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2016年12月13日 歯科診療情報の標準化に関する検討会(第10回)議事録

医政局 歯科保健課

○日時

平成28年12月13日(水) 15時~17時


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第12会議室


○議題

(1)平成28年度歯科診療情報の標準化に関する実証事業の実施状況について
(2)その他

○議事

○和田課長補佐 

ただいまより、第10回歯科診療情報の標準化に関する検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は参考人として、日本歯科医師会の小玉剛先生に御出席を頂いております。また、オブザーバーとして警察庁刑事局より石田課長補佐、五味課長補佐をお呼びしております。なお、今回の検討会は公開となっておりますが、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。それでは、歯科保健課長の田口より御挨拶申し上げます。

 

○田口歯科保健課長

 本日はお忙しい中、本検討会に御出席を賜りありがとうございます。平素から厚生労働行政に御理解・御協力を賜り、この場を借りて厚く御礼申し上げます。本日の検討会は、本年度より実施された歯科診療情報の標準化を広く普及させるための実証事業についての概要と、この事業等から明らかになった歯科情報の利活用に関する課題などを、御報告いただくことになっております。また、事務局より本年10月に出された保健医療分野におけるICT活用推進懇談会の提言について御説明させていただき、歯科情報の利活用について、先生方より御意見を頂ければと考えております。歯科の診療情報に関して幅広い見地から御議論を頂き、貴重な御意見を賜れますことをお願いして、簡単ではございますが、私からの御挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○和田課長補佐

 この後の進行は座長にお任せいたします。よろしくお願いいたします。

 

○住友座長

 本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今、田口課長からの御挨拶の中でありました2つのポイントをはじめ、具体的な話をかなり詰めてしたいと思います。時間は一応17時までを予定しておりますが、会議の進行には是非御協力のほど、お願い申し上げます。それでは、本日の資料の確認です。事務局からお願いいたします。

 

○和田課長補佐

 本日の配布資料について、御確認をお願いいたします。議事次第に続いて委員名簿、座席表があります。参考人から御提出いただいている資料1として「平成28年度歯科診療情報の標準化に関する実証事業の概要」、資料2として「口腔診査情報標準コード仕様書()」、事務局より提出している資料3として「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会提言」があります。また、参考資料1として「歯科診療情報の標準化に関する検討会設置要綱」、参考資料2として「歯科診療情報の標準化に関する実証事業仕様書」、最後に参考資料3として、本年6月に行われた第9回検討会の議事録となっております。乱丁・落丁などがありましたら、事務局までお知らせください。

 

○住友座長

 それでは最初の議題ですが、まず日本歯科医師会からお願いしたいと思います。平成28年度の事業概要等の全体像や進捗状況について、小玉先生から御説明をお願い申し上げます。

 

○小玉参考人

 日本歯科医師会総務担当常務の小玉でございます。平成28年度歯科診療情報の標準化に関する実証事業の内容について、御説明をさせていただきます。資料1をお目通しいただきたいと存じます。1枚目の下段は、実証事業の全体像を示しております。図の中に示しているマル1~マル5の項目に関しては、後ほど御説明申し上げます。本事業においては現在、ベンダー各社においていろいろと異なっている歯科情報を統一化する基盤となる、口腔診査情報コード仕様を策定しております。これを基に、ベンダー各社でCSVファイル出力プログラムを開発していただき、電子カルテ等に実装していただきます。

 その後、CSV形式のファイルをHL7形式のファイルに変換するコンバータの開発を行います。このHL7形式のファイルをSS-MIXのルールで並べ替えたものを、歯科医療機関内のハードディスク等に保存を行います。このローカルストレージの内容が全て、厚生労働省標準規格やSS-MIXのフォルダ構成の場合は、SS-MIX仕様、各社独自のファイルなどを追加した場合は各社仕様となります。この辺りまでを本年度内に行えるように、この事業を行っております。これらが達成された後に歯科情報の利活用が行えるよう、その方向性をより具体的に議論していきたいと考えております。

 次のページの「マル1ベンダー各社の情報統一化」です。ベンダー各社の情報の統一化のために、口腔診査情報コード仕様を策定いたしました。このコード仕様は、厚生労働省標準規格取得を念頭に置いております。これに関しては後ほど、玉川委員より説明をお願いいたします。次にベンダー各社に口腔診査情報コード仕様を配布し、電子カルテ等の歯科情報を変換するプログラムの開発を依頼いたします。このプログラムにより出力されるデータは、統一されたコードを有するCSV形式のファイルとなります。現在数社に、このプログラムの作成を依頼しております。

 続いて、下段にある「マル2CSVファイルの変換」についてです。口腔診査情報コード仕様策定と時期を同じくして、CSV形式データからHL7への変換仕様を策定し、変換仕様に基づいてCSVファイルを国際規格であるHL7形式ファイルに変換するコンバータを作成いたします。このコンバータは代表者が作成し、ベンダー各社と共有することにより、前に申し上げた出力プログラムの開発を容易にし、その開発費用を削減するとともに、HL7に変更が生じてもコンバータを更新することにより対応が可能となり、メンテナンス性が向上します。

 「マル3歯科情報の保存」です。この変換されたHL7形式のファイルをSS-MIXのフォルダ構造に準じて、歯科医療機関内ハードディスク等に保存することで歯科情報の標準化が達成されます。医療ネットワーク活用のため、データセンター等に保存する場合、SS-MIX形式のフォルダごと移動させることで、医科との整合性を取ることもできます。これら保存されたデータは、既存のアプリケーションにて閲覧が可能ですが、口腔内のスナップショットとして画像化を行うには、また別に新たなアプリケーションの開発が必要になってきます。

 「マル4歯科情報の利活用」です。歯科情報の標準化がなされた後、これが全国的に普及すれば、その利活用が可能となります。それらには身元検索をはじめとして、ICTを活用した医療情報のデータベースの構築、医療連携等のネットワークへの参加や医療情報の一元化など、様々な活用例が考えられます。それらを考える上で現在、考慮すべき事項や方向性について御説明申し上げます。歯科情報の利活用については身元確認、身元不明者の歯科情報と歯科医療機関が有する歯科情報の照合を効果的かつ迅速に行う、いわゆる生前・死後情報の標準化が第一に挙げられます。それから、医療情報のデータベースとして疾患の原因究明、治療法の開発、創薬、医療機器開発等に資するデータの蓄積というのも挙げられます。ただ、ここではあくまでもたくさんのデータを集めた匿名化情報の活用になります。

 その他、医療連携等のネットワーク活用が挙げられます。地域や全国の健康・医療・介護情報ネットワークを通じて、歯科情報を医療従事者間で安全に共有することも活用の1つになっております。また、医療情報の一元化も考えております。医療機関等の施設や個々人に分散したデータを一人ひとりを軸に、健康なときから疾病・介護段階までを生涯にわたって統合することも、活用の1つになっております。しかしマル5の課題を見ていただきますと、歯科情報に関する身元確認においては、現在は「個人情報の保護に関する法律」、「警察が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」があります。

 次にスライドの9、「歯科情報による身元確認」に移らせていただきます。これらの法令に基づき、警察が個々の歯科医療機関に対して身元検索の要請を行い、歯科医療機関がハードディスク等に保存した歯科情報を検索し、個別に対応を行っております。今後、警察等から提供される歯科情報にも、本事業の成果を反映したいと考えております。ですから平時における身元確認も、1つの利活用の方法として考えているということです。歯科医療機関がバックアップのみを目的として歯科情報を外部に保存することは可能ですが、その保存先での目的外利用は、現在は不可能となっております。すなわちデータセンター等において、警察からの要請に対応することはできないようになっております。

 またその下の「歯科情報による身元確認」ですが、現在の身元検索に関わる状況をまとめますと、生前の歯科情報の所在が特定できる場合に限り、身元検索が可能となっています。歯科情報の標準化が達成された後には、その手間を大幅に省くことができますが、全てのケースには対応できません。これには法的な壁があるわけです。ですから現在は、生前の歯科情報の所在が特定できる場合に、身元検索が可能となります。歯科情報が特定できない場合においても、日本歯科医師会と警察庁との取組により、可能な部分もあります。ただ、これは広く十分自由にできるということではなく、まだまだ困難な状況も多くあります。しかし歯科情報の標準化が達成された後には、歯科医療機関が警察からの照会に対応するために、その手間を大幅に省くことができる可能性が広がることが考えられ、迅速な身元確認を可能とすることもできるわけです。ですから、ストレージしてあるデータをどういうように利用できるかというのは、身元確認だけに限らず、歯科の情報に関わるいろいろな活用で法律的な整備が必要になってくるわけです。

 次が歯科情報による身元確認ということで、11番目のスライドになります。もし歯科情報の所在が不明なケースに対応する場合、全国の歯科医療機関の歯科情報をデータセンター等に集約する、すなわち歯科情報をデータベース化して、そのデータベースがどこからでも使えるようなシステムを構築する必要があります。また、これらのデータの保存先は都道府県単位、若しくは国ということが想定されますが、データの保存・身元検索への使用に関しては、新たな法的な整備が必要となってきます。現在では国が管理するデータベースの1つとして、ナショナルデータベースがありますが、これは「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて利用されています。身元検索に際してはどのようなシステムを構築するか、どのようなやり方で法律的な担保を求めていくかということに関しての議論が、大いに必要になってきます。

 最後に、12枚目のスライドの「マル5課題」ということで御覧いただきたいと思います。身元確認以外の利活用方法については、資料に示すような課題があります。医療情報データベース構築、医療連携等のネットワークの活用、医療情報の一元化等は、歯科界単独で事業等を行うのではなく、医療界全体の中での歯科として参加していくことが適切ではないかと考えております。例えば、電子かかりつけ手帳の中に口腔内に関する事項を設けることや、PHRを活用することなどの方法が考えられます。これらに関連するICT活用に関する国の方針に関しては、事務局から詳細な説明をお願いしたいと存じます。甚だ雑駁ではございますが、以上、私からの説明とさせていただきます。

 

○住友座長

 スライドの5の「歯科情報の保存」について確認します。今回の実証事業の中に、画像化は入ってないという理解でよろしいですか。

 

○小玉参考人

 そうです。画像化は入っておりません。

 

○住友座長

 分かりました。それも課題と言えば今後の課題なのかもしれないということですね。

 

○小玉参考人

 そうですね。画像があったほうが分かりやすいというところはあるのですけれども、テキスト化するのが現状です。

 

○住友座長

 分かりました。続いて資料2、「口腔診査情報標準コード仕様書()」ですが、これは玉川委員から御説明いただけますか。

 

○玉川委員

 大阪大学の玉川でございます。小玉委員から御説明がありましたCSV形式のファイルに相当するものが、資料2のコード仕様です。当初は各歯科のベンダーがお持ちの電子データを1回変換し、SS-MIX形式にしようと考えておりましたが、それはなかなか敷居の高い作業であることが分かりましたので、2段階に分けております。もう1つはCSV形式のファイル自体も、今後アップデートがあるでしょうし、HL7形式もアップデートがあるでしょうから、各ベンダーがそれぞれにHL7形式へのプログラムを書かれるコストもあり、2段階に分けることにいたしました。

 その1つ目のCSVファイルですが、前回あるいは前々回の検討会で、幕の内弁当という話をしたと思います。資料の中に何となく四角い枠があり、中に番号を書いた名前が入っていることがお分かりいただけるかと思います。9ページに「口腔診査情報データの出力イメージ」というのがあります。これも見た目は分かりにくいかもしれませんが、文字が1行ずつ出力されるテキスト形式のファイルを想定していて、1行目の頭にON2行目にPN3行目にNSというように略語がきて、その後にそれぞれのデータがザーッと並んで、全体として最後にDTというのがきてファイルになることを想定したものです。

 このテキストファイルの出力イメージが、いわゆる幕の内弁当の外の枠に相当するもので、その中に四角く囲んであります。「歯の診査情報レコードユニット」と書いてあるのが、それぞれの歯に相当する部分です。その下にはKKSIと書いてあります。これらが歯周検診とか学校検診といったデータも収められるようにしようとしている所です。そういうことで枠を区切って1行ずつデータを書き、それぞれデータの頭に、この行はどういう意味ですという略語が書いてある、そういう出力イメージが共通の幕の内弁当に相当します。

 では、その頭の内容は何か。1ページに戻っていただきますと目次があって、目次の7から各レコードフォーマットの説明があり、それぞれONPNNSがどういう意味かということが書いてあります。そのONに続いて、情報として入力機関の情報がずっと並びます。PNというのは個人の識別情報が並ぶということです。ちなみに、19ページには入力機関レコード、先ほどの幕の内弁当の先頭の所ですが、ONがあって、そのONの行には何を書くかというのが、マス目で117番まで作ってあります。1行目の情報がそれぞれのレコード識別情報、2つ目のコマが送信先機関種別、3つ目が送信先機関都道府県コードで、それぞれのコードにどういう意味があるかが、その下に書いてあります。

(2)ON-2を見ていただきますと、例えば01は他の医療機関から送信されている情報です。02は委託業者からの情報、04は地域データベースの情報というようにそれぞれ区別し、送信先の都道府県コードは20ページの数字を使います。その下に医療機関の名前はこれですと書いておりますので、このルールに従って9ページにあったテキストファイルを出力していただくというのが標準フォーマットです。いわゆるCSV形式のファイルで各歯科のベンダーが、これまでレセプト電算方式で出力してこられた形式と似せて作ってありますので、ベンダーが出力されるときに、それほど大きな障害にはならないだろうと考えております。HL7にコンバートする部分はこのコード仕様、CSVファイルに従って出力されたものを、どこか1つのプログラムで変換することを想定しておりますので、各ベンダーはこの形式で出力していただくという内容です。この内容は、日本大学松戸歯学部の斉藤先生が非常に尽力され、ここに至っております。以上です。

 

○住友座長

 それでは、少し限定しますけれども、小玉先生と玉川委員から説明があった部分について、御意見、御質問をお受けいたします。小玉先生の中での利活用と課題に関しては、事務局の説明の後で少し詳しくもみたいと思います。もちろん、それに関わるお話も承ります。どなたか御質問はありますか。

 

○多貝委員

 資料1について質問します。スライド5の中にある「歯科情報の保存」の2つ目のポチの所で、「保存されたデータは、既存のアプリケーションにて閲覧が可能である」となっています。医科のほうではSS-MIXビューワーというものが存在しますが、歯科の今回新たにできる形式については、閲覧できるアプリケーションはないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○玉川委員

 先ほどのCSV形式のファイルですと、Webビューワーでデータを見ることはできます。ただ、ここに「画像化」と書いてあるのは、例えば歯の絵があって歯根が分割されているとか、歯冠部はクラウンが入っているというように、絵を作るにはアプリケーションが必要という意味です。そういうお答えでよろしいですか。

 

○多貝委員

HL7形式のものはテキストとしては見られますが、画像ではないにしても、見やすい形ではないですよね。いわゆるテキストとして見られるということですか。

 

○玉川委員

 そうです。

 

○多貝委員

 分かりました。

 

○住友座長

 ほかにどなたかいらっしゃいますか。次へ進みます。資料3の保健医療分野におけるICT活用推進懇談会からの提言です。事務局から説明をお願いします。

 

○綿本専門官 

資料3をご覧ください。前半部分は非常に細かいことが書いてありますので、また時間のあるときにお読みいただければと思います。最後の4枚ほどの部分が、これをまとめた概要です。48ページの後から、また1ページとして始まるので、その辺りを御覧ください。

 当省ではICTを活用した次世代型保健医療システムを考案しており、保健医療分野でのICTの活用の基本理念を打ち出しております。基本理念はwell-beingといって、健康で安心して暮らせる社会の実現を目指しております。この基本理念に向けた4つの価値軸を作っております。1つ目は「患者本位の最適な健康保健医療サービス」、2つ目は「国民全体の主体的な健康維持」、3つ目は「持続可能な保健医療提供システムの実現」、4つ目は「医療技術開発と産業の振興」です。これは資料の前半の部分に詳しく書かれてあります。

 これらの基本理念を達成し、次世代型保健医療システムの構築に向けたパラダイムシフトがあります。まず、1番目は、「つくる」という言葉です。この内容は、集まるデータから生み出すデータへというところで、レセプトやカルテなど、現在収集できるデータだけではなくて保健医療の質の向上など、患者や国民にとって価値を生み出すデータを「つくる」ということです。

2番目は、「つなげる」という言葉です。分散したデータからデータの統合を行っていきます。医療機関等の施設や個々人に分散したデータを人、1人を軸に健康なときから疾病・介護段階までを生涯にわたって統合して「つなげる」ということです。3番目は、「ひらく」という言葉です。たこつぼ化、すなわち個人の情報システムでデータを囲い込むのではなくて、安全かつ開かれた利用をしていきましょうということです。つまり、施設や行政、研究機関などの個々の主体で囲い込まれたデータを産学官が安全に活用できるプラットホームで「ひらく」、医療・介護などの保健医療データをビッグデータとして活用していきましょうということになっております。

4ページをご覧ください。まず、「つくる」というところで、現在我々がやっている事業とほぼ同じようなことを考えられております。今までは、それぞれのベンダーやそれぞれの地域、それぞれの病院において、異なるデータ形式を持っておりましたが、そういうものを標準化し、その部分を活用しながら増やしていくということがデータを作る、この部分にIoTとか、IoTはもののインターネットといって、例えば血圧を測ったときに自動的にカルテへ飛ぶ等データ入力の省力化を図るもので、そういうものを活用して価値のあるデータを作っていきましょうということになっております。

5ページをご覧ください。2番目として、「つなげる」です。例えば、Aさんという方がいて、この人が健康なときに検診を受けたり、病気になったときにかかりつけ医にかかったり、災害のときにけがをして病院へ行ったりという全ての健康や医療に関するデータを1つに統合して、無駄な検査や重複した投薬などを防ぐということで、個々人のデータをずっと生まれてから死ぬまで同じ1枚のカルテでやっていきましょうということになっております。

 次に6枚目ですが、保健医療の価値を高めるためということでデータを「ひらく」という所です。これは、今までまとめられたそれぞれ個々人のデータを、共通のプラットホーム上に乗せて、そのデータを大学、行政、企業に提供していき創薬や医療の質の向上というところにつなげて、さらに、それを国民一人一人に還元していきましょうというものです。

 こういったパラダイムシフトにより、期待されることとして、ビッグデータの活用やAIによる分析により診療や治療が難しい疾患でも、個人の症状や体質に応じた迅速で正確な検査、診断、治療が可能となります。専門の医師等がいない地域の患者や生活の中で孤立しがちな高齢者でも、ICTを活用した遠隔医療や見守りなどの生活支援が受けられます。地域や全国の健康・医療・介護情報ネットワークを通じて、どこの誰でも自身の情報が医師等に安全に共有され、かかりつけ医と連携しながら切れ目のない診療やケアが受けられます。

 研究機関、民間企業で質、量ともに優れた保健医療データの分析、利活用が可能となり、疾患の原因の究明、治療法の開発、創薬、医療機器開発、保健医療関連の新サービスの創出などが加速します。こういう提言書によって、2025年を目途にICTの活用を達成しようとされておりますので、我々が取り組んでいる歯科情報も医療情報の1つとして利活用できるように、その中で、現在は身元確認を迅速かつ効率的にすることが非常に急がれるところですが、最終的には、この中に含まれるようになることが理想ではないかと考えております。以上です。

 

○住友座長

 ただいま事務局から、ICTの活用に関する説明がありましたが、先ほど歯科情報の利活用について小玉先生から説明がございました。その部分について、また、課題等について御意見を頂きたいと思います。全体的な国の動き、今、事務局から説明があったものの中に歯科がどういう形で入っていくのかということであろうと思います。

 全体的な話について事務局に聞きます。先ほどの8番の工程表に法的なものが、その場面で必要になってくるというか対応、これは今後、もちろん、どこかで検討されていくという理解でよいのですか。例えば、歯科関係に関しては、ここである程度の議論をしておくということも必要かと思っております。お願いします。

 

○綿本専門官

 歯科情報に関して、標準化できたものが各医療機関に保存が可能となり、いつでも地域ネットワーク等に参加できる体制を整えておいて、そういう情報をほかの医療の情報と一緒に医療従事者間で共有するための法律が徐々に整備されていくと思いますので、そういった準備はしておかないといけないと考えております。

 

○住友座長

 関口委員、先ほど小玉先生に説明していただいた8ページの課題の2ポツに、具体的に関係法令が出ております。これについて先生から何か御意見はございますか。これが課題であるということは分かりますが、具体的に法的に何かするという、工程表までは頭の中には浮んでいないのです。問題点等について、また、どこをクリアしなければいけないのかということなどについて、御意見があればお聞きしたいです。

 

○関口委員

 資料110の所です。これももう御説明いただいている部分ですが、身元不明者の検索の例でいけば、身元不明者の住居地が特定できていて検索する歯科医療機関の範囲が、ある程度、限定できれば身元不明者の特定はかなり効率的に行える。要するに、住居地が特定できないと、検索をかけなければいけない範囲が広がるので、個々の医療機関が持っている情報に個別に検索をかけるというやり方では特定が困難という問題があります。

 そうすると、個々の医療機関が持っているものではなく、何らかのデータベース、ある程度規模の大きなデータベースを作らないと検索の効率が上がらないということになるので、いずれにしてもここを追求していこうとすると、データベースの構築が必要になり、そこを作るに当たってはデータの安全性、セキュリティを確実にするためにどういう条件でデータベースを作ることを認めるのかとか、どこが作るのか、作る所はどういう条件を備えていなければいけないとか、あらかじめ、そういうデータベースのデータの利用の目的や範囲をきちんと決めておかなければいけないということで、現行の個人情報保護法とか身元調査法ではカバーし切れない部分が出てくることになるのだと思います。

 

○住友座長

 そうすると、先ほど事務局から説明のあった最後のページですが、こういうものを考えるにおいては、歯科だけがうんぬんするということではなくて、ここに大きな形の法規制が求められているという理解でよろしいですか。

 

○関口委員

 それは、歯科情報の活用ということに限定した法律であってもいいわけなので、必ずしも歯科以外のグローバルなところまで考えなくてはいけないということではないと思います。質問の趣旨と合っていたかどうか。

 

○住友座長

 今、全てのものに普遍的な法律の中で、かなりのものが解決するのではないかという思いがありました。そこはいかがですか。

 

○関口委員

 要するに医療も含めた法整備ができてくればということでしょうか。

 

○住友座長

 自ら、そちらのほうも解決していくのではないかという。

 

○関口委員

 それはそうだと思います。しっかりしたものができていけば、そういう枠組みの中に歯科のデータも入っていくということになれば、それはそれでできると思います。

 

○住友座長

 ありがとうございました。

 

○小室委員

 この問題は以前に何回か出ている話ですので、質問しませんでしたが、いわゆる身元の確認に特化したものであれば、個人情報の保護に関する法律も、その枠の外にあるものだからということで認められている気もしますし、また、警察等の取り扱う死因・身元の調査法も、個人を識別するためのデータベースであるならば可能であるように規定されておりますので、さほど問題ないのではないかと思っておりします。

 ただ、地域ごとにデータを保存しておいて、それを活用する場合に問題があるような、ないようなことを今、厚生労働省側からお話がありました。恐らく、データベース化した歯科医師がアクセスするのであれば、それも同じことで賄えるのではないかと思っています。私は以前もお聞きしたのですが、ただ、最終的に問題になるのは、刑事訴訟法に、診療情報を提供してもらいたい旨を伝えても歯科医師側で提供しなくてもよろしいという条文がありますので、それとの整合性を検討すればよいと思います。それでもなお個人情報の保護に関する法律のほうが上回っているのだろうと思います。

 ですから、そういうことを考えますと地域別にデータベースを保存しようが、厚生労働省から頂いた11番目のスライドを見ましても、何となく各診療所においてのデータベース化と、それをデータセンター等に集めてという話、この絵からすると一元管理をするような期待も見受けられます。

 そういうことを考えますと、恐らく余り指標となるような法律は今のところないのではないかと思っていたのですが、それはいかがでしょうか。小玉先生も何かそこら辺のことをおっしゃっておりましたが、日本歯科医師会としては、そういうことは問題ないだろうと思っていらっしゃるのではないでしょうか。

 

○小玉参考人

 今、小室委員から大変重要な質問を頂き、ありがとうございました。身元の確認のための情報を抽出することに関しては、もちろん、「個人情報の保護に関する法律」と「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」、いわゆる「死因・身元調査法」と今先生がおっしゃったとおりのものがありますので、それが法律的な担保になって、捜査に協力でき、そこに情報を出せるということになっております。

 ただ、これはあくまで個々の歯科医院のデータベースに基づいており、これを県のレベルでデータを集めるとか、また、国のレベルでデータを集めて、それを引っ張り出して利活用しようとすると、また、少し話が違ってきます。歯科医院での活用と大きな所にデータを集めた場合との活用が違うので、ある程度法律的な整備が必要なのではないかというところの議論は、必要なのではないかと考えております。

 

○小室委員

 一括管理といいますか、地域のことですね、一括管理したものを管理した所の人たちが勝手に何かしようとすると、それは問題があるかもしれません。いわゆる歯科診療情報として預けたデータを、診療所個々の先生方が検索する分には何も問題ないでしょうし、それを提供するのも何も問題ないはずです。そこに疑問点を置いてしまうと進まなくなってしまう可能性があります。

 

○小玉参考人

 今、委員がおっしゃったとおり、それを1箇所に集めておくということは全く問題ないと考えております。

 

○小室委員

 したがいまして、身元確認においては問題ないと思うのです。ただ、データベースとして、ビッグデータとして扱うようなときには、それは問題があるのかもしれませんが、この際の医療管理については問題ないのではないかと思っております。他の先生方、いかがでしょうか。

 

○関口委員

 今、おっしゃったように、例えば、1つの特定の場所に個々の医院がバックアップとして集めて、結果として1つの場所にいろいろな医院からデータが集まっていて、それを個々の医院が個別に回答するというのであれば、それは現行法のぎりぎり枠内かということもできます。ただ、それだと目的を達成しないのではないか、結局それだと個別の医療機関が、個々の医療機関の中のローカルストレージにもっているのと大差がなくなってしまいますので、恐らく、イメージされている効率化がそんなに図れないのではないかと思います。

 いずれにしても、効率化を図ろうとするのであれば、もう1箇所に集めて、それを個々の医療機関の枠を取り払って、それ全体に検索をかけられるようにしないと、きっと効率化しないと思います。そこには、法的な障害があるというよりも、これは法的な根拠が必要になってくると考えたほうがいいのです。

 

○小室委員

 そもそもデータベース化の話は、以前に申し上げたのですが、一括して国が管理していただければ一番良いと思います。でも、それができないような状況でしたので、日本を7つ程度のブロックに分けて、地域ごとに保存してみたらという話も出たのです。何となくそれもうまくいかないような感じがあって、身元確認のための解析ソフトを作った暁には、各診療所にそれを配って診療所ごとにデータベースを作成してもらいたいという話になっていました。このような話ですと、きっと法的には問題ないということになったと思います。

 

○関口委員

 個別の医療機関が応えるのであれば。

 

○小室委員

 スライド11にもありますように、一元管理を行うかのようなポンチ絵が描かれておりますので、これには非常に期待がかかります。先生がおっしゃるように、このような制度を行うようであれば法律は必要だと思います。ですが、個々の診療所の管理者が解析する場合には、現行法で賄えるのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

 

○関口委員

 そうですね。

 

○住友座長 もし、これを進めるとなれば一元化しないと駄目だという話になって。

 

○小室委員

 ただ、私自身は、そのときに障害になるのは、恐らく刑事訴訟法の165条でしたでしょうか、状況によって歯科医師は診療情報を提供しなくてもよいとする条文があるものですから、その辺の整合性を図れればと思っております。

 

○柳川委員

 私も小室先生と同じように以前から携わりました。この話は随分前からあり、元をたどれば、個人情報保護法が出来たときに医療機関、医療関係者も対象になるガイドラインが出ました。我々開業医は診療室、待合室にポスターを貼ったりして、目的外利用という項目がありますが、例えば、警察から照会があった場合は、当時は死因・身元調査法はなかったと思いますが、当時から警察には協力できると、目的外利用はOKだったと理解しております。

 また、死因・身元調査法が出来てからは、より警察から歯科医師に依頼がしやすくなったと理解しております。ただ、これまで重ねてきた議論で言うと、小室先生がおっしゃったとおり、我々からデータベースが必要だと言っても出来ておりません。情報を外部保存することはOKだが、例えば、警察関係者が1万人のデータがある所に警察からアクセスして、それを利活用することには現行法では限界があると、もしも違っていたら、また教えていただきたいと思うのですが、そういう認識でおりました。

 最終的には、本当は歯科だけに限らず、先ほど厚労省から御説明があったICTの資料3の下から、「ひらく」という所に同じプラットホームで利活用できる、この行政の中に警察行政も入るというイメージが一番分かりやすいと思いました。

 

○青木委員

 関連のコメントです。小玉委員の10ページの図の内容は非常に大事なことが書かれております。図の左と右で当然、歯科医院が特定できているのかどうかということがポイントになっているわけですが、要は横軸です。これは、もしかすると資料に書いてある「身元不明者」の住居地特定というよりは、むしろ「行方不明者」の住居地特定というべきであると思います。横は生前の情報で、縦はご遺体の話なので、そういうことかと理解するわけです。

要は歯科医療機関が判明していれば、その歯科医院の責任の範囲でいろいろなことができますので、それは従来の法制度のまま動ける。図の左側のいわゆる「可能」という所です。東日本大震災でも全部このケースで対応しているわけです。

一方、図の右側は、当然、複数の医療機関が関係するので、先ほど、柳川先生がおっしゃったように、警察が検索するかどうかということよりは、それを行っている管理者がいて、そちらにデータの管理が移っているわけです。歯科医療機関個別ではなくて、データの管理がそちらに移行しておりますので、これは誰が取り扱うにしても、きちんとやるのであれば、関口先生がおっしゃるように法整備を考えて了解を取った上で、取り組んだ方がいいのではないかということかと思います。

1点だけですが、図の左側の状態で、東日本大震災の対応をしたわけですが、関口先生の話では、これでは全く意味がないですよねということだったのですが、違いますでしょうか。

 

○関口委員

 そこまでは申し上げていません。

 

○青木委員

 この図の左側の前提でも歯科医療機関ごとに、先ほど柳川先生がおっしゃったような遠隔バックアップの取組は可能です。診療情報の標準化によって得られたデータをバックアップしておくということは図の左側の前提でも十分可能かと思います。ただ、広域の災害なり、あるいは行方不明者が広く不明な場合で地域が特定できない場合に、せっかくなのできちんと特定できるようにしましょうということになると、図の右側の所があったほうがいい。これは、正に先生方のおっしゃっていることに全く矛盾しません。今後、10ページの図をベースに議論していくといいのではないかということで、私は大変感銘を受けたということです。

 

○住友座長

 確認です。行方不明者と身元不明者という用語は、身元不明者で出ている。横軸を行方不明者としていますか。

 

○青木委員

 これは警察の方に伺ったほうがいいと思いますが、「家出人」、「行方不明者」、「災害で行方不明になった方」のお話が横ではないかと思います。生前の情報ですね。

 

○小室委員

 身元確認は歯科診療所が分かれば、もう判明したと思っても同じなのです。それには条件があるわけです。飛行機が落ちた、あるいは地震があったなどという場合は、その地域、地域で問題が発生しますので、これは受診された医療機関を特定することも可能かもしれませんね。ところが、毎年、日本全国で1,200人ぐらいの身元不明死体が出るわけです。それは、もう受診されている医療機関が特定できないからこそということもあるわけでしょう。そうすると、10ページの右側ですか。これができないとなると、実はそういうことではないと思います。一元化された場合のデータベースを駆使すれば確認は可能となりますから、困難あるいは著しく困難であることは確かなのですが、意味合いとしては少し異なってくると思います。

 

○小玉参考人

 いろいろなご意見を頂きありがとうございます。これは歯科情報を医療機関内に保存している場合、つまり現在の状況ということですので、個々の診療所の対応では、これはできるがこれ以上は限界があるということを示しております。右側は小室委員がおっしゃるとおり、データベース化すれば、もちろん、できる可能性があります。

 

○小室委員

 でき得れば、右側の下の生前情報の所在が特定できない場合というのは、普通できないわけですので、これは困難ということではなくて一元化すればとか、あるいは地域ブロックごとにやればとしておけば可能であるみたいなほうがよろしいと思います。できないと言ってしまうと、何もなすすべがないということになりますので。

 

○小玉参考人

 そこで、いろいろ個人情報の保護を前提にしながら、このデータをどのように活用していくのかという議論が必要になってきます。ナショナルデータベースも匿名の情報で、「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいてデータが活用されております。歯科の診療情報の標準化でもたらされるビッグデータというか、蓄積されたデータは、正しく個人とのひも付きでの活用となってきますので、そうすると、歯科医院の外に蓄積していたものを活用するとなるとかなり慎重に取り扱わないといけないという思いがあります。その辺りは、スライド10の左側だけの状態のものでできますということは、法律的な担保が必要なのではないかというところで、こういう書き方になっております。

 

○住友座長

 小室委員、10は歯科情報を医療機関内に保存している場合、現在をこういう状況で表しているという理解で、次のページにこれの必要性を述べていると理解できるのではないかと思いますが。小玉参考人、いかがですか。

 

○小玉参考人

 座長のおっしゃるとおりです。

 

○住友座長

 そして、ここで次に法的な整備が必要であると書いてあります。この法的な整備が、先ほどもっと大きな網掛けのものではないかという想いが個人的にはありますが、いかがでしょうか。

 

○小玉参考人

 おっしゃるとおりです。結局、今、少し申し上げましたが、ビッグデータ、ナショナルデータベースの場合は、匿名での情報が上がってきております。歯科の診療情報は個人が特定できる情報になっておりますので、個人を特定できる情報とひも付きでのビッグデータの活用に関しては、かなり慎重に進めなければいけないのではないかという思いを私どもは持っております。

 

○住友座長

 私から小玉参考人にお聞きします。例えば、スライド2のデータセンター等ですが、素人っぽい質問で申し訳ないのですがサーバー管理者は誰になるのか。恐らく、これはAIというか人工知能が最終的なサーバー管理者になるのかどうか、個人になるのかどうか、何か想定されるものがありますか。これは事務局に聞いたほうがいいですか。

 

○玉川委員

 現在は、医療機関の中に保存されている情報の管理者は病院長です。ですので、診療所は診療所長ということになると思います。データセンターですと、多分、地域をまたがりますので、例えば、災害のときに県知事が自衛隊を要請するのと同じようなタイミングで、このサーバーのデータを見に行ってもよろしいですよと、鍵を外してもいいですよという、そういうルールがあれば実行に移せるのではないかと思います。

 例えば、市長の権限でやりますとか、そういう市町村レベルでやる方法もあります。医師会、あるいは、それ以外の法人でやる方法もあると思います。先生の御質問にあったデータが集まっている所の責任者は誰かということになると、今のところはその所属の長が責任者です。

 

○住友座長

 もっと大きな組織になったときには、どのように考えるのかということについては。

 

○玉川委員

 多分、そのデータセンター長が責任を負うはずだと思います。

 

○住友座長

 人ですか。

 

○玉川委員

 人だと思いますね。

 

○住友座長

AI

 

○玉川委員

 厳密にやろうと思うと難しいです。

 

○青木委員

AIが一番できないところは、責任を持つとか、倫理を担保するとか、それは全く対応できませんので、やはり最後に人間がきちんとやるということかと思います。

 

○住友座長

 ありがとうございました。ほかに何かございますか。

 

○柳川委員

 私も小室委員がおっしゃったように、もともと国、あるいは地方自治体、都道府県なのでしょうか、そういう所が歯科の身元確認に活用できるデータベースを所有してくれればとずっと思っており、それがなかなか難しいということはよく承知しております。伺いたいことは、今年の10月に警察庁から全国の道府県警、あるいは警視庁に多数遺体が発生した場合に円滑に歯科の照会ができるよう通達されました。例えば、都道府県の歯科医師会や警察で話し合いながら、このようなことで進めましょうという実際の照会要領のモデル案が示されております。つまり、大規模災害について何とか身元確認の精度とスピードを上げようということは、この会議で議論してきたことが延長線上にあるわけです。例えば、都道府県が何百何千の歯科診療所から患者のデータが集まったものをデータベースで所有するとして、死因究明等の推進会議が各県にあります。そういう辺りで議論して県で所有するとした場合に、そのデータを利活用するときには、どういう法整備が必要なのか、そうではなくて現行法で運用できるのか、その辺りを参考までに教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。

 

○住友座長

 関口委員、お願いします。

 

○関口委員

 法律の作り方というのはいろいろあると思いますが、先ほども申し上げたように、都道府県が集めてよいということの根拠を、まず法律で定めるということと、その都道府県が管理することについては、その管理の条件、要するにセキュリティを確保するために、どういう条件を満たしたシステムでやらなければいけないかなど、そういった条件を法律で定める必要があると思いますし、あと、都道府県が管理する場合、データをどういう場合に使用していいかといったことについても、法律で決めておくことが必要になってくるのだと思います。

 

○住友座長

 この参考資料2で、実証事業の仕様書です。これは一応、平成29331日という区切りでやっていらっしゃると思います。玉川委員にお聞きするのがいいのか、小玉委員にお聞きするのがいいのか、どちらでも結構ですが、この2のスライドでいくと、現時点ではコンバータといいますか、CSVからHL7のコンバータの段階に来ていると考えてよろしいのでしょうか。まず、そこをお話いただきたい。

 

○玉川委員

 現在はCSV形式ファイルの出力を、数社にお願いして作っていただこうとしているところです。それが出来上がってから、あるいはほぼ並行で、HL7のファイルを作ることができると思っています。

 

○住友座長

 アウトカムといいますか最終的なところは、例えばここにある利活用というところまで持っていくわけですが、今はもうその過程なのですね。これが今やっている事業についてです。そこの確認を、まず今日はしていただこうと。次にはどういうものが考えられているかという意見を求めようと。

 ですから、利活用の話はもちろん重要なのですが、それはまだここでは、その前のシステムがしっかりしていない段階で、ああだ、こうだとは言えないところもある。ただ、それはもちろん法令的にも、そういう利活用の目的というのも、やはり考えておく必要があるとは理解しています。

 そうしますと一人一人、今までの議論の中で御意見があれば、これからこの事業を推進するために役に立つ意見があれば頂ければと思います。青木委員、いかがでしょうか。

 

○青木委員

 すみません、ちょっと考えさせていただいてから、また。

 

○住友座長

 工藤委員は何かありますか。

 

○工藤委員

 システムというのは非常に私もよく分からないものですが、ICTのほうがもし広ければ、本当はwell-beingという考え方は、先ほどまでずっとお話を聞いていて、やはり遺体には尊厳がないのだなというのを思ったのです。

 私は健康保険組合もやっていまして、御遺体が出たら、この遺体が事件性があるかないかというのは調べなければいけないので、この人はどこに通っていましたかという照会があるのです。我々はここに通っていますよというのを警察に言うのですが、例えば御遺体になった段階で、この人はどこの歯医者さんに通っていましたというのも、それは教えられないのです。というのが今回分かったということです。

 ですから、「人々の様々な生き方に対応し」というのが、本来は「尊重し」というように入れ替えてくれると、この枠の中に御遺体となった部分も入りやすいなというのが、今ちょっと思ったところです。

 そうすると、これからどんどんお金が掛かってくる状態になってきますので、こちらのほうにも少し使えるのかなと。費用的なもので言うと、共同研究ではないですが、誰かさんのアイディアを使えるのかなと、少し思っただけです。少しずれているかもしれませんが。

 

○住友座長

 ありがとうございました。今の部分、小玉参考人、何か答えることがありましたら。

 

○小玉参考人

 確かにwell-beingと合わせて、御遺体の尊厳ということも考えて、そういった表現が適切ではないかと思います。

 

○住友座長

 小室委員、何かありますか。

 

○小室委員

 直接的な質問に当てはまるかどうか分かりませんが、そんなに詳しい区分けをしているわけではないのですが、遺体と言うときには尊厳を持って話をする場合で、死体となると物体としての扱いをするという雰囲気があります。法医学領域ではそういう感じです。災害現地に行きますと、必ず「遺体」に「御」を付けて話をするのもそのためです。我々の近場には御家族の方もおられることもありますので、必ず御遺体という言葉を使うようにしています。

 小玉先生がお示しになったスライドの5番目でしょうか。先ほど座長からもお話がありました、アプリケーションの話があって、画像については、この画像というのはX線写真のことも含めてでしょうか。いわゆるこの事業を、スクリーニングといいますと所見としては数字だけという話ですので、最終的に身元確認というところまでいきますと、どうしても画像が必要なのですが、その場合には新たなアプリケーションが必要だということで、まだまだのようです。最終的な確認をするときには、選ばれた方々の情報をもらい受けないといけませんが、診療情報すべてを提供してくれということになるわけです。

 そのときに刑事訴訟法の、問題が出てくるわけです。その辺を解決できればと思っております。以上です。

 

○小玉参考人

 小室委員がおっしゃったように、確かに口腔内情報という意味からは、歯科診療情報の標準化に関する実証事業で扱っているもの以外の画像化は、大変役に立つものなのです。ただ、先日、日本歯科医師会で行いました実証事業の会議の議論でもありましたが、非常にデータの容量が大きくなってしまうこともあるので、それをどういう形で合理化して、きちんとした形のものにしていくかということは、まだまだ考えて、しっかりと進めなければいけないことだと思っています。引き続きよろしくお願いします。

 

○小室委員

 それと、ちょっと脇に逸れるかもしれませんが、この度の3.11のときは、福島県では各地域の行政が、すべからく個人の情報を流して、行方不明者の対応に当たったからこそ、1,613名の方々の、全員の確認がされたと聞いています。一方、宮城県と岩手県では各行政が、個人情報であるからとして情報を流さなかったという話が、少し漏れ聞こえてきます。そうすると、各行政機関でYESNOを判断するとなると、先ほどのセンター長がOKを出すなんていう話がありましたが、そこら辺に行政の長であるとか、いわゆるセンターがどこにあるかによっての、その県の県知事が出すとか、そのような影響はないものでしょうか。恐らくはセンター長でいいと思うのですが、各自治体で温度差があって、出す出さないということがあったりしますと、そこら辺の法整備も要るのでしょうか。

 

○関口委員

 きっと法律が整備されていれば、そういうばらつきというのはなくなるのだと思います。東日本大震災のときは、結局それを判断する拠り所となるものが各県にないために、判断が分かれてしまったということなので、ちゃんとそれを想定したもの、事前のルールが出来ていれば、それに従って行政は動けばいいわけですから、それがなかったということが問題。

 

○小室委員

 それでも個人情報保護法がまだあったわけですので、それに則れば、少し拡大解釈になるかもしれませんが、そのときもきっと可能だったはずなんですよね。

 

○関口委員

 そこの部分の法律がどうだったかというのは、私は正確に知らないので。

 

○小室委員

 個人情報保護法についてはガイドラインも出ましたが、そのガイドラインがあればこそ可能だったはずなのです。温度差があるということは、各行政の自治体の長たる人たちがYESNOを判断しているわけですよね。

 

○住友座長

 法整備が出来ていたほうが、それは確実で、その方向に向かおうとしているのではないかという理解です。

 

○小室委員

 そこで、福島県の対応が非常に評価されているのですね。

 

○住友座長

 ただ、それもやはり、そのときの状況というのは非常に難しい判断であったのでしょう。やはり法整備が出来たら、そこはスムーズにいくという理解をしています。関口委員、何かありますか。

 

○関口委員

 私はいろいろ法律のことを喋りましたので。

 

○住友座長

 分かりました。多貝委員、何かありますか。後で玉川委員にお聞きしようと思ったのですが、HL7をここでも持ってきているというところ、ここについての意見は何かありますか。CSVまではベンダーさんというのは、分かるのですが、HL7の有用性といいますか有利性、これは当たり前でこれに行くという話になるのですか。

 

○多貝委員

 有効性としましては、ローカルストレージに入れている範囲ではそうでもないのだと思いますが、データセンターにアップするようになった段階では、ほかの医科のデータなどと同じように扱えますので、共通的といいますか、標準的という意味で有効かと思います。一旦、CSVの形式にレセコンから書き出せばいいということについては、やはり馴染みがある形ではありますので、そのほうが各ベンダーに実装を勧めていきやすいと考えています。それと、やはりHL7に変換するソフトが一本であることによって、出来上がるHL7の形式がばらけないという意味も大きいかなと思います。

 

○住友座長

 ありがとうございました。玉川委員、そのHL7のところについて、もう少し何かお話はありますか。要するに一般的によく分かっている人と、これをなぜ使うかということの疑問に対する理解をもっと深く得るために、何か説明を頂ければと思います。これは議事録に載りますので。

 

○玉川委員

 日本ではSS-MIXというのが、いわゆる情報交換のスタンダードになっていまして、その中で実際にデータの形式として採用しているのが、HL7というデータの形式でして、それには例えば患者さんの名前はこのように書きましょうとか、生年月日はこのような数字を書きましょうというルールが決まっていますし、国際的にも同じルールでできますので、いわゆる標準のものでデータを書き出すことが、後々大変役に立つと考えています。今は各歯科のベンダーさんが独自の形式でお持ちですが、最初はHL7まで行きたかったのですが、やはりハードルが高いので、形式が細かく決まっていません。途中に中間ファイルみたいな形で出力をしていただいて、それを読み込んで変換する。そういう形で、国際的にもたぶん使えるデータになると考えています。

 

○住友座長

 柳川委員、全体的に何かありますか。

 

○柳川委員

3年間で新潟を中心に標準データセットまで行って、それから出力プログラムに入って、CSV、更にHL7に変換可能なファイルとなるというところまで、もうすぐのところまで持っていっていただいた。本当に関係者の皆さんに、かなり技術性、専門性が高いところですので、感謝を申し上げたいと思います。

 それから1点、先ほど小室先生から御指摘があった点なのです。これは青木先生にフォローしてもらってもいいのですが、市町村や県行政からの情報提供です。法整備というより、私が伺ったのは、特に市町村行政の窓口が混乱して、例えばレセプトデータの提供についても、かなり早期に指示というか、国から要請があったわけですが、市町村国保は、情報提供できるまで数か月かかったと伺っています。そういった物理的な背景もあったのではないかと思います。以上です。

 

○青木委員

 おっしゃるとおりで、その件はそのとおりかと思います。

私からは、先ほどの工藤先生がおっしゃっていたwell-beingについて申し上げたいと思います。きちんとした死を迎える、身元の特定に至って死を迎えるということが、ある意味、well-beingの拡張といいますか、そういうことに結び付いているという側面が、これは歯科の分野に特有の話になってくると思うのです。

 やはりそういうところを、当然この資料を拝見して、ICTの活用ということで見ますと、保健医療分野でのICTの活用の基本理念と書いてありますが、その、ある種の政策的な整合性をうまく考えていただくと、「歯科医師の先生方の思い」が国民に届くのではないかと思います。当然、「医療」ということなのだけれども、やはりきちんとした死を迎えるということも、「医療」の延長上にあるというような何らかの政策デザインをしていただくと、非常によいと思います。このことは医科の先生方や一般の国民にとって自明ではないので、そこら辺を少し整理していただいて、こういう文書に掲載されるということが、非常に重要ではないか。これは歯科医師会の先生にもお願いをするということかと思います。

 

○住友座長

 今回の実証事業の中に書き込みではなくて、歯科医師会として、例えば厚労省の政策なり、こういうICT等に。

 

○青木委員

 そうです。こういう文章には当然、「身元確認」が入っていないです。身元確認というものが、読み取れる人は読み取れるのですが、当然、何らかの形でこういう事業の延長上に、well-beingの延長上に、「身元確認」を位置付けるというような、整理をしていくと、政策と非常に整合性がある。生きている人のデータに行けるのではないかなと個人的に思います。それは、全く国民が反対するような話ではないと思いますので、是非お願いをしたいと思います。

 

○住友座長

それでは、今日のオブザーバーの、警察庁の刑事局の石田さん、五味さん、何か御意見といいますか、感想等がありましたら発言を頂ければと思います。今までこの会議の流れというのはお分かりいただいたと思います。

 小室先生、だんだんと事業が広がっていっていると思いますが、これがやはり、こういう形で展開していくというのが、やはり歯科としても必要なものではないかという想いがあります。これを積極的に推進していこうという、この検討会の立ち位置というように理解していますが、小室先生はよろしいですね。

 

○小室委員

 ここまで来ていますので、どうしようもない。私自身、この会は歯科診療情報を身元確認にどのように役立てるかという話で始まったと思っています。先ほどから幾度となく発言しておりますが、データを使うのは身元確認のためならば、法的な問題は恐らくクリアできると思っています。ただ、それをビッグデータとして扱って、健康志向に使おうとするからこそ問題が出てくるのであって、そうでなければきっと問題はないはずなのです。

 このようなところで私とすれば少し違和感がある話ですが、将来的に発展性を見越しているということでしたら、これはこれでいいことになります。歯科診療情報の標準化に関する検討会という標題になっていますから、内容的には適合していて別に問題はない。これが身元確認に関する検討会だったらば、ちょっと違うとは思います。

 

○玉川委員

 今の小室先生の御意見に関してですが、日大松戸の斉藤先生は、もしもこういうデータが出てきたら、現在の支払基金でレセプトを出している仕組みが、一番身近だろうということをおっしゃっています。基金に出すデータと大変よく似たデータを第1段階で出すわけですので、それをそのまま持っていくのか、あるいはSS-MIXの形式にするのかはさておき、データの通信の部分のインフラとしては大変よいと思いますし、毎月のデータがそこに上がってきますので、正に最新のデータがあると。しかもセキュアに蓄積されている、どこの誰か分かっている、そういう意味で、そういうところに話が発展していかないかなということをおっしゃっていました。少し追加になります。

 

○住友座長

 ありがとうございました。事務局から出していただいたものは次世代型、保健、ヘルスのほうの医療システムということで、小室先生がおっしゃっていた、そちらはまたそれで活用できれば、それはいい話ではないか。しかし我々が目的としているのは、タイトルとしては歯科診療情報の標準化に関する検討会であるのだけれども、やはり身元を確認するというところは、除いてはいない、それがやはり柱にはなっているという理解です。

 それでは、まだ少し早いのですが、事務局は何かありますか。

 

○綿本専門官

 特にありません。

 

○住友座長

 分かりました。それでは、今の実証事業に関してはいろいろ御意見を頂いたわけですが、今日の御意見でもし修正があるとすれば、座長一任という形を頂きたいのですが、いかがでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○住友座長

 それでは、数々の御意見を頂きました。これを参考にして、またこの検討会で推進してまいりたいと思います。そして、これは終わったわけではなくて、今後も継続しますから、この帰り道に、次はどうすればよいかを今日学んだこと、そして今日の議論の中から皆様方のアイディアとして作り上げていただいて、御意見として頂きたいと思っています。

 御意見は遠慮なく事務局のほうにお送りください。それをこの実証事業等に反映させていきたいと思います。本日は誠にありがとうございました。以上で閉会といたします。

 

○綿本専門官

 皆様、本日は御議論いただき、ありがとうございました。次回の検討会ですが、例年どおり3月頃をめどとして、開催を予定しています。日程照会は年明け頃にお掛けしようと思っていますので、委員の皆様方におかれましては、お忙しいところ恐縮ですが、お力添えを何とぞよろしくお願いします。途中、別件で重要案件がございまして、田口と和田が中座いたしましたこと、誠に申し訳ありませんでした。事務局からは以上です。

 

○住友座長

 ありがとうございました。


(了)

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