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2017年2月24日 第1回小児からの臓器提供に関する作業班議事録

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成29年2月24日(金)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館17階専用第21会議室


○議題

(1)小児からの臓器提供について
(2)その他

○議事

○伊藤室長補佐 それでは定刻になりましたので、ただいまより第1回小児からの臓器提供に関する作業班を開催いたします。班員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただき誠にありがとうございます。

 まず、今回は第1回目の会議ですので、班員の先生方の御紹介をさせていただきます。五十音順で御紹介いたします。日本医師会常任理事の今村定臣班員、山陰労災病院院長の大野耕策班員、明星大学教育学部特任准教授の奥田晃久班員、国立研究開発法人国立成育医療研究センターこころの診療部長の奥山眞紀子班員、東京医科大学病院救命救急センターセンター長准教授の織田順班員、国立研究開発法人国立成育医療研究センター臓器移植センター長の笠原群生班員、金沢医科大学医学部発生発達医学教授の犀川太班員、東京工科大学医療保健学部看護学科准教授の白石裕子班員、飯塚病院副院長の名取良弘班員、東北大学大学院法学研究科教授の水野紀子班員、長野県立こども病院循環器センター長の安河内聰班員、日本医科大学救命救急センター教授の横田裕行班員、東京大学法学部大学院法学政治学研究科准教授の米村滋人班員です。横田裕行班員には、班長をお願いしております。

 続いて、事務局の紹介をいたします。移植医療対策推進室長の井内努です。室長補佐の林です。同じく室長補佐の蔵満です。私、司会をさせていただいております室長補佐の伊藤でございます。よろしくお願いいたします。

 まずは、はじめに作業班を開催するに当たり、移植医療対策推進室長の井内努より挨拶させていただきます。

○井内移植医療対策推進室長 まずは、先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。今回の会議の作業班の趣旨ですが、臓器移植委員会のほうで議題として小児の移植が出たときに、この時点で、一度どのような課題があるのか集約して、その対応策を検討するべきではないかというような御議論がなされました。それを踏まえて、この作業班を再開させていただいております。皆様方には、本日、忌憚のない御意見を頂ければと思っております。我々としては、この作業班で出た御意見等について、しっかりと整理をして、今後の課題というのを考えていきたいと考えております。

 一言で言いますと、本題で御議論を頂くということになると思いますが、今日の会議で出て、明日解決するという問題は、なかなか少ないという認識を持っております。そういった中で、今後どういう方針で、まだ検討を続けていかないといけない事項というのも多々あると思いますし、エビデンスを出していかなければいけないということも出てくると承知しております。我々としては、この会議を早急に進めるというか、パパッとまとめて何か結論を出すというよりも、今後の臓器移植、これから日本で根付いていく中で、どういった課題を一つ一つクリアしていくかということを、地に足をつけた形で我々としても考えさせていただきたいということがあり、その最初ということで御議論いただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○伊藤室長補佐 続いて、作業班の横田裕行班長より御挨拶をお願いいたします。

○横田班長 この度、この作業班の班長を仰せつかりました日本医科大学の横田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は救急という立場で、いつも臓器提供をする御本人や、その御家族の立場からいろいろ意見を申して、あるいは、いろいろな検討を加えてきました。その中で、恐らく小児特有の課題というのが、きっとあるのだと認識しています。この作業班の中では、皆さんのその専門の立場から、いろいろな課題というのをまず議論をしていただいて、その中から方向性、それから、解決策ということの議論ができればと思っております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

○伊藤室長補佐 それでは、頭撮りはここまでといたします。これ以降、カメラ等による撮影は御遠慮ください。

 以後の議事の進行は、横田班長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○横田班長 作業班の会議を始めたいと思います。まず、事務局から資料の確認をお願いします。

○伊藤室長補佐 お手元の議事次第に沿って、資料と参考資料の確認をさせていただきます。議事次第を御参照ください。配布資料として、資料1、小児からの臓器提供に関する作業班について。参考資料1、日本における臓器提供者数の推移と小児の移植希望待機者数。資料2-118歳未満の脳死下での臓器提供事例。参考資料2-2、「改正臓器法施行から5年」の抜粋。参考資料3、臓器提供の意思表示に関する意識調査。参考資料4、臓器移植の普及推進について。参考資料5、体制整備事業について。参考資料6、心臓・腎臓・肝臓のレシピエント選択基準一部改正新旧対照表。参考資料7、臓器提供施設マニュアルの抜粋。参考資料8、臓器提供手続に係る質疑応答集の抜粋となっております。資料に過不足等がありましたら、事務局までお知らせください。以上です。

○横田班長 よろしいでしょうか。もし資料が不足していましたら事務局にお申し付けください。

 それでは、議論に入ります。本日の議題「小児からの臓器提供について」に関して、資料1を御覧ください。資料1に基づき議論をしていきたいと思います。では、資料1の「これまでの経緯」のところから事務局に説明をお願いします。

○伊藤室長補佐 それでは、資料1に基づき御説明させていただきます。まず、資料11、これまでの経緯です。平成28629日に開催されました第44回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会におきまして「最近の臓器移植の実施状況等について」の検討がなされました。その際に、小児からの臓器提供者数は移植希望待機者数と比べ、少ない状況であり、小児からの提供が進まない現状等について議論されました。その結果、小児における臓器提供の現状把握と、その課題及び解決策を考えるため作業班を開催することについて臓器移植委員会より提案がありました。そのため、今回の小児からの臓器提供に関する作業班を開催するに至っております。

 まず、参考資料として、3つの参考資料の御説明をいたします。参考資料1を御参照ください。参考資料11ページ目ですが、平成281231日までの脳死下での臓器提供数の推移を示しております。脳死下臓器提供数は法改正後より増加してきており、着実に提供数が伸びていることが分かります。

2ページ目、その脳死下臓器提供者数のうちの家族承諾による臓器提供、本人意思表示による臓器提供、家族承諾による15歳未満の小児の臓器提供の推移を表しています。小児からの臓器提供数は、毎年、1例から2例の提供であるということが分かります。

3ページ目、心停止下の臓器提供を含めた臓器提供数です。心停止からの臓器提供数は、法改正後より低下してきており、直近の3年間は約30例近くで、横ばい状態が続いている現状です。

4ページ目、こちらはレシピエント、臓器移植希望待機者数です。平成281231日時点ですが、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓となっており、それぞれ15歳未満の数が、赤枠で囲っている部分の人数になっています。また、10代の移植待機希望者数として、心臓は53名、肺は16名、肝臓は22名、膵臓は1名、腎臓は113名と、臓器提供数よりも移植希望者数のほうが多いという現状が続いています。

 続いて、参考資料2-1です。こちらは、これまで18歳未満の脳死下臓器提供者の年齢区分、原疾患、提供日、提供臓器、移植施設を示しています。こちらの少し色がかかった所が1518歳、それ以外は15歳未満の臓器提供になっています。それぞれの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓、小腸のレシピエントの年代、移植病院が書かれています。

 参考資料2-2、日本臓器移植ネットワークが法改正後からの5年間をまとめた報道資料発表です。一部、小児の部分のみ抜粋しています。目次としていろいろありますが、3ポツ目、児童(18歳未満)からの脳死下臓器提供事例の所だけを抜粋しております。

3ページ目、児童からの脳死下臓器提供事例として、経緯と疾患分類と書いてあります。家族からの申出又は選択肢提示を経て、日本臓器移植ネットワークに連絡があった18歳未満の情報の97例を分析しています。外因性疾患では家族の申出が60.3%に対して、内因性疾患は75%という現状が分かっています。

4ページ目は施設の分類です。9割の施設は5類型施設で臓器提供ができるという施設ですが、12例は5類型外の施設からの連絡があったことが分かりました。

5ページ目、家族からの申出というのが66%、約3分の2を占めていることが分かります。3分の1は選択肢提示を行い、情報が上げられてきているという現状でした。

6ページ目、患児の性別、原疾患です。性別は男性が半数です。原疾患は外因性のものが約3分の258例の提供事例の通報数でした。実際、これらの通報数で臓器提供に至ったか、至らなかったかということも見ておりますが、それが78ページのリストになります。

 臓器提供に至ったのが全体の14.4%、97例中14例が臓器提供に至っています。そのうち脳死下提供が9例、心停止下提供が5例です。約85%が臓器提供に至っておりませんけれども、それの原因として一番多いのが「施設の体制整備がまだ」が17.5%、「家族が提供を望まず」が16.5%、「虐待の疑い否定できず」が10.3%でして、これらが10%を超えている理由となっております。それぞれこれを、選択肢提示、家族からの申出というくくりで分析しているのが次のページです。

8ページ目、選択肢提示を行った33事例のうちの臓器提供に至っているのが5例、家族からの申出の64例のうち臓器提供に至っているものが9例です。それぞれの臓器提供に至らずの原因として一番多いものが、やはり「施設の体制整備がまだ」が非常に多いことが分かりました。

 それぞれの要因を分析しまして、これらのことを臓器移植委員会で御報告させていただいた結果、委員の先生方より多くの御意見を頂き、その課題及び解決策を考えるため、今回の小児の臓器提供に関する作業班を依頼され開催の運びになりました。これまでの経緯として、以上になります。

○横田班長 今、この作業班ができた経緯、あるいは背景のいろいろな数字をそろえてお話いただきましたけれども、何かここで確認しておくことはありますでしょうか。よろしいですか。

○安河内班員 日本小児循環器学会の長野の安河内です。私たちは小児病院なので、このドナーの5類型に相当すると思うのですが、体制整備の不備というところが、多分、この会のテーマの1つになると思います。具体的に、なぜどのような体制整備の不備があってできなかったかということが、後ほど説明はあるのでしょうか。

○伊藤室長補佐 今、説明させていただきます。7ページ目の、体制整備がまだという17例のうち、虐待防止委員会がないというものが8例ありました。それ以外の7例は、小児自体の受入れの体制ということで、小児の脳死判定をする先生方の体制とか、院内の全体の脳死を受けるという体制がないというものでした。

○横田班長 よろしいですか。後でまたこのような議論も出てくるのだと思います。JOTの資料というのは、これは公表されている資料ですか。

○伊藤室長補佐 これはJOTのホームページから見ていただくことが可能になります。

○横田班長 私からですが、違和感があったのは、JOTの解釈なのでしょうけれども、原疾患というところに幾つか「不明」とあるのですが、本来この原疾患は確実に診断されていなくてはいけないと思います。もし公表されているデータなら、何か質問があったときには、説明ができるようにしておいたほうが良いと思います。

○伊藤室長補佐 そうですね。

○横田班長 これはネットワークの方の問題だと思います。今、気が付きました。すみません。ほかにありますでしょうか。

 それでは、実際の検討に入ります。小児の臓器提供に関しては、いろいろな問題、課題があるのですが、一時にやりますと議論が拡散してしまいますので、項目を区切ってこの資料にのっとって議論をしていこうと考えております。また、今回は第1回目の会議ということで、皆さんの忌憚のない御意見を頂ければと思います。それでは事務局から、2番の小児の臓器提供に関する現状と現在の取組について説明していただきたいと思います。お願いします。

○伊藤室長補佐 それでは、資料12番目、小児の臓器提供に関する現状と現在の取組を御説明いたします。それぞれ全体を通して、(1)(5)まで御説明させていただきますので、その中で先生方の御意見を頂きたいと考えております。

 まず、(1)普及・啓発についてです。移植医療についての国民の理解はどうかということで、平成25年の内閣府調査においても、また平成288月に日本臓器移植ネットワークが行ったアンケート調査においても、臓器移植というものは認知されていると我々は考えております。

 参考資料3を御覧ください。こちらは平成288月に、日本臓器移植ネットワークが行っている報道関係への意識調査の公表資料となっています。

3ページ目、こちらのアンケートは、インターネット調査で行っているアンケートです。全国展開されていて、有効回答数が3,000人のアンケートになっています。「臓器提供意思カードの存在を知っていますか」という質問では、68%の方は「知っている」と答えているのが分かりました。

4ページ目、「臓器提供意思表示カードで意思表示していますか」という御質問では、10%前後の方々から「カードを持っているので、意思表示している」という回答を得ております。

56ページ目、その意思表示の方法として、運転免許証、健康保険証の裏面への記載をしていますかという質問ですが、運転免許証、健康保険証ともに、約10%の方が意思表示欄があるので記入しているとの回答で、意思表示欄があるのは知っているけれども記入していないという方が、大体45割ぐらいということが分かりました。

 日本臓器移植ネットワークにおいて、意思表示を、拒否の意思表示をするために作ってありますインターネットによる意思の登録があり、そういうことを知っていますかという質問ですが、ほとんどの方が知らないということが分かっています。

9ページ、「臓器提供についてどのように考えていますか」という質問ですが、これでは、合計で63.4%の方が「脳死後でも心臓が停止した死後でも提供してもよい」と答えています。年代別で見ると、10代で半分ぐらい、一番高いところが50代で76.5%の方が提供してもよいと答えております。

11ページ、「臓器提供について、家族と話をしたことがありますか」という質問については、合計では26.3%の方が家族と話をしたことがあるということです。7080%の方は、今まで話をしたことが一度もないという結果が分かりました。これらを踏まえて我々としては、家族と話をしていただきたいということを中心に取り組んでおります。それに関して、参考資料4を御覧ください。

 臓器移植の普及推進についてという資料がありますが、国民の中で臓器提供を希望される方々の割合というのは一定程度、内閣府の世論調査では「約40%の方が提供してもよい」と答えられております。毎年10月には「臓器移植普及推進月間」という取組をしており、厚生労働省が主催で「臓器移植推進国民大会」というのを毎年10月に行っております。今年は、臓器移植法施行20周年のため、東京都にて20周年の記念大会を行う予定をしております。グリーンリボンキャンペーンとして、東京タワーとか、各地域の景観、名所をグリーンライトアップしています。

 また、年間を通じた取組としては、臓器移植を考えるリーフレットとか、免許センターでの意思表示に関するリーフレットを配布していたり、コンビニ、郵便局、薬局といった所で臓器提供のカードを配っています。また、中学3年生向けの授業用の「命の贈り物」というパンフレットを作成しまして、毎年、全国の中学校、約11,000校に配布しています。そういったようなことを現在取り組んでおります。

 普及・啓発としては、やはり家族と臓器移植について話し合ってもらうようなイベントや普及・啓発ということが大事だと、非常に重要ではないかと考え、現在、取り組んでおります。普及・啓発に関して以上です。

○横田班長 まず、全部説明していただき、それから議論を個々にしていきたいと思います。

○伊藤室長補佐 資料12(2)、臓器の提供施設における環境整備について御説明いたします。

 我々は現在、1.脳死判定に係る体制整備の充実について、2.臓器提供時における院内業務負担の軽減について、3.臓器を提供することによる経済的負担の軽減についてといった環境整備について取り組んでいます。現在の取組に関して、参考資料5を御参照ください。

 参考資料51ページ目です。毎年、厚生労働省では施設の体制整備に関するアンケートを全5類型施設に対して行っております。平成28年度のアンケートとして現在行っておりますので、平成27年度の結果を御説明いたします。

 平成27年度6月末現在での5類型施設へのアンケート調査では、5類型施設が862施設あります。そのうち体制が整っていないものが436施設、50.5%です。18歳未満も含め体制が整っている施設が256施設、18歳以上のみの体制が整っているのは170施設という結果が得られております。

2ページ目は、平成271231日付けの脳死下臓器提供360例について、体制が整っている426施設のうち、実際に臓器提供をしたことがあるという施設が170施設、39.9%になります。残りの256施設は、体制が整っているけれども提供したことがないということです。

 この170施設を更に細かく見ると、170施設のうち、1例のみの提供だけでとどまっている施設、数年前にやったり、最近1例やったりといった所もありますけれども、1例のみしか提供したことがないという施設が82施設、48.2%となっています。23例の施設が67施設、4例以上の提供をしたことがある施設が21施設でして、半数が1例を提供してそれで終わっていることが現状として分かっています。

 そこで厚労省として、これらのまだ体制整備ができていない半数の施設、あるいは体制が整っているけれども臓器提供がない施設に支援するために、3ページ目に書いてありますが、日本臓器移植ネットワークを通じて地域支援事業、院内体制整備事業という事業を行ってきています。これまでは、この院内体制整備事業というものが地域支援事業とひも付けされておりましたけれども、今年度からは、やる気のある施設、施設体制を整えたいという施設が、JOTと直接契約していただきまして、JOTのコーディネーターが体制整備のお手伝いをするというような事業内容に変更いたしました。プランとしてこのように3パターンを用意させていただきまして、今まで脳死判定を全くしたことがない施設とか、脳死判定の準備が整っているのだけれども、一部に不足があるから、もう少し研修したいという施設、あるいはこれまで心停止・脳死下臓器提供の経験があるけれども、少し時間が空いたので、もう一度考えたいというような、このような3つのプランを立てまして、事業内容として、院内各種委員会の設置指導、マニュアルの整備、外部講師の紹介、検査のシュミレーション、脳波あるいは無呼吸テストのシュミレーションとか、研修会の開催をしております。各病院にはJOTコーディネーター、都道府県コーディネーターという者が支援に入っております。

4ページ目、これまでの院内体制整備事業との比較として、これまでは地域支援事業とセットで行っており非常にやりにくいというお声を頂きましたので、直接病院自体とJOTの単独で契約するという事業に変更しております。これまでは使いにくいということで、1617施設しかなかったのですが、平成28年度より変更しまして、全国各地の病院から手を挙げていただき約66施設と契約しております。この66施設と契約を結び、体制の整備を行っておりますが、既にこの66施設のうち、数施設が脳死下の臓器提供をしていただいているという実績もあります。

 また、厚生科学費、研究費の政策研究班にて、臓器を提供する施設の経済的な負担軽減ができないかというような経済的な観点からの研究も行っていただいております。以上が、臓器の提供施設における環境整備についての我々の現在の取組となっております。

 続きまして、移植希望者(レシピエント)の選択基準についての御説明をいたします。参考資料6を付けておりますが、こちらは非常に専門的な内容も多く、小児に関する部分のみを簡単に御説明いたします。実際には参考資料2-28ページにありますが、小児の臓器提供をしたいというような家族がいらっしゃったときに、JOTのコーディネーターが説明に入ったときに、臓器が成人に配分される可能性が高いと聞いたことで、辞退された家族がいたこともありました。

 また、臓器移植委員会でも、数年前から委員の先生方から多数の御意見が出ておりましたが、小児からの臓器提供の際には、臓器を提供される御家族の気持ち、小児のレシピエントを助けたいと思っていても、臓器が御家族より年齢の高い成人に回ってしまうということが、社会通念上、許されることだろうかという御意見も賜っておりました。同時に、選択基準を検討する医学的な検討の作業班では、小児のドナーの臓器というのは、小児のレシピエントに配分されるほうが、移植の成績もよく医学的根拠もあるということで、まずは心臓のレシピエントの選択基準が改正されることになりました。

 参考資料63ページ目になりますが、3ページの一番上の(2)臓器提供者(ドナー)18歳未満の場合というところで、もともとは、心臓の場合、治療等による優先度がStatus1Status2と分かれておりましたが、18歳未満であっても、18歳未満、18歳以上のStatus1というのが、先に選択されるような順序になっておりました。それが、左側にありますように、順番として、まずドナーが18歳未満の場合、18歳未満のStatus1Status2という、18歳未満の小児のレシピエントに臓器が配分されるというように変えさせていただいております。こちらの心臓の選択基準は、平成2712月より運用が開始されております。

 肝臓、腎臓のレシピエントの選択基準が、腎臓移植希望者(レシピエント)の選択基準改定案、新旧対照表になりますけれども、この腎臓の3ページ目の一番下の下線を引いている「新設」というところですが、腎臓の場合は、臓器提供者(ドナー)20歳未満の場合は、選択時20歳未満であるレシピエントを優先するということに変更させていただいています。

 次、肝臓移植レシピエント選択基準の改正案、新旧対照表です。こちらにも同様にありますが、肝臓の場合は2ページ目の「優先順位」という所ですが、臓器提供者(ドナー)の年齢が18歳未満の場合には、選択時に18歳未満の移植希望者(レシピエント)を優先するということを、医学的な作業班で検討させていただき、その後、臓器移植委員会で承認されております。こちらのほうは、昨年の10月の臓器移植委員会での承認事項となっております。臓器移植委員会で平成2810月に承認していただきましたが、先般、日本臓器移植ネットワークにおいて、心臓の臓器あっせんでのシステム上の不具合によるあっせん間違いが発覚しましたので、現在、コンピューターシステムを全面停止という指示を行っています。そのため、現在、少し改修に時間が掛かっておりまして、運用開始時期が未定となっています。今後、第三者委員会での調査を待ってから、我々も対応を行う予定です。レシピエントの選択基準については以上になります。

 続きまして、(4)の虐待の対応についてです。こちらは参考資料78を参照していただきながら、説明させていただきます。これまで、臓器提供児の具体的な虐待方法の除外ということに関しまして、こちらは平成22年度の厚生科学研究費で作られました臓器提供マニュアルというもので、除外方法や院内体制の整備をマニュアル化しております。また、参考資料8の臓器提供に係る質疑応答集で周知をしています。

 参考資料7を御説明させていただきます。こちらは、臓器提供施設マニュアルの抜粋となっています。

2ページですが、改正臓器移植法に準じた脳死下の臓器提供のフローチャートです。この赤枠の四角で囲っている所が、小児の虐待の除外方法の診断で、チャート化されております。フローチャートの一番目の四角の中にありますとおり、通常の小児の診療でも行われていますような虐待の疑いがある場合には、臓器提供するしないに関わらず、虐待防止委員会に連絡し、虐待に関する必要な検査を行うとされています。その後、各施設内の虐待対応マニュアルに従って調査を行い、関係機関と協力するというようなことを掲げています。

 その後、通常の救急治療ということで集中治療を行いまして、残念ながら脳死となりうる状態となりますと、「脳死とされうる状態」ということを各施設が診断し、その後「終末期医療への移行」ということになりますが、そのとき、家族への臓器提供の説明を行ったり、あるいは、家族から申出があるというような順序になると思います。

 ここから少しだけ成人への臓器提供と異なる点がありまして、臓器提供の承諾が得られた場合には、小児では原疾患が虐待によるものでない場合でも、虐待防止委員会での調査を依頼しまして、その後、関係機関、児童相談所、警察等への照会を行い、倫理委員会で脳死判定を行うかどうかの決定をしていただくということになっています。倫理委員会で承認されれば通常の成人と同様になりますけれども、法的脳死判定では6歳未満は24時間空けなければいけないという、少し違うところもありますけれども、ほとんど成人と同じような流れになります。

8ページ以降には、被虐待児の診断と対応ということに関し、マニュアルとして書かれておりますので、こちらのほうはまた御参照ください。

 最後に参考資料8を御覧ください。臓器提供に関しまして、臓器提供に係る質疑応答集を厚生労働省から通知として出させていただいています。参考資料8は、小児の臓器提供に係る部分の抜粋ですので、質疑応答集全部は厚生労働省のホームページに載っておりますので、こちらのほうからダウンロードして見てください。

2ページの目次です。全般的事項、臓器提供施設としての要件、有効な意思表示が困難となるような障害、虐待が疑われた場合の有無の確認、承諾の手順、法的脳死判定について、検視、臓器の摘出と搬送などが書かれております。

 そのうち6ページは、虐待の部分を抜粋したものです。例えば虐待防止委員会等が設置されていない医療機関では、今後児童からの臓器提供ができないのかということに関して、虐待防止委員会等の院内体制整備というのは、きちんとガイドラインにおいても、臓器提供を行うために判定しないといけないですので、虐退防止委員会等の院内体制が整備されていない医療機関は、児童からの臓器提供ができないという答えをさせていただいています。

 また、8ページに書いていますが、子供をドナーとする心停止下での腎提供や角膜提供はこれまで行われてきたが、心停止下の場合も虐待の有無の確認をすることが必要ですかという質問に対し、児童の場合、心停止下であっても、ガイドライン第5という臓器提供をする場合の虐待の有無の確認ということの対応が必要だということも書かれています。

 それ以外に、虐待が行われた疑いの有無の確認をどのようにする必要があるのかということも問7、問8、問9、問10に書かせていただいております。その中で、警察、児童相談所といった所とも、情報を共有していただきたいと思います。

 また、11ページ、臓器提供を行う場合の対応というところです。診療過程において虐待対応を行っている場合であっても、臓器提供をするときは、それに加えて別途ガイトラインに定められた臓器提供の対応を行う必要があるのか。この部分が移植、臓器提供を行う場合の特有なものであると思いますが、児童虐待というのは、早期発見をするということで、通常診療でも行われていると考えられますが、その後の臓器提供になった場合に、虐待の対応ということに関しては、児童相談所、あるいは警察等での確認を行っていただきたいということを書かせていただいています。虐待の対応につきましては、以上です。

(5)その他として、(1)から(4)以外の意見がありましたら、よろしくお願いします。説明は以上です。

○横田班長 最後の虐待の有無に関しては、議論がたくさんあると思いますので、まずは順番にのっとって進めたいと思います。(1)の普及・啓発について、資料で言いますと、参考資料3と参考資料4が中心になると思うのですが、これに関して御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

 私から議論のきっかけということで。この10%という数字、意思表示カードへ表示しているかという数字、海外との比較というのはなかなか難しいと思うのですが、この10%の数字というのはどういう解釈と考えればよろしいのでしょうか。少ないと思うのか、あるいは海外と比べると、どうなのかということも含めて、事務局で把握していたらお願いします。

○伊藤室長補佐 まず、海外との比較ということに関して、アメリカでは、大体4割近くの意思表示があるというように聞いております。日本での意思表示を記入しているということに関して、同様のアンケート調査というのは、2016年だけではなくて、2012年から日本臓器移植ネットワークでアンケート調査を行っておりまして、徐々に上がっているという結果が出ています。

 具体的な数字を上げますと、2012年では全体での意思表示をしているものが8.8%、運転免許証では6.3%、健康保険証では7.9%というものが、2013年では全体で7.3%、9.4%、2014年では9.19.3というような形で、徐々にゆっくりゆっくり数パーセントずつ日本でも意思表示を書いている方が増えてきているということが分かったということです。

○横田班長 少しずつ増えているという印象、それから、免許証は確か5年で更新なので、免許証の裏にチェックリストが設けられるようになってから、5年以上たっています。そうすると、免許を持っている方は、目にする機会が全員あるはずだと思います。いかがでしょうか。

○今村班員 私も班長と同じ考えを持っていて、海外との比較というか、生死観と関係があるので、いわゆるキリスト教の国々と、仏教国とか、儒教が広まっているような国々、そこでどのようになっているのかという感じを持ったので、そういう資料があればちょっとお伺いしたいです。

○伊藤室長補佐 事務局です。海外ですと、アメリカぐらいしか分かっておりませんで、韓国、中国、ほかの儒教の国、キリスト教の国、ほかの宗教ではまだ調べておりませんので、またそちらのほうを調べてみたいと思います。

○横田班長 9ページのQ5で、臓器提供についてどのように考えていますかとあります。内閣府の調査だと、4割ぐらいが提供してもいい、こちらでは6割、7割ぐらいですけれども、いずれにしても半分前後の方が提供していいと思っている。一方で、11ページで、家族とはあまり話さないという結果です。普及・啓発について、いろいろな事業というか、試みが行われているわけですが、恐らく持っていないにしても、家族の承諾、あるいは家族の忖度で提供に至るということを考えると、家族同士で1回でも話すような機会が設けられるような普及・啓発の方法というのが大切なのかなと思います。

○名取班員 日本の場合は、全てオープンな所に書くという特殊性があると思うのです。私がアメリカに住んでいた頃のアメリカのフロリダ州の運転免許証は、ただ単にODというマークだけが入って、その内容は警察のコンピューターに行かないと、何をどういうふうに本人が希望しているのかが見えないという状況だったのです。日本の場合は全てオープンになるというところで、書いている人は10%ちょっとだけれども、この9ページのQ5の所に、臓器提供に関しては、まあ、提供してもいいという気持ちが半分ある。日本人の感性の問題なのだと思うのですよね。免許センターでは上に貼るシールを配りますと必ずおっしゃるのですが、確かに臓器移植ネットワークの方も、ネット上での登録はできるのですが、日本人の感性として、私、書いてますよみたいなことを言う性分ではないと思うのです。根本の意思表示の仕方を、もうそろそろ日本人の感性に合うような形に直していただかないと、せっかく50%の方がいいと思っているのに全然反映されていないというのは、根本的にシステムに欠陥があるのだと思います。ちょっと強い言い方ですみません。

○奥山班員 免許証も、健康保険もどちらかというと子供が持つものではないので、子供ということを考えると、先ほどおっしゃったように、何か学校の中で、家族と話すということに関して、講義があって、お家で家族で話したことをどこかに書いておけるようなこともあったほうがいいのではないかと思います。

○横田班長 学校教育の中で、この取組は、事務局のほうから紹介があると思うのですが、非常に限定されていますけど、そのように認識はしています。奥山班員のおっしゃることは非常に重要だと思います。

○水野班員 11ページの「家族と話をしたことがありますか」という問いで、今、委員長がおっしゃいましたように、これがとても少ないというのは問題だと思います。そして、法学的観点からは、改正臓器移植法については山のように不合理があって、言いたいことはたくさんあるのですけれども、そのうちの1つは、この家族の問題です。つまり拒絶権を持つ家族がきちんと定義されていないことです。結果として膨大な数の親族が家族という枠の中に入っていて、その全員の意見を取りまとめなければならないことになっています。ドナーの身近にいる、親、配偶者、子どもたちは皆、ドナーの意思を尊重したいと思っていても、危篤だというのでかけ付けてきた遠縁の大伯父さんあたりが俺は臓器提供なんて反対だというと駄目になってしまうという、ばかばかしいことになっています。できればその辺りの基準も、世界の常識的な基準に、つまり家族のしかるべき続柄の特定者で、優先順位をはっきり付けて、明瞭簡単に意思確認できる手続に、改めていくべきだろうと思っております。

○米村班員 東京大学法学政治学研究科の米村でございます。あまり細かいところを申し上げるつもりはないのですが、全体として拝見しますと、運転免許証や健康保険証の裏面に記載欄があるにもかかわらず、そもそもカードを持っていないと回答する方が8割近くにのぼるというのは、やはり知らないのだと思うのです。インターネット調査ですので、対面調査とはまた違うかもしれません。かつての内閣府の調査は、正確に記憶しておりませんが、対面調査だったような気がしますので、どこまで正確に過去との違いが反映されているのかよく分かりませんが、ただ、情報が不足しているというところは恐らく間違いないのだろうと思います。13ページのQ9に「情報を十分得ていると思いますか」という質問があり、「あまりそうは思わない」「そうは思わない」という方が8割以上になっています。情報の受け手のほうですら、十分な情報を得ていると思っていないという状況があるのは、やはり好ましくないという気がいたします。インターネットでの意思表示ができることも十分には知られておりませんし、普及・啓発については、もう少し取組みを強化していただく必要があるという、全体的な印象を持っています。

○横田班長 ありがとうございます。例えばどういう媒体が好ましいですかね。

○米村班員 なかなか難しいのですが、例えば、先ほど奥山班員からもご発言があったとおり、教育現場で子どもさんに対して伝えるというのは、大変意味のある取組みだろうと思っております。私自身、以前東北大学におりました関係で、震災関連での防災教育の取組みにつき、専門家の話を伺うこともあるのですが、防災教育は、大人を対象に実施するというのは大変難しい部分がございます。適切な避難行動のとり方などは、子供さんに教えて、そこかから家族の中で話をしてくださいというふうに子供さんに言うのです。そうすると、子供さんのいる家庭全体で防災の知識に関する認知度が上がり、それが地域全体に広がっていくということがあります。したがって、この問題についても、子供さんへの教育からスタートするというのが、多分一番早道なのではないかと思います。

○横田班長 日本でも公共広告機構でしたか、ときどきテレビで出ますけれども、時間帯が遅かったりするのです。アメリカでは、提供してくださいという広告ですけれども、ゴールデンアワーのスタートレックのところにコマーシャルが入るのです。ただ、日本では、提供してくださいという広告は多分なじまないと思うし、家族で議論してくださいのような広告が子供あるいは家族が見るような時間帯であってもいいのかなというふうにいつも思っているのです。ですから、その辺も、米村班員がおっしゃったようなことで考えていいのかなと思います。ほかにいらっしゃいますか。時間が限られていますけど。

○安河内班員 小児循環器学会では、命の授業ということのプログラムを移植委員会としてやっていますが、問題は、幾ら医療側がそれを望んでも、学校側が受け入れがなかなか進まないというのが問題です。逆にせっかく命の授業をしたいと学会が意思を持っているにもかかわらず、今そのためのツールも作っていますけど、結局、受入れ側の学校のほうで、受入れができないところに、命の授業の普及が難しい点があるので、そこは注意していただければと思います。何か他にできることもあるのではないかなと思います。

 あと、物議を醸すようで申し訳ありませんが、日本は臓器提供の意思表示があった人が臓器提供できるという形ですが、イタリアみたいな国では、臓器提供を拒否する人が意思表示をするという形になっていますよね。法学的には、Noと書かない人は基本臓器提供の対象にするとした場合に、虐待などがないことが前提にということですけれども、何が重要な問題になるのでしょうか。つまり今は臓器提供ありとチェックをする形でやつているのだけど、それでなかなか普及が進まないとなると、私はしたくないという人だけチェックするという話にすれば、逆に今度はもっと臓器提供の可能性は上がるとは思うのですけれども、その点は法学的にどうですか。

○井内移植医療対策推進室長 また、確認しておきますが、現行の法律での、そもそもの制度の運用という形でこうなっていますので、ちょっとそこはまた次回整理します。なぜ、それが今の現行法上できないのか、現在の体制上できないのかというのを、少し根拠を整理してお示しさせていただきます。

○奥田班員 現在の取組の臓器移植の普及キャンペーンについて発言したいと思います。資料で言いますと、参考資料4番ということになっていまして、ちょうど東京タワーをグリーンにライトアップするということでやっていらっしゃいます。私も児童相談所の経験が10年以上ということで長いものですので、10月は厚労省さんのほうでもキャンペーンのラッシュになっていると認識しています。例えば児童虐待ではオレンジリボン、この前後でピンクリボンもありますし、DVのパープルリボン等々、様々な取組が10月前後に集中しています。ここでグリーンライトアップも10月にテレビが入ったりして放送されたりもするかも分かりませんけれども、この時期やはり何かに関連付けて、イベントのラッシュの時期をずらしてもう少しインパクトを上げるということも必要なのかなと。私はこの会議に参加するということが決まるまで、恥ずかしいお話ですが、グリーンリボンキャンペーンを全く認知していなかったのです。こうしたこともありますので、少し時期をずらしてみてもいいのではないかと。行政的に難しいものがあるかもしれませんが、御検討いただければと思います。

○横田班長 時間も限られているので、最後、よろしくお願いいたします。

○白石班員 すみません。東京工科大学の白石です。少し具体的な話から広がってしまうかもしれないのですが、いつも思うところは、臓器移植は人の死を前提にした医療であるということが、大きな問題としてのしかかってくると思っています。その対象は子供であるということで、親御さんもそうですし、社会も受け入れがたい苦痛なのではないかと思います。救急の場での看取りの研究班などいろいろ参加させていただきまして、いろいろな所で、どのように終末期を迎えたお子さんをケアしていくかというガイドラインがあるのですが、そもそも社会の中で子供を看取るということがどういうことなのかということの、大もとの議論がいつもなされていないなというように感じております。

 社会の中で子供を看取るということがどういうことで、それに関わる医療者や、親御さん、いろいろな周りの方々にもどんなケアをしていかないといけないのかという、そうした大きなところがもう少し議論があったらいいなということと、そういうことの一環として、この臓器移植が、1つのグリーフケアの選択肢として出てきたらいいのではないかと思っているのです。子供が亡くなってもその臓器がほかの人の体の中で生きていて、社会の中でつながっていけるというような、そうした形で、普及のところも、そういう死の教育というか、生きる教育といいますか、命の教育とかということと抱き合わせで、コンセンサスを持ったり、教育したりしていくということ、そうした子供たちが大人になったときに、臓器移植ということが、もっと身近になるのではないかと考えています。

○横田班長 家族に寄り添う、一番近い看護師さんの視点から貴重な御意見をありがとうございました。今の議論と重複する部分もあると思うのですが、続いて臓器提供施設における環境整備、なぜこういう状況になっているかを、資料5の視点から議論をしていただきます。これを見ると、そもそも5類型の中で、半数以上の体制が整っていないというのもちょっと驚きなのです。こういう所へのアプローチとか、問題点の御意見を頂きたいと思います。

○奥山班員 その手前です。10数年前の研究なので、今は大分変わってきているのではないかと思うのですけれども、小児がどこで亡くなっているかという研究がありました。小児の医療供給体制が集約化されていないので、かなりいろいろな病院で亡くなっているという結果でした。その辺が今はどうなっているのだろう、というのが私も疑問なのです。その後のフォローアップと言いますか、そもそもそのような臓器提供できる病院で子供が亡くなるような、しっかりとした医療供給体制になっているのかどうかという辺りを、検討する必要があるのではないかと思います。

○横田班長 この辺は、大野班員や安河内班員が詳しいのではないでしょうか。小児科学会で、小児の死亡事例に関しては登録制システムを。犀川班員お願いします。

○犀川班員 小児科学会の理事のほうから派遣されてきました。小児科の医療体制の全部を語ることはできません。登録制に関してはちょっと分かりません。集約ということに関しては、実際に動きました。数年前から、その集約が大事だと。ただし、それは都市部では可能かもしれない。地方へ行くと、その距離等大きな問題が立ちはだかって、思うほど集約化はできない。集約化というのは医療側からの視点であって、現場は集約を望んでいるかという点もあります。すなわち、多くの人は例えば30分以内にかかれる医療機関を望むわけです。それを集約化すると、1時間かかるという地方が出てきます。そこをすり合わせることはなかなか困難で、現実的に私の認識では一時頓挫していると思います。

 ですから柔軟な集約化と言いますか、できる所はできるかもしれないけれども、難しい所はやはり分散して、そこの小さな集約化。お子さんが亡くなる場所がどこででもいいということではありませんが、望むお母様方は、必ずしも2時間掛かる所で最期を看取りたいというわけでもない。そういう現場とのすり合わせが難しいのは、小児医療だけではないかもしれませんけれども思っております。お答えになりましたでしょうか。

○奥山班員 小児の医療体制整備というのは確かにそうで、昔、私が理事だったころからもスタートしていました。もう1つあるのは、救急医療体制なのです。それが今は小児だけではなくて、救急センターという形で、小児も含んでやっている所も結構あります。そういう意味で、小児の救急医療体制、特に内因性も外因性も両方同じぐらいあるのですけれども、特に小児の外傷をどれぐらい救急医療体制として診られるか、しっかりとしているか。それこそヘリ搬送なども含め、最良の医療を提供できるようになっているのかという辺りに関して何かあったら教えてください。

○横田班長 この辺は救急医の立場として織田班員いかがですか。外傷という意味では小児に特化されてはいなくて、多分小児も含めてのシステムというのは、かなり日本では進んできているとは思うのです。

○織田班員 こと小児となると、東京の事例しか分からないですが、東京に関しては最後の砦として4つ指定されていて、そこに集約されるようになっています。ただこれが、地方になるとどうなるかというのは分からないです。地方になると、それほど救命センターの数が都道府県ごとにたくさんあるわけではありませんので、そういう所に集約するということでまずまずうまくいっているのではないか、と思います。

○横田班長 議論をこの小児特有の課題の方に戻します。

○名取班員 地方という切り口で言えば、うちの病院は地方です。織田先生の御指摘のように、一定の病院に運ぶというのがルールで、救急隊が決めているというか、自然に集まってきています。小児という切り口で発言させていただければ、皆さんのこの図の中の、一番大きい施設を持っているのは脳神経外科学会の基幹施設又は研修施設が8889割ぐらいあります。

 どうしてこれだけ多いかというと、脳外科の研修をする病院で、単科で脳外科でオープンにされている100床未満の病院がここに入っています。この病院では、当然小児は受け入れていません。ですから、体制が整っていない所の中の多くの病院がそういう施設なので、ここで半分しか体制整備ができていない。これは5類型なのですが、小児になるとまた更に下がるだろうと悲観的に思うかもしれません。そうではなくて、小児ができる所は既に体制整備が、私たちの救急の感覚で言うともう済んでいると思います。今更、その施設を増やすのではなくて、ここで整備が終わっている所の先生方の負担感をいかに減らしていただけるかというところにかかっているのだと思います。

○横田班長 名取先生の御意見は確かにそのとおりかと思います。もともと脳神経外科学会は、臓器提供施設としては、専門医訓練施設A項だけだったのです。それが、脳外科の学会としての分類が変わったがために、当時C項という規模的には小さい施設も、この5類型に入ってしまったところが、この半分は体制が整っていないというところの影響が確かに出ているのかもしれません。50.5%の中でそもそも無理だよねというのが、かなり含まれているという御意見ですね。

○名取班員 はい。

○安河内班員 名取先生の御意見と少し関連します。逆に、5類型施設に入っている小児の総合医療協議会施設は33あります。そこで、実際に18歳以下の臓器提供施設を見ると、その中に小児医療協議施設からの臓器提供は1例のみです。そうすると、本来小児医療がちゃんと整備されているべき小児医療総合医療施設なのに、そこからのドナーの提供がないということになり、そののほうが問題と思われます。

 この統計を取るときに、対象となる施設がどのぐらいあって、そのうち実際に提供があったのはどういう施設というような内訳がないから分かりません。

 次のページに、制度が整っている施設の中に、臓器提供をしたことがある、ないと分かれています。これも本来は18歳未満を含めて体制が整っている施設256のうち、実際に臓器提供したのは何施設かというところが問題なのです。救急センターで、小児を余り扱っていない所からも提供があった場合も入っているとすると、今後臓器提供を進めるためにはどこにフォーカスを当てるかということを明確にしておいて議論を進めないと難しいと思います。

 私は、小児医療施設33が小児医療集約に一生懸命力を入れているにもかかわらず、これらの施設からの臓器提供がないのがどういうことかということを、きちっとしたほうがいいような気がします。

○水野班員 私もお伺いしたいのですが、資料2-28ページに、どうして臓器提供に至らなかったかという理由が書いてあります。御家族が申し出てくださったにもかかわらず臓器提供に至らなかった最大の理由が、施設の体制整備がまだということです。施設の体制整備がまだという答えを返した施設は、どういう類の施設であるのか、またどういう体制が不備だから至らなかったのかを御教示いただけますか。体制整備をどのように整えていけばこの問題が解決するのかを考えたいと思います。

○伊藤室長補佐 家族からの申出、選択肢提示を合わせて17施設あります。そのうちの8施設が虐待に関する院内体制防止に対する体制が未整備だということで提供に至っておりません。それ以外の残り9施設のうち7施設が、小児に対しての院内というよりは、脳死全体での体制が整っていないと答えていて、臓器提供に至っていないということです。

○横田班長 ちょうど半分ぐらいですね。虐待防止委員会の関係と、そもそも院内の体制がということと。

○米村班員 今の説明は、7ページの17施設の内訳ですね。

○伊藤室長補佐 はい。

○米村班員 先ほどお答えになったのと同じ数字であるように思います。水野班員から御質問のあったのは、8ページの12施設のほうだと思うのです。そもそも、この表の違いを私もよく理解できないのです。7ページの表と8ページの表は何が違うのかも併せて教えてください。

○伊藤室長補佐 7ページと8ページの違いですけれども、7ページは全体をまとめた、この両方を足したものになります。8ページのほうは、臓器提供の事例として97例あり、そのうち医者のほうから、その患者が脳死とされうる状態だと診断された後に、施設の医師からそういう選択肢提示という、脳死とされうる状態の後に臓器提供という方法もありますよというお話があったものが33例です。脳死とされうるような状態ですよ、というお話をされたときに、家族側自ら臓器提供を希望したいのですけれどもと申し出られたのが64例となります。

○横田班長 足したものが7ページという理解でよろしいですか。

○伊藤室長補佐 はい、足したものが8となります。

○奥山班員 今の話の続きです。これは、ネットワークのほうに連絡があったケースということですね。

○伊藤室長補佐 はい、そうです。

○奥山班員 御自身の施設に体制整備がないのに、オプション提示されたということなのですか。その辺がよく分からなかったのです。そうなると、自分の所に体制整備ができていなければ、ネットワークにも連絡しない施設も結構多いのではないかと思うのです。そうすると、これ以上に諦めている所は結構あるのではないかと思います。

○伊藤室長補佐 先生のおっしゃるとおりで、諦めている施設もあります。こちらの選択肢提示したのにかかわらず、体制整備がまだということは、病院自体の体制と主治医の思いが全く違うということで、主治医がそれを理解していなくてオプション提示をしたということだと想像がつきます。

○安河内班員 今の議論はすごく大事な問題です。臓器移植をする側からの意見は、せっかく家族が申し出ているのに、その大多数が臓器提供に至っていない理由で、体制整備もそうだし、一旦家族が申し出たにもかかわらず、家族から提供を望まない形の結果等につながってしまったというのも、その制度的に問題がある部分ではないかと思います。

 この部分は、家族が提供の意思を示していただいたのに対して、きちっと応えることができれば、もっと臓器提供を進めることができるのではないかと思います。無理に臓器提供を推奨するのではありませんけれども、せっかく家族が臓器提供の意思を持ったにも関わらず、うまく反映できないことのほうが問題なのです。そこが今回の議論のメインの部分だと思います。今後の議論としては、これを一つ一つ埋めていくというか、潰していく形になるのですか。

○横田班長 全体を最大公約数的なというところになると思うのです。やはり支援とかサポートという議論がきっと出てくるのだと思います。

○笠原班員 国立成育の笠原です。臓器移植を実際にやっている者です。近年、韓国では非常に臓器提供数が増えています。以前は日本と同様95分近くが生体肝移植で賄われていて臓器提供が増えています。その理由が正にここで、脳死になった方というのは、強制的に機関に報告をしなければいけないのです。そこは病院のほうに報告の義務があります。そこが日本と大きな差なのではないか。今現在、人口は日本の約半分ですけれども、大体3分の1ぐらいが脳死の臓器移植になっています。そういうところが改善できれば、ここ数年で増えてきておりますので、飛躍的に増えていくのではないかと思います。

○横田班長 脳死、あるいは脳死とされうる状態になった場合に、登録をすればという御意見です。

○安河内班員 1つ質問させていただきます。今の韓国の例というのは、今までの例だと、意思表示があってから脳死判定に行くという流れだったと思うのです。今の話では、脳死とみなされる事態になった症例については、家族の意思に関係なく報告をするということをしているということですか。

○笠原班員 韓国ではそうなっています。

○横田班長 本日は第1回ということで、いろいろな御意見を頂きたいのです。環境整備というのは、その施設の責任の整備もあると思うのですが、いろいろな支援をしていくということもあると思うのです。例えば、厚生労働省の判断で、今まで法的脳死判定の際には、判定医が、当該施設で移植とは関係のない判定医が2名で行っていたわけです。先ほど、小さな施設もあるということで負担になっていて、それがために脳死判定できない施設もあったのです。ところが、一昨年7月からは、2名のうち1名は外部の施設からの支援の医師でも構わない。もちろん、そのときに契約関係をきちんと取る必要はあるのですけれども、判定医自体の支援も可能になってきた。そういう考え方をもう少し延長すると、例えば虐待の判断というのは、当該施設だけではなかなか難しいので、警察や児相にももちろん入っていただくことになります。そういうことで、支援というのは当該施設だけではなくていい、というようなことも当然議論していいのかと思います。

○犀川班員 今の支援ということにつながっていくのですが、大多数が1例前後で、何年かに1度経験するというような状況が圧倒的に多い中で、脳死とされうる状態というのは、どの施設でも判断ができるのです。本当に入口の問題として、ドナーとしていいのか。むろん主治医だけにそれが課せられるわけではないのですけれども、主治医が最初に考えるときに、脳死とされうる状態は判断できる。それではドナーとしては。先ほど、基礎疾患が不明という指摘がありました。

 流れの中では少し変わってきて、病態がはっきりつかない場合はドナーとしてはなり得ない。むろんその中には、その後虐待を否定するというのはあります。そうすると、現場は非常に迷います。そんなときに先ほど言った支援、ドナーになり得るでしょうと、ちょっと後押しをしてやる。皆さんが黙ってしまう、あるいはたくさんの可能性がある中で、言葉を出さないというところには、決められなさ、入口を越えられなさ、開けて進めば体制づくりは幾らでもできる。幾らでもできると言っても大変です。我々も全病院を上げたシミュレーションをしていかない限り、受入れがなかなかできない。だけど、しようと思う中には、先ほど言った支援です。自施設だけでシミュレーションをして、何とかするというのは不可能なので、JOTのプランABCというのは非常に後押しになると思っています。その入口をちょっとサポートしてくれる部分もあるといいなと思っています。

○横田班長 本当は班長は余り意見を言ってはいけないのですけれども、支援というのは私の意見なので、無視して構いません。

○大野班員 韓国は脳死と判定したら、すぐに臓器移植のほうに動くということでしたが、日本の法律というのは、脳死を拒否することを認めている法律だと思うのです。そういう意味で、私たち小児科医が悩むのは、脳死と判定したときに、家族が拒否したときに、次の選択肢を本当は示さなければいけないのではないか。例えば、私たちは長期の脳死というのを経験的に知っています。私自身も2人、長期の脳死を診ていました。脳死ですので、脳の機能がないので、ホルモンを補充しないと絶対に生きていけないのです。バゾプレシンと、甲状腺と、ステロイドです。そういう可能性があるのだということを親にも示す必要があるのではないかと思います。この法律から言えば、脳死でないのを認めているのであれば、脳死下での移植と、心臓での移植と、もしかしたら脳死の状態でも長く生きられるかもしれないということを示すことも必要ではないかと思います。

 小児科医というのは割とそういう経験をしているので、すぐに脳死ということと、臓器提供ということに躊躇する小児科医が多いのではないかと思います。その辺をもう少し選択肢を家族に示す。実際に脳死状態で生きていくというのはとても大変なことですが、みんな在宅に持っていきます。呼吸器を付けて、在宅に持っていきます。例えば私の大学にいる人は、新見の辺りに住んでいるので1時間ぐらい掛かります。それでも在宅でやっている。それで5年以上生きていますので、それをやっていくのはとても大変なことだというのも分かってもらわないといけない。そういういろいろな可能性を全部説明した上で判断させることが、とても大事ではないかと思います。特に脳死と告げて、臓器移植のほうばかりに振っていくというのは、ちょっと不安に思うところもあります。

○横田班長 そうですね。今のは非常に重要なところだと思います。この辺はいつも織田班員が、この選択肢の提示というのではなくて、情報提供だというところを強調されているのですけれども、何か補足で織田班員からありますか。

○織田班員 正にそうで、臓器を提供しますか、しませんかというように尋ねる、そこを迫るのではなくて、あくまでもこういう道がありますよとお示しすることが大事です。私どもの所では、それよりも一歩手前で、脳死とされうる状態の方の御家族には、こういった移植医療に詳しい方のお話、これはコーディネーターのことなのですが、コーディネーターとお会いになりますか、話を聞いてみますか、どうしますかというような、それよりも一歩引いたところでのお伺いをしています。このように一歩手前の選択肢提示のようなこと行っており、その結果、「ではコーディネーターと会って話を聞きたい」という方をたくさん得ている状況です。

○米村班員 今の点は、御家族への説明の仕方とか、話の持っていき方、順序ということでは全く私は同意します。ただ、こういう議論をするときに気を付けなければいけないのは、基本的な考え方、法律の立て付けとの関係で、どういう考え方がとられているのかということです。脳死は「死」であるというのが現行法の考え方だというのが私の認識です。それを前提にできないと、脳死移植というのはそもそも認められません。脳死が「死」でないのであれば、生きている人を臓器提供によって殺すことになります。これは脳死臓器移植の最初の段階から延々と議論されてきていることです。脳死移植を認めることは、臓器提供者は既に死んでいる状態になっていると認めることが大前提です。

 現在の臓器移植法は、脳死の人はもう死んでいるというように客観的に判定できるという前提で作られていると私は認識しています。そうであっても、脳死判定をすることについて、御家族の同意がないと判定ができないというのが現在の規定です。現在、客観的に死であるという状態が存在することを否定することはできないが、それを医学的に判定することが、御家族の意思によっているという仕組みであると思っております。そうすると、当事者になっておられる御家族に対する説明の仕方に関しては、もちろん工夫があっていいと思うのですけれども、社会全体に対するメッセージとしては、それではまずい。脳死の状態で何十年でも生き続けられます、それをサポートするのが国の役割になっています、というようなことは言うべきではないと考えます。

○奥山班員 教えてほしいのですけれども、一番最初にこの法律ができたときは、「脳死は人の死です」とあるというのは、条文の随分前の案には書いてあったのですが、抜けたのでしょうか。

○横田班長 A案です。

○奥山班員 実際法律的に、臓器は提供したくないけれども、脳死なのだったらここで死なせてくださいというのはOKとみなすのですか。脳死が死なのだったら、それがあり得るわけですよね。

○米村班員 もちろん、それは全然問題ないと私は思っています。臓器移植法は、臓器移植に関する法律ですので、臓器移植をしない場合についてはどうするかは何も規定していないというのが基本的な考え方だと思います。

○横田班長 これは私の理解ですが、臓器提供はしないけれども、脳死は人の死だから死なせてくださいというのは、今は成り立たないのではないかと思います。ただし、いろいろな学会のガイドラインがあります。3学会合同ガイドラインというのが公表されて知られていると思います。これは救急学会もそうなのですけれども、脳死は人の死と学会ではそのように認識しています。そのガイドラインでは、家族の、あるいは医療機関の合意の下に、例えば生命維持装置のスイッチを切るということは一応ガイドラインには書かれています。ただ、それは法律では違う次元です。議論が違う方向に行きました。

○米村班員 私は、それは違うと思います。先ほど申しましたとおり、臓器移植法というのは、臓器移植の場合についての法律関係しか定めておりませんので、それ以外の場合について、どのように死を判定するかということについては、一般法である民法、刑法の問題だと認識しています。私自身は民法が専門ですけれども、それはそれぞれの法律の解釈問題であり、一応、脳死をもって「死」とする説と、従来の三徴候をもって「死」とする説の両説があります。ただ、少なくとも、脳死をもって人の死とする判断が現在の法律によって禁止されているということではないと私は理解しておりますし、実際そういう考え方で裁判例も運用されているというように認識しております。

○横田班長 ありがとうございます。ここはこれからの議論にもなると思います。

○織田班員 少しだけ関係のあるところなのでよろしいですか。

○横田班長 どうぞ。

○織田班員 お時間のないところをすみません。私は脳死は人の死だということを、ちゃんと社会、国民に向けて確認をするというのはものすごく大事だというところに、すごく賛成です。

 なぜかというと、例えば「命の贈り物」とよく言いますよね。これは多分「gift」と海外で言っているものをそのまま日本語に直訳したか、どなたかが聞こえのとてもいい言葉というものを探していてこれになったのかもしれないのですが、「命の贈り物」というのが何か、生きている人が次の人に命をあげるみたいなイメージ、これは「命のリレー」も同じですよね。「臓器提供を行うのは亡くなってから」ですから、というところは間違って理解してはいけないところです。お話をするときには、「亡くなってから提供するのですよ」と伝えるのです。まるで「心停止後の提供」は亡くなってからで、「脳死下の提供」は生きている間みたいにと、まだまだ勘違いされかねない恐れがあって、そこが何かいまひとつ社会全体が移植医療がうさん臭いというふうに思っている人もいると思うのですが、そういう原因の1つになっているのではないかと危惧しているのです。

 「亡くなってからの提供なのだ」と、そのためには、「命のリレー」と「命の贈り物」という言葉も併せて、啓発の教材というものをどなたが最後にチェックされているのか存じ上げないのですが、そこも併せて今回、考え直してみたほうがいいかもしれないなと、今の脳死は死であるということを聞いて、あらためてそう思いました。

○横田班長 ありがとうございます。「命の贈り物」ではなくて、「命への贈り物」かもしれないですね。

○織田班員 そうです。移植を受ける方について使用されるのでしたらよろしいかと思います。

○奥山班員 すごく重要なポイントなのです。というのは、今までのガイドラインどおりにずっとやってくると、親御さんが「やっぱりやめます」とおっしゃるときの1つの理由として結構大きいのは、自分で死のボタンを押すことになるからというものです。そこは、もう亡くなっている、だから臓器提供しようがしまいが死なのですよ、だから、どちらにしても死亡診断書を書きますよというのがOKなのだったら、これはまた全然話が違ってくるのではないかと思っています。

○名取班員 実際の取組として、現場では脳死判定の同意書を取って、その後に臓器摘出の同意書を取ってという2段階なのです。その2つのプロセスを分離すればいいだけの話なのです。脳死判定を基本として受け入れるイコール脳死を人の死とするというところに、私は同意しますというところにいきますが、最終的には摘出を拒否したというロジックでいけば、現行法でも対応。この理解はどうなのでしょうか。つまり、2つの同意を。

○米村班員 おっしゃるとおりで、それは条文のつくり上、そうなっています。脳死判定の同意が必要であり、加えて、臓器摘出の同意が必要である。その2段階の同意が必要だと法律の条文に書かれていますので、それに対応して別々に同意を取っているということであると思います。

 いずれにせよ、これは臓器提供が前提の場合の話ですので、臓器提供を前提としない場合について、どういう同意の取り方が必要かというのは、また別の議論だと思っております。

○井内移植医療対策推進室長 今、米村班員に大方言っていただいたのですが、我々も脳死の定義をまた整理して、次回に持ってまいります。恐らく、医学的に脳死になっている状態と、法律上の脳死の言葉の定義が違うということで、それを整理いたしますが、多分、今それが混同されてお話が少し進んでいるのかなという気もいたしますので、また次回、整理させていただきます。

○横田班長 すみません。よろしくお願いします。

 それでは、これはむしろ移植の先生方の専門的な見識からの結果だと思うのですが、移植希望者の選択基準について何か御意見があればと思います。

○笠原班員 成育医療センターの笠原です。小児から小児への臓器提供に関しては心臓が最初に始めましたので、腎臓、そして肝臓のほうも、日本肝移植研究会、日本移植学会と協力しまして小児から小児へという動きで活動しているところです。

○横田班長 ありがとうございます。これは先ほど事務局から説明をしていただいたところを、今、笠原先生が追加で御発言くださいました。心と腎と肝ということですよね。

 これは全く医学的なことだと思うのですが、小児というと15歳というふうになるのですが、ここでは18歳になります。この辺りは多分、純粋に医学的な判断だと思うのですが。よろしいでしょうか。心に関しては、Status2も順番が繰り上がるというところです。既にこれに関しては行われているということですよね。

○伊藤室長補佐 心臓は運用を開始していますが、肝臓と腎臓は、今、JOTのシステム改修中になっています。

○笠原班員 質問をよろしいでしょうか。肝臓と腎臓に関しては、今、システムの運用の開始が未定ということをお聞きしておりますが、めどとしてどれぐらいからになるのでしょうか。

○井内移植医療対策推進室長 まず通知を我々が打って、大体6か月ぐらい空けて、システムを運用し始めようと思っているのですが、現在、各病院とつなぐシステムのほうも、肝臓は大方出来たのですが、腎臓のほうがまだということです。

 あと、今、臓器移植ネットワークのほうで、あっせん誤りがあって、その上で、そのシステムエラーが出た原因究明等をやっておりますので、それが終わった後でないと、現時点で言いますと、今のシステムをそのまま使っていいのかという議論もありますので、ちょっとそこが終わってからでないと、めどが立たないということです。申し訳ございません。

○笠原班員 分かりました。ありがとうございます。

○横田班長 それでは、実はこの時間を一番残しておきたかったのですが、議論がすごく活発で、時間も限られますが、最後に虐待の対応に関して、是非御意見を頂きたいと思います。先ほどの体制整備のところで、虐待への対応、委員会の開催ができないがために、家族の申出を断わらざるを得なかった、提供に至らなかったという数が示されていましたが、こういったところも含めて御意見を頂きたいと思います。

○名取班員 まず、15歳以上18歳未満の部分について、御本人の意思が反映できる、意思確認ができる、ドナーカードなり意思表示カードに「希望する」と書いてあっても、過去に、幼少期に何らかの虐待記録があると、その方々が臓器提供できないという現行になっているということをどうにかしてほしいというか、本人の希望が通らないというのは筋がおかしいのではないのかと思うのです。何の理由で、虐待が駄目なのかというのが、いまだ明確ではないのです。

 果たして、虐待をしている親御さんに忖度がある、権利がある、決定権があるときには、それが何らかのバイアスにかかるのではないかという危惧は、私は専門ではありませんが、そういう感覚があってもしかるべきかなとは思っていたのですが、ましてや15歳を超えた18歳。あくまでもこれは法律上で決められた18歳未満の児童虐待防止法と、15歳という民法での御本人の意思決定権がある15歳以上という2つの法律の狭間にあるこの方々に対して、きちんと対応するというのも、ここで決めることはできないのでしょうけれども、何らかの方向性を出すべきではないかと思うのです。

○横田班長 そうですね。問題点は指摘できます。

○奥田班員 まず、一律に「虐待」という言葉でくくられているところですが、恐らくは、前回この案をおまとめになった委員の方々の中で、虐待のイメージが非常に広範囲にわたっていて、虐待に対する考え方や定義がそれぞれ異なっていないかと危惧しております。児童相談所の現場では御承知のとおり、児童の虐待は4つに分かれています。その中には心理的虐待、ネグレクトも入っています。

 また、今、名取先生がおっしゃった15歳以上18歳未満のところで、自己の意思表示があったとしても、その虐待が司法解剖に回るような重篤な虐待の場合には、当然、例外事項となってきたりしますので、この「虐待」の定義がもう少し各論としてしっかりと再検討すべきということと、概念を統一するということが、最初に必要ではないかと考えております。

 もう1つは、児童虐待について、各病院でまず疑いがあるということは判断されるということですが、これはどのような形で判断されているのかというところです。私ども虐待と調査特定する現場でも1週間、2週間は掛かることが多々あるのです。保護者の方は嘘をつかれることもあります。本当に児童相談所の職員の前では体のいい嘘をつかれて、実際は虐待死していたということもあります。警察の調査や家庭裁判所の調査で「虐待はなかった」等と言われた案件を、児童相談所の調査では、実は虐待があったのだと判断した事例もあります。それを短時間でどのようにして判断されているのかをお聞きしたいと思います。

○横田班長 今のような問題があるからこそ、多分、救急や脳外科の施設としては、限りなく白に近いものを疑いのあるという判断をせざるを得ないというふうな持っていき方になってしまうのです。結果的に、提供しない理由になっているみたいなことを言われてしまうというのも辛いところだと思うのです。ですから、その辺りは今、正に奥田班員がおっしゃったところが、すごく現場では重くのしかかっているのだと思います。いかがでしょうか。

○水野班員 法学者としては、この虐待児から採ってはいけないという条文が根本的に分かりません。全く不合理な条文だと思います。諸外国では当然のことながら、被虐待児、虐待により死亡した子供はドナーの相当なパーセンテージを占めていて、この条文そのものがはっきり言えばおかしな立法ミスだと思います。児童虐待防止は今の日本が抱える喫緊の深刻な課題であり、私は児童虐待防止のために民法や児童福祉法の改正作業なども担当して参りましたが、この条文は、児童虐待の防止とは何の関係もありません。

 私はこの部分のガイドラインを作ったときのメンバーでしたが、ガイドラインを作る部会に参加していた法学者たちはみんな、どうしてこんなおかしな条文をもとに作業しなければならないのかと頭を抱えました。でも法律には違反できませんので、この児童虐待の問題をどうクリアして移植に結び付けるか、非常に苦労をいたしました。ともかく脳死で臓器移植を考える段階で、医者が自分たちで虐待の有無を調べることをしていたら、絶対に無理です。明らかな交通事故死であっても、精神的な虐待の結果、子供が外に飛び出してしまって交通事故に遭ったという可能性はありえます。そんな可能性まで排徐することは不可能です。

この条文は、一番残酷な形の移植妨害です。

 自分の子供が死んだ悲しみに圧倒されながらも、せめてその子の身体だけでも利用して、自分たちのような悲しみを味わう親を救いたいと申し出てくれた親御さんに対して、「あなたは虐待していたのではないですか」と疑って、それを調べた挙句、虐待のあった可能性を完全に白にできないから「あなたの子供さんの身体は提供できません」と言ってつきかえし、親御さんは、せっかくの厚意を信じられない理由で拒絶されて、お子さんをだびに付すのです。このような残酷な移植医療妨害を封じるために、ガイドラインでは、警察と児童相談所だけに聞けばいい、そこで何の記録もなかった、それでもうゴーサインを出していいという形にしました。法律には違反できないけれども、なんとか実施にこぎ着けられるように苦労して、ガイドラインを工夫いたしました。

 でも、どうもその二か所で確認した後も、自分たちで更に考えた挙句、完全に白にはできないからというので、お医者様が移植を躊躇されているという数字が上がってきたことが、ガイドラインを作ったメンバーとしては非常に胸が痛いことになっております。

○犀川班員 私の発言はほぼ現場主義的な、現場でのことになるのですが、今、お話を聞いて、なるほど、移植とは関係なく、我々は日常的に虐待と向き合っているわけです。そうすると、今のお話を聞くと、できるだけその虐待の言葉の縛りを少なくしてという意図があったのだなというので少し安心したのですが、現場は違うわけです。虐待という言葉が大きな壁となって立ちはだかります。

 そして、虐待を判定するのは、決して我々ではないはずなのです。医療側ではなくて、疑う、そして委ねるのは、我々で言えば児童相談所なのですが、児童相談所も決定的には保留します。なぜならば、先ほど奥田班員のほうからお話があったように、時間が掛かる。虐待であるかどうかを見極めるのは児童相談所も長い時間を掛けないと、そんな即断はできません。

 だから、先ほどおっしゃった、虐待がないかどうかというのは、現実的なものは虐待が明らかではないところから臓器移植の場合が動くのではあるのですが、それをどこまでというのは、多分、織田班員も以前学会のほうでお話されたときに、虐待の否定は絶対できないということです。100%という言葉を委ねられれば、それは無理なわけです。絶対目に入らないところがありますので。だからこの言葉は、どうやって、イメージされる虐待を否定するというのは大きな課題だと思っています。

○奥田班員 少し言葉が足りなかったので。児童相談所が虐待を判断するのに時間が掛かるというのは、例えば脳挫傷を負った1歳児が病院に搬送されてきて、虐待かどうか(病院側が)迷っているという段階で虐待通告を病院から受けることがあります。こうした場合、その御家庭に児童相談所の児童福祉司等が調査に出向きます。その際、例えばその子と同じぐらいの重さの人形を持っていって、どこのベッドからどのように落ちたのですかとベッドから落ちた状況や、その時、保護者はどこにいたのか等々の再現を家族に求めることもあります。あるいは自転車に乗って転倒したのならば、その自転車と現場に行って、どこのわだちで転倒したのですか等々を再現してもらうというようなことも調査の一つとして行ったりしています。これをお父さん、お母さん別々に情報収集する。こういった生活レベルの調査を繰り返さないと判断できないことが多いので虐待の断定には時間が掛かるというようなこともあります。

 また、私も実はこの12年間に2例、病院さんから虐待ケースですかというお問合せを直接受けたことがあります。この2例は、たまたま当該児童相談所の虐待での関わり歴がなかったのです。関わり歴がなかったということで御返答をしたのですが、そうすると、その後どうなったのだろうと思うのです。関わり歴がないということは虐待がないということかと。実はそうではないだろうと。たまたま児童相談所の関わり歴がないだけで、本当は心理的虐待、ネグレクト等々の虐待があったかも分からないと。ないことの証明ができないのです。かつての児童相談所でも、北欧の国で里子養育を希望しようとしたご夫婦から問い合わせがあり、「日本に居住していた時の居住地の児童相談所等で虐待していないという証明を発行してもらえないと里親になれないので証明してほしい。」と問い合わせを受けましたが、児童相談所とは関わりがこれまでないというだけで、虐待をしていないという証明まではできませんでした。この辺りも含めて、病院さんが判断される専門機関への問合せというものが、その後そのまま生かされるかどうかということも、もう一回検討は要るのだろうなと考えております。

○安河内班員 困るのは、虐待がないことを証明しなさいというのが、あなたが健康であることを証明しなさいというのと同じように、いいかえれば病気がないことを証明しなさいというのと同じぐらい難しい話なので、逆に、先ほど水野班員がおっしゃったように、こういう事例がなければ、虐待がないとしてみなしていいですよということを現場のほうに提示していただければと思います。現場は虐待該当項目をチェックし、チェック項目がなければ、虐待がないと判断してよいということができるのです。ところが、今はそのようなリストがないので、虐待がないことを証明しなさいという言葉だけが重く受け止められて、虐待されていたとしても臓器提供ができる子供の意思がどこかへ行ってしまっているのです。

 同じことは、知的障害の場合も同じです。あるお母さんに「私の子供は知的障害でずっと差別された上に、今度は脳死になって臓器提供をしたいと思っても、知的障害があるという理由で拒絶されてしまう」。「知的障害がある人は死んでからも差別を受けるのか」という話をされたことがあります。ここは、水野班員がおっしゃっている意味をきちんと踏まえた上で、この臓器提供の体制整備の中で、虐待とはこういう事実があった場合に虐待と判断していいですよ、それ以外だったら、虐待がないとしていいですよというふうに、ある程度のガイドラインは決めてもらわないと、結局この虐待の問題は片付かないと思います。

○今村班員 この虐待防止委員会の設置というのが、この判定に必須だということになると、やはり非常に大きなバリアになっているなと思います。ただ、こういったような小児の救急のようなものを扱う所、これは非常に委員会等が多いのです。何でも委員会というような感じで。そのような病院に対して、またこれかと。通常であれば、やはり年に1例か2例か、非常に少ない事案のために、また委員会というのは非常に現実的ではないような気もするのです。

 しかも、その機能というのが、判定をどういうふうにしているかというのがよく分からないと、実際、虐待がないですよというのは無理でしょうということになれば、この現在設置されている虐待防止委員会というのが、どういうふうな状態なのか、ここでイエスと言っているのかノーと言っているのか、そして、その結果が移植にどう結び付いているかというのを、やはりはっきりしてもらわないと、この委員会の意味というのがはっきりしない。全く機能していないということであれば、これはもうやめていいし、もっとしっかりしろということになれば、この設置基準というものをもう少しきちんとしなければいけないというふうになると思うので、厚労省では、この委員会の内容というものを精査してもらって、この場に提供してもらうというのが大事ではないかと思います。

○名取班員 実際、虐待防止委員会は臓器提供のためにある委員会ではなくて、児童虐待防止法に基づいて開かれていますので、本院では毎月開かれています。ですから、本来は臓器提供に関係ない委員会です。ただ、臓器提供のときには、その委員会を特別にもう一回招集しないといけないというだけの話です。

○横田班長 そうですね。

○奥山班員 その虐待委員会で、例えばうちの場合だったら、臓器提供の場合のチェックリストというものをマニュアルの一環として入れ込んで作ってありますし、それの一部は、ネットワークのほうにもホームページにも載っていることなので、そういうところは、多分先ほどのガイドラインのくくりとしては、委員会を作ってください、その委員会でマニュアルを作ってくださいという中に、やはり臓器提供のマニュアルも作ってくださいというのが入っているのだと考えています。そういうチェックリストなり何なりで、一定の手順を踏んだら、もうそれでいいという形にして当然だと思います。

 先ほどの健康の話と全く同じことなので、私たちにはそれしかできないわけではないですか。ですから、ある程度、これだけやっていればいいのだというので先へ進まないと、少しでも可能性があったら全部除外するなどということをやっていたら、残るものがないと思います。

○今村班員 ちょっと私の理解不足で申し訳ないことを申し上げました。しかし、いずれにしても、この委員会が持っている虐待に関わる部分というのは、やはり検証する必要があると思いますので、やはり、再度、厚労省のほうにはこの実態というものを明らかにしていただきたいと思います。

○米村班員 2点申し上げたいと思います。1点目は、今の議論に関わるところですが、参考資料8Q&A集の11ページに問16があります。通常の診療過程によって虐待対応を行っている場合であっても、臓器移植の場合には別途対応する必要があるのかという質問に対して、回答の2で「虐待対応は常に適切に行われるべきものであって、臓器提供に至る可能性があるか否かにより、その内容が異なるものではないと考えている」と書かれています。私は全くそのとおりであると思っており、今の議論もその内容であったと思っております。たまたま臓器提供の場合に関して虐待対応が注目されてしまったために、臓器移植法に規定が入ったのですが、本来は臓器提供しようが、しまいが、虐待対応はすべきものであり、できればお子さんが亡くなる医療機関全てにおいて、虐待死であったかどうかということが、きちんとチェックできる体制が整っているほうが望ましいのだろうと思います。

 逆に言うと、それができている施設であれば、何の心配もなく臓器提供をしていただいていいはずであり、そこで更にプラスアルファの負担が課せられると理解されること自体が、余り好ましいことではないように思っております。ですから、その点が正確に医療機関に伝わるような工夫を是非していただきたいというのが1点目です。

 もう1点は、そもそも、「虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器.....が提供されることのないよう」にしなければならないという、この附則の規定がどういう趣旨のものであるかということです。水野班員は先ほど、全く不合理な規定だとおっしゃって、私もそれにかなり近い意見ではあるのですが、唯一これを合理的な規定として解釈する方法としては、これは犯罪捜査を妨害してはいけないという規定であると解釈するというものがあり得ると考えております。虐待死に関する捜査の必要があるにもかかわらず臓器提供がされてしまうと、死体に手が加えられて証拠が失われてしまうので、証拠隠滅防止のために臓器提供を阻止する必要がある、という理解です。そうすると、捜査機関が「もう捜査の必要はありません」と言っているにもかかわらず臓器提供を止める理由はありませんので、この解釈によれば、最終的に疑いがあるかどうかを判断するのは医療機関ではなくて捜査機関であることになります。したがって、警察・児相が捜査の必要はないと判断するのであれば、それ以上医療機関で調べる必要はない、臓器移植を止める必要はないということになるものと思います。

○奥山班員 実はガイドラインを作ったときに、ここのところが、虐待死かどうかというところで判断しようというふうに、ガイドラインの委員会はそういう方向に行っていたのです。ところが、法務省から「それはまかりならん」ということで、虐待を受けた者からのものは駄目なのだと。だから、過去に虐待があっても、今回の死亡は虐待死ではなくても駄目なのだという、そこを押し戻されてしまったという記憶があるのです。そこは法務省が言う以上、仕方ないのだろうと思うのですが、その流れで今これが出来ているということは御理解いただいたほうがいいと思います。

○米村班員 それは、法務省の立場は適切であると思います。条文の文言上も直接死因が虐待の場合には限定されておりませんし、過去であれ何であれ、虐待が行われたということについて、その当人の体というのは最大の証拠ですので、過去の虐待について犯罪性があるのであれば、それを調べるためにも、今の脳死の死体に手を加えるというのは適切でないということになるはずです。ですから、その法務省の見解は正しいと思われます。しかし、そういう過去の事実も含めて捜査の必要がないと捜査機関が判断するのであれば、それ以上に臓器提供を止める理由はないということです。

○横田班長 だから、ここで議論したいのは、法律に書かれている以上、附則の5条でしたか、これはもう法律を変えるというのは大変な作業ですので、法律に書かれているものの中で、いかに現場で医療機関としては対応するかという部分です。今は、御意見のあったように、ともすると余りに慎重という言葉はいけないですね、過剰という言葉も適切ではないですが、いずれにしてもそういう傾向で、このネットワークの資料に示されているように、それがために提供できない、本来はできる可能性が高いのにできないという、その理由になってしまっているというところが、何かこの作業班としても意見、提案を出していきたいと思いますので、そんな視点から、また御議論を頂きたいと思います。

 最後に水野班員からお願いします。

○水野班員 先ほど、実行に至らなかった体制整備について質問した意図は、虐待防止委員会について伺いたかったからです。本来、子供を診る医療機関にとって虐待に対応する体制は必須のものですから、虐待に対応するものとして、この虐待防止委員会が機能しているのであれば、子供を診る施設は必ず持っていなくてはならないだろうと思います。

 先ほど名取班員から5類型施設について御説明がありまして、ここにはいろいろなものが入っているということでした。その辺りにつきましては、私は全く無知ですので、施設の種類と、先ほど伺った、親御さんが申し出たのに駄目だった理由として虐待防止委員会がないということとの関連がよく分かりません。つまり、本来、虐待防止委員会というのは、子供を診るような施設であれば必ずなくてはならないような委員会であったら、それがないような所には必ず作ってくださいという働き掛けを、この委員会としては、これからしなくてはいけないと思います。一方、虐待防止委員会が虐待対応のために必ずしも必要というわけではないのであれば、かつ、児童のドナーがかかる病院で、これが設けられていなくても臓器移植のほうに回すほうが、より広く移植が可能になり、病院に無理なことを求めるのではないというのであれば、この虐待防止委員会の関与そのものを制限していくという方向にならなくてはいけないと思うのです。そのどちらかになるのかが、私は実務がよく分かりませんので判断が付きません。

 この法律自体に、幾つも不合理な点があります。先ほど少しお話しが出ました知的障害者の方がドナーになれないという点も、本当に全く何の理由もない話だと思います。最初の臓器移植法立法時に、反対派との妥協点としてドナーの意思表示を切り札にしたことから、知的障害者の問題が出てきてしまいました。脳死そのものについての是非の議論が紛れ込んでしまった非常に不合理な法律です。でもそうなっているのはしかたがないので、法律を前提にしながらも、我々が、少しでも合理的に動かす必要があるのだろうと思います。

○横田班長 これは国会で議論されていた中で、ABCの案が出てきた中での、いろいろなやり取りの中での産物と私も理解しています。

 ほかに、この作業班として議論すべきことがもしあればお願いします。

○織田班員 これから、2回目からも虐待関係の議論が深まると思うのです。現場的な話をさせていただきますと、「普通に怪我などで見えたお子さんの虐待可能性をチェックする」というのと、「臓器提供になるかもしれないという方の虐待可能性をチェックする」というのは、やはり内容が違うので、先ほど、同じように扱ったらできるのではないかという話があったのですが、実際には全く異なると言って良いと思います。

 というのは、怪我してやって来る子を、我々は普段は「身体的な虐待の可能性」のところを特に一生懸命見るのです。なぜか。それを見落として家に帰してしまうと、もっと大怪我で来る。ひどい場合には、もう心停止まで、殺されかけてから来るというところまでどんどんひどくなっていく場合があるので、それを防止するためにというところに、普段、力を注いでいるのです。

 一方、この臓器提供に関わるものになると、ネグレクトを含めた全部をもれなくチェックしなさいというふうに言われているので、大分その精査の内容が違ってくるというところが問題なのです。だから、そこを変えていただいたらいいかなと思うのです。普段行っている虐待可能性のチェックというのは、実は対象によってその内容は異なりますということだけ、最後に申し上げます。

○横田班長 では、今まで議論した以外に何か御意見はありますか。

○奥山班員 先ほど来出ている、やはり知的障害の問題というのは、発達が遅れていたら駄目なのかというのが、いつも議論になるのです。例えば、2歳で発達が少し遅れている。言葉が出ていない。ではこれは障害児に当たるのかというところは、どうしても議論になってしまうので、そこは1つ取り上げていただいたほうがいいのかなと思います。

○安河内班員 犀川班員が最初のほうにおっしゃったのですが、例えば、脳死と考えられる症例を持ったときに、これがドナーたり得るかどうかを相談したくても相談がなかなかできないということがあるのであれば、この委員会で是非、そういう相談の窓口みたいなものを作って、その施設では判断が分からない場合には、経験のある施設の人たちと相談をして考えることができるような形にしていただきたいと思います。多分、経験がある施設は問題ないと思うのですが、経験がない所では本当にこの症例がドナーたり得るのかどうかの判定が難しいときに困ってしまうと思うのです。実はこれに似た例として重症心不全症例に対して私どもの学会では相談窓口を作ったのですが、そういう窓口ができると、やはり今まで相談がなかった所からどんどん来て、例えば、その人たちがVADを付けたりとか、補助循環などの治療を受けるチャンスが増えたりすることがあります。是非そういう相談窓口の在り方についても検討していただければと思います。

○横田班長 相談支援というのも含まれるのかもしれません。時間を少し延長してきましたが、よろしいでしょうか。

 それでは、事務局から次回以降の予定についてお願いします。

○伊藤室長補佐 本日は活発な御議論を誠にありがとうございました。本日頂いた御意見を踏まえて、次回以降の作業班の準備をさせていただきたいと思っております。次回の作業班ですが、今後日程調整の上御連絡させていただきます。

 次回の作業班としましては、主に現場で活躍されている先生から実情ヒアリングや質疑応答をしたいと考えております。まず、普及・啓発に関しまして、現在我々の作っております中学校3年生向けのパンフレットを、実際の中学校の授業で活用いただいているトキワ松学園中学校の佐藤毅先生に御講義いただきます。小児神経の立場からは、東京大学の水口雅先生から御講義いただきます。小児救急医療の立場より、小児救急医の臓器提供に関する意識調査の変化や、小児救急学会での脳死判定の講習会などのアンケート調査などの結果などをまとめていらっしゃる日本医科大学の荒木尚先生から御講義いただきます。また、実際の臓器提供の現場として、6歳未満の小児の臓器提供を初めて行った富山大学の種市尋宙先生に御講義を頂くという、このような予定でおります。その後、参考人の先生方、委員の先生方の日程調整をさせていただき、作業班の日時を御連絡させていただきたいと思います。以上です。

○横田班長 次回は大体いつ頃と、我々は考えておけばよろしいのですか。何月ぐらいなどと言っていただければありがたいと思います。

○井内移植医療対策推進室長 我々も、今言った先生方が来られない日は無理なので、まず、その日程調整を最優先させていただこうと思っています。我々としましては、早く結論を出してというよりも、きちんと1つずつ論点をクリアにしていくということかと思っておりますので、少し時間的に余裕を取って、きちんと先生方の予定がはまるときをできるだけ選びたいと思っております。恐らく2か月、3か月ぐらい後かなというようなイメージでおります。

○横田班長 少なくとも年度が変わってからというような予定でよろしいということです。よろしいでしょうか。

 それでは、私の不手際で少し時間がオーバーしてしまいましたが、第1回の作業班を終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局難病対策課移植医療対策推進室
代表電話: 03(5253)1111
直通電話: 03(3595)2256

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