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2023年5月18日 令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第3回)議事録

○日時

令和5年5月18日(木)15:00~

○場所

オンライン開催

○出席者

小塩会長 田辺分科会長
池端委員 稲葉委員 江澤委員 田中委員 田母神委員 長島委員
濱田委員 林委員  東委員  古谷委員 松本委員  森委員
<事務局>
伊原保険局長 大西老健局長 辺見障害保健福祉部長 森光審議官 斎須審議官 眞鍋医療課長 古元老人保健課長 津曲障害福祉課長 田中参事官他

○議題

○人生の最終段階における医療・介護
○訪問看護

○議事

 

○小塩会長
それでは、ただいまより「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」の第3回を開催いたします。
私は、中央社会保険医療協議会で会長をしております小塩と申します。
本日の議事の進行につきましては、私が務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議ですが、第1回、第2回と同様、オンラインによる開催としております。また、会議の公開につきましては、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、委員の出席状況について御報告いたします。本日は全ての委員が出席されています。
続きまして、前回と同じ御説明となりますが、この意見交換会は令和6年度の診療報酬・介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の同時改定に向けて、中央社会保険医療協議会及び社会保障審議会介護給付費分科会がそれぞれ具体的な検討に入る前に、医療と介護等の連携・調整をより一層進めるという観点から開催するものであります。双方の審議会の委員におかれましては、それぞれのお立場からの御意見をいただくというのはもう当然のことですけれども、そのほかに、ぜひ双方で忌憚のない御意見を交わしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
オンラインで御参加の委員の皆様におかれましては、会議の進行中は基本的に皆様のマイクをミュートにしていただき、発言をされる際には、Zoomツールバーのリアクションから「手を挙げる」をクリックしていただき、私が順番に指名いたしますので、マイクのミュートを解除した上で御発言をいただくようにお願いいたします。御発言が終わりました後は、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
それでは、議事次第に沿って進めさせていただきます。
本日はテーマが2つございまして、まず、「人生の最終段階における医療・介護」、2番目に「訪問介護」について意見を交わしていただきたいと思います。
最初に、「人生の最終段階における医療・介護」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
○眞鍋医療課長
医療課長でございます。
それでは、「人生の最終段階における医療・介護」につきまして、資料1及びその参考資料を用いまして御説明をさせていただきます。なお、資料は大部につき、説明はポイントを絞って行わせていただきますことを御容赦いただければと思います。
それでは、資料1を御覧ください。
1ページ目は目次でございます。
まず、2ページの上の「1.現状」のところでございますけれども、死亡の場所についての記載がございます。
傾向といたしまして、自宅や介護施設等における死亡割合が増加しているということ、また、令和3年における死亡場所は医療機関が67%、自宅は17%などとお示ししてございます。
また、次の○にございますけれども、「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査報告書」、これはこの資料の中では以下「意識調査」と記載がございますが、それによりますと、病気で治る見込みがなく、およそ1年以内に徐々にあるいは急に死に至ると考えたとき、最期を迎えたい場所を自宅としている一般の国民の方々の割合が、これは速報値でございますけれども、43.8%といったデータとなっているところでございます。
次に「(2)人生の最終段階における医療・ケアに関する意思決定支援について」でございます。
1)では、人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスの考え方について、るる記載をしてございます。
一番下の○でございますけれども、厚生労働省におきましては、平成19年に「終末期医療に関するガイドライン」といたしまして、3ページ目にかかりますが、初めてのガイドラインが制定され、以下3度ほど改訂をしてございます。
次の○にありますとおり、特に平成30年の見直しにおきまして、在宅医療・介護の現場でも活用できるよう、医療・ケアチームの対象者に介護従事者が含まれることを明確化し、さらに「ケア」という名称も追加されてございます。
その次の○とその次の○でございますけれども、それぞれこの活用に当たっての留意点を示してございます。まず、本人による意思決定を基本とする、あるいは本人との会話や話合いが繰り返し行われることが必要であるといったことを記載してございます。
以上がガイドラインの説明でございます。
取組状況が2)でございます。
1つ目の○には、様々な立場で推進をしてきた、普及を進めてきたことを書かせていただいてございまして、その実施状況でございますけれども、3ページの下から2つ目の○でございます。こちらには、この話合いの状況について先ほどの意識調査によりますとということでございますけれども、「詳しく話し合っている」または「一応話し合っている」と回答した方々の割合が約3割となってございます。また、医療・介護従事者が担当患者・利用者本人とどのように話し合っているかでございますが、3ページ~4ページ目にかけまして、「十分に行っている」「一応行っている」と回答した者が医師で6割程度ということでございます。
次の○でございますけれども、話合いを行う場面といたしまして、「病気の進行に伴い、死が近づいているとき」という方が医師では8割程度いらっしゃった。あとは記載のとおりでございます。一方で、「人生の最終段階に限ることなく、日々の診察の中で話し合っている」とした方が医師で21%などとなっているところでございます。
次に、在宅医療・介護連携推進事業における取組について御説明をいたします。
4ページの真ん中ほどの○でございますけれども、在宅医療・介護連携推進事業におきまして、地域の実情に応じて、特に医療と介護の連携が必要となる4つの場面の一つに「みとり」を挙げているところでございまして、その次の○でそれに係る取組をお示ししているところでございます。ノート、パンフレットの作成などによる取組が最も多いという状況でございました。
4ページの一番下でございますが、診療報酬・介護報酬の対応でございます。例えば、4ページの下から2つ目の○におきましては診療報酬における対応を御説明してございまして、入院医療でございます地域包括ケア病棟や在宅療養支援診療所・病院等におきましては、このガイドラインの内容を踏まえた意思決定支援の指針を定めることを求めているところでございます。
また、次のページにかかりますけれども、この指針を作成している医療機関が約5割ということで、これは資料で申し上げますと参考資料のP22でございますが、このようなデータもあるところでございます。また、当該指針を作成している医療機関の9割以上が、十分な話合いを行うことを指針として定めていることを記載しております。
次に介護保険におきましては、令和3年度の介護報酬改定におきまして、基本報酬やみとりに係る加算の算定要件で、当ガイドラインの内容に沿った取組を行うことを求める見直しを実施したところでございます。
5ページの真ん中の3)は、本人の意思確認が困難な場合の意思決定支援についてでございます。
1つ目と2つ目の○でございますけれども、本人の意思が確認できない場合には家族等の役割が一層重要になるとされているところでございます。また、本人の最善の利益が何であるかについて、家族等と医療・ケアチームは十分に話し合い、合意を形成することが必要とされております。
次の○でございますが、認知症施策推進大綱におきましても、「特に認知症等により意思決定に困難を抱える場合には」とございまして、あらかじめその在り方について検討することが必要とされているところでございます。尊厳が尊重された医療・介護の提供が重要であるとされているところでございます。
その下、家族等による支援状況と家族支援の状況でございます。
自らが意思決定できなくなったときにということでございますけれども、自らの医療・ケアに関する方針を決めてほしいと思う者、もしくは決めることができると思う方については、「家族」と答えた方が最も多いということで9割でございました。
6ページに進ませていただきます。
一方で、なかなかそのサポート体制ができていないと感じていらっしゃる医療従事者の方もかなりいらっしゃるということをお示ししております。6ページの真ん中の○でございますけれども、一般の国民の方々のアンケート結果におきまして、人生の最終段階におきまして、医療・ケアを受けたいという場所に関する希望についてでございますけれども、下の2行でございますが、認知症の方は末期がんや慢性の重い心臓病の場合に比べまして、介護施設を希望する方が多いということもお示しをさせていただいているところでございます。
次に6ページの下から2つ目の○でございますけれども、こちらは在宅医療が提供されている患者さんにおきまして、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱ以上の方々の割合が半分以上でありまして、この日常生活自立度が低い場合には、その人生の最終段階における医療・ケアの方針を共有している割合も低くなる傾向にあることをお示ししてございます。
7ページに進みます。具体的に、本人の意思に基づく医療・介護の提供についてでございます。
下の2)でございますけれども、まずは情報の共有がどのようになされているかであります。一番下の○でありますが、この医療・ケアチームと情報の共有でございますが、記録に残して共有しているといった方々の割合でございますけれども、8ページの上に行きまして、医師が8割などとなっているところでございます。
その次の○でございますけれども、先ほどの指針を策定している医療機関のうち、約9割の医療機関が意思決定の話合いの内容につきまして、関係者と共有することを指針として定めている一方、医療機関のうち、その内容の実施に当たっての評価として「達成」または「おおむね達成」と回答していただいたところが8割であったところでございます。また、その次の○は共有の方法でございますが、電子掲示板など、時間や場所を選ばないという選択肢もあるというところでございます。
次に緩和ケアの提供についてでございます。参考資料は49ページ以降でございます。2つ目の○の意識調査におきましてどこで最期を迎えるかというアンケートに関しまして、重要としていることは「家族等の負担にならないこと」が7割、次いで「体や心の苦痛なく過ごせること」が6割でございました。
8ページの下でございますけれども、がん疾患に対する緩和ケアに関しましては、先行した取組がなされてきた分野だと思いますけれども、第8次医療計画におきましても、こういった様々な場面で切れ目のない緩和ケアが実施される体制の構築が推進されることが重要とされてございます。
9ページ目は、診療報酬における対応ということでございまして、緩和ケアに係る診療報酬や、訪問看護におきましても診療報酬による評価が進められてきたこと。
そして、次の小見出しの「薬局の麻薬調剤等への対応状況」でございます。麻薬小売業免許を有している薬局が約8割あるということでございますけれども、24時間対応可能なところが3割、また、地域差もあるということでございます。
次に「がん以外の患者への緩和ケアの提供」でございます。1つ目の○にありますように、これは平成14年のWHOの緩和ケアの定義でございますが、がんに限定されるものではないということ、その次の○では、「循環器疾患の患者に対する緩和ケアの提供体制のあり方に関するワーキンググループ」でも、心不全患者さんに対する全人的なケアが必要であるということがお示しされているところでございます。
10ページの「介護保険施設における緩和ケア」でございます。それぞれ報酬上評価があるということが1つ目の○で、次の○でございますけれども、施設内で実施可能な医療といたしまして、疼痛管理(麻薬なし)が可能と回答した施設が、介護医療院では約7割、老健でも約7割、特養では約4割でございます。麻薬を使用する疼痛管理につきましては割合が下がってきてございまして、介護医療院では46%、介護老人保健施設で2割、特養で15.7%だったということでございます。
「4)本人の望む場所での看取りを行うための医療・介護の提供について」でございます。その中で、「第8次医療計画の対応」ということで、先ほど申し上げたとおり、患者が望む場所でのみとりを行う体制を確保することを推進ということでございます。
その次の○で、「救急医療の体制構築に係る指針」におきまして、このアドバンス・ケア・プランニングに関する議論の場等において、患者の希望する医療について必要なときに確認できる方法について検討を進めるとされているところでございます。
10ページの一番下は「死亡場所と国民の最期を迎えたい場所」でございますけれども、みとりにつきまして、近年の死亡の場所は、先ほど申し上げたとおり、自宅が増えてきているということを書いてございます。
次に11ページの最初の小見出しでございますけれども、「国民の人生の最終段階における医療処置の希望」に係る記載でございます。こちらの医療処置を望む一般の国民の割合につきまして、「他の病気にもかかった場合、抗生剤を飲んだり点滴したりすること」ということが6割、「口から水が飲めなくなった場合の点滴」が56.2%であったのに対しまして、「中心静脈栄養」「経鼻栄養」「胃ろう」「人工呼吸器」の割合は低くなっているということでございます。
次に、「救急現場における対応状況」でございます。こちらは、都道府県と消防機関との間でDNAR、これは蘇生措置を拒むということでございますが、こういった方針が示されている患者さんの救急搬送の取決めをしているという都道府県が35%とされてございます。また、そういった意思が生かされる割合が増えてきていることを次の○で書かせていただいてございます。
11ページの一番下から「診療報酬・介護報酬におけるターミナルケア・看取りの状況」でございます。取組の状況でございますけれども、診療報酬におきましては、12ページに進みますが、様々な加算などで評価をしてきたということ、在宅療養支援診療所や病院でみとりを行っている医療機関が75.8%でございます。
次の○でございますが、訪問看護ステーションにおけるターミナルケアの利用者は近年、増加傾向にあるということで、特に令和3年度は医療保険・介護保険ともにターミナルケアを利用という方々の割合が非常に増加をしてございます。これはコロナの流行の影響もあると分析をしているところでございます。
次の○でございますが、介護報酬においては施設類型ごとにみとりに関する評価を行っていること、そして、その内容を介護医療院、老健、特養と書き分けてございます。
その下の○でございますが、近年の介護報酬でございますけれども、ターミナルケアに関する取組を推進する改定が行われてございます。
12ページの下から、主な課題でございます。
(1)が人生の最終段階における意思決定支援で、その1)が取組でございますけれども、13ページでございますが、取組がいまだ低調であるということでございまして、さらに推進する必要があるという記述をしてございます
また、先ほど御紹介いただきました在宅医療も行っている医療機関で指針を策定していないというところが約半数存在するということで、こちらも今後、指針を作成していただくなど、意思決定支援が可能な体制を整えていく必要があろうかと思います。
こういったことを踏まえまして、一番下の2)の前の○でございますけれども、医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話合いを行い、日々の暮らしのニーズの変化を捉え、継続的な意思決定支援を行うことについてさらに推進する必要があるとまとめてございます。
「2)本人の意思決定が困難な場合の意思決定支援について」でございます。ここは認知症を含めて記載をしておりますが、単独世帯の認知症高齢者に対する意思決定支援が現状においても非常に課題であり、今後も課題としては大きくなるであろうということでございます。
14ページもるる記載がございますが、本人の意思が確認できない場合の支援についてもさらに推進していく必要があるとまとめてございます。
14ページの真ん中の「(2)本人の意思に基づく医療・介護の提供について」でございます。
1)の情報の共有については、医療機関と高齢者施設等の間の情報共有の現状について記載をしてございます。それぞれの意思決定に関する情報の共有につきまして、医療機関からの情報提供の割合、逆に高齢施設等からの情報提供の割合につきまして乖離が見られるということも書かせていただいているところでございます。さらに、医療・介護従事者の連携が必要であろうとしているところでございます。
14ページの一番下は「緩和ケアの提供について」ということで、15ページに移りまして、先ほど御紹介したデータを引きまして、上から2つ目の○でございますが、介護保険施設におきましては、疼痛管理への対応が困難な施設も一定数ある。特に麻薬を使用した対応については、対応可能な施設の割合が低い状況であるということ。療養場所や疾患に限らず、患者・利用者本人の意向に沿った緩和ケアの提供を求められるとしているところでございます。
次の○は、麻薬の調剤を求められた際に対応できない薬局も一定数あることなどを記載してございます。
その下の「3)本人の望む場所での看取りを行うための医療・介護の提供について」でございます。最期を迎えたい場所が自宅とする方が43.8%。ただ一方で、それまでに医療・ケアを受けたいところとしては医療機関で、自宅は27.3%ということでございました。こういう意向にどう応えるかということ。
また、次の○には、先ほどの処置につきまして望む方の割合が低いということもお示しをしてございます。
最後の16ページから17ページは検討の視点でございます。先ほど申し上げたようなそれぞれの課題とされたことにつきまして、どのように考えるか。1)では、本人の意思決定確認が困難な場合の意思決定支援ついてどのようにするべきか。
(2)では本人の意思に基づく医療・介護の提供について、1)で情報の共有についてどのようにすべきか、2)で緩和ケアの提供についてどのようにすべきかと。最後の17ページの3)で本人が望む場所でのみとりの提供についてどのようにすべきかというまとめにしているところでございます。
以上で資料の説明を終わらせていただきます。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いします。
なお、御発言に関しては以後の議題も含めまして、時間の都合上、誠に恐縮ですが、お一人当たり3分以内をめどにお願いいたします。なお、3分経過したら、これもまた恐縮ですけれども、事務局より合図がございますのでよろしくお願いいたします。
それでは、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
ありがとうございます。
総論として、いずれの場面におきましても、意思決定を支援する取組は重要であり、認知症患者の増加を踏まえますと、あらかじめ御本人の意思を共有することは推進していくべきであろうと思います。
例えば、急性疾患の治療において、意思決定をその場になって突然迫られることは、適切かつ、患者・御家族双方の望む形での治療を進める上で、大きな障害となることがあります。ただし、だからといって性急に意思決定を促すことや、救急隊の現場での負担軽減などのみを目的として強制的に推進するようなことは、この取組の本来の目的ではありません。この場合、介護施設の入居時や医療機関の入院時において、単なる要件化などを行うだけでは、往々にして医療現場につくることだけが下りてしまうことになります。手順に沿って話し合うという本来の趣旨が現場にしっかり下りるような工夫が必要です。
日々の診療や介護の中で、丁寧に御本人の意思を確認することが大切であります。また、御本人の意思は刻々と変わりゆくものであることと、多職種の大変な多忙さを踏まえますと、対面に加えてICTを用いてリアルタイムにその情報を多職種で共有することも重要であると考えます。また、今後の多死社会におきまして、在宅医療の中で緩和ケアについてその重要性が高まることに異論ありません。
緩和ケアは、単にケアが行われるようにすることのみならず、外来、入院、在宅の医療提供体制全体の中で考える必要があります。人生の最終段階を支える医師が、在宅医療や施設における医療の中で、患者さんの疾病ががんか否かにかかわらず、緩和ケアの知識や経験の豊富な医師らとICT等も使って連携することで、御本人が望む、住み慣れた環境で最期を迎えることが可能となると思います。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、林委員、お願いいたします。
○林委員
ありがとうございます。
テーマ6ですが、かかりつけ歯科医が人生の最終段階まで患者さんと関わるケースも増加しておると聞いておりまして、歯科医にとっても非常に重要で、かつ重い内容の議論だと感じております。
参考資料の76ページの「人生の最終段階において望む処置」を見ても分かりますように、口から十分な栄養を取れなくなることは、人生の最終段階でどのような処置を望むかということの大きな判断基準になっていると思われます。咀嚼、嚥下といった口腔機能を扱う歯科としては、最期まで口から食べてほしい、そして、できる限りその支援をしたいという思いがある一方で、口から食べられなくなったら歯科の役割が終わりというわけではなく、口腔を最期まで清潔にし、疼痛や不快な症状ができるだけ少ない状況で過ごしていただくことができるよう、お口のケアを行うことが非常に重要と考えております。
口腔からの摂取量の減少や服用薬剤の増加などにより、唾液分泌量の減少に伴う口腔乾燥や口内炎などの症状が増えてきております。できるだけ口腔を清潔に保ち、湿潤した口腔環境を維持することは、人生の最終段階においても、QOL向上や肺炎の併発などの観点から患者さん・御家族にとって非常に重要と考えております。
人生の最終段階においても、体や心の苦痛がなく過ごすことができるように支援するといった観点からも口腔健康管理は非常に重要と考えます。現状では、患者さんの状態にかかわらず、歯科衛生士の訪問などにおいて制限があるところもございますが、人生の最終段階において、頻回の訪問や必要処置等を行うことができるよう、患者さんの状態に応じた適切な口腔健康管理が実施できる体制についての検討もお願いしたいと思っております。
私からは以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。
検討の視点に関して発言させていただきます。
人生の最終段階における医療・介護、緩和ケアにおいて重要なことは、患者及びその家族の方々の様々な苦痛や不安感などをどれだけ和らげることができるかという観点からの総合的な対応です。
近年、緩和ケアについては、医療用麻薬を早期から積極的に使用することや、患者が納得するレベルまで痛みが取れるよう使用するなど、考え方が変化してきております。医療用麻薬に対応できる薬局は全国で約5万2,000件ありますが、現在、多種多様な医療用麻薬等の開発が進み、多くの製品が販売されており、また、管理や流通に関しては関係法令を遵守する必要もあります。特に、高容量の注射薬が急に必要となったとしても、必ずしもその時々に必要となるものが薬局に備蓄されているわけではありませんし、取り寄せるにも時間がかかることもあります。
そのため、医療用麻薬等を適時円滑に供給するためには、医療機関等から薬局に対して、緩和ケアを受ける患者に関する情報や状態の変化に応じた治療計画があらかじめ適切に共有されていることが必要です。また、終末期には患者の状態も刻々と変化するため、その対応のために頻回な訪問も必要な場合があり、特に夜間・休日の緊急時に対応するためには時間外対応の視点も重要です。
必要となる麻薬の備蓄や夜間・休日対応は、日頃から医療機関や訪問看護ステーション等の関係機関と連携しておくことで、地域の薬局がいつでも円滑に対応できるようになりますので、連携体制の構築が不可欠と考えます。医療用麻薬の管理や調剤は、法令上の規制を遵守しての対応が必要であり、相応の手間がかかるため、これを頻回に行ったり、夜間・休日対応を行ったりしている薬局にはかなりの負担が発生しています。このような薬局に対して何かしらの配慮が必要と考えますので、今回の改定の議論ではその辺りも含めて検討できるよう準備をお願いできればと思います。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、田母神委員、お願いいたします。
○田母神委員
ありがとうございます。
人生の最終段階における医療・介護について意見を申し述べます。
全てのプロセスにおいて重要なことであると考えておりますが、意思決定支援に際して、患者、利用者、そして家族とともにあるという視点を医療従事者・介護従事者が持ち、患者家族を支え、必要な情報を患者・家族が十分理解できるような形で説明し対話を続けること、そして患者の選択と意思決定を支え、患者の価値観を尊重して、身体的、精神的、社会的、個別的な支援を各職種が連携し、それぞれの役割に基づき提供することが重要であると考えております。
看護職は、外来、入院、在宅、介護事業所等において、医療専門職としてケアに取り組んでいるところでございます。御本人が望む場所で最期を迎えるために、特養のように要介護度の高い方が入居する施設等におきましては、各施設の入居者の状況に応じ、看護職の配置の増加をすることができるような仕組みを検討する必要があるのではないかと考えておりますが、それが難しい場合もあるかと思いますので、外部から訪問看護が入ることができる仕組みについても併せて検討が必要ではないかと考えております。
現在、末期の悪性腫瘍の方で特養に入居している場合には、訪問看護が入ることができますが、悪性腫瘍以外の場合にも必要に応じ、訪問看護や認定看護師や専門看護師、特定行為研修修了者が施設の看護師と連携することができ、症状緩和等の対応力を向上させるという取組も重要ではないかと考えております。
そして、参考資料88ページに看多機での看取りの状況をお示しいただいているところでございますが、御自宅での見取りをお考えになっていた場合でも、独居の方でありますとか最終の段階においては自宅での介護が難しいという場合もございますので、そうした場合に事業所内で看取ることもできる柔軟性を持つケアも重要になっていると思います。
本会で調査をいたしましたところ、特にターミナル期の看多機の利用者の方は、泊まりの利用のニーズが高い状況にございました。御本人が望む場所での看取りを実現するために、看多機のように柔軟に対応できるサービスを利用しやすい形で整備していくことも必要であると考えております。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
古谷委員、お願いいたします。
○古谷委員
ありがとうございます。
人生の最終段階における医療・ケアについては、本人の意思により決定されることが望ましいと思います。在宅医療・介護連携推進事業の中で各地の連携センター等で行われている、エンディングノートの周知や終活についてのセミナー等の意思決定支援事業を、より早い段階から周知するための施策を推進する必要があると考えます。
また、今後、意思決定に困難を抱えることが予想される介護サービス利用開始時、例えば居宅の契約時等にACPについて促す等、具体的な働きかけをすることも有効ではないかと思っております。
特別養護老人ホームにおいては、令和3年度報酬改定でみとりへの取組が強化され、意思を尊重したみとりの取組は進んでいると考えております。一方で、配置医師等の関係で必ずしも意思に沿わない事例もございます。本人の意思を尊重した施設でのみとりに対する医療での評価や、施設のみとりに関する加算へのインセンティブの強化を検討する必要性も感じております。
本人の意思に基づく医療・介護の提供についてでございますが、医療から介護サービスを利用される場合は、ある程度状態が安定し、終末期も見据えた利用をされることが多いので、情報を含めた連携が取りやすいですが、介護から医療の場合には、急変時等が多く、連携が取りづらい状況があります。
医療機関と特別養護老人ホーム等の介護施設の双方において、医療情報や生活支援情報の伝達・活用を推進するために、診療報酬及び介護報酬に関連してインセンティブを設けること、また強化することを検討し、さらに、医療機関と特別養護老人ホーム等の介護施設との間で医療情報や生活支援情報の相互交換を行うための標準的なフォーマットを国が策定し、自治体にその活用を推進することを検討していただきたいと考えております。
緩和ケアに関しましては、地域における医療体制や介護サービスの提供状況により大きな差が出ると思います。特別養護老人ホームにおける緩和ケアは、末期がんの入居者に関して訪問診療が認められておりますが、今後、対象疾患の拡大や、薬剤師による薬剤管理等も検討することがポイントと考えます。在宅や特別養護老人ホームにおいて緩和ケアを行うには、それなりの制度や医療との連携体制を構築する必要があり、緩和ケアの課題を克服していく必要があると考えております。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、池端委員、お願いいたします。
○池端委員
ありがとうございます。
私のほうからは、まず意思決定について1点、緩和ケアについて1点お話しさせていただきたいと思います。
まず意思決定に関しては、先ほどの御説明にもありましたように、本人の意思が確認できない場合には家族にということが圧倒的に多いことは、アンケート調査でも分かるところだと思います。ただ、よく経験するのですけれども、ここの意思決定は家族にお聞きする場合、家族の意思を中心にお話しされる方がやはりどうしても多くなってしまう。この場合は家族に声をかけるわけですけれども、家族と医療・ケアチームが、本人がどう考えるだろうということを想像して意思決定をする。あくまでも、主体は本人であるということを中心に考えなくてはいけないところが現場でも少し混乱する場合があるので、その辺をしっかり啓蒙していく必要があるではないかということ。
となると、やはりもう意思表明ができないときに急にどうするのと言われても、なかなか難しいところがあるので、日々、そういうことを考える機会を設けることが大事なので、ひょっとしたら、ある程度の疾患で、外来で受診しているときに、もしものときにどう考えるかというようなことを外来の医師と患者さん、あるいは家族の間でそういう話を持ち出すといったところからの取組、そして、病状が変わるごとにそれを繰り返しやっていくことが本来の姿ではないかと思いますので、そういう取組を支援するような報酬体系ができればいいのではないかと感じております。
もう一点、緩和ケアに関して、特に最近非がんの緩和ケアが非常に重要だと私自身も感じていて、がんに対する麻薬使用等についてはかなり進んできているかと思います。それでも、麻薬の使用はまだ欧米各国に比べて少ないと言われていますが、非がんに関しても、例えば、心不全の重度末期の状態、あるいは閉塞性慢性肺疾患、いわゆるCOPDの末期の状態では、かなり呼吸が苦しくなってつらい、そのつらさを取っていくには少量の麻薬が非常に有効であることが確認されています。そういうところを使っていきたいのですが、そこに対してやはり介護施設でも難しいし、外から入ろうと思ってもがんの末期以外は特養等には医師、看護師、訪問看護師も入れない状況にありますので、その辺を含めて、非がんの緩和ケアに対しては何らかの処置が必要な場面が想像されるのではないかということで、これも検討の課題になるかと思います。
それと同時に、日本人はどうしても麻薬というと非常につらいものと、イメージが悪いので、そこを取り除く啓蒙活動も必要ではないか。
最後に、治療と緩和ケアを同時に行っていくという姿勢もこれから必要ではないか。治療が終わってから緩和ケアではなくて、緩和ケアを同時にやっていくことも必要ではないかということを申し添えておきます。
以上です。ありがとうございました。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、濵田委員、お願いいたします。
○濵田委員
よろしくお願いいたします。
資料1の3ページ終盤から4ページ冒頭で、人生の最終段階における医療・ケアの話合いの実施状況の中で、医療・介護担当者が利用者本人等と「十分話合いを行っている」及び「一応行っている」と回答した割合は、医師59.5%、看護師54.5%、介護支援専門員68.8%となっており、各職種において相当の取組を進めていると考えてもいいのではないかと受け止めております。
一方、各自治体におかれましても、人生会議をはじめとして動画等を含め各種媒体を活用されまして啓発も進んできていると思っておりますが、まだ利用者やその御家族を含め、抵抗感なく意思確認できる環境や風土があるとはなかなか言い難い状況で、結果として御本人の意思確認が困難となってしまい、終末期のケアにおいて、御本人の意思を確認できないまま支援を行わざるを得ないという事案も起きております。
このため、引き続き啓発活動は進めつつ、御本人の状態像にかかわらず、例えば、一定の年齢に達したときなど、何らかの適切なタイミングで、自発的または何らかの働きかけにより、人生の最終段階で医療・ケアを受けたい場所についてなど意思確認を行う機会を確保する仕組みを検討するなど、介護支援専門員等関係者も含め、利用者の思いを共有できる環境整備に向けた取組等の検討及び啓発活動をさらに地域社会の中で推進する方策なども必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、東委員、お願いいたします。
○東委員
ありがとうございます。全老健の東でございます。
資料1の17ページ、「検討の視点」の最後の「本人が望む場所での看取りの提供について」発言したいと思います。資料1の参考の4ページを見ていただきますと、死亡数の動態を見て分かりますように、今後、今よりさらに高齢者の多死時代が訪れることがはっきりとしております。
それから資料1の参考の6ページ、「死亡の場所の推移」をご覧ください。病院・診療所で亡くなる方がやや減ってきており、自宅が少し増えておりますが、やはり介護施設等、施設で亡くなられる方が大変増えていることが分かると思います。
介護保険施設における看取りを考えてみますと、介護医療院や特別養護老人ホームは終の棲家ではありますが、ほぼ満床ですので、基本的に今入所している方が亡くなる、看取りをするという形になります。したがって、随時の看取りの受入れは厳しい状況です。
一方、老健施設は空床がございます。自宅での看取りが困難となった場合でも、在宅支援の一環として老健施設に入所していただいて、看取り対応ということも可能でございます。
老健施設における看取りは年々増加してきておりますが、介護医療院や特養で長期入所している方の看取りとは少し違っております。例えば、今言いましたように看取りにおける直前の在宅からの入所とか、医療機関から看取り目的の入所というものがございます。老健施設は様々な看取りのニーズに柔軟に対応できている実態もありますので、御報告したいと思います。また、今後、冒頭申し上げたように、多死時代に対してどのような制度設計で看取りをきちんと提供していくかというのが非常に重要になると思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、田中委員、お願いいたします。
○田中委員
ありがとうございます。日本慢性期医療協会の田中でございます。
人生の最終段階における医療・介護ですけれども、慢性期や認知症を有する方々においては、何度も指摘があるように、意思の疎通が困難な状況下でのみとりが多いものです。患者さんの居場所は地域包括ケアシステムにのっとって移動していくものです。慢性期にいらっしゃったときには既に御本人からの聞き取りが困難で、データにありましたように、医師が患者さんからの聞き取っているのが20%というような数字にならざるを得ないところも現場であるかと思っています。
一方、アドバンス・ケア・プランニング、ACPは欧米から入ってきた考え方であり、本来では本人の意思の確認が重要とされています。元来考えられてきたこのアドバンス・ケア・プランニングにそぐわない、本人の意思の聞き取りが困難なケースが多く、現場は大変なジレンマを感じている部分があります。また、死生観や宗教観も欧米諸国とは違うと思いますし、先ほど池端委員がおっしゃったように、御家族への聞き取りといっても御家族がなかなか一本化したお考えでない場合も多く、現場は混乱を来しております。
アドバンス・ケア・プランニング、ACPということではなく、改めて超高齢者が世界のどこよりも多くみとり期に入る我が国ならではのみとりの考え方の下に、本人の意思が聞き取れない場合の在り方をもっと明確につくる必要があると思います。例えば、御本人の意思がしっかりとされている段階で、誰もが意思を表明できるような国民感情の育成をどうしていくのかをきちんと考えていく必要があるのではないかなと思っております。
以上です。ありがとうございました。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、稲葉委員、お願いいたします。
○稲葉委員
ありがとうございます。民間介護事業推進委員会です。
1点、意見を申し上げたいと思います。
まず、このテーマにつきまして、病気等の治療という観点から医療が極めて重要なことであると認識をしております。その中で、在宅介護を支える事業者の立場として申し上げておきたいのは、例えば、第1回のこの意見交換会のときの資料にありました要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療の参考資料に示されておりましたことですが、入院による安静臥床を原因とする歩行障害、下肢、体幹の筋力低下といった入院関連機能障害など、入院が在宅介護高齢者の要介護度を悪化させるといった情報もここで新たに認識されたということを踏まえますと、今回の資料1の12ページの「2 主な課題」の(1)、人生の最終段階における意思決定支援としましては、こうした必ずしもポジティブとは言えない情報も含めまして、多様な意思決定の選択が可能となるような情報の提供が必要であると考えます。
また、ほかの委員の方もおっしゃっておりましたが、本人の意思決定が困難になってからよりも、生き方や人生観を反映させることができる早い段階における情報提供等、関与が行われる機会が大切ではないかと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
人生の最終段階における治療方針の選択は、患者中心の医療の最たるものだと言えます。参考資料の12ページ~14ページを拝見いたしますと、話合いが行われているとはいえ、やはり少し時期も遅いかなという印象も持っております。患者の意思が最大限尊重されるよう、多くの患者について、なるべく早期に話合いを開始すべきだと考えます。先ほど来、ほかの委員から出ておりますけれども、一定の年齢に達したらこうしたことを考えようという意識の啓発的な活動も必要かと考えます。
一方、患者の意思決定支援については、療養病棟や在宅医療を実施している医療機関だけではなく、全ての医療機関が共通認識の下で取り組む必要があり、より多くの患者に早期から意思決定支援を行うということであれば、参考資料の14ページにございますが、日々の診察の中で話し合っていらっしゃいます患者のことを最も理解しているかかりつけ医が今後もっと関与、対応することが重要ではないかと考えます。
次に現行の診療報酬では、指針の策定自身が要件になっておりますけれども、もう少し実績にも着目すべきであるということを感じております。
また、これは質問でございますが、介護職との連携については、まず介護の現場で意思決定支援の取組はどの程度進んでいるのかについて、もし御説明が可能であればお願いしたいと思います。
次に、本人の意思決定に基づきます医療・介護が提供されるためには、ICTを活用して救急現場を含めて関係者間で情報が共有される必要があるということは、ほかの委員からも意見が出ております。ただ、これをどんな形で、どんな方法でという仕組みの構築についてもっともっと議論を進める必要があろうと感じております。
最後に、緩和ケアの提供についてですが、専門医師や薬剤師と連携して、在宅でも疼痛のコントロールが適切に行われるようにする必要があると考えます。
私からは以上になります。
○小塩会長 
ありがとうございました。
ただいま松本委員から御質問がございましたが、これについて事務局から御回答いただけますでしょうか。
○古元老人保健課長
ありがとうございます。老人保健課長でございます。御質問に回答させていただきたいと存じます。
介護現場での意思決定支援の取組がどの程度進んでいるのか、その把握状況についての御質問でございました。介護現場につきましては、平成30年度の介護報酬改定におきまして訪問看護などの看護系サービス等、また令和3年度の介護報酬改定におきまして施設系のサービスなどで、本日の資料の5ページにも記載しておりますが、基本報酬や看取りに係る加算の算定要件にガイドラインに沿った取組を行うことを求めるといった見直しを行い、随時取組が進むよう実施してきたところでございます。
直近、令和4年度に行われました介護報酬改定検証の調査におきましては、例えば老健施設におきまして、死亡対象者の約7割に対してガイドラインに基づいた対応が行われたとの報告もございます。ガイドラインに沿った対応が算定要件とされておりますターミナルケア加算でありますとか、看取り介護加算の算定も増加している傾向にございまして、介護現場での取組も進んできているという認識でございます。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
江澤委員、ちょっとお待ちください。
今、松本委員から介護分野において意思決定支援がどのように行われているかという御質問がありました。そこで事務局から御回答いただいたのですけれども、せっかく介護の関係の仕事に携わっている方がいらっしゃいますので、もしよろしければ、今の御質問について何か参考になるようなことがございましたら、ぜひ御教示いただきたいのですが、いかがでしょうか。
それでは、東委員、お願いいたします。
○東委員
今、会長から振られましたので、老健施設における看取りについて現状を御報告いたします。
先ほど申し上げましたように、老健施設での看取りは年々数が増えております。私の施設でもそうですが、ほとんどの老健施設では、看取りをガイドラインに沿ってきちんと対応していると考えております。
その中でも私が重要視しているのは、やはり本人の意思決定でございます。極端なことを言いますと、本人と家族の考え方が違うということもございます。ですから、御家族に確認するというよりは、まず本人に確認をします。例えば、経口摂取ができなくなったときに経管栄養をするかどうか、認知症がある程度進んだ方でも十分に意思を表明できる方はいらっしゃいます。認知症の方の場合、日によって状態に波がございますので、調子のいいときに意思を確認することで十分本人の意思が確認できる場合がございます。そういう形で、なるだけ本人の意思というものを一番重要視しています。全く意思の疎通ができないような方は、先ほども御意見がございましたけれども、御家族から本人のしっかりしていらっしゃる時の意思とか考え方を詳しく聞いて、看取りに当たっているというのが現状でございます。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
古谷委員からもお手が挙がっていますので、御発言をお願いいたします。
○古谷委員
ありがとうございます。全国老施協議会でございます。
近々の調査で、特養の中でみとりを実施した施設は約8割と言われております。また今後、そこら辺のところで、実際これからももう少し積極的に取り組んでいこうという流れ、そして、ACPまたリビング・ウイル等の導入ということでは、まだ全体の4分の1程度という評価も出ていますが、特別養護老人ホームの27年度以降の入所基準の関係の中で重度化した方の入所が非常に多い。そういう中で、やはり認知症で入ってきたときに御本人さんが意思決定できるかということはございますが、家族と併せていろいろ検討するという機会を最初の入所時に設ける施設が数多くございます。入所中、状況に応じて意思が変わるということも多々ありますけれども、時間、また体の状態に合わせて話を聞くという体制は施設においても整いつつあると考えております。ここら辺はまた強化をしていきたいと考えております。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
江澤委員、お待たせいたしました。御発言をお願いいたします。
○江澤委員
ありがとうございます。
ACPという言葉が若干独り歩きしているような感もございますけれども、ACPやガイドラインは、その中身、すなわちプロセスが極めて重要であります。意思決定支援は意思形成支援、意思表明支援、意思実現支援の3つのプロセスから構成されておりまして、シェアード・ディシジョン・メイキング、すなわち相互参加型モデルで丁寧に支援していく必要があります。また、過去の実施したACPが現時点と一致するかどうかは定かではないため、その都度、丁寧に慎重に対応していくことが必要であります。特に死が近づきますと気持ちの振れ幅が大きくなりますので、頻回な話合いが不可欠となります。そのほか、意思決定支援の際には、身体的苦痛、精神的苦痛が緩和されていることが前提条件でありまして、医療・介護の現場はどこであってもそのことは求められると思います。
検討の視点に、早期から行う意思決定支援の在り方という言葉もございますが、ACPは早過ぎると失敗し、遅過ぎると役に立たないという面がございます。すなわち医療・介護が具体的に想像でできる時期、例えば高齢になって、入院をするとか、大きな手術をするとか、あるいは初めて介護サービスを利用するといったとき、そのほか、本人が1年以内に亡くなっても周囲の人が誰も驚かないという時期には、当然意思決定支援を行っておくことが望ましいと思います。
また、本人が意思表示できない場合は、家族と医療・ケアチームが本人の意思を最大限に尊重するために合意を形成していくこととなりますけれども、関わる全員が本人の幸せを願って、4つの医の倫理原則を根拠とした最善の選択を行うことが重要と考えます。ただ、それはあくまでも推定した意思であることは念頭に置いておく必要があります。
先ほど田中委員もおっしゃいましたが、ACPはサポートスタディーなどの海外の医学研究によって、AD、すなわち文書同意は役に立たず、ACP、話合いのほうが有効であったといった検証から、我が国でも普及すべきだということになっております。
一方で、日本人は家族主義であって、他人に迷惑をかけない意識が非常に高い国民でもございます。したがって、日本の文化、風習、宗教、哲学等を踏まえた日本版のACPというのも今後研究していく必要があるのではないかと思います。
最後に、意思はあくまでも本人に帰属するものであって、意思決定を行うかどうかも本人の意思によることとなります。したがいまして、意思決定支援は非常に重要で、これは当然行うべきですけれども、必要に応じて、あるいは御本人が望まないときに強要することは決してあってはならないと思いますので、その辺りは慎重に取り組んでいく必要があると思います。
以上でございます。
○小塩会長
どうもありがとうございました。
ほかにこの1番目のテーマにつきまして、御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
特にほかには御質問がないようですので、この議題に係る質疑はこのあたりとしたいと思います。
続きまして、「訪問看護」を議題といたします。事務局より資料が提出されておりますので、説明をお願いいたします。
○眞鍋医療課長
医療課長でございます。
それでは、訪問看護につきまして、資料2、そして資料2の参考を用いまして御説明をさせていただきたいと思います。こちらも資料が大部でございますので、ポイントを絞った説明になりますことを御容赦いただければと思います。
1ページ目に目次がございます。
2ページ目、「1 現状」といたしまして、まず、訪問看護に係る施策と制度を取りまとめてございます。「1)在宅医療の提供体制で求められる訪問看護の役割等」としてございます。「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められており、在宅医療は患者の日常を支える医療であり、地域包括ケアシステムの不可欠な構成要素、そして、訪問看護はその主要な一翼を担っていると書かせていただいております。
次の○でございますけれども、多くの二次医療圏で2040年以降にそのニーズのピークを迎えることが見込まれているということでございます。
それがゆえに、次の○でございますけれども、今後も安定的な訪問看護サービスの提供体制の整備が求められているというものでございます。
次に制度自体の説明でございますけれども、参考資料7ページからでございます。
2ページの下の2つの○でございますが、まず訪問看護は、介護保険法による居宅要介護者、または健康保険法等による疾病または負傷による居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対しまして、療養上の世話または必要な診療の補助を行うものということでございまして、そのサービスの提供は、病院・診療所、そして指定を受けた訪問看護ステーションで行えるとなってございます。
その訪問看護サービスの流れでございますが、2ページ下から3ページ目にかけて書かせていただいております。
次の○では訪問看護ステーションは、一つの事業所で医療と介護の双方を取り扱うといったことと、主に介護保険では、例えば看護小規模多機能型居宅介護ですとか、あるいは療養通所介護、居宅介護支援事業所といった介護サービス事業所、障害児通所支援などの障害福祉サービス事業所等の訪問看護以外の事業所を併設することもあるということを述べております。
3ページの真ん中が「3)介護保険・医療保険における訪問看護の対象者」でございます。
1つ目の○でございますけれども、それぞれの対象者でございますが、年齢、疾病、状態で区分されてございまして、その状態に応じまして、介護保険または医療保険のいずれかから訪問看護が提供されてございます。訪問看護を含め、介護保険の給付は医療保険の給付に優先するとなってございますけれども、居宅要介護者であっても、医療保険の訪問看護の対象となる疾病が指定されてございます。これは参考資料の11ページにございますけれども、特掲診療料の施設基準別表7、いわゆる我々の世界では別表7と言いますが、こういった疾患であれば、その人に対する訪問看護につきましては医療保険からの給付とされているところでございます。
次の○でございますけれども、介護支援専門員によるケアプランでございますが、介護給付等対象サービス以外の保険医療サービスも位置づけるように努めていただくことが義務とされているところでございます。
次に3ページの下の給付の現状でございますけれども、1つ目の○で毎年増加していることを記載してございまして、その請求額につきましては、1人当たり1月の請求額は3万円台が最も多い状況でございますが、4ページの一番上の行でございますけれども、1か月当たり65万円を超えるような請求額の利用者も約0.4%存在するということでございます。これは参考資料17ページにございます。
次に「(2)訪問看護ステーションの体制整備」でございます。
1)におきまして、これまでずっと訪問看護ステーションの体制整備を行ってきたと書いてございまして、2つ目の○にありますとおり、介護保険では令和4年4月で1万2498事業所、医療保険では令和4年5月審査分で1万3866事業所あるところでございます。近年も増加傾向にありまして、営利法人立のステーション数の増加が著しいところでございます。
次でございますけれども、そのステーション数ですが、都道府県によって差があることを述べており、次の○では、全体の就業者数でございますが、令和2年末の就業者数は5万8000人余となっております。そして、その就業者の中で、次の○で申し述べておりますのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、以下、理学療法士等でございますけれども、約2割の方がいらっしゃるということを書いてございます。
4ページの一番下、その規模でございますけれども、看護職員5人以上という事業所が徐々に増加している。大規模化も進んできているということでございます。その真ん中には、こちらも大きいところでございますけれども、機能強化型の訪問看護療養費Ⅰを算定するところも増えてきているということでございます。一方で、5人未満といったステーションも全体の約半数を占めているということも記載をしております。
5ページの「2)在宅医療のニーズへの対応」でございます。
1つ目の○でございますけれども、訪問看護の利用者、これは介護保険・医療保険ともに増加傾向ということで、介護保険で64万人、医療保険で約38万人でございます。その下段の2つ目の段落には、先ほどのテーマで申し上げましたように、ターミナルケアの利用者が近年増加傾向であり、令和3年度は顕著に増加していたことを書いてございます。
次の○では制度別の利用者の特徴を記載してございます。介護保険による訪問看護の利用者は、循環器系の疾患や筋骨格系、そして結合組織の疾患が多いということでございます。
次に、医療保険の訪問看護の利用者は、医療ニーズの高い利用者である神経難病等でございますけれども、別表第7及び特掲診療料施設基準の別表8に該当する方が多いということでございまして、それぞれ制度で利用される方の患者像は違っているということを書いてございます。また、医療保険の訪問看護利用者のうち、身体障害者手帳、療育手帳及び精神障害者福祉手帳のいずれかを取得している者が約3割を占めていることも挙げられてございます。
次の○でございますが、機能強化型訪問看護ステーションは、その他の訪問看護ステーションと比べまして、別表7、8と言われる医療ニーズの高い方の受入れが多いということでございます。
6ページの1つ目の○でございますけれども、24時間対応のステーションでございますが、全体として約9割のステーションが届け出ていただいているところでございますけれども、規模に応じまして、小さい場合には24時間体制を整備している割合は低くなるということでございます。
上から3つ目の○でございますけれども、医療ニーズが高く、特別な管理を必要とする者に対する訪問看護を評価した特別管理加算の算定者の割合でございますけれども、介護保険では15.7%、医療保険は22.5%ということで、ともに減少傾向にあるということでございます。
次の○では、令和4年度の診療報酬改定の事実を記載してございます。医師の指示に基づき、医療ニーズの高い利用者に対する理学療法士等による訪問看護が適切に提供されるように書式を見直したことを記載してございます。そして、こうした看護職員と理学療法士等との具体的な連携方法でございますが、都度、そういう情報共有の在り方が多いということでございます。「同じ目標を共有」が7割であったということでございます。
次の○でございますが、専門性の高い看護師による訪問看護の評価を推進するという観点から、令和4年度の診療報酬改定におきましては、専門の研修を受けた看護師が専門的な管理を含む訪問看護を実施する場合の評価を新設してございます。
最後の○は、近年の動きということでございますけれども、レセプト情報の利活用の推進等を目的といたしまして、医療保険の訪問看護療養費の請求でございますが、令和6年の5月審査分からオンライン請求が開始され、介護保険分野と合わせた訪問看護全体のデータ分析、地域医療や在宅医療の実態把握等を推進することとしているところでございます。
それでは、7ページの「2 主な課題」に移ります。
「1)更なる高齢化を見据えた訪問看護の役割等」ということでございます。
1つ目の○は、都道府県ごとにばらつきはありますが、着実に増加していることを述べており、2つ目の○では、訪問看護の質の担保・向上をより図っていく必要があるとしております。また、看護職員による定期的な訪問により、利用者の病状や心身の状況、そしてその変化等を把握して評価を行い、必要に応じて訪問看護計画を見直すことを求められている。
次の○では、だんだんステーションの規模が大きくなるということで、その管理者のマネジメント業務が求められてくることが記載されてございます。
最後の○でございますけれども、訪問看護を提供する環境も変化しているということでございます。情報通信機器を用いた診療の普及状況によっては、D to P with Nと略しておりますけれども、オンライン診療の際に看護師が居宅へ訪問し診療の補助を行うといったことも一定程度想定されるということでございます。
「(2)地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制」でございます。
24時間対応の訪問看護ステーションが多いわけでございますけれども、一方で、特定の利用者への訪問看護の提供に特化している、点滴の実態など基本的な診療の補助や24時間対応に消極的であることなど、利用者や地域のニーズに必ずしも対応できていない事業所があることや、医療ニーズが高い特別な管理を必要とする者に必ずしも対応していない事業所もあるということでございます。
次の○では、24時間対応することについて、やはり職員さんの負担もかなりあるということをお示ししてございます。代休が設けられていないという状況も示してございます。
次の○でございますけれども、これは市町村等が取り組む地域の事業に関しまして、どのように参画しているかということをお示ししてございます。
次の○は、さらなる高齢化を見据えてということでございます。体制整備が求められるということ、そして訪問看護の質の担保・向上が必要となる、そして利用者の状態に応じた一体的なサービスを提供できるといった特性をさらに生かしていく視点も重要と記載をしております。
次の○では、看護職員と理学療法士等の連携方策でございます。後段でございますが、各職種が実施した訪問看護の定期的な評価や理学療法士とのアセスメント等も踏まえた訪問看護計画作成などを行っている訪問看護ステーションは約5割にとどまってございまして、理学療法士と看護職員とが協力して利用者の心身の状況を評価することを求められているのではないかということでございます。
9ページの「(3)介護保険・医療保険における訪問看護の対象者」でございます。医療技術の進歩がございます。そういうことで、新たに在宅療養が可能となっている医療ニーズが高い利用者の中には、介護保険・医療保険いずれかで訪問看護を提供するか検討できていないといった方々がいらっしゃる可能性あると承知をしてございます。
また、訪問看護は、先ほど申し上げたとおり、医療保険・介護保険両方のサービスを提供し得るということでございまして、その切り替わりがございます。また要介護被保険者等であっても、医療保険の訪問看護対象となる利用者がおります。このようなときに、ケアプランに医療保険の訪問看護を位置づけられていない場合には、訪問看護ステーションにとっても利用者に提供されている医療・介護サービスの全体像を把握することが困難でございます。また、ケアマネさんにとっても利用者に提供するサービスの総量が把握しにくいということで、こういった適切なケアマネジメントを推進する上で支障となる可能性があると記載をしてございます。
(4)は、制度上の差異でございまして、同趣旨の加算につきまして、制度改正の中で違いがあるところがございますことを示してございます。
こういったことを踏まえまして、「3 検討の視点」でございます。先ほど申し上げました課題につきまして、それぞれどのように考えるかという取りまとめにさせていただいているところでございます。
駆け足でございましたが、事務局からの説明は以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御意見、御質問がありましたらよろしくお願いいたします。
最初に、長島委員、お願いいたします。
○長島委員
本来、在支病や在支診が訪問看護ステーションを持って、ICTも活用して多職種連携をしながら、必要に応じて在宅と入院を使い分けてみとりまで行うのが良いと考えます。在宅医療を受ける患者さんにとって必要な訪問看護が適切に提供されることが重要です。このためには、主治医等による在宅医療と訪問看護の密な連携が土台となります。
介護保険と医療保険の訪問看護の対象者については、医療技術の進歩等を踏まえて検討することは重要であるものの、これまでの経緯を踏まえ、必要だからという声のみによって安易にその境界を変更することは、慎重にその必要性を検証する必要があると考えております。
また、訪問看護はそれ単体で多い、少ないを議論すべきではなく、例えば、訪問看護が多い地域では在宅医療の不足を補っている面もあり、在宅医療とセットで、トータルで考えるべきと思います。特にその際、D to P with Nのオンライン診療は、これまでの訪問看護が果たしてきた役割や実態を考えれば、様々な良い取組が既に全国にあると思います。また、ICTを活用した多職種連携も全国で行われております。したがって、これらの好事例を集め、手引書を作成し、共有するなどして、地域の実情に合わせて適切なオンライン診療やICTのさらなる活用を図るのが良いと考えます。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、林委員、お願いいたします。
○林委員
ありがとうございます。
本意見交換会は、本日3回目で最終回ということですが、当初より地域包括ケアシステムのさらなる推進について、歯科の立場から多職種連携や情報連携が非常に重要であることを申し上げてきました。
今回のテーマである訪問看護との連携も課題と考えております。日本歯科医師会が実施した在宅歯科医療に関する調査の中でも、在宅を実施する医科診療所との連携や訪問看護ステーションとの連携が課題と考えている歯科診療所が多いことも明らかとなってきております。訪問看護が必要な患者さんは医療的なニーズが高いと思いますので、そういった方は口腔にも何らかの問題があり、歯科専門職の関わりが必要とされる方が多くいらっしゃると考えられます。
それぞれの地域において在宅患者さんに関わる上で、より分かりやすい仕組みで、多くの職種が連携しやすい仕組みづくりを引き続きぜひとも御検討いただきますようお願いいたしたく思っております。
私からは以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、田母神委員、お願いいたします。
○田母神委員
ありがとうございます。
訪問看護の各視点に基づき意見を申し述べます。
まず1点目でございます。2040年を見据えた看護につきましては、高齢者の医療・介護ニーズや在宅での看取りとともに、小児や難病など、多世代にわたる利用者への対応が求められていると考えておりますし、また安定した24時間のサービスの提供体制の構築が急務になっていると考えております。
また、特に退院後早期や、医療ニーズの高い方々の居宅での療養の継続を支えるための対応力、入院前後の医療機関との連携の強化でありますとか、情報共有の基盤整備という視点も重要であると考えております。
訪問看護の24時間体制の安定的なケア提供に向けまして、事業所の規模拡大というのは、先ほども御説明ありましたが、やはり小規模な事業所が非常に多いという状況になっておりますので、欠かせないと考えておりますのと、ICTの活用などの点も先ほども申しましたが非常に重要な点でございます。
地域偏在、領域偏在なく体制整備をしていくという点とともに、必要な訪問看護体制を確保するという点でも、複数の事業所との連携や医療提供施設との連携によりまして24時間体制を構築していくことも非常に重要になっていると考えております。
また、医療保険、介護保険双方の訪問看護において、外部の専門性の高い看護師との連携や、訪問看護師自身が認定看護師、専門看護師教育や特定行為研修の受講の機会を確保し、より質の高いケアを提供していくための取組が重要であると考えております。
2点目でございます。訪問看護の24時間対応体制に関し、本会が昨年実施した調査では、看護職員の身体的・精神的負担が非常に大きいということが示されております。訪問看護は夜間・早朝、休日等の対応も当然発生いたしますが、そうした場合のさらなる評価や、先ほど申し上げました地域での連携体制、情報共有を前提に24時間体制を複数の事業所や医療提供施設との連携により構築していくことも今後の人口減少社会では重要になってくると考えております。
理学療法士等による訪問看護につきましては、医師と連携を取りながら看護計画を立案している訪問看護事業所におきまして、事業所の管理者が責任を持って、利用者にどのようなケアを提供していく必要があるか、訪問看護の実施・評価・改善を一体的に管理していく必要があると考えております。
4点目でございますが、訪問看護事業所は利用者に対し、訪問看護計画に基づき継続的なケアを実施しておりますが、ターミナル期などで保険の適用が介護保険から医療保険に移行したことで加算の要件を満たさなくなる場合もございます。また、事業所の体制に関して、介護保険と医療保険で要件が異なる場合がございます。重度者の医療ニーズの対応や看取りを実施する事業所に対する評価に関し、同時改定に向けて整理・検討が必要であると考えております。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。
訪問看護の提供体制について発言させていただきます。
今後、ターミナルケアや医療ニーズが高い特別な管理を要する方への対応が増加することが予想されることからも、薬局との連携はもちろん、チーム医療による対応が不可欠と考えます。また、施設間、職種間の連携だけではなく、その地域レベルでの連携体制を構築し、対応していくという視点が重要と考えます。特に地域での連携については、行政も含めた地域の関係団体や関係者同士での話合いの場を設けることが連携推進においては必要不可欠なものと考えますが、地域の事情によっては難しい場合もあるかもしれません。どのような形でどのような関係者が訪問看護ステーションとの連携に関する話合いを行うことが適切なのか。各地域でその地域事情に応じた対応が進められるような推進策があってもよいのではないかと思います。
私からは以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、稲葉委員、お願いいたします。
○稲葉委員
1点意見を申し上げます。
さらなる高齢化を見据えた訪問看護の役割が求められているというところです。8ページの一番下の○の記述を見ますと、看護職員と理学療法士等が協力して利用者の心身の状況を評価し、訪問看護計画の作成に役立てている訪問看護ステーションが5割にとどまっているということは少し残念なことであると思いますし、専門職間の連携についてPDCAの好循環には至っていないのではないかと感じているところであります。
在宅介護を支える事業所の立場としましては、多様な専門職が連携の効果を適切に上げていけるような環境整備を進めていくことが重要であると考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
以上、意見です。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、古谷委員、お願いいたします。
○古谷委員
ありがとうございます。
住み慣れた環境で療養を望んでいる方は多く、また、みとりの場として約半数は自宅や介護施設を希望していることから、今後増大する慢性期の医療ニーズに対し、訪問看護の必要性は増加すると考えます。
必要な医療の状況により、医療・介護の両方から対応できる訪問看護の役割は、日常の管理から専門的な管理、みとり対応等を支援する内容も多岐にわたっているため、日常管理を行う訪看と専門的な対応を行う訪看が連携して行うということや、常勤医師の配置が必須でない特別養護老人ホーム等の介護施設で日常の管理を行い、専門的な対応は訪看という連携も今後考えていけるのではないかと思っております。
訪問看護は高齢者の増加や在宅での医療・ケアの需要の高まりに対応し、高齢者や慢性疾患患者などの在宅での医療・介護ニーズに応え、生活の質を向上させる重要な役割を果たします。現状として、制度上の規制緩和、人材確保と働きやすい環境整備、地域連携とネットワーク構築、ICTの活用と技術の導入などの課題に関する考慮が必要かと考えております。
また、訪問看護の対象者が医療保険と介護保険のそれぞれの制度で別々に把握されている場合があり、一体的にマネジメントされていない現状があります。介護保険の居宅療養管理指導も、ケアプランの中で全てが位置づけられておりません。医療保険と介護保険の利用を総合的に把握できる体制の構築をし、連携を強化することにより、医療と介護をシームレスにつなげたサービス提供ができると考えます。
また、疾患や医療的管理等により制度上の給付が異なりますが、例えば安定期は介護保険、みとり期は医療保険で評価するとし、在宅でも介護でもサービス利用が一体的にできるようにすることで、本人の意思を反映した支援につながるとも考えております。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、濵田委員、お願いいたします。
○濵田委員
資料2の9ページにおきまして、訪問看護につきまして、医療保険の場合にはケアプランに位置づけられていない例もあるのではとの記載もございますが、参考資料2の15ページの調査結果にもございますが、医療保険の訪問看護はケアプランに位置づけているというのは、介護保険外サービスの中で最も高い回答率である結果となっておりまして、介護支援専門員は医療保険と介護保険のいずれの場合においても、ケアプランに位置づけてケアマネジメントを行っているということを御理解いただきたいと存じます。
また、給付管理の対象につきましては、当然、対象である介護保険サービスに限定されてまいりますので、この辺りを正確に御理解賜ればということでございます。
また、訪問看護のサービスにつきましては、その守備範囲などを利用者やその家族がうまく理解していただけますように、我々介護支援専門員としましても、これらをしっかり理解した上で、利用者及び御家族に対しましてケアマネジメントを行っていきたいと考えておりまして、関係職種とのさらなる情報連携に取り組んでいきたいと考えております。利用者やその家族がサービスを理解いただけるかどうかということも含めまして、そこに向けた支援の在り方について、今後もさらなる調査や検討を進めていくべきと考えております。
また、居宅療養管理指導等につきましても、例えば単に、医療機関という表現でケアプランの第2表に記載されることがございまして、給付が居宅医療管理指導なのか、介護保険なのか、あるいは医療保険なのかという辺りも、情報提供を受けられると伺っておりますけれども、引き続き記載してまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、東委員、お願いいたします。
○東委員
ありがとうございます。
資料2の9ページ、「3 検討の視点」の「(2)地域のニーズに応えられる訪問看護の提供体制」の1つ目の○でございます。「医療ニーズの高い利用者への対応の観点から、24時間対応に応えられる訪問看護の提供体制について」と書いてございます。24時間の対応が必要な方がそれほど頻繁にいるとは考えられませんが、24時間対応が必要な看取り等の方等に対応するためには、訪問看護ステーションの人員基準だけにとらわれることなく、例えば訪問看護ステーションが併設の医療機関や老健施設等の看護師等も活用してはいかがかと存じます。その方をよく理解している医療機関や老健施設の看護師が所属先の垣根を越えて対応ができるような規制改革が必要ではないでしょうか。看護人材も潤沢にあるわけではありませんので、今ある社会資源を有効に使うことがこれからは求められるのではないかと思います。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、田中委員、お願いいたします。
○田中委員
ありがとうございます。
私自身も、訪問診療に出て、訪問看護の看護師さんと実際に連携している現場の一医師でございます。そんな経験を踏まえてお話をしたいと思います。
在宅のみとりで、御本人の自宅、住まいで亡くなられている場合には、御家族が慌ててしまってどうしていいか分からなくなることがあります。あらかじめ連携をしていても、搬送の問題等が生じております。訪問看護がその場合に大変重要な役割を持つと考えています。みとり期に訪問看護をもっともっと利用しやすくする必要があると思います。在宅医療推進が叫ばれている中で、まだまだ在医総管以外の診療報酬の整備が追いついていないように感じます。
がんだけでなく、非がん疾患の在宅みとり、施設みとりを推進するのであれば、がん末期や難病以外の方でも医療保険の訪問看護を利用しやすくすることや、在宅酸素療法をコロナ以外の急性疾患でも直ちに算定しやすくすることなど、在宅分野の医療保険の拡大が望まれます。超高齢・多死を迎える上で、非がん疾患の在宅、施設みとりを増やすには、繰り返しますが、医療保険と介護保険のバランスの見直しは喫緊の課題と考えています。
また、山間地域における訪問看護師の移動時間の配慮というものに関して、手厚く見ていく必要があると思います。
最後になりますが、以前にも私が提案させていただきました特定行為のできる看護師さんの訪問看護ステーションへの配置を評価し、在宅生活の延伸を支えるべきと考えております。
以上です。ありがとうございました。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、江澤委員、お願いいたします。
○江澤委員
ありがとうございます。
訪問看護ステーションは、介護サービス類型の中でも増加が著しいサービスでありまして、地域によっては一部過剰となっているところもあろうかと思います。一方で、常に一部のステーションは休眠をしておりまして、その理由は看護職員の確保、あるいは利用者の確保が困難というのが上位を占めています。したがいまして、地域に応じた適正な配置というのも望まれるところであります。
また、かかりつけ医との密なる連携は当然でありますけれども、そのほか、在宅ヘルパーとの連携も重要と考えます。在宅医療は在宅介護の支えがあってこそ継続できるものでありますので、そういった在宅での多職種連携というのは大変重要だと考えております。
また、機能強化を行うために大規模化と言われて久しいところではありますが、まだまだ小規模のステーションが多いのが実態であります。したがいまして、経営母体が異なるところが統合というのはなかなか難しいわけでございますので、大規模化よりも、小規模なステーションは地域での連携体制をしっかりと構築していくほうが合理的と考えます。
次に、適正な頻度の訪問が前提となりますけれども、介護保険では頻回に訪問を必要とする利用者においては、区分支給限度基準額のために、ほかのサービスが必要であってもプランニングできていない実態もあります。それから、24時間定期巡回・随時対応型訪問介護看護、いわゆる定巡の訪問看護サービスとの役割の在り方等も含めて今後検討していく必要もあろうかと思います。
また、一部のステーションにおいて、少数の看護職員の下、相当多くのリハビリ専門職を配置している場合もございますけれども、その際は、訪問看護ステーションの本来の理念と役割を経営者、管理者に十分理解していただいた上で運営していく必要があろうかと思います。
最後に、2025年から40年にかけて労働人口が2割減少する中で、在宅サービスにおいて24時間365日をどう支えていくのかというのは、訪問看護のみならず、非常に重要な課題と思いますので、また今後いろいろ議論が必要だと思います。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
それでは、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
ありがとうございます。
参考資料を拝見いたしましても、訪問看護の利用者、訪問看護療養費はコロナ禍の中でも大きく伸びております。今後、さらにニーズが増加することを踏まえれば、量の確保は重要ですけれども、質を担保することも不可欠であります。
参考資料17ページを見ますと、極めて高額な請求もございます。ニーズの増加や患者の状態によって必要なケースがあることは否定いたしませんが、ケアの中身を十分に検証した上で、仮に不適切なケースと考えられるものがあれば、これについては厳正に対処をしていただきたいと思います。
また、参考資料の20ページを見ますと、営利法人の訪問看護ステーションがかなり増えていることも、この10年間程度の大きな特徴です。その形態を否定するものではございませんが、患者の状態に見合った質の高いサービスが提供されているのかを検討する必要があると感じます。
この関係で1点、事務局の受け止め方について質問がございます。こうした形で営利法人が増えていることは、単にサービスを利用する方の増加のみが理由なのか、それ以外に何か理由があるのか、もしお分かりであれば教えていただきたいと思います。
続きまして、DXの関係でございます。厚生労働省におかれましては、訪問看護レセプトが電子請求に移行することを踏まえ、レセプト分析についても早急に取り組み、実態把握や検証精度を高めていただきたいと思います。また、業務の効率化に向けて、訪問看護指示書の電子化にもぜひ取り組んでいただきたいと考えております。
今回、最終回ということでありますけれども、一連の議論を通じまして共通的に登場してきたワードが「情報の共有」とか「連携」という言葉であったかと思います。その方法論として、「DX」とか「ICT」という言葉が登場しておりましたけれども、厚生労働省としてこうしたものを進めたい、あるいはそのキーのツールとして今話題になっているマイナンバーカードというのを位置づけられているのであれば、医療・介護保険での現状であるとか将来像、またその比較であるとか、そういった資料を今後両方の会議体の場でぜひお示しいただきたいというのが最後の要望になります。
私からは以上になります。
○小塩会長
ありがとうございました。
松本委員から2点の御質問があったかと思います。それでは、お答えいただけますでしょうか。
○眞鍋医療課長
医療課長でございます。御質問ありがとうございます。
訪問看護ステーションが増えている理由、また、営利法人立のステーションが増えている理由というお尋ねであったという承知をしてございます。
1点目に関しましては、在宅医療のニーズの増加ということで、それに対応するサービスを供給していく観点から、ステーション数が増えていくことは自然なことかなと承知してございます。
2つ目のその担う主体としましてなぜ営利法人立が多いかということに関しましては、申し訳ございませんが、私ども現時点でこういった分析あるいはこういう見解があるといったところはございません。
以上です。
○小塩会長
松本委員、よろしいでしょうか。
○松本委員
2つ目はまたの機会に確認させていただきます。ありがとうございました。
○小塩会長
ありがとうございます。
それでは、田母神委員、お願いいたします。
○田母神委員
ありがとうございます。
先ほど田中委員から御意見がございました、悪性腫瘍の末期の方であるか否かにかかわらず、やはりターミナル期になりますと、症状緩和に関する訪問看護の必要性は高まりますし、医療処置が多く必要になるところがございますので、訪問看護が必要なときに対応できる仕組みというのは非常に重要と考えておりますので、全く同じ意見でございます。
また、理学療法士等による訪問看護に偏った事業所については、これまでも直近の改定で様々な適正化がございましたので、その後についても厚生労働省のほうでデータをお示しいただいた上で、具体的に検討する必要があるかと考えております。また、地域における訪問リハビリテーションの提供状況なども踏まえて検討を進めることが必要であると考えております。
また、請求額に関しましては、非常に医療依存度の高い方が在宅で療養されている場合もございます。呼吸や循環の維持に関して医療機器を常時使われている方がいらっしゃいますと、やはり訪問看護が非常に頻繁に、かつ複数名で医療処置をしながらケアを提供することが不可欠であります。訪問看護ではそうした方を早朝・夜間問わず支えているということをぜひ御理解をいただきたいと考えております。
質の担保に関しましては、事業所による自己評価も含めて対応されているところでございます。
以上でございます。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほかにこの2番目のテーマにつきまして、御質問、御意見等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほかに御意見等はないようですので、2番目の議題に係る質疑はこのあたりとしたいと思います。
本日を含めて3回にわたり、同時改定に向けて委員の方々の間で意見交換をしていただきました。若干時間が残っておりますが、もしこの場で追加的に何かコメントをしたいことがございましたら、お手を挙げていただきたいと思うのですけれども、よろしいですか。
池端委員、お手が挙がっていますのでお願いいたします。
○池端委員
ありがとうございます。
今日が3回目で、一旦終了となって、介護報酬・診療報酬をそれぞれの場でこれを基に検討することになるかと思います。3回とも私も非常に勉強になりましたし、本当にありがとうございました。
普通に行けば、次の同時改定は6年後になります。この医療と介護の連携は、同時改定に限らず常に情報を共有しなくてはいけないことではないかと思いますし、今回の3回の議論を踏まえて、それぞれの介護報酬・診療報酬にどう落とし込まれたかということを検証することも非常に重要ではないかと思いますので、もし機会があれば、6年後を待たずに、検証も含めてこういう意見交換会等を催していただけるとありがたいかなと思います。一応要望としてお話ししておきます。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほかによろしいでしょうか。
田中委員、お手が挙がっています。お願いいたします。
○田中委員
ありがとうございます。
この3回の中で私も大変勉強になりまして、ありがとうございました。
手短に申し上げますけれども、今、認知症の方などを見ていますと障害分野との連携というところが出てきております。若年の方、また初期の認知症の方の就労支援については、これまでも発言したとおりですけれども、まだまだ障害部門との連携ということでは、医療・介護のみにとどまってしまっている連携がやはり目立っておりまして、障害のところの話を市町村の担当者の方々が、認知症があったらもう障害サービスは利用できませんみたいなところを、つい先日も感じているところでございます。
そういった意味では、障害分野の方々の参加がオンラインですと余計に目立たないところもありますので、少し御検討いただければと思います。今後も引き続きの検討していただきたいというのは池端委員のおっしゃるとおりで、私も賛成でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○小塩会長
ありがとうございました。
ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、最後になりましたが、田辺会長と私より本意見交換会での御意見を踏まえて、今後の中医協及び介護給付費分科会での議論に向けて、一言ずつ申し上げさせていただきます。
最初に、田辺会長、よろしくお願いいたします。
○田辺会長
現場を踏まえた様々な貴重な御意見を賜りまして、本当に貴重な機会だと思っております。
実は私、6年前の前回も同じような意見交換の場に出させていただきました。そのときのテーマは4つございまして、みとり、訪問介護、リハビリ、関係機関の調整というものでございます。この4つに関しましては、今回もまた議論に上げていただきまして、なかなか一筋縄では解決しない問題なのかもしれないと思ったところでございます。
ただ、前回の同時改定の折には、介護療養病床を廃止するであるとか、介護医療院を新しく創設するということ、リハビリに関しましては、維持期のリハビリを医療からできるだけ介護のほうに持っていこうという制度の移行期に伴う課題というものがある意味背景にございまして、そこで同時改定という機を捉えて、医療のほうから、介護のほうから、どういうことができるのかということを議論したという記憶がございます。
今回はこの4つに加えまして、地域包括ケアという問題、さらには認知症という問題、連携に関しましては急性期の入院と施設における医療に分けて議論してまいりました。
これらを見ていきますと、制度の移行に関して出てくる問題というよりは、むしろ高齢者の方々が在宅であり、病院であり、もしかしたら施設という形で空間的にも移動する。制度的にも、医療・介護という複数の制度を移行する。日常的かどうか分かりませんけれども、そもそも移動するということに伴って出てくる具体的な課題を御提示いただいて議論したものと考えております。
その折には、まず情報の共有がどういう形でできるのか、さらには連携の具体的な体制づくりがどういう形でできるのかということに関して、皆様方の様々な御意見をいただき、今後議論していくのだろうと思っている次第でございます。
2番目といたしましては、新しく加わったところでございますけれども、地域包括ケアという枠組みの中に医療と介護の2つを位置づけて、そこでのすみ分けと連携というものを考えるというところが一番初めの切り口として出てきたところでございます。その意味では、単に医療という部分と介護という部分だけではなく、地域の中で何ができて何が連携できるのかという問題が問われてきたということを感じております。
3番目に共通の課題として出てまいりましたのは、認知症という問題でございます。これもかなり難しい問題だと思っているところでございますけれども、それに対して一体何ができるのかということを今後も考え続けていかなければならないだろうと思っているところでございます。
私のほうは介護給付費分科会ということで、介護の給付費の改定にどのように生かすことができるのかということを、今後皆様方からいただいた様々な御意見を参考にいたしまして議論してまいりたいと思います。
本当に様々な貴重な御意見を賜り、ありがとうございました。
○小塩会長
ありがとうございました。
続きまして、私から一言申し上げます。
3回にわたり、医療・介護、それぞれの分野から活発な御意見を頂戴し、中医協会長としてもお礼申し上げます。個人的にも非常に勉強になりました。厚くお礼申し上げます。
2000年度に公的介護保険が導入されたときには、医療と介護をできるだけ分離させて独立させて、それぞれの強みを生かして効率化させることが政策目標だったと思います。その政策目標は効果を上げつつあるのですが、その一方で、医療と介護が連携しないと、新たな問題が生じつつあるという現状認識が私たちの間で共有されていると思います。
これからちょっと個人的な見解が入るのですが、3回にわたる議論を通じて私が最も喫緊の課題と思ったのは、介護サービスから医療サービスへの移行、あるいはその逆の医療サービスから介護サービスの移行、要するに両制度間の橋渡しのところですが、そのところで私たちのウエル・ビーイングといいますか、便益、あるいはクオリティー・オブ・ライフと言ってもいいかもしれませんけれども、それが阻害される危険性がちょっと頭を出していると思います。とりわけ高齢要介護者の病状が急変したときの対応に解決すべき問題があると思います。
実は昨日の中医協でもいろいろ御意見いただいたのですが、この問題は地域差、あるいは個人差が大きくて、画一的に制度設計するのはちょっと難しいということかもしれません。しかし、現行制度を所与として、その下で医療や介護に携わっている方々が最善と考えられる措置を講じたにもかかわらず、高齢者やその家族のウエル・ビーイングが阻害されているというリスクがあったとすれば、それは直さないといけません。そのためには、報酬の在り方も含めて現行制度を見直していく必要があると思っています。これは私の個人的な見解でもありますし、公益委員としての立場からの発言でもあります。
それから、本日は訪問介護のほかに終末期、人生最期の過ごし方についても、極めて重要な御意見をいただきました。ここでも医療と介護という2つのケアの間の連携を強化することが非常に重要であるということが非常によく分かりました。
さらに、人生最終段階の迎え方において、医療・介護それぞれに携わっている方々、それから当然本人、そして家族との間の意思疎通が非常に重要であることが分かりましたし、また意思決定に対する支援も必要だということが分かりました。これについては、様々なガイドライン等々いろいろな仕掛けがあるのですが、さらに踏み込んで対応を考える必要があると思っております。
ちょっと数字を申し上げますと、現在、要介護者の人数は900万人ぐらいです。お隣に座っていらっしゃる田辺先生のところの国立社会保障・人口問題研究所が新しく発表された将来人口推計の数字を使って、年齢階層別に要介護者の発生率を掛け合わせて、私自身が単純に計算したのですが、2060年時点で要介護状態にある方の数は1000万人になります。この数字は介護サービスの必要性が高まるということをもちろん意味するのですが、もう一つ、医療と介護がしっかりと連携しないと非常に困ったことが起こってしまうことも示唆すると思います。
そういうことを考えますと、今回の同時改定に際しましては、医療・介護の間の連携をさらに強化して、医療・介護、障害者向けの福祉サービスも含めてですが、そうしたサービスが全体として私たちの厚生の向上に資するような方向に政策を進めていく必要があると強く思いました。
委員の皆様方におかれましては、ぜひその点を念頭においていただいて、引き続き御指導をお願いしたいと思いますし、事務局の方々にも、ぜひ連携をしてよりよい制度に向けて改革を進めていただきたいと思います。
ということで、私から申し上げたいことはここで終わらせていただきます。
本日の議題は以上でございます。
この意見交換会で出された意見は、中医協及び介護給付費分科会に報告させていただきます。加えて、障害福祉サービス等報酬についても令和6年度に改定されることから、障害福祉サービス等報酬改定検討チームにも報告いたします。
第1回及び第2回で出された御意見につきましては、各回の概要として本意見交換会の資料としております。本日の第3回を含めこれまでの意見交換会での御意見につきましては、事務局においてまとめていただきまして、改めて委員の皆様に一度御確認していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、「令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会」はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。
 

 

 

(了)

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