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2017年6月13日 第59回先進医療技術審査部会
第59回先進医療技術審査部会
(1) 日時:平成29年6月13日(火)16:00~17:30
(2) 場所:中央合同庁舎第5号館共用第8会議室(20階)
(3)出席者:
山口座長、一色座長代理、石川構成員、伊藤構成員、
上村構成員、掛江構成員、真田構成員、柴田構成員、
関原構成員、大門構成員、田島構成員、田代構成員、
手良向構成員、藤原構成員、中村技術専門委員
(事務局)
医政局研究開発振興課 課長
医政局研究開発振興課 先進医療専門官
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 医療技術評価推進室長補佐
保険局医療課 専門官
保険局医療課 課長補佐
医薬・生活衛生局審査管理課 課長補佐
議 題
1.新規申請技術の評価結果について
2.総括報告書の評価について
3.試験実施計画の変更について
4.先進医療の継続の可否について
5.協力医療機関の追加について
6.先進医療の取下げについて
7.未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器又は再生医療等製品を用いる医療技術に係る留意事項について
8.先進医療会議の審査結果等について
9.その他
議事録
○山口座長 定刻となりましたので、第59回先進医療技術審査部会を始めさせていただきます。御多忙の折、またお足下の悪いところお集まりいただき、ありがとうございました。本日は、松山構成員・山中構成員・山本構成員より御欠席の連絡を頂いております。石川先生も遅れるという御連絡でしたが、早くお出でいただきました。ありがとうございます。本日は17名の構成員のうち、現時点で14名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議が成立していることを申し添えます。それでは、配布資料と本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 よろしくお願いいたします。傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほどよろしくお願いいたします。配布資料につきまして確認させていただきます。議事次第から、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。次に、新規申請技術の評価結果について、資料1-1から1-5。総括報告書の評価について、資料2-1から2-3。試験実施計画の変更について、資料3。先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告についての経過報告、資料4。協力医療機関の追加について 資料5-1、5-2。協力医療機関の取下げについて、資料6。未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器又は再生医療機器等製品を用いる医療技術に係る留意事項についての案、資料7。先進医療会議の審議結果の報告事項として、資料8-1、8-2。先進医療におけるゲノム医療技術の取り扱い等に係る検討についての案、資料8-3。会議資料の最終ページは「119」ページとなります。本資料につきましては会議終了後、厚生労働省ホームページにて閲覧可能となりますことを申し添えさせていただきます。本日の資料は以上です。乱丁、落丁等がございましたら事務局までお知らせください。
続きまして、利益相反の御確認です。申請医療機関との関係や、対象となる医薬品・医療機器及び再生医療等製品の企業等について、資料1-1、15ページに記載しております申請医療機関、医薬品・医療機器・再生医療等製品情報を御覧ください。今回、対象となる企業又は競合企業はございません。申請医療機関との関係につきまして、事務局から事前確認させていただいております。今回、いずれの先生からも利益相反の御報告はございませんでした。事前の届出以外に、もし何らかの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。
該当なしということで承知いたしました。
また、今回もタブレットを使用します。届出書類等につきましてはタブレットより閲覧をお願いいたします。なお、会議資料とタブレットの内容は異なっておりますので、発言者は会議資料の何ページ、またはタブレット資料何番の何ページと、あらかじめ御発言いただけますと議事の進行上助かりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○山口座長 では、議事に入りたいと思います。「新規申請技術の評価結果」について、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 御説明させていただきます。15ページ、資料1-1を御覧ください。今回、先進医療Bとして新規に御評価を頂く技術は、整理番号79、「変形性膝関節症に対する多血小板血漿関節内注射治療」です。申請医療機関は、筑波大学附属病院です。審査担当構成員は、主担当が松山構成員、副担当は田代構成員、大門構成員、技術専門委員として、中村委員、以上となっております。
57ページ、資料1-5を御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について事務局より御説明いたします。1.実施責任医師の要件として、診療科は整形外科、資格は日本整形外科学会専門医が必要です。当該診療科の経験年数は5年以上が必要、当該技術の経験年数は不要です。当該技術の経験症例数も要件はありません。2.医療機関の要件ですが、診療科が整形外科、実施診療科の医師数は日本整形外科学会専門医が2名以上常勤しているということです。他診療科の医師数は要件にありません。その他医療従事者の配置も特に要件はありません。病床数は20床以上、看護配置は7対1看護以上が必要、当直体制は1名以上の当直医が常駐で、診療科は問わないということです。緊急手術の実施体制は要件としてありません。院内検査も要件はありません。他の医療機関との連携体制も特にありません。医療機器の保守管理体制は必要です。倫理審査委員会による審査体制は、原則、月に1回の開催、医療安全管理委員会の設置は必要です。医療機関としての当該技術の実施症例数は特に要件はありません。3.その他の要件は特にありません。以上です。
○山口座長 これらの要件について何か御意見はありますでしょうか。伊藤先生、どうぞ。
○伊藤構成員 この治療法は関節腔内への投与で、資料を見る限りは感染症の恐れはないと言っていますけれども、手技的には感染症を引き起こす可能性があって、24時間の検査もできない施設でやっても本当にいいのでしょうか。
○山口座長 ごもっともな御意見だと思います。いかがでしょうか。そのほうが望ましいと思いますけれども、特に関節は感染に弱いので、一旦、起きると大変なことになりますから、ここのところは必要ということでよろしいですか。
○医政局研究開発振興課専門官 はい。照会して、そのようにさせていただきます。
○山口座長 貴重な御指摘、ありがとうございました。ほかにございませんか。それでは、今のことを追記いただくという条件で、様式第9号についてはお認めするということにいたします。次に、本日、御欠席の松山構成員が主担当の申請技術の概要の説明と実施体制の評価について、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 17ページ、資料1-2を御覧ください。概要として、本技術は従来、標準治療とされていたヒアルロン酸関節内注射と比較して、PRPの関節内注射治療の有効性を評価するというランダム化非盲検並行群間比較試験です。このPRP関節内注射を1回6mL、1週間間隔で合計5回行うというものです。
主要評価項目は、膝関節機能改善率として、投与初回から24週時のWOMACスコア改善率となっています。その他、副次項目として、画像検査等も評価することになっています。予定試験期間は3年間、予定症例数は各群75例で合計150例です。
松山先生の御評価ですが、実施責任医師等の体制は「適」、実施医療機関の体制も「適」ですが、医療技術の有用性等の所で「不適」を頂いています。コメントとしまして、PRPの作用機序の説明が臨床症状の改善への外挿を示すのに現状では十分ではない。そのため、PRPの有用性を示すための臨床評価手法・指標が適切であることを提示しえていないということです。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。続いて、技術専門委員の中村委員より、実施体制の評価について御説明をお願いいたします。
○中村技術専門委員 中村でございます。私のほうから少し御説明させていただきます。これまで委員の先生方、また、私からのコメントに対する回答で一部、状況が明確化されたというのはよかったと思います。私自身も大変期待をしているところですけれども、変形性膝関節症を取り巻く状況の開示が少し不足しているのではないかと思われます。その辺の状況を説明させていただいて、この委員会の判断の一助になれば大変有り難いと考えています。
配布資料の18、19ページを御覧ください。基本的な視点として、今回の臨床研究が現在の状況で行われた場合、PRPが仮にヒアルロン酸関節内注射よりもWOMACのスコアが改善したという結果が出たとして、現状で本研究が保険収載に至るだけのエビデンス、根拠となるかどうかというのが重要ではないかと考えます。そこで、まず今回の臨床研究の特徴などを考えますと、1)は変形性関節症のKellgren-Lawrence grade1-3を対象とする150名で、このKellgren-Lawrenceですとgrade4が重症系、grade1-3が軽症から中等症ということです。2)が非盲検、3)は対照薬が関節内ヒアルロン酸投与、4)はWOMACによる6か月後の評価です。5)がPRPの品質管理と至適投与量、その他、少し考慮すべきこととして気になった次第です。
まず、今回の特徴も含めて少しお話をさせていただくと、非盲検ということですので、言うまでもなく、これは臨床研究の質を規定し、高いエビデンスは期待できないのではないかと思います。かなりのバイアスも予想されるところです。それでもなお、結果が有効であると言えるだけの評価法を含めた研究デザインが求められていると考えます。
対照薬のヒアルロン酸の関節内注入の治療ですが、これは世界的に見ますと推奨からははずれています。日本には変形性膝関節症のガイドラインというのがなくて、あるのは、「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告、OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)」になります。この推奨の根拠になっているOARSIというのは2008年版です。しかし、その元になるOARSI guideline自体は2014年に改正されていて、ヒアルロン酸関節内注入はuncertainと格下げになっています。米国AAOSガイドラインでも非推奨になっています。私はRCTが全てではないと思いますけれども、今回の臨床研究で、ヒアルロン酸の関節内注入を対照とする根拠が十分には提示されていないのではないかと思います。
WOMACによる6か月後の評価の点ですが、WOMACと言うのは疼痛、痛みです。これが5項目あって、平らな道路で歩くのが痛いか、階段昇降で痛いかなどです。もう1つ次がstiffness、日本語では「こわばり」と訳されていますが、2項目あって、朝のこわばり、日中のこわばりの程度を聞いています。次が17項目ある日常生活の困難度で、これがfunctionと言われているものですが、内容は、階段を降りるのがどのくらい困難か、階段をのぼるのがどのくらい困難か、椅子座位から立ち上がる、買物に行くのがどのくらい困難か、浴槽に入るといったことがどのくらい困難かなど、主観的な患者さんの評価法になる患者報告型の質問票です。これまでNSAIDsなど、多くの痛みの改善を目標とする膝の介入研究の評価に国際的に広く用いられているものです。
一方、変形性関節症は関節軟骨の変性磨耗が本態です。Kellgren-Lawrence4度の重症例の治療は人工膝関節置換術ですが、その適応の大きな判断基準は関節軟骨の状態です。膝の変形性関節症治療で、今、求められているのは人工関節を回避できるか、あるいはその時期を遅らせることができる治療法です。したがって、関節軟骨の変性を抑えることができるかが鍵になります。実際、動物実験への、この治療法の評価も軟骨の変性の抑制効果であって、その動物の行動評価ではありません。PRPについては長期効果が不明であり、よくデザインされた良質の臨床研究でstrong evidenceが必要な状況にあるというのは、申告者提供のレビューにも述べられているとおりです。現在、MRIが進歩し。変形性膝関節症の軟骨変性の評価に実臨床で広くMRIが用いられており、また、研究のための評価方法も既に提案されています。変形性関節症の介入研究の評価にもMRI評価が既に用いられてきています。これらの状況は極めて重要で、変形性関節症研究の基本情報であり、考慮すべきであろうと私は考えます。
次が、5)PRPの品質管理と至適投与量についてです。PRPの品質管理と至適投与量は今回の計画ではその言及がありません。AAOSのガイドラインでもPRPの評価はinconclusiveです。その理由として、下に挙げてありますように痛みの減少だけを見ていることの不十分さが指摘されているところです。このように考えますと、本研究計画が、この指摘に応える研究デザインであるかを検討する必要があるように思います。本研究では、変形性関節症グレード1-3、つまり軽症から中等症を対象とすることを申請者は主張していますが、そのことがどのように重要で、これまでの研究を超える可能性があるかを根拠をもって明確にする必要があります。日本の整形外科の医療状況が海外と異なるだけでは研究としての理由にはならないと思います。これは、世界的に先進国を見ましても、保存治療から外科治療までやっているのは、確かに日本だけです。海外の整形外科医はほとんど手術に特化している現状があると思います。それはそのとおりだと思います。
6)本研究での患者説明文の中に、変形性関節症は軟骨変性が本態であるということに全くふれていないことが奇異な点です。これはどの教科書を見ても、どのようなパンフレットを見ても必ず書いてあることです。説明文は簡潔である必要がありますけれども、被検者への情報として十分であることも必須だろうと考えます。その他、実臨床で広く実行可能であるかという質問をしましたが、これは研究ができているかの返答になっていて、臨床で使えている点になっていません。これは質問の仕方が悪かったかもしれませんが、ポイントがずれていると思います。また、海外におけるPRPの臨床現場での使用状況についての質問への回答も、質問の趣旨が異なっていて、臨床研究ができるかどうかという回答になっている点が異なっていると思います。以上です。よろしくお願いいたします。
○山口座長 大変詳細で分かりやすい御説明、ありがとうございました。それでは、続いて田代構成員より、倫理的観点からの御評価について御説明をお願いいたします。
○田代構成員 倫理的観点からの評価を担当いたしました田代でございます。お手元の資料の20ページを御覧ください。今回、同意に係る手続き、同意文書に関しては「不適」、補償内容に関しては「適」という判断をさせていただきました。
コメント欄ですが、事前照会事項に関しては、25ページからですが、かなり詳細にお答えいただきました。もともと説明文書が分かりやすく書かれていましたが、説明文書の記載や健康被害に対する補償の概要、患者相談窓口の役割等についてさらに明確化されたと判断いたしました。ただその後、技術専門委員の中村先生やプロトコールを評価された大門先生から様々な指摘を受けて修正が行われ、それを確認したところ、恐らくこれらの指摘を受け、さらに実施計画書及び説明同意文書を改訂することになるのではないかと思われましたので、現行のものでは「不適」という判断をさせていただきました。
具体的には、実施条件欄に4点、指摘をしています。4点の指摘のうち、上の2つが先ほどの中村先生からの御指摘に関連するもので、後半2つが大門先生からの指摘に関係する所です。一番上の所は既に先ほどお話がありましたように、申請者のほうは、あくまでも日本ではヒアルロン酸の関節内注射が標準治療であるという説明をされていて、ただ、その状況が随分変わってきているのではないかという指摘があり、この辺りは研究デザインに関わってくるところですから、再度検討いただき、最終的な研究計画に即して説明文書を修正して頂く必要があるのではないかということで、指摘しています。
2つ目ですが、これも中村先生からの指摘にありましたように、ここに挙がってくる前に特定認定再生医療等委員会で指摘を受け、PRPの注射回数が最初は3回だったのが、合わせたほうがいいのではないかということで、ヒアルロン酸と同じ回数に変えています。研究として5回にしなければいけないということであれば、それはそれで理解できるのですが、その一方で、これまで使われているPRPの注射回数や投与量とどういう関係にあるのかよく分からなくなりました。もし変えたことによって何らかの不利益があるのであれば説明したほうがいいだろうということがありますから、この点についても再度、検討していただく必要があるのではないかと思います。
3つ目と4つ目は、やや手続的なところになります。3つ目の点は最初に私のほうからも指摘させていただいたのですが、当初このプロトコールの特に後半部分が、特定認定再生医療等委員会ではなく通常の倫理審査委員会に、例えばいろいろな有害事象などが報告されるような形になっているので、再検討してくださいと指摘しました。これについては誤記であったということで修正されてきました。ただし、有害事象に関しては未だに記載が整理されていないところがあり、この点については再度見直した上で、どの範囲の有害事象を、特定認定再生医療等委員会に報告するのかを明確化していただいたほうがいいのではないかと思いましたので指摘しています。
21ページで、これも大門先生からの指摘があり、「連結可能匿名化」という言葉が倫理指針の改正に伴い無くなっているので、修正したほうがいいのではないかということで修正されています。ただし、この修正は指針に関する誤解に基づくものだと思いますから、ここも適切に修正していただいたほうがいいと思います。私のほうからは以上です。
○山口座長 ありがとうございました。続いて、大門構成員より、試験実施計画書等の評価について御説明をお願いいたします。
○大門構成員 大門でございます。机上配布資料の21ページから22ページを御覧ください。評価結果としては21ページに示すとおりで、既に3人の先生がご指摘された点について同じ所感がございます。実際のところ、初見の際にも照会を出させていただき、ご回答を頂戴しましたが、依然として幾つか問題点があると考えています。これらを簡単にお伝えいたします。
21ページを御覧ください。適応症、適格基準の項目ですが、結局、標準治療がヒアルロン酸で良いのかについて、私も含め、どの先生方も説明を求めていたのですが、とくに、他の治療法の存在を踏まえた標準治療の設定根拠がご回答として示されませんでした。これは重要な論点であると思いますので、しっかり書いていただく必要があると思います。また、適格基準の各項目の設定根拠についても、先行研究を参考にしたという理由だけにとどまっていて、結局、申請者の先生が主張するようなヒアルロン酸注入が標準治療となるような集団を標的とできているのか懸念として残っています。諸先生からこれらのご質問が飛んでいるのは、恐らく実施計画書の記載にどうしても甘い部分があったからだと思いますので、しっかり記載していただく必要があるかと思います。
22ページに移ります。治療計画の内容についてです。これは恐らく本部会での審議の前に、認定再生医療委員会から治療計画上における盲検化に関する指摘を受けたため、さらには治療群間の比較可能性を理由として、ヒアルロン酸の注入回数と同じにすべく、PRPの注入回数を3回から5回に増やしています。この増加については倫理的に懸念がありますし、そうするのであれば少なくとも、中村先生の御指摘もありましたように、投与回数や総投与量の根拠について、しっかり書き下していただく必要があろうかと思います。
次に、有効性及び安全性の評価方法についてです。先ほどから論点として挙がっている非盲検の試験であるというところですけれども、ヒアルロン酸注入は海外のガイドラインによれば非推奨であるとのことであります。WOMACスコアは患者さんの自己報告によるエンドポイントであることを踏まえますと、例えばヒアルロン酸群に割り当てられて、それを知っている患者さんは悪いスコアを与える可能性もあるかと思います。その逆も然りだと思います。構成員の先生方から、盲検化を検討できないのかという照会がなされた結果として、ヒアルロン酸注入というのは、採取された末梢血が廃棄されてしまうことによる倫理的問題があるので盲検化は困難であるという回答がなされました。その後、中村先生より、評価者に対する盲検化の必要性があるのではないかという御指摘があり、申請者からは、評価者の盲検化をきちんとしますというご回答は頂きました。しかしながら、その具体的な手順、実施体制、工夫等(評価者は誰か、割付群の情報がおそらく含まれているEDCへの評価結果への反映等)、どのようにして盲検化が担保されるのかについて、実施計画書内で明記されていませんでした。この点もしっかり書いていただく必要があろうかと思います。
さらに例数設計の部分ですが、3つの比較試験の成績を併合してエフェクトサイズを求めておられます。その理由として設定値の精度を高めることは御回答のとおりだと思いますが、各試験のK-L gradeの分布を確認すると、グレードとしての重症度が異なる構成割合の試験を併合しているようにも見えました。もし、このK-L gradeがいわゆる有効性の違いに影響を与えるのであれば、この点は検討していただく必要があろうかと思います。これは割付時、解析時にも同様のことが言えるのではないかと危惧されました。また、後治療に関して、これも先行研究にのっとってとくに規定しないと、構成員からの指摘を受けて変更されたのですが、この変更は主要評価項目の評価に影響を及ぼすのではないかということが危惧されました。本当に規定しなくていいのか。その影響を統計的観点から評価しなくてよいのかが気になりました。
最後に、認定再生医療等委員会の報告に関しては、田代先生にご指摘いただいたとおりです。また、「匿名加工情報」に関しても御指摘のとおりで、修正していただく必要があろうかと思います。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。それでは、本日、御欠席の主担当、松山構成員の事前のまとめと総合評価について事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 23ページを御覧ください。総合評価といたしましては、「継続審議」といただいています。コメントとしまして、有効性を適切に示し得たならば有効であると想定される適応患者に対し、細胞治療と比較して安価かつ安全に適応できることから価値のある試験であると考える。有効性を示すためのロジックを再検討していただきたいということです。以上です。
○山口座長 ありがとうございました。それでは、御討議をお願いします。かなり詳細な御検討を頂きましたけれども、何か御質問はありますか。中村先生に、18ページの所にきちっとまとめていただいた6つの片括弧ですけれども、この辺りは非常に厳しいところはクリアできていないと感じますので継続審議とすべきか、あるいは研究の妥当性に対する疑問があること、評価方法における重大な欠陥が指摘されているので、「不適」にして、仕切り直してもらったほうがむしろやりやすいのではないかと思いますが、その辺り、何か御意見はありますか。中村先生、何か御意見はありますか。
○中村技術専門委員 変形性膝関節症が、臨床の現場あるいは社会的にも重要だということは異存のないところです。申請者も、ここには出ていませんが、ほかの申請の所を見ますと、人工関節を減らすとか、それを遅くするのだということが書かれているのです。それが一番望まれているわけです。それがWOMAC(痛み)を中心とした評価法でやりますと、対照薬がヒアルロン酸でいいのかという、そこのロジックをよほど明確にする必要があるのと、非盲検でも世界がそう言っていないものを超えて、この1回の研究で臨床的に使っていいのだという話になるのか。そういう話になるだけのパワーを持つ研究になれるかというところが、これの課題だと思います。その意味で、私が助け船的に言えば、MRIはもう使われていますし、どういうやり方がいいか世界的に何年も前に公表されているのです。ここに出しましたけれども、ステロイドの注入と生食の注入がダブル・ブラインドテストでMRIで評価をしているのです。それで結局、ステロイドのほうが悪いという結果が出たのです。要するに、ボリュームでの1年間の減少量が大きかったということで推奨しないと。今までの世界と全く違うデータになったのです。
それは、アウトカムは人工関節まで見ることは非常に困難ですけれども、1年か2年間見ればボリュームをどうできたかというのは比較可能な状況なのです。ですから、それを入れれば非盲検かどうかという問題点も、それで見ればクリアできるのではないかと私は思います。軟骨の変性を抑えたと、ヒアルロン酸はそういうことが少なくとも昔は言われたわけです。それは単に潤滑油だけでなく良い効果があると。これが今、世界的にどうなっているかは、必ずしも、現状ではしっかり申し上げられませんが、そういうものと比較して軟骨の減少量が止められたということになれば、それはブラインドかどうかに関わらず客観的に、自ずから出ますから、例えばそういうようなことを考慮に入れて評価をすれば、ある程度、いろいろな不十分性は検討が可能なのではないかという印象を持っています。
グレード1-3にする、日本特有の若いほうにできるとなったら、今までのデータで報告されたもののグレード1-3だけを取り集めて、それのヒアルロン酸がどうで、今度のPRPもどうかというふうに比較をしたら、今回のスコープとしても未来に向かって可能性があるということで出されるのは、私は非常にいいのではないかと思います。研究者にはそれだけの意欲があるので、私はそこは大変有り難いなと思っているところです。
○山口座長 ありがとうございました。あと品質管理の問題とか、回数も適当というか、簡単に増やしたりしているので安全性はどうなのかと。その辺りも詰めが甘いというか、本当にこのまま訂正に応じて、そのまま回数を変えることを根拠もなしに許してもいいのか、ちょっと疑問を感じますけれども、その辺りはいかがですか。
○中村技術専門委員 PRPは、結局、総合的な成長ホルモンがたくさん入っているものを分泌するという話で、過去の論文がそうであるということを述べておられるのです。私もそれでいいと思いますが、申請者から出していただいたレビューを読んでみても懸念が残っているのです。長期的には分からないというMode of Actionで必ずしも分からないという懸念も残っている。特にVGFが高いというのは、軟骨というのは血管をすごく嫌うのです。軟骨の中に血管が入り込めば軟骨は石灰化してしまうので骨に変わっていってしまいます。ですから、軟骨というものだけを単純に考えると、VGFというのは普通はブロックしていて軟骨に入ってこないようになっています。それがたくさん出ているところはロジックとしては懸念されるのです。でも、臨床的とか非臨床でも、vivoでそういうことはないことが、一応、証明されているのです。だけど懸念はあるので、しっかりしたロジックでやっていただく必要があり、もうちょっと長期に見るということが、多分、必須になるのではないかと私は考えます。
○山口座長 ありがとうございます。ほかにございませんか。あと中村先生、現場では実際に行われている所もあるのでしょうか。研究としてでなくて。
○中村技術専門委員 送っていただいた論文等も調べましたが、研究としてはレポートが、人に使ったのは7、8個あります。ただ、グレードがみんな違っているので、直ちにはやっていない。それから中長期を見たものはないだろうと思います。
○山口座長 ほかに何か御質問、御意見ありませんか。一色先生、何か。
○一色座長代理 非常に分かりやすく説明いただいたので。
これは「継続」にするか、「不適」にするかというところですけれども、いろいろな点で、この先検討しても難しいようにも感じたのですが、もう一回投げ返して戻るのを待つというのも1つかと思います。その辺りに何か御意見ありますか。真田先生、いかがですか。
○真田構成員 過去に類似の案件が議論されたときも、今回は主要評価項目や試験のデザインにも関わる部分が恐らく多数修正されるであろうと考えますので、そういう意味では、不適といいますと若干印象が悪いので、研究室の方々にはネガティブなインパクトを与えてしまうところがちょっと不安なのですが、そこは期待を込めて大幅に変えて持ってきてくださいということで、不適という判断をされても、一応前回までの倣いにはなっているのではないかと思います。
○山口座長 貴重な御意見、ありがとうございました。ほかにありませんか。藤原先生、何かありますか。
○藤原構成員 真田先生がおっしゃるなら、別に。
○山口座長 それでは、いかがでしょうか。松山先生も一応、継続審議ということにしていますので、一回は返すということで、中村先生、いかがでしょう。
○中村技術専門委員 いや、私もこれはすごく良くなる仕掛けなので。それから、根拠としては非常に曖昧な感じがあるのですが、ホスピタリティはあるものだと思うのです。ですから、この意欲が途絶えないように御配慮いただけると、私たちは大変有り難いと思っております。
○山口座長 ありがとうございました。それでは整理番号79につきましては、「継続審議」ということにいたします。ありがとうございました。
続きまして総括報告書の評価について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 59ページ、資料2-1を御覧ください。先進医療Bの総括報告書に関する御評価を頂くのは、告示番号19「術前のホルモン療法及びゾレドロン酸投与の併用療法」です。申請医療機関は京都大学医学部附属病院です。審査担当構成員は主担当が藤原構成員、副担当が山中構成員です。試験の概要ですが、本試験は閉経後のエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性の乳がん(T1-T2、N0M0)患者を対象に、レトロゾール内服による術前内分泌療法においてゾレドロン酸単回投与の上乗せ効果及び安全性を評価することを主たる目的とした、多施設共同、非盲検、単群試験です。以上です。
○山口座長 では、本技術の評価につきまして、主担当の藤原構成員、説明をお願いいたします。
○藤原構成員 お手元の資料の60ページから61ページに、私のコメント、評価を載せております。山中構成員は今日御欠席ですけれども、後から彼が詳細なコメントを寄せてますので、そちらを参考にしていただければいいのですが、簡単に申しますとプライマリーエンドポイントは達成されなかったと。安全性については大きな問題はありませんので、有効性は従来の医療技術を用いるよりも劣ると判断しましたし、安全性は問題ないと判断しています。技術的成熟度ですけれども、これはゾレドロン酸という骨折予防のために、既にルーティンで診療の中に使われている薬なので、難易度は別に高くなくて点滴するだけですので、これもAにしております。あとは山中先生のコメントを受けた上で、総合的なコメントにしたいと思います。
○山口座長 ありがとうございました。続いて本日御欠席の山中構成員の評価について、事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 それでは、61ページを御覧ください。まず、有効性につきましてはD、従来の医療技術を用いるよりも劣るということです。コメントですけれども、「閾値45%、期待値60%の設定において得られた点推定値は45%を下回る。併用療法の成績が閾値45%を超える可能性(ベイズ事後確率)は16%にとどまった。レトロゾール単剤による成績と大差なく、本対象集団全体に対するゾレドロン酸の上乗せ効果は本試験の結果から否定されたと考える。探索的解析から、ベースラインにおける末梢血中γδ型T細胞の割合が少ない症例については、ゾレドロン酸投与の奏功率が上がる可能性が示唆されている」。
また、安全性につきましてはBで、余り問題なしということです。コメントとしては、ゾレドロン酸上乗せにより、軽微な有害事象の増加が認められたということです。技術的成熟度はAで、コメントは、当該分野を専門とし、経験を積んだ医師又は医師の指導の下であれば実施できる。特に技術的には問題はないということです。以上です。
○山口座長 それでは藤原構成員、もし何か追加のコメントがありましたら、お願いいたします。
○藤原構成員 この品目は、平成25年2月26日の第4回の先進医療技術審査部会で審議されてスタートしたものです。その当時、2010年から2011年に掛けて、様々な臨床試験、大きな比較試験において、術後の内分泌療法の中で、このゾレドロン酸を従来の内分泌療法に加えることによって、再発抑制効果があるかという検討をした試験の結果が出て、再発抑制効果があるというものと、ないというものと様々ありました。
その中で、この試験が最終的な決着を目指す一段階として計画されたという、当時としては非常に意義のある試験だったと思うのです。正に臨床試験ですので、きちんとやってみたら差が出ませんでしたというところなので、最後のまとめの「薬事承認申請の効率化に資するかどうか」という所に書きましたが、これをもってしても、ゾレドロン酸が効果が出そうな患者集団がなかなか出てきていませんので、将来的に、すぐ本試験結果が薬事承認申請の効率化にはつながらないであろうと思います。
○山口座長 ありがとうございました。ただいまの説明について、何か御質問などありませんか。藤原先生、山中先生いずれも、やはり評価としては、Dということで、従来よりも劣るという、副作用が出る分だけ劣るということになってしまいましたけれども、やむを得ないというか、それなりの意義はあったかということかと思います。臨床試験は全てポジティブに出るはずがないので、大いに意味はあったと思いますけれども、何かありませんか。
よろしいでしょうか。それでは、告示番号19については、ただいま御審議いただいた結果を取りまとめて、先進医療会議に御報告いたします。続きまして、先進医療Bの試験実施計画の変更について、事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 先進医療Bの試験実施計画の変更について、1件申請がありました。67ページ、資料3を御覧ください。東京大学医学部附属病院からの申請で、告示番号62「切除支援のための気管支鏡下肺マーキング法」です。本試験は、切除マージンの確保に注意を要する微小肺病変に対し、術前気管支鏡下に色素注入によるマーキングを肺表面に行い、これをガイドとして肺切除を行う単群試験となっております。予定症例数は約160症例、210病変、今回の申請時点で登録は153症例、205病変となっております。
御審議いただく変更内容は、イベント評価委員会の設置です。本変更の経緯ですが、切除成功可否の定義に臨床的な判断を伴うものが少数存在するということで、本試験と独立な委員を加えたイベント評価委員会を設置し、判断のプロセスを記録することで、より客観的な評価が可能になると考えるとのことです。より詳細な理由としましては、本試験のエンドポイントは、切除マージンが何ミリかという比較的、客観的なものなので、当初はそれぞれの切除担当医師が測定数値を入力するだけで十分客観的に判断できると考え、独立の評価委員会を設置していなかったということです。
ところが、70ページを御覧ください。こちらのフローチャートにありますように、少数例ではあるものの、自由記載で入力された内容を踏まえた臨床的な判断が正否の判定に必要となる例が確認されたということです。そのため、このような判定困難事例に対し、たとえ僅かな事例であったとしても、施設間での均一性を確保した客観的な評価を何らかの形で実施することが必要と考え、この「イベント評価委員会」の設置を決定したとのことです。以上です。
○山口座長 本変更内容について、何か御意見ありますでしょうか。これは具体的には、そういう変更を判定せざるを得ないのは何例ぐらいなのですか。
○医政局研究開発振興課専門官 正確な症例数については伺ってはいないのですけれども。
○山口座長 でも大多数は70ページにある、この「機械的に判断できるもの」に入るわけですよね。
○医政局研究開発振興課専門官 大多数はそうだと伺っています。
○山口座長 どうしてもこれでは判定できないものがあったので、それをきちっと客観的に判定するために、別な委員会を作りたいということだと思いますが。これは実際に研究が走ったときに、やはりこういう例があることに気が付いたということで、これを評価しないといけないということです。適切な改正かと思うのですが、何か御意見はありますか。
それでは、特に御意見がないようでしたら、告示番号62の変更については認めることといたします。では次に、先進医療Bの継続の可否に関わる審議結果の報告について、経過報告ということで事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 71ページ、資料4を御覧ください。こちらは先進医療Bの継続の可否に係る審議結果の報告についての経過報告ですが、先月の部会で違反の御報告をした告示番号B67の「ヒドロキシクロロキン療法」です。申請医療機関は慶應義塾大学病院です。この技術は、本申請医療機関が先進医療Bの臨床使用実績の効率化要件に該当するため、使用実績のない状態で申請され、承認、告示されたものです。適応症は関節リウマチ。本試験は寛解を達成していない患者を対象として、ヒドロキシクロロキンの内服を追加併用し、その有効性、安全性を評価する単群試験で、予定症例登録数は60例です。
75ページから「付記」がありますが、先月御紹介したとおり、最初に設定された3症例について、独立委員会によって、継続が問題ない旨の評価を頂きましたが、その後、本部会の承認を得ず、4例目、5例目の投与が開始されてしまいました。患者様には謝罪と経緯の説明を行って、リスクベネフィットを勘案し、投与継続が行われております。
78ページから原因や今後の対応策が述べられております。前回は担当医の失念が本事案の原因であると書かれておりました。しかしながら、それでは臨床中核病院としての、そして特定機能病院としての認識が甘いのではないかなど、様々な御指摘を先生方から前回の部会で頂きました。それを受けて今回は、原因の箇所は、院内の連携・情報伝達・予防体制に不備があり、3例で確実に止まる機能・組織的な体制が十分でなかったことが原因と考えると改めております。
また、その洞察に基づいて問題点を抽出し、79ページからの「再発防止策」を決定しております。情報共有やチェック機能強化などの対応策を取られています。先進医療実施届出書と試験計画書の内容に齟齬がないかにつきましては、リサーチマネージャーが確認し、最終的には倫理審査委員会の責任で確認する体制となりました。
また、80ページにあるように、現在実施中の全ての先進医療Bについて、一斉点検を実施中ですが、本日はまだ完了していないということです。そこで本日は、この再発防止策などにつきまして、御意見がありましたら御指摘いただきたいと存じます。そして本試験の再開につきましては一斉点検の結果と、今後予定しております対応策の状況を次回以降に御報告いただき、その結果を受けて御審議いただければと、提案させていただきます。以上です。
○山口座長 これは安全性の結果をここに報告していただいてから、次の登録が始まると。それは当然のことなのですけれども、ここに登録する前にもうスタートしてしまったという事例です。前回は既にスタートしてしまった方については、やはり継続してあげないとまずいということで、ここで継続をお認めしました。
そのときの回答の中に、何となく担当者がうっかりしていたことが原因であるようなことが書かれています。人間は誰もがうっかりするものであることは間違いないわけですから、その中でそういうことが起きないような仕組みを考えてくださいということでお返ししたわけです。その結果、こういう対応をしますということが、今回書かれていますので、一斉点検の結果も含めて次に報告してもらって、また再開が可能かどうかということは決めます。これをお読みいただいて、何か指摘する点がありましたら、どうぞ御発言をお願いします。
○柴田構成員 資料の78ページに、「本事案が生じた原因について」の検討結果が記されていますが、3)厚生労働省に提出した届出書と実施計画書の確認が倫理委員会で行われることなく、両者不整合が関係者に認識されなかったというのは、実施計画書の改訂のみは、倫理委員会で確認されたけれども、届出書と実施計画書の差異があるかないかが倫理委員会で確認されていなかったという趣旨でしょうか。つまり実施計画書自体は、改訂後に倫理委員会に諮られているわけですね。
○医政局研究開発振興課専門官 そのように認識しています。
○柴田構成員 分かりました。これについては、ここの考察のとおり、そこに差異があることが問題なのです。基本的には審査のプロセスで実施計画書の変更と、届出書の変更に不整合が生じないようにというのは日頃申し伝えてはいるのですが、そこの部分の確認も審査のプロセスで、改めて申請者側に伝達する必要もあるかなと思っています。
つまり、本来、倫理委員会で審査されているのは実施計画書のほうなのですが、先進医療の場合は届出書が重要です。実施計画書に書いてないけれども、届出書のみ改訂するというのは、やはり手続上おかしいので、それはふだんの審査のときにも、改めて申請者の方に伝達していただければと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 承知いたしました。
○山口座長 よろしいですか。では、今の点を伝えてください。ほかにありませんか。
○関原構成員 79ページの今後の「再発防止策」の2)の2番ですけれども、この「診療科各部門に研究の進捗管理等を行うリサーチマネージャーを新たに配置する」というのは、慶應大学から回答書が出たら、慶應大学の診療科はとてもたくさんありますが、そこに全部置くという意味なのですか。
○医政局研究開発振興課専門官 そうですね、この文言によりますと、そういうことだと思います。
○関原構成員 つまり先進医療など余りやっていない診療科であろうが、ファザーネットみたいなもの等、ものすごくたくさんあるから、全部に人を配置してやるのはとても大変ですが。まあ、それは結構ですけれども、そういう意味と理解していいのですね。
○医政局研究開発振興課専門官 そうですね。
○関原構成員 分かりました。
○山口座長 自分たちの科の人が監視するみたいな感じになるので、余り機能しないのではないかと、ちょっと私も不安に思います。何かこう横断的に見る人が余りいなくて、その部門部門に任せるということが本当に機能するかどうかは確かに疑問だと思います。ほかの施設でこんなものを置いている所はないわけで、どういう役割を果たして、当該診療科のリサーチマネージャーで、それが務まるかどうかという辺りを少し聞いていただいたほうがいいと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 はい、照会させていただきます。
○山口座長 ほかにありませんか。
○柴田構成員 今の点については、いろいろと考え方はあると思います。例えば、私は臨床研究を支援する部門で仕事をしておりますが、臨床研究を支援する部門にとっては常識的なことであっても、診療科の先生方で臨床研究を積極的に行われている方と、そうでない方で温度差があります。診療科の側に、そういう臨床研究に関するノウハウを蓄積する窓口があることは支援を円滑に進める上では重要であります。そういう観点では、ここのリサーチマネージャーを設置されるというのは、それなりの意味がある可能性はあるかなと思います。実際に機能しているかどうかは、先生がおっしゃるように聞いていただく必要があると思いますが、可能性はあるということは、ちょっと御指摘しておきたいと思います。
○山口座長 ありがとうございます。
○石川構成員 この間もちょっと発言させていただいたのですが、2)の今後の対応の、今、御指摘があったリサーチマネージャーの設置ですが、平成29年6月ですから、かなり即時的な対応ではないですよね、随分先の話です。実は、申出療養のときも12例か何か逸脱した例があって、あれはやはり臨床の先生方が止められなかったみたいなところがあって、うっかりではないですけれども、止められないという流れの中で、これはグランドマネージャーみたいな者がいないと、これはきっと無理なのです。ですから今回のように患者さんの安全性を担保するような仕組みの中での出来事ですので、より即時性のあるリサーチマネージャーの設置という形でないとしょうがないと思うのです。ですから、そういうことをもう少し改善できないかなと思います。
○山口座長 ほかにありませんか。それでは先ほど申しましたように、告示番号67の技術につきましては、先進医療Bの一斉点検結果などの報告に基づいて、次回以降、再開の可否を判断することといたします。
次に、協力医療機関の追加に移ります。事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 81ページ、資料5-1を御覧ください。これまでに大臣告示されている6つの技術につきまして、協力医療機関の追加申請がありました。83ページから90ページの資料5-2を御覧ください。事務局において、いずれも先進医療を実施可能とする保健医療機関の要件、様式第9号を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として、御了承いただきたく存じます。特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。
○山口座長 では次に、先進医療Bの協力医療機関の取下げについて、事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 91ページ、資料6を御覧ください。告示番号28の技術につきまして、先進医療Bの協力医療機関の取下げ申請がありました。取下げ理由は、この3つの医療機関では、これまでの患者登録の実績はなく、今後の見込みも困難であるためです。こちらも特に御意見がなければ手続を進めさせていただきます。
○山口座長 よろしいでしょうか。では次に、資料7について事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 93ページ、資料7を御覧ください。先月の部会におきまして、先ほどの慶應大学のヒドロキシクロロキンの試験が、最初の3症例で止まらなかったことを御報告いたしました。その際に、委員の先生方から迅速な承認の必要性や安全性をしっかりと担保することが重要であることなど、御意見を頂きました。
そこでこのような検討案を検討しました。経緯の4つ目の○を御覧ください。先進医療技術審査部会の開催がおおむね月に1回であることから、継続の可否の評価までに最長で1か月を要することになります。患者の安全を、より厳格に担保するためにも、できるだけ迅速化することが望ましく、また同時に適正に安全性を担保できる評価体制を維持することも重要です。
そこで、2.対応方針といたしまして、先進医療技術審査部会に先立ち、評価に必要な数症例の試験結果及び、その結果について独立データモニタリング委員会等で審議された結果を、評価担当構成員(申請時の主担当、生物統計担当)の先生方に1週間程度で御確認いただき、先進医療継続の可否について御評価いただくこととしてはどうか。そして継続可となれば速やかに試験を再開してよいこととし、後日先進医療技術審査部会に報告することとしてはどうか。評価のために提出を求める独立データモニタリング委員会に関する資料としては、以下のものとしてはどうか。議事録、当該審議結果に至った判断根拠(検査データ等)、委員会等構成員リスト。以上です。
○山口座長 できるだけ迅速にやらないと、やはり研究の進捗にも関わってきます。先進医療はスピードを求められていますので、このような形で担当の先生には大変御負担ですけれども、1週間程度で御判断いただいて許可をする。その後、この会に報告するというプロセスはどうかということですが、いかがでしょうか。
○柴田構成員 この方針は重要な変更だと思いますので、基本的に賛成なのですが、資料に追加していただきたいものがあります。承認時からの改訂の履歴が残った実施計画書は必要だと思います。
○医政局研究開発振興課専門官 承知いたしました。
○山口座長 ほかにありませんか。
○医政局研究開発振興課専門官 本日は急用で御欠席された山中先生から、2つコメントを頂いております。少しお話させてください。
○山口座長 では、どうぞ。
○医政局研究開発振興課専門官 1点目はこちらで提出するもので、当該審議結果に至った判断根拠で、「検査データ等」としていますが、それよりは、「研究事務局が独立データモニタリング委員会等に提出した資料一式」という形にしたほうがいいのではないかというのを1つ頂きました。
それともう一点は、もし先進医療継続の可否について御評価いただくこととしてはどうかについて、メールでの稟議が可能ならば、それでお願いしたいということです。それらについて御意見がありましたら、お願いいたします。
○山口座長 いかがでしょうか。もう少しかいつまんでお願いします。少し聞き取りにくかったので、もう一回お願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 すみません、1点目は、検査データ等を「研究事務局が独立データモニタリング委員会等に提出した資料」などに改めたほうがよいのではないかということで、生データよりも、それを基に審査したほうがという御指摘を頂きました。
○山口座長 生のデータよりも、「研究事務局が独立データモニタリング委員会等に提出した資料」を出してくれということですか。
そのほうがベターですね。よろしいですか。貴重な御意見を頂きました。では、今の点を変更して、このようなやり方で、これを使うということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
○医政局研究開発振興課専門官 では、そのように改めさせていただきます。
○一色座長代理 もう一点が、よく分からなかったのですが。
○医政局研究開発振興課専門官 すみません、もう一点は御審議を紙ベースではなくて、メール稟議でさせていただくのはどうですかという御提案があったのですが。
○山口座長 メールでいかがですか。では、集まらずメール稟議で行うこととさせていただきます。
○医政局研究開発振興課専門官 そのようにさせていただきます。
○山口座長 それは適切な御提案と思います。
○真田構成員 これはメールベースの審議の場合、実施計画書は、基本は非公開になっていると認識しているのですが、その辺りのセキュリティ対策に御留意いただけるのであれば、それでよいのかと思っております。
○医政局研究開発振興課専門官 では、その辺りを検討して、そのようにさせていただきます。ありがとうございます。
○山口座長 ほかに何かありませんでしょうか。それでは、先ほど申しましたように、2つの点を少し加えまして、この取り扱いとすることといたします。よろしいでしょうか。
次に、粒子線治療の今後の取扱いについて、事務局より報告をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 それでは、97ページ、資料8-1を御覧ください。背景の4番目です。本年2月16日に、第53回先進医療技術審査部会において、「局所限局性前立腺がん中リスク症例に対する陽子線治療」の審議の際に、粒子線治療の先進医療における取扱いについて議論されました。
そこで、2番の議論の概要にあるように、先進医療Bとして実施する場合は比較試験を要求すべきではないかという御意見、実施可能性を考慮した場合には、比較試験の実施は困難ではないかという御意見、また、新たなエビデンスを集積し、明確に将来的な保険収載を目標にしている点では、一定程度は評価できるのではないかなどの御意見がありました。
これらを受けての対応方針として、高度先進医療、先進医療Aとして実施されてきた粒子線治療について、平成28年度以降、一定の水準の試験計画を作成することで、比較試験ではないものの先進医療Bとして実施することを認められてきた経緯を踏まえる必要があるのではないか。そして、試験デザインとして、必ずしもランダム化比較試験として計画されていなくとも、一定の科学的水準を満たし、倫理的にも適切なデザインの試験計画が作成されていれば、引き続き先進医療Bとして実施を認めてはどうかという案が提出され、先日の先進医療会議にて承認されましたので、御報告いたします。以上です。
○山口座長 ありがとうございます。何か御質問はありますでしょうか。
○手良向構成員 今の対応方針に「比較試験」と「ランダム化比較試験」の両方があるのですが、「非ランダム化比較試験」というのもあるので、ランダム化比較試験でもいいし、非ランダム化比較試験でもいいので、別に比較試験を否定するものではないということでよろしいでしょうか。要するに、比較試験を否定するものではなくて、実施可能性を考慮して、ランダム化の場合もありますということで、ランダム化できない場合は、それでもいいですという意味だと理解します。
○山口座長 ランダム化比較試験という言葉がまずいということですか。
○手良向構成員 この書き方だと、ランダム化比較試験をしなくていいというのではなくて、別にそれを否定していないわけです。非ランダム化比較試験も否定していなくて、実施可能性を考慮して、どのようなデザインを選んでもいいですという、それだと今までと特に変わりはないと思いますが、そういう意味で、何も新しいことを言っていないと思うのです。あえて、この文書を出す意味は何ですかということです。
○山口座長 これは強く、割とランダム化比較試験をしないと駄目ではないかということを言われるので、必ずしもそうではないということを確認するということですか。
○医政局研究開発振興課専門官 そうです、粒子線治療に関しては。これまでも踏まえて。
○山口座長 ただ、粒子線治療は、やはりランダム化をしないにしても、それは比較になる対照のコントロールのほうの試験がきちんと評価されている必要があると思います。要するに、対照群のない状況で行われるのもどうかと思います。ですから、よほどデザインをきちんとしてやらないと難しいと思います。いずれにしても、今あるIMRTとか、あのような資料についても、きちんとした標準的なやり方と、標準的な成果というのをきちんと示していないので、そこから始めないとまずいのではないかと思います。そういうものなしには恐らく、いつまでも決着がつかないのではないかと思います。確かに、ランダム化比較試験は難しいことはよく分かります。そのためにも、是非、自分たちの日常診療をもう少しきちんと科学的に評価して、データを示してほしいという感じが少ししました。これは私の感想です。伊藤構成員、どうぞ。
○伊藤構成員 親委員会で決めたので、しようがないと思ってはいますが、陽子線治療だけではなくて、IMRTもあるわけで、それとの比較もされないままにオープン試験の陽子線治療だけが出てきて、それで良しというように、この文章は読めてしまうのですが、そんなに企業寄りに甘くしなければいけないのでしょうか。もともと、化学療法については企業がきちんとやってきているわけで、粒子線治療とか、この手のものだけは企業は何もしなくて医者だけがやらなければいけないというようなことを容認するというのは何か変な気がする。これは政治的な動きなのでしょうか。
○山口座長 その辺りは、特にコメントしてもしようがないわけですけれども。
○伊藤構成員 少なくとも、比較の対照群としてIMRTがあってしかるべしで、それもなしでいい、オープン試験でいいですというように、この文章は読めてしまうのですけれども。
○山口座長 しかし、「一定の科学的水準を満たした倫理的にも、適切なデザインが作成されていれば」というところで、ちょっと押えてあるように思います。
○山口座長 課長、どうぞ。
○医政局研究開発振興課長 基本的には、山口先生がおっしゃるとおりで、何でもかんでもいいというような文章にはしておりません。確かに、今、最初に出てきた頃からすると、随分治療法とかを含めても変ってきていますし、実際、この場の審議においても、いろいろな経済的なところまで含めてやりましょうというところまでいって、厳密な審査をしておりますので、そういう意味では、そういうものを踏まえた上での一定の科学的水準を満たしたデザインということだろうと思っております。
○山口座長 関原構成員、どうぞ。
○関原構成員 私も、これは結局、最終的に保険を収載するかどうかのときは、多分、高額部ですから、費用対効果がかかるわけです、当然。費用対効果というのは、既存の機器に比べてどのぐらいの値段があって、効果がどうかという対照がなかったら、保険の点数も付けられないのではないかなと。つまり、保険収載ができないのではないかということ。そのためにはIMRTは、例えば、前立腺なら前立腺でこうですということをやっておかないと、費用対効果で実際に結論が出ないのではないかと私は思います。保険局の人は、これでいいのですか。
○山口座長 真田構成員、どうぞ。
○真田構成員 諸々御意見はあると思いますが、基本的に粒子線に限らず、ありとあらゆる技術に対する一定のこの部会での審議方針としては、先日、有効性において非劣性の試験を先進医療でもお認めすることを審議した際に、基本的には、既存治療に対する有効性の優越性を求めると改めてうたってあって、そこで確認されたものだと認識しています。今までも基本的には、こちらに申請していただく技術にはそういうところを求めていたと認識しています。
粒子線に限らず、今後は費用対効果というのはどの技術にあっても、大事なトピックスになってくる可能性はあるのだと認識していますが、費用対効果を既存の標準治療と比較できるように、探索的なエンドポイントとして入れ込んでくださいということをお願いしていた技術が恐らく多くあったかと思います。そこは適応症のところでどのような既存治療と比較できるのか、その比較対照群がきっちりしているかというところと、後で費用対効果を体系的に検討できるような試験計画かというところは、部会等の審議の過程で先生方に御議論いただいてから御了解いただいていたと認識していますので、そこは審議の際に、個々で議論いただくことで解決するのではないかと考えております。
○山口座長 ありがとうございます。ほかにありますでしょうか。
○柴田構成員 私も基本的には伊藤先生の御指摘のとおりだと思います。仮に実現可能性がないとしても、これ、前の会議でも申し上げたと思いますが、まずランダム化比較試験をするとしたらどういうデザインになって、どういうエンドポイントを採用すべきかという議論を、どのような試験だったとしても、まず最初にするべきだと思っています。つまり、ある適応症があったときに、その適応症に対する現状の保険診療内でのベストの診療は何かというのが対照群になって、その対照群に対して、新しい医療技術がどういう意味で勝るのか、あるいは、どういう意味で非劣性であるのかというのをエンドポイントを設定して議論するというところを議論の始まりとしていないと、シングルアームの試験ありきで議論を始めてしまうと、粒子線などではそういうことが多かったわけですが、何と比較して良さを主張するのか、どういう面で良さを主張するのかというのが曖昧になるので。仮にランダム化比較試験がフィージブルでなかったとしても、仮にそれを実施するとしたらどういう試験デザインで、対照群は何になるのかというところを詰めた上で、最終的にフィージビリティーであるとか、いろいろな観点からシングルアームにはなるけれども、外部対照としてこういう集団と比較をしますという結果が申請書、あるいは実施計画書に書かれていれば、科学的な議論の土台になると思います。ですので、このような文章があるからといって、比較試験の実施を検討しなくていいということではなく、あくまで検討した上で、フィージビリティーがないからこういう選択肢になったという議論がなされないと、最終的に保険収載の段階で不十分なデータとしてペンディングになるということになって、申請者の方に結局デメリットになると思うので、あくまで議論の仕方としては、ランダム化比較試験をするとしたらどうなるかというのは忘れてはならない論点だと思います。
○山口座長 やはり対照のないものに対して何かやっても、結局分からないのが当然で、その辺りがやはり放射線治療の一番の問題です。IMRTも施設間によってクオリティの差があったり、やはり手術と一緒で、かなり技術的な差があるので、そういう点も問題かなと思いますし、クオリティコントロールはできているのかという疑問もあります。そこのところは、先進医療会議もメンバーは大体似た方が出ていますので、多分、伊藤先生と同じような気持ちで見ていますので、余り心配されなくても、押えられるように思います。私も注意してやります。ほかにありますでしょうか。これは御報告を受けたということで、ここで終わりたいと思います。
次に、これは大きな問題ですが、先進医療におけるゲノム医療技術の取扱いについて、事務局より報告と説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料8-2の99ページを御覧ください。まず、御報告です。現在、「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」というものが行われております。先日、第4回の懇談会で、こちらにお示ししております報告書案の内容について議論がなされました。こちらはまだ最終版ではありませんが、先進医療に関するところを、こちらで御説明させていただきます。
がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会では、「がんの撲滅」に向けてどのように革新的な治療法や、診断法を解決していくかということについて議論がなされています。先進医療に関連しては、101ページに、「制度的対応の必要性」という項目があります。この項目の中の102ページを御覧ください。○印の1つ目に、既存治療薬の選択(コンパニオン診断)だけでなく、広く治療に係る医学的判断に資する「遺伝子パネル検査」についても、必要に応じて先進医療の実施を経て、新たな視点で科学的に評価することにより薬事承認し、その有効性・安全性を確保できる一定の要件を満たす医療機関において、保険診療として実施することと記載されています。
こういったことを受けまして、先日の先進医療会議において、117ページの案を御提案されて了承されましたので、御報告させていただきます。
経緯としては、「ゲノム医療」への期待が急速に高まっており、特に、がんや難病の分野では既に実用化が始まっています。そして、広く治療に係る医学的判断に資する遺伝子パネル検査の重要性が指摘されています。そして、先ほどのとおり、質の高いがんゲノム医療の提供に際し、新たに必要となる機能や役割について「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」において検討が進められています。
そこで対応方針として、遺伝子パネル検査は、DNAシークエンサー、テンプレートDNA調製試薬及び解析プログラムの三者を使用する技術であり、未承認医療機器の使用を伴うことから先進医療Bとして実施することが想定され、また、先進医療Bとして実施するに当たっては、薬事承認に資する臨床的有用性を検証する必要があると考えられます。また、今後、異なる遺伝子パネルを用いた複数の類似技術が、それぞれ先進医療として申請される可能性があります。
以上より、これらの技術に対する先進医療としての統一的な取扱い方針をあらかじめ定める必要があると考えられ、遺伝子パネルを用いた医療技術等を先進医療Bとして実施する際の取扱いについて、懇談会での検討も踏まえ、先進医療技術審査部会において検討を行うこととしてはどうか。こちらの案が先日了承されました。
そこでこの報告を受けまして、資料8-3の119ページの案を今回事務局より御提案させていただきます。経緯ですが、これまで言ったとおり、6月8日の先進医療会議において、こちらの提案がなされて了承されました。対応方針(案)として、遺伝子パネルを用いた医療技術等を先進医療Bとして実施する際には、将来的な遺伝子パネル検査の薬事承認及び保険収載を見据え、実現可能性が高く、臨床的意義の高いプロトコールを承認することが肝要である。また、保険収載時の出口を意識して、プロトコールに必要な要件等を事前に詳細に検討し、定めておくことが重要である。
以上より、まず基本的なプロトコール(以下、コアプロトコールという。)についての医学的、生物統計学的、倫理的に必要十分な項目及び基本的な要件について、座長の指名する先進医療技術審査部会の構成員により検討し、その案を作成し、それを先進医療技術審査部会の審議にて決定することとしてはどうか。その結果に基づいて、先進医療への申請を希望する医療機関に対し、広くコアプロトコール案を募集することとしてはどうか。そして、各医療機関から応募されたコアプロトコール案を勘案し、先進医療技術審査部会にて、コアプロトコールを決定することとしてはどうか。申請者は、上記のコアプロトコールの要件を満たした上で、独自のプロトコールを作成し、申請いただくこととしてはどうか。以上を御提案させていただきます。
○山口座長 これはゲノム技術については、コンソーシアムを作って、積極的に進めようという対応方針は非常に正しいと思います。私もこの懇談会に参加して議論を聞いますが、116ページの図を御覧いただくとここに大体集約されています。研究者の方がやはり主体なので、今、是非いろいろなゲノムを調べて、バイオバンクを作ったり、ゲノムのデータを集約して、日本として、国際的にも負けないようにという方針は誠に正しいと思われます。しかし、一番下のグリーンの所に、全ゲノムシークエンスとか、そういうものも、先進医療で賄ってくれというようになっていて、ここでは、パネル検査などは当然保険収載されるべきだという論調になっているのです。ただ現実問題として、やはり研究と臨床や保険というのは厳密に分けるべきだと思います。もちろん、絶対駄目というわけではなく、近い将来、被保険者の利益につながることであれば、それはいいことだと思うので、是非、前向きに検討すべきだと思います。ただし、そこの線引きをどこでするかということを、やはりどこかで決めなければ駄目なわけです。それについて、これからプロトコールを作ってもらうときに要件とかいろいろなことを決めなければいけませんが、それをこの会議で検討して、コアになるプロトコールを作って、ここまでだったらいいのではないかということを、ここがリードして、提案するというそういう案だと思います。
私も聞いていて、保険診療となかなか相容れないところもあるのですが、ここで全部駄目と言ってしまうのではなく、その線引きのためにも、ここの委員の方の何人かに集まってもらって、たたき台を作って実際のヒアリングを行うといったプロセスを踏んではどうかということです。何か御質問、御意見はありますでしょうか。
○伊藤構成員 教えていただきたいのですが、がんの話なのですけれども、体細胞変異だけの話ですか。それとも生殖細胞変異も両方を含めてなのでしょうか。
○山口座長 このゲノムのコンソーシアムでは一応、がんだけとなっていますけれども、そういうものも当然入って分かってしまうということで、それをどうしようかとまだ議論になっています。ですから、まだ詳細は余り決まっていないのです。
コンソーシアムを作ろうということ自体、非常に膨大なお金も掛かりますし、まだどういう形でデータベースを構築するかというのはまだ確立していません。それから、がんの遺伝子の専門家ですが、患者さんに伝える専門家の養成もまだできていません。まだ少し先の話なのですが、幾つかの遺伝子パネルについては、かなり実用化しつつあるものがあって、特に米国などではかなり普及してきているので、日本でも取り掛からないと遅れるというのが現実のところだと思います。
○伊藤構成員 体細胞変異のほうが随分はっきりしてきていると思いますが、生殖細胞変異のNGSの話になると、NGSの機械によっても深度は相当違いますし、一律にどこのという話を評価するのは、なかなか困難な気はしますけれども。
○山口座長 全くおっしゃるとおりです。例えば、シークエンサーも全然、物によっては何を見ているか分からないものもたくさんありますし、まだ日々進歩していて、まだパーフェクトのものはできていません。
○伊藤構成員 そうですね。
○山口座長 それで一体何を見ているのだという話になって、まだまだ問題点は多いのです。
それから、これはがんのゲノムと言っていますけれども、遺伝子の相談などは、別にがんではありません。もっと広い範囲が医学の分野であるので、がんのゲノムだけを取り上げて、がんゲノムの中核とかを作っても、私はむしろ意味がないのではないかと思います。もっと広い範囲の医療を取り扱う、総合病院でそういう体制を整える必要があるのではないかなど、いろいろな問題点はまだまだ残っています。
○伊藤構成員 体細胞変異は基本的に遺伝をしないのでいいのですが、生殖細胞変異を調べるとなると、遺伝カウンセリングがきちんとできる所でないと難しいですし、それも含めてクオリティコントロールはできるのかとか、幅が広がりすぎるので、どこかに歯止めをかけてスタートされたほうがいいのではないかという気はします。
○山口座長 おっしゃるとおりで、臨床の現場でそういうような人がいないにもかかわらず、やれと言われてもできないです。例えば、今の連携拠点病院に全部それを投げても、今、できる病院はほとんどないと思いますが、そういうものは整備していかなければいけないということで、一つの取っ掛かりだと思います。パネル検査などについては検討していかなければ駄目だと思います。やりたいという所もあるようですので、それをどういう体制で審査していくかということを考えたいと思います。藤原構成員、どうぞ。
○藤原構成員 事務局に質問です。今日の資料8-3の案の対応方針の3つ目の○印の所ですが、先進医療技術審査部会の構成員でコアプロトコールを作成した後に、先進医療技術審査部会の審議で決定して、その結果に基づいて先進医療への申請を希望する医療機関に対して、更に広くコアプロトコール案を募集するというのがちょっと意味が分からなくて、ここがどういうものを作るのかということ。
○医政局研究開発振興課長 コアプロトコールを作るという3番目の○印については、構成員により検討し、案を作成しというのは、その案というのは、その上に書いてありますように、項目とか、基本的には要件です。ですから、どういうところが記載されていなければいけない、いわゆる制度管理の話とか、それから、先ほど言ったような、どういう遺伝子を対象とするものであるとか、そういう枠の話をまずしていただき、その案を作成していただくというのが、この構成員により検討していただくということであって、今、日本の研究所の方で、いろいろな案を作っていらっしゃると思います。その枠の話をした上で、どういうのを作ってらっしゃるかというところで募集をかけて、集まったものを見て、その中で大体、この中にこういうものが基本的なコアプロトコールになるのではないかというのを決定するということです。構成員の方にお願するのは、項目と、要件、いわゆる方向性を決めていただくことになるかと思います。
○山口座長 多分、このまま申請したものを、担当官の人が今の知識で受け取って、そのままみんなに流しても、では、どうやって決めたらいいのだということで、恐らく評価する方も困ると思います。ですから、その枠組みをきちんと、一応、作ってあげないと、相談にきたときに、何を根拠に、どうしてどこまで審査するという枠組みが全然分からないままに、今のままでは対応できないということで、一応、コアプロトコールを作ろうということだろうと思います。石川構成員、どうぞ。
○石川構成員 これをずっと読ませていただきまして、この中に、例えば個人情報、セキュリティの問題とか、大変重要な、課題としてやりきれないような重いものがたくさん入っています。
これは感想にしかならないと思いますが、私などはビッグデータでずっと関与していまして、この辺りが、実は本当に今日的課題でやらなければいけないのは、コンソーシアムの先生方はすごく大変で、例えばストレージにしても、どこの業者でどのような審査をして、このコンソーシアムが審査すると書いてありますが、すごく大変だと思います。
それから、個人情報ですから、それをどうやってストレージするかというときに、その個人情報を漏洩されても簡単には同定できないようなやり方でストレージしていくという技術も必要だと思います。だから、その辺のところも十分に今後考えていかなければいけないし、課題としては大変なものがある。ただ、先進医療Bとか、それでやって、先進医療会議で検討するということの出口はいいと思いますが、そういう点では、これを扱う中核病院がどうやって決めるのかとか、拠点病院をどうやって決めるかとか、そこら辺も大変難しい問題があって、これは是非、コンソーシアムをもう少し層を厚くしても頑張ってやっていただきたいという思いがありますし、私たちの周りでもそのように話し合っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○山口座長 ありがとうございます。ほかに何か御意見はありますでしょうか。それでは、この案のとおりに、今、進めるということにいたします。ありがとうございました。
それでは、本日の議題は以上です。全体を通して何か御意見、御質問はありませんでしょうか。では、ないようですので、次回の日程を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 次回の日程については、7月13日の木曜日、16時から18時までの予定とさせていただきます。場所については、別途、御連絡させていただきます。また、本日の議事録については、作成次第、先生方に御確認をお願いして、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。
○山口座長 それでは、第59回先進医療技術審査部会を終了いたします。ありがとうございました。
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