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2018年9月10日 第11回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局健康課

○日時

平成30年9月10日(月)13:00~15:00

 

○場所

新橋会議室8E会議室
 
 

○議事

○友永室長補佐 それでは定刻になりましたので、第11回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会を開催いたします。本日は御多忙のところを御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開でございますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意ください。
続きまして、委員の出欠状況について御報告いたします。池田委員、近藤委員から御欠席の連絡を受けております。また、多屋委員が少し遅れております。よって、現在、委員8名のうち、5名の委員に出席を頂いておりますので、厚生科学審議会の規定によりまして本日の会議は成立したことを御報告いたします。また、本日は参考人として、2名の方に御出席を頂いております。まず、予防接種推進専門協議会からの御推薦で、福岡看護大学基礎・基礎看護分野基礎・専門基礎分野教授の岡田賢司参考人です。続きまして、肺炎球菌感染症の関係で、国立感染症研究所感染症疫学センター長の大石和徳参考人に御出席を頂いております。
それでは冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。なお、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので御留意をお願いします。
まず、議事に先立ちまして配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、それから配布資料一覧、委員名簿、座席表、資料が1から3-2、それから参考資料が1から12、また、各委員からの審議参加に関する遵守事項の申告書を御用意いたしております。配布資料一覧を御確認いただき、不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。
ここからの進行は脇田委員長にお願いいたします。
○脇田委員長 皆様、本日は御出席ありがとうございます。国立感染症研究所の脇田です。この委員会、また本日もよろしくお願いいたします。まず、事務局のほうから審議参加に関する遵守事項について報告をお願いします。
○友永室長補佐 それでは審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日、御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況、申請資料への関与について申告を頂きました。各委員、参考人からの申告内容については机上に配布しておりますので、御確認をお願いいたします。
本日の審議事項は、不活化ポリオワクチンについて、おたふくかぜワクチンについて、肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る)について、この3点を予定しております。これらの各ワクチンの製造販売業者はサノフィ株式会社、KMバイオロジクス株式会社、阪大微生物病研究会、北里第一三共ワクチン株式会社、第一三共株式会社、アステラス製薬株式会社、田辺三菱製薬株式会社、ジャパンワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社、MSD株式会社、ファイザー株式会社となっております。
岡田参考人より、4種混合ワクチン及び13価肺炎球菌ワクチンについての作成に関与しているとの申告を頂いておりますので、それぞれ該当のワクチンにつきまして、「審議又は議決が行われている間、審議会場から退出する」に該当することから、この取扱いについてお諮りいたします。なお、このほか、「退室」や「審議又は議決に参加しない」に該当する委員及び「退室」や「審議に参加しない」に該当する参考人はいらっしゃいません。以上です。
○脇田委員長 ありがとうございます。ただいま事務局のほうから審議参加についての報告がございましたけれども、岡田参考人はこの当該のワクチンに関する審議と議決の間に審議会場から退出するということですが、参加規程によりますと、この取扱いにつきましては、「当該委員等の発言が特に必要であると当部会が認めた場合には、出席し、意見を述べることができる」ということになっております。岡田参考人におかれましては、当部会から専門のワクチンの資料の説明を依頼しているということですので、退室をせずに審議に参加していただきたいと考えますが、よろしいでしょうか。                                                        (異議なし)
○脇田委員長 特に反対の意見はございませんので、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。それでは審議事項、議事に入りたいと思います。今日は3つ審議事項がございまして、最初が不活化ポリオワクチンについてということであります。こちらは前回から審議をしているところですけれども、まず、資料1について説明をよろしくお願いします。
○黒崎室長補佐 資料1をお手元に御準備ください。不活化ポリオワクチンについてという資料です。1ページ目の経緯につきましては、これまでも何回か出させていただいたところではありますので、必要なところについて説明をさせていただきたいと思います。平成25年7月の第3回研究開発及び生産流通部会におきまして、不活化ポリオワクチンの5回目の接種の必要性について議論がなされ、改めて抗体保有率の経年変化について調査を継続し、その結果に基づき5回目接種の必要性を検討するとされたところです。この度、第9回のワクチン評価に関する小委員会におきまして、それぞれの研究班の概要について御報告を頂き、前回8月の第10回ワクチン評価に関する小委員会におきまして、宮村参考人からヒアリングを行ったという経緯です。
1枚おめくりいただいて論点です。論点として、不活化ポリオワクチンの5回目の接種の必要性に関しては、ただいま御説明申し上げたとおり、抗体保有率の経年変化に関する調査結果に基づき検討することとされております。第9回の本委員会で報告された研究結果と、前回、第10回のヒアリング結果から、今後、5回目の接種が必要となることが考えられるということでして、その接種時期等について検討を開始することが必要とされたところです。今後、5回目の接種の接種時期等について検討を行うに当たり、下記の検討の視点についてどのように考えるかということを、論点として提出させていただきたいと思います。
まず、マル1といたしまして、不活化ワクチン接種後の抗体価と感染防御能との関係についてどのように評価できるか。現時点の我が国におけるポリオに対する集団免疫の状態をどのように評価できるか。マル2といたしまして、我が国において使用可能なIPV含有ワクチンの現状を踏まえ、今後、5回目の接種について検討する場合のワクチンについてどのように考えるか。マル3といたしまして、抗体価の推移と5回目の接種の接種時期についてどのようなことが言えるか。5回目の接種の接種時期について、抗体価の推移以外にどのような要素を考慮すべきか。要素の例としまして、そこに書いてありますような4つの視点をこちらのほうで準備させていただいたところです。
3ページ目、不活化ポリオの抗体価に関する知見の整理ということで、これは前回にも同じ資料を提示させていただいているところではありますが、検出可能な中和抗体を保有していれば、その型に対する発症予防効果があるとされていると言われているところです。
1枚おめくりいただきまして4ページ目、実施率に関しましては前回の資料で御説明したとおりです。5ページ目以降は、第9回小委員会におけるそれぞれの参考人及び委員の先生から発表いただいたスライドを要約させていただいたものです。
8ページ目を御覧ください。それぞれの論点についてどのように考えるかというところを、まとめさせていただいたものです。まず、マル1として、不活化ワクチン接種後の抗体価と感染防御能との関係についてどのように評価できるか、現時点の我が国におけるポリオに対する集団免疫の状態をどのように評価できるかということでして、2点、そちらのほうに説明を加えさせていただいております。
まず、1番目といたしまして、先ほど説明したところと重なりますが、ワクチン接種後の抗体価と臨床的な防御効果の関係を示す代表的な論文によれば、下記の表に示すとおり、検出可能な中和抗体を保有していれば、その型に対する発症予防効果があるとされているところです。また、2番目ですが、本小委員会に報告された研究班の結果によれば、現時点においてポリオの集団免疫というものを考えますと、危機的状況に瀕しているというわけではなくて、集団免疫効果が維持されているものと考えられるのではないか。しかし、抗体価は徐々に低下していることから、今後、いずれかの段階で5回目の接種について、しっかり議論していく必要があるのではないかと考えているところです。
9ページ目、論点のマル2とマル3について御説明を申し上げます。マル2に関しましては、我が国において使用可能なIPV含有ワクチンの現状を踏まえ、今後、5回目の接種について検討する場合のワクチンについてどのように考えるか。マル3につきましては、抗体価の推移と5回目の接種の接種時期についてどのようなことが言えるか、5回目の接種の接種時期について、抗体価の推移以外にどのような要素を考慮すべきかということです。例として、集団免疫を維持するための高い接種率維持の観点、接種を受ける方の負担軽減の観点、他の感染症(特に百日せき)予防の観点、セービン株とソーク株の選択の観点などを要素として挙げさせていただいたところです。
以下は参考資料として付けたものですが、まず、諸外国における接種スケジュールといたしまして、この3+1+1の5回接種のスケジュールを採用している国の接種スケジュールについて、下の表のようにまとめました。初回接種はおよそ6ケ月までに3回、追加接種は1歳時の周辺に1回というところはおおむね共通しているところですが、5回目の接種に関しては少し幅がありまして、就学前後に行っている国が多いものの、それ以降に行っている国もあるという結果でした。
10ページ目、現在、5回目接種を念頭に置いた場合に使用することが考えられるワクチンというのは2種類、大まかに2種類ありまして、1つは不活化ポリオワクチンとしての単抗原ワクチンです。こちらについては5回目の接種として使用することが現在でも可能ではありますが、不活化ポリオワクチンの初回接種及び追加接種を完了した4-6歳の小児を対象に2回目の追加接種(通算5回目)の免疫原性及び安全性を検討した第Ⅳ相試験というものが既にあります。本試験は初回・追加免疫ともに、ソーク株含有ワクチンを接種した小児を対象としているところですので、現在、セービン株で初回・追加免疫を受けた小児に対してこちらを使用するということについては、改めて検討が必要ではないかと考えているところです。一方で、4種混合ワクチンに関しては、セービン株を含むものとソーク株を中心とした株を含むものの2種類が大まかにありますが、現時点では薬事法上5回目接種として使用できる状態にはありません。ですので、こちらを使用するということになった場合には、臨床試験、免疫原性や安全性を検証するための臨床試験が必要であると考えます。また、混合ワクチンであるため、ほかに含まれているもの、他の疾患、特に百日せきに対してふさわしい接種のタイミングも考慮する必要があると考えます。
3番目の参考としまして、百日せきに関してです。百日せきに関しましては、今年の1月1日から検査診断による全数届出となったことから、5月17日に開催されました第8回、こちらの委員会におきまして、第16週までの発生動向について御報告を頂いたところです。その後、こちらの委員会で、今後の更なる報告の集積を待って、再度発生動向に関して御報告を頂くことになったと整理されております。事務局からは以上です。
○脇田委員長 ありがとうございました。それでは、ディスカッションに入っていきたいと思います。論点は3つにまとめていただいていますけれども、8回目の委員会から研究の成果、専門家として宮村先生から御意見を頂いたりして、現在のポリオに対する集団免疫の状況を検討してきたということ。それから、現在使えるワクチンというのが今、説明があったとおり3種類ありますが、単味のワクチン、混合ワクチンということになりますので、3番目の論点としてその時期と、何を使っていくかというところ、他の感染症、百日せきとかの検討の推移もありますので、それも含めて検討していく必要があるということになろうかと思っています。皆様から御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
○多屋委員 最初の論点なのですけれども、この抗体価の減衰を考えると、5回目の接種はいずれは必要だと考えます。もちろん今日、明日すぐという状況ではないと思います。一方、先ほど事務局から御説明があった10ページの今後どのワクチンを使うかですけれども、セービン株で接種をしたお子さんに対してcIPVを使うということについては、これまでも検討されてきていましたが特に問題はなかったかと思います。
もう1つ、9ページの5回目の接種の年齢ですけれども、現在の子供たちの予防接種のスケジュールを考えますと、やはり小学校に入学した以降では接種率がなかなか上がっていませんので、多くの国がそうであるように就学前、麻しん風しん混合ワクチンの2回目の第2期の接種と同時期にするのが、保護者や接種医の先生にとっても利便性が高いのではないかと思います。
○脇田委員長 多屋委員からは、追加接種は必要であろうと、時期は就学前がよいと。どのようなワクチンがというところでは、cIPVでもよいのではないかと、ただ、混合ワクチンを使う場合には臨床試験等が必要になってくるということです。
○福島委員 まず、論点1について少し申し上げたいのですけれども、資料は8ページです。論点1の中に、どのように評価できるかという問いが2つありますけれども、後半のほうの「我が国におけるポリオに対する集団免疫の状態」については、その下の2つ目の○にあるような解釈で問題ないと思います。現時点において抗体価は徐々に低下はしていますが、前回の議論のとおり、集団免疫の状態は危機的状態に瀕しているわけではないので、少し時間的余裕があり、しっかり議論ができる状態にあるということで理解しております。
一方、1つ目の問いの「不活化ワクチン接種後の抗体価と感染防御能との関係」についてですけれども、この小委員会で何か結論を出すものではないと私は思っています。これまで研究班でも「1:8以上か」というところで評価をしていたわけですが、グローバルスタンダードとして治験等でもこのような抗体価が使われているという事実の下、研究班でも1:8という1つのカットオフ値で評価をしてきたわけです。もちろん、本日資料としてお示しいただいたように、検出可能な抗体価、すなわち1:4以上を有していればよいという考えがあることも私は承知いたしました。
このようなことはインフルエンザワクチンでもあるわけでして、1:40というHI価が感染防御能を評価する閾値として使われていますけれども、例えば、「それはワクチン株に対する抗体価の目安であって、流行野生株に対しては1:20でも十分ではないか」という議論があるのと似たようなことだと思うのです。同様に、不活化ポリオワクチン接種後の抗体価と感染防御能の関係については1:8という一定の目安があるので、これについて詳しく議論をする必要はないと思います。少し論点からはずれるかもしれませんが、申し上げておきたいと思います。
すみません、もう1点ですが、先ほど多屋委員が言われた接種時期についてですけれども、私も就学前のほうが、お母さん方にとってはお子さんに接種を受けさせやすいのかなと思います。就学後、小学校5~6年生で受けるワクチンとしてはDTがありますが、DTの接種率はどのような感じで推移しているのかというのも気になります。恐らくちょっと接種率が下がると思いますので、その辺りでDTと一緒にIPVも2回目の追加を打ってくださいとなると、そもそもの接種率が上がってこないのではないかということを懸念します。以上です。
○脇田委員長 ただいまの福島委員からの御意見は、1番目の論点の不活化ワクチンによる抗体価に関しては、感染防御能という観点では少し議論があるけれども、日本全体を考えた場合に、すぐに追加接種が必要になるような状況ではないということでよかったでしょうか。接種時期に関しては、多屋委員と同様の御意見ということと承りました。そのほかはいかがでしょうか。皆さんの御意見を伺いますと、1番の論点に関しては、やはり直ちに追加接種を開始しなければいけないという状況ではないと。ただ、抗体価の推移を考えると、いずれかの時期にきちんと追加接種を始める必要があるということかと承りました。
論点2、3についてですが、接種時期はやはり就学時が接種率を上げるという観点からはよろしいということかと思います。一方で使用可能なワクチンは、現在、実際に使えるのは不活化ポリオワクチンの単味のワクチンでありますけれども、ほかの感染症との兼ね合い等も考えて、実際に使用するものは今後やはり検討を進めていく必要があるというところかと考えます。そのほか追加の意見はありますか。
○原委員 接種時期に関しては、私も就学前のほうが接種率は高くなると思うのですが、その後の抗体価の推移を考えると、なるべく遅いところというのも1つの選択肢かなとは思いました。その辺りも併せて議論したほうがいいのかなと思いました。
あと、その議論に関してですけれども、いずれかの時期というのをどのぐらいの目安で決めていくのかというのが今までこの委員会の中でなくて、私もこういう場でどれぐらいのことを議論していくのか、ちょっといつも頃合いが分からないでいるのですが、何か工程表のようなものがきちんとあると、もう少し分かりやすいのではないかと思います。
○脇田委員長 工程表を作って検討を進める、ほかのワクチンに関する検討というのもありますので、そういうものも含めて順番にというか、検討を進めていく必要があるということでないかと思います。岡田参考人からお願いいたします。
○岡田参考人 論点1に関しては、確かに危機的状況ではないにしろ、集団免疫効果が維持されている今をどのようにしたら維持できるかということを考えると、インバウンドがこれだけ増えてきていますので、早めに追加免疫をすることを議論しておかないといけないと思います。私も原委員がおっしゃったように工程表で、例えば2020年までにポリオの追加接種は決めるなど、具体的に示していただければ有り難いかなと思います。
論点3です。集団免疫を維持するために、高い接種率が必要で、多くの委員が言われるように、就学前がいいと思います。ただ、接種を受ける方の負担軽減の観点という項目があります。これは、現在は不活化ポリオワクチン単独と、百日せきの予防の観点を考えると3種混合ワクチンの同時接種だから負担があるのではないか、という観点だろうと思うのですが、現在の4種混合ワクチンは5回目の接種ができない状況です。開発治験でないとできないことを考えると、5回目の追加接種として百日せきとポリオが必要だということをきちんと決めていただければ、4種混合ワクチンの開発治験が進むと思います。今の段階だと、4種混合ワクチンの5回目接種がまだどうなのかが分からないという状況の中では、メーカーが開発治験の決定まで進まないと思いますから、就学前にポリオと百日せきが必要であるということをこの委員会で決議いただき、基本方針部会で承認いただくことで、4種混合ワクチンの5回目の追加接種の開発治験が進むのではないかと考えます。
最後に、資料の3ページにあるような3型の抗体価が低いことが、OPVの弱点となっています。IPVを接種をしている子供たちが今やっと5、6歳ぐらいになっています。追加接種が遅くなればなるほど、世代間のギャップが生じてくると思います。そのギャップを生じさせないためにも、早いうちに就学前に決めていただくことで、このギャップもなくなってくるのではないかなと考えます。以上です。
○脇田委員長 ありがとうございます。ただいまの岡田参考人の御意見で、不活化ポリオの追加接種の導入時期について、やはり原委員と同様に工程表等を示して議論を進めていくべきだということ。それから、接種の時期ですけれども、こちらは4種混合を使うことによって費用軽減というか、負担軽減ができるのであれば、4種混合ワクチンを追加接種に使うための臨床試験を加速していく必要があるのではないかという御意見と承りました。ほかにいかがでしょうか。
○菅沼委員 今、岡田参考人からお話があったとおり、5回目をするという時期については多分就学前、あるいは今のDTのタイミングという形が考え得るものかなと思うのですが、いずれにしても5回目が4種混合というのを強く念頭に置くということをはっきりさせておくことは、次のステップには必要なのかと思っております。
○脇田委員長 ありがとうございます。多屋委員、お願いいたします。
○多屋委員 2012年にIPVが始まっていますので、ちょうど今年が6歳になります。ですので、岡田参考人がおっしゃったように、余り遠くなると就学前といえどもまたキャッチアップが必要になってくるので、少なくともインバウンドが更に多くなる1、2年以内には5回目の追加が必要です。また、子供たちへの負担を考えますと、DPTとIPVが同時、あるいはDPT-IPVワクチンで接種できたほうが私もよいと思っています。
○脇田委員長 更なる御意見はございますか。今いろいろ御意見を頂きましたので、それらを含めて事務局で取りまとめていただいて、次回以降の委員会で議題とさせていただくということで、また議論を進めていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
それでは、次の審議事項2に移ります。おたふくかぜワクチンについてです。こちらは資料2ですので、また事務局から説明をよろしくお願いいたします。
○黒崎室長補佐 資料2を御覧ください。おたふくかぜワクチンについてです。おたふくかぜワクチンについての経緯です。平成25年7月の第3回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、「仮に広く接種するに当たっては、より高い安全性が期待できるワクチンの承認が前提であり、新たなMMRワクチンの開発が望まれる」とされたところです。
以降、平成29年9月に日本耳鼻咽喉科学会よりムンプス難聴に関する全国調査の結果が公表されたことを受けて、同年12月の第20回予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会において、日本耳鼻咽喉科学会の調査結果について報告いたしました。本年5月に予防接種推進専門協議会から、「おたふくかぜワクチンの定期接種化に関する要望書」が提出されたということを受けて、第9回ワクチン評価に関する小委員会において、日本耳鼻咽喉科学会及び予防接種推進専門協議会からヒアリングを行ったところです。
1枚おめくりいただき、今回の論点を示しています。前回までの議論を踏まえた上で、マル1として、ムンプス難聴の発生頻度も含め、おたふくかぜの疾病の負荷についてどのように評価できるか。マル2として、おたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生頻度についてどのように評価できるか。マル3として、論点マル1、マル2を踏まえ、定期接種化に関する技術的検討を行う上で今後明らかにすべきエビデンスは何か、という論点を立てました。
3ページ以降、それぞれの論点について資料をまとめています。論点マル1は、ムンプス難聴の発生頻度も含め、おたふくかぜの疾病の負荷についてどのように評価できるかです。前回のヒアリングの概要を示しています。守本参考人からの資料に関しては、参考資料4として付けておりますので併せて御覧ください。
2015年1月1日から2016年12月31日の2年間において、少なくとも359名のムンプス難聴症例が報告され、詳細の明らかなムンプス難聴例は、全部で335名であったと報告されています。年齢については、幼児期及び学童期、子育て世代である30代を中心に罹患のピークが認められたことが報告されています。症状については、詳細の明らかな335人のうち305人は難聴として障害が残り、片側の難聴263人、両側の難聴13人は最終的に高度以上の難聴となったことが報告されています。
4ページです。ムンプス難聴の頻度に関してです。おたふくかぜワクチンのファクトシートに関しては、ワクチンによるムンプス難聴の頻度は不明とされていますが、自然感染におけるムンプス難聴の頻度は0.01~0.5%と記載されています。また、守本参考人の第9回の資料に出典のあるもので見ると、やはり、それと同程度、0.1%若しくは0.3~0.5%、0.16%という報告が掲載されています。下の表は、流行性耳下腺炎の報告数です。現在、流行性耳下腺炎に関しては小児科定点で報告されています。実際、この耳鼻咽喉科学会の調査が行われた2015年、2016年に関しては、流行が起きている年であったということがトレンドとして分かる表になっているかと思います。
5ページです。マル2おたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生頻度についてどのように評価できるかです。前回のヒアリングのまとめということで、岩田参考人から御提出いただいた資料を、簡単に概要としてまとめています。岩田参考人からの御提出資料についても参考資料5として資料に含めておりますので、そちらも併せて御参照ください。
最近の国内の前方視的研究によれば、3歳未満でワクチンを接種した場合と3歳以上でワクチンを接種した場合の無菌性髄膜炎の頻度は、それぞれ0.018%、0.078%であったと報告されています。製造販売後調査によるおたふくかぜワクチン(星野株)接種後の無菌性髄膜炎の出現頻度は、以下のグラフのとおり推移していることが岩田参考人から御報告されたところです。
6ページです。製造販売後調査によるおたふくかぜ含有ワクチン(星野株)接種後の髄膜炎の発症年齢は、以下のとおりであったということで、1歳の所にピークがあるようなグラフが示されています。ファクトシートの記載です。ファクトシートでは、ワクチン接種による無菌性髄膜炎の頻度は0.1~0.01%、おたふくかぜの自然感染における無菌性髄膜炎の頻度は1~10%と報告されています。また、表6はファクトシートからの抜き出しです。
7ページです。これまでの審議会における議論です。先ほどの経緯で少し触れましたが、平成25年7月開催の第3回予防接種基本方針部会において、年齢が高くなるほど髄膜炎や難聴などの合併症の発症率が高くなるとされており、ワクチンについても同様に接種年齢が高くなるとともに、副反応の発生率が高くなるということを示唆する報告がされていることが示されました。その上で、選択肢1として、ワクチンの接種による予防効果とワクチン接種により無菌性髄膜炎等が発生するリスクについて、被接種者に対し十分説明し理解を得た上で実施することを前提に、現行の単抗原ワクチンである星野・鳥居株を使用する。若しくは、選択肢2として、ワクチン接種による予防効果とワクチン接種により無菌性髄膜炎等が発生するリスクについて比較衡量し、より高い安全性が期待できるワクチン、若しくはワクチン株が承認された時点で、費用対効果等を踏まえ当該ワクチンを使用するという双方の選択肢について議論が行われ、選択肢2の方向性となりました。
8ページです。論点マル3です。論点マル1マル2を踏まえ、定期接種化に関する技術的検討を行う上で、今後明らかにすべきエビデンスは何かです。やはり、おたふくかぜ単抗原ワクチンの無菌性髄膜炎の頻度について、より信頼性の高いエビデンスを示すことが必要ではないかと考えています。そのため、これまでの無菌性髄膜炎の頻度に関する調査研究の実施方法等も踏まえ、おたふくかぜ単抗原ワクチンによる無菌性髄膜炎の頻度について、どのような調査研究が実施可能かについての検討を事務局で行い、その結果を踏まえて、今後どのように検討を進めることができるかを議論することとしてはどうかと考えています。事務局からは以上です。
○脇田委員長 おたふくかぜワクチンについては、説明がありましたとおり、平成25年の議論において、副反応の少ないワクチンの開発を優先することが望まれるということであったと思います。おたふくかぜの疾病負荷、難聴の発症ということを考えて、今後、単抗原ワクチンについてどのようにするかというところで、現在の単抗原ワクチンの無菌性髄膜炎の頻度について、もう少し調査をしていく必要性があるのではないかという整理であったと思います。委員の皆様から御意見を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
まず、論点マル1に関しては、ムンプス難聴の発生頻度も含めて、おたふくかぜの疾病の負荷についてどのように評価するかということで、こちらは耳鼻科の先生にもヒアリングを行ったところですが、やはり、難聴をはじめとした重篤な合併症があるということで軽い疾患ではないという認識だと思います。そして、そのためにおたふくかぜワクチンをどのようにしていくかということが論点です。
○多屋委員 おたふくかぜに関しては4ページに表を付けていただいておりますように、現在の任意接種では3、4割の接種率ですから、4~6年に1回大きな流行が発生しています。ムンプス難聴の疾病負荷は極めて高いもので、非可逆性の難聴が起こるということを考えると、次の流行までにはおたふくかぜワクチンの定期接種化について明確な決断が必要ではないかと思います。平成24年の第二次提言から既に6年が経過しておりますので、次の流行までにはおたふくかぜワクチンの定期接種をどのようにするか、MMRワクチンの開発がどういう状況かということも、もう一度しっかり検討すべきかと思います。
以前に比べると、おたふくかぜワクチンの接種の年齢は明らかに下がっており、以前は3歳になるくらいまでにという方が多かったのですが、最近はほとんどMRワクチンの第1期と同時、1歳で接種されている方が多いので、無菌性髄膜炎の頻度も少なくなっているのだと思います。ただし、気を付けなければいけないのは、無菌性髄膜炎は医師が検査をするかどうかに随分関わっており、頭が痛い、少し吐いたということで髄液検査をして細胞数が増えているともう髄膜炎になってしまうので、そこでも随分、頻度は大きく関わってくるような気がします。
1回目を1歳でするのであれば頻度が低い、ということであれば、ある程度免疫があるところに2回目をするので、2期の接種があったとしても頻度はぐっと落ちるのではないかと思います。そういうことを次の流行までの少なくとも5、6年、2016年の次の流行までには結論を出していただきたいと思っています。
おたふくかぜワクチンの今の単味のワクチンではこのくらいの頻度ですから、どうしても定期になると数十人から100人くらいの無菌性髄膜炎の数が出てしまうということは、しっかり理解しておかなければいけないと思っています。
○脇田委員長 ありがとうございました。今の多屋委員の御意見ですが、やはり、おたふくかぜの疾病負荷は大きい。さらに、それを防ぐために単味のワクチンの導入も議論する必要があるのではないか。ただ、そのときに、現在の単味のワクチンを使うと、ある程度の無菌性髄膜炎の合併症の可能性があるということを、十分に理解していただく必要があるという御意見と思います。そのほかに何かございますか。
○福島委員 これは、多屋委員にお聞きしたほうがよいのかもしれません。5ページの論点マル2で示されている3年ごとの無菌性髄膜炎の平均報告頻度が、最近下がっているということが、これまでの委員会でも報告されております。その理由としては、接種年齢が下がったことによるものではないかとおっしゃられました。
先ほど言われましたように、無菌性髄膜炎は細菌性髄膜炎以外ということで、ウイルスが同定できず、でも明らかに細菌性ではない場合は、全て無菌性髄膜炎として報告されてしまうということから、1994-1998年に認められていた1万人に1例は、紛れ込みなどもあったと考えるべきでしょうか。そのため、最後の論点マル3、現在においての頻度がどの程度かということを、市販後調査だけではなくきちんとした調査設計で見ないといけないということなのでしょうか。
○脇田委員長 多屋委員にお尋ねということでよろしいでしょうか。多屋委員、何か御意見ございますか。
○多屋委員 もう数年前になりますが、2万人くらいの被接種者の方のその後の無菌性髄膜炎の頻度などが論文にもなっています。福島委員がおっしゃる5ページの90年代の頻度については、おっしゃるとおりで、十分なウイルス学的検討がされていない、例えば、エンテロウイルス等の無菌性髄膜炎が紛れ込んでいた可能性は、もちろん100%否定できるものではないと思います。ただ最近は、副反応検討部会に報告される症例を拝見していると、髄膜炎の場合はワクチン株が検出されたという記載が随分多くなってきていますので、先生方もワクチン接種後の一定期間に髄膜炎が起こった場合は、そのウイルス学的検討をするという方向になってきているのかと思っています。ですので、20、30年前と比較するのはすごく難しいと感じます。
○脇田委員長 ということは、最近のデータは、ある程度精度が上がってきていると考えてもよいということですか。
○多屋委員 今、検査に出していただいている場合は、ワクチン株か野生株かという区別は付けているのではないかと思います。
○脇田委員長 ただ、もう少しきちんとしたデータ取りをしたほうがよいというところはあると多屋委員もお考えということで、ありがとうございました。そのほかに何かございますか。
○岡田参考人 臨床医の立場から、福島先生の御質問に少しコメントさせていただきます。5ページの資料にあるように、上が無菌性髄膜炎の頻度ですよね。先ほど多屋委員が言われたように、無菌性髄膜炎の中にエンテロウイルスが多い年があると、2000年の初めのときのように少しですがピークができます。以前、エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎のピークとこの下の図を重ね合わせて見たことがありますが、少し関連がありそうでした。市販後調査の無菌性髄膜炎の報告は、エンテロウイルスによる無菌性髄膜炎の小さなピークともある程度一致しているようです。
市販後調査で、星野株でこのようなデータを出していただいていますから、できれば鳥居株でもこういうデータがないのかどうかを確認いただければ、今後の参考になるのではないかと思います。新たな調査研究をするとなると、この髄膜炎の頻度からすると相当な数が必要になってきて、新しい臨床研究法の中で、幾ら観察研究とはいっても相当の費用と時間が掛かっていく可能性があります。今までの資料をもう一回ある程度整理していただいて、無菌性髄膜炎がやはり変わってきているということを一度評価していただければと思います。
○脇田委員長 分かりました。ありがとうございました。ただいまの岡田参考人の御意見は、今後の調査を行うにしても、前向きの臨床研究というよりも、これまでの無菌性髄膜炎の調査、それから、市販後の星野株、鳥居株の比較を十分に行う必要があるのではないかということかと思いました。そのほかに何かございますか。
○福島委員 岡田参考人の御意見に関連して、多屋委員に確認させていただきます。先ほど、接種率が上がったときに、おたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の全国の患者が十数人くらいと期待されると言われましたか。
○多屋委員 6ページに、ワクチン接種後の髄膜炎の頻度が書かれています。1万人から1,000人に1人というのは余りにも幅が広いので、例えば、5ページの3、4万人に1人と仮定すると、定期接種では大体100万人のお子さんが接種されるので、数十人くらいの規模になるであろうという意味で申し上げました。
○福島委員 ありがとうございました。論点マル3の現時点での頻度を明らかにするということであれば、先ほど岡田参考人が言われたように、すごく大規模な研究が必要になると思います。単に実数だけではなくて、例えば、95%信頼区間等も含めてある程度の精度で推計しないといけないとなると、かなり難しいと直感的に感じました。以上です。
○脇田委員長 ありがとうございました。そういう意味でも、まず、どのような調査研究が実施可能かということを議論するということかと思います。
○岡田参考人 せっかく疫学の先生がお2人いらっしゃいますから、3、4万人に1例の無菌性髄膜炎の頻度を今から観察研究で前向きにやるとしたら、実質どのくらいの観察人数が必要かを一度検討していただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○福島委員 単に頻度を見たいということですか、それとも、接種者と非接種者の比較をしたいということですか。多分、それによってもかなり変わってくると思います。
○脇田委員長 多分、頻度の比較ということではないかと思います。接種者のですね。
○福島委員 先ほど申し上げたように、接種者の頻度がパーセンテージで出るとして、それでも1回の調査ですので誤差は生じますよね。その誤差を95%信頼区間というもので一般に表すのですが、それがどの程度の範囲に入ればアクセプタブルなのかということが相当絡んできていて、一定の精度で見たいということであれば、すごく莫大な人数がいるような気がします。原委員、どうでしょうか。
○原委員 どれくらいまでなら許容できるのかというところからよく考えていかないと、それを証明するための数は試算できないと思います。あと、今後、定期接種化するとなると、その後のモニタリングをしていくということも大事になっていくので、調査研究として単発で行うのではなくて、その後のことも考えて何か評価できるシステムを作っていくほうが大事ではないかという気がします。
○脇田委員長 ありがとうございました。もちろん、事前に分かれば一番いいのですが、それがなかなか難しい研究になるであろうということですから、どのような調査、推計が可能かということを議論するとともに、定期接種化された後にこういう合併症のモニタリングをしていくかということ。もちろん、現在でも予防接種後の負荷の調査をやっておりますが、更に精度を上げていく方法があるかということかと思います。そのほかに何かございますか。
○大石参考人 まだ公表できるデータではないのですが、名古屋市の公費助成の研究があります。3万人規模だったと思うのですが、そこで接種されて、ワクチンの安全性は高く、でも無菌性髄膜炎は確か1例か2例か、正確に覚えていないのですけれど、そのくらいの頻度であったということが分かっていて、それが一番直近の科学的なエビデンスになるのかと思います。
そして、AMEDの私の予防接種班の中でも、おたふくかぜの安全性については、今年度、調査を進めるということで準備しております。大事なところは、やはり、どの程度のワクチンによる無菌性髄膜炎の頻度であれば許容できるのかとか、落とし所が明確になっていないとなかなか議論は難しいと思います。そこは、予防接種室とよく相談しつつ、今日おいでの疫学の専門の先生とも議論しながら、どのくらいのサンプルサイズで、また、今の先生の気になるコメントとしては、今の臨床試験の必要な体制でどのくらいの予算が掛かるのかとか、その辺りもしっかり議論しないと、私の予防接種班の予算だけではとても執行できるような内容ではないのかと思います。
これもかなり急がれている課題ですので、是非、近々に情報を持ち寄って方針を決めていただいたほうがいいと思います。今年度、年度の研究班はスタートしているのですが、実のところ、具体的な安全性を確認するスタディデザインはまだ決まっていませんので、是非、そういう機会を作っていただきたいと思います。以上です。
○脇田委員長 大石参考人、ありがとうございました。今の情報としては、名古屋市の公費助成の結果からは3万人に1例程度の、正確ではないかもしれませんが、無菌性髄膜炎の発生ということですから、正確なデータを取ろうとするとかなり大規模な調査研究になるということかと思います。今、大石参考人が言われたとおり、これも早急に検討を進めなければいけない課題ですので、どのような調査が可能かという議論をこれから進めていきたいということです。
○多屋委員 現在、おたふくかぜワクチンは、1年間に30、40万人程度が接種されていらっしゃいます。任意接種なので、予防接種法に基づく届出義務ではないですけれど、医薬品医療機器等法に基づいて、医師は無菌性髄膜炎で入院となった場合、届け出なければいけないことになっています。その情報は、既に副反応検討部会でずっとオープンにされていますから、その数を見る。あと、もし接種した方で髄膜炎が起こったら必ず医薬品医療機器等法に基づいて届出をお願いしますということを言っていただくと、新たに何かを始めなくてもできるのではないかと思うのですけれど、それだと駄目でしょうか。
○脇田委員長 いいえ。どのような方法で調査できるかということですので、今、多屋委員が言われた方法も1つであると思います。大石参考人が言われたように、では、どの程度の負荷であれば許容可能なのかということも論点になってくると思います。その点について、現在のワクチンの無菌性髄膜炎の合併症の問題ということについて今後も検討するということですので、再度、事務局に取りまとめをしていただいて、次回の議題とするということかと思います。
○菅沼委員 今までの蓄積されたものを振り返ってみるというのと、これからどのようにするのかという話だと思います。率が非常に取沙汰されるわけですが、実際、ワクチンで起こった髄膜炎の臨床像がある程度クリアになると、どれだけ重症度として高いものがあったのか、あるいは軽症で済んだのかというところがある程度分かると、率以外でもそういうところで余り大きな重篤な例が少ないということになれば、よりおたふくかぜワクチンを受け入れやすくなるのかと思います。その辺りも、もし集められるものであれば集められたほうが判断の材料になりやすいのかと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。ワクチンによる無菌性髄膜炎の重症度に関する情報も集めたほうがいいのではないかという御指摘と思います。
○多屋委員 それに関しては、昨年のワクチン学会か小児感染症学会か忘れてしまったのですが、愛知の先生がワクチンの後に起こった髄膜炎と自然感染によった髄膜炎の臨床像の比較を発表されていましたので、それを紹介していただくことで出せるのではないかと思いました。
○脇田委員長 一定の情報があるのではないかという、多屋委員の御紹介です。その点も含めて、また事務局で取りまとめをしていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。今までの御意見を参考にして、次回の議題とさせていただければと考えております。
それでは、3番目の審議事項に移ります。こちらは、肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る)についてです。こちらは23価ワクチンと13価ワクチンの議論で、資料3-1はPPSV23、資料3-2はPCV13です。まず、資料3-1と資料3-2について事務局から説明をお願いします。
○黒崎室長補佐 事務局から説明を申し上げます。資料3-1及び資料3-2をお手元に御準備ください。資料3-1、肺炎球菌ワクチン(PPSV23)についてという資料です。こちらに関しても、これまで何度か小委員会で議論をしてきたところではありますが、今年5月に23価のワクチンに関するファクトシートが作成されて以降、何度か論点を立てて議論を続けていただいたところです。第8回ワクチン評価に関する小委員会において、ファクトシートについて報告を頂いた後、その議論をし、第10回ワクチン評価に関する小委員会において整理案を基に検討を頂いたところです。改めて、そちらの論点についてということで議論していただければと思います。2ページに関しては、これまで出した資料と同じです。
3ページです。論点として、1回接種者における再接種を含む複数回接種の有効性、安全性、医療経済学的評価について、どのようなことが言えるか。マル1ワクチンの効果の持続性について、どのように評価できるか。マル2ワクチンの効果の持続性の評価を踏まえ、再接種を行う対象者、接種間隔、期待される効果について、十分に明らかとなっているかです。ファクトシートの知見に関しては、そこでまとめをさせていただいたとおりです。
4ページ、ワクチンの効果です。効果の持続性について、ファクトシートに引用されている論文には、以下の記述が含まれているということです。こちらについても、前回の小委員会で出させていただいた資料と一緒ですが、主に免疫原性で評価しているもの及びワクチンエフェクティブネスで評価しているものが、それぞれ複数報告されているという結果です。
5ページにまいります。再接種を含む複数回接種の有効性に関してですが、PPSV23の再接種を含む複数回接種による発症予防効果について検討した報告は、今のところありませんが、日本感染症学会肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会は、再接種の免疫原性が初回接種時と同等であるとする所見から、初回時と同等の予防効果が期待されるとしております。再接種における免疫原性については、そこの表にまとめているところですが、免疫原性の中でIgG抗体であったり、オプソニン活性であったりというところは、この表にまとめてあるとおりの応答が見られたという結果が報告されております。
6ページにまいりまして、安全性に関しては、PPSV23の初回接種より再接種において、全身、局所の副反応の頻度が多く、程度が強い傾向があるものの、初回接種、再接種のいずれにおいても副反応の程度は通常は軽度で、自然に軽快すると報告されております。
再接種を含む複数回接種の医療経済学的評価に関しては、前々回、前回とも提出させていただいたとおりですが、ファクトシートの抜き書きをこちらに書かせていただいたところです。
7ページにまいりまして、海外の予防接種プログラムにおける再接種の位置づけについてですが、こちらについても前回議論していただいたところではありますが、海外においては、PPSV23の再接種を国の制度として認め、更に費用助成まで行っている国は、ドイツがここに書いてあるような国々においては代表的であるということを御説明申し上げたところです。日本においては、「2歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防」のためにPPSV23を使用した場合、保険給付されるということになっております。
最後ですが、日本感染症学会の肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会のガイダンスには、委員会の考え方として、PPSV23の再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないが、症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮してもよいとされております。以上が資料3-1です。
資料3-2、沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)についてという資料です。こちらについては、平成22年11月にワクチン接種緊急促進基金事業の中で、肺炎球菌感染症(小児がかかるものに限る)を対象疾病とし、沈降7価肺炎球菌結合型ワクチンが使用を開始されているところです。平成25年4月より定期接種に加わり、使用ワクチンはPCV7でしたが、その年の11月に13価肺炎球菌結合型ワクチンを定期接種に用いるワクチンと変更して、現在まで至っているところです。
平成27年12月、第2回ワクチン評価に関する小委員会において、高齢者にPCV13を定期接種として使用する場合には、我が国の現状を踏まえ、予防接種施策の推進の科学的根拠として、ワクチンの有効性、安全性及び費用対効果について、客観的で信頼性の高い最新の科学的知見に基づき、評価及び検討する必要がある、とされたところです。特に、モデル解析等による費用対効果等の分析・評価をすることとされております。
第9回ワクチン評価に関する小委員会においては、平成29年度に実施された研究の概要について御報告を頂き、議論が行われたところでして、第10回小委員会においては、それに基づいた議論をしていただいたところです。
2ページにまいりまして、論点です。先ほどの経緯でお示ししたとおりですが、「平成27年12月第2回ワクチン評価に関する小委員会において、下記のとおり整理された」という所です。マル1国内の高齢者における疾病抑制効果の評価については、国内臨床試験に関する実行性の観点から、既存の調査・研究結果を用いて推計することされました。マル2国内の13価肺炎球菌コンジュゲートワクチンの評価に必要となる、下記の科学的知見をできるだけ早期に研究班等が収集した上、PCV13単独、PPSV23の単独、PCV13とPPSV23の併用など、実施する可能性のある施策について、それぞれのモデル解析による費用対効果等の分析・評価を実施するということで、以下の4点が設定されております。ア、成人市中発症肺炎などの発生頻度、血清型の分布について。イ、免疫原性及びその持続性について。ウ、肺炎診療に係る医療費について。エ、QOL評価の指標について。上記のア~エに関するファクトシートにおける記載等を踏まえ、PCV13について、高齢者を対象とした定期接種に使用できるワクチンに位置づけることについて、どのように評価できるか、ということで論点を改めてまとめさせていただいたところです。
そこの下に掲載しておりますのは、前回の資料でも出させていただいたものではありますが、海外における高齢者を対象としたPCV13の導入状況をまとめております。高齢者を含め免疫抑制者や糖尿病などのリスクを持った者に予防接種をしている国が、そちらに書いてあるとおりです。2番目として、高齢者だけでなく、免疫低下者・免疫不全者を対象にしている国、若しくは免疫不全者や糖尿病などのハイリスクの者のみを対象とした接種の方法を採用している国など、様々なものがあります。
3ページにまいりまして、ア、成人市中発症肺炎などの発生頻度・血清型の分布について、どのように評価できるかということでして、細かい論点を少し追加させていただいております。1番目のポツとして、小児に対するPCV7の導入による間接効果、及びPCV13の導入による間接効果について、どのように評価できるか。2番目のポツとして、厚生労働科学研究によるIPDにおけるPCV13のカバー率の推移等を踏まえ、各疾患におけるPCV13のカバー率について、今後どのように変化していくと考えられるか。これらについて、御議論いただければと思います。こちらに書いていますものは、PPSV23のほうでもお出ししたものではありますが、血清型分布に関する複数の研究に関する表でして、IPD、肺炎球菌性肺炎、市中発症肺炎のそれぞれで、PCV13ワクチン血清型のカバー率は減少傾向であることが分かる資料となっております。これについて、今後どのように推移していくのか、御議論いただければと思います。
4ページ、論点のイです。免疫原性及びその持続性についてですが、「成人市中発症肺炎などにおけるPCV13のカバー率に関する評価」及び「免疫原性およびその持続性に関する評価」を踏まえ、PCV13に期待される効果について、どのように評価できるかです。ファクトシートの知見については前回出した資料と同様ですが、PPSV23のワクチン血清型に対する免疫原性はPCV13のそれと同等若しくは劣っていたと結論されているところです。また、有効性に関しては、1つの論文だけですが、そのような報告が記載はされております。
5ページにまいりまして、ウ、肺炎診療に係る医療費について。エ、QOL評価の指標についてです。こちらについても細かな論点を書かせていただいております。肺炎診療に係る医療費について、どこまで明らかになったか。QOL評価の指標について、どこまで明らかになったか。ファクトシートに記載のある、PCV13及びPPSV23の費用対効果分析について、どのように評価できるか。また、「ワクチン接種なしに比べた場合、1質調整生存年(QALY)を追加で獲得するために必要な費用(増分費用効果比ICER)は、PPSV23単独接種で437万円、PCV13単独接種で328万円であった」とされており、PCV13単独接種のほうがPPSV23価ワクチンに比べて優れているとされていることについて、どのように評価ができるか。ファクトシートに記載のあるPCV13及びPPSV23の費用対効果分析の結果などを踏まえ、費用対効果分析について、今後どのように検討を進めることが考えられるか。ということで、論点を細かく設定させていただいております。
ファクトシートの知見については、文献レビューと国内で実施した費用対効果分析が記載されております。文献レビューに関しては、2本の研究がありますが、いずれも、肺炎球菌性肺炎に対する効果をみているものです。こちらの結果については、PPSV23単回投与のほうが、PCV13単回投与よりも費用対効果は優れているという結果になっており、国内の結果とは逆の結果となっております。IPDに関しては、疾病数としては非常に少ないので、費用対効果の評価自体が困難なのではないかと推測されるものです。費用対効果分析の結果については、様々なパラメータの定義のされ方によって大きく異なってくることでして、また海外と国内においては、接種費用、肺炎診療に関わる医療費、血清型の分布などが異なるため、結果の解釈には慎重を要するものではないかと考えております。
6ページにまいりまして、ファクトシートに記載のある国内で実施した医療経済分析です。太字で書いてある所ですが、PPSV23、PCV13ともに、一般的な費用対効果の閾値となる500-600万円を下回ったということです。しかし、異なる研究背景で得られた疫学所見、ワクチン効果が比較解析に用いられていることや、ワクチン効果の持続期間や減衰速度について十分なデータが利用できなかったため、今回の解析結果については、その不確実性を考慮する必要があるとの記載もあります。国内データと海外データとの比較についても、使用されたモデルや分析条件、パラメータの設定が異なるため、単純な比較はできないのではないかと考えております。その途中の所は、全てファクトシートからの抜粋です。
最後の8ページにまいりまして、QOL評価についてです。厚生労働科学研究により、高齢者の肺炎に関するQOL評価について研究が行われたところですが、1年間の研究において、肺炎罹患患者がおらず、QOLの変化を調査することはできなかったということは、前々回、前回、池田委員より御報告いただいたとおりです。一方で、オランダからQOLに関する比較的大規模な調査結果が発表されたことから、その結果及び文献レビューに基づき、費用対効果を算出していくことが、こちらも池田委員から報告はされておりますが、今後QOL評価についてどうしていくかについても、先生方の御検討を賜ればと考えております。事務局からの説明は以上です。
○脇田委員長 どうもありがとうございました。それでは、高齢者の肺炎球菌感染症についての審議をお願いしたいと思います。まず、PPSV23の再接種に関する御意見を頂ければと思います。いかがですか。PPSV23の有効性の持続性については、明確に言えるようなエビデンスはないのではないかとか、再接種を行う対象者、間隔、期待される効果というようなところで、有効性がまだ十分明らかではないのではないかというところかと思いますが、皆様の御意見を頂ければと思いますが、どうでしょうか。
23価肺炎球菌ワクチンの有効性は、接種後に低下していくということであるのですが、IPDとか肺炎球菌肺炎に対する効果が、持続期間が何年かというところ、そちらは明確ではないというのがあると考えています。再接種を設定するに当たって、対象者、接種間隔、そういったところを明確にするのも少し難しいのではないかというまとめとなるかと考えています。現時点では、PPSV23については、再接種を定期接種として行うことはしないという結論になるかと私としては考えているところですが、皆様の御意見を頂ければと思うのですが。
○金川委員 肺炎球菌のワクチンの打ち方は、海外でいろいろな打ち方も推奨されていますし、打つ順番も様々出されていて、その評価はなかなか難しいかと思うのです。今回、この委員会で検討していただいているのは、それぞれのワクチンが費用対効果を考えても有効であるということがあるのであれば、定期予防接種にするかどうかとかを考えた場合に、これは非常に難しいことかもしれませんが、政府がどう推奨するかについて、接種に対する補助をするという意味で、ある一定の金額を補助するという観点で言えば、どちらでもいいのではないかと私は思うのです。
両方とも認めた上で、1回の接種、だから追加接種を認めるのはまた今後の話合いになるのかもしれませんが、1回については定期予防接種として認めるということであれば、両者の比較をすることがそれほど大きな意味を持つのか、それぞれが十分有効であるという論拠があればいいのではないかと考えたのですが。今までディスカッションしているのかどうかという部分もあるのですが、話をした上でそう考えざるを得ないのか。どちらがいいかは非常に難しい。どちらかは認めるけれども、認めない。では、1回打っていたら、23価は2回目は駄目になるのですが、PCV13を打った後のPPSV23の定期は認めるというような、何かすごく複雑な状況になってきているような気がするのですが。1回だったら認めますということで進めるほうが分かりやすいのかと思いました。
○脇田委員長 金川委員、ありがとうございました。今の金川委員の御意見は、定期接種に関しては、PCV13、PPSV23のどちらかを選択できる形でもいいのではないかということかと思います。追加接種に関しては、まだ十分にエビデンスがないのではないか、というところでよろしいしょうか。
○金川委員 もう1つ言うと、価格が違うからということであれば、上限を決めておけばいいわけで、両方全てを賄うという不公平感をなくして、一定の額の支援をしますということであれば、不公平感はないのかと思います。
○脇田委員長 ありがとうございます。そのほかに、まずは、PPSV23の再接種に関する御意見を頂ければと思いますが。大石参考人、何かありますか。
○大石参考人 再接種については、これまでエビデンスをしっかり示してきたとおりであり、要は臨床的に肺炎なり侵襲性感染症を予防できるというか、再接種によって予防できるというエビデンスが、日本も含めグローバルにないということが1つ言えることです。幾つかの国が再接種まで認めているのですが、今はPPSV23の初回接種の評価がやっとIPDサーベイランスの中で少し分かってきたところであり、しかし、この5年間措置の中で定期接種の率が余り上がっていないところも考えると、これを再接種まで今すぐに持っていくのは、なかなか難しいのかという感じではいます。まずは初回接種をしっかりやっていくのが第一段階かと、今、私は考えています。
○脇田委員長 ありがとうございました。引き続きPCV13のほうも議論していきたいと思いますので、また後ほどでも御意見を頂ければと思います。高齢者に対するPCV13の接種に関して、こちらも御意見を頂きたいと思います。論点を幾つかまとめていただきましたが、アで成人市中発症肺炎などの発生頻度・血清型の分布といったところで、どのような評価ができるかということですね。PCV13のカバー率が下がってきている、これはIPDの予防、肺炎球菌性肺炎の予防ということですが、どちらを見ても下がってきているということで、よいかどうかということになろうかと思います。
大石先生に少しお伺いしたいと思いますが、PCV7が導入されて、PCV13に移ったということですが、現在のPCV13の血清型の減少が、最初のPCV7の導入による間接効果が主体なのか、それとも現在使われているPCV13の効果が現れているのかと。これはどうお考えでしょうか。
○大石参考人 成人のIPDサーベイランスは2014年からスタートしていて、PCV7が小児で定期接種になり、そしてPCV13に切り替わったところだったのですが、サーベイランスがスタートした時点で、PCV7の血清型によるIPDは、10年前ぐらいと比べるとかなり減ってきていて、小児のPCV7導入の成人における間接効果は明確だったと思うのです。PCV13の間接効果が見えてくるかというところで、血清型3とか19Aが徐々に出てくるかということですが、減少する傾向はあって、しかしながら明確に下がり切ってないと、PCV13の間接効果とまでは言えてないというところが、今、現状かと思っています。
○脇田委員長 3ページ、大石班のIPDの血清型の推移を見ていくと、2016年以降、30%程度でやや下げ止まっているように見える印象もあるわけですが、今後のカバー率の低下はどのように考えていったらいいでしょうか。
○大石参考人 小児のPCVによる間接効果ですが、小児においては直接効果もぐーんと効いて、PCV13の血清型のIPDはほとんどないのです。間接効果も、刻々とは言い難いですが、年々強くなってきているのだと思っています。日本における状況はこういう状況で、IPDも30%、下げ止まっているという受け止め方もあるかもしれませんが、まだオンゴーイングだったと思います。肺炎についても、4年前ぐらいの54%から32%まで下がってきているという状況があると思います。
海外で見ますと、米国が2014年にMMWRで報告した状況下では、アメリカはPCVが入ったのが2000年からですので10年ちょっとたっているのですが、その状況下で高齢者のIPDのPCV13のカバー率は、20~25%と、そういう学会報告レベルでの報告があったと思います。肺炎はどうかと言うと、肺炎球菌性肺炎は10%ぐらいまで減ってきているということが報告されており、その後4年間ぐらい余り正確なデータが出てないと私は思います。
もう1つは、England and Walesで、これはどちらもファクトシートには引用した論文ですが、2018年の『The Lancet Infectious Deseases』に掲載されたものでは、各年代でIPDの血清型別の罹患率を克明に出しております。65歳以上のIPDでPCV13タイプが、2008~2010年のときに54%、直近の2016~2017年、それから6、7年たっているのですが、そこではPCV13タイプは21%まで下がってきていて、どの国も減衰していることが明確です。
金川委員のコメントですが、確かに免疫原性はPCV13のほうが強くて、カバー率は少し下がってきているところですが、費用対効果なども解析したデータは直近のデータであって、これから減衰するというところを読まないといけないのだと思うのです。これからまた、今の小児の定期接種の間接効果は1年1年進んでくるということなので、ここがポイントかと思っています。英国とオーストラリアの肺炎球菌のポリシーに関わる人たちともディスカッションしたのですが、こういう成人における免疫の減衰というところが、特にPCV13タイプのカバー率の減衰が、重要なポイントだと言っていました。以上です。
○脇田委員長 はい。大石参考人、ありがとうございました。ただいまお伺いした、PCV13の血清型のカバー率の低下というところは、今後も下がっていく可能性が考えられるというような御意見だったと思います。そのほかにございますか。
○岡田参考人 国内でも集団免疫効果は認められています。私は小児科医ですけれども、小児の侵襲性細菌感染症に関しては、大石先生の研究班とは別の研究班、菅班でやっています。菅班で見ていると、肺炎球菌に関しては、小児用肺炎球菌ワクチンを打っていない5、6歳以上の基礎疾患がある方々の中には、ワクチン血清型であっても発症している子どもたちがいます。そういう意味は、海外でやっているように、高齢者および免疫不全状態にある基礎疾患をお持ちの方々で13価に入っているものでも発症していますから、基礎疾患患者および高齢者、免疫不全状態の方々には、金川委員が言われるように、免疫原性のより高い13価を選択肢の1つとして、定期としての機会を与えていただくのがいいのかと思います。さらに今の5、6歳ぐらいまでは、定期接種で行われてきましたので安心ですが、6歳以上で基礎疾患のある子どもたちにはこの13価をやっていないことを考えると、基礎疾患のある学童以上の子どもたちにも1回の接種機会を与えていただくのがいいのかと思いました。
○脇田委員長 ありがとうございました。そのほかに、いかがでしょうか。
○原委員 カバー率にしては、確かに13のほうがどんどん下がっていて、23がカバーするのが割合として多くなっているというのがあるのですが、有効率自体も併せて、両方を併せて考えて、ざっくり計算してみますと、インパクトについては今の段階ではどちらのワクチンを使っても同じぐらいの数の予防ができるのではないかと思います。そうなると、岡田先生の言われたように、ハイリスクの方についてはPCV13を選択肢に入れることで、より効果を大きく持ってくることができるのではないかと思いました。参考として、鈴木先生が書かれていたLancetの論文などでは有意差は出ていないですが、傾向としては、23価では後期高齢者のほうが少し有効率が低めですし、加齢とともに免疫原性も下がることも考えると、そういったものを選択肢に入れるのは必要かと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。
○福島委員 最初に金川先生が言われました、現場でどちらかを選択するという案。価格が違うので、一定程度の上限を設けて、初回のみ補助する。そして、PCV13については、それが望まれる、よりハイリスク者に接種する、というのは非常に現実的な考えでよいと思いますが、一方で、1回目というのをどうやって判定するのかと。マイナポータルで接種状況は把握できるのでしたか。でも、それは結局、自己申告になるのですか。
○脇田委員長 1回目かどうかを判定するための。
○江浪予防接種室長 PPSV23価のワクチンが定期接種された時点におきましては、自治体によっては、過去に独自の予算補助をしていた所においては、もしかすると、まれに接種歴を持っていた所があるかもしれませんが、全国の状態としては、過去の接種歴は十分に分からないという状態でスタートしたと思います。そういった場合には、基本的には接種を受ける方の自己申告によって、初回であるということで受けていただくと。5年間たってくる中で、定期接種が行われた場合に、その予防接種歴に関しては、およそ多くの自治体で、磁気媒体によって管理ができる体制にもなっておりますので、これから先に関しては、過去の接種歴が一定程度参照できる状態になっています。ただ、予防接種歴の情報の保存期間の関係とかいったところも考慮しますと、自治体のほうで何十年も持っている状態ではないので、これから先、再接種をやることになれば、それはまた検討課題になってくるかと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。
○福島委員 そういえば、数回前の小委員会で「全国自治体の接種歴保管状況」を出していただいたことを、今、思い出しました。忘れてしまい、すみません。それによると、保管期限が5年間でしたので、接種が開始されてからそろそろ5年たつので、順次廃棄されていくわけですね。PPSV23とPCV13の両方とも、接種記録の保管体制の状況等を踏まえて、再接種が必要か、あるいは選べるか、総合的に議論されていると思いますので、その辺りも含めて実際に自治体に任せるとすれば、実施体制として、そういうところも問題になってくるのかと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。
○金川委員 接種記録が住民ナンバーとリンクするというような話もいろいろ出ているのですが、自治体が変わるとまた保管の仕方が変わったり、引越しするとまるっきり分からないと。予防接種をやっている現場で海外を行かれる人たちをいろいろ調べたのですが、過去の記憶はほとんど御自身の記憶という形なのですね。公的機関で置いているものを出してと言ってもなかなか出てこないのです。ですから、母子手帳で持っているか、ワクチン接種手帳で持っているものが一番頼りになるデータであるということがまず1つで、肺炎球菌だけではなくて、どのワクチンも何回打ったかが非常に分かりにくいのが現状です。肺炎球菌に関して、特に任意で打たれたワクチンというのはどこにも記録がなくて、医療機関の中でも、5年間の保管という義務になると、ほとんどが出て来ないです。そういう意味で、1回目であるかどうか、先ほどの話で言うと、御本人が1回目だと言うかどうかです。ですから、例えば、脾摘とか無脾症の人というのは打っているのですが、65歳のときに、私は1回目ですと言えば1回目になってしまう可能性はあります。だから、そこのところでそれを詳しく調べるのは非常に難しいかと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。接種記録の問題ですね。
少し論点を進めたいと思います。イのほうの免疫原性ですね。こちらも少し、話にはもう既に上がっていますが、IPD等に対するPCV13の有効性は非常に高いのではないかとのことですね。一方で、PPSV23に関しては、有効性に関しては一定程度の幅があるということかと思います。ただ、PCV13のほうは有効性が高いと考えられますが、先ほど来の話で、血清型の置換が進んでいるわけです。PPSV23はそこまで有効性は高くないが、幅広い血清型に有効であるということで、そこを勘案すると、2つのワクチンに期待される有効性が同等程度と考えられるかと思います。定期接種ということを考えますと、PCV13の導入は、現時点ではメリットがどの程度あるかですが、今、御意見を頂いたように、ハイリスクの方等に対しては選択肢を検討する必要があるのではないかということで、そこに関しては検討していく必要があるかと思います。その点に関してもう一度、再度御意見があれば頂きたいと思います。
○菅沼委員 今、広く行われている、23価のワクチンの問題と、お話されているハイリスクの方をどうするかという問題は、ある程度分けて考えたほうがいいかという感じはしていて、現行のところの大枠は、この前もお話されたとおり、このまま続けていくことになると思います。ハイリスクの患者さん、例えば、今、金川委員からありましたが、脾摘の方は定期接種という形ではなくて、保険が認められて補助しているという形で、そういった形のことも現行としてあるので。これは定期接種の話と、また変わってきますが、そういった、いろいろな感じで、いろいろなパターンを考えてやっていくのもあるのではないかと。全部を定期でやるかどうかは、また議論があるかということだと思います。
○脇田委員長 ありがとうございました。ハイリスクの方には、現行の脾摘の患者さんに対する枠組みを、対象も少し広げることも可能ではないかと思います。
続きまして、論点のウ、エです。費用対効果の話です。肺炎診療に係る医療費について、それから、QOL評価の指標についてですが、今回、池田先生と近藤先生は御欠席ですので。こちらの費用対効果の推計で、現在は、どちらかというとPCV13のほうがいいのではないかといったデータですが、この辺の考え方に関して、大石先生から御意見を頂けますか。
○大石参考人 今回の費用対効果の解析については、池田先生、深澤先生、五十嵐先生にかなり奮闘していただいて、アップデートの疫学情報を使って解析していただいたのですが、ファクトシートの説明のときに繰り返し説明しましたように、ダッシュボード的にデータを入れ込んでいるので、かなりアバウトなデータ解析になっていると。しかし、それしかない情報で、集めて解析しているので、こういう日本独自の費用対効果が解析、分析できたことは非常によかったと思います。PPSV23とPCV13のICERは少し数値が違うのですが、ドイツのデータだと逆になっているとか、そういったところから考えて、一定の費用対効果があるということで、どちらが優れているというような状況ではないと私は理解していて、どちらも費用対効果はあったというレベルの解析内容かと理解しています。以上です。
○脇田委員長 ありがとうございました。そうしますと、PCV13とPPSV23の比較では、現在はどちらも費用対効果の閾値を下回っているということが重要なポイントではないかと承りました。今、大石参考人が言われたように、現時点では、海外のQOL評価を用いるという課題とか、検討すべき新たな課題について、更に、専門家の先生の御意見を聞きながら今後まとめていくことが必要ということでいかがか、と考えております。
○岡田参考人 質問させていただきます。8ページ目の表7ですが、一番右側、13価と23価を比べて、このICERは、1QALY当たり13価を接種することでこのくらいの費用が削減されるという意味ですか、それとも、プラスされるという意味ですか。
○脇田委員長 こちらは事務局、お答えできますか。
○黒崎室長補佐 事務局より御回答を申し上げます。こちらのICERに関しましては、こちらの額が1QALY当たり掛かるということで、同じ効果を得るにはPCV13のほうが安く済むという見方をしていただければと思います。
○岡田参考人 このくらいの額、PCV13のほうが安く上がるのですか。
○黒崎室長補佐 上に書いてあるとおり、ワクチン接種なしと比べた場合、1質調整生存年を追加で獲得するために必要な費用は、PPSV23単独接種で437万円、PCV13単独接種で328万円であったということです。
○岡田参考人 いや、一番右の欄です。この170万円はどういう意味ですか。
○脇田委員長 言われているのは、PPSV23単独のみで見れば437万円で、PCV13のみでいけば328万円だけども、一番右のカラムで、vs.PPSV23と、PCV13と比べた場合には178万円という数字が出ていると、これが何を意味しているのかという点、単なる差額ではないところが、引き算ではないという感じなのです。今日、御専門の先生がいらっしゃらないので、私もここの意味について正確に把握できないものですから、ここは宿題でもいいですか。
○黒崎室長補佐 すぐに検討したいところですが、私のほうでもちょっと整理ができておりませんので、また後で御報告させていただければと思います。
○脇田委員長 申し訳ありません。宿題ということで、よろしくお願いします。そのほか、この費用対効果についても、委員の先生方から御意見はよろしいでしょうか。
それでは、一応御意見を頂きましたので、肺炎球菌感染症に関するワクチンについて、これまでの議論も踏まえ、この小委員会としての意見を取りまとめていきたいと考えています。
まず、23価肺炎球菌ワクチンです。23価肺炎球菌ワクチンの有効性が接種後に低下していくとのことですが、IPDあるいは肺炎球菌性肺炎に対する効果の持続期間が何年かについては明確に出ていないと思います。従って、再接種の対象者、接種間隔、あるいは、どういう人に再接種が必要なのかを明確にするのは、現在では難しいのではないかと考えております。以上の点から、再接種についてはまだ明確なエビデンスがないので、再接種に関しては現時点では行わない、ということを本委員会の結論としたいと思いますし、また、何か新しいエビデンスが出てくれば、その時点で再検討したいと思います。
続きまして、13価肺炎球菌ワクチンに関してですが、現在65歳以上の高齢者におけるIPDのうち、PCV13がカバーする血清型は30%程度という研究結果が出ています。PCV13の有効性は75%という報告があります。PCV13の小児への定期接種の導入によって、成人の肺炎球菌感染症の流行が阻止されていて、着実に高齢者のIPDが減少しており、今後もその傾向が続くだろうという御意見でした。費用対効果の分析におきましては、分析方法、パラメータをどう置くかで変動がありますので、その結果では閾値となる500万円のラインを下回っていて有効である、ということが重要な所見であると思います。そういうことを考えますと、PCV13を高齢者全体を対象とした定期接種に使用するワクチンと現時点で位置づけることは難しいかと思います。ただ、こちらも新たなエビデンスが出て来た場合には再度議論を進めると。それから、免疫不全等のハイリスクの方を対象として、接種の選択肢を与えるべきだという御意見があります。実際に海外でも使用されている実績がありますので、その点に関しては必要に応じて感度分析等をしていただいて、費用対効果の分析も継続して、モデル解析等に着手していただく。それとともに、ハイリスク者の定義、それから、接種の在り方について、引き続き検討していくとさせていただければと考えております。
以上のような考え方で、小委員会の一定の方向性として、基本方針部会のほうで御議論いただくことにしたいと思います。部会への報告に関しては一度取りまとめさせていただきまして、各委員の先生方に確認していただく形で、座長のほうにお任せいただきたいと考えております。そのような方向性でいかがでしょうか。
(異議なし)
○脇田委員長 ありがとうございます。それでは、取りまとめまして、もう一度皆様に確認していただく形で御意見を頂きたいと思います。基本方針部会に諮って、更に議論を行っていただきたいと考えております。委員の皆様から、更に何かございませんか。
○多屋委員 接種の年齢なのですけれども、今、5歳刻みで1回やっているのですが、前回の委員会の議論では、再接種については今すぐはしないので、65歳に決めるという話が出ていたと思います。そこは変更なしということでよろしいですか。
○脇田委員長 初回の接種に関しては基本方針部会のほうで議論を進めていただくことになると思いますので、こちらのほうからは意見を出すという形になろうかと思います。よろしいでしょうか。それでは、本日の議事に関しては終了したいと思います。活発な御議論、ありがとうございました。事務局から何かございますか。
○友永室長補佐 次回の開催につきましては調整の上、追って御連絡させていただきます。事務局からは以上でございます。
○脇田委員長 それでは、第11回のワクチン評価に関する小委員会を終了します。どうもありがとうございました。


 
(了)

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