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2018年4月5日 実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議

医政局医事課

○日時

平成30年4月5日(木)14:00~

 

○場所

厚生労働省 共用第9会議室(20階)

○議事

 

 

 

 ○事務局 
ただいまより「平成29年度実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議」を開催させていただきます。構成員の先生方におかれましては、御多忙のところ本検討会に御出席を賜り、誠にありがとうございます。私は厚生労働省医政局医事課の井上と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。急遽、堀岡室長が別の公務の為遅れての出席となりますことを御報告申し上げます。
まず、本日の資料の確認をさせていただきます。次第にありますように、今年度事業実施機関である北海道大学、東北大学、千葉大学、東京医科大学、名古屋市立大学、岡山大学、愛媛大学、徳島大学、産業医科大学からの実績報告書と、参考資料として「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」を配布しております。不足の資料等がありましたらお申し出いただければと思います。
本日の進め方ですが、まずは今年度の事業実施機関について、実績報告書に基づき、評価委員の先生方に各団体の評価を実施していただきたいと思います。こちらの評価については、後日、各団体にフィードバックをさせていただく予定です。評価票は本日でなくても後日お送りいただいても全く問題はありませんので、書く量にしたがって御検討いただけたらと思います。
なお、当会議は解剖という非常にセンシティブな案件を取り扱いますので、会議のほうは非公開としております。ただし、この成果などを広く今後も発展させていくために、議事録又は資料については公開させていただきたいと思います。
座長は、昨年に引き続き伊達等先生にお願いしております。それでは、伊達先生に議事の進行をお願いしたいと思います。伊達座長、よろしくお願いいたします。
○伊達座長
京都大学の伊達でございます。よろしくお願いいたします。一応、自己紹介をお願いします。
○小林構成員
慶應大学の小林です。簡単に本事業に関する自己紹介をいたします。本事業のガイドラインを作ったときから、長い間委員としておりますので、歴史的なことなら大体お答えできると思います。どうぞよろしくお願いします。
○七戸構成員
北海道大学の七戸と申します。小林先生と同じように以前からこの件に関わらせていただきました。今回は、実際の報告書も出す立場でもありますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
医政局医事課の江崎と申します。主に死体解剖といったことを担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局
医政局医事課の井上です。先生方におかれましては、平素より御協力いただきましてありがとうこざいます。平成30年度からの実践的な手術手技向上研修事業は転機点になると考えており、今後の在り方等も含めて、いろいろとお知恵を貸していただければと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○岡部構成員
東京大学の岡部と申します。今回初めて参加させていただきました。大学では神経細胞生物学という分野ですけれども、昔の神経解剖学の講座に当たります。学会のほうは解剖学会の理事長をしていまして、ここでどういう形で進めておられるのか前から知りたいと思っていたので、今回非常に良い機会だと思っております。よろしくお願いいたします。
○内山構成員
順天堂大学の内山です。死体解剖の資格審査の所で、江崎さんにはお世話になっています。よろしくお願いいたします。
○伊達座長
私は京都大学呼吸器外科の伊達です。外科学会のCST推進委員会(Cadaver Surgical Training Promotion Committee)の委員長を仰せつかっております。3年前に東北大学の近藤先生から引き継ぎましてこの仕事をしておりますが、それまで本当に知りませんでした。アメリカにいるときにCSTをやったことはあるのですが、それぐらいで、京都大学には実質上ありませんので、素人がいきなりその仕事を引き継いだというところですが、この3年間本当にいろいろな人に助けられて、かなり分かってきたところです。京都大学でも立ち上げようとしているので、こういうのを評価しながら、どのようにすればこのCSTが全国に広がっていくか、そういうことに役に立てればいいなと思ってやっております。よろしくお願いいたします。
早速、評価を始めるのですが、去年は各大学の先生がプレゼンテーションをしてくれて、それに対する質疑応答という形でありました。そのプレゼンテーションが結構長ったり短かったりしたのですが、今回は、簡単にまとめてもらったものを、皆さんで評価していって、この評価委員の中で議論するという形ですので、比較的、時間的には多分余裕があると思います。総合討論もありますので、基本的に、1施設を8分ぐらいでやるとちょうどいいぐらいです。大体こういうのは、最初の大学を一生懸命みんなが議論して、段々フェイドアウトしてくることがありますので、公正を期するために、8分ぐらいでやろうと思います。いきなりディスカッションというのもあれですので、簡単に1ページ、1ページめくって、こうだねという大切な所を確認しながやっていくのが一番いいかと思いますので、それでよろしいでしょうか。
最初は北海道大学です。めくっていただくと分かりますように、御遺体は10体使っておられ、22回のCSTを行って、延べ263人が参加されていると。その次にCSTの組織の概要が書いてあります。めくっていただきますと、実際にやられた効果、その次が今後の課題ということでまとめられております。赤い字で書いてありますので、ここを読んでいただくと、どのようなことに効果があったか、課題が残っているかということが分かるようにまとめられております。簡単ですが、私からの説明はそれぐらいにしておきます。
後は、フリーディスカッションですので、北海道大学は七戸先生がいるので、質問していただいてもいいのですが、これで、先生は何年目になるのですか。
○七戸構成員
北海道大学ではこれは2年目になります。
○伊達座長
何か軌道に乗ってきた感じですか。
○七戸構成員
やっと乗りつつあるところですが、実は問題がありまして、献体数がそれぞれの年でかなり異なり、見込みで会員の応募を新たに始める、あるいは応募をやめるというのを今まで解剖学の教室でされてきたのですけれども、今年は、御献体がなかなか入らない状況が秋まで続いていたのですが、急遽この1月から3月に8体を使用できることとなり、トレーニングをしております。2体は中ほどに書いてある消化器外科Ⅱの、献体による食道内視鏡手術研修会に使わせていただいたのですが、この研修会は胸部外科学会の学術集会と共催で実施しました。外科の領域ではライブサージェリーと言って、エキスパートの人に手術をしていただいて、その様子をみんなで勉強するという形式がかつてはあったのですが、やはり医療安全の問題でそれができなくなったような背景があり、ライブサージェリーに替わるものとして、献体2体を使用させていただいて、2名のエキスパートのドクターが手術手技をするところを30人で見学する形で行わせていただきました。
引き続き概要ですが、組織に関しては、北海道大学の場合は、外科系医師の卒後の生涯教育の位置付けから、臨床研修センターを中心に置いて、病院と医学部両方をまたぐ組織として運営しているのですが、病院と医学部では、病院が上にくると利益相反の関係で企業の寄附がなかなか頂きづらいという事情が分かってまいりました。それが現時点での組織としての問題点です。これは来年度以降、組織を少し改編しなければいけないと考えております。
その後の様々な効果、赤字で書いていますが、やはり模擬手術を実際に進めながら手順を確認するのがもっとも有用なところで、さらに、通常の手術では決してやってはいけない、重要な臓器の損傷が、どの程度の力でそういうことが起こり得るか、あるいはそれをどう修復するかというようなことが、特有の効果として挙げることができると思います。
今後の課題としては、人的・財政的な負担の軽減がありまして、今、北大の場合は技官お一人で献体の業務をされているのですけれども、献体数がだんだん増えていくと、その負担が増えてきます。献体1体当たり大体40~50万円の費用がかかりますので、それが20体になると延べ1,000万円が医学部の中に負担が掛かってくるということがあります。また、これは全国どこもそうなのですが、プログラムを検証して、科学的に検証したものをきちんとやっていかないといけない。ですから教科ツールもしっかりしたものを今後作っていく必要があると考えております。また、各施設が同じような悩みを恐らく持っていると思いますので、共通な話題の部分は研究会などを立ち上げて、そこで情報を共有していく必要があるかと現時点では考えております。
○伊達座長
ありがとうございます。この血管損傷は血が出ないですよね、どうやるのですか。
○七戸構成員
血は出ないのですが、中に固定液の注入液が入っていますので、漏れ出てくるのは確認できます。
○伊達座長
なるほど、そういう形なのですね。分かりました。
○小林構成員
この議事録はCST事業の評価としてウエブに公開されています。今後、始められる多くの方々に分かってほしいので、発言させて頂きます。まず本ガイドラインのポイントは3つあります。この点についてご存知ない方がおられます。先般の日本外科学会でもお話ししましたが、外科系の先生方にはぜひ知っていただきたいと思います。それは「ALT」と名付けたのですが、AはAnatomyの略、要は解剖学教室が窓口であること。LはLicense、医者か歯科医という資格者しか直接参加できないこと。それ以外の方は、現在見学者の扱いになっています。この見学者が今、七戸委員か触れた企業参加者であり、介入の場の数になります。最後のTはTransparencyです。透明性を確保するために経理関連も含め報告を上げてくださいということで、現在のガイドラインの骨格として盛り込まれています。最後のTを受けて、日本外科学会へ報告書が上がっています。本日、本評価委員会で総合的に討議したかったのは、厚労省への報告書の形式と外科学会の報告書がまだ若干違っていることです。現場の意見を聞くと、このままでは報告書が二重の手間になるという意見がございます。現在でも、日本外科学会へ報告している施設は必ずしも全部上がってきていないというのがまだ現状です。それらの施設も決して報告したくないわけではないけれども、報告する意義が明確でない点があります。また厚労省の補助金事業施設は厚労省への報告義務的なところがありますが、日本外科学会へは自主性の下で報告をしなさいという形になっています。
座長の伊達先生にお願いしたいのは、総合討論で是非これは統一性を図るための報告書にしたほうが現場の利便性がある点です。また日本外科学会のCST推進委員会のほうでは、今URLを作っています。昨日も作動をチェックしたのですが、よくできているので、それをすり合せしてほしいというのを一旦触れておきたいと思います。
○伊達座長
今、厚労省の報告書というのは、これがそれなのですか。
○事務局
おっしゃるとおりです。今、御指摘頂いた点ですが30年度の実績報告から変更することを検討したいと思います。
○小林構成員
日本外科学会で検討されている報告書は、コンピョーター上でデータ入力する方式になっています。厚労省の補助金に対する報告書も全部一緒という意味ではなくて、それを利用すると転用できる項目を是非入れてほしいと思います。現在の厚労省への報告書では、決まった形式がなく、客観的に評価ができない点が出てくる恐れがあります。若干、説明しますと日本外科学会の報告書には、「目的」の項目が2つに分けてあって、「教育」と「研究」と別れています。「教育」もa,b,cの段階があって、「研究」もa,b,cの3段階があるという形になっています。それをざっと見ますと、各大学の目的に対する評価について、いいかが分かる点があるあります。その発言をお許しいただきたかったのは、まずそれに触れたかったことです。
さて北海道大学の報告書ですが、カバダーシミュレーショントレーニングによって得られた「効果」の所ですが、「模擬手術を実際に進めながら」施行したことが報告されています。つまり、模擬をやる人と御献体でトレーニングをやる人が並行されているような形になっているのです。これは愛媛大学もそうですけれども、腹腔鏡をCSTでおやりになる方は必ず模擬をやってくださいというのがあり、セミナーでは模擬を午前中に入っていて、午後に御献体のCSTに移っているコースがあります。つまり報告書の「教育」のa,b,cに当たりますが、cのような難度の高いのをいきなり御献体で行う前に、模擬等のシュミレーションを行うという手順を踏んでいます。私はそういうのが評価ポイントになると思うので、厚労省への報告書もそういう点を明確に分かるようにしたほうがいいと思います。
もう1つは、厚労省への報告書で「効果」に関しては、参加者へのアンケートが多いのですが、本事業のグローバルの評価が必要と考えています。現在のところ参加者へのアンケートを評価に使いますが、みんないいことしか書かない可能性があります。「大変ためになった」とかですが、それは本当に科学的なのかも評価ポイントになる点と思います。そういうことが分かるような実地要素だけを、マークするような形式で挙げていただいたほうが、評価が客観的かと思います。日本外科学会の報告書も大変意義がありますが、国の予算を使って本事業が的確に行われていることが公開され、多くの人が見ているという点では、この委員会の評価に対する役割が非常に重要と思うのです。
○伊達座長
いきなり総合討論みたいな感じになってきてしまいましたが、総合討論の時間は後で取ってありますので、その点も含めて議論したいと思います。まず、北海道大学について、どうぞ。
○七戸構成員
この報告書ですが、4枚という指定がありまして、それぞれ実施の実績と組織の概要と、後は効果と課題というような、副題はフォーマットどおりに書いているところですけれども、例えば、先ほどの外科学会の報告書に関して言うと、確か締切りが5月なのですね。会計に関しても、年度末ぎりぎりまで実際に実施しておりますので、今の時期でやっと会計を出して、確か10日までの報告の期限がありますので、この評価会議がその後にあればきっと会計のまとまったものが出せますし、もう少し遅くなれば外科学会への実施報告書も一緒に検討できるのですけれども、今年度に関しては、タイミング的には終わったばかりでまだ資料が全部そろっていない状況です。
○小林構成員
七戸先生の続きで、総合討論になってしまっていいですか。
○伊達座長
これはもうしょうがないですね。少なくとも去年よりはいいと思うのですね。去年は延々とみんなが説明し出したというのがあったので、それよりはこうやってまとめてもらったほうが分かりやすいと思うのですが、まとめてもらうポイントが、もうちょっとフォーマットか何かあって、どこの大学も同じようにまとめてくれて、評価するこの評価用紙も同じような形だといいと思うのです。今度、事業が大きくなるし、1年掛けてそれを相談して作りましょうか。
○内山構成員
簡単に点数が出せるような方式にしておけば見るのが簡単ですので。
○事務局
はい、分かりました。
○伊達座長
この報告フォーマットも決まったフォーマットにして。ただ、お金の報告はこのときにするのは難しいですね。
○内山構成員
お金が一番問題になるというのは、要するに厚労省からのお金と、そうでないお金が一緒になって、その報告が非常に不明確な大学があったし、そういうことがどうして起こるのかと。厚労省のお金に関しては非常にシンプルですよね。どこの大学もどういうものに使ったか非常にシンプルに書けるので、そうでないものがCST委員会の所でいろいろなものが入ってくるから、すごく複雑になって分からなくなると。今までの報告だと、それもそういう形でなされるから余計分からなくなってしまっていたのが現実ですので、これは厚労省のことだからもうかなりシンプルにできると思うのですが。
○七戸構成員
もう1つなのですが、要するに、計画に沿ってどれだけ実施されているのかということが大事だと思います。趣旨からすると、どれだけ外部の医師が参加したのかということも、実は今回の参加人数は学内と学外を分けていないので、次回からは学外からどれだけ参加して、広く厚労省の予算が、大学だけではなくて、様々な医師にもきちんとトレーニングの機会を与えているのかということを、評価できるようなフォーマットにしていただければと思います。
○伊達座長
そうですね。やはり評価シートが必要なのと、前もってその評価シートをそれぞれの施設に知らせておかなければいけないです。こういうもので評価するということが分かっていなくていきなり評価されると、言っておいてほしかったという話になります。来年は少し額も増えることですし、それをここ数箇月で作るようにしますか。
○岡部構成員
あと、事業計画に沿ってどれだけ実施されたのかということが基本的には評価の基準になるので、もともとの事業計画で年間これだけやりますという数が例えば2倍違っていれば、評価も、2倍違っていても目標を達成されたと判断してもいいと思います。計画書があって、それに対して評価書が出てきて、計画書の達成目標と報告書のフォームを照らし合わせれば、大体それだけで自動的に評価できるようなシステムにしていただければ。
○伊達座長
分かりました。では、そういう方針で行うことにしましょう。最初に総論から入ってしまいましたが、よろしいでしょうか。では、北海道大学は終わります。よく頑張っておられるという気がします。
東北大学は、最初のページを見ていただくと、16検体を使って研修回数が35、延べ人数は2ページに書いてありますが、522人という相当な数の人が参加している。3ページには、東北大学のCST組織、東北大学は医学系研究科に入っているのですね。運用上に生じた課題とその解決、得られた効果、今後の課題と書いてあります。
○内山構成員
これは全体の話なのですが、使っている遺体の数が大学によってかなり違います。要するに、たくさん遺体が集まる所とそうでない所が非常に明確です。そのときに、当然、規模が変わってくるし、それから、そういうことを全体としてどのように捉えるのかということがすごく問題だと思います。
キーになる大学としては、ある程度遺体が集まらないと困るのではないかという気がするのですが、その点は、ある程度広げられるかどうかのすごく重要な事項なので。
東北大は非常にリジッドにいろいろ進めてやっておられるのですが、一番の問題は、その分だけ解剖学教室への負担がすごく大きいということです。負担を自分たちで引き受けているので余計リジッドになります。それから、お金の出入りの制限もかなりきちんとやっていたと思いますが、それが逆効果のところもあるのです。すごく解剖の先生方に負担が大きいということが東北大学は特に大きなところかと思います。
○小林構成員
今の内山構成員の発言と同じ趣旨で追加の発言です。本報告書の最後に北田先生が実態に関して「今後の課題」として添えている文章です。本事業の重要性を鑑み、解剖学教室の負担を買っているということを、全国的にもきちんと分かってもらうために全国の大学医学部長病院長に対して、発言してほしいという趣旨のことが書いてあります。その趣旨は、正に、内山構成員の御指摘のとおりなのだと思います。ただ、病院長や学長への通達のやり方としては、CST事業に関与している耳鼻咽喉科や整形外科等の学会に十分ご理解いただくことが重要かと思います。日本外科学会のCST推進委員会も解剖学会と外科学会が報告書に対する評価会議の委員をやっていますが、耳鼻科、整形、骨盤内手術領域のようにブタ等の動物では対応できないような解剖学的項目がある科の先生方も運営に入っていただくということが重要と思います。前回は、日本医学会の会頭であられた髙久先生名で全国の医学部に出していただいたような形を取りましたが、もう一回大所からアナウンスしてもらうということは、とても大事な話ではないかと思います。
○内山構成員
厚労省に、この辺りの組織作りをお願いしたい。解剖の教室に、サージカルトレーニングをきりもりできる人材を作ることに協力してほしい。すなわち、サージカルトレーニングに協力できる技術員と教員を作ってほしいということです(定員の増加)。それがすごく大きな課題だと思います。
○小林構成員
もう1つ発言します。新規参入をお考えの大学関係者はすごく気になさっていると思うのですが、本評価委員会がどのように公正に評価しているかという点だと思います。この事業が全国6地域別に分かれていて、予算もそうなのですが、同じ地域から何件も出てくるとなかなか難しいし現実があります。また全然出てきていない地域もあるので、その予算を多申請地域に割り振ることで今まで動いてきました。今後ある程度の予算額が確保されると、今までの実績にもとづき御遺体も集まっていて経歴があってという所が、どうしても負担増になってきている可能性があります。予算分配にセンシティブな発言となりますが、将来的にはやれる所とやれない所が明確化してくる構図が生まれてくるのだと思います。
本事業の推進の立場からすると、ある時期は拡散してたくさんやりますが、ある程度センター化してくると、そこに集中する可能性は当然出てくると思います。その点、この委員会なりどこかが、それをレギュレートするのが予算でどうしても決まってくる可能性はあるのだということだと思います。
○内山構成員
自分たちでシステムを作ることができるわけですから、やりたい大学があったらどんどん参加したらいいと思います。予算も大部分は自分たちで負担しているわけですから(参加者の負担)、それはできると思います。それを妨げないよう(促進するよう)にして、ある程度、厚労省としては負担していただき、さらに、これから人的な保障を考えていただけるのが一番いいのではないかと考えます。
○小林構成員
海外は既にセンター化が始まってしまっています。イギリスだと3か所くらいセンタライズされていて、他の大学が手を挙げられる状況ではないのだと思います。日本は80余りすべてが行うとういうより、効率性や運営によりセンター化の道を付けることが重要かと思います。
○内山構成員
国によって全然違います。イギリスはお国の事情でそうしているわけです。アメリカは商業化されているわけです。ヨーロッパは、それを防ごうとしているけれど、一部、商業化されています。商業化は絶対に嫌だという所もあるわけです。
○小林構成員
今、私がセンター化の発言した理由は、現在はどちらの方向に向かうのかということは、新しい予算執行で、各大学の準備が読めない部分がある点です。内山先生が言われるように。国によって状況は違うので、海外がこうだから日本がそう向かうべきということは一概には言えないとは思いますが、CSTの実績に関する情報としては確実に持っておかないと、我が国にこの事業をどのような形で運営していくとしてもランニングコストはどのように出るのかということが課題になるので、国としても後々のことを考える必要があろうかと思います。
○内山構成員
方向性を考えながら、アナウンスをしていかないと、難しいです。いろいろな人の保障は、例えば、解剖学教室で技術員の確保は昔から言われており、文科省は解剖実習室に人を付けました。どこの大学も(国だけでしょうか)、解剖の技術員を付けましたよね。
○伊達座長
それは、CSTをやっている所には1人それ用の人を付けましょうかとか、そういう意味ですよね。
○内山構成員
多分、やりたいという所を対象に、これからそのように付けて頂ければだんだん広がっていくと思います。
○小林構成員
その点に関しては、我が国のガイドラインの肝になっている「解剖学教室が窓口になること」が原則です。他の国とそこが違うので、その線を崩さないで進む必要はあろうかと思います。
○内山構成員
ヨーロッパのポルトガル辺りは日本と非常によく似ています。
○小林構成員
この評価委員会もそうですし、予算決めのときの評価ポイントを外してはいけないと思います。まず「解剖学教室が窓口になること」は絶対に崩さないほうが日本の状況からして堅守すべきで、その点は一番、時間を割いて、決めたところだったと思います。
○内山構成員
だからいいと思います。人を保障してほしいということです。
○七戸構成員
今回、基盤作りか拠点を作っていくかという話だと思うのですが、やはりこの予算をいただいて有り難かったのは、基盤作りに非常に良くて、非常勤職員を1人雇うことができました。お金が来てからの雇用にはなるのですが、ただ、解剖の御献体を直接扱うまでは至ってはいないのですが、トレーニングには各診療科が入ってきますので、そこの調整をしたり、いろいろな機器を買ったときの会計をするなどで、週に2回来ていただく形で手伝ってもらいました。また、書類作りもかなり手伝ってもらいました。そういう意味では基盤作りには非常にいいということ。
あとは、以前千葉大学で肺移植のトレーニングを実施していましたが、北大でも行いました。ドナーに見立てた御献体と、レシピエントに見立てた御献体で2体並べてというのを、北大でも昨年度、呼吸器外科のグループがやり始めています。今、高難度手術をいかに安全に各施設に導入するかが医学界全体の問題になっていると思いますので、各大学でこういう基盤が出来れば、高難度手術の導入時の医療の安全の確保にもなるのではないかということで、是非広がってほしいと思います。今年度の実践的な手術手技向上研修事業は各地域に2か所と倍増されていますが、今度徐々に増えていけば更に全国に基盤ができてくるのではないかと感じました。
○伊達座長
ありがとうございます。では東北大学、どうぞ先生。
○岡部構成員
ここの例とかもそうだと思うのですが、東北大学は結局拡大していますよね。40体の御遺体を使って、その500人ぐらいの人をリクルートしてやっているというのは、拡大してしまったものが、ある年突然その予算が600万円とかなくなると、そこでかなり問題が生じてしまうわけです。単年度の予算なのでしょうがないと言えばしょうがないのかもしれませんが、一方で、多分、解剖学教室とかで新たに人を育てて、そこの中で何かを動かしていくということを始めた場合に、本当にその予算が切れてしまえばそこでもう復活できないようなことになってしまうので、これを読むと、この制度自体に非常に問題が、大きくすることに伴うリスクがどんどん増えていって、そこのリスク管理ができていなければ受けられないみたいな、そういう可能性もあると思うのですが。
○伊達座長
おっしゃるとおりです。そこが非常に。今、京都大学でもこれを始めようと思って、何かいろいろ準備しているのですが、本当に継続的にきちんとそういう資金が得られるのか、それからランニングコストがどれだけ掛かるのですかというのを大学のほうが聞いてきていて、それに答えられないのです。
○岡部構成員
これは解剖学会でアンケートを取ったのですが、やはり現状で半分ぐらいの大学は、このサージカルトレーニングは受けるつもりはないと言われているのです。主な理由はやはりそういう基盤がないので受けられないという回答でした。考えてみると、病理や法医の解剖というのは、解剖の業務なので、業務を行えばそれに対して収入というか、その分のお金が入ってくるわけです。この系統解剖だけが全くそういうものはなしに、大学の運営交付金を使って解剖自体今までやってきたわけです。サージカルトレーニングになって、それも全く業務としての1体当たり幾らという、そういうものがなしに話が進んでいって、あるとき突然予算ゼロですと言われてしまうと、本当に解剖学教室としてはやっていられないということになってしまうと思うのです。立て付け自体は最初は執行型でしょうがないのでしょうけれども、将来的には変えていく必要があるのではないかと思います。
○伊達座長
そういう意味ではやはりセンター化にありますね、難しい。
○内山構成員
東北・北海道地区では、今まで北海道は札幌医大が資金を獲得していましたが、今回は、北大に変わっただけですので、金銭的なずれが起こるというのはちょっと考えにくい。だから、その辺がよく理解できない。
○七戸構成員
この将来像という形になりますと、ガイドラインの中にも、「医療機器等の研究開発」というのが書かれていますので、これはまたガイドラインの改正が今あって、企業との関係などをもう少しクリアにしていかなくてはいけないのでしょうけれども、研究をやれば、例えば科研費が応募もできますし、あるいは企業との研究協力みたいな形でのグラントが得られる。費用の出るトレーニングとグラントの取れる可能性のある、あるいは共同研究できるような機器開発、医工連携、ここを両輪にしてうまく合わせることで何とか一人立ちするようにすることを、今目指して取り組んでいるところです。
○岡部構成員
ある程度規模を厚くしたいのだったら、製薬とかもそうだと思うのですが、ICYがあるので製薬協みたいな形で、1か所にプールしてからお金を使っていますね。だからサージカルトレーニングはそういう形で、個々の企業と各大学が何かをやるというのではなくて、もうちょっとセントラルにお金をある場所に集めて、それをもう一回再配分するようなことをすればその辺を気にしなくて済むのではないかと思いますが。
多分、企業側がそれをどういうふうに捉えるかがとても重要で、そういう形にしたほうがお金を出しやすいと彼らが思うのであれば、やったほうがいいと思うのです。
○伊達座長
今のところはだから大学医学部というか、病院ではなくて、研究科のほうにこれがあると、企業は比較的研究費として出しやすいと。そうですね、いわゆる奨学寄附金という形ですね。
○岡部構成員
どんどん厳しくなってきた。
○伊達座長
そうですね。
○岡部構成員
どんどん出しにくくなっていくと思うので。
○小林構成員
先般の日本解剖学会総会のワークショップでの発表で、参考になるなと思ったのは歯科の動きなのです。CSTを行うにあたり、例えばトレーニング道具を揃えるやり方です。臨床のものをそのまま持って来るわけにもいかないし、自分のところですべて買うと高いコストが付きます。歯科の場合インプラントの道具というのは比較的共通性があって、学会がNPOを組織してその道具を管理していました。外科だと日本外科学会の中にそういう物を扱う部署が出来て、共通管理している形式です。ハンズオン用の機械自体は、業者に維持・点検を依頼していますが、それをA大学、B大学、C大学のセミナーに貸し出して動かしているという紹介がありました。そういうような組織があるのであれば、学会主導型に共有の物を動かせますし、さっき討議に出た固定の機械の動きに関しては、公益性をもって乗り超えられる要素はあると思います。各大学とも全部揃えたいと言うと、新しく出てきた大学にお金が付けられなくなってしまうというデメリットがあるので、そういう運営方針を打ち出すところを高く評価するのがいいと考えます。
○伊達座長
それではそろそろ次の千葉大学に移りたいと思います。千葉大学も本当にずっと日本のCSTをリードしている施設で、ここは(見込み)というのはこの29年度のが終わっていないときの資料なので、あと2か月ぐらいでやるかもということで、こう書いてあると思うのです。
3ページの一番下を見ますと、御使用された遺体数が20件、CSTが28セミナーということです。参加人数を全部足すと、恐らく相当な人数になると思います、何百人にもなると思います。クリニカルアナトミーラボは、これは研究科、大学院のほうに置いておられると理解しております。ちょっと聞いたら、各外科系の診療科からランニングコストは出していると言っていました。多分、委任経理金を幾らかずつ出していると聞きました。利用実績が、その次5ページ目に書いてありますが、非常に安定している。どちらかと言うと右肩上がりで、利用人数が670人ですからすごいですね。7ページ目を見ますと、献体が70体未満で、CALに使用したのが20体ということですね。あとは、いわゆる学生実習に使用したという意味だと思います。
課題は大体どこでも一緒で、マンパワー、運営資金、外部利用者。外部利用者が増えたので御遺体が相対的に減っている、足らなくなっているということです。9ページで、効果に関してはどこの施設もそうですが、非常に良かったということです。
10ページ目に、新たな工夫が書いてあります。一番上の、医師会と医師研修支援ネットワークとの共催とかをされているのですか。最後のページに、今後の課題が書いてあります。千葉大学について何か御意見ございますか。
○小林構成員 7ページの「今年度のトピック」のところで共通の論議をしたかったのですが、七戸先生から先ほど発言のあった「研究」の部分が17件あります。日本外科学会の報告書では先ほどお話ししたように段階がa,b,cとありまして、研究の質が分かります。しかし、現在の厚労省の報告書では、その分類報告がなく質が分かりません。なぜこの点を重要視するかというと、(企業が参入して)cの「新しい機械を開発したい」というところの要望は、当初ガイドラインが論議されたときからずっとあることなのです。七戸先生が発現しましたが、新しい機械のデバイス開発のための研究をやるから、科学研究費で研究費を獲得したいという要望もあると思います。ただ、企業の営利を全面に直接入れないためには、どのような用件を負荷して軟着陸させたらいいかというのが重要と思います。ガイドライン作成時代からこの点に関しても随分時間を掛けて、ここまで来ているので、「研究」の質というのは共通項目として分かっておかないと評価が困難です。繰り返しになりますが、「教育」もa,b,cと手技がだんだん難しくなる、それから「研究」もa,b,cとだんだん高度なものになってくるという位置付けで報告書になっています。「研究」の質が分かって、それに対してどう評価するかという点からは、実は千葉大学がおそらく「研究」の量が一番多い大学報告となっています。
○伊達座長
多いですね。
○小林構成員
私が3年前ぐらいに外科学会への報告書を調べてみたら、「研究」という報告はほとんど上がってないです。「研究」のところにaとか付いている大学は少なくて、当時は、全部サージカルトレーニングの「教育」だけでした。最近のすう勢を加味して、評価したほうがいいかと思います。
○内山構成員
機器の開発でご遺体を使用したいという希望がある場合、関連する教室の大学院、あるいは、共同研究という形で、倫理委員会を通して、研究を進めることは可能です。この形で、企業と開発するのが最善でしょう。遺体を使った研究が、大学を離れて実施されることは避けるべきです。
○岡部構成員
今までもマクロ解剖は院生の臨床学科の方が来られて研究されていたことも、ずっと伝統的にあるのです。それもかなり前からやられていて、最近変わったことは、その臨床研究の指針が変わったので、以前であれば余り明確にそういうことをやりますと言って、献体の方に事前のお話をしなくてもよかったのですが、今はそういう目的をあらかじめはっきりしておかないと、そういうことに使えなくなってしまっているので、そこがかなり変わったことの1つです。
もう1つの問題点は、先ほど先生言われたみたいに機器開発等が絡んでくると、結局かなり具体的な研究開発だとそれによって利益が生じるというのは当然ありますね。献体というのは基本的に無利益・無報酬というのが原則になっているので、献体してくださる方のほうも何も見返りを求めません。我々のほうも、使う際にはそれによって何も利益が生じるということは考えていませんという、そういう暗黙の了解の上に献体していただいているのです。ただ、もし今後、献体を使っていろいろな機器開発が進んで、機器開発した結果でそれでお金が生じていることがかなり世間的に知られた場合に、今までのその良き関係というのが崩れてしまう危険性はあります。それを解剖学会の方はかなり将来的には心配しているところです。今すぐどうなるということはないかもしれないですが、これが拡大していって、もしそういう例が生まれてしまうと、ちょっとそこが、ただで体を提供していると言っている割にはお前らもうけているのではないかとかいう議論が出て来る可能性があります。
○伊達座長
分かりました。確かにそうなのですが、やはり本当に難しい問題で、これもかなりディスカッションしてきているのですが明確な解答がないといいますか。では動物で人工関節の研究ができるかというと、なかなか難しいです。やはり人間でやってみないと分からないところがあるので、それで。
○岡部構成員
1つの考え方は、そういうので生じた利益は財団みたいなのを作ってしまって、そこに入れてしまうということが明確にできれば、それはそれでいいと思います。その財団で使うお金は、更に次の医学研究を振興するために使うのだというような、そういう立て付けができれば、それは余り反対は出ないと思います。不明朗にどこかお金が行ってしまって、誰かもうけているのではないかと思われるのは大分違う、誤解を生じるので。
○伊達座長
今は幸いそこまで、例えば何か新しいステープラーを開発するための御遺体の利用とか、そういう感じの報告書は上がってないですよね、明確に上がる。
○小林構成員
CST設立趣旨を拝見すると、名古屋市立大では「新規医療機器開発」という目的が明確に書いてあったものもあったかと思います。企業との医療機器開発が直接悪いのではなく、善意、無償のご献体に対する透明性と公正性をいかに担保すべきかを、誤解を生じないように、申請者にきちんとアナウンスを掛けるべきと思います。例えば、学会での発表でもそうですが、ほとんどの人は、「COIなし」と言うことが大事だと勘違いしている人がいます。また「日本でできないのだったらタイに行ってやるよ」とかいうのも、現実問題としてあるのは事実です。新しく改正されたガイドラインにのり、公正に透明性を保ってやっている所を称賛すべきといった論議が随分ありました。岡部先生が触れられたように、「無償の原則」について慎重に進めるべきだと思います。ここはやはりすう勢を見るためには研究の質についてa,b,cがどのように増えてきているのかとかいう目で見てはいかがでしょうか。本評価委員会等では、その点を見据え論議すべきと思います。
○伊達座長
例えば、新しい、すごく優秀なエネルギーデバイスが開発されて、それによって手術も早くできるようになるようなのが開発されて、そうすると、やはりそれを御遺体を使って、確かにこれが有用であるというトレーニングをする。それによって、それを開発した企業は当然もうかりますよね、どんどん売れるから。その代わり、それを使うことによってより手術が安全にできて、こういうサージカルトレーニングの目的は、そういう医療技術の発展とか、国民の健康に寄与するというのが目的なので、それを達成するということになりますよね。そこに利益がどうしても企業には入っていく。それを絶対駄目とすると、何もできなくなってしまうのですね。難しいですね。企業は、入ったものはある程度フィードバックしなさいとかいうことになるのでしょうか。それを次の運営資金に回すとか。
○小林構成員
岡部先生の言われたポイントは、非常に似ている例で言うと「輸血用血液」があります。提供なさる方は無償です。また「臓器移植」も当然ですが無償が原則です。しかしそれらをもとに医療行為を行い、保険診療として利益が生じます。この透明性と公正性に関しては、非常にセンシティブな部分もありますが、個人の考え方だけで決まらないところがあると思います。社会性も必修で、社会の理解を得るためにガイドラインを作って、このような委員会で評価し、予算配分もしっかり評価に見合った形でやる必要があります。血液は、日赤のような組織があり、国の運営体になっています。仮に独自性を許すと、勝手に自分たちが採血した血液を売り回しそれで利益を得ていたら、それは違法でしょうというような観点と同じような感覚に陥ります。今、座長がわかりやすくご献体を利用して医療機器を開発することの国民の健康への寄与に関して指摘されましたが、ご遺体の関する「無償の原則」の論議をあるところでしっかりやって前に進めたほうがいいのではないかと思います。
○内山構成員
献体法を作ってきたという過程がやはり今の話の延長にあるわけだから、何らかの形で公のものであることが分かる形に、これからそういうシステムを作っていくことが大事だと思います。
○伊達座長
ありがとうございます。では千葉大学はよろしいでしょうか。次が東京医科大学です。東京医大は13の御遺体を使って12回のCSTを行って、参加人数はここに書いてあるとおりなので、これを足すと、やはり延べ400には行きますね。次のページ、それぞれの効果が書いてある所、ここは受講料をちゃんと書いてくれているのですよね。これも受講料無料から5万円まで、いろいろあります。見学料を取っている所もあると。最後に追記を書かれていますが、参加費のこと、やはり費用のこと、あとは啓蒙、他大学との連携というようなことが書いてあります。東京医科大学に関しましては、何か。
○七戸構成員
飽和食塩水の固定法というのがあるのですけれども、これについてお聞きしたいのですが、感染の危険に関してはどうなのでしょうか。Thiel法の場合は、ホルマリンがある一定の量は入っていて、感染はないと一応されてはいるのですけれども。
○岡部構成員
これはやはり、かなり注意しないといけないと思います。
○内山構成員
時間をどのぐらい確保しているかによって、ある程度可溶体に出してしまうと、Thiel法はすごく長い期間は保存できないですよね。
○小林構成員
内山先生が発言なさったように、どこの大学からだったか忘れましたけれどThiel法の長期保存上の問題点を挙げていたと思います。
○内山構成員
岡山では、全部、調べています。
○小林構成員
要は、陽性の場合は、ホルマリン再固定という大学もあるぐらい、Thiel法で安全などというのは、それはアウトということですか?
○内山構成員 Thiel法は安全ではないです。
○小林構成員
柔らかさを追求すると、Thiel法や高濃度食塩の話は確かに魅力的で、我が国から学術論文もしっかり出されてきているからいいのです。しかし、感染の問題に関しては、専門家の意見をちゃんと聞いて、運営形態をどうしたほうがいいという指針は、ある程度出すべきではないかと思います。
○岡部構成員
どういうチェックをしているかというのは、結構、重要ですね。それをチェックしようと思っても難しい場合も多いのですよね。何か独居されている方とかで、過去の感染の履歴も分からない中で引き受けますからね。そうすると、本当にこの方は安全なのかと思いつつ、実際には実習に出したりしていますから。
○内山構成員
いや、本当にいろいろな献体の方がおられるので、考えるとゾッとするようなことが実際に起こっていますから。
○伊達座長
そういう意味では、ホルマリンが一番安全なのかもしれないけれど。
○内山構成員
今、岡部先生が言われたように、Thiel法で処理をして、後でいろいろ分かってきたときに困るわけですよね。
○伊達座長
あと30分なので、次は名古屋市立大学です。名古屋市立大学も、今日発表されていましたけれど、ここも結構、45遺体、CSTが20件です。組織がその次に書いてあって、こちらは病院診療科、病院の下にあるのかな。課題や効果がその次に書いてありまして、大体、同じようなことですね。今日は私、呼吸器外科の先生が発表されているのを聞いていましたが、結構、充実したセミナーをされていました。
どちらかと言えばブタとかを使ったアニマルラボのほうは、基礎的なトレーニングに使われることが多くて、御遺体はアドバンスドのことをやっている感じです。かなり、もう既に場数を踏んだ人が、例えば肺移植とか拡大手術とか、平生なかなか出会わない手術をやるときに御利用されているというのが、割と多いなと思いました。名古屋市立大学は何か問題点はありますでしょうか。発表から、かなりきっちりしたシステムが出来上がっている感じを受けました。
○小林構成員
3ページに報告がありますが、これまでの課題と対応で、「CST施設の立ち上げのための資金の不足」とあります。しかし、この施設の立ち上げの目的には、手術用ロボット開発等も含め地元の企業からの出資等を受け数億円とか集まったのが地方紙にも出ていたと思います。ロボット開発とか手術機器開発のためにCSTを使うというのが、メディアから情報であり、公的予算処置後におけるCST報告書における目的の位置がなかなか不明瞭です。
もう1つの指摘は、「生きたブタは基本的手技、御遺体は高度な手技という分け方」は偏りがあると考えます。それぞれのサージカルトレーニングには適性があって、例えば肝臓関係だったら生きたブタがいいだろうけれど、骨盤内とか頭蓋内など解剖学的にブタとは違う要素は、CSTの優位性があります。骨盤内は特に神経の走行とか、熟練した先生でも十分な訓練が必要です。このように生きたブタ実習とは決定的に違う要素があるということを、外科学会のCST推進委員会でも、随分論議いたしました。ぜひ解剖学の先生方にも聞いていただきたかったのです。要はCSTで絶対にやるべき所とか、そうではなくて代用できる所はここだということを、明らかにしていくようなことをやってくれるほうが後発隊にも参考になり、社会全体としても有意義ではないかという論議がありました。ですので一律にたくさんやった所の評価が高いとか、そういう意味ではないのだということをしてきしたいと思います。
○七戸構成員
確かに運営上の問題というのは、解剖学の教室の負担があります。我々も外科医でトレーニングするのに、全て自分たちで用意してやるというのはなかなか難しいところがあるので、このようなスタイルできちんと大学の中で管理するのでは、非常にいいやり方ではないかなと思うのです。一方で解剖学の先生方は、そこに対して、思われることもあると思うので、この名古屋市大のやり方が、今後どのように発展していくのか、問題を生じていかないかというのは、注意深く見ていく必要があるかなと思いました。
○伊達座長
非常に基本的な質問で、恥ずかしい質問かもしれないのですが、解剖学教室に御遺体をいろいろとやってくださる技術員の人がいらっしゃいますよね。あの人にはライセンスは必要なのですか。
○岡部構成員
いや、必要ないです。
○伊達座長
特別なトレーニングや教育を受けていないといけないということは、一切ないのですか。
○岡部構成員
出身大学も関係ないですし、一応、解剖学会で解剖組織技術士という資格認定はしておりますけれども、ただ、それを取られる方は、結構、実際に解剖の実務をやられてから取られる方が多いので、むしろ先にそういうことを始められて、ある程度の経験を積んでから資格を取るというパターンです。ですから、特に何も免許は必要ないです。
○伊達座長
必要ないわけですか。
○内山構成員
地方公務員試験を受ける場合が多いですね。直接何も試験なしで入るという形は少ないかも分からないです。地方によって違うかもしれませんが。
○岡部構成員
大学職員というか、そういう意味でのクォリフィケーションを受けていますけれども。
○七戸構成員
あとは、これもお聞きしたいのですが、いわゆる通常の解剖の業務の中で、御献体、御遺体を扱う所で外部委託というのは。
○岡部構成員
できないです。
○七戸構成員
全く通常はない状況ですか。
○内山構成員
御遺体を扱って灌流等の処置をすることは、普通に言ったら死体損壊罪、刑罰の対象になります。そうならない理由は、解剖学教室の教授あるいは准教授の指導の下に実施していますが、本来は教授あるいは准教授がやらなければいけないのですけれども、彼らが全てできないので、彼らの監督下で実施することで、刑罰の対象になっていません。ですから、それを全く関係ない外の組織の人が扱ったら、それはその時点でだめでしょう。もし遺体の処理をしたとしたら、これはアウトになると思います。
○伊達座長
では次、岡山大学に行きます。岡山大学は何年も前から頑張っておられますけれども、34献体で14回のCSTです。CSTの組織は研究科の下にあると。あとはほかの大学と同じように、報告、課題が書いてありますけれども、岡山大学に関する何か気になるところはありますでしょうか。
○七戸構成員
献体数がかなり多い、34体ですね。多分これはダブルカウントではないですけれども、こことここで別々なことをやったときに、それぞれ別に数えている可能性も、もしかしたらあるのかなと思いました。
○内山構成員
例えば、東北大ですと(現在はわかりませんが)、年70体以上集まります。歯学部と医学部がありますから、その両者で使ったとしても、かなり余裕があります。それらの遺体を用いて、自分たちの解剖研究に使っていました。その意味で余裕があるということです。
○伊達座長
だんだん後半に行くと早くなってきてしまうのですが、愛媛大学もずっと前からされておりまして、愛媛大学もこれはかなり頑張ってたくさんやっておられます。31献体を使って34回のCSTです。CSTの組織が書いてあって、ここはどこかからお金をもらったとか何か書いてありましたね。医師会からの支援金1,000万円により機器の購入が可能となっていると。すごいですね。愛媛の医師会はそんなにお金を持っているのですかね。
○小林構成員
ここはCST開設当初に見学に行って、レポートを書いたことがあります。そのレポートは「胸部外科」という商業紙に前CST推進委員長の近藤先生がオースライズしてくださいました。伊達座長の指摘のポイントですが、愛媛大学では学内の人はもとより、他の地方医療機関の研修先の医師がCSTを先進的にやっていたのです。そうしたら医師会が愛媛県内のいい医者をいっぱい育ててくれるのだったらというので、寄付が行われました。いわゆる地方が地方を支えるようなことを先駆的にやったので、先生が言われたように、私もとても素晴らしいことだなと思います。
そのような医師会の寄付はイギリスなどでも起こっているみたいです。やはり地域社会に医師の技術が貢献しているというようなことが評価されて、その団体から寄付金をもらうというのは、とてもきれいでスマートだったなと思います。
○伊達座長
臨床研究も、5年間で論文6報、講演5回、学会発表68回やっておられますね。会員の申込み希望は年間500名を超えている。すごいですね。
では次が徳島大学です。徳島大学は何かすごい充実したハードな建物などがあるとお聞きしたのですけれども、13献体を使って33回のCSTを行っておられます。CSTですけれども、ここは病院の下にあるみたいですね。病院長の下に来ていますね。実施対象者ですけれども、各科このぐらいの頻度ということが書いてあります。4ページ目にはどういう人が集まって研修を受けたかということが書いてあります。最後のページに効果と課題について書いてあります。やはりどこも同じですね。技術職員の負担をどうやって軽減するかうんぬんということ、あとは資金ですよね。
○小林構成員
この大学の評価も「アンケート」で来ています。先に触れましたが、アンケートというのは非常に科学的根拠を示すのが難しい数値処理になってしまうので、やはり各大学の何か共通のフォーマットみたいなものがないと評価が困難です。アンケートで「すごいです」、「立派です」みたいな話だと、個人によって感想が違うみたいな話になってしまうのかと思います。
○伊達座長
最後に産業医大ですけれども、ここはどのぐらいやったかというのが3ページ目に書いてあります。括弧がどういう意味かちょっとよく分からないですが、18献体で5回という意味なのか、括弧が学外、使用遺体数、学外が30とはどういう意味だろうな。学外の人も入ったCSTを30回やっているという。
○七戸構成員
多分これは上の(見込み)に掛かっていると思います。
○伊達座長
見込みですか、見込みに掛かっているのですね。なるほど、失礼いたしました。あとは課題、効果、今後の課題が書いてありますが、大体これも同じようなところでしょうか。予想どおりだんだん最初に比べると最後のほうはディスカッションの時間が短くなります。
一応、後で皆さん、それぞれの資料を利用していただいて、今回は評価できる点、今後の課題というので気になった所をざっと書いて、お送りください。よろしくお願いします。来年に向けてもう一回おさらいですけれども、報告書のフォーマットを作るということと、評価のフォーマットを作る、この2つをやるようにいたしましょう。司会が不慣れなところがありまして、何かあっちに行ったりこっちに行ったりして申し訳なかったですけれども、かなり充実したディスカッションができて、何が問題かというのが、私自身はよく分かって良かったなと思っております。一応これで今回は終了いたします。どうもありがとうございました。(了)

 

 

 

(了)

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