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2018年8月30日 第9回労働政策審議会 職業安定分科会 雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会

雇用環境・均等局

○日時

平成30年8月30日(木) 15時00分~17時00分

 

○場所

東京都港区芝公園1-5-32
中央労働委員会7階講堂

○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、武田委員、松浦委員、守島委員、山田委員
 

【労働者代表委員】

梅田委員、齋藤委員、村上委員、吉清委員
 

【使用者代表委員】

秋田委員、及川委員、高野代理人(小林委員)、鈴木委員、田代委員、中野委員

○議題

・ 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法 律の経過について(報告)
・ 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部改正法の施行について

○議事

 

○守島部会長 それでは定刻になりました。少し早いのですけれども、全員おそろいのようなので、ただいまから「第9回労働政策審議会職業安定分科会雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会」を開催したいと思います。まずは委員の改選について、改選後の名簿はお手元の参考資料1にありますけれども、前回の第8回以降に新たに本部会の委員に就任された方がいらっしゃいますので、御紹介をさせていただきたいと思います。まず、労働者代表委員、情報産業労働組合連合会中央執行委員の齋藤久子さんです。
○齋藤委員 齋藤です。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 全日本自動車産業労働組合総連合会中央執行委員の吉清一博さん。
○吉清委員 吉清と申します。よろしくお願いします。
○守島部会長 使用者の代表委員としては、日本経済団体連合会労働法制本部統括主幹の鈴木重也さん。
○鈴木委員 鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○守島部会長 それから、本日の出席状況につきましては、公益委員の中窪委員、労働者代表の小原委員、松井委員、使用者代表の小林委員が御欠席です。使用者代表の小林委員に関しましては、日本商工会議所産業政策第二部課長高野様が代理出席をなさっておられます。それでは、事務局から定足数の御報告を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○松永有期・短時間労働課長 有期・短時間労働課長の松永です。よろしくお願いいたします。定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第9条で定めます委員全体の3分の2以上の出席、又は公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますけれども、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
○守島部会長 では、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日の議題に入る前に厚生労働省の事務局にも人事異動がありましたので、事務局から報告させていただきます。
○松永有期・短時間労働課長 7月31日付けの人事異動に伴いまして、事務局に変更がありましたので御報告いたします。まず、小林雇用環境・均等局長です。
○小林雇用環境・均等局長 小林です。よろしくお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 続いて本多審議官です。
○本多雇用環境・均等局審議官 本多です。よろしくお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 続いて、堀井総務課長です。
○堀井総務課長 堀井です。どうぞよろしくお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 それから、吉村多様な働き方推進室長です。
○吉村多様な働き方推進室長 吉村です。よろしくお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 なお、堀井総務課長におきましては、所用のため途中で退席とさせていただきますので御了承を願います。では、事務局を代表いたしまして、小林局長より一言御挨拶を申し上げます。
○小林雇用環境・均等局長 今、申し上げましたように、7月31日付けで相当数の入替えが起こっておりますが、引き続きよろしくお願い申し上げます。働き方改革関連法案でございますが、6月29日に成立をいたしまして、7月6日に公布されております。それ以来、またこの部会の再開ということになります。今後、労使に十分御議論を頂く必要もございますし、また我々としては、特に中小規模の事業者の方にできるだけ周知を図っていくということがございますので、省令あるいは指針の中身について、なるべく早くお示しできることが望ましいと思っております。そういう観点から、是非、精力的に御審議賜りますようによろしくお願い申し上げます。
○守島部会長 それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題(1)「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の経過について(報告)」がまずあります。それでは資料について、事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○吉村多様な働き方推進室長 それでは、議題1点目の法律の経過について、資料1と資料2を使って御説明いたします。まず、資料1を御覧ください。国会における審議の状況についてです。資料1の1ページ目、与党での議論の経過についてですが、これについては法案を国会に提出するに当たり、与党での御議論も踏まえ、政府として施行期日を変更した上で、国会に提出したということについて報告するものです。
  同一労働同一賃金については、1ページ目の下の赤い線で囲っている部分ですが、パートタイム労働法、労働契約法、それから労働者派遣法に関する部分です。まず、パートタイム労働法、労働契約法ですが、大企業については2019年4月を予定していたものを2020年4月に、それから中小企業については、2020年4月から2021年4月ということで1年の後ろ倒しをしております。労働者派遣法についても同じように、2019年4月から2020年4月に後ろ倒しをして、国会のほうに提出し、可決成立を頂いたということです。
裏を御覧ください。2ページ目です。働き方改革の関連の法律の国会における審議状況です。衆議院の審議としては4月から5月にかけて7回ほど審議があり、5月31日に可決しました。その後、参議院に移り、6月に同じように7回ほど審議いただき、6月29日に参議院で可決、法案として成立したということで、先ほども局長からお話したとおり、7月6日に法律が公布されているというところです。
3ページを御覧ください。こういった国会での審議に当たり、衆議院、参議院の委員会で、それぞれ附帯決議を頂いているところです。この附帯決議も踏まえた形で、今後、施行に当たっての準備をしていく必要があるということで、紹介しております。
 まず3ページ目が、衆議院での附帯決議です。附帯決議については、働き方改革関連法案で複数付いておりますので、同一労働同一賃金に係る部分のみを抜粋して、今回は御紹介しております。まず四ですが、非正規雇用労働者の待遇改善に向けた賃金などの手当を支援するために、予算・税制・金融を含めた支援措置の拡充に向けた検討に努めるようにということが言われております。
 それから同じページの十二ですが、今回のパートタイム労働法などの改正、これについては同一企業・同一団体における不合理な待遇差の解消を目指すということについて、丁寧に周知・説明をするようにということが言われております。
続いて4ページ目を御覧ください。参議院での附帯決議です。参議院においては衆議院よりたくさん附帯決議を頂いておりますが、まず三十二です。今回のパートタイム労働法などの改正による同一労働同一賃金については、あくまで非正規雇用労働者の待遇改善によって実現すべきであって、通常の労働者の方の待遇引下げは趣旨に反するということについて、丁寧に周知・説明を行うようにということが言われております。
 続いて三十三番目です。通常の労働者に関する雇用管理区分を新しく作り、職務分離などを行ったとしても、今回のパート法などによる不合理な待遇の禁止規定を回避することはできないことを指針などで明らかにすることについて、審議会で検討を行うようにと言われております。
 続いて三十四です。ここは派遣労働者の関係です。まず1点目ですが、今回の同一労働同一賃金の法律の中身として、派遣については派遣先均等・均衡方式と労使協定方式という2つがあることになっておりますが、派遣先均等・均衡が原則であって、労使協定方式は例外であるということについて、丁寧に周知・説明を行うことなどが言われております。2点目ですが、労使協定の記載事項の1つである同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金額、これについては政府が公式統計などによって定めることを原則として、その他の統計を活用する場合であっても、適切な統計とすることについて審議会で検討を行うようにということが決議されております。3点目ですが、労使協定の賃金の定めについては、就業規則などに記載すべきということを周知・徹底するようにと言われております。4点目ですが、労使協定で定めた内容を行政が適切に把握できるように、事業報告において報告することを周知・徹底するようにということが決議されております。
 5ページ目を御覧ください。引き続き参議院での附帯決議ですが、三十五以降はまた派遣ではなくて、有期・パート・派遣共通の部分です。使用者が待遇差を説明するに当たり、資料の活用を基本に、その説明方法の在り方について、審議会の方で検討を行うことが言われております。この部分については国会の審議の中でも、例えば文書を義務化してはどうかというような御議論もありましたが、実効ある説明がなされるためにはどういったことが良いかと、国会の中でも議論がなされていたということで、この附帯決議が付いていると思っております。
 それから三十六点目ですが、働き方改革の目的や一億総活躍社会の実現などに向けては、不合理な待遇差の解消とともに不本意の非正規雇用労働者の正社員化など、無期転換の促進による雇用の安定、待遇の改善が必要だということで、厚生労働省が策定しております正社員転換・待遇改善実現プランなどの実効性ある推進に注力するようにということが言われております。
それから5ページ目の四十番ですが、短時間・有期雇用労働法などの適正な運用については、担当する職員の機能強化、あるいは体制の充実・強化、関連部署の有機的な連携・協力、こういったものを確保すべきであるということが言われております。以上が資料1の内容です。
 続いて資料2を御覧ください。今回の法律改正を受け、今後、この同一労働同一賃金部会において検討していただければと思っている事項について、事務方のほうで整理しております。大きくはパートタイム・有期雇用労働法関係と労働者派遣法の部分について、分かれるかと思っております。まず、パートタイム・有期雇用労働法関係については、同一労働同一賃金のガイドラインや、あるいは待遇差に関する説明義務などについて御議論いただければと思っております。労働者派遣法については、次回以降と思っておりますが、派遣部分の同一労働同一賃金ガイドライン、それから労使協定の関係、待遇情報の提供、あるいは説明義務、待遇方式の周知、こういったものについて順次御議論いただければと思っております。
 資料2の2ページ目は、今後のスケジュール(案)ということで、本日8月30日が法律が可決成立した後の第1回目ということで、今、御報告した国会での審議状況や、これから御説明するパートタイム・有期雇用労働法関係について、御議論いただければと思っております。次回以降については9月10日、10月2日と日程を仮押さえしておりますので、こういった日程で順次、先ほど1ページ目で御説明した事項について、御議論いただければと思っております。事務局からの説明は以上です。
○守島部会長 ただいまの説明について、何か御質問、御意見等がありましたら伺いたいと思います。よろしくお願いします。特にないですか、よろしいですか。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。(2)「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部改正法の施行について」です。まず、事務局から資料の御説明をお願いしたいと思います。
○吉村多様な働き方推進室長 議題の2点目の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律等の一部改正法の施行についてということで、資料を3つ御用意しております。資料3-1、3-2、3-3の3つですので、この3つについて、まず一通り説明したいと思います。
まず資料3-1を御覧ください。同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台(短時間・有期雇用労働者に関する部分)と書いている資料です。こちらについては、左側に今回提示しているガイドラインのたたき台、右側が平成28年12月20日に政府が同一労働同一賃金ガイドライン案として提示したものです。それとの比較をするような形で資料としては作っております。
 これは平成28年12月20日にガイドライン案を提出しましたが、これを今回、法律に基づく告示という形で落とし込んでいるというものです。ただし一部修正・追記をしている部分がありますので、そこを中心に御説明したいと思います。追記している部分の大きなものとしては、例えば先ほど御説明した国会での議論で附帯決議を頂いている部分、あるいは最高裁の判決が確定した部分、あるいは事例として少し不適当だったかと思うような部分については修正・追記をして、今回、資料として提出しております。なお、ガイドラインについては派遣労働者の部分もありますが、本日は派遣の部分についてはこの資料に入れ込んではおりませんので、次回以降のこの部会での議論の際に提示したいと思っております。それでは、主に修正・追記をした部分について、御説明したいと思います。
 まず1ページ目ですが、第1として「目的」という部分があります。ここは1ページから4ページまで続いておりますが、この部分については、例えば2ページ目を御覧ください。上から2行目ですが、今回の同一労働同一賃金というものは、同一事業主における通常の労働者と短時間・有期雇用労働者等との間の不合理と認められる待遇の相違、差別的取扱いの解消を目指すということで、附帯決議も踏まえ「同一の事業主における」という文言を追記しております。
 それから2ページの下から3行目ですが、待遇の体系について、「労使の話合いにより可能な限り速やかに」という所に、この同一労働同一賃金部会の建議に書かれていた「計画的に」という文言を追加しております。
それから3ページを御覧ください。真ん中から下辺りになお書きというものが追記されております。これについては参議院の附帯決議を踏まえ、雇用管理区分、あるいは職務分離を行ったとしても、不合理な待遇差の相違の解消というものは回避できないということを追記しております。
 続いて4ページを御覧ください。上のほうに追加されている部分がありますが、これも参議院での附帯決議を受けて記述している部分です。不合理な待遇差の解消のため、通常の労働者の待遇を引き下げるということは望ましい対応とはいえないということに留意すべきということを追加して記載をしております。
 4ページから5ページ目にかけて第2「基本的考え方」という部分です。変更している部分としては、例えば5ページの上のほうですが、法律が成立したために記述として必要ない部分を削除しております。
 それから5ページから6ページにかけて、第3という形で定義を規定しております。これについては法律に基づき短時間労働者や通常の労働者などの定義を行っております。特に正規雇用労働者については、法律上「通常の労働者」と記載されておりますので、5ページの一番下の(5)ですが、「通常の労働者」という用語ではなくて、いわゆる正規型の労働者、その他、無期雇用フルタイム労働者という形で規定しております。
 続いて6ページの第4からが、短時間・有期雇用労働者に関する記述という形になっております。まず6ページの下の部分でパート・有期法の第8条や第9条、この規定を記載しており、原則的な法律のルールを説明するような形にしております。
続いて7ページ以降ですが、7ページから14ページについては基本給に関する記述です。事例についてはガイドライン案のものと同じ事例を記載しております。
 ただ、13ページの「さらに」以下で長澤運輸の最高裁判決を踏まえて追記している部分ですが、これは定年後の継続雇用に関する事例について、最高裁における判決が出たことを踏まえて記述を追加しております。13ページの真ん中辺りに「そうすると」という部分がありますが、「そうすると、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者である」ということについては、「その他の事情として考慮される事情に当たりうる」ということを、まず記述しております。
 その上で14ページの1行目で、「様々な事情が総合考慮され、待遇の相違が不合理であるか否かが判断されるものと考えられる」と。「したがって、継続雇用される者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理とされるものではない」という形で記述をしております。
 続いて14ページの2ですが、14ページから23ページまでが手当に関する記述で、順次賞与、役職手当、特殊作業手当、特殊勤務手当、精皆勤手当、時間外手当、深夜・休日手当、通勤手当、出張手当、食事手当、単身赴任手当、地域手当の順に記述しております。
 特に20ページですが、通勤手当の事例です。通勤手当の問題とならない例のイですが、この部分については事例を少し修正しております。これは「公正な採用選考」というのを厚生労働省では進めており、職に対する適性と能力に基づいて選考いただくことをお願いしているものですから、そうした中でガイドライン案の事例が採用圏外からの応募を排除するかのような記述をしていた事例でしたので、そこは少し好ましくないだろうということで事例を変更しております。
 左側に書いている事例としてイメージしているのは、本社での採用と店舗での採用というのが併用されており、店舗での採用については主に近隣で募集を行っているということから、通常の労働者であろうがパート・有期の労働者であろうが、通勤手当の上限を設定している事例にしております。そうした上限が設定されている場合に、短時間労働者の方が御自身の都合で上限以上の通勤費用が必要な地域に転居された場合の通勤手当については、上限までの支払いとしている事例については問題とはならない事例として記載しております。
 それから、23ページ目から25ページ目までが福利厚生の関係の記述です。福利厚生施設、転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障、病気休暇、法定外休暇について記述をしております。
一番最後に25ページ目からですが、4「その他」として教育訓練と安全管理について記載しております。以上が資料3-1の同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台です。
 続いて資料3-2を御覧ください。「待遇の相違の内容及び理由の説明について」という資料です。これは短時間・有期雇用労働法第14条第2項の関係であり、今回の法律により、この条項においては、事業主の方は短時間・有期雇用労働者から求めがあった場合については、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由について説明をしなければならないという規定になっております。この待遇の内容及び相違について、どのようにやっていくかということにつきまして、指針での定め方について御議論を頂きたいということで、今回、資料を出しております。
 具体的には資料3ページ目を御覧ください。今回の資料の作りとしては、3ページの上から5行目辺りに四角で箱に囲んでいる部分があると思いますが、こういった部分について、短時間・有期雇用労働指針に盛り込んではどうかという形で御提案するものです。まずは、比較対象となる通常の労働者、これの考え方です。指針については四角囲いの中ですが、職務の内容及び配置の変更の範囲などが最も近いと事業主が判断される通常の労働者、この方について説明することにしてはどうかと考えております。
 では、具体的にどうやって最も近いと判断していただくかということについては、3ページの真ん中辺りの説明の1つ目の○です。考え方としては職務の内容及び配置の変更の範囲が両方とも同じ方、こういった方がいれば一番いいかと思いますが、そういった方がいない場合については、職務の内容のみが同じ、そういった方もいなければ例えば業務の内容又は責任の程度が同じ、こういった形で順次近いと判断される方が選定されるということを基本としてはどうかと考えております。
 その上で2つ目の○ですが、同じカテゴリーに複数の労働者の方がいる場合には、更に絞り込むこともあり得るだろうということで、例えば基本給の決定に当たっての重要な要素、あるいは同一の事業所に雇用されているかどうか、こういったことなどから絞り込んだり、更には4ページ目ですが、選定するやり方として、例えば1人を選んでも構わないし、過去1年以内に在籍していた方や通常の労働者の標準的なモデルなど、こういった方を比較対象として選定してはどうかと考えております。いずれにしても2つ目の○ですが、どのようにしてそれらの方を選定したか、その理由についても説明することが必要であると考えております。
続いて5ページ目を御覧ください。待遇の相違の内容の説明をするに当たり、まず待遇の相違の内容についてです。5ページ目の四角で囲っている部分ですが、事業主の方については、待遇の相違の内容として実施基準が異なっているかどうか。それから個別具体的な待遇の内容、あるいは待遇の実施基準、こういったことについて説明してはどうかと考えております。
 具体的な考え方ですが、「説明」の1つ目の○、例えば待遇の個別具体的な内容としては、例えば1人の方の賃金、複数人の方であれば平均・上限・下限、あるいは標準的な内容などを説明することは考えられるのではないかとしております。2つ目の○ですが、待遇の実施基準としては賃金テーブル、等級表などの支給基準などについて説明すると。3つ目の○ですが、その際には待遇の水準を把握できるものとすることが必要ではないかと考えております。
 続いて6ページ目をお願いします。それでは待遇の相違の理由ですが、指針としては四角で囲んでいる部分ですけれども、待遇の性質、目的に照らし、適切と認められるものについて説明してはどうかと思っております。考え方ですが、例えばパート・有期の方と通常の労働者との間の実施基準が同じであれば、ではなぜ待遇に具体的に違いが生じているのかという理由について、例えば成果や能力、経験が違うというようなことを説明することも考えられますし、実施基準が違っている場合については、なぜそもそも実施基準を変えているのか、その理由としては例えば職務の内容や配置の変更の範囲が違うといったことについて説明していただくとともに、それぞれの実施基準についてどのように適用しておられるのか、説明することが考えられるのではないかと思っております。
 続いて7ページ目をお願いします。説明の具体的な方法ですが、この点については先ほども附帯決議を頂いているということ、あるいは国会の審議でも文書での明示を義務化すべきというような御意見など、実効ある説明の方法について、国会での議論があったことを踏まえて、今回の提案をしております。
 四角囲みの指針で書く事項としては、資料を活用の上、口頭により説明することを基本としつつ、説明すべき事項を漏れなく記載した容易に理解できる資料を交付することも可能としてはどうかと考えております。説明の2つ目の○ですが、資料の交付で対応するという場合については、就業規則の条項を記載して、その詳細は別途就業規則を閲覧していただくという方法も考えられますが、就業規則を閲覧したいと言われた場合には、誠実に対応する必要があるだろうと考えております。以上が資料3-2の内容です。
 続いて資料3-3です。その他、短時間・有期雇用労働法に関する改正事項ということで、2つの省令改正関係の事項を提案しております。まず1点目が2ページ目ですが、職務の内容に密接に関連する賃金について、法第10条関係です。これについては短時間・有期雇用労働法10条という規定があり、こちらで賃金の決定については、職務の内容等に応じて賃金を決定するように努めるとされております。ただ、職務関連賃金以外のものについては、括弧書きで10条の対象外となされており、その対象外の賃金の例示としては、従来、退職手当というものが書かれておりましたが、今回の法律改正において退職手当については、企業によって長期勤続奨励など様々な性格があることから、例示からは削除されているというものです。その上で、職務関連賃金以外というものをどのように省令で規定するかということを、今回御議論いただきたいというものです。
 現在でもこの省令というものはあり、それが3ページ目ですが、現行の省令においては2つ目の○の所で、①~⑦という形で通勤手当、退職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当、①~⑥までのもののほか、名称の如何を問わず支払われる賃金のうち、職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外のものという形で規定されております。
 こういった規定を参考に、その上で法律改正で退職手当が除かれていることを踏まえ、今回御提案したいと思っているのが4ページ目です。四角囲いの部分ですが、名称だけでは性質、目的と合致していないという部分もあるかと思い、4ページ目では通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当、その他の名称の如何を問わず支払われる賃金のうち、職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外のもの、こういった形で省令で規定してはどうかと考えております。
 続いて5ページ目をお願いします。労働条件の明示の方法についてです。この規定は、短時間・有期労働法6条の関係ですが、5ページの6条を見ていただくと、短時間・有期雇用労働法では、雇入れ時に一定の事項を文書で交付等の方法で明示するということが定められております。
 その明示の方法なのですが、6ページ目を御覧ください。この法律6条1項に基づく労働条件の明示の方法については、省令で定めることになっておりますので、この規定をどうするかということが今回の議論ですが、類似の規定が労働基準法第15条1項に基づく労働条件の明示ということがあります。この労働基準法15条1項の明示の方法というものが労働条件分科会で省令改正が予定されていると伺っております。その改正に合わせてパート・有期法の労働条件の明示方法を合わせてはどうかということで、提案しております。具体的な規定としては、現行と変えている部分を四角で囲んでいる記述の下線で示しています。1つ目の点ですが、「事実と異なるものとしてはいけない」ということを追記すること。それから、やり方として2つ目の点の②ですが、ファックス、電子メールに加え、SNSなど受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信方法、これを加えてはどうかということで、今回、提案しております。資料3-3は以上です。事務局から資料3-1から3-3について、説明は以上です。
○守島部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明のうち、資料3-1の同一労働同一賃金ガイドラインのたたき台について、何か御質問とか御意見がございましたら伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○秋田委員 御説明をありがとうございました。従来から似たようなことは申し上げているのですが、たたき台の第1の「目的」の所、特に2ページを読んでいくと、同一労働同一賃金の実現に向けてという表現が3回ぐらい出てきます。それ以外に真ん中辺りには、「同一労働同一賃金の考え方が広く普及しているといわれる欧州の制度」というようなくだりもあり、ヨーロッパ型の同一労働同一賃金の実現が究極の到達目標なのだと素直に読んでいる労務管理の担当者もいて、非常に誤解を生んでいると思います。このガイドラインから発生したたたき台の目的は、分かりやすく誤解を生まなくて制度を周知していくということが肝要だと思いますので、こういう用語をあえて入れているというのはいかがかなと思います。あわせて、事務局に1つお尋ねしたいのですが、法律の条文の中に「同一労働同一賃金」という言い方は書かれているのでしょうか。
○松永有期・短時間労働課長 後段の御質問については、法律の条文上は同一労働同一賃金という言葉は使っていないということです。
○秋田委員 そうであれば、もう一回申し上げますけれども、例えば2ページの一番上の「同一労働同一賃金の実現に向けて定めるものである」から、「同一労働同一賃金は、」の読点までなくして、公正な待遇を確保し、同一の事業主における通常の労働者と短時間・有期雇用労働者等との間の不合理と認められる待遇の相違とかを解消するのだと、こういうふうに書いたほうが何をすべきなのかがものすごくダイレクトに分かります。私はこのたたき台は、当然ながら使用者側にも何をすべきなのかということを分かりやすく周知するというのが第一目標だと思いますので、あえて同一労働同一賃金というキャッチフレーズ的な表現を無理やり差し挟まなくてもいいのではないかと思います。以上です。
○守島部会長 ほかにどなたかありますか。
○村上委員 資料2にありますように、改正法が成立してから検討すべき事項はたくさんあります。その中でも資料3-1の同一労働同一賃金ガイドライン案については、法案成立後に議論すると整理して、部会では議論はしてこなかったと承知しております。大枠の考え方はガイドライン案で示されているということで、それが世の中にも出ていますけれども、今後法律施行の段階を迎えるにあたって、指針の内容は職場の労使にとって大変重要な参考資料となっていくものと考えています。その点から、今意見のあった目的規定の表現ぶりも含めてですが、細かな表現ぶりや定義規定等も含めて、部会において十分にかつ慎重に議論をしていきたいと考えているというのが1つです。
 また、先ほど目的規定について秋田委員からご発言がありましたけれども、私どもとしても、指針全体を見たときに、少し長いのではないかとか、あるいは改正法が成立した後に、職場で労使が見ていくときに実務的にどうなのかという点から、文言や分量等も見直していく必要があるのではないかと思っております。具体的な意見については、また今回は勿論、次回以降も申し述べたいと思っております。以上です。
○守島部会長 ほかにありますか。
○中野委員 関連していますので、続けて発言させていただきますが、コンプライアンス経営というのが当たり前に求められている中で、短期間で就業規則の改正とか人事制度改正だとかを、各社によって違うとは思いますが、実施していかなければいけない。その上では、今の村上委員の発言と相反するつもりではないのですが、端的にもっと事例を入れていただきたいと思います。分かりやすく、相手が迷わずに、間違いなく解釈できるそういった内容の事例を示すべきだと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○鈴木委員 一昨年12月にガイドラインが公開されてから、私どもの所にもいろいろと御紹介があり、分かりづらいという声を聞きます。幾つか御紹介させていただいて、可能な限り修正をお願いできればと思っているのですが、まず、12ページにある注です。この注は、基本給と賞与を含む手当をはじめとする賃金全体に係る内容になっているにもかかわらず、基本給の後、手当の前ということで、やや位置が分かりにくいという御意見を頂いております。
 もとより、この注の中身というのは、通常の労働者の方とパート・有期の方の賃金の決定の基準とかルールが違う方が読み込まれるという構造になっているかと思います。逆を言うと、賃金に関わるその他の大半の記述というのは、通常の労働者とパート・有期の方の賃金決定ルール等が異なる場合という前提があるかと思いますが、その点がいまいち分かりにくいという声も聞きますので、そういった点を少し分かりやすくしていただく工夫を御検討いただければ幸いです。
 2つ目ですけれども、一応たたき台の目的の2ページ辺りからも書いてありますが、誰と誰を比較するのかといったお問合せがいまだに私どもの所にきます。端的に通常の労働者同士ですとか、有期・パート同士の方の均衡というのは特に問題にならないといったことを明らかにしたり、逆に無期転換ルールが適用になった無期転換後のパートの方は、保護対象になるということは明記してはどうかと思います。
 今度は、均衡規定の主体の問題です。前も部会でお話があったかと思いますが、例えば健保組合とか互助会が慶弔金を支払いをするとか、各種福利厚生を実施するケースもありますけれども、互助会等は対象にならないと思いますので、そういった点も何らかの分かるような工夫をお願いできればと思っております。以上です。
○及川委員 ガイドラインの分かりやすさということなのですが、特に小規模事業者にとっては分かりやすさという観点が大変重要でして、細かい配慮を頂ければ大変有り難いと思っております。
 例えば、3ページの中にありますように、この場では当たり前の言葉なのでしょうけれども、小規模事業者にとってはキャリアパスや雇用管理区分といった表現は大変分かりづらいと。何となく分かるのだけれども、もう少し、例示をしていただくなど、表現の工夫をしていただきたいという声があります。
 また、これも例えばですけれども、12ページです。先ほど注のお話がありましたけれども、12ページの注を読みますと、句点が13ページの一番頭までで、文章が続いています。結論が何だったのかというところが大変分かりづらくて、そもそも注全体に何が書いてあるのかということからしますと、タイトル付けを細かくしていただく、例えば定年後の継続雇用なのだというタイトルをつけていただくと、小規模事業者にとっては、こういったガイドラインを見るということの活用にも通じると思いますので、そういった細かい配慮を頂き、中小規模の事業者にとっても分かりやすいガイドラインにしていただきたいと思っております。
○守島部会長 そのほかにありますか。
○梅田委員 私はたたき台の中で、「目的」の部分で2つ確認させていただければと思っております。
まず1点目としては、「目的」の文章はどちらかというとパート労働者と有期契約労働者を念頭に置いた文章になっている印象がかなり大きいと思っています。
 現実的に派遣労働者は間接雇用であるために、パート労働者や有期契約労働者以上に処遇の困難さを抱えているのが現状です。派遣労働者が抱えている処遇の困難さは、御案内のとおり、根本的には雇用者と使用者が分かれていることに起因しており、特にマーケットの中での派遣契約にその多くが縛られる点があります。その中で、有期派遣労働者の賃金は、同じような仕事をしていても、派遣先によって上がったり下がったりしている実態が日常であるのが現状です。
 こうした制限の中、派遣労働者は、雇用の安定、働き方に応じた福利厚生の充実、能力開発、キャリア形成等についても、困難さを抱えています。今回の改正法が、これまで幾度もなく見送られてきた派遣労働者の均等・均衡待遇に踏み込んだ改正であるからこそ、「目的」の部分に派遣固有の現状の問題についても記載をしていただきたい、という思いです。
 2点目は、先ほど秋田委員からもお話があった部分の「欧州からの示唆を得た」という部分です。法律に根拠を持つ指針の文章として、こうした記述が適当であるのか疑問を持つところです。指針を参考に労使で交渉を行う場面においても、検討過程のような文章については要らないのではないかなということで思っている次第です。以上です。
○守島部会長 ほかにありますか。
○吉清委員 指針の「目的」の箇所に関して、2つ追加で申し上げたいと思います。
 まず1点目は、3ページの中段以下のなお書きの下線部の「なお、短時間・有期雇用労働法第八条」以下の部分です。ここは先ほど御説明があったように、参議院附帯決議の三十三を受けて追記した文章であり、その後に、3ページの一番下から「さらに」という文章で参議院附帯決議の三十二を受けた文章が記載されております。これらの2つの文章は、「目的」の箇所にあるのがふさわしいのでしょうか。分かりやすさという観点で言うと、「目的」の中に入るのではなくて、その後の第2の「基本的考え方」の原案の後に紡がれたほうが、読み手あるいは使い手として理解しやすいのではないかというのが1つ目の指摘です。
 2点目は、附帯決議三十二に関する文章の記載についてです。附帯決議の三十二はもう少しシンプルに、正社員の待遇引下げは法の「趣旨に反するとともに、不利益変更法理にも抵触する可能性がある」と書かれているわけです。今、御提示いただいている原案を見ますと、4ページの1行目から8行目まで、不利益変更をする際の留意事項が書かれていたりだとか、4ページの「第2基本的考え方」の2行前、附帯決議では、「不利益変更法理に抵触する可能性がある」というものが、「望ましい対応とは言えない」というように、少しニュアンスが変わったような書かれ方をしており、読み手に誤解を与えたり、あるいは附帯決議の趣旨が正しく伝わらないと考えます。したがって、この附帯決議の三十二に関する所については、限りなく附帯決議に則した書き方にすべきであるというのが2つ目の指摘です。以上です。
○守島部会長 ありがとうございます。では、齋藤委員お願いいたします。
○齋藤委員 まず、1点目ですが、1ページの指針案の「目的」の記載です。ガイドライン案では、非正規雇用労働者について括弧書きで「有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者」と明記されているのですけれども、指針のたたき台では、2ページで、「短時間・有期雇用労働者等」と置き換えられてしまっています。梅田委員の派遣の記述の所の発言とも関連するかと思うのですけれども、「短時間・有期雇用労働者等」に派遣労働者も含まれるということであれば、指針の冒頭の「目的」の記載になりますので、しっかり「短時間・有期雇用労働者並びに派遣労働者」と記載すべきであると思います。
 もう1つは、4ページの下段のなお書き以降ですけれども、「本指針に原則となる考え方が示されていない待遇や、具体例に該当しない場合についても、不合理な待遇の相違などを解消する必要がある」と記載があるのですが、今回、指針案に記載されていない手当も多くあります。例えば、先ほど御説明のあった資料3-3の3ページですが、パート・有期法の第10条の努力義務の除外対象となる手当として、「別居手当」あるいは「子女教育手当」の例示がされていますが、同一労働同一賃金の指針案には、これら手当について何ら言及がありません。
 また、社会的に広く普及している「退職手当」や、現在の労働契約法第20条の裁判でも争われている「家族手当」等についての言及がないということも不自然であるのではないかと思っております。また、「上乗せ労災補償」についても言及があってしかるべきではないかと考えます。
 今回、全ての手当の考え方を整理して、問題とならない例・問題となる例を追記するということは難しいことは理解していますが、「目的」の部分で、例えば「退職手当」や「家族手当」等の本指針に原則となる考え方が示されていない待遇として例示するなどして、指針に記載されている以外の待遇も法の適用があることが分かるように工夫をしていただければと思います。以上です。
○守島部会長 ほかにありますか。
○鈴木委員 この度、一部最高裁の判示部分が盛り込まれたということに関連して、少しお話をさせていただければと思います。御案内のとおり、長澤運輸事件とハマキョウレックス事件は、いずれも改正前の法律に基づく司法判断ではありますけれども、改正法の解釈をする上でも実務的に有益な部分が多々あるのではないかと考えています。
 例えばですが、最高裁は不合理性の判断に関して、賃金項目の趣旨を個別に判断をしていくという原則を述べつつも、併せて、ある賃金項目の内容が他の賃金項目の内容を踏まえて決定される場合もあり得るということを述べております。また、その他の事情に関して最高裁は、職務内容及び変更の範囲、並びにそれらに関連する事項に限られるものではないということも述べています。さらに、均衡規定が違反となった場合のいわゆる民事的な効力についてですが、いわゆる補充効を否定する判示をしております。少なくともこうした点は大変重要な点でありますので、指針あるいは解釈例規等に、そういった点を明確に示していただくことを御検討いただければと思います。以上です。
○守島部会長 ほかにありますか。
○村上委員 今、鈴木委員からあった13ページの長澤運輸事件の最高裁判決を受けた記述の部分です。この記述については、最高裁の判決文を基に記載されていますが、まず非常に長く引用されています。こういった長い引用が分かりやすいのかどうかということや、短くしたら短くしたで意味が変わってしまうといった懸念もありますので、全体的な表現ぶりについては少し検討した上で、改めて意見として申し上げたいと思います。
 ただ、今回の最高裁判決によっては、先ほど鈴木委員から幾つかの指摘はありましたけれども、定年後再雇用の労働者についても労働契約法第20条、今回のパート・有期法では第8条が適用されるのだということは明確に言っております。この原則論は指針に記載すべきであると思います。
 もう1つは、先ほど鈴木委員が御指摘された補充効の問題についてです。指針は、法的効果を示す性格ではなく、どういう待遇差について何が問題となるのかならないのかということを行政としてまとめたものだと理解していますので、そこまで指針案で示すのは適当ではないと思っています。
○鈴木委員 村上委員の最後の御発言は、そのとおりだと思います。そういう意味で、解釈例規を含めて御検討というふうに申し上げたところです。現在の労働契約法第20条の解釈例規の中に、確か補充効を認めるような記述があったと思います。これは最高裁判決が出ましたので、その点を解釈例規で明確にしていただければという趣旨だということで、御理解を頂ければと思います。
○村上委員 今の点については、長澤運輸事件は労働契約法第20条の事件判決でもあって、今度のパート・有期法8条の判断ではないというところについても十分考慮して、解釈例規の記載は留意しておくべきだと思います。以上です。
○守島部会長 ほかにどなたかありますか。
○村上委員 まず、20ページの下段の「通勤手当」、「出張旅費」の部分です。この点は、ガイドライン案では、採用圏限定とされていました。しかし、公正な採用選考に関連して不適切な表現あるいは内容ではないかということで、指針案では表現ぶりを変えたたたき台が示されているわけですが、たたき台として示されている事例は、ガイドライン案の事例と意味が若干異なっているのではないかというのが1点です。
 また、たたき台では、一般の採用である通常の労働者に対しては、通勤交通費実費を全額支給する一方、短時間労働者に対しては、通勤手当の上限を設定して採用しているという前提が置かれていますが、この前提自体に問題があるのではないかと感じております。ハマキョウレックス事件でも、こうした通勤手当の支給差、支払いに上限を設ける設けないという部分が違法とされたのではないかと思っています。この部分の「問題とならない例」の表現ぶりはもう少し御検討いただきたいと思います。
 続いて、9ページの「基本給」の一番上の「問題となる例の部分」の確認です。この記述はガイドライン案から内容は変わっていませんが、能力又は経験に応じて支給する場合の問題となる例の解釈についてです。
 具体的には、例えばエンジニアであった正社員がジョブローテーションで営業職に異動となるというケースはよくあるのですが、この正社員は営業経験はゼロですけれども、基本給はエンジニア時代を引き継いで算定することが実務上では通常よくあります。こういった職場で、短時間・有期契約労働者の基本給も能力、経験に応じて支給している場合でその正社員との待遇差を考える際に、営業としての経験はないもののエンジニア時代の知識やマネジメントなどの経験も考慮要素になるという理解でよいのか。この点を質問したいと思います。
○守島部会長 お答えになりますか。
○松永有期・短時間労働課長 今の御質問の関係で申し上げると、今のは9ページの事例ですが、現在の業務に関連性を持つか否かということについては、例えば、これまでの企業におけるマネジメントをしてきたという経験が現在の職務に関連しているという形で、広く捉えるということができるのではないかという考えで、このような事例を載せているということです。
○吉清委員 指針の中の個別の項目について少し意見を申し上げます。今、村上委員から「基本給」の話がありましたが、指針案の10ページの4行目から、「問題にならない例」としてある、ロの事例の中で、待遇上の「ペナルティ」という言い回しが出てまいります。目標値を達成していない場合の「ペナルティ」というと、一般的には労基法に触れるような減給、自腹、罰金をいたずらに想起させかねないと懸念しています。この点は、例えば、「達成しない場合での相応の低い評価、評点、それに応じた処遇等」というように、「ペナルティ」という言葉を使わない言い回しとすべきであると思います。
 「ペナルティ」という表現は、「基本給」のほかに15ページの「賞与」の部分も同様に「ペナルティ」という表現があります。ここも、例えば、「評価、評点」という言い方で誤解、曲解されないような文言を検討いただきたいと思います。
 続いて「賞与」に関連して、もう一点発言いたします。15ページの「賞与」の「問題とならない例」に関するところなのですが、この文章は、目標未達の場合のペナルティが課せられているかどうかという「制度や仕組みがあるか」によって、賞与の有り無しがあってもいいと、一見、見て取れます。7行目に、「待遇上のペナルティが課されていないXに対して賞与を支給しているが、その待遇上のペナルティを課されていないYやZに対しては、その見合いの範囲で賞与を支給していないことが問題にならない」と書いてあります。目標や成果などの評定制度の有り無しによって賞与の支給水準に差があるということについては理解できるものの、原案の表現は、「制度の有り無しによって短時間・有期雇用労働者には賞与を支給せずゼロでも良い」と見て取れるため趣旨を行き過ぎているのではないかと感じています。この表現も御検討いただきたいと思います。
 最後に、「賞与」について一点申し上げたいと思います。原案では今、「賞与」は「手当」という項目の中で「(1)賞与」という形で触れられています。しかし、「賞与」以外に記載されている手当と、世の中で認識されている「賞与」の性質は大きく異なることはもちろん、実務上も他の手当と同様には考慮されません。したがって、指針の項目立ては、「基本給」、「賞与」、「手当」と分けて書いた方が実務になじむと思いますので、御検討いただきたいと思います。
○守島部会長 ありがとうございました。ほかに何かございますか。
○武田委員 本日は御説明いただきまして、どうもありがとうございました。意見と質問をいたします。まず、意見としては、同一労働同一賃金の考え方や慣習をしっかり広めて、実現させていくことは非常に重要であると思います。一方で、それを実現させるためには、現実的な説明の方法や現実的な考え方を分かりやすく示していくことをしないと、あるいは基準を厳格に設定しすぎてしまうと、かえって現場の運用が回らない可能性もあるかと考えております。
 例えば、本日、お示しいただいたような比較対象となる通常の労働者の考え方については、先ほども御意見が出ましたが、事例をしっかり示したほうがいいと思います。それに基づき幅を持って検討できる余地を持って現場の運用として進められるようにすることも現実的には重要ではないかと考えます。両方を追い求める、つまり、分かりやすくするということと、現場で現実的に回るようにするという非常に難しい両立ですが、改めて、そこをお願いしたいと思います。
 次に質問ですが、資料3-2の3ページに、比較対象となる通常の労働者の考え方と載っております。ここには、1~5ポツあり、その5ポツの順に近いと判断することを基本とするとあります。このように幅を持たせて通常の労働者の考え方を例示いただいたのはいいと思います。例えば、2つ目のポチに、「職務の内容は同一であるが、職務の内容及び配置の変更の範囲は同一でない通常の労働者」とあります。それから、3つ目に、「職務の内容のうち業務の内容、責任の程度のいずれかが同一である通常の労働者」とあります。
 つまり、職務の内容は一緒なのですが、例えば、配置の変更、責任の度合が異なっている人を基準にしてよいということです。当然ながら、責任の違いは非常に大きいですし、配置転換の有る無しは本当に大きいと思います。あくまでも、これは全く一緒という方がいらっしゃらない場合に、参考値としてその方を近いと判断し、その上で、決定においてその部分の差異は認める。つまり、合理的に配置の変更や責任の程度の違いがある人と、その部分において差は発生するという点を確認させていただきたかったので、質問いたします。
 また、そういうことも含めて、それをどこかに書いていただくのがいいと考えます。そう考えると、6ページにある待遇の相違の理由が大事になってくると思います。同一の実施基準の下で違いが生じている理由を説明することが考えられるという点を含めて記述しておくということも一案かと思います。あるいは、あらかじめ、先ほどの基準にその点をしっかり明記するほうが望ましいかもしれません。その点について、御回答いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○守島部会長 3-2に入ってしまったようなのですが、今は3-1をやっています。
○武田委員 すみません。失礼しました。
○守島部会長 分かりました。お答えいただく前に、まず、3-1に関して、どなたか御質問等ございましたらお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 武田委員の御質問については、後ほどお話させていただきます。3-1の関係について、るる御指摘いただきました。最初のほうにもありましたが、まず、表記をできるだけ分かりやすくという御指摘を多々頂いております。一方で、法令に基づく指針で官報に載せるということで、できるだけ法令用語に沿った形で厳密に書いていかなければいけないという制約もありますので、頂いた御指摘についてはできる限り考えながら、ただ、一方で法令用語、法令にのっとった記載をしなければいけないという制約の中で、どういうことができるのかということを考えたいと思っております。
 こういうことも盛り込むべきだという御指摘等を頂いております。頂いた御意見を整理させていただいた上で、ただ、どういうものを指針という形に位置付け、どういうものを通達という形に位置付けるという整理も必要かと思っております。そういうところも含めて、頂いた御意見について検討させていただけないかと思っております。
 あと、個別に頂いているところについて幾つかお話させていただければと思います。まず、同一労働同一賃金という考え方です。これは、冒頭のガイドライン案の説明で申し上げましたが、2ページで同一労働同一賃金というものはこういうものであるということで、「同一の事業主における通常の労働者と短時間・有期雇用労働者等との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱い等の解消を目指すものである」ということははっきり書かせていただきました。
 秋田委員等から御指摘いただいている同一労働同一賃金という表記の問題です。そこについてどういう形で整理できるかということはありますが、少なくとも、我々としてここを考えていくのは、今申し上げた考え方であるということは申し上げさせていただきたいと思っております。
 あと、目的に関して頂いたところで、欧州の事例等々については記載するということですが、逆にここで言っている部分については、欧州の制度をそのまま取り入れるということではなくて、我が国の労働市場の実態にも合うように考慮した制度を導入するということが、ここの部分に書かれているのかと思っております。今、いろいろ御意見を頂いておりますが、同一労働同一賃金の議論があり、ガイドライン案の公表をしてから2年たっております。まだ同じ仕事であれば同じ賃金にしなければならないとか、欧州のような職務給の原則の導入を目指すものだという誤解も多いということが現状です。ここの部分については、そういう誤解を解いていくという意味でも、一定の意味のある記載なのかと思い記載を残しているところです。
 それから、3、4ページの附帯決議の正社員の引下げに関する記載について、ここで「労使で合意することなく通常の労働者の待遇を引き下げることは、望ましい対応とはいえない」という書き方をしていることで、附帯決議による「法改正の趣旨に反し」とは、違うトーンではないかというような御指摘があったかと思います。法改正という形で表記するかどうかということで考えたわけです。法改正は過去にもあり今後もあり得るという中で、「法改正の趣旨に反する」という表記をすると、将来、どの法改正を指しているのか紛わしくなるのかということで、その法改正という文言を用いない形で記載するというときに、考えた表記がこの表記です。国会答弁でも申し上げていた文言を記載しているということです。
 それから、事例の関係で頂いたもので、9ページの基本給の問題となる例という所で、現在の業務に関連性を持たないというところについては、先ほど御指摘いただいた部分、これは先ほども申し上げたように、現在の業務との関連性は広く捉えることができるものと考えているところです。
 あと、12ページから、注の記載について御指摘いただきました。注の記載の内容は、指針に係る原則となる考え方、具体例を補完するものと考えております。この注という形で記載することが適当と考えております。この注については、正規、非正規の間で賃金の決定基準、ルールが異なるということが問題となるのは主に基本給であるということで、この場所に記載しております。ここの指針の記載は、あくまでも正規と非正規との間の賃金の決定基準が同じである場合ということを指すということを、明確にしてほしいという御趣旨だと思います。それもどういう形でお示しできるかということについては検討させていただければと思っております。
 その次の賞与の部分についてです。賞与の手当について別立てにすべきではないかという御指摘を頂いたところです。ここについては、どういう形で全体の項目立てを整理するのかというところとの兼ね合いかと思っております。そこの項目の立て方については、精査させていただければと思っております。
 それから、齋藤委員から頂いた御意見についてです。どういう事例を載せていくかということで、後で議論していただく省令の中では、子女教育手当が記載されていながら、ガイドラインにその辺りの記載がないというところについてです。まず、パート法10条の関係です。こちらの改正省令は、努力義務の対象として職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外のものを対象から外すということで、職務に関連するか否かについては、個別の待遇、手当の性質、目的に照らして判断するということで、個々に見て職務の内容に密接に関連するものであれば努力義務の対象になり、そうでないものは対象から外し、その基準を示すという形で、ここではその例として、手当の名前を示したというものです。
 一方で、ガイドラインに記載するということについては、ガイドラインの場合、待遇の性質、目的、先ほど申し上げた子女教育手当や家族手当等々の省令で出てきた事例を含めて多様なものがあると考えております。そういう多様なものについては、一律に原則となる考え方を示すことはなかなか難しいのではないかということで、記載していないということです。ガイドラインと省令の記載については、それぞれ明らかにしようとする内容が異なるというところで、具体的に書いているものと書いていないものがあると御理解いただければと思っております。
 その上で、もっといろいろな事例をガイドラインに記載すべきという御意見を頂いております。ただ、原則となる考え方を記載し、問題となる例、ならない例を記載する。皆様方にコンセンサスが得られる事例を書くというのもなかなか難しい作業です。もし、こういうものを追加すべきという具体的な御提案を併せて頂いた上で、この場で御議論いただければと思っております。頂いた御意見の全てではありませんが、我々のたたき台として思っていた考え方は、今、申し上げたとおりです。
○吉村多様な働き方推進室長 少し補足いたします。1点目は、ガイドラインで使っている用語が分かりにくい、あるいは、比較対象労働者が誰かという辺りが分かりにくいという御意見があったかと思っております。先ほど課長からも説明がありましたが、ガイドラインのたたき台が法律に基づく告示ということで、ある程度使える用語や構文に制約があるということで、それにのっとった形で作っていくと、どうしてもこういう作りになってしまいます。文章が長い、正確に書くために長くなってしまい分かりにくいということがありますので、この中身については、ガイドラインが固まった後で別途分かりやすい資料を作っていく等、周知を工夫させていただきたいと思っております。
 それから、齋藤委員からの御意見だったかと思うのですが、1ページのガイドライン案の所の非正規雇用労働者の中に有期・パート・派遣の三者が入っているのに、今回のたたき台では、確か、短時間・有期雇用労働者等という形で丸められているのではないかというお話がありました。たたき台については、5ページに第3の「定義」という部分を作っており、(4)で短時間・有期雇用労働者等は、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者という形で、明示的に派遣の方は入っているということにしております。ただ、少し後ろのほうに定義の場所を移したということでここに来ておりますが、言っている内容として、ガイドラインの中に書いている有期・パート・派遣の三者の方が入っているということは変えていないつもりです。
○守島部会長 1について、山田委員からお願いいたします。
○山田委員 すみません。お移りする前に。個別について、14、15ページの賞与の所です。武田委員が先ほどおっしゃったように、やはり、分かりやすさということは例示していくときには大事だと思います。賞与に関しては、恐らく、かなり本格的にやっていくというか、賞与に関して非正規の方々にお支払いしていくということになると、これまでそういうケースがなかったこともあり、それなりの影響があると思うので、そこの解釈をもう少し分かりやすくしたほうがいいかという問題意識です。
 というのは、14ページの賞与について、会社の業績等への貢献に応じた支給という表現があります。ここに関して、専門家等のこれまで出た解釈を見ていても、これに対して評価が分かれているというのでしょうか、もともと賞与は業績に応じたものという性格があるので、基本的に賞与に関しては非正規に関しても特別な事情がない限り支払うべきだというメッセージだという捉え方と、賞与には賃金の後払い、あるいは、勤労意欲の向上のためということで必ずしも過去の実績と連動していない、ですから、ここに関しては、余り影響がないのだという解釈をしている人と分かれているような印象を持っています。そこはどのように考えていらっしゃるのかということです。
 それと、問題となる例が2つ上がっています。基本的には、ここでは業績に応じた支給をしているということで支払うということになるのですが、通常の労働者と同一の業績の場合は、同一の支給をしていない場合は問題だと言っているわけです。ここの同一という意味合いがやや曖昧というのでしょうか。これは裁判例でもそういうケースがあると思うのですが、例えば、正社員と非正社員では責任や人材活用の在り方が違うので、普通、賞与は基本給に対して何か月分と付けるわけですが、その何か月分を変えていいのか、あるいは、それを変えては駄目なのかということをどのように解釈していくのか。
 それから、ロの所を直接読むと、(問題となるケースとして)正社員は職務内容に関係なく全て出しているのだけれど、一方、非正規というだけで払わないということになっています。これをそのまま取ると、基本的に非正規の方に関して払うべきだというメッセージになるのです。多様な解釈ができる形になっているのではないかと思います。もともとの意味合いをどのように考えていらっしゃるのかということを教えていただきたいと思います。
○守島部会長 松永課長お願いします。
○松永有期・短時間労働課長 今の賞与の部分ですけれども、確かに賞与は、ここは業績に応じて支払う場合の形で書いておりますけれども、それ以外、賃金の後払いとか、勤労奨励のような側面もあることは事実であろうと思います。ただ、ここにおいてはあくまでもこの賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する場合の取扱いということで書いているもので、ここの賞与についてはそういうものについての考え方であり、事例であるという形です。
○山田委員 後払いとなるものに関しては除外するということですね。
○松永有期・短時間労働課長 そこの部分を考慮した記載ではないということで御理解いただければと思っております。そういうことなので2つ目にありました問題となる例のイの、同一の支給についても、あくまでもその業績で支給するという形で決めている部分についての取扱いの事例ということで読んでいただければと思っております。
 あと、この非正規の方にも支給すべきかどうかのところについては、それぞれの手当で会社によってその賞与の考え方があろうかと思いますけれども、その考え方にのっとって考えた場合に、それが通常の者とパートなり有期の方にも当てはまるものであれば、そこは同じような取扱いをすべきだろうという考え方になろうかと思います。仮にそこの取扱いを違うものにするということであれば、それが職務の内容等々に照らして、説明が付くかどうかといったところが問われることになっていくと考えております。
○山田委員 そのようにおっしゃると、この問題となる事例のどの解釈が、これは直接読むと、要は在籍しているということに対して、正規だけ払って、非正規だけ払わないのは問題だということになるので、そうすると先ほどおっしゃった解釈のロはどのように説明していったらいいのか、ちょっと分かりづらいなという印象を持つのです。
○松永有期・短時間労働課長 ロの場合は、職務の内容や貢献等にかかわらず何らかの賞与を払っているということであれば、それについては短時間・有期雇用労働者の方についてもやはり支給されるべきであろうというのが、ここでの問題となる事例の考え方かと思っております。
○守島部会長 岩村委員お願いします。
○岩村委員 今日はいろいろ労使の皆様の御意見等も聞かせていただいて大変勉強になりました。若干のコメントですが、第一に今日の指針案については先ほど課長からも説明がありましたように、これは法令に基づいて書くものだとすると、どうしても縛りがあって、厳密に書かなくてはいけないところがあるので、ある程度難しい書き方になってしまうのはやむを得ないのかなと思っています。先ほど室長からもお話がありましたように、これに基づいて一般の事業主の皆様、あるいは労働者の皆様、組合の方々にとって分かりやすいパンフレットなり何なりを工夫していただくということがポイントかなと思っておりますので、そこは是非お願いをしたいと思います。
 それから、この指針自体はあくまでも法律に基づいて大臣が作るものですけれども、それ自体としては行政指導の根拠になるという性格のもので、こういっては失礼ですが、そのような性格のものでしかないので、これが裁判所を拘束するわけではないという点は留意しておく必要があるかなと思っています。そういう点では、先ほどちょっと民事効の話がありましたけれども、指針の中で民事効まで踏み込んで書くのはやめたほうがいいだろうと思っております。
 それと同時に具体例をいろいろ挙げていただいていますけれども、ある程度幾つかの分かりやすいパターンに分けて整理をして書いていただいているということかなと思っていまして、そういう意味では、今の賞与をめぐる質疑応答の中でも出てきましたけれども、現実には、ここの指針の書いてあるとおりにきれいに賞与が性格付けられているというわけではないので、実際上の適用となると、それぞれのケースバイケースで判断を、行政指導を担当する側が判断をしながら行っていくことになるでしょうし、実際もし仮に訴訟となれば、裁判所が様々な要素を考慮しながら賞与の性質決定を行った上でするということに、どうしてもならざるを得ないかなと思っています。
 そういう点で更に最後に申し上げますと、現在のところは労働契約法第20条の条文、それから現在のパート法の第8条ですが、訴訟の例も非常に少なく、裁判所の判決も余り多くない中で、事例を増やすのはちょっと避けたほうがいいだろうと私は思っています。確かにハマキョウレックス事件の最高裁判決の中で幾つかの手当の例に触れていますけれども、それもあの事例の中ではという話になってしまうので、抽象的に例えば何とか手当で最高裁がこう言っているからというように取り上げるのは、やはり避けたほうがいいだろうと思っているところです。今後、いろいろな例が裁判など、あるいは労働審判などといったものも含めて蓄積していくでしょうから、それに応じて適宜事例としてはっきりしたものを付け加えていくとか、そうした作業を考えていくことなのかなと、今のところは思っているところです。
 その他いろいろ今日、労使の方から御指摘がありましたので、その点については事務局で引き取っていただいて、御検討いただければよろしいのかなと思っております。
○守島部会長 吉清委員お願いします。
○吉清委員 岩村委員のご発言に関連して意見を申し上げたいと思います。先ほど指針は典型的なパターンに分けて整理しているとの説明がありました。その点に若干関係することですけれども、17ページ以降に様々な手当の記載がありまして、17ページ以降からは「特殊作業手当」をはじめとして、個別具体的な手当の表記があります。これらについては、「基本給」や「賞与」の表記と少し違って、「何とかに応じて支払われる場合」といったようなパターンに分けられているわけではなくて、例えば、特殊作業手当を払う場合はこうです、という書き方になっています。手当のこうした記載は前提条件や支給決定基準の違いに関係なく、通常の労働者に手当を支給している場合は、短時間・有期契約労働者の方々についても、自動的にとは言いませんけれども、その手当の性質や目的に照らして合致するのであれば、前提条件や支給決定基準にかかわらず支給するものであると理解して良いのか。この点が質問の1点目です。
 2点目は、先ほど松永課長から御説明があった所について、加えて少し意見を申し上げたいと思います。冒頭の「目的」の章の4ページ、附帯決議の三十二に関する御説明を聞きました。そこで、附帯決議の三十二の中の「法改正の趣旨に反するとともに」の所についての御説明を聞きまして、そこについては理解したつもりですが、その後の労働条件の不利益変更法理にも抵触する可能性があるということを、指針にきちんと入れていただきたいというのが先ほどの私の発言の趣旨です。ここのパラグラフと1つ前の附帯決議三十三のパラグラフを併せて、「基本的考え方」の所に移してはどうかという意見も申し上げたことも併せて検討いただきたいと思います。
○岩村委員 時間の関係があるでしょうけれども、すみません、2点。1点は先ほど申し上げたように、これはいろいろ例を挙げて、ある意味パターン化してということになっていますので、いろいろなケースバイケースの状況が、実は指針の性格としてこの中に取り入れられていないのですね。私の理解では、様々な状況を見て、具体的にこの手当はどういうものなのかを判断する際に、1つのポイントになるのは、この後で議論することになっている説明の所の話だろうと。つまり使用者がどういう説明をしていたかというのが、そういう意味では手当なら手当の性質決定、内容が、趣旨がどういうものかを決めるに当たっての1つの重要な要素になるのだろうと思っています。具体的な話になっていくとそういうことになると、それと併せての理解だろうと考えています。
 2番目に、今ちょっとお話になった吉清委員からのお話ですが、国会の附帯決議なのでということはありますけれども、労働条件の不利益変更法理といった場合には、個別の労働者の同意がなければできないということは書いてあるのですが、他方で一方的変更であっても合理的であればできるとなっているので、したがって、今日のお示しいただいているこの文案でおかしいというように私はならないだろうなと思っております。
○守島部会長 今の点はお答えになりますか。
○松永有期・短時間労働課長 岩村先生からフォローもしていただきましてありがとうございます。あともう一点、書く位置について、ここも御意見とか頂いて考えたいと思いますけれども、今、第1に入れていた、確かに御指摘のあったように、そこは解釈の考え方に関する部分である、そういう記載であることも間違いないとは思います。一方で、そういう解釈を踏まえて、事業主としてこういう取組が求められるということも含んだ意味合いでの記載でもあるかなと思いまして、たたき台としては第1のほうに入れたということです。そうした観点も踏まえて、どちらに入れるべきかというようなことも、また御議論いただければと思います。
○守島部会長 松浦委員。
○松浦委員 手短に1点、「同一労働同一賃金」の言葉については、できればないほうが分かりやすいと思いますが、入れる場合にはその定義が非常に重要になります。だからこそ定義を最初に書いていただいているのだと思うのですが、2ページの「同一労働同一賃金は、同一の事業主における通常の労働者と短時間・有期労働者等との間の不合理と認められる」うんぬんの中の、「同一の事業主における」の部分が気になります。この部分にこそ注書きが必要なのではないでしょうか。例えば派遣の場合は派遣先の労働者とも比較されるわけですから、雇用関係という意味では別の事業主になります。つまり、この「同一の事業主における」という言い方が後々よく混乱のもとになるのではないかなと危惧しておりますので、もう少し整理をして頂き、注書き等に書き込んでいただくことを御検討いただけないかという意見です。派遣に限らず、出向の場合はどうするのか、等いろいろなケースが考えられますので、そういうことも含めて今後御検討いただければというお願いです。
○松永有期・短時間労働課長 御指摘の所はまた精査させていただきたいと思います。一応ここで「同一の事業主における」という書き方をしたのは、ここは、派遣労働者も含めた記載をすることを考えますと、「同一の事業主に雇用される通常の労働者」と書いてしまうと、派遣のケースが読めなくなるため、「おける」というような表記にしてたたき台を作っております。御指摘の点もどうするか考えたいと思います。
○守島部会長 3-1ですね、分かりました。
○鈴木委員 岩村先生がおっしゃられたガイドラインが行政指導の根拠になるということについて、確認をさせていただきたいと思います。6月の建議において、均衡規定については、雇用形態が非正規労働者であることを理由とする不支給などの解釈が明確な場合に、報告、聴取、助言、指導、勧告の対象とすることが適当ということでとりまとめを行いました。先ほど先生がおっしゃられたように、結構例の中でもケースは様々であり、更に深掘りをしないと本当に不合理かどうかは分からないというようなことだと思うのです。そこの解釈が法改正によって変わってしまったのかどうか、私どもはちょっと変わってないということでお願いしたいと思っておりますが、事務局か岩村先生に確認させていただきたいと思います。
○岩村委員 私の解釈が行政当局を拘束するということではないので、何とも言えませんから、事務局のほうでお願いしたほうがいいと思います。
○松永有期・短時間労働課長 我々の方で考えているのは、建議のとおり明確な違反の場合のみが対象になるという考え方は変えていないということです。ガイドラインの問題となる例に明確に合致するようなケースがあれば、まずは話を聞いてというようなことはあるかもしれませんけれども、その判断が微妙なものについては、やはりグレーゾーンということであろうかと思いますので、そこまで至るようなケースについて、そこは対象にしないというのは、その建議の考え方と変わるものではないと御理解いただければと思います。
○鈴木委員 ありがとうございます。
○守島部会長 3-1について、残りどなたか。村上委員お願いします。
○村上委員 先ほど齋藤委員からの意見に対して回答を頂いた部分なのですが、4ページの「基本的考え方」の部分で、先ほどの御説明は、10条の努力義務の除外する手当として規定している手当の部分に書いてあるからといって、同一労働同一賃金の指針の対象にならないわけではないという御説明だったかと理解しました。しかし、私どもが申し上げているのは、「本指針に原則となる考え方が示されていない待遇」について例示を加えてはどうかということです。2年前の12月にガイドライン案を公表されたときに、退職手当や家族手当はどうなるのかという声が大変多く出されたところです。そうしたこともありますので、「退職手当など」と例示をしていただきたいということなのです。「退職手当」について今から「基本的な考え方」を示したり、「問題となる事例」、「問題とならない事例」を示していただきたいという趣旨ではなく、「基本的考え方」の部分に例示をしていただきたいという趣旨ですので、是非御検討いただきたいと思っています。
○松永有期・短時間労働課長 検討いたします。
○守島部会長 では、3-1については大体このぐらいでよろしいですか。また次回戻ってきても全然構わないですので。あまり時間はないのですが、3-2に先ほど武田委員から御意見、御質問がありましたので、それについてまず、お答えいただけますでしょうか。
○松永有期・短時間労働課長 3-2の資料の3ページ、比較対象となる通常の労働者の選定の考え方の所での武田委員からの御質問です。御指摘のとおり基本的に職務内容が同じで、職務内容・配置の変更の範囲も同じということであれば、差別的取扱いをしてはならない、そういう形になるということですが、そこから下の、職務内容は同じだけれども、職務内容・配置の変更の範囲が違うとか、更にその下であれば、その違いに応じた待遇差は当然あるという前提で、そういう方々と比較をした待遇差とかその理由とかということを説明いただくというのが、ここでの説明義務の中身であろうかと思っています。したがいまして、この2ポツ目から下の方々を比較対象として選んで説明するというようなケースにおいては、当然そういう差があって、それなりにその差の理由についての説明をしていただくということが前提となる、そういう選び方であると御理解いただければと思います。
○守島部会長 では、3-2についての質問とかありますか。
○梅田委員 3-2の対応について、先ほど武田委員からも触れられたかと思います。また、事務局から若干説明を頂いたと思います。その関係についてお話させていただければと思います。具体的には説明義務の対象となる最も近い通常の労働者に関連して、説明を受けたパート労働者と有期雇用労働者が、その比較対象に納得できない場合についてです。例えば、事業主から、最も近いとは言えない労働者との説明を受けた場合や、最も近いと思われる通常の労働者が1人いたにもかかわらず、標準的な通常の労働者のモデルを比較対象者と説明を受けた場合はどうなるのか、ということです。この説明対象に納得がいかない場合については、国会でも議論になっており、「都道府県労働局に対して、事業主の指導などを求めることができる」「事業主に対して特定の待遇の差について、任意で説明することが求めることができる」というような答弁があったと思います。こうした説明義務の比較対象者が納得できない場合の対応についても、指針や少なくとも通達で示すべきであると思います。
○守島部会長 お答えになりますか。
○松永有期・短時間労働課長 比較対象者の選定の仕方については今御説明させていただいたような提案でもありますけれども、いずれにせよ、どうしてその方を選定したのかということを含めて、それは事業主が判断して御説明いただくということが基本になるかと思っています。誰を選定するのかというところについて、仮にそれが紛争になるということであれば、労働局でということもあろうかと思います。いずれにしてもそこの判断にして、その方とだけしか争えないということではなくて、最終的に紛争になるのは、誰との比較で争うかは労働者が選べることになろうかと思います。説明義務としての対象は、一義的には事業主の御判断ということで考えているところです。
○守島部会長 よろしいですか。ほかの方、3-2について。
○齋藤委員 7ページ目の説明の方法について、1点意見を申し上げたいと思います。国会での議論を踏まえということになるかと思いますが、説明の方法については、資料に記載のとおり、「資料を活用の上、口頭により説明することが基本」となっております。しかし、「資料の活用」としてしまうと、説明の際に資料が提示されて、説明が終わった際にまた資料が回収され、説明を受けた者に何も残らないというリスクもあるのではないかと思います。パート・有期雇用労働者の方々が、資料をもとに通常の労働者との待遇の差をしっかり理解をして、最終的に待遇差に疑義がある場合には裁判に訴え出るということを可能にすることが重要かと思いますので、その際には「資料の活用」では不十分なのではないかと思っています。そう考えると、「資料の交付」とすべきであると思います。「資料の交付」を基本とすべきということを意見としたいと思います。
○及川委員 小規模の事業者の意見を聞きますと、ここの説明をしていくというところが最大の関心事の1つです。今回のガイドラインに含めて、中小企業にとってはハイライトの部分だと認識をしています。そうした中できちんと説明をしていく、従業員とコミュニケーションを図ることを推進したいという観点からも、あまり事業者が萎縮しないように、柔軟な対応をお願いしたいと思っています。活用する資料ということで、私はこのお示しいただいた原案でよろしいかと考えています。
○守島部会長 ほかにどなたか。村上委員。
○村上委員 先ほど議論がありましたように、この説明義務というのは、大変重要な規定だと思っています。使用者には説明義務をきちんと果たしていただくということが基本ですけれども、待遇説明を十分果たさなかった場合の効果の点についても、国会の中では繰り返し議論がされているところです。その中では大臣も答弁されていますけれども、待遇差について十分な説明をしなかったと認められる場合には、その事実、そして、していなかったという事実もその他の事情に含まれ、不合理性を基礎付ける事情として司法判断において考慮されるものと考えていると答弁されているところです。国会で再三議論にもなって答弁があったということもありますので、説明義務が十分に果たされなかった場合は、不合理性を基礎付ける事情となるということを、パート・有期指針の中で明記をしていただきたいということがあります。以上、意見です。
○守島部会長 ほかにどなたか。大丈夫ですか。まだまだ続くと思いますけれども、3-3が全く残っていますし、3-2も十分議論していないので、また次回に続けたいと思います。そういうことで今回は一応これで打ち切らせていただき、本日の議論はこれまでとさせていただきます。最後に、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○松永有期・短時間労働課長 次回の同一労働同一賃金部会は、9月10日月曜日16時~18時の予定です。場所は決まり次第御連絡させていただきます。以上です。
○守島部会長 これをもちまして、第9回同一労働同一賃金部会を終了いたします。議事録の署名委員として、労働者代表の梅田委員、使用者代表の田代委員、よろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、どうも皆様方ありがとうございました。
 

 

(了)

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