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2018年09月19日 平成30年度第1回血液事業部会適正使用調査会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成30年09月19日(水)
17:00~19:00

 

○場所

新橋会議室8E会議室
(港区新橋2-12-15 田中田村町ビル8階)

○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

稲田 英一 薄井  紀子 大戸  斉 梶原  道子
上條  亜紀 田中  純子 長島  公之 ○半田  誠
益子 邦洋 矢口  有乃
 

欠席委員:(5名)敬称略

稲波  弘彦 國土  典宏 鈴木  洋史
田中  政信 西村  元延


参考人:五十音順

菅野  仁 北澤  淳一 牧野  茂義 宮田  茂樹
 

日本赤十字社:

瀧川  政弘 遠藤  正浩 宮作  麻子
 

事務局:

石川  直子(血液対策課長) 山本 匠(血液対策課長補佐) 富樫 直之(血液対策課長補佐)


○議題

1. 平成29 年度血液製剤使用実態調査について
2. 平成30 年度血液製剤使用適正化方策調査研究事業について
3. 「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン」を踏まえた「血液製剤の使用指針」の改正について
4. 生物学的製剤基準の改正を踏まえた「血液製剤の使用指針」の改正について(非公開)
5. その他
 

○議事

○山本匠血液対策課長補佐 定刻より少し早いのですが、出席の御連絡を頂いている委員の皆様がおそろいですので、平成30年度第1回血液事業部会適正使用調査会を開催させていただきます。なお、本日の会議は議題4以外は公開で行うこととなっておりますのでよろしくお願いいたします。
本日の委員の出席状況を御報告いたします。稲波弘彦委員、國土典宏委員、鈴木洋史委員、田中政信委員、西村元延委員より欠席の御連絡を頂いております。15名中10名の委員に御出席いただいておりますので、本日の調査会は開催可能であることをお知らせいたします。
本日は、参考人として国家公務員共済組合連合会虎の門病院輸血部部長の牧野茂義先生、東京女子医科大学輸血・細胞プロセシング科教授の菅野仁先生、青森県立中央病院臨床検査部部長の北澤淳一先生、国立研究開発法人国立循環器病研究センター輸血管理室臨床検査部部長の宮田茂樹先生にお越しいただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、血液事業本部経営企画部次長の瀧川政弘 様、血液事業本部技術部次長の遠藤正浩 様、血液事業本部技術部次長の宮作麻子 様が参加しております。
事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。血液対策課長の石川直子が赴任しておりますので、御挨拶させていただきます。
○石川血液対策課長 7月31日に着任いたしました石川です。どうぞよろしくお願いいたします。
○山本匠血液対策課長補佐 全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので御報告いたします。本日の議題は、利益相反に関係する審議事項はなく、報告事項のみとなっております。カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。以降の議事進行は半田委員長にお願いいたします。
○半田委員長 まず、事務局より資料の確認をお願いします。
○山本匠血液対策課長補佐 資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿、参考人名簿、資料1-1、資料1-2、資料1-3マル1、資料1-3マル2、参考資料1-1、参考資料1-2、参考資料1-3があります。議題2については資料2があります。議題3については資料3-1、資料3-2、資料3-3と参考資料3を付けております。議題4については机上に配布しております。不足等がありましたら事務局までお知らせください。
○半田委員長 議事に移ります。議題1は平成29年度血液製剤使用実態調査です。事務局から、本調査の背景に関する説明をしていただき、その後に資料1-1を牧野参考人、資料1-2を菅野参考人、資料1-3を北澤参考人から説明をお願いいたします。まず、事務局からお願いします。
○山本匠血液対策課長補佐 この調査の経緯ですが、医療機関における血液製剤の使用実態を把握することを目的としております。厚生労働省から、日本輸血・細胞治療学会に委託して実施している調査です。調査分析の結果については、本日お越しいただいている参考人より発表していただきます。
○半田委員長 資料1-1について、牧野参考人から御説明をお願いいたします。
○牧野参考人 平成29年度血液製剤使用実態調査について、私のほうから本調査の概要と、輸血業務の管理体制について報告し、菅野参考人から血液製剤の使用状況及び北澤参考人から小規模医療機関における輸血療法について報告させていただきます。
本調査については資料1-1を御覧ください。本調査は、国の委託事業として、日本輸血・細胞治療学会が、日本臨床衛生検査技師会及び日本赤十字社の協力を得て、2008年より実施しています。調査対象施設ですが、調査前年である2016年に日本赤十字社より輸血用血液製剤の供給実績のある10,034施設を調査対象としました。なお、血漿分画製剤の使用実績に関しては、必ずしも全施設を含んでいるわけではありませんので御了承ください。
表1に示すように、過去4年間は50%以上の回答率を維持しています。全輸血実施施設の90%以上に当たる9,093施設は300床未満施設であり、300床以上施設は997施設であり、全体の9.88%でした。本調査に含まれる輸血用血液製剤の使用量+廃棄量は、2017年に日本赤十字社から供給された総量の80.2%の捕捉率でした。つまり、本調査は、本邦の輸血用血液製剤の大半の使用情報を含んでいることになります。
5ページの表6cと、次のページの表7を御覧ください。輸血管理料Ⅰ又はⅡ取得施設は年々増加しており、本調査回答施設の4割以上で既に取得していました。7ページの図4を御覧ください。本調査回答施設で見る限り、各輸血用血液製剤の90%以上は、AからDの輸血管理料Ⅰ若しくはⅡ取得施設で使用されていました。8ページの表11と図5では、本調査回答施設において、輸血適正使用加算未取得施設であるグループBとDは、年間の心臓手術や血漿交換療法の件数が多く、1病床当たりのFFPやアルブミン使用量が特に多い傾向が見られました。9ページの図6を御覧ください。自己血輸血実施施設における貯血式自己血輸血管理体制加算取得施設は、本調査回答施設においては17%で、この加算が開始された2014年と比較して増加していました。
救急医療体制です。10ページの図8を見ると、本調査回答施設において、各血液製剤の1病床当たりの使用量は、三次救急医療施設で明らかに多いことが分かります。11ページから12ページの表13と表14では、施設機能別血液製剤使用量を示しています。本調査回答施設において、病床数が多く、全身麻酔件数が多く、心臓手術・造血幹細胞移植・血漿交換・救急医療・臓器移植を行っている施設では、各血液製剤使用量は多く、さらにその施設機能項目が増えるほど血液使用量は多くなっていました。
輸血業務の管理体制についてです。13ページと14ページの図9と図10に輸血管理体制を示しています。輸血管理料が施行された2006年以降に急速に整備されて、300床以上施設では、輸血業務の一元管理、輸血責任医師の任命、輸血担当検査技師の配置、輸血検査の24時間体制、輸血療法委員会の設置は、本調査回答施設において90%以上の施設で既に実施されています。そこで今回は、300床未満施設を100床未満施設と100-299床施設の2つに分けて解析し直しました。そうすると、100-299床施設も着実に輸血管理体制が年々整備されていることが分かり、本調査回答施設において80%前後の施設で既に整備されていることが分かりました。
輸血検査等についてです。20ページの図17に示すように、300床未満施設では、日勤帯のABO型検査を院外の検査機関に委託している施設が、本調査回答施設において45.1%存在し、その割合は年々増加傾向です。特に100床未満施設においては59.6%の施設で外注していました。
24ページの表24と図22では、輸血関連検査における電子カルテシステムの利用状況を示しています。本調査回答施設においてはおおむね90%以上の施設で実施されています。一方、ベッドサイドの患者認証システムの利用は、300床以上施設で81.7%であるのに対し、300床未満施設では41.2%と若干差が認められました。25ページの表25と図24では、輸血後感染症検査を行う施設が徐々に増加しており、本調査回答施設において、半分以上の施設で全例又は一部症例で実施されていることが分かります。
27ページの表28を御覧ください。適正輸血に関する病院としての取組では、本調査回答施設において、2010年と比較して、輸血療法委員会で検討し病院全体で取り組んでいる施設の割合が、45.2%から53.6%に増加していました。
以上、本調査の概要と、輸血業務の管理体制について主な要点のみ発表いたしました。以上です。
○半田委員長 牧野参考人ありがとうございました。ただいまの御報告に関して、委員の皆様から御意見あるいは御質問がありましたら、お願いいたします。いずれも年ごとに改善しているということです。ただし、規模が小さくなればなるほど、その管理体制等々についてはまだ不備があるということです。稲田委員どうぞ。
○稲田委員 25ページにある輸血前後の感染症検査についてです。いろいろな薬物を使ったり、ほかの血液製剤を使うこともあると思いますが、こういう輸血製剤ほど、NATを含めた事前の検査が行われていて、それから術後もいろいろな検査が行われると、こういったことは、ほかにはなかなかないのではないかと思うのです。今後の目標として、100%を目指していくのか、あるいはこれまでの結果から考えて、ある程度選択してやるのか、その辺の見通しは何かあるのですか。
○半田委員長 これは牧野参考人でしょうか、あるいは事務局になりますか。
○石川血液対策課長 御指摘をありがとうございます。その点は我々のほうも、今後の検討課題の1つだと思っております。今の輸血用血液製剤は安全対策がしっかりされていて、いわゆる既知の感染症については、世界でもかなりトップレベルの安全対策がとられているということで、先生方からも御評価を頂いていると思います。その中で、逆にこうした検査を輸血を受けられた方に必ずやる必要性があるのかという点については、他の委員会でも御指摘を頂いている部分でありますので、この点については医療現場での理解と言いますか、我々のほうの説明と言いますか、これまで正しいデータの提示がどこまでできていたのかというところも含めて、今後検討していきたいと思っております。引き続き先生方の御意見を頂ければと思います。
○半田委員長 日本輸血・細胞治療学会のほうでは、今の件に関しては一応見直しが必要ではないかということを既に発表されています。今後、学会とも連携してコンセンサスを得ていくということでよろしいでしょうか。ほかにはいかがですか。田中委員どうぞ。
○田中(純)委員 今の御意見についてですが、始まった経緯は、輸血後に何か起こったときに、全て輸血が原因かどうかということを明らかにするためには、輸血前の検査あるいは検体保存でそれを明らかにするという科学性を担保するためです。皆さんの御意見のように、もちろん今は感染症の発生率は非常に低くなっている、そのことは分かります。でも、なくしてしまったら、何かが起こったときの輸血前の検査とか検体保管がないということで、それが輸血あるいは輸血製剤によるものであるかどうかということの科学的な根拠が出せなくなってしまいます。コストのこともあるとは思うのですけれども、やはりそこは十分慎重に検討すべきですし、そういうシステムを配置している国はほとんどないので、そういう意味で輸血の安全性も保たれてると考えています。だから、十分慎重に検討していただきたいというのが私の意見です。
○石川血液対策課長 輸血前は先生がおっしゃるとおりだと思います。輸血後は果たして本当に100%の実施を目標にすることがいいのかという点に関しては検討が必要ではないかと考えています。今は医療の質の評価ということも言われていて、こういうことを必ずやったほうが質が高い、治療成績も良くなるといったことで、それを数値で、プロセス的なところも評価していこうという動きにあります。そうしたときに、こういう検査をどう考えるかというのは1つ課題だろうと思っています。
もう1つ、本日はいらしていないのですけれども、血液事業部会の委員の方からも、いまだにHIV感染のリスクに血液というのは分かるのですけれども、あたかも輸血が危険だというような記載が時々あるので、そこはしっかりとデータに基づいて、国のほうで正しい情報を発信してほしいという御指摘を頂いています。そういうことと合わせて今後検討させていただきます。
○半田委員長 いずれにしろアップデートが必要だということは、皆さんコンセンサスとしてあると思いますので、是非進めていただきたいと思います。続いて菅野参考人から、資料1-2の説明をお願いいたします。
○菅野参考人 図1を御覧ください。施設規模別回答率と輸血実施予測患者数を示しています。左から0床、1-19床というように、右へ行くにつれて病床の規模が大きくなります。各病床規模で、実際に輸血を受けた患者さんは青い棒グラフで示しています。一方、黄緑色の折線グラフはその病床規模におけるこのアンケートの回答率です。全体としては50.5%の施設から回答を得ていますが、病床規模によって、それぞれ回答率が異なってきます。もしこの回答率が100%であって、回答をくれなかった施設が、回答をくれた施設と同じような輸血を実施していたとしたときの輸血実施予測患者数が赤い棒グラフで、実際に計算した数値がここにデータラベルとして載っています。
今年の回答施設の病床総数は68万1,000、それで76万402人が輸血を受けていましたが、この輸血実施予測患者数を導き出すと、図2のようになります。同種血のみの輸血を受けた方、自己血のみの方、併用の方とそれぞれに御回答を頂いています。同種血あるいは自己血、これは重複が若干ありますけれども、輸血を受けた予測患者数を示すとこのようになります。同種血は97万4,963名、これは昨年比でプラス2.5%。自己血輸血についてはほぼ横ばいという状況です。
図3は、血液製剤の供給、使用、廃棄単位数及び捕捉率です。捕捉率という言葉が出てまいりますが、これは牧野参考人からも説明があったかもしれませんけれども、この捕捉率というのは、日本赤十字社から供給された血液製剤の単位数を分母にして、今回アンケートでお答えいただいた総使用量と総廃棄量を合わせたものを分子にしたときのパーセントです。赤血球、血小板、新鮮血漿と、それぞれに捕捉率が異なりますけれども、全体としては80.2%ということで、先ほど牧野参考人から説明があったとおりです。廃棄率はここにはっきりは示しておりませんけれども、全体の廃棄率は今回は1.05%ということで、製剤別のほうは脚注に載っているとおりです。
図4は牧野参考人の資料の表2と同じですので省きます。輸血用の血液製剤の83%は300床以上の施設で使われているということを示したものです。
図5は、アルブミン製剤の供給量と使用量です。今回は新たに捕捉率という概念をここに足しました。厚生労働省から出てくる平成30年度の需給計画という別の資料からこの総供給量が得られるため、この総供給量に対し、実際に今回のアンケートで得られた総使用量がどれぐらいの割合なのかを捕捉率と示しています。脚注にあるように、4月からの1年間で平成30年度需給計画となっていて、本調査は1月から12月ということですので、完全には時期が一致しないことにも御注意いただきたいと思います。アルブミンの捕捉率については、2015年からの3年間を並べています。2017年のレベルは69.2%ということで約70%ですから、輸血用血液製剤全体の80.2%からすると、ちょっと低い状況にあるということです。
図6は、アルブミン製剤の使用量の推移に関して示しています。図5で捕捉率が年々異なっていることに御注意いただきたいのですけれども、2017年の各病床規模別の使用量は、昨年比ではほぼ横ばいです。しかし、一昨年との比較では全体で90.4%ということで、これは捕捉率の減少分が1.6%あったとしても、アルブミン製剤全体の使用量の減少傾向は明らかだと考えています。
図7の免疫グロブリン製剤についても、同じような調査をいたしました。免疫グロブリン製剤に関しては、2017年の捕捉率は57.5%ということで、アルブミン製剤よりも更に少ない状況です。3年間の捕捉率の推移を見ても徐々に減ってきているということが見て取れます。
図8を御覧ください。免疫グロブリン製剤の使用量に関しては御覧のとおりで、総使用量に関しては6.5%増、これはキログラムに直しているので6.5%ですが、図7だと詳細にグラム単位で計算しているので6.6%となっています。総使用量が6%以上増加しているということです。この捕捉率が4%以上低下したことを考慮すると、免疫グロブリン製剤の使用量は確実に6%以上増加しているだろうということが分かります。昨年との比較では、300床未満が11.6%、300床-499床が6.8%、500床以上が5.1%と、病床規模が小さい医療施設での増加傾向が明らかです。
図9からは、年々お示しさせていただいている1病床当たりの赤血球製剤、血小板製剤、新鮮凍結血漿、アルブミン、免疫グロブリン製剤の年次推移が記載されています。ここは省かせていただきます。
図14は診療科別に、赤血球製剤をどの科が何パーセントぐらい使っているかです。各診療科別の使用状況を御報告いただいていますので計算しています。赤血球製剤に関しては、血液内科が最も多く、心臓血管外科を上回る22.6%ということです。最も多い血液内科から産婦人科までで大体7割の赤血球が使われています。図15で、血小板製剤では、血液内科、心臓血管外科、小児科を合わせて全体の80%、図16で、新鮮凍結血漿、血漿製剤については、心臓血管外科、救急科、消化器外科で過半数を占めています。図17で、アルブミンに関しては、消化器外科、心臓血管外科、消化器内科、救急科ということで全体の6割、免疫グロブリン製剤については、後からもう少し詳しい分析をお出ししますけれども、神経内科、小児科、血液内科、膠原病内科という診療科で全体の70%の使用量を示しています。
診療科別と同じようなニュアンスですけれども、今度は疾患別で見ています。疾患別でも使用量、使用単位数を見て取れる状況です。ここでは2015年、2016年、2017年の3年間の比較を、各輸血用血液製剤で年次推移を見ています。赤血球に関しては、悪性腫瘍、循環器系、血液・造血器系、消化器系、外傷に対する使用が上位で、年々増加傾向にあります。血小板製剤で一番目立つのは、造血器腫瘍のところで、年々使用量は増加しています。血漿製剤に関しては、循環器系、消化器系での使用が多く、特に循環器系疾患に対しては、昨年比で明らかな増加を認めております。
自己血について何枚かの図で御説明いたします。貯血式自己血の使用単位数は全体で23万5,156単位で、昨年比98.9%ということで、マイナス1.1%です。一方、病床規模別に見ると、300床未満のみ3.6%増加で、それ以上の規模の所では若干減っている状況です。
図23で、1病床当たりの自己血の使用単位数を見ると、これは全体としては昨年とほぼ横ばいですけれども、これも病床規模別に見ると300床未満のみ増加の傾向でした。
図24は、診療科別貯血式自己血実施患者数の割合です。これは、例年この会でも御指摘を頂きますけれども、今は整形外科、産婦人科が非常に多く、3番目に多い泌尿器科を加えると、全体で8割以上がこの3科で占められるということが明らかになっています。
図25は、自己血と自己フィブリン糊の実施患者数を各診療科別に並べているものです。先ほどのグラフにあったように、整形外科、産婦人科あるいは泌尿器科が多いのですけれども、一方、自己フィブリン糊を使った症例数は脳神経外科が圧倒的に多いということが分かりました。
最後の数枚で免疫グロブリン製剤の使用動向についてお示しします。図26で、免疫グロブリン製剤の使用施設数は、昨年比で全体、各病床規模別ともほぼ横ばいである。一方、図27で、1病床当たりのグロブリン製剤の使用量は、2012年以降6年間を示していますけれども、徐々に増加しています。増加率も病床規模にかかわらず、ほぼ一定です。図28は、重症感染症、低・無ガンマグロブリン血症以外の使用に関して、この使用目的の推移を示しています。3年間の使用施設数の変化です。例えば川崎病に関しては、549施設が使っていたというのが、次の年には530、次の年は535と読み取れます。この3年間続けて増加したのは、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱随性多発根神経炎(CIDP)、それから多発性筋炎、重症筋無力症、天疱瘡の5疾患でした。
最後に都道府県別の各輸血用血液製剤、血漿分画製剤の使用単位数です。これも例年お示ししております。背景にはもちろん各都道府県固有の診療内容があるはずなのですけれども、それ以上にこの回答率が問題ではないか。図29に関しては、都道府県別に300床以上の医療施設に関して、その施設数が幾つであって、回答率がどれぐらいであったかということです。富山県、山梨県に関しては、300床以上の施設の全ての施設にお答えいただいていますが、右へ行くとだんだん低くなってくる傾向があります。こういうことが背景にあることを十分理解した上で、図30以降の分析をしなくてはいけないということです。
赤血球製剤の使用単位数も、1病床当たりの使用単位数が多いほうから並べてあります。下にデータの回答率、赤血球製剤の1病床当たりの単位数を小さい字で書いてありますので御検討いただけたらと思います。図31は同じように血小板製剤、図32は血漿製剤、図33はアルブミン製剤です。
総括の中で3つだけ振り返らせていただきます。4番目の300床以上施設においてという所です。牧野参考人のほうから、90.1%の施設が300床未満ということで輸血が行われている、一方、製剤の使用に関しては300床以上が83.2%という提示がありましたが、実際に一番最初に示した輸血実施予測患者数に関しては、300床未満が大体38%でした。アルブミン、グロブリンについては、捕捉率という言葉が適切かどうか分かりませんけれども、輸血用血液製剤に比べて捕捉率が低いことから、血液製剤を使用していないけれども、アルブミン、グロブリンを使っている施設での使用実態に関しては、本調査ではどうにもその実態の把握は困難であるということです。一番最後、免疫グロブリン製剤については、通常血液製剤の使用が少ない神経内科・膠原病内科・皮膚科などでの使用が多いということは、今後このアンケート調査では、こういう領域の免疫グロブリン製剤の使用状況・実態については把握できない可能性があるのではないかと考えました。以上です。
○半田委員長 それでは、ただいまの御説明に対して委員の方からお願いします。
○薄井委員 図1のグラフを見ますと、800-899床のアンケートの回答率だけが落ちていますけれども、何か理由があるのでしょうか。
○菅野参考人 明らかに見て取れるのですけれども、理由は定かではありません。
○薄井委員 毎年そうなのですか。
○菅野参考人 毎年そういうわけではありません。
○薄井委員 今回ということですね。
○菅野参考人 はい。
○稲田委員 いつも詳細な分析、大変なことだろうと思います。感謝申し上げるとともに、敬意を表したいと思います。図14~18を見ますと、各製剤について各診療科別の使用が出ているのですが、例えば実際に1患者当たりの使用数が出るのかという質問です。その意図というのは、今後は患者数の増加に応じてそういった製剤が増減する可能性があったり、あるいは手術にしても術式の変更で経皮的な手術、ステントなどが増えてくると、心臓外科の使用量が減るとか、そういった予測に使えるのではないかということで、もし症例別のものが出れば、実際にもう少し役に立つのではないかということでの質問です。
○菅野参考人 診療科別の使用単位数を全部合わせると、当然その施設での使用単位数と完全に一致しなければいけないのですけれども、お答えいただいた5,000施設を見ると、必ずしもなかなか一致しないところがあります。例えば診療科別で1病床当たり、あるいは診療科別で1患者当たりの数値は出るかもしれませんけれども、それが本当に100%正しい値にはならない可能性があると危惧しています。
○稲田委員 ただ、ある程度のものが出るといいのではないかと思ったのです。例えば大量出血のときのMTPの導入や救急、あるいは心臓血管外科のような所ではたくさん使うということになると、それが血液製剤の今後の使用量、特に新鮮血漿や凍結血漿、あるいは血小板製剤といったものに影響してくることがあるので、ある程度フォーカスを絞って、1症例当たりどれぐらいが平均で、更に術式別に調べるというのは、将来予測という点では重要ではないかという気がいたしました。
○長島委員 今後、免疫グロブリン製剤の実態を正確に把握するためには、どのような調査が必要とお考えでしょうか。
○菅野参考人 1つには、先ほど来「捕捉率」という言葉を使っておりますけれども、もし輸血用血液製剤あるいは血漿分画製剤を前年度に使っていない施設に関して、同様のアンケート調査が可能であれば、それは非常に役立つことになると思います。
○半田委員長 ほかにいかがでしょうか。毎年続けてきているということで、最終的にはこれをどういうように利用するかということで委員の方々の御意見を頂いておりますので、対応をよろしくお願いしたいと思います。それでは、引き続き北澤参考人から資料1-3マル1について、御説明をよろしくお願いします。
○北澤参考人 資料の2ページを御覧ください。背景です。平成29年度の適正使用調査会の資料によると、今までお話があったように、300床以上の施設の輸血管理体制の整備状況は90%以上95%でした。それに対し、300床未満の医療機関での輸血管理体制の整備状況は、60~70%程度でした。そこで平成25年度の調査から、300床未満の医療機関を更に5群に分類して検討を行ってきました。その結果、100床未満の医療機関においては、臨床検査技師の配置が少ないことをはじめとする人的資源の課題に加え、同意書の整備、指針の周知、検査項目等に課題があったことを今まで報告しております。また、病院外の輸血についても検査方法と、ここに記載があるような課題が見られておりました。
そこで今回検討した事項は、3ページにありますように、まず100床未満の医療機関の輸血療法について、どのような機関で輸血療法に課題があるのかを知るために、輸血療法の機会が少ない施設を考えることを目的に検討しました。特に今回は、病院外輸血が実施される疾患や患者の状態を調査し、輸血療法の実施の連携の有無、病院との連携の下に、病院外輸血を実施しているかどうかという点について検討しました。4ページが今お話した所ですが、3番は訂正となります。
5ページを御覧いただきたいと思います。100床未満の医療機関のアンケートの回答状況です。100床未満の医療機関のうち今回の対象となった7,112施設でアンケートを実施し、輸血を実施していないと答えた施設を除く2,417施設(輸血実施施設中34.0%、回答施設中79.4%)のアンケートを基に検討しました。6ページでは、今までの調査対象施設数と回答率を示しております。特に100床未満で輸血を実施している施設が増えているか減っているかを検討しましたが、ほぼ横ばいです。回答率は0床、無床診療所については向上してきております。
まず1番目の検討です。年間総輸血症例数別の検討ということで、年間で輸血をしていた症例数が1症例、2~3症例、4~6症例、7~10症例、11~20床例、21~50症例、51症例以上という7群に分けて検討しました。8ページを御覧いただくと、輸血を実施している患者の数が記載されております。もう1つの検討は、年間の赤血球製剤の使用総袋数別の検討です。これも1~10袋、11~50袋、51~100袋、101袋以上と分けて検討しております。
10ページからは左側が輸血総症例数別のグラフで、右側が赤血球使用総数別のグラフです。10ページと11ページは同意の取得、あるいは同意書の有無です。輸血総症例数別では10症例を超えるか超えないかで、少し差があるように見えています。赤血球製剤の使用総数別としても、同意取得は50症例の所、同意書の有無は11症例の所で違いが見えております。
12ページですが、指針には血液型検査はウラ検査を実施すると書いてありましたので、100床未満の症例数別の実施を見ております。51症例以上の所では90%以上ですが、それ以下は少なくなっております。また、赤血球使用総数別でも少ないほど実施率が低くなっています。
13ページの交差適合試験では、間接抗グロブリン法の実施が求められるわけですが、いずれも輸血の使用件数、症例数が少ないほど実施率が低くなっております。
14ページの臨床検査技師以外による交差適合検査により輸血した症例の有無は、やはり赤血球使用総数が少ないほど、検査技師以外による検査の実施で輸血した率が高くなっております。輸血総症例数に関しては、1症例の所で4.3%、それ以外の所は少ないほど高くなっています。
15ページは不規則抗体スクリーニングです。これも間接抗グロブリン法の実施が求められるわけですが、輸血の経験数が少ない、使用数あるいは症例数が少ないほど、実施率が低くなっております。
16、17ページは院内マニュアルの有無で、16ページは輸血療法、17ページは輸血後感染症関連です。いずれも「整備していない」という施設は、患者、症例数、使用総数が少ないほど多くなっております。
18ページの外部精度管理に関しては、医療法の改正により今後、外部精度管理に参加していることが重要になってきます。昨年度の状況では症例数、使用総数別に少ないほど参加している施設は少ない状況でした。19ページで輸血療法委員会の有無を示しておりますが、同様の傾向でした。
20ページが、20年間の記録の保管と保管方法です。さすがに保管していないという施設は見受けられないかと思いますけれども、このような状況です。
輸血前の検体保存に関しては21ページにありますように、紫色の保存していないという所が、特に問題かと思います。ただ、これも症例数や使用総数が少ないほど、保存していないとお答えになる施設が多かったという状況です。
22ページでは小括を記載しております。
23ページからは関連病院との連携の有無により、2群に分けて検討しました。
25ページを御覧いただきたいのですけれども、右側の病院外輸血を実施した場所としては、連携病院があって実施した所では、介護施設で実施した割合が高くなっていて、連携なしという医療機関では、在宅で実施した割合が高くなっておりました。
病院外輸血を実施した理由については連携あり・連携なしともに、在宅治療を行っているため、終末期医療のため、通院困難というのがありましたけれども、通院困難の理由については右側のグラフに示したように、寝たきりが最も多くありました。一番下のその他については、詳細として書いていただいたものを見ると、やはり寝たきりとかターミナルというのが多く記載されておりました。
27ページの在宅治療を行っている疾患としては、連携あり・連携なしのどちらも悪性疾患が一番高く、血液悪性疾患、血液疾患の3つで多くを占めておりました。
28ページは、インフォームドコンセントについて病院内と同じものを使っているか、それとも病院外輸血用に別に作成しているかという設問です。多くの施設では、病院内と同じ説明・同意書を使っているという現実が分かりました。
29ページ、クロスマッチ(交差適合試験)を実施していない施設は、さすがに0%でした。自院で必ず行っているという施設もありますけれども、この実態について、今回の調査では分かりませんでした。
30ページの輸血後感染症対策については、検体保存も感染症検査もほとんど実施していないという施設が多かったのですけれども、病院と連携して実施している施設では、院内と同様に実施しているというお答えが一番多くありました。
31ページ、輸血療法の実際です。輸血を実施する人については、つまり針を刺す人と考えておりますが、連携がないという施設では、ドクターが刺している所が多くありました。終了時に抜針する者ですが、やはり訪問看護ステーションの看護師や輸血担当施設の看護師が抜いていることが多いようです。
32ページの輸血療法中に患者の観察をきちんとやっているかという設問では、多くの施設が病院と同様に行っているとの回答でした。病院と連携していないという施設では、付添う医療従事者として、ドクターが比較的多く付き添っていると書いている施設もありました。
33ページ、輸血バッグの廃棄方法は、困難だという回答があったところですけれども、輸血担当施設で廃棄しているという回答が多くありました。
34、35ページでは、実施困難な検査や実施困難な項目を記載しております。約半数の施設でこのような実施困難という答えがありました。
36ページが延べ件数のグラフです。X軸に「件数」と書いてありますが、例えば1件だけあるとお答えになった施設数が、連携があるという施設では15施設、連携がないという施設では約11施設という見方をします。
「在宅赤血球輸血ガイド」というのを、本日の参考資料1-3に付けていただきましたけれども、これは昨年の12月に学会から出したガイドです。この調査は2月に締切りで行っていますが、知らないという施設が比較的少なかったということで安心をしております。
もう1つの資料1-3マル2を御覧いただきたいと思います。これは外来で実施される輸血です。今までの検討で、外来で輸血をして帰った後に副作用等が起きるので、それに対する対策が十分にできてないことが問題点であろうということで検討しました。
2~4ページは、製剤ごとの件数です。これも先ほどお示ししたものと同様で、下に書いてありますように、病床を分類して行いましたので、色分けで示しております。X軸が輸血の件数です。例えば、これだと多分2施設だと思うのですけれども、その輸血の件数が1件の施設で赤だったら、300~499床の施設という読み方をすることになります。
5ページが、外来で輸血をする際のマニュアルを作成しているか否かです。作成しているという施設は有床診療所で比較的低かったのですけれども、大体6、7割の施設で作っています。
6ページ、外来輸血後に院内で経過を観察する時間を設けていますかです。設けているという回答は、無床診療所や病床数が少ないほど高い割合で、しかも経過観察時間は、無床診療所では60分以上という所が一番高かったということが分かりました。
帰宅後に見られる有害事象の説明を文書・口頭で実施しているという施設は、いずれの病床群でも40数パーセント、口頭だけで実施しているというのも40数パーセントで、実施していないという施設が7~9%程度見られました。
8ページの帰宅後の連絡先についても、10%弱の施設で連絡先を教えていないということが分かりました。
9ページが、輸血中に見られた有害事象と帰宅後に見られた有害事象です。これは数が少なくて分からないのですけれども、帰宅後に見られた有害事象の中では、発疹・蕁麻疹の右にある呼吸困難が実は1位でした。このような重篤な有害事象もあるということで、帰宅後の連絡先等をしっかり説明しておかないと、これらの患者が大変な思いをされるということで、ここが外来輸血での問題点ではないかと考えます。
10ページのグラフが、帰宅後に発生した有害事象への対応についてです。これは救急外来で対応したという病院の報告もありますけれども、電話連絡のみとか、翌日に外来を受診してもらったというのが多く、実は十分な対応ができていない所が多かったと思います。
以上です。
○半田委員長 ありがとうございました。ただいまの御報告に関して、委員の方から御意見をどうぞ。
○稲田委員 大変重要な御報告だったと思います。今までの途中のところまでの話で、使用実態というのが分かってきたのですが、では輸血において何が重要か。先ほど輸血後の感染症検査というのがありましたが、安全性の担保というのが、非常に重要なところだと思います。実際に今の調査を伺っていますと、例えば同意書の取得、マニュアルの有無、検査体制、検査の保存といったいろいろな点で、こういった施設は非常に劣っています。こういった施設は、確かに輸血数は少ないのですが、リスクという点では高いということが予測されるので、こういった施設に対して学会あるいは政府で何かする御予定はおありになるかということを御質問したいと思います。
○半田委員長 学会のほうではどういう課題というか、どういうことを考えていらっしゃるかということです。
○北澤参考人 本日の参考資料1-3にお示ししておりますけれども、学会では在宅赤血球輸血ガイドのほかに、この後はまだ進んでおりませんが、血小板や血漿、あるいは小規模医療機関でもこのようなところはきちんと守っていただきたいということを、学会のガイドラインとしてお示ししていただくようにしていこうと思っています。
○薄井委員 学会のほうで決めていただくのは非常にいいことですけれども、実際に在宅等々で輸血をしていただいている先生方が、必ずしも日本輸血・細胞治療学会に入っていらっしゃらないので、情報をどのように提供するかというのも必要だと思います。これは学会と言うよりも、むしろ国の姿勢が重要ではないかと思うのです。
在宅では、どうしても輸血をやっていただきたいという患者さんがいらっしゃれば、診療所などの先生方にやっていただくというのが現状だと思うのです。私たちも輸血が必要な血液疾患の患者さんをたくさん拝見していますが、ずっと病院で輸血を行うというわけにはいきませんので、在宅でお願いしており、本当に助かっているのです。ただ、一方では輸血関連の副作用などリスクもあります。在宅医療の先生方ときちんと連携しているのであれば情報が出せますけれども、今回のデータを拝見すると、少なくとも半分ぐらいは連携してない診療所などでやっていただいているようです。その辺は国としてもサポートしていただかなくてはいけないと思います。
○半田委員長 いかがですか。
○石川血液対策課長 御指摘、ありがとうございます。正に厚労省としても、在宅医療を推進しており、がんの患者さんでも自宅に帰られて療養される方も増えていらっしゃいます。ただ、そのときに、先生の御指摘にもあったように、果たしてそういう先生方が、輸血・細胞治療学会の指針を目にされているかというところがあります。まずは医療界全体への周知ということであれば、今日も医師会の先生がいらしていますが、我々も様々な場面で関係団体や学会などを通じて、まず周知をするということはできます。一方で、そもそも輸血療法をどういう方にやるべきか、やらないべきかという点も含めて、第一に適正使用という観点があるかと思います。さらに今後、実際に在宅で本当にやっていくとなったときに、どういう安全管理をやっていただかなければいけないかというのは、厚労省内の局は違いますが、医政局には医療安全を担当している所もありますし、在宅医療の推進を担当している部局もありますので、担当部署と連携しながら、きちんとした情報が医療現場に伝わるようにしていきたいと思います。また、この調査は今後も続けていきますので、適宜実態を把握したいと思います。
○長島委員 日本医師会の長島です。日本医師会の中には、例えば有床診療所の委員会とか在宅医療の委員会もございますので、そちらを通じまして、まずこういうような課題が見付かったということを情報提供させていただきますし、例えば学会等で具体的にこのような対策をするといいという、分かりやすい指針等を作っていただければ、日本医師会の連絡網を通じて提供させていただくことも可能かと思います。
○北澤参考人 参考資料1-3の665ページの右側のカラムの「6番」と書いてある所なのですが、このガイドを作るときには在宅の先生等に、山岡先生は西日本で2番目に血液を使っているという先生で、川越正平先生もものすごく多く在宅をしておられる先生で、これらの先生にメーリングリストに流していただいて、皆様から御意見を頂いたりもしておりました。
また、昨年この会で発表した際には、医師会の鈴木先生に御連絡するということでお約束したので、これが公表されたときには御連絡を差し上げたところです。以上です。
○益子委員 今の資料1-3マル1の22ページ、先ほど御報告がありましたように、やはり輸血症例、赤血球製剤使用の総数が少ない施設ほど、いろいろな課題があるということは明らかになったと思うのです。その一方で、今、日本では厚生労働省が病院から在宅へという流れを加速させています。そうしますと、在宅の先生が、がんの末期の患者であっても輸血によって症状の改善が見込める場合には輸血するということがしばしば行われてきているし、これからはもっともっと増えると思うのです。
そのときに輸血の安全性というのがとても大事なのですが、その安全性を担保するために在宅の先生や訪問看護ステーションのナースにどの程度まで負荷を掛けていくのかということも、併せて考えないといけないのではないかと思います。
在宅の先生は、患者が得るメリットとデメリットを天秤に掛けてやると思うのですが、その場合にデメリットという危険性よりも、メリットがある場合には導入するということで現実はやっているわけです。ですので、今のままでいいとは思わないのですが、では病院との連携を持っていくのが理想だというのであれば、どういう形の病院との連携が望ましいのかということを、輸血細胞治療学会ではある程度検討されていますでしょうか。
○半田委員長 いかがでしょうか。一方的に負担を強いるのではなくて、その間にある程度のメリットとデメリットを考慮した方向性が必要ではないかというご意見ですが。
○北澤参考人 まず1つとしては、病院外で輸血をするための同意書を学会のほうでお示しして、このガイドの中に示しました。病院外の場合には、どうしても副作用、有害事象が起きたときの対応は緊急ではできないこともあるというデメリットを御理解いただいた上で輸血をしましょうということ、それ以外にも幾つか書いたつもりです。
病院とどのような連携をすればよいかということについては、細かい在宅輸血に関してのみではなくて、例えばどうしても小規模の医療機関とか診療所の先生方の所には、臨床検査技師がいないという現実もあって、不規則抗体を持っていたりすると非常に判断に迷うこともあるので、そういうのを地域連携という形で、輸血に慣れている病院の所に確認できたりというような地域連携の形は取れないだろうかと。ただ、これはまだ案の段階で、学会全体の方針ではありません。
○長島委員 在宅医療の連携というのは、輸血というのはごく一部ですので、それだけを連携するということは恐らくあり得ないと思いますので、これも地域包括ケアシステムの中で、全体的な連携の中の一部として輸血も扱っていくということでないと、恐らく解決できないだろうと思います。
○矢口委員 今までの話の流れの中での質問なのですが、資料1-3マル2の外来で実施される輸血の10ページ、有害事象の対応についての所に「その他」という所があります。ここの「その他」というのは、例えばどのような対応をされたのかということが分かりますか。有床診療所と無床診療所ではここが非常に多く占めているように見えますので、この対応というのも今までの話の中での今後の課題になるかと思いましたので、具体的にお分かりになれば教えていただければと思います。
○北澤参考人 この「その他」に関しては、別の記述項目を設けておりませんでしたので中身は分かりません。申し訳ありません。
○半田委員長 よろしいでしょうか。それでは、いろいろな意見を頂きました。事務局においては今の御意見を踏まえて、血液適正使用の推進に努めていただいて、また、今年も実施予定の本調査についても、今の御意見を十分に勘案して、より効果的で実効性のある調査をよろしくお願いします。
続いて、議題2、平成30年度血液製剤使用適正化方策調査研究事業について、事務局から資料2の説明をお願いいたします。
○山本匠血液対策課長補佐 本議題は報告事項となりますが、血液製剤使用適正化方策調査研究事業に関しては、平成18年より実施しており、本年度も実施しております。この事業の内容としては、各都道府県にある合同輸血療法委員会のうち、適正使用に資する研究計画を立てていただき、その中で評点が高い研究計画を提示した10都道府県をこちらで選定し、調査研究を委託するというものです。
適正使用推進体制と事業の計画性が高評価のもの、適正使用推進体制と事業の発展性が高評価のもの、それぞれ5者程度を選んでおります。両者は重複しないようにしております。今年度は17県から応募があり、資料2の最後のページに、選定された10県とその研究課題名を提示しております。選定された県ですが、青森県、秋田県、岩手県、宮城県、山形県、茨城県、長野県、新潟県、兵庫県、広島県の課題を採択しております。来年度も同様の事業を行う予定であり、今後の日程等はホームページで連絡します。この昨年の研究計画書に関しては、ホームページで適宜公開するようにしております。以上です。
○半田委員長 議題2に関して、委員の方々から御意見、あるいは御質問はおありでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本事業は引き続きお願いしたいと思います。
続いて議題3、「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン(案)」について、宮田参考人より参考資料3のガイドラインについて説明していただいて、その後に事務局より資料3-2の説明をお願いします。まず宮田参考人、よろしくお願いいたします。
○宮田参考人 資料が一番最後に付いていますので、御覧いただければと思います。このガイドラインについては、資料の2ページ目を御覧ください。これは、AMEDの研究班として実施させていただいております。私が研究代表者、開発代表者をしておりますので、今日発表させていただくということになります。
分担、担当者、協力者は以下に挙げたとおりですが、今回は大量出血ということで様々な領域に関わっておりますので、心臓血管外科、産科、外傷、麻酔科など、多領域のエキスパートの先生方に集まっていただいて班を形成しているということです。それぞれの各学会の理事や理事長を務めていらっしゃる先生方も多数いらっしゃいますので、それぞれの先生方の御意見を聞きながら作成したということです。
この資料の一番最後の112ページを御覧ください。そこに担当の先生方のお名前と領域について書いてあるのですが、今回大量出血のガイドラインというのはなかなかエビデンスが得にくいところ、RCTがしにくいということがありますので、それを適切に評価するためにsystematic reviews teamとガイドライン作成チームを分離して作りました。エビデンス総体を作るsystematic review teamの先生方と、ガイドラインを作成する先生方とを分けて、それぞれ協力はしますがインディペンデントのような形で作成しております。それぞれのClinical Questionについても最低3人が関与して作るということで、公平性や偏りがないことを担保して作ったつもりです。COIについては下に書いてあるとおりです。
元に戻っていただきまして、このガイドラインがカバーする内容ですが、大量出血症例に対する適正な輸血のガイドラインということで、目的は3ページになります。大量出血症例のアウトカム、特に大量出血症例は、外傷であれば20%から40%ぐらいが大量出血で亡くなるということですので、その死亡率やmorbidityというものを改善することをアウトカムとして、事前にそれぞれのアウトカムの重要度を決定しておきまして、その中で最重要と考えられるものに関して主にエビデンスをまとめ、推薦文を作成したということになります。想定される利用者、利用施設については4ページを御覧ください。大量出血に関係する様々な領域の先生方に使っていただければと作っております。
systematic reviewに関する事項で4ページに挙げていますが、これはPubmedとThe Cochran libraryと日本の雑誌の医中誌のデータベースを用いて、1995年から2014年、2014年と2015年の2回に分けてレビューをしておりまして、最終的には5,322文献を抽出し、その中から、まず最初にタイトルとアブストラクトだけで一次抽出、論文を読んで二次抽出。その中で必要と思われるエビデンスのタイプとして、RCT 、meta-analysis、観察研究で症例数が200を超える、若しくはpropensity score matchingなどで適切な対照群が検討されているような論文について三次抽出を行いまして、最終的には心臓血管外科で81文献、外傷で228文献、産科で115文献、その他の領域で72文献を採択しております。それから、この領域では最近エビデンスを抽出するのに非常に重要なRCTが実施されていますので、この後ClinicalTrials.gov等の登録状況を見て、その最新のものについてはHand Searchをして、追加してエビデンス総体として集約しております。ガイドラインについては、今までの輸血細胞治療学会からのガイドラインと同じように、「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」にのっとって、推奨の強さを5ページの一番上に挙げていますが、A、B、C、Dと、「強く推奨する」「弱く推奨する」の1、2に分けております。
同じ大量出血症例でも、それぞれの領域で様々に違うことがあります。7ページの序文にありますが、外傷については、先ほどお話しましたように非常に死亡率に直結するということ、心臓血管外科の場合には大量出血に加えて、人工心肺を使うという特徴、産科領域では、例えば羊水塞栓症などでは出血量が少なくても早期からDICを起こすというようなことがありますので、それぞれの領域の特徴を踏まえてガイドラインを作るということにさせていただいており、それぞれの領域ごとに推奨を決めております。
ガイドラインを作る上で、どのようなものが重要臨床課題になるかということについては、9ページから挙げております。最終的には、余り項目数が多くてもということですので、11ページにあるClinical Questionの4つに集約して、今回エビデンスをまとめております。Clinical Questionの1番としては、大量出血症例へのクリオプレシピテート、フィブリノゲン製剤の有効性です。次が、massive transfusion protocol、大量輸血プロトコルが推奨されるかです。CQの3はprothrombin complex concentrateとrecombinantⅦaが推奨されるかどうか。第4については、輸血療法とは違うのですが、抗線溶療法について、最近は様々な大規模なRCTが出ていますので、それについてまとめたということです。この4つのClinical Questionで、それぞれ心臓血管外科、外傷、産科、その他の領域に分けて推奨文を作成しております。
ガイドラインの本文については、12ページ以降にまとめておりますので、それについては御参照いただければと思いますが、この中で血液製剤の使用指針の中に取り入れていただくということで、今、厚生労働省の血液対策課のほうで御検討いただいているということです。フィブリノゲン製剤についてはなかなかエビデンスが得られにくいところはあるのですが、有効であるというものが多いということですので、それを弱いですが推奨するということが、Crinical Question1の概略になります。
それから、massive transfusion protcolですが、39ページを御覧ください。この領域については外傷の領域で非常に進んでいるのですが、最近海外も含めて、新鮮凍結血漿と血小板、赤血球の投与比を、初期の早い段階から1:1:1を目標にして、少なくとも1:1:2を維持するように投与するということで推奨しております。産科、心臓血管領域でも1対1を超えて投与することが、患者の予後に良くなるという論文も出てきておりますので、これについては様々な領域でも適用できる輸血療法かなと考えてまとめております。
それから、Clinical Questionの3ですが、最近プロトロンビン複合体製剤について、ワルファリンのリバースとして日本でも保険適用が通っておりますので、そういうことを含めてエビデンスを作らせていただいております。ただし、大量出血で作るということに関しては、まだランダム比較試験がそれほどありませんので、今回ワルファリンのリバースということに関してのみ強い推奨を付けているということになります。recombinantⅦaについては、様々off-labelで使われているのですが、最近は血栓症、特に動脈血栓症が増えるというmeta-analysisの結果が出ております。それから、recombinantⅦaは基質であるフィブリノゲンがないところで投与しても効かないということがありますので、recombinantⅦaについては、どうしても従来の輸血療法で効かない場合に、そういうリスクを考えながら投与するという、非常にネガティブな推奨になっております。
最後にClinical Question4の抗線溶療法についてですが、これについては先生方も御存じのように外傷の領域ではCRASH-2 studyが有名です。産科では最近はWOMAN trialというのが報告され、それぞれ国際共同試験で2万例の症例を集めて、その有効性が示されておりますので、抗線溶療法については、輸血量や死亡率を減じるということですので、推奨するということでまとめさせていただいております。内容がたくさんありますので、概略をお伝えいたしました。
これは案になっておりますが、この1週間ぐらいで、日本輸血・細胞治療学会のパブコメと、各関連学会に外部評価をお願いして、11月下旬に一応成案としてまとめる予定で作業を進めています。申し添えておきます。以上です。
○半田委員長 引き続いて、事務局から資料3-1から資料3-3を説明していただきます。
○山本匠血液対策課長補佐 資料3-1と資料3-2を見ながら説明できればと思います。先ほど宮田参考人から説明があったように、大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドラインがAMEDの研究班で作成されております。こちらの内容を踏まえて、今回、血液製剤の使用を改正するとしたいと思っております。要点等についてですが、先ほど宮田参考人から説明のあった、39ページにある内容ですが、Clinical Question2の大量出血症例に対するmassive transfusion protcol、このときの最適の赤血球、新鮮凍結血漿、血小板濃厚液の比はどれかというところで、現行、血小板製剤に関して投与比の記載がありませんので、これを記載しています。資料3-2の新旧対照表の2ページと4ページの部分です。2ページの部分は、「血液製剤の使用指針」のⅣ、血小板濃厚液の適正使用の部分ですが、この部分に、早期に新鮮凍結血漿:血小板濃厚液:赤血球液の投与比が1:1:1となることを目標とすることを推奨すると記載しています。4ページにおいても、新鮮凍結血漿の適正使用という部分で同様の記載をしております。
また、資料3-1の改正の要点の2つ目のポツで、抗線溶薬についてです。これはガイドラインのClinical Question4、抗線溶薬についての記載から持ってきておりますが、ガイドラインの87ページに記載があります。こちらを踏まえて、新旧対照表の4ページの新鮮凍結血漿の適正使用の一番下の段落に、大量出血時は、抗線溶療法により輸血量や死亡率を低下させる可能性があるので、早期からの抗線溶薬の投与を推奨すると、これはガイドラインを踏まえて2Bという推奨で書いております。
そのほかですが、参考文献の追加をしてります。またこれまで「大量輸血」という形で項目でしたが、このガイドラインが出来たことを踏まえて「大量出血時」という形で項目名を変更しております。それから新旧対照表の1ページになりますが、これは赤血球液の適正使用の部分で、術中投与の所に大量輸血の記載があります。この部分では、新鮮凍結血漿液や血小板濃厚液の投与についてと、その際は様々な所見を参考にしなさいということを書いておりますので、この部分は削除として、同様の記載をⅣの血小板濃厚液の適正使用と、Ⅴの新鮮凍結血漿の適正使用の部分に記載するようにしております。
先ほどの宮田先生からの説明で、ワルファリンの拮抗に関する内容もガイドラインにあるということでした。その部分に関しては、資料3-2の新旧対照表の5ページ、クマリン系薬剤の効果の緊急補正の部分に、現行、より緊急の対応のためにはプロトロンビン複合体製剤を使用すると記載しております。記載整備の範囲とは思いますが、使用することを推奨する1Bと記載するようにしております。ガイドラインを踏まえて、以上のような要点を修正したいと思っております。改正時期は平成30年度内を予定しております。以上となります。
○半田委員長 大量出血症例に関する学会のガイドライン、それからそれを踏まえた改正案ということですが、委員の方々からいかがでしょうか。
○薄井委員 私が専門ではないから分からないのかもしれませんが、新旧対照表の2ページの大量出血時の所、プラズマとプレートとRBCの投与単位の比が、早期から1:1:1になるようにと書いてあります。そしてその後に、少なくともこの比が1:1:2以上になるというのは、トータルでというような解釈でよろしいのでしょうか。これが1つです。
それから、Clinical Questionの所では「単位比」だと思うのですが、「単位」という言葉が抜けているような気がしますので、投与量と考える人はいませんけれども、そこを確認したいのでよろしくお願いします。
○山本匠血液対策課長補佐 文献の内容も踏まえての回答が必要かと思いますので、宮田参考人からお願いいたします。
○宮田参考人 大量出血等のプロトコルについては、早期に1:1:1になることを目標にするということです。止血が完了した時点で、その後にいろいろな検査をしてその後の投与を決めるということですので、総量が1:1:1になるというわけではありません。最初に検査もできないような大量出血が起こっている場合には、取りあえず1:1:1を目標に入れて、日本ではなかなか血小板製剤とかFFPを溶かして置いておくということはできませんので、それを目標にすれば大体1:1:2を維持できると考えております。それでやっていただいて、止血がある程度完了したところで、検査値を見ながらその後の投与を決めていくということで推奨を決めておりますので、ここにあるように「早期に」ということで考えていただければというように思います。
○薄井委員 2つの数字があると分かりにくいと思いまして、「1:1:1」というのと「1:1:2以上」というのが並んでいると分かりにくいと。先生の御説明でよく分かるのですが、分かりにくいかなと思いまして御質問しました。
○宮田参考人 海外では、それぞれの大きな病院というのは自分の所でBlood Bankを持っていますので血小板の在庫がありますので、最初から1:1:1で投与することはできるのです。しかし、日本では残念ながら血小板製剤を在庫している施設は皆無ですので、1:1:1を推奨したいのですが、そう書くと最初に血小板が手に入らない、その場合にガイドラインにのっとらなかったということで後で問題になる可能性があります。ですので、日本の現状を考えて、1:1:1を目標にするのですが、最低でも1:1:2ぐらいを維持できるように投与ということに、今回はさせていただいております。
あと単位数については、海外と違って日本は200の全血から作ったものに関して、全部それぞれの製剤の単位数がそろっておりますので、それについては投与比であれ用量であれ、日本では1:1:1ということで問題ないかと思います。
○薄井委員 これは単位数ということですか。
○宮田参考人 そうです。日本の単位数では、これで全然問題はないと考えております。
○大戸委員 この指針の内容について特に反対するものではありませんが、これがどういう状況で使われるかと言いますと、裁判を念頭におきたい。ここに「1:1:1となることを目標とし」と書いてあります。このままですと、これを守らなかったから患者の命がなくなったのだ、それを守らなかった病院側の責任であるというおそれがあります。ここで「可能な状況では」という一言を加えていただければと思います。
○半田委員長 事務局から何かありますか。
○山本匠血液対策課長補佐 先ほどの薄井委員からの意見と大戸委員からの意見ですが、こちらの1:1:1と1:1:2という2つの数字があると、その部分で誤解が生じるのではないか、分かりにくいという意見と、現実により即した意見で、一言加えてくれという御意見だと思います。そのことに関しては事務局のほうで修正案を今後作成し、血液事業部会に改正(案)を提出したいと思います。
○半田委員長 それから、これは法令になるわけなので、今の大戸委員の御意見としては、それが何らかの医療係争に使われる可能性もあるということで「可能な限り」などの文言を入れるという、そういう御提案ですね。
○山本匠血液対策課長補佐 こちらは通知になるので法令でありません。、大戸委員の御意見を踏まえて、記載に関しては修正を検討させていただければと思います。
○半田委員長 よろしいですか。それでは稲田委員どうぞ。
○稲田委員 数値ということに関係するというのは、過去においてはこういった術前からの出血性ショックとか、あるいは術中のショックとかでの死亡が1週間以内に51%ぐらい、最近では43%ぐらいに下がっていると。こういった場合に輸血療法は非常に重要だと思うのですが、こういった1:1:1あるいは1:1:2以上、これは恐らく現状で考えると適切というか、十分納得できる内容であると思います。
ただ、この注意書きの所にあるように、いろいろな条件的な制限があると。例えば、宮田先生がおっしゃったように、新鮮凍結血漿、向こうではthawed plasmaがあってすぐ使える状況と、日本での現状の問題が乖離しているということがあります。あと、恐らくこのRecommendationを非常に大きく引っ張ったのが、44ページのマル2RCTの所にあるHolcomb2015年のStudyだと思うのですが、この内容を細かく見てみると、ではどれぐらい早期にかと言うと中央値で8分、ここで血漿も血小板も用意されているというところと、こちらの最終的なあるいはできるだけ早くと実は大分乖離があるので、その辺りのところで使う側が十分に理解をしていないと、早期とはいつなのだろうというところで多分誤解がいろいろ生じるだろうなということです。この辺はある程度の注意書きは付ける必要があるかと思いました。以上です。
○半田委員長 ほかにいかがでしょうか。
○益子委員 重症外傷でダメージコントロール手術等をしている立場からしますと、これまでもmassive transfusion protocolということで1:1:1という形を目標にやっていたわけですが、それが正式に厚生労働省の血液製剤の使用指針の中に盛り込まれたというのは大変大きな意味がありますので、そのことを高く評価したいと思います。
その一方で、大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン、最初に宮田先生から御説明していただいた資料の27ページの外傷という所です。Clinical Questionで大量出血症例へのクリオプレシピテート、フィブリノゲン濃縮製剤の投与を推奨されるかという話ですが、このRecommendationでフィブリノゲン150mg/dL未満の外傷による大量出血に関しては、クリオプレシピテートあるいはフィブリノゲン濃縮製剤を投与することを提案するということで、2Cという表現がされています。ただし、その後ですが、フィブリノゲン濃縮製剤は外傷による後天性低フィブリノゲン血症患者に対する保険適応はなくて、クリオプレシピテート等は各施設の院内調剤によってのみ使用可能であるため、施設体制整備をしておくことが必要であるという方向性なのですけれども、これは施設間の格差を容認するという方向性であって、やはり望ましい方向は国がきちんとした製剤を作って、それを使うべきときに誰でも使えるような体制を取ることではないかと思います。その辺のこれからの厚生労働省の方向性というか、方針を教えていただければ有り難いと思います。
○半田委員長 いかがでしょうか。
○山本匠血液対策課長補佐 フィブリノゲン濃縮製剤に関しては、関連の学会から適応の拡大というところの要望が出ていると認識しております。そのほうでの検討の結果が出れば、こちらの指針にも記載していくということは検討できるかとは思っています。現状、大量出血というのは確かに臨床上重要な課題だと認識していますので、まずはこのガイドラインからできる範囲のものをこちらの指針に記載したと考えていただければと思います。
○稲田委員 先ほどのClinical Question2の血小板製剤を使うというのは、恐らく我々は2つのことを検証しないといけないと思います。1つは、日本初のデータ、こういったものが出てくるかというところで、1:1:1から1:1:2の間のところで予後が変わってくるかどうかということは当然必要ですし、もう1つは、先ほどの血液製剤の使用量というところで、やはりそれだけの血小板使用の増加に対して、そういった負担増に対して、日赤なり何なりがきちんと応えることができるか、もし応えるとしたら、一体何時間でそういったことができたのかといったところの検証をしていく必要があるのではないかと思いました。
○半田委員長 ありがとうございました。
○宮田参考人 今、御指摘いただいたところは非常に重要で、我々の班会議でも本当にこういう推奨をしていいのかどうかという議論もありました。日本の現状を考えると、大戸先生におっしゃっていただいたように、これを書くことがいいのかどうかということはあるのですが、このガイドラインを作るときには純粋に患者さんの予後を改善するということが我々の責務ですので、それを曲げてガイドラインを書くのはやはりおかしいということですので、純粋にエビデンスに基づいたガイドラインということで今回記載させていただいております。
ただし、ガイドラインの42ページを御覧いただければと思うのですけれども、そこに今回のガイドラインでそういうことが臨床上の問題として起こるかということで、各Clinical QuestionごとにPractice pointsということで、実際に本邦でこのエビデンスを用いて治療をする際に、どのように実施すべきかということに関しても記載をさせていただいております。特にMTPの場合は、早期に血漿や血小板製剤が投与できない体制では、TEGなどのpoint-of-careデバイスやフィブリノゲン測定によるモニタリングに基づく投与が有効である可能性も指摘をしておりまして、各施設によっていかに早期にMTPを発動して、各製剤の投与を実行することができるかについて、特に血漿の早期投与については可能な実施体制の整備も重要であるということを指摘させていただいております。
それから、血小板製剤の早期入手に関しては、日本赤十字血液センターとの連携体制の構築が必要であるということ、また、日本でこのガイドラインを応用する場合、クリオやフィブリノゲンについてもどのように入手するかについて考慮するということです。今後、日本でもMTPの構築については、準備できる体制の早期構築が望まれるということですので、日本の現在の医療状況を勘案した形で、最後にそれぞれ解説も付けさせていただいているつもりでおります。
○半田委員長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。これは通知として出されるということですが、ベースにあるのは当該学会のガイドラインということで、それを踏まえた通知という部分だと思います。今の御意見等をちょっと勘案して修正案を作成させていただければと思います。これに関しては、血液事業部会での修正案の審議を経て、実際の使用指針の改正ということになると思います。改正内容に関しては、私座長のほうで預からせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは事務局、よろしくお願いしたいと思います。何かありますか。
○石川血液対策課長 御意見ありがとうございます。今回まず、研究班のほうでこういうガイドラインを作っていただきましたので、様々なほかの事業でもそうなのですが、まずはできるところから反映をさせていきます。それから、この研究班には当然、日赤の関係の方も協力者ということで入って、連携をして作成をしていただいておりますので、引き続き、供給サイドと実際に現場で使われる先生方と連携して進めていきたいと思います。
○半田委員長 それでは、議題3までで公開の議題は終了となります。ここまでの議論で、全体を通して委員の方々から御意見等はございますか。よろしいでしょうか。それでは、議題4は非公開となりますので、ほかに議題がないということですので、事務局から進行をよろしくお願いいたします。
○山本匠血液対策課長補佐 ありがとうございます。公開の議題はここまでとなりますので、議題4は非公開となります。傍聴者の皆様は、ここでの退席をお願いいたします。
 

 

(了)

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