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2017年8月9日 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第45回議事録

○日時

平成29年8月9日(水)8:59~10:20

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

荒井耕部会長 中村洋部会長代理 田辺国昭委員 関ふ佐子委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 間宮清委員 宮近清文委員 松浦満晴委員
松本純一委員 松本吉郎委員 万代恭嗣委員 猪口雄二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
日色保専門委員 昌子久仁子専門委員 上出厚志専門委員 加茂谷佳明専門委員
<参考人>
福田敬参考人 池田俊也参考人
<事務局>
鈴木保険局長 渡辺審議官 伊原審議官 迫井医療課長 古元医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○費用対効果評価の施行的導入の検討について

○議事

 

○荒井部会長

 ただいまより第45 回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠状況について報告します。

 本日は、榊原委員が御欠席です。

 次に、厚生労働省におきまして異動がございましたので、事務局より紹介をお願いします。

○迫井医療課長

 事務局の異動を御紹介します。

 保険局、古元重和医療課企画官でございます。

○古元医療課企画官

 よろしくお願いいたします。

○荒井部会長

 ありがとうございました。

 なお、会議冒頭のカメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○荒井部会長

 それでは、議事に入ります。

 本日は「費用対効果評価の試行的導入の検討について」を議題といたします。

 事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いします。

○古元医療課企画官

 資料につきまして御説明をさせていただきます。

 医療課企画官の古元でございます。

 費用対効果資料を今回2つ提出させていただいております。費-1、費-2、2つの資料について御説明をさせていただきます。

 本日は2つのテーマについて御議論をいただきたいと考えております。その1つ目、費-1の資料をごらんください。

 2コマ目をごらんいただきまして、平成29 年7月 26 日、前回の本部会におきまして、費用対効果に関しまして、まず試行的導入に係る事項について必要な検討を行うこととされました。具体的には以下の項目を優先して検討することとされまして、この資料におきましてはその中の1の2番、倫理的、社会的影響などに関する検証のあり方について御議論いただきたいと考えております。

 3コマ目をごらんください。全体の中における今回、御議論いただく倫理的、社会的影響等に関する検証のあり方の位置づけでございます。

 4コマ目をごらんください。費用対効果の評価に当たりましては、ICER のみでは評価できない要素、すなわち倫理的、社会的影響などについても必要に応じて考慮することが求められます。その考慮する要素につきましては、一定程度の具体性を持ってあらかじめ定める必要があると考えまして、5月 31 日の部会で以下1~6の要素を提案したところでございます。

 5コマ目、6コマ目の資料を用いまして、これら6つの要素につきまして、その御提案をした趣旨を御説明したいと思います。

 1番、感染症対策といった公衆衛生的観点での有用性について。医薬品、医療機器が持つ患者本人以外や状況の変化などに対する有用性については、ICER の値のみでは評価が困難な場合がある。例えばワクチンなどはワクチンを接種された御本人だけではなく、感染症に罹患するおそれのある方々のリスクも減少させる。こういった効果があるわけでございます。こうした効果についても一定の配慮を行うことを提案したものでございます。

 2番目、公的医療の立場からの分析には含まれない追加的な費用につきましては、中医協のガイドラインにおきましては、この費用対効果、ICER の算出におきましては公的医療保険の立場を基本とすることとされている中ですが、その治療が公的な介護費、また、生産性に大きな影響を与える場合もございます。こうした場合については基本的には公的医療保険の立場からの分析結果を評価することを基本とする一方で、公的介護費や生産性損失を含めた分析結果についても、一定の配慮を行うことを提案したものでございます。

 6コマ目のスライドに移ります。3番目、長期にわたり重症の状態が続く疾患での延命治療についてでございます。長期にわたり重症の状態が続く疾患について分析が行われた場合、そのICER に十分に反映されない可能性がございます。こうした観点について一定の配慮を行うことを提案したものでございます。

 4番目、代替治療が十分に存在しない疾患の治療については、こうした疾患に対する治療の開発への影響を避ける観点から、一定の配慮を提案したものでございます。

 イノベーションにつきましても、そういった医療機器、医薬品の開発を阻害しない観点からの一定の配慮を行うことを提案したものでございます。

 最後、小児の疾患を対象とする治療につきましては、一般に市場規模が小さいことから小児の疾患に対する治療の開発は困難。こういった観点から一定の配慮を行うことを御提案いたしました。

 以上が御提案の内容でございます。

 この6つの御提案に対して7コマ目の資料をごらんください。本部会におきましてさまざま御意見をいただきました。その御意見を7つにまとめたものが7コマ目の資料でございます。それぞれについて本日は対応案を御提案したいと思います。

 8コマ目をごらんください。まず7つの御意見の中の1番と2番についてでございます。御意見といたしましては、1番、倫理的、社会的影響などに関する観点で考慮する要素については、現段階で余り厳密に定めないようにするべきではないかとの御意見。また、2つ目の御意見としては、示された要素において具体的に何を評価するのか、また、定量的にどの程度の評価をするのかあらかじめ定めておくべきではないか。こういった御意見をいただきました。

 そういった御意見を踏まえまして本日の対応の考え方といたしましては、まず今回は試行的導入についての検討ということでございますが、倫理的、社会的影響などの考慮を行うに当たり、その客観性を担保するためには考慮する要素について、事前に一定程度の具体性を持って定める必要があるのではないか。そして、当面、試行的導入におきましては先ほど御説明した1~6の要素のうち、1~4についてまず考慮することとしてはどうか。また、個々の要素、1~4の具体的な評価方法については、今後、総合的評価の方法を検討する中で整理してはどうかという御提案でございます。

 次に、9コマ目をごらんください。先ほど1~4について考慮すると申し上げました5番目の要素、イノベーションについてでございます。御意見3~5の3つの御意見をいただいております。このうち3番目と4番目については、つまり薬価並びに材料価格算定ルールとの整合性を図る必要があるのではないかといった御指摘でございます。また、5番目の御意見は、必ずしもICER の中に反映されるものではないため、一定の考慮をする必要があるのではないか。こういった御意見でございますが、対応案といたしましては、イノベーションにつきましては、費用対効果における総合的評価及びその評価結果に基づく価格調整の段階における取り扱いを整理する必要がある。つまり、そういった価格調整も視野に入れて整理をする必要があるということでございますので、今後、試行的導入における総合的評価及び価格調整の方法を検討する中で、それぞれの整合性を踏まえながら取り扱いについて整理してはどうかという御提案でございます。この具体については引き続き御相談をさせていただきたいと考えております。

 最後に10 コマ目でございます。小児の疾患を対象とする治療について御意見をいただいております。6番目の御意見として、小児の疾患を対象とする治療については、そもそも費用対効果の対象としないこととされているのではないか。入り口で対象外とされているのではないかといった御意見。また、7番目の御意見としては、成人の疾患を対象とする治療薬の中にも、実態として小児の疾患にも用いられているものがある。一定の考慮が必要ではないかといった御意見でございます。

 対応の考え方ですが、小児疾患に対する治療の開発を阻害しないため、これまでの議論におきまして一般的には考慮する要素として考えられるものでございますが、これまでの議論において、同じ観点から小児疾患の治療に対するものは費用対効果評価の対象から除外するとされております。その考え方との整合性を図る観点から、今回、試行的導入においては、小児の疾患を対象とする治療については費用対効果評価の対象から除外する方針を踏まえ、総合的評価における考慮要素から除外することとしてはどうかといった御提案でございます。

 少し複雑になります。まとめますと、御提案申し上げた6つの要素のうち1~4については必要に応じて考慮を行う。5番については今後価格調整方法を検討する中で整理をしていきたい。最後の6番、小児については考慮する要素から除外するといった御提案でございます。

 以上、費-1の資料でございました。

 続きまして、本日の2つ目のテーマでございます費-2の資料をごらんください。試行的導入における評価基準の設定手法についての御説明を申し上げます。

 本資料2コマ目、3コマ目は、先ほどの資料と同様のことを記載しておりまして、まず優先的に試行的導入のことをきょうは議論させていただきたいということでございます。

 資料の4コマ目、下の右の図をごらんください。ある薬、または医療機器のICER が算出されたときに、費用対効果がよいのか悪いのかを判断するに当たりまして、評価の基準をどう定めるのか。本日はその点について御協議をいただきたいと思います。

 5コマ目をごらんください。ICER の評価基準の設定方法といたしましては、次の2つの要素の活用が考えられるのではないかと考えております。1、国内の支払い意思額に関する調査の結果。これには既に過去に行われた調査と今後新たに行う調査がございます。また、2つ目として諸外国における評価基準。試行的導入におきましては、このうち1の1)及び2、すなわち過去に行われた調査と諸外国における評価基準を活用して、評価基準の設定を行うこととしてはどうかというのが本日の御提案でございます。

 なお、前回の中医協でも御議論いただきました、新たに行う国内の支払い意思額(仮称)に関する調査については、今後その実施のあり方や具体的な調査手法などについて、その結果の活用のあり方も含めて引き続き検討してはどうかとの御提案でございます。

 ここで、まず過去に国内で行われた調査についてまとめてみました。6コマ目をごらんください。表にございますとおり、4つの調査がございます。1QALY 当たりの支払い意思額を算出したものでございますが、表をごらんいただきますと上から 2003 年、 2006 年、 2010 年、 2013 年と経年順に記載しておりますが、上の2つ、1と2は社会としての負担という聞き方。一番下の4番は全額自己負担をする場合の金額の聞き方。3はその両方を聞いているという形の調査研究になっております。

 結果の概要は表に記載のとおりですが、それぞれの調査の詳細について次ページ以降でまとめてみましたので、概略を御説明させていただきます。

 7コマ目をごらんください。これが2003 年の1つ目の調査の概要でございます。調査方法などについては記載のとおりでございます。実際の質問ですが、点線の四角で囲みました、現状ではきょう死ぬしかない状態の患者にある治療法を施すことにより、完全に健康状態で1年寿命を延ばす治療法があったとします。こういった想定の中での社会が幾らまで負担してよいと思いますか。これは具体的に金額を記入する形の調査でございます。

 次いで8コマ目をごらんください。2006 年の調査でございます。方法については記載のとおりです。これも1番、 2003 年の調査と同様に、あす死亡するしかない疾患に対して新たな医療が行われる場合、その費用を税金で賄うという設定の中での調査となっております。

 続きまして9コマ目をごらんください。3つ目の調査の概要でございます。方法は記載のとおりですが、この調査の特徴といたしましては、3つ目の○のところ、支払い意思の種類において社会としての負担、そして個人の自己負担(全額)、この2つを聞いていることがこの調査の特徴になります。

 まず社会としての負担についての実際の質問が点線で四角で囲っておりますが、病気にかかり死が迫っている人がいます。ある薬を使う。こういった場合に公的な健康保険で賄う場合のという設定でございます。

 次に、全額自己負担についての御質問。同様に、あなたは病気にかかり死が迫っている状態であると仮定し、全て自己負担という設定の中での調査になっております。

 最後に4つ目の調査でございます。最も新しい2013 年の調査でございますが、方法等について概略は記載のとおりですが、詳細については次の資料をごらんいただきたいと思います。 11 コマ目と 12 コマ目が4つ目の調査の詳細を御説明した資料になっております。

11 コマ目の資料の下の図をごらんください。まず健康状態Xの方がいると仮定します。その健康状態、横軸が時間、縦軸が QOL でございますが、治療を受けない場合は○○カ月の間、その状態が続く。ただ、治療を受けますと、右側をごらんいただきますと速やかに QOL が1まで回復する。こういった治療を受ける場合にかかる費用について伺うということでございます。

 この調査の大きな特徴といたしましては、ここに記載の健康状態Xをさまざまなレベルで設定していることでございます。以前この部会におきましても、きょう死ぬしかないような患者さんというそもそもの前提が難しいのではないかといった御指摘もあったところでございますが、この調査は健康状態Xをさまざまなレベルで設定してございます。具体的には12 コマ目にございますとおり、8通りの健康状態を想定して、そこから完全に健康状態に戻る場合に幾らの費用をといった設定でございます。

 以上、4つの調査の概略を御説明させていただきました。

 最後に参考といたしまして、諸外国の評価基準の例として13 コマ目をごらんください。イギリスの例でございます。評価基準として2万から3万ポンドということで、イギリスは医療技術等の費用対効果評価に世界でも早く取り組んだ国とされております。かつ、具体的な評価基準が公開されていることから、本日、記載のとおり例示いたしました。今後、他国の状況についても情報収集を行っていく予定でございます。

 事務局からは以上になります。

○荒井部会長

 ありがとうございました。

 ただいまの説明に関して御質問等がありましたらお願いします。

 松本吉郎委員、どうぞ。

○松本吉郎委員

 費-1の6のところで、確かに試行的導入における倫理的、社会的影響等に関する観点から考慮する要素についてということで6点お示しになって、今回はとりあえず1~4で試行的導入に対して行いたいということだと思いますけれども、試行的導入が13 品目ありますけれども、1~4に限ってもそんなに該当するものはたくさんではないような気がしますし、あくまでこれは限定的な指標ということで考えてよろしいかどうか確認させていただきたいと思います。

○荒井部会長

 企画官、お願いします。

○古元医療課企画官

 今回4つの項目をということでございますが、これを全ての13 品目にというわけではございませんで、御指摘いただきましたとおり、それを考慮すべき薬剤もしくは医療機器に適用するというものでございます。

○松本吉郎委員

 もう一つ、費-1の9コマ目、イノベーションのところでございますが、このイノベーションのところに、初めて価格調整の段階における取り扱いという文言が出てきておりますけれども、価格調整のあり方、活用の仕方については、これまで議論したことが全くないと認識しております。その中でなぜイノベーションのところだけこういった文言が出てきたのか違和感がございますし、今後検討する、あるいは取り扱いについて整理するということではいいかもしれませんけれども、あくまでここのイノベーションのところだけで出すのではなくて、価格調整の問題につきましては、もう一度改めて総合的に判断するという文言にしていただいたほうがいいのではないかと思いますが、その辺についてはいかがでしょうか。

○古元医療課企画官

 まず考え方といたしまして、薬価もしくは保険医療材料の算定の中でイノベーションが評価される中で、費用対効果の評価における評価が例えば二重評価といったことがないように、そこをしっかり整合性をとってやらせていただきたいといった考え方でございます。価格調整の方法などにつきましては、そのスケジュール感を含め、また御相談をさせていただきたいと考えております。

○松本吉郎委員

 わかりました。イノベーションはもともと薬価を決めるときに用いられていることから5、6は今回外すことになりましたけれども、また、イノベーションのところだけさらに総合的評価と価格調整のところで3段階で出ることになるので、この辺についてはもともとのきちんとした議論をしていくべきではないかと思っております。よろしくお願いします。

○荒井部会長

 吉森委員、お願いします。

○吉森委員

 費-1の倫理的、社会的影響などに関する対応について、今、話がありましたけれども、8コマ目のところの対応の考え方、5のイノベーションと6の小児疾患を対象とする治療の取り扱いを今後の検討及び除外としていることについては、費用対効果の試行的導入における検討の検証を具現化し、スピード感を持ってやらないといけないという状況でありますので、このアプレイザルの議論を前進させるためにも一定評価できるものではないかと思います。

 そこで今後の検討とされています5のイノベーションに関してでございますけれども、既に試行的導入の13 品目は、医薬品としての薬価算定の段階でイノベーションの評価にかかわる加算がなされているものも多いのだろうと思います。したがって、当然そのようにイノベーションも考慮して設定されている薬価が、本来その効果に照らして適切であるかどうかを評価すべきであって、改めて費用対効果評価制度でイノベーションを評価する必要性は乏しいのだろうと考えておりますが、いずれにせよ薬価算定時におけるイノベーションの評価のあり方、そして費用対効果における、今も松本委員から出ていましたけれども、価格調整のあり方、この辺も含めた整合性を早急に整理して、結論を出すべきだと考えております。

 次に費-2のICER の評価基準の設定手法についてでございますが、まず試行的導入にかかわる検証をスピード感を持って行うということでございますので、5コマ目の御提案にあるように試行的導入においては既存の調査結果を活用する。海外の諸外国の評価基準を活用するということは一定、理解はいたしますが、過去の調査時の 2003 年から 2017 年、 10 年以上たっていますので、経済環境変化は非常に大きい。これは自明の理でございますが、これを考慮しますと同時進行で本格的導入に向けた新たな支払い意思調査はやるべきであって、さらにはその調査方法、内容をしっかりと議論し、時期を逸すことなく実施すべきだと考えております。仮に過去調査を活用し試行的導入を先行させるとするならば、その検証結果と新たな調査での評価基準との比較検証を速やかにできるような体制に持っていくべきだと考えております。

 これは質問でございますけれども、6コマ目の1~4の過去の調査では、1~3は今、御説明もありましたが、死の直前を前提とした調査ということでございます。当然これは4の8パターンの調査に比べて支払い意思額は高くなる傾向になっていると見ていいのではないかと思います。この点に関して、一般的には医薬品の服薬であれば死の直前よりずっと前に服薬することが多いと考えますので、死の直前を前提とした調査では正しい支払い意思額は算出できないと考えております。事務局はこの辺、過去調査を活用するときにはどのようにお考えなのか。

 また、13 コマ目にあります諸外国の評価基準で、イギリスは致死的な場合というものがたしかあったように記憶しているのですけれども、この辺、諸外国の活用をどのように内容を調査しているのかを踏まえているのかを知りたいと思いますが、その内容、いわゆる調査方法は開示していただけるのでしょうか。この辺は事務局に質問でございます。

 それと、これまでの費用対効果の専門部会での議論におきましては、諸外国、つまりイギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、スウェーデンといった諸外国、こういう諸外国の多岐にわたる項目を広く参考にして議論をするというふうに記憶しておりますが、今回、イギリスだけの開示でございますが、フランス以下、諸外国のデータは開示されないということは、そういうデータがとれないということなのでしょうか、どうなのでしょうか。これも質問です。

 以上です。

○荒井部会長

 企画官、お願いします。

○古元医療課企画官

 3点、お答えしたいと思います。

 まず1点目でございます。支払い意思額、これは仮称でございますが、調査につきましてさまざまな健康状態の方を対象に調査をという点でございますが、以前のこちらの部会におきましても、そういった御指摘はございました。そういったことも含めて検討していきたいと考えてございます。

 2点目、例えば今回、イギリスにつきまして例示として御提示させていただきました。イギリスにつきましては先ほど御発言がございましたとおり、致死的な場合に少し違った数値をといった情報もございますが、そこは今、詳細に調べておりまして、今回の資料には反映し切れてございません。また、イギリスを含めて今後さまざま情報収集を行う中で、適宜この部会にも御提示していきたいと考えております。

 最後、フランス等、他国の状況を参考に議論をするという点でございますが、例えば今回、倫理的、社会的影響等に関する観点、費-1の資料といったところは、他国の状況を相当程度参考にして御提案をさせていただいたという経緯がございます。片やこの評価基準の具体的な価格につきましては、なかなか公に開示されている国がないという状況でございまして、その中でもイギリスは開示されていたということできょうは御提示いたしました。

 以上でございます。

○吉森委員 海外を参考にするなら、なるべく多くの社会保険制度が日本と似通ったところは参考にすべきなのだろうと思います。

○荒井部会長

 松本純一委員、どうぞ。

○松本純一委員

 まずとりあえず試行的導入に関して評価をしてみるという姿勢は、評価したいと思います。その中で質問なのですけれども、費-2の資料で6コマ目になりましょうか。6コマ目というより4番目の白岩ら2013 年の調査なのですが、これは健康状態AからHが完全に健康な状態Yになるということですけれども、AがY、BがY、CがYというそれぞれでの意思額のデータはあるのでしょうか。

○荒井部会長

 参考人、お願いします。

○福田参考人

 参考人の福田でございます。

 御指摘の点ですけれども、これについてはさまざまな健康状態で改善に応じての支払い意思額を聞いていますので、それぞれデータとしては存在をします。ただ、その場合には必ずしも1QALY 増加に対してという形ではなく、健康状態がある程度改善するということですので、場合によっては 0.4QALY とか、それに対して幾ら払っているかという金額ですから、もともと死亡からという場合には1 QALY 増加に対して幾らという聞き方をしますけれども、これについては健康状態の改善についてですので、図で言いますと 11 枚目のスライドにありますとおり、斜線のところに対して幾ら支払ってもいいかという聞き方になりますから、ここは必ずしも1 QALY に対してではなく、これが例えば 0.4QALY だったりします。それを比較ができるように、1 QALY 当たりに換算した数字を計算してお示ししているという形になります。なのでデータについてはそれぞれの健康状態での改善に応じた意思額が存在します。

○松本純一委員

 その中で例えばAがYになる支払い意思額と、HがYになる支払い意思額の場合、HがYになるほうが金額が高いとかいう傾向はあるのでしょうか。

○福田参考人

 御指摘のとおりで、健康状態の改善度合いが大きいほうが、支払い意思額が大きくなります。

○松本純一委員

 それと6の資料で見ますと、社会としての負担と個人の自己負担というのがありまして、3番目の調査では両方行っている。両方行っていてあまり金額に差がないように思います。この辺は参考人としてどのように理解をされているのでしょうか。例えば公的保険を使う金額と全額自分で支払う金額とがほとんど変わらない。このことに関してはどのようにお考えでしょうか。

○福田参考人

 この金額に関しましては、設定としては自分の健康状態に起こったことに対して全額自己負担で払うというのと、ほかの人に起こったことに関して社会で払うということで、それほど変わらない。若干、社会のほうが高目かなと思っていますが、ほぼ同様であります。

 やはり回答者としては、そこにどのくらいお金をかけてやるというのを社会的な支払いであっても、自分が払うのとほぼ同等ぐらい払うというのを認めているのかなと思います。この調査は実は諸外国でも調査をしておりまして、同じような結果が得られています。

○松本純一委員

 公的保険を使うことの理解ができていないとはとれないですか。というのは、これは郵送とインターネット調査で行っています。今回、先ほど言いましたように新たに行う調査をやらずに、今までの調査をもとにして試行的導入に関しては評価をしようという提案をなされました。おおむねそれは了解をしたところですけれども、郵送とインターネット調査ではなく今回は対面調査をするというのは、対面調査でないと正確なものは出ないということがあって、そのような提案をされたのではないですか。

○福田参考人

 インターネット調査で過去のものが行われている理由といたしましては、調査方法と関連しておりまして、3番目、4番目の調査は質問の仕方が二段階二項選択法というもので、最初に1つの金額を提示して払いますか、払いませんか。その結果に応じて次の質問をするという形式ですので、回答によって次の質問を変えなければいけないという特徴があります。なので調査方法としては、インターネットとか相互に回答に応じて結果が変えられるようなものを使う必要がありますので、なかなか郵送調査には合わないところがあります。

 インターネット調査でやった場合には、あくまでもインターネットにアクセスできる方が対象になりますので、今回、面接のほうがいいのではないかと考えた理由としては、必ずしもインターネットにアクセスできる環境がない方についても調査対象から外すべきではないという考え方から、面接にしたということでございます。郵送でない理由はインターネットのときと同じで、結果に応じて次の質問を変えなければいけないから郵送ではない形のほうがいいのではないかと考えた次第です。

○松本純一委員

 ということは、あくまでも参考人としては費-2の資料の7~10 の4つの中のいわゆる破線で囲まれた質問事項については、答えた人は全て理解した上で答えたという理解をされていると受けとってよろしいわけですね。

○福田参考人

 回答者について個別に確認したわけではないのでありますけれども、調査についてはそれなりに理解をして答えていただいていると思います。確かに一部に明らかに理解をされていない、どのような設定でも回答が全く同じとか、そういう方がいらっしゃいますので、そういう方については分析から除外するといった対応をとっております。

○荒井部会長

 では松本吉郎委員、お願いします。

○松本吉郎委員

 今の6コマ目に関してですけれども、1から4まで過去の調査の結果が出ていますが、これはどのようにしてお使いになるのか。一番最後の4を中心にして活用するという形で考えていらっしゃるのでしょうか。

○古元医療課企画官

 この支払い意思額調査につきましては、例えば4番の調査につきましては、先ほどから御議論いただいておりますとおり、さまざまな健康状態をベースラインの中で調査をしておりますとか、3番の調査について自己負担の場合と社会が負担する、両方聞いておりますとか、さまざまな特徴がございます。こちらの部会でもそういったことも考慮して検討すべきではないかといった御意見をいただいたところでございますので、この調査のどれか1つをこれにという形といいますか、まずこの4つの特徴を踏まえながら具体的な数値の御提案を今後させていただきたいと考えておりまして、きょうの時点でどの調査をというところまでは御説明申し上げられないのは申しわけございませんが、御理解いただければと思います。

○松本吉郎委員

 とすると、1から4まで一つ一つについても金額に幅がありますけれども、この4つを総合的に考えて額を決めていくというのは非常に困難なような気がするのです。先ほども御意見がほかの方からありましたが、1~3は死の直前ということで限定した聞き方で、4番目は非常に総合的ないろいろな各場面での切り取り方であって、確かに1QALY 当たりということで調整をしていると言いましても、4番目の 450 550 というのは果たしてどのような状態を言うのか非常にわかりづらい漠然とした状況になっている中で、これを見比べてやる。それから、社会的負担と個人の全額負担というのはニュアンスがかなり違いますので、その辺を本当にこの中で総合して1つの金額として結論を出すというのは、非常に困難な状況にあるのではないかと思うのですけれども、いかがなのでしょうか。

○古元医療課企画官

 御指摘いただいた点も整理いたしまして、また御提案をさせていただきたいと考えております。

○荒井部会長

 先に安部委員、お願いします。

○安部委員

 今の5コマ目でありますけれども、試行的導入を年度内にしっかり実施するという観点からは、1の1)と2を活用して評価基準の設定を行うということは理解いたすところであります。

 一方で、今いろいろ御議論がありましたけれども、評価基準に最新のものを使うわけではなくて、過去のデータや外国のデータを使うという観点でありますとか、その後に行われる価格調整の仕組みや方法論は、まだイメージが示されていないという状態にあるわけであります。そういった意味ではあくまで今回は、本格的導入に向けた試行的な導入において、価格の調整を行うことは決まっているという状況を考えますと、今後、価格調整までのプロセスの中で極めて慎重に丁寧な議論を踏まえて、価格調整の幅もその性質を踏まえた一定限定的な範囲での調整ということが必要と考えております。その後、その結果を踏まえて本格導入の中でしっかりどういう仕組みにしていくのかということを、さらに検討していくことが必要だと考えております。

 以上です。

○荒井部会長

 万代委員、お願いします。

○万代委員

 まず費-1でございます。全体的なたてつけの認識から申し上げますと、3ページ目の3コマ目のスライドでございますが、左側に倫理的、社会的影響等に関する検証のあり方は総合的評価のところに含まれて、これを検討するんだという図示だろうと思うのです。しかし、一方で9ページのところで特にイノベーションについては、先ほど来、質問がありますように価格調整の方法を検討する中でということでございますので、3ページに戻ると、下の一番最後の行の評価結果の活用というところに価格調整の方法をどうするかというものが含まれると思いますので、新たにイノベーションというものをここで考えるということであれば、ここの3の図につきましては、評価結果の活用の左側のところにイノベーションという文言を持ってきて、その上で矢印を右側に引っ張るというようなたてつけに9コマ目のスライドで提案していると考えられます。

 私自身考えますに、そうではなくてイノベーションを含めて今の3ページの総合的評価のところのアプレイザルで判断するという図式だろうと思いますから、あえて価格調整の方法を検討する中でイノベーションを一番最後のところに持ってくるというのは、考え方としては変だろうと思いますし、むしろ総合的評価、アプレイザルのところで全て行う。それこそそれを総合的に用いて評価結果の活用をするという考えだろうと思いますので、9ページの文言はこれまでの検討の内容からしてもおかしいかなと思いますので、その点についてはどう考えるかお聞きしたいと思っております。

 それにつきましてはいかがでしょうか。

○荒井部会長

 ではまず1点、企画官お願いします。

○古元医療課企画官

 イノベーションにつきましては、本日、御説明をさせていただきましたとおり、総合的評価、また、その先の委員から今、御指摘いただきました3ページの評価結果の活用、そういった中でどのように用いるのか、その整合性を引き続き検討させていただきたいという御提案でございまして、きょうはそこの御検討を改めてさせていただきたいという御提案と受けとめていただければと存じます。

○万代委員

 最初の御説明でそのようには伺ったので、そういうお答えであればそのように認識させていただきたいと思います。

 続きまして費-2でございまして、特にこれまでの議論にもありますように、支払い意思額についてどのような設問をして、どのような調査方法をしてということで、さまざまな議論があったことは当然だろうと思います。したがいまして、今回、試行的導入においては、新たな調査は用いないで過去の調査あるいは諸外国における事情を勘案して、それを参考にするという御提案でございますが、それについてはそれで一定程度納得するものでございます。

 しかし、これまで皆様もおっしゃったように、支払い意思額の調査については、支払い意思額を用いるかどうかも含めまして、早急に議論を進める必要があるかなと思っております。したがいまして、例えば質問項目につきましても、より具体的に提案いただいた上で、この場で早急に議論することとしないと間に合わないのではないかと思いますので、ぜひそのような方向で提案いただければと思います。

 つきましては質問です。参考人の先生のほうがよろしいかもしれませんが、費-2の12 コマ目の支払い意思額についての白岩らの 2013 年の研究における健康状態でございます。8通りの健康状態ということでAからHまでございますが、その中のAからGまでにつきましてはそれぞれ5項目の質問、健康状態の定義があるように思いますが、最初の3つは日常の行動、 ADL といいますか、そういったような形。あとの2つは痛みであるとか不安であるとか、そういった精神的な状態というふうに思いまして、記憶が間違っているかもしれませんけれども、 EQ-5 も同じようなたてつけだったと思います。そうしますと EQ-5 もそれなりの実績があると思いますが、イメージとしてはがんの患者さんがこういう状態に陥ったときの質問項目にも思えなくもないので、できるだけ健康状態Xがごく一般的な健康状態の低下を表す質問項目になるような設定が必要なのではないかと思います。そういう新たな質問項目の設定について何かアイデアとか、これまでの研究とか、そういったものはございますか。

○荒井部会長

 参考人、お願いします。

○福田参考人

 お答えさせていただきます。12 枚目にあります健康状態の設定なのですけれども、御指摘のとおりで EQ-5D の日本語版というツールを使って、その5項目をもとに記述をしたものでございます。この EQ-5D 自体はがんに特別使うということではなく、一般的にどの病気でも使われておりますので、特にがんを意識したものではありません。

 なぜ既存のそういうスケールを用いて書いたかといいますと、その上にQOL 値というものが入っておりますが、この EQ-5D の記述方法で記述した場合には、これに該当する QOL 値が算出できるようになっています。そうでない方法としては、患者さんと想定される状態を文章で記述していく方法も考えられなくはないのですが、そのときにはその場合の QOL 値が幾つになるか考えなければいけない。場合によってはそれ自体をまた新たに調査しなければいけないことになりますので、比較的過去の調査におきましても、 QOL 値についてはちゃんとそのまま計算ができるようなベースになる一般的な QOL の評価尺度の記述方法を使って記述するというのが多くとられている方法かなと思います。目的は QOL 値自体が改めて調査をしなくても、この記述だったらわかるというところを利用しているということでございます。

○万代委員

 よくわかりました。そうしますと新たな支払い意思額に対する調査手法については、どういう質問項目を設定する難しいかなと思いますけれども、例えば手法として白岩らの研究の一番最新のものを参考にすることも考えつつ、今の参考人のお答えでは、新たにそういう質問項目を設定するのはデータの信憑性とか信頼性という点からなかなか難しいと、そのように理解すればよろしいでしょうか。

○福田参考人

 それについては検討したいとは思いますけれども、検討ですとそのような形が現実的かなと。

○万代委員

 今後の検討ということでございますので、今日提示された調査主要とは質問項目が違う可能性があるかもしれませんが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

○荒井部会長

 宮近委員、お願いします。

○宮近委員

 費-2の5コマ目の内容でございますけれども、一番最後の○に、新たに行う国内の支払い意思額に関する調査については、今後、その実施のあり方や具体的な調査方法等について、その結果の活用のあり方も含めて引き続き検討してはどうかという提案がなされています。これまで委員の皆さん方が議論を積み重ねる中で、いろいろな疑問点が出されました。そういった議論の積み重ねを踏まえ、今後引き続きということではなくて、できるだけ何とかこの試行導入における費用対効果の検討に生かせるために、支払い意思額に関する調査を実施していただきたいと思います。

 もちろん、過去に行われた調査を参考にするというのも、1つのデータとしては貴重だと思いますし、諸外国を参考にするというのも必要です。ただし、今までの委員の方からの御指摘にもありましたように、データとして十分でない要素が含まれております。このため、中医協でこれまで委員の皆様が知恵を出し合った議論の積み重ねを踏まえ、引き続き検討していくということではなく、試行的段階で何とか先生方、参考人の御協力を得て調査の実施に踏み切って、成果を出して、それをまた試行の段階でのいろいろな検討に役立てていくべきではないかと思います。これを遅らせて本格的導入のところで新たな支払い意思額のデータを活用するというのもまた危険ですし、試行の段階でまずは実施して、その内容を検討すべきではないかと私は思います。

 やればわかることがいろいろあると思います。とば口でいろいろ論議を重ねて、ああでもない、こうでもないと言うことも必要なのですけれども、今この段階においては、これだけ医療体制の見直しが迫られている中で時間と競争しているわけですから、いつまでも議論を繰り返すということではなくて、ぜひ支払い意思額に関する調査を実施していただきたいと思います。

 以上です。

○荒井部会長

 御意見ありがとうございました。

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 宮近委員の意見に関連してお聞きします。これまでの議論は、ICER の評価基準の設定方法については、支払い意思額調査を行ってそれを参考値にするということでした。試行的導入においては、これを同時並行で進めていくということですが、本格導入においても、支払い意思額調査を参考にしないという選択肢もあるということでしょうか。

○荒井部会長

 企画官、よろしくお願いします。

○古元医療課企画官

 制度化に向けまして、まず今回の御提案申し上げている内容は、費-1、費-2いずれも試行的導入における進め方についての御提案をさせていただいたというのが本日の議論でございます。その後、制度化に向けた議論につきましては、またこの場で御協議をさせていただきたいと考えております。

○幸野委員

 本格導入に取り入れる可能性のあるものは、試行的導入の段階で全て取り組んでおかなければならないと思います。従って、本格導入で支払い意思額調査を用いる可能性があるのであれば、試行的導入においても支払い意思額調査の結果は把握しておくべきだと思います。本格導入で支払意思額調査の結果を用いないとしても、試行的導入の結果が出るときには調査を終えていて、参考として結果を把握しておくべきだと思うのですが、これについてはどうお考えでしょうか。

○荒井部会長

 医療課長、お願いします。

○迫井医療課長

 御議論をお聞きしておりまして、整理をしていただきたいと考えることが少々ございますので、一言お話をさせていただきたいのですが、今回、事務局で提案させていただいている大きな柱としましては、費用対効果評価を可能な限り早く制度化していきたい。それでここ数回ほど議論をさせていただいた中で、支払い意思額の調査の部分に係るさまざまな御指摘あるいは御懸念をいただいているということでございます。

 一方で、試行につきましては時間をかけて既に進捗させておりますので、特に改定作業に一定程度リンクをさせて進めないと作業できませんので、そういった意味で前回の御提案ですけれども、試行に向けた7+6品目の13 品目の作業と、この調査、これは調査を基本的にはやっていく、それを反映させていくという前提でもちろん我々作業を考えていますが、その調査にかかわる御疑問なり御指摘はかなり多岐にわたっておりますし、これは相当程度丁寧に委員の皆様におつき合いいただいて、議論を進めた上でというふうに認識しております。

 そう考えますと、今度の改定に向けた作業を円滑に進めつつ、今お話をさせていただいたことをスケジュールとしてやっていくために、2つのことは基本的には議論としては分ける。そのかわり、それぞれ進捗させていただきたいという趣旨でございます。

 先ほど宮近委員のお話と幸野委員のお話、私どもで少し整理なり御指摘を改めていただきたいと思っておりますのは、以上のような視点から試行については調査をしっかり設計をして御議論をいただいた上で実施をして、かつ、今年度末に向けての作業を組み立てるのは少し難しいのではないかということから、試行については既存の調査あるいは諸外国の数値でやってみる。そういう意味でも文字どおり試行という形でやらせていただきたい。並行して、これは縦に続けてということではなくて並行して調査についても、もちろん次回以降ちゃんと整理をして、先延ばしという趣旨ではなくて引き続きという意味は、引き続き議論をしますけれども、可能な限り速やかに、かつ、丁寧にという趣旨ですけれども、やらせていただきたいということでございます。

 宮近委員の御指摘は、試行についても調査をやった上で、今年度末に予定しておりますそういった対応をやるべきだという御指摘のように聞こえますけれども、我々としてはそれは難しいという御提案をさせていただいていますので、改めまして宮近委員と幸野委員の御指摘については、この場で我々としては試行に向けた作業については調査を改めて整理して実施するのは難しいという判断なのですけれども、そこは、いやいや、試行はあくまで調査をやった上で行うべきで、場合によっては作業がおくれてもいいという御指摘であれば、我々はそのように対応いたしますし、あくまで我々としては今お話をしましたように、本格導入に向けた制度設計と、それに必要な調査は行う。ただ、試行に向けた作業についてそれは両立できにくかろうということで分けて整理をさせていただきたい。これが御提案ですので、その点について改めて今の御指摘については作業の組み方とか、新しい調査についてあくまで試行の段階で行うべきであるという御指摘なのか、その点について明確に御指導いただきたいと考えております。

○荒井部会長

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 試行的導入では過去の調査結果や諸外国の結果を用いて行い、本格導入では新たに行う支払い意思額調査の結果を用いることになった場合に、今回用いた試行的導入の値と、新たに行う支払い意思額調査で得られた結果が大きく異なった場合に、大変混乱して本格導入に至れないのではないかと思うのですが、その辺はどうお考えですか。

○迫井医療課長

 率直に申し上げまして、調査結果は現時点で予断を持って得られているわけではございませんので、その点についての判断はなかなか難しいと思います。過去の調査、諸外国の数字はそれなりに参考になると思いますけれども、やはり重要なのは、先ほども御指摘が幾つかありましたが、医療保険を取り巻く環境が大きく変わってきている中で、やはり直近の、かつ、可能な限り合理的な調査を実施した上でというのは当然だろうと思いますので、そのような場合に試行のときに行った、ある限界のあった数字と、今後、本格的に制度を導入する場合の数値が仮に異なった場合、そのことも含めてこの場で御審議をいただくことが筋であって、違う可能性があるから試行をやめるのかといった話になりますので、そこは最終的には中医協の御判断をいただきたいと思いますが、我々としては文字どおり試行でございますので、かつ、試行のプロセス全体を見て制度設計をしていきたいというのが中医協の場でのこれまでの御議論だと事務局は理解しておりますので、我々としては数字が違い得るというリスクはある程度冒しつつも、試行は試行でこれまでのノウハウと審議の結果を生かしてやらせていただきたい。かつ、先ほどから強く御意見いただいております調査は調査でしっかりやっていく。そのようにさせていただきたい。仮にそこで数値のそごがあったときには、新ためて御相談したいと考えております。

○荒井部会長

 宮近委員、どうぞ。

○宮近委員

 5コマ目の具体的な調査手法等について、あるいは結果の活用のあり方等について、今後もっともっと検討する余地があるのかどうか。今までの議論とはまた別の方向性で何かやろうとしているのかどうか。そういうことであれば手続的にいろいろなことをやらないといけないので、間に合わないということも考えられるのですけれども、そこのところはいかがなのでしょう。我々委員としてはいろいろな意見を出させていただいて、これまで論議をしてきたわけなのですが、その内容を踏まえて調査に踏み切ることは現段階では難しいということなのでしょうか。

○古元医療課企画官

 調査につきましては、これまでさまざまな御意見をいただいたところでございます。それをもとにより納得感のある調査を行うことが重要だと考えておりまして、そのためにはもう少し時間がかかると我々は考えております。それを踏まえますと、試行的導入を予定どおり実施するためには間に合わないのではないか。こういった判断から、こういった御提案をさせていただいております。

○荒井部会長

 間宮委員、お願いします。

○間宮委員

 調査の手法についていろいろ議論を今までしてきたと思うのですけれども、どうも調査の手法を提案されたものについて、いろいろこうしたらいいのではないか、ああしたらいいのではないかという意見が出て、もともとの提案のとおりにいかないのだったら、ではやめておこうかというようなものはおかしいような気がするのです。それはまた後で検討するということなのですけれども、いろいろな意見が出ることは想定されるわけですから、それに対応するスケジュールで計画するべきことであって、私はこの資料を見て何だこりゃと思ったのですが、今までの調査の聞き方は、治療をしなければ死ぬしかないという人にその治療をすると、1年間健康な状態で過ごせる。その後、死ぬというような聞き方をするしかないと学問的というか調査の手法として聞いていましたけれども、4番の手法もあるではないかということで、このあたりの説明がきちんとされていないのではないかと思うのです。このあたりどうなのでしょうか。

○迫井医療課長

 事務局として進め方にスピード感、説明、御指摘を踏まえた対応になっていないというある意味、厳しい御指摘だろうと受けとめておりますので、そのようなことのないように今後気をつけたいと思っておりますが、宮近委員と今の間宮委員のお話に対して我々の認識を共有させていただきたいのですが、先延ばしをするという意味ではなくて、少しずつステップを踏んで議論をしていきませんと、今回の取り組みは本邦でもちろん初めての取り組みでございますし、内容的にもある意味デリケートで御関心の高い内容ですので、慎重に審議をさせていただきたいという趣旨でございます。

 そのことを前提といたしまして、これまでいろいろ多岐にわたる御意見をいただきましたし、御指摘をいただきました。それを全て、リセットして新たにという趣旨ではございませんで、これは宮近委員と間宮委員のお話そのものに対する我々の認識ですけれども、当然、今までいただいたさまざまな御指摘を踏まえて新たな提案はもちろんさせていただきます。それは全く新しいとかそういうことではなくて、今まで議論していただいたものを積み上げて、その議論あるいは御指摘を得て、一番合理的で納得感の高いものを提案させていただきたいという趣旨でございます。

 具体的に今回、初めて4つの過去の調査について詳細にお示ししておりますが、まだまだ情報が足りないという御指摘がありましたし、先ほど診療側から設問の設定とか、さまざまな調査手法につきましてもまだまだ御指摘がございます。いたずらに時間を引き延ばしたり、いたずらに実施をおくらせるという趣旨ではなくて、丁寧な御議論をいただきたいと思っておりますが、あくまでこれまでの議論を積み上げていった上でしっかりそのことを踏まえた提案を次回以降、させていただきたいということですので、その点についてはこれまでの説明なり資料が不十分だったことはおわび申し上げますけれども、御理解いただきたいと考えております。

○荒井部会長

 間宮委員、どうぞ。

○間宮委員

 手法、聞き方についてもそうなのですけれども、この参考の4つの調査をそのまま使うかどうかというのはもちろんわからないですが、1~3については延命治療に対する支払い意思額なんだということでここに書いてありますけれども、4番目は違うということで、調査の目的も性格も全然違うと思うのですが、先ほど私が質問したきょう死ぬしかない人が治療をして1年間、元気な状態でいるというのと4番目は違いますよねというのは、その答えをいただいていないと思うのですけれども。

○迫井医療課長

 これは言ってみれば、調査をした前提とか情報として事実関係ということでお示しをしているものです。ですからおっしゃるとおり前提が違いますということなのですが、御質問の趣旨がなぜ違うのかという考えをお尋ねなのか、違うという事実についてどう我々としてお答えしていいのか、質問の趣旨をいただけると助かります。

○間宮委員

 要するに調査の目的とか設定が違うものを参考にするんだということで、これで例として出しているのですけれども、それは違うのではないかということです。調査の目的と設定がかなり近いものを持ってこなければ、参考にはならないのではないですかということです。

○古元医療課企画官

 この基準の設定に用いる支払い意思額については、さまざま新たな調査を含め御意見をいただいたところでございます。今いただいた御意見も踏まえまして、具体的な御提案をさせていただきたいと考えております。

○荒井部会長

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 試行的導入の結果は、具体的にはどれぐらいまでに出すのでしょうか。

○迫井医療課長

 おっしゃるとおり、これはスケジュール感も含めてもう少し詳細にお示しをしないと、今のようなイメージがつかんでいただけないだろうと思います。御指摘のとおり、まず試行的導入という具体的に医薬品で7、機器関係で6でございますけれども、これらについては今度予定されております平成30 年度改定に合わせて、価格の見直しに反映させますという趣旨です。

 そうしますと、ほぼ通常の改定作業と大体連動して動いていただくようなイメージでよろしいと思いますけれども、作業としては一定の今回いろいろお示ししておりますフレームワークといいますか、スキームを具体的に整理して、考え方も一定程度整理をして、並行してこれは専門家によります議論でデータの整理もしておりますので、そのステップにのっとってこちらにお示しをして、最終的な対応の方法について御判断いただくことになります。それが言ってみれば年内には少なくとも一定のめどを立てた上で、価格の見直しは実際には来年度の当初から実施できるような形で行う。次回以降ちゃんと書面でお示ししたいと思いますけれども、これが大雑把な進め方のイメージであります。その作業を行いながら並行して制度設計ができる部分は当然ありますので、制度設計の議論をさせていただく。それから、前回も整理をさせていただきましたが、調査であくまで取得をしたいのは基準値の設定の数字でございますので、その数字を得るという作業の調査の部分と、試行の議論で得られたさまざまなノウハウを文書化する、制度化するという作業は少し性質が違いますので、これも可及的速やかに時間をかなり意識して作業をさせていただきたいと考えております。

○荒井部会長

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 私が繰り返し申し上げているのは、試行的導入に新たに行う支払い意思額調査を採用しないとしても、どのような結果が出るかということは把握した上で、試行的導入の結果を出すべきだと思います。試行的導入の結果を価格決定に用いるまでに、支払い意思額調査を終わらせれば良いわけで、スケジュールに少し余裕ができると思いますので、早急に調査手法等を決めていけば、試行的導入の価格決定を行うまでにその数値を把握することは可能ではないですか。

○迫井医療課長

 これは口頭で議論するとなかなかイメージをつかんでいただきにくいと思いますので、次回に少なくともスケジュールはしっかりお示ししたいと思いますが、幸野委員の御指摘と我々の認識はそんなに実は違わないように思います。すなわち可及的速やかに作業はして、丁寧な議論をしつつもスピード感を持って調査を行うという点では同じなのだろうと思います。

 一方で試行的導入、今お話をしましたとおり価格の改定時期というのはある程度限定的に作業を進めなければいけませんので、もちろん可及的速やかに調査を行って数値がわかっていれば、試行的導入分についても反映できると思いますが、逆に新しい調査ができないと、その結果がわからないと試行も含めて全て作業しないんですという形になりますと、全てがそこでとまってしまいますので、我々としてはそこは試行と制度化した後の本格的な制度運用は違うというふうに整理をさせていただいておりますので、そこの作業はパラレルで並行してやらせていただきたいとお話をしているだけですので、可能な限り作業を進捗させる。それから、その点についてのスケジュールは次回、明確にする。その時点でもし反映できるのであれば、結果が速やかに得られるのであれば、それはそれで活用させていただく。そのように理解をしていただければ、大きくそんなに認識は違わないのではないかと考えます。

 一言だけ申し上げておきますと、実際に年内に一定の整理を行うということは、それまでに調査のさまざまな質問とか様式とか全てを定めて実際に調査を行って、かつ、それを集計してその数値を得るということになります。直感的に申し上げますと、それを年内に行うというのは現時点でかなり難しいのではないかと考えます。したがいまして、試行においてその結果を活用するのは現時点では難しいのではないかというのが、私ども事務局の見立てでございます。

○幸野委員

 最後に再度申し上げますが、本格導入において新たに行う支払い意思額調査の結果を用いるのであれば、試行的導入時に価格調整に用いるかどうかは別として、その値は試行的導入時に絶対に把握しておかなければ本格導入には入れないと思います。次回以降、スケジュールを見て議論をしたいと思います。

○荒井部会長

 安部委員、お願いします。

○安部委員

 1つだけ質問をさせてください。この仮称の支払い意思額調査をこれから進めるわけですけれども、参考人の方にお聞きできればと思うのですが、諸外国で支払い意思額というのは定期的な一定の期間をもってやり直しているのか、それとも1回やると相当程度の期間、その支払い意思額をもとに数値を出しているのか、どちらなのでしょうか。

○荒井部会長

 参考人、お願いします。

○福田参考人

 私の理解している範囲では、特に定期的にこういう調査が行われている国は存じておりません。あくまでも研究者が取り組んでいるものが報告されているという状況で、それを参考にして使っているということだと思いますので、研修者のスケジュールに応じてですので、定期的にやっているということは把握しておりません。

○安部委員

 そうすると時に応じて修正ができるものではないので、今回の調査もスピード感を持ちながらも丁寧にやっていく必要があると思います。

○荒井部会長

 御意見ありがとうございます。

 万代委員、どうぞ。

○万代委員

 進め方の議論ということで本日、事務局から新たな提案ということで出されたと認識しております。それと申しますのも私の認識としましては、ここ数回は支払い意思額のあらゆる項目について少し紛糾しましたので、議論が止まってしまったなと思いまして、それについて多大な時間を、無駄な時間とは言いませんけれども、かなり費やしたかなと思っております。

 私自身としても、費用対効果につきましては世界的にもヘルスケアテクノロジーアセスメントということで広く行われておりますので、評価結果をどう用いるかどうかは別としまして、それが日本で行われないということ自体は時代おくれかなと思っておりますので、何らかの形で進めるべきだと思います。

 そういう意味で、このところの支払い意思額での紛糾について、事務局が新たな提案をされて、ひとまず新しい調査は試行的導入においては用いないで、これまでの論文等を参考にして本当に試行的にやったらどうだという提案でございます。この点については事務局として相当、二歩も三歩も譲った上で前へ進めたいというような意思表示と考えますので、高く評価したいと思いまして、ひとまず事務局の提案のまま試行的導入については別途進めるということで御提案申し上げたいと思います。

 以上です。

○荒井部会長

 松本純一委員、お願いします。

○松本純一委員

 今までの議論は必要な議論であったと私は思います。支払い意思額という聞きなれない言葉に対して、共通のコンセンサスを得るために必要な議論であったと思います。その中で確認のために質問をさせていただきますが、今までいろいろな世界にこういう研究者がいて、費用対効果評価をされていると思うのですけれども、仮称ですが、支払い意思額という調査を用いずに費用対効果評価を出しているような研究者はいるのでしょうか。

○荒井部会長

 参考人、お願いします。

○福田参考人

 御質問は制度とかではなくて、研究者がやっているものということでよろしいでしょうか。

○松本純一委員

 制度でもよろしいのですけれども、支払い意思額という名称はともかくとして、自分が健康になるためだったら幾らでも払いますよ。その金額はこれだけですよというような調査もなしに、それを用いずに薬剤あるいは機器の費用対効果評価をしていることはあるのでしょうか。

○福田参考人

 これは国内でもさまざまな技術等についての費用対効果の研究というのは行われてきておりまして、それらの研究で全てこういう調査をしているわけではなく、一般には増分費用効果、ICER として出した数字に対して、これが費用対効果にすぐれるのかどうかという議論をディスカッションの論文だとパートでやるときに、今回紹介されているような論文を引用して、この値より低いので費用対効果にすぐれるというような結論の出し方をしている論文が一般的に多く見られます。

○荒井部会長

 ほかには御意見特にないでしょうか。そうしたら専門委員、お願いします。

○上出専門委員

 倫理的、社会的影響等に関する検証のあり方に話が戻ってしまうのですが、1点コメントをさせていただきたいと思います。

 総合的評価における倫理的、社会的影響等に関する検証といったものは、従来はICER の評価と並列的に示されておりましたものが、この部会の議論の中で ICER の評価を補足的に評価するような位置づけとなってきた経緯があるかと思います。この倫理的、社会的影響等に関する影響をどのような場合にどのように評価すべきかといったことを検討するのも試行的導入の1つの目的かと思っております。

 お願いでございますけれども、試行的導入の検討の中で、この社会的、倫理的影響に関します当該企業の意見を提出もしくは表明する機会を確保いただいて、どういった品目にどういった項目を考慮すべきかというところをぜひ議論いただきたいと考えます。

 以上でございます。

○荒井部会長

 ありがとうございました。

 特にほかにはないでしょうか。中村部会長代理、どうぞ。

○中村部会長代理

 今までのお話をお伺いしていて出てこなかった論点としまして、諸外国における評価基準の現状について、評価基準がどのくらいの金額かというのは出ているのですが、評価基準の値をどのように出したのかという情報はございません。イギリスが2万から3万ポンドという数値をどうやって出したのか、こういった情報も非常に重要です。

ただ、そういった情報はなかなか公開されていないと思っています。評価基準額を出すための方法についても調査していただいて、もしそれが公開されていないのであれば、公開されていないという形で、情報をいただけるといいかなと思っています。

○荒井部会長

 ありがとうございました。

 ほかには特にないですか。よろしいでしょうか。ほかに御意見等もないようでしたら、本件については本日の御意見を踏まえ、御提案いただいた方向で事務局において検討を進めることとしたいと考えていますが、よろしいでしょうか。

 本日の議題は以上です。次回の日程につきましては、追って事務局により連絡しますので、よろしくお願いします。

 それでは、本日の「費用対効果評価専門部会」はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

○古元医療課企画官

 ありがとうございました。

 続きまして、薬価専門部会でございますが、少し時間が長くなりましたので、5分間の休憩をもって、あの時計で26 分から開始したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

(了)
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