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2017年4月28日 第13回新たな社会的養育の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

○日時

平成29年4月28日(金)9:30~12:30


○場所

経済産業省別館1111各省庁共用会議室


○出席者

構成員

奥山座長 松本座長代理 相澤構成員 井上構成員 加賀美構成員
上鹿渡構成員 塩田構成員 伊達構成員 林構成員 山縣構成員

事務局

山本内閣官房内閣審議官 川鍋家庭福祉課長

○議題

(1)関係者からのヒアリング(花園大学 和田一郎准教授)
(2)一時保護に関する議論
(3)その他

○議事

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第13回「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、西澤先生から御欠席の御連絡をいただいております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料としましては、右上に番号を付してございます。資料の1番から4番まで。本日お越しいただきました花園大学の和田先生の資料が資料4ということで、添付してございます。あと、参考資料1と参考資料2ということで、参考資料1は前回お出ししたものと同じ資料でございます。参考資料2が、前回第三者評価について御質問等いただきましたので、資料を御用意させていただいております。

 机上配付の資料としまして、和田先生が研究でかかわっておられます一時保護所における支援のあり方に関する研究の報告書を配付させていただいてございます。

 本日、マイクが1人1本御用意できておりません。事務局が持って走りますので、若干御迷惑をおかけいたします。申しわけございません。

 資料の欠落等ございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。

 それでは、これより先の議事は奥山座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 では、早速議事に入っていきたいと思います。

 本日の議事は、前回に引き続き一時保護のことについて検討したいと思っておりますが、3時間ございますので、もし議論が少し早目に終われるようでしたらば、次回に向けて施設のことについての議論に少し入っておきたいと思います。御協力のほどよろしくお願いいたします。

 本日は、花園大学社会福祉学部児童福祉学科の和田一郎准教授にお越しいただいております。お忙しい中ありがとうございました。まず最初に、10分ほどプレゼンテーションしていただいて、こちらからも御質問とか、一緒に議論をさせていただければと思います。

 では、和田先生、よろしくお願いいたします。

 

○和田准教授

 花園大学の和田でございます。おはようございます。

 一時保護所の研究はここ数年集中的に行っておりまして、国や民間団体の研究補助金等の御支援をいだきながら現在も視察や現地調査等を行っております。本日はどうぞよろしくお願いします。

 では、お手元の資料4に基づきまして説明させていただきます。

 1つ目の論点として一時保護所の現状でございます。これについては、特に都市部と地方で顕著なのですが、入所率などの外的要因だけではなく、内的要因である職員の業務量についても大きな違いがあります。

 次に、一時保護所は非常勤の割合がとても高い職場でありまして、保護所によっては夜間は非常勤職員しかいないところもございます。

 また、入所児童につきましては、虐待件数の増加からでしょうか、情緒行動面に課題を抱える児童の入所が多くなってきております。

 しかしながら、保護児童が多い自治体においては、それら児童の短期治療的な機能が一時保護所で果たせなくなってきているということが現状でございます。

 2番目の論点として一時保護所の課題です。まず初めの課題として、多くの保護所はニーズに見合う質と量の確保がなされておりません。その理由として、1つに、質と言えば、最低限度の共通した研修はなく、フォーマットがございません。量といたしましては、各一時保護所ごとの予算や人事体制がまちまちでございます。

 2つ目に、SV体制が不十分なことです。一時保護所は交代勤務であることから、チームアプローチの重要性があり、SVの重要性は高いと考えられますが、SVの研修等もほとんど行われておりません。

 3つ目は、児童が生活するという場面で考えますと、ソーシャルアドミニストレーションを理解、実践できる管理職が必須だと思われますが、児相長研修等でそれがなされておりません。

 4つ目として、国が個別対応職員の規定をしましたけれども、それにより、個別対応が国の想定していない使われ方をしている保護所があり、児童の権利擁護上問題が大きくあると考えられます。

 5つ目に、一時保護所独自の職員配置の最低基準について述べさせていただきます。今は児童福祉法施行規則に基づき児童養護施設の基準を準用するということになっておりますが、ここは本当は児童心理治療施設を基準にしていただきたいところなのですけれども、最低でもこれからは今の児童養護施設の基準に加えて、教育の確保として特別支援の教員数も上乗せした職員配置が必要でないかと考えられます。

 また、全国の一時保護所の1割ほどに減りましたけれども、一時保護所職員が夜間の児童虐待電話当番等を行い、職員が手薄になることや、夜間の身柄つき通告などにより同様に手薄になることもあり、時間帯による職員数の標準化が必要ではないかと考えられます。

 次の課題として、混合処遇の問題です。混合処遇が不適切なのではなく、個に応じた真の意味の個別対応ができない建物構造や職員体制、職員の専門性の欠如とともに、大規模一時保護所が存在するところが大きな問題であると考えられます。

 混合処遇を例として、非行児や被虐待児が一緒という意味合いで使われておりますけれども、非行児童にも虐待の被害の割合が高いことから、そのような加害、被害の関係や分け方ではなくて、「社会から守られるべき環境の子ども」と「社会に開かれた中ですごさせるべき子ども」が一緒に生活をしているという視点が今後は必要であると考えられます。

 最後に、今後の一時保護所のあり方について述べさせていただきます。

 第一に、具体的な一時保護所の強化プランが必要と思われます。例を挙げますと、児童相談所強化プランでは、これから4年間にかけて児童福祉司とそのSV、心理士、保健師が1,120人程度、平成27年度に比べ26%ふやすということになっています。この強化プランになぜ同じ児童相談所であり、子どもを保護する重要な部門である一時保護所職員が入らなかったのかと思っております。このような数値による具体的な到達目標が必要であると考えられます。

 第2に、個々の児童の状況に応じた支援を可能にするためにも、職員の質、量、待遇の向上だけではなく、一時保護システムそのものについて、ユニット化や小規模化、一時保護委託の推進など、受け入れ量の拡充も必須です。

 第3に、社会診断、診療所診断、そして一時保護所の行動診断による総合的な判断に基づくソーシャルワークが行われるためには、この3部門の連携と、その部門の長が同一職階の必要性を感じます。ワーカー、心理側の部門の長が課長級である一方、一時保護所長が係長級というところもありました。

 第4に、建物の基準に関しては、支援者であるケアワーカーと生活者としての子どもの視点をもとに生活動線で考えた部屋の設置が必要であります。そのためには、やはり小規模化、家庭的養護化になっていくだろうと思います。

 第5に、すぐれた実践をしているところは、児童心理治療施設や児童自立支援施設の待機の間に、さまざまな工夫をして急性期の治療的かかわりをなし遂げており、事実上の治療施設として機能している現実があります。こうした実践は、24時間同一の職員集団によるケアの効果であると考えられます。児童養護施設への委託一時保護はここが最大の課題になると考えられます。

 最後に、交代制の勤務であり、研修がしにくい職場でありますけれども、職員のスキルを向上させるためにも、児相研修に多い従来形の知識詰め込み研修ではなくて、実践を伴った研修を全員に受けさせるなどの取り組みが望ましいと思われます。

 以上です。

 

○奥山座長

 非常に限られたお時間でまとめていただきまして、どうもありがとうございました。

 構成員の皆さんから何か御質問がございますでしょうか。どうぞ。

 

○松本座長代理

 どうもありがとうございます。

 1点お聞きしたいというか、もう少し詳しく教えていただきたいことなのですけれども、2の一時保護所の課題の(1)の5番目の項目に「国が、個別対応職員の規定をしたことから、逆に個別対応が懲罰的・謹慎的に」云々とございます。これは具体的にどういうことなのか、もう少し教えていただけますか。

 

○和田准教授

 例えば自治体によっては、男女目を合わせてはいけないというところもあるのですけれども、そういうところで目を合わせてしまうと、個別対応職員が子どもを個室に連れていって専門的に指導するとか、もともとの趣旨とは違った使われ方をしているというところだと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 松本先生、よろしいでしょうか。

 

○松本座長代理

 はい。

 

○奥山座長

 一時保護所の全国の差がかなり激しいということがありますね。だから、個別対応職員がどのように使われているかも県よってかなり違うということですか。

 

○和田准教授

 はい。

 

○奥山座長

 ほかにいかがでしょうか。塩田先生。

 

○塩田構成員

 ありがとうございました。

 私も中で働いているワーカーさんたちが一時保護所の目的とか役割がわかってやっているのかなと疑問に思うことがあります。保護所で子どもが語られたことがちゃんと担当の福祉司さんに届いているのかとか、その辺がどの程度やりとりをされているのかわからなかったり、私は児童養護施設なので、一時保護委託を去年だと7人受けたのですが、どのように過ごさせてくださいとか、指示がないのです。逆に聞いてはいけないことがありますかとか、気をつけなくてはいけないことがありますかと聞いて、あらかたケースはお聞きしてお預かりするのですけれども、指示がないのです。

 逆を言うと、うちの職員が黙っていると、アセスメントに力を入れているので、おうちで起きていたこととか、間取りとか、どこで虐待が起きたということも、無理に聞くことはないですが、子どもから語りがあれば、そこは積極的に聞いていって記録にまとめて提出しますが、業務内容が標準化されていないことが心配なのですけれども、実情としてはいかがなのでしょうか。

 

○和田准教授

 一時保護所のマニュアルに関しては、全国の47%ぐらいがつくっているのですが、自治体によってばらばらです。見せていただきましたが、本当に自治体によって全く違います。

 先ほど先生がおっしゃった一時保護所の内容をワーカーがどれだけ知っているかということなのですが、それもばらばらでして、すぐれているところはワーカー側と一時保護所の職員のシステムが統合しているので、どちらも毎日の記録とかがオンラインで読めるのです。そういうところだと、一時保護の職員側、ワーカー側が、今、お母さんと会って再統合の調整しているのだなというのもすぐリアルタイムでわかりますし、また、一時保護所できょう何を食べたのかとか、どういう暮らしをした、どういう語りをしたというのも全部打ち込んでありますので、ワーカー側もすぐ見えるようになっているのです。

 そういうところもある一方、仲が悪いまではいかないのですけれども、情報が断絶していて、一時保護所内の情報が全くワーカーにも伝わっていないし、逆のところも多いというところでございます。非常に大きな課題だと思っております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 どうぞ。

 

○藤林構成員

 和田先生の御指摘はいずれももっともだなと思いながらお聞きしておりましたが、幾つか教えていただきたいのですが、一時保護所の職員の専門性の確保、専門職集団になってほしいというのは常々思っているわけですけれども、それが可能になっている自治体、児童相談所はどのようなバックグラウンドとか特徴を持っている自治体なのかというのがもしわかりましたら、教えていただきたいと思います。

 もう一点は、政令市とか中核市もケアワーカー、直接指導職員が働く現場を一時保護所以外に持っていない自治体もたくさんあるわけなので、一時保護所、ケアワーカーを公務員として雇用していくということは、人事管理上とても大変ではないかなという印象もあるのですが、そういう声を聞かれたことがあるのかどうか。

 そう考えますと、必ずしも自治体が直営でなくて、一時保護所を一時保護専用施設として外部に委託するとか、一時保護所そのものを外部、どこかの法人に委託するという考え方であるとか、例えば一時保護専用施設をほかの法人、別のところで運営していくという考え方もあるのかなと思うのですけれども、その辺の和田先生のお考えをお教えいただきたいというのが2点目。

 3点目は、それに関連して、3の(7)のところに書いてありますように、すぐれた実践をしているところがあるということなのですが、「24時間同一の職員集団によるケアの効果である」と書いた後に、「児童養護施設への委託一時保護は、ここが最大の課題になると考えられる」ということで、この辺の意味合いも教えていただければと思います。

 

○和田准教授

 1つ目の専門職集団の自治体というところですが、視察するときに自分の自治体の名前を出さないくれとよく言われているので、言わないのですけれども、関東地区の一つの自治体は、一時保護所の職員の専門化にすごく力を入れているところがございまして、他にないほどの職員の研修を組織化してやっているということ。組織化するとともに、その研修の内容をそのまま現場ですぐ生かせるように、実践をもとにして常にフォローアップしているという自治体がございます。そういうところの自治体を見ますと、職員が専門集団と思っているところがありますので、私も見ていない一時保護所もたくさんあると思うのですが、そういう研修体制が整って専門家集団をつくつている自治体は実はあります。

 2点目のほうは本当に悩ましいところで、おっしゃるとおりで、直営がいいのかとか、外部委託がいいのかとか、法人委託かどうかというのは、まだわからないところですけれども、もし一時保護のシステムが標準化されているとするならば、外部委託というのは可能になってくると思われます。ただ、今、一時保護所のシステム自体もまちまちですので、各県によっても全然違いますので、そういうものの標準化が必要かなと思っております。

 3番目のすぐれた実践についてですが、治療的かかわりをしているところは三交代制とかになっているのですが、その子どもに対して常に同じ大人が接して24時間見ているということなのです。児童養護施設となると、一時保護専門職員というのはいないわけですから、ほかの子どもを見たりしているところで非常に難しいと思っております。

 以上です。

 

○藤林構成員

 ですから、児童養護施設に一時保護を委託する場合でも、一時保護児専任の職員がそろっておれば同様のことができるのではないかなと思うのですが、そう考えてよろしいでしょうか。

 

○和田准教授

 はい。

 

○藤林構成員

 1点目の、関東のどこの県かわからないのですけれども、多分一時保護所の職員が1カ所だけでなくて、複数の一時保護所を異動できるとか、ほかの県立施設、障害児施設とか障害者施設とか児童自立支援施設とか、ほかの人事異動も可能な、割に大規模なところではないかと想像するのですけれども。

 

○和田准教授

 おっしゃるとおりです。

 

○藤林構成員

 ということは、ケアワーカーの研修体制というか、キャリアパスが整備されていると考えていいわけですね。

 

○和田准教授

 はい。

 

○藤林構成員

 ですから、そのような入所施設を持たない自治体は、どうしても人事異動ができなかったり、一時保護所で何年か経験して別の部署に行きますので、経験が蓄積していかないという問題が残るかなと思っております。

 

○和田准教授

 おっしゃるとおりです。

 

○藤林構成員

 わかりました。どうもありがとうございました。

 

○奥山座長

 では、上鹿渡先生で、その後、山縣先生、お願いします。

 

○上鹿渡構成員

 貴重なお話、ありがとうございました。

 2ページの一番上のところに混合処遇を非行児や被虐待児が一緒という意味合いで使われてきているけれども、そうではなくて、問題は子どもの視点からということになると思うのですが、「社会から守られるべき環境の子ども」と「社会に開かれた中ですごさせるべき子ども」がいるというこの見方に変えて、一時保護を活用していくというのは非常に重要な視点だなと思いました。

 それに絡んで、今の藤林先生のお話とも関係するのですが、一時保護委託という形が社会に開かれた中で過ごさせるべき子どもなどでは有効な子どもが結構いるのではないかなと思うのですが、例えば里親やファミリーホームや家庭養護での一時保護の使い方とか、いろいろ調べていらっしゃった中で思われている、考えていらっしゃることがあったら、ぜひ教えていただければと思います。

 

○和田准教授

 ほかの国の緊急一時保護の制度を見ますと、社会に開かれた中で過ごせるということは、やはり里親とかファミリーホームが望ましいと思いますが、ぜひそちらの方向で一時保護委託が進めばと思っているところでございます。

 一方、非常に治療的なかかわりが必要な子どもも多くなってきているような実情ですので、そういう面では、ほかの国とも同じですが、施設的な一時保護というのも残さざるを得ないというか、必要だということも考えられます。

 

○藤林構成員

 関連して、割合はどれぐらいと思われていますか。社会に開かれた中で過ごす子どもと守られるべき環境の子どもの割合。

 

○和田准教授

 感覚ですが、半分はいると思います。

 

○藤林構成員

 ありがとうございます。

 

○奥山座長

 山縣先生。

 

○山縣構成員

 山縣です。

 今のお二方の委員の発言とかなり重なってしまって、もういいかなと思いつつも、今、一時保護所に期待されているのは、緊急保護と行動観察と短期入所、治療の3つだと思うのですけれども、今の話を聞きながら、一時保護所のこの3つの主な機能は、全て一時保護所で今後もいくべきものなのか。混合化するような中で混合化を防ぐとするならば、今後の一時保護所はこの3つの中のどれかにある程度特化していって、例えば民営化なり、あるいは委託一保で、そちらのほうがむしろ中心になって、一保そのものは、例えばどこかの機能により特化していったほうがいいのだとか、そういう感覚というのは何かありますか。

 

○和田准教授

 今でさえ一時保護所の使い方が自治体によって全然違うので、懲罰的に一時保護に行けというところもあるぐらいなので、非常に差があって、全体的にというのはなかなか難しいなと思います。

 

○山縣構成員

 和田先生の個人的なお考えで結構です。ばらばらに使われているから、むしろこういう使い方に絞っていったらどうか。ほかの機能は子どもにとっては必要であるという前提で考えたときに、ほかの部署、部門なりほかの施設、他機関なり、ほかでやったほうが一時保護所の姿としては好ましいと思われるかどうか。3つとも必要なのだと考えていくのか。そうすると、現在の課題はどうしても残り続ける可能性があるわけですね。その辺を解消するための今後のあり方としてどこかに特化していったほうがいいのかどうか、そういうお考えがあるかどうかです。

 

○和田准教授

 個人的意見としては、緊急一時保護のみ特化したほうがいいかなと思うところであります。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 伊達先生。

 

○伊達構成員

 大変子どもの状態像が悪いということですので、里親さん、施設から一時保護所にUターンをしているケースがかなりふえているというふうに推測しているのです。そうすると、そのケースを初めて預かったケースと同じ一時保護所に置いて対応するということはかなり難しい問題があるのではないかと思って、2ページの混合処遇というところで言えば、Uターンと、一番最初の、ある意味アセスメントをきちんとしていくための機能としての一時保護所の使い方みたいなものは違うと思うのですけれども、そこら辺のことを踏まえた上での一時保護所の活用をやっているような事例はあるのですか。

 

○和田准教授

 難しいですね。施設で何かトラブルを起こして、懲罰的ではなくて、クールダウンとして一時保護所を使っているところは幾つかあります。そういう面では、最初に入ってくるのと違って、アセスメントがちょっと異なるというのは事実ですので、そういうところをやっている自治体はあります。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○伊達構成員

 一時保護所を使うことによって継続性、切れないようにするとか、そういう意味合いが本当に持てているのかどうか。そこら辺は調査の中で明らかにするようなことができるのでしょうか。

 

○和田准教授

 実際この調査でも、一時保護所に行った後にもとの施設に戻ったか、違う施設か、家庭復帰したかというのを調べているところではございますけれども、大体半分ぐらいはもとの施設に戻るということになっています。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 伊達先生、よろしいですか。

 

○伊達構成員

 はい。

 

○奥山座長

 ほかにいかがでしょうか。井上先生。

 

○井上構成員

 和田先生、ありがとうございました。

 今、大事なところの議論があったと思いますが、先生、せっかく机上配付の資料として27年3月に報告していただいたあり方に関する研究のこの分があります。私もこれを読ませていただいているのですが、これが出たのが27年3月でございまして、その時点で32ページ「一時保護所の今後のあり方について」ということで、短期目標、中期目標というのは、僕らとってとても大事な分け方なのですが、そういった形で書いてくださっていますが、28年の法改正を受けた上でこれをもう一度考えてみて、どういったものが本当に大事かという御意見がありましたら、お聞かせいただきたいということが一つ。

 あと、この資料全体の中でここだけは絶対読んでおきなさいというところ、先生の言葉で推薦する場所がありましたら教えていただけたらなと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

 

○和田准教授

 大分前になってしまったのですけれども、短期目標については、かなり自治体からの問い合わせもあったのですが、職員がいまだ休みがとれないとか、宿直制度が続いているという自治体が実はあるのです。なので、短期的な目標でさえまだ何とも言えないというのが実情でございます。

 一方、これを読んで中長期的な目標まで入れている自治体もございまして、衛生管理の面でこの報告書をもとに改善した一時保護所が多いという話は聞いているところでございます。

 読んでおきたいところというのは、「あり方について」を読んでいただけたらなというところでございます。

 以上です。

 

○井上構成員

 ありがとうございます。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ほかによろしいですか。では、加賀美先生。

 

○加賀美構成員

 この後、協議の話があるので、それにも絡むところになるのかもしれませんけれども、将来ビジョンという意味合いでいくと、和田さんがもともと児童相談所あるいは一時保護の機能と絡むところにお仕事があったということで、きっと一番近いところで将来ビジョンを持てる方だというふうには思っているのですが、私、何回かこの議論の中で触れてきた記憶はあるのですけれども、児童相談所と一時保護所の立ち位置の関係というのは、もちろん非常に連続したものとして捉える必要があるだろうけれども、そもそも一時保護所は、今日的に言うと、虐待を受けた子どもなど一番重い体験をしてきた子どもたちが最初にたどり着く場所で、その子どもの将来の行く末を決めていくという大事な機関だろうと思うのです。ですから、アセスメントセンターとして明確に位置づけて、ある程度独立したアセスメントができる機関として形づくる必要があるのではないか。つまり、別物としてそれぞれが権威を持って相互関係の中で子どもの将来を考えていく、そういう位置関係にする必要があるのではないかというビジョンを私なりには持っているのですが、いかがでしょうか。

 

○和田准教授

 おっしゃるとおりだと思います。特化したほうがいいと思っているところでありますので、モデルケースでもいいので、ぜひどこかから始めていただけますといいなと思っております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 林先生、いかがでしょうか。

 

○林構成員

 ありがとうございました。

 1点お伺いしたいです。一時保護と言ったときの「一時」の期間についてです。最初のところで都市部と地方部の差の中にも保護日数の格差が非常に大きいというのは、国から出された資料の8ページ目のところにもあるかと思います。平均日数約1カ月弱を超えている児相が4割弱ぐらい存在するわけです。日数の格差ということに影響を及ぼす要因と、こういうふうに通学もできない、外出も自由でないという海外での一時保護と言ったときの一時というのは、どれぐらいの日数、あるいはどれぐらいの時間で考えられているか。もし何かありましたらお願いします。

 

○和田准教授

 日数に影響を及ぼしていることの多くは、児童人口の割合です。管轄当たりの一時保護所の18歳人口がかなり影響を及ぼしておりまして、一時保護所が管轄する、児童相談所が管轄する子どもの数が多ければ多いほど、一時保護所の数も相対的に多くなってきますので、そういう自治体ほど日数が長いということと、あとは、社会的養護の受け皿がほぼ満杯なところは、やはり一時保護所の期間も長くなっているというのが実情でございます。なので、受け皿がないので、待機のためにずっと長くなってくるというのが一番大きな実情でございます。

 調査した年度によりましても、社会的養護、例えば児童養護施設、6割埋まっているところから、ほぼ100%埋まっている自治体までありますので、あきがないと滞留してしまうというのが大きな問題だと思います。

 海外の例は、ほとんど司法が期間を決めるのでまちまちなのですが、一時保護に関しては、およそ1カ月が多いです。そういう施設、集中ケアセンターでいるというのは1カ月ぐらいが多いのですけれども、でも、文献等を読みますと、6カ月とか1年いる方もおられるので、まちまちで、あくまでも司法がその期間を決めるということになっています。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 どうぞ。

 

○藤林構成員

 今の海外のことに関連して、確かに1カ月とか、もっと長く半年といった一時保護期間があると思うのですけれども、林先生の質問にありましたように、では、その間、完全に学校に通学できないのか、ひとりで自由に外出できないのか、そういう行動の縛りはどのような状況になっているのか御存じでしょうか。

 

○和田准教授

 すみません。そこまではわからないです。コストのことしか考えていなかったので。

 

○藤林構成員

 わかりました。

 

○奥山座長

 山縣先生。

 

○山縣構成員

 先ほどあわせて質問しておけばよかったのですけれども、和田先生のイメージとして緊急保護を強調していくほうがいいのだというお話だったので、ある程度クリアしたような気もするのですが、乳児の一時保護が、今、制度上できなくて、全てが委託になると。乳児の問題については何かお考えがありますでしょうか。

 

○和田准教授

 乳児ですか。

 

○山縣構成員

 今回の研究対象にならないというのはよくわかった上で、でも、一時保護という枠組みから言うと、乳児については、例えば行動観察とかの部分が一時保護所ではできないということですね。

 

○和田准教授

 そうですね。

 

○山縣構成員

 その辺について、先ほどの話だと、それは外でやることは可能ですよという答えがありつつも、現状ではなかなかそうはならないとしたときに、乳児の委託が病院とか乳児院とか、行動観察に関する専門職を必ずしも配置していないところにやらざるを得ないと。そのことについてもしお考えがあれば。

 

○和田准教授

 難しいですね。結構田舎に行きますと乳児も一時保護所で見ているのですね。その場合はずっと同じ保育士さんが見ているというのがあって、非常にいいなと思っているところなのですが、乳児に関しては、大体のところは乳児院が多いのが実情ですので、そういうところの行動観察というのは、理想としては専門的なトレーニング等をして行動観察ができるようになってほしいなと思うところであります。

 

○奥山座長

 1つ私のほうから。先ほど藤林先生の御質問に関連して、この前、別のワーキングのほうで、山田先生がオレゴンのフォローをしておられるのですが、昔は一時保護所があったのですが、撤廃になって、全部里親委託になったときに、ソーシャルワーカーが非常に大変になってしまった面があるとのことでした。里親が見つからずに、ソーシャルワーカーさんが一晩一緒に寝ているということもあるというお話しでした。

 もう一つは質問です。机上配付の32ページ、3年後をめどに検討すべき事項の「入所児童1人当たり月額3万円」というのは、どういう意味なのかというのを伺いたかったのです。実際私自身が見ていて、うちの病院などにも一時保護委託というお子さんが入るのですけれども、非常に委託費が安いのと、それから洋服などが全然ないので、病院中にメールで、「こういう事情なので、同年齢の洋服が余っている人に供出を御願いします」と呼びかけなければなりません。それで洋服とか歯ブラシとかを集めてその子に渡すということをしなければいけないという状況が存在している事実があります。一時保護こそ丁寧に見なければいけないところ、つまり、一時保護こそお金をかけなければいけないところだと思っているのですが、月額3万円というのは非常に安いという気がするのですけれども、どういう計算か教えていただけますか。

 

○和田准教授

 これは多いほうだと思って書いているところでございます。

 

○奥山座長

 これは何を積算して3万円になるのですか。

 

○和田准教授

 子どもの支援をする洋服代とかそういうのが出ているのですが、自治体によって上乗せしているところがあって、上位10%のいい自治体の平均が3万円ぐらいだったので、3万円としたのです。

 

○奥山座長

 私物とかそういうもののお金というふうに考えるということですか。

 

○和田准教授

 私物というか、洋服とか歯ブラシとか歯磨き、そういう生活用品のためのお金です。

 

○松本座長代理

 これは一時保護委託費のことですか。それとも一時保護所の生活の。

 

○和田准教授

 一時保護所の生活です。

 

○松本座長代理

 保護委託費の話ではない。

 

○和田准教授

 委託費ではないです。

 

○奥山座長

 わかりました。

 ほかにいかがでしょうか。相澤先生。

 

○相澤構成員

 今度一時保護所の評価基準をつくることになるのですけれども、施設でなくて、一時保護所としてきちっと評価しなければならない独自の点みたいなものを幾つか挙げていただけたらありがたいと思っています。

 

○和田准教授

 明らかになってほしいのはルールですね。一時保護所のルールを第三者評価できちんと明らかにしてほしいと思います。

 

○奥山座長

 ルールというのは、どういう意味でしょうか。子どもへのルールですか。それとも大人へのルールでしょうか。

 

○和田准教授

 両方ですけれども、この報告書等が報道されたり、ネットに出ることによって、一時保護所の職員や一時保護を経験した子どもさんからの連絡が非常に来るようになってきたのですが、常識では考えられないようなルールがかなりある自治体が多いので、第三者評価ではそういう基準、きちんと明らかにしたほうがいいのだなと思っているところでございます。

 

○奥山座長

 とんでもないルールはやめましょうという意味のルールですか。

 

○和田准教授

 権利擁護でもよくないのではないかなと思うところがございます。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 では、和田先生、お忙しい中ありがとうございました。

 これからまた一時保護に関する議論をしていきますので、よろしければ一緒にいていただければと思います。

 前回、幾つかの視点が挙がっていたと思います。委託を推進していくことと、もう一つは小規模化の方向に一時保護所も向かわなければならないということ、それから先ほど来出ています第三者評価のことが議論の中で挙がっていたかと思います。それについてでもいいですし、ほかの視点でもいいので、自由に議論をしていきたいと思いますが、いかがでしょうか。林先生。

 

○林構成員

 先ほどの私の質問の内容と和田先生からのコメントを含めて、私自身が感じていることを1点。それは先ほど申し上げた一時保護と言ったときの「一時」の期間についてです。先ほど1カ月や、長いときは6カ月という御報告がありました。それに対して、藤林委員のほうから外出も自由でなくて、学校にも行けないという環境なのかという御質問があったと思うのです。実は昨年度カリフォルニア州のオレンジカウンティから児童福祉局のアドミニストレーターの方が来て全国で講演をされていまして、厚労省のほうにも来られていました。そのときに出たのが、オレンジカウンティにおける一時保護期間をどういうふうに考えているかということでした。日本の一時保護所の現状をお話しした上で、そういう空間の中で暮らす一時保護というのはどれぐらいかという質問に対して、72時間という回答がありました。

 先ほど1カ月や6カ月と言われたのは、一時保護委託のような家庭養護が確保された上での6カ月であって、あくまでも緊急保護というところに特化すべき。先ほどもどこに特化すべきだということがありましたが、基本的には日本における一時保護所の現状ということを考えたときに、我々は数時間とか数日で考えるべき空間であるということをその場で再確認させていただいたわけです。

 児童福祉法上、2カ月を超えないというふうに規定はあるのですけれども、実際児福審などを通して更新され、長い子どもなら6カ月というケースもあるわけで、結局、そういう規定の仕方が、確かに受け皿の問題もあるのでしょうけれども、ある種の危機感のなさみたいなものが審議会に出ていて感じることでもあります。

 だから、そもそも2カ月というところがどうあるべきか。それから一時保護委託ということを考えずに、一時保護所というところに限定して考えたときの一時というのはどうあるべきかということを1点追加いただけないかということ。

 もう一点、出ていなかった点として、子どもの喪失感にどういうふうにつき合うかということで、あくまでも一時保護所の職員にそのあたりを委ねるという意見が多かったと思うのですけれども、諸外国であるようないわゆるガーディアンアドライタムとかアドボケイトとか、そういう第三者的な一貫した喪失感に寄り添う準専門職、あるいはそれがボランティアであってもいいわけですが、そういうアドボケイト的なものを考えるというのはこれまでの議論の中であったと思うので、そのあたりを考えていただくということと、そういう方々を含めた第三者評価のあり方、評価の主体者として、当事者主体、子どもの主体というのはありましたけれども、第三者のあり方というものもちょっと議論していただきたいなと。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 林先生に御質問なのですが、今のお話の中で、先ほどの和田先生のお話を引用すれば、社会から守られるべき子どもに関しては、72時間そういうところにいると。しかし、そういう一時保護の場所とアセスメントをするような一時保護の場所は違うと考えるほうがいいのか、それとも同じ場所と考えておられるのか、その辺をちょっとお伺いさせていただきます。

 

○林構成員

 そのとき言われていたのは、例えば社会から守られるような空間に入れる場合は、我々が言っている一時保護所ではなくて、また違う生活型の施設に移行するという言い方をされていました。だから、あくまでも次の先を見つける緊急シェルターというふうな感じでした。

 

○奥山座長

 要するに、緊急な場合、一時的に1日、2日いるところと、それからアセスメントのところは別に考えたほうがいいということですね。

 

○林構成員

 そうです。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ほかに。どうぞ。

 

○松本座長代理

 今、72時間ということを林さんがおっしゃったので、たしかイギリスのポリスプロテクションは72時間で、それは週末を挟んでも、金曜日の夜にあれしても月曜日にコートオーダーをとれるというので、72時間だと思うのです。なので、その後、たしか法的な手続をとってプレースメントが決まるというのは、2週間とかいう形で時期を決定したと思います。最新情報はつかんでいないのですけれども、何をするために何時間とか何日という決まり方をしているので。

 一時保護のところも、恐らくプレースメントの場所がないということも大問題だと思うのですが、児童相談所で物事を例えばケース会議をして受理して決めていくときの期間の問題と連動しているかなと思いました。

 

○奥山座長

 加賀美先生。

 

○加賀美構成員

 先ほどの話とつながる話をもう一回持ち出すのですが、明確にアセスメントという機能としての位置づけを持つべきであろうということです。だから、「一時保護」という名称そのものがどこから出てきたかと考えると、西澤構成員が前に発言した中で、戦後の戦災孤児を一時保護する場所として創設されたものだというふうに理解しています。つまり、そのころから構造が余り変わっていないという発言もあったと思うのですけれども、その観点から言うと、今の時代、虐待を受けた子どもたちというくくりの中に入るような子どもたちが圧倒的に多いわけで、もちろん社会から守られるべき子どもも全く同じ構造の中にいる。そういうことも含めて、その子どもの一生を決めていくような大事な機関だという立ち位置で、全く別物として再構築する必要があるものだろうというのが私の観点です。

 先ほど林先生のお話にあったように、「一時的に」というのを、ごく一時的にという意味で機能を全く別にして、アセスメントのための機能は別立てにするという考え方もあるのだろうと思っています。だから、そこの構造をどうするかというのをもう一度この中でも議論していったほうがいいのではないかなと思っています。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 山縣先生。

 

○山縣構成員

 同じようなことになってしまうのですけれども、前回、別の会議のために途中で抜けたものですから、後半の議論を聞いていないので十分理解できていない部分がありますが、今の話も含めて、期間とか時間とか、あるいは委託、一時保護の推進という発想ではなくて、一時保護の間に何をすべきなのかというのをまず確定しておかないと、今、制度は3つを期待しているけれども、それが今後とも必要であると考えるならば、それが一時保護期間中に可能なのかどうか、あるいはどこで可能なのか。今、林委員が海外の例を出されたので言うと、72時間で、次のところで何か専門的なことをやるらしいとするならば、これは委託ではないと思うのです。一時保護で現在やっている機能に特化した新たな期間の設置が必要であるという形にしないと、委託という考えでいくとちょっとずれるかなと。もともとの機能のところをきっちり固めてからでないと、いろんなものが議論しづらいなということを今、感じていました。

 

○奥山座長

 井上先生。

 

○井上構成員

 今のお話のとおりだと思います。先ほどの72時間は、松本先生が言われていたような人権擁護の考え方から入っていると思います。大人のほうですね。ですので、それは緊急一時保護であって、その方を守る。そのためには窓から出られないような牢屋的な感じの保護所になるかもしれませんけれども、それはあくまでも72時間。

 その次の一時保護は、先ほど山縣先生が言われたように、何をすべきかということを考えて、評価とその後のマッチングのための一時保護という考え方で見ていって、それをどれぐらいの期間で見ていくか。その中では、子どもさんの希望とか、今まで受けてきたことから苦しんできた内容とか、そういったものを考えて、適切なところをきちんと選んで、話し合った上で決定する、そういうイメージが大事だと思います。

 以上です。

 

○奥山座長

 少し確認をしたいのですけれども、井上先生でも加賀美先生でもいいのですが、先ほどアセスメントセンターをつくるということを加賀美先生がおっしゃったのですけれども、そのイメージとしては、そこは子どもたちが生活をする場所としてのアセスメントですか。例えば里親さんに一時保護委託をして、里親さんたちが通ってくる形のアセスメントセンターなのか、それとも全員がそこに一時的に住まなければいけないという形でアセスメントセンターがあるのか、その辺を確認させてください。

 

○加賀美構成員

 イメージとしてはいろんなものが考えられるのですが、今おっしゃったような考え方も当然出てくるのではないかなと思っています。つまり、個別化という観点はここからスタートするべきだろう。だから、子ども一人一人のオーダーメイドの社会的養育というか、社会的養護をどう考えるかという観点で一番大事な時期ではないのかなと。そういう意味では、今、マッチングの話もありましたけれども、そういったことも含めてきちっとできる必要があるのではないかなと思っています。

 

○奥山座長

 ということは、いろいろなタイプがある。アセスメントセンターができたとして、アセスメントセンターで生活して、アセスメントを受ける子どももいれば、どこかほかのところからそこに通ってきてアセスメントを受ける子どももいるという考え方でいいですか。

 

○加賀美構成員

 基本的にはどこに行っても生活があるということ、その生活が保障されるということがベースだろうと思っていますので、その上で、子どもの状態像にあった機能を用意すべきだと私は考えます。

 

○奥山座長

 いかがでしょうか。それでいいですか。

 林先生のほうから出てきたもう一つの問題点、喪失感に付き添うケアの特殊性です。一時保護時のケアの特殊性に見合った保護とアセスメント、両方なければいけないわけで、そこをどういうふうに組み合わせていくのかというところですが、今は児童相談所が一般的にはアセスメントをする。行動観察だけが一時保護所がやるというところだろうと思うのですけれども、加賀美先生は、一時保護をするところはアセスメントセンターとして位置づけてしまったほうがいいのではないかという考え方ですね。

 ほかにもいろんな意見があると思うのですけれども。では、井上先生。

 

○井上構成員

 今、イメージができていると思いますので、実際に動くことを考えますと、現在児童相談所にある一時保護所の中で大きく2つの仕事を分けるという形のイメージのほうが具体的になるのではないかと思います。新たにつくろうとすると、もっと大変になりますからね。ですから、今ある一時保護所の中のある部分を先ほど言いました緊急一時保護の部署としてきちんと整えて、それはそういうふうに使いますよと。もう一つ別のところに、先ほど言いました評価とマッチングのケア、それからトラウマのところの評価をする。

 そこで何をするかというと、これは絶対大事なのですけれども、その子を預かるとして、その子どもさんをもしインケアの形にするのだったら、誰がきちんと見ていくのかということを決定するということ。2番目は、どこの場所でその子を見ていくのかということ。3番目に、その子に対して保障されていくものとして、その子の教育がどういった形できちんと行われるのかということを明確にしてあげるということ。この3点を明確にするということが大切なのではないかと思います。

 

○奥山座長

 それは一時保護の後でという意味ですか。それとも一時保護の。

 

○井上構成員

 一時保護の中で決めていく内容としてその3つ。

 

○奥山座長

 つまり、一時保護をどこですることになりますか。

 

○井上構成員

 一時保護に関しては、先ほど言いました児童相談所の、今ある一時保護所でするのですが、その中で大きく緊急と。

 

○奥山座長

 そうすると、井上先生は、どちらかというと委託一時保護は余り考えないということですか。

 

○井上構成員

 小さい子どもさんたちとかそういったものはまた別の話で、あるいは子どもさんの問題、例えば親御さんが亡くなって、全くケアする方がいなくなって緊急とか、内容によっては委託でやっていける部分があるのではないかと思っております。

 以上です。

 

○奥山座長

 そういうことも含めて、例えば、緊急の場合は大変だけれども、72時間以内、つまり数時間でも構わないわけで、数時間の間に一時保護を委託にするのか、それともアセスメントセンターの中でやるべきなのかということを決めて、そのうえで、一時保護をしている中でアセスメントをしていくという形を考えるということですか。

 

○井上構成員

 そうですね。

 

○奥山座長

 林先生。

 

○林構成員

 ちょっと混乱している部分もありまして、そもそも一時保護というのは何をすべきか。緊急的な保護とアセスメントというあたりが機能として出てきたのですけれども、前回の議論を踏まえると、校区に一時保護委託をふやして、より身近なところで子どもを保護する体制という議論があったと思うのです。ただ、アセスメントセンターと言ったときに、逆の方向、一点集中的にやる大きな何かを設けて、そこに全部出していくという発想ですね。子どもにもかなり厚いアセスメントが必要な子どもとそうでない子どもがいるかもわからない。そのあたりを含めて、その2つの流れの整合性と、「アセスメント」と言ったときに、おのおのの持っておられるイメージにそごがあるような感じもしまして、日数的にどれぐらいで、どういったことを具体的にすることがアセスメントかというあたりも含めて、私自身、前回の議論との整理をさせていただけたらなという思いがあります。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 藤林先生。

 

○藤林構成員

 実際に一時保護所に来る子どもさんというのはさまざまなニーズを持っていて、保護者のレスパイトケア、ショートステイよりは少し長目の、親御さんの体調がよくなるまでの2週間、1カ月という方もいらっしゃれば、施設、里親からUターンして、そこでクールダウンするような方から、身柄つきでやってくる16歳、17歳の子まで、盛りだくさんのニーズの子どもを一時保護所という閉鎖空間で行うということは到底無理があるということが出発点にあるのではないかなと思うのです。

 そうすると、今の議論を整理していくと、従来型の児童相談所併設、閉鎖空間、学校にも行けない、ひとりで外出できない、このような空間というのは、なるだけ必要最小限の期間に行うべきというのが一つの方向性ではないか。

 主たる目的はアセスメント目的であるとか、主たる目的がレスパイトケア的なものであるとか。場合によっては、加賀美先生が言われるように、生活がちゃんと保障されるような空間において、よりインテンシブなアセスメントを行うところもあれば、治療的なことを行うところもある。または、もうちょっと緩やかな空間もあるということで、いろんなバリエーションとオプションがあっていいのではないか。そんなにインテンシブなアセスメントが必要でない場合であれば、それは里親家庭とかファミリーホームでもいいのかもしれませんし、よりインテンシブなアセスメントと、より短期治療的なケアが必要であれば、それは児童心理治療施設並みの施設になっていくのかなと。一つのタイプでは賄い切れないのではないかというのが私の印象です。

 もう一つ、一時保護所の入所期間と一時保護期間を分けて考えないといけないのかなと思っています。児童相談所を長くやっている立場からすると、アセスメントは何をするのかというと、その次の行き先をどうするのか、もとの施設には戻って大丈夫なのか。他の施設に措置変更するのか。新規に入所した子どもに対してはどのような里親さんがいいのか、施設がいいのかということを決定していくためのアセスメント。家庭復帰の可能性変えることも含めて。そうすると、おおよそのアセスメントは8週間あれば大体できるかなと思っていて、8週間を超える場合の長期入所化というのは、適切な施設、里親さんがいないということに尽きるのではないかなというのが私の印象です。

 

○奥山座長

 相澤先生、どうぞ。

 

○相澤構成員

 藤林先生がおっしゃっていましたけれども、いろんなタイプとニーズがあるということで、継続的な一時保護というのもありかもしれませんが、私は断続的な一時保護みたいな感じで、週末だけ一時保護するような断続的な一時保護のあり方もあっていいのかなと。例えば私がいた国立の施設などは、はるかに遠いところに自分たちが直接アフターケアできないような子がいて、その子が土日だけ一時保護所で対応してもらうとか、そういうことをやったケースも以前はありました。そういう意味では、断続的な一時保護のあり方みたいなこともきちっと検討してもいいのではないかなと思っています。

 

○奥山座長

 断続的一時保護。

 どうぞ。

 

○山縣構成員

 先ほどからずっと同じことにこだわっているのですけれども、今までの議論を踏まえて言うと、現在「一時保護」と呼んでいるもののうち、行動観察的要素とか短期ケア的要素の部分は、今後「一時保護」と呼ばないという整理のほうがわかりやすいのではないか。今は「一時保護」と呼んでいるけれども、そこがきっと混乱をさせているような気がしていて、そうすると、林先生が言われたような超短期部分というあたりも今後は「一時保護」なのだと。必要なものを求める、ケアするときには一時保護ではなくて、その専門ケアをどういう形で提供しているのか。それが2カ月なのか、3カ月なのか、それはまた議論すればいいけれども。私は、個人的には「一時保護」という言葉はもう外したほうがいいのかなと。先ほどからこだわっているのはそこなのです。

 

○奥山座長

 つまり、72時間の緊急的なところを「一時保護」と呼ぼうと。

 

○山縣構成員

 そういうことです。例えばです。別の言葉でもいいのですが、セットでやっていることで議論がうまく整理できないのではないかなという意味です。

 

○奥山座長

 そうすると、その後を何と呼びますか。

 

○山縣構成員

 言葉はちょっと苦手なのですけれども。

 

○藤林構成員

 それは是非そうしたいのですが、それは措置ということなのですね。アセスメントする機関に対する。

 

○山縣構成員

 措置と呼ぶかどうかも、どの仕組みで対応するかも考えればいいのであって、機能としてはっきり違うということを意識したほうがいいのではないかというところです。

 

○藤林構成員

 私の理解では、一時保護でなければ、それは措置になるわけなので、そういった措置できる機関がキャパとして確保できるか。一時保護のあり方を議論していくためには、一時保護期間をなるだけ短期間にしていくためには、その子どもたちが適切にアセスメントなりケアを受けるための十分な施設なり里親さんのキャパを確保していくということと同時に議論していく必要があるのかなと思うのです。

 

○山縣構成員

 当然そうだと思いますけれども、今の藤林先生の話は、要は、アセスメントの部分を外部委託しようとするのと同じ。結局、そこにお金はどう出てきますか、資源はどうつくることが可能ですかというのと同じところにたどり着いているので、お金をきっちり確保する、場所は場所でどうつくるか。分離することによって、これも反対が出てくるとは思うけれども、現在「一時保護所」と呼んでいる部分のお金は少なくとも減らすことができるわけです。期間も減るし、スタッフも減らすことができる可能性が出てくる。その予算で次のものができるとは全く思えない、足りないけれども、全体を動かすことによって出てくる予算もあり得る。一時保護委託している部分のお金もそこに全部集中的に行くということも考えられる。そうすると、乳児のアセスメントも外部委託でなくて、そこで一緒にやりましょうということも考えられるのではないか。その辺を大胆に1回考えてみて、現実的に折り合いをつけるしかないのではないか。

 

○奥山座長

 事務局に質問なのですけれども、今ある養護施設等への一時保護委託で一時保護の場所をつくってもらうというのがありますね。あれは措置費なのですか。それとも一時保護委託費なのですか。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 国の予算としては、一時保護の費用も施設の運営費も予算としては措置費の中で同じですが、先生がおっしゃっているのは、一時保護委託として委託を受けているお金なのかということでしょうか。

 

○松本座長代理

 一時保護委託費ですよね。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○山本内閣官房審議官

 補足をしますと、国費の流し方、負担金か補助金かと大きくわけられますけれども、負担金の中の国費としては措置費に計上されているのです。自治体の立場から委託をしますので、それは自治体からの委託費ということになります。措置とは委託であると考えてもらっていいと思います。

○奥山座長

 ということは、余りその辺は考えなくていいということですか。先ほどの藤林先生の措置なのかどうかというところ。

 

○山縣構成員

 金額が大分違うので、考えてもいいと思います。

 

○奥山座長

 伊達先生。

 

○伊達構成員

 ちょっと論点がずれてしまうかもしれないのですけれども、72時間以内とか、あるいは2カ月間で次の措置する先をきちんと用意していくという時間の問題に対して、どう対応するかということを考えたときに、それこそ一時保護所を使うのか、あるいは一時保護を違うところに委託するのかという違いはあるにしても、それをきちんとやっていく人は誰なのかという、いわゆるゲートキーパーの役割みたいなものを決めないで、そういう場所をつくればそのことがきちんとできると考えるところにちょっと無理があるかなと。必ずそれらしい場はつくっていく必要があるけれども、同時にそのことをちゃんとやってくれるゲートキーパーという役割を持つソーシャルワーカーが児童相談所中心につくられていないと、このことはきちんと解決していくという方向に向かないのではないかと思います。

 そういう意味で、そこをどうするか。アセスメントセンターにする云々でなくて、アセスメントをやる人間は誰かということをちゃんと決めないと、この問題はクリアできないのではないかと考えてきましたけれども、いかがでしょうか。

 

○奥山座長

 アセスメントをするのが誰か、つまり、児童相談所の職員なのか、それともそうでないところでやるのかということですか。

 

○伊達構成員

 例えば72時間という問題でも、私の聞いた話では、欧米でも里親さんが、2~3日預かってよと言われて預かったら、全然来てくれなくて2年になってしまったとか、そういう話を聞いたことがありますが、要するに、預かり先が里親さんであれば全ていいというわけでもないし、施設であれば全ていいというわけでもなくて、そこに同時に時間的な限界をきちんきちんと整理していくゲートキーパーみたいな役割をやっていく人が同伴しないと、この問題が正しい解決の方向に向かないのではないかなと思います。それが日本の場合は特に欠けていると思います。

 

○奥山座長

 児童相談所ではないのですか。

 

○藤林構成員

 私が答えるべきかどうかわかりませんけれども、要するに、児童相談所の担当児童福祉司とかスーパーバイザーが漫然と一時保護委託をして、そのままにしてしまわない。しっかり進行管理を行っていくということとワンセットでないと、また新たなアセスメント機関に、委託しっ放しということが起こってしまうのではないかというのが多分今の御意見ではないかなと思うのです。それは社会的養護に措置した場合と同じで、施設、里親に委託措置した場合に何年もそのままになってしまうということではよくないわけなので、家庭養育原則とか、または代替養育の本来のあり方ということを考えると、措置した段階から出口のことを考えていくということが必要である、というのと共通の課題ではないかなと思います。

 

○奥山座長

 先ほど措置費と委託費の話で、一時保護委託費のほうが安いからという話が隣から挙がったのですが、本来は逆ではないのかなと思うのです。一時保護のほうが大変だし、一時保護の子どものほうが傷ついているわけで、そういう子どものケアをするほうがお金が高いぐらいでないと本来はやっていけないのではないかと思います。

 どうぞ。

 

○伊達構成員

 先ほどの和田先生の資料を使わせてもらえれば、一時保護というのは、2ページのところにある急性期対応だと思うのです。子どもが家から切り離されなければならないのだということを受けとめていったり、次のところはどういうところであるのだろうかという不安に対して、ちゃんと応えられるようなことをやる必要があるわけで、急性期対応なわけですから、費用的な面は、今の一般的な生活をしていくということよりももっと高くて当たり前だろうと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 上鹿渡先生。

 

○上鹿渡構成員

 せっかく和田先生がいらっしゃっているので。今、コストの話が結構出ているのですが、実際海外では今、奥山先生が言ったように措置のほうが高く出ているのかとか、どういう使い方ができるかというのをいろいろ調査研究されていて、何か考えていらっしゃることがありましたら、ぜひ伺いたいなと思うのですが。急に振ってしまってすみません。

 

○奥山座長

 突然振られましたが、よろしくお願いします。

 

○和田准教授

 僕は、指標としてお金を見て使用しているのですけれども、集中ケアセンターの予算で見ますと、1人が1年間いたとするならば、年間2,000万から3,000万ぐらい使っているのです。でも、日本は10分の1以下なのです。人も物も少ないので、どこから手をつけていいのかなというのがちょっと難しいところなのですけれども。

 

○奥山座長

 よろしいですか。

 

○上鹿渡構成員

 続けてすみません。どういう場所を「一時保護」と言うかというところともかかわるのですが、その場所がよければ、「一時」の意味がまた変わってくるというお話なのですが、特に乳幼児などについては短くしていくとか、里親ガイドラインなどでも、今回は、もし里親が準備できないような、環境因として子どもが家庭養護に行けない場合もある期間、数日、数週、長くても数カ月という単位でということ。子どもにとって早ければ早いほどいろんな回復が早いし、もとに戻れる可能性が高いというところを今回入れられたと思うのです。児童福祉法改正でも子どもの権利というのがどーんと入った中で、一時保護のところもしっかりやるべきだと思うのです。

 司法関与のほうでそれが2カ月というところで、裁判所が関与してくるかもしれないという話に持っていけたわけですけれども、そこで一つ、これまでとは違う2カ月のところでというのが出てくるかなと思うのです。でも、それは本当に一歩で、現場からすれば、きょうのお話の中からすれば、もっと早くからとか、最初の段階からそういったものが本来必要で、そういうものがないと、出す先がないとか、いろんな要素があって、大人の側の事情が先行して遅くなってしまいがちなところを、裁判所というところが先に、この子は、この状態であれば、アセスメントはこれだけの期間でと。逆にそこが期限を決めることで子どものほうの利益が守られていくという実情があるかなと思うので、そういう流れの中でもつながっていくようなものをここでも出して、司法関与のほうでもそういった話、あそこで終わるのではなくて、先に進むようなことがつなげられたらなと思います。

 

○奥山座長

 今回の法改正案は第一歩なのですけれども、2カ月というのが長いというのはみんな思うのと同時に、親が反対したときだけというのが問題かなと思っています。本来は子どもが2カ月以上いていいのかというところを判断してほしいのに、親が反対しているから、それに対して司法が絡むというのは、少し筋が違うという気が致します。ただ、第一歩であるというのはそのとおりなのだろうと思います。

 林先生、いかがでしょうか。

 

○林構成員

 アセスメントを誰がするのかという議論があったと思うのですが、それ以前に一時保護の民間委託という話も出ていたかと思います。恐らく諸外国で緊急のシェルターにせよ、セラピューティックなケアを集中的にするところとか、アセスメントをするところというのは民間運営だと思うのです。私は、アセスメントと緊急保護と、もう一つ、今、言いましたインテンシブセラピューティックケアみたいな機能が必要だと感じていて、それは以前里親の支援を考えるときに、子どもへのケアが非常に不足しているという話があったと思うのです。私が里親研究をやっているときに、フランスとか西ヨーロッパ諸国を訪問したときに、フランスにも乳児院というのはあったのですね。そこは何を提供しているかというと、インテンシブセラピューティックケアということを言われていました。要するに、集中的に一定のエビデンスのある治療をそこでやる。家庭委託するための準備をしているという言い方をされていました。だから、そういう機能は乳児院とか養護施設とか、今、言われていたところが担っていくという方向性はすごく現実的かなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 もう一つだけ事務局に質問させてください。先ほどの、養護施設への新しい制度で一時保護委託する場所ができることになったのですけれども、そこでの考え方は、アセスメントは委託されたところがきちんとやるという形でなされているのか、それともアセスメントは児相がやるのだから、委託された養護施設ではアセスメントは考えないということか、それともアセスメントの一部、行動観察はやってくださいというくくりになっているのか、そこのところを少し教えていただけますでしょうか。

 

○川鍋家庭福祉課長

 昨年度新しく設けた今の一時保護委託のあり方は、定員の外につくるということがまず今までと違うのです。ただし、措置ではないから、先ほどと同じように、措置費ではないけれども国の負担金であることは間違いない。なので、一時保護委託は委託なので、アセスメントは児童相談所がやるということです。

 

○奥山座長

 行動観察は児童相談所と連携してやってくださいという形になっているということですか。

 

○川鍋家庭福祉課長

 そういうことになると思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 塩田先生。

 

○塩田構成員

 前の前の話についていけなくて今ごろ手を挙げたので、随分前の話に戻ってしまうのですけれども、委託費のことを考えれば、経費はかかるとは思うのですが、それ以前に、子どもがすごい状況の中から身一つで保護されてくるわけですね。本当に助けられたのだ、守られたのだという実感を持ってもらわないと、一時保護の意味がないかなと思っていて、施設でお預かりする日は、緊張の強い子、一時保護は、うちの場合は別室で別な人がケアをするということをできないので、定員があいているところにお受けして、そこで一時保護を委託するのですけれども、でも、そこにも入れられなくて、一晩ケアワーカーを別立てで立てて、その子に寄り添って不安を軽減するようなことをしたり、身一つで何も持ってこないですから、幾らお金がかかるといっても、パジャマから下着から着がえを買って提供する。

 場合によっては、高校は通っていいですという一時保護もあるものですから、不安があるので、職員が送迎、付き添いながらやったりということは、養護施設だからできるのかもしれないですけれども、学校に通いたいから養護施設に一時保護ということでも受けることがあります。

 その中で感じるのは、希死念慮があったりとか、自殺企図があったり、相当なダメージを抱えてくる子、施設の中でお預かりしていいのかということを児相とやりとりするのですが、福祉司さんの動きが非常に悪くて、すぐには来てもらえなかったり、そこが行動観察だけでなく、例えば施設の施設内診療を使っていいとか、そういうことを決めていただくと、もうちょっとサービスとしても提供できるのかなとか、改善の余地があるのかなと。

 取りとめがなってしまいましたが、一時保護については、養護施設の現場からはそういう思いがあります。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 皆さんのイメージの中でもそうだと思いますが、72時間以内の緊急一時保護といったら、1対1で、安心できる大人がべったりくっつくぐらいの感じでなかったら、子どもはとても不安でたまらない状態ですね。時間がたってくれば少しゆっくりできるかもしれないのですけれども。

 そういう意味でも、一番最初は全てがインテンシブケアをしないとならない。個別の治療ケアはまたその先になるかもしれませんが。今までの一時保護の考え方というのは、逆に一時預かればいいといった感じで、そこの傷つきに対するケアが重視されてこなかった面があるように思います。そこをできるだけ今回しっかりと提言していきたいと思います。

 先ほど少し出てきました乳児から幼児期初期、つまりToddlerあたりのお子さんたちに関しては、今、ほとんど乳児院で一時保護されています。先ほど、地方のほうでは一時保護所で受けているところもあるとおっしゃっていたのですけれども、かなりが乳児院なのだと思います。従って、乳児期から幼児期初期は少し分けて考えてもいいとも思います。というのは、実際に、児童相談所の方々がどのぐらい乳児のアセスメントができるのかという疑問があり、そのあたりのところは考えておかなければいけないと思うのですが、加賀美先生、いかがですか。

 

○加賀美構成員

 現実的にそこを考えると、24時間365日、ゼロ期の子どもたちを長い歴史の中で保護・養育してきた乳児院という機能は大事な機能だと思っているのです。そういう意味でも、ここに一時保護をせざるを得ないだろうという現実の中でやってきたのだけれども、家庭養護推進という課題で、乳児院の改革の問題もこれから議論として出てくる中で、一時保護の機能としての乳児院がこれからも重要な位置づけになるだろうと思っています。

 

○奥山座長

 里親さんに乳児さんを一時保護したときに、そのアセスメントをするのが児相で大丈夫なのか、乳児院の機能をかりなければいけないのか、その辺を加賀美先生はどうお考えでしょうか。

 

○加賀美構成員

 もう一つの機能として、里親支援のエージェンシーをどう構築するか。これもまた議論として出てくるだろうと思います。そこで、里親さんを含めて、里親さんの養育のあり方についてのサポートシステムも、乳児院はそういう機能を持っているわけで、そういったいろんなものを総合して考えると、そこと関係しながら再構築していくというのはとても重要なので、少なくとも日本に相当数の乳児院があって、その機能を持っているということから考えると、そこは生かすべきだろうなと思っています。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 

○藤林構成員

 おととい、NHKの「あさイチ」で福岡市の乳児短期里親を報道いただいたのですけれども、ああいう里親さんというのはそんなにいないのです。ごく数人しかいない里親さんに登場いただいて、報道いただいたのです。このような乳幼児の短期間の養育里親さんをリクルートし、十分トレーニングしていくということが必要なのと、里親さんがアセスメントをどれぐらいできるのかという問題があるわけなので、職員がそこの家庭に訪問するなり、または里親さんと一緒に来てもらうなりして、例えばアタッチメントの安定度であるとか発達について十分アセスメントしていく、ということとワンセットではないかなと思うのです。

 その場合に、児童相談所が直営で乳幼児専門の里親さんのリクルートから、その後のアセスメントまでやっていくというオプションもあるかもしれませんけれども、民間機関にフォスタリング・エージェンシーとしてやっていただくということもあるかもしれませんし、乳児院には心理士さんがいらっしゃるわけですから、乳児院が里親さんのリクルートからその後のアセスメントまでやっていくという選択肢もあるのではないかなと思っています。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 井上先生。

 

○井上構成員

 藤林先生がまた大切なことをおっしゃってくださったので追加しますが、福岡市の乳児短期里親と同じような形の部分は中津にもありまして、7~8年それをやった方がことしの4月から認可外の保育所の形にしました。その形にすることによって、子育て支援課のほうもほかの保育所とはちょっと違うという形で、かつ一時的な保護ができる。そして、養育里親の経験がありますので、24時間以上の、常にケアをする体制も整っていまして、そういったものもつくっていく必要があるのではないかなと思うのです。林先生がずっと言ってくださっている身近なところのケアということで考えると、これはやはり有用になるのではないかなと思います。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 乳児さんを分離して保護したときの乳児の反応というのは、一見、気がつかれないことが多いかもしれないのですけれども、非常に重要なものです。一生響く可能性があるものですので、乳幼児の一時保護は非常に丁寧に大切にケアしなければいけないだろうと思います。そういう意味でも、分離したときの乳児さんの反応をしっかりと見ることができる必要があります。里親さんの教育も必要ですが、児童相談所にそこまで課すのかと考えると、ちょっと難しいのではないのかなという思いもあります。そういう意味では、乳児院のノウハウというのが重要になってくるのかもしれないと思うのですけれども。ほかにいかがでしょうか。井上先生。

 

○井上構成員

 今、奥山さんが言われたとおりで、それで私たちは、非器質性の体重増加不良の子どもさんたちの回復のプロセスというものをビジュアルで見えるようにしまして、それを実際に見ていただきながら、子どもさんのこういう反応が実は意味がありますよと。お話を聞くと、そこの里親さんも保育士さんのほうもはっきりわかっているのです。最初来たとき何もしゃべらなかった。声をかけても動かなかった。痛がりもしなかった。それがかかわり出して3週間ぐらいしたら泣くことがはっきりできるようになってきた。その後、自分であっち、こっちと指を指すようになってきた。そういったことを知っているのですね。ですから、そのプロセスをきちんと評価するという形を整えてあげるだけで、恐らくすぐできるようになるのではないかなと思っております。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 相澤先生。

 

○相澤委員

 先ほど断続的な一時保護と言いましたけれども、いきなり緊急一時保護という保護の仕方が必要なケースもあるかもしれませんが、一時保護の治療的な機能ということで言うと、週末なりデイだけでもいいと思いますが、そういうやり方で治療的な支援として一時保護を活用して、そこから徐々に継続的な一時保護に移行をする。これはどうにもならなくなって一時保護するやり方と比較にすれば、移行ケアとしては子どももそこになじんでいるわけですから、子どもに優しい一時保護のあり方ですし、こういう在り方についてもきちっと考えていくべきだと思います。

 

○奥山座長

 東京都のパオが比較的それに近いことをやっているのではないかと思います。短期のお預かりもやるし、長期のお預かりもやるという形で。

 

○相澤委員

 例えばショートステイなどを使うときは基本的にお金がかかるわけです。ショートステイを使えないような御家庭の方もいると思うし、貧困家庭のような方、今の子育て支援事業を上手に使うこともできないような方もいらっしゃるので、そういう意味で、治療的な機能としての断続的一時保護のあり方についても考えてもいいのではないかと思っています。

 

○奥山座長

 これまでの皆さんの御意見を伺っていると、緊急一時保護で守らなければならないようなお子さんに関して、それを本来の「一時保護」と呼んだほうがいいという意見もありますが、緊急の一時保護と、それからアセスメントが必要な時期の一時保護と大きく2種類なのだけれども、その中で、ソフト面で言えばケアをどういうふうにしていくのか、治療をどういうふうにしていくのか。傷ついた子どものインテンシブなケアであり、必要に応じた治療、トリートメントというか、セラピーと言ってもいいのかもしれないですが、治療をどうするのか。この辺のところを組み合わせて考えていくということと同時に、それぞれに対しての人的な必要性とも考えていかなければならないと思います。

 前回の話を受けて、資料を事務局が用意してくださったので、最後、第三者評価について少し話をしていきたいと思います。参考資料2です。第三者評価について、大分資料をまとめてくださいました。事務局のほうからこの参考資料について御説明いただけますでしょうか。

 

○事務局(結城総務課課長補佐)

 それでは、参考資料2のほうを簡単に説明させていただきます。

 2ページは、社会的養護関係施設の仕組みについてまとめたものとなってございます。

 下の表の左側が福祉サービス全般。これは児童関係以外にも、高齢者、障害者を含む全般の共通の仕組みとなっておりまして、右に社会的養護関係施設の仕組みが書かれております。

 福祉サービスの第三者評価事業につきましては、社会福祉法に基づいて任意で受ける仕組みとなっておりまして、ごらんいただきますと、評価基準ですとか評価機関については、県レベルで策定などがなされているわけでございます。

 これに対しまして、社会的養護関係施設につきましては、上の枠の○にも書いていますが、「子どもが施設を選ぶ仕組みでない措置制度であり、また、施設長による親権代行等の規定もあるほか、被虐待児等が増加し、施設運営の質の向上が必要である」。こういった考え方によって、第三者評価について受審の義務、これを初めとした特別な仕組みとして行われているわけでございます。

 個別にちょっと見ていきますと、まず受審の頻度については、3カ年に1回受審しなければならない。

 評価基準につきましては、上の枠の2つ目の○に書いていますが、施設の数が少ない中で、評価機関が評価経験を蓄積して、質の高い評価を行えるように、原則として全国共通の評価基準としてございます。

 評価機関ですが、認証と評価調査者の研修というものを、「全国推進組織」と書いていますが、これは第三者評価を推進するための全国組織でありまして、全社協がそれに当たります。この全国推進組織が広域的に行うということとなっております。

 第三者評価に当たっては、利用者調査を実施することであったり、評価結果は、全社協が評価機関から報告を受け、公表を行う。第三者評価を行う年度も含めて、毎年自己評価については行っていただくということになってございます。

 次のページには第三者評価を受審する際の流れの例を掲載してございますので、後ほどごらんいただければと思います。これが社会的養護関係の仕組みです。

 1ページに戻っていただきまして、これは今年度からまだ制度的な枠組みがない中で試行的に行う一時保護の第三者評価の概要を掲載してございます。先ほど申し上げたとおり、現在制度的な仕組みはないわけですけれども、昨年の3月に新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会によって、一時保護への第三者機関による評価の仕組みを構築すべきというような提言をいただいていること。それから、資料の後ろのほうにつけさせていただきましたが、平成27年度に行った一時保護所に関する調査研究事業の中で、既に独自に第三者評価を行っていた横浜市、堺市の事例についてヒアリングを行って、この報告書の中で評価項目の例示などが示された。評価項目の例示というのは、51ページから掲載してございます。こういったことを受けまして、この取り組みを少しでも今の段階から広げていくために、新たに今年度予算措置を行って実施することとしたものでございます。

 実施方法ですが、この基準等の議論がされていない中でやっていただくために、この報告書を参考に設定しておりますが、まず評価者につきましては、都道府県等が学識経験者、弁護士、医師などから評価委員という形で選定していただく。ただ、これにかえまして評価を適切に実施できる者であったり、団体において実施することも可能としてございます。

 評価基準については、報告書のほうで例示が示されておりますので、これを基本として地域の実情なども踏まえた形で設定していただくということにしてございます。

 評価結果のほうは原則公表としておりますが、横浜、堺でもなかなか全面的な公表というのは困難な状況でございまして、一時保護所の匿名性などを考慮しまして、結果の一部を公表しないことも可能ということにしてございます。

 今後、厚労省のほうで一時保護のあり方などを検討する際の参考とするために、この費用の助成を受けて、第三者評価を受審した場合には報告というものを求めることとしております。

 経費についてこの間話題にも出ましたが、3年に1回で308,000円ということにしてございますが、これは既にある社会的養護関係施設と同水準にまずは設定させていただいているというところでございます。

 次に、報告書の中身について簡単に説明いたします。

 

○事務局(松崎総務課児童福祉専門官)

 第三者評価を実施している横浜市と堺市について、調査概要のほうに記載されています。両市とも児童福祉審議会の下部組織を編成いたしまして、弁護士の先生やお医者さん、教員や学識経験者の委員を大体5名程度で実施しているそうです。評価結果については両方とも公表していないということなので、どんな形でフィードバックしたかということに関しては、詳細には把握できておりません。

 評価技法としましては、堺市さんのほうは詳しい形で公表されていなかったのですが、横浜市さんのほうは、まず一時保護所の職員全員による自己評価を行いまして、その中に評価を上げます。その後、お子さんに対してのアンケート調査を行った上で、それを集計しています。あとは、第三者評価委員の先生から細かい設問が設定されていて、判断基準も示されていまして、その中でA、B、Cランクをつけるという形になっています。横浜市さんでいきますと、65項目ぐらいの評価基準がありました。その中で総合的に勘案した中で評価を決めていくという形の技法をとっています。

 その中でどんな判断をしたかということに関しては、さまざまな自治体で判断基準があるようなので、状態についてはわかりませんが、そういう手法をとっているということで確認をとっております。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 この報告書の52ページと66ページになっているのですけれども、このあたりのことを県のほうに提示して、県のほうで決めていただいて、評価をするという考え方というふうに理解したのですが、それでよろしいですか。

 

○事務局(結城総務課課長補佐)

 はい。この基準について、国のほうでも議論が行われていませんので、まずはひな形的に使っていただいて、ただ、これで過不足とか地域の実情があると思いますので、今年度に関してはこれをベースに県のほうで決めていただきたいと考えております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 というと、比べられないですね。各県でやり方が違ってしまっているということであると、その県その県でいろんなものが出てきても比べられないということになりますね。統一した基準というのは難しいのでしょうか。

 

○事務局(結城総務課課長補佐)

 現段階では統一的な基準がない中で、29年度はもう始まってしまってございますので、まずはこちらに示されている例示を基本ベースにしていただいて、若干のアレンジというのはあり得ると思いますので、基本的には同じものを使っていただいて、若干の差異が生じるのはやむを得ないのかなと考えております。

 

○奥山座長

 基本的には一時保護所が、先ほどの和田先生のお話でも、余りに差がある、いろいろな問題が生じているということがあったので、第三者評価の結果を見て、うちはここが問題なのだということが全体の中でわかるということが必要なのだろうと思います。そうした場合に、この項目の統一性ということもありますけれども、評価のあり方を統一しなければ比較が全くできないです。

 ですので、少なくとも評価をする方々を1カ所に集めて、こういう方法でこういう評価をしろということをやらない限り統一した評価はできないのではないかと思います。そうしないと、比較ができないので、結局、ほかに比べてうちはどんなふうに悪いのか、いいのかというのがわからないという形になるのではないかなと思うのですが、いかがでしょうか。ほかの先生方、何か。どうぞ。

 

○松本座長代理

 奥山先生の御意見はそのとおりだという前提で、前回その評価のあり方で議論になったときもその点は出ていたと思うのです。そこを含めてこの検討委員会で少し議論をして一定の方向を出すというふうに理解をしているのですけれども。その話とは別に、今年度始まったものについてどうするかという形での議論も一方でするということですか。

 

○奥山座長

 もう今年は始まってしまったから仕方ないから、来年度からこうしてくださいという形で議論をするか、それとも今年度も少し変更ができるのか。加賀美先生。

 

○加賀美構成員

 せっかく始めるので、その効果をもって本格的な評価制度を形成するためにどう生かすかというレベルまでは議論しておいたほうがいいと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 今回はこの形で進んでいるので、その結果を見てどういうふうに変えていくかということをきちんとやるというふうに考えてもいいのですか。

 

○松本座長代理

 現実的にはそういうことなのだろうと思うのですが、そのときに、前回も議論があったと思いますけれども、誰が評価するか、どういう範囲で評価するかというときに、少し広域がいいだろうということと、一時保護所はある種の特徴があるので、それは先ほどからここで議論になっている、一時保護所を現時点で何を評価するかという話と、何が求められるべきかという話をした上で、評価ポイントをつくっていかないとまずいかなという気はします。

 だから、緊急に求められるのは、子どもの安全・安心の感覚と権利擁護という観点から見たときに、今の場所はどうかということをまず議論して、評価項目として入れる。それを先行させるような形になるのかなというのが私のイメージです。

 

○奥山座長

 先ほど来の話から考えれば、緊急で守るべきときにどれぐらい子どもが安心できる、それから喪失体験に対してどういうケアができているかというところ、それからアセスメントの時期にどのぐらいのケアができていて、そしてどういうアセスメントができているかということ。それぞれの機能に応じた評価をきちんとできるような形に持っていかなければいけないのではないかと思います。井上先生。

 

○井上構成員

 僕の聞き間違いかもしれませんが、先ほど事務局のほうから横浜市の資料がないということだったのですけれども、私が知っている限りで、平成25年ぐらいから横浜市児童福祉審議会児童相談所一時保護所外部評価委員会から報告が毎年60ページぐらいに及ぶ内容で出ていると思うのですが、その辺はどうでしょうか。

 

○事務局(松崎総務課児童福祉専門官)

 平成25年度から報告書はインターネットのほうで上がっております。それから評価項目等もあって、評価技法なども決まっております。でも、結果については残念ながらないのですが。

 

○井上構成員

 大体の項目とか、どういう点が大事なのかというのは、それを見ると、かなりこなれた格好でできているようですので、皆さん、もしよければ。

 

○奥山座長

 先ほど松本先生が前回のことをリマインドしていただいたのですが、少し広域でやるべきではないかというのは前回議論があったところなのですけれども、それに対して、今のような形で各県の審議会、児福審のようなところがやるけれども、そこのやり方を統一するような方向がいいのか、それとも本当に評価をする機関が広域なほうがいいのか、その辺を御議論いただけますか。

 この前もお話ししたのですけれども、代替養育施設の第三者評価に関しては、全国推進組織というのが全社協であるとのことです。しかし、全養協も全乳協も全社協に入っているので、COIに絡むのではないかと思うのですが、いかがですか。

 そういうことも含めて、もし県の児福審のやり方を統一するような運営の上部機関を設けるとしたら、一体どういうところがやるべきなのか。それから、児福審を使うのではなくて、広域でそういう機構のようなものをつくるとしたらどういう形がいいのか。その辺、いかがでしょうか。

 

○松本座長代理

 すぐにできるかどうかということは別にして、県の児福審なりがやるということが求められていますけれども、そう遠くないところで評価機構のようなものをちゃんとつくるというふうにして、そういう方向でまずは走るということでないとまずいかな。これは前回も申し上げましたが、一児相で、実際児福審でコミットしておられる方もお互いよく知っているような関係の中でやられていることが多々あるかと思いますので、ちょっと離れたところ。自己評価の観点から内部で評価するということがまず前提だと思いますけれども、自己評価の点検も含めたところはもう少し広いところの広域でというふうに思います。

 もう一つは、一時保護の機能に合わせて評価をするとなると、例えば一時保護の期間というのは、一時保護所の評価というよりは、児童相談所の機能そのものの評価になってくると思うのです。アセスメントができていますかというのも、それは一時保護所の機能ということだけでなくて、例えばケアプランをどういうふうに立てていくか、そこにアセスメントをどんなふうに反映させていくかという児童相談所そのものの評価になってくるので、一時保護所の環境ということ、そこがまず最初に走るということかもしれませんけれども、きちっと評価しようとすると、児童相談所そのものの評価ということ、あるいはそこの仕事の進め方の評価ということになってくると思うので、そうなってくると、ちょっと引いたところで評価機構のものがあるというほうが、評価するほうもされるほうもお互いいい緊張関係があっていいのではないかなと思います。

 

○奥山座長

 今の御意見は、機構的なものをつくったほうがいいのではないか。

 ほかに御意見ありますでしょうか。どうぞ。

 

○藤林構成員

 この報告書の評価項目などを見ながら、何を評価するのかという基準は明確になってくるのですが、本当に適正な評価が行われるのかどうかというのは、かなりのスキルが必要ではないかなと思うのです。単に職員に聞いてそれで評価するのではなくて、重要なのは、ここにも書いてありますように、子どもへのインタビュー、子どもに対するアンケート調査、子どもが言っていることと職員が言っていることにはどうしても差があって、子どもの言っていることが100%正しいというわけではないのですけれども、そこの差をどのように評価していくのかということを考えますと、十分な経験を持った専門家の一定のプールがあって、その人々が年に1回ではなくて、年に何回も何十回も全国の一時保護所を評価していく中で、より適正な評価が行われていくのではないかなと思います。

 しかも、一時保護所の子どものインタビューといっても、その期間たまたまいた子どもを評価するわけです。ですから、あるとき保護されていた子どもが例えば無外した、帰ってきた、そこでどのような対応がされたのかというのを児童記録で読み取っていくということなどを考えると、名前を出すとあれですが、例えば和田先生みたいな熟練した方が見なければ、その児童記録の背景に何があるのかというのはわからないわけなのです。年に1回の評価では経験が積み重なっていかないのではないかなと思います。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 和田先生、評価に関して何かコメントありますか。

 

○和田准教授

 いいえ。

 

○奥山座長

 特に評価項目に関して、先生が評価するとしたら、どこを中心に評価したいというのがありますか。

 

○和田准教授

 地域で差があったところは先ほど例があったのですが、保護所によっては、靴のサイズが全部あって、服も全部新品であって、倉庫に新品の物資がいっぱいあるところもあるわけです。一方、石けんも前に出ていった子どもの石けんを使ったり、衛生法にひっかかるのではないかと思うのですけれども、そういうところもあるので、お金というのは一つの基準として見えやすく、比較しやすいなというところが一つ。

 あとは、保護所の職員が一番言っているのは、ほかの保護所が何をやっているか全然わからないということだったのです。ということなので、公表するならば、統一した基準というのがどんな項目でも必要なのではないかなと思いました。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。相澤先生。

 

○相澤構成員

 第三者評価基準は、たしか施設のほうは3年に一度見直しがあるのです。恐らく29年度は見直しの期間になるので、それに合わせて一緒に一時保護所の評価基準をおつくりになられるのが、実行上いいのかなと思いますね。要するに、施設の評価基準を活用する部分もあると思いますし、逆にこれだけ委託一時保護のことを重要視するのであれば、ほかの児童福祉施設の評価基準の中で委託一時保護の評価項目みたいなものについても検討されるべきですし、全体的に言うと評価基準を削減する方向で検討するという方針が全社協の評価委員会のほうから出ていますが、児童福祉施設は措置施設ですので、そういう意味では、きちっと権利擁護等の担保ができるような基準づくりをすればいいというのが1点。

 それから、前回も言いましたが、一時保護所の中で自己評価をきちっとやるという意識なり雰囲気がきちっと出てこなければ。第三者評価を受けて幾ら評価しても、職員の意識が高まらなければ、実際に質の向上には結びつかないので、自己評価をきちっとやれる、そういうシステムを考えていくべきだなと思います。

 私がいた国立施設などですと、年に2回は権利擁護アンケートというのをとって、そのときに家庭福祉課の職員が来てもらって、それを見てどういうふうに改善すべきかということを検討するということをしていますが、一時保護所自身がそういう検討をするようなシステムをつくっていくということが重要だと思います。

 

○奥山座長

 基本的には第三者から評価を受けないと、何が問題なのかを自分たちではわからないのだと思いますが。

 

○相澤構成員

 ですから、評価基準があれば、その評価基準にのっとって、それを自分たちでチェックするということもできるのですね。

 

○奥山座長

 もちろん、そうです。評価基準にのっとってチェックを自分たちでします。そこに第三者が評価したら、また違うのです。それを聞いた上で自己評価をしないと、次の自己評価につながらないのです。

 

○相澤構成員

 もちろん、そうなのですけれども、自己評価も大事だというのを私は言いたいのです。

 

○奥山座長

 だから、自己評価の前にまず第三者評価。第三者評価の前には当然自己評価があるので、自己評価をした第三者評価をして、その後にそこで指摘されたことがどう改善されたかという自己評価を繰り返していかなければいけないですね。次の評価までの間に。それはもちろん義務づけなければいけないことだろうと思うのですけれども。

 自己評価が大切なのはわかるのですが、まずは第三者としてきちっとした指摘ができる機関があるのか、機構があるのか、そこをやらないと、それが自己評価につながらないということがあると思います。

 どうぞ。

 

○山縣構成員

 今の話は、私の中で鶏か卵かみたいなもので、とにかくどこかから始めないとループは動かない。自治体、準備状況によって、鶏から始めようが、卵から始めようが、それが連鎖していますよということが重要なのではないかなと思います。

 前回途中で抜けたものですから、そういう方向になっていたのかというのを今、理解できたのですけれども、一時保護所の第三者評価については広域でやろうというのが大体の意見というふうに考えてよろしいでしょう。

 

○奥山座長

 はい。

 

○山縣構成員

 そうすると、広域圏というのは、どれぐらいのイメージで今、議論ができているのですか。今、福祉行政の多くは、都道府県とか市町村のほうにどんどん主体化していくという形で、広域化はむしろ好ましくないと。ただ、一保の特性からして広域という議論になっているのではないかと思うのですが、そうしたときに、広域の行政単位というのはもはやないのですね。そうすると、新設のものを想定するのか、既存の広域行政単位があって、そこに福祉部門を乗っけるというイメージなのか。放っておいたら新設というのは相当難しい。これだけで成立するような事業というのはないと思うのです。この辺の現実感というのはどんな形で議論されているのかなと。

 加えて、もし一保の特殊性、これが県に1カ所とか2カ所しかないということをベースに議論しておられるとするならば、児童自立支援施設とか児童心理治療施設などもほぼ同じような、場合によっては心理治療施設はもっと少ない状況下で、それを都道府県単位で一施設しかないのに評価しているわけです。県単位でできているという前提。十分かどうかは別にして。この辺の関係は前回議論になっていたかなと。

 

○奥山座長

 これは私の考えですけれども、評価ということに関して言えば、基本的に事業として考えること自体がおかしいと思います。例えばISOの評価は、国際的に一律にしようという考え方ですね。評価というのはそういうものであって、事業の実施者は、県や市町村におりきて、そのとおりなのですが、それを評価するのが県や市町村だったらば、これはCOIです。

 それよりも、広域で、言ってみればある意味ISOでもいいぐらいですね。国際的な機構で。そういう考え方をとっていかないと、きちんとした評価はできないと思います。

 

○山縣構成員

 同じことを言っている。そういうのを想定するかどうかということを聞きたかったということなのです。

 

○奥山座長

 想定したほうがいいと思います。

 どうぞ。

 

○上鹿渡構成員

 そうすると、きょうは一保のということですけれども、既にある社会的養護関係施設や、先ほど松本先生からもあった児相自体とか県自体の評価とか監査みたいなものもひっくるめて機構としてやっていくという形、すぐできることではないですが、そういうものにしていかないとならないのかなと。特に契約で今やっている社会的養護関係施設だと、自分で選んだところにやってもらうというのは、あちら側は選んでほしいし、こちら側はいろんな意図が働くという中では、本来やってほしいと思っているような、子どもの最善の利益を保障するような改善に向けたものというのは難しいのではないかなと思うのです。

 評価されるのを選べるのでなくて、ここが広域であり、広域をさらに一つでまとめるような国としてのレベルのものが一つあって、広域でそれぞれはもちろんやるという形をとるのだけれども、それは選べるのではなくて、ここがあるとき、もっと言えば、数日前に行きますというようなレベルで連絡が来て、準備もそんなにできない中で、ふだんの様子をしっかり見て、そのときに子どもの話も聞くと。本当に改善を目指すとしたら、かなり厳しいものになると思うのですが、本当につくろうとしたら、そういう評価ができるような機関であり、それを支えるスタッフ、専門的な研修。1カ所でやれば、1年にやる件数もどんどんふえていく中で、そういう場所をつくれば、専門家集団としてそこが成り立っていくということが起きてくるかもしれない。場所をしっかりつくりながら、経験も重ねて前に進んでいくということが必要ではないかなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 最終的にはその方向だと思うのですけれども、今どうするかということも必要だと思います。最終的な方向に関しては、報告書の中でその方向でやらなくてはいけないのだということは書いていかなければいけないと思うのですが、そこに近づくプロセスとしてどういう形がいいのかということを考えていかなければいけないと思います。

 どちらかというと、今、代替養育施設のほうの第三者評価が走ってしまっていることもあります。また。一時保護の第三者評価にするのか、一時保護所の第三者評価にするのか、という問題もあるのだと思うのですが、その第三者評価に当たって少し前に進められればいいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

 例えば今年度は、今、話が出たように各県でやるとして、そこの結果を全部集めて、どの程度評価に差があるかということを調べて、これではいけないということを明確にする方向性もあると思うのですが、いかがでしょうか。

 

○加賀美構成員

 非常に単純に言うと、今回児童福祉審議会のもとで横浜方式でやるという話ですね。ということになれば、国のほうの機関は、国の児童福祉審議会のもとに、その結果を評価する機関をつくるということで試行錯誤していくという段階なのではないのかなと思います。

 

○奥山座長

 その段階をどうプロセスを踏んでいくのか。

 

○加賀美構成員

 国のほうにそれを総括する委員会を同時につくるということが必要ではないか。

 

○奥山座長

 つまり、各県でどういう評価がなされたのかというのを集めて、どうすべきかということを考える国の委員会が必要であろうということですね。

 ほかに御意見ありますでしょうか。

 

○山縣構成員

 アイデアとしては、必要かどうかというのは十分議論できていないのですが、今までの奥山委員長とかの話を前提にすると、統一の視点を持ったような評価者の研修が要るのではないかということかなと。可能かどうかは別にしてです。

 

○奥山座長

 今年度はその予算をとっていないわけですね。

 

○事務局(結城総務課課長補佐)

 評価者研修というところの予算までは事業として組んでおりません。

 

○奥山座長

 なので、次年度以降にそれをやらなければいけないということをきちんと言う委員が必要だろうということですね。ちょっと遠回りですけれども。

 

○山本内閣官房審議官

 よろしいですか。一時保護特有の第三者評価の基準のあり方といのは、まさにこの検討会で議論してもらおうと思っていたわけで、委員会と言おうが、検討会と言おうが、ここなのではないかともともと考えておったのですね。ただ、時間軸の問題がありますので、少なくとも差し詰め動かしてみてというのをやらせていただいて、それを集約して、この検討会が何カ月後にどうなっているのかわかりませんけれども、いずれにしても、どうあるべきかという議論をしていただくことは大変重要だと思っておりますので、そういう方向で考えたいと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ただ、国が直接に評価をするということにならなかった場合は、監視機構として常設の場は必要なのではないかと思います。こういうアドホック的な委員会ではなくて、どこかが監視していくということをしっかりと位置づけておいたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○山本内閣官房審議官

 つくり方としては、常設審議会の中の専門委員会とか、そういうやり方はあり得ると考えています。

 

○奥山座長

 いかがでしょうか。どうぞ。

 

○藤林構成員

 なかなか難しくて、山縣先生が言われた都道府県に1カ所しかないあるのは、一時保護所だけでなくて、児童自立支援施設も児童心理治療施設もそうなので、同じ発想でいけば、両方とも同じように評価をするべきではないかなというのは全くそのとおりと思うのです。

 評価する機関をどう形成していくのかというのが重要なプロセスではないかと思うのです。けれども、この委員会なのか、児童養護施設とか乳児院は後で議論するとして、県に1カ所しかないような施設を評価する機関というのは、ほかの児童養護施設、乳児院のように、この一覧表があるように、選べるところでなくて、こことここに指定するのだという指定機関のような考え方はできないのかなと思うのですが、それはあり得るのかどうか。私は専門でないのでわからないのですけれども、そのような施設は国なりが指定した機関が行うというふうに大枠が決まってくると、では、その指定機関をどこに委託するのかとか、そこの職員はどのようなトレーニングを受けるのかという次のプロセスに進んでいくのかなと思います。

 

○奥山座長

 具体的に指定機関というのは、どういうところをイメージされていますか。

 

○藤林構成員

 よくわからないのですけれども。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○井上構成員

 和田先生、どうでしょうか。評価機関。

 

○奥山座長

 評価機関をつくりますか。

 

○井上構成員

 もういろいろされていると思うので、何か御意見をいただければ。

 

○奥山座長

 何か御意見ありますか。

 

○和田准教授

 いや、特に。大丈夫です。

 

○奥山座長

 相澤先生。

 

○相澤構成員

 はっきり言って評価機関も、育つ機関が必要なのですよ。ですから、第三者評価を2回受けたと前回言いましたが、向こうの機関の方ときちっとコミュニケーションしながら、見る視点、ここを見てくださいとか、こういうところを見ないとちゃんと見られませんよねとか、そういうやりとりをするわけです。どうしてここはこういうふうにチェックされたのですかとか、こういう点がありますよねと。要するに、コミュニケーションしながらきちっと評価していくというところにまた意味があるわけです。先ほど奥山先生が言ったように、自分の自己評価と第三者評価の見る視点が違うので、視点を違えるということは、こちらが重要と思っているところはここなのに、そちらが見るところは違うのだと。そういうやりとりをしながら評価機関というのは育っていくので、その期間も踏まえて、その上で、例えば藤林先生が言ったように、その中で育ったような機関を幾つか選定されて、それを指定するとか、そういうことがあり得るかなと思いますが、いきなり最初からこの機関というのはなかなか難しいかなというのが、実際私が第三者評価を受けた感想です。

 前回言ったように、格差が非常にあるので、この機関がいい機関かなというものは、評価を受けた施設数が幾つ以上とか、それなりの経験を積んでいる、そういうものも一つの判断材料になるかもしれませんけれども、そういうことも踏まえながら、指定するなら指定していくということを考えるべきではないかなと思います。

 

○奥山座長

 最初のうちはそうなのかもしれないのですが、ISOなどは非常に厳しいですね。評価を受ける側が育てるようなコミュニケーションというのはあり得ない評価だと思いますが、どこまで厳しいものにするのというのもあるかもしれないですね。

 井上先生。

 

○井上構成員

 今、相澤先生がとても重要なことを言ってくださったと思います。僕らもよく経験するのは、調査機関の方たちがどこをどういうふうに見たらいいのかというのが本当にわかっていない方たちが多いのです。ですので、社会的養護として大切なところはどうだという臨床の場面の話を少しずつしていきながら、こういう点、こういう点とか、見方のポイントを少し話し合うというのは大事ではないかなと思ったのですけれども、先生、どうでしょう。

 

○奥山座長

 評価する側がそんなのではまずいのではないかと思うのですけれども。

 

○井上構成員

 話し合いをするのは、施設とそこが話し合うのでなくて、ここに関係している人間とという意味ですよ、先生。

 

○奥山座長

 つまり、もし国に常設の委員会ができたら、常設の委員会とその評価機関が話し合いをする。それはそのとおりだと思います。

 

○松本座長代理

 議論の進め方なのですが、個人的には独立した評価機関があって、一時保護所だけでなくて、社会的養護全般についてきちっと評価して、意見具申ができるというところが必要だと思っているのです。では、それをあしたできるかというと、そういうものでもないという中で、そこに近づいていくプロセスの一環として当面何が必要かということと、中期的に何が必要かということ、両方あると思うのです。

 現行制度の中で一時保護所があるわけです。もう一つは一時保護委託があるので、その中身が子どもの人権、あるいは安心・安全の感覚を守る、それで次の処遇につなげていくという観点から見たときに、いろいろばらつきがあって、まずいことがいっぱいあるのではないかということをどうするかという点では、当面今の制度を前提にした形の評価基準なりあるべき姿は出すべきだと思うのです。

 もう一つは、一時保護のあり方そのものがそれでいいのかという話が出ていて、もうちょっと一時保護の機能を見直していこうというのは、時間的な感覚はわかりませんが、この2~3年ぐらいのところで動いていくというところを前提にしたときに、評価の軸が変わってくるのだと思うのです。あるべき位置づけが変わってきて、評価の軸が変わってくる。そんなことを積み上げていくしかないのかなと。ある意味当たり前なのですけれども、確認しておかないと、どこの議論をしているのかがなかなか見えにくいような気がして。その中で経験を積んで、蓄積がある中で、もうちょっと全体的な評価ということが必要になる。

 ただ、個人的な意見ですけれども、現行制度を前提にして改善を促していくような形の評価というので、単一の県だけではなくて、広域な形で評価なりが統一できる、あるいは評価の基準そのもので風通しがよくなるような仕組みにしていかないとまずいかなと思っています。

 以上です。

 

○奥山座長

 加賀美先生。

 

○加賀美構成員

 今、松本委員からもお話があったとおりですが、少なくとも社会的養護のほうも含めて、日本の第三者評価制度はかなり試行期間があって形成したものです。初めてやるという構造の中でいきなり完成形を求めるというのは難しいので、2~3年の試行期間ということでこの枠組みは考えておく。少なくとも308,000円でできるかどうかというのはちょっと疑問があるのですが、恐らく予算でやらなければいけないことだから、とりあえずそれでやらざるを得ないのだろうけれども、そうだとしたら、あくまでも試行期間だという考え方を基本ベースにして取り組んだほうがよいと思っています。

 

○奥山座長

 相澤先生。

 

○相澤構成員

 最低基準というか、きちっとした質の評価を担保するという意味では、監査がきちっと必要なわけです。施設などもそうですね。この第三者評価というのは、社会福祉法の中のサービスの質の向上のための第三者評価なので、どうやってサービスの質の向上をするかということで、今ある以上にそれをさらに向上するにはどうしたらいいかという評価なので、最低基準というか、そういうものについては監査というところでの基準をきちっとつくって、その上で第三者評価というシステムをどうつくるかということをきちっと議論しておかないと、第三者評価と監査が一緒になってしまっているような、そんな議論になっているかなという感じがします。

 

○奥山座長

 監査の中で質を監査しているのですか。つまり、基準がどうだというより、ケアの質ですね。子どもへのアンケートというのは、監査の中でもやっていることなのでしょうか。監査と言うと、数字的な面を見ているようなイメージがあるのですけれども。

 

○川鍋家庭福祉課長

 監査は、ケアの質までは行けなくて、最低基準で配置基準が決まっていますね。職員配置がちゃんとできていますかぐらいは見られるのです。あとは経理面の監査ということなので、質の部分というのは、監査では見ていないと思います。

 

○奥山座長

 そうすると、第三者評価というのは、やはり質を見ている。向上もあってもいいけれども、一定基準より低いところはまずいですよということを指摘しなければならないわけですね。

 

○相澤構成員

 たしか施設監査の中にも権利擁護のことをきちっと見るとか、そういう内容が入っていたと思いますが、それは一時保護所にはないのですか。

 

○川鍋家庭福祉課長

 権利擁護で言えば、確かに入っているのですが、権利擁護に具体的にどういうことが書かれていて、それに基づいて何をやりましたかというのは見られるのですけれども、果たしてその権利擁護のやり方が、中身、質としていいかどうかまでは難しいと思うのですが、実態として何をやっているかは聞き取っていると思います。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○藤林構成員

 監査も活用すれば質の中身まで子どもにインタビューするということもできるかもしれませんけれども、基本的には都道府県、自治体内部の監査なので、そこは限界があるのと、監査者自身の専門性という点からもこれは限界なのかな。そう考えると、何度も言っていますように、広域的に専門性の高い集団が経験値を積んで成長していくということではないかなと思うのです。

 

○奥山座長

 ほかにいかがでしょうか。

 

○藤林構成員

 漠然としたイメージで言うと、例えば相澤さんと和田さんとあと何人かで専門職集団をつくって、どこか委託された団体がこの3人か何人かを雇用して、全国を回っていくとすぐ経験値が高まっていくというのが私のイメージなのです。個人名を出してしまって恐縮なのですけれども。

 それは3年も4年も5年も待っていられないわけなので、今すぐ一時保護所の適正な評価ができる人材というのはそんなにいないと思うのですよ。多分和田先生の研究班の方々はできる人材になっているのではないかということも考えると、専門職集団をある程度スピード感を持って組織していくということと、その人材が実際に都道府県の一時保護所を評価できるような仕組みを事務局と一緒に考えていくということが当面必要なことではないかなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 専門職集団の機構のようなものをできるだけ早目につくるべきであるという考え方だと思います。

 その方向で考えていく。ただ、それに4年も5年もかけていられない。時限としては2年ぐらいということで考えるということでよろしいですか。

 そのときに、松本先生がおっしゃったように、それと並行して一時保護所の改革があるので、そこも含めて、評価のポイントが若干は変わっていくのでしょうけれども、原則は多分変わらないですね。子どもにとっていいケアをしているのか、きちっとしたアセスメントをしているのか、子どもにとっていいことをやっているのかというところなので、そういう意味では、そこの原則を見ながらある程度つくれば、一時保護の制度が変わっていったとしても、評価は可能になっていく可能性があるのではないかと思うのですけれども、松本先生、いかがですか。よろしいですか。

 では、そんな方向でここでは考えていきたい。どうぞ。

 

○山縣構成員

 今のまとめの中には、社会的養護のところで言うと、全国何とか組織というのを全社協と、実際の評価機関なり評価の仕組みを動かす都道府県という構造になっていますね。今のは両方を専門何とかかんとかでやる。

 

○奥山座長

 専門集団の機構が回っていってしまう。

 

○山縣構成員

 それは両方やるというふうに理解をしていく。

 

○奥山座長

 両方やる。

 

○山縣構成員

 全社協の機能と都道府県の今やっている機能の両方をそこが全てやるという理解でいいのですか。

 

○藤林構成員

 必要なのは、専門性経験値が積み上がっていくような専門職集団が各都道府県の一時保護所の評価をできるような。そこをどういう仕組みにするのかというのは、私もビジョンを持っているわけではないのですけれども、その仕組みをつくっていくというのが今回の方向性としての力点ではないでしょうか。

 

○山縣構成員

 そのほうがいいと思います。余りがちがちに固めずに、いろんな対応の仕方があるというぐらいのところで行ったほうがいいのかなと思います。

 

○奥山座長

 それには幾つかの例を出してもいいのかもしれないですね。例えばそういう機構があって、先ほどお話が出会た国の委員会があって、そこが常にお互いにウオッチングするような状況を作り出す。つまり、機構が報告を国にして、国でも話し合ってもらって、それも受けてやっていけるような仕組みを考えてもいいのかもしれない。

 

○山縣構成員

 いろんなパターンがあって、その中で絞り込んでいけばいいかなと思います。

 

○奥山座長

 相澤先生。

 

○相澤構成員

 第三者評価で、先ほど監査と言ったのは、実は国立機関、施設は処遇監査をやっているわけです。それは基本的には第三者評価基準を活用して処遇監査をしようということになっていて、年に2回、国立機関、国立の児童自立支援施設はやっておるのですが、監査の中にもそういう要素を入れてもいいのではないかと思っているという意味で先ほどちょっと提案させていただきました。

 

○奥山座長

 先ほど藤林先生の御意見と重ね合わせると、監査をする方たちは専門集団なのですか。

 

○相澤構成員

 一応、児童福祉専門官が来てチェックをしていただくということで、国立の児童自立支援施設は専門官にやってもらっています。

 

○奥山座長

 1人。

 

○相澤構成員

 2人。

 

○奥山座長

 その専門官は、評価ということのトレーニングは受けるという形になりますか。つまり、監査のトレーニング。

 

○相澤構成員

 それは受けていないと思いますね。

 

○奥山座長

 監査にしても評価にしても、どこがポイントで、どう見ていくのかというのは、そう簡単なものではないと思います。藤林先生が専門集団とおっしゃったのは、確かに和田先生たちはよく御存じかもしれないと。では、行って評価ができるかというと、必ずしもすぐそれができるわけではない。そこのトレーニングも必要になってくるのではないかなと思います。例えば子どもにダイレクトに面接するのかしないのか、あるいはアンケートをするのかしないのか、あるいは施設が子どもからのアンケートをきちんととって、どう解しているのか、そこの評価をするのか、そういうところもどこをやるべきなのかというのは、監査なり評価なりする人たちが考えなければならないことであって、そこを決めていかないとならないと思います。

 恐らく国立の施設の処遇の監査というのは、国立の施設はそんなにあるものでなくて、ほかと比較するものではないので、それでいいのだと思うのですけれども、ほかとの比較ができる評価の一律性ということを考えた場合には、相当なことが必要になってくるのではないかと思います。

 

○藤林構成員

 この評価とか、子どもへのインタビューというのは非常に専門性が必要で、昼間行って、今まで会ったこともない全然外部の人が子どもに会って、この保護所はどうですかと聞いても、多分本音など出てこないと思うのですよ。だから、どのようなインタビューをするべきなのか。

 例えば滋賀県は、今もやっているかどうか知らないのですけれども、泊まり込みで各施設に行って、そこで子どもの意見を聞くということを長くされていらっしゃるわけですが、場合によれば、一時保護所も前回ヒアリングに来ていただいた慎さんみたいに、泊まり込む。夜こそいろんな事件が起こるわけですから、泊まり込んで、そこで何が起こっているのかというのを観察するということも含めて評価をしていくということが重要ではないかなと思うのです。ここはそういう視点とかインタビュー技術であるとか、インタビューと観察したものをどのように評価につなげていくのかというのは非常にスキルが必要かなと思います。

 

○奥山座長

30万円でそこまでは難しいのではないのかというのが少し気になりましたが。

 上鹿渡先生。

 

○上鹿渡構成員

 きょうは、一時保護所のということで、今言ったような形で進めながら、途中でも出てきました社会的養護全体で全国での組織をつくっていくというのを見据えながら進めていけたらなと思います。それのプロセスとしてまず一時保護所をやってみるということで。それは、既にやっている第三者評価の仕組みというのは、民間がまだいろいろ参入していないところで、今回改正された後では、そこがふえてきて、養子縁組についても今後ふえていくと思いますし、里親支援などもそこでふえてきたりということで、もう一回第三者評価、質的な監査に当たるぐらいのものにするのか、そこももう一回考え直すというか、取り組み、このままではないものに持っていける方向で行けたらなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 将来的にはこうあるべきというイメージは、皆さん、比較的一致しているのですけれども、どういう形でそこにたどり着くかというところの問題かなとは思います。そういう形で何らかの報告書にまとめていくということにしていきたいと思います。田野さん、どうぞ。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 話が戻ってしまって申し訳ありませんが、施設の監査を都道府県に実施していただくときに、国から監査の視点の項目として示しているものの中に、子ども一人一人の権利を尊重して、ちゃんと意見や訴えを酌みとるような仕組みが設けられているかとか、あるいは被措置児童虐待の防止に向けて取り組みがきちんと行われているかとか、そういったお子さんに対する処遇についての監査というのも、先ほどの経理の監査だけでなくて、あわせて実施していただくようにしています。自治体が監査で施設に伺ったときにはそういう視点できちんとお話を伺うようにはしていますということを補足します。

 

○奥山座長

 どういう方が監査に行っておられるのですか。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 自治体によってまちまちだと思います。児童福祉の担当職員が行く場合と、監査専門の部門を設けている場合もありますので、どちらの場合もあると思っています。

 

○奥山座長

 監査専門の部門というのは、福祉に関する監査の専門。

 

○事務局

 私の知っている範囲ではそうです。高齢とか、ほかの福祉に関するものも含めての監査部門を持っているところもあると思います。

 

○奥山座長

 わかりました。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 すみません、手短にお話しします。

 先ほどの施設への一時保護委託の費用については、もう一度よく確認しますが、一時保護委託を専門に受ける体制を整えるということで、一時保護を受け入れる費用ということなので、そこはどういう整理か確認して御説明できるようにしたいと思います。

 

○奥山座長

 入所の有無にかかわらず、定員、1人当たり幾らという形で通知が出ていたような覚えがありますが不確かです。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 今回定員の外で一時保護委託が受けられるようにということでそういった仕組みをつくったので、具体的に確認して報告したいと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 あと30分になりました。5分休んで、次の施設に関しての話に移りたいと思います。よろしくお願いします。

 

(休  憩)

 

○奥山座長 では、先へ進めていきたいと思います。

 最初にお話ししましたように、施設のあり方に関して少しお話を進めていくことができればと思います。家庭養育の推進ということがあって、代替ケアに関しては、家庭養護をまず第一に考える。しかし、子どもにとって必要な場合には施設ケアも必要になってくるという話だったと思います。その施設ケアの中で話が出てきていたのは、小規模、小さい単位が必要。それから、地域の中に開かれていることが必要。もう一つ非常に重要な視点として個別化。個々の子どものニーズに合った形のケアができる施設のあり方が必要。この3つが出ていたのですが、前回シングルトン卿がいらしたときもお話が出てきた、プロセスの中として必要なこと、あるいはプロセスの後でもきっと必要になってくると思うのですけれども、施設が里親さんを支えたりという意味で、施設の多機能化ということも必要になってくると思われます。

 例えば包括的里親養育機関を受けていく、あるいはほかの色々な機能を施設が担っていくということが必要になってくるのだろうと思います。小規模あるいは地域に開かれたということについては議論をしてきたと思うのですが、個別的なケアができる施設のあり方、体系、今後の施設に求められる機能といった面に関する議論をもう少し深めていきたいと思います。自由に議論して次回につなげていきたいと思いますし、あるいはこんな資料を見せてほしいということがあったら、それは次回、事務局のほうにもお願いいたしますので、御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。相澤先生。

 

○相澤構成員

 小規模化を進めていくということですので、いろんな小規模があっていいなと。つまり、今、いろんな種別がありますけれども、児童福祉法の中でこういう対象と規定されていますが、対象のお子さんをきちっとアセスメントしてみると、このお子さんは児童養護で、このお子さんは児童心理治療施設というように,今ある施設種別だけの機能では対応し切れないような面もあるし、それから前に言った若年の特定妊婦になられたような方は、赤ちゃんと一緒に母子でケアをするような形態の小規模があってもいいし、要するに、子どものニーズにきちっと合ったそういう小規模をどんどんふやしていくのがいいのではないかなと思っているということです。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ということは、小規模の家庭単位の中にケア度の高いお子さんもいれば、そうでないお子さんもいるという小規模を考えていくということになりますか。

 

○相澤構成員

 そういう形態が一つあってもいいかなと思いますし、例えばアクティングアウトが非常に強くて、児童自立支援施設みたいに地域の中で生活がなかなか難しいというような、施設内で生活することが子どもの権利をきちっと保障するというか、確保するようなお子さんもいるので、必要性に応じた機能を持った小規模をつくっていくというのが基本的にいいのではないかと思います。

 

○奥山座長

 ということは、小規模でも地域に開かれたというところはない小規模があると。そういうところにはどちらかというと行動の問題が激しいお子さんたちが集まるというような小規模を考えるということですか。

 

○相澤構成員

 そういう小規模もあっていいし、地域の中で開かれたところでケアを受ける小規模があってもいいし、いろんなタイプの小規模があっていいのではないかということです。

 

○奥山座長

 いかがでしょうか。どうぞ。

 

○藤林構成員

 措置する側から考えますと、現在の児童自立支援施設と児童心理治療施設がケアできるレベルと大舎制児童養護施設がケアできるレベルに広大なすき間というか、落差があって、退所したけれども、では、どうするのかといった場合に、措置できる施設がなくて、場合によれば家に帰ってしまうということもあるわけです。

 相澤さんの言うように、小規模児童養護施設、いわゆるグループホームがもっと多く各地域にできていくということが必要。量的に加速していくということと、もう一つ、いろんなニーズに応じた多様な小規模児童養護施設がふえていくということが必要かな。その中には児童自立支援施設を退所した。私としては高校までそこにおってほしいと思うけれども、なかなか高校に通学できない児童自立支援施設もあったりするわけですから、その場合に、そういった子どもが高校に進学・通学できるような小規模児童養護施設があればいいのかなと思ったり、発達障害とか二次障害を持っている子どもさんを一手に引き受けるような小規模児童養護施設があったり、そんな多機能、多様な小規模児童養護施設も。質と量の拡大が必要かなと。

 その場合に、全部同じ単価なのかどうかというところもまた考えるべきであって、場合によれば、現在虐待加算しかないわけで、同じ小規模児童養護施設・グループホームだけれども、ケアレベルが求められる子どもさんが大勢入ってくる場合にはこういう単価であり、そこまでない場合にはこういう単価という考え方も一方で検討するべきではないかなと思います。

 

○奥山座長

 質問です。そのときの単価を変えるというのは、どういうイメージを先生は持っておられますか。

 

○藤林構成員

 1人当たりの措置費が、今、児童養護施設はこれぐらいの額であり、児童心理治療施設はこういう額であるというところの真ん中ぐらいがあったりするのかなという気もするのですが、児童養護施設A型、B型というイメージなのかなと思うのです。そこは現場の感覚の御意見を聞いてみたいと思います。

 

○奥山座長

 加賀美先生。

 

○加賀美構成員

 この議論を十数年前にやったことがあります。養育不全がこんなに進行している中で、施設の状況は、今ある分類型の社会的養護施設全て含めてボーダーレス化している。例えば情短のない都道府県は養護施設がそれを担うとか、いろんな構造になっているわけで、そういうことを考えると、ボーダーレス化という観点から言うと、ちょっと乱暴なくくり方をすると、先ほどの話のように、社会的養護施設A、B、C群などという形でもいいのではないか。

 今度は子どもの発達課題の問題とすると、ケアのレベル、質、治療的養育という観点からのお世話の話になってくると、かなり個体差がある。そうなると、当然アセスメントに基づいた単価制というものを考えていくべきだろう。

 先ほど子ども一人一人のオーダーメイドという話をしました。子どものケア、個別化をしていこうという今回の法改正の流れの中で、個別化をきちっと担保する意味でもそういう方向を考えていかなければならないだろうと思います。特に社会的養護施設は、できる限り良好な家庭的環境、このフレーズでくくられたわけです。そうなると、構造化や体系化も議論しなければいけないのではないかと思っています。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○山縣構成員

 今、加賀美委員が言われた部分、私は実はそういう考え方の人間なのですが、既存の施設の延長上で考えるのか、一旦それを更地にして、どんな機能が今、求められているのかという形で、例えば児童心理治療機能の6人ホーム、それから非公開の自立支援、社会的養護系の中の幾つかのパターン、あるいは父子対応型とか母子入所型とか、そういう機能を集めて、うちの施設はどのパッケージでやるか。この部門を3つ、この部門を1つとか、あるいは都道府県単位でそれがどれぐらい必要かとなると、児童心理治療施設がない都道府県がいまだにずっと続いていて、養母が結果として担わざるを得なくなっている。そういうところもある程度解消できるのではないか。ここでそこまで議論していいのかどうかというのが1点です。

 もう一点は、ひょっとしたらこれは前回やられているのかもしれない。今、座長が家庭養護を第一にというふうに言われた。私はそれがいいのですけれども、報告書のまとめとして、養子縁組を含めた家庭養護と見ていくのか、養子縁組は家庭であって、家庭養護ではない。あくまでも家庭なのだと。家庭養護は里親とか、日本で言うとファミリーホームのようなところが家庭養護なのだと。最終の報告書のイメージで、養子縁組をどこに位置づけるか、権利条約でもそこはやや曖昧なのです。くっついているように見えるパートと、別に考えているパートがあって、ここがそこに踏み込んでいくのか、曖昧なままにそれぞれ解釈の余地ありという形でいくのか、結構重要なところではないなと思っているのです。

 この2点です。

 

○奥山座長

 その2つの問題で、まず1つ目ですが、到達点という意味では更地で考えるという方向性を議論していいと思うのですけれども、では、今の既存のプロセス、種別がある中で、そこにどういうふうに到達していくのかというのを考えていなければならない。

 

○山縣構成員

 私のイメージでは、そのプロセスを経ると、どうしても児童養護施設が中心の議論をやらざるを得なくなる。児童心理治療施設とかが今でもそこのプロセスには入っていないのですね。小規模グループケアとか地域小規模何とかという発想にそこがなり切れていない。乳児院もややそういう傾向がある。児童養護だけがそこのイメージをつくっていっているけれども、それでいいのだろうかというところも含めて。

 

○奥山座長

 今すぐにでもやらなければならない問題としては、児童心理治療施設も児童自立支援施設も小規模、地域化ということを考えるべきであると思います。

 ただ、児童自立支援施設の場合、本当に地域化が全面的にいいのかというのはあるのかもしれないですが、少なくとも家庭的な養育になっていかなければいけないというのは、今回の法律に書かれているので、そこはやらざるを得ないところだろうと思います。先ほど先生がおっしゃったように、「更地にして」に関しては、私は賛成なのですが、ただ、それに近づけていくにはどうしたらいいかということがあると思います。

 

○山縣構成員

 同じことを言っているつもりです。更地をイメージして種別ごとに議論できるのか、自立支援施設のみでこの議論をすると、そこの延長上でしかなかなか。他領域に踏み込みづらいと思うのですよ。そういうことを外してもらって、将来像はこんなところにあるから、そこに向けて20年かけて、おたくらはそこにどういう形で入っていくのやというぐらいまで刺激するのかどうかというのが言いたかったところです。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 2つ目、養子縁組をどちらに入れるかというのは非常に難しいところだと思うのですが、私の意見だけ言わせてもらいます。皆さん、意見が違うと思うのですけれども、最終的には家庭なのかもしれないとは思うのですが、ただ、今の養子縁組を社会的養護の方を受け入れる養子縁組として一つ確立しようとすると、社会的養護の中にある程度組み込んでおいて考えて、特に入り口としてはそのように考えていくということが必要なのではないかなと思います。それは私の意見です。

 いやいや、養子は縁組してしまったら、もう家庭と考えればいいのですよという方もいるかもしれないですね。

 

○山縣構成員

 それも私の説明が不十分だったかもしれません。それを言った理由は、養子縁組を組んでもフォローが必要だというのは当然思っています。今、言いたかったのは、措置権者で言うと、里親が確保できたら、それ以上、養子縁組まで進めなくてもいいのだと。むしろ養子縁組がまずありきで、そこをしっかりやれないといけないという意識を持つかどうかというところをどう書くか、そういうイメージで議論していたつもりです。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 そうすると、それに関しては永続性ということが言われているわけで、養子縁組をしっかりと考えてくださいということになるのだと思います。

 では、藤林先生、松本先生、伊達先生。その後、上鹿渡先生。

 

○藤林構成員

 それはいわゆる国連ガイドラインに書いてある永続的解決を求めていくというところにあるように、児童相談所のソーシャルワークの中で非常に重要な部分として我々が書いていくべきではないかなと思うのです。

 縁組も支援が必要ということも大体コンセンサスができている。

 ただ、特別養子縁組成立後の子どものこと、そのことを「社会的養護」と名づけるのか名づけないのか、「インケア」と呼ぶのか呼ばないのかというネーミングの問題ですね。そこが難しいなと思っているところです。

 

○松本座長代理

 特別養子縁組だけでなくて、養子縁組そのものについてももう少し丁寧な議論が必要だと思うのです。そのときに、先ほど山縣さんが、里親が見つかったらよしとするのか、先に養子縁組云々というふうな表現でおっしゃったことについて、要するに、養子縁組全体の里親さんが前に出てくるような気がするので、里親さんというのは、里親さんの名前も変えて、つまり、子どもの養育をしていただく機関として里親家庭というものを積極的に考えていきましょうということとちょっとそこがずれるので、養子縁組を前提にしない里親さんというものをもうちょっときちっと位置づけるという方向があって、養子縁組の話もしておかないと、ちょっと混乱するかなと思いました。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 伊達先生、上鹿渡先生で終わりにしたいと思います。よろしく。

 

○伊達構成員

 余りにも要素が多過ぎてまとめ切れないと思うので、施設のほうは何ができるかということで言えば、児童養護施設もそうですし、乳児院もそうだと思うのですが、ともかく家庭的とか小規模ということでその部分を繰り出していくということは一つの方向としてあり得るけれども、それを出した後の本体が何をできるのか。そこでやらなくてはいけない難しい子どもの総力戦の問題、このことに対して構造化が全然できていないですから、ここのところにどれだけ費用をかけてちゃんとできるのかということを考えておかないと、小さなものに全て分割してしまえばそれで済むという話ではないと思いますので、そこの議論は足りないと思います。

 

○奥山座長

 どうぞ。

 

○上鹿渡構成員

 では、最後ということで、ありがとうございます。

 今、小規模という話がされていたのですが、もう一個ある個別化というところで言うと、施設が個別化するときいろんなやり方があると思うのですが、その一つに、地域の里親さんの家を使って、そこを里親支援事業という形で施設がチームとして一緒に子どもを見ていくという形で個別化ということも考えられるのかなと思っています。

 次回にと思っていたのですが、きょうこの話になったので、つなぎということでお話しして、次回もう少し詳しくお話しできればなと思っています。長野県上田市に乳児院がありまして、9人定員の小さな乳児院なのですが、上田市と長野県と連携して話し合いを去年6月から続けています。シングルトン卿がここでおっしゃってくださったようなプロセス、あそこまで明確にしっかりとはできていないのですが、そういったことを参考にしながら、地域で施設を中心にしながら、自治体も交えてそういう展開ができないかなということで計画をずっと思って立ててきていまして、ここでいろいろ議論されたことで新しく今年度から入ってきたいろんな制度。これまであったけれども、そういった支点では施設が施設養護を中心としたサービス提供者から、家庭養護を支援したり、実際それをサービスとして提供するというところに変わっていくためにと考えると、意外とこれまである制度の中で、こういう使い方ができるとか、そういうのを一緒に考えながら計画を立てて、この4月からまずは里親支援事業をしっかりとっていける形をとれるようにということで、取り組みが実際始まったところがあります。

 ここの話を次回まとめて持ってきますので、それを皆さんに提示させていただいて、それがプロセスを考えるときの一つの参考ですね。本当に試行的に初めているところですので、試行的でありますが、確実に実現しなければならないことだと思って精いっぱいやっているのですが、そのあたりを提示して、また皆さんに御意見をいただいたり、プロセスのことを考えていけたらいいのかなと思っております。よろしくお願いします。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 次回、施設種別を将来的に更地にして考えることもイメージしつつ、でも、今の状況からどうプロセスを踏んでいくのかというところでお話を進めていければと思います。

林先生。

 

○林構成員

 授業がありまして今後なかなか出席できないもので、3回に1回ぐらいは来ようと思ってきょう来たのですけれども。

 1点、障害スペクトラムというか、障害自体も非常にグラデーションを持って考えていくということを考えたときに、以前障害児施設を社会的養護に入れて考えるか。二重措置などを含めて、一施設で担うだけではなくて、多様なあり方を考えてみましょうということがあったと思うのです。障害児施設を社会的養護に入れるか云々というところと、先ほど養子縁組を社会的養護で考えるか云々。つまり、社会的養護というのはどういう構成要件を持って成り立つものなのかという合意がない中で、実は里親委託ガイドラインの中に国は養子縁組を家庭養護として捉えるということをことし既に明記しているわけです。

 私と藤林先生で虐待防止学会の学会誌の特集号で養子縁組を組まれたときも、そこを私自身は強調していて、でも、児童福祉法自体に位置づけられていない養子縁組そのものを社会的養護、家庭養護として捉えるという見解については再検討が必要であり、何をもって社会的養護として捉えるか、その構成要件を明確にすべきではないかということをそこの序論のところで書かせていただいているのですけれども、そこを含めて再検討いただきたいということ。

 あと、乳児院に関して、日赤や済生会病院の附属の乳児院というのはまだ2030とあるわけです。そこはすごくブラックボックス化していて、彼、彼女らのその後の状況、彼らがどういう人生を歩んでいるかというのがなかなか見えないところで、そういう社会的入院的な乳児院を含めて、もうちょっと乳児院のあり方そのものも検討いただけたらなと思います。

 以上です。

 

○奥山座長

 今の2つの問題に関してですが、乳児院のことに関しては早急に考えていかなければならないと思っています。以前にも乳児院からモデル的に家庭養育への移行を行うべきではないか、つまり、家庭養育を必要としている低年齢児のところから少しずつ考えていくべきではないかという話もあったので、乳児院のことはしっかりと考えなければいけないと思っています。

 もう一つ、今の障害児施設、養子縁組のことなのですが、一つの考え方として、子どもそのものが社会的養護を必要としているかどうかというのを決めていくという考え方もあるのではないかと思います。施設そのものを社会的養護施設と言うのか言わないのかというよりも、子どもに対して社会的養護対象かどうかを決めるという考え方もできるのではないかと思っています。これも将来の話です。そのあたりも含めて次回議論ができればと思っています。

 ありがとうございました。非常に重要なポイントを挙げていただきました。

 よろしいでしょうか。

 では、次回ですけれども、毎回金曜日になっているので、林先生も来づらいのですかね。

 

○林構成員

 はい。

 

○奥山座長

 5月26日が皆さんの御都合がよいなので、一応26日ということで考えています。ただ、時間に関しましては事務局のほうで御検討いただいております。

 では、事務局のほうにお返ししますので、よろしくお願いいたします。

 

○事務局

 日程調整がうまくできていなくて申しわけございません。次回は5月26日の金曜日を予定しております。時間につきましては、厚労省内の別の会議と今、調整しておりまして、早目に時間をお知らせするようにいたします。申しわけございません。

 以上でございます。

 

○奥山座長

 きょうは、長い間ありがとうございました。非常に充実した議論ができたと思います。どうもありがとうございました。

 


(了)

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