ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会・援護局(社会)が実施する検討会等> 生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会> 第2回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録(2016年10月6日)




2016年10月24日 第2回生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会議事録

厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室

○日時

平成28年10月24日(月)15:00~17:30


○場所

厚生労働省 省議室


○出席者

宮本 太郎 (座長)
相澤 照代 (構成員)
(代理:加藤弘参考人)
朝比奈 ミカ (構成員)
大津 和夫 (構成員)
奥田 知志 (構成員)
菊池 馨実 (構成員)
櫛部 武俊 (構成員)
生水 裕美 (構成員)
田中 弘訓 (構成員)
長岡 芳美 (構成員)
西岡 正次 (構成員)
野溝  守 (構成員)
前神 有里 (構成員)
森脇 俊二 (構成員)
山本 英紀 (構成員)
渡辺 由美子 (構成員)
渡辺 ゆりか (構成員)
和田 敏明 (構成員)

○議題

(1)自立相談支援事業のあり方について
(2)就労支援のあり方について
(3)その他

○議事

 

○金井課長 それでは、定刻より若干早いようですが、皆様方、お集まりですので、ただいまから第2回「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、本日の構成員の皆様の出欠状況について報告いたします。駒村構成員、新保構成員から欠席との御連絡をいただいております。また、相澤構成員につきましては、代理として川崎市健康福祉局生活保護・自立支援室担当課長加藤弘様に御出席いただいております。なお、菊池構成員は若干遅れるとの御連絡をいただいております。

それでは、議事に移りたいと思います。以降の進行につきましては宮本座長にお願いいたします。

○宮本座長 皆様、お忙しい中を第2回の検討会にお集まりいただき、どうもありがとうございます。早速、会議を始めさせていただきます。

 前回、御都合で出席いただけなかった生水構成員、前神構成員、山本構成員がいらっしゃっております。御活動の中身も含めて、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。

○生水構成員 皆さん、こんにちは。滋賀県野洲市市民生活相談課の生水と申します。よろしくお願いいたします。

 この生活困窮者自立支援法は、生活保護とか介護保険といった法律のように単体で運用する制度ということよりも、さまざまな制度とコラボして組み合わせることにより、効果的な運用ができる法律であると感じています。例えば野洲市では平成274月より債権管理条例を施行していますが、この中に、生活困窮者ということがわかれば、債権の放棄や執行停止ができることを明文化しました。また国民健康保険税を滞納して資格証明書になってしまっている方の中で、生活困窮者自立支援法における自立相談支援の相談対象となる方については、短期の健康保険証を交付することを可能とした要綱変更をし、相談者の発見の仕組みを作りました。

 また、保育園の待機児童の問題を解消するために、市が無料の職業紹介をとりまして、保育士等の就職希望者のニーズと保育園のニーズをマッチングさせる仕組みをつくりました。このときにハローワークと一体的に実施している生活困窮者の方々の就労支援と組み合わせて、より効果的に相談者のニーズの発掘につながるようにしています。

 こうしたことから、生活困窮者自立支援法はさまざまな制度とコラボして組み合わせることでより効果的な活用が出来る新しい形の法律だと思うところから、制度の見直しについてはより柔軟に、そしてよりしなやかな改正ができればと願っています。

 1つ、御紹介させてください。野洲市では、野洲市くらし支えあい条例をつくりまして、今年の10月1日から施行しております。平成23年のパーソナルサポートサービスモデル事業から現在まで生活困窮者支援として包括的な取組を進めてまいりましたが、相談を受ける中で、生活困窮というのは経済的困窮だけではなくて、社会的孤立の方々の御相談が非常に多くあります。そこで条例において、経済的困窮のみならず、社会的孤立についても支援の対象者として位置づけました。市や支援者、関係機関が安心して支援できる仕組みづくりを条例の中にうたって、地域づくりも含めてやっていくところであります。

 以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

○宮本座長 ありがとうございました。

 続きまして、前神構成員、よろしくお願いいたします。

○前神構成員 皆様、こんにちは。地域活性化センターから参りました前神有里と申します。よろしくお願いします。

 皆様のお手元に、一般財団法人地域活性化センターの事業案内と、ピンクの表紙のセミナーなどの案内、最後は表紙が1枚ついていまして、「人おこし 説明会資料」という資料を3点お配りさせていただいております。

 一般財団法人地域活性化センターは、昨年、創立30周年を迎えた財団法人でして、ひとづくり・まちづくり・しごとづくりなどをお手伝いしている財団法人です。その中で、この検討会にかかわりがあると思われるものを持ってきたのですけれども、ピンクの表紙のチラシを開いていただきますと、セミナーの御案内が入っております。生活困窮者自立支援とくらしを支え合う仕組みづくりということで、タイトルが未来への戦略会議という名前にしておりますが、こういう担当部署で働いている人だけじゃなくて、地域の中でいろいろなかかわりを持って、生きづらさを抱えている人が少しでも生きやすくなるような取り組みができないかということで、セミナーを実施したりしております。

 あと、人おこし事業のパンフレットは、私どもで実施しているものではないのですが、総務省の制度で地域おこし協力隊というものがあります。主に過疎地域を中心に若者が地域活性化のために移り住んで、いろいろな取り組みをするという制度です。そういう制度からも、人おこしという事業を始めている人が生まれてきたりして、地域の中でいろいろなサポート体制が制度以外のものでたくさんできております。そういう人材を育成していくのも活性化センターの事業としてやっておりまして、皆さんに御紹介ということで持ってきました。

 どうぞよろしくお願いします。

○宮本座長 ありがとうございました。

 それでは、山本構成員、よろしくお願いいたします。

○山本構成員 長野県の健康福祉部の山本と申します。

 県の立場ということで、町村部を中心に、当該地域の近隣の市と連携しながら生活困窮者の対策に取り組んでおるところでございます。

 よろしくお願いいたします。

○宮本座長 ありがとうございました。

 それでは、本日の議事に入らせていただきます。事務局から伺っている本日の議事、大きく2つあります。1つが、自立相談支援事業の現状と課題、あり方についてということになります。そして、2つ目が就労支援のあり方についてということです。

 これについて、事務局から御説明をいただくわけですけれども、それに先立って、座長として事務局にお願いです。委員の皆様としては、この制度をよくするために、御自分のそれぞれの御活動の中でいろいろ感じていらっしゃることをここで意見表明したいと思っていらっしゃると思います。しかし、どのタイミングで論点を出せばいいか、少しお迷いのところもあるかもしれません。したがいまして、この検討会全体で5回くらいの開催を予定していると理解しておりますけれども、これからどんな順番で、どういう論点が出てくるのか。そのことを簡単に御説明いただくと、今後の見通しがつきやすいのかなと思います。それを事務局から御説明いただきたいのです。

 加えまして、そうした次々に繰り出される論点をそのたびに論じることにとどまらず、これだけ多士済々で、多くの地域からたくさんの御経験をお持ちの強力なメンバーが集まっていらっしゃいます。もっといろいろな論点というか、あるいは議論の切り口というか、お考えになっていることもあるのではないかと思います。今日の論点の括り方を見ると、制度の柱に沿って整理されているように理解できるのですけれども、例えば高齢者とか子どもとか、いわば支援の対象ごとでありますとか、また、都市部、地方、地域の状況ごとにとか、いろいろな議論の括り方があるのかなと思います。

 そうした議論の柱の立て方をどこかで構成員の皆さんから御提示いただくということも、また可能であり、必要なのかなと思います。場合によっては、どなたかからのヒアリングとか実地調査の必要性も浮上してくるかもしれないと思います。

 まず、事務局から、これからの大体の議論の組み立ての予定などをお伺いして、その上で論点を御説明いただいた後の質疑応答の中で、私が申し上げた2番目、3番目の問題、つまり新しい論点、新しい切り口、あるいはヒアリング等、つけ加えるべき議論の中身等も、もしおありでしたら、構成員の皆さんからお話いただければなと思います。

 まず、本後室長、よろしくお願いします。

○本後室長 座長から御指摘をいただきました点ですけれども、まず、今回が自立相談支援事業と就労支援ということでございます。第3回、次回が1114日月曜日でございます。ここが家計相談支援事業、それから貧困の連鎖の防止という観点から、子どもの学習支援の事業など。それから、住居確保給付金、一時生活支援事業。座長から御指摘ございました制度という括りで見たときの事業を、このときに全てやっておきたいと思ってございます。多少盛りだくさんになりますが、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、第4回、これは12月1日を予定しておりますけれども、ここでは、横断的な論点で御検討いただきたいと思っております。例えば、生活福祉資金のあり方、それから、都道府県の役割、あるいは研修のあり方といったことについて御議論いただきたいと思います。座長の方からも都市部と町村とか、高齢者・子どもという切り口でという御意見もございました。構成員の皆様から、そういった御意見ございましたら、この第4回のときにできるだけ資料をお出ししながら御議論いただければと思います。

 第5回、ここまでが年内になるかと思います。第4回までで一周り御議論いただいた上で、二周、実際の論点はどういうところにあるのかということ全体を御議論いただきたいと思っています。そのときには、生活困窮者自立支援制度は地域づくりだということを柱で掲げていますので、そうしたことについてもあわせて御議論いただければと思っています。年明けに向けて、また論点整理の御議論をいただければと思っております。

 現時点で大まかなスケジュールは、以上でございます。

○宮本座長 ありがとうございました。

 全体で5回と申し上げましたけれども、それほど甘くないというか、もう何回かあるようでございまして、よろしくお願いいたします。

 それでは、本後室長の方から御説明ございましたが、このような切り口、論点もあり得るのではないかということ。この後の質疑応答の中でも必要をお感じでしたら、どうか御自由に御提起いただければと思います。事務局からの論点に絡めてでも構いませんし、それと別立てでも結構でございます。

 それでは、先ほどお示しした論点について、事務局の方から説明をお願いいたします。

○渡邊室長補佐 それでは、お手元の資料について御説明させていただきます。

 資料1と2に加えまして資料3が2点ございます。ワードの字のものについては、本日御欠席の新保構成員からいただいている資料でございます。もう一つ、パワーポイントが2つ縦置きになっております方は、奥田構成員からいただいたものでございます。ホームページに掲載するときには構成員名を表示したいと思いますが、2つをあわせて資料3ということになってございます。御了承いただけますようお願いいたします。

 まず、資料1から御説明させていただきます。こちらは、前回の検討会におきまして、委員から御指摘をいただいた事項の中で、データで御用意できるものをまとめたものでございます。

 スライド2をご覧ください。

 前回、新規相談者の中で、2割ほどが4050代の就労していない男性であるというデータをお示ししたのですが、そのことに関しまして、その世帯の状況はどうなっているかという朝比奈構成員からの御指摘がございました。4050代の男性、就労の有無ということにあわせまして、婚姻状況と同居者の有無にさらにクロスをかけまして、お示ししたのが下の円グラフでございます。就労していない男性を見ていただきますと、就労している男性に比べまして、未婚で同居者有り、未婚で同居者無し、いずれも多い状況でございまして、未婚で同居者無しというところには、親と家族との同居が多く含まれているのではないかと考えてございます。

 続きまして、3ページでございます。

 こちらは、西岡構成員から御指摘いただいておりました、自治体がこの制度をどのように受けとめたのかという大きな問いに対しまして、予算の執行状況でございます。自立相談支援事業と3つの任意事業につきまして、所要額と補助基準額を比較してお示ししているものでございます。ご覧のとおりでございます。

 続きまして、5ページでございます。

 こちらは、大津構成員からいただいた問題提起の中で、支援員の待遇とか雇用形態がどうなっているのかという御質問がございました。支援員の待遇につきましては、私どもでデータを持ち合わせておりませんので、本日は雇用形態についてのみのお示しになってございます。自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計相談支援事業につきまして、7割から9割が常勤であるという実態でございます。

 続きまして、6ページでございます。

 こちらは、長岡構成員より、プランに至らない理由の分析が必要ではないかという御意見がございました。それを受けまして、自治体にヒアリングをした結果をまとめたものでございまして、下の表の一番左の枠を見ていただきますと、大きく4つ出てきてございます。書面での本人同意が困難である。相談者が来なくなる。プラン作成による継続的な関わりの必要がないとか、支援員によって少しばらつきがあるといった実態が聞かれてございます。

 いずれも、表の一番右の欄を見ていただきますと、実務上の工夫でうまく対応している自治体もかなりおられるということで、引き続き、こうした工夫の周知が必要ではないかと考えてございます。

 7ページでございます。

 こちらは、駒村構成員から、ステップアップの状況把握が必要ではないかということの御指摘がございました。それについては、新たな評価指標によりまして、今後、把握していくということでございますが、上の枠囲みの中にそのスケジュールをお示ししてございます。今後、4回にわたって把握していく予定でございますので、データが整い次第、この会でもお示ししていきたいと思ってございます。

 最後に、8ページでございます。

 こちらは、和田構成員より御指摘いただいた、地域福祉計画への困窮者支援の位置づけの資料でございます。市区部813自治体につきまして、約9割が地域福祉計画を策定済みとなっておりますが、その中で地域福祉計画への盛り込みとか作業中のものまで含めますと、約半数が困窮者支援の位置づけをしていただいているという状況でございます。

 以上が資料1でございます。

 続きまして、資料2ですけれども、2ページをごらんください。

 今回の資料2におきます着眼点でございます。

 まず、自立相談支援事業については、前回、データによりまして、相談経路が本人から、あるいは関係機関からという2つが多いということですとか、支援員の配置と相談プラン作成といったところに一定の相関があるといったことを見ていただいたわけですが、今回の資料では、実際の関係機関との連携の実態でありますとか、潜在的な支援ニーズについて、どうアプローチするか。あるいは、身近な生活圏での自立相談支援機関の周知をどう考えていくかといった観点で資料を作成してございます。

○宮本座長 すみません。もう本日の論点に入っていますね。

○渡邊室長補佐 はい。

○宮本座長 その前に、資料をリクエストされた構成員の皆様、今の室長補佐の御説明でよろしいかどうかだけ確認させていただければと思います。前回の御要請に沿って、事務局の方から資料が出され、御説明もありましたけれども、よろしいでしょうか。

 それでは、すみませんでした。御説明をお続けください。

○渡邊室長補佐 大変失礼いたしました。ありがとうございます。

 それでは、資料2の2ページの続きでございます。

 就労支援につきましては、この困窮者制度は対象者像に応じた就労支援ということで制度化してございます。その事業体系が、実際始まったところでニーズに照らしてどうだったかということ。それから、各事業に期待した機能、役割、効果といったものがどうか、あるいは課題はどうかといった観点から資料を作成してございます。

 自立相談支援事業について、6ページからご覧いただければと思います。

 自立相談支援機関への相談の3割が「関係機関からの紹介」であったというデータを前回見ていただいておりますが、これまでさまざまな関係機関と困窮制度の間で、こういう人は困窮制度の側につなぐ、逆にこういう人は他制度の側へ案内するといった対応を整理して、連携通知という形でかなりお示ししてきてございます。6、7ページにかけての表は、それを整理したものでございます。

 この中から、特に3つを取り出して、8ページ以降で資料にさせていただいております。

 8ページ、スライド番号が抜けておりますが、生活保護担当部署との連携というスライドでございます。

 こちらは、前回も奥田構成員から、生活保護に至らない相談者が困窮の方にきちんとつながっているのかという問題提起をいただいておりますが、上の枠囲みの2つ目の丸で、実際に94%の自治体で生活保護担当から自立相談へつながった実績はあるというデータが見られます。ですので、相談者ベースで見て、取りこぼしのないようにしっかりと連携していくことが必要であろうと考えてございます。

 2つ目としまして、9ページですけれども、自治体が税、保険料、利用料等のさまざまな金銭を徴収する場合に、困窮による滞納ケースを把握する場合がございます。

 下の左側の図1を見ていただきますと、通常ですと、滞納者と徴収部門との間でのやりとりになりますので、滞納が続く場合は、滞納処分とか公共サービスの提供削減などによりまして、本人の生活状況が非常に悪化するケースも想定されるということですが、右側の図を見ていただきまして、ここに自立相談支援事業を使うということをうまく挟み込むことができれば、例えば滞納分の分納について、御本人と一緒に各機関と調整するとか就労支援するといった形で生活を支えていくことができるのではないか。こういった取り組みができているのは、上の枠囲みの中ですが、部門によりますけれども、5割から2割という実態が見られるところでございます。

 10ページも、自立相談支援機関と学校との関係について、同様に図解したものでございます。

 仕組みとしては、今のものと同じですが、子どもから発せられる言動の変化から生活困窮が懸念される場合に、教育行政・児童福祉行政の中で支援や指導をしながらも、世帯の生活困窮状況に対しては、自立相談支援機関がアプローチするのがよいのではないかということでございます。こうした実態については、2割弱の自治体で取り組みが確認されているという状況でございます。

 11ページでございます。

 こちらは、今、申し上げたような行政機関などで把握しているニーズとは逆に、まだ把握していない潜在ニーズをどう認識するかということでございますが、その例として、ひきこもりの人の実態把握の例をお出ししております。

 秋田県藤里町の取り組みが先進事例でありまして、例えば社協とか民生委員の個別訪問やアンケートなどによりまして、実態を把握して支援につなげるという取り組みが全国的に広がり始めているといった状況でございます。

 12ページをご覧ください。

 身近な生活圏で対象者にアプローチしていくことが必要になってまいりますが、それにつきまして、自立相談支援事業による工夫と、それ以外の工夫ということで、2つ整理しております。

 表の左側にありますのが、自立相談支援事業が従来からある地域福祉活動などを使って周知していくやり方。右側にありますのが、これは困窮のこの検討会と並行して走ってございます、地域力強化の検討会の方のテーマでもありますけれども、対象を限らない形で、身近な圏域で包括相談するというやり方の中で困窮者の課題を捉えて、自立相談支援事業につないでいただくという取り組みも行われているという状況の御紹介でございます。

 続きまして、就労支援の方に移らせていただきます。15ページまで行っていただければと思います。

 まず、生活困窮者の就労支援のニーズを、初年度の実績から見ていただくものでございます。

 図解しておりますが、3段目から下を見ていただきますと、就労支援対象者2.8万人と書いてございます。これが初年度の実績でありまして、就労支援対象者は、プラン期間内に一般就労を目標とする人ということであります。

 この中には、4段目を見ていただきますと、ハローワークの求人によりまして就労していけるような方もおられて、これを1としてございます。

 そのほかに、本人のニーズに合ったオーダーメイドの求人を作り出す必要がある人ですとか、就労の準備段階を経る必要がある人ということで、2の部分をつくってございます。

 それから、この就労支援対象者の枠の外に3というところがございますが、まだ一般就労を目指す段階ではないが、準備を続けていくという方々もおられますので、こうした1から3までというのが、大きく困窮者法で捉えている就労支援ニーズでございます。この中で、特に2、3というところが困窮者法独自のオーダーメイド支援が効果的な対象者ということで、ここが2万人から3万人ぐらいのボリュームではないかと推計してございます。これが初年度の状況でございます。

 16ページで、今、申し上げた1から3のニーズを一番左の縦にとりまして、現行の事業体系と照合する資料でございます。

 一番上のハローワークの求人で就労していける方々に対しましては、事業としては、大きくAとBという2つラベルを貼ってございますが、Aは、いわゆるハローワークのナビゲーターの事業でございます。こういうものですとか、自立相談支援事業の就労支援、これらが当たることで支援しています。

 中ほどのオーダーメイドの求人を作り出すことで就労しやすい人に対しましては、自立相談支援事業、あるいは自治体におけます無料職業紹介というもので対応している状況でございます。

 下の2段につきましては、就労に向けた準備とか柔軟な働き方を要する方々でありますので、D、Eとしまして、就労準備支援事業、認定就労訓練事業というものが制度化されてございます。

 ここまでで、前ページとの比較で言いますと、C、D、Eで2.4万人から3.4万人のニーズがあったのではないかということでございます。

 一方で、右側の表組みを見ていただきますと、Dの就労準備支援事業については、初年度の利用件数は約1,800件、Eの認定就労訓練事業は161件という実態でありまして、いずれもニーズはあると思われますが、利用件数は少ないというのが実態でございます。

 就労準備支援事業につきましては、当然、任意事業でありますので、実施していない自治体では自立相談支援事業はカバーしているといったことですとか、これは支援を受けに通うというたてつけでありますので、作業賃・交通費などは当然事業費からは支払われないという体系になってございます。

 認定就労訓練事業につきましては、公費による事業ではありませんので、雇用型でしたらば賃金が支払われますけれども、そうでなければケース・バイ・ケースになっている。概況としては、このような状況でございます。

 ここから、各事業の現状を見ていただくわけですが、その際の視点ということで、17ページをご覧ください。

 個別の困窮者の就労支援を行うことによりまして、個別の自立支援をするということと、それから、地域ニーズを踏まえて就労・参加型を作り出していく地域づくりということが車の両輪だろうと考えてございます。ですので、効果・機能の確認というところでも、この2つの観点から行うことが必要だと思ってございます。前回、菊池構成員から御指摘いただいた、自立支援と地域共生社会の関係性ということがございましたが、就労参加の場づくりということが1つ接点になるのではないかと考えてございます。

 18ページから各事業ごとに見ていただきますが、18ページは、ハローワークベースの求人で就職している方々に対する状況ということで、自立相談支援事業。それから、参考として記載しておりますのがハローワークのナビゲーターの事業ですけれども、それらの利用件数と就労・増収率あるいは就職率というアウトカムの部分をお示ししてございます。

 ここから各論が3つございまして、19ページが求職者支援制度との連携でございます。

 これは御承知のとおり、ある程度まとまった給付金を受給しながら訓練の受講をして、早期就労を目指すという事業でございますが、特に生活困窮者の生活基盤のことを考えますと、状態像や意向を踏まえながら効果的に活用していきたいと思う事業でございます。

 21ページをご覧ください。

 高齢者の就労支援ニーズということで、1枚まとめてございます。高齢者においても、一般就労に向けた就労支援のニーズが一定程度あるということがデータでも示されておりまして、これに対してどう対応していくかということが1つあるかと存じます。

 23ページでございます。

 こちらは、前回も複数の委員から御指摘いただいておりますが、就労したらそれで自立かというと、その後の経過確認が必要だろうということについて、定着支援について7割以上の自治体で取り組んでいただいているという状況の御紹介でございます。

 続きまして、24ページからが就労準備支援事業についてですけれども、事業の概況部分は少し飛ばさせていただきまして、30ページまで行っていただければと思います。

 30ページ、31ページが、就労準備支援事業の実態をヒアリングによりまして改めて確認したものでございます。

 ヒアリングをいたしますと、改めて就労準備支援事業はさまざまな状態像の方が利用しておられて、そういう方々に対してオーダーメイドの支援、図の真ん中ほどにいろいろ書いてございますが、一口で就労体験といいましても、さまざまな事業所で、さまざま御本人に合うものをオーダーメイドで開発しているという状況であります。そういう状況があって、右側の着実なステップアップというところにつながっていることが確認できております。

 このステップアップのところをもう少し細かく見たのが31ページでございます。

 右側の枠囲みを見ていただきますと、例えば就労体験先で仕事の適性を確認して、本人に自信がつくとか、仕事のイメージを持つことができるようになる。

 あるいは、就労継続支援事業所で就労体験をすると、御本人が障害者雇用枠での就労に意向を持つようになった。

 あるいは、一番下のところで言いますと、なお、直ちに一般就労することは難しいので、認定就労訓練事業で支援付きの就労をしているというような、さまざまな形でステップアップされるということが確認できております。

 その中で、就労体験ということが1つ浮かび上がってくるわけですが、32ページを見ていただきますと、さまざまな就労体験の場を、地域の課題とか事業とタイアップすることを通じて場づくりが進んでいるということの御紹介でございます。

 35ページまで行っていただきまして、これは就労準備支援事業の意義を見ていただく資料ですけれども、赤と緑のグラフが載ってございます。

 緑の方は就労準備支援事業で実施している支援、赤の方は就労準備支援事業をやっていない自治体で、自立相談支援事業がどれだけカバーできているかというデータでございます。真ん中ほど、赤い枠で囲んでおります、ボランティアや職場見学、就労体験、こうした外に出ていくタイプの支援につきましては、赤い棒が短くなっておりまして、なかなか自立相談ではカバーし切れない、人手のかかる支援でありますので、こうしたものが就労準備支援事業だからこそ取り組める部分ではないかと考えてございます。

 こうした中で、37ページをご覧いただきますと、初めに、就労準備支援事業については利用件数が1,800件程度であったということを申し上げたのですが、利用すべき人が利用しなかった理由を自治体にお尋ねしてございます。その中では、御本人が希望しない。その中で、必要性の理解とか新しい環境への拒否感といったものが出てまいります。

 それから、経済的負担とか資産収入要件のことが挙がってくるという状況でございました。

 この資産収入要件につきましては、次の38ページで整理してございます。

 これは、施行規則の中で資産収入要件を定めておりますが、自治体に一定の弾力運用を可能とする枠組みにしてございます。その弾力運用については、運用している自治体が約半分という状況でございました。

 続きまして、認定就労訓練事業ですけれども、44ページをご覧ください。

 こちらにつきましては、初年度、161件の利用の中で、左下の円グラフですけれども、非雇用型のみという利用形態が一番多い状況でございました。

 これも、45ページで、その効果というものを確認してございますが、これは一定期間、継続的な利用を想定した事業でありますので、その中でもステップアップを意識しながら支援しているということと、地域ニーズを踏まえた就労の場づくりがなされていることが確認できてございます。

 48ページに行っていただきますと、これも利用件数が少ないということを冒頭に申し上げたわけですが、就労準備支援事業と同じように利用しなかった理由をお尋ねしてみますと、これについては、まず、認定事業所が本人の通える範囲内にないということが出てまいります。それ以外につきましては、先ほどの就労準備と同じような状況でございます。

 47ページを見ていただきますと、そういう認定事業所自体がないという状況ですが、認定権限を持っております都道府県、政令市、中核市におきましては、左側のグラフで半分の自治体が認定申請の促しをしていないという状況でございました。

 さらに、認定の促しをして断られた場合の理由をお尋ねしてみますと、右側のグラフでお示ししていますような、直接的なメリットがないとか申請手続が面倒だ、人的余裕がないということが理由として挙がってくる状況でございました。

 最後に、49ページでございます。ここで無料職業紹介の部分について御説明いたします。

 地方分権の枠組みの中で、今年の8月から地方版ハローワークという制度が施行されておりまして、これまで無料職業紹介を自治体が実施する場合にかかっておりましたさまざまな規制が緩和されたという状況でございます。

 右下の青い枠を見ていただきますと、これによりまして、例えば就労体験先の事業所で一般就労へ移行していくときに、スムーズにあっせんができるといったことですとか、認定就労訓練事業(雇用型)へのあっせんもしやすくなるということが言えるかと思います。

 これについての実態としては、50ページでございます。

 今年度当初に自治体にお聞きした段階では、無料職業紹介の実施状況として、できる状況になっているのは2割程度でありまして、残りは検討中、準備中という状況でございました。こうした部分について、大分追い風になっているのではないかと考えてございます。

 資料2としましては、以上でございます。

 最後に、資料3について、簡単に申し上げます。

 新保構成員からいただいたものでございますけれども、今回、自立相談支援事業と就労支援のあり方についての議論だということで、いずれも制度の理念をしっかり確認することが、機能の評価あるいはあり方の議論で重要ではないかという御示唆でございます。3では、生活保護受給者に対する支援との協働・一体的支援ということも含めて御意見を頂戴しておりますので、御紹介でございます。

 以上でございます。ありがとうございます。

○宮本座長 大変細かいデータも含めて、要領よく御説明いただきました。

 これから御議論いただきますが、まず、今の御説明に関しまして、確認しておきたいことがございましたら、遠慮なくお尋ねいただければと思います。

 櫛部構成員。

○櫛部構成員 44ページの認定就労訓練事業の利用のところで非雇用型が一番多くなっているのですが、これをやっているところと就労準備をやっているところは、何かつながっていますか。それとも、就労準備もあるし、認定就労訓練事業もあるよということなのか、就労準備はなくて、認定就労訓練事業はあるよということなのか。

○宮本座長 いかがでしょうか。

○渡邊室長補佐 その点については、まだ分析ができておりませんので、次回、御準備いたしたいと思います。

○宮本座長 認定就労訓練事業が雇用型か非雇用型か、そのタイプの問題と、就労準備の状況との関連ですね。大事な論点だと思いますので、ぜひ分析いただければと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 大津構成員。

○大津構成員 今の櫛部構成員の関係で、16ページ、認定就労訓練事業の非雇用型の作業賃等の支払いはケース・バイ・ケースとありますけれども、どういうことなのか。非雇用型だけれども、例えば日雇いとか、どういう雇用形態で、賃金形態がどうなっているのか。つまり、支払わないケースというのは、最低賃金の例外規定が入っているとか、いろいろな理由があるかと思いますけれども、後日で結構ですので、また教えていただければと思います。

 以上です。

○宮本座長 そのことの意味は、謝礼程度のものにとどまっているということですね。

○渡邊室長補佐 非雇用型でありますので、雇用契約ではないという意味で、最低賃金の適用はございません。その上で、作業に対して、対価の分の工賃のようなもの、あるいは謝礼とか交通費みたいなものが出ているケースもあれば、出ていないケースもあるという意味で、まさにケース・バイ・ケースという状況であります。

○宮本座長 よろしいでしょうか。はい。

 では、生水構成員、続きまして、菊池構成員。生水構成員の方からお願いします。

○生水構成員 16ページの就労支援ニーズと就労支援の体系のところで、就労支援準備のD、ニーズはあるが利用件数が少ないという、このニーズというのは、37ページにあります、利用すべき者が利用しなかった理由にリンクするのか、相談者のニーズであるのかというのが1点。

 それと、38ページの就労準備支援事業を巡る課題2のところで、就労準備支援事業を実施した自治体において、「準ずる者」を認めた実績はあるかというところが、46%、あるとなっています。

 その次に、資産収入要件を満たさず事業利用できない場合において、「準ずる者」と認めた実績が45%あるというところで、これは実態的に「準ずる者」が、実施自治体においてどれぐらいの範囲まで運用上認めているのか。これを認めていることによって、就労準備の効果が上がってきているのか。ここのあたりをもう少し詳しく教えていただければと思います。

○宮本座長 2点でありましたけれども、それぞれいかがでしょうか。

○渡邊室長補佐 16ページのニーズに比べて利用件数が少ないというところで申し上げているニーズというのは、その前のページにありますような相談者のニーズです。相談者の中で、こういう柔軟な働き方のニーズがあるだろうと思われる方は結構いらっしゃるけれども、実際の利用につながっているところは少ないという趣旨でございます。

 それから、38ページのいわゆる資産収入要件の「準ずる者」の運用状況ですけれども、これは自治体によってかなり個別に決めておられますので、やり方というのはいろいろございます。例えば、施行規則第4条第1号の世帯収入を確認するということが、世帯全体の通帳などの確認がなかなかしにくいという場合に、そこまで確認していないで2号として認めるという例もありますし、さまざまでございます。実際には、これを認めることによりまして、利用件数が増えているというお声は相当お聞きしているという状況でございます。

○宮本座長 生水構成員、よろしいでしょうか。資産収入要件は非常に大きな論点であって、なぜこれを課すのかという御意見も多く聞かれるわけですけれども、今のやりとりでよろしいですか。生水構成員としては、制約の是非についても問われたいのかなと思っていたのですけれども。

○生水構成員 ニーズはあるが、利用件数が少ないというところで、この収入要件を改めることによって、ニーズをすくい上げていくことができるのかを論点として挙げたかったのです。これは、ほかの構成員の方々の御意見もあると思いますので、私はこれで結構です。

○宮本座長 この資産収入要件については、後ほどまた構成員の皆様から議論いただけると思います。

 菊池構成員、よろしくお願いいたします。

○菊池構成員 今の点に関しては、ちょっと大きな論点ですけれども、自治事務であることをどう考えるか、どこまで縛りをかけるのか。できるのにやっていないだけじゃないかという論点があると思います。それはちょっと置いておきますが。

 せっかく私の発言を意識して書いてくださったのに、ちょっと面倒くさい質問をして申し訳ないです。17ページ、抽象的な理念で、ちょっと気になるのですけれども、下の2行の2つの文章の関係をどう理解すればいいのか。これは、目指すことそのものである。例えば、目的・手段の関係であるとか、あるいは生活困窮者の自立支援は、「支える側と支えられる側が固定しない地域」を目指すこととイコールなのか。ちょっとこだわってしまうのですけれども、どういう理解をされておられるのか。生活困窮者自立支援ということと、地域共生社会の理念というか、追求というか、どういう関係性で理解されておられる文章なのかということです。

○宮本座長 地域共生社会の理念とぴったり重なるという御説明に聞こえて、そこがやや違和感もあるという質問の御趣旨ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○渡邊室長補佐 困窮者の自立支援ということを考えるときに、就労参加の場をつくることが自立支援そのものであろうということが1点でございます。それは、生活困窮者というのは支えられる側だと、一般的にはよく捉えられるわけですが、それだけではなくて、就労に参加することで、例えば満たされていない地域ニーズに対応していけるという意味では、支える側にも回ることができる。そういう意味では、支える側と支えられる側というのは、困窮者支援の中では、その境界が極めて曖昧になるのだろうと理解してございます。

 こうした困窮者支援の理念と地域共生社会は、また一段違う概念ではありますが、地域共生社会が目指す支える側と支えられる側が固定しないということと、かなり重複するのではないかという趣旨で書いてございます。

○宮本座長 どうぞ、菊池構成員。

○菊池構成員 これは、むしろ今後、ほかの構成員の皆様にお教えいただいた方がよいのかもしれないのですが、生活困窮者自立支援の直接の目的というのは、就労を含めた参加の場をつくっていくことなのではないかというのが、1つ、私の理解です。その後にどういう社会が形成されるとか、この方々が参加した後の社会がどうなのかというのは、この自立支援の直接的な枠組みの次のステップの議論なのではないか。私はどちらかというとそういう理解をしているのですが、そうではないのでしょうか。これは、構成員の皆様、それぞれのお考えがある、大きな議論かもしれない。ここで議論することがいいのかどうかもわからない。すみません。

○宮本座長 渡邊補佐からのお答えが念頭に置いているのは、恐らく菊池構成員がおっしゃっている2ステップを一括りにして、参加の場を広げていくこと自体が自立支援であり、共生社会の形成であるという御趣旨でおっしゃっている。補足してください。

○渡邊室長補佐 申し訳ありません。座長から助けていただいたとおりでございまして、概念的には2ステップかもしれませんが、地域共生社会のような土壌がなければ生活困窮者の就労参加の場というものもできないまま、これまで閉ざされてきた。そういう中で排除されてきたということではないかと考えてございまして、そうしますと、自立支援と地域共生はほとんど一体なのではないかという問題意識でございます。

○宮本座長 これは大変大きな問題かなと思いますので、これきりに終わらせず、また菊池構成員の方からも続けて何度も問題提起いただいて、議論を続けることができればと思います。

 後で御議論いただきますけれども、ほかに資料の解釈等をめぐって御質問がありましたら。

 では、奥田構成員。

○奥田構成員 すみません、後でもう一度議論になるということですが、さっきの収入要件のことですが、私の地元も最初は準ずる者規定はしなくて、交渉する中で準ずる者を認めた。そうすると、件数がどんと出てくるというのが実態です。逆に言うと、なぜほかの自治体はやらないのか。わざわざ厚労省が緩和の要件まで書いているのに、それをやらない理由が知りたい。知らないのではないかというのがそもそもあって、私の地元も余りよくわかっていなかったというのもあったのです。ですから、なぜ緩和要件が入っているのに、そこに積極的にならないのかというのは少し気になる。調べられるかどうかわかりませんけれども、なぜしないのかというのはちょっと聞いてみたいところでした。

 もう一つ、これは単なる感想ですが、例えば37ページの就労準備支援事業を利用しなかった理由で、本人が希望しないということがどっと出てくるのですが、これは皆さん、御専門の方々なので現場はわかっていらっしゃると思いますけれども、正直言うと、私は現場が相談者の責任にしていく。要するに、相談員の力量のあるなしが、御本人たちの自己責任みたいな形で語られていくという構図にしてはいけないのではないかと思います。つまり、本人が希望しなかったのだと言ってしまったら、一番何もしない理由になるのです。それは変な形の自己責任で、相談の持っていきようとか、相談支援のあり方とか力量自体が、現場においては相当差があるだろうと思います。このあたりは、相談事業所の課題・問題だということを留意しておかないと、これだけ素直に読んでしまうと就労準備支援事業は要らないのではないかという話になりかねないと思いました。これはちょっと感想です。

○宮本座長 資料の御説明についての確認から、少しずつ御意見の方に入ってきているように伺いましたが、いかがしましょうか。今の資産収入要件についての第1の御質問。これは、先ほども生水構成員から出ましたけれども、要するにどうして手続上、この資産収入要件が必要になったのかということと、その要件の説明、それから緩和措置についての説明がどのように自治体になされているのかということも含めて、少し膨らませて、もし今の段階で御説明いただけるのであれば御説明いただくということで、いかがいたしましょうか。次回にしますか。

○渡邊室長補佐 奥田構成員がおっしゃった、運用しない自治体がなぜなのかということも含めて、次回、資料を御準備させていただくことでよろしいでしょうか。

○宮本座長 奥田構成員、次回でよろしいでしょうか。

○奥田構成員 はい。

○宮本座長 では、2番目、これは多分に御意見でもあったと思いますけれども、相談事業所自体の力量の問題。これは、もし何かコメントがおありでしたら。

○渡邊室長補佐 まさに相談側でどれだけ促しができるかというところでもあるかと思うのですが、これはぜひ専門家であられます皆様から御意見をいただきたい部分でございます。よろしくお願いします。

○宮本座長 それでは、狭い意味での御質問という段階から、だんだん皆さん、御意見と渾然一体となっていくということでよろしいのかなと思います。今、事実関係を確認いただいた方も、2回目、3回目、ぜひとも御発言をお願いできればと思います。それぞれ、今日の2つの論点について、皆さんの御関心の強弱もございましょうし、また御専門との遠近というのもあるかなと思いますが、そこは余り気にされないで御自由に議論いただければなと思います。

 基本的に、毎回全ての構成員に御発言いただきたいと思ってございますけれども、端から順番にというのも、最近の大学のゼミみたいな感じになってしまいますので、そこは少し大人モードで議論していければなと思います。いずれの論点からも、あるいはどういう視角からでも構いません。

 では、生水構成員。

○生水構成員 何度も申し訳ないです。

 私も公務員なので、先ほど奥田構成員がおっしゃった、「準ずる者」の拡大を厚生労働省が言っているにもかかわらず、なぜしないのだろうというところについては、自治体としては、収入要件としてここに規定された以上、それは制度としてしっかり守ろうというのが大前提にあるだろうと思うのです。私は、先ほど「準ずる者」の範囲をどれほど認めているのかと聞いたのが、実はそこのところであって、実態的に約半数が「準ずる者」で運用しているのであれば、収入要件についてはニーズに対応するためにも不要ではないかというのが私の考えであります。

 なので、もし調査していただくときに、どうして「準ずる者」を活用しないのか、話を聞いていないのかというところだけではなくて、どの範囲まで活用しているか。実際、なければもっと利用できるのではないかというところまで含めて、アンケート等で調べていただければ、効果的なものになるのかなと思います。

 以上です。

○宮本座長 生水構成員のお話、これもまた次回ということでよろしいでしょうか。

○生水構成員 はい。

○宮本座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 櫛部構成員。

○櫛部構成員 この2回目の資料を読んで、菊池構成員がやらないだけじゃないかという非常に厳しいお話をしていましたけれども、やれないという部分もあるかもしれない。つまり、自治体の問題というのが、大きいということを、これを読んでいても感じるわけです。直営であれ、委託であれ、福祉事務所の設置自治体では、保護課というところが、おまえやれよということで大体やっているところが多いのかなという感じがします。

 釧路市は、ここ10年ぐらい、利用しやすく出やすいという生活保護の福祉法に基づく3つの自立という取り組みをしてきました。しかし全国的には、生活保護自立支援プログラムを見ると、経済的自立や日常生活の自立は、たしか何千単位でプログラム数があるのですが、いわゆる社会生活自立という、どちらかというと地域の方と手をつないで何かするというプログラムは、子どもの支援ということを入れても、たしか数百台だと思います。10年たっても、身近な仲間うちのところとは手をつなげるけれども、対外的な、先ほど言った地域力との関係でつながれていない。そこに大きい問題があるのではないかと思います。

 実際、就労準備の意義にしてもそうですが、ボランティアをやれるならば働けるだろうと一般就労に対する念仏のようなものがあるが、そこへのプロセスが余りないのではないかと思います。

 菊池構成員は地域共生社会と生活困窮制度という話をされましたが、働く場を開発したり工夫したりすることは、そういう観点がないと、働き方それ自体が広がらないと思います。私どもは漁網の仕立てをやっています。地域の中でやる人がいないので。全国にもそういう目で見るときっとあると思います。それが共生というもの保護世帯や困窮者が排除されないことにつながっているのではないかなと私は思っております。

 困窮でいえば就労準備に参加している人たちは、まずマイナスから来ているのです。家では働かないのと言われる。ずっとそういうことを考え続け、いろいろやっては失敗するので、もう嫌になる。ここに来たら少し逃げられるかなという気持ちから、まず就労準備に来るとおっしゃっていまして、どうしても僕らはプラスのステップアップと考えるのですが、行きつ戻りつではなくて、戻りつ行きつというか。そういうことがないと・・・。就労準備というものの見方というのが、自治体の中では収入要件ということが先に来て、地域の担い手なのにそこになかなか行かないということを、自治体がどうやって考えられるようにするかというのが大きいなと思います。なかなかいい案はないのですが。

○宮本座長 今のお話、菊池構成員からの、自治事務ということで、自治体任せでいいのかということを受けて、櫛部構成員から、特に就労準備あるいは認定訓練の事業について、自治体の取り組みを促す。しかも、行きつ戻りつという、就労と支援の間のゾーンをいかに豊かにしていくのかということについて、自治体の取り組みを促すためにどうすればいいのかということですかね。

 もともと、この検討会の冒頭の挨拶でも申し上げたとおり、自治体では、働けない人たちのための福祉と、その福祉を必要としない人たちのための雇用というものが長らく二極化してきたわけで、この制度そのものが自治体のこれまでの現状と多分にずれているというか、少し先を行っている。したがってどうしてもずれがある。そのずれがある中で、こういう就労準備について、もともと積極的に取り組みがスムーズに進まない可能性もあるなということは、皆さん、予想していたわけですけれども、まさにそういう傾向がある。

 そこで、いわば自治体の主導性・自主性と、この制度の趣旨とのジレンマみたいなところで、どういうふうに我々は議論し、アプローチしていけばいいのか。恐らくそういう御趣旨でしょうね。

○櫛部構成員 はい。

○宮本座長 わかりました。

 では、和田構成員、次に渡辺構成員、よろしくお願いします。

○和田構成員 今のことにも関連するのですけれども、生活保護受給者と困窮者の就労支援を同じ事業者に委託してやってもらっていることが、かなりの割合あるということが前回の資料に出ていたと思いますけれども、実際聞いてみると、生活保護受給者の方々は、結構長いプログラムを昼間やれる。ところが、生活困窮者の方は、そうは言っても食べていかなくてはいけないので、バイトとかをやっている人も結構いて、夜のプログラムしか入れられないし、短期間しかできない。

 非常に矛盾していることがあって、そのことと関連するのですが、実際に社会参加やいろいろなものを体験する場合も、現場では、例えば500円ぐらい、日当ではないけれども、少しお金を出すみたいなことを独自にやっているところもあります。それをやると非常に参加意欲が出てくる。生活困窮者制度には、そういう支援がない。動機づけにうまくつなげていくような支援を具体的に考えていかないと、非常に矛盾しているのではないかということが1つです。ここをどう考えるか。

 もう一つは、現場でモデル事業のときからやっているところに聞きますと、非常に難しいケース、繰り返し支援が必要になってくるようなケースが、一生懸命やるとだんだん滞留してくる。全体としても、平均すると対応している期間が長くなるだけではなくて、そういう方々が増えてくる。そうすると、そういう方々を支援しながら新しい方々の相談もしなければいけないということになってくるので、もしかしたら、この機能を維持していくためには、どのぐらいの件数ができるかとか、特に難しいケースをどのぐらい支援しているかみたいなことについても考えないと、一生懸命取り組むとそういうケースが滞留すると捉えられ、問題が出てくるのではないかということが2番目。

 もう一つだけ発言させていただくと、これからの検討の一つに高齢者の問題があるのではないかと思っています。高齢者の方々の相談がかなり多い。都市部などは特にそうですけれども、その場合、このくらいの収入が欲しいという額は必ずしもそんなに高くない。3万円とか、多くても5万円とかあれば、今の年金とかにプラスして生活が可能になる方々がいるのですが、すぐに仕事につけるのは、清掃と交通整理、特に夜です。そういうものしかなかなかない。そうすると、体の状態とか年齢を考えるとなかなか難しい。結局、シルバー人材センターだけではなくて、高齢者が短時間とか、あるいはかなりの年齢になってもやれるような仕事の開発を本格的にやる必要があるのではないか。可能性としてあるのは、介護保険の生活支援サービスは非常に現実的ではないかと思っています。私の知っているケースでも、要支援1の人がヘルパーをやることだってあるのです。よく考えてみれば、自宅だったらそんなことはごく普通にやっています。だから、そういう意味で、高齢者の就労支援ということについては、そういう仕事の開発をかなり本格的にやりながら進めるということを考える必要があるのではないかと思います。

○宮本座長 ありがとうございました。

 今、和田構成員から3つの論点がございまして、当事者のモチベーション、インセンティブ、それから取り組む地域、自治体のモチベーション、インセンティブ。3番目に、先ほど私が新しい切り口、論点がもしございましたらということに触れて、高齢者の問題も言及したのですけれども、和田構成員の方から、これは、これから1つ論点として取り上げていいのではないかという御趣旨で問題提起があったのかと思います。この制度、もともとは生保の受給者の中でも、いわゆるその他世帯が増大していることに対応して議論が始まったわけですけれども、その後の経緯を見ていると、高齢世帯が高齢化の割合以上に急増しているということで、どうやらこの制度とのかかわりが非常に大きくなってきた。

 と同時に、事務局からも御説明あったとおり、地域共生社会の議論と並行して走っているわけですけれども、地域包括支援センターとか介護保険改革の新しい総合事業との関係を、我々はどういうふうに考えるかということも非常に大事な論点になってくるわけですが、恐らくそことの接点というのも非常に濃厚なのかなと思います。

 今、和田構成員からの議論がございましたので、これは12月に入ってからの議論になるかもしれませんけれども、共生社会のビジョンとの接点も念頭に置いて、ここをひとつ柱に置いていただくことをお願いできればと思います。

 ありがとうございました。

 では、渡辺構成員、お願いします。

○渡辺(ゆ)構成員 よろしくお願いします。渡辺です。

 一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトでは、平成26年にモデル事業として就労訓練準備事業を単体で名古屋市から委託を受けたのですが、皆さんの議論になっている就労準備支援事業と認定就労訓練事業の、ニーズはあるが利用に至らない理由に、もちろん資産収入要件はすごく大きな壁となっていて、それを取り外してほしいなというのは私もすごく賛成です。さらに、ニーズがあるけれども、利用件数に至らない理由のもう一つとして、私は、どちらの事業も、より御本人の個々に合わせた個別サポート、寄り添い型の支援になりにくいたてつけになっているのではないかというのを感じます。

 資料の28ページにもあるように、生活困窮に陥る方はさまざまな困難を抱えています。それゆえに、今まで就労で失敗を繰り返したり、ライフステージごとに周りからできない理由を誤解されて、自己責任にされたりという方々に関して、30ページにあるようなメニューを設けて、それに当てはめていくというのは、なかなか効果が出にくい方法なのではないかと思うのです。徹底して個別の支援のオーダーメイド型でないと。御本人にとって、それが使えないものや使いたくないもの、あるいはマッチしないものであれば、効果がないだけではなく、御本人を追い詰めてしまうことになりますし、合わない制度が幾つあっても、合わないなら、本人にとってないのと同じなのではないかと思います。

 認定事業所に関しての件数で言えば、利用しない理由として、本人が通える範囲内に認定事業所がないが68%もあるのですけれども、こちらも私たちのモデル事業の間では、認定事業がありきではなくて、初めに対象者ありきで、その一人一人に合わせた求人を一から開拓しました。本人の特性や持ち味に合った環境を持つ企業をハローワーク求人から探して、そこにアプローチをかけて、一、二週間の就労実習をお願いするという形をとって、その実習を受け入れてくれる企業、イコール認定企業として取り組んでいました。

 実習中には、企業内に対象者の働きやすい環境の整備や支援体制の構築を行うことで、サポートつきの一般就労という形を企業に受け入れていただいたのですが、通えるところにないのであれば、御本人が通える範囲で、しかも御本人の環境に合った企業を一から開拓していくという、より個別性に特化した支援の方が、困窮者の方の就労支援にぐっと向いているのではないかと思います。

 それに関して、人材の不足とか支援員の力量の問題というのが出てくると思うのですけれども、個別性に合わせて、一人一人取り組んだ方が、支援というものは難易度が下がるのではないかと思っているし、手数もそちらの方が効率はいいのではないかと思います。就労準備も、何かメニューを置いて、そこに通所型でプログラムを開催しようと思うと、そのプログラム自体の人員配置が必要になってくる。であれば、その人員配置の人数を個別支援の方に回した方が、より効果的で利用のニーズに合った実態の実数がぐっと増えるのではないかと思いました。

 ありがとうございます。

○宮本座長 ありがとうございました。

 大変大事な論点、渡辺構成員の御経験に基づいて提起いただいて、いかがでしょう。これに関して、西岡構成員、お願いできませんか。

○西岡構成員 今の渡辺構成員の発言、菊池構成員の意見もそうですけれども、現状では自治体はやらないというか、やれないということを申し上げたい。今回の資料でも、オーダーメイド型の求人とかオーダーメイドの支援メニューが広がっているのは、見えてきたと思います。オーダーメイド型の求人にしろ、求人のアレンジにしろ、オーダーメイドの支援メニューにしろ、その地域の自治体がつくらない限りは存在しない。どうつくるか、つくれるかがポイントになっています。

 昨年、社会福祉推進事業で全国の自治体を回って感じたことは、オーダーメイド型の就労準備支援事業について、自治体側の責任と体制が極めて曖昧だということです。なぜかというと、例えば福祉事務所の所長が本体の生活保護を所管しながら、就労準備支援事業を委託にしろ、直営にしろ、推進することが可能か妥当かということです。比較になるかどうかわかりませんが、例えば地域の金融機関が地域企業に融資する場合、支店長なり支店長代理といった肩書きを持った人が出てきて信頼関係をつくります。それは地域企業をしっかり応援するという意味だと思います。

 僕らの就労支援は、支援する人材を地域企業に送り込みながら、そこで同じ目線に立って育成しましょうという形で、貴重な人材を案内するわけですから、その責任性はもうちょっと考えた方がいいと思います。そうだとすると、就労準備支援事業を地域の事業所と連携して推進するなって取組はたぶん課長のレベルでする仕事じゃない。先ほど渡辺構成員がおっしゃったようなオーダーメイドの支援メニューをつくって、人材を受け入れてくれて一緒に育成してくれる金融以上にリスクの伴う取組です。では、責任者が挨拶に行って、こうしましょうとか、市の責任でやっているかと自治体の責任を形にしているかというと、どこもやっていない。委託した事業者に任せている、あるいは就労支援員を雇っているから、その人が動いているから、それでいいじゃないというレベルだと思います。

 就労体験がアンペイドワークであっても、地域の生産現場の中に私たちが支援する人材が入っていく訳ですから、地域企業との関係というものはもう少し真剣に自治体がつくる必要がある。企業等との関係づくりは福祉部局の責任ではないということができるかというと、言えないでしょう。ほかに自治体で担当する部局があるかというと、ありません。地域の中小企業と多様な人材とのマッチングは、ずっと前から言われていますが、医療、福祉、保健、いろいろな課題を抱えた人が働き続けるという意味での人材と企業を支援をするメニューを持っているところは自治体には今までないわけです。これは、マスコミの方もわかっていないことが多いです。

 就労というのは大事だけれども、オーダーメイドの就労支援メニューをつくる現場となる中小企業へのサポート、支援という観点がないと、支援メニューが増えない。それから、先ほど奥田構成員も事業所の問題じゃないかと言うけれども、相談支援員はすごく頑張っているけれども、後ろを見たら全然支援メニューがない。案内できるメニューがないのに、相談を受けていて、そのままという感じでしょうね。メニューを誰がつくるのかという責任がはっきりさせる時期に来ている。言葉は悪いですけれども、自治体で福祉部長ぐらいがこのテーマをあたかもできるかのように抱き込んでしまっている。

 要するに、できないと言わないといけないわけです。我が市、我が自治体には、この制度に関する企業との取引ができる部局がありませんというところから、多分議論が始まると思います。これは何となくどこかに委託したらできそうだという形でやっていると、中小企業から信頼されません。企業は、人材とその育成を引き受けるわけですから、企業にとっても、こういうオーダーメイドの人材育成というか、求人に応募する求職者を雇い入れる形ではないが、これが人材確保につながるかもしれないという期待感を持ちながら、中間的な働き方をする人材の受け入れを初めて経験するわけです。

 一方で、非雇用型が多いのは、そういう緊張感のない事業所の開発が進んでいるということです。とりあえず言われているから、訓練で非雇用で受けたらいいか。これは、極めてリスクの少ないタイプです。しかし人材が欲しいと思っている事業所とつき合うと、この人材は御社で十分育成できます、定着できますと言えるかどうか、真剣に応援できるかです。そこで決まってしまうわけです。すぐには戦力にならないけれども、こういうプログラムでやりましょうということが言えるかどうかがポイントなのです。しかし、執行のあり方について国の制度から言えるかどうかは微妙な問題です。自治事務として自治体の責任だと思います、なかなか理解されませんが。

 地域の受託団体も、対企業に対する責任性が極めて薄いです。だから、求人につなげればいいという従来パターンでやっている。一方、労働サイドでハローワークがそういう仕事をしているかというと、それはハローワークの任務じゃないので、カバーしません。だから、ハローワークは本来の業務で頑張っていただいているので、そこは違うよ、もうちょっと自治体としての問題の所在をはっきりさせるような動きが大事かなという気がします。

 もう一つ、せっかく資料に取り上げてもらっている32ページで、連携する企業も、その自治体の中の企業とだけではなくて、1回目の議論でありましたが、相談しているところとは違う地域に、自治体を越えて就労するケースもたくさんあると思います。いろいろな支援の選択肢から考えたら、オーダーメイドの就労支援メニューをやってくれる企業、事業体が広域に存在するときに、それを見つけ、うまくつなげるようにしないといけない。都市自治体であれ、地方の自治体であれ、そこのメニューだけでやろうとするとしんどい。可能性を摘んでしまうことになります。

 人材は多様で、いろいろなニーズ、適性を持った方がいらっしゃいますので、そのチャンスをどうつくるかというときに、資料では広域的にと言っていますが、例えば農業では、大阪や仙台からでも、就労準備支援事業や他の事業を使ったら、広域的に移動する訓練付き就労は可能なので、自治体間できちんと支援と仕事を約束する仕組みづくりや、地域企業と連携できていることが条件だと思います。多様な人材は単に求人だけでは動いていない。支援があるから動いている、動けるということが大事なところです。

 ちょっと長いですけれども、1つだけ提案ですけれども、これだけオーダーメイドの求人とか支援メニューを自治体ができるようになったのならば、19ページに労働サイドの求職者支援制度の御紹介があります。就労訓練的なメニュー、企業と連携したメニューを自治体がつくり上げ、企業からも信頼が得られているとなれば、自治体が求職者支援制度上の支援訓練実施機関となってもいいのではないかと思っています。なぜ自治体は求職者支援制度の中の訓練実施機関になっていないのかという気がする。

 地域企業にとっても、有益な人材確保であり、自治体が一緒になって育成・確保すると考えれば、自治体にちょっと任せてくれたらやりますよという提案です。

 以上です。

○宮本座長 ありがとうございました。

 お二人の構成員から、就労支援をめぐって大変リアルで大事な論点を出していただきました。

 まず、事務局には、さまざまな自治体の状況と、その効果について構成員からお示しいただいたわけですが、特に渡辺構成員からもお話があった、事業の内容といいますか、プログラムの中身。それは、座学メニュー型なのか、実践オーダーメイド型なのか、中身と効果についての見通しが少しよくなると、いわゆるエビデンスベースドの議論ができるのかなと思います。もし可能であれば、そのプログラムの中身をどういうふうに類型化するか、難しいところではございますけれども、少しデータをさらっていただければなと思います。

 自治体にそのことをお願いしてのことなのですけれども、渡辺構成員と西岡構成員、それぞれ大変重要な提起をいただいて、制度をこれから変えていく、あるいは何がしかの仕組みを付加していく上で、西岡構成員からは、求職者支援制度との連携ということで、自治体が実施機関にという御示唆はあったわけですけれども、例えば西岡構成員が御活躍されていた豊中市は、御自身は経済部局の方として、まさに就労支援を福祉部局と連携しながらやっていただいたわけですけれども、そんな形をつくっていく上で、何か有益な制度改革の中身、御示唆いただけるところが何かあればお願いできないか。少し漠然とした言い方でも構いません。

 渡辺構成員にも、こういうふうにしていくと、もう少しうまく回っていくというのがもしおありでしたら。また、いつか立ち戻る機会はあると思いますけれども、こういう議論になっているのがいい機会でもありますので、お願いできればと思いますが、いかがでしょう。

○西岡構成員 制度の運用で具体的なことはないのですけれども、各地、いろいろな状況を見ていて、この制度の活用と地域の人材確保とか人材育成をしたいというのが、自治体にとっては、人口増の云々ではなくて、地域経済に見合った人材を確保し、育成したいというのは共通の課題です。そのときに、この制度というのは、多様な人材をどう地域の中で活躍できるようにするかというのは大事なことです。

 ただ、そういう観点での役所の部署とか、担当・体制をどうつくるかというところを今、結構アドバイスするというか、一緒に議論する場合が多いです。そういう意味でいくと、多様な人材が地域で活躍できる。それは、イコール、就労支援が伴った形でできるということは、多分、福祉部局が一番ふさわしいと思います。

 ただ、福祉部局が対企業への人材面で大変重要な影響力を持つというところを、自治体としてどう整備するかになるかと思います。自治体の雇用部門というのは小さいですけれども、産業部門、企業部門がこの制度なりを活用して、この制度で言うオーダーメイド型の支援メニューみたいなものをどうつくるかということを置きかえれば、多様な人材をどう評価したらいいかというのが、今の日本の企業制度の中では、メンバーシップ型の労働社会に慣れているので、生産イメージを持って常に人材を見てしまいます。

 僕らがやっているのはジョブ型で、ジョブに構造化した中で、その企業にうまく入っていけるように企業とのおつき合いをするわけですけれども、ジョブ型のおつき合いができるということは、こちらの人材の評価ができる。私たちは、生活困窮者の中で一緒に経験させてもらいましたけれども、福祉部局の中のソーシャルワークのセンスなりスキルが問われると思います。こういう中での人材評価が、企業側にどう翻訳して伝わるのか、あるいは企業側の環境整備なりにうまく助言できるのかというのが、多分自治体に求められている機能だと思います。

 それは、イコール、形を変えれば、今、御報告のあったオーダーメイドの支援メニューがそこで誕生するということだと思います。だから、それをどこでつくるのがいいかといったら、今の自治体を見れば、産業部門なりでは僕は無理だろうという気がしています。私たち自治体が地域を見たときに、多様な人材、いろいろ課題を抱えつつも働きたいというのを実現するということを考えれば、この人材の評価抜きに、労働力の評価を抜きに企業とつながろうとしても難しいですね。企業、あとは自己判断で頑張ってねというのは、中小企業にとっては多分酷な話です。それをすれば全部ノーです。課題を抱えた人は要りません。そういうリスクはとれませんという話になってしまう。

 そういう意味では、この制度を立ち上げている厚生福祉サイドの自治体の組織体制あるいは責任の編成というのが、一番リアリティーがあるのかなと思います。

○宮本座長 ありがとうございます。

 渡辺構成員。

○渡辺(ゆ)構成員 ありがとうございます。

 制度の枠組みでということでお答えできるか、ちょっとわからないのですけれども、私が感じるのは、就労準備支援事業も認定就労訓練事業も、プラス、生活保護の就労支援も、支援員がそれぞれ「キャリア窓口型」ではなく、「アウトリーチ型」で動けるようなたてつけにしていただけたらとすごく思います。窓口に行ってキャリア相談、ハローワークでの求人紹介ということは、もちろん重要ではあるのですけれども、そこから先、個別に寄り添って、その方の地域に出向いていって、一緒に企業を開拓して、実習して、定着支援して、生活支援してということを、トータルして1人の相談員が御本人のためにステップごとにずっと随行できるような、伴走できるような形の方が効果を発揮するだろうと思います。

 開拓員みたいな方が企業開拓を、対象者がいない中で「認定企業になってください」と、認定企業のリストをつくるために回っているというのをよく聞くのですけれども、それはとても難しい開拓の方法だろうと思います。担当としてついた支援員が、その方を見極めて、その方に合った企業をみずから開拓する。

 そのときに、企業や事業者に、「生活困窮者の方の認定企業として登録してください」とお願いするのではなく、個別のエピソードで伝える。例えば「中学も不登校で、ほぼ自宅に引きこもり、ほそぼそ家業を手伝っていたけれども、家業が廃業になってしまって、そこから5年ひきこもっていたA君です。」「ただ、今は就労して自立したいと思っていて、中学で学べなかった漢字を練習したり、散歩を2時間して体力をつけたりと頑張っている。本当に陰ひなたなく働くことができる方なので、御社で実習させていただけませんか?」と言うと、多くの企業が「それなら会ってみようかな」となりやすいという実感を私は持っています。

 生活保護の就労支援員も就労訓練事業の支援員も就労準備の支援員も、それぞれ個々の方々に寄り添って、アウトリーチ型、個別支援型で動けるような制度のたてつけになっていくと、より丁寧に、実数としても上がってくるのではないかなと思います。

○宮本座長 ありがとうございました。

 大事なことですので、この問題に少し立ち入ってしまいました。ここでまた多様な論点から御自由に御議論いただければと思います。

 朝比奈構成員、お願いします。

○朝比奈構成員 朝比奈です。

 先ほど、資料1で、4050代の男性相談者の状況など、2ページで御紹介いただきました。事務局の御説明では、親等と同居している人が一定の割合いるというお話でしたが、例えば未婚で同居者有りとか婚姻歴有りで同居者有りの同居者が子ども世代であった場合とか、婚姻歴有りの方が、今は同居状態じゃないけれども、別居している子どもがいると想定した場合に、その子ども世代の状況はかなり過酷、深刻であろうということが容易に想像されると思っています。そのあたりをどうやって取り上げていくかということについて、貧困の連鎖を学習支援の回でというお話もありましたけれども、それだけで大丈夫なのかなというところが1つ、問題意識としてあります。

 私たちの地域でも少しずつ連携を深めているのですが、まず1つは、児童相談所が社会的養護の分野で基幹的な役割を担っていると思います。そのなかで、親子分離をせざるを得なかった、養育能力が低かったり不適切な状態にあると判断された場合に、児相は家族の再統合というかたちで親御さんに「指導」しても状況はなかなか容易には変わらないだろうと思うのです。指導にとどまらず、具体的な支援を提供する必要があって、その手立ての一つとして、ぜひ困窮者支援制度を活用すべきではないかというのが1つです。

 それから、もう一つ、どうしても家族の再統合を果たせなくて、社会的養護の後、孤立した状態のまま社会に出ていかざるを得ない、児童養護施設卒園の人たちとどうやってつながっていくかということも、非常に大きな課題だと思います。虐待から保護されたゆえに、育った地域と離れたところで生活せざるを得ない方々が多くいると予想されていて、そういう意味では身近な地縁も血縁も頼れない状況です。そうした人たちにどうやってアプローチしていくか、きちんと受け皿を用意していくかという点でも、困窮者支援制度とのつながりをしっかりと位置づけておく必要があると思います。

 もう一つが、高校との連携をどうしていくか。第1回でも学習支援のその後ということが話題になっていましたけれども、高校へのアプローチも、家庭へのアプローチと、もしかしたら高校からのドロップアウトということも含め、10代後半から20代ぐらいに着目して、この制度がどのように役割を持っていくか。そのために関係機関とどういうつながりを持っていくかということは、きちんと枠組みを持って対応すべきかと思っています。

○宮本座長 ありがとうございました。

 今の論点をこれから膨らませるために、朝比奈構成員としては、事務局から何かレスポンス、あるいは新しい切り口、論点として柱を立てますか。

○朝比奈構成員 1つは、社会的養護の現状がわかる数をぜひ出していただきたいなと思います。

○宮本座長 それは、次回ということでよろしいでしょうか。

○朝比奈構成員 はい。

○宮本座長 就労支援から少し切り口を変えて、今、4050代の男性相談者が多いのですけれども、家計的な背景とでも言うべきものについて、大変大事な論点の提起がございました。 

○前神構成員 地域活性化センターの前神です。

 すごく難しくて、ついていくのが大変だったのですけれども、働き方というところで、私がいろいろかかわっていることで最近の変化といいますと、働き方が大分クリエイティブになってきているといいますか、どこかの会社に雇用されるという働き方だけではなくて、もう少し地域での創業というところにも目を向けた方がいいのではないかと思っています。今日の資料で、私が説明なしでわかると思うのは、11ページと32ページぐらいしかないのですが。

 今、若い人たちが何の問題も持っていない、身体的な問題も持っていないし、精神的な問題も持っていないけれども、どこかの会社にずっと雇用されて働く働き方を選んでいるかというと、さっきも少し言いましたけれども、地域おこし協力隊みたいな、月に手取り10万円ぐらいしかないような仕事でも、どんどん地域を元気にしていきたいということで、今の仕事をやめたり、新卒で飛び出していったりする人もいるわけです。複数のなりわいで食べていくといいますか、地域の中に昔からある未利用のものとか、自然の恵みを受けて、それを違う形につくり変えていくということを彼らはとても得意としています。

 例えば観光などでも、今はどこか観光地にバスで運ばれていくような、大型の昔やってきた観光を望む人はほとんどいませんし、例えばすごい山の中をただ走って楽しむトレイルランみたいなことを楽しむ人もふえています。そうすると、道を整備するとか、そこの自然のガイドができるということが新しい仕事に変わってきているのです。そこには、昔から、そこの地域のことを知っている、そこで暮らしてきた人たちの話がとても大事で、それを聞いて新たななりわいにつくり変えていくような人たちもいます。

 あと地域で、今、取り組んでいるものがどんどんさびれていかないようにするために、移住者を増やそうという取り組みを地方創生のメニューでやっていない自治体は、地方ではほとんどないぐらいです。そうすると、どうやって食べていくのかが問題になるので、移住者のためにこの地域にどれだけの仕事を集めることができるかという観点で、すごい山の中の、合併する前は村だったようなところで、このあたりでどれだけの仕事があるかというのを集めてみた協力隊がいるのです。

 そうすると、年間を通じて幾つか複数でやっていくと、村を出なくても生活できるじゃないかということに気がついて、まず移住してくる方に紹介するための資料として用意していたのですけれども、その集めた仕事は地元の人たちで結構きれいに回っていて、新しい収入源になったり、若い人が外に出なくても何とかやっていけるとなったり、働き方が少し変わってきている。人は制度だけでは生きていけないので、そういう動きに着目するとすれば、先ほど福祉と産業経済の部署が役所の中でなかなかマッチングしにくいというのがありましたけれども、その間に地域担当部署があるのです。地域コミュニティとかコミュニティビジネス、ソーシャルビジネスみたいなことをやってきているところもあります。

 今日お配りした資料の中に、人おこしをやっている元地域おこし協力隊の資料を持ってきましたけれども、人おこしの説明の1ページ目を開くと、田舎には結構若者を元気にするものがあるよというメッセージが載っていますが、そのとおりです。

 あと、自分がかかわっている地域にも、高校を卒業して就職するにも、進学するにも、勉強するのは余り得意じゃなくて、家にいて、特に何もないという子が結構いるのですけれども、運転できるということは免許を返納したお年寄りにとってはとてもいいパートナーで、車で移動して仕事をしていた人の運転だけをお手伝いするというのが、1つ、彼の仕事になって、それが自信につながった。

 さらに、印刷やデザインとか、パソコンで簡単なラベルをつくったりできるから、そういうものを手伝いますという事業を、事務所を持てないので、事務所間借りでお仕事を請け負いますみたいなことを始めたりする子もいる。地域の中では、その辺の変化が表れているのでどこかと連携するのであれば、地域担当部署と地域の動きをよくチェックしていくといいのではないかと思っています。

 地方創生で地域の中に仕事をつくろうとか、何か開発していこう、創業を支援していこうみたいな動きはどんどんありまして、結構な予算が交付金でついているのです。そればかりで使うのはもったいないので、いろいろなところが集まれる地域という切り口で持っていくと、人が生まれてから死ぬまでのステージは全部地域の中にあるので、どこの部署と言いにくいものは地域担当部署だと、割とすんなり行くのではないか。というのは、私はもともと自治体の人間なのでそう思っていまして、その辺の動きはかなり大きく変わってきている。そういう事例ももう少し調べられたら、もっと議論が膨らむのではないかと思って聞いていました。

 長くてすみません。

○宮本座長 ありがとうございました。

 確かに、先ほどの就労支援の議論は、中小企業中心に、それを念頭に置いて議論したわけですけれども、今、前神構成員の方から、創業というか、社会的企業と呼ばれるような新しい事業体を受け皿にする議論も重要ではないかというお話でありました。今日、御説明いただいた資料からは、そのような新しい事業体の柔軟な動きなどはちょっと見えにくくなっているところもあって、恐らくその背景にある交付金のもとが内閣府だったり、経産省だったり、あるいは個別の自治体であったり。そのあたりで関係が見えにくいところもあると思いますけれども、事務局、いかがでしょうか。そのあたりの動きについて、この制度から見た場合、何か特徴的な点があれば、ぜひお話いただければと思います。

○渡邊室長補佐 先ほど室長から申し上げましたところでは、第5回ぐらいで地域づくりの取り組みについて、資料を御準備したいと思っているのですが、私どもとしても、いわゆる地方創生ですとか地域づくりという動きと、この困窮者支援とがどのぐらい連動しているのかという実態把握が、正直、まだ十分にできていない部分がございまして、それについて引き続き確認いたしまして、追って資料を御準備させていただくような形にさせていただきたいと思います。

○宮本座長 ありがとうございました。

 前神構成員、おっしゃったようなことを制度の見直しに生かす上で、こんな制度が加わったり、ここをこんなふうにいじると地域の活力が生かせるというものが、もしありましたら。

○前神構成員 直接この制度にかかわる立場に今はないので、少し難しいのですけれども、成果を見ていくときに、何件件数につながったというのがあり過ぎると、地域と連携するのは遠回りのような気がします。成果の指標といいますか、見方といいますか、その辺を工夫したら、もう少しわかりやすくなって、これぐらいのことだったら私たちでも十分できるのにという、自治体の担当窓口で全部できるわけではないので、決められるのではなくて、自発的にできる役割分担といいますか、そういうものが進んでいった方がいいのかなと思って、聞いていました。

○宮本座長 ありがとうございます。評価の基準ということですね。

 ほかにいかがでしょうか。

 森脇構成員、お願いします。

○森脇構成員 私どもの自治体では、就労準備支援事業にはまだ取り組んでいなくて、この事業をどのように活用していくかということを考えたときに、この場におられる皆さん、実践されていらっしゃる方々ばかりなので、そのあたりもぜひ御意見を聞かせていただきたいのです。

 3つの自立ということを考えたときに、この事業自体、最長1年という期限というのが、下手をすると私たちがあと何カ月だからみたいな、そういうことに陥ってしまうのではなかろうかというのが正直あります。では、スタートをどこにするかというところがとても難しい。とても連携していますよということは、データとしては出ているのですけれども、特に働きたいという意思を持っている人というのは、その人が長くひきこもっていたとしても、ある程度の体験を通じながらやっていけるかなというところはあるのですが、その前の本当に出てくるという段階から考えていくと、とても1年では短い。

 その人が地域の中で生活していくということを考えたときには、周りの方々の受け入れということも同時に考えていく。そうしたときに、当然周りの方々の、下手をすると御本人の昔ながらの悪い情報というか、あの家は近所とつき合いがないからとか、いつの間にか周りが孤立させてしまっているということがある。本人の孤立につながっていたということを考えたときに、周りの理解も含めて、就労支援が先とか、生活支援が先ではなくて、本人の状態に応じてなので、どこから入っていくかをオーダーメイドだとしたときに、私たちは自立相談支援機関も持っていますので、そこの相談支援員、いわゆる就労支援員がかかわっていく。

 その期間が長くなると、一定の信頼関係をそこで得たときに、例えば就労準備支援事業を自立相談をやっているところがそのまま受ければ、同じような顔ぶれでかかわっていけるのですけれども、私たちのノウハウとして、より就労に特化した部分は持ち合わせていません。障害の就労移行支援事業所などのノウハウを持っているところで、しっかりと体験していただいたりすると、私たちが長くかかわればかかわるほど、もう一つ新しくかかわるところが増えると、またその方の越えないといけないハードルができてしまう。

 そうすると、私たちも、預けたよ、はい、おしまいということを決してやるわけではないですが、そこにもかかわりながら、2年3年かかっていて、新規の相談がどんどん入ってくると、その方へのかかわり方が時間的に見てもどうしても少なくなっていく。そこを就労準備支援事業所がその方との信頼関係をうまく持ってもらえたらいいなと思って、来年度から、この事業に入っていきたい。けれども、どこかに特化してお願いしないと、この3つをやりますよとやっていくと、35ページのデータにもあるように、かなり曖昧なところがあると考えたときに、そこの整理も必要なのではないかなと考えています。

 私たちが就労準備支援事業を本人の状態に合わせて活用していくかということは、1年ということを考えていくと、どうなのかなというものがある。その人の状態に応じて、柔軟に1年半、2年とか、そういう幅を持たせていただけると、私たちも本人を焦らせるつもりはないのですけれども、期限があるために、ここまでいかなくちゃいけないという本人の能力とか思いを、いつの間にか置き去りにしてしまう可能性がなきにしもあらずと感じている。ある程度見通しが立った時点でやってしまえば、それはいいと思いますが、その辺を少し柔軟に考えていくということも、1つ大切なことじゃないかなと感じています。

○宮本座長 ありがとうございました。

 事業のタームと、公務員も含めた支援者の配属の期間、それと当事者の発展、3つの自立の循環をどういうふうに連関させ得るのか、実はこれは大変重いことなのかもしれません。ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 渡辺由美子構成員、よろしくお願いします。

○渡辺(由)構成員 ありがとうございます。

 私ども、東京とか仙台の割と都心部で子どもたちの学習支援をしているので、生活困窮の方々というと、親御さんとかを想定するのですけれども、ひきこもったりしていないけれども、お仕事的には非常に低賃金で、仕事が切れてしまうと次を探すのが大変という方たちです。

 一方、都市部だけかもしれないですけれども、雇用の現場では圧倒的に人手不足になっていて、私どものところにも、働く人がいないか、例えば高卒で、こういう仕事をしたい人はいないかとか、母子家庭の支援をしている団体には、地方の旅館に仲居が全然いないから、仲居をやってくれる人がいないか、ゴルフ場の受付をやってくれる人がいないからゴルフ場に来てくれないかとか、トラックの運転手。とにかく配送が全然足りないから、そういう子たちに何とか免許を取らせて中小企業でやっていればいいのではないかということで、雇用の現場も絶対あるわけで、それがうまくつながらないかなと常日ごろ思っています。

 お母さんたちとか、中卒、高校を中退した子たちと接していて思うのは、ちょっと時間がかかるのです。ただ、能力的に劣っているわけではないので、少し時間をかければできる。私たちの学習会でいくと、お子さんの出欠状況を必ず教えてくださいねとお願いします。要は、学習会を休まないように、出欠の連絡を毎週いただくのですけれども、最初のころは、メールをお送りしても返事が来ないから、電話で、「御連絡いただかないと困るので、お願いします。」と確認するというようなことを繰り返します。

 3カ月ぐらいたつと、皆さん、ちゃんと携帯でメールが返ってくるし、かなり厳しい人でも半年もたてばできるようになる。

 そういう事から推察できるのは、多分、お仕事に慣れるのに時間がかかる方なのだろうと思います。

 今、都心部では、コンビニでもフードサービスでも宅配の現場でも人が全然足りません。そういうお仕事はそれほど高度なスキルが要らないので、マッチするのではないかと思うのですけれども、一人前の仕事がすぐできないので、企業にとっては、最低賃金を払っていきなり雇い出すのは難しいと思います。どんな組織でも、雇ったからには、一人前の仕事、時給分の仕事をして欲しい。企業でも同じなので、雇用につながらないと思うのです。

 ただ、人手不足なので、お仕事に慣れてくれて、一人前の仕事をしてくれれば、その人は絶対必要になるのです。例えば 44 ページにもあるように、何で認定就労訓練企業にならないかというと、企業のメリットがない、助成金等のメリットがないとあります。そういう方を受け入れる企業には、3カ月とか半年分ぐらいはお給料を補助してあげる。要は、雇う方としては半分だけ払えばいいので、最初は仕事ができないけれども、ちょっとゆっくり見てみるかとか、もうちょっと慣れるまで見ようかとすると、それは現場で就労支援をやってくださっている。その仕事に慣れるようにしてくださるということなので、就労準備支援事業を実施しなくても企業がやってくれていると考えれば、それを企業に委託していると考えられるかもしれない。そんなことで、有償で職業訓練をして、それが雇用にちゃんとつながるような形ができないのかと思っています。

 もう一つが、例えばフードサービスのコンビニとかスーパーだとか配送にしても人手不足。大手企業は、 CSR 観点から子どもの貧困にも取り組もうとおっしゃっていますけれども、企業の社会的責任として何かしなければいけないということがある中で、大手企業が、 CSR として「私たちは認定就労訓練を担って、そういった方たちを受け入れます。」というような取り組みはできないでしょうか。ただし、全部受けるのは大変なので、3カ月とか半年分は、助成金が入ることで、その人たちをゆっくり育てながら就労につなげる仕組みがあれば、企業にとってもメリットが大きいので、いい形で進むのではないか。

 頑張ってくれて半年やって一人前になってくれて、ちゃんとレジができるようになれば、深夜に働く人がどこも足りないので、深夜に一生懸命働いてくれてありがたいという人材に変わると思うので、そこにどう変えていくかというのを考える方法はあるのかなと思っています。

 もう一つが、全然違うのですけれども、 10 ページに自立相談支援機関と教育機関との連携ということで、学校との連携がなかなか難しいということですが、子どもの貧困の現場でもそうですけれども、お子さんがいる家庭の状況というのは学校が情報を一番持っているのです。学校と連携できればいいのですが、子どもの貧困の教育支援の現場でも非常に難しいと思っています。自立相談とかもあるのですよということを、学校を通してなかなかお知らせできない。

 学校のお話を聞くと、私たちの学習支援を御紹介いただくときもそうですけれども、お宅は貧困だから、これはどうですかというのは言いづらい。個別に特定して渡すのはすごくやりづらいと言っているので、各自治体で就学援助を受けている家庭には、一律に自立相談の御案内を定期的に行うとか、「仕組み」にすると学校はすごくやりやすいので、そういう形でうまく連携できると思います。

 もう一つは、親御さんが文章を読むリテラシーみたいなものが非常に弱いなと感じていて、私たちもお知らせするときに、いかに簡単に要点だけを文字数少なく出すかということを考えています。お知らせの御案内も、困っている方の相談を受けますよとか、お金を貸しますよ、職業の相談をしますよとか、本当にわかりやすい内容のもので、まずはお電話等でつながるようになると、学校を通しての相談の提示みたいなものもできると思っています。

 以上です。

○宮本座長 ありがとうございました。

 3つの論点、いずれもこれから継続的に議論しなければいけないことだと思うのですけれども、スクールソーシャルワーカーを含めた学校からの紹介が1718%にとどまっていた。渡辺由美子構成員からは、例えば就学援助を受けている人に、自動的に自立相談の窓口につなげるような制度的な回路という御示唆もあったわけですけれども、スクールソーシャルワーカーはつなぎ先に大分悩んでいるところもあると思います。そのあたり、何でその程度におさまってしまっているのか。

○渡邊室長補佐 スクールソーシャルワーカーの実態を少しお聞きしますと、どうしても学校単位ではまだ配置されていなくて、教育委員会に配置されていて、市内の学校をエリアで分担して見ているといった実態もお聞きします。そうしますと、学校から教育委員会に上がるところで1つ階段があるといいますか、そこでつながっていないということも聞かれています。もちろん、スクールソーシャルワーカーも含めて、自立相談を御案内いただくというのは、制度的には周知がすんでいるような状況ですが、実態がなかなかついてきていないのが実情だと理解しています。

○宮本座長 ありがとうございました。

 ほかの2点の問題、つまり、企業のモチベーション、インセンティブは、メリットがないというのが97%の回答になっているわけですけれども、それを部分的であれ、何か補助金等をつくれないかということ。それから、CSRの舞台を少しつくれないだろうか。非常に大事な御指摘をいただきました。

 ほかにいかがでしょうか。

 では、奥田構成員。

○奥田構成員 今の学校の問題とも絡むと思うのですが、9ページの、これは生水構成員にも後で意見をいただきたいのですけれども、今までは自治体なりライフラインの事業者が滞納者を抱え込んでいた。今は自立相談ができたので、それを紹介するという絵になっていると思うのですが、個人情報の取り扱いが多分一番大きな問題になっていると思います。本当は、右側の絵が三角形になったらいい。要するに、先ほどの相談員が相手の自己責任にしている面がないかというのと同じ話で、これも結局は滞納者と呼ばれる困窮者が行くか行かないかは本人次第だという話にとどまる。

 でも、一方で、本人の頭越しでその情報を自立相談に持ち込むとリスクが当然高い。何かもう一つの線はないのかというところは、ちょっと工夫しないと。例えば、私のところはNPOで民間ですけれども、保証人バンクという連帯保証人制度を独自でつくっていまして、最初の家賃契約の時点で、契約書の中に滞納等々のときは大家がNPOに連絡しますという本人同意をとっている。そうすると、非常に早い段階で滞納情報が来る。そうすると、我々はもともと連帯保証人の立場であるNPOですから、即介入して、うちを利用している人は元ホームレスの人がほとんどですが、再ホームレス化を防ぐという仕組みをつくっているのです。

 ですから、この絵は、自立相談ができたので受け皿ができましたよということは示しているのだけれども、もう一つの意味として、そのアウトリーチも含めて相談経路をどうつくるかという話は、ちょっと危険な部分も当然伴うけれども、議論すべきじゃないかというのは、さっきの学校情報もそうですね。学校から、もしくは行政から、就学援助をもらっているところに手紙を出す。それは、ある程度やれば一斉だからできると思います。

 でも、一方で、本当に緊急な事態とか心配な事態は、学校から自立相談に来るかどうかというと、これは現状としては来ないだろう。それをどうするかというのが、制度で行けるのか、個別でやるのかちょっとわからないですけれども、三角形になるかというのは大きな課題かなと思っています。

 それから、今後の議論のやり方にもちょっとかかわってきますが、第3回で住居確保給付金について議論するということですが、住居確保給付金は、どちらかというと、今日の延長線の話だと思います。住居確保給付金は、失業以降何年という要件がある制度だから、あれはどちらかというと就労支援制度です。そうじゃなくて、先ほど和田先生がおっしゃった高齢者とか年金破綻の問題がもう見えてきているわけだから、そうなると、この制度の中のストレートな居住支援という枠が弱い。だから、居住支援ができるのかということです。この辺は、地方創生の議論の中でも、空き家云々というのも含めて、居住支援というのはどこで議論するのかというのは、さっきの高齢者の問題も含めて、あるのではないかと思います。

 それと、もう一つが子どもの学習支援ですが、これも第3回で議論するということですが、今回、正確な絵を描いてくださった。それは何かというと、世帯支援とちゃんと書いてある。けれども、タイトルはいまだに学習支援です。これは、大きく勘違いを起こさせていると思います。そうじゃなくて、今回、今のはやりで言うと丸ごとだから、特にこの制度は中身を選ばないとか属性で見ない。子どもは、学習支援だけじゃどうしようもないというのは、先ほど申し上げたとおりで、私たちも現場で本当にそう思っています。その理解を浸透させるためには、学習支援という枠のとり方自体、ちょっと見直した方がいいのではないかと思いました。

 最後に、今日は、資料3の方を持ち込みで資料を入れたのですが、これはまた時間があったら見ていただきたいのですが、先ほどの起業のところです。新しい働き方。これは、実は東日本大震災の復興支援にかかわる中で、公益財団をつくって、私は代表もやっているのですが、そこで震災復興支援でカキの養殖を再開するというのをみんなで頑張ってやったのです。しかし、カキむき作業というのは結構高度で、簡単に誰でもできないので、仕事を切り出しして、カキをむかないで、殻つきカキをきれいに洗って、加熱して売り出す。そこの受け皿として、生活クラブとグリーンコープという生協にお願いしました。

 これは、労働の意義も、そこで働いている若者は、自分が助けてもらっているというだけじゃなくて、復興支援に携わっているという意義性が出てくる。復興をすすめている漁師たちも、自分たちがカキを復興させることで、仕事のない若者に仕事を出せるという両義性でやったのです。これは、今、仕事になり、最低賃金をクリアしていて、3年間で24人がそこで働き、5名が一般就労、障害作業所等で3名、あとは継続したりしています。

 人材不足、人手不足の企業とどう事業をすすめるのか。そして、企業の中に、ある意味福祉的観点みたいなものも含めて、どう理解していただくかというのも大事です。一方で、最後の回に出てくる地域づくりということで言うと、私の記憶では、今回のこの議論の中に社会的起業というか、ソーシャルファームみたいなものを起こすためには、起業支援をつけましょうという議論がかつてあったと思います。要するに、事業を起こすための一時金を最初は国が出しましょうみたいなもの。

 それは、ある意味、人手不足という中で解消できるかもしれないけれども、私はこれからの日本の社会とか地域ということを、これを使って、もしくは地方創生も使って、もう一度、地域とは何だ、人が暮らして生きていくというのは何だということを考えないといけない。それは働き方も変わっていくだろうし、単なるお金のかさ、幾らもらえるかではない価値観も出てきている。そういう中で言うと、もう一回、起業支援みたいなものも含めて、チャンスがあればいいのではないか。

 今回、私たちは復興支援でやったので、東日本大震災のときに全国の人たちの心が動いて、そのお金をベースに始まったので、起業できたわけです。私たちのコンセプトは起業と移譲ということを考えていまして、最終的には地域に移譲して、財団は次のステップに行くということをやっているのですが、そういうことで新しい働き方、もしくは消費もそうです。私はあえて高いカキをつくろうとやっています。要するに、消費者は、1粒で二度三度おいしいカキで、復興支援もできるし、若者就労支援もできるという。三度目は何かというと、東北一円、人手不足もしくは後継者不足で困っている。そこに震災が来たものだから、本当に人がいなくなった。ここにどんどん若者を連れていって、100人に1人でも、これをやりたいという人がいたら、漁師も、後の面倒を見てくれるかと言ったら、いいよと、みんな大歓迎です。そういう意味では、Iターンというか、地方に人材を出して受け皿もつくれるということで、先ほど出ましたけれども、マイナスを埋める発想だけじゃなくて、これでプラスをつくってしまおうみたいなところまでできないのかというのが、私はすごく期待しているのです。そんな意味で、今日、この資料を持ってきましたけれども、よかったら見てください。

 私からは以上です。

○宮本座長 ありがとうございました。

 奥田構成員から大きく3つ論点がございまして、2番目の論点は、これからの議論の仕方にもかかわるので、そこを取り上げておきますと、恐らく次回、家計相談・居住支援も含めた一時生活支援等を議論するわけですけれども、そういう議論の仕方は手がたいのですが、現在の仕組みを固定させてしまうことにも結びつきかねないということで、次回、この論点はまた別立てで出ますけれども、そこにもう一回、相談支援や就労支援の話を組み込むような形で複合的・一体的に議論していくということで、皆さん、合意いただければ、そのような形で議論を蓄積していきたいと思います。

 先ほど、朝比奈構成員から出た困窮の連鎖の話も、自立相談支援と家計相談の支援をどう一体的にやっていくかというテーマにもなるかと思います。したがいまして、次回もこの自立相談支援、就労支援の話をこれで終わりとせずに、また引っ張り出して一緒に議論していきたいと思います。

 1番目の問題、9ページの図をきちんと三角につなげていくべきではないか。これは、奥田構成員は生水構成員の顔を見ながらお話されていましたけれども、いわゆる野洲モデルではここを三角形として完成させている。いかがでしょう、生水構成員、野洲よりも少し大きな自治体だとなかなかそうはいかないという声も聞こえてくるわけですけれども、野洲の経験から、もうちょっと一般化していくことを考えて、先ほどの奥田構成員の問題提起に何か示唆をいただくとすると、どんなふうに言えるでしょうか。

○生水構成員 実は、国民健康保険というのは健康のためにとても大切な制度にもかかわらず、ここを滞納している方が多くて、野洲市が知り得る情報を集めて精査したところ、約100世帯の資格証明書の方の9割が、何らかの事情によって支払える状況ではなかったということがわかりました。また、国民健康保険税の滞納者の6割強に多重債務の状況があったということがあります。本当に困っている方ほど情報が届かず、また諦めてしまっているなどの理由で御相談に来られない。まさしく先ほど奥田構成員がおっしゃったとおりです。そこで野洲市では多重債務の取り組みについて、税金や使用料の滞納から発見し債務整理の解消や生活再建のための支援をおこなっていく仕組みとして多重債務者包括的支援プロジェクトを始めました。このプロジェクトでは、相談者の同意を得ることを担保にして個人情報の共有と第三者提供をしています。全国の自治体の税務部局では催告を繰り返しを幾らしても払えない方々に請求しても職員が疲弊するばかりであるというところで、回収することだけに視点を置くのではなく、滞納者の生活再建という視点を持つことが自治体として必要ではないかと大きく関心をもたれています。ただし、税の部局と福祉の部局がかかわる上で情報共有が必要となりますが、地方税法22条の守秘義務の大きな壁が市役所内の連携を阻害しています。自ら相談に来られない人の生活困窮状況を把握するためには、効率的な生活困窮者対策からみると、この情報共有が重要なのです。

この地方税法22条について、目的を生活困窮者対策に限った場合においては税情報の活用ができるとした運用あるいは改正となれば、市役所が滞納税金の情報から本当に困っている人をアウトリーチすることが可能となります。これによって全国の自治体においての滞納整理の意識が変わり、税務部局の意識が変われば、庁内の生活困窮者支援の連携が大きく進むと思います。

 それと、自治体では個人情報保護条例の縛りがありますが、この22条が変わることによって、ここも大きく変わっていく可能性があると思うので、生活困窮支援においても、災害と同じレベルで個人情報の共有ができるようになれば現場の取組が非常にやりやすくなると思います。

 せっかくの機会なので、これは言いたかったので、ありがとうございます。

○宮本座長 ありがとうございました。

 最後の社会的企業への援助、これは先ほど渡辺由美子構成員や前神構成員からの議論とも重なりまして、ソーシャルアントレプレナーシップをこの制度としてどういうふうに促していくかということ、これも議論し続けたいと思います。

 野溝構成員お願いします。

○野溝構成員 社会福祉法人の立場から、2点ほど述べさせていただきます。

 先ほど和田構成員より、高齢者の就労支援について御意見がありまして、今後の論点としていただくことになりました。私ども社会福祉法人といたしまして、特に介護保険事業に携わっている法人は、ほとんどが地域包括支援センターを行政から受託させていただいております。そういった中で、地域の高齢者の、もちろん介護だけの問題ではなくて、生活支援のところも最近始めているところであります。しかしながら、制度の中でなかなか十分に進んでおりません。今後の自立相談支援事業のあり方において、相談機関の連携先として、地域包括支援センターが果たす役割というものは大きなものがあると思います。

 平成27年3月に、厚労省から我々社会福祉法人に対しまして、生活困窮者自立支援制度と介護保険制度との連携について、通知をいただいております。その中で、生活支援コーディネーター、地域支え合い推進員の配置について述べられていますが、現実としては、地域包括支援センターの中にまだまだ支援員が置かれていない状況ではないかと思います。

 ちなみに、埼玉県では、2810月1日現在でありますけれども、第1層の生活支援コーディネーターが選任されているところが63の自治体、全てで配置しておりますけれども、大体が社会福祉協議会に配置されています。一部、基幹型の地域包括センターあるいは包括支援センターが入っておりますけれども、社協に担っていただいています。

 第2層の生活支援コーディネーターの選任につきましては、現在、まだ埼玉県内では全体で11。その中で地域包括支援センターが担っているのは、まだ7つであります。今後、生活困窮者自立支援との関係の中では、生活支援コーディネーターを各地域包括支援センターに速やかに配置する必要性があろうかと思います。そういった中で、高齢者だけではなくて、地域の生活困窮者の問題につきまして、地域包括支援センターが関わっていく重要性があるのではないかと思います。

 そこで、次回でも結構でございますので、生活支援コーディネーターがどの程度各自治体に配置されているのか。その中で、どういったところに配置されているのかをお知らせいただくとともに、まだ協議会の設置も進んでいないかと思いますが、協議会の設置状況等もお知らせいただければと思います。

 2点目でありますけれども、就労支援につきまして、いろいろ御意見がありました。認定就労訓練事業につきまして、私たち社会福祉法人は、就労訓練に提供できる作業・労働、いろいろなものを持っております。それを支える福祉人材も多くおります。この認定就労訓練事業に積極的に参画していくのが、社会福祉法人としての責務ではないかなと思いますし、今回の社会福祉法人改革の中でも、地域公益活動として我々は責務を負う中で、まさに認定就労訓練事業を社会福祉法人が担っていくことは大変重要なことではないかと思っております。

 しかしながら、47ページにありますとおり、認定申請をするに当たりましては、ハードルが大変高いものがあります。埼玉県内でも社会福祉法人が進まない理由として、申請手続が非常に面倒であるということが挙げられております。我々社会福祉法人は、ディスクロージャー体制をしっかりやる状況になっておりますし、当然、監査も受けております。

 確かに認定につきましては、民間企業等、いろいろチェックしなければならない状況であることは承知いたします。特に財務諸表等につきましては、社会福祉法人はしっかりディスクロージャーもできておりますので、少し省略、簡素化していただければなと考えております。

 現在、埼玉県内では30カ所の認定就労訓練事業所がありますが、昨年1年間でマッチングできたケースはまだ2件のみであります。就労訓練をしても、その先の就労先をどういうふうにマッチングさせていくかとなりますと、我々社会福祉法人だけでは限界もありますので、これらの行政機関等との連携をさらに深めるための施策というものも講じていただきたいと思っております。

 そこで、埼玉県では、前回もお話させていただきましたとおり、埼玉県内の全ての社会福祉法人が、社会貢献活動といたしまして、彩の国あんしんセーフティネット事業を展開しております。現在は、経済的給付、現物給付のみでありますが、来年4月より、この就労訓練事業につきましても、彩の国あんしんセーフティネット事業の中で取り組むべく、現在、準備を進めております。

 就労訓練事業を社会福祉法人の参加によって積極的に進めて、県内、どの地域でも訓練を受けられる事業所がある環境をつくっていきたいと思っております。現在の彩の国あんしんセーフティネット事業の経済的支援も含めて、相談支援事業と組み合わせて、生活支援と就労支援を同時に提供して、安心して就労訓練を受けられる環境を社会福祉法人として提供していきたいと考えております。

○宮本座長 ありがとうございました。

 大きく2点、大事な論点を御提起いただきました。特に、最初の論点にかかわっては、事務局へ資料の要請もございました。実は、生活支援コーディネーターと自立相談支援事業の主任相談員は兼務できるように設計されていて、これはこの制度を立ち上げるときに老健局に行ってお願いした覚えがあります。このつながりというのは、さっき和田構成員からもお話がございましたように非常に重要ですけれども、いかがでしょうか、事務局の方で兼任の事例というのはあるのでしょうか。余り聞かないですね。もし何か接点があるようでしたら、先ほど野溝構成員からの資料要請がございましたけれども、あわせて調べていただければと思います。

 では、本後室長、お願いします。

○本後室長 失礼しました。

 兼任の状況ということになりますと、直ちに把握しているデータがございませんので、幾つかそういった事例があるかどうかということは、把握してみたいと考えております。

○宮本座長 ありがとうございました。

 すみません、私、最初、2時間半で、そんなに時間がもつのかなといつも思って、それで余計にしゃべっちゃうのですけれども、結果的には時間がだんだん押してまいっております。すみません、まだ御発言いただいていない方を優先的にお話いただいた方がいいのかなと。

 では、長岡構成員、続きまして、山本構成員、田中構成員、お願いします。

○長岡構成員 山形市社協の長岡と申します。

 ただいまの御意見に決して反論するわけではありませんけれども、生活支援コーディネーターは1層も2層も山形市では社協が受託しております。2層は、地域包括圏域、13圏域あるのですが、13名、全て山形市社協でということで、現在、活動しております。

 それで、和田構成員が先ほどおっしゃられた高齢者の就労、それから社会参加という部分では、生活支援コーディネーターが地域とかかわりを持って、また地域包括支援センターとも連携を図りながら、担い手養成講座などを開きながら進めているという現状でございます。このように、地域の中で早期発見の仕組みがあって、住民の支え合いの仕組みがあって、情報提供するときには地域の組織がある。こういうことをつくってきた社協が受けるということで、こちらの方はしているところでございます。

 また、自立相談支援事業につきましても、社協が受託しております。現在、全国的には委託が6割で、その約8割が社協だと聞いておりますけれども、私の方から、着眼点の自立相談支援事業の2つ目と3つ目について、感想などを述べさせていただきたいと思います。

 社協がさまざまなネットワークをつくってきておりますけれども、当然、そうすることによって相談件数がどんどん増えてきます。その相談解決に向けて進めているという状況ですが、そのネットワークがあるからこそ、深刻化しないうちに対応することができて、解決もしやすくなるのではないかと考えているところです。つまり、プランに結びつかないという理由も先ほど出していただいたのですけれども、この通常のネットワークで解決してしまうというプラス面もあるのではないかなと感じているところでございます。

 具体的にそのネットワークとはどういうことかと申しますと、山形市の場合ですと、平成4年から小地域福祉ネットワークを通じて福祉協力員の制度をつくって、地区社協を中心に身近な地域での見守り、声かけ、訪問活動を実施してきておりまして、早期発見、それと、その発見したものを専門職につなげる仕組みをつくっておりまして、さらに、地域包括支援センター13カ所全部でネットワーク連絡会というものを立ち上げて進めてもらっているという状況です。

 このネットワーク連絡会は、地区の役員の方々はもちろんですけれども、医療・保健・福祉関係者、そのほか警察とか金融機関、さらに薬局とか商店、あと福祉サービス事業所といった方々で構成する連絡会の仕組みということで、平成18年からずっと全ての地域で進めてきているということのほかに、成年後見センターの運営委員会では、弁護士とか司法書士とか精神科医。それから、生活困窮の方の運営会議では、ハローワークとか商工会議所とか若者サポートステーションとの会議を通じて、常に連携がとれるようなネットワークということで体制をつくってきているという状況です。

 この幅広いネットワークをもって、横の連携をスムーズに行うことができて、その制度のはざまの問題に対して解決できる活動を進めていくというのは、社協の強みではないかと思います。全ての社協がそうなのかはわかりませんけれども、言えることは、その強みを生かして、とにかく進めていければということと、その解決に向けた取り組みについては、ソーシャルワークの視点は絶対に欠かせない、その技術は絶対に欠かせないだろうなと思います。こういった技術を持ち合わせているのが社協と言えるのではないかと思っております。

 それで、資料2の16ページですが、例えばAとBをつなぐ部分ですとか、CとDのつなぎというのが、今後の全体の議論で大切になってくるのではないかと感じている部分です。こういった部分でもソーシャルワークの視点とか伴走型というところを進めていく。そういうときに行政と一緒にできるような何らかの仕組みがあればいいと考えているところです。

 以上です。

○宮本座長 ありがとうございました。

 山形市や藤里町の社協の経験がぜひとも広がっていくといいなと伺っておりました。

 では、山本構成員、お願いします。

○山本構成員 簡単に3点だけ。

 これまでの議論の中で、自治体の取り組み促進をどうしていくか、これは非常に重要な観点だと考えております。新しい事業でありオーダーメイドの支援という御意見がありましたけれども、好事例をぜひ共有して取り組みを促進していくと良いのではないかと考えております。

 また、取り組み状況の見える化、ベンチマークという言い方がいいかどうかわかりませんが、指標の設定は難しいかもしれませんけれども、そうしたものがあると、自治体の取り組みが進んでいく面もあるのではないかと思っております。

 もう一つは、取り組んでいく上で、自治体内でも他部署に関係するものなので、連携通知の資料にございますけれども、自治体全体として取り組んでいる他の事業とうまく絡めていくことが、有効に機能する一つの方策ではないかとも感じております。我々の経験としては、先般、自殺対策トップセミナーという形で、副市町村長を含めて3分の1の御出席でしたけれども、県内の市町村長に集まっていただきました。こうした首長を巻き込んだ取り組みと連動させることが重要と考えます。

 また、就労支援については、大企業に取り組んでいただければ本当にありがたいのですけれども、町村部へ行くとそうしたところもなかなかありません。就労困難な方の支援については、障害者の就労支援の取り組みもあります。今日、共生社会でインクルーシブの話がありましたけれども、他のこうした就労支援に関する事業の活用等々についても考えてみてはどうでしょうか。これまでも取り組みがあって、検討もされているかと思いますけれども、より一層進んでいけば、生活困窮者の就労の場の拡大につながっていくのではないかとも考えております。

 以上でございます。

○宮本座長 ありがとうございました。

 特に、最後の障害者との連携、高齢者との連携もあわせて、非常に重要なところかと思います。

 田中構成員、お願いします。

○田中構成員 最初に感想といいますか、この制度を見たときに、作者の名前は忘れたのですが、「逝きし世の面影」という、江戸時代の日本、地域社会がしっかりして、人口が少ない。ああいう社会を目指しているのかなという個人的な感想がございまして、あれをつくり上げるというのは、これだけ時代が変遷してきた中で困難なことなのかなという思いが非常にあります。それで、前回、第1回目で、つなぎをどう定義するか、どういうふうに考えるかという議論がありましたけれども、そういったところが非常に曖昧といいますか、はっきりされていないところがあると思うので、1つは、そういったところも見ていく必要があるということと。

 今、長野県の話がありましたけれども、町村部へ行きますと、就労の場というのはなかなかないというのがありますから、障害との使い分けをするのではなくて、ミックスに使ったり。あるいは、資料2の16ページ、AからEまで事業が分かれておりますけれども、基本的に生活相談をしていく中では、視点は違ってきますが、家計というものも一緒に見ていくわけですから、事業が切り分けられると、単体の事業として、人数とか予算を委託先から要求してくるということもありますので、もうちょっと使い勝手のいいやり方がないかと思います。

 地域をつくっていくという17ページに目指すことが書かれていますが、何人かの構成員から幾つか出ましたけれども、特に高知県は少子高齢化で高齢者が増えていきますので、いかに高齢者が元気でいられるかということで、いきいき百歳体操というものが始まっております。かみかみ百歳体操もやっていますけれども、例えば老人クラブで、リタイアされた方が元気にいろいろな自分たちの趣味とかで活躍されていますけれども、ああいった方たちが、介護保険の地域支援事業の要支援から外れていくことになりますが、そういったところとも連携して行けるような仕組みづくりが重要だと感じています。

 若者たちが勝手に起業していくという話もありましたけれども、地域の方が困っていることをお互いに助け合うという意味で言うと、高齢者しかいない地域でも、元気な人が支援していく。例えば高知で言うと、健康パスポート制度というものをつくりまして、ポイントがたまっていって還元されるのですけれども、そういった皆さんに訴えるものが何がしかないと、役所がこれを示しても、現場の方ではどんな絵を描いていったらいいのか。これをやるところは、福祉事務所しかないだろう。うちは福祉事務所ですけれども、やっていることは、産業とか商工とか、いろいろなところとマッチングしなきゃいけないし、あるいは税部門、国保とか、多重債務者もカバーしていかなきゃいけない。非常に幅広い事業だと思います。

 そういったことを考えると、せっかく横断的にやっていこうという仕組みを提案してくれているので、役所の体制の問題もありますけれども、それが横断的にできるような、そういう使い方ができるような仕組みにしていただけたらいいのかなと思います。

 まとまっていないですけれども、以上です。

○宮本座長 ありがとうございました。

 では、最後になりますけれども、加藤さん、よろしくお願いします。

○相澤構成員(代理加藤課長) ありがとうございます。川崎市でございます。すみません、代理で参ったのですが、2点ほどお話させていただければと思います。

 1点目は、川崎市の場合、自立相談窓口、もうじき3年ほどになるのですが、開設しているところでございます。委託でやらせていただいているところですが、支援員のことについて、ちょっとお話をします。先ほど奥田構成員からお話があったように、支援員は相談者任せにしているとか、力量のお話もございまして、その辺、つくづく感じているところであります。

 あと、西岡構成員からも、委託だと委託任せになるところもあるという御指摘もいただいて、ちょっと耳の痛いお話を頂戴したところです。そういうところでは、3年間、同じところに委託させてもらっているところですが、相談員の質とか、その辺は常日ごろから意識しながら、進捗はコミュニケーションをとりながらやらせてもらっているところでございます。

 その一方で、和田構成員からもお話があったのですが、相談にいらっしゃる方々の困難度というか、相談内容の複雑化というのですか、重たい方々もいらっしゃって、そういう方々の支援に対する期間が長期化しているところもございます。相談員自体のスキルとかもある一方で、そういう方々とのかかわりの中で、私がこういうことを言ってはいけないですが、疲弊している状況も多々見られるところで、あれをやれ、これをやれと一方的に言うこともさることながら、その辺の相談員へのフォローというところもいろいろ考えていかなきゃいけないのかなと常日ごろ思っているところです。

 ですので、議論の中で研修のあり方とかもお話があるところですが、支援のノウハウというところも大事かと思いますけれども、川崎市の場合、支援者あっての相談窓口かなと思っているところもございますので、そういう方々をいろいろな角度から見ることも1つ大事なのかなと思ったりしております。

 もう一点、和田構成員がおっしゃっていた高齢者の就労支援につきましては、川崎市も大分取り組ませていただいているところですが、相談にいらっしゃる方々の3分の1ほどが60歳以上の方々のような状況でございます。その方々は、就職先がなくて困っている方々が一番多うございます。それ以外の方々は、いろいろな課題を持ちながら複合的に、健康のこととか御家族のこととか債務のことを含めて、困りごとを3個ほど持ってくるのですが、御高齢の方々は就職に困っているとか、金銭的に困っているという方々が多い状況になっています。

 ですので、そういう方々の就労支援ということで、和田構成員からもお話があったのですが、とっつきやすいところで警備とか清掃のお仕事が多くて、体も丈夫な方なので就労のマッチングはしやすいのですが、それ以外の健康に多少問題がある方々の就労先はなかなか見えてこない状況なので、その辺、新しい方向を考えていかなきゃいけないかなと思っています。そういう方々は、生活保護のことも考えてくださいと相談窓口でお話ししているところですが、生活保護を受けている方が高齢者世帯に増えている状況なので、その方々をできれば救ったり、御支援していければ、また違った道が見えてくるのかなと、先ほどお話を頂戴して感じたところでございます。

 以上でございます。

○宮本座長 ありがとうございました。

 相談員の疲弊という問題はおっしゃりにくいことだと思いますけれども、大変重いことでありまして、忘れないで議論していきたいと思います。

 さて、座長の不手際で5分ほど時間が延びてしまいましたけれども、皆様から中身の濃い議論を展開していただきまして、今日はひとまずここで閉めていきたいと思います。

 事務局の方から、次回の開催予定等、御連絡をお願いしたいと思います。

○金井課長 次回の開催につきましては、1114日月曜日の14時から16時半でございます。場所は、全国社会福祉協議会の灘尾ホールを予定しております。よろしくお願いします。

○宮本座長 それでは、これにて本日は閉会させていただきます。どうもありがとうございました。

 


(了)

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