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2016年11月30日 第6回 新たな社会的養育の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

○日時

平成28年11月30日(水) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用第12会議室(12階)


○出席者

構成員

奥山座長 松本座長代理 相澤構成員 井上構成員
加賀美構成員 上鹿渡構成員 塩田構成員 伊達構成員
藤林構成員

事務局

山本内閣官房内閣審議官 川又総務課長 川鍋家庭福祉課長
竹内虐待防止対策推進室長

○議題

(1)関係団体等からのヒアリング
  ・ルーモス
  ・ゆずりは
  ・保育園を考える親の会
  ・大木 愛氏
(2)論点の中の社会的養護に関する議論
  1)「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう」に関する定義とそのあり方
  2)「できる限り良好な家庭的環境」の定義とそれを利用する場合の条件
  3)里親支援事業体制の在り方
  4)子どもの立場にたった継続性を重視したソーシャルワークのあり方
(3)その他

○議事

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐) 

 おはようございます。それでは定刻になりましたので、ただ今から「第6回新たな社会的養育の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は西澤構成員、林構成員、山縣構成員からご欠席のご連絡をいただいております。

 まず資料の確認をさせていただきます。配布資料といたしましては、議事次第の後に、右上に番号を付してございますけれども、資料は1から5まで。資料1が「各検討会・ワーキンググループの開催状況等について」という横長の資料。資料2が毎回お出ししていますけれども議論のポイント。資料 3が前回奥山座長からご提出いただきました検討会の成果として必要な事項の案。資料4としまして改正児童福祉法3条の2の解釈に基づく社会的養護ということで、奥山座長から前回ご提出いただいた資料。資料5といたしまして今回ヒアリングにご出席いただきました団体等の方からご提出いただいた資料でございます。参考資料として前回もご提出しておりますけれども、議論に関連する資料ということで参考資料1と参考資料2、それと参考資料3といたしまして「子どもの家庭養育推進官民協議会」からご提言をいただいておりますので、そのご提言について資料として添付をさせていただいております。資料の欠落等ございましたら、事務局までお申し付けください。

 それではこれより先の議事は奥山座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

〇奥山座長

 ありがとうございます。今日は2時間と比較的短い会議になっております。それが普通なのかもしれないですけれども。さっそく議事に入って参りたいと思います。まず最初にヒアリングをさせていただきまして、いろいろご質問等をお願いして、そしてその後少し時間が余りましたら前回に引き続いての議論ということにしていきたいと考えております。

 関係団体の方々におかれましては、非常にお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日はルーモス、ゆずりは、保育園を考える親の会、それから大木愛様にお越しいただいておりますので順次ご意見を伺っていきたいと思います。意見を述べていただく際に、ルーモスに関しましては通訳をお願いしている関係上、少しお時間がかかりますので30分、あとの団体の方々に10分ずつお願いをしております。2分前もしくは1分前に鐘が鳴りますのでご参考にしていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

それではまず一番最初にバーナードス元代表ルーモス常務理事ロジャー・シングルトン卿よろしくお願いします。

 

※以下、通訳した部分のみの議事録。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

おはようございます。今日はこのような機会をいただき、検討会に参加させていただきましてありがとうございます。私といたしましては、英国での経験、かつては施設中心でやっていた社会的養護を、家庭を中心にして子どもたちをケアしいくシステムに抜本的に変えていったたお話をいたします。

私自身の説明に時間を使いたくはないのですが、若干お時間いただいて私のバックグラウンドについてご説明いたします。

30 年間英国の極めて大きいNGOのバーナードスの代表をしておりました。1970年代に実施された様々な研究の成果から、施設で育てられた子どもたち、とりわけ幼少の子どもたちは、様々なダメージが改善されず、発達上様々な悪影響を受けるおそれがあるという結果が出ておりました。そこで私どもとしては今までやってきた施設でのケア、これを縮小し、家庭を基盤とした子どものケアに変えていこうという決断をいたしました。

その転換には15年間かかりました。今日私が皆様にお話するのは、その15年間の経緯についてでございます。

2 つ目の経験談といたしまして、バーナードスを辞めてから新しいルーモスという組織で私は働くことになったということでございます。このルーモスという組織は 10年前に作られまして、皆様ご存じのハリーポッターの著者JKローリングが創設したものでございます。ハリーポッターのことは皆様ご存じと見えて、ニコッとされたお顔が見えました。そのJKローリングと私とあと1、2名で私どもの小さなグループとして、東欧諸国で子どもたちが施設でケアされている実態を知って極めて大変な状況にあると思いました。そこでよほどの理由から子どもを施設に預けなければならないというケースを除いて、基本的には子どもを家庭でケアすることを進めるためにルーモスの設立をを決めたわけです。このルーモスは今20以上の国において政府と一緒にまたは財団やNGOの組織などと一緒によほどのことがない限り、できるだけ多くの子どもたちを家族のもとで、いろいろな家族のもとでケアしていこうとする組織になってきました。これが私の背景でございまして、今日はそのことでお話をするわけでございますが、時間の関係もございますから4つの点に絞って私の経験を共有させていただきます。

私が日本についてどうこう言う立場にはありませんので、私の話を聞かれて、ああこの点は日本でも役立つということがあればそれを参考にしていただければと思います。今年の少し早い時期にに国会において児童福祉法が改正されたという話を聞いてたいへん嬉しく思いました。まさに良い基盤ができて、それをもとにこれから前に進むことができると思います。

私達が抜本的に施設に基づいて子どもをケアすることから家庭を基盤とするケアに移った一つの要因として、いくつかの国で子どものケアのための施設を閉鎖しよう、閉じようという動きが出てきたことがあります。そのために、まずは家庭を基盤としたケアを作っていくことが重要だと思います。施設を閉鎖するにあたっては、施設に子どもを預けようと思う前、または施設から子どもを出す前に、子どものために家庭を基盤とするケアを準備する必要があります。

まず、子どもの生みの親その家庭を支援することによって自信を持って自分の子どもをきちんと育てられるように助けていこうということが第一歩ということになりました。

そして自らの生まれ育った家にいられない、または、戻ることが出来ない場合には、里親等に委託されることになるわけですけれども、私どもとしてはその里親の養育能力をきちんと調べ、評価することによって不足があればそれを補う、必要なトレーニングを実施し、支援するということをいたします。子どもにとって最悪な状況というのは、施設から出されました、里親には預かってもらいました、ところがそこで上手くいかなくてまた施設に戻されましたという経験です。

そして、私が最初のメッセージとして皆様方に申し上げたいことは、子どもが様々な形で家族に引き取られて、その家族のなかで成長・発達を続けるためには、やはりその家族からきちんとしたケアがなされるということを私どもがしっかりと確認していく必要があるということです。

今週、私は二葉乳児院を訪れることができましたけれども、そこではまさに本当にこうあって然るべきという素晴らしい状況になっていたと思います。親、そして里親をサポートするということがなされていたわけでありますけれども、その基盤がすでにあって、まさに今後に向けての第一歩の基盤が築かれているところだというように思いました。

4点申し上げると言いましたが、その2番目のポイントでありますが、グッドプランニング、きちんと計画を立てるということが極めて重要だということを挙げます。その中にはいくつかの要素がございますけれども、軽々しく家族から子どもを引き離すことがあってはならないということです。

それから、子どもが自分の家族に留まってそこで暮らし、そのコミュニティで暮らすためには何が必要かきちんと評価することが重要です。もしすでに施設を閉鎖するというプランがあり、子どもを一晩だけ預かるというシステムや、週末だけ預かるというシステムもなくなるといったような場合には、今までその施設で働いていたスタッフの将来を考えてあげなければなりません。スタッフのスキルや能力というものが無駄にならないようにそれを他で生かすことができるようなことを考えていかなければならないということです。

皆さんもその通りだと仰ると思いますけれども、まずは生まれ育った家族から子どもを引き離すということをせずに、なるべくそのような事態になることをを防ぐということが重要だと思います。さきほどグッドプランニングと申しましたけれども、まず予防策として子どもを家族のもとに留まらせるという工夫をしていく必要があると思うわけです。そのためにどのような措置をとったら良いのか、どのように対応したら良いのか、安全に子どもが生まれ育った家庭で継続して暮らせるようにまずは工夫をすることだと思います。

そして次に、子どもがどうしてもその生まれ育った家族から離れなければならないという場合のグッドプランは、やはり施設に委託するのではなくて、他の家庭を探してそこに委託するということです。すでに施設に委託されている子どもに対しては、慎重に個別の一人ひとりの評価をしていく必要があると思います。その子どもが、もし家族のもとに戻るのであればそのためのニーズは何なのか。家族のもとには戻れないけれども里親に委託されるということになったら、その場合の子どものニーズは何なのか。一人ひとりのニーズをきちんと評価する必要があります。

そして次に重要なポイントでありますけれども、もし施設で預かる子どもたちの数が減っていく、減らすということになった場合には、その施設でそれまで働いていたスタッフの経験やスキルをどのようにこれから将来に生かしていくかということの計画です。そのプログラムが成功している例がもうすでにあるわけですけれども、施設で今まで働いていたスタッフがこれから新しい状況の下で彼らの経験とスキルを活かすためには、そのための準備が必要ですし、必要な研修、トレーニングというものも実施していく必要があるということです。

もし時間が許して皆様方のご関心があれば、施設で今まで働いていたスタッフがどのように新しい仕事をすることになったのか、いろいろな国のアレンジについてもお話しできると思います。

これが私が申し上げたい4点の中の2番目のポイントで、施設で暮らしていた子どもたち、また、その子どもたちをケアしていたスタッフの将来を考えるグッドプランニング、つまり、きちんとした計画が必要であるということを挙げました。

3番目のポイントとしては、プライオリティとしてどこから、何に最初に手をつけるかという点です。私の提案でございますけれども、優先順位としては乳児院を一番に考えるということだと思います。その理由の一つ目として様々な研究成果があります。これは長年にわたっていろいろな人達の研究によって示された結果でありますけれども、子どもはやはり大規模な施設よりも家庭で育つ方が、発達の状況が良好であるという結果が示されていることが挙げられます。この2~3日私は二人の人に会いました。今はもう成人になった二人の方ですけれども、長年施設で暮らした方でした。彼らは説得力を持って小さいときから施設に預けられた場合のデメリットというか、「ここはよくなかった」ということについてきちんと話してくれました。

乳児院の赤ちゃんを家庭に移すことに優先して取り組むべき二つ目の理由は日本の里親養育の位置づけと関係があります。日本では今後里親養育を利用することに対する信頼を育む必要があると思います。最も幼い子どもを様々なダメージから保護し、里親に委託することに最初に取り組むことを私が推奨するのは、一般的にはより幼少の子どもの方が里親委託先を確保しやすいという事実が示されているからです。以上が家庭を基盤とするケアへの移行について一番年齢の低い乳幼児を最初に手掛けることを提案する3番目のポイントです。

最後に本日申し上げたかったことの4番目のポイントということになりますけれども、これはいろいろな国が遭遇している問題で財源の確保ということです。必要なお金をどこから集めて持ってくるかという問題です。問題はお金が、資金がない、ということではないわけです。その財源というものはあるわけですけれども、今まで施設に使われていた資金を今度は子どもが生まれ育った親、または里親に振り替える、その難しさがいろいろな国においてあるわけです。

そして信頼に足るエビデンスとして、一般的に施設ケアへの委託に要する費用の方が家庭を基盤とするケアへの委託に要する費用よりも高いということが明らかにされています。家庭養護の方が費用が掛からないということです。ところが実際問題として大きな困難があります。家庭養護のための準備をして、そちらのお金も使わなければならないわけですけれども、その間、まだ施設には子どもたちがいます。その施設に対する資金というものも出していかなければなりません。この適切な家庭養護を準備しながら同時に施設養護も使用し続けなければならない過渡期という、今までよりもお金がかかる期間があるということが次の難問です。

個人的に私が遭遇した難しさということでありますけれども、どの国の大蔵大臣も財務官もそれから政府のお金を扱っているお役人も長期的には費用が抑制できるものの、短期的にはいましばらくの間はより多くのお金を出さなければならないということをなかなか理解してくれない、納得してもらえないということがあります。これは一般論ということになるかもしれませんが、どの国でも政府がなかなか首を縦に振れないのは、どこからこの間に必要とされる財源を得てくるかということ。それを決めることであります。

最後のポイントとして、この施設を閉鎖して家庭を基盤とするケアに移行するその過渡期、この変革をするのにはどこかが手を挙げて始めなければならないということがあります。そして戦略的なレベルとして大臣がこのことに積極的であるということと、そのための法律が整備されているという状況が日本の皆さんにはおありなわけです。また、これらの意思決定にあたって個々の子どもをどこでどのようにケアしていくかということに関しては、児童相談所長の役割が大変重要ではないかと私は思います(私の理解が間違っていないことを願っていますが)。児童相談所長は個々の子どものニーズをきちんと知っています。財源としてどこからお金を持ってくればよいかということも知っています。ですから困難はないはずです。

最後に残り2分という鐘がどこかで鳴ったような気がしますが、ご清聴ありがとうございました。

 

〇奥山座長 

ロジャー・シングルトン卿どうもありがとうございました。他の方々のプレゼンテーションを聞いた後で、まとめてご質問に移りたいと思いますので少しお待ちいただきますようよろしくお願いいたします。

引き続きまして、ゆずりはの高橋所長、よろしくお願いいたします。

 

〇ゆずりは(高橋所長)

アフターケア相談所ゆずりはの高橋です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

アフターケア相談所ゆずりはでは、児童養護施設や里親家庭などを退所した方々を対象にした相談支援事業を行っております。社会福祉法人子供の家が運営母体となり、2011年に開所し2013年度より退所児童等アフターケア事業、東京都では通称ふらっとホーム事業と呼んでいるのですが、アフターケア事業を受託して運営しております。本日10分という限られた時間ではありますが、アフターケアの実践の場においての現状と課題をお伝えさせていただきます。

事前に用意していただいた、配布していただいた資料は、ゆずりはのページ、11ページからになります。今日お話しをさせていただく内容を4つの課題に分けてあります。各課題ごとの下、白い丸が打ってあるんですが、その白丸は新たな社会的養育の在り方で記された事項で関連するものを記載してあります。また資料の最後に発言の補足として簡単な資料も添付しましたので、またあわせて読んでいただけたらと思います。

施設を退所した子ども達の多くは家庭からの援助を引き続き受けることができません。生活の一切を退所後も自らで担い、失敗することも立ち止まることもできない緊張状態の中で日々の生活を維持していかなければなりません。過去のトラウマが起因するコミュニケーション能力の欠如や精神疾患の発病などによって社会生活を円滑に進めていくのは、私達が想像する以上に難しい状況にあります。一般家庭の子ども達と比べて未だ低学歴という現状もあります。幾重にも重なる見えないハンディを背負う中で、生活破たんに陥るケースは決して少なくありません。

平成16年の法改正で児童福祉法第41条は児童養護施設等の児童福祉施設の目的として当該施設を退所した者に対する相談、その他の援助を行うことを規定しています。資料にも児童福祉法第41条載せてあります。こちらも踏まえてお話させていただきます。

現状と課題1 社会的養護における「継続性」と「永続性」の担保の在り方について。支援の対象年齢は具体的にいつまでとするのでしょうか。この第41条の解釈の曖昧さがアフターケアにおける施設間の支援格差を生み出しています。アフターケアは当然やらなければ、プラスアルファの支援としてやってあげよう、やりたいけど出来ない、やる必要はない、施設によってアフターケアに対する姿勢は様々です。

ゆずりはへの当事者の方の相談者の年齢は16歳から上は60代までと幅広く、特に相談が多い年代は20代後半から30代までの方です。特にそれも女性です。相談は二十歳まで、とか施設を退所してから3年以内、などと年齢を限定することはできません。年齢と状況によって相談内容は異なり、また、どの相談内容も一人で解決することは到底難しいものばかりです。

年齢の問題で少しお伝えすると、保証人の問題があります。保証人の問題の対応に関しては身元保証人確保対策事業がありますが、多くの自治体ではこの対象年齢は二十歳未満です。身元保証人、連帯保証人、これらを必要とするのは二十歳までとは限りません。転職もします、住居を変わることもあります、更新の手続きもあります。今民間の保証協会を利用することもより厳しくなっています。退所者の方は保証人の不在によっての住居や就労するうえでの不利益を被っている方が沢山いるかと思います。

2 自立の基盤としての養育者のアタッチメントと信頼関係の形成。退所時から冒頭にもお伝えしたように、いくつものリスクを背負って社会生活を送っているにもかかわらず、退所者の方は困難な状況に陥っても退所したのだから施設にはもう迷惑はかけられないと思っている方が非常に多くいます。入所中の子どもと施設との信頼関係がアフターケアにも反映されます。自立するということは、施設や支援者を一切頼らないということではなく、また、失敗しない、間違わない、問題を起こさないということでもなく、困った時には誰かに相談し、助けを得る力を持つことであるとまず養育者や支援者が認識する必要があると思います。

また、退所者の方が社会生活の中で福祉や医療に繋がる際に、施設に入所していた事実と記録は大変大きな役割を果たします。これに関わってゆずりはでは、施設経験の全くない方からの相談も受けることが度々あります。借金やDV、妊娠など非常に困難な問題を抱えており、た家族を頼れない、家族から逃れてきているという方々から相談をいただきます。その方々の生い立ちを聞けば、なぜこの人が子どもの頃社会的養育に繋がることができなかったのかと思うようなケースばかりです。本来社会的養育が必要だった方ということで私達は支援を提供しております。そのあたりの実態も今後明らかにしていきたいと思っています。そんな方たちと比較して、社会的養育のバックグラウンドすなわち記録があるということや、チームとして連携できる施設があるだけでも支援を進めていくにははるかにスムーズです。

3 自立保障・継続的支援の保障について。生活相談や福祉の窓口は各自治体に整備されています。しかし、社会的養育、親や家族を頼れない状況にある方の背景を充分に理解している職員の方の配置は未だ充分ではありません。社会的養育に関しての専門の支援員が自治体に配置されることで支援の流れが円滑になり、また、未だ潜在化しているアフターケアのニーズの掘り起こしにも繋がると思います。そして特に里親の方はアフターケアにおいても非常に孤立した状態にあります。巣立った里子が困難な状況に陥り、児童相談所に相談しても年齢が18歳を過ぎているということで対応してもらえなかったという相談が実際に私どものところで増えています。

4 地域生活の支援の在り方。新たな社会的養育の在り方に関する意見で挙げられた、このような支援が必要だと挙げられた項目、ちょっといくつか読み上げます。社会保障、社会制度を利用する上での支援。暴力被害、性暴力を含む時の早期介入と対応。妊娠と出産時の支援。現行の制度の中でここに掲げられた事業の担い手としてまず期待できるのは退所児童等アフターケア事業を担う団体と考えています。ただ、実際ゆずりはでもこれらの支援を提供しておりますが、規定の補助金700数十万のお金では読み上げたような支援を実施していくのは非常に厳しい状況にあります。現在、退所児童等アフターケア事業を担っている団体は全国に20か所近くありますが、これも増えていく傾向にあるかと思いますが、すでに事業所ごとの課題や問題を抱えています。事業内容を実施するための規約や補助の見直しを図ることが必要かと思います。

はい、時間がきてしまうので少しはしょりますが、社会的養育を経験した方、巣立った方のサポートは誰がいつまで担うのか、アフターケアは児童福祉法の範疇を超えているのでしょうか。私達の社会で一番のセーフティーネットとなっているのは、社会的な支援や資源ではなく、親や家族という社会構造です。支援を必要とする方を適切な支援へと導くためには、その生い立ちを理解する支援者が助言や交渉を代弁することで支援を受けられるスピードは各段に上がるかと思います。まだまだお伝えしたいこと沢山あるのですが、一応時間がきたのでひとまず発言はここまでとしたいです。ありがとうございました。

 

〇奥山座長 

高橋様ありがとうございました。では続きまして保育園を考える親の会、普光院代表、よろしくお願いいたします。

 

〇保育園を考える親の会(普光院代表)

よろしくお願いします。私が代表を務めます保育園を考える親の会は、保育園に子どもを預けて働く親達で作る市民団体です。本日は長年にわたり聞いてきた保育園保護者の声、そして、見て参りました保育所の姿。特に私は保育園を審査する仕事を今しておりますことから保育所の記録や計画、現場を数多く見てきた体験から意見を述べさせていただきたいと思います。

私の資料が16ページから始まっておりますが、パワーポイントで作らせていただいたのですが、2コマ目に今日お話ししたいことの要旨をまとめております。早速3コマ目に入りますが、この図は保育所が概ね安定して子育てをしている家庭から社会的養護にかかる一歩手前の養育困難家庭までをも保育の対象としていることを表したものです。点線で状態を区切っていますが、これは固定ではなく、安定していると思われた家庭が何かの躓きから要支援の状態になることもあることを矢印で表しています。ご存知の通り保育所は、児童福祉施設としての特徴を持っています。保育料が所得に応じた額であることによって経済的に不利な状態にある家庭を排除しない仕組みになっています。また定員を超える申し込みがあった場合、基本的には保護者の勤務時間が長い家庭が優先されますが、ここにありますようにひとり親の家庭、障害・発達障害のあるお子さん、育児・養育困難・虐待懸念のあるご家庭も優先されることになっています。こういった保育所では実際に家庭の経済状態などで分かたれることなく様々な家庭の子ども達が一緒に育つ場所となっています。

4コマ目に参ります。保育所保育指針に書かれている保育所の役割を私の方で整理してみたものがこの図です。一般的には保護者の就労を支える施設と考えられがちですが、就学前教育も担っており、今申しましたように児童福祉施設としての機能、一般的な子育て支援の機能も担うということが指針には明記されています。

5コマ目に参ります。保育園を考える親の会の会員の多くが、保育所に支えられて子育てをしていると強く感じていると思います。保育所があったから子育てができたという親もいます。保育所は親が働いている間子どもが過ごす場所ですが、子どもの生活の場だからこその教育、あるいは生活習慣を身に付けるということも援助できています。また一人ひとりの子どもの発達や個性を捉え家庭の悩みを共有することもできます。親は保育所でのびのび楽しく過ごすわが子を見て安心します。また、保育士の子どもへの関わり方を見たり、わが子を保育士がどう理解しているかを聞かされたり連絡ノートで読んだりすることは子育て初心者の親にとっては大変勉強になりますし、また子どもを愛らしく思う気持ちを何倍にも膨らませていただいたと感じている親は多いと思います。

6コマ目に参ります。今申し上げたことを図に表したのがこれです。と申しましても4コマ目に書いたようなフルスペックの機能を持った保育所が全てではありません。保育所の運営者の理念、施設や設備、職員の資質などによって出来ることと出来ないことがあり、近年特にそのバラツキが大きくなってきたというふうに感じています。

7コマ目、裏面に参ります。これは全国1350の公私立園から回答を得た調査研究のものです。児童福祉機能、つまり児童福祉にかかわる様々な働きをやっているかどうかということをアンケートで答えてもらっています。やはり民営よりも公営、つまり民営化されていない公立の施設の方が良くやれているということが表れています。勿論やれていないというところは該当するような子どもや家庭が在籍していなかったという場合も含まれていると思います。

次に8コマ目に参ります。保育所の児童福祉機能を発揮する、あるいはしようとする時、課題になることとしてこのようなことがあると考えます。まずみなさんも良くご存じのように待機児童が今非常に多いということです。優先利用家庭も利用できないという状態になっています。あと、保育士不足による人材の枯渇や資質の低下ということが実際に起こっています。保育の質が低下して家庭支援の実行が不能になっている施設もございます。それから自治体や事業者の意識が低下していると思います。制度理念が弱く、権利保障よりも自由契約を念頭に置いた制度運用や、施設に利用者が選ばれるような可能性も生じてきていると思っています。また公立の減少ということは、あと職員の非正規化も進んでいるんですが、セーフティーネットの弱体化ということに繋がっていくのではないかという風に懸念しています。

保育所、保育士の負担が増えているということを9コマ目に書いておりますが、最近の調査では認可保育所の保育士の負担が特にいろいろな保育施設の中でも大きいというふうに出ております。それは私もそうだろうなというふうに思いました。保育所は今、保育所保育指針や行政指導などで沢山の質の向上のための取り組みが課されております。ここに書かれているようなことです。しかしこれに見合った、このような機能強化に見合った人員や人材は確保されてきたのかと。そのような施策が取られてきたかというと非常に疑問です。

10 コマ目に参りますけれども、これは実際に困難家庭を支援している保育所の営みを援助理論に当てはめて整理したものです。ご専門の先生方がご覧になれば当たり前のことばかりですけれども、保育士は乳幼児のケア、教育をしながらこういった動きをしなければならないということです。特に時間をかけて保護者の相談を聞き受容し支援すること、保護者の状況を把握すること、子どもの状況を把握すること、それを整理して正しく問題共有することなどは大変な労力と資質を必要とします。

11 コマ目に参ります。これらのことを踏まえて今後の保育所等の施策はどうあるべきかについてここにまとめさせていただきました。1項目目は言うまでもありませんが、質を確保した待機児童対策が必要だということです。2つ目、待機児童対策がある程度行きわたった暁には、保育の必要性の認定をもっと緩くしてより多くの家庭や子どもを保育所が対象とすることで子育て支援が強化され子どもの権利が守りやすくなるというふうに思います。それにあたって、次の項目、保育所が児童福祉機能を発揮するための人員配置基準をもっと充実する必要があると思います。

そして次の項目ですが、更にそれに足る人材を集めるためには処遇改善も欠かせません。今これは国に取り組んでいただいていると思いますが、まだまだペースが遅いのではないかというふうに思っています。それから公立の保育所の立て直しということ。2004年に公立保育所が、運営費が一般財源化されましたが、その後公立保育所の民営化や保育士の非正規雇用化が激しく進んでいます。公立保育所こそフルスペックの機能を持って市町村の子育て支援の手足となるべき存在だと思っておりますので、なんらかの立て直しが必要なのではないかというふうに思っています。

次に12コマ目に参ります。制度理念の強化というふうにしておりますけれども、現在市町村は保育所や認定こども園の入園の利用調整を行っております。そこで困難を抱える家庭や子どもも救われる場面があります。ところが昨年から行われております子ども・子育て支援新制度では待機児童がなくなったら。なくなったというのはどういう状態を指すのかよくわからないんですが、なくなったら、認定こども園のような直接契約の施設は施設と保護者の間だけで入園手続きをするということが想定されています。そうなったら、認定こども園も児童福祉施設と位置付けられていますが、実際には施設に家庭や子どもが選ばれてしまって今のような家庭支援の仕組みが維持できないのではないかというふうに心配しております。保育所から認定こども園に移行するところも今後もっと出てくると思います。最後の項目、このような仕組みの整備と共に現場の支援として保育所の中でも特に児童福祉機能を発揮する保育所などの施設には新たな補助金を設けてその働きを応援するということも必要ではないかと思っております。児童虐待等の悲しいニュースにふれますと、この子どもがもし保育所に通えていたらどうだっただろうということを思わざるをえません。是非とも保育所機能の活用ということを検討していただければというふうに思います。よろしくお願いします。

 

〇奥山座長 

普光院様どうもありがとうございました。続きまして大木様よろしくお願いいたします。

 

〇大木様 

おはようございます。大木愛と申します。私は今実家に住んでいますが、実家がファミリーホームをやっていて5人の子ども達と養親と8人家族で暮らしています。私と上の3人は養子で資料の方にも書かせていただきました。資料というには申し訳ないプリントですが、資料に沿ってお話しさせていただきます。

  今回3つの質問を事前にいただいたのでこの3点についての回答を書かせていただきました。

まず子どもとしてこれまでどのような経緯を過ごしてきたかということですが、資料に書いた通り私は出生時に実母と死別し、生後1か月の時に養子として大木の家庭に引き取られました。その際に現在の愛知方式の先駆けとして愛知県の産婦人科医師会と連携し、産院から直接子どもを引き取って家庭へ送る働きをされていた一人の婦人宣教師によって今の家庭へと導かれました。結婚して7年間子どもに恵まれなかった両親の子どもとしてその後2歳下、4歳下の二人の弟もできて3人姉弟として育ちました。二人の弟も同じ宣教師により新生児期に養子として大木家に引き取られました。

私が4歳の時に二人目の弟が我が家に来ましたが、その時に母のお腹が大きくなることなく赤ちゃんができたことに疑問を持ったことがきっかけで真実告知を受けました。養子の当事者体験のお話しをするときなどはこの辺のことをちょっと詳しく話させていただきますが、今日は時間もないので簡単にします。私は4歳のときに真実告知を受けました。今のセオリーとしては、それでも遅めだと言われるんですけれども、私としては4歳の時が私にとってはベストだったのかなと思っています。小さいときに聞いても充分な理解はできないと思いますけど、その年齢に応じて理解していくものなので一回言っておしまいというのではなくて、少しずつ子どもも理解を深めていきながら何回も本当のことを教えてもらうということはすごくいいことだなと思います。真実告知を聞いたときによくどんなふうに思った?、とか傷にならなかった?、と聞かれるんですけれども私にとって真実告知を受けたことは傷になるどころか、自分に大人の話を教えてもらったという、逆に嬉しい気持ちがあってみんなに言いたいぐらいの感じでした。みんなに言っちゃうのを親に止められたぐらい、傷になるような経験ではなかったですね。出生時に母と死別したことや4歳の時に真実告知を受けたことは養子ならではの特別な経験だと思うんですけれども、今日ここで皆様にお伝えしたいなと思うことはそのような経験が、皆さんが想像される程私にとって大きな影響になっていないというか、まあそれは自分が通ってきた一つの道であってそれが特別なことではなかったということをお伝えしたいなと思います。でもそれは本当に恵まれたことで新生児期にしっかりと家族の一員とされて、自分の家族の中で育てられたから、それが大きな傷にはならなかったんではないかなと感じています。

数年前から養子としての体験をお話しさせていただく機会が増え、自分は養子なんだなあって改めて考える機会が増えました。このような機会をいただくまでは自分が養子だっていうことを生活の中で意識したり考えたりすることはほとんどありませんでした。それは自分が養子だということを知らなかったということでなく、親も私の周りの人達もそのことが特別なことだとして扱っていなかったからだと思います。姉弟が養子だったということもあるかもしれませんが、私の環境の中で養子という環境が特別ではなかったし、そのことを親だけではなくておじいちゃん、おばあちゃん、親戚だったり近所の人だったり私を取り巻く環境の人がそれをそのまま受け入れてくれていたので、それは特別なことではなかったんですね。それが本当に恵まれていた環境だったなと思います。

私が6年生になったとき、2歳の妹ができました。その子は東京都の里子として委託されてきた子でしたが弟が二人だった私にとっては妹ができるということがとっても嬉しかったことを覚えています。みんなで何度も乳児院に足を運んで少しずつ慣れて我が家に委託されることになりました。一緒に遊びに行ったり、短期間我が家へ来るのとは全く違って、委託されてからしばらくは2歳の里子にとっても私達家族にとっても大変な時期でした。特に保母さんばかりの中で生活していた里子にとって大人の男性である父の存在は恐怖だったようで顔を見るたびに大泣きしていました。顔を合わせるたびに泣かれる父は一番大変な思いをしていたと思います。その妹も今では30歳を過ぎて一児の母親になりました。今そのときのことを、話をすると「でも全然覚えてないけどね」と言うので、そういう意味では家庭に引き取られる年齢が2歳ぐらいならまだ遅すぎではないと言えるかもしれません。でも私は2歳の子が新しい環境に慣れるのにもどれだけ泣き、苦労してきたのかを目の当たりに見ました。様々な事情や状況の中で難しいこともあるかもしれません。本当に小さい時に家庭が必要だという状況にないこともあるかもしれませんけれども、子どもの最善を考えるという意味では早い時期に、新生児のうちにできれば施設を経ないで直接に新しい家庭に子どもが引き取られる。そのように本当に安心して子どもが生活できる家庭に迎えられて欲しいなあということを切に願っています。

そのようにして2歳の妹ができて、その後は4人姉弟として育ったんですけれども、まあその4人姉弟の子育てを一期目の子育てとするならば、その4人の子育てが終わってから養親のもとへ新しく小学校2年生の里子が来ました。そこから私の親の二期目、三期目の子育てが始まっていくわけですが、その後来たのは皆小学生だったり中学生だったり高校生だったり、年齢を重ねてきた子ども達がほとんどです。里親が、歳がいっているので小さい子が来なかったっていうのが大きな理由だと思うんですけれども、いろいろな子どもが来る中で親と暮らせない事情の子もいれば、親はいるけど家庭の味を知らない子、親元から逃げてきた子、と死別よりも複雑な事情が沢山あるものだと思いつつ驚きつつ様々な背景を持ってきた子ども達が家族になっていくことの努力と苦労を幾度となく見てきました。その際、子どもも家族になっていくために努力と苦労を要しますが、その子どもを受け入れる家族もまた努力と忍耐を求められています。そういう意味でも家庭に来るのが小さければ小さいほど、お互いに無理なく家族になっていけるということ。新生児の時に養子になった私自身、養子であることを意識することなく育ってこれたということを一つの例としてそのような環境が広がってくれたらいいのではないかなということを今日お伝えしたいなと思います。

二番目は、養子縁組、里親、ファミリーホームを通して気づいたことということで、養親への質問だったと思うので思いつくままにそこにプリントにばーっと書いたので一つ一つお話しできるかと思ったんですけれども時間がないので割愛させていただきます。

三番目、どのような支援が求められているかということに関しては、資料に書けなかったんですけれども、今も言った通りにまずは自分の経験から子どもが家庭に引き取られるのは小さければ小さいほどいいということを覚えて支援を進めていただきたいです。

そして家庭で育つ、家庭を知るっていう意味では養子とか里子とかあまり関係ないように感じて育ってきたんです。妹は里子として育って、私は養子として育って、そこに差を感じたことはなかったんですけれども、でも18歳で自立しなければならないとか名前の事で病院に行く度に説明しなければならないとか、養子になる方が本当にそういうしばりが少ないっていうことがありますし、里親のところに来てまた返されるケースが多いっていうことを先ほど言われていましたけれども、私の親も、私の弟が結構荒れて、すごく苦労したんですね。その際に里子だったら返していたかもしれない、でも養子になったから覚悟が決まったということを言っていたんです。なので、子どもを引き取る、養子にするっていうことで親の覚悟も決まるっていうこと。本当は親からこの話は聞いていただきたいんですけれども、そういう意味でも小さいときに養子縁組で家庭に入るということが進められて支援されたらいいなって思っています。

あと支援に関してもっといろいろ言いたいんですけれども、まず具体的な支援に関して子ども達よりも親の意見を聞いていただきたいなと思うんです。養子としては、私は子どもとしての当事者ですけれども、実際、新生児期の時に養子となった私は何も困ったこともないし、努力したこともないし、引き取るにあたって悩んだのも決心したのも犠牲を払ったのも親なので、親達の意見を、私の親も含めてですけれども本当に家庭それぞれなので、いろいろな親の意見をヒアリングしていただければなと思います。

と言いつつ時間がないのに言っていいですか。子どもの意見も言わせていただくと、そのいろいろなサポートに関してなんですけれども、今も児相の方々が色々なサポートに入ってくださったり、いろいろな経済的な支援を国からいただいたりということをしていますけれども、私は家庭的ということを思うときに、そういう出入りがあることはあまり家庭的じゃないなって感じるんですね。でも母はそのようなサポートをすごく有難いと言っているんです。なのでその支援とかいろいろなニーズも子どもが思うニーズと親が本当に有難いと思うニーズっていうのは親の意見と子どもの意見とまた感じるところが違うと思いますので子どもの意見も聞きつつ親達の意見もたくさん聞いて良い制度になっていっていただけたらありがたいなと思います。以上です。

  すみません、長くなりました。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。では、これから30分程度、ご質問等の意見交換をしたいと思います。構成員の方々、どの方に対してもよいのでご質問ありましたら、よろしくお願いいたします。

はい、加賀美先生。

 

〇加賀美構成員 

今日は貴重なお話しありがとうございました。ルーモスのロジャーさんにお話しを伺いたい点は、今日午後、「市区町村の支援業務のあり方に関するワーキンググループ」というものが午後あります。そこでテーマは勿論今回の法改正は全ての子ども・家庭をまず基本的に支援するという意味で社会的養育という言葉を使っているんですが、その中で家庭にある子ども達、全ての家庭の子ども達を含めて、虐待を受けたとされるような子ども達も含めてその支援を基礎自治体である市区町村が今後進めるということを方略として進めているわけでございますが、その市区町村が進めるということについて民間団体としておやりになっていたロジャーさんから見てその点についてどんなお考えがあるかお聞かせいただければと思います。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

NGO (民間団体)の貢献は一部でしかないというふうに思います。そのことは最終的にはやはり中央政府や各自治体が関わってくることで持続可能なサポートになっていくのだと思います。私はNGO(民間団体)と政府、自治体を含めてのパートナーシップが極めて大切だと思います。NGOとしてはいろいろなアイディアを出して提案をして、そして成果を出して実証するところまではできると思います。しかし、地域または自治体などのレベルでそれが合理的であり、それを採択しようというものでなければ、つまり実践的で現実的なものでなければ、なかなか自治体がのっては来ないと思います。お答えになったでしょうか。

 

〇加賀美構成員 

ありがとうございました。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。他にいかがでしょうか。はい、藤林先生。

 

〇藤林構成員 

私は児童相談所の所長をしている立場のものです。シングルトンさんに二つ質問したいと思います。

一つ目は今日のお話はファミリーベースドケアにあたってのお話しだったのですけれども、全ての施設が閉鎖するわけではなく多分少数の一部の施設は子どものニードに対応するために残ると思います。特に10代の子どもの行動障害などがある場合には、施設ケアが必要と思います。その場合、従来の施設の在り方と、新たな施設の在り方とはどのような違いがあり、どのような体制や機能を備えるべきか教えてください。

二つ目の質問も続けてよろしいでしょうか。私はイギリスの児童福祉の関係者と話していていつも思うのは、児童相談所の、イギリスで言えばソーシャルサービスと思うのですけれども、その児童相談所の体制が日本と比べて非常に充実していると思います。日本においては子どもの保護に多くの人材を取られて、措置した後のマネージメントであるとか、里親制度に対して充分な職員を配置できていないと思っています。

更に、児童相談所だけでなくてイギリスにおいては裁判所が児童保護にしっかり関与しているという実感を持っています。で、そこで質問ですけれども、シングルトンさんは、日本が今後ファミリーベースドケアに移行するにあたって、児童相談所の体制または裁判所の関与の在り方について、何かサジェスチョンがありましたら教えていただきたいと思います。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

まず一番目のご質問にお答えいたします。ルーモスは特定の子どもたちに対しては引き続き施設でケアする必要があるということを受け入れております。二つ例を挙げます。例えば障害が極めて重い子どもです。24時間ケアしなければならない。夜間も通してみていかなければならない。そういう子どもの場合にはとても家族だけでは手が回りません。ですから、そういう子どものためにはやはり極めてケアやサービスの水準の高い施設が必要だと思います。二つ目の例ですが、おっしゃる通り、特にティーンエイジャーでその行動的に親も手が出せないような、さらには、メンタルヘルス的に状態が悪いというような子どもたちもやはり施設でケアしていかなければならないと思います。施設を閉鎖していった話しをしましたが参考のためお伝えしますと、1971年には4万人の子どもたちが施設でケアを受けていましたが、今は6千人に減っております。

それから二番目のご質問にお答えいたしますけれども、親も手に負えないのでお願いしますという場合もありますし、逆に法律に訴えなければならない状況ということもあると思います。

英国の家庭裁判所の方がそういうひどい目にあっている子どもを親元から離すという判断をすることがが日本よりも随分多いと思います。お答えでありますけれども、日本の児童相談所に匹敵するのがいわゆる社会サービスと呼ばれているものだと思いますけれども、やはりそういうところの関わりが極めてしっかりとした土台となるということです。そのソーシャルサービス、日本の児童相談所に匹敵するものと、それから裁判所も第一に考えるべきは子どもの最善の利益、子どもにとって何が一番大事かということで、親の意見というのはその二の次だということです。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました他にいかがでしょうか。

はい、塩田先生、井上先生の順で。

 

〇塩田構成員 

シングルトンさんと高橋亜美さんにお願いいたします。シングルトンさんが二番目のポイントでおっしゃったグッドプランニングのところでその施設のスタッフだった職員がどのような新しい仕事を得たのかをお聞きしたいです。

それと、高橋亜美さんには社会的養護の子ども達を沢山見ていて、特に児童養護施設出身の子どもにインケアのうちに、一番必要だと思う支援で、足りていなかったと感じることがあったら教えてください。

 

〇奥山座長 

お願いします。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

今まで乳幼児の施設で働いていたスタッフの人達ですけれども、同じ建物の中で今まではずっと毎日そこで子どもと暮らすということだったわけですけれども、一日だけ来る子ども達のケアを同じ建物でするようになりました。つまりデイケアになったわけです。施設ケアではなくて。したがってその機能を拡大させたということです。子どものケアをするだけではなくて親御さんに対してアドバイスをいろいろします。こういうようなことをしたらいいんじゃないかというような支援をして、その機能が拡大しているという状況です。もう一例申し上げますと、年長の子どもたちをケアしてきたスタッフについてですが、新しいトレーニングを改めて受けてもらい、そして里親をサポートするような仕事をしてもらう、子どもと里親を両方を支援するように方向づけたということです。施設で働いていたスタッフというのは対応の難しい子どものケアを担ってきたわけですし、そこに里親が子どもを預かって困っていることをサポートするという役割が加わったわけです。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。高橋さんお願いします。

 

〇ゆずりは(高橋所長)

さっき発言したことと重複する回答になってしまうかと思うのですが、施設入所中に、虐待していた親が劇的に変わっているとか回復しているとかっていう状態はなかなかない。特に、ゆずりはに相談に来る方はより大変な家庭環境にあり、親は社会に出てからももう一切頼れないまたはもう絶縁しているという方達なので、結局施設を出た後も家族を頼れないのであれば何か困ったときには、まず施設に相談してきていいんだよという、そういった安心感、信頼関係を育むということが何よりも一番大事なことだと思います。例えばアパートの家賃が払えなくなってホームレスになってから相談するとか、お金がなくて結局性産業で仕事をしてその間に何か誰かわからない男性と妊娠してしまってから相談というのではなくて、いつでも困ったときは頼っていいんだという気持ちがあれば早い段階で施設に相談に行ける。その相談を施設がもらったときも施設で全部サポートするのではなくて、いろんな支援資源を活用し、繋げていくっていうところも含めたアフターケアを展開してもらえればと思います。

インケア中のSST、あの私ソーシャルスキルトレーニングとかちょっと大嫌いなんですけど、すいません、あれはあれで必要かもしれないけど、それを必死に、退所後に間違えないように何か問題が起きないためにあれもこれもっていうので持たせようと施設職員も必死に頑張っている。私も施設職員だったのでそれは勿論わかるんですが、「それを持たなくても忘れても何かあっても大丈夫だ」というその関係を施設入所中に作るっていうのが一番だと思います。あと例えば手帳を取得する障害者の愛の手帳東京だと取得するっていうので手帳を取得すれば社会に出た後色んなことに活用できるからというので、手帳の取得も施設は必死に取得しようと試みてくれるのですが、「なぜあなたに手帳が必要かっていうところだったりとかこういうふうに利用するんだっていうこと」も丁寧にやりとりしていかないと、手帳を持たされたまま社会に出た後、手帳によって足を引っ張られるという事態もあります。長くなってしまいうまく言えないのですけれど、そういった手帳の取得にしろ、学歴や資格を取得することにしろ、ソーシャルスキルにしろ、なんでも持たせれば取らせればいいというのではなくて、そこのプロセスを丁寧にやること、同時に退所後にも施設を頼っていいという信頼を育む。施設の職員は辞めるかもしれないけど、辞めたって私達がいなくなったってここの施設はあなたがいつでも困った時は声をあげていい場所なんだっていうことを自信を持って、言ってもらえたら、困難な状況にある方の声がもっとあがってくると思うし、インケア時に何が必要かということも、見えてくるかなというふうに思います。以上です。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。井上先生。

 

〇井上構成員 

小児科医の井上です。発達行動小児科学というのを専門としています。

シングルトンさんにお願いします。

1987 年にモーズレイ・ホスピタルでマイケル・ラダー教授のところで仕事をしていた者です。1989年のザ・チルドレンアクトUKを作ってくるプロセスを見てきた者なのですが、今年の日本の状況がまさにそれを受け入れた国の状況だと思います。その時に大きく施設の子どもさん達を里親さん達の方に地域の中に出してくるという状況の時に国民の意識の改革というものはとても必要だと思うんですが、その当時どのようなことをされたかっていうことを教えていただけたらと思います。

もう一点は先程もお話しがでましたが家庭裁判所の関与についても最初の段階で全て上手くいっていたのか、それとも最初はとりあえず関与することから徐々に今のように成熟してきたのかということを知りたいのですがその点についてもコメントをお願いします。以上です。

 

〇奥山座長 

はい、よろしくお願いいたします。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

1989 年の英国でのご経験というのは大病院で診ていた障害が重度の子どもたちの話ということでよろしいでしょうか。

 

〇 井上構成員 

私が参加したのはディプロマ、ごめんなさい、児童精神科とチャイルドヘルスの合同コースで王立ロイヤル;Bethlem Royal Hospitalほどひどいものではなかったです。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

おっしゃる通り、その普通の住民、市民を教育するということは本当に重要な要素だと思います。確かにお話しがあった通り1980年代の英国というのは、まだまだ知的障害のある子どもを預かっている病院というのが沢山あって、それは町の中心ではなくて田舎の方に沢山散在していたという状況でした。バーナードスの経験としては、まずその子どもたちを病院から出す、退院させるということでした。家族がサポートできれば一番いいわけですけれども、できなければ里親にみてもらうということと、それから町の中でとても小さなユニットで2人3人4人最大で5人としてみていくというような状況になりました。

最初小さなホームで数人の問題を抱える子どもをケアしていこうといったときにやはり近所の人たちから反対の声が出ました。その近所の親達はその障害児が自分達の子どもに、特に性的暴力を振るわれるのではないかということを恐れたわけです。そこで私どもとしては、確かに皆様方の恐れておられるということはよくわかりますということを言ったうえで、だけれども子どもたちをきちんとケアしみていきますからと説得をするのですが確かにおっしゃるように時間がかかりました。最終的には近所の人達もそれを受け入れてくれて最後にはグッドフレンドになりました。先生のおっしゃる通りでやはり日本でも同じような状況に遭遇されるかもしれませんが、やはり時間がかかるということと、エネルギーが必要だということです。急かして早くなんてことは出来ないわけで、やはりまずはプランを立ててそれを然るべきところに承認してもらってということになりますと2年はかかるわけで、やはりその子どものユニットが受け入れられるまでにはそれぐらいの時間がかかるということです。

家庭裁判所についても手短にお答えします。この特別な子どもたちのための家庭裁判所というのは、やはり効率的に作るというのではなくて徐々に時間をかけて作られていきました。今日の家庭裁判所の判事たちは本当によくトレーニングされていて、そして子どもに焦点を合わせて子どもがどうかということに対して非常に感受性が高くて、子どもにとっての最善の利益を第一に考えるということになっています。

例えば生みの親が養子縁組に反対をする場合でも、家庭裁判所がそれを「ノー」と言って却下することがあります。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。上鹿渡先生。

 

〇上鹿渡構成員 

上鹿渡です。お二人に質問なのですが、大木さんとシングルトンさんに質問したいと思います。

大木さんへの質問ですが、時間が足りなくなって飛ばされたというか飛ばすしかなかったところなのですが、今ファミリーホームについてのご意見として「事務仕事が多すぎて家庭的ではない」と書かれております。この検討会でもファミリーホームの中にある様々な形態について「家庭」なのか「家庭的」なのかというところは非常に問題になっているところなのですが、大木さんが見てこられた養子縁組、里親、そしてファミリーホームという現場で、ご自身が子どもとして生活しつつ今はファミリーホームの仕事もされているなかで、ファミリーホームのところに書かれてある「家庭的でない」部分とは一体どういった点なのかお聞きしたいです。

もうひとつ、シングルトンさんへの質問です。先ほど、もともとバーナードスが施設ケアを主として提供していた組織から今の家庭養育に関するケア、サポートを主としてで提供する組織に変わるその途中で、施設も維持しつつ家庭養育に転換していくにあたって必要な、財政的に余分に費用を要する時期があってそこをどう乗り越えるかが重要だということを言われていたかと思います。、そのあたりの具体的な話をお聞きしたいです。先ほど民間団体、NGOと自治体や国との関係の中でパイロットプログラムのような取り組みでその実現可能性を実証していくという役割もあるというお話しもあったのですがそれも含めて、もう少し具体的にお話しいただければと思います。

 

〇奥山座長 

大木さん、よろしくお願いいたします。

 

〇大木様 

はい、どのようなところが家庭的ではなかったかという質問だと思うんですが、ここに書かせていただいたのは事務仕事が多すぎて家庭的ではない、また外部、児相とかいろいろな方の出入りが多すぎて家庭的ではないということを書かせていただいたんですけれども。事務仕事ということでは沢山の支援をいただいているので致し方のないことなのかもしれませんが、領収証を集めたり毎月の請求や会計報告をまとめたり確定申告の時には山ほどの作業をする中で、里親の時はこんなことなかったのにね、って毎年そんな会話をしているなということと、あと我が家ではプロではなくて妹がその責任を担ってくれているのでその余計に負担を感じているのかもしれないんですけれども、じゃあ、かと言って、会計のことで外部の人にお願いをするということになったらまたそれも家庭的ではないのかなということを感じます。

あとその外部の出入りということは、これも里親時代ですね、里子が1人2人のときにはあまり感じなかったことなんですが、ファミリーホームになって里子が5人6人いる中で児相や支援員、施設の里親担当の方などが訪問してくださる中でやはりその回数があまりに増えてくると家庭的ではなくなってくるなと感じる要素になっています。1人につき大体1年に1回程度であっても6人いれば6回になりますし、新しく委託された場合は、半年間は毎月訪問となると結構な頻度での出入りになるんですね。そうなると、「あ、また来るのか」って言ったら申し訳ないんですけれどもそんな子ども達とも「よく来るね」っていう話をしていると、それでじゃあ今日は部活止めて早く帰ってきてねとか、今日は、あなたは家にいなきゃいけないよ、とか1人に対してそんな何回もってことではないですけどそんな会話が増えてくると、「あ、まただね」っていうそんなところで家庭的、家庭というよりかは「ああやっぱり施設なのかな」って思うことは多いです。そんなことでよろしいでしょうか。

 

〇奥山座長 

ありがとうございます。ではシングルトン卿お願いします。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿) 

財政問題というのはかなり複雑なことになると思います。古い施設だったところが、新しい目的のために同じ建物でなされていくということで、例えば一晩だけ預かってもらうとかそれから週末に預かってもらうというような子どもの数は確かに減りました。質の高いそして家庭を基盤とするケアを提供する方が施設で子どもをケアするよりも費用がかからないということが一般則です。ご覧いただけますか。今指で触っているところがその施設でのケアのコストといたします。右側の線はかなり下に行っていて家族ベースのケアになるとコストがそれだけ下がります。ところがその施設の高いコストから家庭を基盤とするケアの低いコストに行き着くまでに赤く加えてあるのが、余分にお金が必要になってくる期間ということです。それは家庭を基盤とするサポートのその土台をいろいろ作っている時期であり、それにもコストがかかるのですが、それと同時にやはり施設のコストもかかるということですから、この過渡期にはそれだけ(余分に)お金が必要になるということです。それでこの追加コスト、その転換期の追加コストはものすごく多いわけですね、この過渡期の一時的な必要費用の増加をラクダのコブに見立てて「ハンプ」と呼んでいます。これは中央政府から自治体・地域へ出されるお金です。この変換期の財源が確保されなければ、子どもの施設を閉鎖し、家庭養護に移行すると言ってもその土台がきちんと整備されていなかったら子どもへのダメージはより大きくなってしまうという恐れがあります。今日の午後厚労省の方にもお会いすることになっておりますのでその点申し上げておきます。私も役人をやっていたことがありますので、役人としての考え方は理解しているつもりです。

 

〇奥山座長 

ありがとうございます。伊達先生。

 

〇伊達構成員 

シングルトンさんにお聞きしたいのですけれども、昨日日本財団で行われたプログラムにちょっと出させていただいてですね、その時に要するに中身を変えようというときに、お風呂の水に例えてですね、水道の蛇口はちゃんと閉めて変えるでしょというお話しをされたと思います。そうするとそのまず水道の水を止めるということが今の日本では出来ないんですね。その次から次に子どもが依頼をされてそれが出来ないんですけれどもその次から次に依頼をされるという子ども達はイギリスでも同じような流れがあったと思うんですけれどもどういうふうにそこらへん二重のやり方をこう作っていくことができたのかそこら辺を教えてください。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿) 

昨日いらっしゃった方もいますが、お風呂の水を空にしようと思ったらまず水道を止めなければだめだと、後から後から水が入ってくるのでは出し切れないという話をしたわけです。まずプランニングをきちんとするということの大切さということを申し上げ、それから財源を確保しておくことの大切さということを申し上げたわけですけれども、施設から子どもを出すということになればやはり最初に、子どもが生まれ育った家族をサポートしていくことが大切です。子どもが虐待されたり、または無視・放置されたような家庭のサポートを準備するというのは難しい話だとは思います。

私は今週のはじめにいろいろなところに参りました。それからいろいろな方にお目にかかったりしたわけですけれども、まず自分の生まれ育ったところで安全に暮らすことができるようにどうするのかということなんですけれども、一つは毎日センターに子どもを預けるということがひとつなのではないかと思います。そしてその間に親に助言したり、親をサポートしたりしていくと、そのようなやり方ができれば徐々に安全に元の家で暮らせるようになるのではないかと思います。先ほどの話の最後のところは子どものために家族を用意・準備することが蛇口を止めることにもなるという話です。確かにおっしゃる通りそういうようなサービスがなければ、施設を閉鎖して家庭を基盤とするケアへ移行するというような変革はできないわけで、予防をしていくということが大事なキーワードじゃないかと思います。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。最後に私の方からひとつ普光院さんにご質問をしたいと思います。保育園が色々な機能を持っているってことに関して改めて確かにそうだなあと思い、また、地域の基盤になるところであろうと思います。ただ、現在、量のことばかり言われていますね、保育園が足りない足りないと。ただ質のところがあまり議論されていないのではないかという非常に気がかりなところでもあり、その点を教えていただけたと思います。普光院さんの方から見られて、色々な機能があるのでもっと多様な、職種なりなにかを配置すべきなのか、それとも保育士さんをもっと多く配置すべきなのか、両方かもしれませんが、その辺について何かご意見があったらお伺いしたいと思います。

 

〇松本座長代理 

松本です。私も同じこと聞こうと思っていて、例えばソーシャルワーカーさんのようなものを配置するっていう方向が望ましいのか、もう少し保育士さんの力量といいますかね、そういうものを上げていくということが望ましいのか、両方と言えば両方でしょうけれども、特にその点は。

 

〇加賀美構成員 

じゃあついでにもうひとつ。量の問題を、質の問題という視点で。私からは、今の待機児童問題から規模が拡大している傾向があるという問題について何かご意見があったら。規模を縮小する必要があるのではないか、つまり質を高めるための規模の問題。小規模化という意味です。以上です。

 

〇保育園を考える親の会(普光院代表) 

はい、まずその職員の数なんですけれども、やはり今の日本の保育士の配置基準というものが戦後からほとんど改定されてなくてですね、少なすぎると思います。多くの自治体でそれを改善しようというふうに上乗せをしたりしているんですけれども、地方で財源、裕福ではない自治体では全く国基準でやっているところもありますし、そういうところでは本当に人手が不足しているというふうに思います。そうすると日々の子どものケアも非常に逼迫してきますので、私はまず保育士の数をもっと増やすべきだろうと。多分現場からもそういう要望がずっと国に上がり続けてきたんだろうと思うんですけれども…。例えばこの子ども・子育て支援新制度がスタートするときに3歳児を15対1にするというプランがあったんですけれども、残念ながら財源が、消費税が上がらなかったので先送りになってそのままになっているという状況です。
  そういった基本的な保育士数というのは世界の国々と比べても日本は少なすぎるので、まずそこはちゃんと充実させなければいけないし、そこに更にプラスでいろんな専門家の方が関わってくれたり、あとはよく言われる地域のボランティアさんが入ってくれたり、そういうことが大変保育所の機能を充実させるうえでは有効であるというふうに思います。

ソーシャルワーカーさんの専門性というのはすごく大事なんですけれども、やはり日々子どもと接して日々親と接している保育士が見ているものというのは非常に情報量が多いです。その方々がきちんと記録がとれるのか、記録をとってそれを職場で共有したり外部機関と共有するために情報を整理出来るのかっていうと、今のような状態ではなかなか大変だというふうに思っております。

それから保育所においてもやはり今規模が大きくなりすぎているところがあるというふうに思います。小規模保育ほどになってしまいますと今度は幼児の年齢になったときに集団活動での教育ということが不足しますけれども、もう少し乳児から幼児まで通して小規模、100人足らずの規模でどこでもやるようになった方が子どもにとっては望ましいのではないかというふうに思います。

 

〇松本座長代理 

せっかくなのでシングルトン卿にイギリスでは3歳児までデイケアあるいはナーサリーで何人のお子さんに一人の大人が、保育士さんがいるのが普通なのかちょっと教えていただければ。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿) 

デイセンターで6人の子どもに二人のスタッフです。

 

〇奥山座長 

ということでかなり差があるということがわかりました。ありがとうございました。

 

〇ルーモス(ロジャー・シングルトン卿)

乳幼児です。赤ちゃんも含まれてということです。皆さんにとってグッドニュースかどうかはわかりませんけれど。

 

〇奥山座長 

ありがとうございました。今日は重要なヒアリングだったということもあり、ヒアリングだけで2時間終わってしまいましたが、非常に重要なお話しをいただけたと思っています。例えばですね、先程のサー・シングルトンにおっしゃっていただいたように、私達は将来の全体像を描くことを考えてきましたけれども、それを実現するためのプロセスの提言が非常に重要だということを教えていただいたと思います。前回提示しました、今後の成果物の中に社会的養育の全体像のみならず、それを実現するためのプロセスに関する提言を是非入れていきたいと考えています。他にもとても重要な視点をいただきました。重要だと思いましたのは、社会的養育全体を考えないと社会的養護の未来がないということだと思います。地域での社会的養育を充実していくことで初めて社会的養護が理想的な方向に流れいくことが出来るんだということもありますので、引き続きここの中では社会的養育全体ということで議論を深めていけたらと考えております。今日はお忙しい中ヒアリングに参加していただいた方々どうも本当にありがとうございました。大変貴重なご意見をいただけたと思います。どうもありがとうございました。では事務局の方にお返ししたいと思います。

 

〇事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

どうもありがとうございました。次回につきましては1228日の水曜日13時から17時までを予定しております。次回は並行して開催されております検討会、ワーキンググループの開催状況、法改正後の進捗状況、あと個別の論点に関するご議論を予定しておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。


(了)

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