ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)> 第6回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録(2017年8月30日)




2017年8月30日 第6回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録

社会・援護局

○日時

平成29年8月30日(水)15:00~18:00


○場所

KKR東京(東京共済会館)
10階(瑞宝の間)


○出席者

宮本 (部会長) 駒村 (部会長代理)
朝比奈 (委員) 石橋 (委員)
浦野 (委員) 大西 (委員)
大野 (委員) 岡部 (委員)
奥田 (委員) 勝部 (委員)
菊池 (委員) 小杉 (委員)
生水 (委員) 新保 (委員)
竹田 (委員) 平川 (委員)
松本 (委員) 渡辺 (委員)
田中参考人 (岡崎委員代理) 成田参考人 (福田委員代理)
前河参考人 (松井委員代理) 稲葉参考人 (立教大学特任准教授)
橘参考人 (特定非営利活動法人ボンド・プロジェクト代表) 伊藤参考人 (KHJひきこもり家族連合会代表)
上田参考人 (KHJひきこもり家族連合会本部事務局長) 川上参考人 (社会福祉法人生活クラブ風の村ユニバーサル就労支援室長)
A参考人 (社会福祉法人生活クラブ風の村就労準備支援事業利用者)

○議題

(1)部会におけるこれまでの主な意見について
(2)有識者・利用者等からのヒアリング

○議事

○竹垣課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第6回「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を開催いたします。

 本日は、宮本部会長は少しおくれて到着されますので、後ほど、駒村代理のほうから進行をお願いしたいと存じます。

 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、岡崎委員の代理として、高知市健康福祉部副部長の田中参考人、福田委員の代理として、川崎市健康福祉局長の成田参考人、松井委員の代理として、大阪府福祉部地域福祉推進室社会援護課長の前河参考人にお越しいただいています。

 また、本日は、有識者・利用者からのヒアリングに関する参考人として、立教大学特任准教授の稲葉剛様、特定非営利活動法人ボンド・プロジェクト代表の橘ジュン様、KHJひきこもり家族連合会代表の伊藤正俊様及び同連合会本部事務局長の上田理香様、社会福祉法人「生活クラブ 風の村」のユニバーサル就労支援室長の川上葉子様と就労準備支援事業利用者のA様にお越しいただくこととしております。

 田中参考人、成田参考人、前河参考人に、稲葉参考人、橘参考人、伊藤参考人、上田参考人、川上参考人、A参考人の御出席につきまして、部会の御承認をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○竹垣課長 ありがとうございます。

 それでは、これ以降の進行を駒村代理にお願いしたいと存じます。カメラございますれば、御退席をお願いいたします。

 駒村代理、お願いいたします。

○駒村部会長代理 代理の出番はないかと思っていましたけれども、想定外の出番です。今日、宮本先生ちょっとおくれるとおっしゃっているようですので、代理をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速議事に入りたいと思います。

 これまで計5回の部会を開催し、生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の見直しに向けて、自立相談支援、就労準備支援、一時生活支援・居住支援、家計相談支援それぞれのあり方や、子どもの貧困への対応や高齢者に対する支援のあり方などさまざまな論点について、精力的に御議論をいただきました。本日は、まず、これまでの部会における委員の皆様からの御意見について整理をしていますので、事務局から御説明いただくことになります。

 その後、今後の制度の見直しに向けて、さらに議論を深めるために、有識者や利用者等の方からヒアリングをさせていただく機会を設けました。有識者としてのお二人の方、利用者等として3つの団体の関係者からのヒアリングをさせていただき、今後の制度の見直しに向けた必要な視点についての示唆が得られればと考えております。

 なお、本日は後半のヒアリングへ重点的に時間を配分したいと思っておりますので、これまでの主な意見についての整理ですけれども、これについては30分程度でと思っております。

 では、「議題1 部会におけるこれまでの主な意見について」、事務局からの資料説明をお願いいたします。

○姫野推進官 ありがとうございます。

 それでは、資料1「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会におけるこれまでの主な意見」について御説明させていただきます。全体30ページ以上ございますので、ごく簡単に概略のみ御説明したいと思います。

 まず表紙をめくっていただきまして、目次でございます。これまでの第2回、第3回、第4回、第5回と、各部会で特に議論いただきたい点ということで提示させていただきました論点に沿って皆様からいただきました御意見を整理しております。たくさん御意見をいただいておりますので、1ページ目以降書いておりますが、ある程度要約しながら、それから、意見のまとまりごとに少しまとめながら要約しております。たくさん御意見をいただいたところについては、一部重複するところはまとめて記載しているところもございます。あらかじめお送りして、中身については御確認していただいているかと思いますが、この資料を再度見ていただきまして、現時点での主な意見の整理ということで、補足がないかということを御確認いただければと思います。

 また、9月以降、さらに議論続きますので、さらに深堀りの意見は、9月以降、また、していただけるかと思いますが、現時点の意見の整理ということで御確認いただければと思います。

 以上でございます。

○駒村部会長代理 では、資料1を見ながら、御意見のとりまとめについて、御意見・御質問がありましたらお願いしたいと思います。

 最初に、田中参考人と成田参考人は本日初参加でございますので、御挨拶も含めて、優先してお話を聞きたいと思います。

 田中参考人、よろしくお願いいたします。

○田中参考人 高知市健康福祉部の田中と申します。

 私は昨年、福祉事務所長として困窮の論点整理のあり方検討委員会のほうに参加させていただき、この委員の皆様方の中には何人かの方と議論をさせていただきまして、非常に闊達なお考えと意見に触発をされたところです。

 この話の中では、主に子どもと高齢者のところでございますが、高知市の場合、高校進学率は上がりましたが中退率は高くて、そこら辺の学習支援とあわせて生活支援も必要ではないかという話もしてきたのですけれども、中退をしてしまってそのまま社会に出て行くということが、例えば18歳の選挙権がありますね。その中退したときにいろいろな社会保障と関わりができるのですけれども、そこで果たして、彼らは社会保障についてどれだけ理解をしているかということと、18歳になったときに選挙権ができます。そこで大事な制度設計についての意思表示をするという機会があるのですけれども、果たして、それは正しいのかなというのが1つずっと思っているところでございます。

 それと、学習支援と生活支援を考えたときに、困窮の制度と生活保護が行ったり来たりする人が中にはいらっしゃるので、そこの仕組みが、例えば入り口は困窮が入り口であって、その中でスクリーニングをかけて必要な人には生活保護、そういう仕組みですね。それと、困窮のところで給付をする仕組みですね。ここを入れることで生活保護に行かなくても給付で賄われていく、就労支援もしながらやっていくと、そういった仕組みが1つは必要なのではないかということと。それから、学習支援と併せて生活支援は、高校を卒業する段階まで継続的にしていく必要があるのではないかと考えております。

 それから、高齢者につきましても、これから先、まだ右肩上がりでふえていきます。人口減少、現役世代が減っていく中で、低額な年金であったり、あるいは10年で満期を迎える年金をもらう方がふえてくる中で、最低生活費が足りないということをもって、その全てを生活保護で見ていくのは果たしてできるのかなと個人的には考えておりまして、そこも生活困窮の中で、例えば家賃の手当とかそういったもので本人の医療保険を使いながら年金で賄える形をつくっていくことも、一つは考えていく必要があるのではないかと強く感じております。

 手当を出すかわりに総合事業で週1、2回働いていただいて現金も手に入れていただく、健康パスポートなども手に入れていただいて社会参加をしていく。そういうことで給付を受ける範囲を小さくしていく。言葉はあんまり正しくないかもしれませんが、そういった仕組みを1つ考えていく必要があるのではないかというところを考えています。

 高知市では、今、高齢者を除いて、ケースワーカー1人当たり100ケースぐらい担当しています。ケースワーカーも非常に苦労をしておりますし、あと、人材育成が全然手をつけられてない状態なので、そこは本当に生活保護が必要な人に特化した仕組みにしていくことが大事なのではないかと考えております。

 長くなりましたが、以上です。

○駒村部会長代理 現場からの視点ありがとうございます。中退の問題あるいは低所得の高齢者の増加の問題、これについては幾つかの制度を組み合わせてやっていくしかないという御意見だったと思います。ありがとうございます。

 もうお一方、今日、成田参考人は初めてということでございますので、御挨拶を兼ねて少し御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○成田参考人 川崎市の健康福祉局長の成田でございます。挨拶につきましては、前回、福田市長から御挨拶もさせていただいておりますので、私は資料1の(3-1)「3無料低額宿泊所等」につきまして、設置自治体を代表しまして少し意見を述べさせていただきたいと思います。

 無料低額宿泊事業につきましては、事業の開始の日から一月以内に都道府県知事に事業経営の届出を行わなければならないとされております。このため、形式要件を整えた届であれば、仮に不適切な事業であっても、自治体はこれを受理をせざるを得ないという状況となっております。施設の設備・運営等に関しましては国から指針が示されております。これにより行政指導を行っておりますけれども、実効性の担保は十分とは言えないという状況がございます。具体的には、法令に基づく最低基準を満たさない事業者が違法性を認識しながら事業を開始し、さらには、改善命令を行ったとしても、改善されるまでの間は違法な状態での事業継続が可能でありまして、利用者は劣悪な環境での生活を余儀なくされるなど、悪質な事業者の参入を阻止することができず、利用者の福祉を著しく阻害することとなります。

 つきましては、無料低額宿泊所につきましては、第1種社会福祉事業と同様に許認可としていただけますよう強く要望させていただきたいと思います。

 以上でございます。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。具体的な御意見をいただきました。

 それでは、ほかの委員の方からも、従来どおり、御発言の予定の方はピンクのパネルを立ち上げてください。資料1について御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 そうしましたら、私の席の遠いほうからお願いしたいと思います。最初に、菊池委員からお願いいたします。

○菊池委員 ありがとうございます。私からは1点のみです。

 (2-1)の4。多分、私の発言は上から2つ目のポツのところで、困窮法第2条の定義規定等を見直すかどうかが論点という、中立的に書かれていますが、私は見直すという方向でぜひお考えいただければと考えております。ここは、生活困窮者自立支援法のまさに理念とか哲学、法の基本的なたてつけに関わる部分で、経済的困窮ということでいくのか、社会的孤立といったほうに広げるかというところで、制度の根幹に関わると思います。

 高齢者であれば地域包括支援センター、障害、要保護児童と、それぞれ相談支援のセンター的な機能を持つ仕組みがありますけれども、それ以外にも、私も最近関わったものとしては、例えば犯罪被害者支援とか、ごみ屋敷問題とか、犯罪の加害者側の障害者や高齢者、性犯罪被害者、さまざまな困難を抱えている方々がおられる。そういった方々を広く受けとめ得るのが自立相談支援のこの枠組みではないか。そうしないと、結局、縦割りの中でどこかでこぼれ落ちてしまう方がいらっしゃるのではないか。そういう意味で経済的困窮からもし翼を広げることができれば、普遍的なその地域におけるそういった困難を抱える方の受けとめの機関になり得るのではないかということで、大いに期待しているところでございます。

 以上です。

○駒村部会長代理 これだけだとはっきりしないのですけれども、解説を言っていただきまして、ありがとうございます。

 続けて、小杉委員からお願いいたします。

○小杉委員 ありがとうございます。

 私は、8ページの4の「無料職業紹介事業」の上から2つ目のところ、多分これは私の意見を要約していただいたのだと思いますが、「慎重であるべき」がどこにかかっているのかということをもう一回御説明をさせていただきたいと思います。

 無料職業紹介事業ということ自体は、私は大変賛成です。慎重であるべきは何かというとあっせんです。あっせんの際にどれだけ相手先の事業所についてきちんと調べるか。そういうことが大事で、よく知っているところならともかくという話ですけれども、そうした事業所についての情報は、ハローワークとか労働部局が持っていることがございますので、そういう意味では労働部局との間の関係を強くしていただいて、例えばその事業所が、事業所都合による退職者を出すとかそういうことをしたかどうかということもハローワークではわかるわけなので、そうしたことの周辺情報も含めて、あっせんについては、相手先事業所について慎重に選んでいただきたい。あるいは、そこでの働き方についての中間的な就労から順番に外れるようなこともございます。どこからが労働に当たるのか、その辺りもきちんと把握していただきたいという意味で、そういう意味で慎重であるべきだということです。

 以上です。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。これは御自身の御発言に関する補足説明ということで、ありがとうございます。

 では、次に生水委員お願いできますか。

○生水委員 足していただきたいことについて、大きく3点述べます。

 6ページの(2-2)の「就労支援のあり方について」で、交通費について意見が挙げられていますが、就労準備支援事業の対象者は生活困窮状態にあるので、ニーズはあっても必要な交通費を捻出するのができず、参加ができない状態です。また、就労準備といっても、作業をする以上、それに伴う対価がなければモチベーションも上がらず、やる気も失ってしまいます。そこで、交通費や訓練手当のような現金給付、こちらをぜひとも検討いただきたいと思います。

 それと、就労準備支援事業について、既存の障害福祉サービスと目的も手法も同じようなものがございますので、活用できるように検討すべきではないかと考えます。

 次は、15ページ(4-1)の「子どもの貧困への対応について」です。野洲市の学習支援事業においては、地域住民からお米の寄附を受け、おにぎりなど軽食の提供をしておりますが、このおにぎりをきっかけに子どもたちが参加しやすい場所となっていて、また、おにぎりをつくってくれている地域のボランティアの方々と子どもの交流にもなっています。また、個々の学力に応じて教材を渡すことで子どもたちも喜び、学習のやる気にもつながっています。そこで、こうした経費を認める必要があるのではないかと考えます。

 それと、特別支援教育が必要な子どもさんも参加されていますが、こうした子どもへの学習支援における体制は非常に弱いところがありますので、受入れに必要な仕組みの検討が必要ではないかと考えます。

 最後に27ページ、(5-1)「都道府県の役割」についてです。ホームレスや就労準備や訓練事業を考えますと、市町の圏域を越えての対応が必要です。また、各市では、相談員の人材確保最大の課題である中で、特に家計相談支援においては、専門性の確保が課題となっています。

 そこで、自殺対策においては地域の格差が生まれないように、都道府県ごとに地域自殺対策推進センターを設置しておりまして、関係機関と連携をとりながら市町村や民間団体への相談支援、技術的助言、人材育成研修を行う体制を整備されています。そこで、この自殺対策を参考にして、生活困窮者支援事業においてもサポート体制を都道府県において整備するため、都道府県が主体となってサポートセンター設置の検討が必要ではないかと考えます。

 以上です。

○駒村部会長代理 これも具体的な給付あるいは手当あるいはシステムについてですね。

○生水委員 足していただきたい意見です。

○駒村部会長代理 わかりました。事務局のほうでも今後のこのバージョンアップのときに、今の意見を反映するようにお願いいたします。

 それでは、竹田委員お願いします。

○竹田委員 ありがとうございます。

 各項目についてはこれから深堀りをしていくということですので、1点だけ述べさせていただきたいなと思います。

10ページにあります居住支援のあり方の中で、保証人に関して幾つか意見が挙がっておりますが、この保証人に関してはこれまでの議論でも挙がっておりましたし、また、視察の中でもご意見が出ていたところかなと思いますが、単に居住支援の保障だけではなく、入学するとか、就職する、入院する、入居するなど、さまざまな場面で人的保証として保証人というのが求められている。それが現状として、制度横断的なところでかなり課題として挙がっていますので、これが今後どういうふうに対応していくか、改善していくかということで、また、その支援のしやすさみたいなところにつながっていくのかなと思っていますので、この点についてもどこかで検討をしていただく必要があるかなと思っております。

 以上です。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。

 平川委員、お願いします。

○平川委員 5ページのところで、自立相談支援事業の体制について記載がございます。体制の確保や人材、ケースワーカーのスキルの向上が大変重要と思っていますが、これは自立相談支援事業だけではなく、全ての生活困窮者の支援、生活保護、福祉事務所の実施体制に横断して関わる課題であるのかなと思っています。これらは生活困窮者の課題や福祉事務所の実施体制の強化といった総体的な課題であるととらえていくべきではないかと考えています。

 生活保護のほうは交付税措置でこの間少しずつ改善されてきているところではありますが、生活困窮者のほうは事業ということで、なかなか実施体制の安定性というところでも課題があるかと思いますので、そういう観点での補強ということでお願いできればと思います。

 以上です。

(宮本部会長出席)

○駒村部会長代理 朝比奈委員、お願いいたします。

○朝比奈委員 朝比奈です。本日の机上配布資料にもとして配らせていただきましたけれども、家計相談支援事業に関わる事柄について3点申し上げたいと思います。

 こちらの資料の中で記述がありますので、それ以上細かくは申し上げませんが、基本的に、家計相談支援事業は経済的な環境を整えていくソーシャルワークの機能の1つであるととらえられるかと思います。生活困窮者自立制度のテキストの中でも、あくまでも自立支援相談事業が中核となる事業として、本制度の支援の総合調整と地域づくりの司令塔を担うという記述がございまして、そういう位置づけであることは既に共通認識になっている点だと思われます。その基本的な司令塔を担う自立支援相談事業の中で家計相談支援事業が支給決定されて機能を発揮していくという、そういう構造になるかと思いますので、ここをまず押さえておく必要があるかと思います。

 その上で、特に高齢者年代で家計相談のニーズがあるということが会議の中でも報告されてまいりましたが、前回の議論でも申し上げたのですけれども、身近な地域のレベルで整備されてきている地域包括支援センターが、基本的に一義的には経済的な問題も取り扱っていくということを押さえておく必要があるのではないか。ただ、これまで地域包括の相談業務においては、私どもの地域でもそうですが、介護の側面に重きが置かれてきたこともあって、現場の中で経済的な問題を取り扱うということに消極的であったり、まだノウハウを十分に持っていないというふうな現状もあろうかと思いますので、家計相談支援として標準化された内容を、高齢者分野、障害者分野等々、ほかの分野の相談機関にも普及を図って、それぞれの分野の、先ほど菊池委員の御発言にもありましたけれども、ソーシャルワークの拠点の中できちんとこの経済的な環境を整えていくための家計相談支援が展開されていくという、そういう方向性を描いていく必要があるのではないかというのが1点です。

 ただ、今回、生活困窮者自立支援法の中で1つ、任意事業という位置づけではありますけれども、家計相談支援事業が位置づけされたという意味をしっかりと踏まえておく必要があると考えておりまして、私の現場では、家計相談支援事業が給付決定された人については、自立支援相談の相談員以外に家計相談支援員もつけて、それぞれカウントをし、記録などについても蓄積をしているというところです。自立支援相談が包括的な支援をする一方で、家計相談支援が専門的な機能として位置づけられた意味合いも、具体的に現場の中で実施していく際には明確に示していくことが必要だと思っております。

 3点目は、この資料の中でもう触れられている点で、23ページですね。金銭管理についてです。先ほど出されていた公的な保証制度についても一部関わりがあるところであるかと思いますけれども、支出に課題を抱える方々の中には、家計相談支援による一定期間の働きかけだけでは家計管理の習慣が身につかずに、継続した支援がなければ家計収支のバランスが維持できないという方が一定程度存在することは、これまでの会議の中でも発言されてきたところです。

 判断能力が不十分な場合には、当然成年後見制度や日常生活自立援助事業の利用につなげておりますけれども、判断能力が不十分でなくても、浪費などによって食事さえ事欠くような事態が頻繁に起きてしまう方も多くいらっしゃいます。こうした方々について何らか地域の中で受け皿をつくっていくということが、社会的な孤立を解消していくという観点からも要請されていると考えます。

 この部会と並行して、先ごろ最終回を迎えましたけれども、「我が事・丸ごと」の地域力強化検討会の中で示された「地域福祉計画」に盛り込むべき事項の例という、あくまでも例示ですけれども、「判断能力に不安がある人の金銭管理」という文言も盛り込まれております。金銭管理の仕組みづくりについては、多くの場合、ニーズを抱えた相談者が孤立した状態にあることから、きちんと公共性の基盤を持って地域の仕組みとして取り組みが進められていくことが望まれていると思います。

 以上です。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。

 ほかに、委員からは御発言はいかがでしょうか。

 岡部委員、お願いいたします。

○岡部委員 2点ございます。

 1点目です。(5-1)28ページの箇所です。「町村部における支援のあり方」の中で、町村においても自立支援相談機関を設置すべきであるというトーンで書かれているかと思います。生活困窮者自立支援法においては、福祉事務所の設置自治体で自立支援相談事業、生活困窮者を行うということになっています。私の個人的な意見としては、生活困窮者、低所得者と社会的孤立に対処する総合的な機関と考えますと、より身近な地域がよいと考えます。福祉事務所の設置自治体は都道府県・市が必置、町村が任意ですが、生活困窮者自立支援法においては、最低でも町村で任意、生活困窮者自立支援事業は市町村から始めるという方向で考えていただくことはできないかどうか。これは朝比奈委員がおっしゃっている地域包括が生活困窮者の自立支援相談機関であるというイコールという形も1つ考えられます。二枚看板になりますが、自立相談支援機関を持つことが地域の総合的な相談を受けつける、生活の課題に対処できることになるのではないかというのが1点です。

 2点目です。これは33ページの「その他の意見」で、生活保護に関わるケースワークについてです。生活保護というのは、最低生活の保障と自立の助長という2つの目的を持っております。これは給付業務を通して相談援助活動を行うことです。これは法律でいくと最低生活に関わる給付と相談援助に関わる法定受託事務と相談・助言に当たる自治事務があります。この点については、御意見として給付事務と自治事務を分けるという御意見があったかと思います。私はこの分離という考え方について2つの点で賛成いたしません。1つは法的観点から、この分離の考え方は現在の法的体系の中ではとれない、法的仕組みとなっていません。2つにはソーシャルワークの観点からです。ソーシャルワークでは生活保護制度を主要な制度資源として活用する考え方に立っています。給付と相談援助が密接不可分となっておりますので分離するべきではないと考えます。両論併記で結構ですので、そういう主張をさせていただきます。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。それは1つ議論になるところが明確にされたということですね。

 では、勝部委員お願いいたします。

○勝部委員 ちょっと重なりますけれども、まず27ページの「都道府県の役割」のところですが、各自治体の生活困窮者自立支援制度の実施状況の格差がかなりあるということで、アウトリーチがあるところ、全くないところ、それから、いろいろな就労事業等もかなりの格差があるということで、それぞれの自治体にお住まいの方がそこで十分な制度が受けられない場合に、それ以上どこにも言いようがないという状況が今ありますので、先ほど、生水委員からもお話がありましたが、都道府県段階で、そういう十分できていないとか、あるいは対応が困難な地域の実態を把握できるような場所をつくっていかないと、市町村任せということになっていますと、格差が広がったまま、あるいは是正がないままに進んでいくのではないかという非常に懸念をしています。そういう意味では都道府県段階で町村部の支援もあるのですけれども、町村はむしろ窓口はそれぞれのところで持っていただいて、都道府県レベルで是正をしていけるような、そういうセンターをつくっていただいて、苦情も含めて対応できるような窓口を持たないと、住んでいる町によって平等な窓口になっていかないという、ちょっとそういう懸念をしておりますので、ここはそういう体制を少し補強をしていただくのがいいのではないかなと思っております。

 それから、2点目ですけれども、14ページですね。子どもの貧困対策も、先ほど生水さんがおっしゃったことともかぶりますが、これだけ子どもの貧困、こども食堂、学習支援ということで、市民レベルで活動が広がってきたことに対して相当な地域での成果が上がっていると踏まえていますので、ここについても、寄附任せ、あるいはそれぞれの自治体といいますか地域の善意に乗った事業ということで置いておくのではなく、ここもある程度きちっとした基盤を体制整備していく必要があるのではないかなと強く思っています。

 以上です。

○駒村部会長代理 ありがとうございました。

 一巡しました。ほかに委員の方で、つけ加えることはございますか。

 奥田委員、お願いいたします。

○奥田委員 奥田です。

 私は、(2-1)の「自立相談支援のあり方について」の3辺りですが、これとは別のチームで地域連携のほうをされていて、もう一応終わったという話を先ほど朝比奈さんからありましたけれども、私は、この制度が目指しているものは今はやりの言葉で言ったら「丸ごと」であって、そこが成立しないと、正直これだけではできないという感想です。

 ですから、最低限、地域包括とか定着支援センターとか、生活保護は当然だし、そこは縦割りになってしまっていますけれども、この自立相談支援と一緒にやる。そういうことで言うと、支援調整会議のあり方が私は相当肝だと思ってきたのです。

 しかし、実際開いてみると、これは構想段階では、支援調整会議は私なんかはわりと期待をしていて、そこにどれだけの地域資源があつまって、あるいは、その中で足らないものはつくろうではないかというような創造的な会議にさえなると思っていたのですが、実際ふたを開いてみるとあんまり議論にならないし、実際どうなっているのかというのがちょっとよくわからない状態になっていて、今回のこの一連の議論の中でも支援調整会議の位置づけとか期待とか、これからのあり方みたいなものがあまりない。

 今回出てきているのは情報の話で、個人情報をどうするのかという話が出てきているのですけれども、私、今後としては、支援調整会議のあり方がまさに地域連携との絡みでも一番近いところにあって、支援調整会議というところについて今後もう少し議論を深めなければならないのではないかという、これは庁舎内だけでおさめるのではなくて、本当に地域における地域支援調整会議というぐらいの名前に変えたほうがいいのではないかというのが率直な感想でした。

 以上です。

○駒村部会長代理 ありがとうございます。

 ほかに、委員いかがでしょうか。

 ちょっと私のほうから、せっかくですから1点。

19ページから20ページにかけて、私の発言で、自尊感情、自己肯定感や、あるいは人間関係に関する記述がありますけれども、これは当然高齢者全般に、皆さん自己肯定感が下がるというよりは、孤立や困窮状態による高齢者の方はということの意味で申し上げているわけですね。

 高齢の方の心理的な変化については、最近、研究でもかなり明らかになっていますので、高齢の支援、家計相談も含めて全般ですね。高齢の方の社会に対する見え方とか心理的な変化を踏まえて支援に当たってもらいたいという趣旨でこの2文を私コメントさせてもらったというつもりでございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 もしよろしければ、議題1の議論については終了して、今日の議論を、この資料1に反映していただくということになるのではないかと思います。事務局よろしくお願いいたします。

 では、議題2については、宮本先生がおいでになりましたので、これからは宮本先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

(参考人着席)

○宮本部会長 やむを得ぬ事情で若干到着がおくれて、申しわけございませんでした。駒村部会長代理には大変御迷惑をおかけいたしました。

 続きまして、今日の議題の2番目になりますけれども、有識者・利用者等からのヒアリングを始めていきたいと思います。

 改めて、今日ヒアリングに御協力いただく皆様を紹介させていただきます。まず、立教大学の特任准教授でいらっしゃいます稲葉剛先生。それから、特定非営利活動法人ボンド・プロジェクトの橘ジュン代表をお招きしております。さらに、KHJひきこもり家族連合会の伊藤正俊代表及び上田理香本部事務局長に来ていただいております。さらに、社会福祉法人「生活クラブ 風の村」の川上葉子ユニバーサル就労支援室長とその就労準備支援を利用されていらっしゃいますA参考人においでいただいております。さらに、「生活協同組合連合会グリーンコープ連合」の家計相談支援事業利用者の方々、今日はビデオレターという形で発表を行っていただくことになっております。

 皆様、大変お忙しい中、また、炎暑の中をおいでいただき、ありがとうございました。

 進め方になりますけれども、まず参考人の皆様から順にお話をいただいた後、その後一括する形で質疑・意見交換を進めていきたいと思います。資料等を拝見すると、大変充実した内容で、たくさん聞きたいのですけれども、何せ時間の制約もございまして、各参考人からは15分から20分程度の時間の中で御説明をいただくことになっております。恐縮ですが、20分を経過した段階で私のほうから声をかけさせていただくこともあるかもしれませんけれども、御容赦をいただきたいと思います。

 それでは、稲葉参考人から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○稲葉参考人 本日はお招きいただきありがとうございます。立教大学大学院特任准教授の稲葉です。という肩書きになっているのですけれども、私自身もう一つ肩書きがありまして、「一般社団法人つくろい東京ファンド」という団体で、住まいを失った生活困窮者の相談支援活動を行っておりますので、そちらの実践報告と、そうした実践の中から見えてきた各制度の課題等についてお話しさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 資料のほうが、パワーポイントを打ち出したものがお手元にあるかと思います。あと、別紙で、机上配布資料の3ページ以降、ちょっとページ数多くなって申しわけありませんが、そちらにワードを打ち出したものと、あと、「つくろい東京ファンド」のスタッフが書いた原稿も資料としてつけさせていただいておりますので、御参考にしていただければと思います。

 まず1ページめくっていただきまして、「路上生活者数の推移」で、私は1990年代半ばから東京の新宿を中心にホームレスの人たち、いわゆる路上生活者の相談支援活動を行ってきたのですけれども、路上生活者数は全国的にも東京23区においても、ピーク時の4分の1から5分の1まで減少していることは事実だと思います。ただ、この数値に関しては、近年、東京工業大学の研究者を中心としたARCH(アーチ。Advocacy and Research Centre for Homelessnessの略称)というグループが深夜のカウントを行っておりますけれども、そちらの深夜のカウントと比べてみると、行政の調査が昼間の目視調査であるためにかなり少なめに出ている。深夜にカウントすると2倍から3倍の数があるというデータもあることは指摘しておきたいと思います。

 そして、その減少の要因ということで次にまとめましたけれども、90年代に比べて、生活保護の申請が進んだというのが一番大きな要因だと思います。自立支援センター事業も行われておりますけれども、実際、効果としては、自立支援センター事業より生活保護を利用して路上から抜け出した人が多いというのが現状かと思っております。

 ただ、特に首都圏の福祉事務所においては、住まいのない人が生活保護を申請する際に、民間の宿泊所、無料低額宿泊所などに入ることを事実上の要件としている。そこに入らないと受けさせてあげませんよといったような対応をすることが多くて、ここが1つネックになっております。路上生活者の中には、後に障害についてのページがありますけれども、知的障害や発達障害あるいは精神疾患をお持ちの方が多いということが各地の調査でもわかっておりまして、特にそうした人たちが相部屋の施設になじめずに、施設の中でいじめられたり、あるいは人間関係に苦しんで路上に戻ってしまう。または、そうした施設の悪いうわさを聞いて、そんなのだったら生活保護を受けないということで路上に滞留してしまうという人がかなりの割合でいるということが私たちの実感からも言えるかと思っています。

 また、もう一方で、行政の調査が路上とか公園とか河川敷など、屋外にいる人たちの調査だけにとどまっている。これはホームレスの定義の問題がありまして、外にいる人たちだけがホームレスというふうになっているので、その一歩手前にいる人たちですね。ネットカフェや友人宅等、あるいは最近では脱法ハウスというものも、行政用語で言うと違法貸しルームというものもありますけれども、そうしたところにいる幅広いハウジングプア層の実態把握が進んでいないという問題も指摘しておきたいと思います。

 次に、幾つか、東京及び埼玉の貧困ビジネス施設の写真を挙げておきましたけれども、左上の写真は、東京都豊島区にある民間の宿泊所の内部の様子でして、20人部屋という施設がいまだに存在していると。当該の福祉事務所の係長の方ともいろいろ意見交換をさせていただいて、こうした施設に福祉事務所が事実上誘導しているということがホームレス問題の解決を妨げているのではないかという指摘もさせていただいているのですけれども、残念ながら、福祉事務所の職員の方も居住環境が劣悪であることは承知しているが、区内にほかに施設がないのでやむを得ずそういったところを活用させてもらっているというような発言をされるような状況が続いていて、結果的にこういったところに誘導されて、中でうまくいかずに路上に戻ってしまうという方が多数いるということが言えるのではないかと思っております。

 その中には、次のページにありますように障害を抱えている方が多い。これは池袋の調査の報告を出しておりますけれども、名古屋の調査でも同様な結果が出ておりまして、軽い知的障害あるいは精神障害、または、ボーダーといわれるような人たちがホームレスの人たちの中には多くて、特にそうした人たちが路上に滞留させられているという状況があるのではないかと言えるのではないかと思います。

 そして、次に民間宿泊所が「終の棲家」になっているのではないかという点について、この間も幾つか新聞報道等なされております。一番下に出しました『毎日新聞』の報道では、東京都と千葉県の民間の宿泊所だけで年間150人以上が死亡退所しているという報道がなされておりまして、こうした生活保護を申請して民間の宿泊所に入って、そこで数年間、私も、実際8年とか10年とか施設にずっと暮らしていると、本人がアパートに移りたいと言ってもなかなか移してくれないという相談を受けたことがありますけれども、施設にいる間に高齢化がさらに進んで、7080代になってくると、今度は、また、民間のアパートの側でも賃貸住宅市場で部屋を見つけられないという状況になって、さらに長期化してしまう。その結果、施設の中で亡くなってしまうというようなケースもふえているのではないかなと思われます。厚生労働省の調査でも、生活保護の方がほとんどですけれども、全国の無料低額宿泊所及び無届け宿初施設で32,000人以上の方がいるという状況がわかっていて、そこに人々が滞留していると。全てが貧困ビジネス施設というわけではありませんけれども、劣悪な施設も含めてそこに人々が滞留しているという状況は改善すべきだろうと思っております。

 そうした中で、私たち「つくろい東京ファンド」という団体を2014年に立ち上げまして、ハウジングファーストと、ホームレスの人たちに直接住宅を提供するという理念のもと住宅支援の活動を行っております。詳しくは、スタッフが書いた原稿のほうを読んでいただければと思いますけれども、東京都中野区に個室のシェルターを開設いたしまして、3年間で約80人の方に利用していただいております。または、ほかの区でも、現在、新宿区、豊島区、墨田区などで、近年、空き家問題、空き室の問題が深刻化しておりますので、そうした空き家や空き室を借り上げて、そこを住宅支援の場として活用するという事業を行っております。

 利用の流れについて見ていただきますと、さまざまな都内の生活困窮者の支援、ホームレスの支援をしているNPOから紹介して入っていただくことが一番多いのですけれども、ただ、最近は東京都23区内の生活困窮者自立支援相談の窓口からの紹介で入られるという方もいらっしゃいます。私たちは民間の寄附で運営しておりまして、完全に制度の外でシェルター事業を行っているのですけれども、実際は、特に東京では、一時生活支援事業が非常に使い勝手が悪くてなかなか入れないという状況があって、生活困窮者自立支援の窓口でも、「断らない支援」ということで、いろいろな方の相談を受けるけれども、実質的にその住宅支援が必要な方についてつなげ先がないというような状況があります。そのときの一つの社会資源として私たちのような民間団体が受け皿となっているというような現状もありまして、そうした窓口からの相談もふえております。また、一部、社会福祉協議会からのつなぎでお受けすることもあります。

 そして、私たちのシェルターに3か月から6か月程度、なるべく早くアパートにと思っているのですけれども、3か月程度入っていただいて、その間に生活保護の申請の支援を行ったりとか、あるいは病院の同行や部屋探しの支援等を行って、地域のアパートに移っていただく。アパートに入った後も、家庭訪問等を行って、地域での生活を支えていくという事業を行っております。

 詳しい実績については、机上配布資料の11ページに一覧表が出ておりますので、ごらんになっていただければと思いますけれども、退所された方のうち約8割がアパート、約1割が精神科のグループホームで地域生活を継続されておりまして、9割の方々が地域での生活を継続されていらっしゃいます。

 こうした事業は、もともと私どもが参考にしているのがアメリカで始まった「ハウジングファーストモデル」といいまして、従来の方式がステップアップ方式といわれて、アメリカの場合は薬物依存を抱えているホームレスの方が多いので、そうした方々にまず病院に入ってもらう。薬物とかアルコールが完全に抜けたらシェルターに移ってもらう。そこで一定期間過ごしてもらって、その後、グループホームに入ってもらって、生活訓練をして、最後にアパートに移るという、これも日本の自立支援センターの事業も基本的には同じ発想になっているかと思うのですけれども、アパートがゴールになっているという、そういうモデルで従来事業を行ってきたのですけれども、結果的に、その途中でドロップアウトしてしまう人たちが多い。最後までたどり着けるのが2割程度しかいないということが徐々にわかってきまして。そうではなくて、最初から無条件でアパートを提供して、そこでの地域生活を支える。それを医療関係者やソーシャルワーカー、ピアサポーターなどがチームを組んで家庭訪問を行って、地域での生活を支えるという方式に転換したところ、8割から9割の方が地域で定着することができたことがわかりまして、結果的に、社会的なコストもそちらのほうが安く抑えることができる。医療費等を削減できるということで、アメリカの各州に広がり、そして、今、全世界、欧米を中心にハウジングファーストモデルというのが主流になりつつあるということが言えるかと思います。

 私たちは東京で、「ハウジングファースト東京プロジェクト」というネットワークを組んでいて、このハウジングファーストを東京で実現するために活動をしているということになります。

 ハウジングファーストの原則については9ページに掲載いたしましたけれども、住まいは基本的な人権であるという考え方のもとに、全ての人たちにノージャッジメント、ジャッジをせずに直接住宅を供給する。入った上で支援をするという、御本人が必要とする限りにおいて関わり続けるという支援のスタイルになっております。

 東京では、現在、ハウジングファースト東京プロジェクトということで、7団体がネットワークを組んで、それぞれの持ち味を生かして支援を行っておりまして。私たち「つくろい東京ファンド」は、その中でも借り上げ住宅支援を担当しております。ほかには、精神科の訪問看護のステーションであったりとか、精神科のクリニック、あるいは北海道の「べてるの家」につながっている「べてぶくろ」という団体があるのですけれども、そちらのグループホームなどもありまして。ホームレスの方だけではなくて、精神科病院から退院された方々の居住支援も同時に行っているということになります。

 そうした活動を行ってくる中で、当然、福祉事務所と協働する機会も多いのですけれども、残念ながら、さまざまな点で困難を感じる場面があります。幾つか11ページに問題点を列挙しておきましたけれども、前泊地主義というのは、これは、自治体が生活保護を申請するときに、本来は現在地保護ですから今いるところで申請すればいいのですけれども、東京都内の自治体は、「前の日の晩はどこに泊まっていましたか」というのを非常に気にするということがあって、法律にはない前泊地主義というのをとって、事実上、それでほかのところから来た人を排除するということも行われていたりとか、あるいは、生活保護を受けた後にアパートを借りる際に、その管内でないとアパートの設定を認めないということで、居住の自由が事実上制限されたりというような問題もあります。また、アパートを借りる際に、厚労省のほうでも住宅扶助の代理納付というのを進めていらっしゃいますけれども、必ずしもそうしたことに積極的ではない自治体もあって、これも地域によってかなりばらつきが出ております。

 最も問題になるのは、そうした私たちの施設からアパートに入る際のアパートの一時金の支給についての判断が当事者不在で進められておりまして、その判断がかなり恣意的である。統一的な判断というのではなくて、ケースワーカーのかなり恣意的な判断によって、「ちょっと待ってください」みたいなことを言われるのですけれども、その判断がなぜちょっと待たなければいけないのかよくわからない場合が多いということがあって、私たちとしてはなるべく早くアパートにと思っているのですけれども、それがなかなかスムーズに進まないというような問題があるかと思っております。

 そうした実践から見た課題について、困窮者支援、生活保護等については述べていきたいと思いますけれども、まず、生活困窮者自立支援制度の課題といたしましては、一言で言って、居住支援が弱いということが言えるかと思います。住居確保給付金という制度がありますけれども、利用者数がこの数年で6分の1、7分の1程度まで減ってきております。これは一番の要因といたしましては、この住居確保給付金、もともとは前身といたしましては2009年にできた住宅手当ということになろうかと思いますけれども、当時は、リーマンショック、派遣切りがありまして、これまで働いていた人が急に仕事・住まいを失ったという状況があって、それに対応するために離職者に対して住宅支援を行うというのがこの住居確保給付金の前身である住宅手当の趣旨ということだったのですけれども、その対象者がその後拡大されていないという問題があるかと思います。実際には、当時と比べて困窮者層がかなり変化してきておりまして、現在では、仕事がなくて住まいに困っているというよりも、仕事があるけれども、ワーキングプアであるためにネットカフェなどで暮らさざるを得ない。特に大都市部では住宅費が高い、初期費用が高いということで、アパートを確保できないという人たちがいるのですが、そうした人たちがこの制度を使うことはできない仕組みになっているのは大きな問題だろうと思っております。

 あと、高齢者も制度から除外されておりまして、これも今、「下流老人」という言葉がブームになっていて、低年金の高齢者がふえておりますけれども、こうした人たちがこの制度、住宅支援を受けることができないのは大きな欠点だろうと思っておりますので、対象者を拡大して、あと、アパートに入るときの初期費用が現在は社会福祉協議会の貸付になっておりますが、これもなかなか借りにくい、審査が厳しいという状況がありますので、これについても支給するような制度に変えていただきたいと思っております。

 次に、一時生活支援事業についても、実施地域、残念ながら、任意事業の中でこの一時生活支援事業は28%ということで、実施率が最も低い事業になっておりまして、国の補助金を引き上げるなどして実施できる地域をふやしていく必要があるだろうと思っております。

 そして、全体といたしましては、先ほど、ハウジングファーストの原則で、住まいは基本的人権であるという話をいたしましたけれども、現在の困窮者自立支援制度の中では、居住支援、住宅支援があくまで就職支援、再就職支援の一つのツールでしかないという点に問題があると思っております。そうではなくて、全ての生活困窮者に安定した居住の確保を最優先するという発想の転換が必要ではないかなと思っております。

 生活保護についても同様でして、生活保護法の中には、第30条で「居宅保護の原則」がありますけれども、残念ながら、それがあまり重視されていない。無低などの民間宿泊所に長期滞在を強いられるという状況があります。民間宿泊所に依存するのではなくて、基本的に、まず居宅を設定して、そこでの地域生活を支える仕組みを構築すべきだろうと思っております。

 ただ、現状ではケースワーカーがあまりに少な過ぎる。無料低額宿泊所になぜ福祉事務所が依存するかということを考えたときに、ケースワーカーの不足があると考えておりまして、地域に移ると一人一人家庭訪問をしなければいけないけれども、施設にみんなでいてくれると、そこに一箇所行けばいいという発想がどこかに問題としてはあるのだろうと思っています。その意味でもケースワーカーの増員は不可欠だろうと思っております。同時に、悪質な民間の宿泊所に対しては規制を強化してほしいと思っております。

 居住支援については、今年の10月から、住宅セーフティネット事業が国土交通省のほうで始まります。今年の4月に住宅セーフティネット法が改正されまして、空き家を活用した新たな住宅セーフティネットが始まるということで、そことの連携、厚生労働省のほうでも、今、国交省との連絡協議会を開いていらっしゃいますけれども、この連携を深めて、居住福祉政策を確立していただきたいと願っております。

 あと、同時に、生活保護について古くて新しい問題である「水際作戦」がいまだに存在しております。私たち支援者が一緒について行くときちんと対応していただけるようにはなってきておりますけれども、生活に困っている方が一人で行くと、いまだに追い返されるという状況がありまして、その水際作戦であったりとか、あるいは先日今年の1月に小田原市の「保護なめんな」ジャンパー問題が発覚して、あろうことか、福祉事務所の職員が「保護なめんな」とローマ字で書かれたジャンパーを着用して家庭訪問等を行っていたということが大きな問題になって、小田原市はその後検証委員会を設置して改善に努めていらっしゃいますけれども、そうしたケースワーカーによる人権侵害もいまだに散見されるという状況があります。これらを改善するためには、ケースワーカーの研修体制を強化したり、あるいは第三者的な苦情受付機関を設置したりということが必要だと思っております。

 また、小田原市もそうだったのですけれども、自治体のホームページとか、あるいは「保護のしおり」に書かれてある生活保護制度の説明の中に、実際とは違う、違法に近い記述があることが幾つか問題になっておりまして、これらについてもぜひチェックしていただきたいと思っております。

 最後に、居住支援とはちょっと異なりますが、扶養照会の問題について述べさせていただこうと思っております。私たちはホームレスの支援を行っていて、いまだに、7080代の方に路上でお会いする機会もあるのですけれども、そうした方々が生活保護の利用につながらない理由としては、1つは施設の居住環境の問題があります。もう一つは扶養照会。家族に連絡がいくのが嫌だとおっしゃる方が非常に多いということが前から気になっております。福祉事務所が親族に対して扶養照会を行うことが制度の利用を妨げる要因になっており、それが約2割といわれる生活保護の捕捉率の低さにつながっているかと思います。

 報道によると、厚生労働省が扶養照会の実態調査を行うということで、これは2013年の生活保護法の改正において、私たちが反対したにもかかわらず、扶養義務者への圧力を強化するような条文が盛り込まれてしまったのですけれども、それがさらに強化されるのではないかということで関係者の間で不安が広がっております。そもそも公的扶助制度の利用に際して、親が子どもに対する扶養義務はまだわかるのですけれども、成人した子どもが親に対する扶養義務を問題にするという仕組みは、日本、韓国、台湾などごく少数の国や地域にしか存在しておりません。しかも、韓国では日本以上に厳しい扶養義務者の基準があって、事実上、要件として扶養義務が扱われてきたのですけれども、近年、韓国で福祉の死角地帯の解消ということが大きな課題になっていて、福祉につながらないで亡くなる方がいる。これをなくそうということで、今年から扶養義務者の基準を段階的に廃止していくという改革が行われております。これは本当に時代に合ったものだと思います。また、韓国では、これまでパッケージで行われてきた扶助を個別給付方式に変えることも同時に行われておりまして、これらの改革を通して制度につながる人をふやしていこう。制度利用者を政策的にふやしていくというような対策が行われております。

 翻って日本を考えてみると、果たして厚生労働省は生活保護の利用者を政策的にふやそうとしているのか、捕捉率を上げようとしているのか、それとも捕捉率を下げたいのか、正直、私にはよくわかりません。本気で貧困対策に取り組むというのであれば、制度につながる人を増やす、利用しやすくするというような改革を行うべきであり、前近代的な扶養照会の仕組み自体を段階的に廃止していくということを検討すべき時期に来ているのではないかということを、最後に問題提起させていただきたいと思います。

 私からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 豊富な御経験に基づいて、特に居住支援に関して、困窮者自立支援制度についても大変貴重な御提言をいただいたかなと。そして、また、その御提言はこの審議会で議論してきたこととも深く関わっているなとお伺いをしておりました。

 皆さん、おそらく議論されたいことがたくさんあると思いますけれども、そこで議論を始めてしまうともうおさまりがつかなくなるというところもありますので、予定どおり順番に進めていきたいと思います。

 続きまして、橘参考人、よろしくお願いいたします。同じく時間は20分程度ということでお願いをいたします。

○橘参考人 こんにちは。NPO法人BONDプロジェクトの橘ジュンと申します。

PP

 私は、1020代の生きづらい女の子たち、居場所のない女の子たちの支援を2009年からしています。本当に帰る家がないのですよね。今、保護している子たちもそうですけれども、余儀なく自立を目指す以外、生き延びていく方法がないのですよね。だって、何か失敗したり、ぐあい悪くなったら、ちょっと休もうとか、家に帰ってしばらくゆっくり考えようなんていうことができないようなような子たちなので。というのは、家が虐待家庭ということもあり、1020代のときはいろいろな制度や支援につながれず、まちをさまよい歩く。あとは、その若さとか女の子ということで、その性を利用されるということしかなかったのですよね。もうギブアップするというのが本当に大変だなと思いながら、日々女の子たちと関わっています。資料のほうとかを見ながらいろいろと説明していけたらいいなと思います。BONDプロジェクトです。

 次、お願いします。

PP

 「1020代の生きづらさを抱える女の子のための支援」ということでやっています。

 もともと私はライターで、女の子たちにどうやって出会うかというと、街にいる子に声をかけて、「こういった本をつくっているので、よかったら話を聴かせて」というのを始めたのがきっかけだったのですね。それは2005年だったのですけれども、終電が過ぎても街に立っているし、おなかが大きい子が街に立っていて、声をかけられて3,000円で身を売っていたりする。そういう女の子たちと出会って、これってお金がないからなのか、帰る場所がないからなのかというのを想像ができなかったのですね。

 話を聴く。そうしたら、「あんな家よりましなんだ。帰るよりましなんだよ、こっちのほうが」と言って、1020代の女の子たちが、着替えもないから、白い洋服を着ていると、袖口がどんどん黒くなったりとかそういう状態でも街に居続ける。私から見てて、これはちょっとしんどくないかなとか、お風呂に入りたくないかなと思ったりとかするのですけれども、そうやって私が声をかけると「おなかすいた」とか、「お風呂入りたい」とか、「ちょっとゆっくり休みたい」と言って、私ができることは話を聞いて、御飯食べさせて、お風呂入らせて休ませることだなと思って、保護ということをそのとき知らなかったので、「じゃ、あなたが楽だと思う場所はどこ?」と言ったら、「ラブホテルだ」と言うので、「わかった。ラブホテル泊まっていいよ」と言って、入ってから出るまで付き添ってあげたりとか、お金を出してあげたりとか、そういうふうにしていたのですね。もちろん自宅に泊めるということもしていました。わからなかったのですね。いろいろ知らなかったのですけれども、本当に困っていて、やりたくないけれども、仕方なく援助交際しているという女の子たちだったので、「それだったら、一晩うちに泊まりなよ。ゆっくり考えよう」ということを2005年ぐらいからずっとしていました。

 だけど、聴いて、伝えるというだけではどうにもできないという状況を知って、いろいろな人につながなければいけないと思ったのですね。2009年に、その子にとって大人にくっつけるという思いを込めて、BONDプロジェクトというのを始めました。

 次、お願いします。

PP

 「聴く」「伝える」「繋げる」です。

 「聴く」というのは、その子たちの声を聴かないと本当の部分がわからないということで、それをやっています。「伝える」は、本でしたりいろいろと、今ラジオとかもやっているので、それで伝えたりとかでやっています。「繋げる」は、弁護士さんとか、ほかの専門機関へつなぐということもしています。

 ただ、相談を受けて、本当に帰れないとか帰せないという状況の子の話を聞いたときに、やはり必要なのが居場所なのですよね。その日安心できる居場所、それが必要だなと思ったのですね。それで、仕方なく一時保護というのをしています。ワンルームのマンションにマットを敷いて、女の子を泊めていました。帰せないのだもの。帰ったら虐待があるのだもの、暴力があるのだもの、やりたくない援助交際をしなきゃいけないのだものということで、「じゃ、ちょっとうちにいたほうがいいね」ということで一時保護。朝までゆっくり休めばいいよ。だって、街に出て、彼女を必要とする人たちはやはり彼女を利用しようとする大人たちだったので、彼女の人生が百八十度変わっていく、そういう姿を見てきたので、「そんなことしないでいいよ。だったら、うちにいなよ」ということで、一時保護をやっていました。

 ただ、一時保護でその子にふさわしい支援先につなごうとする、そのつなぎまでの時間が必要だということで、中長期の保護をしていたのですけれども、それでも行く場所がないのですよね。今は、もうしょうがないですよ。自立を準備するための家ということで7月28日から始めているのですけれども、そうやってもう出会ってしまったから、居場所づくりをやるしかなくなってしまったのですね。ということでやっています。

 次お願いします。

(PP)

 私たちの役割は、もちろん行政のところにつなぐのも前提ですけれども、そこにたどり着けない、待っていても出会えない女の子たちの支援ということで、「動く相談窓口」として頑張ってやっています。街頭パトロール、アンケート、メール相談、電話相談、面談。

 この面談も、来れる子には来てもらう。だけれども、来られない子だっているわけですよ。小学校6年生の子も面談しに行ったことがあります。中学校1年生の子も「ここまでおいで」と言って、来られないのですね。そういう子は、私たち行きます。北海道から沖縄まで全国、その女の子に会いに行くのですよ。新規の相談は、1か月大体5060人ですね。そのぐらい声が届きます。どこにも相談できないって。学校だって行けてないとかそういうこともあります。親には当然、親のことを誰か大人に言うということができないとか、そんな感じで誰にも言えないという言葉を私たちに伝えてくれます。

 今大事にしているのは、いろいろな支援をされている方たちとの連携だと思っているのですけれども、こんな場所あるよって、今ある相談窓口とか教えるのですよ。当然、私だってすぐに行けないときがあるから。だけど、やはり窓口というのは彼女たちにとっては敷居が高いのですよね。怖くて行けない、そんな大ごとにしたくないって、そう思ってしまうのですよ。「だったら、どこどこの何々さんのところへ行って」って、そういうネットワークを、顔の見えるネットワークづくりというのを今目指して頑張っています。

 次お願いします。

(PP

 今、BONDでやっているのが電話相談とか、あとは、荒川区の障害福祉課と一緒に、なかなか行政にたどり着けない女の子たちのための相談室ということで、週3回やっています。

 お願いします。

(PP)

 あとは、今「若草プロジェクト」といいまして、瀬戸内寂聴さんとか村木厚子さんとか、あとは、大谷弁護士さんたちとかとその地域の支援者の方たちなどと一緒に、女の子たち一人一人に寄り添おうじゃないかと。葛藤に寄り添うということですね。決まっているとか決めて、相談に来る子なんていないのですよ。悩んだり迷ったりしたいのですよね。その葛藤につき合える人たちというのを、ネットワークをふやそうと思ってやっています。

 お願いします。

(PP)

 活動風景はこんな感じです。本当に、いれば声をかけるという感じです。気になった子がいるから声をかける。「よく話してくれるね」と言われるのですけれども、話してくれる子もいるし、話してくれない子もいるのですよ。それは当たり前です。でも、その関係だからいいのですよね。だって、街で出会って、私が興味を持って声をかける。相手は話したくないと思ったら話さなくていいのだもの。補導とかでもないので。なので、話したいと思ってくれるから本音が聴けるというのもあるのかなと思って、この対等な関係性がすごく心地いいのですね。無視されても、それは当然だと思っているので。そのかわり、私たち「何かあったときには相談してね」ということで、本を渡したり、カードを渡したり、今日話せなくても、いつか困ったときに私たちがつながれるように、役に立てるようにと思って、そういう情報のカードみたいなのを渡しています。

 お願いします。

(PP)

 これは本当に漂流少女みたいな感じなのですけれども、いろいろなお家をもう転々としているのですよ。この子は16ぐらいから風俗をやって、風俗の運営をしている男の家とかそういう感じで住所もないのですね。だから、どこにも行けないという感じなのですよ。当然、何か悪さをして見つかれば、彼女もきちんとした場所に保護されるのですけれども、それ以外は、くぐり抜けてしまえば、何とか体を売って生活をしているというような状況の子なのですね。だけれども、彼女はやはりいろいろ疲れたり、怖い目に遭ったりすると連絡をくれるのですよ。それで、「ちょっと休ませて」と言って私たちのところへ来るのですね。私、保護ってそれでいいと思っているのです。そういう使い方もあっていいと思っているのですよ。今疲れたから、悩みたいときに悩めるというのも大事だなと思っているので、そういう子も受け入れています。

 お願いします。

(PP)

 今、街で声をかけられてついて行くという女の子もいますけれども、ほとんどネットで出会って男の子と待ち合わせをして。男の子というのは今日泊めてくれる人。「神待ちサイト」とか、昔そういう言葉がはやりましたけれども、いろいろなことと引きかえに泊まる場所を得る。そういうふうにしながら生きている子がいるわけですね。

 この子もそうでした。この子は児相2度ぐらい一時保護されています。されているけれども、結局、家に戻される。戻されて、親の状況は変わらない、虐待は変わらない。大人なんてなかなか変わらないのですよ。変わらないとなったときに、もう家を出る、出ようと思った。でも、お金もない、行く場所もない、携帯だけ持つ。それで、SOSを出すのですよ。今日泊めてくれる人。見つかった人。返事たくさん来るのですって。いろいろ見せてもらいましたけれども、その中から、今迎えに来てくれるという人を選んで、彼女が最寄りの駅、そこから彼の車に乗って行ってしまうから、自分がどこにいるかわからないのですよ。連絡があったときもそうだったのです。「今どこにいるの」と言ったら、「わかりません」と言うのですよ。「何で」と言ったら、「だって、車で迎えに来てもらって、その家にいるから」。ああ、そうだと思いましたね。郵便物がないか聞いて、そうしたら郵便物が周りにないと言うので、家から出てもらって、近所のお店へ行ってもらって、どこにいるか知った。そうしたら、もう2県またいでいました。もうそんな状況です。それで、いる場所に迎えに行って保護をして、2週間ぐらいうちにいて、その後、児童相談所にもう一回つないだ。今は、自立援助ホームにいます。やっとですよ。

18歳前だからよかった。だけれども、18歳になってしまった子なんて、児童相談所に保護してもらえませんから。そうなると、婦人保護事業、婦人保護施設になる。だけど、18歳で高校3年生だったらどっちなのですかという話ですし、大学生だったらシェルターだったら、シェルターから学校だって通えないじゃないですか。そんな感じで彼女たちにふさわしい公的な安全な場所がなかなかないというのが現状なのではないかと思います。

 次お願いします。

(PP)

 これはうちのシェルターでの様子です。うちの20代の若いスタッフが一生懸命女の子たちのために喜びそうなものをつくっています。

 次お願いします。

(PP)

 こうやって一緒につくったり勉強を教えたり、そういう時間も過ごしています。だから、私たち彼女たちと楽しい時間も過ごしているのですよ。だからやっていけるのです。

 次お願いします。

(PP)

 いろいろな子がいるのですけれども、今日、事例とか話しているとちょっと時間がなくなってしまうので、これは飛ばします。

(PP)

 飛ばします。

(PP)

 私が思うには、若年女性にも届くように、「こういう制度があるよ」って、生活困窮者自立支援制度が自分に当てはまるなんて女の子たちはわからないと思うのですよ。そんな言葉は知らないし、もともと親から「おまえのせいだ」とか、「おまえなんて生まれてこなきゃよかった」と言われている子たちなので、もう本当に自己否定感が強いです。そういう子たちがどこかに行って、ちゃんと誰かに助けてもらえるなんて思えないのですよ。だけど、私たち通訳とかそんな役割なのかな。彼女たちの話を聴いて、彼女にふさわしい大人につなぐ、こういう場所につながらなかったらこういう制度が使えないというのをわかっていただきたいなと思います。

 ネットで彼女たちは大体検索しますけれども、ここにたどり着かないのではないかなと思うのですよね。私が今困ってて、相談できる場所がここだって、生活困窮者自立支援制度というところだってわかるかな、わからないんじゃないかなと思います。そのニーズに合わせるということですよね。私たちみたいなものを利用していただければいいなと思います。

 今行っている支援が制度につながらない。いろいろやっていると思うのですけれども、本人がその制度と自分とは全く関係ないと思っていると思うのですよね。なので、この支援の担当者にも見えるように、地域の連携会議などに私たちのような支援をしている、現場を知っている団体なども参加して現状を述べさせてもらって、それで、一緒に考えていいただければ、彼女たちの困っている、そして、必要だと思う支援にちょっとは近づけるのではないかななんて思います。

 とにかく貧困と言って本人がぴんとくるかといったらこないと思うのですよ。施設とか、小さいときいろいろな事情で大変な思いをしながら行けた子はいいです。行けなかった子たち、見過ごされてきた子たちはどうしましょう。親はいる、お金もある、さらに、世間体も気にする大人たち、親たちです。その中で虐待を受けてきた子どもたちは、苦しくても困ってても後ろ楯がないのです。救助の手、救いの手なんて、待っていてもさしのべてもらえない。法や制度というものからすり抜けていってしまうのですね。

 貧困家庭だけで起こるものではないのが虐待です。ふさわしくないからといって、彼女たちにその制度を当てはめないということはしないでほしい。病院にも受診しない。困難な状況に置かれている女の子たちが必要としていることは、先ほども言いましたけれども、その葛藤につき合うことだと思います。そのニーズに合った支援、具体的な問題点を洗い出して、彼女たちと一緒に解決の糸口を見つけていけたらいいのではないかなと思います。私たちも微力ですけれども、女の子たちと一緒に何とか使える制度とかそういうものを利用しながらやっていきたいなと思います。

 婦人保護事業の見直しも同時にこれは考えていただきたいのですね。行かないのですよ。あそこに行けないのです。18歳から行けても、彼女たちと年齢差もあります。時代に合った場所というものが必要なのではないかなと思っているので、私たち、今そういう居場所ができるように自立準備ホームみたいなものをつくらざるを得なくてつくりました。だけど、貸してくれているのは婦人保護事業の方なのですね。そうやっていろいろな意味で変えていくということも必要なのではないかなと思います。

 どうもありがとうございました。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 葛藤に寄り添うとか、動く相談窓口というのは、まさにこの制度が実現しようとしていることなのですけれども、橘さんたちの目から見ると、この制度、確かにストリートの彼女たちからすると、ネットから見えてこない制度だということで、橘さんたちのような「通訳」を通して見ないと見えてこない。そういう意味では異国の制度になってしまっているようなところがあるということで、これは大いに触発された次第であります。どうもありがとうございました。

 続きまして、伊藤参考人及び上田参考人からの御説明をお願いしたいと思います。恐縮ですけれども、15分程度という時間の枠でお願いできればと思います。

○伊藤参考人 初めまして。今日はこのような会議に意見を述べさせていただくチャンスをいただきまして、ありがとうございました。

 私たちKHJ全国ひきこもり家族連合会は、2005年に創業者奥山雅久が立ち上げた全国組織でございます。現在、全国に59支部ありまして、北海道から沖縄までさまざまな活動を家族会としてやっております。最近は、もともとはひきこもりだった若者たちが外へ出始めて、自分たちの意見を言う場として、「ひきこもり大学」とか、「ひきこもり対話研修会」とか、そういうふうないろいろな本人たちが発言できる環境になってきたなとそんなふうに思っております。

 最近問題になったのは、昨年度内閣府で発表がありました、ひきこもり総数54万人という数ですが、それは39歳までという枠組みの調査でしたので、それ以降の40歳以上、65歳以下の実態調査を行いました。問題が浮かび上がってきたのはそれこそ貧困の問題ですね。もう外へ出れませんから、親の年金生活に依存してしまう、そんなような生活を送っている。どこにもつながっていない状況が非常によくわかってきました。今年もその調査を継続するつもりですが、今回、この会議に資料としてまとめたものを事務局長の上田のほうから報告させていただきます。

○上田参考人 では、お手元の資料に「当事者視点からのヒアリング」ということで、本日7事例お持ちさせていただきました。当会は、「当事者」と言うところを、家族、親ですね。そして、本人、兄弟、姉妹、全て含めて「当事者」ということで、今回、こちら全て利用者の方御本人から電話でのヒアリングを行ったものをまとめさせていただきましたので、御説明をさせていただきます。

 もう一つ、今回の場は、本人たち利用者がどんな思いでこの困窮者窓口を訪れたかということをぜひ知っていただきたいということで、『ひきこもり新聞』という新聞から、「私たちが望む必要な支援」というこちらの資料も参考でつけさせていただきましたので、あわせてごらんいただければと思います。

 では、レジュメの1ページ目からまいりたいと思います。

 主なヒアリング内容としては4点事例の聞き取りをしております。まず家族事例が5事例あります。

 最初の1事例目は、こちらに書いてある、母親60代前半、本人36歳男性、ひきこもり期間10年。

 当会のひきこもりの調査では、10.8年が平均年数ですけれども、40代以上になるとひきこもり期間が23年という結果も出ておりまして、この男性は30代でひきこもり期間10年というところでの事例になります。

 経緯としましては、本人に市役所のことを知ってほしいと家族と本人が一緒に来所したのがきっかけで、その中に困窮者窓口があり、相談につながった。

 実際に支援を受けてよかった点としては、1~2か月の相談利用で、本人が自分で精神保健福祉手帳を取得し、手続きも本人が自分で行うことができた。

 今年4月からは就労訓練事業所に通い、本人のペースに合わせた伴走型支援を行ってもらっているということで、現在も週3日通えている。

 支援員の方が特に本人のこだわり、気に入らないものを本人は受け入れようとしないというその部分を非常によく理解をしていただいて、本人の目線で寄り添ってくれたことで現在も継続できているのではないかと思われる。

 家族に対して、本人がずっとひきこもりたいのは自分の気持ちを言えなかったり、NOが言えなかったり、自分の中の内にこめてしまうことで非常にエネルギーがそこで消耗してしまって動けなくなるという特性があります。そこで、本人も家族に対しても少しずつ自分の気持ちが言えるようになったり、また、家族も本人の力を過小評価していたということで、もっと本人のやる気や粘り強さを応援していきたいと言っておりました。

 大切な点で、1つ備考につけ加えましたのは、当会60か所家族会がありますが、この支援員の方は東京にも頻繁に足を運んで、いろいろな家族会の学習会や居場所、イベントも参加されて、一体本人がどういう思いでいるのかというのを積極的に学びを深めていった支援員の方だったということをおっしゃっておりました。

 こんな支援があったらという今後の要望ですけれども、このお母様は、自分が保健センターに8年通っていたので、こういった困窮者窓口の情報も入手はできましたが、ただ、支援の情報が自分から探さないと手に入らない。できれば、もっと市役所の関連窓口のほうからの積極的なアナウンスもあったらよかったなと、または、市報や公報への掲載もぜひ検討してほしいというお声をいただきました。

 では続きまして、家族事例の2にまいります。

 この方の事例は、男性45歳、ひきこもり期間15年という事例でございます。

 お母様への聞き取りを行いました。お母様は、2年前から困窮者窓口に訪れているということなのですが、その困窮者窓口の支援員に、家族会のひきこもりを経験したピアサポーターが支援員にいたということで、訪れてみようというのがきっかけだったそうです。

 実際によかった点としては、非常に物理的アクセスがよくて通いやすい。そして、ここの支援窓口は隣に喫茶室が併設されていて、予約なくても、自分が行きたいときにその喫茶室を訪れて自由に利用ができる。担当の相談員が隣から「何々さんが来たよ」ということで、必ず声をかけて、そこで話を聴いてもらえた、非常にいいと言っておりました。自分のペースで動ける。家族自身もせかされるせかされるのが非常に負担になるのでと。

 この支援員の方は訪問支援を3回してもらいましたが、ひきこもりの特性を非常によく理解している支援員の方で、本人に無理に会おうとしなかった。そして、家族の状態を適切にアセスメントをして、今、家族関係の信頼関係が課題ですねと。この親御さん非常に過干渉であったというところで、本人が全く無言の状態で長いこと来ていましたが、必要なときは本人から話しかけるからということで、過干渉をやめたところ、今少しずつ会話が戻りつつあると。

 その裏に、この親御さん自身も家族でひきこもり状態であって、社会へも自分自身が非常に閉ざされた状態。その中でこの困窮者窓口につながったことで、親自身も世の中の仕組みや制度の支援に関心を持ったり、近所の方が困っているということで、困窮者窓口を紹介したりなど、親自身の自己肯定感も軽くしていったと。そして、もう一つは、家族会と困窮者窓口を使い分けて、家族の気持ちの吐き出し、嫁姑の問題もいろいろあったり、介護の問題も大きくあったというそうで、そのときの気持ちの吐き出しは家族会に、そして、困窮者窓口では具体的な家族相談でということで、使い分けができているというのも非常に自分の安心につながっているとおっしゃっておりました。

 次の家族事例3にまいります。

 この方は、本人44歳の男性、ひきこもり期間20年、お母様は70代ということで、お母様から聴いた事例です。

 最初に来所したときに、「ひきこもり」という看板が全くなく、本人が来ないと何ともという窓口の体制ができていなかったときに、このお母様はとにかく窓口に丸1年行き続けて、ひきこもりの状態のことを、こういう状態で本人はどうしても来れないのですということを伝え続けたところ、今年4月に来所したときに、あと、親のほうから、とにかく今本人の状態がわからないので医師につなげてほしいという具体的な要望を伝えたのと、あとは、自分が70代になって、親亡き後の不安がある、どうしたらいいかという点を尋ねたところ、そこの適切な情報提供を受けたという事例です。

 実際に、親亡き後の情報提供としては、グループホーム、施設、手帳の取得の仕方、生活保護、介護の方法などの社会資源の紹介と、あとは、医師につなげたいというところについては、在宅医療精神科のある訪問診療をすぐに紹介してもらい、今現在、月2回、ドクターがこの方のお家に訪問診療をしている。本人も会えてはいるのですけれども、まだ質問に答える程度で、実際にこの後どうなるかといったところだそうですが、ここで、ひきこもりの特性というか、初めての方に会うことの負担ということを考慮していただいて、もし、このドクターがかわるときに、新しいドクターになるのであれば、新しいドクターと合わなければ、引き続き担当してもいいですよという、その辺も事前に配慮をしてくれているということで、訪問に対してのハードルを下げて対応をしてくれていると。

 あとは、支援員自身も、訪問をとにかく迅速に行っていただいて、とにかく会えなければ会えないでいいので、ひとまずお伺いしますということのアウトリーチをして、今実際は、月1回、本人は口をききませんけれども、同じ空間でお茶を飲んだりとかいうことができるところまで来ている。たまに質問をすると、「ある」とか「ない」とか、「ゆるキャラは興味あるか」という質問にも「ない」とか、そういう答えは答えてくれる。そこも、帰り際に支援員の方が「嫌なのに、会ってくれてありがとう」と、本人の気持ちに非常に寄り添う言葉をかけ、上から目線の押しつけで訪問しているんじゃないよというところをちゃんと言葉を添えて接してくれているところも非常にありがたいということでした。

 この御家族の場合は、1年間通い続けて、自分が、家族が一体何が困っているかというニーズの整理ができたという、私は非常に相談力のある家族だと思うのですが、次の事例5についてもそうですけれども、家族は一体自分の困っていることをどのように説明したらいいかわからないというそこからスタートですので、こういった事例もあるのですけれども、相談力、受援力、援助を受ける力のない家族もあるというところで、ちょっと事例4と5を紹介したいと思います。

 事例4は、もう一つ、60代前半のお母さんですけれども、このお母さんは学校の先生をやっていらしたということで、非常に積極的に窓口に訴えを起こしたお母さんでした。本人を連れてきてくださいと言われて、親がどれだけ困っているかということを訴えても対応はされなかったということで、その後、社協に1年間通い続けて、地域のキーパーソンを見つけた。児童館の方だということですが、こうやってひきこもりで困っている親がたくさんいるんだよということを訴えたところ、同じ思いの親がたくさんいることがわかって、今年4月、何と同市に親の会を立ち上げるに至ったと。

 そして、このお母さんは、中間的就労を、とにかく選択肢を何か欲しいと。本人が一般就労が難しいし、そういったすぐに働ける状態ではないけれども、そういったリハビリ的に何かないかというのをずっと訴え続けているそうです。ただ、そこの窓口にもそういう資源や情報がないの一点張りで、このお母さんが自力で内職を探し、そういった中間的就労の場の創出は個人では限界があるので、とにかく行政の理解を求めたいということを強くおっしゃっておりました。

 こういったところから、どんな支援があったらいいですかというところで、インフォーマル、公的でない民間のこういった支援現場のところから制度の網の目からこぼれ落ちた家族や本人のニーズがある。そこをぜひヒアリングして知ってほしい。当事者、家族の声に耳を傾けてほしい。

 そして、このお母さんはほかの市で、非常に進んでいる支援事例までかき集めて耳にして、何とか受けたいと、そこまで行ったそうなのですが、やはり在住ではないということで断られてしまった。長い目で見て、ほかの市のサービスも柔軟に受けられるようなシステムがあれば、選択肢の幅が広がるのではないかという声でした。

 そして、最後の家族事例の5ですが、家族がどんな混乱状態で自分の困り事を何から話していいかわからない御家族、70代後半のお母さんです。ちょっと高齢化したお母さんですね。御本人は40代男性、ひきこもり期間20年。

 このお母さんには、実は私が同行支援をして窓口に一緒に参りました。まず、どこから相談していいかわからない、そのお母様の複合化された不安というところで、子どもの将来もそうですが、親としての自責感、自分自身の老い、お持ちの家業のこと、夫婦、兄弟関係などいろいろな不安が折り重なっているというところを、支援員の方に2時間にわたってじっくり聴いていただくことができました。その不安の整理ができたことで、次の段階どうしたらいいかをこのお母さんは考える余裕ができました。

 もう一つ、このお母さんはかつて実は相談機関、サポートステーションですけれども、そのサポートステーションに行ったときに、なかなか本人の変化が見られないということでやれやれと、こんな変化が見られないのではちょっと相談も進みませんねという、そこで受けたトラウマがずっとあったそうで、息長く聴いてくれる相談機関は本当にあるのでしょうかという、そこの相談すること自体にとても不安を抱えていたお母さんだったのですけれども、この困窮者窓口の方で、「息長く行きましょう。1年以上はかけていきましょうね」という声がけにとても安心をされたそうです。

 あとは、パンフレットの説明が非常に丁寧で、ここにもちょっと抜き書きしたのですけれども、本人にパンフレットを見せるのでも、そのパンフレット自体が本人への威圧感、就労へのプレッシャー、そして、自分自身のこのブランクの長さに対する負い目を突きつけられるようなパンフレットもあると思うのです。その中で、この窓口のパンフレットは非常にやさしいパンフレットで、ここに書きました、「長期間ひきこもっており、家族以外との関わりがなく、すぐに就職活動をするのが困難である方も、安心してお越しください」というこの言葉があって、ここだったら本人も見るのかなという、そんな言葉もおっしゃっていました。

 以上が家族事例です。ちょっと急ぎ足で、本人事例のほうを1つ提出しましたものがあります。

44歳の男性、現在、一般就労中です。ひきこもり期間13年です。この方からは、長期のひきこもり者への対応についての貴重なヒアリングをいただきました。

 この方は、経緯として、母子家庭で、就労経験はありますが、挫折し、39歳のとき家族会につながったそうです。

 実際、家族会でのそういった活動はできたのですけれども、その後、お母様が就労困難となり、生活保護を受給しました。担当ワーカーから生活保護受給のための条件として、就労準備支援を紹介されました。週に2回セミナーを受講し、ボランティア、アルバイトの体験を重ねて半年間で就労に至ったケースです。

 ここで支援を受けてよかった点としては、「自分で目標をつくりましょう」ということで、それに向けて動くと。自分は多分背中を押されないとできないタイプだったのではないかと。背中を押されながら流れに乗って思い切ってやれたことがよかったのではないかとおっしゃっていました。

 就労の面接でよかったこととして、その場で就労が決まってしまった。1社目でしたと。履歴書について非常に空白期間の緊張というか負い目があったのだけれども、ほとんど履歴書を見られなかったのではないのかなとおっしゃっていまして、そういうストレスもありませんでしたと。

 就労後は、パートを経て、現在、正社員ですが、自分で稼いだお金を気兼ねなく使える、自由に使えるお金があることで自分の自信につながっていますと。現在、就労後も定期的に生活保護のワーカーの訪問がありました。担当は1~2回かわりましたけれども、何よりも自分のサポートというよりも、母と一緒のサポート、家族、世帯全体のサポートをしてもらえたことが安心につながりましたというお話でした。

 改善してほしい点ということで伺いましたのが、就労セミナーでのロールプレイがペース的にきつかった。対人緊張が強い、長期にわたるひきこもり。ひきこもりというのは、とにかく対人関係の困窮、対人関係が閉ざされた状態がひきこもりですので、そういう人にとってロールプレイという実習は、途中で耐えられなくなるのではないかと。この方の場合は、その前に家族会や若者の会への参加があったことが、そういったところの自分が耐えられた要因ではなかったのかなとおっしゃっていました。

 こんな支援があったらという今後の要望ですけれども、長期ひきこもり状態の方にはゆっくりとした時間が必要ではないか。人への受け答えに慣れるまでも、答えるのもゆっくりと時間がかかりますし、そこに長く関われることが大切ではないか。まずは定期的に通ってもらう環境づくりからではないか。そして、本人の落ち込みやすさへの配慮。これは特に受け答えが苦手というのは、日常会話でも本当につまずいてしまったり、つまずくのではないかということで、そこですらとにかく不安で、会話が本当に思うようにできなくてというところの落ち込みやすさですね。

 あとは、手帳を持ってなかったり、診断名がない人が非常に多いですから、そういったところで精神疾患の方との差というか、精神疾患の方はわりかし自分のことがわかっていたり、自己認知ができていて、対人への免疫もある方が多いと思うのですが、ひきこもりはそこが非常にブランクが大きくて、免疫がありませんので、自分が非常に自己否定が強いし、排除されてきたというそこの負い目的なところと、あと、自分が障害者扱いされていないという、自分の理想像との葛藤がありますので、そういった心理的な特性も見ていきながら、支援員の言葉のかけ方、指示的な高圧的な態度に敏感で傷つけられたと思いやすくなってしまったり、相手との距離感がうまく図れなくて、近づき過ぎても遠過ぎてもプレッシャーになったりするという。言葉はないけれども、目に見えない表情の変化でその方の状態を見ていくという、その配慮も必要ではないかというお話もありました。実際は、そういう理解と配慮のできる支援員の育成が必要ではないかと締めくくられていらっしゃいました。

 最後の事例になりますが、昨今非常ににふえている兄弟、姉妹の方の事例を説明いたします。

 御両親二人亡くされて、親亡き後の長期ひきこもり者への理解と配慮をということで、姉妹で御相談に行かれて、御本人は51歳の弟さん、ひきこもり期間20年ということです。

 兄弟、姉妹の場合は、20年とありますが、実際、人生の半分以上ひきこもっている25年から30年というケースもざらではありませんので、この事例はこれからの先駆的なモデル事例になってくるかと思っております。

 両親の死後、父母が遺した預貯金で生活をしていましたけれども、蓄えが少なくなって、KHJの家族会に相談がありまして、そこから困窮者窓口を紹介されました。

 1年目はよかった。ベテランの相談員の方から親身な寄り添いや社会保障に関する適切な説明があって、精神的負担が軽減してよかったと。ただ、よくなかった点として、2年目の相談員の方が非常に若い方で、長期ひきこもりに関する経験・知識が不足していて、本人に会えないということを言っていたところ、「では、どうしたらいいのでしょうか」と、逆に質問をされてしまった。本人に手紙を書いてほしいと訴えたのですけれども、その依頼を受けてもらえなかった。話は聴いてはくれても、窓口に具体的な解決力が不足していたと言っていました。

 あとは、姉妹への面談と本人への電話のみで、訪問活動や同行支援も一切なかった。そして、本人へ電話して、当然本人は断ります。拒否から始まりますので、断ったところで、それのアプローチがもう終わってしまった。

 では、こんな支援があったらというところで、長期ひきこもり者とその家族への理解をまず深めてほしい。経験豊かな支援員を配置してほしいと。自発的に窓口へ行けないのがひきこもりです。そういったところに一体どういった本人へのアウトリーチ、訪問活動。ただ訪問活動といっても、来ただけではなく、本人との関係づくりを積極的に行ってくれる支援体制が欲しい。

 そして、もう一つは親亡き後、兄弟・姉妹も自分たちの世帯、自分たちの家族を抱えて大変な中動いています。そこの兄弟・姉妹へのサポート体制、手続の援助や代行などを行ってほしい。具体的に、親亡き後、本人が一人で生きていくための具体的な方策のアドバイスをしてほしいということで、実際、このお姉さんは姉妹では来られたのですけれども、このお姉さんが一人で本人の生活基盤、遺産相続の手続などを肩代わりすることになりましたと。その精神的負担はかなり大きく、誰かに助けてもらったという実感がなかった。兄弟とは言え、何でここまで自分がやらなければいけないのかという非常に孤独感と理不尽な思いがあったそうです。

 生活保護を受ける際にも、自分の現在の家を売って生活保護を受けるための住居確保までに、本人が一時的に住まうことができる住居提供がなく、住居を調えるのがとても大変だったと。この住居提供がもし一時的にでもあればよかったと。あとは、生活保護受給に当たっても、本人に説明することへの負担、本人にそれをわかってもらうことへの意思疎通がそもそも難しいというところの関わりをサポートしてくれる人がほしかったなと。手続の説明の本人への負担が大きかったですということで、その支えになったのが家族会の中にある「兄弟・姉妹の会」というのがありまして、そこでの分かち合いの場が自分の精神的支えになりましたとおっしゃっていられました。

 実は、今回御紹介できなかった本人からの事例もありまして、最後のそのほかに寄せられた声からということでここに書きましたが、初回の面談、長期的なブランクが多い方にとって、自分は歓迎されてない、非常に自分を排除されてきたという支援員の言葉や行動にも非常に敏感になっております。初回の面談でそういった何気ない相談員の方の一言で「それはうちではやっていません」とか、「ちょっとそれ以上は無理です」といった言葉だったり、何かそういった言葉に非常に傷ついてしまったという声もあったそうです。

 特に発達障害を抱えている人で、自分自身の困難をうまく言えなかったり、臨機応変にアドバイスが聞けなかったり、苦手意識が非常に刺激されてしまって強い変化への抵抗感を持ってしまったり、そういう特性もぜひ窓口の方に理解をしていただきたいということをおっしゃっていた方もいました。

 以上のことから、ひきこもりの状態にある支援にとっては、支援人材の質の確保と人材の育成が必要であると考えております。あと、ひきこもっている本人が求めるあり方の声をぜひ学んでいただく機会を設けていただきたいと強く思っております。

 また、先ほど情報提供というところでありましたが、利用者目線のホームページやパンフレット、特に本人たちにとってはお役所的と言ってしまってはあれなのですけれども、文字ばかりのホームページに非常に威圧感を感じてしまって、自分が行くべきところではないのではないかと思ってしまうという声も幾つかありまして、あなたたちのすぐ手の届くところに利用できる場所があるんだよといったような情報提供の工夫もぜひお願いできたらなという声をいただいております。

 当会は、孤立無援社会から、共に支え合う社会としてなくてはならない制度として、ぜひこの制度拡充にお力添えできたらと思って、今回事例を出させていただきました。少しでもお役に立てればと思います。ルールありきではなく、人ありきの制度となるように、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○宮本部会長 ありがとうございました。大変豊かな事例の中で、この制度ができていることあるいはできていないこと、特にゆっくりした時間であるとか、落ち込みやすさへの配慮という、そういう細かいセンスの問題をどういうふうに制度の中で実現していけばいいのかということを考えながら伺っておりました。

 続きまして、A参考人からのお話をお願いしたいと思います。全体にちょっと時間が押してございまして、また、15分ということでよろしくお願いします。

○A参考人 千葉県佐倉市から参りましたAと申します。私は「生活クラブ 風の村」で、現在、就労訓練事業を利用しています。本日は、私の生活困窮者自立支援事業を利用してのお話をしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 私は小学校の院内学級は無事卒業しましたが、中学校の院内学級には通えず、家事を手伝いながら自宅で過ごしていました。母が亡くなった後、父と二人暮らしになりましたが、父が退職した後は経済的には厳しい状態でした。その後、父が亡くなった後独りになった私を心配した自治会長さんの紹介で、自立相談機関の人たちがいらっしゃってくださり、いろいろ相談に乗ってくれました。独りになった不安を受け入れてもらってとても安心したし、心強かったです。

 就労経験が全くないため、地域の就職情報誌等で就職活動を開始しました。就労準備支援事業において履歴書点検や自己アピール方法等を学びました。ハローワークで求職者登録し、求人票の閲覧方法を教えてもらい、就職活動を一緒に行いましたが、条件にあてはまる企業がなかなかみつかりませんでした。

 就労準備支援事業を利用してみての感想ですが、なかなか、第一歩が踏み出せなかったです。職場実践方式という、企業への応募を実践しながらの就労準備支援事業であったため、雇用の採否に関する恐怖感、就労スキルがないことへの不安が自分の中で大きくなってしまいました。経済面の不安も改善されることがなく、もっと企業とのネットワークを広げてほしいと思いましたし、いろいろな企業をもっと紹介してもらえたらよかったとも思いました。仕事の経験がないことへの不安はもちろんですが、それ以上に、家族以外の人と関わる機会がなかったことに対する不安が強かったです。

 そこで、就職活動を始める一歩手前のステップとして就労訓練を紹介していただきました。私の課題は、資格や免許を取得することよりも、まずは家族以外の方と接する機会を増やすことだと実感しましたので、訓練を申し込むことを決めました。訓練事業所は介護施設で、まずは見学に行くことにしました。ショートステイ、デイサービスの他に、障害者施設も見学させていただきました。

 そして、2週間の実習が始まりました。実習初日を終えて帰宅したら緊張から解放され涙が止まりませんでした。しかし、それで気持ちがリセットされ、2日目からは落ち着いて取り組むことができました。「働くことは社会に参加して少なからず自分も頼りにされているんだ、自分も役に立っているんだ。」と実感することができて、私にとって今までにないとても貴重な経験です。

 でも、その分大変なこともあり、心が折れそうになることもありますが、それを自分一人で抱えていたら持ちこたえることができなかったと思います。そんなときに、自立支援窓口の皆さんに話を聞いていただいたり、アドバイスをいただける環境はとても心強く、そのおかげで大変なことも少しずつ自分で解決・克服できるようになりました。

 経済面の改善がされたことも大きな変化です。週に3日は高齢者ショートステイの介護補助に従事し、週に1日は保育園で清掃業務に従事しています。保育園では園児の玩具も作っています。今までに私が作った作品を少しご紹介したいと思います。

 他人とのコミュニケーション力も大幅に改善し、ショートステイでは、利用者さんに自ら積極的に話しかけることができるようになってきました。初任者研修も終了し、介護補助の仕事を今では任されるほどになりました。失敗し、落ち込むこともありますが、やりがいを感じています。

 こういう支援があったらよいと思うことは、就労訓練事業をもっと周知してほしい。もっと利用する側の視点で制度紹介をしてほしいです。

 また、私自身、就労訓練事業を利用した先輩として就労訓練を今後利用する人をサポートしたいとも思っています。「正直であることや、人を大切に思うこと。人の命を大切にすること。人と人のつながりを大切にすること。」その思いに支えられて、さまざまな人に助けられて、いろいろな困難を乗り越え、今の自分があると思います。

 以上です。

○宮本部会長 どうもありがとうございました。

 A参考人はこの制度を利用して感じられた苦しみやストレスみたいなことも含めて、あるいはこの制度を通して達成していただいたことを含めて、本当に率直に語っていただいて、心から感謝したいと思います。どうもありがとうございました。参考になりました。

 次に、「生活協同組合連合会グリーンコープ連合」の家計相談支援事業の利用者の皆さんからのビデオレターという形での発表になります。

(ビデオレター上映)

 1事例目 64歳男性(障害があり寝たきりの妻と二人暮らし)

 「最初に相談したときの生活状況・心境は?」

  私は、今トラックの運転手を長いことしていましたけれども、家内があるとき、脊髄の病気で腰から足が立てなくなり、仕事を介護のためにやむを得ず辞めました。

  蓄えもないですからね。家内の年金と私の60になってからの年金で少ない収入でやってきましたけれども、病院へ通うのに車代とか、徐々にやっていけなくなり、つい闇金に手を出してしまって。家賃も国保もだんだん払えなくなってきて、もうどん底の生活でしたね。

 「家計相談支援事業をすすめられたときの心境は?」

  半信半疑でね、頼んでみるかって。そうしたら、えりさんたちが来てくれたもので、そのとき、それでもやっぱり半信半疑だよね。区役所とかああいうところは一緒に行ってくれたからね。だんだん気持ちが進むようになっていって。

 「家計相談支援事業を利用してみての感想は?」

  闇金や借金は相談をしてもらえました。すぐに解決はできました。

  それで、生活のあり方については、いろいろえりさんのほうからアドバイスをいただいて、滞納も徐々に減り、家賃や保険も、えりさんと一緒に窓口に行って、支払方法とかそういうのができましたので、本当に助かりましたね。

  普通、そこまでしてくれんものね。

 「最初に相談したときと比較して生活状況の変化はありましたか?」

  前の生活は、闇金とか借金の毎日毎日考えて生活していたので、食べる物も考えていたのですけれども、家計相談支援のおかげで随分生活が楽になって。

  ほかから借金しなくてよくなったからね。それだけでも大きな成果だと思うけどね。

 「家計とかは差がありましたか」

  家計ですか。今まではこういう支援が入るまでは、二人だけしかいませんので丼勘定でやっていたんだけど、こういう家計のお金の計算が入って、やりくりが少し細かくなってできるようになりましたね。これが支援していただかなければ、こういう毎日が丼で、また、借金、借金でしたけれども。

  本当助かったものね。

 「こういう支援があったらよいと思うことがありますか?」

  皆さんもそれを参考にしてやってもらったら助かると思うんだけどね。皆さん困っておる人いっぱいいるから。

  私たちは本当は行くところはどこもないのでね。役所に行っても、話を聞いていただくだけで、何の解決にもなりませんでしたけどね。本当にこういう事業があるというのは助かりました。

 2事例目 32歳女性(夫、小学生の子ども1人の3人暮らし)

 「最初に相談したときの生活状況・心境は?」

  お父さんが倒れて、もうお父さんにおんぶにだっこの部分も半分はあったし、お互いがないときはお互いで出し合ってやったけど。

 「同居されていたからね」

  そうです。お父さんが病気で倒れて。だから、お父さんの収入が20ぐらい丸々なくなって、やっぱりそこが大きくて。そこで狂って、ああ、ちょっとどうにもできなくなったなと思って。

 「家計相談支援事業の利用をすすめられたときの心境は?」

  それも嫌で嫌で。

 「その嫌というのは、やっぱり知らない人に様子というか内情まで話すというのが嫌だった?」

  話すのは別に大丈夫なんです。それは別に抵抗ない。自分がしてきておったというか、まあやりくりができんことやけ、それは別にいいんですけど。自分が意見を言って、正当な答えで返されても、それは借金がないからそう言えるのでしょうって自分の中で思うのですよ。言ったところでねみたいな。結局、同じ境遇にならんと。貧乏は結局貧乏の人しか気持ちはわからんわけで。多分言ったところで、一般論としては当たり前のことを言ってこられても、そう言われても、うん、ほらね、やっぱりね。言いたいことはわかるけど、結局、多分誰も私の気持ちはわかってくれんて思ってて。

 「家計相談支援事業を利用してみての感想は?」

 「家計を一個一個、えー、そこまで聞くのって多分思われた」

  そう思いましたね、最初。家計簿をまずつけないから、え、こんな細かいところまで書くのって正直思ったけど、多分それをせんと結局どこで無駄なお金が出ているのか。家計簿つけてないし。ここが無駄なんだなみたいな。たばこもそうだし、車も、前は旦那の車が大きかったし。だから、どこに無駄があるのかも全然わかってなくて、無駄だらけなんですけど。

 「最初に相談したときと比較しての生活状況の変化は?」

  今は、グラフが真っすぐな状態で落ち着いて安定しているっていう感じですね。正社員になって、給料も安定して、背中を押されたというか、向こうもやっと火がついた。  旦那的にもよかったんだと思います。

  今はもう(家計簿は)つけてないのですけど、ある程度もうリズムがとれてきたので。

 「予算みたいなのがね」

  そうです。だから、給料を下ろしたら、封筒に、これ支払い、これどこどこ、これは旦那の残りの。今は封筒分けしています。だから、給料を下ろした時点で、支払系は一回こっちに紙に全部書き出して、銀行とか生活再生とか、JAの保険とか、全部封筒に書いて、すぐ振り分けにいくんです。で、残った分で携帯とか家賃とかもまた別にして。銀行系は銀行系、その払いに行くところは払いに行くところ。残りは、今月6万幾らか残ったのかな。旦那の分はガソリンとたばこと、給食費とか、やれサッカーの部費だったりとか。

  前は、給料ぼんとそのまま封筒に入れておって、そのまま出しておったけ。それは何にどこに何が出るかはわからないですよね。今年10年目です。そこに至るまでも、結果、生活再生がないと旅行も行けないし。全体真っ暗で行く気にもならんし。それ多分抵抗あるんですよ。家のことを話さなくて、私がそうだったので。借金あることとかを言うのは恥ずかしい、言ったところで、どう言われるのかという不安もあるし。それをしたところで本当に変われるのかなって半信半疑な部分もあるし。

  でも、何か1年たって、結局、旅行へ行けるぐらいまでになったのだから、みんな私たちみたいに1年。うちらは1年かかったけど、1年もかからずにできる人だっているだろうし。あのときに、旅行へ行こうねって話していたじゃないですか。お金積み立てて、そのうち旅行へ行けるようになればいいよねって。それがやっと現実になって、まあとりあえず1つの目標をクリアしたね。

 「こういう支援があったらよいと思うことがあれば」

  必要ですね。私みたいなのは、まだ旦那もいるからやっていけるけど、母子でしている人もいるだろうし、絶対いると思います。だって、世の中お金じゃないですか。お金がないと何もできないし、病院にも行けない、何もできない、子どもにさせたいこともさせられない。私みたいに多分悩んでいる人はきっといっぱいいると思うんですよ。この世の中何万人といるだろうし、それは絶対必要なことだと思います。なので、私みたいな人が一人でも救われれば、それはそれでいいことかなと思います。

  こんなに自分の中で変われたから、前向きになれた。霧が晴れて、何か暗闇の中におって、どよ~んと何か鬱になりそうな状態から、子どもに対する考え方も変わったし、旦那に対する見方も変わったし、お金のリズムもとれたし、旅行も行けるし。そう考えたら、きっと困っている人はまだいっぱいいます。

 3事例目 61歳男性(外国人妻と小学生の子ども2人の4人暮らし)

「最初に相談したときの生活状況・心境は?」

  父が他界するまでは、父の年金と自分の給料で支払分を折半していたので、そんなに苦しいというあれはなかったのですけれども、父が他界してから、全部自分にかかってきたので、それで、ちょっともう払えないのでということで、家賃がおくれたり、保険料がおくれたりしたので。

 「家計相談支援事業の利用をすすめられたときの心境は?」

  家計簿とかつけている記憶がないので、自分のときも何が何ぼ使っているかは全然わからないので、それは助かったと思います。自分的には、もう失うものは何もないので、もうぶっちゃけた話をしたほうがいいかなと思って、もうありのままを言いました。

 「最初に相談したときと比較しての生活状況の変化はありましたか?」

  実際こんなに出ているんかなと思うのですけど、マイナスになるのかなと思うのですけどね。その辺は初めて知った感じですね。家計簿も全然つけてないので、何が何というのがわかってなかったので、それは助かったと思います。

  それは、妻と一緒に何回か来て話をして、妻も全然金銭感覚は。やっぱり日本人と違うところもあるのですよね。それで、本人的に何が出ているのかというのもわかってなかったみたいで、それは助かりましたね。今までは話したことがないので、もう丼勘定でやっていたので。

 「具体的に何か減らされたとか?」

  電話代が一番大きいので、電話代を少し減らそうというふうな話とかですね。

 「気持ちはどうでした?」

  いや、もう支払いのことばかりでね。何ぼ働いても全部出ていく。食べるのもきついかなと思うので、どうしたらいいかなという感じだったですね。

  こちらのほうで市営住宅の安いところを探してもらったりして、それで気分的に大分楽になりましたね。家賃も安くなったし、光熱費とかも全然違うのでね。

 「あと、国保の滞納は」

  去年の分は終わって、今年の分はまだ。

 「滞納の分は解決したと」

  はい。

 「解決して、今のお気持ちはどうでしょうか」

  それはもうほっとしています。今まで、妻と子どもが里帰りしてないので、ためて行かせてあげたいなと思うので、少しでも貯金できればいいなと思う余裕ができたですね。

 「こういう支援があったらよいと思うことはありますか?」

家計相談支援事業自体を知らない人がやはりおると思うのですけれども、自分も実際知らなかったので、知ったということで、家計簿をつけたり全然してないので、何が幾ら出ているのかというのもわからないで、何がいっぱい出ているとか、家族と相談できて、実際、電話代とかいろいろ減らすこともできたので、助かっています。

  それと、分納の分があったのですけれども、それも一緒に行ってもらって、随分心強かったです。生活を現在、気分的にちょっと安心できて、落ち着いています。

 4事例目 79歳男性(1人暮らし)※近所に住む友人同伴

 「最初に相談したときの生活状況・心境は?」

  助かりもしてないけれども、何か軽くなった。そやから、何となく借りたんだけど、それが始まり。それをしたのが始まりだから。借りたのは10万ですよ。家賃が払えなかったからね。市役所に相談をして、払うようにしたから相談したんだけど、即払ってくれというというような。

 「家計相談支援事業の利用をすすめられたときの心境は?」

  助かったということだね。

 「普通言いたくないじゃないですか、お金のことは」

  いや、貧乏は明らかにしてもらいたかったね。

 「赤字があったのを見て、どう思われましたか?」

  僕は大丈夫と思っておったのだけど、それがよけい悪いんだろうね。

 「年金月に5万払いますって決まりました。今日も5万円払いました」

  うん、払った。4月、6月、8月、今、3回払った。

 「3回払いましたよね。その5万で払いますって決まったときはどんなふうに?」

  よかったなと思ったね。安心した。

  友人:最初は、例えば早く返すために、2回で10万とか9万とかそういったふうに返すと言っておったけど、後を全然考えずに、そのときはそうしたらいいという感じでしよったけど、こうやって分けてもらってできたということは、本当に助かったですね。

 「家計相談支援事業を利用してみての感想」

  余裕がある。ためている余裕がある。今日は、これが終わって買物と思ってね。銀行の手帳を2冊つくっているんですよ、別々に。年金の振込通帳と、もう一つは自分のほうの貯金が。もうみんな満足していますよ。

「最初に相談したときと比較しての生活状況の変化はありましたか?」

  友人:相談を受けて解決するまできちっと世話をしてくれる。

  やっぱり安心しているもの。

 「こういう支援があったらよいと思うことがありますか?」

  友人:これが中途半端に終わったらいかんと思うけれども、ちゃんと最後まで面倒を見てくれる。そういったことはこれからもずっと続けると、こういった制度があるといいなと思ってね。大いに進めていってほしいと思うね。

 「もし、家計相談いなかったら」

  それはどうしようかな。

  友人:実際、家を追い出されるような状態だったけんね。それをまとめて16万。もう出て行ってくれって、そういった感じやったけん。もう本当ぎりぎり生活もあった状態やけんね。そのときにこれがなかったら、また、悪い道のほうに走っておったという。

○宮本部会長 いかがでしたでしょうか。

 それでは、これで今日予定しているヒアリングのプレゼンテーションは全て終了ということになります。この後、皆さんから報告者に対して質疑応答をお願いしたいと思うわけですけれども、時間は押しておりますけれども、ここで5分休憩をとらせていただきます。したがいまして、25分に必ず座席にお戻りいただければと思います。

 

(休  憩)

 

○宮本部会長 いつものように、プレゼンテーションに対する御質問・御意見等がある方は、赤札を立てていただければと思います。いかがでしょうか。全体に時間も限られておりますので、質問も3分程度、お答えもできれば短くということで、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 それでは、生水委員お願いします。

○生水委員 本当に胸が熱くなる貴重な御意見ありがとうございました。

 私からは、最後の家計相談支援で、ビデオレターについて意見を述べたいと思います。

 今回のビデオレターの相談者が発言されていたように、生活困窮に陥る理由として、自分や家族の病気による収入減少、また、アクシデント、こういった急な生活の変化に対処できないということが出ています。そのときに、闇金や高利の借金をしてしまって、より家計状態が悪化していることがわかります。これについては、相談者にとってもっと活用しやすい、利用しやすい生活福祉資金の改善、そして、家計相談支援との連携、これが重要ではないかと思います。

 また、どの事例の相談者も、自分の家計の状況がわからなかった、丼勘定だったと言われています。単に家計簿をつけさせるというのではなくて、何に幾ら使っているのかが整理されることで、支出の状態なども見えるようになり、相談者自らやりくりができるようになっておられます。このように家計相談支援というのは、相談者自らが家計管理を行っていけるように力をつけていく支援ということがわかります。

 特に2番目の事例の女性が明確になっておりますが、家計の中身をいろいろ聞かれることが嫌なのではなくて、一般論や正当な答えしか返されないこと、自分たちの苦しみを理解してもらえないこと、こういったことが嫌であるとおっしゃっていました。家計相談支援というのは、指導ではなくて、本人の気持ちに寄り添って、家計状態・状況を専門的に細かく切り出すことで、本人の家計に対する理解を深めていくというわけで、これは自立相談支援ではやれないことだと思います。

 また、全ての事例において、国民健康保険や家賃の滞納がありました。市役所に相談されましたが、話を聞くだけだったり、支払を催促されるだけで解決できなかったと、これは本当に申しわけないことで。しかし、家計相談を受けることで無理のない分納計画ができて安心したと喜ばれています。家計相談支援員が生活の仕方、支出のバランス、分納すべき金額の限度額の押さえ方などを考えて、それぞれの窓口に同行して相談をされるので、無理のない家計が維持でき、生活が安定します。これも自立相談支援ではできない支援であります。また、市役所の滞納のある担当課にとっても、家計相談に連携するメリットを実感するので、庁内連携の充実と効果的な相談者のアウトリーチにつながるのだと思います。

 特に印象に残ったのが4番目の事例の男性がおっしゃったこと。「解決するまできちんと支援してもらえた」と言われたことです。家計相談支援はまさに解決型相談支援であると言えます。

 最後に、今回ビデオレターに出演された皆さんは、御自身の経験からも、全国に困っている人はたくさんいるから、この支援はぜひ必要だ、自分たちは助けられたと語られています。生きていく上で、将来の目標が持てるようになる家計相談支援は必須事業にする価値のある支援であると言えます。

 以上です。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 今のはグリーンコープのビデオレターに対するコメントですので、特に答えは期待していないということですね。

○生水委員 はい。ありがとうございました。

○宮本部会長 それでは、新保委員お願いします。

○新保委員 新保と申します。

 今日は本当に参考人の皆様ありがとうございました。この領域では、長らく当事者の声を政策に反映させるということがなかなかできにくかったのではないかと思っています。そういうことから、今回も当事者の方に一番近いところで活動をされている皆様や制度を利用されたお立場からこうして御発言をいただく機会があったことに、私はとても感動しております。そして、このことは極めて意義のあることと思っております。

 特に制度を利用されたA参考人のお話、本当に今後の制度をよりよくするところにつながっていく、とても大事なメッセージでした。

 ビデオレターの4名の方のメッセージも、まさに相談員との信頼関係がある中で率直に聴かせていただいたお話でした。

 そして、最後のビデオレターですけれども、先ほど生水委員も言われていましたように、自立相談支援事業と異なる家計相談支援事業の特徴とか強みとか、この事業ならではのよさというものを伝えていただけたメッセージだったと思います。

 本当に、今日はこのような機会をいただいて、とてもうれしく思っています。ありがとうございました。以上です。

○宮本部会長 新保委員も、特に回答は必要ないですか。

○新保委員 はい。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、渡辺由美子委員お願いします。

○渡辺委員 ありがとうございます。

 私も意見といいますか感想になるのですけれども、いろいろな事例を聴いて、非常に勉強になりました。特に、BONDプロジェクトの橘さんのお話とかひきこもりのお話をお伺いしても、1つは、子どもが成長してきて、あるときに社会から孤立をしてしまう点があるというのが非常に問題なんだなと思って、今ですと、子どもの貧困対策ということで、子どもとか中学生とかは結構できているのですけれども、高校生とか高校中退の支援がまだ少し宙ぶらりんな状態であるというふうなことの議論は出ていますけれども、やはりそれが裏づけされたといいますか、そういう若者の困窮対策とか、社会から切れないようにどうするかということは非常に重要な観点なのだなと思っています。そういう意味では、高校生世代ですね。中退した子も含めて若者だとかというところを、実施主体が都道府県でやるのか、市区町村みたいなところでやるのかというふうなところはまだなかなか決まっていないのですけれども、そういうところもしっかりと明確にして、どこかが責任を持ってやるようにしないといけないのではないかということをすごく思いました。

 それから、これは制度のことではないのですけれども、常々、私たち学校現場で思っているところでも、今の日本の教育現場では非常に望まれる子ども像みたいなことが非常に決まっていて、発達障害まではいかない発達特性みたいなところで、例えば人づきあいが得意な子どももいれば、そうではない子もいるとか、黙々と作業をするのは好きだけれども、なかなか人の輪に入れないようなお子さんたちというのがいたときに、どうも、元気で明るくはきはきとしている子がいい子で、そうじゃない子は何となくだめな子みたいなふうな見られ方をしがちです。そういう子たちがすごく自己肯定感を小さいうちから下げていってしまって、何となく社会の波に乗っていけないみたいな状況があって、それはすごく問題だなと思っています。非常に多様性とかダイバーシティということが今いわれていますけれども、ぜひ、学校現場の中にもいろいろな人がいて、ちゃんとみんなで理解し合っていくことが非常に重要なのだということを、これは学校の先生だけではなくて、教育の現場に入れていただいて、お友達だとかその保護者の方とかもしっかりと理解をして、なるべく小さいうちから人を阻害しないような社会をつくっていくというふうなことを国全体で考えるのかなということはすごく思いました。

 本当に非常にいろいろと貴重なお話を聴かせていただいてありがとうございました。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、朝比奈委員お願いをいたします。

○朝比奈委員 朝比奈です。皆さん、どうもありがとうございました。私のほうからは、稲葉さんと橘さんに御質問をさせていただきたいと思います。

 稲葉さんには、つくろい東京ファンドで個室のシェルターを提供していらっしゃるということだったのですけれども、そこに入った方々に対してケアというのでしょうか、人的な関わり、信頼関係をつくるとか、例えば食事の面倒を見るとか、そういった関わりをしていらっしゃるかどうかということと、関わりをしていらっしゃるとしたら、そのスタッフの体制などについてはどのようにされていらっしゃるのかということを教えてください。

 それから、橘さんについては2つあるのですけれども、1つは最後のところで、婦人保護施設、婦人保護事業について、もう一度今の時代に合ったあり方の検討が必要ではないかというような御指摘がございましたが、それについてもう少し具体的にイメージしているところがあれば教えていただきたいというのが1つと。

 2つ目は、いろいろな政策の流れの中で、身近な市町村で相談を受けていこうというような全体としてトーンが出てきているのですけれども、例えば渋谷に出て行くとか、新宿に出て行くとか、東京を目指すとか、多分、橘さんたちが関わっていらっしゃる若い女性たちは、身近な市町村というところであまりとどまっていないと思われるのですが、その中間的な立場として、自分たちのような存在を使ってくださいというようなお話もあったのですけれども、最終的には具体的な生活の手立てを得るためには身近な支援につないでいく必要もあって、その辺りをどういうふうに考えたらいいのか、どういうふうにあったらいいのか、もしお考えがあったら教えてください。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 それでは、稲葉参考人と橘参考人、それぞれお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

○稲葉参考人 ありがとうございます。

 つくろい東京ファンドの中野区につくろいハウスというシェルターがありますが、その支援の現状については、机上配布資料の8ページ以降にスタッフが書いた原稿があります。支援の現状については、11ページの「つくろいハウスの支援」という辺りから書いておりますので、それをごらんになっていただければと思いますけれども、宿泊場所の提供は行っておりますけれども、食事の提供は行っておりません。緊急的な食料の提供は行うことはありますけれども、基本的には宿泊費、住宅扶助分と、あと、水光熱費6,000円のみいただいて、ほとんどの方が生活保護を利用されているので、生活保護の生活扶助品については御自身で使っていただくという形になっております。スタッフは常駐の管理人が1名いるのと、あとは、パートタイムの生活相談スタッフが2名いるのですけれども、ただ、それだけでは十分でない点もありますので、先ほどお話ししたように、「ハウジングファースト東京プロジェクト」ということでネットワークを組んでいる団体の中に、精神科のクリニックであったり、訪問看護ステーション等もありますので、特に精神的なケアの必要な人については、そちらと連携しながらサポートしているということになります。

○宮本部会長 朝比奈委員、よろしいでしょうか。

○朝比奈委員 はい。

○宮本部会長 続きまして、橘参考人に2つ質問がありました。

○橘参考人 18歳以上で行き場所のない女の子となると、婦人保護事業で女の子たちをサポートしてもらうということになると思うのですけれども、18歳の子があそこに入所して生活するというのはちょっと大変かなと思っていて、女の子たちにも説明したりとか、見学とかも行かせてもらうこともあるのですけれども、まず携帯が使えないというのがもう嫌。もうそんなのだったら入らないとか。あと、お母さんから虐待を受けていたとか、おばあちゃんから虐待を受けていたという子もいるので、高齢の女性たちとの共同生活をすごく嫌がる。自分の興味があることとか、そういった方たちとの共通の言葉。若い子たちはまず言語が違いますから、何しゃべっているか本当わからないことをいっぱい話すので、その感覚に合わないというのがあるのではないかなと思っていたので、私は、102030代半ばぐらいまでの若年女性版婦人保護施設というのがあればいいなと思っていたのですね。

 自分たちがそんなことはできないので、今できることといったら、今19歳の女の子と大学生の女の子を私たちの借りた家に住まわせながら、バイトをして、自立を目指す。学校へ行って、バイトをさせて、自立を目指すという、それぞれのペースで自立支援をしていくという場所にしていこうと思ってやっています。うちの場合は、スタッフが必ず夜つくので、働いているお母さんが家へ帰ってきて、夕飯をつくって、子どもたちに御飯を食べさせて、次の日、朝御飯を用意して送り出すという、そういう役目で、今、自立準備ホームみたいなのを勝手にやっています。

 あと、一つは何でしたか。

○朝比奈委員 身近な市町村にという。

○橘参考人 渋谷にいろいろな子が来るじゃないですか。だけど、前泊させるとなると、うちは渋谷区になったりとか、あと、今3か所拠点があるので、荒川区であったり、もう一個、今、準備ホームというのが練馬にあるのですけれども、さあどうしようという感じなのですよ。だけど、住所がある場所とか、あと、女性相談センターにつなぐというのが本当に大変です。最初に私たちは保護してしまうから、その後つなぐとなったときに、では、どこが面倒を見るのということにもなりかねるので、そこをクリアしていきたいというのと、一緒に考えていただきたいというのを常々思っているのですけれども、でも、うちがある場所となるから、もう渋谷区か練馬区か荒川区かとなってしまうのかなとなってしまいますよね。

 本当は、制度で彼女たちをサポートしていってもらいたいので、そのほうが中長期の支援ができるじゃないですか。私たちなんていうのは一時的なので、本当にいろいろな意味で足りないから。だけど、まずはそういったルールとかを守らないとそちらとつながらないので、そこが何とか変えていってもらいたいな。だから、その大変なところを、今のこのしゃべっている制度で何か考えてもらえるとありがたいと思っています。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、奥田委員、勝部委員、竹田委員の順番で続けていきたいと思います。ただ、全体として時間は押しておりますので、短めのコメント、質問でお願いします。

○奥田委員 奥田です。私、稲葉さんにまず最初。

 ハウジングファーストの考え方は前から知っていますけれども、よくわかりました。ただ一方で、即アパートという、単純に言えばそういうことなのでしょうけれども、一方で、実際されているのはシェルターで一旦引き受けて。だから、その中間施設とハウジングファーストの考え方はどうなっているのかというのが、聞いていてよくわからなかったのですね。

 それと、もう一つは、私はケースワークなのでどっちがベストかというのはあんまりなくて、ケアが要る人は中間施設も利用するだろうし、即アパートというのは当然あるだろうし。うちも実際どっちも使っているのですね。ですから、ハウジングファーストの部分と中間施設のところの話を少し補っていただければと。

 それと、ネットワークを組まれている中で就労部分があまり見えなかったのですが、就労なんかはどんなふうに考えておられるかというのが1つ。

 もう一つは、どなたにというわけではないのですけれども、今日来てくださった皆さんのお話を聴いてすごく刺激を受けたのですけれども、一方で、ちょっと不安になったのは、会議が始まるときに、私ちょっと意見を言わせていただきましたけれども、そちらから見たこの制度はどう見えているのかというか、もっと言うと、支援調整会議なんかに呼ばれることはあるのでしょうかというような話も含めて、どなたでもいいのですが、そこをちょっと聞いてみたいと。

 それと、今日、BONDプロジェクトの話とかひきこもりの話は特にそうだと思うのですけれども、ゆっくりとか、無理しないで、本人のペースでとか、そういうことを考えていると、やはり社会的排除とか孤立の問題が非常に大きな問題で、この制度の1つの目安値になっているのが就労何%、増収何%と、前から私はそれだけに特化されるのを非常に危惧しているのですけれども、私はやはり第2条の問題で、これが「現に経済的に困窮し」から始まる経済的問題なのか、社会的な排除であるとか、孤立の問題なのかというその辺りに関しても少し意見をいただければうれしいと思いました。よかったら、お二人に簡単にお願いします。

○宮本部会長 簡単に答えるのは不可能な御質問だとは思いますけれども、すみません、そこをあえて簡単に短くお答えをいただければと思います。

○稲葉参考人 ありがとうございます。

 おっしゃるように、プレゼンの中で御紹介したアメリカのハウジングファーストは、最初から直接恒久的なアパートを確保して、そちらに入居していただくという形ですので、今日御紹介した中野区のつくろいハウスについては、個室型シェルターということで、ハウジングファーストの定義からは外れるということになります。一番重要なのは、プライバシーの保たれた、御本人の安心と安全が保障できるような環境を用意することが一番重要だと思っております。

 ただ、私たちつくろい東京ファンドとしては、豊島区にも9部屋確保しておりまして、その中には恒久的な住宅として確保している部屋もあります。これは御本人の意思も確認した上で、シェルター的な利用ではなくても、そこにずっと住みたいという場合には、ずっとそこに住んでいただくというふうにしていただいております。サブリースという形になります。

 就労の面については、実はこの4月に中野区で、これまで3年間個室型シェルターのつくろいハウスの活動をやってきまして、そこからアパートに入られた方が、地域で暮らしていらっしゃる方が40名以上になってきましたので、その人たちの仕事づくり、場所づくりということで、シェルターから15分ぐらい歩いたところに一軒家を確保いたしまして、「カフェ潮の路(しおのみち)」という名前でカフェをつくりました。

 これは、アパートに入られた方の中に、御高齢の方が多かったり、障害をお持ちの方が多いので、なかなか一般就労は難しい。ただ中には、軽作業の仕事ならしたいという方もいらっしゃるので、その人たちの仕事づくりとしてもカフェを使っておりまして。コーヒーの焙煎やコーヒーの販売に現在6名が従事して、仕事づくりを行っております。また、同時に、アパートに入った方々の交流の場、居場所づくりにもなっておりますし、また、地域住民との分かち合いの場にもなっているということになります。

○宮本部会長 それでは、橘さんお願いします。

○橘参考人 うち、今まで自主的に保護とかしてきて、ものすごい件数になってしまったのですね。延べ件数ですけれども、昨年度とかは1,105件とかだったのですよ。だから、どこにも制度につながってない子たちですよ。自分たちが5ベッド用意して、それが毎日のように埋まっていたという延べ件数だったのですけれども、長い子で2年ぐらいいた子がいるのですよ。これ、自立って厳しいなと思ったのですね。ただ、その症状が出始めるのが保護してからしばらくたってからなのですよ。

1020代の子の中で一人だけ19歳の子、本当に保護してからぐあいが悪くなってしまって、これはバイトとかひとり暮らしとかというのはちょっとほど遠いなと思って、生活保護を申請して、その条件に合うような状態だったので、彼女は生活保護をとったのですけれども、ただ、ひとり暮らしとなってアパート暮らしになったのですけれども、ひきこもってしまったのですね。若い子が行きたくなるようなデイケアサービスみたいなのがなかなかないのではないかなと思っていて、沖縄にはすごい環境が恵まれているというのもあって、若い子たちが必要なそういったサービスを受けたくなる、プログラムを受けたくなるような場所があるらしいのですよ。浜辺でビーチバレーとか、水族館に見学とか、何かいろいろあるらしいのですね。

 というのもあって、私、必要な子に生活保護はもちろん必要だと思うのですけれども、何か自分で頑張れるとか、私たちが見守らなければならないけれども、応援していけば何かできるというその可能性があるような子たち。いわゆる体力とか、戻って来たりとか、あと、目標も出てきたりしたような子はやはり背中を押したいのですよ。社会に出したいのですね。

 今は、本人と決めて、何か月までにお金をこうやってためて、こうやってひとり暮らしするという、そういう自立を準備するという場所にしたのです。それまでは、保護しっ放しだったのですよ。そこはちょっと反省点も踏まえて、今回は新しい形で女の子の住める場所、中長期保護できる場所をつくりました。本当試行錯誤ですね。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 続きまして、勝部委員お願いします。

○勝部委員 稲葉さんのお話を聴いて、我々の支援の中でも居住をステレオタイプで集団で対応をして、それから、状況を見てからということよりも、その人その人で合わせながらアパートを、ケースワーカーなどともいろいろお話ししながら対応したケースは後々うまくいっているというのもありますので、とても参考になりました。

 全体を通じてですけれども、支援者の立ち位置の問題をそれぞれから当事者の皆さんからおっしゃっていただいて、我々はどうしても正しいことを言ってジャッジしてしまうとか、いいか悪いかみたいなことを当たり前のことを正しく言ってしまうみたいなところ、これは養成研修のところでもいつもお話をしている面でもありますが、相手の立場になるというのはなかなか難しいということですが、難しいと言ってしまったら相談できないので、正しさを言うのではなくて、優しくなるということをやはり肝に銘じなければいかんなということを改めて思いました。

 橘さんのお話の中で私はちょっと悔しいなと思ったのは、JKビジネスのほうが生活困窮者自立支援よりも強いのだというお話で、丸ごと支えてしまうというところを、そこにどうやって我々の事業が届くのかというのはやはりもっと考えなければいかんと。そのためには教育と連携をどうするのかという話ですが、高校になりますと、市町村レベルではなかなか手が届かなくて、都道府県単位になってしまうということで、高校中退問題を都道府県レベルでどうフォローしていくかということをしっかりと考えていかないと、大阪だけでも6,000人ぐらいの人たちが中退して、進路変更という名前でさようならしていくという状況があることをどう考えるのかというのは非常に問われたなと思っています。

 最後ですが、ひきこもり支援のお話の中で、今日の事例というのが70代の方々の事例までが多かったですけれども、我々の支援の中でも、80を超えてしまうと、親のほうのパワーがなくなって、なかなか相談に行き着かないとか、変化をなかなかすることができないということを感じているのですが、ひきこもりの高齢化について何か課題があれば教えていただきたいということが1つ。

 就労準備の前の橘さんたちが言っている、そういう居場所といいますか、ちょっと回復期の本人の自己肯定感を、いろいろな生活をもう少し組み立てていけるような場づくりみたいなものがもう一段階ないと、なかなか一気に就労準備まで行き着かないというのが我々の経験なのですが、この辺も今後の支援の中で何かお考えがありましたら教えてください。

○宮本部会長 すみません。ここでお答えをいただく段取りなのですけれども、ちょっと残りの時間の関係で、質問を全部出し切っていただいて、まとめてお答えをいただくことにしたいと思います。

 竹田委員挙げていらっしゃいますね。その後、大西委員、大野委員もいらっしゃいますので、その配分をちょっと念頭に置いてお進めください。よろしくお願いします。

○竹田委員 ありがとうございます。

 端的に皆さんにお伺いしたいなと思ったのは、どういう相談者に出会うかによって、結局、その後の解決につながっていく、つながっていかないというのがかなり今回の事例、プレゼンの中でもあったのかなと思っていますので、ぜひ、今後どういう相談者といいますか、そういう人材が求められているのかということに関して、改めてご意見等をいただければなと思います。

 以上です。

○宮本部会長 大西委員、お願いします。

○大西委員 稲葉先生の資料の2ページ目で「福祉事務所が民間の宿泊所への入所を事実上、強要するケースが多い」私が今一番危惧しているのはそこで、福祉事務所の人員の少なさとそのスキル、その辺をしっかりと見直していかないと、優良な施設にしっかりその人たちを紹介するのはいいと思うのですが、それを放置して、そうでない施設へ行くと、先ほどの写真ではございませんが、衛生面であったり、災害面であったり、いろいろな心配があると思いますので、その辺は私も非常に危惧しておりますので、しっかり受けとめたいなと思っています。

 以上です。

○宮本部会長 それでは最後ですけれども、大野委員お願いします。

○大野委員 私は民生委員の大野でございます。

 今日はいろいろなケースのお話を伺いまして、とても自分自身が反省をしているということで、質問ではなくて、ちょっと感想を述べさせていただきたいと思います。

 ビデオレターの中で、初めて民生委員という言葉が出てきたような気がいたしました。そして、民生委員さんや行政の窓口にも相談したけれども、話は聞いてもらったが、その先には進まなかった、解決策が見つからなかったというお話を聞きまして、私、民生委員として、過日もお話ししたと思います、100周年を迎える民生委員制度ですというようなことで自負はしておりましたが、これらのケースのところに民生委員さんが必ずいらしたわけですよね。果たして、その民生委員さんがこういったケースに関わりを持っていたのか、いなかったのか、これから民生委員として一度原点に立ち返って活動をしていく必要があるのかなというふうな、自分自身として、また、民生委員として感じましたので、これからの活動に役立てていきたいと思います。

 ありがとうございます。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 ちょっと確認しますけれども、勝部委員からお答えを求めているのは上田さんということでよろしいですね。

○勝部委員 はい。

○宮本部会長 竹田委員からお答えを求めているのは皆さんと。できれば、限定していただくと、全員からお答えをいただくのはやや時間が足りないところもあります。

○竹田委員 では、橘参考人からいただければと思います。今後、どういう人材が求められるかという、相談する側のほうですね。

○宮本部会長 それでは、上田参考人からまずお願いします。

○上田参考人 8050問題、長期、高齢化、たくさんあるのですけれども、まず、今、家族会では認知症にかかられている方、判断力の低下、家族会に行くにも体力が低下してもう行けなくなっている。さらに、家族自体が孤立化してしまうところをどう防いでいくかというのが課題になっています。

 ある家族会は、家族会を一つの地域にあったのを一回もっとばらして、ブランチ的にすぐ行けるような場所に最寄りの寄り合いみたいなのをつくって、とにかく家族が孤立しないようにしようという取り組みをしている会もありますが、実際のところ、足が遠のくと、本当に家族だけで抱え込んで、兄弟、姉妹の事例にあるように、今度は御兄弟が相談に来るというような流れが出てきています。そこをどうしていくかは本当に全国的な課題になっています。

○伊藤参考人 もう一つよろしいですか。

○宮本部会長 では、ごく補足の意味でお願いします。

○伊藤参考人 居場所は、今さまざまな居場所があると思うのですが、私たちは「育ち直しの場」として考えております。つまり、昔は学校が居場所だったのですね。それが、今は学校が居場所になってなくて、学校はむしろ行くことで被害者になってしまうというか、いろいろな問題を抱えてしまう。そういう部分では「育ち直しの場」としてさまざまな居場所があっていいのだろうな、それが社会資源になっていけばいいのだろうなと、そんなふうに思っています。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 では、最後に、橘参考人お願いいたします。

○橘参考人 医療機関とか福祉機関とか、あと、私たちみたいな民間とか、その連携が大事だと思うのですね。私たちは情報を提供するのですけれども、つなぐと、あちらからフィードバックしてもらえないのですよ。もちろん個人情報が大事なのはわかるのですけれども、あの子どうなったというのを、その子が逃げて来て、またうちに来て、ようやく知るみたいな、その過程はどうしたという話なのですけれども、その辺で連携がとれたら、その女の子が変なところへ行かないというふうにもなるかなと思うので、いろいろなところとの連携をしていただけるとありがいし、あと、病院の先生たちとかもどういうのが虐待かとかDVかとかというのももうちょっとわかっていただけるような、そういう場みたいなものをふやしていくといいのかななんて思います。警察もですけれども、とにかくいろいろなところとの連携が必要だなと思いますね。それをわかった上で、話が聴ける相談員さんがいたらいいと思いますね。

○宮本部会長 ありがとうございました。

 時間の制約がございましたけれども、参考人の皆さんのおかげで大変中身のある討論ができたのではないかなと思っております。これで、議題2の討論を終了させていただきたいと思います。

 改めて、稲葉さん、橘さん、伊藤さん、上田さん、川上さん、Aさんに、拍手でお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

(拍手、参考人退席)

○宮本部会長 それでは、事務局から次回日程についての連絡をお願いしたいと思います。

○竹垣課長 次回は9月21日(木)の14時からを予定しております。場所は追ってお知らせいたします。なお、8月1日と3日に実施しました現地視察の際に御提供いただいた資料を机上に配布させていただいておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○宮本部会長 現地視察の皆さん、酷暑の中をどうも御苦労様でした。資料が出ているということでございます。

 それでは、本日の審議会、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)


<委員名の漢字表記及びアルファベット表記について>
岡崎委員の「おかざき」の「さき」のつくりの上部は、一部ブラウザ上で正しく表示されないために、便宜上「崎」の字で表示しています。正しくは「大」ではなく「立」ですので、あしからずご了承ください。
また、A参考人については、個人が特定できないよう姓名をアルファベットの「A」としておりますので、ご了承ください。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活困窮者自立支援及び生活保護部会)> 第6回社会保障審議会「生活困窮者自立支援及び生活保護部会」議事録(2017年8月30日)

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