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2017年3月13日 第14回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成29年3月13日(月)17:00~19:00


○場所

中央合同庁舎5号館 専用21会議室(17階)


○出席者

吉田(恒)座長 岩崎構成員 金子構成員 久保構成員 久保野構成員
杉山構成員 床谷構成員 林構成員 藤林構成員 峯本構成員
森口構成員 横田構成員 吉田(彩)構成員

○議事

○林補佐 定刻となりましたので、ただいまから第14回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様にはお忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、上鹿渡構成員、山田構成員、山本構成員から御欠席の連絡をいただいております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。配付資料は右上に番号を付しておりますが、資料1-1、資料1-2、資料2-1、資料2-2、資料3、追加資料を配付しておりますので、御確認いただければと思います。

 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただいております。

 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 皆さん、こんにちは。

 それでは、早速、議事に入ってまいりたいと思います。

 恐れ入りますが、カメラの撮影はここまでとさせていただきますので、お願いいたします。

(カメラ退室)

○吉田(恒)座長 本日の議事についてでありますけれども、配付されました議事次第にもありますように、資料1-1、資料1-2として、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案に関する資料が提出されております。

 これについて、竹内虐待防止対策推進室長から御説明をお願いしたいと思います。

○竹内虐待防止対策推進室長 それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。

 児童虐待対応におけます司法関与のあり方につきましては、本年1月16日に本検討会において、これまでの議論の整理を取りまとめていただき、この議論の整理を踏まえまして、厚生労働省において関係省庁等と協議を行い、必要な制度的検討を進めてきたところでございます。

 このたび、必要な手続を経まして、お手元にございます児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を去る3月7日に閣議決定をし、現在開会中の通常国会に提出をさせていただきましたので、御報告をさせていただきます。

 法律案の概要でございますけれども、資料1-1をごらんいただきたいと思います。

 「改正の概要」といたしましては、大きく3点ございます。1つが、虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与。2点目が、家庭裁判所による一時保護の審査の導入。3点目が、接近禁止命令を行うことができる場合の拡大でございます。

 それぞれの改正事項につきましては、後ろにポンチを御用意してございますので、そちらをごらんいただきながら御説明をさせていただきます。1枚おめくりいただきまして、2ページをごらんください。

 保護者指導への司法関与につきましては、下のほうに表をつけてございますが、まず現行の児童福祉法第28条の措置の承認の審判の申し立て。少しかみ砕いて申し上げますと、保護者の意に反して子どもを里親委託あるいは施設入所の措置を講じる場合には、家庭裁判所の承認の手続をとることになってございます。

 この28条の措置の承認の審判の申し立てを行った際に家庭裁判所から、2で、都道府県等、具体的には児童相談所ということになりますけれども、勧告をする。3で、その勧告をした旨を保護者に対して直接通知をする。4で、家庭裁判所の勧告のもとで児童相談所は保護者指導を行いまして、5で、その保護者指導の結果について家庭裁判所のほうに報告をさせていただく。そして、家庭裁判所におきましては、その保護者指導の結果も踏まえまして、申し立てを承認するのか、あるいは申し立てを却下するのかの審判をしていただくということになります。

 そして、右下の6のところですけれども、申し立てを却下した場合、引き続き保護者が在宅で養育をするケースにつきまして、4で保護者指導を行った場合には家庭裁判所の勧告のもとで引き続き保護者指導ができる仕組みを設けたいと考えております。

 3ページでございます。2つ目の改正事項、一時保護の審査の導入で、現行、一時保護の期間は、原則として、2カ月を超えてはならないということで、保護者の意に反して2カ月を超えて一時保護を行う場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聞かなければならないとされておりますが、この手続にかえまして、保護者の意に反して2カ月を超えて一時保護を行う場合には、家庭裁判所の承認を得なければならないこととしております。

 また、※に具体的な件数。今回、調査も行ってございますので、推計値でございますけれども、親権者等の同意なく2カ月を超えて行う一時保護の件数につきましては、全国で年間500件弱、468件と見込んでおるところでございます。

 下の段ですけれども、接近禁止命令を行うことができる場合の拡大ということで、現行、接近禁止命令を行うことができる場合は、親権者等の意に反して施設入所等の措置がとられている場合ということでございますが、改正案におきましては、これに加えまして、親権者等の同意のもとでの施設入所等の措置がとられている場合。加えて、一時保護の場合につきましても接近禁止命令を行うことができることとしてございます。

 なお、資料1-2が要綱あるいは条文本体で、4枚ほどおめくりいただきますと、改正法の附則が出てまいります。

 この法律案につきましては、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するということになってございまして、6ページをお開きいただけますでしょうか。

 改正法の附則第4条というところに検討規定が置かれてございます。御紹介申し上げますと、政府は、この法律の施行後3年を目途として、児童相談所の体制の整備の状況等を勘案し、改正後のそれぞれの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするという検討規定を置かせていただいております。

 私のほうから、法律案の概要として、法律案の施行期日、そして、検討規定について御説明をさせていただきました。説明は以上でございます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 本日は、特別養子縁組制度の取りまとめの議論を進めるということで、かなり時間が限られております。ただいま御説明がありました法律案につきまして、御質問等がございましたら個別に事務局のほうにお問い合わせいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、特別養子縁組の利用促進のあり方について意見交換をしたいと思います。今回は取りまとめに向けた議論を行いたいと思っております。

 特別養子縁組の利用促進のあり方につきましては、これまでに多くの関係者の方からヒアリングを通じて御意見をお伺いし、これを踏まえて各先生方から論点について御意見をいただいているところでございます。この検討会として、児童福祉の増進の観点からの考え方をまとめる段階に入っていきたいと思います。

 それでは、事務局から資料2-1、資料2-2について御説明いただこうと思いますけれども、その前に本日、林先生、藤林先生・山田先生・上鹿渡先生・久保先生の連名で、2つの資料が出されておりますので、それぞれ5分程度で御説明をお願いしたいと思います。

 では、最初に林先生から御説明をお願いいたします。

林構成員 民間養子縁組機関であるベアホープさんから意見書の代読を依頼されましたので、私から代読させていただきます。資料をごらんください。

 1ページ目です。大枠で4点のポイントがございます。

 まず、1点目として【子どもの出自を知る権利について】です。下線部をごらんください。

 1.です。「出自を知る権利」とは、実親の名前や本籍地などについて知る「ルーツ探し」だけではなく、子どもが実親との分離体験をせざるを得なかった自身を受容するプロセスに必要な情報を知る、広義の権利として捉えていくべきであるという主張です。

 2.として、子どもは小さいうちから自身について、年齢に応じた理解と受容のプロセスを繰り返していく必要がある。養子であるということを告知するだけではなく(真実告知を通して)実親と養親の思いや、子ども自身のストーリーを繰り返し伝えていくことで、養子自身の受容を促す支援が必要であるというふうに主張されております。

 3.として、そうしたストーリーづくりに必要な情報というものの一元的な管理の必要性、あるいはそこにおける専門的な人材の配置の必要性について書かれております。

 広義・狭義という言い方があるのですけれども、下の段に行きますと、権利条約の7条1項で言う、父母を知る権利というものは狭義というふうに捉えられているわけですけれども、そのページの下から2行目で「出自を知る権利」、ストーリーとか真実告知を含めて考えるとするならば、それを広義というふうに捉えられております。

 次の2ページをごらんください。

 2行目に、生みの親自身の知られたくないと実親が望んでいるという、そのあたりで情報へのアクセスと同時に、コントロールの必要性という非常に難しい課題があるわけですけれども、特に戸籍情報なんかも、アクセスということだけではなく、コントロールの必要性ということもここでは言えるのではないかと思います。

 それから、一番最後の段落を見ていただきますと、専門的な職員の配置ということでいいますと、2行目にありますように、西ヨーロッパ諸国あるいは北欧に配置されているようなアーキビストの配置の必要性とか、あるいは次の次の文ですか。韓国の状況が書かれているのですけれども、アジアの一つの国が近年、一元的な管理をしたということで、韓国における状況というものも参考になるのではないかということです。

 一番下に、韓国の保管している情報の項目リストというものは、ここでは割愛させていただいております。

 次の3ページをおめくりください。2点目は支援のことです。

 特に2.のほうです。不調の防止のためには、委託後の支援の充実よりも、充実とともにというふうに書いたほうがいいかと思うのですけれども、まず養親さんとして育つ育成のシステムと、それ以前のスクリーニングとか、あるいはマッチングの手段。そういうものを整えていく必要があるのではないかということです。

 その下の本文の4段落目です。「但し」というところです。ここでも出ておりました、ただし、ここで忘れてはならないのは、どんなにすばらしい支援の枠組みを構築しても、提供可能な仕組みがあったとしても、養親自身が支援に対してインボランタリーなら意味がない。子どもの養育者としてのコンピテンシーというものをきちっと評価して、主体的に支援を求める考え方をきちっと持っていただく必要性なんかについて書かれております。

 一番最後の、ベアホープでは段階的なコンピテンシーチェック、養親さんとして育っている家庭をきちっと評価する。そういう項目も整えておられます。そのチェックリストは、ここでは割愛させていただいております。

 次に、3点目です。4ページをごらんください。

 1点目は、民間団体の実践の質をどういうふうに担保するかということについて書かれているということです。それから、これはあっせん法なんかで規定されている第三者評価項目なんかにも参考になる視点かと思います。でも、民間機関だけではなくて、児相を含めて考えるということです。

 2点目は、財政支援のあり方です。これはこれまで言われてきましたように、あっせん件数で換算せずに、ある程度の継続的な運営ができるような財政支援が必要だということかと思います。

 それから、4点目は次の5ページをごらんください。

 1つ目です。養親候補者をどう確保していくかで、現在は不妊治療というところに、ある種の大きな市場を求めているわけですけれども、あらゆる子どもたちに養親さんを保証していくという意味では、そういうところへのアプローチだけでは対応が困難であるということです。

 3番目で、そういう不妊治療の対象者というものは大きな養親の可能性があるということで、不妊治療に携わる医療関係者の教育と、治療開始前の特別養子縁組や里親に関するインフォームドコンセントの義務化の必要性。情報をきちっと伝えることの義務化の必要性について書かれております。

 私からは以上です。よろしくお願いします。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 続きまして、追加資料につきまして、久保先生のほうから御説明をお願いいたします。

○久保構成員 済みません。この資料はたたき台に対する意見になりますので、もしよければ、資料2-1等の説明が終わった後のほうがよろしいかと思います。

○吉田(恒)座長 たたき台の全体にわたりますね。

○久保構成員 はい。そうです。

吉田(恒)座長 それなら、そのパートパートでいきましょうか。

○久保構成員 はい。わかりました。

○吉田(恒)座長 では、そういうことで、久保先生にはまた後ほど、各箇所でこれをもとに御意見をいただくことにします。

 それでは、事務局から資料2-1、資料2-2について御説明をお願いいたします。

○林補佐 それでは、事務局から資料2-1のたたき台について御説明いたします。

 「1.はじめに」「2.基本的な考え方」「3.議論の整理」「4.今後に向けて」と、大きく4つに分けてございます。これまでの御議論を踏まえまして、本検討会の考え方を取りまとめる上での議論のたたき台として整理いたしました。

 まず、「1.はじめに」です。

 昨年3月の「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告(提言)」、昨年5月に成立した改正児童福祉法の検討規定、「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえて、昨年7月、この検討会において、児童相談所、民間あっせん団体に対する実態調査、それから、関係者からのヒアリングの実施も含め、子どもの福祉の増進を図るため、特別養子縁組制度の利用促進の在り方について議論を進めてきたこと。

 具体的には、年齢要件、審判の申立権、実父母の同意等の成立要件、子どもの出自を知る権利、養子縁組成立前後の養親や子どもに対する支援、行政の支援体制の強化、民間あっせん団体、養親候補者の確保について検討してきたことを記載してございます。

 「2.基本的な考え方」でございます。

 昨年の児童福祉法の改正の趣旨を踏まえて、特別養子縁組制度の利用促進の在り方を検討する必要があるとした上で、里親、児童養護施設等に3年以上措置されている子どもは、平成27年3月現在で約2万人いること。また、普通養子縁組制度と特別養子縁組制度との違い。こうした背景を踏まえて、できる限り多くの子どもが永続的な家庭において養育されるよう、子どもの福祉の増進を図る観点から特別養子縁組制度の利用促進の在り方を検討するという考え方を書かせていただいてございます。

 「3.議論の整理」。

 「年齢要件について」の「現状と課題」です。児童相談所における子どもの虐待の相談対応件数は、平成27年度に10万件を超えているということ。それから、現行制度の内容について書かせていただいた上で、厚生労働省が行った調査としまして、選択肢として特別養子縁組を検討すべきと考えられる事案が、2年間で298件あったこと等を書かせていただいてございます。加えまして、里親、児童養護施設等に在籍する6歳以上の子どもは、平成25年2月現在、約3万人いるということで書いてございます。

 「主な議論」です。実父母の家庭で養育することが難しい子どもにより広く永続的な家庭で養育される機会を与えることができるようにするため、現行制度の年齢要件について見直すことが考えられる。この観点に立って検討するに当たり、年齢を引き上げることとした際にどのようなパターンが考えられるのか。それぞれにどのようなメリット、課題が存在するのか、について検討することが重要であると書かせていただいております。

 特別養子縁組の養子の上限年齢の引き上げの方向性として、児童福祉法上の児童の範囲と同じ18歳未満とすること、身分行為の当事者が15歳以上の場合は、当事者本人の意思が相応に尊重されることから、15歳未満とすること。子どもが6歳未満の間に養育を開始し、その後、養育を継続した場合に、18歳未満まで申し立てを認めることも考えられるという、これまでの御議論から出た考え方を記載してございます。

 なお、仮に養子の上限年齢を引き上げることとする場合、養親の現行の下限年齢の規定のあり方についても検討する必要があるというふうに書いております。

 「審判の申立権・実父母の同意等の成立要件」でございます。「現状と課題」としまして、現行の審判の申立て、成立要件について、現状の民法の制度に触れた上で、厚生労働省が行った調査によりますと、特別養子縁組が成立した事案のうち、2年間で、実親の同意を得る際に220件で何らかの困難が生じていることなどを記載してございます。

 実父母の同意がない場合、または実父母の同意があるものの、後に翻されるおそれがある場合には、養親候補者が実親との関係から審判の申し立てを躊躇することがあり、また、養親候補者による養子となる者の養育が不安定な環境下になるなど、養親候補者に大きな負担がかかっているという指摘を書いております。

 「主な議論」でございます。より広く実父母の家庭で養育することが難しい子どもに福祉の増進と永続的な家庭で養育される機会を与えることができるようにするためには、実父母の同意に係る課題を解消することが必要であると書いております。

 この観点に立ちまして、これまで検討会で示されました、実親の同意を制限することを中心に、さまざまな意見・考え方を示されましたので、記載してございます。

 続きまして、「子どもの出自を知る権利」でございます。「現状と課題」といたしまして、国・自治体・民間において出自を知る権利を保障する情報の範囲が必ずしも明確になっているとは言えず、年齢や情報の機微な程度に応じて開示することが適当である範囲が定かではないという課題に触れてございます。厚生労働省が行った調査によりますと、児童相談所において63.6%が文書を永年保存しています。12%が30年保存としておりました。民間あっせん団体においては84.2%が永年保存をしていました。

 ここからも分かりますとおり、これらの文書が全国統一した保存期間となっていないという課題があると書いております。

 「主な議論」でございます。戸籍・裁判所の記録・児童相談所の記録・民間あっせん団体の記録など、それぞれの個人情報保護の法令が存在することに留意しつつ、出自を知る権利を守るために必要な情報についてコンセンサスを得る必要性について書かせていただいております。

 また、文書の一元管理など適切な移管、保管等がされる必要性、仮に一元管理をする場合には、一元管理をする機関の設立・運営など、行政改革との関係を整理する必要性について書かせていただいております。

 「養子縁組成立前後の養親や子どもに対する支援」といたしまして、「現状と課題」で、成立した後における特別な支援というものは現行準備されておらず、実親家庭と同様の支援しか想定されていないこと。また、一部の民間あっせん団体において、成立前の研修が不十分であると書いております。

 厚生労働省が行った調査によりますと、特別養子縁組の成立後、養親による養育困難の訴えや虐待等の問題が生じた事案は、2年間で58件あったということを書かせていただいております。

 「主な議論」といたしまして、特別養子縁組の中には社会的養護の対象とすべきものがあり、この特別養子縁組家庭に対して、必要な支援を検討する必要があると書いております。

 続きまして、「行政の支援体制の強化、民間あっせん団体、養親候補者の確保」についてです。「現状と課題」で、厚生労働省が行った調査によりますと、児童相談所における専従組織がある割合は、全体の15.6%ということでございました。

 また、昨年12月に、特別養子縁組の民間あっせん事業を届出制から許可制にし、その事業の適正な運営を確保する民間養子縁組あっせん法が成立いたしました。なお、この法律の施行日は公布後2年以内で政令で定める日と規定されていることを書いてございます。

 また、厚生労働省が行った調査によりますと、養親候補者の確保のためには、正確な情報提供、基礎的な養育知識・経験を持った特別養子縁組目的を希望する里親希望者を開拓すること等が必要であるという意見がございました。

 「主な議論」です。特別養子縁組に関する行政機関の体制については、各自治体における児童相談所等の単位で可能な限り一元化することが適当である。全国で民間あっせん団体が高い質の支援を行えるようにするためには、十分な専門性と経験を有する職員を確保することが適当であること。このため、民間養子縁組あっせん法の施行に向けて、児童相談所と民間あっせん団体が連携・協力体制を構築する必要性があることを書かせていただいております。

 「4.今後に向けて」です。

 本検討会の提言を踏まえ、特別養子縁組の利用の促進の在り方については、政府内の関係部局においてさらに検討を進め、結論を出すことを求めたい、と書かせていただいております。

 以上でございます。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、取りまとめに当たりまして、ただいま御説明にありましたたたき台に基づきまして、この検討会としての考え方につきまして、意見交換をしたいと思います。

 ただいま御説明がありました「1.はじめに」の部分と「2.基本的な考え方」の部分について、久保先生からの御意見をいただきながら皆さんとともに意見交換をしていきたいと思いますので、まず「1.はじめに」と「2.基本的な考え方」について御意見をいただきたいと思います。

 それでは、久保先生、お願いします。

○久保構成員 「たたき台に対する意見」、追加資料のほうで、早速なのですけれども、訂正がありましたので、随時申し上げておきます。

 まず「1 『1 基本的な考え方』について」の2行目の冒頭に「とら」と書いてありますが「とから」に御訂正をお願いします。

 内容について、改正児童福祉法の趣旨を踏まえてというふうに書かれており、今回の改正児童福祉法では子どもの権利条約の精神にのっとることが掲げられております。そこで,児童福祉法の2条のほうにも掲げられている、子どもの最善の利益を優先して考慮すること、 また、子どもの意見尊重の2点は非常に重要なものですので、この基本的な考え方の(1)の2のところに加えていただければと思っております。その点につきましては、この追加資料の別紙、3枚目になりますが、赤字で下のところに修正しているような文言を入れていただければと思います。

 それから、同じように条約を踏まえて策定されております国連の代替的養育に関するガイドライン、国連の指針といいますが、こちらで掲げられております家庭養育の方向性につきましても、この基本的な考え方の中で挿入していただければと思います。こちらは、別紙の2ページ目の3として掲げておりますところの「この点」というところ以降に掲げております。

 それから、普通養子縁組に関しまして、たたき台の中で、社会的養護の一つとして普通養子縁組制度があるというふうになっておるのですけれども、普通養子縁組は社会的養護の1選択肢として位置づけられるものでありますので、要保護児童だけに特化したものではないということで、挿入として「の選択肢」というものを入れていただければと考えています。

 ここでは以上です。

○吉田(恒)座長 最初の「1.はじめに」と「2.基本的な考え方」についての御意見をいただきました。

 ほかの先生方からの御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ございますか。

 では、床谷先生、お願いします。

床谷構成員 この修正案に対する質問という形で意図をお聞きしたいのですけれども、1つはこの赤字が入っているところの「子どもの最善の利益を優先して考慮し、子どもの意見を尊重するよう努めることとされたこと」というものをあえて書くべきであるということなのですが、子どもの権利条約自体がこれをうたっていることは間違いないわけですけれども、特別養子縁組との促進の関係でこれを書くということは、子どもの意思を尊重する場面を特別養子縁組の中にもう少し明確にその機縁といいますか、機会を設けるということにつながることになりますでしょうか。

 例えば年齢を上げた場合に、その子どもの何歳以上であれば本人の意思を問う、あるいは現行法の8歳未満であっても、もうちょっとはっきり本人の意見を聞く。そういう形での、子どもの意思の観点からの一つの制約といいますか、チェックポイントを置くという意図が含まれていると理解してよろしいでしょうか。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、お願いします。

○床谷構成員 済みません、もう一つ。

 もう一点の「社会的養護の一つの選択肢」というものを入れたらどうかという御提案なのですけれども、普通養子縁組制度が多様な目的に使われているということはそのとおりですが、社会的養護の一つとして普通養子縁組制度があるがということと、一つの選択肢として普通養子縁組制度があるがというふうに入れても趣旨は変わらないように思うのですが、どういうふうに変わるのかなということで、なぜ入れるのかなと思った次第です。

○吉田(恒)座長 それでは、久保先生、お願いします。

○久保構成員 1点目の子どもの意見の尊重ですけれども、床谷構成員のおっしゃるとおり、そのように考えております。

 私どもが提案しております手続の二分化におきましても、第1段階のところで子どもの意見を聴取するという手続を入れておりますし、また、年齢が低いお子さんにつきましても後見人を付するなどして子どもの権利擁護なり意見を代弁するという手続を考えておりますので、そのためにここにはこういう文言を入れていただければと考えております。

 もう一つの選択肢のところで、おっしゃるとおり、さほど大きく変わるわけではありませんが、全く普通養子縁組制度が社会的養護としてだけではないというところをもう少し強調する趣旨で入れていただければということだったのですけれども、もし、それを適切にあらわす言葉があれば別の言葉に言いかえていただいても構いません。

○吉田(恒)座長 よろしいですか。

○床谷構成員 はい。

○吉田(恒)座長 ほかに「1.はじめに」のところ、「2.基本的な考え方」のところで。

 では、林先生、お願いします。

○林構成員 同じところです。2の「最善の利益を優先して考慮し、子どもの意見を尊重するよう努めること」ということでちょっとお聞きしたいのですけれども、現実、長期の里親さんが縁組の代替的な役割をしている実態もあるかと思うのです。

 それで、いろんな要因でそういうふうにならざるを得ない状況があるわけですけれども、その中に、よく言われるのは養親さんが、ある程度、子どもの意向を聞いてから縁組をするということを言われる場合があるのです。それが成人して以降だと言われる方もおられるわけです。

 そういうことを考えると、要するにここで久保構成員が主張されていることは、いかなる年齢であろうと、どういう状況の子どもであろうと、法的に安定した親子関係を提供する必要性があるのだということだと思うのです。そこに子どもの意向というものは非常に子ども自身の意向だけでもってというよりは、子どもの意向にかかわらず必ず法的な親子関係を提供しなければならないという考え方もあるわけで、その辺を私自身、どう考えたらいいのかなというふうにちょっと考えさせられました。

○吉田(恒)座長 特に御意見をいただかなくても、そういう修正案に対する御意見があったということで受けとめたいと思います。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。

 なければ、次に年齢要件について御意見をいただきたいと思います。

 それでは、こちらも久保先生のほうでございますね。

○久保構成員 はい。

○吉田(恒)座長 では、お願いいたします。

○久保構成員 こちらも、先に修正だけを申し上げます。

 「2 『3 議論の整理』について」の(1)の2段落目の冒頭ですけれども「改正児年齢要件を引き上げることの課題として」となっていますが「改正児」というところは削除をお願いします。「年齢要件を引き上げること」というところから始まるということです。

 中身としては、まず主な議論のところの、養子の上限年齢を定めることのメリットとして、子どもの物心がつく前に親子関係の形成を開始することができるという点です。こちらは、おっしゃることはわからないでもないのですが、これはよく考えてみれば、子どもがよくわからないうちに身分形成をしてしまったほうがよいのではないかというふうに捉えられかねませんし、やはり子どもが権利主体とされているという基本的な考え方からしますと、こういった文言をメリットとして掲げるのはもはや許されないのではないかと考えますので、削除すべきではないかと考えます。

 それから、年齢要件を引き上げることの課題として、かえって養子縁組の成立時期がおくれるおそれがあるとされている点ですけれども、こちらは現行制度のまま、申立手続等を養親となられる方にイニシアチブを与えたままであるとこういったおそれがあるのですが、そうでなければこういったおそれというものはなかろうということを考えますので、そういった文言に修正していただければということです。それにつきましては、いずれも別紙の3ページ目のところで具体的な文言等は書いております。

 それから、子どもの年齢は10歳が限界という考え方もあるという点ですけれども、こちらはあくまで実際には難しい場合があるという程度のものであって、この点はあえて、なお書きでする必要はなかろうと思いますので、削除していただければと思います。

 この点では以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、年齢要件につきまして、ただいまの久保先生の御意見も含めて、ほかの先生方から御意見をいただければと思います。いかがでしょうか。

 では、床谷先生、お願いします。

○床谷構成員 これも久保構成員に対する確認なのですけれども「明記すべきである」とおっしゃっている点なのですが、現行のままの申立てが養親のイニシアチブによる場合だったらこうなるのではないかという御指摘なのですけれども、この言葉は裏返すと、養親になる人が気持ちがまだ定まらなくても、相申立人とするかどうかは別として、申立人として児童相談所を認めるとした場合には、児童相談所のほうが申立人の意思が固まる前にも申し立てる。つまり、一定の時期をずるずる延ばすのではなくて、申立てを早める、一定の時期までに申し立てをするということが含意されているのでしょうか。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 こちらも提案しております手続の二分化を前提にしておりまして、1段階目はもちろん、養親さんが必ずしもイニシアチブをとるのではなくて、児童相談所長が申立権を有するということにしています。

 第2段階における身分関係の構築の部分につきましては、養親さんが申し立てをするということになっておりまして、その点で、もちろん、気持ちが固まらなければ申し立てをされないわけなのですけれども、それにつきましては一定の期限を設けるということで解消できるのではなかろうかと思っております。

○吉田(恒)座長 床谷先生、いかがでしょうか。よろしいですか。

○床谷構成員 はい。

○吉田(恒)座長 ほかに年齢要件のところでいかがでしょうか。

 では、久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 たたき台に対する意見に対する意見といいますか、御提案の中でといいますか、なお書きで「10歳が限界という考え方もある」というところについての私の意見なのですけれども、済みません、欠席などもありまして、今まで明確にこういう発言はしていなかったのですが、比較的最初のころのヒアリング等の議論の中で、たくさんの特別養子縁組をされた経験から、10歳程度が適切といいますか、済みません、不正確だとかえっていけませんので、私のほうの印象でお話しします。

 さまざまな事情を考慮したときに、適切なケースというものはせいぜい10歳といいますか、上であっても10歳だというお話も聞いたように思ったといいますか、そのような受けとめ方をしたことがありまして、少なくとも私自身の意見としましては、10歳が限界という考え方は十分にあり得ると思っておりまして、このなお書きは、そういう意味では考え方もあるというレベルでは置いておいていただきたいという意見を持っております。

 それとの関係で、この上限を、年齢要件を上げる場合のやり方として、原則を上げるのか、例外を上げるのか、さまざまなあり方があるというふうにここで指摘されていますけれども、法制度として、この特別養子縁組を法に載せるときに、典型例といいますか、あるべき姿を一定の原則として示すことも重要なことではないかと思っていまして、その内容として10歳が完全に適切かというところは議論の余地があるとは思いますけれども、少なくとも例えば15歳の人ができなくなると困るので、原則を上げるというふうに単純に考えるのではなくて、例外としては認め得るとしても、典型例としてはこのあたりだという考え方も必要だと思っていまして、それとの関連もあって「なお」以下を残しておいていただきたいという意見です。

○吉田(恒)座長 わかりました。

 この点、いかがでしょうか。

 では、森口先生、お願いします。

○森口構成員 私はあえて、なお書きはないほうがいいのかなと思う立場で意見を述べます。

 今、おっしゃったように、この法律というものがあるべき姿を示すのだとすれば、やはり子どもが家庭における養護を受ける権利として、どのような年齢の子どもにもそういうことを保証したいという理念をここで打ち出すべきで、10歳とかそういう具体的な年齢は、ある程度手がかりになるような年齢かもしれませんけれども、そこでディスコンティニュアスに区切ることの意味にも疑問があります。

 実際、ほかの国で年齢要件を低く決めていない国の養子縁組の例を見ますと、ずっと年長の子どもで成立しているケースもたくさんあって、法律としては全てを認めて、実際にそれが難しいとか適切かどうかというのは実際の運用で、確かに10歳以上は少ないという形であらわれてくるとは思うのですけれども、それをあらかじめ入り口のところで認めないというふうに宣言することについては、やはり私は疑問を感じます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 年齢要件に関して、ほかにいかがでしょうか。

 岩崎先生、お願いします。

○岩崎構成員 10歳の発言元は私だと思います。年齢は上げて欲しい。でも現実的には年齢が高くなる程親子になるのはとても難しい。私たちの経験では、10歳ぐらいまでが、どうにかできた成功例ですという意味だったので、今、森口先生が言われたように、これからのことを考えるのであれば、確かに17歳や18歳でも可能なこともないわけではないので、それを余り具体的な年齢で決めるよりは、18歳にするのか、未成年にするのか、15歳にするのかというのはまだ議論の余地があるような気がしますけれども、15歳、18歳、未成年というものには、今までの社会的な了解度がありますが、そこへ10歳をあえて入れることは、私も省いていいのではないかと思っております。

○吉田(恒)座長 わかりました。よろしいですか。

○岩崎構成員 はい。

○吉田(恒)座長 蒸し返すようで申しわけないのですけれども、私は入れておいてもいいのかなと。というのは、10歳にしましょうという話ではなくて、この検討会ではそういう話も出ましたということをお伝えするという、記録としての意味として残してもよろしいのではないかという、ですので、ニュアンスが違うのですが、いかがですか。

 どうぞ。

○藤林構成員 座長がそう言われると、やはりそれは違うのではないかと思うのです。10歳で親子関係を形成するのは確かに難しい。難しいということと、その養子縁組ができるかできないかというのは全然文脈が違うことなので、ここは、そこをこう書かれると、間違ったメッセージになってしまうので、私は削除すべきと思っています。

○吉田(恒)座長 では、久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 済みません。「なお」を残すかどうかというものの直接の意見ではないのですけれども、関連して、背景にある考え方の違いが今の議論に関係していると思ったので、ちょっと補足させていただきます。

 この前の子どもの意思の尊重というところの議論とも絡むのですけれども、子どもの意思の尊重が日本の法制度の中で足りないといいますか、課題がある部分はあると思っていまして、方向としてはそれをもうちょっとどうにかしていくべきであると私は一般的には思っています。

 この場面で特別養子縁組での子どもの意思といったときに、この制度がまさに実親子関係という身分関係を切断するという、ほかにはない特殊な効果を持っている制度であるということが気になっていまして、私自身の結論は完全に出ているわけではないのですけれども、ある程度以上の年齢を想定して、結局、自分の実親との関係を切断するということを意思表明するですとか、それに効果の持つ何かをするということを認めていくということを前向きに制度に盛り込んでいってよいかというところはちょっと慎重に考えたほうがいい気がしています。

 ほかの場面で、身分関係を意思で切断することは認められているかと考えますと、相続権の制度などでも、自分の意思だけで切るということは基本的にできないということになっているかと思いますので、そこが気になるところです。

 1点だけ、それとの関係では、もちろん、子どもの親として適切な行動のできない親であるからこそ切ろうという話をしているわけなのですけれども、その点については親権喪失のところでも子どもに申立権を認めるかどうかがかなり議論になって、そこではやはり究極の場面なので、むしろ認めたほうがよいということで選択されたわけですが、それと比べたときにどうかということはありますが、身分関係を切断することについての意思ということになるので、ちょっと違うといいますか、慎重に考えるべきところがあるのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 わかりました。

 ということで、どちらがどちらというわけにはいかないというわけですが、ほかに御意見はございますか。

 では、峯本先生、お願いします。

○峯本構成員 私自身の個人的な意見は、18歳未満でいいのではないかとか、場合によっては岩崎さんがおっしゃられたみたいに、20歳未満ということでもいいのではないかと思っているのですけれども、つまり、現実にどれが使われるかどうかは別にしても、利用可能性を拡大するという観点で、実際に数は少なくても、そのニーズがあるということであればいいかなと思っているのです。

 整理の仕方としては、1つは全体として、年齢引き上げについては多分、皆さん共通していたということだとしたら、もう少しそこを明確に確認してもいいのかなと。そこにもし消極意見が皆さんの中であれば別なのでしょうけれども、確認をしていいのではないかなということが1点。

 その年齢についてはかなりいろんな意見があるということなので、ある意見はここに挙げておいていいのではないかと私は思います。ですから、10歳について、おっしゃられた岩崎さんが撤回されるということであれば、別にそのこと自体は挙げなくてもいいのかなという、割とそこは、この議論に関しては単純に見ていいのではないかという、どうせ、これが原則でいきますとかというところまでは多分まとめることは無理なのだろうと思うので、意見として、理由つきで出ていたら、短くてもその理由を挙げながら、ある意味、そこを並列的に挙げておくとか、濃淡を多少つけてももちろんいいとは思いますけれども、挙げておくというのがまとめの仕方としてはいいかなと思います。

○吉田(恒)座長 前からここで確認しているように、皆さん、引き上げというところでは御異論がないので、ここでのまとめとしてはそうなるかと思います。

 もちろん、多様な意見という表記になるのかなと思いますけれども、特に10歳に関しては、岩崎先生のほうで特にこだわらないということですので、事務局のほうも必ずこれを入れなければいけないということではないということで御理解いただいてよろしいかと思います。

 では、林先生、お願いします。

○林構成員 これは年齢引き上げの必要性のところで書かれているのですけれども、要は福岡市の調査とかを踏まえると、やはり速やかな縁組促進ということの材料として、10歳を超えるとなかなか親子関係の形成が難しいのだということで言いますと、いかに進めるかという、その文脈の中でこの文を使うというのは一つかなと思ったのです。

○吉田(恒)座長 そうですね。それは考えられると思うのです。

 それで今回、やはり利用促進というものが必ずしも法改正だけ、特に特別養子の法改正だけを目指しているものではありませんので、児童福祉の中で取りかかれる部分もありますので、それに参考になるような事柄は残しておいてもよろしいのかなと。また、その適切な箇所もあるかと思います。貴重な御意見、ありがとうございました。

 それでは、次がなかなか難しいところで、審判の申立権、実父母の同意等の成立要件。ここは大変議論が活発に出ましたので、少し時間を多目にとりたいと思います。

 最初に、久保先生のほうからお願いします。

○久保構成員 まず、現状と課題のところの点です。こちらはイのところで、厚生労働省が行った特別養子縁組に関する調査によるということで数字を挙げていただいております。ただ、こちらの数字ですけれども、特別養子縁組が成立したり、それを検討したりしたことが前提となっております。残念なことながら、全国の児童相談所では、この特別養子縁組に関して、積極的であるところ、ないところ、かなり差異があります。ですので、そういったことを踏まえますと、必ずしもこの数字にあらわれたところだけではない、客観的には特別養子縁組が必要かつ相当な子どもさんもかなりいらっしゃるのではなかろうかというところもきちんと明記すべきではなかろうかと考えております。

 それから、たたき台のウのところですけれども、同意の撤回が養親候補者に対する負担というふうになっておりますが、同意の撤回だけではないというところです。例えば試験養育期間が終了しても養親側の問題でないところで特別養子縁組の要件が認められないとして、養親候補者の養育環境から子どもが引き離されたり、実親に養親候補者の情報が漫然と開示されたり、子どもと実親との法的関係を解消するための手続を養親候補者が担わせられたりするということも養親候補者の大きな負担となっておりますので、その点もきちんと明記すべきではないかと考えております。その点につきましては、別紙の5ページ目になりますが、具体的な文言を入れておりますので、御参照ください。

 以上です。

○吉田(恒)座長 それでは、この申立権と実父母の同意等についての御意見を、このたたき台の部分についていただきたいと思います。ただいまの久保先生の修正の御意見も御参考にしていただければと思います。いかがでしょうか。

 どうぞ。

○金子構成員 確認なのですが、今は現状と課題のところだけ御説明になったと思うのですが、そこに限るという趣旨でしょうか。

○吉田(恒)座長 いえ、そうではないです。

○金子構成員 では、その先も説明いただいたほうが。

○吉田(恒)座長 失礼しました。

○久保構成員 こちらのたたき台に対する意見の(3)の主な議論についてのところでございます。こちらで、主な議論の中で、公正証書による同意の確認ということが掲げられております。ただ、この公正証書によることのみに限定することを同意の要件とすることが特別養子縁組の抑制になるということが考えられますので、公正証書によることのみに限定することに対する課題として上げるべきではなかろうかと考えております。その点については、別紙の6ページ目になります。そこの上のところに書いております。

 それから、手続の二分化について、たたき台のほうでは主な議論のエのところに書いてございますが、これにつきましては提案しております手続二分化案では第1段階で実父母との法的関係を断ち切るというふうにはしておりませんで、権利を停止するという程度で提案 しております。ですので、その点に関するところは全て削除ないしは修正ということでお願いしたいと考えております。

 また、特定の養親候補者が不在であるのに、特定の子どもを特別養子縁組相当と判断することの適否を課題として掲げられている点についてですけれども、この点につきましては、現行制度においても養親の適格性がいかに認められたとしても、養子となる子どもの適格性が認められない場合や、逆に養子となる子どもの適格性が認められても、養子の適格性が認められない場合は特別養子縁組は成立させることはないと思います。ですので、現行制度でもそれぞれ別個に判断されていると考えておりますので、このことを手続二分化の課題として掲げるのは誤りであろうと思いますので、削除いただければと思います。

 それから「さらに」のところですけれども、第1段階で実父母との法的関係を断った後に特別養子縁組が成立する保証がなく、第1段階で認められた後に養親候補者が不在となるなどして、子どもの法的地位が不安定になるおそれがあるという点を課題として掲げられている点についてですけれども、現行制度でも試験養育期間が経過しても特別養子縁組が成立する保証は全くないということですので、現行制度でも養子となる子どもさんの地位が不安定になるおそれはつきまとっているということになります。ですので、この点につきましても、手続二分化をしたからこその課題というのは間違いであろうと思いますので、削除すべきではないかと思います。

 それから、提案しております手続二分化案につきましては、第1段階の手続におきまして、養子としての適格性が認められた場合でも実親の権利義務が停止されるだけで、実親との法的な身分関係が終了するわけではないとなりますので、子どもの養育をめぐる権利関係が不明確になることはなかろうと考えております。しかも提案している二分化案では、第1段階の手続において後見人を付するということを考えておりますので、現行制度よりも子どもの利益を図ることができると思いますので、子どもの法的地位等が不安定になるものではなかろうと考えておりますので、この点については削除すべきであろうと考えております。

 削除だけですのであれですけれども、その点につきましては別紙のところを御参照いただければと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、申立権と実父母の同意等、現状と課題、それから、主な議論につきまして、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 では、金子先生、お願いします。

○金子構成員 済みません。ちょっと確認をしたいのですけれども「たたき台に対する意見」の3ページ目の下のほうに、太字で書いてありますが、「実親の権利義務が停止される」というのは民法上どういう制度を想定されているのか。あと、後見人を付するというのも、必要があれば改正するということを伴うのかなと思うのですが、何がどうなるという仕組みを考えられているか、ちょっと御説明いただければと思います。

○吉田(恒)座長 まず、久保先生、お願いします。

○久保構成員 親子関係は切断しないということですので、それまでは続く。ただ、親権を停止という状態で、ただ、親権者でない親御さんもいらっしゃいますので、その点について権利義務の停止という言葉を使っておるだけです。イメージ的には、基本的には親権停止と同じように考えていただければと思います。

○吉田(恒)座長 後見人のほうは。

○久保構成員 後見人につきましては、親権停止という形になりますので、当然、子どもさんの権利擁護のために後見人を付する。いわゆる未成年後見が開始するような状態になりますので、後見人を付するということを考えております。

○吉田(恒)座長 金子先生、いかがでしょうか。

○金子構成員 親権停止の審判があれば後見という話はわかるのですけれども、親権停止の裁判ではないというのがよくわからない。端的に言って、もうちょっと詰められたほうがいいのではないかなという印象を受けました。

○吉田(恒)座長 久保先生、お願いします。

○久保構成員 効果として親権が停止するような効果が発生するわけですけれども、それ以外に、ここに書いてありますように、子どもさん、養子となる適格性についての判断も入りますので、必ずしも親権停止だけの判断ではないと考えています。

○吉田(恒)座長 そうすると、私の疑問ですけれども、この第1段階の審判があったときには、例えば親権停止したものとみなすみたいな、そんな条文をつくることになるのですか。

○久保構成員 特別養子縁組の手続きは親権者だけの話ではなく、実親さんという話になりますので、同じような場面にはなるのですけれども、条文としてはそれも考えられるのかなと思いますが、必ずしもそれで足りるかというと、ちょっと違うようには思います。

○吉田(恒)座長 もう少し幅が広くなる感じですか。

○久保構成員 はい。そうです。

 岩崎先生、お願いします。

○岩崎構成員 逆に、特別養子縁組の同意権が成立する。要するに、第1段階での児童相談所から特別養子縁組に対して実親が同意をしたことが明確になる裁可をするわけですから、そういう意味で同意権が成立したというのは、おかしいですか。

 要するに、特別養子法ができてから、実親が親権喪失と同じように扱われるというところで、いろんなリアクションがあります。例えば裁判官のなかにはこの裁判をしたくないという、余り積極的にしたくないと言われる理由が、実の親が同意をして申し立てられているのですけれども、それを認めてしまうと、犯罪者でも何でもないこの人を一人の子どもの親として全否定をしたようなことになるというふうに受けとめられる傾向が時々あって、私はいつもびっくりいたします。は生みの親であることについては何ら否定されていないと思うわけで、生みの親であることを否定するわけでは決してありません。それこそ相続権と扶養義務が法的な関係としてはなくなることだけであって、生みの親として、認めています。育て親たちはこんなかわいい子をよく生んでくれたというふうに感謝をするぐらいで、生みの親をもうちょっと生みの親として大事にさえすれば、親としてこの人が認められないわけではありません。その子どもを養育することが不可能なだけであって、養子縁組に同意をしたということが法的に今後変わらないものとして承認されたというのが第1段階で、児童相談所から申し立てていただくことであれば、私はとてもわかりやすいと思っているのです。

 特に、実は今、裁判所との関係の中で出てきている問題の一つに、実親が裁判所から呼び出されているのに、なかなか行ってくれないために審議が長引いている状態がありますね。そうすると時々、裁判所のほうから「実の親に出頭するなり、それにかわる連絡をするように、申立人に連絡をしてほしい」みたいなことがあったり、特別送達された審判書が届かないので、在宅していない親に対して、「ちゃんと審判書を受け取ってくれるように申立人から実の親に連絡をしてほしい」という要請がこの間ありまして、そんなことは申立人にはできませんから、結果として児童相談所にお願いするのですが、養親となる者が申し立てるということの問題性がそういうところにもあって、子どもの実親側の同意に関しては児童相談所長が申し立ててくれる。子どもの養親になりたいというほうの身分事項の変更に対しては、養親となる者から申し立てるという、これが何とかうまくセッティングされたら、私は養親のほうのいろんな細かいささいな悩みがかなり減少するであろうと確かに思いますので、ぜひそれがうまくできるように考えていただけるとありがたいなと本当に思います。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 今の岩崎構成員のお話で、今のは同意がない場合に、いわゆる民法の817条の6のただし書きの場合に第1段階の審判によって同意があったものとみなすという効果を生じるということでよかったですか。

○岩崎構成員 だから、最初の審判は同意をしている人にも同意が翻らないという審判ですから、児童相談所長から申し立てるにしても、現在、施設に措置されている何々の子どもの特別養子について、この実親は同意し、少なくとも今後翻ることがないということを審判してほしい。もちろん、同意がない人には、同意はしていないけれども、児童相談所としては、これは特別養子縁組が認められるべきで、この人の同意をしていないことに関して、逆に言えば裁判所は、子の福祉のために特別養子が必要であるという審判をしてほしいという申し立てになるのではないのでしょうか。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 済みません。別に反対しているわけではなくて、効果として、さっき、私が親権停止というものではちょっと足りないというところを、そういう文言ではなくて、同意をしたというふうにみなす。同意を補充するという効果が生じるというふうに考えていいですか。同意の話ではなくて、817条の6のただし書きの部分の認定という効果を生じさせるというふうに考えたほうが一番わかりやすいかなと思いまして。

○岩崎構成員 でも、同意をしている人だって、同意を翻すこともあるわけですから。

○久保構成員 その点はいいです。大丈夫です。そこは間違いないです。それ以外のお子さんの話です。済みません。

○吉田(恒)座長 では、この点につきまして、久保野先生、いいですか。

○久保野構成員 はい。

○吉田(恒)座長 金子先生、お願いします。

○金子構成員 お2人がおっしゃっていることはちょっと違うといいますか、久保構成員も別に反対はされないということなのでしょうけれども、岩崎構成員は1回同意をして、それが撤回できないように裁判を第1段階でするということを考えていると。

○岩崎構成員 もちろん、そうです。

○金子構成員 久保構成員の案は、少なくとも前回の案ですと、同意が得られなかった場合について、817条の6のただし書きの要件を満たすということを裁判で確定させて、それがいわば同意の補充みたいな効果を持つという仕立てを考えているということですか。

○久保構成員 そうです。

○岩崎構成員 でも、その2つを第1段階の裁判というふうに両方含めて考えることは難しいでしょうか。

○吉田(恒)座長 いかがですか。

○久保構成員 私はその趣旨でよろしいかと思います。

○吉田(恒)座長 よろしいですか。

 では、金子先生、お願いします。

○金子構成員 久保構成員がよろしいとおっしゃるならそれでもいいのかもしれないのですけれども、公正証書ですと同意する件数が減るというふうにおっしゃっているわけですが、同意を撤回できないようにする裁判をしたら、同じように、結構ぎりぎりの段階で、やはりやめたという人はふえて、そうすると、同意を得られないケースは減るのではないかなと思うのですけれども、そこはそれでもかまわないのですか。

○吉田(恒)座長 では、久保構成員、お願いします。

○久保構成員 提案している二分化案の中では基本的には、公正証書の場合はかなり公正証書にすること自体がハードルが高いということで抑制に向かうのではなかろうかということです。

 家裁のほうは、第1段階でそこがもしひっくり返ればそこで終わりということになりますので、今のように試験養育期間を長くやった後にひっくり返るよりは、早い段階でそれを防止することができるとは思います。

○吉田(恒)座長 では、床谷先生、お願いします。

○床谷構成員 済みません。どこを議論しているかがなかなかわからなかったのですが、初めのところの養親になろうとする人が申立てをちゅうちょすることがあるというところの、ここにいろいろと、もとのたたき台に対して、これまでに主張されてきた、こんな事情もあるということをもっと書き加えてほしいというところと、今の公正証書のところの同意のとり方の問題とが一緒になってきてしまっているので、なかなかわかりづらいのです。

 この後者のほうのことについてですが、公正証書によってとるということは私も提案させていただいている者の一人ですけれども、これは同意の撤回制限という制度が、今、日本にはない。同意の撤回がいつまでもできるということで、同意の撤回を遮る法制度が日本にはない。それに対して、同意の撤回を遮るための手段をとっている国は、同意したら撤回できないとするか、あるいは一定の期間だけ撤回できるとするかということを前回御紹介したわけですけれども、その条件として同意が間違いなくきちんととれているということを、イギリスについては金子構成員に紹介いただきましたし、ドイツについても私のほうからも鈴木先生のメモからもありましたけれども、このとり方をきちんとすることによって同意を撤回できなくするという契機を何とか生み出そうという工夫だと思うのです。

 確かに、公正証書を使えばそれがハードルになるという点はあるのですけれども、それでも同意撤回ができなくなるという時期をつくり出すという意味では促進の効果にもなるので、そこのところを前向きに捉えるために、方式についてはきちんとやるべきではないかというのがこの公正証書によるということの趣旨です。

 たたき台のもとの案にありますように、単に文書であっても、一定の程度、同意撤回への可能性は、少しは少なくなる。文書をとる段階で十分考えるだろうから、撤回の可能性は少なくなるだろう。これに加えて、単なる文書ではなくて公正証書という、法律家がきちんと説明して、同意すればどうなるかということをきちんと理解していただいた上で同意してもらうということになれば、そこまで行くのであれば撤回できなくなる時期というものを設けてもいいのではないかという趣旨です。

 それに対して、たたき台のところにある、でも、もともと実親が育てるということが第1の趣旨ではないか。そこのところとの関係が問題は残りませんかという御指摘は私も、この指摘をいただいて、確かにそうだなという点は、公正証書を推進している側としてもなるほどという御指摘なのですが、これはやはり同意をするときに、自分は育てることを別の人に託すということを十分に納得した上での同意を公正証書の形でとるということで、何とか第一義的には養育者は実親であるというところとの調整といいますか、調和をとることができるのではないかと考えた次第です。

 ドイツ法でも、親が子どもの養育には第一義的責任を負っておりますけれども、それでも同意をすれば撤回できないというふうにしているのは、そこへの段階をきちんと踏まえるからそこが何とか調和がとれるのであろうと思います。ちょっと、その点だけ。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 床谷先生の今の御発言ですと、この公正証書による同意を要件とするという、この箇所は特に削除する必要はないという御意見ですね。

○床谷構成員 はい。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 私も、公正証書による手法というものは一つの方法だと思っています。ただ、これだけに限定してしまうと狭まってしまうのではなかろうかというところで御意見を申し上げただけです。

 それから、今、行われているように、児相なり、あっせん機関が同意をとってという場合ですけれども、2段階で提案している中では、養親さんが同意を前提に申し立てをする。申し立てをした段階で、基本的に同意の撤回は一旦できないようになる。その審判の中で、家裁が同意の有効性についてきちんと判断する、調査する。それで、同意が、これは無効だとなれば、もちろん、同意の撤回といいますか、そもそも同意がありませんので、もとに戻る。ただ、有効性が認められれば申し立て時点で撤回ができないということになりますので、そういった手法がもう一つ考えられるのではなかろうかというところです。

○吉田(恒)座長 ですから、同意を確保するという、同意の撤回を安易に行われないようにするために、裁判所の手続というものと、もう一つ、公正証書という、それも残しておいてもいいということですね。

○久保構成員 はい。

○吉田(恒)座長 では、全くそれをなくすということではないですね。

○久保構成員 それは違います。

○吉田(恒)座長 了解です。

 ほかに、この点について。

 峯本先生、お願いします。

○峯本構成員 今の点の、たたき台の7ページのウのところの表現のことだと思うのですけれども、ウの後段で「若しくは、実父母の同意を公正証書などの書面による慎重な手続きで得た上で」というもので、ちょっと前段と別の制度として上げてあるので、何となく公正証書によるという手続をというものがかなり、逆に言ったら、この制度は公正証書を前提にするものですみたいに読めるので、逆に言いますと、前段の「同意を書面による慎重な手続きにより得た上で」というのは多分、皆さん恐らく、同意を慎重にしないといけないのは間違いないので、その方法として公正証書によるものが妥当であるという意見もあるけれども、それに対しては逆に、むしろ負担が過剰で、利用を消極化させてしまう意見があるとかという、両方の意見があるという書き方にしておけば、公正証書というものがメッセージとしてひとり歩きすることを防ぐことができるのではないかというのが、この点については意見です。

 もう一つは、私は手続二分論が、久保先生の修正案ではなくてたたき台のほうですけれども、エですが、申立権を児童相談所長に認めるということについて、手続二分論の中で位置づけられているのですけれども、手続二分論は二分論で意見としていいかなと思うのですが、私個人としては反対意見があることはもちろんあるのですが、単純に現行法制度の枠組みの中でも児童相談所長に申立権を認めるということと、同意をいわゆる最初の申し立てのときに同意があるかどうかというのはあるのでしょうけれども、裁判手続の中で早期に同意の有無を確認しておいて、裁判手続、対裁判所との関係で同意を確認しておいて、一定期間経過後はそれを撤回できないという制度にするという、割とそれも可能ではないかというのが申し上げた意見なので、必ずしも手続二分論ではなくても、申立権者に児童相談所を加える。それで、同意の手続はもちろん慎重で、裁判手続に絡ませて、同意の手続は慎重で、一定期間経過後は同意の撤回はできなくなるという制度はあり得るのではないかというような、二分論と別に切り離してというふうに感じています。

○吉田(恒)座長 今、峯本先生がおっしゃったような方法もあるということをつけ加えるというのではいかがでしょうか。

 どうぞ。横田先生、お願いします。

○横田構成員 どのタイミングで言おうかと思ったのですけれども、そのこととの関係ですが、このたたき台の6ページのイのところで、特別養子縁組の手続に児童相談所の関与がどうしても必要であろうという観点から申し上げます。この2行目で「まずは現行の特別養子縁組制度において養親候補者のみが申立権者とされている趣旨は、養親子関係という身分関係の形成についてはその当事者のみが申立権を有するという基本的な考え方に依拠しつつ」とありますけれども、これが先ほど峯本構成員が言われた申立権の話とひょっとしたら抵触するのかもしれませんが、これはやはりおかしいということを言いたいと思います。

 といいますのは、時間がないので簡略に伝えますけれども、最初に申立権のほうからです。これは家事事件手続法の話、前回の話の続きですが、そもそも家事事件手続法の背後に憲法がないという最高裁を前提とした上で、申立権が与えられるという、これは当事者として扱われるということですけれども、当事者で扱われるということの意味について確認する必要があるわけです。例えば親権喪失の場合に親族が請求できますけれども、親族は何らかの実体法上の法的地位に基づいて請求するわけではありませんし、申立権が認められたけれども、その親族には必要的陳述聴取とかが保障されていませんから、申立権が認められたから手続上、何らかの地位が保障されるわけではないということなので、申立権を認めたとして、それ以後、何かがついてくるわけではない。

 特に、これは現状、別表第1の審判なので、別表第2は憲法の背後がない中で一応、家事事件手続法の68とか69で一まとめのパッケージみたいなものを用意しているのですけれども、別表第1はそれができなかったということなので、例えば具体的に言いますと、親権喪失の期日における親権者の審問のときに、別表第2の審判と違って、反対当事者の立ち会いは保障されていませんし、それから、28条審判は親権喪失審判と違って、期日における親権者の審問も保障されていませんし、審判ごとにばらばらです。だから、個別に考えればいいということで、これがまず1つです。

 そして2つ目ですが、身分関係の形成でしょう。だから、当事者のみがという話ですけれども、これは何かおかしいなとずっと思ってきたのです。何がおかしいかということなのですけれども、共通前提から出発すると特別養子縁組制度というものは基本的な性格として国家宣言型の制度である。これは、私は非常に適切な表現だと思うのですけれども、この特別養子縁組制度が国家宣言型であるという、この基本的な性格がこのたたき台の出発点においては十分に理解されていないと思います。これは言い方を変えますと、民法家族法という法規定が基本的に民事実体法と公法から成るということが理解されていない。あるいは民事実体法と公法関係が混同されているということだと思います。

 具体的に言いますと、この特別養子縁組というものは国が子どものかわりに養親となる者と養子縁組関係を結ぶという話ではなくて、これは養親となる者の側から言いますと、養親となる者の意思が養子縁組関係を形成するわけではないわけです。つまり、この養親の請求は民法817条の2に書いてありますけれども、これは民法でいう身分行為ではない。だから、これは婚姻の話とか普通養子縁組の話と違うわけです。

 この話をもう少し具体的に言いますと、婚姻の場合、これは民法739条で、届け出によって婚姻が成立するとありますね。だから、ここで届け出という公法行為と私法関係の話が一緒になっているのです。普通養子縁組もそうですけれども、特別養子縁組の817条の2はそうなっていなくて、むしろ、さっき言っている親権喪失の834条の親族の請求とかと同じような規定ぶりになっていて、それだけを見ると純粋に公法規定です。

 これを実質的に見ても、特別養子縁組は子ども本人の意思をそれ自体として組み入れている手続ではないわけです。それについて、民法の身分行為の話で話を考えるということ自体が私は強く違和感があって、民法の身分行為の話でこの特別養子縁組の話を考えなくてはいけない実質的理由がわからない。養親の意思が大事だといっても、それは審判の効力のところで判断すればいい。その後に成立した養子縁組関係という私法関係に何らつながっていないと思うのです。

 つまり特別養子縁組の審判というものは行政的裁判と表現される家事審判において、家事審判官が主体的に後見的な立場から決定するものであって、だから、これは民法の頭ではなくて、公法、行政法的に考えないといけない話なのです。そう考えると、この特別養子縁組の手続というものは、一番近いのはむしろ国籍法の帰化の許可です。つまり、国籍法の場合に法務大臣が国籍を付与することによって国家と個人の基本的関係を形成するのと同じように、法務大臣ではなく家事審判官が養子縁組という私法上の関係を形成すると考えるべきです。養親となる者の意思は大事なのですけれども、それは国籍の場合だって国籍選択する本人の意思が大事でしょうというのと同じ話であって、そこで民法の身分行為の話を持ってくる理由はないし、それは話がずれているということなのです。

 さらに最後ですけれども、あとは常識的な話をつけ加えますが、身分行為の場合であっても婚姻届は当事者の意思のみでなされるわけではなくて、プラス証人が2人ですね。ですから、当事者のみということではないわけです。ということなので、私の理解では、特別養子縁組の手続に児童相談所が関与することを否定する法的な根拠は日本法のどこにも存在しないと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 そうすると、この6ページの今の主な議論のイのところの書きぶりが適切でないということですか。

○横田構成員 私はそう思っています。

○吉田(恒)座長 どういう書き方がいいのかという点に関しては、また事務局と横田先生との間で適切な表現を考えていただいて、というのは、そこが根拠になって、その後、続いていくわけですから、そこが変わってしまうと随分大きな違いが出てきますね。

○横田構成員 でも、これは多分、異論が結構あると思って私はしゃべっているのです。

○吉田(恒)座長 では、御意見はそういうことだというふうに伺って、こちらのほうの修正という御意見ではないということでいいのですか。

○横田構成員 いや、できれば修正してほしいです。

○吉田(恒)座長 修正の可能性があるということでしょうか。修正の必要はあるという御指摘かと思いますけれども、よろしいですか。

 どうぞ。

○藤林構成員 私は法律の専門家ではないので、横田構成員の言っていることが半分ぐらいしかわからないのですけれども、もっともな感じはするのです。ですから、この意見をただの意見としてではなくて、やはり十分、この場でも検討するべきと思います。

○吉田(恒)座長 ただ、結論としては、横田先生も児童相談所長を申立人に加えるという点では反対ではない。ただ、その理由づけがここにあるような理由づけでは適切ではないという御趣旨ですね。

○横田構成員 このまとめですと児童相談所長が加わるということも排除されているのではないかと思ったので述べたわけです。確かにこれは身分関係なので、本人の意思は大事なので、養親の申立権はそうだとしても、プラス児童相談所長が何らかの形でかかわるということは排除されないのではないのかなということが言いたかっただけです。

○吉田(恒)座長 わかりました。

 では、その部分は了解いたしました。事務局のほうも、それを受けて修正をお願いします。

 時間の関係で、では、お願いします。

○床谷構成員 今まで民法学者が言っていたことを否定されているということなので、一言だけ言いますけれども、確かにおっしゃるとおり、特別養子は契約型ではなくて国家宣言型、裁判所の官庁宣告型であるというふうに私たちも紹介していますが、あくまでこれは私法制度の範囲であって、従来の当事者が契約をした養子縁組に裁判所が許可をするというタイプから、裁判そのもの、審判そのものによって成立するという意味に変わったということで官庁宣告型という言い方をしているわけですけれども、土台としてはあくまで養子縁組全体の中で、特別養子は民法全体の中の特別規定として追加されているわけです。

 特別養子の款にないものは一般的な養子縁組の規定が適用されるという理解ですから、あくまで私法で ある養子縁組制度の中の成立の場面だけが届け出という方式から変わったということだけであって、それが行政行為とか公法行為というふうに言われてしまうと私たちの理解としてはにわかには賛成しがたいということで、これはまとめなので、従来の民法学者がこういう立場をとっているけれども、公法学者から見るとこういう見方もできるという仕方で上げていただくことには反対いたしません。

○吉田(恒)座長 よろしいですか。

○横田構成員 ちょっと待ってください。

 つまり、養子縁組関係は私法関係です。それは間違いなくそうです。だから、実親との関係は切るとか、そういう細かい話は抜きにして、基本的には私は民法の基本的な私法関係に手を突っ込んでいるつもりはなくて、要するにその後、成立した後の養子縁組関係はあくまでも私法関係ですけれども、成立の手続という関係は、私、民事手続自体が公法的なものであると思っていますので、そういうことを言ったわけで、行政行為であると言っているわけではありません。

 これは多分、議論していると、時間があるので、この辺に。

○吉田(恒)座長 これ以上やると、家族法とは何だという話をしなければいけないので、ここでこの辺で一応。

 では、大谷参事官、お願いします。

○大谷法務省民事局参事官 御議論自体を否定するものではございませんが、ここに書かれていることは現行法がこういう考え方ですという趣旨と思われますので、その意味では、私は間違っていないと思います。それをどう考えるかということを今、御議論なさっていますけれども、この部分の記載自体は、現行法はこうですねということが書いてあるだけなので、その限度では特に誤っているわけではないと思うところです。

○横田構成員 いや、現行法の理解がということなのですけれども。

○吉田(恒)座長 そこは本当に理解の仕方かと思います。

 金子先生、どうぞ。

○金子構成員 いや、私は今の話ではなくて、まとめ方の話をしたいので、よろしければ先に杉山先生から。

○吉田(恒)座長 では、杉山先生、お願いします。

杉山構成員 同じようにまとめ方の話かもしれませんが、最初の方は児相の申立権の話と2段階の審査の話が当然にリンクするものとして議論されていたのですが、今の横田委員のお話のように別に切り離すこともできるわけです。そのため、最終報告書の主な議論のところでは、ここで出た議論を客観的に示すのであれば一つの考え方に偏ったものではないほうがいいと思いますし、少なくともエで書かれていることは一応、それを前提に議論がされてきたところなので、このまま削除しなくてもいいのではないかという気がいたします。

 また、修正案のような考え方は今日最終的に出されたのですが、修正案の場合にデメリットが全部なくなるかというとそうではなくて、恐らく児相が申立権を認めると、養親候補者を確保するために第1段階を早期に走らせることになり、第1段階が認められた後、養親候補者がいないという状態は生じうるので、デメリット自体は残る可能性はあるのではないかと思います。つまり、修正案でも原案が示すデメリットの部分は全部削除されることにならないと思います。

○吉田(恒)座長 では、金子先生、どうぞ。

○金子構成員 済みません。今の話とちょっとかぶるかもしれませんけれども、エのところで「メリットがある」で終わりで、あとは削除でいいという「たたき台に対する意見」というものがありますけれども、私は、そこは残してほしいなと思っておりまして、さっきもちょっとやりとりがありましたが、要するにディテールがわからなさ過ぎて、さっきの議論のほかにも、例えば特別養子縁組相当と判断する、その判断基準が一体、何なのかも明示されていませんし、そんなような段階でこのデメリットは生じないとかと言われても困るので、もし、この程度のディテールにとどまるのだったら、課題のほうも残していただきたいと思っております。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、どうぞ。

久保構成員 二分化に限らず、現行制度でもこういったデメリットはあるのを、さも二分化にしたからこういうデメリットがありますという書き方はやめていただきたいということなのです。それだったら、削ってほしいということなのです。

○吉田(恒)座長 どうまとめるかですけれども、基本的にはいろいろ意見が出ています。それで、この考え方にはこういうメリット、こういうデメリットというものを整理しているというところでまとめていくのだということになれば削除するのが適切ではないかというのも一つの御意見ですし、残すべきであるというのもあるとすれば、やはりこのまま残しておいて、そして疑問として、ただ、残すときには今、久保先生がおっしゃったような、ミスリードにならないような表現として残す必要があるのではないかということで、久保先生、よろしいでしょうか。

○久保構成員 あとは文言を見たいと思います。

○吉田(恒)座長 では、久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 今のデメリットの件に対しては、現行法でも不安定が生じているという不安定と、ここで書かれている不安定は大分違うことが書かれていると思いますので、そこは既に前提になってお話はされているとは思いますが、そこはぜひ残してほしいと思っています。

 そういう大議論の後にちょっと細かいことで申しわけないのですけれども、6ページ目のイの6行目の最後のところで、同意が要件とされていることの趣旨について「非虐待事案において」と書かれている表現が若干、気になりまして、これは要するに817条の6の、ただ、ただし書きと言ってしまうと多分広くてずれるから悩ましいのだと思いますけれども、不正確といいますか、もし削除してしまったほうが正確なのかなと、ちょっと気になったので、済みません、一言でした。

○吉田(恒)座長 では、今後、御検討いただくということで。

 残りの時間が限られてきて、まだまだ議論すべき点がありますので、先に進みたいと思います。

 どうぞ。

○峯本構成員 さっきの理論的に、児童相談所長に申立権が認められるかどうかという議論があって、それを書いていただくのは全然いいのですが、もう片方で社会的養護の子どもたちに対するリーガルパーマネンシーの保障という観点から、いわゆる親権喪失、28条みたいな流れの一環として今回の特別養子縁組制度を考えるという議論になっていますので、その観点からも、基本的には当事者とともに児童相談所が申立適格を持つ。つまり、手続をスタートさせるときに児童相談所が申し立てを行うのだという考え方は、一つは出てくるかなと思いますので、そこは意見として書いておいていただいたほうがいいかなと。身分関係の形成に関与できるのかどうかという議論と別の話として、今回の流れから言ったら、その点は児相に申立適格を認めるときの一つの重要な要素になるのではないかなと思います。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、大分限られましたけれども、続けて、出自を知る権利についてです。

 この点は、久保先生のほうからは特にないですね。

○久保構成員 ないです。

○吉田(恒)座長 では、ほかの先生方、いかがでしょうか。

 よろしいですか。先ほど御説明いただきましたけれども、では、横田先生、お願いします。

横田構成員 もっといい意見がほかの先生方から出ればと思ってたのですけれども、一応、確認ですが、議論の仕方として、現在の戸籍制度を前提として、戸籍情報の話でという話と、もうちょっと、やはり子どもの出自の権利はもっと広い話でしょうという話と両にらみで進めていただきたいと思っているのです。

 それで、戸籍の話は前回言ったので、もっと本当に、これこそ本丸のほうの話でいいますと、これは私がちょっと勉強不足なので詰めていませんけれども、要するに匿名出産の話が将来出てきたらということを頭に入れておかないといけないのですが、ただ、そのことを踏まえた上で話をします。

 ドイツの匿名出産をちょっとかじったぐらいで話をしますが、ドイツの匿名出産だって永遠に秘密というものではないわけですね。そうすると、例えば親の側、実親の側が死んでも秘密だということはあり得ないと思うのですけれども、そういうことを前提にするならば、情報の収集と管理と開示請求と前回言いましたが、少なくとも情報の収集と管理のレベルで言うならば、開示は後日の話として、収集と管理に関する限りでは早急に対策を練らないといけないと思っています。

 といいますのは、これは制度ができました、ではこれからということでは遅いわけです。これは前も誰かがおっしゃっていましたけれども、なので、まずはできるところからでも先にということで、だから、まとめのところにありましたね。秘密のうちにという。

○森口構成員 9ページです。

○横田構成員 アのところですね。「実母に自分の情報を秘匿する選択肢を用意する必要があるという課題がある」ということを踏まえた上でも、なお、永遠に秘密はあり得ないのだからということで、収集と管理のところだけでもまとめられるところはまとめたふうに動いたほうがいいのではないかと思います。

吉田(恒)座長 わかりました。

 では、床谷先生、お願いします。

○床谷構成員 今、横田構成員がおっしゃった中で、ちょっと確認といいますか、訂正しておきたいのですけれども、ドイツ法の場合、匿名出産というふうにおっしゃりましたが、匿名出産と私が御紹介した内密出産法とは違います。匿名出産という言葉はどちらかというとフランス法の中の制度として紹介されることが多いのですけれども、もちろん、ドイツにも匿名出産の慣行はあるのですが、法律になっているのはそうではありません。

 内密出産のほうは、訳は人によって違うのですけれども、内密出産法について御紹介したのは、子ども自身が知る権利を持つということと、実親のほうが知られたくないということとの利害の調整をどうとっているかということの一つの例として御紹介したわけで、16歳になるまでは母親は子どもに対しては、自分は誰かということを仮名で出生登録をすることはできる。その上で、16歳になった子どもが自分の実親を知りたいというときに、母親のほうもそのことを察して、それをなお拒否することはできる。その利害の調整を家庭裁判所が行う。

 こういう形もありますということの例として申し上げたわけで、あくまで当面の秘密を守るということなので、ドイツ法も死ぬまで隠せという発想ではありません。その点は、フランス法のほうはまだ、むしろそれに近い部分があるのではないかと思っています。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○横田構成員 だから、死ぬまで隠せということではないのでということです。

○吉田(恒)座長 よろしいですか。

 では、久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 今のところ、同じところが気になっていましたので発言させていただきますが、今のやりとりから考えますと、アの最後の3行、特に最後のところで「実母に自分の情報を秘匿する選択肢を用意する必要があるという課題がある」というのがちょっと強いのではないかなという気がいたしまして、床谷先生から御紹介があったように、そこに対立があり得るので、調整の仕組みをうまく設けることが課題なのだというふうにしないと、実名も含めて永遠に隠せる選択肢を用意する必要があるというふうに言っているように誤解されかねないのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 では、少し踏み込んで書いていただくということですね。

 どうぞ。

○床谷構成員 そこのイのところについての一元管理の機関の話なのですけれども、これは最初に林構成員から紹介していただいた文書の中に出てきている韓国の中央入養院ですか。この制度、入養特例法の中でつくられている新しい組織のようですけれども、その組織のようなことをこの場で、例えばこういうものがあったらいいのではないか。例えば韓国にはこういうものがあるということを情報として議論の場として出てきていることをこのたたき台の中に残すことは可能でしょうか。

 要するに、韓国の入養特例法は民法の制度ではないので、民法には日本の普通養子に当たるものと特別養子に当たるものがあり、それとは別な形で入養特例法の中に、要保護児童のためだけの子どもの認定と手続と記録の保存という制度があるので、恐らく社会的養護の子どもについて特別養子の特殊版をつくりたいという発想は、この韓国の入養特例法のようなものを、そのもとでつくられているこういう機関のことも含めて日本は設けるべきではないかという主張にもつながるのではないかと思いましたので、ちょっと発言させていただきました。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 今の床谷先生の御発言を受けて言えば、諸外国のそうした例なども参考にしてということになりますね。そういう書きぶりでここのところの言葉をつけ加えていただくというのでいかがでしょうか。結論をここで示すわけではありませんので、今後の検討の材料なり視点を提供できればと思います。

 時間があと15分しか残っておりません。この後、支援のところですね。縁組成立前後の養親や子どもに対する支援、それから、行政の支援体制の強化(一元化)、両方とも支援にかかわるところですので、ちょっと乱暴かもしれませんけれども、この2つ、支援の部分について御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 済みません。この(4)の支援のところ、主な議論のところですけれども、前々回ですか。その前にヒアリングを行いまして、その際に来ていただいた当事者の方々からは、研修であったりとか支援の必要性であったりをかなり強く訴えられておりました。その点について、記載が不十分ではなかろうかと考えておりますので、別紙の6ページ目に記載しておりますが、このような文言を挿入していただければと考えております。

○吉田(恒)座長 「多様なニードを持つ養子縁組が増えることに合わせて、養親への研修」等々ですか。

 別紙のほうですか。

○久保構成員 はい。済みません。別紙の主な議論のアのところに挿入しているところで。

○吉田(恒)座長 赤で入っていますね。こちらのほうも御検討くださいということですね。

○久保構成員 はい。

○吉田(恒)座長 ほかにいかがでしょうか。

 では、森口先生、お願いします。

○森口構成員 私も主な議論のアのところなのですけれども、「特別養子縁組の中には社会的養護の対象とすべきものがあり」という表現があります。前回の検討会で私自身もアメリカの例を挙げて、必ずしも特別養子縁組の全てを支援するというよりは、その中で特に社会的養護であるものを支援するべきだという区別をつけたのですけれども、その後に藤林さんや林さんの意見などをお聞きして考え直したので、それについて申し上げたいと思います。それから、このまとめにはないのですけれども、論点のところでは「特別養子縁組を支援するときには普通養子縁組との公平性なども考えなければいけない」という点が挙がっていたのですけれども、それについても述べたいと思います。

 私は要保護性がある児童の養子縁組は全て支援をするべきだと考えます。実際、児童相談所に出てくるケースは特に要保護性が強くて社会的養護とみなされ、それを支援することはもちろんだと思うのですけれども、そうでない場合、例えば民間のあっせん機関によって新生児のときに委託される特別養子縁組を支援するかどうかというところでは、私はしなくてもいいかもしれないと考えていたのですが、考えが変わりました。

 新生児についても、実は要保護性が非常に高い場合が多く、望まれない妊娠の場合は胎児に対するネグレクト、例えば栄養状態が悪い、あるいは飲酒、喫煙、薬物使用などによって、胎児の段階でネグレクトを受けている可能性が高いと考えられます。あるいはそこまで行かなくても、単に胎児期に母親が高いストレスのもとにあるというだけで、出生時のアウトカムが悪い、さらに、その子どもたちが成人になったときの健康や能力、学歴や所得にも大きな負の影響がある、という実証研究がここ五年くらいに医療経済学等の分野で続々と出ています。

 そのことを考えると、やはり民間のあっせん機関による実母が親権を放棄した新生児を対象とする養子縁組についても、英語ではアット・リスク・チルドレン(at risk children)というのですが、非常にリスクが高い子どもたちだといえます。つまり、その後成長していく中で軽度から重度の障害があらわれる可能性が高く、この検討会でヒアリングをさせていただいた方も、民間のあっせん機関で養子縁組をした後に「こんな縁組をしなければよかった」という人が多くでるほどいろいろな問題が起きているというご発言がありましたが、まさにそれは胎児のときにネグレクトを受けて生まれてきた子どもたちがその後にさまざまな困難を持つことにも起因していると考えられます。特に、日本は特別養子縁組が年間たかだか600件しかなく、アメリカの場合はそれが社会的養護のみで8万件もあるので全ての養子縁組を支援することはできないとは思うのですけれども、日本の場合は非常に少ないわけですから、児相と民間の区別なく、全ての特別養子縁組を支援する方向でいいのではないかと考え直しました。

 最後に、普通養子縁組との公平性なのですけれども、普通養子縁組は本当にいろんな理由でなされていて、相続税対策でも認められるという判例もありますし、私自身の研究でも、普通養子縁組を児童の年齢別にみると、小学校、中学校、高校の入学年齢で非常に増えるのです。つまり単に子どもの学区を変えたいといったような、いろんな瑣末な、全く要保護性のない動機が多く混在しています。だから、この検討会で議論しているように、年齢要件などを緩和して全ての子どもに、要保護性がある全ての子どもについて特別養子縁組という選択肢をオファーできるという制度を整えることができれば、普通養子縁組との公平性は考える必要はないのではないか、と考えます。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ほかに支援に関して。

 では、林先生、お願いします。

○林構成員 (5)も含めてですね。

○吉田(恒)座長 そうです。

○林構成員 (5)の、ちょっと言葉の問題といいますか「行政の支援体制の強化(一元化)」と書いてあるのですけれども、先ほどの記録の管理とかと言われている一元的管理という場合の一元という言葉と、この行政支援体制の強化という、この書かれている内容を見ると、例えば11ページの主な議論のウの2行目で「連携・協力体制を構築する必要がある」ということを踏まえると、一元的に何か行うどこかの機関がというよりは、行政だけでなくて、公民を含めた支援体制の一貫性とか、あるいは連携・協働ということのほうがこの内容からするとしっくりいくのかなと思っています。

○吉田(恒)座長 タイトルのつけ方も含めてですね。

○林構成員 はい。

○吉田(恒)座長 ただ、主な議論のアのところで「中央児童相談所等の単位で可能な限り一元化」という言葉が11ページのほうに載っていますから、そちらに引きずられると。

○林構成員 これは多分、養親情報の一元化とか、そちら側ですね。

○吉田(恒)座長 そういうことです。

○林構成員 そこをもうちょっと分けて書いたほうがいいかなと。支援と養親情報の一元化という。

○吉田(恒)座長 そうですね。先ほどのところとも関係してきますね。

 では、峯本先生、お願いします。

○峯本構成員 先ほどの、全体としてリスクを抱えた子どもであるという観点から言いますと、今の利用できる支援サービスの観点で言いますと、市町村の要保護児童対策地域協議会で、一定期間でも要支援児童もしくは要保護児童として登録して、一定期間、モニタリングであったり、見守りのサービスを提供するのは現状でも、件数がそんなにむちゃくちゃ多いわけではないので、利用可能な制度として、逆に登録されたらラべリングされてみたいなネガティブな印象を受けられる可能性もあるかもしれませんけれども、現実には保険サービスも含めていろいろ登録することによって積極的な支援が提供できる基本的な枠組みがあるので、そこは触れてもいいかなと。

○吉田(恒)座長 要対協の業務のところにですね。

○峯本構成員 要対協への登録のところとして、現状ですぐに利用できるサービスという、よくやっていますね。施設から戻ってくるときには、少なくとも要支援登録して、一定期間の保健師さんの訪問であるとか、いろいろなコーディネートしながらサポートするということは、市町村の多くが取り組みをされている状況になってきているかなと思いますので、その辺はちょっと入れておいてもいいかなと思います。

○吉田(恒)座長 このまとめの中に要対協をですね。

○峯本構成員 場合によっては、先ほどの印象的なことは多少残るのですが、そこは。

○吉田(恒)座長 これもほかとの、全体のものがありますので、調整した上で、可能であれば入れていただくということで御検討ください。

 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 ここの10ページの主な議論のアのところに「特別養子縁組の中には社会的養護の対象とすべきものがあり」という言い方があるのです。

 それで、2ページの「2.基本的な考え方」の(3)に、先ほど意見を言いましたが、「社会的養護の一つとして」、または「社会的養護の選択肢の一つとして普通養子縁組制度がある」というふうに書かれているわけなのですけれども、普通養子縁組のごく一部ですが、要保護児童が普通養子縁組として祖父母が養育していくというパターンがある。特別養子縁組も要保護児童の福祉を保障する制度です。けれども、この特別養子縁組というターム・用語と、社会的養護がイコールなのか、それとも、その一部なのか、というのが何か曖昧な感じがおります。一方で私は社会的養育の検討会のメンバーであり、社会的養護と社会的養育の言葉をどう使い分けるのか、現在、議論中なものですから、ここはもうちょっとよく慎重に言葉を使っていただいたほうがいいのかなと。

 特に児童福祉法3条の2の中で、厚労省が作ったポンチ絵の中に、家庭と同様の養育環境の中に養子縁組が含まれているということを考えると、特別養子縁組イコール社会的養護と名づけてもいいのかなと思うわけなのです。ただ、社会的養護とイコールといっても、支援の必要度、重要度はケース・バイ・ケースになっていくわけなのですけれども、位置づけとして、ここは慎重に文言は使ったほうがいいかなと思います。

○吉田(恒)座長 なかなか本質的なところの話に出てきてしまいましたけれども、とても大事な御指摘かと思います。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 林先生、お願いします。

○林構成員 先ほど峯本構成員が言われたことは、この主な議論のウのところで、児童相談所と民間あっせん団体及び、例えば市町村での妊娠相談機能とか要対協などとの連携・協力体制が必要であると修正するのがいいかと思います。

○吉田(恒)座長 そういう表現でもいいと思います。

 もう、これでよろしいですか。

 それでは、最後で大変活発な意見交換になりましたけれども、事務局のほうはこれを受けて、また取りまとめのほうをお願いしたいと思います。

 最後「4.今後に向けて」というもので2行載っておりますけれども、この部分に関しましては、特別養子縁組の利用促進のあり方で、本検討会で考え方ということでまとめた後の扱いということで出てくることかと思います。政府内の関係部局において、さらに検討を進めて結論を出すことを求めたいということです。民法の改正が必要なこともあるでしょうし、予算に反映させるということが必要な場面もあろうかと思います。これらの点について、政府内の部局での検討が進められて、これらの結論、これに結びつけるということを検討会として望みたいというのを最後に加えたい。こういう趣旨でございますけれども、この点、よろしいでしょうか。

 特に御意見がないようですので、きょうの意見交換、この取りまとめ案に関しまして、たたき台に対するさまざまな御意見をいただいたところであります。

 それでは、最後に事務局のほうから御案内をお願いいたします。

○林補佐 次回日程につきましては、3月28日火曜日、17時からを予定しております。

 特別養子縁組に関しまして、取りまとめの御議論をお願いしたいと考えております。

 なお、前回の検討会で個人情報の開示の関係の資料を求められましたが、調整させていただきました結果、資料の提出は不要ということでしたので、今回提出していないということを申し添えておきます。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 本日も御議論いただきまして、大変ありがとうございました。それでは、本日の検討会はこれで閉会といたします。

 御出席の先生方、御多用のところ、どうもありがとうございました。


(了)

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