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2017年10月2日 第4回遺伝子治療治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会 議事録

厚生労働省 大臣官房厚生科学課

○日時

平成29年10月2日(月) 14:00~16:00

 

○場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)

○出席者

【委員】

位田委員、伊藤委員、内田委員、小野寺委員、谷委員、
中畑委員、那須委員、南委員、松原委員、山口委員
 

○議題

 1.指針の見直しに向けての意見交換
 2.その他

○配布資料

資料1 第3回専門委員会における主なご意見
資料2 厚生労働特別研究事業「ゲノム編集技術を取り入れた遺伝子治療等臨床研究における品質、安全性確保等に関する研究」第1回班会議概要
資料3 検討事項(案)(再改訂版)
 

○議事

 

○ 下川研究企画官 定刻となりましたので、ただ今より「第4回遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会」を始めさせていただきたいと思います。本日はお忙しいところをお集まりいただき、どうもありがとうございます。
 前回の委員会開催以降、人事異動がございまして、厚生科学課長が佐原から浅沼に代わっておりますので御挨拶をさせていただきたいと思います。
○ 浅沼課長 ただ今御紹介いただきました厚生労働省厚生科学課長の浅沼でございます。7月11日付けで厚生科学課長を拝命し、早や3か月たちました。この遺伝子治療等臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会は初めてですので、僭越ながら簡単に御挨拶をさせていただきたいと思います。
 特に、私どもとして用意した御挨拶があるわけではないのですが、座長の山口先生とは長いお付き合いになりますし、委員であられる先生方とも半分ぐらいは顔見知りの先生方ばかりでございます。それだけ、先生方におかれましては、厚生労働行政で日ごろから大変お世話になっている次第です。
 この遺伝子治療に関してもずいぶん時間がたち、それ相当の遺伝子治療がされてはいるのですが、やはり時代の流れというのもございます。時折、こういった指針の見直しをさせていただきながら、より円滑な、あるいはなじんでくれば一定の規制を外しながら、どんどんこの治療が進められるような形も必要ではないかということで、前回まで、この議論をさせていただいているのだと承知しております。
 あと、もう少し御議論をいただきながら、この指針の見直しに向けて、私ども厚生科学課も取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしく御指導・御鞭撻いただきますよう重ねてお願い申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○ 下川研究企画官 委員の出欠状況ですが、高橋委員から御欠席とのお返事をいただいております。
次に、配布資料を確認させていただきます。議事次第、座席表のほかに、資料1、資料2、資料3を配布しております。資料に不足等がございましたら事務局にお申し付けください。
 それでは、以後の進行につきましては、山口委員長にお願いしたいと思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます、本日はお忙しい中、本委員会に御参集いただきましてありがとうございます。
 早速、議事に入りたいと思います。まず資料1「第3回専門委員会における主な御意見」につきまして事務局の方から説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○ 下川研究企画官 資料1を御覧ください。1枚おめくりいただき、第3回専門委員会における主な御意見を御説明させていただきたいと思います。
 順番に読ませていただきます。
 1.ゲノム編集技術の利点は、短時間かつ効率のよい設計と導入により痕跡を残さずに遺伝子を修復できることと、自己の細胞を編集するので免疫の問題も起こらないことである。
 2.ゲノム編集技術を用いた臨床試験は海外で行われはじめ、開発に巨額が投資されているものの、デリバリーの問題により、目的となっている疾患は主に眼、筋肉、肝臓や癌に限られている。
 3.ゲノム編集技術を医療において実用化するためには、基本特許に加え、Cas9を医療応用できるツールに作り替えるための酵素エンジニアリングや疾患の起きている臓器に特異的にデリバリーするとともに作用する時間も制御できる技術(時空間的な制御技術)の開発が必要で、これら周辺技術の競争は始まったばかりである。医療応用のために、ベクターに搭載できるようCas9のサイズを小型化し、切断部位の高認識化と自由度向上を果たしたスーパーCas9の開発が進んでいる。
 4.細胞内への導入方法としては、ウイルスベクターを使用する方法とタンパクRNA複合体(RNP)をリポソームのナノカプセルの中に入れて細胞内に導入する方法がある。RNPを使用する場合は、一定時間後分解され、作用は継続しないが、アデノ随伴ウイルスベクターを使用する場合はCas9が持続して発現する可能性があり、時間的な制御技術の開発が必要である。このアデノ随伴ウイルスベクターを使う方法とリポソームのナノカプセルを使う方法は非常に発達してきている。
 5.厚生労働科学研究で検討する技術的、細目的項目については、ゲノム編集技術に対応した遺伝子治療等臨床研究計画書の記載の在り方につき、○1研究計画書に記載すべき事項及びその内容、○2研究計画書に係る品質及び安全性に関する評価項目の記載における留意事項、○3研究計画書に添付すべき資料及びその内容とする。本指針の用語や定義や評価すべき事項については、本委員会で検討する。
 6.遺伝子治療について、今までは遺伝子導入で定義していたが、遺伝子導入だけでなく、遺伝的改変を定義に入れる方向がよいのではないか。センダイウイルスベクターは、細胞質に存在するため、定義を遺伝的改変のみにしてしまうと齟齬が生じる。以上です。
○ 山口委員長 ありがとうございます。前半部分は、この間ヒアリングさせていただいた濡木先生の講演の内容かと思います。後半部分の5番、6番の辺りが議論した内容ではないかと思います。もし、この辺について何か御意見等ございますでしょうか。よろしければ、これで前回の意見としては、こういう内容であったということで確定させていただければと思います。ありがとうございます。
 続きまして、議題1の指針の見直しについての意見交換を行いたいと思います。まず、厚生労働特別研究で「ゲノム編集技術を取り入れた遺伝子治療等臨床研究における品質、安全性確保等に関する研究」の第1回の班会議を先日開催させていただきました。これにつきまして、開催して議論した内容を資料2として説明させていただければと思います。それに続きまして、資料3に基づいて議論をさせていただければと思います。
 まず、資料2を見ていただければと思います。これが研究班会議での意見の内容というか、特に前半のところに、本日の見直し委員会で議論していただきたいことを挙げております。私から説明させていただきます。研究班での議論ということで、出席者については、ここに列挙されたとおりです。
 遺伝子治療の定義については、「遺伝子治療等臨床研究に関する指針」の記載をどのようにするべきかということについて議論を行いました。ゲノム編集では遺伝子改変のみならず、様々な遺伝子発現の制御のための遺伝子の修飾もあるということで、このような遺伝子改変ではない修飾技術をどこまで遺伝子治療と考えるかを議論して、「見直し委員会」での議論の素案を提示する目的で、まず議論させていただきました。
 先ほどの資料1の最後のところを見ていただければと思います。遺伝子治療について、今までは遺伝子導入という定義をしていたけれども、遺伝子改変という、遺伝子導入ではないのだけれども最終的には遺伝子改変を行うような技術についてもやはり含めるべきで、それを受けた形で、見直し委員会で合意された遺伝子改変を入れるべきではないかというところに関し、特にタンパク質やmRNAを用いたゲノム編集に関して、遺伝子導入では定義できない部分について、どのように定義するべきかについて議論を行いました。
 もう1つ、ゲノム編集技術では遺伝子のノックアウトや相同組換えによるDNAの塩基配列の改変のみならず、ターゲット遺伝子のDNAのメチル化、あるいはその部分、ターゲット遺伝子配列の、そこの部分を覆っているような、覆っているという言い方はちょっとよくないですね、ヒストンのアセチル化など、様々なエピゲノムの修飾によるゲノム編集も考えられていると言われております。こういうようなことをどう取り込むべきか、それからゲノム編集技術について特定遺伝子のエピジェネティックな変化を起こすことを目的とした場合、そのエピジェネティックな効果は一過性ですぐに終わるのか、それとも一定時間持続するのか。特に、一定時間持続するのではないかという意見もありました。こういう場合、エピジェネティックなところがターゲットのみならず、オフターゲットの安全性についても考えないといけないことから遺伝子治療として評価をすべきではないかという意見が出されました。ただし、これらについては、研究班で最終的に議論をするのではなく、ここで見直し委員会として議論をしていただく、そこをどこまでの範囲とするべきかということは、ここの委員会に委ねたいと考えています。この点については、本日あとで集中的に議論していただければと思っております。
 もう1つ、エピジェネティクスのほうに関し、ヒストンのアセチル化という修飾が特定の遺伝子配列にのみ限定されるような技術であるかどうかというのは不明な点が多い。そういう観点から考えた時、このヒストンのアセチル化は入れるべきではないのではないかという意見もありました。その辺の範囲についても、本日議論していただければと思っております。
 指針本体の定義で全てを説明するのは難しいので、定義をしたとしてもグレーゾーンというか曖昧な部分、あるいはその時点での技術が固まっていない部分もあるだろうと想定し、見直し委員会での議論を整理しQ&Aで説明していった方がいいのではないかという意見も出されました。
定義については、エピジェネティックな修飾・編集技術を取り入れる案を見直し委員会で提案することとしたい。暫定的には先ほど、最初の方で述べましたように、遺伝子の改変のみならず修飾の部分、例えばDNAのメチル化などの部分も一応入れるような形では提案したいということです。ただ、この辺に関しては、この会議で決めていただければと思います。
 次のページですが、あとは細かい話です。ゲノム編集技術について、まず指針の本体部分、要するに、大臣告示に当たるところの議論が主に今のところでした。そのほかにゲノム編集技術については、例えば計画書というところがございます。遺伝子治療等臨床研究を申請する際には計画書を提出していただきますけれども、そこの記載についても今申し上げたように、もしエピジェネティックなところまで入れる、あるいはmRNAやタンパク質を用いた改変も入れるとすれば、研究計画書の記載は多分変わってくるだろうと思っています。その部分については研究計画書とセットで、いずれ説明させていただければと思っています。
 あとは別添に、遺伝子治療の作製方法、品質評価、特性解析、非臨床について書かれたところで割と細かく規定しているところがあります。その辺についても多分、修正・修文する必要があるのだろうと。これについては、本日、ゲノム編集の定義と、どこまで範囲を含めるかということを決めていただいた上で研究班で案を作りたいと考えています。
 その点についてが、(ア)(イ)(ウ)に当たるところです。例えば、今まではベクターの構築などの話は書かれているわけですが、例えばRNAの場合にはベクターの構築という部分だけではなく、いわゆるタンパク質化学的な記載方法というものが必要になると思います。あるいは、mRNAを入れる場合でも、そういう記載については今までの記載では十分書き切れていないところがあります。その辺については範囲が決まった後で記載するような形で提案させていただければと思っております。
 3番の海外動向について、FDAの動向というのは不明なのですが、EMAに関しては、EMAのReflection Paperが出されております。その部分、“These tools use different starting materials and are able to achieve more specific genetic modifications than traditional vectors”ということで、“specific”という定義が付いていて、特異的な遺伝子配列を修飾するという形です。このmodificationは、恐らく改変のところが主だとは思うのですが、解釈の仕方によっては修飾というか、エピジェネティックな修飾も含めるような形になっているのかなと思っております。ですから、この定義に合わせるような形で幾つか提案をさせていただいております。
 4番の今後のスケジュールですが、10月に見直しの本委員会が2回開催されます。まず、本日、当委員会でどういう定義をするかということと、ゲノム編集の範囲というか、遺伝子治療として見るべき範囲を決めていただいた上で、更に細かいところまで研究班で提案させていただき、最終的にはもう一度、できれば10月末に予定のこの会議で、更に追加の提案をさせていただければと思っております。
 続いて、3ページの用語の定義です。これは多分、3番でやったほうがいいのかもしれません。指針の定義として、今まで書かれているのが、この指針において「遺伝子治療等」とは、治療や予防を目的として遺伝子又は遺伝子を導入した細胞を人の体内に導入すること、ここまでの黒字で書かれているのが今までの指針です。そこに2つほど例を挙げております。あるいは種々の方法により人の遺伝子を改変ないしはヒト細胞の遺伝子を改変して人体内に投与すること。ここの部分に関して様々な意見があって、まとめていただいた上で書いていただこうと思っております。
 もう1つは、この指針の「最終産物」というのが、今まではベクターやウイルスベクター、プラスミドの遺伝子コンストラクトということになっていたのですが、それ以外に、人又は人細胞の遺伝子を改変するために用いられる特別な活性を持つタンパク質やmRNA等が最終産物である場合も含めるという提案というか、これで決まってというよりも、こういうような書きぶりが1つの案ですということです。
 最終ページ、4ページです。ここはどういうように変わってくるかということで、研究班のメンバーの方とちょっと案を作らせていただきました。一番上のゲノム編集技術というのは二本鎖を切断して相同組換えということで、これがタンパクであればウイルスベクターを使うか、プラスミドを使うかということになるかと思います。ここまでの部分は改変ということにすれば全部入ってくるかと思います。
もう1つ、切断しないゲノム編集というものがあります。例えば、デアミナーゼによって点変異を引き起こすようなものがある。これは一応、改変に入るだろうと考えられます。あと、リコンビナーゼによる組換えも、そこに入るかと思います。
 一方、下の方ですが、メチル化DNAを脱メチル化することによって、ターゲットに関する特異的な変化を起こすことによって、遺伝子発現制御を行う。要するに、こういうメチル化、脱メチル化というのは、ある一定期間続くだろうということです。上の部分が遺伝子改変に相当し、下の部分が遺伝子改変ではない、エピジェネティックな効果ということで、この辺の範囲を本日議論していただければと思います。
 今、たくさん説明してしまいましたが、まず資料2、研究班で議論しました内容について、エピジェネティックな遺伝子治療をどこまで含めるかというのは、この次、すぐに議論させていただきたいと思います。まず、この研究班での議論の内容について御質問等がございましたら。あとで、エピジェネティックなところも含めた提言を議論させていただければと思います。
○ 那須委員 岡山大学の那須です。大変詳しく、かつ簡潔にまとめていただいて論点が明らかになりました。
先ほど先生もおっしゃられたように、海外の動向を見た時、modificationという言葉がいろいろな日本語の中で改変、修飾という言葉が今後使われていった時、どこまでどうかということを私も読んでいて感じました。恐らく、これを聞いた日本の研究者が、同じ改変、修飾でも思い浮かべる言葉は同じ言葉でもそれぞれ違うことを思い浮かべますし、実際、それが英語に訳された時にどうなのか。かなり混乱を生じますし、議論が平行して噛み合わないことがあるかと思うので。
○ 山口委員長 ありがとうございます。
○ 那須委員 それと、これは英語でどう言うのかという、今後の海外とのハーモナイゼーションを考えるとmodificationなのか何なのか。よろしくお願いします。
○ 山口委員長 多分、modificationについては、一度、EMAの知り合いに確認をさせていただければと思います。ただ、今、海外でも決まっているかどうかは分かりません。その点については調査をしたいと思っております。その辺についてはハーモナイゼーションしたいと思っております。ほかにありますか。
○ 今村委員 こういった方面について、まるで素人みたいなもので恐縮です。改変や修飾とか、こういうようなものの医学的な意味であるとか、実際に臨床的な意味であるとか、こういうものが分からないと。これをやっている方にはスッと入るのでしょうが、部外者には何のことなのかということで、どこをどういうように定義を変えたらこういうような意味付けなのですよということを、もう少し詳しく説明していただければと思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます。私だけでなく、何人かの専門の先生も加わって、私が今ちょっと申しましたことをフォローしてくださればと思っております。
 例えば、目的とした場合だけを考えますと、もう改変の方はよろしいかと思っております。例えば点変異を起こして、そこを抜いてしまったり、塩基が2、3個抜けてしまえばナンセンス変異を起こしてしまいますので、その辺はいいと思うのですが、メチル化によって多分そこの部分が読み取られないような変化をしてしまうと、例えば一定期間その発現が抑さえられることによって分化が誘導されたり、あるいは分化が抑制されたりという効果があるわけです。そういう目的のために使われるのだろうと思います。もう1つ、オフターゲット効果の場合、先ほどのspecific genetic modificationと、ヨーロッパの所に書いてありますが、特定のところだけをmodificationするのではなくオフターゲットの全く違うところをmodificationしてしまう可能性があるかと思います。そういうことも含めると、例えば、ある遺伝子を一定期間抑制したつもりが全く別の遺伝子を抑制してしまっていると、結果的にはそういうことになるかもしれない。そう思ったからこそ、やはり遺伝子治療でみるべきではないかというのが、この委員会での意見です。
○ 今村委員 ということは、改変と同じような技術というように考えていいということなのですか。
○ 山口委員長 それが一定期間続くということ、改変はもう未来永劫続いてしまうわけです。エピジェネティックなものは、メチル化が起きている期間、その期間は瞬間的ではなく、むしろ結構長期にわたって起きるので、やはりそこの部分は生体への影響なども長期にわたって起きるだろうと。例えば、がんのエピジェネティックな効果というものもありますし、そういったことも含めて評価すべきではないかという意見でした。
○ 今村委員 この議論が始まる時、こういうような改変技術等が割に市中の医療機関でも行い得るような技術になりつつあることが非常に問題だと。今までのような、ある程度高度な研究をする所だけでなく、という議論があったと思います。同じように、この技術も、市中でもできると理解していいのですか。
○ 山口委員長 多分、これは他の先生からお答えいただいたほうがいいかと思います。
○ 小野寺委員 成育の小野寺です。今までもHDACインヒビターとか、脱メチル化剤が創薬としてかなり使われていたと思います。ただ、今回のゲノム編集の一番重要な点は、大体30億個ぐらいある人間の遺伝子の特定の場所に狙い付けられるということです。今まで、がんの薬とか、いろいろありましたけれども、それが一体どこに効いているかわかりませんでした。
 ただ、今回のゲノム編集は人間の遺伝子の中で特定の位置に狙いを付けて、そこを治しに行くというところが一番大きな話になります。そのために、ゲノム編集技術が持つリサーチ機構に薬を付けていくという感じでしょうか。今までの薬の概念とは全く異なり正にspecificという言い方をしているのはそこにあります。4ページの青色で書かれている所が今までの薬にはない点だと思っています。
○ 山口委員長 あと、もう1つ、今村先生が御心配なさっている、例えば我々でも今、遺伝子治療は実験室レベルでやりますが、昔は結構それなりのテクニックが必要だったのです。プラスミドだけを買ってきて、ここ専用に変えるようなプラスミドが簡単に手に入るので、それを使えば正直、クリニックでもできる可能性はあると思います。ただ、細胞を取り出して、それを加えるだけという。今のエピジェネティックなものも将来は多分そういう技術になってくる可能性はあるだろうと思います。
○ 今村委員 そうしたら、やはり方向性としては、なるべく広く考えておいた方が安全という感じなのですね。
○ 山口委員長 そうですね。
○ 今村委員 分かりました。
○ 山口委員長 もう1つ、先ほど那須先生がおっしゃったみたいに、海外とハーモナイゼーションした時の医療を考えた時、全てをきちんと書き込むことがいのか、それとも改変等という「等」みたいな形で割と幅広めに書いておいて、あとはQ&Aみたいな形で、こういうこと、こういうことという例示もあるかと思っています。今想定しているのはそこまでなのですが、例えば技術の進歩によってもっと変わってくる可能性はあると思います。
○ 今村委員 つい数年前までは、こういうことは余り議論にならなかったけれども、今になって思ったよりも急速にこういうものが急速に進歩してきた。だから、また来年とか再来年とか、こういうことをもう一遍議論するよりは、もう少し、数年後、あるいは5年後ぐらいを見据えて議論した方がいいですよねということですね。
○ 山口委員長 はい。この前の改正の時には、しばらくは先だろうという想定で、あの書き方をしてしまったのですが、こんなに早く、やはりCas9がすごくインパクトがあったということです。
○ 伊藤委員 今頃、このような質問をして申し訳ありません。全く分からないというか、最近、様々なマスコミやテレビなどを通じてCas9のことが報道されたり、この中でも出演された先生もいらっしゃって拝見したのですが、クエスチョンマークが増えるばかりなのです。患者さんの中には、一定のというか、結構な期待感がある反面、何かそうでないような報道もあるものだから、そこのところに何か触れておく必要があるのかと思ってはいます。
 その前に幾つか、個人的なことを含めて聞いておきたいことがありますので申し訳ありませんが、時間をいただいて幾つか並べたいと思います。1つは、ちょっと長いのですが、ゲノム編集については、総合化学技術イノベーション会議の生命倫理専門調査会、そこには「ヒト胚の取扱いに関する基本的な考え方の見直し等に係るタスクフォース」というものがあり、ゲノム編集に関する審議をしているわけです。そことの整合性というのは取れているのかということです。
 先ほどありましたが、患者会の期待と同時に懸念もあって、特にマスコミ等で非常に期待が増殖していく、今後もっと増殖していくのではないかという懸念もある。しかし、本当に事故というのは起きないのだろうかということなのです。それから、痕跡を残さないというのは果たして良いことなのか、あるいはリスクなのかということも、ちょっと分からなくて。痕跡を残さないということが盛んに書かれているわけですが、そうすると何がどうだったかが分かるのだろうか。この中にはそのために何か取っておくというか、いろいろなことを書かれていますが、もうちょっと分かりやすい方法がないのだろうかということです。
 もう1つ、Cas9という技術が確立され、簡単になって、キットにして普及している。そうなると、個人輸入とか、あるいは様々なことも考えられますので、自由診療の場のような所にそれが広がっていかないか。あるいは、Cas9は本当に信頼性が確立されているのかというのがちょっと疑問なのです。この間も臍帯血の事件があったように、何か訳も分からず普及してしまうということが、もしもあったとしたら、実際に目指す患者のための医療とはまた違ったものになりかねない。そこも、この際聞いておきたい。
 また、ミトコンドリアの遺伝子についても、ここで言う遺伝子治療ということで考えてよろしいのでしょうか。ミミトコンドリアだけが別なのか、それとも全く同じものと考えていいのかというのは、私たちには分からないので教えていただきたいということです。
 治療を受けた人の生殖というか、そういうものは全く安全なのか。植物の段階というか、農作物では結構いろいろ議論があるようですが、植物と同じように考えていいのか。そこも分からなくて、そこも分かりやすく患者さんたちに説明していかなければならないのではないかと考えています。
この指針といいますか、何か罰則規定みたいなものを伴うのかどうか。もしも事故があった場合、その責任というのはどこにあることになるのか、ちょっとよく分からない。インフォームド・コンセントの体制も含め、そこのところも中に盛り込まなければいけないのではないだろうかという気がします。
 最後に、患者さんたちは生命保険などの対象になるのかという話もあります。そういうことに全然答えられないので、時間を取って申し訳ないのですが本格的な審議に入る前にお伺いしておきたいと思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます。多分、指針全般の話だと思いましたので、それは非常に大事なことです。ただ、私自身がそれを全部答えられるかどうか分からないので、少し説明だけさせていただいて、あと、先生方でフォローしていただければと思います。
 例のヒト胚の取扱いに関するタスクフォースに関しては、前回は欠席せていただいたのですが、私も出席しております。ヒト胚のことは、生命倫理専門調査会が決められること。ただし、ヒト胚を使って遺伝子治療臨床研究に該当することをされる場合には、この指針が関わるだろうと思っております。
 そういう意味で、アメリカも日本もそこの遺伝子治療では、ヒト胚を目的とする、あるいは目的としようがしまいがヒト胚の改変を禁止する形になっております。あと、7番で御質問いただきましたが、これは罰則規定があるかと言われると、罰則規定そのものはないわけですよね。恐らく罰則規定ではなくて、例えばそういう研究をやっていて研究費をもらっていたとしたら、その研究はストップをすると、そういうことになるのではないでしょうか
○ 下川研究企画官 今、山口委員長がおっしゃったとおりで、罰則規定はありませんが、科研費をもらっている場合は、ここの指針に従ってやっていただくことになります。
○ 山口委員長 あと、もう1つは、再生医療法に引っ掛かる場合は罰則規定があると理解してよろしいですね。
○ 下川研究企画官 はい。
○ 山口委員長 ということです。2番目の問題が、患者会の方々の期待と安全性に関する不安ということと、特にその改変がされたこと、その根拠を残さないというか、例えば異常な遺伝子があったとして、その異常な遺伝子を改変することによって、正常な遺伝子に変わっただけで済むのかというところに関しては、多分まだ分からないところだと思います。これは研究班の中で、今度、オフターゲット効果についてどう評価すべきかをやっていらっしゃる先生をお呼びして少しヒアリングをさせていただきたいと思っております。その議論は後でいずれ紹介させていただければと思っております。
 先ほどおっしゃいました、自由診療がそういうふうに行われるのではないかという危惧があるとは思うのですが、多分、これは今まで以上に自由診療で使われやすい、先ほど今村先生がおっしゃったように、そういうリスクはあると思います。ただ、これは今までの自由診療でもそういうところが、今、リスクとして言われていて、遺伝子治療学会でそういうことを、安全性も含めて声明を出したりしております。ただ、これは完全に禁止できるとか、そういう点については我々自身が、多分、厚労省の中でもどこが担当するかというところもあって、なかなか難しいところかと思っております。
 5番目のミトコンドリア治療ですが、ミトコンドリアそのものの遺伝子を改変する場合は、遺伝子治療になると思います。ただし、ミトコンドリアそのものを入れるような、例えば、今、3つの親を持つ子供ができたという話がありますよね。ああいう遺伝子改変されていないミトコンドリアを入れるところは、多分、世界中の遺伝子治療学者は対象としていないと思っております。ただ、この辺は先生方、もしあれば。そこは、例えば細胞のハイブリダイゼーションとか、細胞融合した場合はミトコンドリアも一緒になりますので、そういうことを考えれば、遺伝子改変とは言えないだろうと思っております。
 それから、補償に関しては、今、例えば、これは臨床研究である場合は、多くの場合、再生のほうもそうですが、実施者は保険に入ってくださいと。何か有害事象が起きたときには、保険でカバーできる体制をできるだけとってくださいということをお願いしておりますし、多くの場合はそうされていると思っております。
 あとは、例えば、有害事象が起きたときに、真摯に、そういう有害事象に対処していただくことも、実際、臨床研究をスタートするときに、我々がそういうことが抜けている場合には臨床研究の審査会の中でコメント、あるいは再生医療のところでかかる場合には、そういうことをコメントしております。そういう場合には、そういうことが対応されているようです。大体今ので。
○ 伊藤委員 もしも事故があった場合、そのようなことを今から考えるのはおかしいのですが、その痕跡を残さないとなると、実際、それがこの治療によってできたことなのか、本来、その人の病気だったのかという区別が付くのでしょうか。
○ 山口委員長 その辺も非常に難しい問題。それが先ほど少し、痕跡の解析方法ということも含めて、科学的にそのアプローチがどのようにできるかを含めて、研究班でヒアリングした上でここに答えを、答えというわけではないのですが、今の科学の水準はここまでですということを紹介させていただければと思っております。
 ほかに先生方、今、伊藤先生の話がかなり広範にあったので、私の説明で不十分なところがあった気もしていて、もし何か。
 すごく重要な話と思うので、谷先生いかがですか。では、那須委員、どうぞ。
○ 那須委員 私は臨床家の立場として、今までに前立腺がんの患者さんの遺伝子治療を40人ぐらい実際にしてきているのですが、伊藤委員がおっしゃったことは、我々も現場でいろいろな指針に沿って、倫理審査委員会とか、そういった所とかで討議した上で実際にやりますし、今現在、特に臨床研究法とか、そういったものもできて、きちっと社会的な制度が整備されていく中において、私はきちっとできると思って、今言ったような御指摘を倫理審査委員会等で十分踏まえながらやれますし、実際の事例があったときには、倫理審査委員会でそういうことが討議されていくということで考えておりますので、今、私は伊藤委員の意見は、そういった意味で大変貴重な御意見だと。
 ただ、問題は、先ほど今村委員がおっしゃったように、ヤミでやられたときに困るということで、私は、それは規制当局、その他のほかに、こういう治療を受ける対象となられる患者御自身も、こういう言い方をすると非常に失礼かもしれませんが、我々が、学会としてもそういったところを啓発して、どうしても藁にもすがる思いでそういう所へ行きますので、私たち学会からそういった所へのきちっとした啓発活動をすべきことではないかと思いました。
○ 谷委員 今のヤミの問題は、現在の遺伝子治療においても、同様に指針にのっとって、アカデミアの場合は厳格な審査がなされているのですが、自由診療等でやられている場合には、基本的にそれを抑える法とかが、まだないのが現状です。ex vivoの遺伝子治療に関しては、それが再生医療法で規制され始めてはいるのですが、あくまでもin vivoの遺伝子治療に関しては今はできておりません。今後、それに関しては厚労省のほうで今、お考えになっておられるとは思いますが、現在のところ、おっしゃるように、そこはゲノム編集に限らず起こり得る問題で、今、那須先生がおっしゃったように、学会としてはそれに関して警鐘を鳴らしていく方向で進めさせてはいただいております。
○ 山口委員長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○ 位田委員 4ページの図に関わるのですが、基本的に遺伝子改変、組換えだけではなくて遺伝子改変をすれば、それが指針の対象に入ると、そういう趣旨はよく分かったのです。遺伝子改変に当たらないけれども発現を制御するという場合は、遺伝子治療の目的である病気の予防若しくは治療ということに使われないのかという疑問なのですが、いかがでしょうか。
○ 山口委員長 こういう形で、例えば発端の細胞のNotchという特別な因子を、むしろ一定の期間でspike上に発現させて、神経に分化させることも行われるわけです。そういう形でやろうと思ったらできることになると思いますし、逆のようなケースも多分あるかとは思うのです。もし、例えばこれをDNAメチル化とか、脱メチル化を制御することによって、ある遺伝子の発現を一過性に抑えたり、あるいは誘導したりすることを入れることでどうだろうかというのが、まず。
○ 位田委員 指針の対象に入れるということなのですか。
○ 山口委員長 提案としては。
○ 位田委員 これは、線が引いてあるのは。
○ 山口委員長 上は遺伝子改変で全部いけるのですが、下の赤の部分が改変にはならないが、遺伝子治療に含むべきではないかということです。
○ 位田委員 改変から外れるが、含まれるという趣旨ですね。
○ 山口委員長 その趣旨で入っております。
○ 位田委員 分かりました。すみません、私は誤解しておりました。
○ 山口委員長 分かりにくい、申し訳ありません。そこの下の、例えばヒストンの修飾、タンパク質の修飾については、今のところものすごく範囲が広くなり過ぎるので、ほかの薬剤でもそういうことが起きるので、下のは分けたほうがいいのではないかと。上まで、赤の字の所を全部入れてはどうかというのが提案でした。それについては、多分、次の所でまた議論させていただければと思います。
○ 位田委員 分かりました。少し懸念するのは、仮に転写制御因子とかヒストン修飾を外すとすれば、これを用いて病気が治せるということがあったときに、いったい何が指針、というか、何が基準になるのだろうとは思うのです。ここだけ外れてしまって、穴になってしまうのかと思うのですが。
○ 山口委員長 ですから、その上までを、赤字で書いてあるのは一応入れます。
○ 位田委員 赤字までは分かりました。それは私も賛成なのですが。
○ 山口委員長 ありがとうございます。
○ 位田委員 だから、残った部分をどうするのだろうと思うのですが。
○ 山口委員長 残った部分をどうするかというのは、もうひとつ、ここで議論していただきたいということなのです。要するに、多分こういうこともあり得るというか、今、実際にゲノム編集に関する総説がいっぱい書かれております。その中でこういう技術も開発されているようで、そこをどこまで入れるべきか。もちろん、ここで明確に書いてしまうのもありますし、入れるという形で。ただ、その辺に関して、例えば先ほどのように、「等」という言葉で入れるという議論もあるかと思います。本当にワーキンググループとしては、ここで、まず決めていただきたい。そのための素案を提供するまでが、ワーキンググループで議論したときの提案です。
○ 今村委員 私は、位田先生が言われたことと全く同じことをお聞きしようと思っていたのです。こちらの黒の2つを入れると入れないとの意味合いというか、そこはこういうことをやっていない人はよく分からないというかな。
○ 山口委員長 申し訳ありません。
○ 今村委員 これを入れたら、こういうメリットがある、これを入れないと、こういうデメリットがあるとか、こういうのを説明していただければ、ここで議論できて、入れましょうとか、やめようとか、入れると思うのですが。
○ 山口委員長 これは技術的なところがあります。例えば、今までの上のメチル化というのは、ある遺伝子があって、ガイドRNAでそういう遺伝子にピタッとくっ付いて、あと、今まではCas9で切ったりしていたのですが、そこをメチル化するような酵素を入れたりすれば、そこの部分のメチル化だけが切れたり入ったりするわけです。ところが、タンパク質のヒストンの修飾があったり、そこにくっ付いているタンパクを全部アセチル化したり、脱アセチル化したりするので、要するに遺伝子specificとは言えなくなってくるのではないかというのが委員の意見でした。
 要するに、ヒストンの修飾があっても、ゲノムは変化していないわけです。だから、ヒストンの修飾を入れると余りにも範囲が広くなり過ぎるのではないかということと、後は先ほど言いましたHDACインヒビターとか、いろいろな薬剤によってもヒストンのアセチル化とか、脱アセチル化が起きてしまうのです。
○ 今村委員 実際の研究は、これを入れると随分やりにくくなるのですか。
○ 山口委員長 はい。例えば、薬剤のものを、先ほどの概要の2ページで、ヨーロッパの所に書いてあるspecific genetic modification、要するに特異的な遺伝子を改変するという書き方をしてあって、多分そこがゲノム編集の特徴だと思うのです。アセチル化というのは、遺伝子特異的ではない可能性が出てくるのではないかという、その辺も懸念がある。余り入れてしまうと、ほかにまで影響してしまう可能性があるということです。
○ 今村委員 日本だけが厳し過ぎて、他に遅れをとるみたいなことがあると、非常に不本意なことですしね。
○ 山口委員長 そうですね。こういうゲノム編集ではなくて、アセチル化とか脱アセチル化を起こしたりして、あるいは抗がん剤などには、そういうのも使われたりしていますので、そことの切り分けというか、それが難しくなってくるのではないかというのも、もう1つの意見です。
○ 今村委員 それこそ一般的には、欧米との横並びの感じでこうやって入れる、入れないのを決めると。
○ 山口委員長 まだ欧米のほうが、まだちょっと。
○ 今村委員 まだ進んでいない。
○ 山口委員長 はい、そこまでは議論がされていないような気がします。
○ 今村委員 分かりました。
○ 山口委員長 よろしいでしょうか。今の資料2の議論は、前回、ワーキンググループでの議論をまず整理させていただいて、確認をさせていただいたと思っております。では、一応ここで前回のワーキンググループでの議論は終了させていただいて、実際、今日本当に議論していただきたい指針の定義とか範囲について議論をさせていただければと思っています。
 資料3を御覧ください。特に1番目、先ほどからかなり議論はさせていただいているのですが、その辺について忌憚のない御意見を頂ければと思っています。資料3の2ページ目ですが、上の部分の(1)「遺伝子医療等」「最終産物」の定義等についてということで、1つ目の●は多分、議論は済んでいるのかと思っております。定義としては、ウイルスベクターを投与することを前提にしているのだけれども、mRNAあるいはタンパク質とか、そういうものを使ったものも入れるべきではないかというのが、前回の見直し委員会の結論であったと。
 ただ、切断活性が無い人工制限酵素で、特にゲノム編集の塩基配列を変異させずに目的の遺伝子発現を制御する手法を入れるべきかどうか。これは、今言いました、例えばDNAのメチル化とか、そういうことも含めて入れるべきではないか。先ほどの赤字で書いた範囲を全部入れたほうがいいのではないかと。先ほどの資料2の遺伝子改変に相当する所までは、前回でOKだったのですが、下のDNAメチル化/脱メチル化、あるいはワーキンググループとしては一応提案をしてはいないのですが、転写制御因子とか、ヒストン修飾とか、こういうものについても、どう取り扱うべきかをこの場で議論していただければと思います。まず、ここまでの議論を頂ければと思っております。
○ 小野寺委員 これは一般論として考えたいのですが、ここに書いてある目的の遺伝子の発現の制御がその定義だと思うのです。そのために、例えばDNAを切る、切らない、あるいはそこでのDNA自体のメチル化、アセチル化等を考える。これは非常に分かりやすいと思うのですが、これを遺伝子治療の範疇に入れるとか入れないかに関しての論議があってもいいと思います。私は基本的には入れてもいいと思うのですが、それは、今回の場合、あくまでも特定の遺伝子、特に例えば、がんに関わる遺伝子におけるメチル化上程の改変やヒストンの修飾変化を目指すわけですから、今回の遺伝子治療に入るのではないかと思っています。
 なぜかと言うと、多分、そういう薬ができたときに、今の創薬の安全性テストでは、安全性の評価が困難なためです。つまり、評価のためには次世代シーケンサー等の網羅的遺伝子解析とかメチル化の変化等の最先端の遺伝子解析の方法を用いる必要があります。その意味で、基本的には目的とする遺伝子の発現を何らかの形で修飾するものはゲノム編集として定義していいのではないかと、私は思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます。私も、その辺が正直もやもやとしております。もし、ほかの御意見もありましたら。今あえて、こういうことを言ってしまってはいけないのかもしれないのですが、例えば、遺伝子治療の範囲としては赤字の部分だけにしておいて、ヒストンの話をするかというのも、同じような懸念があるとして、言わば例の遺伝子改変をしていない腫瘍溶解性ウイルスみたいな形で審査をやるという形もあるのだろうと思っています。
○ 内田委員 多分、これは定義をどうするかという問題だと思うのです。基本的には、遺伝子導入ではない、編集の部分は、ゲノム編集技術を用いているとか、ゲノム編集技術を応用しているということで、その特異性が出されていて、ヒストンの修飾に関しても、ゲノム編集技術のCRISPR/Casを応用しているものだと思うのですが、ゲノム編集技術を用いるようなことを定義の中に入れて、更に配列とか、核酸のみの修飾、編集なのか、後はメチル化というか、ヒストン修飾までを含めるかは分からないのですが、そこら辺を全て遺伝子の編集と言ってしまっていいのかどうかと、そこら辺も用語の問題だとは思うのです。後は編集というものの定義を更に遺伝子治療の指針の定義の中に加えて、こういうものはゲノム編集、あるいは遺伝子編集であるという形で定義をしてというように、その用語の定義を付けていかないと分かりにくいかと思ったのです。すみません、少し分かりにくかったかもしれませんが。
○ 山口委員長 ありがとうございます。多分それをおっしゃった、ゲノム編集と定義というのは、先にやってしまったほうが分かりやすいのかと。すみません、変更しました。松原先生、その辺、ゲノム編集という定義をするとすると、どうなりますか。
○ 松原委員 それはすごく本質的なもので、なかなか一言で言いにくいと思うのです。CRISPR/Cas9とか、そういう技術の名前を入れてしまうと、来年全く違う発想の出てきたものがカバーできなくなりますから、もう少し根本的なところで定義しなくてはいけないだろうとは思います。
今回の改訂に関して一番問題になるのは、技術の革新が非常に著しいので、不用意にいろいろなものをガチガチに決めてしまうと、とても動きがとれなくなる気がするのです。話は戻りますが、例えばヒストン修飾にしても、今、既に抗がん剤としてある薬は、ヒストン修飾をじゅうたん爆撃的に全部押さえてしまうとか、変えてしまうとか、そういうものは薬として使っているわけですよね。そちらはOKで、1点だけ修飾するものを開発しようとすると非常に厳しい指針が出てくることにもなりかねないわけです。だから、そういう意味では、非常に矛盾をはらんでいので、かえって混乱をさせるようです。余りいろいろなところをガチガチに決めてしまわないで、少し遊びを残すというか、そういったところの配慮は、全般にわたって少しあったほうがいいのではないかという気がします。
○ 山口委員長 ありがとうございます。もしかしたらゲノム編集という中身も、細かい所までは決めなくても、ある一定の、例えば先ほどのEUの所に書かれている特定の遺伝子の修飾というふうにすると、割とゲノム編集的にはそれほどずれてはいないですよね。あと例えば、その辺をQ&Aにするという手はあるのかと。
○ 小野寺委員 私も基本的に内田先生の考え方で正しいと思います。つまり、ゲノム編集の一番の問題点は、先ほど言ったように、いかに目的の遺伝子を探し出すかです。TALENにしてもZink fingerにしてもCRISPR/Cas9にしても、基本的には目的の遺伝子を探して、そこでDNA切断酵素とか脱メチル化剤を付けることになります。ですから、ゲノム編集の一番大事な点は目的の遺伝子を探し出すというところだと思うのです。
 ただ、目的の遺伝子を探し出すということはofftarget effectであろうと、何らかの遺伝子改変をゲノムに入れる可能性があるわけです。もちろん、抗がん剤でもいろいろな遺伝子変異を起こすものはありますが、それは特異的ではありません。今回の場合は、遺伝子の切断や改変、あるいはヒストン修飾も全て目的の配列を探すというシステムを使うわけですから、私はゲノム編集だと思うのです。繰り返しますが、私は遺伝子を探し出す機構がゲノム編集の一番の重要な点だと思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます。その辺で書きぶりですが、先ほどの資料2の中の赤字で書いた所は、ただ単に「遺伝子を改変」と書いてあるのですが、多分、ゲノム編集の場合には「特定の遺伝子を」ということなのだろうと思うのです。「特定の遺伝子を改変」ないしは「修飾」というふうにすれば、あるいは「編集」という言葉を使ってもいいのかもしれません。「編集」とは何ぞやというのは、別途定義をする形、あるいはQ&Aで定義する形にしておけば、先ほど松原先生がおっしゃった、フレキシブルを少し持たせておくところもできるのかと思ったのですが、その辺について松原先生。
○ 松原委員 基本的にはそういうことです。もう1つ、先ほど伊藤委員がおっしゃったことに関連してですが、伊藤委員から先ほどいろいろな御質問が出て、先生がお答えになった。伊藤委員がそれで全部OKと了解されたかどうかは分からないのですが、これはとても重要な問題を含んでいると思います。この中で議論していることが、結局、社会ではすごくいろいろ報道もされて問題になっている。そこの広報とか、本当に分かりやすい説明をどこかで、きちんと私たちとして出していかないと、何か、いつまでたっても専門家だけが勝手に決めてしまったという不信感を抱かれかねないと思うのです。ですから、広報、啓発に、もう少し踏み込んで、どこかで動いていかないと危ないのかという気がすごくしました。
○ 山口委員長 ですから、遺伝子治療としてゲノム編集を入れたときには、どう考えるかは多分出していかないといけない。それこそ、いろいろQ&Aで出すのか、それとももう少しきちんとして出すのか、コンセプトとしてはこう考えたと。よく海外などでリフレクションペーパーとか、ホワイトペーパーという形で出されたりしていますが、そういうのを出していく必要があるのだろうと。
 先ほどのEMAのものも、このリフレクションペーパーはEMAが出していて、今後ゲノム編集を議論していくときに、こういう形で社会にアナウンスしているところがあるので、それは出していく必要があるとは思っております。
○ 伊藤委員 松原先生、ありがとうございました。そういう専門家向けのというか、治療や様々な所に使うときのQ&Aと、一般国民向けというか、患者向けというのは大分違うものだと思うのです。そこのところで、また御配慮いただければ。
○ 山口委員長 ありがとうございます。この辺は、本来、科学技術を説明するのは科学者の責任だと思うので、これはできるだけ事務局と協力しながらやっていきたいと思っております。
○ 位田委員 この指針の中でゲノム編集を定義しないといけないのかどうかは、私は根本的な疑問をもともと持っているのです。というのは、ここでは要するにゲノム編集という技術を使って遺伝子を改変して病気を治療する、予防するという話なので、今はゲノム編集と言っている技術なのだけれども、また将来的に、それと何か違う技術が出てきたときに、これも入れるかどうか決めなければいけない、これもまた定義しないといけない、ということになってしまうのだと思うのです。
 もし私の理解に間違いがなければ、ゲノム編集はそういう方法若しくは技術であって、治療そのものではないので、むしろゲノム編集を使って出てくるもの、例えばそれが遺伝子改変というカテゴリーのもの、若しくは先ほどタンパクという話もありましたが、そういうものをきちっと押さえておけば、ゲノム編集そのものを定義することを議論をする必要はないと私は思っているのです。これは科学的な問題ではなくて、むしろ指針の中に入れるのであれば、ということです。そうでないと、ゲノム編集とは何ぞやという形で、いや、ここまでなんだ、いや、ここからここまでなんだという議論に終始してしまって、本来の目的である、ヒトの体内に遺伝子若しくは遺伝子を改変した細胞を入れて病気を治療するということから、離れて議論してしまうのではないかという気がするのですが、いかがなのでしょうか。
○ 山口委員長 ありがとうございます。もしこの辺、小野寺先生、何か。
○ 小野寺委員 正にそのとおりだと思います。ゲノム編集自体を定義してしまうと大変なことになると思うのです。結局はスタートラインをどこに置くかであり、その意味で特異的な遺伝子を介した事象と置くのが良いと思います。「ゲノム編集」というより「特定の遺伝子を介した遺伝子を改変」あるいは「特定の遺伝子を介して遺伝子を修飾した細胞を投与すること」かと思います。つまり、今後、新しいくすりが出現したとき、そのくすりの機構として特定の遺伝子を介した目的遺伝子あるいは周囲の改変とするとこれまでの薬を区別できると思います。
○ 山口委員長 ありがとうございました。私も少しそう思っておりました。「編集」という言葉を使ったほうがいいのか、それとも「修飾」でも構わないと思っています。そのときに、もう1つ、今おっしゃられたところの特に「目的」というところがあるので、「目的」と書くか「特異的」と書くか、そこの辺が議論になるのかと。要するに、ゲノム編集は、特定の遺伝子を狙ってやるというところに意味があるのだろうと思います。今の抗がん剤は、そういういろいろなことの脱メチル化も全部起こしてしまうので、そこは非特定になるとは思うのです。そうすると、やはり区別をしておいたほうがいいのかと。
○ 位田委員 分からないことばかりなのですが、要するに、ゲノム編集というのは方法なのですね。ここでは、遺伝子を改変する、特定の遺伝子なら遺伝子を探し出して、それに何らかの手を加える、若しくはその周囲のタンパクなり何なりに手を加える、そうしたものをヒトの中に入れる、というプロセスの上で研究するのだけれども、どうしますかという話ですよね。だから、最終産物の範囲がきちっと決まっていれば、その方法はゲノム編集という方法であろうと、若しくは将来的に何らか出てくる別の方法であろうと、それは何でも構わないという言い方は少し乱暴ですが、構わないのではないかと思うのですが、そうではないのでしょうか。
○ 山口委員長 多分そこで小野寺先生が危惧されていることは、先ほど来、議論しているのは、例えばメチル化とか、脱メチル化とか、そういうのは他の薬剤でも起きてしまいますよね。
○ 位田委員 はい。
○ 山口委員長 そうすると、ゲノム改変とかそういうのは、どのような薬剤でも起きてしまうのだけれども、そういうふうに、ただそのことだけを入れてしまうと、要するにゲノム編集以外のものも全部ここに入ってきてしまう。それは、遺伝子治療という範囲からかなり外れたものまで入れてしまっているのではないかと。遺伝子治療でもよく言われるのは、目的の遺伝子を導入した細胞とか、そういう目的を入れているのは、多分そこに意味があるのだろうと思うのです。
 ゲノム編集という意味でなくてもいいと思うのです。ある特定の目的の遺伝子を改変したり、修飾したりしているというところに、その意味があるのかと。あと、細かいところの説明のあるのは、Q&Aに入れたほうが、ここで余り決め過ぎると、新しい技術にも対応ではないだろうしと思ったのですが。
○ 位田委員 私自身は、ゲノム編集という、ある意味で新しい言葉を使ってしまうと、それぞれの先生方の考えておられるゲノム編集の範囲は違う可能性がありますし、そうであれば、もっと一般的な形で特定の遺伝子を改変するという言い方とか、どう表現すればいいのかよく分かりませんが、そのほうが指針の文言としては分かりやすいのではないかと思います。
○ 山口委員長 ありがとうございます。多分そこを小野寺先生。
○ 小野寺委員 研究者側から言わせていただけると、なまじ、これで諮ってしまうと、かなり研究が止まってしまいます。今、かなり一般性をもって薬を開発されている方もこの指針に入ってしまうと、研究は止まってしまう可能性があると思います。ですから、定義をなるべく小範囲にしておくことで研究の範囲を広げることは可能かと思います。ただ、結局は遺伝子を変えてしまうというこれまでの薬とは違う側面を持つので、安全性の観点からそこの部分だけはしっかり定義しましょうという考えです。定義をしっかりしておくことで枠組みを決めておき、これまでの研究に対してはこれまで通りで行うべきと思います。
○ 位田委員 要するに、線引きの問題だなと思っています。その線をどういうふうに表現して決めれば研究を阻害しないような形で決められるかということです。その線引きの言葉は、ちょっと分かりませんが。
○ 山口委員長 先ほど位田先生がおっしゃったように、目的の遺伝子というか、特定の遺伝子と、多分そうおっしゃっていたと思うのです。そこの部分はある。それとゲノム編集という言葉そのものを定義しないほうがいいのではないかというのが位田先生の御意見だったような気がします。恐らくそれについては小野寺先生の御意見もそこの部分は一緒なのかなと。あと、定義の中で少し今まだ曖昧に残っているのが、先ほど言ったヒストンのアセチル化みたいな所は、この議論の中では結論はまだ出ていないのかな。先ほど赤字で書いた所で、「特定の」という意味ですけれども、DNAメチル化とか、脱メチル化、特定の遺伝子の、こういうことを起こすときは一応入れておこうということは、多分異論はなかったのかなという気がいたします。あとはその文章の問題は少し考えるとして、その黒字の部分だけが少しグレーゾーンに残ってしまっているような気がしています。それで私の理解はよろしいでしょうか。皆さんの意見も。最初のほうで、特定の遺伝子周りのヒストンのアセチル化とかは入れておいたほうがいいかなというのが、多分、小野寺委員の御意見だったと思います。内田先生も多分、そのぐらいだったかなという気がしてはいます。そこの部分まで入れてしまうかどうかというところの議論を少ししていただいて。伊藤先生が手を挙げられたのは、何かその辺に関連しますでしょうか。
○ 伊藤委員 いや、厳密に用語とかを定義するのはもちろん大事なことですし、それはいいのですが、ただ、せっかく一般社会の中ではゲノム編集とか遺伝子治療という言葉が浸透してきてやっと分かりやすくなってきたときに、突然それが消えるのも変ですから、やはり括弧付きでもいいから、例えば「ゲノム編集等」というように入れるとか、何かそこら辺りのこともないと、専門家の間だけで分かるのはそれはいいです、何も問題はないと思うのです。せっかく国民の中に言葉が浸透してきたという事実というのも、もう少し大事にしておいたほうがいいかなという感じだったのです。
○ 山口委員長 先に、どうぞ。
○ 内田委員 ちょっとまた内容が違うかもしれないのですが、これで問題にしているところが、例えば染色体の塩基が変わると、それがもうずうっと持続をするというところがあって、あと脱メチル化にしても、脱メチル化の状態がかなり長期間続くであろうということがあります。この転写制御因子と、ヒストン修飾はちょっと分からないですけれども、この辺が例えばゲノム編集でやったときに、やはりずうっと続くものなのかどうかというようなこととか、あとほかのいろいろなものでも転写制御因子の制御というものはあると思うのです。そういうところとの線引がきちんとできるのかということです。例えば染色体のというか、核酸の塩基が変わったというような、そういう形での持続性のあるものと、そうではない一過性で修飾をされたようなものとは、やはり切り分ける必要があると思うのです。それがどういう形で切り分けるかを少し考える必要があると思います。
○ 山口委員長 今、2つの議論があったので、少し整理させてください。1つはまず、ゲノム編集という言葉をどこかで使ったほうがいいのではないかという伊藤委員の御意見があります。これは我々は、ものすごく新聞報道など、みんなゲノム編集がどうのこうのと、やはりここのやっていると言われてしまっていて、ゲノム編集で実質ゲノム編集のことをどう入れるかという議論はしてはいるのですが、その言葉をその指針本体の中に入れるかどうかということと、やはり分かりやすくするために、どこかでゲノム編集という言葉を、例えばQ&Aの形でも、あるいは別の形ででもどこか使うというやり方も1つあるかなと。
 先ほど何人かの御意見は、定義そのものの中にゲノム編集と書いてしまうと、そのゲノム編集がレギュレーションしていったり、変わっていったりするときに対応できなくなることもあるし、余り定義というところで入れることではないのではないかというのは、かなり皆さんに共通していた意見かなと。
あと伊藤委員がおっしゃったように、ゲノム編集という言葉はこれだけ一般化しているのだから、どこかで書いたほうがいいというか、どこかでこういうことを定義しているのだということをアナウンスするというのは、それはそれでまた別途あってもいいのかなと。それを定義の中に放り込まなくてもいいのかなと、ちょっと私自身は思ったのですが。私の意図としては、ゲノム編集をどこかで使うのですけれども、その定義の中でやらなくてもいいのかなという気が少しいたしました。伊藤委員の思っておられることは、どこかでちゃんと反映する必要はある、要するに一般的に分かりやすい言葉でこういうことを入れたということをアナウンスできればいいのかなと。
 もう1つは、ゲノム編集の範囲というか、遺伝子治療にいける範囲のところで、ヒストンのアセチル化まで入れるかどうかに関しては、かなり微妙なところかなと。
○ 小野寺委員 これは1つの危惧なのですが、ヒストンの短期的あるいは継続的修飾というよりも、ゲノム編集は基本的に特異的な遺伝子の配列を元に改変を入れるわけで、最近、用いられるdead Casは、一応、遺伝子を切らないことにはなっていますが、本当に遺伝子がきれていないかはわかりません。それはどのように調べるかというと、現時点では次世代シーケンスにかけるしかない。そうなるとヒストン修飾の継続性というより、その細胞の遺伝子が改変されていないかを調べなければならない。つまり、そのような薬の開発には、安全性、有効性の評価試験として、今行われている遺伝子治療での評価が適切と思われ、その意味では当座は遺伝子治療の範疇に入れておいた方がよいだろうということです。もし、今後、絶対切れないということが分かれば、それはあえて入れる必要はないと思いますが。
○ 山口委員長 分かりました。その辺は例えば、ESなどを作るときに、中畑先生に御意見頂きたいのですが、やはりDNAが裸になるので、もちろんiPSの場合は遺伝子治療で後で議論させていただきますが、やはり遺伝子のシーケンスをしたりとかは求められたりするわけで、絶対しないといけないかどうかはまた別にして、その辺の範囲を解析する必要はもちろんあると思いますし、ちょっと気になったのが、それは遺伝子治療だから全部やるのか、それとも遺伝子治療ではないケースでもやるのかというところがあったと思うので、その辺はどうですか。
○ 中畑委員 確かに、iPS細胞はもともとiPS細胞を作るときから遺伝子を入れていますので、何らかの方法によって入れていますので、それは染色体に組み込まれるとか組み込まれないという議論はもちろんありますけれども、組み込まれない場合でも一応遺伝子は入れていることには問題はないわけで、ただ当然、この本指針の中にそれを使った治療というのも最終的には含まれるべきではないかと思うのです。ただ、同じiPS細胞、今臨床に使う場合は、今うちの研究所から出すiPS細胞は全ゲノムをシーケンスをして、必ず人間というのはどこかにミューテーションがあるわけですけれども、それが本来持っているミューテーションであるのか、本来持っているミューテーションであっても、本来というのは、その患者さんがiPSを作る前から持っているようなミューテーションなのかどうか。それから本来、患者さんとかドナーが持っているミューテーションであったとしても、それが病気に関係しているミューテーションなのかどうかも全部調査をして、問題ないような細胞だけを選んで臨床に使ってもらうという形にしているのですけれども。ただそのときに、iPSを作る段階では当然、遺伝子を何らかの方法によって入れるということですけれども、その遺伝子があるのはできるだけDNAの中には残らない形で今は作るという方法で作っているということです。
 あと主に転写に関係する、ここにあるような転写関連因子ということですけれども、それも一過性に発現するという系を使っているんですけれども、これが、ときに結構あとまで残ってしまうようなクローンがあるので、そういうクローンは使わないようにはじくというような形で使っています。だから議論されているのも、一過性に発現していればいいのかという、一過性に発現しているかどうかも一応見ないといけないことにもなってしまいますので、その辺の議論をどうするかということです。
 あと、先ほどからずっと議論がありますように、ゲノム編集という技術は本当に、私が実際に扱っているものにとっても日進月歩という形で、1年前の技術が全く変わってしまうようなすごいことで、数年前まではプロでないとできなかったのが、今は大学院生でも平気でみんなほとんどの学生がやっているようなレベルになってきました。これが今後どういう形で進歩していくかというのはなかなか予測できない面もありますので、この指針を作るとすれば、先ほどから議論があるように、非常に広範な形に作るか、あるいは1年ごとに見直すというような形でやっていくか、どちらかではないかと思うのです。そんなところが感じるところです。
○ 山口委員長 私も非常に悩んでいるのですけれど。小野寺先生の懸念もすごくよく分かっていて、例えばヒストンのアセチル化は、目的遺伝子の部位のヒストンのアセチル化だと思うのですが、例えば遺伝子治療というように、遺伝子治療というのは遺伝子のところをターゲットにしているけれども、そこに入れておいたほうがいいのか、技術に応じて遺伝子を加減するリスクがあればもちろんその中に全部入れると思うのですが、その辺の範囲をどうするかというのが、一番私が合意を得たいと。合意が得られなければ、そこのところを全て入れておいてという手もあるのですけれども、逆に入れておくことによって、ほかまで全部入ってくるのかなと。その辺も御意見いただけると有り難いのですが。正直言って、場合によってはヒストンのアセチル化は定義としては入れないけれども、そのリスクがあるからきちんとした審査をやるというやり方も、最初に言いましたけれども、もちろんあると思うのです。
○ 小野寺委員 例えばCRISPR・Casでの薬が開発された場合、特にウイルスではないので、結構、平気で市中の病院で使われる可能性があります。その時、安全性をどう考えるかが重要です。これまでの経験から、定義しておいた方が安全なのかなとも思っています。もし、定義しておかないと、「非常に良い、効きますよ」という可能性が高くなってくると思います。ただ、基本的にこれが遺伝子治療かと言われると私もわかりませんが。
○ 谷委員 例えば今はそういう技術はないとは思うのですが、現在の例えばオリゴマーの技術とHDACのインヒビターとの技術を組み合わせるとか、そういう技術が恐らく出てきた場合に、ここで扱うかというと、なかなか実際にオリゴに関しては扱わないし、HDACも扱わないことになっていますよね。そうすると、それをcombineしたときに、いわゆる複合遺伝子治療というのがあるかどうか分からないですけれども、そういうことになった場合にどうするのかということがあると思うのです。ただ、そこについてはやはり中畑先生がおっしゃったように、年々キャッチアップしていかざるを得ないかなとも思いますし、伊藤先生がおっしゃったゲノム編集の言葉を入れたほうがいいというのは、多分そのほうが一般の方に分かりやすい言葉として、一つ一つここまでがここまでだという専門家でも境界線を議論しても分からないわけで、一般の方はもっと分からないので、いわゆるゲノム編集というのは、どこかにfootnoteに書いておいて、それで万難を排して、そのように呼ぶみたいなことにしておけば、恐らく言葉を使うことによって全体の指針がかなり分かりやすくなるような気はいたします。
 それと遺伝子治療自体もそうだとは思うのですけれども、かなりの頻度で改定作業が過去にも5年ぐらいずつはやられているような、もっとですかね、5年でしょうか、山口先生がずっとやっておられるのですが、やはりそういう改定は必須だと思いますので、それで内容自体はアップグレードしていかざるを得ないかなと思うのです。
○ 山口委員長 少し提案させていただけますでしょうか。いろんな意見があるとは思いますし、その辺、私にもそこのところ、ここまでというのは正直ございません。その辺をどう含めるべきか、範囲そのものをきちんと決めるということ自体、技術的に可能なのかどうかという点も含めてなかなか難しいところかと思っています。
 すみません、資料2の3ページ目を見ていただけますでしょうか。例えばということで、これはそうであらねばならないという意味ではないのですけれども、赤字の部分だけですが、「あるいは種々の方法により人の遺伝子を改変ないしは、あるいはヒト細胞の遺伝子を改変して」という、そこら辺は少し文章の書き方を後で工夫させていただきますけれども、改変だけではなくて、例えば編集というか、編集というよりも修飾でも構わないと思うのですけれど、そういうものが全部含まれたときに、正直申しまして、この「アセチル化」の所はグレーゾーンに残しておいたほうがいいのかなと、ちょっと今、気がしてはいるのですが、いかがでしょうか。
 実際に、小野寺先生が危惧されているようにアセチル化のところで特異的な部分のアセチル化だけを目的にしているけれども、切ってしまったらどうするのだと言われたときに、そういうリスクがある場合には遺伝子治療として見なせるというような意図で書くというやり方もあるかなという気がしたのですが。
○ 小野寺委員 谷先生の言われることはそのとおりで、遺伝子治療かと言われたら非常に分からないのです。ただ、4ページの絵で、技術はこの大きな青の所なわけです。要は、核酸配列認識モジュールの下流に何を付けるかによって異なる薬が作られる。たとえば、ヌクレアーゼを使えば核酸を切断する。デアミナーゼを付ければ脱アミノ化が起こる。そして、そこにHDACインヒビターを付けると脱アセチル化を抑えるということです。デアミナーゼを付けた場合とHDACインヒビターを付けた場合で、その配列モジュールは同じだけれど、あるものは遺伝子治療になり、あるものは遺伝子治療でなくなるわけです。ただ、どうしてもこの配列認識モジュールということがありますので、何らかのコメントを付けて、例えば安全性はこういうことを調べたほうがいいという趣旨でガイダンスを付けるのも一考かと思います。
 あとは中畑先生が言われるように、これは来年、何が起こっているか分からない分野なので、結構、細めな改定ということが必要になってくるとは思います。
○ 山口委員長 おっしゃっていた、改変につながるようなリスクがあるときにはこうすべきというような形では書けるとは思うのです。ひょっとしたら、その辺は私はQ&Aのほうがいいのかなと少し思ってはいるのですけれども。
○ 那須委員 私も最初この3ページの赤文字の所と、EMAの英文を読むと、非常に混同しておられて、英文では「tools」という言葉をきちんと使っていてspecificなことは書いてないので、今後の変更、いろいろなことが変わっていくことを見ると、toolsという言葉できちんと代用して、やはり先ほどのいろいろな技術の様々なことは、こういう定義は比較的簡単にして、細かな各論とかそうしたものは、ある程度この指針の運用面においてやることのほうが、こういう指針を作るときには、より良いのではないかなと私は感じました。
○ 山口委員長 いかがでしょうか。
○ 位田委員 私自身は、こういう指針を作るときは、これからどんなものが出てくるか分からない、どんどん新しくなりますし、したがって、できるだけ一般的な形で傘をかけておいて、ただし、これとこれとこれは除外しますという形で除いていっておかないと、可能性を狭めてしまうと思っています。では、そこに入らないものはどこで審査をするのかという問題が残ります。もっとも、遺伝子治療臨床研究でなければ、いわゆる医学系研究の指針がかぶることになるのですが、医学系研究の指針でかぶせておけば本当に大丈夫かというと、ちょっと二つの指針は見方が違うと思うので、うまくいかないのではないかとも感じます。問題は要するに、患者さんの安全とか治療の有効性の問題なので、それを考えると、最初はやはり大きな枠をはめておいて、ただし現状ではこれとこれとこれは除します、若しくは、これは例外ですという形でやるほうが妥当かなという気はしますけれども。
○ 山口委員長 今、位田先生にまとめていただいたように、文章として先ほど提案したのは、その意図で書かせていただいたような形になっております。ですからその辺、先ほどの赤字で書いた部分を少し包含するような形で書いて、ただ、むしろヒストンのアセチル化というのはデータが蓄積してくれば多分外してもいいのかもしれませんし、それがまだ一般化しているとも私自身も思ってはいないです。将来的には出てくる可能性があるというところかなという気がいたします。よろしいでしょうか。最終的な文章は、もう一回委員会がありますので、練らせていただきます。ワーキンググループでも、その文章を先ほど少し提案させていただいたような形で書いてみて、もう一度確認をいただければと思っております。
 あともう1つ、先ほども出てきたのですが、3つ目の●のiPSのことについても少しだけ確認をさせておいていただければと思います。これはゲノム編集を行う場合には臨床研究として、いわゆる遺伝子治療に関わる範囲に入ると考えてよろしいでしょうか。これは確認です。一応、iPSにターゲットするときは、iPSを作ったあと、患者から作った場合には、患者は遺伝子の変異があるので、それを修正して打つようなことがまず想定されると思うので、多分それに該当するのだろうと思っております。恐らく今の指針から見れば、その場合はex vivo遺伝子治療ということで、ex vivo遺伝子治療は最終的には再生医療等のほうで見ることになるのですが、指針そのものとしての定義の中にはそれが入ってくるという考え方ですが、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
○ 位田委員 定義するのは、全然反対ではないのですが、いずれにしても法律のほうが優先するので、最初から法律がかかってしまうという話ではないのでしょうか。人体に入れるのであれば、という前提ですけれども。
○ 山口委員長 先生、薬機法ではかかるのですが、再生医療等法でex vivoの場合には、指針第一から第十二の定義とかがかかるのですけれども、それ以外も参考にするとなっているのです。だから入らないことになってしまって、ですから薬機法でも、例えばmRNAを使う場合は遺伝子治療を参考にしてくださいという、そういう落としどころになるかと思います。ちょっとややこしくて、いつもこの文章を説明するときに頭が痛くなるのです。
 次に、指針のほかに、例えば計画書に添付しなければならない話としては、倫理委員会の構成要件として、その1つは、ゲノム編集技術の専門委員を含めるべきかどうか、これを改修の中に入れるべきかどうかを議論しました。研究班としては、ゲノム編集そのものだけは割りと今、先ほどから議論していますように、いろいろな技術があって、確かに最新の技術はちょっとずれてくるものもありますけれども、場合によっては、これを全部要件にしてしまうと、構成そのものは随分変わってきてしまうので、研究班としては、ゲノム編集の専門家を必須という形ではなくていいのではないかと。もし必要であれば、時々adhocに入れていただくような形でも構わないのではないかというような意見でした。その辺については、研究班としてはそうだったのですが、よろしいでしょうか。
○ 位田委員 私も、委員にするには、5名以上でもかまわないのですが、5名という制約があるので、委員に必ずしもしなくてもいいかもしれません。ただ、そういう専門家側の意見を聴取するとか、そういうことをきちんと書き込んでおく必要はあると思います。
○ 山口委員長 多分、遺伝子治療ですと、ex vivoに関してだと1か所だけですね。もし新しいゲノム編集技術があった場合、あるいはin vivoの場合ですと審査委員会で議論しますので、そのときには必要に応じて専門家を、どうしても必要な場合は入れるという形になります。それがいないと審査ができないという形にしてしまうことではないかと。
 その次に、新規性の判断ですけれども、遺伝子治療の臨床研究の新規性の判断に関して、どういう場合にするかということで、この場合少し議論になっているのは、最終産物についてはオフターゲットの効果について解析することのために、例えば患者に投与する場合の血清とか、あるいは最終産物を10年間以上期間を保存するとなっているけれども、これについて変更する必要があるかどうか。要するに、ゲノム編集ゆえに、より長期にわたって保管する必要があればということなのですが、必要があるかどうかということです。
 これに関しては、ワーキンググループとしては、今でも10年間、固定ではなくて、ヒト血清とかそういうのを使って、薬機法で言うような特定生物由来原料物質などを使うと長期にわたって保存・保管を求めますので、それは再生医療等評価部会でもそのような取扱いをさせていただいています。この10年というのは、今言っているゲノム編集の場合に最低限を10年から更に上げる必要があるかという意味での意見です。それについては、一応ワーキンググループとしては、その10年はあえて延ばす必要はないのではないかという意見でした。我々は余り感じなかったのですが、松原先生、もしその辺のところ、特に何かありますか。
○ 松原委員 もしゲノム編集で考える点があるとすると、年限で切るというよりは、次世代での健康状態を把握する前というように多分なるのだと思うのです。結局、Germ-limeに本当に影響はなかったのかどうかと。ただ、それを入れてしまうと、とても大変なことになってしまうので、いじらないとすれば別に10年でも5年でも関係ないような気がします。
○ 山口委員長 この指針本体に関して議論させていただきたい点は、大体以上のようなことです。特に今日は指針の定義と範囲で、範囲についてはもう一度確認をさせていただきます。最初の資料2の最後を見ていただけますでしょうか。この図で確認させていただきます。赤字の所までは多分、皆さんの合意が得られたと。黒字になっている所の、例えばヒストンの修飾で、この場合のヒストンの修飾なども、定義としては特定遺伝子の部位のヒストンの修飾だったと理解しております。ですから、そのようなリスクがあった上で、例えばブラスアルファのリスクが想定されるようなものについては、多分ひっくるめていったほうがしばらくはいいのではないか。ただし、その蓄積に応じて変えていったほうがいいと、要するに外せるものであればもちろん外していっても構わないと思いますし、その場合には、これを包含するような形での定義をしておいて、細かい所の話に関しては、例えばQ&Aとか、あるいはそういうという形で整理をしていく形で落ち着いたかと思いますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。予定していた検討は大体終わりましたので、続きにつきましては次回以降にさせていただきたいと思います。先ほど言いましたように、範囲と定義の部分については大体合意が得られたと思いますので、細かい文言については、もう一度、今の定義にしたがって先ほどの「等」を入れるとか、少し文章を、例えば修飾という言葉を使うかという、その辺は考えさせていただいて、次回のときに提案させていただければと思っております。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、事務局から次回以降の事務連絡についてお願いいたします。
○ 下川研究企画官 次回、第5回の日程につきましては、先日委員の皆様から頂いた候補の日程をもとに、10月30日の15時から17時を予定しております。改めて御連絡いたしますのでよろしくお願いいたします。本日の議事録につきましては作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後公開させていただきますのでよろしくお願いいたします。
 最後になりましたが、本日お忙しいところ、お集りいただきましてありがとうございました。事務局からは以上です。
○ 山口委員長 本日は長時間にわたり議論をいただきまして、どうもありがとうございました。
 

 

(了)

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