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2017年1月16日 第8回 新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会
○日時
平成29年1月16日(月)17時00分~19時00分
○場所
厚生労働省 省議室(9階)
○議題
関係団体等からのヒアリング
○議事
(議事概要)
各参考人から発表後、構成員から質疑応答を含め自由に発言いただいた。
(主な発言概要は以下のとおり)
1.地域主導による医療・介護と生活の支援に関する議論について
【地域主体の医療の確保】
○ 医師の養成には最低でも 10 年程度必要であり、現在の医師不足と、中長期的な医師の養成とを混同せず、長期的な視点から議論すべき。
○ 少子化が進む中、医学部人気が高まり医療従事者の養成数が増加することは、医療以外の他の領域へのマンパワーの配分という観点から問題がある。他方、医学部定員が増えすぎると、医療の質が低下する可能性がある。
○ 医療現場の勤務環境を改善するため、勤務環境改善支援センターのような既存の仕組みをしっかりと活用すべき。
○ 急ぐべき課題である医師の偏在対策については、早急にビジョン検討会で結論を出し、医師需給分科会にフィードバックして議論を深めるべき。
○ 医療提供の形や医師需給に大きな影響を与えるICTやAIなどの技術革新を踏まえた、定期的な医師需給の検証・見直しができるような仕組みが必要。
○ 医師偏在対策は、地元出身者枠の導入や出身地での臨床研修の実施など、エビデンスに基づいた対策を早急に実施することが重要。
○ 医師の資質として、単に偏差値が高い者ではなく、国民に寄り添い、患者の立場に立って臨床ができる者が望ましい。一方で、医療の質を担保するという観点から、一定程度のレベルは必要。
○ 地域枠とそれ以外の学生の間で成績に差があるという懸念があるが、医師国家試験の合格率はむしろ地域枠の学生の方が高い。地域で自分が医療をやるという思いを持つ学生は、そうでない学生より頑張っていると認識。
○ 都道府県によって、地域枠の医師の条件が異なることから、都道府県ごとの事情を踏まえつつ地域枠の医師に求められる役割を議論すべき。
○ 医師の偏在は都道府県における取組と同時に、都道府県を越えた取組についても視野に入れるべき。
○ 青森県は、自治体病院の再編等の医療提供体制の整備を行っているが、医師偏在への効果は不十分。全国単位で医師を増やしても、医師不足地域の医師不足解消には繋がっていないことから、都道府県単位での医師偏在対策は国の規制的手法が必要。
○ 青森県では、病院医師が不足しているため、医療へのアクセスに一定程度の不便があっても病院の再編が必要と地元住民に理解してもらっているが、それでもなお医師不足が解消しない。
○ 奨学金を貸与された学生や地域枠学生は、義務年限を超えた卒業 10 年目以降は都道府県に残っていない。地域の医師の平均年齢が上がってきており、医療提供体制を持続可能にするためには、卒業 10 年目以降の医師に一定程度医師不足地域での医療提供に携わってもらうことが必要。
○ 医療に対する住民の不満の声としてコミュニケーション不足が原因と考えられるものもあるため、医師を強制的に地域に配置すれば医師不足が必ずしも解決するわけではない。
○ 専門医の配置は、専門研修のプログラムなどで調整していくことが必要。
○ 今後、新専門医制度によって、後期研修医と大学とのつながりが強くなるのではないか。
○ 医師の働きやすい病院を作ることは投資であり、投資に見合う収益があるか、他の職種の理解が得られるか、などの点について、数年単位の経営者の視点が必要。
○ イギリスでは、必要とされるニーズや頻度に応じて、地域の他の医療機関と補完し合い、ワンストップではなくワンコミュニティーとして地域のニーズに応じて医療資源を配分することがなされている。
○ 日本がこれから変わりゆく医療ニーズに対しより柔軟に対応していくためには、ソロ診療からグループ診療へ、長時間労働から時間外専門サービスとの連携へ、医師単独から多職種連携・分担へ、対面診察のみからより多様な受診方法へ、便宜的領域から学術的領域へ、などの視点が必要。
○ イギリスでは、患者の診察や入院までの待機時間の減少のため、医療従事者に負担を負わせるのではなく、プライマリ・ケアに予算を投入し労働力を増やすなど、システムとして対応した。
○ 医療や介護の従事者の需給の検討においては、地域や施設の種別、事業者のパフォーマンス、地域密着や自助・互助・健康増進・介護予防・総合事業の程度など、現状の提供体制の在り方の分析が必要。地域の資源に即して地域主体で需給を検討している、イギリスの Clinical Commissioning Group が参考になるのではないか。
○ イギリスにおける地域の医療資源の分配は、マネジャーの集団がトップダウンで地域に必要な供給をはめ込んでいく方法が失敗したことから、地域医療のニーズを知ったGPが行うようになり、現在のところ上手く運営されている。
○ 医療ニーズの中には、真の医療ニーズと、供給者が作り出すニーズ、利用者の心理不安や期待によるニーズがある。医療を持続可能とするためには、出来高払いによる供給者が作り出すニーズの最小化、信頼関係に基づく利用者の不安の緩和、医療者のコミュニケーションによる利用者の期待のコントロールなどによる医療のパイの適正化が重要。
【プライマリ・ケアの確立】
○ 地域における病院の医師不足の解消には、総合診療医の養成などプライマリ・ケアの基盤強化が重要。
○ 一人で働くソロ診療は、孤立しやすい、家庭との両立が難しい、幅広い対応がしにくいなどの短所がある。一方、グループ診療は、予約外の患者の診察、予約不要の電話相談の提供、往診、訪問診療などをカバーすることが可能。
○ プライマリ・ケアを担う医師は患者が問題と感じていることに応える必要があり、コミュニケーション技術を高めることが重要。
○ 二次医療で磨いた臨床技術はそのまま一次医療で通用するというのは誤解であり、一次医療で必要な臨床技術は二次医療とは本質的に異なり、専門のトレーニングが必要。
○ 家庭医療科はサブスペシャリティーではなく基本領域の一つであり、また、領域別診療科の集合体ではなく総合的に診る独自の専門性・世界観が存在する。
○ プライマリ・ケアにおける多種多様な問題の必ずしも全てが、高コストである医師との対面診察を必要としない。ニーズやリスクも低いときにはコストの低い対応、ニーズやリスクが高いときにはコストの高い対応をするなど、程度に応じてサービス提供法を変えることが重要。
○ 日本の医療と介護では、特定の臓器や疾患でなく患者にフォーカスするという観点が不足しており、これが達成されることで実際に患者に必要な医療が提供でき、患者の満足度も向上する。
○ GPが少ない予算で多くの患者を診ることにより、従来型の臓器別スペシャリストが恩恵を受けているという視点が大切。
【柔軟なタスクシフティング、タスクシェアリング】
○ 医師は業務を抱えすぎているため、他職種と連携することが重要であるが、そのためには、電子カルテの活用や同じ場所で業務を行うことによる情報共有が重要。
○ オランダでは、医師の負担を適正化するため、家庭医が主導してプラクティスナース、診療所看護師の養成の仕組みを作ってきた。プライマリ・ケアのガイドラインがエビデンスに基づいて常に更新されており、ガイドラインベースでできるものは看護師が行い、より高度な判断が求められるものは医師が担っている。
○ イギリスでは、看護師や薬剤師への権限の委譲と併せて、責任も移ることになる。自分のコンピテンシーを超えていることを行い、何かあった場合、看護師の責任となる。
【医療とまちづくり】
○ 医療と介護との連携にはまちづくりが必須であることから、地域医療に関しては、医療関係者が市町村の担当者や介護職員とも議論することが重要。
2.個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方の実現
【個々人の能力と意欲に応じた疲弊しない体制等の整備】
○ 医療の世界で医師が働く場所はさまざまであり、どこで働くかは医師が自分のキャリアの中で選択していくべき。医師が余って仕方なく他の分野で働くということがないようにすべき。
○ 医療安全やQOLの観点から医師の三交替制を導入することは、一人の医師が患者を最期まで看取る、という国民の医療に対する価値観とは異なり、国民の理解などが必要。
○ 国民の望むものが多すぎる中で、期待に応えようと医師が一生懸命働くことで医師の過重労働が起きているため、医療提供者側の論理だけで医師の需給を考えるべきではない。
○ 医療従事者の定着のためには、疲弊しない体制の構築、キャリアプランの作成等によるやりがいの出る職場づくり、教育研修機能の充実が重要。
○ 働き方の改善については、女性だけに特化した制度を設けると、女性の役割が固定されてしまうため、男性・女性ともに利用できる制度づくりを行ったうえで、働き方の改善の制度を実際に利用できる職場の雰囲気づくりや管理者研修の強化が必要。
○ 長時間労働は、男女間や子供がいる人といない人との間の不公平感、当直明け勤務による医療の質の低下や、家庭や地域での活動ができない等の問題がある。
○ 長時間労働の是正として、交替勤務の導入、カンファレンスの勤務時間内実施、勤務環境改善の取組の学会などでの広報、患者教育、専門医取得・更新制度の柔軟な運用、育児以外でも利用できる時差勤務や短時間勤務、兼業可能な就業規則、病棟クラークの活用、他職種との業務分担などが重要。
○ 医師の需給推計では、女性医師の働き方を基準にして、必要医師数を推計すべき。
○ 医療従事者の勤務環境改善においては、看護師についての取組みが女性医師でも活用できるなど、職種を超えて効果が出るものがある。
○ 女性の医療従事者が働きやすい環境を整備するためには、経営層がしっかり関わり周囲の理解を得ていく必要があり、経営層が好事例をアピールし、共有していくことが重要。
○ 医師は主治医として患者を抱え込む傾向がある。多様な働き方を可能にするためには、医師同士の相互レビューの導入や教育、標準化された分類に基づく診療録などにより、タスクシェアしていくことが必要。
【専門性の追求】
○ 大学病院は、手術数が少ない、外科医の数が多い、手術以外の仕事が多い、給料が安い、先輩医師が疲れているなど、研修の場所として問題がある。
○ 専門医教育として、アメリカは教育期間が決まっていて独り立ちできる時期が明確であるが、日本は教育機関が決まっておらずいつ独り立ちできるか明確でない、という問題がある。
○ 心臓血管外科の専門医研修として、アメリカは専門医取得に必要な年間最低執刀症例数や修練医の枠が決まっており、修練医と専門医の境界が明瞭である。日本は最低執刀症例数がアメリカより少なく年限も存在せず、修練医の枠も決まっておらず、修練医と専門医の境界が不明瞭であり、専門医制度が中途半端。
○ 効率のよい心臓血管外科教育システムに変えていくためには、施設集約、チーム医療の推進による権限委譲、カリキュラムの充実が必要。
○ 大学主導の教育体制は、小さな施設を増やすことがメリットとなり施設集約ができない、縦割り組織で症例数の増加が困難、学術とマネジメントと臨床のポジションが重複している、などの問題があり、症例数の多い一般病院が重要となる。
○ 心臓血管外科医が自分の仕事に集中できるための一般病院の取組として、集中治療医の医師の24時間常駐による急変対応や、診療部所属の診療看護師が術後管理を中心になって行うことが挙げられる。
○ 日本では組織がピラミッド型で、医師が部長になりたがるために小さな施設が乱立する。部長と臨床医が同列に活躍できる環境をつくり、施設の集約化を進めるべき。
○ 小さな病院が幅広いトレーニングを積むためには、他の病院との交流が必要。
○ 診療看護師が活躍するためには、地域医療におけるニーズの存在、医師と協調して働くための所属の在り方、信頼して働くための医師の意識などが重要。
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