ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央社会保険医療協議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)> 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第135回議事録(2017年6月28日)




2017年6月28日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第135回議事録

○日時

平成29年6月28日(水)10:30~11:18


○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)


○出席者

中村洋部会長 野口晴子部会長代理 関ふ佐子委員 田辺国昭委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 平川則男委員 宮近清文委員
中川俊男委員 松原謙二委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
加茂谷佳明専門委員 吉村恭彰専門委員 上出厚志専門委員
<事務局>
鈴木保険局長 谷内審議官 濱谷審議官 迫井医療課長 眞鍋医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○薬価制度の抜本改革について

○議事

○中村部会長

 ただいまより、第135回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。

 まずは本日の委員の出欠状況について報告します。本日は全員が御出席です。

 なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○中村部会長

 では、議事に入らせていただきます。

 今回は「薬価制度の抜本改革について」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。

○中山薬剤管理官

 資料の御説明をさせていただきます。

 薬-1をごらんください。今回は「薬価制度の抜本改革について(その11)」ということで、「8 イノベーションの評価」をテーマとさせていただきたいと思います。

 背景ですけれども、イノベーションの評価につきましては、大きく分けると2つあると思います。1つは収載時の薬価算定または既収載品の薬価改定時に、臨床上の有用性などに基づき行われる薬価上の評価というもの。もう一つは、適応外薬等の問題の解消の促進ということとともに、革新的な新薬の創出の加速といった観点で、特許期間中の薬価の引き下げを猶予するという形の新薬創出・適応外薬解消等促進加算というものがあるということになろうかと思います。このうち、御存じのとおり、後者については前回の中医協薬価専門部会で議論をさせていただいたという状況ですので、今回は前者のほうを議論させていただく形としたいと思います。

 従来、新薬創出に係るイノベーションにつきましては、薬価において適切に評価することとされております。具体的に言いますと、新医薬品の薬価算定の際には有用性の程度に応じて加算を行う。そして、既収載品の薬価改定の際には小児や希少疾病などの効能を新たに追加した薬剤に対して市場実勢価格に基づく算定値に対して加算を行う。そのような仕組みが導入されているところでございます。

 2ページをごらんください。こうした仕組みにつきましては、薬価制度におけるイノベーションの評価のあり方ということで見直されてきております。例えば画期的加算を例にとりますと、イノベーションの評価が不十分であるという理由から、平成12年度は40%であったところ、段階的な引き上げが行われ、平成20年度からは70120%となったという経緯がございます。

 昨年末の基本方針でも、真に有効な医薬品を適切に見きわめてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図るとされております。国民負担の軽減とともに薬価制度におけるイノベーションの評価というものについて検討する必要があるという状況です。

 基本方針及び中医協において示された課題としましては、今、御紹介しました基本方針の内容、さらに中医協においてもイノベーションの評価についてどう考えるかという点が課題として提示されているという状況です。

 3ページに参りますけれども、現行制度であります。新医薬品の算定時におきましては、類似薬効比較方式(I)の場合と、原価計算方式の場合とで異なる方法となっております。

 まず、類似薬効比較方式(I)の場合ですけれども、ここの下の表に掲げているとおり、各種加算、補正加算を行うこととしているということでありまして、これについては参考資料にも3コマ目にもう少し詳しい内容がございますので、これは御参照いただければと思いますが、例えば画期的加算については3つの要件を満たすものということで、新規の作用機序であるということ、さらに類似薬に比べて高い有効性・安全性を持っているということ、さらに疾病の治療方法の改善になるということ、この3つの要件を満たす場合に画期的加算になるというような条件があるということなどがございます。

 こうした加算の加算率については、公開した基準によるポイント制によって定量的に算出した加算率を参考に決定しているという状況です。

 次に、原価計算方式であります。原価計算方式の場合は営業利益率について、既存治療と比較した場合の革新性や有効性、安全性の程度に応じて、平均的な営業利益率のマイナス50%からプラス100%の範囲内の値を用いることにしています。

 これについても公開した基準によるポイント制により、定量的に算出した補正率も参考に決定しているということでございます。

 既収載品の薬価改定時におきましては、下に3つありますが、小児に係る効能・効果または用法・用量が追加されたもの、希少疾病等に係る効能・効果等が追加されたもの、あるいは先駆け審査指定制度に指定されたものがある場合、また、市販後に集積された調査成績により真の臨床的有用性が直接的に検証されていることが国際的に信頼できる学術雑誌への論文の掲載等を通じて公表されたもの。これらの場合に、薬価改定の際に算定値の加算の対象となる場合があり得るということであります。

 なお、製造販売業者の負担が相当程度低いという場合には、こうした加算は行わないというようなことも考慮されております。さらに加算率については5~10%ですけれども、既に持っていた効能による市場規模がありますので、そういった市場規模の大小に応じて、その加算率も傾斜配分をすることになっているところでございます。

 今後の検討課題ですが、新医薬品の算定時におけるイノベーションの評価ということで、このイノベーションの評価、新医薬品の算定時のイノベーション評価のあり方についてどう考えるべきかということであります。

 特にですけれども、原価計算方式が採用される医薬品につきましては、革新的な医薬品も含まれ得るにもかかわらず、イノベーションに関する評価については類似薬効比較方式とは異なり、価格全体ではなく平均的な営業利益率に対する補正として行われております。このため、類似薬効比較方式と比べれば、薬価全体に対して限定的な評価となっているという指摘があるということであります。これについては参考資料の12コマ目をごらんいただきますと、原価計算方式の場合、営業利益率に対する補正という形で加算率が設定されますので、加算率がプラス20%、プラス30%、プラス40%となったとしても、それぞれの加算率が0だった場合と比較した場合の差額が右から2つ目の欄にありまして、その差額に基づいて薬価と比較した場合には、実質加算率としては3.52%、5.43%、8.91%ということで、おおむねその加算率から比べると5分の1程度になるという形となっております。

 類似薬効比較方式の場合は加算率20%、40%というものについては、算定されたものの全体に掛けますので、実質加算率としては同じ20%、40%になるという状況があるということで、こういったことを指しております。

 薬-1に戻っていただきまして、4ページの次の段。一方、原価計算方式は医薬品の製造等に係る経費を積み上げて薬価を算定する方式ですので、類似薬効比較方式とは薬価算定の考え方が異なっている面もあるというのも事実でございます。

 こうしたことを踏まえ、原価計算方式におけるイノベーション評価のあり方をどう考えるかということです。

 さらに、原価計算方式におけるイノベーション評価については、製造経費等が明確とされた場合により評価できるような仕組みを設け、これによって、あわせて原価計算方式における正確性・透明性を向上させることについてどう考えるかということも検討課題として挙げさせていただいております。

 次に、5ページです。既収載品のイノベーションの評価のあり方について、どう考えるかという点でございます。先ほど申し上げましたとおり、小児や希少疾病などに対して効能などが追加されたときに加算されるといったものですけれども、その範囲の妥当性などについてどう考えるかというように考えていただければよろしいかと思います。

 以上です。

○中村部会長

 ありがとうございました。

 ただいまの説明に関して、御質問等がありましたらお願いします。

 安部委員、お願いします。

○安部委員

 原価計算方式について、御説明をいただきましたが、参考資料の12ページで、加算率と実質加算率があり、管理官からおおむね5分の1という評価になるという御説明がありました。

17ページを見ますと、加算の要件項目とポイントということで、それぞれ、例えばa-110ポイント、b-1、c、d-1、e、fとあり、満点をとると20ポイントということで補正率が100%になるということかと思います。そうすると、画期的な医薬品でこの補正率を満点とるようなもので100%のプラス加算になっても、実質薬価でいくと20%が上限になるという考えでよろしいのでしょうか。

○中村部会長

 薬剤管理官、お願いします。

○中山薬剤管理官

 お答えします。原価計算方式に関しては、参考資料の10コマ目に計算の仕方が載っております。プラス100にするということは営業利益率のところを2倍にするということになりますけれども、営業利益の部分がほかの販売費・研究費等や流通経費など、それぞれ関係するような形の式になっておりまして、そういったことで細かく計算しますと、営業利益率を仮に14.7%として流通経費を7.3%とする。ここに書いてあるとおりですが、さらに消費税を8%とします。営業利益率のところがプラス100%とした場合には、実質加算率としては計算上はプラス20.82%になります。

○安部委員

 御説明、ありがとうございました。

 そうしますと、薬-1の4ページのところでも説明がございましたけれども、画期的な医薬品であって、かつ、製造費等の透明性が高い、明確であるという場合。いろいろな条件はあると思いますが、そういった医薬品に関して、類似薬効比較方式と比べて原価計算方式の評価のあり方はかなり限定的だなという印象があります。そこのところは透明性と革新性という要件を踏まえつつ、その評価のあり方については検討すべきだと考えます。

○中村部会長

 吉森委員、お願いします。

○吉森委員

 革新性のある医薬品について、そのイノベーションに対する評価を行うことは、当然、国民によりよい医薬品が早期に提供される体制を整備していくという観点で、最も重要な論点であるとは思いますが、一方で、課題はその評価の方法についてです。今回、議題となっている保険収載時、また、薬価改定時、その評価、更には先ほど議論がありました、費用対効果。費用対効果では倫理的・社会的影響等に関する観点からの検証項目にイノベーションの評価が盛り込まれておりますし、更には新薬創出等の加算。このように、薬価制度全体にイノベーションという評価が入っておりますので、この薬価制度全体を俯瞰して、医薬品のイノベーションの評価がそれぞれ過不足なく行われているかどうか、これをしっかり整理して議論する必要があるのではないかと思います。

 その上で、今回御提示の4ページの4番の今後の検討課題についてですが、最後の段落の○、「また」以下でございます。原価計算方式におけるイノベーションの評価として、製造経費等が明確とされた場合に、より評価できるような仕組みを設け、あわせて正確性・透明性を向上させることについてどう考えるかとありますが、事務局におかれては、具体的にどのような経費を明らかにして、それに対してどのような評価を行うことで正確性・透明性を向上させることができるとお考えなのか。何かイメージをお持ちであればお教えいただきたいと思います。

 というのは、この点は、まず、どのような経費を開示できるのか。これが判然としなければ、それに対する評価をどうするかという具体的な議論にも入れませんし、当然、製薬メーカーの皆さんの協力が必要です。そういう意味では、今後の薬価算定の際の原価計算方式等々のあり方の議論の際に、再度検討すべき重要な事項だと思います。

 質問のところをよろしくお願いします。

○中村部会長

 薬剤管理官、お願いします。

○中山薬剤管理官

 再度、参考資料の10コマ目をごらんいただくことになると思いますけれども、原価計算方式についてはこうした項目、1の原材料費以下、労務費、製造経費、そしてそれを全体として4の製品製造原価と呼んでおりますけれども、そうしたもの。さらには販売費・研究費等といったようなものがございますので、そういったものの内容について明確化された場合ということを想定しているということになろうかと思います。

○吉森委員

 それは製薬企業から明確に、我々が納得できるような開示をしていただけるという前提ですか。

○中山薬剤管理官

 実際のところ、移転価格といった形での、なかなか内容がわからないといったものを除けば、基本的にはこういった原価計算に基づく場合には、今申し上げたようなところの情報についてはデータをきちんと出してもらった上で、そこを査定するという作業を行っているという状況です。

○吉森委員

 製薬企業側にはそれを理解していただいているという前提でよろしいのでしょうか。そうすると評価も具体的にいろいろ議論が進むとは思いますけれども。

○中村部会長

 加茂谷専門委員、お願いします。

○加茂谷専門委員

 先日の本部会で原価計算方式の正確性・透明性の議論について議論があった時にも述べさせて頂きましたが、私どもは原価計算方式での算定の際、参考資料10コマ目の内容について一つ一つ資料を提供し、それに基づき薬価算定組織の中で議論が行われていると理解しております。それをどのような形で本会に開示していくのかという点については、事務局との調整が必要とは思いますが、私どもは正確性・透明性を上げるということについては、できる限り協力していきたいと思っております。

○中村部会長

 中川委員、お願いします。

○中川委員

 一部、今の議論の繰り返しになりますが、薬剤管理官にお聞きします。4ページの4の2つ目ののところで、「平均的な営業利益率に対する補正として行われている。このため、類似薬効比較方式と比較して、薬価全体に対して限定的な評価となっているといった指摘がある」と書いてありますが、限定的な評価になっていると思っていますか。指摘があるのはそうかもしれないけれども、事務局としてどう思っていますか。

○中村部会長

 薬剤管理官、お願いします。

○中山薬剤管理官

 説明の中でも触れさせていただきましたが、12コマ目にあるとおり、薬価として原価計算方式であろうと類似薬効比較方式であろうと、算定されたものに対して革新性などによって加算をするという形で考えた場合、実質加算率という数字で見た場合には、やはり原価計算方式のほうがどうしても低くなっているという事実はあると思いますので、そこは我々事務局としても認めざるを得ないのではないかと思っています。

○中川委員

 参考資料の10コマ目の、これを今、丁寧にやっているとおっしゃいました。1から8まで、一つ一つを丁寧にやっていて、営業利益率を考慮して、それで原価計算方式のほうで算定された薬価はかわいそうなことになっていると思うのですか。ちょっと変な話だと思います。

○中山薬剤管理官

 かわいそうになっているということではありません。もちろん、革新性などがなければ、この営業利益率のところにはプラスの評価は何もかからないわけで、そういったものについてはきちんと、かかった費用と営業利益を上乗せした上で、それが薬価であると。それでいいと思うのですが、あくまで革新性が高いものに対しては、やはり医薬品の価値というものをもう少しプラスアルファで考えてもいいのではないかという視点に立った場合に、類似薬効比較方式と比べたときに原価計算方式の場合はその評価の仕方が余り高くならない仕組みになっていると考えています。

○中川委員

 そこで、4ページの最後のですが、以前、日薬連の会長さんのお話で、製造原価をつまびらかに、詳細に示すことは企業として、企業秘密だからそんなことはあり得ないと言われました。そういう状況の中で、この最後のが大事だと思うのです。「製造経費等が明確とされた場合に」とか「正確性・透明性を向上させることについてどう考えるか」。まさに製造経費、製造原価が、この中医協の場で明確だなと、説得力があるなというときに評価するということでいいのではないかと思います。逆に言うと、そうでなければ、明確でないものは今までどおりというように考えるべきだと思います。いかがですか。

○中山薬剤管理官

 先ほど加茂谷専門委員からもあったと思いますが、正確性・透明性が確保されたものについて高く評価できるような仕組みにするということはいいのではないかと思いますが、それを、こうした中医協の公開の場で、いかにその透明性・正確性があるということを示していくかということのやり方については、しっかりと慎重に考えていかなければいけないのではないかと考えます。

○中川委員

 こういう場で公開できないというのが納得できないのです。公的医療保険制度下で、国民皆保険のプレーヤーとしての製薬メーカーが、製造原価を明らかにできないというのは、そもそもおかしな話なのです。企業秘密だからとか、営利企業だからとか、株価がどうだとか、それは違う話ですよ。文脈が。

○中村部会長

 加茂谷専門委員、お願いします。

○加茂谷専門委員

 繰り返しになりますが、私どもは薬価算定組織に対して必要な資料を開示しております。危惧いたしますのは、例えば算定された薬価が1,000円で、その製造原価が200円とか300円であった場合、200円、300円でつくれるのであれば、その価格で納入をというように、医薬品の流通に影響を与えかねないのではないかということです。このようなことも考慮頂きながら慎重な御判断をお願いしたいと思っております。

○中川委員

 類似薬効比較方式も比較薬と比較するわけで、その比較薬もずっとたどれば最初は原価計算方式ですよね。ちょっと、へ理屈になりますけれども。そういうことを考えると、どうも原価計算方式だけが不利だというのは、一般常識化していますけれども、ちょっと違うかなと思っているのです。

○加茂谷専門委員

 不利だというような表現は、私自身も適切ではないと思っております。原価計算方式によってイノベーションの評価が適切になされているかどうかという点については、議論があろうかと思いますが、類似薬効比較方式で算定できない品目を、現時点において、原価計算方式で算定することはやむを得ないだろうと思っております。類似薬がない場合に、すぐさま原価計算方式を用いるのかという間に、もう1つぐらいのステップが算定ルールの中にあっても良いのかなという個人的意見は持っていますが、現行はいたし方ないと認識しております。今回お示しいただいています「限定的な評価になっている」という点につきましては、私どもの認識も一致しているところであり、ぜひ、改善をお願いしたいと思っております。

○中川委員

 御意見はわかりました。

 そこで改めて申し上げますが、画期的な新薬や有効性の高い新薬のイノベーションに対し、公的医療保険財源で手当てするというのは、私はやはり違うと思います。すばらしい薬ができれば、一番恩恵をこうむるのは国民、患者さんですが、一方で製薬メーカーの利益から一部株主に配当という形で行くわけです。そういうことも考えると、製薬産業のイノベーションを公的医療保険財源で手当てするというのは、本来の趣旨から言うと違うと思います。今の議論は次の改定の議論ですから、急には変えられませんけれども、我々の主張は変わらないということを申し上げておきたいと思います。

○中村部会長

 御意見、ありがとうございました。

 では松原謙二委員、お願いします。

○松原謙二委員

 患者さんにとっても新しい薬ができることは大変幸せなことですし、イノベーションをしっかりやっていただきたいので、それを評価するのは私は当然だと思います。原価につきましては、日本の企業の場合、恐らくそのようなことに対してかなり適切にやってくださっていると私は信じています。そこのところで、例えばより明瞭に外に出せるのであれば、つまり原価が非常に高くてということが明瞭であって、それを外に出さねばならないときには、より高く評価するというやり方をとるべきだと個人的には思っています。

 問題は、保険財政が非常に難しくなる一番大きな要素として、原価計算方式で計算するときに、日本の企業は非常にオープンですのでちゃんとやってくださると思うのですが、外国の企業の中には、それをきちんと表示できないようなブラックボックスがあると私は以前から思っています。特に製薬企業の製造する能力は、日本は最高級であります。それは普通の薬品をつくる、合成するにおいては最高のレベルにあると思いますが、もう一点、大きな問題は、最近、財政で非常に負担をかけているのはやはりバイオ製品です。バイオ製品の場合には、合成ではなく細胞を用いて、その細胞の起源、あるいはその細胞の何かのノウハウによって大変収益率が違ってくると聞いています。

 そういったことに対して、日本の企業が余り投資しなかったという面はあるかもしれませんが、外国からそれを買ったときに、原価計算方式で原材料費等を上げますと、この前の免疫剤と同じように、大変大きな金額になってしまいます。そこのところを含めれば、外国は外国の事情がありますから、それについては当然ですけれども、やはり普通の合成品とバイオとは少し考え方を変えて検討していく必要があると思います。

 先ほどから、これからお金がかかるということを言っておられます。恐らく薬剤において一番お金がかかるのは、どんどん出てくるバイオ製品が非常に高価なために起こると思いますので、そこのところは外国から輸入する原価がどのようなものかで決まりますと、最終的に、1品目が決まると類似薬効比較方式で、その類似したバイオ製品も同じような金額になって大変に高どまりします。そこのところを、ぜひ、何とかする方法をまず考えていただいて、そこに対応していただきたいと思います。

 戻りますと、イノベーションで高く評価して、いい薬をつくっていただくことにおいては、私は大賛成であります。ただし、特許が終わったら速やかに安くしていただいて、事務経費その他いろいろとございますから、そのあたりは合理的な金額にして、そして、その薬をつくり続けることができるような体制にしていただきたいと思います。

 以上、意見です。

○中村部会長

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 先ほどから出ている意見と重複して恐縮ですが、あえて発言いたします。今回、事務局から提出された資料の4ページにおいて、原価計算方式におけるイノベーションの評価が限定的であり、類似薬効比較方式での評価と平仄を合わせたいという提案のように読めたのですが、私は、考え方の異なる計算方式の評価方法を比較しても全く意味がないと思うので、平仄を合わせる必要はないのではないかと思っています。

 しかも、原価計算方式は、製造総原価には原料費や研究開発費など、我々には見えないものがたくさんあって、いわゆるブラックボックスであり、我々としては不透明なものに加算をつけるべきではないと考えています。もし評価の方法を変えるのであれば、意見が出ているように、まずは原価計算方式の透明性や正確性をきちんと担保すべきだと思います。

 現在の原価計算方式におけるイノベーションの評価は、営業利益率に上乗せされていて、この経緯がわからないのですが、このやり方はどう考えてもおかしいと思っています。これは政投銀のデータで、上場企業34社の、いわゆる大規模優良企業の営業利益率が採用されておりますが、こういったものに加算するというのは不合理だと思われますので、今回、見直していくべきだと思います。また、イノベーションの評価を営業利益率に上乗せすることとした経緯を教えていただきたいと思います。

 併せて、2ページに、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針が枠囲みで示されていますが、イノベーションに対する評価は、薬価算定の際の補正加算や新薬創出等加算、新たに導入される費用対効果評価の3つの評価があり、今回、これを全て見直すわけですから、吉森委員がおっしゃったように、全てセットで整理をして、二重に評価することがないように、すみ分けをきちんと行う必要があるのではないかと思います。

 以上です。

○中村部会長

 営業利益率の方は、御質問ということでよろしいですか。

○幸野委員

 その経緯がわかればで結構です。

○中村部会長

 経緯がわかれば、営業利益率に対する加算の経緯をということですね。

 薬剤管理官、お願いします。

○中山薬剤管理官

 営業利益率に補正をする形で原価計算方式について評価しているということの経緯ですが、これにつきましては、最初が平成20年度の薬価制度改革において、原価計算方式で算定されている医薬品に対して、めり張りをつけた算定となるようということで、営業利益率に対してプラスとマイナス、めりと張り、±50%という範囲内の補正を行うこととしたということであります。そのときの考え方としては、積み上げた製造総原価の部分がありますけれども、そこを割り込むような形でプラスマイナスするとまずいのではないかということで、それとは別の営業利益率のところでプラスマイナスを掛けることによって、めり張りをつけたいという発想だったと承知しています。そして、その後、イノベーションの評価を高めるべきだという流れの中で、平成26年度薬価制度改革においてマイナス50からプラス100とするという見直しがされたということでございます。

 営業利益率に対して加算することに対しての妥当性云々という御指摘もありましたが、そこも含め、全体として透明性が確保されるような形に対して評価を行うということに関して、いろいろ検討させていただくという形にさせていただきたいと思います。

○中村部会長

 ありがとうございました。

 ほかに何か御意見、御質問等はございますか。

 松原謙二委員、お願いします。

○松原謙二委員

 今の営業利益率の話ですが、類似薬効にすると、どれぐらいが営業利益かということがわからないわけですから、そのときに、原価計算方式のときには、流通など、ほかのものはきちんと金額がわかっているので、一番明瞭に計算しやすいから、ここのところにのっけているというように私は理解していたので、これ自体に全く根拠がなくて意味がないという意味ではないと私は思います。むしろ、そこのところで十分な利益が出て、次の投資に回していただければ、私ども医療機関としては幸いであります。

○中村部会長

 中川委員、お願いします。

○中川委員

 薬価制度の抜本改革ということで、中医協で議論してきましたが、何度も言っているように、先発品と長期収載品と後発品と、さらにオーソライズド・ジェネリック(AG)と、これを一体的に考えて抜本改革をするのだと申し上げて、それはみんな一致してきたと思います。

 そこで、前回も申し上げましたが、この長期収載品、AGの定義。これをきちんとしておかないと、これからいろいろな問題が起きてくる。私は宿題としてさしあげたつもりでしたが、そうでもないような感じなので、すぐには答えなくても結構です。

 そこで質問があります。我々は高額医薬品で大変な危機感を持って中医協で、特に薬価部会で議論をしてきましたが、その中でC型肝炎治療薬は治癒を目指して治ってしまうから、将来的な医療費ということを考えても、むしろ削減になるのではないかということまで申し上げました。ソバルディ、ハーボニーはそれぞれ2015年の5月20日と8月31日に薬価基準に収載されました。それぞれ、御存じのように、一時は6万円と8万円です。ところが、2015年の5月に、インドの後発品メーカーから、ソバルディの後発品が1錠当たり60分の1の価格で販売されているのです。これは一体どういうことなのでしょうか。まず、その前提としてお聞きしますが、2014年9月にソバルディとハーボニーがWHOの必須医薬品モデル・リストに追加されたと報道されていますが、それは間違いないですか。

○中村部会長

 中川委員、これは今日のイノベーションの議論とは。

○中川委員

 いや、薬価制度改革の一応の区切りですので聞いています。これは重要なことで、今まで出てこなかったのです。

○中村部会長

 では、いかがでしょうか。

○中川委員

 いや、いいです、答えなくていいです。そうなのですから。

 こういう大事なことが、今までのC型肝炎治療薬の議論のときに、情報として出てこないというのが問題ですよ。そして、2014年9月に、ギリアド社がインド系の後発品メーカー7社とライセンス契約をしているのです。そして、これの製造販売権を認めるという契約をして、このインド系の後発品メーカーはロイヤルティーを払うわけですけれども、対象は発展途上国91カ国に販売をもう始めているわけです。こうなると、世界の医薬品市場の特許期間とか再審査期間とか、データ保護期間とか、非常に神経質にやってきたことが崩れてしまうのではないかと心配になってきます。全然仕組みが違うから大丈夫だとおっしゃるでしょうが、例えばこのインド系の後発品メーカー7社の製造した、ソバルディ、ハーボニーの、これは厳密に言うとAGだと思うのですが、オーソライズド・ジェネリックが、これを日本の、例えば後発品メーカーが委託されて輸入販売をするという、輸入して委託販売をするという可能性はありますか。

○中村部会長

 経済課長、お願いします。

○大西医政局経済課長

 ただいまの御指摘の点でございますけれども、ギリアドがインドのメーカーにライセンスを与えて、ハーボニー等と基本的に同じものをつくらせているということですので、中川委員から、これはAGではないかと御指摘されましたけれども、私どもの理解としては、色は違うけれども先発品そのものがインドから安く売られており、これは途上国における医薬品アクセスを高めるという、ギリアド社の判断のもとで、そういうことが行われているということで理解しております。

○中川委員

 先発品をインド系の後発品メーカーがつくっているというのは違うと思いますよ。だから私は、先ほどから、定義が大事だと申し上げているのです。先発品とAGと後発品の。

 もしもインド系の後発品メーカーが、本物をつくっているのであれば、商品名はソバルディ、ハーボニー、そのものですよね。違う商品名ですから、これはまさにAGではないですか。この辺の違いを明確にしてほしいということを言っているわけです。

 お答えになっていませんが、この、インド系の後発品メーカーで製造したソバルディ、ハーボニーのAGを、日本のメーカーが輸入して、販売を委託されて販売することが可能かどうかということを聞いているのです。

○中村部会長

 経済課長、お願いします。

○大西医政局経済課長

 申しわけございません。お答えが漏れていました。

 ギリアド社のほうでは、そういった趣旨で契約を結んで事業を行っているということですので、インドで製造されているハーボニーが日本へ供給されることは、契約上は起こり得ないということでございます。

○中川委員

 実際にそうなのでしょうが、これはギリアド社の、発展途上国向けの人道支援推進策の一環としてやっているというように、プレスリリースにはそうなっています。ところがインド系の後発品メーカーの製造能力が飛躍的に拡大した場合、これは発展途上国以外への委託販売という可能性も十分出てくるのではないかと思うわけです。その可能性はどうかという心配をしているわけです。こういう例が、これからいろいろ出てくるのではないか。日本の薬価制度を守るために、改革するために、もう何十回目ですが、長期収載品とAGと後発品の定義をしっかりしなければならない。繰り返しますが、長期収載品は先発メーカーが特許期間を過ぎても持っているから長期収載品ではないかと、そのように決めてはどうかという提案はこの前にしました。AGと長期収載品の違いは何かということも、国民には非常にわかりにくい。これも言いました。そういうことを含めて、宿題ではないですが、そういう意見があったということをお忘れなく、これからは中医協で議論を。特に事務局におかれましては、紙をつくって、いろいろ明確にしていただきたいと思います。

○中村部会長

 では、ぜひ。

 松原謙二委員、お願いします。

○松原謙二委員

 C型肝炎というのは本当に治らない病気で、大変に、全人類が苦しんでいた病気です。それについて、ギリアド社に対してある投資グループが、人類のためになる投資をしようと。利益ではなく人類の幸福のために投資をしようとするグループがあったと聞いています。その結果として、かなりリスクを負いながらも、ああいったいい薬をつくってくださり、恐らくその延長上として、先進国で治って発展途上国で治らないのは、恐らくそういった、人類のためにという考え方とずれるので、その分だけライセンスを与えて安くつくって、それを発展途上国で使えるようにしようというのは、もともとの考え方からして正しいと思っています。

 エイズの薬も同じようなことをしている会社はかなりありますし、一番大事なのは、今、中川先生がおっしゃったように、そういった薬が悪用されて、変な形で先進国に回ってくるということは、ギリアド社にとってもよろしくないことですので、そういったこともきちんと日本の厚生労働省はされていると思いますから、情報を十分に集めて、そういうことのないようにという発言だったと私は理解しています。ただ、それをやっておられるギリアド社に対しては、私は敬意を表したいと思います。

 以上です。

○中村部会長

 イノベーションの評価というものが今回の大きな議論ですけれども、イノベーションの評価と後発医薬品、それから長期収載品(AGも含む)をセットで議論しなくてはいけないという中での御意見だったと思います。

 ほかにイノベーションの評価に関して何か御質問、御意見等はございますか。

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 最後に、5ページで論点が示されていますが、これに対して意見がなかったのでコメントいたします。今後、費用対効果評価が導入され、対象となる品目の規模がどれだけ拡大されるかということも関係しますが、基本的には費用対効果評価により再評価を行うこととなりますので、現行の仕組みを見直す必要は特にないのではないかと思います。

○中村部会長

 5ページというのは、既収載品のイノベーション評価のところですね。

○幸野委員

 はい、それに対する意見です。

○中村部会長

 ほかは、いかがでしょうか。

 特にないようですね。ありがとうございました。

 本日いただいた御指摘を踏まえ、本件については引き続き議論を行いたいと思います。

 本日予定された議題は以上となります。次回の日程につきましては、追って事務局より連絡をいたしますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

保険局医療課企画法令第1係

代表: 03-5253-1111(内線)3288

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