ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会)> 第5回遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録(2017年10月30日)

 
 

2017年10月30日 第5回遺伝子治療治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

厚生労働省 大臣官房厚生科学課

○日時

平成29年10月30日(月) 15:00~17:00

 

○場所

厚生労働省9階 省議室

○出席者

【委員】

位田委員、伊藤委員、今村委員、内田委員、小野寺委員、
高橋委員、谷委員、中畑委員、松原委員、南委員、
山口委員

○議題

 1.指針の見直しに向けての意見交換
 2.その他

○配布資料

資料1 検討事項(案)(3訂版)
資料2 「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」改正の方向性について
参考資料1 遺伝子治療等臨床研究に関する指針
 

○議事

 

○下川研究企画官 定刻となりましたので、遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会を始めさせていただきたいと思います。本日は、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。本日は、那須委員から御欠席との返事を頂いております。南委員は少し遅れて参加されます。次に、配布資料を確認させていただきます。議事次第、座席表のほかに資料1、資料2、参考資料1を配布しております。資料に不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。では、以後の進行につきましては、山口委員長にお願いしたいと思います。
○山口委員長 ありがとうございます。本日は、本委員会にお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。では、早速議事に入りたいと思います。まず、前回の見直し委員会での主な意見につきまして、事務局から概要について説明をお願いいたします。
○下川研究企画官 資料1を御覧ください。この資料は、指針の改正に当たっての論点と本委員会でのこれまでの議論をまとめたものになります。
1ページに(1)から(5)の論点がありますけれども、(2)と(4)につきましては、特別研究班会議でまず議論をするという内容ですので、これまでこの委員会で議論されました(1)、(3)、(5)についての御意見を御説明させていただきたいと思います。
 まず、3ページを御覧ください。横の表になっているものになります。遺伝子治療等の定義ですけれども、これまでの御意見といたしまして、現在の定義につきましては、ゲノム編集技術への対応不可能な場合があるので、それについては対応が必要ということで、その表に書いてありますけれども、ゲノム編集技術を4タイプに分類しておりますが、それぞれの議論が行われております。ゲノム編集技術の一番上の所は、DNAの切断があって、かつ特定のDNA配列の改変を行うもの。その次の段はDNAの切断は行わないけれども、一番上と同じように特定のDNA配列の改変を行うもの。この2つのゲノム編集技術については、DNA配列の改変を行う技術は安全性の観点、オフターゲット効果などがあることから、遺伝子治療等の定義に含めるべきであるという御意見を頂いたかと思います。 それから、ゲノム編集技術の上から3番目の欄、これはDNAの切断もしないし、特定のDNA配列の改変も行わない、しかし、エピジェネティクスへの作用として特定のDNAの部位を修飾するもの。これについては、DNA配列を改変しないものの、特定のDNAの修飾(メチル化/脱メチル化)を行っており、遺伝子治療等としても、言葉としても違和感はないし、また安全性上の観点、オフターゲット効果やDNA切断が本当に起こらないのかどうかという懸念もあるので、遺伝子治療等の定義に含めるべきである。
 それから、前回の検討会のときに、時間をさいて御議論いただきましたけれど、一番下のDNAの切断も特定のDNA配列の改変も行わないけれども、エピジェネティクスへの作用として特定のヒストンの部位を修飾するものについての取扱いです。3つポツが書いてありますが、一番上の所ですが、遺伝子治療という言葉の観点でまず考えると、直接DNAに作用しないため、必ずしも遺伝子治療とは言えないけれども、Cas9酵素の代わりにどのような酵素を使用するのか、具体的にはDNAを修飾する酵素を使用するのか、ヒストンを修飾する酵素を使用するのかによって、遺伝子治療等への該当性の有無が変化するというのは、不自然であるし、また特定の遺伝子の発現を制御するという点では、遺伝子治療という範疇で指針において取り扱うことも可能ではないか。
 安全性の観点で考えると、ヒストンの修飾状態が継続性のあるものかどうかによって、遺伝子治療等への該当性を判断するという考え方もあるけれども、それが一過性なのか継続的なのかは、実際に検査しなければ分からないので、そのような観点で遺伝子治療等の定義の境界は定めることは難しいであろう。しかしながら、DNAを切断しないとされるCas9を使用したとしても、DNAを本当に切断しないのかどうか現時点では明らかではないし、オフターゲットも含め安全性の上の課題も残っている。一方で海外の規制との整合性も考慮すると、現時点で明確な形では定義に含めた書き方を行うべきではないと考えられます。
 以上のことから、指針の定義の中では、ヒストン修飾の指針への該当性は明確にせず、当面は通知等により、遺伝子治療等の定義の中に含める運用とし、知見を重ねて最終的に判断するのが適切ではないか。
 それから、表の欄外の所にありますが、ゲノム編集技術は日々進歩しているため、固定的に指針の中でそれを定義し、ゲノム編集技術という言葉を遺伝子治療等の定義に取り入れることは避けたほうがよい。しかしながら、定義が何を指しているかについて、研究者、一般国民に分かりやすく伝えるためには、通知等の解説の中でゲノム編集技術という言葉を用いて、改正の趣旨を説明することが適切である。
 また、ゲノム編集技術にかかわらず、現在想定外の技術まで取り込んだ形で定義することは難しいので、今後、遺伝子治療等の定義から外れる新たな技術が登場した際にはその都度検討して、必要に応じ指針の改正を行うことがある。また、疾病の治療や予防を目的として、iPS細胞やiPS細胞から分化させた細胞に対してゲノム編集を行った後に人に投与する場合も、遺伝子治療に含まれるという御議論があったかと思います。
 次に、8ページを御覧ください。倫理審査委員会の構成要件として、ゲノム編集技術の専門家を含めるべきかどうかということですけれども、御意見としては、現在の遺伝子治療等の定義の範疇の技術においても、いろんな技術があって、必要があれば審議する内容に応じて適切な専門家の意見を聴くという運用が現在でもなされていて、一方、今回追加しようとしているゲノム編集技術についてもいろいろな技術があって、固定的にゲノム編集専門家を委員に含めるという要件を課すと、かえって倫理審査委員会の運営に支障を来すことが考えられるので、固定的な委員ではなくて、必要に応じ該当審査案件に関連する技術についてのゲノム編集の専門家の意見を聴くという運用が適切である。したがって、現在の規定の変更は不要であるという御意見だったかと思います。
 次に、10ページを御覧ください。最後は、研究に係る試料、情報の保管期間についてです。御意見としては、これまでの遺伝子治療等の技術と比べて、ゲノム編集技術において現在の規定以上に最低限の保管期間を延長するなどの措置を取るべき特別な理由は見当たらないので、現在の規定の変更は不要であるということだったかと思います。御説明は以上でございます。
○山口委員長 前回の本委員会での議論をまとめていただきました。これについて、御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。後半のワーキンググループで議論した内容についても、重複する部分がありますが、前回の議論を少し確認をさせていただければと思います。よろしいでしょうか。
 では、今のような議論が行われたという前提で、本日は議論を進めていきます。その上で、これまで本委員会までに、ワーキンググループで先ほど説明いただいた前提の下に議論をさせていただきました。前回の委員会の議論を受けて、厚生労働科学研究「ゲノム編集を取り入れた遺伝子治療等臨床研究における品質、安全性確保等に関する研究」というのが研究班の名前ですが、その第2回の班会議で、用語の定義などについて議論をして、改正の方向性のたたき台を作成いたしました。資料2を見ていただきまして、それぞれの項目について研究代表者の私から説明させていただいた後、議論をさせていただければと思います。
 1ページ目の右側が現行で、左側がワーキンググループで議論した内容です。前提となるのは、前回の本委員会での議論を受けた内容だと、我々は考えております。まず一番重要な用語の定義ですが、この中で赤で書いてある所がゲノム編集をどう取り入れるべきかという議論です。青字で二重線になっている部分は、それ以外に少し議論を進めていく中で、今までの指針の中で少し整備をしたほうがいいと思われる部分を、追加で整備をした部分です。ですから、赤字になっている部分がゲノム編集、青字の所がゲノム編集以外のところも含めた整備の案となります。
 用語の定義ですが、今までのものから第二、用語の定義、一、この指針において「遺伝子治療等」とは、疾病の治療や予防を目的として、遺伝子治療、若しくは遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与すること、又は特定の塩基配列を標的として遺伝子を改変すること、若しくは特定の塩基配列を標的として遺伝子を改変した細胞を人の体内に投与することをいう。少し回りくどいような文章になっておりますが、全てカバーをしようとすると、このような言い方が適切ではないかと思っております。ですから、赤の部分がゲノム編集を取り入れた形での記載となっております。
 次に、十六で「最終産物」の定義をしております。この指針において「最終産物」とは、被験者に投与する最終産物に作製された疾病の治療、又は予防のための遺伝子が組み込まれたDNA。その後、追記として、治療又は予防のための遺伝子が組み込まれたウイルスその他の粒子、又は特定の塩基配列を標的として遺伝子の改変を行うために用いるタンパク質、若しくは核酸等をいう。これは、一番最初の黒字の部分の、遺伝子が組み込まれたDNAというのは、プラズミド等を表します。医薬品などでいうと、これは遺伝子発現構成体になるかと思います。その次は、組換えウイルスに関する記述です。治療、又は予防のための遺伝子が組み込まれたウイルスが組換えウイルスになるのですが、元の文章ですと「DNA又はこれを含む」と。こうなると、DNAウイルスしか含んでいないような定義になっているのではないかという懸念があり、あえてこの部分は少しややこしい書き方をしておりますが、DNA、RNAウイルスを含むような記載にさせていただいております。「又は」以降で、ゲノム編集として普通のウイルスを使う場合、ベクターを使う場合やプラズミドを使う場合は前で包含されますが、タンパクや核酸等、メッセンジャーRNA等も含めて、今までの最終産物に当てはまらないものの場合には、赤字で書いた所が適用されるという仕組みです。
 次に、今回の適用対象外でしたが、少し元の記載が不明瞭ではないかということで、生殖細胞を対象とする遺伝子治療の禁止等の項について、もう少し簡潔に記載する方向で、青字の所のように修正しております。人の生殖細胞又は胚を対象とした遺伝子治療等臨床研究及び人の生殖細胞又は胚に対して遺伝子治療等を行うおそれの臨床研究は、行ってはならないと。多分、内容的には今までと同じであろうと思っております。ですから、遺伝子改変という言葉でいいのかという議論があり、もう少し明確にしておいたほうがいいのではないかという話です。
 2ページ目以降は、前回の議論の中で、ワーキンググループでどのような記載をするかということで、研究計画の記載について、ゲノム編集の中でタンパク質のみを使うような、あるいはメッセンジャーRNAのみを使うようなケースについて、どう記載するかということで、第十八の一の丸9遺伝子の改変に用いるタンパク質又は核酸等の情報ということです。丸8が今までの遺伝子治療でプラズミドを使った場合や、ウイルスベクターを使った場合で、「開発の経緯」は同じであろうと。導入する遺伝子という所が、この場合はタンパク質や核酸は遺伝子ではありませんので、その部分が「導入するタンパク質や核酸等」になります。遺伝子の導入方法に当たる所が、「遺伝子の改変の方法」に当たるだろうと、タンパク質や核酸を使った場合はそのようになるのではないかと。(4)の最終産物については同じなので、(1)と(4)は同じで、(2)と(3)がこのように記載したほうが適切ではないかという案です。
 最後のページは、新規性の判断です。ものとして新規性、あるいはターゲットとしてものが新規性、そのような場合にタンパク質や核酸を使う場合に、どのような新規性の言葉で記載すればいいかということで、丸2に新しい項目を入れて、その後ろをずらしていくという提案をさせていただいております。丸2遺伝子の改変に用いられるタンパク質若しくは核酸等で新規のもの、又は新規の遺伝子改変方法を用いること。ですから、ものとして新規ということと、改変の方法が新規であると。疾病の対象が新規になるものは丸3のほうになりますので、これで全部含まれているのではないかと考えている次第です。一応ワーキンググループで検討させていただいたものは、以上です。これについて、いろいろと御意見があるかと思いますが、ここで本日メインの議論をさせていただければと思います。お願いいたします。
○伊藤委員 大変分かりやすく整理されているのですが、分からないことがありますので教えてください。1つは、3ページの下にゲノム編集技術のことで、特定のヒストンの部位を修飾ありの項の委員会の御意見ですが。
○山口委員長 資料1のほうでしょうか。
○伊藤委員 資料1です。
○山口委員長 資料2の。
○伊藤委員 そうではなくて、資料1の3ページです。それでもよろしいですか。
○山口委員長 どうぞ。
○伊藤委員 下のほうにある「現時点で明確な形では、定義に含めた書き方を行うべきではない」という御意見ですよね。「該当性は明確にせず、当面は」と書いてありますが、いずれ知見を積み重ねて最終判断をするのが適切という意味がちょっと分からないのですが。素人では、早めに判断しておくのがいいかなと考えるのですが、知見を重ねてからでいいということの意味を教えていただけますか。
 それから、6ページの研究計画書に添付しなければならない資料の中での(3)ですが、「ベクター作製方法に関する詳細な情報」とだけ書いてあるのですが、これだけで専門家の方々はお分かりになっているのでしょうか。これは、どういう意味かが分からなかったのです。
 もう一点は、8ページの一番最後で、これも委員会での御意見ですが、「か えって倫理審査委員会の運営に支障を来すことが考えられる」と書いてあります。これは、具体的にはどのような支障を想定されておられるのでしょうか。
 それから、資料2の1ページの第七、「遺伝的改変を目的とした」という文章と、ただそれを「対象とした」ということでは、具体的にどういうことが違うのでしょうか。教えていただければと思います。
○山口委員長 順番にいかせていただきます。最初のところは、この前もなかなか結論が出なかった部分だと思います。ヒストンのアセチル化について、含めないでいいという結論にはもちろんなっていないのですが、含めるべきかどうかのところがなかなか結論に至らなかったところです。これは、2つほど理由があります。1つは、下川さんにも説明いただいたのですが、海外の動向が本当にヒストンアセチル化も全部入れる方向になっているかというと、そこがなかなか読み切れないだろうと。日本だけが本当にそう言い切っていいのかというのが、1つあります。恐らく、以前私自身がFDAやEMAと議論しているときは、余りヒストンアセチル化までは想定していないような印象を持っておりました。ただ、だから要らないというわけではないです。
 もう1つは、伊藤先生の意見に対する答えになるかもしれないのですが、今は恐らくヒストンアセチル化だけを、タンパク質やアミノ酸だけで入れたようなものがすぐ出てくるような状況ではないだろうと。もしやられるとしたら、恐らくウイルスベクターなどを使うようなものが最終になるのではないかと。それですと、旧来の遺伝子治療の中に当然含まれてきますので。今回一番気になるのは、タンパク質やメッセンジャーRNAだけで、要するに旧来の遺伝子治療の定義に当てはまらなくなったときに、それをどうカバーするかということです。もし、タンパク質やメッセンジャーRNAだけで起きるような、起こすようなものが直近でくるのだとしたら、急いで結論を出さないといけないとは思うのですが、そういう状況ではないのではないかというのが、もう1つの要素です。ですので、海外の状況を含めて少し様子を見ても大丈夫なのではないかということです。要するに、世界的にもまだそこまでいっていないのではないかということです。そう言いながら、いろいろな技術が急に進歩してくることがありますので、その場合には急いで対応しないといけないということも、もちろんあるかと思います。
 それから、6ページの計画書の詳細な情報ですが、通知の中にどのように計画書を書いてくださいというのがあります。さらに、それの別添があります。別添には、いわゆるウイルスのベクターを作るときに、どういう遺伝子を入れてどういう細胞の中で組み換えて、それをどのように解析するかという項目を細かく書いたものが、大臣通知ではなく出されております。ですから、そこを見せていただくような形で構成されておりますので、大臣通知そのものは簡単な書きぶりしかしていないのですが、具体的な中身については、その作製方法については、数ページにわたって細かく書いております。ですから、そこを見ていただくことになっています。もしあれでしたら、そういう情報を今度事務局から出していただくと有り難いです。そこに書いてあることが分かるかと思います。
 それから、8ページのゲノム編集の専門家の意見を聴くという運用が適切か、固定的な意味ではなくて、必要に応じてということですが、支障を来すというよりも、委員に必ず入れないといけないとなると、ゲノム編集がないときにも必ずその先生に入っていただかないといけなくなってしまうので、そこは絶対必須ではないだろうということで、このような書きぶりにいたしました。
 それから、遺伝子改変の目的としたという、その改変のところが本当に全部改変でなるのかについて、少し意見もあります。この辺りは、もう少し遺伝子治療という大まかな括りの中に括っておいたほうがいいのではないかということで、このような。改変というと、改変でないとというような、そこの改変の中身が少し振れているわけです。ですから、改変にヒストンアセチル化まで入れるかもしれないし、入れないかもしれない、そこは曖昧になっていますので、むしろ、遺伝子治療の中に入れてしまえば、遺伝子治療と定義したものは全て入ってくることになるかと思って、そのような記載にさせていただいたというのが提案です。他の先生方、御意見等はありますか。
○位田委員 先ほどの伊藤委員の一番最初の質問で、知見を積み重ねることの続きですが、海外の動向が必ずしもはっきりしていないので、日本だけというわけにもなかなかいかないだろうというのは、よく理解いたします。もし、日本でこれを含めるという規定を作った場合に、何らかの研究に支障が出るようなことがあり得るのでしょうか。
○山口委員長 逆に言うと、そこのところが読めないというのが正直なところなのです。技術的な話として、例えばヒストンのアセチル化がいろいろな技術でできます。ですので、化学薬品でとかというのは、もちろん外すことにしているのですが、そこの間のグレーゾーンが結構出てくる可能性があるのではないかと。その辺りを少し危惧しているのもあります。
○位田委員 恐らくそうだとは思うのですが、問題は、例えば抜け駆けでヒストン修飾なりアセチル化なりをやって、そうすると今のところは明確に遺伝子治療臨床研究の中に入らないので、この指針の規制を受けないということで、実際に行われてしまう可能性は当然あり得ると思うのですが、そこはいかがでしょうか。
○山口委員長 そこも、例えばヒストンのアセチル化、HDACでやられているような化学物質のものなどは、やるとしたら恐らく抗腫瘍効果、がんなどにしか使わないだろうと、一般的に考えられていると。要するに、かなりリスクの高いことになるのです。正直申しまして、遺伝子治療だから日本は規制できるというところがあって、その点を指摘いただいていますが、もし、これがアメリカやイギリスなどのヨーロッパでしたら、恐らく全部臨床研究は国の機関が見ています。抜け駆けという意味はそういうことなのですが、全てを遺伝子治療の中に入れないと見れないのかと、そこは本来は遺伝子治療でないものも、IRBできちんと見ていただくのが本来の筋ではないかという気がしてはいるのですが。これは、私の個人的な意見かもしれません。
○位田委員 アメリカやヨーロッパと日本とでは、制度が随分違って、臨床研究はアメリカなどは法律で規制しているので、余り細かいことは書いていないです。日本は、非常に細かく書いているけれども指針なので、そこはどこまで見通して規制を掛けるかは非常に難しいのですが、少し抜け駆けのことが気になりました。
 2点目は、資料2の第七の生殖細胞のところで、現行のものも遺伝子治療という言葉を使っています。遺伝子治療というのは、上の用語の定義のところで、疾病の治療や予防を目的として行われるものを遺伝子治療と言っているので、それ以外のいわゆるエンハンスメントでやる場合には、本来は遺伝子治療には当たらないので、この指針の範囲を超える。今まで、日本は何もそういうことは規制していないですし、世界的にもなかなか規制は難しいと思うのですが、遺伝子治療と書くことによって、疾病の治療や予防を目的とするということで限定してしまうことになるので、本当にそれでいいのだろうかと思います。目的が違うから、遺伝子治療にならない形で、遺伝子改変などをやるという可能性はどうかなと思うのですが。
○山口委員長 今、遺伝子ドーピングが問題になっています。遺伝子ドーピングの場合は、割と遺伝子を入れた影が少し出るというのですが、ゲノム編集の場合はそれが出てこない可能性があるわけです。これは、本当に議論をしていかないといけないのかもしれませんが、エンハンスメントという、いわゆる遺伝子ドーピングみたいなことを目的の中に入れること自体に、少しリスクがあるかなと。遺伝子治療は、なになにをするということを目的として書いていますので、こういうことをしてはいけないという目的ではなかなか書きづらいところがあるのです。基本的な共通認識としては、そういうものはやってはいけないというのはあるのですが、それをどう記載するべきかというのは、本当の意味で意見をお伺いしたいところです。事務局からも、そういうことを書いておくほうがいいのかという意見を聞いたのですが、やってはいけないことを書くこと自体が、今までの指針の立て付け上、ほとんどやったことがない話なのです。治療以外の目的で、こういう目的でやるのだというのはあるのですが、こういう目的のことはやってはいけないと。胚のところは、意外とF1を作らないということで明確になるのですが、遺伝子ドーピングというのが。それこそ御意見を頂けると有り難いと思います。
○伊藤委員 しつこいようですが、見逃していたので。資料2の1ページの第七の所ですが、改正の方向性では「生殖細胞等を対象とする遺伝子治療等臨床研究の禁止等」ですね。現行では、「生殖細胞等の遺伝的改変の禁止」となっていまして、印象としては現行のほうがクリアにぴしっと駄目なものは駄目と言っているような気がするのですが。これを臨床研究の禁止だったら、これは臨床研究ではなくて、もう実際にやるのだと言われたらどうするのですかという話ですか。
○山口委員長 これは遺伝子治療の指針そのものの立て付けが、臨床研究をやるときの指針なのですね。治療ということをターゲットにして指針は作られていなくて、恐らく治療になった場合には、治療になったと言っても、例えばPMDAで承認されるような、薬機法で承認されるようなものは向こうでやるのですが、その前はもう治療という、当然その中で今の懸念点の全部が、評価されると思うのです。あくまでも遺伝子治療臨床研究指針というのは、研究として実施されるという場合の話です。ただ、逆に言うと、生殖医療などの研究をしないで、いきなりやれるものかというところですよね。ヒト胚のところでも、そんなことが簡単に行くような議論ではなくて、むしろそれはやってはいけないほうとして今考えて、議論が進んでいると思うのです。
 もう1つは、「等」と入れているのは、もともと「遺伝子治療等」の「等」の中の、遺伝子治療には該当しないのですが、例えば腫瘍溶解性ウイルスのような弱毒株を使ったようなケースなども、一応、遺伝子治療の指針の中で見てくださいと言われれば見ましょうということになっていますので、そういう意味で「等」を入れていることになります。
○位田委員 おっしゃることはよく分かっていますし、私もそうだろうなと思いながら質問しているのですが、基本的に生殖細胞に何らかの改変を行うこと自体は、全面的に禁止するべきだというのが私の意見です。おっしゃるとおり、これは遺伝子治療の臨床研究なので、日本の場合には何段階かあって、臨床研究というものと、実際に治療というものと、それ以外の可能性は当然あるので、本当であれば全部、傘をかけて、生殖細胞に対する改変、若しくは何らかの介入は禁止するという法律的な規制があるのが一番だと思うのです。しかし、それがないので、できるだけそういう可能性を潰していくために、臨床研究の中でもその規制の可能性を広げておいたらどうかなというのが私の意見というか、希望なのです。
○山口委員長 ありがとうございます。どうしてもこの指針そのものを我々は審議できる、遺伝子治療臨床研究の審議をしていることになっており、それ以外の話についてはここで全部決めてしまえるという話ではないと思いますので、場合によってはここの部分に関しては、ヒト胚、内閣府のほうで議論している話との意見の交換も必要になってくるのかなという気がするのです。もし、その辺、事務局のほうから何かありましたらお願いします。
○伊藤委員 今、位田先生の言ったようなことがちょっと頭の中にありながら感じているのですが、これは臨床研究の指針なのです。それでも第七の所には、はっきりと「遺伝的改変の禁止」と書いてあるのです。そこと今回の改正との違いがあるということは、前の指針のこの書き方がおかしかったという意味になるのですか。
○山口委員長 そうではなくて、遺伝子改変という、改変の中身にちょっとグレーゾーンがあるので、グレーゾーンのまま改変の意味をそのまま取り込んでしまうと、ちょっと齟齬が出てこないかと、そういう議論です。あと、「もたらすおそれのある」というのは、この後ろの部分は変わっていないのですが、おそれがあるというのは、目的としなくても、そのおそれがあってはいけないと、もうやってはいけないということになっています。かなり幅広く禁止しているというように、私は解釈はしてはいるのですけれども。
○下川研究企画官 ちょっと補足しますと、多分この改正の方向性の案は、最初の題名の所に「等」が付いているのは、後半の「おそれのある臨床研究」というものが「等」がないと読めないので、「等」が入っているのではないかと思います。それから、「遺伝的改変」という言葉がなぜなくなっているかですが、「遺伝的改変」という言葉が不明確なので「遺伝的改変を目的とした遺伝子治療」と言ってしまうと、遺伝的改変を目的としていない遺伝子治療があれば、それが漏れてしまう可能性があるのではないか。それだったら、不明確な「遺伝子的改変」という言葉をなくして、「遺伝子治療」そのものを使ったほうがいいのではないかということで、中身を変えたというよりも、よりこちらのほうが明確なのではないかということで、研究班のほうで御提示された意見ではないかと思います。
○山口委員長 ほかにワーキンググループの先生方でも御意見を頂ければ結構ですが。
○今村委員 今、両委員が言われたことは、私どもが非常に懸念をしているところです。そういうこともあって、あるいはまた海外との規制とのこともあって、両にらみをしながら臨床研究という部分に絞って議論が行われたということで、このようなちょっと奥歯に物の挟まったような指針になったのだろうと理解しますし、それはそれでワーキンググループの先生方の御苦労もよく理解します。
 海外との規制の状況ですが、日本だけでやってもその効果というか、倫理性の担保がどうしても非常に歪曲化されたものになってこざるを得ないということで、いろいろな難しいところはあるのでしょうけれども、やはり先進国を中心としたところでの総合的な議論があって、まとめていくべきものなのかなと。そういう意味では、私どもの会長が今、世界医師会長になっていまして、特にここでは倫理的な課題を取り扱うというのが第一義的なことになっております。そういったことで、この委員会のミッションから超えますが、このような意見があったのだと、特に生殖細胞を扱うようなものについては、今言ったような御意見で相当厳しい対応をしなければいけないということで、内閣の倫理調査会でも議論されているように、そういう方向で議論をすべきだと思いますし、そちらのほうへのコメントといいますか、こちらのほうでの意見も、ちょっとここのミッションは超えるけれども、こういう意見が強くあったということをどこかに付記していただければ、大変有り難いなと思います。
○山口委員長 ありがとうございます。正しくそのとおりかと思いますので、是非、医師会のほうからも世界のところにもそのように。我々がやるとすると、どうしてもPMDAも交えた形でないと、FDAとかああいう所と議論しにくいところもあります。個別にはやろうと思っているのですが、全体としてのハーモナイゼーションというのは、やはりそういう場がちょっと必要かなという気がしますので、それは是非、医師会のほうで世界的なところでの議論を引き受けていただけると有り難いなと思っております。その点については、こういう議論があったということ自体は、内閣府のほうにも伝えていただくようにお願いしたいと思っております。ほかにありませんか。
○位田委員 すごく細かいことなのですが、表現上で第七の所で、「遺伝子治療等を行うおそれのある」というのに、ちょっと感覚的に引っ掛かっております。第二の用語の定義の所で言われているのは、遺伝子治療というよりは、遺伝子治療行為なのだろうと思うのです。というのは、遺伝子治療というのは、遺伝子治療行為を行って、病気を治療する、若しくは予防することだと思います。もともとの用語が「遺伝子治療」という言葉を使っているので、これで余り問題はないのかもしれませんが、ここの「遺伝子治療等を行うおそれのある臨床研究」という部分になると、何となく言葉の上での違和感がありますので、こちらは遺伝子治療の後に「行為」というのを入れたらどうかと思います。そうすると、遺伝子治療行為というのを、また定義しないといけないことになるかもしれないので、若干躊躇するのですけれども。この点は細かい表現なので、そうでないといけないと言うつもりはありませんが、ちょっと感覚的に違和感がある。
○小野寺委員 今おっしゃるとおりで、現行のほうですが、「生殖細胞又は胚の遺伝的改変をもたらす遺伝子治療」というのは、多分in vivo遺伝子治療の話だと思うのです。ですから、今回も基本的に同じようなことなので、その文章は同じで「及び人の生殖細胞又は人の胚に対して遺伝子の改変のおそれのある遺伝子治療等の臨床研究」で良いと思います。あくまでも遺伝子治療というのは、位田先生が言われるように、結果的に生殖細胞に何らかの変化を起こしてはいけないという話なのです。あと、元の文章は同じでもいいと思いますが、「遺伝的改変」か「遺伝子の改変」でもいいと思いますし、また、「おそれのある遺伝子治療臨床研究は、行ってならない」が多分正しいのではないかと思います。
○山口委員長 ありがとうございます。位田先生と小野寺先生のお話を聞かせていただいて、趣旨は多分同じで、文章のちょっとおかしな所をできるだけ明確にしたほうがいいということで、この間ワーキンググループでも、法令の人にしょっちゅう聞きながらやっておりましたので、ちょっと法令の人に確認をして、そこの最終判断というか。これは後でちょっと申し上げますが、多分これは中間まとめになるかと思いますので、ここの文章に関してだけは、そのようなまとめ方にさせていただければと思うのですが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それ以外のところでありますか。どこでも結構ですけれども。
 一応、今日の大きなメインの資料2について、第七の所の文章の修正を宿題として頂きましたが、これは早急に修正をして、メールベースで皆様に確認だけを頂けるように、数日以内に送らせていただければと思います。それで確定して、確定といっても、一応、今日の委員会での確定ということなのですけれども。
今日は早く終わりそうなのですが、資料2が大体片付けば、この辺の議論経過について、11月の再生医療等評価部会に中間報告という形で出させていただければと思っております。再生医療等評価部会、あるいは班会議での意見を基に、今後も更に検討は続けていくし、これの形で更に詳細な部分についての議論を、またやっていかないといけないので、そのワーキンググループでの経過について、またこの委員会で報告させていただければと思っております。そういうことでよろしいでしょうか。
○位田委員 質問なのですが、資料1のヒストン修飾の指針への該当性は明確にせず、当面は通知等によって中に含める運用とすると、これはどこの部分で入れるのですかね。どういう形で。
○山口委員長 幾つか考えられる方向がありまして、今の記載としてはこのようにするのですが、例えばQ&Aを出す、あるいは脚注を付けるという形で、「当面」という言葉を使えるのであれば使って、「ヒストンアセチル化等をする場合」。ただし、その場合でも、そのヒストンアセチル化等をタンパク質やメッセンジャーで行う場合が今、外れてしまいますので、そういうものが出てきた場合には、一応、今のところ遺伝子治療に入れておこうとする。ただし、それは将来、見直しをするという言い方になるのかなというように、ちょっと考えております。
○位田委員 そうすると、資料2の用語の定義の十六の所で入れられるという、そういう趣旨で理解してよろしいですか。
○山口委員長 指針本体の中ではなくて。
○位田委員 いや、これに、ここはこのように運用するんだというのを付けるわけですよね。ですから、十六の解説というか、分かりませんが、そういう形ですね。
○山口委員長 はい。
○位田委員 そうすると、例えば注番号を付けるとすると、どこに付くのかなというのが。
○山口委員長 ありがとうございます。かなりいろいろな意見を頂き、一応、中間まとめということで、資料2を、ちょっと修正する部分がありますが、修正したものを確認させていただくということで、11月の再生医療等評価部会に中間報告させていただければと思っております。ほかになければ、最後に事務局に連絡事項についてお願いします。
○下川研究企画官 次回、第6回の日程については、皆様から頂いた候補の日程を基に検討中です。決まり次第、連絡したいと思います。次回以降の委員会ですが、先ほども御質問がありましたが、どんな試験をやるべきか、どんな点に留意をするべきなのかということについては、特別研究班のほうでまだ議論いただいていますので、その結果が上がってくれば、またここで議論をさせていただきたいと思います。本日、現時点の案ということで、改正の方向性ということになっていますが、現時点でずっとこれで確定ということではありませんで、今後またより良く文章も修正したいと思っております。また、これはこの委員会の上の再生医療等評価部会に諮った上ではあるのですが、来年、臨床研究法が施行されることになっており、それに伴って、遺伝子治療の臨床研究の指針の見直しも必要になりますので、再生医療等評価部会の了承が得られれば、この委員会でその検討も併せて行いたいと考えております。
 本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いして、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。最後になりましたが、本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。事務局からは以上です。
○山口委員長 仕事が1つ増えるようですが、またよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 

 

(了)

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