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2016年12月2日 第18回 社会保障審議会人口部会 議事録

○日時

平成28年12月2日(金)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

津谷部会長、稲葉委員、大石委員、大林委員、小野委員、
鬼頭委員、駒村委員、早乙女委員、榊原委員、白波瀬委員
鈴木委員、高橋委員、山田委員

○議題

1 報告聴取
   ・平成27年国勢調査 人口等基本集計結果の公表等について
2 新推計の基本的考え方
3 その他

○議事

○津谷部会長

 定刻になりましたので、ただいまより、第18回社会保障審議会人口部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては御多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。

 本日の委員の出欠状況ですが、白波瀬委員はもうすぐお出でになるかと思います。西郷委員からは欠席の御連絡を頂いております。また、本日は、国勢調査人口等基本集計結果などの説明のため、総務省統計局統計調査部より国勢統計課の栗田課長にも出席いただいております。

 それでは議事に入らせていただきます。カメラの方は、ここで退席をお願いいたします。まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。

 

○野崎政策企画官

 企画官の野崎でございます。お手元の資料を御確認いただきたいと思います。本日の資料は、議事次第、座席図のほか、資料1-1「平成27年国勢調査 人口等基本集計結果」、資料1-2「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」の公表について。資料2「日本の将来推計人口-新推計の基本的考え方-」となっております。皆様お手元にございますでしょうか。

 

○津谷部会長

 では、議事の最初にあります報告聴取を行いたいと思います。人口に関する調査結果として「平成27年国勢調査 人口等基本集計結果」について。そして「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」について、総務省統計局の栗田国勢統計課長より御説明をお願いいたします。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 ただいま御紹介いただきました、総務省統計局の国勢統計課長をしております栗田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、1026日に公表した平成27年国勢調査の人口等基本集計結果等について御説明させていただきます。まず、この人口等基本集計ですが、こちらは全ての調査票を用いて、市区町村別の人口・世帯・住居に関する結果、外国人や高齢者世帯等に関する結果について集計をした確報値となります。
 本年81日に開催されましたこの部会で一度御説明をさせていただいた抽出速報集計や、第1報として今年の2月に公表しました人口速報集計、こちらはいずれも速報値になっております。申し上げるまでもございませんけれども、以後、今回の確報値、人口等基本集計結果の方を御利用くださるようお願いをいたします。

 資料1-13枚めくりましたところから始まる「結果の概要」を用いまして、一度、8月の部会で御説明させていただいておりますので、それ以降明らかになった状況等を含めて、簡単ではありますが確報値の説明をさせていただきます。概要の3ページ、「我が国の人口」です。我が国の人口、こちらは総人口ですが、12,7094,745人というのが平成27101日現在の人口となっております。平成22年と比べ、962,607人の減少、割合としては0.8%の低下となっております。これは大正9年の国勢調査開始以来、初めて人口が減少したという結果となっております。

 また、6ページに内訳として日本人人口12,4284千人、総人口の98.6%となっていますが、平成22年と比べ1075千人の減少。一方、外国人人口は1752千人、総人口の1.4%となっており、104千人の増加となっています。ちなみにこの後にも出てまいりますが、今御紹介しました外国人人口関連の数値は、今回の確報値で初めて公表された数値となります。

 次に、17ページの「年齢別人口」です。総人口に占める15歳未満人口は1,5887千人、総人口の12.6%、1564歳人口7,6289千人で同じく60.7%。65歳以上人口が3,3465千人、同じく26.6%になります。こちらは調査開始以来、総人口に占める15歳未満人口の割合は最低、一方、65歳以上人口の割合は最高となっており、御案内のとおりですが、少子高齢化が進展していることがお分かりいただけるかと思います。
 29ページは「外国人人口」の国籍別の内訳が出ております。我が国に住む外国人人口は先に御紹介したとおり1752千人となっておりますけれども、それを国籍別に見ますと、中国の方が511千人で最も多くなっており、平成22年に引き続き割合が上昇しております。また31ページで、外国人人口が多い都道府県は、東京都379千人と最も多くなっており、以下、愛知、大阪、神奈川、埼玉の上位5都府県で全国の外国人人口の約半数53.9%を占めております。都道府県人口に占める外国人人口の割合は、最も高い東京都で2.8%となっています。

 33ページ、「世帯の状況」です。我が国の世帯数は5,3449千世帯となっており、平成22年と比べ1498千世帯増えております。一般世帯数、これは全ての世帯から学校の寮の学生とか病院等の入院者など、施設等の世帯の数を除いたものになりますけれども、5,3332千世帯となっており、一般世帯の1世帯当たり人員は2.33人、平成22年に引き続き減少をしております。

 35ページですが、一般世帯の1世帯当たり人員を都道府県別に見ますと、山形県が2.78人で最も多く、一方、東京都が1.99人で最も少なくなっており、こちらは比較可能な昭和45年以降初めて2人を下回るという結果になっております。ごく簡単ですが、確報値ということで人口等基本集計結果については以上です。

 平成27年国勢調査の概要につきましては、8月の部会でも御紹介させていただいたところですけれども、今回初めてオンライン調査を全国で展開するという試みを行いまして、最終的に36.9%の世帯の方にオンラインで御回答を頂きました。オンラインで回答した方にアンケートを行っており、その結果によりますと、オンライン回答をした方の年齢層は、40代、50代、60代、この4060代までで全体の約3分の2を占めております。オンライン回答はパソコンとスマートフォンの両方で可能だったのですが、スマートフォンでの回答割合は比較的若い世代が多く、30代以下の年齢層で高くなっておりました。

 また、単独世帯、1人暮らしの世帯のオンライン回答率は、ほかの世帯、2人以上の世帯と比べて低いというような傾向も見られているところで、次回以降の調査の実施の参考にしていきたいと思っております。一方、オンライン以外の回答、従来から行っていました紙の調査票での回答状況ですが、年齢や国籍等の不詳が増加傾向にあります。具体的な数値を若干御紹介しますと、平成27年国勢調査では最終的に年齢不詳、年齢をお答え頂けなかった方が、全体に占める割合にして1.1%、国籍不詳は同じく0.8%となっております。

 こうした状況を踏まえ、資料1-2ですが、今般、人口に係る最も重要な項目である年齢・国籍について、ユーザーの結果表の利用の利便性に鑑みて、資料にありますとおり「平成27年国勢調査結果における年齢・国籍不詳をあん分した人口」というものを参考表として、1124日付けでホームページに公表いたしたところです。

 あん分処理・集計方法としては、「単身世帯か否か」、及び「男女」別に平成27年国勢調査による年齢・国籍の不詳を除いた構成比で不詳の比例配分を行い、「単身世帯か否か」別の不詳あん分済み人口を合算しまして、市区町村の「年齢、日本人・外国人、男女別人口」としております。都道府県別結果と全国結果については市区町村別の数値を合算して出しております。この年齢・国籍不詳あん分済み人口は、人口推計の基準人口として利用することを予定しておりますが、そのほかにも皆様に御議論いただきます将来推計人口の基準人口としても利用していただける御予定と聞いております。簡単ですが、私からの説明は以上です。

 

○津谷部会長

 ただいま御説明のありました、「平成27年国勢調査 人口等基本集計結果」、及び「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」について、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

 

○鬼頭委員

 最後の国籍不詳・年齢不詳のことでお伺いしたいのですが、インターネットで回答している場合には、何か抜けている所があれば自動的に警告が出ていたのではなかったかと思いますが、紙ベースの場合はどこかでチェックして、また再調査、問い合わせをするというようなことは今はやっていないということでしょうか。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 鬼頭委員がおっしゃったとおり、オンライン回答につきましては全ての項目がきちんと埋まっていないと、最終的に回答を送信できないような仕組みになっておりますので、そういった意味で不詳というものは生じないと理解しております。一方、紙の調査票につきましては、1項目1項目を紙に書いて御提出いただくということになりますので、御記入いただけない所は「不詳」の基となります。今回その不詳をあん分した参考表を公表させていただきましたけれども、この不詳は、紙の調査票から出てきているという理解です。御記入いただけなかったものは、調査票の審査という段階がありまして、ここで補定できる所は補っていくという処理をしております。それでも、なおかつ分からなかった所が不詳として残っているということです。

 

○鬼頭委員

 ありがとうございます。

 

○津谷部会長

 よろしいでしょうか。そのほか御質問、御意見はありますでしょうか。

 

○稲葉委員

 すみません、今のお話ですが、全部の項目が埋まらないとインターネットでデータ送信できないということだったと思います。そうすると何か答えたくないものが、埋めたくない所があると、送信そのものをあきらめてしまうという人がいるのかなと思ったのですけれども、そういう点はどうお考えでしょうか。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 私どもは最終的にオンラインで出てきた回答状況しか見られないものですから、例えば、答えたくない項目がオンライン回答の中にあって、送信はされなかった方が実際にどのぐらいいらっしゃったのかという状況までは把握できていない状況ではあります。ただし、答えたくない、いわゆる忌避感の強い調査項目に回答したくないがために、オンライン回答をやめた方がいる可能性はなくはないのかなと思っております。我々のほうでそれがどのぐらいの方なのか、この項目は忌避感が強いといったところまではオンライン回答からは分かりませんが、紙の調査票であまり御回答が頂けない部分というのは、いわゆる忌避感の強い項目なのかなと思っております。

 

○稲葉委員

 そうしますと、オンラインでの回答の設計として、埋めたくない不詳項目が出ても回答を促すような、しやすいような形にするほうがいいのかどうか、ということは何かお考えになったのでしょうか。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 結果から申し上げますと、今回オンラインで回答いただけた方が36.9%で、初めて全国展開をしたセンサスの調査としては、それなりの率はいったのかなと思っております。そうした意味で、オンライン回答をなさる方はある程度御理解を頂いた上で、全ての調査項目についてインターネットで回答していただけたのかなと思っている部分はあります。

 それから、オンライン回答を推進しているという趣旨そのものですけれども、紙の調査票の回答には、調査員の方が来た時に、記入支援を受けたい方は調査員がお手伝いをしながら回答してもらうという、そういう良さはあるのですが、ネットならすぐに回答できるという意味で、回答者の方の利便性が高まります。一方、調査実施側にしてみますと、全部の調査項目にマーキングをして出していただくことで、結果精度が高まります。また、調査票の審査もそうした意味では簡便になるという、両方で良い面があるということで推進しております。いろいろなアンケートの結果などから、もし「答えたくない項目だけ答えたくないのです」といったような声があれば、そうしたことも踏まえながら次回のオンライン調査について検討していきたいと思っております。しかし、そこまでの強い声というのは我々は把握はしていないということです。

 

○津谷部会長

 今回オンライン調査で回答された方に対して、確かアンケートを実施され、次回の国勢調査でもオンラインで回答したいですかと尋ねられており、その結果、非常に高い割合の回答者が次回もオンラインで回答したいということであったと理解しております。その際、オンラインでの回答が楽だったか大変だったかということも確か尋ねられていたかと思うのですが、楽だったという方が多かったというように私は記憶しておりますが、もしこの点について何か付け加えることがありましたら、お願いいたします。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 今御紹介しましたアンケートで、操作が簡単だったとお答えいただいた方や、次回もまたオンラインで回答したいとお答えいただいた方が9割前後いらっしゃるということで、大半の方は回答もしやすいし、次もオンライン回答をしたいというように思っていただけているという結果が出ております。

 

○津谷部会長

 よろしいでしょうか。

 

○山田委員

 私は、国籍及び年齢不詳人口以外にも、有配偶者の配偶関係とか、世帯類型についても不詳が出ているというように理解しております。その扱いというか、バイアスとかそういったものについて、もし何か想定できるようなもの、ここにバイアスがかかっているのではないかということを教えていただければと思います。

 

○栗田総務省国勢統計課長

 今御指摘いただいた点は非常に重要な観点かなと思っております。今回、先ほど資料1-2で参考表を公表しましたと御説明させていただきましたが、これは最も基本的な項目である年齢と国籍の状況について不詳がある部分をあん分しましょうということで、あん分表を公表したのは初めての試みです。当然、今おっしゃっていただいたような配偶関係とか家族、世帯の類型というものも不詳が増えてきているという傾向はありますので、我々はその不詳の数等を分析しまして、あとは結果を利用される方々のニーズ等もお聞きしながら、場合によってはそういう項目もあん分するということも考える、検討する必要が出てくるのかなと認識しております。

 

○津谷部会長

 そのほか御質問、御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは次に、議事の2番目、「日本の将来推計人口-新推計の基本的考え方-」について、石井人口動向研究部長より御説明をお願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  国立社会保障・人口問題研究所の石井です。お手元の資料2、「日本の将来推計人口-新推計の基本的考え方-」について説明いたします。まず3ページを御覧ください。本日の説明ですが、新推計の枠組み、基準人口に続いて新しい仮定推計の考え方として、出生、死亡、国際人口移動のそれぞれについての説明をいたします。

 まず最初に、新しい推計の基本的枠組みと基準人口について説明いたします。推計の枠組みとしては、コーホート要因法を用いて2016年~2065年の50年間を本推計期間として推計します。なお、2066年~2115年までは参考推計期間とします。推計の対象ですが、国勢調査の対象と同一であり、日本に常住する総人口ということです。

 ただし、今回の推計では、人口動態統計で、日本人人口に関する出生率等を実績値としていることから、日本人人口に限定した結果も参考として表章する予定です。属性分類に関しても平成24年推計と同様、男女・年齢別、年齢は104歳まで各歳、105歳以上は一括として推計を行います。このような枠組みを用いて、平成27年までの実績に基づき推計を行います。

 次に基準人口ですが、これは先ほど統計局からも説明がありましたが、年齢・国勢不詳をあん分した人口を出発時点の人口として用いて、将来の推計をいたします。次の4ページが、今、申し上げた基準人口を人口ピラミッドで示した図です。

 仮定設定の説明に移ります。5ページを御覧ください。仮定設定については、出生の仮定、死亡の仮定、国際人口移動の仮定となっているので、この順番に説明します。

 6ページを御覧ください。まず最初に、出生の仮定に関して説明します。出生仮定は女性の生まれ年、すなわちコーホート別に設定を行うわけですが、前回、説明したとおり、この推計では、基準時点に15歳で出生に関する実績値が全くないコーホートを参照コーホートと呼び、合計出生水準のベンチマークとしております。新推計では2000年生まれコーホートが参照コーホートとなります。

 一方、参照コーホートまでの出生水準の変化は、基準時点で0歳のコーホートまで継続し、それ以降のコーホートでは一定として仮定設定を行っています。このコーホートを最終コーホートと呼んでおりますが、新推計では2015年生まれコーホートが最終コーホートということになります。

 平成24年推計と同様、出生仮定設定は日本人、外国人別に行い、外国人については日本人と連動する形で設定を行っております。年齢別出生パターンについては経験補正型一般化対数ガンマモデルを用いておりますが、参照コーホートの要因別投影から得られる合計出生水準に関する情報を用いながら、年齢別パターンの推計を行っていきます。

 次に7ページを御覧ください。「出生スケジュールと出生率」の関係を示したものです。一般に全体的な出生水準を表す指標としては、右側の合計特殊出生率が用いられておりますが、これは左側の図にある年齢別の出生率を合計したものですので、図の面積に相当しています。参照コーホートなどの出生水準は合計レベルで考えるわけですが、実際の将来推計には年齢別出生率が必要になりますので、最終的には左側の年齢スケジュールの推計を行い、将来推計を行うことになります。

 次のページを御覧ください。出生の仮定設定は、コーホートごとに行うと申し上げたので、仮定設定時には、通常観測される各年次の出生率を下のほうのコーホートに組み換えて行います。また、将来の仮定設定を行ったコーホート出生率は、将来人口推計のときには、また年次別に組み換えて行うので、これらの組換えを行いながら、仮定設定を行い、推計を行っていくことになります。

 年齢スケジュールに関してですが、次のページを御覧ください。これはコーホートでの年齢スケジュールを投影するためのモデルについて示したものです。この推計で使われているのは一般化対数ガンマモデルと呼ばれるもので、緑色の真ん中の辺りに示してあるような式で表されるモデルです。推計に関してですが、これは出生順位別に、第1子、第2子、第3子、第4子以上と分けて推計を行っております。また、我が国の出生パターンの特徴を表現するために、経験補正関数と呼ばれる関数を加えて推計を行っております。

 次の10ページを御覧ください。出生順位別の年齢別出生率と一般化対数ガンマモデルによるモデル値を、幾つかのコーホートに関して比較して示したものです。こちらのデータは平成24年の中位仮定値を示しているものですが、実績値をよく表現していることが御覧いただけると思います。

 次に11ページを御覧ください。こちらの図は、コーホート別に5歳ごとの累積出生率の実績値と、平成24年の中位仮定値を示したものになっています。ここで既に実績が得られているAコーホート、実績から推定が可能なBコーホートに関しては、直接に一般化対数ガンマモデルを用いて年齢パターンの推定が可能な範囲となっております。

 一方で、実績値が少ないCコーホート、あるいは全くないDコーホートについては、この後に説明する参照コーホートの合計水準、あるいはBコーホートの推計結果を利用しながら、年齢別パターンの推定を行っていく形で推計が行われます。

 こちらのグラフですが、マーカーのない線で平成24年推計の中位仮定値を示しており、マーカーで実績値を示しております。特に白抜きのマーカーは平成24年推計以降に判明した新たな実績値を示しております。一番上に黒で示された線が50歳までの累積で、いわゆるコーホートの完結レベルの水準となっています。こちらを御覧いただくと、実績値が出ているところまでは、おおむね平成24年推計に沿って推移してきており、近年は年次別の出生率は若干の上昇が見られるわけですが、依然として完結レベルでは、出生水準が低下する傾向が引き続いていることが御覧いただけると思います。

 一方で、もう少し若い、30歳あるいは35歳までの白抜きの新たな実績値を御覧いただくと、平成24年推計の中位仮定値より僅かに高く推移しているところです。したがって、これらのコーホート以降においては、完結レベルの低下傾向が平成24年推計よりも、やや弱まる可能性があると考えられます。

 次に12ページです。こちらは何回か御覧いただいた図ですが、「参照コーホートの仮定設定の考え方」を示したものです。コーホート合計特殊出生率は、1-50歳時未婚率、期待夫婦完結出生児数、結婚出生力変動係数、離死別再婚効果係数といった要因に分解ができます。

 次に、これらの参照コーホートの要因ごとに説明します。13ページを御覧ください。最初に50歳時未婚率と平均初婚年齢を表す、初婚率の試験的な投影結果について説明いたします。まず左側の図ですが、女性のコーホートの年齢別累積初婚率の実績値を示したものとなっています。この中で緑色の線とマーカーが、1980年コーホートの実績値と、それに対応する平成24年推計の中位仮定値となっております。1980年コーホートでは、実績値が前回の中位推計の軌道におおむね沿っていることが御覧いただけると思います。

 次に右側ですが、この実績値に基づき、現状得られているデータ等を用いて試験的な投影を行ったものとなります。本資料にはこのほかにも試験的な投影が入っておりますが、これらはあくまでも中間的な暫定値ですので、最終的なものとは異なることをあらかじめ御了承いただきたいと思います。右側の図によると、灰色で示された部分が試験的投影値となりますが、これに基づくと、50歳時未婚率は前回推計の参照コーホート水準である20.1%近くになっていくことが御覧いただけると思います。平成24年推計でも未婚者割合の増加は、完結出生レベルに対して大きな影響を及ぼしたわけですが、新しい推計においても、このような影響は引き続いていくものと考えられます。

 次に、夫婦完結出生児数について説明します。まず左の図を御覧ください。出生動向基本調査の結果を用いて、1935年から1954年生まれの初婚どうし夫婦の初婚年齢別生涯出生確率と夫婦完結出生児数のモデル化を行ったグラフです。これらのコーホートについては、妻の初婚年齢別出生確率が安定的であったことから、このモデルを用いることによって初婚年齢から夫婦完結出生児数の平均値、すなわち期待値を推定できるということです。これを期待夫婦完結出生児数と呼んでおります。

 この期待夫婦完結出生児数ですが、今、申し上げたとおり、初婚年齢で決まるわけですので、女性の晩婚化が進行すると、それに伴って低下することになります。しかしながら、右の図を御覧いただくと、実線で示されたものが期待夫婦完結出生児数ですが、それに対してマーカーが実績値となっており、1960年以降のコーホートで、この期待夫婦完結出生児数よりも実績値のほうが下回っていることが観察されてきたところです。

 そこで、実際の完結出生水準の期待夫婦完結出生児数からの乖離を両者の比率で表し、結婚出生力変動係数と呼んでいるところです。先ほどの初婚率の投影から、平均初婚年齢の投影が得られ、それから期待夫婦完結出生児数が得られるので、更に結婚出生力変動係数が分かると、夫婦完結出生児数の投影が行われることになるわけです。

 次の15ページを御覧ください。結婚出生力変動係数の将来投影を考えるに当たり、現在、出生過程途上にある30歳代の子ども数の実績値と、平成24年の推計値を比較したものが左上の図になっております。また、これらの期待出生児数に対する比を表したものが下の図となっております。1970年以降のコーホートで、30歳代で夫婦の平均出生子ども数の実績と期待夫婦完結出生児数との乖離が、やや緩やかになっていることが御覧いただけると思います。

 これは1970年以降のコーホートで、次第に晩産型の出生パターンが定着し、30歳代以降の出生によって夫婦出生率の引き下げ効果が緩和されていることが要因として考えられるところです。したがって、新推計での結婚出生力変動係数は、平成24年推計による投影よりも、より1に近い水準、夫婦完結出生児数が、より期待夫婦完結出生児数に近い水準に推移する可能性が考えられるということです。

 次に、離死別再婚効果について、16ページで説明します。離死別再婚効果は前回も説明しましたが、女性の50歳時点での結婚経験別の平均完結出生児数について、初婚どうし夫婦に対する比を、結婚経験構成比で加重平均をとったものです。意味合いとしては、初婚どうし夫婦の完結出生児数を、全ての既婚女性の平均出生児数に変換するというような意味を持つ係数になっております。

 結婚経験別の平均完結出生児数について、新推計の暫定値と平成24年推計値を比較すると、「その他」というカテゴリーを除き、結婚経験別による平均完結出生児数の初婚どうしとの差が、やや小さくなっていることが観察されております。一方で、50歳時点での結婚経験を観察すると、初婚どうし夫婦の割合が減少し、それ以外の構成割合が上昇する傾向が見られております。

 次に、17ページを御覧ください。これまで説明した参照コーホートの要因ごとの仮定設定の考え方をまとめて示したものです。この中で特に、平成24年推計と異なった傾向が見られるのが、結婚出生力変動係数と離死別再婚効果です。結婚出生力変動係数については、1960年代出生コーホートで顕著な結果がこれまでは進行してきたところでしたが、1970年以降のコーホートで、30歳代での出生によって夫婦の出生力の引下げが、やや緩やかになると考えられます。それから、離死別再婚効果についてですが、現在、離婚率は横ばいに推移しており、コーホートの平均子ども数の低下は緩やかに進行すると見込まれているところです。

しかしながら、初婚率の部分でも説明しましたが、完結出生レベルにも影響を及ぼす未婚者割合については、平成24年推計での増加傾向が引き続いて起きております。

 したがって、これまで観察されてきたコーホート合計出生水準の低下といった少子化が、将来に向けて引き続いていく傾向については、平成24年推計よりもやや弱まる可能性はあるものの、今後も一定程度引き続いていくものと考えられます。以上が出生仮定の参照コーホートに関する考え方です。

 次に、新推計における出生仮定の課題として、婚前妊娠初婚・出生の分離に関して説明します。ここで、婚前妊娠初婚・出生とは、俗に言うできちゃった結婚やおめでた婚と呼ばれる妊娠先行型の初婚と、それに伴う出生ということになっております。したがって、これは妊娠後結婚した者が対象となっておりますので、出生に関する婚外子は含まれていないことに御注意ください。また、婚前妊娠による出生については、同居開始から7か月以内に出生という定義を用いてデータの作成を行っております。

 それでは図のほうを御覧ください。1960年と1980年コーホートの年齢別初婚率と第1子の出生率を示したものです。将来推計に必要となるのは、このうち黒で描かれた「全体」という部分になっているわけですが、右側の1980年コーホートの図を御覧いただくと、黒のグラフで初婚率あるいは出生率が、20歳代前半で若干こぶのように出てきていて、一般化対数ガンマ分布の推計値よりも、若干高く推移するという傾向が観察されております。これが婚前妊娠出生の影響と考えられる部分になっております。

 これについては、従来の推計においても、一般化対数ガンマ分布モデルに婚前妊娠に関する経験補正を組み込むことによって対応を行ってきたところです。そういう意味では、これまでの対応は、婚前妊娠に係る年齢別パターンを分離して把握するのではなくて、単一の数理モデルによって推定は行いつつも、若年層の経験的誤差をモデル化し、経験補正関数として推計に組み込むという対応を行ってきたということです。

 しかしながら、こういった単一分布の微修正を行うという従来の方法論を用いると、前回推計以降に得られた実績値で顕在化してきた、初婚と第1子出生の年齢分布の分散の拡大といったことを十分に表現できないことが明らかとなってきました。そこで今回は、婚前妊娠とそれ以外の初婚・第1子出生を、データ上の区分を行うとともに、それぞれに別々の分布を当てはめるという、推定方法の改善を行うことを考えているところです。

 次のページを御覧ください。初婚並びに第1子出生を「婚前妊娠初婚・出生」と「それ以外の初婚・出生」に分けて、試験的に投影を行ったものです。初婚率・第1子出生率について、平成24年推計の仮定値に比べて、20歳代前半等での当てはまりが改善されていることが御覧いただけると思います。このように、新推計においては、婚前妊娠初婚・出生の分離という新たな手法を導入することにより、将来推計の精度を高めることが可能になるだろうと現在考えておりますが、一方で、これは今回初めての試みでもあるので、実際の推計に向けては、パラメータ推定の感度や安定性について、十分に検討を加えながら作業を進めていきたいと考えております。以上が出生の説明です。

 次に「死亡の仮定」に移ります。20ページを御覧ください。死亡の仮定では将来生命表を作成するわけですが、その基礎データとしては、日本版死亡データベースというものを使用しております。これは私どもの研究所のほうで作成して公表しているものです。将来生命表の推計期間に関しては2065年までということで、総人口に対して日本人と同一の生命表を仮定して推計を行います。それから、年齢別の死亡モデルについては、平成24年推計で使用したものと同じ、修正リー・カーター・モデルを採用します。

 次の21ページを御覧ください。「リー・カーター・モデル」の説明です。これは前回も御覧いただいたので、説明のほうは省略します。

 このリー・カーター・モデルによるパラメータ推計の結果を、次の22ページに示しております。こちらは平成24年推計の結果です。まず左側のグラフはaxbxで、axは標準的な対数死亡率のパターンを示すパラメータ、bxは年齢別死亡率の変化率を表すパラメータとなっております。通常、リー・カーター・モデルを用いた将来推計では、これらのaxbxというパラメータは、将来に向けて固定することになっております。

 一方で死亡の時系列水準を表すktというパラメータ、死亡指数とも呼ばれますが、そちらが右側の図になっております。これはマーカーのところが実績値、実線や点線になっているものが将来推計値となっております。この将来投影値であるktを用いて、将来生命表等の作成を行うことになるわけです。

 次に23ページを御覧ください。これも前回説明しましたが、近年我が国で観察されている、いわゆる年齢シフトというものを、生存数曲線の推移で示しております。近年では古典的疫学転換期に見られたのとは異なり、生存数曲線が右側に張り出していく「死亡の遅延」というような、年齢シフトの表現が必要となります。リー・カーター・モデルではこのような表現に一定の制約がありますので、平成24年推計ではこれを修正したリー・カーター・モデルを用いて推計を行ったということです。

 次に、その修正の部分に関して、もう少し詳しく説明します。24ページを御覧ください。平成24年推計では、若年層ではリー・カーター・モデルを用いながら、高齢層では、年齢シフトの表現を行うことが可能な線形差分モデルというものを利用しております。こちらの図は、高齢部で使われている線形差分モデルの考え方を模式的に示したものになっております。線形差分モデルでは、いわゆる死亡率改善というものを、死亡率曲線の横へのシフトとして捉えるということになっております。

 こちらの図の中に、色の付いた矢印がありますが、これが曲線の各地点におけるシフト量、いわゆる年齢シフトを示す差分となっております。線形差分モデルとは、この年齢シフトの差分量を、年齢の線形関数として表すモデルとお考えください。この線形差分モデルのパラメータとして、ft'gt'というパラメータがありますが、このうちgt'は、線形関係における直線の傾きを表しております。こちらの図にあるように、この傾きがマイナスというときには、gt'を積分したgtは減少するということで、そのときに曲線の勾配が大きくなるという関係になっております。

 次のページを御覧ください。もう1つ、ftというパラメータがあるのですが、実際の推定では、ftの代わりとして高齢死亡率曲線の位置を表すStというパラメータを使用して推定を行っております。これは死亡率が0.5になる年齢として定義されるパラメータです。Stの推定が行われると、Stgtを用いて、ftを計算できますので、実際の推定には、このStgtが用いられています。

 このStgtが持つ意味を示したものが25ページの図となっております。Stが増加するのは、死亡率曲線が高齢側に平行にシフトするという効果を示していることになります。それに対して、先ほど御覧いただいたように、gtが減少するというのは、曲線の勾配が急になることを表しています。したがって、それぞれの死亡率変化に対応してgtあるいはStというものが変化し、それらの解釈ができるということをこちらで御覧いただけるかと思います。

 次に26ページを御覧ください。平成24年推計におけるStgtの将来推計に関して示したものです。まずStの将来推計ですが、これについてはリー・カーター・モデルの死亡指数であるktとの間に線形関係を仮定し、リー・カーター・モデルのktの将来推計に連動する形で投影を行います。

 一方、gtについては、前回推計時点において、それまでの低下傾向が緩やかになってきていたので、推計時点における直近の平均値を将来に向けて固定するという形で将来推計を行ったところです。

 次に、27ページを御覧ください。平均寿命、あるいは平均寿命の男女差の実績値と平成24年推計の比較を行ったものです。左側は平均寿命の将来推計値と実績値の比較ですが、男女とも実績値は、高位、低位の幅の中を推移しております。右側ですが、平均寿命の男女差を示したものです。マーカーが付いたものが実績値で、長期的には拡大傾向だったわけですが、近年では横ばいか、やや減少傾向となっていることが御覧いただけるかと思います。

 次に、2829の両ページは、平成24年推計の年齢別の死亡率推計値と、2012年、2015年の実績値を比較したものになっております。28ページは2012年のもの、29ページは2015年のものになっております。どちらも傾向として見られる点として、4060歳近辺で推計値がやや過大になっている一方で、80歳以上でやや過小となっている傾向が観察されております。

 次に30ページを御覧ください。この乖離の原因ですが、これに関しては、我が国の死亡改善パターンの変化が要因として考えられるところです。
 1990年代には、特に女性において高齢者の死亡率改善が顕著に進行し、死亡率曲線が高齢側に強くシフトする動きが観察されておりました。こちらの図のStの動きを御覧いただくと、1990年代でStが非常に強く増加をしています。その一方で、gtがほぼ一定ということで、勾配が変わらない中、シフトが進んできたことが御覧いただけると思います。

 しかしながら2000年代に入って、特に2010年以降で高齢死亡率の改善ペースがやや緩んできており、高齢側へのシフト傾向が弱まるとともに、死亡率曲線の勾配が急になってくるというような、改善パターンの変化が起きていると考えられます。

 こちらの図ですが、Stgtの試験的推定を行った結果です。ここで平滑化曲線による傾向線について、実線のほうが2010年までの値を用いた平滑化曲線、点線のほうが2015年までのデータを用いたものとなっています。2015年まで用いるとStの増加傾向が緩んでいます。一方でgtは、引き続いて減少するような方向に変わってきていることが御覧いただけると思います。したがって、これらに基づいて、先に御覧いただいたような、若年層での過大傾向、一方で高齢層でも過小傾向が生じたと考えられるところです。

 次に31ページを御覧ください。出生と同様に「死亡の仮定設定に関する考え方」を示したものです。このうち、特に平成24年推計と異なった傾向が見られるのは、高齢死亡率改善の所です。今も説明したとおり、年齢シフトの効果は引き続いて起きているわけですが、やや緩やかになって続くと考えられております。

 次に32ページを御覧ください。これらを踏まえ、新推計における死亡仮定設定の課題としては、前回推計では将来に向けて固定していたパラメータのgtについて、その減少傾向を投影上織り込むような改善を行うことが挙げられるかと思います。これにより、年齢シフトの効果が緩やかになるという傾向が反映できると考えております。

 こちらの図は、これを模式的に示したものです。黒が基準時点の高齢の死亡率カーブですが、これに対し、通常のオリジナルのリー・カーター・モデルを用いて投影を行うと、緑の点線のような曲線になると考えられます。リー・カーター・モデルには年齢シフトの効果がありませんので、勾配が急になった形で推定が行われることになります。

 一方で、平成24年推計の方法によると、年齢シフトによって死亡率改善を行うことになりますので、青い線のような推定結果になると考えられます。今回、gtの減少を見込んで推定を行うことにより、両者の中間的な赤い線のような推定結果が得られるのではないかと考えているところです。以上が死亡の仮定の説明です。

 次に、国際人口移動の説明に移ります。「国際人口移動の仮定」については、日本人の国際人口移動、外国人の国際人口移動に分けて設定を行っております。また、このほか、外国人移動者の性・年齢別割合、あるいは国籍の異動率などに関しても設定を行っております。

 それでは、それぞれについて説明します。34ページを御覧ください。まず、日本人の国際人口移動です。日本人の国際人口移動については、おおむね出国超過の傾向が続いているわけですが、その絶対値は平成24年推計当時よりも若干小さくなる傾向が見られております。しかしながら年齢パターンについては比較的安定的と考えられることから、従来同様、近年の平均的な男女・年齢別の入国超過率が継続するという仮定設定を考えているところです。

 次に外国人の国際人口移動仮定について説明します。外国人の国際人口移動については、不規則な上下変動を繰り返しながらも、長期的にはおおむね入国超過数が増加する傾向にあると見られております。したがって、こちらも従来と同様に、過去の入国超過数の動向を用いて、その長期的な趨勢に従うという形での仮定設定を行うことを考えております。

 次に36ページを御覧ください。「国際人口移動の仮定設定に関する考え方」をまとめたものになっております。まず、日本人の国際人口移動については、先ほど御覧いただいたとおりですが、おおむね出国超過の傾向であるものの、絶対値は平成24年推計よりも小さくなる傾向が見られています。ただし、男女別の年齢パターンは安定的ということですので、近年の平均的入国超過率が継続すると考えられるところです。

 それから、外国人の国際人口移動については、長期的には、おおむね入国超過数が増加する傾向になっていたわけですが、平成24年推計の直近の年次で、リーマンショック、あるいは東日本大震災に起因する大規模な出国超過という特殊な事情が観察されていたところです。したがって、平成24年推計では、短期的な出国超過の影響を、2012年まで見込んでいたところです。ただ、推計以降の実績値を観察すると、平成24年推計で見込まれていたよりも1年長く、2013年まで短期的な出国超過の影響が観察されたわけですが、一方で回復パターンは平成24年推計と類似していると見られますので、長期的には入国超過の基調に回復していくだろうと考えられるところです。したがって、こちらも従来と同様に、過去の入国超過数の動向による長期的な趨勢ということで仮定設定を行うことを考えているところです。

 それから、37ページ以降ですが、背景となるデータとして、38ページには年齢階級別に見た女性の未婚者割合、39ページには離別者割合、40ページには出生動向基本調査の結婚持続期間別の平均出生子ども数を掲載しておりますが、これらの説明のほうは省略いたします。私からの説明は以上です。

 

○津谷部会長

 ありがとうございました。大変盛りだくさんの説明で、大変テクニカルな部分が多うございましたが、石井部長には時間を御配慮いただいて、かなりのスピードで御説明いただきました。ただいまの御説明の「日本の将来推計人口-新推計の基本的考え方-」について、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

 

○早乙女委員

 大変詳細な御説明をありがとうございました。産婦人科医として30年やってきましたが、ここ10年、20年ぐらいの動向がすごくきれいに出ていると思いました。先ほど丁寧な御説明がありまして、特に10ページは、まず高齢の出産のほうに少しシフトしている話があるかなと思っております。60年生まれコーホートから85年生まれコーホートの5年ごとでお示しいただいて、図を見ると視覚的にはなかなかはっきり見えないように思いますが、高齢で産む率が少しずつ上がってきています。高齢出産そのものが、35歳初産がもう20%を超えているという現状です。超え始めた頃は、35歳以上で1人産めればいいというような風潮が強かったのですが、今は35歳から産み始めて、あるいは40歳から産み始めて2人、3人と出産される方が増えてきているので、そのインパクトを十分に推計の中に盛り込んでいただいたらいいのかなと思っております。

 特に18ページの「出生仮定の課題」の婚前妊娠初婚のこぶと、それ以外がこれほどはっきり出たのは、今回、初めてこのようにお示しいただいたと思います。これが分離することにより現状把握がしやすくなりました。

 もう1つは質問です。これが進んできたときに、将来推計人口に対するインパクトはどのように影響すると考えたらいいのか、もしお分かりになれば教えていただきたいと思います。現状把握ということで十分だとは思うのですが、それが1点です。

 

○津谷部会長

 まず、2点コメントを頂きました。ひとつは、高齢になっての出産が増えていることの推計への影響について、もうひとつは、18ページに示されているように婚前妊娠初婚のこぶがみられるため、出生を2つに分けたということについて、そして最後に1つ御質問があったと思います。石井部長、ご説明お願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  いわゆる高齢というか、30代での出生ということですが、最初に御覧いただいた10ページは平成24年推計ですので、どちらかと言うと御覧いただいて御参考になるのは、15ページにある図です。こちらは出生仮定途上の御夫婦の平均出生子ども数が、どのように推移していくかを調べたものです。こちらを御覧いただきますと、平成24年推計が実線のラインになっていますが、それよりも30歳代では少し高く累積出生数が推移してきておりますので、これが今御指摘のあった、30歳代での出生が見られるということに対応しているのではないかと思います。そういった意味で今回、平成24年推計よりも30歳代での出生がやや上向きに推移しているというポイントについては、結婚出生力変動係数を見直すということで対応され、その中に織り込まれると考えております。

 それからもう1点、婚前妊娠初婚と出生の分離については、これまでもある程度はそういった傾向が見られており、それを1つの関数で対応してきたわけですが、今回は2つに分離しようということを考えております。その1つのきっかけとなったのが、先生からも御指摘のあったように、かなり分散が大きくなってきたということです。婚前妊娠というのは一定程度、ずっとあるわけですけれども、そうではない結婚や出生がかなり高齢のほうにシフトしてきているだろうということで、今回2つに分けて推定を行うということを考えているわけです。

 将来推計上のインパクトという意味で申し上げますと、これまでの1つの関数でやるよりも、再現性のようなことに関しては優れたものになるのではないかと考えております。ただ、一方で、これまで1つの関数で推定していたものを2つに分けることになりますので、パラメータの数が増加することになります。そういった意味では、推定の安定性について、いろいろと検討を加えなければいけないところがあります。一方で婚前妊娠の初婚と出生のパターンというのは、現在、比較的安定的ということが実績でも見られています。そこで、パラメータの数を増やしたことによる繁雑性の増加はあるのですが、それによる影響というのは余り大きくないのではないかと、現状では考えております。

 

○早乙女委員

 今の件で1点申し上げます。この部会では直接関係ないかとは思いますが、社会保障という点では、このこぶがどんどん大きくなってきた場合にそれをどう捉えていくかということが、実は非常に重大な問題であると考えています。というのは、社会保障の点では一人親世帯の貧困の問題というのが直結しているわけですから、そこのところが人口の数という点では増えるけれども、また違った課題をはらんでいるということは指摘させていただきたいと思います。

 あと、もう1点だけ、ごめんなさい。今回の推計には反映しないと思いますが、今後のこととしてLGBT、性的マイノリティの方たちが最近、子どもをつくることに非常に意欲的になってきています。卵子提供、精子提供という形が、いろいろな制度がないままにぐんぐん進んできているという現状が1つです。もう1つは養子制度という形で、不妊治療でお子さんを授からなかった方たちがいろいろな社会制度を利用して、中絶を希望されている方からお子さんをもらい受けるということも進んでくるかと思います。そうすると、これは政策として進めてほしくはありませんが、中絶を禁止するということではなく、中絶を希望されているような方が出産する、中絶数が減少して出産数が増えるということも、インパクトとして起こり得るかなということだけはコメントさせていただきます。

 

○津谷部会長

 出生仮定については一言で言うと、家族形成のパターンがヘテロジニアスになってきている、つまり多様化しているということが言えるのではないかと思います。若い年齢では婚前妊娠による出生が増えている一方で、35歳以上の出生も増えており、それに対応するために、よりヘテロジニアスなモデルを構築していただいていると思います。家族形成プロセスが複雑になっていくわけですから、当然パラメータの数も増えていきます。そして、パラメータについても、この中でどれぐらいセンシティビティが高いものがあるのかということも、問題になってくるかと思います。石井部長の御説明によりますと、それについては恐らくある程度安定した傾向が見られるので、対応できるのではないかということであったかと思います。もし、何かこれについてのコメントがありましたらどうぞ。金子副所長、何かございますでしょうか。

 

○金子副所長(社人研)

  婚前妊娠出生に関しては、2000年代は第一子出生の25%程度で推移してきましたけれども、2010年を超えてから少し減ってきております。もちろん、これから増えるという見通しもあるあり得るわけですが、今のところはそういう兆候が見られなくて、割と安定的と見たほうがいいかということ思うしだいです。石井部長からもあったとおり、もし増えてくるようであれば、石井部長からも説明があったとおり、パラメータを新しく入れているわけですから、それに対応することはシステムとしては可能です。それそうした事態に対応する意味もあって今回、このように改良しているということです。

 

○津谷部会長

 将来人口推計はポピュレーション・プロジェクションですので、今まで起こった観察値をある程度モデル化・数理化して、それを将来に投影していくわけです。ですから、5年ごとに行われる将来人口推計に、それを反映させるような柔軟なモデルを、そしてより精緻なモデルを構築する努力をしていただいていると理解しております。出生仮定についての御質問、コメントはよろしいでしょうか。

 

○山田委員

 特にお伺いしたいのは、14ページと15ページの結婚出生力変動係数の調整についてです。今の議論では30代半ばで結婚をしても、どんどん生まれているという実態があるという話ですが、一方で第17回のときにお示しいただいた出生動向調査の中では、やはり夫婦の平均出生子ども数は、結婚持続期間1519年の人たちの数がずっと減り続けていました。平均理想子ども数においても低下傾向がずっと見られるということで、これを1に近づけることが果たして。実態として実績値は、15ページの白マル、参照コーホートの夫婦完結出生児数が、やや下のほうを行っているわけですが、それが平成24年推定の投影よりも1に近い水準へと推移していくかどうかというと、議論の余地があるのではないかと思います。

 特に出生コーホートの期待値に対する比を御覧いただくと、確かに38歳時点の実績では上向いているわけですが、35歳時点実績とか30歳時点実績では、また期待値に対する比の1から離れていく方向に行っているわけです。プロジェクションではこの後一旦上がって、また再び下がることが投影されているわけですが、それが早く来ただけではないかとも思うのです。これについてどういうように見たらいいのか、御説明いただければと思います。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  先ほどおっしゃった結婚持続期間1519年の夫婦の子ども数というのは、ある意味、完結レベルですので、年齢の高いほうでの層、産み終えた方々がどれくらいのレベルかということで、それに関しては下がってきています。こちらの実績値でも分かりますように、完結レベルというのは現在得られている40歳時点から推定しても、下がっているということが実際に起きています。

 ただ、一方でもう少し若いほうでどういう変化が起きているかをお示ししたのが、左の図です。それぞれのコーホートの中では、若干の上下動がありながら推移をしていきますが、特に前回推計以降で見られた実績値の変化を観察いたしますと、1970年前後のコーホートの出生というのが、それ以降に比べて若干低いレベルにあることが見られるというのが1点です。

 もう1つは、実線が前回の推計値ですが、それよりは上方に実績値、白マルが推移してきていることが確認されております。この白マルは実績値ですから、若干の上下動がありながら動いているのですが、多くのポイントで平成24年推計よりは上を走っているということが確認できます。そういった意味で前回推計よりは1に近くなるだろうと考えられます。それがどのぐらいのレベルになるかに関しては、実際の推計をやってみないと分からないわけですが、前回推計でも結婚出生力変動係数というものは低下していくと見ているわけです。その低下傾向がやや緩むのではないかというのが、この新しい実績から見られる傾向であると考えています。

 

○山田委員

 確かに波打つ部分もあるとは思うのですが、もう1つ今、コメントとして差し上げたのは、平均理想子ども数というものが、近年はいずれの結婚持続期間でも落ちていくのを、どういうように見るかだと思うのです。ぶれか、本当に下がってきているのか。要するに、白マルに乗っかるように新たな結婚出生力変動係数を掛けるべきかというのは、多分センシティビティ・テストか何かをやられると思うので、またそのときにでも差異の大きさについてお示しいただければと思います。

 

○津谷部会長

 ただいまの御質問へのお答えは、15ページの左の2つのパネルの下のほうに示されているかと思います。38歳のところでは上がっているけれども、もう少し若い年齢では上がってそして下がっている。5年分しか新しい実績を示す白マルはないわけですが、これをどう読むかという問題かと思います。いずれにしましても、山田委員の御指摘のように、パラメータのセンシティビティが高いと推計結果への影響は大きく、特に時間が経過すると誤差が大きくなってくると思いますので、センシティビティ・テストの結果も含めて次回御説明いただけると、大変有り難いと思います。山田委員、よろしいでしょうか。

 

○山田委員

 ありがとうございます。

 

○津谷部会長

 そのほかに出生仮定に関する御質問がありましたら、今お受けいたします。

 

○鬼頭委員

 早乙女委員の御質問で大体分かりました。今回の基本的な考え方の説明で、私が非常に興味深く思ったのが婚前妊娠出生の件です。これは前々から、1970年と2005年の有配偶出生率を比べると、二十歳以後では余り変わらないで、むしろ30歳ぐらいで高まっているのに対して、1519歳では出生率が3倍ぐらい高いということがはっきりしていたわけです。それが今のことに結び付いてよく理解できました。

 問題は、その後にどうなるかです。早乙女委員もそれに近い御質問を最後のほうでされたと思うのですが、その他というのを見ると日本の場合、どうも婚前出生で、出産を機に結婚に結び付くというパターンかと思うのです。これがそのまま結婚に結び付かないで、非婚のまま子どもを次から次へと何人か産んでいくということが起きるのか。つまり、フランスや北欧に見られるような形になるのか、それともこれを機に結婚するというパターンなのか、もしその辺の見込みがありましたらお教えいただきたいと思います。江戸時代の場合は地域によってかなり差がありますが、北関東などでは、子どもが生まれてから結婚する、あるいは登録するということが決して珍しくなかったと思います。ですから現在の日本でもそういうことが起きているのではないかと思います。これからどうなると予想されるか、その辺のお考えを教えていただければと思います。

 

○津谷部会長

 これは確認ですが、1819ページに示されているのは妊娠したのは婚前だけれども、子どもを産んだときには結婚しているということだと思います。鬼頭委員の御質問は、結婚しないで子どもを産んでいることについての御質問でしょうか。

 

○鬼頭委員

 統計上はどうなのでしょうか。後で結婚した人の出生率というようになっているのでしょうか。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

 こちらに関して、いわゆる婚外子は婚前妊娠の中に入っておりません。婚前妊娠というのは、全て結婚を伴っているものです。婚外子に関する見込みというお話があったわけですが、日本では全出生に占める非嫡出子の割合、いわゆる婚外子の割合が人口動態統計にあります。これは若干緩やかに増加しているのですけれども、非常に低い水準にとどまっていて、2015年で2.3%程度という水準にとどまっています。これはほかの諸外国と比べると、極めて低い水準ですので、現状では婚外子を特別に取り扱う必要はないだろうと考えております。

 

○津谷部会長

 その他、何かありますでしょうか。

 

○榊原委員

 鬼頭委員の御指摘に関係します。婚外で生まれる子どもの数がさほど増えているわけではないということなので、今回、この形で推計を進めるということに異論はないのですが、例えば先週、大阪で日本子ども虐待防止学会というのがあり、私も行ってきました。非常にホットなテーマが妊娠期の問題です。「想定外の妊娠」とか「望まない妊娠」という言い方で、これまで光の当たらなかった命が、非常に問題になっています。それが「赤ちゃんポスト」と言われる慈恵病院の妊娠相談や受入れなどに、相当な数の相談が殺到しています。これまでだったら中絶だったり、見えない所で殺されていたりした命が、見える化されてきたことでどうしようかということで、妊娠相談の活動に取りかかる人たちがすごく増えていたり、母子保健の制度も強化していこうという動きが始まっていたりということが起きています。

 数的には少ないとは思うのですが、想定の置き方として、結婚してからでないと子どもが生まれないという前提でこの先もずっといけるのかどうかというと、恐らく変化が起きつつあるのではないかと思います。私は全体のデータとか、エビデンスに基づいて積み上げた議論はできないのですが、取材の最前線では、例えば今は保育も爆発的にニーズがあって、潜在化していたものが顕在化しているように、潜在化させられていたものが女性活躍の政策と少子化対策の強化という中で、出てきているという感じがしているのです。その根本の課題として、結婚してからの命だけを見る、出生だけを見るということでいいのかということについては、もう少し柔軟な目を向けていただいたほうがいいのかなという気がしています。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  先生が御指摘のとおり、現在、我が国における結婚や出生に関しては、いろいろな意味での多様化が進んでいて、従来型の画一的な捉え方よりも、多様性が許容され、受容されてきているというのが現状であると私も考えます。私どもが将来推計を行うときに重要なのは、実は将来と言うよりも、現在何が起こっているかを捉え、それを将来に向けて投影するということが、プロジェクションとして一番重要なことだろうと思います。そういった意味では、おっしゃるような社会の変化、あるいは多様性が受容されているということに関しても、当然我々として関心を払っていかなければならないということは全く先生のおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、一方でプロジェクションを行うときには、やはり一定のモデル化とか、統計的な処理というのが必要になってきます。今は全体のプロジェクションを行う中で、婚外子についてはシェアとしては非常に小さいということで、現状の取扱いということにしているわけですが、先生のおっしゃるとおり社会が変化して、そういったものが統計的に大きくなってきたときに、それはやはりプロジェクションの考え方自体を変えていかなければならないだろうと思います。そういった意味で、私どもがプロジェクションを行うときには、まず現状がどうなっているのか、社会がどう変化しているかということについて、常に関心を払いながら、作業を行っていきたいと考えております。

 

○津谷部会長

 将来人口推計はある意味でライフコースを投影していくわけですが、ライフコースに起こっている変化には大きく言って2つあり、1つはタイミングの変化、もう1つは人口イベントの発生の順番の変化、つまりイベント発生のシークエンスが従来のものから変わってきています。今回の推計モデルでは、婚前妊娠による出生と、それ以外の出生とを分けているのですが、将来はこれをさらに修正及び拡大して、モデルをより柔軟かつ多様なものにする試みであると思います。これは、人口変動により適切に対応していただくための一歩であると思いますので、高く評価したいと思っております。その結果については、次回の部会で具体的な御説明を頂けるものと思います。出生仮定のみならず、死亡や国際人口移動に関する御質問、御意見はありませんでしょうか。

 

○鈴木委員

 非常に厳密なモデルを作成されて、大変な御努力に敬意を表したいと思います。私が質問したいのは2点あり、いずれも死亡に関わることです。まず2425ページの線形差分モデルです。24ページの右に模式図が出ております。これは模式図ですから、あくまでも模式ということで理解しておりますが、この場合ですと60歳前の50歳代で、年齢のシフトが非常に大きくなって、その後は100歳という死の限界寿命に近づくと、当然ながら改善傾向というか、それが小さくなっていることが分かるのですが、実際に年齢シフトというのは、いつ頃の年齢で起きてくるものなのか。恐らく10歳代でこういうことはないと思うのです。多分40歳代も余りないのかなと思います。実際には60代、70代あるいは80代ぐらいにピークが来るのかどうか。数理モデルというのが余りよく分からないものですから、教えていただければ有り難いと思っています。確かに25ページを見ると、Stの増加などが80代ぐらいから大きくなっているように見えるので、その辺を1つ教えていただければと思います。

 もう1点の質問は、27ページの近年の死亡率の動向と将来推計値です。平均寿命の男女差が縮まっております。5年とか、ずっと進行して縮まっているのですが、恐らく女性の平均寿命が余り変わらない、延びないのに対して、男性が増加していることを表しているのかなと思います。何が男の平均寿命を押し上げているのか。具体的に言うと、例えば死亡率構造です。死亡原因になるある疾病の死亡率が減少しているのか、こういう現象が起きている背景をどのようにお考えになっているのかを教えていただければと思います。以上2点です。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  まず、年齢シフトの件です。モデル上の問題ですが、このモデルは先ほども御説明したときに、若年層ではリー・カーター、高齢層では線形差分モデルを使うということで、それをつなげて使っているというお話を申し上げました。実際に40歳より低いところでは、完全にリー・カーター・モデルを使っていて、線形差分モデルはかなり高齢のほうで当てはまりがよいので、基準時点で70歳以上でこちらのモデルを使うことにしています。ただ、これはシフトモデルなので、基準時点で70歳というのをフィックスしますと、シフトモデルに乗り換える年齢が固定し、不自然なことが起きるので、乗り換える年齢も同様にシフトさせるという取扱いをしております。ですから、先生がおっしゃったとおり、こういった線形差分モデルがよく当てはまるのは、かなり高齢のところであるとお考えいただければと思います。

 もう1点の男女の寿命差の件ですが、ほかの先進諸国では、どちらかと言うと近年縮んでいる傾向が普通です。そういう意味では2000年代ぐらいまでは、日本が非常に特殊な傾向を示していたので、男女の寿命差が縮み始めているというのは、一般的な国際的な傾向に沿ってきていると考えられます。もう1つ、今は男性の寿命が延びているという御指摘がありました。ある意味ではそういうようにも言えると思うのですが、逆にもう少し寿命の長期的な推移を見ますと、1990年代に男性の寿命のほうが少し伸び悩んでいて、それが少しキャッチアップしてきていると見るほうが、どちらかと言うと自然かと思います。そういう意味で、寿命差が縮み始めた1つには、男性の寿命の1990年代の伸び悩みが少し解消してきていると見ることができるのではないかと考えられます。

 

○鈴木委員

 今の御説明はよく理解できました。男性の平均寿命が改善しているというか、1990年代に落ちたものが回復して、欧米並みになってきたという御説明はよく分かりました。それを示す疾病の死亡率変動みたいなものはあるのですか。例えば、肺がんが少なくなったために、男性の平均寿命が改善しているとか。なぜ男性が改善したかという、「なぜ」の部分が分かれば教えていただければと思います。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  現在の日本の寿命を引き伸ばしているのは、近年では悪性新生物の死亡率改善というのが非常に大きいと思います。もう少し前ですと、脳血管疾患死亡率の低下が、寿命の伸びに大きく寄与していたわけですけれども、脳血管疾患の死亡率はかなり低下してきていますので、現在ですと悪性新生物死亡がかなり寄与しているのではないかと考えられます。今、手元にデータはないのですが、寿命に大きく寄与しているのは、今は悪性新生物に移ってきているのではないかと考えられます。

 

○高橋委員
 男女の寿命差の縮小傾向については、最近の欧米の研究では、男性の喫煙率が下がってきて、その結果、心疾患系の死亡率が下がってきたことが指摘されています。最近の文献を調べたところ、それが結果的には女性の社会行動、社会に出て働く機会が増えてくると、男女のライフスタイルが近くなって、喫煙率の低下が男性の死亡率低下に寄与しているという結果がありました。

 

○津谷部会長

 年齢にもよりますが、男性の喫煙率が下がってきているのに対して、若い女性の喫煙率は上がっています。このような変化は我が国もそうですが、多くの先進国で見られております。悪性新生物が近年最大の死因になっており、その変化が大きいという石井部長のご説明でしたが、がんにはストレスその他、いろいろな誘因があるかと思います。そうすると、男性と女性とで以前は非常に大きかった雇用労働力率が急速に縮小してきており、女性の家庭外賃金就業率が上昇しています。その結果、女性も男性と同じようにいろいろなストレスにさらされることが多くなるという傾向が強くなっているのかなと思います。将来推計の生命表は死因別に推計されておりませんが、男女がどのような理由で死んでいるのかについての死因分析は、大変重要だと思います。通常のリー・カーター・モデルから差分モデルにスイッチする年齢についても、そのポイントも固定しないで、アジャストなさっているということですので、柔軟なモデルの構築という面からもこの処置は望ましいと思います。よろしいでしょうか。では山田委員、お願いいたします。

 

○山田委員

 私も同じところを質問させていただきます。特に、現役の40代、50代の死因ナンバー1、ナンバー2というのは自殺です。自殺というのはサイクリカルに動いていて、ここ5年間の自殺率は下がっています。ですから、本来なら景気変動で、自殺率がサイクリカルに動くというのはあってはならないことなのですが、実際のデータとしてはそのように動いています。それをgtでサイクリカルな影響を拾ってしまうと、逆に本当のところはgtが立っているのかサイクリカルな影響なのかが分からないところがあるので、この推計自体が大変だというのは承知していますし、詳細な資料は大変分かりやすかったのですが、可能であれば、サイクリカルな影響をどれだけ外すのかということで、本当にgtが立ってきているのか。もちろん長期的には立ってきていると思うのですが、もう少し明らかになるのではないかと思いますので、そこを今後確認していただけるのであれば、お願いしたいと思います。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  委員のおっしゃるとおりで、ここ5年ぐらいは特に男性の自殺率は低下傾向にあって、そこが若年層での死亡率の変化に影響を与えているというのはおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、今の御説明の中で、この5年間でgtが減少する傾向が出てきたということを踏まえて投影すると申し上げたわけですが、gt自体は1970年以降のデータを使って投影しますので、1970年以降で全体を見てみますと、緩やかな減少基調になってきております。また、gtが減少して勾配が立ってきている影響には、若年層だけではなくて高齢層の影響も実は大きく、全体の影響として言えば、どちらかと言うと、高齢層の死亡率の変化というほうが大きいと考えられます。

 もう1つは先ほどの話とも関連して、委員のおっしゃるとおり、例えば30代ぐらいですと自殺が1位ということですが、40代を過ぎてくると、悪性新生物も多くなってきて、同じぐらいのシェアを占めてきます。自殺のほうはフラクチュエートしながら推移するのですが、現在、悪性新生物の死亡率というのはかなり高齢のほうに動いていまして、若年のほうでの2位に当たる悪性新生物のほうはステディに減少してきているということが見られます。したがって、自殺のフラクチュエーションがあったとしても、それは長期的にはキャンセルアウトされていって、全体として悪性新生物等のほかの死因が下がってくるということになれば、一定の減少という形になりますので、自殺の影響というのは、ある程度長期的なトレンドを見ることで解消できるのではないかと考えられます。

 

○小野委員
 前の人口推計のときの議論の繰り返しになるかもしれないのですが、理解不足で教えていただきたいことが2つあります。

 1つは、先ほどから出てきている線形差分モデルです。40歳、70歳という年齢をお出しいただきましたが、40から70までの間、つまり差分モデルから差分でないモデルになってきているので、ある程度なだらかな補正がなされているのかなというところが第1点です。

 もう1つは、今日の御議論の中では余り出てこなかったと思うのですが、推計というのは高位推計とか低位推計というのがありまして、私なりに判断すると、例えばリー・カーター・モデルとか、対数ガンマ分布の中に、εという形で誤差項が入っています。これなどを基にして、低位とか高位というのを考えられるのかどうか。また、別の考え方があるのかというのが私はよく分かっておりませんでして、その辺りを教えていただきたいのです。

 大体、確率モデルによって将来を投影しますと、いわゆるタイル値のようなところで見ますと、その幅というのは年を追うごとに大きくなっていくわけです。それが、今の低位推計とか高位推計というのは、割と年によって広がらずに安定しているような印象を受けるのですが、その辺りで、私の理解が違っているのだと思いますが、教えていただきたいと思います。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  まず、第1点目のリー・カーター・モデルと線形差分モデルをどのようにつないでいくかという話です。これは今回の資料には入っていないのですが、もともとリー・カーター・モデルというのは、低下型のモデルということで、いわゆる年齢に沿った軸で死亡率改善というのが行われると考えるモデルです。一方でLDモデルというのはシフト型ということなので、対数死亡率が同一であるようなところに対して、対応する年齢がどのように増加していくのかという変化をすることになります。そうしますと、人口学でレキシスサーフェスと呼んでいますが、レキシス平面上で対数死亡率を高さとした曲面を考えますと、リー・カーター・モデルのような低下型モデルというのは、それを年齢で切った軸の方向に死亡率改善で変化していくのに対し、LDモデルのようなシフト型モデルというのは、レキシスサーフェスを水平に切ったような方向に変化していくということになり、死亡率の変化がレキシスサーフェス上の変化方向のベクトルと考えることが可能になります。

 そうしますと、リー・カーター・モデルの変化方向のベクトルと、LDモデルの変化方向のベクトルがあるわけですが、その両者のベクトルを線形結合させてやることによって、二つの間を滑らかに変化させることが可能になります。そのようにしますと、それぞれの死亡率曲線で40歳以下ではリー・カーター・モデルの変化ベクトル、70歳以上ではLDモデルの変化ベクトルを取り、途中では両者を線形結合したベクトルの方向に死亡率が変化するというようにしますと、全年齢のモデルを構成することができるようになります。

 したがいまして、途中のところでは、変化する方向のベクトルを線形結合させることによって全年齢モデルの死亡率改善というものを作成するというのが、両者を1つのモデルにする方法論になります。

 2点目の高位推計と低位推計の話です。平成24年推計での高位推計と低位推計の考え方ですが、リー・カーター・モデルにはktというパラメータがあり、死亡の時系列水準を表すものとなっています。ktの投影に関しては、22ページにありますとおり、関数を当てはめて補外をしているわけなのですが、そのモデル値と実績値の乖離を誤差の経験分布と考え、その誤差を復元抽出して付加する、いわゆるブートストラップ法によって中心線を推定し直すことによって、将来の中心線の分散を測定します。

 一方で、回帰分析における予測区間の考え方では、単に中心線の分散だけではなく、中心線と実績値との分散を付加しますので、その両者の分散を加えることによって将来のktの値の分散を推定し、99%の予測区間を作るという方法によっています。

 この将来推計人口というのは、決定論的、ディターミニスティックな推計として高位と低位を設定しています。一方で、オリジナルのリー・カーター法は、おっしゃっているようなストキャスティックな推計であり、ktの時系列解析を行って、ドリフト項を持つランダムウォークとして将来の分布を作成していくわけです。しかしながら、この推計では、そういったストキャスティックなことより、もともとディターミニスティックな推計の中で、仮に仮定値に変動があった場合に将来の人口がどのぐらい変わるのかというのを示すというのが高位と低位の目的であって、将来の生命表関数の分布の確率分布を示すというのが本来の目的ではありませんので、そういった観点から、ストキャスティックな手法で分布を作って設定するという方法は取らずに、ktの当てはめに伴う誤差から得られる分散を用いた99%予測区間を用いて、高位と低位の軌道を設定しているというのが考え方です。将来のほうに広がっていかないというのは、そういった設定の仕方によるということになります。

 

○小野委員

 出生率のほうはどのような考え方をするのでしょうか。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

 出生というのは、いろいろな行動要因が影響を及ぼすということがありますので、出生仮定に用いる参照コーホートに関する50歳時未婚率、結婚出生力変動係数、夫婦完結出生児数といったそれぞれの要素ごとに、プロジェクションしたときの幅であるとか、あるいは結婚出生力変動係数では高位であれば1まで戻るというような、それぞれの要素ごとの高・低の幅を設定し、それらの組み合わせによって、高位・低位を作るということとしております。

 

○津谷部会長

 この将来人口推計モデルはデターミニスティックなマクロシミュレーションのモデルであるということかと思います。出生と死亡は年齢の関数ですが、死亡仮定と出生仮定の設定もだんだん複雑になっており、具体的にこうなったらどうなるというシナリオをいろいろなコンビネーションでお示しいただいていると理解しましたが、それでよろしいでしょうか。先ほど大林委員が手をあげていらっしゃいましたが、ご質問ありますでしょうか。

 

○大林委員

 2点お伺いします。1つは22ページです。若年者についてはリー・カーター・モデルを使うということに関してお伺いします。bxの曲線は、特に20歳辺りまでで男女でかなりパターンが違うという感じがするのですが、これは意味のある相違なのか、何か背景が考えられるのでしょうか。

 もう1つは、34ページです。日本人について、ここでは2011年から2015年の率の平均値は、最大値と最小値は除いた形で3か年分の平均値になっています。一方、前回推計の資料を見ると、前回の数値は2004年から2009年の6年分を使っており、その上で最高と最低を除いて、4年間の平均を取るという形です。今回の2011年から2015年の分を使うというのは、実際にこういう形で推計がなされるということなのか、もしそうであるとすれば、6年分使用からの変更には何か理由があるのかどうか、細かい話で恐縮ですけれども教えていただければと思います。

 

○津谷部会長

 石井部長、よろしいでしょうか。最初の御質問は22ページのbxの若い年齢について、レベルだけではなくて年齢パターンが相当違うのではないかということについての御説明がおありだったらお伺いしたいということです。後の御質問は、34ページについて、前回は6年分であったが、今回は5年分ということで、これには何か理由があるのでしょうかということですが、ご説明お願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

 まず、22ページのbxです。御質問の件は20歳以上のほうでかなり違いがあるということですか。

 

○大林委員
 20歳未満のほうです。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

 20歳未満のところのbxは、確かにある程度違いがあるのですが、もともと20歳未満、特に0歳近辺のところというのは死亡率が高いのですが、10歳辺りというのは非常に死亡率が低いところですので、そういった意味では、いわゆる若干の違いはあるのですが、大きく違いを与えるようなものにはなっていないと思います。対数死亡率であるということもあって、ちょっとした影響を受けやすいということから若干の違いが出ているだけではないかと思われます。

 もう一点の国際人口移動のほうです。これはまだ中間的な暫定値ということで、最終的に決定したものではないわけですが、何年分を平均するのがいいのかということは、そのときどきのデータで、例えば非常に動きが異なっているようなときには、その範囲を少し広げたり縮めたりということを適宜行っています。今回もデータの傾向等を見ながら判断をしていきたいと考えております。

 

○鬼頭委員

 ただいまの35ページの国際人口移動の所でお伺いします。1つは今の期間との関係です。リーマンショック後とか震災の影響というのは、どう処理されているのでしょうか。

 もう1つは、ここで言っている外国人の入国超過数という場合には、法務省の入管統計で見ているのか、国調あるいは推計された定住人口で言っているのか、この中身を教えていただきたいと思います。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

 おっしゃったリーマンショクや震災の影響は、外国人の入国超過のほうで大きく影響が出ていまして、これまで入国超過の傾向だった外国人移動が逆にマイナスになって、出国超過のような傾向が表れている年もあります。そういった年は、異常値ということで除外して補外をするような対応を行っていますので、そこに関してもそれぞれのデータの内容を精査しながら、推計を行っていくことになります。

 将来推計人口の実績データというのは、総務省で出されている現在推計人口と同じデータになりますが、現在推計人口では法務省の入国管理統計からデータを取っていますので、オリジナルソースは入国管理統計ということになります。

 

○津谷部会長

 そのほか、御質問やコメントがありましたらお願いいたします。

 

○大石委員

 移動の場合などに、超過数というのは差分ですよね。例えば、それぞれ入国数、出国数を推計して、それから差を取るのと、そうではなくて超過数そのものを推計するのと、どういうメリット、デメリットがあるかについて教えていただけますか。

 

○石井人口動向研究部長(社人研)

  御指摘のとおりで、本来は入国と出国というのは別々の動きをしますので、本来は入国と出国が別に扱えれば、そのほうが望ましいということはおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、現在はデータの制約上、それぞれをばらばらに取ることができないということで、入国超過数を基にした推計を行っているところです。

 

○津谷部会長

 そのほかに御質問やコメントはありませんでしょうか。よろしいでしょうか。では、大変活発な御議論や御質問を頂きありがとうございました。今回頂いた御意見、御質問を参考にしつつ、これからの推計作業を行って頂きたいと思います。そして、その結果を次回以降の部会の議論に反映させていただくことになるかと思います。

 まだ時間は5分ほどありますが、御質問と御意見は出尽くしたようですので、今回の部会の質疑応答、討論はこれまでとさせていただきたいと思います。今回議論を踏まえて、国立社会保障・人口問題研究所に推計作業をお願いいたします。社人研は既にいろいろなテスト推計を行っておられ、その一部を今回御提示いただきましたけれども、これから更に本格的な推計作業を進めていただくことになると思います。次回は、この新推計の試算結果、今回よりも更に進んだ推計の結果を御報告いただくことになるかと思います。なお、次回の開催日時については、事務局より委員の方々にお伺いし、日程調整をして、改めて御連絡することにいたします。その節は、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、本日の部会はこれで終了とさせていただきます。御多忙の中、お集まりいただきまして本当にありがとうございました。


(了)

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