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2017年4月28日 第1回労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会

職業安定局

○日時

平成29年4月28日(金)   9時00分~12時00分


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎第5号館
職業安定局第1・2会議室(12階)


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、武田委員、松浦委員、守島委員、山田委員

【労働者代表委員】

梅田委員、小原委員、冨田委員、松井委員、宮原委員、村上委員

【使用者代表委員】

秋田委員、加藤委員、小林委員、高橋委員、田代委員、中野委員

○議題

・同一労働同一賃金に関する法整備について

○議事

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 定刻になりましたので、ただいまから第1回「労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」を開催いたします。

 初回ですので、部会長が選出されるまでの間、私、企画課の岸本が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 本日の御出席委員につきましては、労働政策審議会令第9条で定める委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、本日の出席委員は 18 名中 17 名であり、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

 本日、塩崎厚生労働大臣が出席を希望されておりましたが、公務の都合上、欠席となりましたので、代理として職業安定局長より御挨拶を申し上げます。

○生田職業安定局長 皆さん、おはようございます。職業安定局長の生田でございます。

 今、お話がありましたように、大臣は国会用務のために出席がかなわず、本当に恐縮をいたしておりました。大臣からメッセージを預かっておりますので、私から代読をさせていただきます。

 委員の皆様におかれましては、大変御多忙のところ御参集いただき、まことにありがとうございます。昨年1月の施政方針演説にて安倍総理が、同一労働同一賃金の実現に踏み込むと表明し、その後、総理指示に基づき、昨年3月に設置された同一労働同一賃金の実現に向けた検討会において、国内外の正規・非正規の格差の実態や、現行法制、裁判例などに関する現状把握や検証を行い、具体的な方策についての論点を整理していただきました。そして、昨年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、「我が国の雇用慣行には十分留意しつつ、躊躇なく法改正の準備を進める」こと、「どのような待遇差が合理的であるか、また不合理であるかを事例等で示すガイドラインを策定する」ことが盛り込まれました。さらに、昨年9月には、総理が自から議長となり、労働界と産業界のトップを含めた「働き方改革実現会議」を立ち上げ、同一労働同一賃金の実現も9つの緊急検討項目、重要課題の一つとして議論をいたしました。

 こうした検討の成果を踏まえ、先の3月 28 日に決定した「働き方改革実行計画」では、昨年 12 月に同会議で示した「ガイドライン案」に法律上の根拠規定を設けることのほか、同一労働同一賃金の実現に向けた法改正の方向性として、労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整理、労働者に対する待遇に関する説明の義務化、行政による裁判外紛争解決手続の整備などを明記いたしました。

 安倍総理からは、今後、関係審議会の審議を経て、早期に法案を国会に提出するように指示があったところであり、こうした状況のもと、本日ここに働く現場の実態を熟知された委員の皆様方をメンバーとする「同一労働同一賃金部会」を新規に立ち上げさせていただきました。早速、具体的な制度設計につき検討を開始いただき、できるだけ早期に結論を得ていただきたいと考えております。

 同一労働同一賃金の実現には、「職務内容や能力等の明確化と公正な評価を確立し、それにのっとった正規・非正規を通じた合理的な賃金制度を労使の話合いにより速やかに構築すること」が必要です。雇用形態にかかわらず、一人一人が公正な評価と待遇を受けられるようになることで、非正規雇用の方々の処遇改善にとどまらず、女性や高齢者など、様々な状況を抱えた方々が多様な働き方を納得して選択できる社会の実現にもつながります。さらに、一人一人の働く方のやる気を引き出し、企業の生産性や競争力の向上にもつながっていきます。そして、さらにそれが待遇改善という形で働く人々に還元されていく姿、すなわち「働く喜びと成長の好循環」を達成していくことが肝要であり、これを厚生労働省としても政策目標として掲げ、推進していきます。

 昨年 12 月に「働き方改革実現会議」で示した同一労働同一賃金の実現に向けたガイドライン案の前文には、この基本哲学を明記しており、これを法律でしっかりと明記していただきたいと考えております。

 皆様方には、今般の改革理念について共有いただきながら、「働き方改革実行計画」に基づき、働く人の視点、現場の視点、社会全体の生産性向上の視点などを踏まえつつ、新たな制度の設計に向けて忌憚のない御議論をいただくようお願い申し上げて、私からの御挨拶とさせていただきます。

 以上でございます。何とぞよろしくお願い申し上げます。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 カメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。カメラの皆様、よろしくお願いいたします。

(報道関係者退室)

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 議事に入ります前に、本部会の委員の皆様について御報告させていただきます。

 お手元に資料1としまして、「同一労働同一賃金部会」委員名簿を配付しております。名簿順に、委員に就任された方々につきまして御紹介いたします。

 まず、6名の公益代表の委員を御紹介いたします。

 東京大学大学院法学政治学研究科教授の岩村正彦委員。

 株式会社三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長の武田洋子委員。なお、武田委員におかれましては、本日、所用のため途中退室される御予定でございます。

 本日御欠席でございますが、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の中窪裕也委員。

 法政大学キャリアデザイン学部准教授の松浦民恵委員。

 学習院大学経済学部経営学科教授の守島基博委員。

 日本総合研究所調査部長/チーフエコノミストの山田久委員。

 次に、労働者代表の委員を御紹介いたします。

UA ゼンセン人材サービスゼネラルユニオン会長の梅田弘委員。

 電機連合中央執行委員の小原成朗委員。

 全日本自動車産業労働組合総連合会副事務局長の冨田珠代委員。

UA ゼンセン政策・労働条件局長の松井健委員。

 情報労連中央本部中央執行委員の宮原千枝委員。

 日本労働組合総連合会総合労働局長の村上陽子委員。

 次に、使用者代表の委員を御紹介いたします。

 日本通運株式会社取締役執行役員の秋田進委員。

 全国中小企業団体中央会常務理事の加藤篤志委員。

 日本商工会議所産業政策第二部長の小林治彦委員。

 一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長の高橋弘行委員。

 株式会社資生堂秘書・渉外部長の田代裕美委員。

 株式会社高島屋友の会代表取締役社長の中野奈津美委員。

 委員の皆様、ありがとうございました。

 次に、部会長を選出いたします。部会長は、労働政策審議会令第7条第6項に基づき、部会に属する労働政策審議会本審の公益を代表する委員のうちから当該部会に属する委員が選挙することとされております。本部会でこの要件に該当する委員でいらっしゃいますのは守島委員のみとなりますので、守島委員に部会長をお願いすることでいかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 それでは、守島先生、よろしくお願いいたします。

○守島部会長 ただいま選ばれまして、部会長を務めることになりました守島です。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員の皆様の御協力を得ながら、この長い審議を続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、部会長の就任に際しまして、部会長代理の選任からさせていただきたいと思います。部会長代理につきましては、労働政策審議会令第7条第8項により、部会長に事故があるときは、当該部会に属する公益を代表する委員または臨時委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理すると規定されており、岩村委員に部会長代理をお願いしたいと思いますので、御了承いただければありがたいです。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 最初の議題は、運営規程に関してのものです。先日、3月 31 日に持ち回りで議決された労働条件分科会、3月 30 日に開催された職業安定分科会及び3月 31 日に開催された雇用均等分科会において、それぞれの分科会の運営規程が改正され、同一労働同一賃金の実現に向けた法制度の具体的なあり方について検討するために、「同一労働同一賃金部会」が設置されました。新しく設置されたこの「同一労働同一賃金部会」の運営規程案について、事務局より御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 それでは、運営規程案につきまして御説明いたします。

 資料 No. 2-1から計6枚ございます。労働条件分科会、職業安定分科会、雇用均等分科会、3つの分科会にそれぞれぶら下がるものといたしまして、本部会を設置することとしております。労働条件分科会運営規程、資料 No. 2-1を例に御説明しますと、第5条に本部会、「同一労働同一賃金部会」を置くということが今回の改正で追加されております。同じように、職業安定分科会、雇用均等分科会の運営規程にも、本部会の設置に関する条項が追加されて、それを受けまして、資料 No. 2-4から2-6までの通り、本部会の運営規程を決定していただきたいと考えております。

 本部会の運営規程、資料 No. 2-4を例に申しますと、各分科会・部会の運営規程と並びの内容としてございます。第2条では、本部会の委員の人数構成、第3条では部会の会議の開催について、部会長が必要があると認めるとき等の開催要件、第4条では、会議の招集請求手続、第5条では、会議招集の際は7日前までに付議事項等を通知するということ、代理者の出席の扱いが第6条、第7条が部会の庶務の課室ということでございます。

 同様に、3つの分科会にぶら下がりますので、同内容の運営規程が2-4、2-5、2-6と3つございます。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ただいまの御説明について、御質問、御意見等がございましたら、伺いたいと思います。

 大丈夫ですか。よろしいでしょうか。

 それでは、当部会の運営規程は、ただいま御説明のあったような形で決定して、労働政策審議会関係法令及びこれらの運営規程に基づき、本部会を運営してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、次の議題である「同一労働同一賃金に関する法整備について」に入りたいと思います。まずは事務局より、これまでの間の経緯等の資料につきまして、御説明をいただきたいと思います。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 それでは、資料3と資料4の2点につきまして、同一労働同一賃金の法整備の議論に至る経過等を含めて御説明申し上げます。

 まず、資料3でございますが、これは「働き方改革実行計画」と申します、去る3月 28 日に総理を議長とする「働き方改革実現会議」で決定された文書でございます。内容は、働き方改革の9つのテーマ全てを網羅いたしまして、今後の大きな方針を示しております。同一労働同一賃金だけでなく、長時間労働の問題ですとか、兼業・副業の問題、病気治療と仕事の両立の問題など幅広く扱っておりますが、特に本部会で御審議をお願いいたします同一労働同一賃金の法改正に関しましては、実行計画の下のページ数で7ページから言及されております。

 7ページの下の に「法改正の方向性」という括弧の見出しがございますが、ここからが直接関わる部分でございます。最初に、この「法改正の方向性」全体の前置き的な記述がございまして、職務内容、職務の成果・能力・経験等に対する正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者を通じた公正な評価・待遇決定の推進、また、公正な待遇決定が労働者の能力の有効発揮につながる。それを通じて、経済や社会の発展に寄与するといった大きな理念を明らかにするということを一つ提言されております。その上で、具体的な法改正の内容ですが、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の3本が具体的な改正対象法律として挙げられております。

 めくっていただきまして8ページですが、この3本の法律の改正の大きな骨格について、実行計画で4項目にわたって示しております。

 「 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備」でございます。まず、現行制度の紹介としまして、いわゆる均等待遇の規定、それから均衡待遇の規定について、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者で規定状況がどうなっているかということで、現在、均等待遇の規定が有期雇用労働者についてはないということ。また、派遣労働者については、均等待遇・均衡待遇いずれもないということが書かれております。この状況を改めるため、有期雇用労働者について、均等待遇を求める法改正を行う。また、派遣労働者について、均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行う。さらに、パートタイム労働法も含めて均衡待遇の規定について明確化を図るとされております。どう明確化を図るかは、実行計画ではこれ以上に明らかにされておりません。

 次に「 2労働者に対する待遇に関する説明の義務化」という項目でございます。ここでは、不合理な待遇差の是正を求める労働者の救済にとって実効性ある法制度とするために、労使間の情報格差に着目いたしまして、特に企業側しか持っていない情報のために労働者が裁判で権利救済を求められないであるとか、あるいは訴訟の前に労使間で話合いをしようと思っても不利になるとかいったことがないようにするために、この情報の問題が重要だという認識を示しております。

 その上で、現行制度におきまして2点指摘をしておりまして、1つは、パートタイム・有期・派遣のいずれにつきましても、比較対象となる正規雇用労働者との待遇差に関する説明義務が課されていないという点を指摘しております。また、有期契約労働者については、待遇に関する説明義務自体も事業者に課されていない。若干補足をいたしますと、現在、パートタイム労働者と派遣労働者については、それぞれの法律で、本人の待遇については、待遇の内容ですとか待遇決定の際の考慮事項、こういったことの説明義務が課されておりますが、有期契約労働者にはそれが課されていないということが前提としてございます。

 そこで、今般の法改正においては、事業者は、1つは、有期雇用労働者についても、雇入れ時に、労働者に適用される待遇の内容等の説明義務を課すということ。また、雇入れ後に、事業者は、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の求めに応じ、比較対象となる労働者との待遇差の理由等についての説明義務を課すとされております。

 次に「3行政による裁判外紛争解決手続の整備」という項目であります。今回、不合理な待遇差の是正を求める労働者にとって、最終的には裁判で争えるようにということを保障する法整備を行おうという定義になっておりますが、実際に裁判に訴えるとしますと経済的負担も伴いますので、裁判外紛争解決手段(行政 ADR )を整備し、均等・均衡を求める当事者が身近に利用できるようにするということが提言されております。これも若干補足でございますが、現在、裁判外紛争解決手続として、現行法ではパートタイム労働法に労働局による調停などの規定が設けられておりますが、法体系が別々になっていることもありまして、有期雇用労働者と派遣労働者については、この調停のような仕組みが設けられておりませんので、そこを指摘していると解されます。

 次に「4派遣労働者に関する法整備」でございます。これは文章の大前提といたしまして、派遣労働者についても、1にございます通り、均等・均衡待遇を求めていく。その際に、派遣先に働く労働者との均衡・均等を求めるということを文章の前提といたしまして、1つ目の段落ですが、派遣元事業者は、派遣先労働者の賃金水準等の情報がなければ、派遣労働者の派遣先労働者との均等・均衡待遇の確保義務を履行できないとあります。派遣の場合には、パート・有期とは異なります特殊性として、派遣先と派遣元と派遣労働者の三者関係ということがございます。賃金などを決定するのは派遣元でございますが、派遣先との比較の中で決めるためには派遣先の情報が必要だということであります。このため、派遣先事業者に対し、派遣先労働者の待遇に関する情報を派遣元に提供する義務などの規定を整備するとあります。

 次の段落ですが、これも派遣特殊の議論といたしまして、派遣労働者については、派遣先労働者との同一労働同一賃金の適用をいたしました際に、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わることで派遣労働者の生活所得が不安定となるといった点。また、派遣元事業者による段階的・体系的な教育訓練等のキャリアアップ支援と不整合な事態を招くこともあり得るとされております。派遣元事業者が例えば社内で教育訓練体系を整備し、教育訓練に応じた能力向上を見ながら、ふさわしい派遣先を見つけていくということを仮にいたそうとしましても、それと必ずしも派遣先の賃金水準が見合うとは限らないという点があるのではないか。こういう問題意識があると考えます。

 こういったことから、今回提言されておりますのは、派遣労働者につきましては、派遣先との均等・均衡を大原則といたしますが、一方で、派遣労働者として十分に待遇の保護を図られていることを要件としまして、労使協定を締結した場合については、派遣先労働者との均等・均衡待遇ではなくて、この労使協定による待遇決定を認めるということを記載しております。具体的には、その労使協定の要件として3つを掲げております。<1>から<3>まででありますが、<1>が同種業務の一般労働者の賃金水準と同等以上であること。<2>が派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金に反映させていくこと。<3>が賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないことであります。

 次に、9ページの「(2)法改正の施行に当たって」という見出しの項目がございます。ここでは施行期日につきまして、具体的に何年何月という特定ではございませんが、この同一労働同一賃金を進めるに当たりまして、社内で賃金制度の見直しに関する労使の話合いなどが必要となることも多かろうと思われますので、十分な法施行までの準備期間を確保するという考え方が示されております。

 この同一労働同一賃金の法改正に関して、実行計画で決定されている内容は以上でございますが、若干、今の点に関連します点で、資料7を本日お配りしてございます。そこで現行制度について補足をさせていただければと思います。

 資料7の表紙をめくっていただいて、2ページと3ページに、今の実行計画の1で申し上げました均等・均衡待遇の規定の現状を書いてございます。2ページでは、パートタイム労働法、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の現状でありますが、第8条と第9条という2カ条がございまして、第8条がいわゆる均衡待遇の規定、第9条が均等待遇の規定でございます。第8条では、事業主がその雇用する短時間労働者の待遇を当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、短時間労働者及び通常労働者のとしまして、大きく3ケ所アンダーラインを引いてございますが、3つの要件でその待遇差を判断することになっています。1つ目が、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、これを法律では「職務の内容」と総称しておりますが、これが第1の要件でございます。第2の要件は、その次で、職務の内容及び配置の変更の範囲でございます。大づかみに申しますと、職務の内容の変更の範囲ですから、異動の範囲ですとかいうことが当たります。配置の変更の範囲というのは、昇進の範囲ですとか転勤の範囲というものが主に当たるとイメージいただければと思います。それから、その他の事情、これは個別の事案に応じて様々な事情が読み込まれ得るバスケットクローズ的な文言でございます。この3つの考慮要素を考慮して、不合理と認められるものであってはならないというのが、パートタイム労働法の均衡待遇の規定であります。

 また、パートタイム労働法では、次の第9条、均等待遇の規定がございまして、これも概括的に申しますと、職務の内容と、その職務の内容及び配置の変更の範囲、第8条で言うところの1つ目と2つ目の考慮要素、これが通常の労働者と短時間労働者で同じ場合には、待遇において差別的取扱いをしてはならないという規定でございます。第8条が包括的な考慮要素について、同じ場合、違う場合を含めているのに対しまして、第9条は、その中の特定のケースについて規定をしているという関係に立ってございます。

 3ページでは、有期雇用労働者に関しては労働契約法で規定をしておりますので、その条項でありますが、第 20 条という規定がございまして、ここで均衡待遇について規定をしております。第 20 条の中身は、今申し上げましたパートタイム労働法8条と類似しておりまして、有期契約労働者と無期契約労働者について、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、それから職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情、この3つの考慮要素を考慮して、不合理と認められるものであってはならないという、基本的にパートタイム労働法8条と同じような構造の規定が設けられております。

 次に、労働者派遣法第 30 条の3でございます。労働者派遣法は、今申し上げたパートタイム労働法、労働契約法と若干異なりまして、現行法におきましては、派遣元事業主に待遇決定に当たって配慮を求める、いわゆる配慮義務の規定までが設けられております。配慮の内容でございますが、ここでもアンダーラインを3ケ所引いてございます。派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮するというのが配慮要素の一つでございます。また、同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準、これが配慮要素の2つ目。それから、派遣労働者自身の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験等を勘案するという形で、こういった要素を勘案して、派遣労働者の賃金を決定するように配慮してくださいというのが労働者派遣法の規定でございます。

 それから、説明義務に関する議論が実行計画の2でございましたが、説明義務に関しましては、次の4ページをごらんください。4ページでは、パートタイム労働法の均等・均衡待遇に関する主な規定をピックアップして御紹介しておりますが、特に説明の関係では、第6条に1つ、労働条件の明示という規定がございまして、昇級の有無など一定の事項について、文書交付などにより、短時間労働者に明示するという義務がかかっています。

 また、第 14 条で、雇入れ後速やかに、雇用管理の改善措置の内容について、短時間労働者に説明をする。同じ条項の第2項で、短時間労働者から求められた場合に、雇用管理の改善措置の決定に当たり考慮した事項について、短時間労働者に説明をするという規定がございます。第1項が、いわば待遇の内容そのものの説明義務であり、第2項は、その待遇の内容を、どういうことを考慮して決めたかの説明でございますが、いずれもその射程としておりますのは、短時間労働者本人の待遇であるというのが現状でございます。

 この説明義務に関しましては、5ページに労働契約法の関連規定を載せておりますが、労働契約法には、この説明義務に当たる規定はございません。

 また、労働者派遣法、これも5ページの緑のところでありますが、これについては、賃金決定の際に考慮した内容について派遣労働者に説明する義務という、パートタイム労働法 14 条と類似の規定が置かれております。

 以上が、実行計画を御説明いたしましたことに関連して御紹介を申し上げる現行制度の概略でございます。

 次に、資料4に移らせていただきたいと思います。資料4「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会報告書」でございます。これは昨年3月から本年3月にかけまして、厚生労働省と内閣官房共同事務局の形で学識経験者の先生方、具体的な御参集いただきました先生は資料の 30 ページに掲載してございますが、この先生方に御参集いただきまして、同一労働同一賃金の実現に向けまして、諸外国、特に EU 諸国における制度の現状や運用状況、裁判例などがどうなっているかという点ですとか、日本の制度の現状と課題、日本企業の賃金実態、日本と EU の比較、ガイドラインや必要な法的見直しに向けた考え方の整理といった項目につきまして、1年間かけて御検討いただきました。その過程で、昨年 12 月に中間報告をお出しいただき、本年3月に論点整理という文書を出していただきました。その2つをまとめたのが、この報告書でございます。

 昨年 12 月の中間報告では、同一労働同一賃金の推進に向けた基本的な考え方として、こういう点が重要であるのではないかという点を御整理いただきました。中間報告は、この報告書の 21 ページから後にお付けしてございます。全部御説明すると時間が足りなくなりますので、ポイントを絞らせていただきますが、欧州諸国の検討から、欧州といっても一くくりにはできず、独仏と英では相当な労働市場構造、またそれに応じた同一労働同一賃金の実現のさせ方の違いがあるといった発見ですとか、それを踏まえて、我が国も含めて、それぞれの国の労働市場構造に合った方策をとることが重要であるといったことが冒頭、 23 ページ、 24 ページあたりでは記載されております。

 そして、 24 ページの下の方に基本的ポイントといたしまして、(1)から(3)の3点、これが同一労働同一賃金の実現に向けて重要であるということで、賃金決定ルールの明確化ですとか、職務や能力等と、待遇水準の関係性を明らかにすること、教育訓練機会を含めた均等・均衡の促進によって生産性の向上を図ること、こういったことが重要であるというような御提言でございます。

 以下、同一労働同一賃金の推進に当たって、企業規模ですとか非正規社員比率にも配慮していくことが必要であるとか、派遣労働者については丁寧な制度設計が求められるであるとか、職能分離を起こさないようにしながら進めることが肝要であるといったことを指摘いただいております。御参照いただければと思います。

 それから、3月には論点整理という文書をおまとめいただきました。これは法整備に向けまして、この検討会で法整備はこういう内容とすべきだという決め打ちの御結論をいただくという形ではなくて、法整備につきまして、それぞれの専門的な御知見から考えられる論点と、それに対する、こういう選択肢をとればこういうメリットがあるが、こういう点が問題になるといった、まさに論点の整理をいただいたものでございます。

 内容的には、1ページからが論点整理でございまして、主な論点項目ごとに、主な御意見として検討会で出た御意見の集約と、2ページから3ページのようにグレーの網かけをしました箱がございますが、ここで具体的に先生方から御指摘いただいた点を項目に沿って並べているという構成になってございます。詳しくはまた御参照いただければと思います。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの説明に関して、御質問、御意見等がございましたら、御発言いただきたいと思います。

 では、秋田委員。

○秋田委員 ありがとうございます。

 全体の中でお尋ねしたいのは、同一労働同一賃金について研究会の御報告もあります。まず、研究会の中ではヨーロッパの制度と比較しているという御説明もあって、一般的に我々も含めて同一労働同一賃金ということでイメージするのは、やはり業種横断的な職種給賃金という形だろうと思います。ですけれども、これからまた出てくると思うのですが、今回、改革会議で御提案されているのはそうではなくて、同一企業内の正規と非正規の不合理な格差の是正ということであって、同一労働同一賃金とこれをひっくるめて言ってしまうと、一般的な用語との誤解を非常に世の中で生じる可能性があると思います。ここでは、あえて言えば、日本版同一労働同一賃金みたいな意味合いだろうと思うのです。

 いずれにしても、ここで言う同一労働同一賃金とは何かという定義がなされていないというのがそもそもあるのですけれども、これはどのように定義をされるということなのでしょうか。

○守島部会長 ありがとうございます。

 企画課長、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 今の点は、実行計画を含めまして、政府がこれまでどういうスタンスで取り組んできたかということでございますので、事務局から申し上げます。

 同一労働同一賃金とはこういう概念であるということを明示的に定義しました箇所は、実行計画の中にはここという箇所はないのです。ただ、これまで議論をしてまいりました政府の「働き方改革実現会議」あるいはその前身である一億総活躍国民会議の議論といたしましては、1つは、今回対象にするのは同一企業内での正規と非正規の待遇格差の是正を図るための同一労働同一賃金というか、待遇格差政策であるということが前提でございます。その上で、同一労働同一賃金を日本でも取り組んでいこうという議論の出発点としまして、欧州の同一労働同一賃金の法制度、また運用、裁判例などを色々と調べまして、欧州の同一労働同一賃金においても裁判例など運用の実態まで見ていきますと、例えば、勤続年数の違いであるとか、労働の質の違い、持っている資格などによって、同じ労働というか、何を労働と言うのかですけれども、同じ職務内容であっても勤続年数等々の考慮による差異は認められているということで、純粋に今おっしゃった業種横断的な職種別賃金によって、かっちりシングルレートで決まるようなものよりは、もう少し自由度、幅があるということを議論の出発点としてまいりました。

 日本におきましても、いわば職務給でなければ同一労働同一賃金にならないという考え方ではなくて、企業の様々な賃金形態、賃金決定基準、労使の話合いの中で積み重ねられてきたものを尊重しながら、その中で正規と非正規の格差を是正していく切り口を見出そうということで議論しておりますので、直感的に想起されます欧州的な企業を横断する職種による賃金決定、それしか認めないのだという議論ではないということは、政府のこれまでの議論の前提でございます。

○守島部会長 よろしいでしょうか。

○秋田委員 ありがとうございました。

 そういった違いがあるというのをこれからも一般的に周知していただくのと、そうすると、その欧州型のところを目指すのかどうか。欧州型の同一労働同一賃金が目標なのか、そうではなくて、この日本型の同一労働同一賃金というのがゴールなのか。その辺はいかがなのでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 将来目指すかどうかについては、労使あるいは国民的な議論の問題であろうかと思います。先ほど、非常に端折りながらでございましたが、検討会の報告書の中で御提起いただきました内容でも、本当に、将来、欧州的な労働市場を目指すのかどうかということについては、そこまでは決め切らないで、ただ、当面の対応として、賃金決定基準の明確化であるとか、職務内容と待遇の結びつきの明確化であるとか、そういったことが必要だということは提言されておりますが、欧州のような労働市場を目指すかどうかについては、政府としても、どちらとも方針を決めていない開かれた状態であると考えております。

○守島部会長 よろしいですか。

○秋田委員 たびたびすみません。

 ということであれば、やはり日本的雇用のこれまで労使で築き上げてきた制度のよさを生かしながら、進めていっていただいた方がいいのではないかと思います。これは意見です。

○守島部会長 ありがとうございました。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 ありがとうございます。

 今、秋田委員が御指摘された点は、労働側として重なる認識を持っております。同一労働同一賃金というと、あたかも職務給的な色彩が濃いようなイメージをされる方もいらっしゃいますし、また、同一価値労働同一賃金ではないのかといった様々な議論があります。しかし、この間の政府の議論などを見ておりますと、正規労働者と非正規労働者の処遇格差をどうやって是正していくのかということがメインのテーマであると認識しております。

その際、横断的な職種別賃金があるヨーロッパのようなものを目指していくのかどうかというのは別な話であると思います。ただ、法政策としては、ヨーロッパの事例も参照すべきだろうと思っておりまして、そういったことを考えながらこの部会で議論していくべきではないかと考えております。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 岩村委員、どうぞ。

○岩村委員 今の議論は非常に重要なポイントだと思います。若干、少なくともフランスぐらいは知っているという観点からいうと、やはりフランスの場合は、先ほど秋田委員も言及されましたように、いくつかのヨーロッパの代表国で見られるように、もともと労働組合の組織が産業別の労働組合の組織で、かつ、フランスの場合は、産業別の労働組合が一定の資格を持っている場合に締結した労働協約については、組合員でない人たち、さらには使用者団体に入っていないような企業についても、当該産業に属していれば全部適用されるという非常に強い効力を持っている。その中で当該産業における職種別の最低賃率表が定められているというのが全体のベースにあって、その上に乗っかって、紛争が起きたときに裁判所が同一労働同一賃金という原則で判断をしている。そういう実態だと私は理解しています。

 逆に言うと、フランスについて言えば、まず法律が同一労働同一賃金というものを定めたわけではなく、それに先行して労使が自治によってつくり上げた一定の産業別の職種別賃金の体系がまず存在するという状況だと、少なくとも私はそのように理解をしています。既に労使双方から御指摘があったように、日本の場合はそれが全然違うので、考え方の出発点としては、やはり企業内というものをベースにして考えていかざるを得ないだろうと思います。

 もう一つ、フランスの職業別・職種別の賃金というのが目指すべきモデルかと言われると、私も少しはフランスのことを知っているので、それほど肯定的には考えられない。フランスの労働市場は非常に硬直的であり、職種の枠を超えた配転とかはまず考えられない。ということは、結局、ある職種について産業構造の転換とか技術発展が進んで、要らなくなるということになれば、もう企業をやめていただくというのが根本的な考え方であり、ただ、それをやっていると失業率がどんどん高くなるので、雇用政策上それはやめてくれということで、色々な規制や補助対策をやっているということになります。逆に言うと、そうした問題点を避けるために、規制に規制をどんどん積み重ねていく。さらに様々な補助対策を乗っけていくという構造であると基本的には理解しております。

 その辺はこれから具体的に、同一労働同一賃金というものを、「働き方改革実現会議」の計画を受けて、ここでどう考えて法律をつくるかという話かと思います。

 もう一点、要望なのですけれども、資料 No. 4の検討会の報告書ですが、私の記憶では、中間報告のときには各委員がそれぞれ附属してペーパーを出していたはずです。そこで中間報告をまとめる際にベースとなったそれぞれの委員の見解が出ていて、これは大変重要だと思うので、次回で結構ですけれども、資料としてお出しいただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 事務局、お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 申しわけありません。資料の点は、確かに中間報告では、この本文の後に各委員の先生のそれぞれの専門的な御知見からの御意見集がございました。それは次回、お付けしてお出しいたします。

○守島部会長 ありがとうございます。

 ほかにどなたかございませんか。大丈夫ですか。

 続いて、事務局から残りの資料について御説明いただいて、そこに基づいて、各議題について議論を進めていきたいと思います。それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 それでは、資料5から7までにつきまして、御説明申し上げます。

 まず、資料5でございますが、これは本部会におきまして、本日を含めて今後、御議論をお願いしたいと考えております全体像、現時点で考えられます全体像をお示ししたも のでございます。 が「短時間労働者・有期契約労働者関係」、2が「派遣労働者関係」としておりまして、非正規雇用の中でも直接雇用の類型と、三者関係、間接雇用の類型とで若干法制度に特殊性がございますので、大きく分けてございます。

 1、短時間・有期関係では、1つ目が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備、いわゆる均等待遇規定・均衡待遇規定をどうしていくかという点であります。有期契約労働者の均等待遇規定の問題、それから均衡待遇規定の明確化と実行計画がされていますが、それをどう肉づけするかという問題。また、今、ガイドライン案という文書を政府がお示ししたものとして実現会議に提出された形になっておりますが、これの根拠規定をどうするかという点です。

 2番は、労働者に対する待遇に関する説明の義務化でございまして、現在、説明義務の規定がない有期契約労働者の点をどうするか。また、比較対象労働者との待遇差の理由などについての説明義務を加えることについてです。

 3番、行政による裁判外紛争解決手続の整備等としております。行政 ADR の手続の対象は、今、パートタイム労働者だけでございますが、これをどうするかという点と、また、パートタイム労働法で設けられております報告徴収や助言・指導・勧告・公表の規定、こういったものの適用対象をどうしていくかということもあわせて論点だと考えております。

 2は派遣労働者関係でございます。1つ目が、司法判断を求める際の根拠となる規定の整備であります。ここが(1)と(2)に分かれておりまして、先ほど実行計画でもございました、原則としての派遣先との均等・均衡による場合が(1)であります。(1)の中では、派遣の均等待遇規定、均衡待遇規定をどう整備していくかという点。それから三者関係であることによる特殊性としまして、派遣先から派遣元事業主へ待遇情報を提供していただく仕組みが要るのではないかという点。それから派遣料金、これが派遣労働者の賃金の原資になりますので、これへの配慮が要るのではないか。その他、派遣先に求める措置の関係です。

 (2)は労使協定による待遇決定による場合でありまして、この労使協定の締結主体をどうするか、あるいは労使協定の要件をどうするかといったことが論点であります。

 めくっていただいた2番が、労働者に対する待遇に関する説明の義務化、3番が、行政による裁判外紛争解決手続の整備等でございます。これは全く同じということではございませんが、比較的、 の短時間・有期の待遇説明の義務化、裁判外紛争解決手続の整備等の項目とある程度パラレルな部分もあるかと思っております。派遣の中では、1番、司法判断の根拠規定の整備をどうするかが、非常に派遣特殊な議論、御検討をお願いしたい点でございます。

 以上が全体像でございまして、本日この後、御審議をお願いしたい点としまして、資料6「論点(案)(短時間労働者・有期契約労働者関係)」を次に御説明いたします。

 ここでは、先ほど御説明いたしました「働き方改革実行計画」をベースに、これをさらにどう肉づけしていくかという点について、事務局の御提案をあわせて記載しております。構成としては、「働き方改革実行計画」に倣いまして、まず四角の1番が「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」であります。

 その下の枠の中に、「働き方改革実行計画」の該当部分を抜粋しています。

 その箱の下に矢印が4つ並んでおりますが、この矢印部分が具体化に関する事務局からの御提案でございます。

 1つ目の矢印でございますが、均等待遇規定について、有期契約労働者についても対象としてはどうかとしております。これは「働き方改革実行計画」の上の箱に引用しております、下から3行目のアンダーラインを引いた部分をほぼそのまま書いておりまして、実行計画の内容の通りであります。

 次の矢印、均衡待遇規定、職務内容や職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮して不合理な待遇差を禁止する規定でありますが、これについて明確化を図るため、待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化してはどうかとしております。これは実行計画では、均衡待遇の規定について明確化を図るとだけされている部分につきまして、具体的にどう明確化を図るかについての事務局の御提案でございます。少し補足をさせていただきますと、待遇の性質・目的に対応する考慮要素と書いてございますが、これは考え方としましては、昨年 12 月に公表いたしましたガイドライン案でこのような考え方をとったところでございますが、待遇の性質、例えば基本給ですとか各種手当、各種手当にも例えば役職手当ですとか特殊作業手当、あるいは通勤手当、食事手当、様々なものがございますが、これと法律で定められております均衡待遇規定の考慮要素 から 3を照らし合わせて不合理かどうかを判断するに際しまして、基本給のようなものは各企業に様々な決定基準、職務給、職能給、成果給がございますし、それを前提にしますと、法律でこの考慮要素だけで待遇差が不合理かどうかを判断するというような狭い判断の比較の枠組みはなじまないと考えた次第です。

 したがいまして、ガイドライン案につきましては、例えば経験・能力に応じて支給しようとする、そういう考え方をとっているのであれば、経験・能力の評価において差別がないようにしてくださいという考え方。あるいは成果や業績に応じて支給するという考え方をとっておられる会社であれば、その成果・業績の評価において公平に扱ってくださいという考え方をとりまして、どの考慮要素に照らして待遇差が不合理かどうかを判断すること自体、法律上の3大考慮要素を幅広く考慮し得る、その中で各社の実情に応じた比較を労使でやっていただくという考え方をとりました。

 一方、各種手当類でございますが、例えば役職手当、店長に出す店長手当というようなものがある場合、この店長手当が正社員 店長とパート店長で不合理になっていないかどうかを判断する際には、考慮要素 から 3までございますが、主に1、店長としての職務内容、どんな仕事内容で、どんな責任を負っているかに照らして、それが同じであれば、店長手当は同じにしてください。違いがあるのであれば、その違いに応じた支給にしてくださいという考え方をガイドライン案ではとった次第であります。

 役職手当ですとか特殊作業手当、こういった職務に着目したと考えられる手当は、3つの考慮要素のうち、専ら職務内容を、この考慮要素で不合理かどうかを判断することにふさわしいのではないかという考え方をとりました。

 また、通勤手当や食事手当といった手当がございますが、こういったものは、職務内容が違う場合であっても、同じ事業所で同じように働いているのであれば、例えば同じようにお昼の時間帯を挟むような勤務形態になっているのであれば、同じように食事手当を正社員・非正社員に支給していただきたいという考え方をとりました。

 ですので、同じ手当類といいましても、その手当の性質によって職務内容が違うかどうかで判断をするもの、あるいは別の手当ではその他の事情の中に何かあるかもしれませんが、食事手当などのように職務内容や職務内容・配置の変更範囲、その他の事情にかかわらず、同じところで同じように働いていれば同じにしてくださいというものがあるだろうという考え方をガイドライン案ではとりまして、この政府としての考え方をベースに、今回の均衡規定の明確化について、こういった提案を申し上げているところでございます。

 ただ、世の中には様々な待遇がございまして、これを政府が全て把握できるわけでもございませんので、法律の条文で基本給は3つの考慮要素の総合判断であるとか、役職手当は職務内容で判断するとかいうことを特定するのは縛り過ぎになるのではないかと考えまして、法律の条文としましては、現在の待遇差があるときは、1から3の考慮要素に照らして不合理と認められるものであってはならないという規定に若干文章を加えまして、待遇差があるときは、その待遇の性質・目的に応じて、1から3に照らして不合理と認められるものであってはならないという形にすることが、バランスのとれた案なのではないかという考え方を持っております。

 次の矢印でございますが、これも明確化の一環としての御提案でございます。現在、考慮要素の3つ目として、その他の事情という文言がございます。これは個別の事案ごとに様々な事情をこの文言の中で考慮し得る、これによって個々具体の事案について柔軟かつ現実的な解決、処理を可能にするという意味で役割を果たしている文言でございますが、一方で、外から見れば全く内容が想像つかないという点もございます。規定の明確化を図るという観点からは、これについて、このような明確化のやり方があるのではないかということで、現在、その他の事情という文言の中で読み込まれておりまして、かつ、こういったことを待遇決定の考慮要素として考慮しなければならないという意味ではないのですが、考慮することが社会的にも通常認められることであろうと考えられます。職務の成果・能力・経験といった要素を、このその他の事情の例示として明記してはどうかという提案でございます。成果・能力・経験・その他の事情というふうに並べてはどうかというイメージでございます。例示列挙でございますので、例示を出したことによって、その他の事情の柔軟性が損なわれる、狭められることになってはならないという問題意識は一方で持っておりますので、そこはそうならないように解釈を明確化しつつ、例示をすることで、均衡待遇規定の明確化という観点の一つの方策にできないかということでございます。

 4つ目の矢印でございますが、これも均衡待遇規定のあり方についてで、現在、パートタイム労働法と労働契約法、先ほど条文を簡単に御説明申し上げましたが、別々の法体系であることもありまして、若干その条文の構造に相違がございます。その相違点が、パートタイム労働法は同一の事業所の中で通常の労働者とパートタイム労働者を比較するという考え方をとっておりますのに対し、労働契約法では、同一の使用者、いわば企業単位で無期契約労働者と有期契約労働者を比較するという考え方に立っております。別々の法体系、別々の政策としてやっているのには、これまでこれでよかったわけでございますが、今回、政府としましては、パート・有期・派遣という雇用形態に対して横串的に待遇改善を図っていきたいという考え方、そういう発想を持っておりますので、ここのずれは統一をしたい、整合させたいと考えています。

 その際に、どちらにそろえるかということになるわけでございますが、現在の様々な状況を考えますと、近年、例えばパートが店長であるというケースもどんどんふえてきております。その際に、事業所の中での比較ということに留まっておりますと、店長が店舗に一人しかいない場合は、事業所の中には比較すべき方がいないということになってしまいます。ですが、パートの店長の、例えば、店長手当の扱いがどうかということを評価する際には、やはり類似の店舗の正社員の店長の扱いがどうなっているかということを見ざるを得ないケースがあるのではないかと考えますと、どちらにそろえるかと申しますと、同一の使用者、労働契約法の方にそろえることが適切ではないかということを提案申し上げております。

 2ページに移っていただいて、次の矢印ですが、これはガイドラインに関してでございます。ガイドラインは現在、ガイドライン案というものが法律の根拠のない形で政府案をお示しして、関係者の御意見を色々いただいている状態でありますが、これについて、法改正の中でガイドラインの根拠規定を設けまして、厚生労働大臣がガイドラインを策定することができるというイメージの条項を設けて、法律にきちんと根拠づけることをしてはどうかということでございます。

 次に、四角の2番「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」という項目であります。

 実行計画の抜粋が先ほどと同様についておりまして、その下に矢印で事務局からの御提案を申し上げております。

 現行のパートタイム労働法においては、短時間労働者については、以下の1)から3)の説明義務を課しているが、有期契約労働者についても同様としてはどうかとしております。1)が特定事項、昇級・賞与などの文書明示。2)が待遇内容全般の雇入れ時の説明義務、これは文書という縛りはございません。3)がパートタイム労働者から求めがあった場合の待遇決定の考慮事項に関する設営義務です。これについて、有期契約労働者には同等の規定がございませんので、同様の扱いとしてはどうかという提案であります。これは実行計画の中の箱で引用した部分の下から4行目からのアンダーライン部分にそのまま対応する内容でございます。

 次に、3ページの上の矢印ですが、「また、これらに加え」といたしまして、パートタイム労働法にも現在ない内容でありますが、短時間・有期契約労働者が求めた場合には、正規雇用労働者との待遇差の内容やその理由等についての説明義務を課してはどうかということとしております。これは実行計画の箱で引用した中の最後の2行が該当部分でございます。それを引っ張ってきたものであります。

 3ページに戻っていただいて、そのすぐ下の矢印で「さらに」とございますが、説明を求めたことを理由とする不利益取扱いを禁止してはどうかという提案でございます。実行計画にはこのことまでは書かれてございませんが、労働法の他法令の例を見ますと、育児休業の申し出をしたときであるとか、ストレスチェックの関係で労働者が権利の行使としてあることを事業主に求めた場合に、そのことを理由として不利益取扱いをしてはいけないという規定が多く設けられておりますので、その立法例に倣ってはどうかという提案でございます。

 次に、四角の3番「行政による裁判外紛争解決手続等」でございます。

 箱の中に実行計画の抜粋が同様にございます。

 そのすぐ下の矢印でございますが、そこの前半4行ほどでは現行のパートタイム労働法の御説明をしております。短時間労働者については、行政が必要と認めた場合、法律的にはもう少し正確に言うと「短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは」という文章になっておりますが、雇用管理の改善の必要があると認めるときは、報告徴収・助言・指導・勧告ができるという規定がまずございます。その上で、さらにより具体的に、何条違反、何条違反というふうに条項を特定いたしまして、その場合には勧告のさらに次の措置として、企業名公表ができるというのがございます。

 同じくパートタイム労働法では、行政 ADR の仕組みとしまして、労働局長による紛争解決援助や調停の規定が設けられております。調停と申しますのは、都道府県労働局ごとに地域の弁護士会等に御協力いただきまして、弁護士の先生ほかに調停委員になっていただいて、申し出があった場合に労使双方の御主張を聞いて、調停案をつくるというプロセスでございますが、そういう手続が設けられております。これが有期契約労働者については、労働契約法にこういった行政措置的な規定が、労働契約法の法律の性格もありまして一切ございませんので、パートタイム労働法に諸規定を移行・新設することにより、行政による履行確保の対象、それから行政 ADR の対象としてはどうかという提案でございます。

 次の「なお」という矢印でございますが、これは今の矢印で申し上げたことのもう一段細かい運用の話になってまいりますが、パートタイム労働法の現状をもう少し詳しく申し上げますと、均等待遇規定、職務内容その他が同一である場合は差別的取扱いをしないでくださいという規定につきまして、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としております一方で、均衡待遇規定については、現状では報告徴収・助言・指導・勧告の対象としておりません。法律的には、均等・均衡とも雇用管理の改善のために必要があると認めるときはという条文ですので、読み込み得る法律の条文になってございますが、その条文の運用としては、均等はやるけれども、均衡はやらないというふうになっているのが現状であります。

 これにつきまして、事務局の御提案としまして、今回、均衡待遇規定を含めてガイドラインを整備する。今のガイドライン案を法律に基づくものにきちんとした手続を踏んで位置づけていくということを考えますと、均衡待遇規定についても一定の場合に報告徴収・助言・指導・勧告の対象とすべきではないかという考えをお示ししております。現在、均衡待遇規定について報告徴収・助言・指導・勧告の対象としておりませんが、これは考え方としては、やはり均等待遇規定と違って、均衡待遇の場合にはどうしてもグレーゾーンといいますか、量的な評価といいますか、例えば、ある正社員の方とパートの方がいて、職務内容が相互に違う。その違いに対応した待遇格差というのは、例えば、 100 80 なのか、 100 70 なのか、 100 60 なのか、こういったことが問題になり得る事案がございます。裁判になれば、そこをまさに様々な観点から判断をして、白黒つけていくわけでございますが、 100 80 とか 100 60 といった判断を行政官が現場にぱっと行ってつけるということはなかなかできないであろうし、また、すべきでないだろうという考え方で、今回、均衡待遇規定は助言・指導等の対象としていないわけでありますが、今回の考え方としては、ガイドラインの策定等により、均衡待遇規定の中でも解釈が明確化できるケースが出てくるのではないかということであります。

 そこで、提案の文章としましては、解釈が明確でないグレーゾーンの場合は、今と同様に報告徴収・助言・指導・勧告の対象としない一方で、解釈が明確な場合は、報告徴収・助言・指導・勧告の対象としてはどうかとしております。

 次の4ページの段落ですが、その際、均衡待遇規定については、これは何条、何条と条項を特定して企業名公表の対象を決めておりますが、これについては相手方に与える一定の社会的ダメージも考慮し、従来どおり公表の対象とはしないという提案としております。

 また、行政 ADR については、均等・均衡待遇を求める労働者の救済を幅広く対象としてはどうかとしております。これも補足をいたしますと、現在のパートタイム労働法では、均等待遇規定に関わる問題は労働局調停などの対象としておりますが、均衡待遇規定の方は対象となっていないのが現状でございます。

 四角の4番「その他」でございます。

 現行のパートタイム労働法では、1番から3番までで取り上げませんでした、やや細かめな規定が種々設けられております。例えば、国がパートタイム労働施策の基本方針を策定するですとか、就業規則の作成・変更に当たりまして、労働基準法で全労働者の代表の意見聴取が義務としてかかっておりますが、それとは別に、パートタイム労働者の代表の意見聴取の努力義務がございます。また、通常の労働者への転換に関する規定、例えば正社員を募集する際に、こういう募集をしますということをパートの方に周知してくださいといった規定などがございます。これらにつきまして、現在、パートタイム労働法でパートタイム労働者のみに適用されているわけでございますが、先ほど行政 ADR のところで申し上げました法律の構造としまして、現在の有期契約労働者は労働契約法、パートタイム労働者はパートタイム労働法という法律の建てつけになっているところを、有期契約労働者に、現在のパートタイム労働者に適用されているような様々な行政的な措置を適用する観点から、パートタイム労働法に規定を移行・新設することに伴いまして、これらの規定についても、パートタイム労働者のみならず、有期契約労働者も同様に対象としてはどうかという提案でございます。法律の各条文の主語に短時間労働者というのが出てまいりますが、それを短時間・有期契約労働者と改めることによって、このようなことにしてはどうかという提案をしております。

 以上が、パートタイム労働・有期契約労働に関しまして、実行計画をベースにさらに法制化に向けて御議論をお願いしたいと考えている点でございます。それを今回と次回も含めて、パート・有期の議論をお願いできればというスケジュール感で考えております。

 次に、資料7につきまして、これは現行制度などの参考資料でございますので、逐一は申し上げず、議論の中で必要に応じてまた御紹介・御参照願えればと思いますが、先ほど触れなかったページについて概略を申し上げます。

 6ページでは、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の特に均等・均衡にかかわります条項の発展経過を書いてございます。3法それぞれ必ずしも同時のタイミングではなくて、それぞれの政策論のスケジュールの中で改正をされてまいりました。

 7ページからは、現行のパートタイム労働法などの具体的な運用、通達の特にポイントになると思われる部分の抜粋お付けてございます。7ページ、8ページは、パートタイム労働法におけます通常労働者、パートと比較される比較対象労働者の概念の整理の部分であります。

 9ページ、 10 ページは、パートタイム労働法の均衡待遇規定と均等待遇規定の解釈について拾っております。

11 ページ、 12 ページでは、パートタイム労働法の説明義務の条項に関する内容を御紹介しております。

13 ページでは、パートタイム労働法の行政 ADR の関係の規定や仕組みを示しております。

14 ページからは労働契約法でございまして、 14 ページでは、労働契約法 20 条、均衡待遇の規定の内容説明です。

15 ページは、先ほど説明義務の関連で出ました不利益取扱い禁止規定について、他法令の例を3つほど取り上げております。

16 ページ、 17 ページは、パートタイム労働法ができる前も含めてですが、雇用形態の違いによる賃金格差等をめぐって争われた過去の主な裁判例を記しております。

 最後のページでは、 EU の3大、パートタイム労働指令、有期労働指令、派遣労働指令の概略をまとめております。

 駆け足でございましたが、以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 それでは、資料6「論点(案)(短時間労働者・有期契約労働者関係)」に沿って御議論を進めていきたいと思います。

 まずは論点1「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」及び論点2「労働者に対する待遇に関する説明の義務化」について、御意見、御質問があれば、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

 梅田委員、どうぞ。

○梅田委員 今回示された論点の全体像には、ガイドライン案の内容に関する項目が盛り込まれていません。ガイドライン案の内容については、法案成立後、改めてこの部会で議論されるのかということを確認したいと思います。

○守島部会長 御質問ということですね。

 事務局、よろしくお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 ただいまの御質問でございますが、実行計画の資料、資料3の 63 ページをお開きいただいてもよろしいでしょうか。ガイドライン案の前文の中で、このガイドライン案の位置づけとしまして、 63 ページの一番上の○でございますが「今後、この政府のガイドライン案をもとに、法改正の立案作業を進め、本ガイドライン案については、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的に確定する」とされてございます。ここで意図しておりますのは、現在、法律に根拠のないガイドライン案という形で出ているのですが、これについて、今も私どもに日々ホットラインで様々な方から御意見を頂戴しておりますのと、それから法案を国会で御審議いただきますと、当然、ガイドライン案についても様々な御意見、御指摘をいただくことと思いますので、こういったことを踏まえて、法案成立後に今度、法改正が成立した場合に施行のための省令事項ですとか、そういうことを決めていくプロセスが必要となってまいります。そういう中でガイドライン案についても最終的に確定させていくということで、今回は法改正の内容に絞って御議論をいただきまして、ガイドライン案については、国会審議を踏まえて御議論いただける段階で、またお願いできればと思っております。

○梅田委員 ありがとうございます。

○守島部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 武田委員、どうぞ。

○武田委員 御説明いただきまして、どうもありがとうございました。

 基本的に御説明いただいた内容には賛成の立場でございますが、3点、意見として述べさせていただきたいと思います。

 まず、1番目の点でございますけれども、先ほど企画課長から口頭で御説明いただきました通り、私もあまり狭い判断に限り、複雑な規定によって縛ることはなじまないのではないかと思います。したがって、企業が判断する上で、よりどころとなる部分をしっかり明確化することが極めて重要ではないかと考えております。

 2点目でございますが、先ほど御説明いただいた通り、今回の趣旨としては、できるだけ横串で労働市場の様々な慣行を改革していこうということですから、その趣旨に沿えば、専門家の方々の御意見は踏まえるべきと存じますが、できるだけ法体系も横串化し、できる部分については一本化していくことを、ぜひ進めていただく必要があるのではないかと思います。

 ただ、法律の専門の観点から、区別した方がよい部分はあろうかと思いますので、その点、今後議論させていただければと思います。

 3点目といたしまして、資料に書かれていることとは若干離れますが、同一労働同一賃金に関し、私なりの考え方を述べさせて頂きます。働き方に関して成果・能力・経験等によって、本当は同一労働なのに賃金が同一になっていない部分、あるいは不合理な部分を解消していく、いわゆる均衡待遇を徹底していくことになれば、本来は、正社員に関してもそうした基準によって合理的に説明できていないと、両方に対して説明できないはずです。したがって、その点も併せて行っていかないと、結果的に、同一労働同一賃金を進めていくのは難しいのではないかと思います。成果や能力、職責も含めた職務の内容に沿って賃金が決まることで、労働者自身もスキルを身につけるよう切磋琢磨し、より職務や職責の範囲を広げていく、それが生産性の上昇につながり、ひいては持続的な成長を実現していく。この点は冒頭の大臣の御挨拶とも整合性を持つのではないかと考えます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 有期契約労働者に対して均等待遇規定を設けるという1番目の矢印のところで、関連して申し上げたいのですが、定年後の再雇用の方々についてでございます。御承知のように、定年後継続雇用者、現在約8割がフルタイムの有期雇用、これが1年間の期間で5年更新される、このような内容で雇用義務を果たしている企業が圧倒的に多いということでございます。そもそもこれは御承知のように、公的年金の支給開始年齢の繰下げということで、そういったことと連動して企業に雇用義務が課されていると理解しております。したがって、これは企業としては本来、仕事があろうがなかろうが、雇用義務を社会的な見地から課されたというのが経過だと理解しております。

 現在、そういった形で継続雇用するには、当然ながら、別にやらせる仕事があればいいですが、そうでなければ 60 歳以前から従事していた仕事をそのままさせている、そのまましていただいている、これが企業にとっても本人にとっても非常に仕事がしやすいということで、同じ仕事をしているというのが多い実態だろうと考えております。

 したがって、こういった背景がある有期契約労働者に、ここで全く規制の対象範囲を限定せずに適用するとなると、そもそも雇用義務ありきのところで、企業にとって雇用の自由が奪われていますので、そこに後から賃金も、同一の仕事であれば同一賃金という形で、わかりやすく言うと、後出しでそういうところまで規制が伸びてくるのは非常に釈然としないという感じがいたします。これは有期雇用の無期転換ルールのときも高齢者のところはこういった議論がありましたけれども、定年継続雇用者の処遇をめぐって、今、裁判でも争われているという事象もありますが、いずれにしても、これを全く何の措置もなく同様に混ぜていく、適用範囲としていくことについては、慎重に検討が必要だろうと考えております。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 ありがとうございます。何点か申し上げたいと思います。

 資料6で先ほど論点を御説明いただきましたが、連合が行っている労働相談には、非正規雇用で働く皆さんから、正社員と同じように働いているのになぜ賃金が上がっていかないのかということや、同じように働いているのに、例えば安全衛生などの装備が正規・非正規でなぜ異なるのかということ。さらには、なぜ正社員とパートタイマーや有期契約社員で休暇制度が異なっているのか。正社員には一時金が支払われているのに、パートタイマーや有期契約社員には支払われていない。こうした違いは何なのかという声が非正規の皆さんからは大変多く寄せられています。

 こういった正規・非正規の処遇格差をどうやって縮めていくのか、是正していくのかということが重要だと考えています。先ほど御説明いただいたように、これまでも労働契約法やパートタイム労働法の中で待遇差の是正に関する規定整備がされてきたわけですが、処遇全体で不当な格差がないのかといえば、まだまだあるのではないか。こうした処遇格差を是正するための実効的な法整備を行うことが非常に重要であると思っております。現行法下でも最近は少しずつ裁判例も出てきておりますが、まだ規定として使いづらい部分があるのではないかと思っており、そうした部分を是正し、労働者にとって使いやすくする観点から法整備をしていくことが必要ではないかと考えております。

 今回、待遇差の合理性なのか、それとも不合理な待遇差を是正するのかというところで、私どもは合理的な理由のない待遇差を禁止すべきということを求めてきておりましたが、実行計画では、不合理な待遇差の禁止という現行法制の枠組みは維持することとされました。この場合であっても立証の負担を労働者が一方的に負うのではなく、使用者にも立証責任があるということを明確化していくことが重要であると考えております。また、ガイドライン案では問題となる例と問題とならない例が示されていますが、グレーゾーンが多く残るわけで、問題となる例でなければ直ちに適法ということではなくて、グレーゾーンも含めてすべての待遇差について裁判で争えるようにしていくべきだと考えております。

 その上で、先ほど秋田委員から高齢者の問題について御指摘がございました。この点については、御指摘があった長澤運輸事件は係争中であり、一審、二審について、それぞれ様々評価があると思います。一審のままでいいのかということも議論はありますけれども、高裁判決のように、定年後の継続雇用だからということで賃金を引き下げることが許容されるということでもないと思っております。定年後の継続雇用労働者の方がそれぞれどのような働き方をしているのか、また、それまでの賃金体系の問題などを様々考慮して考えなければならないと思っております。定年後の継続雇用労働者の方を直ちに法の対象から外すということではなく、司法の判断を見ながら考えていくべきではないかと考えます。

 それから、論点1の1つ目の矢印、2つ目の矢印については、基本的にこのような方向性で明確化していくことが必要ではないかと考えております。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。

 松浦委員、どうぞ。

○松浦委員 2ケ所質問させていただきます。

 1ケ所目は、1ページ目の矢印の2つ目でございます。均衡待遇規定について明確化を図るために、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断すべきという規定を入れられたいという御提案だったかと思います。これについて、おそらく手当については、ある程度クリアに判断がつくという面があるかと思いますが、やや心配なのが基本給の部分です。基本給の部分については、正社員と非正社員で賃金設計の考え方がそもそも違っていることがむしろ一般的だと思いますが、考え方が違っている場合には、この規制の対象から外れるわけですね。例えば、非正社員が職務等級で、正社員が職能等級ですという場合は、性質・目的に対応する考慮要素ということからすると、そもそも性質・目的が違うのだから、比べようがないということになるのではないかと思うのです。

 それは正しいかどうかも含めてお聞きしたいのですけれども、そうなると、そもそも基本給は非常に複雑で色々な考慮要素があるわけなのですが、その上で、このような規制のたたずまいにしたときに、正社員と非正社員で賃金設計の性質・目的をたがえておけば規制がかからないのではないかという逆のインセンティブが働く懸念がないのかということです。

 つまり、賃金体系をなるべく共通化していく、透明化していくという総論がある一方で、むしろ分解して同じ考え方のものを規制していきましょうということを基本給にまで適用していくと、共通化と逆の方向性に行く懸念がないのかという疑問点です。

 この箇所についてもう一つの疑問は、もちろん待遇の性質・目的がきれいに判断できればいいのでしょうけれども、労使の交渉の結果、性質・目的が曖昧な落としどころに落ちついたというケースも各企業で出てくると思うのです。ですので、こういう個々の待遇ごとの性質・目的で、という枠をはみ出して労使が合意したときに、それについてどう考えるのかということが、この箇所についての2点目の疑問点です。

 もう一ケ所は比較的シンプルな質問ですけれども、3ページの1つ目の矢印のところで、短時間労働者・有期契約労働者が求めた場合に正規雇用労働者との待遇差の内容について説明義務を課すという部分で、格差是正に向けて重要な論点になってくるかと思います。ただ、個々の労働者の比較ではなく、雇用管理区分間の比較を想定しないと、なかなか説明は難しいのではないかという議論が過去にあったかと思うのですけれども、ここについてはどのようにお考えになっていらっしゃるかということを確認したいと思います。よろしくお願いします。

○守島部会長 岸本さん、どうぞ。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問を3点いただきました。順に御回答申し上げます。

 まず、基本給につきまして、この均衡待遇の適用をどう考えるかでございますが、現行法におきましても、それから今回、私ども事務局が提案申し上げた内容におきましても、基本給においては、賃金決定の基準を正社員・非正社員で共通にしようと、あるいは別々にしようと、均衡待遇規定そのものの適用から外れることはないというのが大前提だと考えております。その上で、どういう考え方で当てはめていくかという問題になってまいりますが、正社員と非正社員で基本給の決定基準が違う。例えば、正社員は職能給プラス成果主義的な賃金決定で、非正社員は専ら職務をベースに決定しているというケースが仮にあったとしますと、その場合の考え方としては、賃金決定基準が異なっていることそのものが不合理であるという考え方はとらずに、異なっていること自体が直ちに不合理とかいうことではなくて、異ならせていることについて、その異ならせていることが職務内容の違い、あるいは職務内容・配置変更範囲、その他の事情の違いの実態に裏づけられるかどうかということが評価・判断をされるべきものであると考えております。

 ですので、逆に言いますと、非常に会社側の抽象的な主観のみで正社員と非正社員について、正社員は会社の中核としてやっていく人たちだからというような御説明が仮にあったとします。でも、職務内容、あるいは職務内容・配置変更範囲、その他の事情のどれをとっても違いが見られないという場合は、その賃金決定基準を異ならせていること自体が、どこかでは説明できない待遇差を生んでしまうことになると思われますので、問題とならざるを得ない。しかし、職務内容が違うとか職務内容・配置変更範囲、その他の事情に実態として違いがあるということであれば、それが賃金決定基準を異ならせる実態上の根拠になり得るので、そこは司法判断になると考えておりますので、賃金決定基準を異ならせれば均衡待遇規定の適用から外れるということではないという大前提であることは申し上げたいと思います。

 2点目の労使交渉経過の問題でございますが、これはやはり実際の裁判例などを見ましても、裁判官が待遇差を評価するに当たって、ある手当の正社員・非正社員のバランスなり、アンバランスが労使交渉の中でどういう経過をたどってきたかを見ている例はございますので、これは個別の事案による面が大きいかと思いますが、現在の裁判例、まだ確定判決ではないものもありますので、参考情報ではございますが、例えば今の条文のその他の事情という中で、個別の事案によって労使交渉経過も加味して不合理かどうかを判断していくということは、より現実に即した解決を導く上でも重要なことではないかと事務局としては認識しております。

 3点目でございますが、待遇差の説明について、正社員との待遇差の説明と一言で言っても、それは個々の正社員の待遇差なのかということでございました。検討会でも議論があった点でございますので、一部そこから教えられたことでもございますけれども、例えば正社員が 1,000 人いる会社があったとしましたときに、ある非正社員との待遇差を 1,000 通り説明するということは実務的にもあり得ないことであろうと思います。一方で、中小零細企業で比較対象となる正社員が1人しかいないという場合に、そのものずばりを説明しますと、その正社員の方の給与明細を見せてしまうのに等しいことになりかねないということで、実務的にはこの正社員との待遇差は、どういう形で履行していただくかというのは、運用上様々なケースを考えなければいけないという問題意識を持っております。

 詳細は、法律に書き切ることではないように思っておりまして、施行に向けて通達などでどう整理していくかという問題だと思っておりますが、やはり現実的な問題としては、もちろん個人比較をやるという選択肢もあり得ると思いますけれども、例えば同種の業務についている正社員のグループを取り出して、その待遇。その中で、例えば対象となる非正規の方と勤続年数が近ければ、勤続5年だったらどれぐらいになるかとかいう者との差を示すことも、一つの待遇差の説明方策になり得るのではないか。こういったことを含めて、実務が回り、かつ、労働者保護にも欠けない説明義務の履行のあり方というのを、詳細を施行段階までには色々御議論しなければいけないと思っております。

○守島部会長 よろしいでしょうか。

○松浦委員 ありがとうございます。

 1点だけ、1つ目の質問で、賃金体系が違うからよいということにはならないというお話。もちろん、規制を逃れるために賃金体系をテクニカルに変えているというのは論外だと思うのですけれども、実際のところ、職務能力で判断して賃金水準がこのような等級になっていますということと、逆に、職務等級で判断してこのような水準になっていますということを比べて説明するというのは、テクニカルにも、本当に真面目にやろうとしても難しい面があって、それがこれまで均衡がなかなか効果的に実現できなかった根底の理由だとも思っておりますので、これは要望ですけれども、今後、御議論いただければと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございました。

 高橋委員、どうぞ。

○高橋委員 資料6の1ページ目について2点、まず意見を述べたいと思います。

 2番目の矢印です。「不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に対応する考慮要素で判断されるべき旨を明確化してはどうか」という指摘ですけれども、これに関して、私はとても違和感を覚えています。と申しますのは、別に個々の待遇ごとに見てはならないということではなくて、企業の労使交渉の中では、例えば労働組合の方々が基本給の引き上げといったことを要望して交渉に当たっても、なかなか経営環境等が許さず、話合いの結果、今回はある特定の手当についての改善をしましょうということで労使合意をするケースも見られるわけであります。

 そういたしますと、先ほど松浦委員が手当はクリアだとおっしゃっていましたけれども、私はそんなことは全然思っておりませんで、手当といっても、その導入とか改定の状況は、その都度都度の労使交渉の中で色々な経緯を経て現在の形になっているわけでありまして、手当の名前とか性質といったようなものは、どちらかというと後付け的になっている部分が通常であります。そういうものも勘案せずに、個別個別にどうなのかと判断する枠組みだけというのは非常に違和感があります。

 また、「働き方改革実行計画」の中に入っているガイドライン案の中にも、具体的に問題とならない例の中に、交代制の勤務手当について問題とならない例を書いていますね。正社員の方については、必ずしも交替制勤務に従事するわけではないので、交代制勤務に従事したときだけ交代制勤務手当を支給します。他方で、有期・パートの方については、そもそも採用のときから交代制勤務であることを織り込んで採用したことによって、その有期・パートの方の賃金については、交代制の手当部分を織り込んで基本給が設計されているといったようなことについては問題とならないということも明らかにされているところであります。そのような総合的な判断枠組みが可であるということが、ガイドライン案からも読み取れるわけであります。

 したがいまして、単純に賃金項目について一対一で個別の待遇ごとに見ていくという枠組みだけではなくて、待遇差につきましては、総合的に判断するという枠組みを併せて設けて、それは個別の企業の実情に応じて判断するという形にするべきではないかと思っておりまして、この2番目の矢印は、私は反対であります。

 3番目の矢印についても続けてお話をしたいと思います。先ほどの松浦委員と岸本課長のやりとりの中である程度明らかになっている部分ではありますけれども、今回、3要素のうち、その他の事情というものがわかりにくいという指摘があるようですので、職務の成果・能力・経験といった要素を例示してはどうかという御提案ですが、これもこの例示の3要素についてはあまりにも属人的すぎるきらいがあるのではないかと思っています。こうした職務の成果とか能力とか経験といったものがある程度適合してくるのは、基本給に関わるところだけなのではないかと感じておりまして、とりわけ先ほど岸本課長も御説明されていたような、例えば職務非関連手当などといったものについては、全くこの成果とか能力とか経験と関係ありませんので、その他の事情の例示としては、極めて限定的すぎると思います。

 その結果、例示をすることによって、まさにこの文書にも書いてあるように、逆にその他の事情が狭く解されてしまうことを大変懸念しているわけであります。先ほど課長からの答弁もありましたけれども、労働組合との交渉経緯、あるいはその交渉の結果、どのような形で企業が対応したのかといったようなこともあわせて、その他の事情の代表的な例、むしろ、そちらの方が個人的には代表的な例だと思っておりますけれども、そちらの方がはっきりその他の事情の中に入り得るということを明記するべきではないかと思います。

 私からは以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 ありがとうございます。

 私からも1点、1ページ目の3番目の矢印の例示の件について、要望と意見を述べさせていただきたいと思います。

 今ほど高橋委員から、「その他の事情」について、労使合意、労使で話し合った結果や状況などは、そうした考慮にするべきではないかといった御意見もありましたが、私もその件には、そうした考慮がされていくべきだろうと思っております。ただ、この場合は、やはり当該の労働者の皆さん方の意見もきちんと踏まえた上で労使合意、労使で協議がされているということが一番の前提になろうと思いますので、そうしたこともしっかりと確認はしていくべきだろうと思ってございます。

 それから、その他の事情の中の例示の件でございますけれども、私としても1点懸念を持っておりますのは、例示がされたことによって、実際の争う場などで司法の判断が、その例示によって硬直化されてしまうようなことがないようにすべきだろうと思ってございます。例示された要素以外のものについてもきちんと考慮がされるといったような建てつけも必要かと思いますので、そのことを要望として申し上げておきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 中野委員、どうぞ。

○中野委員 私の方からは、先ほど岸本課長からも話がありましたので、その部分に付け加える形で話をさせていただきます。説明義務の件です。雇用に際しましては、雇用条件を説明することは決められていることで、その際に、正規非正規の賃金体系の待遇差といった説明を充実させることは、雇用側としても当然、雇用する人たちのモチベーションの向上に大きく影響しますし、企業の人材育成戦略の一環として各社が意思を持って実施すべきと考えています。

 ただし、事業主に説明義務を課すとしますと、先ほどの通り、対応しきれるかどうかという不安や懸念があるのも事実です。例えば、先ほど数千人という話もありましたが、数百人以上の単位でも非正規労働者を雇用する企業が頻繁に説明を求められた場合はどうしたらいいのかとか、非正規労働者から特定個人の正規雇用労働者の個人情報の提供を求められるようなことは、先ほどの発言にもあったかと思いますが、個人情報保護法の観点からできないと思います。それでも形式上でもいいからやれという話になってしまえば、逆に会社に対する不信感を与えかねないのではないかという懸念も生じるかと思います。

 雇用の際に全ての非正規労働者に対して、比較対象となる雇用区分の違い等々の説明会、そういったものを開催した場合でも、正規でもスライド勤務はありますので、雇用後も変更のたびに説明会を開催するのかとか、また、それは相手が納得をされるまで繰り返さなければならないのか。一つの方法として、労組と共催する等々の各社各様の対応で問題ないのか等に対してのお答えをいただきたい。

 あと、働き方改革が、今、推進されており、働き方の一つとして短時間に業務効率よく働くという考え方もありますので、労働者と事業主双方、過度な負担にならないように、提供すべき情報の範囲で実施するとか、提供方法等は、義務ではなく各社の方針に沿ってそれぞれの実務に合った対応可能な方法で実施するのが重要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 お答えになりますか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問に当たる部分がございましたので、その点について御説明いたします。

 御指摘の点、先ほど非常に抽象的ではございますが、労働者の保護の観点と、一方で実務が回るかどうかという観点の両方をにらみながら、この待遇差の説明義務の履行のあり方について、運用をどのような形を認めていくか、施行までに詰めていく、御議論いただくということを申し上げましたが、現時点では、そのような方向性のレベルで事務局としては考えております。

 今、色々御指摘いただきましたような様々な方策についても、そのような方策で実務負担がどうかという点、また、労働者にとって知りたい情報が適切に得られる形になっているかといった点から、許容範囲がどこまでかということを詰めてまいりたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 よろしいでしょうか。

 田代委員、どうぞ。

○田代委員 ありがとうございます。

 企業実務の観点から何点か申し上げたいと思います。

 まず、均等待遇規定について、有期契約労働者も対象とするかという点につきましてですが、中小企業の最大の経営課題は人手不足でございます。多様な人材がその意欲、能力に応じて活躍できる環境を整備するということは、切実な問題と認識しております。

 有期契約労働者ということに関しましては、検討会の資料、先ほど御案内いただいた3ページの3パラグラフにある委員の御意見にもございましたように、実際の職場環境においては個別処遇であるがゆえに高処遇という形になっている有期契約の方、また、正社員登用前の試用期間という位置付けの有期契約の方、あとは秋田委員もおっしゃっていましたように定年後再雇用の有期契約の方という形で色々なバリエーションがございます。こういった有期契約労働者の雇用形態の多様性に鑑みますと、職務内容や、職務内容と配置変更の範囲が同一である場合に必ず同じ賃金とするということは難しい場合もあるかと思います。

 加えまして、比較対象である正規雇用労働者の定義も明確にしていただく必要があると思います。少なくとも現時点においては、ある程度の企業規模になりますと、有期雇用から無期転換した無期雇用の方、あるいはいわゆる定期採用の総合職の方、また、特定の業務に従事している無期雇用の方、特定職というような位置付けの方といった数種類の無期雇用労働者が存在しますので、どの労働者を比較対象とするか、実務で悩まないように適切に対応していただきたいと思います。この点、先ほどの検討会の資料の4ページの御意見にもございましたけれども、通常の労働者を比較対象とすべきといっても、その通常の労働者というところの外縁が必ずしもはっきりしていない現状があるように感じております。

 次に、その他の事情、現行のパートタイム労働法の中から6要素にするべきではないかというところで、例示を増やすことについてですが、不合理な待遇差であるかどうかの判断の考慮要素としまして、職務の成果・能力・経験といった事項を明記していく方向性に異論はございませんが、実際にどの程度の成果・能力・経験であれば、どの程度、賃金決定に反映させるべきなのかという判断は非常に困難ではないかと考えております。賃金の決定方法は各社各様でありまして、これまでの労使交渉の中で形成されてきたという事情もございます。これらの考慮要素は待遇差をつけてもよいという要素であって、待遇差をつけなければならない要素ではないということを改めて確認したいと思います。

 最後に、短時間労働者、有期契約労働者が求めた場合の事業主への説明義務を課すことにつきまして申し上げます。労働者の待遇に関する説明義務を事業者に課すことにつきましては、その方向性に異論はございませんが、企業だけに過度な負担がかかるのではなく、労使双方が納得できる制度設計としていただけるように配慮していただきたいと思います。こちらは実行計画の8ページの下2行を反映したものと先ほど御説明がございましたけれども、こちらの実行計画の中では理由等という表現になっておりまして、実際に処遇差の内容というところまで踏み込んでいるのかは、わかりかねた点もございますが、処遇差の説明を求められた場合に何をいつまでにどれだけ説明すれば義務を課したことになるのか。また、説明をする際、他の従業員との待遇差を示すことによって、先ほど中野委員もおっしゃっていましたように、プライバシーや個人情報保護法との兼ね合いもどうなのかというところも整理していただくことが重要と考えております。

 また、個別の、自分の隣にいる正規雇用者というような説明を求められた場合には非常に対応に苦慮すると思われますが、そういった場合でも、個々の従業員との待遇差ということではなくて、例えば、当該職務と同レベルの総合職であれば大体このぐらい、というような幅を持たせた解釈をしても、説明義務を果たしたと言えるような御配慮をお願いしたいと考えます。

 私からは以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 小林委員、どうぞ。

○小林委員 1回目の議論でございますので、論点からは外れるかもしれないですが、3点申し上げさせていただきたいと思います。

 今回の目的の非正規労働者と正規労働者の不合理な待遇差をなくしていこうということにつきましては、全く異論を持っておりません。ただし、同一労働同一賃金ガイドライン案が発表になりましてから、企業においてヒアリングをしたりしたのですが、そうした中で、今回、前例となる事例がほとんどないということがあるのと、多分、これが行われると混乱や紛争が起こるのではないかという懸念があるということでございます。

 私からは3点お願いをしたいと思っております。1点目は、先ほど冒頭の議論に出てまいりましたけれども、同一労働同一賃金の定義がないというお話も聞きましたが、こちらの同一労働同一賃金の意味するところや、この制度が導入されたことに伴ってどういう形態になっていくのか、雇用がどのように変わっていくのかということの共有化は、ぜひ図っていただきたいと思います。特に、この部会で、皆さんが違った観点で議論すると非常に混乱しますので、できるだけ具体的な事例をもって議論を進めていただければと思っております。

 2点目でございますが、これと関連いたしますが、ガイドラインの問題でございます。先ほど事務局の方から、ガイドラインについては今回議論しないというお話もいただいておりますが、本部会での議論の成果というのは、ぜひガイドラインをつくる際の参考にしていただきたいと思います。特に、このガイドライン案につきましては、問題となる例と問題とならない例が示されているのみなのですが、現場からは、自社の就業規則等に当てはめると非常にわかりづらいという声をいただいております。グレーゾーンは必要だと思っているのですけれども、できるだけグレーゾーンを縮めていただきまして、企業の実務に役立つようなものになった方がいいと思っておりますので、ぜひお願いいたします。

 3点目ですが、施行時期の問題でございます。実行計画にも書いてあるのですが、今回は3法一括改正ということになっております。特に、労働条件分科会でも議論されております時間外労働の上限規制等の問題もございますので、それと施行時期が一緒になりますと、企業の方は実務が大変になるということもございますので、実行計画にも書いてありますけれども、十分な準備期間をぜひお願いしたいと思っております。

 私からは以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 加藤委員、どうぞ。

○加藤委員 恐縮です。中小企業の立場から一言お願いをしたいと思っております。

 「働き方改革実行計画」については、私どものトップも参画させていただいて、前向きに実現するように努力していきたいと考えております。日本の従業者の7割は中小企業で働いていらっしゃいますし、企業から見ればほんの1%、2%が大手企業という整理から考えていくと、この制度が浸透するかどうかというのは、まさに中小企業、特に何百人という中小企業も当然あるのですが、5人、 10 人、 20 人、そういうところが圧倒的に多い状況かなと思います。そういう中で、先ほども御議論がありましたけれども、正規の従業者と比較の説明責任が求められるなど、そんな話になってくると、今まで、ややもすると中小企業、いい悪いは別としまして、人間関係の中で経営を進めてきたという状況が圧倒的に多い中小零細事業者にとっては、まさに経営の根幹に関わるような、労働問題が起こり得るのではないでしょうか。やはり可能な限り労使の話合いができるような環境、それから、今、お話がありましたけれども、労使ともに理解ができるような周知の準備や期間、これを十分に御理解いただきながら、制度がスタートしたら中小企業も積極的に参画し、取り組んでいけるような御検討、成果をつくっていきたいと思っておりますので、ぜひ御理解いただきたいと思っております。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 小原委員、どうぞ。

○小原委員 ありがとうございます。

 論点案の2ページ目に「解釈の明確化を図るため、ガイドラインの策定根拠となる規定を設けてはどうか」という記載があります。この点について、厚生労働省のホームページを昨晩調べてきたのですが、労働契約法は、労働契約に関する民法の特別法と位置づけられ、罰則や臨検などで監督指導を背景としない法律であるという記載がありました。ガイドライン案は法改正後に検討が行われると思うのですけれども、労働契約法には罰則、臨検などの監督指導を背景とすることがなじまないということを留意して、ガイドライン案の位置づけを検討する必要があると感じていることを申し述べておきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 松井委員、どうぞ。

○松井委員 待遇と待遇差の説明をどのように企業の方に実施していただくのかということは、実務的に検討すべきこともあるかと思いますので、具体的な方策について、今後議論したいと思います。

ただし、今回、正規・非正規の待遇差を是正するという法改正の目的を達成するためには、説明義務が非常に重要です。どうやって説明を行うかとともに、一方で、説明義務が果たされない場合はどのような措置をとるのかということも検討する必要があると思います。また、待遇差の不合理性は最終的に裁判で判断されることとなりますが、説明義務が果たされたのか否かということは、待遇差の不合理性の判断にあたっての考慮要素として考えられるようにすべきであると思います。

 また、パートタイム労働法で既に説明義務という規定がありますので、現状説明義務がどのように果たされているのかということを部会でお示しいただければ、より現実的な議論ができるかと思いますので、お願いしたいと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、宮原委員。

○宮原委員 ありがとうございます。

 昨年、パート・非正規の方にアンケートを実施したのですが、労契法 18 条の影響で、少しこれまでと傾向が変わってきているということが明らかとなりました。これまで労働者全体の労働時間は短くなる傾向があって、それはパート・非正規の方が増えたからだという見解が示されておりましたけれども、私どもが実施したアンケートの中で、パート・非正規の方の労働時間が長時間化するという傾向が出てきています。これはパート・非正規の方の基幹化が進んでいるということとの証左ではないかと思います。また、労契法 18 条に基づいて、雇用期間も少し短くなる傾向も見て取れました。こうした状況を踏まえ、パート・非正規の方からどういった要望をされているかということなのですが、一番は賃金についての不満で、そこを解消してほしいということが最も多い数値だったのです。なお、ここ1年でどういうことが不満ですかとお伺いしたところ、雇用切りに対しての不安があるというでした。

 今回の法改正の射程についてですけれども、有期契約労働者、パートタイム労働者と正社員の待遇差だけではなくて、労契法 18 条に基づいて無期転換した元有期労働契約者と正社員の待遇差など、無期雇用のフルタイム労働者と正社員の待遇差、さらには契約期間が例えば1年と3カ月の労働者同士の待遇差も含めて、広く解釈がされるような制度設計が必要であると思います。そうでなければ法の抜け穴を残すこととなり、同一労働同一賃金が目指す非正規雇用労働者の処遇改善が達成できません。その点も検討したいと思いますので、よろしくお願いします。

○守島部会長 ありがとうございます。

 中野委員、どうぞ。

○中野委員 先ほどの小原委員の御発言に戻って申しわけないのですけれども、ガイドラインの策定根拠となる規定の話です。裁判規範である均衡規定を明確にする点でガイドラインの策定根拠の規定を設けること自体に異論はないのですが、ただ、均衡規定につきましては、先ほどもパートタイム労働法の解釈の例規で助言・指導・勧告の対象としてこなかった経緯という御発言があったと思うのです。その背景には、不合理性が規範要件のために、唯一裁判官だけが原告、被告の主張立証と心証形成、それを得た後に合理性の判断ができるといった政策判断があったからだと考えております。

 先ほど村上委員からグレーゾーンも対象とすべきという話があったものの、不合理性の判断がされた判例が、今、実際にどれだけあるのか、積み上がっていくにはそれ相当の時間が必要ではないかとも考えます。ガイドラインの策定根拠を規定することで不合理かどうかを予見できる可能性が高くなるという期待はもちろんありますが、問題となる例、ならない例がガイドラインに示されること自体が、事例により不合理性の判断が変わり得ることの証左とならないかなど、議論の中で明らかにしていっていただけたらと思っております。よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 ありがとうございます。

 1ページ目の一番下の比較対象となる者のところでございますが、先ほど、店長などの事例があるので同一企業内という御説明がありましたけれども、そういう極端な事例があるから同一企業内ということではなくて、これはやはり同一企業とかになると実務的にものすごい負荷がかかりますので、同一事業場内を原則として、同一事業場内に比較対象の者がいれば、もうそれで十分なような気がいたします。事業場内には他にはいない店長のような場合は、そこから広げていく。そういうことをぜひやっていただきたいと思います。

 これは正社員もそうなのですが、特に有期雇用の方は支店とか事業場によって雇用の実態がまちまちでありますので、一概に、同一使用者内、企業内まで広げて比較することの意味があまりないと思いますので、同一事業場内でできればと思います。

 それと、田代委員からもございましたが、ここで言う通常の労働者とは何かということを明確にしていただく必要があると思います。御承知のように、いわゆる無期雇用の労働者については、日本の雇用法制の中では解雇規制が非常に強固でございます。また、当然、日本の企業の労使は雇用の安定と職域の確保を最優先で取り組んできておりますので、仮にいわゆる総合職としての仕事が十分にできないような状況に至っても、雇用を確保するために、わかりやすく言えば、有期雇用者と同じような仕事をさせてでも、雇用を守っているという事例は十分あり得るわけです。これを同種の仕事をしている正規社員というような比較の中に入れるのは、本来、本末転倒な話で、そうなると雇用の安定が損なわれることにもなりかねませんので、通常の労働者とは何かというのをきちんと明確化していただかないと、安易な紛争を招くと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 ありがとうございます。

 先ほどから使用者側の皆さんから説明義務について様々な懸念点が示されました。具体的にどう説明するのかということへの意見でしたが、待遇の説明義務は、結局どういった理由で待遇を決定していて、その待遇に基づいてこの雇用管理区分の方々にはこういう仕事をしていただきたいということを説明することにつきるのだと思います。こうした説明はそれぞれの企業で今でもきちんとされているのではないかと思います。

待遇差の説明についても、労働者から求められたら理由も含めてきちんと説明するということでしかないのではないかと思います。労働者も色々な賃金体系の中で納得して働いていらっしゃっていて、なかには手当の部分などで疑問がある方がいて、そのときに、なぜ正社員と違うのかということを労働者が企業に問うたとき、企業は今でもこういう理由で違うのだということを説明していると思います。それを今回ここでは言っているのではないかと思っており、私としては、なぜ説明義務が過重な負担と捉えられるのか、疑問です。

 また、秋田委員から解雇規制に関する発言がありました。それはこの部会の議論ではないかと思っておりますが、日本の解雇規制は決して強いものではないと思っていますので、その点を1点だけ申し上げておきたいと思います。

 それから、誰と比較するのか、誰との待遇差を説明するのかという点で言えば、なるべく職務内容や働き方が近い方について比較して説明していくことになるのではないかと思います。その点は、法律に書くかどうかは別にして、誰と比較するのか、なぜその人たちとの差を説明するのかという理由について説明していただくべきと思いますので、それは部会の中で議論していきたいと思います。

 また、比較対象が適切ではない、比較しようがないような人との待遇差を説明されても意味がないですので、選定した比較対象が適切でないときには、司法判断において不合理性を基礎づけるような重要な要素となるという解釈もとるべきであると思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 高橋委員、お願いします。

○高橋委員 先ほど宮原委員からの御発言があったので、それに関連してお話ししたいと思いますけれども、無期雇用のフルタイム労働者と正社員間の不合理な格差是正とか、有期労働者間の不合理な格差是正まで広げていくべきだという御発言がありましたが、今回の「働き方改革実行計画」の中には、そうした考え方は示されていません。あくまでも正社員と非正社員の不合理な格差の是正ということですから、そこは射程外であろうと思っています。

 また、有期間の格差是正ということに踏み込みますと、今、労働契約法 18 条の政策効果が徐々にあらわれ始めていて、無期転換がどんどん進んできているのです。そうした中で有期契約労働者間の不合理な格差是正まで踏み込みますと、そうした政策効果を台なしにしていくと考えられますので、ここは実行計画にのっとって、いわゆる正規労働者と非正規労働者の不合理な格差是正に限定して考えていくべきであると考えております。

○守島部会長 ありがとうございます。

 岩村委員、お願いします。

○岩村委員 何点か意見と質問があります。

 まず、今日の論点案の1番目「労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備関係」ということで、これだけでなく、今日御説明いただいた論点案を貫く一つのトーンは、横串を刺すという表現もありましたけれども、有期とパートをなるべく同じものとして考えていこう、同じような横並びで規制をそろえようということかと思います。ただ、既に何人かの委員からも御指摘がありましたけれども、有期雇用というのは色々な機能があります。フルタイムの有期というのもあるわけですし、先ほどちょっと触れられたように、ある意味、試用期間的に使われる有期もあれば、おそらく我が国の雇用慣行なりの中で一番大きなものは、定年退職後の再雇用というのがあるのだろうと思っています。

 もう一つ、今、議論になったところですけれども、労契法 18 条で無期化という政策を、ある意味、有期雇用については一番のウエートを持って進めてきているところでもある。そういったことからすると、単純にパートと有期を横並びにして、同じ規制をかけてしまえというのが妥当かどうかということについては、私は疑問に思っています。少なくとも、有期が持っている多様な雇用創出機能をなるべく損なわないような形を考えていくべきだろうと思いますし、何よりも労契法 18 条が今、徐々に効果を現わしているのを、それを反対方向に向けるようなことにはなってはならないと考えているところです。

 それとの関係で御質問なのですが、私も御説明いただいたような気がしたのですけれども、ちょっと聞き逃したのですが、現在ですと、労契法 20 条でも、パートの均衡待遇の方でも、その他の事情というのがあって、そこのところをどう読むかということにより、有期についてはある程度柔軟な解釈をとり得るだろうと思います。

 ただ、若干気になるのは、これは順番に並べていって、職務内容、職務内容・配置変更範囲、その他の事情ということになっています。おそらく法制局的な用語だと、その他の事情という「その他の」というのが入っているので、これは前の列挙されたものは「事情」の例示ということかと思います。そういう意味で、あまり列挙されたものから遠くに離れたものはその他の事情という中に入らないのかなという気がしなくもないのです。労契法 20 条だと、今日の資料でも出ていますけれども、その他の事情ということで、労使慣行等ぐらいまでは入れてあって、その辺は我々も法律を作るときに色々議論してそういう形で入れているのですが、それ以上に、例えば、先ほど議論のあった労使交渉の経緯とか、それから、おそらく再雇用等の関係で非常に重要なのは、雇用保険から出る高年齢雇用継続給付金の支給状況であるとか、もう一つは、先ほどの議論でいくと、これは高年法に基づいて作った再雇用制度であるとか、そういったものは、その他の事情の中に読み込めるのかどうかというのが気になっていて、その辺、現段階で事務局がどのようにお考えになっていらっしゃるかをお聞きしたいと思っています。

 もう一つ、これはあまり議論がされていないのですが、同一労働同一賃金で裁判所に訴える根拠規定を作りましょうということでありますけれども、これは後でまたもう一度申し上げますが、今回の同一労働同一賃金の全体を貫く一つの特徴なのですが、そこに非常にウエートが置かれている。

 他方で、司法審査というのと、それから労使の自治をどのように整理し、折り合いお付けるのかなというのが気になっています。例えば、先ほどのその他の事情になりますけれども、団体交渉の経緯があって、こういう手当を作りました。あるいはこの手当の額をこうしましたということ自体は、多分、もしそれがその他の事情ということに入るのであれば、裁判所においても考慮されるでしょう。しかし、これは実際にフランスの判例の中で出てきた事例ですけれども、お昼の食事手当を出します。これは外勤の人だったのです。その外勤の人の中で、例えば管理職とかその階層の人だと、クライアントと外で会ってビジネスランチをするでしょう。だから、そういった人たちについては昼食代は少し高い手当を一日当たりお付けします。しかし、そうでない一般の外勤の職員についてはそういうことはないので、もっと低い額の手当お付けます。それが実は裁判所で一蹴されまして、結局、要するに、管理職ポストについているような人たちが外でクライアントと会って高い飯を食っているということについて、何の立証もない。それは合理性があるとは認められないということで、アウトということになっています。

 そうすると、実は団体交渉で労使が話し合って決めましたというだけだと、裁判所に行くと、より立ち入った判断になって通用しないかもしれない。そういう趣旨で規定を作ったということなら、その裏付けとなる証拠があるのかという話になります。例えば、職務内容・配置の変更範囲については、実はこの人たちはこういうことになっていて、こういう職務配置でこのようになっているのです、労使で話し合って、それでいいよねとしたのですと主張する。ところが、裁判所の頭としては、本当にそうなのか証拠を出せということになる。職務配置のあり方を実証する証拠はないのでだせませんとなると、多分これはアウトということになる。裁判というのはそういうものなので、証拠を出せなければアウトなのです。

 そうすると、実は多分、労使交渉にもかなり大きな影響を与えるのではないか。労使だけが話し合って、この人たちについてはこういうことにしましょうねといって話をしたというだけでは、多分、使用者側にとってみると不合理とは言えないというふうにはならない。そこまでの立証ができないということになってしまって、もっと詰めた交渉をしなくてはいけない。しかも、それを裁判所に行くことまで考えて、証拠も全部そろえて交渉しなくてはいけないことになるだろう、そういう変化を引き起こす効果を持つだろうと思っていますが、その辺のところを事務局はどのようにお考えになるか。また、労使の皆様、そこはどうお考えになりますかというのが私の質問であります。

 もう一つは説明義務関係なのですが、説明義務そのものは、一つの考え方として私もあるだろうと思います。ただ、気になるのは、もともとの一番最初の条文のところは、現在の労契法 20 条なりの不合理であってはならないという枠組みを前提として考えている。そうすると、立証責任の細かい議論には入りませんけれども、使用者側としては不合理ではないということさえ、少なくとも最低限は立証しなければいけないということになるのですが、逆に言うと、使用者側は、合理的であるということについてまでは立証が求められていないということになるはずなのです。しかし、説明義務のところの今日のものを読むと、どうも合理的であるということの説明が求められているような気がしなくもないのですが、もしそうだとすると、そもそもの出発点と平仄が合わないのかなという気がするので、その辺、事務局の方からどのようにお考えであるかということをお教えいただければと思います。

 もう一つが紛争解決のところでありますが、本格的な民事訴訟ではなく、なるべく簡易な紛争解決方法を整備するということ自体は非常に大事なことでありまして、それは当然考えなければいけないと思っています。ただ、今回の考え方で今日の論点として示されたものとしては、労働局の紛争調整委員会を活用しましょうという考え方であります。これは従来のパートタイム労働法の考え方からいくとそうなるのかな。要するに、パートの方に寄せてしまうという考え方なので、そうなのかなと思うのですが、同一労働同一賃金で問題となるようなものは、権利紛争ではありますけれども、しかし、他方でこれは利益紛争でもあり、企業の中における賃金体系をどうするかという問題でもあります。ところが、紛争調整委員会の場合だと、これは単独のあっせん委員がやるというのが公式的なものであって、労使が関わるのは必ずしも正面から出てくるものではないかなという気もするのです。しかし、利益紛争的な面があるのだとすると、やはり労使の委員というものの関与をもう少しはっきりさせた方が、この際、よいのではないかという気もします。

 今、瞬時に私は紛争調整委員会の構成と手続を調べられなかったのですが、あっせん委員が中心だと理解していて、必ずしも当然に労使が関わる構造ではなかったと思うのですが、問題の性質からすると、むしろこれは労使がかかわらないとうまい調整はできないのではないかという気がしておりますので、その辺のところのお考えが、もし今日の時点であればお答えいただければと思いますし、それはまた次回以降考えましょうということであれば、それはそれで結構でございます。

 最後に一言だけ申し上げておきたいのですが、今回の実現会議もそうですが、出発点がそもそも、全面的とまでは言えませんけれども、大部分が結局、同一労働同一賃金の問題を基本的には全て個別労働紛争のレベルで解決しようという発想でできています。しかし、何人かの委員からも御発言がありましたように、これは本当は個別紛争という色彩よりも、企業における賃金体系をどうするかという、ある意味でのまさに集団的な労使関係の問題として考えなければいけないものだという気がしています。そうすると、今日、これはもちろん実現会議と実行計画をベースに作っているので、そうなってしまっているのですが、ことの性質、本質を考えると、やはり労使の役割、特に団体交渉、賃金交渉等、あるいはもっと言えば企業における非正規も含めた賃金体系をどうするかということのいわば再構築をこれを契機にやっていっていただかないと、全体としてはうまく進まないのではないか。とりわけその際、問題になるのは、労働組合、過半数組合が存在する大企業の組合においても、必ずしも非正規の労働者が組合員ではないという問題もあり、中小企業に行きますと、これは御承知のようにあまり組合がないという中で、この問題について、どういう枠組みで労使の自主的な交渉なり、とりわけ賃金体系の再構築を進めていくかという観点をぜひ取り入れる必要があるのではないかと私は考えております。

 最後は私の意見ですので、それは事務局の方で特にお答えは要りませんけれども、その点をぜひこの審議会で議論すべきではないかと思っております。

 長く時間をとりまして申しわけありませんけれども、以上であります。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、岸本さん。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問に当たる部分がございましたので、事務局としての見解を申し上げます。

 まず、その他の事情という3つ目の考慮要素の関連で、1つは有期雇用について、実態としては様々な政策的な意味合いがある。高齢者の雇用確保であったり、若年者の就職機会の確保といったことがある。これをどう考えるかとか、生かすようにしなければいけないのではないかという御指摘だったかと思います。これにつきましては、事務局もそういった様々な有期雇用、それはパートにもあると思いますけれども、特に有期雇用において政策的に果たしている機能を損なうようなことを意図して、今回、同一労働同一賃金を進めることが、世の中が求めていることであるとは思っておりません。

 その際に、それを法的にどう扱うかという問題になるわけでございますが、一つは、これは必ずそうだというのではなくて、比較的そういうケースが多いのではないかという意味で申し上げますと、今回、現行の法律でも、今回の事務局提案でも、職務内容に続けて、職務内容・配置変更範囲というのを待遇差の考慮要素の一つとして維持しております。これについて維持するかどうかというのは、様々な考え方があり得る論点だと思いますが、これを維持する一つの効果としましては、いわゆるトライアル的な雇用としての有期である場合などについて、仮に近隣の正社員と同一職務内容であったとしても、職務内容・配置変更範囲においては相違があることが多いだろうということで、そういった政策的な効果を損なうことなく、公正な処遇を求めるという目的と両立させ得るのではないかと考えておりまして、そこの要素をどうするかというのが重要な論点になるのではないかと思います。

 それから、労使交渉経過につきましても、最後のところで、これは御意見ということではございましたが、本来、集団の問題でもあるのではないかという御指摘は、賃金の問題ですので、原資があって、それをどう分配するかという問題でもありますので、集団問題であることはその通りだろうと思います。ただ、今回、「働き方改革実現会議」で議論し、実行計画に取りまとめられましたのは、そこを明文でそう書いてあるわけではございませんが、現在の様々な、それこそ労使関係の状況などを見て、非常に司法判断とか裁判による解決をくどいぐらいに繰り返している文章になっているわけでございますが、究極の解決として司法解決の道、それを今よりも使いやすくしていくことが必要だという問題意識はあろうかと思います。決して、集団問題であるとか、集団的労使関係の重要性を否定はしていないのですけれども、率直に申すと、そこで今、十分には解決しきれていないからこそ、待遇格差の問題が社会問題化していて、まずやるべきこととして、個別救済の道を今よりもしっかりしたものにすることが必要ではないかというのが前提になっていると思います。

 同一労働同一賃金政策あるいは均等・均衡待遇政策を、別にこの実行計画が全てではないのだろうと思いますが、あるべき論を考えましたときに、集団的労使関係の契機をどう生かしていくかというのは大変重要な論点だと思うのですけれども、今回、「働き方改革実行計画」を受けた法整備の議論につきましては、この実行計画をベースとしていただきまして、司法判断の根拠規定ですとか説明義務といった個別救済の規定の議論が中心になってまいりますが、それをまずは肉付けする議論をお願いしたいと思います。ただ、一方で、集団的労使関係の活性化といいますか、それの組み合わせ方というのは、もう一つ重要な論点として今後も御意見をいただければと思います。

 それから、高齢者雇用に関しまして、特に公的年金の存在、高年齢雇用継続給付の存在、こういったものをどう考えるかという御指摘もございました。これは実は現在、最高裁にかかっている事案で、昨年、一審、二審と続けて判決が出た内容が、かなりベクトルとして逆方向を向いたものが出た事案がございました。まさに定年後の継続雇用有期について、退職一時金の存在、公的年金の存在、高年齢雇用継続給付の存在などを、待遇差を根拠づける事由として考慮を認めるかどうかという判断について、判断が分かれたところでございます。これについては、事務局としましては、現在、最高裁にかかっている事案ということもありまして、まさにそういったことを考慮することが社会として許されるのかどうかについて、最高裁が下すであろう判断を今、見守っているところでございます。基本的にはその判断を見守って、それを踏襲するような解釈を行政としても示していきたいという考え方でおります。

 ガイドライン案の中にも、ある注の箇所で、最高裁判決をということまでは具体的に書いていないのですが、公的年金、退職一時金の存在などをどう評価するかについて、引き続き検討と書いてある箇所がございまして、それは、今、申し上げたような趣旨で入れているものでございます。そのスタンスは、ガイドライン案の 12 月の時点から、現在、事務局としては引き続き維持をしております。

 それから、説明義務に関しまして、これと均等・均衡待遇規定について、不合理禁止の枠組みにすることとの関連のお尋ねがございました。説明義務に関しまして、そのように聞こえたかもしれませんが、事務局の考え方としましては、待遇差とその理由等を説明していただく際には、待遇差はこういう待遇差があるという事実と、この待遇差の理由はこういう理由で例えば賃金決定基準を異ならせていますとか、あるいは賃金決定基準の中でこういう理由で職能等級において違う評価になっていますというような事実を説明いただくということであって、それによって、いわば規範的な価値判断として合理だ、不合理だということの説明を求める規定ではないと考えております。そこは不明確であれば補足をさせていただきたいと思います。

 それから、 ADR につきまして、これは大変貴重な御指摘と受けとめました。賃金の問題ですので、確かに権利紛争であると同時に利益紛争であるという意味合いもございます。現在、労働局の調停は、主として弁護士の先生に調停委員になっていただいておりまして、いわば公益委員的な方にやっていただいているわけでございます。労働審判も労使の審判員が参画したことであれだけの成果を上げているということもありますので、そういう意味で貴重な御指摘だと思った次第でありますが、そこは項目の中では四角の3番に関わる問題でございますので、次回に向けて検討したいと思います。

 1点だけ、現行法制度について一言御紹介しますと、個別労働紛争解決促進法であっせんに当たって参考人の意見を聞くことができるという規定がございます。参考人がどういう人であるかとかいうことについては事案に応じてだったかと思うのですけれども、そういったことも含めて、やるとなると体制的にも大きな話になりますので、処理し切れるかどうかわかりませんが、御指摘を検討させていただきたいと思います。

 漏れがありましたらお教えいただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

 山田委員、どうぞ。

○山田委員 岩村委員の先ほどの2点目の論点です。集団的労使交渉、いわゆる労使自治と法律でこの問題をどう解決していくかということに関して、今回は法律ということなのですけれども、これは表裏一体だと思うのです。というのは、これまでの状況は労使自治でやってきたわけだけれども、いわゆる非正規と言われる人たちの救済が結果としてできてこなかったので、今回の話が出てきているということなのだと思うのです。これに対して、集団的労使交渉の枠組みの中にしっかり組み込んでいくことができるのであれば、今回の法律の部分は最小限、比較的軽めの規定になっていくと思いますし、それができないのであれば、やはりかなり書き込んでいく。訴訟をも辞さないような方向に持っていくというトレードオフがあると思うのです。

 ですから、やはりそこは労使の間で、これからの日本の雇用社会をどうつくっていくのかというところに対しての合意というか、それなりの覚悟は要るのではないかなと。私は個人的には、日本のよさというのは、労使交渉でやってきた、労使自治でやってきた、これまでの議論からしても、実態は非常に多様だと思います。大企業と中小企業でも違うし、まさに先ほど議論があった有期雇用で見てもかなり多様ですので、全てを書き込むことは不可能ですし、そうではなくて、やはり集団的な枠組みのところを今後、これを出発点にやっていくというところの合意をこの会議においてもとっていくことが大事なのではないか。

 その上での御提案というか、今回の話から少しずれるのかもしれませんけれども、こういう機会ですので1つ申し上げたいのですが、最初に秋田委員が提起された、まさに日本のこれまでの労使交渉は個別労使でやってきたわけです。これを産別とか、ヨーロッパのような形のところに果たして持っていくのかどうか、これは本当は結構大きな論点なのだと思うのです。このところが労使自治のあり方とも実は関わってくるわけで、ここは色々議論があって、これをやり出すと時間がいくらあっても足らないということなのですけれども、私の個人的な考えとしては、その部分でもう少し、ヨーロッパにはならないのですけれども、産別のような協議を何らかの形で作っていって、例えばガイドラインという話がありますけれども、ガイドラインも今つくっている一本だと、これは産業別によって全然違うと思いますし、先ほどの議論にもあったように、これを規定することによって逆に紛争を招いてしまうこともあり得るので、場合によっては産業別にそういうガイドラインを議論していくことも一つ考えることはあり得るのではないかということで、意見ということで言わせていただきます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 村上委員、お願いします。

○村上委員 岩村委員の御指摘に対して何点か申し上げたいと思います。

 1点目は、有期は多様であるという御指摘についてです。確かにそうした側面もあるかもしれないですが、試用期間であるといったことや定年後継続雇用であるといったことは、「その他の事情」の中で考慮されることがあるのではないかと思います。

 2点目に、山田委員からも指摘のあった、労使交渉の経過が尊重されないおそれがあるのではないかという点です。その点については、日本の裁判所はそういうものなのだろうかという疑問があります。つまり、岩村委員が紹介されたフランスの裁判所の事例のように労使交渉が行われたことが考慮されないで判断なされるのではなくて、これまでの裁判例などを見ていると、日本の裁判所は労使交渉の経過というものはきちんと見ていくのではないかと思われます。 私も、非正規労働センターという部署におりまして、非正規雇用で働く皆さんを組織化した組合のお話もかなり聞きました。後で補足があれば松井委員からお願いできればと思いますが、非正規雇用で働く皆さんの労働条件の向上に向け、まずは組織化して、どんな要望があるのか、どこに不満があるのかということを組合がアンケートなどをとりながら聞いて、一気には解消できないけれども、一つずつ改善していく。まずは休暇の問題を解決しようとか、次は一時金の制度をつくろうとか、そうした段階を踏んで解消していくという労使交渉経過をたどっています。こうした労使交渉は裁判でも認められているのではないかと考えているところであります。

 3点目は、次回の議論になるかもしれませんが、行政 ADR の問題についてです。紛争調整委員会がこのままでいいのかという御指摘かと思いますが、今、別途、労働基準局長が参集する会議として設置された「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」で行政 ADR の話が出ております。その中では、労使が入っている労働委員会をもっと活用したらどうかということも議論されていますので、その点も考慮してはどうかと思いました。

 最後に、労働者代表法制の御指摘であると思いましたが、この問題については、同一労働同一賃金の問題だけではなくて、長時間労働の是正に向けて議論している中で1つのテーマとなっている三六協定の締結をどのように適正化していくのかということにも共通する課題であると思います。また、今回の検討で言えば、派遣の集団的労使関係をどうしていくのかということも大変重要な問題であると思っております。私どもも集団的労使関係をどのようにつくっていくのか、あるいは組合がないところの労働者の代表組織をどうしていくのかということは整備をしていかなくてはならないと考えております。ただ、今回の「働き方改革実行計画」に基づく立法の検討ゾーンでは検討し切れないと考えており、それはまた同一労働同一賃金部会だけではない議論だと思っております。この問題は、本格的にきちんと議論していくべきであろうと思いますが、それができないから同一労働同一賃金ができないということでは必ずしもないと考えております。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 小林委員、どうぞ。

○小林委員 全体的に関わる話なのですけれども、中小企業とか小規模企業の今の経営課題は何かというと、最大の経営課題が人手不足でございまして、そうした中で、この働き方改革をやっていこうというところの目的の一つは、やはり生産性を向上していこうということだったと思っております。先ほど来の議論の中で、紛争を解決するために個別救済を目的とした紛争解決を設けましょうとか、個別の説明義務を課していきましょうということをやっていきますと、中小・小規模企業におきましては、多分、人事労務担当もいないというのが現状のところが結構多いのではないかと思っております。こうしたときに、こうした紛争が増えてきたり、説明義務が頻発化したときに、これは本当に生産性が上がっていくのかどうかという観点をぜひ考えていただいて、人手不足です、でも生産性向上させなければいけないですよとしたときに、こうしたものが増えていって、色々なものが規制強化されていくというところが果たして生産性向上につながるかどうかということも踏まえた形で、ぜひこの議論もやっていただければなと思っております。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 松井委員、どうぞ。

○松井委員 労使の集団的な交渉の重要性は私どもも当然認識しておりますが、各委員から発言があったように、非正規労働者の組織率が非常に低いという問題と、中小企業における労働組合の組織率が非常に低いということがまず前提としてあります。その上で我々が労使交渉を行う中で、個別の待遇毎に考えるということだけではなく、総合的に考えるべきことも重々承知しているのです。ただ、今回の立法化の趣旨、並びに、不合理な待遇差については一定のガイドラインを定めて、それを労使交渉で参照するという機能はやはり重要ではないかと思います。ガイドライン案では、合理的な待遇ではなく、不合理な待遇差はこういうものですと示されているわけですが、現段階においては現実的なものではないかと理解しているところです。

 先ほど村上委員からも発言がありました通り、非正規労働者を組織化して、一挙に何か全部が改善できるということではないので、経過をたどって改善していくわけですが、その際には、ガイドライン案で不合理な待遇差として示されているものについて優先して是正に取り組む。そういうことにガイドライン案は役に立つのではないかと思います。

 併せて、ひとつ質問も兼ねてなのですが、今までの論議で、合理性と不合理性の話が出ています。先ほど岩村委員からも、企業の説明義務について、法の立て付けからいうと、企業は不合理でないことを説明すればいいのではないかという趣旨の御発言もあったかと思いますが、もし仮に現場でそういうことがあると、かえって火に油を注ぐというか、紛争を助長するなどあまりよくないことが起こるのではないかと思います。合理性、不合理性の整理については、もう一度どこかでしていただきたいと思います。資料7「現行制度に関する参考資料」の 10 ページの「立証について」という部分で、具体的な運用が書かれていますが、ここでは労働者は不合理な相違があることを主張立証し、事業主は待遇の相違が合理的なものであることを立証するという説明がなされています。私はこういうことであると理解しておりますが、いま一度、議論をしやすくするためにも、その辺の整理をいただきたいと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 高橋委員、お願いします。

○高橋委員 何点か申し上げたいと思います。

 先ほど村上委員が、フランスの裁判官と違って日本の裁判官はそんなことはないのではないかという御指摘がありましたが、長澤運輸事件の一審判決を見ると、その他の事情を一切勘案することなく判示しているのです。そうしたこともありますので、やはりその他の事情というものが、先ほど事務局から御提案があった3要素だけに限定されることなく、もう少し幅広い、様々な要素が勘案されるのだということをどこかに明記することが必要であると考えています。

 今、松井委員が、合理性、不合理性をもう一度議論するという話でしたけれども、「働き方改革実行計画」で、今回は、先ほど課長が説明した通りの現行枠組みを維持するということになっています。この部会は、そうしたもう一度の蒸し返しの議論をする場ではないことについて、ぜひ労働者側の皆さんの理解を得たいと思っています。

 あと2点申し上げたいと思います。説明義務に関してなのですけれども、雇入れ時の説明義務は問題意識を持っておりませんが、雇入れ後の説明義務に関して、具体的な例を言いますと、工場に勤めている非正規の方が、工場長と私の待遇はどう違うのですかとか、あるいは事業部門の部門長と私はどう違うのですかといったような比較まで求められることになりますと、そもそも3要素に照らして全く違う働き方をしている人まで比較対象となり得るのかどうかという問題提起なのです。やはり比較対象となる方は、基本的には3要素、とりわけ2要素に照らして比較的近い方を説明義務の対象とまずしていくということを考えていくべきではないかと私は思っております。

 最後、これは今日の論点から外れるのですけれども、私が今回の問題についてずっと思っている疑問なのですが、もし仮に企業が待遇格差の是正に着手するという経営判断をしたときに、当然ですけれども、そう簡単にはできませんね。労使間で十分な話合いをして、お互いに納得を得て制度を変えていく。そのためには相当程度の時間が必要です。あるいはかなり段階的に時間をかけて、3年とか5年かけて徐々に直していくということも当然想定されると思います。法改正施行後に、是正段階の途中で、不合理な格差があるではないかといって訴えを起こされたときに一体どうなるのだろうという問題意識を持っておりまして、それに対して私自身、答えがあるわけではないのですけれども、どのような法整備とするべきかということについては、いずれかの時点で議論していくべきではないかと、最後に問題提起だけさせていただきます。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 岸本さん、一言お願いします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 実行計画における整理に関わる点もございましたので、その点について事務局から理解を申し上げさせていただきます。

 合理・不合理の問題でございますが、これについては、今回の実行計画で示されております方針は、現在の均衡待遇規定・均等待遇規定について、不合理なものであってはならないという方向からの規定という条文構造、これは維持するという考え方を前提に立ってございます。

 一方で、ガイドライン案にも関わるのですけれども、問題となる例と問題とならない例をガイドライン案でお示ししております。これは実行計画の本文の中にもその種の記載をしているのですけれども、これは問題とならない例以外は全部アウトであるとか、問題となる例以外は全部セーフであるという意味ではございませんで、いわば民事問題ですので、1かゼロかに峻別できるものではなくて、ゼロと 100 の間にグラデーションがある、そういう性格の問題だと思っております。今回、行政として、ここはさすがに黒と言えるであろう、ここは白と言えるであろうという両端を、問題となる、問題とならない例として書きましたが、それで世の中のあらゆるケースが尽くせているわけでは全くございませんし、だからこそ、グレーゾーンをもう少し縮める努力ができないのかという御意見もいただいているわけでございます。

 ですので、最終的にはそれは司法判断によって真ん中の同意と、それから、白だとか黒だとかいう、問題となる、ならないも行政の解釈ではありますので、最終的には全部が司法判断にかかる。司法判断にかかる際の根拠となる規定が、現行のパートタイム労働法8条、9条、あるいはそれをベースにした新しい均衡・均等待遇規定だということであります。

 主張立証に関しましては、概念が少し混乱している部分もあるのですけれども、実際に裁判におきましては、原告、被告双方が主張立証することはその通りでありまして、当然、原告は自分の受けている待遇差が納得できない、その理由はこうだということを主張するわけですし、また、会社側は、その主張に対して、それは実はこういう理由があるのだということを主張立証し、いわば両方の主張立証合戦を聞いて、裁判官が、これはどちらの主張を採用すべきだということで心証を固めていくというプロセスですので、主張立証を行うのは労使双方が行うのであるという考え方を前提に立っております。その上で、条文構造としては不合理なものであってはならないという構造は維持する。ただ、ガイドラインにおいて、その問題となる、問題とならない例をとしておりますが、それは問題となる例が不合理であって、それ以外は全部セーフだと言っているのではなくて、本当に両端で書けそうなものを書いたにすぎませんので、全体が法律に照らして司法判断になるという構造であると、それが解釈であると御理解いただければと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。

 冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 1点事務局に確認をしたいのですけれども、説明義務の最後の矢印の中に説明を求めたことによる不利益取扱いの禁止の事項がありますが、不利益取扱の禁止規定は、報告徴収・助言・指導・勧告、さらには公表、行政 ADR の対象となるのか。これが質問です。我々は、それは対象にしていくべきではないかという観点からの確認のものになります。また、不利益取扱いを受けたことを理由に裁判に訴えられるような民事的な効力につきましても規定していくことをあわせて御検討いただきたいと思います。

 以上です。

○守島部会長 ありがとうございます。

 では、岸本さん。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 御質問ですので、お答えいたします。

 まず、本日の論点のところに書きました不利益取扱い禁止は、説明義務の条項で、特に労働者から求めがあった場合の説明義務に関して、その求めをしたことを理由とする不利益取扱いを禁止すべきではないかという御提案でございます。

 また、不利益取扱い禁止規定の違反の効力でございますが、これについては済みません、現行の他の労働法における不利益取扱い禁止規定に倣って御提案しておりますので、その解釈がどうなっているかも含めて、次回、御説明させていただきたいと思います。

○守島部会長 ありがとうございました。

 秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 先ほど課長の御説明の中で、グレーゾーンの両端を明らかにして、後は司法の判断ということなのですけれども、この法が施行されるに当たって、企業の労使で新たな制度を作ろうというときに、グレーゾーンのところで質問が相当出ると思うのです。それは裁判でやってくれというのは無責任な話で、企業のところで制度を検討して是正していくのであれば、労使が間違うことのないように、 Q&A みたいな問合せ窓口は当然必要だと思うのですが、いかがでしょうか。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 法律が成立いたしましたら、おそらくその施行事務は労働局が担当することになります。労働局では、法律所管の立場から問合せに答える立場になりますが、民事法令になりますので、そこで行政が独自解釈を示していくことは難しいと思います。ですので、今回、ガイドライン案として示しておりますが、今は案でございますので、ここでの御議論ですとか、あるいは国会審議などで、例えばですけれども、今は事例が、確か二十いくつか載っているのですが、それについて、もっとこういう事例も問題となると言えるのではないか、あるいは問題とならないと言えるのではないかといった話も出てくるかもしれません。そういったことも含めて、案を取るプロセスの中で、より役に立つガイドラインにしてまいりたいと思いますが、ガイドラインができました後に、そこのガイドラインにも手がかりがない、また、裁判例など司法の判断にも手がかりがないようなケースについて問合せを受けて、それは私としては黒だと思いますとか、白だと思いますということを答えることは、民事問題という性格からすると、そこは控えなければならないのだろうと思います。

 そういう制約もある中ではありますが、ガイドライン案の内容について、今後、関係者の御意見、国会審議での御指摘などを踏まえながら、検討することが必要と思います。

○守島部会長 ありがとうございます。

○岩村委員 よろしいでしょうか。すぐ終わりにしますが、今の質疑との関係で言うと、基本的には、最終的にはこれは裁判所が決めることになりますので、行政当局、つまり労働局の方でお答えいただいたものに従ってやったからといって、裁判所がそれで認めてくれるということが当然にはどうしてもならない。その限界があるということは御理解いただく必要があるかと思います。

 もう一つは、裁判所と労使交渉との関係ですけれども、先ほどちょっと応答もありましたが、裁判所は確かに交渉の経緯を見てはくれるのです。ただ、他方で、具体的にこれは職務がどう違うのというのを、交渉の経緯で話したのだからそれでいいと認めてくれるかというと、おそらくそれは認めてくれなくて、証拠を出せという話に多分なるのだと思います。ですから、最終的には、労使交渉の経緯で話していますけれどもといって詰めていくと、それを作った経緯をちゃんと、こういう理由で違いましたといったら、その裏付ける証拠はどこにあるのだという話になるのだと思います。そういう意味で、この問題になると、結局のところ、要するに客観的な証拠はどこにあるのという話に行ってしまうのだろうと思います。

 もう一つの問題は、これは労働審判ができた経緯と関係しますけれども、裁判所は労使関係に詳しいわけではないので、そこにあまりに多くを期待するのもいかがかという気を私はちょっと持っているということでございます。

○守島部会長 ありがとうございました。

 どうぞ。

○松浦委員 次回で結構なのですけれども、先ほどの質疑の中で1点だけ確認です。もともと民事だというのは理解しておりますので、そもそもガイドライン案とは何なのだろうという疑問もあるのですけれども、その中で、問題となる例について報告徴収・助言・指導・勧告の対象とすることを提案されているということは、少なくともその対象については行政が関与していくと理解をしていました。今のやりとりでちょっとそこら辺がわからなくなったので、次回で結構ですので、御説明いただければと思います。

○守島部会長 次回にお願いします。

 それでは、そろそろ定刻となりましたので、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。

 最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いいたします。

○岸本派遣・有期労働対策部企画課長 次回の日程でございますが、次回の「同一労働同一賃金部会」の日時、場所については調整中でございますので、追って御連絡を申し上げます。

○守島部会長 ありがとうございます。

 それでは、これをもちまして、第1回「同一労働同一賃金部会」を終了いたします。

 なお、議事録の署名については、労働者代表は冨田委員、使用者代表は小林委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 本日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。

 


(了)

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