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2017年4月10日 第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成29年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録

健康局健康課

○日時

平成29年 4月10日(月) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用15会議室(12階)


○議事

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより第26回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会及び平成29年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。副反応検討部会の永井委員、安全対策調査会の望月委員より御欠席の連絡を頂いております。

 現在、副反応検討部会委員8名のうち7名、安全対策調査会委員6名のうち5名の委員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会及び薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 また、本日は参考人としまして、大阪大学大学院医学系研究科教授の祖父江友孝参考人、大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教授の福島若葉参考人にそれぞれ御出席いただいております。

 冒頭のカメラ撮りにつきましては、申し訳ございませんがここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 本日の審議の前に、傍聴に関して留意事項を申し上げます。開催案内の「傍聴への留意事項」を必ず守っていただきますようお願いいたします。留意事項に反した場合は退場していただきます。また、今回、座長及び事務局職員の指示に従わなかった方や会議中に退場となった方については、次回以降の当会議の傍聴は認められませんので、御留意のほどよろしくお願いいたします。

 本日の座長につきましては、桃井副反応検討部会長にお願いしたいと思います。それでは、ここからの進行をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 議題を始めたいと思います。まず、事務局から審議参加に関する遵守事項について御説明、御報告をお願いいたします。

○事務局 審議参加について御報告いたします。本日御出席をされた委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金などの受取状況について、これまでと同様に申告を頂いております。本日の議題において、調査・審議される品目はHPVワクチンであり、その製造販売業者は、グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社であり、事前に各委員に申告を頂いております。各委員からの申告内容については、机上に配布しておりますので御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の寄附金等の受取状況から、柿崎委員がMSD株式会社から50万円を超えて500万円以下の受取りがあるため、柿崎委員は、HPVワクチンについて意見を述べることはできますが、議決には参加いただけませんことを御報告いたします。

 引き続き、委員におかれましては、講演料等の受取りについて、通帳や源泉徴収票などの書類を確認いただくことにより、正しい内容を申告いただきますようお願いいたします。

○桃井委員 以上につきまして、修正等はおありになりませんね。よろしいでしょうか。それでは、次に事務局から配布資料について御説明ください。

○事務局 本日の配布資料の確認をいたします。本日の資料ですが、お手元の資料の一番上から、1枚紙で座席表、議事次第、委員一覧、資料一覧がございます。資料1から4までが本資料です。また、委員、参考人の皆様には、机上配布資料として、全国疫学調査(平成281226日の会議資料)と先ほど御確認いただいた寄附金等の受取状況の回答表、サーバリックスとガーダシルの添付文書がございます。資料としては以上です。足りないものや落丁等がございましたら事務局へお申し出ください。

○桃井委員 資料はよろしいでしょうか。それでは審議に入ります。まず、議題1HPVワクチンの安全性について」の審議をお願いいたします。資料1から3までです。事務局から、資料の御説明をお願いいたします。

○事務局 資料に入る前に本日の内容ですが、本日はHPVワクチンの副反応が疑われる症状の報告状況等について、資料1から3までで御説明させていただきます。このHPVワクチンについては、昨年1226日の本合同会議において、昨年51日から8月末までの副反応が疑われる報告の状況について御説明をしております。本日はその後の91日から11月末までの3か月間について説明させていただきます。

 資料1を御覧ください。資料1GSK社のサーバリックスに関する資料です。1ページの中段には、医療機関への納入数量をもとに推定した接種可能のべ人数、製造販売業者及び医療機関からの副反応が疑われる症例の報告件数を記載しております。実際の記載としては、接種可能のべ人数は534人で、製造販売業者から16件、医療機関からは30件、うち重篤なものが26件報告されております。またこれらのうち、今回の対象期間内に接種が行われた症例の数をそれぞれ括弧書きで記載しております。今回の対象期間内の報告はございませんでした。過去の事例ということです。その次に頻度が記載されています。製造販売業者から3.2%、医療機関から重篤なもので4.9%という数字を出しておりますが、本ワクチンについては接種者数が現在極めて少ない中で過去の症例が報告されているということで、この頻度自体は余り意味のないものになっています。なお、販売開始からの累計の頻度等については、真ん中の表の一番下に記載しております。

1ページの下段については、転帰の情報をまとめております。今回の報告対象期間内の後遺症、死亡例はございませんでした。1ページは以上です。

2から7ページは、報告のあったものを症状別に集計したものです。表の見方ですが、表を縦に見て左側が前回の合同会議までに報告されたそれぞれの件数になります。右側に今回報告された件数がまとまっております。詳細な説明は省略させていただきます。

 続いて8ページを御覧ください。こちらは予防接種法の報告基準に定められた症状について抜粋、集計したものを掲載しております。こちらも右側が今回の集計対象期間に報告されたもので、血管迷走神経反射が疑われる症例として1件報告がございます。8ページは以上です。

 続いて9ページ以降です。9から13ページは個別の症例の一覧となっています。製造販売業者と医療機関から報告されたものをそれぞれまとめておりますけれども、910ページが製造販売業者から報告されたものです。詳細は説明いたしませんが、発生日とか転帰が表の右半分ぐらいに記載がありますけれども、かなり不明というようになっています。こちらについては過去の症例ということで文献等によるものが多く、発生日、転帰等が不明になっております。11ページからが医療機関の報告になります。医療機関の報告についても、真ん中ぐらいの縦に発生日、発生までの日数等、不明なものがこちらも散見されております。推測になりますけれども、当初受診していた病院ではなく、その後受診した別の病院から報告されることもありますので、そうした観点で発生日等が不明になっているものと考えております。なお、別の医療機関から報告される場合に、件数に重複が生じるという場合もありますが、これにつきましてはこの会議までに可能な限り重複を排除するように努めておりますし、今回の会議後にも重複が判明した場合については、次回以降の会議資料でその件数を補正するというように対応していきたいと思っております。

14ページは、接種後の迷走神経反射が疑われる症例でのアナフィラキシーの可能性について検討した資料です。下の表のとおり、迷走神経反射が疑われる症例は今回6例ありましたけれども、右側の、ブライトン分類3以上としてアナフィラキシーが疑われる症例はありませんでした。

 続いて15ページ以降になります。15ページは、GBS/ADEM、急性散在性脳脊髄炎及びギラン・バレー症候群の可能性のある症例のまとめになります。今回はADEMの疑いがある症例が1件報告されております。具体的な内容については16ページ以降に記載しておりますけれども、今回はちょっと経緯が長いため、17ページからかいつまんで御説明させていただきます。本症例は、基礎疾患のない女性が3回目の接種から約11か月後、17ページですと初回接種から起算されておりますので、17か月後に認知症、倦怠感、傾眠等の種々の症状が発現しており、その後、18ページに、各時点で転帰が記載されています。本件ADEMに関しては、18ページ上のほうに、接種2,148日後時点という中に急性散在性脳脊髄炎という記載があります。

 戻りまして、16ページに専門家の意見が記載してあります。「臨床症状はADEMと異なるが画像などの所見に乏しい。接種後症状が顕著になったのは約11か月後と時間が空きすぎる」「ADEMの特徴である強い炎症所見を伴った一相性の急性脳脊髄炎の経過と後遺症の起こり方が異なる」「急性散在性脳脊髄炎を発症したとの記載だけであって、臨床症状、検査所見、考えられる発症時期等の記載はなく、判断できない」そういった御意見を頂いております。16ページの一番右側に事務局の評価を記載していますが、情報不足で判断できないとさせていただいております。ADEMについては以上です。

19ページは後遺症症例です。経緯は2021ページに記載しています。基礎疾患のない14歳・女性がHPVワクチン接種後に、19ページ真ん中辺りに「症状名」という記載がありますが、こちらに脳炎、脳症等、種々の症状が出ております。後遺症としては、症状名の一番下の括弧書きですが、起立性頭痛、低気圧での疲労、めまい等々が後遺症として残ったというものです。経過は2021ページです。こちらもかなり長くなっておりますので、かいつまんで御説明いたします。20ページの真ん中辺りに接種17か月後、3回目の接種から約1年後ということですが、こちらの時点で起立困難、疲労、イライラ、脱力、性格変化等が生じたと報告されております。20ページの下から8行目辺りに年月日不明とあり、脳炎、脳症、末梢神経障害、知覚異常を発現との記載があります。その後、21ページの上のほう、接種1,880日後時点の転帰ですが、こちらにも脳炎、脳症等の後遺症があるという記載があります。

 ページを前後して申し訳ありません。19ページの右側、専門家の評価です。専門家の意見としては、「常識的にはワクチンによる後遺症とは考えにくい」「精神症状と自覚的訴えが主症状であり、脳炎や脳症を示唆する神経学的所見や器質障害を示す臨床所見/検査所見が記載からは読み取れない」「情報不足で判断できない」という意見を頂いております。後遺症症例は以上です。

 資料1の最後、22ページからはアナフィラキシーの報告のまとめです。23ページに今回の報告をまとめております。今回は3件、アナフィラキシーとして報告されています。専門家の評価の結果、いずれもブライトン分類3以上と評価されたものはありません。24ページ以降は個別症例の経過をまとめております。こちらの説明は省略させていただきます。資料1は以上です。

 続いて、資料2を御覧ください。MSD社のガーダシルについてです。資料の構成は同様となっています。1ページ目中段ですが、接種可能のべ人数は2,241人で、報告としては、製造販売業者から3件、医療機関から8件、うち6件が重篤なものと報告いただいています。また、今回の対象期間内の報告はありませんでした。報告頻度については、製造販売業者から0.1%、医療機関から重篤なもので0.3%という数字を出していますが、サーバリックス同様、過去の症例を計算に用いているため、数字自体は余り意味のないものとなっております。

 下段には転帰の情報をまとめております。今回の報告対象期間内での死亡例、後遺症症例はありませんでした。

2から5ページは、報告を症状別に集計したものです。こちらの説明は省略いたします。

6ページは、予防接種法の報告基準に定められた症状について抜粋、集計した結果です。今回の報告期間では、血管迷走神経反射が1件報告されております。

7から9ページは、報告された個別症例の一覧です。詳細な説明は省略しますけれども、サーバリックス同様、発生日、転帰等が不明なものがあります。こちらについての理由は先ほどのサーバリックスと同様と考えております。

10ページは、接種後の迷走神経反射が疑われる症例でのアナフィラキシーの可能性についてです。下の表ですが、今回6例報告されていますけれども、そのうちブライトン分類3以上としてアナフィラキシーが疑われると評価を頂いたものはありません。

11ページは、GBS/ADEMの可能性のある症例のまとめになります。今回は、ギラン・バレー(GBS)の疑いがある症例について1件報告されています。症例の経過として13ページ目以降に記載しております。こちらもかなり経過が長くなっていますので、かいつまんで御説明いたします。本症例については、基礎疾患のない13歳の女性が、下から7行目にあります接種514日後に、四肢麻痺、筋力低下、歩行困難が発現し、ギラン・バレー症候群の診断で入院したという事例です。その後の経過、多々記載がありますけれども、こちらは省略させていただき、専門家の意見について御説明いたします。

12ページの右側の専門家の意見としては、「発症までの時間が空きすぎる。末梢神経速度も正常で検査上もGBSは否定できる」「発症の仕方が突然であること、様々な症状が一挙に出ていることは、GBSの臨床経過とは異なり、GBSは否定的である」「しびれ、麻痺、筋力低下などの部位が一定の傾向を呈することなく不定愁訴的に変動していること、さらに、誘発筋電図・神経伝達速度も異常を認めないこと、脳脊髄液検査が施行されていないことから、ギラン・バレー症候群とする根拠が認められないため判断できない」という御意見を頂いております。一番右の事務局のまとめとして、「GBSとは判断できない。ワクチンとの因果関係は不明である」とさせていただいております。ADEM/GBSについては以上です。

 最後の15ページは、アナフィラキシーとして報告された件数をまとめております。今回はアナフィラキシーとして報告された症例はありませんでした。資料2は以上です。

 続いて最後、資料3を御覧ください。HPVワクチンの関係で定例的に御報告している資料になります。HPVワクチン接種後の失神関連の副反応が疑われる症例をまとめた資料、そちらのアップデートになります。サーバリックス、ガーダシルそれぞれまとめていまして、2から4ページがサーバリックス、5から8ページがガーダシルのまとめになっています。特段大きな変化はないので、かいつまんで御説明いたします。

2ページはサーバリックスの関係ですが、1.国内の発現状況です。下から3行目からですが、件数と発生率を記載しております。国内の発現状況としては、サーバリックスは953例、発生率は10万接種あたり13.61例です。このうち意識消失があった症例は639例で、10万接種あたり9.13例でした。

3ページは意識消失までの時間を表したグラフと図になっています。上の棒グラフは接種後30分までに発現した症例、下の表は接種後30分以降に発現した症例をまとめたものです。以前の会議において、上の棒グラフの一番右側にある「不明」と、その左の「直後(時間不明)」、これらのカテゴリーの意味合いについて御質問を頂いておりました。こちらについて企業に確認が取れましたので、この場をお借りして御説明させていただきます。まず、「直後(時間不明)」と「不明」は、いずれも30分以内に発現したものを両方とも意味しております。これら2つの違いですが、医療機関からの情報の得られ方により場合分けをしているということです。具体的には、接種直後に意識消失したという報告をされた場合、時間は明確ではなく直後ということだけ分かっている場合は、時間不明ということで、「直後(時間不明)」と分類しております。一方、報告のされ方のあり得るものとして、例えば意識消失したが30分後には回復したということで、回復した時間のみが記載されている場合があります。この場合、実際に起こった時間が不明で、直後かどうかも不明ということで「不明」と分類しているというものです。30分以内に両方とも起きているけれども、その起きた状況の時間が、ある程度分かるものと分からないものとで分類しているということです。サーバリックスは以上です。

 続いて、ガーダシルです。こちらも資料の構成は一緒です。5ページ、1.国内の発現状況ということでまとめております。下から2行目、こちらに件数が書いてありまして、失神に関連する副反応が疑われる症例としては382例、発生率は10万接種あたり19.8。このうち意識消失のあった症例は263例、10万接種あたり13.6例でした。6ページはサーバリックスと同様にグラフと表が記載してありますが、傾向はサーバリックスと同様で、今回特に大きな変化があるというものではありません。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○桃井委員 ありがとうございました。資料1から3について、御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。2つのワクチンともに、直近3か月間の中では0という数字が出ております。報告されている数字はそれ以前からの報告が上がってきているものです。また、両方ともアナフィラキシー、GBSADEMに関しては、それと医学的に考えられる症例は0という御報告がなされています。よろしいでしょうか。このようなところの御報告があったと思いますし、失神関連につきましても、今までも御報告いただいた内容で、この前の御質問にもお答えいただきました。

 もし御意見がなければ、今回の御報告では、過去に発生した症例が、かなり時間を置いて直近の3か月に報告された例のみと。全体の傾向としてはこれまでの報告と大きな変化はなしということでよろしいでしょうか。そういたしますと、その評価を経た上で、御審議いただいた2つのワクチンについては、今回までの副反応疑い報告によって、その安全性において新たなシグナルの検出はないと。したがって、従来どおりの評価ということでよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。以上で、議題1の「HPVワクチンの副反応疑い報告に関して」は終了いたします。ありがとうございました。

 それでは、議題2に移ります。資料4「全国疫学調査(子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究)」の結果につきまして、前回同様、研究班の班長の祖父江先生、研究班の委員の福島先生に本日も参考人として御出席いただいております。誠にありがとうございます。前回の会議で、研究班で実施した疫学調査の結果について、資料に基づいて御説明を頂きました。それについて、委員の先生方から様々な質疑応答がなされまして、より正確にこの調査の結果を評価し、認識をするために、追加分析をお願いしたいという幾つかの御意見を頂戴いたしました。その御意見に沿いまして、研究班の先生方に追加分析をお願いしたところです。本日は追加分析の結果が出ましたので、その結果について、今日お出でいただいている祖父江参考人、福島参考人から御意見を頂きたいと思います。まずは班長でいらっしゃる祖父江参考人から、御説明をよろしくお願いいたします。

○祖父江参考人 資料4に基づいて御説明します。昨年12月に御報告して以降、幾つか宿題を頂きましたので、その追加分析の結果を御報告します。

 前回の資料の中で概要を説明していましたが、復習がてら幾つか抜粋をしておりますので、この辺りから説明します。1ページ下段が、前回資料「全国疫学調査概要」です。一次調査、二次調査から構成されており、一次調査において18,302診療科に対して調査を行いました。調査対象症例の基準としては、1から4の全てを満たす症例を報告していただくということです。一次調査については数だけ報告していただき、二次調査において、一次調査の結果「患者あり」と回答した508の診療科に対して個人票を送付し、詳細な情報を収集しました。一次調査と二次調査を合わせて、多様な症状があり、ワクチン接種歴のない患者数を推計することを目的として行いました。

2ページの上段が一次調査のハガキの内容、下段が二次調査票です。

3ページの上段ですが、その中で取り扱い12を行っています。二次調査票の中で、診察に際して診療科で把握した傷病名を聞いておりますが、その傷病名で調査期間の症状を説明できるかできないかを、主治医の意見として聞いています。左に「説明できない」「説明できる」「不明」とありますが、説明できるとされた例について、HPVワクチン接種による、あるいはHPVワクチン接種後と明示されているもの、そうでないもの、更にHPVワクチン接種と明示されていないものについて、多様な症状と明らかに区別できる疾患、SLEやリウマチといったものとそうでないものについて、この分類に従って別表1から5のカテゴリーを作り、それぞれ有訴率を分子として含めるか含めないかを判断しました。右の「相当する」が分子として含める、「相当しない」が分子として含めないという意味です。

 取り扱い12で違う判断をしているのが、「説明できる」とし、HPVワクチン接種歴は明示されていないけれども、明らかに区別できる疾患でもない、別表3の扱いを取り扱い12で区別しています。どちらかというと、取り扱い1のほうが少なく見積もる形の有訴率になっていると思います。このような形での扱いをして有訴率を計算したものです。

 それ以降、部会の委員の方々から宿題として追加分析を指示していただいたのが、下段の4つです。二次調査報告症例の特性、症状の層別分析、症状の数が10以上である者の傷病名の分布、有訴率に影響しうる要因を考慮した分析です。二次調査報告症例の特性ですが、11)として、接種から発症までの期間(女子接種者のみ)について、下の表に頻度分布を示しています。横軸が発症直前の接種から発症までの期間を月数で示したものです。上段は月数を0から48か月まで示しており、下段は1年以上のところをまとめて図示しています。上段では、1か月以内に起こっている症例が一番多いわけですが、その後、順次減少していくパターンが見られます。下段で1年以内のところを拡大すると、かなりの程度1か月以内に起こっており、その後、減少していくパターンが見て取れると思います。その結果、1か月以内で起こっているものではなく、1か月を超えるところでの発症が68.9%、3か月を超えるところで59.2%、6か月で44.7%、1年を超えるところで36.9%という症例が報告されております。

5ページ上段ですが、発症直前の接種から発症までの期間を調査時年齢別に見たものです。14から18というのは、あくまで調査時の年齢ですが、分布を見ると一見調査時年齢が低い、14から15歳のカテゴリーで、接種から発症までの期間が長い例が16から18歳に比べて少ないということが見て取れると思います。下段は接種時の年齢別に分類した場合の、同様に発症直前の接種から発症までの期間を見たものですが、15から16歳、接種時年齢の高い群で接種から発症までの期間の長い例が少ない傾向が見て取れます。

 この傾向がどういうことを意味しているかを考えると、次のページですが、全体としては先ほどの分布を示したものです。年齢別に見ると、現象としてはその四角に書いてあることが観察されていますが、接種年齢の下限がおおむね12歳ということは、調査時年齢が低い群では必然的に接種から調査までの期間が短くなります。すなわち、調査時年齢14歳の群では、接種から調査までの期間が3年以上には原則ならない。ですから、そういう長い例は観察されないわけです。調査の設定上こういう分布の違いが見られますが、これをもって接種から発症までの期間が、調査時年齢が低いほど短いとは言えないということです。

 また、接種時年齢別に見た場合の検討においても、下から2つ目のポツですが、調査時年齢の上限が18歳という限定があります。したがって、接種時年齢が高い群では接種から調査までの期間が短い。例えば、接種時年齢が16歳だと、調査までは、18歳ですから3年以上にはならないということで、長期間の例は高年齢では原則不可能ということでこのような分布になります。したがって、調査時年齢が高いほど、接種から発症までの期間が短いということも言えない。ですから、集計結果としてはこう見えますが、この結果をもって年齢ごとに何かが違うということを示しているものではないということです。

 次に、症状の持続期間です。7ページ上段ですが、男子、女子の接種歴なし、女子の接種歴あり、女子接種歴不明という群ごとに症状の持続期間を比べると、パターンとして男子、女子接種歴なしに比べて、女子接種歴あり(接種後発症)で症状の持続期間の長い例が多い、女子接種歴不明でその中間というパターンが見て取れます。

 下段はこれを年齢別に見たものです。12から14歳、15歳、16から18歳の3群に分けて見ると、12から14歳においては主に男子、あるいは女子接種歴なし、女子接種歴不明が多いのですが、3から6か月と短い例が非常に多くなっています。一方、16から18歳の群では、女子(接種歴あり)の集団における数が多く、この群では明らかに37か月以上、あるいは25から36か月以上と持続期間の長い例が多く見られます。

 次のページですが、調査時年齢別に見ると、調査時年齢が低い群、12から14歳において男子、女子接種歴なしで症状持続期間の短い例が多い。高い群では女子接種歴あり(接種後発症)の例が多く、症状の持続期間の長い例が多いということです。不明の場合は中間ということです。しかし、このようなことになるのに、調査設計上の限界があります。1つは、発症時年齢の下限が12歳であるために、調査時年齢が低い群では発症から調査までの期間が短くなります。先ほどと同じような感じですが、調査時年齢12歳の群では、発症から調査までの期間は1年以上にはなりません。ですから、分布としては短い例が多くなります。さらに、短期改善例を捕捉しにくいということもあるので、調査時年齢が高い群において短期例が少ないということを把握しているわけではなく、その間に改善してしまった例については把握できていないわけです。ですから、真の分布を反映しているわけではないということです。したがって、調査時年齢別に見た症状の持続期間の違いは調査設計上の限界によるものであって、自然の分布を示しているものではないということです。

 調査時年齢別の所見を踏まえて全体におけるパターンを勘案すると、現象としては四角に書いてあることが観察されていますが、この現象の主な要因は「男子」「女子接種歴なし」「女子接種歴あり(接種後発症)」、各群の年齢分布が異なることと考えられます。すなわち、16から18歳を主体とする「女子接種歴あり」の群においては、16から18歳のパターンが見られ、「男子」「女子接種歴なし」では12から14歳のパターンが見られる。そのことが年齢を勘案しない7ページ上段のグラフにおけるパターンに反映されているということです。したがって、男女別、接種歴別に見た症状の持続期間に違いがあることを7ページ上段のグラフから言うことも、かなり無理があるということです。

9ページ下段、報告診療科です。全国疫学調査においては、対象として10診療科、特別階層の2種類を選んでいます。10診療科に関しては、こうした多様な症状を生じた患者がここに受診するだろうということで、200床以上の病院に関しては全数、200床未満に関しては半数を抽出しています。加えて、特別階層として、こうした症状の出た患者に関する協力医療機関を指定しており、病院としては83施設ですが、こうした患者は特にこういう所を受診されるということで全数を含め、診療科としての単位で88診療科を対象としております。

 次のページですが、男女別、あるいは接種歴別に診療科の分布を見たものです。前回資料をこのような形で出しましたが、その後、診療科で一次調査、二次調査でややずれて報告されている例がありました。その例を細かく見直して再集計をしたために、10例ほど差異が生じており、それに基づいて修正後の結果を示しております。ただ、大きく分布が変わっているわけではなく、特徴としては接種歴ありでは特別階層、接種歴なしでは小児科、接種歴不明では精神科・心療内科が多いということです。

11ページ上段ですが、二次調査において、1施設当たりの報告数の内訳を診療科ごとに示したものです。特に男子においては、1施設当たり10症例を超えるような診療科は、小児科、精神科・心療内科に各1施設ずつ見られました。女子においては、20症例を超える施設は特別階層に1つ、10症例を超える施設は小児科、精神科・心療内科に各2施設見られました。女子に関して接種歴別の内訳を見ると、A群、C群、E群と分けていますが、各群で10症例以上報告例のあった診療科が、小児科、精神科・心療内科、特別階層にそれぞれ見られ、その報告症例数が下段に1326111113ということで示されています。

12ページ上段、別表2ですが、女子のうち、HPVワクチン接種後明示された疾病名で「説明できる」とされた症例で、その方々に限った上での診療科ごとの1施設当たりの報告症例数を見ると、特別階層で24例、1施設から出ているということです。

 以上をまとめると、下段ですが、特に診療科で患者報告数が多い施設としては、男子では小児科、精神科・心療内科で19例、13例、女子、接種歴なしでは小児科、女子、接種歴あり(接種後発症)では特別階層、不明では小児科、精神科・心療内科となりました。13)の小括です。

 症状の層別分析について説明します。前回の報告で、症状の分布を二次報告に基づいて御説明しましたが、それが要因ごとにどう違うのかということで、5つ要因を挙げていますが、その要因に関して層別で症状の特性を見ております。

 第1に年齢です。13ページの下段で、縦に症状の種類が並んでいます。これは前回の報告と同じ順番で並べてあり、おおよそ類似した症状が前後しております。痛み、感覚といったものが出ています。このページは疼痛及び感覚の障害ですが、それを12から14歳、15歳、16から18歳と年齢ごとに分けました。趣旨としては、こうした症状の頻度が年齢によって違うのかを確認するわけですが、もちろん接種歴あり、なし、不明を別の色のバーで示しているので、それも同時に見るということです。痛み、特に頭痛、腰痛・背部痛、腹痛等の頻度が高いわけですが、接種歴あり、なし、いずれもそれ相当の頻度がありますし、これを年齢別に見た場合も、特に大きく差異があるわけではありません。一方、光に対する過敏、音、におい等々については、接種歴ありの16から18歳で頻度が高い傾向がありますが、接種歴ありの年齢分布が非常に偏っております。12から14歳はほとんど0というか、接種歴ありではN=6ですので、頻度的に比較できるというわけでもありません。このような形ですので、余り差異はないのではないかという解釈です。

 次のページでは、同じ比較を運動障害について行っています。ここでも若干16から18歳で頻度が高い傾向はありますが、特に大きな差があるという解釈には至らないと思います。下段の自律神経症状など(1)、15ページ上段の自律神経症状など(2)についても、ややばらつきはありますが、年齢ごとに大きな差異があるとは解釈できないと思います。15ページ下段は認知機能の障害ですが、これについても大きな差はないのではないかということです。

16ページ上段は、症状の数別に見た割合です。12から14歳、15歳、16から18歳、それぞれ接種歴ありで数が多いという特徴はありますが、年齢ごとに見て差があるわけではないという解釈だと思います。下段は1つ以上の症状を有するものの割合ですが、これについても年齢ごとに特に大きな特徴があるとは言えないと思います。

17ページの上段、下段が、それぞれ就学・就労状況、自宅での過ごし方です。これに関しても、特に年齢ごとに見て大きな特徴があるわけではないように考えます。

18ページのグラフは、接種から発症までの期間別で、女子の接種者のみです。ですから、少しパターンが変わって、下段の図でそれぞれの症状について青いバーが1か月以下、緑のバーが2か月以上ということでグラフを書いています。これについても、青と緑で示していますが、特に大きな差はないのではないかということです。疼痛及び感覚の障害、運動障害が下段です。

19ページ上段は自律神経症状、認知機能の障害です。1か月以下のところで認知機能障害が若干高い感じがあります。下段が全体的な傾向、症状の数、就学・就労状況、1つ以上の症状を有する者の割合、自宅での過ごし方です。就学・就労状況等では、やや重篤な例が1か月以下に多い傾向があるかもしれません。

20ページからは、持続期間別です。横に4群並んでいて、持続期間の短いものから長いもののそれぞれの症状の頻度を比較するものです。これについても関節痛、頭痛等々ありますが、持続期間別に見て特に大きな特徴があるわけではないと解釈しました。

21ページ上段は運動障害、下段が自律神経症状など(1)、22ページ上段が自律神経症状など(2)、下段が認知機能の障害です。特に持続期間が短い、長いということで差異があるわけではないような印象です。

23ページは症状の数です。これについても、特に持続期間別に見て特に差異があるとは考えにくいです。下段は1つ以上の症状を有するものの割合ですが、これも差異は余りないと思います。

24ページ上段、下段は就学・就労状況、自宅での過ごし方です。長期にわたる例で、重篤差が大きいということでもないようです。

25ページは、報告診療科別に見たものです。報告診療科に関しては、特別階層とその他で分けています。下段は疼痛・感覚の障害です。これに関しては、特別階層で接種歴ありの群での症状の頻度がやや高い傾向があると思います。特に光に対する過敏、音に対する過敏、においに対する過敏が若干高い傾向があるかもしれません。

26ページ上段は運動障害ですが、これに関しても特別階層で、接種歴なしに関してはN=3ですので比較できる数ではありませんが、接種歴ありに関しては若干高い傾向があります。26ページ下段と27ページ上段の自律神経症状についても、若干高い感じがあります。27ページの下段が認知機能の障害ですが、同様に若干高い感じです。

28ページ上段は症状の数ですが、これに関しても特別階層で10以上の症状の例数がやや多い印象があります。就学・就労の状況については、ほとんど休んでいたという辺りの頻度が若干高めな傾向があるかと思います。

29ページは、症状に関する主治医の判断・診断名別に見たものです。3群に分かれており、別表1から3で示しています。別表2は、定義上接種歴ありの方しかありません。症状の頻度については、別表2に相当する部分に関して症状の頻度がやや高い傾向が見られます。運動障害、自律神経症状など(1)(2)、認知機能の障害についても、どちらかというと別表2の群で頻度が高い傾向があります。

32ページ、症状の数です。これに関しても、別表2に当たる部分で81例ということで、10以上の例数が若干多いということです。下段に関しては、特に差はないと思います。就学・就労状況、自宅での過ごし方に関しては、特に大きな差はないかもしれませんが、主治医が「説明できない」と回答した群においては、緑が若干高い感じがします。

34ページ上段、小括として「多様な症状」の頻度、その種類ですが、それぞれ特性ごとに比較したところ、「接種後発症」「接種歴なし」ごとに比べた場合、同程度で見られる症状と、比較的「接種後発症」で割合の高い症状があります。ただ、「接種から発症までの期間」「症状の持続期間」といったファクターで分けた場合に、層ごとに特徴的な所見があるかというと、特にはなかったと考えます。一方で、「報告診療科」、特に「特別階層」「症状に関する主治医の判断・診断名」別に関しては、「別表2」に相当するものですが、特定の症状について頻度の高いものが幾つか見られたということです。症状の数に関しては、同じように「年齢」「接種から発症までの期間」「症状の持続期間」といった要因で層に分けた場合には余り変化はありませんが、「特別階層」「別表2」では症状の数に関して頻度が高い傾向がありました。以上、小括ということです。

3番目は、症状の数が10以上あるものの傷病名の分布です。35ページ上段ですが、HPVワクチン接種歴がない人について、それぞれ別表1から3に相当すると判断した患者における傷病名を列記したものです。ほとんど別表3に相当しますが、頻度が高いのが起立性調節障害、適応障害、身体表現性障害です。下段はHPVワクチン接種後に発症した人での別表1から3の中での傷病名の分布ですが、別表1が多くを占めており、起立性調節障害、末梢性神経障害性疼痛、片頭痛等々があります。別表2に相当するものとしては、自己免疫脳症が18例ということで、例数としてはかなり多いですが、それ以外にもHPVワクチン関連神経免疫異常症候群といったものも見られます。別表3については、起立性調節障害、頭痛、倦怠感といったものが複数例見られたということです。

 この表の中で、傷病名別の人数とともに傷病名別の報告診療科も示しています。例えば、下段で別表2の自己免疫脳症が18例ありますが、これは1施設から報告されています。別表3の起立性調節障害の例では、3例が3施設から1例ずつ報告されているということです。

36ページですが、ワクチン接種歴が不明の人についての傷病名のリストです。主には別表3から構成されており、起立性調節障害、鬱病、身体表現性障害といったものが複数例見られます。

 小括として、下段にあるように、症状の数が10以上である人、「多様な症状」を示している人たちに関する傷病名の分布としては、接種歴なしについては起立性調節障害、適応障害、身体表現性障害等が多く、接種後発症に関しては自己免疫脳症、起立性調節障害、特に自己免疫脳症が18人。接種歴不明に関しては、起立性調節障害、鬱病、身体化障害ということです。接種歴不明の傷病名が接種歴なしに割と近いということは、接種歴不明の人の中に接種歴なしの人たちが多いのではないかと推察されます。

4番、有訴率に影響しうる要因を考慮した分析です。1)接種歴不明の扱いに関してです。下段に前回資料の表をそのまま提示していますが、取り扱い12について接種歴なしに関する期間有訴率を2.820.4と報告しております。さらに、接種歴に関して不明の例を全て接種歴なしと想定した場合には、それぞれの値が5.146.2になるということです。

 ワクチン接種後に発症した人については、取り扱い118.2、取り扱い227.8となっております。接種歴不明とともに、接種と発症の前後関係が不明なもの、(D)と書いてあるものに関しても接種後発症に加えて、それに基づいて有訴率を計算すると、22.069.5となります。ただ、どの数字がどの仮定を置いて計算したものか、組合せが分かりにくいという御指摘がありましたので、下段のようにどのパターンがどの数字に当たっているかを明示しました。20.431.827.8とありますが、20.4が取り扱い2の接種歴なしに当たるものです。赤い数字の27.8が接種後発症の取り扱い2、接種歴不明は勘案していないものです。31.8というのは、これに接種と発症の前後関係が不明な(D)に当たるものを足したものです。これに関しては完全に接種歴不明ではないので、それを足したものを今回の図には示しています。

 仮に接種歴不明の人たちを全て接種歴なしと仮定した場合、下段の真ん中に当たりますが、接種歴なしの有訴率は20.4から46.2に増えます。接種歴ありは、接種歴を考慮しない場合と全く同じです。一方、接種歴不明を全員接種後発症、接種歴ありと仮定した場合は、赤のバーが69.565.5と増えます。青のバーはそのままです。ですから、比較する値としては接種歴に関して仮定をした場合、全員接種歴なしとしたら46.2、接種歴ありが31.8、あるいは27.8が対応し、接種歴不明を全員接種後発症とした場合は、20.469.565.5という組合せが対応します。接種歴不明を全員接種歴なしと仮定した場合には、有訴率は接種歴なしの群で接種歴ありよりも高くなるということになります。

 まとめとしては、39ページ上段ですが、接種歴不明の例の扱い方によって、有訴率はどちらが高い場合もあり得ると、どちらが高いという高低の判断をするのは困難であるということです。

42)は、接種から発症までの期間です。女子接種者のみですが、40ページ上段の取り扱い2で、有訴率が10万人あたり27.8です。直近の接種から発症までの期間に関しては、全く制限を設けず計算をしております。これについて1か月以内、3か月以内という制限を設けて計算するとどうなるかを下段で示しています。訂正ですが、接種後発症の「1年」と書いてあるのは「1年以内」、「6か月」は「6か月以内」ということで、4つに関して「以内」を付け加えてください。考慮せずの場合は27.8ですが、1年以内、6か月以内という制限を加えるに従って有訴率は減少していき、1か月以内という制限を加えると10万人あたり8.6となります。ですから、このような制限を加えての有訴率は、むしろ接種歴なしの数字よりも低くなる場合もあります。この点から言っても、接種歴あり、接種歴なしの間で有訴率を比較し、高低の判断をすることは難しいと言えます。

43)症状の数です。42ページ上段ですが、有訴率に関しては症状が少なくとも1つあるということで、分子としてカウントしています。ただ、症状が1つでもあればよいのかというところで、症状の数という軸だけですが、2つ、3つ、4つと増やして、10ある人という制限を加えて有訴率を計算しております。ですから、1以上で今まで報告している27.820.4という数字が掲示されていますが、順次下がっていき、10以上では接種後に発症した群での有訴率が15.6、接種歴なしは5.3となります。ずっと並行して動いているので、このグラフ上では接種後発症が常に接種歴なしより高いわけですが、注目すべき点は、接種歴なしの群においても、10以上の制限を加えた場合も0にはなっていないということです。

 下段ですが、小括のポイントとしては、症状の数を多くすると有訴率が低くなる。C群がA群よりも高い。しかし、10以上に限ってもA群では有訴率は0ではなかったというところをポイントとして挙げております。

43ページ上段は、今回の追加分析を通じてのまとめです。追加分析の二次調査報告症例の特性で幾つか所見を挙げましたが、その所見に関しては見掛け上のものということで、結論に含めるべき所見はなかったと判断しました。症状の層別分析からですが、「多様な症状」の内容、症状の種類としては「年齢」「接種から発症までの期間」「症状の持続期間」については層別に解析しても余り違いはなく、「報告診療科」「症状に関する主治医の判断・診断名」別で見ると、「特別階層」「別表2」で、特定の症状について頻度の高いものがあったということです。「多様な症状」の数に関しても同様に、「特別階層」「別表2」で頻度の高い傾向がありました。

 有訴率に影響を及ぼす要因に関して分析したものですが、「接種歴不明」の取扱い方によっては、「接種歴あり」と「接種歴なし」の間で「多様な症状」の有訴率に逆転を生じることもありました。「接種後発症」と報告された患者について、接種から発症の期間を「1年以内」「6か月以内」「3か月以内」と短くするに連れて有訴率は減少し、場合によっては「接種歴なし」よりも低くなる場合もありました。この2点からすると、接種歴あり、なしの間での有訴率の比較は非常に難しいものであるということです。ただ、症状の数を10以上に増加させた場合でも、「接種歴なし」において10万人あたり5.3人は存在するということですから、5.3人というのは意味のある数字ではなく、0ではないということに意味があるのだと思います。

 今回の追加分析の結果も含め、全体の今回の研究班の報告としてのまとめです。調査を行うに当たっての前提としては、以下のものがあります。「多様な症状」があり、HPVワクチン接種歴のない患者数、これは「患者の人数と有訴率」と訂正していただきたいと思いますが、これを全国規模で推計できました。それにより、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告された症状と同様の「多様な症状」を有する者が一定数存在するかどうかを確認することが目的で、HPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係について言及する調査ではないことを前提に始めています。

 結果を解釈するに当たって、HPVワクチン接種歴の有無別に、「多様な症状」の有訴率や内容を比較することには、以下の点から困難があります。「接種歴なし」と「接種歴あり」の年齢分布が極端に異なる。一方は12から14歳が主体、一方は16から18歳が主体です。更に種々のバイアスがあり得るということで、こうした前提、あるいは解釈上の注意点がある上での我々の研究班の結論としては、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する者が一定数存在したということを明らかにし得たということです。

 以上ですが、1点訂正をさせていただきます。8ページの下段の2ポツの真ん中ですが、「女子接種歴なし」とありますが、「『男子と女子接種歴なし』で調査時年齢が低い例が多く」です。「男子」が抜けておりますので、この部分の訂正をお願いします。訂正としては、この箇所と、40ページの下段の表の「1年以内」「6か月以内」「3か月以内」「1か月以内」と、43ページの下段の「HPVワクチン接種歴のない患者の人数と有訴率を」の3点です。報告は以上です。

○桃井委員 長時間にわたり御説明いただきまして、ありがとうございました。今日も大変詳しく明快に御説明いただきましたが、疫学調査はそのスタディデザインによって意味付けができる数字と意味付けができない数字があるということを、これは疫学調査の本質的な特性ですが、大変明確に御説明いただきました。

 では、大変大部の資料ですので、順を追って皆様方に御意見を伺いたいと思います。まず、前回の会議で今回の追加分析の御意見を頂いた委員の先生から、この結果について御意見を頂き、その後、その他の先生方からの御意見を頂戴したいと思います。

 まず、11)の接種から発症までの期間についての追加分析です。これは山縣委員から御意見を頂きました。これについては、6ページの11)に小括のまとめがあります。年齢別では、調査設計上の理由から接種から発症までの期間については言及できないというおまとめを頂きました。これについていかがでしょうか、山縣委員から。

○山縣委員 ありがとうございます。これは先ほど祖父江先生からも言われたように、1つは、やはりケースを見ているので、発症から短期で症状は出たけれども、その後消失した方が、年齢の高い方で入っていないという非常に大きな問題がここにはあるということが、これを見てもよく分かったと思います。また後で御質問させていただきたいと思いますが、要するに、こういう症状を見ていくときに、ある一定期間、症状が出ている人だけを見ていくというのは、なかなかそういう意味では、軽症やもっと重症の人が入ってこないという非常に大きなバイアスが入ってくるということは、誰が見ても分かったはずだということです。どうもありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございます。大変重要な点だと思います。発症を見ているわけではなくて有訴を見ているわけですから、改善した例は拾い上げられていないという本質的な問題があります。それは祖父江先生からも御説明を頂きました。ありがとうございます。ほかに委員の先生方から御意見はおありになりますでしょうか。いかがでしょうか。多屋先生、何か御意見はおありになりますか。

○多屋委員 特にはありません。接種回数とか年齢層の切り口で見ても特定の傾向を示しているということはないということが分かったかと思います。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかに何か御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次に移らせていただきます。

12)症状の持続期間についてです。これは、倉根委員から、症状の数について年齢ごとに比較できるのか、症状の数は年齢によって多くなるのか、時間が経過すると多くなるのか等の御意見があり、追加の解析を頂きました。これについては小括12)にまとめがあります。これも調査設計の影響を受けており、男女別、接種歴別に見た症状の持続期間に違いがあるとは言えないというまとめを御説明いただきました。倉根先生、御意見をお願いいたします。

○倉根委員 私もこれを見て1つ感じたのは、ページが違うのですが、例えば23ページなどを見ても、経過が長いと症状が多くなる。つまり、増えていくというものではないのかなと感じます。ちょっと飛んでしまいましたが、ここも感じたような次第です。こことちょっと関係があるのですが、経過が長ければ症状が増えるというものでもないのかなともちょっと理解したのですが、そのような理解で正しいでしょうか。

○祖父江参考人 そのとおりだと思います。

○倉根委員 つまり、これは、振り返ると、多症状が出る方は短い期間の間に多くの症状が発現してしまうということですよね。

○祖父江参考人 ただ、症状の持続期間の短い人が短い人の代表例ではないのです。ごく一部の人を扱っているので、正当な比較ができているかどうかは定かではないと思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○倉根委員 はい。

○桃井委員 ほかにおありになりますでしょうか。ここも先ほど、改善例は入っていないので、これをパターンとして理解することはできないという明快な御説明を頂きました。

○倉根委員 あとは、改善というか、人によって、ある時期にある症状が出て、消えてまた出るという方もあると思うのです。結局、そこもある時点で見ているから、そういう傾向も見られないわけですよね。

○祖父江参考人 調査期間としては半年ということを設定していますので、その間の症状ということです。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○倉根委員 はい。

○桃井委員 それでは、次に移らせていただいてよろしいでしょうか。次は、13)の二次調査報告症例の報告診療科についてです。これは、何人かの委員から御意見、御要望を頂きました。多屋委員からは、接種歴あり、なし、不明について、各々を報告した診療科の数についていかがか。山縣委員からは、特定の診療施設からの報告が多いことについてどう考えたら良いか。稲松委員からは、HPVワクチン由来と判断した症例の詳細を報告した診療科数の分析等の御意見を頂き、診療科について追加解析を実施していただきました。これについては、まとめは小括13)にあります。男女別、接種歴別に報告数が多かった施設については、1施設当たりの最大報告患者数がまとめられてそこに書いてあります。これについて御意見を頂いた委員から御意見を頂きたいと思います。多屋委員、いかがでしょうか。

○多屋委員 詳細なまとめ、ありがとうございました。特別階層の診療科の先生方からの、回答率といいますか、88診療科にお問い合わせいただいて、16診療科から回答を頂いたというように11ページの上の表で見たのですが、その読み方で間違っていないかということを教えていただきたいと思ったことと、ある1つの診療科の先生から27人の患者さんの報告があったということで、ここはこの先生の御意見が多く反映されていると理解していいのか、その2つだけ、すみません、お願いします。

○祖父江参考人 後半はそのとおりです。前半は、何診療科、数をもう1回。

○多屋委員 88の特別階層の診療科に調査をしていただいたと書いてあるのですが、そのうち回答いただいた施設が16ぐらいの施設であったと理解して良かったのでしょうか。

○福島参考人 福島からお答えします。特別階層については、最初に一次調査依頼を送付したのは88診療科ですが、そのうち、該当の患者さんがありますと報告した診療科だけが二次調査の対象になります。委員の先生方にはお手元に資料があると思いますが、前回部会資料の、下のページ数の5ページになります。5ページの下に「特別階層」とありますが、88診療科のうち一次調査に回答したのは85科、そのうち患者ありと回答したのは33科ですので、特別階層としては33科が二次調査の対象になります。

○多屋委員 ありがとうございます。33科の特別階層から、大体半分ぐらいの施設から二次調査も回答していただいたと、そのように。

○福島参考人 二次調査で診療科別の回答数は出していないのですが、本部会の資料11ページの上段の表を見ますと、先生が言われているような回答率なのではないかと思います。

○多屋委員 ということは、その中の約半分ぐらいの先生からの御意見が特別階層の回答と理解して良いということになりますか。

○福島参考人 はい。

○多屋委員 ありがとうございます。

○桃井委員 よろしいですか。それでは稲松委員から追加の御意見を頂きましたので、よろしくお願いします。

○稲松委員 全体の理解を難しくしているのは、どうも特別階層の施設の先生の幾つかの強硬な意見が全体を振り回しているような、そういう感じがちょっとします。ただ、この疫学調査からそのことは恐らく言及できないのでしょうけれども、その内容について詳細に別の方向から洗って、こういう方がこういうことを言ってということをはっきりさせておいたほうがいいような気がちょっといたします。

○桃井委員 ありがとうございます。山縣委員からも追加の御意見を頂きましたので、よろしくお願いします。

○山縣委員 ありがとうございます。私もここの12ページのまとめの所でよく分かりましたが、先ほど多屋先生も御指摘されたように、一次調査で比較的多く出されているところの二次調査の回答が、少しない施設があるのかなと、今回の11ページを見ると思うのです。ですので、一次調査から出た結果と二次調査による結果が、回答してくださった施設による違いも考慮しないといけないのかなということを逆に思いました。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかにございますか。

○福島参考人 今、山縣先生が言われた患者数の違いについて、少し補足させていただきます。一次調査で患者あり、そしてかなり多い数の患者さんを報告された診療科については、その患者数が、記憶に基づいたものもあったと思います。実際、二次調査の段階で、「一次調査の患者数を修正させていただきます」と修正されてきた診療科があります。その場合は各施設からの申告ということで、集計に反映させて前回部会資料をお作りしました。ただ、一次調査で多くの患者を報告された診療科で、二次調査には協力いただけなかった診療科については、一次調査での報告患者数のままになっております。実際の患者数がもう少し少なかったかもしれないのですが、その辺の事情は把握できないままということで御了承願います。

○山縣委員 ありがとうございます。

○桃井委員 御説明、ありがとうございました。ほかの委員の先生方から、これについて何か御意見はおありでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、次の症状の層別分析について御意見を頂きます。年齢、接種から発症までの期間、あるいは症状の持続期間の切り口で層別の分析を頂いています。今までの分析について御意見を頂きたいと思います。これにつきましては、年齢層別の分析については倉根委員から御意見を頂きました。接種から発症までの期間別の分析については山縣委員、症状の持続期間の分析については倉根委員、報告診療科別の分析については、柿崎委員から御意見を頂戴いたしました。

 もう1つ、症状に関する主治医の判断・診断名別の分析について、倉根委員から頂きました。この層別分析については小括2にまとめが書いてあります。「多様な症状」の内容については、年齢別、接種から発症までの期間別、症状の持続期間別に見て、層別の違いは言えない。報告診療科別、症状に関する主治医の判断・診断名別に見た場合、特別階層、別表2で特定の症状について頻度が高いものもあったというまとめを頂きました。多様な症状の数については、年齢別、接種から発症までの期間別、症状の持続期間別に見て、層別の違いは言えない。報告診療科別、症状に関する主治医の判断・診断名別に見た場合、特別階層、別表2で症状の数が10以上ある患者の頻度が高い傾向があったというように、先ほどまとめて御説明を頂きました。これにつきまして御意見を頂きたいと思います。まず倉根委員、お願いいたします。

○倉根委員 これを拝見して全体として見れば、年齢別あるいは症状の持続期間と年齢との関係、それから、接種あり、接種なしでも大きな差はないというように見えるのですが、その解釈でよろしいのでしょうか。

○祖父江参考人 そのように記載したつもりです。

○倉根委員 もう1つ、小括2で、例えば3つ目で、まず、特別階層の頻度が高い、それから、多様な症状の数も特別階層で高いというのは、むしろそういう患者さんが特別階層に指定されているので、そういう所に行ったということでしょうか。

○祖父江参考人 行ったのかもしれないですし、その診療科においてそういう症状を把握する傾向にあったといいますか。

○倉根委員 あったということですね。

○祖父江参考人 どちらとも解釈できると思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○倉根委員 はい。

○桃井委員 では山縣委員、お願いいたします。

○山縣委員 接種から発症までの期間に関して1か月で分けたときに特に変わりがないということがよく分かりましたので、それで結構です。ありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございます。柿崎委員。

○柿崎委員 詳細な検討、ありがとうございました。報告診療科別の層別解析をお願いしたわけですが、先ほどもありましたが、特別階層は協力医療機関ということで、接種後で症状がある患者さんが集まっていて、接種していない患者さんが少ないということで接種のあり、なしで比較できないかと思うのですが、25ページの表で、その他の診療科においては、接種歴なし、あり、不明で、ある程度数が分かれているかと思います。その他の診療科の接種歴ありの一部の方は特別階層のほうに紹介されて来るかとは思いますが、その他の診療科において、接種歴なし、あり、不明で、症状に関して一部の症状、例えば自律神経症状などは3群間でほとんど差がないわけですが、認知機能の障害などで、若干、接種歴ありの群が多いように見える表もあるのですが、これは差があると見てもいいのですか、それとも差がないと解釈したほうがよろしいのでしょうか。

○祖父江参考人 幾つかの症状に関しては接種歴ごとに見て、特に接種歴ありで頻度が高いということは、前回の報告において行っています。ここの認知機能ですとか、あるいは刺激に対して過敏ですとか、そういったものが見られます。今回は、接種歴あり、なしということではなく、それにプラス、報告診療科、年齢といったもので層別化した場合に特徴があるのかということを見たので、特に接種歴あり、なしでの差は余り強調していません。前回報告のときにおいても、幾つかの症状においてはそのような差のあるものもありましたということは報告しているつもりです。

○桃井委員 よろしいでしょうか。

○柿崎委員 はい。

○桃井委員 ほかの委員の先生方から御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次にいきます。

 次に、3番目ですが、症状の数が10以上である者の傷病名の分布についてです。これは倉根委員から追加の御要望がございました。接種歴あり、なし、不明について、症状が10以上ある者の傷病名について特徴があるのではないか、これについて解析をということでした。倉根委員、お願いいたします。

○倉根委員 まず35ページの下の所で、先ほども出ていたかと思うのですが、この別表2HPVに関連するというような傷病名が、特に自己免疫脳症については1つの診療科から18が報告されているということで、この診療科の先生なりがかなりこの病名を付けておられるのかなと感じました。それを除いても、4つの診療科からHPVに関連があるというような診療名が付いているということで、かなり偏りがあるのかなとは、これを見て感じました。

 もう1つは、別表2HPVに関連があるというものを除いて、例えば35ページの下のほうに別表1や別表3でいろいろな傷病名が出て、特に別表3に出ておりますが、これとその症状、多様な症状を有する、その上の接種歴がない、それから、36ページの上のほうの不明であるという所を比べると、比較的多い傷病名、例えば起立性調節障害とか、同様の傷病名が付いているのではないかと感じました。これ全体を何という名前で出せばいいのか私は分かりませんが、機能性身体症状なり、そういうところに出てくる症状を、それぞれ、ある症状を強く示しているのかなというような感じを少し持ちましたので、ワクチンの接種歴がある、あるいはなしでも類似の症状が出ている。

 とは言え、一方、ワクチンの接種歴がない方でこういう、傷病名としてはこういう症状が出てきますが、それをもう少し、これは傷病名として出ておりますので、もう少し何か、専門家に、こういう症状は実際にはどういうものなのかというのをヒアリングなりで具体的にお示しいただけると我々の理解ももう少し強まるのかなと。特に35ページの上の表に出てくる患者さんたちが実際、どういう症状であるか、そして、それが35ページの下の所と類似性があるのかどうかというのをもう少し具体的に示していただけると有り難いかなと思いますので、患者さんを診ておられる先生にヒアリングなりを、あるいはこういう患者さんを紹介していただけるということがあるとよろしいのかなと思いました。以上です。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかに委員の先生方から御意見はおありでしょうか。

 確かにこういう患者さんたちの診療においては、同じ患者さんを診たとしても、診た医師によって診断名は恐らくかなり違ってくる、非常にバラエティが多くなってくるだろうと思われます。それがこういう状態の共通の問題、医学的にも問題であろうと思いますので、この診断名だけを見て全体像を見るのはなかなか難しいという倉根先生の御意見もおっしゃるとおりだと思います。どういう患者さん方が、特に非接種者の群でどういう患者さん方がいらっしゃるのかというのは、知っておくことは大変プラスになることなのだろうと思います。

○倉根委員 あと、ここに付け加えるとすれば、例えば、ここで出てくる症状数が多い患者さんが、いわゆる重症であるのか、症状数は多いけれども比較的治療によく反応する、あるいは重症度が少ないのか、あるいは、多いということはやはり重症度が強いのか、そういう何か、これは個別の患者さんによって違うのかとは思いますが、そういうことも我々は、なかなか具体的には、この数からだけでは分からない部分がありますので、そういう意味でも、そこを教えていただけると有り難いと思います。

○桃井委員 ありがとうございます。症状の数だけで、重症度はイコールではないのだろうと思いますので、その辺の分析も必要なのだろうと思います。ありがとうございました。ほかに委員の先生方から御意見はおありでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、4の有訴率に影響しうる追加解析の御説明を頂きます。これは、山縣委員から御意見を頂いて追加分析がされました。結果の考察に当たり、影響度が大きいバイアスについての感度分析ができるかという御意見を頂戴いたしました。これについては、小括41)にまとめが記載してあります。接種歴ありが大きくなる場合も、これは接種歴不明例が大変多いものですから、不明例の取扱い方によって有訴率が接種歴ありのほうが大きくなったり、接種歴なしが大きくなったり、両方の場合があったというようにまとめられております。山縣先生、御意見をお願いいたします。

○山縣委員 ありがとうございます。前回の資料に比べて、この38ページの下段を示していただいて、それが非常によく理解できました。それから42ページの、この43)にはなりますが、これに関しましても、数別に見ていっても接種歴なしの方は0ではなく、むしろあるということと、これに関しても、例えば接種歴不明の人をどこに入れるかによってこの青の線が赤の線の上に来るということもあるということも、先ほどの38ページのものを見ると理解できると思いました。どうもありがとうございます。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかの委員の先生方から御意見はおありでしょうか。有訴率は発症率でないので、数字の理解が難しいところは繰り返して御説明いただきました。恐らく実態はこの間にあるのだろうと思いますが、ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、42)の接種から発症までの期間を考慮した分析についてです。これも、山縣委員からの御意見によって実施していただきました。これは、小括42)にまとめが書いてあります。接種後発症の方については、直近の接種から発症の間を短くするに従って有訴率が減少する。1か月以内だと、接種歴なしよりも小さい数字が出る場合もあったという、接種後から発症までの期間別の有訴率を出していただきました。これについて、御意見を頂いた山縣先生からお願いします。

○山縣委員 先ほどから何度も繰り返しのことで、当然、発症までの期間を入れてしまうと、必ずしもそれを反映しているわけではないとは言え、このように変わってくるということがこれでよく分かったと思います。ありがとうございます。

○桃井委員 ほかにございますか。

○倉根委員 4ページの下の図とも少し関係するのですが、接種から発症までの期間を切っていった場合に、例えば1年超、あるいは2年超、3年超というところでも、ある数、発症するとして上がってくるものがある。こういうある時期から後ろを、コントロールとは言いませんが、何がベースラインかと見るような解析、そして、発症後、非常に早い1か月未満、あるいは2か月未満との比較、そういう解析というのは意味があるのでしょうか。それは、なかなか難しいし、余り意味がないのでしょうか。

○祖父江参考人 接種から発症までの期間で、因果関係に関しての判断を下すといいますか、間が空いているものに関しては因果関係は弱く、1か月以内であれば、比較的因果関係のあるものが多いのであろうというところはそのとおりだと思うのですが、どこで区切るかに関して、きちんと定義ができるのであれば、数字としてそれ以降の所は、いわゆるベースラインですと、接種とは関係なく生じた、類似の発症といいますか、そういったものとしてカウントできるはずですから、そこが今回、接種歴なしの部分でカウントされている頻度と同等であろうというように推察できると思います。

 ただ、それは、接種から発症までの期間のどこで線を引くかはよく分からないところで、さらに、接種から発症までの期間が短いところでも、実はベースラインは存在するはずです。接種歴とは関係なく、短期間でも起こる例もあるはずです。ですから、常にそういうものがあって上乗せの形で因果関係のあるものが存在しているのだろうという、その考え方はそうなのですが、期間を限定してというところがなかなか難しいので、数字でもって明確に、これはこうと言うのはなかなか難しいと思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか、倉根先生。ありがとうございました。ほかに御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 次に、43)の症状の数についての追加分析を御説明いただきました。これについては山縣委員から御要望がございました。先ほども御意見の中に付け加えていただきましたが、改めて御意見をお願いいたします。

○山縣委員 先ほどのとおりで、42ページの上段の所でよく分かりました。要するに、数が増えても、やはり接種のない人でこういったことを発症されている方がいるということと、これは不明が入っていない図ですので、先ほどの不明をどこに入れるかによってこの青と赤の線の位置がやはり変わってくる可能性があるということでよく理解できる図だと思います。ありがとうございました。

○桃井委員 ありがとうございます。ほかに御意見はおありでしょうか。よろしいでしょうか。これで追加解析の御説明に対する御意見を全て頂戴いたしました。最後に祖父江参考人に何か、御質問等、全体としておありの方はいらっしゃいますか。

○長谷川委員 初回接種後と複数回接種後のこの症状の出方で、発熱との関連があるものは何か、分かるものはございますでしょうか。

○祖父江参考人 接種後の発熱に関しての情報は取っていないですよね。

○福島参考人 すみません、代わりにお答えいたします。本調査では20157月から12月の期間に症例対象基準でお示しした症状を呈した方をピックアップしていただいていますので、接種後に発熱があったかどうかということを追跡しているわけではございません。また、本調査の目的は、最後のスライドでお示ししましたとおり、あくまでも非接種者における多様な症状を有する患者の人数と有訴率を見るものですので、先生が言われている部分にターゲットを当てている調査ではないということも御理解いただきたいと思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。調査項目ではないということですね。山縣委員。

○山縣委員 今、福島先生からもありましたように、今回の調査の目的をきちんと最後に改めて明確にしていただき、そのことに関しての答えもきちんと出していただいたという意味で、この疫学調査にご尽力いただいた、祖父江先生、福島先生、誠にありがとうございました。ただ一方で、ここで課題になっている、このワクチンの副反応として考えられるのか、どうなのかといったようなことを我々が知るためには、基本的にどのような研究デザインなり情報なりが必要なのかということについて、もしもコメントがございましたらお願いしたいと思います。

○祖父江参考人 どれだけ因果関係にアプローチできるかというところだと思いますが、今、日本においてHPVワクチンを接種して副反応と言われるものが出た人、出なかった人、この人たちを対象とした研究は事後的に行わざるを得ないものでして、ここについて質の高い研究をこれ以上行うということは余り、望みは少ないのかなと思います。

 あと、私として一番気になるところは、数のカウントはしています。接種歴なしの人のその分子としての数を出しています。ただ、この人たちが本当に接種歴ありの人で生じていた分子と同じものなのか、同じ性質を持っている人たちなのかということは、こういうアンケート調査、疫学調査ではほとんど限界があって、そこについての確認は、もうひとつ踏み込んだ形で症例を検討するというような、今、倉根先生がおっしゃったような形での検討がどうしても必要ではないかと思います。ただ、全体を通して、因果関係に関してアプローチをするということはかなり限界があって、そのことに関してきちんと追求するのであれば、今後起こることに関して、きちんとした仕組みを作って対応するということが必要なのだと思います。

○桃井委員 ありがとうございました。大事な所だと思いますが、前にも多分御意見を頂いたと思いますが、これは特定の疾患についての調査ではないので、症状群であるという、大変本質的な困難さを伴うところもあると思います。ほかに御意見、あるいは御質問はおありになりますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、長時間質疑応答を頂きまして、ありがとうございました。これまでの議論は大変膨大ですので、もう既に先生方の御説明、そしてお答えでなされていると思いますが、確認だけさせていただきます。まず、今回の疫学調査の目的について、祖父江班長から明快に御説明いただきました。資料43ページの下段ですが、目的はこれらの「多様な症状」があり、HPVワクチン接種歴のない患者の人数がどのぐらいであるのか。これも様々なスタディデザインによってバイアスがかかりますが、これを全国規模で推計してみるのが目的でした。それによって、ワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する者が、一定程度存在するかどうかの確認が目的であった。繰り返して説明なされましたように、また私どもも理解しておりますように、本疫学調査はワクチン接種と接種後の症状の因果関係について、言及できるスタディではないことを確認させていただきます。そして、接種歴あり、なしに関しまして、「多様な症状」の有訴率の数字が様々な分析、追加分析によって出ましたが、接種歴あり、なしの年齢分布が極端に異なることや、様々な調査デザイン、様々な調査の内容のバイアスから直接比較することは極めて困難であるという、本質的な問題も御指摘いただきました。

 次に、今回報告を求めた患者の症例基準についてですが、これは冒頭で明快に御説明いただいたとおりです。「多様な症状」、症状が、少なくとも1つ以上ありということが繰り返し説明されましたが、単に1つ以上あるということのみならず、資料に明記されておりますように、重篤という観点で症状が3か月以上持続して、かつ日常生活、通勤や通学や就労に大きな影響がある方を報告対象としたということです。この報告を求めた患者の症例基準についても、本審議会としても妥当であったと考えてよろしいと思いますが、これでよろしいでしょうか。御異論がないようですので、この調査に関して、以上の目的と対象について改めて確認させていただきました。

 本日は前回御報告頂きました、第一次の報告にプラスして、追加分析の結果を御説明いただきました。その結果として、まず「多様な症状」の内容を種々の特性別に比較したところ、「接種後発症」「接種歴なし」で同程度の割合で見られる症状と、「接種後発症」で割合が高い傾向にある症状が認められた。しかしながら、「年齢」「接種から発症までの期間」「症状の持続期間」別に見て、層別の違いは言えない。一方で、「報告診療科」「症状に関する主治医の判断・診断名」別に見た場合、「特別階層」、HPVワクチン接種に関連する傷病名で説明できるとされた群で、特定の症状について頻度が高いものもあった。

2番目には、「接種後発症」と「接種歴なし」の有する症状の数については、「年齢」「接種から発症までの期間」「症状の持続期間」別に見て、層別の違いは言えない。しかしながら、「報告診療科」「症状に関する主治医の判断・診断名」別に見た場合、「特別階層」、HPVワクチン接種に関連する傷病名で症状を説明できるとされた群で、「症状の数が10以上である者」の頻度が高い傾向があると言えた。

3番目には、「接種歴不明」の取扱い方について、これが多数あるものですから、「接種歴あり」と「接種歴なし」との間で、どちらに入れるかによって、それぞれの有訴率が逆転する状況がある。したがって、逆転する間のどこかが実際を反映しているのであろうが、どちらに入れるかによって、逆転したという数字上の事実が認められたということです。

4番目には、「接種後発症」と報告された患者については、「直近の接種から発症」までの期間別に解析してみますと、「1か月以内」「3か月以内」等々と短くなるに従って有訴率が減少して、「接種歴なし」よりもむしろ低くなる場合もあったという数字が出たということです。5番目には、有する症状の数を「少なくとも1つ」から「10以上」に増加させた場合、当然かもしれませんが、有訴率は減少するけれども、「接種歴なし」においても、10万人あたり、「10以上」が5.3人存在するという結果が出たということです。

 結論は、先ほど資料に記載され御説明いただきました。HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」、この「多様な症状」の中には日常生活に支障がある重篤度を持つ者という対象に限っております。これを有する者が一定数存在したという結論を頂きました。研究班で追加分析を頂きましたものも含めまして、以上の結論に特に御意見等おありにならないでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、前回1226日に御説明いただいた第1回の御報告と今回の追加調査の結果の議論を考えますと、本疫学調査によってHPVワクチン接種歴のない者でも、接種後に報告された症状と同様の「多様な症状」を有する者は一定数存在することが確認されたということで、結論としてはよろしいでしょうか。出された数字の解釈については、今まで御議論いただいたとおりです。これを結論とさせていただきます。

 また今回の疫学調査では、HPVワクチン接種歴のない者で、接種後に報告された症状と同様の多様な症状を有する者は、様々な機能性身体症状、あるいはその周辺診断名など、様々な類縁の診断名が付いている実態があることが明らかになりました。非常に診断名については多様であることも特徴であります。これについては、先ほど倉根先生から御意見を頂きましたとおり、実際に傷病名、あるいは診断名だけでは全貌が見えてこないことも御意見を頂きました。また、この領域は医療従事者であっても十分な理解をされているとは言えない状況にあるという極めて難しい領域でもありますので、今後は、ここに上がりました接種歴のない方々で様々な診断名が付いている、特に、症状の数に限らず重篤な状態を示している方々がどのような状況にあるのかを、少し様々な情報を集めて、実際に御診療いただいている先生から伺えればそれが一番なのですが、それが可能かどうか分かりませんが、実態をきちんと知って、明らかにする。これは数字で明らかにするというよりも、非接種者の中にどういう患者さん方がいらっしゃるのか。そういうことも考えたらいかがかという御意見を頂きました。これについては特に御異存がなければ検討したいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、検討させていただきます。ありがとうございました。追加解析につきましての議題2については以上です。何か追加の御意見等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議題12をこれで終わらせていただきます。事務局から何かありますでしょうか。

○事務局 本日は長時間にわたりまして、活発に御議論を頂きましてありがとうございます。次回の開催につきましては、日程調整の上、日時について御連絡を差し上げます。

 また、傍聴者の皆様へのお願いです。本会議終了後、先に委員が退室いたしますので、委員の退室が終わりますまで、そのまま席でお待ちください。事務局からは以上です。

○桃井委員 それでは、今日の会議はこれで終わらせていただきます。祖父江先生、福島先生には前回に引き続きまして、長時間御出席賜りまして誠にありがとうございました。これで終わらせていただきます。


(了)

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