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2016年5月13日 歯科医療の専門性に関するワーキンググループ(第5回) 議事録

医政局歯科保健課

○日時

平成28年5月13日(金)


○場所

共用第9会議室(19階)


○議題

○ 歯科医療の専門性に関するワーキンググループの方向性(案)について

○ その他

○議事

○和田歯科保健課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより「歯科医師の資質向上等に関する検討会 歯科医療の専門性に関するワーキンググループ ( 5 ) 」を開催いたします。構成員の皆様におかれましてはお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 まず、構成員の出欠状況です。本日は、井上構成員、山口構成員から御欠席との御連絡を頂戴しております。また、南構成員は所用により 11 時半頃に中座されるという御連絡を頂いております。

 なお、 4 1 日付けで事務局に異動がありましたので御報告いたします。田口歯科保健課長です。

 続きまして、手元に配布しております資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、座席表、構成員名簿です。このほか、資料は 1 から 3 まであります。また、参考資料 1 を配布しております。これとは別に、これまでの検討会及びワーキンググループの資料につきましてはお手元の青いファイル内にまとめております。乱丁、落丁などがございましたら、お知らせいただければと思います。

 なお、今回のワーキンググループにつきましては公開となっておりますが、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。

 それでは以降の議事運営について、西原座長、よろしくお願いいたします。

○西原座長 おはようございます。ただいまから第 5 回のワーキンググループを開催させていただきます。

 御承知のように、 4 月に熊本、大分を中心に地震がございました。本学も福岡県にある 3 つの歯科大学として、県の歯科医師会とともに熊本に歯科保健支援という形で出向いてきたところです。その動きを見ている中でも、このような非常事態を迎えて「さあ」となったときに、やはり、歯科が診療室にとどまっていることなく医科・歯科連携という形で出向いて仕事ができる人材を増やしていく努力が必要で、現状ではなかなか人材的に不足する面もあるのかなという実感が少し湧いてきています。この専門性についても、会議の冒頭、新たな専門医の在り方という問題ともう 1 つ、既存の専門医をどうするかという、いわゆる社会への説明責任という観点での 2 点を語っていく中で、やはり入り組んだ問題もございますが、今回、混乱していた第 4 回のワーキンググループの議論を少しすっきりと整理するような形に向けて議論を取りまとめさせていただきたいと思っておりますので、御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日、ただいま事務局で説明がありました資料をお手元に配布しておりますが、本日は時間が 2 時間と限られておりますので、まず、資料の説明を通しでさせていただいた後に、まとめた形での質疑応答という形を取らせていただきたいと思っております。この方向でよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

 それでは、まず事務局に資料 1 及びその他、置かれている資料幾つかを利用しながら意見書の説明をお願いしたいと思いますが、高田専門官、よろしいでしょうか。

○高田歯科口腔保健専門官 はい、資料 1 の御説明をさせていただきます。資料 1 といたしまして「歯科医療の専門性に関するワーキンググループの方向性 ( ) 」、これまでに出された意見をまとめたものを提示しております。こちらの方向性 ( ) ですが、今回のワーキンググループで議論がなされた後、親会に報告するような流れを考えております。それでは説明に入ります。

 1といたしまして、国民が求める歯科医療の多様化に対応しつつ、安全・安心な歯科医療を提供するために必要な歯科医療の専門性についてということで、主に今の日本に必要な歯科医療とは何だろうかと、新しいニーズも含めて書いているものがこの1になっております。

1) といたしまして求められる歯科医師像についてということで、 1 つ目の○。歯科医師は、学部教育、臨床実習、国家試験、臨床研修というように養成されて、多くは、いわゆる一般歯科医として歯科医療を提供しております。しかし、高齢化の進展に伴いまして、基礎疾患を有する方、歯科医療機関に来院できない方、このような方が増加しております。また、 1 行下りまして、侵襲度の高い歯科医療、ハイリスクな患者さん、要は、基礎疾患を持っていらっしゃって同じ治療であっても難度が高くなっているような患者さん、このような方に対応できる歯科医師へのニーズが高まってきています。

2 つ目の○といたしまして、勤務の形態にかかわらず全ての歯科医師が生涯にわたって能動的に自己研鑽を積むことが重要である、また、歯科医師を取り巻く団体、関係する団体は、そのような生涯にわたって能動的に自己研鑽を積んでいる歯科医師の研鑽そのものを支援する必要がある、ということを書かせていただいております。

3 つ目の○といたしまして、医療安全、感染対策等に係る研修を受講し、対策を講ずるとともに、院内感染対策は院長一人の努力よりもむしろスタッフ全員がチームとして取り組むことが重要ですから、「職員への教育」というワードも入れさせていただいているところです。

2) といたしまして歯科医師の研鑽の場について説明させていただきます。 1 つ目の○です。歯科における研修は、歯科医師会、学会、大学同窓会、民間団体などの各団体において実施されておりますが、研修内容や修了基準は主催者によって独自に設定されており、その内容はまちまちとなっております。特に歯科における特徴といたしましては、全国各地で開催されている民間主催のセミナー、スタディグループなどが活発に実施されておりまして、これが多くの歯科医師のボトムアップ、モチベーションとなっているのは事実ですが、 5 行目の中ほどですが、民間主催のセミナーなどは、研修の内容、質、回数、共に玉石混淆です。

1 枚めくっていただきましてこのような問題への対策といたしまして、 1 行目、複数団体が積極的に連携して、例えば、学会と歯科医師会の合同開催、スタディグループと別の団体の合同開催というように、他の団体と合同で開催することによって、各々の団体の良さを活かした研修となって、また、研修の質が担保されるとともに、受講の機会が拡大されるのではないかということが期待されるところです。

 続きまして次の○です。歯科診療所は小規模なものが多いということで、例えば、院長が講師を務めて歯科診療所独自に行う研修の機会というのは、やはり病院よりも少なくなってしまうだろうということ、また、同僚と言える歯科医師も院内にはいないことが多いですから、他の職員からもたらされる研修、又は新しい歯科医療に関する技術、知識などについての情報も入りにくい傾向にあるのではないかと書かせていただいております。それについて、このため歯科医師は、歯科の専門性に係る主な組織である学会、大学医局・同窓会、歯科医師会などのいずれかに所属し、研修や新たな歯科医療に関する知識・技術などに関する情報を得ることが期待されていると書かせていただいております。

1 つ○を飛ばしまして 4 つ目の○です。なお、このような議論については、正に現場に出ている歯科医師だけではなくて、歯学部教育、国家試験、臨床研修から始まる生涯研修、これらにおいて、一貫して取り組むことが期待されるということを書かせていただいております。

3) は歯科医師の自己研鑽の在り方についてです。 1 つ目の○ですが、歯科医師の自己研鑽に係る制度を考える際には枠組みありきではなく、まず研修対象者や研修修了者の到達度をあらかじめ設定した上で、どのような制度にすべきかということを議論すべきであると書かせていただいております。

4) は求められる歯科医療の提供についてです。 1 つ目の○です。専門性に関するワーキンググループですから、高い専門性への議論がある一方で、従来から国民からの強い要望として、そもそも論ではあるのですが、全ての歯科医療機関は、職員への教育も含め、医療安全や感染対策などが講じられ、安全・安心な歯科医療を提供することが求められるということを改めて記載しております。

1 枚めくっていただきまして2です。歯科医療の中で既に位置付けられている専門医についてということで、現在、広告できる専門性資格、広告できないものも含めまして、多くの専門性資格があるわけですが、これらについて示しております。  1) 各学会において認定されている専門医についてです。 1 つ目の○です。現在、専門医として求められる知識・技能などの認定基準は、各学会が独自に設定しており、各々の団体によって設定しているレベルは異なっているということです。

2 つ目といたしまして、専門医制度を運用する学会が多く、また、似たような領域もあることで、国民のみならず、当該専門医がどのような専門性を有するのか歯科医師にとっても判断しづらい状況にあるということです。

3 つ目の○です。そのような中で各学会の専門医制度について、研修内容や専門医資格に関する客観的な評価方法、評価基準などを設定する必要があるというようなところで、皆様から御意見を頂いたところです。

 その評価の具体的な方法につきましては 4 つ目の○です。具体的な方法について、主に歯科医師会、歯科医学会からは、第三者的組織によって行われるべきであるというような意見が出される一方で、主に歯科医師以外の構成員からですが、第三者組織にこだわらず既存の団体で、例えば外部委員を複数人加えた委員会を設置するなどということによって、速やかに取り組むべきであるというような御意見も出されているところです。この評価の在り方については、引き続き、関係者間で国民の意見を十分に踏まえた議論を期待したいと考えます。

2) といたしまして、歯科医療の専門領域についてです。 2 つ目の○です。国民が求める専門性、つまり広告できる専門医資格がこの中心になろうかと思いますが、歯科医師が求める専門性、例えば難しい症例などを照会・紹介するときに歯科医師同士で活用できるもの、これは分けて議論すべきであろうということを書かせていただいております。

3 つ目の○といたしまして、近接・類似する領域については、例えば研修を共有する、相互に認定し合うなどというように、関連する諸学会を中心に、専門医制度の統合も含め、今後どうあるべきか議論が必要であると考えます。

4 つ目の○です。全ての歯科医師が 1 つの専門性を取得すべきかというテーマが従来からあったわけですが、歯科医師の約 9 割の勤務先は歯科診療所であること、一方で専門性資格を取得できる施設は主に大学や病院歯科であるということを考えますと、勤務場所と研修施設とのギャップが現時点ではかなり大きいです。また、専門性資格を有していたとしても多くの歯科医師は、ほぼ全ての歯科医師、一般歯科診療に従事しているということもありまして、専門性資格の取得状況は現時点ではまだ 1 割ぐらいである。これらを踏まえて、現時点で「すべての歯科医師が 1 つ以上の専門医を取得すべき」であるというところを短期的な目標として設定するのは困難であるとまとめてございます。

3) といたしまして、専門医の養成・認定・更新についてです。 1 つ目の○といたしまして、専門医の養成の在り方については、例えば複数の学会で 1 つの専門医を養成する、認定するといった、学会間での相互認定なども含めて、学会や歯科医師会で検討されるべきであるとまとめております。

 続きまして、3に移りたいと思います。専門性についての情報の在り方、つまり、広告やインターネットでの情報提供も含めての発信の仕方について書かせていただいております。

1) です。歯科分野における「広告が可能な医師等の専門性に関する資格」について、いわゆる広告できる専門医と呼ばれているものです。歯科の領域では 5 つの専門性資格が広告できる専門性資格となっており、それ以外の専門性資格については広告できないという整理になってございます。

1 つ目の○の 2 行目ですが、歯科医師が患者に対して、あたかも高い専門性を有しているかのような誤解を与えるような広告などの例があるという指摘がなされております。これに対しまして、次の行、研修の主催者、認定を行っている団体、その研修を広告する出版社、このような方々が、まずその研修を受講する歯科医師に研修修了した旨の認定等が広告できるような誤解を与えないようにすることが求められていることを書かせていただいております。

1 つ飛ばしまして 3 つ目の○です。広告できる専門性資格は、告示に示された外形基準と関係団体の意見とで、広告の可否が設定されております。これに合わせまして、国民の受診の観点なども踏まえて、なぜ広告可能なのか、なぜ広告不可能なのかなどということを透明性を持って評価されるべきであるということが意見として出されているものです。

 めくっていただきまして4、関係団体による協議です。今後、一定の結論を得るところまで至っていないものにつきましては、歯科医師会などの関係団体、学会、大学、第三者を交えた協議などの場を設定して、今後、具体的に議論をしていく必要があろうということで、4として追加してまとめております。

2 つ目の○の 3 行目です。歯科医療の専門性に関する検討を行う際には、歯科医師は主に診療所で働いているということ、また、多くは自らの専門性があってもなくても、専門性資格を持っていても持っていなくても、一般歯科診療をしている人が多いということ、これらを踏まえた上で議論をする必要があるということです。具体的な議論の内容につきましては 3 つ目の○、協議は 1 2 年を目途としまして下記について検討することが期待されるということで、総論は賛成を得られているが各論はまだ具体的には決まっていないような項目について、下記に並べさせていただいております。

1といたしまして、在宅などにおける侵襲度の高い歯科医療などに対応できる歯科医師の養成の在り方については、例えば養成はどのような研修内容、評価方法とすべきかというようなこと、2といたしまして、歯科医師の自己研鑽の方策、質の高い研修を数多く提供するためには、どのように研修を設定するべきなのかということ。3といたしまして、各学会の専門医資格について客観的な評価方法、評価基準、まずそれがどのようにあるべきかということで、既存の団体を活用して又は第三者的な組織を評価者とするということについてどのように考えるかということ。めくっていただきまして4近接・類似する領域における研修の在り方については、各々、近接・類似している学会同士が研修を共催した上で 1 つの専門医制度とするなどということについて、どのように考えるかということを、まず関係団体の皆さんで御協議いただきたいということ。5といたしまして、国民に情報提供すべき歯科医療の専門性及び専門性資格とその評価の在り方についてどのように考えるかということ、ということで記載をさせていただいております。今回、前回の 3 月の議論から記載の変更のあった部分を中心に説明させていただきました。

 続きまして、時間を長く取ってしまって申し訳ないのですが、本日御欠席の御連絡を頂いております山口委員から「第 5 回歯科医療の専門性に関するワーキンググループ意見書」というものを頂いておりますので、この場を借りまして簡単に御説明させていただきたいと思います。ただいま説明させていただきました資料 1 について頂いている御意見です。文言について、 1 番と 2 番で御意見を頂いております。

まず、 1 番目といたしまして、「関係団体は、当該歯科医師の研鑽を支援することが期待される」という記載があるが、「期待される」のではなく、「求められる」という強い言い方としてほしいということ。

2 番目といたしまして、「研修や新たな歯科医療に関する知識・技術等に関する研修等の情報を得ることが期待される」という記載になっておりますが、むしろ研修などの情報を得るよう努めないと国民から期待される役割を果たせないというような、もっと強い言い方としてほしいということ。

3 番目ですが、現在乱立している専門医を整えることよりも、むしろ地域包括ケアの担い手の一員として、複数の慢性疾患を抱えた高齢者などに対する対応ができる歯科医師、そういう養成についてのほうが国民からの要望は強いということ。

4 番目といたしまして、第三者的な評価機構の必要についてですが、 5 行目の後ろからです。現在も様々な団体があるにもかかわらず、乱立する学会について「ふるいにかける」ことができていない現状を見ると、同じ関係者が第三者機関を作ったとしても、各学会の専門医の認定基準や評価基準の統一を作成し、一定の権限を発揮できると、現段階では思えないということで、これまでにできなかったことに何を加えれば可能になるのか、それらを明確にするよう議論すべきであるということ。

5 番目といたしまして、広告ができる専門性資格についてはどのような基準になっているのか、是非公表すべきだということ。また、広告できる専門性資格、例えば小児歯科専門医というものと、標榜科である小児歯科というものが、患者から見れば、当然ながら専門医を持っている人が標榜しているのだろうというように、誤解をしてしまうのではないかということで、きちんと整理をすべきであるということ。

6 番目といたしまして、「関係団体、学会、大学、第三者を交えた協議の場を設定」するというふうに書いてあるが、どこが中核を担い、事務局をどこにするかということを本会議で明確にしておくこと。

 以上が山口構成員から出されている意見です。私からは以上です。

○西原座長 ありがとうございます。今回、お手元の議事次第にもございますように、歯科医師会と日本歯科医学会からも資料として提出していただいていて、それぞれを柳川構成員と今井構成員から御説明いただけると聞いておりますが、よろしいでしょうか。

○柳川構成員 はい。

○西原座長 お願いいたします。

○柳川構成員 資料 2 をお読み取りください。このワーキングでの御意見、さらに日本医師会はじめ関係団体のお話も伺いながら、現状の考え方を試案としてまとめさせていただきました。スライドは全部で 9 枚ありまして、まず 2 枚目です。

 今の専門官の報告とも重なるところが多いのですが、医科と歯科は状況が異なります。歯科は単科ですので、大きく捉えれば 1 つの括りです。歯科領域にも機能分化は必要なのですが、科の内容として専門性を細分化して持たせること自体は、患者の立場からいって、例えば歯科大学の付属病院のような環境下でなければ、なかなか理解されづらい面があるということです。

3 つ目は、現在ある専門医の認定基準や研修の評価基準が、必ずしも統一されていない。もちろん基礎も臨床もありますので、全部の統一化が可能かどうかは別としても、そういったところの課題はかつてからあると考えております。歯科においては、ほとんどが開業医で GP である。現状では医科における総合診療科的な評価、専門性の中で総合診療科を位置付けるということは、歯科においては更に準備や議論が必要だと考えております。

3 枚目のスライドです。論点はこの 2 つです。

4 枚目はキャリアパスのイメージ図で、皆さんも既に御覧になっていると思います。生涯教育という視点で、この専門性を捉えることも非常に重要だと私も思います。歯学教育においても文科省のモデル・コア・カリキュラムの改訂が 6 年ぶりに行われる、あるいは歯学教育の分野別の認定や評価をする方向だということも伺っておりますし、出口の国家試験も 4 年に 1 回の改善計画が、再来年から実施されるという状況です。そのような中で、専門的な教育や生涯研修をどう考えるかという機会が与えられたと捉えておりますし、大きな節目で、日本歯科医師会としても方向性をお出ししたいということです。

 資料の 5 枚目と 6 枚目も、既に本ワーキングで使われたものですが、これは総合診療科を歯科に当てはめた場合にどう考えるかというイメージ図です。先ほど少し触れさせていただきましたが、現状では、たとえば医科の総合診療科というのは、地域包括ケアの中でゲートキーパー的な役割と位置付けられると思いますが、歯科医師はそれぞれ専門性を有していても、 GP としてほとんどのことを歯科診療所がやる場合が多いわけですので、医科と同じような仕組み、システムの中で位置付けるのは難しく、更に具体的な検討と準備が必要ではないかと考えます。

 スライドの 7 枚目です。現状で専門性を確立するためにはどのような課題が必要かについて、 1 から 5 まであります。 1 つずつ申し上げます。

1 番目、専門性の高い歯科医師の育成ということは、一定の機能分化も必要です。例えば口腔外科、矯正歯科というのは分かりやすいわけですが、高齢化を背景に歯科ニーズが多様化しており、その担い手の育成が必要だということは申し上げるまでもありません。歯科を細かく細分化することよりも、そういった社会ニーズに応える担い手の育成の方が論点で、さらに全体のスキルアップ、レベルアップも必要だということです。

 2番目、国民に見えやすい歯科専門性の確立というのは、必ずしも標榜科名の問題だけではなく、患者に提供する歯科医療の内容や水準が分かりやすく、見えやすいことが肝要なのだと思います。その辺が大きな課題になってきています。

3 番目は、先ほど申し上げた各学会の認定基準の見直し、「統一化」という表現が必ずしも正しくないとすれば、統一化に向けた基準作りというか、既に始めている学会の取り組みを、それを更に分かりやすく表現していくということです。

 それから4番目、先ほど申し上げたキャリアパスを、生涯教育、生涯研修という視点で捉えていくということです。

5 番目、日本歯科医師会が生涯研修制度を日本歯科医学会の協力を頂きながら運営してきていますが、既に現在の単位制に移行してから 28 年が経過しており、日本歯科医師会会員 6 5,000 人の約 75 %が参加する生涯研修制度がございます。そこには、もちろん医療安全、倫理、救急といった、基軸となるような研修を更に充実させることはもちろんですが、もっと実習を加えるようなことも考えて、生涯研修制度の充実を図ります。それにより、全体の国民歯科医療の向上を目指すということです。

8 枚目はイメージ図です。これは今後また大学あるいは学会を含め、関係の皆さんと具体的な詰めが必要ですが、今持っているイメージを簡単な図に示しました。要は求められる歯科医師像、提供体制についての現状のイメージです。一番左側が新卒者あるいは若手の歯科医師とお読み取りいただきたいと思います。今、日本歯科医師会の会員は全員が日本歯科医学会に所属しております。ただ、分科会に所属していない歯科医師もかなり多いわけですが、私は基本的には、歯科医師が何か 1 つの専門医を取得しなければいけないということは、時期尚早な話だと認識しています。

 その下は今後の新たなシステム案で、専門医の在り方や専門性をイメージしたものです。一番左側が、今、正に求められている社会ニーズに対応するためのルートです。臨床研修 1 年後の、例えば新卒者でいえば、そのまま続けて 4 年間の研修を受ける。ただ、このルートは現在開業している歯科医師がチャレンジできないものではいけませんので、どのような方も幅広く受けられるようなものでなければいけないと考えております。こういった専門的な研修には、主にこれは大学や、大きな病院といった施設が必要だと思いますが、そこで実施する研修で、これは総合診療科という考え方とは別だと思います。むしろ、かかりつけ医機能を高めていくような、新たな専門性を構築するということが、今、正にこのワーキングで議論されていることではないかと思います。あくまでもイメージ像ですが、そういったものを考えております。

 それから、もともと学会の各分科会の認定専門医はいらっしゃるわけで、専門医ということに限ると 8 %ぐらいと伺っております。その方々も、それぞれの専門性を高めるために、これまで通り更に研修を積まれますので、それが真ん中と右側のラインです。

 そこで一番大事になってくるのは、研修制度をどのように組み立てていくか、あるいは専門性をどうやって認定評価していくかということで、そこに第三者的な評価が必要だろうと考えております。それが第三者機構という名前かどうかは別として、そこで研修の要件、認定の仕方ということを改めてトータルで見ていく必要があるのではないかと思います。

 一番右側は、そうはいっても新たな 4 年間の研修を受けない方は当然いらっしゃるわけですが、それは決して勉強しないということではありません。日本歯科医師会の研修制度には先ほど申し上げたように、ほとんどの会員が参加しておりますので、そこに実習を付加することなどにより、更に充実させていき、地域歯科医療を担っている歯科医師に対し、継続的な学術的サポートをしていくということです。これは歯科医師会だけではなく、学会や大学とも連携しながらということを考えております。

 最後のスライドを御覧ください。これは最初から第三者評価機構が有りきの議論ではなく、私どもが考えているのは、まず一番右側を御覧ください。今、数々申し上げた歯科専門性に関わる諸課題の解決に向けた検討のテーブルが必要だということで、「協議会」と書いてあります。このような協議会の設置をしたいと思います。構成員としては、日本歯科医学会連合、日本歯科医師会、歯科衛生士・歯科技工士の国家試験、資格、免許を扱っている歯科医療振興財団、それから、私立歯科大学協会があります。国公立の大学歯学部については、法人化はされていませんが組織としてありますので、そこも含みます。さらには有識者をお招きした協議会で、主に 3 点の議論が必要だと考えています。

 ただ長い期間で議論をするというよりは、もちろんスケジュール感をもってやりたいと思います。 1 つ目は、歯科医療の向上です。当然ですが、水準を高めるためにどういった研修が必要なのかです。先ほど専門官からお話があったように、研修の実施主体が様々でレベルが随分違います。より多くの歯科医師が幅広く、クオリティが高い研修を受けられるような研修の在り方、システムについて、そこで更に議論を深めていきます。

2 つ目が、先ほども出ましたが、現在の日本の歯科専門医制に係る課題、学会が抱えている現状の課題についても具体的な協議をします。

 それから、これらの点について評価する必要があるでしょうから、その評価する機能がどう必要で、どのようなシステムであるべきか、その運営の仕方までを含めたことを議論する。以上の 3 点については、このワーキンググループでも顕在化した課題がほとんどだと思いますので、引き続き具体的な検討を、スケジュール感をもってやるということです。更にその先に、第三者的な評価機構の設置があるのではないかと考えております。私からは以上です。

○西原座長 引き続いて、日本歯科医学会の今井先生からお願いいたします。

○今井構成員 歯科医学会から、歯科の専門医制度に関してこれまで歯科医学会が取り組んできた経緯並びに現状、さらに今後の展開あるいは展望について御説明させていただきます。

 資料 3 並びに机上配布の資料を御参照ください。まず、本邦における歯科領域の専門性資格の認定制度です。これは若干歴史的な背景になりますが、歯科における専門性資格の認定制度は、昭和 48 年に日本口腔外科学会が「口腔外科専門医」制度を作ったのが最初です。その後、歯科領域の各専門学会がそれぞれの歯科医療を担当する歯科医師の育成を目的に、認定医あるいは専門医制度の運用を開始しております。平成 28 年現在、歯科医学会所属分科会では、専門分科会 21 分科会のうち 17 分科会、認定分科会 22 分科会のうち 21 分科会が、同制度を運用していることは、先生方も既に御承知のとおりで、これは資料の 1 番目を御覧いただければと存じます。

 これらの制度により、歯科医療・歯科医学の専門分化、深化が進められた一方で、認定基準あるいは研修プログラムに統一性がなく、多様な制度が乱立し、社会構造あるいは口腔疾病構造が変化する中で、必ずしも国民・患者の受診行動につながっているとは言えない状況にあるとの指摘があります。ここの点については、我々は真摯に向き合わなければならないと考えているところです。

2 番目に、認定医・専門医制協議会です。これは、現在「専門医制協議会」と名前が変わっております。平成 14 3 月に厚生労働省の告示 158 号、告示 159 号により、平成 14 4 1 日付けで医療機関の広告規制が緩和され、医師又は歯科医師の専門性に関し、告示で定める基準に満たすものとして厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定する資格名が広告できるようになりました。これも先生方が御承知のとおりです。

 これを受けて、かねてから各専門分科会における認定医・専門医制度について検討を行ってきた日本歯科医学会は、この規制緩和の一環であるこの件への対応を図るために、平成 14 7 月に医学領域の専門医認定制協議会の酒井先生、杉本先生をお招きし、専門性資格の広告等について講義をしていただき、学びました。その後、日本歯科医師会、日本歯科医学会、日本歯科医学会専門分科会の第三者懇談会を開催し、「認定医・専門医制協議会」の立上げを決定したところです。この協議会は日本歯科医師会、日本歯科医学会、ここには専門分科会を含みます、並びに有識者からなる三者構成として、当分の間は日本歯科医学会の内部機関として活動することにしております。本協議会は厚労省への専門性資格認定団体の申請に当たり、事前審議の体制で審査に当たるとし、重要な役割を果たしております。この制度は現在も継続して運用しているところです。

 このような中で 3 番目です。平成 17 年に専門医制協議会による専門医制度のグランドデザインというものを策定しました。前項で示した厚労省告示による広告可能な専門性資格制度の導入から 3 年経過したところでまとめられました。内容としては、歯科医療の専門医制度の概要と、その実施のための基本原則を示すものと策定され、専門医制度に関わる組織図、専門医の名称、専門医の定義と移行措置を含む内容です。資料 7 を御覧ください。細かい内容については後ほど資料を御覧いただければと存じます。時間が限られていますので、先に進みます。

 続いて、広告可能な歯科医師の専門性資格名と申請状況です。平成 28 4 月現在で、先生方も御承知のとおり、歯科での専門資格は 5 つで、日本口腔外科学会、歯周病学会、小児歯科学会、歯科麻酔学会並びに歯科放射線学会です。

 続いて、 5 番目の歯科医学会専門医制在り方検討委員会の打合せにおける検討です。これは、評価する歯科医療から評価される歯科医療への転換を目指したものです。平成 22 4 月に、この歯科医学会専門医制在り方検討会打合せ会が開催されました。これまでに 4 回開催しております。これは前項に記載した、各専門学会における広告可能な専門性資格認定団体の申請状況や国民視点の歯科専門医制の在り方について、「評価する歯科医療・評価される歯科医療への転換」の切り口から、現状の専門医制度の問題点とその打開策、さらには学会・大学主導型、学会主導・地域連携型、地域主導・学会協力型の 3 つの専門医の分類 ( ) に基づき、定義、分類例、施設・設備、備品、患者の評価、患者の移動、配置、一般歯科医の期待・評価、競合、保険制度上での優遇制度、学会に要求される対応並びに広告の各項目の整理を提示しました。

 この取りまとめられた専門医制度 ( ) については、現在継続審議となっております。この内容については、参考資料 8 を後ほど御参照ください。

 続いて、厚生医政局長への「歯科専門医の在り方に関する検討会」設置要望の提出です。平成 23 年度に厚生労働省内に医科の「専門医の在り方に関する検討会」が設置されました。それらは平成 25 4 月に報告書にまとめられているものです。内容については先生方は既に御承知のとおりですが、歯科において、前項までにお示ししたように、日本歯科医師会、歯科医学会、有識者により構成される日本歯科医学会専門医制協議会で歯科専門医の在り方を検討してきました。現行制度の抱える問題を踏まえて、改めて国民の視点に立った上で、歯科医療の一層の向上と適正化を図るために、厚生労働省内に検討会を設置し、歯科医師の専門性の在り方について幅広く検討を行うよう、日本歯科医師会と歯科医学会の両会長名で、医政局長宛てに要望したものです。要望書は参考資料 9 です。

 さらに 7 番目です。平成 27 7 月に、日本歯科医学会内に歯科医学教育・生涯研修協議会の委員会を設置し、その委員会へ様々な諮問を行っております。すなわち、以下の 4 項目です。 (1) 日歯会員に対する生涯研修システムの構築、 (2) 総合歯科診療専門医 ( 仮称 ) 研修カリキュラムの作成、 (3) 卒前教育における医科歯科連携に必要なキーワード・リストの作成、 (4) 歯科漢方医学教育カリキュラム案の作成。詳細は時間の都合で割愛させていただきますが、このような作業内容を諮問し、答申を待っているところです。

8 番目ですが、現在この資質向上に関する検討会「歯科医療の専門性に関するワーキンググループ」での検討がなされているということです。

 最後の所に、これまでの経緯を経時列的に並べてあります。一番下の欄を御覧ください。これは 4 1 日付けで、 43 学会からなる法人格を要する日本歯科医学会連合が立ち上がりました。今後、ここで歯科の専門性に関わる検討会を設置し、これまで日本歯科医学会で検討してきたグランドデザインをはじめとした内容、医科の専門医制度、そして今回の日歯からの提案、さらに本ワーキングでの内容を整理し、歯科の専門性として望ましいシステムを作り上げていく計画を持っているところです。以上です。

○西原座長 最後の A3 の紙を見ると、今井先生にお話いただいたことの全体像が見えると思います。お二人にそれぞれのお立場からお話をしていただきました。この後、資料 1 に戻らせていただき、報告書という形での議論に進みたいと思うのですが、まず、この全体像を捉えるという観点から御質問、不明な点など、幾つか構成員の発言をお受けしたいと思っております。いかがでしょうか。

 座長の立場ですが、私から 1 点お尋ねします。 A3 の紙の下に、平成 28 年から平成 29 年の連合としての活動のことが書かれていますが、一方で歯科医師会でも、「評価」という言葉を使われています。運営の面も含めて、教育機関も含めたグループによる運営を目指す、その運営となる事務局の労力もかかわってきますから、歯科医師会はその労を取るという意味も含めて、これを出されている。この 2 つの間の組織での基本的な考え方は、同じと考えてよろしいのでしょうか。

○今井構成員 これまでにも日本歯科医師会と歯科医学会あるいは歯科医学会連合で協議を内々に進めてまいりまして、基本的な点では齟齬はないと考えております。

○西原座長 連合に関しましては、参加している各学会が一会員あたり 300 円の会費を納めています。連合の中でそれぞれの学会の専門医あるいは認定医を持っている組織の評価を行うとなると、これは利益相反という観点からも、少し気を付けなければいけないのではないかということ、専門性の評価に求められる開示性の高い組織下でということでは、難しい面があるのではないか。これは山口構成員からも投げ掛けがありましたが、その点について、現状を連合はどう考えているか、それをお答えいただけたら次の議論に進みやすくなるのですが、いかがでしょうか。

○今井構成員 連合の御理解が十分にされていないと思いますが、連合の立ち上げは医学会のものと全く同じで、日本医学会が医師会から 1 つ分かれた医学会連合というものを作られました。この経緯ですが、いわゆる安全医療機構あるいはこの専門医の問題について、独立した法人格を持たないと活動が難しいというところで、法人格を有するという経緯に至ったものです。ですので、いわば連合の今の仕事というのは、大きく分けると 2 つに絞られてくるわけで、集中してこの所で協議をしていくような計画です。ですので、先生が危惧されるようなことは、恐らく払拭できるのではなかろうかと考えております。

○西原座長 歯科医師会から何かございますか。

○柳川構成員 私のポンチ絵の最後のスライドですが、協議会で、あるいは「準備会」という言い方が正しいのかも知れませんが、様々な課題について、今、座長が指摘されたような課題についても、この前段の協議会で十分な議論をして、第三者的な機構の役割や、そこでどのような仕事をするのか、どういう運営をするかも、しっかり決めることだろうと思います。

○今井構成員 もう少し進んだ内容を少しお話させていただきますと、既に歯科医学会連合と日本歯科医師会で準備委員会の設立というところでは合意をして、それに向けての準備をしているところです。

○西原座長 双方の組織から「準備」という言葉が出てきましたし、私としては今まで A3 の経時列を見て、平成 14 年から 10 年間以上をかけての動きと、ここ 1 2 年の動きは法人の問題もありましょうし、ドラスティックに変わり得るとしたときに、是非このワーキンググループでの、国民目線での専門医とは何かと語り合い、問題点を抽出したことを尊重していただきたい。歯科医師会も連合も話合いをしていくということであれば、開示性の高い歯科医師会に出していただいている協議会、あるいは連合が中でやられている準備会議、これは歯科医師会に音頭を取っていただくなりして、幅広に運用していくほうが、国民にとってより理解しやすい歯科医療の展開につながると感じたところです。

 ただ、いずれにしても、今から各論の中の4でこの問題に触れさせていただきますので、もし構成員の中からこれ以上の御意見がなければ戻らせていただいて、資料 1 に基づいて話を進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○鴨志田構成員 日本歯科医師会の先生方に伺います。今日、御発表のあったスライド 8 「新たな歯科専門性のイメージ ( 試案 ) 」の右下の「日本歯科医師会の生涯研修制度の充実による支援」という部分と、左側の第三者機構等で作るような専門医療と離れているのですが、今、日本歯科医師会がやっている生涯研修制度と今回いろいろと考えている専門制度については、何かクロークスするようなことはお考えなのでしょうか。これが 1 つです。

 次に、資料 1 3 ページ、高田専門官が言ってくださった所で、私も正にそうだと思っているのですが、2の 2) の○の 2 つ目に、「国民が求める専門性と歯科医師が求める専門性は分けて議論すべきである」というまとめが出ているのですが、それを踏まえて日歯から御説明いただいたスライドの図の説明をしていただければと思うのです。

○西原座長 よろしくお願いします。

○柳川構成員 最初の点を御説明させていただきますと、先生が御指摘のスライドはまだイメージの段階ですので、幾つかハードルがあるということは考えております。つまり、新たな専門性を深めるとすると、この図の左側にあるようなものが必要だろうと。細かな細分化よりは、現在ニーズにあるようなものが必要だろうと。細かな細分化というよりは、現状のニーズにあるような、例示をすると医療連携、地域包括、在宅といった分野ですが、既にそれぞれの学会があり、そこを統合や改編をするというのは難しいわけです。ただし、そういった分野について、専門性の高い施設で新たな研修を受ける、そこに歯科の新しい専門医像があるのではないかということを考えております。

 一番右側の所は、そういったラインというか、そこに乗っていかない歯科医師のほうが当然多いと思いますので、そこはそれで歯科医療全般の向上のために現状の生涯研修制度などを活用しながら、スキルアップを図っていくというような整理を考えております。

 ただ、一番左側の部分については、今後は更に具体的な検討が必要だと考えておりますので、そこはいろいろな御意見を伺いながらということになると思います。

○西原座長 今のポンチ絵に関連して、移行期は新しく歯科医師になる人材と、既に地域で歯科医療をしている先生方を、切り分けて考えていかなければいけないという考えで、このポンチ絵を見ると少し理解しやすいのですが、もう一方で教育という観点でモデル・コア・カリキュラムが変わるのが誘因になると考えられます。モデル・コア・カリキュラムという観点でも大きく改編しようという動きをしている文部科学省の佐々木企画官には後で御意見を頂きたいところです。

 更に国家試験も変わっていく、そして臨床研修医も 10 年を経て、変えていかなければいけない時期にきているというので、後期 2 年目の研修医制度を導入をしている大学も幾つかあるわけです。そのような大学は人材のキャリアの道を少し広げようという努力をしているということも含めて、これは意見を共有して、それにつながる専門医あるいは生涯研修を準備会、協議会で語っていかないと、シームレスなものはできないのだろうと思います。

 ということで、文科省が進めている教育改革の今までの流れを踏まえて、佐々木企画官から御意見をお願いできたら助かります。

○佐々木企画官 ( 文科省オブザーバー )

今、柳川先生がご説明されたスライドをそのまま使いたいと思います。まず一番大きなポイントですが、スライド番号 7 4 番に、歯科医師のキャリアパスの構築とあります。これに、非常に大きく絡むわけです。西原先生から御紹介いただいたように、今回は 6 年ぶりのモデル・コア・カリキュラムの改訂になりますが、その大方針は、多様な歯科医療ニーズ、また学問としての歯学というニーズが多様化していく中で、それに対応できる歯学教育を行おうというものです。よって、この 4 番の歯科医師のキャリアパスの構築を見据えた形での卒前教育、ひいては卒前卒後の一貫性をきちんと担保しようということにもつながるわけです。ということは、今御議論いただいている内容は、反射的に将来、また生涯にわたっての歯科医師、研究者になる方も当然いらっしゃると思うのですが、それを見据えたときにどういう歯学教育を行うかということですので、まさに鏡の表と裏のような関係になるわけです。

 以上から、ここで御議論いただいて、一定数、この専門性、専門医のスキームに乗るということであれば、卒前段階からもそれを見据えたような教育になっていくということを、現在考えております。○西原座長 今御案内があったように、大学も少子化という状況の中で、需給問題にも関わってくることなのですが、変わっていかなければいけない。さらに、今、文部科学省補助金事業で行われている大学の機能別認承評価の機構づくりの最終段階に、今年度入っており、 29 大学で分野別機能評価を医学部に遅れて、を行おうという議論もある中で、歯学における大学教育は国家試験を通ればいいという教育から脱却して、次世代の歯科医療を担える人材は何かというのを考えて、 29 大学が一体感を持って話し合う時が来ているのだと思っています。そのような中で、まだつながりが見えてこないのが、既存の専門医制の問題です。さらに、次はもう少し歯科医師がより社会で患者、あるいは国民のニーズに応えられる人材になる、そのためには生涯研修を通じてどうしたらいいのかというのを考えながら、先程来出てきていた準備会でも協議会でも結構ですが、歯科会のオートノミーを効かせて、今年から行う第三者的機構、これは、新たに機構を設けるのではなく、歯学部の身の丈を考えて、どうしたらいいかということでも良いのですが、いずれにしても皆さんの御意見をお聞きしながら取りまとめたいと思っています。

 それでは、高田専門官が説明した資料 1 に戻っていただいて、まずは「国民が求める歯科医療の多様化に対応しつつ、安全・安心な歯科医療を提供するために必要な歯科医療の専門性について」について、御意見をお聞きしたいと思っていますが、どなたかいかがでしょうか。

○小林構成員 まず、今回の方向性案、総論について、一言述べさせていただきます。今までの会議の論点、並びに多様化し、なおかつ超高齢社会を迎えている日本の歯科医療のこれからの方向性を、非常にまとめたものだと私は感じております。今、座長が御指摘になった、国民が求める歯科医療の多様化についてですが、 1) 1 つ目の○の下の「在宅等における侵襲度の高い」という部分は、 2 行前の「高齢化の進展に伴い」という部分のほうが私としては重要だと思いますので、どちらかというと在宅というのにこだわらないほうがいいかなというイメージは持っています。ですから、これを削るのか、あるいは高齢化の進展の部分に比重を置いた方が、より分かりやすいのではないかとは感じています。

 それから、下の 3 番目の○です。これは今日の資料の確認事項にも出ておりますが、「歯科医師は安全・安心な歯科医療を提供するために、医療安全や感染対策等にかかる研究を受講し」ということですが、昨今の状況を考えますと、いわゆる薬剤耐性にする部分についても少し触れられたほうがよろしいかと思います。というのは、今、国のほうでも施策として、いわゆる薬剤耐性のアクションプランを打ち出そうとしている状況です。今後、やはり歯科医療に従事する者、並びに職員も含めての教育の中で、薬剤耐性、いわゆる AMR のアクションプランについての研修、並びに対応の必要性も、是非ここで加えていただいて、より歯科医療の安全性を高めるということで意識していきたいと思いますので、できれば追記していただければと思います。

○西原座長 今、 2 つ御指摘がありました。 1 点目の求められる歯科医師像についての表現については、在宅等とありますが、この辺りは少し私と事務局に一任いただいて、整えたいと思いますが、よろしいでしょうか。 2 点目の薬剤耐性のいわゆる AMR なのですが、歯科医院内での院内感染を、もう少し各診療医が地域で考えなければいけないということは 1 つの目標設定としては、必要ではないかとは考えております。これも、少し検討した上で、前向きに対応するということで、皆さんよろしいでしょうか。

○今井構成員 先生の御意見に異義はありませんが、これは感染対策等という所に包含されてくる問題だと思いますので、そこでその項目を 1 つ入れるということではなくて、感染対策等の中に組み込むということで、私はいいのではないかと思います。

○西原座長 表現の仕方になってくると思うので、それも御一任いただきます。ただ、院内感染については、基本的には薬剤耐性菌が出てきてからの問題を、歯科医師が余りにも知らなすぎるということを、教育をしていて私は常々感じております。血液検査をして出てきた、出てこないということにとどまっていてはいけないということから、少し工夫しながら入れていくということとします。よろしいでしょうか。

○伊東構成員  1) の最初の○の所で、今も小林構成員から出た質問ですが、「在宅等における侵襲度の高い歯科治療」という所が、少し引っ掛かるのです。これは、在宅医療に行って、侵襲度の高いことは余りしないでなく、むしろそういう場合は、病院歯科や歯科病院、次元医療というか、そういう役割分担をすることが必要だということを書くことのほうが重要ではないかと思いますので、考慮していただけたらと思います。

○西原座長 今の件に関しては、これからの時代の流れもあります。おっしゃるとおり、在宅において今では侵襲度の高い歯科治療は行っていない現状かも分かりません。ただ、今後を見据えた場合、まずはそれを見極めて、適切な対応ができることというのを書き加えた上で、今後の課題やテーマとして、このような書き方も必要かと思います。この辺りも整えさせていただきます。初期対応の問題は、書き加えさせていただきます。事務局、よろしいですか。

○鴨志田構成員 求められる歯科医師像の所で、これは私が普段開業していて求められていることかもしれませんが、 1 つは今の侵襲度の高い歯科医療やハイリスク患者への対応可能というような文言になってしまうかもしれないのですが、対応可能といいますと、麻酔の知識がなければいけない、外科の知識がなければいけない、緊急時の対応ができなければいけないと、そちらのほうにいくようなニュアンスを持っているのです。それも、もちろん必要ですが、我々はスーパーマンではないので、あれもこれも全部できるということはないわけですね。そういったときに、対応可能というニュアンスの中に、適切な専門医に送るとか、適切な内科医に送るということができる能力が含まれているという気がしていますので、別な良い文言があれば有り難いと思います。

 それから、この求められる歯科医師像全体の 1 つ目の○には、連携について余り書いてありません。先ほど申し上げたように、私たちはとてもスーパーマンではありませんし、歯科の分野も広いですから、英語で言うとゲートオープナーというのでしょうか。私の所で見付けた糖尿病の疑いがある人は内科に送る、あるいは必要のある人は内科の先生に代診を得る、あるいは必要な人には介護保険のケアマネージャーの紹介をするといった意味の連携ができる歯科医師が、私は今の時代求められている、そういう部分があるのではないかと思っています。何とかそういうニュアンスを入れていただけると有り難いと思いました。

○西原座長 今の点に関しては、 2025 年問題も含めて、他職種連携というのは、今の学生教育の場では普通になってきております。これは、○を 1 つ増やしても、うまく今のお三方の意見を入れて、初期対応の部分と治療に係る部分との書き分けは必要なのかもしれません。うまく、分かりやすいように、御意見を踏まえて、これは修正可能かと思いますので、そのような形にさせていただくということで、よろしいでしょうか。ほかに、何かありますか。

 この項目は、 1) から 3) 4) まであります。広い範囲にわたっておりますので、どなたか、よろしいでしょうか。

○高梨構成員 自己研鑽の所で、細かいことかもしれませんし、文言上は意味として入っていると思うのですが、歯科医のトラブルはインフォームド・コンセントが不十分であったり、インフォームド・コンセントの記録化が医科に比べて非常に遅れていて、そのために起きているケースが多いので、できればそのような趣旨のことを 3) 2 番目の○の所に、教育として必要であるという趣旨のことを入れていただけると有り難いかなと思います。

若しくは、患者の自己決定権の尊重などになろうかと思うのですが。

○西原座長 先生の立場の表現になるとですね。

○高梨構成員 そうですね。患者サイドからの視点では、そのような表現になります。

○西原座長 そのようなことは、確かにインフォームド・コンセントという言葉そのものでもいいかと思いますし、この辺りに入るかと思いますので、事務局で対応をよろしくお願いします。ほかに、よろしいでしょうか。

○南構成員 1の所の全部についてでよろしいのですね。

○西原座長 はい。

○南構成員 そうであれば、本日御欠席の山口構成員の意見書が先ほど御紹介されましたが、私も国民の立場から、山口構成員が言われていることには全面的に賛成です。特に、 4 番目に書かれているように、国民から広く求められている歯科医像というのは、ここに書き込まれていることに尽きると思っているのです。地域で活躍しておられる歯科の先生方のどこにでも、患者がアクセスする可能性があるわけで、強い要望としては、その先生方がひとりの例外もなく安全・安心な歯科医療を提供してくださる、ごく標準的な歯科医療を提供してくださる先生であるということです。なおかつ、今日的に言えば、医療安全や感染症対策といったことは、先ほど座長もおっしゃいましたが、余りにも当たり前なことなわけですね。ですが、現実にいろいろな事件や事故が起こってきてみると、こういうことが必ずしも全国の全ての歯科医師に徹底されているとは、言えない現状が残念ながらあるわけです。国民はここは安全だという明確な情報がほしいのだと思うのです。ですから、それはここで申し上げるべきかどうかは分からないのですが、先程来、縷々述べられているように歯科医師会も歯科医学会も大変丁寧にこれまでも検討され、努力を重ねてこられているので、その延長上として、ぜひ。ごく当たり前の安全・安心な歯科医療が提供できる歯科医師の質を担保していただくことを是非とも徹底していただきたいと。広告という言葉は余り好きではないのですが、宣伝とは違い、広く周知せしめるという意味の広告という形で、きちんと国民に分かるように示していただきたいのです。行く行くはマル適マークのような表示まできちんとつなげていただけないかというのが、国民の希望ではないかと思われます。

 余りしつこく申し上げるのもどうかと思うのですが、やはり私どもの立場からしますと、適正な質に達しない歯科医院が、たとえ 1,000 軒に 1 軒、 1 万軒に 1 軒であろうとも、そこで起こる有害事象というのは当事者にとっては 100 %なわけですから、これはやはり徹底をしていただくことが非常に大事ではないかと思っております。

○西原座長 山口構成員からは、意見書という形で各論も含めて出されています。今、南構成員がそれを括るような形で、国民目線で、国民が知り得る情報は知りたいという基本的な姿勢からも、やはり一定基準を達した診療は受けたいと、受ける権利があるということにもつながってくると思います。このワーキンググループは、やはり国民目線という、そういう意味で語り合ってきたのだということを踏まえて、後で語る機構準備委員会では、それを重要視して行っていただきたいということを、できるだけ文言に表していくということで記録に残したいと思います。

○高梨構成員  3) 2 番目なのですが、もう 1 点、専門的なこととは関わらない一般的な話になります。やはり歯科のトラブルが起きたら、当然どういう診療がなされたかをレビューするわけです。ただレビューをするときに、保険診療のカルテでさえ SOAP システムで書かれていないために、患者の主訴が書いていないものが多くて、このときにこう言った、患者はこう言った、いや、歯科医はそういう話は聞いていないというトラブルは、すごく多いです。レビューをしたときに、評価ができないのですね。私の理解では、カルテ本来の機能としてはそれでは駄目なのではないかと思います。

 それから、特に自費診療のカルテは非常にプアーで、特にトラブルを起こす先生のものをよく私が見るからかもしれませんが、プアーなカルテしか残っていなくて、極端なことを言うと幾らお支払いしました、クレジットカードで決済しましたというようなことしか書いていないようなものもあります。やはり、診療過程の記録化というのは、患者にとっても、後でどういう診療が行われたのかという共有認識をつくるためにも重要です。

 もう 1 つは、カルテの記録は、歯科医の立場の方から見ても、私はきちんとこういうことをしたのですよということを、きちんと事後的に証明できる手段として重要なのです。しかし、それが現在医科に比べると非常に残念な状況になっていますので、その辺りの改善を一般論として入れていただきたいというのは、お願いしたいです。

○西原座長 その問題は、今回の専門性に直接関わってはこないのですが、厚生労働省の関わるもう 1 つの部分の歯科医療のレセプトの指導等も含めて、その辺りの体制への話になってくるかと思います。事務局で、今の点について何かありますか。今の高梨構成員に対する適切な回答があれば。

○田口歯科保健課長 直接的な御回答になるかどうかは別として、ここには医療安全や感染対策などが書かれております。ここの関係法規等の部分には、先ほど高梨構成員からありましたが、健康保険法の中で例えばカルテの記載の位置付けや療担規則等に書かれているようなものも、多分含まれているのだろうと思います。今お話があったように、もう少し個別、具体的に書くべしという話であれば、書き方の工夫を考えさせていただいた上で検討したいと考えております。

○高梨構成員 ありがとうございます。

○鴨志田構成員 今の高梨先生のお話で、対象になるかどうか分からないのですが、一応お話だけさせていただきます。今般 4 1 日から、医療保険で、かかりつけ歯科医機能の強化ということが大きくうたわれ、かかりつけ歯科医を後押ししてくれるような点数配分に、私は一般の開業医ですから、そう理解しております。ここに田口課長がおりますので、よく御存じかと思います。その専門性の議論の中に、かかりつけ医の機能強化というようなことが少しリンクするのか、全然関係なくやるのかというところが今疑問に思いましたので、御相談というか、意見として出させていただきます。かかりつけ医機能について、専門性のほうでは少しは言及があってもいいような気がしているのですが、いかがでしょうか。

○西原座長 前回のこのワーキンググループでも、その問題は出ております。ただ、今外形基準としてのかかりつけ歯科医の形はできて、それをどう専門医につなげるかに関しては、議論が足りていないと思っております。したがって、表現の仕方は難しいのですが、言葉として書くか、書かないかに関しては、私座長と事務局に一任いただくということで、よろしいでしょうか。

 では、次の大きな項目の 2 番目「歯科医療の中で既に位置付けられている専門医 ( 広告できないものも含む ) 」とありますが、どのように考えるかということです。これは、今連合が取り組むべき重要な案件ということで、先ほど今井構成員から、歴史的な経緯も語られたところです。このワーキンググループとしては、 2) 2 番目の○、国民が求める専門性と歯科医師が求める専門性は分けて議論をすべきであるという、アカデミアとしての団体が専門性を求めるということは、歯科医学、歯科医療の進歩にとっては不可欠ですから、当然求められるべきものです。しかし、それを国民にどのように反映させるかという議論を今後すべきであるという言葉に、この○は置き換えていいのかと思っております。ここの構成員の方々には共通認識を持っていただいた上で、少し現実論を踏まえた書きぶりをしている、全ての歯科医師が 1 つ以上の専門医を取得すべきというものを現時点で考えて、このような表現にしている経緯もあります。

 既存の専門医ですが、少し日本歯科医学会の先生方と話をしていく中で、今後の方向性として、 1 学会が 1 専門医を出していらっしゃいます。今の歯科医療を取り巻く環境が変化していく中で、少し多様性を考えてグループ化をして統合化をしていくということが、歯科医師会からのパワーポイント原稿の中にも出ていた言葉です。その辺りについて、連合としては取組が可能かどうかというところまで、少し踏み込んで回答を頂ければと思いますが。

○今井構成員 大変難しい問題で、正に歯科医師が求める専門性と、国民が求める専門性の乖離をどのように調整するかになると思います。やはり、歯科医学という学問、アカデミアとしての専門性を求めるものについて阻害をする、自由なアカデミアの行動、活動を阻害することは、あってはなりません。そこを考えながら、しかしながら国民から、繁雑な情報等に適切な判断ができないという批判があるようですので、その点については専門医制度を踏まえて、連合組織を作るというようなことを、検討しております。

○西原座長 この点についての資料 1 の取りまとめは、 4 ページの最上段の「専門医の養成の在り方については、学会間での相互認定等も含め、学会や歯科医師会等で検討されるべき」という表現になっております。正に、ここにグループ化をイメージした表現が書かれております。これで今、今井構成員からは、方向性としては問題ないということのようですので、このような形でいかせていただきたいと思っております。よろしいでしょうか。何かありますか。

○高梨構成員 2の 1) 4 番目の○の所で、「第三者組織にこだわらず」というのは、前回私が発言させていただいたところでもあります。結局、第三者組織を作ったのは、中立、公正専門医認定の中立、公正性の担保という手段であって、第三者であること自体が目的ではないはずなのですね。ですから、中立、公正性の担保の必要性と、迅速、かつ実現可能性のあるシステムのバランスの中で、この問題点は議論していくべきことです。中立、公正性の担保の必要性があるということを前提にした文言が、ここに少し入っていたほうがよろしいかなと。第三者組織といっても、山口構成員からも御指摘がありましたが、第三者であればいいのだよねということではないので、そういうことが独り歩きしないように、中立、公正性の担保の手段として第三者機関、ないし外部委員を入れて中立、公正性の担保の手段を取るなどの書き方にしていただいたほうが良いという気がするのですが。

○西原座長 法律的な判断を含めての中立を示す言葉の挿入ですが、これは可能かと思うのですが、事務局で検討をお願いします。ただ、一方で、今現実的に第三者機関を新たに作って動かないのを議論してもしょうがないだろうという現実感が、もう一方で高梨構成員からありました。これは、今日の総論の冒頭で少し歯科医師会が踏み込んだポンチ絵で構成図を書いていただいていますので、 1 年を目途ということも含めて、私としては親委員会にいい形でこのことは伝えていきたいと思っています。議論していても、今はもう駄目ですよという時代になったということを、報告書の中に取りまとめたいと思います。高梨構成員、それでよろしいでしょうか。

○高梨構成員 はい、ありがとうございます。

○南構成員 今の高梨構成員の言われたことともほとんど同じことだと思うのですが、議論に窮すると日本では大体このような審議の場でよく出てくる言葉は、「第三者機関」とか、「連携」というキーワードです。第三者機関なるものが金科玉条のように位置付けられてしまうことが、ままあるわけですね。ですから、やはりこれは外形的なことではなくて、今、高梨構成員が言われたような精神を是非書き込んでいただきたいと思います。実際に、今日冒頭で御説明がありましたように、各歯科医師会、歯科医学会の専門家の方々が、これからも十分議論を続けて行かれるのですから、やはりそこに中立的な公正な視点を入れていただければ、それでいいのだと思います。

 前後しますが、これまでにも再々申し上げてきたことです。今、世の中で目に触れる余りにも多い歯科の専門医があります。国民のリテラシーというものも問われるところかとは思いますが、とはいえ放置もできない。学問的な研究の自由や真理の探求などを押さえていただく必要があるわけではありません。国民の期待はそういったものにもかかっているわけですから、学問の進歩や研究の進展に大きな期待が寄せられていることも事実ですから、そこは全く臆することはないと思うのです。ただ、それとは別に、国民の目に見える歯科医療の表示なり、掲示なりについて、是非、質の担保と併せて議論していただきたいということかと思います。

○西原座長 先にお帰りになるということで。全般の中立、公正というのは、最後の大きな括りの4に、関係団体による協議ということで申し送り的なところがありますので、ここで表現できるかと思っております。

 もう 1 つは、今、数多くある専門医が国民にとっては混乱を招くということがあれば、歯科医のほうもやはり損ではないですかというエールで受け取りたいなと思っております。お互い、医療を提供する者、提供される国民との間のコミュニケーションをよくするために、この専門医制をどうするかという議論を今後も展開していくべきだと、私自身も思いますが、これもつないでいきたいと思っております。ほかに、よろしいでしょうか。

 それでは、 3 番目の大きな項目に入ります。 4 ページの、専門性についての情報の在り方の点で、 3 つ挙げております。このワーキンググループの 1 2 回目で、専門医官に来ていただいて、広告と標榜の問題については御案内いただいているので、ここの出席者の構成員は十分分かっているところだとは思っているものの、まだまだ今のままではなかなか国民が分かりにくい面があることも確かです。そこで、このように 1) 2) に分けてなるべく分かりやすくしたつもりではありますが、忌憚のない御意見を頂きたいと思います。これは、厚生労働省の今後の動きにもうまくリンクしていければということですので、何か私どものこのワーキンググループで拾わせていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

○小林構成員 現状につきましては、この括り、あるいはこの判断で致し方ないと思っておりますので、この方向でまとめられてもよろしいかと思います。ただ、中立、公正性のある評価機構が認めた新しい専門医というものが今後決まっていけば、その専門医は全て広告可能であり、なおかつ国民に対して担保を持って出すような形で決めていいと思いますので、是非、その方向でもし書き加えるものがあったら書いていただければと思います。以上です。

○西原座長 私自身もそれは納得するところですので、少しお預かりさせていただきます。ありがとうございました。

○高梨構成員 今、小林先生からお話があったのとほぼ同じなのですが、結局、良か悪かを区別することができない問題をどうするか。それは少し前に南構成員がおっしゃいましたが、国民側がリテラシーを上げることが重要になります。そして、国民側がリテラシーを上げるためには、プロフェッションのほうからの情報発信、こういう歯科医を選んでくださいという情報発信をしていくことが必要です。例えば、私の経験では、私が関わったあるレーシックの大きなトラブルに関しては、そのとき日本眼科学会がレーシックとはこういう手術です、眼科専門医のいる医療機関で受けてくださいということを国民に広く周知する努力をしたことで、少し 1 回落ち着いた時期がありました。歯科医の専門性についてなぜ宣伝を規制する必要があるかというと国民がちゃんとした専門性の高い歯科医の方にアクセスできるようにするためです。しかし、宣伝の規制しても破る人もでてきます。す。実際、ホームページについてのガイドラインが機能していないことは否定し難いのではないかと思います。ですので、この問題を解決するためには、プロフェッションの情報発信があって、市民の側がその情報発信を受け止めて、市民がそれでリテラシーを上げていって、この歯科医院のホームページにこう書いてあるけど、これはちょっとどうか、信用できないのではないかと国民が判断できるようになることが必要なのです。そして、専門医制度がちゃんと完成した暁には、これは信用できる専門医の歯科医の先生だから、この歯科医の所へ行こうかと、国民が判断できる体制にする。そのためには広告だけではなくホームページまで規制を広げることが必要であり、、プラス、プロフェッションによる情報発信、市民側のリテラシーの向上が必要です。そのようにして国民が自らの歯科医療に対するニーズに則してきちんとアクセスができる体制をつくることが、私は一番望ましいと考えています。そういうスパイラルを作ることが最終的な目標ではないかと思っています。抽象的な物言いで恐縮ですが、そういうことの一環として広告ないしホームページの規制があるというものを目指していくことを、難しい言い方で恐縮ですが、文章を考えろと言えば考えますので、それをお酌み取りいただいたものにしていただけると有り難いと思います。

○西原座長 効率優先な専門医性ができた暁にはということになりますが、プロフェッショナリズムとリテラシーの問題は、正直なところ、学生レベルでは教えているのです。しかし、まだ制度設計が追い付いていかないのと、出てからの現実の世界でまた変わってくる。ですから、これは繰り返し繰り返し教育していくしかない、生涯研修の肝になる 1 つだと思いますので、是非、文言のほうで整えて参考にさせていただけるかもしれないという程度でというのが今のお答えになるのですが、お忙しい中よろしければ文章の整えをお願いいたします。それでは 3) もよろしいでしょうか。どうぞお願いします。

○伊東構成員 広告が可能な専門医の中に、歯科放射線とか歯科麻酔が入っているということで、これは国民に向けての広告というよりも、むしろ歯科医師同士の中でこの先生は歯科麻酔が専門だよ、歯科放射線が専門だよというグループではないかと思うのです。これが国民に向けての広告可能な所にこれが入っていると違和感があります。そして、国民に向けての診療の標榜科名には、むしろこれまで議論の中でいろいろ出てきたインプラントとか、そういうものが入っていないという、ここで話されたことと現実とがいつまでも噛み合わないままで、専門性を考えるワーキンググループ会議が終わってしまうのではないかと心配します。これを継続して、国民に向けてちゃんと公表できるような形に仕上げないといけないのではないかと思うのです。そういうのは今度の新しい連合の中で討議されていくのでしょうか。それが 1 つです。

 もう 1 つは、もし経緯が分かるのであれば、歯科放射線とか歯科麻酔がなぜ広告可能に入ったのか、国民にとって余り関係がないようなものがそこに入ってしまったのか、どなたか御存じだったら教えていただきたい。

○西原座長 まず、前半の矯正、インプラントという具体的な提示があった件に関しては、専門医制が出来てきている中で、やはり、学会が重なり合ったり、重複していたりしている。つまり、インプラントに関連する学会が 2 つぐらいあって、これこそ相互乗り合いでうまく話をして、プロフェッショナリズムに基づいた教育プログラムを作り提示をし、そして評価制度を作るということが必要な時期に今来ているのかもしれません。この辺は過去の経緯を踏まえて、次に向けてどうアクションを起こすかということで、連合が考えるべき問題の 1 つなのかもしれません。

 それより先に、私自身も小児と放射線が入ってきている経緯について、この間説明があったかと思うのですが、専門官から簡潔に説明できますか。

○高田歯科口腔保健専門官 広告可能な医師の専門性についてというのは、大臣告示で設けている外形基準をクリアしたうえで、国民の受診のためになるか否かというのは、各学会が各々考えて提出するという形です。また、外形基準、つまり、法人格を有しているか、会員が 1,000 人以上いるかという形については評価をしますが、その内容については日本歯科医科学会、日本歯科医師会などの御意見を聞きながら評価をしているところで、原則は外形基準のみで評価をしております。

○西原座長 法的な対応と実質的な対応は、今後やはり専門性をより良くしていく過程で避けられない議論だとは思います。今、キャンセルすることもなかなか難しいというのが現実かと私は理解しておりますが。

○伊東構成員 ただその外形基準を満たせばいいということであれば、矯正にしろ、インプラントにしろ、少なくとも私たちが目にしている外形基準は満たしているのではないかと思いますが。

○西原座長 この議論を今ここで整理できないのですが、そのためにはやはり最終的に意見を述べている、元で言えば歯科医師会並びに日本歯科医学会の認定に関わる方たちが開示性をもって、どうして駄目なのだよということを言わなければいけなかったのではないかと思います。先生がおっしゃるように、もし不思議感を持つ臨床医が多いとしたら、それは問題だと思います。

○伊東構成員 是非、そういうものを書き残して、次につないでいただきたいと思います。

○西原座長 直接的には専門性には関わらない問題ですが、現実な問題ですので、この報告書にはそぐわないかとは思いますが、全体の報告の中で機会があればということで、この場は納めさせていただいてよろしいでしょうか。

○今井構成員 先生、連合に対する御質問がありましたので、簡単にお答えします。連合が今後立ち上げて委員会の中、あるいは協議会の中で検討しようというところには、やはり、 1 つは専門医を必要とする分野か否かということも含めていかなければいけないと思っております。したがって、そういうふうなところは当然議論の俎上に上がると連合では考えております。

○西原座長 ありがとうございました。ほかによろしいですか。それでは、関係団体による協議という4、 5 ページになります。ここに関してはアンダーラインを付けて、やはりスピード感を少し強調するという観点、あるいは中立公正という言葉をここに加える形にはなりますが、より国民目線でも理解され得るものを目指すのだということを表わしていると思っております。

 今、柳川構成員は退席されて小林構成員は残っていらっしゃいますが、歯科医師会がリードオフをとっていくことに関しては持ち帰っていただいて、是非、前向きに御検討いただきたいと思っておりますが、その点について御意見はいかがでしょうか。

○小林構成員 スピード感を持って検討を進めていくことは、もちろん大切だと思っております。ここに今協議すべき内容、列挙されている部分については喫緊の課題でもありますので、精力的に議論を進めていくということで、現時点では一応お答えとさせていただきたいと思います。

○伊東構成員 この1の部分の「在宅等」の表現をよろしくお願いいたします。

○西原座長 ほかに構成員の中から協議体に関してありますか。

○伊東構成員 もう 1 つお尋ねですが、日歯の資料の 8 番の左側に書いてある「専門性の高い施設における研修 (4 ) 」と書いてありますが、これについてはどんなところを想定しておられるのですか。

○小林構成員 概念としては、大学の総合診療科であったり、あるいは独立型の臨床研修施設を持っている病院の研修施設と思っております。ただ、今後内容的にどういう部分が必要なのか、あるいはそこだけで全ての研修を終えられるとは思いませんので、そこを中心として、また臨床研修と同じように協力型にするのか、あるいは各学会の講習会を受けるとか、いろいろな方策が考えられます。基本的に所属については、大学あるいは病院ということを概念としては思っております。

○西原座長 多分、今、お答えにくいのは、外形基準だけではなく、内容も加味して、今まで我々がここで議論してきたことももちろん踏まえていただくということになれば、規模等々も少しフレキシブルになるということではないかと思います。現実的に機能して、評価に耐え得る、そこの部分がこのポンチ絵の中には出ているのかと思っております。小林構成員、そういう考え方でよろしいですか。

○小林構成員 ありがとうございます。

○西原座長 小森構成員、全体を通じて何かありますか。

○小森構成員 私はもう随分たくさんお話をさせていただきましたし、御参考にもしもなったとしたら大変有り難いということです。医科についての御質問等がありましたら、構成員ですが、アドバイザーというか、医科としての場合はどうですかという立場です。

 感想を述べさせていただくと、医科でそういう動きがあったので、歯科でも急いでこの議論をしなければという、大変御無礼ですが、少し前のめり的な御発言が当初あったような印象がありましたが、先生方は着実で冷静で、そしてしっかりした足取りをとっていこうと。また国民の方々にも見える形でということで、私は最後の取りまとめについては、全体の方向性については、何ら異論はないということを日本医師会を代表してお話をさせていただきたいと思っております。

1 点だけもしも申し上げるとしたら、広告可能な専門医の問題については、御承知のように平成 14 年の大臣告示です。この議論は社会保障審議会医療部会で平成 13 年から平成 14 年にかけてかなり水面下でも、また平場でも非常に激しい議論があったということです。ある意味、非常に問題点は大きいが、その時点でのある種の政治的、あるいは全ての関係性で納得ができる 1 つの合意点であったということであって、決して理想的なものだということは私どもは全く思っておりません。したがって、医科における専門員の仕組みに関する検討の中でも、広告可能な専門性についての議論があったということです。

 逆に言いますと、今、外形基準であるので、その外形基準を認めたら全て認めるべきではないかという議論の方向性ではなく、この議論そのものをもう一度きちんとやり直すべきだろうと整理をしております。医科で言いますと、現在 56 で広告可能な専門医というものを認めておりますが、実は、先ほど申し上げた理由から言いますと、恐らく現状で 100 150 という数になっていると思います。医科の全体の合意として、この議論には非常に問題があるので、駆け込みでみんな入ろうということはもう差し控えましょうと。もう一度立ち止まって議論しましょうという気持ちで今議論しているということですので、御参考になればということです。ありがとうございました。

○西原座長 これまで時間を割いていただいて、発表までしていただき、本当に小森先生ありがとうございました。

 今回、各論としての 4 項目です。様々な御意見を頂きましたので、これをまとめる形で 6 月に予定されている親委員会に報告してまいります。ただ、今までの専門性に関する議論は、いろいろ国民に誤解を招く要因になったという観点では、スピード感がなかったかというのが実質タイムラインを見ても感じるところです。先ほどお願いしたところの関係団体、学会、大学、あるいは有識者という意味、あるいは中立、公正という意味での第三者を加えた協議の場を速やかに設定して、このワーキンググループの議論を活用した形でまとめていく、次へつなげていくということを、少し強調させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 なお、今日、様々な発言を構成員からいただきましたが、その最終的な論点の整理については、私と事務局に御一任いただく形が現実的かと思いますので、よろしいでしょうか。皆さんに御理解いただければそのようにさせていただきます。それでは 5 回目の会議の主たるものは終わったかと思います。一度事務局に戻させていただきます。

○和田歯科保健課長補佐 構成員の先生方、活発に御意見を頂きましてありがとうございました。先ほど座長から御発言がありましたが、本ワーキンググループの方向性については、座長と御相談させていただいて、取りまとめた内容を歯科医師の資質向上等に関する検討会に御報告させていただきたいと思います。事務局からは以上です。

○西原座長 ありがとうございました。私は 5 回座長を務めさせていただきましたが、様々な御意見を頂き、私自身も教育という観点で大学にまた戻り、励みたいと気持ちになった次第です。国民のための医療ということで真摯に御議論を頂いたことに改めて感謝を申し上げて、今日、この会を終わらせていただきます。ありがとうございました。


(了)

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