ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)> 第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成28年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録(2016年12月26日)




2016年12月26日 第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成28年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録

健康局健康課

○日時

平成28年12月26日(月)14:00~16:00


○場所

厚生労働省省議室


○議事

○事務局 第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成28年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。副反応検討部会の永井委員、長谷川委員、安全対策調査会の望月委員より、御欠席の連絡を頂いております。また、倉根委員、山縣委員が遅れて到着されるとのことです。現在、副反応検討部会委員9名のうち5名、安全対策調査会5名のうち4名の委員に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会並びに薬事・食品衛生審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 また、本日は参考人として、大阪大学大学院医学系研究科教授の祖父江友孝参考人、大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学教授の福島若葉参考人に御出席いただいております。

 申し訳ございませんが、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 本日の審議の前に、傍聴に関する留意事項を申し上げます。開催案内の「傍聴への留意事項」を必ず守っていただきますよう、お願いいたします。本留意事項に反した場合は退場していただきます。また、今回座長及び事務局職員の指示に従わなかった方や会議中に退場となった方については、次回以降の当会議の傍聴は認められませんので御留意願います。

 本日の座長につきましては、桃井副反応検討部会長にお願いしたいと思います。それでは、これからの進行をよろしくお願いいたします。

○桃井委員 議題に入る前に、事務局から審議参加に関する遵守事項について、御説明と御報告をお願いいたします。

○事務局 審議参加について御報告いたします。本日御出席された委員及び参考人の方々の過去3年度における関連企業からの寄付金、契約金などの受取状況について、これまでと同様に申告いただきました。本日の議題において、調査・審議される品目は、子宮頸がんワクチン、HPVワクチンであり、その製造販売業者はグラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社であり、事前に各委員に申告いただいております。各委員等からの申告内容については机上に配布しておりますので、御確認いただければと思います。

 本日の出席委員等の寄付金等の受取状況から、柿崎委員がMSDから50万円を超えて500万円以下の受取りがあるため、柿崎委員はHPVワクチンについて意見を述べることができますが、議決に参加いただけないことを御報告いたします。

 引き続き委員におかれましては、講演料等の受取りについて、通帳や源泉徴収票などの書類を確認いただくことにより、正しい内容を申告いただけますようお願いいたします。以上です。

○桃井委員 間違いはございませんでしょうか。

 事務局から、本日の配布資料の御確認をお願いいたします。

○事務局 お手元の資料の一番上から、座席表、議事次第、委員一覧、資料一覧があります。その次が、資料1「副反応疑いの報告状況について」、資料2「副反応疑いの報告状況について」、資料3HPVワクチン接種後の失神関連副反応疑いについて」、資料4「全国疫学調査」です。その次が委員限りの参考資料として、A3の紙と「2次調査個人票」です。その後は、傍聴者も含めてお配りしている、委員の謝金等の受取りの申告状況です。その後が委員限りの資料として、本件ワクチンの添付文書です。以上です。足りないものや落丁がございましたら、事務局にお申し出ください。

○桃井委員 議題に入ります。議題1HPVワクチンの安全性について」です。まず、事務局から、資料1から資料3までの御説明をお願いいたします。

○事務局 資料1については、サーバリックスでの副反応が疑われる症状の報告の状況等についてです。資料2が、もう1つの子宮頸癌ワクチンであるガーダシルの副反応疑いの報告状況についてです。子宮頸癌ワクチンについては、本年78日の合同会議において、本年31日から4月末までの副反応状況について御報告しております。本日は、本年51日から8月末までの4か月間に報告された各ワクチンの副反応が疑われる症状の報告状況について御説明いたします。

 資料11ページ目です。上段は商品名等が掲載されております。中段の表の左のほうに、医療機関への納入数量を基に推定した接種可能延べ人数を記載しております。接種可能延べ人数は606人でした。また、同じく中段の表の右側に、製造販売業者及び医療機関からの副反応が疑われる症状の報告件数を記載しております。こちらについては、製造販売業者から50件、医療機関からは25件、うち重篤なものが19件報告されております。これらについては、今回の対象期間の51日から8月末までに接種が行われた症例数を、それぞれ括弧書きで記載しておりますが、今回については医療機関から報告された1件のみとなっております。

 また、もう少し下にパーセンテージが書いてありますが、これまでと同様に、報告対象期間中の接種可能延べ人数を分母に取り、報告された症例数を分子にし、頻度を計算しております。こちらについては機械的に計算しており、製造販売業者から8.3%、医療機関から重篤なもので3.1%という数値を算出しております。ただし、こちらについては、現在接種数が極めて少ない中で過去の症例が報告されているという状況ですので、当該頻度の数値自体には余り意味のないものかなと感じています。なお、販売開始からの累計としての頻度は、その下の「参考」に記載しています。

1ページの下段については、転帰をまとめています。今回については、医療機関の報告で後遺症症例が1例あります。詳細については後ほど御説明いたします。

 なお、1ページ目の注意事項の見方として、何点か補足させていただきます。まず、重篤症例の報告数は、製造販売業者と医療機関の両方が報告してきた場合については、重複を排除するため、医療機関の報告として計上しています。1ページは以上です。

 次に2から7ページ目については、これまでに報告された症例を症状別に集計したものです。縦に見ていただくのですが、表の真ん中から少し左側が、前回の会議までに報告されたそれぞれの件数です。一番右側の部分が、今回報告された件数です。説明は省略させていただきます。

8ページを御覧ください。こちらは予防接種法の報告基準が定められた症状について、抜粋・集計した結果をまとめています。こちらについても、真ん中から左側が前回までの報告数、右側が今回の対象期間の報告数です。今回については、表の一番下の血管迷走神経反射が疑われる症例として、計13件が報告されております。

9ページ目以降です。9ページから15ページまでは、報告された個別症例の一覧です。製造販売業者と医療機関からの両方が含まれております。こちらについて詳細な説明はいたしませんが、製造販売業者からの報告については、発生日等が不明となっているものが多くあります。こちらについては、今回報告された症例が文献によるもの等が多く、発生日、転帰等が不明となっているというような背景があります。

 続いて16ページ目です。こちらは、ワクチン接種後の迷走神経反射が疑われる症例のアナフィラキシーの可能性について検討した資料です。下の表にあるとおり、今回迷走神経反射が疑われる症例は39例ありましたが、ブライトン分類3以上として、アナフィラキシーが疑われる症例はありませんでした。

17ページは後遺症症例です。17ページに概要と専門家の意見が出ており、18ページ目以降に詳細が出ております。簡単に概略を説明しますと、本件症例については、基礎疾患のない16歳の女性がHPVワクチンの接種後に、自己免疫性網膜症等、目の関係の症状が発現し、自己免疫性網膜症、網膜色素上皮症、脈絡膜炎、網膜炎が後遺症として残ったというものです。17ページの真ん中辺りの「症状名、転帰等」に記載があります。

 詳細な経過は18ページ目以降ですが、簡単に申しますと、接種1か月半後、左目に光視症が発現、65日後にMEWDS(多発性一過性白点症候群)と診断されているほか、接種1,748日後にも視覚障害が未回復として残っております。

17ページの右側に専門家の評価を記載しております。こちらは事務局で取りまとめは行っておりませんが、各委員の意見を紹介いたします。「ワクチン接種と自己免疫網膜症発症との間に時間的な前後関係はあるが、因果関係があるとは断定できない」「ワクチン接種時期と症状の出現には因果関係を示唆する時間的つながりがあるように思われる。しかし、このような網膜白点を伴う網膜症で一過性の経過をたどる疾患としてMEWDSを鑑別する必要がある。MEWDSは本ワクチンが原因であるかどうかは不明である。自己免疫性網膜症と本ワクチンの相関は不明である」「本症例では通常のMEWDSと異なる病態である」といった意見を頂いております。

 続いて20ページです。こちらは、アナフィラキシーとして報告された症例の件数を、これまでのものを含めまとめたものです。今回のものは一番下ですが、0件ということで、報告された症例はありませんでした。

21ページ目は、死亡症例です。過去に合同会議で既に評価いただいておりますが、今回新たな情報が得られたため、再度専門家に評価いただいたという事例です。内容としては14歳の女性が接種から約1年後以降に意識消失を発症し、接種から約27か月後に死亡に至ったという症例です。詳細については22ページ目以降に記載しており、いずれも下線を引いている点が今回追加されたものです。追加されたものについては、心電図検査の所見等が新しく記載されております。

21ページの右側の「調査の結果」です。こちらは特段の変更はありませんが、読み上げます。「心室細動が直接死因と考えられるが、得られた情報から心室細動の原因は特定できない。意識消失発作の発現及び心室細動による死亡はワクチン接種から長期間経過後に認められており、ワクチン接種との因果関係があるとは考えにくい」という評価を頂いております。資料1については以上です。残りの部分は本件死亡症例についての詳細な経緯です。

 続いて、資料2を御覧ください。こちらはMSDのガーダシルについての資料です。資料の作りは同様で、1ページ目の中段の左側に、接種可能な延べ人数が今期のものとして記載されており、約3,000人です。その少し右側に、製造販売業者から4件、医療機関から6件、うち重篤なものが5件ほど、副反応が疑われる症例として報告されております。また、先ほど同様、今回の対象期間内に接種が行われた症例の数を括弧書きで記載しておりますが、ゼロということで、今回の対象期間の接種はありませんでした。

 その下の報告頻度については、製造販売業者から0.1%、医療機関から重篤なもので0.2%という数値を算出しておりますが、先ほどのサーバリックス同様、過去の症例が報告されておりますので数値自体には余り意味のないものとなっております。なお、販売開始からの累計は、そのすぐ下に参考として記載しております。

1ページ目の下段は転帰の情報です。死亡と後遺症症例の報告はありませんでした。2ページ目から5ページ目については、報告された症例を症状別に集計したものです。説明は省略いたします。

6ページ目は、予防接種法の報告基準に定められた症状について、抜粋・集計した結果を掲載しています。今回については、ギラン・バレー症候群、血管迷走神経反射が疑われる症例として、それぞれ1件、3件が報告されております。7ページから9ページは、報告された個別の症例の一覧です。詳細は省略いたします。

10ページは、迷走神経反射が疑われる症例でのアナフィラキシーの可能性です。今回は7例が報告されておりますが、そのうちブライトン分類3以上としてアナフィラキシーが疑われる症例はありませんでした。続いて11ページは、アナフィラキシーが疑われる症例のまとめです。一番下に、今期の5月から8月までの件数がありますが、0件です。

 続いて12ページはギラン・バレー、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)の可能性のある症例のまとめを記載しています。今回については、医療機関からGBS(ギラン・バレー症候群)の疑いがある症例として1件報告されております。13ページ目以降に、経過及び専門家の評価をまとめています。13ページ目を御覧ください。

 本症例については、基礎疾患として、卵巣嚢胞、喘息のある16歳の女性が接種3か月後に両足の脱力が発現し、髄液検査や神経伝達速度からはギラン・バレー症候群を積極的に支持する所見は得られなかったものの、報告医は身体所見からギラン・バレー症候群と診断したという症例です。右側に専門家の意見をまとめておりまして、「ワクチンと関係のない、特発性のギラン・バレーの可能性は残る」「ワクチン接種が関連した可能性も否定できない、あるいは他のウイルス感染による自己免疫反応を誘発した可能性も否定できない」「ワクチンその他の感染症の両者の可能性が残る」といった意見を頂いております。それらの意見を事務局でまとめたものが、一番右です。まとめとしては、「ギラン・バレー症候群の可能性は否定できない。ワクチン接種との因果関係は不明である」としております。資料2は以上です。

 続いて資料3です。こちらは子宮頸癌ワクチン接種後の失神関連の副反応が疑われる症例をまとめた資料です。こちらはこれまでの会議でも御報告させていただいており、そのupdateというものです。資料は2ページから4ページがサーバリックス、5ページから8ページがガーダシルということで、1つの資料となっております。

2ページ目を御覧ください。1.国内の発現状況です。最後のほうですが、サーバリックスの販売開始後から、本年8月までの報告については933例、発生率は10万接種当たり13.33例、このうち意識消失があった症例が631例、10万接種当たり9.01例ということです。

3ページ目はグラフと表が出ていますが、意識消失までの時間を表したものです。上の棒グラフは、接種後30分までに発現した症例をまとめています。下の表は30分以降に発現した症例をまとめたものです。こちらを見ていただくと、上のほうのグラフでは30分以内に発生しているということが分かります。

4ページ目は、意識消失があった症例の時期ごとの発現の傾向を示しています。表の下のほうが最近のものです。ここ最近の事例として報告されたものはなく、今回報告されたものについては、その時期ごとに随時数字として加算している状況です。以上がサーバリックスについてです。

5ページ目からはガーダシルについてです。1.国内の発現状況です。最後のほうにありますが、8月末までの報告としては、失神に関する副反応がトータルで379例あり、発生率は10万接種当たり19.7例です。また、このうち意識消失のあった症例は261例で、10万接種当たり13.6例という数値です。

6ページ目は、先ほどのサーバリックスと同様、意識消失の時間などを示したグラフと表になっています。傾向はサーバリックスと同様です。

7ページは、意識消失のあった症例の期間ごとの発現の傾向を示した表です。8ページの最後のほうが最近ですが、こちらについても0件ということで、ここ最近の事例として報告されたものはありません資料1から資料3についての説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○桃井委員 これにつきまして、御意見、御質問等をよろしくお願いいたします。

○多屋委員 資料1のサーバリックスの副反応疑い報告状況の表について教えてください。今年の5月から8月までの4か月間で、606回の延べ接種可能人数に対して、50人、25人と報告頻度が書かれています。販売開始からの累計は699万で約1万分の1の延べ接種可能人数なのですが、この4か月で報告された頻度が多いのです。下にあり、8881,523の中に、ダブルで報告されている症例があるということはないのでしょうか。次にはこの下の数字に足されて、どんどん足し算がされていると思うのですが、重複カウントを排除できるような仕組みを取らないといけない気がするのですが、いかがでしょうか。

○桃井委員 事務局から、重複カウントを排除できるシステムになっているかどうかについてお願いいたします。

○事務局 ただいまの質問については、今回は古い症例として製造販売業者で50件という数が報告されているのですが、以前も報告されていて、ダブルカウントになっているのではないかというのが先生の問題意識かと存じます。

 こちらについては、製造販売業者であるグラクソ・スミスクライン社で、まず新しい情報、新しい症例と思われるものを入手した場合については、それが重複するかどうかを確認していただいています。その上で重複だとは言い切れない場合については、そこはもしかしたらダブルカウントになるかもしれないのですが、新規の事例として報告していただいております。

 今回は50件ありますが、先ほど少し説明でも触れましたが、学会での報告であったり、実際の医療機関まで行き着かない、個別の患者まで行き着かないという症例がかなりありまして、そういったものは数字的には現時点では新規とカウントせざるを得ないのかなと考えております。ただ、今後新しい情報が得られて、重複ということが確認できれば、カウントとしては引き算をしていくと考えています。

○多屋委員 是非よろしくお願いいたします。そうでないと、どんどん足されていって症例数だけが多くなってしまうので、なるべくそういう工夫がされるようにお願いいたします。ありがとうございます。

○桃井委員 これは、特に製造販売業者からの報告で、先ほども御説明のときに御指摘されましたように、発症日不明、接種日も不明という症例がかなり多くありますが、それらは重複のチェックのしようがないわけで、そうしますと、それらは重複している可能性は十分にあると考えてよろしいのでしょうか。

○事務局 そうです。一般論として申し上げれば、確認のしようがない部分ですので、重複している可能性はあると考えております。

 得られている情報によりますが、どうしても確認できない部分があるというのはございます。

○桃井委員 全体の累積頻度を考える上で、非常に重要な御指摘だろうと思いますが、何らかの方法があるものかどうか、なお引き続き御検討いただければ大変有り難いと思います。

○事務局 正確な数字となるよう、引き続き検討を進めていきたいと思います。

○倉根委員 資料33ページの棒グラフですが、右側に「直後(時間不明)」と「不明」というのがあるのですが、「直後」というのは30分以内の間に時間不明ということですか、これはどういうことでしょうか。

○事務局 こちらについては手元にデータがありませんで、企業にそれぞれ作ってもらっていますので、確認して御連絡させていただきます。

○桃井委員 よろしくお願いいたします。ほかにいかがでしょうか、よろしいでしょうか。

 まとめさせていただきます。確認した内容としては、先ほど御質問がありましたように、今回の報告では直近の4か月間の前に発生した事例が、かなり報告されておりますが、累積のデータを含めて、全体の傾向としては、内容ともにこれまでの報告と大きな変化はない。そして、サーバリックスの接種例で、接種後に眼科的な疾患の発症が1例あり、視野の異常という後遺症の報告がありました。ガーダシルに関しては、ギラン・バレー症候群を否定できないという症例の報告が1例ありましたが、いずれも1例にとどまっております。このようなまとめでよろしいでしょうか。

 以上のようなまとめに基づきまして、御審議いただいたワクチンについては、今回までの副反応疑いの報告によって、その安全性において、新たなリスクのシグナルの検出はない。したがって、従来どおりの評価であるということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。以上で、HPVワクチンの副反応疑い報告につきまして御審議は終了いたします。

 引き続き、議題2、全国疫学調査(子宮頸癌ワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究)についてに入ります。これは班長をお務めいただいた祖父江参考人から御説明をお願いいたします。資料4です。よろしくお願いいたします。

○祖父江参考人 大阪大学の祖父江です。この全国疫学調査の研究班を担当しております。隣が福島先生ですけれども、実際の解析を担当して、細部にわたる質問が出た場合に、必要に応じて発言させていただきます。

 お手元の資料4を御覧ください。全国疫学調査を実施しております。概要は去年の確か11月に、この部会で報告させていただきましたけれども、それ以降実施しているというところです。下の段に概要を示しておりますけれども、本調査はまず一次調査、二次調査と大きく2つの調査から構成されています。一次調査については、全国の病院を対象に、2015年、去年の後半における患者の受診有無についての報告依頼をしたということです。

 タイトルにありますように、これは青少年における「疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状」について、頻度、特性を調査するという目的で行っています。調査対象の診療科としましては、全国の18,000診療科、これは10診療科を選び、さらに特別階層としては、協力医療機関の83施設を全数選び、10診療科については、200床以上の病院は全数、200床未満の病院に関しては半数抽出ということで行っています。

 回答していただく調査の対象という症例の基準ですけれども、以下の1.4.の全てを満たすということで行っております。1.としては年齢が1218歳、これは受診時の満年齢です。

 さらに以下の症状が少なくとも1つある。疼痛及び感覚(光・音・におい)の障害、運動障害、自律神経症状、認知機能の障害、この4つのうちの少なくとも1つ以上ある。この症状が3か月以上持続しており、かつ通学・就労に影響がある。こういう人たちの受診状況を調べるという目的で、一次調査については、患者の数、性、年齢を調べることを依頼しました。

 さらに、患者が1例でも存在している医療機関に関して、二次調査を行い、多様な症状の臨床疫学像について報告を依頼しました。「患者あり」と回答された診療科は508診療科あり、そこに個人票を送付し、臨床疫学特性とともにHPVワクチンの接種歴もこの中で問合せをしています。一次と二次を合わせて、多様な症状がありワクチン接種歴のない患者を推計することを目的として行ったものです。

 次のページ、上の段が主な調査スケジュールですけれども、去年の後半の受診者数を今年に入って1月から一次調査、依頼状を送付して、3月に再依頼、6月にまた再依頼ということで、おおむねデータをフィックスできたのが7月であり、さらに二次調査を開始したのが7月の末、再依頼あるいは新規の回答等受け付けて、最終的にフィックスしたのが、つい最近ということです。この間、解析に関しては、1021日に解析計画に関しての検討を行って、それ以降、それをフィックスした形で解析を進めているということです。

 下段が一次調査に用いたハガキです。これは1枚もののハガキであり、1診療科に対し 1枚出していただくというようなものです。この中に男子・女子に分けて、各年齢ごとの先ほど申しました定義に従った症例数を書いていただくことをお願いしました。

 次のページですが、全国疫学調査の二次調査、これは1症例1枚、個票の形で提出していただくもので、個人情報としては性別・生年月日・イニシャル、現在の居住地、この辺りまで聞いて、重複例はできるだけ排除するという試みをしています。それから既往歴、子宮頸がんワクチンの接種歴に続いて各症状の詳細を聞き、さらに右側の真ん中辺りにこの期間の就学・就労状況を聞き、この病院にかかっている貴科で把握できている傷病名、これは一番下の枠ですけれども、主病名以下10傷病名を記載していただき、認められた症状がその傷病名で「説明できる」「説明できない」ということを主治医、あるいはこの回答者の意見ということで聞いています。ここは後で説明しますが、重要なところとなります。

 こうした調査で抽出数、回収数について、おおむね診療科単位での数字を出すと、一次調査においては60%程度、二次調査においても診療科単位でいくと63.8%の回収が得られているということで、この類の調査にしては非常に回収率はいいのではないかと思います。

 結果を交えて報告させていただきますが、下段の一次調査では診療科別に見た対象数、抽出数、回収数、これは全て診療科単位の数ですけれども、25,000の対象がある中での抽出としては18,000、回収できたのが11,000で、これが6割程度ということです。報告された患者数でいくと、男女計で2,555の例数がこういう症状に相当すると報告された実数です。

 右上は性・年齢別でいくと、903例が男子、1,652例というのが女子それぞれの数字です。その回収数を1施設当たりの患者数ということで表を作ってみました。診療科別に見て一部多い所があります。例えば、小児科ですと5099例で1施設、精神科・心療内科ですと、100例以上という所も1施設あります。これらに関しては、二次調査の中でまた「適格」「不適格」ということを判断して使用しましたので、結果的には100例以上の所は使っていないということで処理しておりますが、少なくとも一次調査ではこのような結果ということです。多い所はやはり14例とか59例という所は380施設あるいは61施設と多くなっています。

 次のページ、これで一次調査としては抽出数、回答数、回答された例数ということで掛け算をして、フローにある1.に当たる粗推計患者数をまずは求めます。さらに二次調査から得られた個人票の情報を用いて、不適格であるか重複例であるか、この点に関して除くという意味での補正係数を算出し、それを掛けるというものが2.です。その結果、出てきた補正後推計患者数に、4.の段階で多様な症状、これに関しての判断を、さらに発症時年齢が12歳以上であるかということで、このファクターを考えて、5.としては「多様な症状」を有する推計患者数というものを出しました。

 さらに次の段階でHPVワクチン接種歴に関しても、不明例というものがありますので、それを勘案して分子に当たるところを計算し、7.に当たるHPVワクチン接種歴別に見た「多様な症状」を有する推計患者数を推計しました。さらに8.としてこれは別のデータですけれども、HPVワクチン接種歴別の全国の推計人口、これが有訴率を計算する場合の分母になります。これに市町村からの報告に基づく累積接種者数を合計し、それをこの年齢階級の人口から引いて、非接種者としてカウントしたということです。これは一番最後の「参考」に詳細を記していますので、御覧ください。

 ちょっと割愛しますが、9.としては、7.8.で求められた分子、分母の割り算をして、この半年間の期間有訴率というものを求めました。今から説明していきますが、随時このフローを見比べてもらって、今、どの段階を説明しているのか確認しながら聞いていただきたいと思います。

 右上の表2-1です。これは男女別、年齢別の一次調査の報告患者数です。実数として9031,652というのは表1-12,555の男女別の数ということで確認できます。その右横の粗推計患者数は、抽出率と回収率を勘案して割り戻したもので、2,0793,804という数字になります。これに補正係数、先ほどの不適格例、重複例を除くという操作を行うための係数として掛け算をすると、その後の患者数としては3.に当たる黄色の部分ですが、全体として1,185が男子、2,244が女子です。そのうちの12歳以上に限ると、9011,728となります。また、この数字が次の計算の土台になります。

4.の過程の説明として下段の二次調査票の中の、この点に関する質問の形式ですけれども、まずは貴科で把握できている傷病名を聞き、この「上記傷病名で20157月から12月に認められた症状をおおよそ説明できますか」という質問に対して、「できる」「できない」「不明」を選択していただき、できる場合は最も説明できる傷病名の番号をお書きくださいというような質問をしています。

 これをどう扱うかという解析をする段階で、いろいろ班内で検討しました。それは次のページの取扱い1.2.などが出てくる表です。まず左側に記載の傷病名で症状を説明できるのかどうか、「できる」「できない」ということで、まず二分されます。

 説明できる中でもその傷病名に何が書いているのかということですが、それにHPVワクチン接種に関係する傷病名が明示されているもの、例としては「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」というようなことが書いてあるものに関しては、我々はカウントすべき症例であるということで、右側の扱いでは「相当する」ということにしました。もちろん説明できないというものは「相当する」とし、説明できる中でも「ワクチン接種による」と明示されているものに関しては「相当する」としました。

 そのように明示されていないものというところで分けて、下から2番目の欄で別表4に当たるところですが、HPVワクチン接種後に生じた多様な症状とは明らかに区別できるもの、例としては、SLEや関節リウマチやてんかんといったものであれば、相当しないと主治医が説明できるということなので、これは我々がカウントする症例ではないだろうということで「相当しない」という判断をしました。

 ただ、ここの判断が人によってかなり変わるところがあり、*で書いてありますが、主治医が「症状を最も説明できる」と指定した傷病名のみを列挙したリストに基づいて、班員が独立して判断して、全員一致して「HPVワクチン接種後に生じた多様な症状とは明らかに区別できる疾患」と判断したものについてのみ、このカテゴリーに入れました。

 それ以外のものが別表3に当たるわけですが、下記以外として、例としては、起立性調節障害、適応障害、身体表現性障害というようなものがあります。これについて、取扱い1.としては「相当しない」、取扱い2.としては「相当する」とし、この2つの判断を別にしてカウントしました。

 ちなみにこれらのカテゴリーの傷病名にどういったものが書いてあるかというのが別表15と続きます。主治医が説明できないと回答したものとして、下段にありますが、起立性調節障害はじめ、このような病名、別表2HPVワクチン接種によると明示される傷病名です。別表3が一番の関心事だと思いますが、さらに数が多いパターンで、起立性調節障害、あるいは適応障害、身体表現性障害、解離性障害、うつ病云々と、このような病名がリストアップされているとのことです。

 それから別表4が、明らかに区別できるというもので、全身性エリテマトーデス、てんかん、関節リウマチ、それから感染症云々というところが出てきます。不明と判断されたものも25名、このような病名が書いてあったというものです。

 このような扱いをもって我々がカウントする多様な症状に相当する、しないという判断をして求めた数字が、表2-2a、表2-2b、上が男、下が女のお子さんです。取扱い1.、取扱い2.と左右に並んでおり、その中で多様な症状に「相当しない」「相当する」「不明」というものを推計しています。

 ですから、補正後推計患者数というのは先ほど出てきた表2-1の右側に901例、あるいは1,728例から出発し、その取扱いを1.2.で判断し、多様な症状に「相当する」「相当しない」が表の2-2a81例、829例、これがプロセスの中では、6ページ目の算出フローで当てはめると、5.に相当する数字です。それが男・女とあるということです。

 男子が81例、829例、女子の場合ですと、415例、1,590例と、かなり幅がありますが、このような数字になりました。男子については、ほぼ全員が「接種歴なし」と判断されますので、これが接種をしていない男子の中での、こういう症状に関しての有訴率と判断できます。女子に関しては、さらにHPVワクチン接種歴別に求めることが必要になります。

 それが、12ページの6.ですけれども、HPVワクチン接種歴をカルテの記載に基づいて調査しておりますので、どうしても「なし」「あり」以外に「不明」というものが存在します。さらに「接種歴あり」に関しても接種前に発症したのか、後に発症したのか、前後関係不明なのかということになります。これをどう扱うかですけれども、まずは「接種歴なし」ときちんと書いてあるもののみを分子とすることは必要ですが、それにプラスワクチン「接種歴不明」例を全てワクチン「接種歴なし」と仮定した場合にどうなるか計算しました。

 さらに「接種歴あり」については、接種後発症のみで計算することと、ワクチン接種歴不明、あるいは接種と発症の前後関係不明というものを総和として求めることで、ワクチン接種歴不明例に関する処理をしました。その上での数字が右側のものです。これは両方とも女子です。男子は先ほどの表2-2aで、「接種歴なし」ということで推計しています。上が女子における「接種歴なし」、下が「接種歴あり」ということで、「接種歴なし」の中でも、純粋に「接種歴なし」の例、それから「接種歴なし」+「不明」で取扱い1.2.ということで、4つのパターンがここに示されています。それで求めた分子に当たるところが、多様な症状の推計患者数のところで、661204771,081に相当するということです。

 これに対応する分母ですけれども、全体としては233万人、これの年齢分布が出ています。これは一番最後の「参考」を見ていただくと、その下段にある表の中の右から4つ目の未接種者(女子)の数字を、年齢が逆になっているので、上下引っくり返した数字をここに当てはめていただくと、そのとおりになります。

 これが8.に当たるところですが期間有訴率の分母です。推計患者数が分子で、それで割った期間有訴率10万人当たりが、それぞれ2.820.45.146.2とありますが、これは最終的に求めようとしていた9.の値になります。見ていただくと、「接種歴なし」の女子たちの年齢分布が1214歳までは、ほぼ、その階級の人口に等しいのですが、それ以降の年齢層に関しては徐々に少なくなっていることが見て取れると思います。ですから、「接種歴なし」の集団は、主には1214歳の人たちをターゲットにして調査していることになります。

 下段が「接種歴あり」の表ですが、(C)としては接種後に発症したと把握できたものだけを分子、多様な症状の推計患者数とすると、取扱い1.では291になりますが、取扱い2.では445となります。これに接種後発症+前後関係「不明」+「接種歴不明」というものを足し算して求めたものが353例、1,113例ということです。分母に関しては逆に「接種歴あり」という分母は、1214歳に関して言うと非常に少数であり、1618歳に関しては7080%程度の接種歴があるという分布になっています。これで割り算をすると期間有訴率としては接種後発症で取扱い1.の場合は18.2、取扱い2.27.8で、下の段が22.069.5となります。

 このような数字が出ると、どうしても上下を比べるのですが、見ていただくと分かるように、「接種歴なし」の中でもいろいろな数字が出ています。全体の年齢を合わせての数字としても2.8から46.2と幅があります。下段でも18.2から69.5とかなり幅があります。さらに年齢分布もかなり違うということもあります。それのみならず、いろいろなバイアスがあります。ですから、この2つを比べて、例えば20.427.8が違うことを積極的に言うのはかなり危険といいますか、そこまでは言える数字ではないことは御理解いただきたいと思います。

 いろいろなバイアスがあると言ったものの説明が次のページから始まります。接種有無別に有訴率を比較する際に考えられるバイアスとして、上段がいわゆるセレクションバイアスというものです。ワクチン接種者には症状があると接種しないだろうということで、接種歴があるほうが有訴率が低くなり、接種歴なしのほうが高くなる可能性があります。これは接種歴が高くなるほどバイアスが大きくなると思います。あるいは接種歴があるほうが医療機関に受診しやすく、こういう場合は「接種歴あり」のほうの有訴率が高くなります。

 一次調査として診療所を含めなかったので、これは両方とも有訴率は低めに出ます。回答する際に、接種歴がない有症状者のみが受診している医療機関からは、恐らく回収時が悪いかもしれないというようなことがあると、「接種歴なし」のほうが有訴率が低くなります。大概二次調査でも同様なことが起こると、「接種歴なし」のほうでの有訴率が低めに出るとのことです。

 下段は情報バイアスというものですが、症状発現の時期を長めに取ることで、12年たっても症状「あり」とカウントすることで「接種歴あり」の有訴率を上げる方向に行っているかもしれません。それから、接種歴がある者のみの調査だと医療機関のほうが誤解するということで、「接種歴なし」のほうの症例の数を少なくカウントすることになるかもしれませんが、その場合は「接種歴なし」のほうが有訴率は低くなります。あるいは一部の医療機関で、こういう調査は意味がないから参加しませんという意思表示をされた所もあります。そういう所は「接種歴あり」のほうの有訴率が低くなります。

 症状に関して病名で説明「できる」「できない」で判断するときに、接種歴があるほうが「説明できない」と判断しやすい。あるいはHPVワクチンと関連付けた病名で説明できると判断しやすいということになると、「接種歴あり」のほうの有訴率が高くなるというバイアスが掛かる可能性があります。

 右上は接種歴に関しての情報バイアスですけれども、明確に「接種歴あり」と書いていない場合に、やはり「接種歴不明」ということは、実際には「接種歴なし」の場合が「不明」となっている場合が多いのではないかということになると、「接種歴なし」のほうの有訴率が低くなります。あるいは逆に、接種時期をきちんと書けていない場合に「不明」ということになると、「接種歴あり」のほうの有訴率が低くなることになります。全部が網羅できていないかもしれませんが、こういった種々のバイアスが掛かるために、「接種歴あり」「なし」を言う間で有訴率を比較することは危険であると考えています。

 ただ、「接種歴あり」「なし」でこういう数字を出した場合に、分子に当たる症例が本当に同じなのかということに関しては、まだ数をカウントしただけですので、そこに関しては何らかのチェックが必要だということで、分子に当たる症例に関しての特性を比較してみました。

 ここから先は16ページの上のほうですが、実際に二次調査の中で個票の報告をしていただいたもののうち、適格であると判断された773例の中での集計です。男子が261例、女子が512例いて、そのうちの12歳以上の発症で、なおかつ多様な症状に相当するという方が男子で183例、女子で365例、さらに365例の中の接種歴に関する分布が「なし」が110例、接種前に発症した人が2例、接種後に発症した人が103例、前後関係不明が13例、「接種歴不明」が137例です。ですから「不明」が結構多いですね。

 これごとに、まずは下段は年齢分布を示しております。女子、男子ごと、それから女子に関しては接種歴の区分別ごとですが、「接種歴なし」はやはり低学年1214歳が多いですし、特に14歳辺りが多いです。それに対して「接種歴あり」、接種後発症のほうは、主には高学年1618歳が多く、「接種歴不明」のところは中間的な分布になっているところです。

 さらに右上の診療科の分布で見てみると、「接種歴なし」は主には小児科に由来します。「接種歴あり」のほうは特別階層として協力医療機関に指定されている所での報告がかなりあり、「接種歴不明」では精神科・心療内科の情報が多くなります。以降、下段ですが、個別の症状で、「接種歴なし」が110例、「接種歴あり」(接種後発症)が103例、これが青いバーで、「接種歴不明」が137例で緑のバーです。

 この3群について、それぞれ「不明」に関しては除くということで、分布は全例に対しての、この症状「あり」の人の割合を掲示したものです。疼痛及び感覚の障害としては、関節痛、頭痛、腰背部痛等々あります。これを見ると、頭痛や腰痛などに関しては割と3群の頻度が似ていますが、光に対する過敏、音に対する過敏、においに対する過敏というのは青いバーですが、「接種歴あり」のほうで特に頻度は高くなっています。運動障害のほうもおおむね「接種歴あり」のほうで高い頻度になっており、歩行障害、脱力、握力の低下等々はやはり「接種歴あり」のほうで高い傾向が見られます。

 次のページには、自律神経症状、右下にありますが、認知機能の障害を提示しています。めまい・立ちくらみ、倦怠感・疲労感などは両群ともあり、あるいは吐き気などは割と頻度がありますが、認知機能の障害に至ると記銘の低下、学習能力の低下、集中力の低下というのは、青いバーでやはり高いことが観察されます。

 ただ、こういう症状の頻度を接種歴別に比較する場合にもバイアスが掛かり、このような特性の比較にもバイアスが掛かるということで、下段に示しているように、対象者自身がやはりワクチン接種と関連して、こういう症状を訴えやすいということがありますし、医者側も接種歴があると、こういうことはないかと確認しがちですから、どうしても症状の頻度としては高くなるのではないかということはあります。

 こういうことがあるので、簡単な比較は注意を要するわけですが、それをまとめた形での比較として、右上の症状の数別の割合で見ると、「接種歴あり」のほうで10以上の症状を有する人の頻度は高い傾向があります。ただ、「接種歴なし」あるいは「不明」のところは割と似通っていますので、「接種歴不明」は「なし」に分類される人ではないかという類推はされます。

 それから、「疼痛」または「運動障害」の症状を1つ以上有する割合は、全ての分類で9割以上です。就学・就労の状況でいくと、「接種歴あり」のほうでほとんど休んでいたという割合が若干高めかなということもありますので、若干重篤な例が多いのかなという感じです。自宅での過ごし方に関しても、やや接種歴のあるほうで重篤感が高いかなというところはあります。これが症状に関してのデータです。

 まとめの第1点としては、HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の「多様な症状」を呈するものの割合が、1218歳の女子においては、人口10万人当たり40.3で、これが11ページ目の下の段です。説明できない取扱い1.に当たる数としては、10万人当たり10.5と提示されております。それから、1218歳の男子については、人口10万人当たり20.2で、上の段の数字と推計されます。主治医が症状を説明できないと限るものは取扱い1.に当たるわけですが、これが10万人当たり2.0ということが確認されます。

 主としてワクチン「接種歴なし」に関しての有訴率を求めるということでしたので、2.としてはHPVワクチンの接種歴がなく、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する1218歳の女子は、接種歴のない人口の中で10万人当たり20.4というのが、13ページ目の上の段の取扱い2.の「接種歴なし」の値です。これが「接種歴なし」と「不明」を合算した場合の値としては46.2です。取扱い1.として扱った場合は、それぞれ2.85.1ということになります。3.としては、女子で「接種歴あり」と「なし」における多様な症状の頻度は、母集団の年齢構成が異なることに加えて、多数のバイアスが存在するために比較できないということです。

 さらに特性に関してまとめ2.としては、個別の症状について、多様な症状、具体的な症状別に見ると、接種歴にかかわらず見られる症状と、それから「接種歴あり」で割合が高い症状があります。ただ、接種歴の頻度と同様に、多数のバイアスが存在するために、単純な比較は難しいです。

 ただし、全ての症状は「接種歴あり」と「なし」の両方に存在しました。ゼロというような症状はありません。ですから一方の群だけに特異的な症状は存在しないということが言えるかと思います。数に関しても「接種歴あり」「なし」の有する症状の数の違いについては、母集団の年齢構成が異なり、以下のバイアスが存在するために比較できない。

 これは上のバイアスとも重なりますけれども、「接種歴あり」の者でワクチン接種に関連するとして報告されているという症状を、より訴えやすい。更に医師が「接種歴あり」と診察する場合に、ワクチン接種に関連するとして報告されている症状についてより詳細に問診しようとすることのために、症状特性に関しても、詳細な比較ということに関しては注意を要するということです。

 まとめがやや複雑になりましたので、最終的に簡潔にこの調査による結果をまとめると、1.としては、HPVワクチンの接種歴のない者においても、HPV接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する者が、一定数存在したということです。2.としては本調査によってHPVワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係に関しては、言及できませんという結論を掲げました、以上です。

○桃井委員 大変なデータの解析結果をご報告いただいてありがとうございました。また、詳細に御説明いただきましてありがとうございました。これについて、御質問や御意見等を頂きます。データのクオリティをどのように受け止めるかということを適切に理解するのはなかなか難しいのですが、現段階で御質問や御意見があるでしょうか。

○岡部委員 膨大なデータの整理をありがとうございました。非常に基本的なことが私にはよく分かっていないところがあるのですみません。8ページの推計患者数の算出フローの4.の判断の仕方です。この調査をして、「説明できない」「できる」で分けたところで、この取扱いが「相当する」「相当しない」というのを、もうちょっと簡単に言っていただくとどのように分けたらいいのでしょうか。頭が整理できないので。

○祖父江参考人 「相当する」「相当しない」という意味は、このワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状というものがあって、これに相当するかしないかという意味です。日本語として分かりにくいですね。ここは、説明する側も混乱しがちなところなので、注意をして説明しようとは思ったのですけれども、なかなか分かりにくいところです。

○桃井委員 山縣先生お願いいたします。

○山縣委員 今の表のところで、本当にこのような分類をきちんとされた上で検討されているというのは非常によかったと思います。質問は、「説明できる」の上から2番目の別表2の横に、「HPVワクチン接種による」とか、「HPVワクチン接種後」と明記されているということではあるのですが、接種後からの時間というのを今回は聞いているのですか。

○福島参考人 調査票では、接種者について、接種日、今回の症状の発症日等を聞いておりますので分析は可能です。ただ、今回は推計患者数の算出にあたり、ダブルチェック、すなわち班員2人で独立して分析を行いました。これは、間違いのないようにということです。これを正確に出すためにだけでもかなりの時間を要しました。二次調査の報告症例の集計については概要しかお示しをしておりません。したがって、御要望がありましたら、今後追加解析は可能です。

○桃井委員 今の御意見は、ここに入る群の中で、接種後の期間に関して解析ができるかどうかということで、これは可能であるというお返事を頂きました。これは、山縣先生の御意見としては、していただいたほうがよいという御意見でしょうか。

○山縣委員 はい。

○倉根委員 例えば、13ページと12ページで、「接種歴がなく多様な症状を呈する」という方々と、「接種後に発症し多様な症状を呈する」という方々。先生がおっしゃるのは、ここの年齢分布が違うということなのです。年齢分布を補正というのか何というのか、それはそれとして考慮した上での解析というのは、こういう解析法ではなかなか難しいのでしょうか。

○祖父江参考人 もちろん年齢のことを考える場合に、基本は年齢別に数字を出しましょうということです。それは、実際はやっているわけです。この表の中でも、数字としては出しています。まとめとして年齢調整をするとか、そのようなこともできますけれども、それぞれの年齢層における数字というのが余り安定していませんので、取りあえずと言いますか、年齢を考えずに合計としての数字を出しましたということです。必要があれば補正をする、調整をするということも可能ではあります。ただ、調整をするということに関して言うと、年齢ごとに共通しているという発想になります。それは本当なのかと言われると、ちょっと抵抗感があります。

○桃井委員 今、抵抗感とおっしゃったのは、それは意味があるかどうかという意味でしょうか。

○祖父江参考人 本来は年齢別に比較するというのが重要なのですけれども、そこをするととにかく数字がいっぱい出てきます。いろいろなパターンを考えて、更にそれを年齢別にというと、本当に数字が100個、1,000個ぐらい出てくるのではないかというぐらいのものです。概要を知っていただくという意味で、合計の値を出しているということです。

○倉根委員 もう1つは、19ページの上の段の左上に、症状の数が書いてあります。この症状の数の年齢分布というのか、nが少ないからなかなか出せないのかもしれないのですけれども、この症状の数というのは、年齢が上がってくると多くなるのか、あるいは本来比較的症状の数が多い方はもともと多いのか。あるいは接種後時間がたつとこの数が多くなってくるのか、というのは解析としては難しいのでしょうか。

○祖父江参考人 年齢別にこれを出すこと自体はできます。ただ、詳細なところについてはまだできていないのですが、必要であれば次回に数字は提示できると思います。

○桃井委員 それは、年齢特性によるものか、群特性によるものかを見たいということですね。

○倉根委員 はい。

○福島参考人 倉根先生がおっしゃいました19ページの上の段の症状の数別に見た割合を、例えば年齢ごとに出してみたらどうかという御意見です。例えば、1歳階級年齢毎、13歳で見た場合、14歳で見た場合というように出すと、かなり数が少なくなってしまうことがあり、その年齢によっては「接種歴なし」の方はいるのですけれども、「接種歴あり」「接種後発症」の方が全くいないということにもなりますので、ある程度13歳と14歳をまとめるとか、そのような工夫が必要かと思います。それは、今後詳細に検討してみたいと思います。

○桃井委員 この数を見ても、年齢別というよりも、年齢層別が、数からいっても適切だろうという御意見ですね。それでも、見られるものは見ることができるということですね。

○倉根委員 はい。

○桃井委員 他にはいかがでしょうか。多屋先生どうぞ。

○多屋委員 このような膨大なデータをおまとめいただきまして、ありがとうございます。分からないところがあるので教えてください。8ページ、9ページ、10ページにいろいろな症状が記載されていて、それぞれ別表1、別表2、別表3、別表4というように区分分けされています。同じ病名でも違う区分になっていたりとか、それはどのような判断でなされているのでしょうか。

○祖父江参考人 これは、全ての病名をリスト化して、別表3に当たるか別表4に当たるかは、臨床の先生に見ていただきました。別表3と別表4の区別をしていただきました。その際に、割れるようなものは全て別表3にしています。

○多屋委員 例えば「HPV関連」という記載があるものが5だったり2だったりするのと、「SLE」が1だったり4だったりするというのは、それは何なのでしょうか。

○祖父江参考人 この分類に関してのまとめ方については相当任意と言いますか、まだまだ整理すべきところはあるのですけれども、取りあえず数とか、あるいは病名の具体的なものを理解していただこうということで、このリストを提示しています。

○桃井委員 福島先生どうぞ。

○福島参考人 追加させていただきます。多屋先生がおっしゃった8ページの上の表は、「説明できない」と主治医が判断した病名については、必ず「相当する」、すなわち「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同じものである」というように扱っています。これは、ワクチン接種後に生じた症状が、今までになかったものであるという認識もあることを鑑み、主治医が例えSLE、全身性エリテマトーデスというように病名を付けていても、それで主治医がその子の症状を「説明できない」と判断しているという点は、最大限尊重したということになります。

○多屋委員 もう1つ質問です。17ページのグラフです。「接種歴あり」の方と、「接種歴なし」の方、「不明」の方が、それぞれほぼ100人ずつぐらいいるようなn数になっています。この「接種歴あり」の方、「接種歴なし」の方、「不明」の方というのは、報告してくださった医療機関の数はどれぐらいの差があるのでしょうか。

○福島参考人 報告した医療機関の数というのは、今のところ分析はしておりません。

○多屋委員 先生によって症状に報告基準というか、診断基準というか、特にあるわけではないので、なし、あり、不明を報告してくださった医療機関の分布がどのようになっているのかというのが分かるといいかなと思って質問させていただきました。

○桃井委員 いかがでしょうか。これは何らかのバイアスの存在を考える上で役に立つ数字になるかもしれないということでしょうか。これについてはいかがでしょうか。

○福島参考人 追加でまた結果を御提示したいと思います。

○桃井委員 よろしくお願いいたします。他にはいかがでしょうか。山縣委員どうぞ。

○山縣委員 私も、多屋先生が言われたことは重要だと思います。最初に100以上の所は除いたという話があったと思うのです。それも含めて、1つの医療機関からの報告例に関してどう考慮するかということについては、また是非御検討いただければと思います。

 もう1点なのですが、13ページが非常に重要なポイントになろうかと思うのです。先ほど19ページの症状の数別に見た割合のところで、祖父江先生が、「接種歴不明」というのは、どちらかというと「接種歴なし」に近い集団ではないかということをお話になりました。そう考えると、例えば13ページの上に関して言うと、下の段の「接種歴なし+接種歴不明」というところのほうが、むしろ「接種歴なし」の実態に近く、下のほうからいくと、その「接種歴不明」を除いても、上の段のほうが、例えば「接種歴あり」の多様な症状を呈する割合に近いと考えることが1つできるのかということに関してはいかがでしょうか。

○祖父江参考人 真の値があるとして、どちらが真の値に近いかというと、恐らく下段のほうが近いのだろうと思います。今回の目的が、少なくともこのぐらいいますということを言おうとしているので、「接種歴なし」に限っても出すという姿勢は必要なのかと思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。そういう意味で、それぞれの数の比較はこの調査においては不適切であると理解してよろしいのでしょうか。他に御意見、御質問はありますか。

○柿崎委員 特別階層の88の診療科と、その他の診療科で背景が異なると思うのです。特別階層の診療科だけの解析だとか、それ以外の解析というようなことはいかがですか。

○祖父江参考人 症状の特性に関しての話ですか。

○柿崎委員 全体を含めて同じような傾向に、全体に同じような結果になるのでしょうか。

○祖父江参考人 有訴率自体を計算するのは、特別階層の病院だけではできませんので、全体を使ってということになります。症状の特性に関しては、特別階層の病院だけを抽出して、症状の分布に入れることはできます。

○柿崎委員 何か差はありそうなのでしょうか、まだ分からないのですか。

○祖父江参考人 そこまではまだ見れていません。

○桃井委員 他にはいかがでしょうか。

○大野委員 いろいろな症状を観察してくださっているわけです。今回こういう調査は初めてなので明確なことは言えないかと思うのです。こういう症状について、例えば関節痛とか頭痛の年齢差、このぐらいの年齢で大きな年齢差があるとか、年齢差はないとか、そういうのが分かっている症状はあるのでしょうか。例えば関節痛は中学生ぐらいの時に多いとか、高校生になると少ないとか、もしその年齢範囲で同じ程度で出るのだったら、調べた母集団は、バイアスを除けば均一だと言えるのではないかと思うのです。

○祖父江参考人 何か他のデータソースで、年齢ごとにそういう症状に差があるということが、分かっているか、分かっていないかという意味ですか。

○大野委員 はい。それと今までの医療の世界の常識みたいなもので、これは年齢差がある症状だとか、そういうのがあったら教えていただきたいと思います。

○祖父江参考人 そういう症状に特有の年齢分布というようなことを、私は承知しておりません。

○桃井委員 他にはいかがでしょうか。山縣委員どうぞ。

○山縣委員 これは本当に大変な調査だったと思うのでいっぱい質問があります。14ページなのですが、私も疫学をやっていて、これだけきちんと選択バイアスと情報バイアスに関して、今後必要だということを出していただいて本当にありがとうございます。これは、今後もしも可能であればでいいのです。この中で特に重要な、例えば選択バイアスや情報バイアスが存在したとするときに、結果を考察する上で、感度分析、すなわち、可能性のある仮説を置いて、別の分析をした上で、結論を補足するというやり方があると思うのです。そういうことが今後可能であるのであれば、これは今後御検討いただければいいと思うのですが、お願いできればと思います。

○祖父江参考人 そういう意味で、今回幾つかパターンを設定してやったのが、症状に関しての「取扱い1.」と「取扱い2.」です。更に接種歴に関して「不明」をどう扱うか。こういうことに関しては、先生がおっしゃるような感度分析に近いものを行って、幅を求めたということです。ですから、症状と接種歴に関しては非常に重要なバイアスなのでそのような扱いをし、他のバイアスに関しては先生がおっしゃるように、どんなシナリオで考えれば、どの程度の幅になるのかということが想定されるものに関してはできるだけしたいと思います。残念ながら、バイアスというのはどれぐらいの大きさなのかが分かったら苦労はないというか、多くの場合は分からないのです。だから比較できないと言っているわけです。その感度分析的なことも、余りいっぱいやりすぎると分からなくなるのではないかと思います。

○山縣委員 先生がおっしゃるとおりだと思います。それなので13ページの黄色で示されている8つの数字で、特に上が接種歴がなく、下が接種後となっています。この時にどれとどれを比較するのが妥当なのかといったようなことに関して、追記しておいていただくとよいと思います。記載位置で対応するところを比較してしまうような気がするのですが、そうではない。

○祖父江参考人 もちろんそうではないです。

○山縣委員 それなので、先ほど言いましたように、接種歴不明をどちらに入れるかによって、例えば「接種歴不明」を、「接種歴なし」というように入れると、取扱い2.のほうでは46.2という数字が10万人当たり出てきます。それに対応するものをしたとして、接種歴不明を入れていない、接種後に発症の右側を入れると27.8ということになって、いわゆる接種歴のない人のほうが有訴率は高いといったようなことが出てきてしまう、というようなことをこの表の中から理解する必要があったと思いました。

○桃井委員 これについて何か御意見はありますか。

○祖父江参考人 個々の値を対応させて、上と下を比較するということではなく、上の段は上の段で、これぐらいのバリエーションがありますというように理解していただきたいです。下の段は下の段でこれぐらいのバリエーションがあります。それぞれこれぐらいの幅があるものを違うと言えるのかどうか、相対として見ていただきたいのです。ですから、個々の値を比較して、20.427.87.4違うので、27.8のほうが高いのかと言われても、それぞれこれぐらいのばらつきがある中での比較なのですよ、というように理解していただき、その比較はこの調査からは結論は出ない比較であるというように理解していただきたいと思います。

○桃井委員 それは大変重要な御説明であろうと思います。おっしゃられたように、最大、例えば13ページの一番下の所は、とにかく全部入れてみたらというところがあります。CDEを全部入れてみたらこういう数字になりますということなのだろうと理解しております。他に御意見、御質問等はありますか。

○倉根委員 今回は、男子の所は余り説明がなかったし、あれなのだろうけれども、接種なしの女子と男子でも、ほぼ似たような症状が起こっていると。その率も大体同じようなもので、ちょっと男子のほうが低い値ではありますが、症状は男子にもあると。これは、そういう解釈は立つのでしょうか。

○祖父江参考人 もちろん同じようなクライテリアでやっていますので、同じものを扱っていると思います。

○桃井委員 他にいかがでしょうか。このような解析をしていただけると、もう少し理解が進むというような御意見が更にありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、今までに出た御意見をまとめさせていただいてよろしいでしょうか。御説明のところは十分御説明いただきました。御意見はまとめますが、足りなければ追加してください。

 接種後の期間に関して、どのような幅で報告されていて、どのような分布なのか。期間と分布だと思いますが、どのようなものが集まっている群なのかという、接種後の期間。それによって解析できる事項を御検討いただきたいということが1点です。

16ページの年齢に関して、これは「接種歴なし」と、「接種後発症」というのは、年齢分布がかなり違うということがありましたので、年齢層別、12歳、13歳、14歳辺りと、16歳以上とか、これをどう分けるかの詳細は研究者が判断されますが、年齢層別に症状の特徴があって、それがそれぞれの群に反映されているのかどうか、ということの解析をしていただきたいということです。

 症状の数と年齢分布に、これも一定の何かパターンが見られるのではないか。可能であれば、症状の数と罹病期間というのもあると、より臨床的な全体像が見えやすくなるような気がいたしました。

 症状のあり、なしの報告の医療機関数に関しては、100以上の所の1件の精神科を除いて解析されています。これは極めて重要であるので、より詳細に、どのような検討が適切かどうかを御検討いただきたいということです。症例、「接種歴なし」が110、「接種後発症」が103という、症例の数が大体同じようであったのに対して、医療機関数はどうなのかということを解析していただくと、これもある程度バイアスを我々が考える上で重要なデータになると思いますので、この解析をよろしくお願いいたします。

 特別階層の診療科に関して、その他の医療機関と同じ群なのかどうかということに関して、特に症状に関して解析が可能であればお願いしたい。これも何らかのバイアスを考える上で重要になるということであろうと思います。

 選択バイアス、情報バイアスに関して、詳細な御説明を頂きました。大変バイアスの数が多いために、数そのものをそれぞれ比較することは不適切であるという御説明を頂戴いたしましたが、バイアスの影響に軽重があるはずですので、それに関して教えていただきたい。あるいは専門的な感度分析が可能かどうかを御検討いただきたいという御意見を頂戴いたしました。

 御意見の中で漏れているものはあるでしょうか。よろしいでしょうか。

○稲松委員 9ページの病名をずっと見ると、別表3の主治医が「説明できる」と回答したという疾患も、内科の臨床からいくと、画像診断、血液検査というのは何ら異常なく、臨床経過からこう考えるしかないかなということで付けた、不安神経症とか、この診断名の多くがそういうものなのです。そこにワクチンがどうのという情報が1つポンと入ると判断が変わってしまうみたいな、病名がワクチン由来というようにスッと振ってしまう。そういう性質のものだということの認識が多分必要だろうと思うのです。

 そういう意味で、HPVによるみたいなことを報告した先生方の状況をもう少しきちっと把握しておく必要があろうかと思います。多屋先生からあった質問と内容的には似ているわけですけれども、幾つの施設から、何人の先生からこういう報告が出てきているかということをきちっと把握しておく必要があるように思います。

○桃井委員 先ほどの医療機関数あり、なしに関する医療機関数の中に、そのような解析をお願いしたいということと理解いたしました。他に、私がまとめで漏らしたものがありましたらお願いいたします。福島先生どうぞ。

○福島参考人 5ページの下の表で、最大の報告患者数を頂いた精神科・心療内科の1件が解析から除外されているという説明がありましたが、訂正させていただきます。除外はしておりません。推計患者数の計算に含めております。しかし、この御施設は、二次調査で回答を頂けませんでした。これは1回の督促の後も回答を頂けず、その1回の督促のときに、回答できない理由もお書きいただくような欄を設けたのですけれども、その辺りの返事も頂けなかったということです。したがって、この御施設からの報告は、二次調査報告症例には寄与していません。そういう意味で二次調査の解析対象には含まれていないということなのです。この報告を頂いた136例というのは、一次調査の報告数に補正係数を掛けた状態で含めておりますので、推計患者数から除外していることはありません。この辺の訂正を申し上げます。

○桃井委員 追加をありがとうございました。他に、このような点をより解析をお願いしたいというような御意見はありますか。大変大事なデータで、しかも大変難しい解析で、100%理解するのはなかなか困難な点もありますので、会議終了後も、このような点に関して解析をお願したいとか、そのようなことがありましたら是非事務局のほうへお寄せください。それらも含め、班会議のほうにお願いしたいと思います。どうぞ追加の御意見がありましたらよろしくお願いいたします。

○岡部委員 元データが膨大な上に、解析が非常に困難であったということは本当に想像に難くないのですが、幾つかお願いをして、更なるデータが、もしこれ以上のものが出るのだとしたら是非それを待ちたいと思います。それにどのぐらいの時間がかかるのか。簡単なものではないと思うのですが、数年と言われるとちょっと困ってしまうのですけれども。

○祖父江参考人 数箇月の短いぐらいではないかと思います。

○岡部委員 私も、本日のこれだけの時間ではとてもとても理解できないので、もうちょっと読み込んだり、あるいは一部外部の意見も出てくるかもしれませんのでそれらを見て議論させていただければと思います。ただ、バイアスを全部ゼロにするというのは無理な話ですから、そのバイアスを承知した上でどういう判断をするかということに議論がつながってくると思うのです。更なる分析を出していただけるのならば、是非参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○桃井委員 追加の様々な解析をお願いすることにいたしましたが、先ほど私がまとめた内容で解析をお願いしてよろしいでしょうか。是非よろしくお願いいたします。御説明にもありましたように、様々なバイアスがあって、単純比較ができないというおまとめを頂きました。それでも大変貴重なデータですので、言えるところ、言えないところを厳密に受け止めて、適正に判断をしたいと思いますので、追加のデータ等をよろしくお願いいたします。何か追加はありますか。

○倉根委員 「接種歴不明」というのがあります。この方たちが、実は接種していた、あるいはしていなかったということは調べられないでしょうか。既にお答えを頂いているのですが、そういうお願いというのはなかなか難しいのでしょうか。3分の1が不明だということで、この方たちがどちらなのかということは、データ解析にも響いてくるように見えるのですが、この辺はいかがでしょうか。

○祖父江参考人 これは、あくまでカルテを基本とした調査ですので、カルテに書いていなければ、回答者としては「不明」と書かざるを得ないと思います。もしそれを確認するということになると、本人かあるいはその市町村に対してということになります。これをしようとすると、まず相当ハードルが高くなるということです。それをやるだけで、恐らくまた1年かかると思います。

○桃井委員 よろしいでしょうか。他に追加の御意見等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、ただいま頂いた御意見を追加で様々な御解析を頂いて、より適切な理解ができるように御尽力を引き続きお願いいたします。先生方どうぞよろしくお願い申し上げます。本合同会議は、今後も引き続き様々なワクチンの安全性の確認のために、皆様に審議をお願いいたします。定期的に開催いたしますが、先ほどお答えを頂きましたように、本疫学調査に関しては、追加のデータが出た時点で、また皆様方に御審議、御議論をいただきたいと思いますので、そのときにはどうぞよろしくお願いいたします。一定程度の期間を経た後で、また御意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 重ねまして、祖父江班の先生方には大変膨大な御尽力を賜り誠にありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。議案は以上で終了です。その他事務局から追加はありますか。

○事務局 本日は長時間にわたり、活発に御議論を頂きまして誠にありがとうございました。本日は、その他には特にありません。次回の開催については、日程調整の上、日時について御連絡を差し上げます。

 この後ですけれども、傍聴者の皆様へのお願いです。本審議会が終わりましたら、委員が先に退出いたしますので、委員の退出が終わるまでその場でお待ちいただければと思います。事務局からは以上です。

○桃井委員 本日の会議はこれで終わらせていただきます。様々な御審議を誠にありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)> 第23回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、平成28年度第9回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録(2016年12月26日)

ページの先頭へ戻る