ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 脳卒中に係るワーキンググループ> 第2回脳卒中に係るワーキンググループ 議事録(2017年2月3日)




2017年2月3日 第2回脳卒中に係るワーキンググループ 議事録

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成29年2月3日(金)15:00~17:00


○場所

三田共用会議所 3F 大会議室(A~E会議室)


○議事

○岡田がん・疾病対策課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第2回脳卒中に係るワーキンググループを開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課長補佐の岡田と申します。よろしくお願いいたします。

 今回より新たに御参画の構成員の御紹介をさせていただきます。誠に恐縮ですが、お名前を呼ばれた構成員の方は御起立いただき、一言、御挨拶をいただきますよう、よろしくお願いいたします。日本医療法人協会副会長の馬場武彦構成員でございます。

○馬場構成員 馬場でございます。脳外科医であり、急性期、回復期、慢性期、在宅と全ての施設を運営している立場として、あるいは民間病院の立場として、意見を述べさせていただきますので、よろしくお願いします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 全日本病院協会副会長の美原盤構成員でございます。

○美原構成員 美原と申します。どうぞ、よろしくお願いします。

○岡田がん、疾病対策課長補佐 なお、鈴木倫保構成員は遅れて御参加されると御連絡をいただいております。また、日本看護協会常任理事の川本利恵子構成員、岡山県保健福祉部長の荒木裕人構成員からは、御欠席の御連絡をいただいております。また、今回参考人として、回復期リハビリテーション分野の専門家として、医療法人社団輝生会理事長の石川誠先生、熊本県で脳卒中の地域連携システムの構築に取り組んでこられた、熊本市立熊本市民病院主席診療部長の橋本洋一郎先生に御出席いただいております。石川誠先生は遅れて御到着と御連絡をいただいております。

 続きまして資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、脳卒中に係るワーキンググループ構成員名簿、資料1、検討会、ワーキンググループの進め方()、資料2、脳卒中の回復期・維持期の診療提供体制の考え方()、資料3、橋本参考人の発表資料、参考資料1、現状の回復期の医療資源、参考資料2、厚生労働省医政局指導課長通知「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制について」(平成24)より抜粋、参考資料3、第1回脳卒中に係るワーキンググループにおいて出された意見。また、貸し出し資料といたしまして、第1回の検討会及びワーキンググループの資料を配布させていただいております。こちらは会議終了後、机の上に置いたまま、お持ち帰りになりませんよう、よろしくお願いいたします。資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちまして、撮影を終了し、カメラを納めていただきますよう、お願いいたします。これからの進行を小川座長にお願いいたします。

○小川()座長 それでは、議事に入らせていただきます。前回第1回は、先ほどの資料にもございましたように、8月開催でしたので、大分、間が空いてしまいました。諸般の事情によるものでございます。本日は第2回の脳卒中に係るワーキンググループということで、前回の主題は、急性期の診療供給体制の在り方の骨子に関する検討が主でしたけれども、本日の主題は、回復期~維持期の診療供給体制の在り方について御議論をいただくことになっております。それでは、検討会、ワーキンググループの進め方()につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○石上がん・疾病対策課長補佐 資料1を御覧ください。検討会、ワーキンググループの進め方()です。今まで、平成286月に第1回脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会を開催いたしまして、循環器病の診療提供体制の現状と課題について検討を行いました。また、8月に第1回脳卒中に係るワーキンググループを開催し、第1回検討会における意見の報告とワーキンググループの進め方()を、また、搬送~急性期の診療提供体制の在り方の骨子に関する検討を行いました。本日、平成2923日、第2回脳卒中に係るワーキンググループにおきまして、回復期~維持期/慢性期の診療提供体制の在り方の骨子に関する検討及び、急性期診療と回復期~維持期/慢性期診療間の連携体制の在り方の骨子に関する検討を予定しております。

4月予定の、第3回脳卒中に係るワーキンググループ、また、心血管疾患に係るワーキンググループでは、搬送~急性期の診療提供体制の在り方の詳細に関する検討。5月目処の第4回脳卒中に係るワーキンググループ及び、心血管疾患に係るワーキンググループでは、回復期~維持期/慢性期の診療提供体制の在り方の詳細に関する検討及び、急性期診療と回復期~維持期/慢性期診療間の連携体制の在り方の詳細に関する検討を予定いたしております。

 また、平成296月を目処に各々4回のワーキンググループにおける議論を整理し、「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」へ報告を予定しております。以上です。

○小川()座長 ただいまの進め方につきまして、皆様から何か御意見、御質問等ございましたら、御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。今日は23日ですから、4月に第3回、5月に第4回ということで、中間取りまとめに進むわけですので、よろしくお願いいたします。

 次に、脳卒中の回復期・維持期の診療供給体制の考え方につきまして、事務局より資料2を、また、地域における診療供給体制構築の例といたしまして、先進的な試みを非常にアクティブにやっておられる熊本県の橋本参考人から、資料3で御説明をいただきまして、議論に進めさせていただきます。それでは、事務局からお願いいたします。

○石上がん・疾病対策課長補佐 資料2につきまして御説明させていただきます。脳卒中の回復期・維持期の診療提供体制の考え方()です。1枚目を御覧ください。脳卒中の回復期・維持期における現状について示しております。まずは、脳卒中によるADLの低下に関する現状です。左下の円グラフを御覧ください。脳卒中患者の急性期治療の終了後、退院時の状態には、症状や障害が残らないようなものから、重症の障害を呈するもの、また死亡まで幅広く分布しており、患者によって、急性期医療を行う施設からの退院時の状態が様々であることが分かります。

 また、脳卒中では、急性期の診療を行う施設から回復期リハビリテーションを行う病棟に移行後、回復期リハビリテーション病棟における入院日数の分散が大きく、急性期後のリハビリテーションに係る期間も患者によって様々であることが示唆されます。そのような疾患の特徴がある中、急性期治療の終了後に、集中的なリハビリテーションを行う回復期リハビリテーションの領域につきましては、病床の整備状況や、リハビリテーション従事者の分布が地域毎にばらつきがあることが指摘されております。

 続きまして、スライドの3枚目です。脳卒中の再発予防についての現状です。脳卒中の累積再発率は、初回発作後1年で約12%、5年で35%と報告が出ております。脳卒中のうち、脳梗塞に関しましては、再発予防のために抗血小板薬を内服している患者では1年再発率約4%とされていますが、その抗血小板薬を継続して内服している割合は、1年で50%まで低下するという報告もあり、再発予防治療の継続が十分でない可能性が指摘されます。

 スライド4です。脳卒中は、急性期から回復期、慢性期、維持期まで幅広く対応が必要な疾患ですが、それらの診療間の連携についての現状として、回復期リハビリテーションの開始時期が早いほどADLの改善度が良好で、在宅復帰率が高いこと、また、急性期の医療を行う施設への再入院の原因として、脳卒中の再発や、呼吸器感染症との合併症の併発等があることが指摘されています。

 以上を踏まえて、スライド5に、脳卒中の回復期・維持期における課題()を示しています。1つ目、患者の状態に応じた目標ADL及び、リハビリテーションプログラムを設定し、地域の現状に即したリハビリテーションを提供する体制の構築が必要ではないか。2つ目、急性期から引き続き、再発予防目的の治療を継続できる体制の構築が必要ではないか。また、脳卒中の急性期と回復期・維持期診療間の連携における課題()としては、1つ目、かかりつけ医と、脳卒中診療を主に担当する医師や、回復期リハビリテーションを主に担当する医師が連携して、患者の維持期の経過を診ることができる体制の構築が必要ではないか。2つ目、急性期の病態安定後、速やかに回復期・維持期の診療に移行できる連携体制の構築が必要ではないか。3つ目、脳卒中の再発や、合併症等により病状が増悪した際、適切に急性期時診療と連携できる体制の構築が必要ではないかと課題()を上げさせていただきました。

 これらを踏まえて、急性期~維持期の診療提供体制のイメージをスライドの6に示しております。脳卒中患者の急性期、回復期、維持期に幅広く対応するため、急性期の診療、回復期の診療、維持期の診療がそれぞれの機能を適切に担いつつ、患者情報の共有により、適切に連携を取りながら、地域の現状に応じて疾病管理を行う体制の構築が必要ではないかということを示しています。

 スライドの7ですが、これらの診療提供体制の構築に向けましては、医療施設及び、診療提供体制の評価指標を設定することが必要ではないか、また、適切な評価指標の策定には、さらなる検討が必要ではないかということで、幾つかプロセス指標、アウトカム指標のイメージを挙げさせていただいております。以上です。

○小川()座長 引き続いて、橋本参考人のお話をお伺いします。資料3でお願いいたします。

○橋本参考人 熊本における地域完結型の脳卒中診療態勢構築の取組についてのお話をさせていただきます。30年以上前、1984年から1987年の3年間、国立循環器病センターで脳卒中の勉強を行って熊本に帰ったのですが、当時は発症から23か月たって急性期病院からリハビリ病院に移るという仕組みでした。リハをやっている先輩たちから急性期をやる医師は救急医療の充実に向かっている、リハビリをやっている医師は在宅医療に向かっている、そのバトンタッチが遅すぎるので、3週間でバトクンタッチができないかと、1987年に言われましたが、当時はなかなかうまくいきませんでした。

 次のページは、熊本市における1993年に熊本市民病院に赴任したときに私が感じた脳卒中急性期医療の問題点です。1つの施設に多くの脳卒中患者が集まらないために、大きなチームが組めない零細な診療態制でした。当院は神経内科2人、脳外科1人、日赤と済生会は脳外科が5人ずつで、特に脳卒中専門医、神経内科医が少ない状況でした。急性期から回復期、多くは回復期の前半を診療する「病院完結型」の診療になっており、長々と患者が急性期病院にいるものですから、急性期治療ベッドが不足し、救急車を断わらざるを得ない状況が続いていました。脳卒中専門施設にリハ専門医がいない、リハスタッフが少ないことから、十分な急性期リハが行われていませんでした。当時は安静が脳卒中では必要と考えられていたので少なくともベッドサイドリハビリを早期からするということを決めていたのですが、当時のリハ部長からベッドサイドリハはしないと断わられたという苦い経験があります。そういうことがあって、救急部、集中治療部、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科、循環器内科などの多くの科を持ち、多数の脳卒中患者を24時間いつでも受け入れて、かつ高度先進医療を提供できる急性期脳卒中治療施設が少ない。断わらざるを得ないというのが一番つらかったと思います。

 次のスライドです。一方、私たち神経内科は脳卒中だけを診ているわけではありません。頭痛・めまい・しびれなどの外来診療、脳卒中や痙攣重積、脳炎、髄膜炎などの救急、あと難病も診ないといけませんし、認知症やリハビリテーションもです。これだけの領域を少ない人数で診るために、脳外科の先生たちと組もうということと、他科・多職種とチーム医療をやろうということで、院内システム構築を行いました。脳卒中パスの原型を熊本市民病院で作って、済生会がパスに仕上げたという経緯があります。あと、ストロークユニット化といったシステムの構築を行いました。

 更に、地域の医療資源の有効活用です。新たに病院を創ることはできない時代でしたので、地域にある施設をつなげようということで、かかりつけ医やリハ専門病院との医療連携の中で診療ネットワークを構築しました。右上の図で、急性期病院を中心にした図で申し訳ないのですが、かかりつけ医との前方連携はかなり前から熊本では進んでいましたが、地元に多いリハビリテーション専門病院との後方連携が十分にできていないという問題がありましたし、急性期病院同士の水平連携も不十分であったというのがあります。こういう中で、脳卒中を23週間、急性期でどうにかやっていこうと、地域完結型の脳卒中診療体制構築をやろうと考えました。

 次のスライドです。政策的にも、病院完結から地域完結へいくような流れになっていました。紹介率の向上、外来患者の抑制、在院日数の短縮をやれと20年以上前に病院長が吠えていましたが、これをやると病床稼働率が低下しますので、対応策としては、かかりつけ医との病診連携(前方連携)、それと救急医療の推進、高度先進医療です。一方でDPCの導入、IT化、パス、更に若手医師の獲得と教育もしなければいけないということがありました。私たちがやりたいのは、医療の質を高めたいということですが、医療の質とは何か。早く、安く、安全に、確実に治す。これを脳卒中でやるというのは至難の業なのですが、結果的にはチーム医療でやろうという流れに変わっていったかと思います。

 ここで、脳卒中症例を24時間断わらずに、かつ質の高い診療を継続するためにということで、地域連携システムの構築を皆で考えました。地域医療連携は何のためにするのか。1つの病院で診たほうが、患者は幸せだろうという議論が一時期ありましたが、病院で完結するやり方ですとフルマラソンのようなもので、救急から急性期医療を行って、回復期をやって、維持期在宅までを1つの病院でやるというのは、非常に大変だということで、熊本では地域にそれなりのリハ施設がありましたので、それぞれ救急病院、リハ専門病院、療養病床あるいは施設という所で、駅伝方式でやると、お互い自分たちの得意な分野でやれるし、高校生の駅伝でもフルマラソンのトップランナーと同じぐらい走れるという考え方で、連携の構築を始めました。

 これは脳卒中診療の流れですが、2000年頃に勝手に作った模式図で、上が病院完結型で下が地域完結型です。全体が実は地域完結ということになるのですが、本当は1つの病院で急性期から回復期まで十分にやれる仕組みを、個人的には30年前に作りたかったのですが、そういう時代ではもうなくなっていて、地域にあるリハ専門病院と急性期病院が連携する、この地域完結を目指すということを考えました。

 ところが現実的には、リハ専門病院との連携がうまくいかないということで、1994年に世話人会を開いて、1995年から急性期病院とリハ専門病院の連携の会である脳血管疾患の障害を考える会を始めました。急性期病院の神経内科、脳外科、リハ病院のリハ科の先生たちと年2回、医師と医師以外のメディカルスタッフを加えた200人程度で開催しました。世話人会を頻回に開いて、いろいろな情報をそろえて、方向性を決めて、200人規模の会でドンと2時間から2時間半、皆でデータを見たり議論をしました。基本、患者・家族の満足度向上を図りつつ、私たち脳卒中診療をやっている医療従事者の満足度も上げていこうということを考えました。

 ただ、最初からうまくいくわけはないのです。連携の会の取組のスライドを示しますが、まず、私たち急性期病院からすると、なぜリハビリ病院はすぐに取ってくれないのだろうかと。MRSAは駄目とか気管切開は駄目とか、いろいろな患者が駄目だと言われて、それでは駄目だろうと思っていたのですが、そういう中で文句を言うと喧嘩になりますので、まずはお互いの急性期病院の紹介、院内の取組、リハ病院の紹介、院内の取組をプレゼンテーションしてもらって、知るということ。それと、熊本市民病院から託麻台病院、済生会から回生会とか、急性期から回復期にいった患者の症例のリレー提示を行い、急性期病院ではこうでした、回復期に臨む者、回復期に転院したときで、回復期は実は急性期から得た情報は見ると聞くとでは大違いの患者が来て、非常に苦労したこと、急性期への要望などを提示してもらいした。そのように症例ベースで検討していって、お互いにどうやったら連携がうまくいくかと議論しました。特に下流から上流へのフィードバックが重要と考えました。

 あと、予約からリハビリ病院への転院に1か月ぐらいかかっていた時期がありまして、この患者に適する回復期の病院を23つ同時に挙げて、ダブルブッキング可能として、早くリハ病院に移ったほうが、廃用症候群がなくなるということで、そういうことも一時期したことがあります。それと、急性期病院は大体土曜日がお休みなものですから、リハビリ病院に土曜日に皆で見学に行くことも行いました。20以上の病院を見学しました。

 一方、リハ専門病院からのデータとしては、20年前に、急性期病院へ出戻る3大要因として、脳卒中の再発、重度合併症の併発、あと、がんの見落としが結構データとして上がってきましたので、急性期病院としては、がんを見落とすなと急性期病院で議論しました。あと再発しないようにする。あるいは合併症をどうしても持っておられますから、その合併症に応じて対応できるリハ病院の選定ということも考えられました。それと、急性期病院やリハ病院の陣容を作って公表するとか、あとは医療制度がどんどん変わっていきますから、医療制度に合わせた連携の在り方を常に協議をしていたというのはあります。

 それと、連携を始めた頃に、電話一本で1週間で転院できる仕組み、発症から3週間というのをイメージしていて、これを提案しましたが、なかなかうまくいきませんでした。大体56年かかって、2000年ぐらいで、電話一本で1週間、発症から3週間で転院できる仕組みになりました。

 次のスライドです。急性期病院、大学病院を中心として、熊本赤十字、熊本市民病院、済生会、熊本医療センター、4つの救急病院が脳卒中を24時間受け入れていまして、それを取り囲む地域密着型のリハ病院がどんどん連携の中で育っていってくれました。救急病院は24時間最高の医療をやらなければいけませんが、100km先でも高速道路で来たりとか、宮崎辺りの県境の病院からもドクターヘリで来るということが可能なので、最終的には地元密着のリハ病院がいかに育つかというのが、脳卒中診療で一番のポイントかなと思います。

 次は熊本脳卒中ネットワークの概要です。急性期と回復期の連携は、実は比較的うまくいきました。問題なのは回復期と維持期です。どんなに回復期で頑張っても、在宅に行けない方たちをどう維持期でケアしていくかということで、2003年に神経難病や整形外科疾患も加えた回復期のリハ病院と維持期の病院・施設の連携の会である回復・維持期リハを考える会が立ち上がりました。一方、急性期病院の診療の標準化も要りますので、火の国脳卒中カンファレンスというものを毎月やっておりますし、2007年には地域連携パスを動かす熊本脳卒中地域連携ネットワーク(K-STREAM)を作りました。また最終的に一番重要な在宅ドクターネットを作ってくださいと言い続けて、在宅の方たちは2008年に熊本在宅ドクターネットを作っていただき、いろいろな取組によって熊本の脳卒中診療ネットワークは動いています。

 次に済生会のデータです。このような連携の構築により、非常に急速に急性期病院の在院日数が減少しました。自治体病院である熊本市民病院でも在院日数が減って、救急車を断わらなくて済むような仕組み作りができるようになりました。脳外科、神経内科、整形外科の在院日数がどこの病院も長かったと思うのですが、急速に減って、救急車を断わらない診療体制が構築できました。

 次のページのスライドは、回復期リハ病院である熊本回生会病院のデータですが、平成4年当時は発症から43.5日で転院していたものが、平成7年に連携の会を始めて、平成8年に28.1日、平成10年が23.5日で、平成10年にはほとんどの患者が、発症から4週間以内にリハ病院に転院する仕組みが出来上がっています。

 早く転院すると、本当はアウトカムがよくなってほしかったのですが、アウトカムは変わらずに、リハ病院の在院日数が急速に減っていきました。これはリハ領域の半分笑い話なのですが、泳いでいるイカが急性期病院でスルメ、廃用になってリハ病院に行ってもスルメのままなのが、早期に急性期リハをやりながら、廃用になる前にリハ病院に転院すれば、本当のリハビリに特化できますから、廃用を取り戻さなくていいという形で、ゴールに達する期間を短縮できたと考えられます。それによって、多くの救急患者が救急病院に入院できて、かつ多くの患者が回復期で十分なリハを受けられるという形ができたと思います。

 次に地域連携パスの話です。地域連携パスは一方向型と循環型というのがあります。かかりつけ医との循環型でいくパスも必要なのですが、脳卒中や大腿骨頸部骨折であれば、急性期、回復期、維持期と、一方向に流れていくようなパスが要るだろうと考えました。ただし、急性期が診ているものは疾病、回復期が診ているものは障害、維持期が診ているものは生活で、この違うものをどうやって繋ぐかという課題が生じました。

 実は、私自身は、急性期の在院日数が急速に減って、23週間になった中で、回復期の病院は急性期との連携とともに維持期との連携が必要であるため、脳卒中診療の中核は回復期であるということを常に考えていました。そこで回復期の機能が最大限に発揮できるような地域連携パスを作るためには、回復期が作ったほうがいいということを2006年に提案し、回復期にいろいろと検討いただきました。激論が交わされ策定に1年かかりました。

 急性期のお願いは治療の継続ですので、ベースに診療情報の共有と治療の継続性を担保しながら、脳卒中患者ではリハビリの継続が要となりますので、急性期はしっかりと急性期リハをして廃用にならないようにして、回復期が十分なリハをやって、できるだけ在宅に持っていく。それが在宅に行かない場合は維持期の施設、療養病床で更にリハをやってADLを上げていくという形で、治療の継続とリハの継続の2つでつなげればいいだろうと考えられました。

 次のページです。ただ、リハ病院間で非常に意見の相違があったものですから、ポイントとしては、1、どの症例でも十分にリハを受けられる、リハの切り捨てをしない、2、どの地域でも使える地域連携パス、療養病床とか老健とかも分かるようなシンプルなものにしよう、3、地域で1種類の地域連携パス、すなわち計画管理病院に勝手にやられると混乱しますので、地域で1つのパスを作ろう、4、ゴール設定は、最初から在宅を目指すということを考慮するということ、5現在の院内パスを利用する、ということにし、リハの継続と治療の継続でつなぐことにしました。

 もともとリハ病院で作っていたデータを基に、脳卒中ですと大体1週間ぐらいで安定しますから、1週間で安定したところで、歩ける人、どうにか立てる人、座っているか寝たきりの人を簡単にADL評価して、リハ病院に電話をして、1週間以内に転院します。リハ病院に入ったら3日以内にFIMを評価して、軽度障害リハコース、標準リハコース、重度障害リハコースというコースで在宅を目指します。どうしてもリハ病院で帰れない方は、維持期の病院・施設で標準ケアコースと重度障害ケアコースで、在宅を目指すというようなパスを作りました。

 地域連携パスの患者用です。急性期、回復期、維持期、最終的には在宅をめざします。医療者用は、リハの継続と治療の継続の2つをいかに担保するかということですが、実はリハの継続は、患者・家族が要求しますからうまくいきます。治療の継続がうまくいかないというのが、今の大きな課題かと思います。

 最後のテーマになりますが、最近地域包括ケアシステムを目指しているわけですが、私たちは当初、地域リハビリテーションという立場でネットワーク構築を考えました。地域リハビリテーションとは、障害を持つ人々や高齢者が住み慣れた所で、そこに住む人々とともに、一生安全に生き生きとした生活が送れるよう、医療、保健、福祉を生活に関わるあらゆる人々がリハビリテーションの立場から行う活動の全てを、地域リハビリテーションと言います。要介護状態の軽減、介護予防を図るためには、予防的なリハ、急性期リハ、回復期リハ、維持期リハを量的にも質的にも地域ごとに整備することが必要です。

 基本的に在宅を目指すわけですが、在宅で何がポイントかというのは、急性期しかやっていないもので分からなかったのですが、地域連携パスを作るときに、在宅をやっている方、リハをやっている方にいろいろ聞きました。在宅の勝負は最初の3か月です。3か月で、歩いていた人が寝たきりなるので、在宅にいくときには必ず退院時ケアカンファレンスあるいは退所時ケアカンファレンスをやって、在宅の3か月のプランをしっかり作るということと、以後は過介護にならないようにしていくというのがポイントになります。在宅の場合は、いろいろな地域のシステム、医療資源、介護資源を使って、在宅でサポートします。

 地域連携パスというのは医療従事者の連携するツールなので、患者・家族に自己管理をしてもらおうということで、初めて補助金をもらい「くまもんの脳卒中ノート」を作成しました。患者・家族でケアマネと一緒に管理してもらいます。アウトカム設定は、脳卒中になった方が再入院しないようにしようということです。再入院で多いのは、最近は再発よりも、転倒骨折、肺炎などの合併症ということで、注意すべき点を書き込んでいます。

 こういう中でネットワークを作っていきながら、熊本の医療連携はなぜうまくいったのかということをいろいろと言われるのですが、熊本大学があって、そこがコントロールしたからうまくいったのだということも言われるのですが、そういう気持ちは全然なくて、やはりリハビリテーションという基盤があって、医者になったときからリハビリに関する教育を受けたというのがあったというのと、先人たちの取組です。あと、地域の医療資源を有効活用したということです。「人・金・物」の時代から、「情報と時間」の時代、すなわち早く情報を仕入れて、どうやったらいいか、早くスケジュールに乗せていくことができたかなと思っています。それと仲間がたくさんいたということと、かかりつけ医と専門医の第一世代の医療連携から脳卒中に特化した第2世代の医療連携をやったということで、循環器は循環器、整形は整形と、それなりのチームが熊本の中でそういう連携をしていました。それと明確なミッションがあったということです。なかなか規模が大きすぎて難しいのですが、いろいろと形を変えながら組織作りをやっていっています。

 一方で、脳卒中診療ネットワーク構築を進める中で、地域リハビリテーション広域支援センターの補助金事業が始まって、これが熊本県全域にできましたし、難病ネットワーク、認知症ネットワーク、高次脳機能障害ネットワーク、回復期の研究会、あるいはそれぞれの科や職種のネットワークがあり、そういうものが知らない間に一体化していって、例えばこの患者は難病のネットワークに乗せたほうがいい、この患者は脳卒中後だけれども高次脳機能障害は問題だとか、私たちがいろいろなネットワークに入ることによって、患者たちをどうにか支援できる仕組みが出来上がりつつあると思います。

 最後のスライドです。地域連携とか地域連携パスは何のためにやっているのだと言われたときに、私たちは地域にいる方が脳卒中になっても、十分な急性期医療とリハビリができるような「脳卒中の均てん化」を目指しているのだなと、今思っています。以上です。

○小川()座長 ありがとうございました。ただいま事務局から、脳卒中の回復期、維持期の診療供給体制の考え方について御説明があり、橋本先生からは、長年にわたって御努力をしてきて、現在非常にうまくいっている熊本における脳卒中診療体制、連携の取組を御報告いただきました。このお話を確認して、議論を進めたいと思います。橋本先生は所用があり、30分ほど前に御退室になる予定ですので、橋本先生への御質問があれば、早めにお願いいたします。

 ただいまの事務局説明、橋本参考人からの御発表について、何か御発言はございませんでしょうか。

○長谷川構成員 とても分かりやすいですが、私はこれまでの脳卒中の急性期以降の考え方というのは、急性期、回復期、維持期という3つのスキームで考えられてきたと。今はありませんが、かつては計画管理病院という形で、3つをつなげればいいという考え方があったわけですが、この考え方は改めたほうがいいと思っています。

 それはなぜかと言いますと、急性期患者は今非常に高齢化をしておりまして、回復期リハビリテーションに必ずしも全ての人が流れるわけではありません。また、高齢化しており、合併症を持った脳卒中の方々は、180日ルールがあるために何とか治療したとしても回復期のリハビリテーションに転院できない。高度医療を行うべき特定機能病院など、大学病院に長いこと入院継続することもあります。あるいはリハビリテーションも全くできないような高度の障害を持った人たちは、どうしたらいいのか。

 私は、九州で医療をやって、大阪でやって、関東でやったことがあるのですが、回復期リハに流れる人の形というのは、地域で全く違いまして、非常に早く、どのような人でも受け取るような地域があるかと思うと、この人は絶対に回復期リハ適応だと思うような人が行けないような地域もありまして、これは地域によって千差万別なのです。

 ですから、回復期以降のことを考えるというスキームの中で、急性期、回復期、維持期ではなくて、急性期から自宅に帰る人、急性期から回復期リハ病棟に行ける人、合併症があって、しばらくしたら回復期リハビリができる人、合併症などでとてもリハビリには乗らない人、これら全てがきちんと評価されないと、全体の脳卒中を把握した形にならないだろうと思います。

 というのは、今、救急車で脳卒中の急性期に来るというよりは、介護系から搬送される事案が増えている状況がありますので、恐らくこれから人口構成が変わってきますので、少し考え方を変えたほうがいいのではと考えております。

○橋本参考人 脳卒中患者のすべてがリハビリの適応があるとはいえないというのは現実的な話なのですが、急性期病院の医療を考えますと、長々と急性期病院の病床を埋められても困るというのがありまして、個人的にはレスピレーターが付いた患者でも取ってくれる病院と仲良くしていました。

 ですから、そういう全身管理ができて、リハビリ機能も持っているような病院を地域にどれだけ作れるか、あるいはいろいろと合併症を起こしそうな方、最近はがんが増えていますので、がんがあって脳梗塞を起こした方を診られる病院も必要です。このような場合は、回復期リハ病棟では難しいので、一般病床でがんの治療をしながらリハビリができる病院が必要です。救急医療の入口の救急に特化していく病院と、リハビリと療養をやって在宅を目指すという方向性が全然違いますので、そういう急性期以降を担う病院がいろいろな形であると、すごくいいと思っています。地域の中にはレスピレーターを1病院で20台見られるとか25台見られるとか、そういう施設が育ってくれると、急性期医療が育ってくれると、急性期医療が壊れなくて済むのかなと。

 常に私は、救急車を1台も断わらない急性期医療をするためにはということを考えて、地域の中にある医療資源をどう結び付けていくかということを考えています。確かに先生が言われるように、地域によってかなり違うというのも現状だと思います。

○小川()座長 地域によって医療資源そのものが全く違うということも当然ありますし、今の長谷川先生の切り口は、脳卒中患者の重症度に応じて行くルートが違うということだと思いますが、それはそれとして、やはり何らかの形の流れを作らないと話の基本は進まないのだと思うのです。ですから、そういう意味で橋本先生が長年にわたって構築してきたシステムそのものは、非常に意味があるだろうと思います。そのほかに何かございますか。

○宮崎構成員 いいお話をありがとうございました。先生はいろいろな所で御講演なさっていて、先生の所ではなくてもいろんな地域を知っていると思うのですが、そういう場合に主体がどこでうまくいっている例が多いのか、例えば医師会が主体なのか、急性期の病院なのか、あるいはリハの病院なのか。先ほど大学の話が出ましたが、そのことを教えていただければと思います。

 もう1つは、いろいろと連携をするときに会議をするわけですが、それなりにいろいろと費用がかかると思います。リハで、OTPTなども参加してくると、そういう費用はOTPTの人たちに負担していただいているのでしょうか。費用の問題はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。

○橋本参考人 最初の質問ですが、どういう形になるかというのは、地域の医療資源に左右されますので、どうしても急性期主導でいかないといけない、あるいは大学主導でいかない所もあれば、尾道のように急性期病院と医師会しかない所だと医師会主導でいって、それが恐らく地域包括ケアの考え方になっていったのだろうと思いますので、地域の医療資源によって変わってくると思います。

 私自身は「熊本のまねをしてください」という話は、地域によって資源が違うので、一切していないのです。熊本における問題点を挙げて、それを解決するために、熊本に少し豊富だった回復期リハ病院をうまく活用させていただいて現在のネットワークが出来上がっており、地域の医療資源をしっかりと把握した上で連携していく必要があると思います。

2000年に回復期リハ病棟ができて講演をさせてもらったときに、すごく面白いことが起きました。回復期病院のドクターが講演すると、回復期の病院から、熊本は回復期に患者をたくさん紹介してくれて羨ましい、うちは急性期からは患者さんが来ないという話があります。一方、急性期病院の立場で発表すると、急性期病院の先生たちからは、うちの地域には回復期の病院が全然なくて困っていると言われます。どうも、急性期は地元に回復期がないと言い、回復期の先生は急性期から紹介してもらえないと言う、地域の医療資源を十分に把握できていなくて、「ない」と言っていた時期があるのかなと思っています。あるものを探していって、そこでうまく連携をしていく。つなげるということが非常に重要なのかなと思いながら、講演をさせていただいた覚えがあります。

 それと、基本的に熊本の連携はくまもんの脳卒中ノート以外は補助金なしでやりました。ただし、研究会をやりますので、そのときに参加費を500円集めて、500人が集まると25万円です。そういうものを経費にして、多くの方に集まっていただいてということで運営してきました。

 熊大の教授から言われたのですが、熊本の連携がうまくいっているのは、補助金が入っていないから、手弁当でやっているので長続きするのだと言われたことがあります。ただ、そこはいろいろなやり方もあるのでしょうけれども、補助金をもらえる宛てがなかったので、自分たちの参加費で運営してきたということがあります。

○美原構成員 橋本先生の試みはすごいと思うのですが、先生が先ほどおっしゃっていた「レスピレーターを付けた患者も、回復期リハ病棟で取るべきだ」とお考えでしょうか。

○橋本参考人 それはちょっと無理ですので。

○美原構成員 そこはすごく重要だと思っているのです。長谷川先生がおっしゃったように、回復期リハビリテーション病棟の目的は何かというと、機能を改善させて在宅に行くという機能であり、そこにそれだけの人的なものがストラクチャーとして配置されているわけです。

 しかしながら、そこに行ってもよくならない患者というのは確かにいるわけです。例えば我々のデータで見ますと、回復期リハビリテーションに行ってよくなる人というのがいるのですが、絶対によくならない人もいるわけです。そういう患者が、本当に回復期リハに行くべきかということを、私は非常に疑問に思っています。それから、非常に軽症な人は少ししかよくならないわけです。

 何が言いたいのかというと、長谷川先生がおっしゃったように、かなり病態によって求められるリハビリテーションの量は変わる。そうしたときに、如何せん、今の180日のモデルがありますが、回復期リハビリテーション病棟においても非常に長くいすぎると思っています。

 我々のデータでは、歩ける人はほとんどが90日以内に歩けるようになります。歩けない人は、何日いても歩けません。これらをずっと診ていていいのかということで、今、急性期と回復期の連携ということを考えたときに、何が規定しているのかというと、急性期側の問題です。

 急性期側の問題としては、先ほどお話がありましたように、なかなか回復期に来てくれないと。いわゆる診療報酬上のものが大きいと思います。何日間は高いから置いておくということです。回復期のほうはどうなのかというと、空けてしまうともったいないからというので、180日置いておくということです。

 これはいい医療をするために、どうしても診療報酬上のインセンティブが付いてくるので、その辺を考えないと、なかなか思うようにはいかないのではないか。これは、特に我々のような民間病院においては、病院経営というのはすごく大きな問題ですので、その辺のことを考えなしに形だけ言っても、なかなか厳しいのかなという印象を持ちました。

○橋本参考人 熊本における地域連携パスのオーバービューというのを見ていただきますと、急性期病院からリハ病院に移るときのADLによって、軽度障害リハコースは12か月、標準リハコースは23か月、重度障害リハコースは35か月となっていて、これは過去のデータからこういう形を作っています。これは検証したことがあるのですが、大体合うということです。ただし、全くの寝たきりの人を回復期に送るか送らないかというと、これは非常に議論のあるところではあります。

○小川()座長 スライドの何枚目ですか。

○橋本参考人 先生のものですと、その下になります。

○小川()座長 分かりました。

○橋本参考人 急性期からリハ病院に移るときこの人がどのぐらいの期間で、この人がゴールに達せられるか。全部が歩けるようになるわけではないですから、例えば車椅子レベルになるだろうと、ある程度の予測を持って連携していくという形で、地域の資源によっては、どうしても最初から回復期に行かずに療養病床とかに流れざるを得ないのでしょうけれども、私たちは少しだけでも回復期の適応があれば、12か月はリハをやって、駄目だったらリハ病院で宣告をしていただいて、療養病床、施設に行っていただくような形で熊本では議論をしてきました。急性期の23週間で、その人の人生が決められるのかという議論もあって、なかなか鋭い批判も受けたこともありまして、チャンスを少しだけでも与えるけれども、ただし、だらだらとはやらないということです。

 それと、地元密着のリハ病院は、例えば回復期だけではなくて、地域包括ケア病棟があったり、以前ですと障害者病棟があったり、療養病床を持っていたり、複合型ですので、一部は急性期病床を持っていて、そこでレスピレータ管理もしてくれたり、幾つかの病床を持つことによって回復期相当の患者を病床によって分けて、ケアしていって、リハに乗りそうだったらリハ病床に移行するとか、そういう形をやってくれている所もありますので、そこは患者の病態、重症度に応じて、今使える病床をうまく活用する必要はあるかなと思います。

○今村構成員 奈良医大の今村です。今、我々は地域医療構想をどうやったら実現できるかという研究班をずっとやっております。熊本が急性期から回復期、慢性期に連携するモデルとして、最も日本で進んでいるだろうと考えております。済生会の副島先生が我々の研究班に入って、熊本モデルは地域医療構想を、今、全て日本に広げれば解決できるかということを研究しております。それだけではとても無理でしょうという見解で、地域医療構想そのものにも無理があるのですが、もし、これをやっていくとしたら何が抜けるかということを2年ぐらい詰めております。その中で、2つ大きな問題があると考えているのは、慢性期をパス化できるかということが非常に難しい問題です。長谷川先生から御指摘を頂いた内容を全てはらんだ問題で、1つのパターンでのパス化は無理にしても何パターン化のパス化ができて、パス化に合わせて病院の配置や基準を作っていくことができるのかというのが1つです。

 もう1つ、たとえそれができたとしても、多分、美原先生の御指摘にも近いと思いますが、再々発とか、既に回復リハに入っている方の再梗塞といった、何回も梗塞を繰り返していく患者さんがおられて、その患者さんを本当に急性期で受けてやっていくのでしょうかという、この2点が大きな問題点として今残っております。正に検討中のことを先生にお聞きするのは非常に心苦しいのですが、我々が苦しんでいる問題について、先生のお考えがあれば教えていただきたいと思います。

○橋本構成員 地域連携パスを作るときに、回復期リハ病院でどんなに頑張っても家に帰れない方たちに対しては維持期の病院・施設との連携が必要になります。先ほどのオーバービューの右側の維持期のリハ病院・施設という所で、維持期はBarthel indexしか使えないということで、回復期でどんなに頑張ってもお家に帰れない方で、Barthel index25点から100点を標準ケアコース、25点以上は在宅を目指せる可能性があり、一方でBarthel index020点というのはなかなか厳しく、在宅は難しいので維持期でケア続けることになります。ただ、維持期でもリハ機能はそれなりに持っていますので、リハビリの量・質が落ちてしまうという、今の診療報酬上の問題があるので、時間をかければ上がっていく方たちがいるところをどうしていくかが、今後の大きな問題かと思います。

 私は維持期の25点以上が何なのかよく分からなかったのですが、車いすレベルでもどうにか1人で御飯が食べられるというレベルで、家に帰れるのかという感じと聞いていますが、その辺のところが、急性期病院の私たちにイメージが沸くような形のスキームとかができてくると、急性期病院がもう少しいろいろ考えながら地域のシステム作りをやることができます。どうしても急性期病院が音頭を取ってしまいますが、回復期とか維持期の先生が言いなりになる必要はなくて、逆に、下流から上流にものを申していく仕組みが必要です。在宅ドクターネットをどうにか作ってくれと私が一生懸命言った理由は、回復期から急性期にものを申せば急性期の医療は変わるのです。ですから、維持期から回復期、在宅から急性期、回復期、維持期にものを申していただければ、地域の仕組みが良くなると考えました。

 ただ、在宅には2つ芸風があると言われて分からなかったのです。それは何にと。この2つの芸風がうまくいかない。がんの在宅と脳卒中、難病の寝た切りの在宅の2つが混じらないと言われて、ああ、そうかと思ったのです。結局、知らないことがたくさんあるということで、こういう所で考えてはいますが、何度も繰り返す方たちで、もう、意識が悪くなって、再発したのか、感染症を起こしているか分からない人たちも救急病院にどんどん送られてくることもありますから、ここ数年の1つの取組としては、Advance directive(事前指示書、事前指定書)があります。今後、再発したり、急変したときに急性期病院に出戻りますかと。出戻ったら、治療しないといけませんので。そういうところまで含めた取組が少しずつ行われ始めていると思います。

○今村構成員 今、先生がお答えいただいた内容は、既に我々の議論の中でも大分やっております。回復期のほうから急性期でやってほしいことは熊本モデルの中でも随分検討されてきた。その中でパターン分けが必要で、がんと大腿骨頚部骨折、脳卒中を分けて考えて、脳卒中への問題として、回復期から急性期でやってほしいことを全て受け入れたとしても、その上で回復期から慢性期に流れるパスが必要ではないかというお話です。

 この部分はなかなか解決しづらくて、その話になぜなっていくかというと、急性期病院から、ある程度決まった症状の方が、行く(転院する)回復期病院によって治り方が随分違う状況があります。渡すときに、こういうパスのパターンの人を渡すのですよ、ということがちゃんと流れていかないと、そこの意思の疎通がうまくいかない。例えばFIMの評価1つにしても、急性期の評価の仕方と回復期の評価の仕方が、実際に読み込み方が違っているというのが現実にあって、言葉を合わせるという次元からパスを作っていかないとしんどいですよねという話の議論になるのです。その中で、先生の御経験をお願いできればと思います。

○橋本構成員 今は連携室ができて、連携室に丸投げして転院が進んでいくのですが、やはり一番重要なのは、医者として、この患者さんがどういう機能を持った回復期が良いのかということを議論しないと、ただ、転院すればいいという形になりつつあるのは困って、やはり回診などで議論するのは、この方はどこに転院予定ですかと聞くと、この人は心臓が悪いから、心臓の治療ができるドクターが居る所がいいよねとか、この人は重度障害だから、時間をかけてリハビリをやって、どうしても帰れなかったら、その施設の中で診れるほうがいいのかもしれないよねとか言って、ある程度選別をするというか、患者さんに合った所も考えていかなければいけないのではないかと。パス化と言いますか、そういう形で全てがうまくいかないのかなという気がして、やはり病院を見学して、この患者にベストなリハビリ病院はどこなのか。一番直近、家に近いリハビリ病院がいいのですが、そこでは無理な場合は別を考えるとか、そういう個別化も必要です。標準化しなければいけないところと、個別化が必要なところもあるのかと思います。確かになかなか難しいと思います。

○小川()座長 ただいまの議論は大変重要な議論で、ただいまの議論について何か更に追加はありますか。

○長谷川構成員 もう1つ、インディケーターを将来的に設定しなければならないということがあります。ワールド・ストローク・オーガナイゼーション、世界脳卒中機構という所がありまして、そこでいろいろなインディケーターのことを考えておられるのです。その考え方の一番重要なことは、脳卒中を起こした人は適切なリハビリテーションを受ける権利があるのだと。これは男でも、女でも、高齢でも、人種でも変わりない。脳卒中を起こした脳卒中生存者には適切なリハを受ける権利があるのだという、そこから出発するべきだとしています。

 先ほど美原先生がおっしゃいましたが、回リハ病棟というのは、1つきちんとした定義があったほうがいいと思います。そうでないとインディケーターは作れないと思います。90歳で5回も6回も脳卒中を起こして、また急性期病院に入ってきたら、その人にとっての適切なリハが行われるようなものでなければいけないというインディケーターを作らないと、地域によって資源も違うのでいろいろなことはありますよねで済ませたら、インディケーターは絶対にできないと思います。

○小川()座長 全くそのとおりで、要するに、脳卒中診療体制を全国で均てん化をするのであれば、やはり、最大公約数のものは何かしらの形で持っていなければ駄目ということなのだろうと思います。

 先ほどの事務局説明の資料256ページ、一番重要な所は、事務局資料の「診療供給体制における課題()」の下から2つ目の○に、「急性期の病態安定後、速やかに回復期・維持期の診療に移行できる連携体制の構築」というのがあって、そのイメージとして下に6ページがあるわけです。非常に適切な説明をしていただいたのが、先ほどの熊本における地域連携パスオーバービューというのが、美原構成員、あるいは長谷川構成員が御指摘されたところを包括しているのではないかと思うのです。

 多分、これをもう少し改編しますと、例えば、熊本における地域連携パスオーバービューの図からすれば、脳卒中急性期病院で、もう寝たきりで、到底回復期リハに行っても効果がないでしょうというのはそのままスキップして、それなりの病院に行くということでしょうし、独歩で比較的軽症な患者さんは、回復期リハ病院にも行かないで、自宅退院というルートもあるのだろうと。そこのところの基本として、基本を確認しておきたいのですが、脳卒中急性期病院を退院するときの重症度に応じて、いろいろな行き方があると思いますが、基本としては脳卒中急性期病院があって、回復期リハ病院があって、最終的に維持期リハ病院があって、在宅という流れに関しては、皆さんの御意見で、こういう流れというのは、確定でよろしいというお考えですか。それとも、それはまずいと。どの辺がどういうふうに。

○長谷川構成員 先ほどから御議論があったように、非常に高齢化してきますので、合併症を持った脳卒中の方もたくさんおられますし、介護系へ行って何回も急性期の病院に入って来られる方も非常に増えております。そうすると、レスピレーターの付いた人も、全部ともかく1回、回リハに行って、それから振り分けるというわけでは今はありません。

 適切なリハというのは何も、歩け歩けとピシピシたたいてやるわけではありません。それは寝た切りの人には寝た切りの人なりのリハビリですが、そこまで考えないと、地域全体のインディケーターの作りようがないと思うのです。ある所では、こういった人は回リハに行けるけど、合併症のある人は行けない地域があるというのでは、インディケーターを全国に広げるというのはなかなか難しい。ですから、急性期、回復期、維持期という3つつなげたら、それで脳卒中の全体像になるというのはよろしくないのではないかと思います。

○小川()座長 全体像になるわけではないのですが、大きな流れというか、例えば、脳卒中を罹患した患者さんの多くは急性期病院で治療して、そして回復期リハ病院で治療して、そして維持期に行って、在宅に流れていくという、例外だけを言っても、なかなか全体像を作ることはできないのです。先生がおっしゃっていることはよく分かります。ですから、当然、急性期、回復期、維持期という流れに乗らない人たちが必ずいるということは置いておいて、多くの方々はこういう流れで行くと在宅まで行って、ある程度うまくいくということで進まないとまずいのではないかと思いますが、橋本先生、どうですか。

○橋本参考人 私自身は実は急性期があって、あと回復期と維持期はワンセットでいいのかなと現実的には思っています。ですから、急性期に23週間ガッと救急治療をやって、すなわち基本的には救急病院にバーッと集めて治療して、半分ぐらいは直接家に帰れますので、帰れない方たちが病態、重症度に応じて回復期に入ったり、療養病床に入ったり、一般病床に入ったりするのですが、そこは地元に密着したリハ機能を持った病院に行けば、1つはレスピレーターが付いていれば一般病床でも診るし、回復期の適応があれば回復期に入るし、あるいは地域包括ケア病棟に入ったりとか、そのような中で在宅を目指しますが、家の都合、いろいろな都合で帰れなければ病院の中にある療養病床とか、隣にある老健とか、場合によってはサービス付き高齢者賃貸住宅など、最近病院の中とか、隣に造っていますから、その中で診ていただいて、在宅を目指す、あるいは居住系を目指します。一方で、急性期病院の中に回復期リハ病棟を作ってしまうと、在宅の視点が抜ける可能性もあるので、その辺が難しいのです。私自身は急性期に特化した病院が、しっかり救急医療をやって、あとは地元の病院がしっかりと在宅まで目指して行くのがよいと考えています。

○美原構成員 今の橋本先生対して、あえて反対的な意見を言います。なぜそうなのかと言うと、ここには割合と急性期の先生しかいないからです。回復期側の意見からすると、先ほど長谷川先生がおっしゃったように、乗らない患者さんが結構多いのです。そして、回復期に回ってきたとき治り切らない。例えば、何度も何度も脳卒中を繰り返して、心臓もガタがきて、心不全状態であるのが急性期から回ってくるわけです。ちゃんと治り切っていないではないですか。これは何をするのと。そういうような患者さんは決して少なくないわけです。

 ですから、それではどうしたらいいのか。確かに、うまくきちんと回復できるような患者さんは、しっかりとしたリハビリテーションを提供し、しっかりと流れに乗せるということはとても重要ですが、今、これだけの高齢社会、あるいはたくさんの障害を持った方が、何度も何度も繰り返して入ってくる方は確かに多くなってきているわけです。それを全部一からげにして、急性期はしっかり急性期をやるのだ、その後はお前たち診ろと言って、急性期以外はみんな一緒だというのは、私は厳しいかと思います。そうしたときにどういうのがあるか。先ほど長谷川先生がおっしゃっていたかもしれませんが、リハに乗るまで、ポスト・アキュートを見てくれる病院というので、病棟という機能がもしかしたら地域包括ケアのポスト・アキュートという機能かもしれないと思います。

 あるいは大学病院が、何度も何度も脳卒中を起こしてほとんど寝た切りに近いような方の急性期を受け入れる病院なのかというと、これはまた私は疑問にも思うわけです。そういうのは正にサブ・アキュートなわけです。

 そういうような方たちを入れる機能というのが、もしかしたら地域包括ケア病棟のサブ・アキュートの機能ではないかと思います。非常に難しいと思うのですが、いずれにせよ、急性期、回復期という流れだけで全部を押しとどめるのは、これだけ高齢化が進んで、たくさんの障害を持たれた方が一律に行くのは少し厳しいのではないかという印象を持っています。

 特に回復期側としては、どうしても急性期の病院というのは大病院ですので、回復機関の声が届かないとおっしゃっていましたが、正にそのとおりで、我々に、どうしてこんなのを送ってしまうのだろうということはないわけではないので、この辺も是非考えていただきたいと思います。以上です。

○小川()座長 ありがとうございます。

○今村構成員 今、御議論を頂いている内容は、地域医療構想が持っている根本的な問題点です。それは高度急性期、急性期、回復期、慢性期という形で、全部の患者さんを括ってしまって整理しようという根本的な問題だと思います。あれをなぜ議論したかというと、これから高齢者の方が増えてきます。高齢者の方の病気が増えてきたときにどうするか。一番不足するのが回復期というという整理になるのですが、この部分は先ほど御指摘を頂いた、正にサブ・アキュートとかポスト・アキュートが増えるということを回復期で括ってしまったために、難しい問題が出てきている。高度急性期から始まる病気というのは、基本的には治る65歳以下の患者さんをベースに考えてきたので、実際に数で多いのは確かに急性期から始まる、回復期につながるラインなので、これが主流です。ただ現実にこれから考えなければいけないのは、高齢者の方で、治らない方が増えてくるということに対しての対策を考えなければいけない。この部分は4つの流れとは別にもう1つ考えなければいけないことだと思います。

 ですから、今の回復期につながる一連のラインと、もう1つ治らない人について、特に高齢者の方々についてはもう一本考えないといけないと私は考えています。

○小川()座長 今村先生のお考えでは、例えばポンチ絵を描くときに、脳卒中急性期病院という括りと、回復期リハ病院という括りと、維持期リハ病院という括りと、そして在宅という流れに関しては、基本的にはそれでいいだろうというお考えですよね。

 しかし、そこに入らない、そこに乗らない患者さんをどうするかというのも、ちゃんと考えておくべきだというお考えですか。

○今村構成員 別に考えて、もう1つ考えたものをどの4つに乗せるか。実はその4つの分類の議論をする際には、そういう議論が1度経られて、一旦ごっちゃになっているのです。ごっちゃになっているから、今、この議論がもう一遍起こってしまうという問題で、昔、5分類あったと思うのです。その中で、サブ・アキュートという亜急性期というのがバラバラになって急性期と回復期に行ってしまったということで、医療現場から見た1分類が消えているという現象があるのです。そこの部分をもう一遍取り出して、別立てで議論をして再整理しないと、議論としてはどうしても抜け落ちる部分が出てくるのではないかという指摘です。

○小川()座長 美原先生のお考えとしては、例えば、今村先生が御説明されたような、急性期、回復期リハ、そして維持期リハというルートでは乗らない患者さんがいて、先ほど先生がおっしゃったレスピレーターをまだしている患者さんを回復期に乗せるのかというお考えですから、それはそれで別なルートもあるという整理の仕方でいいわけですか。

○美原構成員 そうです。おっしゃるとおりです。やはり、当たり前の脳卒中の患者さんと言うといけないですが、そのような患者さんに関しては、ある程度ルーチン化されて標準的な治療法が確立すれば、これは効率的な医療に結び付くと思います。

 しかしながら、これだけ高齢社会が進み、何度も繰り返しているような患者さんを、それに無理矢理乗せるのはなかなか厳しいだろうと。それを無理矢理乗せることは、そういう機能を持っている病院に対して、その機能を十分にいかせないようなことをするからです。ですから、これは効率的ではないと思います。

 例えば、先ほど人工呼吸器を付けた患者さんを、回復期リハビリテーション病棟へ送ることは私は反対です。それはそれが持っている機能ではないからです。そういう機能をどこに求めるのかといったときには、それはもしかしたら今の段階では地域包括ケア病床なのかもしれません。

 長谷川先生が少しおっしゃったかもしれません。良くなるまで、良くならないまでは、急性期が終わったら少しポスト・アキュートで、そのような機能の所に置いてもいいのではないかと、私はこの意見には賛成です。なぜならば、いきなり心不全が治り切っていないのを回リハに持ってこられても困ってしまうわけです。やはり、回リハというのは積極的にリハビリテーションをするという明確な機能があるわけです。そして、在宅に向けるという明確な機能があって、そこに特化してストラクチャーを組んでいるわけです。ですから、それがいきるような患者さんを集めると。患者さんが来るような病棟とすべきであると思います。以上です。

○橋本参考人 実は、このオーバービューで、障害の障を重症の症にしていない理由は、うちは重度障害は診れますが、重症は診れませんという病院があります。例えば、呼吸不全があったり、心不全があったりということで、障害の程度は、普通はリハビリは関係ないのですが、そこの議論が実は心不全があったり、呼吸不全があったりして、重症の脳卒中患者さん、特殊な患者さんたちが当然乗らないということであって、麻痺が強くて、四肢麻痺だけれども、どうにか頑張ってリハビリしますという所はあるので、恐らく、そういう合併症を持って乗らない患者さんたちがいることと、議論を分けていかないといけないかと思います。

 うちは重度障害は診れますが、重症の呼吸不全は診れません。ですから、そういう患者さんたちを一般病床でリハビリもしてくれたりするので、ですから、回復期に全て入りませんから、回復期に適する患者さんたちは回復期に行きますが、回復期に適さない患者さんたちは、地域包括ケア病棟とか一般病床とか障害者病棟、そういう病床を持っている病院があれば、そういう所にお願いできます。無理であれば、急性期病院の中の地域包括ケアで時間稼ぎをして、落ち着いたところでリハ病院へ行くとか、それはリハ病院が持っている地域包括ケア病棟がいいのかどうかというところはあるのですが、どちら側かの地域包括ケア病棟を利用するとか、そういうことになるのかと思います。どうでしょうか。

 繰り返しても、病態が安定していればリハビリの適用がある人は回復期リハに行くでしょうし、適用がなければ直接維持期の施設に入っていくと。これを昔書いたら、急性期の2週間で回復期の適用があるかないか、判断ができるのかと言われたのですが、何度も繰り返し、寝た切りの人が再発しても寝た切りなので、そういう方たちは直接維持期の病床施設に行くことは、当然行われているのだろうと思います。その辺がADLの障害が強いのか、合併症が問題なのかというところで、当然変わってくるかと思います。

○今村構成員 今、御指摘のような点が、うちの研究班でも一番難しいところで、維持期の病棟で脳梗塞を起こした人は急性期に行くのかという、それが一番難しいのです。行かないということは、そこでもう脳梗塞の治療をしないということなので、その判断を維持期の先生にしてもらって、もうやらないでくださいと言うのかというのがあって、それはやはり一旦はサブ・アキュートの所で受けてもらって、CTは撮って、やれることがないか診てから返してくださいと言うのか、本来の急性期から回って来るルートとは別のルートがない限りは、全部急性期に回ったら、急性期は多分破綻するのです。全部維持期で止めてくださいと言ったら、それは診療拒否に近いものがあって矛盾するのです。この矛盾をどう解決するのかというところが、今、多分、現実の問題としては一番難しい問題としてあるのだと思います。その辺の解決策というのは、なかなか思い浮かばないのです。

○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。合併症のある方で、リハビリをやらなければいけない方はたくさんいらっしゃると思います。なおかつ、例えば、和歌山医大のリハビリの教授のように、食道がんで手術が終わった後、翌日から座位にしてさらに歩かせる、あるいは人工呼吸器が付いたままリハビリをするという、そういう場合もあるのと同じように、脳梗塞でも心不全でもそういうリハビリが予後をよくする。合併症があってもリハビリをする。そのことによって、脳の機能が保たれていくということは、大事なことだと思います。脳卒中は、超急性期、回復期リハビリ、維持期、在宅の4つに分けての治療の流れが示されなければ合併症のある方の捉え方は、そのような方が、又、超急性期病院に戻るのはおかしなことで、このような方達の頭のリハビリはやりながら、昔の亜急性期のような施設で肺炎を治して、リハビリに早く戻るように別の扱い方をしなければいけないと思います。やはり、今村先生がおっしゃるように、論点を少し整理していただきたいと思います。

○小川()座長 これはかなり整理が必要ですね。かなり難しい問題だと思いますし、ただ旦に医療の問題だけでもないというところもありますから。

 もう1つは、例えば回復期リハでは、この部分が適用であるという明確なエビデンスはあるのですか。要するに、先ほど美原先生がおっしゃったように、レスピレーターが付いているような患者さんを回復期リハに突っ込んでも効果はほとんどないとか、あるいはそういうガイドラインみたいなものはないのですか。

○石上がん・疾病対策課長補佐 それは脳卒中のということですか。そうではなくて、今の段階では、例えば、こういう患者さんにはリハビリ提供があって、こういう患者さんにはないというのが明確にはなっていないものと思いますが。

○長谷川構成員 現実的にはレスピレーターが付いて転院する脳卒中というのは余りいないのです。何でもいいから付けて、結局は外れなくなってしまってという方は、脳卒中ではそんなにいないと思います。脳炎とか、そういう人たちのほうが圧倒的に多いのです。レスピレーターの話が前面に出てしまって申し訳ないのですが、現実的には余りいないと思います。

 議論が混乱しないようにしておきたいのは、回復期リハ病棟というのが日本にあって、これは日本独特のもので、橋本先生が留学されていたドイツのハイデルベルグ大学で、大学の在院日数が非常に短くなったときに、その近くのリハビリ病院が、実はレスピレーターを56台持って人工呼吸器をつけた人たちも入れるという、回復期のニューロリハビリテーションをする所に変わってきたことがあります。

 日本には伝統的に回復期リハ病棟というのができています。これはとても大切な所で、そこにレスピレーターが付いたままともかくどんどん入れますかというと、それはなかなか厳しいところだと思います。ですから、回復期と言う言葉で大きくひとくくりにしていますが、今多くは回復期リハ病棟に流れるものですから、回復期リハ病棟という括りということからすると、レスピレーターはなかなか入らないということです。

○小川()座長 非常に難しいことで、これをまとめるのも大変難しいのですが、例えば、事務局資料256ページの所をベースにして考えたときに、これと参考資料1の「現状の回復期の医療資源」を合わせたいのです。例えば、参考資料1の現状の回復期の医療資源の1が、理学療法士の10万人値の数ですが、熊本は赤ですから非常に多い。作業療法士も非常に多い。言語療法士もリハビリテーション科の専門医も極めて多いという状況の中で、理学療法士は86人以上です。これより半分以下の所が青や緑になっているわけで、東北、関東を含めて、この辺が非常にこの資源が低いわけです。

 そういう中で、話を戻して、「ありき」で言ってしまい申し訳ないのですが、例えば、脳卒中急性期病院と回復期リハ病院と維持期リハ病院という、3つのカテゴリーで物事を考えたときに、それが地域で回っていく医療資源として、回復期リハ病床、あるいは維持期リハ病床がどのぐらいの割合であれば、熊本方式のものがあるのだという切り口でお話はできませんか。

○橋本参考人 実は、熊本は意外と脳外科の先生も、神経内科の脳卒中をやってる数は多くないのです。ですから、1回目のワーキンググループにてデータが出ていたと思いますが、血管内治療専門医も非常に少ない所で、急性期を担うドクターが少なく、一方でリハの資源が多いので、早くリハ病院に行って、急性期病院が断わらないでいこうという、地域の医療資源によってそうなっているということです。

 ですから、熊本で回リハに行く平均在院日数が17ぐらいで回っていると思うのですが、全国は今は29まで減っているのですが、そこが回復期に行く時期が、恐らく、その地域の医療資源によって左右されてくるのだろうと思います。

 熊本は一時期、無理矢理回復期に押し出していると非常に批判されたこともあるのですが、実際、データを出してみますと、やはり、重度障害や合併症のある人は急性期が長めに診療して回復期に移り、早く移れる人は早く移しているので、全体として短くなっているので、やはり地域の医療資源によってバトンタッチの時期が変わってくるであろうというところかと思います。

○石川参考人 熊本はやはりモデル的な存在ですが、日本地図でPTOTSTのスタッフの濃厚差ですが、実はこれはベッドが多い所にPTOTSTがたくさん養成されているのです。総ベッド数とPTOTSTの数を比較すると非常に似ているのです。またベッド数の多い所は、回復期病棟のベッド数も多いのです。大体、全国平均、総病床数の5%が回復期です。ですから、ベッド数が少ない所は回復期の医療資源も少ないのです。そこはPTOTSTも少ない。そういう比例関係があります。

○小川()座長 そうなってくると、どうなのですか。これは各県とか、そういう所のベッド数と理解していいのですか。それは急性期も慢性期も全然関係なく、全体の総病床数が多い所は。

○石川参考人 回復期も多い。PTOTSTも多いということになっているのです。多分、それだけ養成する養成校を作ろうという動きが、ベッド数が多い所は非常に活発化しているわけです。

○小川()座長 一方で、ほとんどの都道府県は病床過剰ですよね。要するに、過剰がものすごくひどい所は、OTPTも多いということになるわけですね。そうなってくると、もう社会問題ですね。もう医療の問題ではなくなってしまいますね。

○今村構成員 病床の西高東低は昔から日本に存在する問題で、東北と九州と比べると、病床数で言うと、人口10万単位で倍以上の差がある。場合によっては5倍の差があるという現状があります。これはPTOTSTに限らず、医師も看護師も全て西高東低がはっきりあります。地域医療構想で何が問題になったかと言うと、日本全国平均をとって、その上で医療の需要量をとっていくと、どうしても西日本は病床の必要量に対して、ものすごく病床が多いという話になります。一番あふれてくるのがやはりその回復期以降、特に慢性期の病床があふれてくるという話になります。その慢性期の病床を閉めてくださいというメッセージで伝わったので、随分混乱があったと思うのです。そうではなくて、患者さんがこういう変化がありますよと示したのが、地域医療構想だという整理ではあるのです。

 ただ、そうは言っても患者さんの変化が起こっていくことに対して、病床がたくさんある地域と、少ししかない地域では根本的な差があります。結局、日本全体でこうやればいいですよということができなくなってしまって、都道府県別に計画を作ってやってくださいという話になっています。一部のところでは、病床がたくさんあるのですけれども、どうしましょうかということが問題になっています。青森とかの辺りですと、そもそもお医者さんも看護師さんもいないんですけれども、どうすればいいのでしょうかということで、各地域別に状況が違うという状態だと思います。

 今医療計画で議論がされているのは、一体その各都道府県でどんなことを準備していけばいいか、基本最低限こういうことをやってはどうかという議論が進んでいます。どちらかというと、こちらからもし発信するとすれば、最低限こういうことを目指してはどうでしょうかということを投げていくことが、1つの目標ではないかと思います。日本全体の問題を、ここで是正する議論は難しいと思うのです。この循環器、それも脳卒中の対策について、こういう部分を都道府県で考えてもらわないといけないよということで、学会からできることは、こういうことですよと整理していただくことが必要かなと思っています。

○橋本参考人 やはり、基本的には脳卒中は救急の病気ですから、発症したら必ず救急病院にその日のうちに入院して治療するということが必要な病気なのです。救急病院が断らないということがまず一番にあって、やはりこの回復リハ病棟ができたことにより、非常に脳卒中患者さんたちがリハビリ病院に行きやすくなったというのがあるのです。

30年前とか20年ちょっと前ならリハビリ病院は整形外科疾患を取ってくれる。整形外科疾患だと骨折ですので、肺炎を起こしたり、心筋梗塞を起こしたりしないのですが、脳卒中患者さんは急性期病院で23か月診て、肺炎を起こす人は起こして死んで、心筋梗塞を起こす人は起こして再発する人は再発する。何しろ落ち着いて23か月経った時点でリハ病院に取りましょうという時代がずっと続いていたのですね。

 それはおかしいだろうということで、急性期病床を埋めて、救急病院が回らなくなっていたというのが現実的にあったのです。回復期リハ病棟ができたことにより、実は回復期の病院が、脳卒中をうちは一生懸命取りますので、早く紹介してくださいというのが、2000年からころっと風向きが変わってしまったのですね。ですから、脳卒中患者さんが行き場がないという状況から、きちんとしたリハビリに多くの人を乗せられるようになったという、この回復期リハ病棟の存在はすごく大きいと私は思います。

 ただし、それに乗らない患者さんたちがいるのですけれども、この日本で確立してきた回復期リハ病棟の存在により、救急病院はかなり助かったのだろうと私は思うのです。回復期リハ病棟の存在というのを前提に、しっかりと議論をしていただくと急性期病院としても非常に助かります。急性期治療を希望される人が救急車で来れば、それを受け入れざるを得ません、断わらない医療をやるということで。ですから、そういう回復期病棟を持っている病院が、しっかり電話1本でじゃんじゃん取ってくれるので、実は熊本地震のときにも、熊本市民病院が病院避難をやったあと、うちが取れなくなって、他の病院がものすごく救急車を取らざるを得なくなったのですが、やはり回復期相当の病院と救急病院との連携で、回復期相当の病院が早くいろいろな患者さんを取ってくれることによって、熊本地震による医療の崩壊はなかったということがあります。ですから、非常に助かる存在ではあるかなと思います。

○今村構成員 私は、全て慢性期の視点で考えることがすごく重要だと思うのですね。実際に慢性期の病院で、誤嚥性肺炎で寝ている方が脳卒中を起こしたら、やはり急性期の病院に転床させますかと言ったら、現実それは送るほうも送られるほうも非現実的だと考えると思うのです。これからそういう方がどんどん増えていくときに、そのままでいいのですかという問題が出てくると思うのですね。それについて、これからそこの数が増えてくるわけですから、今までどおりで希望者は救急病院に来てすぐに回復期に行きますといったら、回復期がどんどん詰まっていって身動きが取れなくなるという現象が起きてくると思うのです。

 急性期を、特に高度急性期を担っていた部分が全部受けていくこと自身、多分キャパが超えていくと思うのです。それがキャパを超えないということであれば、それを脳卒中の検討会で超えないから目指すべきであれば、目指すべきであるし、受け切れないというのなら、受け切れないことに対しての対策を考えるべきだと思うのですね。

○橋本参考人 恐らく脳卒中を起こした方の再入院は、再発よりも肺炎とか骨折のほうが圧倒的に多いのです。ですから、脳卒中で以前入院していた方が骨折で手術をするとか、呼吸器内科病棟に入っているほうが今は多くて、再発を繰り返す人たちがどれだけいるのか。かえって、合併症を起こして出戻っていることが多いところが問題なのかなと、私は脳卒中の立場で思いますけれども、いかがでしょうか。その辺がちょっとごっちゃになってないのかなと。それともう1つは、やはりadvance directiveが今後重要だと思います。重症肺炎を起こしたときに、救命するために救急病院に送られれば、当然挿管レスピレーターになるわけで、それを希望しますかというところのほうが、現場ではかえって現実的な問題になっているのかなと思います。

○今村構成員 よろしいですか。地域全体を考えたときに、脳卒中の病態だけをどうするかということが問題なのではなくて、脳卒中を起こしている患者さんの合併症を持っている人たちが、一番困った、対応に困る存在なわけです。この方々を誰が考えるかといったら、考える場所としては私はここしかないと思うのです。ここ以外で、多分他で考えてくださいと言っても、大腿骨骨折のワーキングがあったり、誤嚥性肺炎のワーキングがあるかと言ったら、ないわけです。向こうからすると、脳卒中を起こしている患者さんが起こしている合併症だから、ここで考えてくれないと、となると思うのです。我々、疫学班がそのようなことを考えられるわけではありませんので、実際に専門家の先生の中で、その方針を定めていってもらわないと、これからここも突入していっている、5年ほどの間に起こる変化に対して社会が受け切れなくなると思うのです。それに対しての議論なのだと思います。

○小川()座長 分かりました。これもテーマの中では非常に大きなテーマの1つです。ちょっと視点を変えて、先ほど来ずっと初めからディスカッションをしているのは、回復期リハビリテーションを提供する医療施設というのと、維持期の医療を行う施設というカテゴリーでやっているのですけれども、せっかく石川先生もいらっしゃっているので、例えば維持期の医療を行う施設や回復期リハビリテーション病棟の施設基準というか、それの標準化というのはされているのですか。

○石川参考人 それは診療報酬でしっかりと決まっていますし、今入院では123という3種類、それに各種加算があります。それで大体もう人員配置基準やそれからどういう患者さんをどれぐらい良くして、何日間で何とかしなさい、在宅復帰率は何パーセント以上と、こういうのが明確に決められています。

○小川()座長 明確に決まっているわけですね。ですから、そういう意味ではそれほど地域によって施設によって基本的に差はないのですね。

○石川参考人 回復期リハビリテーション病棟に入ってくる患者さんの代表例は、大腿骨頸部骨折を中心とした下肢の骨折か、脳卒中を中心とした脳損傷ですね。それが代表的なのですけれども、パーセンテージから言うと、脳卒中は50%を切っているのですね。今47%なのです。毎年少しずつパーセンテージは減っているのですね。その代わりに増えているのが骨関節系なのです。問題は、骨関節系はまだまだ在院日数を短くできる可能性がすごくあるのです。今平均大体5758日なのですけれども。脳卒中は平均が70日ぐらいなのです。脳卒中は全然動かないのです。短くしよう、努力しようと言ってもなかなかある一定の期間はかかるのです。整形系が在院日数が短くなれば、脳卒中を受け入れられるスペースはまだ膨らむ可能性があるのですね。ですから、私は回復期リハビリ病棟が足りない足りないというような議論があるようですけれども、それほど足りなくないのではないかなと。今も8万床あるのですけれども。マックス10万床あれば、もう十分ではないかなと考えています。その2025年を目指しても。

○美原構成員 今石川先生がおっしゃっていたように、診療報酬上の回リハというのはある程度決まっているのですが、それが適切であるかという、きちんとしたエビデンスがあるかどうかは僕は疑問に思っています。例えば今は180日までオーケーなわけですけれども、うちのデータで見ますと、例えばブルンストロームで16に分けて、1の人はもう歩けるようになりません。2の人が平均64日で自立します。最長でも110日以内、56だと30日以内に全部自立します。それで帰すわけです。ですから平均在院日数、我々の病院は圧倒的に短いです。

 では何故そんなに長いのでしょうか、というのはやはりベッドを埋めたいからです。ベッドを埋めたいからだろうと、私は思います。つまり、そこのところに、短くすることに対する診療報酬上のインセンティブはないからだろうと思います。

 例えば、急性期病棟は、診療報酬上で平均在院日数を短くすることに関してインセンティブが付きましたから、どんどんベッドが空くようになりました。そして大病院でもケアミックス化しているところも多くあると思いますね。急性期のベッドが要らなくなるからです。同じように、回リハもきちんとというか、何が適正か分からないのですが、そのアウトカムに関して、どのくらい平均でちゃんと歩行が自立するのかという根拠を持って行い、そしてそれに対して診療報酬上に短くするというインセンティブを与えれば、私はきっと短くなると思うのです。いずれにせよ、どう考えても180日というのは全然長過ぎると私は思います。これは我々のデータで、他の病院がどうかということにはならないですが、かなりの症例数を集めたデータですので、結構信頼がおけるのではないかなと思っています。

○長谷川構成員 最終的にインディケーターを作って評価すれば、人口当たりの言語療法士とか、西高東低であるとか、それはあっても当然いいわけなのです。やはりそこには理想的にかくあるべきだというのはないと、インディケーターというのは作れないと思うのです。米国ですと、疾患の診断が確定して病状が安定して治療方針が決まって、そして30分以上車椅子に座れたらリハビリテーションの適用の可能性がある人とか、全ての脳卒中を起こした人はリハビリテーションを受ける権利があるとか。先ほどおっしゃった、維持期から高度急性期に行くべきかとか、その辺の大きなところを議論をしておいて、インディケーターをもって、北海道ではこの内何割だから駄目ですねとかデータが出てくるようにしないと、PDCAサイクルが回っていかないです。ですから、地域どこでも千差万別いろいろあるわと言ったら、現状のままになってしまうと思うのです。

○石川参考人 現実に、今の回復期リハビリ病棟の問題点を出すと、最大の問題点はリハ専門医の不足なのですね。今回復期リハビリ病棟に、リハ専門医が常勤でいるところは3分の1しかないのです。3分の2は、リハをよく分からないドクターが診るわけです。ですから、いろいろなことが起こっているはずなんです。その辺の問題をまずきちんとしないと、整理整頓したリハにはならないということが1つです。

2番目は、維持期のほうのリハです。維持期のリハは老人保健施設とか通所リハとか、そういうところが担うとなっていますが、実際問題として、老健施設にPTOTは平均45名しかいないのです。ですから、とてもそれで対応ができないわけです。そうすると、PTOTSTが最も豊富にいるところは、回復期リハ病棟のある病院なのですね。回復期リハ病棟を持っているところは、訪問リハと通所リハを約7割やっているわけです。先ほど、橋本先生から回復期と維持期をセットで考えてもいいのではないかというお話がありましたけれども、それはそういう意味で多分回復期を持っているところが、もっと積極的に維持期まで手を出して、責任を持つべきだということで、そういう流れは現実的にいいと思うのです。

○小川()座長 そのような人的な資源がそろっているということですね。

○石川参考人 そうですね。

○美原構成員 そこで問題が出てくるわけです。回リハの間は、医療保険上でかなりの単位数のリハビリテーションを提供することができるのですが、在宅に移ると介護保険下になって、提供されるリハビリテーションの量が少なくなってしまうのです。実際に、在宅というのは患者さんの生活する場ですから、回復期リハビリテーション病棟でピークまで持っていく必要はなくて、ある程度自宅で満足できるようになったら、お家という生活の場に帰してあげればいいと思うのです。そしてそこに訪問リハなどで入っていけばいいと思うのですが、そうすることに対して今の診療報酬制度ではなかなか面倒を見てくれていない。そこで断絶する。ちょうど困難期ですね、病院から自宅に戻った時の困難期に対して、十分な手当が行き届かないような、診療報酬制度であると思います。その辺を考えていただければと思います。

○小川()座長 要するに、医療と介護の狭間で診療報酬、あるいは介護報酬が違うと。

○美原構成員 そのことで、十分なリハビリテーションが提供できなくなっている可能性がある。

○小川()座長 そういう問題もあるということです。問題点がどんどん出てきます。

○今村構成員 今の点です。医療と介護の問題の、介護側でなぜリハビリがなかなか入らないかの1つとして、介護には上限があって、月々30万という制限があるのですね。ヘルパーさんは1回行って1,000円なのですけれども、リハビリには1回行くと3,000円とか掛かるのです。そうすると、訪問看護も同じなのですけれども、血圧を1回測りに来てもらうのと、ご飯を3回作ってもらうのが同じ金額という状況があります。その中の選択肢としてどうしても御飯を作るほうを優先して、なかなかリハビリに回らないということがあります。維持期リハに行くことで、実際に制限がかかるという問題が発生していると思います。

○小川()座長 先ほど、美原先生がおっしゃった、要するにインセンティブを与えるというお話もあったのですけれども、そういうことからすると回復期にしても維持期にしても、診療報酬供給体制の何らかの評価指標も議論をしなければならないわけです。この辺に関してどなたか御意見をお持ちですか。これは非常に難しいところだと思いますけれども、それ以前の問題が、項目だけでも非常に大きな問題がたくさんある中で、ここまで議論ができるかということもありますけれども、余り時間がありませんので、一応項目としては出させていただいて、ある程度御意見があればお伺いしておいたほうがいいと思います。何かありませんか。

○長谷川構成員 今日、議論ではっきりディスカッションしてきたのはクリアな回リハ、回復期、維持期に行く線と、ポスト・アキュートのようなことが絶対必要であろうと。最終的に、地域のインディケーターを作るときには、やはりきちんと定義をされていないと、定義されていないものは絶対評価されませんので。では、回リハはどういう人が大体行くところなのか、ポスト・アキュートというのは大体どういう人が行くところなのか、その辺が決まってこないと、インディケーターが作りにくいのではないか、今日の議論を聞いていて、そのような感じがしました。

○小川()座長 なかなかこの委員会から診療報酬改定だとか介護報酬改定のところに提言するものでは到底ないわけです。ただ、そういうものまで含んで、供給体制が成り立っているというところから、いろいろな問題が出てきているのだと思います。今までの全体の議論を通じて何か御発言はありますか。

○宮崎構成員 別のことですけれども、先ほど回リハの病床の数が問題になりましたけれども、私は群馬県で、他の県の状況はそれほどよく知らないのですけれども、結局リハビリの病院は、群馬県においては結構周辺の過疎のところに多いのです。そういうところに例えば前橋市内の方をそういうところにお願いすると、そこで例えば1か月ぐらい家族もなかなかお見舞いに行けないような状況です。そこで一生懸命やってくれるのでそこのリハは問題ないわけですけれども、これから高齢化が進んできたときに、あるいはそれを在宅につなげるときに、やはり地元にないとなかなかうまくいかない。

 リハこそ昔は温泉のあるようなところで、離れたところでやっていたということだったのです。急性期は、多少隣町でも救急車で行けばいいのですけれども、リハこそ地元にいて地元でその後につなげるためにあるべきではないか。偏在がかえって問題になるのではないかと思うのです。私は他の県のことはよく知らないので、その辺は余り問題はないのでしょうか。リハを専門にやっている方に伺いたいと思います。

○小川()座長 どなたか今の御質問に対して、御意見はありますか。

○石川参考人 回復期リハ病棟の制度ができてから、急速に都市部に移行しています。むしろ温泉保養地型のリハ病院は、立ちいかなくなっています。ですから閉鎖しているところが増えて、月ヶ瀬もそうですしいろいろなところが閉鎖や病床削減をしています。その代わり街中にたくさんできるようになってきた。それは急速にそうなっていると思います。

○宮崎構成員 では望ましい方向に行っている。

○石川参考人 そうですね。それから維持期のサービスですけれども、これも似ていて、確かにサービス量はまだ十分ではないと思うのですが、介護保険の居宅系サービスの中で最も急速に伸びているのは、訪問リハビリテーションなのです。この10年間で4倍から5倍に増えたのです。まだ絶対量は少ないですけれども、勢いはあります。問題は通所のリハビリテーションが増えないのです。通所介護ばかり増えて通所リハが増えない。こちらにちょっと問題があります。

○田村構成員 全く今のこの議論とは観点が異なりますけれども。私は看護職なので、看護職の仕事は、診療の補助ということで医師の注射とか医師の指示に従った診療の部分と、療養上の世話という2つがあるのです。療養上の世話は、ADLを向上させるという目標があるのです。そういうことをしなければいけないのが看護職の仕事なのです。人的なPTOTSTがいないということにおいても、そういう部分を看護職がADLの向上という観点から、活用できるのではないかという部分は私から提案したいと思います。もちろん、看護職がこの人にさせても駄目とか、能力の問題とかたくさんあるかもしれませんけれども、今後はそういう部分になっていけるような教育体制ができるといいと思います。

○石川参考人 その話に全く同意見なのですが、回復期リハ病棟にはこう言っては何ですがピンからキリまであるのです。ピンはナースが圧倒的にいいのです。看護の出来が違うというか、正にADLの視点です。自立支援の技術を持っているし、見守りや声掛けが非常に適切です。それがない回復期リハ病棟は成績も悪いのです。ですからPTOTSTの数とかリハの量だけではなくて、看護という問題をおいてリハは語れないですね。

○小川()座長 何かしらの医療行為をやる上において、必ずアウトカムを評価するところがなければこれは進まないわけです。それを今みたいな形でやっていただければ、もちろんいいのでしょうけれども。

○田村構成員 厚生労働省のお役人の前で言うのはあれですが、看護職の教育カリキュラムの中で、脳卒中そのものの教育というのを体系的に組まれていないのです。体系的に教えられていないのです。そういうカリキュラムになっているから、対象者を高齢者とか母性とか成人というふうに見るという概念しかないわけですから、教育の中で疾病を持った脳卒中の患者さんというところが非常に手薄な施設もあります。いろいろな大学あるいは専門学校によって、教育の仕方が違います。教えられ方が違うから、国家試験は受かったけれども、日本の脳卒中の人達を支援する看護師が十分に育っていない。心疾患においても同じように、体系的な部分でそういう項目が、まだ心疾患は循環器の部分で項目としてありますけれども、国家試験もおかしな試験問題の形式になっていると言えます。その辺りは置いておきますけれども、看護職としても言いたいことがあります。

○川勝構成員 私は患者ということで出席していますが、今の田村先生のお話で、思い出したことがあるのです。今日事務局から配布された資料23ページ、3枚目のスライドの脳卒中の回復期・維持における現状2、再発予防のデータをこの間拝見して、ずっと考えているのです。結論から言うと1行目に書いてあるのは、累積再発率は5年間で35%、つまり5年間で3人に1人は再発している。3行目にあるのですけれども、脳梗塞患者の抗血小板薬服薬継続率は1年後で50%程度。つまり、1年経ったら薬を飲んでいる人が2人に1人にしかなっていない。これは大問題だと思うのです。

 そもそも私は病気になって13年目ですけれども、薬をなぜ飲むのかという意味を、私の入院した虎の門病院分院の看護師さんに教えられたのです。薬は普通の市民はどうして飲むのでしょうか。例えば胃が痛くなったから胃薬を飲んだら治ると思っています。私はバイアスピリンとかプレタールとかを飲んでいますけれども、それを飲んだら麻痺が治ると思ってしまう人が結構いると思うのですね。薬を飲む意義を教えられていないから。普通に薬を飲むという意識でしかないから、ちゃんと患者を教育しないといけないわけです。これを放置しているから再発率が高いのだと思うのです。

 私はお陰さまでいい看護師さんに巡り合えて、教育を受けてよかったなと本当に思っています。やはり回復期において、患者を正しく教育する、脳梗塞はどうして起きて何が原因かは、今更ですけれども再発予防とか、発症時の対応について、もう少し教育をしないといけない。することによって再発をかなり抑えられるはずです。それと逆に一般の発症も抑えられるようになっていくのではないかと思うのです。看護師さんにも教育をちょっと担っていただいて、患者に優しく寄り添っていただいて教育いただければいいのかなと思いました。

○小川()座長 ありがとうございます。患者さん教育というのは、必ずどこかに項目として入れなければならないことだと思いますので、これは入れたいと思います。ちょうど時間もまいりましたけれども、石上さん、ちょっとこれは大変ですね。非常に大きな問題が山積して、今までの中で一番難しい委員会だと思いますけれども、うまくまとめてください。

 先生方には真摯に御議論いただき、問題点が明らかになったと思います。これを整理をして、最終的なところできちんとした結論を出していきたいと思っております。また先生方には、中間のところでいろいろなお願いをしないといけないかもしれませんので、どうぞよろしくお願いいたします。

 どうしても全体を通じて御発言があるという方がいらしたら、御発言ください。よろしいですか。よろしければ議論は終了として司会を事務局にお返しします。

○岡田がん・疾病対策課長補佐 次回のワーキンググループの日程については、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中、恐縮ですがよろしくお願いいたします。

○小川()座長 ありがとうございました。本当に皆様には大変お忙しい中、御出席を賜りまして、大変濃いディスカッションをしていただきましたことを感謝申し上げます。ありがとうございました。

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 脳卒中に係るワーキンググループ> 第2回脳卒中に係るワーキンググループ 議事録(2017年2月3日)

ページの先頭へ戻る