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2018年3月13日 第17回薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会

○日時

平成30年3月13日(火) 13:00~15:00

 

○場所

厚生労働省専用第21会議室(17階国会議事堂側)
東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
 

○議題

1 「薬害を学ぼう」に関するアンケート調査結果について
2  薬害教育の実践例について
3  薬害に関する資料収集整理について

○議事

○衞藤座長 定刻を少々過ぎましたが、ほぼお集まりのようですので、ただいまより「第17回薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催します。皆様にはお忙しい中、御出席いただきまして、どうもありがとうございます。まず委員の出欠状況について、事務局から御報告をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 本日は全委員に御出席いただく予定になっています。館先生から少し遅れて到着されるという御報告をいただいております。また、本日は追手門学院大学の藤吉先生に、参考人として御出席いただきますが、御到着が少し遅れています。また、本日は薬害教育の教材に関する議題がありますので、文部科学省から初等中等教育局教育課程課長補佐の鈴木様、同じく初等中等教育局健康教育・食育課健康教育調査官の小出様、及び同課の保健管理係長の下野様に御出席いただいております。

○衞藤座長 次に前回の検討会を開催した平成29年1月以降に、事務局に人事異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 事務局の人事異動について報告します。医薬・生活衛生局長の宮本です。同じく医薬・生活衛生局総務課長の屋敷です。同じく医薬・生活衛生局総務課の医薬品副作用被害対策室長補佐の増川です。そして私は、医薬品副作用被害対策室長補佐の川瀬です。どうぞよろしくお願いします。事務局からは以上です。

○衞藤座長 ありがとうございます。なお、カメラによる撮影はここまでとします。御退室をお願いします。それでは、本日の検討会の議題について報告をいただくとともに、資料の確認をお願いします。事務局から説明をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 本日の検討会の議題について御説明します。本日は1点目として、薬害教育教材に関する今年度分のアンケートの結果について、御報告します。次に2点目として、今年度、モデル的に複数の学校に、薬害に関する授業を実際に実施していただきましたので、その概要を御報告し、その上で授業の実施を通して把握した課題等についても整理しましたので、それについて御議論いただければと考えています。3点目として、薬害資料に関する研究班の、今年度の活動状況を報告させていただきます。

   本日配布している資料について説明します。まず、本日の検討会の議事次第、そして構成員の名簿、座席表をお配りしています。資料1「薬害教育教材に関するアンケート調査(平成29年度)の結果について」、資料2「薬害教育の実践例について」、資料3「授業の実践等を通して把握できた課題等について」、資料4「薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築(厚生労働科学研究費補助金)の平成29年度の活動について」をお配りしています。また、参考資料として、毎年、各中学校に配布している「薬害を学ぼう」のテキストと、教員用の「指導の手引き」、その手引きの「簡略版」をお配りしています。不足等がありましたら、お申し付けください。以上です。

○衞藤座長 資料はよろしいでしょうか。それでは早速、本日の議題に入りたいと思います。最初の議題は、平成29年度の「薬害を学ぼう」に関するアンケート調査結果についてです。事務局において、昨年度に引き続き、薬害教育教材に関するアンケート調査を実施したとのことですので、その結果について事務局から説明をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) それでは、資料1を御覧ください。この資料はアンケート調査の結果で、昨年度と同様の項目で調査をしたものです。目的が中学3年生を対象とした「薬害を学ぼう」について、教材のより有効な活用方法等の検討に繫げるため、教育現場での使用状況、問題点等を把握することを目的に行ったものです。
  調査対象は全国の中学校でして、11,058箇所となっています。調査内容は書いてあるとおり、5つの項目について聞いております。使用状況ですとか、この教材の発送時期が良かったかどうか。あとは指導の手引きであるとか、視聴覚教材について聞いています。あとは全般的にですが、この教材についての感想・意見等について、質問を行っています。
  調査方法はこのアンケートを、パンフレットの発送時に併わせてお送りしていまして、中学校において必要事項を記載していただいた上で、事務局の副作用被害対策室にファックスで返送いただくという形で行っています。調査の概要ですが、今年度の回収率は11.5%で、1,268箇所から回答をいただきました。昨年度、この検討会におきまして、昨年度のアンケートの回収率が8.1%という形になっていまして、ちょっと低いのではないかという御指摘いただいたところです。今年度につきましては、3.4%ポイント上昇して11.5%となっています。まだまだという数字だとは思うのですが、少し回収率が向上した要因としては、今年度のパンフレットの発送に当たりまして、日本薬剤師会さんにお話をして、学校薬剤師さんが集まる会議で、このアンケートへの御協力について御案内をしていただいたところです。そうしたことをしていただいて、少し回収率の向上にもつながったのかなと考えています。
  結果の概要については、2ページ目以降を御覧ください。まずは予定も含めた使用状況について説明します。授業で使用した又は予定があるというのは、今年度は41.6%です。昨年度は45.5%ですが、実数としては増えています。回収率の影響もありますので、ほぼ同水準ということかと思っています。また、配布をした又は予定があるというのは、51.7%です。全く使う予定はないという回答は5.9%となっています。
  活用いただいた教科については、社会科が333校(59.3%)で、昨年度より少し上がっています。保健体育科についても193校(34.3%)、こちらも昨年度から少し上がっています。その中で取り上げた単元としては、今年度は特に人権の関係で、取り上げたという回答が247校と、昨年度より67校多いという形です。一方で、「消費者の保護」は、横這いという状況です。その他、保健体育系では、「医薬品の適性使用」であるとか、「エイズ・感染症の予防」「薬物乱用」に関連して取り上げたという御報告をいただいています。
  教材の発送時期です。平成28年度までは4月に発送していました。今年度は、先ほど参考資料でお配りしましたが、指導の手引きの簡略版を新たに作って、それに少し時間を要した関係で、平成29年度は6月末に発送しました。その結果、「ちょうど良い」と回答をいただいた割合が増えています。昨年度は「ちょうど良い」が74.3%だったのが、今年度は81.0%となっています。もともとの4月発送だと「早すぎる」というのが21.1%だったのですが、それが大きく減りまして、9.2%にとどまっています。「遅すぎる」が若干、1.2%から5.9%に増えてはいるのですが、全体としては8割以上の所で、発送時期については、ちょうど良いという評価をいただいたところです。ですので、来年度の平成30年度につきましても、同じように6月頃の発送として少し様子を見たいと考えています。
  時期についての御意見のところで、6月でも早いという御意見も一部にありまして、公民分野で扱おうと思うと9月頃からになるので、その時期がいいのではないかですとか、保健分野でこの関係について扱うのが、やはり2学期末ぐらいなので、もう少し遅くてもいいのではないかという御意見もありました。一方で遅すぎるという御意見もあって、年度初めに計画を立てるので、6月頃に送られても厳しいという御意見もありました。これについては、毎年度末に、ちょうどこの2月にも発送したところですが、事前に「こういった教材をお送りします」と各中学校に事前送付という形で行っているところですので、そういったものを踏まえて次年度の計画を立てていただければと思っています。
  次の3ページに行きまして、指導の手引きについてです。こちらも、ほぼ昨年度と同じような状況になっているのですが、おおむね67%が「内容が適切」としていて、「内容が難解」が一方で7.1%はいらっしゃるというところです。「使っていない」が20.7%いらっしゃいまして、残りが「その他」等となっています。
  「内容が難しい」という御意見の中で、詳しく見てみますと、聞き慣れない言葉が多くて、薬害という印象が、ちょっと自分に関係しているという感じがしないというような御意見がありました。また、中学校ではもう少し身近な事例を扱う方がやりやすいという御意見もありました。あと、指導する側の下準備が大変という御意見もありました。
  また、「使っていない」と回答いただいたところでは、部分的に使えるような方法があると有り難いという御意見ですとか、使っていないけれども、関連することとして、人権保障の分野の中で、国家賠償請求権について薬害C型肝炎訴訟を取り扱うことはあるが、薬害問題そのものについて深く掘り下げている時間はないという意見もありました。その他の意見としては、1時間程度では、このパンフレットのボリュームだと多いと感じたという御意見ですとか、今、指導案については、消費者保護の観点で作っていますが、人権という視点での指導案があるといいという御意見もいただいています。
  4ページに移り、視聴覚教材についてです。こちらも「授業で使用した(予定)」が15.2%で、大半の所でまだ使っていただいていないという状況です。ただ、使う又はその予定としている所では、メイン教材として使用する予定であるとか、視聴覚教材になると、生徒の顔が上がるので説明しやすく助かるという御意見があります。一方で、日頃使わない言葉が入っているので、難しいと感じるという御意見もあるところです。
  その他、授業での活用等について詳しくお聞きしたところでは、社会科の中で活用したという御意見としては、今の中学校の社会科の教科書の中で、消費者問題の年表が載っている部分があるのですが、一部の教科書会社では、薬害について年表に少し載せている所もあるということで、それと関連して指導したいと回答をいただいている所もあります。あとは基本的人権の享有を妨げられている事例として取り扱うとか、実際に起きた事柄なので生徒に響くものがあるということを回答いただいています。
  5ページに移りまして、保健体育で活用したというところですが、学校薬剤師の方が授業をされている所があるようで、そのときに補助教材として使っているですとか、中学校で保健体育に関連する項目とすると、用法・用量を間違えないことや、自然治癒力というのがメインではあるが、薬害にも触れることができる教材なので有効に活用したいという御意見をいただいています。
  「時間がない」という御意見もいただいておりまして、時間が見出せないで使えなかったということですとか、時間が見出せない中でも、人権がおびやかされている一つの事例として、資料を配布して生徒に紹介はしているですとか、今はちょっと難しいが、総合学習の時間などで、別枠で学ぶ機会を作れたらと考えていただいているという回答もありました。
  「内容が難しい」といった点については、文章の量が全体的に多いという御意見があります。あとは、「資料の構成等」については、指導の手引きに学習のポイントが示されているので分かりやすいといった評価をいただいている一方で、目的であるとか主題をもう少し明確にしてほしいという御意見もいただいています。
  最後の6ページですが、他校の活用例も知りたいとか、薬害の中でも初期の方といいますか、1950年頃の薬害については、教える側も記憶に乏しくて分からないということで、改めて授業の研究をすることが必要になってくるという御意見があります。あとは非常に大切な内容なので、生徒にも必要かもしれないが、教師にとっても必要だろう、職員研修も必要だと思うという御意見をいただいています。
  7ページは、来年度、パンフレット送付時に同封しようとしているアンケート調査の案です。今年度配布した際に、アンケートの用紙が2枚ものになっていて、2枚目の回答が漏れていると思われる例もありましたので、体裁を工夫して1枚に収まるようにして、全部漏れなく回答していただけるように工夫したいと考えています。説明は以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの調査結果に関する御説明について、御質問、あるいは御意見のある方は、御発言をお願いしたいと思います。藤原委員、どうぞ。

○藤原委員 これは文科省の方にお聞きしたいのですが、私どもはどちらかというと、この手のアンケートというのはよく出すのですがあまり回収率はよくありません。参考までに文科省が例えば社会科の先生方に、このようなアンケートを出したときの回収率というのは、大体どのぐらいなのでしょうか。何が言いたいかというと、厚生労働省から中学校に出していますので、文科省という言葉が一緒に付いたアンケートだと、もっと回収率が上がるのではないかと思うからです。。なぜかというと、この間AMR(薬剤耐性)で内閣府でやったときには、いろいろ省庁をまたがってやられていたので、アンケートも非常に回収率が高かったような気がしました。前もお聞きしたかもしれないのですが、毎年10%というのは、せっかく貴重な資料を配っていて、なかなか回収率が上がらないなと思ったので、もし分かれば教えていただきたく、質問させていただきました。すみません、分かればで結構です。

○文部科学省教育課程課長補佐 ありがとうございます、文科省初等中等教育局の鈴木です。網羅的にどれぐらいの回収率なのかというのは把握していないのですが、学校基本調査のように、統計法上で位置付けられている調査については、もちろん100%の回収率になっていますが、任意のアンケートについて、我々は今、どれぐらいというのはデータとして手元にないものですから、申し上げられない状況にありますので、また何かあれば調べて、お知らせさせていただきたいと思います。

○藤原委員 教えていただければと思います。ありがとうございます。

○文部科学省健康教育・食育課健康教育調査官 健康教育調査官の小出と申します。文科省の調査ではありませんが、公益財団法人日本学校保健会という所で、学校に対してのアンケートを行うことがあります。その場合で、文科省から是非協力してくださいという形にした場合、70%ぐらいの回答は来ていると考えています。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございます。文科省からの情報がありました。ほかに御質問、御意見がありましたら、挙手でお願いします。よろしいでしょうか。それでは倉田委員、お願いします。

○倉田委員 アンケートの回収率が10%ということですが、実際に配ってくださったり、授業をした方というのは、あとの9割は分からないわけですよね。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) はい。それはアンケートを返していただいていないので、どうなのか分からないです。

○倉田委員 余り希望的な推測はできないのかもしれないのですが、これは資料として、本当にもったいないと思うのです。なので、子供に渡せなくても親に渡して、親たちが見てほしいなと。私は一般人でここに参加しているものですから、一般の人たちが薬害というものに対しての、本当に副作用と薬害の違いが分かっている方のほうが少ないと思うのです。
  ですから、このパンフレットを利用してほしいので、子供に配らなくても、例えばPTAの会合ですとか、参観日のときにいらした親御さんに渡すなどの提案をしていただけないでしょうか。子供だけに渡してしまうと、もらってもそのまま廃棄してしまう可能性もあると思うので、できれば大人の目に触れてほしいので、そういう親が絡んだような催し物のときに渡すことも考えていただけるような、発送のときに追加情報として親御さんに手渡ししていただくことも大変重要だと思います。少しでも多くの方にこの資料を見ていただけるようにという努力はしてほしいと思います。

○衞藤座長 ほかにいかがですか。栗原委員、お願いします。

○栗原委員 これまでの検討会の場でも発言したと思うのですが、今の調査結果の6ページの「その他」の所の③に、(養護教諭に文書資料が届いた)という括弧書きが付いていますが、恐らくこれは結構、一定数の学校で、こういう形で管理職が養護教諭さんに渡しているケースが多いと思うのです。私も直接、何校か聞いたことがありますが。これについて、例えば社会科主任と言ったらいいのか、社会科担当者とか、そういうのを校長さんの名前の脇に書くわけにいかないのでしょうか。確か、過去にも同じ発言をしたことがありますが、それはできないというような回答があったかもしれませんが。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 正に送り先としては、基本的には校長先生になるかと思いますし、一方で、指導の手引きでも書いておりますが、基本的には今お示ししているのは、社会科の中の公民、特に消費者保護に関連して、という話を書いています。一枚紙でそういった趣旨の紙も入れているところなのですが、実際に最後、どの教科で使うかというのは、そこの学校の中での御判断というのもあろうかと思いますので、宛名に社会科御担当みたいなことを入れるのが必ずしも良いことなのかというのは、ちょっと検討が必要かなと思っています。

○衞藤座長 ありがとうございました。その他はありますか。また後の議題と関連する部分もあるかと思いますので、それでは、この調査結果に関しての議論というのは、ここで終了して、次の議題に移りたいと思います。
  2番目の「薬害教育の実践例について」については、昨年度の検討会で、事務局から説明がありましたが、今年度は委員の皆様にも御協力いただきつつ、個々の学校に直接依頼をして、実際に授業を実施していただく取組に着手していますので、その内容と、そこから把握した課題についてまとめたとのことですので、事務局からの御報告をお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 資料2と資料3について説明します。まず、資料2「薬害教育の実践例について」を御覧ください。今年度個別にお願いして、中学校3校と高校3校で実際に授業をしていただきました。実は昨日も、授業を実施していただいた高校があるのですが、時間の関係で、まとめが間に合いませんので、本日は、紹介できず申し訳ありません。

   それぞれ、本検討会の委員の先生方にも御協力いただいたところです。駿台甲府中学校については、望月先生の御紹介をいただきました。2番の兵庫県立尼崎小田高等学校については栗原委員にも、枚方市立杉中学校、大阪府立牧野高等学校については薬被連副代表世話人の勝村様にも御協力をいただいたところです。6番の筑波大学附属中学校については、館委員に御紹介いただきました。この場をお借りして、改めて御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。また、本日、紹介する学校の先生方にも、この場をお借りして御礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
  それでは、中身について説明します。1ページです。駿台甲府中学校の授業を御紹介します。こちらは3年生を対象に社会科の公民の中で、人権と関連させて指導を行っていただきました。学習の目的は、「被害拡大の原因」と「奪われた人権」について学ぶということで設定していただいております。5ページ以降に、実際に担当していただいた先生が作成された指導案を添付しておりますので、適宜、御参照いただければと思います。
  当日の授業の流れです。指導案にも書いておりますが、最初に特に詳しい説明はせずに、地域の薬剤師から医薬品の外箱を3種類ほど入手されたということで、それを生徒に配布しているという様子がありました。その後、授業に入っていきます。パンフレットの「薬害を学ぼう」の1、2ページの薬害に関する説明を生徒に読み上げさせて、途中で先生から、それぞれ被害拡大の原因や奪われた人権は何なのかという2点を意識して、読み上げたり話を聴くようにしてくださいという留意点が示されました。また、薬害を生じさせた医薬品によって恩恵を受けた人もいらっしゃるということや、当時の社会情勢(高度経済成長やバブル経済等)についても適宜、補足説明を加えられていたという状況です。視聴覚教材のうち、全部を見せるということはできなかったのですが、被害者のインタビューの所について視聴しております。下の方に写真も載せておりますが、こういう形で、クラスの授業の中で実際に使っていただきました。
  視聴覚教材のうち、被害者のインタビューの所を視聴しています。そこで指摘されていた、被害拡大の原因についてどのようなことが言われていましたかということで、先生から質問して、生徒からは、情報をもっと早く医療従事者が伝えていれば良かったですとか、薬の使用を禁止すれば良かったたのではないかという回答が出ておりました。
  その後に、このインタビューを受けた被害者の方々が奪われてしまった人権は何なのでしょうかと先生から質問されて、それぞれ、生徒からは、「自由権(身体的自由)」や「生存権」という回答がありました。先生から補足的に、被害とは別に差別や偏見を受けた方もいらっしゃって、このことは法の下の平等にも関わる問題でもあることと、これまで人権の授業で学んできたことと繫げて考えていってほしいという話がありました。
  次に、パンフレット「薬害を学ぼう」の5、6ページにある薬害の防止のために国、製薬企業、医療機関・薬局、消費者ごとに取るべき役割について質問を挟みつつ説明を行っていきました。先生から、国や製薬企業が行うべき情報提供については、知る権利に関わるという話とか、国については、憲法第25条第2項の「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定にも関係するということを補足で説明されておりました。
  最後にまとめとして、授業の冒頭に回覧した医薬品の外箱について少し御説明されて、実は、これはがんの治療に行いる医薬品で、一つは抗がん剤の効果を高めるために処方されており、その副作用を抑える薬が一緒にセットで処方されるわけではなく、実際には副作用が発生してから処方されるものだと薬剤師から聞いたという話に触れつつ、薬に対する関心を持ってくださいという説明をされておりました。
  生徒の感想ですが、「一番印象に残った点は何ですか」と聞くと、視聴覚教材が印象に残ったという意見が非常に多かったです。例えば、それぞれの薬害について被害者からの話を聞いたところ、自分が思っている以上に悲惨であった事実に驚かされたとか、国が禁止しなかったことに関しても怒りの心が湧いてきたという意見がありました。その他に、薬害の種類の多さや規模の大きさが印象に残った、被害自体もそうですが差別もひどいことだ、偏見が多い社会と思ったという感想がありました。
  「授業で良かった点は何ですか」と聞いたところ、薬害について理解できたということが多く挙げられておりました。また、3ページですが、被害者の声を実際に聞くことができたと。印象に残った内容と重複するところでもあるのですが、やはり、生徒の印象としては強く残ったのだろうなというところです。先生も最後に言っておられましたが、日頃飲んでいる薬について改めて考える良い機会でしたという感想が挙げられていました。駿台甲府中学校については以上です。
  7ページです。兵庫県立尼崎小田高等学校です。こちらは、高校3年生を対象に授業を実施していただきました。普通科の中に「看護医療・健康類型」というコースが別途に作られており、将来、看護師や医療関係の仕事に就きたいと考えている人が集まっているコースです。取り扱っていただいた教科ですが、学校が独自に設定している教科で、「健康」という教科があり、その中に「看護医療総合」という科目がありました。これについて5時間分授業をやっていただき、今回の資料で説明するのは被害者の講演を含む、2時間目と3時間目の授業についてです。
  非常に長い時間を使って、薬害について授業をしていただきました。学習の目的は、薬の正しい知識、薬のベネフィットとリスクを学び、特に被害者の家族から話を聞いて御本人や家族の思いを知る、先ほど説明しましたが、将来看護師を含めた医療職に就こうと考えている生徒にとって、自分がこういう問題に直面したときに、何ができるのかということを考えてもらいたいという目的を設定していただいております。こちらについても11、12ページに指導案、13~16ページに授業で使っていただいたワークシートを参考として載せておりますので、適宜、御参照ください。
  当日の授業の流れです。この学校では、「MMR被害児を救援する会」の上野秀雄様に御講演いただきました。講演の内容をかなり圧縮して紹介しています。当時、MMRワクチンの副反応の多さが報道されていた中で、親として、上野さんとしては本当は接種を希望していなかったのですが、医者の強い勧めもあり、結果として接種することになり、被害を受けてしまったというお話と、被害規模が大きかったというお話でした。被害発生の原因に関することとしては、複数のメーカーがワクチンを製造しておりましたが、そのうちの一つの会社が承認とは異なる方法で製造していたことが原因の一つではないかと考えられているということ、多くの副作用が判明してきた中で、情報の公表が迅速になされなかったり、国や企業の対策が早期に取られなかったという問題があると考えているということを御講演でお話いただきました。
  その後、生徒たちでグループディスカッションをするということで、4、5人で1グループになり、薬害の発生防止のために、国、企業、医師、医療機関、国民のそれぞれが考えなければならないことについて、ディスカッションをしていただきました。以下、発表いただいたことを概要的に載せております。例えば、①国が考えないといけないことということで、情報公表や迅速な対応について言及されているグループが多かったです。また、監督体制もきちんとしたものにすべきだという意見もありました。②製薬会社については、便宜上、姿勢と付けておりますが、利益を優先しすぎない姿勢になるべきではないか、コンプライアンスに関するもの、国と同じように情報公表に関するもの、特に副作用に関する研究をもっとすべきではないかという意見が出ておりました。
  ③医師、医療機関です。インフォームドコンセントが挙げられており、副作用の把握と正確な情報を伝えるということ、多かったのは、医療を提供する側としても副作用の情報をしっかり認識すべきだ、利益にこだわりすぎない、期限切れになっている薬を使うべきではないというような姿勢に関する意見が出ておりました。④国民の考えるべきことでいけば、自分自身も薬に興味を持ち、自主的に副作用について調べるという情報収集に関すること、また意思の表明として、医療機関や医師に対して自分の意見をしっかりと伝えるべきではないかとか、病院や医師選びをしっかりすべきという意見が出されておりました。
  9ページです。このグループディスカッションを挟み、再び上野さんに、今度は裁判と判決について御講演いただきました。裁判の中では、因果関係が認められた人とそうではない人がいたとか、企業については、予見可能性があったということで責任が認められたり、国については、ワクチン接種の一時見合せ措置や緊急命令を発すべき法的義務があったとまでは認められなかったのですが、企業への指導監督義務違反が認められたというお話、また事件が発生したことによって予防接種の制度が良い方向に変わってきたところもあるのですが、まだ問題が残っていると考えているということを御講演でお話いただきました。それで、この授業は一旦終わりという形になりましたが、そういう授業を受けた生徒の感想で一番、印象に残った内容として、やはり被害者による講演が一番印象に残ったという回答が多かったです。その他、国、製薬会社、医療従事者の責任や被害の大きさなどについて印象に残ったという感想がありました。
  次のページです。授業で良かった点は、薬害について理解できたということが挙げられており、他人事ではないということです。これは関連するのですが、下の所で、もともと看護師等を目指している生徒なので医療職を志す者として他人事にしないことが大切だと実感しましたということで、自分の将来に関連することだという感想がありました。その他、授業の実施方法については、グループワークが良かったという感想もありました。
  次に、17ページです。枚方市立杉中学校です。中学2、3年生を対象に授業をしていただきました。「総合的な学習の時間」ということで授業をしていただきました。学習の目的としては、「薬害問題について学ぶ」「障害とともに生きることについて理解を深める」という目的で授業をしていただきました。授業は2時間で構成されております。1時間目は、サリドマイド事件について、2015年2月頃に放送されていたNHKの「薬禍の歳月」というサリドマイドについて特集した録画を視聴しました。大体、30~40分間くらい観て、録画としては途中で終わっておりますが、その後、「薬害を学ぼう」のパンフレットを使って、サリドマイド事件について御紹介していただき、パンフレットの1、3、6ページについて10分程度、説明していただいたという状況です。
  2時間目に、(公財)いしずえサリドマイド福祉センター理事の増山ゆかりさんに講演を行っていただきました。講演の概要はここに書いてあるとおりで、まず、最初に薬には主作用と副作用があるというところからお話いただきました。例えば、副作用は、風邪薬を飲んで胃がむかむかする、注射を打った所が腫れるというところから始めていただき、薬害という言葉がありますが、副作用を超えた被害が薬害であると考えているということで、例えば、リスクとベネフィットのバランスが取れていない、人災の側面もあるということを講演で触れていただいておりました。
  その後、少し医薬品からテーマが飛んで、障害者としての人生についてお話していただき、障害があって生きたいように生きられないことが多かったのですが、負けたくないという気持ちが強い中で生きており、その中で助けてくれる人も多くいたということ、増山さんが就職をされたときに、会社の方から通訳が向いているのではないかという助言を受けて、そのときに初めて必死に中国語を勉強して、実際に通訳になり、中国に赴任したこともあるというお話をしていただきました。
  次のページです。医薬品の話に戻り、副作用が避けられないという薬の性質を考えると、場合によっては生徒の皆さんが被害者にも加害者にもなり得ることがあるということ、薬害を繰り返さないように自分で何ができるのか、あるいは、こういう被害を受けて困難な状況に置かれた場合、どのようにするのかということを考えるきっかけになればうれしいというお話をしていただきました。
  写真は、増山さんが講演されるときに理解しやすくなるようにということで、生徒に片手でニンジンの皮剥きをするにはどのようにすればいいでしょうかということをやっていただいたり、この後、増山さんが普段どのように料理をしているのかを実際に見せていただいたりしております。写真で非常に見えにくくなっているのですが、右側の写真は、増山さん御自身の日常生活の様子を撮影した動画を、放映しながら講演をされていたというところです。
  講演を聴いた生徒の感想です。今の動画等を見たこともあるのだと思うのですが、料理や生活されている中での御苦労を感じたという共感に関するもの、二度と薬害が起こらないように国や製薬企業は薬の安全性をしっかり確認してほしいという意見が出ておりました。
  全体を通して授業を受けた生徒の感想です。一番印象に残った内容としては、被害者への共感に関する感想が多く出されておりました。苦しんでいる人がたくさんいるということが一番印象に残っているという意見が多くあったところです。その次は、薬害について知ることができたことが印象に残った。40年以上前にこういう事件が起きているとは知らなかったし、そういうものはもうなくなってほしい、薬の副作用と薬害が違う問題なのだということが分かったという感想が出ています。また、サリドマイド事件について非常に詳しく話を聞いたので、ドイツで販売停止していたのに日本では販売停止に時間が掛かってしまったということについて印象に残った、国や製薬企業の対応について印象に残ったという感想が出ておりました。
  授業の良かった点については同じような中身ですが、薬害について知ることができてよかった、自分の身にも起こり得ることなので他人事と思わずに気を付けたい。また、再発防止について考えることができた、被害者の講演を聴くことができた、どうしてもっと早く販売を中止しなかったのかと、生徒自身も悔しい気持ちになりましたという感想がありました。
  21ページです。大阪府立牧野高校です。高校1年生を対象に授業を実施していただきました。教科は二つです。一つは人権講演会ということで講演会の形での授業と、公民科の現代社会の中で人権と関連させて指導を実施していただきました。講演会と現代社会の授業の間が少し空いており、大体、講演会は昨年の11月に行われ、公民科は今年の2月に行われましたので、3、4か月くらい間が空いているという状況なので、公民科の授業と人権の講演会の授業は少し関連しているのですが、それぞれ独立したものとして授業を実施していただきました。
  学習の目的としては、人権講演会については、増山ゆかりさんから、被害者と障害者の人権に関するお話を聞くということ、公民科の現代社会については、もともと人権について学ぶ授業の一環として実施しました。なぜ薬害は起こったのか、薬害を起こさない社会にするにはどのようにしたらよいか考えて、薬害が人権の問題であるということを理解することを目的に置いていただいております。
  指導案や、関連するテスト等も実施いただいたということで、参考資料が多くなっており、25~48ページまでが、実際に先生に作っていただいた指導案等です。38ページからですが、一部、テスト問題への回答も載っております。全てを説明する時間がありませんので、御参照いただければと思っております。
  21ページに戻ります。授業の流れについて説明します。最初に行われた人権講演会についてです。先ほどの枚方市立杉中学校と同じような内容で、増山ゆかりさんに講演を実施していただきました。こちらでも同じように増山さんが、分かりやすくなるようにということで、実際にリンゴの皮剥きを実演していただいたり、同じように生徒にも片手でリンゴを切るにはどのようにしたらいいでしょうかという形で、参加型の授業にしていただきました。概要については、枚方市立杉中学校と重複するところもありますので、省略いたします。公民科の授業で使用していただいたスライドが、31~34ページまであります。この授業では、そのままパンフレットを使うということは無かったのですが、増山さんのお話やパンフレットの情報を少しピックアップする形で、スライドを新しく作っていただいたということです。
  流れを簡単に説明します。まず先生から、薬によって障害を負ってしまうことがあるという導入のお話の後に、薬害の原因は漢字1字で表すと何かということで先生から質問されました。その回答として、「人」「薬」という回答がありました。その次に、薬には眠くなるというような副作用が必ずあるということを説明された上で、視聴覚教材を使って薬害の歴史について少しDVDを視聴しました。その後、改めて薬害の原因は何かと生徒に質問して、やはり「人」ではないかという回答がありました。副作用とは異なって、薬害の原因は薬ではなくて人にあるのではないか。具体的には、薬を作る製薬企業、国、医療を提供する医療機関、薬局は、全て人によって運営されているものですので、「人」にあると考えられるという旨の説明をされておりました。
  薬害を起こさない社会にするにはどのようにすれば良いかということで、生徒が各グループに分かれて議論するのですが、例えば、製薬会社がどのようにすべきなのかということについて考えるグループ、国がどのようにすべきなのかと考えるグループというように、それぞれのプレイヤーごとのグループに分かれて議論をするという形でした。
  そのグループ分けの仕方も、例えば、将来、一般企業に就職したいと思っている人は製薬会社のグループに行きましょう、公務員になりたいと思っている人は国のグループに行きましょう、医療職になりたいと思っている人は医療機関・薬局のグループに行きましょう、消費者問題について考えたいと思っている人は消費者のグループに行きましょうという形でグループ分けされておりました。
  グループごとに議論していただき、発表された生徒の意見については、こちらに書いてあるとおりです。例えば、製薬会社については、薬についていろいろな実験をすべきではないか、国については、会社とは別に独自に薬を検査する機関を作るべきではないか、医療機関・薬局については、やはり医療を提供する際には最新の知識を身に付けておくべきではないか、消費者については、そもそも病気にならないといいということ、薬や病気についての知識を身に付け、薬の説明文書をよく読んで医師や薬剤師の話を聴くべきという意見が出ておりました。
  先生から、この授業のまとめとして、産・官・学が国民の命を最優先に考えて仕事をすることが重要であり、国民が産・官・学を監視することが重要であると。それは自己決定権とも関連するのだという御説明をされていました。最後のまとめの言葉としては、人の幸せを奪うのは人であるし、逆に人の人権を守ることができるのも人であるということで、人権に絡んでいる問題なのですという御説明をされておりました。
  授業を受けた生徒の感想です。人権講演会については、増山さんのように前向きに物事が動くようにしていく姿に感銘を受けたこと、薬は良かれと思って服用するものだが、こういう被害が実際に発生したこともあり、それは怖いことだと思いましたという感想がありました。公民科の授業については、一番印象に残った内容は、薬害について知ることができたことが印象に残りましたという回答がありました。また、薬害については副作用が出すぎたものだと思っていたが、実際にはそうではないということが分かってびっくりしたという感想がありました。続いて、次のページですが、他人事ではなくて自分にも関係のあることだと知りました、これから起こる可能性も十分にあり、自分たち「人」が関係する問題なのだということを知ることができて印象に残った、またグループでの議論が印象に残ったという回答をいただいております。
  授業で良かった点については、視聴覚教材も薬害の理解に役立った、医薬品への興味を持つことができた、これは印象に残った点と共通するところですが、グループに分かれていろいろな視点から薬害について考えて、それぞれの意見を聞けたということが良かった点として挙げられております。
  この授業を実施していただいた先生の率直な感想をいただいております。29ページの「9 授業を計画・実施した感想と今後に向けての提言」を先生に書いていただいておりますので、少し紹介します。
  先生自身がまだお若く、薬害について学んでこなかったこともあり、準備に相当の時間を要したこと、また薬害に関する授業を広げていくには、国で、授業例を蓄積して、教員が授業を実践しやすい支援体制を整えていく必要があるのではないかという御意見をいただいております。大阪府立牧野高校については以上です。
  49ページです。5番目の志学会高等学校です。志学会高校は通信制の学校です。通信制なので、毎日、生徒が来るわけではないのですが、生徒が実際に来て授業を受けるスクーリングの日に、この関係の授業を実施していただきました。対象学年は、高校1年生は現代社会と日本史の中で薬害について触れていただいたということ、また全学年を対象にして特別活動として増山さんの講演を聴いたということです。
  学習の目的です。現代社会については、消費者問題の観点から薬害について取り上げていただきました。日本史の関係では、高度経済成長に関連する時期の薬害について取り上げていただきました。最後の特別活動については、薬害事件の被害者の講演を聴いて、社会にはリスクが存在すること、そのリスクは自分とは無関係ではないということを理解して、実際の生活にいかそうとするということが目的として掲げられております。
  授業の流れについてです。こちらも指導案やワークシートを作っていただいております。53~56ページまでが現代社会と日本史の指導案です。57、58ページがそれぞれのワークシートで、実際、当日に生徒へ配布したものです。これもスクーリングの日を活用してということですが、授業に入る前に、先ほども紹介したサリドマイド事件について特集したNHKの「薬禍の歳月」の録画を視聴した上で、それぞれ授業を実施されており、ある程度、サリドマイド事件について予備知識を持った上で授業に臨んでいるという状況です。
  公民科の現代社会についてです。消費者問題ということで、実際には教科書に沿って授業が進められており、まず、「信用」に着目して説明されております。消費者行政について、消費者運動を契機に制定された法律や行政機関があるという説明をした後に、少しサリドマイド事件の話に入り、その事件を防ぐためにすべきであったことについて考えをまとめて、それぞれ生徒から発表していただくということをしておりました。
  生徒からは、サリドマイド事件について詳しく番組を見たということもあり、情報公表の話、ドイツで出た「事件」、「事故」を知らせるべきであった、迅速に対応すべきだったのではないかという意見や感想が出ておりました。
  次のページです。消費者としてどのような点に注意すべきかについて、自分の考えをまとめていただいております。書いていただいた生徒の考えを抜粋すると、やはり消費者としても情報収集が必要ということで、薬については副作用も知った上で使用すべきだと考えたとか、安全を求める権利、知らされる権利、選ぶ権利があるということを理解する必要があるのだという考えが書かれておりました。
  別の日に、日本史の授業でも取り扱っていただきました。高度経済成長について、教科書に沿って説明されていく中で、高度経済成長そのものの話や、それに生じた弊害である公害問題について説明されておりました。そこに少し関連させて、またサリドマイド事件について御紹介していただきました。当日の先生の話し方として、労働時間が今よりも長かった当時、サリドマイド事件の薬については、癖になりにくい睡眠剤だといううたい文句で売られていて、そういう薬が被害につながってしまったというような御説明をしていただいております。あと、サリドマイド事件については公民科の学習との関係を踏まえて、課題意識の醸成を図るということで、国、企業の側からの問題点はどのようなものでしたかということを、また改めて考えさせていました。
  こちらは、全学年を対象にした特別活動です。こちらも枚方市立杉中学校と同じで、増山さんに講演をしていただきました。内容については、重複する所がありますので説明は省略いたします。次のページです。その講演を聴いた生徒の感想です。被害を受けた方だけではなくて、増山さんのお話の中で、増山さんのお母さんまでも責任を感じてしまっていたのだというお話を聴いて、非常に胸が苦しくなった、同じようなことが起きてもおかしくないと思われる中で、今日学んだことを今後の生活にもいかしていきたいという感想が述べられておりました。
  全体の授業を受けた生徒の感想です。医薬品、薬害について知った、興味を持ったということで、いろいろな御意見、感想をいただいております。もっと早く国や製薬企業が対応していれば大きな被害は防げたのかもしれない、薬が安全かを調べることが大事だと思ったということが挙げられております。被害者への共感というくくりでいくと、下から二つ目ですが、薬一つで人生を大きく狂わされている人々が行動を起こして世の中に訴え掛けているということに非常に感動した、差別や他の人からの嫌な視線を感じて生きて来られたのは本当に辛いことなのだと、二度と同じことがないといいと思うという感想がありました。
  59ページです。筑波大学附属中学校です。対象学年は、3年生を対象に授業を実施していただいております。社会科の公民の分野の取りまとめの単元になるかと思いますが、「よりよい社会を目指して」という項目と関連させて指導を実施していただきました。また、道徳という形で、被害者に講演をしていただきました。学習の目的は、社会科については個人が健康で文化的な生活を送りつつ、よりよい社会を築いていくために解決すべき課題として薬害を取り上げ、それについて自分の考えをまとめるという目的が設定されております。
  「授業の流れ」としては、先生に指導案や配布資料を作っていただいております。63~65ページの「別添7」は、筑波大学附属中学校の指導案です。67、68ページの「別添8」は、当日、生徒に配布した資料です。配布資料は、パンフレット「薬害を学ぼう」から抜粋した情報を載せているということです。
  まず、薬害のない社会を実現するには何が必要か考えるということが、この授業のテーマですと説明された後に、薬害と副作用の違いについてどのような違いがあると思いますかという生徒へ質問を行っております。薬害という問題について詳しく説明した上でではなく、自分で考えるということで先生は御質問されたのだと思います。そういう状況で、その違いは程度の問題なのではないか、病状の重症度に応じて、例えば、重症で言えば薬害だが、軽症であれば副作用ではないかと考えた生徒もいたり、被害の期間が違うのではないかという回答がありました。
  その後、「薬害を学ぼう」から情報を抜粋した資料を生徒に配り、目を通させた後に、「個人」「企業」「政府」「その他の独立した存在」がそれぞれ何をすべきなのかということについて、2人1組で議論して、生徒から発表してもらったということです。出てきた意見を一部紹介します。政府が医薬品開発の支援と規制を行うべきである、企業がミスをしたら罰則を科すべきではないか、海外とのつながりを強化したらいいのではないか、チェックする機関を複数設置して相互に監視させるべきではないかということに触れられていました。個人については、お薬手帳や薬の説明書をよく見て、調べたり、薬局に聞いたりすべきではないかという発表がなされておりました。
  この授業を通じて、社会はどうあるべきなのかを考えてほしいということを、先生から御説明されておりました。次のページに載せているのは、実際に先生が板書をした図です。社会のまとめの単元の所なので、統治機構の問題にも若干絡めてお話されておりました。裁判所、政府というワードが、この中では出てきております。
  道徳の授業です。こちらも増山さんの講演を実施していただきました。内容については、省略させていただきます。講演を聴いた生徒の感想は、自分たちの身近な問題で自分が被害者ではなくて、いつか加害者になってしまう可能性もあり、身近だからこそ考えなければならない問題だと感じた、差別の問題もサリドマイド事件の中には含まれていたことで、日本という国が薬害、社会問題、一人一人の幸福について、どのように正義を実行していくべきなのかということについて考えさせられる内容でしたというような感想が述べられていました。
  授業を受けた生徒の感想です。印象に残った内容としては、やはり被害者の講演が印象に残ったという声が多くありました。国などに責任があって生じてしまった問題で、政府も国も関わっているとして、これは他人事ではないと強く思ったという感想もありました。授業で良かった点は、重複しますが、薬害について理解することができた、再発防止について考えることができた、自分でどのようにすれば薬害についてなくすことができるかを深く考えるきっかけとなったという回答がされておりました。その他の意見としては、生徒たちで話し合って発表を聞いてということもあり、様々な立場においてできることについて考えて、答えは一つではないということを学ぶことができたということが、良かった点として挙げられております。資料2については以上です。
  続いて、資料3です。「この授業を通して把握できた課題等について」です。授業を見学させていただいた当日もそうですし、授業を実施していただくまでに先生と事務局でいろいろ相談させていただいたことを踏まえて、こちらとして把握できた課題、今後の取組についてまとめた資料です。
  まず、パンフレットの「薬害を学ぼう」の関係です。授業を実施していただく先生から、いろいろな薬害について掲載されているのはいいが、一つの物事について掘り下げていく授業スタイルをやろうと思うと少し使いづらい、国の役割や企業の役割が何かというような、正に生徒に考えさせたい点がパンフレットそのものに既にまとまってしまっているので、そのものを配って授業をするというのは授業として成り立ちにくいという御意見がありました。また資料1で説明しましたが、学校アンケートの中でも時間数との関係で、1枚くらいにまとまった資料があると良いという御意見もありました。
  来年度以降の取組です。こうした御意見等を踏まえて、来年度もモデル的な授業実施に向けた取組は継続したいと思っておりますが、授業の展開方法についてまた知見を増やした上で、パンフレットの簡略版や抜粋版を作成するなどして、薬害の問題のパンフレットが、より活用しやすいものとなるように検討を加えていきたいと考えております。
  「指導の手引き」の関係です。これも先ほど説明したとおりなのですが、今の「指導の手引き」は、中学校3年生の社会科の中の消費者保護に関連する授業の参考となるようにという形で作成・配布しております。今回、中学校3年生に対して授業を実施していただいた中では、公民分野の基本的人権やまとめ的な単元に関連させて指導を実施していただいたり、あとは、総合学習や道徳についても授業を実施していただいております。
  また、中学校3年生以外にも、中学校2年生の総合学習の時間、高校の公民の現代社会の人権や消費者問題の授業で使っていただいたということがあります。また、学校アンケートの中でも、消費者保護以外の指導案を求める御意見もありました。こうした御意見を踏まえて、来年度以降、引き続き授業を実施していただくという取組を継続しつつですが、教科等の特性に応じて消費者の保護以外の内容と関連させて取り扱うことも可能であるという点を考慮して、指導案の追加や再構成を検討してはどうかと考えております。
  裏面です。授業の実施率の向上に向けた取組です。率直な御意見として、授業を実施していただいた先生から、先生自身も知らないということ、生徒に身近な問題であるということを感じてもらうこと、導入部分で生徒を引き込んでいくということに困難さを感じるという御意見もありました。学校アンケートでも、聞き慣れない言葉が多い、指導時に改めて授業研究が必要になるという御意見も寄せられております。
  来年度以降の取組として、例えば、実際に教科ごとに研究会をやられているケースがあると思います。そうした中で、お時間をいただいて教師向けに講演を行ったりする、教師が薬害に関する理解を深めるために、何か取組ができないかということを考えていきたいと思っております。また、こちらは文科省とも良く相談したいと思っているのですが、他校の活用例を知りたいという御意見もありましたので、今日の資料2を基に作成した指導事例集を作り、パンフレットと併せて周知していきたいと考えております。
  長くなってしまいましたが、私からは以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。ただいま事務局から資料2、資料3に基づいて詳しく御説明していただきましたが、そのことに関して御質問、御意見がございましたら挙手をお願いします。

○栗原委員 初めに基本的なところを伺いますが、最後におっしゃられた事業の報告に関する資料の公開うんぬんですが、今日のこれは、この検討会の議事録、配布資料、いつもどおり公開される。それは参考資料2として、今、私たちが拝見したものがWEB上で公開されるということでよろしいのですか。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) それは当然、通常どおりやります。

○栗原委員 資料2は、どのようにして作成されたものなのか伺いたいのですが、各学校に皆さん分担されて、出向かれて参観されたと思います。授業を実施された先生が共通の項目、様式を与えられて、それぞれの先生が作った。そして、それぞれの先生が子供たちの感想を指導者の目で抽出してこういうふうにまとめたのか、あるいは医薬品副作用被害対策室の皆さんがまとめられたのか、そこがはっきりしないので教えていただきたいと思います。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 説明不足で申し訳ありませんでした。資料2の別添として付けている指導案やワークシートというのは、当然、各学校の先生に作っていただいたものです。ただ、学校によってこういったものを作られるときに、様式やいろいろ違うことはあらかじめ想定しておりましたので、この検討会で報告するための資料としてはなるべく統一的な書き方をした方がいいということで、こちらで基本的に資料2の本文については、医薬品副作用被害対策室で実際に授業に参観させていただいて、それをもとに作成をしたものです。

   アンケートについては本日は配布していないのですが、生徒向けのアンケートを授業の前後に実施したものがありますので、基本的にはそこに書かれていたものを抜粋しております。また、一部の学校で、アンケートを配ること自体について、生徒に余りいろいろなものを配り過ぎると混乱してしまうということで、先生が作られたワークシートの中に書かれていた感想などからピックアップしたものもあります。位置付けとしてはそういう位置付けです。

○栗原委員 つまり、別添を除いた部分というのは、医薬品副作用被害対策室で作られて、指導者に確認していただいたという感じですか。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) はい、そうです。こちらで一度、原案を作って、各学校の授業で実施していただいた先生方にも御確認をいただいたというものです。また、上野さんや増山さんにも事前に送付して、個人情報等に関わる話でもありますので、そこはそういったプロセスで作成したということです。

○栗原委員 この検討会の場には、もっともふさわしい、学校の現場の先生のお考えとか、生徒たちの反応とか、2回目だと思いますが、これだけふんだんに出されてきたという点で、非常に嬉しかったというのが正直な感想でした。以上です。

○衞藤座長 ほかに御質問、御意見はありますか。

○大平委員 実践例を見させていただいて、私は1年に1度しか出席していないので、これまで積み重ねてきた薬害教育の取組の一つとして、かなり良い部分が集約されてきたのではないかと感想としては持ちました。

   こうした事例をWEB上で公開されるという話ですが、薬害教育の実践例の資料に、このように実践をしていただいていますということで、毎年配っている「薬害を学ぼう」という資料の中に本来はあってもいいのではないかと思うのです。これを見て、うちの学校でも取り組んでみようかという動機付けになるのではないかと思います。どんな取組をしたらいいのか、なかなか分からないところも多分にあると思いますので、こうしたところの切り口で、回収率が10%余りでは高いのか低いのかという議論はあると思いますが、やはり、周知していく、皆さんに知っていただくためには、そのものの実践例をいろいろな形で広めていただくことがいいのではないかと思いますので、是非、検討していただきたいと思います。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 今回の資料2の体裁が、正にこの検討会で学校単位で御報告する体裁で作っておりますが、こういったものを作っていく中で、学校の先生からは、むしろ科目ごとに並べていただいた方が分かりやすいというか、学校によって複数科目をやっている所もあるので、そうした観点での並べ換え等も必要ではないかという御意見もいただいております。学校に配ることは考えているのですが、学校現場で活用しやすい体裁はあると思いますので、そういったところは検討した上でパンフレットにも同封することは行っていきたいと思います。

○手嶋委員 努力されているのは分かっておりますが、この際思い切って、受験生活ギチギチの中学生よりも高校生のほうにも、予算とかそういうこともあると思いますが、「薬害を学ぼう」というパンフレットを配布することも考えていただけたらと思います。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) すぐに全高校に来年度から送りますというのは、すみません、そこは難しいというか、無理なのですが、今回、実際に高校でも授業をしていただいている所にはお送りしております。御関心を持っていただける所があれば、当然、こちらで部数は用意して、パンフレットをお送りすることは少なくともやっていきたいと思っています。できるだけ多くの所で取り扱っていただけるようにということで、今後も検討していきたいと思います。

○手嶋委員 もう高校生になると、そろそろ大学受験もあるでしょうけど、実社会に向けて成長のときで、薬害に関して、ある程度の知識を勉強していったほうがいいのではないか。やはり、中学ではやっていただいて、あと忘れ去られていくというか、受験があり、まだ幼い頭脳よりか、少しゆとりのある高校生の方でこういう知識を是非広めていただきたいと思っております。

○衞藤座長 花井委員どうぞ。

○花井委員 今、何人かの委員が発言したとおり、今までここで検討された実践例がかなり整理された形でできていて、事務局は非常に頑張ったというか、すごいなと。資料3は私たちが言いたい論点を先取りされていて、この委員会でやるまでもなく、事務局として分かってますみたいな話で資料3が出てきているのですが。今、手嶋委員が発言したように、高校でもやれると。これを見ますと、中学よりも高校の方が薬害というコンセプトと自分の実社会との関係が割と概念的に理解されているような展開が多いようなので、それは良いなと思って見たのです。ホームページ上では、あえて中学校なので、高校でもやってくださいというのをどこで言うかというのがあるのですが、別に高校でやる分にはいいし、それはそれの良さがあるということで、それはもっと強化していくということは良いのではないかと思います。
  先ほど事務局で言ってくださいましたが、科目毎の手引みたいな指導の仕方みたいなものが充実していくとかなり良くなると思います。これは結構また大変な作業になっていくと思いますが、是非、それを作っていただけたらと思います。
  大平委員の発言も良いですが、カラーでこんなやってますみたいなものが、もう一つあれば、それは確かに実際の実践例を紹介するものもあれば、お金があればの話ですが、そういうものもあれば、より良いかなと思いました。たくさんの実践例をやってくれて、やっと良かったなという気分になりました。ありがとうございます。

○衞藤座長 栗原委員どうぞ。

○栗原委員 今日の議事録と配布資料をサイト上に公開するとなると、これは埋もれますね。ですから、「薬害を学ぼう」のサイトの中に、例えば2012年の立命館宇治と、甲府で実践された望月先生の二つの資料が上がっていますが、それに並列というか、議事録の配布資料の方にリンクを置いて、ただ単に配布資料の所だけでは足りないと思います。せっかくのものが埋もれてしまう可能性があるので、その辺はよろしくお願いします。

○花井委員 これは普通の定例のオペレーションはやりますが、これを編集し直して、先ほどの「薬害を学ぼう」のページに載せるための分にブラッシュアップしたものを別途、載せるという説明だったということですね。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) これはこれで、当然、通常どおりアップしますが、教育現場で、より見やすい形等に再構成した上で、そういったものを配ったりするなど。

○栗原委員 再構成のためには一定時間かかると思います。議事録や配布資料の段階で、リンクも置いていただくことが良いかと思います。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 検討いたします。

○衞藤座長 矢倉委員どうぞ。

○矢倉委員 指導してくださった先生方が御立派な指導をなさっていますし、ですから、子供たちの感想も結構、正当な感想が入っていると思います。しかし、前回の検討会で、中学生に対しては少し難しいのではないかという御意見が、2、3人からあったように思います。私もそのうちの1人です。それと、回収率との関係を見ますと、これだけ毎年やっているのに、今年は少し増えて10%を超えたということですが、これは教材をどこで指導するかという選択が、学校として非常に難しいのではないか。だから、いつまでも時間と意欲のある教師は、ここでやろうという決定的な時間を作るわけですが、まだそこまで時間が足りなくてふうふう言っている教師もあると思うのです。そういう人にとっては、一体どこで指導したらいいのだという迷いが、やはりずっと尾を引いているのではないか。その難しさが回収率にも繋がってきているのではないかと思います。先ほどもったいないとおっしゃった先生もたくさんおられますので、私も同じ思いでいるのです。その辺をもう少し、厚労省としても、文科省もしっかりこの問題を考えていただけたらありがたいと思います。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございます。その他いかがですか。

○栗原委員 我々ばかりよく話しています。この辺りの専門でいらっしゃる先生方のお話も伺いたいと思います。

○高橋(浩)委員 御指名ありがとうございます。私は言おうか言うまいか迷っていることがあるのですが、結局、本検討会には、実際に学校現場での薬害に関する教育を充実させたいという願いがあるのだと思うのです。今、どうしてもパンフレットを学校に配るという形だと、なかなか全ての子供たちにというのは難しい面もあると思います。私が一つ、これは良いかどうか御判断いただきたいと思うのですが、ちょうど学習指導要領が変わって、今、正に中学校の教科書を作っている最中なのです。来年には高校の教科書を作ることになると思います。「薬害を学ぼう」を教科書を作っている会社に、厚生労働省として、過去のいろいろなことを踏まえて、こういうことをやっているので、是非御参考にと教科書会社に送付したなら、教科書に影響を与える可能性もあると思います。各学校にどんどん働きかけることは大事だと思いますが、ちょうど今、教科書を作る時期なので、もちろん圧力をかけてはいけないと思いますが、学校の先生が薬害について知らないように、教科書の著者も余り知らない、あるいは関心がないということもあり得ると思いますので、一つの手かなと。失礼しました。

○衞藤座長 ありがとうございました。高橋寛委員、お願いします。

○高橋(寛)委員 大学で薬害を教えていることもありますが、やはり、当初この委員会でも発言をしておりますが、予定していたとおり、中学生は薬害の詳細まではわからなくても、感じるというか、被害者に対し共感はすごくできるのだと、この資料を見ても分かりました。やはり、高校の方は成長というか、大人になっていますので、感じるだけではなくて具体的にどういうふうなことをすればいいとか、薬害が社会の中でどういう位置付けにあるのかを理解できています。その辺は、中学生と高校生はそういう分け方でいいのではないかと思います。生徒に配布する資料は同じでも、学年の違いでそこを目標として、まず授業をやっていただければいいのではないかと思います。それが今回、複数の学校の実践例の中でちゃんと授業ができることを証明できたことは非常に良かったと思います。あと一番感じたのは、若い人たちがもう薬害を知らなくなっているということです。教員が教えられなくなっていることが、もしかしたらこれから続けていくときに問題で、教員に誰が教えるのかというところが一つ課題としてあるのではないかと思います。

   何度もこれはアンケートでやっていますが、11,000(校)出して、実践してくれるのが約500(校)なので5%ということです。やっている学校はいいのですが、残りの95%の学校は、どういう取組なら可能なのかというところが掴みきれていないのが最大の課題ではないかと思います。
  もう一つ、後で過去の資料と比べてみればいいのですが、資料の48ページ、薬害という言葉を全く知らなかったという高校生が3割いるということです。この辺の数字を全国的にどうやって拾っていくかということも、少し今後は考えていければいいかと思います。

○衞藤座長 ありがとうございます。

○館委員 今、高橋(寛)委員から、95%の現場ではなかなか実際に実施されていないという現状が述べられましたが、その理由と言うと変ですが、私自身が以前、筑波大学附属中学校にいたもので、学校現場で感じていたところを少し申し上げます。
  薬害に関わる問題を中学校で取り上げるのは、社会科では公民的分野の「消費者の保護」のところです。学習指導要領上、「消費者の保護」は市場に委ねることの難しい問題のひとつとして扱われています。経済単元は、市場に任せるべき問題と市場に委ねることが難しい問題とに大きく分かれており、「消費者の保護」は消費者の保護政策を取り上げるべきだという位置付けになっているわけです。その教材を考えるときに、消費者の保護政策として何が適切な教材かということを先生方は悩みます。もちろん教科書会社も考えるわけです。そのときに教材は、身近であって分かりやすくということを意識するのです。薬害だけでなく、公害問題もそうですし、様々な社会問題が戦後起きてきた中で、今の生徒に何が本当に身近で分かりやすく感じられるかということを考えるのです。
  今回の薬害に関する実践報告では、例えばスライド教材が使われたり、サリドマイド被害者である増山さんを実際にお呼びして話を聞く機会が設けられたりしたのですが、このような教材が提示されますと、生徒にとって今まで全く無知だったものが、急に近い存在になってくることがあるのです。このようなすぐれた教材が提示されたのは、先生方がさまざまな実践を積み重ねられていたり、工夫したりしたからだと思うのですが、多くの先生方はなかなかこのレベルまではいかないのが現状です。変な話、学習指導要領を新しくしても、学習指導要領の徹底というのはきっと文科省の方も相当悩まれているわけです。しかし、良い教材というのは、一度こういう形で提示され広がり始めると、口伝えで、少しずつ少しずつ広がっていくものだと思います。生徒にとっても教師にとっても良い教材だと感じられたり、ホームページ上に分かりやすい教材がどういう位置付けで、どんな単元で使えるかということが出てきたりすると、「あっ、これ使えるな」と一般の先生方が感じて、割と手軽に手に取ってもらえるところがあると思います。身近さに関して言うと、薬害という問題も、今の子供たちにとってみて、やっぱりこれは自分たちが考えなければいけないのだなと感じさせる、仕掛けと言うと言葉は良くないかもしれませんが、切実性のある教師からの働きかけが多分必要になるかと思います。
  また一方で、社会科というのは、金融教育・法教育・消費者教育・投資教育・平和教育・憲法教育という形で、いろいろな何々教育が要請されています。そうすると、薬害に関する教育と聞くと、社会科の先生は、「えっ、また」という抵抗感を持ちがちです。その中での選択になってきますので、「あっ、これ使えるな、大事だな」と、社会のこれからの在り方を考えるときに必要性が非常に感じられるなという形での教材や情報の提供ができれば、それがどのような方法かということを本当はここで言えればいいのですが、そこはなかなか難しいのですが、現場の先生方の重い腰を動かすことができるのではないかと思います。今回このような実例が出てきたので、これは使えると先生方はきっと思いはじめるのではないかと思います。長くなりましたが、以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。栗原委員、望月委員という順番でお願いします。

○栗原委員 先生方からお話をありがとうございました。資料3の3番の中の「来年度以降の取組」に2項が挙げられていましたが、その1項目は、都道府県によって名称が違うかもしれませんが教育行政にかなり近い密着した形で「中教研」などと呼んでいましたが、例えば何々市の中学校教育研究会(中教研)の社会科研究部会というのがあります。都道府県レベルでも同じものがありますので、そういったところに働きかけることかなと思いました。私の地元でそれを試みてみようかと思いました。
  それと、現在のパンフレットでは、中学生には難しいのではないかという御発言が、今までも、今日も結構ありましたが、ちゃんと指導要領の単元の消費者保護という、そことの関連だよということまで示されているわけですから、逆に、教材の内容を見直して、中学生向け、先ほど抜粋版とか簡略版というお話もありましたし、端的に言ったら、高校生版と中学生版というか、そういった方向を目指した教材の見直しの作業に入る段階かと。もちろん、量的に実践を増やすことが今一番大事かと思いますが、そんなことも思ったりしました。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。時間進行により、望月委員で最後にしたいと思います。

○望月委員 もう、ほとんどの先生がいろいろ御意見を出していただいたのですが、筑波の先生がおっしゃっていたように、教員がこういった素材があることを余り知っていないことを何か解決していく方法を見つけることで、薬害を素材にして、社会科の中で人権、あるいは消費者保護ということを教育していくことに役立てて、なおかつ、こういった薬害が再発することの無い社会を作っていくところまで子供たちに考えさせるような教育ができていくといいなと思います。
  先ほどから高校生のほうが、もしかしたらそこまで深く考えるためには適当かもしれないというご意見がありましたが、私もそんなふうに思います。発達段階もあると思いますが、「気付き」というのは多分、中学校でできるのでしょうが、社会の仕組みとしてどうあるべきかというところまで考え方を深めさせるのは、もしかしたら高校のほうが適当かもしれないと、私は何回も毎年ワークショップで中学生、高校生を対象にやってきて、そんなふうに感じています。
  もう一点、先ほど、教科書を今作る時期なので、教科書を作る出版社に情報をというお話が出ていましたが、そういう方法もあるなと思ったのですが、実は高橋(浩)委員の御意見を聞く前に意見を述べようと思っていたのは、私は保健体育の教科書の医薬品の教育の指導者向け解説を担当して書いたことがあるのですが、その中には、実は薬害も入れてあるのです。社会科とかでは、どのようにして教員向けの指導教科書みたいなものが作成されているか分からないのですが、一つの素材として人権とか、消費者保護を教育する中に、こういうものが使えるという材料になるということを、教員向けの解説書の執筆者に情報発信ができないかということを感じました。
  どういうふうにアプローチしていいか私もよく分からないのですが、先ほどの教科書の出版社に送れば、それを担当する執筆者等に回してもらえると、すごく良いかなとは思います。

○衞藤座長 多数の御意見をいただきまして、ありがとうございました。また、ほかにも御意見があるかとは思いますが、この後の議題もありますので、この議題については以上とします。なお、本日皆様からいただいた御意見については、事務局で整理して、必要に応じて、また皆様に御相談いただきたいと思います。最終的には、議長の私に御一任いただければと思いますので、よろしいですか。

   ありがとうございました。それでは、そのように進めたいと思います。議題3、薬害に関する資料の収集・整理等についての御報告ということです。直近の状況を事務局から御説明をいただきます。よろしくお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 資料4の「薬害資料データ・アーカイブズの基盤構築」(厚生労働科学研究費補助金)の平成29年度の活動について、御説明します。

   今年度の活動の報告についてです。今回、御報告させていただくのは、主に被害者団体、薬被連との関係があるところについてです。平成29年7月2日に、「薬被連・研究班の研究交流会」を実施しました。本日、お越しいただいている藤吉先生から「アーカイブズ」について御説明いただき、「当事者が当事者の過去を展示すること」の宣伝として、サンフランシスコGLBT歴史博物館の例を御紹介いただきました。
  次に、「薬害資料アーカイブ化に関するワークショップ」ということで、平成29年8月19日~8月20日にかけて、愛媛県の今治市においてワークショップを開催しました。こちらの研究班の奈良女子大の島津先生に取り仕切っていただいて、薬被連の関係者の方にも13名ほど御参加をいただきました。内容としては、陣痛促進剤による被害の関係の資料を題材として、資料整理や目録化作業の技能習得を目指すという内容です。実際の資料を題材について、簿冊単位の仕分けや、目録作りを行ったり、紙資料のスキャニングなどを行ったということです。
  次は、3月3日に行ったものですが、厚生労働省の予算で、被害者の方の証言映像を撮るという取組を行っております。その関係で、試写会も含めて、研究班での薬害被害への理解を深めることと、被害者の方と一緒に後世にそれを伝えるという課題についての枠組み構築を図るという関係で検討会を実施しております。
  次のページは、同じく証言映像の関係で、2月以降、収録を実際行っていたわけですが、証言映像の活用方法についても、この研究班において御検討をいただくということで、その前提として当然、御本人の同意を得て、収録撮影のときに研究班のメンバーも同席するという取組を行っております。
  次は、昨年度においても、この検討会で発表しましたが、大阪人権博物館に緊急避難をしている資料の整理を随時行っております。特に、具体的には散逸の危険がありました「福岡スモン資料」や「筋短縮症資料」について、平成27年に大阪人権博物館に移管しました。その資料については研究班で目録作成などを実施しています。福岡スモンについては、ファイル単位の目録打ち込みが終了して、今後、資料のスキャニング等も実施していく予定です。私からは以上です。

○衞藤座長 それでは、この件は報告事項ですが、御意見や御質問がありましたらお願いします。また、藤吉先生にも参考人としてお越しいただいておりますので、御質問については適宜、藤吉先生からも御回答をいただけるかと思います。いかがですか。

○花井委員 厚生労働大臣が、資料館的なものの必要性についてお認めいただいているとは聞いておりますが、残念ながら現状、そういう資料館は無いので、各団体が一生懸命自分の所で整理しているという実情にあると承知しております。
  そうは言っても、各団体が全部把握していないということで、若しくは、かなり歴史のある団体の場合は、もう解散して、店じまいしましょうかということになった資料も捨てられては困るということで、今、仮置き場として人権博物館の協力を得て、そこに福岡スモンと筋短縮症の二つの資料についてはお預かりいただき、しかも、ただ物置として借りるのではなく、収蔵庫として、ちゃんとアーカイブを作って整理して収納していく形になっていると思います。
  藤吉先生に教えていただきたいのですが、私どもの懸念としては、他にも、そろそろ押さえておかないと危なくなる資料があります。こうしたものについても引き続き、国と研究班としては御対応いただけるという理解でよろしいのですか。

○衞藤座長 藤吉先生、よろしくお願いします。

○藤吉参考人 御質問ありがとうございました。薬害とは直接関係無いですが、10年ほど前には、戦友会の解散で、その資料をどうするのかということが非常に問題になって、保護された資料もありますが、実際行方不明になった資料もかなりあります。そういうことを繰り返さないようにということで、今、研究班が準備を進めております。所帯がそんなに大きくありませんので、私たちが全ての資料の面倒を見るということは、現状では申し上げにくいですが、当事者の皆さんが、当事者の皆さんの力で自分たちの資料を整理することについて、より深く理解していただけるように、今後は私たち自身が人権博物館に所蔵されている資料を整理する作業と、それぞれの団体で、所蔵している資料を、それぞれの場で整理していけるように、そういうことをサポートするという方向で、力点を移したいと考えておりますので、その辺は来年度1年でどれだけ進むかというのは確約しにくいところですが、そういうところに力を注いでまいりますということは、今の時点で申し上げられます。以上です。

○衞藤座長 ありがとうございました。事務局から何か補足する御意見がありましたらお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長 今、藤吉先生からお答えいただいたことに尽きると思いますが、国としても薬害資料について全国にどういう団体にどういうものがあるか、まだ良く分からない部分はあります。その辺の把握とか、物理的な整理はともかく、全体の把握は一定時間かかるかと思いますので、その点については研究班の先生たちや、薬被連と御相談しながら着実に進めていきたいと思います。以上です。

○花井委員 ありがとうございます。どんどん探してきて収蔵しろということではなくて、事務局からも説明があったように、調査しているうちに、あっ、これはどうにもならないものだ、何とかしなければという緊急避難的なことが、多分生じていくだろうと。そのときに適宜、対応していただけるのであれば、それでよろしいかと思います。

○栗原委員 それぞれの被害者団体が保有する資料については、当事者として、自分たちの生き様に関する資料ですから、自らそれを整理して後世へという努力は当然だと思うのですが、第三者的な立場で考えると、被害を受けた者に、更にこういう仕事をやらせるのかという怒りというか、何というか。やはり、それはふさわしい建物があって、能力ある専門的な方がそれに取り組んでいただくことが、真の資料保存、将来の公開のためには絶対に必要だという、そこはしっかりと確認していただきたいと思います。

○医薬品副作用被害対策室長 今後はどういうスケジュールで、どういうふうにしていくかというのはなかなか現時点で申し上げられないのですが、基本的な考え方としては、後世に残すべき資料が、どういうカテゴリーのものかということについて、できる限り、まず共通理解を作った上で、被害者の団体中心だと思いますが、被害者の方の負担ができるだけ少ないような形で、国としてどのような取組ができるかということも、また御相談していきたいと思います。

○衞藤座長 その他にいかがですか。

○藤吉参考人 釈迦に説法になりそうですが、アーカイブズを考えるときに、いわゆる本、図書と違うのは、図書の場合には誰が書いた、どこの出版社から出た本ということで、一気に検索が可能です。何年のどこの出版社から出たと。

   資料の場合には、ある活動をしている中で作られるものが大半ですので、例えば、この資料はこういう場面で、こういう会議で作られた、会議で合意されたものであると。または、ある人が会議に出すために個人的にまとめた内容だというものもあり、同じ内容でも意味合いが異なってくる場合があります。これをアーカイブズの世界では、二つのC、コンテンツとコンテクスト、つまり、その資料の内容と、その資料が作られた文脈、この二つがはっきりして初めてアーカイブズとして意味を持つことということを強調します。そういうときに、必ず当事者の皆さんのお知恵を拝借しないといけないので、その点は重々御協力をお願いしたいと思います。以上です。ありがとうございました。

○衞藤座長 ありがとうございました。他にありますか。

○栗原委員 資料4の2ページ、二つ目の○の「内容」の一つ目に「福岡スモン資料」と「筋短縮症資料」とありますが、東京スモン第2グループの、量的には段ボール2~3個ぐらいで少ないのですが、これが抜けていると思います。以上です。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 御指摘ありがとうございます。

○衞藤座長 他にありますか。それでは、来年度の活動状況についても、また御報告をお願いしたいと思います。以上で、本日の議題は全て終了しました。次回の日程等について事務局からお願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) 次回については、事務局より、追って日程調整をしますので、また御連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。それでは、これで本日の検討会を終了します。長時間にわたりお疲れ様でした。御協力をありがとうございました。

○医薬・生活衛生局長 委員長すみません。事務局から資料の御紹介を終わった後で申し訳ないのですが、配布してあって全然、言及していない資料がありますので、説明の時間を少しいただきたいのですがよろしいですか。

○衞藤座長 はい、お願いします。机上配布資料を説明する場面がなかったので、お願いします。

○医薬品副作用被害対策室長補佐(川瀬) こちらは藤原委員からお配りいただいたもので、薬の適正使用等に関する教育で、保健指導や先生方への参考資料という形でいろいろ工夫をされて配っているものです。薬害教育においても参考になるのではないかということでお配りいただいたものです。では、藤原委員からよろしくお願いします。

○藤原委員 事前にいらしたときに、実践例をどうのこうのというお話があったので、私どもはどちらかというと10年ぐらい、望月先生が一番御協力をいただいているのですが、一番最初に質問させていただいたのは、やはり、保健体育の時間の薬教育は中学の義務教育に入っています。ところが、薬剤師会を通して、いろいろなアンケートをやらせていただくと、非常に回収率が悪いので。正直を言って1桁だったのです。したがって、一番最初に言わせていただいたのですが、それは別として、やはりこういうものを作っていかないと、実際、現場の先生方がこういうものでやるのだという、先ほど正に実践例ということをおっしゃいましたが、そういうものも含めて御参考までに配らせていただきましたので、是非、この会でも社会科に向けたいろいろな取組だと思いますが、参考にしていただければと思って配らせていただきました。どうもありがとうございました。

○衞藤座長 どうもありがとうございました。 それでは、これで終了します。ありがとうございました。

 

 

(了)

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