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2016年12月16日 第11回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」

職業安定局

○日時

平成28年12月16日(金)9:00~11:00


○場所

厚生労働省(中央合同庁舎第5号館)12階 職業安定局第1・2会議室


○出席者

川口 大司 (東京大学大学院経済研究科教授)
神吉 知郁子 (立教大学法学部国際ビジネス法学科准教授)
中村 天江 (リクルートワークス研究所労働政策センター長)
松浦 民恵 (ニッセイ基礎研究所生活研究部主任研究員)
水町 勇一郎 (東京大学社会科学研究所教授)
皆川 宏之 (千葉大学法政経学部教授)
柳川 範之 (東京大学大学院経済学研究科教授)

○議題

・中間報告について

○議事

○柳川座長 それでは、ただいまから第 11 回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては大変お忙しいところ、御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日は、塩崎厚生労働大臣、加藤働き方改革担当大臣にもお越しいただいております。まずは私のほうから、本検討会における中間報告 ( ) につきまして簡単に御説明させていただきたいと思います。お手元の資料 1 を御覧いただけますか。

 この間、検討会のメンバーの方々におかれましては大変御尽力いただきまして、私の無理難題をいろいろ聞いていただきました。事務局の方々にも大変御尽力いただきまして、何とかこういう形で中間報告 ( ) ができたところでございます。

1 枚めくっていただいて目次がありますけれども、「はじめに」の所から簡単にお話をさせていただきます。本検討会では、正規・非正規の対応格差が大きいことは、かなり大きな問題であるということが検討会の共有する問題意識でございました。これは、川口先生が御尽力いただいた参考資料に挙げている実証研究からも示されていますとおり、いろいろな実証研究の手法を用いて、学歴、勤続年数、役職、職種等を制御するとある程度縮小するものの、制御してもなお格差が存在するという事実が認められています。この不合理な格差を是正し、非正規社員の待遇を改善することが強く求められているということで、本検討会では、この点について、ガイドライン作成の意義と基本的な考え方を中心に検討させていただいたということです。

 この格差を考える上では、いわゆる「同一労働同一賃金」の考え方が非常に参考になるわけですけれども、この考え方を詰めていくのはなかなか難しいことで、この原則が広く普及していると言われる欧州での実態を参考とすることで、この原則に踏み込む形で非正規社員の待遇改善が実現する方向性を提示するというのが、この報告書の目的ということになっています。

 欧州諸国の検討から分かったことですけれども、欧州諸国、特にフランス・ドイツ・イギリスの制度・判例・実態を詳細に検討した結果、各国における労働市場の構造によって、同一労働同一賃金の実現のさせ方には大きな違いがあることが明らかになったということです。ただし、同一労働同一賃金の原則を男女差別禁止の枠組みと考えている国もあり、すべての欧州諸国が、同一労働同一賃金原則を雇用形態別の問題として捉えているわけではないという御意見もございました。

 検討結果概要ですけれども、ここに詳細に書かれているので全部を御説明するわけにはいかないのですが、産業別労働協約において、企業横断的・雇用形態横断的に定められているところが、ヨーロッパ、特にフランス・ドイツにおいての大きな特徴です。イギリスにおいては、むしろ労働協約によって賃金が決定されることはほとんどないのですが、その一方では、労働市場の流動性が高い形で企業横断的な賃金が定められる形になっているということでした。

 言い換えますと、次は 2 ページ辺りですが、同一労働同一賃金というのはどのようなものなのかという点につきましては、各国のそれぞれの諸制度を前提に考えるべきで、この制度や取組を抜きに抽象的に考えることは難しいということです。この点から得られた重要な示唆は、その一断面だけを切り出すのではなくて、労働市場全体の構造をよく理解した上で参考にすることの重要性、そしてそれぞれの国の構造に合った対応策が取られることの重要性です。

 「ただし」ということで、基本的ポイントで書きましたように、当然のことながら各国の構造というものも時代とともに変化していくわけですし、あるいは変化させていく必要がある場合もございます。日本では今現在はこの産業別労働協約ではなく、企業別で労働条件が設定されているのが中心ですし、雇用の流動性もそれほど高くありません。そうではありますけれども、長期的に見ると例えば企業横断的・雇用形態横断的に賃金が決定される。あるいは、そういう形で比較検討ができるようなシステムに移行していくことも考えられなくはないだろうと。その観点に沿って整理するのであれば、労働市場改革を進めていく必要性も非常に大きいだろうと思っています。ただし、こういうことは段階的にきっちり進めていく必要があります。また長期的な方向性に関しては慎重な検討も必要です。

 「そうだとすれば」ということで、基本的なポイントを 3 つ書かせていただきましたけれども、まずは正規社員・非正規社員両方に対し、賃金決定のルールや基準を明確にすること。それから、職務や能力等と、賃金を含めた待遇水準の関係性が明らかになり、待遇改善が可能になるようにすること。そして 3 番目として、教育訓練機会を含めた「能力開発機会」の均等・均衡を促進すること。それによって一人ひとりの生産性向上を図ること。これらの柱が、日本が同一労働同一賃金に踏み込み、非正規社員の待遇改善を実現させるためのポイントであり、ガイドラインはそのための重要な手段であり第一歩として位置付けられると考えています。

 同一労働同一賃金は幅広い検討が必要なわけですけれども、非正規社員の待遇改善をできるだけ早期に実現させるという目的のためには、同一企業内で比較をすることが現実的であろうということになっています。長期的視点としては、同一企業内のみではなく、外部労働市場の活用も含めた労働市場整備を通じた、待遇改善という側面も重視していく必要があると書いています。

 ガイドラインの位置づけですけれども、本来は、賃金等の決め方については、当事者である労使の決定に委ねるべきものでありますけれども、先ほど冒頭に書きましたように、特に非正規社員の待遇改善を含めた格差是正は非常に大きな社会的課題です。その点では、ガイドライン等を通じた、国による対応が有効となる余地があると考えられます。

 この検討会においては、つくられるガイドライン「案」は、現行法の解釈を明確化するものと位置づけてまいりました。しかし、現状ではガイドライン「案」の法的位置づけは不明確であることから、ガイドライン「案」は現時点では効力を発生させるものではない旨をきちんと周知すべきであると書いています。

 また、ガイドラインの制定・発効にあたっては、適切な検討プロセスを経ることが望ましいということで、本検討会においても、今後必要な法的見直しに向けた考え方の整理を行っていきたいと思っています。

 次のガイドラインの考え方と適用に向けた民間の取り組みですが、欧州の実態を踏まえても、このガイドラインが実効性をもち、結果として待遇改善に役立つためには、民間側、労使による積極的な取り組みが不可欠です。

 そのためには、広い意味での待遇をどのように決めているかを、明確にしていくことがまずは求められる。そのうえで、賃金をどのように決めているかをできるだけ客観化して、透明性のある形で提示できるようにして、正規・非正規の間でできるだけ比較できるようにしていくことが重要と考えています。また、このような民間側の取り組みが行われてくれば、自ずから、待遇の決まり方について、企業側がより的確な形で説明ができるようになると期待されます。

 その点では、賃金決定の明確化に加えて、個人の納得度を高める方策も必要となってくると考えています。後で御説明するような職務分離などの副作用や企業経営への過度な影響を避けるためにも、このような民間側の取り組みのために必要な、過不足のない時間軸を確保することが重要であり、民間側にも積極的かつ着実に取り組みを進めることが求められると思います。

 今、申し上げたような職務分離と言われる問題ですけれども、民間側の取り組みが十分にできていないと、ガイドラインをつくっても適切に運用がされず、非正規社員に対して、形式的に違った職務を割り当てる形でガイドラインを形式的に守ろうとする動きが広がってしまう恐れがあります。

 そうなると、かえって非正規社員が低い待遇を与えられたり、最悪な場合では職を失ったりして、結果として待遇がむしろ悪化してしまうことにもなりかねない。このような職務分離等を起こさないようにするためにも、上で述べたように、民間側での実効性ある体制づくりと併せて、ガイドラインを具体的に定め、適切な時期に発効させていくことが求められるということです。

 具体的に取り組むにあたっては、比較的決まり方が明確であり、職務内容や人材活用の仕組みと直接関係しない手当に関しては、比較的早期の見直しが有効かつ可能と考えられます。ただし、基本給と手当の区別が明確でない企業も存在することから、その点に関する明確性確保等の対応が民間側に求められることになります。

 それに対して、基本給部分については、多くの企業で、決まり方が複雑で様々な要件が絡んでいます。長期的雇用を前提にしている部分も多く、賃金表の作成等を通じて、決まり方を明確にして、正規・非正規間の比較をできるだけ可能にする仕組みを民間側で整えていく等、段階を踏んだ取り組みが求められる。また、非正規社員を含む労使交渉において格差是正を実施させることも重要だと書いています。ただし、仕組みを整えるのに時間がかかることを理由に改革が進まないことのないよう、そのための対策も併せて必要なことかと思っています。

 また、企業規模や経緯、非正規社員比率の高低によって、このような取り組みの容易さというのはかなり違ってきますので、実際にガイドラインを策定し発効させていくうえでは、労使の取り組みも含め、それぞれの企業の実情に合わせた丁寧な対応が求められると考えています。ただ、この点においても、仕組みを整えるのに時間がかかることを理由に改革が進まないことのないよう、着実な施策の実行が求められるということです。

 派遣社員に関しては、均等・均衡待遇をどのように進めていくかは、他の非正規社員の待遇改善とは異なる方法をとることが適切か、その方法としてどのようなものがあるかも含めて、今後さらに検討が必要だと考えています。

 派遣社員の待遇改善に際しては、まずは派遣元事業者内の他の社員との待遇格差の是正、この部分に関しては、有期契約社員やパートタイム社員の待遇格差是正と同様に進めていくべきであろうと思っています。その際、派遣事業では非正規社員が社員の大半を占めることになりますので、労使の適切な検討プロセスを経て取り組み方針を決定していくことが重要となる。

 一方、派遣先社員との均等・均衡待遇に関しては、派遣元事業者と派遣先事業者との間の連携・協力の在り方、労働市場における派遣社員のキャリア形成等、派遣特殊的な論点がありますので、その在り方については、残念ながら本検討会では議論が十分尽くされていません。ですから、企業横断的な賃金決定メカニズムが存在しない我が国ではさらに丁寧な制度設計が求められると思っています。

 少し長くなって恐縮ですが、非正規社員の待遇については、キャリア形成や能力開発が重要で、生産性向上を通じた待遇改善の視点をもっと本質的には取り入れていくべきであると書いています。役職、職種等による待遇差の改善は、キャリア形成や正規社員への転換に対する支援政策によって実現していくことが重要です。また、日本的雇用慣行自体が、今後大きくかつ急速に変化していくことも考えられます。それらの変化も的確に見据えた、制度設計の在り方が強く求められると思っています。

 このガイドラインは、影響が幅広くおよび得ることと、経済環境や働き方の実態も時とともにかなり変わっていきますので、作成されたガイドラインは本当に効果があったのか、あるいは副作用を生み出していないのか、そして現在の経済実態に合っているかを定期的に検証して評価するプロセスが重要であろうと考えています。そのための仕組みづくりとしては、今、政府全体で取り組みがなされていると伺っていますけれども、エビデンスの収集・分析ができる体制が重要だと思っています。

 最後ですが、「非正規」をなくすということで、このような取り組みを通じて、正規・非正規という呼称格差を改め、すべて様々な雇用期間や労働時間の多様性のある社員という考え方に整理されていく必要がある。今回のガイドライン作成は、そのための大きな一歩にしていくことが期待される。ただし、もちろんそれだけではなく、広く正規社員の働き方も含め、より大きな全体の働き方改革を通じて、すべての人が、より良い働き方が可能になるような制度設計がなされることを期待したいということです。

 このようにまとめさせていただきました。文章を読み上げる形で長くなってしまいまして恐縮ですけれども、かなり文章の細かい所まで皆さんに御議論いただいて文案を詰めてきましたので、いい加減に変えると間違って伝わってしまうかと思いまして、少し丁寧に説明させていただきました。時間を取ってしまいまして恐縮です。

 今、説明させていただきました中間報告 ( ) につきまして、委員の皆様方から両大臣に是非、お伝えしたい御意見がありましたら、せっかくの機会ですので、恐縮ですがお 1 人、 1 分程度で御発言いただければと思います。いかがでしょうか。

○松浦委員 こういうときは空気を読んで何も言わないというのが、もしかしたら日本における暗黙のルールなのかもしれないのですが、私は最近「あえて空気を読まない」、 AKY を自分の行動指針にしていますので、一言だけ言わせていただきます。中身については柳川座長が丁寧にご調整くださいましたので全く異論はございません。労働組合の職場懇談会のような発言で大変恐縮ですが、今回、柳川座業が本当に御苦労されて短期間で中間報告をまとめてくださいました。ですので、この検討会のもう 1 つのミッションである法的な見直しに向けた考え方の整理につきましては、できればもうちょっと前倒しで会を設定いただけると、柳川座長の労働条件が改善されるのではないかと思いますので、是非、それだけお願いしたいと思います。出過ぎたことで大変申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

○柳川座長 ありがとうございます。いかがでしょう。せっかくですのでお 1 人ずつ喋る感じで、どうぞ。

○中村委員 今回、欧州の同一労働同一賃金を、内部労働市場が高度に発達している日本の中でどういうふうに再構成するかということで、この検討会を含めて知恵を絞ってきたのかなと一員として感じています。欧州型の同一労働同一賃金と、日本型の非正規の処遇向上というのは似て非なる部分が多々あります。その中で 4 割の非正規労働者について大きな方針を今回出せたことは、とても大きな一歩が踏み出せたと思っています。この後、年明け以降、さらにこの検討会を進めていきますが、 4 割の非正規の中で 2 %ですけれども、派遣労働者については現時点で議論がほぼできていません。

 派遣労働者は派遣元事業者に雇用され、派遣先で働いていて、労働市場の市場相場で賃金が決まる。賃金が決まる相手、待遇が決まる相手が 3 か所あるので、どこと待遇をそろえていくか、若しくはどこで待遇を上げていくのかは、とても大きな論点になると認識しています。欧州型は当然ながら市場型で決めていっていますし、日本的雇用慣行の直接雇用の非正規は企業の中なので、本来、企業横断的に賃金が決まっていく欧州の同一労働同一賃金に一番近い派遣という形態を、日本の中でどう処遇改善していくのかという議論が年明けにできればと思います。 2 %ではあるのですが、多分、同一労働同一賃金に向けては、先んじでいろいろなことが検討できうる派遣について議論を深めていければと考えています。

○柳川座長 そのほか、いかがでしょうか。

○神吉委員 私もあえて、空気を読まず。労働法というのは、市場への介入であって自由を規制するものと位置付けられることがあります。でも、労働法の本当の目的は、働く人の自由の保障だと思うのです。自由というのは、本質としては自分のことを自分で決定できるという自律性だと思っています。そうだとすると、今の非正規の方というのは自分の労働条件設定に対して、自律性が阻害されている状態にあると考えています。それをどうやって取り戻していくか。これまた企業の経済活動の自由との調整で、どういうふうに制度設計していくかに、考慮のポイントがあるのではないかと思っています。私はこれまでも検討会でそういったことを念頭に置いて議論してまいりましたし、これから法的な見直しの在り方に関して考え方を整理していくに当たっても、そういう観点で臨んでまいりたいと思っています。以上です。

○川口委員 大まかな意見は座長が御紹介くださった案の中に全て含まれていますので、それに基づいて少しだけ強調させていただきたいと思うことがあります。まず非正規労働問題の重要性ですが、内外の状況を見るにつけ、所得格差の拡大などが社会的な不安定をもたらすということに関しては、皆が認識を共有している部分だと思います。ですから、このような政策を行うことが非常に重要だと思います。

 太字で強調してある所で生産性を向上させるということですが、この生産性の向上は非常に大事ですけれども、それをいかに待遇の改善に結び付けていくかというところも同じぐらい重要なポイントで、そこはいろいろな方法があると思いますが、市場の整備というものを通じて、高い生産性を持っている人に、高い賃金のオファーが来るような仕組みを考えていくことも必要ではないかと思っています。

 最後ですが、検証プロセスです。結局、こういう政策をやって本当に政策のターゲットになっている非正社員の待遇が改善しているかどうかが、何よりも大切なことだと思いますので、統計の整備も含めて実際にこの政策を行ったことが、どのようなインパクトを与えたのかについては、是非、御検討いただきたいと思います。

○皆川委員 一言だけ申し上げさせていただきます。今回のような取組を進めることは、広く社会で働いている労働者の方々の待遇改善につながり得るものだと考えていますので、非常に有意義な取組だと考えて微力ながら協力させていただいてまいりました。ただ、ほかの委員の皆様からも既に御意見がありましたように、このような取組を進めていくことは企業における賃金の支払い方、あるいは賃金制度の変更につながっていく可能性が高いわけです。そういった次第で日本では 5,000 万人以上の方が働いていて、その中で少なからずが非正規雇用となっていますので、非常に社会経済的に影響が大きい政策です。このような政策を実効ある形で進めていくためには、これは欧州の経験などからも導かれることですが、労使の協議あるいは適切な利害調整を、できるだけ開かれた形で社会的にも行っていくことが非常に大事ではないか。肝要ではないかと考えています。今後、政策を新たに進めるに当たっては、そのような社会的に広いボトムアップの取組を促進するような政策も併せて御検討いただければと考えています。以上です。

○水町委員 この問題は非常に難しい問題であって、様々な考え方とか様々な視点があると思います。その中で改革を前向きに進めるようなことにつながる中間報告を取りまとめていただき、昼夜を問わず御貢献いただいた柳川座長のお仕事ぶりに大変敬意を持って感謝したいと思います。

○柳川座長 委員の皆様方の御意見は、この中間報告 ( ) におおむね収斂していると思っていますけれども、よろしいですか。ここから先、もし文言調整が必要な場合は私に御一任いただくということで、よろしいでしょうか。

                                  ( 各委員了承 )

○柳川座長 それでは、中間報告について座長の私に御一任いただきましたので、両大臣より御挨拶を頂きたいと思います。まず、塩崎大臣より御挨拶いただきます。よろしくお願いいたします。

○塩崎厚生労働大臣 皆さん、おはようございます。同一労働同一賃金の実現に向けた検討会ということで、今年の 3 月から開催していただきました。皆様方には 11 回にわたって会合をお持ちいただき、専門的な見地から我が国と欧州の法制度の賃金決定の実態などを含めて、幅広くかつ精力的に御議論を賜ってまいりました。改めて心から感謝申し上げたいと思います。

 先ほど来、お話が出ていますように、特にこの中間報告の取りまとめにおきましては柳川座長自ら報告案の作成をしていただき、そして皆様方との意見を調整するという大変な御労苦を全面的に担っていただきました。また、皆様方にも昼夜を分かたず意見交換をしていただいたと聞いております。本当に大変お忙しい皆様方にお集まりを頂きましたけれども、そういう合間を縫って今回の取りまとめをしていただいたということで心から感謝申し上げたいと思います。特にこの数日はメールでのやり取りがそれこそ 24 時間に近い形で行われて、ややブラックな感じがいたしますが、お陰で今日のすばらしい取りまとめが行われたと思っています。改めて柳川座長をはじめとする皆様方の多大なる御尽力に感謝を申し上げたいと思います。

 中間報告の中で、今、御説明を頂きましたけれども、安倍総理が明確に、繰り返し明らかにしてきているように同一労働同一賃金に踏み込むと。そして非正規で働く方の待遇改善を実現させると。このためのポイントとして今回の中間取りまとめで、 1 つは正規社員を含めた賃金決定のルールや基準の明確化をすること。そして職務や能力等と賃金を含めた待遇水準、この関係性の明確化による待遇改善の実現、そして能力開発機会の均等・均衡による一人一人の生産性の向上、この 3 つの柱を御提起いただいたと理解しております。

 これらの考え方は正規雇用あるいは非正規、双方の職務の内容の明確化や、それに照らして働く方お一人お一人の公正かつ客観的かつ丁寧な評価、それに伴う賃金体系が構築されること。そして非正規雇用の方々にも、職務執行能力の向上に向けた能力開発機会の拡大ということが生産性向上につながる。そして今後の我が国の労働の在り方として、こういった大変重要な観点の御指摘を頂いたと理解しています。

 これらを実現することは、どのような働き方を選択したとしても公正な待遇が受けられる。納得できるという個々人の多様な働き方を可能にしていくのではないか。それに加えて我が国の将来に向けた活力、そして企業にとっても全体の活力、さらには経済の持続的な成長にもつながるのではないかと思います。今後は、今、働き方改革実現会議が行われていますけれども、そこにおける議論をへて、待遇差に関するガイドラインの案をお示しすることになっています。

 本中間報告につきましては、現場の労使の皆様方が取り組んでいこうとする際にも、まず最初のステップとして賃金などの決まり方を客観化、透明化していくなど、重要な示唆に富んでいると思いますので、労使の皆様方にはこの報告書を御参考に、よく読み込んでいただいて、実際の労使のお話合いを進めていただければと思います。この中間報告をガイドライン案の基本的な考え方としてしっかりと受け止めて、今後の整備の検討をはじめとする同一労働同一賃金の実現に向けた政策に生かしてまいりたいと思います。

 検討会の先生方には引き続き、これから法改正も行っていこうということで総理から指示を頂いていますので、この法改正案づくりにつきましても御指導を賜りますように、お願いを申し上げて私からの御挨拶にいたしたいと思います。正規・非正規の格差の差をなくす。あるいは同一労働同一賃金を日本で導入することに関して、最も先端的に御検討いただいた皆様方ですので、恐らく日本の中で、この問題の一番のプロになっておられるだろうと思います。法改正に向けた今後の作業でも御指導を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○柳川座長 続いて、加藤大臣より御挨拶いただきます。よろしくお願いいたします。

○加藤一億総活躍担当大臣 ( 働き方改革担当大臣 )  働き方改革担当大臣をしております加藤でございます。中間報告を取りまとめいただきまして、この間、今、塩崎大臣からもお話がありましたが、今年の 3 月から 11 回にわたり、 EU における、また我が国における制度、そしてまた運用状況といったことの分析の上に立って、これからの我が国における同一労働同一賃金の方向性や実現に際しての考え方、これを御提示いただいたということで本当に有り難く思います。

 こういう場所では常に座長をはじめ、委員の皆さん方に御尽力をということを申し上げるわけですけれども、そうした形式的なことだけではなくて、本当に今、この前の委員の方からも御発言があったように本当に多くの御苦労をいただきながら、特に柳川座長には本当に御苦労いただいて、こうしてすばらしい中間報告書を取りまとめていただいたと改めて我々は認識をさせていただいて、そういった認識の上で、これをしっかり受け止めさせていただきたいと思います。

 内容においても、従来、欧州は職務給、我が国は職能給中心であるということで、なかなか同一労働同一賃金というのは難しいのではないかとされてきたわけですけれども、この点に関しても中間報告では、欧州と我が国の本質的な差異は賃金決定方法が分離している我が国と、雇用形態を問わず賃金決定が共通的である欧州との違いであると、こういうような認識をお示しいただき、また、その上で種々の御提言を頂いたところでございます。

 同一労働同一賃金につきましては、総理を議長とする働き方改革実現会議において議論を進めているところでございますし、今日、いただきました、またここでの御議論も踏まえながら、次回の会合においてガイドライン案についてお示しをしていくことにしています。また、企業の労使の方々には日本における同一労働同一賃金の実現に向けた方向性、特に具体的な考え方といったことについて、いろいろな意味で御懸念、不安もあるわけですけれども、今回、中間報告という形でお示しを頂いたことによって、そうしたことに対する理解を更に深めていただけると思うわけであります。

 さらに、これから必要な法的見直し等に向けた考え方の整理など、さらにこの検討会においてお進めいただけるということです。我々も働き方改革、特に同一労働同一賃金の処遇を改善していく。そして更に総理は非正規という言葉をなくしたいと、こういうことをおっしゃっておられるわけです。それに向けてしっかりと取り組み、また議論も進めさせていただきたいと思っていますが、どうか委員の先生方の引き続きの御協力を心からお願い申し上げて、感謝とさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

○河村企画官 大臣は公務の関係でここで退席をさせていただきます。報道関係者の皆様も御退室をお願いいたします。

○塩崎厚生労働大臣 どうも皆さん、ありがとうございました。

○柳川座長 それでは、ありがとうございました。だいぶ御議論いただいたので大丈夫かと思いますが、この中間報告 ( ) について、何か必要な御議論等がありましたら出していただければと思います。よろしいですか。それでは、ありがとうございました。これをもちまして本日の検討会は終了したいと思います。今後の進め方については、私と事務局で御相談の上、追って事務局より御連絡をさせていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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