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2017年4月28日 第3回心血管疾患に係るワーキンググループ 議事録

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成29年4月28日(金)12:30~14:30


○場所

経済産業省別館312号会議室


○議事

○石上がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから、「第3回心血管疾患に係るワーキンググループ」を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課長補佐の石上と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 本日は、9名の構成員に御参集いただいております。岡山県保健福祉部の荒木裕人構成員、地方独立行政法人奈良県立病院機構奈良県総合医療センターの上田裕一構成員、公益財団法人日本心臓血圧研究振興会附属榊原記念病院看護部の三浦稚郁子構成員、一般社団法人日本病院会の宮崎瑞穂構成員からは御欠席の御連絡を頂いています。

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、心血管疾患に係るワーキンググループ構成員名簿、資料1が急性期の診療提供体制構築に向けた考え方()、参考資料1が現状の心血管疾患急性期診療に関係する医療資源、参考資料2が急性期の専門的医療を行う施設が担う医療機能イメージ、参考資料3が「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」平成29331日厚生労働省医政局地域医療計画課長通知 別表よりり抜粋 心筋梗塞等の心血管疾患の医療提供体制構築に係る現状把握のための指標例、また、貸し出し資料といたしまして、第1回検討会、第1回、第2回脳卒中及び心血管疾患に係るワーキンググループ及び第3回脳卒中に係るワーキンググループの資料を配布させていただいております。こちらは会議終了後、机の上に置いたまま、お持ち帰りになりませぬよう、よろしくお願いいたします。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちまして、撮影を終了しカメラを納めていただきますようお願いいたします。これからの進行は永井座長にお願いいたします。

○永井座長 それでは、議事に入らせていただきます。最初に、資料1「急性期の診療提供体制構築に向けた考え方()」について、事務局より御説明をお願いいたします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 事務局でございます。お手元の資料1を御覧ください。こちらは急性期の診療提供体制構築に向けた考え方()として提示しています。

 スライド番号3の「急性期診療提供体制構築の検討の方向性()」ですが、上部に前回までに出された主な意見を提示しています。1つ目の●ですが、急性心筋梗塞や急性大動脈解離の他に、急性期心血管疾患としては急性心不全や不整脈等もあるのではないか。2つ目の●として、特に急性心不全については、患者数も増加しており対策が必要ではないか。

 このような御意見を受け、検討の方向性()として下の箱にありますが、心血管疾患の急性期診療における主な対象疾患や、必要とされる治療内容を整理した上で、急性期診療を提供するための体制の構築について検討する。このように記載しています。

4番目のスライドですが、これは「急性期の診療提供体制の現状➀」として、「心血管疾患救急医療体制と対象疾患」に関するデータを提示しています。左の円グラフですが、これは平成28630日の第1回検討会において、国立循環器病研究センターの安田参考人から提出いただいたデータです。2014年循環器救急の実情に関するアンケート調査における対象施設、循環器専門医研修施設998施設の救急医療体制の区分を示しています。円グラフで示しますように二次救急が65%を占めていて、循環器救急医療はこのような二次救急病院が大きな役割を果たしているというデータです。右のデータですが、これは平成27年度DPC対象病院における循環器系疾患救急医療入院の疾患別割合です。これは、平成28年度第4回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会において公開されている資料を基に、当課において作成いたしました。この公開されたDPCデータを用いて、それぞれの循環器系疾患の割合を提示しており、この割合はDPCデータの中で、医師が緊急処置が必要と判断した入院である、緊急医療入院に関してのみ提示しています。総数約31万件のうち、心不全が39.6%、虚血性心疾患が30%、以下、不整脈11.8%、大動脈/末梢動脈疾患が7.6%、肺塞栓症が1.9%、弁膜症が1.9%です。このようにDPC対象病院における循環器系疾患救急医療入院の約70%は心不全と虚血性心疾患であると考えられます。

5枚目のスライドですが、これは「急性期の診療提供体制の現状➁」として、「急性期心血管疾患に対する治療内容」を整理したスライドです。先ほど提示した平成27年度救急医療入院循環器系疾患のDPCにおける手術有無割合を提示しています。これはDPCにおける手術有無のコードを基に件数を確認し、その割合を提示したスライドです。一番左が心不全で、心不全は総数約12万件のうち、緑の手術なしが84.7%、定義手術あり、その他手術ありがそれぞれ0.3%、15%で、こちらにおける定義手術は冠動脈、大動脈バイパス移植術等が挙げられています。その他手術は主に冠動脈インターベンションやペースメーカー移植術等です。このように心不全において多くは内科的治療であると考えられます。

 真ん中が急性心筋梗塞に関するデータです。総数約54,000件のうち、その他手術ありが87.3%、これは主に冠動脈インターベンションです。定義手術ありが2.9%、これは冠動脈のバイパス移植術とか心室瘤切除術です。手術なしが9.8%です。このように多くが冠動脈インターベンション治療の適応であるというデータです。

 一番右が解離性大動脈瘤、すなわち大動脈解離ですが、約半数近くが外科的治療です。定義手術はステントグラフト内挿術で、主にB型解離の重篤な合併症を有する例に施行されています。その他手術が38.3%で、いわゆる大動脈瘤切除術等、一般的な大動脈解離に関する外科的手術が含まれています。手術なしが約56.3%です。このように全体の約半数近くが外科的治療です。このように急性期の心血管診療においては、対象による疾患によって必要とされる治療内容には違いがあるという状況です。

 このような状況を踏まえ、6枚目のスライドですが、「急性期診療提供のためのネットワーク構築に関する検討の方向性()」を提示しています。これに関して前回までに出された意見としては、地域で急性期診療を完結することを原則にしながらも、対応疾患によっては、必要とされる治療内容と医療資源の観点から、地域を超えたネットワーク体制構築も必要ではないか。2つ目として、心血管疾患は、急性発症や治療中の急変が多く、急性期心血管疾患患者の受入体制には、ある程度の余裕が必要ではないか。3つ目として、時間的制約のある心血管疾患急性期診療については、心血管疾患を疑った場合に、まずは専門的治療が可能な医療施設に搬送し、患者の状態に応じて円滑に転院搬送できる施設間ネットワーク体制の構築が必要ではないか。このような御意見を頂いております。

 これを受けまして、検討の方向性()として、地域の医療資源を効率的に利用し、対応疾患に応じた急性期診療を24時間体制で提供できる急性期診療提供ネットワーク体制の在り方を検討するとしています。

 次の7枚目以降のスライドですが、実際の地域における例を提示しています。1つ目が東京都CCUネットワークにおける急性心血管病患者搬送システムの例です。これは第1回の当ワーキンググループにおいて、榊原記念病院の高山参考人より提出いただいた資料です。東京都CCUネットワークにおいては、急性心血管病患者を直近のCCUネットワーク加盟施設へ搬送する体制を整えています。このネットワーク内では当日の当番病院を設定していますが、基本は直近のCCUネットワーク加盟施設に搬送し、直近の施設が受入困難の場合に当番施設が受け入れる体制を構築していて、ある程度受入患者を分散させることで、体制に余裕をもたせた例として提示しています。

2つ目として、同じ東京都ですが、急性大動脈スーパーネットワークの搬送システムです。これは同様に高山参考人からの資料です。急性大動脈解離については通常のCCUネットワークとは違い、直近のCCUネットワーク加盟施設の搬送ではなく、いわゆる直近の急性大動脈重点病院、急性大動脈疾患の治療実績が豊富な病院に直接搬送する体制を整えています。このように疾患に応じてネットワーク体制を構築している例として提示しています。

9枚目のスライドですが、こちらは東京以外の例として提示していて、「急性期心血管疾患ネットワーク体制の例➂」として熊本県における取組を提示しています。熊本県における現状が左で、緊急冠動脈インターベンション治療実施可能施設が、各施設の医療圏で発生する循環器救急疾患に対応しており、必要に応じて心臓血管外科併設施設への再搬送も図られています。左の熊本県の地図で赤のマル印が緊急冠動脈インターベンション治療が可能な施設で、点線は各施設がカバーする医療圏です。このように熊本県内には、これらの施設の医療圏に含まれない地域も存在しています。このような地域もカバーする体制を目指し、熊本大学医学部附属病院心臓血管センターでは、県下全域を網羅した体制を目指し、救急搬送システムを活用した急性期診療体制を構築しています。具体的な図が右側です。循環器救急患者を防災ヘリ/ドクターヘリ/消防救急車/モービルCCU(心臓疾患専用救急車)等を用い、熊本大学の心臓血管センターに運び、循環器内科、救急、心臓血管外科が協力して治療に当たる体制を整えています。

 次のスライド10番が、岩手県における例を提示しています。岩手県における急性期心血管疾患診療提供体制ですが、1つ目は急性心筋梗塞等の急性冠症候群の診療提供体制です。診療提供体制構築の方針としては、各地域の拠点施設で緊急冠動脈インターベンション(PCI)が完結できる体制を構築しています。その拠点施設は左の岩手県の地図における赤いマルで示しています。この中で心臓血管外科常駐施設は赤い枠で囲った2施設ですが、PCIに関しては心臓血管外科併設にかかわらず、全県で効率的な緊急PCIが可能な体制を目指しています。そのための主な取組として、重症例や手技の判断に困った場合等は、テレカンファレンスシステム等を用い、岩手医科大学の医師とリアルタイムで相談する体制を整備しています。また、各拠点施設の常勤医は3名程度の現状で、岩手医科大学からの派遣医師により体制を維持している現状です。急性大動脈解離等のいわゆる急性大動脈疾患の診療提供体制ですが、診療提供体制構築の方針としては、外科的治療の適応になることが多い急性大動脈疾患は各地域の拠点施設では治療が困難であり、盛岡にある2つの心臓血管外科常駐施設へ患者を搬送する体制を敷いています。

 スライド番号11番ですが、このような例を受けて、「急性期診療提供のためのネットワーク構築の考え方()」を提示しています。1つ目ですが、施設毎の医療機能を明確にした上で、効率的なネットワーク内での連携体制を構築することが有効ではないか。2つ目ですが、地域によっては、平均的な救急搬送圏外の施設との連携体制の構築も必要ではないか。3つ目ですが、このような観点から地域の救急搬送圏の状況等を踏まえて、それぞれの地域に適した施設間ネットワークを構築する必要があるのではないか。

 この考え方を受けて、12番目のスライドですが、「施設間ネットワーク構築のイメージ」を提示しています。地域の医療資源を効率的に活用し、対応疾患に応じた24時間体制を確保するために、左側に医療資源が乏しい地域での例を提示しています。このような地域では、平均的な救急搬送圏内にPCIや内科的治療が可能な施設が1施設のみであり、外科的治療が可能な施設がないケースも考えられます。このような場合には、平均的な救急搬送圏外の施設との連携体制を含めたネットワーク体制の構築が必要ではないかと考えられます。一方、右側の医療資源が豊富な地域ですが、こちらは各医療施設が医療機能を明確にし、効率的な連携体制を確保することが有効ではないかと考えられます。このように各施設が対応可能な治療を明確にした上での、対象疾患に応じた円滑な連携が重要であると考えられます。

13枚目のスライドですが、このようなネットワーク体制を構築するに当たり、「急性期専門的医療を行う施設が担う医療機能に関する検討の方向性()」を提示しています。これに関して前回までに出された主な意見としては、1つ目として、急性心筋梗塞に対する再灌流療法に代表される心血管疾患の急性期治療については、現在広く普及している観点かつ時間的な制約の観点から、集約化は適さないのではないか。2つ目として、大動脈解離等に対する急性期外科的治療については、質の確保の観点から、専門性が高い医療施設への集約化の検討が必要ではないか。3つ目として、「高度な専門的医療を行う施設」と「専門的医療を行う施設」に分けて、厳格な医療施設の基準を設定すると、臨床現場に混乱を招く恐れがあるのではないか。4つ目として、急性期の専門的医療を行う施設の役割分担については、医療資源や地理的条件等、地域毎の臨床現場の現状に即した検討が必要ではないか。こういった御意見を頂いています。

 このような御意見を踏まえ、検討の方向性()として、1つ目は、心血管疾患の急性期診療において、集約化の検討が必要な治療法を整理する。2つ目は、臨床現場の現状に応じて、地域の医療施設が、どのような医療を担えばよいかについて検討する。このように挙げさせていただいています。

 それを受けたデータの提示ですが、14枚目のスライドが「急性心筋梗塞に対する冠動脈インターベンションと心臓血管外科手術実施体制」のデータです。左の円グラフは第1回検討会の安田参考人からのデータですが、急性心筋梗塞に対するPCI施行施設における緊急冠動脈バイパス手術体制の状況です。このように急性心筋梗塞に対するPCI施行施設において約半数は緊急の冠動脈バイパス手術体制を整えていません。しかしながら、右のデータで示しますように、急性冠症候群に対するPCI施行後の予後については、心臓血管外科併設の有無により、特に予後に差は認めないというデータもございます。冠動脈インターベンションに関してはこのようなデータもございますことから、心臓血管外科併設手術に集約することは必ずしも必要ないのではないかと考えられます。

 一方、15枚目のスライドですが、こちらは急性期の心臓血管外科手術に関するデータです。左側のデータは、都道府県ごとの救急搬送緊急心臓血管手術症例の標準化死亡率比です。これは手術症例のデータベースであるNational Clinical Databaseからの論文ですが、このように救急搬送された心臓外科手術症例の都道府県レベルでの標準化死亡率比には、差があることが示されています。ただ、このような心臓血管外科手術症例の死亡率に関しては、病院への到達時間、救急医療体制等、様々な要因が影響すると考えられますが、要因の1つとして、施設における手術件数が指摘されています。そのデータが右側のデータですが、これは施設における心臓血管外科手術件数と予後で、同じ症例データベースからの論文です。冠動脈バイパス術と胸部大動脈手術の2つの例を記載していますが、共に施設における年間手術件数が多いほど、リスク調整死亡率は低いというデータが提示されています。

 このようなデータを踏まえ、16枚目のスライドが「急性期専門的医療を行う施設が担う医療機能の考え方()」です。1つ目が、ネットワーク内で各々の施設が提供する医療機能は、地域の状況や施設の医療資源に応じて、柔軟に設定される必要があるのではないか。2つ目が、急性心不全、急性心筋梗塞、急性大動脈解離等、疾患により急性期治療内容は異なるため、地域で各急性期心血管疾患に対応できるような、各施設の役割分担を検討する必要があるのではないか。3つ目が、役割分担の検討の際には、提供する急性期治療について、安全性等の質が確保されていることも必要ではないか。4つ目が、このような質の確保の観点からは、まずは外科的治療については、集約化の検討が必要ではないか。このように提示させていただいています。

 括弧内ですが、近年拡大しているステントグラフトによる大動脈解離への血管内治療等、心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療については、今後安全性等のデータを収集した上での検討が必要ではないかと考えています。

 それを受けて、17枚目のスライドですが、これは「急性期の医療を行う施設の医療機能の分担のイメージ」です。このように急性期の医療を行う施設が担うべき医療機能は、地域のネットワークを構成している医療施設において、分担する必要があるのではないか。大きな箱の中が心血管疾患急性期の専門的医療を行う施設で、大きく2つ、専門的医療を包括的に行う施設と専門的医療を行う施設に分けています。包括的に行う施設においては、PCIや急性循環不全に対する内科的治療等に加え、外科的治療等も行う施設を想定しています。専門的医療を行う施設としては、PCI、急性循環不全に対する内科的治療等、心血管疾患に対する一般的な診療を行う施設を想定しています。主に初期対応を行う施設については、急性期の心血管疾患に対する専門的医療提供施設ではありませんが、心血管疾患を疑い、初期治療及び専門的医療を行う施設への転送が可能であることを提示しています。このような施設の中で治療適応に応じた、適切かつ円滑な連携体制が重要ではないかと考えられます。

 これらを受けて、18枚目のスライドが、「発症~急性期の診療提供体制イメージ」です。一番左側の発症した後、これはいわゆる再発とか急性増悪を含むと考えています。この後に救急搬送や患者様の直接受診により医療施設へ搬送されますが、この中に急性期の心血管疾患の症状とか、早期受診の教育を含めた啓発が重要な役割を担っていると考えています。また、医療施設においてはそれぞれ専門的医療を包括的に行う施設、専門的医療を行う施設、主に初期対応を行う施設が、それぞれの役割に応じて円滑な連携体制を構築することが重要ではないかと考え、そのようなイメージを提示しています。このような発症後~急性期の診療提供体制の構築にあたっては、地域の現状を踏まえる必要があるのではないか。また、疾病毎の特性を踏まえる必要があるのではないか。急性期治療の安全性等の質が担保されていることも必要ではないか。この3つが重要と考えて提示しています。

19枚目のスライドですが、「心血管疾患の急性期診療提供体制の評価指標の考え方()」を提示しています。19枚目、20枚目の2つのスライドで提示していますが、赤で示している地域の急性期診療提供体制に係る指標、地域全体の評価は、厚生労働省の医政局地域医療計画課長通知における指標例等が挙げられます。緑の枠内は急性期の専門的医療を行う施設に係る指標として、医療機能に応じた各施設の評価をイメージしています。このように、それぞれの施設の役割分担に応じた指標が提示されることをイメージしています。

20枚目のスライドで提示している考え方()ですが、1つ目として、急性期診療提供体制の評価は、地域全体の評価に加え、各医療施設の役割が果たせているかの観点も必要なため、地域の評価指標に加えて、各施設に対する評価指標も必要ではないか。2つ目として、各施設が担うべき医療機能は地域により異なるため、各施設の評価指標は地域の実状を踏まえて設定する必要があるのではないか。3つ目として、疾患毎に中心となる急性期治療は異なるため、各施設の評価指標は、主に想定される対象疾患を踏まえて設定する必要があるのではないか。4つ目として、具体的な指標を含め、評価指標については、引き続き検討していく必要があるのではないか。このように考えています。以上です。

○永井座長 ただいまの御説明に御質問を頂きたいと思います。

○羽鳥構成員 1回目のときに、冠動脈ステントの成功率、院内死亡率は、施行件数の多いボリュームによって違うのではないかという話があったと思います。確認なのですが、ステントによる治療の成功率は、施行件数が少ないからよくないとは言えないという事でよろしいでしょうか?

 それと関係するのですが、スライド13の心臓外科については、ボリュームが大きな所のほうが、手術成績がよいと読めますが、いわゆるステントなどの内科治療に関しては関係ないと考えてよろしいのでしょうか。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 まず、インターベンションについて、14枚目のスライドのデータについては、それぞれの施設における成功率に関しては基本的には97%と、ほぼ差はないというデータが提示されております。

 心臓血管外科のように、いわゆる施設の件数とインターベンションの成績については、現在のPCIのガイドラインの記載を見ても、一律の結論が出ていないものと理解しています。ある程度施設が多いほうが成績があるという考え方もありますが、逆にデータとして、そのデータの件数は関係ないというデータもありますので、現状で本邦において明確な結論が出ていないものと事務局としては考えております。

○小川構成員 これは実は私どものデータなのですが、心筋梗塞というのは血栓が軟らかいです。それで、ある程度できる人なら開くことは割と簡単であるというデータで、アメリカでも出ています。アメリカのデータを見ていまして、私たちの所のデータで、非常に症例の少ない、例えば冠動脈インターベンション(PCI)50例以下の病院と、200例とか300例の病院と比べてみたのですが、急性冠症候群に関しては差がないのです。いわゆる待機的なPCIでは差があるというか、症例の少ない病院は待機的な場合は非常に難しい病変はやりませんで、そういうときは必ず多い病院になります。本当の急性期に限れば血栓は軟らかいですので、これはある程度の力があれば、そんなに変わらないと思います。これはアメリカでもそうですので、間違いないと思います。

○永井座長 ほかにいかがでしょうか。

○磯部構成員 おおむね、良いシステムをお考えいただきました。全体的に私は評価できると思います。スライド4で、一次救急、二次救急、三次救急の仕分けで、二次救急が循環器疾患の急性期を主に診ているという御指摘のとおりだと思うのですが、今私がいる施設は二次救急ですが、心疾患の重症度、あるいは心救急疾患の治療を必要とする重症度と、二次救急、三次救急が乖離しており、私どもの所には三次救急に運ばれた大動脈解離が搬送されてくるのが現実です。

 ですから、疾患ごとにという区分けをするという御提案でしたが、一次、二次、三次という現行の枠を、疾患ごとに特性を考えて、地域性も考えて循環器の救急体制を考えていただきたいと思います。

 もう一点は、次のスライドの5番で、疾患が急性心不全、心筋梗塞、大動脈解離と3つあります。総数を見ていただきますと、心不全が125,000、心筋梗塞が54,000、大動脈解離が12,000で、桁が違うのです。

 疾患ごとのという御提案で非常に賛同できます。特に心不全で、慢性期の治療でこの次の話題と関わってくると思うのですが、心不全は、慢性心不全をベースにして急性増悪をして、救急疾患として運ばれてきますが、この心不全の12万件という方たちはやがて慢性心不全の対象となって、再入院といったことに関わってきます。極めて数が多く、増加していて、高齢者であるという特性を持っておりますので、心筋梗塞や解離のような急性期の外科も含めた特別な治療、手術等が必要となる疾患とは違うと思いますので、そういったところを分けて検討いただくというのは大変理にかなっておりますし、そういった方向で進めていただきたいと意見を申し上げておきます。

○永井座長 今の点は、前回議論した慢性心不全という概念を置くかどうかは別として、心不全あるいは慢性期の心不全の急性増悪についてどうするか、その体制をいかに作るかという問題なのだろうと思います。ですから、ある程度「急性増悪」という言葉はきちんと残したほうがいいと思うのです。いかがでしょうか。

 私からは、17枚目のスライドの一番下です。先ほどの御説明では、初期治療を行うのは初期対応を行う施設でよろしいのですね。これは、初期治療を行う施設への転送ということではないですね。初期対応はきちんとやってもらわないといけないわけです。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 このような施設に運ばれた場合に、恐らく急性期の心血管疾患を疑って、専門的な治療のPCIなどができる施設に搬送されると思うのですが、基本的には時間との戦いですので、必要最小限の初期対応、例えばニトロ、アスピリンといった初期的な対応も搬送先の施設で行うというのは、時間との概念を考えますと難しいと思います。そのため、いわゆる一般的な医療としての初期対応はしていただくということを考えています。

○永井座長 そうすると、初期治療は初期対応と違うということでしょうか。それとも、初期治療を行うとともに専門的医療を行う施設への転送ということですか。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 初期対応は、来られたときの初期治療と必要な施設への搬送を全て総括したイメージだと思っておりますので、例えば来られたときに、この方が急性の心血管患者であったときに、搬送が必要である判断を行い、搬送の手配を行います。それと同時に必要な初期治療は行っていただくというようなイメージです。

○永井座長 そういうことですね。ですから、先ほどの心不全の急性増悪であれば、酸素投与やラシックスの注射ぐらいはしていただきたいのですが。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 そのような基本的な医療をということです。

○永井座長 そうすると、心血管疾患を疑い、初期治療を行うとともに専門的治療を行う施設への転送が可能というほうが、誤解がないのではないかと思いますが。そこの誤解がないような表現にしていただければと思います。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 了解いたしました。

○永井座長 ほかにいかがでしょうか。

○羽鳥構成員 東京都のCCUネットワークというのはシステムといて完成度が高いですが、私は神奈川県医師会理事の時、横浜市のネットワークはほぼ出来ておりますが、川崎市でネットワークを始めて約2年になりますが、課題が大変多いです。データベースは、CCUネットワーク9病院の循環器科で入力しております。データベースは無報酬ボランティアでやっているので、データベースを作るに当たって、入力作業に公的なお金が補助されていないので、苦労しているところです。

 もう1つは、救急搬送して来た消防との連携がうまくいく場合もあるのですが、いかない場合もあります。救急隊の方が患者さんを引き渡す時に、CCUネットワークのチェックリストの指定の項目にパッパッと○を付けてくれる場合もあるのですが、付けてくれないと消防局で知っているデータしか手に入らないことがあるので、データベースが手間なく作れるようにしてほしいと思います。

 例えば脳卒中の場合も前回議論になりまして、脳卒中はウオークインなど救急隊を通さずに入院してしまうようなものもあるので難しいということになりましたが、心疾患の場合はウオークインは多くなく救急が絡んでくることが多いと思うので、うまく工夫すればできるのではないかと思います。東京都も消防庁に大きな予算がついたこともあってできたという話も聞きましたから、キックオフに相当する部分は国なり各都道府県において補助金を付けていただいて、データベースをきちんと作るという発想がほしいと思うのですが、いかがでしょうか。

○永井座長 この点はいかがでしょうか、まず事務局から。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 健康局の当検討会においては、適切な循環器疾患に対する診療の提供をどのように行うかという観点で議論いただいていると考えています。

 その中で、羽鳥先生が御指摘のようなデータベースの構築が重要であるという御意見はごもっともでして、ご指摘のような観点も診療提供体制に必要であるという御提言を基に、今後省内での検討を行う際に、診療提供体制構築の議論で示された考え方として提示して、引き続き検討していければと考えています。

○小川構成員 それに関して、正確ではないのですが、156年前に、総務省の消防のデータでかなり詳しいのがありました。厚労省の方が総務省に出向しているときに、そのデータに気付いて私に連絡してくれて、心筋梗塞のデータと突合ができないかということでやったのですが、結構良いデータがあるのです。最近、脳卒中のグループもやっているのですが、循環器のグループもそのデータを一緒にやれないかということで、今やっています。

 ただ、1つ問題があって、個人情報保護法で、そこら辺でグッといったのがストップしているのです。それさえ解決すれば、消防のデータと突合することによって、かなりの救急のデータがそろうと思います。参考までに。

○永井座長 最後のスライドにある評価指標の考え方の問題にも関係するのですが、ここには地域の評価指標と各施設の評価指標とあります。そもそもこれは研究としての評価指標なのか、あるいは行政の事業としての評価指標なのかというところをもう少し議論したほうがよいと思うのです。

 つまり、研究であれば、個人情報保護法と研究ガイドラインに従います。行政事業であれば、それは個人情報保護法と研究ガイドラインの外ですから、行政としてならできるはずです。むしろ行政が自ら出していけば、余り問題はないはずなのですが、その辺はどうなのでしょう。どこまで出すかにもよるのですが、そういうデータが実に取り残されているのですね。行政に分析結果を戻して、行政が発表するのは問題ないはずです。いかがでしょうか。

○小川構成員 かなり詳しいデータがあるのです。

○永井座長 大学に委託して分析して、まず結果を行政にお返しして、オープンデータになった後に学会に出せば問題ないわけです。

○小川構成員 オープンにしてですね。

○永井座長 行政としてどこまで主体的に指標を作るのかということなのです。全て学会に頼むと非常に大変で、できないことがいろいろあるのです。今村先生、その辺りはいかがでしょうか。

○今村構成員 なかなか難しい立場なのですが、私は基本的には行政が作るべきものだと思っています。ただ、自分も行政にいて、今は指標を作る手伝いをしていて、行政だけで作るのは無理なのです。ですので、誰かが行政が指標を作る手伝いをしてあげなければいけないです。

 今、地域医療計画の指標は、私はかなりの部分でお手伝いさせていただいていまして、今回の参考資料3に出ている部分というのは、うちの研究班で出しているものです。

 ただ、それは既存のデータから作り出されるものであって、検討会の議論の言葉で言えば、「それはアウトプットであってアウトカムではない」という、なかなか辛辣な御意見を頂いていまして、アウトカムというのはどうやって出すのか。やはり臨床現場の先生が助けたというのはどういうことを言うのかということを数字化したものでないと、アウトカムにならないだろうと。

 それを既存のデータから作り出すというのは実際には不可能でして、消防庁のデータもうちで分析させていただいているのですが、到着時間というのは分かるのです。その方々がインターベンションで成功したのかどうかというのは分からないのです。1か月後に生き残ったかどうかというのは分かるのですが、その後はどうなったかというのは分かりませんし、それが原因で亡くなったかどうかも分からないという状況なのです。

 ですので、基本的には、今は学会単位で様々なデータベースを作っていただいていますから、ああいう本当のアウトプットと言えるようなものを、この行政の指標に利用できる形ができれば、行政側がそれを指標として作り上げることができて、行政だけで作ろうとすると、恐らくうまくいかない。また、学会だけで行政を動かすというのも無理だと思うので、そうするとこういう検討会の場で、学会がここまでやって、ここから先は行政がやるということのコンセンサスが得られれば一番いいかなという感じがします。

○永井座長 ただ、その場合に、別の目的でデータを使うと、また改めて同意取得になります。できないことはないのでしょうけれども、非常に大変なのです。

 がんの場合には、がん登録法というのがあって、できるわけです。そういう意味でも、脳卒中・循環器疾患の登録法などを作らないと、実際はなかなか難しいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○今村構成員 がんであれば登録が法律で決められて、系統立てて集めることができて、行政側からしたら予算化も割と根拠があるのです。それに対して、循環器全体に数字を集める根拠がなくて、本当に協力していただく所から集めることしかできないわけですし、根拠法令があるわけではありませんから、それを予算化すること自身非常に困難だと思うのです。

 ですから、今あるファシリティーで何ができますかという部分と、それから先の予算を付けていったり、半強制的に集める方法となると、法律や新しい制度設計を考えないと、がんのようにはなかなかいかないのではないかと思います。

○美原構成員 評価指標の問題です。ほかの所でも評価指標の話が出ていますが、基本的にはそれでPDCAサイクルを回すというのが念頭にあるのだろうと思うのです。そうしたときに、幾つか気に掛かることがあります。地域差があるといったときに、全国的に見ると、それぞれの地域に合わせた指標というと、ベンチマークが難しくなります。だけれども、地域ごとにその指標を作ると、その地域の定点観測のような形になって、継続的にやっていくということはできるけれども、地域ごとにどうなのだという話が出てくるかもしれません。

 もう1つ非常に気にしているのは、施設ごとの評価指標を取るということがあるのですが、もちろんこれは各施設の機能の向上には結び付くとは思うのですが、上手に使わないと、ランキングのようになってしまうと非常に問題ではないかと思いますので、その辺を十分に注意しないといけないかと思っています。

○今村構成員 御指摘の点は全くそのとおりだと思っていまして、ランキングのようになることが最も危険だと思います。

 今「指標」と言われているものは、どのようなものがあるかというと、地域医療計画の中では、二次医療圏単位の指標なのです。国全体に対して、この二次医療圏はどうですかという数字を見るというのは、医療計画の中でかなり行われています。ただ、今、循環器や心血管ということで見たときに、うまく二次医療圏の医療状態をその指標がうまく表現できているかといったら、それができていないのです。

 作っている側が言うのも何なのですが、やはり既存のデータでは無理があって、それをいかに現実の循環器の医療をよくするための進行管理の数字として良いものを作るかというのは、我々側からはほぼ限界にきています。それをどう作っていただけるかというのは重要かなと思います。その先に、今度は病院単位で見たときに、病院自身がどれだけ急性期に対して対応できるかということを、病院自身が考える材料として必要だろうという状態があります。それは、医療構想の中で4区分に分けて、急性期を中心にやるか慢性期を中心にやるかということをそれぞれの病院が判断しようとしています。

 例えば我々の研究班でやっているのは、病院の病床機能報告の数字は集まっていますので、その中で急性期の機能が病院としてはどれぐらいあるかを目に見えるような形にしていってはどうかと考えています。そういうことをランキングをするためというよりは、その地域の中で、自分の病院がどれだけ急性期の機能をほかの病院と比べて持っているかを見てもらうための指標としては、非常に重要なのではないかと思います。

 その意味では、循環器も医療構想の概念では二次医療圏を超えて、大きく括っている地域がたくさんあって、それは各病院の機能をそれぞれの県の考え方、指標として作っていれば一番いいのですが、その中で括ればいいと考えることができたから、大括りで作ることができていると思うのです。そのように指標を作っていければ、今の循環器の疾患に対しての医療体制を改善していくための根拠に持っていけるのではないかと思います。

○永井座長 そこはいろいろとデリケートな問題を含むのですね。でも、何か指標がないと改善なり、地域医療構想も立ちにくい。

○美原構成員 今、先生がお話になられたときに、報告制度と指標を結び付けるということがありました。私はそれは面白いと思うのです。そうすると、実際に今の4つの分類に関して、あなたの所はこうだという明確なと言うか、数値目標的な、事故報告というよりも、こういうものだという項目が出てくるようなことが将来的に考えられるでしょうか。

○今村構成員 使い方を誤ってもらうと、とんでもないことになるので、そうならないようにすることが私は大切だと思うのです。

 奈良県で今やっているのですが、県庁ではランキング的なことがほしいと。でも、こちら側からすると、それは違うと。でも、各病院からしたら、ほかの病院がどれだけの機能を持っているのかを分かりやすくしてもらうほうが有り難いけれども、ランキングになると困る。そこが一番難しいところです。指標そのものを作ることは、いろいろなパターンで作っていくことは難しくはないのですが、それを使う段階が一番注意が必要なもので、数字の作り方と使い方の違いの部分だと思うのです。

 それに対して、今の循環器の指標の話は、アウトプットとなるそのものが、使い勝手が悪いというか、それが循環器の医療体制を示す数字ではないのではないかという話がありますから、死亡率だけで見ていいのかどうか、家に帰れたということだけで見ていいのかというような話の部分がありますから、議論としては、そういった部分との区分けが必要だと思います。

 ○永井座長 確かに昔からよく言われていますが、死亡率は高機能の急性期病院のほうが高いのです。それは、そういう重症の方がより搬送される、あるいは場合によったら到着時に亡くなられるような方が多いためといわれています。ですから、指標の工夫というのが非常に重要で、一人歩きしないということが大事ですね。いかがでしょうか。

○磯部構成員 戻りますが、先ほど永井先生がおっしゃった初期対応を行う施設、あるいは治療も含めてという御指摘なのですが、東京都のCCUネットワークはうまくいっていると思うのですが、その要因の1つは救急隊との連携と、教育と定期的な会議を繰り返しているということがあります。

 御提案のあった、包括的というところは、専門的医療、初期対応という役割分担を持った施設ということなのだと思いますが、循環器の急性期疾患では専門的医療を行う施設以上の所にまず運んでほしいと思いますので、その辺りは羽鳥先生もおっしゃられたように、救急隊にこの概念、循環器救急についての搬送のシステムをしっかりと教育、あるいは啓発するようなシステムを作っていただくことが前提だと思います。自治体の枠の区割りにとらわれない形で循環器救急を取り扱えるように、かつ、なるべく疾患、初期の症状に応じてどういう施設に運ぶかといったことの教育までを含めた体制にしていただきたいと思います。

○羽鳥構成員 磯部構成員の考えに賛成です。昔の開業医、中小病院のイメージは、患者を手放すのが嫌なので、最初は自分の医院に来てくれ、そしてそこで判断して病院へ送ることを病診連携のポイントの様にいう時代もありましたが、患者教育のときにも、脳卒中、心筋梗塞などの症状が出たら、かかりつけ医に電話してきて相談するのは構わないけれども、救急車を呼ぶことが大事だという話は、きちんとみんなしています。

 永井先生がおっしゃったように、非常に迷う症例、顎が痛い、左手が痺れるなどの症状で診療所に受診してきて、そこで心電図をとる、FABPなどの迅速検査をするなどの初期対応をというのはよく分かりますが、過去にこういう症状があった方は、ニトログリセリン、ニトロペンなどを持たせて、服薬して症状の変化をみるようにとかの説明をすることはあっても、激しい胸痛などのある時に自分の診療所に来て、心電図を撮ってどうこうということはないのではないかと思います。

 もちろん、冠血管再建に成功された後の治癒後のフォローアップとして、スタチンをきちんと飲めとか、抗血小板薬を飲めとか、そういうことはやると思いますが、患者を抱え込もうとはしていないと思うことが1つです。

 もう1つです。消防局との連携で大事なのが、東京は23区全体をカバーするのか消防庁一つでいいのですが、県単位になると消防局は市町村になってしまうのです。そうすると、横浜市とか川崎市とか、大きな所はいいのですが、もう少し人口の少ない市町村では、非常に小さな消防署になってしまい、消防ももう少し改変して県単位になっていただけると、救急の対応もみんなそろってくるのではないかという感じがするので、ここでの議論とは違うかもしれませんが、そういうことも考えていただけたらと思います。

○川本構成員 ずっと欠席しており、議論がずれていたら申し訳ありません。

 今、羽鳥委員と磯部委員が発言されたとおりで、私もその点を非常に心配しております。初期対応のときの構築の考え方は、地域によって平均的な救急搬送圏内で枠を作っていくという話だったのですが、その作り方のときに一番問題になってくるのが、今の救急のときの対応だと思っています。初期対応をどうしていくのかというのは、非常に大きな問題だと思います。

 特に、生活圏内がどのようになっているのかというのは、地方によってはかなり事情が違ってきていますので、この点が大きな問題ではないかなと感じているところです。是非、今のような視点のところを御検討いただいて、構築していただくことが重要だと思っています。

○永井座長 羽鳥先生、多くの患者は結構御自身で、タクシーなりで来られますね。そういうときのイメージなのですが。

○羽鳥構成員 分かりました。普段からの患者教育、そして受診されて来たら心電図を撮って、FABPなどの迅速な検査をするということはありますが、ショック症状、胸痛などの強い症状があったときに、患者もそういう御自分でできる対応はやったほうがいいです。要するに、症状がでてから、冠動脈造影、血行再建の時間が遅れてしまうのは、治療成績を下げてしまうと思います。

○小川構成員 羽鳥構成員のおっしゃるとおりで、最近は開業医の先生にはかなり浸透していまして、ドア・ツー・バルーン・タイムを意識されています。ほとんど電話が掛かってきた段階で、すぐに循環器の救急病院へ行けというケースがかなり多くなって、それが非常に予後改善につながっていると思います。

 それと、消防のこともおっしゃるとおりで、都会と地方というのもあるのですが、地方の中でも、いわゆる地区によってもかなり消防隊のレベルの差がかなりありまして、そこら辺のレベルアップを図れば、その地域が全体的によくなるというのは確かにあると思うのです。それはまた今回の問題とは違うのかなと思うのですが、それは厚労省から地域医療計画ができて、それを地方に徹底していけば、そこら辺はかなり地方は意識しますので、よくなるのではないかと思います。

○美原構成員 連携の問題なのですが、今、連携というのは何を連携するのか、何が連携の基なのかというと、今のお話は人が動く、患者が動くというのがイメージされているのですが、例えばストロークの世界では情報が連携する、例えばITを使ってMRIを診てもらうとか、例えばt-PAのとき我々は必ず胸の写真を撮って、解離があるかどうかを見るわけです。そのときに、よく見慣れている先生だったら、すぐにこれは危ないから送れと言うけれども、耳鼻咽喉科の先生であったり消化器の先生であったり、分からない人も中にはいるかもしれません。ストロークかもしれない、t-PAかもしれないけれども、それを専門の循環器の病院に送って診てもらえるようなITを使った連携というのが、今ストロークの中ではそういうことがすごく言われているのですが、そういうようなITを使った情報伝達を検討する必要があるかどうかということです。

 それからもう1つは、これも私はよく分からないのですが、ストロークの場合には、患者が動かないで医療提供者が動くことがあります。例えば血管内のインターベンションのときに、遠くのほうですと、血管内のできる先生が基幹病院から途中の病院に行って、過疎地からその途中の病院に来て、そこで血管内を行うというような、医療提供者が動くような連携の体制というのもあるのですが、循環器の世界だとシースなどはとてもできないとは思うのですが、インターベンションはほとんど流布しているからいいのでしょうか。

 何が言いたいのかというと、この領域において、連携の中に情報の伝達とか、医療提供者側の伝達ということも考える余地があるのかなということを思いました。

○永井座長 情報の伝達というのは。

○美原構成員 ITを使って、例えばCTを診てもらいましょうとか、心電図を診てもらいましょうと。余り大きな声では言えませんが、私は最近は心電図をちゃんと読めないかもしれないし、そういうようなことを見慣れないと、誤診に結び付いたりすることがあるかもしれません。胸が痛いといって心電図を撮ったけれども、それが本当に循環器に行くことが必要なのかと、全てのドクターが分かるのか分からないのか。

○永井座長 実際は、難しいです。極めて微妙なST上昇を見逃してしまうことがあるのです。教科書の範疇を超えたような世界があります。

○美原構成員 そういうようなときに、それを送って診てもらうというのは必要か。そんなことを言う前に送ってしまえと言うのかもしれないし、それはよく分からないのですが、そのような情報伝達というのも、1つありかもしれないです。

○永井座長 そうですね。多くは大したことはないと判断してしまうことがありますね。

○磯部構成員 もう1つの視点は、遠隔医療だと思うのです。こういうネットワークを作ったとしても、非常に広域な先ほどの岩手県とか、施設が限られている所については、マグネットホスピタルというか、中心になる包括的な施設を中心として、IT医療を使って治療の選択肢を中心の病院が考えて、地域にある施設の医師を指導するとか、搬送するしない、あるいはインターベンションを行う行わない、そういうことが今の時代は可能となってきていると思いますので、原則は対面診療だとは思いますが、遠隔地については、そういったシステムを導入していくことが、私は必要だと思います。

○小川構成員 心電図はもう簡単に送れますので、そこら辺で症状があれば、疑わしきは送ったほうがいいというのは、1つの原則だと思います。

 それと、先ほどの羽鳥構成員の御質問なのですが、私の発言は少し誤解を与えたと思います。それと情報伝達という意味で、もちろん左主幹部でショックであれば、これは誰でもすぐにやらないといけないのですが、左の主幹部で、閉塞せずに流れていてバイタルが安定している場合には高度な技術があるPCIの多い病院でやった方が良いとか、手術したほうがいい事があります。そういうときは情報伝達して、外科のある病院に送るというのはもちろんやっていることです。そこら辺は、普通の心筋梗塞であれば誰がやっても同じなのですが、非常に特殊な場合の心筋梗塞で、高度な技術を要する場合は画像をすぐに送れますので、基幹の病院に移送するという情報伝達は、もうルーチンでやっています。そういう意味で、成績に余り大きな差がないのではないかと思うのです。

○永井座長 先ほどのネットワークの問題ですが、そこは整理しておきたいと思います。資料1のスライド12ですが、こういうイメージでよろしいのかどうか。疾患ごとということも大事だと思いますし、情報伝達、遠隔医療を含めて、この絵について御意見を頂きたいと思います。

 先ほどの磯部構成員の御意見の大動脈解離のような場合というのは、そう一筋縄で、一次、二次、三次というわけにはいかないということですね。

 それから、一般的な救急搬送圏をどう考えるかです。それを越えた搬送も必要になるでしょうし、連携体制を作らないといけないですね。それから、救急隊員への教育ですね。基本的には、そういうことを踏まえた上での、図の12だということでしょうか。

○磯部構成員 大動脈解離については、非常に特殊な診断と治療が必要になってくるので、100%、24時間診療ができないということもあります。今はヘリコプターで患者を運ぶことも可能です。東京都でも私どもの病院のように、ほとんどの時間帯で緊急の大動脈解離の手術ができる施設というのは余りないと思うのです。大学病院でもオペ室がいっぱいであったり、夜中であればできるけれども、日中はオペ室を開けて待っているわけにはいかないという所がほとんどだと思いますので、特に大動脈疾患に関しては、相当広域の、搬送システムもヘリコプターまでを含めたことも考えた施設の選定というか、搬送圏を考えていただくのが大事だと思います。

○永井座長 冠動脈疾患の場合には、受入可能病院というのは表示されていますね。

○磯部構成員 東京都はそうです。

○永井座長 大動脈についてはどうなのですか。

○磯部構成員 大動脈ネットワークが同じシステムでやっているので、そうすると先ほど言いましたように、大学病院のような所、都内であっても24時間の受入れはOKでない。ですので、今可能である、可能でないということを常に表示していれば、遠隔地からでも搬送するシステムを作っておけば、診療は可能ではないかと思いますが、相当広い圏内にしないと。

○永井座長 羽鳥先生、大動脈についてのネットワークについて、川崎、神奈川はいかがでしょうか。

○羽鳥構成員 大動脈瘤大動脈解離に用いて、川崎は少し特殊で、民間の川崎幸病院というのが大動脈センターを持ち100%入院、即外科対応をする広い範囲の患者もよく診ていただけるのですが、逆に言うと横浜だと、大学がメインの対応となると、大学にお願いしても、手術室の枠がぎっしり詰まっていて95時の対応では駄目です。そうすると、大動脈は1分、2分が大事だと思うので、そうなるとそこではできないので、大動脈に関しては別扱いにしたほうがいいような気もします。

○永井座長 大変重要な御指摘だと思います。

○今村構成員 医療計画と今のネットワークの話とを少し整理すると、イメージはこれでよいと思いますが、医療計画は現在5疾病5事業という名前の下に計画が作られていて、その中に、前回までは「心筋梗塞」という項目で入っていたのが、今回「循環器」まで、やっと幅が広がったという状況です。各都道府県は、現在、脳卒中は別にあるのですが、心筋梗塞と循環器疾患ということで計画を作っています。先ほど二次医療圏を超えて医療構想圏を作っている所があるという話がありましたが、基本的には循環器というよりは、心筋梗塞で作っているという状況なのです。

 ですから、こちらからもし疾病別に提案をしていくとすれば、心筋梗塞についてはこんな考え方で、循環器の中の考え方を3つに分けてくださいという話があって、その中に急性心筋梗塞はこのように考えてください、解離性動脈瘤はこのように考えてくださいと、そのように分けてあげないと、都道府県が計画を作る際に使えなくなると思うのです。疾病で分けるということであれば、疾病ごとに都道府県がどんな計画を作るべきかをイメージして、それの進行管理の指標がまた必要になってきますので、それをイメージして議論していただくと、より現実図につながるものになるのではないかと思います。

○小川構成員 疾病単位でやると、県の導入が非常に難しいと思いますので、1つの大きな目安は、心臓血管外科がオペをやっているかが1つの指標になると思うのです。ただ、磯部構成員がおっしゃったように、24時間、365日大血管の緊急オペができる所は本当に少ないです。そこまで言うと非常に厳しいかもしれませんが、一応大きな目安としては、心臓外科があるかどうかが1つの目安になると思います。

 また、永井座長がおっしゃったように大きなくくりでないといけないのですが、例えば大きな病院が2つか3つあった場合に、片方で解離をやっていたら次の病院に送るとか、そのような移送も考えなければいけないので、大動脈解離に関しては特殊な考えが要るのではないかと思います。今ものすごく増えていて、先ほど1万幾つとおっしゃったのは、最近のデータで2万件あるのです。ですから、かなり増えてきているので、その辺りの対策は考えておかなければいけないと思います。

○永井座長 一方で、心不全は数は多いけれども、手術が要らない場合が多いわけです。そこの対応をどうするか。それが全部1つの心血管疾患だということで高度急性期に殺到したら、機能しなくなります。でも、救急隊でそこを全部鑑別するのは難しいですし。いかがでしょうか。その辺りのネットワークの作り方ですね。

○今村構成員 救急隊の考え方について情報提供させていただきます。私も20年近く消防庁とも救急隊とも付合いがあって思うのですが、消防庁はもともと自治省の一部で、基本的に自治をどうコントロールするかということをやっている所で、あそこから上意下達で伝えて、やってくださいというのはなかなか難しい土壌があります。実際、先ほど議論にあったように消防隊の格差がどれぐらいあるかというと、ものすごくあって、トップレベルは大都市の救急隊で、一番低いレベルは規定の記入さえもなかなかできないという状況です。

 では、消防庁の救急隊が何をしているかというと、ボトムアップに一番力を注いでいて、最低限の救急搬送とは何かということをやろうとしています。上に進んでいく分にはモデル事業的に進んでいってもらって、それを目指すべきものにはしていても、実際に指標として、これだけのものを集めなさいと消防庁が言える環境にあるかというと、そういう環境にはありません。そういうことを聞いてくれもしない所がたくさんあることに対して、どう指導するのかにエネルギーを費やしている状況なのです。

 ですから、今うまくいっているのは大都市で、消防隊と学術関係でうまく連携の取れた所が、データとしては非常にきれいなものがそろうようになって、その1つの成果としてはウツタインみたいなものがあります。あれは全消防庁にあのレベルで他の疾患についても広げようとしてはいるのですが、なかなかうまくいっていない状況です。各疾患別で見たときには、地域別に特に大きな消防隊と取んでやってもらって、それがだんだん地域全体に広がってというパターンでしか広がっていない状況があるので、あるべき論を消防庁にぶつけても、変わりにくいのではないかと思います。

○永井座長 そうすると、基本的には地域単位、自治体単位にならざるを得ない。それでも、大動脈解離のような場合には、徐々に圏域を超えて実績を上げていくしかないですね。

○今村構成員 小川構成員が御指摘のように、心臓外科の手術ができる所という限定を掛ければ、消防隊は誰よりもよく知っているので、消防隊が分かりやすい指標という形で都道府県単位で投げれば、多分うまく動くと思うのです。

○永井座長 あとは、受け入れた所のいろいろな判断ですね。

○小川構成員 永井座長がおっしゃったように、確かに急性心不全も大動脈解離も心筋梗塞も全部来院して、循環器の救急をやっている所はパンクしています。だから、言い方は非常に慎重でなければいけませんが、例えば救急で判断して手術が要らない、内科的にやれると分かったら早く次の病院に移すような、良くなれば後方病院をどんどん作っておいて、そこに移送しながらやっていけば、救急のメインの所はつぶれないでいけるのではないかと思うのです。患者の反応もありますが、早く次の病院に移すことができれば一番いいと思います。だから、機能分担をしておいて、外科もPCIも何でもできる病院と、それ以外の病院と分けて移送していけば回していけるかなと思います。

○永井座長 しかし、移動ももちろんそうですが、心肥大で肺浮腫や肺水腫が来た場合などは、ラシックスを少し打つだけでも良くなることが結構あるのです。そういう初期対応は、専門医でなくてもある程度できるようにしておかなければいけないということですが、それが全部高度急性期病院に来たらパンクしますね。

○小川構成員 そういう所が疲弊しないようなシステムを作っておかないと、これからやっていけないのではないかと思います。

○磯部構成員 先ほど厚労省から提案があった、心不全は少し別に考えてということです。心不全の場合は、慢性期の治療とリハビリテーションという一連の流れがあるので、別立てでやるシステムにしていかないとやっていけないですね。

○永井座長 ネットワーク構築についてはその辺りにして、次は急性期の専門的医療施設が担う医療機能についてです。今の話とも重複しますが、どの辺りまで機能を担えばいいのかということです。スライド17、先ほどの話になりますが、専門的医療を包括的に行う施設、専門的医療、インターベンション等を行う施設、初期対応を行う施設。これも今の議論と同じで、多少疾患ごとには違うけれども、特に慢性心不全の急性増悪は別にすると。でも、基本的には、今村構成員のお話だと地域単位でいかざるを得ないだろうということなのだろうと思います。急性期のインターベンションについては、今の日本では大体体制ができたと言ってよろしいのでしょうか。脳梗塞はまた別だと思いますが。

○小川構成員 全国ではないと思います。

○磯部構成員 しかし、この間の安田構成員がお出しになったJROADのデータだと、AMI8割は急性期の再管理治療を受けているというデータがあるので非常に良い成績なのだろうと私は思います。地域差があることは事実だと思いますが、それを集約化してしまって8割から減ってしまうことがあってはいけないと思います。

○永井座長 このスライドの15を見ると、随分格差が大きいのですね。死亡率が0.32.5%と、8倍ぐらい違うのです。もちろん、県名は軽々に出せないでしょうけれども、要因分析はどこまでされているのでしょうか。どういう要因なのか。

○小川構成員 完璧に要因分析はされていませんが、悪い所は離島の多い所なのです。運ばれていないとか、運んでくるまでにものすごく時間が掛かっているとか、そういう所なのです。ですから、先生がおっしゃったように、一概にデータでうんぬんはできないのです。そういう要素が必ずありますので。県によってもものすごく差があるのです。これを出すべきか出さないべきかは問題ですが。

○永井座長 もう少し格差を縮める方向に頑張らないといけないと思いますが、いかがですか。もちろん、長期予後や質の問題は残ると思いますが、それは今、学会等でも随分研究されるようになってきたと思います。外科の病院の配置や機能の意味合いはどうなのでしょう。集約化という話はまだ出てくるのでしょうか。

○小川構成員 磯部構成員がおっしゃったように、PCIは各地で、外科は集約化になるしかないのではないかと思うのです。

○永井座長 そのデータが出てくれば、自然にそういう方向へ誘導されていくのだろうと思います。あえて余り強い行政的指導でということは考える必要はないように思います。むしろ弊害が出てしまう。

○今村構成員 人口構成が変化して、65歳以下の人がどんどん減ってきていますので、65歳以下の手術に関してはどんどん減っていっている状況です。多分、毎年1%ずつぐらいのペースで減っていっているのではないかと思います。今増えているのは、6575歳の層の手術で、それで相殺されて手術が増えていると思うのですが、今度、団塊の世代が上に上がって、2025年から75歳にほぼ全員入りますので、もう少しするとオペ件数そのものが減ってくる状態に突入していくと思います。ですから、外科が一般的に若い世代、75歳以下の手術をする外科に関しては、これからは減っていく時代になるので、自然に競争淘汰の状態が発生するのではないかと思います。行政が介入する以前に、それは現象として起こると思います。地域医療構想はそういうことが起きますよと言っているだけで、そこから先は都道府県で考えてくださいというものなので、それを疾病ごとに考えるのが先ほどの医療構想区分の考え方なのです。ですから、外科というくくりではやっていませんが、自然にそういう現象が起こるでしょうということを予測している状況です。

○永井座長 今の点についてはよろしいでしょうか。もう1つ、先ほど議論いただいた評価指標についてどう考えるか、特に地域の指標と施設ごとの指標についてどのように取り組んだらよいか、御意見を頂ければと思います。確かに、ランキングになってしまっては非常に大きな弊害が出るし、逆に過剰に集約してしまう可能性がありますね。しかし、全く指標がないというわけにもいかないだろうと思うのです。

○今村構成員 情報提供のことなのですが、地域ごとの指標については、医療計画でいろいろな指標が出ていますが、病院ごとの指標はQI(Quality Indicator)の事業の中で、いろいろな団体が今までも各病院ごとのQIを公表することを進めてきていて、今、大きな病院は何らかの形でQIを進めています。前回の診療報酬の改定の中でも、QIを出せということが出てきているので、大分、病院ごとのIndicatorの公表に関しては世の流れになってきています。例えば、病院団体の中で心筋梗塞の指標としてアスピリンを投与していますかとか、胸痛が起こってから3時間以内にカテしていますかといった指標、病院に搬入されてから1時間半以内のカテ率なども確かQIの中に入れているので、そういうものが世の中に出ていて、多くの病院がQIとしては使って公表している状況はあると思うのです。それを全ての病院にやっていただけるのであれば、都道府県はそれを集めて指標にすることができるだろうと思いますが、まだ先進的な病院が取り組んでいる段階ではないかと思います。

○永井座長 データの話も、先ほど少し出た脳卒中、循環器疾患の基本法がもし成立すると、随分状況が変わる可能性はありますね。

○小川構成員 今おっしゃった指標は、全部データがあるのです。がん対策基本法で、登録病院は800850の間だったと思いますが、循環器の場合は循環器専門病院の1,300病院のデータが全部あります。その中で、DPCの全部そろっているデータも、1,100の病院のものがあります。さらに、1,100の病院に全部許可を得て、出してもいいという病院が700病院もあるのです。ですから、すごい量のデータがあるのですが、後ろに法律がないものですから、もし法律があれば、1,100DPCのデータが全部そろって、ドア・ツー・バルーン・タイムや薬が分かるのです。しかし、その700病院では出せるのですが、それ以上は出せないということはあります。

 ただ、永井座長がおっしゃるように、それは急性期だけのデータですので、法律ができれば、慢性期のデータに広げていけば、きちんとした医療経済にも役立つようなデータが出せます。ですから、法律さえできれば、すぐにゴーできる状況にはなっているのです。

○永井座長 各施設の指標が要らないとは言えないですね。どこまで出すかは別にして、何らかの指標は必要であるということだろうと思います。

○磯部構成員 私は、今村構成員がおっしゃったように、今の新しい考え方でいいと思いますが、今のQIは御紹介があったようなドア・ツー・バルーン90分とか、AMIの後のアスピリン処方率、心不全のときのβブロッカーの処方率等、DPCのデータから取りやすいものを選んでいるのではないかと思っています。しかし、実態はもう少し複雑だと思います。DPCデータから取りやすいことも大事だと思いますが、より急性期の疾患の診療の質を表すようなQIは行政的にもいろいろ工夫していただいて、もう少し実態に即したものを出せるようなものを作っていただきたいと思います。

○小川構成員 データを、きちんと分かっている方が見れば分かっていただけるというか、永井座長がおっしゃったように、ものすごく症例の多い病院で、かなり高度なことをやっている病院が、重症を取るから案外成績が思ったほど良くなくて、症例の少ない病院が良いということもよくあります。PCIも同じで、非常にPCIの多い病院は難しいPCIに手を出すので、成功率から言えば、症例の少ない病院と比べると症例の多い病院のほうが少し成功率が低いのです。症例の少ない病院は無理をせず、絶対安全確実なものしかやらないから成績が良くて、大きな病院は数パーセントですが、成功率が落ちるということを分かっています。成功率だけでここの病院は駄目だと言われたら困りますが、そういうことを認識していただければデータは全部出してもいいと思います。

○今村構成員 小川構成員が御指摘になった数字の読み方のところが非常に重要で、地域医療計画でも救急搬送時間をより短くしようということで、一時期、大きな指標に取り込もうとした時期があるのですが、実際救急搬送時間が一番長いのはどこかというと、東京都なのです。それはなぜかというと、選択肢があるので、あちこち問い合わせている時間が一番掛かるのです。

 それに対して、地方のほうがかえって短くなる。搬送時間は長いのですが、1か所に向かっていくので、行っている間にもし2箇所選択肢があっても、どちらかになるので、実際には都心部のほうが長いという状況があります。我々が感覚的に指標として良いと思っているものと、数字の読み方として根本的に違う問題が入ってくることがあって、数字を作ることとその数字を読むことには違う面があって、読み方まできちんと説明して、誤解がないように伝えていかないと、指標は全く逆の読まれ方をする可能性があるので、その辺りも数字を作る上での留意点だと思います。これは我々のように既存のデータを分析する人間からは分からないので、現場でやっている人がその数字を読めるようになっていただいて、評価してもらわないと、指標としては使用に耐えないというのが現状だと思います。

○永井座長 そうしますと、資料118枚目のスライドが全体的なイメージをよく描いているように思うのですが、下に書いてあるように、地域の現状を踏まえるとか、疾病ごとの特性を踏まえる必要がある。また、質の担保も必要であると。そういう条件付きではありますが、全体のイメージとしてはこんなところかなという感じがします。発症の所には再発や慢性疾患が急性増悪することも含む。啓発は、患者への啓発もそうでしょうし、救急隊との連携も啓発事業に入るのではないかと思いますが、この絵について何か御意見はありますか。

○井上構成員 患者の立場としては、この18番のスライド上に「啓発」という項目があり、急性期心血管疾患の症状と早期受診の教育とあることに、少しほっとしました。と申しますのは、自分が受診すべき状況にあるのかという判断ですが、なぜかいつも躊躇するのです。まず御相談するのは近くのかかりつけの先生ですが、そこで常にご相談やコミュニケーションがうまくいっていると、自分の今の症状が、注意しなければいけないものなのか、もう少し様子を見ても大丈夫なのか、判断の指標になっていくのかなと思いながら、スライドを見ておりました。先ほど磯部構成員が消防士に対する教育をとおっしゃいましたが、同時に、私ども患者に対する啓発、教育の強化も、非常に大切なことで、大きな意義があることと思っております。

 また、救急車の要請となると、ほとんどの患者は自己判断で、このぐらいで救急車を要請したらまずいのではないか、呼ぶほどではないのではないかなど、判断を自分でしてしまい、躊躇しているという実態があります。常に御近所の初期対応を行ってくださる先生とコミュニケーションを取りながら、自分の今の体調がどういう状況なのかを、患者も学んでおく必要があり、クリニックの先生ばかりでなく、様々な行政サービスを利用するなどして勉強する、啓発を受けていくことの重要性を日々感じております。

○永井座長 しかし、これは実はものすごく難しい問題で、患者の教育だけではなく、医師、医療者への教育が重要です。つまり、非典型的な症状を出す重大な状態がたくさんあるのです。いつもみんな胸が痛くて脂汗をかいていればわかるのですが、そうではなくて、ちょっと胸焼け程度だとか肩がこる程度で、実は重大な状況にあるということもあるのです。それはある程度専門のベテランでないと分からないときもあるのですが、ほかの疾患よりは重大な結果になり得るので、やや幅広に取っていく教育が必要になります。患者だけでなく、医師もつい軽い方向へ考えがちで、少し前まではおかしくて、今は何でもありませんと言われたら、それならよいでしょうとなりがちです。でも、ひょっとしたら、少し前のおかしかったことが重大なサインかもしれないのです。そういうことを含めての啓発で、実際は相当難しい。循環器特有の難しさがあります。その辺りを御理解いただければと思います。でも、それだけにこの啓発を強く前へ出しておかなければいけないという意味です。

○磯部構成員 現在検討されている対策基本法には教育啓発が入っておりますので、この辺りは学会とかそういうレベルではなくて、行政のレベル、あるいは教育のレベルですので、法律の力で啓発活動を進めていくことが大事だと思います。実際、心筋梗塞で一番治療までに時間が掛かるのは、患者の覚知から救急車を呼ぶ所、医療機関に受診する所までなのです。受診さえすれば90分以内というのが我々の常識にはなっていますが、患者の覚知から病院に来るまでの時間を短くすることが一番求められていることかと思います。

○美原構成員 その教育はとても難しいと思うのです。例えば脳卒中では、脳卒中協会が中心になって、各県で毎年市民公開講座をやっているのですが、出てくる患者は1回脳卒中をした人です。そういう人が来て、本当にもっと来てほしい人がなかなか来てくれないのが現実で、どのようにしたら一次予防になるのか、健康な地域の方々にちゃんと理解していただけるかというのは、大変難しい問題だろうと思っています。

○永井座長 これは本当に力を入れてするべきことで、脳血管疾患、心臓病は命取りになります。短時間で急変する。症状が非典型的で、ほとんど何でもないことの場合もある。無症状のときもあります。そういう中でどう対応するか。基本的には、先ほどお話したように幅広に、何でもなくてよかったですね、ぐらいのつもりで受けないといけないということですね。

○小川構成員 少し離れますが、そういう意味でも、先ほど行政とおっしゃった消防のデータで、病院に到着するまでに亡くなっている人は結構いるのですが、そのデータもあるのでしょう。あれも出されたほうがいいのではないかと。心筋梗塞でどのぐらい亡くなっているかではなくて、高山先生の東京CCUのネットワークのデータがあるのですが、到着するまでにかなりの方が亡くなっているということがまだ数値としてはないのです。その辺りは行政でも出していただいたら、循環器疾患は恐いのだということが分かると思います。脳もそうですが、到着するまでに亡くなっていることが結構あるということも、消防のデータで出してもらえたらいいなと思います。

○今村構成員 消防の救急隊の中で、到着死亡の中に含まれていると思います。

○小川構成員 その中で、心臓は救急隊の人が判断しているものが結構あるのです。

○今村構成員 その項目は、全国で入っているものはそんなにたくさんなくて、東京都や大阪府は独自に取っているので、ウツタインのデータに近いものが付いているのです。

○小川構成員 全国ではないのですね。

○今村構成員 そうです。心肺停止状態で到着したウツタインデータの扱いになるので、ウツタインの情報は申請すれば誰でももらえるようにはなっているのですが、救急隊の全国で取っているほうになると、大分少なくなるのです。

○永井座長 県に行けば、市町村に全部了解を得ないといけないわけですね。県を調べようと思ったら、一つ一つの市町村にお願いしないといけない。

○今村構成員 多分、救急隊の情報は、情報として入力されたものは総務省の中の消防庁に一括で入ってくるので、そこで審査をすると。厚生省の統計と同じで、統計使用の申請書を出して、許可が得られれば使える状態にはなっています。

 救急隊のほうだけで言うと、救急隊の格差がものすごくあるので、救急隊のものは余り出してくれないのです。それも、集計しても救急隊ごとの差が出ないようにしか集計させてくれないのです。ウツタインのほうは割と自由にやらせてくれるのではないかと思います。

○永井座長 何かほかに御発言、御意見はありますか。

○馬場構成員 スライドの1718は本当によくできたイメージ図だと思いますが、実際に救急搬送があるときには、大阪であれば救急搬送基準としては救急隊が重症例、意識障害が強いとか、血圧とか心拍数の関係で重症だと思うと、まずは三次救急へという選択が最初にされてしまって、その後に心血管疾患が強く疑われる場合は三次救命救急センターのほかに二次急性期心血管疾患専門的医療を行う施設が選択されるという図式になっています。ですから、搬送のときには包括的な外科的治療ができるかどうかではなく、三次救急か二次救急かという判断になってしまうので、ここに三次とか救命救急センターという言葉がないのは非常に心強く思っています。まず心血管疾患を疑った場合には、脳血管でもそうですが、専門の施設へということで、すっきりしていて非常にいいと思います。

○羽鳥構成員 先ほどの症例登録の話ですが、がん登録の場合、国の対策基本法ができる前も、日本中で6つの県が独自の事業として県で登録作業をやっていたのです。そのときは「地域がん登録」と言っていたと思いますが、そのときのデータの取り方は、最初に発見した開業の先生が内視鏡をやったり、胸のレントゲンを撮ったりして、がんを強く疑った場合にも用紙に記入して1年間の症例を3月に集計して個票を医師会に送ります。一方精査するための病院に行っても、そこでも個票を作りstage分類、1年後生存などのチェックをして送ります。今の国のがん登録と同じぐらいのレベルで登録する。

 もちろん、二重登録されることもありますが、複数の医療機関に行ってということもあるので、県立がんセンターで最終的には一括管理して全部精査して、亡くなった方を死亡個票まで役所で追跡して、最終的な確定の結果が出るのは5年後ということもありましたが、そのような作業をしていたということもあるので、循環器の登録もやろうと思えばできないこともないだろうと思います。小川構成員が先ほどおっしゃったように、既にこれだけのデータがあるということでしたら、何かの形で第七次医療計画にも反映できることをしていかないと正確なデータに基づいて医療費をつくるべきですので、そのためにも何か工夫していただけたらと思います。

○磯部構成員 先ほどの施設の評価指標の話はとても大事だと思いますが、それと同時に認定要件、ストラクチャー指標について、厚労省からの提示ではスライド16に「地域の状況や施設の医療資源に応じて、柔軟に設定される必要がある」とあります。これは正にそうで、これまでの施設の認定の状況は、特に急性期をやっている所は何でも自分の所も認定が欲しいということで、過剰投資をしたり、件数を増やすような努力をするといったことが、今までなかったとは言えないと思います。ですから、柔軟に設定されることがとても大事で、うまく実態に即して、かつ適正な病院が認定されるようなストラクチャーの指標が大事だと思います。

○永井座長 よろしいでしょうか。ほかに御発言がなければ、本日のワーキングを終了したいと思います。次回は、「回復期~維持期の診療提供体制の在り方の詳細」に関する検討を行う予定です。事務局から連絡事項をお願いします。

○石上がん・疾病対策課課長補佐 次回ワーキング・グループの日程については、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

○永井座長 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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