ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会)> 第5回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録(2017年2月10日)
2016年12月8日 第5回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録
健康局健康課
○日時
平成28年12月8日(木)10:00~12:00
○場所
厚生労働省 省議室
○議事
○大林室長補佐 定刻になりましたので、「第5回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分化会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」を開催します。本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。また、傍聴の方は、「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
委員の出欠状況について、御報告いたします。福島委員から御欠席の連絡を受けております。また、金川委員は遅れていらっしゃるようだと思われます。現在、8名のうち6名に御出席いただいていますので、厚生科学審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
なお本日は、参考人として、ファクトシートの作成の関係で、国立感染症研究所感染症疫学センター長大石和徳参考人、国立感染症研究所細菌第二部部長柴山敬吾参考人、予防接種推進専門協議会からの御推薦で、福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野教授岡田賢司参考人に御出席いただいております。申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席表、資料1から3と、別添1から6まであります。審議参加に関する遵守事項の申告書を御用意しております。配布資料一覧を御確認いただき、不足の資料等がありましたら事務局にお申出ください。ここからの進行は、倉根委員長にお願いいたします。
○倉根委員長 おはようございます。感染症研究所の倉根です。委員の皆様、参考人の先生方、ありがとうございます。本日よろしくお願いいたします。事務局から、審議の参加に関する遵守事項について報告をお願いいたします。
○大林室長補佐 審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日、御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受取り状況、申請資料への関与について申告いただきました。各委員・参考人からの申告内容については、机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。本日の審議事項は、ロタウイルスワクチン グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社を予定しております。本日の出席委員の申し出状況及び本日の議事内容から、今回の審議への不参加委員及び参考人はおりませんことを御報告いたします。事務局からの報告は以上です。
○倉根委員長 ありがとうございます。それでは、議題に従って進めてまいります。議題(1)ロタウイルスワクチンについてに入ります。前回のワクチン評価小委員会において、多屋委員、池田委員から、ロタウイルスワクチンに関する「最近の知見」の御報告を頂き、腸重積のベースラインデータの整理、リスクベネフィット分析、費用対効果の推計について、引き続き検討することとされたと思います。そのため、事務局から資料1について御説明を頂き、その上で委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。それでは、資料1に基づいて、事務局からの説明をお願いいたします。
○芳川室長補佐 事務局より御説明させていただきます。資料1と別添の資料をお手元に御準備ください。これまでの経緯を簡単に御説明させていただければと思いますので、委員の先生方のお手元には、机上配布として、前回の資料をお配りしております。こちらは非常に大部になりますので机上配布という形にさせていただいております。前回、ワクチン評価に関する小委員会において、過去の経緯等について整理をさせていただいた紙も準備をさせていただいていますが、平成25年12月の予防接種ワクチン分科会において、今回「3つの課題」と呼んでおりますが、腸重積ベースラインデータの整理、リスクベネフィット分析、費用対効果の推計について整理する必要があると、このように結論づけられたという形です。
前回、6月の本委員会において、「その後の知見」という形で、多屋委員、池田委員からロタウイルスワクチンに関する最近の知見を御報告いただいているところです。前回の6月の小委員会の議論において、これまでに明らかとなっている科学的知見について事務局で整理し、以前より検討課題に挙げられておりました3つの課題について、引き続き検討することになっていました。そこで、今回、この3つの課題について、一番最初の知見としてファクトシート、その後、作業班中間報告書、そして前回、6月に御報告いただいた最近の知見、その後幾つか知見もありますので、それらをこの3つの課題ごとに整理をして、別添のとおりまとめています。
別添ですが、1つ目の課題、「腸重積ベースラインデータの整理」です。ここでは、これまでに報告にありましたものを時系列で整理しています。1.として、「ロタウイルス作業班中間報告書」までは、まず3つの課題の整理が必要とされる以前の時点までの科学的知見です。2.として、それ以後、「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」までの知見は、平成27年12月までに集まった知見です。3.といたしまして、「その他の知見」という形で整理をさせていただいています。
1ページの1.の2つ目の○にありますように、腸重積のベースラインのデータは、地域における後方視的な研究や全国レベルの診療データベースから算出した発生率は、約150~190/10万人・年であったことが、作業班中間報告書に報告されています。
一方で、今日お越しいただいております大石参考人を研究代表者とした研究班において、腸重積ベースラインデータの収集を行っていただいています。2.の「最近の知見」までという情報の中にありますように、ワクチン導入前の腸重積の発症率が、1歳未満の人口10万人当たり92/10万人・年という報告を取りまとめていただいています。
3.その他の知見を御覧いただきますと、これは次の腸重積のリスクの増加でも御説明をいたしますが、腸重積についてワクチン導入前後で比較をしたところ、その発生頻度には全体として大きな違いはないと、同じく大石参考人の研究班の中で報告いただいています。
一方、右側の海外の知見ですが、オーストラリアとか、そこに示してあるように、その他の欧米各国、あるいはアジア等々での報告頻度が報告されていますが、非常に幅があることが示されています。
別添の2ページです。2つ目の課題「リスクベネフィット分析」です。リスクベネフィット分析というのは、ロタウイルスワクチンが導入された場合に、どのようなリスクが生じて、どのようなベネフィットが生じるのか、それを比較検討するという意味合いです。まずリスクとして、腸重積の増加リスクに関する知見を2ページに整理させていただいています。1.の平成25年12月までの知見として国内では、少なくともファクトシート中間報告書までに記載はなかったということです。一方、海外に目を向けてみますと、ここに幾つか記載をさせていただいていますように、RV1、RV5の知見の中で腸重積の発症リスクの大きな増加は認められていなかったことが、ファクトシートの中に記載されていますが、その後のワクチン導入後の各国の市販後調査等々により、オーストラリア、メキシコ、ブラジルにおいて、初回接種の時期に相当する生後3か月未満での増加や、接種後1週間以内の発症増加が指摘されていまして、それらのリスク比等々も海外における知見という形で報告を頂いています。
2.です。平成27年12月までの知見として、国内の知見ということで、先ほど言及させていただきました大石参考人の研究班の国立感染症研究所砂川先生の分担研究において、ロタウイルスワクチンの導入前後における腸重積発症リスクの増加について評価を頂いております。先ほど申しましたように、1歳未満の全体での発生リスクの増加は、リスク比としては前後比で0.91であって、差は認められていないことが報告されており、その旨を「最近の知見」に記載していただいています。
一方、これについては1ページに、月齢別の表を載せさせていただいていますが、この表に基づき、生後3か月で若干報告頻度の増加を認められていると、こういったことも報告書には記載していただいています。
また、国内のロタリックスの市販後調査の報告を、期待発生率と比較した文献の報告によれば、初回接種後7日以内の腸重積が増加していることが確認されている一方で、2回目の接種後では、そのリスクの増加は認められなかったことが、「最近の知見」に書いていただいています。
2.の海外の知見では、NEJMの報告にもありますように、引き続き初回接種のところでのリスクの増加が、メキシコ、ブラジルで報告されているという知見の記載があります。
3.その他の知見ですが、こちらは国内で2社、MSD社とGSK社から供給されているロタテックとロタリックス、それぞれについての製造販売後の安全性データの報告を頂いて、公表されています。接種後に報告された腸重積の報告は、それぞれ10万出荷当たり4.1例がロタテック、4.3例がロタリックスという結果でした。診断確定数は、それぞれ10万本当たり3.6例、3.5例という形で報告をされています。
3ページです。リスクベネフィット分析のベネフィットの部分です。こちらは、ロタウイルスワクチン導入によって、ロタウイルス感染症をどの程度軽減することができるかという観点での知見です。これについては、既に平成25年12月までの知見の中でも、国内において幅広く、その疾病の状況を把握システムとして5類感染症の感染性胃腸炎の一部としてロタウイルス胃腸炎が把握されています。また、秋田県・三重県・京都府の調査により、5歳未満のロタウイルスによる入院率が4.4~12.7/1000人・年ということで、全国推計をしますと、年間2万6,500~7万8,000人の入院があり、そのうち70~80%が2歳以下と、このような疾病負荷の情報の記載を既に頂いていました。また、それぞれロタリックス、ロタテックの臨床試験の結果に基づき、ロタウイルス性胃腸炎の予防効果、あるいは重度の胃腸炎の発症の予防効果が確認されていることが、ファクトシートに記載されています。
なお、平成25年12月までの海外の知見では、既にこの時点において、重篤な胃腸炎に対する予防効果等々は、幅広く示されている状況でした。
2番は、「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」まで、(~平成27年12月)に、国内で示されてきたベネフィットに関するものです。変化としては、平成25年の第42週から、ロタウイルス性の感染性胃腸炎についてのサーベイランスが動き始めたという形になっています。また、国内において、平成25年12月までは十分示されていなかった重症ロタウイルスの胃腸炎に対する予防効果、あるいは入院率の低下傾向が、地域の報告によって示されてきていると、このような形で知見が報告されています。
4ページの3番です。今、2、3ページで御説明させていただいた内容について、腸重積の発症リスクの増加とロタウイルス感染症による疾病負荷を軽減するベネフィットを比較衡量した国内のデータに基づく報告を、ここで示させていただいています。この報告は、ロタリックスの導入後、5年間でのリスクベネフィット分析という形で、ロタウイルス性胃腸炎に対する入院・死亡の軽減の効果と、リスクとして腸重積による、あるいはロタウイルスワクチン導入による超過入院・超過死亡のそれぞれを、推計に基づいた形で算出しています。この分析の結果、「ロタウイルス胃腸炎による入院・死亡をそれぞれ1万7,925例・6.3例減少させ、腸重積による入院・死亡をそれぞれ50例・0.017例増加させる」と記載されています。なお、この文献を報告していただいている著者らは、GSKの雇用関係にあるという旨も併せて記載されています。
最後ですが、費用対効果です。平成25年12月までの知見として、保健システム・社会のそれぞれの立場から分析されています。当時としては、社会の立場から見た場合に費用対効果的であることが、国内の分析の結果として記載されています。
一方、「最近の知見」においては、接種群の一人当たりの期待費用が、接種していない場合(被接種群)の費用を上回るという結果であるということも記載されており、費用対効果に関する見解は、国内においても評価が分かれる形です。
諸外国においても、ベルギー、フィンランドでは費用対効果的であるという一方で、アイルランド、イングランド・ウェールズ、フランス等では費用対効果的でないという旨が、ファクトシートに記載されています。
3つの課題の整理については以上ですが、資料1の一枚紙に戻っていただきまして、これら3つの課題について、現状の科学的知見を整理させていただいたところです。これら3つの課題について事務局では、以下の5つを論点として記載させていただいています。これらの内容について御議論いただければと思います。1.腸重積のベースライン発症率について、1歳未満人口10万人当たり報告数について幅があるが、これをどのように考えるのか。2.ロタウイルスワクチン導入によって見込まれる腸重積増加リスクが十分に明らとなっているか。3.ロタウイルスワクチン導入によって見込まれるベネフィットは明らかとなっているか。4.上記2.3.のリスク等ベネフィットを比較衡量することは可能か。比較した場合にどのように考えるか。5.ロタウイルスワクチン導入の医療経済学的評価はどうか。御検討をよろしくお願いします。
○倉根委員長 ありがとうございました。ただいま事務局から説明していただきましたが、資料1に基づいて、ここに幾つか論点が書かれております。これに関してそれぞれの御意見を頂きたいと思います。特にここで順番は申しませんので、それぞれ御意見を頂いて、それが関連することもあるかと思いますので、委員の方々、参考人からの御意見あるいは御質問でも結構ですが、頂きたいと思います。いかがですか。
○池田委員 まず1点、質問させていただきたいのですが、私は老眼で見えないのかもしれないのですが、1ページ目、「腸重積ベースラインデータの整理」の3.「その他の知見」にある大石先生の御研究のグラフですが、この縦軸は、発症した症例の実数なのか、それとも他の所にあるような人口10万人当たりの報告数なのか、これはどちらになるのでしょうか。というのは、上下のグラフを見ると、少しスケールが違うように見えましたので、それを教えていただければと思います。
○大石参考人 これは実数だと記憶しております。
○池田委員 そうしますと、これをもって増えたか減ったかというのは、この数字だけでは分からないということで、次のページのリスク比が0.91というのが、もしこのグラフから導かれたものであるとすれば、全体の人口10万人当たりにしたときには高さとしては余り変わらず、その三角形の所だけがやや増えているように見えるという解釈をしてよろしいのかどうかということです。
○大石参考人 おっしゃるとおりだと思います。現状では、今、十分な比較ができる状況にはないので、このような図になっているのだと思います。一番大事なポイントは、報告数だけではなくて、実際にこの症例のロタウイルスワクチンの接種があったかどうかが、現状では十分に把握できておりませんので、そこは今年度中に精査して最終報告としたいと考えている次第です。
○池田委員 もう1点よろしいですか。今のグラフの件ですが、ワクチン導入前の調査は後ろ向き調査、ワクチン導入後の調査は前向き調査ということで、一般的に研究デザインだけからいきますと、前向き調査のほうが非常にきちっと把握ができているかと思うのです。例えば、ワクチン導入後の数字のほうが、より正確だとしたときに、導入前の数字は、後ろ向き調査で見逃がしが多くて少ないのか、それとも、レセプトなどを見て、保険病名という問題もあって、むしろ多めに推計されている可能性があるのか、その辺りの正確性については何かありますか。
○大石参考人 この点については先生が御指摘のとおりであり、ワクチン導入前の情報については、レトロスペクティブに見るしかないわけで、そこで制度が違うことについては、なかなか排除できない問題かと理解しております。
○岡田参考人 たまたま私はこの調査に参加させていただいたのですが、後ろ向き調査のときには、前向き調査も同じですが、保険病名から拾っています。腸重積がどこまで正確かは分かりません。そして、先生が御指摘のようにスケールが違うのは、後ろ向き調査は5年間で、前向き調査が3年間ですから、それを実数として、図にしていますので、これだけの差が出てきているのだろうと考えます。前向き調査のほうが、各病院の研究協力者の皆さんには、少しずつ意識が高まってきた分だけ、少しそのようなバイアスが掛かっている可能性はあると思います。
○原委員 保険病名で採録されていたということですが、最終的にカウントするときには、ブライトン分類のレベル1とか、そういう何らかの共通の尺度でカウントしていかれたのでしょうか。
○岡田参考人 保険病名で拾ってきて、最終的にはブライトン分類で、評価をしたと思います。
○多屋委員 私もこの研究に少し協力しておりますので、補足ですが、集まってきた腸重積症の患者の実際のカルテを拝見させていただきに行った地域もありますし、ワクチンについて星印を付けた所については、特にロタウイルスワクチンの接種歴などを調査した結果、分かった中では接種を受けた人はどなたもいらっしゃらなかったという結果等もあります。また1年間で、この数がもう少し増えていますので、そこが増えてくると、もう少し数が明らかになってくるのではないかと思います。一人一人の症状を全部入力していただいていますので、それが日本で使われている腸重積の診断基準に合致しているかどうかは、全員を確認した上での数となっています。
○池田委員 ベースラインのデータは大変重要だと思っているのですが、5年間及び3年間について調査されたことは、恐らく毎年毎年のデータもあると思うのですが、経年的に見たときに何か増加傾向とか減少傾向したトレンドがあるのか、それともかなり変動が大きくて、その辺の分析には、この症例数だとなかなか耐えないものであるのか、その辺りはいかがでしょうか。
○大石参考人 調査は継続的に続けているのですが、経年的なデータがまとまるほどにはなっていないというところです。そういった年度毎の分析も、今年度末には検討したいと思っております。
○倉根委員長 私から1つ質問させてください。「3か月児での発症が当時も増加しており」とまとめとしてはこうなっているのだけれども、これは3か月というところを導入前と導入後で比較すると多くなっているという解釈なのか、それとも発症のパターン、カーブを見たときに導入前のカーブと導入後のカーブを比較すると、そこが増えているとか、どういう解析になるのでしょうか。
○大石参考人 現状の理解としては、先生がおっしゃるようなパターンが変わってきているというレベルの評価と理解していただいたほうがいいと思います。最終的には、罹患率がどう変わってくるかということ、特にワクチン接種との関連でどうだということが分かってくればいいと思っております。
○倉根委員長 ありがとうございます。この点での御質問あるいは御意見は、ほかにありますか。現在あるデータだとこうだけれども、今後蓄積されてくるであろうと。そうすると、もう少し情報が集まってくれば、更に解析も出てくるかということだろうと思います。この点ではよろしいですか。
○池田委員 臨床的な情報について、知らないので教えていただきたいのですが、腸重積の治療ですと、例えば整腹術などを行うと。それも完結的なものと非完結的なものと。多分、重症度等の状態で、その処置なども変わってくると思うのですが、例えば数としての変化だけではなく、重症度とか処置などの必要性についても何か傾向はありますか。多分レセプトだと、その辺りも御覧になっているのかと思ったのですが。
○多屋委員 机上配布の資料の1-1の前回御提出した「最近の知見」の中の23ページが該当する部分ですが、ここに大石班での結果をまとめています。表1として、ベースライン調査と前向き調査で報告された国内腸重積症のまとめを記載しているのですが、非観血的整腹の割合と観血的整腹の割合に、ワクチン導入前と導入後で差は認められておりません。先ほど岡田先生から御質問のあったブライトン分類の部分については、2つ目のパラグラフの部分に書いてあり、ブライトン分類評価におけるレベル1の症例定義を満たす症例であるかどうかについての確認はしています。
○岡田参考人 付け加えますが、低月齢児は腸壁が薄いということもあり、加圧だけでなかなか整復が難しいこともあって、開腹術などは観血的な整腹が増えているのではないかとの懸念がありました。今、多屋委員からの御説明のように、幸い早い例が少し増えたとしても、観血的な整腹例はそれほど増えていないとわかりました。ただ、小児科領域で、3か月ぐらいの腸重積では、今まで余り経験がないものですから、そういう意味で3か月児ぐらいは、やや怖々やっている症例も多少あるという可能性はあります。
○倉根委員長 今の議論で、ベースラインの発症率の部分において議論してきたのですが、ここについて更に何かありますか。よろしいですか。それでは、それ以外といいますか、更に全体に関して御意見、御質問はありますか。
○多屋委員 今まで腸重積症という安全性の面を中心に議論されました。次はベネフィットの部分についてです。3ページにベネフィットの部分が記載されております。報告書をまとめてから既に1年がたちましたので、ロタウイルス胃腸炎の流行時期である春を1回過ぎております。今回の秋の学会などでは、その頃のデータの発表なども随分されており、患者の数が減ってきているというベネフィットの部分の発表が結構多く出てきております。そういう新しいファクトについても、今年度が終わった後、また入れられるのではないかと思うことが1つ。
それから、重症のロタウイルス胃腸炎の予防が目的のワクチンですが、一方、Disease Burdenとか、疾病負荷を考えると、ロタウイルスによる脳症なども、結構、子供にとっては重症の病気なので、そういう患者が実際に日本ではどれぐらい発生しているのかという部分を見ていただくことで、ロタウイルス感染症の疾病負荷の部分を一緒に見ていただいたほうがいいのではないかと思っております。ロタウイルス脳症の数は全数届出疾患なので、集計すれば公表することができると思います。
○倉根委員長 今の多屋先生の御意見に対していかがでしょうか。多屋先生、一般論としての質問なのですが、ロタウイルス感染が全体として減ってくれば、やはり脳炎の脳症も、それと比例して減ってくるであろうと考えていいのですか。あるいは、それはまた別かもしれないと予想、予想というか、どうでしょうか、そこら辺。
○多屋委員 ありがとうございます。インフルエンザ脳症と同様に、インフルエンザの患者の数が減ればインフルエンザ脳症の数も相対的に減ります。同じように、ロタウイルス感染症の患者が減れば、それによって起こってくるロタウイルス脳症の患者も、数としては減るのではないかと思っております。ワクチンとの関係は別として、まず実際に起こっている疾病負荷の部分を見ていただけるといいかと思っております。
○倉根委員長 ほかにいかがでしょうか。今、多屋先生からはそういう御意見が出ました。
○原委員 ロタウイルスのワクチンのベネフィットに関しては、私も実際にエフェクティブネスを評価したりしており、効いているという実感はあります。やはり効いていても、リスクの評価を十分してからでないと、よく効いてその疾病が減っていくとリスクに目が向くということで、そちらの評価をもう少し強化したほうがいいのではないかと思います。
この議事検討の中に幅がある所をどのように考えるのかという点についても、かなり倍以上の幅があるということで、私なりにこの辺りの全国レベルの診療データベースの論文を見てみました。こちらはDPCのデータを使った分析ということで、重複症例の扱いをどのようにしたのかとか、その辺りで多く見積もる方向に働いているのかという印象を受けました。
例えば、内科で治療して、うまく整腹できなかったので外科の病院に行ったとなると、それぞれ違う病院でカウントされることになり増えることになります。よく読むと、このデータは7~12月の数を2倍してカウントする方法で、大石先生の報告書では、夏季に多い傾向があるということも書かれていることを考えると、それも少し多く見積もる方向に働いているのかという印象があります。その点で大石先生の報告で夏季に多いというのは、7、8月に多いということでよろしいですか。
○多屋委員 今の御質問なのですが、もともと腸重積症の発生が少し夏場に多いという傾向が今までもあって、それは今回の調査でも同じような結果が出てきておりました。おそらく夏に多い感染症などとの関連もあるのではないかと思っております。
○原委員 そうなると、多分、少し推計を多く見積もる方向には働いているのではないかと推測しました。
○倉根委員長 ほかに御意見、御質問はございますか。先ほど多屋委員から、幾つか発表というか研究がなされているということなのですが、比較的小さなグループで、各々できる範囲での研究が進んでいるとすると、サイズや実際に使用している統計手法とか、そこはかなりヘテロな研究があちらでも、あるいはこちらでもなされているということでしょうか。それとも、全国レベルで、そういうものが重層して行われているということですか。
○多屋委員 全てを把握しているわけではないですが、ロタウイルスに関して私が存じ上げているだけでも、研究班が3つぐらい走っていると思います。効果の面、感染症の発生動向という面については、神谷・庵原・菅班、片山班でもされていると思いますし、その一環として出されたのか、そこまでは把握できておりませんが、いろいろな所で患者さんが減ってきているという発表があり、そういうことで学会での発表がされているのだと思います。そういう結果が今年度末には、また得られるのではないかと思っております。
○大石参考人 先ほどの原委員の質問に即答できなかったのですが、要は、2012年度の中間報告の記載によると思います。やはりロタウイルスによる急性胃腸炎の発生動向の中で、この記載では、ロタウイルスとそれ以外のエンテロウイルス等々の発生動向が混ざって表現されているので、一方で、ロタウイルス胃腸炎の好発時期とは違うと書かれているので、その辺をもう少し精細に分析してベースラインのデータに、季節性をどのように評価すればいいのかということについては、もう一度研究班で持ち帰って、また原先生には報告したいと思います。よろしくお願いいたします。
○倉根委員長 よろしくお願いいたします。ほかに御質問、御意見はございますか。また多屋委員に質問なのですが、発表の中で余り効果がないというデータはありますか。つまり、なかなかそういうデータは発表しないのかもしれませんが、やはり効果があるというものが先生が御存じの中では全てであるという、ほとんどであるということでしょうか。
○多屋委員 ありがとうございます。もう少し詳細に見て来ればよかったのですが、私の目についた発表については、効果の部分だったと思います。
○倉根委員長 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。今、少しベネフィットの部分に入っているのですが、2番の論点について、ワクチンの導入によって見込まれる腸重積の増加のリスクが明らかになっているのかと、現在の治験の中でということはいかがでしょうか。事務局で「最近の知見」と、「その他の知見」ということで、幾つかまとめてもらっているのですが、ここに関して御意見はいかがでしょうか。
○管沼委員 先ほどの岡田参考人からの3か月未満の腸重積の項のお話では、外科の先生の臨床数は増えているという印象なのですか。
○岡田参考人 小児科も含めて気になり始めているという意味合いです。
○管沼委員 それは、そのワクチンとの兼ね合いでということではないのですか。
○岡田参考人 それもあるかもしれませんが、結構、生後3か月未満ぐらいの子供たちも腸重積があるのだということが、小児科医だけでなく、小児外科の先生方の間でも認識されてきたのかなと思います。
○倉根委員長 ほかにいかがでしょうか。論点2について、考え方や御意見はいかがでしょうか。
○原委員 日本のデータだと集団のものを使って期待値でリスクの増加があるかという、生態学的な研究といいますか、集団のデータ同士を比較するようなものはあるのですが、海外のように、それに加えてセルフコントロールドケースシリーズみたいな、個人が接種をするかどうかのバイアスみたいなものを考慮した研究成果はまだないと思います。
結局、接種が進むといろいろな人が接種してくることになるので、その辺りの評価はまだ十分とは言えないのではないかと思います。
○倉根委員長 いかがでしょうか。よろしいですか。今、1番がかなり議論され、3番に移り、それから2番は余り十分ではないのではないかという御意見を原委員からいただきました。その場合、2と3を比較した場合にどのように考えるのかということは、いかがでしょうか。あるいは、4、5に移っても構いませんが、各専門家の御意見を頂戴したいと思います。
○岡田参考人 5番に移ってもよろしいですか。
○倉根委員長 はい。
○岡田参考人 費用対効果の点は国際的にもなかなかうまく評価できていなくて、国内でも評価が分かれているという御報告だったと思います。前回の、この委員会でもお願いをさせていただいたのですが、イギリスなどのように費用対効果が出るワクチン価格が、どれぐらいなのかということを医療経済の先生方に今一度評価をし直していただければ、ありがたいと存じます。社会の観点からすると、以前に計算していただいたものと社会が少し変わってきていると思います。
今の日本のワクチン価格だと費用対効果がはっきりしない状況なのかもしれないですが、日本の今の社会状況の中で、これくらいのワクチンの費用だったら保険の立場や社会の立場の両方から費用対効果が出るのかということを、今一度評価していただけると、価格の面で製造・販売側がそれはとても無理と言われるのならば話は別ですが、いかがでしょうか。
○倉根委員長 今、岡田参考人から御質問が出ましたが、医療経済の先生方、いかがでしょうか。
○池田委員 以前にも一部分析をさせていただいたので、今、御指摘のことについては、もちろん、再計算することは可能です。ただし、アメリカとイギリスを比べると、医療経済評価の分析の基本的な考え方が違っていて、アメリカは社会の立場を基本としております。その中で、子供が病気になったときに親が看病したときのコストとか、可能なものは全て含めて評価するということで、実際、ACIPのロタウイルスのガイドラインのレコメンデイションの中にもそうした前提で分析した数字で、ワクチンの価格が幾ら以下になれば社会としてコストの節約になるという数字まで載っております。
一方、イギリスは国が税金で払う財源がどうなるという±を評価するという立場で分析をしており、これは、また分析の目的や使い方が違うと思います。ただ、ワクチンに限らずですが、アメリカで最近出た医療経済のガイドラインだと、両方の立場で分析して評価するということが示されております。先ほどのJAMAにガイドラインが載っております。そういうこともありますので、両方の立場で再計算するということは、もし御指示があれば準備したいと思います。
ただし、実はこれを計算するときには、もともとベースラインとして腸重積がどのくらい日本で起きていると仮定するのか、ワクチンの効果をどのように仮定するのかという有効性、安全性のデータを使えという御指示があれば、それに基づいて計算できるので、まずは幅があるにせよ、どのデータを基本で使うか、どの幅で計算するかという御指示も同時にいただけると有り難いと思います。
○倉根委員長 岡田参考人への御質問に関してはそういうことですが、そうすると池田委員、まずは前提となるデータがそろわないと、なかなか計算したものの信頼性が難しいのではないかという御意見でしょうか。
○池田委員 まず、基本となるデータとして、これを使うという前提条件が決まっていると計算が進められるということです。ただし、もちろん不確実性のあるものは幅を持った推計で、多分、この値が多少変わっても結果に影響を与えないとか、あるいは、この値がしっかり決まらないと最終的な意思決定に影響を与えるということも計算できますので、幅を持った推計も可能なので、まず、どういう範囲でパラメーターを定めるのかということについては、御指示を頂いたほうがいいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○倉根委員長 ありがとうございます。今、研究を進めておられる先生方から、また、今の池田委員の御意見に対して何かございますか。いつ頃こういうデータがそろうでしょうかというようなこと、あるいは、幅を持ったものは出せるだろうけれど、はっきりした数が出てくるまでにはもう少し時間が掛かるのか、そこら辺はいかがでしょうか。
○多屋委員 具体的に、現時点でこの数字が必要ということを幾つか御提示していただけると、出せる最新のデータがまとめられるように思います。それから、1年前の報告書ですが、前回、提出した報告書の17ページにあるような感染性胃腸炎の患者から見つかったロタウイルスの検出状況で、IASRのグラフです。これは2014年までなので、例えば、2015年や2016年を見ることで、ロタウイルスの検出が減っているのか、あるいは、何か変わっているのかということも出てきます。16ページの基幹定点からの報告数ですが、16年のデータが、あと1シーズン増やせるかと思います。
もう1つ感じているのは、今、保育所に通園している子供がとても多くなってきております。ロタウイルス胃腸炎の患者が1人いると、感染力が強い病気なので、保育所中に流行が拡大してしまって保護者が休まなければいけないということもあります。ワクチンを接種する人が多くなると、それが少なくなるというメリットの部分をなかなか数字として出せないのですが、保育所に通っている保護者の立場から考えると、そういうところもベネフィットの部分として見ていっていただけると有り難いと思います。
○大石参考人 池田委員からの質問についてです。腸重積の疾病負荷ということで、その他の知見のところで論文が示されているということですが、私自身、この論文を精読しておりません。入院に係る入院日数とか、そういう情報があれば費用対効果は計算しやすくなって可能になるのでしょうか。死亡例はそう多くないと思うのですが、入院期間だけでよろしいのかどうかです。
○池田委員 費用の点で結果に大きく影響するのは、1つは、接種するワクチンの価格です。もう1つは、先生が御指摘のように重症になったときの入院の日数や費用も結果に大きく影響してまいります。今はDPCで、腸重積の分類があるので、これをある程度、参考に入院日数は定められるかと思っております。
ただ、細かい話を言うと、費用対効果はcost per qualityと言って、分母が医療費とか、QOLの下がった分ということになるので、子供のQOLをどのように測るのか、あと入院日数が少し動くと分母のほうが大きく動くので、結果の不確実性が非常に増してくるのですが、しかし、DPCのデータを使った入院日数で、それを基本分析として実施するということは可能だと思います。
○大石参考人 そうすると、特に症例の入院日数が必要ではないということですか。
○池田委員 はい。新たに収集できれば望ましいですが、今あるデータで計算するとすればDPCの平均的な入院日数を使用することは可能だと思います。
○倉根委員長 ありがとうございます。ほかに御意見はございますか。
○原委員 やはり、流行状況を見ていくに当たっては、そこの集団のワクチンのカバー率も併せて見たほうがより良いと思います。その辺りはどのように評価されているのですか。
○倉根委員長 いかがでしょうか。今の原委員の御質問ですが、ある地域におけるロタワクチンの接種率がどうかという。
○原委員 こうやって見ている集団の中で、同じ集団の中の接種率を見ていく必要があると思います。
○倉根委員長 そこはいかがでしょうか。
○岡田参考人 任意接種ですから、地域の接種率はなかなか分かりづらいのですが、もちろん日本全体の接種率は、販売量からある程度は推察できると思います。そういう意味では年々上がっているということは伺っております。
○多屋委員 岡田先生と同じなのですが、任意接種なので接種率が分からないということで、インターネット調査をしていただいたことがあるのですが、今から1年少し前の2015年の春の段階で、生後2か月ぐらいまでの赤ちゃんは60%ぐらいの赤ちゃんが接種を済ませているという結果が出ていたので、また1年たってもう少し高くなっているかもしれませんが、なかなか任意接種の接種率を出すことは難しいものですが、そういうデータは出てきていると思います。
○倉根委員長 難しいけれど、ある程度の数はあると。ただ、それは地域ごとにかなり違うということもあり得るわけですね。ほかにいかがでしょうか。本日の御議論いただきたい部分が幾つかここにありました。それぞれについて御意見、御質問を頂きました。これをまとめるということはなかなか難しい作業ですが、国内、国外で多くの知見が集まっているということは事実だと思います。ただ、今後広く接種を進めていくために更に検討をするには、幾つかの課題が残っていることが現状ではないかと思います。
本日の1~5の論点に関して御意見いただきました。今後、幾つか走っている研究班のデータも参考にしつつ、また、他の知見も事務局で集めて、そして知見の収集に向けた検討を事務局で進めていただき、更に、ほかからも知見が出てくるでしょうから進めて、事務局で一定の整理ができた段階で、もう一度報告いただくという方針でいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○多屋委員 先ほどの質問に対しての補足です。前回の報告書「最近の知見」の21、22ページに、いすみ市での調査を記載しております。赤のグラフと青グラフです。白黒印刷の資料では区別ができず申し訳ないのですが、22ページのグラフですが、全額公費助成を始めたかどうかで、青の全額公費助成をしている市内と、していない市外で、このように患者の数が大きく変わってきているという結果も1年前には一応出しております。
○倉根委員長 ありがとうございます。具体例としてこういうものもあるということです。また戻り、全体のまとめといいますか、今日の議論の整理です。先ほど申しましたが、各研究班のデータ、知見の収集が今なされておりますので、それ及び他に出てくる知見も含めて、その収集に努めていただき、さらに、それに基づいてもう一度、事務局でまとめていただく、そして、一定の整理ができた段階で、またこの委員会で報告すると、まとめたいと思いますが、それでよろしいですか。
(異議なし)
○倉根委員長 ありがとうございます。議題1については、そのようにまとめて本日の結論としたいと思います。次に移ります。報告事項です。まず、議題2の報告事項です。2点あります。まず、本年の1月に製造販売承認されたヴァクセムヒブワクチンについて本年の3月の小委員会で、有効性、安全性、費用対効果等について国立感染症研究所でファクトシートを作成するということになっておりました。
そのファクトシートが作成されておりますので、その経緯を含め、資料2-1について、事務局から簡単に説明の後、柴山参考人から資料2-2のファクトシートについて御説明していただきます。
○芳川室長補佐 資料2-1をお手元に御準備ください。沈降ヘモフィルスb型ワクチン(ヴァクセムヒブ)についてです。これについては、タケダ薬品工業株式会社のヴァクセムヒブが、本年1月に国内で製造販売承認されたことを受け、3月に開催された第3回ワクチン評価に関する小委員会において、定期接種で使用することの是非に関する検討について、以下のこととして2点の了承を頂いたところです。
主にアクトヒブと比較する観点から、有効性安全性費用対効果等について、国立感染症研究所にファクトシートを作成いただく。そのファクトシートに基づき、本剤ヴァクセムヒブを定期接種で使用することの是非に関する検討を行うということでした。本年9月30日、国立感染症研究所によって、沈降ヘモフィルスb型ワクチンのファクトシートが作成されております。
また、つい先日ですが、本年11月24日に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、本剤はもともと皮下の用法でしたけれども、筋肉注射に関する用法の追加について御報告がされました。筋肉注射に関する用法の追加が、承認の予定をされているので、その用法に関しても併せて検討が必要となるということです。そのため本日の小委員会においては、感染研の先生方、また池田先生にも御協力を頂いて、作成いただいたファクトシートについての御報告を頂くという予定にしています。事務局からは以上です。
○倉根委員長 ありがとうございました。それでは資料2-2になりますが、柴山参考人から説明をお願いします。
○柴山参考人 それでは私のほうからは、沈降ヘモフィルスb型ワクチンVaxemHibに関して、その有効性、安全性、費用対効果等、それらについて科学的な知見、主に現行の既に使われているヘモフィルスb型ワクチンのアクトヒブと比較する観点から、科学的知見をファクトシートという形でまとめましたので報告させていただきます。資料2-2を御覧ください。
このファクトシートですけれども、冒頭のところに全体の要約を載せてありますので、冒頭のそちらの要約部分に沿った形でちょっと御説明させていただきたいと思います。1ページ目を御覧ください。このインフルエンザ菌、混合莢膜型b型、これ以降は「Hib」と略させていただきますけれども、Hibというのは皆様御存じのとおり、小児において重症の侵襲性感染症を起こす、そういう病原体です。
2歳ぐらいまでに鼻咽頭に保菌されることが多いのですが、この菌が肺であったり、血流に入ってきますと重症な髄膜炎とか、菌血症を伴う肺炎、蜂窩織炎等を引き起こし、特に問題になるのはこの髄膜炎なのですけれども、こちらが急速に進行し、予後が不良な場合が多い。先進国であっても致命率が3%ぐらいとされています。あるいは救命されても後遺症を残すことが多いということで、非常に深刻な問題だということであります。
この感染症は、ワクチンによって予防することができるという、そういう感染症です。現在、日本におけるワクチンの導入状況と疫学状況がどうなっているかということです。このHibに関しては、厚生労働省の研究班で、病原体サーベイランスを行ったというデータがあります。この研究班によると、Hibワクチン導入前、現行のActHibが2007年に導入されて、承認され、その後2010年に公費助成が始まって、接種率が大幅に向上しているのですけれども、その導入以前では、小児の細菌性髄膜炎は、大体12~20%ぐらいがHibによるものだったということです。
しかし、ActHibが導入され、更に2013年には定期接種化され、予防接種法に基づく定期の予防接種対象となったわけです。こういう形で接種率が向上したことに伴い、このHibによる侵襲性感染症は顕著に減少しました。研究班のほうで、北海道もありますので10道県を対象とした病原体サーベイランスが実施されたのですけれども、ActHib導入前では、髄膜炎罹患率は、人口10万人当たり7.7であったのですけれども、Hibワクチン導入後、現在、2014年のデータでは0で、全く分離がないという状況になっております。要するに、このサーベイランスの規模では、もう検出できないぐらいにHibの分離検出例が減っているという状況にあります。
さて、今回承認されたこのワクチンVaxemHibは、ActHibと同様の沈降ヘモフィルスb型ワクチンなのですけれども、こちらは沈降ヘモフィルスb型ワクチンで、抗原としては同じHibのpolyribosyl ribitol phosphate(ポリリボシルリビトールリン酸)なのですけれども、若干ちょっと分子量に違いがあるということとか、製法に若干違いがあるということと、あともう1つ大きな違いはキャリアタンパク質で、この多糖体だけでは抗原性が弱いので、キャリアタンパクを付けているのです。ActHibがジフテリアトキソイド(ジフテリア毒素)なのですけれども、こちらのVaxemHibは、ジフテリアの毒素と、しかもこれは遺伝子変異を導入して、無毒化したジフテリア毒素をキャリアタンパクとして用いるという、そういう大きな違いがあります。あともう一つ大きな違いは、アジュバントが入っているということです。VaxemHibのほうにはアジュバントとして、リン酸アルミニウムを加えてあります。ActHibのほうには入っていません。こういう違いがあります。
それで、2ページ目に移って、有効性についてです。このワクチンの有効性は、臨床試験によって調べられているのですけれども、この有効性の評価は抗体価が上昇しているかどうかで判定をしています。具体的には、先ほど申しました抗原のPRP(polyribosyl ribitol phosphate)に対する抗体価が上昇するかどうかということで見ています。
臨床試験によると、VaxemHib接種あるいはActHib接種群、両群ともに、ワクチン接種4回(初回に3回と追加免疫1回)を受けた被験者の99%以上が抗PRPIgG抗体を0.1μg/mL以上の濃度で保有していた。1μg/mLの濃度というのは、抗体価というのは長期防御ができるレベルということです。つまり、VaxemHibもActHibともに、十分な抗体反応を誘導することができると示されたわけです。このような試験は、他の国においても同じような結果が示されているということであります。
次に、ワクチンの互換性ですけれども、互換性と申しますのは、VaxemHibとActHibは初回免疫3回と追加免疫1回でやりますので、途中で違うワクチンを使ってもいいかということなのですが、私どももこういうことに関する論文をいろいろ調べたのですけれども、なかなかそういう論文がありませんでした。
ただ、WHOの報告によると、WHOの事前承認審査、これにおけるVaxemHibの添付文書によると、追加免疫の事項に、「初回接種にVaxemHibを使用したものは追加接種としてVaxemHib、又は他のHib結合体ワクチンは使用可能であり、同様に初回接種で他のHibワクチンを接種したものには追加接種でVaxemHibの使用が可能」という記載があります。
また実際に、韓国ではVaxemHib、ActHibこの2剤を含む、他の製剤も含む5種類のワクチン製剤が実際に流通しています。そして全接種件数の14~19%が、これらの違うワクチンを使っていることが報告されています。韓国ではVaxemHibは2009年から使用されているようですが、その後に特に韓国でHibによる侵襲性感染症の動向、例えばそれが増えたとかそういう報告はされていませんので、事実上こういうHibワクチンは交差接種を行っても防御効果に恐らく影響はないのではないかと考えられております。ただ、なかなかこれに関しては、余りデータがないので、なかなか科学的なエビデンスではっきりと申し上げるというのはちょっと難しいかなと思います。
次ににワクチンの安全性についてですけれども、このVaxemHib、第1相の臨床試験では副反応の発現頻度が94.3%(35例中33例)ということで、死亡等の重大な有害事象はなかったということです。ほとんどが発赤とか硬結とか腫脹とか、軽度のものであったということです。第3相の臨床試験では、ActHibとの比較を行ったということです。副反応、これはDPTワクチンと同時接種したときの副反応の発生頻度ということであります。副反応の発生頻度は、VaxemHib分で82.4%(278例中の229例)です。一方でActHibのほうは62.0%(137例分の84例)で、ActHibに比べると、VaxemHibのほうが発生頻度が高い傾向にありました。主な副反応は、その接種部位の紅斑・硬結・腫脹というものであり、死亡例などの重大な有害事象はなかったということです。
ちなみにこのActHibよりも、VaxemHibの副反応の発生頻度が高いということですが、この数字を例えばDPTワクチンと比較すると、DPTワクチン単独接種の副反応の発生頻度と比べても、ほぼ同じだということであります。それほどワクチンとして、副反応の発生頻度は高くないということです。
このファクトシートの要約のところには、記載がありませんが、医療経済に関して既にActHibがこのように日本で導入されていて、なかなか評価が難しいということです。医療経済効果については、24ページの5.のところに記載がありますけれども、日本でもこういうActHibが既に導入されているということとか、文献検索等を用いても、なかなかこういう関連する論文というのは見つからないという状況ですが、ActHibとVaxemHib同様に、抗体を誘導することができるということから、恐らく有効性・安全性がほぼ同等であるとは予想されるのです。こういう有効性・安全性がほぼ同等であるということであれば、後はワクチンの価格により、例えばどちらかが安ければそちらのほうが経済的と言えるとか、そういうことは言えるかとは思います。かなり端折って御説明申し上げました。私のほうからは以上です。
○倉根委員長 ありがとうございました。この感染症研究所それから池田委員にも御参加いただいて作成されたファクトシートの説明でした。本件に関しての質問は、また後で受けたいと思いますので、次に進みたいと思います。
報告事項の2点目、不活化ポリオワクチンの5回目の接種についてです。前回の小委員会において、本日も参考人としておいでいただいていますが、岡田参考人から、不活化ポリオワクチンの5回目の接種について言及いただきました。その不活化ポリオワクチンの現在の検討状況について、事務局で引き取って整理することになっていたと思いますので、そちらについて事務局から報告の説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。
○芳川室長補佐 不活化ポリオワクチンの5回目の接種についてということで、資料3について御説明します。まず背景ですが、委員長から御指摘いただいたとおり、6月に開催された前回第4回の小委員会において、不活化ポリオワクチンに関する御指摘をいただいたので、事務局で過去の検討状況と現状について整理しましたので、御報告します。
なお括弧書きとして、参考ということでサノフィ株式会社が製造する不活化ポリオワクチン「イモバックスポリオ」について「別添1」に付けています。国内の臨床試験の結果から、平成28年2月に添付文書の改訂がなされ、4回を超える接種が可能という変更が行われています。これまで不活化ポリオワクチンの導入の経緯、それから5回目接種の必要性についての検討の経緯をまとめています。
平成24年8月に開催された、不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会において、不活化ワクチンを接種する多くの国で2歳以降に追加の接種を行っていることから、日本において抗体保有率の経年変化の観察を行う必要があるとされ、その経年変化に基づき不活化ポリオワクチンの5回目接種の必要性、及び必要な場合においてはその接種時期の検討を行うとされていました。
その後不活化ポリオワクチンが、平成24年9月、11月に、使用が可能となりました。平成25年7月に開催された(第3回)研究開発及び生産流通部会において、不活化ワクチンの5回目接種の必要性について、改めて御議論をいただいています。この内容のサマリーを「別添2」に付けていますが、平成25年12月16日の予防接種・ワクチン分科会の資料のまとめという形で記載している1つ目の○の「抗体保有率の経年変化について調査を継続し、その結果に基づいて5回目接種の必要性を検討する」ということが、資料3の平成25年7月の部会の中でも改めてその必要性について結論付けられています。
また参考として、「別添3」に、現在の諸外国の不活化ポリオワクチンの接種スケジュールについて、事務局で幾つかのホームページ等で情報を集めたものについて載せています。上のグループは、4回接種の国です。5回目接種の国もあって、更に6回以上で5年毎とか、10年毎という形で接種されている国など様々で、不活化ポリオワクチンについての接種スケジュールというのは国によって異なっているということが分かっていただけると思います。
次に資料3の裏面を御覧ください。「ポリオに対する抗体保有率の経年変化について」は、ここで書いてあるとおり、感染症流行予測調査事業と、以下に示しているAMEDの研究班において調査をしていて、今後も継続していくことを予定しています。これらの事業及び研究結果については、別添4~6に示していますけれども、「別添4」のところでは感染症流行予測調査事業ということで、2015年度の年齢別ポリオの抗体保有状況について、上から1型、2型、3型という形で、抗体の保有状況がこのような形になっています。
一応、目安として点線を引いているのは、平成24年まで定期接種としてOPV(経口生ポリオワクチン)を使っていた世代から、現在大体3歳ぐらいの方以降は不活化ポリオワクチンを使用されていて、その方々において、抗体価が赤の線が4倍以上、黄色の線が8倍以上ということで、保有状況としては高く維持されていることをお示ししています。
また別添5は、研究班の報告ということです。こちらについては、今日、参考人として御出席いただいている岡田先生に研究分担者として行っていただいているのですが、不活化4種混合ワクチンの治験の段階で、いわゆる定期接種として接種を受けている方々よりも少し年齢の高い方に対する4種混合接種後の抗体の保有状況についてのフォローをしていただいている研究です。ここでも結論としては、ポリオに対する抗体の保有状況というのは維持されているという旨を記載しています。
別添6については、感染研の清水先生の研究班の中で、多屋先生に行っていただいているポリオの感染症流行予測調査事業の分析の研究ということで、こういったもので抗体保有率の経年変化を経年的に見ていっているという状況です。これらの調査結果に基づいて審議会で必要に応じて検討いただくという予定にしています。事務局からは以上です。
○倉根委員長 ありがとうございました。今、事務局から、資料2-1及び2-2ということで、2つの報告をしてもらいました。何か御質問御意見ございますか。どちらでもけっこうです。まず最初の「沈降ヘモフィルスb型ワクチン」のファクトシートについての報告に関する質問はいかがでしょうか。特にございませんか。
私から1つ、柴山参考人に。2ページの上から5行目に長期防御レベルという言葉があるのですけれど、これはHib感染症の防御レベルとされる1.0μg/mL以上が、長期維持されたということですか。それとも長期防御という何か概念があるのでしょうか。
○柴山参考人 この時点で1.0μg/mL以上の濃度の抗体価があれば、その後、長期にということです。
○倉根委員長 そういうことなのですね。分かりました。長期に維持されるのではなくて、それがあればひょっとすると少し落ちたとしても十分な防御が維持されるという概念なのですね。
○柴山参考人 ええ、感染症発症を防御するのに十分な抗体がまだ維持されて、結果的に感染症が十分に予防できるということが期待されるという濃度です。
○倉根委員長 そういうことなのですね。つまり1.0ないとだめだという話ではないのですね。1.0持っているということは、長期になると少し抗体価は低下するかもしれないけれども、それでも長期に防御できる十分量が1.0であるという概念なのですね。
○柴山参考人 はい、そういうことです。
○倉根委員長 分かりました。御質問よろしいですか。それではここについては特にないようですので、資料2-2を事務局から報告いただいたのですが、ポリオの5回目接種について前回御意見いただいたことに関しての現在の整理ということですけれども、御質問御意見はありますか。よろしいですか、現在はこういう状況であるということです。
それでは、後半2つについて特になければ、本日の議事については終了したいと思います。ありがとうございます。事務局から何かありますか。
○大林室長補佐 次回の開催については、追って御連絡させていただきます。事務局からは以上です。
○倉根委員長 ありがとうございます、それでは本日のワクチン評価に関する少委員会をここで終了したいと思います。活発な御意見をいただきありがとうございました。
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