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2017年1月23日 第6回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録
厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室
○日時
平成29年1月23日(月)16:00~18:30
○場所
東海大学校友会館(望星の間)
○出席者
宮本 太郎 (座長) | 相澤 照代 (構成員) | 朝比奈 ミカ (構成員) |
大津 和夫 (構成員) | 奥田 知志 (構成員) | 菊池 馨実 (構成員) |
櫛部 武俊 (構成員) | 駒村 康平 (構成員) | 生水 裕美 (構成員) |
新保 美香 (構成員) | 田中 弘訓 (構成員) | 長岡 芳美 (構成員) |
西岡 正次 (構成員) | 野溝 守 (構成員) | 前神 有里 (構成員) |
森脇 俊二 (構成員) | 山本 英紀 (構成員) | 渡辺 由美子 (構成員) |
渡辺 ゆりか (構成員) | 和田 敏明 (構成員) |
○議題
(1)前回までの指摘事項に関して
(2)論点整理(案)について
○議事
○金井課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第6回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方におかれましては、御多忙の折お集まりいただき、誠にありがとうございます。
本日の構成員の皆様の出欠状況でございますが、構成員の皆様全員出席ということになっておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移りたいと思います。以降の進行につきましては、宮本座長にお願いいたします。
○宮本座長 年も改まりまして、あと2回の構成員会を予定しております。これから報告書をまとめていく大事な局面になっていきます。御協力をよろしくお願いしたいと思います。
まず、構成員の皆様から前回いただいた御意見に沿ってまとめた論点整理(案)を用意しております。これについては、後でまとめて事務局のほうから御説明をいただいた上で議論をしていきたいと思います。
その前に、前回の議論に関連して事務局に御準備いただいた資料1に基づいて、これを御説明いただくことから始めたいと思います。よろしくお願いします。
○渡邊室長補佐 それでは、資料1を御用意ください。例によりまして、前回の検討会におきましていただいた御指摘に関して御用意したものでございます。
2ページでございます。前回、渡辺由美子構成員から御紹介いただいたデータでありますが、生活保護世帯の子どもの進学状況の違いとその世帯の自立状況の関係を横須賀市さんが調査をしておられます。そのデータでございます。
100名余りの中学卒業生の属する世帯の子どもさんの進学先について全日制高校、定時通信制高校、中卒で修了という3つに分けまして、その世帯が3年~5年の後に自立したかどうかという割合を見ますと、円グラフを3つ載せてございますが、大きく違いが出ているというような状況を調査されてございます。
3ページをご覧ください。こちらは前回御欠席でおられた田中構成員から提出資料の中でお求めいただいていたものでございまして、生活保護と困窮者制度の就労支援を一体的にやっているかどうかによって、メリットと留意を要する点ということで実施をしておられる自治体さんにヒアリングをさせていただきました。
上半分が、いずれも必須事業ですけれども、自立相談と被保護者就労支援を同一の事業主体がやっている場合、下半分が別の事業主体がやっている場合ということでございます。メリットと留意を要する点というのは大体反転の関係にございます。
同一の事業主体が実施している場合、メリットとしましては、ノウハウが活用しやすいですとか、日常的な情報共有・支援の継続性を保ちやすいというようなことが聞かれてございます。
右側の留意を要する点としましては、支援対象者の特性の違いというものがどうしてもございまして、生保受給者の場合は支援に比較的時間をかけられますけれども、意欲喚起が難しかったり、困窮者は、早期の自立を目指すので時間をかけにくいといったようなことがございます。こういう中での支援メニューの構成という中で配慮が必要だということでございます。
別々の場合というのは、今の留意を要する点がメリットとして対応しやすいということで出てまいりますし、留意点としましては、支援の継続性を保ちにくいですとか、求人開拓をするという場合に二重の開拓にならないような改善が要るといったようなことが出てきてございます。
4ページ、5ページが都道府県の役割の関係でございます。
4ページは、前回、町村部の施行状況についての議論の中で、都道府県と町村役場の連携事例が周知されればというようなお話も出していただきました。実際、確認をしてみますと、事例として町村役場が相談事例ごとに法の施行主体である都道府県と連携をしているということが確認できておりまして、例えば連絡会ですとか、支援調整会議の構成メンバーとして町村役場の方に出てきていただいているだとか、個別事案と全体的な制度・事業の報告といったような2つの次元で連携が図られているということでございました。
最後に、5ページでございます。これは前回、複数の構成員から、都道府県が管内の福祉事務所設置自治体の支援に伴走していけるような観点が必要ではないかという御議論があったかと思います。
その中で、これは他分野の例ではありますけれども、前神構成員から御紹介いただいた愛媛県の虐待対応専門職チームの事例、朝比奈構成員から御紹介いただいた千葉県の中核地域生活支援センターの事例というものを掲載させていただきました。
左側の愛媛県の事例は、高齢者虐待防止法の施行後に社会福祉士会、弁護士会という専門職チームが必要だということで、そういうものをつくって市町村に派遣をするという形の支援になっている。スーパーバイズを意識しながら取り組むということで、派遣者みずからが解決しないということに留意するというところが重要なところかと思います。
千葉県の中核地域生活支援センターについても、個別の支援というのは基礎自治体の担当部門、地域の関係機関と役割を分担しながら、センターも相談者に寄り添った伴走支援をするということと、これは一番下のところですけれども、各区域の関係機関と課題を共有していくという連絡調整会議ですとか、県と中核センターの情報共有の会議ですとか、さまざまな層で連絡調整がなされているというような仕組みだとお聞きしてございます。
御紹介は以上でございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
渡辺由美子構成員、田中構成員、あるいは都道府県、基礎自治体、町村関連の御質問をされた構成員の皆さん、よろしいでしょうか。特に改めて確認されること等はございませんでしょうか。ありがとうございました。
続きまして、先ほど申し上げたとおり、資料2の論点整理(案)について、少し時間がかかるかと思いますけれども、事務局のほうから御説明をお願いしたいと思います。
あわせて、これは就労支援関連の資料になりますけれども、机上配付のみ構成員限りという形でつづりが用意してございます。大変申しわけありません。傍聴の方のお手元には行っていないのですけれども、これについても御説明をお願いしたいと思います。
○渡邊室長補佐 続きまして資料2でございます。若干まとまったお時間を頂戴しますが、お許しいただきたいと思います。
論点整理の案としまして、これまで5回の議論で御意見いただいたものを文章として組み立てたものでございます。
柱立ては、1ページを見ていただきますと、1が総論部分、2が個別論点ということで、2につきましては、法定事業が自立相談プラス4つの任意事業ということもございますので、そういった構成も念頭に置きながら9つの節を立てて構成をするという形にさせていただきました。
2ページ~4ページが総論部分でございます。「生活困窮者自立支援法の果たしてきた役割、課題と今後の方向性」ということで大きく3点をまとめてございます。
冒頭、困窮者法の意義・役割の部分ですが、法が施行をされてさまざまな相談者がアクセスしているという状況は、これまでもデータで振り返っていただいたところですけれども、3つ目の○として、制度の対象が極めて多様であるにもかかわらず、支援に当たっての基本的な姿勢はほぼ共通だということで、複合的な課題の解きほぐし、活動的な参加と就労を含めた生活向上、自己肯定感の回復といったことを記載させていただきました。
そういう中で、ボリューム的な部分でいいますと、この2年で新規相談者は約45万人、プラン作成により継続的に支援した人は約12万人と、確実にさまざまな課題を乗り越えたステップアップが見られるということ。その先に就労・増収といった段階を経て自立に向かう人も約6万人ということで、ここは若干推計を含む部分ですけれども、記載をさせていただいています。
支援の広がりの一方、以下のような課題ということで5つございます。
1つは、45万人という相談者のほかにもまだ生活困窮者は少なからずいるのではないか。
2つ目として、地域に互助の関係づくり、参加、就労の場を求めていくという取り組みはまだ試行錯誤の段階も多いのではないか。
3ページに参りまして、3つ目として、就労準備支援、家計相談支援については、任意事業を実施していない自治体では十分な支援が行えていない可能性があるということと、住まいをめぐる課題に対して支援の不足が明らかになってきているということ。
4点目としまして、今、特に社会的課題として認知をされているのは子どもの問題と高齢の生活困窮者ではないかということ。
最後に、こうした中で先進的に取り組む自治体と取り組みが脆弱な自治体の差が開きつつある。こういったところを課題認識としてまとめました。
続いて、法制度のあり方を充実していかなければならないとしまして、視点を8つにまとめさせていただきました。
(1)は、みずから自立相談支援機関へ相談することが難しい人にも確実に支援を行えるようにするということ。
(2)としまして、そういう相談機能は支援の「入り口」として、全ての相談を断らないことを基本とする。
(3)は、地域共生の考え方でありますけれども、支え手と受け手側に分かれないで、役割を持って支え合うということを基本に据えるということ。
4ページに参りまして(4)ですが、包括的な支援ということを的確・効果的に行うために、就労、家計の支援を全国的に充実するということ。
(5)については、この法律の中で想定している現行の一時的・過渡的な住まいの支援だけではなくて、長期継続性のある「住まう」支援を行えるようにするということ。
(6)は、子どもの貧困への対応の観点から、学習を初めとした総合支援とともに、子どものための世帯支援を強化するということ。
(7)としまして、高齢の生活困窮者に対する支援体系の整備。
(8)としまして、地域の自発性、創意工夫を重視しつつも、地域ごとの支援体系を底上げし、全国的な支援の質を向上する。
こういった観点を書かせていただきました。どれも後ろの個別論点で構成員の御議論をまとめてございます。それをある程度抽象化してまとめさせていただいたのがここまでの部分でございます。
こうした視点を中心に据えて法のあり方を見直しつつ、次のところですけれども、地域社会のほうでは「自分たちができることをすれば、困っている人や子どもの支援につながるのではないか」という他人ごとにしない取り組みというのも出てきているということもありまして、もとより困窮者の支援というのは法制度による事業・支援だけで完結するものではありませんので、地域社会・資源との間で開かれた柔軟な関係性を持てるものでなければならないとまとめさせていただきました。
5ページからが「2 個別論点」でございます。
構成としましては、最初に括弧書きの枠囲みの中で【現状の評価と課題】ということで、事務局からこれまで御紹介してきたデータですとか、それに関して御議論いただいた部分をまとめてございます。その後に【論点】を記載してございまして、御説明としてはこの【論点】のほうを中心にさせていただきたいと思います。
「(1)自立相談支援のあり方」の【現状の評価と課題】としては、さまざまな状態像の方がアクセスをしていて、いかに相談につなげるかということが一つのポイントであるということと、その際には関係機関から支援を必要とする人が着実につながってくる関係づくりが必要であるということ。
6ページ、7ページですけれども、現状としては、新規相談件数、プラン作成率について自治体ごとのばらつきが見られるということでございます。
支援に当たっては、この法律の支援は、法や他制度による支援、インフォーマルな支援を組み合わせて足りないものをつくるということでありますけれども、その中ではフォローアップも重視した支援が行われているということでありまして、そういう個別支援一つ一つを通じて、これまで支援につながらなかった世帯が明らかになったり、従来よりあった地域課題の解決と組み合わせた就労支援が始まったりということで「入り口」と「地域との関係づくり」という2つの局面で、各地の地域社会が変わり始めているというところまでが現状かと存じます。
8ページからが【論点】でございます。
1つ目は、みずから自立相談支援機関へ相談することの難しい人も含めて、支援を必要とする人を確実に相談につなげていく仕組みが必要ではないかということで、具体的には1~3を例えばということで記載をさせていただきました。
特に御議論があった点として、2の地方税の滞納者というところに関しては、地方税法22条という規定もありますけれども、滞納者情報を法の支援に活用しやすい仕組みができないかといった御意見もいただいておりました。
3の学校ですけれども、ここはスクール・ソーシャル・ワーカーの配置状況も踏まえながら、御意見としては、個別ケース対応での連携と一般的な制度周知での連携の両面について御意見をいただいていたかと思います。
このほか、関係機関はさまざまな分野がございますので、そういうところとの連携の強化ですとか、9ページに参りますけれども、もう一つ並行して検討しております地域力強化の取り組みとの連携ということで、地域で発見される支援を要する世帯がきちんとこちらの自立相談につながって、専門的に支えていけるということが重要ではないかと書かせていただきました。
こういう中では、経済的困窮の課題を抱える人かどうかにかかわらず全ての相談を断らないということと、現状の相談実績というのはこれまで受けとめられた相談ということでありますので、まだ十分にアプローチできていない若年世代の方、相談しにくい就労中の方であったり、身近な地域では声を上げにくい人といったようなところにも配慮が必要ではないかということで、寄り添い型相談支援事業の意義というような御意見も頂戴してございました。
このような相談をきちんと受けとめていくという点では、自立相談支援事業の体制もしっかりしなければならないのではないかという御意見ですとか、その際には新規相談件数の多い、少ないで見るだけではなくて、継続ケースが蓄積してきているというような実態のお話も複数あったかと存じます。
一番下の「自立に向けた支援」というところでは、積極的なプラン作成の推進と、就労後の定着支援ですとか、償還段階の伴走支援ですとか、そういう地域社会の中で自立生活をどのように確立していくかというところが重要だというような御議論だったかと思います。
10ページですが、そういう中で地域づくりということを法が目指していくわけですが、それは一人一人の個別支援を起点としたものであるべきで、同時に地域にある他分野の地域づくりとも連動していくことではないかというような御意見をいただいたかと思います。
11ページからが「(2)就労支援のあり方」でございます。就労支援については、支援対象者の状態像に応じた就労支援の制度化ということで、11ページから14ページにかけてそれぞれの事業の実績も含めて整理をさせていただきました。
12ページの上から2つ目ですが、生活保護受給者と就労自立促進事業、これはハローワークのナビゲーターの事業ですけれども、こういうものですとか、次の○の無料職業紹介事業の活用という話も確認されたかと思います。
一方で、一番下の「就労準備支援事業の利用状況」については、想定されるニーズに比してそれほど利用が進んでいないということで、利用しにくいケースが存在している。この中では、利用中の経済的負担ですとか、資産収入要件のあり方というところで御意見を多くいただいたかと思います。
13ページに行っていただきまして、そういう中で、利用者はまだ少ない実態にありますけれども、就労準備支援事業の利用者は着実にステップアップが見られるということで、こういうステップアップをもたらしているのはオーダーメイド型の本人に合わせた支援と就労体験ということで、これらが自立相談支援事業においては代替できないというような形でまとめさせていただきました。
一番下の「認定就労訓練事業の利用状況と効果」ですが、こちらも同様に利用者はまだ少ないわけですけれども、一定期間継続的な利用の中でステップアップが見られるということで、こちらについては、14ページですが、認定の広がりに課題があるということと、本人が通える範囲内に認定事業所がないということもありまして、認定を増やすことでミスマッチを解消し、利用しやすくなると見込まれるというようなことで整理をさせていただきました。
「住居確保給付金」のセーフティーネット効果というところも記載をしてございます。
15ページからが【論点】でございます。
「就労支援全体の組み立て方」ということで大きく5つ記載をしてございます。
1つは、本人に対する寄り添い型・伴走型の支援の中で、実習をしながら長期的な就労を実現して、困窮を脱却していくような支援。
2つ目は、その際に、地域には既に創業も含めてさまざまな仕事があり、人材が必要とされているということで、5つ記載をしておりますが、地域によってさまざまな資源があり、柔軟に取り組みやすい枠組みということが重要ではないか。その際には企業支援の観点ですとか、あるいは就労といった場合、法の実施主体としての圏域(市域)を超えていくということも十分にありますので、そういうことも念頭に置いていくべきではないかということ。
3つ目は、ハローワークの支援との連携を深めるということ。
4つ目としましては、就労において配慮を要する方というのは困窮者に限らないので、地域ごとに分野を超えていくことが必要ではないかということ。
最後に、一つ一つの事業においては、メニューに本人を合わせることなく本人起点の支援が必要ではないか。
こういったことが基本的な組み立ての部分の御意見だったかと思います。
16ページに参りまして、個別の論点としまして「就労準備支援事業のあり方」からでございます。ここは大きく2つでございます。
将来の困窮の予防の観点からこれを積極的に活用していくべきだという御意見をいただいておりましたが、資産収入要件のあり方として、地方自治体・支援現場において利用すべき人に着実に利用を案内できるような検討をしていくべきではないかとさせていただきました。
もう一つの課題としまして、厳しい生活困窮状況にある世帯は、交通費が捻出できないという理由で収入を得られる仕事を優先しがちだというような御意見を複数いただいておりました。何らかの対応が必要ではないかと記載してございます。
1つ飛ばしまして「認定就労訓練事業のあり方」については、経済的なインセンティブが必要ではないか。あるいは社会福祉法人が積極的に参画できるように、手続面の簡素化等の御意見を頂戴したかと思います。
「住居確保給付金」については、セーフティーネット機能の効果的な発揮のために、制度周知という観点で不動産事業者との連携というような視点も頂戴しておりました。
次に「高齢者の就労支援ニーズ」の関係で幾つか記載をしておりますが、年齢を問わず健康面、やりがいにも配慮した地域での就労の場づくりが必要だということと、高齢者といえども御本人の状態は当然さまざまでありますので、そこのアセスメントをしっかりした上で支援していくべきではないかというような御議論だったかと思います。
「その他」といたしまして、就労支援と介護保険の生活支援サービスとの展開の結びつきですとか、求職者支援制度との連携を深めるべきだといったような御意見も頂戴してございました。
18ページからが「(3)家計相談支援のあり方」でございます。
こちらについては「基本的な考え方」としまして構成員の皆様から頂戴した御意見の表現も使わせていただいて冒頭まとめておりますけれども、支援の効果としましては、みずからの家計状況を客観的に理解して計画的にやっていくということはなかなか難しい中で、家計相談支援員とともに家計収支を明らかにしていくことで、自分で理解できるようになるとか、みずから家計管理ができるようになるというようなことが確認されているということであったかと思います。
そういう支援を通じてステップアップが図られていますけれども、19ページに参りまして、ポイントとなっているのは早期からの家計相談支援と専門的な支援ということでありまして、特に専門的な支援の部分は自立相談支援事業では代替できないのではないかというようなことであったかと思います。
こういう支援の効果というのは、各種滞納の解消、あるいは庁内連携といったことにも効果的でありますので、未実施の自治体においては事業の必要性の認識が高いというようなことであったかと思います。
19ページの下ですが、【論点】といたしましては、家計相談支援事業の専門的手法は、地方自治体の任意で行われる事業ではなく、必須とされるべきではないか。これはかなり多くの御意見をいただいたかと思います。
20ページに参りまして、自立相談の中でも行えるという意見もあるけれども、専門的な内容までは実施できていないのではないかとさせていただいています。
「課題」として4つ記載しておりますが、1つは補助率の問題です。
2つ目は、実施している自治体においても自立相談支援事業との連携の課題があるのではないかということだったかと思います。
3つ目としては、そういうこともありまして、必須とする際に自立相談支援事業の中に機能として位置づけるか、別事業とすべきかが重要ではないかということ。
4つ目は、御本人の側の利用のちゅうちょというようなことも話題に出たかと思います。利用を後押しできるよう、本人が実感できる効果と組み合わせていくことが必要ではないか。
家計相談にかかわる論点として、あと2つですけれども、「生活福祉資金との連携」で家計相談支援事業を活用すべきではないかというのが1つ。
2つ目は「生活保護受給者の利用」ということで、生活保護受給者にも家計相談支援が効果的であるので、実施されることが考えられるのではないかといった御意見をいただいたかと思います。
21ページからが「(4)貧困の連鎖防止・子どもの貧困への対応のあり方」ということで、学習支援事業を中心にまとめさせていただきました。
まず、学習支援事業ですが、一番上の○ですけれども、これは低学力・低学歴が貧困の連鎖を生んでいるという問題意識で地域の場で高校進学・中退防止の支援を行うことを主眼とした事業であります。ただ、実際の支援においては、さまざまこれまで議論してきたような実践の広がりが見られているというところです。
特に2つ目の○の世帯支援ということですが、子どもの学習支援事業の中で養育相談であったり、進学資金の相談が行われているということがありまして、親の就労支援等まで含めると自立相談支援事業で行われているというのが一般的かと思います。目的・対象を異にするほかの事業、これはひとり親であったり、文科省の事業などと連携しているような自治体もあるという状況であります。
22ページからが【論点】でございます。
1つ目の「子どもの学習支援事業のあり方」としては、今さまざまな実態がありますけれども、質の向上の観点から標準的な内容を定めるべきではないかということと、貧困の連鎖防止のための総合的な事業として再構築すべきではないかという御議論があったかと思います。
個別具体の論点としましては、自立相談支援事業が行う世帯支援との連携をどう図るか。ほかの学習支援事業との関係をどうするか。学校との連携や、子ども食堂との関係をどう考えるか。これについても、補助率について課題だという御意見をいただいたかと思います。このように整理をさせていただきました。
学習支援事業とは少し離れますけれども、高校生に対する支援の不足ということで、これは学習だけではなくて自立に向けた相談支援も必要ではないかということ。
最後に、23ページの「貧困の連鎖防止のための予防的な教育」ということで、社会保障教育ですとか、家計管理についての教育の必要性の御議論もかなりあったかと存じます。
24ページからは「(5)一時生活支援のあり方」ということでございます。
一時生活支援事業の【現状の評価と課題】として、特別措置法に定めるホームレスの数というのは減少傾向にありますが、ホームレスが確認されない自治体・小規模自治体においても一時生活支援事業の実施が広がってきているということでございます。
そういう中で、さまざまな状態像の利用者がおられるので、一時生活支援事業を利用して就労自立を果たされるケースと、入院ですとか生活保護適用といった形になられるケースの二通りあるという現状でございます。
これについての【論点】といたしましては、25ページですが、借り上げシェルター型という今広がっている実施形態の中で、効果的な自立支援というのはどのように考えられるかということですとか、広域実施をより進めるということが重要ですけれども、その際の都道府県が果たすべき役割も含めて検討が必要ではないかといったような議論だったかと思います。
これは一時生活支援でありますけれども、長期継続性のある住まいの問題を「(6)居住支援のあり方」として26ページ、27ページで整理をしております。
26ページですけれども、データで見ていただいたような住まいを確保するに当たっての家賃負担の問題、連帯保証人、緊急連絡先等々の課題がある中で、現行法の中では長期継続性のある住まいという面についての具体的な支援メニューはないということでございます。
さまざまな先行事例からは、生活支援とハード面を一体的にした居住支援のニーズがあるのではないか。そういう生活支援を誰がどのように提供するのかといったことが論点として浮かび上がってきているということかと思います。そういう事例を御紹介させていただいておりました。
27ページからが【論点】でございます。困窮者支援において居住支援は不可欠な要素ではないかというのが1つ目でございました。
2つ目は、転居による家計改善ということを考えた居住の支援。
3つ目は、保証人がいない方への自立支援や地域の見守りがつくことによって入居しやすくなる枠組みという御意見もあったかと思います。
4つ目ですが、国土交通省の居住支援協議会との連携ということも当然必要になりますし、空き家の活用と連携といった御意見も頂戴しておりました。
5つ目としましては「住まう」という面に関する支援を考えていくときに、なかなか期間設定が難しいので、どこまでを制度の中の支援と位置づけるかという論点も出していただいておりました。
6つ目として、無料低額宿泊所のあり方との関連ということもあったかと思います。
最後に「住宅手当(家賃補助)」といたしまして、現役の稼働年齢層、若年層、自立できる年齢の子ども、高齢者など、さまざまな属性の方を念頭に置いた効果的な支援ではないかという御意見を頂戴しておりました。これは事務局からも御紹介した国土交通省において検討されている新たな制度との連携を深めるべきではないかと書かせていただいております。
28ページからが「(7)高齢者に対する支援のあり方」でございます。
御紹介してきましたように、法の施行によりまして高齢者が自立相談支援機関のほうにつながっておりまして、この中では一般就労を目指すプランというものも半数近くあるということで、就労収入によって家計を支えるというニーズのあらわれであります。
一方で、家計管理の課題をお持ちだということも出てきておりますし、住まいの問題というところもデータでいろいろ見ていただいたというのがこれまでのところでございました。
29ページからの【論点】ですが、これはこれまで就労と居住の節で見ていただいた項目を抜粋して再掲の形にさせていただいております。
30ページを見ていただきますと、1つだけ「高齢者になる前の支援」ということでこの部分に載せさせていただいておりますが、高齢期になってから困窮や生活保護に至ることを防ぐという観点では、その前の時期に支援につながることが重要ではないか。いわゆる「8050」の世帯など、特に留意して相談につなげていくべき人がいるのではないかと整理をさせていただきました。
31ページからは「(8)自立支援に関連する諸課題」ということで、生活福祉資金のことと生活保護との関係の2つを大きく取り上げてございます。
相談支援において顕在化する当座の資金ニーズについて、生活福祉資金の効果的な活用ということを期待するわけですけれども、これは両制度間の連携状況、貸付要件等々、課題についてデータで見ていただいたかと思います。
生活保護との関係で申し上げると、保護を必要とする状態にある方であれば福祉事務所におつなぎをしているということでありまして、これは法律上対象者が分かれているのですけれども、支援メニューに関しては同様の支援が可能な仕組みとなっているということであったかと思います。
32ページに行っていただきまして、生活保護との関係で、相談支援の場面においても、自立相談支援機関と福祉事務所につなぐ場合に、相互連携、情報共有について、通知等によってかなり細かく求めてきてございます。
例えば、自立相談に相談があった後、生活保護のほうにつなぐ場合に、その後どうなったかというのを把握する法令上の仕組みはありませんので、どうなったかわからないという御意見があったかと思いますが、支援の一貫性という点での課題の御指摘があると書かせていただきました。
【論点】といたしましては、32ページが「生活福祉資金のあり方」ですけれども、データの整備を初めとしまして手続や必要書類、要件等々の見直すべき点があるのではないか。家計相談支援事業との連携というのがあるのではないか。判断能力が十分でない人への対応ですとか、長期的には、ずっと事業として償還を見守っていくというのではなくて、地域で孤立しない状態をつくっていくことが重要ではないかという御意見もあったかと思います。現行では自立相談支援事業とセットになっていない教育支援資金についても、検討してはどうかというような御意見も頂戴したかと思います。
33ページは「生活保護との関係」でありますけれども、自立相談支援機関に相談があって、生活保護を一時的に使ってまた自立相談に戻るという場合や、生活保護の脱却時に自立相談につながるという場合、こういった場合の支援の一貫性をどのように確保すべきかということ。
それから、入り口という意味では、福祉事務所とは別に自立相談支援機関があることによって相談しやすくなっているというような御紹介もあったかと思います。相談しやすい窓口のあり方ということで、この場所に記載をさせていただきました。
最後に、34ページ「(9)支援を行う枠組み」としまして、法体系のあり方、自治体・支援従事者・関係者の役割ということでさまざまなものが入ってございます。
「支援の理念」という冒頭のところですが、困窮者法が目指してきた「困窮者の自立と尊厳の確保」「地域づくり」という2つの目標ですけれども、こうしたものは現行法の規定では法文上は明らかになっていないというのが現状でございます。
「支援の質と人材養成研修」というところでは、自立相談支援機関ごとの力量差、あるいは支援員の業務負担といったところの御指摘があったかと思います。そういう中で、人材養成研修について、国が実施しているボリューム感を記載させていただきました。
こうした支援の質、人材確保も念頭に置いて、続いて「都道府県の役割」になりますが、広域自治体として基礎自治体の支援をバックアップする役割というものが強く期待されていますけれども、これは分野によって進んでいたり、まだ道半ばであったりという状況でございます。
35ページの中ほどが「町村部における支援」ということですけれども、全国平均には届いていない都道府県が多いということです。
都道府県に続いて「社会福祉法人の役割」というところですが、法に定める各事業の担い手、あるいは独自の支援の担い手ということで取り組みが期待されるということでございます。
最後に、36ページの現状認識ですが、「制度評価指標」もここに書かせていただいておりますが、制度評価としては「入り口機能」の評価と「プロセス」の評価、特に就労自立につながる「就労・増収」という3点に着目をして現状では多角的に実施しているという状況でございます。
【論点】といたしましては、36ページの下からですが、「支援の理念の具現化」として、困窮者に対する包括的な支援、あるいは地域づくりといった理念を国・地方自治体・支援現場が常に確認・共有し、支援に具現化していける枠組みが必要ではないかということを書かせていただいています。
そういう中で御議論が出ましたのは、自治体トップの理解ですとか、行政計画への位置づけ、既に地域にあるさまざまな動きとの連携・役割分担ということを念頭に置きながら、自治体ごとの自立支援体系を組んでいく必要がある。
そういう中でありますので、どうしても地方自治体間でばらつきがあるわけですが、その改善に当たっては、国が事業を義務化する方向だけではなくて、さまざまな方策を検討すべきではないかという御意見を頂戴していたかと思います。
「支援の質と人材養成研修」につきましては、支援の肝は支援に従事する「人」であるという御議論だったかと思いますが、その中で、都道府県研修に加えて、国が人材養成研修を行う意義も含めて全体をどのように考えるか。
研修に限らず、支援に従事する人の待遇面ですとか、ネットワークづくりなどにも目配りをして、支援現場のバックアップが必要ではないかということ。
どうしても困窮者支援は実践が先行するところがありますので、支援効果というのは確認されてきておりますけれども、その普遍化のために研究、知見の蓄積が必要ではないかといったようなこともあったかと思います。
質の高い支援に関しては、第三者の検証、OJT、スーパービジョンといったような論点も出していただいておりました。
続いて「都道府県の役割」としましては、これは前回の議論だったかと思いますが、基礎自治体が行う支援への伴走ということでの役割の位置づけについて、スーパーバイズ機能を発揮できる事業の枠組みですとか、具体的な財源の裏づけを持った役割という検討事項をいただいたかと思います。
「都道府県の役割」の際には、38ページの一番上ですけれども、人の移動ということを念頭に置いた広域調整が必要ではないかといったような論点も出していただいておりました。
「町村部における支援」においては、町村が当事者として参画するための枠組みという御意見があったかと思います。
「社会福祉法人の役割」につきましては、自立相談支援事業としっかり連携をして、地域における広域的な取り組みが進むことが重要ではないかということと、そういう際の手続面、制度面の障壁についての確認といったような論点だったかと思います。
「制度評価のあり方」については、先ほど多角的な評価をしているという現状を申し上げましたが、そういうものを充実していくべきではないかということと、少し違った観点で、将来の損失を防ぐ人的投資の意味という観点の評価も必要ではないかという御意見もあったかと思います。
最後に「帳票のあり方」としまして、世帯単位の支援ということについての論点も出していただいておりました。
説明が長くなりましたけれども、資料2は以上でございます。
続きまして、座長からも御紹介がありましたけれども、クリップどめで机上配付のみ構成員限りという資料を御用意しております。クリップを外していただきまして、2枚目が図で、3枚目が字のものでございます。並べてご覧いただければと思います。
就労支援につきまして、今ほど御説明した論点整理(案)の中でも、地域資源の中で地域ごとに展開を考えようという方向性を御議論として出していただいていたかと思います。
その際、これまでの5回の議論の中でも、恐らくは自治体の地域性、つまり人口規模、事業所数の違いを暗黙のうちに共有してきたのではないかと思うわけでありますが、本日の議論の素材ということで試み的にそれを見える化した見取り図というものをつくらせていただきました。それが2枚目の図のほうでございます。
あくまでこれまで5回の検討会で事務局からお出しした資料、あるいは構成員から御紹介のあった事例で、どういうエビデンスを見てきたかというものをプロットさせていただいていまして、全国網羅的な分析ではありませんし、掲載している自治体につきましても、その自治体の取り組み全部が載っているということでは決してありませんので、タイトルも「試論」とさせていただいていますが、そういう前提でご覧いただければと思います。
プロットしてみるに当たりまして、軸は右から左に人口規模とさせていただいています。事業所数の大小もおおむね人口規模に連動するということがありますので、こういう軸を仮に置いてみたというものでございます。
就労支援の事例というときに、一般就労とか認定就労訓練のような主に雇用を想定した取り組みと、就労準備の体験などの取り組みとありますので、これらはもちろん連続的ではありますけれども、雇用を想定した支援というのをオレンジで置いて、就労準備の就労体験のような地域への入り方というところを緑で下のほうに置いてございます。
オレンジのほうを見ていただきますと、特定産業の御紹介があったものを塗り潰してございます。左半分の自治体については、特定産業とのタイアップが展開の特徴だったのではと思われるのですが、右半分の比較的大きな規模の自治体では、特定の産業名というのは余りお聞きしなかったように思います。これも仮説的に考えれば、事業所数が多くて、さまざまなお仕事があるということのあらわれかもしれないということでございます。
青い枠が左のほうに2つございますが、シルバー人材センター、ハローワークといった労働分野の支援機関と連携して取り組まれているという事例もあったかと思います。
下半分の緑の枠を見ていただきますと、これは就労準備支援事業の事例として御紹介したものでありますが、右から左まで割とどの規模でも、商店街、地域行事という身近な地域資源の中で就労体験先を開拓して支援しているということが見て取れておりまして、もちろん特定の産業名が出てくるところもございますけれども、上のオレンジのようにはきれいには分かれないというようなことが見えてくるということでございます。
この図をご覧いただきながら、もう一枚の字のほうですが、浮かび上がってくることといたしまして、就労支援において、もちろん全国共通の論点もありますけれども、地域での展開を考える際に、ある程度人口規模などの地域性を勘案することも必要ではないかということ。
2つ目のポツは、オレンジの枠を想定したことでありますけれども、一般就労の求人開拓や認定就労訓練を通じた実習など、雇用を念頭に置いた支援というのは、事業所の多い中・大規模の自治体及びその近隣の自治体では比較的取り組みやすいが、現状で取り組みが進んでいる小規模自治体では特徴的な地場産業との連携や企業がポイントとなっているのではないか。
ここから小規模自治体の取り組みを深めていくために効果的な取り組み事例の周知ですとか、地場産業との連携、企業の取り組みを伸ばしていくことが一つの方向性ではないか。その際に、行政の商工部門、まちづくり部門などとの連携をどう進めるかを書いてみたものでございます。
また、当然ながら、こういう特徴的な産業で就労の場が広がればそれでいいということではありませんので、それ以外の場というのも同様に重要でありまして、行政が行う無料職業紹介、ハローワーク、シルバー人材センター、あるいは障害福祉サービス事業所など、認定就労訓練の認定増加に向けた対応ということも含めて後押しができるとよいのではないかということを書かせていただいています。
一番下ですが、緑の部分でありました就労準備支援事業ですけれども、こちらはオレンジの枠のように地域性というよりは、自治体規模、地場産業との連携状況にかかわらず、オーダーメイド型で地域の事業所を就労体験先として開拓するということが浸透しつつあるのではないかということで、この図から見られると思われることを事務局案として整理してみたものでございます。こちらも議論の中で使っていただければと思いまして御準備をいたしました。
以上でございます。長くなりまして申しわけありません。
○宮本座長 御説明ありがとうございました。
御承知のとおり、この検討会では5回にわたって大変多角的で深く、何よりも熱い議論が重ねられてきましたので、これをここまでまとめるのは大変だったのではないかなと、お正月休みも返上だったのではないかなと思います。
もちろん、だからといって議論を手加減されたいということではございませんで、皆様としてはいろいろおっしゃりたいことが多々あるのではないかなとも思います。それを存分に御議論いただければと思います。
その前に、先ほど私、「報告書」という言い方もしてしまいましたが、正確には「論点整理」ということになろうかと思いますが、論点整理について特定のフォーマットというのがあるわけではないと思いますけれども、事務局のほうにこの様式についての確認ですが、大きく個別論点とあって、その次に破線で囲った【現状の評価と課題】とタイトルがつけられたところがあって、その後に【論点】となっているわけなのですけれども、この3つの関係といいますか、つまり、破線で囲った部分は現状とデータだけかというと、必ずしもそうではなくて課題というのも挙げられている。
【論点】のほうは、恐らくこの検討会が発信していくべき課題なのかなと思うのですが、破線で囲ってある中での課題と【論点】として提示される課題の関係ですが、破線の中の課題というのは、恐らくこの制度の趣旨に照らしてデータから異論の余地なく客観的に浮かび上がる課題であって、【論点】のほうは、ある程度議論していかなければならない、多様な価値、あるいは見方も取りまぜた課題の提示の仕方だと、そんな理解の仕方でいいのか。
それから、最終的なアウトプットはこういう形で出そうとされているのか。つまり、こういうデータも記載された形で出そうとされているのか、そのあたりはいかがでしょうか。
○渡邊室長補佐 おおむね今座長が言われたとおりでございまして、点線の枠内にございますのは、現状認識と、その認識を持つときに構成員からの御報告の中で認識を持ったものもございますが、大きくは事務局資料として御紹介をしてまいりましたデータによって現状認識を持っていただいたかと思いますので、それに基づいて確認される、評価できる部分と課題ということで書かせていただきました。当然ながら、やや解釈を伴う部分がついてくるということでございます。
そういう現状認識の中で、この後どうするかという観点で【論点】を枠囲みの外に整理をさせていただいております。当然、どうするかということでありますので、課題とつながるものもございますが、例えば、補助率のことが課題として書かれている節もございますが、補助率が課題であるからできないということはデータではご用意できていないので、点線の中にはないとか、そういったような関係性にはあるかと思います。
最終的にはこの形でまとめていただきたいという思いで本日御用意をしてございます。ただ、全体的に一通りの議論の中ではでこぼこしている部分もあるかと思いますので、今日はその部分について議論をいただけたらいいのではないかと思っております。
○宮本座長 ということでございます。恐らくそうしたフォーマットについても御意見がおありの方がおられるかもしれません。
それでは、議論を始めてまいりますが、例のごとくお一人3分以内で、御発言がある方は赤札を立てていただくという形で進めさせていただきます。
この論点整理は、大きく個別論点、総論の部分と分かれています。どこからでもと申し上げたいのですけれども、少し行ったり来たりが始まってしまうかなと思います。どこからどこまでとは区切りませんが、かつ、区切ることも難しいといいますか、どうしてもいろいろな項目が関連して皆さんの御議論になっていくと思いますので、まず総論とは区切りませんけれども、気持ちの上では前から後のほうに議論を進めていただくという形で御議論いただければなと思います。まず、皆さんから前のほうにかかわる御意見を3分で述べていただいて、別な論点はまたちょっと切り分けて別な3分でお話をいただくという形でお願いできればと思います。
それでは、和田構成員。
○和田構成員 全体に今説明されました中身について、私たちの議論を非常によく整理していただいたなというのが感想です。ずっと見ると、自治体での実際の取り組みもそうなのですが、この事業の場合、就労準備のところが非常に大事だと思うのですけれども、自治体の取り組みが非常に弱い。実際に取り組んでいるところの効果はデータ的にもはっきり出ていて、そこが非常に気になるところです。
オーダーメイド型の就労というのもここの議論の中でかなり出てきて、そういう新しい考え方が非常に大事であると思うのですが、結局、家計相談支援の場合も就労準備支援の場合もそうだったのですけれども、任意事業のほうは自治体がなかなか取り組まない。
自治体の幹部の方に伺ってみると、今の自治体で予算をとるときに、任意事業というものについては全然相手にされない。だから、必要性はわかっているのだけれども、なかなか予算がとれない。両方とも必要だったら、結局は相談のところにくっつけてやっているのです。
この事業全体で考えると、やはり就労準備というものが入ったのは非常に意味があることなので、ここをちゃんと位置づけるということが必要なのではないか。だから、家計相談支援と同じように必須化して一つの流れだと位置づけていく。
これを総合相談の中に全部位置づけるのか、あるいは今のように任意事業となっているけれども、必ずやるのだというやり方をすべきかというのはあると思うのですが、いずれにしても、今までなかったようなきめ細かく対応するという取り組みができるというところをちゃんと位置づけるべきだというのが1つです。
それに関連して、私、高齢者の就労のところで幾つか発言しましたけれども、今の就労準備事業のところで財政的な要件が入っていますが、65歳未満となっているのです。
ところが、実際は、今回出されたデータやいろいろなもので今まで見てきたように、できるところまで働きたいという高齢者は3割いらっしゃるし、皆さん、高齢になっても働きたい。70歳とか、あるいは75歳という人たちを含めて、半分ぐらいの人たちはとにかくできるだけ働きたいとなっているので、この65歳未満という要件については、うんと広げるのか、あるいは働きたいということであればその対象にするのだということも含めて、もっと緩めるというか、広げるということを今回はやるべきなのではないかと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
確認ですけれども、就労支援については、【論点】のところに必須化してもよいのではないかという文言はまだ入っていないですね。
○渡邊室長補佐 そういう御意見はこれまで十分なかったかと思いますので、入れてございません。
○宮本座長 ありがとうございました。
続きまして、生水構成員、お願いします。
○生水構成員 自立相談支援のあり方で2点です。
生活困窮者自立支援法の対象者が、定義において生活困窮者というのは経済的困窮となっています。実際の相談現場ではひきこもりやごみ屋敷等の問題も多く、社会的孤立も含めるなど対象者を広げることが必要ではないかと思います。
もう一点は、個人情報の共有についてです。こちらの【論点】でも税金について挙げてくださっているのですが、ほかの情報についての共有も必要となるところから、支援者間で個人情報を共有して情報収集できるような仕組みが必要と考えるので、この論点もあわせて入れていただきたいと思います。
例えば、野洲市の地域包括支援センターが受けた高齢者虐待相談において、平成27年度は49件ありまして、そのうち生活困窮を原因とするものが16件でした。平成28年4月~12月までは、44件の相談に対して15件が生活困窮原因となっています。
この生活困窮については、本人に年金があっても家族は無職で収入がないとか、または少ないなど、世帯が困窮していることによって適切な介護サービスが受けられないケースや、子どもに年金を搾取されているようなケースがあります。
虐待認定となれば個人情報保護条例の例外規定となって、本人の同意がなくても関係機関での情報共有は可能となりますが、認定されないグレーゾーンについては例外規定とならず、関係機関の情報共有、収集することはなかなか難しいです。
特に世帯支援においては、本人の同意をとることが難しいケースが多くて、生活困窮状態にある相談者の支援については、関係機関が協力して支援のアプローチをするためにも、支援者間で包括的に情報共有できる仕組みが現場では求められているので、ぜひともこちらの論点も入れていただければと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
この論点整理をなるべく豊かにつくり上げていくためにも、今の生水構成員のお話も非常によくわかるのですが、具体的にどこの部分にどのような訂正や付加をしてほしいかという御意見をいただけると、事務局もありがたいのかなと思うのですけれども、第1の経済困窮のみならず孤立もというのは支援の理念のあたりでしょうか。
○生水構成員 そうですね。対象者として挙げていただけるような論点については、相談の対象者というところになってきますので、その箇所に加えていただければと思います。
○宮本座長 両括弧でいくと、どのあたりでしょうか。
○生水構成員 生活困窮者自立支援法における対象者の定義なので理念に加えるのか、また「(1)自立相談支援のあり方」になるのかと思うのですが、どうでしょうか。
○宮本座長 そこは柔軟にということですね。
○生水構成員 はい。
○宮本座長 2番目の関係機関の連携は。
○生水構成員 これは8ページの【論点】の「生活困窮者を受け止める」というところの2に「税や公共料金等を滞納している人」の情報共有として地方税の共有の部分を挙げてくださっていますが、ここの部分を膨らませるような形でと思います。税金等の滞納情報だけではなく、ほかにも支援に必要な福祉情報等もございますから、自立相談や家計相談をする際に支援者間で支援に必要な個人情報の共有ができる仕組みができれば、行政における庁内連携、また行政と委託団体や関係機関との連携における阻害要因が大きく解消されると思いますので、あわせてこちらに入れていただければと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
続きまして、菊池構成員、西岡構成員、森脇構成員の順番で進めさせていただきます。よろしくお願いします。
○菊池構成員 就労準備支援と家計相談支援についてもよろしいでしょうか。
1つ目の就労準備支援事業につきまして、先ほど和田構成員がおっしゃられたことに同感なのですが、家計相談支援のほうははっきり必須事業化の検討ということが出ているのですが、就労が全てであるとは思いませんけれども、就労が自立支援の一つの中心的な目標であることは確かであると思いますので、就労準備支援事業のあり方につきましても、必須事業化に向けた検討を行っていくべきであるといった一文を入れたほうがいいのではないかというのが私の意見です。
その際、資産収入要件の定めにつきましても、16ページの最初の○で「対象者要件のあり方を検討」ということで、方向性としてはよろしいかと思いますが、これも見直しを検討すべきではないかと思います。
この対象者を限定することと、それから、総論部分の3ページの(3)のところで「生活困窮者を含む地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成」するというのがこの法の目指す方向性であるとすれば、そのことと対象者を限定して支援していくということは、やや矛盾する面があるのではないかと思われます。
30ページの「高齢者になる前の支援」のところで「8050」の話がありますが、若いときに支援しないとしても、親とともにだんだん年をとっていくと、結局は支える必要性が生じてくるということをここでも認識しているわけですので、そういう意味でも、より早い段階から支援するほうが、御本人のみならず、社会にとってもよいのではないかということで、この資産収入要件のところを検討するということなのですが、もう少しその趣旨を明確に出すことはできないかなということで、中身は御検討をお願いしたいということです。
家計相談支援についてですが、私、ケースワークの専門家ではありませんけれども、生活保護ケースワークにおける支援と家計相談支援はぴったり重なるわけではないのではないかと思います。
例えば、裁判例では、生活保護費の貯蓄に対するケースワーカーの指導の適法性が争われるケースがあります。有名なのは中嶋訴訟という裁判で、最高裁判決では、保護費を原資として学資保険に加入したところ、その返戻金を収入認定して保護費を減額したというケースにおいて、ケースワーカーの措置が違法とされています。判例は、法の趣旨・目的にかなった目的と態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は収入認定の対象とすべき資産には当たらないとして、自立助長のための一定の貯蓄は認められると判示しています。
ただ、この判断はケース・バイ・ケースで非常に微妙です。こうした意味で、ケースワーカーの指導と、計画的な家計管理の能力を身につけるという観点からの家計相談支援というのは、やはり別立てで仕組みを考える必要があると思います。
その意味で、20ページの一番下の○のところで「生活保護制度の自立支援プログラムの中で位置づける」という文言が入っているのは積極的に評価したいと思うのですが、ただ、自立支援プログラムは任意のプログラムですし、法律上明確な根拠があるわけではない。生活保護法第27条の2ですか、一般的な規定しかないということですので、これは家計相談支援を必須事業化するかどうかということともかかわりますが、本検討会の守備範囲外かもしれませんけれども、自立支援プログラム自体の法的な位置づけの検討も含めて検討していく。生活保護法の改正と連動して、こういった事業についてもしっかり明文化したほうがいいのではないかと思いますので、可能な範囲で少しそういうニュアンスを出していただけないかなというのが意見です。
○宮本座長 ありがとうございました。
特に後のほうの論点は少し技術的な問題もありそうですので、菊池構成員ともぜひ御相談いただき、詰めていただければなと思います。ありがとうございました。
西岡構成員、お願いします。
○西岡構成員 2つございます。1つは就労訓練事業、もう一つは今議論になっています就労準備支援事業についてです。
16ページの「認定就労訓練事業のあり方」について、多分以前議論がありましたが、経済的なインセンティブがあれば拡大するのではないかという議論です。私たちの実践から、経済的なインセンティブというのは人材育成では中小企業にはほとんど意味がないということは確認してほしいです。むしろ技術的な支援やそのインセンティブのほうが重要ではないかということです。
特に中小企業の場合、訓練にしろ雇用型にしろ、当然、途中で採用するケースが多いわけで1人採用といった形で、労働者は1人で職場に入るパターンで、職場での孤立も体験するわけです。
そういう人材を定着支援する場合に、私たちの実践で今テーマになっていることは、事業者側、特に管理職・指導者側向けとか、在職者向けの教育訓練が極めて大事になっています。何気ない一言で就労継続が困難になったり
します。在職者訓練というのは、教育訓練の仕組みをつくったり、訓練者を含めて多様な人材の職場での人事評価の仕組みをつくるということで、企業経営者にとっても形として残るような支援、援助になります。今後、そのような人事政策や環境整備が現場で具体化できるような形で、技術的なインセンティブ、技術的な支援が重要であるということは付記してほしいというのが1つです。
就労準備支援事業について和田構成員から必須化という議論があったのですが、私は逆で安易な必須化というのはよくないと思います。
先ほど、役所というのは何らかの自主財源の出費が求められるとなかなか予算化しにくいと発言がありましたが、自治体の場合ですが福祉部局が言っている限り難しいという論理で言いかえたほうが当たっているかと思います。
それはなぜなのか。法律に書いてあるとか、国が言っているみたいな安易な予算化の話です。
就労準備支援のようなオーダーメイドの事業を推進するには協力する企業等が欠かせない訳で、地元の企業とか商工会、商工会議所が入ったような推進の仕組みができるのであれば、就労準備支援推進に向けた国からのインセンティブを与えましょうとか、財源がついて委託すれば済むような政策ではなく段階的な自治体の努力を求める、地域づくりとしてのアプローチがはめ込まれたものを優先的に認めていこうというやり方がいいのではないか。
一律に必須化するとなると、一番簡単なのは、どこかに委託をして実施してもらえば、それで形としては成り立つ。福祉部局の伝統的なやり方だ。しかしそれでは主体的な地域づくりが形骸化する、地域との関係づくりが乖離してしまう可能性があります。もう少し戦略的な就労準備支援事業なり、就労系のメニューが自治体・地域に根づくような発想で打ち出すのが大事ではないかと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
ちょっと確認なのですけれども、今、西岡構成員がおっしゃった技術的インセンティブというのは、認定就労訓練事業を引き受ける企業にとってのということでよろしいでしょうか。企業にとっての経済的インセンティブよりも、今おっしゃったような技術的インセンティブを重視するべきだということですね。
2番目の論点は、大変悩ましいところというか、大事であって、恐らく西岡構成員としては、自治体の経済部局もかかわっての就労支援の体制ができないまま必須化すると、福祉部局が形の上だけ引き受けて矮小化させていってしまうことを何よりも恐れると。恐らく和田構成員の観点からすると、そうは言っても、まずは必須化しないと事は動かないと。そのあたりをどのように戦略的に考えていくべきなのか、大変大事な論点がお二人の議論の中から見出せるのかなと思います。
森脇構成員、お願いします。
○森脇構成員 地域づくりというところで、直接法の改正、制度の改正というところではとても難しい部門だと思うのですが、この法律・制度が目指すところの地域づくりをしっかりと進めていかなくてはいけないと思います。また、今回、法改正、制度改正をしたとすると、今後の3年間で生活困窮を軸とした地域づくりがもっと具体的に先進事例として挙がってくると思います。
今回の3年間というのは、あくまで制度をどのように動かしていくかというところが中心になってきた部分がありました。これまでの地域づくりを踏まえた上で生活困窮の仕組みをしっかりとやっていけば、こんなに地域づくりが広がったのだということが見えてくると考えられるので、今回の論点整理の中でも地域づくりをしっかりと枠立てていただけるとありがたいと思います。
3ページの法制度のあり方の3つ目に挙がっておりますが、「地域づくり」と一言ではなかなか言いづらい部分はあるのですが、各自治体が描く部分に余りにも差があり過ぎるのが現状なので、法の趣旨をしっかりと広めていかなくてはいけないと思います。では、どのようにイメージの方向性を持っていけばいいかというと、もう片方の地域力強化の検討会が示しているように、地域というものが目指す形のイメージなのかどうか、この辺がこの検討会とどう連動していくのかというと、8ページの終わりから9ページに、地域力強化の取り組みとして自立相談支援機関が包括的な相談機関の中心を担うということが書かれております。
今回の参考資料として出していただいている後ろから2枚目のカラーの地域力強化検討会の下の図のところにも、自立相談支援機関が中心になっています。これだけはっきりと書かれているということを考えると、この制度が目指すところはこうなのですということを常に示せるような形を残していくと、基礎自治体がこの制度・法律を使って地域づくりをしていくときに方向性を見失わないようになると思うので、ここをまとめることができないか提案したいと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
自立支援制度は地域づくりなのだという議論は皆さんから出たのではないかなと思いますが、今の森脇構成員のお話のニュアンスとしては、その割にはそのことが36ページとかなり奥まったところに入ってしまっていて、総論の(3)にもあるのだけれども、いま一つどーんと掲げられた感が得られないということで、ここをもう少し前のほうに根本的な利点として持ってきていいのではないかということなのかなと思います。ありがとうございました。
続きまして、朝比奈構成員、田中構成員、新保構成員、渡辺ゆりか構成員、よろしくお願いします。
朝比奈構成員、お願いします。
○朝比奈構成員 1点は、今、森脇さんがおっしゃったことと重なるのですが、34ページの【現状の評価と課題】の枠組みの中で「支援の理念」ということが改めて確認をされています。ここが極めて重要ではないかと思っていて、これまで子どもや高齢者も含めて、各領域の相談の中で包括的とか総合的というのは耳にたこができるぐらい聞かされてきたのですが、結局、なかなか実態的に前に進んでいないという現状があって、困窮者支援は高齢者や子どもの問題も含みますが、多くは現役世代が中心で、現役世代には子育ての課題も高齢者の介護の問題も降りかかってきて、家庭児童相談室からは親の責任や義務の履行を求められるし、地域包括支援センターからは同居の有無にかかわらず介護をする側のキーパーソンとして役割を求められるという状況の中で、困窮者支援を掲げたこの法の支援の理念が全体化しないと、多分状況は変わらないだろうと思っています。
そういう意味では、自立相談支援の中に並行して地域力強化のことが書かれていて、今、森脇さんは地域づくりの観点からおっしゃったのですが、包括的な相談支援体制づくりという観点からも、もう少し大きく困窮者支援発としてきちんと打ち出しをして、全体化していくような方向性が書き込めないかなというのが1点です。
2つ目は、余り大きな話でもないのかもしれないのですが、18ページの「(3)家計相談支援のあり方」の「基本的な考え方」の1つ目の○のところで「自己認知を持たせる」という表現がちょっとひっかかりました。
「させる」というような表現は、先ほどの法の理念というところとは少し違和感があるのではないか。例えば「自己理解を深めるきっかけになる」とか、そういう丁寧な言葉の使い方を随時していかなければならないのかなというのが1点です。
25ページの「一時生活支援事業のあり方」のところですが、これまでの議論の中で奥田構成員からケアをどうするかという話が出てきていて、そこをもう少し書き込まないと「効果的に自立支援が行われるにはどのようなことが考えられるか」という部分の中身が伝わらないかなと思いました。
私どもの現場でも一時生活支援事業を実施しておりますけれども、相談・面接の場面ではわからない日常的なかかわりの中から本人の能力とかスキルの見立てが深まって、その後のプランの大事なアセスメントの情報が集まってくるということがありまして、単純にハードの屋根を提供するということを超えた一時生活支援事業の重要性をしっかりと私たちとしては理解をし、認識もし、活用もしています。そのことをぜひここで具体的に書き込んでいただきたいなと思っています。
これが最後なのですが、30ページの「高齢者になる前の支援」についてです。高齢者のことを特出ししたので、この項目が必要になったのだと思うのですが、現実に60代前半や50代の方々に対してこれまでの生活のやり方を変えていきましょうと迫るのは極めて厳しい状況もあって、もう少しライフステージ全体を見越しながら、社会教育と言ってもいいと思うのですけれども、これまでもここの先生方といろいろな議論をしていたときに、困るような事態にならないようにどうしようかということは教えてきても、困ったときにどうするかということは教えてきていないというお話があって、そのあたりをここだけで書くのではなくて、もしかしたら総論にも入っていくのかもしれないのですが、社会教育の観点からしっかりとそのことを位置づけていくべきではないかなと思いますので、取り上げ方について検討をお願いしたいと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
これも確認なのですが、今4つ御提起があって、後の3つはどの箇所での書き加えあるいは訂正なのかよくわかったのですけれども、最初の支援の理念にかかわっているというのは、最後のほうに出ているのを総論のところに持っていくべきではないかということですね。
○朝比奈構成員 はい。
○宮本座長 わかりました。これは恐らく先ほどの森脇構成員の議論、生水構成員の議論ともかかわって、ひょっとしたら生活困窮者の定義そのものを法や報告書に書き込んでいくという作業と絡まってくるのかなと伺っておりました。
続きまして、新保構成員。
○新保構成員 それでは、前半部分ということで、16ページの「就労準備支援事業のあり方」と「認定就労訓練事業のあり方」について、お伝えさせていただきます。
先ほどから議論に出ていますけれども、就労準備支援事業の必須事業化については、ぜひ検討課題に入れていただきたいと考えております。今後、就労準備が必要な世帯の方は増えてくると思いますし、先ほど西岡構成員がおっしゃったように、今後、自立相談の就労支援員は企業への支援にかなり力を入れていくことが期待されているということもあります。利用者の状況に合わせた丁寧な支援というところでいいますと、まずは、それをやっていくという方向で検討できないか。もちろん西岡構成員が先ほどおっしゃられたことも本当にそのとおりと思うところでありますので、そのことも考慮ながら必須事業化の検討をぜひしていただきたいということがあります。
今日いただいた机上配付のみの資料の論点の最終のところにも、就労体験先は全国的に自治体規模に関係なく検討できるのではないかという案もいただいていますので、お願いできたらと思う点です。
もう一点は、認定就労訓練事業の認定手続の簡素化・簡便化についてです。この認定事務は都道府県と政令指定都市及び中核市が担っています。一般市がこれを認定したいと思ったときに認定手続がスムーズに進むように、ぜひこの認定事務のあり方を検討していただければと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
認定事務のあり方については、どのあたりに書き込むことになりますでしょうか。
○新保構成員 16ページの真ん中の「認定就労訓練事業のあり方」のところでいかがでしょうか。
○宮本座長 わかりました。
最初の論点は、和田構成員のおっしゃったように、必須事業化を書き込むにしても、西岡構成員の問題意識を何か文言に反映させていくということになるのかなと思います。ありがとうございました。
では、田中構成員、お願いします。
○田中構成員 前回休みまして、第2回~第4回の皆様の速記録を改めて読み返してきて、現場で実践されている方々の発言というのはなかなかすごいなと思っていました。
4ページの最後から2つ目の○の「地域社会・資源との間で開かれた柔軟関係性」ということですが、今日は前回出されたことに対する意見ということで、メリット、デメリット、一体的にしているところとしていないところの差というのを出していただきましたが、あるものを有効に使うという意味では、一体的にできるのであれば、そこを使いやすくしていただくということが1つです。
先ほど森脇構成員がおっしゃられましたけれども、社会的課題として意識するということであれば、地域づくりということを考えたときに、困窮者自立支援というのは地域づくりなのだというところをもっと前面的に表のほうに書くべきではないかという気がしております。
前にも言いましたが、昔、日本のよき時代には「村社会」というのがあったわけですけれども、今、個人主義、成果主義になった中で改めてそういったことに目を向けていこうというときには、早い段階から地域づくりに皆さんが関心を持つということ、地域づくりを考えたときにはそういうことが一方であるのだと、困窮者ということではなくて、地域づくりをしていくことが困窮者を解消していくのだというところの意識づけが前面に書かれてほしいなと思います。
これも森脇構成員がおっしゃいましたが、36ページの「制度評価指標」の3に「中でも就労自立につながる」とあります。KPIの中では仕方のないことなのかもしれませんが、自立という形も、例えば、準備の方もいれば、訓練の方もいらっしゃるわけなので、「就労自立」としてしまうと、一般就労だけというイメージが先行しますので、ここの書きぶりもちょっと考えていただけたらと思います。下の実績のほうでは分かれていますけれども、こういったところへの書きぶりが要るのではないかというのがあります。
もう一つ、ちょっとどうしたものかというのが4ページの(5)です。一時的なことは当然なのですが「本来的に長期継続性のある『住まう』」とありますが、これはどこまでやっていくのかということです。期限設定した支援というのは当然限りがあるわけですから、そういったところでいうと、地域づくりの中で住まうことも含めて暮らしをどう支えるか、どのようにみんなが見ていくのかというところを意識づけるような理念を掲げられておく必要があるのではないかなという気がしました。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
渡部ゆりか構成員からは資料の提出もされておりますので、恐らくかかわらせての御発言かと思います。
○渡辺ゆりか構成員 よろしくお願いします。
各構成員の皆様から就労に関してのことも取り上げられましたので、提出の資料もあわせて、私が感じていることを3点お伝えさせていただければと思います。
もちろん質の高い就労準備、就労訓練の2事業が充実していくということは論を待たないところだと思うのですけれども、私が一つ感じているのは、それに伴って自立相談支援の役割における就労支援機能の強化と充実も必要ではないかなということです。そちらを資料にさせていただいています。
1枚目の資料の左側は国の資料を拝借したもので、皆さん見なれた図だと思うのですけれども、灰色の矢印の一番右の部分、準備や訓練の段階が終わった方が就労につながるところの機能が少し弱いのではないかと感じています。
ここの部分を就労訓練事業の支援員さんが持ち出して後ろに伸ばしていくのか、それとも、自立相談の就労支援がやるべきなのかというところがもう少し明確になっていくといいのかなと思っています。
そのときに特に参考にしたい機能の強化という部分でいけば、障害福祉分野では、今回、私たちが目指していこうと言っている同行や実習の伴走型の就労支援が充実しており、実績も上がっているので、長期就労の観点から見ると、今後、自立支援相談員さんの就労支援が上記の課題を担うためには、障害福祉部門の就労支援のモデルから学び、機能を取り入れていく必要があるのではないか。そこがもう少し明確になっていくといいなと思っています。
それは提出させていただいた資料の裏側のページにも同じことが言われているのですけれども、就労準備、就労訓練がまだ任意事業で充足していないとしたときに、就労にかかわるところが自立相談支援しかない自治体も多くございます。その中で、就労支援というのは、特に準備・訓練、定着に関してはもちろん充足していかなければならないのですが、同行・実習といった寄り添い型の強化を目標にしていくといいのではないかなと思っています。
目標を長期就労、定着に設定し、先ほどから議論にも上がっている企業に対しての受け入れの支援を含めた企業実習や、ジョブコーチができる人材の育成と、就労支援の充実した配置、プラスでいえば、御本人に実習に出向くための交通費と賃金が出る協力金というのが望まれるのではないかなと思っています。
2つ目は、15ページの一番下にもありますように、認定訓練事業においても、支援対象者一人一人に合わせて企業開拓するほうがすごく有効なのではないかと私は思っているのですが、認定訓練事業の事業所登録は、先ほど新保構成員もおっしゃってくださったように、現在は政令指定都市の場合は市が、その他の場合は県が実施することになっていますが、本人を中心とした企業開拓を行う場合、開拓の主体と認定の主体は同じ方が良いのではないかなと感じています。
開拓主体と認定主体が別々であると、認定までにすごく時間がかかってしまって、御本人や企業をお待たせしてしまうことにもなってしまいます。地域の中で丁寧に足を運んで企業開拓をするということがこれからますます大切になってくるので、企業や事業者とチームになるということを考えたとき、企業開拓をした団体や事業所に登録までの手続をできる権限があったほうが、とても有効ですし、また、企業にかかる負担も減って、求人開拓のスムーズな流れがつくれるのではないかと思います。
3つ目は、12ページにございます無料職業紹介事業の実施状況が19.6%というところなのですが、本人に合わせて企業を開拓して、働くことを見越した実習から長期就労につなげようと思ったとき、どうしても無料職業紹介を介する必要があるのですが、ハローワークに登録するのに企業担当者が出向く必要があったり、ハローワークに本人が通う際の、手間や距離など、本人や企業の負担を考えたときに、各自治体が無料の職業紹介機能を持ったほうが小回りがきいて効率もよくて、御本人や企業にも負担が少なくなるのではないかと思いますので、こちらも推し進めていく必要があるのかなと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
後の2つの論点は非常によくわかったのですけれども、最初の就労支援のあり方にかかわって、具体的な書きぶりとしては渡辺ゆりか構成員はどういうことを想定されていますでしょうか。つまり、必須化の議論がこれまで出てきたわけですけれども、自立相談支援事業とむしろ一体化していくことによって、長期就労への連結を確実なものにしていくということになりますか。
○渡辺ゆりか構成員 そうですね。自立相談支援の就労支援の役割として、私が感じているところでは、どうしても窓口支援、キャリアコンサルティング型支援というところに考えが行ってしまっていると思うのです。もちろん就労訓練事業との協力・連携でいいのですけれども、企業実習あるいは企業同行、企業側への受け入れの支援といったところのアウトリーチ型の就労支援が自立相談の就労支援の枠組みの中に明確化されている必要があると思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
そのあたり、先ほど田中構成員からあった評価指標とのかかわりで、自立相談支援の前面に出てくると就労が全てかということにもなりかねないところもあって、その辺の区別と連携が大変難しくなってくるのかなと思います。ありがとうございました。
続きまして、駒村構成員、大津構成員、櫛部構成員の順でお願いします。
○駒村構成員 先ほどいろいろあった地域づくりの議論のところで、西岡さんからお話があったところがやはり非常に気になるところです。
福祉の制度と見られてしまうと、就労支援を義務づけても形式的なことにとどまるのではないかというのは非常に重要なところかなと思っておりまして、今日ここにいるメンバーは、この制度・政策にかかわっている委員ですから、もちろん制度を認知しているわけですけれども、そもそもこの制度が住民や地域の企業、あるいは自治体、特に町村部、あるいは社会福祉法人といったところがどのぐらい認識しているのかというのは、正直言って不安である。この分野とちょっと違う人に話をすると、把握、理解していないような感じがします。
生活困窮者と言った瞬間に、自分の仕事には関係ないのだと思っている人が非常に多いわけです。したがって、生活困窮者というのはこの法律の名前ですから、さすがにそこをという話に行けないと思いますけれども、先ほどの地域づくりのキーワードをもっと早くひっかかるようにしなければいけないと思います。
1の「全国各地の支援を太く大きく育てていくために」というよりは、ずばり地域づくりの手法・ツールにするのぐらいに前へ出して、地域づくりのツールなのだということをはっきりわかっていただいて、これはサブタイトルというのかどうかわかりませんけれども、この総論部分を福祉の政策に限定されたものではないのだということがわかるような形にしていただく。地域づくりのところを、総論部分かどこかに独立した一つの集合体としてはっきり上位のところに出したほうがいいのではないかと思いました。
以上です。
○宮本座長 大変具体的な御提言をありがとうございました。そのあたりはとても大事なところですので、1のタイトルそのものに「地域づくり」という言葉を加えていくということですね。そのことを含めて御検討をいただければと思います。
大津構成員、お願いします。
○大津構成員
16ページの「就労準備支援事業のあり方」のところで2点ほど申し上げます。
和田先生が御指摘されたように、要件について高齢者、65歳未満となっているかと思うのですけれども、16ページの一番下のほうに「高齢者の就労支援ニーズ」というのがあって、「高齢者のうち就労希望がある人には、ハローワークやシルバー人材センター等とも連携しつつ、年齢を問わず」と書かれていることからしても、要件について、65歳未満とすることについてはどうなのかと思います。
さきの1月に日本老年学会のほうでも、65歳以上ではなく75歳以上を高齢者とすべきだといった提言もありますし、和田先生が御指摘のように、国際的に見ても日本の高齢者の就労意欲は高いということから考えても、65歳に区切る合理的な理由というのが少しずつ薄れているのかという気がしておりますので、この要件は16ページの一番上の○のところに資産要件とあわせて見直しの検討というのを入れてもいいのかなと思います。
就労支援事業についても、必須化について課題とするべきであるという議論がありますけれども、宮本先生がおっしゃったように、ただし書きで環境整備等を含めて検討課題の一つというぐらいであれば、少し踏み込んだ自治体の政策が求められるのかなという気がしております。
以上です。
○宮本座長 大変ありがとうございました。
続きまして、長岡構成員のほうからお願いします。
○長岡構成員
皆さんがおっしゃられている地域づくり、特に森脇構成員とほとんど同じなのですけれども、いろいろなところにちりばめられてはいるのですが、理念のところに総論として入れていただくというのは全く同じ意見です。
そのときに、地域力強化検討会のまとめの最後から2枚目の体制のイメージのところで、困窮者支援はどの部分をどのように担っていくのかという関係性とか、位置づけとか、そういうのがある程度わかるような形になればさらにいいのかなと思いましたので、そこだけ申し上げたいと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、櫛部構成員、お願いします。
○櫛部構成員
意見とここはというのと2つ分けたいのですが、私は4~5年前、社会保障審議会の中とモデル事業とこの2年を経過して、最初は困窮者支援というのは生活保護のディフェンシブという言い方をし、あるいは見られ方をし、したがって、水際ではないか、沖合ではないか、官民とは何だと言われてきた議論だったと思うのです。
この2年間やってきて、最初の2ページの○の2番目、3番目、それから、34ページの理念のところを見ると、水際とか沖合とかそういうことではなくて、この精神というのが、いわばやゆといいますか、懸念といいますか、そういうところから離脱したという点で、私は価値がある評価だと思っております。
もちろん自治体の中には901の相談場所があり、福祉事務所は1,200ぐらいあるということですから、それぞれ水際とか沖合ということもあるのかもしれないけれども、少なくともそのことを中心的なこととして考えていないというところが、私はこの3年間なり、2年間の最も大事なところだと思っており、この表現と評価について賛同しています。
1つは就労準備なのですが、お手元にありますように、当事者にとってはどうなのかということを考えたいと思っております。もちろん自治体はいろいろあるわけですが、就労準備の場をつくるということは、この事例の方も、就労準備で格好悪い自分を受けとめたといいますか、そこから人に気づいたり、いろいろな働き方があるのだということに気づいたりして、この人自身が回復したという事例なのです。
事例の最後のほうに記述してありますが、1年たって今はお勤めになっているのですが、この就労準備の場があったおかげで引きこもったり、ただ求人を見て今日はなかったね、明日はありましたねというような日々とか、あるいは周りから何で働かないのだと言われたり、常にそれを考えなければいけない日々から逃れられたということが大事だったとおっしゃっていることを見ますと、この対象者が、先ほど孤立という話がありましたけれども、その広がりに合わせると、就労準備の取り組みが大事になってくるのではないかなと思います。
もちろん必須だ、必須でないという決め方をしたからといってどうだという議論は確かにありますけれども、国研修の中で聞いた話の中でも、例えば、資産要件の部分で監査が怖くて就労準備が使えていないと。それなので、わざわざ市の単費で居場所づくりをして企業の見学に行っているとか、そんな話を聞くと、もう少しそういうことがきちんとできるのかもしれないと思います。
西岡さんがおっしゃる懸念は重々わかっていますが、当事者の可能性と機会をどう保障するかということを考えると、就労準備は大事なことではないかなと思いますし、必須にしたから全て解決するなんて私も全然思っていませんけれども、そういう方向で対象者像というのを押し出していく必要があるのではないかと思います。
それから、報告書案にちりばめられている中に保証人という問題があるのですが、就労のときに保証も必要だと言われることが多々あります。これの書きぶりなのですが、孤立との関係でこの保証というところを浮かび上がらせる新しい保証の仕組みとして、大事だというちょっと抽象的な前提を入れて起こしていただくようにお願いしたいと思います。
つまり、単なる入居のときの保証人とか、そういうテクニカルな話だけではないのだと思っているのです。今までここに日が当たっていなかったわけです。そういう意味で何か起こしていただければなと思っています。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
この後、前神構成員、さらに渡辺由美子構成員にお願いしたいのですけれども、その前に、期せずしてと申しますか、駒村構成員、大津構成員、長岡構成員、櫛部構成員、皆さん、最初の総論のところに地域づくりというのをもう少しきちんと掲げていただきたいと。そうでもしないと、この法律・制度が相変わらず狭い部局の中での業務に終わってしまうのではないか、あるいは西岡構成員の御懸念も現実のものになってしまうのではないかということだと思うのですが、これまでだったらそのような書きぶりというのはなかなか難しかったかもしれませんが、今、地域力強化の議論がここまで全省的な議論になっている段階で、その書き方というのは、どの程度まで前面に掲げることができるのか、事務局、この段階で一言お願いできますでしょうか。
○本後室長 ありがとうございます。
具体的な書きぶりはまたこれから検討させていただきたいと思いますけれども、全体的な方向といたしましては、皆様から御指摘をいただいたとおりかなと思っています。福祉の延長線上という形の地域づくりというだけではなくて、地域全体を考えたときに困窮者というのはどういう位置にあるのか、あるいは困窮者支援はどういう位置にあるのか。そういう視点も含めて、大きな視野でこの制度を位置づけていく必要があるのだということは、制度をつくったときからそういう理念でありましたし、実際に多くの自治体がそれにチャレンジをしてきているという状況かなと思っています。
地域力強化検討会で別に検討しておりましたけれども、まさにその中で出ている議論というのも同じような議論だったかなと思っています。地域全体を見たときに、福祉的な考え方でいうと、これも非常に重要でありますけれども、一人一人の支援をどうしていくかという観点からの地域づくりということと、地域全体をどうしていくかという観点からの地域づくり、これも両方考えていって、そういう姿の中で制度がどうあるのかということを考えていかなければいけないというのが地域力検討会の大きな方向性だったと思います。
そういった全体の大きな流れも含めまして、ここの総論のところで今の御議論を整理させていただければと思っています。
○宮本座長 ありがとうございました。
地域力強化の検討会、地域共生社会論と並んで走っているからこそ、今、構成員の皆さんがおっしゃったような書きぶりは可能になっている。ただ、これも偶然ではなくて、恐らく皆さんの思いや問題意識が積み重なってここまで来ているということは間違いないわけですけれども、ただ、この機会を逃してはいけないということもまた確かでしょうから、ぜひともこれは実現させることができればなと思って伺っておりました。
お待たせいたしました。では、前神構成員、渡辺由美子構成員、お願いします。
○前神構成員
私が皆さんと違うのは、ふだん直接生活困窮者と向き合う仕事をしていないのですが、地域づくりのほうを本業でやっておりまして、この法律ができたときのことをふと思い出してみたら、縦割りでは通らない、分野を超えて横につながっていくための法律ができたのだと聞いたことが頭に残っています。たしか福祉の地平を超えるとまでおっしゃっていたのがとても私は印象的だったので、これは地域をつないでいくものになるなと最初は思いました。
福祉をスティグマにしないというのがすごく大事だと思っていまして、地域の中でいろいろな住民の方とお話をすると、福祉のお世話にはなりたくないという気持ちを持っている方はたくさんいるので、今、福祉ということが特別なものではなくて、誰にでもある暮らしや生活の中の問題であるという認識を持てるような仕掛けも必要なのではないかなと思っています。
今、まち・ひと・しごと創生本部のほうでいろいろな手を打ちながら、地方創生を各自治体が頑張ってやっているところですが、人口減少社会においてどうやって担い手を確保していくかという中で、最初はあちこち移住とかで人を取り合いするようなところで、自治体同士が戦うという感覚だったのが、今はそうではなくて、一緒に組んでやっていこう、私たちの暮らしを豊かにしていくために、幸せな地域生活を送るためにやるのだと意識も変わってきています。
なので、全体の書きぶりをもう少し普通の人にわかりやすくするためには、その辺の取り組みを参考にしながら、親和性のある書き方が必要かなと思っています。
私がこの中で気になっているのが、15ページの真ん中のあたりに就労の関係で1~5と書いてあると思うのですけれども、最初に「人手不足感の強い業界や中小企業」というのが出るのは何となく違和感があるのです。
そうではなくて、今、働き方の考え方とか、仕事というものが今まであったものと大分種類も変わってきていまして、今、地域で何が起きているかというと、新しい仕事づくりというところがどんどん広がっていまして、今まで仕事と認識されていなかったもの、どちらかというと、どこかに勤めてお給料をもらうということよりも、地域の中の新しい役割にお金がついてくるというような収入の得方ということが結構地方で起きているのです。なので、地方に行けば行くほど専門的な社会資源がないので、そこをどうあるものでつくっていくかという発想ととても似ていると思うのです。
人口減少社会の新たなプレーヤーをどうやって増やすかというときに、移住者とかだけではなくて、地域の中にいる人で、今、何かに参画するには個人的な問題が大き過ぎて生きにくさを抱えている人が、その問題を解決することでプレーヤーになっていくのだよ、納税者に変わっていくのだよという考え方が結構普通に話されているのです。
その辺の感覚と余り乖離してしまわないことが大事だと思うので、もし私が書くのだったら1~5を3、2、1、4、5と並べるのです。最初に1が来るのが何となく嫌らしいなという気がします。
あと、仕事づくりとか、働く場づくりみたいなことも入ってもいいのではないかと思っています。
あと1つですが、37ページの最後に「都道府県の役割」が出てくるのですが、都道府県の役割の中に「スーパーバイズ機能」と入れるのもちょっと私は抵抗感があるのです。
昔、機関委任事務時代は、国が決めたことを県が間に入って市町村に言って、またそれを上にというやりとりをしていたときに、監督官庁的な感じの物言いみたいなことをやっていた時期もありましたけれども、今はそれぞれの役割を精いっぱいやりながら、つながり合いながら、できること持ち寄り型の関係に変わっていると思うのです。
一緒にみんな取り込んでいくための取り組み、県内のいろいろな自治体でばらばらに行われていることをいい形で広域的に進めていくというのが本来の県の仕事ではないかと思うので、ここでこういう書き方をすると、市町村の反発にあうという気もしまして、ここの部分は県が取りまとめるという印象にならないほうが今の自治体の関係に沿うと思いますので、そこをちょっと言っておきたいと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
15ページの1~5のところは、恐らく1と3、つまり、中小企業と社会的企業はこれまでは別世界だったのだけれども、今、これが同時に収れんしつつあるという部分もまた見られるのかなと思いまして、そこは西岡構成員的な問題意識と前神構成員の問題意識をうまいこと束ねながら、この書きぶりを考えていきたいと思いますので、ぜひ事務局、そのあたりの問題意識を受けとめていただければなと思います。
続きまして、渡辺由美子構成員、相澤構成員、奥田構成員、菊池構成員の順番で進めていきたいと思います。
○渡辺由美子構成員 私からも2点あります。
1つが、総論のほうにまた入ってしまうのですけれども、櫛部構成員のお話と似ているところがありまして、2ページの2つ目の○で、生活困窮者の実像がわかってきた、今まで見えていなかった人たちが見えてきましたという話がありました。
もう一つは、生活困窮者自立支援法が非常に有効であったということをしっかりと伝えたほうがいいと思っています。
生活困窮者の方々が本当に深刻な生活保護に陥る前に、早目、早目に救っていくことで、早期に介入して早期に予防することが非常に効果があるのだということは、今までやってきた中で成果が見えているので、それを伝えていくということは、生活困窮者自立支援法をこれから太く大きく育てていくために非常に重要なことではないかと思っています。
そういう観点で、住居確保給付金ですとか、一時生活支援資金ですとか、生活福祉資金みたいなものも非常に有効でありますし、就労支援準備事業の資産要件みたいなものも緩和をして、もっと積極的に使っていくべきだということを、子どもたちの学習支援もそうなのですけれども、自立支援法の中で予防とか早期介入ということを推し進めていくべきだということをしっかりと書いたほうがいいのかなというのが一つです。
2個目は本当に個別のことになるのですが、22ページ目に学習支援があるのですけれども、この中で一番下に「高校生に対する支援」というのがあります。これは高校生だけではなくて、高校を中退してしまった方とか、先ほどの資料にもあったように、中卒のままで出たのだけれども、なかなかうまくいかないとか、そういういわゆるユース世代の方々というのが非常に不安定です。サポステはあるのですが、あそこが就労支援みたいなことに固まっている中で、実はその前に学習支援や、生活の支援など、本当は住居の支援とか、そういうものも必要かもしれないと思います。そういうユースの方々という支援対象があるので、高校生だけではなくて、もう少し幅を広げていただくのがいいのかなと思っております。
以上2点です。
○宮本座長 ありがとうございました。
強気の書きぶり、それから、後段の部分は、ぜひ渡辺由美子構成員のお知恵も拝借して書いていったらどうかなと思います。ありがとうございました。
相澤構成員、お願いします。
○相澤構成員 私のほうからも2点御意見を申し上げます。
1点目は、22ページの子どもの学習支援の関係なのですが、3つ目の○の中で「他の学習支援事業との関係をどのように整理するのか」という書きぶりになっているのですが、生活困窮者の学習支援事業と他で行っている学習支援事業が「整理」という書き方をされてしまうと、また省庁の縦割りといいますか、そのようなことを生むのではないかという危惧をしております。
有機的にどのように包括的な支援ができるかという意味でいいますと、どのようにかかわっていけるか、むしろ統合といいますか、どのような形でより事業を膨らませていけるのかという書きぶりのほうがよりふさわしいのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。
2点目は居住支援のあり方についてです。27ページの「住宅手当(家賃補助)」の関係で「国土交通省において検討されている新たな住宅セーフティネットの家賃補助制度に期待しつつ、十分に活用できるよう連携を深めるべきではないか」という御意見がここに書かれていますが、既に国土交通省では新たな住宅セーフティーネットの制度の仕組みについて具体的に随分進んでいるようです。
2月23日には説明会が開かれて、その対象者というのも、書きぶりの中では住宅確保要配慮者として高齢者世帯、障害者世帯、子育て世帯、被災者世帯、低所得世帯、その他外国人世帯等というような具体的な列記も見られますし、住宅に関する補助の関係も、実際の具体的な住居の提供者に補助していくというようなことも示されているところであります。この連携につきましては、国土交通省のほうがかなりもう進んでいるので、十分にあちらからの情報も入れていただいて進めていく必要があるのではないかと思います。この点についてもよろしくお願いいたします。
○宮本座長 ありがとうございました。
相澤構成員からは、国土交通省がどんどん領域を広げているけれども、大丈夫か、最後に生活支援だけ福祉行政が担う機械的な切り分けになっても困るので、ぜひそこももちろん協調しながら頑張ってほしいということだったと思います。ありがとうございました。
続きまして、奥田構成員、それから、菊池構成員には後でお願いしますけれども、その前に野溝構成員にもお願いして、その後、菊池構成員にいきたいと思います。よろしくお願いします。
○奥田構成員 奥田です。何点かあります。
1つは、一番大きな大枠の話なのですが、先ほど生水さんが孤立の観点という話を出されていましたけれども、私もそれがとても今回の法律・制度で一つの目玉だと考えているのです。
例えば、よく説明資料の中に生活保護の手前のセーフティーネットだと位置づけられているのですが、現実的には生活保護制度というのは最後のセーフティーネットになっていないのです。つまり、経済的な面においては要件が図られて、現実的には、生活保護の窓口に行ったけれども、生活保護を利用しなかったという人が何十万人と出ているわけで、そうすると、その後に控えているのはこれなのです。
8つの視点の2のところで私がすばらしい一言だと思うのは、全ての相談を断らないということです。いいことだな、いい言葉だなと思います。今まで制度設計等を考えるときには、誰を受けるか、誰を断るかとやってきたわけですが、今回は断らないのだと。
そうすると、変な話、生活保護を突き抜けて、さらにここで最後のネットを張るというようにも見えるわけです。それはどこかといったら、経済的な問題だけではなくて、孤立の問題であるとか、生き方、生きづらさということも含めてこれが最後になってくる。だからこそ地域という話にもなるということで、そもそもこれは手前のセーフティーネットだったのかという話を根本問題としてやらなければならないのではないかというのが、一番根っこの問題です。
そうなると、それに関連して評価なのですが、36ページ、37ページあたりなのですが、就労と増収ということが評価のゴールになっているわけですよね。それに向かうところとしてKPIがありますよというたてつけになっているのですが、もともとKGI自体はこれでいいのかというのがあって、つまり、ゴールの設定ですね。
パフォーマンスのところで、その途中で関係性が広がったとかなんとかとありますが、それはあくまでも就労と増収に向かうことにおける道行きの評価をしているわけだから、元来、孤立の問題を言ってきたのだけれども、最終的にはKGIのほうが就労・増収になっていく。そのためのパフォーマンスの話、KPIの話になっているということで、具体的に言うと、例えば、このあたりの考え方も含めて、その手前なのかどうなのかという話はやはりまだ議論の余地があるのではないかと思いました。それが1つです。
2つ目は必須か任意かという話で、今日は特に家計と就労準備は必須を増やしましょうとなっているわけで、それは私は実は必須でやったほうがいいのではないかと思っているのです。ただ、その形態のことなのですが、自立相談に付加する形でいくのか、専門性を重んじて別働隊でやるのかというと、私は後者です。これはやはり専門性を重んじて別事業にしたほうがいいと思うのです。これが自立相談に紛れてしまうと、最初に考えた趣旨がなかなか貫徹できないのではないかなとも思います。
もう一つの別の観点で、そもそも論として、事業が多岐にわたることによって、今、全体の半分は直営で、残り半分が委託でされているのです。生水さん、ごめんなさい。別に生水さんのところを何か言っているわけではないのだけれども、先ほどの地域づくりの議論からすると委託が増えたほうがいいと私は考えているのです。
それは、この予算を使って地域に資源を生み出すことができるし、このことだけやっているような事業体ではなくて、これをも使って自主事業をやっているようなところにこの資源で応援してやるということで、それはまさに地域づくりなのではないか。
専門性を重んじるということにおいて、別事業がいいし、別事業にすることによって委託に出しやすいということで、例えば、相談事業は直営でやっているけれども、任意事業に関しては委託に出せる。そのことによって地域資源が生まれるのではないかということにおいて、私は必須を増やす、プラス、委託を増やすという観点はあっていいのではないかと思います。
あと、ちょっと細かいことなのですが、一時生活支援事業のところで「子どものための世帯支援」というのもいい言葉だと思いましたけれども、ホームレスの部分においては、自立相談員のいわばBチームというのがいるのです。皆さん余り認識されていないと思うのですが、自立支援センターにいる自立相談員は自立相談事業の別動隊として特化されているわけです。
同じように一時生活支援事業のシェルター型においても、あるいは子どものための世帯支援においても、自立相談員の別動隊を配置できる仕組みにしたほうが、特に子どもにおいては、学習支援のところと、世帯支援になったら自立相談に戻すというのは、私、現場でやっていて、どうもこれはうまくいかないのではないかなと思うのです。だから、そこに人件費をつけることによって一体化させる。これはシェルターの自立相談員もそうだというのが具体的な提案でもあります。
あと、居住支援のところで居住支援協議会との連携というのが書かれているのですが、私、本音で言うと、この場の議論ではないのですが、居住支援協議会は国土交通省のマターだけれども、これは厚労省も入ったほうがいいと思います。国土交通省と厚労省は両者で居住・生活支援協議会ぐらいのものをやったほうがいいと思っているのです。
ただ、一方で、居住支援協議会の改革というのはあるとしても、もう一つ、居住問題に関しては、民間の事業者との連携というのがとても大事で、例えば空き家情報などは、正直、民間が持っている情報のほうがよほど優れています。アップデートも速い。ですから、連帯保証会社も含めて民間事業者とどう連携をつくるのかということは実は大きいのではないか。やはりそのあたりに触れないと、居住支援をやりますよ、居住支援協議会と連携しますよと、本当にそれでできるのかというのは私はすごく疑問に思っていまして、どうなのかということです。
最後に人材なのですが、私、2年たって心配しているのは、もう既に人材が入れかわってきている。この事業の前に、私、実は社会推進事業費をいただいて研究事業をやらせていただいて、人材育成の答申を出しました。
あのときに、例えばキャリアアップとか、キャリアパスをどう考えるかとか、具体的に言うと、研修ノートというものをつくって、その人がどうステージアップしていくかということをある一定期間誰かが見守ろうではないかみたいなことを提案しているのですけれども、このままいくと、特に直営のところで研修された方は、2~3年たったらいなくなったということになりかねないということです。
だから、やはり人材を長期にわたって育成していくための仕組みをもう一つつくらないと、その年はいいのだけれども、来年はどうなるのか、再来年はどうなるのかというのが見えない人材育成になっていないかというのが1つです。
最後は私の感想なのですが、地域づくりはとても大事なのだけれども、これだけ民衆レベルの意識分断が進んだ時代で、困窮に対するヘイト感情というのはすごいのです。私は今回はこの制度でそこを打ち返さなければいけないと思うのです。これを社会のお荷物だみたいな扱いをするのではなくて、これで本当に社会をつくるのだということで、そういう意味では、困窮者に対するバッシングは許さないというぐらいのことをちゃんと書かないと何も変わらないと思います。
以上。
○宮本座長 ありがとうございました。
今の第2のセーフティーネットとか、その手前の段階というある種の空間的比喩と、今、奥田構成員がおっしゃった居住支援にかかわった民間事業者との連携だとか、まちづくりとか、ここはなかなか空間的比喩が難しいところです。これが最後のセーフティーネットだと言ったときに、なかなかまちづくりという言い方と両立しないところもあったりして、そのあたりは構成員の皆さんが共有している問題意識なのかなと思います。そこをどううまく表現をしていくのか。ひょっとしたら空間的比喩は余り使わないほうがいいのかもしれない。空間比喩ではなくて、今、奥田構成員がおっしゃったことを表現していく方法を工夫したほうがいいのかもしれないなどと思いながら伺っておりました。
野溝構成員、よろしくお願いします。
〇野溝構成員 私の意見が論点の中に取り入れていただいております。ぜひ法改正の中で生かしていただければ幸いに存じます。
その中で2点ほど述べさせていただきます。まず「社会福祉法人の役割」についてであります。35ページの枠囲みの中にも書かれておりますが、私ども社会福祉法人は、社会福祉事業に係る福祉サービスの供給の確保の中心的な役割を果たすとともに、他の事業主体では対応できない様々な福祉ニーズを充足させることにより、地域社会に貢献していくということを目的として事業をさせていただいております。
しかし、全ての社会福祉法人が生活困窮者に対して目を向けて支援をしているわけではありません。
今日まで社会福祉法人の先人の方々が制度のはざまの中で独自の事業を展開してきました。社会福祉法人の中には幾つかの事業を運営する法人もありますが、一法人一施設という法人が日本全国に数々あります。
特に多くを占める保育園では、保母さんは保育業務が主であり、問題になっておりますシングルマザーの生活困窮等の問題等に関する相談業務に係わることはなかなかできない現状であります。
高齢施設、障害施設、保護施設等につきましては、相談員が配置されていますので、私たちはそういった制度の中でしっかり対応をさせていただいております。保育園の状況を考えますと、まさに相談支援がしっかりできるような保育所になっていただかなければならないのではないかと思っております。
今後、社会福祉法人の保育園においても、生活困窮のシングルマザーに対する様々な課題に対応できるようにしていっていただきたいと思います。
もう一点は学習支援です。構成員のご発言の様に、学習支援に関しては、単なる学力向上のみでなく、進路相談のための支援や、その家族の生活支援が出来るような枠組みを作っていただきたいと思います。
そうした学習支援の中で、小学校、中学校と学んだ子ども達が高校入学後、中退したのでは支援になりません。中退することのないように、高校生になっても継続した支援が出来るようにこの制度の中に取り入れていっていただきたいと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
社会福祉法人の協力を促す書きぶりについては、ぜひ野溝構成員にもお知恵を拝借して具体化していければと思います。
菊池構成員と申し上げていたのですが、その前に山本構成員、よろしくお願いいたします。その後で菊池構成員、お願いいたします。
○山本構成員 都道府県の立場から「都道府県の役割」について申し上げますと、34ページの下から35ページの上のところで現状を分析していただいて、37ページで今後の方向性について提案、問題提起をしていく形になっていますけれども、35ページの「バックアップする役割」とか37ページの「スーパーバイズの機能を発揮できる事業の枠組み」をもう少しイメージできるように書けないかということです。
恐らく資料1の5ページで、今回、他分野における取り組みとして専門職チームの派遣や、センターを設置して連絡協議会を開催するということがありますが、困窮者対策でこういう枠組みかどうかはまた今後の議論だと思うのですが、既存の枠組みのこうしたものが参考になるのであれば、点線囲みの【現状の評価と課題】のところで少し記載をしておいていただけると、都道府県の立場から見て何が求められているのか少しイメージしやすいと思います。もしそうしたほうがよろしければ、記載をしていただければ読みやすいと思っております。
その上で、都道府県が支援するときに、まちづくり、地域づくりということに対する支援なのか、本当に困窮という福祉の支援なのか、全体の方向性は出るにしろ、具体的なところはここですぐ結論が出るわけではなく、この後の検討にお任せする形になるかもしれないと考えております。我々は福祉部門の取組を行っているのですけれども、健康福祉部だけでは本当に幅広い支援は当然できませんので、そのあたりの考え方を整理した上で都道府県のバックアップの役割、枠組みづくりを今後議論していただければと思っております。
以上でございます。
○宮本座長 大変大事な御指摘、どうもありがとうございました。
「スーパーバイズ」という表現については、先ほど渡辺ゆりか構成員からも問題提起がございまして、まちづくりにかかわるのだということも含めて、このあたりは工夫が要るかなと思いました。ありがとうございました。
それでは、皆さんの御協力で一巡は終わりまして二巡目になりますけれども、二巡目と申し上げましても、必ずしも皆さんから発言いただく必要はないという二巡目になりますと牽制をしておいて、それでは、菊池構成員、よろしくお願いします。
○菊池構成員 先ほど1点言い残したことがありまして、発言させていただきます。
36ページの一番下の「支援の理念の具現化」の○をもう少し書き込んでいただけないかということでございます。
私は以前、何とかこの法律を権利という枠組みから捉えられないだろうかというような発言をさせていただいたのですが、先ほど朝比奈構成員から御発言があったように、「○○させる」というのは改めたほうがいいというのは私も同感であります。
まさにその辺にあらわれていると思うのですが、ここでの対象になられる方というのは、主体でもある一方で客体でもあるという側面というのは否定できないわけで、それが金銭給付のようなものとはやはり違うわけです。
どうしても客体であるという側面から、本人の生き方や考え方に対する干渉という側面は否定できないわけです。なので、私も憲法25条的ではなくて、13条の幸福追求権とか自己決定権にかかわる部分があるというお話をしたのですけれども、この相談支援という分野を権利あるいは権利利益という切り口から捉えていくのはやはり難しい面があると考えざるを得ない部分があり、今後とも深めていきたいと思っています。
ある意味で権利の裏返しとしての公的責任といった側面から、ここでは公的責任のあり方の見直し、具体的には支援のメニューの充実化、それを裏づける財政的な支援という側面から、今回の見直しというのも一義的には捉えていくことになるのかなと思います。そういった意味での公的な実施責任を支えるものとしての法の理念をきちんと明確にしていくということが大切ではないかと思っています。
もしそういう方向で少し書き込むとすれば、例えば、36ページの一番下の○で「地域づくりといった理念を法定化し」あるいは「明確化し、国・地方自治体・支援現場が常に確認・共有し、支援に具現化していける制度枠組みとそれに見合った財政支援体制を構築していくことが必要ではないか」と。「財政」という文言を入れるのは重過ぎるのであれば、ここでは無理にとは申し上げませんが、もう少しここを書き込んでいただきたいという趣旨です。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
今、赤い札を立てていらっしゃるのが5人いらっしゃいます。残り時間が12分でございます。12を5で割った形で発言いただくのが権利の相互尊重ということになりますので、そこをよろしくお願いいたしたいと思います。
必ず回るという確信のもとに私は進めていきたいと思いますが、上がった順番はわかっていませんけれども、櫛部構成員から順番にお願いします。
○櫛部構成員 菊池構成員がおっしゃったところにもちょっと絡むのですけれども、結局、自由というのがあったとしても、それは希望が持てないといけないのではないか。、相談を断らないという裏側は、見捨てないというか、希望に繋がることではないかなと思うのです。それを書けるかどうかというのはちょっと私もよくわからないけれども、そのように私は思いました。
もう一つは、都道府県とか人材育成です。人材育成というのを理解して進めていく人は少ないと思います。官民共同の研修のやり方ということを、都道府県の責任という形もあるかもしれませんが、この検討会の人たちはみんなそれぞれの地域で研修団になるとかを含めて、そういう人をどんどん増やしていく方向性について、人材研修の中で官民共同型の研修というのを何か起こしていただければいいなと思いました。
あと、私は、地域づくりというのがわかるようでまだよくわからないというのがあります。ある精神科医が密で少なるは自死が多く、疎で多様は少ないということをおっしゃっていて、余り距離感がストロングだとちょっとまずいのかなという感じも一方ではすごくしております。
それから、この中に社会福祉事務所とあるのですが、この理解は千差万別なのではないか。当たり前のように我々は使っているのですが、国の必置規則と実態とは大分違うのではないかというところも少し今後議論をしていきたいところだと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、新保構成員、お願いします。
○新保構成員 まず、33ページの「生活保護との関係」のところなのですが、今2つ○がありまして、支援の一貫性、相談しやすい窓口のあり方という論点が出ていますけれども、もう一点、一体的・協働的な支援のあり方というものが検討できないか、こちらを論点に入れていただけるとありがたいと思います。
例えば就労準備支援事業などは、中で一緒にやっていても、片方には参加費用が保障されているというようなことがあって、その辺のばらつきがないように、かかる経費なども分断されないように検討していただけるとありがたいと思います。
もう一点は、たくさんの皆さんもおっしゃっていますけれども、36ページの一番下の「支援の理念の具現化」のところです。できれば冒頭の1の柱の中に、今、国が示していらっしゃいます「生活困窮者の自立と尊厳の確保」、「生活困窮者支援を通じた地域づくり」という目標を明確に出していただきたいと思っておりました。
特に尊厳の確保ということは、前神構成員からスティグマの話がありましたり、奥田構成員のほうからも排除されたり、バッシングされるということを許してはいけないという話がありましたけれども、ここに尊厳の確保が入っていることの意味はとても大きいと思います。
生活保護も生活困窮者も経済的ないしは孤立で大変な状況にあるという中で、生活保護と困窮者支援が分断されないということも非常に重要だと思います。そういったことも含めまして、論点のところではできれば前段に理念を掲げていただきたい。そして、いつか本当に法文に理念が書き込めるのであれば、本当にそのようになっていっていただきたいというのが願うところです。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
西岡構成員、お願いします。
○西岡構成員 16ページのところで技術的な支援、インセンティブのことを申し上げましたが、就労訓練事業についてです。既に国は広域の就労訓練推進アドバイザーと基礎自治体での就労訓練推進員の配置についてモデル的に補助しています。質の高い訓練事業をどうつくるのかという課題に踏み込んでいると思うのですけれども、この検討会では議論にはなっていませんが、どうだったのか。
推測するに、就労訓練について何をつくったらいいかわからないので、先ほど議論になったように、認定手続きを細かく、きつめにやっておくというような雰囲気だったのでしょうか。要するに、認定訓練事業を受け入れる事業所に何を応援したらいいのか、支援策は何かが見えない中でスタートしている。今年度せっかくモデル的にその課題に踏み込んでおられるわけなので、その結果を踏まえて次のステージや推進策あるいはあり方については、議論をしていただいたらと思います。
以上です。
○宮本座長 ありがとうございました。
前神構成員、お願いします。
○前神構成員 こういう場で県の役割が話されることが余りないので、もう少し追加で言いたいのですが、先ほど山本構成員もおっしゃっていたように、県でどういう形でやるのか、福祉部だけでやるのかというようなこともあると思うのですけれども、現場から遠い県だとすると、がちがちの市町村より横とはつながりやすいと思うので、他分野が連携できるような工夫をすることというようなことを、はっきり書き込むとかではなくて、ニュアンスとして入れてほしいなと思っています。
というのは、愛媛県の資料が出ていますけれども、この虐待対応専門職チームというのは、県は担当者もずっと代わっていきますし、専門職の人がいるわけでもないので、これは外につくって協働事業で実施しているわけです。県がずっとやっているのは場づくりです。連携会議という場をずっと県庁で開催して、県庁に事例が集まるというところだけをやっています。
チームというのも弁護士会と社会福祉士会が出ていますけれども、それ以外の職種の人がいっぱいいます。私もそのメンバーですけれども、私は全然そういう専門職でもないですし、全く違うところに異動します。異動というのはプレーヤーを増やすのにすごくいいことなので、そういうプレーヤーをつくっていく。
そして、先ほど奥田先生もおっしゃっていたように、委託できるのも大事だと思うのです。がちがちではなくて緩やかにサポートできるようなインフォーマルな動きというのをつくっていくというのもとても大事だと思います。
人材育成も他分野の人が参加できるというのが大事ですし、先ほど愛媛県の虐待対応専門職チームと連携会議の話をしましたが、連携会議も構成員を決めてその人に集まってくださいではなくて、いついつやりますので来たい人はどうぞという場でやっているのです。そうすると、行こうと思った人が来て、がちがち福祉の団体なのに来ないところもあるし、それはそれで、その人たちが来ようと思ったときに来ればいいので、そういう緩やかな連携の形をつくっていくというのが少し現場から遠い県にできることではないかなと思っています。
人材育成も、いろいろな人が来ると、全く違う部でそれを取り入れた研修をすることもできますし、自分が経験したのでも、こんなところで生活困窮者のことを勉強すると思わなかったというところで出てきたこともありますし、今勤務しているのは、地域づくりを支援する地域活性化センターという団体ですけれども、こういう考え方ができる人が増えるようにということで、厚生労働省の方にも来ていただいたり、生水さんにも来ていただいたりして、活性化センターの研修でも生活困窮者の自立支援を扱ったりしています。なので、相互乗り入れみたいなことができる機運をつくっていくのが大事ではないかなと思います。
○宮本座長 ありがとうございました。
渡辺ゆりか構成員、お願いします。
○渡辺ゆりか構成員 ありがとうございます。2回目ですし、最後なので早目に終わります。
私は、議論をずっと皆さんとしていて、地域の違いについて考えてきました。今回、事務局の方が自治体規模の観点から見た就労支援と浮かび上がる論点の資料を提出してくださっていますけれども、それはすごく必要な整理だと私も思います。
15ページにまた戻って申しわけないのですが、先ほど前神構成員が2個目の○の1~5の順番に違和感があるとおっしゃっていたのですけれども、実は名古屋市という都市部に拠点を置く者にとっては1番に全然違和感がないのです。
地域で頑張って事業を展開されている中小企業の方々の人材不足というのは、名古屋市においては深刻な地域の問題で、企業の方と私たちと御本人とチームになって、配慮点をお互いに探りながら、事情があって仕事につけていない方をその企業でなくてはならない人にしていくプロセスは、まさに地域づくりだと思っています。ですのでやはり、地域の人口規模の違いと、その取り組み手法には、違いがあるのだと明確に捉えたほうがいいのではないかと思いました。
2つ目なのですが、奥田構成員からも上がりました36ページのKPIの評価のことなのですけれども、3番目の「就労・増収」というのが着地点でいいのかというお話がありました。就労・増収というのは誰かの役に立って働いているということなので、私もとてもいいことだと思うのですが、そこで見逃してはいけないのは、ただ御本人が働けばいいということではなく、就労を入口にした、人への役立ちや社会へのつながりを通して、周りの助けをどれだけ得てもいいので、本人が自分の主導権をきちんと取り戻していくことができたかを、伝えられる指標にしてほしいと思いました。数値化しにくいとは思うのですけれども、就労・増収に加えて、その観点が見える評価指標にしていただけたらと思いました。
ありがとうございます。
○宮本座長 ありがとうございました。
冒頭、私のほうで二巡目、三巡目ありだみたいなニュアンスのことを申し上げておいて、結局、一巡半で終わってしまったのですけれども、もし今発言しておかないと今晩よく寝られないという方がおられるようであれば受け付けますが、大丈夫でしょうか。
○奥田構成員 寝られますが、先ほどの当座のお金がないというところで、生活福祉資金の活用ということに大分集約されて書かれているのですが、議論のときは、もう少し独自でつくのではないかとか、生活福祉資金のほうも、社会福祉協議会さんで独自でつくっている財源のほうが結構使い勝手がよかったみたいなことは報告されていたわけだから、生活福祉資金だけの議論にならないように、もう少し幅広で目の前の必要をその日に手を出せる形というのが、先ほど就労のところと生活保護を分断させないようにという話がありましたが、まさにそれにも絡む話で、そこはもう少し議論が広かったのではないかなという印象がありました。
○宮本座長 ありがとうございました。
それでは、今いただいた御意見を踏まえて、次回は事務局から今の意見を反映させた案を御提出いただくということになります。
座長として一言だけお願いをしておくと、大変よくまとめられたということは冒頭申し上げたとおりなのですが、たくさん出てくるある表現、それは何かというと「連携を深める」という表現なのですけれども、これを半減させていただけないか。
もちろん連携を深めることは非常に重要なのですが、それはもう百も承知で動いているわけなのですけれども、それでも連携が進まないのはなぜかということを考えて、これを阻害している要因であるとか、本気でまちづくりや地域活性化という観点がないから連携に踏み込めていないという現実だとか、そのあたりを踏まえた、もう一歩具体的な書きぶりにしていただけないか。
別に数えたわけではないのですけれども、今、10数個ある「連携を深める」という表現をできれば半減させるような形で踏み込んだ表現にさせていただくと、少しリアルになってくるかなと思います。
それでは、次回の開催の日程について、事務局のほうからお願いいたします。
○金井課長 ありがとうございます。
次回の開催につきましては、3月6日月曜日、16時から18時30分で、場所は全社協の灘尾ホールを予定しております。よろしくお願いします。
○宮本座長 それでは、今日の検討会を終わらせていただきます。今日は全員出席で大変ありがたく思っておりますが、次回もよろしくお願いをいたします。
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