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2017年5月12日 第2回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会

職業安定局

○日時

平成29年5月12日(金)   14時00分~17時00分


○場所

東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館
中央労働委員会 講堂(7階)


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、武田委員、松浦委員、守島委員、山田委員

【労働者代表委員】

梅田委員、小原委員、松井委員、宮原委員、村上委員

【使用者代表委員】

秋田委員、加藤委員、小林委員、高橋委員、田代委員、中野委員

○議題

・同一労働同一賃金に関する法整備について

○議事

○岩村部会長代理 定刻より若干早いですけれども、冒頭から御出席の委員の皆様、おそろいですので、始めさせていただければと思います。ただいまから「第 2 回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」を開催いたします。本日は、守島部会長が、所用のため 1 時間程度遅れていらっしゃいます。そのため、守島部会長がいらっしゃるまでの間、部会長代理の私が議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。本日の御欠席の委員ですけれども、公益代表の中窪委員、労働者代表の冨田委員です。なお、公益代表の武田委員、使用者代表の小林委員におかれましては、所用のため途中で御退席と承っております。また、使用者代表の高橋委員におかれましては、 30 分ほど遅れて参加されるということです。

 それでは、事務局から定足数の御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 報告いたします。労働政策審議会令第 9 条で定める委員全体の 3 分の 2 以上の出席、又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数が満たされておりますことを御報告申し上げます。

○岩村部会長代理 ありがとうございました。それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきたいと思いますので、御協力をお願い申し上げます。

 では、議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第を御覧ください。本日は、前回に続きまして、資料 1 「論点 ( )( 短時間労働者・有期契約労働者関係 ) 」の論点 3 「行政による裁判外紛争解決手続の整備等」、及び論点 4 「その他」について議論いただきたいと考えております。また、その後の残りの時間で論点 1 「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」、及び論点 2 「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」につきまして、前回に引き続き何か御意見、御質問等がありましたらお願いしたいと考えております。

 まずは、事務局から資料と前回の確認事項につきまして御説明をいただき、その後、今、申し上げましたそれぞれの議題につきまして、御議論を頂戴したいと考えております。それでは、事務局から資料につきまして御説明をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御説明申し上げます。本日は、資料 1 から 3 までの 3 点の資料を配布しております。まず、資料 1 です。前回、 4 28 日の回に引き続きまして「論点 ( )( 短時間労働者・有期契約労働者関係 ) 」というものを配っております。内容は、前回御議論いただきました論点案と同じものです。本日は、前回に引き続きまして四角の 3 番、四角の 4 番を議論したいと思っておりますので、改めて四角の 3 番、四角の 4 番につきまして、内容を説明します。

3 ページからです。四角の 3 番、行政による裁判外紛争解決手続等であります。働き方改革実行計画の該当部分を、この四角の中に抜粋しています。その上で、矢印で、これを受けました事務局としての提案を記載しております。最初の矢印ですが、現在のパートタイム労働法におきまして、一定の行政手続の規定があります。前半の 4 行ほどで現行法の説明をしております。短時間労働者につきましては、行政が必要と認める場合、法律的にはもう少し正確に申しますと、「短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため、必要があると認めるときは」となっておりますが、報告徴収・助言・指導・勧告ができるという規定がまずございます。その上で、さらに具体的に何条に関してという形で、対象を特定して公表の規定があります。また、行政 ADR の仕組みとして、同じくパートタイム労働法におきましては、労働局長による紛争解決援助や調停の規定が設けられております。調停というのは、都道府県労働局ごとに弁護士会さんなどに御協力をいただき、調停委員を弁護士の先生等になっていただいている。その先生に両当事者の言い分を聞いていただいて調停案を作っていただく、こういうプロセス、手続が設けられております。現在、有期契約労働者につきましては、労働契約法におきまして、このような行政組織的な規定がありませんので、提案としては、短時間労働者と併せて有期契約労働者についても、パートタイム労働法の諸規定を移行・新設することにより、行政による履行確保措置の対象とするとともに、行政 ADR が利用できるようにしてはどうかとしております。

 次の「なお」という矢印です。これは、今の矢印で申し上げたことのもう一段細かい運用の話です。パートタイム労働法の現在の仕組みをもう少し詳しく申し上げますと、現在、均等待遇の規定、つまり、職務内容や職務内容配置、変更範囲が同一であるという場合は、差別的取扱いをしてはならないという規定につきまして、報告徴収・助言・指導・勧告の対象として、実際にも運用対象としておりますが、一方で、均衡待遇規定につきましては、現状では、法律上は雇用管理の改善のため必要があると認めるときでカバーをされておりますけれども、運用としましては報告徴収・助言・指導・勧告の対象としておりません。これにつきまして、今回の提案としては 4 行目からですけれども、均衡待遇規定に関しても解釈が明確でないグレーゾーンの場合には、引き続き、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方、解釈が明確な場合というのを均衡待遇の中で取り出し、そのような場合には報告徴収・助言・指導・勧告の対象としてはどうかという提案としております。

 また、 4 ページですが、その際は、均衡待遇規定については、従来通り、公表の対象とはしないとしてはどうか。また、行政 ADR につきましては、これも、現在均等待遇に関する案件を行政 ADR の対象にしているという仕組みにしていますが、均衡待遇についても、幅広く対象としてはどうかという提案をしているところです。

 四角の 4 番、その他です。現行のパートタイム労働法におきましては、 1 番から 3 番までに取り上げませんでしたやや細かめな規定が設けられています。例えば、国がパートタイム労働施策の基本方針を策定するとか、就業規則の作成・変更にあたって、労働基準法で求められております全体の代表の意見聴取の義務とは別に、パートタイム労働者の代表の意見聴取の努力義務といったもの、また、通常の労働者への転換に関する規定、例えば、正社員を募集する際に、こういう募集をするということをパートタイマーの方に周知していただくという規定などがあります。これらにつきましては、現在パートタイム労働法に基づいて、パートタイム労働者のみに適用されているわけですが、有期契約労働者に現在規定している労働契約法においては、このような規定がないところです。

 今回、パートタイム労働者と有期契約労働者について、雇用形態を横断的に様々な形で待遇改善を図ってまいりたいという趣旨から、事務局の提案としましては、これらパートタイム労働法に基づく規定について、有期契約労働者も対象としてはどうかという提案をしているところです。資料 1 の説明は以上です。

 続きまして、資料 2 です。これも前回提出しました資料とほぼ同じですが、 1 点、 11 ページです。 11 ページに点線で 4 つに区分している一番下の区分で、都道府県労働局雇用均等室が行った是正指導という欄があります。この部分を、前回の資料から追加しております。前回、委員からの御質問で、パートタイム労働法に基づく説明義務の諸規定について、実施状況、労働局における是正指導条件についてお尋ねがありましたので、平成 27 年度の是正指導件数を掲載したものです。第 6 条、雇入れ時の労働条件の文書交付に関して是正指導 6,343 件、第 14 条第 1 項、雇入れ時の待遇に関する措置内容の説明に関してが 3,982 件、それから、第 14 条第 2 項、雇い入れられた後、パートタイム労働者の方から求めがあった場合の待遇に関する考慮事項の説明義務に関して 9 件、という施行実績です。

 それから、資料 3 です。これは、前回提出した資料の中で同一労働同一賃金に関する検討会の 3 月の報告書と、 12 月の中間報告を配りました。 12 月の中間報告の中で参考資料として本来付いておりました検討会の各委員の先生の、お一人お一人の専門的見地からの意見集を添付しておりませんでしたので、今回、その部分を改めて配っているものです。 1 ページ、川口先生に始まりまして、検討会委員の先生方が、この前に付いております中間報告、本文とは別にそれぞれの先生のお考えに基づく御意見を述べていらっしゃるペーパーです。資料の説明は以上です。

○岩村部会長代理 それでは、先ほど申し上げました進め方に従いまして、まず、論点 3 の行政による裁判外紛争解決手続の整備等につきまして、御質問や御意見などがありましたら、お願いしたいと思います。

○梅田委員 均等・均衡待遇規定を行政ADRの対象とすることに関し、意見を申しあげたいと思います。労働者にとって待遇の差に関する紛争の解決の選択肢が増えることに異議はありませんが、待遇差の違法性・適法性に関する最終的な判断は、やはり行政ではなく、裁判所でなされるべきだと私は思います。均等・均衡待遇規定を行政指導や行政 ADR の対象とすることで、裁判に訴えにくくなるような仕組みにはすべきではないという意見です。以上です。

○岩村部会長代理 ありがとうございます。御意見ということで承るかと思います。では、他はいかがでしょうか。

○中野委員 今、梅田委員の方でおっしゃられたことと、同じかもしれませんが、パートタイム労働法の労働局長による紛争解決援助や調停規定を有期契約労働者にも対象とすることについて異論はありません。ただ、その前提としまして、労働紛争に至る前に労働紛争が起こらないようにする労使の話合い、これが大前提で絶対必要だと思います。

 均衡規定については説明義務等の行政手続と異なり、不合理性の判断について、厳格な法的解釈が求められると考えます。なぜならば、不合理か否かの判断につきましては、個別の事情ですとか、個別の解釈の違い等が大きく関わってくると思うからです。だからこそ、梅田委員もおっしゃいましたが、裁判官が個別紛争ごとの証拠による事実認定をきちんとして、不合理性の解釈を行って、初めて判断可能と考えています。

 ネット上で過程の議論を含まない最終的な事象のみがいたずらに流れるということもあります。裁判所の判断であっても、ネット上では、様々な意見が書き込まれる時代ですから、余計に裁判所等が判断すべきと考えます。

 均等規定につきましては、もちろん行政指導の対象ではありますが、法的要件は先ほど説明があった通り、職務内容や職務内容配置変更の範囲が同一になったうえで事実認定をすれば足りることだと思っています。

 均衡規定につきましては、職務内容の違いと待遇差の違いのほかに、労使交渉における経緯もあり、その他の事情がこの後、議論になると思いますが、それらが加わった上で、総合的に不合理か否かの判断が求められると思います。

 ガイドラインにより均衡待遇が不合理か否かを予見できる、そういう期待ももちろんありますけれど、誰もが納得できるケースは少ないのではないかと思います。したがいまして、均衡待遇につきまして、厚生労働大臣、労働局長がガイドラインに基づき、事業主に助言・指導・勧告、こちらを行うことについては反対いたします。

 例えば、調停委員の先生が弁護士であるケースもありますが、裁判官ではありませんので、不合理か否かという規定の要件を判断できないのではないかと思います。よって調停委員が、助言・指導・勧告することにつきましても、同様に反対させていただきます。以上です。

○岩村部会長代理 他にはいかがでしょうか。

○加藤委員 基本的には私も賛成の立場で異論があるわけではないのですが、これは事務局の方に教えていただければと思います。現行のパートタイム労働法の規定の中にある、紛争解決援助や調停という部分がどの程度利用されているのか。その辺りが分かれば教えていただきたいと思っております。

 特に、働き方改革の実行計画では、身近に無料で利用できるというような言い回しになっております。具体的に、これまで短時間労働者の方々の中で、どのような利用実態だったのか、それに伴っての周知をどのような形でされてこられたのか。例えば、件数とかまで分かればですが、今後、有期契約労働者の利用を考えていくに当たっては、参考になると思いますので、もし教えていただける部分があれば、お願いできればと思います。以上です。

○岩村部会長代理 それでは、事務局の方でお答えをお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。

○河野短時間・在宅労働課長 お答えします。現行パートタイム労働法に基づく、労働局長による紛争解決援助ですが、過去 2 年間を御紹介したいと思います。平成 26 年度が 2 件、平成 27 年度が 1 件です。また、調停に関しては、平成 26 年度が 1 件、平成 27 年度が 0 件です。紛争解決援助や労働局長による援助に関しては、特別にパンフレットなどを作り、労働者の皆さんをはじめ、周知に努めているところですけれども、引き続き努力していきたいと思っております。以上です。

○加藤委員 ありがとうございます。件数で 1 件、 2 件というようなことなのですが、これは事務局の方としては、実態として利用の有効性や効果は、その制度との絡みでどうお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

○河野短時間・在宅労働課長 パートタイム労働者の方で、なかなか紛争解決援助を求めたいというところまで至る方が、これまでの実績から見ますと、そんなに全国的にも多いというわけではありません。ただ、裁判で訴える前の簡易な手続で紛争を解決できるという仕組みは、労働者の方にとっては、個々の事案を見ますと、非常に労働局のこの制度の仕組みがあったからこそ、労使の紛争が解決したと言えるわけですので、引き続き制度としては非常に重要だと思っておりますし、周知というものは先ほどと重なりますけれども、引き続き努力していきたいと思っております。

○岩村部会長代理 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。その他にいかがでしょうか。

○小原委員 今の加藤委員の御発言は、パートタイム労働法に基づく行政ADRの利用件数が少ないから不要なのではないかとも聞こえたのですが、件数が少なくても機能を果たしているのではないかと思います。むしろ、必要性があるのに労働者が利用できていない実態がアンケートなどで出てきたのであれば、周知を徹底したり、利用しやすいように工夫をしたりしていくことこそが必要なのではないかと思います。また、今回、事務局からは、均衡待遇規定や、有期契約労働者の方についても行政ADRの対象とするというご提案があるわけで、対象件数が増えることも考えられますので、行政の体制整備と併せてお願いしたいと思います。以上です。

○村上委員 先ほど中野委員から、均衡待遇規定は労働局の助言・指導・勧告の対象とすべきではないという趣旨のご意見がありました。私も、均衡待遇全てが行政指導の対象にはなりづらいという理解はいたしますが、しかし、例えば、パートタイム労働者だからとか、契約社員だからという理由だけで、通勤手当を支払わないとか、危険手当を払わないとか、そういったことは、明らかに認められない待遇差であり、解釈が揺らぐものではなくて明確化できるのではないかと思います。いま申し上げた雇用形態を理由とする待遇差の訴えは、連合の労働相談にも寄せられています。例えば、パートには慶弔休暇がないとか、雇用形態が違うから、通勤交通費は支払われないといった相談です。

 法改正が実現し、その後、ガイドラインも示されていくことで、多くの企業では法改正の内容が周知され、ガイドラインなどを参考にしながら、労使の話合いの中で納得性のある処遇が作り上げられていくのだろうと思います。しかし、それでもなお、法改正の内容やガイドラインの中身がよく分からないといったような企業も、一定程度存在してしまうのではないかと思います。そういった企業を中心に、行政による助言・指導・勧告の対象としていくことは必要であると思います。また、行政ADRの仕組みに乗せていくことも重要であると考えております。以上です。

○岩村部会長代理 ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。

○松井委員 今の村上委員の発言と重なる部分はありますけれども、均衡待遇規定の中でも「解釈が明確な場合」については、行政による助言・指導・勧告の対象とすることに賛成したいと思っております。さらに、誰の目から見てもはっきり違法であると分かる待遇差であれば、均等待遇規定の場合と同じように、公表の対象にした方が法的にも分かりやすいと思います。公表する場合というのは、勧告を何度もしても従わない場合という、かなり悪質な場合だと思われますので、制度としてそろえた方が分かりやすいですし、効果もあるのではないかと思います。以上です。

○岩村部会長代理 ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。冒頭の梅田委員の御意見について若干コメントします。今回の議論になっている行政 ADR とか行政による助言・指導・勧告、あるいは公表といったものは、別に個々の、例えば、パートタイマーの方、あるいは有期雇用の方が裁判に訴えて、自分の権利主張をするということを妨げるものでは全くありません。

 行政 ADR を利用するかどうかというのも、もちろん、これは使用者側で利用できるわけですけれども、労働者側も御自身の選択によって使えるというものでありますので、逆に、特に個々の労働者の方側からすると、何か自分が問題があると考えたときに、その問題を解決するための手段として、実はいくいくつかの選択肢が用意されているということです。

 一番簡易なものとしては、労働局長の助言とか指導というものを求める糸口を、行政の側に求めるということもあるでしょうし、そこからさらに場合によっては、それを通らずに行政 ADR の方に行くということもあるでしょう。さらに今現在であれば、個別紛争を扱っている労働委員会に行くこともあれば、労働審判に行くこともあるでしょう。

 さらに労働審判も飛ばして、最初から本訴でやることも可能です。そういう意味では、使用者側にとってもそうでありますが、特に個別の労働者にとっては、何か問題が起きたときに、その紛争を解決するための、あるいは権利主張をしていくための窓口の選択肢が、今回、仮に事務局の御提案のような形にすると、パートについてもそうですし、有期についてもそのチョイスが広がるという趣旨だと御理解いただくのがよろしいかなと思っております。

 別に、裁判所に、あるいは労働審判にいきなり行くとか、裁判所の本訴にいきなり持って行くということが、今回、こういう形でもって、パート労働法のものを拡大したとしても、妨げられるという性格のものではないと私は理解しております。

○松浦委員 質問というか念のための確認です。前回の会議の最後に、お話させていただきましたが。均衡というのはグレーゾーンが大きいわけですが、少なくとも現在御提案いただいている報告徴収・助言・指導・勧告の対象としようとする均衡の内容については、明らかに誰が見ても分かる解釈というか、内容が特定されるという理解でよろしいでしょうか。

○岩村部会長代理 では、事務局の方でお答えをお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 現在、パートタイム労働法にあります助言・指導・勧告の規定は、法律の仕組みとしては「雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは」という、かなりオールマイティに発動できるような条文になっているところ、均衡については行わないように運用しているものが、まず、今の法律と運用の仕組みです。

 それで今回の御提案ですが、先ほど委員からも御指摘がありました点、私どもも検討の中では意識をしているつもりです。均衡に関しては、特にその職務内容は違う、職務内容や配置変更範囲、その他の事情が違うことによって、例えば 100 70 の待遇差があるときに、これが不合理に当たるのかどうか。 100 60 ならどうか、 100 80 ならどうかというような、ある種グラデーションの問題に関しては、これはその行政がパッと入って、パッと判断するというようなことにふさわしいものではないだろうと、引き続き、考えております。

 一方で、均等待遇規定は、職務内容と職務内容配置変更範囲が同じ場合には、待遇においても同じにしてくださいと、ある種、要件を絞って強い効果を持たせた規定ですが、その強い規定に当てはまるケースばかりとは必ずしも限らない。世の中の多くは、むしろ均衡待遇規定の方に入ってくる待遇差が多くあります。

 そういったことを考えますと、均衡待遇規定でカバーする中で、そこでカバーされるのですが、待遇差についてグレーというよりクロの領域と評価せざるを得ないようなケース、例えば、ここで 1 つ決め打ちに、ファイナルアンサー的に申し上げるということではありませんが、 1 つの例として考えられるのは、やはり、ある所で通勤手当がそのパートさんには出ていないと。出ていないだけではなく、その事情を会社にお聞きしたところ、「いや、正社員ではないからです」というような、雇用形態のみが理由であるようなお答えだったケースがあったとします。法律が求めておりますのは、職務内容や職務内容変更範囲、その他の事情で待遇差が不合理であってはならないということですので、雇用形態だけということですと、これはちょっと行政としても放置をするべきではないのではないかというケース、そういったものが取り出せるのではないかと思っております。

 いずれにせよ均衡待遇に関しては、御意見のような点、その行政の恣意的裁量にわたってはならないという点は、私どももしっかりと認識をした上で、運用の検討をしていきたいと思いますが、基本的な私どもの方向性としては、例えば雇用形態が理由であるというような均衡の中での対象をはっきりさせるとして、運用することとしてはどうかという御提案を申し上げている次第です。

○岩村部会長代理 松浦委員、よろしいでしょうか。

○松浦委員 はい、ありがとうございます。

○山田委員 まさにその均衡待遇が外れたときに、それを公表の対象とするかどうかということなのですが、もともと均衡自体が先ほどの事務局の御説明にあったように、曖昧な部分が今の段階ではある。これは結局、ガイドラインのところで出てきたことで、そこでどの程度、明確なもので出てくるかということとの関係だと思うのです。それで判断していくという話になってくるのだと思います。

 もう 1 つは、 1 つの提案というか、これは色々と考え方があると思うのですけれども、最初はそういう意味では、なかなか均衡がどこまでというようなグレーゾーンがあるということであれば、実際にその公表というものを若干、一定程度、遅らせるような形にしていく、状況を見ながら出していくというようなこともあり得るかなと。

 ただ、最終的にははっきりしたものが出てくるのであれば、当然これはもともとの法の効力ということを考えますと、やはり最終的には対象にしていく事務局案は、大枠でいいのではないかと私は思うのです。ただ、もともとの均衡という概念の曖昧性ということを考えたときに、一定程度の方法の猶予ということも考えてもいいのではないかという意見であります。  

○岩村部会長代理 ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。

○高橋委員 遅れて来て申し訳ありません。途中から聞いているので理解が正しくないのかもしれませんが、今の均衡待遇に関する助言・指導・勧告等に関することについて申し上げたいと思います。

 やはり既に色々と御発言がありますように、均衡待遇がなされているかどうかということは、 3 要素を総合的に鑑みながら個別の事情に照らして判断していくものでありますので、先ほど事務局から御説明があったように、雇用形態が違うから支給していないといった、誰が見ても明らかに不合理だというようなものでしたら、それは理解しますけれども、それ以外のものについて、個別の事情に照らさないで、全く即座に行政官等が判断できるというものは限りなく少ないのではないかと思うのです。ですので、今の事務局の提案ですと、その辺りがちょっと不明確で、先ほどの御説明の例は理解しますけれども、それ以外の例として、どのようなものがあるのかというのが非常に分かりにくいものであります。

 したがいまして、もし仮に助言・指導等を行っていく場合でも、いくつかのサンプルを出していただいて、なるほど、その行政が考えているのは、そういうところについて、その行政が関与し得る、それ以外のものについては関与し得ないというような、何かイメージが分かりませんと、抽象的に議論してもよろしくないのではないかと判断します。もし、あまり抽象的にしか考えておらず、具体的に特定できないのであるならば、仮に助言・指導・勧告等を入れる場合でも限定化をしていくことが望ましいのではないかと思います。

 また、先ほど労側の委員から、公表なども均等待遇に合わせていくべきではないかという意見がありましたけれども、それだけ抽象的なものと、それから均等規定のように明確な要件の事実認定をしていけば、自ずと判明していくものとそろえていくことは相容れないのではないかと思っております。以上です。

○岩村部会長代理 ありがとうございます。今のは御提案ということでよろしいですか。

○高橋委員  1 点目の質問といいましょうか、雇用形態を理由とする不支給以外に、今、行政として考えている均衡規定に関して、助言・指導・勧告をし得るような例があるのかどうか。もしあれば教えていただきたいと思います。

○岩村部会長代理 では事務局、お願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の点ですが、この問題につきましては私ども検討の仮定でこういうケースがまずあるだろうと、これを対象にすべきではないかと思いましたのは、まさに雇用形態を理由とする不支給が見られるようなケースです。本来、法律の趣旨が浸透していきましたら、そういった答えが返ってくること自体がなくなっていってほしいことではありますが、現状では少なからずといいますか、決してないとは言えない状況であると思っております。

 それ以外にケースがあり得るかどうかにつきましては、現在、具体的にこういうケース、こういうケースというものを持っているわけではありませんが、雇用形態を利用とする場合というのは 1 つあるだろうと思っています。この問題は現在の法律に照らしても「雇用管理の改善のため必要があると認めるときは」という文言の運用として、その縛りを掛けているというものです。

 また今回の御議論に加えて、今回の法改正の今後の流れとしては、法律が国会で成立を仮にしたならば、今度はその省令事項などを御議論いただく場をお願いする必要があると思っております。そういった場も含めて対象について、できるだけ非正規の方の待遇を改善することに資する一方で、その行政による恣意的な裁量というような批判を受けないような形を、また改めて議論させていただければと思います。

○岩村部会長代理 高橋委員、よろしいでしょうか。他にはいかがでしょうか。

○村上委員 まず、先ほどの松浦委員と事務局とのやり取りについて確認したいと思います。松浦委員が御発言されたのは、資料 No.1 3 ページでいえば、一番下の矢印にある、均衡待遇規定を「報告徴収・助言・指導・勧告」の対象とするかどうかという御質問であって、事務局からはその回答があったという理解でよいでしょうか。つまり、紛争解決援助や調停の利用については均衡待遇規定も対象とするということは論点になっておらず、そこは対象にすると理解しています。

 次に、論点案には書かれていないのですが、今回の法改正で説明義務を強化する中で、現行のパートタイム労働法では第 14 条の説明義務規定は報告徴収・助言・指導・勧告などの対象とされているところ、法改正後も引き続き対象となる理解でよいのかを確認したいと思います。

 それからもう 1 点、高橋委員から均衡待遇規定は解釈が明確ではない場合もある中で、いきなり行政が指導するのかという趣旨の御発言もあったのですが、事実として現在、労働者から、こういう手当が支給されていないとか、こんな待遇差があるというような相談が行政にあった場合に、行政はいきなり事情も聞かないで助言・指導をするような運用となっているのか。どのように報告徴収したり、助言・指導しているのかということについて、実務的な運用を御説明を頂ければと思います。

○岩村部会長代理 では事務局、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 運用に関しましては、もし不足がありましたら後でお願いしたいと思いますが、まずは、ちょっと順番があれですけれども、助言・指導・勧告の運用につきましては、最初から権限行使というよりは、当然その事情をお聞きし、最初には助言を行って是正をお願いする。それでもうまくいかないときに、指導なり次のステップに移っていくという形です。

 例えば、本日、追加でお配りした資料 2 11 ページの中で、現行のパートタイム労働法の説明関係の規定の是正、指導状況がありましたが、例えば、第 6 条の関係で 6,300 件、助言を指導しているとありますが、この 6,300 件に対して助言をしまして、そこから次の指導に行っているのが 100 件ぐらいであったかと記憶しております。

 ですので、このパートタイム労働法の説明義務の関係は何か意図的に、悪意を持って批判しているというよりは、規定そのものが知られていなくて、うまく履行されていないということが実態として多いのかなと思っております。いずれにせよ、そういう手順を踏んでやっております。

 また、 1 点目のお尋ねでした均衡待遇の、法律でいうと第 18 条の行政による能動的な助言・指導・勧告と、それから紛争解決援助の章の中にある受動的な助言・指導ですが、先ほど松浦先生との関係でお答え申し上げたのは、能動的な指導の方をお答えしたという意識でおります。

 受動的な紛争解決援助につきましては、提案申し上げております事務局の気持ちとしましては、紛争解決援助の中の助言・指導は、能動的な法律の規定に照らした助言・指導とは、また少し趣きが異なると言いますか、当事者から訴えがあって、その解決を促すための助言・指導です。例えばこういった相談を御社の方から受けておりまして、 1 つ話し合ってみてはどうですかというようなものも、この紛争解決援助の中の助言には含まれます。

 好例としては他法令ですけれども、個別労働紛争解決促進法という、こういった均衡以外の、いわばよろず労働相談を受け付ける紛争労働行政 ADR の仕組みがありますが、ここでは、例えば、就業条件変更法理に関する相談ですとか、解雇権濫用法理に関する相談などもお受けしておりますが、その際に行っている助言というのは、その法律の規定に照らしてどうこうというよりも、話合いを促したり、あるいは、もし御存じない場合には、その就業規則変更法理に関する過去の裁判例の情報を差し上げたりというようなことをやっております。そういった紛争解決援助の中の助言・指導・勧告、それから調停につきましては、最終的な行き着く先が、調停委員の先生による調停であるということも合わせて、均衡待遇全体を紛争解決援助の受付はさせていただきたいと思います。

 また、調停の仕組み、行政での仕組み全体がそうですが、例えば、調停に対して出頭する義務ですとか、出てきた調停案を受諾する義務といったものがあるわけではなく、あくまで両当事者の任意によって解決を受け容れるかどうかを決める手続であることも申し添えさせていただきます。私からは以上です。

○岩村部会長代理 あとはよろしいですか。村上委員に対しての質問、今ので全部お答えいただいたということで、よろしいですか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 失礼いたしました。現在のパート法の規定におきましても、説明義務違反は、助言・指導・勧告・公表の対象となっております。そこは今なっているものを外すということはないだろうと思っております。

○岩村部会長代理 村上委員、よろしいですか。では、秋田委員どうぞ。

○秋田委員 事務局に御確認したいのですが、労働局長による指導等が行われた場合の公表は、これはすべからく指導が行われたイコール公表なのですか。それとも労働局長が公表するか否かを判断するとか、何かあるのでしょうか。

○岩村部会長代理 では事務局、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律上は助言・指導・勧告の規定がまずありまして、その中で特に勧告の中でも何条違反、何条違反というものの条項を特定しまして、その特定された何条違反に関する勧告に、さらに従わない場合は公表というように、助言・指導・勧告までの対象と、公表の対象は法律上も明確に区分されております。

○岩村部会長代理 よろしいでしょうか。

○秋田委員 そうしますと、今回のこの法律が施行されると、先ほど来、通勤手当という、ものすごく分かりやすい例が出されているのですけれども、企業としては通勤手当だけ直せばいいということにはならないわけですね。当然ながら賃金制度設計全てを本法に合わせた形で見直していく、総合的にそれによって労働組合と労使協定を結ぶ、あるいは就業規則を全面的に書き換えて、作り直すというような作業が必要となるわけです。

 そうすると、その通勤手当だけ先に直しますということに、多分ならないのですよね。そうすると、今、直している最中ですけれども、通勤手当だけは現状の就業規則のままになっていますと。こういうことでも当然、指導されて、払いますということにはなるのですけれども、そういう事情の勘案をきちんとしていただかないと、勧告したからイコール公表だとか言うと、まるで企業が何もしていないという誤解を生む。

 今回の同一労働同一賃金の関係は、これもまた後ほど発言の場があれば申し上げますけれども、企業の雇用区分そのもの、あるいは今までの、どちらかと言うと、生活賃金に応じたような賃金制度そのものを全て見直さないと、なかなかきちんと対応できない。そのためには手順、手続、労使合意に、相当の時間がかかりますので、これは施行の期間、あるいは諸々の関連事項も含めて、是非御配慮いただかないと、適切な対応ができないのではないかと思います。

○岩村部会長代理 事務局、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 非常に重要かつ難しい御指摘を頂いたものと思います。これは行政として、民事法の規定の解釈にも関わりますので、これはこのように解釈されるものだと、明確な形でお答えはしにくいのですが、一般論として、今のような、まさに社内でその話合いが行われて、賃金制度の見直し途上であるというような時点で紛争が起こったとき、あるいは類似かもしれませんが、見直しが一応労使でまとまって、例えば 3 年計画で非正規の方に対してこういうものを適用していこうとやっている、その途上の年度に起こったときにどうなるかというのは、 1 つの論点であると思っております。

 最終的には、その現行法のパートタイム労働法あるいは労働契約法が、今、既に均衡待遇規定ルールをもって施行されておりますので、まさに今、紛争がある手当について起こったらどうなるかということにもなるわけですが、これは必ずそうなるという根拠はありません。ただ、職務内容、職務内容配置変更範囲に加えて、その他の事情という考慮要素が法律にはあります。これは個々の事案ごとに、様々なものを司法の場でも読み込まれております。労使協議の経過がどうだったかといったことを、その中で考慮している事案もあると承知しております。そういった中で、見直しの途上である、あるいは経過的に直していく途中経過であるというような場合が、その他の事情の中で考慮され得る、そういった判断をされる可能性はあるのではないかと思います。

○岩村部会長代理 よろしいでしょうか。今のは非常に、前回の議論とつながるところであり、たまたま今日はテーマが紛争解決と助言・指導といったところになっているので、秋田委員の御質問はその角度からだったのですが、実は労働者がいきなり裁判所に持っていきますと、同じ議論になるのです。

 つまり、使用者側としては、「いやいや、今、通勤手当を取り上げられているけれども、実は社内で労使交渉をやって、 3 年計画で通勤手当その他全部も含めて、是正することになっているのです」という主張をしたときに、裁判所がそれで認めてくれるかですね。今、払えということには必ずしもならないと考えたとしても、そういう判決が書けるかどうか、ちょっと私も自信があまりなく、そこは詰めて考えなければいけないのです。いずれにせよ、そういう主張が、例えばいきなり裁判所に持って行かれたときに、採用してもらえるかという、そういう議論になると思いますし、むしろ、そちらの方が本来議論すべき問題だろうとは思います。

 行政の方はむしろ、どういう形で助言・指導するかという観点から言えば、ある程度の裁量権というものは当然ありますので、そこは裁判所と違うところなので、したがって、あくまでも仮定の話ですが、いわば全体としての賃金の再調整をやっているところですということであれば、これはその他の事情ということで、それを踏まえた上での助言・指導ということが行政の方で行うことを考えることになるのかなとは思います。

 むしろ厄介なのは裁判所に持って行かれてしまったときで、こちらの方が難しいことになるかという気がいたします。つまり、「いやいや、今、労使交渉で 3 年計画でやっているのです」ということで、例えば、先ほど来、話題になっている通勤手当を払えというのは、請求棄却ということになるのかどうかですね。そこは非常にクルーシャルな問題だと思います。

 今日は司会の立場なのであまり好きなことは話せないという、非常に不便さがあるのですが、ちなみにですが、通勤手当は有期契約であれば労契法 20 条によって、「あなたは有期契約ですから、通勤手当は払いません」というのは現行法でもアウトです。今、議論しているのは将来こうなるという話ですが、通勤手当については将来こうなるという話ではなく、現在においても基本的にアウトだということだけは、ちょっとコメントさせていただきたいと思います。他はいかがでしょうか。

○高橋委員 例えば、実際に取られている運用の 1 つでもあるのですけれども、いわゆる正社員に対して、幹部候補人材を幅広く地域から採用したいということから、新幹線通勤を認めてお支払いしていますと。しかしながら、非正社員については、新幹線通勤は残念ながら認めておりませんみたいな事例に対して、通勤手当ということだけを見て、個別の待遇については個々に照らして見ていくみたいなことと関連するのですけれども、それが果たして不合理かどうかというようなことについて、行政が助言・指導・勧告などを、そもそもできるのかなという気もしております。

 先ほど雇用形態でも、極めて典型的な雇用形態を理由とする不支給というのは、非常にそれはその通りだと思いますけれども、個々の事案を見ていけばいくほど、なかなか助言・指導・勧告を、本当に行政官ができるのかなという、非常にクエスチョンマークが付くのですけれども。

○岩村部会長代理 事務局の方、何かリアクションはありますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 様々な事案を想定すれば、基本給でも手当でもクエスチョンマークが付く、つまり論点の資料の表現でいえばグレーゾーンに当たると解した方がいいだろうということは、通勤手当や食事手当に関してもあり得ると思います。

 御提案申し上げているのは、そういった個々の中身の割り振りといいますか、何をもって明確かというかについては、もう少しこの第 2 段階も含めて、議論させていただければと思います。少なくとも典型的な事例として、グレーとはむしろ言えないだろうと、クロに入り込んでいるといわざるを得ないだろうという、雇用形態論みたいなこともあるのではないかという考えから、一定の線引き、明確性の線引きの中で、助言・指導をさせていただきたいという提案です。

 通勤手当についても個別の事案によっては、様々なグレーゾーンにあり得るケースがあることは御指摘の通りだと思います。

○岩村部会長代理 高橋委員、よろしいでしょうか。他はいかがでしょうか。

○村上委員 均衡待遇規定を行政指導などの対象にすることについて色々なやり取りがありましたが、使用者の方の中には、この部会に出席されている使用者側の皆さんのような立派な方ばかりではなくて、連合の労働相談にパートタイム労働者には年次有給休暇はないとか、産休はないのだという訴えが労働者から寄せられているように、法律の理解が十分ではない使用者も一定程度いるわけです。そうしたときに、雇用形態が違えば待遇も違っていいのだというような誤解があることは間違いないわけで、そういうことをどうやって是正していくのかというのが、この議論だと思っております。

 確かに、先ほど使用者側から発言のあった新幹線通勤のような事案もあるかとも思いますが、そうした待遇差は単純に「非正規雇用だから」という理由で説明されるのではなくて、正社員の方に支払っている分は、今でも貢献度や拘束性、不規則な勤務をされている、更には責任といったことの違いに応じて支払われているのではないか。負担が軽い方などについては支払わないといった理由があるはずなのです。その理由が合理的で、きちんと説明されていることが重要であると思っております。

 労働側も、均衡待遇規定のすべてを行政指導の対象とすべきということを言っているわけではなくて、パートタイマーだから、派遣社員だから、契約社員だからということで設けられている待遇差は、是正していく必要があるのではないかと考えています。

○岩村部会長代理 ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。若干、公表のところについてコメントをしておきますと、今日の事務局の方からの御説明では、均等待遇については現行のパート法がそもそも公表について定めを置いているということがあって、それを有期契約にも広げましょうという、そういうお話でありました。

 他方で均衡の方については、公表までは考えないという御説明だったと思います。これは極めて法的なテクニックの話になるのですが、法律上、公表というものを規定していますと、おそらくこれは行政処分ということになって、というのは公表することによって、公表された側に一定の不利益が発生することがありますから、行政処分ということになって、訴訟で公表された側は争い得るということになります。

 しかも実は、公表されてしまってからでは遅いので、公表される前に差止めを掛けるとか、あるいは勧告が出たところでもって取消訴訟を起こすとか、そういうことが実際、考えられるということになります。その点、実は均衡の方は先ほどの御議論を受けますと、やはりグレーゾーンがあってということで、なかなか難しい問題があります。その中で公表までも規定の中に含めてしまうと、行政としては実は勧告を出すのもかなり慎重にやらないといけないことになってしまうだろうと思われます。

 つまり勧告を出した時点ですぐに訴訟が起きてくる可能性があるので、そこを争われることになると、勧告そのものの適法性を、そこで行政としてはきちんと確保しなくてはいけないことになるので、かなり実は勧告を出すこと自体に、抑制力が働いてしまうという可能性があります。その辺を、特に均衡待遇についてはどう考えるのか、そういう論点が法テクニック的にはあるということだけコメントさせておいていただきたいと思います。

 それでは、部会長が到着されましたので、私はここまでとさせていただいて、後は部会長にお任せしたいと思います。

○守島部会長 すみません、遅れまして申し訳ございませんでした。

再開いたします。 3 番の議論ですね、どなたか意見はありませんか。大体出尽くした感じですか。よろしいですか。ありがとうございます。

 次に、論点 4 「その他」について、皆様方から御意見等がおありになれば、まず御発言いただきたいと思います。

○宮原委員 現行のパートタイム法第 7 条の、就業規則の作成・変更時の意見聴取に関する努力義務規定は、パートタイム労働者の過半数を代表する者からの意見を聞くという法律の立て付けとなっています。パートタイム労働者の方の就業規則の作成・変更の時に当事者の意見を聞くということは非常に重要であると思うのですが、その方法が雇用形態ごとに細切れで意見を聞くことが果たして適当なのかは疑問が残ります。加えて、現行の過半数代表者の選出方法についても課題があるということも、申し添えたいと思います。

 なお、パートタイム労働法第 7 条の運用状況について、行政としてどのような認識があるかどうかお教えいただければと思います。

○守島部会長 今のは質問と捉えてよろしいですか。では、事務局からお願いします。

○河野短時間・在宅労働課長 現行のパート法第 7 条の運用状況ですが、第 7 条に関しまして、助言等を行った件数について、平成 27 年度は 3,511 件です。

○守島部会長 よろしいでしょうか。他に何かありますか。

○秋田委員 その他の色々な項目がある中で、通常の労働者への転換という部分があるのですが、これは論理的な話としてお尋ねしたいのですが、当該事業場では対象となっていない転換のケースは当然ながらここには含まれない。分かりやすく言うと、九州工場の正職員を転換させようとして九州工場の正職員ではない労働者に対して説明をし、募集をするという行為を、同じ企業だからといって北海道にいる有期雇用者に知らしめるのはもともと対象外なので、不要なのですね、ということの確認です。よろしくお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 現在のパートタイム労働法の第 13 条の規定でこの通常労働者の転換の規定がありますが、この第 13 条では措置を 1 号から 3 号まで挙げまして、いずれかの措置を講じてくださいという規定になっています。その中の例えば第 1 号で申しますと、転換推進の措置というのは具体的な通常労働者の募集を行う場合に、その募集に関する事項を、当該事業所に雇用する短時間労働者に周知することとなっておりますので、実際問題としても、北海道工場のパートさんが九州工場の正期職員に応募することは考えにくいということもありますし、また法律もそうしたことを踏まえた規定となっております。

○守島部会長 よろしいですか。他にどなたかありますか。

○高橋委員 今の通常の労働者の転換について、有期契約労働者も対象にするという観点ですけれども、有期契約労働者というと、定年後の継続雇用者も含まれてしまうことになります。定年を迎えられた方についてもまた再び通常の労働者への転換の対象とするというのは、あまりにもおかしいのではないかと思っておりまして、ここは定年後継続雇用者は通常の労働者への転換の適用除外だというところは明らかにするべきではないかと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 これも現在のパートタイム労働法で通常の労働者の転換という規定があるわけですが、これはケースバイケースになりますけれども、定年後の継続雇用で雇用される再雇用社員が、労働時間の短縮も仮に受けているとしますと、パートさんのパートタイム労働者に該当するわけです。その場合には法律の適用としては第 13 条の通常の労働者の転換措置がかかっていることになります。ただ、一方で通常の労働者としてのライフサイクルを、 60 歳まで来られてそこで有期になられた、パートになられている方ですので、そういうライフサイクルを描いているわけですので、そこでもう一回通常の労働者の転換というのは、両当事者の意識としても合わないことが多いだろうと思います。

 一方で、労働者の募集を行う場合に、雇用対策法という法律で年齢制限をしないでくださいというルールを課していますが、その中で一定の例外の場合に年齢制限を課していい 1 つとして、定年未満の年齢で労働者を募集することは許容されておりますので、現在、パートタイム労働法でも形式的には法律の適用になっているのですが、実際問題としては、通常労働者について定年未満の年齢の募集をかけることにより、そこは現実の問題は起こらないように調整がされているというのが現場の話だと思います。

○守島部会長 よろしいでしょうか。他に。

○松浦委員 先ほど定年後の嘱託社員のお話がありましたが、有期契約労働というのは本当に多様で、非常に短い期間の雇用契約の方もいらっしゃると思います。それこそ日々雇用されているような方々も有期契約労働に含まれるわけです。もちろん理論的にはパートタイム労働法に短期のパートの方も含まれているのですが、おそらくパートタイム労働者の方々以上に短い期間の方々が、有期の中には相当いらっしゃると思われます。そういう実態に関しては現時点でどのようにお考えになっているのか、確認させていただいてもよろしいでしょうか。

○岸本・有期労働対策部企画課長  4 番に関して、ちょっとお尋ねから遠いところからの答えになるのですが、パートタイム労働法と労働契約法の法律の性格に大きな相違が現状ございます。パートタイム労働法で用意をされているパートタイム労働者の待遇改善に関する様々な措置を、有期契約労働者にも適用をしようという方向で考えるとしますと、パートタイム労働法で用意されている様々な行政的な規定が、労働契約法の法律の性格にはなじまないということがあります。

 一方で、パートと有期はそれぞれパートタイマーも多様であり、有期契約労働者も多様です。有期契約労働者の多様性の方がもしかしたら大きいという話もあるかもしれませんけれども、その中で、定年後の方であるとか、若年のトライアル雇用的な方であるとか、様々な方が有期に含まれますが、逆にある種の典型でない通常の非正規というとちょっとイメージが分かりにくいかもしれませんが、高齢者でも若年者でもない働き盛りの年齢の男女で有期契約労働で、それでその生活を成り立たせているというような働き方をなさっている方もいらっしゃる。

 そうしたことを考えますと、特殊性がある一方で、パートと有期には共通性がある部分もあって、法律の適用としては、まず 1 つにはその法形式として、労働契約法にその行政的な規定を入れ込んで、別法のまま、そのパートと有期の待遇改善の仕組みをそろえていくということが非常に法律的に難しいということと、パートタイム労働法に有期契約労働者も入れ込む形にしたときに、ここで御提案申し上げているような就業規則の作成変更時の手続や、相談体制の整備などについて、逆に法律上の位置付けを異ならせるだけの実態のはっきりした違いがあるかというと、そこは重なる部分と違う部分があるというのが実態ではないかと思っております。

 法律の規定の適用としては、パートに現在お願いしている様々な規定を有期にも含ませていくという形が、最も現実的な方策なのではないかという考えでこのような提案としております。

○松浦委員 御趣旨は大体理解いたしましたし、御提案の総論としては理解できる部分はあるのですが、個別にその法案を作っていかれる中においては、パートについてももちろん多様性はあるわけですけれども、有期の多様性というところについても、もう少し丁寧に議論していく必要があるのではないかと思っております。ありがとうございます。

○守島部会長 他にどなたか、よろしいですか。それでは時間もまだありますので、論点 1 及び論点 2 、前回議論したところですけれども、そこについて何か言い残したこと、若しくはさらに付け加えたいこと等がありましたら御発言いただきたいと思います。

○田代委員 前回の論点に係る部分ですが、発言させていただきます。論点 ( ) 1 ページの矢印の 1 つ目、「均等待遇規定について、有期契約労働者についても対象としてはどうか」という点についてです。追加の意見となりますが、定年後再雇用の有期契約労働者について、多くの職場では定年前後での処遇の変更が急激なものとならないように、定年に至る数年前から段階的に職務内容や責任の範囲、給与などの処遇を変更していくというような取扱いをしております。そのため、比較すべき時点につきましては、その直前のというよりは、どこの部分と比較をするのが適切なのかということに関して、企業が適切に判断ができるような、柔軟な制度設計にしていただければと考えます。

○守島部会長 他にどなたか。

○秋田委員 前回も若干申し上げたのですが、この法律では、ガイドラインでグレーゾーンが非常に多いことを示しつつも、そこは具体的には裁判できちんと判断を仰ぐという、そういう御趣旨だというのは理解をいたしました。しかしながら、それを何となく全体的な流れから、これで裁判を起こしやすくなりました、どんどん起こしてくださいとか、政策として裁判を助長するようなそういう話ではなくて、やはり裁判に行かないようにきちんと明確な基準をできる限りガイドラインの中でも出していただきたいということが 1 つです。

 それとこのガイドラインで実際の紛争が起きたときの決着というのは、最終的に司法の判断というのは分かりますけれども、先ほども申し上げましたが、今回のケースはそうした紛争が起きる、あるいはそういうこととは別に全体的な賃金制度、社員制度を見直さなければいけないというようなアクションを各企業は取らざるを得ない。したがって、その紛争のところについて、行政に相談するというのはなかなか回答が難しいであろうけれども、例えば、中小企業において、どうやって就業規則を直していったらいいのか、あるいはどうやって賃金規程を変えていったらいいのか、全くそれは民事の話なので各企業でやってくれとか、そういう話ではなくて、そういうときの相談窓口、あるいは支援措置、モデル就業規則を作るなど、そうしたことを是非、相当程度力を入れてやっていただかないと、これは何月何日までに皆さんやりなさいとか、そういうことではなかなかうまく適応しないだろうと思いますので、是非よろしくお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の点です。まず、支援措置の点ですが、一定の御報告を申し上げたいと思います。平成 29 年度から開始をしました事業として、都道府県単位の事業主団体などに委託をして、非正規雇用の支援センターを開設しております。これはこの同一労働同一賃金も含め、非正規労働者の待遇改善を進めようとするときに、賃金規程の見直しなどが必要になってくる場合が多いのですが、大企業は自前の体制の中で会計作業を進められると思いますけれども、中小零細企業の場合にはそれは難しいだろうということで、社会保険労務士さんなどにコンサルタントになっていただいて、こういう方向で賃金規程を改定したいというような御相談に対して、無料でその改定作業などのアドバイスをする事業を行っています。

 法律相談、法律的な○×のアドバイスは行政の委託事業の枠内では難しいですが、会社の社長さんの方でこの賃金規程のここをこのように直したいということを持って来てくだされば、それを具体化するお手伝いをする事業で、 29 年度はまだ始まったばかりですが、できるだけ地域の中小企業の方に役立つように運用してまいりたいと思います。

 それからガイドラインの明確化について、現在、昨年 12 月にお示しをしましたのはガイドライン案ですので、これから法律が国会で成立を仮にしたら、これを正式に、法律の根拠規定に基づく厚生労働省の指針にしていくプロセスが必要となってまいります。そのプロセスの中で、ガイドラインにする過程でよりよいものになるような様々な御意見、お知恵をいただきながら検討してまいりたいと思います。

○守島部会長 よろしいですか、他にどなたか。

○中野委員 先ほどパートタイム労働法に有期契約を合わせていくというような御発言がありましたが、この法律の中で、例えば、通常の労働者という言葉は何を指すかという表現一つをとっても違う部分があり、企業側は色々な解釈ができてしまうのです。対応に当たり同じ表現に合わせていただくことはできないか。つまり、 2 つを 1 つの法律に合わせていくという考え方が 1 つあります。要するに、対応する側に分かりやすく統一していただく方が間違いのない対応ができるという考えを意見として申し上げたいと思います。

 また、先ほど田代委員からもありましたが、もう少し事業主の裁量に委ねていただけるのであれば、労働者からの求めに応じた事業主の比較対象の選定について説明することにも応じられると思いますので、一考いただきたい。

 加えて、特殊要件という言葉を使ったら失礼に当たるかもしれませんが、例えば女性の活躍推進の中で出産休暇や育児勤務から復職したばかりの方や介護を抱える方、傷病休暇から戻ったばかりの方など配慮が必要だと思います。また、障害者雇用においては、特例子会社の設立等々各社ごとの対応がありますが、弊社横浜店ではあえて有期雇用でありながらも、同じ社内で仕事をしており、同じ場所で一緒に仕事をする場面もありますので、そのようなケースをこの中でどう見ていくのかを、少し説明いただきたいと思います。

○守島部会長 質問という理解でよろしいですか。企画課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 全体の御意見にわたる部分かもしれませんが、通常労働者等の概念整理につきましては、おっしゃる通りで、現在のパートタイム労働法と労働契約法でも、その比較対象の特定の仕方には法律の性格の違いもありまして、一致していないところがありますので、 1 本の法律にするに際し、大きく言えば、パート法方式、労働契約法方式、どちらの考え方が今後のルールとしてなじむのか、しっかり検討してまいりたいと思います。

 育児や介護の期間、特に復帰直後の問題、あるいは障害者の雇用の問題ですが、これは個別の事案によってどういうロジックで当てはめていくのか、どんな事案が有り得るか、多様なような気もしまして、パッと具体的にお答えできなくて恐縮ですが、いずれにせよそういった社会的な配慮でもって障害者の方を雇用していただいている、雇用主の責任としてやっていただいていることが損なわれるような、こういう解釈を示すことによって障害者雇用が進みにくくなるようなことであってはいけないと。それは絶対に間違いないところだと思います。

○中野委員 配慮は当たり前のこととして、お答えいただいた通りに御対応いただければと思います。なかなか難しい話だと思いますので、よろしくお願いしたいと思っています。

○岩村委員 障害者について若干だけコメントします。まず第一に、そもそも障害者雇用促進法の中で、障害者であることを理由とする差別が禁止されているという大原則があった上で、私の承知している限りでは、一般的に障害者の方については特例子会社ではなくて雇用されていただいている場合は、やはり嘱託というような形で、有期雇用を使っているケースが多いと思います。その場合はおそらくは職務の切り出しや何かそういう形をされた上でやっていることが多いと、一般的に私も承知しているので、そうだとすると、そこは職務の内容やその責任の程度とか、そうしたところで均衡の問題になるのかどうかを考えることになるかと思います。

 それから、育休や介護休業、あるいは御本人自身の傷病からの立ち上がり時期ということでは、そのときの職務の状況等に応じて、場合によっては職務の内容や責任でもって考えることもあるでしょうし、また制度の趣旨によってはその他の事情というところでそれを勘案するということが考えられるかなと思います。いずれにしても、先ほど事務局にお答えいただいたこととそんなに大きな差があるものとは、私は思ってはおりません。

○松井委員 比較対象となる労働者について、事業所単位ではなくて企業単位で考えていくという提案を事務局からいただいておりますが、多々御発言があったように、同一の使用者に雇用される正規雇用労働者といっても非常に多様化している現状があります。そのため、ある程度考え方を示していただくことは必要だと思います。

一方で、多様化しているだけに企業にだけ比較対象の裁量権があるという解釈は適当ではないと思います。待遇差に問題を感じた非正規労働者の方が、この方と比較してやはりおかしいというようなことがあれば、そこはしっかりと対応できるような法整備にしていく必要があるかと思います。比較対象についてどう整理していくのかは難しい課題だと思いますが、是非御検討いただきたいと思っております。

○小林委員 先ほど相談窓口を整備していただけるような話もあったのですが、私どもの会員の中小・零細企業からは、同一労働同一賃金といったときに、その言っている意味がそもそも分からない、というような意見を多くいただいております。

 私どもは以前より、同一労働同一賃金の定義を明確化していただくよう要望しておりますが、それ以前の問題として、同一労働同一賃金制度を導入しようとした場合に、どういうところから手を着けていったらいいのか分からないという状況ですので、この法律が施行されたら、何をいつまでにどのように準備すべきか、というような手順書・マニュアル等の整備も、是非お願いできればと思っております。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 検討させていただきます。

○秋田委員 先ほど中野委員からありました件の関連ですが、岩村先生から解説もありましたが、逆の読みもされないように明確化していただきたいです。例えば障害者であろうと正社員と同じ賃金を払っています。だけれども、客観的な成果や色々なものも含めれば、有期雇用の人が、私はもっと成果が出ているというような言い方もしようと思えばできるわけです。したがって、社会的な施策として対応している場合もありますので、その他の事情等の解釈などによって通常の比較対象者には入らないことを是非明確化していただきたいです。前回も申し上げましたけれども、企業の中でやむを得ず、様々な事情で賃金を維持しながら仕事は軽くしているケースがありますので、いずれにしても、それを 1 つの目標として、なぜ賃金がそこと違うのかというような、無用な争いを起こさせないような、そういうところは明確化すべきだと思います。

○高橋委員 比較対象者に関して、前回の事務局の提案では、同一の使用者に雇用される正規雇用労働者を比較対象としたらどうかという御提案があり、使用者側の委員から、まず原則は同一の事業所内に存する正規雇用労働者を対象として、同一の事業所内にいなければ、同一の企業内に展開すると主張しました。それに関連して、正規雇用労働者ということですが、ガイドラインを見ると無期雇用フルタイム労働者という言葉が使われています。ガイドラインはあくまでもこの非正規労働者と無期雇用フルタイム労働者との比較に関してガイドライン案が作られているというように考えています。ですので、今回の法律改正に当たって、ガイドライン案の方向性で考えていけば通常の労働者といったようなことではなくて、無期雇用フルタイム労働者的なことを法律上、どのように明記していくのかということが課題ではないかと思っております。また、比較対象となる労働者の選定に当たっては、無期雇用フルタイム労働者は多様であり、 1 つしか無期雇用フルタイム労働者のパターンがないという会社はほとんどなくて、様々な方がいらっしゃいますので、やはり企業側としては、まず比較対象としては、職務内容、職務内容・配置変更の範囲、その他の事情に照らして、無期雇用フルタイム労働者と同種の方を捜して、いない場合はそれに近い方を比較対象としていく形で、企業側がその判断をしていくと。そういう枠組みが実務上ワークするのではないかと思っております。

○守島部会長 他にどなたか。

○村上委員 先ほど秋田委員がおっしゃったことがよく理解できなかったので、少し教えていただきたいと思います。秋田委員の御発言は、中野委員がおっしゃった障害者雇用にかかわる発言に関連して、障がいのある有期雇用労働者は法の対象にすべきではないということをおっしゃったのでしょうか。

○秋田委員 正社員で雇用している場合ですが、障害者雇用というのは 1 つの政施策的に社会的な福祉の見地も含めて雇用していますので、したがって、通常の正社員と完全に同様の成果、あるいは同様の能力等を求めているわけではなく政策的に同様の賃金を払っている場合も多々あると思います。したがって、有期雇用労働者から比較対象となるような、ここでいうその他の事情も含めた労働者群というのは、やはり一般的な労働者としないと、そこの政策の意味が薄れてしまって、先ほど岸本課長がおっしゃったように、雇用にマイナスになるような事象も考えられるのではないかと思います。

○村上委員 障がいがあって働いている方は多種多様です。企業が障害者雇用率を達成するために重度障害の方を雇用している場合もあります。一方で、中途障害になった方や身体の方などで、障がいのある方と職務能力はほとんど変わらない方もたくさんいらっしゃると思います。一言で障がいのある方といっても本当に多様である中、初めから対象外にするというような議論は、やはり雇用・労働政策を考える上では不適切ではないかと考えます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 私からも先ほど障害者の雇用を損なうことがないようにという趣旨のことを申し上げましたが、私のときに念頭に置いて理解していましたのは、それは聞き違いというか勘違いだったかもしれませんが、障害者の方が正社員でいらして、だけれども中途障害やリハビリの過程などで、まだ前の能力を回復はしていない、けれども企業としてはその方の生活とかも考えて、前と同じような賃金水準を補償していると。そうするとものすごくその時点で発揮している能力から見れば少しまだ完全回復するまでは割高に払っているけれども、その割高分をベースにパートや有期の方がそれと均等、均衡と言われると、かえってその割高分を削らなければいけないのではないかというようなお話かと思いまして、そういうことが起こらないような解釈でなければいけないのではないかということを申し上げたつもりですが、ちょっと逆に、障害者の方が有期やパートの場合とは違うケースのことだと思っていたのですけれども、すみません。

○秋田委員 今、私が言いたかったのも岸本課長のおっしゃった内容です。したがって、村上委員がおっしゃるように千差万別な方がいますので、それを一律でというつもりはありません。当然そういったものを斟酌しながら、ただ、そうは言ってもそういったことでハンディにならないように、きちんと配慮をするような比較対象というのがあるべきだろうと、そういう趣旨です。

○守島部会長 今の点はよろしいですか。

○村上委員 今の点は理解いたしました。その上で、先ほど来、使用者側の委員から様々なことを明確化して欲しいとの要望がなされておりますが、どんなに細かな規定を作っても、どうしてもグレーゾーンは残るのではないかと思います。仕事の進め方や雇用形態は企業ごとに違っていますので、それに応じて処遇を決めていくということが、企業や職場の実態だと理解しております。それをすべてについて一律に線を引くことはできないと思います。一定程度何らかの基準や考え方を明確化し、それを基に労使が知恵を絞った結果様々な事例が出てきて、社会的な規範が形成されていくのだろうと考えています。特殊事案について、ガイドラインで解釈を出していくことできないし、適切ではなく、かえって硬直化してしまうのではないかと懸念をしております。

今回、有期契約労働者については労働契約法第 20 条などの規定をパートタイム労働法に移していく法改正の方向性が示されていますが、その際はパートタイム労働法の良さというものもありますけれども、労働契約法の良さというのもあるので、両方少しずつ歩みよって近づけていくような改正をしていくべきではないかと思っておりますので、意見として申し上げたいと思います。

○守島部会長 よろしいですか。他に。

○高橋委員 改正法の施行に関して意見を申し上げたいと思います。今度の法改正を受けて企業として様々な賃金制度等を見直していかなければならない企業も多数出てくると思います。他方でその賃金制度等の見直しを行う場合には、当然ですけれども、改正法だけではなく、政省令や通達、そのガイドライン等がはっきりと分かってからそれに基づいて、労働側の皆さんと話合いをしながら見直しをしていくということになっていくのだろうと思います。より丁寧に話合いをすればするほど時間がかかって、先ほどの冒頭のディスカッションの中にも、例えば 3 年計画で見直しをしていくというようなことにもなっていく可能性もあると思います。

 したがいまして、今回の改正法案すら国会に提出されていない状況ですけれども、施行日については十分な配慮をしていくべきではないかと思います。

○加藤委員 関連して申し上げます。中小企業の分野においてまさに施行した段階で大手企業、大企業はどんどん見直しに向かって準備をされて、進んでいかれると思うのですが、中小企業にとって、特に零細な部分については、大手企業と、例えば下請取引関係の中で色々大手企業に指導を受けながら、あるいは周りに色々相談をしながら少しずつ手を付けていくと思いますが、 5 人、 10 人ぐらいでやっている零細企業というのは何が何だか分からない、何をやっていけばいいのか分からないという。先ほども少しお話がありましたが、そういう状況ですので、どうしても中小全体で動かせるためには、まず中小がどういう状況になっていったら進んでいけるのかを十分に御配慮いただくことが我々としても非常に重要なポイントだと思っておりますので、是非御検討いただければと思っております。

○守島部会長 他にいかがですか。

○小原委員 資料 3 の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」の「各委員からの専門的見地からの意見」を見ていて、「そうだな」と思ったところがあったので、検討会の中でどういった議論があったのかをお伺いしたいと思います。

 具体的には、資料 3 4 ページの最後の段落の「また」以降にある、「イギリスでは、不利益取扱い禁止法制の抜け道として、職務分類や『同一労働』であるが待遇が低い『ダミー比較対象者』を置いておく等の状況が生じている。権利を設けても、その権利を実現する手段が乏しい場合には、かえって望ましくない状況に陥る可能性を示唆する」という記載についてです。先ほど松井委員から発言があった通り、比較対象は使用者側だけでなく労使で検討していくのが大切なのだろうと思いつつ、この御指摘に対してどのような御議論があったのかということと、検討会委員の方の御意見が分かればご説明頂ければと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 神吉先生のクレジットの文章ですので、私が正しく解説できる立場ではありませんが、議論としては、まず欧州の同一労働同一賃金と日本の現在の均等均衡法制、今回の前提としている枠組みの総意として、欧州の方が同一労働であることが比較の前提となっています。業務内容と責任が同じであると。同じである場合には、同じ待遇をというのが大原則ですが、我が国の場合には、職務内容などが違っても、職務内容や職務内容配置変更範囲、その他の事情の違いに照らして、不合理ではない待遇をというような考え方で、対象の広さが違っています。

 欧州の場合には、同一労働であることが比較の大前提であるということとの兼ね合いもあり、同一労働の対象者の中で、イギリスで言われているのは、同一労働の中で非常に待遇の低い正社員を 1 人作っておいて、その人と比較するというような、抜け道的運用が見られるのではないかという議論がイギリスに関してはあり、神吉先生もそのことに言及されていらっしゃるわけです。

 ただ、前提となっている法制が、同一労働の場合に同一賃金というように対象を狭く絞っている欧州の法制と、均等のみならず均衡も含めてカバーしている我が国とで、出発点が異なる議論であります。

○小原委員 そういうことであれば、先ほどの繰り返しになりますが、松井委員の発言にあった通り、比較対象は使用者側が一方的に決めるのではなく、労使で検討することが必要であると思います。

○守島部会長 他にございますか。

○村上委員 先ほど使用者側委員から施行日に関するご発言がありましたが、労働側としては、中小企業などで周知や相談体制の整備は大変重要だと思っておりますが、施行はできるだけ早くしていくことが必要ではないかと考えておりますので、その点を申し上げておきたいと思います。

○守島部会長 他にございますか。

○岩村委員 いくつかまとめてということになります。先ほどの障害者の件については、秋田委員の御説明で私も問題の状況は理解しました。ありがとうございました。

 それから、先ほどの神吉先生のペーパーの件ですが、ポイントは同じページの上から 3 つ目の段落の所です。イギリスの労働条件の決め方がどうなっているかがポイントになります。要するに、イギリスの場合は産業別協約というのがほとんど消えてなくなってしまっているので、ドイツやフランスのような産業別協約による職種別の最低賃率を決めるというもの自体が、そもそも存在しないというところが物事の出発点になっているというのがあって、一番最後の段落の話につながっていくということだと理解します。

 それから私自身の考えは、実現会議のときにペーパーを出す形で申し上げているので、ここで改めて繰り返したり、そのことを蒸し返すつもりは全然ございません。ただ、先ほど高橋委員と村上委員の間で議論になった問題、あるいは本日の議論の中で出てきた問題、それから中小企業について小林委員あるいは加藤委員からあった発言を振り返って考えてみると、これから中小企業も含めて、とりわけ有期雇用を使っている一定規模以上の企業では、企業全体の賃金体系を正社員の部分も含めて見直していくということが、おそらくトータルで見直すことが必要になってくると思われます。

 そうなると、どうしても、組合があれば、一定の労使交渉の時間を確保することは当然必要ですし、中小企業の場合ですと、組合がなくても使用者が賃金体系全体を見直していくことについて、労働当局の相談を得たり、あるいはコンサルティングを得たり、その他の請負元、発注方の大企業の指導を受けたりという形で、整備していかなければいけないということになるので、そういう点で、どうしても一定の期間というのは必要なのかなと思っています。私自身は、そのためにある程度の計画を考えるべきではないかということは言っていますが、そこに必ずしも固執はしませんが、ある程度の期間は必要かなと思います。

 それが必要なもう 1 つの理由は、先ほど出てきた論点とつながっていまして、ちょうど今労使交渉をやって見直そうとしている、あるいは見直しが決まって 3 年かけてだんだんにやっていく、あるいは 5 年かけてやっていくという途中で訴訟を起こされると、非常に厄介な話になる可能性があります。それで判決が出てしまうと、労使交渉をしていたところで、もう一度再交渉して、またもう一回直すとか何とかという、非常に面倒くさいことになりかねないし、交渉が混乱しかねないということがあると思います。

 そもそも賃金体系あるいは賃金も含めた様々な処遇体系をトータルで見直すという話になると、場合によっては労働条件の一部の不利益な変更といったような問題も出てくる可能性があり、法律的には、非常にさらに問題が複雑化するということがあろうかと思います。そういう点で施行の時期というものと、企業なり労使が対応していくのに必要な期間の見合いを、ある程度勘案する必要はあるのかなとは思っています。のんびりやれとは言いませんが、あまり性急にやると混乱してしまうのかなと思っています。その辺の時間感覚は、労使それぞれで詰めていただく必要があるかと思います。

 もう一点は、これは前回も申し上げたことですが、賃金体系を全体として見直すという中では、パートの方あるいは有期契約の方、どの範囲の人に聞くかという問題もありますが、そういった方々の利益をきちんと反映させられるような意見表明なり代表の選出なりといったことも考える必要があると思っています。

 ただ、これも法整備的にやろうとなると大変な話になるのですが、私の希望としては、そういった企業において全体的な賃金体系の見直しを労使双方などで行っていく場合には、関係するパートあるいは有期の人たちの声あるいは利益がきちんと反映されるような、そういう形で是非やっていただきたいと考えています。

 最後の最後は裁判所に行かなければいけないということはあることだとは思いますが、できるだけそういう形にならないで、スムーズに法の狙うところが実現されるというのが一番いいことだろうと私は思いますので、その点について、是非労使の御理解と御協力、更には行政当局の必要な助言といったものをお願いできるような方向で進めていただくということを、希望したいと思います。

○村上委員 岩村委員がおっしゃったことに関してですが、均等・均衡待遇を理由とした正規雇用労働者の労働条件の不利益変更は、適当ではないと思います。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇を長期的にそろえていくということはあるかもしれませんが、均等・均衡待遇を理由とした不利益変更を認めるということであれば、今回の法改正の趣旨に反すると思います。今回の法改正は非正規雇用労働者の処遇改善であるという理念規定を是非置くべきではないかと考えています。

 また、施行時期の問題で、労使交渉には一定程度時間がかかる点も目配りしなくてはならないという御発言がありました。確かに、制度を見直していくときには一定の時間がかかりますので、計画的にやっていくということが通例でではあります。この点、真面目な労使は法施行に間に合うように対応しようということになりますが、法施行の直前が迫ってようやくエンジンがかかるような企業もないことはなく、そういったペースにいつまでも合わせていると、いつまでたっても法施行できないということになります。やはり、一定の時期に、ここからやるということを決めて、そこに向かって労使で前向きに取り組んでいくということしかないと思います。

 また、労使協議は、パートタイム労働者や非正規の皆さんの声を聞いた上での実質的な労使協議にすべきというのは、全くその通りだと思っておりますので、そういったことも促すような規定ぶり、あるいは今回の報告のまとめをしていただきたいと思います。

○松浦委員 同一労働同一賃金の実現に向けた有識者検討会に参加させて頂いておりましたので、一言だけ申し添えたいと思います。

 検討会の中で御議論があったのは、個別の労使紛争というのは労使にとって必ずしもハッピーなことではないと。それは労働者側にとっても負担は非常に大きいですし、紛争に至らないのであればそれに越したことはないと。紛争に至らない形で、労使の話合いによって解決できるのであれば、それがベストであろうというような御意見が多数あったと記憶しています。

 その上でガイドラインの位置付けについての確認です。現時点ではガイドライン案ですが、これが紛争を誘発するようなものであっては、労使にとってハッピーな結果にはならないので、ガイドラインは見る人によって解釈が違うような形にするのではなく、なるべく分かりやすく、解釈の相違により紛争が起こるような類のものにはならないようにしていくべきだということについては、検討会のなかである程度御意見の一致があったのではないかと思っております。補足です。

○武田委員 先ほどから施行時期の議論が出ております。私も、適宜適切なタイミングで進められるべきだと思う一方、実際に現場、企業の立場からすると、様々な準備、一定程度の時間が必要というのは、十分理解できます。

 また同時に、分かりやすく伝えていくことも重要ではないかと思います。考え方として、私自身は、先ほども御意見が出ましたように、あまり具体例を細かく記入しすぎると、逆にかえって現場は混乱しますし、事務負担も増えてしまう問題がございますので、極めてシンプルに据えた方がいいと思います。一方で、今日の資料を拝見しますと、現行法で実現していることと、これから改正が必要なことがかなり並列で並んでいます。この場には、企業の代表の方が出られておりますが、企業の現場あるいは企業の管理者が、きっちりと理解していく段階に向けては、まだその議論は早いと思うのですが、分かり易く伝えていく点も重要なのではないかと思います。つまり、時期だけの議論ではなく、分かりやすく周知していくことについて、もし現段階でお考えのことがありましたら御教示いただきたいですし、まだ法律の中身を議論している段階ですから、それは今後ということでしたら、今後の御検討事項に入れていただければ有り難いと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 つきましてはこの部会の資料、法制度施行に際しての様々な周知資料の両方についても、留意いたします。

 それから、施行期日について様々な御議論を頂いております。いずれの御議論ももっともな話であるとお聞きしております。この同一労働同一賃金の検討会の中でも施行期日の議論はありましたが、ある種抽象的ですが、含蓄の深い言葉であるように思いましたが、過不足のない時間軸が必要だということで、過も不足もないことが大事だということだろうと思います。必要な準備期間をきちんと取るという要請が一方でありますし、一方では非正規の方の待遇改善というのは、今ここで起こっている労働問題だということもあります。両方を勘案し、これは手続的には、法律の中で施行期日を書いていきますので、法案要綱を御議論いただく際に、そこで何年何月というのは出てくる形になろうかと思っております。本日の御意見もきちんと踏まえていきたいと思います。

○守島部会長 他にございますか。

○秋田委員 前回も申し上げたのですが、ここにいらっしゃる方は理解のレベルは全く一緒なのでいいのですが、どうしても同一労働同一賃金ということでやっていきますと、それが一人歩きして、「イギリスでは」「フランスでは」という話になりますので、日本型の同一労働同一賃金を実現するということを、まず冒頭で明確にしておかないと、そこから理解が始まらないと、分かりやすい理解にならないのではないかと思います。

○山田委員 今回と前回でパートと有期について、ということで、ある意味では節目になるので、前回申し上げたことも含めて考えるところを申し上げます。

 今回の趣旨というのは、同一労働同一賃金に向けて最終的に裁判で終わらせる根拠を作っていくということだということで、これ自体は、前回も申し上げましたが、結果としてこの 20 年間の中で、正規と非正規の問題の十分な改善が見られない中で、私は必要なことなのだと基本的には考えています。

 ただ、今回のこの議論の中でもはっきりと出てきているように、実際には企業規模、あるいは有期雇用の形態により、非常に多様なものを全部法律で規制するというのは不可能であり、逆にそれをやりすぎると職務分離のような問題を起こすということで、改めて集団的な労使コミュニケーションの在り方が問われているということなのだと思います。

 ただ、かつては、日本はまさにそれでうまくやってきたわけでしょうけれども、いわゆる非正規と言われる方々を含めた形での集団的なコミュニケーションの在り方を再構築しようという問題提起と受け止めていくということが、まさに同一労働同一賃金で先鋭的に現れているという捉え方をしていかないと駄目なのだと思います。

 それを具体的にやるのは、これは今回求められている議論の枠からは脱線するのでしょうけれども、背景にある問題として念頭に置いておかないと駄目なのは、従業員代表制なのか過半数代表制なのかは色々な議論があるのでしょうけれども、いずれにしても、労働者サイドの公正代表というものをどう考えていくのか、それと同時に、企業とどう話をして決めていくのか。私は個人的には、日本型の個別企業組合の在り方、あるいは個別労使を基本にするというやり方は、ある意味生産性を上げていくことで労使が協働してきたということで、非常に大きな財産だと思っておりますが、もう少し企業間での産業別の調整なり連携の仕組みというのが、従来よりは必要になってきているのではないか。個別労使を原則としながらも、そういう何らかの仕組みを考えていく局面に入ってきているのではないかと個人的には思っております。

 当面は、秋田委員もおっしゃったように、日本型で始まる企業内ということなのでしょうけれども、例えばマクロ状況を考えますと、人口減少がどんどん進んでいく中で、産業内での企業の連携、場合によっては再編というのは既に起こっているわけで、今後も起こっていかざるを得ないと考えております。

 その中で、個別をベースにしながらも、産業別の連携強化ということが大事になってくるのだろうなということです。

 今回の関係では、当面の話というよりも今後ということなのでしょうけれども、それにはガイドラインというのが重要なものだと思います。先ほど来「分かりやすく」ということで、ベースのところはそうなのですが、実際にやっていくときに曖昧であると色々なことを起こすということもありますので、非常にシンプルな部分と、もう少し各論的な部分の 2 段階というのも 1 つの考え方なのではないかと思います。

 前にも申し上げましたように、場合によっては産業別に労使で懇談会か検討会か分かりませんが、そういうことを議論して、いわゆるパートやアルバイトの多い産業と、そうではない産業では状況も違うと思いますし、そういうところを議論していく。これは時間との関係で早くすませるのか、時間をかけるのか。個人的には時間をかければいいとは思うのですが、これは色々な考え方があると思うので、一定程度のところで線を引いた上で、少なくともそのような議論をやることが必要になってきているのではないかと考えています。

 もう 1 つ申し上げますと、本日の話でもそうですが、結果的にトータルな報酬制度の見直しにつながっていくのだと思います。最初は激変緩和措置というか、小さな形で入れていくというのが望ましいと思うのですが、いずれそういう話になってきたときに、これも色々な考え方があると思うのですが、前回も出たと思いますが、日本の雇用社会全体をどういう方向に持っていくのかということに対して、これは議論が色々とあって難しいのですが、やはり改めてもう一回、いわゆるメンバーシップの在り方に対してどう考えていくのか、ヨーロッパ的なものをどのように組み込むか。私は個人的には、メンバーシップをベースにしながらも、一定程度産別のような連携を何となく接続することを考えていく必要があるのではないかと思っているのですが、そういうものも含めて、いずれ議論していかないと駄目なのではないかと。同一労働同一賃金の問題というのは、まさにそういう課題を投げ掛けているという意識を持ってやっていくことが必要ではないか。ということで、少し時間を頂いて、日頃考えていることを問題提起させていただきました。

○岩村委員 今の山田委員の御発言を受けながら、少しコメントさせていただきます。

 労働契約法の第 20 条を作ったときに、あれは労働契約というまさに個別労使の問題の規定ということだったわけですが、私もそうですし、他の労働法の先生の中にもそういうことをお書きになっていた方がいらっしゃいますが、これはまさに個別の労使にとどまらない、むしろ集団的労使関係の問題として考えるべきだということを申し上げていたのですが、残念ながら、そのようにはあまり捉えていただけなかったと思っていまして、非常にそこは残念だと思っています。

 今回の、この同一労働同一賃金という問題も、最終的に司法にという話になってくるとまさに個別労使の問題なのですが、本日の御議論の中でも非常にクリアに出ていたように、問題そのものは、むしろ集団的な労使の間でどのように今後処遇体系を考えていくのか、正規の人、非正規の人を含めて処遇体系を考えていくのかという、集団的な問題だろう、その投げ掛けなのだろうと私は思っていますので、是非そういう観点から、法律の施行に向けてということもあるかもしれませんが、労使それぞれ御検討いただければなと強くお願いしたいと思います。

 もう 1 点だけガイドラインについてです。これは、いずれにせよ法律ができた後での議論なので、あまりここで細かい議論をしても仕方がないと思っていますが、この手のガイドラインを作るのは非常に難しいと思っています。クリアに作れば作るほど、その裏をかこうという人がたくさん出てくるという問題があります。細かく作ればいいかというと、細かく作れば作るほど、またその裏をかこうという人が出てきます。

 ある意味で、少し幅の広い概括的なものを作っておいた方が、裏はかきにくいという微妙なさじ加減が要求されますので、事務局におかれては既に一定の案がありますが、今後本格的に議論するに当たり、その辺のことも考えつつ御準備いただければなと思います。

○中野委員 関連しまして、賃金制度は企業にとって経営戦略の一環であり、改正は非常に大がかりです。同一労働同一賃金という言葉の響きからして、世間的に知っている方が多いと思われがちですが、一方で「あの議論はどうなっているのか」「あれは当分やらないのではないか」という声があるのも事実です。

 結果、準備がどんどん遅くなると思うのです。遅くすることが目的ではありません。議論を深めることが目的で、早くやれたらいいのですが、各企業の労使関係など色々ありますので、そういう意味でも、できることからで結構ですが、公の場所で進行状況などのスケジュールが流せないものでしょうか。難しいかもしれませんが、途中で修正が入ってもいいのではないかと思っています。

 失礼ながら、同一労働同一賃金の進行具合を懐疑的に思っている方もいらっしゃる気もします。して、そうしますと備えができていない状況が長くなりはしないかと。勝手な意見かもしれませんが、ご検討いただけたらと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 大枠で、働き方改革実行計画の工程表はあるのですが、その中でも何年何月施行というのはその時点で特定できなかったので、長い矢印の中に、法改正から法律施行を全部突っ込んだような形になっています。

 施行日の議論が出てくるのは、法律の条文の附則という箇所に何年何月施行ということを書くことに通常はなりますので、その法案の要綱を対外的にお示しして議論いただくところで、施行日が明らかになると思います。もうしばらく検討の時間を頂ければと思います。

○村上委員 山田委員から御指摘のあった件について、前回も申し上げたのですが、私どもとしてもこの議論をするに当たっては、非正規労働者も含めた労使コミュニケーションをどのようにして進めていくのかということが大変重要な課題だと思っております。

 ただ、労使コミュニケーションの問題は、今回のいわゆる同一労働同一賃金だけではなく、36協定などにも関係する問題であるので、もう少し全体的な課題として捉え、きっちりと議論して、前へ進めていくべきだと考えています。

 それから、これは組織の意見ではないのですが、非正規雇用労働者の方がどれぐらいの仕事をされていて、どのような働き方をされているかということは、ある程度業界別に異なるということは御指摘の通りだと思います。製造業の現場と小売業の現場、さらには事務系の現場では、非正規雇用労働者の方がされている仕事も違いますし、処遇も違うということを考えれば、産業別、業界別で、労使で一定程度何か話し合っていくということは大変有益だと思います。今回の法律に基づくガイドラインでは基本的な考え方を整理しておきながら、業界別にどのように雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を実現していくかということを考えていくことは、大変重要だと思います。

○守島部会長 他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議論が収束したようなので、本日の議論はここまでにさせていただきます。

 最後に、事務局から次回の日程等についてお話をいただけますでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 次回の同一労働同一賃金部会の日時と場所は、 5 16 ( ) 13 時から 16 時、経済産業省別館各省庁共用 1111 会議室にて予定しています。

○守島部会長 これをもちまして、第 2 回同一労働同一賃金部会を終了いたします。議事録の署名に関しましては、労働者代表の宮原委員、使用者代表の秋田委員にお願いいたします。本日はお忙しい中ありがとうございました。


(了)

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