ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 保険局が実施する検討会等> データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会> 第8回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録(2016年12月7日)




2016年12月21日 第8回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録

○日時

平成28年12月21日(水)17:00~19:00


○場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター(14階ホール14A)


○議題

議論の整理(案)について

○議事

○西村座長 まだお座りになっておりませんが、皆さんおそろいになったので、開催したいと思います。第8回「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」でございます。

皆さん、お忙しい中、お集まりいただいてありがとうございます。

 きょうの出欠でございますが、神成構成員、山本隆一構成員から御欠席という連絡をいただいております。あと、皆さんおそろいになりました。

 参考人を御紹介したいと思います。よろしくお願いします。

 まず、健康保険組合連合会から白川副会長でございます。

 全国健康保険協会から藤井理事でございます。

 国民健康保険中央会から原理事長でございます。

 社会保険診療報酬支払基金から伊藤理事長でございます。

 日本病院会から大道副会長でございます。

 お忙しい中、どうもありがとうございます。よろしいお願いしたいと思います。

 それでは、議事に入ります。

 まず、資料の確認をしたいと思います。課長、よろしくお願いします。

○保険課長 本日の資料でございますが、まず「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会における議論の整理()」、林構成員提出資料といたしまして「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会における議論の整理に関する意見」、参考資料といたしまして「これまでの意見の整理(事務局作成資料)」、以上となっております。よろしくお願いいたします。

○西村座長 そろっておりますでしょうか。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 きょうの議題は「議論の整理()について」ということでございます。

 簡単に前回の議論の振り返りをさせていただきたいと思いますが、支払基金の組織・体制のあり方に関して「これまでの議論を踏まえた論点の整理」をお配りして、それに基づいて前回御議論をいただきました。

 具体的には3つに分けることができると思います。「業務の効率化について」「ビッグデータの活用について」及び「支払基金に必要なガバナンス態勢について」であろうかと思います。

 これまでの本検討会全体の議論、そしてワーキンググループの議論を踏まえて、今、お手元に論点を提示させていただいております。これに基づいて皆様からきょう、御議論を賜りたいと思います。

 また、前回は「支払基金の審査委員会の現状について」という事務局の説明、また支払基金の神奈川県支部と宮城県支部の審査委員長にも御出席いただきまして、地域の審査委員会が審査を行うことの意義や役割等について御説明を受けました。この点についてもさまざまな御意見を頂戴したところでございます。

 前回の検討会においてそういった議論を整理するという御了解をいただきましたので、きょうは、これまでの検討会におけるさまざまな御意見、あるいは2つのワーキングにおける御議論を踏まえて、事務局に、お手元にあります「有識者検討会における議論の整理()」を作成していただきました。この検討会では、28年中、つまり、ことしじゅうに結論を得るということになっておりますので、そういうことを踏まえて皆さんの御議論を賜りたいと思っております。

 本日、それに加えて林構成員から資料の提出がございますので、この後、事務局の説明に引き続いて御説明をお願いしたいと思っております。

 また、この説明に関連して、金丸構成員から、どうしても御都合があって早く退席するということを伺っておりますので、林構成員の資料の説明の後、金丸構成員から御発言をお願いしたいと考えております。

 こういう順序でいきたいと思いますが、よろしゅうございますか。

 それでは最初に、事務局が作成した資料の説明をしていただき、その後、林構成員提出資料の説明、そして金丸構成員からの御発言、こういう順序でいきたいと思います。

 資料の説明、よろしくお願いします。

○保険課長 保険課長でございます。

 それでは、これまでの議論を踏まえて、資料といたしまして「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会における議論の整理()」を提出しておりますので、内容につきまして、課長補佐から読み上げをさせていただきます。

○堀補佐 保険課の堀でございます。

 それでは、資料を読み上げさせていただきます。

 データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会における議論の整理(案)

 1.はじめに

○社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)をはじめとする審査支払機関には、レセプト電子化により、年間約20億円のビッグデータの集積が進んでいる。現行法では、「審査支払」の実施自体を存在意義とする「業務集団」に留まっているところであるが、保険者の信頼を得るチェック機能を効果的・効率的に行うだけにとどまらず、その保有するデータを十分に活用した役割を果たすことが、より一層期待されている。

○また、昨今の医療をめぐる状況や技術の進展を考えると、審査支払機関については、ビッグデータとICTを最大限に活用することで、保険者と協働しつつ、医療の質の向上に寄与するいわば「頭脳集団」として、その役割を再定義すべき時期に来ていると考えられる。

○折しも、規制改革会議からは、支払基金における診療報酬の審査の在り方をゼロベースで議論し、ICTを活用した業務の効率化や組織の見直しを求められている。このような指摘をむしろチャンスととらえ、単に業務の効率化にとどまらず、国民や患者のため、そして医療全体の発展のために、本検討会においては、未来志向の議論を行った。

○具体的には、平成28年4月より本検討会を開催し、主にマル1「審査支払機関における審査業務の効率化・審査基準の統一化」、マル2「ビッグデータを活用した保険者機能の強化及び医療の質の向上」、マル3「マル1及びマル2の議論を踏まえた支払基金の組織・体制の在り方」の3点について、議論を行った。なお、マル1及びマル2については、それぞれ本年8月~11月上旬にかけて審査・支払効率化ワーキンググループとビッグデータ活用ワーキンググループを設置した。以下は、検討会とワーキンググループにおける議論の成果である。

2.本検討会における検討事項

()審査業務の効率化・審査基準の統一化に関する事項

○審査支払機関の業務改革及びシステム改革においては、本検討会や審査・支払効率化ワーキンググループでの議論及び規制改革会議からの指摘から、下記の3点にフォーカスして改革の方向性を、以下に提示する。

A コストパフォーマンスが高く最適なアーキテクチャ(設計思想)による業務・システムの実現

B 審査プロセスの見直し・効率化

C 審査業務における情報支援

○日本の医療保険制度では、被保険者の被用者保険と国民健康保険の間の移動があることを踏まえ、審査支払機関の審査業務の効率化・審査基準の統一化を検討するに当たっては、支払基金と国民健康保険中央会及び国民健康保険団体連合会(以下「国保連」という。)による改革の検討を一体的に進める必要がある。

○その際、支払基金については、システム刷新の時期が差し迫っていることや規制改革会議において明示的に指摘を受けていること等を踏まえ、審査業務の効率化・審査基準の統一化については、まずは支払基金による改革の取組みを加速させていく。一方、国保連による改革についても、支払基金による改革の検討も踏まえながら、支払基金との審査基準の統一化も含め、引き続き検討し取り組んでいくこととする。

○なお、新たに構築設計されるシステムは現行の審査の質は維持しつつも、保険者機能の強化、医療機関の負荷軽減、審査の事務職員・審査委員の負荷軽減、審査基準の統一化など、業務改革を踏まえ、PDCAの回る医療情報分析が可能なスケーラブル(拡張可能)なデータベースを有するシステムとする。

()ビッグデータ活用に関する事項

○前述のとおり、審査支払機関には、レセプト電子化により、年間約20億件のレセプトデータが集積している。また、健診情報については、年間0.3億件の情報が審査支払機関に集まり、さらに、国保連に関していえば、年間約1.5億件の介護レセプトを審査している。

○さらに、これらの医療レセプトの情報や、特定健診等の情報は、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)に蓄積されており、その数は、医療レセプトで約110億件(平成21年4月~平成28年1月分)、特定健診等情報で約1.7億件(平成20年度~平成26年度実施分)となっている。また、介護レセプトの情報については、その個人の要介護認定情報等とともに、厚生労働省の介護保険総合データベースに蓄積されており、その数は、介護レセプトで約5.2億件(平成24年4月~平成2710月分)、要介護認定情報で約4千万件(平成21年~平成28年5月分)に上っている。

 これらの厚生労働省で保有しているデータベースは、現時点で、その保存年限を設けておらず、これからさらなるデータ集積が進み、巨大な医療・介護のデータベースとして有効に活用されることが期待されている。

○これらの情報は、全体として見れば、各個人の健康・医療・介護に関する詳細な情報が記載された、優れたデータベースである。しかしながら、現在、それが分散管理されており、また、個別にも十分活用できているとはいえない状況にある。

○ビッグデータやICTを活用した質の高い医療の実現や保険者機能の強化に向けて、本検討会及びビッグデータ活用ワーキンググループでの議論を踏まえ、こうした有用なビッグデータの活用や分析等に関する具体的方策について、以下に提示する。

()支払基金の組織・体制の在り方について

○上記の()審査業務の効率化・審査基準の統一化に関する事項及び()ビッグデータ活用に関する事項についての基本的な方向性を踏まえ、業務改革及びビッグデータ活用の推進に向けた取組みを確実に実施していくために、支払基金における組織・体制の見直しやガバナンスの強化について、以下に提示する。

3.審査業務の効率化・審査基準の統一化について

()コストパフォーマンスが高く最適なアーキテクチャによる業務・システムの実現

○審査支払機関におけるこれまでのシステム設計構築は、発注側のガバナンスが著しく不足しており、業務遂行に資するアーキテクチャではない利便性を欠くシステムに対して、非常に高額な費用が費やされてきたと考えられる。また、業務の重要性に鑑みれば、情報セキュリティへの対応が不足しており、この点についても見直しが必要である。

○「コストパフォーマンスが高く最適なアーキテクチャによる業務・システムの実現」には、業務改革に基づく、業務運営体制の抜本的見直しが求められるが、状況を抜本的に改革し、これら業務効率化システムの設計構築、セキュリティについて主体的に取り組むためには、まずは改革の取組みを加速させるべく支払基金内に専任のCIOChief Information Officer)並びにそのCIOを支援するチームとしてICTの専門家によるタスクフォースを設置するなどの体制を確立することが求められる。

○業務プロセスの見直しに基づき、医療機関等によるチェックなどの後述する複数の取組みを推進し、審査におけるコンピュータチェックの寄与度を向上させることをこの体制で内部からチェックし、審査業務の徹底的な効率化を図るべきである。

○なお、現在は審査支払業務に係る費用をレセプト枚数で割ったものを審査手数料としているが、今後は、審査業務の効率化や支払基金の業務範囲の変化に伴い、審査手数料の設定の在り方を抜本的に見直し、医療保険者の負担軽減を通じ、ひいては国民の負担軽減につながるよう、全体として軽減していくべきである。

○支払基金が自身の改革を目指した、現時点における「システム刷新計画」はシステムハードウェア変更等が主体となったもので、業務改革に関する検討が不足していると考えられる。

 そこで、検討会及び審査・支払効率化ワーキンググループにおける議論を踏まえ、現在の「システム刷新計画」を止め、全面的に見直しを行うことが必要である。

○なお、見直しに際しては、既存システムに囚われることなく、ゼロベースでシステム全体のアーキテクチャを検討していくこととし、まずあるべき業務の姿を描いた上で、新業務に基づく新システムの構築が不可欠である。

○支払基金においては、業務改革に基づく、業務運営体制の抜本的見直しを図るとともに、前述したような、専任のCIOICTの専門家によるタスクフォースの設置や、業務効率化やシステム等の専門家の配置などを推進し、業務改革やシステム刷新計画の立案・遂行、ベンダーマネージメント、セキュリティ等における推進体制の見直しを実施していくことが望ましい。

○このような体制拡充に伴い、支払基金の事務局は、レセプトの審査業務から、審査される側と審査を行う側の意見のとりまとめや、審査・支払業務全体の改革を推進する立場へと役割を進化していくべきである。

○なお、支払基金のシステム刷新について説明を受けた上で同意をする立場である保険者についても、ITリテラシー、発注能力等について向上させる必要がある。

○また、国保連については、支払基金の業務改革に基づく、業務運営体制の抜本的改革見直しの検討を踏まえながら、引き続き、審査基準の地域間のばらつきの是正や業務プロセスの見直しなどの業務効率化、利便性の高いシステムの設計構築や、セキュリティ等における推進体制の見直しを検討し、着実に取り組んでいくべきである。

()審査プロセスの見直し・効率化及び審査業務における情報支援

○審査プロセスの見直し・効率化は、手続の簡素化にあたり、医療機関等や保険者の負担が減少することも意識しつつ、審査プロセスを構築していくべきである。

○まず、審査支払機関で行っているコンピュータチェックルールを公開することは、レセプトの返戻数の減少や審査支払機関の職員が行っている審査共助事務の軽減化が期待されるなど医療機関等並びに審査支払機関の効率化に資するものである。保険者や医療関係者等と調整の上で公開の基準を定め、原則として公開すべきである。

○なお、これらの取組みと併せて、厚生労働省においても、診療報酬点数に係る告示・通知の解釈について明確化すべきである。

○これに加え、再審査の申し出や返戻再請求は、紙媒体でやりとりされることがほとんどであり、業務効率化の妨げとなっていることから、原則電子化を行うべきであるし、レセプト形式について、なるべく目視による審査を不要とするため、コンピュータチェックで判定可能な形式に見直しを行うべきである。

○「各審査支払機関における地域間差異や支払基金と国保連における差異を含めたコンピュータチェックや付箋の貼付及び剥がしの状況等」の審査プロセスにおける見える化がエビデンスベースの業務改革の基盤となることを踏まえ、審査プロセスの継続的な見える化と審査基準の継続的な統一化に向けた改善を図るための仕組みが必要である。

()新たなシステムの基本設計について

マル1 コンピュータチェックを医療機関等において行う仕組み

○審査支払機関から医療機関等にレセプトが返戻・査定される際、不適切とする理由が十分に示されていないため、医療機関等で、大量の情報提供とチェックが必要になる場合があることを踏まえ、返戻・査定理由の明確化を行うべきである。

○審査支払機関からのレセプトの返戻をできる限り少なくするため、現在、審査支払機関が行っているオンライン請求システムにおけるASPチェック及びレセプト電算処理システムにおける受付事務点検のコンピュータチェックの内容について、レセプトの請求前に医療機関等での事前のコンピュータチェックを可能とし、チェックでエラーが判明した場合には、これを訂正した上でレセプトの請求等を行えるようにすべきである。

○その際、上記のような医療機関等における事前のコンピュータチェックルールをベンダーがそれぞれ独自に構築するのではなく、審査支払機関が一元的に構築して医療機関等がレセプトの請求前に活用できるようにすべきである。このことにより、各医療機関等でのシステムの構築・保守コストの効率化及びチェック内容の一元化と、各医療機関等及び審査支払機関におけるレセプト返戻などに伴う事務負荷の軽減等が図られる。

マル2 コンピュータチェックに適したレセプト形式の見直し

○電子レセプトのコンピュータチェックでエラーとなった請求項目のうち、詳細記述項目内容のテキスト解析等に基づき、頻繁に記述される項目については、電子的情報送付のオプションとして、例えば、医療行為等を行った理由や対象部位等を電子レセプト上項目として記載し、医療機関等がそれらを選択して送付可能とすべきである。

○選択項目を選ぶことを可能とする仕組みとすることで、医療機関等においては処理時間の短縮や手戻りの減少による利便性向上、審査支払機関においては、コンピュータ処理範囲の拡大による効率性向上が期待される。

○なお、全ての項目を選択式にすることは困難であることから、上記の詳細記述を要する項目に加え、項目化が容易な診療項目、請求件数、付箋の多い請求項目から選択式にすることが考えられる。

○上記の点を進めつつ、関係者の意見を聞きながら、コンピュータチェックに適したレセプト形式の見直しを進めていくべきである。

マル3 コンピュータチェックルールや付箋貼付状況の差異に係る継続的な見える化等

○支払基金と国保連間及び支部間・都道府県間のコンピュータチェックルールや付箋貼付状況の差異については一部判明しているが、時間的制約もあり、全体像は未だ判明していないことから、引き続き、より多面的な把握・分析による見える化について、不合理な差異の解消に向けて計画的に取り組むことが必要である。

○なお、支払基金については、地域事情を踏まえて設定しようとするコンピュータチェック項目について、本部において設定の根拠を確認の上、精査する必要がある。

○国保連については、各都道府県の独自の外付けシステムも含めたシステム全体のコンピュータチェックルール等の処理状況を継続して把握・分析し、各都道府県間で可能な範囲での整合性を図る必要がある。

○コンピュータチェックのルールやチェック結果等の差異に係る把握・分析や統一化等については、厚生労働省・医師会等・支払基金・国保連に加え、関連政府機関、ICT関連の有識者等が集まって、具体的に点数表の解釈や地域の差異を明確化していくなど、定期的にPDCAを回して継続的に検討していく場を設けていくべきである。

○当該検討の場において明確化された、点数表の解釈、地域の差異については、医療機関等及び保険者に共有すべきである。

○新しく出てきた医療技術等についても、当該検討の場において評価して標準化を順次行っていく必要がある。

マル4 コンピュータチェックの統一化に向けて、効果的な検討を推進するためのシステム環境等の整備

○上記の多面的な把握・分析による見える化は、今後刷新されるシステムに標準機能として搭載させ、さまざまなレポーティングが自動的になされる環境の整備が必要である。

○上記の検討の場では、これら分析によるエビデンスに基づいて検討を行うことが必要であるが、このような具体的なエビデンスは、コンピュータチェックの統一化に向けた、検討を行うための重要なファクトとなる。

○なお、審査委員会における審査においても、過去の審査状況等を参照できる仕組みを作成し、審査委員に利用して頂くことで、審査に役立てることが考えられる。

マル5 審査プロセス全体のオンライン化

○引き続き、医療の現場の判断を尊重したうえで、審査プロセス全体を見直して、返戻再請求及び再審査の申し出のコンピュータ化を含め、審査業務のさらなるコンピュータ化、オンライン化を、CIOICT専門家によるタスクフォース等が中心となり、主体的に推進することを求めていくべきである。

4.ビッグデータの活用について

()データプラットフォームについて

○一般的に、壮年期には被用者保険に加入しており、高齢になって退職してから、国民健康保険に移る。さらに、歳を重ねると、後期高齢者医療制度に加入し、要介護認定を受け、介護保険サービスの対象となる。

 このように、医療・介護の場合、ライフサイクルの中で加入する保険制度が変わっていくという特性がある。この結果、国民健康保険には、個人の疾病・医療に関する情報があるが、健康な時期に関する情報がない。一方で、被用者保険には、壮年期の特定健診等の情報があるが、そのアウトプットに相当する医療(もしくは介護)に関する情報がないという状況が生じている。

○これらの情報を連結していくことができれば、例えば、ある個人が何歳の時点で特定健診・特定保健指導を受け、その後、いつ医療機関にかかり、どのような状態で、どういった処置を受け、さらに、将来的にどのような医療・介護を必要としていったかが、分析できるようになる。

 つまり、個人の保健医療に関するヒストリーを、ビッグデータとして分析することが可能になり、医療の質をさらに向上させる可能性を秘めたものだといえる。

○今後、こうした可能性の実現に向けて、健康・医療・介護のデータベースを連結し、プラットフォーム化していく取組みを進めていくべきである。

 プラットフォーム化した情報は、専門家による分析を行い、その結果を保険者や現場の医療関係者等にフィードバックし、医療の質の向上、保険者機能の強化等を果たしていく。

○また、こうしたプラットフォーム化していく場合、既存のインフラを最大限に活用する観点からも、現に医療・介護のレセプト情報や特定健診等の情報を扱っている支払基金・国保連において、その管理・運営・分析等を行うことが望ましい。

()支払基金・国保連の保有するビッグデータの活用と保険者機能の強化

○保険者においては、従来から被保険者の資格管理、保険料の設定・徴収、保険給付、審査支払を行っているところであるが、今後、さらに保健事業等を通じた加入者の健康管理や医療の質や効率性向上のための医療提供側への働きかけについての取組み(保険者機能の強化)が求められている。

○前述のとおり、足元でも、審査支払機関には、大量の医療・介護のレセプト情報や特定健診等の情報が集積されているにもかかわらず、これらが有効に活用されているとはいえない状況にある。保険者機能の強化の観点から、こうした有用なデータベースは、早々に活用方策を検討し、実行に移していくべきである。

○国保連には、既に医療・介護の情報を連結した国保データベース(KDB)システムが実装されており、KDBを活用した保険者のデータヘルス計画の作成支援などの取組みが展開されている。今後は、こうした連結データの特性を踏まえ、医療・介護全般に関して、保険者機能の強化の観点から、さらなる活用の拡大の取組みが期待される。

○支払基金で現行法下においては、医療レセプト等の情報を審査支払のみにしか活用していない実態がある。国保連の取組も参考にしつつ、保険者ごとに特徴や状況を分析ができるようにすることで、それぞれ保険者の実情に沿ったデータヘルス等の推進を図っていくべきである。

()ビッグデータ活用に当たって留意すべき事項

○健康・医療・介護の情報のプラットフォーム化に当たって、全てのデータベースをトップダウンで構築していくことは、現実的ではない。民間で収集している情報と公的に収集すべき情報を整理し、民間の自立・自走できる環境を作りつつ、連携していくことが重要である。このため、データベース間の連携が行えるよう、支払基金・国民健康保険中央会が医療等IDの発行を行うとともに、当該IDを利用して、保健医療に関するビッグデータを活用していくべきである。

○また、データのプラットフォーム化を進めていくに当たっては、データクリーニングの体制、データの集約・交換技術、セキュリティの確保、医療・介護現場から出力されるデータの質の向上等、様々な課題がある。こうした課題に対応できるよう、適切な専門家を配置し、システムの設計段階から慎重な検討を進めていかなくてはならない。

5.支払基金の組織・体制の在り方について

()支部における職員体制について

○審査業務の組織・体制の見直しについて、まずは、審査業務の徹底的な効率化を図る必要がある。そのためには、現時点で平成33年1月に実現予定であった支払基金の審査・支払システム刷新計画を全面的に見直した上で、ビッグデータ活用のためのシステムの実装時期も踏まえ、平成32年度中に新システムを実施できるようにすべきである。

○こうした審査業務の効率化を前提とした上で、本検討会では支払基金の組織・体制の在り方として、以下の点について検討を行った。

マル1 審査業務や職員のスリム化に伴い、47都道府県の支部の効率化についてどのように考えるか。

マル2 韓国のHIRAでは審査業務を全国一元化している一方、我が国では都道府県支部単位で審査委員会を設け審査を行っていることについてどのように考えるか。

マル3 現行のシステムでは、大部分のレセプトについて支部で審査が完結してしまうことについてどのように考えるか。

マル4 審査委員の構成については3者構成(学識経験者、保険者、診療側)となっていることや、利益相反禁止の仕組みについてどのように考えるか。

マル5 先進医療に係るレセプトや専門医の少ない診療科に関するレセプトの審査体制についてどのように考えるか。

○まず、支部の職員体制については、前述のシステム刷新等による業務の効率化により、支払基金の審査共助事務における職員の業務量が減少すると考えられることから、これを踏まえて47都道府県における支部の職員体制について、その規模を必要最小限のものに縮小していくべきである。

 これに対し、支部についてブロック化することなども含めて、組織・体制の在り方を抜本的に見直していくべきとの意見があった。

○その際、具体的な支部組織の効率化の在り方については、支払基金と厚生労働省において、新たな審査・支払システムの設計内容や現在の支払基金の職員の勤務状況なども踏まえて、速やかに具体的な効率化計画(工程表)を策定すべきである。

()審査の一元化について

○次に、現在47都道府県ごとに設置している審査委員会の在り方については、以下のような議論を行った。

 まず、審査の効率化の観点に加え、公的医療保険制度は全国どこでも同等の医療が受けられるということが基本であり、今後の審査の在り方としては、コンピュータチェックの基準の統一化を進めていく中で、将来的には、韓国HIRAのように全国一元化することが適切なのではないかとの意見があった。

 また、同様の観点から、原則的には本部で審査し、どうしても本部でできないものについて、ブロック単位や都道府県支部で審査するということを原則とすべきとの意見があった。

○これに対し、日本においては混合診療を認めている韓国と異なり、必要とされる医療についてすべて公的医療で行うことが原則となっており、診療報酬に係る告示・通知の適用を比較的幅広く認める必要があるとの意見があった。そのため、レセプトからわかる情報以外にも地域の医療提供体制や環境、家族の状況、生活習慣等の状況を踏まえて都道府県単位で審査を行う必要があることから、当面は全国一元化やブロック単位での審査は困難であるとの意見があった。

○この点については、審査・支払効率化ワーキンググループにおける検討においても、審査の地域差についての具体的な内容までは吟味できていなかったことを踏まえ、今後、コンピュータチェックの基準の原則統一化の作業とともに、システムにより、審査委員会の審査内容についても見える化を行い、地域における具体的な差異の内容を把握した上で、データに基づき、支払基金の本部において、専門家が議論を行う体制を整備し、エビデンスに基づいて審査内容の整合性・客観性を担保していくべきとする点について概ね意見が一致した。

○その際、支払基金の本部は、支部がどのような基準を設定しようとし、それにより、どのような審査結果となっているのかを把握する必要があり、その把握したデータに基づいて、本部がその妥当性を判断し、支部の判断に対し適切にガバナンスを効かせていく体制が必要である。

○また、これに関連し、現在では40万点以上の高額レセプト等は本部において一括して審査を行っているところ、こうしたレセプトについて、今後本部での一括審査の割合を高めていくことや、専門医が少ない診療科のレセプトについては、ウェブ会議システムの導入も含め、複数の都道府県において合同で審査を行っていくこと、再審査のレセプトの一部については本部で行うことなどを検討していくべきである。

()審査委員会のガバナンス・審査委員の利益相反の禁止等について

○また、支部の審査委員会のガバナンスについては、各地域の審査委員は当該地域の診療機関で診療を行っている医師等が選任されるため、審査される側が同時に審査する側にも立つことになることから、利益相反を禁止するため、現在運用上で行われているとされる、審査委員が自らに関連する医療機関の審査は行わないことや、審査委員が担当する医療機関を定期的に変更していくことを、規則として明確化していくことが必要である。また、同様の観点から、審査委員の都道府県間での相互乗り入れを行うべきとの意見があった。

○なお、こうした見直しに当たっては、高い使命感を持つ審査委員の意欲を損なわないように十分に配慮する必要がある。また、高齢者の医療の確保に関する法律に定められている都道府県ごとに地域独自の診療報酬を設定していくことについて今後の動向に着目する必要があるという意見があった。

○以上のような意見を踏まえ、支払基金の組織・体制の見直しについては、今後、支払基金と厚生労働省において具体的な業務効率化計画を策定し、その中で実施可能とされたものについては、着実に実施すべきである。

○また、審査の全国一元化などさらに残る課題については、コンピュータシステムの刷新も踏まえ、支部における審査の実情を的確に把握できる仕組みを構築し、エビデンスベースの議論を行える環境を速やかに整えた上で、公的医療保険制度は全国どこでも同等の医療を受けられる制度である点や、個々の患者がふさわしい医療を受けられるようにするという観点、医療の質を向上させるという観点から、審査の組織・体制の在り方について引き続き検討を行っていくことが必要である。

()ビッグデータ活用における審査支払機関の役割について

○ビッグデータ活用においては、今後、データプラットフォームの運営・管理等については、支払基金と国民健康保険中央会が共同して担うことが期待されており、また、データヘルスの推進にあたり、データ分析の人材やノウハウの不足が課題と感じている保険者も散見されるところ、保険者から審査支払機関に対して、個々の保険者を支援するような役割も期待されているところである。

 また、審査支払機関がこのような役割を果たすことにより、社会全体のデータヘルス事業の取組みのさらなる促進につながり、医療の質の向上に資するものになると考えられる。

○以上を踏まえ、支払基金においては、審査業務の効率化・審査基準の統一化を中心とした業務改革によって組織体制のスリム化を行うと同時に、ビッグデータ活用における新たな役割を担っていくことで、これまでの「業務集団」から「頭脳集団」へと改革していく必要がある。

()支払基金の組織のガバナンス強化について

○支払基金として、これらの改革を確実に実施していくためには、支払基金のガバナンスの強化が必要となる。業務改革の専門家やCIO及びCIOを支えるICT専門家によるタスクフォースの設置等のほか、ビッグデータ活用を見据えたデータの利活用や分析を担う部門や医療の質の評価に関する研究部門の設置が必要である。また、それにあった専門人材の確保も行っていく必要がある。

○他方、今後、支払基金内の業務改革に伴う人材の配置や必要な人材の新規採用にあたっては、業務の効率化によりスリム化する組織がビッグデータ活用を理由に今以上に肥大化しないように留意しつつ、本部において戦略的かつ計画的に行っていく必要がある。

6.今後の対応について

○本検討会において指摘された内容を踏まえ、確実に改革を実施していくために、支払基金と厚生労働省において、新たなシステム刷新計画等も見据えながら、具体的なスケジュールや内容などを盛り込んだ改革工程表について、平成29年春を目処に基本方針を取りまとめるべきである。

○併せて、支払基金及び国民健康保険中央会におけるビッグデータ活用推進において、今後、データプラットフォームの構築やその活用方策について、業務運営体制や費用負担なども踏まえながら、厚生労働省も関与の上、具体的な工程表について平成29年春を目処に基本方針を取りまとめるべきである。

○支払基金と国民健康保険中央会及び厚生労働省が中心となり作成する以上の工程表の内容については、確実に改革が実施していけるよう本検討会においてもフォローアップしていくこととする。

○なお、支払基金において、第2回検討会に提出した自らの改革案は、こうした検討会の考えに沿っていると思われることから、まずは本報告書の内容について、速やかに改善の取組みを行っていくこととする。

○また、工程表の内容も踏まえ、平成29年夏を目処に、規制改革会議を始めとして、政府の方針において方向性を示し、平成30年通常国会において社会保険診療報酬支払基金法等について改革の内容に沿った法整備を行うべきである。

 以上です。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 時間の関係がありますので、続いて林構成員から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○林構成員 「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会における議論の整理に関する意見」、これは構成員である私個人の意見として本日述べさせていただきます。基本的には読み上げさせていただきます。

 平成28年6月2日閣議決定の規制改革実施計画におきましては「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保」については3つの事項がありますが、そのうちの3つ目「組織体制の在り方の見直し」、これも結論として求めております。

 具体的には「a 現行の支払基金の各業務(特に、職員による点検業務及び説明・指導)のうち、不要・非効率な業務を削減すること」「b 保険者が支払基金以外の者(民間企業を含む)を活用することが適切な業務について活用の仕組みを構築すること」「c 支払基金が担うことが適切な業務がある場合には、その具体的な組織・体制等の在り方(業務拠点も含めた職員及びシステムなどの体制、業務範囲、法人形態、ガバナンス体制、事務費負担の在り方、法規制の在り方等)を検討すること」、以上を求め、平成28年内に結論を得次第、速やかに措置することとしております。

 本検討会における議論の整理は、以上の閣議決定事項に応えるべきものでありますので、以下の事項に留意して取りまとめることが必要と考えております。

 1、支払基金の審査支払いに係る年間830億円近い費用には、医師による審査委員会の費用のみならず、職員による点検業務にかかわる人件費、建物・設備、コンピュータシステム維持費などが含まれています。現在は、戦後間もない昭和23年に制定された支払基金法26条の解釈によりまして、審査支払業務に係る費用全体をレセプト枚数で割ったものを審査手数料として保険者が負担する仕組みになっておりますが、今後は、審査業務の効率化や支払基金の行う業務範囲の変化に伴い、審査手数料の設定のあり方を抜本的に見直し、国民の負担を全体として軽減すべきものであります。

 そもそも、保険者と支払基金は民民の業務委託関係にある以上、その委託の手数料は、保険者が支払基金に委託する業務の範囲、例えば、点検業務は保険者自身が行う場合もあると存じますが、そういった業務の範囲と質に応じて合理的に設定されるべきものであることは当然であると考えます。

 2、支払基金の組織・体制の見直しは、単に支部職員体制の規模縮小にとどまらず、支部の集約化を含めるべきであります。

()医療費の負担の軽減が徐々に廃止されるなど、国民皆保険制度を維持するための国民の負担増が不可避となっておりますこの現状を直視し、無駄なコストを極力削減し、負担軽減につなげられる部分は待ったなしでコストを削減することが必要であると考えられます。

()昭和23年の基金法3条1項では、従たる事務所を各都道府県に置くと定められておりますが、現在ではレセプト電子化が完了しておりますので、そもそも都道府県ごとに事務所を置く必要性はなく、審査委員会については、既に40万点以上の高額レセプトなどは本部一括一元化しており、また専門分野などの一元化についても異論はないところでございます。

 また、支部を集約化しても、支払基金に審査委員会部門を設けて都道府県ごとの審査委員会を残し、会議室等は国保の審査委員会と共用することも可能でありますので、ここは危機感を共有し、柔軟に組織を見直すことが肝要であると存じます。

()支部集約化の方針は、本検討会の開始時点、平成28年5月23日の第2回、資料3-1、3-2におきまして、支払基金が自己改革提案として示されたものであり、本検討会においては大きな既定方針として多数の構成員の賛同を得ているものと思料いたします。本検討会の議論の整理に当たり、開始時点より議論が後退することはあってはならない、認められないことだと存じます。

()したがって、審査業務の効率化を前提とし、支部のブロック化なども含め、支払基金の事務所の集約化・一元化に向けて、組織・体制のあり方を抜本的に見直すことをこの議論の整理において明記すべきであると存じます。

 3、支払基金の組織のガバナンス強化に関しては、支払基金内のガバナンス強化のみならず、さらに厚生労働省や保険者などによる支払基金に対するガバナンス機能の強化、支払基金の効率化指標の設定や情報公開など、「診療報酬の審査と効率化と統一性の確保」に関する一連の業務についてPDCAサイクルが持続的に回る仕組みが必要であると考えております。

 本日の議論の整理が閣議決定事項違反とならないよう、以上の点に御配慮の上、御検討をよろしくお願いいたします。

○西村座長 ありがとうございました。

 引き続き、金丸構成員から御意見を頂戴したいと思います。

○金丸構成員 どうもありがとうございます。きょうは所用がありまして、早く退席するものですから、一番最初に意見を述べさせていただきます。

 今、林構成員がおっしゃられたとおりでございまして、規制改革会議及び閣議決定された内容について、それらと整合性がないものとしてまとまることがないようにぜひお願いしたいと思っています。

 この整理()はよくおまとめいただいたとは思っているのですけれども、この整理()の中で、業務の効率化あるいは審査基準の統一化を実現しようと思ったときに、次期システムのできばえが物すごく重要になるわけです。文章もそういうふうに書いてあるのですけれども、そもそも規制改革会議の中で支払基金に対する問題意識を強く有したのは、規制改革会議にお呼びしたときの支払基金の皆様の御説明を聞く限りにおいては、将来の支払基金の機能をちゃんと果たしていただけそうもなかったというのが原点でございます。そういう意味では、業務の効率化でありますとか、組織のゼロベースの見直しということにつながったのだと思っています。

 例えば、3ページの()のシステムに関するところですけれども、「コストパフォーマンスが高く最適なアーキテクチャによる」云々がありまして、あたかも支払基金の中に専門のCIOICTの専門家によるタスクフォースが設置されさえすれば、支払基金が引き続き将来にわたって、今お願いしているような機能を担える組織になれるかのごとく読み取れるのですが、こういう人たちを数名配備しただけで本当に今の支払基金の皆様が将来ビッグデータの時代も含めた次世代対応ができる組織になるのかどうかについてはまだ大いに疑問を持っております。

 逆に申し上げますと、今回、例えば刷新計画をとめて、新たな刷新計画をつくるわけですから、その刷新計画のできばえが評価たり得なかったら、民間の代替の機関があれば、そういう方々にアウトソースする可能性というのも逆にいうと大きくなるのではないか。それぐらいの危機感を持ってこのシステムの新しい刷新計画もつくっていただきたいし、そういうシステムの刷新計画を踏まえて、今度は業務効率に関するいろんな工程表が今から厚労省で作成されて登場しますけれども、このシステムの刷新計画と厚労省で作成される工程表は、ある意味で表裏一体だと思いますので、この双方のできばえいかんによっては、また新たにゼロベースの見直しの会議がすぐさま発足しないといけないとも限らないので、相当危機感を持って、今まで我々が議論してきたことの中のキーワードを羅列しただけで従来の路線からそれほど変わらない結果にならないようにぜひしていただきたいと思います。

 以上でございます。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 この後、今の金丸構成員の意見も含めて議論いただきたいわけでございますが、大部にわたりますので、今の金丸構成員の議論は、整理()の「5.支払基金の組織・体制の在り方について」というところで皆さんと御意見を交わしていただきたいと思っております。

 そこで、この後の進め方でございますが、「1.はじめに」、それから「2.本検討会における検討事項」がございますが、ここの議論は、3以降の議論をやりながら個別に御意見を伺うということにしたい、そうしないと最後まで行かないと思いますので、この後は3から議論をスタートさせていただきたいと思います。

○松原構成員 座長、申しわけありませんけれども、林構成員の意見は多岐にわたっていまして、一個ずつで議論できませんから、林構成員の出された資料について少し意見を述べたいと思います。金丸構成員の分は5のところに集約できると思います。

 先ほど提出された資料ですけれども、議論の内容をよくわかっておられるとは思います。また、1ページ目の1のところ、年間830億円に近い費用について、私どもも努力し、また、今回の一番大きな業績は、新しいシステムをつくる上でいろんな不備があったということが明らかとなり、それを一括して、ITに詳しい人の手も入ってやり直すことが進められるという決定になったことは大変によいことだと思います。

 また、830億円近い費用でございますけれども、こういったものについて少しでも減らす、審査の効率化をするのに、例えばプログラムを公開して、それを十分吟味しながら、変なケアレスミスがないように、最終的にはそこのところを修正して互いに手がかからなくていいように、さらにいえば付箋を剥がしたりする無用なことをしなくてもいいようにできるということは大きな進歩だと私も思っております。

 ただ、業務の範囲内については、やはり合理的に設定されるべきでありまして、審査手数料については、恐らくこのシステムを新たに導入することによって大分減るように私は思います。これは大変大きな業績であります。しかし、合理的というところに、前回から申し上げていますように、地方によっていろいろと差異がある。医療というのは、例えば国民が全く同一の医療を受けるというのはまず無理であります。北海道と東京は絶対に医療の状況が違いますから、同じ医療は北海道の方が東京に引っ越してくれば受けられますけれども、北海道で東京と全て同じ医療をするというのは、よほどお金があっても無理な話であります。つまり、そういったいろんなことを踏まえた上で合理的な状況ができているということを御理解賜らねばならないということです。

 2の()のレセプトの電子化ですが、電子化されたから事務所を置く必要がないというのはちょっと論理の飛躍ではないかと思います。電子化して効率化することは大切なことですけれども、その点において各地方に合わせて審査を行う、また、それを手伝うという仕組みを残していただかなければ、私ども医療機関としては、支払基金を十分に信用して、尊重して、この仕事をお任せしているわけですから、そういったことができなくなることについては断固反対いたします。

 審査委員会だけが残っても、審査委員会と一緒にいろいろなことを助けてくださっている職員の方々がいらっしゃるわけですから、その方々の助けをかりながら審査していくからこそ短時間で効率的に審査ができるのであって、そこのところの仕組みを壊されるということは、私は反対であります。

 再審査の場合には、また地域がわかっている同じ審査委員会に戻ってくる話でありますし、入り口がどこにあるかというのは大変重要な問題でありますので、そこのところを御理解賜りたいと思います。

()に、既定の方針として基金が出したから後退することは認められないと書いてありますが、最初に基金が出された案のところで、十分なものではないと何度も申しましたように、これは基金がいわれてつくられたものでしょうけれども、このようなことをしたら基金自体が医療機関から信頼を失います。そのようなことのないようにやっていただきたいと申したところであります。

 さらに、3のところは極めて正しいと思います。支払基金内のガバナンスのみならず、厚生労働省、保険者、さらに私どももお金は出していませんけれども、審査する人材を非常にコストを安く出しているという事実があって、三者でやっている仕事であります。その中で、基金が信頼を失うことのないように適切に仕事をしていただくことが大事であって、信頼を失ったら医療機関はそこに出せなくなります。そのところを考えていただきたい。ただ単純に請求書を送って、それを審査して払いますという機関ではなく、信頼をもとにして互いがやっている機関であることを御理解賜りたいと思います。

 政府は、おのおのの地方を大切にするという国の政策を出しています。一つの地方だけが入り口がなくなるようなことがあれば、大切にしているとは思えません。つまり、このこと自体、国の政策に反したことであります。

 さらに、戻りますと、閣議決定をされたaの条項、これはまさに私ども今回の努力で行うことができたわけであります。bの条項につきましては、レセプトがオンラインができなくて突合できなかったときの仕組みであって、この仕組みは実際には活用されていません。cについては、最後のところをよく読んでいただければわかりますように「検討すること」とあります。こうしなければならないではありません。私どもここで十分に検討したわけでありますから、閣議決定には十分に従って、その結論として今回の回答を出したいと思っております。

 一方的に、一つの意見があった、それだけ書けというのは、私は反対であります。私どもは、あくまで基金の制度につきましては、今まで申したように、入り口についてはきちっと温存していただいて、医療機関が信用できる仕組みをそのまま構築していただきたいと思うところであります。それが本来の検討した結果であり、検討したわけでありますから、これは閣議決定に反することではありません。そこのところを十分に理解していただいて、ここまでよくできたものを信頼関係を壊してしまったら、1も2もできなくなります。そこのところを御理解いただいて十分に判断していただきたい。もしそのような意見を書くのであれば、私どもがいっている反対意見もきちっと併記していただかなければならない、それが検討であります。

 以上です。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 では、山口構成員。

○山口構成員 私も、支部のあり方について御意見申し上げたいと思います。

 まず、支部の業務の一部について、それを集約化していくことについて反論することはないのですけれども、支部そのものを集約化するということに賛成した覚えもございません。

 前回も意見を述べましたけれども、審査は、地域の患者さんの実態把握であるとか、医療機関との継続的な、きめ細やかなやりとりがあって、結果として精度の高い、いいかえれば質の高い審査が可能になっているので、こうしたことを円滑に行うためには、地域で診療している先生方の顔が見えることが非常に重要だと考えています。効率化は大賛成なのですけれども、効率化によって、国民への適切な医療提供にも影響を与える審査の質が低下することは許されないことだと考えています。むしろ審査の質の維持向上のために効率化であるべきだという視点も外してはいけないだろうと考えています。

 また、こうしたことを含めまして、限られた期間で審査を効率的かつ適切に行うためには、職員の審査事務共助、それから審査委員への情報提供、医療機関への情報提供や調整など、サポートが非常に重要で、審査委員と職員が一丸となってこういった審査を支えている現場があるということです。当然、審査委員会をサポートする職員も、地域性であるとか、専門的な知識が必要で、職員の審査事務向上のために、地域医療を把握している審査委員が直接的に指導、育成していくことも必要だろうと考えています。

 今いったようなことを踏まえますと、支部は、審査における地域の顔が見える関係の拠点でありまして、地域の情報共有の場となっていること、少なくとも当面は審査委員会が47都道府県に残ること、そして審査委員会が支部の中核機能であることから、支部についても各都道府県に残すべきだと考えております。

 以上です。

○西村座長 ありがとうございました。

○森構成員 関連で、済みません。

○西村座長 では、よろしく、森構成員。

○森構成員 支部の集約化で、今、2人の先生からありましたけれども、職員のサポートという話があったと思います。審査の1カ月の限られた期間の中で、例えば審査だけでなくて、薬局に対して電話で照会があったり、レセプトの返戻があったり、ルールの理解が不足していると思われるときには文書のやりとり、さまざまなことが行われています。そうしたことを効率的、効果的にやる上で、職員のサポートというのは非常に重要になってきていると思っています。そうしたことを行う場が支部だという理解になってきますので、ぜひ支部に関しては残していただけるようにお願いしたいと思っております。

 以上です。

○西村座長 では、宮田構成員。

○宮田構成員 宮田です。

 支部を残すか残さないかというところは、先ほども少しあったのですが、どういう業務をこれからやっていくか、支払基金全体として何を実現するかにもよるとは思います。そのときに、林構成員から出た3番、今回の改革案全体を、金丸構成員からも出ていますが、これが一回で一気に改善するということはまずないので、こういったものを継続的に見直す。この報告書の中では、個別の業務のPDCAは書かれているのですが、支払基金の業務全体の進捗を管理していく、代替的な組織という可能性も含めての評価、PDCAの体制ということは書かれてはいないので、これについてはやはり必要だろうと思います。その中で、例えば審査に関しては一元化していって集約化できる可能性がある一方で、より使えるデータにするためにデータの質の評価というのが今後必要になってきます。そのときに、より近くにある支部がもしかしたら活用できるかもしれない。あるべき業務、何を実現するかの中で、集約化も一つの方向性であると思うのですけれども、検討していくという意味でこの3番はすごく重要と思いました。

○西村座長 ありがとうございます。

 皆さん御意見あろうかと思いますが、できましたら、冒頭に提案しようとした分類で議論を進めたいと思います。

 「1.はじめに」と「2.本検討会における検討事項」については、それを独立に捉えて議論はしない。今、3番と5番が絡んでいると思いますが、「3.審査業務の効率化・審査基準の統一化について」というさっきの論点整理をごらんいただきながら、まず議論いただいて、その後「4.ビッグデータ活用について」、そして「5.支払基金の組織・体制の在り方について」、最後に「6.今後の対応について」、こういう順番でこの後、御意見を伺いたいと思います。今のお話にあったように、3番と5番がもちろん密接に絡んでおりますが、やはり3番を議論しないと5番の話は進まないと思いますので、そういう順番で御意見を頂戴したいと思います。そういうことで御協力をお願いしたいと思います。

 金丸構成員、どうぞ。

○金丸構成員 いよいよ退席しなければいけなくなってしまいました。

 今、林構成員のペーパーを契機に、3人の委員の方々から支部は残すべきだという話がいきなり出てきました。業務の見直しあるいはシステムの刷新をしようとしているときに、支部は残すべきだという話がもし前提になれば、この会議は失敗だったと思います。

 なぜかといいますと、参考資料の10ページ、白丸の一番下に私の意見が記載されていると思います。どんなシステムができるか、どんな仕組みにするか、あるいは業務の効率化にプライオリティー、優先順位を持ってきて、それを検討した上で最適な組織のあり方はどうあるべきかというのが王道だと思うのです。最初に、今あるものを残しましょうという話になってしまうと、それこそゼロベースの見直しではなかったということになりますので、今まで何回もやってきた議論は何のためにやってきたのかと思います。それだけちょっと申し上げておきたいと思います。

○西村座長 では、松原構成員。

○松原構成員 これだけ議論して、そしていろんなディフェクトがわかって、それを修正したことは全く意味がなかったといったら、何をやっても意味がないのではないですか。

 ゼロベースとおっしゃったところは、ゼロベースで考えながら最終的に議論した結果、やはりこれは形として残すべきだということを今、私は申し上げたので、そういった議論がなくて、最初から残すものありきといっていたわけではございません。皆さんの御意見を聞きながら十分に議論して、やはりこれからもう一つ大事なビッグデータの活用をするためにも、こういった仕組みがあって、そこで個人情報さえきちっと外せば、データを十分に検討して、さらによい医療ができる。その仕組みのためにも要るのであり、また、地域においてどこに入り口があるのかわからない、隣の県にあるといったらそれはやはりその県の方はなかなかつらい、そういったことも含めて、さらによいものをつくるための話をしているのであって、これで全く意味がないということとする事については、私は反対であります。

○西村座長 もう一回、金丸構成員、どうぞ。

○金丸構成員 私は、支部はどうあるべきかというのはまだわからないのです。お三方がおっしゃった支部があるべきだというロジックは理解できませんでした。業務の効率化をどうやっていくか、今まで手でやってきたことを今度新しいシステムをつくって、もっと効率化しようといっているわけですね。松原先生のお話ですと、過去、審査委員のなり手がいなくて、モラルの高い方々が献身的にサポートしていただけるというようなお話でしたので、審査委員の負荷も一気に軽減できれば、しかもそれが科目ごとに専門性の高い低いがあって、先ほど松原先生が北海道と東京の話を出されて、ちょっとショックでした。我々国民は、地域が離れても同等レベル以上の医療は受けられるという前提で過ごしていますので、あたかも東京だけがレベルが高いというようなお話をされるのは、大阪出身の森下先生もいらっしゃるので、ちょっとどうかなと思いました。

 要するに、私が申し上げたいことは、今、組織の見直し、ここをどれぐらいの規模でどう残すかというのはまだこれからの話で、システムの刷新計画も、それから厚労省の皆さんが考えられる業務の効率化の工程表もこれから出てくるわけです。だけど、それよりも前に支部があるべきだという話のロジックについては、私は理解できません。

○西村座長 金丸構成員、さっきの参考資料の10ページで今のお話の核になる表現はどこになりますか。

○金丸構成員 プライオリティーというか、流れがありますね。業務の効率化を議論して、システムの刷新計画ができますね。できたら、それを運用するわけですから、今度は審査委員の方々がどんな負荷になるのか。その人たちは、全国に今いらっしゃる人たちよりも人数は減るかもしれません。あるいは減らなければ新システムの目的たり得ないわけでしょうから、そうすると事務の負荷も減る。そのときに支部という名前とか、そこにどんな人たちがどんなふうにいるべきかというのは議論があっていいと思います。それはその後の話でしょうというのが私のいいたいことです。

○西村座長 では、森下構成員。

○森下構成員 今の点に関しては、支部という名称だったり形というのが重要ではないというのは金丸委員のいうとおりだと思うのです。一番重要なことは、先ほどお話が出ましたように、審査の質を担保する、これが絶対重要な条件だろうと思います。かつ、できるだけ合理化していただく必要がある。ですから、必要最低限の業務というのがやはり決まる必要がある。その中で、では何を支部としてやるべきなのか、支部という名称がいいかどうかは別にして、そこが決まらないとどういうことをやるのか決まらないのではないか。

 もう一点は、ビッグデータとして今後このレセプトデータをどう活用するのか、これは中央で全部やるのか、それとも各都道府県での医療計画に生かすという意味で、支部という、ブロックで何か必要なのか、ここもまだ議論が済んでいないのですね。そういう意味では、そういうことも全部議論が進んでいった上で、では果たしてどういう機能が都道府県に要るのか、それに支部という名称がふさわしいのか、あるいは名前が変わるのかわかりませんが、何らかのものが要るというのは間違いないだろうと思います。そこの議論が進まないと、今の時点でありなしという議論をするのはちょっと早いのではないか。

 そういう意味では、現時点でできること、すべきことを明確にすべきだと思います。その上で、では最終的にどうするのか、かつ、それはあくまでも当面の話であって、ここから先、5年、10年したときずっとそれが生きるというのもなかなかこれは難しいだろうと思います。

 一番重要なのは、都道府県の単位として一体何の機能を持たせるべきか、実はここはまだ議論をしていないというか、この検討会でもできなかったと思います。これはやはりちゃんとしないといけない。置くべきものあるいは持つべきものがわからないのに、人員が何人必要かというのはわかってきませんので、そういう意味では、こうあるべきだという形の議論から入るというのはどうかなと思います。むしろ機能として何を持たせるかという議論をやはりすべきだろうと思います。

○西村座長 松原構成員。

○松原構成員 そういったことを議論して、実行して、その上で、やはり要らないのだとおっしゃるのならともかく、最初からなくていいのだという話をされるから、そうではないですよと。これだけいろいろな改革をやろうということをいって、それをやっている。支部を変えるというのは法律を変えなければいけません。まず、ここまできちっとやってみる。それからまた考えてもなら、理解できますが、最初から全部なくしてというところから全て考えるというのではなく、私どもは、今回いろんな議論をしたことをまずやりましょうといっていると御理解ください。

○森下構成員 そこのところは一緒なのです。あくまでも先ほどの話は、林先生も御自分でいいましたけれども、林先生の御意見であって、ここから先の話は、閣議決定の内容をしっかり守っていただきながら、やはりどういうものが必要かという議論をしていくべきだろうと思います。ただ、その結果として名前が大事だという話になるのなら、これは納得がいかない話だと思いますので、まずは議論をしていくというのが優先だと思います。

○松原構成員 私は名前が大事だといっているのではなくて、やはり各県に仕組みが要る。例えば、ある県と別の県が統合されて一つになったら、当然一つになるべきで、その県においてそこで医療をしている医者たちがどこにアクセスしていいか、これがわからなければ信用ができなくなるから、きちっとしていただきたいと何度も申し上げているところであります。

○森下構成員 今までの御議論を踏まえて、多分、事務局が上手に整理できると思いますが、仕組みが要らないとは私はいっていませんで、どういう仕組みが要るか検討すべきだという話です。

○西村座長 佐藤構成員。

○佐藤構成員 両方、前提条件が違っていて、一方で、支部の存続を前提に議論するのはけしからんという議論と、支部の廃止を前提にして議論するのはけしからんという議論があって、実はどちらも前提にしていないというのが答えです。きょうは、論点整理をまとめる場ですので、本来これに即さなければだめなのです。今、3の話をしているはずがいつの間にか5になっているのだと思います。

 9ページの5のところで、支部については規模は最小限にとどめる。他方、これは意見があったというだけですけれども、支部についてもブロック化する意見もあったということなので、ファクトとしては、全体としてはスリム化を進めるという話なのだと思います。ゼロになるかどうなるかは知らない、スリム化の程度はこれからだということと、それから、皆さんは支部の話ばかりしていますけれども、重要なのは本部でありまして、本来、今回の改革の肝は、10ページに書いてあるとおり、本部が支部の判断に対して適切なガバナンスを効かせるということ、これは審査の統一化において肝ということ。

 もう一つは、12ページのところで人員にかかわる部分だと思うのですけれども、今以上に肥大化しないように人員については「本部において戦略的かつ計画的に行っていく」なので、これからの議論は、むしろ本部に、よりガバナンスを効かせていく、結果として本部が、支部が必要だと判断すれば、それはそれです。本部が、支部は要らないといえば、それもそれです。重要なことは、本部が支部に対してガバナンスを効かせる。これが前提でないと、何か戦国時代みたいに群雄割拠で弱い幕府が一つあるという話になりますので、そんな話をしたいわけではないということなのだと思います。

○西村座長 今の御意見はよくわかりますが、読んだらそういう御意見が書いてあると私は理解しました。文言について、ここをもうちょっとこういう表現に強めるほうがいい、あるいはこれは強過ぎる、そういう議論をやるほうがこの後、生産的ではないかと思います。

 さっきの御議論は、大変建設的な御議論でよかったと思いますが、この後もぜひそういう方向でよろしくお願いします。

 では、森下構成員。

○森下構成員 文言修正の話をしたいと思います。6ページの丸の2つ目ですけれども、「関係者の意見を聞きながら」となっています。コンピュータチェックに適したレセプト形式に対しまして、ぜひICD10の病名コードを採用するなどといったような言葉を入れていただいて、個別の病名を使いたいという先生がいらっしゃるのであれば構わないと思うのですが、一方で、データベースを整理するのであれば、基本的にはそうした世界的な統一ルールに沿っていったほうがいいだろうと、それでかなりの部分が合理化できると思いますので、ぜひそういう修文をしなければと思います。

○松原構成員 賛成です。

○西村座長 葛西構成員、よろしくお願いします。

○葛西構成員 今のは私もそう思います。ちょっと関係ない話になってしまうかもしれませんが、この手の議論をして次のステップはどうなるかということを想定すると、恐らく業務改善、業務効率化という言葉が出てまいります。そうすると大抵、どこぞのコンサルティングファームあたりに頼んでワークフロー図を描いて、どこの業務が無駄かみたいな可視化という作業をしますね。それと同時に、システム開発をする側のベンダーさんは、業務効率化のためのビジネスプロセスを修正して、仕様凍結して、仕様が固まったらシステム開発の見積もりを始めるというふうに段階的に進みます。

 そこに至る過程で、政府の場合、業務プロセスを全部可視化しようとするととんでもない時間がかかります。多分、支払基金においてもそうですし、これを全部可視化していって、可視化しているうちに何をやるのだったかわからなくなってしまうといっているうちに、システム開発のほうは、要求ができないからずっとつくれないとなる。

 一つポイントとしては、5ページの()のマル1の3番目のところに「コンピュータチェックルールをベンダーが」と書かれていて「レセプトの請求前に活用できるようにすべきである」、この一言をとっても、簡単にいうと、DPCのシステムに事前にチェックする機能をつけなければいけないというだけでも数十社、私がざっと見積もっても50社以上の方々にこの内容の検討を受け入れてもらわなければいけなくなる。

 つまり、とんでもない量の仕様策定をしていかなければいけないので、仕様策定しながらビジネスプロセス効率化を同時並行でやる方策を必ず入れないと、ビジネスプロセスを考える人、効率化する人、システム開発をする人が別々に走ると思います。システム開発する人は、多分、ビジネスプロセスを考える人たちとは別に、自分の発注のある種、利益を求めるので、きっとあの人はあのベンダーとつながっている、そういう悪口をいって牽制し続けるということになって、結果、システムができ上がると全然違うものになるというのが定番パターンなのです。私も再三そういう悪口をいわれ続けました。そういうことをするのであれば、同時並行にやはり検討しなければいけないということが大事です。

 専門的にいうと、運用面だけを統合化するだけでもかなりコストが見込まれるはずなのです。私は今までそうやってきました。システムを全部縦割りにするのではなくて、システムの運用面からアプローチすればかなりコストは下がるはずなので、そういったシステム運用の見直しとか、後は同時並行に反復開発を行うというような視点が入っていないと、これ自体がビジネスプロセスをずっと考え続けて終わってしまう可能性があるということだけ注意としてお伝えしたいと思います。

○西村座長 ありがとうございます。

 今のお話は、実は厚労省にCIOをというイメージで私も感じておりまして、ぜひ今のお話を文言で表現するだけではなくて、厚労省のこういう問題に関するガバナンスをどういうふうに確保するかということもぜひお考えいただきたいと思います。

 それでは、3番、4番、5番、6番という私の提案は全く無視されておりますが、今までの議論を踏まえて、この会議は、構成員ではないのですが、参考人の方々がいろいろされるということをイメージしておりますから、参考人の方々の御意見がございましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。

 では、白川さん、よろしく。

○健保連白川副会長 私どもは途中から参加させていただいたのですが、この報告書 ()を見ると、見事に核心をついた御議論をしていただいているということで、感謝申し上げたいと思います。

 保険者からしますと、支払基金の効率化に関連して、どういう業務を担うべきかということをこれから詳しく整理していこうというお考えのようですが、その中で、審査支払機関であるにも関わらず、残念ながら支払関係については全く触れられていません。私どもが問題提起していますのは、現在、支払も各支部ごとに行っているような状態ですから、もう少し集約をしていただければ、それこそ振り込み手数料等もかかっているわけですので、この辺の観点もぜひ効率化の中でお考えいただければというふうにお願いいたします。

 あと一点、工程表に関しまして、厚生労働省と支払基金で今後、工程表等を策定していくということが書き込まれていますが、ぜひ保険者の声も聞いていただくような形でまとめていただければと要望いたします。

 以上です。

○西村座長 そうですね。保険者という文言がほとんどありませんね。

 それでは、さっき申し上げましたように、3と5が絡んでいますので、もう一回、5のところでさっきの話をやっていただいたら結構かと思います。

 ビッグデータのところについて御意見がございましたら伺いたいと思います。7ページからですね。いかがですか。どうぞ。

○佐藤構成員 これは素朴な疑問ですけれども、7ページ、8ページのデータプラットフォームについて、誰がこれを分析することを念頭に置いているのかという確認です。8ページの一番上に「プラットフォーム化した情報は、専門家による分析を行い」と書いてあります。ここでいう専門家はあくまで厚労省とか支払基金の内部の人間を指すのか、あるいは後でセキュリティーの話にも出てきますけれども、セキュリティーを確保した上で外部にも広く公開して、外部の専門家の知見も活用するということまで念頭に置いているのか、これは確認です。

○西村座長 事務局は今までの御意見を踏まえてどういうお考えですか。

○事務局 事務局でございます。

 佐藤構成員から今あった御指摘ですけれども、支払基金側とか保険者側というのもありますし、外側の専門家といったところも想定して、広く分析する側は想定しております。

 以上です。

○西村座長 では、山本構成員。

○山本(雄)構成員 私、ビッグデータワーキンググループの中にいた者なのですけれども、ビッグデータ活用のところで、おやっと思うのが、(1)にデータプラットフォームについてというのが書いてあります。もともとワーキンググループの中で議論していたときは、今からデータベースの大きいのをつくるとか、プラットフォームが云々という話ではなくて、データの活用には前段階でやらなければいけないことがあるという議論がかなり出ていたと記憶しています。

 実は3番の審査のところでも何度も出てきた話なのですけれども、そもそも支払基金の中でICT担当がちゃんとしているのかみたいな話とか、あるいは先ほど森下構成員や葛西構成員からも出ていましたように、きちんとICD10を使おう、あるいはマスター整備をしよう、仕組みの導入というのは結構ベンダーをたくさん入れる中で大変だという議論が出ているにもかかわらず、ここで急に「ビッグデータ活用」という表題の中でプラットフォームをつくるぞとなってしまうのは、ワーキンググループで話していたのとは逆方向なのではないかという気が正直しています。ここは、プラットフォームという言葉が何を指すかというところと実は関連しますので、そこの定義を書いてほしいというのが一つです。

 もう一つは、むしろ8ページの終わりから9ページの頭にかけて「ビッグデータ活用に当たって留意すべき事項」というところに書いてあるような、例えばトップダウンで構築するのは現実的ではないとか、データクリーニングや集約・交換の技術だとか、セキュリティーの確保、こうしたことこそやっていただかないと、今後、ビッグデータで産業振興等もしていかなければいけないというのが政府の意向としてある中で、これを一足飛びに、活用できる、あるいはできるようなシステムが組めるから書かれてしまうのは、我々の検討内容からすると順番がそもそも違うのではないかと思っています。

 その点で、健保連の白川様からもお話がありましたけれども、審査支払基金で支払い業務の改革についての話は余りなく、審査業務の話ではそのスリム化といっていたのに急にデータの解析みたいな業務を新たにやるというのが上乗せされている、となると唐突感が否めない、少し書きようがあるのではないかと思いますので、意見として述べさせていただきます。

○西村座長 ありがとうございました。

 今の御意見について何か反論はございますか。

○葛西構成員 今の2つの意見、トップダウンでやらないこととか留意事項については、ワーキングに出られた方は私が話していたことを御存じだと思うのですけれども、ワーキングの際にいえなかったことが一個あります。特に9ページ目の一番上のところに追加して考えなければと、ワーキングでちょっといい残していて心残りのことがあります。

 一つは、実はビッグデータのやり方で、外に使うことを前提に検討している。その外というのは何かと考えると、これは物すごく幅が広くて、例えば次世代医療ICT基盤の中で代理機関の話がまず一個あるという話とか、それから「ピープル」も名前が出ているのでいいのだと思うのですが、いわゆる医療IDの利活用の話、それから、前回もいったと思うのですけれども、総務省がやっている地域活性化と絡んだ医療の話、自治体の政策で利活用する。それに医療分野の創薬とか、製薬会社はリアルワールドデータといわれている民間のデータベースがあります。さらに、最近ですとプレシジョンメディシンみたいなゲノム解析、かなり幅広いのですね。それを特定のベンダーの特定の方が一意につくることは絶対できなくて、協和的にやらなければいけないということだけいったのです。

 それはどういう意味かというと、まず第一歩として、ネットワークだけでも相互乗り入れをするだけですごく大変なのです。単純にいうと、例えば保険者ネットワークとか、当然、自治体のLGWANを使うかどうかは別として、広域連合が持っているネットワーク、それにオンサイトセンターのNDBのネットワークがあって、民間会社が持っているデータベースがある。民間会社は企業保険を中心としたデータを取り扱っているケースが強いのです。ですから、企業保険が持っているネットワークとも相互乗り入れをしなければいけない。つまり、ネットワークの集約でも統一でも統合でもない、相互互換、相互乗り入れということを書き入れないと、ずっとセキュリティーも確保されないまま公開することは絶対あり得ないですから、そのネットワークに関することは追記していただきたい。

 もう一個、私がいい忘れたのが、統計的な部分があるので、どうしても連関表みたいなものを使うのです。連関表というのは何かというと、ワーキングの際には一部説明したと思うのですけれども、各統計情報、e-Statみたいな母数情報が全部違うので、母数情報がどこの、例えば都道府県単位のデータなのか、それとも日本国みたいな国単位なのか、市町村単位なのか、企業単位なのか、ばらばらですので、そういった意味でいうと、例えばセンサスといわれる国民統計みたいなものがありますが、ああいうものはそういった連関表を使いながら、どれともデータを取り出せるようになっています。そういった連関表に関しても検討しないとでき上がらないだろうということを追加しておきたいと思います。

○西村座長 ありがとうございました。

 今、山本構成員と葛西構成員のお話は、大変もっともと思っておりますが、もし今の話に御異論がございましたら、おっしゃっていただきたいと思います。

 私は座長なので遠慮していたのですが、アメリカの経験をこの間お話ししまして、今度、データが見える化した後、何がわかるかということは、やはりある程度慎重に議論しないと、断片的なデータが社会を行き交って、かえって医療の内容、医療の質を下げるという心配もございます。これは確実にやらないといけない話ですが、やはりちゃんと順序をしっかり、工程表をつくってということが必要かと、座長で越権でございますが、申し上げたいと思います。

 今の私の意見も含めて、そんなゆっくりはだめだろうという話があったら伺いたいと思います。

 宮田構成員、どうぞ。

○宮田構成員 補完させていただくと、山本構成員がおっしゃったように、まずやはりデータの質をよりよくして、正しい審査、支払いの質を上げていくということが大前提なので、それが先に来るべきだろうというのはそのとおりだと思います。

 ただ、データを審査に活用していくに当たっても、つながっていないという現状をどうにかしなくてはいけない。先ほど葛西構成員のほうからも出たのですけれども、「ピープル」というのは、森田構成員がこの間、座長をされて出されていましたが、こことの連携で、支払いの中で果たす役割があるだろうというところはこの前段だと思うので、この話はさせていただきましたし、私は大事だと思っています。

 ただ、それが民業を圧迫するかどうかというと、そうではなくて、国だからこそできる部分と、より保険者の立場に寄り添って、各加入者の人たちの健康を改善するというのはむしろ民間のほうでやっていくべきところなので、その共通基盤となるような質を改善しながら、データが持っているポテンシャルを高める、公共的なレイヤーの果たすべき役割をどういう形で果たしていくかというところがプラットフォームなので、順番を整理した上でぜひ位置づけていただけるといいかなと思います。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 それでは次に、5番のかなり議論がある「支払基金の組織・体制の在り方について」に移りたいと思います。

○山本(雄)構成員 済みません。先ほどいい忘れたのですが、文言の話で1点だけ。ビッグデータの8ページの()の1個目のところ、ここは記載は全く異論はなく、このとおりなのですが、一番最後のところの「働きかけについての取組みが求められている」というところに、取り組みとそれを支えるガバナンスのあり方をきちんと持たせるのだということを言葉として入れていただければというコメントで、追加でございます。

○西村座長 それでは、9ページの「5.支払基金の組織・体制の在り方について」というところでもう一回議論をしていただきたいと思います。

 林構成員。

○林構成員 私が冒頭に申し上げました個人の意見でございますけれども、これに対してまず松原構成員から反論がございました。順番にお答えしたいと思います。

 1番目に書いた点は、事務手数料を合理的に設定すべきであるということをいっているのであって、医療費の話ではございません。松原委員は医療費の点についておっしゃっていたようですので、そうではなくて。

○松原構成員 違いますよ。

○林構成員 違いますか。

○松原構成員 違います。基金の費用の話です。

○林構成員 基金のその手数料を合理的に設定すべきであるということ。これは支払い側である保険者と支払基金が民民の契約関係にある以上、その手数料は合理的に設定すべきであるという点についてどういう点で異論があるとおっしゃっているのでしょうか。

○松原構成員 合理的に設定できるべきであるという事には賛成したのです。そうしないといけない。ただし、ここにおいては、お金を払っている、もらっているだけではなくて、審査委員会で私ども医療提供側のかなりのエネルギーを使って協力しているということをお忘れなくということを申し上げたのです。

○林構成員 それはこの点を書き込むことについての反対意見ではないのですね。

○松原構成員 1番について反対しているわけではありません。これは非常に今回努力してうまくいって、大変な業績を上げたということを申し上げたと思います。先ほど金丸委員がこれでは何にもならなかったということをおっしゃったので、これだけシステムを改善するし、間違いなく業務を軽くできる方法を議論して見出したわけですから、そのことについては私ども評価したいということを申し上げたのです。

○林構成員 わかりました。

 では、まず、この第1点につきましては、私としては、3ページの下から2つ目の「なお」以下の「全体として軽減していくべきである」の次に、「そもそも、保険者と支払基金は」という以下の「業務の範囲と質に応じて、合理的に設定されるべきものである」というこの原則論を書き込みたいと希望しております。

○西村座長 もう一回、表のほうの1番の「なお」はどこにありますか。

○林構成員 3の(1)の4つ目の丸です。3ページの下から2つ目の丸です。

○西村座長 わかりました。

○林構成員 「なお、現在は」ということで「全体として軽減していくべきである」で終わっておりますが、ここに、私の本日の意見書の1ページ目の一番下の一文を追加することを御提案申し上げます。

○西村座長 一番下のどこから。

○林構成員 「そもそも、保険者と支払基金は民民の業務委託関係にある以上、その手数料は、保険者が支払基金に委託する業務の範囲(例えば、点検業務は保険者が行う場合等)と質に応じて、合理的に設定されるべきでものある」。

 続けさせてください。2番目の点でございます。本日の取りまとめ案でいきますと、9ページの「5.支払基金の組織・体制の在り方について」というタイトルなのに、()は、いきなり「支部における職員体制について」の話に矮小化されているように存じます。支部体制についてということで支部のあり方自体もここで論じられているべきだと思います。その中で、先ほど松原委員、山口委員、森委員の御三名から、医師会の先生方だと存じますけれども、支部を残すべきであるという御意見がありました。支部を残すべきであるという御意見の趣旨としては、支部、つまり現在、都道府県ごとに支部の下にある審査委員会を残すべきであるということ、それから、審査委員会が機能するように審査委員会をサポートする職員を残してほしい、そういう御趣旨ではないかと思うのですが、違いますか。

○松原構成員 違います。それを含めて、この仕組みのきちっとした組織がなければ十分なことができないので、それを残すべきだと申し上げたので、審査委員会だけ残せばいいと申し上げているのではありません。

○林構成員 では、きちっとしたとか、顔が見えるとか、そういう言葉ではなく、どのような業務が支部という立場で必要なのか、どうお考えなのでしょうか。

○松原構成員 十分な審査ができるためのサポートする職員と組織が残らなければ、例えば医療機関はどこに文句をいっていいのかわからなくなります。さらに、隣の県に支部を持っていけといわれますと、隣の県へ行かなければならないので、入り口をきちっと残していただきたいということを申し上げているのと同時に、支部は支部なりの仕事をしている、そしてその中で、今回、業務をきちっとしなければいけなかったのは、審査の中でのコンピューターのあり方をもう一回見直そうということで話をしたわけで、支部をなくせば全てがうまくいくということについては、私はそうは思わないと申しているわけであります。

○林構成員 私どもの規制改革会議の閣議決定事項の2番目は、ICTを最大限効率的に利用した上で、現在の業務のあり方を見直すということを出発点としており、その点についてこの検討会では議論していただいたと思います。基準の一元化に向けてこれが進むということになれば、なぜ支部ごとに職員による点検事務が必要なのでしょうか。

○松原構成員 もともと一元化が必要であると私ども申しておりません。このプログラム自体が十分なものではないので、それを公開してきちっとしましょう、それをつくるにおいて、一カ所でおつくりになるということも一つの方法だということに同意しているので、全て一元化してHIRAのようにするということについては、私は何度も反対しております。

○林構成員 松原先生の御意見は御意見として承りましたけれども、それが結論として正しいものであるかどうかは別だと思います。

 もう一点だけいわせてください。先ほど支部が必要であることの理由の一つとして、支部の審査委員会に再審査も来るからというお言葉がありました。しかし、それ自体は実は再審査のあり方としては望ましいものではありません。一旦自分が審査したものを同じ審査委員会で再審査するというのはナンセンスだと思いますので、それは支部が必要であることの理由にはなっていないと思います。

 したがいまして、結論ですが、9ページの5の()のタイトル自体、本来は「支部の在り方について」としていただきたいところですが、百歩譲ってタイトルはこのままとしたとしましても、()の下から2つ目の丸の「まず、支部の職員体制については」という文章の次に「これに対し(中略)との意見があった」という2行が書かれておりますが、私としては、ここは「さらに」としていただき、「審査業務の効率化を前提として、支部のブロック化なども含め、支払基金の事務所の集約化・一元化に向けて、組織・体制の在り方を抜本的に見直していくべきとの意見があった」と、せめて両論併記するのであればそういった形にしていただきたいと思います。

 この趣旨は、830億円のこの国民の負担をいかに効率化していくか、負担減していくかという危機感を医師会にも共有していただきたいということでございます。

○西村座長 今の話で、集約化までは多分、御異論はないと思うのですが、最後におっしゃった一元化に向けてというのが、もし主張されるのであれば両論併記にならざるを得ないかなと、お二人の意見を伺って思います。

○松原構成員 簡単に集約したり一元化するのは、地区地区のあり方が違いますので、なかなか難しいということを私は何度も申しました。

 それから、830億円のことにつきましては、私どももそれを感じているから、なるべく費用がかからないようにということで協力していろんなことを議論しているわけでありますので、そこのところは御理解賜りたいと思います。

○西村座長 そういうことで、一元化まではどうしても両論併記にならざるを得ない。ただ、松原構成員、集約化ということも反対でいらっしゃいますか。

○松原構成員 県からなくなるということは、それなりに大きな重みがございます。隣の県に行って手続をしなければならないということであります。そういうことも含めて、非常によくやっている上に、さらに何度も申しますけれども、いろんなことをやっているところは顔が見えて、医療機関がどんな医療機関か互いにわかっているから、適切な形になっている非常にいいシステムを壊すのはいかがなものかと何度も申し上げているところであります。

○林構成員 済みません。隣の県に行って手続をしなければいけないというのはどういう意味ですか。

○松原構成員 その入り口自体が別の県に統合したりされたり、例えば一つのブロックの中で統合されますと、結局そこのところとやりとりをしなければならなくなります。現在のところは、支部と議論をすれば、そのことに対しての回答はすぐ出てまいります。それも含めて、医療機関として住民の方々に適切にいい医療ができるための仕組みであるから、その県においての事務所は残していただきたいと何度も申し上げているわけです。

○林構成員 本当は審査委員会も集約化すべきだと思いますけれども、私の意見書では、2の()の「また」以下で、支部の組織の集約化の話と審査委員会の置き方というのは区別して考えることも可能だということをお話ししております。支払基金に審査委員会部門を設けて、松原先生御希望の都道府県ごとの審査委員会を残せば、隣の県にドクターが行く必要はないわけです。ですから、そういったことも含めて、無駄は極力削減するという危機感を持っていただきたいと医師会にお願いしておきます。

○松原構成員 無駄だと私ども思っておりません。これは全く考え方が違います。

○林構成員 支部が残れば、建物を持ち、維持コストはかかるわけですよ。

○西村座長 今の議論はちょっと不毛な方向に行きそうな気配がありますので、大変恐縮ですが、一つは、林構成員がおっしゃった支部における職員体制というところは、職員体制だけではなくて、支部の体制についてというふうにする。

 9ページの下から2番目の丸のところですが、「さらに」以下の話は、もちろん両論併記もありますし、実は冒頭この御意見を伺ったときに、金丸構成員あるいは森下構成員が、中身の業務をどういうふうにするかはっきりしないうちに支部が要るか要らないかという議論をしても仕方がないというふうにおっしゃったので、職員の体制とか、事務所を一元化するとか、そういう議論ではなくて、今おっしゃったように、全体のあり方の集約化に向けて、しかも一元化という文言は削除して、集約化が可能かどうかを検討するということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

○松原構成員 何度も申します。これをきちっと残さないと、今回の目的の、データをきれいなものにしたり、あるいは正しいものにしたり分析したりすることがまず無理だと思うので、ここのところは、今までのやり方を全て取っ払うありきではなくて、残しながら、これだけ改革したものをやってみるというのがまずやるべきことだと思います。かなりの大きな改革を今回議論したわけであります。それをまずやることが大事なのではないでしょうか。

○林構成員 最低限、両論併記をお願いしたいと思います。

○西村座長 わかりました。では、今の箇所はそういうことでよろしくお願いします。

 あと、わずかの時間になりました。最後の「6.今後の対応について」というところも結構重要な箇所でございます。もちろん、5番に触れていただいても結構ですが、「6.今後の対応について」は、恐らく構成員の皆さんの御意見を踏まえて、かなり具体的な書きぶりになっているように理解しておりますが、12ページ、いかがでしょうか。

○林構成員 12ページの「6.今後の対応について」の直前のところに、できれば、皆様も御異論がなかったと思うので、私の意見で3に書きましたものを「さらに」として入れていただければと思います。「さらに、厚生労働省や保険者等による支払基金に対するガバナンス機能の強化、支払基金の効率化指標の設定や情報公開など、『診療報酬の審査の効率化と統一性の確保』に関する一連の業務についてPDCAサイクルが持続的に回る仕組みが必要である」という一文をこの位置に入れていただければと御提案申し上げます。

○西村座長 今の御意見は特に御異論ございませんか。

○松原構成員 私も異論はございません。きちっとやっていきたいと思っております。

○西村座長 飯塚構成員、どうぞ。

○飯塚構成員 10ページで非常に気になりますので、一言だけ。「審査の一元化について」というこのページは私は何度も読んだのですが、結局、この検討会の我々の総意は、審査は一元化すべきだという結論になっているのだと読めてしまう。私は、そういう記憶はないのです。

 最初の丸は、韓国HIRAのように全国一元化することが適切ではないかという意見があった。その次の丸は、都道府県単位で審査を行う必要があることからもそれは困難であるという意見があった。この2つは記憶しておりますが、その次の2つの丸は、丁寧に読むと、コンピュータチェックの基準の原則統一化によって、あるいは見える化によって違っているものに対して「おまえ何で違っているのだ」といって一元化していきましょうというふうに書いてある。でも、こんな議論があっただろうかと思います。

 そもそも審査の一元化は、今も支部のブロック化についてこれだけいろんな議論があるわけですので、あたかも我々が審査は本来一元化できるものだという前提で議論したかのようなものは、少なくとも真面目に参加していた者としてはそんな議論はないと思いますので、この10ページは全体としてよくお考えいただきたいと思います。

○松原構成員 賛成です。私どももそのつもりではございません。

○西村座長 では、森下構成員。

○森下構成員 その点に関しては、支部の独自ルールはできるだけやめて、あるものに関しても一回中央に戻して判定して再度やるという議論は、ついこの間、したと思いますよ。明らかに議論した後で、なかったというのはちょっと納得できないです。前回、森田先生の間でまさにそういう話をしましたし、その前からずっと出ている話がまさに書いてある内容だと思います。

○松原構成員 それでしたら、私はそのときに反論していますので、ぜひそれもお書き加えください。

○森下構成員 ルールを一旦戻してという話に関しては、先生、反論しなかったのではないですかね。

○松原構成員 そうであれば、今、明確に反論いたします。それを単純にやることにおいては私は反対であります。

○西村座長 私もこの箇所は議論したような、ただ、上のポツで、当面は困難であるという表現だったような記憶があります。

○佐藤構成員 10ページの下の3つのポツは、その前のほうのコンピュータチェックの統一化に向けてエビデンスを積み重ねていきましょうという議論の延長だったと思います。きょう、神成さんはいないですけれども、あのとき問題になったのは、支部が自分たちの独自の判断でいろんな付箋をつけている、これはどうなのだという議論があの中ではあったわけですから、それを受けての話だと思いまので、別に全く議論していなかったわけではない。

 それから、統一化しろといっているわけではなく、まずエビデンスを積み重ねて、説明のつかないものについては、これは何度もいっているとおり、とにかく見える化をして、できるだけ差異はないようにするというのが全体の流れであって、皆さん極端に物を考えているようで、一元化を好き勝手にやるという、そんな話をしているわけではなくて、今、余りにもばらばら感があって、しかも全体像が見えないから、それをちゃんと見せて、差異があれば、合理的かというのでまた議論が出るので、要するに、説明がつかないものについてはできるだけ解消していく。結果的にそれがぴたっと全国一元になるのか、どこかに差異が残るのかは、やってみなければわからないといっているだけと思います。

○西村座長 今の御意見でよろしゅうございますか。

○森田副座長 私の名前が何回か出ていて何もいわないのも失礼かと思いますので、申し上げておきます。私自身は、これまで松原先生が何回もとおっしゃる以上に何回も申し上げてまいりましたのは、5年前にこの問題を議論したときに、少なくとも被保険者の側、国民から見て、同じ保険者に対して保険料を払っていながら、同じ病気でかかったときに、地域によって治療のあり方が違うということの合理性は一体何なのか、それが問われていたわけです。それは5年前から問われていて、それぞれ地域によって事情が違うというけれども、どういう事情かという合理的な説明は私は今まで十分に聞いておりません。あるかないかは、私は医学の専門家ではございませんので、わかりませんけれども、私が東京で診察を受けたときと北海道で診察を受けたときにお薬の出方が違うとか、なぜそういうことが起こり得るかという合理的な説明をしていただきたいというのが根本だったわけです。

 それに関していいますと、ずっと議論がございました。そして、地域の信頼性の話で、それぞれ地域によって違うのだというのですけれども、患者さんの数が違うとか、病気の発生が違うというのは、今申し上げましたように、論理的に見て一人の人間に対する差異としては説明にならないと思います。

 何を申し上げたいかといいますと、この文言についてはとやかくいうつもりはございません。いろいろと意見をいえばという「意見もあった」という形でふえていく話ですので、それはそれとして記録として残していただきたいと思いますけれども、根本のところは、地域が違うのかどうかという合理的な根拠を見出すためにきちっとしたデータに基づいて検証しようというのがここで合意を得たところではないかと思っております。そのために、なかなかシステムをつくるのが難しいとか、データの質がという話があったと思いますけれども、そこで詰まっていたのではこの話は解決しない。

 裏返していいますと、先ほどから支払基金の地域の支部と、医師会なり何なりの審査される先生方との信頼関係が非常に重要だというお話がありました。これは確かにそうだと思いますけれども、今、起こっていることは何かといいますと、国民の被保険者の側が健康保険の仕組みに対して信頼感が、ちょっとこれはいい方がよくないかもしれませんけれども、失われつつあるのではないか。その意味でいいますと、今までうまくいっていた仕組みがこれからも持続するということはいえないのではないか。そこで根本的に見直そうというところからこういう話が出てきたのだと思います。

 したがいまして、地域の差異がどういうことか、それこそきちっとしたデータに基づいて合理的な差異があれば、その差異は認める。それはいいと思いますし、差異がない場合には、やはり診療報酬の形からいって同じ基準に収れんしていくのは当然のことではないかと思っております。現段階でいきなり収れんして、だから支部は要らないとか、違うから支部は要るのだという議論はいささか乱暴かなと思っています。そこはそういうふうな形で詰めていっていただきたい。

 支部については、私は、松原先生とは違う意見を持っております。というのは、顔が見えるとか、近くに行くとおっしゃいますけれども、四国4県の人口は今、横浜市と同じくらいです。さらにいいますと、その四国よりも一県である岩手県は広いのです。その5倍以上の面積を持っているのは北海道です。そういうことを考えたときに、昔この法律ができたときには、確かに物理的に情報を渡すことが非常に困難であったから、昭和23年のときには支部という単位を設けたということだと思います。今や、まさにICTの時代になったときに、その根拠、合理性はどこにあるのかということはもう一度考え直す必要があると思っております。全部、支部をなくせというつもりは決してございませんけれども、林先生のペーパーにあったのか、どこかにありましたけれども、できるだけ被保険者の負担を減らして、いわゆる手数料ではなく、本来の医療に対してお金が使えるような形にしていただきたい、そういうふうに思っております。長くなりました。

○松原構成員 済みません。お名前をいただいたので。支部をなくすことについては明瞭に反対いたします。

 それから、北海道を出したのは、大変広く大きいところであり、気候も寒く、交通網も東京に比べて違うということで出しているので、別に北海道に他意はないのですが、例えば北海道で遠くから来た方に、強い薬を出そうか弱い薬を出そうかと思ったときに、遠く離れていたら少し長目に出さなければ仕方がない。しょっちゅう来られない。そうすると、やわらかい薬を長目に出す。あるいは近くの方で何かあったらすぐその日に来られるのだったら、早くよく効く強い薬を出す、そのような状態もあります。例えば、どこにいるから全部同じということではなくて、いろいろなことを勘案して、気候、交通網、その方の性質、収入、いろんなことを考えた上で私どもは処方したり治療したりしているということを御理解いただきたいです。

 それから、同じ保険でと、同一人物が両方の保険を持つことはありませんので、退職して家にいて国保に移るということはあっても、同時に国保と社保に両方入る法律はありませんので、こんなことをいったら失礼かもしれませんが、ないことを議論するというのは意味がないのではないかと私は思っております。

○西村座長 松原構成員、今の延長戦は、この会議が終了後、また新たなこういう会議で議論をぜひやっていただきたいと思います。私もどっちかというと森田委員に反論したいことがあるのですが、ここでは座長で、審議官に叱られますので、これ以上申しません。

 時間が来ました。最後は、参考人の皆さんから何かこれだけはいっておきたいという話を伺って、この会議を終了したいと思いますので、いかがでしょうか。

○日本病院会大道副会長 初めて発言する機会をいただきまして、ありがとうございます。

 2分ほどしゃべらせていただきたいと思います。かつてレセプトの伝送が始まって2~3年たったころだと思うのですけれども、我々病院団体から基金に対して2つのお願いをいたしました。

 一つが、我々はレセプトという請求明細書を送っているのだから、支払明細書を下さいということです。これは数カ月で実現しました。今や、支払明細書を我々がエクセルでも何でも落とせるようになっていますので、病院としては初めてコンピューター上で請求と入金の個々の突合ができるようになっている。こんな企業はないと思うのですけれども、初めて病院が普通の企業にやっとなった瞬間でした。

 それから、もう一つお願いしたのが、我々これだけレセプトの伝送に協力しているのだから、事務もかなり軽減し、何よりも時間も短くなったということで、支払いを早くしてくださいということです。私は、1カ月早くしてくれといったのですけれども、さすがにそれはちょっと勘弁してくれということで、数日早くなりました。たかが数日ですけれども、実は病院の給料の支払日までに入金されることになったわけです。これでどれだけの病院が助かったか、想像にかたくない話です。

 今回、こういう話が出てまいりました。レセプトのコンピューターによるチェックを一次チェック、審査委員によるチェックを二次チェックと仮定すれば、一次チェックを医療機関で前もって行うことができる。これは我々にとって夢のような話です。これによって、我々医療機関、病院自身の経費の削減にも相当なるはずですし、何より、もっとスピーディーにレセプト業務ができるわけです。そのことによって一次審査抜きですぐ二次審査になるとなれば、基金のほうも相当な経費ダウンになるのだろう、両方、ウイン・ウインになるのだろうということで、今後に対して我々は非常に期待しているところです。どうぞよろしくお願いします。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 どうぞ。

○支払基金伊藤理事長 先ほど健保連の白川副会長さんからお話をいただきましたが、支払業務に関しましては、既に本部に一元化しており、手数料を含めて、効率化を図っている段階でございます。

○西村座長 今、理事長がおっしゃったので一つ気になっていることがございまして、実は前回、飯塚構成員から基金のガバナンスについて御提案がございました。ただ、これは公益代表の役員の選定についてという、やや特定のテーマで、この会議にはなじまないというふうに判断して、議論の俎上にのせませんでした。基金の理事長さんとしては、前回提出された飯塚構成員の資料を熟読いただいて、ぜひこの内容についても御検討いただきたいということを強く申して、飯塚構成員の御提案に対しての判断とさせていただきたいと思います。

 それでは、時間が超過しそうでございますが、これで事務局にお返ししたいと思います。よろしくお願いします。

○保険課長 次回の検討会は、1226日(月)17時から開催を予定しております。詳細につきましては、追って御連絡を申し上げます。

 以上でございます。

○西村座長 事務局には、必ず報告書案をできるだけ早く皆さんに出していただくようにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。


(了)

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