ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 医師の働き方改革に関する検討会> 第1回医師の働き方改革に関する検討会 議事録(2017年8月2日)




2017年8月2日 第1回医師の働き方改革に関する検討会 議事録

医政局

○日時

平成29年8月2日
13:00~14:30


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)9階 省議室


○議題

(1) 働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制、医師の勤務実態等について
(2) 医師の働き方改革について(自由討議)

○議事

 

 

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 定刻となりましたので、ただいまより第1回「医師の働き方改革に関する検討会」を開催します。

 構成員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 座長選任までの間、進行を務めさせていただきます医政局医師・看護師等働き方改革推進官の乗越と申します。よろしくお願いいたします。

 初めに、塩崎厚生労働大臣より御挨拶がございます。

○塩崎厚生労働大臣 一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 本日、大変お忙しい中、御出席をいただきました皆様方に、改めて感謝を申し上げたいと思います。きょうは、医師の働き方改革に関する検討会ということで、その第1回目の会合にお集まりをいただいたところでございます。

 これまでも、医師の働き方の改善の必要性につきましては、繰り返し議論をされてきたところでございますけれども、昨年度、実施をいたしました医師の勤務実態に関する調査、これは東大の井元先生にお願いをいたしまして、全国の10万人の医師に対してアンケートを送りまして、1万6,000人余りの先生方にお返しをいただいた。そういう大規模な調査を私どもは初めてやったわけでございます。

 その調査の中でわかったことはいろいろありましたけれども、特に若年の医師の先生方を中心にして、オンコールや当直を除いても週60時間を超える勤務時間、長時間労働が常態化している。そういう方々が一定数おられるということが改めて確認できたところでございます。

 このような調査結果などを踏まえて、本年4月に取りまとめられました「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」、これは東大の渋谷教授に座長になっていただきましたが、その報告書の中におきましても、医療従事者の自己犠牲を伴う負担と士気に過度に依存をいたしましたシステムから脱却をすべきではないかという指摘がございました。

 政府全体としても、働き方改革をことしの3月までやってまいりましたが、その3月にまとめられました「働き方改革実行計画」におきまして、働き方の健康の確保とか、あるいは仕事と家庭の両立を無理なく実現するために、長時間労働の是正に取り組むことがメーンテーマの一つとして取りまとめがなされ、特にその一環として、罰則つきで時間外労働の上限規制を初めて導入する、法律としては初めて上限規制を正式に罰則つきで導入するということになって、政労使で合意をいたしたところでございます。

 今、法案の作業中でございますけれども、このような中で、医師につきましては、この「働き方改革実行計画」では、「時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である」と書かれておりまして、「具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る」と実行計画には書かれているわけでございます。

 これを踏まえて、医師の時間外労働の上限規制の特例のあり方、規制はかけるということでありますけれども、特例のあり方について、この場で御議論をいただくことが目的でございまして、このような規制的な手法を考えるというのが、まずもってのタスクでございますけれども、具体的な医師の勤務環境改善策を推進することで、医療の生産性を高めて、提供する医療の質を維持、向上しながら医師の働き方を改善していくことも同時に重要なわけであります。

 先ほど触れました「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」、渋谷検討会の報告書では、いわゆるタスク・シェアリング、タスク・シフティングの手法によりまして、医療従事者の業務負担の最適化、1人の患者を複数の医師で担当するグループ診療といった活用などが提言をされておりまして、このようなタスク・シェアリング、タスク・シフティングを通じて、いろいろな面で医師の働き方は十分変わり得るわけであります。このような方法についても幅広い観点から、皆様方にはぜひ忌憚のない御議論をいただいて、若手の医師あるいは女性の医師、特に将来の展望を持ってキャリア形成をしたいと思いながら、なかなか今の環境のもとでうまくいっていないという方々の思いに意をいたして、ぜひ、生き生きと働くことができる環境整備につながる御提案をいただければありがたいと思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、医療の中身をどうするのか。その中で医師がどういう働き方をするのかということが決まってくるわけでありますので、一人の医師だけを見ていても、なかなか医師の働き方は変わらない。すなわち、これまでチーム医療と言われてまいりましたが、本当の意味で、これからタスク・シェアリング、タスク・シフティングをして新しい医療の形をつくる中で、医師がどういう人間らしい働き方ができるのかということを、ぜひお考えをいただけたらありがたいなと思っています。

 先ほど申し上げたように、実行計画の中で「医療界の参加の下で」ということですが、医療界とは誰のことを指すのかというのは当然問題になるわけで、昔だったらば、団体代表だけみたいなことが多かったわけでありますが、私どもとしては、ポジショントークの場としてここが議論されるようなことではなく、皆さん方のそれぞれのお考えをしっかりと御開陳をいただいて、もちろん団体としての御意見は当然のことながらしっかりと耳を傾けるわけであります。しかし、それで全ての声を代表できるかというと、なかなかそうはいかないのだろうと思いますので、ぜひ皆様方には自由闊達な御議論をいただいて、最後はまとまらないといけないので、そこのところはよろしくお願いしたいと思いますけれども、これからしっかりとした議論がこの場で行われて、医師の新しい働き方、そして言ってみれば働く人として、医師が人間的に働いていけるように、皆様方の御尽力に期待をして、御挨拶とさせていただきたいと思います。

 どうぞよろしくお願いをいたします。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 ありがとうございました。

 それでは、カメラの方はここで退室をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 それでは、構成員の紹介に移らせていただきます。

 本検討会の構成員につきましては、開催要項の別紙のとおりでございますが、本日御出席の構成員の皆様を御紹介させていただきます。窓側にお座りの委員から御紹介をいたします。

 東京女子医科大学東医療センター救急医、赤星構成員でございます。

 公益社団法人日本医師会常任理事、市川構成員でございます。

 順天堂大学附属病院医師、猪俣構成員でございます。

 東京大学大学院法学政治学研究科教授、岩村構成員でございます。

 東京ベイ・浦安市川医療センター集中ケア認定看護師、戎構成員でございます。

 福岡県済生会福岡総合病院名誉院長、岡留構成員でございます。

 岡山大学医療人キャリアセンターMUSCATセンター長、片岡構成員でございます。

 保健医療福祉労働組合協議会事務局次長、工藤構成員でございます。

 東北大学環境・安全推進センター教授、黒澤構成員でございます。

 早稲田大学法学学術院教授、島田構成員でございます。

 岩手県立久慈病院副院長、遠野構成員でございます。

 特定非営利法人架け橋理事長、豊田構成員でございます。

 医療法人恒貴会訪問看護ステーション愛美園所長、中島構成員でございます。

 ハイズ株式会社代表取締役社長、ハイ構成員でございます。

 社会医療法人ペガサス理事長、馬場構成員でございます。

 塩原公認会計士事務所特定社会保険労務士、福島構成員でございます。

 青葉アーバンクリニック総合診療医、三島構成員でございます。

 日本労働組合総連合会総合労働局長、村上構成員でございます。

 全日本自治団体労働組合総合労働局長、森本構成員でございます。

 千葉大学医学部附属病院院長、山本構成員でございます。

 なお、本日は荒木構成員、渋谷構成員から所用により御欠席との御連絡をいただいております。

 それから、事務局でございますが、医政局、労働基準局、保険局より出席いたしております。時間の関係上、紹介は割愛させていただき、座席表により御確認をいただければと思います。

 それでは、塩崎厚生労働大臣におかれましては公務がございますので、ここで退席とさせていただきます。

(塩崎厚生労働大臣退室)

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 次に、本検討会の座長についてでございます。

 本検討会の座長につきましては、岩村構成員にお願いいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 ありがとうございます。

 それでは、本検討会の座長は岩村構成員にお願いいたしたいと存じます。

 以降の議事運営につきましては、座長にお願いをいたします。

(岩村座長、座長席へ移動)

○岩村座長 ただいま座長を仰せつかりました岩村でございます。大変重い役目を負うことになりましたが、構成員の皆様方の御支援をいただきながら務めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 議事に入る前なのですが、お立ちの方がいらっしゃるので、もしまだ後ろのほうで席があいているようでしたらお詰めいただいたほうがと思うのですが、難しいでしょうか。難しければ、少しあいている脇の席等、事務局のほうでつくっていただいて、お座りいただいたほうがいいかと思います。申しわけないのですが、よろしくお願いいたします。

 なるべくお詰め合わせの上、御協力をお願いしたいと思います。

 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。まず、事務局のほうから資料の確認をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 それでは、お手元の配付資料でございます。まず、次第がございまして、その後、座席表を挟みまして、資料1「医師の働き方改革に関する検討会 開催要綱」でございます。資料1につきましては「2.検討事項」をごらんいただければと思いますが、先ほど大臣からお話がありましたように、働き方改革の実行計画に基づきまして、この検討会は開催されるものでございます。検討事項につきましては3点、新たな医師の働き方を踏まえた医師に対する時間外労働規制の具体的なあり方、医師の勤務環境改善策、その他ということといたしております。

 資料2「働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制等について」。

 資料3「医師の勤務実態等について」。

 それから、参考資料といたしまして、参考資料1「『働き方改革実行計画』(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)」、参考資料2「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書」を添付しております。

 不足等ございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。

 以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 資料のほうはよろしいでしょうか。

 それでは、お手元の議事次第をごらんいただきたいと思いますが、本日の議題は2つとなっております。「働き方改革実行計画を踏まえた時間外労働の上限規制、医師の勤務実態等について」と「医師の働き方改革について」となっております。

 まず、議題1につきまして、事務局から御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○藤枝労働条件政策課長 労働基準局労働条件政策課長でございます。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、資料2を私のほうから御説明させていただきます。めくっていただきまして「現行の時間外労働規制の概要等」ということでございます。議論を始めていただく前提といたしまして、現行の労働時間法制について御確認をいただければと思い、御用意しております。

 2ページでございます。まず、原則でございます。法定の労働時間、これは労働基準法に32条という条文がございまして、そこで原則が定められております。1週間40時間、それから1日8時間を超えて労働させてはならないと規定してございまして、罰則つきの法律で、この原則が定められております。したがいまして、ある意味、この40時間、8時間が原則的な上限だということになります。

 ただし、次のところにございますが、いわゆる残業、時間外労働及び休日労働をさせる場合の規定がございます。労働基準法36条という条文がございまして、使用者は、過半数組合または過半数代表者と労使協定、いわゆる36協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合、時間外または休日に労働させることができると。残業するために、この36協定の締結と届け出という手続が必要になります。

 また、その下でございますけれども、その場合は、いわゆる割増賃金も払っていただく必要がございまして、通常賃金の2割5分以上の割増賃金等を払っていただくことが必要になってございます。

 3ページをごらんください。この残業時間、いわゆる時間外労働でございますけれども、先ほど申し上げたように1日8時間、1週40時間が原則で、36協定を締結して届け出ればこれを超えることができますが、法律上は、いわゆる残業時間についての時間数の上限は明記されておりません。ただ、ここは厚生労働大臣が法律に基づく告示を定めておりまして、時間外労働の限度基準を定めております。過度な残業は看過できないということから、大臣告示で指導するという仕組みになっております。

 その限度基準の中に書いてございますのが、1カ月45時間あるいは1年360時間といった時間外労働の上限の限度時間でございます。この時間数につきましては、法的な拘束力はないものの、労働基準監督署において指導を、この基準をもとにさせていただいている状況にございます。

 ただ、この時間についてもさらに例外がございまして、赤字で書いてありますが特別条項と呼んでおりますけれども、例外的に臨時の必要のある場合については、さらにこの45時間、360時間を超えて36協定を締結することができるとなってございまして、年間6カ月という限度はあるのですけれども、この特別条項を結べば、45時間、360時間を超えることができます。

 超える場合については、具体的な時間数の決めがございません。当然、何時間、例えば月80時間とかそういう数字は労使で話し合って決めていただく必要はありますけれども、その数字の上限は特に示されていないということで、ここがいわゆる青天井ではないかという御批判を受けたわけでございます。制度としては、こうなっております。

 4ページ、具体的なイメージということで、サンプルを載せてございます。3つの病院を少し例として挙げさせていただいておりますが、これが36協定で定まっている時間数でございまして、例えばA病院であれば真ん中辺に「延長時間の限度(通常)」とありますが、これは1カ月45時間、1年360時間でございますので、先ほどお示しした大臣が定める基準には適合している状況でございます。

 右側が「延長時間の限度(特別条項)」、これがまさに特例の部分でございますが、これについては、このA病院では1カ月150時間、年6回まで、1年間1,000時間という数字になっておりまして、延長の理由としては、医療業務及び付帯業務等が著しく集中した場合ということになってございます。

 同じようにB病院では、通常の延長時間は45時間360時間で収まっておりますけれども、特別条項については、1カ月150時間、1年990時間、C病院にいたっては、1カ月200時間、1年1,470時間といった、かなり長い時間数が特別条項として結ばれているということでございます。

 ただ、一つ御留意いただきたいのは、これはあくまで最大ここまで時間外労働できるというアッパーでございますので、実際にこれだけ働いているかどうかは別でございます。念のため、保険的に長目の時間数を定めている例も間々あるところではございますが、こういう上限を定めている状況でございます。

 5ページでございます。医師の方の働き方を語るに当たっては、いわゆる労災の問題も避けて通れないわけでございます。いわゆる過労死基準と言われているものを参考に掲げさせていただいております。脳・心臓疾患の労災認定基準でございまして、業務による明らかな過重負荷があったかどうかを総合的に判断しております。その判断の基準の一つとして、下にございますが長期間の過重業務があったかなかったかを判断いたします。その判断の指標の一つとして、(2)過重負荷の有無の判断として、発症前1カ月間に時間外・休日労働がおおむね100時間超え、あるいは発症前2~6カ月間の月平均で時間外・休日労働がおおむね80時間超え。この時間数を超えている状況にあれば、業務と脳・心臓疾患の起因性があると判断することになります。いわゆる過労死ラインと言われているものでございます。

 ですので、この過労死ラインという数字だけを取り上げてみれば、100時間80時間というのがラインでございますので、先ほどの36協定の数字をどう見るかという議論になっていくと思っております。

 6ページでございます。これは直近5年間の医師について、過労死等の労災補償状況を見たものでございます。マル1が脳・心臓疾患、マル2が精神障害でございます。数としては1桁ではございますけれども、毎年残念ながら一定の数が労災、過労死等と認定されておりまして、この支給決定件数のところが過労死として認定された数字になりますけれども、括弧内は死亡者の方の数でございますので、残念ながら亡くなられている方も毎年起きているという状況でございます。

マル2精神障害のほうは、括弧内は自殺をされた方の数でございます。

 以上が現行制度の説明になります。

 7ページが「時間外労働の上限規制について」ということで、先ほど大臣からも御説明がありましたように、昨年9月から総理のもとに働き方改革実現会議が開催され、この労働時間の上限規制について議論が行われました。そもそも働き方改革は何のためにやっているかをまとめたのが8ページでございます。かいつまんで申し上げますと、働き方改革についての意義でございますけれども、一番上の枠の2ポツ目をごらんください。働き方改革こそが労働生産性を改善するための最良の手段という捉え方になっております。労働力人口が減少する中、あるいは育児や介護といった制約のある労働者がふえている中で、いかに効率よく成果を出していくか。そういう意味で、労働生産性を改善するための働き方改革が必要だという認識に立っております。

 その上で、それが生産性向上に結びつき、分配に結びつき、成長と分配の好循環が構築される。こういった社会を目指していくのだという発想でございます。

 右下の真ん中あたりの「長時間労働」という赤枠のところをごらんください。長時間労働についてはどういう認識かということが書いてございます。健康の確保はもちろんですけれども、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっていると。

 下でございますけれども、これを改善することによってワーク・ライフ・バランスが改善され、女性や高齢者も仕事につきやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。経営者にとってみても、どのように働いてもらうかに関心を高めて、単位時間(マンアワー)当たりの労働生産性向上につながることが期待されるという認識で取り組んだところでございます。

 次の9ページは構成メンバーでございますので、御参照ください。安倍総理のもと、議長代理に働き方改革担当の加藤大臣、それから塩崎厚生労働大臣がつかれ、有識者としては経団連・連合のトップの方にも入っていただいた会議でございます。

10ページがその結論でございまして、3月28日に「働き方改革実行計画」というのを決定いたしました。さまざまな論点がございましたが、大きな論点としては「2.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」、そして「4.罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」ということが柱になってございます。

11ページでございます。「働き方改革実行計画」で医師の問題についてどう書かれているかというのが赤字のところでございます。これは先ほど大臣が御挨拶でお話をされたとおりでございます。改めて読み上げさせていただきます。

 医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。具体的には、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る。

そういうことが決定されたところでございます。

12ページは、この中で出てきました応召義務でございます。これは御案内のとおりでございますが、医師法の第19条に規定がございまして、診療に従事する医師は、正当な事由がなければ患者からの診療の求めを拒んではならないとされております。

 また、この正当な事由というのは、医師の不在または病気等により、事実上診療が不可能な場合ということで、限定的に解されているところでございます。

13ページは、医師の養成課程を簡単に図示したものでございまして、御案内のように、医学部を卒業後、国家試験合格後も、法律に基づく臨床研修2年、新たな専門医の養成3年以上というような形で、10年以上の自己研さんを必要とする状況になっているということでございます。

 こういった医師の特殊性、業務の特殊性を踏まえて、この時間外労働の問題をどう考えていくかという検討をお願いしたいということでございます。

1415ページは、時間外労働の上限規制等について、6月に労働政策審議会で建議いただいた内容でございまして、これを踏まえて今、法案作成作業中でございます。簡単に申し上げますと、1の(1)でございますが、法律に基づく上限規制として月45時間、年360時間を原則とするということでございます。現在は、先ほど申し上げたように、大臣の告示で指導するための基準となっていますが、今後は法律に格上げして罰則つきのものとする、法律上の規制とするという方向性でございます。

 また、右側の特例は先ほど特別条項と申し上げた部分ですけれども、この特例についても、現在は上限の数字がないのですけれども、今後は年間720時間、それから休日労働を含んで2~6カ月平均で80時間以内、単月でも100時間未満といった上限を、特例の場合もつくろうということでございます。

 簡単でございますが以上でございます。「働き方改革実行計画」全体については、先ほど申し上げたように参考資料につけてございますので、また適宜御参照いただければと思います。

 資料2については以上でございます。

○花咲医療勤務環境改善推進室長 続きまして、資料3につきましては私、医療勤務環境改善を担当しております花咲のほうから御説明させていただきます。ちょっと風邪をひいておりまして、途中、お聞き苦しい点等ありましたら、まことに申しわけございません。

 まず、資料3「医師の勤務実態等について」ということで、各種データを御紹介する資料になっております。

 おめくりいただきまして、まず「1.医師の勤務実態等」ということで御紹介いたします。先ほどの働き方改革、長時間労働の是正につきましては、ワーク・ライフ・バランスという観点もあると御紹介させていただいたところでございますので、現在、医師の基本属性といたしまして、女性医師の割合等についてまず御紹介したいと思います。

 2ページ目、全医師数に占める女性医師の割合は増加傾向にありまして、平成26年時点で2割を超えています。右のグラフにございますように、医学部入学者で見るともっと多数の方が女性だということになっております。

 3ページ目、女性医師を診療科別に分布等について見てまいりますと、皮膚科、小児科、産婦人科といった診療科では女性医師の占める割合は高くなってございます。また、一方で、外科や脳神経外科などの診療科では、女性医師の占める割合は低くなっております。

 4ページ目でございます。医師に関しましても、一般に言われておりますM字カーブといったものが存在している資料になっております。

 5ページ以降は、労働時間なり勤務時間についてのデータを御紹介していきます。まず、5ページ目は、総務省の就業構造基本調査で、1週間の労働時間が週60時間を超える雇用者の割合を見たものでございます。年間就業日数200日以上の正規職員に関してのデータになってございますけれども、雇用者全体で見ますと1週間の労働時間が60時間を超える方の割合が14%となっておりますが、職種別に見た場合、医師が41.8%と、中で最も高い割合となっております。

 6ページ目でございます。今、申し上げましたように、週60時間を超える医師の割合は非常に高くなっているのですが、その時間別の分布をこのようにグラフにいたしますと、特に75時間以上で一度はね上がっておりまして、著しく長い方が医師の中には存在することが明らかになっているかと思います。

 7ページでございます。先ほど、大臣のほうから挨拶でも御紹介させていただきましたが、井元先生にお願いしまして昨年度行いました調査の結果でございます。病院の常勤勤務医の週当たりの勤務時間の分布について、まず7ページでは御紹介しております。ここで一言申し上げますと、勤務時間の定義でございますが、上の四角にございますように、診療時間、自己研さんや会議への出席等の診療外時間に加えまして、当直時間中の待機時間というものも含めまして、それを勤務時間と定義を置きましてデータをお出ししておりますので、その旨、御了承ください。

 この勤務時間につきまして、週60時間を超えていらっしゃる方は、男性医師の場合は41%、女性医師の場合は28%となっております。

 続く8ページでございます。勤務医の週当たりの勤務時間を御紹介したものです。全年代の平均で、男性は57時間59分、女性は51時間32分となっておりまして、年代別に平均を見ますと、男性の場合は、年代が上がるにつれて減少しておりまして、女性の場合は、一旦、30代、40代で一番下がったものが、また50代で上がった上で、2つの山があるような形になっております。

 9ページをごらんください。続きまして、週当たりの勤務時間を、年代別にピークはどこにあるかというものを見た資料でございます。男性医師の場合は、20代は5060時間がピーク、それ以降、30代で6070時間に一回ピークが上がりまして、その後、徐々にピークが下がっていく形になっております。

 一方、女性医師は、20代が5060時間、そして3050代でピークは一旦下がった上で、60代でさらにピークが下がるという、また違う形をたどっております。

10ページ目でございます。今度は勤務時間を診療科別に見たものでございます。全診療科平均で56時間28分でございますけれども、診療科別に見ますと救急科、外科、産婦人科、その辺が長くなっております。

 右のグラフは、診療科別に時間帯の分布を見ておりますけれども、相対的に勤務時間が長い救急科や外科系は、それぞれ52%、44%の方が勤務時間は週60時間以上となっておりますけれども、相対的に短目である精神科であっても、27%の方は1週間当たり60時間以上の勤務時間があるという状況になっております。

11ページ目をごらんください。今度は勤務時間を家族構成別に見ております。既婚の女性の常勤勤務医の方は、お子さんがいらっしゃると勤務時間が短くなる傾向があるということが、右のグラフから見てとれるところでございます。

12ページをごらんください。医師の方に、実際に育児に携わる前の理想の働き方と、実際はどうでしたかという理想と現実についてお伺いしたデータでございます。男性医師の場合は、時間短縮勤務や勤務日数減などを希望される方もいるのですが、大数は子育て前と変化なく働きたいという理想を抱いていらっしゃいまして、現実もそのまま子育て前と変化なく働いていらっしゃる状況でございます。

 右のグラフは女性ですけれども、女性の場合は時間短縮勤務や勤務日数減などを希望する割合が多いとなっておりまして、男性とまた全然違うのが求職・離職される方が現在常勤医師の方の1割、非常勤医師ですと4分の1が休職・離職を実際に経験されているという状況になっております。

13ページをごらんください。先ほど、育児中に休職・離職される女性医師が多いと御紹介いたしましたけれども、そういった休職・離職された女性医師は、他の勤務形態をとった女性医師と比較して、専門医資格の取得率が有意に低いというデータがございます。

14ページでございます。今まで勤務時間なり労働時間が長い傾向にあるということを御紹介してきましたが、他の働き方における課題を御紹介する形で、また別の調査からデータを持ってきております。

 まず、時間外労働になる主な理由につきまして、1—1で御紹介しております。他律的な事情であります「緊急対応」とか「手術や外来対応等の延長」といったものが一番多くなっております。続きまして「記録・報告書作成や書類の整理」、「会議・勉強会・研修会等への参加」というものも続いております。

 その下、1-2のグラフは、月の最長連続勤務時間をお示ししたものでございます。右の赤い破線で囲んでおりますけれども、連続勤務が24時間超という方が1割強いらっしゃるような状況になっております。

 また、最長連続勤務時間が長いということは、医師における当直などの特殊な勤務体系にもよるのかと思うのですけれども、その右の1-3、1カ月の宿直の回数についてお伺いしたところ、平均3.2回ということでございました。

 その下、宿直1回当たりの拘束時間と実労働時間数についてもお伺いしたところ、拘束時間の平均は15.2時間、そのうち実労働時間は平均5.3時間という結果が出ております。

15ページをごらんください。先ほど、時間外労働になる理由につきまして、記録・報告書作成や書類の整理とか会議への参加等々がございますと御紹介したところですが、記録や文書の作成等も含めまして、実際に50代以下の常勤医師が1214日という特定の1日に費やした時間数をお伺いしたものです。患者への説明とかいろいろございますけれども、一番多いのは真ん中の医療記録(電子カルテへの記載)が93分、また、先ほどございましたように文書作成などに36分がかかっております。

16ページをごらんください。先ほど御紹介しました5つの業務に費やしている平均240分がございましたが、そのうちどのぐらいを他職種に分担できるとお考えになりますかと聞いた結果がこちらになってございます。

 その上の四角にございますように、平均240分のうち20%弱の約47分が他職種に分担してもらうことが可能だと考えているという結果が出ております。

 おめくりいただきまして17ページ以降「2.勤務環境改善の取組の現状」について御紹介いたします。

 まず、18ページ目でございます。医療法に基づきまして、現在、医療機関の中で自主的に勤務環境の改善に取り組むべき努力義務が定められてございます。そういったものに対して、それを支援するための拠点といたしまして、一番下にございます都道府県に医療勤務環境改善支援センターというものが設置されておりまして、現在、個別の医療機関において勤務環境改善の取り組みを行う場合に、労務管理の専門家と医業経営のアドバイザーを両方併置いたしまして、支援を行っているところでございます。

 おめくりいただきまして19ページをごらんください。こちらは女性医師の支援に対する主な取り組みをまとめたものでございます。地域医療介護総合確保基金を使いまして、各都道府県で一番上、女性医師等就労支援事業をそれぞれ行っていただいているところでございます。

 また、2つ目といたしまして、片岡先生にもいろいろ御苦労いただいているのですけれども、女性医師キャリア支援モデル普及推進事業という事業を実施しておりまして、そこの1つ目の○にございますように、女性医師支援の先駆的な取り組みを行う医療機関をモデル医療機関として位置づけて、地域の医療機関に普及可能な支援策のモデル構築やシンポジウム等の普及啓発などを行っていただいているところでございます。

 3点目、女性医師支援センター事業でございます。日本医師会様に委託いたしまして、女性医師の就業に関する実情把握の調査や再研修先の紹介等々、いろいろな業務を行っているところでございます。

 最後、20ページが「(参考)関連スケジュール」。

 おめくりいただきまして21ページです。この資料は、先日の医師需給分科会にお出しした資料なのですけれども、まず一番上、本検討会、医師の働き方改革の関係の検討会では、先ほどから開催要綱等で御説明しているように、労働時間短縮策の検討をしていただいた上で、時間外労働規制のあり方について御検討いただくこととしております。

 今後の進め方は、まだ詳細が定まっていないところもございますけれども、年明けをめどに中間整理を一旦していただいて、それを踏まえまして、その1段下「医師偏在対策・需給推計」ということで、今後、医師需給推計を行わなくてはなりませんので、こちらは検討会での中間整理も踏まえまして、需給推計にそれを反映させていければと考えております。

 雑駁かつ駆け足になりましたが、以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして議題の2番目であります「医師の働き方改革について」に移りたいと思います。働き方改革実行計画と医師の勤務の実態等について、ただいま御説明をいただいたところでございます。開催要項にもございますように、また、先ほど大臣がお話しになりましたように、この検討会の検討事項は、新たな医師の働き方を踏まえた医師に対する時間外労働規制の具体的なあり方というものと、その実現に向けた医師の皆さんの勤務環境改善策などということになっております。

 働き方改革を進める中で、医師の皆さんにつきましても長時間労働の是正を目指す必要があるわけでありますけれども、一方では、応召義務等の医師の特殊性についても配慮することが求められているところでございます。

 きょうは第1回ということでもございますので、構成員の皆様のそれぞれのお立場から、現場の実態、医師の皆さんの業務の特殊性、想定される論点、改善に向けた取り組みなどについて、幅広く御意見等をいただければと考えております。

 なお、きょう御出席の皆さんは数が非常に多く、恐らく皆様それぞれ御発言をされたいと思いますので、申しわけございませんけれども、発言に当たられましてはお一人様2分以内ということでお願いをしたいと思います。御協力をいただければと思います。

 それでは、どちらからでも結構でございます。

 では、市川構成員。

○市川構成員 日本医師会の市川でございます。日本医師会の取り組みを中心に、2分ですね。

 それでは、要点のみということで、まず、医師の働き方を論じる上で大切なのは、できることから始めることではないかと思います。将来の議論は大切ですが、まず、医療界として自主的な改善を進め、その着地点を予想しつつ、医師の特殊性を踏まえた将来のあり方について考えるべきではないでしょうか。

 日本医師会は、平成20年に勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会を設置し、以降、さまざまな取り組みを行ってまいりました。今、申し上げました、できることから始めるという視点で作成したツールがありますが、これは次回以降にお示ししたいと思います。

 医療界を挙げて、まずできることから始め、今ある仕組み、例えば医療勤務環境改善支援センター、地域医療支援センターなどを活用することが大切であると考えております。医師の働き方について2年の猶予をいただいたのは、応召義務の特殊性を理解していただいているからだと思います。応召義務に加え、自己研さん、高い職業意識、倫理観などが特殊性によって長時間労働、連続勤務、時間労働の突発的な変動、労働時間の解釈の違いが起こり、結果、労働時間管理に健康管理の難しさが生じている。これが一番の問題点だと思いますし、また、一般労働者と大きく違う点であると考えております。

 まず、初めに応召義務。現在の医師法の応召義務は、明治7年に医制という現在の医師法のもととなった規程で定められ、当時は罰則規定が置かれておりましたが、昭和23年に医師法が改定される際、応召義務を法で規制すべきではないとの意見があったが、医師勤務の公共性から、応召義務は残しておくべきとする意見が大勢を占めました。今のような形で残されたことと重なります。ただし、罰則規定は削除され、医師の良心に委ねられることになった応召義務は、このような長い歴史があるものであります。

 応召義務に答える仕組みとして、医療機関へのフリーアクセス、昭和36年に成立した国民介護保険制度を背景に、誰でもいつでも医療保険で医療を受けられる体制を構築してまいりました。国民にとっても、長い間、常識化、定着化している仕組みであります。

 長い間の積み重ねででき上がっている医師の働き方を考えるには、医療界だけでなく、国民の理解も必要であり、慎重に進める必要があると考えております。

 続きまして、自己研さん。日本医師会の医の倫理綱領1番目に「医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす」とあります。医師にとって、知識と技術の習得は義務と不可分であり、これが労働時間を長くする要因にもなっております。

 しかし、診療に直結するのかそうでないかの切り分けは難しく、病院の指示があれば、自己研さんは業務となりますが、病院の中で人によっては解釈が異なることでもあります。

 この自己研さんをどのように取り扱うかという点は、大きな課題の一つであると考えます。

 続きまして、高い職業意識、倫理性。医師は、人の生命を預かっており、さまざまな決まりがあっても、患者を何とか治したいという高い職業意識、倫理観で仕事をしているということがございます。医師のこうした考えた方で医療が支えられていることが、この長時間労働につながっている面があります。

 日本医師会でこのたび立ち上げました医師の働き方検討会は、医師の勤務環境改善のために具体的な方策、地域医療体制を踏まえた勤務医の健康確保の補則を中心にという会長諮問のもとで議論を行っております。

 日本医師会は、働き方改革の目的は長時間労働の是正ではなく、勤務医の健康を守りつつ、地域医療体制をしっかりと守っていくことだと考えております。長時間労働をまずきちんと是正することは当然でありますが、連続勤務の是正も必要ですし、医師に対する安全衛生体制全般にも向けて対応していく必要があると考えております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、ほかの方いかがでございましょうか。

 村上構成員、どうぞ。

○村上構成員 ありがとうございます。労働組合の連合の村上でございます。

 この検討会の目的と進め方について、1点ずつ申し上げたいと思います。

 まず、検討の目的でございますが、先ほど資料2などでも御紹介いただきましたけれども、過労死や過労自殺などで亡くなる医師が存在しています。労災認定されずに、ただ裁判で労災と覆ったような例もございます。こうしたことからすると、医師の長時間労働を改善することは重要であります。

 先日もマスコミで、女性の研修医の方の労災認定の事案が大きく報道されたところでございます。過労死ラインをはるかに超えるような残業を前提として、いつ倒れてもおかしくないような状況で医師が働くことを前提とした医療提供体制のままであってはならないと思います。そういった意味で、この検討会がこの時期に開催されることは、大変時宜にかなったものだと考えております。

 勤務医は、医師の特殊性もございますけれども、紛れもなく労働者でございますし、同じ人間であります。また、社会の安全を支えるという仕事は、医師だけではなくほかの多くの仕事でもなされているところでございます。そうしたことから考えまして、医師についても労働基準法上の労働時間規制がきちんと適用されること、また、今回の時間外労働の上限規制も適用されるということを大前提として、業務改善などのために知恵を出し合うことをこの検討会の目的として検討を進めるべきであると考えます。

 2点目は、進め方についてでございまして、今回、多くのドクターが参加されていますが、現状認識を共有するために、過労死、過労自殺など過重労働による医師の労災認定の事案や裁判例などについて、ぜひ件数だけではない資料も出していただきたいと思います。また、そのような事案に深く関与された弁護士など、専門家からのヒアリングも行っていただきたいと思っております。ドクターの過労死、過労自殺にかかわる裁判の判決文も読むことがございますが、大変過重な、過酷な労働環境でございます。こうした働き方は、決して特殊なものではなく、氷山の一角ではないかと考えておりまして、ぜひヒアリングの機会を設けていただきたいと思います。

 よろしくお願いします。

○岩村座長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでございましょうか。

 では、猪俣構成員。

○猪俣構成員 順天堂大学の猪俣と申します。一臨床医として発言させていただきます。

 まず、私たちの働き方改革を踏まえた上での目的としては、質の高い医療の確保と、一方で質の高い職場環境を確保することであると思います。

 質の高い医療をこれから継続的に確保するためには、私たち医師自身でも自己研さんや研究活動といったサイエンスの部門であったりとか、学会活動といったものが重要になると思いますので、それに対して画一的な労働時間の制限は、医師においては設けるべきではないのではないかと考えています。

 一方で質の高い職場環境についてですけれども、私たちは、臨床いわゆる外来の部門で診察をしているだけではなくて、もちろん診察もしますけれども、医学生の教育であったり市民の教育であったり、あとは先ほど申し上げたとおり研究です。サイエンスに関係することをやったりとか、一方で、病院の経営自体にもかかわる場合がありますので、そういった多様ないろいろな仕事をこなす上で、どうやって労働環境を整備していくかということを少し検討したほうがいいのではないかと思います。

 本日、重要視されているタスク・シフトとかタスク・シェアリングという概念ですけれども、ぜひこういった検討会をもとに、そういったクライテリアとか目安、どのようなものが医師の仕事でタスク・シェアリングできるかというのを皆さんで考えていただいて、そういったものが具体的に導入されるような道筋をつくっていただければと思います。

 一方で、そういったものを外部委託すると病院自体の経営も危ぶまれますので、そういったことに対してはどのように検討していけばいいのかも皆さんで考えられればいいかなと思います。

 あとは、効率化に関してはITとかIoTといったものもありますので、そういった分野もどのように病院に導入して、医師の職場環境を改善できるかということも話し合えたらいいのではないかと考えております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、今、3人お手が挙がっていますので、赤星構成員、森本構成員、山本構成員の順番でお願いします。

 では、赤星構成員どうぞ。

○赤星構成員 私のほうからは、20代の最も労働時間が多いという統計が先ほど出された代で、かつ最も労働時間が多いとされる科である救急医という立場から、少し現場の状況も含めて御意見をさせていただきたいと思います。

 我々、若手の医師とか周りを見ても、別にみんながもっと働きたくないというわけではなくて、これ以上働きたくない人ももちろんいますし、特に救急とかになると、自己研さんのためにもっと働きたいという人ももちろんいます。なので、こういう統計を見ると、そういう人たちが両方一緒になって、同じ統計として勤務時間として上がってきていると思うのですが、これ以上働きたくない人が無理に働かないで済む環境をつくる。そして、もっと働きたい人たちは、働いた時間がしっかり報酬としてとか評価される。かつ、健康を脅かす量の労働時間にならないことができればなと思っています。

 あとは、特に働いていると、他職種のほうがむしろうまくやってくれるのではないかと思うような業務も物すごくたくさんあって、定員の交渉だとか、いわゆる文書の作成だとか、恐らく我々がやるよりももっと効率的に、かつよくできることがあると思いますので、そういうところは他職種にシフトしていただけたら我々は助かるな、もっと医療に集中できるなと考えています。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、森本構成員、どうぞ。

○森本構成員 自治労の森本です。

 今後の検討の方向性ということでお話をさせていただきたいのですけれども、先ほど医師全体として週60時間を超える労働時間の割合が40%を超えているという報告をいただいております。この60時間というのは、いわゆる過労死ラインに相当するようなものでございまして、4割の医師が過労死ラインを超えるような働き方を実際に行っているという状況でございます。

 地域や診療科目などによっても異なるのかもしれませんが、医師がほかの働き方と違って、長時間労働を行っても過労死につながらないなどということは絶対にあり得ないと思っております。今後、時間外労働の上限以内であるために、どう働き方を変えたら収められるのかという方向で検討していただきたいと思います。

 労基法にもありますが、1日8時間、週40時間が労働の基本であり、ここを基本に置きながら議論いただきたいと思うことと、検討に当たって、医師の応召義務なのですけれども、勤務医の場合は特に医師個人としての応召義務への対応という検討ではなくて、組織的にどうこの応召義務に対応できる体制をつくっていくのかという方向性で検討いただきたいと思います。

 それから、宿直に関してですけれども、拘束時間15.1時間、実質労働5.3時間というのもございました。この間、宿直に関する給与支給などをめぐって裁判などもたくさんございますので、そういった例や、医師以外の宿直の働き方に関する裁判例なども参考にしながら、実態についても詳しく報告、検討していただきたいと思います。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、山本構成員どうぞ。

○山本構成員 千葉大学病院の山本でございます。

 大学病院の管理者という立場から、一言お話をさせていただきたいと思います。

 ここのところ、多くの大学病院が労基署から御指導をいただいている状況がございまして、私ども全国医学部長病院長会議でも非常に危機感を持ってこの医師の労務管理ということについて今、検討を進めているところでございます。

 先ほど、病院勤務医の勤務時間の実態調査の結果が出ておりましたが、私ども全国医学部長病院長会議で調査しますと、これよりもさらに長い時間が出てまいります。まず、ここで具体的な数字は持ち合わせておりませんが、外科系などは軽く10時間ぐらい長い数字が出てまいります。

 私ども大学病院の特殊性としては、先ほどもお話がございましたけれども、診療のほかに教育と研究という3つのタスクが我々はミッションが課されておりまして、それがモザイク状に入りまじっている。ここからこの時間は教育、ここからここは研究でここからここが診療ときれいに切り分けられないという状況が非常に問題を複雑にしているかと思います。

 大学の教員の場合、通常、研究と教育が主体の場合には、裁量労働制がとられております。例えば医学部の教官でも、基礎系の教官は裁量労働をとっている。しかし、臨床系の場合には当然、診療が入りますから、裁量労働になじまない部分がございます。この辺を今後どのように切り分けて、どこからどこまでしっかり時間外労働の規制の対象となるのかとか、この辺はこの検討会での議論の流れも踏まえながら、私どもの病院長会議のほうでも検討を進めたいと考えているところでございます。

 どうぞよろしくお願いいたします。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは今、手が挙がっていますので、ハイ構成員、福島構成員、三島構成員の順番でお願いをいたします。

○ハイ構成員 ハイズ株式会社のハイと申します。私は元外科医でございまして、今は病院経営のコンサルティング会社をしております。中立的と言ったら変ですけれども、一部、臨床の経験をした点を踏まえましてお話しさせていただきます。

 医師が提供する価値というのは、量と質の掛け算だと私は考えております。つまり、労働時間と質、生産性といったところだと思います。今回は、まさに医師の働き方改革というタイトルで検討会を設けていただいていますので、働く時間改革ではないと私は考えております。だからこそ、時間の議論は当然ながら、掛け算のもう一方である質の点についても、時間を下げたから質がどうやったら上がっていくのかという議論もセットで考えていかないと、片方だけ議論してしまうと、どうしても提供する価値が下がってしまうと。それは、先ほど皆さんにおっしゃっていただいているように、提供される側の患者さんまたは地域にとって、必ずマイナスになって返ってくる。だからこそ、量と質の両にらみで進めるべきかと思います。

 先ほど、まさに臨床現場の赤星構成員がおっしゃいましたように、学びたい方もたくさんおられる。当然、ライフのほうを優先される方はたくさんおられる。ビジョン検討会でもありましたように、医師にはさまざまなキャリアプランがある、考え方があるということで、一律にこうあるべきだ論ではなくて、先ほどお話がありましたように、いろいろな方々の意見を聞きつつベストバランスをとっていくという姿勢が一番大事かなと思っております。

 非常に難しい、最適解はなかなかないかもしれませんけれども、それを探すのがこの検討会だと思っております。

 ありがとうございます。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、福島構成員どうぞ。

○福島構成員 今、時間の長さでははかれないというお話がありましたけれども、私は社労士という立場で、コンプライアンスの観点から現場を見なければならないことは承知の上なのですが、それでも、例えば、36協定届の特別条項が、書類上では、年6回、何時間とありました。でも、実態としては、年6回にとどまらず、常態化している状況も見受けられます。こうした状況の中で、上限規制を設けることだけでは、上限時間だけがひとり歩きして、現場の混乱が起こりかねないという懸念があります。

 現場の状況をきちんと把握して、360度の方面から、これを見てどうするか。例えば、医師の偏在とか、補助職の育成とか、病院の機能の再確認であるとか、国民教育といった観点からも、総合的に判断がなされるべきなのではないかと思っています。

 是正勧告を受けた病院の是正報告などを見ましても、やりたくても改善できない状況がたくさんあります。これは医療機関単独では解決し得ないということをあらわしていると思いますので、こうした検討会で、どうすれば改善されるのか。その道しるべを示してあげることは大変意義のあることと思います。

 また、別の委員会では、医療勤務環境改善マネジメントシステムの活用について検討を進めています。特に支援センターのあり方について今、支援、助言を進めているところではありますけれども、まだまだ周知が浅く、これからこの支援センターが適正に機能していくことで、もう少し病院自体の自主的な改善が実現するのではないかと考えております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、三島構成員どうぞ。

○三島構成員 三島と申します。私は現在、在宅医として勤務しております。今は都市部ですけれども、もともと島根県だったり北海道や僻地、さまざまなセッティングで研修した経験から、患者さんに質の高い医療を届けるために、個人としての持続可能性ではなくて、チームとして、組織としてどう連携して患者様に質の高い医療を届けるかという考え方をもっともっと若手、私たち自身も変えていかなくてはならないのではないかと思っております。

 女性医師だけではなく、これからライフサイクルに合わせて介護であったりとか子育てだったり時間制約がありながら、個人としても、そしてチームとしても長く患者さんのために医療を届ける仕組みを、現場の若手をもっと巻き込んで、この場で話し合いをさせていただければと思っております。

○岩村座長 ありがとうございます。

 いかがでございましょうか。

 では、黒澤構成員から馬場構成員ということでお願いいたします。

○黒澤構成員 私は、東北大学で産業医の教室をしております。私は大学病院の産業医でありますし、私どもの教室員が地域の基幹病院の産業医をしておりまして、産業医の医師の長時間労働の面談をしておりますので、その面談の中身を御紹介したいと思います。

 一番多いパターンは、うちの病院ですと80時間を超えるとほぼマスト的に面談をしておりますが、やはり業務が多いと。ですから、目の前に患者さんがいるのでやらなくてはいけないということで、事務負担、コメディカルに業務負担をしてあげたりとか、何かこちらでできることはありますかということで、産業医がいろいろ業務の内容を仕分けたりということを事務のほうにやっても、それでも患者さんが来る。それは、地域で基幹病院にしても大学病院にしても、そこしか診るところがないので、救急車でそこに来てしまうということで、特に小児の医療とか心臓血管外科とかいろいろなところがあっぷあっぷしてしまうということで、地域のシステム、医療システムから見ないといけないというような、どうにもならないところがあるなと感じています。

 それから、大学病院は特にそうなのですが、大学の給料だけではやっていけないということがあって、大学で80時間長時間労働をしても、その後、外勤で、バイトで泊まりにいったりとかいうこともあって、その分の管理が全然できていない。

 あとは、私どもでは産業医がいますけれども、産業医がまともに機能している病院が余りない。ですから、新潟の研修医の場合もそうだったと思うのですけれども、そういう過労死になりそうな人を早く見つけて、休めということを言ってくれる人がいないというのも、働き方の点では問題かと思います。

 一方、研修医の過重労働の面談するときがあるのですけれども、これは逆に研修医の先生はすごく元気で、もっと頑張って働きなさいみたいな感じでやるときもありますし、それは産業医が見て、言い方は失礼ですけれども、この人はもっと働いたほうがいいなとかというときもありますし、それで元気で、その人の自己研さんになるわけで、その辺、判断してくれる人が、ほかの病院もいっぱいいればいいのではないかということを思ったりしています。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 それでは、馬場構成員どうぞ。

○馬場構成員 私は、大阪で民間病院を運営している理事長、院長、そして脳神経外科医です。あとは大阪府医療勤務環境改善支援センターのセンター長という仕事もありますが、きょうは病院団体の代表として発言させていただきます。

 まず、医師の特殊性ということなのですけれども、医師が働くことは自己研さんという側面があるという事実があります。また、医師は働きに誇りとプライドを持っております。私の病院の脳神経外科医は、手術の技量を高めるため、より多くの手術症例を求めようと競って、奪うように当直を志願しております。

 初期研修医の多くは月の超過勤務を制限されていることには不満を持っています。

 また、自己研さんのための活動と労働とを厳密に切り分けることは極めて困難であり、他産業の働き方を単純に医師に当てはめるのは無理があると思います。

 医療界として、医師の働き方改革を支援するために、タスク・シェアリング等の改善策を積極的に推進していくべきであると思いますが、それとともに、医師独自の裁量労働制の創設等の、働きたい医師が働けるといった措置も考慮すべき必要があるのではないかと思っています。

 あと、地域医療ということを考えるときには、医師の需給というのは基本的な現状の働き方をもとに決められておりますので、極端な労働規制というのは地域医療を崩壊されるおそれがあります。

 また、需給バランスの崩れというのは、さらなる地域間偏在を生み出すおそれがありますので、ぜひ慎重な対応の御検討をお願いいたします。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、たくさんお手が挙がってしまっているので、そちらから岡留構成員、工藤構成員、島田構成員、遠野構成員、中島構成員の順番で行きたいと思います。

 では、岡留構成員からどうぞ。

○岡留構成員 日本病院会を代表して、今、4病院団体協議会の馬場先生たちと一緒に検討しているところなのですが、私はいつもこういう議論になると一番根本的なプリンシプルのところから非常におかしいと思うのが、大体、医師の場合には労使協定が結ばれているのかなと。36協定36協定と言われますけれども、医師と病院の勤務医は、院長先生あるいは管理者との間に労使協定とかが全然結んだことがないのですね。

36協定とは何だという話題が近年出てきたから、初めてみんな知るようになったのですね。ですから、医師の労働者性は一番根本的に問われる時代であると同時に、医師の労働の中身、要するにオンなのかオフなのか、そのルールをある程度、定義づけていかないといけないだろうと思うのです。そのためには、現在の医師がどういう働き方、ビヘービアかということを、タイムスケジュールに合わせてある程度の実態調査をきちんとやっていくことが必要ではないかと。

 私ども4病院団体協議会では、そういう方向で実態調査をやりたいなと思うのですが、厚生労働省の御協力が得られれば一緒にやっていきたいなとも思うのですけれども、ちょっと言い過ぎかもしれません。いずれにしても、今、医師に問われる労働者性とは何かということを、私たちはもう一回ここで考える必要があるだろうということを、改めて認識しているところであります。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、工藤構成員どうぞ。

○工藤構成員 ありがとうございます。ヘルスケア労協の工藤といいます。

 長時間労働についてですけれども、長時間労働をやらされる、もしくはやってしまうということでいくと、働き続けることができない。また、そういう人も多い。特に女性の働き方と合わないという現状であるかと思います。長時間労働の解消というものは、それぞれの施設での人員の確保というものにもなっていくのだろうと考えます。

 長時間労働の原因を考えたときに、業務量が多いからということが一般的かと思いますけれども、その中でも、業務量というのは、事務的な量なのか、それとも患者さんに対応する時間なのか、そこは区別する必要があるだろうと思います。文書関係、事務的なものでいけば、ほかの職種との連携というものを、これまでも厚労省としては進めてきているかと思いますけれども、これまで以上にその推進というものを、ITや、さまざまな技術を使って進めていくべきであります。

 ただ、患者さんとの対応ということでいけば、それは時間的にどういう配分の中で行われているのか、つまり、時間外の緊急が多いがための長時間労働になっているのか、もしくは、時間内の緊急があって、それに手をとられるがために、トータルとして長時間労働になっているのか。そこのところをきちんと見ていく必要があります。

 他職種との連携ということでいけば、医業をどこまで、医者のみにするのか、ほかの分野にもう少し分けるという検討もまた必要になってくると考えますが、その際、連携に耐えられる人材の確保も求められてくるかと思います。

 また、他職種の人間がふえるということでいけば、診療報酬なり、そのような財政的な裏づけをどうとっていくのか。あと、病院ですけれども、外来と入院もやっているところはごく一般的かと思いますけれども、病院ということを考えたときに、外来をどこまでやるのか。これはもちろん地域差、またそれぞれが持っている医療機関の性格等も関係してきますけれども、今の外来機能を病院に付与するということについても、改めて考える必要があるだろうと思われます。

 自己研さんという言葉が出てきておりますけれども、今の自己研さんのやり方というのは、男職場の自己研さんでしかないのかなと思います。女性も社会進出してきて一緒に働いているということでいけば、自己研さんのあり方も考える必要があります。自己研さんできる期間もしくは時間も労働時間の中に確保する必要があります。

 就労支援については、今の就労支援は、当然ながら女性の社会進出ということが背景にありますから、女性対象の項目が多いかと思いますけれども、男性の育児休業というものも進めようという中でいけば、女性だけではない、誰でもがとれる支援制度が必要です。またとる人からすると、とりたいけれども同僚なりにしわ寄せが行ってしまうということで、なかなかとれないということがあります。ですから、そういうところにしわ寄せの行かないような支援制度もつくっていく必要があるのではないかと考えます。

 いずれにしても、財政的な支援がなければ医療機関の継続した事業は難しいかと思いますので、その配慮というものも当然必要になってくるかと思います。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、島田構成員どうぞ。

○島田構成員 ありがとうございます。私の専門は労働法でございますので、その観点から若干発言をさせていただきます。

 まず1点は、この検討会の中で、医師の特殊性を踏まえてどう働き方改革を進めていくのかということでございますが、これは労働法の観点から考えますと、医師であろうと、労働基準法の労働者である。ここは動かしがたいところがございまして、それぞれの働き方、例えば我々大学の教員も、多分、大学の教員の皆さんに聞いたら、自分は労働者だと思っている人は余りいないと思うのですけれども、ただ、労働者として扱われるということでございまして、ある時期までは、余り大学が労働関係法規をどうするかということは問題にされてこなかったのですが、今は、先ほど病院にも労働基準監督署がというお話がございましたが、大学に対しても同じような問題が起きておりまして、したがって、ここで検討すべきは、一方で、その特殊性を踏まえるとは言いましても、一番ベーシックなところでは一般としての側面があるので、そこをどう反映させて考えていくのだろうかということだろうと思います。

 今、お聞きしていると、特殊性で押さえられることは、私の感じは、必ずしも医師だけにある問題ではなくて、さまざまな働き方の中で、特に高度な専門職には多かれ少なかれ、大学の教員などもそうなのですが、共通する問題があるのではないだろうかとお聞きしてまいりました。

 2点目でございますが、これが政府の働き方改革という枠組みの中で進められているということを我々は踏まえる必要があると思っていまして、実は働き方改革の中で、これは私なりの理解なのですが、通常の一般企業においても、従来の正社員の働き方でいいのかということが実は問われていて、長時間労働ではない、新しい働き方改革を実現しないと、この労働時間規制というのにも実は対応できないのではないかと。

 その意味では、先ほどの議論から、時間規制だけではなくて、新しい高い質を持った医療の提供というお話がございました。全く賛成なのですが、それは決して医療界だけではなくて、実は日本の産業界のまさに抱えているテーマだという観点から考える必要があると。

 それから、医師の方々でも自発的な働き方が多い。これは高度な専門職のみならず、日本の労働者はそうだと思います。それを否定するわけではございません。ただ、例えばこの間の労働法の判例を見てまいりますと、例えば研修医というのは労働者だということが最高裁でも明示されたり、あるいは医師の時間外労働手当の請求についても認められるということを含めて、一般法との組み合わせは考えていかざるを得ませんし、また、これは医療ではないのですが、先ほど出ていたような過労死、過労自殺事案では、管理者にどういうことが求められているかというと非常に高度でして、本人が働きたいと言ったから働かせたといっても、管理者の安全配慮義務が満たされるわけではなくて、とめなければだめなのだと。そこまで本当にしなければいけないのかと思うぐらいに、実は現在の裁判といいますか判例の安全配慮義務に対する捉え方は厳しくなっております。

 そういう意味では、労働時間規制で一番大事なのは、実は経営管理の問題でございまして、個々の医師がどうかということではなくて、これは勤務医の問題ですから、勤務医の所属する病院の経営管理者の問題です。これは民間企業でも、個々の労働者の自覚の問題ではなくて、それぞれの担当している上司がどこまでこのことを意識して、きちんと長期的展望を持って働かせるかということです。

 ですから、最終的には皆さんがおっしゃっていることが一致してくるのだろうと思いますが、これから勤務医においても、健康時間、生活時間を確保することをどのようにして経営管理の中で実現していくのか。こういう観点で議論をしていくことが必要ではないかと思います。

 あともう一点だけですが、医師のさまざまな補足的な労働を削減していくためには、これからIT技術などが必要だと思うのですが、大病院などは、私どもが見ても相当なシステム化が進んでおられると思うのですが、そうでないところも多い中という中では、システム化には物すごくお金がかかるので、ここをどうしていくかということもあわせて考えないと、現状の働き方改革にはつながらないのかなと思いました。

 以上でございます。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、遠野構成員どうぞ。

○遠野構成員 ありがとうございます。岩手の田舎で大体300床の地域中核病院から来ました。我々の病院の現状をお伝えしたいと思います。

 究極の目標の超過勤務の規制というのは、研修医においては我々の病院で5、6人なのですけれども、それはもともと、例えば外科チームは我々3人なのですが、そこに来てくれた方が当直明けは24時間休みですよとなっても特に困らないので、法で決まった研修医制度なので、法のほうで規制をしてもらうのは、我々も行け行けで働かせる上級医とかがいて困っているときもあるのですけれども、そういうものに関しても抑制がきいて、病院として研修医を守れるので、いいかなと思います。

 ただ、3年目以降の常勤医になりますと話が全然違ってきまして、我々県立病院が26ありまして、東北新幹線がとまる本線沿いは割とドクターも集まっているのですが、私がいる沿岸部などは、ほぼ岩手医大と東北大学からの派遣の先生で成り立っている県立病院が多くて、やはり県としても、県立病院運営においては大学にはなかなか頭が上がらないというか、いつもお願いして来てもらっているという状況なので、参考資料2の報告書を読ませてもらって、地域の偏在は都道府県主体でとあったのですけれども、それは当県では田舎に関しては難しいので、ぜひ国と県とでという感じも必要なのではないかなと。

 要は医者がいませんので、シフトしようにもシェアしようにも医者がいないのでしようがなくて、田舎などは何とか大学から1人派遣してもらって運営していますので、一人科長の先生とかは大変かと思います。

 偏在ということに話がずれてしまったのですけれども、そこから超過勤務を制限するようなことができるかなというのがきょうのところの印象です。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、中島構成員どうぞ。

○中島構成員 私からも人口減少、過疎地域のほうから報告いたします。

 私は今、診療所が閉院したり、65歳以上の医師の割合が30%以上を過ぎている地域で訪問看護師を行っています。

 地域でも医師の責任の集中はありまして、例えば介護サービスを一つ利用するだけでも、医師の書面が必要となっていて、医師は1人の患者さんがいろいろなサービスを使うごとに、何枚も同じような書面を書いているような状況になっています。

 こういう状況を何とかできないかなといつも思っているのが一つと、そのような中で、訪問看護師として何かできないかと考えておりまして、患者のニーズを中心に考えてはいるのですが、一人体制の医師たちが緊急時、例えば診療中や夜間の緊急時の対応を少しシェアリングできないかなということで、カテーテルや気管カニューレのトラブルに関して、特定行為修了看護師をステーションに配置しております。

 実際に緊急時の対応が医師との二重体制になっておりまして、地域で非常に特定行為の修了者の看護師の効能を感じております。ですので、今回のこの会議では、看護師の特定行為等に行うシェアリングのほうも、少し課題として話し合っていただければいいかなと思っております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございました。

 時間があと少しですが、まだ御発言になっていない方がいらっしゃいますので、戎構成員と片岡構成員、順番でお願いいたします。

○戎構成員 私は看護師なのですけれども、米国の呼吸療法士という資格を持っております。私の経験から、米国と日本の医療現場の違いをお話しさせていただこうかと思います。

 私が向こうで見てまいりましたところ、1人の患者さんに接する職種の違いをかなり実感いたしました。日本にはない職種が米国にはありますし、米国にあっても、ほかのヨーロッパにはないものもありますけれども、日本の現状と比べると、はるかに職種の数が違うという点が、同じ質の高い医療をやっているのに、どこかの職種に物すごい仕事の負担が来ているのではないかなと思っております。

 実際に看護師の仕事内容を見ましても、日本の看護師が行っている仕事量は米国の看護師が行っている業務の範疇と異なっておりまして、それだけのタスクをこなす職種があちらにはあります。ただ、それだけ多くの職種が日本にも必要かというとそうではないと思うのですけれども、ただ、今の医療の水準を維持していくためには、今、既存の職種だけでは対応し切れていけない、質を担保していけないのではないかということを非常に感じました。

 タスク・シェアリングという面において、私が持っている米国の呼吸療法士という資格もそうですけれども、それ以外にフィジシャン・アシスタントですとか、まだまだ名前を挙げればあるのですけれども、そういった点でも御検討をいただく場であってもいいのではないかと私は思っております。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、片岡構成員、それから豊田構成員が御発言希望だということですのでその順番で、豊田構成員までということにさせていただきたいと思います。

 では、片岡構成員どうぞ。

○片岡構成員 ありがとうございます。私は、岡山大学で女性医師のキャリア支援を平成19年から約10年間行っているということと、臨床のほうは、大学病院の総合内科で勤めております。

 女性医師のキャリア支援から少し御報告ですけれども、こちらのほうは女性、特に育児中の女性、あるいは女性に限らず介護をしている方が柔軟な働き方を可能にするということで、もともと当直も含めて100%働くか、そうでなければやめるかといったような選択肢しか10年前はなかったものが、柔軟に働くことが可能になったということで、実際、離職ということではなくて、ペース配分を変えながら継続できるようになったという事実がございます。

 こういった制度は10年間で約120名以上の医師が利用しておりますけれども、この利用期間は、例えば子育てであれば3年間に限っておりまして、その期間が終わったら、今度はまた自分の次のステップに進んでいくわけですけれども、その制度を利用した後の横断調査をしますと、5割の方は地域の医療機関に移って働かれていることもありまして、働き方を変えるということで、その方のキャリアだけでなく、地域医療にも貢献できるのではないかということを、実践を通じて感じている次第であります。

 ただ、これはもちろん女性医師に限った話でもないですし、男性も含めて、ライフサイクルに合わせてそういった働き方を選択できることが望ましいのではないかなと思います。

 一方で、若手の方あるいは技術を高めないといけない時期に学ぶことあるいはよりボリュームが必要な時期も当然あると思いますので、画一的な対応はなかなか難しい部分もあると思います。

 特に、患者さんという相手がある仕事ですので、そういった理解を求めていくことも必要なのではないかと思っています。

 以上です。

○岩村座長 ありがとうございます。

 それでは、豊田構成員どうぞ。

○豊田構成員 私は、現在NPO法人で医療対話推進者の養成事業をしております。医師事務作業補助者によるサポートもそうなのですけれども、医師や看護師のように、患者さんに対して説明や対話をしっかり行わなければならないような立場の方々が、患者さんとのコミュニケーションがうまくいかなくなったりしたときに、対話をサポートする担当者など、実際に誕生している人材がいると思うのですが、私自身も医療クラークを長年やってきて思うのですけれども、今は実際そういう人たちがいるにもかかわらず、実際の業務がかみ合わないといいますか、そういう現状があるということを長年見てきておりますので、今もう既にできているものをしっかり活用していくことも一つ大切なことだと思いますので、これから新しく生み出していくものと、現在、既に厚労省などで努力されてできていることの現状も踏まえていただき、ぜひ、一つ一つこれから具体的なところに入っていく中で、発言させていただきたいと思っております。

 よろしくお願いいたします。

○岩村座長 大変ありがとうございました。

 まだ御発言なさりたい方がもしかするといらっしゃるかもしれませんけれども、申しわけありませんが予定した時刻が若干過ぎておりますので、きょうはここまでとさせていただきたいと思います。

 きょう、皆様から御意見を伺う中で、これからの進め方についても幾つか御要望等がございましたが、これについては事務局とも相談させていただいて、どのように対応するか考えさせていただきたいと存じます。

 次回以降も、きょういただきました御意見等を参考にしながら議論を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 最後になりますけれども、次回の日程等につきまして、事務局のほうで何かございますでしょうか。

○乗越医師・看護師等働き方改革推進官 次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

○岩村座長 では、以上をもちまして、本日の会議はこれで終了とさせていただきたいと思います。

 お忙しい中、場合によっては遠方から、どうもありがとうございました。

 

 


(了)

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