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2020年3月18日 第1回精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

令和2年3月18日(水)18:00~20:00

 

○場所

東京都中央区八重洲1-2-16
KTP東京駅日本橋カンファレンスセンターホール2A

○出席者

朝比奈構成員、伊澤構成員、岩上構成員、江澤構成員、岡部構成員
奥田構成員、小幡構成員、鎌田構成員、神庭構成員、吉川構成員
小阪構成員、櫻木構成員、田村構成員、中島構成員、長野構成員
野口構成員、長谷川構成員、藤井構成員、山本構成員

○議題

(1) 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の目的について
(2) その他

○議事

 

○友利課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第1回「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 現在、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況でございます。本日の開催に当たりまして、感染拡大防止を図り、各構成員の方々を初め出席されている方の感染の不安を取り除くため、体調がすぐれない場合は出席を控えていただくことや、出席に当たりましては会場入場の際に、手指のアルコール消毒等、せきエチケットについても御協力をいただくようお願いしているところでございます。皆様にはこれらの対応に御協力いただきましてありがとうございます。
 なお、本検討会につきましては、原則「公開」の扱いになっておりますけれども、今回、新型コロナウイルス感染症対策の一環としまして、本日は傍聴不可、頭撮りについても不可とさせていただいております。
 それでは、本日の構成員の出席状況について報告をさせていただきます。
 本日は、櫻田構成員、中谷構成員、中原構成員から、御都合により欠席との御連絡をいただいております。
 では、机上に配布させていただいております本日の資料を確認させていただきます。
 まず座席図、議事次第、資料1が開催要綱で、その裏に構成員名簿が記載されております。資料2が「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について」、参考資料が「精神保健医療福祉の現状」で、これらの資料が本日の資料となっております。不足資料や落丁等ございましたら、事務局にお申しつけください。
 では、本日が第1回目の検討会でございますので、障害保健福祉部長の橋本より一言御挨拶をさせていただきます。
○橋本部長 障害保健福祉部長の橋本でございます。
 構成員の皆様方におかれましては、年度末で大変お忙しい中、また、この新型コロナウイルス感染症への御対応などで、そういった面でもお忙しい中を本検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本当に御承知のとおり、現在、新型コロナウイルス感染症が日本国内はもとより世界で猛威を振るっている状況でございまして、本日も先ほど司会から申し上げましたように、傍聴人を入れないというちょっと異例の対応をせざるを得ないという状況になってございます。私ども厚生労働省といたしましては、一刻も早い終息に向けまして、省内一丸となって対応に取り組んでいるところでございますので、構成員の先生方におかれましても、引き続き、また、いろいろな場面で御協力いただければと思っております。
 さて、精神保健医療福祉に関する五十数年の流れを少し振り返ってみますと、平成16年に「精神保健福祉策の改革ビジョン」がございました。この中で、入院医療中心から地域生活中心へと、そういう基本的な方策の実現に向けて取り組むべしと、こういったものがあったわけでございます。それから10年を経まして、平成26年でございますが、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」が出されました。この中で、精神障害者に対する保健医療福祉に関わる関係者全員が目指すべき方向性がある意味定められたと考えております。
 その3年後でございますが、平成29年2月、新たな、地域精神保健医療体制の在り方などについて議論を行いまして、「これからの精神保健医療福祉の在り方に関する検討会の報告書」が取りまとめられたわけでございます。この中で初めて、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」という理念が明確に盛り込まれまして、現在、このシステムの構築に向けた取組を関係者一体となって進めている、そんな状況でございます。
 私が申し上げるまでもございませんが、精神疾患を有する患者の数が近年増加傾向にございます。平成17年には推計約302万人という患者数だったわけでございますが、平成29年になりますと、約419万人という状況でございますので、相当数の増加と見てとれるかと思います。結果的には、脳血管疾患や糖尿病を上回る、国民にとって身近な疾患という状況になっております。
 先ほどの平成29年の明確に打ち出されました「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」になりますと、これは精神障害者が地域の一員として自分らしい暮らしをすることができるように、医療はもとより障害、福祉や介護、住まい、社会参加や就労、そして、地域の助け合い、または、いろいろな意味での普及啓発、そういったものが包括的に確保されていくことが画然なわけでございます。私ども厚労省といたしまして、予算の中でこういった取組を支援するような事業を設けまして、それを支援する。あるいは、技術的な支援を行うという一環で、このシステムの構築のための手引きといったものも作成して、そういったものをお示しするなどをしてまいりました。しかしながら、こういったことはやってきたわけでございますけれども、平成29年にこの理念を掲げてからもう数年が経過しておりますが、これまで全国の自治体や関係団体の皆様方といろいろと意見交換をする中から、このシステム構築を進めていく上で、実施主体が不明確ではないかといったことを初めとして幾つもの課題があることもはっきりしてまいりました。
 このため、今般、現場の関係者の皆様方や、あるいは有識者の方々、当事者の方々、家族の方々、こういった様々な方々から成るこの検討会を設置させていただきまして、この地域包括ケアシステムの構築の推進に関して、今、課題とされているような事項について改めて整理をし、そして、その課題を解決して、より一層前へ進めるということのために、そして、各種の施策に反映させることのために、改めて、この場で御議論をいただきたいということで御参集をいただいたわけでございます。
 構成員の皆様方におかれましては、それぞれのお立場から大変活発な御議論をいただきまして、施策のより一層の充実を図り、そして、精神障害者が地域の中でより自分らしい暮らしをできる、そんな世の中を実現するために、さらに前進をしていきたいと考えております。何とぞよろしくお願いいたします。
○友利課長補佐 では、議事に入る前に資料1の本検討会「開催要綱」の「3.構成員等」の(4)におきまして、座長は構成員の互選により選出して、座長代理は座長が指名することとしておりますので、まずは座長を決めたいと思います。
 構成員の皆様、いかがでしょうか。
○中島構成員 事務局で決められたらいいと思います。
○友利課長補佐 承知いたしました。
 事務局からということでございますので、事務局としましては、日本精神神経学会の理事長で、精神障害者の医療・保健・福祉に関する幅広い学識経験をお持ちの神庭構成員を推薦させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○友利課長補佐 ありがとうございます。
 それでは、本検討会の座長を神庭構成員に務めていただくことといたします。
(神庭座長、座長席へ移動)
○友利課長補佐 それでは、今後の議事進行につきましては、神庭座長にお願いしたいと思います。
○神庭座長 本検討会の座長を務めさせていただきます神庭でございます。どうぞよろしくお願いします。
 では、議事に入る前に、本検討会「開催要綱」3.の(4)に基づき、私のほうで座長代理を指名させていただきます。
 座長代理につきましては、藤井構成員にお願いいたします。
○藤井座長代理 国立精神神経医療研究センターの藤井でございます。
 御指名ですので、座長代理を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○神庭座長 ありがとうございます。
 では、早速、議事に入りたいと思います。
 まずは議題1「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の目的について」ですが、関係する資料に基づき事務局から説明をお願いいたします。
○寺原課長補佐 事務局です。精神障害保健課の課長補佐をしております寺原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料1の「開催要綱」を御覧ください。
 平成16年に「精神保健医療の改革ビジョン」が打ち出されまして以降、地域生活中心という考え方を示してきているところでございます。また、平成21年には「精神保健医療福祉のさらなる改革に向けて」を取りまとめております。さらに、平成26年には「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性」を取りまとめております。
 それを受けて、こちらにございます、平成29年2月に「これからの精神保健医療の福祉のあり方に関する検討会」の報告書におきまして、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築の理念が示されたところでございます。以降、2018年度からの第5期障害福祉計画及び第7次医療計画におきましても、この精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを大きな柱として打ち出しております。各自治体におきましても、医療・保健・福祉の連携をもとに各施策を行っていただいております。
 また、後ほど御説明いたしますが、構築推進事業、構築支援事業という事業等を通じて各自治体に厚生労働省も支援をさせていただいておりますが、その中で現場よりいろいろな課題が挙がってきております。その課題を踏まえて、今般、この関係者によります、医療と保健と福祉と当事者等の有識者の方による重層的な連携支援体制の議論、検証が必要と思いまして、こちらの開催をさせていただく流れとなってございます。
 事務局からは、以上でございます。
○神庭座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明につきまして、皆様から御質問、御意見がございましたらおいいたします。
 なお、発言につきましては、できるだけ簡潔に2~3分程度でお願いいたします。いかがでしょうか。
 どうぞ。
○櫻木構成員 日本精神科病院協会の櫻木です。発言をさせていただいてありがとうございます。
 私は、この検討会が始まるに当たって、一丁目一番地の質問をさせていただきたいと思います。それは、この表題の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」についてです。現在の社会システムの中にある地域包括ケアシステムは、例えば高齢者に対してとかいろいろありますけれども、その中に精神障害を組み込むという考え方なのか。それとも、地域包括ケアシステムという手法を参考にして、新たに精神障害に対応した独自のものを構築しようというお考えなのかという点であります。
 どうしてこういう質問をするかということですが、これはある先生から私は聞いた話ですけれども、精神障害の方が、この「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」ということに非常に心配をしているというお話を聞きました。どういうことかというと、せっかく精神科病院を退院しても、地域で自分たちが別に隔絶されたシステムの中に閉じ込められてしまうのではないかということを心配していると。それに対してどういうふうに答えたらいいのかと。もちろん、患者さんたちが心配するように、地域の中で新たなシステムの中に、精神障害を持った人たちを閉じ込めてしまうというシステムだとすれば、当然、我々としては反対をしていかなければならないと、そういうふうなお話をされました。
 最近、ある団体から、入院医療中心から地域生活中心へと政策転換が図られて久しいにもかかわらず、いまだに入院医療に依存をしているという御批判をいただいたわけですけれども、私たちは地域移行に反対をしているわけではありません。ただ、退院がゴールで、退院すれば全てハッピー、後のことは知らないよというふうな退院至上主義を懸念して、異論を表明しているということであります。
 今回の第7次の医療計画の中で、入院需要と地域移行に伴う基盤整備量という考え方が示されました。やっと非常にバランスのとれた考え方ができてきたなと、その辺に対しては我々は賛成をしているわけです。そうした議論の中の延長線上の中で、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築が捉えられているのであれば、その成果は大いに期待をしたいと考えています。
 我々に対するいろいろな御批判はいただくわけですけれども、例えば精神科特例というふうなことが言われます。でも、現状では特例ということはないのであって、医療法上、例えば、一般病床には一般病床の、療養病床には療養病床の、感染症病床や結核病床には、それなりの基準が示されていて、精神病床の基準も別に定められているということであります。
 ただ、そうした中でも、我々としては、多職種チームによる治療の推進という観点で看護基準、看護配置にとらわれずに、例えば精神保健福祉士さん、これを初めとしたコメディカルスタッフを含めた人員確保に努力をしてきたところであります。特に急性期治療の機能を持った病棟では、厚い人員配置を図ることで早期の退院促進を図ってきたところであります。それについて重装備化をしていると批判をして、行動制限の増加を招いているという御批判をいただいているところではありますけれども、これは我々にしてみれば、木を見て森を見ない議論であって、的外れだと考えざるを得ません。
 ちょっと話が脱線しましたけれども、一番最初の一丁目一番地についてのお考えを示していただければと思います。
 以上です。
○神庭座長 事務局いかがでしょうか。
○寺原課長補佐 事務局です。
 まず、精神分野に限定した内容の議論をいただきたいということではございません。高齢者分野に端を発しております地域包括ケアシステムではございますが、これらの考え方や実践の方法は、精神障害者やその御家族等の支援体制を構築する上でも活用できるものだと考えております。精神領域におきましては、精神障害者やその家族等を取り巻く様々な環境を考慮しないといけませんし、関係者の重層的な連携による支援体制の構築が必要でございますので、精神領域についてある程度特化した取組も必要ではないかと考えております。
 その中で、櫻木構成員も申し上げられました関係者の重層的な連携が一つのキーワードだと思っておりまして、そのためにも、様々な見える化も含めて議論していただきたいと思っています。あくまでも、高齢者の地域包括ケアシステムと同様に、地域住民を中心としていかに多職種の方が連携し、精神領域に限らず取り組んでいけるかということを考えております。
○櫻木構成員 その中で、地域移行の中身が今まではどうしても障害福祉サービスを中心にいろいろ考えられてきたのですけれども、ついさっきまで、私は「医療計画の見直し等に関する検討会」に出ていたのですけれども、そこで、今は外来機能の問題が取り上げられています。そこで、なかなか精神科医療というところまで議論が進んでいかない。
 ですから、今回のことで言えば、地域包括ケアシステムの中で、医療の部分あるいは福祉の部分、保健の部分をバランスよく取り上げていただいて、むしろ、外来機能に関してもここでの議論をほかの検討会の議論にも反映をするというぐらいの形で考えていただければと考えています。
○神庭座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
○長野構成員 なんぐん市場の長野です。
 精神障害にもというところで、「にも」という文言を入れたらどうですかと前回の検討会で発言をさせていただいたのが私だと思うのですね。そのときの思いをもう一度確認だけなのですけれども、さっきの櫻木先生の話でもそうですけれども、精神障害の方に特化するということはこれからあり得ないと思っていて、この「にも」は、介護保険もそうだし、社会の仕組みもそうだし、もちろんレジャーもそうだし、仕事もそうだし、ありとあらゆる社会の中でどんな方も生きていけるように包括ケアをちゃんとやるべきだという意味で「にも」と発言したつもりです。
 私たちも実践をしていく中で、ほとんどの方、ごくごく限られた方に特別な手当てが要る方はもちろんいらっしゃるけれども、本当に従来難しいなと思っていた方もほとんどの方が普通の一般の社会の仕組みの中で支えられることも見えてきていますし、それをもっと広げて議論をする精神福祉医療の中の議論でとどまらないことがとても大事なことだと思っていて、「にも」と発言させていただきました。
 とにかく社会の中でどなたも生きられる、検討会の前回の「にも包括」のまとめのところにも、精神障害の有無にかかわらずということがはっきり書かれていると思いますので、そこがいろいろなところと連携しながら広がっていくといいなと願っています。
 以上です。
○神庭座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
○伊澤構成員 精神保健福祉事業団体連絡会の伊澤です。よろしくお願いいたします。
 先ほど、検討会の「開催要綱」の御説明をいただいたのですけれども、「構成等」の(6)ですね。必要に応じて参考人の招致という記述がございますけれども、この検討会は精神障害の方々の支援をどのように活性化させるか。そういう意味では提供する側の議論だけでは当然駄目でありまして、その受け手ですよね、ユーザーとなるべき方々の意見を多く聴取したほうがいいという考えを持っております。
 したがいまして、現在の構成の中に当事者の方の参加がちょっと少ないかなというところもございまして、この(6)にございます参考人招致で、ぜひ、当事者の方の御意見をたくさんヒアリングするような機会を設けていただきたい。
 これは要望でございます。お願いいたします。
○神庭座長 事務局いかがですか。
○寺原課長補佐 ありがとうございます。前向きに検討をさせていただきます。
○神庭座長 ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、先に進ませていただきますが、よろしいでしょうか。
 残りの資料2及び参考資料について、事務局から説明をお願いいたします。
○寺原課長補佐 事務局です。
 資料2の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について」御説明をさせていただきます。
 おめくりいただきまして、1ページでございますが、日本の人口の推移になります。今後、総人口が減少するという中で、高齢化率の割合は上昇するという推計がなされております。
 次は2ページになりますが、人口構造の変化になります。団塊の世代が全て75歳以上になる2025年までにおいては、高齢者、後期高齢者の急増が見込まれております。また、団塊ジュニアが全て65歳以上になる2040年までにおきましては、生産年齢人口の急減が推計されているところでございます。
 次は3ページでございます。精神疾患を有する患者数の推移になります。3年ごとの患者調査からの受診者の推計でございます。平成29年度の調査において、初めて総患者数が400万人を超えた状況でございます。外来患者数は増加傾向、一方、入院患者数はやや減少傾向でございます。
 4ページでございます。外来患者数の推移の疾患別内訳を示しています。最も多くを占めているのが鬱病や躁鬱病等を含む気分障害、緑色の部分でございますが、いずれの疾患も増加傾向にありますけれども、赤色のアルツハイマー病の増加割合が顕著となっています。
 5ページでございますが、外来患者数の年齢階級別の内訳になります。いずれの年齢階級も増加傾向でございますが、特に75歳以上の増加が顕著になっています。
 次は6ページです。入院患者数の推移の疾患別内訳になります。最も多くを占めているのは統合失調症でございますが、統合失調症の患者数は減少傾向でございます。一方で認知症の患者数は増加をしているという状況です。
 7ページです。入院患者数の年齢階級別内訳になります。65歳未満の入院患者数は減少傾向でございますが、一方で65歳以上、特に75歳以上の入院患者数は、増加は顕著になっています。
 8ページからでございますが、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係るこれまでの取組」について御説明をいたします。
 9ページが、法制度の改正経緯についてになります。平成7年に精神保健福祉法が制定されまして、平成25年に直近で改正がなされております。平成25年の精神保健福祉法の改正では、医療保護入院に関して、保護者制度の廃止、家族等同意の創設と、精神科病院の管理者に対する退院後生活環境相談員の設置、地域援助事業者との連携、退院促進のための体制整備の義務づけ等が規定されたところでございます。
 10ページでございます。平成16年からのこれまでの検討の経緯でございますが、主な内容のみ示してございます。平成16年には、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」の中で、「入院医療から地域生活中心へ」という基本的な方策が示されたところでございます。その5年後の平成21年には、「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」の報告書が公表されております。
 平成26年には、大臣告示として、地域の受け皿づくりの在り方等に係る具体的な方策を取りまとめました、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」が取りまとめられたところでございます。
 その指針が次の11ページでございます。入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療の実現に向け、精神障害者に対する保健医療福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性を定めております。
 その中で4つ大きく掲げております。
 1点目が「精神病床の機能分化に関する事項」、2点目が「精神障害者の居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供に関する事項」、3点目が「医療従事者と精神障害者の保健福祉に関する専門的知識を有する者との連携に関する事項」、4点目が「その他良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する重要事項」でございます。現在もこの考えをお示しし、各自治体においても取り組んでいただいている状況でございます。
 12ページでございます。「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」におきまして、「新たな地域精神保健医療体制のあり方に関する分科会」が開かれました。その中で、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築の理念が示されたところでございます。
 13ページでございます。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築のイメージ図でございます。こちらにございますように、精神障害者が、地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉、介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された地域包括ケアシステムの構築の理念を平成29年度に示したところでございます。
 14ページでございます。2018~2020年度までの第5期障害福祉計画に係る国の基本指針におきましても、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築を主なポイントとして示しております。その中で成果目標として3つ示しております。保健・医療・福祉関係者による協議の場、都道府県におきましては各障害福祉圏域ごと、市町村におきましては各市町村ごと、あるいは、市町村におきましては共同の開催も可ということで、その設置をお願いしております。精神病床の1年以上入院患者数の減少、それから、退院率の上昇を成果目標として掲げております。
 15ページです。保健・医療・福祉関係者による協議の場の設置についてのアンケート調査の結果になります。都道府県におきましては、第5期の障害福祉計画を終わるまでの令和2年度末までに設置予定というものが約8割を占めております。また、「未設置かつ未確定」及び「その他」と回答した自治体におきましても、保健所圏域等の単位では協議の場を設置する予定という形になってございます。右側の市町村におきましては、令和2年度末までの設置予定が約6~7割の状況でございまして、34.2%は「未設置かつ未確定」という状況になっています。
 16ページです。協議の場における参加者の状況になります。保健・医療・福祉から、当事者、家族等の参加者の状況を見ておりますが、保健・医療・福祉、市町村職員の方は約8割以上参加をされておりますが、一方で、高齢者介護、住まい、就労、当事者・家族等の参加者の割合は、市町村、圏域、都道府県いずれも少ない状況でございます。右側の協議内容についてですが、中ほどにあります「入院中の精神障害者の地域移行」に関しては、約8割が議論をされておりますが、そのほかの「普及啓発」「家族支援」それ以外に関しましてもなかなか協議がされていないという状況でございます。
 17ページです。協議の場のPDCAの状況になります。地域アセスメントから始まりまして、目標設定、目標達成に向けたロードマップ作成、成果の評価と改善という形でアンケートを取っておりますが、まず地域アセスメント自体がなかなかされていないことが分かります。地域課題の抽出はされながらも、目標達成に向けたロードマップ作成や、その評価と改善も十分ではないという結果になっています。
 次に18ページです。この協議の場の概念に基づいてアンケートを行っております。
 先に25ページを御覧ください。後ほど御説明いたします手引きの中で、保健・医療・福祉関係者による協議の場の機能と協議内容の構造の概念をお示ししたところでございます。縦軸が協議内容の構造として、地域基盤の整備の軸、支援体制の整備の軸、個別支援の検討の軸を示しております。横軸が、機能として保健・医療を起点とした基盤整備の検討、福祉を起点とした基盤整備の検討を示しております。それぞれ縦軸・横軸ごとに議論はされているということを自治体からはお聞きしておりますが、中ほどにあるインテグレーションした統合した議論が進んではいないのではないかという課題を持っております。
 18ページにお戻りください。今回、昨年度お示しした、この会議体の概念に基づいてアンケートを行いました。地域基盤の整備の軸、支援体制の整備の軸、個別支援の検討の軸ごとに示しております。まず、右上の地域基盤の整備の軸ですが、青の保健・医療を起点とした検討、右側の福祉を起点とした基盤の検討、中ほどの統合した地域づくりの検討ごとに見ておりまして、それぞれ都道府県、圏域、市町村ごとに検討しているかどうかの割合を示しております。いずれも約40%未満という状況になっております。特に市町村においては、地域基盤の整備の検討がなかなかなされていないという状況でございます。また、中ほどの統合した地域づくりも今後の課題になっています。
 左下のマル2の支援体制の整備の軸になります。こちらも都道府県、圏域と比べると市町村の議論が進んでいないという状況です。また、中ほどのインテグレーションした検討も進んでいない状況にございます。
 右下の個別支援の検討ですが、個別支援に関しましては、都道府県と比べて、圏域及び市町村のほうが検討されていることが分かりますが、やはり真ん中の統合した地域づくりの検討はなかなかなされていないということでございます。この統合した地域づくりの検討に関しましては、一つの協議体をつくらないといけないということではありませんで、それぞれの検討の場がある中で、しっかりと連携をする仕組みがあればいいのではないかと考えておりまして、そういう考えもお示しをしているところでございます。
 次は19ページでございます。第5期障害福祉計画と同じ年度から開始されています、2018年度から開始されております第7次医療計画でございます。第7次医療計画においても、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築を大きな柱としておりまして、このケアシステムの中でケアシステムの構築を進めるためには、右側にあります多様な精神疾患等に対応できる医療連携体制の構築が大切であるという考えを示しております。
 次に20ページでございます。平成29年度より、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業及び構築支援事業を開始しております。左側に構築推進事業を示しております。都道府県・指定都市・特別区・保健所設置市に対する補助金事業になっております。右側が構築支援事業でございまして、こちらは委託業者を通じた事業になっております。それぞれの事業について御説明いたします。
 21ページを御覧ください。まず都道府県・指定都市・特別区・保健所設置市に対する補助金事業である構築推進事業になります。事業内容でございますが、1番目の協議の場の設置は必須になっておりまして、2番から14番に関しては、地域の実情に合わせて選択いただくという形になっております。また、11番目の構築推進サポーター事業と13番目の医療連携体制の構築に係る事業は来年度からの新規事業になっています。12番目の精神医療相談事業は、精神科救急医療体制整備事業からの組替えを行う予定になっています。これまでの実績でございますが、29年度、30年度、今年度と、参加いただいている自治体が増えてきている状況でございます。
 次は22ページの委託事業を通じた構築支援事業になります。各自治体、都道府県・指定都市・特別区において、まずはモデル障害保健福祉圏域を設置いただきます。そのモデル障害保健福祉圏域に対して、国が選定した広域及び都道府県等の密着アドバイザーがアドバイスをさせていただくという事業になっています。このアドバイザーは、保健・医療・福祉のそれぞれ実践経験のある方から選定をさせていただいております。これまでの実績といたしましては、29、30、元年度と、徐々に増えてきているところでございます。
 次は23ページでございます。また、この構築支援事業の中で、状況・ノウハウの共有化も広く行っております。まずポータルサイトを開設しております。このポータルサイトの中で各自治体が行っているニュースの発行として各自治体の取組も御紹介しておりますし、また、全国会議も行っておりますので、この合同会議の概要もお示ししております。また、これから御説明いたしますが、手引きも昨年度作成をしたところでございまして、今年度もこの手引きを更新し、公表する予定でございます。
 24ページからが手引きについてでございます。各自治体より具体的な事業を行うに当たってどのように行っていけばいいのか分からないという声が出ておりまして、この手引きを作成するに至っております。3つの章から成っておりまして。まず1章が、精神保健医療福祉のデータと政策です。2章が、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムについて、その概要や協議の場、各事業の構成要素等についてお示ししています。第3章が、自治体における具体的な取組の実例を示しております。
 次は25ページですが、こちらは先ほど御説明いたしました協議の場合の概念でございます。
 次は26ページでございます。構築プロセス、いわゆるPDCAを示しております。下にありますように、構築プロセス例として、まず各自治体において地域アセスメントの実施を促しております。その上で保健・医療・福祉の協議の場においてこの地域アセスメントの共有を図っていただきまして、地域ビジョンと具体的な目標の設定をしていただいています。その上で、各個別テーマごとに実践を行い、評価及び見直しが好ましいと考えております。
 27ページでございます。各地域のアセスメントを行っていただくに当たり、まずは地域全体のアセスメントが必須ではないかと考えております。その地域全体のアセスメントを各自治体ごとに行っていただくに当たり、今から御説明いたしますReMHRAD:地域精神医療福祉資源分析データベースが非常に活用できるものであると考えておりまして、当課の研究班を通じて公表しているところでございます。
 28ページがそのReMHRAD(リムラッド)についてでございます。4つのコンテンツから成っております。1番目が医療計画の指標についてです。第7次医療計画より、各疾患等の15領域ごとに指標例を示しておりまして、各都道府県が各疾患ごとに患者数や病院数等の指標を用いて各自治体の医療計画の実施状況を把握されております。また、この指標のアウトカムとして、退院率や平均在院日数等も示しているところでございます。この指標をこのReMHRADの中で見える化をしておりまして、各都道府県ごとにこの医療計画の15領域ごとの指標が見える形になっております。仕様ごとに全国平均と比べた4分位で表示しておりまして、色で示しておりますが、自分の都道府県が全国と比べて多いのか少ないのか、その多寡が分かるというものでございます。
 2番目が入院者の状況でございます。これは市町村ごとに示しておりまして、精神病床の入院者の状況を入院期間ごとに表示しております。自分の市町村の医療機関に入院している患者がどこの住民からなのかということが見えます。また、自分の市町村に住所がある患者がどの市町村の医療機関に入院しているのかという、逆の発想でも見ることができます。
 3番目が、地域包括ケアのための資源の状況といたしまして、障害福祉サービス事業所と訪問看護ステーションの設置数を、人口10万対と実数で表しております。この人口10万対に関しましては、全国平均と比べて8分位でその多寡を表示しております。
 最後4番目が、医療機関と障害福祉サービス事業所と訪問看護ステーションの位置、マッピングを示しております。
 次が29ページでございます。今申し上げましたReMHRADも活用いただきながら、まずは御自分の市町村の全体のアセスメントを促しております。その上で、各事業を行うに当たって、事業ごとの地域アセスメントが必要であると考えております。今回の資料では割愛しておりますが、この事業ごとのアセスメントを行うに当たっての情報源も各自治体向けにお示しをしております。
 次が30ページでございます。目標値の例になります。構築推進事業で先ほど申し上げました各事業がございますが、その事業ごとに目標値の例を示しております。これは各自治体が既に使っているものとか、あるいは、アドバイザーから御助言いただいたものになりますが、数値目標ではなくとも質的目標でもいいと思っておりまして、こういった例を基に具体的に目標を挙げていただくようお願いしているところでございます。
 次は31ページでございます。各事業を行っていただくに当たり、協議の場、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)・地域の助け合い・教育(普及・啓発)ごとに、具体的なものではありませんが、考え方に近いものでございますけれども、その取組の例を示したものでございます。
 次が32ページでございます。地域生活支援事業としまして様々な事業を行っていただいておりますが、その中で、精神障害者関係に特化して実施している補助事業を列挙しているものでございます。アウトリーチ事業やピアサポート関係の事業、研修養成事業等を行っております。アウトリーチ支援に係る事業といたしましては、平成26年度より、地域生活支援広域調整等事業として、必須事業として行っていただいているところでございますが、このアウトリーチ事業はなかなか進んでいないという現状もございまして、この構築推進事業、補助金事業におきまして、要件を緩和した上で、このアウトリーチ事業の促進を図っているところでございます。
 次が33ページでございます。補助金事業の構築推進事業の実績になります。1番目の協議の場の設置は必須事業ですので、75分の75の100%になっています。ピアサポートとか地域移行関係職員に対する研修に係る事業はある程度の数値を示しておりますが、一方で、住まいの事業とかアウトリーチ及び評価に係る事業等が伸び悩んでいるという状況でございまして、各地域の実情に合わせて選定いただき取り組んでいただいていますが、事業内容によってばらつきがあるという状況でございます。
 34ページになります。来年度から新しく新規事業に入れます補助金事業の中での構築推進サポーター事業でございます。保健・医療・福祉の関係者に対する助言もしていただく必要がございますし、また、それぞれの関係者へのいわゆるコーディネーターが必要であろうと考えておりまして、その助言及びコーディネーターをするための構築推進サポーターを補助金事業の新規事業という形で来年度より入れてございます。
 次に35ページが、精神科救急医療体制整備事業になります。都道府県・指定都市におきまして、中ほどにあります精神科救急情報センターを設置いただいておりまして、この精神科救急情報センターを通じて、下にございます精神科の救急医療施設を選定いただき、その中で24時間365日対応できる体制を確保いただいているという状況でございます。
 36ページです。こちらは構築推進事業・構築支援事業と別に、多職種・多機関連携による地域連携体制整備事業を来年度より開始いたします。多職種・多機関連携を図り、地域での医療支援連携体制整備及び住宅確保支援連携体制整備を試行的に実施することにより、精神障害者が生活を送る上で必要となる支援内容等の明確化を図るための事業でございます。医療側に連携支援コーディネーター、いわゆる通過型のグループホーム側に連携支援コーディネーターをそれぞれ置きまして、医療機関とグループホームと地域とを連携するに当たり、どういった支援内容が必要かというその明確化を図るためのいわゆるモデル的な事業になっています。この中で課題も把握していきたいと考えています。
 次に37ページでございます。地域共生社会についてになります。地域共生社会におきましては、38ページ、39ページにございますが、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会」の最終取りまとめがまとめられたところでございまして、今月、社会福祉法の一部改正案の提出が既にされているところでございます。この地域共生社会につきましては、この理念のところにございますように、制度・分野の枠や、「支える側」「支えられる側」という従来の関係を超えて・包摂的なコミュニティ、地域や社会をつくるという考え方がまず大切な理念でございます。
 その中で、市町村における包摂的な支援体制の整備の在り方といたしまして、3つの支援、「断らない相談支援」「参加支援」「地域づくりに向けた支援」を一体的に行うよう、市町村の新たな事業を創設すべきだという取りまとめになってございます。対象は、本人・世帯の属性を問わず、社会、介護、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題や地域社会からの孤立など様々な課題を抱える全ての地域住民とすべきとされておりまして、任意事業として、段階的に実施すべきとされております。また、制度的に設けられております財政支援の一体的な実施を促進する必要があることも取りまとめられているところでございます。
 40ページから、事例を2つ御紹介させていただきます。
 41ページが、埼玉県の重層的な連携体制構築の取組になります。精神障害者への支援は、一義的には市町村の役割と考えられるものの、医療機関の偏在やノウハウの不足から市町村単位では対応が困難な課題も多いということで、こういった課題に対して、広域的・専門的にバックアップする支援体制の構築が図られています。右側にありますように、重層的な連携体制といたしまして、市町村と県保健所と県の主管課が連携をしている構築体制を図っているという実例でございます。
 42ページでございます。もう一つの取組として、千葉市の取組挙げさせていただきます。こちらは検討・審議を中心に行う協議の場的な連携会議と、実働中心の分科会に分轄しておりまして、会議の2層化を行っております。我々もいろいろ見学させていただいておりますが、この分科会の中で、「進め隊」「広め隊」「深め隊」というものを取り組まれておりまして。多くの関係者、これは当事者も含めて様々な取組が行われておりまして、当事者、御家族等の方にもこの広め隊としていろいろな広報・啓発活動も行われているところでございます。
 43ページが、「課題・論点」になっております。
 44ページが、そのイメージ図でございます。このイメージ図を見ていただければお分かりのように、真ん中に住まいがございまして、地域住民を中心に行っていくことが非常に大切であると考えています。
 その中でも、45ページになりますが、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る課題ですが、こちらの課題はこちらに書かせていただいておりますように、先ほど御説明いたしました構築推進事業と構築支援事業を活用していない自治体の担当者に対して、当課が直接ヒアリングを行ったものでございます。その中の主な意見を列挙してございます。幾つか御紹介させていただきますが、共通理解が得にくいといったもの、具体的な事業のイメージが湧かないために具体的な進め方が分からないという御意見、それから、圏域ごとのニーズに合わせて事業化することで実施可能ではないかという御意見、圏域間で開催状況に差があるといったこと、また、市町村別に行う場合には小規模の市町村に至っては開催が困難であるという御意見、協議の場については規模が小さい保健所等では職員が少なく、開催が難しいといった御意見、また、下のほうになりますが、マンパワーが足りないといった御意見、地域診断をして目標値をどう定めればいいのか分からない、といった御意見が挙がっております。
 次に46ページでございます。こちらは全自治体に対して行ったアンケート結果になっております。協議の場が設置できない理由でございますが、事務局が定まらない、開催意義や目的等の共通理解が得られない、課題の選定ができない等々の設置できない理由が挙がっております。
 また、「協議の場を開催するにあたりどのような課題があるか」でございますが、いろいろな意見が出ておりますけれども、開催に係る課題としては、議論結果が具体的事項にならないというのが多くを占めております。開催後に係る課題としましては、議論した内容を関係機関の具体的活動に結びつけられていない。その評価方法が課題であるといった御意見が出ております。
 地域包括ケアシステム構築に向けた課題についてでございます。特に当てはまるものとして3つまで答えていただいておりますが、多いものといたしまして、中ほどにあります、地域の医療・障害福祉資源が不足している、事業推進を担う人材の確保ができていない、地域包括ケアシステムの構築のためのノウハウが不足しているといったものが、課題として挙げられております。
 48ページでございます。課題の整理でございますが、これは、一番下に留意事項として書かせていただいております、この記載いたしました課題に関しましては、今、御説明いたしました主に自治体のヒアリングとアンケート結果を受けた上での課題の整理でございます。
 これまで様々な事業を行ってきておりますが、手引きを作成する等の取組も含めて、その中でヒアリング等も行いながら、先ほど御説明した課題が挙がってきているところでございます。医療に係る施策は都道府県が主体となっておりますが、保健・福祉に係る施策は主に市町村が主体となっていることもあり、自治体において精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を中心となって推進する者が不明確である。市町村、都道府県、保健所、精神保健福祉センターの担うべき役割が不明確である。それぞれの自治体において状況が異なる中で、自治体間の連携方法が不明確である。保健、医療、福祉間の連携体制が不十分である。法的根拠がない中では人や予算が十分につかない。医療機関等にも協力を求めにくい。圏域内及び圏域間の連携が不十分であり、かつ圏域が様々なため混乱している。住まいの確保、社会参加、就労といった課題への取組内容が具体化されていない。といった自治体からの声が上がってきております。
 さらに、協議の場合の設置につきましては、「開催意義や目的等の共通理解」「課題の選定方法」「参画者の選定方法」等が挙げられておりまして,開催につきましては、「議論結果が具体的事項にならない」、開催後につきましては、「包括ケアシステムの構築に係る評価方法」や「関係機関の具体的活動に結びつけられていない」といった課題が挙げられているところでございます。
 地域包括ケアシステムの構築に向けた課題としましては、ノウハウの不足、人材の確保、資源の不足、高齢者部門・介護保険部門との連携等の課題が挙げられているところでございます。
 次に49ページでございます。こちらはイメージ図とそごがない形で、現在「作成段階」としておりますが、下にございますように、こちらの資料は様々な精神障害者の地域生活を支える体制の構築につきまして、当然ながら地域住民を中心に考えながらも、それぞれの機関等の視点から考えた中で、現状や課題、強み弱み等を議論いただくために使用いただく。こちらの検討の場で議論いただくために使っていただくことを想定しております。
 50ページは、さらに詳細なものでございますが、同様でございます。
 最後51ページでございます。本検討会における議論の進め方及び想定される主な検討事項の御提案でございます。進め方に関しましては、議論の基となる各種データを我々事務局等が示した上で、先生方有識者等からヒアリングを行いながら、想定される主な検討事項の整理を行うのはどうかと考えております。想定される主な検討事項としては、大きく4つの柱がございます。
 まず1つ目が地域精神保健です。
 地域住民への普及啓発
 孤立させない取組、基幹相談支援センターの役割
 精神保健福祉センターと保健所の役割
 基盤整備に係る地域差
等でございます。
 2番目の柱が、地域で支える体制です。
 資源の見える化
 住まいの必要量とその確保
 長期入院の予防
等です。
 3番目が、地域精神医療です。
 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける精神科医療機関の役割
 当事者や家族のかかわり
 入退院時の連携体制
等です。
 4番目が、保健、医療、福祉の連携支援体制です。
 国、都道府県、政令指定都市、市町村の役割
 人材育成
になります。
 こちらの検討事項にございますように、例えば認知症等の各疾患に限定したものではなく、精神に限ったものではなく、幅広く議論をいただきたいと思っております。
 スケジュールでございますが、今月から一、二カ月ごとに本検討会を開催させていただきたいと思っておりまして、1年後の令和3年3月を目途に意見取りまとめを行っていただきたいと考えております。
 事務局からは以上でございます。
○神庭座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の説明につきまして、皆様から、御質問、御意見がありましたらお願いします。
 どうぞ。
○野口構成員 全国精神保健福祉センター長会の野口です。
 詳細な発表をありがとうございました。
 先ほどの櫻木先生とのお話とも関係するのですが、そもそも「にも包括」が精神障害にかかわらずもっと幅広く地域住民全体も含めて対象としたということですが、この資料を見ますと、地域共生社会で書かれていることがまさにそれに対応することだなと思うのです。ただ、この資料だけでは、「にも包括」と地域共生社会との関係がよく分からないところがあります。国としては、地域共生社会を中心にしてやっていって、それに「にも」包括もさらに統合されるような形で考えているのかどうかなど、その辺りはどうなっていますでしょうか。
○寺原課長補佐 事務局でございます。
 地域共生社会とこちらのいわゆる「にも包括」も含めた地域包括ケアシステムの関係につきまして整理をいたしますと、地域共生社会は、今後、日本社会全体で実現していこうという社会全体のイメージやビジョンを示すものでございます。一方で、地域包括ケアシステムに関しましては、地域共生社会を実現するためのシステム、仕組みであると考えております。
○野口構成員 いずれにしても、我々の議論も地域共生社会を常に参照しながら、そこを目指しながらという感じで考えていくということでよろしいのでしょうか。
○寺原課長補佐 そのように理解しております。
○野口構成員 分かりました。ありがとうございます。
○神庭座長 どうぞ。
○藤井座長代理 今のことに関連して、今の事務局から御説明いただいた中で、地域住民全体が対象と理解したのですけれども、私が広域アドバイザーとして様々な自治体でお話を伺う中では、「にも包括」が誰を対象とするのかがわからないという話をよくききます。これまでは主に入院されている方であったりとか、入院経験者、中等度あるいは重度の方が対象の中心となっていて、地域住民全体が我が事として精神障害あるいは精神疾患、メンタル不調の問題を考えられないということがあるように思います。
 「にも包括」の理念については、確かに29年度のまとめに示されてはいるのですけれども、その理念の本質的なところがなかなか浸透してないのではないかと思うところがあります。ですので、この検討会でまずはどなたを対象とするのかということをしっかり話し合った上で、地域住民全体を対象にするということであれば、地域住民全体に対してどのような支援が必要なのか、地域住民全体が当事者であり、さらに支援者でもあると思いますので、それぞれにどのような役割を持って支援をしていくのかについても考える必要があると思います。視点をどこに置くのかによって議論の仕方が違うと思いますので、住民全体の話をしているのか、中重度の精神障害の方の話をしているのか、どこを議論するのかというのを最初に明確にしておきたいと思います。今のお話からすると、地域共生社会の中に「にも包括」が位置づけられるということですけれども、地域共生社会のことを中心に議論するのか、精神障害の重度の方の支援を中心に議論するのか、議論の焦点をどこに持っていくのかというのを教えていただきたいのですが。
○寺原課長補佐 事務局でございます。
 ぜひ、皆さんに御意見をいただければと思っておりますが、最後の51ページにお示ししました、想定される主な検討事項を見ていただきますと、こちらで示している考えとしましては、重度の精神障害者に限定したものではなく、重度の方も含めたものであると考えてございまして、その中では、いわゆる軽度の方とか、医療機関に必ずしも結びつける必要もないような方も含めた考え方をお示しはしておりますが、ぜひ、御意見をいただければと思っております。
○神庭座長 どうぞ。
○吉川構成員 日本精神科看護協会の吉川です。よろしくお願いいたします。
 私も今の野口先生と藤井先生の御意見に同感です。病院の看護職を対象として地域包括ケアシステムが打ち出されてから3年間ぐらいいろいろなところで研修をしてきました。ただ、これまでの精神保健医療福祉の施策と何が違うのかという、要は長期入院患者の地域移行支援との違いがなかなか分からないという声が聞かれます。何でそのように皆さんが思うのかというと、このイメージ図を見たときに、左上の入院しているところが起点になっていろいろな施策が打ち出されているというか、いろいろな説明も、入院されている方を起点にした仕組みにどうしても見えてしまうということがあります。そこで、もっと精神疾患の有無にかかわらずというところを、私もそうですけれども、非常に魅力的に感じたところですので、精神疾患になっても、安心して暮らすことができる地域づくり、それに向けてみんなで何ができるのかというのを考えていくというのが大事かなと思っています。
 もう一点、確かに協議の場が非常に大事だと思います。ただ、保健・医療・福祉、それと、市町村、この4者関係の中だけで完結してしまっていて、地域住民が我が事として考えていくためには、そこにもっと地域住民の方に見えるような、そういう施策を打たないと、今やっている議論が関係者の中だけで終わってしまって、非常にもったいないと思います。地域住民のニーズとかそういった声もどんどん聞きながら、今後に向けて考えていくほうがいいのではないかなと思っています。
○神庭座長 この点につきまして、ほかに御意見はございませんでしょうか。
 どうぞ。
○櫻木構成員 精神科病院協会の櫻木です。
 この間、医療計画の中の5疾病というふうに精神障害が取り上げられたのは、旧来の例えば統合失調症とか躁鬱病を中心とした気分障害とか、あるいは、アルコール依存症のように、必ずしもフェーズによって入院を必要とするという疾患だけではなくて、例えば鬱病、それもストレス関連性のものであるとか、あるいは、認知症の問題などは物すごく大きくて、そのことをどういうふうに地域の中で考えていくかというのは、医療計画の中で取り上げられたというような議論の流れだと私は理解しているのですね。
 そうなってくると、吉川先生がおっしゃったみたいに、関係者だけの中で議論が完結してしまうと、一番最初に障害者の人が心配しているような、何だか病院の外に新たなシステムができて、病院からそこへ移転しただけで、結局、我々は我々だけで生活してしまうというふうなところになりかねないのですよね。
 ですから、医療も確かにこの中でかなりの部分がありますけれども、常に医療が関係しているというよりは、必要があれば医療にきちんとアクセスできるということを保証しながら、ほかの社会の要素とどういうふうに連携をしていくかという考え方はやっぱり必要だと思いますし、医療の中でも、今日は江澤先生がいらしていますけれども、いわゆるかかりつけの先生と我々精神科医療がどういうふうに連携していくかという視点はかなり必要なところですので、ちょっと言い方が適切ではないかもしれませんけれども、何か議論が矮小化されることを非常に危惧します。
○朝比奈構成員 千葉県で中核地域生活支援センターという対象を限定しない相談事業で2004年から仕事をしております。その後、生活困窮者自立支援法に基づく相談事業の仕事も兼務しております。その立場から発言をさせていただきます。
 まず1点が、このシステムのイメージがどういう年代を想定したものなのか。全世代ということがイメージされているのかどうかということについて少し疑問を持ちました。これまで私が携わってきた相談事業では、精神的な課題を抱えた方々で未治療であったり、福祉サービスにつながっていない方々と大変多く出会ってきていまして。そういう意味では皆様がおっしゃるように、福祉や保健・医療の枠組みにとどまらないというところは大変納得がいくところですし、例えば生活困窮者支援の現場でも、ベースとしての知的な課題や発達のバランスの悪さ、それから、精神的な課題に着目できず、迫れずに、アセスメントやプランニングを進めた個別支援がことごとくうまくいかなくなっている。それは実は、地域包括支援センターや子供の相談事業でも同様で、この問題をいかにきちんと普遍的な施策の中に位置づけていくかということはとても大事だと思っています。
 その観点から言いますと、例えば、先ほど年齢別の疾患の表などが示されていましたけれども、0~24歳、もちろん数が少ないのでこういうくくりになっていると思うのですが、これが全てなのかということをしっかりと押さえておく必要があるのではないかなと思いますし、現場の相談で、今すごく困っているのが、年齢を問わず、子供時代に虐待を受けてきて、潜在的なリスクを抱えて、孤立とか生活課題が不穏的になって、ストレスの中で発症すると一気に重症化したり急性期になったりするという、多分、そういう方々に一番どこでも悩んでいる、困っている。だけれども、十分な受け皿がないし、退院支援ができるかというと、親族頼りないので身寄りもないですし、既存の福祉サービスがそういうキャパを持っているかというと、必ずしもそうではないという状況の中にあって、例えばそういう方たちが、また、さらに家族をつくって、子育てをして、また、精神的な課題を大きく持ったまま、子供にも様々な影響が及んでいくというような状況に。
 そういう人たちを念頭にこのイメージ図を見ると、この中に入ってくるのかなという感じがとてもしてしまったので、そういう意味では皆様の意見にも賛成するところなのですが、精神障害にもというネットワーク、イメージ図を持つのと併せて、こうした方々の課題をきちんと例えば児童福祉法の要保護児童の対策協議会とか、それから、介護保険の高齢者のネットワーク組織とか、それから、生活困窮者支援のネットワークとか、そういう一般施策の中にきちんと精神障害の方々のニーズを発言できる人たちが入っていくという、両方の仕掛けが必要なのではないかなと思っています。
○神庭座長 どうぞ。
○江澤構成員 ありがとうございます。日本医師会の江澤でございます。
 地域包括ケアシステムの概念は当然一つでございまして、遡れば、2012年の税・社会保障の一体改革で、全世代型平等の社会保障というところを起点として、当初から、地域包括ケアシステムの対象は全世代型ということは最初からお墨つきだと認識をしています。その中で、住み慣れた地域で住み続けられることのシステム、その地域は御本人の自己の選択によるということも最初から明確に決まっておりまして。その日常生活圏域は中学校区程度あるいは30分程度で駆けつけられる中学校区程度ということで、これも前提条件でございまして。そして、その中では、新たな資源を投入するのではなくて、既存の機能、あるいは、既にある社会資源を、まずその辺りのネットワークをうまく使いながら地域づくりをしていこうと。したがいまして、地域包括ケアの本質は、地域づくり、まちづくりでございます。
 そして、その前提条件としては、規範的統合、すなわち、保険者、自治体が進める地域包括ケアシステムの構築に関する基本方針を同一の目的の達成のために、関係者あるいは関係団体、住民等が共有する状態でございまして、規範的統合がまず前提条件に必要なので、そして、明確に主人公は地域住民でございますから、地域住民の方が仮に精神障害者だったときのことをこの場で議論するのがふさわしいと思っています。
 その中で、当然、精神障害者特有の支援する社会資源とか特性がありますから、その特性について議論していきますが、本質的には地域包括ケアシステムは何ら変わることがなくて、住民が主人公であって、そして、そこの地域課題を積み上げていって、地域課題を踏まえた、要は地域課題を解決していくと地域包括ケアはよく推進すると言われていますけれども、そういう状況になります。ですから、地域課題、すなわち、地域包括ケアシステムはコミュニティ・ベースド・インテグレーテッド・ケア・システム。コミュニティ・ベースドは御当地システムなので、これは地域の実情に応じて当然考えていかないといけない。全国一律のルールは当然なじまないということになります。それから、もう一つのインテグレーテッド・ケアのこのインテグレーションは、直訳すると統合ですが、先ほど資料の一部にもありましたが、これはどちらかというと関係者とか関係団体とかが連携をすることを意味します。要は、サービスのちゃんとはざまがないとか、ちょっと重複している無駄なところを省くとか、いろいろな関係団体をコーディネートする機能が必要となるので、これはもちろん自治体でもいいし、あるいは、医師会等の関係団体でもいいかと思っています。
 1つは、在宅医療介護連携推進事業が平成24年から始まっていて、実は、これが市町村が初めて医療行政に着手する登竜門でした。実は来年4月から大きくモディファイしますけれども、これは地区医師会と市町村が良好かつ円滑な連携がないと成し得ない事業として今走ってきています。したがって、市町村も少しは医療行政の着手している部分はあると思っています。もちろんいろいろな市町村で温度差はあるとは思いますけれども、そして、そこで地区医師会とのネットワークも一定程度その事業を通じてできて、チャンネルがある部分があるので、そういったところも、ぜひうまく活用していただいて、あとは、今、市町村の地域包括ケアで要は出先あるいは委託することがありますけれども、やはり地域包括支援センターなので、このシェーマの中に地域包括支援センターとか、あるいは、先ほど櫻木先生がおっしゃったけれども、かかりつけ医機能とかがありませんが、その辺りが身近なところで支えていくので、その辺りを今後議論をしていく必要があるかなと思っています。
 たしか2年前の一昨年の6月の社会保障審議会の障害者部会で初めて、この精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの資料が初めて審議会で出たと思っています。そのときにも、先ほど長野構成員もおっしゃられましたけれども、私もそのときに、何で「にも」なのかと言ったのは、もともとが全世代型でスタートしているものですから、それで、あえて、「にも」もそのときに申し上げたのです。だから、地域包括ケアシステムの前提があって、その中で住民が主体であって、その住民の方が仮に精神障害者であることを踏まえて何をすべきかということで議論をしていく必要があると思います。
 最後に一点、もう一つは意思決定支援が大事で、これから多くの方が毎年亡くなる時代で、2039年には166万人の方が亡くなられる多死時代であって、大往生を創造しないといけない時代に入っていきます。精神科入院患者も高齢化をしてきています。したがって、当然いろいろな疾患も持つし、いろいろなイベントが起こる状況の中で、意思決定支援でACP、あるいは厚労省のガイドライン等もありますけれども、御本人を主体として地域づくりをどう考え、地域づくりの中で御本人がちゃんと自分の意思が尊重されて、人生の最期まで生き生きと暮らせることを考えていく必要があると思います。
 したがいまして、地域包括ケアシステムでは、異業種・異分野連携が実は大きな柱になっていて、医療介護連携は実は前提条件でございますので、当然そこがないと次へ進めないので、そこから議論をしたらいいと思いますけれども、そういう状況だと認識しています。
 以上でございます。
○神庭座長 どうぞ。
○山本構成員 全国精神保健福祉相談員会から参りました山本と申します。相談委員会には、行政職で精神保健福祉に携わる従事者の会でございます。私は、その中で、保健所設置のない基礎自治体ということで、副会長を務めております。今回、参加させていただいてありがとうございます。
 今のお話を伺っている中で、このシステムが日常生活圏域また基本圏域ということで、市町村ベースで全世代型でというところに個人的には賛成をしているところでございます。
飯能市という小さな自治体で、人口が7万9000ほどで、全国の自治体としては標準的もしくは少し小さな、高齢化率が30%程度の標準的な自治体だと思っておるのですが、今、地区の医師会の先生方と医療連携拠点また地域包括センターにお声かけをいただいて、障害分野の職員が、江澤先生からありました、在宅医療・介護連携に関わる参加の機会をいただいたりしております。
 自治体としては、先ほど朝比奈構成員がお話しになっていたように、生活困窮や母子保健、子育て支援もそうですが、メンタルヘルスの問題を抱える住民が多くある。その中で、埼玉県の場合は市町村に自治体職員として精神保健福祉士の採用がありまして、今、全県で50人ほどが市町村相談員会ということで会を構成しているのですが、地域の相談の現場の皆さんがお困りになったときに、基幹型地域包括センターや相談支援事業所[A1] と行政の専門[A2] 職員と話をしながらアセスメントして解決に向けていく。それはかかりつけの先生であったり精神科の先生であったりと相談するような形で進める中で、障害福祉計画に則って介護・[A3] 福祉サイドからのアプローチをしていたりします。
 一方では、この資料を拝見すると市町村の保健という部分が少し薄くなっておりまして、そこの位置づけについて今後どのようにしていかれるのかというところですが、ちょっと話はずれるかもしれないのですが、私は、5年間健康増進の担当もさせていただいて、その際に、健康増進の計画、食育の計画とか、自殺対策の計画に携わったのですが、例えば食育については、市町村で取り組むに当たって、管理栄養士がきちんと全国の90%の[A4] 自治体で平均3人固定の配置があるというデータが出ております。一方では、精神保健については、市町村保健に根拠がなく、努力義務ではあるのですが、市町村に精神保健福祉士の配置は埼玉以外ではあまり進んでいない現状もございますので、その辺りも含めて今回検討会に参加をさせていただいて、日常生活圏域の中でどのように全世代型に進めていくのか、また、基本圏域としての市町村の役割、福祉ベースのところと保健、それは都道府県の医療・保健との連携をどのようにしていくのか、その辺りを深めて議論ができればいいと考えております。
 以上です。
○神庭座長 どうぞ。
○鎌田構成員 日本看護協会の鎌田でございます。過去、前職は県行政で保健所等を含め保健師として仕事をしておりました。
 今、お話もあったかと思いますが、日本看護協会では、地域包括ケアを進めるために、高齢者だけではなく、生まれた子供から、障害を持った方も含めて、全世代を対象に地域包括ケアを進めようとしています。今日の話にもありましたけれども、市町村が拠点となって地域包括ケアシステムをするときに、保健所圏域単位で保健所がどう関わっていくか。さらに、県の本庁がそれをどう支援していくか大事になります。今日の説明の中でいろいろ現状を説明していただきまして、ありがとうございました。
 やはり協議の場が設置しにくいとかという話もあったかと思いますが、市町村でできないところを支援するのが保健所であり、そこでどのような協議体を持つかといったところをしっかりここで議論して明確に示せばいいのかなとも思いますし、また、それをさらに県行政としてそこをどう支援するかといったところ、それは本日、51ページに示されている、想定されている主な検討事項の中にもあります。
 例えば精神保健福祉センターと保健師の役割が地域保健の中にありますが、これは昔から役割は決まってやっていることで、それをしっかり見える化できてなかったのかどうなのかといったところをさらに明確に示せば、より進んでいくのかなということを思いながら聞いておりました。保健所では、昔から精神科の病院を退院した方々が地域で長く住むためにはどうするかといったところで、過去ではデイケアをやったり、就労支援をやったり、いろいろな事業に取り組んでいました。そうした中で、今これが出てきていますので、いろいろな補助金もありますが、それをいかに活用して市町村で進められるか、都道府県でできるかといったところには、今日、野口構成員、精神保健福祉センターの先生がいらっしゃいますけれども、そういったところが県の中で少し音頭を取り、旗を振っていただければ、また、進んでいくのかなというのを思いながら聞いておりました。当然、そこには医師会等の関係もありますし、精神病院協会も、いろいろなところと連携をしながら、自治体、現場では、今もやっているかなと思っております。
 意見です。
○神庭座長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ。
○長野構成員 先ほどから続いているお話の中で、最後の検討事項の項目立てをかなり深めていく必要があると思っていまして、例えば、地域で支える体制のところの資源の見える化の一言で済ませているのですけれども、ここを今の地域でどんな地域包括ケアが構築されているかとか、介護保険法で精神障害・精神疾患を持ったときに介護保険法がスムーズに使えるとか、総合支援法も実は知的障害ベースのところは精神障害の方への対応がほとんどできなかったり、メンタルな課題があっても、自前では何もできないところも結構あったりとか、逆に、児童福祉法にしても生活困窮者自立支援法にしても、その地域の資源をかなり拡大して、その中でスムーズに当たり前に対象者として使うときには使えるという検討をここで入れるのはどうかなと思って、「見える化」一言で済まさないというのも手かなと思いました。
○神庭座長 ありがとうございます。
 この問題に関しまして、ほかに御意見ございませんでしょうか。
 どうぞ。
○田村構成員 日本精神保健福祉士協会の田村です。
 今、私は大学教員をしていますが、非常勤で企業の健康管理センターでメンタル不調者の相談対応やリワーク支援をしています。ストレスチェックの実施制度開始以降、またそれ以前の労働安全衛生法改正以降は、勤労者のメンタルヘルスの向上には関心が高まったこと、まして、最近では、社員の方々が精神的な健康を損なわずに、より元気に働くことによって企業に貢献してもらうためのウィン・ウィンの関係のなかでの取り組みも見られています。
 ただ一方では、企業に余裕がなくなってきていることも事実で、長期間病んだまま働き続けるのは非常に難しい状況もあります。一たび会社という社会活動の場から外れてしまったり、休職後に戻れず退職すると、途端に所属する場をなくしてしまい、地域の中で他にどこかつながるところなく、非常に孤立した状況になってしまうということもあります。
 今お示しいただいた図の中では、既に医療や福祉にもつながりのある方がイメージされているように思いますが、まだそういったところにつながっていない方も実際には、地域住民の中にたくさんいらっしゃって、そういう方が自分のまちで暮らしていて、周りに自分を支えてくれる住民がいるという感覚は持ちにくいのではないでしょうか。
 また、大学においても、昨今、障害をお持ちの方が多数入学してこられるようになりました。当然、学内での合理的配慮は行っていますが、卒後の進路選択に苦労される例も少なくありません。大学を出てすぐ、障害福祉サービス事業所に通所という前例もありますが希少で、所属場所、行き場所が見つけられないということは少なくない状況です。
 メンタルヘルスの課題を抱え、企業の健康経営や、大学教育、高等教育とか、そういった人生の流れから外れてしまった方々の受け皿をどうつくっていくのか。地域の中にそういう場をどうやって設けていくのか。そういう観点での協議も大事ではないかなと思います。
 ここまでは意見で、併せて、少し質問をさせていただきます。資料18ページのスライドに、「保健・医療・福祉関係者による協議の場」の機能と協議内容の構造の概念をお示しいただいていますが、先ほどの寺原補佐の御説明では、統合した地域づくりの検討というところが、マル1、マル2、マル3の3つの課題ともなかなか難しいようだということでしたよね。ここのところで、例えばマル3が「個別支援の検討の軸」となっていて、その「個別支援の検討の軸」の中で、保健・医療・福祉が統合した地域づくりの検討とは、具体的にどういうことを指しているのでしょうか。個別支援における不備や不足を地域課題として捉えるということなのかどうか、イメージできずお尋ねします。
 併せて、江澤先生などもおっしゃっているように、地域格差があって、市町村は相当に人口や財政規模やも、資源の数も違い、また資源の偏在等もあると思いますので、どういう市町村がどういうお答えをされているかといった傾向など、もし細かい分析があれば、次回また資料を出していただけるといいかなと思います。
 最後の発言は要望ですが、先ほどの図の真ん中の統合した地域づくりの検討は、具体的にどういうことをお聞きしようとした設問だったのかお聞かせください。
○寺原課長補佐 事務局でございます。御質問ありがとうございます。
 各自治体の方等と意見交換をしている中で、この横軸でございますが、保健・医療を起点とした基盤整備のそういった検討の場はありますと。例えば、自立支援協議会を中心としたような福祉を起点とした協議の場はありますと。ただ、保健と医療と福祉、それぞれの方が入った議論という場はなかなか少ないというような声もありまして。そういった中でそれぞれの議論はあっても、その連携がないというお声が挙がっていたので、こういった概念を示したというところでございます。
 具体的にはどういった内容かというのは、今回のアンケートでは取っていないのですが、かなりいろいろな角度でヒアリングは行っていますので、その中で、次回示せる範囲で示したいと思っています。
○神庭座長 どうぞ。
○長谷川構成員 診療所協会から参りました長谷川です。
 私は北海道ですけれども、地域については、医療の偏在もあるかと思いますし、入院医療に関しては郊外ですけれども、外来については都心部というようなケースもあるかと思うので、流動的に柔軟に地域を動くものと考えていただければと思います。
 また、地域の支援の輪に一旦入って、それでオーケーという人もいらっしゃると思いますが、中には、転々としながら社会で生きていくという人もいますので、どうしても広域連携にならざるを得ないようなケースもあるかと思うので、地域を柔軟に考えていければと思います。
○神庭座長 ありがとうございます。
 どうぞ。
○中島構成員 公精協という訳の分からぬ団体から出てきたのですけれども、さっきから話を聞いていたら、ますます訳が分からなくなって、自分が訳が分からんだけではなくて、この会議がやはり訳が分からないと。それは、焦点が非常にぼやけていて、いろいろなことをみんなで言い合って、一体何が決まるのかなと。この令和3年3月をめどに意見の取りまとめ。意見をまとめて、どうするのですか、これ。
○寺原課長補佐 事務局でございます。御質問ありがとうございます。
 御説明させていただいた中にありましたように、平成16年以降特にですが、地域生活中心という考えは様々な検討会等でお示しいただいております。それ以降、幾つも同様の検討会が繰り返されておりまして、皆さんの有識者の方々や現場の方々のお声は、その各検討会の中でも十分に伝わってきているという状況でございます。それを踏まえて、先ほど御説明した、平成26年の「良質かつ適切な精神医療の在り方」の告示も出ておりまして、その中に理念的なもの、理想的なものは十分入っていると思っています。
 一方で、では、どう基盤整備等をすればいいのか、具体的にどう施策を行っていけばいいのかというものがなかなか十分ではないという認識を持っておりまして。今回の検討会では、理念や考え方は当然大切なので、先生方のお考えに基づいて具体的なことを提言していただきたいと思っております。
 その中で、先ほどお示しした4つの軸で、それらの軸は当然連携したものになると思っていますが、では、具体的に、今、保健所や精保センターの話も出ましたけれども、では、何が問題で、どう人が足りなくて、どういう業務をしているのかといったことも、それは我々がデータを示した上でになると思いますが、御議論いただきたいと思っています。
 最終的には、各施策に結びつけていきたいと思っていますし、あるいは、具体的な事例であったり、具体的な手順を、各自治体には示していきたいと思っています。
○中島構成員 やっぱり分からないですよね。それは行政の問題でしょう。行政がちゃんとしないからこういう問題が曖昧なまま、何も解決しないで進行していると思うのですよね。行政はもちろん厚労省だけではなくて地域の行政も全部含めてのことですけれども、その辺りをちゃんとするためには組織が間違っておるのですよ。なぜ、地域包括ケアシステムと言ったときに、医政局がやって、そのときには精神医療のことは全く念頭にないのですよ。全くないけれども、精神科側から言ったからちょっとひっつけただけ。また、消えてしまった。これでは駄目なのですよ。
 少なくとも急性期の医療は、これはもう医療として一つなのに、精神を除いた医療をやりなさいみたいに今はなっているでしょう。それを何とかするために、リエゾンとかいろいろなことを無理やり入れ込んでいっている。僕は、厚生労働省の組織割の仕方が間違っていると思う。そこへまず切り込まないといけないでしょう。この会として、ちゃんと医政局に移せというぐらいはっきり言っていいのではないかなというのが僕の意見でございます。
○佐々木課長 精神・障害保健課長の佐々木でございます。
 誠に鋭いといいましょうか厳しい御意見をいただいたかなと思っております。
 ちょっと私見も入りますけれども、私、この検討会を障害部でやることの意味はすごくあるなとは思っているのですね。といいますのも、精神障害をお持ちの方が地域にいらっしゃる。その方に対するアプローチを、必ずしも医療が必要でない場面もあるかもしれない。でも、医療の必要があれば、その手が届くような形で対応をしていくと。まさに、櫻木構成員がおっしゃられたことを受け売りで申し上げておりますけれども、その中で保健という話、そして、福祉。
 今回、検討会は、住まいというところを基軸にして多職種の方が、また、多機関の方が連携して行えるということで、既存の地域包括ケアシステムの概念を使いながら、この精神領域で特有の問題、そういったことを議論しながら、具体的にどのような手立てを取っていったらいいかというところをまさに議論していただきたいなと思ってはいるのですね。
 理念の整理はこれまでも多分何度かされているとは思うのですけれども、今、寺原が申し上げましたように、それを実際に実行ベースに移さなければいけない、待ったなしの状況が今そこにあるのだろうと。そして、我々も自治体の関係者の方々といろいろ意見交換をさせていただく中で、彼らもどうしたらいいのか戸惑っている。行政がしっかりせよというお叱りはごもっともだと思っておりまして、それはしっかりさせていくためにも、いろいろな御意見をいただかなければいかんかなと思っているところでございます。そういう意味で、多分野の方々にお集まりいただいてこの検討会をしつらえさせていただいているところでございます。
 今後、1年間の短い期間の中でできることは限られているかもしれません。今日は第1回目でございますので、いろいろな御意見をいただきながら、事務方としても、座長と相談しながら、議論の事柄を整理させていただきながら、提示させていただいて、最終形もしくはその後の施策を現時点で予断を持って言えるものではないのですけれども、いただいた御意見を一つ一つ丁寧に拾って、今後の施策につなげていきたいと、その意思表示だけは、すみません、今回させていただきたいなと思っております。
○中島構成員 ということは、お経で言えば、雑宝蔵経みたいな、落ち穂拾いみたいなものですな。基本骨格はもうできていると。基本的な考えはできていると。その中で精神で落ち穂のように落ちているものをちゃんと拾い上げてくれと、こういうことですか。
 課長の発言を聞いていたら、何となく僕はそんなふうに聞こえてしまったのです。
○佐々木課長 基本骨格が完全に固まっているという傲慢な申し上げ方はちょっとできないかなと思っていまして。もちろん、いろいろなその後の地方共生の考え方もあったり、時代の変遷に伴っていろいろな理念・概念もあると思いますので、いま一度基本的なところも整理をしていただきつつ、併せて、実際にお困りの方が地域の中でいらっしゃる、そういった人に対してどのようなアプローチをしていったらいいのかという手立てについて、先生方の御知見を頂戴できたらと思っております。
○中島構成員 一言だけ。それでは、来年の3月に提言するときに、ちゃんと精神科医療も医政局へ移せと言うこと、それを基本に置きながら、落ち穂をしっかり拾っていただきたいと思います。
○佐々木課長 いただいた御指摘で、ちょっと言い忘れておりましたけれども、医療に関しては、医政局とは当然同じ厚生労働省内でございますので、連携は取らせていただきたいなと思っています。ちょっと組織論云々かんぬんの議論はなかなかしづらいところがあるかもしれませんけれども、いただいた御意見を踏まえながら、しっかりその部分につきましては意識してまいりたいなと思っております。
○神庭座長 それでは、小幡構成員から順番に。
○小幡構成員 全国精神保健福祉会連合会の小幡です。精神の家族会です。
 この包括ケアシステムが実際は運用されてくることを前提に進められながら、なかなか当事者を含めたニーズやアセスメントが不十分だったというところがあるかと思います。ここの点をどういうふうに掌握していくのかという部分が抜けてしまうと、具体的な方策を打っていく包括システムをつくっていくというところでは抜け落ちてしまうと思っています。先ほど説明の縦割りや受け手・支え手というだけの話ではなく、家族や当事者がサポーターという位置づけだけでもなく、自らこの仕組みの中で役割をどうすれば担えるのかとか、どういう形で異業種の方や専門職の方と連携してやっていけるのかという視点も備えつけていかないといけないと思っております。
 この論点整理の中では、「当事者や家族のかかわり」という文言が地域精神医療の中では出ておりますけれども、そこの範疇ではなくて、どういうふうに進めるのか。先ほど、共生社会をイメージして、一般市民も含めて、定着するようにと考えていくと、啓発とか教育という部分をどう位置づけて連携させていくのかということもあると思います。
 場合によっては、厚労省の範疇だけではない、それこそ他省庁も含めたところに波及するようなことに及ぶのなら、何か手立てがこの会議で議論したことが及ぶのか。残念ながら、そこはまだハードルが高く、厚労省の中でやれることを今回はシステマチックにやっていくということにとどまるのか、その辺についても皆さんの御意見を率直に出しながら、私としては、本当に保健・福祉ということも、公衆衛生も含まれるとは思います。ここの検討会で小手先の議論で終わるのでは、結局、また、向こう3年5年と、今回歩んだスタンスとあまり変わらないことに終わってしまうのではないかという危惧を思います。ざっくばらんに皆さんの御意見を集約するというところだと思いますので、いろいろな御意見が出ていると思いますけれども、もう一度当事者ニーズ、アセスメントを拾い上げられなかったということではなくて、当事者ニーズは何があったのか。少なかったとしても事例はあると思いますので、焦点を当てていただきたいと思います。
 以上です。
○神庭座長 ありがとうございます。
 奥田構成員どうぞ。
○奥田構成員 私は、全国居住支援法人協議会という、国交省が住宅セーフティネットの改正をしまして、その中でできた居住支援をする法人。これは法人格ではなくて、認定されるというか、ある意味看板です。だから、本業はそれぞれ不動産業をされている方がいたり、福祉の方がいたり、そういう方々が居住支援法人になっているということです。
 私自身は、もともとはホームレス支援の全国組織の代表であったり、朝比奈さんと一緒に、生活困窮者の自立支援制度をつくったときの審議会のメンバーだったりします。
 住宅のことがど真ん中に入っていて、多分ここが一番一つの具体的な課題になるのだろうなと思っております。ただ、住宅に関しては、全国で800万戸以上空き家が宙に浮いている状態で、すぐにでも使えるのだけでも300万戸ぐらいあるのですね。家がもともとないのだったら困るのだけれども、家があるのに使えないのが困っているということで、1つ思いますのは、多分ここは精神のケアの御専門の方がたくさん来られていると思うのですけれども、住宅の問題で言うと、本人の支援の体制を取るのと、大家側の支援の体制を取るというのが両建てになります。この両方をうまく回さないと、本人目線だけで、当事者目線だけでやっていると、大家さんはなかなか納得できない。それが地域の安心にもなるという話に、大体大家さんというのは地域の方が多いのですね。ですから、2つの安心が大事。
 そのときに、大家さんの安心は何から来るのかというと、このイメージ図で言うと、これとよく似た絵をあちこちで見るのですけれども、例えば、住まいの横に、車椅子に乗ったおばあちゃんがいて、その周りにお孫さんと子供さん夫婦がいるという、正直、これならば多分家の確保はできるのですよ。ここがないから家の確保ができないのですよ。つまり、制度的なものでカバーできていく部分は当然必要だし、病院も当然、入院も必要だし、でも、一方で、なぜ大家が不安になって貸せないのか。これは精神障害の方々だけではなくて、今、例えば、私は法務省にも呼ばれていますし、刑務所出所者を引き受けてくさる大家さんがいないという問題とか、本当に共通項で言えば全部住宅の確保が全てのあれで来ているのですね。ですから、私が代表をやっている全居協の会議には必ず厚労省と国交省と法務省の担当者が来ているという、多分民間組織で会議ごとに3省全部出てきているというのはほぼない。これは住宅の一つの特徴なのですね。
 では、何が安心かというと、実はこの絵で言うところの家族機能なのですね。保証人であったり、日常生活上困ったことがあったら相談できる人とか、例えば大家さんの8割が高齢単身者の入居を拒否しているのです。アンケートでこれははっきりしている。では、何で拒否しているかというと、そのうちの1つは、例えば、低所得であるとか、日常生活困ったときに相談できる家族はいないとか、もう一つは何かというと、死後事務なのですね。亡くなった後の担当をしてくれる人がいない、いわばお葬式を出す人がいないし、残置物の処分もできない。これは全て保証人も含めて家族の機能だったのですよね。この家族機能が、家族がいてもできない、あるいは、家族そのものがいない、単身社会になっているという、この家族機能をいかに社会化するかということが実は住宅確保においては非常に大きなテーマになります。
 ですから、この議論の中で、家族がいるという前提だけではなくて、家族がいないというところで、その家族機能を、あるいは地域で社会化していくことをもう一段階仕組みみたいにしていかないとなかなか難しい。
 私は北九州ですが、今日はすみません、この後ちょっとで抜けます。コロナの影響で減便になっていまして、最終便が飛びませんとさっき連絡が来て、その一個手前に乗ってくださいという話になったので、もう出ないといかんのですが、私が住んでいるのは製鉄所があった八幡ですが、地域で互助会をつくってお葬式出せる仕組みをつくったのですね。赤の他人がお葬式を出すという仕組みをつくりました。これは単に葬式ができるようになっただけではなくて、大家の拒否がなくなったのですね。それをすることによって大家さんが拒否しないというところまで持っていったという、この家族機能の部分が、この絵を見ていると、これだったら多分大家さんは貸すよと、こういう幸せな人たちが周りにいてくれたらですね。でも、これがいないという中で、では、どうやって地域で引き受けるのかという仕組みづくりに多分なるのだろう。そこがうまくいけば、刑務所出所者であろうが、いろいろな住まいの確保で困っていらっしゃる方々が、住宅ストックが使えるということになるだろうと思いました。だから、この絵は、この家族あってよし、なくてよしかなという思いがちょっとありました。
 すみません、以上です。ちょっと失礼いたします。
○神庭座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○岡部構成員 日本相談支援専門員協会の岡部と申します。よろしくお願いします。
 私は感想と意見になりますが、広域アドバイザーとして各地を回らせてもらったり、相談支援専門員の養成で全国40カ所ぐらいを回る中で、今日の議論の中で、当事者や住民を中心としたまちづくりをしていくという、そういう理念についてはよく分かったと思うのですが、それに向けて各地で、なかなか100点にいくというのは難しいのでしょうけれども、70点のところがあったり、30点のところがあったり、様々だと思うのです。そこそこいけているところもたくさんあると思っているのですが、今日の資料で私が着目したのが、当事者や住民を中心としたまちづくりをしていくための肝としては、協議の場が大変重要であると認識していますが、資料の中でこの協議の場の中の議論がうまくできていないかもしれないなというデータが少し引っかかりました。
 というのは、もしかすると、個別支援よりも体制をどうしようかというところに先に議論が行ってしまって、体制のことを話すと議論の発散のしっ放しでなかなかまとまらないという、個別から出発しながらどうしていこうかという地道な作業をしていくのが一番まちづくりの中では手応えも感じられるところだと思うのですけれども、そうではなくて外側から入ってしまう失敗をして、結果、時間ばかり過ぎていくということになっていないだろうかということを感じたわけです。
 つまり、意見としましては、うまくいっているところはそのまま進んでもらえばいいと思うのですけれども、議論がどうも不慣れなためにうまくいってないところについては、どういう手順で取り組むとそこそこうまくいくのかという最低ラインのモデル等をこういった検討会の中で示すことも、国全体の底上げの機能としては大変重要なのではないかと思っております。
○神庭座長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○江澤構成員 一点、意見というか要望ですけれども、検討事項の中で、地域包括ケアシステムの本質でございます地域づくりの要素がちょっと弱いのではないかと思っています。地域で支える体制があるのですけれども、要は、退院患者のうち、1年以内に4割が再入院をしているという、とりあえずは地域で孤立を防いだり、どうなじんでいくかというのをつくっていく受け皿が、大体一般的にどこでも指摘されますけれども、精神障害者の地域での受け皿づくりが非常に遅れているというのが、多分、多くの今まで意見が出ていると思います。
 その中で、包括的な生活支援の拠点をつくっていかないと、そういうところでちょっと困ったときに相談ができたり、あるいは、自分の不安を解消できたり、生きがいを作り出したり、閉じ籠もりを防止するというような、特に地域住民との交流の場が必要だと思っています。
 私も二十数年前に、その頃は幾つかグループホームをつくっていましたけれども、二十数年前は、グループホームをつくるだけでも大変苦労をしていました。というのは、グループホームをつくるときに、近隣の住民に、ここに認知症の人の住まいができるけれどもどうかと言うと、その頃はまだまだ認知症が市民権を得てない時代がありました。精神疾患はまだこれからだと思っています。したがって、住民の受け皿を、あるいは住民が許容するような、あるいは、共に暮らせるようなところを目指していかないと、かなり高みではありますが、そういったところを目指していく必要があって、そうすると、地域の受け皿づくりをより強化していかないと、多分、医療連携とかはそこそこできているし、僕はそんなに心配してなくて、地域の受け皿づくりが一番遅れているのではないか。
 そして、先ほども意見が出たと思いますけれども、自助・互助・共助・公助の共助は当然保険制度ですが、自助も当然、セルフケアも御本人も支援しないといけないし、互助の住民のボランティアとかNPO法人とかそういったところの活力も活用しながらというのが、一般的に地域ケアシステムでは半ば常識的なことなので、そういった住民とのネットワークという視点がこの中にちょっと入っていないので、検討をしていただきたいと思いますし、つい最近、平均生活日数という目標値を出されておりますけれども、あれは都道府県単位で、全県なので、地域包括ケアシステムは、一番大きくても市町村レベルでやっていかなければいけないので、先ほど、規範的統合と申しましたけれども、そこでアドバルーンを上げるのはずばり市町村なのですね。だから、市町村単位で目に見えるようなデータがないとなかなか難しいでしょうし、そういった中で、ぜひ、各地域の実態に応じて考えていくと。
 特に、ほかの医療政策においては、かなり将来のニーズの推計値が出ております。だから、精神疾患においてもそういった将来の、人口が減るところとか高齢者が減るところだと、当然ニーズが減っていくわけですし、いろいろな意味でこのニーズも踏まえながら、過不足のないスピード介護サービスが提携できるようなものと、そして、もともとは住民とのネットワークがないと生活は成り立たないので、住民との視点がちょっと見えないので、これは要望です。
○野口構成員 すみません、最初の目的のほうにちょっと戻ってしまうような話ですが、私も自治体にいますと、精神保健がそもそも重要だという認識が自治体の全体としてはちょっと弱い感じがするのです。特別な人の特別な問題で、それはやればいいけれども、別にやったからといって体制にそんなに大きい影響はないのではないかみたいな認識があるように思います。その辺もあって、自治体の精神保健がなかなか充実しづらいという問題もあると思います。ただ、これをどうするかというのはなかなか難しい。いろいろなレベルでやっていかなければいけないですし、中にいる人間も頑張らなければいけないのですが、その議論もどこかでしていただければと思いますし、先ほどの理念というか、地域包括ケアと地域共生社会の理念的な話になるかもしれませんけれども、例えば、重度の方の問題、一般住民のメンタルヘルスの問題を含めた精神保健の問題をやることが、地域包括ケアあるいは地域共生社会の構築とか、安定した運営とかにどう影響するのかという辺りも、ぜひ、検討が必要なのかなと思っています。
○神庭座長 どうぞ。
○藤井座長代理 これまでの議論を伺って、この資料を改めて拝見しますと、今、作成段階の「精神障害の地域生活を支える精神保健医療の体制とは…」で示していただいている図は、対象がかなり絞られているのかなという印象を受けます。これだけが表に出てしまうと、「にも包括」の対象が狭い範囲に限られているように見えてしまいます。この図の他にも、地域共生の視点も含めた幅広い視野でのイメージ図もつくっていただけるとありがたいと思いました。
○神庭座長 ありがとうございました。
 そろそろ時間になりつつあるのですけれども、よろしいでしょうか。
 今日は、本当に各領域の御専門の方から貴重な御意見をいただいたように思います。確かに精神医療・精神保健福祉にわたり様々な問題があって、その全てをこの一年で語り尽くしてまとめていこうとしても、中島構成員がおっしゃったように、これはまとまりようがないぐらい大きな問題があります。けれども、少なくとも前進して、それが施策に結びつくような、そういった検討会にしていきたいと思います。
 確かにいろいろな問題があるのですが、その中でどれを重点的にやっていくかというようなことも、また、御意見をいただきながらこの会を進めていければなと思いますので、事務局でも、ぜひよろしくお願いします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議論はここまでとしたいと思います。
 最後に、今後のスケジュール等につきまして、事務局からお願いいたします。
○友利課長補佐 事務局でございます。
 次回の検討会につきましては、4月17日金曜日の14時から16時を予定しております。ただし、冒頭に申し上げた状況もございますので、正式には、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
○神庭座長 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、本日の検討会はこれで閉会といたします。
 構成員の皆様方、貴重な御意見、誠にありがとうございました。

 

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