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2017年4月10日 第19回 社会保障審議会人口部会 議事録
○日時
平成29年4月10日(月)15:00~17:00
○場所
全国都市会館3階第1会議室
○出席者
津谷部会長、稲葉委員、大石委員、小野委員 |
鬼頭委員、駒村委員、榊原委員、白波瀬委員 |
高橋委員 |
○議題
(1) 日本の将来推計人口(平成29年推計)
(2) その他
○議事
○津谷部会長
それでは、定刻になりましたので、ただいまより第19回社会保障審議会人口部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては新年度、新学期が始まったばかりで大変御多用かと思いますが、それにもかかわらずお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。本日の委員の出欠状況ですが、大林委員、西郷委員、早乙女委員、鈴木委員、そして山田委員から欠席の御連絡をいただいております。
それでは、議事に入らせていただきたいと思います。本日の議事は日本の将来推計人口、平成29年推計の推計結果についての説明です。申し訳ありませんが、カメラの方はここで退席をお願いしたいと思います。
では、まず事務局から資料の確認をお願いします。
○野崎政策企画官(社会保障担当)
事務局でございます。本日の資料は、議事次第、座席図のほか、資料1、日本の将来推計人口(平成29年推計)、資料2、日本の将来推計人口(平成29年推計)-推計手法と仮定設定に関する説明資料-となっております。お手元に資料はございますでしょうか。
○津谷部会長
よろしいでしょうか。それでは、日本の将来推計人口(平成29年推計)について、国立社会保障・人口問題研究所の石井人口動向研究部長より御説明をお願いいたします。
○石井人口動向研究部長(社人研)
国立社会保障・人口問題研究所です。このたび、日本の将来推計人口(平成29年推計)がまとまりましたので、本日はその推計結果と手法・仮定設定について御報告を申し上げます。資料は2つございますが、最初に資料1を用いまして、平成29年推計の結果概要につきまして御説明を申し上げました後、資料2で推計手法と仮定設定に関しまして御説明を申し上げたいと思います。
まず、資料1を御覧ください。表に目次がありまして、1、2、3と記述があるのですけれども、本日は時間の関係で要約のほうを中心に結果の概要を説明します。資料13ページ、結果の要約です。まず、この推計ですが、本推計では出生、死亡にそれぞれ高、中、低3通りずつ、計3×3で9通りの推計を示しております。こちらは死亡が中位仮定の場合の結果を要約したものとなっています。1行目は出生仮定を示したものです。今回では長期の合計特殊出生率は中位仮定で1.44、高位仮定で1.65、低位仮定では1.25となっております。右側に前回の平成24年推計の中位仮定が1.35とありますので、今回の中位仮定は前回よりも高い設定となっております。
2行目は、長期の平均寿命を示したものです。中位仮定では、長期では男性が84.95年、女性が91.35年といった仮定設定になっております。仮定設定に関しましては、資料2でまた詳しく御説明しますので、まず先に推計の結果の要約を説明します。
次の3行目の所に総人口があります。人口推計の出発点である平成27年の総人口1億2,709万人であったわけですが、中位仮定では平成77年には、8,808万人まで減少すると見込まれております。一方、出生高位仮定によりますと、2065年の総人口は9,490万人、低位仮定では8,213万人となるものと見込まれ、いずれの結果によりましても、わが国は今後長期的な人口減少過程に入っていくということが見込まれています。また、平成72年の総人口を前回と比較しますと、前回の8,674万人が、今回では9,284万人ということで、610万人の増加となっています。
次に、その下、年齢3区分人口の推計結果につきまして、中位仮定を用いまして説明します。年少人口である0~14歳人口は、実績値で既に減少しておりまして、平成27年では1,595万人となっております。将来もこの減少傾向は続くと見込まれ、平成77年には898万人まで減少すると見込まれます。
また、生産年齢人口である15~64歳人口も同様で、平成27年7,728万人から、平成77年には4,529万人まで減少すると見込まれます。一方で老年人口、65歳以上人口は、平成27年に3,387万人となっておりますが、ここからしばらく増加をしまして、平成52年には3,921万人まで増加します。その後、平成54年に3,935万人でピークを迎えた後は減少に転じまして、平成77年には、3,381万人と見込まれています。老年人口は、こういったわけで推計期間中に減少に転じるわけですが、老年人口割合は一貫して上昇を続け、平成27年の26.6%から平成77年に38.4%まで上昇をする見込みです。
こちらをグラフで示したものが21ページです。図1-1が総人口の結果を示したものですが、基準時点である2015年以降、我が国の総人口は長期的な人口減少過程に入ることが御覧いただけます。ただし、破線で示しました前回推計よりは高、中、低とも軌道が上方に移っています。図1-2は、老年人口割合を示したものです。こちらは2015年以降一貫して上昇をしていることが御覧いただけると思います。こちらは、前回推計である破線よりも下方の軌道となっており、高齢化の進行が前回推計よりはやや緩やかとなっているということです。
22ページです。こちらが年齢3区分別人口、あるいはその割合を示したグラフです。これによりますと、年少人口、生産年齢人口とも今後は一貫して減少するということが見込まれますが、一方、老年人口については2040年代に向けて増加をし、2042年にピークを迎えた後、減少に転じるといった見込みです。23ページです。人口ピラミッドの変化を2015年、2040年、2065年の3点について示したものです。一番上が基準時点の2015年で、近年の少子化を受けまして若年層では人口規模が小さくなっているということが分かります。今後もこの傾向は引き続いていくことが見込まれ、2065年は高齢層の比重がより大きな年齢構成へと変化をしていっていることが分かります。
このように今回の推計結果は前回と比べて人口減少の速度や高齢化の進行についてはやや緩和されているというものですが、一方で我が国が長期的な人口減少過程に入っていくこと、また、今後も少子化・高齢化の傾向が引き続いていくということを示す結果となっております。この概要版では、次のページ以降、死亡仮定が高位・低位の場合の推計結果あるいは各種推計の比較、仮定値と続きますが、45ページ以降に、長期参考推計と条件付推計を掲載しております。ここまでで御説明をいたしました平成77年までの9本の推計を基本推計と呼んでおりますが、まず45ページ以降の長期参考推計は、長期の人口推移分析の参考とするために、平成78年~平成127年について推計を行ったものです。この際、生残率、出生率、出生性比、国際人口移動率は平成78年以降一定として参考推計を行ったものです。47ページ以降この出生・死亡の仮定に応じた長期参考推計結果を掲載しております。
次に53ページを御覧ください。こちら以降に条件付推計の結果を掲載しております。条件付推計とは、仮定値を機械的に変化させた際の将来人口の反応を分析するための定量的シミュレーションで、ここでは出生率と外国人の国際人口移動の水準を様々に変化させた際の将来人口に関する反実仮想シミュレーションの結果を示しております。こちらは、前回推計でも行っておりますが、前回は基本推計公表のおおむね1年後に報告書として示していたものです。今回につきましては、本部会におきましても、今後の出生動向の見方につきまして様々な御意見をいただいたということ、あるいは、少子化などを踏まえまして将来の人口への関心が高まっているということなどを受けまして、前倒しで作業を行い、基本推計と同時に公表をするということといたしたところです。
この仮定値につきましては機械的に設定を行ったもので、出生率については、平成77年における合計特殊出生率が1から2.20まで0.2刻みとなるような設定を行っております。また、外国人の移動仮定につきましては、平成47年における年間の純移入数を0、5、10、25、50、75、100万という切りのいい数字として推計を行ったものです。
この手法につきましては後ほど資料2の所でもう少し詳しく説明したいと思います。なお、最初に説明しました基本推計が人口学的統計手法によるプロジェクションであるのに対しまして、先ほど申し上げた条件付推計というのは任意の仮定をおくことによって人口動態並び人口構造への帰結を観察・分析しようとするというものですので、両者はその目的が異なるということにご留意をいただければと思います。
それでは次に、資料2にしたがいまして、推計手法と仮定設定に関する御説明を申し上げます。最初に「これまでの部会審議」があります。本日の資料は二部構成となっておりまして、1番目の所、「これまでの部会審議」として3回の部会資料の一部を抜粋したものを掲載しております。それから第二部につきましては、今回の議題の中心となります平成29年推計の手法と仮定説定に関する資料となっております。
まず、4ページです。こちらは、これまでの3回の部会審議の議題を示したものですが、特に赤字で示しましたものが将来推計に直接関係をする議題ということになっております。最初の第16回の部会では、「推計人口とは-その役割と仕組み-」といたしまして、本将来人口推計に求められる中立性や客観性またそのための手法としての人口投影、即ち将来人口推計というものは、観測されました人口学的データの過去から現在に至る傾向・趨勢が今後も続くとして将来に投影して科学的に推計を行うというような、人口投影の考え方を中心に御説明を申し上げたところです。
2回目、第17回の人口部会では、「将来人口推計の方法と検証」といたしまして、これまでの将来人口推計の検証や評価、それから平成24年推計を中心としまして、将来人口推計の方法論について御説明をいたしました。
3回目、第18回の部会におきましては、「新推計の基本的考え方」といたしまして、新しい推計の方法論について、直近のデータの動向を踏まえた基本的な考え方につきまして、御説明を行って御審議をいただいたところです。次ページ以降、第一部では、これまでの部会資料の中から人口投影の考え方など、本日の議題に含まれない部分を中心に抜粋を示したものですが、既に委員の皆様には御案内のところと思いますので、説明は省略をさせていただきます。
それでは、16ページを御覧ください。平成29年推計の手法と仮定説定を説明します。17ページです。こちらが平成29年推計の基本的枠組みと基準人口について掲げたものです。基本推計の枠組みといたしましては、コーホート要因法を用いまして、2016年から2065年の50年間を推計期間として行います。また、推計の対象は国勢調査と同一で、日本に常住する総人口となっております。ここで常住するということは、当該住居に3か月以上に渡って住んでいるか、あるいは住むことになっている者とされておりますので、例えば外国人に関しましては、観光などで日本にいらして3か月未満の短期滞在するような方は対象には含まれないということになります。それから、属性分類につきましては、平成24年推計と同様男女・年齢別、年齢は104歳まで各歳、105歳以上は一括で推計を行います。
このような枠組みを用いまして、平成27年までの実績に基づき推計を行ったところです。それから、出発となる基準人口ですが、これは総務省統計局によります年齢・国籍不詳をあん分した人口を用いております。18ページです。先ほど概要のところでも御覧いただきましたが、基準人口を人口ピラミッドで示したものです。
次に19ページから仮定設定の説明に移ります。将来人口推計を行う際には、先に御覧いただいた基準人口を出発といたしまして、出生・死亡・国際人口移動という人口変動要因によって将来の人口を推計してまいります。したがいまして、それぞれの人口変動要因に関する将来の仮定設定が必要となるということです。本推計では、これらの仮定値につきまして、過去から現在に至る人口学的データの傾向・趨勢が今後も続くといたしまして将来に投影する人口投影の考え方にしたがって仮定設定を行っておりまして、それぞれ今御覧いただいているような将来の各年次におきます年齢別の出生率、あるいは生残率等を人口投影手法に基づいて推計して設定を行っているところです。
20ページです。こちらは各仮定設定の概略を示したものです。出生仮定につきましては、今後完結水準に至るコーホートについて各要素の低下傾向が緩やかとなる結果といたしまして、出生率は平成24年推
計の仮定値より高く推移をいたします。死亡仮定につきましては、将来の平均寿命は平成24年推計同様、速度は緩やかになりつつも今後も改善を続けながら推移をいたします。それから、国際人口移動仮定につきましては、日本人については直近平年の状況が継続、外国人につきましては過去の動向による長期的な趨勢に従うとしております。
それでは、それぞれの変動要因につきましてより詳しく御説明を申し上げます。21ページです。出生仮定に関する説明です。まず、出生仮定ですが、これは女性の生れ年即ちコーホート別に設定を行っております。前回御説明をいたしましたが、この推計では基準時点に15歳で出生に関する実績値が全くないコーホートを参照コーホートと呼んで合計出生水準のベンチマークといたしております。新推計では2000年生まれコーホートが参照コーホートとなります。一方、参照コーホートの出生水準の変化は、基準時点で0歳のコーホートまで継続をし、それ以降のコーホートでは一定として仮定設定を行っております。このコーホートを最終コーホートと呼んでおりますが、この推計では2015年生まれが最終コーホートとなります。平成24年推計と同様出生仮定設定は日本人、外国人別に行いまして、外国人につきましては日本人と連動する形での設定を行います。年齢別出生パターンにつきましては、経験補正型一般化対数ガンマモデルを用いております。参照コーホートの要因別の投影から得られる合計出生水準に関する情報を用いながら、年齢別パターンの推計を行うということで設定をしております。
22ページです。こちらも何回か御覧いただきましたが、参照コーホートの仮定説定の考え方となっております。コーホートの合計特殊出生率ですが、こちらは1マイナス50歳時未婚率、期待夫婦完結出生児数、結婚出生力変動係数、離死別再婚効果係数といった要素に分解ができます。また、これらの背景として平均初婚年齢が関係しているということです。
23ページです。こちらは、参照コーホートの要因ごとの仮定設定の考え方をまとめたものです。それぞれ説明を申し上げます。まず、結婚に関してですが、平均初婚年齢につきましては現在出生行動を終えた実績値である1964年生まれコーホートで26.3歳となっておりますが、これについては上昇傾向が続いており、今回の参照コーホートでは28.6歳まで上昇すると見込まれます。これは、前回推計よりも更に晩婚化が進むという見込みであるということになります。一方、50歳時未婚率ですが、実績値は12.0%となっており、こちらも今後上昇が見込まれるということで、参照コーホートとでは18.8%まで上昇すると見込まれます。これは、前回推計の20.1%とおおむね同じ程度の水準ですが、若干やや低い水準にとどまるということになっております。
夫婦完結出生力です。これは晩婚化の影響と、それ以外の影響の2つに分けられます。平均初婚年齢が前回推計よりも高くなっているということで、晩婚化による影響では出生児数は、前回より低下の方向に働くということです。一方で、90年代以降に始まりました晩婚化以外による夫婦の選択的な出生児数低下については、近年、30歳代以上の出生が増加をしているということで、より緩やかになると考えられ、実績値の1.96人から低下はするものの、1.79人ということで前回の1.74よりもやや高い水準にとどまると見込まれています。それから、離死別再婚効果についても0.955ということで、前回の0.928よりもやや緩やかな水準となると見込まれています。
次に、それぞれの要因ごとの投影について説明します。24ページです。24ページは50歳時未婚率と、平均初婚年齢を表わす初婚率の投影について示したものです。まず、左側の図ですが、こちらが女性のコーホート別の年齢別累積初婚率の実績値のある所までを示したものです。これに対しまして、この実績値に基づきまして将来の投影を行ったものが右側の図になります。これによりますと、2000年生まれコーホートの50歳時未婚率は18.8%という水準になりますので、灰色で示されました前回推計の20.1%とおおむね同程度の水準ですけれどもやや低い水準にとどまるということが見込まれます。
前回推計でも未婚者割合の増加というのは完結出生レベルに対して大きい影響を与えていたわけですが、今回もこういった影響は引き続き大きいと考えられます。
なお、50歳時未婚率が現在一貫して上昇傾向にあるということですので、高位仮定については50歳時未婚率が推計時点で直近の実績値となる1960年代半ばの出生コーホートの水準に回帰するという設定を行っています。一方で低位仮定については、高位仮定と中位仮定の年齢別初婚ハザードの比率を用いて逆側に反転させるような考え方を用いて設定を行っております。
25ページです。次に夫婦の完結出生児数に関してです。夫婦における妻の初婚年齢別出生確率が安定的であるようなやや古いコーホートについては、夫婦の完結出生児数は妻の初婚年齢分布のみに依存して変化をすることになりますが、これが期待夫婦完結出生児数と呼ばれる変数で、晩婚化が進行するのに伴って低下をすることになります。こちらのグラフの中に水色で示した線がありますが、こちらが期待夫婦完結出生児数の推移と見通しということで、晩婚化に伴いまして、将来のコーホートに向けて減少していくということが御覧いただけると思います。
また、1960年代以降のコーホートについては、晩婚化以外の要因によっても夫婦完結出生児数低下というのが見られてきたというところです。こちらのグラフの中でマーカーで示されているのが完結出生児数の実績値ですが、この実績値が水色の線である期待夫婦完結出生児数から乖離をしているということが御覧いただけると思います。そこで、この乖離の度合を両者の比率で表しまして結婚出生力変動係数と呼ぶということについては、これまでも御説明を行ってきましたとおりです。
先ほどの初婚率の投影から平均初婚年齢の投影が得られまして、ここから期待夫婦完結出生児数が得られますので、更に今申し上げた結婚出生力変動係数を投影することによりまして、夫婦完結出生率の投影が行われるということになります。この乖離について御覧いただきますと、前回推計時点では一貫してこの乖離が大きくなっていくという傾向が見られていたわけですが、前回推計以降得られた実績を見ますと、両者の乖離が減少するといった傾向が見られております。
そこで、この傾向をより詳細に観察をするため、更に若いコーホートについても分析を行ったものが次の26ページになります。まず、左の図ですが、こちらは出生過程途上の夫婦の平均出生子供数の推移を表したものです。現在、出生過程途上における30歳代の女性コーホートを観察いたしますと、初婚を経験した夫婦の平均出生子供数の実績と、初婚年齢分布から算出される期待夫婦完結出生実数の乖離が若干緩やかになりつつあるということが御覧いただけると思います。この背景としては、1970年以降のコーホートでは次第に晩産化型の出生パターンが定着をしてきているということで、30歳代以降の出生によって夫婦出生率の引き下げ効果が緩和されているということ、それから、もう1つ、初婚年齢の上昇に伴って結婚出生力変動係数の分母となる期待夫婦完結出生率数が低下をしているという2つの要因が考えられます。
次に右の図を御覧いただきますと、これは両者の比である結婚出生力変動係数自体を示したものですが、特に1970年前後のコーホートまではこの係数が低下傾向にあったのに対してそれ以降のコーホートでは上昇基調にあるということで、1980年前後のコーホートでは30歳時点で1960年半ばのコーホートの水準まで回復をしているということです。したがいまして、中位仮定では参照コーホートの結婚出生力変動係数も1960年代半ば程度の水準に至るということで投影を行ったというところです。
この結婚出生力変動係数の1935年生まれ以降のコーホートにおいて過去に経験された範囲を考えますと、これは夫婦における妻の初婚年齢別出生確率が安定的であったコーホート水準である1から、1970年生まれ前後の実測値の水準の範囲というようになるわけです。そこで、最も高い水準である1というのを高位仮定、最も低い水準というのを低位仮定ということで、これまでに経験された範囲というのを高位、低位仮定の幅として設定を行いました。
次に、27ページです。離死別再婚効果について説明をいたします。離死別再婚効果は、女性の50歳時点での、結婚経験別の平均完結出生児数について、その初婚同士夫婦に対する比を、結婚経験構成比で加重平均を行ったものということで、初婚同士夫婦の完結出生児数を全ての既婚女性の平均出生児数に変換する係数となっております。実績値の投影によりますと、この係数は1964年生れの実績値0.959から、参照コーホートでは0.955となるものと今回は見込まれます。
次の28ページです。以上により設定されました、参照コーホートの50歳時未婚率、平均初婚年齢、夫婦完結出生児数、離死別再婚効果に基づきまして、参照コーホートの合計特殊出生率を算出した結果がこちらになります。これによりますと、日本人女性のコーホート合計特殊出生率は、中位仮定で1.40、高位で1.59、低位では1.21と見込まれています。
次に29ページです。こちらはコーホートでの年齢スケジュールを表す、一般化対数ガンマ分布モデルをお示したものです。これに関しましては前回説明しましたので、今回も説明は省略いたします。
30ページです。こちらはコーホート別に5歳ごとの累積出生率の実績値と、中位仮定値をお示ししたものです。前回御説明をいたしましたとおり、既に実績値が得られているAコーホート、あるいは、実績データから推定が可能なBコーホートについては、先に御覧いただきました、一般化対数ガンマ分布モデルを用いまして、直接年齢パターンの推定が可能となっています。
一方で実績値が少ないCコーホート、あるいは全くないDコーホートについては、先ほど投影を行いました、参照コーホートの合計水準と、A・Bコーホートの結果を利用しながら、年齢別パターンの推定を行っています。こちらを御覧いただきますと、特に35歳以上の累積出生率で、灰色で示しました前回集計よりも、上のほうに軌道が推移しておりまして、30歳代以上の出生率の上昇というのが見られることが、観察いただけるかと思います。しかしながら、黒い線で表わされておりますコーホート合計特殊出生率、50歳時の水準を御覧いただきますと、基本的には減少基調ということになっていまして、前回集計よりも参照コーホートの水準としてはやや高い水準とはなっていますが、依然として少子化の傾向というのは継続していくということが御覧いただけるかと思います。
次に31ページです。こちらは、出生順位別年齢別出生率と一般化対数ガンマモデルによるモデル値というのを幾つかのコーホートにおいて比較したものとなっております。特に実績値があるコーホートでは、実績値をモデルがよく捉えているということが御覧いただけるかと思います。
次に32ページです。今回の推計モデルの改善点として、前回の部会でも説明いたしましたが、婚前妊娠出生の分離に関しましての御説明を申し上げます。従来の推定におきましても、一般化対数ガンマモデルに婚前妊娠に関する経験補正を組み込むということでこの婚前妊娠出生への対応を行ってまいりましたところです。前回御説明しましたとおり、今回は、婚前妊娠とそれ以外の初婚第1出生をデータ上区分するとともに、別々に分布を当てはめるという推定方法の改善を行ったところです。こちらの図は、1965年、1980年の2つのコーホートの第1子出生率の推計結果を示したものです。将来推計に必要となりますのは黒で書かれました全体という部分ですけれども、特に右側の1985年のコーホートを御覧いただきますと、婚前妊娠出生によって実績値がややいびつな形状となっていることが御覧いただけると思います。しかしながら、今回推計では、これを緑で示された婚前妊娠出生と赤で示されたその他の出生、2つに分けてモデル化を行うということで、より実績値が当てはまりのよい推計結果を得ることが可能となったということです。
33ページです。以上によりまして、コーホート別の年齢別出生率というものが得られるわけですが、これを年次別の出生率に組み替えまして合計特殊出生率の推移として示しましたのがこちらの図です。以上が出生仮定の説明です。
次に死亡仮定について御説明をいたします。34ページです。死亡仮定では将来の生命表を作成いたしますが、基礎データとしましては当研究所で作成しております日本版死亡データベースを使っております。推計期間は2065年までで、総人口に対して日本人人口と同一の生命表を仮定して推計を行います。年齢別死亡モデルについては平成24年推計と同じ修正リー・カーター・モデルを採用しております。
次の35ページです。こちらは死亡仮定の考え方を示したものです。要因として3つ掲げています。死亡の全体水準については、速度は緩やかになりつつも、今後も改善が引き続くということで設定を行っております。高齢死亡率改善については、いわゆる年齢シフトの効果というのは引き続きますが、これは緩やかになりながら続くという見込みです。寿命の男女差については、長期的には拡大をしてきたということですが、直近ではやや横ばいか減少傾向ですので、推計では横ばい傾向が続くと考えて設定を行っております。
次に、36ページです。こちらはリー・カーター・モデルの説明ですが、これは以前にも説明しましたので省略いたします。
37ページです。こちらはリー・カーター・モデルのパラメータの推定を行った結果です。左の図が標準的な死亡パターンを表すax、それから年齢別死亡率の変化を表すbxを示したものです。通常、リー・カーター・モデルによる推計では、これらのパラメータは将来に向けて固定されるということになります。
右側の図のほうが死亡の時系列水準を表すktのパラメータで、これを将来に向けて投影することによって将来生命表が作成されるということになるわけです。この際、この標準となる死亡率推移、中位仮定の死亡率パラメータの分散をブートスラップ法等によって求めて、これを用いまして死亡指数が確率99%で存在する区間を推定して、死亡指数ktが上限を推移する場合を死亡高位仮定、下限を推移する場合を死亡低位仮定として、高位、低位の設定を行ったところです。
38ページです。こちらは高齢部分で用いられています線形差分モデルの考え方を示したものですが、これも前回説明しましたので省略をさせていただきます。
39ページです。こちらでは、線形差分モデルで用いられる2つのパラメータ、St、gtの2つがあるということを説明しましたが、左の図がそのSt、gtの変化と、死亡率曲線の対応を模式図的に示したものです。一方で、右側はSt、gtのパラメータの投影結果を示したものになっています。Stとgtの将来推計ですが、先ほど御覧いただいたリー・カーター・モデルでは、時系列水準というのをktという死亡指数というパラメータで表しますので、St、gtの投影に当たりましては、これらとの間の線形関係を仮定いたしまして、リー・カーター・モデルのktの変化率を用いて、これに連動する形で投影を行ったということです。
40ページです。この結果として得られました男女の平均寿命を示したのが、40ページの図です。平均寿命は御覧いただけますように、推計期間を通して一貫して上昇するということで、平成77年には中位仮定では男性84.95年、女性では91.35年、高位では男性83.83年、女性90.21年、低位では男性86.05年、女性では92.48年となるものと見込まれるところです。
次に41ページです。前回の平成24年推計では、勾配を表すというパラメータgtについては、将来に向けて一定として推計を行ったところですが、先ほど御覧いただいたように、今回の推計では、これが将来に向けて低下をしていくという形での推計を行ったところです。この影響に関して示しましたのが41ページの図です。黒の基準時点、2015年の死亡率に対しまして、オリジナルのリー・カーター・モデルを用いますと、これは年齢シフトの効果がないということで、緑色の点線で示したような勾配が急な死亡率曲線が得られるということになります。一方で、平成24年推計の方法を仮に用いたとしますと、青い形での投影が得られるということで、死亡率曲線が平行的にシフトするような形での推計結果が得られるということになります。平成29年推計では、先ほど申し上げたような、この勾配がだんだん急になるという効果を見込んでいますので、このgtの減少によりまして両者の中間的な赤い線で示したような推計結果ということになります。以上が死亡仮定の説明です。
次に国際人口移動仮定について説明を申し上げます。42ページです。国際人口移動仮定ですが、これも前回説明しましたとおり、日本人、外国人に分けて設定を行っているところです。
43ページです。こちらは国際人口移動仮定の仮定設定に対する考え方を示したものです。まず、上側、日本人の国際人口移動ですが、これに関しましては、おおむね出国超過の傾向ということになっていますが、2005年~10年頃と比較しますと絶対値が小さくなるという傾向が見られております。ただし、男女別の年齢パターンに関しては比較的安定的なパターンとなっています。
外国人の国際人口移動につきましは、世界金融危機や東日本大震災の影響で2013年まで短期的な出国超過の影響が観察されたところですが、長期的にはおおむね入国超過数の増加基調に回復をすると見られています。これを踏まえて仮定設定を行っております。
まず、日本人の設定に関しまして44ページでもう少し細かく御説明をいたします。この日本人の国際人口移動は、おおむね出国超過の傾向ということですけれども、男女別の入国超過率というような年齢パターンをグラフでお示しをしておりますが、比較的安定したパターンというのが得られていますので、平成22から27年における日本人の男女年齢別入国超過率の平均値というのを求めます。ただし、年齢ごとに、最大値、最小値を除いた値を用いております。これから、更に偶然変動を除くといった平滑化を行って、これを平成28年以降、日本人の入国超過率として一定として仮定設定を行うということで推計を行ったところです。
45ページです。外国人の国際人口移動については、先ほど申し上げましたように、長期的には入国超過が増加をするという傾向があるということで、この入国超過数の実績値を用いまして、一時的な変動を除いた長期的な趨勢を将来に向けて投影するという形で仮定設定を行ったというところです。
46ページです。国籍異動については、国内の外国人人口を分母といたしました男女年齢別の国籍異動による日本人の純増率について、直近の実績の平均値を平滑化して仮定値としたところです。
以上により、全て出生、死亡、国際人口移動に関する仮定設定が行われたということで、これに基づきまして、冒頭に説明いたしました基本推計結果が得られるということになるわけです。
最後に、長期参考推計と、条件付推計について御説明いたします。47ページです。まず、長期参考推計です。こちらは、基本推計の期間が平成77年であるのに対して、長期の人口推移分析の参考とする観点から、平成78年から平成127年までについての推計を行ったものです。ここで、生残率、出生率、出生性比、国際人口移動率といった仮定設定に関しては平成78年以降一定として計算を行っています。
次に条件付推計です。こちらは仮定値を機械的に変化させた際の将来人口の反応を分析するための定量的シミュレーションで、基本推計の結果をより良く御理解していただくといった観点から、毎回これに合わせて実施をしているものです。今回の概要版では、出生率と外国人の国際人口移動の水準を様々に変化をさせた場合の、将来人口に関する反実仮想シミュレーションの結果を示しております。
48ページです。今回示しております条件付推計というのは、「感応度分析」と呼ばれるシミュレーションで、出生率と外国人の国際人口移動のレベルが様々に変化した場合に対応した将来人口に関するシミュレーションというのを行ったものになっております。シミュレーションに用いた手法ですが、まず、出生率については、基本推計における中位・高位・低位の3仮定がありますが、この3仮定の年次別出生率を使いまして、これを線形補間あるいは補外することによって年齢別出生率を作成するといった、機械的な設定を行っております。また、出生率のレベルですが、2065年における人口動態ベースの出生率が1.00から2.2の中で、0.2刻みになるような、線形補間、あるいは補外比を求めて設定を行うということで、機械的な設定をしたところです。
それから、外国人の移動仮定ですが、こちらについては、基本推計におきます2035年における年間の純移入というのが、約6.9万人ということになっておりますので、この時点における純移入数について、0、5、10、25、50、76、100万人となるような比率を求めまして、これを2035年まで固定をしております。なお、2035年以降は、基本推計で行っているのと同様に、2035年の性、年齢別入国超過率を求めまして、2036年以降、その率が一定となるものとして、仮定設定を行って、推計を行ったところです。
次の49ページです。こちらが設定をされました出生率、外国人移入数の仮定値をグラフで示したものです。左側が出生率仮定で、いわゆる出生中位仮定、高位仮定、低位仮定を使って、機械的にこれを上下させる形で設定をしたということになっています。
外国人移動仮定に関しましては右側で、こちらも基本推計の仮定を上下させるということで機械的に設定を行っております。
50ページです。こちらが分析の結果です。まず、出生率水準を変化させた場合の将来人口の感応度です。それぞれの出生水準の変化により将来の総人口のレベルというのが様々変化をすること、一方で、老年人口の割合に関しても変化をするということがこちらの2つのグラフで御覧をいただけると思います。
次のページが外国人移動水準の変化による将来人口の感応度を示したものです。こちらも、左側に総人口の将来見通し、右側に老年人口割合の将来見通しをお示ししております。
最後のページ52ページは、これらの分析結果に関しまして、総人口と老年人口割合、2065年と2115年の数字を一覧として示したものとなっております。こちらを御覧いただきますと、やはり出生水準、外国人移動の水準というのが、長期的な人口の規模、年齢構成に大きな影響を及ぼしているということがおわかりいただけると思います。
先ほど申し上げましたが、基本推計というのは最新の実績データに基づき、人口投影手法を用いまして出生・死亡・国際人口移動に関する仮定設定を行っており、結果の客観性・中立性を確保したものとなっているわけです。こういった仮定設定の方法から、基本推計というのは、現在の社会変化の趨勢が継続した場合に実現する将来の人口というように理解ができるものですので、これを御覧いただくことによって、将来の私たちの行動や選択に関する指針を議論するための基礎資料として利用できるものとなっております。
一方で、今御覧いただきました条件付推計というのは目的が異なっておりまして、現実から導かれ得るものとは必ずしも一致しない任意の仮定を置くことによって、人口動態並びに人口構造への帰結というのを観察あるいは分析しようとするものとなっております。したがいまして、両者の性格の違いに十分留意をした上で、これらの結果を利用していただければと考えます。私からの御説明は以上です。
○津谷部会長
石井部長、ありがとうございました。大変テクニカルで、非常に盛りだくさんな推計結果を簡潔にまとめて御説明いただきましたが、大変複雑ですぐに理解することが難しい点もあるかと思います。ただいま、御説明のありました日本の将来推計人口、平成29年推計につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
○駒村委員
大変な作業、お疲れさまでした。大きく2つぐらいのブロックで質問したいのですが、1つ目は資料に関しての質問で、もう1つは追加資料というか、ここに出ていないデータがあればと思っています。最初の資料に基づいた質問で、2つほどなのですが、今日頂いた24ページの記述は。
○津谷部会長
すみません、資料の1でしょうか、2でしょうか。
○駒村委員
2のほうです。
○津谷部会長
資料2の24ページですね。
○駒村委員
24ページの記述と、すみませんが前回は欠席してしまったので、どういう議論が行われたか、十分フォローできていませんが、前回の資料2の13ページの初婚率の試験的な部分から、今回は「試験的」という言葉は消えて、採用したパラメータが出てきたと。
これは人口推計は5年に一度、客観的かつ透明な前提作業が行われて数字が出たのですから、この数字自体はいいとか悪いとかいう判断をするものではないのですが、この前回資料と今回資料の2つの記述が違う。試験的というところは分かるのですが、記述が少し違うところがあります。未婚率のところが、「平成24年の参照コーホートの近辺に近付く」と前回は書いてあって、今回は「わずかに低い」と書いてある。この間、どうしてこういう違いが出たのかというのが1点目です。
それから、もう1点は、今日の資料2の43ページのほうで、国際人口移動の仮定設定についての実績が、男性が40、女性が24、中位推計が30から35で、男女が逆転しているようなことになっています。これは一体どういう根拠なのか。45ページには48.9%の男女比であると書いてあるのですが、この辺の追加説明があったかなかったか、十分に理解できなかったので、この辺のバランスが変わっていることについての御説明を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。ほかの資料はまた後ほど。
○津谷部会長
分かりました。まず、先ほど駒村委員より御質問のありました2点についてですが、第1点目は今回の資料2の24ページ、「女性コーホート累積初婚率の投影」と、12月2日の前回の人口部会の資料の13ページ、「女性コーホート累積初婚率の試験的投影」の2つで表現が違うけれども、これはどういうことかということです。数字も変わっていて、試験的ですので、その後、4か月ぐらいたっておりますので、これはどのようにこの差が生まれているのかということです。
それからもう1つは、資料2の国際人口移動についての御質問です。まず43ページの実績値、これはいろいろあるかと思うのですが、男性と女性では男性のほうが4万人に対して女性は2万4,000人なのに、中位推計値ではそれが逆転している。確かこの45ページについてだと思うのですが、外国人入国超過はネットマイグレーションですけれども、この外国人人口について、超過者のうち約49%ぐらいが男性と推計されている。これはどういうことか御説明を頂きたいということでよろしいでしょうか。それでは石井部長、お願いいたします。
○石井人口動向研究部長(社人研)
まず、未婚率のほうです。累積初婚率の投影に関しての説明です。前回の12月の時点での試験的な投影の際には、平成24年推計の参照コーホート水準近辺ということで説明しました。この際はまだ推計の作業過程であり、最終的な推計結果に至るまでに様々な検証や精査を行って、推計を確定させていく途中の数字ということで部会でお示ししました。
その時点で考えられたのは、いわゆる累積の初婚率の投影が、前回推計と全く違うようなところに行き着くのではなくて、割と近い水準に近づいていくだろうという中間的な結果が得られていましたので、参照コーホート水準近辺に近づくという表現で部会資料の作成を行いました。
その後、様々な精査等を経て最終的な中位仮定値の投影を行ったところ、ある意味では18.8%と20.1%と、おおむね2割前後のところに収束したということです。前回仮定値の近辺には近付いていったということです。ただしより細かく見ると、前回よりも50歳時未婚率としては少し低い水準になったということが最終的な推計の結果ということになります。こちらが第1点目です。
それから2点目、国際人口移動仮定のほうですが、43ページでは直近の実績ということで、直近5年間の実績を示しております。男女の割合に関しては、もう少し長い期間の実績に基づいて設定しているので、それで男性の割合が48.9%という形となったということです。以上です。
○津谷部会長
御説明、これでよろしいでしょうか。
○駒村委員
より長いとは、どのぐらいのタイムスパンでやられたのかということが、ちょっと気になるところです。それから前半の部分は、後で出生率に与えるインパクトの構成要素がパラメータの変化によってどう出たのか。どれが一番出生率の改善に、このパラメータの変化の影響が大きかったのかを教えていただきたい。20.1と18.8の数字が、どのぐらい出生率に跳ねたのか、これが少し気になるところなので、これは追加資料になりますが、後ででもいいですけれども資料を頂ければと思います。
○津谷部会長
この外国人人口の純移動、つまりネット・インターナショナル・マイグレーションですけれども、この実績値は女性のほうが低くなっていますが、長期的には男性よりも増加傾向にあるということなのでしょうか。どれぐらいの長期的なことなのかが第1点です。ご説明よろしくお願いします。
○石井人口動向研究部長(社人研)
期間につきましては、おおむね30年程度の平均値と設定しておりますので、その違いということです。もう1点は参照コーホートに対するそれぞれの影響ですが、参照コーホートに関して、28ページでそれぞれの要因を示しております。50歳時未婚率は18.8というよりは、その補数の1-0.188というものが実際の出生水準に影響を与えます。 それらの観点から申し上げると、前回は20.1になりますので、それも1-0.201というところが出生水準に影響を与えるので、実は50歳時未婚率のところは影響はしているのですが、そこよりも今回推計では、夫婦完結出生児数の影響のほうが大きかったであろうと考えております。
○津谷部会長
よろしいでしょうか。
○駒村委員
解析結果が出れば、変化率は100にしたときにどうなのかを見せていただければと存じます。
○津谷部会長
このセンシティビティー・テストの結果ですが、これは参照コーホート、つまり国勢調査実施年である2015年に15歳の女性のコーホートについてのものですが、先ほどの御説明のように、2つ目の夫婦完結出生児数のセンシティビティーがより高くなっています。50歳時の未婚者割合をもって生涯未婚率と呼んでおりますが、我が国では結婚と出生は強く結び付いておりますので、当然ながら結婚は出生に影響があるわけですが、結婚した後、夫婦がどれぐらいの水準及びタイミングで子供を産んでいくのかという影響のほうが、より大きいであろうという理解でよろしいのでしょうか。
○石井人口動向研究部長(社人研)
すみません、誤解があるといけないので、少し補足します。前回推計との違いということで、前回推計の参照コーホートと今回推計の参照コーホートでの変化で一番大きく寄与したものは夫婦完結出生率です。ただ、そもそもコーホートの合計特殊出生率水準に影響を及ぼす要素としては、50歳時未婚率の影響は非常に大きいものです。
今回は50歳時未婚率が余り前回と変わらなかったので、前回との変化に関しての影響は大きくはなかったということですが、そもそもコーホートの合計特殊出生率水準が低いということは、やはり今、50歳時未婚率が2割近くまでいっているということが大きく影響しております。
○鬼頭委員
今の回答と関係するところですが、26ページの「結婚出生力変動係数の投影」の説明で、これから先、期待夫婦完結出生児数へ、だんだん戻りつつある、接近しつつあるとおっしゃいました。
それは別のところで言うと、その前の23ページの表、「出生の仮定に関する考え方」に出てきているのかなと思います。特に夫婦完結出生力の部分の「晩婚化以外の影響」で、30歳代での出生によって、夫婦出生率の引下げが緩やかになるという表現がありますが、これは30歳代での子供の産み方が、より旺盛になったという見方でよろしいのでしょうか。
つまり、結婚年齢が高くなって、今まではそれに引きずられるように完結出生数というか合計特殊出生率は下がったけれども、今、晩婚化に応じて、30代になって、盛んに産むようになったという理解でよろしいかということです。
○石井人口動向研究部長(社人研)
ここで言っている結婚出生力変動係数は、いわゆる晩婚化だけの過去の安定的なコーホートでの産み方というものがありますが、実は1990年代ぐらいから、1960年生まれ以降のコーホートで、晩婚化の構造的な影響以上に平均子供数が減るという傾向が見られてきたということがあります。その乖離のところを結婚出生力変動係数というパラメータで表しているわけです。前回推計のときまではこの乖離が増大していく傾向があったのですが、減少することはまだ見られていなかったということです。
ただ、今回の推計を見ると、そういった30代のところで、その乖離がやや低くなってきている。先ほど申し上げた晩婚化だけの影響のほうに少し近づきつつありますので、ある意味では選択的に子供数を下げるという影響がやや緩やかになったと見られるのではないかと思います。
○津谷部会長
よろしいでしょうか。実績値を基に将来投影をしていますので、特に30代以降の期待値と実績値は乖離しているのですが、その乖離に縮小傾向が見られるので、それを今回の将来推計には取り入れられたということかと思います。
当然、参照コーホートは国勢調査の実施年に15歳の女性の出生コーホートですので、このコーホートの今後の出生行動は不確実性が高くなります。それに御注意いただいて、先ほどの御説明は、一番大きく変化したものがそうであったということです。それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。その他、御質問、コメントありませんでしょうか。
○白波瀬委員
大変な作業ありがとうございました。ただいまの御説明から、それぞれの改善点がわかりました。、例えば婚外子というか、最初に出産して結婚したか、その順番が逆の場合の違いも考慮してより精緻に推計作業をされていました。あるいは高齢化のところについても、より高齢になったら伸び率の変化率がだんだん下がるとか、推計自体はかなり精緻にされていたということが、今日の説明からも分かりました。この点の御努力については、高く評価をさせていただきたいと思います。
ですから、推計そのものが精緻になっていますので、逆に言えば、これから次の推計で、どのぐらいの修正がなされるかによって、実際の様々な政策効果を見る場合に留意が必要かもしれません。そういう意味では、人口推計そのものの技術としては非常に高くなっているので、それを今後どのように活用していくのか、読んでいくのかということについても、別枠ということになりますが、充実した議論が次の段階としては可能になるのではないかと考えました。意見ですけれども、以上です。
○津谷部会長
ありがとうございました。特に資料2の32ページに示されているように、婚前妊娠出生を出生全体から分離したという今回の新しい試みですが、白波瀬委員もおっしゃいましたが、特に10代及び20代前半の女性の出生率に占める婚前妊娠及び出生の影響は大きいですので、これがはっきりと分離できたことはとても良かったと思います。
1980年出生コーホートは2015年時には35歳ということで、まだ子どもは産めますが、ほぼ産み終える年齢に近づいてきているコーホートです。一方、1965年出生コーホートは完全に子どもを産み終えた集団であり、これら2つの出生コーホートには大きな違いがあるということで、大変に興味深く、有用な統計資料になったかと思います。
そのほか、コメントやご質問はありませんでしょうか。
○小野委員
石井部長の過去の論文を拝見し、個人的には死亡率の関係で、先進諸国の高齢死亡の表現に関してはロジスティックモデル、特に2パラメータのモデルというものが高齢死亡率を効果的に表現しているという特性を踏まえ、このモデルが時間変化する際に持つ特性を抽出して、死亡率改善方法に基づくモデリングのフレーム枠を扱うようにする。こういった趣旨で、高齢死亡率を表現する上で好ましい性質を備えたモデルとして、LDモデルを開発されたという点が、非常に数学的にもきれいに整理されており、感心した次第です。
途中、資料2の38ページにグラフがありますが、この線形差分モデルのグラフを見てみると、実年齢としては1歳年を取るということなのですが、前の世代と比べて後の世代のほうが生物学的に見ると、1歳ほど年は取らなくなっていくというメッセージのような受け取り方をさせていただき、なかなか感慨深いものがあったというのが1点コメントです。
それから、私はアクチュアリーですが、数理的な技術というものを駆使するある種の技術屋でありますけれども、アクチュアリー会という会員としての行動規範というものがあり、専門的職能者として行動する際の指針が定められております。
今回の作業も専門的な事項であり、同様の視点から拝見しますと、例えば推計に当たっての基本的方針とか、数理モデルの特徴であるとか、モデルの改正の内容等が十分に説明されていると評価します。それから、モデルに基づいて設定された仮定も、合理的かつ目的適合的であり、人口推計、特に基本推計について十分にその職責が果たされていると私は思いました。
一方で、今回の将来推計は、石井部長もおっしゃったとおりで、前回で言うと基本推計、参考推計を公表した約1年後に公表された条件付推計というものを、同時期に発表する。そして報告書に記載するとともに、条件付推計の中身も前回新たに加えられた出生率と国際人口移動のみを扱ったものと理解させていただきました。
この推計の位置付けにつきましては、47ページから48ページに記載されていますとおり、基本推計の結果の理解の促進のための感応度分析であるということだろうと思います。逆にそれ以上でも以下でもないということだと私は理解させていただいております。以上、コメント3点です。
○津谷部会長
ありがとうございました。コメントの最初の2つは主に死亡率について、そして後のひとつは推計対象期間についてですね。推計期間の最初の50年は本来の推計対象期間ですが、ここに更に2066年の状態が一定であると仮定して、そのまま将来に投影した参考推計、さらには出生率と国際人口移動について条件をつけて、他のパラメータをコンスタントにして、これら2つをそれぞれ動かしたときにどうなるのかという条件付き推計の結果を、ここで示して頂いたわけです。
以上、3つほど小野委員からコメントを頂きましたが、石井部長、これについて何かコメントがありましたらお願いいたします。
○石井人口動向研究部長(社人研)
まず死亡のモデルですが、やはりこれはもともとリー・カーター・モデルが標準的に使われているということで私どももそれを使ってきたところですが、日本の死亡状況は特殊なところがあるということで、おっしゃったような死亡率曲線をシフトさせるような効果を織り込んだモデルの開発を行ってきたところです。こういったモデルを開発することによって、日本の推計としてより良いものを作っていくことを引き続き行っていきたいと思います。
また、おっしゃったとおりで、正にこういった人口部会という場で御説明していくことが、私どもとしての推計の説明責任を果たすことにもつながっていると思いますので、委員の皆様から貴重な意見を頂戴して、また委員の皆様に説明していくことを通じて、推計としての透明性も高めたいと思いますし、更にそういった技術に関しても向上していければと考えております。
それから、条件付推計、あるいは長期参考推計に関してはおっしゃったとおりで、特に条件付推計はいわば1つのシミュレーションとして、議論の素材として活用していただくような位置付けのものであると私どもも考えております。以上です。
○津谷部会長
条件付き推計はよく使われるのですが、将来高い確率でこうなるよということではなくて、あくまでこうなったらこうなるであろうという仮定のお話であり、ここで定量化、つまり具体的に数値を示していただいたことは大変に有用であると思います。
我が国の死亡率、特に老年期の死亡率の改善は急激です。改善のテンポはスローダウンしてきてはいますが、それでもリー・カーター・モデルは年齢の関数としてのモデルであり、それをそのまま用いると当てはまりが良くない。特に老年期、中でも後期高齢期には当てはまりが悪くなってきています。前回の推計から引き続いてモデルの修正と精緻化していただき、更に今回はそれを頑張っていただいたということで、それに対して感謝を申し上げたいと思います。
○大石委員
大変な作業をしていただき、感謝しております。資料2の23ページにある出生の総括表について、全体的なイメージを確認させていただきたいということが1つです。そのあと、全体についての感想を申し述べさせていただきたいと思います。
まず、総括表を見ると、結婚に関しては前回より晩婚化は進むけれども、生涯未婚率の点では前回よりはやや低くなるということですね。晩婚化はするけれど、結婚からは前回予測したほどは逃げていかないというか、後での多少の結婚キャッチアップ的なものがあると。
夫婦完結出生数については、足下でも減少係数がやや弱まってきているようなデータもあり、前回よりはややポジティブな結果となっているようです。離死別の影響があるとしても出生に関してはポジティブな影響が出てくるということですね。つまり、晩婚化はしていくのだけれども、皆が家族形成からシャイアウェイ(shy away)していくわけでもないという将来像と捉えてよろしいでしょうか。
○石井人口動向研究部長(社人研)
今、委員がおっしゃったとおりで、晩婚化は前回推計と比べると、もう少し進むということですが、50歳時未婚率はやや低くなり、夫婦完結出生児数に関しては、若干の増加、離死別効果に関しても前回よりも緩やかになるといった方向性に関しては、全くおっしゃるとおりであると思います。
ただ、最後のところでコーホートの合計出生率の推移を御覧いただきましたが、コーホートの合計出生率の推移は今後、先々のコーホートに向けて、基本的には減少基調が変わったということではありません。そういった意味で前回推計に比べると、そのレベルは若干緩やかになったということですが、しかしながら少子化が進んでいくという基調に関しては、やはり依然として続いていると見るべきであろうと考えます。
○大石委員
ありがとうございます。全体についての感想ですが、死亡の動向を見ましても、医療や年金に関する負担は、これからますます重いものになっていくだろうということは、この結果からも見てとることができます。5年前の前回推計はもっと厳しかったわけで、負担が増大することは既に分かっていたとも言えるわけです。
今回、非常に明確に出していただいた条件付推計を見ますと、50万人ですとか100万人といった外国人の移動があって、ようやく1億人にいくのかなというような状況ですね。言ってみれば年間出生数に匹敵するか、あるいはそれ以上の外国人流入があって、ようやく1億人が維持できるということが示されています。
非常に精緻に推計していただいたわけですけれども、この推計結果をどのように利用するかは、政治や行政の役割であろうと思いますので、そちらについての説明責任を求めていくべきであろうと、委員の1人として思います。
○津谷部会長
石井部長、何かコメントはありますか。よろしいでしょうか。
○石井人口動向研究部長(社人研)
私どもの推計はおっしゃるとおりで、公的年金の財政検証、あるいは社会保障の給付と負担の推計をはじめ、様々な政策に活用される基礎的なデータですので、委員がおっしゃられたような、説明責任といいますか、その前提あるいは仮定設定の透明性に関しては、最大限、客観性・中立性を重視してやっていかなければならいと考えております。今後ともそういったことを最優先に考えながら、推計の作業を進めてまいりたいと考えております。
○津谷部会長
そのほか御質問、コメントはありますでしょうか。
○榊原委員
お願いと感想とを申し上げたいと思います。お願いは、皆さんには釈迦に説法の話なのですが、今回出していただいている、中位、高位、低位の仮定の数字は仮定なのだと。それは先ほどの御説明でもあったように、過去の趨勢がこのまま続くと、このような未来になってしまうというものであって、確定された未来ではないということを、念を押して念を押して言っていただかないと、メディアの立場からは、この数字が一人歩きして、「日本はこうだから」という単純な誤解につながりかねないことが懸念されます。「そうではない」と、これまでと同じ社会状況がこの先も続くなら、こういう未来になると予想されるのだということを、丁寧に発信していただきたいということがお願いです。
感想のほうなのですが、今回、条件付推計も同時に出していただき、かつ非常に精緻な作業を、これだけの期間にやっていただき、人口分析に関わる皆さんの強い危機感というか、メッセージ性というものを感じた次第です。
次の5年後の推計までに、今の社会状況についてどれだけの変化を私たちは作り出すことができるのかどうかを問われているということを受け止めなければならない。そういうメッセージとして共有したいと思いました。言い替えれば、これからどのように、今回示された厳しい未来予測を政策立案に生かしていくのか。それは、社会全体に問われているのですが、取り分け政府に問われているということを改めて確認したいと思いました。
それから、今日示された中位仮定では将来の出生率の見通しが1.44と示されました。政府は昨年6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」などで、「希望出生率1.8」を目指すことや、総人口を一億人規模で維持することなどを目標として掲げましたが、こうした目標と今回示された将来見通しには乖離があることが明確になりました。この乖離を埋めるためにどうするのかということが次に問われます。
ではどうするのかということは、この部会の議題ではないですが、今回の推計の作業に注がれた多大なエネルギーを思うと、同等かそれ以上のエネルギーを注いで、どうやって社会状況を変えていくのか考えていっていただきたいという希望を持っています。 今回の分析で、興味深いと私も思ったものが、資料2の32ページ、婚前妊娠の出生を切り出して、見えるようにしていただいたところです。政策を考える際の良いヒントになるデータを出してくださったと思いました。
婚前妊娠するで若年の山が、出生数全体の山は低くなっているのに、ここは高くなっている。ここの若い人達の中に、子供の貧困とか、経済的に不安定なシングルマザーとか、養育にリスクのある人たちが含まれているのではないかと推察されます。このグループのボリュームが増えているのなら、社会保障上の対策が追い付いているのかどうかという検証が必要になっているのではないかと思いました。
リスクを抱えたグループの増加にきちんと対応していくことは、安心して産める環境を整え、第二子、第三子の養育にも安心して臨んでもらうためにも急務なのではないかと感じました。
最後にもう一つ、お願いです。少子化を巡る神話というか、誤った理解ものがまだまだあるということを、取材をして感じます。例えば「晩婚や晩産が進んだから、出生率が低下して少子化になった」「女性の就労率が上がったから少子化になった」という見方があります。その通りではありますが、出産の高齢化や女性の就労は欧州の主要国でも進んでいるけれどもフランスやスウェーデンでは出生率は回復している。少子化の本当のネックはどこにあるのか、各国比較のデータなどをきちんと知ってもらう努力も必要だと感じています。以上です。
○津谷部会長
私が感想を述べるのも何ですが、将来人口推計は現在の状態が一定で変わらなければ今後どうなるというお話ではないのではないかと思います。特に2015年以降の50年間についてはそうではなく、出生と死亡のそれぞれについて高位、中位、低位と3種類の推計シナリオが設定され、したがってシナリオの組合せは3×3で合計9通りです。国際人口移動についてはシナリオは1つだと理解しております。一定になると仮定されるのは2066年以降の50年間についてであり、2066年以降変わらないとするとどうなっていくであろういうことです。また、コーホート率とピリオド率の違いについてもできる限り分かりやすく説明する必要があると思いました。皆さんピリオド率に慣れていらっしゃるので、この将来推計のコーホート率をピリオド率と同一視されてしまうと大変困ります。
後で石井部長に御説明を頂くわけですが、この希望出生率1.8という数値と国勢調査が実施された年次に15歳の女性の参照コーホートがこれから経験するであろう出生力、つまりコーホートTFRの投影値を一緒にはできません。ですから、このような誤解をどのようにして解いたらいいのか、私も実はよく分かりません。とにかく、希望出生率と参照コーホートのコーホートTFRの将来投影値を一緒にされてしまうと、ちょっと困ったことになります。
この部会には榊原委員がいらっしゃいますので、希望出生率とコーホートTFRの将来推計値は切り離して、メディアに御説明を頂ければと思うのですが、石井部長、そして金子副所長、何かこの点についてありましたら、お願い致します。榊原委員もいらっしゃいますし、マスコミの中で大変言論に力を持っていらっしゃる委員もここに来ていただいております。簡単でよろしいので、御説明を頂ければと思います。
なお、先程スウェーデンのお話がありましたが、アジアは結婚しないと子供を産まない傾向が強く、特に我が国を含む東アジアでは婚外出生割合は2%ぐらいと聞いております。しかし、欧米諸国、特にスウェーデンを含む北欧ではでは婚外出生割合はおよそ半分かそれ以上ですので、確かにおっしゃるとおり、結婚しないでも子供を産む、結婚と出生というものが切り離されている社会です。日本がそのようになれるかどうか、それが良いことなのかどうかということも含めて、これもまた議論の対象になるかと思いますが、私自身は日本とスウェーデンを同列に比べられないのではないかと思います。
ただ急激な少子化が進行している東アジア、そして東南アジアの国は、ある意味同じような文化的・歴史的な背景があるということは、そのとおりであり、結婚と出生は非常に強く結び付いていますけれども、これからこれがどうなっていくのかということについては、議論の余地が大きいと思います。
この2つですが、特に最初の点について、石井部長と金子副所長何かありましたら、コメントをお願いいたします。
○金子副所長(社人研)
大変貴重な御意見、御指摘を頂いていると思います。榊原委員から頂いた御指摘は、この将来推計人口というものを理解するときに、将来の人口がどうなるのかというものを、何とかして当ててやろうといった形で行われているものとは違うということを御指摘いただいたのだと思います。すなわち、とても分かりやすく言ってしまうと、今のいろいろな社会の変化も含めて、社会が変化していったときに、今のままだと人口がどうなっていくのだろうか。それを、科学的に示すことによって、それでは我々の行動として何が正しいのか、何をすべきなのかということの指針にしていただくために、こういった推計をしています。その点に関しては、榊原委員に御指摘いただいたことは、そのとおりだと思います。
それから、希望出生率に関してですが、これはあくまでも政策的な目標の数値です。これは、先ほども私が申し上げましたように、現在のままでいきますと、なかなかそれはそういった方向には向いていないということが、今回の推計、あるいはこれまでの推計でも既に示されていることであります。それについて、榊原委員にも御指摘を頂きましたが、次の推計までにどのようなことをどれだけするのかということに、この推計を活用すべきであるということをご指摘いただいたように私は伺いましたので、正に皆様方にそうしていただければ有り難いと思った次第です。
○津谷部会長
ただ、今回の将来推計の結果をみると、希望出生率1.8の近い将来での達成は、それが具体的に何であるかは別にして、確かに難しいように思われます。しかしながら、これは今回の推計が国民が希望する出生水準の実現を否定したというメッセージではないと、私は解釈いたしました。参事官、これについて何かございましたらお願いいたします。
○度山参事官(社会保障担当)
まず、希望出生率ですが、1億のプランにも明確に書いてありますが、これは国民の結婚や出産に対する希望が叶ったときに達成される出生率なので、実際の1.8という数字は出しておりますが、1.8という水準というよりは、国民の希望が叶うということの1つの考え方と理解すべきものだろうと思います。今、部会長から御指摘のあった点ですが、例えば私どももいろいろなデータを見ており、今回の推計に当たって確認ができたのは、特に30代ぐらいのところの出生が以前の推計ほどペシミスティックではなくなってきているということです。同時に、幾つかのデータを見ますと、例えば有配偶の方の女性の労働力率が以前は大体20代後半や30代前半で4割ぐらいだったと思いますが、最新のデータですと6割ぐらいになっています。それから、この部会でも御説明をしました出生動向基本調査によりますと、子どもを産んだ後の継続就業率が、これもずっと20年間4割ぐらいだったのが、5割を越すという水準になってきています。この2つのデータから見ても、世の中はかなり急速に変化をしてきていると思います。
この変化に合わせた対応をどのように取っていくかが、かなり大きく結婚や出産に影響を与えるだろうということです。たとえで申しますと、それだけ女性の就業率が上がってきているのであれば、やはりそれに応じた保育サービスの準備などをしないと、準備を怠ること自体がまた出生に影響を与えてしまうことだと思います。現実の社会の中では、いろいろな方がいろいろな状況の中での個人的な判断として、結婚や出産をしておられると考えますと、できるだけその障壁を取り除く政策を、1億プランはそういう考え方を明確に示していると思いますが、政策当局としてはそのような努力を続けていって、これが実際の実績にどのように反映してくるかをよく見ていきたいと考えているところです。
○鬼頭委員
簡単に感想を申し上げます。先ほど、榊原委員がおっしゃったことは、本当にそのとおりだと思います。また、今も担当の方々に御説明いただいたことは、そのとおりだと思いますので、この伝え方が非常に大事だと思います。このような推計というのは、あくまでも直近の変化のトレンドが続いたらどうなるか、それも人口学的な変数の動向を組み合わせて結果を出しているだけの話ですから、出生率が1.44で止まってしまうのかということや、やはり駄目じゃないかというような読み方をされると、私は少し違うのではないかと思います。それよりも、私は推計ではなくて、今回も含めて過去3回の推計を見ていただくと分かるのですが、2005年の一番出生率が低かった時代で1.26です。これが、2015年で1.45まできたわけですよね。その変化をどう説明するかだと思います。ですから、乱暴なことを言いますと、2005年の1.26から2015年の1.45まで、出生率は約0.2ポイント上がったわけです。この調子でいくと、これは推計ではなくて単純な小学生の算数ですが、2030年代の半ばには1.80になるし、2050年代には2.07になるよと。そうなると言っているわけではなくて、今までだって当たらなかったじゃないかと。当たらなかったのは、推計が悪いのではなくて、そういう性格のものでしかないと。ですから、今の政策の努力や準備に当然つながっていくわけですが、そこの読まれ方を十分に注意して発表していただけるといいなというのが願いです。
○津谷部会長
しかし、出生率が2005年から2015年の10年間で0.2ポイント上がったから、このままリニアに将来投影すれば20年後には1.8に到達するという話にはならないと思います。先ほど大石委員からも大変有用な御指摘がありましたが、15~49歳の人口再生産年齢の女性の晩婚化や晩産化は進んでいるけれども、それがそのまま出生率を非常に大きく落ち込ませていません。ですから、子供を生むタイミングの問題があるわけですが、これ以上晩産化が続くと、当然生物学的に子供を生むことが無理な年齢になる女性の数と割合は多くなります。ですから、このまま行けば出生率は1.8になるから心配ないというメッセージは、ちょっと違うかなと、個人的には思います。とはいえ、結婚が遅れたから、それがそのまま出生率全体の水準の大きな落ち込みにつながるということではないわけです。2005年のTFRの1.26が現時点では一番低いわけですが、あれは一時的な落ち込みで、その後出生率は回復したので、今回の推計ではそのトレンドを反映させて出生率の将来投影をしたので、今回はこうなっているということは確かにそのとおりです。榊原委員は恐らくマスコミの中でも非常に人口に対して御理解がおありになる方で、この部会に参加していただいて大変有り難いと思います。できる限り分かりやすく、でも誤解のないように、メッセージを発信していきたいと思っております。
ただ、先ほど達成が難しいであろうと言ったのは33ページの出生率についてです。人口動態率にはピリオド率とコーホート率があるのですが、出生率に関してはその年次に15歳~49歳であった女性の出生率が問題になります。つまり、あるひとつの年次には35個の異なる出生コーホートが積み上がっているわけですが、33ページに示されているのはピリオドTFRの将来推計値ですよね。希望出生率が厳密に言うとどういう指標かということは別にして、もし結婚したい人が全員結婚して、そして産みたいだけの数の子どもを産んだときに出生率はどうなるよというお話だと思います。このページのどこを見ても、たとえ高位推計でも1.8に到達はしていないわけです。
これから5年後どうなるか。確かに、今回の推計から次回の推計までの5年間については実績値が出てきますので、推計値と比較して検討を加え、それをどのように次の将来推計に反映していただくかということが大変大切だと思います。先ほどの希望出生率1.8というのは、仮定の仮定の指標ではあるけれども、それを実現するのは、将来推計から見る限り、つまりこれからの人口行動としてみる限り、かなり難しいのではないかということは、榊原委員のおっしゃったとおりです。この33ページにある推計値、高位、中位、低位と3つの推計値に幅がありますが、かなり高いハードルです。付け加えると、希望出生率を政策的な目標の1つとして捉えて、そうなるように努力するということではないように思います。いずれにしても、たとえピリオドTFRが1.8になっても少子化は続いていきますし、人口の減少は続いていくということについては、変わりはないと思います。
○白波瀬委員
繰り返しになりますが、榊原委員がおっしゃったことについては、政策としては、もっとしっかりせえということだと解釈いたしました。ただ、政策の効果を見るのは、かなり難しいので、今回の推計とは区別して議論しなければなりません。今回行った人口推計については、実態をいかに精緻に見るかが鍵となって、このたびの最新の推計結果につながってきたことです。結論から言いますと、申し訳ないけれども、1.8の希望についてはかなり区別をして、この場では極力出していただきたくない数字です。それは、参事官からも少しお話がありましたが、別の角度からの議論での数値であり、今回の推計は人口学的なそれなりの精緻な方法論をもって積み上げておられます。また、今、前回の推計と比べる場合も推計の中身、要するにパラメータの置き方そのものが違っていますので、単純比較ができないわけです。それは、技術自体が違っているのか、実態が変わっているのかということをしっかり考慮しないと、単純に横並びに比較できないことになります。ですから、いろいろな数値の読み方については、今回は、基本推計としての意味合いを全面に出していただくというか、それが本日ここで提示されたことです。その背景に何があって、これからどうしますか、という議論は極力区別をしてやっていただくべき枠組みでの議論だと考えます。以上です。
○高橋委員
私が言いたかったことを言っていただきましたので、それに付け足すことは余りありません。後半の部分は、あくまでもシナリオ推計で、人口学的なプロジェクションとは全く違うものですよね。ですから、その違いがあることを前提に、1.8がどうのという議論と、ここの人口推計における出生率の仮定値と同じ土俵に並べて議論すべき性質ではないということが重要なので、その点を忘れないで議論していただきたいです。その違いがあるということを、また説明者に対してこれからいろいろな所から質問が来ると思いますが、その違いというのはこういうことなのだと。つまり、コーホートベースに評価した出生率の予測値と、単なる年次別の出生率の仮定値とは性質が異なるということを十分理解していただけるように、社人研の方も、それから部会の皆様も理解して議論をしていただきたいと思います。そして、かつ、また先ほどおっしゃられた政策の話は、恐らく別の場所で議論されるべきだろうと思います。以上です。
○津谷部会長
先ほどご説明のあった条件付き推計ですが、今回の推計の参照コーホートが50歳になる2065年について推計しているわけではないですよね。50年後のピリオドTFRが1.00~2.20まで幅を付けて将来推計をやってみたらこうなったということですよね。ですから、条件付き推計のTFR=1.8の場合の推計結果を基に政策的な議論するということでは、恐らくないのであろうと思います。この推計は、そこに、どれぐらいのところで収斂していくかというモデルであり、異なった条件の下で50年後の2065年には人口規模や人口の年齢構造がどうなっていきますよというお話かなと思いました。ですから、ご説明でもシナリオとおっしゃいましたが、この推計結果はそのように見ていただくとよいかと思います。
とはいえ、余り何のことやら訳が分からない抽象的な議論では、社会、経済のお役には立ちにくいので、いろいろな推計の条件などを注意して見ていただきたいのですが、そのメッセージというものは大きく言うと、余り大きくは変わらないということかと思います。変化のタイミングや度合いは変わってきておりますが、先ほど最後に石井部長がおっしゃいましたように、我が国の人口の減少局面は今後も続いていきますし、超高齢化が進行しています。、女性一人当たりのTFRが2.1弱ぐらいにまで戻りその後安定しないと少子化は終わらず、中長期的に人口は安定しません。これを実現することは、私が生きている間は恐らく不可能ではないかと思います。断言はできませんが、非常に高いハードルであることは確かかなと、お話を聞いていて思いました。
○駒村委員
政策の議論があったので、確認しておきたいのですが、今回は、5年間の数字を見た結果がこうなっているというだけであり、政策効果があったか、なかったかも、これはどちらもメッセージはありません。ただ、過去5年間の傾向はこうだったという意味合いのものしかないのだということで、政策効果があったお陰とか、なかったという議論はしてはいけないというのが1点です。
それから、出生率が今回改善したのは良いことかもしれませんが、出生率の改善が、少子化の問題に対して社会の気が緩まないようにしなければいけません。これは、また後日発表されるとは思うのですが、やはり出生数が単年度当たりどうなっているかを、率の上昇にもかかわらず、数は余りインパクトが出てこないということは、きちんと今回、本当は一緒に見せるべきではなかったのかなと。かえって、出生率は回復しているのだというところで、気が緩んでしまうのは、ちょっとまずいのかなと。数は依然として厳しいままです。
それから、これも後日発表されると思うのですが、今回は総人口と高齢化率が少し収まったわけですが、この3つの要因が人口間移動と死亡率の改善と出生率の改善の3つのファクターが、どのぐらい効いて、どのぐらいの貢献度によって人口構成の数字に影響を与えたか。これも、後日だと思いますが、出していただきたいと思いました。以上です。
○石井人口動向研究部長(社人研)
出生数の見通しですが、これに関しては、本日ホームページにより詳細な表を掲載しております。その中に、出生数、死亡数の推移も載せております。また、後日報告書の形で刊行いたしますが、その中にも掲載を予定しております。
それから、もう1つは、例えば前回の2060年の人口と今回の人口を比べて、どれぐらい変化があって、それが出生、死亡、移動の寄与がどれぐらいかということですが、一応現在計算はしております。5年前ですと、先ほど少しお話申し上げました条件付推計を1年後に別途作成する解説編という報告書で出しておりましたが、その解説編の中で、前回推計との差に関する寄与度分析も掲載をしてきておりますので、今回も解説編報告書を作る際にその数字もお出ししたいと考えております。
○津谷部会長
よろしいでしょうか。そのほか、御質問、コメントなどありましたら、お願いいたします。
○稲葉委員
細かいことですが、先ほどの高橋委員のお話を聞いていて、ああ、そうかなと思ったのですが、条件付推計というのはピリオドのTFRの値を膨らませたり、凹ませたりということで作っているのですか。
○石井人口動向研究部長(社人研)
条件付推計の出生の仮定に関しては、完全にピリオドの率を中位、高位、低位を使って、それを外分、内分をするというように、機械的に設定をしています。
○稲葉委員
そうすると、例えばそれをコーホートに組み直して見ることは、やっていらっしゃるのでしょうか。
○石井人口動向研究部長(社人研)
今のところはやっておりませんが、やることは可能だと思います。
○稲葉委員
そうすると、例えば最後の49ページのグラフなどを見て、例えば10年間ぐらいで2.0ぐらいまで回復するというのは、リアルなシナリオなのかななどと思うと、そういう判断は今は何もしていないということですか。
○石井人口動向研究部長(社人研) そこに関してはしておりませんが、多分組み換えると余りリアリスティックなパターンにはなっていないのではないかと思います。あくまで機械的に行ったものです。
○津谷部会長
少子化が進んだ国で女性1人当たりのTFRを0.5上げる、そしてこれを10年で達成するというのは、恐らく歴史的にみてあまり例がありませんし、現実的に考えてなかなか難しいです。我が国では女性の初婚年齢も高いですから、TFRが1.3から1.5に増加することは可能でも、1.5から2.0に上げるというのは非常に難しいかなと思います。数値的には可能ですが、ほとんど現実味がないシナリオになるかと思います。
そのほか、何かコメント、御質問はありませんか。大変すばらしい御質問、コメントを数多く頂き、また有用かつ含蓄深いご意見を多数いただきました。本当に有難うございました。現在、社人研のホームページに今回の推計のより詳細なデータがアップされていますので、是非御覧いただき、参考にしていただきたいと思います。そして、もし何か疑問点などがありましたら、石井部長に御連絡を頂き、確認を取っていただくこともできるかと思います。また、今回の部会は、仮定付きの推計をお示しいただきましたが、その詳細な結果を報告書としてまとめて頂くということです。今回は推計結果の主要な骨子を御説明を頂きましたが、更なる詳細な推計結果の説明は、完成し次第社人研のホームページにアップされるかと思いますので、是非そちらもお使いいただきければと願っております。
では、ほぼ予定の時間がきておりますので、審議はこれまでといたします。御参加、御協力に感謝申し上げます。本日の部会は、これで終了いたします。ありがとうございました。
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