ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 臨床開発環境整備推進会議> 第2回 臨床開発環境整備推進会議 議事録(2015年8月20日)




2016年4月7日 第2回 臨床開発環境整備推進会議 議事録

○日時

平成28年4月7日(木)13:00~14:45


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第15・16会議室(21階)
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)


○議題

(1) 会議開催の趣旨について
(2) 疾患登録システムの構築状況及び今後の運営方針について
(3) 各業界からの要望事項
(4) その他、治験・臨床研究の推進について

○議事

 

○事務局 それでは定刻になりましたので、ただいまより、第2回臨床開発環境整備推進会議を始めさせていただきます。事務局を務めます厚生労働省医政局研究開発振興課長の神ノ田です。最初に、前回の開催より構成員変更がありましたので御紹介をさせていただきます。参考資料4の構成員名簿を御確認ください。まず、中釜斉国立がん研究センター理事長(代理藤原康弘企画戦略局長)、小川久雄国立循環器病研究センター理事長、水澤英洋国立精神・神経医療研究センター理事長、齊藤延人東京大学医学部附属病院病院長、石黒直樹名古屋大学医学部附属病院病院長、野口眞三郎大阪大学医学部附属病院病院長、石橋達朗九州大学病院病院長、竹内勤慶應義塾大学病院病院長(代理副島研造臨床研究推進センター教授)に御出席いただいております。なお、政府関係の構成員の変更につきましては、構成員名簿で確認いただければと思います。また本日、参考人として特別研究班の研究代表者を務めていただいています、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の武田伸一所長に御出席いただいております。

 次に開会に先立ちまして、本推進会議の座長を務めます、厚生労働省医政局長の神田より、御挨拶を申し上げます。

○座長 委員の皆様方にはお忙しいところ、本日は御出席を賜りまして誠にありがとうございます。この臨床開発環境整備推進会議、これは昨年の8月に設置されたわけですけれども、クリニカル・イノベーション・ネットワークの具体的な方策を検討するということと併せまして、健康・医療戦略に出ておりました、我が国の臨床開発環境を整備していく上での課題などについて検討する場として設置をされたところです。クリニカル・イノベーション・ネットワークにつきましては、我が国から革新的な医薬品・医療機器等を創出して国際競争力を強化するということで、非常に治験等のコストがかかるようになっていることから、何とかそれを効率的にできないかということで考えられた構想です。昨年の自民党の日本経済再生本部の経済好循環実現委員会で、「2020ジャパンチャレンジ」プロジェクト10という中に選ばれまして、日本再興戦略ですとか、骨太の方針の中にも位置付けられて、政府を挙げて取り組んでいくということとしているところです。

 前回の8月の会議では、具体的な疾患登録システムの構築に向け、企業の方々にも入っていただいて具体的な話合いを進めていただくということで、ワーキンググループで検討を進めてきたところですけれども、その後具体的な話合いも進められまして、システムの構築も進んでいるということですので、本日はそのワーキンググループの検討の状況や、一方で特別研究班において、ワーキンググループに共通する対象群として活用する際の課題等について検討が進められております。本日はワーキンググループでの検討状況や、今申し上げた特別研究班の検討結果などを、この場で情報共有させていただくことと併せまして、平成28年度からいよいよ具体的な疾患登録も始まってまいりますので、具体的な方策・進め方について御議論を賜れればと考えております。具体的な御意見を頂きまして、よりよいものにしていきたいと考えておりますので、構成員の皆様方には忌憚のない御意見を頂きますようよろしくお願い申し上げます。

○事務局 続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。「議事次第」のほか、資料1、資料2-12-7、資料3、資料4-14-3、参考資料15を用意しております。資料の不足等がありましたら事務局までお知らせいただければと思います。よろしいでしょうか。それでは、これより議事に入りますので円滑な議事進行のため、撮影等につきましてはここまでとさせていただきます。それでは、以降の議事進行につきましては座長の神田局長にお願いいたします。

○座長 それでは、議事に入らせていただきます。本日は構成員の皆様のほかに、オブザーバーの皆様にも御出席いただいておりますが、御発言についてはオブザーバーの皆様からも積極的にお願いしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 議題の一番最初の疾患登録システムの構築・登録の状況から始めたいと思います。前回の会議から半年が経過しており、メンバーも入れ替わっております。事務局から改めてクリニカル・イノベーション・ネットワークの構想の概要について、簡潔に説明をお願いします。

○事務局 資料1に沿って説明申し上げます。若干おさらいになりますが、よろしくお願いします。1ページ目です。このCINの背景についてまとめております。4点ほどありますが、先ほど局長からの挨拶にもありましたとおり、1点目、医薬品、医療機器等の開発のコストが高騰しているということがあります。2点目には、疾患登録システムを活用した新たな臨床開発の手法が開発されて、海外では効率的な臨床試験が実施されるような例が見られているということ。また、3点目に書いてあるように、国内においても国立がん研究センターにおける先駆的な取組として、Scrum-Japanという取組が始められており、こちらには製薬企業等も参画いただいているところです。4点目には、国立がん研究センター以外の各ナショナルセンターにおいても、平成26年から疾患登録システムの構築を開始しているという背景があります。

2ページです。こういった背景の下で、平成28年度からクリニカル・イノベーション・ネットワークの構築に取り組んでいくということで、所要の予算として31億円を計上しているところです。こちらのポンチ絵にありますように、ナショナルセンター・臨床研究中核病院、PMDAAMED等の関係機関のネットワークを構築して、企業にも参画いただき、産学官連携による治験コンソーシアムを形成していくということです。このコンソーシアムにおいて、疾患登録システムを活用した治験等を進めていくということです。こういったことで、効率的な治験が実施できる環境整備を行って、国内外のメーカーによる国内臨床開発を加速させていきたいということです。

3ページです。こちらの表にあるように、平成28年度所要の予算として31億円を確保したところです。

4ページです。関係機関が多数にわたりますので、しっかりと連携しながらということで、こちらにありますような形でこの推進を図っていくということです。臨床開発環境整備推進会議については、昨年8月に第1回を開催し、本日が第2回目ということになりますが、この推進会議において、運営方針、進捗管理等を行っていくということです。この推進会議の下に、がん等の7つの疾患領域ごとにワーキンググループを設置して、疾患登録システムの設計等の具体的な取組を進めていくということです。

5ページです。こちらに今後構築するナショナルセンターの疾患登録システムの一覧を整理しております。後ほど各ナショナルセンターのほうから御説明がありますので、説明については省略いたします。

6ページが自民党の「2020ジャパンチャレンジ」プロジェクトにおいて掲げられているCIN関係のKPIの一覧です。これらのKPIを達成することにより、日本再興戦略で掲げられております医療関連産業の市場規模の拡大を目指しているということです。

7ページがワーキンググループの開催状況です。計8回、開催しております。

 最後は8ページです。先ほど局長の挨拶にもありましたとおり、平成27年度にクリニカル・イノベーション・ネットワークの特別研究班を設置して、各ワーキンググループに共通するような課題について検討していただきました。後ほど研究代表者の武田所長より検討状況を御説明いただく予定となっております。説明は以上です。

○座長 続きまして、本推進会議の下に設けられた各ワーキンググループから御報告いただきたいと思います。具体的な検討状況であるとか、各機関で構築した疾患登録システムの構築・患者登録の状況などについて御報告をお願いします。まず、国立がん研究センターの藤原構成員代理から、3分程度で説明をお願いします。

○国立がん研究センター企画戦略局長(代理) 資料2-1、がんワーキングですが、昨年1027日に開催しております。出席いただいた企業は、先ほど資料1でもお示ししましたが、16社、製薬6社、機器4社、再生医療関係5社です。出席企業16社をお迎えして、国がんの中で開催してまいりました。私どもがクリニカル・イノベーション・ネットワークの中で登録事業として目指しているのは、「構築中のシステム概要」の所に概略が書いてあるように、UMIN、日本医師会治験促進センター、JAPIC、この3つのWHOのゴールドレジストリのサイトの臨床試験登録サイトを集約して、特に希少がんに絞って、「どんな」臨床試験が「どこで」実施されているかという検索を可能にするシステムを、このワーキングというか、私ども国がんの一番の大きな命題、課題としております。というのは、ほかのナショナルセンターは疾患登録の構築をされていると思いますが、がんの患者さんは予後が厳しく臨床試験に参加される方は大体、半年とか1年ぐらいでどんどん入れ替わっていきますので、恒常的な疾患登録システムは治験の推進等にはなかなか役立たないということから、むしろ患者さんが臨床試験を瞬時に峻別して、それに参画することで企業への何かの助けになればということで、このシステムを構築しております。

 ページをめくると、構築中のシステム概要となっていますが、特に臨床試験の登録をする際のエリジビリティ、適格基準をきっちり把握できるように、それからアクティブ、登録が可能かどうかが分かるように、更に実施医療機関がどこであるかということが分かれば患者さんをそこに御紹介できるので、それが分かるように、この3つを重点的に整理して、先ほどのUMIN、日本医師会治験促進センター、JAPICのサイトの集約をしようと試みております。今日、製薬企業の方々が来られておりますが、この疾患登録システムの一番の課題は網羅性と、それから企業にはこれまで治験に関する医療機関の情報はなかなか外に出していただけませんでしたので、いかにやっている治験をあまねく把握して、なおかつそこの参加医療機関がきちっとこの登録サイトに出ていることが肝になりますので、製薬企業の先生方のこれからの御協力をお願いしたいと考えております。

 あと2枚は参考ですが、私どもはがんの領域で、通常の疾患レジストリと違うことを考えておりますのは、参考に書いてありますように、既存のレジストリが、既に法律に基づく全国がん登録などがありまして、悉皆性に富む疾患登録を新たに作るというのは、余り効率的ではないと考えたせいです。

 希少がんに関しては、次ページにありますように、様々な小さな研究会、あるいは学会で疾患登録の試みはされていますが、それを網羅的にやっている試みはないので、今回このような登録システムを構築しているところです。以上です。

○座長 質問とか意見交換については、後で一通り説明が終わったところで、まとめてお願いしたいと思っております。続きまして、国立循環器病センター理事長の小川構成員からお願いいたします。

○国立循環器病研究センター理事長 疾患登録システムの進捗状況、資料2-2です。1枚目ですが、国立循環器病研究センターでは、脳卒中、成人先天性心疾患、胎児不整脈、心不全の4つの疾患登録を実施しております。昨年の第1回会議以降の進捗状況を説明しますと、まず下から3段目、各登録システムの参加施設数と症例登録数です。表にお示ししているとおりです。また、昨年度、疾患登録システムを整備して、現在、運用に向けて調整を進めておりますが、この詳細は次ページで説明いたします。さらに、今後の方向性については、各疾患登録システムについて、登録数等を伸ばすようなシステムを作って充実に努めております。特に脳卒中の研究網である「NeCST」については、今月中にも企業への参加、説明会を予定しており、より御活用いただけるように考えております。

2ページ目です。今回、治験・臨床研究推進事業によって、国立循環器病研究センター(NCVC)患者登録共通プラットフォームを構築しました。このシステムの特徴は2つあります。1つ目は資料の右下、当センターの院内の電子カルテシステムや検査、画像等の部門システムの情報から、標準化された医療情報であるSS-MIX2を介して、疾患ごとのデータ収集基盤に半自動的に情報を収集することができることです。概念図の左上ですが、さらに事業参加病院もSS-MIXを導入しておられる病院がかなりありますので、その病院の電子カルテなどから、半自動的に当センターのデータ収集基盤に収納することが可能となります。

2つ目は、このデータ基盤を活用し、容易に新規の疾患レジストリを構築し、対象疾患を拡大することが可能なことです。これについては、現在、進行中です。

 資料3枚目です。国立循環器病研究センターでは脳卒中、特に急性期治療に関する多施設共同臨床試験の総合的な調整を行う研究ネットワーク、Network for Clinical Stroke Trials(NeCST)を構築しております。脳卒中診療を支える地域の基幹病院には、臨床研究の実施体制が十分でなく、全国的かつ大規模な臨床試験の実施は困難な状況でした。このような状況を打開するため、脳卒中の臨床研究ネットワーク作りを開始しました。国立循環器病研究センター内に中央事務局機能を置き、全国の脳卒中診療の基幹病院にネットワークへの参加を呼びかけているところです。NeCSTには画像データのコアロボ機能や画像評価委員会の構築など、すぐに治験に役立つ機能があります。さらに、企業の意見も参考にさせていただきながら、ネットワーク参加施設の中から1、各施設に適した施設の紹介機能、2、専門家による効果・安全性評価委員会の設置、3、ネットワーク内中央倫理委員会の設置を考えております。今後、医薬品や医療機器の開発の迅速化に役立つ強力なネットワークに育てていく予定です。以上です。

○座長 続きまして、国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤構成員、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長 資料2-3で国立精神・神経医療研究センターでの状況を御報告申し上げます。1ページ、これまでの経緯ですが、先ほど御紹介がありましたように、昨年1013日に我々として第1回のワーキンググループを行いました。先ほども一覧表で御紹介がありましたが、20社を超える企業の方に御参加いただいております。さらに昨年12月、今年3月にも回を重ねており、半年間で3回行っております。4月、5月にも予定しておりますが、この活動を強力に進めているところです。幸い後でお話のある特別研究班の班長の武田所長がうちにおりますので、このように進めているところです。

2ページですが、たくさん治験等、臨床研究を行っておりますが、3つを代表的なものとして例示します。神経・筋疾患のレジストリ、精神疾患のレジストリ、画像といったものです。内容はそこに幾つか書いてありますが、次ページで代表例として神経・筋疾患のレジストリを説明します。

3ページです。この患者登録システムとネットワークの両者をコンバインした活用が非常に有用であるという実例かと思います。左側にRemudyと書いてあります。これが登録システムで、先ほど平成26年からというお話もありましたが、この中央の小さいグラフでは2009(平成21)から筋ジストロフィーの登録は始まっております。このように右肩上がりに着実に増えており、うまくいっていると思っております。そこを通じた企業等への情報提供の依頼については、中央の表がありますが、既に11の企業、あるいはアカデミアからも5件あり、括弧の中はTREAT-NMDという国際的なシステムで、国際的な連携も進んでいることをお示ししております。

 これらをうまく活用するために、全国をネットワークで結んだ組織を作っており、右にある筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(Muscular Dystrophy Clinical Trial Network(MDCTN))が稼働しております。現在では筋ジストロフィーの方のみならず、筋強直性ジストロフィー、あるいは遠位型ミオパチー等、着実に対象疾患を増やしているところです。中央の枠ですが、こういうシステムを利用して、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するアンチセンス核酸医薬品であるNS-065、あるいはNCNP-01と略語を使っておりますが、右に書いてあるものの治験が進んでおり、これは平成2710月に先駆け審査指定制度の初の対象品目に指定されるということで、そういう成果が上がっているという実例です。

4ページ目が精神科、精神疾患のレジストリですが、基本的には筋ジストロフィーと同様のシステム活用しており、レジストリとネットワークを組み合わせた形で、効率よく臨床研究を進めるという方針です。

5ページ目は、当センターにおけるワーキンググループの構成と申しましょうか、センター長はトランスレーショナル・メディカルセンター、TMCと略しておりますが、当センターでは非常に古くからTMCを構築して臨床研究を進めてまいりましたが、そのセンター長をワーキンググループの長として、ここに書いてあるような構成員を含めて、このCIN事業を強力に進めていきたいと思っております。以上です。

○座長 続きまして、国立国際医療研究センター理事長の春日構成員、よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター理事長 資料2-4です。ページをめくって、私ども国立国際医療研究センターでは、糖尿病、HIV/エイズ、肝炎、国際感染症、この4つの患者レジストリを現在、構築中です。第1回目のワーキンググループが昨年928日に開かれて、幾つかの企業から御参加いただいております。本日は時間の関係で、糖尿病とHIV/エイズについて説明したいと思います。

 次ページが糖尿レジストリです。診療録直結型の全国糖尿病データベース事業ということで、J-DREAMSという名前で、私どもと日本糖尿病学会とが共同してこの事業を進めております。先ほども少し御説明がありましたが、各種の面談のいろいろな電子カルテの情報をSS-MIX2という標準のデータの様式でサーバに蓄積していって、それをMCDRSというシステムで、必要なデータを抽出して、匿名化して暗号化して、私どもの糖尿病クラウドセンターに送信して、糖尿病の方のデータベースを構築するというものです。昨年、平成27年度にAMEDから3億円の調整費を頂いて、この事業が画期的に進歩して、全国29の施設にこのSS-MIX2並びにMCDRSのシステムを入れることができて、現時点で既に1万人の患者さんのデータを登録済みです。

 基本的には、今後の目標としては5年間で、すなわち平成31年度までに、施設としては100、患者さんの数としては最低10万人、多分20万~30万人の方の登録はできるだろうと思っております。これは標準的な糖尿病の診療を全国で行うということも含めて、あるいは今まで明らかでなかった糖尿病の薬の効果、副作用、いろいろな点でこのデータベースは活用できるのではないかと考えております。

HIV/エイズのレジストリですが、私どもでは平成9年からHIV感染の患者さんのレジストリをやっており、現在まで3,800人ぐらい、検体としては経時的な血液検体を保存しておりますので、もう2万検体を超えております。しかしながら、これをほかの施設へ提供する、あるいはバンク事業として行うことがありませんでしたので、包括同意を取得して平成26年度からそのようなバイオバンクへこのデータを移行するということを始めております。そこにあるように、平成26年度と平成27年度で940名ぐらいの包括同意を得て、バンク利用のほうへ移行しております。平成28年度としてはHIVのレジストリに150名、バイオバンクのほうに250名、そうするとバイオバンクのほうに合計1,200名ぐらいの方のデータが登録されることになると思います。最終的にはHIVで通院しております2,000人、全員のバイオバンクへの移行を行いたいと思います。2,000人といいますと、全国のHIVの患者さんの約17%ということで、このバンクでもかなりのことが分かるのではないかと思っております。以上です。

○座長 続きまして、国立成育医療研究センター理事長の五十嵐構成員、よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター理事長 資料2-5、国立成育医療研究センターの取組について報告いたします。私どもが目指す小児領域のクリニカル・イノベーション・ネットワークの整備としては、小児慢性特定疾病704疾患を中心とする小児分野の希少疾患、あるいは難病の臨床情報を患者の電子カルテから収集する、「小児医療情報収集システム」を開発し、運営を始めております。それは1ページ目に記載してあります。ワーキンググループは昨年10月に開催して、12の企業の方にお集まりいただきました。

2ページです。小児の総合医療施設の集まりである、小児総合医療施設協議会に加盟している35の医療施設が共同してこの臨床研究を行うために、小児治験ネットワークを平成22年に構築しております。平成27年度からは私どもが作成した小児医療情報収集システムを使って、小児総合医療施設4施設と、小児科のクリニック33施設から、今年の2月の時点で約14万人の電子カルテデータを収集することができております。平成28年度には、参加する小児医療施設は11施設に増えます。小児科のクリニックも50を超える予定になっております。

3ページです。小児医療情報収集システムでは、患者の病名、検査結果、処方、治療の内容など、そういった医療情報だけでなく、患者の症状、臨床経過、既往歴などの医療情報をも収集することが可能です。

4ページです。希少疾患の患者数、患者の症状、状態、治療予後などの情報をまとめることで、医薬品や医療機器の開発をしたり、あるいは小児における適応外使用の問題の解決を図ることを考えております。それから、予防接種、薬剤の副反応の頻度調査をすることで、これまで以上に正確な市販後調査も行うことができると考えているところです。

 最後のページです。小児の健康管理には、これからは医療だけではなく保健も重要と考えております。今後、医療データだけではなく、様々な健診などの保健データをも統合して一元管理することで、新しい医療連携のモデルを構築することを考えております。以上です。

○座長 続きまして、国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽構成員、よろしくお願いいたします。

○国立長寿医療研究センター理事長 資料2-6MCI及びサルコペニアということですが、コンピューターシステムについては各NCと同じなので省略して、特に特徴的なことを解説いたします。認知機能障害は800万人、どのような方を登録してトライアルレディにもっていくかということですが、各々前臨床、MCI、認知症も10年ぐらいのギャップがあるために、時間軸を考慮に入れて、その各々の所から登録するシステムを考案しました。

3ページですが、前臨床においては3つの地域のうちの1つの地域から、既に1,156名のトライアルレディの同意を頂いて、順調に推移しているところで、2,000名のプリクリニカルも達成できる見込みです。

4ページですが、MCIなどを含めて、昨年は20だったのが現在30施設、地域以上に協力が広がっており、更に来年度、数施設の増加が予想されております。

5ページはMCI、特に医療機関の倫理審査の状況ですが、4月以降からほとんどの施設で登録が可能となっており、実際の登録が開始されているところです。

6ページ目はレジストリを活用した開発の促進状況ですが、既存の治験薬、あるいは医師主導治験にも対応していこうということで、ワーキンググループに熱心に御参加いただき、今後は実際に個別の議題に入っていくということです。また、国際的な治験との協調も明日、1つありますが、7月の国際的な認知症会議のときにGAPなどとの会合を予定しているところです。

8ページが全体の進捗状況で、平成27年度はこれらのレジストリシステムといったもののマネージメント及びサイエンティフィックなレベルの知見を獲得して、同時にCIN Workingとのこのような個別の交渉を含め、平成28年度から実際に企業との連携について、より具体的な話が始まればと期待しているところです。以上です。

○座長 最後に、医薬基盤・健康・栄養研究所理事長の米田構成員、よろしくお願いいたします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所理事長 資料2-7を用いて報告いたします。1ページめくって、私どもの基盤研が対象としております疾患は、ほかの医療機関が対象にしておられない希少難病ということで、希少難病CINとして、昨年11月にワーキングを開催しました。データ提供の在り方とか、どのような付加価値を付けるかということに関して、企業の方々からも御意見を頂きました。特にレジストリ情報の量の確保に加えて質、アクセスの容易さが大事だということで議論になっております。

 次ページです。私どものレジストリの構築に向けての進捗状況ですが、大きく2つ、2本立てで進めています。1つは難病登録DBということで、データを登録してくださる難病の専門医の先生方の負担を減らすことと、質と量を担保するという両方のコンセプトを大切にして進めていくということです。国の難病登録システムである「臨床調査個人票」を用いることにして、現在380疾患が難病指定されておりますので、それらの「臨床調査個人票」の改定作業を実施しているところです。これらを用いて、国の難病のデータベースとしての希少難病CINの基盤を作りたいと考えております。

 もう1つは双方向性の希少難病レジストリの構築です。これは難病の患者さん、あるいはその御家族が自主的に参画できるようなレジストリを作りたいと考えております。患者さんの参加型の登録システムを運用するということで、治験参加を望む難病の患者さんのリクルートにもつながると考えて、この2つ、2本立てで進めております。

4ページです。今申し上げた双方向性難病レジストリは、ここに示すような創薬Gateway、基盤研のホームページから入っていくことができるサイトを設けて、難病の患者さん、研究者・主治医をつないで、患者さんの診療情報と血液などの試料も継続的に提供することで、難病治療に向けたデータの提供を考えております。これは現在準備中で、今年度中に動かしたいと考えているところです。

 最後に、今後の方向性の1つとして、国際連携を考えております。難病政策のデータベースは世界に先駆けて我が国が開始した施策ですので、これを国際的に展開するということです。国際的な難病のコンソーシアムであるIRDiRCというInternational Rare Diseases Research Consortiumに、我が国からはAMEDと私ども基盤研が加盟して、今年3月にフランスで行われた会議に出席してまいりました。希少難病のCINの基盤である患者さんの所在情報であったり、自然歴、ナチュラルヒストリーの収集について、この会で開催されたTherapies Scientific Committee(治療法科学委員会)で、本日同行してくれております松山部長から提案して、同時に開催されたExecutive Committee(執行委員会)でも大きな議題となっております。これらのコンソーシアムを介して、難病DBに我が国が貢献できるように、今後も活動を続けていきたいと考えております。以上です。

○座長 以上、7つのワーキングにおける検討状況、あるいはシステムの構築の状況について説明がありましたが、御意見、御質問等がありましたら、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構理事長 大変意欲的なレジストリの話を伺って嬉しく思っているところですが、PMDAとすれば、このCINに対して、非常に積極的な支援をしていきたいと思っているところです。そこにおいて、1つお願いがあるわけです。それは、いわゆるITに関する共有化というのをしていかないと、つまり言語を共有化していくことが、今後の日本の大事な情報の扱いについては、とても大事なことであると思っています。産官学が組んでいこうという場合において、特に治験は今後日本も、アメリカも、ヨーロッパも、CDISCという電子化された基本的なデータを共有することになって、これは義務化されてくるわけです。そうすると、これは恐らく、臨床研究においても、将来的にそういう発展を目指すならば、それに準ずる又は同じようなデータをそろえていかないと、国際的には通用しなくなってくるだろうと思うし、日本国内においても、ちょっと足手まといになるのかなと。各固有の疾患、例えば糖尿病であるとか、アレルギーであるとか様々な疾患があるわけですが、固有のルールがあって、それはCFASTというのが別にあるのですけれども、これも共有していただくようになってくるのかなと思うわけです。そういうことで、治験並びに臨床研究については、CDISCCFASTを前提に、それに近い形で情報を集めていただくようにしていただくことが重要と、まず思います。

 それから、もう一つは、ポスト・マーケティング・サベーランス、いわゆるファーマコビジランスですね。これは臨床情報を集めまして、例えばこの薬はどういう影響が一般的には起こるのか、どのぐらいの頻度で起こるのかということを、今PMDAが探っているところで、これはMID-NETというプランでやっています。今現在、10医療機関、23病院でやっているのですが、これでファーマコビジランスが出てくると、これは単に負の情報だけではなくて、プラスの情報も入ってまいります。加えて、それにレセプト情報であるとか、DPCの情報も加えてありますので、非常に様々な情報で、これは考察することができます。こういう方向でも、できるだけ御協力いただくと、皆様方の研究の成果というものが、社会に十分に反映できるような格好になるのかなと、私たちは思っておりますので、そこら辺、ICTについて、十分、まず基本的なところまで共有化していければ有り難いなと。これはAMED、末松先生がおられますけれども、是非そういうことをやろうという話をしているところでございまして、よろしくお願いいたします。

○座長 ありがとうございました。治験、その組入れのためにやっているわけです。おっしゃられたような方向で、進めていけるように、PMDAのほうからも積極的なアドバイス等をお願いしたいと思います。ほかに御意見等ございますでしょうか。

○日本医療研究開発機構理事長 今の近藤理事長から御指摘があった点については私は近藤先生の意見を共有しております。小生からの質問ですがナショナルセンターを核とした臨床情報の共有システムができると、今はメディカルID、マイナンバーのようなものはありませんが、これができると、患者さんの目線から見ると、がんにかかって、バックグラウンドに糖尿病があったり、心血管疾患があったり、認知症のリスクのある方など、1人の方が複数の問題を持っている、そうした場合に、しっかりと名寄せと情報共有が可能な臨床情報のネットワークになるのかどうかというところについて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○事務局 各ナショナルセンターのほうから、御回答を頂ければと思いますけれども。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人) 大変恐れ入ります。各ナショナルセンターの先生方にお答えいただいてもいいのですが、本日、参考人で出席しております、特研のリーダーを務めます、武田でございます。共通した課題で、私たちの発表の中にも一部出てまいりますので、簡単にお答えしたいと思います。今、理事長からお尋ねがありましたけれども、各疾患領域を念頭に患者登録情報を行った場合に、それぞれの背景に別の病気が出てくる、例えば、糖尿病であっても、認知症が出てくるというのが、大きな問題になります。それに関しましては、やはり次世代医療ICT基盤協議会などでも検討が進んでいるところでございますが、今後目指すべき情報登録システムとして、幾つかの情報をインテグレートした形で、新たなシステムを作ることが非常に重要だと考えて、1枚だけ私たちも図を、準備しています。できれば、そのときに先ほど、双方向化という言葉もありましたけれども、患者さんの声自身も反映するような形になれば、一番素晴らしいのではないかというのが、私どものこの半年の間の検討結果の一端です。まとめを簡単に申し述べました。

○国立長寿医療センター理事長 多病ということですので、長寿のほうでは、大体認知症の登録システムでも、合併症を持たない方は半数しかおりませんので、一応単独の登録というのはあり得ないわけで、そのレジストリの中では、連結可能匿名化という形で、ほかの疾患の合併症、あるいは併存疾患についても登録するようになっております。これらが今後、レジストリの中で、トライアルなどの、あるいは科学的なものにどうやっていかされていくかに関しては、今御説明があったように、春日先生の所と糖尿病という切り口で共有して、双方向で利用して、サイエンティフィックにあるいはトライアルにということを始めたばかりです。まずは私たちの長寿の中では、多くの疾患について、同時に登録して、それらについての情報を共有して、患者さんにも返していくシステムというのは、中ではできていますが、6NCで共通に別々の疾患の中でというのは、今、糖尿病で始まったばかりですから、それを広げていきたいと私も思っています。以上です。

○技術総括審議官 技術総括審議官の鈴木ですけれども、個別のデータベースはどうなっているかは、個別のNCから言っていただければいいと思うのですが、総合的に見て、私は2つのイシューがあると思います。1つは個人情報保護法が改正されるというイシュー、これは恐らく来年の4月から施行されますけれども、その際には、病歴とかゲノム情報を含めて、要配慮個人情報と定義されます。要配慮個人情報と定義されれば、匿名化したとしても、それは個人情報として第三者提供するときには、オプトインでなければいけないということになりますすので、施行後は、新しいものをオプトインで同意を取っていただくということになりますけれども、問題はそれまでに持っていた情報、オプトアウトであったり、オプトアウトもしていなかったり、という情報を第三者に提供するときに、そのままでは41日以降、法律違反になってしまうので、どういう形でオプトインとみなせるかというところを、個人情報保護委員会とも諮った上で、きちっと詰めておかないと、41日にぱっと開いてみたら、全て過去の情報は止まってしまったということになりかねないので、それは非常に大事だと思います。

 それから、もう1つは、電カル等々様式が違うので難しいということと、それから、新たに忙しい臨床の先生方に入力をしていただくのは非常に難しいので、ある意味でいうと、電子カルテなり、レセプトから必要な情報の大部分を取り出せるような形にした上で、こういう登録をしていかないと、実行上、維持そのものにものすごく費用と手間がかかってしまって、ワークしないということになってしまう。ですので、そこを、今後ICT基盤を整えていく中で、うまい形でそれが乗るような形にしないといけないというこの1点になると思います。

○座長 私が認識している限りでは、国立国際医療研究センターでやっている糖尿病のやつは、カルテから登録ができるというようなことになっていますので、個別に入力しなければいけないということではなくて、だんだんそのようにしていく必要があるということは認識しています。それから、末松理事長がおっしゃったように、医療等IDなどが入れば、横に紐付けができるようにしていくということは、当然考えていかなければいけないことではないかなと思っております。ほかに御意見等あれば、よろしくお願いします。

○名古屋大学医学部附属病院病院長 今の医療ICTの技術の問題なのですけれども、実は画像データを集める際にも、DICOMの問題が非常にありまして、名前が簡単に消せないと。なかなか院外へ持ち出すことができなくなっているというところも、今後データベースを作られる際には、どうされるのか少し教えていただければと思います。画像データが必要な疾患は多数ありますから、是非ともその辺のところ、少し厚労省の音頭取りでいいですからやって、フォーマットを統一していただければ非常に助かります。

○国立がん研究センター企画戦略局長(代理) ICTに関連いたしまして、多分、ナショセン皆さんこれから困るのだろうということは1つ、サイバーセキュリティですね。内閣官房のサイバーセキュリティ室から、結構な額の整備を数年以内にやれというように、国立研究開発法人は言われています。その中で、各ナショセン結構、終始苦労しておりますので、ICTをきちんと整備するのはいいのですけれども、セキュリティをどのようにするかについては、やはり役所の方も、今後何年かにわたって、省全体として、私もナショセン、あるいは文科省関連の国立大学法人もそうかもしれませんが、セキュリティのところにお金をかけないと、このICTの整備はちょっといかないというところを、よろしく御協力をお願いしたいと思います。

○座長 ほかにございますでしょうか。画像の提供等について今、問題提起がありましたけれども、実際にやっておられる中で、何か、武田所長。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人) 大変恐れ入ります。御指名ですので、今水澤理事長から御説明がありました資料2-3を見ていただきますと、その2ページ目の一番右側に、IBISSという表示がございます。これは私自身が属しておりますNCNPで行っております画像の集中登録システムでありまして、現在平成26年度の補正予算で整備を進めたところですけれども、IBISSを通しまして、臨床情報と画像データの統合をやらせていただくことが、これからナショナルセンターのみならず、ほかの施設でも画像を扱っているときの1つのひな形になるであろうと考えております。

○座長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。

 それでは、次の議題に移らせていただきます。議題の順番を入れ替えまして、議題3の業界からの御意見を先にお伺いしたいと思います。まず、日本製薬工業協会の副会長の手代木構成員から、よろしくお願いいたします。

○日本製薬工業協会副会長 ありがとうございます。手代木です。少し順番的に無理をお願いしており、武田先生の特別研究班からの検討結果の中で、私ども製薬業界のいろいろな要望をある程度、取り入れていただいておりますので、それはまた後でリピートしていただければと思います。まず1ページ目ですが、私どもの認識では、このお話はちょうど緑の部分でが、電子カルテ、バイオバンクといったものを患者様、健康人の方々から収集することで、できれば創薬ターゲットの発見も行いたい。また多分、一番喫緊の課題は、治験における被験者のリクルート、あるいは治験の対照群のデータとして利用することで、例えば治験全体としての必要症例数が減少しないだろうか、ということです。市販後においては、近藤先生からもお話がございましたけれども、標準治療との比較、あるいは治療の最適化、最終的には、もしかすると費用対効果みたいな評価にもある程度、活用できるのかもしれない。そういったビジョンとして持っていただいていると考えております。

2ページ目ですが、私どもにとって一番大きな課題は、開発にお金も時間もかかり過ぎるということですので、ちょうどここの青の所に書いてありますけれども、革新的新薬の創出のスピードアップを図るということは、当然そのスピードイコールコストですので、コスト削減に相当プラスです。そういう意味では、医療保健制度の維持のためにも、国民の健康寿命の延伸に加えて、このデータのネットワークを作ることの重要度は高く、正に喫緊の問題であると思っております。

 ところが、そこの下のレジストリですが、今日お話を伺っておりまして、各ナショナルセンターの先生方に本当に精力的に取り組んでいただいておりますが、ただ、製薬業界の少し我がままを言わせていただきますと、レジストリをどのように使うかによって、必要な項目がかなり変わってまいります。そういった意味では治験における対照群として使うのか、製造販売後の場面で使うのかを含めて、いろいろな使い方の可能性を考えますと、当初からかなり高質なデータを作っていただくことを意識していただくことが非常に重要になると思っております。

3ページ目ですが、これは実は武田先生の所の御発表にも丸々入れていただいておりますが、上の赤枠の中で述べている患者のレジストリ、疾患登録情報の可視化ということです。特に下の短期的課題の所に私どもからのお願いと書いてありますが、ワンストップ・サービスを提供する中央支援部門を設置し、いろいろな所に様々な、例えばオーファンなども含めますと、かなり細かいレジストリがありますが、中央支援部門で一括してみられるようになるとありがたいです。一方で、藤原先生からは、企業側も治験情報が全部オープンではないので、そこの情報もきちんと参照できるようにしてほしいとおっしゃられましたが、これはそのとおりと思いますので、そこも含めて両方からワンストップ・サービスを提供する中央支援部門が多分必要だろうということです。それから、これは技術総括審議官からもお話がございましたけれども、これが本当に要配慮個人情報となったときに、企業側もどこまで本当に使えるのだろうかという懸念もあるため、法的な整備も含めた環境整備を是非お願いしたいと思っております。

 最後ですが、この患者レジストリの利用を考えれば考えるほど、非常に大きなポテンシャルはあるだろうと。企業側としても、ヒト・カネ・モノを投入してでも、是非御協力を申し上げたいと思っておりますので、このいろいろな課題について、今回この推進会議の果たすべき役割が本当に大きいことを、企業側も改めて認識させていただいているということで、発表とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○座長 どうもありがとうございます。続きまして、日本医療機器産業連合会副会長の鈴木構成員、よろしくお願いいたします。

○日本医療機器産業連合会副会長 資料4-2を御覧ください。第1回目の会議では、医療機器の開発について、医薬と異なる点をまず、背景として、説明させていただきました。それが23ページ目です。2ページ目は医療機器の開発の源泉は、医療現場にあるということで、改良を繰り返して行うという特徴があるということと、3ページ目では、医療機器開発における治験の特徴として、データが少ない中で、有効性、安全性を評価しなければならず、治験デザインそのものに制約がある、ということを説明させていただきました。

 このような背景の下、4ページになりますが、医療機器開発の観点から、要望させていただいた事項が次のとおりです。まず、治験デザインの制約を軽減するためにも、疾患レジストリのデータを、治験の比較対照データとして利用できるようにしていただきたいということと、また、医療機器の市販後レジストリに関するコンソーシアムを公的資金の投入により、立ち上げていただきたいということを要望させていただきました。本日は、この2点について、医療機器メーカーとしての立場から、期待することとして、少し具体的に説明させていただきます。

5ページです。疾患レジストリについて、治験の比較対照データとして活用するための課題を3点ほど示させていただきました。1点目は現在それぞれのナショナルセンターにて、構築されている疾患レジストリなどについて、データ構造や参照方法など、共通事項の議論を今後、更に進めていただきたいと思います。2点目ですが、我々の医療機器メーカーも各ワーキンググループへ参画し、医療機器開発においても、利用可能なデータベースの構築を目指す必要を感じております。この点については、業界団体である医機連の中にCINの対応ワーキンググループを設け、各ワーキングの情報等を共有し、議論させていただいております。3点目としては、登録されているデータを治験の際に対照群として利用可能とする点であります。これについては、医療機器業界としても是非とも更に進めていただきたいと考えております。

 次に6ページです。医療機器市販後レジストリについて御説明いたします。医療機器の市販後レジストリに関するコンソーシアムの構築につきましては、新たなワーキンググループの立上げを要望させていただきます。このワーキンググループは、学会、企業、PMDAAMED等関連する方々に参加していただいて、医療機器の市販後レジストリのガイドラインを整備することを目的として、主に共通課題についての検討を進めていくことをイメージしております。そして、臨床開発環境の整備という観点からで、今後検討を進めていく上で、特に世界に通じるレジストリの構築をどうしていくかが重要と考えております。

 参考として、7ページは現在運用されております医療機器の市販後レジストリの一覧です。

 最後の8ページです。医療機器の市販後レジストリに関する海外動向として、IMDRFで検討されている患者レジストリについての御紹介です。このように、医療機器の市販後レジストリは、世界的な流れであり、日本においても体系的な整備が必要と考えております。世界に通じる革新的な医療機器を開発していくためにも、臨床開発の環境を整備をする、今回の取組には大いに是非とも期待しております。説明は以上です。

○座長 ありがとうございました。続いては、再生医療イノベーションフォーラム会長の戸田構成員、よろしくお願いいたします。

○再生医療イノベーションフォーラム会長 私の資料は4-3です。御参考までに前回の資料も、(1回会議再掲)という形で添付しております。今日、先生方のお話の中に一部ありましたが、レジストリだけではなく、患者さんの生体サンプル、前回は細胞という形に限っておりましたが、そのレジストリと細胞のデータの紐付けをすることがCINの要諦ですので、是非そういう観点も御考慮いただきたいというのが前回です。

 今回は4ページ以降です。各ワーキンググループにも我々の団体から企業側として参加させていただきました。彼らの報告を簡単に3つにまとめております。1つは、難病・希少疾患のレジストリは研究開発の実施可能性を判断する上で、企業にとっては非常に価値のある情報源であるということです。2つ目は、治験プロトコール作成時に必要な情報が網羅されており、当該レジストリが治験対照群として、利用可能なヒストリカルデータに成るのであれば、企業にとっての価値は更に高まるということです。「しかしながら」と若干否定的な書き方になっておりますが、いずれにしても難病・希少疾患においては製品開発を指向する企業に限定的であるということです。付け加えたコメントとしては、難病・希少疾患からまず入るということで、サクセスモデルを作っていけば、他の疾患へも当然発展可能とは考えております。

 企業のニーズを4ページにまとめてみました。NCの強みをいかすという観点でいきますと、医療現場のニーズが極めて具体的に発掘できる、そういう状態が我々のニーズです。疾患レジストリと患者さんの生体サンプル情報が紐付けされていれば、例えば情報がその時点では不完全であっても、もう一度サンプルから情報を引き出すことも可能になるということです。あとは「創薬支援」と今回の「治験推進」のCINの要諦の部分を5ページに図でまとめております。一言で言いますと、左の創薬支援、「Drug Discovery」では、アイデアの萌芽、、競争力のある新薬の創出、結果として、創薬の成功の確率が上がってくるということを期待しており、右の治験推進、「Drug Development」のところでは、臨床試験の一部を、iPS細胞化技術を活用して確立した病態モデル細胞で評価するなどによって、治験の効率化、Speed upが図られることを期待しております。特に真ん中の「病態モデル細胞」は、それらの細胞をリサーチツールとして使うことによってメカニズムの検証や副作用機序の解明が出来、また各種機能細胞を樹立することで、このクリニカル・イノベーション・ネットワークの本来の目的である、臨床開発の効率化、加速化に近付けるのではないかと思っております。ここには載っていませんが、セルセラピーという観点でいっても、細胞自身がないと、今後出てくる再生医療のセルセラピーの分野では、正に細胞サンプルが必須ですので、そういう点も含めて我々としては是非お願いしたい。

5ページの一番下に書いてありますが、コンソーシアムを作って、NCやアカデミア、企業が参画してどういう病態から入るのか、どういうサンプルから作っていくのか。いわゆるサンプルとレジストリが必ず同じ数である必要は全くないわけです。いろいろな具体的な進め方はコンソーシアムを作ってやっていくということで、産業界としては、こういう点で、先ほど手代木さんもおっしゃいましたが、正にヒト・モノ・カネを投入するに足る質の高いものに仕上げていただければ大歓迎ですし、我々も参加させていただきたいと思っております。

 最後に、このような動きは既にアメリカのカリフォルニアではあり、カリフォルニア州が中心になって、3,000人の内訳は500人が健常人ですが、疾患iPS作りを始めており、本年度は約800名が終わっております。あと2年のプロジェクトで3,000名になると。このiPSは情報付きで、欲しい方には全て手に入るような仕組みがもう出来上がっております。国際競争力、産業力の高揚という観点でも、この取組は非常に重要と思っております。

6ページはあえて、時間の関係もあり御説明しませんが、参加企業、加盟企業からの生の声を添付しております。以上です。

○座長 今の御発表について、御質問等がありましたらお願いします。

○日本医療研究開発機構理事長 製薬工業協会、医機連、再生医療のそれぞれの御発表の中に、共通している部分があるので、どなたでも結構ですがお聞きします。例えば、製薬工業協会の資料4-1、一番最後のページに、「短期的課題」と「長期的課題」と書いてあって、「長期的課題」のほうに「海外のレジストリとの連携」という言葉が出てきております。

 医機連の資料の6ページ、ここにも市販後レジストリについて「世界に通じる市販後レジストリの構築」という言葉が入っております。再生医療イノベーションフォーラムの資料、あと御発言にもありましたが、欧米の方々を対象とした再生医療の細胞資源の情報が手に入るような仕組みがあったと。

 一方でアジアはどうかと考えると、VIP(ベトナム・インドネシア・フィリピン)という枠組みだけでも全部で67億人の方がいて、医療マーケットが形成されています。

 質問は、英語化の問題です。こういう議論になると、いつも長期的になってしまって、こういったレジストリの作り込みを英語に対応できるように初めから設計することの必要性について御意見を伺いたいと思います。なぜかというと、こういったレジストリーの仕組みを公的にサポートしようという意思決定がされれば、当然、臨床研究に辿り着く前のフェーズ、つまり、研究開発の初期段階から、クリニカルリサーチの提案書の様式も英語化していく、あるいは基礎研究の段階からサイエンティフィックメリットのところは英語で評価していくということを、我々の機構としては意思決定をしていく必要があると思っています。

 これは先ほどのナショセンの皆さんに投げかけた質問とも関係します。恐らく、大学病院の先生方はいろいろなコンプリケーションを持った患者さんを多数お持ちです。そういった情報をどのようにレジストリーの構築に利用したらいいのかということとも密接な関係があると思っています。参考として御意見を少し頂けると大変有り難いと思いますが、いかがですか。

○日本製薬工業協会副会長 それではお二方に後で御要望を頂くこととして、製薬協の要望を先に言わせていただくと、それは英語で作っていただいたほうが有り難いというのは正直なところです。私ども製薬協としては、常に近藤先生の所にも御無理をお願いしておりますが、承認申請資料も英語で作ったものを受け取っていただきたいと申し上げております。これは長年お願いを申し上げているところで、かなりスピードアップにつながるという確信はあります。あと、いろいろな医薬品開発が、今ではグローバル治験で行われております。1つのプロトコールで国を例えば5か国、10か国含めて行うような試験が一般化している中で、どういった患者さんのポピュレーションをねらうのかというのを考えるときに、参考データとして患者に関するデータベースを各国共通にできるというのは、成功確率も上がりますしスピードも随分違うと思います。

 一方で、日本の先生方の日々の電子カルテの中から、医療情報をどのように抜き出してデータベースに情報トランスファーしていくかというところは、実際の問題としてハードルは低くはないと思いますが、そうデザインしていただくのは我々、産業界みんな共通の要望だと思いますので非常に大きなメリットになると認識しております。

○日本医療機器産業連合会副会長 医療機器に関して当方も製薬の方と同じように、そちらの方向に向かうことは賛成です。しかし、医療機器の内容は多岐にわたっており、各企業が先端的な分野に様々な形で臨まれているということもあり、まだまだ業界としては一つになって様式の英文化に向かってはいない、というのが現状と思います。今後、世界に通じる革新的な医療機器を開発していくためにも、徐々にでも様式の英文化の方向にも対応していくことが必要と思います。

○再生医療イノベーションフォーラム会長 お二方と全く同じです。再生医療は、レギュレーションだけではなく、標準化の方でも、正に今、各国が我田引水を図って、リーダーシップを取ろうと、しゃかりきになっているところです。日本の再生医療は行政やその他関係者のお陰で、先進的なレギュレーションが構築されましたが、標準化のところは正直言って実践で磨いていませんので、かなり遅れております。ただこの分野は好むと好まざるにかかわらず、工業製品で言うとISOと同じように全て英語でやられていますので、ここの部分は標準化に対して簡単にトランスファーできる仕組みが、最初からあったほうが極めて便利と考えております。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人) 特別研究班の武田です。一言、追加申し上げます。私たちは製薬協を中心にヒアリングをさせていただいて思いを共通にする部分がありますので、その面からの追加の発言です。

 この後レジストリを幾つかの種類に分けるというお話します。そのうち少なくとも希少性疾患や難病に関しては、その例として、水澤理事長から御説明した先ほどの私どものNCNPの資料2-33ページの左に「Remudy」という御紹介を頂きました。この中で、TREAT-NMDが出てくるのですが、この筋ジストロフィーを中心にした希少性疾患のレジストリは、英語版の登録項目の原型があり、そのフォームを一にしております。したがって、外国とも共通の運用が可能になっているわけです。しかも、私どもがRemudyと申して筋ジストロフィーについて作った患者登録システムは、ほかの少なくとも希少性疾患に関しては、応用が可能ではないかと思っております。

 ただ、AMED理事長の御質問のもう1つの大きなポイントは、もっとコモンなディジーズの場合、しかもアジアで非常にポピュレーションが多い場合、あるいは異なる疾患を持つ場合にそういうことが可能かというお尋ねと思いまして、そういう点については、これから更に皆様と協力して御検討させていただきたいというのが、私どもの見解です。

○国立循環器病研究センター理事長 今のコモンディジーズに関して、先ほど御紹介した心不全などは、もうアメリカと共通の項目で登録をしております。

 脳卒中に関しても、ほぼ同じような登録でやっておりまして、特に心不全に関しては欧米との比較はすぐできる状態です。循環器疾患、特に心疾患に関しては、ほとんど欧米と一緒にやっている状況です。

○国立長寿医療研究センター理事長 アルツハイマーがコモンなディジーズかどうか議論があるところですが、EPADというヨーロッパのものを和訳して、みんなでそこの共通知識を得た上で、我々のオレンジプラットホームも英訳は既に終わっております。これを持って今度のGAPEPADとの会議に臨み、共通化を図っていくという状況です。まだ、完全に共通化はできておりませんが、かなりのコアの部分で共通化をしております。英語版は一応できており、概要については既にLancet Neurology5月下旬の電子版に載るようになっておりますので、それでより海外とのコミュニケーションが図れると考えております。以上です。

○座長 脳卒中とか心不全とかRemudyとか、既に共通フォーマットができているところもあるということかと思います。方向性としては共通の登録ができるようにしていく必要があろうかと思います。ほかに御意見や御質問はありますか。この後、武田先生から特別研究班の報告をしていただいて、それを踏まえて意見交換ができればと思います。まず、7つのワーキンググループで検討している項目について横串を差すということで検討してきておりますので、武田所長から特別研究班の検討結果について御説明をお願いします。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人) 御紹介をありがとうございます。資料3を見ていただきたいと思います。この半年の特別研究班の検討結果について、簡潔に御紹介をさせていただきます。

 表紙に内容を示しております。1ページ、患者登録情報、あるいは疾患登録情報の意義、医薬品開発における意義をごく簡単に書いております。すなわち、患者レジストリを使いますと、市場調査、治験計画の作成、あるいは実施可能性の調査、リクルートができることは、今までのお話の中でも出てきました。今後、更にレジストリが進んでいくと、治験の対照群の検討、あるいは製造販売後の調査ができるようになると考えられます。

2ページ、私どもの研究班の1つの根本でありますが、倫理面での論点整理を見ていただきたいと思います。現在、我が国にある患者レジストリを特に倫理面からこの3つに分類しております。1つ目のカテゴリーが、今日のお話ではがん、難病がその対象になりますが、行政事業二次利用型の登録制度です。2番目が、今日のお話でも循環器、あるいは成育、国際の糖尿病等で出てきました、電子カルテ等の医療情報を使った二次利用型のレジストリで、これが主流になっています。

 ただ、これに関しては、ICTでも別途精力的に御検討いただいているところですが、一番大きな問題は、技術総括審議官から正しく御指摘いただいたように、病歴は要配慮個人情報となっていることから、どのように同意を取るかという大きな課題がありまして、これについては引き続き検討をすべきと考えております。ただこれに伴う共通化、あるいは複数の疾患を持っている等の件に関しては、後で少しだけ述べさせていただきます。

3つ目が、治療開発研究をやっていく上で直接の対象になる研究利用明示型のカテゴリーです。これは例えば私どもの筋ジストロフィーのレジストリ、あるいは長寿でやられている認知症のレジストリがこれに当たるかと思います。これに関しては、確かに倫理的には有利な点が同意等でありますが、個々にこういったレジストリを立ち上げる必要から、資金等を御配慮いただく必要があるのではないかという感じがしております。

3ページ、こうしたレジストリの現状に対して、特に製薬企業の皆様からどういう御希望があるかということですが、これは既にしっかり述べていただきました。ごく簡単に繰り返させていただきます。やはり、どこに行けばどういう情報が得られるか、そうした意味でのワンストップ・サービスができるような中央支援部門が欲しいと。その際にも、Good Registry Practiceを十分意識する必要がある。さらに治験コンソーシアムを、インフラストラクチャーとして準備していくことに関しては、いろいろな議論があります。疾患領域によっては企業の皆様にも御協力を頂いて、構築できていく可能性があるのではないかと私たちは感じております。

4ページ、今後更に必要なレジストリを伸ばしていく分野としては、2つ項目があると思っております。このページには、治験対照群としての活用を掲げております。もう1つは、市販後のことです。これは後段で少しだけ述べさせていただきます。

 治験対照群に関しては、疾患領域が出てきますが、問題は臨床評価の代替手法になるかどうかです。これについてはレギュラトリーサイエンスの皆様、特にゲートキーパーであるPMDAの方々と十分協議して、その要件を詰めていく必要があるのではないかと感じております。最後のレギュラトリーサイエンスとの関係においては、市販後のレジストリも、また、課題は一にしているのが私どもの見解です。

5ページ、今後の情報登録システムの形を書いております。基本になるのは、電子カルテ等の医療情報をどのように統合するかということで、その際の課題は幾つかあります。1つがPMDAの理事長から御指摘があった言語の共通化です。2つ目は、AMEDの理事長から御指摘のあった、複数の疾患を持つ場合にどのようにインテグレートするかです。3つ目が、これもお話の中では双方向性として出てきたものに相当すると思います。患者さん御自身のPersonal Health Record、例えばペイシェントライクミーというものがありますが、それをどのようにインテグレートして、新たな世代の情報登録システムを作るかが一番大きな課題だと思います。ただ、もちろん倫理の大きな問題がありますし、次世代医療ICT基盤協議会などでも取り組んでいただいているところです。

 それらを踏まえて、私ども特別研究班からのお願いを6ページに書いております。これも一部繰り返しになりますので簡単に申し上げます。やはり、ワンストップ・サービスを実現するような中央支援システムを構築していただきたい。もう1つは、企業の皆様にも参加しやすいような、恐らくこれは疾患領域等の課題がありますが、課題を絞ったコンソーシアムが形成できたらと思っております。

 具体的な今後のレジストリの構築方向としては2つあります。1つは、治験対照群としての活用に資するレジストリです。もう1つは、製造販売後の調査、安全性対策に資するレジストリです。後者についても医機連の皆様から御要望がありましたが、課題は同じで、レギュラトリーサイエンスの皆様、ゲートキーパーであるPMDAとの連携が重要であるというのが私どもの見解です。

 最後の7ページには、中央支援部門を形として書いております。これらを通して、私たちが感じていることは、患者登録情報、患者レジストリというものは、現在別途進められているゲノム医療、バイオリソース、IRUDとも共通したものがあるということです。さらにはオバマ大統領により提唱されたPrecision medicineについても、この患者レジストリが深く関係しているというのが私たちの最後のコメントです。以上です。

○座長 ただいまの検討状況について御質問、御意見等がありましたらよろしくお願いします。

○名古屋大学医学部附属病院病院長 誰も発言しないので少し言わせていただきます。非常に高度なレジストリでもってデータを集めるということについては、非常に価値があることだと思います。私たちは中核病院として、多分入れるデータを提供する側、入れる側ということに当面の間はなってくると思うのです。そうなると、これは高度で、しかもリジッドなデータを提供しようとすればするほど、どんどん手間がかかるというところ、当然、お金はどうなるかということで、中核病院と言えども決して懐は暖かくないということです。その辺のことについては当然何らかのインセンティブないしはコンペンセイトがあるということでよろしいのでしょうか。これが1点です。

2点目は、例えばがんでデータを集められると。しかもある意味、ゲノムデータも集めるかもしれないという御発言があったかと思います。そういう場合、例えばあるがんで、ある一定のフェノタイプにおいて、特定のフェノタイプが出てくる。例えば糖尿病が合併しやすいとか、そういうことになると、そのデータというのは共通されていくのか、そういうスキームでこれは動くものなのかということです。はっきり言うと患者さんに説明するときに、ゲノムデータの提供ともなりますと、院外への持ち出しは今のところ、かなりハードルは高いということで、今後変わってくるものなのかどうか。その辺のことについて少し御説明を頂ければと思います。

○事務局 CINの初期投資については国費で整備を図りました。今後どう運用していくかということですが、可能な限り必要な予算は確保していきたいと思っております。また、この治験ということになると、企業活動の一環として行われておりますので、企業にメリットのあるようなネットワークを構築して、ユーザーの立場で、資金提供も含めた貢献も企業にはお願いしたいと思っております。何とか安定的に運用していけるような形で、こういった先進会議の場でいろいろと意見交換をしながら、どういった形で事業を維持していけるかというところも御相談をさせていただきたいと思います。

○審議官(医薬担当) 別の質問ですが、今の御質問に関係するお話として、武田先生の御説明、あるいは最初に藤原先生の御説明の中に、少しそういった要素の話があったかと思います。1つは、患者さんがこのネットワークの上での重要なステークホルダーになっておりますので、この方々に納得してもらえるかどうかということがとても大事です。そもそもこのようなネットワークをレジストリと言っていますが、参加される患者さんたちがこのレジストリに参加することで、自分たちにとって新しい治療に対するアクセスのチャンスを得るということまで実現されるのだと、あるいはそういうより良い治療を受けるための扉が開かれるのだと。その双方向性のあるシステムにしていくことを、もっと分かりやすく言っていくことがないと賛同が得られないのではないかと、初期にCINの構想を考えているときに、私どももそのような話をしていたところです。参加される患者さんには、非常に短期間で病状が悪化していくようながんの患者さんもおられれば、ずっとその病気を抱えている患者さんもいらっしゃいます。そういうそれぞれの患者さんにとっての切実な思い、願い、ニーズとかがある、そういうものに対して、このネットワークに参加されることで、患者さんにとってどんなメリットがあるのか是非考えるべきではないか、というのが1つ大事なポイントかと思います。

 そういう意味で、武田先生がお作りになったレポートの一番最後の図に、中央支援部門というものがある上に、右側に「国民」という絵があります。この部分をどういうふうに分かりやすくしていくか。あるいは患者さんにとって本当に価値があると感じてもらえるようなものにしていくのか。そこにどのような声を取り入れていくのか、ということが非常に重要ではないかと私どもは思っております。

 特にがんの患者さんのレジストリのところは、登録しても、なかなかチャンスが来ない、待っていてもそんなに早く治験が来ないので、まずは最初に今やっている治験はどこだというのを御紹介するという格好にされているのも、やはりそれはそれぞれの疾患の患者さんのニーズにむしろオリエントした格好で、システムの特性をアジャストしていることの1つの現れではないかと思います。

 こうした視点は、是非先生方がこのようなシステムを考えていただく上で、どうやって難しいデータを取るのか、そこの負荷が大きいという話もありますが、もう1つは、参加する患者さんが、納得して積極的に参加してくれるという方向を何とか目指せないか、ということもお考えいただけると有り難いと思います。少し余計なことを言いましたがコメントさせていただきました。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人)  森審議官に御紹介いただきまして、大変助かりました。CINの中心は、私どもの理解では、医薬品の開発に資するような患者レジストリであると考えております。最後の中央支援部門にも書かせていただきましたが、私たちの説明の倫理面に関していえば2ページ目の3.研究利用明示型は、一つの原型になりうると考えております。もちろん我が国においては、レジストリには様々なものがありますが、医薬品を開発することによって、国民にその成果を返すということを一番大事にして、更に発展させて、ゲノム医療であるとか、あるいはバイオリソースの管理等にも是非いかしていただきたいというのが、私どもの真意です。

○名古屋大学医学部附属病院病院長 ちょっと誤解を受けたようです。私は別にそれをいけないと言っているわけではなくて、せっかく集めるのだからそうやってリサイクルしたらどうかというスキームを入れてはと言ったつもりです。

○東北大学病院臨床研究推進センター特任教授(代理) 東北大です。臨床研究中核病院ということで評価させていただいています。議論を聞かせていただきますと、中核病院はこれらのデータを上手に利用して主導治験に向けていく、あるいは企業治験も含めて質の高いレベルで進めていく。多分、そういう目的があるのかなというように理解しています。

 資料12ページ目に書いてあるところで、ナショセンから企業に向かう所がデータの共有、個人情報保護に配慮と書いてあります。これは企業に限らずナショセン間でも、あるいはナショセンと臨中の間も恐らく同じような仕組みが必要なのだと思います。この仕組みを、ここ以外でどこかで考えている所があるのか、それともここで考えていくべきものなのか、そこについて今日の情報だけではちょっと理解し切れていないので、どなたか御説明いただけると有り難いのですが。

○事務局 事務局からお答えします。今、先生が御指摘の資料12ページ目を御覧いただきたいと思います。基本的には、ここのステークホルダーの中にNC、臨床研究中核病院等と書いてありますが、企業については医療機関ではありませんので、コラボして利用開発する、新薬の開発によって貢献する形での利活用という形の参加になります。臨床研究中核病院においては、NCあるいはこのネットワークで作られているデータの利活用という面だけではなく、恐らく医療機関としても洗練された臨床研究を行う、治験を行う機関ですし、また患者さん自身との接点があるのでレジストリを作る側、ネットワークに参加する側でもある。そういう意味でこの位置で図を描かせていただいております。ですから、実際のネットワークというのは今、モデル的にNCを中心にスタートしておりますが、最終的には日本全国に似たようなもの、林立しているものを寄せて集めて、既存のレジストリを駆逐するのではなく、それらの既存のレジストリを統合し、統一していくような形での調和的な発展的解消という意味で、大きなネットワークに成長することをねらってはおります。

 その中で一番大事なのは、森審議官からもお話がありましたが、患者さんからの理解が得られることが必要です。「自分が便益を得られるのだ」という実感、つまり、遠い将来的な意味では新薬の開発による先進医療の確立がありますし、直接的な近未来では治験への参加、によって自分自身の疾病の治療という目的が達成されるような形での理解を頂くため、研究参加型の情報開示型のデータベースができることを、ある意味で念頭に置いております。また、そういった面でのお金につきましても政府も最大限努力しますけれども、レジストリというものは最終的には継続的に維持経営しなければいけないものですから、そのコストについて、商業利用である医薬品開発におけるペイ・バックという形での民間からの支援、コラボレーション・コンソーシアムが、現状のレジストリの発展的解消の将来像であると。そこに向かってより大きなものをより低コストで、より効率的なものが永続するようなものを、この事業の最終的な目標として見ております。ちょっと横道にそれましたが、今先生から御質問の臨床研究中核病院にあっては利用者でありながらも参加者、作成者の一端を担っていただくことを想定しておりました。答えになっていれば幸いです。

○東北大学病院臨床研究推進センター特任教授(代理) ありがとうございます。更に突っ込んだ話をさせていただきますと、この先、SS-MIXを使うとかCディスクで出すとかという具体的な話までここで出ているようですが、その辺についての議論というのは、ここでやるべきものなのか、ほかでやっているのか、その辺についての情報も頂けませんか。

○座長 先ほど言ったSS-MIXを共通の様式にしていくということは、ICTの検討会のほうでもそういう議論がされています。既にMID-NETというPMDAで使われているものもそうですし、国立病院機構もSS-MIXベースでデータベースを作るというようになっています。それが共通の標準様式になっていくことは、概ねそういう方向になっていると思っています。

○審議官(医薬担当) 前回のこの会議の場でも、確かタケイシ先生からSS-MIXだとカバーできないデータがいろいろあるという御指摘も出ております。もちろん、それぞれの疾患のデータを集める上で、付加的なデータの部分を何とかそれぞれ用意しなければいけない。

 近藤理事長が御説明になったCDISCプラスCFASTと言っているほうは、疾患ごとに、その特性に合わせたデータ項目を用意していくというのが国際的な動きとしてあって、日本も今、それに乗り遅れないようにということをやっている状況があります。

 基本的には、電子データとして、きちんとしたフォーマットができているものであれば、

いずれ大きくつないでいくことができるということについては、基本的なコンセンサスができております。これは内閣府のほうでそのような、日本全体のICTのコーディネーションをお考えいただいているという今の動きですので、SS-MIX縛りとかいう話をここで決めているということではありません。是非御理解いただければと思います。

○国立国際医療研究センター理事長 ちょっと違う質問をさせてください。私ども、またいろいろな所で疾患データベースを作っていて、それが必ずしも最初から製薬企業あるいはほかのいろいろな種類の企業の多種多様なニーズに合わせるために作ったものでないというとき、倫理的な面でどうしても幾つか問題が出てくるのではないかと思うわけです。できるだけそういうものを広く利活用していただこうということで、包括的同意を取り直しているわけです。それをどの程度詳しく、あるいはそこで企業との関係で限定的に述べるべきなのかという細かい問題があるのではないかと思います。そういう点を是非、武田先生の班で大体の目安と言うか、こういうような包括的同意の内容にすれば、いろいろな面で問題なくデータを利用できるのではないか。そういうことを作って示していただけると現場としては非常に有り難い。その辺、御検討いただけないかと思っています。

○国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長(参考人) 今の春日先生の御質問、私どもの特別研究班で議論をさせていただいておりますので現状を申し述べたいと思います。

 特に個人情報保護の改正ということがあり、一つは先ほども出ていますような病歴が要配慮個人情報であるということ、一方学術研究はこういった改正があっても個人情報保護法の適用除外となるわけです。ただ、企業による利活用は学術研究に該当しないと思われますので、個人情報保護法の適用除外対象にはならないという大きな限界があります。それについては、この半年の私どもの活動でも、一番の懸念事項となったところです。法の改正等もありますので、できれば新たな研究班、あるいは私どもの後継となる研究班でもこの検討を続けさせていただき、是非皆様のお役に立てるようにと考える次第です。

○座長 鈴木さん、今後の全体のスケジュールや動きについて少し説明していただけますか。

○技術総括審議官 全体を言えるかどうか分かりませんが、まず、今、武田先生がおっしゃったことについては、個人情報保護法というのは、基本的には国立や独法、都道府県立、市町村立のようなものしか対象になっていない。そういう意味では法律的に言うと割と狭いのです。その上で、更に研究機関による研究目的の研究については除外するという構成になっているので、正におっしゃったように研究機関によるものでない場合には、多分除外されないことになるというのがまず1点です。

 もう一つ、「除外されたとしても」と言うとちょっと厳しいのですが、昔あった疫学指針と臨床研究指針を合わせて一つの指針にしましたけれども、実質上、その指針で法律が適用されるのと同等の厳しさでガイドラインで規定される可能性がある。可能性があった場合、ガイドラインを満たさないとどうなるかと言うと、厚生労働省や文部科学省、経済産業省の研究費を受けられませんということになってしまう。そうなると、実質上研究が止まってしまうので、そこをどうするかという点がやはり残りますということだと思います。

 いずれにしろ、来年4月と目される個人情報保護法の施行に向け、その他の関連法の整備、政令の整備、それからガイドラインの整備は一括して、ある程度以上の時間的余裕を持って進めないと、多分現場のお医者さんや研究機関の方々は大変なことになってしまうと思います。今、局長もおっしゃいましたが、ICTの懇談会等々で各所も含めて検討しております。なるべく早く、スケジュール感と方向性感はお示ししたいと思います。

 繰り返しになりますが、4月以降に取るデータは一定の形式でオプトインということでやっていただくとして、それ以前に蓄積されたデータをどういう形でオプトインとみなすかが、多分一番の課題ではないかと思います。そこも個人情報保護委員会と含めてちょっと検討させていただくことになると思います。

○座長 ありがとうございました。したがって、こちら側の整理を見ながら更にどのようにしたらいいか検討していただく必要があるかと思います。

○内閣官房健康・医療戦略室次長 内閣官房の健康・医療戦略室です。健康・医療戦略室では、医療データの活用について検討を行っているところです。厚生労働省と相談しながら、また、この推進会議の動きも見ながら、今日頂いたお話も含めて現場の情報を踏まえて検討を進めたいと考えております。法律的な対応が必要なのか、それとも指針や運用の話なのかなど検討し、制度的な対応を必要な部分があれば考えていきたいと思っています。

○座長 ほかに御意見等ありますか。

○再生医療イノベーションフォーラム会長非常に難しい議論だと思います。再生医療のほうでも、この壁に随分ぶつかっています。例えば今、細胞を手に入れるというのは海外だったら簡単に手に入る。皮膚の細胞は全部海外から手に入れている。やはり、国民のメンタリティーを変えないと。通常の個人情報保護法と医療情報というのは全然違うわけです。

 釈迦に説法なのですが、原点に返る必要があると思い申し上げているのですが、今、我々が近代医学の恩恵に浴している、それは何年も前、いろいろなことで亡くなっている方たちの蓄積があって今我々は近代医学の恩恵を得ているわけです。それが全て、今ここで述べられているようなアカデミアだったら使えるけれども、企業は営利目的だから使えないとか、そういう切り口でやっていくと、いつまでたっても変わらないのではないかと思います。

 ならばどうすればいいのか。別に私に妙案があるわけではないのですが、やはりこの中で何かキャンペーンをするとか。例えば日本は今高齢社会です。あと何年かしか生命がないという方たちは、ちゃんと説得すれば自分たちの献体なりサンプル、情報なりを次の世代、孫の世代に使ってくれとなる、誰が嫌だと言うでしょうか。単なる法律論で攻めるという切り口も絶対必要ですが、やはりもう少しこの中でレジストリを公益のために使っていくという観点で何か考えるところがないと、なかなか前に進まないのではないか。

 一つの例は、これは今、単に皆さんのお話を聞いていての思いつきですけれども、希少疾患や難病というのは、病院にかかった方たちが自分の病気が一つのグループとして次の世代に治療経験となるなりで、何か役に立ったらいいなと思ってくれるような気がします。ですから、何かモデルを提示することも、ある意味で一つの突破口になるのではないか。すみません、素人ですがそういう感じがしました。

○国立精神・神経医療研究センター理事長 今の御議論、先ほどの御議論とも、つまり患者さんの利益、患者さんの思いといったものにも関係するわけです。

 実際、例えば我々のRemudyという筋ジストロフィーの登録については、もともと患者さん自身が登録するというシステムで始まっています。恐らく、多くの登録事業については各患者さんの団体、あるいは家族の会といったものと連携してやっていると思います。この席に来ておられるかどうか分かりませんが、この事業も早い段階からそういう形で理解を求めて一緒にやっていくという姿勢はとても大事ではないかと思います。

○座長 ありがとうございました。ほかに御意見等ありますでしょうか。

 それでは、疾患登録システムに限らず、この場は、治験や臨床開発環境の整備自体を目的としているわけですので、それ以外も含め臨床開発環境の整備その他で御意見があれば御発言をお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長 これも先ほど少し議論があったのですが、倫理的な側面について、各施設でいろいろな事業を進める形になっていて、各施設で個々に倫理審査を受けているわけです。倫理審査はいつも時間がかかりますし、大変だという思いを持っているわけです。もう少し中央化して倫理審査ができるといいのではないか。6ナショセンもそうですし、この事業に関わるようなところは共通して倫理審査を受けられるようなシステムを構築していったら非常にいいのではないかとは思います。

○事務局 御指摘、ありがとうございます。今、先生から御指摘いただいたいわゆるCentral IRB、多施設共同研究のとき、個別に倫理審査委員会を通していては非常に非効率だということで、欧米の各国もCentral IRBの推進を図っているところです。

 我が国においても5か年計画等で何回も取り組んできているのですが、ここまでで分かってきたことは、お互いがよく見えないとなかなかCentral IRBへの一本化はできないということ、これがほぼ分かってきています。つまり、あそこの倫理審査委員会の結果は信用できないからうちの病院でもう一回やるという、倫理審査を自施設でやり直す側の意見がある。また、中央倫理審査委員会のほうも多施設研究をCentral IRBとして受けてくださるところもあるのですが、一方で、見たこともないような、研究体制も分からないようなものの倫理審査はできないと。双方の言い分を聞いてみると、相互理解が不足しているために進まない状況だったということが分かってきています。

 最終的な年度においては、それぞれ双方の理由を歩み寄って、お互いの情報を開示することによって、どういう所だったら信用してCentral IRBを受けてもらえますか、どういつCentral IRBの審査だったら自施設での倫理審査委員会への重複した審査を依頼しませんかということを逆に問いかけていかなければいけない。また逆に、どういうところまで情報を開示してくれたら、そこの研究体制、医療安全体制を信用できますかということを問うていかないといけません。双方の歩み寄りを積みあげて、Central IRBの実運用の実現可能性について、もう少し掘り下げたうえでCentral IRBを更に進めていきたいと考えております。事務局としては同じ問題意識で進めていきたいと思っているところです。

○国立精神・神経医療研究センター理事長 いろいろ外国にも先行例があるようですので、うまく行くと良いと思っています。

○日本医療研究開発機構理事長 手短に発言します。AMEDで初年度にIRUDという、難病・未診断疾患を立ち上げました。。IRUDは今ここにおられる水澤先生、成育医療の松原研究所長にそれぞれ大人と子供のグループのリーダーをやっていただいています。このプロジェクトで半年ほど前に大学病院の先生方、皆さん臨床現場でぎりぎりのところで頑張っておられますが、大学病院の先生方にお話したところ、私は当たり前だと思うのですが、データを提供してくれという話をすると、「これはNCの研究のために我々がデータを提供するプロジェクトですか」と聞いた先生がおられました。一方で水澤先生も松原先生もそのようなマインドセットでは全然やっていないんですね。

 恐らく、異なるセクターの先生方同士の相互のトラストが成立しないとクリニカル・イノベーション・ネットワークは成立しない。そこは大きな挑戦になると思われます。「CINは誰のためにやっているのか?」という御発言がありましたが、患者さんが納得するかどうかというところにすべてはかかっている。我々もファンディングエージェンシーとして、患者さんのレジストリを構築するとどのように患者さんに貢献できるかとか、未診断症例が確定診断にどう至るのかなどが具体的に可視化できる、またそういう成果を評価の指標にしてプロジェクトの評価をしていこうということを部内では決めております。CINを構築する上でも是非、マインドセットのバルカニゼーションをうまく外して成果がしっかり出るように配慮をいただきたいと思います。我々もそういう工夫をしたいと思います。

○座長 ありがとうございます、是非そういう方向で検討していきたいと思います。

○国立がん研究センター企画戦略局長(代理) 簡単に。ニショケン開発環境の中、今日は国からトライアル・レジストリの話がされていますけれども、実際にはその後臨床試験が待っているので、臨床試験の部分に関する国の予算や体制整備状況というのはまだまだのところがあります。

 今日の会議に関連して申しますと、例えば国からのトライアル・レジストリ、臨床試験登録に関して患者さんから最近一番要望を受けるのは、見える化されていないとか、一体企業の治験がどこで何をやられているのか見えないというもので、たくさん頂きます。今回、コンバ……システムが入り、PMDAがホームページでピボタル・トライアルの開示を始めていただいて非常に有り難いのですが、如何せんPDFになっています。できればExcelファイルにしていただいて、患者さんがソートしやすいようにというのが一つ希望です。

 それ以外に、今のところ臨床試験情報は、国立保健医療科学院で先ほどのJAPICUMIN、治験促進センターの情報は集約されていますけれども非常に見にくい。それを大々的に改善していただいて、患者さんがそれを見れば簡単に分かるような仕組みを作っていただく。

 レジストリの話では英語でやりましょうという話もありましたが、一方で日本語にしないと患者さんが読めないというところもあって、両立をしっかりしていただきたいと思います。

 最後、私はレジストリでAMEDの臨床研究治験推進事業のPOをさせていただいています。今回、CINに基づいたクリニカル・トライアルの審査をさせていただきましたが、結構予算が限られていて、非常に良い臨床試験のプロポーザルがあっても全部取れなかったりする。せっかく、このレジストリが進むのであれば、国からトライアル・レジストリに基づく臨床試験に関してAMEDにしっかり予算を付けていただいて、もっとたくさん臨床試験が進んで、更に薬事承認や保険償還につながるというようにしないと、出口のほうが詰まってしまってはいけないなと思います。

○医薬品医療機器総合機構理事長 一言申し上げたいと思います。末松先生が今おっしゃいましたが、CINを運営していくに当たって、例えばいろいろな所からデータを頂きたいと思ってもどういうように使われるか、一方的にナショセンのために使われるのではないかという疑念が浮かぶわけです。ありとあらゆるところで疑念を相手に与えてはならない。ですから、どうやったらCINがあらゆるステークホルダーから信頼を得られるかを、まず考えなければいけないと思います。

 それは何かというとやはり理念だろうと思います。つまりこの運営は誰のために、どういうやり方でこうする。それから決してこういうことはしないとか、こういうことを明確にしておかないと、運営自体を目をつむってやると何をするか分からない。これには特に産官学が組むわけですから、例えば産が何をするか分からない、官が何をするか分からないとは申し上げたくはありませんが、いずれにしろ、お互いに信頼をどうやって作るかという理念をしっかり明確に書き込むことだろうと思うし、それに基づけば、もしもそれに反することがあればそれは罰せられるわけです。そういう覚悟でこのCINというのは、しっかりスタートをやっていただきたいと思います。

○座長 ありがとうございます。御指摘を頂いたようなことを、きちんと整理をして、信頼が得られるような、先ほどありました不信感を抱かれることがないようにきちんと目的、使われ方がいかにしたら御理解いただけるかについて、私どもでも対応を検討させていただければと思っています。ほかに御意見はありますか、よろしいでしょうか。

 ありがとうございました、本日予定していた議題は以上です。事務局から連絡事項があればお願いします。

○事務局 本日の議事録につきましては作成次第、構成員、オブザーバーの皆様方に御確認を頂き、その後公開させていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 また、次回会合の日程・開催場所等については追って事務局より御連絡させていただきます。

 以上をもちまして本日の会議を終了いたします。ありがとうございました。

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 臨床開発環境整備推進会議> 第2回 臨床開発環境整備推進会議 議事録(2015年8月20日)

ページの先頭へ戻る