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2017年1月16日 第10回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成29年1月16日(月)17:00~19:00


○場所

中央合同庁舎5号館 共用第6会議室(3階)


○出席者

吉田(恒)座長 岩崎構成員 上鹿渡構成員 久保構成員 杉山構成員
林構成員 藤林構成員 森口構成員 山田構成員 横田構成員
吉田(彩)構成員

○議題

○林補佐 定刻となりましたので、ただいまから第10回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、金子構成員、久保野構成員、床谷構成員、峯本構成員、山本構成員から御欠席の御連絡をいただいております。
 まずは、資料の確認をさせていただきます。
 配付資料は右上に番号を付しておりますが、資料1、資料2、資料3、資料4、参考資料1、参考資料2を配付しておりますので御確認いただければと思います。
 なお、資料3の調査結果については新たに民間1団体から回答があり、それを反映しております。変更点は、赤色にしてございます。
 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。
 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただいております。
 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○吉田(恒)座長 皆さん、こんにちは。それでは、第10回の検討会を始めたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議事でありますけれども、配付されております議事次第にもありますように、特別養子縁組に携わる関係者の方からのヒアリングを予定しております。
 本日、社会福祉法人子どもの虐待防止センターの田中事務局長と岡崎相談員のお2方にお越しいただいております。後ほど御説明をお願いし、質疑応答したいと思います。よろしくお願いします。
 その後、前回の検討会で事務局にお願いした論点ペーパーについて説明をしていただき、それぞれの分野について各先生方から御議論をお願いできればと思っておりますのでよろしくお願いします。
 まずは、ヒアリングに入る前に司法関与の取りまとめに関しまして事務局から説明をお願いいたします。では、川又課長お願いします。
○川又総務課長 総務課長の川又でございます。
 参考資料2という資料をお願いいたします。机上配付資料の前にあると思いますが、参考資料2と書いてございます「児童虐待対応における司法関与の在り方について(これまでの議論の整理)」という資料でございます。
 これは、12月12日に開催されました第8回の検討会における皆様の御意見を踏まえまして、その後、座長とも御相談をさせていただきまして、このような参考資料2という形で、これまでの議論の整理という形で一応、今の時点でのまとめをさせていただきました。各構成員の先生方におかれましては、御協力をいただきましてまことにありがとうございました。
 なお、この議論の整理でございますけれども、これは従来から御説明をさせていただいているとおり、何ら一定の方向性を決め打ちするという性格のものではなく、検討会におけるさまざまな御意見を検討事項ごとに整理をさせていただいたというものでございます。
 今後は、この検討会での御議論の内容を踏まえまして、政府部内におきまして具体的な制度検討を行っていきたいと考えているところでございます。よろしくお願いいたします。
 なお、この週末に一部、司法関与に関する新聞報道があった件につきまして一言申し上げたいと思います。
 まず、事実関係といたしまして、厚労省として現時点で何らかの方針でありますとか改正内容について決定をしたとか、記者に発表をしたというような事実はまずございません。本検討会としての議論の整理というものをこのようにおまとめをいただいたところでございますけれども、厚労省としてはこの検討会での司法関与に関する議論の内容も踏まえまして、現在法制的、実務的に対応可能な具体的制度の在り方について、次期通常国会への法案提出も念頭に置いて政府部内で鋭意調整、検討を進めさせていただいているところでございますけれども、現時点において成案を得るには至っていないところでございます。
 当該新聞記事につきましては、当該マスコミの御判断において報道がなされているものと承知をしております。御心配をおかけした面があったとすれば、申しわけありません。よろしくお願いいたします。
○吉田(恒)座長 ありがとうございました。
 司法関与につきましては、この検討会で大変活発な御議論をいただきました。ただ、それをもってしても、まだまだ議論が尽きない部分はたくさんあろうかと思いますが、今回の資料の取りまとめによって、現時点での議論の整理という形でまとめさせていただいたところでございます。事務局におかれましては、この議論の整理に加えて、これまでの議論を踏まえましてさまざまな御意見をしっかり受けとめていただいて、今後の具体的な制度設計を行っていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。では、司法関与に関しましてはひとまずはここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の議題にありますように、ヒアリングに入りたいと思います。本日は、特別養子縁組に携わる関係者として、社会福祉法人子どもの虐待防止センターの田中事務局長と岡崎相談員のお2方にお越しいただいております。養子縁組成立後の支援など、現場の実態についてヒアリングさせていただきますと大変参考になろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、最初に10分程度御説明いただき、その後、20分程度各先生方から御質問、御意見等をいただければと思います。資料に関しましては、資料の4の「ヒアリング対象者提出資料」と、あとはきょう配られました子どもの虐待防止センターの資料もお手元にあるかと思います。御確認ください。
 それでは田中様、岡崎様、よろしくお願いいたします。
○岡崎氏 岡崎でございます。よろしくお願いいたします。
 私たち、虐待防止センターが何をやってきたかというのは資料の上の段のところに書いてありますのでお読みいただければと思いますし、10分間ということなので簡単に説明という形にさせていただきたいと思います。
 今、特別養子縁組の方たちからの相談が、深刻でございます。子どもさんが28とか29歳くらいから、下は小学校3年生くらいまでの方たちの相談が多いですけれども、「もうこんな子は要らない。返したい。養育里親なら返せるのに。もらわなければよかった」というようなことをしょっちゅう私たちは聞かされています。
 でも、現実に法的にそれは無理なことなので、どうその家族を再構築していくかというところで面接や電話相談をしています。お父様にもお会いしたり、本人に会うこともありますけれども、非常に困難な状況です。
 何がそうさせているかというと、それぞれの家庭の養育ですから事情はいろいろありますが、今一番感じているのが、すごく夢を持って始めた養育なのですが、やはり知的とか発達の遅れのあるお子さんが多く、こんなはずじゃなかったという思いです。現実として支援級ぎりぎりくらいの子どもが多くて、学校でうまくいかなくて不登校になり、家庭内暴力で包丁を振り回すなどという話もよく聞ききます。とにかく警察沙汰にならないようにどうしていこうかと思っています。家出だとか、妊娠だとか、自殺未遂だとか、大変でございます。
 それで、私が感じているのは、「返したい、こんな子はもらわなければよかった」という言葉を聞くと、やはり登録前の研修不足で、子どもを実際に養子縁組する前の研修の問題ではないだろうかと思っています。その辺をちょっとお話させていただきます。
今、私たちは<特別養親サロン>というものをやっています。これは3年前くらいから始めましたけれども、参加されている方たちというのは、児童相談所からの紹介と民間のあっせん団体からの紹介が半々くらいでしょうか。最近は民間の方が多くなっています。
 私たちはお子さんがどこからということは聞きません。どこを経由してどんなふうにしてお子さんを育てているのかということは私たちには必要ない。とにかく現状で、今何が困っているのかというところでやっております。今特に増えているのが、「これから生まれますからすぐ来てくださいと言われて病院に行って、生後1週間くらいでもらうといったケースです。
 生後3~4日目で東京まで新幹線に乗って、さらに飛行機に乗せて連れて帰りますということです。
 皆さんに「何が困りますか」とお聞きしますと、妊娠期間がないので、保健センターなどでやっているプレママ教室とか、両親・母親学級などには通っていらっしゃらない。なので、おむつの変え方とか、ミルクの飲ませ方、離乳食の方法など、スタートのところから本当にどうしたらいいかわからない。民間のあっせん団体の方達から聞きましたら、各地の助産師会に訪問をお願いしていますということでしたが。
 例えば仕事を休んで登録手続きをしたら、あっという間に紹介があったので、それから慌てて退職届けを出してということで、全く赤ちゃんを育てるという知識も何もないまま、赤ちゃんが来てしまう。慌ててベビーベッドを買いに走り、紙おむつを買いに走り、ミルクを買いに走りという状況で始まります。しかも、何か月健診というのが保健センターで必ずありますけれども、保健師さんの理解がなくて、「何で母乳を出さないのだ」といきなり怒られたとか、あるいは、家庭裁判所できちんと特別養子縁組が成立するまでは名前が違うわけですが、保健師さんは、里子さんのことは随分理解が進んでいるのですけれども、養子縁組については本当に理解がなくて、戸籍上の名前で呼ばれて、誰のことだと、周りの方もきょとんとしているというようなさまざまな困難に遭遇していらっしゃいます。
 民間の養子縁組あっせん団体の方も困っています。「相談が多くて私一人でどうしようもありません。助けてほしい」と言われ、相談されれば受けますと話はしましたけれども、登録前研修をやってもらえないかとも言われて、個別の団体に対しては、私たちはしませんとお話しています。ただ、登録前研修が必要だということはすごくわかります。
今、養親さんには、児童相談所の里親研修を受けてくださいというふうには言っていますけれども、児童相談所から拒否をされ受けさせてもらえないそうです。
 なぜなら、それは養育家庭向けであって、養育家庭の登録をしない人には受けさせないというようなことです。八方ふさがりの状態で、でも子どもはどんどんときていますので、困難なことがすごくあります。
 それから、民間団体の場合には、生まれる前に「何月に生まれるお子さんがいるのでいかがですか」ということで、そこで契約して、その段階である程度は、お金が支払われるのでしょうか?そんな状態ですから、明らかに身体的欠陥があって、「私が育てるのは無理です」となったときにどうするのでしょうか。私は自分が子育てしてきて身体的障害を持った子どもを育てることの困難さというのはすごく思っています。それを無理やり、契約したから育てなさいといって渡してしまって、最初から拒否感がありますので、かわいいとも思えないし、『こんな子』というのがそこから始まってしまうというような現状があります。
 ではその引き受け手のない子はどうするのか。海外に大分行っているという話も聞きましたけれども、乳児院で引き受けてくれるのか?民間のあっせん団体では育てられない現状があります。
 今、一番私たちが困ったなと思っていますのは、生母さんの心身の状態ですね。知的に低い方やら、精神障害の方やら、DVやらもあって、ハイリスクな子どもなんです。発達障害の子どもは6%と言われていますが、確率はずっと多くて知的に低い子も多いですね。
 2歳、3歳くらいになるといろいろなことが顕著になってきます。すると、「特別養子なんかしなければよかった、里親さんにしておけばよかった」とおっしゃるんです。里親だったら返せるのにというふうな言い方をなさるのですけれども、背景には特別養親には支援が全くない大変さがあると思うのです。そこのところの困難さを感じています。
 今この法律ができても2年、3年待てない状況なんです。まずできるところからぜひぜひ厚労省のほうでも考えていただきたいと思っています。1つには橋本里親サロンというものをやっていますけれども、橋本サロンには特別養子縁組の赤ちゃんを連れた人が多く参加されていて、ここでとても良い取り組みが生まれています。養育家庭のそろそろ登録をやめようかという大ベテランの方で、何十人も虐待を受けた子を育てた方たちが、非常によく養親さんを面倒見てくださっています。「うちに連れていらっしゃいよ、疲れたのならばうちで1日預かるよ」と。これはレスパイトじゃないんですね。養育家庭じゃないから。自分の子どもですから勝手にできるわけです。そこで話を聞いてくださったりしています。
 そういうところを見ても、まずは民間団体の方たちは赤ちゃんをあっせんしたら、全国に里親会があるわけですから、「地元の里親会につながってくださいね」ということを、まず養親さんに伝えてほしいと思います。
 それから、児童相談所にぜひお願いしたいのは、研修には民間団体の方も一緒に入れて連携してほしいです。すぐにでもこれはできるだろうと思います。一番は国として里親子とか養子縁組の親子の治療機関が必要なんですけれども、何年も待てない状況なので、まずは地元の里親会と児童相談所が民間からの赤ちゃん縁組を支援するという気持ちを持っていただきたいし、何か通達でそこができないのだろうかと、痛切にそれは思っております。
○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。
 田中様、岡崎様におかれましては本日大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。ただいまお話いただきましたけれども、その内容につきまして御意見、御質問がおありかと思いますのでお願いいたします。いかがでしょうか。
 では、横田先生お願いします。
○横田構成員 ちょっと知識が不足しているので正確ではないことを言うかもしれませんけれども、これはむしろ今の御報告を受けて厚労省の方にお伺いしたいのですが、現在養子縁組里親についての研修も事実上はやっていると聞いています。そういうことを前提とした場合に、制度上の話とは別に研修の内容自体が今、言われた民間からのダイレクトな特別養子縁組の場合と、養子縁組里親の場合で合わないとか、そういうような事情はあるのでしょうか、どうなのでしょうか。
○吉田(恒)座長 それでは、川鍋課長お願いたします。
○川鍋家庭福祉課長 里親研修という形で、今おっしゃったように養子縁組里親とか、あるいは養育者とかそれぞれありますが、民間の今おっしゃった件については、そういう意味では今の制度がある意味、任意みたいな形になっているので、そこをこちらのほうできちんと把握しているという形に今はなっていません。
○横田構成員 つまり、内容がわからないということですか。
○川鍋家庭福祉課長 はい。
○吉田(恒)座長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
 山田先生、お願いします。
○山田構成員 それについては、今回成立した法律にも書いていないのですか。民間あっせん事業所は許可制になりましたよね。
○吉田(恒)座長 では、課長お願いします。
○川鍋家庭福祉課長 今回の議員立法でできた法律については、今おっしゃった養子縁組あっせんを受けることができない養親候補者という規定があり、その中に研修の受講が義務づけられています。研修が終わっていない人は、あっせんが受けられないということになっています。
○吉田(恒)座長 よろしいですか。
○山田構成員 ということは、研修を受けなければいけないことになったという理解でいいのですね。それは、施行はいつからということなのでしょうか。
○川鍋家庭福祉課長 施行はこの2年以内とされているのですが、具体的な施行期日は定まっていません。これから、そこも含めて政省令の話とか、あるいは通知なり、あるいは指針になるかわかりませんけれども、そういった中でどこまで書き込んでいくかというのがこれからの作業になります。
○吉田(恒)座長 では、山田先生お願いします。
○山田構成員 岡崎さんに教えていただきたいのですけれども、今のお話だと民間あっせん事業所から新生児委託をしてもらった親御さんからの御相談で結構難しい問題があるということですけれども、例えば高齢児、3歳、4歳、5歳以上くらいの子どもさんと特別養子縁組をした家庭ですが、そういうお子さんの多くは被虐待児、被ネグレクト児の特別養子縁組だと思うのですけれども、何か特徴があるのかどうかということをまず教えていただけますでしょうか。
○岡崎氏 最近、高齢児は余り聞かないですね。児童相談所からの紹介ケースでも、ほとんど1歳前後です。
 ですけれども、やはり乳児院にいたせいか、膝の上に乗ってこないとか、赤ちゃんのときから養育したのとは違うちょっとしたものはありますけれども、私の感覚では、やはり児童相談所では乳児院の中でしっかり見て、この子ならば大丈夫であろうという子を出してくださっていて安心かなというのは思っています。
 赤ちゃんが産まれますから迎えに来てくださいという形はすごいリスクが多くて、その辺の支援がなくてどうしていくのでしょうか。しかも、児童相談所に相談に駆け込んでも、「民間からですよね」ということで一切支援をいただけません。
○吉田(恒)座長 田中さん、お願いします。
○田中氏 今の追加をいたしますけれども、赤ん坊のときに委託を受けたケースで見た目でリスクがあった子で、それをお金は払ったんだけれども、「お金はもう要らないから子どもを返します」と言うと、実親のほうは実際に困りますよね。そういうことも、現状で起きてくる。これから民間団体でどんどんあっせんケースが増えてくると、そういうところの研修もしっかりしていく必要が生じる。
 それから、実親の研修もないのです。そういう団体に登録をする実親と子どもを受け取る側、双方が事前研修をきちんとやっていかないと、その後での実親の精神的なリスクも大きいです。それも先日我々が民間団体から協力要請されたのですけれども、ちょっと待って欲しいと、我々も手が足りないですから。そういうことが実際に起きた後のことを法律だけではなくてどうやるか。
 1団体で2年間で30組もインターネットあっせんで成立しているという話があって、そういうのが、いろいろなところにできているわけです。かなりの子どもが実際にはあっせんされていて、その後のフォローを我々みたいな民間団体がしなければいけない状況にある。
 そうすると、法制化もよろしいのですけれども、先ほど岡崎が言ったように、現実に起きている問題に対し、厚生省や児相や、そういうところでどうやって子どもを救っていくのかというところを早目に手を打っていただきたいですし、認可制になったのならば、即そういうところで認可団体を教育するのではなくて、そこから子どもを受けた親の研修を早くスタートさせていただきたい。
 ただ、研修するだけの人材がどこで育っているかというのは、我々はちょっと考えると寂しい限りなのですが、それは急務だと思います。
○岡崎氏 ちょっとつけ加えさせていただくと、真実告知もあっせん団体の方に聞くと、「小学校に上がるまでには真実告知はしてくださいね」と。児相なども大体そのような言い方です。養親さんには、とにかくいつ、どういうふうにしたらいいのだろうかということを私たちのところでも聞かれるのですけれども、それを言われた子どもがどのような気持ちになり、出自のことついてどう自分の中で咀嚼していくかというところは全く抜けていて、それで思春期になって大爆発して、「おまえなんか本当の親ではないのに」と言う子が多いです。。
 私たちはどういうことが必要なのかというところで試行錯誤を3年やってきて、大体このぐらいの研修は必要であろうというものを年間6回のプログラムでやっていますけれども、そのようなものをお願いできたらと思います。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。
 では、藤林先生お願いします。
○藤林構成員 虐待防止センターには、いろいろな養親さんが、つてを頼って、あるいは、評判を聞いて来られていると思うのですが、中には来られたけれども、継続的に来なくなる方であるとか、または本当に必要性がある、いろいろな不安とか混乱を抱えていらっしゃるにもかかわらず、こういった民間の虐待防止センターの支援を受けていらっしゃらない方があるのではないか。
 多分、民間あっせん団体からあっせんを受けた方もいらっしゃると思うのですけれども、これは推測になると思うのですが、実際に虐待防止センターの支援につながっている方というのは全体のどれくらいなのでしょうか。氷山の一角なのでしょうか。
○岡崎氏 氷山の一角です。もちろん地方の方は無理ですし、鹿児島でこんなに困っている人がいるとか、北海道でこういう人がいるとか言われましても私たちは何もできないので、結局、精神保健福祉センターにまず行ってくださいとか、療育センターにつないでくださいということをやっています。
 それで、今、橋本サロンとか、志希の集いをやっていますけれども、養育里親さんが心配な養親さんを連れて来られたりして、里親会の力は大きいと感じています。里親会は全国にありますので、里親会の力をぜひお借りしていきたいと思っています。
 福岡は民間からどのくらい来ているかとか、把握していらっしゃいますか。
○藤林構成員 どこの児童相談所でも、今は同居児童の届け出という形で把握するわけなのですけれども、把握しまして、その後、成立したという知らせも受けるわけですが、成立後の養親さんに対する支援というのが任意になっているのです。ですから、その後、里親会に入会される方もいらっしゃいますけれども、入会されない方もいらっしゃるというところで、成立後の支援をどのように届けていくのか、という仕組みが非常に重要かと思っているところです。
 ですから、先ほど質問したのは、たまたま虐待防止センターにかかわりを持たれた養親さんはいいのですけれども、そうではなくて何の支援もなく、里親会にもどこにも属していらっしゃらない養親さんというのが全国にたくさんいらっしゃって、そういった方々に支援を届けていくというのが急務である、というふうな御発言だったかと思うのです。特にこの数年、民間団体からの成立件数がふえていることを考えますと、ここにどのような仕組みをつくっていくのか。または、その支援の中身というか、コンテンツというか、ソフトをどうしていくのかということは、本当に急いで何かつくっていく必要があるのではないかと私も思っております。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 私のほうからですけれども、防止センターで今、特別養親のサロンをされていますが、これはどこかの自治体からの委託とか、何らかの助成事業で行っているということとは違うのですか。
○岡崎氏 全く何もないですね。
○吉田(恒)座長 防止センターの持ち出しですか。
○岡崎氏 参加費1,000円で、お子さんをお連れになった方は500円いただいて、講師の方は無料でお願いして、保育士さんの謝金は防止センター持ち出しでやっております。
 今川崎が割といい取り組みを始めています。川崎には乳児院が2カ所あるのですけれども、まず児童相談所が縁組が成立した方たちを把握しますね。それで、両方の乳児院でサロンを始めて大分定着してきました。
 ただ、そのサロンというのはやはり小さいお子さん、赤ちゃんからせいぜい2歳ぐらいまでのお子さんを育てている方たちだけなので、もっと先輩の話を聞きたいということはおっしゃっています。そこで研修もして欲しいという声も出てきたということですが、ただ、養育里親さんと一緒の研修やサロンというのは無理があります。
○吉田(恒)座長 その点に関連してもう一つ質問なのですけれども、里親さんからの相談も受けておられるということで、特別養親になった方の相談とか悩みと、それから里親さんの悩み相談とはやはりここが違うというようなところはありますか。
○岡崎氏 それは、やはり違います。里親さんのほうは虐待を受けたお子さんたちを育てていて、子どもは里親さんとの愛着の未形成からくるいろいろな問題行動を起こすので、ケアには子どもの虐待防止センターで行っている西澤哲先生のプログラムなどにもお願いをしております。特別養子で多いのが発達障害、知的障害、支援学級に行かせたくないけどどうしようとかですね。児童相談所からの場合には交流期間が2~3カ月でもありますので、そこで覚悟も決まるし、無理だと思って断ったという方もいます。児童相談所に無理ですと断って、民間に全てを託したらまたこんな子であった、と受け入れられないとおっしゃる用親さんの精神的ケアをしています。2年、3年とかかりますけれども、「この子には私しかいないのだ」と、「この子の親になると私は決めたのだ」というところまでカウンセリングです。その方がなぜ養子縁組をしようと思ったかも全部聞きながらしておりますので、里親さんとは全く違う形です。里親さんの場合には、その子の虐待を受けたトラウマをどうしようというようなことが多いです。
○吉田(恒)座長 わかりました。ほかにいかがでしょうか。
 横田先生、お願いします。
○横田構成員 そうすると、最初の私が疑問に思ったことですけれども、研修の必要性ということを強調されましたが、その研修というのは今、既に存在している養育里親とか養親里親の研修とは違う特別養子縁組固有の内容の研修というものを早急にという御提案と理解してよろしいですか。
○岡崎氏 やはり、そうですね。返したい、返せない、児童相談所は嘘をついた、リスク説明が足りなかった。ということをおっしゃるので、なぜ縁組をなさるのかという、その辺りの研修が必要なのだろうと思います。

○吉田(恒)座長 では、岩崎先生お願いします。
○岩崎構成員 私たちは、もう30数年前から養子をもらいたい人のための事前研修に力を入れてきました。最初に始めたころは、週末土曜日の午後の3~4時間を5回連続でやっていました。5回連続でやりますと年間2回ぐらいしかできないので、ちょっと縮めて、でも全部で13時間分くらいの研修会を今年度から今までは3回だったのを今年度から4回にふやしました。
 その合間に、今年度から養親ゼミナールという研修会を2カ月に1回、特にここに書かれている特別サロンと同じようなことなのですけれども、「真実告知について」、「養子の思春期」、「ルーツを探る」、「発達障害の子どもを育てる」、それから「子どもが大人になるというのはどういうことか」ということと、「成長した養子からのメッセージ」という組み立てで全6回をやることにしました。とりあえず事前研修会でやることは、「なぜあなたはあえて血のつながらない子どもを育てたいのですか」ということがテーマです。私はそれを最初の回からの宿題にして、そのことを考えてもらうことにしています。いかに客観的に自分が何のために、何を獲得するためにあえて血のつながらない子どもを育てようと思うのかというところをはっきり説明できるように整理することを、研修の目的にしてやっていって、最後に一言ずつ皆さんに話してもらうことにしています。
 それと、協会は今回の児相のは調査を見て頂いても分かるように、新生児委託は児相に任せています。勿論乳児もかなり扱っておりますが、出産の状況や、親の背景が複雑な子どもで、児相では探せなかった子どもの委託を受けることが多いですし、それから大きくなった2歳以上の子どもたち、特に6歳直前の子どもたちの養子縁組が多いので、彼らと親子関係を結ぶというのは本当に大変なんです。彼らから、「私がどんなに悪い子でも、何をしてもあなたたちは私を捨てないんだね」という確認が得られるまで、育て親に対していろいろな問題行動を起こして確かめようとします。それが親子になるための最初の大変な時期で、『地獄の沙汰』だと私は呼んでいるぐらいです。それを皆さんも言葉だけは聞いていらっしゃると思いますが、『試し行動』です。それから『赤ちゃん返り』がどんなふうに始まるのかということを説明して、それに耐えられるかどうか。それを夫婦が力をあわせて、本当に我が子とするために受け入れていけるのかどうかというところをしっかりと考えてくださいとお願いするのです。
 そういうことが事前にあった上で、この子と親子関係になるために、あなたの生育歴から、夫婦関係から、親族の関係から、みんな調べさせてもらって、それから今は平均して2カ月から3カ月の施設実習をして引き取ってもらって、そして6カ月の試験養育期間にそれこそ耐えられるか、何とか頑張り切れるかというところを乗り越えれば、あとはまあまあ普通に努力していけばそこそこに育ちますし、思春期にもう一度大きな揺れがきますけれども、引き取った当初の試し行動のところで思い切り関わった親子は何とか思春期を乗り越える力を子どもも親も持っています。そうすると、幸せな子どもたちの結婚であるとか、大学進学だとか、それなりのそれぞれの子どもたちの能力を発揮した日常が養親たちを喜ばせてくれるということになるのです。その流れが全部あって、特別養子縁組がうまくいくかどうかということだと思うのです。
 それでも、まだいろいろなことがあります。私たちの子どもでも、少年院に行っているのもいますし、今、刑務所に入っているのもいますし、覚せい剤に手を染めた子どももいますし、自殺した子どももいますし、殺された子もいますし、まだ殺した子は出ていないのですけれども、1200人も養子になった子どもたちがいますといろいろな事件を起こしてくれますけれども、でも、それはある時期の子どもたちの生育過程であって、何が起きようと諦めずに見守っていくうちに子どもというのはひょんなところから立ち直ってくれますので、いろいろな悩みは私たちも尽きませんけれども、子どもの力を信じるということと、「子どもをもらおうと思ったあなた方が今日までしてきた努力を信じて、私達と一緒に頑張って見守っていこうね」というところで何とか親子というのが育っていっていると思っています。
○吉田(恒)座長 ありがとうございました。
 きょうのお話で、特別養親になった方も大変御苦労されて相談に乗っておられるということで、今回家庭福祉課のほうでしていただいた調査の中にも養育の家庭で生じた問題というので子どもの問題行動であるとか、病気や障害、養育困難の訴えがあった等と、現実にこうした数字も挙がっているというので、特別養親に関しては本当に成立前から成立後の支援が必要だというお話をいただいたかと思います。どうもありがとうございました。
 私たちの今後の議論にぜひ役立てたいと思っております。どうもありがとうございます。
 それでは、ただいまのヒアリングを受けて、林先生のほうから御発言のお求めがありますので、お願いいたします。
○林構成員 今日は、支援者の立場からお話を聞かせていただいてどうもありがとうございました。
 それで、実際に養子縁組を組まれた当事者の方のヒアリングをお願いしたいと考えております。実際に私の知り合いで埼玉県の里親会の副理事長の方で、その方は養子縁組家庭であり、里親委託も受け、実子さんもおられるという御家庭です。
 御提案は、その御夫婦と、その養子さんの3人の方のヒアリングをお願いできないかということで審議のほどお願いします。
○吉田(恒)座長 ただいま林先生のほうから御提案がございましたけれども、特別養子縁組の当事者の方、親御さん、また養子さんからのヒアリングの御提案ですけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。
(委員 異議なし)
○吉田(恒)座長 それでは、皆さん御同意いただいたということで、次回の検討会でぜひこのヒアリングを行いたいと思いますので、事務局のほうの調整をよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして意見交換に入りたいと思います。事務局から、論点ペーパーについて御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○林補佐 それでは、事務局から資料1の「特別養子縁組制度の利用促進に関する論点(案)」について御説明いたします。
 (1)から(8)まで、個別分野ごとに「問題意識」、「論点」、「課題・留意点」を書かせていただきました。時間も限られておりますので、構成員の皆様には特に「論点」について御議論いただくことを念頭に記載してございます。
 1ページ目でございます。「特別養子縁組制度全体について」ですが、前回の検討会で御議論を求める意見が出た「普通養子縁組ではなく特別養子縁組でなければ保障できない子どもの永続的な家庭とは具体的に何か。」を論点に記載させております。
 2ページ目と3ページ目の「年齢要件について」でございます。「問題意識」のところですが、厚生労働省の調査結果を踏まえまして、年齢要件を見直す場合、原則6歳未満である要件、例外の8歳未満の要件、養親の下限年齢について何歳とすることなどが適当であるかを論点に記載しております。
 なお、次の3ページに書かせていただいてございますが、「課題・留意点」として、高い年齢になるほど特別養子縁組が適当ではなくなる考え方、特別養子縁組が必要な年長児童が普通養子縁組になっている場合があるということが指摘されてございますので書かせていただいてございます。
 4ページ目でございます。「審判の申立権について」でございますが、申し立てに伴い、原則、必要とされている実親の同意を得ることが障壁となっている側面があるということから、申し立てを特別養子縁組候補時の適格性を判断する手続と、特定の養親候補者との間の養子縁組の適否を判断する2段階の手続を分けることや、現在申し立てを養親のみとしているところ、児童相談所長も加えるべきかという点について論点に記載してございます。
 なお、「課題・留意点」には、2段階について積極的な意見と慎重な意見がこれまで出されてございましたので載せてございます。
 6ページ目でございます。「成立要件について」でございますが、民法でその要件を定めてございますが、子どもの永続的な家庭を保障するという観点から特別養子縁組が現実に機能するように、その要件やこれらに関する運用のあり方についてどのようにすることが適当であるかを論点に記載させてございます。
 7ページ目でございます。「子どもの出自を知る権利について」ですが、養子となった子どもが将来、養子縁組に至った事情等を知ることができるようにするために、行政機関・裁判所・民間あっせん機関が保有する記録の保管のあり方、保存期間、子どもが当該記録にアクセスする仕組みについてどのようにすることが適当かを論点に記載させております。
 なお「課題・留意点」において、そもそも出自を知る権利を保障するというのは具体的に何をどの範囲まで保障するのか。実母や、実母との関係をどうするべきかを記載させてございます。
 8ページ目でございます。「養子縁組成立後の養親や子どもに対する支援について」ですが、各機関においてどのような支援を行うことが適当かを論点に記載させております。
 9ページ目でございます。「養子縁組の民間あっせん団体について」ですが、児童相談所と民間あっせん団体間、児童相談所間で養親候補者の情報共有する仕組みを設ける場合、どういった仕組みとすべきか。また、民間あっせん団体への支援は具体的に何が必要かを記載させております。
 10ページ目でございます。「その他」として「養親候補者の確保について」ですが、厚生労働省の調査結果では、養親候補者が少ないということが指摘されております。そのため、特別養子縁組の利用促進を図るため、養親候補者をどのように確保するかを記載してございます。
 説明は、以上になります。
○吉田(恒)座長 ありがとうございました。ただいま御説明いただきました論点案についてですけれども、いかがでしょうか。何か御意見等ございますでしょうか。
 山田先生、お願いします。
○山田構成員 まず1つ目の制度全体のところの論点なんですけれども、これについてはしっかり議論すべきと思っていて、その中でも特に、普通養子縁組の問題点としてまず大きく2つあると思うんです。
 1つは、やはり普通養子縁組だと実親に情報が、言葉は余り適切じゃないかもしれませんが、筒抜けになるということで、本当に子どもの安全が確保できるのかということです。
 それから、普通養子縁組は特別養子縁組よりははるかに簡単に離縁ができてしまうという点においてもやはり問題点が大きいので、この前、「普通養子縁組であってもリーガル・パーマネンシーは担保できる」というような発言もありましたけれども、その2点を考えると、特別養子縁組と普通養子縁組では全然パーマネンシーの度合いが違うということで、きちんと普通養子縁組の持つ問題点というものを認識しなければいけないんじゃないかと考えます。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。私のほうでは、今日皆様方に各論点について御意見いただこうということで予定しておりますけれども、この論点のまとめ方以外に論点となるべき点であるとか、それからもっとここのところを詳し目にということなどございますでしょうか。
○山田構成員 全体のところですけれども、特別養子縁組というとやはり、新生児委託が中心というふうになるのですが、もちろんそれも児童の福祉なのかもしれませんけれども、今、我々のこの検討会として大きな課題なのは要保護児童、虐待やネグレクトを受けた子どもたちに特別養子縁組を提供していきたいということなので、普通養子縁組と特別養子縁組だけの問題が全体構造なのではなくて、今、民法では特別養子縁組がきちんと規定されていますけれども、児童福祉法には特別養子縁組が入っていないわけです。
 その辺をきちんと法律の枠組みから議論しないと、新生児委託だけが特別養子縁組ではないということに、もうちょっと力点を置かないといけないのではないんでしょうか。
○吉田(恒)座長 そうすると、この制度全体のところでそうした被虐待児も対象とするというか、そうした制度の枠組みが必要だという御指摘でよろしいですね。
 私のほうから提案なんですけれども、先ほどの岡崎さんのお話を伺っていると養親さんの支援というときに、縁組前の研修の重要性をおっしゃっていましたね。岩崎先生も同じようにおっしゃっていました。それで、ここでいただいた論点の中にそれが入っていないんですね。ですので、ちょっとここも議論する必要があるだろうというので、これも加えていただけますか。お願いいたします。
 そういうところで、ほかに加えるべき点がありましたらということでどうぞ。
 では、藤林構成員お願いします。
○藤林構成員 今の吉田座長の意見に関連しまして、また改めて虐待防止センターの方のヒアリングを聞いて思ったのですけれども、私は児童相談所なのですが、児童相談所が養子縁組成立に向けて行っていく場合に、成立前も成立後も、ある程度の仕組みがあるわけなんです。養子縁組里親という制度を使って、研修は必須ではないが、マッチングであるとか、または養親さんの適格性について認定登録していくというプロセスがあるわけです。民間あっせん団体の場合にはそういったものがほとんど整備されていない段階で成立になっていく。
 試験養育期間を経て家庭裁判所で養子縁組が成立するのに、この2つのプロセスがあるということが、果たしてそのままでいいのかどうか。養子縁組里親さんには手当はないにしても生活費などの支給はあるけれども、民間あっせん団体の場合には反対にお金を払っていらっしゃる。この2つのプロセスをそのままにしておくべきなのかどうかということも考えるべきです。もう一つ養子縁組里親という制度そのものも、この機会にもう少し検討してもいいんじゃないかと思っています。以上です。
○吉田(恒)座長 全体のところですね。先ほどの山田先生のお話のように、被虐待児というのも焦点に入る。今度は縁組里親との区別、役割分担みたいなものということですね。林先生、いかがですか。
○林構成員 新たな社会的養育の検討会とのすみ分けというか、研修とか、そういう実践手続に関することはそちらに委ねるというすみ分けも必要かなと思うんです。
 それで、藤林委員が言われたようなそもそも論のところというのは、むしろこちら側に含めるところなのかなと、大きいところは山田委員が言われているようなことです。研修以外にもきっと細々とした支援内容の課題というのはいっぱいあるわけで、そういうことはぜひ社会的養育の専門委員会のほうにと思います。
○吉田(恒)座長 私が提案したのは、研修の中身をここで議論するというのではなくて、研修の必要性、重要性をこの委員会で共有するということで、それは当然そちらのほうに委ねるということでよろしいかと思います。そうでないと、時間が足りませんので。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、久保先生お願いします。
○久保構成員 この検討会が特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会ということで、前回もお話が出たかもしれませんけれども、支援が重要なことは本当にそのとおりだと思うのですが、この検討会でこの6、7、8番はやはり検討していかなくてはいけないのかというのはまだ疑問に思うんです。それ以外のそもそもの本当に必要な1、2、3、4、5のところがこの検討会でまさに検討すべきところではないか。そこに重きを置くべきではないかとは思います。
○吉田(恒)座長 いろいろと論点に関してはめり張りをつけて議論していかないと時間が足りませんので。
 ただ、私も前回申し上げましたけれども、利用促進という点からすれば、特別養子に出すほうも、受けるほうも、子どももやはり安心してこれを送り出す、または受けるということでなければ利用促進につながりませんので、そうした意味ではこの支援というのはこの検討会でもやはり一応議論しておく必要があろうかという認識です。
 岩崎先生、お願いします。
○岩崎構成員 1つ難しいことは、今回の児童福祉法の改正の中で考えれば、社会的養護下に置かれた子どもの特別養子の利用促進というふうに私はやはり捉えていたんですね。そこへ民間団体が、ここのところはあっせん法ができるというところでいろいろな動きがあったんですけれども、民間団体とある意味で一線を画するのが社会的養護下の子どもの特別養子縁組をどうするのかということと、一般の人たちがやっている特別養親も当然あるわけです。
 例えば、不妊治療の代理母の親子関係を特別養子でやっていたりするわけですから、それまで含めて特別養子をどこまで利用するのかという問題も実は含んでいるんですけれども、今はそこまで議論するのではなくて、社会的養護下にいる子どもによりリーガル・パーマネンシーを保障していくためにはどうあるべきなのかというところに限定をまずしないと、結局拡散していくのではないかという心配はしています。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。とても重要な御指摘をいただきました。
 それでは、論点に関してはいただいた御意見をまた事務局のほうでまとめていただいてということになろうかと思います。
 それでは、先ほど山田先生のほうから制度全体について御意見をいただきましたけれども、この論点の順番に見ていきたいと思います。
 制度全体、それからまず年齢要件ですね。このあたりにつきまして、御意見をいただければと思います。制度と年齢要件ですね。
 では、山田先生お願いします。
○山田構成員 年齢要件のところで、まず子どものほうなんですけれども、右のページです。3ページのほうの課題のところに書いてあったりするんですが、15歳だと普通養子縁組はみずからの意思でできるからということで、「15歳未満でいいんじゃないか」という議論になっているのですが、先ほど言ったとおり普通養子縁組と特別養子縁組は質が違うので、特に社会的養護下にある子どもの特別養子縁組ということを考えたらやはり、18歳というところを考えないといけないのではないでしょうか。
 もちろん、高年齢児の親子の関係の構築の難しさということは念頭に置きながら、やはり可能性としてはそこまで道を開いておいたほうがいいのではないかという点が1点です。
 それから、養親さんのほうなんですけれども、例えば里親さんだと手当がわずかでもあるわけですね。それで、特別養子縁組で実親になると、今度その支援が全くなくなるということで、それだけかどうかわかりませんけれども、この2ページのところに課題が書いてあるように、特別養子縁組の年齢を引き上げると里親期間が長くなるんじゃないかというような問題も指摘されていると思うんですね。
 先ほど岩崎構成員がおっしゃったとおり、ここの主たる課題は跡取りさんが欲しくて特別養子縁組するというよりは、社会的養護にある子どもたちの特別養子縁組ということを考えると、場合によっては特別養子縁組でも社会的養護にあった子どもを特別養子縁組する場合には、たとえ実子となったとしても経済的な支援を継続して、経済的支援の対象としてあげるということも考えたらどうなのでしょうか。そうすると、お金の支給で行政とつながっているので、お金以外のいろいろな支援の継続性も得られるのではないでしょうか。
 例えば何度もお話ししましたけれども、アメリカのオレゴン州ではリーガル・パーマネンシーが3つあって、1つは実親の親権を喪失された子どもの養子縁組、それから親権は実親のところに置いたまま未成年後見人として後見人が子どもを育てるというパーマネンシー、それから例えば障害児さんのような実親子関係を構築するといろいろ責任が重くなるような場合には、実親に親権を置いたままパーマネント・フォスター・ケアというのをやっています。
 パーマネント・フォスター・ケアは福祉の分野で経済支援が入るわけですけれども、実親の親権が奪われた状態の子どもに特別養子縁組をした場合も、未成年後見人の場合も、いずれも福祉の分野ではない州のお金を使って経済支援をしているんですね。即座に日本でできるかどうかわかりませんけれども、そういったものを考えないと、この2ページ目の論点の1の問題が残ってしまうのではないかと思います。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。年齢要件につきましては、ほかにいかがですか。
 では、林先生お願いします。
○林構成員 本日配られています参考資料1の10ページ、これまで配付されてきた資料です。日本における特別養子縁組に相当する諸外国の養子縁組の年齢要件について記載されているものです。
 これをごらんいただくとおわかりのように、日本が6歳未満というのは極端に低いわけですね。アメリカなどは制限なしという形です。それで、私自身が前回、なぜ年齢要件が6歳未満に規定されたかというのをさまざまな論文から引用させていただいて4点ぐらい挙げていたんですね。ここでも、普通養子が望ましい子どもたちもいるんだという中に、ある程度の学童期以降の縁組で生みの親の記憶があるとか云々というのが出てきていました。
 でも、基本的にはそういう問題ではなくて、あらゆる年代の子どもたちに法的親子関係に基づいた家庭が必要だという合意がまず必要かと思います。それは、たとえ生みの親の記憶があろうと、そういうことではなくて、今ある家庭において子どもにとって必要なのはより法律的に安定した特別養子縁組が必要なんだという合意がまず必要かと思います。
 それから、山田委員が言われたように、年齢を上げることによって縁組の申し立てがおくれるのではないか、遅滞化するのではないか。そこにはもちろん経済的な問題もあるのですが、それはあくまでも民間機関とか児童相談所の運用の問題で、どう最初に伝えて、申し立てしなかったためにどういうことになるかということをきちんと伝えていない中で起こることのほうが多いんじゃないか。
 私もこういう話をしたときに、実際に養親さんが、私たちはお金のためにやっているんじゃないということはすごくやはり言われました。もちろんそうですけれども、お金の問題でその遅滞化を防止するということではなくて、あくまでも送る側の問題というふうに考えて、きちんとその辺は候補者に伝えていくということがまず必要です。
 私自身、縁組を含めて手当も必要だというのはどういうことかというと、さっき岩崎委員が言われた、養子縁組を社会的養護に位置づけるとするならば一定の社会的コストを負担するということが前提ではないかと考えています。
 それは先ほど藤林委員が言われた、いっそのこと公民機関を合わせて、岩崎委員は民間機関は別に分けて考えるべきだと言われたんですけれども、やはりそういう子どもをもし生みの親が育てないというと児相にくるということを考えれば、もうちょっと要保護児童を広く捉えて、公民一貫した里親ではない養親前委託のようなものを設けて、縁組後も公民機関一貫して一定の手当と言うか、養育費実費と言うか、どう言うかはちょっと置いておいて、経済的な何らかの支援をすることによって児童福祉法に養子縁組を位置づける意味が出てくるというふうに思います。以上です。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。ほかに年齢要件はございますでしょうか。
 私のほうからの検討課題になるかと思いますが、年齢を上げるということになってくると子どもの意思はどうなるんだろうかということですね。例えば15歳よりもさらに上げるということ、またはそれ以下でも、意思能力のある子どもであれば当然その同意なりを必要とするだろうという家事事件の手続のことも考えておかないといけないんじゃないかということなんです。
 民法改正で親権喪失の話をしたときに、子どもに申立権を認めることに対するかなり強い反対があって、要は子どもに親を訴えるということをさせてよろしいのかという疑問が出されたんですね。今回の特別養子は、要は意思能力のある子どもからすれば、自分の親を捨てるというか、自分の親を切るという決定をさせるわけです。そこもやはり同時に考えておかないと、単に年齢を上げればいいということではなくて、その意思決定をした子どもも傷つかないようにするための配慮というのをどうしたらよろしいんだろうか。そのあたり、外国ではどうしているんだろうかということです。
○山田構成員 少なくとも私がポートランドで聞いてきた話では、そういうお子さんがいるので、未成年後見人という制度をセカンド・チョイスとして持っているわけです。親との法的な関係は残すけれども、監護者は後見人さんがやっていくということで、そういう子どもの意見を反映させた制度もパーマネンシーの中に入れているという話でした。
○吉田(恒)座長 そういうことで、ここのところは年齢を何歳に設定するかということと、やはり特別養子の手続にもかかわってくることだということで私の意見を申し上げました。
 では、横田先生お願いします。
○横田構成員 今の座長と山田構成員とのやりとりですが、要するに15歳以上の場合だと、つまり親権喪失プラス未成年後見人という選択肢が特別養子縁組の別の選択肢としてあるという話では。
○吉田(恒)座長 私はそこのところまでは理解はしていませんけれども、ただ、問題点として指摘しただけで、山田先生はそれに対する外国の例というのでこういう補完的な制度がある。
○山田構成員 そうですね。日本と制度が違うので、日本で適用できるかどうかということではなくて、オレゴン州がどうしているかというと、親権喪失をするケースというのは縁組ケースしかないんですね。それで、未成年後見人にしろ、パーマネント・フォスター・ケアにしろ、親権は親元に残したまま、そういう別なリーガル・パーマネンシー・プランニングというのがあるということです。
○横田構成員 ですから、これはもともとその前の前提として、何歳まで上げるかという話をクリアしないと次にいかないと思うんですけれども、今の議論はもし15歳よりも上げるということを検討するときの話だと思いますが、その検討をするときに親権喪失プラス未成年後見人でなくて特別養子縁組でなくちゃいけないのかという検討になるんでしょうかということです。
○吉田(恒)座長 では、藤林先生お願いします。
○藤林構成員 多分、年齢の高い子どもさんは、ほぼ100%児童相談所のもとにある子どもさんであり、要保護児童、または社会的養護にいらっしゃる子どもさんです。
 そう考えると、当然、児童相談所の担当児童福祉司が、子ども、親権者、または里親さんに委託されている場合は、養育里親さんに吉田座長が言われたように、十分な配慮がされるべきであり、またはされていくような児童相談所のケースワークでなければそもそも成り立たないというふうに私は思います。18歳までの子どもに特別養子縁組制度を保障するということと、それが本当に子どもの福祉にかなうかどうかという配慮ということと、別に論じながら、両方一緒にやっていく必要があるべきです。児童相談所のケースワーカーの質の向上というのはまた別の文脈で当然必要かと思っております。
 それと、ここに書かれている留意点の中の10歳が限界、当然年齢が高くなればそれは難しいです。思春期の真っただ中の子どもが特別養子縁組になるというのは相当難しい問題じゃないかと思うんです。けれども、だから特別養子縁組制度のチャンスを保障はしないということではなくて、だからこそ縁組前後の支援が非常に必要であるという文脈で考えていく必要があるかと思います。以上です。
○吉田(恒)座長 わかりました。ありがとうございます。年齢要件はいかがでしょうか。
 岩崎先生、お願いします。
○岩崎構成員 私も18歳、場合によっては20歳未満という線をずっと考えてきたんですけれども、何回も言っておりますようにそこまでを対象にするというより、それまでの年齢の間に特別養子にしてもいいほど、いい親子関係ができた場合に適用されることの必要性を感じて言ってきたので、1つは民法の先生方と何回かこの話をしたときに、やはり15歳という年齢がいいのか、10歳がいいのか、これも難しいですけれども、とりあえず今の日本の法律でいけば、15歳になると本人が選べる。
 普通養子をなくさない限り、アメリカのように養子縁組といったらもうこれしかないというのではなくて、フランスのように普通養子に近いものを残すのであれば、それを選択することが子どもの側としてできるということを残してもいいのではないかということは確かに思います。
 ただ、18歳でもこの人とやはり一生親子として生きていきたいと育てている親も思い、本人も思っているのであれば、それは特別養子にすることが必要だと思うんです。ちょっと1の論点があやふやになりましたけれども、何が私は特別養親になってよかったかというと、まず棄児です。棄児の戸籍のあの悲しさ。一人だけの戸籍を持っていて父、母の欄が空白でという戸籍の子どもが特別養親を得ることによって父、母の欄に特別養親の名前が書き込まれるんですね。
 もちろん、棄児の場合には出生の届け出が市長だったりすることで棄児であることがわからないわけではないのですけれども、一見、戸籍の中に父、母が明記されること、私はやはり長く普通養子でこの社会的養護下における子どもの養子縁組に携わってきましたので、養子縁組になってもなおかつ父、母のところが空白で、養父誰それ、養母誰それという、あの戸籍を持たなければならない棄児たちが、特別養子になったらどんなに救われるだろうというようなことは、特別養子縁組の本当にありがたい効果だったと思うんですね。
 そういう意味では、何のために特別養子が必要であるのかということと、日本の場合には養子縁組というのは本当に便利に使われてきたところなので、子の福祉のための特別養子というところの範囲をしっかりと明確にした上で、誰が必要なのか、どの子どもにはこれが必要なのかというところをちゃんと議論すべきではないかと思っています。
○吉田(恒)座長 ありがとうございます。
 では、お願いします。
○森口構成員 今の論点につけ加えたいのですが、日本では普通養子縁組が先にあったために、特別養子縁組の導入の際に要件を敢えて厳し目にして、もし特別養子縁組が使えなくても普通養子縁組があるからよい、という考えがあったと思います。
 これは日本の特殊な事情です。例えばフランスにも現在、日本に似たような単純養子と完全養子がありますが、歴史的には家の継承を目的とする単純養子は成人を対象とするもので、未成年を養子にすることはできませんでした。ですから、児童福祉のための養子制度が必要になったときに、新しく完全養子という制度を作らなければいけなかった。ところが日本の場合は、普通養子縁組で大人も子どもも、親族も他人も養子にすることができて、ものすごく汎用性が広かったために、特別養子制度の設立がここまで遅れた。そして、導入しても、要件は厳しくして様子をみようということだったのですが、そのまま改正もなく、利用が進まないままに30年たってしまったというのが現状です。
 そのために、今でも日本では子どもの福祉のための養子制度という考え方が社会に根付いていないと思います。特別養子制度ができたときにも、親子関係が築きやすいように養子や養親の年齢制限などを入れているのですけれども、そうではなくてリーガル・パーマネンシーという考え方は、障害があっても、何歳であっても、全ての子どもにパーマネントでエクスクルーシブな親子関係を築く権利があるということです。つまり、普通養子のように実親と養親という2組の親があるのではなくて、養親が養子に対して排他的な親権、つまり親としての権利と義務の全責任を持って本当の親子になるということがリーガル・パーマネンシーなのです。ですから、その入り口を民法の規定で狭めてしまうと、例えば幼少の子どもの方がうまくいきやすいから6歳未満にするといい始めると、では障害のある子どもも特別養子縁組の対象にしない方がいいのではないかという考えにも繋がります。
 アメリカでさえ、1960年代までは障害がある子どもは養子縁組の対象としないという方針であっせんをしていました。それが1980年代になって、子どもの最善の利益の観点から考えると、全ての子どもに家庭で養育を受ける権利があるという考え方に変わったのです。実際に障害のある子どもを育てようという養父母は少ないかもしれないのですが、1組でも見つかればそこでマッチングが成立するわけで、そのような可能性をそもそも法律で絶ってしまってはいけない。先ほどから皆さんもおっしゃっているように、民法ではまず全ての子どもにリーガル・パーマネンシーを保障するという理念を明確に書くべきで、それを実行する際のさまざまな問題については、それをどう解決し、支援していくかを別に考えていくことに賛成です。
○吉田(恒)座長 森口構成員、どうもありがとうございました。ほかに、年齢要件はよろしいでしょうか。
 では、なければ、その次の3の「審判の申立権について」というところです。先ほど事務局から説明がありましたように、ここの箇所に関しては論点の1にありますように2段階の手続にするということ、または現行の手続において児童相談所長に申立権を認めるという論点が書かれておりますけれども、この審判の申立権について御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。
 では、横田先生お願いします。
○横田構成員 前回問題提起したので、責任をとって話を始める必要があると思っていますけれども、私のほうから、現行制度のもとで児童相談所長に申立権を付与することで問題意識に対応できないかというようなお話をしました。
 そうすると、申立権とは別に審判の2段階に固有の価値があるという意見、岩崎構成員と、それから床谷構成員でしょうか。むしろこの2段階にするということは、私の理解では、その確信となるポイントは要するに子どもにとって確定的な安定した状態を確保するということが審判2分割の本来の趣旨で、それが一番重要だというような御意見と理解したんですけれども、それはよろしいですか。
 その上で改めて申し上げますけれども、要するに審判2段階だということで、現行制度で申立権を付与することによっては実現できない価値があるという御主張は理解した上で、これはむしろ話の進め方についての提案になるのかもしれません。つまり、審判の2段階ということに固有の価値があるということは理解しましたけれども、この専門委員会での問題意識として提案されたものは、やはり養親がなかなか大変だということで話を進めています。
 それが、まず最初の診断ですね。とりあえずこの設定された診断で、その診断から次にその処方箋として2段階で物を考えてはどうかというふうに話が進んでいるんですけれども、出発点は診断で、その診断は何かというとここの専門委員会の話としてはまず養親の話なので、その観点からまず現行法でだめなのか、それとも2分割なのかという議論をした上で、でも2分割には別の価値がありますよねというふうに順を追って議論をしたほうが、議論が錯綜しなくていいのではないかと思う次第です。以上です。
○吉田(恒)座長 そうすると、現行法上の不都合な点をまず明確にすべきだということですか。
○横田構成員 とりあえず問題意識として考えているのは、やはり養親がなかなか厳しいというところですね。その観点からすると、やはり2分割の提案と、ただ単に現行法での申立権という提案が多分対比されるだろう。
 そして、これは全くその次の話と切り離されているわけじゃなくて、その次の2分割に固有の価値があるという話に進んだ場合にも、その制度をつくるときにやはり児童相談所の体制とか問題になりますよねということがあり、2段階目の話のときにも第1段階目の話に意味がないわけではないので、まずはそちらから議論したらいいんじゃないですかという話です。
○吉田(恒)座長 もうひとつよくわからないのですが、最初の出発点として、まず第1段階で議論すべき点というのをもう一度お願いできますか。
○横田構成員 ここのペーパーの4ページの「問題意識」の1として掲げてあるところから出発して、そこからまず考えましょうという提案です。
○吉田(恒)座長 順序としてこういう書きぶりになっている、そういう現実があるからということですね。
○横田構成員 それぞれ問題意識があると思うんですけれども、それを全部一遍に議論してしまうと話がごちゃごちゃになるので、まず問題意識の1から出発してはどうでしょうかということです。
○吉田(恒)座長 ただいまの横田先生の御提案ですけれども、問題意識の1の部分に関して、もう少しここのところを掘り下げてみてはいかがかということですが、この点いかがでしょうか。養親が申し立てる際の心理的な負担が極めて大きくなるんだということで、実親のもとで育てるのが難しい子どもが特別養子縁組に移行できない。そういう負担の大きさというのが、この特別養子縁組の利用促進の障害になっているという捉え方でよろしいかどうか。
 山田先生、お願いします。
○山田構成員 そうした場合に養親さんが困っている部分が2つあって、まず実親さんが「子どもをお渡ししますよ」と言ってくれればいいけれども、そうじゃない場合に養親さんが申し立てなければいけないというハードルがあるということと、せっかく養育里親等の枠組みで子どもを育てていて「特別養子縁組をしましょう」という手続に入ったのに、最初は「いいですよ」と言っていた実親さんが、「嫌ですよ」と言われたときに話がまた戻ってしまうという2つの問題です。
 この2つのハードルというか、苦悩があるわけだから、その2つに対してそれぞれ回答しようとすると、最初の部分は児童相談所長が申し立てるようにしたらいいでしょうということと、2つ目の課題をクリアにするためには2段階にしたらどうですかという議論だったんじゃないかと私は理解しています。
○吉田(恒)座長 横田先生、お願いします。
○横田構成員 そうすると、2つのうちの後ろの話があるので、やはりここで2分割が必要だという御意見ですか。
○山田構成員 そこについてはまだ私の中で実際にはクリアになっていなくて、次の成立要件のところと関わってくるのですが、成立要件をどういうふうに設定するかということとも御指摘のとおり兼ね合っているので、では2段階にするのがいいのかどうかというのは結構、複雑な問題なんじゃないかと思うんですね。
 ですので、まず申し立ての部分については余り異論がないんじゃないかと思うんです。児童相談所長が申し立てるようにしたらいいんじゃないかというところなのかどうか、まずその辺をクリアにしてはいかがでしょう。
○吉田(恒)座長 山田先生の今の御意見は、現行制度のもとで、それとも2段階を前提にして申立権ですか。
○山田構成員 まずはそうです。現行制度というか、全部制度を組みかえていくことも想定しているわけですから、まず養親さんの申し立てに対して非常にハードルがあるということについては、その部分を児童相談所長が担うことについて別に今のところ異論は出ていないんじゃないですかという指摘をしました。
○吉田(恒)座長 わかりました。いかがですか。
 では、藤林先生お願いします。
○藤林構成員 何か議論が錯綜している感じがするんですけれども、要するにまずはこの論点1の2段階の手続に分けることについて、その必要性などについて十分議論しましょうということですね。
 私は今の議論を聞いていてそう理解したんです。けれども、それは要するに調査にもありましたように、実親さん、生みの親が行方不明とか、いつ出てくるかわからないとか、または同意していないとか、そういう曖昧な状況に置かれている子どもを養親さん候補の人が養育していく負担という問題。それと、もう一つは、同意はしているけれども、本当に最後まで同意が続くかどうかという不安感というか、これは多くの養親さんが感じているところですから、同意がある、同意がない、同意未確認、これは全部同じレベルにあって、でも、ある段階でもうこの子どもさんは特別養子縁組候補児として判断されるという裁判所の判断があれば、あとは養親さんが安心して養育できていくという文脈になっていくんじゃないか。
 それは、前回、林先生が欠席で私が代読したところに同意撤回の期限というくだりがありましたね。早稲田大学の棚村先生が提案していることで、これにも関連してくるかと思うんです。同意していても、この同意撤回の期間を置くことによって養親さんが安心して養育していける。これを実現するためにも、この2段階手続というのは必要なのかなと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
○吉田(恒)座長 横田先生、お願いします。
○横田構成員 最後の点は、今の制度でも同意の確実性を確保する方法で何か対応ができそうに思うんですけれども、要するにそれを家庭裁判所がオーケーだと言えばいいんですよね。その話の前に、まずはどういう制度を想定するにせよ、児童相談所に申立権を与えるというところまで認めることによって、その後の話を次にしましょうという提案です。
○吉田(恒)座長 では、お願いします。
○大谷法務省民事局参事官 法務省でございます。この点は、申立権と成立要件とを別に議論されているわけですけれども、民法上は養親が請求することが縁組の成立要件となっています。
 民法の考え方としては、本来は実親が子どもを育てるべきだろう。それが原則だという認識の上で、特別養子縁組という形で実親子関係をなくしてしまうという重大な効果を与えるためには、まずは養親の請求を要件として、きちんと縁組意思を確認するとともに、後に同意が撤回された場合であっても、それはやはり実親が育てたいというのであればそれが望ましいということが、もともとの考えにあるのではないだろうかと思うところです。
 従いまして、手続的な点よりは、むしろ本来、実親が育てるべきではないかという考え方との関係をどのように整理するのかという点を御議論いただきたいと考えております。
○吉田(恒)座長 山田先生、どうぞ。
○山田構成員 だからこそ、先ほど枠組みのところでお話したとおり、要保護児童とか社会的養護にある子どもという枠組みで今、議論をしましょうと言っているのであって、今の大谷参事官のお話だと、実親と養親の「子どもを出します」「もらいます」という親の制度としての議論になってしまっています。
 そうではなくて、実親さんから危害を加えられたり、育ててもらえない、その子どもに対して新たな実親を与えましょうという枠組みの話をしているわけだから、実親が育てるのがいいというのは実親がまともになるんだったらそのほうがいいかもしれないけれども、そうじゃないからこの議論がなされているんだという大前提が崩れているんじゃないかと思います。
○吉田(恒)座長 先ほど岩崎先生がおっしゃっていた、社会的養護の枠組みで考えるというとそういう見方になってくるということですね。
 では、林先生お願いします。
○林構成員 岩崎委員もこういう冊子で、やはり子どもは生みの親に育ててほしかったという欲求を持っているんだ。そのあたりの判断を、どれぐらいのスパンで子どもの時間感覚でもってどう考えるかということは重要なことかと思います。
 私はやはり日本の場合、例えば児相ケースの場合だと施設と交流が長くて6カ月とか1年、そして試験養育期間がさらに6カ月あって、そして申し立てから成立するまで考えるとトータル2年半ぐらいかかったりすると、そこまで考える必要があるのかなとも思います。
 私が前回引用させていただいた論文は中央大学の鈴木博人先生のものです。鈴木先生は、こう言われているんですね。パーマネンシーを保障するという考え方を取り入れている国では、同意撤回に一定の期間を設けている。やはり日本のように成立まで認めるというのは、余りにも長過ぎる。かといって、それを短絡的に切るということも問題だし、でもやはり今の成立まで認められるという撤回の中で子どものパーマネンシーがきちんと保障されていない。1年半たって別のというのは考えられないことじゃないかということが1点目です。
 それから、きょう民法学者の床谷先生が御欠席なので、私が鈴木博人先生に、司法上の手続と行政上の手続との区別がついているじゃないかということの意図を再度お尋ねして返答いただいたんですけれども、よくわからないんです。
 ちょっと読み上げてみますと、横田先生が指摘されていたように、オーストリアの養子縁組のことを鈴木先生は指しておられまして、先にお知らせしたオーストリア法が養子縁組を契約として構成しているのに対し、ドイツ民法は国家宣言型の養子法となっている。国家宣言型といっても、養子縁組が裁判所に申し立てられなくてはなりません。
 未成年養子の場合、養親となる者の申し立てと、実父母及び子の養子縁組に対する同意が要件となっている。この申し立てと同意が、実体法上の意思表示ということになります。
 手続上は、申し立てに基づいて手続は開始する。養子縁組は契約構成であっても、国家宣言型であっても、身分変動を伴うというくだりだと思うんですけれども、身分関係を創設する法律行為ですから当事者の意思なくして成立することはあり得ない。
 これが、申立権や同意権が一身専属権、つまり私が思うに生みの親の同意とか、養親当事者にしかその申し立てが認められていないということの理由です。
 ヨーロッパ大陸法では法律行為論が根底に置かれていますので、父母のいる子の養子縁組の申し立てが行政機関によって申し立てることはあり得ませんということです。
○吉田(恒)座長 では、横田先生どうぞ。
○横田構成員 その理解で、私が理解したことと全く同じです。それで大丈夫です。
 それで、先ほど林構成員が言われた最初のほうですね。同意の撤回の話がどうなんだということですけれども、私も手続が確実にわかっていないので間違っていたら撤回しますが、要するにどこまで同意が撤回できるかという話と、この審判の分割と当然に直接リンクするのかなというところがちょっとわからないんです。
 要するに、ころっと変えちゃまずいということは私も理解しました。そうなのでそれは考えないといけないんですけれども、私は分割提案がどうしてもそれでなければだめだとわかったら考えを改めますが、しかし、言われていること一つ一つを、今は同意の撤回の話ですけれども、それは別の手続的な工夫ができないかと思っています。
 それからもう一つは、やはり身分関係の変動だから当事者じゃないとだめだという話ですね。それは前回に私がお尋ねしたところですけれども、そんなことが日本でもそうなのか。ドイツはそうで、オーストリアもそうだということはわかりましたけれども、日本もそうなんですか。
 今、大谷参事官はそうだというお答えなんですか。
○大谷法務省民事局参事官 現時点での私の認識としては、身分関係の創設についてはそのように考えております。
○吉田(恒)座長 いかがですか。よろしいですか。
○横田構成員 わかりました。
○吉田(恒)座長 審判の申立権に関しまして、今の御議論を伺っていると、成立要件のほうにも当然、話が及んでくるということでありますので、この成立要件、特に同意の問題であったり、それからあとは要保護性等ですね。そちらも含めてさらに御議論いただければと思いますけれども、成立要件のほうはいかがですか。
○森口構成員 すみません。法学者じゃないので議論についていけていないんですけれども、今の会話で、これまで異論がないと言っていた「児相による申し立て」というのは実はできないということがわかったということなのですか。
○大谷法務省民事局参事官 そのような趣旨で発言したわけではございません。
○吉田(恒)座長 そうではないです。
○森口構成員 そうではないんですか。では工夫すれば何とかなるかもしれない、という会話だったのですか。
○横田構成員 大谷参事官には否定されましたけれども、まだ議論は終わっていないとは思っています。
○吉田(恒)座長 そういう御提案があったということ、そういう疑問が出されたということですね。
 では、岩崎先生お願いします。
○岩崎構成員 社会的養護における養子縁組を考えるときに、要するにまず親が育てられるかどうかという査定がどれだけちゃんとできているかなんです。
 だから、ほとんどのケースは児童相談所の窓口に子どもを預けたいと最初に言ってくる親は、どれぐらい預かったらあなたの問題は解決しますかと聞くと、判で押したように、大体半年ぐらい預かっていただければというのがお定まりなんです。そうですね、藤林先生。その半年が守れなくて、要するに気がつくと18歳まで施設にいるというのが今の実態なんです。
 それは、やはり児童相談所、あるいは養護施設が引き受けた子どもがいつまでここにいるべきか、いつになったら実の親は引き取れるのか、引き取るために必要な実の親と子どもとのかかわりをどういうふうに持たせるのかということがまずしっかりと機能していないと、それができない親だからこそ、社会的養護の子どもに養子縁組を用意してリーガル・パーマネンシーを保障したいという話にいくのであって、そこが今なかなか児相もできていないんです。
 例えば、私たちも週末里親制度で上がってくる子どもは面会がほとんどないので、この子は何で養子にならないのかというところから児相と詰めていくと、要するに引き取るめどがいつまでたってもたたない状況の親であれば養子縁組先を探してやるほうが今、週末里親を探すよりもいいのではないかということに、よくすりかわっていくことがあるんです。
 そのときにいつも私は心配するんですけれども、親から子どもをある意味でやはり奪うわけですから、例えば施設に預けた親は何をすれば親であり続けられるのかというところが全く議論されないんです。
 例えば、月に1回必ず面会をしなければいけない。面会をしないのであればお手紙を出すとか、電話をするとか、行けないという理由を子どもにも知らせてやって、「お母さんはあなたのことを心配しているよ」ということが常に子どものほうに伝わるような親子関係を支援する働きが養護施設や児童相談所の中にないと、その子どもから親を奪うことは我々もできないと思っているんです。
 だけど、実際はそれができていなくて、いつの間にか親は面会に来なくなり、いつの間にか所在が不明になっていたり、あるいはどうもいるらしいけれども携帯電話を何回かけても出てこないとか、何回家庭訪問しても親のほうから連絡してこないという状況の中で、どういう親が私たちにとって子どもを守り切れない親だという判断をするのか、その根拠を私たちは積み重ねていかないといけないと思っているんですね。
 実は、私は40年ほど前、家庭裁判所のある調査官とこのことについて話し合ったことがあるのです。そのとき、その当時彼は主任調査官でしたけれども、「日本の文化から言えば、盆と正月に迎えに来ない親は親でない」と言われたんです。私は、目からうろこでした。2~3年ぐらい行方不明だったらとか、私はそのころ思っていたんですけれども、日本の文化だったらそうじゃないだろう。日本の文化は盆と正月は家族が一堂に会することが当たり前であって、そのことさえ守れないような親は、親じゃない。
 確かに昔の養護施設はお正月になるとほとんど閑古鳥で、10人ぐらいどうしても帰れない子が残るんですけれども、今は大半が残っているんですね。どんどんそういう文化がなくなりつつあるので、この文化を根拠にするのは、少し極端な話ではないかなとは思っているのですけれども、でも基本的には、今でも飛行場が満員になり、新幹線が満杯になり、高速道路が数珠なりになるぐらい、盆と正月はみんな故郷へ帰るんです。家族が一堂に会することが日本の文化としてまだやはり生きている部分があるのならば、やはり年に2回、子どもを迎えに来て一緒に過ごすということが守れないような親は、守れない理由がちゃんとあるのならば別ですけれども、そうでないのにもかかわらずできないのであれば、親でないというふうにアセスメントする。それがいいかどうかを検討しなければ、やはりこの議論は進まないと思うんです。
 それは、社会的養護の子どもについて、なおかつそういう理由で、彼らを養子に出すとするときには、私は児相長が申し立て人になって、この子どもにはリーガル・パーマネンシーを保障することが大事なので、今その親の同意はとれていないし、行方不明であるけれども、特別養子縁組の申し立てをして裁判所の結審をもらうということが予測されて、私たちはマッチングをする。そうすると、あとは育て親さんと子どもとの関係が築かれたか、築かれていないかが、次の裁判所の審判になるというような形でなければ、私たちは安心してやれないと思っているんです。
 もちろん、社会的養護のための養子縁組はきっちりと、どういう子どもが対象になるかは明確にされるべきですけれども、明確になった子どもに必ず養子縁組先が決まるというものではありません。そんなに甘いものではありませんので、ここはまた違う論理が働きますけれども、でも、まず何が子どものために保障されるべきかというとき、社会的養護の子どもについては、この条件が整えば国としてリーガル・パーマネンシーを認める必要があるのではないか。
 そこの議論は、ここでやるべきか、新しい社会的養護の部会でやってもらうべきかは難しいところなんですけれども、今回こういうことが論議されるためにはまず議論されなければならない要件ではないかと思います。何をしたら親であるのか、何をしなければ親として認めないのかというところをどう決めるのか。なかなかこれは難しい話なんですけれども、やはり議論をしておかないといけないのではないかと思っています。
○吉田(恒)座長 山田先生、お願いします。
○山田構成員 もう報告書が確定した話を蒸し返すようですけれども、だから、裁判所命令というのは必要なんじゃないかと思うんですね。この親が本当に適切な親なのかどうかを評価していく手続の中に、やはり「裁判所の命令にも従わないのか、従うのか」というあたりがかかわってくるんだということが1点です。
 アメリカのオレゴン州だと、結局、「この親が適切かどうか」「親権をこの親から剥奪するかどうか」という審判と、それから「どの親子関係を新たにつくるか」という子どもへの養親さんの選定を同時並行でやっています。
 例えば、日本で、実親が親権喪失宣言を受けた子どもでないと特別養子縁組できないとなったら、この間にものすごく時間がかかってしまうので、両方を並行にしてやっていくという制度設計も考えないと、子どもにとっては問題が生じるのではないかと思います。
○吉田(恒)座長 先ほどの岩崎先生のお話も、最初の第1段階のところで児相長に申立権を認めるというのは、要は実親の適格性をここでまず判断するということですね。
○岩崎委員 そこはどうしても必要なんじゃないかと思うんですけれども。
○吉田(恒)座長 あとは、私のほうで疑問なんですけれども、論点の1で「特別養子縁組候補児」とありますよね。もし2段階の制度で、裁判所に候補児だというふうに認定される。逆に言うと、実親が不適切であるという判断がなされた場合に、その子どもと親との関係はそれまでと全く法的には変わらないわけですね。
 ただ、候補児としてリストに載るというだけのことという理解でよろしいですか。例えば親権はどうなるかとか、そのあたりは。
○山田構成員 そこが、すごく難しいと思うんです。
 あとは、林構成員の話だと、特別養子縁組などは実親と養親の同意がなければ成り立たないという鈴木先生のコメントがあったんですけれども、次の要件のところと絡んでくるのですが、同意がなくても、養親の同意がなくて特別養子縁組が組まれるはずはないので、養親さんはもちろん「この子どもを実子にします」という同意はあるに決まっていると思いますけれども、問題は実親のほう、実親の同意の問題だと思うんですね。
 実親の同意が不要な要件というのをちゃんと決めないと、やはりこの議論は堂々めぐりで終わっちゃう感じがするので、その要件のほうとあわせて総合的に考えていかないと議論が成立しないんじゃないでしょうか。
○吉田(恒)座長 だから、この2段階の最初の段階のところでは当然、父母の同意をどうそこに評価するのかという要件の問題とつながってくるということですね。ですから、同意がなくても候補児としてリストアップできるんだという仕組みにしていけばよろしいということですね。
 ただ、親権の問題はまだちょっとペンディングだということですね。
 では、林先生お願いします。
○林構成員 たしかアメリカは1997年のアスファでしたか、その成立によって児童相談所が申し立てるようになったと聞いたことがあるんですね。どうしてそういうことが可能かというと、先ほど何をすれば親として認められるのかという前提として、やはり児相がどれだけ支援したかとか、要するにどれだけの充実した在宅ケアを提供したかとか、それをあくまでも一定のスパンの中できちんとやったという証左があってこそ成り立つものだと思うんです。
 ただ、日本の場合、そうなると行政側の問題ということが起こって、要するに何もやっていない中で親になりなさいではなくて、一定のサービスプランを明確化して、そしてその期間の中でリーズナブルなエフォートをしたという証が必要になってくるわけですね。
 もちろん、そういうことでこれから変えていくということは考えられるんでしょうけれども、現実の今の日本の状況で親になりなさいという自己努力だけということになる危険性もあるのではないかと思います。
○吉田(恒)座長 それは第1段階のところの判断で、児相の合理的な努力を要件に組み入れるかどうかということですね。
 では、藤林先生お願いします。
○藤林構成員 それは、当然ですね。児童相談所が申し立てる際に、児童相談所は何の努力もしていませんでしたという、そんな恥ずかしい申し立てはあり得ないわけなのです。当然この2段階説を取り入れるということは、またこれは別に論じないといけないんですけれども、児童相談所のソーシャルワーク力が十分強化される必要があります。
 どのような形で裁判所命令が今後導入されるかわかりませんけれども、十分な在宅ケアであるとか家庭復帰の努力を児童相談所も行い、また裁判所も関与し、親権者、保護者がどれだけ努力をしたのかということが、配慮されて申し立てていくというプロセスと、これは表裏一体のものじゃないかと思います。
○吉田(恒)座長 大分この申し立てに関しては、成立要件とかなり密接にここであわせて議論していく必要があるということが明確になってきたようです。
 それでは、この申し立てと成立要件ですが、成立要件の今、同意のところは議論しておりますけれども、そのほかの要保護性というんでしょうか、特別養子縁組を認めるその必要性等、こうした厳しい要件の部分に関してはいかがでしょうか。
 では、藤林先生お願いします。
○藤林構成員 元に戻るんですが、先ほど横田構成員が言われた2段階説を入れるとして、ではその養子縁組候補児として判断をした場合に、その子どもの身分というのは養子縁組が成立するまでの何カ月間か半年間というのはどういうものになるのか。やはり、どこかでしっかりほかの国の制度なども学びながら議論しておく必要があるかと思います。
 それと、それに関連して、今の養子縁組の申し立ては養親さんに委ねられている。その結果、林先生の研究にあるように、とても長い時間、試験養育期間に入らない養子縁組里親さんもいらっしゃれば、結局6歳すれすれになってしまうという場合もある。本来は養親さん候補者は速やかに試験養育期間に入り、そこから裁判手続に入っていくということも担保されるような仕組みがなければ、非常に不安定な状態に子どもが置かれるのが長くなってしまうという弊害も生じてくるかと思います。養子縁組のその申し立てが、完全に養親さん任せにならないような仕組みもどこかに必要かと思います。
○吉田(恒)座長 ですので、ここのところは民法にもかかわるし、今の藤林先生のお話で言うと、それを児童福祉法の中に盛り込むのかどうかという話になってくるかと思うんですね。ほかにいかがでしょうか。
 久保先生、お願いします。
○久保構成員 私も議論がちょっとわからなくなったので確認の意味でお伺いしたいんですけれども、実父母の同意があるときは同意の撤回の問題で、同意がないときに2段階にするかどうかという話なんですか。とにかく、2段階にするという話ですか。
○吉田(恒)座長 ではもう一度、その2段階にするというときの父母の同意を、先ほどからの理解でいうと第1段階のところで、父母の同意がなくても特別養子候補児というふうに裁判所に認めてもらうという提案ですよね。そういう案がここに出ているというふうに理解してよろしいですか。
 藤林先生、どうぞ。
○藤林構成員 同意がある場合の撤回期間の問題は、2段階説を取らなくても何らかの仕組みでできるんじゃないかというのが、横田構成員の御意見ですね。具体的にどんなものがあるのかというのを聞いてみたいんですけれども、そういうのはあり得るものなのかどうか。
○横田構成員 要するに、同意書が曖昧なものじゃなくて公正証書なりでということを考えていたんですけれども、だから2分割というのはこの状況が弊害の可能性もあるということは指摘されているので、それでなくていろいろな問題点がクリアできるんだったらそれを先に考えたらどうですかという話なのですが、それは無理なんですか、どうなんでしょうかという話です。
○吉田(恒)座長 具体的なイメージが。
○横田構成員 要するに、とりあえず同意が不安定なことが問題なわけですね。そして、それを第1段階の家裁の審判で決着をつけないといけないのかなというのが素朴な疑問なんですけれども。
○吉田(恒)座長 要は、第1段階のところで同意というのがどうも成立要件にかかわってきそうだというときに、同意のある場合とない場合、または先ほど藤林先生がおっしゃったような不安定な場合という、ここの決着をつけようというのが第1段階だというふうに理解してよろしいんですか。
○横田構成員 だから、そこに固有の意義があるということで。
○藤林構成員 そうです。ですから、例えば児童相談所が、家庭養護促進協会さんに、この養子候補さんの養親さんをどなたか探してくださいと依頼した場合に、協会の方は、こんな不安定な状況ということでは受けられませんという話だと思うんです。
 ですから、第1段階、第2段階というふうに分かれているということなんです。ただ、その場合に撤回期限の問題をこの中に含めるのか、含めないのかというところがまだちょっと積み残しの課題じゃないかというところを蒸し返したわけです。
○吉田(恒)座長 では、第1段階で候補児となったところで、また撤回のおそれも出てくる。また、撤回を認めるかどうかということですか。
○藤林構成員 同意している方の場合に。
○吉田(恒)座長 同意でない場合です。不安定とかですね。
○藤林構成員 その場合は、第1段階で裁判所の判断が出れば後戻りできないですね。
○横田構成員 わかりました。同意がある場合に、その同意をひっくり返せるということに対しては今、私が言ったことが何かあるかもしれないけれども、同意がない場合に第1段階の審判でそこを決着つけましょうというところが意義だということですね。
○吉田(恒)座長 細かいことを言えば、候補児として裁判所の審判で出たということになってくれば、現在のこの審判で言うとやはり異議申し立てというのは審判後2週間はあり得ますよね。それは認めるということで、ただ、その後、今度は養子縁組候補者が出て、事実上の養育関係があるところまでは入り込まないようにしていこうということでしょうか。
 横田先生、いかがですか。そういう制度の考え方です。
○岩崎構成員 私たちがあっせんをする場合、今もそうですけれども、親が養子に出してほしいという依頼のケースについては、そこで同意書をとるんですね。その同意書が、法的効力がないわけです、実際問題、養親さんが申し立てて家庭裁判所の調査官が実母を呼び出して、そこでとった同意が最終的に法的な効力を持つ同意になっているんです。
 だから、結果として私たちがいただいた同意は、同意をしたという根拠はあるんですけれども、それが法的な拘束力を持たないというところが私たちにとってとても悩ましいところなんです。逆に言えば、この子を養子に出してくださいとか、乳児院に預けたけれど私は引き取れませんので養子に出してくださいと親がいったときに、児相や私たちが取った同意について、その段階で裁判所に「この親はこの子どもを養子に出すというふうに申し立てております」と申立てて、審判してもらい、その審判を担保してもらえれば、その後の撤回もできるように、何カ月間、例えば3カ月間の撤回期間を認めるとか、あるいはその審判に対する即時抗告を認めることは結構かと思います。けれども、今のやり方では児相や私たちが取った同意が、法的な効力あるというふうには見られないのですから、こういう里親さんがいるからいいかなと思って具体的なマッチングをし、親子になるための努力をさせてから、特別養子の申立てをしますので、その段階で親の同意が翻るかもしれないという不安を抱えて、審判を待たなければならないのはつらいのです。なので、やはり養子に出してほしいといった親の同意を先に担保してもらう審判もしてもらえたらありがたい。
 それもできるだけ時間を置かずに、それに対して即時抗告も一応は2週間ならば認めましょう。そのかわり、親はもう同意を撤回できないということになります。そうすると、私たちも第1候補の養親さんがうまくいかなければ第2候補、第3候補と、一生懸命探さないといけなくなるんですけれども、それは我々の責任としてやりましょう。
 だから、私たちがとった同意、児童相談所がおとりになった同意が何の法的な効力も持たないまま審判になって親がひっくり返すことが認められているということが、私には子どものために我慢ができないことだということなんです。
○吉田(恒)座長 わかりました。
○横田構成員 その部分が何とかなるんじゃないかという話なので。
○岩崎構成員 もしかしたら何とかなるから、担保という形をとってくだされば何とかなるんじゃないかと思います。
○吉田(恒)座長 予定の時間になりまして、19時です。本来であればそれぞれの論点について意見交換をしたかったんですけれども、やはり大事な申し立てのところ、成立要件のところに時間を割いてイメージが大分見えてきたのかなと思います。
 ただ、議論の中でやはり宿題も残っているということでありますので、きょうの議論はまた次回以降、成立要件、申し立て、そして残された論点についてさらに議論を深めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局のほうから次回の案内等を含めて御案内をお願いします。
○林補佐 次回の日程につきましては、1月30日月曜日17時から19時を予定しております。
ヒアリングと、引き続き特別養子縁組に関して御議論をお願いしたいと考えております。
○吉田(恒)座長 ありがとうございました。
 それでは大分、込み入った議論になりましたけれども、また次回以降御議論願いたいと思います。
 きょうは、どうもありがとうございました。

(了)

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