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2016年12月15日 第51回先進医療技術審査部会

(了)


第51回先進医療技術審査部会

(1) 日時:平成28年12月15日(木)16:00~17:55

(2) 場所:全国都市会館 第1会議室(3階)

(3)出席者:
山口座長、一色座長代理、石川構成員、伊藤構成員、
掛江構成員、真田構成員、柴田構成員、関原構成員、
田代構成員、松山構成員、山中構成員、山本構成員、
中村技術専門委員

  (事務局)
医政局研究開発振興課 課長
医政局研究開発振興課 治験推進室長
医政局研究開発振興課 再生医療等研究推進室長補佐
医政局研究開発振興課 先進医療専門官
医政局研究開発振興課 先進医療係長
保険局医療課 医療技術評価推進室長
保険局医療課 専門官
医薬・生活衛生局審査管理課 課長補佐

議 題
1.継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について
2.新規申請技術の評価結果について
3.試験実施計画の変更について
4.協力医療機関の追加について
5.先進医療の取下げについて
6.未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器又は再生医療等製品を用いる医療技術に係る留意事項について
7.その他

議事録
○山口座長 第51回先進医療技術審査部会を始めます。本日は、御多忙の折お集まりいただき、ありがとうございます。
 本日は上村構成員、大門構成員、田島構成員、手良向構成員、藤原構成員から、御欠席の連絡を頂いております。本日は17名の構成員のうち12名の構成員にお集まりいただいていることから、本会議は成立していることを申し添えます。技術専門委員として、中村先生に継続審議案件の御審査をお願いしております。
 配布資料と、本日の審査案件の確認を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料の確認をいたします。議事次第から始まり、座席表、開催要綱及び運営細則、構成員及び技術専門委員名簿と続きます。
 次に、継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について、資料1-1から資料1-5です。新規申請技術の評価結果について、資料2-1から資料2-5です。先進医療Bの試験実施計画の変更について、資料3-1から資料3-3です。先進医療Bの協力医療機関の追加について、資料4-1から資料4-4です。先進医療Bに係る協力医療機関の取下げについては資料5です。未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器又は再生医療等製品を用いる医療技術に係る留意事項については資料6です。最後は参考資料です。会議資料の最終ページは128ページとなります。
 本資料については、会議終了後、厚生労働省ホームページにて閲覧可能となることを申し添えます。本日の資料は以上です。乱丁、落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。
 続いて、利益相反の確認です。申請医療機関との関係や対象となる医薬品・医療機器及び再生医療等製品の企業等について、資料1-1の15ページ及び資料2-1の49ページに記載しております。申請医療機関、医薬・医療機器・再生医療等製品情報を御覧ください。
 申請医療機関との関係、対象となる企業又は競合企業について、事務局から事前確認させていただいております。今回、整理番号63の技術について、手良向構成員、山中構成員より、御報告がありました。評価対象技術に含まれる医薬品又は医療機器等の製造販売業者、競合企業等からの受領額が、手良向構成員におかれては50万円以下でしたので、当該技術の議事取りまとめ及び事前評価に加わることができます。山中構成員におかれては500万円以下でしたので、当該医療技術に関する検討に加わることはできますが、議事の取りまとめ及び事前評価には加わらないこととなります。事前の届出以外に、もし何かしらの利益相反がございましたら、この場で御報告をお願いいたします。該当なしということで承知いたしました。
 また、今回もタブレットを使用していただきます。届出書類等につきましては、タブレットより閲覧をお願いいたします。なお、会議資料とダブレットの内容は異なっておりますので、発言者は「会議資料の何ページ」又は「タブレットの何ページ」とあらかじめ御発言いただけますと、議事の進行上助かりますので、よろしくお願いいたします。
○山口座長 議事に入ります。まず、継続審議の評価を受けた技術の再評価結果について、事務局から御説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 傍聴者の方の撮影はここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 資料1-1の15ページです。今回、先進医療Bとして、先の先進医療技術審査部会で継続審議の御評価を頂き、今回再度御評価いただく技術が1件ございます。整理番号63、骨髄由来単核球細胞を用いた脊髄損傷に対する治療です。適応症は脊髄損傷です。申請医療機関は田附興風会医学研究所北野病院です。審査担当構成員は主担当が松山構成員、副担当は田代構成員、手良向構成員、技術専門委員は中村委員です。
 資料1-5の49ページを御覧ください。審議に先立ち、先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について、事務局より御説明いたします。まず、実施責任医師の要件として、診療科は脳神経外科、整形外科、神経内科、救急科のいずれかです。資格として、日本脳神経外科学会専門医、日本整形外科専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本救急医学会専門医のいずれかとなっております。当該診療科の経験年数は5年以上、当該技術の経験年数は不要、当該技術の経験症例数は、実施者(術者)として1例以上を必要とする。それに加え、助手又は術者として1例以上を必要としております。その他の条件として、当該技術の術者として、5例以上の経験のある医師が未経験の医師を指導して施術させた場合、施術した医師の経験と数えることが可能であるとのことです。
 医療機関の要件として、診療科は脳神経外科、整形外科、神経内科、救急科のいずれかです。実施診療科の医師数は常勤が1名以上であること、他診療科の医師数は特に要件はありません。その他、医療従事者の配置としては、臨床検査技師が1名以上であること、病床数は60床以上であること、看護配置は10:1看護以上であること、当直体制は診療科を問わず医師が1名以上当直とすること、緊急手術の実施体制は必要とします。院内検査は24時間体制を要件とします。他の医療機関との連携体制に関して要件はありません。医療機器の保守管理体制を要件とします。
 審査体制に関しては、原則として毎月開催されること、医療安全管理委員会の設置は要件とします。医療機関として、当該技術の実施症例数は2症例以上であること、そのほか、北野病院は当該技術の指導医療機関となるため、形整外科医師鈴木義久が実施責任者として実施可能とする。リハビリテーションセンター(理学療法部)あるいはそれと同等の部署が存在し、理学療法士あるいは作業療法士が適切なリハビリテーション指導を行えること。以上となっております。
○山口座長 ただいま御説明いただいた要件について、御意見を頂けますでしょうか。よろしいですか。では、様式9号についてはお認めいただいたということにいたします。
○松山構成員 後ほど、主担当の松山から少しコメントさせていただきます。
○山口座長 分かりました。次に、整理番号63の評価結果について、主担当の松山構成員から、概要の説明と実施体制の評価について御説明をお願いいたします。
○松山構成員 骨髄由来単核球細胞を用いた脊髄損傷に対する治療です。この試験は受傷から12週以内、比較的早期の受傷脊髄損傷の重篤度A又はBの患者を対象に、患者から骨髄液を採り、洗浄後、それを髄腔内に注射するという治療法です。予定試験期間は2年6か月、予定症例数は51例と、かなり多い症例数となっています。
 実は、前々から北野病院では、形成外科の鈴木先生が主に担当しておられていて、脳神経外科あるいは整形外科の先生が担当しないとよろしくないのではないかという議論を差し上げていて、それに対するお答えとして、資料50ページに、「北野病院は当該技術の指導医療機関となるため形整外科医師鈴木義久が実施責任者として実施可能とする」とあるのですが、実施に関しては、形成外科の先生で可能だとは思いますが、適正な診断がなされるのか、ASIAのA、Bという診断が適切になされるのかに関しては、かなり疑念を持たざるを得ないというところがありまして、この部分から1.の実施責任医師等の体制に関しては、当初は「適」とさせていただいておりましたが、「不適」とさせていただければと思っております。
 2.実施医療機関の体制です。これもやり取りの中では、いろいろと修正をされたということだったので「適」にさせていただいておりましたが、髄腔内に細胞を打つところに関しては、この治療法に関して鈴木先生はずっとされておられて、日本でも第一人者の先生ですので、punctureする部分に関しては問題なかろうと思うのですが、その後の適切なリハビリが行えるか、適切なASIA分類の診断が行われるかということを考えると、脳神経外科ないし整形外科の専門医の先生が実施体制の中に全く入っていないということは、そもそも論として適正なサイエンスベースで、この技術が保険診療にいくかを審査しなければいけない我々の立場としては、受け入れ難いものであると考えているところです。
 3.医療技術の有用性に関してです。ダブレットの41ページから論文がありますが、10症例の中で比較的良好な結果を得ているということなのですが、よくよく論文を見ていると、MRIで改善したという患者と、ASIA分類で改善したという患者の間に相関性が得られないのではないかというところがあって、もう少しサイエンスベースの議論がほしいと。なぜ効くのか。過去の論文などを考えて、やはりサイエンスベースで議論するのが、この評価部会の意義だということですので、この部分に関しては「不適」とさせていただいています。一旦、実施体制の評価に関してはそのようにさせていただければと思います。
○山口座長 続いて、技術専門委員の中村先生から、実施体制の評価について御説明をお願いいたします。
○中村技術専門委員 私からこれまで御指摘させていただいたのは3点あります。1つは、投与の細胞数です。これが分からないということですと、効果の判定あるいは今後につながらないということで、細胞数の基準を明確にしていただきたいということでしたが、この点については、1.00掛ける108から1.00掛ける109という動物実験に基づく結果からの類推ではありますが、そこを明確にしていただいて、それに達しないものは参考にするということですので、この点はよかったかなと思っています。
 2点目は、Historical Controlの件です。プラセボを置くというのは倫理的には難しいということで、どうしても対象を単群でやらざるを得ないという御意見がありました。そのこと自体はやむを得ないと思いますが、脊髄損傷のリカバーというのは、受傷からの期間によって、自然回復というのが見込まれます。これは前回も申し上げましたが、完全に脊髄神経の遮断ではなくて、損傷後の浮腫、エデーマといったことで障害が起こっている部分については、改善が見込まれます。したがって、非常に早期に介入すればするほど改善率は高くなりますので、受傷からの期間を考慮しないHistorical Controlというのは、サイエンスベースでは世界にも通用しないということです。そして、2007年にSpinal Cord Injuryに対するClinical Trialのためのガイドラインというのが、世界の専門家が集まって多数例で解析されていることを御紹介させていただきました。それにより、今回はASIAのAとBについて、4週までの時点と8週については記載がありますので、それを採用して回復率を出していただいて、それから統計的に意味があるかどうかについては、生物統計の先生に解釈をお願いしたいと思いますが、それを取り入れたということについては非常によかったと思っています。
 ただ、12週については、このガイドラインではSupplemental Dataとして、多数例の報告を見ることができます。それによると、非常に長期に見たデータがありますので、何らかの参考にされてはいかがかという御提案を申し上げましたが、それはしないという御回答で、4週と8週のみということですので、それはそれで1つの見識でありますので、その点もよろしいかなと思っています。
 ただ、そうなりますと、計画書のいろいろな所に、12週の名残りが残ったままになっていますので、もう一回詳細に事務的にでも確認をいただきたいと思っているところです。
 3点目は、今ちょうど問題になった医療機関の要件です。当該診療科の経験年数5年というところの、当該診療科とは何かということで、それが書いてある中には「形成外科」という言葉がないので、現在の診療体制が形成外科だけというのは、今の松山先生からのご意見のとおり、少しこの辺は議論があるのではないかと思います。フォローアップをしていきますと、おそらく脊髄損傷の方が全部完全に回復するということは想定できないので、形成外科の先生は、もう1つ大きな合併症として、褥瘡という問題がありますので、褥瘡の対応については専門家ですので御経験があろうかと思いますが、その後の拘縮ですとか、筋力の低下といった様々な問題が生じますので、治験を受けられた方のフォローアップという点からも、脳神経外科あるいは整形外科の専門医の方が入っているということは、診療科として必要ではないかと考えるところです。
○山口座長 続いて、田代構成員より、倫理的観点からの御評価をお願いいたします。
○田代構成員 お手元の18ページです。前提としては、もちろん実施体制が適切であるとか、科学的に適切な研究が立てられていることにはなりますが、倫理面では前回の検討の際に、自然回復に関する記載が書かれていないことが問題になり、それについては追記されましたので、この点については解決したということで、補償の話はその前の段階で既に改善されていましたので、「適」と判断しております。
○山口座長 続いて、本日御欠席の手良向構成員より、試験実施計画書等の評価について、事務務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料1-2の18ページです。試験実施計画書等の評価は、いずれも「適」との御評価を頂いております。
 コメントとして、「臨床試験実施計画書に関する照会事項に対して適切な回答および改訂がなされたと判断し、全て適としました」となっております。
○松山構成員 手良向先生がいらっしゃらないのですが、何回かやり取りをしていて、かなり専門的なことでございますので、是非とも本日御出席の柴田構成員にコメントいただければと思います。統計的な面で。
○柴田構成員 基本的に手良向先生が既に御判断されていることに対して、私が追加で何か言うことは今回の件についてはないと思っておりますが、先ほど中村先生から御指摘のあった評価の方法などについては詰めが必要で、そういうところはほかの構成員の先生方からの御指摘に合わせて、それがプロトコルの規定であるとか、解析方針にはねてくるところは出てくると思います。
○松山構成員 私の懸念なのですが、得てして再生医療というものは症例数が少なくて、先生方は非常に思い入れが強いので、intensiveにケアをされると。本来であればそこまで治療されないところが、しっかりとリハビリされることによって、見掛け上で有効性が出てくることがよくある。実際、nが増えて探索型から検証型にいくと、実は有効性が取れないということをよく経験しています。その部分を考えないといけないのではないかと思います。
 そう考えると、実は今まで根拠になる部分が、どこまで本当に評価されてきたのかというところが、実は少しもやもやするところがあって、プロトコルに関しても何らかを考えなければいけないのかなというところはあります。
 是非とも構成員の先生方から、いろいろな群の置き方などがあると思いますので、御意見を拝聴させていただければ有り難いと思います。
○山口座長 それでは、今のことについて御討議をお願いいたします。御意見等はございませんでしょうか。
○真田構成員 私はこれが一番最初に審議をされたときには事務局サイドでお受けしていた立場なので、事前相談等でいろいろと論点を詰めていた中で、一点中村先生に是非教えていただきたいのですが、今、先進医療で別の技術として先行して先進医療AからBに入ってきたものに、阪大がやっている「自家嗅粘膜移植による脊髄再生治療」という技術がございます。その技術にあっては特に単群なので、後々のリハビリテーションのプログラムについて、今、松山先生から強度の問題が出ましたが、その強度によるばらつきをどう評価するのかというところが非常に難しいと思っていました。しかし今回の計画書を拝見すると、リハビリは転院先のプログラムにのっとって、一応6単位で、廃用症候群の場合は9単位と、時間は規定されているのですが、強度やリハビリの段階に応じた程度は規定されていないということが、私としては専門領域でないので恐縮なのですが、多少懸念として残ったところです。その辺りの問題点はこの書きぶりで解決されていると考えてよろしいのでしょうか。
○中村技術専門委員 そこの術後のリハビリテーションというのは非常に重要なポイントだと思います。本来は、どのようにやるかというのは標準化をする必要があると思いますが、全国から患者が集まって、また地元に戻るということがあると、標準化するのは非常に難しいと思います。
 ここに書かれている保険診療内でやってくださいというのは、ある意味での1つの方針というか、それ以上のことはしないということなので、そこのばらつきについては考慮していないと。それでも十分に戦えるというお考えだと思います。実際は、そこは非常に重要な問題だろうと思います。
 そういうことを言いますと、例えばMMT(徒手筋力テスト)の取り方についても、医療技術者という名前があっても、それが誰なのかを特定していただきたいとしたことと、今回の条件の中に理学療法士が最後の「その他」に書いてあるのは少し問題かなと。必要な病院としての条件の中に、「理学療法士学会が認める経験何年以上の理学療法士であること」ぐらいのものは入れておかないと、MMT(徒手筋力テスト)というのは5、4、3、2、1、0と評価法の定義はしっかりしているのですが、施術者による問題が起こるということは多くの人が認めているところですので、それは構成員の御指摘のとおりだと思います。
 ここではそこにはもう介入しないということになっています。例えば阪大の脳神経外科のやっている嗅細胞の移植については、私の聞き及ぶところでは、術後のリハビリテーションをする病院を指定して、そこでしっかりやってくださいということになっていたと理解しています。
○山口座長 ほかにございますか。
○山本構成員 脊髄損傷の比較的急性期の患者をするということで、ほかでも見たことがありますが、1つはリハビリの問題があります。阪大の試験は、先進医療になっているものについては見ていないと思うのですが、その前段階のものは阪大の委員会で見たことがあります。そこは内部でもかなり指摘されて、その結果、リハビリのやり方を統制するということで、施設も決めて、やり方も決めたという経緯があったと思います。
 もう1つ少し気になるのは、どうしてもブラインドを掛けられませんので、仕方はないのですが、患者のモチベーションが、介入することによって激しく変わる可能性が高いということを感じます。特に、脊髄損傷は大抵事故で、比較的若い方が多くて、あるとき突然そういう重篤な損傷を起こして、大きな麻痺、感覚の異常というのが突然出て、かなり将来を悲観するという状況になって、そこから次に、実はこういう新しい治療があると入ってきたときに、どの程度リハビリに対するモチベーションが変わるのかというのが気になっているところです。
 プロトコルをザッと見させていただいたところで、そういう評価項目はないのですが、例えば自己評定式の鬱状態のスコアを参考までに取るとか、ある程度そういうことも参考としてやっておいたほうがいいのではないかという気がしました。
 ただ、再生医療の多く、特に自家で行う再生医療の多くが、ブラインドは掛けられないというのは仕方がないところで、逆にシャムを入れるということについては、かなり非倫理的な問題がありますので、そこは仕方がないと。ですので、ある程度の人数を入れることで、そこはパーセントとして見ていくということでやるしかないだろうとは思っているのですが、障害が特殊といったらおかしいのですが、状況がいろいろな条件によって、見た目の回復が変わる可能性があるので、多方面からの評価を入れるべきかなという気はいたしました。
○中村技術専門委員 それに関わることとして、資料25ページに、Zone of Partial Preservation(ZPP)という質問をさせていただいたのはそのことに関係します。初診時の麻痺のレベルは、残余の麻痺のレベルで決めるのですが、その下にZPPというpartialにやられているzoneがあるのです。多くの回復はそこで起こるということも知られているのです。それを超えて、さらに回復するのかどうかということは、そういう意味では非常に重要で、御指摘のあったようなことも確認しようとすると、この回復がZPPの範囲内にとどまるのかどうかは、理解の助けになると思います。
 ZPPがADLで意味があるのは頸髄損傷です。頸髄損傷の場合は、1レベル下がっても、これが例えば6番で、これが7番だとすると、6番から7番も効くようになるとpush-upができるとか、そのように非常に機能が変わるわけです。でも、胸髄損傷で、このレベルで1レベルどうなったという話は、実はほとんど下肢の運動には関係しないので、ZPPのことはあまり問題にならないのですが、頸髄損傷に関しては、回復の起こった所、MMTで回復した所が、それがZPPの範囲内であったかどうかということは本当に重要なのだと思います。
 ですから、今回私がこれをお聞きしたときには、リカバリーの指標として、副次項目でもZPPを確認して、その範囲であったかどうかも確認するとか、そういうことは是非やっていただきたいと思って、質問したわけです。
 前回の幹細胞の時代にお聞きしたら、私の記憶では取っていないと言われたので、取っていない研究というものがあり得るのかと、私は非常にびっくりした記憶があります。そしたら、今回は実は取っていたという答えになっていました。しかし、今回は評価項目にZPPは入っていないので、副次にでも入れておくべきだろうとは思います。そういう意味でも、理学療法士のプロフェッショナルの判断は非常に重要なことになるのではないかと思っております。プラセボはある程度避けられないと思います。
○柴田構成員 先ほどのコメントの補足です。今のような議論があるのであれば、例えばリハビリの内容も画一化するのが不可能であって、通常の薬の試験と違いますから同時対照を置くのも非常に困難である、なおかつ、評価尺度にも曖昧さ、主観性があるということであれば、機能尺度の改善と判断する閾値、一点の増加などという閾値の設定が、実はあやふやなものにとどまる可能性があるのではないかというのが気になるところです。
 そういう話で、例えばZPPなどできちんと裏付けを取って、データが補足されているとか、改善と判断する閾値をもう少し上げておくべきではないかという話は別途必要なのかもしれないという印象を持ちました。
○中村技術専門委員 これは非常に重要な問題で、今後も脊髄損傷に対する治療というのは計画があるやに聞いていますので、ここの会議でどういう基準を取るかというのは、非常に重要なことなのだろうと思うのです。これまでの例えば大阪大学の嗅細胞とかで、こういう検討の場に掛かったかどうかは私は存じ上げないので分からないわけですが、少なくとも今回はこのことを議論したので、例えば今のリハビリテーションの均質化とか、ここで決めたことは、その後に影響があるのだろうと思います。ですから、どう発言したらいいか私も分かりませんが、下手をすると研究の抑制にもなりかねない気もしますので、その辺は国としてどういう判断をするのか、委員会として重要と思います。事実として曖昧さがある程度残るというのとプラセボ効果が排除できない、それは単群試験の宿命です。そういうものがあるということを理解した上で、これを考えるということだろうと思います。
○山口座長 貴重な御意見をありがとうございました。
○中村技術専門委員 もう一つ、ちょっと気になっているのは、「脊髄損傷は悲惨である」とずっと書いていることです。それは本当に大変で、何とかしたいと思うのです。ですけれども、この計画でその悲惨さが改善するのかということとは、ギャップがあるような気がするのです。悲惨なことはそのとおりなのですが、序文にそれを書いて、この治療でといったときに、それが改善するかのようにトーンとしては聞こえてしまう危険はないか、その辺が私としては気になるところです。
○山本構成員 私も一応神経内科医なので、この脊髄損傷の再生医療についてはすごく興味があります。中村先生もおっしゃるように効くのであれば進めていきたいし、効くような治療が出ることを望んでいますし、少しでも効くのかどうかということを前向きにチャレンジするということで、こういう試験を止めないということは重要だと思います。
 ただ、一方で中村先生からいろいろ御指摘いただいているように、ものすごくプラセボ効果が強く出る。特に強く出る領域であることは間違いないので、それをカバーするような試験デザインが組みにくいというところもありまして、しかも筋の拘縮状態とか、そういうのを含めていくと、実施する期間にも限りがありますので、例えばdelayの、ある程度待っていただく群を作って、比較できる期間を作るとか、そういうようなデザイン上の工夫も難しいという、本当に、この時期にだけやって効果があることを見たいというような趣旨でこられていますし、そこにはある程度の科学的な根拠はあると思いますので、そう考えると、やはりちょっと効いているものが過大に評価される可能性は非常にあると思いますので、中村先生がおっしゃるように、過大に評価してしまって、多数の方に使われて、結果的に失望するような方が増えるということについては、そういうことにならないようにしていく必要があると思うので、いろいろ厳しいコメントが付いていると思いますが、今後例えばiPS細胞も参入してくると思いますし、そういうときにどれもが効くのだ効くのだという方向でいくのではなくて、どのぐらい効いているのかを科学的に評価できるような評価項目をできるだけ作っていっていただきたいと思いますので、そういう意味で、おっしゃっているようなZPPといったところをきちんと取るとか、そういうことはできるだけやっていただきたいと思います。
○中村技術専門委員 山本構成員のおっしゃるとおりだと思います。普通ですと、例えばレントゲンの評価をするのだとすると、外部評価委員会を作って、治療チームとは関係なく評価する委員のチームを作って、その人たちが評価することになるわけです。そういう意味からいうと、今回の脊髄損傷の投与前と投与後の評価については、外部委員会的なものが巡回してでもチェックをするとか、そういうものを作れば、今の御懸念のところがゼロにはならないにしても、相当カバーできると思います。実際の治療をしたグループが評価をするというのは、どうしても難しいので、本来は外部評価委員会を入れるということは不可能ではないと思います。あるチームを作って、MMT(徒手筋力テスト)の再確認をして、ZPPの取り方を再確認して、そのチームが前と後のフォローのときに必ずその人たちが目を通してチェックをするというようなことは、普通のレントゲンとか治療効果のときにはやっていることがありますので、そういうことは可能なのではないかという気はします。現実性がないわけではないと思います。
○松山構成員 今の御意見、外部評価委員会の話は非常に御慧眼で、私も思い浮かばなかったのですが、非常によいアイディアだと思います。
 今、このところでプラセボが置けないというのは、疾患の状態から考えて仕方ないのですが、ただ、評価委員会で認められて、先進医療となって、将来的にこれで有意差が取れたということになると、保険診療になります。保険診療になった後に、プラセボ効果は消えますから、患者は実は治療効果はなかったと。これほど悲惨なことはないということを考えると、ここはできるだけプラセボエフェクト等を排除していけるような体制の再構築が必要かと思います。
○山口座長 ほかに何かございますか。大体意見は出尽くしたと思いますが、幾つか問題があって、1つは体制の問題で、御指摘のあったとおり、この体制ではまずいのではないかということです。
 もう1つは評価の方法で、もう少し客観性を持たせなければ駄目ではないかと。難しいことは難しいのですが、こういうことがモデルになるとしたら、今後の審査にも重大な結果を招きますので、もう少しきちんとしたものにすべきかと思います。外部の者が回って見るというのも非常に面白い方法だと思いますし、その点をもう少し検討する必要があるという御意見がたくさんありました。
 リハビリについても、強度とか、やる気が大分違うので、その辺りも標準化しないと評価は難しいのではないか。
 もう1つは、有効性について考察が足りないという点もあって、これを見て、これはいいと思うようなデータが、まだ十分にはないということも大きな問題かと思います。
 最後に、やはり統計的にこれできちんとデータが出るのかどうかという疑問もあって、たくさんの御意見があったと思います。このまま承認というわけにはいかないと思うのですが、ほかに御意見がなければ、松山先生から、まとめと総合評価をお願いいたします。
○松山構成員 今、頂いた5点を踏まえて申請者の方々とやり取りをさせていただくということで、継続審議とさせていただければと思います。
○山口座長 よろしいでしょうか。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局から確認です。5点、申請者へ照会事項として返す内容の確認です。1点目は実施体制で、脳神経外科あるいは整形外科をどういう形で実施体制に入れていただくかを確認します。2点目は実施計画書上対象患者が受傷後4週と8週となっているが届出書上において反映されていない部分の修正が必要。3点目、リハビリの標準化について、しっかりとコメントを頂くということです。4点目は、対象患者のメンタルに関する評価も評価項目に入れることを検討いただくということです。5点目は、ZPPの評価を評価項目に入れることで、それらの評価を全て含めて外部委員会等を用いた第三者性を担保すること。以上を申請者へ照会事項としてお送りさせていただくようにいたします。
○山口座長 よろしいでしょうか。大変うまくまとめていただきましたので、今の5点を確認するということで、継続審議とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 続いて、新規申請技術の評価結果に移ります。事務局より説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料2-1、51ページです。本日先進医療Bとして新規に御評価を頂く案件は1件です。整理番号72、膵がん腹膜転移に対するS-1及びパクリタキセル経静脈腹腔内投与併用療法です。適応症は初回治療予定の他臓器に遠隔転移のない腹膜転移を伴う膵がんとなっております。申請医療機関は関西医科大学附属病院です。審査担当構成員は主担当が上村構成員、副担当が田島構成員、柴田構成員となっております。
 資料2-5、81ページです。審議に先立ち先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件について事務局より御説明いたします。実施責任医師の要件として、診療科は消化器外科または消化器内科または腫瘍内科またはそれに相当する診療科であること。資格は消化器外科学会専門医または消化器病学会専門医または日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医であること。当該診療科の経験年数は10年以上であること。当該技術の経験年数及び当該技術の経験症例数は特に要件はありません。その他、膵がん腹膜転移治療研究会会員講習会参加が必要である。化学療法治療歴が1年以上必要であるということです。
 医療機関の要件としては、診療科は消化器外科または消化器内科または腫瘍内科またはそれに相当する診療科であること。実施診療科の医師数は常勤医師が3名以上であること。他診療科の医師数は麻酔科医師が1名以上であること。その他、医療従事者の配置として薬剤師を必要といたします。病床数は200床以上であること。看護配置は11対1看護以上であること。当直体制は外科が1名以上の当直であること。緊急手術の実施体制を必要といたします。院内検査は24時間実施体制を必要といたします。他医療機関との連携体制は特に要件はありません。医療機器の保守管理体制は必要といたします。倫理審査委員会による審査体制は少なくとも2か月に1回かつ必要時開催となっております。医療安全管理委員会の設置を必要といたします。医療機関としての当該技術の実施症例数は要件といたしません。
 その他の要件は特にございません。以上です。
○山口座長 これらの要件について御意見はありますか。1つだけ、この当直は外科でないといけないのでしょうか。外科医が大変つらい思いをしているのに、また外科医を当直させるのは、外科医でなくてもいいのではないかという気はするのですが、いかがですか。
○医政局研究開発振興課専門官 では、外科または消化器内科医ということで申請者に修正いただくようにいたします。
○山口座長 ほかに何かありますか。それでは、今の点を追記いただくという条件で様式9号はお認めいたします。整理番号72の評価結果について上村構成員から、今日は御欠席ですので、概要の説明と実施体制の評価について事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料2-4、77ページは技術の概要です。膵がん患者の他臓器に遠隔転移がなく、審査腹腔鏡検査ないしはバイパス手術において腹膜播種例や腹腔内細胞診断陽性例を対象にS-1及びパクリタキセル経静脈・腹腔内投与併用療法の有効性及び安全性について、標準治療であるゲムシタビン、パクリタキセル併用療法群を対照としたランダム化比較試験を行う計画となっております。
 主要評価項目は全生存期間、試験期間は登録期間は3年、観察期間は1年半とした総研究期間4年半となっております。予定症例数は試験治療群90例、対照群を90例とした合計180例となっております。
 資料2-2、54ページの実施体制の評価ですが、全て「適」との御評価を頂いております。コメントとして実施責任医師等の体制に特に問題はないと判断した。実施医療機関については、「消化器外科または消化器内科または腫瘍内科またはそれに相当する診療科」で実施することで問題ないと判断した。経静脈的な標準的化学療法は、腹膜に到達して腹膜転移に治療効果を認める濃度に到達しないとされており、S-1及びパクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法を提案する合理的根拠は理解可能である。
 パクリタキセル経静脈・腹腔内併用療法については、申請者以外の研究グループも取り組んでおり、対象範囲や併用する薬剤の選択も異なっている。一般に、複数の薬剤、更に複数の投与経路を組み合わせると、その組合せは非常に複雑となり、それぞれの薬剤の真の至適用量を決定することは非常に難しい。将来的には複数の開発プログラムから得られた有効性と安全性データをよりシステマティックに評価していくことも必要になるであろう。
 本研究においては、申請者の仮説どおりに本治療法が腹膜転移膵がん患者の腹膜病変進展を制御、並びに腹膜に露出する膵がん原発の縮小効果を通じて、切除率の向上と生存期間の延長をもたらすのであれば、新しい技術として有用性は高いと考える。有効性に関するエビデンス構築のためにランダム化比較試験を提案されていることも評価できる。その他、主担当が指摘した試験実施計画書、同意文書等の不備等については事前の照会事項の回答で対応がなされ問題が解決している。以上です。
○山口座長 続いて本日、御欠席の田島構成員の倫理的観点からの評価について事務局から御説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 倫理的観点からの評価は、資料2-2、52ページです。同意に係る手続、同意文書について「不適」との御評価を頂いております。コメントとして1点目、説明文書に次のような問題点があり修正を要する。全体に記載ぶりが一般人には難解で分かりやすいとは言えない。試験予定期間について記載がまちまちで倫理審査委員会承認日の整合性も取れていない。治療群の試験薬の投与期間に関する説明がない。試験終了後の対応について記載がない。先進医療に関する患者負担費用の正確な額を出す場合には「およそ平均」は不要。病院の相談窓口については名称がなく、代表番号の記載があるのみで連絡はしにくい。全体に誤字等の訂正を要する。
 2点目は、同意書に代諾者署名欄があるが、本臨床試験について代諾の必要な被験者はないため同欄は不要である。3点目、補償はないが保険会社に付保を相談し断られ、また、抗がん剤による治療でもあるため、やむを得ないと考えた。以上のことから実施条件として上記1点目及び2点目の問題点が全て解消されれば「適」として良い。以上です。
○山口座長 続いて、柴田構成員から試験実施計画書等の御評価について御説明をお願いします。
○柴田構成員 お手元の資料の55、56ページです。今回の計画書については評価に先立ち、事前の照会事項に対して回答を頂きました内容で、いずれも問題点、不十分な点は解消したと考え、全て「適」と判断しております。お手元の資料2-3のタブの57~65ページ及び75、76ページ辺りに計画書の内容で改訂していただくべき事項の指摘をしております。
 主なところは、基本的には計画はしっかり立てられているのですが、計画書に記載しておかないと多施設共同臨床試験を実施する上で混乱するような事項、そういうところの記載整備をしていただいたという趣旨です。これを指摘したのは、単施設の試験であれば比較的意思疎通ができますが、多くの施設で同時並行で行うものであるためです。中間解析を実際どのように行うのか、主たる解析でどのような意思決定が行われるのかというのはデータ管理をする方やCRFを書く方にとっても重要な情報でありますので、そういうのは統計家の手元にある書類だけでなく、試験実施計画書に主な部分は書いておかれる必要があるのではないかという趣旨で指摘をいたしました。いずれも適切に対応されたと思いますので、判断としては「適」といたしました。以上です。
○山口座長 それでは、御欠席の上村構成員からの事前のまとめと総合評価について事務局から説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料2-4、56ページです。事前の総合評価として「条件付き適」の御評価を頂いております。実施条件は説明文書と同意書に関する指摘事項への対応が必要とのことです。以上です。
○山口座長 では、ただいまの件について御審議をお願いいたします。何か御発言がありますか。膵がんの腹膜播種というのは極めて予後が悪いと思います。恐らく半年ももたないと思います。
○関原構成員 進行膵がん患者には、今山口先生がおっしゃったように、大体余命何箇月の説明を受けているだけにこのデータの平均16か月はすごく予後がいいのです。更に良い症例は24か月となっています。しかも、これは1、2例ではなく、それなりに症例数に基づいているわけです。全部で36でしたか。そうすると患者は既存の治療より是非こちらにしてほしいと、これを見たら患者はそう言うと思うのです。
 しかも、これは胃がんなど承認されているわけですから、リスクや副作用などを含め、ある程度膵がんの患者もリスク分かるわけです。患者から申し出があると医者というのはどのように考えるものなのか、いや、これは臨床試験だからフィフティフィフティでするのが原則ですと言えば、それはそのとおりなのですが、この難治の膵臓がんでこれだけ有効な成績が書かれると、どのように考えるかというのが私としては疑問です。
 もう1点は、こういう有効症例のデータがあるにも拘らず、世界ではどこもやっていないようです。資料79ページで、欧米では薬事承認(無)、アメリカでも全くやっていないということです。こんなにいいのに世界ではどこもやっていないのかというのも、世界中で膵臓がんの治療薬を探しているだけに少し気掛かりな印象を受けたと、これは患者側の率直な意見です。
○山口座長 このことに関してどなたか御意見ありますか。1つは、ものすごく差があるものであれば、おっしゃるとおりシングルアームで十分だと思います。極めて予後の悪いものに対して格段の成績が出るのであれば、そのほうが人道的かと思うのですが、そこまでいっていないという御判断ではないかと思います。
 もう1つ、例えば、卵巣がんで腹腔内の化学療法というのは、結構行われているのですが、世界で行われていないのは、一般的にはオンコロジストの方は余り好まなくて、局所治療というのは極めて限られた疾患に対してしか行われていないので、膵がんに対してはまだ行われていないというのが現状だと思います。何かこの辺り御存じの方がいらしたらコメントを頂けたら。シングルアームでもいいのではという御意見に対してはどうでしょうか。
○山中構成員 試験デザインのことで少し質問があるのですが、上村先生がいらっしゃらないので柴田先生にお答え頂く形になるかもしれないのですが、対照群の成績を9か月、今回のIPパクリタキセル+TS-1の成績を14か月見積って、それで1群90例の試験、約180例の試験になっています。
 普通の感覚からすると第3相試験としてはちょっと少ないのではと思い、実際にこの方面の研究者たちが引用している、日本で行われた大きな第3相試験を見ても1群300例ぐらいの規模でやっていますので、やはり、それぐらいないと差が見いだせないのではないかと思います。
 何でこんなに症例数が少なくなっているのかというと、2群間の差を結構大きく見積っているからです。特に対照群であるnabパクリタキセル+ゲムシタビンの成績が9か月になっているのですが、これは過去の第3相試験の成績では、確かにこの成績なのですが、これは腹膜以外にもいろいろな遠隔転移がある膵がん患者さんの成績です。
 今回は腹膜以外には転移のない患者さんを対象にしていますから、もっと成績が上がるはずだと思うのです。なので、多分こんなに5か月も差はなくて、2、3か月のマージナルな、だけど臨床的に意味のある差になると思います。心配しているのは、第3相試験をしてまた差が見えなかった場合に、この間の胃がんのパクリタキセルの第3相試験の結果も少し症例数不足で、多分有効ではあっても、症例数不足だったところもあり、結局、解釈が難しくなってしまうと思うのです。
 試験をして検出力不足になり、ぎりぎり有意ではなかった場合にまた第3相試験をするというのは困難なので、研究グループの症例集積能力に大いに依存するのですが、やはり、1群90例というのが少な過ぎるのではないかというのが率直な印象です。
○柴田構成員 ベースラインの9か月の設定の妥当性については、確かに議論の余地があると思います。そこは実際、代わりにどうするのだというのは議論が必要かもしれないです。また上乗せのところも確かに、考え方は幾つかあると思いますので、もっと小さい上乗せにしてサンプルサイズを増やすべきであるという考え方はあると思います。
 普段、臨床試験の計画を立てるときに、先行研究のデータから予測される群間差を基に群間差を設定するという考え方もありますし、一方で、新しい治療法の毒性や利便性を加味して、どのぐらいの差であれば臨床的に意味のある差だと考えられるかということで、より小さめの設定を選択するという考え方もあります。
 私が臨床試験の計画をしているときには後者の考え方で設定することが多いですが、一方で、どちらが必ず正しいということでもないので、申請医療機関の先生方が、9か月に対する14か月の上乗せの検証を行うと考えておられること自体については、現時点では特に問題とはしていませんでした。ただし、議論の余地はあるとは思います。
 この14か月と大きな差が設定されていることは、実際のところそうなのだという現実的な設定かもしれない思う一方、ランダム化をするということは臨床の先生方が、先行研究の全生存期間のシングルアームの試験の非常に良い成績というのは、あくまでシングルアームのものであるし、セレクションもかかっているものであるので、それのみで判断するのは厳しいと考えていることの反映でもあるのではと考えているところです。
 そこの上乗せをどのぐらいにするのかという話については、先ほどの繰返しになりますが、臨床的に意味のある差として、より小さな差でも臨床的に受け入れたいと思うのであれば、そういう設定にしてサンプルサイズを増やすべきであろうという指摘は論点としてはあるとは思います。
○山口座長 以前に胃がんの腹膜投与で途中で対照群に当たった人が結果的にはIPの治療をやってしまっているというのは、先ほど関原構成員の御発言にもありましたが、そういうことがこれでも起きてしまうと、症例が少ないとそれはものすごく効いてきて、わけが分からなくなるという可能性があると思うので、その辺りの歯止めというか何か方法はないのですか。
○山中構成員 この試験に関してはもうそこの治療変更は仕方ないと思うのです。あとは、やはり症例数が少ないとどうしても重要な因子が偶然アンバランシングを起こしてしまいますので、そういった意味からももう少し症例数があったほうが、特に膵がんの患者さんて患者さんの状態が異質性の度合いが高いように思いますので、症例数不足で検出力不足に陥ることをこの試験では懸念しています。
○山口座長 何か御意見ありますか。幾つか懸念はありますが、柴田先生の御判断でもありますので、この試験は一応「条件付き適」ということでいかがでしょうか。田島先生から御指摘がありました2か所の項目、たくさんありますが、これをきちんと直していただければ一応「適」ということでいかがでしょうか。
○掛江構成員 些末な点ですが、説明文書の中、計画書も同様なのですが、投薬や検査のスケジュールの表があるのですが、恐らくただの誤植だと思うのですが、矢印が表の外に出ていたり、普通に見ていて、かなり違和感があるのですが、そういったものも併せて直していただければ。
○山口座長 分かりました。全体に誤字等の訂正を要するということも書いてありますので、そこも含めて直していただくということでよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 事務局です。今回田島先生、掛江先生から頂いた説明文書中の不備を一通り直していただくことと、症例数設計で用いた対照群についてその妥当性について確認させていただくようにいたします。
○山口座長 ありがとうございました。続いて、試験実施計画の変更に移ります。事務局より御説明をお願いいたします。
○医政局研究開発振興課専門官 先進医療Bの試験実施計画の変更について3件の申請がありました。資料3-1、83ページを御覧ください。
 1件目、日本医科大学付属病院からの申請で、告示番号23「トレミキシンを用いた吸着式血液浄化療法」についてです。適応症は「特発性肺線維症の急性増悪」となっています。本試験は特発性肺線維症の急性増悪患者を対象とした従来の薬物治療への本試験治療上乗せによる有効性及び安全性を検討することとなっています。予定試験期間は2014年1月から2016年12月までの2年間、予定症例数は20例、今回の申請時点で登録は14例となっています。
 変更内容は、研究期間を2018年6月までの18か月間の延長となっています。変更理由としては、実施計画上、2016年10月31日時点で14例が登録されたが、終了予定日である本年12月31日までに完了が見込めないため、18か月間の実施期間延長を行うこととしたとのことです。以上です。
○山口座長 ただいまの御説明に何か御質問はありますか。20例のうち14例まで来ているということで、もう少し延ばしていただければということですが、特に御異議はありませんか。よろしいでしょうか。
 では、告示番号23の試験計画の変更については認めることといたします。
 2件目の試験実施計画変更について事務局から御説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料3-2、85ページです。東京大学医学部附属病院からの申請で、告示番号54「FOLFIRINOX療法」です。適応症は「切除不能又は術後再発胆道がん」となっています。本試験は、切除不能又は術後再発胆道がん症例を対象として、FOLFIRINOX療法の有効性と安全性の評価を行うものとなっています。予定試験期間は2016年2月から3.5年間、予定症例数は35例で、今回の申請時点で3例が登録されています。
 主な変更内容は4点あります。1点目、観察時期の項目に後観察期間の後に「中止時」を追記した。2点目、後観察期間中の受診時期を「終了後適宜」から「8週毎(±5日)」に変更した。3点目、試験治療各クールにおける日程表記について、「Day(1±0)」を「Day1(-1~0)」に変更する。4点目、尿検査・胸部レントゲン検査を「各コース開始時に必ず施行」ではなく、「2コース目以降は必要に応じて施行」へ変更する。以上となっています。
 変更理由ですが、1点目、中止時も後観察期間中と同様の項目を評価することを明確にするため。2点目、後観察期間中の評価タイミングを明確にするため。3点目、各コース開始の判断は前日検査を許容することとしたため。4点目、膵がんに対するFOLFIRINOX療法の国内治験では、尿検査は各コースごとに評価がなされていたが、CTCAEgrade3/4に該当する重篤な尿検査異常は報告されていない。そこで、本試験は、登録時に採血と尿検査にて腎機能に異常がないことを確認し、2週間ごとの採血で腎機能障害を評価することから、腎機能のデータに変化が見られた際に、尿検査を追加するという体制で検査の負担が軽減されつつ安全性が担保されると考えるため。また、上記治験では、各コース初めに胸部レントゲンは必須としておらず、CTCAEgrade3/4に該当する重篤な呼吸器、縦郭及び縦郭障害は肺動脈血栓症1例(2.8%)のみが報告されている。そこで、本試験は2週間ごとの受診時に、呼吸器系を含めた自他覚所見を評価し、また、抗腫瘍効果の評価のため、8週ごとに胸部を含めてCTが施行されることから、これらの検査所見を踏まえて、必要に応じて胸部レントゲン検査を施行することで検査の負担が軽減されつつ安全性が担保されると考えるため。以上となっております。
 なお、本変更は平成28年5月に申請医療機関の倫理審査委員会において承認され、本技術審査部会への変更手続がなされることなく、11月まで運用されていました。
 127ページの参考資料を御覧ください。実施計画書運用に係る手続の運用について、部会における確認事項になります。この中で、「人員配置変更などの軽微な変更を除き、部会にて当該変更に係る有効性・安全性等の技術的妥当性及び試験実施計画を検討し、部会にて当該変更が承認されたことを確認した後に、変更後の試験実施計画による先進医療の実施を認める運用とすること」としております。
 今回申請いただいた変更3)及び4)については軽微な変更には該当せず、部会において承認を要する変更であり、先進医療の課長通知違反に該当する事案となっております。本件は、申請医療機関内における調査により発覚し、今回、変更申請と併せ、本事案に対して資料3-2、87ページにあります「再発防止への取り組みについて」という報告書を申請医療機関より御提出いただいております。内容としましては、新規患者登録は一旦中止の上、調査中である。原因は、先進医療会議への報告に係る認識が不十分であった。臨床研究支援体制における問題点の調査を今後行っていく。先進医療を実施する関係者への教育体制の見直しを進める。以上の御報告を頂いております。
 今回、本4点の変更申請の可否及び変更申請の遅延に対する対応について御検討いただきたく存じます。
○山口座長 変更申請に関することと、変更申請に遅延があったということに対する対応、この2つの問題がありますので、まず、変更申請について、どなたか御意見はありますか。
○一色座長代理 変更申請する理由の4)の記載が、「必要に応じて施行」に変更ということと、理由に書いてあるのは、「腎機能のデータに変化が見られた際に尿検査を追加する」という文章になっています。ここは「腎機能のデータに変化が見られた際に施行」というように記載すべきではないかと思ったのですがいかがでしょうか。
○山口座長 いかがでしょうか。4番目のものは、少し言い訳を書いているようなところがあるのではないでしょうか。特に4番目は、あえて尿検査・胸部X線検査をこの時点で、当初の計画にあったのを数箇月やったところでやめてしまうというのは、何か相当の理由がないと駄目だと思うのです。そういう理由が示されていないように思われます。
○真田構成員 私も今、座長がおっしゃったのと同じ意見です。そもそも国内治験のプロトコルを理由にして、これを変更すると書いてあるのですが、国内治験のプロトコルというのは、恐らくまだ3例しかやっていないこともあって、当初からある程度分かっていたことであり、それに対して、はじめからこういう考察がなされていれば問題はなかったのでしょうが、コースが始まったところから、そのコースが始まったということに関係しない理由で検査のグレードを下げるということになると、やはり、そこは最初の考察が不足していたのではないかと懸念されざるを得ない内容なのではないかと思います。
 例えば、これは3例やっていて、その3例の結果、途中経過に問題がないのでというような理由であれば、まだ、試験の進行と関係があってそれはいいのでしょうが、そこが1つ引っ掛かったということです。
 サイエンティフィックにこれが、それでも大丈夫かということについては、私も専門ではありませんので、ご専門の先生方の御意見をお伺いしたいところだと思うのですが、その出し方に、ちょっと引っ掛かりました。
○医政局研究開発振興課長 事務局から事実だけお伝えします。この3例の組み入れは、実はこの変更のあととなっています。この変更の時点というのは、まだ1例も組み入れていない時点での変更というところです。
○山口座長 ほかに何か今のことに関して御意見はありますか。
○山本構成員 検査の負担ということも書いてあるのですが、胸部レ線と尿検査なので、どのぐらい負担が軽減されるのかなというのが、ちょっと不思議な感じもいたします。実際問題として、これが何か患者さんを入れるところで、普通に走っている診療体制とうまく合致しなくて、やはりなかなか難しいとか、検査が漏れるとか、そういうようなことがあるのであれば、そういう理由を挙げていただくほうが受け入れやすいかなとは思います。
 おっしゃっているように、先ほどの事実もありましたので、今書いていらっしゃることだけだと変更理由が余り適切ではないと言わざるを得ないかなとは思います。別に、これを削るということを最終的に選択肢にするのは構わないと思うのですが、理由をもう少し受け入れやすい理由にしていただくほうがいいかなと思います。
○関原構成員 私も全く同じです。要するに、血液検査のほうがよほど大変ですよ。これはクレアチニンが少しおかしいというので、尿検査というのは要するに一番簡単でお金も掛からないわけです。血液検査はお金も掛かるし。だから、これは何でこんなオーバーに、大げさにしてあるのかなというのが率直な疑問だったのです。
○山口座長 ありがとうございました。お二人とも同じ御意見だと思います。
○田代構成員 1点、今の点に関してなのですが、これは一応、変更申請が、ここには来ていないですが、東大の倫理審査委員会には掛かって承認されているので、併せて、倫理審査委員会で承認したときに、特に問題はないと判断した理由なども伺えればいいのではないかとは思います。何らかの議論はあったとは思うので。
○山口座長 それは何か報告はありましたか。
○医政局研究開発振興課専門官 いいえ。そちらの報告は受けてはおりません。
○山口座長 それでは、確認させてもらうということでよろしいですか。それはできますか。確かに興味はあるところです。
 ほかの、最初の1)、2)、3)に関してはいかがでしょうか。特に御意見がなければ、1)、2)、3)は変更を一応認めて、4)についてはちょっと認められないというようなことになるかと思うのですが、よろしいでしょうか。
 では、1)、2)、3)については認め、4)については認めないことにいたします。
 次に、変更申請の遅延について。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 よろしいですか。
○山口座長 どうぞ。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 せっかくですので、本件のプロトコルについてもう一度確認をさせていただきたい事項があるので、先生方の御意見を賜りたいと思います。タブレットのほうの749ページです。お伺いしたいところはステップ管理の観点です。このプロトコル自体は、ステップ1、ステップ2で構成されていて、ステップ1の結果を評価した後にステップ2に進むようなデザインになっています。書きぶりが、ステップ1、749ページでは、3例を登録しまして、その成績が良ければ効果安全評価委員会にかかりますし、そこが芳しくない場合には追加症例があったり、あるいは悪かった場合にはその形での効果安全評価委員会にかかるようなデザインになっています。
 次のページです。問題はステップ2にいつ行くか。このステップ2に行く前に、この技術審査部会のほうに御報告いただいて、次のステップ2のオーケーを頂いてからステップ2に移るのか、そうではなくて、ステップ2は、その3例の部分が一番問題になるのですが、次のクールにどんどん入っていってしまうというタイミングが非常に取りにくいものなので、ややもするとその3例だけはステップ2にそのまま自動的に行ってしまうようなこともあり得る中で、ここの解釈が若干読みにくくて、ステップ1、ステップ2が自動的に3例は行けてしまうのか、あるいは、一回立ち止まって御報告いただいて、この部会で御評価いただいてからその3例の継続も含めて議論すべきデザインだったのかというところの文章の読み方のところは、今更ながらにして読みにくかったので、先生方に再度ここの部分の解釈についての御質問を、少し専門的なのですが、教えていただければと思ったのです。
○山口座長 いかがでしょうか。これは、やはり一旦立ち止まってから判断するものではないのでしょうか。
○柴田構成員 多分それは試験の計画によると思います。前例としては、先行事例が1例もなかった状況で申請されるような特区関係のもので、数例の経験を踏まえた上で、広く患者さんを増やすというものの場合には、一旦数例の経験が確認できた段階で、この場で議論をしましょうという計画になっている試験があります。
 そうでない試験というものもあって、普通のこういうデザインの場合には、試験を止めずにそのまま、試験の中の効安での審査はするけれども、そのままステップ2に進むという計画のものもあったと思います。
 前者については、最初の申請時に、このタイミングで報告していただきましょうということが部会で議論されていたと思うので、そういうものについては、そういうふうに書いてあったと思います。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 先生に今御指摘いただいたのは、750ページのステップ1の3)の評価に係るものだと思っております。そこには、効果安全性評価委員会における検討結果を先進医療技術審査部会、正にここの先生方に提出して、試験の継続についての指示を仰ぐと明記されているので、確かにこういう場合だと一回止めなければいけないのではないかというように読めるのですが、ただ、患者さんからすると、クールが入っている3名については、一回止められるようなイメージになってしまうので、よほどそこのタイム管理をしっかりしないと、それは実施医療機関の、ある意味ではハンドリングの問題ではあるのですが、そこを注意してやるべきですよというような指導をしてよろしいのですよねと。こういう記載があるのに、3例だけはいいのですというふうに解釈していいのかどうかというのは、一応、先生方の御意見を賜ってからにしたかったのです。
○柴田構成員 その話について言うと、その2つ下の行に、「ステップ1に登録された症例は」という話が書いてあるので、継続投与の話があるとすれば、それは規定上、4例目の話はまたこの話とは別ですが、既に登録された3例の患者さんの治療に関しては、こういう規定であるという解釈でいいとは思うのです。
○医政局研究開発振興課治験推進室長 そうすると、4例目からは駄目で、3例だけは継続してフォローアップするのだけれども、4例目は確実に止まって先生方に御評価いただかない限り組み入れられないということでよろしいのでしょうか。
○真田構成員 。事務局に確認をしたいのですが、これは当初から特区の枠組みで入ってきたものですよね。そのときの先行症例はゼロ例であったという解釈でよろしいのですよね。
○医政局研究開発振興課専門官 そのとおりです。
○真田構成員 それであれば、この書きぶりは、最初の3例で先行症例にかかるところを先進医療で施行しながら、その初段階の評価を部会まで上げてくるという趣旨だと理解をしていますので、今、正に御議論いただいていたようなステップで、一旦、3例目までのところでの評価が上がってきてから4例目のものを始める。3例目までは、確か特区の枠組みの病院しか協力医療機関になれないのですが、4例目からはその制限が外れて、第9号に書いてある施設が全部入ってこられるようになるという枠組みだと理解をしています。
○医政局研究開発振興課専門官 仰るとおりでございます。
○山口座長 御説明ありがとうございました。
 次に、変更申請への遅延への対応について御審議をお願いします。
○真田構成員 私は、この「取り組みについて」という文章を拝見して、少し気になった点があるのです。今回、東大さんの中で、この計画の変更が、要件の緩和にあたりますよね。ですから、ある程度そこは患者さんにリスクをかける可能性があるということを前提の上で倫理審査委員会にかけて、それが承認されたと理解します。
 これは、以前、埼玉医大国際医療センターさんの件でしたか、同じようなスキームでこの部会の場で審議した記憶があるのです。そのときにもやはりそれを厚生労働省に報告していない、あるいは報告しようという姿勢がないということについては、かなりの御認識があってのことだというふうに捉えざるを得ないと思います。ただ「忘れていました」などということではなく、やはりリスクがかかるということを、ではなぜ報告しないのですかということについては、これも前例もあることですし、仮にこの事象がしっかりフォローされていれば、そういうふうにすべきであったと考えます。
 もう1つは、取組を始められたのは分かるのですが、取組を始めてどうなったということが書いていないので、そこは恐らく、ではどうなったのですかということをフォローアップするなり、追加で御報告を頂くなりというふうなアクションがあってもいいのかなと感じました。
○山本構成員 報告が遅れたことについては、いけませんでしたねと言わざるを得ないのですが、私は余り何というか、やはり大きな組織で、なかなか一人一人まで十分行っていなかったのかなという気もしましたのと、うちでもそうなのですが、一度始まってしまって、その後、変更を全部かけていかないといけないという、この先進医療の制度も、なかなか複雑なので、それを十分に各研究者がみんな熟知しているという状況まで持っていくのは各施設なかなか大変だろうなと思います。そこについては、私自身は、次から気を付けてくださいねと。
 これが東大さんは多分初めてだったと思いますので、初めてのことについては注意ということでいいのではないかなとは思いますが、一応、再発防止への取組のところで、「以下の対応を検討し進めてまいります」ということは書いてありますので、やはり、日本のリーディングユニバーシティであられるところでもありますので、検討し進めていかれたことを、また後で報告をしていただくというフォローアップの報告は頂いたほうがいいかなと思います。
 それに対して、何か現時点で何かパニッシュということをするようなものではないのではないかと。ちゃんと検討して、こういうふうなことをしましたということを、また後で御報告いただければいいのかなと。ただ、同じことが2回、3回あったときにはまた考えないといけないとは思うのですが。
○柴田構成員 私も山本先生と同じ意見なのですが、例えば、88ページの上の所に、遅れた理由等と書いてあり、「どの程度までの変更までを先進医療会議へ報告すべきなのか十分に認識していなかった」と書いてありますが、これは結構線引きが曖昧な部分です。例えば、今回改定されている内容、1)から4)までについては、東大さんの研究実施計画書は厳密に書かれているので、ここのところを改定しようという話になるけれども、実際に出てきているいろいろな研究実施計画書の中には、緩く書いてあるものが多数あり、緩く書いてあるものはなあなあで通ってしまって、真面目に一生懸命やると軽微な記載変更についても全部報告しなければならなくなるということです。報告は、軽微か軽微ではないかという線引きはした上で、軽微ではないものについて報告すべきだという考えはよく分かるのですが、一方で、それに対してパニッシュメントなどということで変なインセンティブがかかると、結局、申請するときの計画書を緩く書いたほうが得をするということになってしまうので、そこは研究の質が上がる方向のインセンティブをかけるような御判断を頂ければ、これから出てくるものもしっかり書こうと、しっかり書いておけば、後できちんと良い方向に評価してもらえるという方向に誘導していただくほうがいいのではないかと思います。個人的な意見ですが、コメントさせていただきました。
○掛江構成員 先ほど真田構成員がおっしゃったことについての質問でもあるのですが、これを拝見したときに、今、柴田構成員がおっしゃったように、どちらかというとフワッと緩く書いていたものを具体的な記載に直したとか、この修正自体が、プロトコルを簡略化して、被験者にリスクを負わせるというようなものではなくて、どちらかというと、特に尿検査などは、先ほど山本構成員がおっしゃったように、そもそもなくても血液だけで評価できたものを入れてしまったのだけれども、プロトコルに入れてしまったら、やはり逸脱などが出てくるので見直して、もともと要らなかったのだから正式に外しましたよと、どちらかというと開始前までにプロトコルの無駄をきれいに整理をしてみましたという修正なのかと。それも、今までフワッとしていたものを具体的に書いたという感じのものが主なような気がしまして、これ自体は被験者さんに負荷やリスクをかけるような変更ではなくて、プロトコルをより良くする、より正確にするための変更であり、かつ、研究者にとってみれば、そもそも想定していたものを具体的な言葉に置き換えたというところで、実際にやるものには変化がなく、文言をきちんと書いてくれたというような意味では、研究者にとっては軽微な変更だったのではないか。
 どこまで報告すればいいのかをきちんと認識していなかったというのは申請者のミスで、もちろん今後は正していただきたいのですが、私自身が受けた印象が、もしかしたら真田構成員が先ほどおっしゃったものと、逆なように思ったものですから、その辺りをこの委員会としてこの変更をどちらに捉えるべきなのかというところを教えていただければと思いました。
○山口座長 それについては、これを省くことが本当に負担を減らすかどうかということに大いに疑問があると私も思います。何で、あえてここでそんなことをわざわざ倫理委員会まで持ち出して、その手間のほうがよほど大変で、しかも施行したばかりでそこのところだけなぜ変えるのか、理解に苦しみます。ですから、倫理委員会でどういう議論があったのか私も聞きたいというのは田代先生と同じ気持ちです。そこのところを余り緩めてしまうと、特にリスクのチェックに関わることですから、やはり正当な理由がないと、「整理されました」などという話ではなくて、そこはきちんとやらないとまずいのではないかという意味でも、少し調査してもらって、また報告してもらうという方向がいいのではないかと思うのです。
○真田構成員 私も座長と同じ意見なのですが、プロトコルが新規で審議されるときには、端から端まで体系的な審査が入って、リスク評価等々には専門の委員の方が付いてされるわけなのですが、私の懸念としては、やはりそれが一旦カッチリとした状態で通っていながら、それが始まった途端に、1例も入っていないところで変更するというところの審査は、そこを切り出して審査するわけですので新規の審査ほど体系的とは言えない。となると、やはり得てして、良いものを出して通ったものが、何となく変わってしまうということについては、やはり一定のブレーキを掛けないといけないのではないかということを私は思っていた次第です。
○医政局研究開発振興課長 事務局からよろしいでしょうか。先ほど真田構成員からお話があったことと併せて、私どもは、まず、この案件が特区で、1例も先例がないところで始まった研究であるということで、きっちりウォッチしてほしいという意図がもともとあったというところであって、倫理審査委員会で知らないうちに変わっていたということです。
 ある意味、倫理審査委員会自身は、ここにありますように、臨床研究の担当のところが運営をしたり、そこと連携が取れていなかったかどうかというのはちょっと分かりませんが、きちんとある意味ウォッチをしていただきたいということで、これは病院として、医療機関として申請があったものを我々は受けて許可を出している。そういう中できちんと報告もしてください、変更についてもしてくださいというお願いをしていたところで、後になって、実は倫理審査委員会で変わっていましたよというような話であるのであれば、一体、先進医療の管理というのはこの病院においてはどうなっているのかというところを非常に心配したということもあって、今回、多少、どういう管理になっているのかというところは正直あるというのが事務局としての考えです。
○柴田構成員 研発課長の御指摘はごもっともだと思いますし、真田先生のおっしゃっているように、計画が大幅に変更されているときに、それが全く把握できないまま進められるというのは確かに問題だと思います。
 一方で、例えば今回のものの4)をどう判断するかというのは御意見がいろいろあるかと思います。そこのところの判断についても、いろいろ御意見が出ているところであって、明らかにプロトコルの、例えば、3例で止めるというものを30例に変更して勝手に進めていたとか、プライマリーエンドポイントを勝手に変更していたなどというものとは違うものであるので、結果として4)は事前に報告しておくべきものであったとこの場で結論が付いたとしても、そこは明らかな、主目的を変更するものであるとか、患者さんに対して規定していない投与方法を使用するような変更に比べると、相対的にはちょっと質の違うものであるということを踏まえた要求というふうに、バランスを取っていただく必要があるのではないかと思った次第です。
 総論として、大きな変更があるものが勝手にされているとまずい、それはちゃんと医療機関として体制をとってやっていただきたいというのは分かりますし、それはそうするべきだと個人的にも思います。逆に言うと、東大さんのようなしっかりとした医療機関であってもこういうふうに解釈がぶれるものについて、あたかも何か著しい逸脱をしたかのような印象を与えるような対応は避けておいたほうがいいのではないかと思った次第です。
○山口座長 ありがとうございました。ほかにはありませんか。これは恐らく、実行している診療科は、ちゃんと出して審査してもらっているのだけれども、その後、こちらへ報告が来ていないわけですよね。それがなぜ来なかったかということも含めて、こういうことがもしも起きているようであれば、本来重要なことがそういう形で、審査だけして置き去りになっているということがあるかもしれないということで、やはりある程度報告はしていただいたほうがいいのではないかと思います。
 実施中の先進医療について総点検及び報告を求めることを先進医療会議で提案するというような形でいかがでしょうか。先進医療会議での意見も聞いてみたいと思いますので。よろしいでしょうか。決してこの事柄がけしからんというわけではなくて、施設としての対応がちょっと大丈夫ですかというところは、皆さんやはり疑問だと思うので、今のような形でいかがでしょうか。
 では、そのような形で進めさせていただきます。
 3件目の試験実施計画変更について、事務局から説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料3-3、89ページを御覧ください。杏林大学医学部付属病院からの申請で、告示番号60、アキシチニブ単剤療法です。適応症は胆道がん。切除が不能又は再発であり、ゲムシタビン抵抗性を有するものとなっております。本試験はゲムシタビン耐性となった切除不能、再発胆道がん患者を対象として、アキシチニブの有効性と安全性を検討するものとなっております。予定症例数は32例。現在は1例の登録となっております。主な変更内容は、除外基準につきまして、活動性の消化管出血若しくはその既往を有する患者、がんの消化管浸潤を有する患者、以上の2項目の追加となっております。変更理由としては、現プロトコルでは、消化管出血の既往や、がんの消化管浸潤により、消化管出血の危険性がある症例が登録可能でしたが、本試験において1例、原病増悪による消化管出血による死亡例の発生を認めました。アキシチニブは、血管新生阻害薬であり、消化管出血は予期されることから、今後、消化管出血のリスク低減のため、除外基準を追加したとのことです。以上です。
○山口座長 ただいまの御説明について何か御質問はありませんか。
○真田構成員 単に確認ですが、1例はもう入っているということで、この人たちが新しく設定された除外基準には該当していないということでいいのですよね。
○医政局研究開発振興課専門官 新しい除外基準に関しては、抵触する可能性があると思います。
○真田構成員 失礼しました。そうですね。亡くなった方でした。すみません。
○山口座長 ほかにありませんか。これは尤もなことかと思うのですが。特になければ、告示番号60の試験計画の変更については認めることといたします。続きまして、協力医療機関の追加に移ります。事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料4-1、91~93ページを御覧ください。12月は先進医療技術審査部会の開催がなく、開催要綱8、持ち回り開催の規定により、持ち回り審議にて御承認いただきました協力医療機関の追加につき御報告申し上げます。
 これまで、大臣告示されている14の技術について、協力医療機関の追加申請がありました。
 資料4-2、95~105ページを御覧ください。事務局におきまして、いずれも先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件、様式9号を満たしていることから、協力医療機関の追加としてお諮りし、異議なく承認されたところです。
 次に資料4-3、107~108ページを御覧ください。これまでに大臣告示されている7つの技術につきまして、協力医療機関の追加申請がありました。各々先進医療名、適応症、申請医療機関、追加協力医療機関について記載しております。
 資料4-4、109~117ページを御覧ください。事務局において、協力医療機関として提出のあった先進医療実施届出書を確認し、いずれも先進医療を実施可能とする保険医療機関の要件を満たしていることを確認いたしました。協力医療機関の追加として、御了承いただきたく存じます。
○山口座長 いかがでしょうか。
○医政局研究開発振興課専門官 特に御意見がなければ、手続を進めさせていただきます。
○山口座長 次に先進医療取下げについて事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料5、119ページを御覧ください。これまでに大臣告示されている3つの技術について、協力医療機関の取下げの申請がありました。先進医療名、適応症、申請医療機関、取り下げる協力医療機関について記載しております。いずれの技術も取下げ医療機関は浜松医科大学附属病院となっており、取下げ理由としては、実質的に医師の退職のためとなっております。特に御意見がなければ手続を進めさせていただきます。
○山口座長 よろしいですか。特に御意見がないようですので、ありがとうございました。次に未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器又は再生医療等製品を用いる医療技術に係る留意事項について、事務局より説明をお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 資料6、121ページを御覧ください。本留意事項については、「厚生労働大臣の定める先進医療及び施設基準の制定等に伴う手続き等の取扱いについて」に示されており、未承認若しくは適応外の医薬品、医療機器、又は再生医療等製品を用いる医療技術に係る留意事項において、数例以上の臨床使用実績がない場合であっても、申請は可能とするという特例を設けております。
 現在は、別添資料124ページのとおり、特例の対象医療機関として、早期探索的臨床試験拠点事業又は臨床研究中核病院整備事業の対象病院と記載しておりました。
 今回、早期探索的臨床拠点事業が、平成27年度末をもち終了となったことを受け、本特例の対象とする医療機関を、資料6の項目1、申請医療機関の要件に記載のとおり、1つ目が臨床研究中核病院、2つ目が臨床研究品質確保体制整備病院、3つ目が、国家戦略特区内における先進医療の特例を利用可能な医療機関と整理しました。
 また、今後、臨床研究品質確保体制整備事業が、平成28年度末以降、順次終了となることから、事業終了後の取扱いについて項目7、臨床研究品質確保体制病院の取扱いについての項におきまして、補助期間終了後も承認済みの技術に限り、そのまま申請医療機関、協力医療機関として継続可能とすることとしました。本留意事項の運用案につきまして、御審議をお願いします。
○山口座長 ただいまの御説明について何か御意見、御質問はありませんか。妥当なことだと思いますが、よろしいですか。それでは本件を認めることといたします。本日の議題は以上です。熱心な御討論をありがとうございました。構成員の皆様、何かほかに御意見、御質問はありますか。
○石川構成員 今日、またパクリタキセルの膵がん治療が出てきたのですが、これはすでに公開になったりしているのです。目標例数を90名として先ほども議論していたのですが、患者さんによってはパクリタキセルを希望される。同じ病棟でいれば、ポートがお腹に入っていて分かるわけです。患者さん同士が交流するというのも普通ですので、そうするとパクリタキセルのほうがいいのではないかと。誰が考えても良いようなデータになってますので、そういうことはまた起こるのではないかと思うのです。
 それと同時に、私たち今の時代は、患者申出療養があるので、あれに患者さんがこういうことを目にすると、そちらのほうにも移ってくるのではないかと思うのです。今の状況では、患者申出療養について、かなり漠とした定義しかないので、この段階で関係医療機関ではない所で治療をやっている患者さんが、そちらのことをやりたいという申出がかなり出ることが推測されるのです。
 ですから、これはもう1つ先進医療会議のところでもあるわけですが、そこまでの間にきちんと整理をしておかないと、また私たちは中医協の方たちから、何をやっているのですかみたいなことを言われたりすることもあるので、このシングルアームではないということのやり方について、少し事務局のほうでも整理をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
○山口座長 確かにそういう懸念はあるかと思いますが、何か事務局からありますか。
○医政局研究開発振興課長 石川構成員御指摘の点は、本当に私ども事務局としてもご尤もだと思います。どこまで整理できるかというのはあると思います。実際問題、申請が上がってきて、今、承認するという仕組みになっているので、それを患者申出療養の関係とどう整理していくかということですので、制度的な問題もあると思いますので、そこは少しお時間を頂くかもしれませんが、医療課とも相談をして、検討していきたいと思います。
○山口座長 申出療養で認められると、この試験に参加する人がいなくなってしまうかもしれませんね。
○石川構成員 そうですね、逆に言えばですね。
○関原構成員 それを心配したので、患者はこっちでやってくださいと言うのかと思いまして。大してお金もかからないのだから。
○石川構成員 きちんとこうやって先進医療の場合には、きちんとプロトコルだとか、そういったものを議論してやるわけですよね。ですから、その辺の綿密なことをやっているのに、逆に言えば、この医療機関ではない所で治療をされている方で、こういうことを要望したときには、ある面では生きる道はそれしかないみたいなことになってしまうわけですから、かなり要望してくることは大いに考えられますよね。そこのところをどうするかということを考えないと、これから同じようなものが、パクリタキセルの腹腔内投与というのは、どうも効きそうだという印象がかなりあるので、いろいろな所で出てくる。卵巣がんなどもすぐだと思うのですが。
○山口座長 何か皆さん御意見がありましたら。なかなか難しい問題だと思いますので、ここでは回答はないと思うのですが、一色先生、何かありますか。
○一色座長代理 特にございません。
○山口座長 関原さん、いかがですか。
○関原構成員 先ほど私が言いたかったのはその話です。これはあんなにデータが良いと、膵臓がんの人は絶対それを言うなと、先生はどうするのかなというのが、先ほど私が質問したことなのですが。片一方で申出療養ができて、非常に膵がんの所については関心が高いだけに、私は事務局にもこの話をしたのですが、えらいコストがかかるというのは別なのですが、これはお金は大してかからないわけですね。これをやってくれと言われると、どうするのかなと。
○山本構成員 患者申出療養ができたので、例えば、やろうと思えば、今日出てきている膵がんの腹腔内投与療法は、先進医療のほうでは並行群間試験ですが、患者申出療養のほうにオープン試験に出すことも可能なわけです。
 それが並行して走っている制度なので、我々としては、もし患者申出療養制度で、これが例えばオープン試験で通って、それが動き始めたときに、そこに対して何も別に言う意見はないですが、この中では、並行群間試験のデザインで、ああだ、こうだと議論せざるを得ないのですよね。
 保険医療の外で使える薬、医薬品医療機器について、ある程度併用療養を拡大する形で幾つかの制度があるのですが、私は普通の医療関係者ですので、フラットな感じで言うと、エビデンスの優劣というか、そこに余り筋が通っていない制度が幾つか並行して走っているなという気がします。そこについては、厚労省が追々整理していただけるのではないかと期待をしております。
○保険局医療課専門官 患者申出療養制度と先進医療の並びというのは、基本的に先進医療で全く同じ患者さんでされている場合には、まず先進医療に入っていただくことを前提として作っている制度ですので、先進医療の枠組みから外れた患者様が、患者申出療養制度をしたいという形になれば、患者申出をされるという形に基本的にはなっております。
 ただ、先進医療でやっている医療機関まで行けないとか、そういう場合もあろうかと思います。そういう場合には、まず、できれば申出をされたい患者様の近くの医療機関で、先進医療の協力医療機関になれないかどうかとか、そういう所をまず検討していただいて、可能であれば先進医療に入っていただく形にはなろうかと思います。先生方がおっしゃるとおりで、先進医療では今回のように比較試験でされるような形になりますので、患者申出療養と比較してデータ、エビデンスというのはしっかりと集積される可能性があると考えております。
○山口座長 先進医療で、例えば対象が70歳未満と限定してやっているときに、80歳の人が申し込んで来るということもありますよね。
○保険局医療課専門官 おっしゃるとおりです。その場合には、患者申出療養で実施されうるとは考えております。
○山本構成員 揚げ足を取るようですが、例えば拒否した患者さんを先進医療で拾えないので、並行群間試験なら入れませんといった方を、患者申出療養制度でオープン試験を用意しておいて、その人はこぼれ落ちたからこっちへ入れるということは技術的には可能なわけです。ですから、こちらが先進医療のほうが臨床試験として厳しいプロトコルでやればやるほど、こぼれ落ちる患者さんは増えて、それを拾い上げる形で、患者申出療養制度でやるということは技術的に可能なので、ですから、これは制度が並行してある以上、それはなってしまっているのです。
 ですから、こぼれ落ちると言っても、どのぐらいの差でこぼれ落ちるかというところがあります。現実的には技術的にはその意思で入らないと決めた人をこちらに入れる。Aという試験とBという試験があったときに、少し違うということは、そういう試験を作ることは技術的に可能ですので、それが同じ場で話をすれば、一方はこれはないでしょうとか、こちらは通しましょうということは言いますが、別の会議でやっている限りはそういうことは言えませんので、そこについて整理をするというのは、どちらも管理されている厚労省の責務だろうと私は思います。
○石川構成員 ですから、今の整理だとか、今、山本構成員がおっしゃったことはそうだと思いますが、ただ私が言ったように、患者申出療養というのはかなり漠としているのです。施設がどうだこうだとか、そういうこともないので、山本構成員が言ったように、同じに並行で走っていても、こちらはちゃんとした集積にならないかもしれないということなのです。ですから、それは厚労省のほうで、やはり事務局のほうできちんと整理する必要が私はあるのではないかと思います。
 患者さんは、自分は生きるか死ぬかですから、やはり選びたいということもあるかもしれません。しかし、それは日本の今後の医療のためにちゃんとできるかどうかという問題もあるので、そこはしっかりしていただきたいというのが要望です。
○関原構成員 私も今、医療課の説明、要するに、関西医大でしかやっていませんと。北海道の人が、いやいや、それは北海道でちゃんと申請をして、北海道大学で医療機関になってもらってくださいと。これは死ぬ人が余命を宣告されているような人たちだから、そういう話ではなくて、やはり、申出である以上、日本でいればしかるべきところであれば、その制度はある程度弾力的に使えるということでないと、それは酷ではないかという気がします。原則はそうであっても、ある程度の人がアクセスできるような格好で申出も普及しないと意味がないと思います。
○柴田構成員 実際のところは、ランダム化比較試験の結果、新しい治療法が有効であったという結論が導かれる確率は非常に低く、実際には、今までのもののほうが良かったという結果になることは結構あるのです。
 薬の開発の治験に関しても、多くのものがフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と進む途中でドロップアウトしていく現実にある。ただしそれは、私たちは臨床試験を普段たくさん見ていますし、一般に公開されない例えば治験のデータなども厚労省の方とかPMDAの方は知っているので、ランダム化されている段階のものはどちらがいいか、本当に分からないからやっているというのが頭で分かっているのですが、一般の方は当然、世の中に出ている薬というのは、効いているから世の中に出ているのであって、一般の方は多分、そういうものは全く分からないと思いますので、関原先生がおっしゃったようなコメントになるとは思うのです。
 そこのところは説明をしていくことは必要だと思います。気を付けておかないといけないと思うのは、先進医療に認められているものの中には、今回のように第3相試験をやろうというレベルのものから、限りなくファースト・イン・ヒューマンに近いものもあって、まだ安全かどうかも分からないのもある。ただそれを先進医療で認められていることを理由にして、患者申出療養でいろいろな医療機関でやるということになってしまうと、それは安全の管理の面でも、まだ全く効くかどうかも分からない段階のものも対象にしてしまうという面でトラブルが生じると思いますので、石川先生がおっしゃっているように、制度面での交通整理がないと混乱をしてしまうかなと思います。そういうものをやりたいと思われる患者さんの気持ちはとてもよく分かるので、情報提供をする部分というのは必要ではないかと思います。
○保険局医療課医療技術評価推進室長 いろいろ御指摘いただいてありがとうございます。患者申出療養については第1例が出たときに、石川構成員がおっしゃったように、中医協でも、この制度自体が漠としていて、どういうものがあるというのは、具体的なイメージが実は固まっていないということは伺っております。今日もかなり具体的な例として、2つの制度が並行して走っていることの問題点のまた御示唆を頂きましたので、患者申出会議のほうでも、その辺りはもっと議論して整理するべきだということで、我々事務局としても考えておりますので、今日頂いた御示唆をまたそちらに持ち帰って、また委員の先生で両方出られている先生方もいらっしゃいますので、きちんとその辺りのハーモナイズをして議論させていただければと思いますので、またよろしくお願いいたします。
○山口座長 ほかに、せっかくの機会ですから何か御意見はありますか。今日は非常に良い議論ができたと思います。せっかく集まったので、30分で終わるのもいいですが、時々2時間ぐらいやってもいいと思います。ほかに御意見がなければ、今日はありがとうございました。次回の日程を事務局からお願いします。
○医政局研究開発振興課専門官 次回の日程は、翌1月については、新規審議案件等がないため、持ち回り開催とし会合は中止とさせていただきます。持ち回り案件については、事務局より別途構成員の先生方にお諮りし、その結果については後ほど公開とさせていただきます。なお、翌々月2月の開催については、2月16日(木)16時から18時までの予定とさせていただきます。場所については、別途御連絡させていただきます。また、本日の議事録については作成次第、先生方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。
○山口座長 1月はお休みでゆっくりお休みいただきたいと思います。その代わり、その分が2月厳しくなりますので、これもよろしくお願いします。それでは第51回先進医療技術審査部会を終了いたします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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