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2017年8月2日 第16回新たな社会的養育の在り方に関する検討会

子ども家庭局家庭福祉課

○日時

平成29年8月2日(水)11:00~12:30


○場所

中央合同庁舎第5号館厚生労働省省議室(9階)


○出席者

構成員

奥山座長 松本座長代理 相澤構成員 井上構成員
加賀美構成員 上鹿渡構成員 塩田構成員 伊達構成員
西澤構成員 林構成員 藤林構成員

事務局

吉田子ども家庭局長 山本内閣官房内閣審議官 長田総務課長
成松家庭福祉課長 宮腰虐待対策推進室長

○議題

(1)新しい社会的養育ビジョン(案)について
(2)その他

○議事

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 定刻となりましたので、ただいまから「第16回新たな社会的養育の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、山縣構成員から御欠席の御連絡をいただいております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。

 配付資料といたしましては、議事次第の後ろに資料1「新しい社会的養育ビジョン(8/2案)」、資料2は構成員の先生に御提出いただきました資料ということで、藤林構成員と相澤構成員から御提出していただいた資料を配付させていただいております。

 机上配付の資料といたしまして、相澤構成員からの意見と書かれた資料を配付させていただいております。

 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。

 それでは、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。

 これより先の議事は奥山座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○奥山座長

 皆様、お忙しい中お集まりいただいて、ありがとうございます。

 本日、この報告書の最終案を決定する方向で議論をしていきたいと思うのですけれども、1時間半という非常に短い時間でございますので、前回からの積み残しの分を、まずお話をさせていただき、その後、構成員からの提出資料について御説明いただいた後で、できるだけ1時間以内で議論を終了させたいと思っておりますので、御協力よろしくお願いいたします。

 では、まず「新しい社会的養育ビジョン(8/2案)」をあけていただきたいと思います。目次をつくっていただいて、目次を見て、結構書いたのだなということがよくわかりました。

 まず、前回の松本座長代理からの御指摘もありまして、4ページです。この子どもを移行しなければならないときに、子どもの意向を尊重するのだということをここに入れるということで、ただ、十分な説明、その前からのプロセスがわかる説明が必要だという御意見がありましたので、それも含めてここに書かれております。これに関して、何か御意見はございますか。

 よろしければ、この修正はこの形にしたいと思います。

 8ページ、前回までの議論の中で、養子縁組という割と漠然としたことが書いてあったのですけれども、特別養子縁組の意義が結構大きいだろうということで、きちんと「特別養子縁組」という言葉をこの中に入れていこうという話でした。これで「中でも特別養子縁組」とか「中でも永続的解決を保障する特別養子縁組」など、そういう形で、特別養子縁組が非常に重要なのだということを入れていただいていますし、10ページは「特別養子縁組の充実が求められており」という形で修正されております。ここの部分はよろしいでしょうか。

 では、先に行かせていただきます。23ページ、一時保護を行う場に関してですけれども、先日の会議で藤林構成員から、子どもの権利制限に当たるということに対してどう対処すべきかという御説明がありまして、少し議論をさせていただきました。その結果をこのような形で修正していただいていますが、ここのところはよろしいでしょうか。

 藤林先生から追加はありますか。

 

○藤林構成員

 特に、これでいいです。

 

○奥山座長

 ここでは、仕組みをこれからつくるという形での修文になっています。

 

○藤林構成員

 こういう問題があるということをみんな意識しながら、仕組みについて考えていこうということでいいかと思います。

 

○奥山座長

 何か御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 続きまして、28ページ、これは先ほどのところをそのままここに入れ込んだ形になります。サマリーで書かれたものです。

 伊達先生、どうぞ。

 

○伊達構成員

 今のことと関連しますけれども、後ほどで結構ですが、38ページの移行期のケアの表現の仕方がこの趣旨と若干違っているように思われますので、そこの部分の手直しが必要ではないかと思います。38ページだと、限られた期間の代替養育は短期だということになってしまうと、たびたび措置変なり住む場所が変わってしまうことが避けられなくなってしまうのですけれども、そのことに対して、かなりまずいということをはっきりと示す表現にすべきだと思います。これだと逆に「代替養育は永続的解決ではなく限られた期間の養育である」ということで「従って、ケアを受ける場所の移行は存在する場合が多い」という、ちょっとわからない書き方になっているのです。例えば「従って、ケアを受ける場所が頻回になる危惧がある」ということで、そこの問題になるところをはっきりと示したほうがいいと思います。そうしないと、子どもたちが転々としてしまう可能性が大きくなってしまうと思います。

 

○奥山座長

 代替養育からの永続的解決のときに、必ずしも生活の場が新たな生活の場に移らない場合もあるのだと思うのです。家庭に戻るとかです。あるいは何らかの永続的解決のための生活の場の移行というのは、どうしても出てきてしまう可能性があるということをここで言っているので、「移行は存在する可能性がある」みたいな形ですか。頻回になるかどうかはまた別問題だと思うのです。

 

○伊達構成員

 「あるので、特に配慮が必要である」とか。

 

○奥山座長

 わかりました。「移行が多くなる可能性があるので」ということですね。「従って」と。

 そこのところはよろしいでしょうか。

 事務局、どうぞ。

 

○田野家庭福祉課課長補佐

 念のために今のところの確認を。

 

○奥山座長

 ちょっと前後を見て、後で詳しく直したいと思います。今ここで言うと間違ってしまう危険性があるので。

 

○田野家庭福祉課課長補佐

 わかりました。

 

○奥山座長

 また伊達構成員にもきちんとお伺いしますけれども、意向としては、皆さん、よろしいでしょうか。細かい文言は後で前後を見ながら修正したいと思います。

 そうしましたら、36ページです。この前お約束しましたように、施設養育でのあり方を入れるということで、6)です。5)が長いことは長いので、その中に多少は入っているのですけれども、どうしても「代替養育を担う児童福祉施設の在り方」ということに関しては、その外形的なことがかなり多くなってきてしまっているので、やはり養育のあり方を一つ入れておかなければならないだろうということで、そこを「施設養育に求められる高度な専門性」ということで、追加をさせていただいています。このところに関してはいかがでしょうか。

 松本先生、どうぞ。

 

○松本座長代理

 個別性をきちんと担保するという趣旨で書かれていると思いますので、その趣旨としては、まずこれは賛成するというか、この方向でと思います。

 この文言なのですけれども、この文章の3つ目のパラグラフですか。「上記のような治療的養育の提供や」云々というパラグラフのずっと文章を行って「従来の「集団養護」や「集団処遇」といった概念は不適切である」とあるのですけれども、この従来の「集団養護」や「集団処遇」という概念そのものがどういうものかについて、余りきちんと議論もされていないし、特にこれがなくても「極めて個別性の高いものである」として「従来、ルールによる集団管理に依拠してきた」とつないでいいのではないかとは思いますけれども。

 

○奥山座長

 加賀美先生、どうぞ。

 

○加賀美構成員

 今回の改正が家庭養護を推進する方向にかなりかじを切っているわけで、そういう反面、難しい発達課題を持った子どもたちが施設養護される状況はますます進行するだろうという観点から、こういう書き込みというのはとても意味があるだろうと思っています。

 以上です。

 

○奥山座長

 ここで言われるかぎ括弧つきの「集団養護」「集団処遇」というものが特別な意味を持つのか、かぎ括弧がなくても当たり前の集団でやることという意味なのか、そこの問題なのです。もし特別な意味を持つとしたら説明しないと、この報告書としてはわからないと。

 

○加賀美構成員

 グループ・ダイナミックスという考え方で子どもを養育する考え方は、ある意味で養育の一つの援助過程のあり方としては考えられるわけで、そこのところを丁寧に言わないと、ともかく数を集めてやればみたいなことになってしまう場合もあるので、そういう意味で「集団処遇」や「集団養護」という言葉については、丁寧に説明をする必要があるだろうと私は思っています。

 

○奥山座長

 そうすると、加賀美先生はそこを説明して入れるべきであるという考え方ですか。

 藤林先生、どうぞ。

 

○藤林構成員

 これは西澤先生が詳しいのではないかと思うのですけれども、いわゆるこの「集団養護」という概念というか、固有名詞というか、そのようなものは、過去、この児童養護の世界にあったわけですね。そのことを指しているのかなと思うのですけれども。

 

○奥山座長

 西澤先生、どうぞ。

 

○西澤構成員

 一応、書いた人間の責任として。というか、何か怖いなと。何か物すごく緊張して張り詰めた雰囲気が嫌だなと思って。

 「集団養護」はあくまでも集団養護理論の集団養護を指しているのであって、そもそもはソビエトの集団教育理論というものに起源を持つもので、要は、悪い言葉で言えばジャガイモ理論と言われている、子どもは子どもの中でもまれて育つのだという、雑駁に言うとそういうことです。

 ただ、歴史的に言うと、かなりゆがめられてきた経過があるので、説明するときに、どこまで説明するのか。そもそもの積惟勝の集団養護理論までさかのぼるのか、それが今、ゆがんで、現在の集団養護理論があるわけですけれども、そちらのことを説明するのか。

 「集団処遇」という言葉は、これは概念としては定着していないと思いますが、施設養護の現場ではよく用いられる言葉で、職員集団が子ども集団を見るというものを指して、大体は使われているかと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 松本先生、どうぞ。

 

○松本座長代理

 今の西澤構成員の御説明がある意味わかりやすくて、そこのところで、ある特定の理論、何々理論とかというものを個別にここで取り上げることが妥当かどうかという問題だと思うのです。ただ、趣旨としては、これは極めて個別性の高いものとして考えようということがきちんとここに書かれているということが第一かなと思ったので、そういう発言をしました。

 

○西澤構成員

 書いた人間の思いとしては、「集団処遇」については、確かに今、私も言いましたように、概念として別に定義されたものではないので、ここで書くのがいかがかと言われると、確かに。個別化ということを押し出せばいいのかなと思いますが、「集団養育」あるいは「集団養護」については、かなりしっかりした理論を重ねているものであり、かつ、やはり今の養護施設の現場で個別化を進める上では、私は非常に不適切だと思っているので、その点を明らかにしたほうがいいのではないかという思いです。

 

○奥山座長

 松本先生、どうぞ。

 

○松本座長代理

 お考えはわかりますし、そこは私も私なりの意見はありますけれども、個別のことについてここで評価をするような形になるので、それはどうなのかなと思ったのです。全体として、ここである特定の理論について、その評価について議論をしたわけではないので。西澤構成員のおっしゃりたいことはわかるし、私も私の意見はあります。

 ただ、全体の趣旨としては、個別性をきちんと担保するという形で進めること自体に、何の異論も私はないです。

 

○西澤構成員

 すみません。ちょっとだけ時間をください。

 

○奥山座長

 ほかにこれに対しての御意見はありますか。

 塩田先生、何か御意見はありますか。

 

○塩田構成員

 誤解を受けてはいけないなと思うので、私の勉強不足かもしれないですけれども、ホスピタリズム論争の積惟勝先生の「集団主義(養護)理論」は、別に個別性をおろそかにしたものではないので、そこと一緒にならなければいいなとは思っています。集団の中でも個を大切にするという意味合いが入っていたと思っています。

 ただ、私も強調すべきは、個別化を大切にする、子どもの個のニーズに応えていくような支援と思っています。

 

○奥山座長

 西澤先生、どうぞ。

 

○西澤構成員

 わかりました。一つの理論を指してここでそれを否定するのはよくないということが総意であれば、内容的にそれを書き込む修正をさせていただきます。例えば「子ども同士の中で子どもがもまれて育つといったような集団に力点を置いた考え方は」というような言い方をすればいかがでしょうか。

 

○奥山座長

 そういう形で修正するということと、今、西澤構成員のお話を聞いていて、私も1つだけ皆さんに伺っておきたいのは、子どもの個別のニーズに合わせてということを私たちは相当議論してきましたけれども、今、西澤構成員がおっしゃったように、集団が育てるのだ。育てる側ですね。大人の側といいますか、養育する側が集団でいいのだというのも、少し矛盾があるのかなと。1対1の関係性ということはかなり重要なので、余り誰でもいいから集団で、一人の子どものニーズに全員が合っていればいいのだというものでもないのではないか。そうすると、先ほど西澤構成員がこの「集団処遇」というところでおっしゃった内容も少し内容的に入れていただけませんか。

 

○西澤構成員

 すみません。いろいろなことを考えるのですけれども、何時までに。

 

○奥山座長

 終わって5分。

 松本先生、どうぞ。

 

○松本座長代理

 趣旨は大体これでみんな了解していると思うので、方向としては議論がしてあるので、余り説明を長くつけ加えなければいけないとか、そういうようなことを、また丁寧に議論していくのだったらいいのですけれども、早急につけ加えるのはちょっと怖いなという気はします。

 

○西澤構成員

 ごめんなさい、何が怖いの。

 

○松本座長代理

 文言をめぐって、またこれでいいか、あれでいいかみたいな。それでたたき台があってまた次に議論するとか、そういう評価を定めていくみたいな形になるので、ここをこの場ですべきかどうかという問題なのです。

 

○奥山座長

 その表現を入れるとかなり長くなりそうですか。

 

○西澤構成員

 1行はふえると思います。

 

○奥山座長

 いかがでしょうか。説明を入れる。入れたほうがいい。

 入れたほうがいいでうなずいている先生方が多いので、少しお考えいただいて、この会の中でもしできましたら、御発表いただければありがたいと思います。

 

○西澤構成員

 作家じゃないのでね。

 

○奥山座長

 では、次に行きたいと思います。39ページです。ここも養子縁組制度のあり方ということで、「特別養子縁組」という、漠然とした養子縁組ではなく特別養子縁組という形にさせていただいています。ここの部分はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 林先生、大丈夫ですか。

 

○林構成員

 結構です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 そうしましたら、45ページです。ここがなかなか書くのが難しかったのですけれども、前回の加賀美構成員の御意見の中に、地域でのソーシャルワークが充実していくと、どうしても掘り起こしが起きるだろうと。代替養育もしくはその先の永続的解決をしようとする子どもたちがふえていってしまう危険性があるので、そこの適切な推計をしていく必要があるだろうということで、ここにこういう書き方で少し入れてみましたけれども、何かこの点に関して、御意見はございますでしょうか。

 読み上げます。「この報告書に記載されている新しい社会的養育ビジョンを実現していくためには、代替養育を必要としている子どもの数、必要な里親委託数、必要な養親数、それを支えるために必要な児童相談所職員数等を割り出していくことが必要である。適切な統計を取って、その可視化を図っていく必要がある」という書き方にしているのですけれども、いかがでしょうか。

 加賀美先生、いかがでしょうか。

 

○加賀美構成員

 当然、今回の法改正で在宅というところにかなり大きなウエートを持った改革が行われていくわけですから、その具体的な市町村が機能し始めて初めてそういう統計もとれるような実態があるのではないか。今まで全く暗数で来たものですから、そこをということも期待を含めて、もしできたら、市町村の活動との関連で今後こういう統計を整理していってあるべき姿を見出していくというような、そういう書きぶりでもいいのかなと思っています。

 

○奥山座長

 というと、これを変えたほうがいいということですか。

 

○加賀美構成

いえ、書きかえるというよりも、もしあえて言うのならば、現状ではどうやって統計を拾っていくのかということについて、具体的な手だてがないわけですから、市町村の在宅支援という役割が機能し始めていくと、初めてそこでここに期待されるような統計も集積していけるのではないのかということもあるので、そこも含めて、市町村の活動との関係ということで、もし触れていただけるのであればいいかなと思います。

 

○奥山座長

 具体的にはどのような修文ですか。

 

○加賀美構成員

 今はちょっと。

 

○西澤構成員

 先生、ここはアイデアの段階ではなくて文章の段階なのですよ。

 

○加賀美構成員

 そうだね。

 

○奥山座長

 今のお話を私なりに解釈すると「この報告書に記載されている新しい社会的養育ビジョンを実現していくためには、今後の市町村の在宅支援の充実にあわせ」という一言を入れる。よろしいですか。

 

○加賀美構成員

 はい。

 

○奥山座長

 「在宅支援」という言葉がいいのかどうかわからないので、「市町村の子ども家庭福祉の充実にあわせ」ですかね。

 

○加賀美構成員

 という書きぶりになるのでしょう。

 

○奥山座長

 よろしいでしょうか。

 では、その次に行きます。47ページ、ここの修正のところは、サマリーに書き込まれたことをここにも、ここは工程なものですから、工程として必要ものをここに入れたということになります。よろしいですか。

 その後は到達目標を入れるということを、前回皆様のほうで賛成という形になりましたので、この工程の中に到達目標を入れ込んでいきました。

 そして、49ページの一番下のところをごらんください。これは上鹿渡構成員から、フォスタリング機関に関しては、プロジェクトチームをつくるということが入っていたのですけれども、乳児院の機能変換、あるいは多様化といったことに関してもプロジェクトチームが必要ではないかという御意見がありましたので、それを入れさせていただいております。

 あと、到達目標を入れたのと、51ページの児童相談所のところに、パーマネンシー保障のためのソーシャルワークを行える人材の確保ということが到達目標の一つとして入っております。

 あとは目標数を入れ込んだだけでございますので、特に大きな問題はないかと思うのですけれども、何か御意見はございますか。

 藤林先生、どうぞ。

 

○藤林構成員

 今の奥山先生が指摘されたところ以外でよろしいですか。

 

○奥山座長

 ちょっと待ってください。

 今の赤のところで何か御意見はありますか。よろしいですか。

 では、藤林先生、どうぞ。

 

○藤林構成員

 改めて昨日全体を見ましたところ、ここの部分の少し記載が足りなくて全体の整合性がとれていないなというところを1カ所発見しましたので、また御検討いただければと思うのです。

 5ページのサマリーのところに「アドボケイト制度の構築を行う」と、ここは漠然と書かれていまして、子どものアドボケイト制度の構築を行うのだということがわかるわけなのです。それに関連するページは45ページに書かれてあるわけなのですが、45ページの上から2つ目のパラグラフのところに「社会的養護を受けている子どもに関しては定期的に意見を傾聴し、意見表明支援や代弁をする訪問アドボカシー支援などが可能になる子どもの権利擁護事業や機関を創設することが必要である」と本文には書かれています。

 ところが、55ページの「6.子どもの権利擁護」のところを読みますと、これは専ら未成年後見人も書いていますけれども、児童相談所の決定に関する、要するに社会的養護に入る前のところについてのアドボケイトのことしか書かれていなくて、45ページの社会的養護を受けている子どものアドボケイト制度のところがすっぽり抜けてしまったなというところに気がつきまして、もし皆さんの御意見が共有いただけるのであれば、この45ページのところの文章を少し短くして、56ページにもう一つ中ポツで入れていただければと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

 

○奥山座長

 これは工程にかかわることなのですけれども、事務局としてはいかがでしょうか。どのぐらいの時期にと。

 

○山本内閣官房審議官

 まず、具体的にどう修文するのか教えてください。

 

○藤枝構成員

45ページの社会的養護を受けている子どもに関するアドボケイト制度の構築という文言が、56ページに新たに中ポツで入るか、「その仕組みを提示するとともに」と入れていくか。

 

○山本内閣官房審議官

 今の御意見では、55ページから56ページにまたがっている文章を、大体同じような中身で社会的養護の中にいる子どもについても適用するというイメージでよろしいでしょうか。

 

○藤林構成員

 適用ではなくて、この55ページから56ページに書いてあるところは、児童福祉審議会がこういう機能を持っているということを提示することしか書かれていなくて、要するに、社会的養護に現在措置されている子どものアドボケイトについては、この55ページのところには触れられていないのですね。でも、45ページのところには、「創設することが必要である」と書かれてあるわけですから、これに関連するところがないなということなのです。言っている意味はわかりますか。

 

○奥山座長

 わかります。この社会的養護というのは代替養育と在宅措置も含めて。

 

○藤林構成員

 そうですね。論理はそうなりますね。

 

○奥山座長

 要するに、訪問アドボケイトの仕組みを創設するということですね。

 

○藤林構成員

 そこまで具体的に例示が難しければ、社会的養護を受けている子どもに対するアドボケイト制度の構築というようなものでも、抽象的でもいいと思うのですけれども、5ページのところに「アドボケイト制度の構築を行う」と書いてあって、このアドボケイト制度の中身が、今から代替養育を受けようとしている子どもたちの部分だけでなくて、社会的養護を受けている子どもにもアドボケイト制度の構築が必要であるとか、検討すべきあるとか、そういった文言が必要かなと。

 

○奥山座長

 それを必要だということは、恐らく皆さん、これは前にも書いてあることなので必要だろうと思うのですけれども、私が気にしているのは、これは当然仕組みをつくるというのは国がつくるのですけれども、一応、これは工程なので、何年度ぐらいまでにできるかというところがありますので。

 

○藤枝構成員

 何年というのは私にはよくわからないので。

 

○奥山座長

 できるだけ早期に。

 

○藤枝構成員

 そうですね。実現してほしいです。

 

○山本内閣官房審議官

 基本は55ページにある、このポツのモデル事業とか仕組みの提示というのは、この年度を想定していますけれども、その実施状況も見ながらできるだけ早く仕組みについて提示するというような書き方でいいですか。

 

○奥山座長

 申しわけありません。恐らく、この56ページのモデル事業は、児童相談所の決定などが子どもの権利を反映していないというところの問題であり、そうではなくて、社会的養護を受けている子どものアドボケイト制度なのです。これは全く違うものなのです。ですから、モデル事業を見ながらということにはならないと思います。

 相澤先生、どうぞ。

 

○相澤構成員

 この訪問アドボケイトについては私が御提案したのですけれども、施設の子どもたちに定期的にアドボケイトが訪問して意見を聞くというような事業を創設していただき、まずそれから始めていただきたいという感じがします。在宅まで広げるとなるとすごく大変だと思いますので、まずはそこからではないかと思うのです。

 

○奥山座長

 その順番はあると思いますが、最終的な目標としては、社会的養護全体ということでいいですか。それこそ、例えばモデル的な実施から始めていくような書きぶりでもいいかと思いますが。

 林先生、どうぞ。

 

○林構成員

 ほかの記述のところでも、たしか意思決定過程にアドボケイトの付き添いを得て参画するとか、そういう文面がほかにあったと思うのです。それがまさに、そういうことも含めてのアドボケイトではないかと。

 

○山本内閣官房審議官

 それでは、今、その記載の年次なのですけれども、「モデル事業(平成31年度)を行い、できるだけ早く仕組みを提示する」でいかがでしょうか。

 

○奥山座長

 わかりました。モデル事業を31年度にスタートさせて、できるだけ早く仕組みをつくるということで、よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。では、そのような形で文章の中に入れさせていただきたいと思います。

 ほかはよろしいですか。

 林先生、どうぞ。

 

○林構成員

 2点お願いします。

 1つが、39ページの「(1)養親・養子に関する情報の一元化」というところです。そこの3行目に、ハーグ国際養子縁組条約に日本は未批准というところがあって、これに倣って、一元化というシステムの必要性がここに記載されているわけですが、このハーグ条約の批准に向けて検討するというのは、当初は入っていたのですけれども、後ほど削除されていたのですが、こういう条約は国際の養子縁組ではなくて、国内養子縁組の体制の充実化において必要だという認識だと思うのです。そういうことからすると、こうした条約の批准に向けて検討というのが、多分他省庁との検討が必要だということで削除されたのではないかと思うのですけれども、これはどうでしょうかという提起です。

 2つ目が、フォスタリングエージェンシーに関して、例えば32ページの4)の1行目に、フォスタリングエージェンシーが担う機能としてリクルート・研修・支援が頻繁に出てくるのですけれども、ここでは、調査・マッチングという部分は任せないのか。つまり、プロセスの中で中核的な業務は、調査でありマッチングであると思うのです。里親支援機関事業とどう違うのかというのは、多分予算上の額の違いとか、そういうことがあるのかなと。だから、両方置いておくということはそれなりに意味があるのでしょうけれども、中核的な機能を含めて一貫した民間機関が担うということは非常に重要なことではないかということです。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 フォスタリング機関のところは、どのような形になっていくのかというのは、ある意味これからなのだと思います。マッチング等を入れるか入れないかということよりも、プロジェクトチームができてそこでのガイドラインをつくっていく中で、もう少し細かく議論していく必要があるのではないかと思います。もし入れるとしたら、「その可能性も含めてプロジェクトチームで議論する」という形で入れたほうがよろしいでしょうか。

 

○林構成員

 私の印象としては、そこが中核でしょうという思いがあったもので、頭出しにせよ、リクルート・研修・支援というのが、フォスタリングエージェンシーとしての私のイメージからすると距離感があるのかなと。

 

○奥山座長

 西澤先生、どうぞ。

 

○西澤構成員

 多分、議論しなかったと思います。何となく措置機能は児相に残るよね、だからマッチングも児相だよねみたいな、何となくそういうムードでこれになってきているので、そこは精査して、私も先生のおっしゃることはよくわかるので、プロジェクトチームなりなんなりで、もっと議論をしながら、様子を見ながらというところが必要なのではないかと思います。

 

○奥山座長

 前、藤林構成員からも、フォスタリングエージェンシーに措置されてそこから委託されるような、そういう措置費の流れみたいなことも議論されたと思うのです。そういうことも含めてプロジェクトチームでは御議論いただかなければならないのだと思うのですけれども、そこのところを1行どこかに入れますか。

 

○藤林構成員

 マッチングまで含めるかどうかというのは、これはまだちょっと十分議論が尽くされていないところもあるので、例示として入れるのはどうかな、と思います。調査も、実際に現在福岡市が委託している民間機関に家庭訪問や調査も行っていますけれども、我々児童相談所としても一定の調査というか、面接もしておりますので、そこも今後日本型のフォスタリングエージェンシーをつくっていく場合にどうするのかというのは、今後のプロジェクトチームに委ねるということでいかがでしょうか。

 

○奥山座長

 よろしいでしょうか。

 

○林構成員

 結構です。

 

○奥山座長

 では、「フォスタリング機関事業の内容については、今後のプロジェクトチームで十分な議論を尽くしていく」みたいなところを1行、どこに入れようか。一番後ろでもいいかもしれないですけれども、そこに入れるということでよろしいでしょうか。

 ほかによろしいですか。

 ハーグ条約に関してどのような入れ方ができるか、林先生のほうで、文章としてはどういうように入れたらいいという御意見はございますか。

 

○林構成員

39ページの(1)の3行目にもう既に入れていただいているので、だから、最後にこれに向けて検討するということを入れるか入れないかということです。

 

○奥山座長

 どういうように入れればいいかなと思って悩んでいるのですけれども、「ハーグ国際養子縁組条約の批准も進める必要がある」ぐらいの1行でしょうか。

 

○林構成員

 そこまで書いていただけるのでしたら、それで。

 

○奥山座長

 誰がとは言わないけれどもみたいな。

 西澤構成員、どうぞ。

 

○西澤構成員

 「視野に入れ」ぐらいでどうですか。だめかな。

 

○奥山座長

 松本座長代理、どうぞ。

 

○松本座長代理

 私はそこは余りちゃんと議論していないような気がするので、もう少し議論して入れていくということではなくて、今、急遽文言を考えるというのも、むしろ私はこのままでと思うのですけれども。

 

○林構成員

 これまでの先行研究というか、国際的にどう見られているかということを含めて、私がやってきた調査の中で提言して、それなりの議論はし尽くしてきたとは思っているのですが、この場では確かに十分に議論されていないという松本座長代理の御見解だと。

 

○松本座長代理

 議論が必要だという含みの表現であれば。

 

○奥山座長

 そうですね。そうすると「批准に向けた議論が必要である」ぐらいですか。

 

○林構成員

 いいです。

 

○奥山座長

 それだったら入れないほうがいいとか、何かありますか。

 

○藤林構成員

 松本座長代理が言われたみたいに、ここでそのことの是非というか、適当かどうかの議論がされていなくて、今、意見を求められてもいいとも悪いとも、全体的に把握していないので意見のしようがないのですね。どうでしょうか。

 

○林構成員

 座長にお任せします。

 

○奥山座長

 わかりました。ちょっと考えさせてください。

 ほかはよろしいですか。

 そうしましたら、きょう資料を御提出していただいております相澤構成員、藤林構成員から御説明、御意見をいただきたいと思うのですけれども、まず、相澤構成員からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 机上配付の資料がございますので、それに沿って手短に御意見をお願いします。

 

○相澤構成員

 私からですけれども、「「新しい社会的養育ビジョン」への意見」ということで、配付資料でございます。まず、サマリーのほうに数値目標が出てきましたけれども、代替養育に関する年限を区切った数値目標案については、検討会でも十分に議論が尽くされていたとは言えない。今、まさにハーグ条約の議論においても十分に議論されていないということで判断できないという意見がございましたけれども、数値目標についても、自治体、関係団体等とも意見交換をしながら、十分に議論した上で数値目標を立て実効ある取り組みを私は推し進めるべきだと。

 それから、西澤構成員の意見と同様に、各数値目標については、科学的根拠が説明できるものでなくてはならないだろうと。

 新規入所措置を停止した場合、ケアニーズが高く、施設等における十分なケアが不可欠な場合に限らず、委託先のない乳幼児が出てきた場合はどうするのか。これは井上構成員も前回言っていたと思いますけれども、無理をして、例えば里親委託に結びつくのではないかというような大きな懸念がある。乳幼児を養育する里親制度体制が十分にできていない中で、なぜすぐ停止する必要があるのか疑問だと。

 性急に里親制度を推進することは、里親登録が進まない中で、複数の子どもを里親に委託することに結びつき、不調のリスクが高まるとともに、不測の事態に至る危険性をはらんでいるだろうと。ひいては子どもが犠牲になりかねない。ゆっくりと焦らずに、子どものニーズに対応してもらうような里親を育てていくことが、将来的に里親制度の推進に結びつくと私は考えているということです。

 この数値目標を達成するには、毎年、例えば前回藤林構成員が、乳幼児だけでも1,200と。それで、学童期を含めたら2,000以上の里親登録が必要であり、過去のデータというのは、きょうは資料を出しましたけれども、私の資料で「里親及び委託児童の推移」をみるとわかるように、一番里親登録が確保されていても1,000です。例えば、この目標を達成するのに最低でも毎年2,000の里親登録が必要となってくるわけで、過去のデータから見ても、これは不可能と思えるような数値だと。このような数値目標を掲げることによって現場のやる気を起こさせることに結びつくとは思えず、むしろ反対にやる気を失するようなことになりかねないのではないか。リクルートのできる効果的な方法は本当にあるのか。これがない中でこんな数値目標を立てても余り意味がないのではないか。

 それから、予算をとって施策を推進することも大事だけれども、人材育成も極めて重要です。フォスタリング機関においてもこれから人を募集し、人を育てるという状況であり、フォスタリング機関が整備されたからといって、里親のリクルートから里親支援、家庭復帰の調整など、十分に対応できるかどうかは疑問だと。しかも、その目標を達成するためには、毎年相当数の里親リクルートを行い、委託数をふやしていかなければならない。このような状況の中で、里親支援や家庭復帰のための調整などの業務を適切かつ十分にこなしていくことが果たして可能なのか。責任感が強く真面目に取り組む職員であればバーンアウトしかねないし、途中で職を辞してしまう職員も出かねない。そもそも全国一斉にこうした状況に対応できる里親のソーシャルワーカーやフォスタリング機関の確保すら困難ではないのか。

 それに、このような数値目標があれば、なおのこと手を挙げる機関がなくなってしまうような危険性はないのか。仮に数値目標を立てて、叱咤激励し、やる気を引き出すような効果を狙うのであれば、現在でも十分とは言えない体制の中で関係者は努力しているのでありますから、少し努力すれば実行可能な目標を設定するのが、私は妥当ではないかと。したがって、数値目標については再考すべきではないか。

 少なくとも「あくまでも取組目標であり、この目標を推進することで、子どもの福祉を妨げるような状況に至る危険性がある場合には、子どもの福祉を優先してもらいたい」といった文章を付加してもらいたいということでございます。

 急ぎましたけれども、以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 考えておかなければならないポイントを指摘していただいたと思いますので、一つ一つ考えていきたいと思います。まず、施設入所を停止するといいましても、原則停止という形でございまして、その目的は子どもの権利の保障ということですから、全員がそれを見失わなければ、そのような事態は起きてはいけないことなのだと思うのです。それが起きるからこれをやらないというのは、逆におかしな理論になってしまうのではないかと私自身は考えます。

 あと、科学的根拠とか、その辺に関しましては、藤林先生から推計がございますので、そちらをお話しいただきたいのと、人材育成に関しても、今後プロジェクトチームをつくっていく中でどのようなことができるのか、少し考えて、ここの議事録に残したいと思いますので、まず藤林先生から資料の説明をしていただけますでしょうか。

 

○藤林構成員

 前回も説明しました資料なのですけれども、前回は表を張りつけ間違っていたものですから、正確な表を張りつけて、机上配付ではなくて皆さんにお配りいたしました。同じ説明になってしまうところは飛ばして、かいつまんで説明したいと思います。

 4ページのところを見ていただきたいと思うのですが、乳幼児に限定してお話をしたいと思うのですけれども、児童相談所として乳幼児の措置方針を、このビジョンでいくと(1)(2)(3)、特に新規措置は原則家庭養育となっているわけなのですが、これはなかなか即座にできるわけではないので、少なくとも(2)(3)の長期入所の抑制と現在長期入所している子どもの家庭養育への措置変更というところだけでシミュレーションをしてみました。

 ここの長期入所の抑制と長期入所の子どもの家庭養育の措置変更は、これは平成29年、今年度の里親委託ガイドラインに明確に書いてある部分ですので、改めてこのビジョンで示すまでもなく、厚労省はこの里親ガイドラインで長くとも数カ月以内には移行すべきと書いておりますから、新たな考え方ではないわけです。要するに、現在ガイドラインに書いてある(2)(3)を全国の児童相談所が行っていった場合とも捉えていただいていいかと思います。

 そうした場合に、3に書いているような数字が出てくるわけなのですけれども、これもこの数字の意味については前回お話をしましたので、ここは時間の都合がありますから、飛ばします。

 結論としては、5ページのところに書いておりますように、特に乳幼児に関しては、これは3歳未満は5年、6歳までは7年となっていますが、7年間で推計します。すると、6,413人分の養育里親のキャパシティーを確保することが必要になってくると思います。これはキャパシティーなので、いわゆるフローを考えるととても複雑になっていきますから、単純に6,413人の養育里親のキャパシティーを確保するというように考えますと、7で割りますと大体毎年900人という数字になっていくのかなと思います。人口120万人の都道府県、政令市で換算すると、年間9人程度となっていくのかなと思います。

 相澤構成員が言われましたように、確かに現在の年間の里親委託児童数の増加は、年間200から多い年で400ぐらいですから、それを900にしていくというのは、今の2倍、3倍ぐらいの取り組みが必要かなと思うのです。でも、これは前回も言いましたように、リクルート手法の質的転換。従来のリクルート手法ではなくて、しっかりとしたリクルート手法を全国で展開していくということと、児童相談所も含めたフォスタリング機能の強化の整備が必要なのは言うまでもないのかなと思います。

 ただ、現在でもやろうと思ってできることもあるわけです。未委託里親の活用も今年度の里親支援事業の中に入っておりますし、親族里親の都道府県格差も激しいものがありまして、特に首都圏は年間1人とか3人です。福岡県は30人という、親族里親の活用もあるのではないかと。

 また、里親支援専門相談員のリクルート面での活用も考えれば、私は十分現在でもやっていける部分はあるのではないかと思いますが、それでも足りない部分は、フォスタリング機関の整備が必要かなと思っています。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 相澤構成員が心配されている人材育成のことについて、いかがでしょうか。どなたか御意見はございますか。人材育成が追いつかないのではないかと。

 プロジェクトチームをつくって、そこが研修を担っていくということは前回もお話が出ていますし、ある種研修ではないのですけれども、近いプログラムとして、フォスタリングチェンジをされている上鹿渡構成員の感触としていかがでしょうか。

 

○上鹿渡構成員

 感触としては、この多機能化とか機能転換には、施設スタッフの再トレーニングがとても重要で、それにはお金もかかり、また実際にどういったことを学べば、身につけると、必要とされる十分な里親支援ができるのかというところも含めて、まだ全然議論がなされていない領域で、今、私がかかわっている乳児院でそれに挑戦しているところです。

 フォスタリングチェンジは子どもを委託されている里親さんが、子どもの問題行動に困ったときのいろいろな対応方法を身に付けるためのプログラムですけれども、このプログラムを里親さんに実施するためには、里親を支援する側が多くのことを学ぶ必要があります。それによって、里子や里親さんのことをよりよく理解し、対応できることがふえるとは思ってはいます。里親支援に係わる方々の専門性を高める方法の一つとして、どのぐらいのスピードでそのような人たちの助けになっていけるのかはわからないところですが、一つの方法としてこのような研修を増やしていくということもあり得るかなとは思います。

 

○奥山座長

 藤林先生がフォスタリングチェンジも福岡で何回かやられていると思うのですけれども。

 

○藤林構成員

 昨年の3月にフォスタリングチェンジ・プログラムのファシリテーター研修を福岡でやりまして、そこにうちの職員が何人か参加して、昨年度と今年度と2回、1クール12回の研修を行ったのです。これは里親さんにとってもとても好評だったわけですけれども、それだけではなくて、このファシリテーター研修を受けた職員自身が里親支援というのはこういうものであり、こういうことを実際に語っていくということがとても整理されて、非常によかったという感想もあります。

 現に全国で何十人もの方がこの研修を受けているわけですし、今年度も行うと聞いていますので、これも一つのオプションではないかと思うのです。こういうフォスタリング機関、要するに、フォスタリングを行っていく職員の研修機会が今まで少なかったのではないかと思っていまして、これを今後もっとふやしていくことが重要ではないかと思います。

 現に、国立武蔵野学院では里親研修が行われていますね。改めてきょうホームページを見ると定員が30人で、少なくとも全国の都道府県、政令市、児童相談所設置市の里親業務に係る職員が全員受けられるような研修制度の充実も、今年度からしようと思えばできるのではないかと思います。

 

○奥山座長

 その辺も含めて、それらをどこかに書き込むということではないのですけれども、今度のプロジェクトチームは、そういう研修をきちんと到達目標を含めた研修プログラムを立てて、それぞれいろいろなところでやっている研修の研修効果ということを判定していくということも必要なのではないかと思います。

 林先生、どうぞ。

 

○林構成員

 当初、人材難だということは確かだと思うのです。どうその職員として育っていける環境をつくるか。日本で例えば家庭養護促進協会とか、あるいは東京都だと養育家庭センターがあった。そこの人たちがどう育ってきたということを考えたときに、マッチングや調査という中核的な業務にかかわる中で成長したという声がすごく強いように思うのです。それが委託後の支援という、フォスタリングチェンジもある意味そういうところの機能強化だと思うのですけれども、業務をする中で育つということが非常に重要かなと思いますので、フォスタリングエージェンシーのあり方そのものですね。機能のあり方を含めて、ぜひ、マッチングや調査などを含めてかかわるような機関の設置も視野に入れていただきたいと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 加賀美先生、どうぞ。

 

○加賀美構成員

 相澤構成員の懸念はとてもよくわかりますし、我が国はソーシャルワークという観点での働きの弱さは全体にあると思うのです。その中でも、児童分野は特段すぐれたソーシャルワーカーが育っていないという現場感覚は持っています。

 そういう意味で、特に里親ソーシャルワークということを考えても、とても大変な山があるなとは思っていますが、今回のこの大きな転換点、国を挙げて、我が国は子ども家庭福祉についてのソーシャルワークを強力に進める。そういうメッセージとして私は捉えていくべきだろうと。そういう意味で、財政的な問題も含めて大きな転換点として取り組んでいくということを覚悟の上でやらないとできないことだと私は思っていますので、そういう意味でも、国を挙げてという言い方をすると、マクロな政策として、この里親のソーシャルワークを進める人々をどうやって育てていくかということを本当に真剣に取り組む必要があると、私は思っています。

 

○奥山座長

 西澤先生、どうぞ。

 

○西澤構成員

 まず、きのう山縣構成員とやりとりをしていて、伝えてと言われたので、まずそこからお伝えしていいですか。

 基本的に、この今回の報告書の理念やありようについては、文句はない。自分の理念とも一致している。ただ、この数値目標に関しては、いろいろな議論があるし、自分も考えがまとまらないので、賛成も反対もできないのだけれども、座長に一任したいと。要するに、皆さんがということです。

 そのことをまずお伝えして、私もこの前の議論に参加できないで、ごめんなさい。いろいろ考えていたのですけれども、ここに私の名前も引用されているので、根拠という部分は私も必要かと。要するに、説明責任を果たしていくための根拠は一つは必要かと思っています。そこに入る前に、相澤先生、「ひいては」は引いてしまったらだめで、これは延長の「延」だよ。引いてしまったら、子どもの犠牲も意味がよくわからない。

 まず、相澤構成員がひっかかられている新規の措置入所の停止というのは、これは就学前の子どもについてではなかったですか。そうですね。

 これは本当に私ごとで恐縮なのですけれども、2014年に施設養育のあり方ということで、ISPCAN、国際子ども虐待防止学会の大会が日本で開催されたときに、欧米において施設養育を推進する立場にある人たち、研究者たち、非常に高名な人たちに3人来てもらって、フロアにはイギリスで脱施設化のオピニオンリーダーであるケビン・ブラウンがいて、すごく緊迫した状況の中で議論があったのです。その中で、施設を推進している人たち、施設は養育施設ではなくて治療施設なのですが、この3人とケビン・ブラウンが一致したのは、乳幼児に施設はあり得ないという見解だったのです。だから、やはり国際水準を考えると、この方向に向かって努力していかなければいけないし、国連のガイドラインも3歳以下の子どもの施設養育は即時撤廃と言っているわけなので、別にそれに迎合して、全てそこを今すぐやりなさいではなくて、これを目標として掲げるというのは、グローバルスタンダードではないかと私は思っています。

 もう一つ、私は何回も言っていて、皆さんからはじかれていることなのですけれども、未委託里親の問題がありますね。これは根拠の部分です。未委託里親については、余り公表されていない研究結果を私信で聞いたのですけれども、今、全国の里親措置率にばらつきがありますね。そのばらつきの説明変数を求めた研究があって、その中で未委託里親の研修とか未委託里親の支援というのを入れたところは委託率が上がっているというのが、唯一出てきているデータらしいのです。これは先ほど言ったように未発表なので、余り大きな声で言えないから小さい声で言いますけれども、それを見ると、日本の場合、これはくしくも相澤先生が出してくれた資料で委託里親数、この資料によると今、35%ぐらいですか。ということは65%が未委託なので、この未委託の中身というのがはっきりしていない。多分、児相現場ではこういう人だから委託しないとか、あるいはできないとか、いろいろ理由はあると思うのです。合わないとかね。だけれども、その実態は全国的にどうなのだということはわかっていないのだと思うのです。

 例えば仮に想像するに、今、委託されている里親ではない人たちが大体7,000世帯あるわけですね。このうちで、例えば2,0003,000という人たちが努力すれば委託できるのであれば、相澤構成員がおっしゃっているような数値はある程度ぐっと短縮しないかなと私は思うのです。

 未委託里親を、失礼だけれども、放置している都道府県は結構あるのではないかと私は想像しています。自分のところの地元の都道府県で考えたら。どことは言いませんけれども。

 そういう想像をする傍証なのですけれども、この前の31日のここの会議を取材して、いろいろな報告を幾つかの新聞が書いていらっしゃいましたね。その中で、私は朝日のデジタル版を見たのだけれども、里親委託率が一番低い秋田県の児相の関係者なのか、本庁の職員なのかわからなかったのですが、その方が言っているのは、自分たち秋田県では、施設に空きがあるので里親委託を推進していませんと答えているのです。だから、これは子どもの権利や子どもにとっての養育云々よりも、裏から見ると、施設の事情を考えて措置しているということになるので、こういうところで未委託里親に対する働きかけをやっているとは、私は到底思えない。それは多分秋田県だけではないだろうと思うのです。

 すみません。べらべらしゃべっていますけれども、あとのことは、どう変数が動くかがわからないので、例えば子ども期以降を50%、それでここで実現するように、乳幼児が75%里親委託できたら、乳幼児から上がる子どもは多分ぐっと減りますね。もちろん、ほかの家庭から小学校期、中学校期になって入所してくる子どもの問題もありますけれども、それに関しても児童相談所が機能強化されていって早い段階で保護されるようになったら、今、養護施設で中高生の性虐待のケースでみんなあたふたしていて、そんなの3年や5年でできるわけがないよという話になるのだけれども、そういう子どもの数自体がどれだけ変化するかわからないので、ここはもう目標を定めて、秋田県みたいなそういう認識の甘いところもちゃんと考えなければと思わせるような、これは加賀美先生の意見だけれども、そういう目標を立てていくということをやるべきではないか。相澤構成員にはいろいろ思いはあるのだろうと思うのですけれども、私はそう思います。

 

○奥山座長

 相澤先生、どうぞ。

 

○相澤構成員

 未委託里親とか、もちろんそういうものは計算をしても、例えばこの2,000というのは、全部委託が可能だった場合の数字ですね。私が出したこの2,000というのは、委託率や登録を辞退する里親数を考慮せずに、登録された里親さんに全部子どもを委託した数が2,000以上なわけです。毎年目標を達成するのに。この毎年2,000以上を実際に確保できるのかは、とても難しい数字だなと。

 

○奥山座長

 藤林先生の数字と相澤先生の数字は、多分倍ぐらい違うのです。藤林構成員は120万のところで9人ぐらい毎年ふやすのだと。ただ、相澤構成員の2,000というものを100万に計算すると、毎年20人になるのです。100万都市で毎年20人ふやさなければならない。

 

○相澤構成員

 この毎年2,000というのは、全国。

 

○奥山座長

 だから、全国なので、人口に対する割合で考えると、100万都市であれば、毎年20人ふやさなければならないということなるわけですね。そういう意味ですね。だから、それが藤林試算と若干違いはあるのです。

 藤林先生、そこをお願いします。

 

○藤林構成員

 私は、乳幼児の75%を目標にした場合に、6,400人で、年間900人ということで、多分、相澤構成員は全年齢にわたってということだと思うのです。

 

○相澤構成員

 だから、50%、学齢以上も10年かけてやっていくということになると、75%の50%で、最初の5年間は2,000を超える数値になるということです。

 

○奥山座長

 毎年全部割り切るわけにはいかないと思います。恐らく、乳児だけでも最初のフォスタリング機関ができるまではスロースタートだと思うのです。それができたところからぐんと伸びるというのが期待だと思うのです。

 それで、先ほどおっしゃったように、乳児院からの委託が少なくなる。それが700人でしたか。

 

○藤林構成員

 措置変更が700人です。

 

○奥山座長

 そうですね。それがまず減るわけです。その先で、最初から少しずつ里親さんの中には大きい子を養育してみたいという方もいらっしゃるかもしれないので、それは別にやらないと言っているわけではなくて、そういうポイントを定めて、できるだけリクルートをしていくということになるのだろうと思います。

 

○相澤構成員

 それで、例えば加賀美構成員の前回の発言で、里親委託率を上げるとしても母数が3倍から4倍になる可能性を考慮すべきなどという議論を考えたら、さらにもっとふえていく可能性だってあるわけでしょう。

 

○西澤構成員

 それこそ根拠のない数字だよ。妄想。ごめん、冗談。だから、すごくいろいろな独立変数があるわけです。これは独立変数と従属変数の関係がよくわからなくなってしまう。

 

○相澤構成員

 数値目標については、科学的根拠について十分な議論もせず、わからない中でこの数字を出していくのが、本当にいいのかということです。

 

○奥山座長

 藤林構成員、どうぞ。

 

○藤林構成員

 そもそも平成23年の里親委託ガイドラインには「里親委託優先の原則」と書かれたのです。28年の児童福祉法の通知文においても、乳幼児については、「里親等の委託を原則」と書いているわけです。29年の里親ガイドラインにも、あくまで一時的なものであって、「数カ月以内には移行すべき」と書いてある。乳児院から措置変更する子どもは「原則として、里親委託への措置変更を検討する」とも書いてある。要するに、厚労省の通知文には「原則」と書いてあるわけです。「原則」というのを、今回「75%」に言い換えただけのことなので、メディアは、「75%」という数字を、大げさに書いていますけれども、単に「原則」を「75%」と言い換えただけのことなので、そんなに驚くものではないのではないかと私は思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 今までの皆さんの御意見を伺うと、要するに、推計というのはいろいろな形で出しようがあるし、いろいろな数字が出てくる。だけれども、その数字を見て、やる方向に行くのか、やらない方向に行くのかというのは大きな問題だと思うのです。この数字は、私は藤林先生の数字にしても、相澤先生の100万の都市で毎年20人確保しなければならないという数字にしても、その数字ならやりようはあるのではないかというイメージを持ちます。実際、里親さんとお話ししたりなどをしても、これはいけるのではないかと。今、いる里親さんが1人、2人、リクルートもできる。さらに言えば、本当にリクルーターを養成するということをやっていけば、できない数字ではないのではないかという印象を持っているのですが、そこで前へ進むのか、引くのかというところに関しては、いかがでしょうか。

 井上先生、どうぞ。

 

○井上構成員

 井上です。

 藤林構成員が言ってくださったところは物すごく大事なことで、「原則」と書いていた部分が、今回法定化されたのです。だから、児童相談所はしなければならないのです。まず考えていく段階で、家庭養護の原則を守らなければいけない。その考え方で進み出した場合は、奥山先生が言われるとおり、変わってくるものが出てくるのではないか。西澤先生が言われるような実際の数字の動きがはっきりしてくるのではないか。私はそう思っています。

 

○奥山座長

 藤林構成員、どうぞ。

 

○藤林構成員

 この相澤先生の意見の中に、リクルートできる効果的な方法はあるのかという投げかけがあると思うのですけれども、私はあると思います。現に、福岡市が民間委託して、効果的なリクルート手法で確実に養育里親さんが確保されつつあり、大阪府でも実際にそうなっているわけです。要するに、今まで里親リクルートという発想がこの国に根づいていなくてやってきたという問題があったのではないかと思うのですけれども、今後、フォスタリングエージェンシーのプロジェクトチームの中で、日本における効果的なリクルート手法ももっと練っていく必要があると思うのです。この問いかけに対して、私はあると思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 上鹿渡先生、どうぞ。

 

○上鹿渡構成員

 今の点で言うと、以前提示したうえだみなみ乳児院では、もともと保育士だった方を一人リクルーターとして再配置し、コンサルテーションを受けながら、この1カ月余り里親リクルート活動を始めています。コンサルテーションのもとでこれまでに取り組んだことのないことに取り組んでいます。人口約15万の上田市でお店や銀行等にチラシやポスターを持っていき挨拶、説明をしたりしています。その乳児院の院長も言っていたことですが、そもそもこの地域で児童福祉に取り組んできたことによって信頼されている施設がこのような活動を始めているということで当初想定していたより受け入れもよく、まだ本当に短い期間で研修、登録等先までは行っていないのですけれども、現段階ではある程度よい感触は得られているとのことです。

 もう一つ、本日話題になるのではないかと思い私としても考えをまとめてきたので、それを提示させてください。

 きのう、31日に案が出された後、新聞各紙で今日も議論になっている「特別養子縁組を5年以内に1,000人以上へ」「原則として施設への入所を75%、50%」といったことが話題として取り上げられて、この数日間だけでも関係者に期待と不安の両方が広まっていると思います。私個人としても、まさにこの期待と不安の両方を持っておりますが、本日の議論を通して、ここにいる構成員の皆さんも期待だけではなくて、不安も持ちながら、本日この報告書を出していくということになると理解しております。

 この報告書を出すことを子どもの最善の利益保障に結びつけるために、具体策についてさらに考えなければならない段階に入ったのだと思います。それで、前回乳児院改革に当たってのプロジェクトチームの設置を提案しました。

 私は昨年6月以降、今回、この報告書で示されたような新たな社会的養育の必要性について、特に施設の多機能化・機能転換と、里親養育にも必要とされる変化について、児童養護施設、乳児院、里親、養子縁組関係者、児童相談所、学校、保育所関係、一般の人たちにもこのような話を、各地の様々な講演・研修会でしてきました。内容としては、この検討会でもヒアリングのあった英国における施設から家庭養育への移行の取り組みですとか、第14回で報告したうえだみなみ乳児院の機能転換計画などでした。児童福祉関係者以外は、このような問題があること自体を知らないことがほとんどでしたが、この問題について伝えて、その解決方法として例えばこのようなものがあるということをお伝えすると、よく理解していただけて、期待の言葉をいただくこともあり、自分も里親支援など、できることで協力したいという一般の方々も何人もいらっしゃいました。

 一方、施設関係の方々につきましては、意見はさまざまでした。子どもたちと日々の生活を共にしてくださっていて、子どものことを一番に考えてくださっている方々にとっては大きな変化の提案でしたので、子どもたちのことを一番慎重に現実的に考えてくださってのことで、当然のことでありがたく感じておりました。

 ただ、実は施設の多機能化・機能転換という内容に大きな期待を寄せてくださる施設長ですとか、自治体関係者、また、既にこのような取り組みをしており、これでよかったのだと安心したといった感想を講演が終わった後に個人的に言ってくださる方もいらっしゃいました。ですから、現場関係者の中にも、大きな不安と大きな期待、両方があるのではないかと思っています。表明されているかどうか、それぞれがどのような割合かはわかりません。

 今回の報告書案で提示されている前述の具体的事項については、国の方針ということで、さらに大きな不安と期待を現場に巻き起こしているのではないかと思います。一番の懸念は、このように具体的な数字を決めてしまうことで本来意図していたものとは違った数字合わせに終始することになってしまうのではないかことです。

 

○奥山座長

 先生、ポイントを絞ってお話しいただけますか。

 

○上鹿渡構成員

 すみません。本来意図していたものとは違った数字合わせに終始することになってしまうのではないかということで、ただ、このことは、立場によってその了解の程度はさまざまだと思います。現場からすれば、根拠の曖昧な数字に期限を限定されて取り組むことはなかなか了解されにくいのではないかと思います。

 このような数字合わせは、子どものニーズではなくて関係する大人のニーズが優先されて取り組みが展開される場合に生じるのだと思います。システムの移行・転換に実際に取り組む大人が、権利主体である子どもの最善の利益を保障することを常に第一とすることを取り組みのなかにしっかりと位置づければ、こういった弊害は生じないのではないかと思います。

 今回の新しい社会的養育ビジョンでは、この75%だけを言っているのではなくて、実親支援や養子縁組の利用促進を進めた上で、代替養育における里親養育をしっかり進めるということを言っています。ですから、この75%の数字は、このようなパーマネンシー保障実現のための付随的な結果で、75%自体が最終目標ではないということを意識し続ける必要があると思います。そのために期間を区切りながら、それまでの取り組みが子どもにとっての成果となっているかどうかを評価して、問題があれば当初目標も再検討しながら進めていくことが必要だと思います。

 この数値目標につきましても、今日もいろいろ議論になっておりますけれども、「高過ぎる」「低過ぎる」いろいろな意見があるようです。今後予防的事業がより機能することで、さらに社会的養育を必要とする子どもの数がしばらく増えていくだろうという予測や、実際に養育里親がどれぐらい準備できるのか、そういったことも不明な中で、さらに乳児院と新しく準備される里親養育で、どちらが子どもの発達にとってよりよいものなのかについてのエビデンスもない中で、こういった数値を決めることは本当に困難だと思います。

 

○奥山座長

 先生、ポイントを絞ってください。

 

○上鹿渡構成員

 ルーマニアでは、既存の施設養育と新たに創設した里親で措置される子どもへの様々な影響が調査されました。こういった実証的研究、RCTなどできちんと示された結果をもとに、2歳未満の乳幼児の施設入所を認めず緊急里親養育に託すということで法律を改めたわけですけれども、日本でもそのような調査結果を待って安全に進めようというのでは時間がかかり過ぎ、また、そもそもそのような結果を得るためには実践が必要であることから、このようなより良い実践につなげるための評価を同時に進めながら、実践を展開していくということが今後必要とされるのだと思います。

 「原則」という言葉だけでこのまま続けていくかというと、これもこれまで変わらずに来た状況を実際に変えていくには不十分だと思います。今回新聞報道で取り上げられたこの数字、「原則」が「75%」という具体的数値で言いかえられた際の、非常に大きな反響、具体的な変化に対する期待と不安の表れこそが、これまで変わらずに来た社会的養護の状況を変え始めるために、まさにこのような具体的数値が必要であることを示しているのではないかと思います。

 

○奥山座長

 先生、お願いします。まとめてください。

 

○上鹿渡構成員

 すみません。

 私はそれでプロジェクトチームが必要ではないかと提案したのです。プロジェクトチームの中で、例えば今日議論されたような懸念についても、きちんと現場の意見を酌みながら、結果として75%や50%というところを目指しながら取り組んでいく。その中で、もしかしたらパイロット的に、本当にわからないことではあるので、全自治体、全施設で一遍にというよりは、ここに挙げた75%、50%というものを、地域、自治体によって取り組みやすいところ、準備が整っているところと取り組みにくいところ、まだ準備が整っていないところがあると思いますので、パイロットプロジェクトとして実施できそうなところ、変化へのニーズのあるところで、まずは必要な資源を集中的に投入して一定期間取り組んでみる。その結果数値目標や期限に変更が必要であることがわかれば、それらをもう一度考え直す。また、その取り組みの中で、実証的な評価研究や取り組みに関する評価も並行して実施することで、今いろいろな方が持たれている懸念を払拭できるのではないかと思います。

 長くなりました。すみません。

 

○奥山座長

 もう時間がないので、申しわけありません。最後に行きます。

 相澤先生がお話しくださった中で、こういう数字があるために児童相談所が問題のある行為をするのではないかとか、そういった問題に関しては、今後評価機構をつくっていく中で評価されていくべき問題ですし、本来は、先ほどいろいろな方がおっしゃっていたように、あってはいけないことだと思います。

 ただ、そういう意味で警鐘を鳴らしておかなければならないのは、相澤先生がおっしゃっている中では、子どもに害が及ぶことは絶対にあってはならないという点は重要だろうと思います。ですから、このサマリーの「3.新しい社会的養育ビジョンの実現に向けた工程」の最初のパラグラフの後ろに、例えばこれは私の案ですけれども、「また、これらの改革は子どもの権利保障のために最大限のスピードを持って実現する必要がある。その改革の工程においては、子どもが不利益をこうむらないよう十分な配慮を行う。」ということで、スピードを持ってやるがために起きてしまうようなことに関して、子どもが不利益をこうむることがないよう配慮するという一文を入れたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 

○相澤構成員

 ありがとうございます。

 

○奥山座長

 では、一応、この議論はここで終わりたいのですけれども、全体として何か御意見はございますでしょうか。

 

○西澤構成員

 最初に言われた宿題はどうしますか。

 

○奥山座長

 もしできていたら。

 

○西澤構成員

 では、また御批判はあるかもしれませんが、今、言っておいたほうがいいかなと思います。36ページのところに戻ってください。「上記のような治療的養育の提供や家族問題への支援は、子どもや家族の個々の支援ニーズに基づいて行われる極めて個別性の高いものであり、子どもの成長や発達を集団の関係性に依存する考え方や、子どもの個別的な関係性を軽視したケアワーカーの集団による処遇といった考え方は不適切である」。

 

○西澤構成員

 一番反対していたのは松本先生だから。

 

○松本座長代理

 長かったから、メモをとるのに必死だった。

 

○西澤構成員

 だから長くした。

 

○松本座長代理

 説明的だと思うので、今のはあれして、最後は多分奥山先生が全体でまとめられると思いますけれども。

 

○西澤構成員

 一応そういう感じでということは了解で。

 

○松本座長代理

 説明的には、趣旨はわかりました。

 

○西澤構成員

 塩田先生は。

 

○塩田構成員

 拍手です。

 

○西澤構成員

 ありがとうございます。では、きょう作家としてデビューしたということで。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 井上構成員、どうぞ。

 

○井上構成員

 1点間違いがあったので、11ページです。自分が出しておったのですけれども、差しかえで古いほうを出しておったみたいで、一番上の囲みの中に「乳児全戸訪問事業」と書いているのですが、「乳児家庭全戸訪問事業」です。ここだけ書き直しをお願いします。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 加賀美構成員、どうぞ。

 

○加賀美構成員

 西澤先生が妄想だと言われたから、103,28695%以上は、在宅として見守りという状況にある。この子どもたちの問題でさえ、潜在ではない。もう顕在化している問題。ここに手をつけることが大事だという観点で言えば、当然社会的養護を必要とする子どもの掘り起こしということは可能性としては大きいと私は思っています。

 以上です。

 

○西澤構成員

 わかりました。先生、すみません。冗談でした。ただ、横浜市の調査による数字では2倍ということになるので、その点は。

 1個だけ確認させてください。すごく細かいことなのでどうでもいいのですが、何回も言っているのですけれども、「アドボカシー制度」ではなくて「アドボケイト制度」で本当にいいのですか。

 

○奥山座長

 「アドボカシー制度」ですね。

 

○西澤構成員

 「アドボケイト制度」とか「アドボケイト機能」とかがいっぱい出てくる。アドボケイトは人のことなのですね。

 

○奥山座長

 そうですね。

 

○西澤構成員

 人を制度と言うのかな。前から、私は「アドボカシー」ではないですかと。「アドボケイト」は動詞か人ですね。だから、「アドボカシー制度」ではないのですか。

 

○相澤構成員

 私も「アドボカシー制度」がいいと思います。

 

○西澤構成員

 ようやく気が合いましたね。

 

○奥山座長

45ページは「アドボカシー支援」になっているのですね。

 

○西澤構成員

 別に「アドボケイト」でも悪くはないのかもしれないのですが、判断はしてください。

 

○奥山座長

 人の制度にするか、概念の制度にするかのどちらか。

 

○西澤構成員

 少なくとも「人の機能」はおかしいような気がするのですけれどもね。「アドボケイト機能」。

 

○林構成員

 スウェーデンでもオンブズマン制度と言ったりすることもあるので、多分、アドボカシーという上位概念の中にアドボケイトという一つの考え方もある。アドボカシーは非常に広いように思います。

 

○奥山座長

 そうですね。

 

○西澤構成員

 わかりました。そこは委ねます。一応、疑問だということだけ出しておきます。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 そろそろ時間が来ました。この報告書を、きょうをもって、これからできたものを最終的に私がチェックさせていただきまして、大臣に手渡すという段取りになっております。本当に皆さんの御協力に感謝したいと思います。

 昨日来、メディアがいろいろと書いてくれました。その一つの評論の中に「これは革命である」という評論があって、私はおっと思いました。私自身が、四半世紀この代替養育に微力ながらかかわらせていただいてきた中で、皆さん一人一人が本当に一生懸命やられているし、決してサボっているわけではないのですけれども、ただ、なかなか前へ進まない。アドホック的に少しずつ変えていっても、基盤となる考え方が変わっていなければ変わらないのではないかということで、どこかで、仲間内では「革命が必要だな」みたいことを言っていたのですけれども、「これは革命だ」と書いてもらって、おっと思いました。

 そうやって考えてみると、ある意味、今回の法改正を含む改革というのは、子どもにとっての市民革命なのかなと。子どもが権利を獲得する市民革命であったと考えてもいいのかもしれないと思っています。その市民革命が法律として起きた後のブループリントをここで議論してきたということなのだろうと思います。

 私が昔読んだ本で、有吉佐和子さんが訳された本で「最後の植民地」という本がありました。それは、世界的な女性の権利侵害のことを書いた本だったのですけれども、私は「その先の植民地」という本を書きたい、書きたいと思って現在に至りました。「その先」という意味は「子ども」なのですけれども、ただ、その本を書く前に、子どもの権利を前面に打ち出していくことができるようになったということは非常に大きいことだと思います。

 本当にこの間、構成員の先生方、あるいはワーキンググループ、その他の検討会の先生方、そして、その周りで励ましや御指導をいただいた方々に感謝したいと思いますし、そして、何より、恐らく限界を超えて頑張ってくださった吉田局長、山本審議官を初めとする事務局の方々に、深く深くお礼を申し上げたいと思います。

 さらに、3年前からいろいろな審議会あるいは委員会での検討、そして、法改正があり、この検討会がありという形で流れてきたわけですけれども、そこに関しましては、塩崎厚生労働大臣を初めとした厚生労働省で関連された全ての方々、特に、3代にわたっていますので全員のお名前を挙げるわけにはいかないのですけれども、本当に御尽力をいただいた旧雇用均等児童家庭局の方々に感謝したいと思います。

 ただ、これはまさにスタート台に立ったというところですので、これからもみんなで頑張っていかなければなりません。特に、先ほど上鹿渡先生からもお話がありましたように、現場の方のこれまでの知恵、能力といったものを、大切な宝物にしながら子どもの権利を守っていくのだということを考えることが大切だと思います。そして、そのために制度をよくし、そして、政策を進め、いい形で子どもたちの権利を守っていくことを推し進めていけたらと思います。

 ただ、先ほど革命と言いましたけれども、変わろうとするときには、必ず変えたくないという動きが生じます。これは誰の心の中にもある問題で、私の心の中にも、先ほど上鹿渡構成員が不安と両方あるだろうとおっしゃっていたように、動かしたい、でも不安という気持ちは絶対にあります。ですから、変えたくないという気持ちが生じるのは、これは当然で、必ず生じるものですから、それを考えながら、ただ、それによって本当に子どもの権利が守れるのかということを常に考えながら、そこに焦点を当てて、皆で進んでいくということが一番重要なことだと思っています。

 この間、至らない座長でございましたが、皆さんの助けで何とか報告書を出すに至りました。本当にありがとうございました。

 

○藤林構成員

 提案なのですけれども、この革命的な取りまとめに一番貢献いただいたのは、座長の奥山先生だと思うのです。昨日、松本先生と話していて、いろいろな取りまとめに個人の名前のレポートというものがあるのですけれども、「奥山レポート」と言っていいですかという提案です。

 

○奥山座長

 それはちょっとあれなのですけれども、ただ、これが恐らく子ども家庭局でできた初めての報告書ではないかと思いますので、ぜひ子ども家庭局の中ではブループリントとして大切にしていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。


(了)

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