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2017年6月6日 第5回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会

職業安定局

○日時

平成29年6月6日(火) 10時00分~12時00分


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省専用第12会議室


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、武田委員、中窪委員、松浦委員、守島委員、山田委員

【労働者代表委員】

梅田委員、小原委員、冨田委員、松井委員、宮原委員、村上委員

【使用者代表委員】

加藤委員、小林委員、高橋委員、田代委員、中野委員

○議題

・同一労働同一賃金に関する法整備について

○議事

 

○守島部会長 ただいまから、第 5 回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会を開催したいと思います。本日の御欠席は、使用者代表の秋田委員です。では、事務局から定足数の報告をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第 9 条で定められております委員全体の 3 分の 2 以上の出席、または公労使、各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

○守島部会長 ありがとうございました。冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきたいと思います。

 それでは議事に入ります。本日は、資料 1 「同一労働同一賃金に関する法整備について ( 報告 )( ) 」について御議論いただければと思います。まず、事務局から資料について説明いただき、その後、各議題について御議論いただきたいと思います。事務局から御説明をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御説明申し上げます。資料 No.1 です。これまで 4 回にわたり、同一労働同一賃金に関する法整備の在り方について御議論いただいてまいりました。それらの御議論を踏まえ、本日、部会としての報告の案を事務局として御用意いたしました。これを基にまた御議論いただければと思います。

 最初に 1 ページ目、囲みの 1 、基本的考え方です。非正規雇用の現状とか、法整備にあたっての基本的考え方などについて、「働き方改革実行計画」に記載の内容や、 3 月まで開催されていた有識者検討会の中間報告などをベースに、基本的考え方を事務局として整理をしたものです。

 最初の○ですが、我が国の非正規雇用労働者が現在全雇用者の 4 割を占めていること。また、いわゆる「不本意非正規」の労働者割合は低下傾向にありますが、子育て・介護等を背景とした時間制約、勤務地制約などにより、非正規を選択する層が多いことも事実といったことを書いています。

 次の○は、正規と非正規の間には賃金、福利厚生、教育訓練などの面で待遇格差がありますが、こういったことが社会的な影響として少子化の一要因となっているのではないか、また能力開発機会が乏しい非正規雇用労働者が増加することによって、労働生産性向上の隘路ともなりかねないのではないかという認識を示しております。

 次の○ですが、賃金などの待遇は労使自治、労使によって決定されることが基本ですが、一方で不合理な待遇差については是正を進めなければならないという考え方です。また、この不合理な待遇差の是正を進めるためには (1) (3) で書いていますが、正規・非正規間の両方の賃金決定基準の明確化、職務内容・能力等と賃金等の待遇の水準の関係性の明確化、教育訓練機会の均等・均衡の促進により、一人ひとりの生産性向上を図ることといった観点が重要であるとしております。この 3 点については、昨年 12 月の有識者検討会の「中間報告」から引いております。

 これを受け、「以下の考え方」、これは実行計画に盛り込まれている内容を明記していくことが適当としています。雇用形態にかかわらない公正な評価に基づく待遇決定、また、働き方の多様な選択が可能となるとともに、非正規雇用労働者の意欲・能力の向上、労働生産性の向上につながっていくことというのを置いております。

4 つ目の○は、昨年末に政府が提示した「同一労働同一賃金ガイドライン ( ) 」については、関係者の御意見、また改正法案についての国会審議での御議論を踏まえ、当部会、この同一労働同一賃金部会で御議論いただき、最終的に確定していくこと。また、できあがったガイドラインを前提に、実効性担保のため、労働者が司法判断による救済を求める際の根拠となる規定の整備、労働者に対する待遇に関する説明義務化、行政による裁判外紛争解決手続等の整備、こういった内容について、囲みの 2 以下に示す法改正を行うことによって、不合理な待遇差の解消を実効ある形で進めていくことが必要であるとしています。

 次の○では、法整備と併せ、労使間で非正規雇用労働者を含めた労使において、処遇体系の確認・共有、職務能力等の内容の明確化、公正な評価の推進などについて労使対話を促進することが重要であると、考え方を示しております。

 次の○で、働き方改革の実現に向けて一過性ではなく、長期的かつ継続的に実行していくことが必要であるという考え方を付記しております。以上の基本的考え方を前提に、囲み 2 以下が、具体的な法整備の内容に関する記述です。

 囲みの 2 は、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備についてです。 (1) 短時間労働者・有期契約労働者については、最初の○で、現行法、パートタイム労働法、労働契約法においてどうなっているかについて、 3 つの考慮要素を考慮して、不合理と認められるものがあってはならないとされております。 3 つの考慮要素は※にある職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情です。

 次の○では、この現行法の規定は、個々の待遇の違いと 3 考慮要素との関係性が必ずしも明確でない点があることから、 3 ページの最初の○のとおり、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化することが適当としております。ただし、個別の事案に応じては、非正規雇用労働者を含めた労使協議経過等を踏まえ、複数の待遇を併せて不合理と認められるか否かを判断すべき場合があると考えられることや、「待遇の性質・目的」は実態を踏まえて判断されるものと考えられることに留意が必要であると、併せて記載しております。

 次の○は 3 つの考慮要素のうち、 3 のその他の事情の解釈の範囲の問題です。考慮要素として「その他の事情」の中から「職務の成果」「能力」「経験」を例示として明記することが適当としております。また、労使交渉の経緯などが個別の事案の事情に応じて含まれることを明確化するとし、「その他の事情」の範囲が逆に狭く解されることのないように留意することが必要であることを、併せて記載しております。

 次の○は、均等待遇の規定です。 1 職務内容と 2 職務内容・配置変更範囲が同一である場合の差別的取扱いを禁止する「均等待遇規定」については、現在、有期契約労働者については規定されておりませんので、ここでは有期契約労働者についても「均等待遇規定」の対象としていくことが適当であるとしております。その上で、「なお」の段落ですが、定年後の継続雇用の有期契約労働者に関する差別的取扱いの解釈については、退職一時金・企業年金・公的年金の支給等を勘案することを認めるか否について、引き続き検討を行い、おって解釈の明確化を図っていくことが適当としております。現在、最高裁に係っている事案があり、最高裁の判断を見守っていくことも必要ではないかとの考え方から、このような「なお」書きを記した次第です。

4 ページ、比較対象の範囲についてです。パートタイム労働法では同一の事業所に雇用される「通常の労働者」とし、労働契約法では同一の使用者に雇用される無期契約労働者としております。これについて、近年は非正規雇用労働者自身が店長などであることもあり、同一の使用者に雇用される正規雇用労働者と比較対象とすることが適当であるとしております。

(2) 派遣労働者関係です。最初の○で、現行法について 3 つの要素、 1 派遣先の労働者の賃金水準、 2 同種業務の一般労働者の賃金水準、 3 派遣労働者自身の職務内容等を勘案し、賃金決定を行うという配慮義務にとどまっていることを書いています。

 次の○は、派遣労働者の実際の就業場所である派遣先の労働者との均等・均衡が重要な観点であることを記載しております。

 次の○で、「しかしながら」のところですが、派遣先労働者との均等・均衡によって派遣労働者の賃金決定を行う場合、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定になること。また、派遣労働者が担う職務の難易度が、同種の業務であっても派遣先の賃金水準と必ずしもリンクするとは限らないものですから、結果として派遣労働者の段階的、体系的なキャリアアップ支援と不整合な事態を招くこともありうるという認識を示しております。

 その上で 5 ページ、こうした状況を踏まえ、派遣労働者に関しては、 1) 派遣先の労働者との均等・均衡の方式、 2) 労使協定による一定水準を満たす待遇決定による待遇改善を図る方式の 2 つを用意するという案です。具体的には、以下のような制度設計とすることが適当であるとしております。 1) の派遣先労働者との均等・均衡方式です。 1) 派遣労働者と派遣先労働者の待遇差について、短時間・有期と同様の均等待遇、均衡待遇規定を設けること。 2) 派遣元事業主がその派遣先均等・均衡の規定を履行できるよう、派遣先に対し、派遣先の労働者の待遇に関する情報提供義務を課すこと。また、その情報提供がない場合は労働者派遣契約を締結してはならないこと。また、派遣先から派遣元に送られる待遇情報は、派遣元事業主等、この「等」は使用人とか従業員のことですが、の秘密保持義務規定の対象となることを明確化することを掲げております。 3) その他派遣先の措置、教育訓練など、現在派遣先に配慮義務が係っているものもありますが、この規定を強化するという記述です。

2) の労使協定方式です。これについては、派遣元事業主が、労働者の過半数組合または過半数代表と話し合って、以下の要件を満たす労使協定を締結し、協定に基づいて待遇決定を行うことを認める。以下の要件として、 1 では、「同種業務に従事する一般労働者の賃金水準と同等以上であること」、 2 では「段階的・体系的な教育訓練等による派遣労働者の職務内容・職務の成果・能力・経験等の向上を公正に評価し、その結果を勘案した賃金決定を行うこと」、 3 では「賃金以外の待遇についても、派遣元の正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと」の 3 つの要件を挙げております。ただし書きですが、派遣先均等・均衡方式によらなければ実質的な意義が果たせない、例えば食堂、給食施設や休憩室などについては、 2) の方式の対象としない、 1) の方式でやっていただくとしております。

2) の労使協定に合わせて、派遣元において労使協定が周知されるよう、必要な規定を設けるとともに、労使協定の有効期間を定める。また、過半数代表者の選出等に関するルール、これは労働基準法施行規則の規定を踏まえた形で過半数代表者の選出等に関するルールを定める。労使協定の状況等を行政が把握できる仕組みを定めるなど、省令などにおいて労使協定の適正性のための所要の措置を講ずることが適当としております。

 次の○は、これらの規定の履行に際して、派遣先に対して派遣料金の設定に際し、派遣元事業主がその 1) 2) の規定を遵守できるよう、必要な配慮を行っていただく配慮義務を設けることが適当としております。

 さらに、次の○ですが、 1) の派遣先均等・均衡方式、 2) の労使協定方式のどちらの方式によるかを派遣先が知り得るようにすることなどについても、必要な規定を設けることが適当としております。

(3) ガイドラインの根拠規定の整備です。短時間・有期・派遣について、均等待遇規定・均衡待遇規定等の解釈の明確化を図るため、現在の法律に根拠がない形で案が示されておりますが、ガイドラインの策定根拠となる規定を設けることが適当としております。

 囲みの 3  労働者に対する待遇に関する説明の義務化です。正規雇用労働者との待遇差に関する情報を事業主から適切に得られ、事業主しか持っていない情報のために、労働者が権利行使を救済されないことがないようにと、まず考え方を書いております。

 その上で (1) 短時間・有期契約労働者について、現行法では短時間労働者について 1) 特定事項の文書交付による明示、 2) 待遇内容等に関する雇入れ時の説明義務、 3) 待遇決定に際した考慮事項に関する労働者からの求めに応じての説明義務が課せられております。

 その上で次の○で、有期契約労働者については今の 1) 3) までのいずれも課せられておりません。また、短時間・有期契約労働者、いずれについても正規雇用労働者との待遇差の内容や、その理由などについて説明が得られる制度となっていないことを書いております。

 次の○、「このため」のところです。短時間・有期のいずれについても上記 1) 3) 、現在「パートタイム労働法」において定められている説明義務に加え、短時間・有期契約労働者が求めた場合には、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等について説明が得られるよう、事業主に対する説明義務を課すことが適当としております。また、その際には、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁止することが適当という部分を加えております。

 次の○は待遇差の比較の場合に、具体的にどの正規雇用労働者との比較なのかという議論がありました。これについては、部会の議論を踏まえ、「待遇差の比較対象となる正規雇用労働者については、一般に、非正規雇用労働者と同一の事業所に職務内容が同一又は類似の無期雇用フルタイム労働者が存在する場合にはそれと比較することが適切と考えられるが、画一的に法定することはせず、事業主に説明を求めた非正規雇用労働者と職務内容、職務内容・配置変更範囲等が最も近いと事業主が判断する無期雇用フルタイム労働者ないしその集団との待遇差及びその理由並びに最も近いと判断した理由を説明することとする ( この場合であっても、非正規雇用労働者が司法判断の根拠規定に基づいて不合理な待遇差の是正を求める際の比較対象は当該事業者が最も近いと判断した無期雇用フルタイム労働者ないしその集団に限られるものではない。 ) 」としております。そういった個別事案に応じた対応を含め、施行に向けてこの点については考え方を整理しておくことが必要ではないかとしております。

(2) 派遣労働者です。現行労働者派遣法においては、派遣元事業主に対して、待遇の内容等に関する説明義務、タイミングは雇用しようとするときです。それから 2 で待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務は、求めに応じることが課されております。おおむねパートタイム労働法に近い内容となっております。

 これについて、次の○で派遣元事業主に対し、上記 (1) の1 ) 3) まで、つまりパートタイム労働法で現在課されている説明義務及び派遣労働者が求めた場合には、待遇差の内容やその理由等についての「説明義務、不利益取扱禁止」を課すことが適当としております。また、なお書きで、派遣労働者の場合には雇入れのタイミングと労働者派遣をしようとするときのタイミングが違うことがあるので、この説明義務については「雇入れ時に加え、労働者派遣をしようとする時を加えることが適当」としております。

 囲みの「 4  行政による裁判外紛争解決手続の整備等」、行政 ADR などに関する項目です。 (1) 短時間・有期契約労働者ですが、最初の○では、現在の短時間労働者についてはパートタイム労働法においてどうなっているかを記載しております。事業主に対する報告徴収・助言・指導・勧告の規定が設けられた上で、義務範囲が明確な規定に関しては、公表の規定が設けられております。また、行政 ADR として労働局長による紛争解決援助や、調停の規定も設けられております。

 次の○で、一方、有期契約労働者についてはその労働契約法の法律の性格もあり、行政による履行確保や、行政 ADR の規定がないことを書いております。次の段落ですが、有期契約労働者についても短時間労働者と併せて、パートタイム労働法の諸規定を移行・新設することにより、行政による履行確保措置の対象とするとともに、行政 ADR が利用できるようにすることが適当であるとしております。

 次の○は、現行のパートタイム労働法の現状では、均等待遇規定については報告徴収・助言・指導・勧告の対象としておりますが、均衡待遇規定については対象としておりません。しかしながら、均衡待遇規定に関しても解釈が明確でないグレーゾーンの場合は、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、職務内容、職務内容・配置変更範囲、その他の事情の違いではなく、雇用形態が非正規であることを理由とする不支給など解釈が明確な場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象とするとしていくことが適当としております。均衡待遇規定については従来どおり、公表の対象とはしないことが適当としています。また、行政 ADR については均等・均衡待遇を求める労働者の救済を幅広く対象としていくことが適当としております。

(2) 派遣労働者関係です。最初の○は、現行の労働者派遣法について、派遣元事業主に対し、報告徴収・指導及び助言・改善命令・事業停止命令・許可取消しの規定があります。また、派遣先に対し、報告徴収・指導及び助言・勧告・公表を行える規定が整備されております。上記「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」、均等待遇・均衡待遇の規定。それから 2 番、説明義務化についてもそれぞれの規定の趣旨に応じ、これらの現在労働者派遣法に用意されている行政による履行確保措置の対象としていくことが適当としております。

 次の○は、また、派遣労働者についても、労働局長による紛争解決援助や、調停といった行政 ADR 、現在パートタイム労働法で設けられているような仕組みを利用できるようにすることが適当としております。

 続いて 10 ページです。最初の○は、その際には均衡待遇規定については短時間・有期と同様、解釈が明確でないグレーゾーンの場合は報告徴収・指導・助言等の対象としない。職務内容、職務内容・配置変更範囲、その他の事情の違いではなく、雇用形態が非正規であることを理由とする不支給など、解釈が明確な場合は対象としていくことが適当であるとしています。また、行政 ADR については、均等・均衡待遇を求める労働者の救済を幅広く対象としていくことが適当としております。

 囲みの 5 、その他です。上記 4 までで取り上げてきた規定の他に、短時間労働者には、パートタイム労働において、国による施策の基本方針の策定などの規定が設けられております。有期契約労働者についても、同様にこれらの規定の対象としていくことが適当であるとしております。なお、※で注記しておりますが、通常労働者への転換措置に関して、定年後の継続雇用の方の場合、どういう適用になるかという議論がありました。ここで、なお書きで、現在の雇用対策法施行規則において、求人の年齢制限に関する規定が置かれております。雇用対策法施行規則第1条の3第1項目1号で、定年の年齢を下回ることを条件として、労働者の募集・採用を行うことは可能とされております。この場合には、そのような募集採用であれば、定年後継続雇用者は応募対象とならないこととなりますので、そのような形で整理が可能ではないかということで、注記をした次第です。

 また、派遣労働者については、労働者派遣法における別途の法制により、そのパートタイム労働法で認められているものと、同趣旨が達成されているものが多いですが、就業規則の作成・変更時の意見聴取 ( 努力義務 ) については対応するものがありませんので、派遣労働者についても同様に対象としていくことが適当としております。

 最後に囲みの「 6  法施行に向けて ( 準備期間の確保 ) 」です。上記の法改正は、事業主にとって必要な準備を行うために一定の時間を要すると考えられます。したがって、施行等にあたっては十分な施行準備期間を設けることが必要であるとしております。

 さらに、各事業主における賃金制度等の点検等に向け、十分な周知・相談支援が必要。また、業種・職種・地域毎の状況も念頭に、中小企業・小規模事業者等各事業主の実情も踏まえ、労使双方に丁寧に対応することが求められる。行政としての対応ですが、丁寧に対応することが求められるとしております。

 一番最後では、施行段階に向けての議論の段階になってまいりますが、以下の点については実効ある労働者保護の観点、実務上の観点の双方から、施行段階において検討を深めることが適当とし、代表例を 3 つほど挙げております。以上が事務局から用意した報告書案です。

 誤植がありまして、 9 ページです。内容にわたるものではないのですが、恐縮でございます。 (2) 派遣労働者の項目の、まず最初の○の下から 3 行目に、上記「 1 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」とありますが、これは番号が「 2 」の打ち間違いです。次の「 2 」説明の義務化も、これは「 3 」の打ち間違いです。同じミスが、次の○にもあり、司法判断の根拠規定の整備は「 2 」で、説明の義務化が「 3 」です。今、気付きましたので訂正させていただきます。以上です。

○守島部会長 それでは、今、御説明いただいた資料について、御意見、御質問等あれば、お伺いしたいと思います。どなたかありませんか。

○小原委員 本質的な議論に入る前に、 1 点お伺いしたいと思います。

言葉の使い方なのですが、本日お配りいただいた部会報告書案では、「非正規雇用労働者」という言葉が使われています。他方、以前にお配りいただいた資料を改めて見返すと、「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」の中間報告では「非正規社員」、その検討会の報告書では「非正規雇用労働者」という言葉が使われています。さらに、「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、ただし書をした上で「非正規雇用労働者」、「働き方改革実行計画」では「非正規労働者」、「非正規雇用」、「非正規雇用労働者」と様々な言葉が使われているのです。今回の部会報告書案では「非正規雇用労働者」という言葉をどのような定義、意味で使っているのでしょうか。使い分けがあるのであればお伺いできればと思います。以上です。

○守島部会長 では、課長どうぞ。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 意味を異ならせている意図はありません。非正規雇用労働者、非正規労働者、非正規社員、同一の対象を指すものと考えております。用語法につきましては、それぞれの議論の場における用語法、特に実現会議にせよ、有識者検討会にせよ、有識者の方にお集まりいただいて運営しておりますので、その先生方の用語法を尊重した面があります。実行計画の用語法に沿うことが、今回の議論の経緯からすると適切ではないかと思いますので、非正規雇用労働者、正規雇用労働者としておりますが、改めて検証しまして、この報告案の中で、もし不統一がありましたら、そこは是正をしたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。それでは他にどなたか。

○岩村委員 ちょっとだけ確認ですけれども、この後、多分、法案要綱の議論になってくるのですけれども、法律用語として、非正規雇用労働者というものが出てくるということではないという理解でよろしいですね。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律用語としては、あくまで短時間の労働者であったり、有期であったり派遣労働者だということを考えております。この報告案では、パートと有期と派遣の総称のような意味で、非正規雇用労働者と用いております。

○宮原委員 基本的な考え方の部分で確認させていただきます。

1 ページ、上から 3 つ目の○のところで、「法へ明記していくことが適当」として、 2 つポツが記載されておりますが、この部会で議論してきた内容ではなく、唐突感を覚えます。この「法へ明記していくことが適当」ということについて、具体的にどの法律へ規定することを考えているのか。もしパートタイム労働法に明記ということであれば、特に 2 つ目のポツに関してはなじまないと思います。

 また、こういった規定を仮に法定化するということであれば、「働き方改革実行計画」の 7 ページにある、「法改正の方向性」という項目の記載内容を忠実に明記すべきであると思います。具体的には、「公正な評価・待遇決定の推進や、そうした待遇の決定が、労働者の能力の有効な発揮等を通じて、経済及び社会の発展に寄与する」といった記述とすべきであるということを意見として申し述べたいと思います。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。お答えになりますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 事実関係をお答えしますと、実行計画の 7 ページに御指摘の記述があります。公正な評価、待遇決定うんぬんの大きな理念を明らかにした上で、これこれの改正の各論に入るという構造になっております。この記述は、「その大きな理念を明らかにした上で」という部分を受けたものです。

 実行計画の書き方からしても、具体的に司法判断の根拠規定ですとか、説明義務に関しては、改正対象法律として、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法という 3 つの法律が挙げられておりますが、この大きな理念のところは、具体的に何法とまでは書かれておりませんので、何法に書くかということ。

 それから、今回この報告書案に書かせていただいたのは、以下の考え方をということで、必ずしもこういう文言を書くということではありません。文言をどうするかについては、この考え方を法制的に吟味して、法案要綱の中で、どういう形で出てくるかということになろうかと思っております。いずれにしましても、その実行計画に基がある記述ですので、その実行計画の具体化という観点から、引き続き法制的な面を詰めてまいりたいと思っております。

○守島部会長 ありがとうございました。他にいかがですか。

○小原委員 今の宮原委員の御指摘の「 2 番目のポツは」というのは、「生産性向上」という言葉が法律条文にはなじまないのではないかという御質問だったように聞こえたのですが、改めてお考えを頂ければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 働き方改革実行計画では、「能力の有効な発揮等を通じ、経済及び社会の発展に寄与する」という書き方になっております。別にこれでもいいかと思うのですけれども、やや能力の有効発揮と経済社会の発展というのが、手前の目的と、非常に遠大な大目的と間が空いているように思いまして、それをつなぐものがあるのではないかと。つなぐものは有効な能力の発揮によって、生産性が向上するということではないかという考えで、このような記述としております。

 考え方としては、能力発揮から経済社会の寄与と、生産性向上の先に経済社会の寄与があるのかもしれないと思うのですけれども、能力発揮からいきなり経済社会の寄与では遠いかなと思いまして、こういった文言を入れております。その辺も条文化する際の整理がどうなるかについては、法制的な検討を進めたいと思います。

○松井委員 報告書の 4 ページ、 5 ページの派遣労働者に係る部分に関して意見を述べたいと思います。

今回、派遣先均等・均衡を原則とする考え方が示されたと理解しておりますが、 5 ページの一番上の○では、「選択制とすることが適当」という表現になっています。この部分については、これまでの部会の論議でも、原則は派遣先均等・均衡で、派遣労働者の保護に資する労使協定を締結した場合には例外として違う待遇決定ができるという、原則と例外の関係にあるとの説明がなされてきました。仮に労使協定に不備があった場合は、派遣先均等・均衡の原則に戻るということや、労使協定を内容や締結手続きの面でも、派遣先均等・均衡からの除外を認めるに相応しい内容にすべきであるという論議をし、かつ、そういう御答弁も頂いていたかと思います。この原則と例外の関係を、改めて確認したいということが 1 点目です。

 併せて、派遣先労働者との均等待遇ということを考えた場合に、職務内容、職務内容・配置の変更範囲の 2 つが大きな考慮要素となります。派遣労働者の場合は、そもそも派遣先労働者と雇用主が違うこともあるので、 2 番目の職務内容・配置の変更の解釈が問題になってくるだろうと思います。雇用主が違うから当然に職務内容・配置の変更範囲は違う、だから均等待遇はできないという一律的な解釈がされれば、法改正の趣旨が達成できないと理解しております。

 この職務内容・配置の変更範囲の取扱いについては引き続き法施行段階での検討事項であると思いますが、議論を深めていただきたいというお願いです。以上、確認とお願いということで発言をさせていただきます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 まず確認ということで頂いた点ですが、今回、派遣先均等・均衡という方式の他に、労使協定による方式の 2 つを用意しまして、派遣元の中で労使で話し合っていただいて、どちらの方式をするかと。それで労使協定にするのであれば、適正な労使協定を締結していただいて、その協定方式を選ぶことができるという意味で、派遣元の中の労使の話合いによって、 2 つの方式が選べるという意味では、選択制という、政策的にはそういった表現が適切ではないかと思っております。

 ただ、法律上の両者の関係につきましては、あくまでも労使協定が適正に締結されて、初めてその方式を使えるということですので、労使協定が締結されなければ、労使協定が無効であれば、派遣先均等・均衡に戻るという意味では、法律的には原則が派遣先均等・均衡であるということに、おそらく法制的な整理はなるものと考えております。そういう意味で、法律上の原則論の話と、それから政策的に労使の話合いで 2 つの道を選ぶことができるという意味合いで、言葉が場面によって違うかもしれませんが、そのような関係であると申し上げたいと思います。

 それから、職務内容・配置変更範囲につきましては、これは派遣の場合だけでなく、パートの場合、有期の場合でも、職務内容・配置変更範囲が同一であるケースがどれぐらい見られるかというのは、ケース・バイ・ケースです。派遣の場合にも当然このような要件、パート・有期の均衡待遇規定、均等待遇規定と並びの要素を設けておきながら、派遣労働者であるからという理由で、一律に職務内容・配置変更範囲が一致することはあり得ないというような解釈は、当然取るものではないと思っております。

 やはり個々の事案によって、派遣先労働者と比較して、職務内容・配置変更範囲が同じなのか、違うのか、違う場合には、その違いの大きさがどの程度なのか。それは個別に見ていくということだろうと思います。

 実際に同じケース、あるいは似たケース、大きく違うケースがどれぐらいの分布になるかというのは様々だと思うのですが、少なくとも派遣である以上は、職務内容・配置変更範囲はもう見るまでもなく違うというような解釈、理解ではないと考えております。

○守島部会長 ありがとうございました。他にどなたかありませんか。

○梅田委員 今のお話に関連する意見ですが、資料の 6 ページの 2 つ目の○では、先ほど事務局がお話したように、派遣元が 1) 派遣先均等・均衡と 2) 労使協定方式のどちらを採用しているか派遣先が知るようするために必要な規定を設けるとしています。この点、以前の部会で労働側から指摘したのは、 1) 2) のどちらが採用されているかという情報は労働者の立場からも非常に重要であるということです。これから派遣で働こうとする労働者の立場からすれば、自分の待遇が派遣先均等・均衡と、 2) の労使協定方式のどちらで決定されるかということは、派遣会社を選ぶ上で重要な情報だと思います。派遣先だけではなく、労働者に対しても、派遣で働く前にどちらの方式であるか知らせるようにすべきだと思います。

 また、第 3 回部会でお話させていただきましたが、派遣先ごとに派遣先均等・均衡と労使協定方式の使い分けるようなことは許すべきではないという指摘をしました。そこで事務局からは、「いいとこ取り」は適当ではないという旨の答弁があったと思います。この「いいとこ取り」は適当ではないという点については、今後の省令や指針などに明らかにすべきです。これは意見として申し上げます。

○守島部会長 ありがとうございます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 ちょっと確認ですが、 1) 2) の方式のどちらにするかにつきましては、労働者の場合、待遇の説明義務が別途ありますので、雇入れ時あるいは雇用しようとするときの説明義務の中で、どちらの方式かを知り得るように措置をすることが考えられるのではないかと思います。それで足りないのかどうか、足りない点があれば、またそれはどういう措置を講ずるかということを、施行段階も含めて検討させていただきたいと思います。一義的には待遇内容の説明義務というものが係っておりますので、少なくともその段階では知ることができるだろうと思います。

○高橋委員 今の梅田委員の御意見に関連して、 6 ページの 2 番目の○のところですが、私はこの文章を読んだときに、日本語の表現がちょっと分かりにくいと思いました。「 1) 2) のどちらの方式によるかを派遣先が知りうるようにすること」と書いてありますけれども、派遣先としては派遣契約を締結する際に、当然どちらの方式かを知らなければ、そもそも労働者派遣契約を締結できない仕組みになっているので、この日本語の意味がよく分からないのです。なぜ派遣先が知るようにすることについても、「必要な規定を設けることが適当」という文章が書かれているのか、その説明がよく分からないのですけれども、それを教えていただけないでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 これは私どもなりに部会の御議論を踏まえ受け止めて、こういうことではないかと思って整理した内容で、整理の仕方が十分かどうかというのは、また御指摘いただければと思います。高橋委員、御指摘のとおり、労働者派遣契約の締結交渉時に、どちらの方式にするかというのは、元と先で当然意見交換が行われる事項であろうと思いますので、これについては、おそらくその方式をどちらにするかが開示されなければ、もう派遣契約の締結のしようがないというようなレベルの話ではないかと思います。

 一方で、その派遣契約締結後の一連のプロセスを考えたときに、例えば派遣労働者が複数名派遣されてきて、その中に協定方式の方と、派遣先均等・均衡方式の方が混じっていると。例えばですが、ある派遣会社が方針として、無期雇用と有期雇用の派遣労働者を両方持っていて、無期雇用については協定方式を使っていると、有期雇用については派遣先均等方式を使っているというようなケースが仮にあるとします。

 派遣されてくる労働者が混在しているというような場合に、 A さんが協定方式の方です、 B さんは派遣先均等方式の方ですというような形で、派遣先が知り得るようにすることが、必要な場面があるのではないか。それを知らないと、その派遣先において待遇変更が生じた場合に、これは派遣元に通知をする必要がある待遇変更なのか、どうなのかということが適切に判断できない場面があるのではないかということを考えて、派遣契約締結時とはまた別の場面で、その派遣先が知り得るようにする必要があるのではないかと。具体的には法制的に更なる詰めが必要な点もありますが、そういった考え方で必要な規定とした次第です。

○高橋委員 少し理解したような気がいたしますが、派遣先といたしましては契約締結時に受け入れる方が、たとえ方式が混在したとしてもこの方は協定方式、この方は均等・均衡方式というフラッグが立っているはずだと思いますので、その必要な規定という意味がよく分かりません。ですので、法制局との詰めを行っていただいて、次回の法案要綱のときには、もう少し整理していただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。村上委員、どうぞ。

○村上委員 先ほどの梅田委員の御意見に対する事務局の回答に対して確認したいと思います。梅田委員は、労働者が派遣元で雇用されて派遣労働者となって働こうとするときに、派遣先均等・均衡なのか、労使協定方式なのかを事前に知っておくことは必要ではないかという指摘をしていたと思います。それに対して事務局からは、待遇に関する事項の説明義務が労働者派遣法の 31 条の 2 に規定されているので、それで対応可能ではないかという御回答があったと思います。

しかし、労働者派遣法 31 条の 2 は、「派遣労働者として雇用しようとする労働者」に対して待遇説明をしなくてはならないという規定であって、説明の時期は、派遣元で雇用されて派遣先で働こうとするタイミングにかなり接近していると思います。梅田委員の指摘は、もう少し手前のタイミングで派遣先均等・均衡か労使協定方式かを労働者が知ることができるようにすべきというものです。労使協定方式を取っていて、ステッフアップ・キャリアアップできるような派遣会社で働いていきたいと思う人もいるわけで、そういう情報を勘案して派遣会社を選ぶということもあるのです。そういうことを考えると、もう少し手前の段階、例えば求人時の労働条件明示などの段階で、 1) 2) のどちらなのかが分かるようにしておくことが必要ではないかと思っています。その点を御検討いただければと思います。以上です。

○守島部会長 課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 時点の違いがあることが今の御意見が分かった気がいたしますので、この点について、例えば求人時の条件明示のルールということになりますと、おおもととしては職業安定法があり、そこで細目を定め切ってはいなくて詳細を指針に落とすという構造になっていますが、この場合、派遣会社の独特のルールですので、職安法の体系の指針で書くのか、派遣法の体系の中で処理するのかという点も論点としてはあるような気がいたします。いずれにしても、時点の違いに関する御指摘の趣旨を承知しましたので検討させていただきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか、冨田委員。

○冨田委員 ページが戻ってしまい恐縮ですが、 3 ページ目に、考慮要素の「その他の事情」について、新たに「労使交渉の経緯等が個別事案の事情に応じて含まれうることを明確化する」という 1 文が追記されました。これはこれまでの論議の経過で追記されたものと理解しますが、その上で 1 点要望です。この労使交渉については、どういうふうに行われていたかということが非常に重要だと考えています。具体的には、労使交渉がその職場にいらっしゃる非正規労働者の方々の意見を踏まえた上で行われていることが重要だと思います。この点は明確化していくよう、今後、措置をお願いしたいと思います。以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。高橋委員。

○高橋委員 今、冨田委員が御指摘されたところと正に同じなのですが、今回、「労使交渉の経緯等が個別事案の事情に応じて含まれうることを明確化する」という文言が書かれているわけですけれども、例えば現行のパートタイム労働法 8 条の解釈例規を見ますと、「その他の事情については、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであり」という表現があり、労働契約法 20 条の解釈例規におきましても、「その他の事情は、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであること」といった文言があり、労使交渉の経緯というよりは、むしろその他の事情の典型的なエグザンプルとして、合理的な労使の慣行という表現が用いられているかと思います。こうした現行の解釈例規の考え方は、今回の法改正後も踏襲されていくという理解でよろしいかどうか、確認させていただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 ただいまの確認の点ですが、今回、その他の事情について成果等の例示ということを提案させていただいた次第です。その際、前提としまして、その他の事情の範囲が逆に狭まることにならないようにということを議論の前提として考え、また御提案してまいりましたので、現在、その他の事情の文言で読まれている概念につきまして、これを今回の改正を機に落としていくということは考えておりません。今、含まれているものは引き続き含まれることによって、その他の事情の範囲が狭まらないようにしたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。他に、どなたか。村上委員。

○村上委員  2 点ございまして、 1 点は質問です。

1 点目は、小原委員が先ほど質問した言葉の定義の問題に近いかと思いますが、 9 ページに関してです。報告書案では、均衡待遇規定について、グレーゾーンの場合は報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、「解釈が明確な場合」は報告徴収・助言・指導・勧告の対象とするとしています。この「解釈が明確な場合」に関して、「雇用形態が非正規であることを理由とする不支給」という言葉がありますが、「雇用形態が非正規」という表現は、報告書案の中で初めて出てくると思います。ここで言う「非正規」というのは労働時間が短い、契約期間に定めがある、派遣である、その 3 点ということで捉えて良いのかということが質問です。

2 点目は、均等・均衡待遇について誰と比較するのかということです。 7 ページの下の部分の 3 つ目の○で丁寧に書いていただいていますけれども、ここでは、事業主に対しては当該の非正規雇用で働いている方と最も近い正規労働者あるいはその集団との待遇差と待遇差の理由、更にはなぜその人たちを比較対象に選んだのかをセットで説明する義務を課すということを言っています。その上で、労働者が実際に事業主の説明や正規雇用労働者との待遇差に納得できずに訴訟をするときは、事業主が説明対象とした人に縛られずに広く比較対象を選べると整理されています。現在係争中の事案も同じようなものがありますから、こういった方向性が妥当ではないかと思います。現行のパートタイム労働法では比較対象とする通常の労働者とは何かということについて、かなり解釈を細かく示していますが、労働者が裁判に訴えにくくなるケースが出ないように、司法救済を求めることが難しくならないようにしていただきたいと思います。比較対象となる通常の労働者というのは実態に応じて判断するものであると思いますし、使用者が選んだ人と労働者が選ぶ人とは違うケースも出てくると思いますので、施行に向けた考え方を整理する場合は、現場実態に応じて判断することが難しくならないように、検討いただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長  1 点目の雇用形態が非正規であることを理由とする不支給という記述のところですが、これは総称的に書いていますけれども、短時間・有期・派遣がここで言う非正規の中身です。 2 点目に頂きました点は、 7 ページのような考え方をこれまでの部会の御議論を踏まえて書かせていただきましたが、ここでも施行に向けて考え方を整理していますので、また今の点、施行段階の御議論の中でも御提起いただき、事務局としても検討してまいりたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。他に、どなたか。高橋委員。

○高橋委員 何点かあるのですが、まとめて発言させていただきたいと思います。 1 点目は、基本的な考え方に関わるところですけれども、本日、御欠席の秋田委員が、この会合の第 1 回目のときに、我々が目指すべきは欧米型の同一労働同一賃金ではなくて、我が国の実態に即した法整備であるといった趣旨の御発言をされたと思います。それは誠に適当であると思いますので、できれば基本的な考え方のどこかに、我が国の雇用慣行に留意しながら、正規と非正規の不合理な待遇の差の是正を図るといった趣旨がにじみ出るような工夫をしていただければ有り難い。 1 点目はお願いです。

2 点目は、報告書案の 3 ページの 3 番目の○、一番下の○です。「さらに、現行法においては、 1 職務内容と、 2 職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の差別的取扱いを禁止するいわゆる『均等待遇規定』」と記述がありますが、現行のパートタイム労働法は、この職務内容と、職務内容・配置の変更範囲」の前に、「当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において」という記述があるわけです。ここからは質問ですが、今回、新たに有期契約労働者に対しても均等待遇規定を適用する場合、現行のこの第 9 条の条文自体は変更することではないという理解でいいかどうかという確認です。

3 点目ですが、 5 ページの 2 番目の○で、 1) 2) の一番終わりのところです。前回、私のほうでも御指摘させていただいた旨が、今回反映されていて、派遣先からの待遇等の情報に関して「秘密保持義務規定の対象となることを明確化すること」という文言があります。この「明確化」というのは、単純な質問ですが、労働者派遣法第 24 条の 4 を改正してその旨を盛り込むのか。それとも通達等で規定するのか。その明確化のあり方について、どのようにお考えなのかを質問させていただきたいと思います。

 最後ですが、一番最後の 11 ページで「また」以下の文言です。施行段階において検討を深めるべき事項が列挙されていますが、私が理解するところにおいては、もちろん、この 3 点は大変重要で施行段階において検討を深めるべきだと思いますが、これだけに限らないのではないかと思いますので、これらは主なものであるということが分かるように表現を少し工夫していただきたい。これはお願いです。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。課長、どうぞ。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長  1 点目につきましては御要望という形で頂きましたので、また皆様の御意見も踏まえながら次回に向けて検討させていただきます。 2 点目の均等待遇規定ですが、報告案では簡潔な書き方をしていますけれども、念頭に置いている条文は現在のパートタイム労働法 9 条の条文構造を念頭に置いています。 3 点目の秘密保持ですが、現在、労働者派遣法で派遣派遣元事業主、代理人、使用人、その他の従業者に秘密保持義務を課している規定は、包括的に「業務上取り扱ったことについて知り得た秘密」という文言で、これを細かく書いていくと、逆に細かく書かなかったものが抜けてしまうのではないかという疑念も生じうるのではないかと思いますので、これは条文よりは下のレベルで解釈を明確化する取扱いが適当ではないかと思っています。 4 点目、一番最後の点は事務局としても、この 3 点のみであるという趣旨ではございませんでしたので、そこは誤解のないように考えたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。加藤委員。

○加藤委員 私から、 10 ページのところに法施行に向けてと記載いただいていて、これまで申し上げ、お願いしていた中小企業に御配慮いただいていると感じています。「さらに」のところで「賃金制度等の点検等に向け」ということで中小企業、特に、非常に大きな影響を、この部分は考えていかなければいけないことになるかなと思います。「周知・相談支援」という言葉は、具体的には施行後のフォローアップの問題も含めた、例えば言葉を見ると単純に周知とか相談を手伝っていきますという感覚ですが、それをどんな形で具体的に考えていっていただけるのか、そこをお尋ねしたいと思います。

また、基本的な考え方のところで、同一労働同一賃金は、中小企業、我々の立場からすると我が国の経済全体、今後の少子化等も含めて国全体として取り組んでいかなければいけない大きな課題ということ。規模や業種、地域を全体として中小企業も頑張っていかなければいけない。それに国としても配慮しながら、この制度を進めていくのだという辺りも、何かの形で触れていただけると非常に有り難いと思います。

  ○守島部会長 ありがとうございます。課長、どうぞ。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長  1 点目の御質問ですが、周知・相談支援につきましては、現在、 29 年度に実施しているものとしては都道府県単位で、県によっていろいろですが、社会保険労務士会、経営者協会といったところに委託をさせていただいて、賃金規定の見直しなどについて無料相談に応ずる事業を行っています。さらに、ここで「十分な周知・相談支援が必要であり」としていますが、私ども事務局としましても、更に 30 年度予算要求を検討する時期でもございますので、様々な関係の皆様の御意見も頂きながら、さらに 30 年度はどんな追加、拡充が必要かも、こういった記述を頂きましたら検討してまいりたいと思っています。

 それから、御指摘の 1 番の基本的な考え方の中にもということですが、私どもとしても大企業から中小企業まで遍く、この法律の趣旨に沿った対応が円滑になされることが重要だと思っていますので、どんな文章が、どこに入れられるか検討させていただいて、またこの場にお諮りをさせていただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。小林委員。

○小林委員 私ども商工会議所で 4 月にアンケート調査を実施ました。回答企業数は 2,700 社ほどで、企業規模としましては、従業員 100 人未満が 80 %を占めています。同一労働同一賃金のガイドライン案についてお聞きしたところ、「知らなかった」と回答した企業が 41 %を占めました。その他の意見としては、「今後、どのような影響が出てくるか不安」と回答した企業が 27 %ほどありました。したがって、周知徹底を改めてしっかりとやっていただき、また、相談体制の整備についても、しっかり取り組んでいただきたいというのが要望の 1 点目です。是非、よろしくお願いいたします。

2 点目は、同一労働同一賃金の定義を明確化していただきたいということです。同一労働同一賃金の定義はどこまで詳細に定義できるかわかりませんが、会員企業にヒアリングしたところ、ガイドラインで示されているように正規と非正規の間の待遇改善ではなく、正規同士の同一労働同一賃金を想定している企業もありました。ガイドラインの定義である、同一の使用者に雇用されている正規と非正規の問題の不合理な待遇差を解消するということを、どこかで明記していただけると有り難いと思っています。以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。岸本さん、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 「知らなかった」が 41 %の実態については、私どもとしても重く受け止め、引き続き周知の努力をしてまいりたいと思います。それから、御指摘のとおり、今回の議論の対象としているのは非正規で働く方々の待遇改善をしようと。その観点から正規・非正規の不合理な待遇差の是正を進めていこうということで、正規間の待遇差の問題は、それはまたそれで、 1 つの政策的論点としてはあるのかもしれませんが、今回の法整備の対象ではないと思っています。その点は、例えば 1 ページの 3 つ目の○のところで、「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の是正を進めなければならない」と書いていますが、さらに、こうしたほうがいいということもあるかもしれませんので、そこは御相談させていただきたいと思います。

○守島部会長 他に、中野委員。

○中野委員 法施行に向けた準備期間についての件です。それなりの時間が要るということで御配慮いただいて書いていただいたと思いますが、ここでは事業主の話にとどまっているように思えます。一方、働く人たちにとってもこの改正は非常に大きくて、それまで描いていたキャリアプラン等々が変わってくる人たちもいると思います。新卒採用も関わってくると思いますし、そういう意味からすれば、選択する時間が必要なのは事業主に限らないのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 個別の企業における労使の話合いは様々な論点を取り上げて行われるかもしれないのですが、ここで準備期間として事業主のことを書いているのは、法律の形として均等・均衡待遇を図る義務が事業主にかかっていますので、事業主がその準備をする主体でもあるのだろうということで書いています。個別の話合いにおいて労使それぞれがいろいろなことを考えなければいけないということは、そのとおりだと思いますが、準備をする主体としては事業主になるのではないかということで、このような記載としています。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。松浦委員。

○松浦委員 先ほどの同一労働同一賃金の議論にも関係するのですが、基本的な考え方のところで 3 ページの一番最初の○で、おそらく今回の法改正の中で一番重要なポイントの 1 つがこの最初の○になるのではないかと思っています。ここでおっしゃっているのは、「待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき」ということで、要は横串で処遇を見ていきましょうということをおっしゃっておられるのだと思います。そういう意味では、まず 1 点目の質問ですが、横串で見たときには、必ずしも同一労働でなくても同じ処遇にすべきものがあるのではないかということをおっしゃっていて、例えば通勤交通費などについては、むしろ非同一労働同一賃金を主張されているのだと私は理解しています。そういう意味では、法律に落ちるときには同一労働同一賃金という言葉は出てこないのではないかと理解しているのですが、そこの法律に落とすときの言葉として同一労働同一賃金がどういう取扱いなのかということを、 1 点目の質問としてさせていただきたい。

2 つ目、同じ 3 ページの○の部分で、確かに「当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素」で、個別に判断したときに同じにすべきではないかと。不合理な格差を設けるのが適切ではないのではないかという部分があって、それについて同一にすることによって正規・非正規間の格差が是正される面はあると思っています。ですから、それを否定するつもりは全くございません。ただ、一方で、これまでの判例の中でもあったように、個別に見るということも重要ですけれども、格差というものを判断するときに全体の水準で見ることも併せて行われてきたわけです。個別に見たときに、ある個別の処遇について非常に大きな差が付いていて、その個別の処遇の性質・目的に関して考えると、その差というのは不合理ではないけれども、トータルで見たときに相当差があるのが本当にいいのだろうかということ。それを見る余地は残しておく必要があるのではないかと考えています。ここの「ただし」のところで、「複数の待遇を合わせて不合理と認められるか否かを判断すべき場合がある」というところで読み込めるのかもしれませんが、全ての処遇を横串で見ることが、本当に正規・非正規の格差是正に必ずつながり得るのかどうかは、少し慎重に検討する必要があるのかなと。ですから、法案を書いていただくときに、その文案については少し慎重に御検討いただければと思っています。それが 2 つ目です。

 最後、もう 1 つは、これは別のところですが、その他のところで、できれば御検討いただきたいというのが 1 点ございます。今回の改正内容、特に派遣についてはかなり影響が大きいのではないかと私は思っていて、その際に少なくとも今回の政策効果を検証し、実際に格差是正につながっているのかどうかを見直していくというか、その効果を見ていくプロセスが必要だということを、できれば盛り込んでいただけないかなと思った次第です。以上、 3 点です。よろしくお願いいたします。

○守島部会長 ありがとうございました。課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長  1 点目ですが、御指摘のとおり同一労働同一賃金は、今回の政策の大枠を表現するものとして政府として用いていますが、これを法律にブレークダウンしますと、均等待遇規定と均衡待遇規定を、それぞれどのようにまた規定を充実し、組み合わせるかということであると思っています。したがって、法律に出てくるのは均衡待遇であり均等待遇という概念になると思います。また、同一労働同一賃金というのを本当に文字通りに解しますと、法原理として逆に同一労働でない場合には規制が掛からないという原則で、そこに手当や待遇の性格によって少し変形を加えていくというロジック、欧州のようなロジックを想起させる面もございますが、日本の場合には、もともと均衡待遇の規定を持っていますので、初めから同一労働と言いますか、ハードルになっていない法制です。そういった意味からも法律論としては均等待遇規定であり、均衡待遇規定をどのようにしていき、それをどう履行確保していくかということだと思っています。

2 点目の個別に見ていくことと全体に見ていくことというのは、結局、その見ていった先でつながる場合が多いのではないかと思いますが、いずれにしても御指摘の趣旨、かえって権利救済の可能性を狭めることがないかどうかという御懸念については、おっしゃるとおりだと思います。そこは条文化に当たっても気を付けたいと思います。

 それから、派遣に対する影響についてですが、この政策に限らず、政策について実施して、実施しっ放しということではない。そういう時代ではないと思っていますので、この政策についても施行がされましたら、その施行状況を見ながら、必要な見直しの議論をしていくことは必要だと思っています。

○松浦委員 正社員、非正社員の格差、特に非正社員については正社員転換や雇用形態の移動も含めていろいろ動きがありますので、完全に一時点の格差を見ただけでは、政策効果がなかなか判断できないところがあるかと思います。追跡的に見ていくことが必要になってくると思いますので、その点も併せて御検討いただければと思います。

○山田委員 主に基本的な考え方に関連することで、 2 点申し上げます。 1 点目は、これは書くかどうか、できればそういう趣旨のことを入れていただければと思いますが、今回の同一労働同一賃金実現に向けての取組のタイミングが、これからしばらく良い局面にあるのだということだと思うのです。というのは、言うまでもなく人手不足が非常に深刻化している中で、既にパート、アルバイトの賃金が相当上がっている。企業にとっても、人材確保の意味では処遇改善が必要になっている。長期的に見ても人手不足が続くという見通しですので、これが労働者だけではなくて、企業にとってもプラスの面があるのだと、そういう主体的な取組を促すような表現が 1 つどこかに入ればいいかなというのが、 1 つの御提案です。

 もう 1 つは、今回ここに書き切れるかどうかということはありますが、先ほど高橋委員がおっしゃったこととも関わりますが、今回は日本的なというか、欧米そのもののやり方ではないということと関わると思いますが、同一労働同一賃金の実現のそもそもの狙いは、私自身は職場における公平性を実現していくことで、働き手、あるいは企業の活力を上げていくという、最終目標はそこにあるということだと思います。そうした観点からすれば、同一労働同一賃金というのは、あくまでそのための 1 つの手段に過ぎないと思うのです。もう少し言うと、職場における働く人々の公平ということをそもそも論で考えてみた場合に、少なくとも 2 つの軸で考えていく必要があると思っています。 1 つは時間軸というか、つまり、短期的かつ静態的な、その時その時の公平性の問題か、あるいは長期的あるいはダイナミックな公平性かという軸です。それで言うと、今回は短期的な公平性への対応だと思うのです。しかし、先ほど松浦委員もおっしゃったようにもう少しダイナミックに、当然非正規の人々のキャリア形成ということを考えていったときに、能力育成をどうするのか、あるいは正社員にどう転換していくのかという長期的な観点が非常に大きな問題であるわけですから、そういう軸が 1 つあると。

 もう 1 つ重要なのは、これは守島部会長の御専門のところだと思いますが、公平観とか公平性といったときに、「結果としての公平」と「過程 ( プロセス ) の公平」の 2 つがあって、働く人たちが納得をして、モチベーションも上がり、企業の業績も上がっていく。同一労働同一賃金というのは、基本的にはそこでの結果公平の話だと思いますが、今回の全体の報告書の中にも少し入っていますが、労使の間の交渉のプロセスも非常に大事なのだと。そういう公平感の全体像を、今回報告書にはっきり書くかどうかは別として、実際に施行していくときには周知していくことが大事なのではないかと。今回は、あくまで先ほど申し上げた時間軸で言うと短期の部分、かつ、その結果公平というところが、この 20 年間の中で弱かったので、ここを強化するということであって、全体の職場の元気とか、企業の業績を上げていく、そのために働き手の公平性をしっかり確保していくには、トータルに公平性を確保していくことが必要になるのだと。そうでないと現場が混乱する。同一労働同一賃金の全体における位置感を国民がしっかり把握して、適切な取組ができるような趣旨を、ここに書き入れるかどうかは別だと思いますが、実際に施行されるときにはそういうことも周知されていくことが重要ではないかということで、 2 点申し上げました。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○小原委員 今の先生方の御発言に関連すると思いますが、短期的な公平性や結果としての公平性ということだけではなく、長期的な公平性や過程の公平性も必要であるだという点は、本当にそう思います。

そう考えたとき、資料の 10 ページの下から 3 行目にある「さらに、全事業主における賃金制度等の点検等に向け」という記載については、少し読み過ぎかもしれませんが、正社員も含めた今ある賃金体系全てを見直さなければならないという誤った理解はすべきではないと思います。賃金制度が未整備の企業は、正規・非正規にかかわらず労働者に対する待遇説明が困難ですので、賃金制度の点検をして見直すことが必要です。この意味での賃金制度の点検と見直しは、正規・非正規にかかわらないこととして、労働者の処遇の納得性向上のために必要だろうと思います。

 一方で、今すでに賃金制度があって、業種、業態、企業理念、その他、昔は年功の性格が強かっただった制度を従業員の納得性向上をめざして、能力の色を強くしたり、成果の評価の色を強くしたりという工夫を労使で築き上げてきた企業もあるわけです。こうした労使で積み上げてきた正社員の賃金体系や賃金制度、処遇体系を全部、今回のいわゆる同一労働同一賃金ということで見直しをするということではないと思います。今回の法改正で求められているのは、今ある正社員の賃金制度を基に、雇用形態の違う皆さん方の処遇をどう見直すのかということです。具体的には、昇級の仕組みを入れるとか、手当てをどうするのかといった営みが必要なのだと思います。

 まとめて言うと、いわゆる同一労働同一賃金を実現するということで、正社員を含めた賃金体系全てを直ちに見直さなければならないということに直結するものではないということを、強く申し上げておきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○武田委員 私から、 3 点申し上げます。 1 点目は、今の御意見とも、先ほど小林委員が御指摘されたこととも関係しますが、項目 1 3 つ目の○の「 (1) 正規雇用労働者 - 非正規雇用労働者両方の賃金決定基準・ルールを明確化」についてです。私は、今回狙っている同一労働同一賃金を実現していこうとするならば、均衡処遇という観点から正規・非正規両方の賃金体系を見直していく時期には来ているのではないかと思います。今すぐに正規雇用の賃金体制を抜本的に変えましょうと言っているわけではないですが、双方に納得がいく説明ができるようにするには、正規の賃金が能力や成果、経験等に基づいて決定されていないと、そもそも比較できないのではないかと考えます。したがって、ここに (1) が明記されることの意味は大きいと、私は考えております。

2 つ目は、 1 3 つ目のポツの 2 つ目です。冒頭にも御意見があったかと思いますが、「非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につながっていくこと」が、先般の実現会議のガイドラインとは文言が違うのではないかという御指摘が先ほどございました。私は、生産性向上という文言はあったほうがよいと思いますが、一方で生産性向上だけかなということもあり、冒頭にもございましたように少子化の観点もありますし、先ほど山田委員が御指摘されたように、実は非常に人手不足への対応といった面もございます。つまり、人手をしっかり確保していく、あるいは不合理な格差を是正することによって、経済社会の安定性に資するという面もございますので、これは一案ですが、「労働生産性の向上につながり、ひいては日本の経済社会の発展に資する」、あるいは「経済社会の発展につながっていく」というような文言を、一言加えていただいてはどうかと考えました。

3 つ目は、私も今回の法の改定で将来のキャリアがどう変わっていくかが、実は非常に大きなポイントと考えます。つまり、将来に対して頑張れば報われるという思いを持てるようになることが非常に重要なため、山田委員もおっしゃったように、一時点で調整して終わりというよりは、その後のキャリアによって賃金が変わっていくことが重要と思います。逆に言えば、二時点目、三時点目ではそれが分散していないとおかしいです。つまり、企業の一定の考え方に基づき、もちろん企業によって考え方に差はあってよいと思いますが、頑張った度合い、能力を向上させた度合いが賃金に反映されていくことが重要です。文章の中に入れるのは難しいと思いますが、考え方が周知されていくことは重要ではないかと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○高橋委員  10 ページの 6 番の「法施行に向けて」のところですが、 4 行目に「十分な施行準備期間を設けることが必要である」と。これは誠に適当なことですが、仮に十分な施行準備期間を設けたとしても、この会合でも何人かの方が御指摘をされましたが、点検等を行って労使間で話合いをし、何らか必要な見直しをすることについて労使で合意ができれば、見直しをしていく形になるわけですが、これまでの御指摘にあったとおり、仮に制度を見直すとした場合、相当程度の時間を要するわけです。そのときにまじめに対応して、丁寧に交渉を続けて見直しをしようとすれば、施行日をまたいでも労使交渉を続け、段階的な施行を行うといったことも考え得るわけです。そうしてまじめに取り組んでいる企業は、まだ制度の見直しを完全に完了しない間に施行が行われ、その結果、訴え等が起こされていくといったことも想定されます。そうした点について憂慮する声がこの会合でもあったわけで、この報告書にそのことを書くのはなかなか難しいと思いますが、そういう指摘があったことが分かるような形で周知をしていただければ有り難いと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○村上委員 確認 1 点と、今の高橋委員が御指摘の点についての意見を 1 点を申し上げます。

まず、高橋委員が今御指摘された点については、何度も特に使用者側委員を中心に懸念の声が出されております。そういった論議も踏まえて、 3 ページの均衡待遇規定の考慮要素の「その他の事情」の部分で、労使交渉の経緯なども含まれ得るということが書かれたのではないかと思います。きちんと労使交渉していって、例えば 3 年計画で待遇差を改善していくとしたときに、いきなり法違反という話にはならないのではないかと思います。裁判所が判断するにあたっては、労使交渉のプロセスもきちんと見て、処遇全体を変えていくということも考慮されうるのではないかと思います。

 また、細かな部分について伺いたいのですが、現行のパートタイム労働法第 9 条で、先ほど高橋委員から御質問があったことに関連して疑問に思ったのでお伺いします。現行のパートタイム労働法第 9 条では、「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない」とされています。この「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」という点について、例えば 1 年契約を反復更新して 4 年働いている場合はその全期間を見るということなのでしょうか。有期雇用のパートタイム労働者の扱いについて、現行解釈はどのようにされているのか教えていただきたいと思います。

○河野短時間・在宅労働課長 「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」とは、当該短時間労働者が通常の労働者と職務の内容が同一となり、かつ人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と同一となってから雇用関係が終了するまでの間となっております。「見込まれる」ということに関しては、将来の見込みも含めて判断されるものであり、期間の定めのある労働契約を締結している方については、労働契約が更新されることが未定の段階であっても、更新をした場合にはどのような扱いがなされるかを含めて判断されるものとしております。

○守島部会長 他に、どなたか御質問、御意見等はありますか。

○小原委員  10 ページの「その他」の最後で、派遣労働者について「就業規則の作成・変更時の意見聴取」という記載があります。派遣労働者に関しては、この報告書案の中には、派遣先均等・均衡方式と、労使協定方式による派遣元での均等・均衡がありますが、この「就業規則の作成・変更時の意見聴取」について、その対象が派遣先なのか派遣元なのかが書かれていないのです。前回部会での事務局説明のときには「派遣元」とおっしゃっていたので、「派遣元」であると理解はしているのですが、報告書案には書かれていないため、改めて「派遣元」であることを確認して議事録に残したいと思いますが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 失礼しました。前回も申し上げましたとおり、これは派遣元の就業規則の作成変更時の意見聴取です。

○小原委員 ありがとうございます。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○中野委員 同じように細かなことで、先ほどもお話がありましたが、これは派遣事業主にとっては非常に大きな改正だと思っております。課題が多い中で、 5 ページの上から 2 番目の○の 2) で「派遣元事業主は、派遣先からの情報提供がない場合は、労働者派遣契約を締結してはならない」とはなっているものの、情報提供がないだけではなくて、中には情報提供できないというケースもあると思います。そうしたときにどのような対応をとるべきだと考えているのでしょうか。つまり、派遣元のほうで労使協議中とか、制度がまだできていないといったことで金額が決まらず、情報提供ができない場合、または制度改正の経過中には何を提供すれば良いとみなされて、何であれば問題があるとみなされることになるのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 個別の事案によって様々なケースがあるのかもしれませんが、今の質問で想定されるのは、派遣先において協議中ということでしょうか。そうしますと、協議が整うまでの間は従来の待遇が派遣先において実施されているのだとすれば、実施されている待遇を情報提供すればよいことだと思います。

○中野委員 前回も申し上げましたが、派遣元事業主の中にはその辺りをかなり注目し、その間の営業活動はどうなるのだろうかという不安もあるということだけ一言申し上げておきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。他に、どなたか。

○田代委員 実務の観点からの細かい質問ですが、先ほどのやり取りの中で、派遣元事業主の中でも、無期雇用の方については労使協定方式を適用し、有期雇用の方については派遣先基準を適用するということでしたが、そうすると同じ派遣会社の派遣社員であっても、派遣元でどのような雇用区分に置かれているかによって、適用とする方式が変わり得るということでしょうか。確認させていただきたいと思います。そうなると、実務において同じ派遣社員を受け入れている場合でも、その方が派遣元の事業者において雇用区分が変更になったという事情が起きた場合には、派遣料金が変わってくることがあり得るという理解でよろしいでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 派遣就業期間中に方式が移るということは、多大な混乱を招くと思いますので、それを法令のレベルでどうするかということはあるかもしれませんが、通常、派遣先と派遣元の話合いの中でもそのようなことは行われないのではないかと思います。複数の派遣労働者がいて、協定方式の方と派遣先均等・均衡方式の方がいる場合には、労働者派遣をしようとするときの通知なので、派遣先が分かるようにするということは考えて、文章に盛り込んだ次第です。しかし、途中で派遣労働者が派遣就業期間中に方式を変わるというのは、そこまでは。

○岩村委員 それほど深く詰めているわけではないのですが、例えば派遣期間中に派遣先均衡から協定方式に変わるといったという場合、非常に単純化すると、 1 つは従来の派遣先均衡よりも派遣労働者の給与が下がる場合、あるいは、場合によってはその逆もあると思うのです。問題は、特に給与が下がる場合は不利益変更になってしまうので、それはできないだろうということになるかと思います。ですので、実務上はどこかのところで新しく派遣する、ある一定基準日以降に派遣に入る人から協定方式を適用するとか、そういったことをすることによって対応するほうが望ましいのかなと思います。その方が、トラブルにはならないだろうと思います。そういう意味では、現に今、派遣している人たちについてまで変更を適用するのは、余り適切ではないという気がします。

○守島部会長 他には、よろしいですか。

○岩村委員 非常に総論的な話ですが、私自身は、この同一労働同一賃金の議論は従来の日本の雇用慣行の中で賃金の原資が大きく正規社員に割り当てられていて、他方で非正規の人たちは、場合によっては事業所単位の採用であったり、更には原資が物件費であったりという形になっていて、それを是正していこうというものだと思っています。そういう点では、この同一労働同一賃金の今回の動きが投げ掛けている 1 つの大きな問題は、まず、第一に、特に労働側に対して賃金原資配分の正社員への大きな偏りをどう考えるのか、それに対しての非常に厳しい投げ掛けだと私は思っています。

 そういう点で、今日書いていただいている中で、 2 ページの上から 1 番目の○の最後に「公正な評価の推進とそれらに則った賃金制度の構築等が可能な限り速やかに行われるよう、非正規雇用労働者を含めた労使の対話を促進する」と書かれていることを、是非、労働側におかれましても、意識して今後の取組を進めていっていただきたいと思います。願わくば、使も含めて、使と正規労働者と非正規労働者が全部としてウィン・ウィンの関係になるところに着地点が見付かるのが一番望ましいと思っていますので、そういう点で今後の労使の対話と御努力を是非ともお願いしたいと思っています。

○守島部会長 ありがとうございました。他にどなたか御意見、御質問等はありますか。

 それでは、大分議論が進んできましたので、報告書の内容については一通り議論が終わったと考えたいと思います。報告案については、本日頂いた御意見を踏まえて、次回、事務局から再度御提示いただきたいと思います。最後に、次回の日程等について事務局から説明をお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 次回の同一労働同一賃金部会の日時・場所については調整中ですので、おって御連絡いたします。

○守島部会長 ありがとうございました。それでは、これをもちまして、第 5 回同一労働同一賃金部会を終了いたします。なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の梅田委員、使用者代表の中野委員にお願いをいたします。本日はお忙しい中、長時間どうもありがとうございました。

 


(了)

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