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2017年7月5日 不妊に悩む方への特定治療支援事業に関する「意見を聴く会」

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成29年7月5日(水)
14:00~16:00


○場所

TKP新橋カンファレンスセンター 6G会議室


○出席者

参加者

石井美智子(明治大学法学部専任教授)、松村淳子(京都府健康福祉部長)、松本亜樹子(NPO法人Fine理事長)、温泉川梅代(日本医師会常任理事)、吉村泰典(一般社団法人吉村やすのり生命の環境研究所長)

雇用均等・児童家庭局母子保健課(事務局)


○議事

不妊に悩む方への特定治療支援事業に関する「意見を聴く会」

 

○安濟補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「意見交換会」を開催いたします。

 お集まりの皆様には、御多用の中、御参加いただきましてまことにありがとうございます。

 私は本日の司会をさせていただきます、母子保健課課長補佐の安濟と申します。

 まずは母子保健課長より開会の御挨拶を申し上げます。

○神ノ田課長 皆様こんにちは。厚生労働省母子保健課長の神ノ田でございます。

 本日は、不妊に悩む方への特定治療支援事業に関する「意見を聴く会」ということで開催をさせていただきましたところ、大変お忙しい中、お集まりをいただきましてまことにありがとうございます。また、お集まりの皆様方には、日ごろから母子保健行政の推進に格別の御理解、御協力をいただいているところであります。この場をおかりしまして厚く御礼を申し上げます。

 御案内のとおり、晩婚化、晩産化が進む中で、不妊に悩む方々がふえておりまして、現在5%ぐらいのお子さんは、生殖補助医療により生まれているという状況にございます。このような不妊治療を受けている方々の経済的な負担を軽減するため、厚生労働省では平成16年度より、体外受精等に要する費用の一部を助成する事業を実施してきたところでありますけれども、その助成対象につきましては、法律上の婚姻関係にある夫婦に限定してきたところでございます。一方、いわゆる事実婚に関しましては、例えば年金や健康保険、児童手当といったような社会保障分野におきまして、法律婚と同様の取り扱いがなされているということでありまして、不妊治療の医療費助成につきましても、事実婚を対象に含めるかどうかということが検討課題の1つになってございます。

 本日の「意見を聴く会」につきましては、今後、厚生労働省としてこの課題につきまして検討を進めていくに当たりまして、関係の皆様方、また、専門家の皆様方からの御意見を参考にしていきたいということで開催をさせていただいた次第でございます。限られた時間ではありますけれども、忌憚のない御意見をいただきますようお願いいたしまして、簡単ではございますが、冒頭の挨拶にかえさせていただきます。きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

○安濟補佐 次に、本日御参加の方の御紹介をさせていただきます。五十音順に御紹介いたします。

 石井美智子 明治大学法学部専任教授。

 松村淳子 京都府健康福祉部長。

 松本亜樹子 NPO法人Fine理事長。

 温泉川梅代 日本医師会常任理事。

 吉村泰典 一般社団法人吉村やすのり生命の環境研究所長。

 ありがとうございました。

 恐れ入りますが、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。

(報道関係者退室)

○安濟補佐 続きまして、資料の確認をお願いします。

 右肩に資料1から資料4までの計4部の資料を配付しております。また、吉村所長、松村部長より資料の提出をいただいております。

 資料の欠落等ございましたらお知らせください。よろしいですか。

 なお、この会は公開で開催をしまして、資料及び議事録も公開いたします。

 それでは、意見交換会に入りたいと思います。本日の意見交換会の進め方ですけれども、まずは簡単に事業の仕組みや背景の資料の説明を行わせていただきます。その後、参加者の皆様それぞれのお立場から、特定不妊治療支援事業の助成対象として、事実婚の方も含めることについて御意見を頂戴したく存じます。最後に、参加者の皆様を交えてフリーディスカッションができればと考えてございます。

 まずは制度の概要等について御説明をいたしますので、柳川課長補佐よりよろしくお願いいたします。

○柳川補佐 まず母子保健課より、制度の概要について御説明させていただきます。資料2になります。

 まず1ページ目でございますけれども、不妊治療について御説明させていただきます。資料の左側に保険適用されている不妊治療をお示ししております。主に検査や検査による原因がわかった場合の治療が該当しております。

 次に右側、こちらが保険適用されていない不妊治療に関してです。そのうち特定治療支援事業として国の助成対象となっておりますのが生殖補助医療、主に体外受精、顕微授精が該当しますけれども、それに加えまして平成27年度から対象となりました男性に対する治療として、顕微鏡下精巣内精子回収法、いわゆるTESEと言われておりますけれども、こちらが対象になってございます。

 2ページ目に移らせていただきます。こちらが不妊治療の流れの概略図になっております。まず検査を行います。検査によりまして男性不妊、女性不妊、あるいは原因がわからない機能性不妊に大別されます。ここから原因がわかりましたものに対しましては、原因の治療を行います。ここまでが保険適用となっております。ここからさらに原因がわからない機能性不妊ですとか、あとは治療が奏功しなかった場合に関しましては、さらに進みまして夫婦間で行われる人工授精などの治療に進みます。そちら右側に移りまして、今回、不妊治療に悩む方への特定治療支援事業の対象となっておりますのが、この赤枠で示しております生殖補助医療、男性に対する治療というところになっております。

 3ページ目に移らせていただきます。こちら生殖補助医療の実施数、出生児数についてお示ししております。まず1つ目に生殖補助医療の実施数としまして、治療延べ件数ということで合計で約40万件という件数が挙がってきております。2番目に、生殖補助医療による出生時数の推移ということで、こちらは年々増加傾向にありまして、最後の平成26年度、こちらでは4万7,322人の出生がございまして、これは総出生数のうち4.71%に当たるという結果が出ております。

 4ページ目になります。こちら不妊治療に悩む方への特定治療支援事業についてでございます。趣旨としましては、妊娠治療の経済的負担の軽減を図るために、高額な医療費がかかる、あるいは配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成しております。対象者としましては、特定不妊治療以外の治療法によっては、妊娠の見込みがないか、あるいは極めて少ないと医師に診断された法律上の婚姻を有している夫婦となっております。

 給付内容としましては、1回15万円、初回に限りまして30万円までの助成を行っております。さらに平成27年度より、男性不妊治療を行った場合には15万円上乗せで支給しております。所得制限がございまして、夫婦合算の所得ベースで730万円というところがございます。

 こちら支給実績ということで、右下にございますが、年々増加傾向にございまして、平成27年度では約16万件支給しているという実績がございます。

 5ページ目に移らせていただきます。不妊治療に悩む方への特定治療支援事業における現行の申請手続ということで御説明させていただきます。まず真ん中の緑です。治療を受ける方がまず指定医療機関へ受診されます。そこで治療を行いまして、病院側から治療費の請求を受けます。こちらはまず実費で支払っていただいております。支払いを終えた場合、受診等の証明書、領収書を医療機関からもらうことになります。

 6番目に進みまして、これら書類をもちまして都道府県、指定都市、中核都市に助成申請を行います。こちらの証明書以外に所得証明書、あとは法律上の婚姻をしている夫婦であることを証明できる書類、例えば戸籍謄本等をもって申請を行っていただきます。この申請が都道府県、指定都市、中核都市でこれらの書類をもとに審査が行われまして、助成が行われるという仕組みになっております。

 6ページ目に進ませていただきます。いわゆる事実婚の取り扱いについてということです。こちら社会保障等の分野では法律上、事実婚の関係にある者を給付等の対象にしております。幾つか例示をさせていただいておりますけれども、例えば国民年金法や厚生年金保険法に基づきまして遺族基礎年金が支給されておりますとか、あとは健康保険法に基づきまして家族療養費を支給しているというようなことがございます。以下、続きますけれども、後ほど御確認いただければと存じます。

 7ページも例示になっておりますので、8ページ目に進ませていただきます。8ページ目は事実婚に関する実務上の取り扱いということで、国民年金法と厚生年金保険法を取り上げております。まず事実婚関係の認定の要件に関しましては、事実婚関係にある者としてはいわゆる内縁関係にある者をいうというものであり、内縁関係とは、婚姻の届け出を欠いていますが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係を言いまして、例えば要件としましては、当事者間に社会通念上の夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させるような合意があるですとか、あとは当事者間に社会通念上の夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在することとなっております。

 2番目に認定方法ということですけれども、これは住民票上、同一世帯であるということですとか、世帯が異なっておりますが、住所が住民票上、同一である場合。あとは住所が住民票上、異なっていますが、下のア、イのような項目に該当する場合となっております。

 最後9ページになりますけれども、認定に当たっての提出書類を表にまとめております。こちら例えば住民票上、同一の世帯である場合、住民票の写しを提出してもらう等々、続きますけれども、こちらも御確認をいただければと思います。

 以上、駆け足になりましたが、制度の概要の説明を終わらせていただきます。

○安濟補佐 ありがとうございました。

 資料3及び資料4につきましては、それぞれ議論の過程の中で御参照いただければと思います。資料3につきましては背景資料をまとめておりまして、人口の動態でありますとか、実際に不妊治療の実施医療機関の指定についてどういうふうにまとめるのかとか、そういった背景の資料。日本とフランスの婚姻制度の比較といったものや諸外国における事実婚の概要といったものを参照として入れてございます。

 資料4につきましては、岐阜県さんのほうで不妊治療の助成事業の中で、一部事実婚の方に対しても助成を行っていらっしゃるということで、参考で資料を頂戴してございます。

 それでは、参加者の皆様から御意見等をお伺いしたいと思います。まずは医療を提供される側のお立場から、吉村先生と温泉川先生の順でよろしくお願いいたします。

○吉村所長 それでは、説明をさせていただきます。私からはA4横長の資料1、資料2を準備させていただきました。

 生殖補助医療と申しますと、体外受精・胚移植を中心とする医療を言うわけでありますが、我が国におきましては皆さんも御存じのように国のガイドラインとか、あるいは法的な規制とかがないというのが現状でございます。昭和58年から日本産科婦人科学会は、体外受精・胚移植に関する見解というものを出してきております。イギリスで体外受精が成功したのが、1978年でありますが、おくれること5年、我が国においても体外受精をやるという機運が高まってまいりまして、ガイドラインをつくったわけであります。当時は社会の認知度もまだ体外受精に関しては全くありませんでした。マスコミからの御理解もなかなか得られないような状況もありました。いろいろな状況があり、被実施者は要するに婚姻の確認をしてから行ったほうがいいだろう。法的な婚姻関係にある夫婦に体外受精を行ったほうがいいだろうということで、見解を昭和58年に決めたわけであります。

 当時は戸籍等による婚姻の確認が望ましいとされ、戸籍謄本を提出させているところが多かったように思います。しかしながら、10年、20年たってまいりますと、外来においてなかなか戸籍謄本をいただくのが難しいという状況になってまいりました。平成18年に体外受精の改定をしておりますが、このときには婚姻という表現は残しております。このときの改定の内容は、適用に関する改定でありまして、これまでは体外受精でしか妊娠できないカップルに対しての適用が体外受精の適用であったわけでありますが、例えばエイズウイルスに感染しているカップルなどがございます。その場合、精液中にはエイズウイルスが混入していることがあります。欧米でもそのことが報告されるようになってまいりまして、生まれてくる子供が感染しないために、体外受精・胚移植あるいは顕微授精といった技術を使ったほうが、リスクを回避できるということで改定をしたわけであります。

 当時、一般の体外受精を行っているクリニックの先生方からは、なかなか厳密に婚姻の確認をするのが外来、臨床の現場では難しい。臨床を行っていく上で戸籍謄本をいただくこともなかなか難しいというような現実があったわけでございますけれども、当時は非嫡出子に関しましては、例えば遺産相続において嫡出子と違って不利益がある。そのようなことを考えまして、婚姻という表現を残したわけであります。しかし、戸籍等の婚姻の確認ができる文書を提出といった項目は削除したといった経緯がございます。ですから特に戸籍で確認をしなくても、実際上は体外受精が現実に行われていたわけであります。

 そして平成26年に婚姻している夫婦という項目、婚姻しているという項目を削除いたしました。ここは下に書いてございますが、平成25年9月に最高裁の違憲判決が出ました。これを受けまして平成2512月に民法が改正されまして、非嫡出子の相続分が嫡出子と同等となる。これ以外にも非嫡出子がまだ不利益をこうむっている点は法的にはあると思いますけれども、遺産相続においても不利益がなくなったという最高裁の判決が出たことも受けまして、婚姻しているという言葉を削除したわけであります。そのときには社会情勢の変化によって夫婦のあり方にも多様性が認められるだろう。医療現場においては例えば社会通念上の夫婦においても、不妊を受ける権利というものを尊重しなければならないといったような考え方もございました。また、被実施者は夫婦であるという必要性を残す言葉を残すことによりまして、婚姻しているという表現を削除しても臨床上、外来においては適切に実施できるのではないかという考えに基づいて、このように平成26年に変更したわけであります。

 実際の変更の改定につきまして、その次の資料に書いておりますけれども、変更前は適用に関しまして「被実施者は婚姻しており、挙児を強く希望する夫婦で」となっていたわけでありますが、「被実施者は挙児を強く希望する夫婦で」としたわけであります。我々としては、このときに当然のことながら事実婚も考えていたわけでありますが、事実婚を容認するとか、そういう表現ではなく、夫婦という言葉にしたわけであります。私どもメディカルプロフェッションが夫婦とは何ぞやという定義をすることも非常におかしな話でありますし、夫婦であると患者さんが、カップルがおっしゃってこられたら、これは体外受精をしてもいいのではないかという考え方に至ったわけであります。

 その下のヒト胚及び卵子の凍結保存と移植ということに関しましても、同様な理由で「被実施者夫婦の婚姻の継続期間」というものを改めまして「被実施者が夫婦として継続している期間であって」というふうに考えを変えたわけでございます。

 以上が私ども学会の考え方でありまして、現実に今、行われている体外受精におきましては、事実婚であっても実施されているというのが現状でございます。

 以上が私の学会としての報告であります。

○温泉川理事 続きまして、日本医師会でございます。

 日本医師会と言っても私も産婦人科なのですが、ですが日本医師会といたしましては、医師の職業倫理指針第3版、これは平成27年6月に答申が行われております。生殖補助医療におきまして、我が国における生殖補助医療は法的規制がなく、日本産婦人科学会の見解に準拠し、医師の自主規制のもとに実施されているというふうになっておりまして、今、吉村先生の言われました産婦人科学会に準じることになっております。

 ただ、晩婚化が進む社会で不妊の問題が以前より深刻になっております。医学的にも早期に治療を始めることが効果的であることから、正しい知識を持って早い段階で適切な対応をとることは、とても重要であると思います。子供が欲しい人が希望どおり子供を持てるようになること、これが必要であると考えております。そして、ここの産婦人科学会の社会情勢の変化によりというものがありますが、まさに時代の流れというものがありますし、今どき夫婦別姓を主張される方もおられますし、事実婚がモラルに反するということとは違うような気がいたしますので、特に問題はないと思っております。

 そして日本医師会といたしましては、今まで言っていたことは、ちょっとこの事実婚とは違うのですが、所得制限額が19年に650万円から730万円に引き上げられ、助成対象者は拡大されましたが、不妊に悩む方に対する経済的な負担軽減を目的にしているのであれば、所得制限を撤廃することが必要であると、今までもそのように申し上げてきております。不妊治療は多岐、長期にわたることもあり、医療保険が適用されず、経済的負担も大きいので、少子化対策の一環として公費負担制度のあり方の見直しは必要であると思っております。これは事実婚と違いますが、つけ加えさせていただきます。

 以上です。

○安濟補佐 ありがとうございました。

 続きまして、実際に事実婚の方に対しても助成を独自事業で実施されております京都府の松村部長から、御説明をよろしくお願いいたします。

○松村部長 お手元に京都府の提出資料として、私どもの制度の資料を配付させていただいております。

 1枚目が京都府の事業と国の国庫を活用した特定不妊治療助成事業の比較、2ページ以降は私どもの補助金の交付要綱をつけております。

 今、御案内の、そういう意味では事実婚に対する助成ということについては、京都府の単費事業で取り扱っているところでございます。私ども京都府というのは大変少子化が進んでいるところでございまして、平成15年にこの制度をつくっているのですけれども、このころ既に合計特殊出生率は、東京に次いでワースト2位で何年かずっと経緯しているという時期がございまして、ちょうどそのころから子育て支援も含めて、少子化対策の取り組みをやり始めた時期になります。この当時、この制度をつくったときの担当課長をしておりましたので、今日ここにこういう形で来させていただいたという経過がございます。

 不妊治療の給付事業は京都府の単費事業でございますけれども、通称、一般不妊治療と呼んでおります。対象につきましては、先ほど厚生労働省の母子保健課からも御説明がありましたが、保険適用されている不妊治療に対して私ども京都府は助成をしている事業になります。ちょうどこの事業を立ち上げる検討をしているときに、国において特定不妊治療の議論がなされていました。その当時といいますと、いわゆる体外受精に対して行政が補助を打っていいかどうかという倫理的な問題のもので議論されていたかなと記憶しております。そうしたことも含めまして、私ども京都府は、国の検討よりも不妊治療を何とかしていきたいということも含めて、保険適用されている不妊治療、女性だけではなくて男性不妊に対しても産婦人科、泌尿器科等で実施されております不妊治療に対して取り組みを進めてきたところです。

 中身でございますけれども、医療費の部分でいきますと保険適用としては自己負担の2分の1、限度額としては保険適用分については6万円という形で当初、取り組みをさせていただいております。また、国のほうは16年から特定不妊治療を開始されておりますが、人工授精に対して狭間として対象にならないということがわかりましたので、平成23年から人工授精に対して府単費で積み上げてきております。それから、平成26年から不育治療にも拡充する形をとらせていただいております。国のほうの部分で男性不妊が対象になれば、そちらも活用する中で上乗せ補助という形でやってきているところでございます。

 今、議論になっております事実婚に対してですけれども、補助要綱を少しごらんいただきたいと思います。第2条の1、まず医療機関において不妊症と診断された対象者が不妊治療を受けられるというのが大前提になります。補助対象事業の第2条の第2項の(1)になるのですけれども、要件といたしまして、その対象者の方が府内に1年以上、住所を有する夫婦ということと、一般不妊治療給付事業のうち、不妊治療にかかる医療費の一部を助成する事実及び不育治療に当たっては婚姻の届け出をしていない、いわゆる事実上、婚姻関係にある者を含むということで、平成15年のときからそういう意味では先ほど言いましたように不育は後からついてまいりましたので、一般不妊に対して事実婚も含むという形で取り組みをしております。

 事実婚に何でこれを対象に含めたんだという話の部分なのですけれども、10年以上も前の議論で、担当課長をしていたのですが、正直、不妊治療に対してやるかどうかというのを私ども予算のところで議論させていただいたのですが、事実婚を含めないということに対して余り議論がなかったなと記憶をしております。実際に不妊という形で、いわゆる不妊の診断をされる大前提が夫婦関係にあって、通常の性行為をされている段階で、その当時は2年以上妊娠されないというのが治療の大前提でありましたので、そういう観点からも一般不妊という形の部分で保険診療を開始されているところについては、事実婚も含めていったのではないかと、すみません、推測にすぎなくて申しわけないですけれども、そのように記憶をしているかなと思っています。私ども京都府の職員でも、その当時でも夫婦別姓という形で生活されている方もいらっしゃったのは事実ですので、それほど大きな抵抗なくいったような、状態でございます。

 実績を1枚目の一番下段につけさせていただいております。とりわけ事実婚ということでございますので、この一般不妊の部分につきましては、私ども市町村と負担割合を2分の1、2分の1で29年度の当初予算で7,200万円です。

 事実婚の状況でございますけれども、平成28年度の実績でございます。京都市域もありますので全体で、一般不妊治療の対象者の方が3,721人のうち、事実婚は14名の方がいらっしゃいました。そういう意味では約0.4%という実態でございます。ちなみに不育症も一緒に数字を挙げさせていただいております。

 事実婚なのか、あるいは婚姻されているのかという確認の方法でございますけれども、もともと京都府の単費事業で、市町村が実施主体という形でやっておりますので、市町村のほうが住基もしくは申請書で確認をしていくという形になります。そういう意味では京都市など、大変対象者人口が多いところについては住基で確認というのもなかなか事務手続上できませんので、申請書での確認で対処いただいております。一方で、この方は事実婚であるということの確認を19の市町村が住基端末で確認しているというのが今の状況でございます。

 こうした中で私どもとして、今回、議論になっている中で、今の家族なり婚姻という関係の多様性から考えますと、出産を望まれる方が出産できる環境あるいは子育てができる環境をとっていくのが、私ども少子化が進んでいる京都府としてはやっていきたい中身と思っております。そうした観点からいきますと、特定不妊治療においても対象として拡充していただけたらありがたいなと思っております。

 参考になのですけれども、特定不妊治療、26年のときに国制度のほうはたしか回数制限と年齢制限があったところではあるのですが、年齢制限については妊孕性の問題を含めてそれは仕方がないと私ども思ってはいるのですが、回数については今、不妊という診断がそれまでは2年だったのが1年に診断基準も変わっているということと、大変年齢の若い方、23歳、24歳のところでも既に不妊症と診断される方がいらっしゃるというのから考えますと、43歳までの間の中で回数が6回というのはなかなか御懐妊されるまでいかないという事実もありまして、私どもは回数は10回まで維持をさせていただいております。できたら回数も含めて検討いただけたらありがたいと思っております。

 以上でございます。

○安濟補佐 ありがとうございました。

 続きまして、不妊治療を受けていらっしゃる当事者の方から相談を受けていらっしゃいます松本理事長、よろしくお願いいたします。

○松本理事長 本日はお招きいただいてありがとうございます。意見を言わせていただく機会を頂戴できるのはとてもありがたいことです。

 今回、事実婚の方に対して助成金を出していただけるかもしれないという議論になっているということなのですが、私ども患者団体としましては、もちろんとてもありがたいことですので、ぜひと思っております。

 その際に、多分一番争点となるというか、私どもも一番気がかりなのが、生まれた子供の権利が損なわれないのかな、子供が生まれたことに対して何らかの波紋を生んでしまうことはないのかなというところが、私どもの中でも少し議論として上がりました。というのは、本当に事実婚のカップルでしたらもちろんウエルカムだと思うのですが、例えば離婚のことで論点になっていて、それが子供を産むことに対して、子供が生まれたからといってそれを盾にというようなことが起きたら困るしというような声が、やはり当事者の中でも聞かれたのです。ですので子供の権利がきちんと守られるという前提であれば、ぜひとも助成をしていただきたいなというのが私どもの中からまとまった話です。

 そのために今、お話を伺っていますと、事実婚を確認する書類を提出するような仕組みがまだ想定されていないみたいですけれども、事実婚という事態をどうやって確認できるのか。そのあたりに対して何らかの、そこで1回の条件みたいなものをつくっていただけたらば、そして事実婚、本当にこの2人は事実婚で、ただ籍が入っていないだけであるというカップルであれば、ぜひ婚姻届のあるカップルと同じように助成していただけないかなというのが、私どもの願いの1つです。

 今、松村さんがおっしゃいましたけれども、やはりこれからどんどん婚姻関係にこだわる人は減っていくような気がしているのです。事実、私どものメンバーの中でも事実婚のカップルというのはおりまして、そのカップルは助成が受けられないということで、そこは本人たちは諦めたという経緯もありました。しかし、私の知人の中には事実婚では助成が受けられないということで、わざわざそのときに籍を入れまして、そして治療を受けて助成を受けたという人もいました。

 助成していただけることは非常にありがたいことでして、そのサポートはぜひ受けたい。ただ、そのための条件があるとなると、その条件を飲む人と飲まない人といるのかなと。ちなみに助成のために婚姻届を出したカップルなのですけれども、結局、子供には恵まれませんで、その後また籍を抜いたのです。その理由というところまでは私は深く立ち入っていませんが、やはり何らかのこだわりとか、自分たちがそうしたいという事情があると思うのです。そこにいつまでもとらわれることと、自由な家族形態、自分たちの幸せな家族形態を追求して、その中で子供も産み、育んで、幸せに生きていきたいなという人の願いをかなえることのバランスのような気がしています。そのあたりをもう少し考えていただいて、若干の条件はつくのかもしれないですが、やはり産みたいと言って頑張っている方たちのサポートをしていただけることは非常にありがたいことだと思いますので、ぜひ前向きに御検討いただけたらと願っております。子供の権利だけは大事にした上でということです。

 以上です。ありがとうございます。

○安濟補佐 ありがとうございました。

 最後に、民法の家族法の観点から石井先生、よろしくお願いいたします。

○石井教授 家族法を専門としている立場で、意見のべさせていただきます。あくまで私の個人的な意見です。家族法学者がみんなこう考えているということではありません。事実婚についての考え方も人それぞれですので。

 私としましては、今回の助成事業の対象を事実婚夫婦に拡大することはよいことだと思います。と申しますのも、今までの先生方もおっしゃっているように、夫婦別姓が認められない等、さまざまな理由で婚姻届を出せない、出したくないカップルが現実に存在します。そういう人たちもこの事業の対象にしていったほうがよいのではないかと考えます。

 そして、そのようなカップルも社会において、婚姻している夫婦と同様に、夫婦としての役割を果たしていますので、国として、そういう人たちを助成することはよいことなのではないかと思います。

 民法の領域でも、古くから判例によって内縁が保護されてきました。事実婚は、婚姻に準ずる関係、準婚として捉えて保護しています。先ほど御説明がありましたように、社会保障の分野では夫婦に事実婚夫婦も含むことが多いのではないかと思いますので、この事業についても拡大することは十分考えられると思います。

 ただ、拡大に当たっては幾つか考えなければいけない問題があると思っております。まず、重要な問題として、父子関係、父の確定の問題があると思います。生殖補助医療においては、生まれる子の福祉を第一に考えるべきですが、子の福祉の観点からは、生まれる子の親子関係が明確に定まる必要があると思います。父母が婚姻関係にある場合には、民法772条に嫡出推定の規定があり、生まれた子の父は夫と推定され、子どもは出生時に父が確定します。ところが、事実婚の場合には、夫が法律上は存在しませんので、出生時に父が確定しないことになります。認知という手続があって初めて、事実婚の夫が父になりますので、認知が確実に行われるようなシステムが必要ではないかと思います。

 認知は任意認知が原則ですが、できれば胎児の段階で認知していただくと、出生時に父が確定することになります。一番問題は、事実婚カップルが何らかの事情で関係を解消したりなどして、認知が行われなかった場合に問題になります。その場合も子どものほうから認知の訴えを起こすことはできますけれども、そもそも訴えを起こすということが一般の人にとってはかなり大変なことですし、その訴訟においては、子どもの側がこの人が父であるということを証明しなければいけません。今まで、死後生殖の事例を除いて、私の知る限り、生殖補助医療で生まれた子の認知の訴えの判例はなく、どのような証明によって親子関係が認められるかということが示されてはいないと思います。従来、自然生殖の場合には、子どもを懐胎したころに父母の間で男女の関係があったこと等が言われてきましたけれども、生殖補助医療の場合には全く違ってきますので、そういう問題もあると思います。

 さらに、今年の初めには、婚姻関係にある夫婦の間でも、凍結受精卵を移植するに当たって夫が同意していなかったという理由で、自分の血縁上の子であるにもかかわらず、自分は父ではないという訴えを起こした事例も報道されています。そのような親子関係が問題になる事件が起きておりますので、事実婚カップルの場合でも、生まれた子の父が速やかに確定できる制度設計を考えていただきたいと思います。

 私が考えました拙い例ですが、例えば、夫が生まれる子を父として養育していくことを誓約する同意書を、医療機関は、生殖補助医療実施ごとに必ず受け取り、それを保管しておくことを求める。その同意書のひな形のようなものを助成の実施要綱の中で示しておいて、各医療機関がそれをアレンジした同意書を用いる。そして、助成制度にある医療機関の指定に当たって、そのような同意書の確保をきちんと行っているというようなことを指定の要件として考える。さらに、助成金の申請に当たっては、事実婚関係を証明する書類とともに、同意書のコピーを添えて申請するというような形で同意が確保され、父がきちんと法的に定まるようにする。これは私が足りない知恵を絞って考えたシステムなので、もっとよいシステムを当局で考えていただきたいと思います。子どもにとって、父の確定は重要ですので、父がきちんと定まるシステムを考えていただきたいということが第一点です。

 ついでに幾つか申しますと、これは少子化対策の事業ではあると思いますが、それでもやはりこの助成制度が国による産めよふやせよ政策、そういうものであってはならないと思います。夫婦は子を持って当たり前、何で不妊治療を受けないのか等、そういう社会的圧力につながらないような配慮、リプロダクティブライツを踏まえた政策の推進をお願いしたいと思います。

 そして3点目は、先ほど何も法規制がないという話を吉村先生がおっしゃいましたが、そういう中で技術だけが進み、広まっていて、生まれた子どもの親子関係をめぐる訴訟事件も多々起きているのが現状です。2003年には法整備に向けた報告書も出ているにもかかわらず、15年近く何もなされないままです。子どものことを考えて、立法によって問題を解決するように、ぜひ厚労省が中心となって進めていただきたい。

 そして、立法には時間がかかるのであれば、助成事業における先ほど申しました医療機関の指定を通じて、生殖補助医療が適切に実施がされるような体制をつくっていただけたいと思います。

 以上、勝手なことを申しました。

○安濟補佐 ありがとうございました。

 次に、今までの御発言等を踏まえまして、参加者の皆様の御議論をいただければと存じます。

 加えまして、最初に説明しました資料に関する御質問等でも結構ですので、御意見等がございましたら御発言いただければと思います。

 では、吉村先生、お願いします。

○吉村所長 平成26年の学会のときに、婚姻という表現を取るときに、今、言ったような議論がなされました。我々は事実婚とは言っていないです。夫婦とはというときに、我々メディカルプロフェッションが夫婦の定義をすることはできません。我々はクライアントが、カップルが私たちは夫婦ですと言ってこられたら、いや、あなたたち本当の夫婦なのですかとは聞けません。

 そのときに一番問題となったのは、現実的に法的な夫婦でないことを確認しておかないと、いろいろな問題点に遭っているクリニックの先生もお見えになったのです。例えば夫婦がお見えになるのに、夫婦関係がある、要するに法的な妻がおられるのに、全く関係のない方と体外受精をされたというケースもあるのです。そして、クリニックが訴えられようとしたとか、そのような現実に遭っておられる方は、いまだに戸籍謄本をとっておられます。

 平成26年から変えたのですけれども、いまだに戸籍を確認しているというクリニックもあります。そういった問題点も認識しています。

○安濟補佐 ありがとうございました。

○温泉川理事 私は去年12月まで、半年前まで自分でクリニックをしていました。体外受精はしていないのですけれども、一般の不妊治療、中絶、そのあたりはしておりました。

 妊娠というか、中絶に関しては皆さん御存じのように同意書をとります。それに対しての同意書というのはすごく気をつけないと、いろいろなことが起きるからという、産婦人科医会から母体保護法の問題もあっていろいろ知っていましたけれども、今回のように自分が産みたいと思っても、国の補助を受けていうことではないが、普通の不妊治療のときに、深く考えずに不妊治療してくださいと言えばしていた、というのが現実なのです。だから私は性教育もずっとしていたのですけれども、むしろ男の子に教えるときに、中絶を女性のほうがしたい。そのときは同意書が要るのだけれど、もし産みたいと言ったら、それで男性のほうはお手上げですよ、という説明をしていたのです。これは国の補助云々ではないということがあるからとはいえ、事実婚だとか婚姻がどうのとか、全く確認していなかったというのが普通のクリニックの現実だと思います。

 吉村先生のところは大学だったし、重鎮であられたから、倫理委員会とかがあったのですけれども、一般の私たちは、産みますと言われたときに、何ら考えず、それはよかったね、という、これが現実でした。ただ、それは国の補助云々とは少し違うのですが、普通の産婦人科というのはそんなものだった、と自分でも恐怖を感じております。

○松本理事長 今、石井先生が言ってくださった父子関係のこととか、認知に対して対人認知というのが実際にあるということですか。

○石井教授 はい。

○松本理事長 私はその言葉は本当に不勉強で存じ上げなかったですが、すばらしいことだなと思いまして、夫の同意書を私が父です、ちゃんとこの子が生まれたら育てますという同意書をとって、それを条件にするというのは非常に前向きだし、現実的だし、実現可能なことではないかなと思ったのです。なのでもしそれを助成していただきたい、そして体外受精も受けたい、でも籍はどうしても入れたくないんですというカップルの場合には、こういった条件を加えた上で子供の権利、福祉を確保した上で、それで実施が可能になるということであれば、かなり実現に対して一歩、二歩、三歩ぐらい進んだような気持ちに私はなったのですけれども、皆様はいかがでしょうか。医療の現場からの声はわからないのですが、患者としてはそれは非常に本人もカップルもありがたい、子供もありがたい、すごくすばらしい御提案だなと感じました。

○松村部長 先ほどの父子関係というか認知の問題云々で、京都府では一般不妊に対しての事実婚を対象にしていることから考えますと、いわゆる普通の性行為が行われている状態なのです。生殖補助をして女性に戻すというのではなく、明らかに男性、父親がわかっている状態ですので、15年からさせていただいていて、特に、事実婚でという理由での父子関係のトラブルというのは今まで市町村のほうからはまず聞いていないというのが1つです。

 先ほどの夫の同意書というお話の部分なのですけれども、私ども今、今回の部分とは少し外れてしまうのですが、がんの治療などAYA世代の女性に対しての卵巣保存といいますか、卵子保存といいますか、それを今、検討しておりまして、特定不妊治療をしていただいている医療機関と、どういう形で保存できるかという意見交換をさせていただいている中で、卵子だけを保存するよりは、受精卵として保存するほうが安定的とおっしゃるのです。そうしますと、今の部分でいきますと、受精卵にするまでは男性はいらっしゃる状態ですけれども、今度それを体外生殖補助で戻していくときに、違う男性があらわれた場合、産婦人科でわかるものなのか、胎児の認知あるいは同意書は今でもとっていらっしゃるはずですが、事実婚の場合、医療機関でとるということに非現実的なところもあるのかなと、そのように印象を受けたところなのですが、吉村先生、その辺はいかがなのでしょうか。

○吉村所長 温泉川先生もおっしゃっていたのですけれども、まさにそのとおりでありまして、例えば体外受精の場合は御本人がお見えになることが多いので、顔を見て御主人だということがわかるかもしれません。そのときに例えば夫を確認するのに運転免許証を見せてくださいとか、そういうことになりますね。まだ体外受精の場合はいいのですけれども、人工授精の場合はもっと危険でして、精子を持ってこられるだけなのです。これが主人の精子ですと。その証拠はどこにもないのです。ご主人の精子であると確認をするということが現実の医療においては不可能なのです。ですからそれはカップルを信頼申し上げて、我々は人工授精をしているのが現実です。凍結した胚を取っておいて、全然婚姻関係がないにもかかわらず、要するに戸籍を確認しないならば、新しくできた男性との間で子供をつくってしまうということだってもちろんあり得ます。厳密な確認の方法は、生殖医療でなくても通常の不妊治療でもすごい難しいのです。

 ですから例えばAIDといって他人の精子を使用する場合は必ず法的な婚姻関係を確認しますし、ドナーも誰かということはすぐわかっていますし、同意書も1回ごとにとっていますから、確実にわかるのですが、法律の専門家の方々とお話をすると、大丈夫ですかということをよく、言われたのですが、本当にそういったことは現実的には起こり得るということです。

○温泉川理事 中絶の同意書は必ずなのですけれども、妊娠する同意書というのは私は思ったこともないので、でも、これはそういうことですからね。

○石井教授 自然妊娠にはもちろん同意書は必要ない。その問題は別として、手術等の治療を受けるというときには、本人の同意だけではなく、保証人のような人の同意もとっていますね。

○温泉川理事 普通のがんとかのオペということですか。

○石井教授 そういう意味では治療の1つとして、生殖補助医療の治療は、ある意味で、夫婦を単位として、行われているものですから、夫婦の同意を得る必要があるのではないでしょうか。

○吉村所長 もちろんだから体外受精の場合は取っています。

○石井教授 本人以外の人を連れてきて、詐欺的なことを行うことまでは防げないです。幾ら法律で禁じても、いろいろ防げないことはありますが、なるべくきちんと行われるようなシステムをつくることが大事なのではないかと思います。

○温泉川理事 本当に私たちがしていた普通の不妊治療にも、同意書をとると考えたこともなかったのですが、検査だけでもという分もあるし、もしそういうことだったら国の補助を受ける受けないではなくて、普通の不妊治療のときにも同意書をとる。それとはまた違うのですか。

○安濟補佐 恐らく温泉川先生がおっしゃっていらっしゃるのは保険適用されているほうで、そちらは通常の診療報酬の範囲内でやっているはずなので、私も診療報酬の中の要件にどこまで入っているのかすぐにはわからないのですが、恐らくそこでは要らないのだと思います。それはあくまで検査の部分ですので、今回、議論が行われておりますのは、特定不妊治療の部分はまた少し体外受精でありますとか顕微受精のほうですので、また少し違う話になってくるので、前の部分は。

○温泉川理事 それはもちろんわかって言っているのですが、京都府は一般の不妊治療にも助成を半分していると言われるのですよね。

○松村部長 そうです。一般不妊治療のところで市町村が実施主体という形で京都府独自の補助制度をつくりまして、保険診療分に対して市町村と京都府とが半分半分お金を出して補助をしています。その保険診療分については先ほど言いましたように、事実婚の方も対象にさせていただいています。

○温泉川理事 ですからそれは補助があるからこそ、事実婚かどうかという確認をある程度とるということですよね。国という意味ではなくて公的な補助という意味。

○松村部長 京都府は補助申請をされるときに、御本人、いわゆる申請者のお名前と相手のお名前を書いていただきます。私どもの制度としては所得制限も設けていませんが、申請者及び相手の方がその市町村に1年間以上は住んでいることが必要になりますので、市町村は住基で確認に行くのです。だから市町村がその方が補助対象かどうか確認するために、住民票がその市にあるかどうかまず確認に行くのです。そのときに一緒に確認していいですかという同意をとらせていただいて、この方が御結婚して相手とのお子さんを望んでいらっしゃるのか、事実婚の対象となっているのかというのは、市町村レベルではわかるというところでやっています。

 ただ、どうしても先ほども例を言いましたように京都市なんかは130万ぐらいの人口になりますので、申請者数が大変多くなってきますので、そうしますと住基端末のところに確認に行くという手続が大変煩雑になっていきますので、申請の方が私たちは夫婦です、いやいや事実婚です。姓が違えばそのように判断して受けていらっしゃるというのが今の状態です。

○温泉川理事 不妊という意味ではなくて、妊娠の取り扱いがいかに難しいかということになってくると思うのです。石井先生、やはり産む産まないというのは、国の補助の有無でなく、どう考えるか、難しいですね。私は事実婚でいいと思うのですが、一般の人たちに事実婚でないとだめだとか、非嫡出子ではだめだとか、いう権利云々の話ではないですよ。

○松本理事長 話が少し逸れてしまうかもしれないのですが、先ほどの胎児認知が私はとても気に入っていまして、石井先生に少し伺いたいのですが、それは受精卵をつくった時点で認知をするのではなくて、胎児なのでおなかの中に着床が認められて、それで何週かしたときにお父さんが僕ですよという認知をするということだという理解で合っていますか。それがもう既にこういった制度があると先生教えてくださったのですが、これは今どういうところで使われていたり、どういった形で認知をどこに届け出るとか、そういったものはどう運用されていることなのでしょう。

○石井教授 胎児認知は民法の783条に規定されています。ただ、子どもが生まれた後の認知は父が単独でできるのですが、胎児認知の場合には母の名誉ということもあるので、母の承諾が必要ですけれども、出生前にも認知することができます。そうすると、先ほど申しましたように、生まれたときに父が法律上いる形になります。

 任意認知は簡単です。普通の届け出でできます。父であることの証明も何も要りません。私が父であるという意思を届け出るだけです。

○温泉川理事 ちょっと話が外れるかもしれませんが、先ほどから性交があれば相手があるから父がと言われますけれども、それは相手が違って2、3日違えばわからないわけです。あとは遺伝子とか調べる。だからそこらあたりの性交体験があったというのだけではまた違うような気がします。だから今、言われたとおり相手が父ですと言って名乗ったら、それでというのは危険ですよね。

 現実はすごく多いとは言いませんけれども、そういうことで女性のほうが悪用することもあるし、男性が悪用することもある。私なんかが日常ずっと36年間診察をしてきてやった中で「えっ?」ということがあるので、ただ事実婚という、そこで丸めてしまえばそれで終わりだと思うのです。

○石井教授 認知があっても、後で認知を無効とする裁判によってその人が父ではない、その認知は無効であるということを裁判所で決めてもらうことはできます。普通は今ですとDNA鑑定をするという形で。この前、問題になったのは、最高裁では認知をした父自身が、自分の子でないということを知りながら認知をして、後になってからその子の母と離婚した結果、自分の子ではないと訴えて、それも認められた判決もありますので、認知があればそれで大丈夫という話ではない。

○吉村所長 私たち学会は、なぜこのように婚姻関係をとったかというと、これはクライアントの意向を認めざるを得なかったというところがあるのです。例えばこれだけ体外受精が一般的な、要するに22人に1人が体外受精で生まれるようになった時代において、なぜわざわざ戸籍謄本を出さなければいけないのですかと。こういったことをよく外来で言われることが多くなってきました。事実婚で実施するかどうかとか、そういうことは私たちが考えるようなことではないと認識していまして、夫婦であれば、カップルであれば、子供ができなければ体外受精を受ける権利は誰にもあるでしょうということです。

 例えば私たちは夫婦と言ったのですけれども、マスコミは次の日には事実婚というような報道をするわけです。私達は事実婚とも何とも言っていないのですけれども、夫婦と言っただけなのに事実婚で許されるのかということになってくると、事実婚とは何ぞやということになりますね。そうなったときにいつも考えるのは、2つの点を考えておかなければいけないのは、生まれた子供の権利です。生まれた子供にどのような親子関係が定立されるのかということです。それから第1点は、そのために同意書をとらなければいけないとか、父は誰であるということを決めていかなければいけないとか、胎児認知が必要だとかという問題です。石井先生への質問は、今、厚労省、自民党のPTでは第三者に対する生殖補助医療についての親子法を今、検討しているのですけれども、案が出ているのですが、それもなかなか国会に上程されないという状況にある中で、例えばこの事実婚で体外受精をするときに、親子法で決めていかなければいけないようなことはあるのですか。事実婚で子供ができたときに。

○石井教授 法律で親子関係を定めるのであれば、生殖補助医療に同意した男性を父とするという規定を入れるのがよいと思います。

○吉村所長 772条の第1項は当てはまらないわけですから、婚姻関係がないとなると父が誰かということが全然わからなくなってしまうということですね。となると同意した夫が父である。生殖補助医療をするということを同意した夫が父であるということだけは明記しておかなければいけないということですね。

○石井教授 そうですね。そうしておけば婚姻関係にあろうとなかろうと、また、事実婚であろうとなかろうと、自分が父になることを同意した人を父とする。

○吉村所長 それは法律で決めないといけないことですよね。

○石井教授 そうですね。法律がないと、争いになる可能性があります。

○吉村所長 そういう法律を決めれば、同意した夫が父であるということを決めれば、胎児認知とかそういうことは必要なくなりますか。

○石井教授 事実婚の場合、同意した夫は、戸籍に載るわけではないですから、後で争いになったときにはその同意書をもって、この人が父だということを証明できますけれども、戸籍上その人を父として記載してもらうためには認知という別の手続、今のところは、そういう手続が必要なのではないかと思います。

○吉村所長 最低限、要するに同意した夫が父であるということは決めておかないとまずいということですね。

○石井教授 そうですね。争いを防ぐためには明確にしておく方がよいと思います。

○吉村所長 法的な措置をしていく必要があるということですね。子供を守るためには。

○石井教授 そうですね。望ましいと思います。

○松村部長 済みません、よくわからなかったです。親子法で同意した人が父であるというのと、認知というのは別だということになりますと、そのほうに規制しなくても同意した人が認知するということをすればいいわけですね。

○石井教授 そうです。

○松村部長 その行為は親子法に規定していても、しないと戸籍法上の父になり得ないということになるというのが、なぜ親子法に規定しないといけないのかというのがわからないのです。戸籍法上の戸籍のところに認知することによって父親として名前が載ります。そのためには胎児のときに同意をしておきます。そこの流れはわかるのです。同意することによって認知の届け出をしていただいて、認知するという行為をする。それによって父親になるというのはわかるのですけれども、今度は親子法に法律の規定がされれば、どういう人が父であると規定されれば、なぜ同じ行為をしないとだめなのですか。逆に言えば、その行為をすれば父になれるのであれば、なぜ親子法に、法律に規定しないとだめなのですか。

○松本理事長 今おっしゃったのは法に規定があれば、その認知はしなくても大丈夫ですかという質問だったような気が。

○松村部長 認知が必要とおっしゃったので。

○松本理事長 だから法律に規定されていようが、されていまいが、認知という手続きはしなければいけないんだなということになった。

○松村部長 別にこちらの法改正がなくても大丈夫なのですか。

○松本理事長 大丈夫というか、たぶん、変わらない。いずれにしても手続はしなければいけない、ということですよね。つまり認知という手続きを。

○石井教授 手続は必要だと思います。別の何らかの規定の仕方はあり得るかもしれませんが、今のシステムですと同意したものが父であると規定したとしても、婚姻している夫婦の場合には、戸籍上夫が分かりますけれども、戸籍係には、出生届が出されたときに、誰が同意した人かなどということはわかりません。そもそも、出生したときにはこの子が生殖補助医療で生まれたということも何もわからないのです。要するに、戸籍に反映させるためにはそういうことが必要だということです。

○吉村所長 極論を言えば、要するに生殖補助医療に同意した夫は子を認知しなければならないということで済むわけですか。今の自民党のPT案はそういう感じなのです。1つは産んだ人が母親である。2番目は、正式な文章を忘れたのですけれども、生殖補助医療に同意した夫は子を認知しなければならないとか、そういう表現だったのではないか。

○神ノ田課長 確か、認知を拒否できないというような感じだったかと。

○吉村所長 そのような感じ。

○石井教授 嫡出否認できないという規定だと思います。

○神ノ田課長 そうでしたね。

○石井教授 婚姻しているので、夫が父になる。先ほど略して、出生時に決まると言いましたけれども、自然生殖でも夫が血縁上、父でない場合があります。その場合、子の出生を知った日から1年以内は、夫は自分の子ではないという訴えを起こすことができます。これが嫡出否認の訴えです。それに対して、精子提供による生殖補助医療によって子をもうけることに同意した夫は、自分の子ではないと否定することができないという規定を置くということです。

○温泉川理事 先ほど否認できると言われませんでしたか。それとまた違うのですか。

○神ノ田課長 今の話は新しい法律でどう整理しようかということです。

○石井教授 今は、嫡出否認できてしまう可能性があるのです。裁判所が権利の濫用とか何かで制限しない限り、自分の子ではないと主張できる可能性はあります。

○神ノ田課長 1点御質問してもよろしいですか。あえてこの事実婚に対して助成することについて、批判的な立場から寄せられる、あるいは想定される意見として、どうしても籍を入れることができない特別な事情って何なのだと。つまり籍を入れれば正々堂々と助成を受けることができるわけです。にもかかわらず、事実婚にこだわる理由が説明できないと、我々としても今回、事実婚も対象にしましたというときに、こういう困ったケースがあるんです。こういう非常に救わなければいけないケースがあるんです。そのためには要綱を改正して、事実婚の人も含めて助成する必要があるんだというところを説明できなければいけないのかなと思っているのですが、その本当に困っているケースはどういうものなのだろうというところを教えていただけたらなと思います。

○石井教授 先ほども申しましたが、夫婦別姓が認められていませんので、通称ではなく戸籍の姓を従来の姓で通したいと思う人は婚姻届は出せません。先ほど松本さんがおっしゃったように、助成を受けるために、そのときだけ婚姻届を出して、また離婚する。そこまで求める必要があるのでしょうか。

○松本理事長 確かにおっしゃるとおりで、私も詳しくいろいろな方から話を聞いたわけではないのですけれども、手続がまず全て例えば仕事をしていると全部書きかえしなければいけないのは、とても面倒くさいというか、雑多な作業にはなりますし、それと同時に自分の姓に愛着を持っている方も非常にいらっしゃいます。自分はずっとこの姓で生まれ育ってきて、私が聞いた話だと、長女一人っ子で自分がいなくなるとこの姓が途絶えてしまうんだと。その由緒正しい姓ではないかもしれないけれども、自分としてはこれはずっと大事にしたいといって事実婚にしていらっしゃる方もいました。事実婚でしていて、いろいろなことがすごく不便だと言っていましたので、そういったところで夫婦別姓が早く認められたらいいのになというのは、よく上がってくる声の1つではあります。フランスとかだと多分そういった意味で事実婚というか、姓が違って結婚していない方がたくさんいて、それでも子供はいっぱいふえていてという例が多分、吉村先生とかそのあたりはとても詳しいのではないかと思うのですが、そうしたことで生まれた子供も幸せで、夫婦が幸せだったらば、そこまで戸籍にこだわりを持つ必要はこの多様性の社会にあるのかなというのが、当事者から上がってくる声ではあります。

 もう一個、何か言おうと思ったけれども、忘れたので思い出したらお伝えします。済みません。

○吉村所長 第三者を介する生殖補助医療のときも、婚姻関係にある夫婦としたのです。これはどうしてかというと、親子関係がかなり複雑になるだろうと。精子をもらう、卵子をもらうという状況の中で、また事実婚ということになると非常に複雑になるだろうということで、それは法律婚にしたのです。そのときも法律婚でなくてはいけないのですかという御意見も当時からあったのです。だから御主人に精子がないカップルで子供を持ちたいというときにAIDをしたい。どうして結婚しなくてはいけないのですかというようなカップルの方もお見えになったけれども、それはちょっと我慢をしていただきたい。

 ただ、事実婚の場合はなかなか難しいということは私は非常によくわかります。やはりこれは夫婦別姓とか、それをよしとする人もいれば、それはならないという人もお見えになるわけです。事実婚はだめだとおっしゃる方は、生まれてくる子供はどうなるのですかとよく質問されます。事実婚であっても、生まれてくる子供ということを考えておけば、体外受精を実施してもよいのではないか。第一義に生まれてくる子供のことを考えてあげるとなると、父親をまず確定しておく。そのようなことが大事なのではないかと思います。

○温泉川理事 私が言うのは、やはり時代というのはすごくあると思うのです。私はちなみに70歳なのですが、若いころは結婚するまではそのようなことは絶対にだめみたいな中で育って、今なんかは全然違うではないですか。性教育だってそこからずっと変わってきているわけです。そういう時代の流れというのはすごく大切で、それに流されというのではないのですが、いわゆる2人がちゃんと生活をしていくときに、夫婦別姓であろうが、籍を入れようが、2人の考え方の問題ではないですか。そういうことは大切にしたほうがいいのではないかという、これは日本医師会ではなくて私の考えです。

 そういう時代の流れはすごい感じるのです。今よりもきっと私たちのほうがすごい変化があった時代だと思うので、すごくそれは感じます。

 それと、また中絶の話を出しますが、中絶も今は、同意書が要りますが、女性の権利として同意書なんか要らないのではないか。基本的に女性の権利というものがあって、中絶と反対の話なのですけれども、通じるところがあるのではないかと思います。そういうところで事実婚ということがあれば、全然問題ないのではないかと思います。

○松本理事長 思い出しました。籍を入れないと言っていた方の中で、あちらの家と家とのつながりをあえてつくりたくないと言っていた方がいらっしゃいまして、それは何でかと言ったらば、お相手の方のおうちがちょっと大きな商いをしていらっしゃるところだったのです。そこの商いがどうもうまくいっていないようだ。それは旦那様のほうも、もし何かがあったら借金がそちらに来るからとかいう、そのような理由だったかなと思うのですけれども、そういったことでもし将来そういうことになったら困るので、結婚という形はするけれども、籍を入れるというのはやめておいたほうがいいのではないかといって事実婚していたという人がいたことを思い出しました。そういったおうちの事情、例えばお墓を守るのが大変だとか、あちらの田舎に行かなければならないとか、そういったことも理由の1つになることはあると思います。

○石井教授 いただいた資料にもありますように、厚労省管轄の社会保障関係では、多くの場合に、夫婦には事実婚も含むという形になっています。この助成事業は、社会保障給付ではないけれども、似たような趣旨の事業として考えるならば、同様に扱う。事実婚を含めることをほかのところで問題にしないのであれば、ここでも同様に扱っても問題はないのではないかと思います。助成を、事実婚に拡大するのではなく、これまで種々の理由から婚姻している夫婦に制限していたけれども、その必要がなくなったので、制限を外すというふうには説明できませんでしょうか。

 ついでにもう一つ、先ほど父を確定すれば問題がないように受け取られかねない説明の仕方だったのではないかと思いますが、非嫡出子の場合というか、事実婚の場合には父が確定しましても、単独親権になります。父母が婚姻している場合には共同親権なのですが、父母が婚姻していないと共同親権ではないのです。まず、母が親権者になって、父に親権を渡すこともできるのですが、渡してしまうと今度は母は親権者でなくなってしまいます。婚姻した夫婦でも離婚すれば単独親権になるのと同じですけれども、事実婚の場合に少し違うことはあるということをつけ加えさせていただきます。

○安濟補佐 予定の時間を過ぎてございますので、そろそろおしまいにしようかなと思います。

 本日は幅広い御意見をいただきまして、活発に御意見をいただきましてありがとうございました。御参加をいただきました皆様には深く感謝を申し上げます。

 本日いただきました御意見を参考に、今後、検討を進めてまいりたいと考えております。

 これをもちまして本日の意見交換会は終了いたします。御出席の皆様、どうもありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

子ども家庭局母子保健課

代表番号: 03(5253)1111
直通番号: 03(3595)2544

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