ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会難病対策委員会)> 厚生科学審議会疾病対策部会 第44回難病対策委員会 議事録(2016年8月31日)
2016年8月31日 厚生科学審議会疾病対策部会 第44回難病対策委員会 議事録
○日時
平成28年8月31日(水)15:00~17:00
○場所
労働委員会会館講堂
○議事
○徳本難病対策課長補佐 ただ今から厚生科学審議会疾病対策部会第44回難病対策委員会を開催いたします。委員の皆様にはお忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
本日の委員の出席状況ですが、駒村委員、本田麻由美委員から欠席の御連絡を頂いております。
カメラの撮影はここまでとさせていただきたいと思います。傍聴される皆様方におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いいたします。
以降の議事進行につきましては千葉委員長にお願いいたします。
○千葉委員長 まず最初に資料の確認をお願いいたします。
○徳本難病対策課長補佐 資料の確認をいたします。まず資料1、第43回難病対策委員会での主な意見です。続いて資料2は大阪府の取組についての資料で、大阪府の難病医療提供体制という資料です。資料3は富山県の取組について、富山県における難病医療体制についてです。資料4は難病の遺伝子診断時の受診の在り方についてで、難病におけるゲノム医療提供体制、難病医療を提供する医療機関としてという資料です。
続いて資料5-1、難病の医療提供体制の在り方について(モデルケース)骨子(案)です。資料5-2、難病の医療提供体制の在り方について(モデルケース)骨子(案)概要です。資料の欠落等がありましたら事務局までお申し付けください。
○千葉委員長 よろしいでしょうか。本日の議題は1、2、3、その他を入れて4つあります。まず、議事に入る前に、前回の委員会で出ました主な御意見について事務局からお願いします。
○徳本難病対策課長補佐 資料1に基づき、第43回難病対策委員会での主な意見を御紹介申し上げます。
➀➀-1.都道府県内の連携体制につきましては、研究班より窓口による適切な医療機関の紹介について御提案を頂きました。2ポツ目ですが、窓口を幾つか作るという形についても御提案いただきました。また、診療可能な疾病のリストをチェックするといった体制、質を担保する体制についても御提案いただきました。
続いて4ポツ目ですが、地域や疾患に応じて多様な窓口があってもいいのではないかという御意見もありました。続いて、窓口が様々にあったとしても、中心的な窓口は決めておいてネットワークを構築すべきではないかという御意見もありました。最後になりますが、都道府県もそのネットワーク構築にコーディネーターとして関与する必要があるのではないかという御意見がありました。
➀➀-2.難病医療支援ネットワークとの連携についてですが、特殊な疾病に対応できるよう、全国レベルの窓口をうまく組み合わせることが必要との御意見がありました。次に、このようなネットワークの充実について御要望いただいたものと理解しております。
続いて➁.診断後に身近な医療機関で適切な医療を受けるための連携について、病状が悪くなる前に診てもらい、今後の注意点などを助言する仕組みが必要なのではないかという御意見を頂きました。また、ある程度、患者を1つの医療機関に集中させる必要性があるという御意見も頂きました。
裏面を御覧ください。➂.移行期医療への対応として、小児医療側と成人医療側が一緒に診ていく体制を作るべきとの御意見を頂きました。また、移行期医療に係る医療提供の連携につきましては、アカデミアからの議論が必要であるという御意見を頂きました。
続いて➃.遺伝子診断等の実施についての対応ということで、コンソーシアムやセンター等を作り、信頼性が担保された形で遺伝子診断ができる体制が求められているのではないかという御意見を頂きました。また、遺伝子診断はむしろ不安が先立つケースがあるという御意見もありました。さらに、遺伝子診断の前に、疾病について患者に正しく伝えることが重要で、カウンセリングのスキルが求められるという御意見がありました。
就労支援につきましては、診断前から病気を抱えながら就労しているということも考え、議論を進めるべきという御意見がありました。また、地域の産業医や校医との連携も考慮することが必要との御意見を頂きました。
その他の御質問・御意見として、指定難病の患者数はどのぐらい増えたのかということについて、報告の御依頼がありました。これにつきましては前回お答えしましたとおり、衛生行政報告例の報告があれば、この会議で御説明申し上げるというものです。
そのほか、軽症者のデータの登録等についても議論してほしいとの御意見がありました。あと、長期療養には担当医・保健師・ケアマネジャーの指導・育成が必要との御意見がありました。また半年、1年先の見通しと増悪の前に紹介元に戻す仕組みがあれば、身近な医療機関でも安心して難病患者の受入れができるという御意見がありました。資料1については以上です。
なお、申し遅れましたが、健康局長の福島は公務のために本日は欠席させていただきます。
○千葉委員長 ありがとうございます。前回出た様々な御意見をまとめていただいたわけです。
本日最初の議題は、難病の医療提供体制構築に係る都道府県の具体的な取組についてということです。難病法が制定されて、助成を受ける疾患について決まっているわけですが、それをサポートする体制というところの御議論になるかと思います。
まず、今日は大阪府及び富山県の取組を続けて御発表いただき、質疑等は後でまとめてお願いしたいと思います。まず大阪府の取組、資料2について大阪健康医療部の伊岡様から御説明を頂きたいと思います。お願いします。
○伊岡参考人 大阪府健康医療部保健医療室地域保健課の伊岡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は当委員会で難病医療体制の現状と課題についてお話をさせていただく機会を設けていただき、どうもありがとうございます。深く感謝申し上げます。
私事ですが、難病医療の施策を担当して数か月、まだ4月から数か月ですので何分素人です。大阪人やから言うて突っ込みを入れずに、気軽に聞いていただければ有り難いと思います。すみません。
早速、資料に基づき御説明申し上げます。まず、資料の2ページをお開きください。大阪府の概況を簡単に記載させていただいております。指定難病認定者数が6万8,000人、小児慢特認定者数は約4,600人、これは政令中核を除きます。こういった患者さんを抱えております。
指定医療機関は難病が5,000か所、小児が760か所です。指定医の数が難病で1万1,800人、小児で1,900人、かなり多い人数を指定しております。
難病の拠点病院については1か所、府立の急性期・総合医療センターを指定しております。協力病院につきましては指定しておりません。これは国の要綱が出る以前から、医師のつながりによって連携体制が既に構築されていて、指定しなくても連携は取れるのではないかということで、協力病院は指定していないということです。大きな特徴はそのように協力病院がないということと、指定医の数が非常に多い点だと思います。
3ページを御覧ください。大阪府難病患者体制のあゆみと言いますか、難病患者支援体制のあゆみを記載しております。大阪府は昭和47年に難病対策要綱が出され、その翌年、特定疾患研究会を府単独事業として立ち上げ、疾患分野ごとの部会を設置いたしました。全国に先駆けて難病の研究事業を開始したところです。主な事業として、調査研究をはじめ、医療費補助、在宅難病対策、医療機関整備の4事業を行っています。
平成5年には特定疾患数が増えていく中、保健所のアドバイザー機能と専門的な後方支援を行うための難病医療情報センターを設置いたしました。平成10年、特別対策推進事業実施要綱が出された年に、当時、府立病院と呼んでおりましたが、現急性期・総合医療センターを拠点病院と指定いたしました。特に、神経難病を中心とした医療連携とネットワークを構築したところです。
先ほども申し上げましたが協力病院を指定しておりません。これは平成10年の実施要綱が施行される以前から、府が設置する特定疾患研究会の関係医師や関係医療機関での連携体制が既に構築されていたことによるものです。
平成13年には、国が指定いたします対象疾患の拡大と治療研究が進んできたことから、
府単独での研究事業を終了いたしました。そこからケアシステムの構築を行うこととし現在に至っております。
ここのあゆみでちょっと自負しているところなのですが、全国に先駆けた難病対策の取組を進めてきたと。この辺は大阪府としては胸を張れるところではないか。ただ、現在は課題が山積しているという状況があります。
資料の4ページを御覧ください。消費税財源を利用して、地域医療介護総合確保基金事業を活用した、難病患者在宅医療支援事業を紹介しております。平成26年度から平成28年までの3か年事業として行っているところです。この事業は専門病院が地域の診療所や病院等と連携し、在宅における難病診療等を支援いたします。そこで在宅医療を推進することを目的にしております。具体的な事業内容は研修と同行訪問と➀➀➁に書かれておりますが、実施病院は御覧の5病院で行っているところです。
資料の5ページではこの事業のスキームをポンチ絵で記載させていただいております。専門病院、医師会、看護協会、保健所が連携して在宅医療スタッフへの研修を行う研修事業、➀➀があります。それと地域医療機関スタッフが在宅患者及び家族の所へ診療や訪問看護に行く際、専門病院のスタッフが同行いたしまして、在宅医療スタッフの難病の医療的ケアに関する専門知識と技術の向上を目的とする同行訪問事業。この2事業、先ほどの研修と同行訪問事業の紹介の絵です。
資料の6ページを御覧ください。この事業の事業実績を記載させていただいております。いずれも平成27年度の実績ですが、研修事業につきましては二次医療圏単位で100名規模の研修を年2回程度実施いたしました。同行訪問事業につきましては、神経難病患者を中心に、5つの実施病院のスタッフが延べ448件、1病院当たり平均90件の同行訪問を実施したところです。
補足ですが、➀➀の研修事業についてはどのような研修をしているのかということもあるので御紹介いたします。難病疾患の中で多い疾患の専門的見地からの情報共有、ケース紹介、他職種との連携について研修を行ったところです。
資料7ページを御覧ください。この事業実施をまとめるに当たり、各関係機関から御意見を頂きました。専門医からは、在宅生活が理解でき、病気の進行を見据えた指導の必要性を再認識できたという御意見がありました。かかりつけ医からは、専門医と患者・家族を交え、今後の療養生活の協議ができてよかったという御意見がありました。専門医・かかりつけ医両方からですが、専門医とかかりつけ医がいる場でALS患者の今後の病状変化を予測し、医療的ケアに関する患者家族の意思決定を共有できたという御意見を頂きました。専門病院からは、かかりつけ医候補が少なく、地域で難病患者に関わる医療機関が限定されていた。比較的早期から、かかりつけ医に紹介し連携していく工夫が必要といった御意見がありました。
これを総合的に評価したと言いますか、事業としての効果としては、かかりつけ医の希少難病への理解だけではなく、専門医の在宅医療の状況への理解が深まったということです。先ほどのポンチ絵の所で、研修が専門病院からの一方向となっておりますが、実はかかりつけ医からの情報もあり、知識が深まったということです。
それから、かかりつけ医と専門医が患者・家族の生活の場に同席することで、3者がそれぞれの立場から在宅療養生活を理解できた、3者が共通認識を持つことができたということが、事業効果として挙げられるかと思っております。以上で基金事業の紹介を終わらせていただきます。
先ほども申し上げましたが、実は大阪府の難病対策につきましては、たくさんの課題があります。大阪府の難病医療体制について御紹介させていただきたいと思います。
資料の9ページ、小児難病支援をとりまく状況ということで、平成27年9月に出されました基本方針の中で、小児難病についても切れ目のない医療等を行うため、国はモデル事業を実施し、都道府県・市町村は連携の推進に努めるという記載がありました。ここでは小児難病支援をとりまく状況を記載しております。1つ目の項目、高度医療児が増加して、成人後の医療も小児科で引き続き対応しているという状況があります。2つ目の状況ですが、市町村が実施いたします乳幼児医療費の制度対象者の拡がりにより、小児慢性特定疾患の申請がなされず、保健所において正確な患児の状況が把握できないという点もあります。
資料の10ページを御覧ください。難病医療提供の課題ということで記載させていただいております。1つ目、専門医師確保の継続性に不安。これまで医師個人のネットワークに依拠していたということがあり、この医師の世代交代で後継医師が育成できていないという、これは一番大きな課題かと考えております。
2つ目に希少な対象疾患が増え、専門性の確保に不安という項目を書いております。大阪府は、全国割合で難病指定医が7.8%、約1万人、協力医は全国シェアで20.6%、約1,100人と指定しております。この点、全国的には贅沢な悩みかもしれないのですけれども、それでも極めてまれな疾患については府内で専門家が確保できていないという課題がございます。指定医は診断書を書くだけでなく、いわゆる難病の制度面の理解も高めていく必要があるのではないかと感じているところです。
資料の11ページを御覧ください。ここでは小児難病に係る課題ということで記載させていただいています。難病患児の把握ができないという項目ですが、これは保健所で把握ができないということです。子ども医療費、いわゆる乳幼児医療費の制度対象者が拡がったことにより、なかなか医療費助成の必要がないということで小慢の申請が行われず、申請が必要な進行性の疾患や高度医療児に対する支援が開始できないという課題があります。
2つ目の項目は学校保健との連携が不十分ということで、幼児期から学童期、成人期という移行の中、支援に必要な学校保健と地域保健・福祉関係機関との連携が確立されていないという課題があります。
3つ目、小児から成人期へ移行する支援体制が不十分という項目ですが、小児から成人期への移行後も引き続き小児科が診療を行っているという実態があります。これについては、やはり保健・福祉の支援体制についても一定の整備が必要ではないかと思っております。
資料12ページ、以上の状況を踏まえ、大阪府から国へ望むことを御提案として記載させていただきました。希少疾患の専門家ネットワークの構築という項目を挙げています。頻度の極めて低い疾患では、経験のある専門家を都道府県単位で確保することが非常に難しいという状況があります。全国での情報収集であったり情報発信が必要ではないかと思います。この辺は国で御検討いただければと思います。
2つ目、小児難病の成人期の医療の確保という項目ですが、現実的な医療移行について、モデル事業の実施等による具体的な検討というものが必要ではないかと思っております。
最後ですが専門家育成の支援という項目として、難病医療に取り組む若手医師の勤務環境整備に支援が必要ではないか。非常に医師確保が難しい、専門性の高い医師の確保が難しいという状況の中で、勤務環境整備に支援が必要ではないかということで項目を挙げました。イメージを具体的に申し上げますと、例えば臨床研修医のマッチングを行う際、難病疾患に関連性の高い診療科の枠を増やすとか、そのような配慮ができないだろうか。例えば臨床に入ったドクターへの研修や学会発表などについて、難病に関する内容ではそういう若手医師を優先させるとかいう配慮ができないだろうか。
あと1つ申し上げますと、例えば難病に関連性の深い神経内科であったり膠原病内科、消化器内科などの診療科目の先にいわゆる難病があるということを、これはちょっとドラスティックになるかもしれませんが、例えば医療計画などで明示できないか。この点、ちょっと私見も入っているのですが、そういうイメージです。
もう1つ申し上げますと、これは厚生労働省とは違うかもしれないのですが、大学の中での医学教育の中で、いわゆる臓器別の教育と言うか、一種の教育が主流という中で、臓器を横断的に扱う難病について教育ができないか。こういったイメージを持っているところです。以上、難病医療に取り組む、意欲のある若手医師にインセンティブを与えるような支援ができないかというのが総じた御提案だということにさせていただいております。
以上、大阪府の難病医療提供体制について御説明申し上げました。僭越ながら国に対する御提案をさせていただきました。以上で大阪府からの説明を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○千葉委員長 先に進ませていただきまして、次に資料3の富山県の取組について、富山県厚生部の前田様から御説明をお願いいたします。
○前田参考人 富山県厚生部次長の前田と申します。本日は貴重な機会を頂きまして、ありがとうございます。こういった発言をさせていただく機会というのはなかなかありませんので、大変緊張しておりますが、富山県の取組についてしっかりと御紹介させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
1枚目で、簡単に富山県の海と山の美しさだけをPRさせていただきます。真ん中の写真の奥に立山連峰が見えており、これは3,000m級の山です。そこの下に海があって、1,000mの深い海になっております。非常に風光明媚な所で、食べ物も非常に特徴のある所で、難病対策以外にも県としても特徴のある地域ですので、是非視察を兼ねて見に来ていただければ有り難いと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
次のページは富山県の概況です。人口が約100万人です。大阪府比べて10分の1とまではいかないのですが、小規模な県の1つで、医療圏としては4つです。厚生センター・保健所ということを書いており、富山県では県型保健所のことを厚生センターと呼んでいますが、医療圏ごとに厚生センターという形で保健所を置いていまして、大きな所が4か所あります。あと、保健所設置市である富山市が保健所を持っている、また厚生センターの支所が4か所あるということで、9か所の保健所があります。難病医療拠点としては1機関で、富山大学医学部附属病院にお願いしており、難病医療協力病院として、公的病院23機関を指定しています。難病指定医が約1,300人、訪問看護ステーションは58か所です。東京から2時間8分で富山まで北陸新幹線が通るようになり、非常に交通の便もよくなりましたので、これから北日本の富山、金沢という所に、そういう意味では今までの東海道から、新しい流れができるのではないかと期待しているところです。
次のページです。富山県の公的病院という形で、24病院です。先ほどの大学と、23という形でお示ししております。これは「公的」ということで書いているのですが、一般病床が100床以上の所というのが、私立では2つしかありませんで、基本的に富山県の医療というのは公的病院に依存しているところがあります。真ん中に富山市という大きな市があり、そこの西に富山大学附属病院があり、ここが中核で富山県の大体真ん中にあります。先ほど、富山県は小さいと申し上げましたが、新幹線をはじめ交通の便も発達しているところがありまして、一番東端から西端まで、30分ぐらいで行けるコンパクトな県です。それもあって、最終的に1か所ということで、距離的に顔が見えているというところがあります。
また、公的病院の23病院を協力病院に指定していて、富山医療圏、新川医療圏、高岡医療圏、砺波医療圏の4つの医療圏がありますが、それぞれに中核的な病院がありまして、がん対策、救急医療、周産期といったところも、医療圏ごとにその中核的な病院がイニシアチブを取っているところがあります。例えば一番東端の新川では、黒部市にある黒部市民病院が、この地域での医療のことでは責任を持つという形になっていますので、ある意味でピラミッド構造になっているというところが、富山県の特徴です。また、ほとんど公的病院しかないこともありまして、大学の医局がほとんど金沢大学出身の方と富山大出身の方ということで、人的なつながりも非常に強いです。さらに、開業される先生も総じて公的病院を経験されてから開業される先生が多いということがあって、病院と診療所が、非常に濃厚な人的関係にあるというところが特徴です。それが、富山県のいいところとして出ている部分もあると思っております。
次のページは概要です。今、医療受給者数は、平成28年度末で指定難病306疾病で8,194人ということで、利用していただいています。先天性凝固異常症が41人、スモン等が19人、小児慢性特定疾病は525人ということで、先ほど大阪府のほうでも御意見がありましたが、子供の医療費の無料化というところがあり、本県でも大体中学3年生ぐらいまで、入院と外来を無料化していますので、その辺で実質の数、疾病にかかっている方の数よりも少ない数が出ているのではないかと思っています。
本日の主である医療提供体制ですが、拠点病院・協力病院指定をさせていただいた上で、医療に関しては難病医療連絡協議会を開催しております。(2)の協議会、(3)の研修会、(4)の相談を、拠点病院である富山大学医学部附属病院にお願いして実施しています。連絡協議会は、23の公的病院の先生方、神経内科の先生方中心にお越しいただき、その他厚生センターなり医師会なりという形で集まっていただき、基本的には症例のシェア、持っている医療相談室の実施状況などについて意見交換をさせていただいています。こちらは、主に医療についての議論をしていただいています。
(3)の研修会ですが、実際は協議会に続けてそのままやっているというのが現状なのですが、基本的には先生方は医療的な話をしていますので、富山大の先生、難病の専門家の先生に御講義を頂いて、診断のポイント、非常に珍しい遺伝子検査といったもののニーズがあれば、是非富山大学なりに紹介してくださいということでお声掛けしています。これが、(3)の研修会の主たる目的です。
最後の難病医療支援室は、主に医療のところなのですが、療養系の御相談が大勢を占めており、その中でレスパイトの調整をお願いされるケースが多いので、一般的な医療相談に加えて、レスパイトの相談をこの支援室で受けて、医療機関を選定、日程の調整を実施しています。
5ページです。難病対策委員会の資料をベースに作っておりますが、基本的には難病拠点病院たる大学と協力病院で、相談支援センターと一体になって実施しているところですが、論点としては、県の中で診きれないところについて、全国的な取組であるネットワークになかなか相談できていないという状況です。後ほど課題で御紹介しますが、そういうところがまだ弱いところではないかと思っています。
6ページです。在宅難病患者一時入院事業です。これは、大体レスパイトで実施しており、先ほどの難病医療支援室の紹介で、ふだん診療を受けておられる病院と入院されている機関は一致している場合もありますし、御紹介で別の病院に入っていただく場合もあります。先ほど、中核的な医療機関が医療圏ごとにあると御紹介しましたが、そうした所に県の施策ということで、医療圏ごとに責任を持っていただいておりますので、そういう所にお願いして、レスパイト入院をしていただいています。基本的に神経疾患で、昨年度の実績でいくと20件で、3日から長い方で2週間ぐらい入院されています。ちなみに、1日に1万9,000円を医療機関にお支払いしていますが、中核病院の急性期病院でしたら、1日に5、6万円は稼ぎますので、そういったところではコストに見合わないと言われていますが、そういう政策的なところに御協力いただいているというところです。
4番は難病患者地域支援対策推進事業です。これは保健師の活動で、富山県の売りは医療提供体制もさることながら、保健師、保健所が非常に尽力しているというところがあり、少しだけ紹介させていただきます。恐らく、医療提供体制を議論するときに、なるべく地域で長く療養していただくということを見据えますと、保健師の活動とどういう形でリンクしていくかというところは、非常に重要だと思っており、県の自慢ですので、紹介させていただきます。
ハイリスク者に対して家庭訪問させていただき、ハイリスク者はほとんど神経難病なのですが、保健所で責任をもって把握させていただき、在宅療養の相談、医療機関との連携という形で進めています。また、疾患別の療養相談会というものがあり、保健所で毎月1回とまではいかないのですが、2か月に1度、月に1回ぐらいは相談会をやっており、健康相談やレクリエーションの手法、家での過ごし方について、勉強会を開いたりしています。
また、難病相談支援センターというのは、当県の場合は富山県社会福祉協議会(社協)に委託をして実施していますが、実際に従事していただいているのは保健師のOBの方が中心で、一般相談、専門医の相談会等を開き、「社協でやっている」というと非常に少ない数で、形式的な実施に見えるかもしれないのですが、年間で2,000~3,000件の相談を受けており、それなりの数の相談を受けている状況です。また、別に保健所で、年間200~300件を受けていますので、保健所単位の相談もありますし、全県的な相談も受けております。受けている人が保健師ということもあり、相談の質もそんなに差はないというところで、「こちらでは違うことを言われた」というのが余りないのではないかと思っています。
基本的には、神経難病の方の療養系の相談が多いのですが、ほかに多いのは就労支援に対する相談で、ハローワークとの連携もあります。話を始めると今日のテーマから外れてしまうので、今日はお話はしませんが、見せるだけ見せようと思って持ってきました。相談支援センターで独自に就労のガイドブックを作っていまして、これは実際に保健所の相談内容でどうやったら就職につながったかとか、実際に相談支援センターで相談を受けて、こうやったら就労につながった、継続につながったという事例を集めて、患者にこういうところに気を付けて業者に話すといいという形で、保健師の目線で書いたガイドブックを作って、患者に配っています。そういうところで、地域社会でなるべく役割を持って過ごすという難病の基本方針の理念の実現に向けて、尽力しています。いつか、保健所の役割というような説明の機会がありましたら、富山県の取組を改めて紹介させていただければと思います。
しつこく保健所の例を御説明させていただくと、難病患者の支援区分という形で置いていますが、重症度に応じて患者の支援を保健所が実施しています。再評価の期間ということで、1~2か月に1回、3~6か月に1回と書いていますが、実際にこの頻度で再訪問させていただいて、症状や状況が変わっていないか、家族の状況はどうかということのヒアリングをしております。神経難病の方が中心なのですが、療養にチェックというところで、保健所が相当絡んでいる事例ではないかと思っています。冒頭で、「公的病院しかない」「医療機関もない」と申し上げましたが、逆に言うと、公的ブランドに対して信頼が厚いというところもありますので、保健師が立ち入ることに対して、住民や患者が抵抗を感じない県民性も大きなところではないかと思っています。
次のページです。これは、1つの厚生センターの難病の患者のニーズ票です。部分的な御紹介ですが、患者の状況、現在の治療状況、介護者の状況など、難病の医療費の申請に来られた方で、同意を頂ける方については、このようなチェックシートを作ります。厚生センターで把握し、医師とこの患者について話をするときに、保健師が基本的な情報として持って行く、あるいは事例検討の際に使わせていただく、レスパイトの要望があればこれを使って基礎情報にさせていただく、災害時のハイリスク者の把握にも使わせていただいておりますので、そのような形で活用させていただいているのが現状です。
次は、富山県の難病対策地域協議会です。国の考え方では、保健所に1か所という形で示しているところですが、これは県内1か所で実施しています。理由ですが、もともと非常に狭いというのがあり、そういう中核的な所との連携を取っていますので、そういう形で、3次医療圏全体で難病を診ている、特に診断部分はそういうところがあるので、1か所で診ているというところがあります。あと、県の特徴として、富山県は富山市が保健所設置市で、保健所設置市単独で完結してしまうと、なかなか県全体でどういうことをしているのかが把握できない、県市問題というのは富山でもありまして、市の内容、特に中核市の情報を県が把握するというのは難しいのですが、県単位でやらせていただいて、ほかの市町村なり保健所の報告と一緒に、富山市の保健所の状況も報告していただいて、県全体の状況を把握するという形でお話をしております。
また、患者団体の御意見ということですと、100万人規模だと、1か所で話をしたほうが分かりやすいというところはあります。もともと国の地域協議会でイメージしていた患者の療養系、相談、実績という話については、厚生センターでケア連絡協議会というものを別に開催して、医療圏ごとに事例検討などを別にやらせていただいておりますので、富山県の地域協議会のやり方としては、全体像を把握することを大きな目的にしています。
最後に、課題を3つ挙げさせていただきます。医療提供体制の課題(1)は診断についてです。確定診断を受けるための流れでいくと、悪い状況かと言いますと、少なくとも難民状況にはならないというところがあります。なぜかというと、もともと診療所を公的病院の卒業生が開業されていたりということで、人間関係が濃厚なので、そういう意味で、こういう患者を紹介したよねということで、他診療科に行っても大体顔が見えるというところがあります。県を出て治療に行ったといっても、金沢大学か富山大学のどちらかであることが多いので、例えば、金沢大学の神経内科に紹介・受診する場合、富山の神経内科の先生方は「あの人が行ったのだね」ということで分かるということで、非常に濃密でありますし、逆に息苦しいのが特徴です。そういう形で、顔が見えているのはいいことではあります。
逆に、野放図に大学に紹介するというのはない、皆さん大学の診療レベルも御存じなので、いたずらに紹介しても仕方なかろうということで、むやみに大学に集まりすぎるということはないのですが、困難事例が医療の流れの中に埋まっている可能性もありますから、もう少し拠点病院に困難事例は積極的に紹介してくださいと、最後の砦ということで紹介してもいいと思っています。こういう形の県の流れでは捉えきれないような希少疾病等、遺伝子診断等の100万人規模では余りやらないようなものが診断に有用な場合は、なかなかそこに位置付けられておらず、23の病院の中で対処療法で済ましているということはあるので、そういう中核的な病院には、最後の砦として全国的な所ともっとつながっているのだというPRをもう少し付けてもいいと思っています。
次のページです。医療提供体制の課題(2)です。診断の治療方針ということで、今、かなり属人的な形で頼っている、あるいは協議会でも勉強会という形でやっていますが、より診療方針みたいなことを中核的な病院が前面に打ち出していけるような中身については、そういう情報発信機能は拠点病院により求められるかもしれないと思っています。
最後は、より住み慣れた形での療養です。先ほどの2つの、診断というところと、決まった後の治療方針を決めるというのは、総論の疾病ごとにどうするかという話になると思うのですが、専門性の高いアカデミックな話だと思うのですが、(3)の住み慣れた地域での療養になりますと、主に神経難病の方が多いと思いますが、かかりつけの先生に御紹介、あるいは地域で生活されているときに保健所が積極的に関わるというところがあります。レスパイトですとか、そういうニーズがありますので、(1)(2)とは別の議論かもしれませんが、そのような形で重症の患者を巻き込む形で、今は神経難病に限ってはそれなりに対応をしているのが現状ですが、これを広げていくということであれば、更なる工夫が必要だと思っているところです。以上、富山県の状況について、簡単に御報告させていただきました。
○千葉委員長 大都会を代表して人口880万人の大阪、それに対して地方を代表して人口106万人の富山県の御紹介をしていただきました。共通項もありますし、違うところもあったと思いますが、両方を合わせて御意見、御質問はありますでしょうか。
○福永副委員長 大阪では第一の課題に挙げられていた、専門医の若い世代が育っていないというのは、恐らく全国的な傾向で、特に神経難病の代表である筋ジストロフィーあるいはALSをやってくれる若い人がいないのです。私も大阪の先生方をよく知っているのですが、私と同世代なのです。
例えば神経難病の中でも、パーキンソン病などの場合には関わっている人が多いというのは、1つは、治療法があるものだからメーカーが主導してくれるのです。ところが、ALSと筋ジストロフィーというのは、現在は的確な治療法がないということも大きな要因です。以前は厚労省の研究班としてサポートしていただいていたのですが、最近はそういう研究班も弱体化していますし、できたら何らかの形でサポート体制ができたら若い先生方で筋ジストロフィーやALSに取り組む人が多くなるのではないでしょうか。
富山県の例は、厚労省でスキームを書いたものを、地方でどのぐらいやれるかというのは非常に注目されるところでもありますし、前田先生が描いていたイメージを、是非県で実行していただければなとエールを送りたいと思います。頑張ってほしいと思います。
○羽鳥委員 日本医師会から出ました羽鳥と申します。大阪の伊岡さんにお伺いしたいのですが、私も文科省のコアカリキュラム、専門医機構、日本医師会の事業である生涯知識教育の担当をしているので、伊岡さんがお示しになったのは、若い先生たちに勉強する場、興味を持っていただくと同時に学会で発表する場など、いろいろ検討していただきたいということだと思うのですが、特に神経難病、306に増えたこれらの疾患については、患者から見れば要配慮個人情報だと思うのです。その辺について、何か大阪府では工夫をして、学会発表するときにサポートをしているというようなことはありますでしょうか。要するに、患者個人が同定されないような方法での、いい学会での発表方法があったら、何か工夫していることがあったら教えていただきたいと思います。
○伊岡参考人 担当医師の学会発表の中身について、私も直接把握しているわけではないのですが、個人情報の扱いにつきましては、全国レベルで基本的には大事にしているということでやっていると思うのです。工夫しているところというのは、私も不勉強で存じ上げないのですが、少なくとも若手医師にインセンティブを与えるような支援は何ができるのかというのは、府の中でも検討しているところです。
○鶴田委員 数字の確認をしたいと思うのですが、大阪府の難病指定医は、全国割合7.8%で1万人ということ、富山県の指定医の1,321人を人口で換算すると、指定医は全国に12~13万人いると見ていいのですか。協力難病指定医というのは、国の指定ではなくて、大阪府独自の指定医という理解でいいのですか。制度的には国の協力医ですか。
○伊岡参考人 大阪府の場合は国の協力医です。
○鶴田委員 普通は指定医のほうがレベルが高くて、協力難病指定医が低いと思うのですが、この数からすると協力難病指定医のほうがレベルの高い人たちなのですか。
○千葉委員長 事務局からよろしいですか。
○徳本難病対策課長補佐 指定医の制度は2つの枠組みがありまして、1つが難病指定医です。もう1つが、協力難病指定医という位置付けです。その違いについては、新規の難病患者の認定の際に書類を作成できるというのが難病指定医ということで、できる範囲としては難病指定医のほうが広くて、協力難病指定医のほうが狭いという整理になっています。
○鶴田委員 いろいろな疾患について指定医があるのですが、その中でも難病の指定医が最も多いのでしょうか。例えば医師の人口の4割が難病指定医で、その医師たちが難病を診ているということですか。今後の難病の拠点病院のことを考えるときに、そういう医師たちをどのように考えていくのか。まず数のことだけを聞いたのですが。
○徳本難病対策課長補佐 難病指定医の要件は2つあります。1つは、診断又は治療に5年以上従事した経験があって、申請時点において関係学会の専門医の資格を有していることです。
1若しくは2のどちらかを満たせばいいのですが、2つ目の要件は、5年以上従事した経験があって、一定の研修を受けていただく、受けていただければ、専門医資格を持っていなくても難病指定医の指定はできることになっています。
○鶴田委員 そうした医師の4割が難病の指定要件をもっているにもかかわらず、研修を受けないということですか。この研修の内容とはえらくギャップがある気がするのです。書いてあることを含めてです。
難病指定医の状況と、難病の拠点病院を作るときのイメージが分からなかったのでお聞きしました。後で拠点病院のときにお話をしようと思っていますが、当面は難病指定医数のことだけを確認したいということでお聞きしました。
○千葉委員長 そこら辺は私の認識では、まだきちんとした整合性は取れていないという印象があります。ですから、今の質問をされたことはよく分かるわけですが、なかなかきちんとした制度として、必ずしもできていない向きがあるので、きちんとした答えが出にくい面があろうかと思います。患者の便利性と、本当にしっかりと診るという両方の要望を合わせた形で今は走っていると、私自身は理解していますが、そこら辺はおっしゃるように、もう少し整理しなくてはいけないと私自身も考えているところです。
○鶴田委員 追加して言えば、大阪府の場合も富山県の場合も、患者6人か7人に、指定医が1人いるという構造です。大阪の場合は協力病院などがなくてもうまくいっています。ということは、富山県の場合は、協力病院としては指定しているけれども、指定しなくてもうまくいくという理解をしてよろしいのでしょうか。
○千葉委員長 時間がないので私の理解したところで申し上げます。人口1,000万ぐらいの所と100万の所の差というのは、すごくあると思います。ですから、1か所指定していれば、それで全体が統合されていくような小さな都道府県と、大阪や東京のように、1,000万、何千万もあるような所では、少し状況が違うので、それでもって指定していないという理由になるかどうかは分かりませんが、一方で指定病院を作るということの1つの困難さというものを表しているのではないかと、私自身は理解しています。
しかしながら、やはりここのところも何か考えないと、やはり大きな所でもコアのようなものがあって、話が進められるべきでないかなというのは、これは私としての意見ですので、今後そこら辺は御検討いただくべきかなと考えています。
○本田(彰)委員 富山県の保健師の活動が、かなり地に着いた形になっていると思います。保健師の働き様として、異動があって、難病に特化した形で継続して地域での活動をするというのが、全国的に保健師としては難しくなってきていると思うのですが、その辺りについて、富山では保健師の育成、養成というところでは、難病に関して何か特別なことをされているのでしょうか。
○前田参考人 特にはないと思うのですが、1つは研修を頻回にやっていて、保健所レベルでも月に1回なり、2か月に1回なり勉強会を開いています。あと、全県的な研修会も、将来保健師になる学生向けのものも含めて、年に1、2回、それぞれの単位ごと、大学向けになど開いています。また、看護専門学校の保健師コースで難病の講義を持ったりというところが大きいかなと思います。
あと、異動が3~5年に1度というのが、他県に比べて頻度が高いか低いかというのはあると思うのですが、その頻度の中で、チェックシートをもって実施していただいていますので、そういうところもうまく使いながら実施していただけているのかなと思っております。
○益子委員 大阪の在宅医療支援の取組ですが、3年間ということですが、これで神経難病の在宅患者のどれぐらいをカバーしているのでしょうか、ほとんどカバーしているのでしょうか。それから、これは3年間ということですが、今後続ける予定はあるのでしょうか。
○伊岡参考人 在宅医療支援の事業自体は基金事業として位置付けて、府の財政状況も見ながら、当然国の基金からの支出と、府からの支出もありますので、非常に難しいところはあるのですが、取りあえず今年で終わりということにはなるのですが、基本的には続けていきたいと思っています。
神経難病の患者を全てカバーできているかについては、カバーはできていないです。
○益子委員 どのぐらいカバーできているか分かりますか。
○千葉委員長 答弁のようになってもいけませんので。
○益子委員 もう1件よろしいですか。
○千葉委員長 簡単にお願いします。
○益子委員 富山の相談件数が非常に多くて感心しているのですが、相談会をどのような所で、何回ぐらい開催しているのでしょうか。開催するに当たって、何か工夫はあるのでしょうか。
○前田参考人 相談会自体は相談支援センターで月1回ぐらいやっております。疾患別をしたり、テーマを明確にしているので、参加される人数は差がありますが、その中で積極的に言っております。当然、難病相談支援センターがちゃんとあって、そこで「役に立ちますよ」というPRをさせていただいていますし、訪問なり、保健師の活動の中でもPRさせていただいていますので、それが相談の実施につながっているかなと思っています。
○千葉委員長 ありがとうございました。両府県のお話を聞いて、違いというところでもって問題点がいろいろ実際には浮き彫りになってきていると思うのです。まだまだディスカッションはあると思うのですが、時間が相当オーバーしているので、取りあえず御紹介についての御質問はここまでとさせていただきたいと思います。
では次に、難病の遺伝子診断等の実施の在り方について、東京女子医大附属遺伝子医療センターの斎藤様から御説明をお願いしたいと思います。すみませんが、ちょっと時間が押していますので、簡潔にお願いできればと思います。
○斎藤参考人 お手元の資料4を御覧ください。「難病におけるゲノム医療提供体制」ということで、東京女子医科大学附属遺伝子医療センターの取組を御紹介します。まず1枚めくり、ゲノム医療、遺伝子診断ということです。ゲノムというのは、DNAという蛋白質を作る体の様々な機能のまず設計図のような形です。DNAの配列をきちんとはっきりさせるということが、結局難病の確定診断ということになります。先ほども少しお話があったように、確定診断がなされないままにいろいろな病院をさまよい歩く患者さんはかなり多数いまして、難病の診断がされないまま特定疾患の認定もされないという状況もあります。そういう意味で、2ページにあるように、きちんとした診断を付けることを、オバマ大統領がPrecision medicine initiativeということで、2015年に一般教書の演説で発表しました。上に1、2、3と書いてあるように、ゲノム情報、DNAの情報を調べて、それをより効率的・効果的に診断、治療、予防に使うことが、いわゆる遺伝子診断の臨床応用になります。2番にあるように、難病やがんなどの原因のある疾患、それから単因子の疾患、様々なものがそういうDNAの医療、ゲノム医療の対象となります。こういうものが発展していくのが、ちょうど日本のこれからの大事な方向性でもあると思います。
3ページですが、先日まで、ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースというものが、厚生労働省が中心になってありました。私も委員を務めてきました。日本と欧米との比較でゲノム医療の現状が書いてあります。全て青いほうが日本で、赤いほうが外国なのですが、日本の矢印が短くなっています。そういう意味で、いろいろな面で日本はまだ遅れている現状があります。一番上の遺伝子診断に関わる所を緑で囲みましたが、疾患の診断という所で、日本の保険収載されているもの、36疾患が今、74に増えましたが、やはり英国では492という、このような大きな違いがあります。それから、ゲノムの配列が分かると、それによってアンチセンスオリゴなどの治療の実用化が正になされてきて、有効性も検証されてきている状況ですので、そういう意味で治療につながることも数多く出てくるということが、これからの医療だと思います。
4ページ、なかなか言葉の定義が難しいと思うのですが、遺伝子診断ということでも、特に遺伝子検査という言葉は、一般的に遺伝子検査という言葉は、体質検査などに使う傾向になっています。医療の現場では遺伝子関連検査と言うようになっています。特に、生殖細胞系列、難病の診断の場合には、3行目の赤で書いてある遺伝学的検査という言い方をします。その中で、単一遺伝子疾患とか染色体異常症に関する遺伝学的検査というもの、それから3つ目の所の網羅的遺伝学的検査、こういうものが難病において非常に効力を発揮すると考えます。
5ページに、これもゲノム情報のタスクフォースに用いられた、ホームページに載っているその図を出しました。日本のこれからの医療というのは、DNAの情報を使って難病の確定診断をしていくことになります。赤で囲ってあるように、診療の流れとしては、やはり遺伝子診断をするためには遺伝カウンセリングをきちんとする、検査の意義を説明する。それから検体を採取し検査をしていく。それを解釈して、その結果の解釈をまた遺伝カウンセリングにおいて行う。その結果を踏まえて治療、療育に向かっていくのがゲノム情報を使った重要な流れであると思います。
6ページ、と言っても、先ほどの先生方からの御意見にもあるように、やはり遺伝子診断はむしろ不安が先立つのではないかとか、患者さんに正しく伝わらないのではないかという懸念があります。これに対して日本医学会では、医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドラインを出しています。これは2011年に出しています。まず遺伝学的検査・診断を実施するときに考慮すべき遺伝情報の特性として、生涯変化しない、血縁者間で一部共有される、それから青で書きましたが予測ができる、非発症保因者、また将来の発症、さらに出生前診断にまで利用することができるということがあります。
ですから、7ページにあるように、遺伝カウンセリングとして、そのような情報をきちんと患者さん、家族に説明する、そしてそういう情報提供だけでなく、心理社会的な支援を行うことが非常に重要になってきます。ですからこの点では、医師だけではなく、遺伝カウンセリングに習熟した者が連携してチーム医療として行うことが非常に重要になります。
8ページ、遺伝学的検査の目的としては、先ほどから言いましたように疾患の確定診断があります。確定診断をすることによって症状とか臨床経過、予後が予測できたり、治療方針が決まったり、家族における遺伝に関する情報提供ができたりします。さらに、根本治療の提供としては、最近はライソゾーム病の酵素補充療法とか、またこれは古くからウィルソン病の治療、副腎白質ジストロフィーの造血幹細胞の移植。さらにアンチセンスオリゴ薬は、脊髄性筋萎縮症に対してFDAで効果、有効性が認められた薬であって、日本でも保険収載される方向になっています。こういうことの特徴としては、主に対象の多くは難病であること、それから本人だけではなくて、家族にも不安や葛藤が生じるということで、このような心理的葛藤への共感とか理解が非常に重要です。こういうプロセス、これをきちんとケアしていくプロセスが医療の質を上げていき、患者・家族を支えていくと考えています。
9ページ、そうすると遺伝カウンセリングでは何をするかということになります。ここにあるように、情報収集、評価、再発率の評価、いわゆる遺伝子検査、遺伝学的検査、カウンセリング、意思決定のサポートです。それから診断がつかない症例というのも数多くあります。そういう場合に、次世代シーケンサーで検査をしていくとか、それから継続的な臨床評価をすることになります。それから心理社会的な支援、そういうものが重要です。
10ページ、具体的に、私ども女子医大でやっている遺伝カウンセリング、遺伝学的検査実施の体制を図に示しました。患者さんからの予約があります、家族からの予約があると遺伝カウンセリングをして、それから矢印のようにスタッフでディスカッションをして、そのプロセスの中で遺伝学的検査をやるかやらないかということを、家族、患者さんの希望と我々の医療側からの判断で決定していきます。実施する場合には、検体を採取、データを解釈し報告書を作成する。その結果を踏まえて診療を継続していくことが、いわゆるきちんとしたエビデンスに基づいた医療になります。10ページの右側の下が私どもの診察室なのです。普通の一般の診察室とちょっと違って、少し居心地がいい、ですからなかなか患者さんもお帰りにならないというのが欠点なのですが、そういうお部屋でやっています。
女子医大に、実は2004年からこういう遺伝子医療センターが開設されて、初めの頃はこの数にあるように、年間500人満たないという状態でしたが、今、3,000人を超えているような受診者数になっています。そして、私の専門である筋ジストロフィーとか脊髄性筋萎縮症、そういう神経難病の遺伝学的検査というものを求めている方が非常に多くて、64%はそういう神経、また筋疾患です。それから染色体疾患、家族性腫瘍、様々な皮膚、血液、奇形症候群、循環器、また最近、拡張型心筋症、肥大型心筋症、そういう疾患、単一遺伝子病の方がかなりいます。
12ページ、こういうことで診断がつかない場合に、次世代シーケンサーというのが非常に威力を持ちます。ここにあるように、サンガーというのは今までの古いシーケンサー、それに対して次世代シーケンサーは、広辞苑の4万冊分のDNAを解析できる能力があります。
13ページにあるように、例えば私どもの所で患者さんを拝見していて、それからまたほかの施設で診断がつかない患者さんがいると、いわゆる一つ一つ遺伝子検査、遺伝学的検査をしますが、そこで診断が確定しないときには次世代シーケンサーを使うことがあります。ただちょっと欠点としては、偶発的所見ということがありますので、これもこれから様々ディスカッションをしていくところです。
14、15ページは、実際に次世代シーケンサーで診断がつかなかった患者さんに診断をつけたという実例です。本当に非常に珍しい神経筋接合部の遺伝子変異が次世代シーケンサーで見つかりました。RAPSNという遺伝子なのです。先天性の筋無力症候群と確定診断されました。
16ページにあるように、RAPSNの変異というものは神経筋接合部の異常であって、これはただの様々な検査ではなかなか見つからないということでした。診断がついてから確定のために、国立精神・神経センターの西野一三先生に電子顕微鏡を見直していただいたところ、神経筋接合部の異常がはっきり同定されたということがあります。16ページに書くように、RAPSNの変異が見つかったということは、今まで何病か分からなかったものに、抗コリンエステラーゼ剤が効果があることが証明されて、そしてこの方はこの治療を受けることができるようになります。ですから、確定診断が治療に結び付くという、非常に大切な経験があります。
18ページからですが、全国のそういう遺伝医療をやっている施設がどういうふうにあるかということ、また、そういう資格を持っている人間がどのくらい分布しているかを日本地図に書き入れてみました。全国遺伝医療部門連絡会議というものがあります。これは日本の全ての大学病院は入っています。ただ、青森県、熊本県、ここにはいないかもしれませんが、ここだけにはいらっしゃらないというので、是非、青森と熊本の方もお入りいただければと思います。こういう所が、いわゆる遺伝子診断ができるような施設として登録し、そして、この人たちが1年に1回集まって連携していろいろなディスカッション、遺伝子診断の効率化とか技術の問題、そういうディスカッションをしています。今年も10月の初めにそういうミーティングがあります。それから臨床遺伝専門医、これは遺伝の専門家として、まだ専門医制のサブスペシャリティとして、これから議論されていくところには入ると思いますが、既に臨床遺伝専門医は日本で1,269名、そういった研修施設は81か所、全ての大学病院はほとんどそこに入っています。
次ページ、これは非医師です。非医師の認定遺伝カウンセラーの養成をしています。やはり、遺伝学という日本の医学や看護学でもなかなか教育していない分野ですので、大学院として少なくても2年間、女子医大だけ4年間の博士課程なのですが、大学院教育を受ける、そういった方たちが非医師で182名います。養成課程の大学院は年々増えているのですが、今、14か所あります。
21ページが今日お話したまとめです。何が必要かを少しサマライズしました。遺伝学的検査として、やはり検査の質保証というところ。これは是非、国内の衛生検査所が難病の遺伝学的検査を全て網羅できるような体制。それから、難病の確定診断に非常に重要ということで、やはり保険収載ということはこれから是非ここで議論していただきたいことだと思います。それから、診断を効率化するためには次世代シーケンサーは非常に威力を発揮していて、難聴の遺伝子診断については、既に次世代シーケンサーが保険収載されている現状です。ですから、やはり診断を効率化して、なるべく安いお金できちんと診断できるような体制を研究しながら、診療に結び付けることが重要だと思います。
それから、遺伝カウンセリング。やはり不安とか、家族に影響することにきちんと対応できるようなシステム、質保証が大事です。この人材育成という意味では、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーの育成は、私ども学会でもやっていますが、やはり遺伝学的検査の前後に遺伝カウンセリングをすることが必要であるにもかかわらず、全く保険収載されず、これは医師や病院のボランティアになっています。そういう点は、やはりこういう遺伝カウンセリングによって家族にも影響があるし、人生が変わるかもしれないということを医療が無償提供するというのは、非常に不合理な問題であると考えています。それから、ゲノム医療提供施設というのは、今、全国遺伝子医療部門連絡会議がありますが、やはり全国の、先ほどもありますように、大都市も地方都市もそういう対応ができる、均てん化が必要と思います。
それから4番が非常に重要なことだと思います。遺伝学的なことで差別が起こるということはあってはならないことで、これはやはり国民に対する遺伝学の教育が余りにも不足しているためで、それが差別につながるということになります。大体1人当たり数十個、今、次世代シーケンサーで調べると数十個のミューテーションを皆さんは持っているわけです。それが何か数十個のミューテーションをもって、みんな欠陥人間であるのが普通であると、遺伝学的に。それをまるでパーフェクトだというような形で差別が起こっているというのが日本の現状です。それに対して、やはり子供の頃からきちんと教育していく。ゲノムの教育ということ、啓発が非常に重要であると考えています。以上です。御清聴ありがとうございました。
○千葉委員長 ありがとうございました。ゲノム医療提供体制の全体的なお話と、東京女子医大の取組についてお話を頂きました。御質問、コメントありますか。
○本間委員 どうも今日は貴重な話をありがとうございます。1つ教えていただきたいのです。この症例の中の6歳9カ月男児に、先天性筋無力症候群の確定診断ができたと。これは、先ほどの保険収載にも絡むのですが、確定診断ができるまでどれぐらい期間が掛かったのか、それと費用はどれくらい掛かったのか、大雑把でいいのですが参考までに教えていただけますか。
○斎藤参考人 実は、この方は、生まれたときからほかの地方の病院でケアされていて、そこの大学病院も非常にレベルが高くて、出産直後から筋整形をしたり、遺伝学的検査もサンガーで一つ一つやって、大体10個ぐらいの遺伝学的検査をしてきたところで、診断がつかないということで私どもの所に相談に来られました。Targeted resequencingという74個を一斉に検査ができるような次世代シーケンサーでスクリーニングをして、そこでこの遺伝子が見つかったという状況なのです。ですから、初めからもしかしたらそれをやれば10万円ぐらいで済んだところが、筋整形して傷が付いて、それから1個サンガー。昔からずっと、この6年9か月間、診断に掛かってしまったという状況だと思います。
○千葉委員長 ですから、お値段も相当違っていることになります。ほかに何か。
○森委員 是非、患者に分かる言葉での説明を徹底していただきたいと思います。なかなかちょっとした医薬用語とかが入ると質問しにくいところもありますし、また、患者や家族の気持ちも揺れ動きますので、しっかり時間も掛けながら、その結果に結び付けていただきたいというのをお願いしたいと思います。
それと今、民間のほうで、例えば新聞のチラシ広告などで、遺伝子検査ができますなどというのも挟まれてきたりしていますので、その辺を非常に心配しているところです。こういうところは難病にもちろん限りませんが、チェック機能がどこかにあるのか、何か規制が必要ではないかというような、少しそのような不安を持っています。
○斎藤参考人 分かりやすさというのは、これは遺伝学的検査だけではなく医療全般において非常に重要なところだと思います。患者さんにとって分かりやすく話す、特に私ども遺伝カウンセリングをやっていく場合に、一番難解な言葉を一番分かりやすく話すということが、そのテクニックが最も重要なところと考えています。大体1人当たり、初診で1時間ぐらいは少なくても掛かります。1時間から1時間半、それからここに図もいろいろ入れていますが、図を使ってそういうパネルをお見せしながら。それからあと、患者さんが分かった気持ちで帰って、しかし家に帰ると分からなくなってしまうとなるので、全部カルテは実は開示しています。カルテのコピーも、遺伝カウンセラーが全部記録してそのコピーを渡すとか。それから、あらかじめ病気に関する説明文書を遺伝カウンセラーが作って、そしてそれも資料として渡して、そういうものを皆さんお持ち帰りになって家で見直して、それから絵を欲しいという方はカラーコピーでお渡しして、そういうもので御理解いただくことが非常に重要です。
私どもが遺伝カウンセラーをやってから気付いたことですが、遺伝カウンセリングをやって遺伝学的検査をしないという人よりは、する人たちのほうがずっと多いのです。して前向きにやっていこうということと、やはり繰り返し遺伝カウンセリングをすることによって疾患を受容していくというプロセスがあります。遺伝学的検査の結果が出たときに、何て言うか、とてもうれしそうな感じになるのです。やっと分かったかという感じで。ですから治療ができるというわけではないのに、非常に喜びに感じてくださるというところがあって、やはりそれは疾患の受容とイコールではないかと思います。
○千葉委員長 やはり分かりやすく説明するという意味でも、認定遺伝カウンセラーの養成というのが今後、恐らく非常に重要になってくるだろうと思われます。後の御質問については、むしろ厚労省のほうでしていただいたほうが。インターネット等とかで、遺伝子診断できますという宣伝をちらちら見受けるというお話ですが。
○斎藤参考人 私からでいいですか。DTC、ダイレクト・トゥ・コンシューマーと言って、唾液を使ったら、例えば才能が分かると、ある国からそういう勧誘のホームページがあったりという、非常に由々しきことだと思います。それから肥満遺伝子というのも、100kgぐらいある人がこのような細いバナナ形だとか、非常に間違っていることもあるし、エビデンスがまだはっきりしていない状態でこういうことをやっていくのは、非常に問題であるということ。これはゲノム情報のタスクフォースのほうでもそういう結論は出てきています。やはりそのときに厚労省としては、経済産業省は推進したいのではないかとちょっと感じてしまうのですが、厚労省としてはきちんと対応してくださると信じています。
○春名委員 3ページの所です。大変、革新的な診断治療がこの世界で進んでいるという、将来性があるのかと思ったのです。先ほど日本が遅れているというお話でしたが、例えば疾患の診断の所で、英国では492種で日本は36疾患ということ。ちょっと疾患と種類で違うのですが、これが実際のところはどれぐらいだとか。あとは、分子標的薬の所では40と62ですから、それほどでもないのかとか。
あと、一部の難病は単一の遺伝子が原因となるものだというお話でしたが、難病の中には、いろいろな遺伝子の変異が重なった形で、遺伝子の変異がありながらも、生活習慣病に似た外的要因が原因でというものもあるのではないかとか思うのです。そういう場合の、外国では疾患の予防で生活習慣病というだけではなくて、何か潰瘍性大腸炎だとか自己免疫疾患だとか、そういうのでのコホート調査だとかが行われているとか、何かそういうことはないのかと、ちょっと情報を頂けたらと思いました。
○斎藤参考人 この図では、日本で保険収載36となっていましたが、今は74ですか、増えているところなので、ちょっとこの図が古いかと思うのです。ただやはり、外国の3桁に及ぶ種が保険で支払われるというところと比較すると、まだ日本が大分遅れているということになります。ではどうしているかと言うと、今、研究費で支払ったり、それから患者さんから実費を自費診療として頂いたりと、医療の現場では、混合診療にならないような形で様々な状況になっているのです。恐らく国としては、指定難病はオーケー、全部保険収載になるのではないかと期待をしています。ただ、ここにあるような分子標的療法はやはりがんの治療ということで、非常にがんに関する治療は研究としても日本は進んできていますので、そういう点では外国に余り劣っていないのではないかと思います。
それから、先ほど御指摘があった単一遺伝に関しては、まだなかなかそれは全部クリアになっていないというところが、ゲノムワイドの解析をしてもまだクリアになっていないところがあります。その点、ここのオバマ大統領の一般教書演説のPrecision medicineでも、国民の10万人にDNAをみんな提供してくださいという動きがあって、10万人のコホートをやっているという。そうしたこともアメリカでは国の施策として調べていく。日本も幾つかそういうコホート研究がされ始めているので、今、急速にこの青の矢印が赤に近づこうとしているのではないかと思いますし、まずはそうしなければいけないと考えています。
○千葉委員長 ありがとうございました。最後が一番重要なので、そこで時間を掛けたいと思います。今のお話で、厚労省のほうは30何疾患を74と、実際、保険収載として、ついこの間増やしてきたという経緯もあって努力はされている、肩を持つわけではないですが努力はされていると私自身としては認識しています。それから、一言ですが、イギリスと日本はやはり保険制度が違うので、なかなか単純にこれは数で比較するのは難しいかと私自身も思っています。決して日本が非常に劣っているというわけではないという認識は私自身としては感じています。いろいろこれも御意見があると思いますが、最後の議題が一番重要ですので、次に移ります。
それでは続いて、難病の医療提供体制構築に係るモデルケースの骨子(案)について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○遠藤難病対策課長補佐 これまでこの委員会で御議論いただいた内容を参考にして、難病の医療提供体制の在り方についてのモデルケースの事務局案を作成いたしましたので、提示いたします。資料5-1については、これからまとめていき、次回の委員会で最終的に取りまとめますが、実際の報告書の文書の骨子になっていくものです。この概要を横長の資料5-2にまとめましたので、説明いたします。
資料5-2の1ページ目は、前回の検討会でもお示しした難病の医療提供体制の確保に関して、基本方針に記載されている目指すべき方向性をまとめたものです。これを基に、前回の委員会でも御意見を頂きましたが、それらを事務局のほうで集約して、新たな医療提供体制のイメージとして、2ページ目以降に事務局案を提示いたしました。
2ページ目ですが、前回の議論の中で、多様な難病患者に対応する紹介窓口の医療機関があったほうがよいということでしたので、連携の中心となる都道府県難病診療連携拠点病院を都道府県に1つ以上指定して、診断・相談機能と教育機能、そして情報収集機能を求められる機能として定めてはどうかと提案いたします。また、診療科、分野ごとに多様な窓口があってもよいのではないかと御意見も頂きましたので、この部分は難病診療分野別拠点病院を都道府県に地域の実情に応じて指定してもらい、診断・相談機能、教育機能を求められる機能としてはどうかといたしました。これら拠点病院の役割分担や連携は、従来からの難病医療連絡協議会を活用していただき、一般病院や診療所間との連携体制も構築していければと考えてはいます。
3ページです。平成25年の提言のときからもありました難病医療支援ネットワークを、先ほどの都道府県難病診療連携拠点病院とナショナルセンター、学会、研究班、IRUD、難病情報センターなどで構成し、全国的な支援ネットワークを整備していくことを提案いたしました。都道府県で診断がつかないときに、都道府県の枠を超えた連携を都道府県難病診療連携拠点病院をハブとして構築していくことを考えております。
これらの全体像を4ページにまとめて提示しました。4ページの図になりますが、2次医療圏に関しては、従来の事業や難病対策地域協議会を中心とした連携で、地域ごとに体制が構築されていると思います。こちらはこれを継続していく予定です。今回、新たに提案させていただくのは、3次医療圏の都道府県難病診療連携拠点病院と難病診療分野別拠点病院、また都道府県の難病診療連携拠点病院をハブとした難病医療支援ネットワークの整備になります。
5ページ目は実際の診断までの流れになりますが、ここでは拠点病院が中心となります。どの拠点病院がどの疾病を診断できるのかの情報は、難病情報センターなどを活用して、医療者だけでなく、患者さんにも分かりやすく公表して、それを基に紹介、又は患者さんが直接受診するという流れになります。さらに、極めて希少な疾患などで、拠点病院で診断がつかない場合は、ここをハブとして全国的な難病医療支援ネットワークにつないでいくということになります。
6ページですが、この都道府県難病診療連携拠点病院や難病診療分野別拠点病院については、先に述べたそれぞれに求められる機能を参考にして、各都道府県が地域の実情に応じて決定していくものになります。都道府県に応じて、幾つかのパターンが考えられるかと思います。
7ページです。今度は治療のほうですが、診断後、より身近な医療機関に逆紹介されるまでの流れをお示ししました。逆紹介時に大事なことは、前回、御指摘もありましたが、教育研修をしっかりやっていただくことになるかと思います。この図には記載されておりませんが、この教育研修は介護福祉等関係者や難病相談支援センターへの研修も必要かと思われます。
8ページです。この逆紹介の流れも、現在、構築されております地域の実情に応じて構築していくのが望ましいのではないかと考えております。
9ページですが、難病の医療提供体制が構築されたら、この体制の中で、小児慢性特定疾病等児童の移行期医療への対応も連携していくのが望ましいのではないかと提案したいと思います。事務局からは以上です。
○千葉委員長 資料5-1と資料5-2とありまして、これは資料5-1の部分を図式化したのが資料5-2ということで、資料5-2を基に御説明していただいたことになります。今後の取組ということで、大きく掲げて御説明いただいたことになろうかと思いますが、ただいまの御提案に対して何か御意見、御質問はありますか。
○福永副委員長 当初、委員会の中での総合型が結局、診療連携になって、領域型が分野別にほぼなったと理解してよろしいのでしょうか。今回こういう形で名称が変わったのは、何か意味があるのかどうか、もし分かっていたら教えてほしいのですけれども。
○徳本難病対策課長補佐 以前ありました総合型、領域型との違いなのですが、総合型、領域型を提案いただいた提言の段階から、306に増えた疾病の診療を総合型なりの拠点病院で見るのは現実的に無理だろうという御意見がありまして、基本方針の段階で全部を見るとかいうのではなくて、まず早期に診断をつけることが重要なのだろうということが基本方針に定められた。その内容に基づいて、前回43回で御議論いただいたところです。
ただ、43回の御議論の中で、3次医療圏、都道府県内の中で、窓口としての機能として拠点病院は必要だろうということは、皆さんの中でコンセンサスを頂いたところで、以前の総合型、領域型と絵図は似てはいるのですが、我々の求めているところの今回の都道府県難病診療連携拠点病院については、従前の総合型の診療をするというよりは、今回は診断に至るまでの相談窓口としての機能に着目した位置付けだということです。絵図としては非常に似てはいるのですが、求められている機能は違うものだと認識しております。
○鶴田委員 私はがんの拠点病院に携わってきた観点から、ずっと意見を言っていたのですが、厚生労働省のほうには拠点病院はいっぱいあると思うのです。がんの拠点病院とかエイズ拠点病院とか、肝炎とかある中で、みんな少しずつ違うのです。その比較表を作っていただけると、この問題もある程度分かるのかなと。現在、認知症の拠点病院と言いますが、認知症の拠点病院は診療所も入りつつあるのです。だから、がんを念頭に置いた拠点病院を難病の拠点病院と同じように言うと、患者さんは誤解するのだろうと思うのです。だから、がんほどの高度医療を拠点病院がするわけではないと私は思うのです。ある一部分だけを診る形だと思います。そこを含めて分かるようにしていただければ有り難い。
がんについては国が指定するのですが、これは都道府県が指定するわけです。だから、今度は都道府県のほうで指定するときに、国は難病の均てん化医療をしようとするのか、しないのか。そこの趣旨が都道府県への通知のときにしっかりしていないと、東京でも1つの拠点病院なのかと。東京は医科歯科はこの拠点、何々大学はこの拠点とした形で複数もあり得るのかどうかという、その拠点病院の考え方を国としてどうプレゼンテーションするかというのが、都道府県が決めるときの参考になると思います。
3番目は、本当にこの拠点病院を推進するとすれば、その推進体制、例えば補助金制度とか、何々拠点病院というのは、がんセンターの場合はヒト、モノとあるわけですから、そういう求められるものをどうするかを、補助制度も含めて検討していただきたい。
先ほど説明はされませんでしたが、資料5-1の整理の仕方は、これがもし認定基準というか、指定基準であれば、逆の書き方だろうと思います。今、説明されたような形での基準、例えば資料5-1の2ページに、より早期に正しい診断につなげる機能として、対象となるのは都道府県難病診療連携拠点病院と書いてありますが、難病指定病院はこういう基準だというほうが分かりやすいと思います。書かれている内容は、初診から診断がつくまでの期間をできるだけ短縮すること。あと、いろいろ書いてあることは当然のことだと思うのです。どの病院もそうすべき話が書かれてあって、拠点病院ではなくて、拠点病院においてはこういう条件を満たすこととか。これは理念だけなので、具体的なのですね。本来、診療ガイドラインに沿った診療を実施しなかったら今、裁判で負けてしまいますよ。だから、書き方が違うのではないかという気がします。
○千葉委員長 幾つか御提案があったように思いますが。
○徳本難病対策課長補佐 まず、がんや他の制度の拠点病院との整理については、これは最終的に我々は都道府県宛てに通知をして、来年度、各都道府県に体制をとっていただくということで進めておりますので、その際に各都道府県の皆さんに誤解を生まないように、そういった整理は必要だと思いますので、準備させていただきたいと思います。補助金なり、この取組をどう推進するかに関しては、それぞれの機関にどういった機能を、今、行っているものにプラス付加をするのかということに関わってくると思いますので、それについても当然この制度自身が平成29年度からスタートするわけではないので、どういった機能が付加されるのかに応じて、平成30年度からこの制度がスタートすると思っていますので、それに向けた取組は我々としても努力していきたいと思っているところです。
この資料5-1の書き方については、御指摘はごもっともな部分があります。ただ、一方、従前、医療計画の通知がこういった形で書いている部分もありまして、それと横並びにやらせていただいたといったところもあります。さはさりながら、この報告書はこの委員会で作る報告書ですので、皆さん方の御意見を聞きながら、分かりやすい形に組み直しをさせていただければと思います。
○千葉委員長 今のことですが、がんの拠点病院と常に対比されることが多いわけですが、おっしゃるとおり国が中心になっているものと都道府県が中心になっているものの差がありまして、今の制度でいきますと、先ほどのお話ではないのですが、都道府県ごとに特徴があるので、多分、厚生労働省としてはデフィニットにこれというように決めない、あるいは決められないという状況でお話が進んでいるのだと理解しています。例えば6ページにありますように、結局、ここで幾つかの提言をされているということで、これは私の意見ですが、ここはボワッとこんなのがあるよというのではなくて、もう少しファインな形で御指導いただけたら有り難いかなと個人的には思いますけれども。やはり人口100万と1,000万では、この図の中のどれに当てはめていくかというのは、自ずと変わってくると、私自身は感じています。
もう1つの予算面の件ですが、これはおっしゃるとおり、がん拠点病院は予算がちゃんと下りているというのに対して、こちらのほうはそういう予算付けがないわけではないのですが、基本的には少なくて本当にインフラを整備できるだけのものがあるかどうかというと、私自身も若干、疑問に思っていて、この点については施策問題として今後、継続していただく必要があるのではないかと思っています。ほかはいかがですか。簡潔にお願いします。
○小幡委員 資料5-2の目指すべき方向、これに尽きているのだと思いますので、正に早期の診断、身近な医療と3、4、5とありますが、このための提供体制のイメージが大事だと思います。5の所ですが、資料5-1の所には若干、療養環境整備の支援とありますが、資料5-2のほうには余りインパクトがあるような話が書かれていなかったので、こちらの方にも書いていただきたいということです。
それから、今日、参考人として意見を頂いた方々との関連でいきますと、目指すべき方向の4の所で遺伝子診断のことも書いてありますが、要するにゲノム医療というのは、ゲノム医療ならではのいろいろな課題、カウンセリングもありますし、倫理的な観点とかいろいろあるのですが、ここで難病の委員会として正確な診断のために遺伝子診断が本当に必要だということであれば、今の保険の話もありましたが、それはかなり前向きに早く取り入れる必要があると思うのです。ですから、難病としての観点から、ここのゲノム医療の切出しというのを適切に行っていく必要があるのではないかと思います。もう1点、大阪と富山の方から説明を頂きまして、皆さんしっかりよくやっていらっしゃると思うのですが、どういう都道府県かによって大きさとか人口に差がありますので、資料5-2の3ページの所の、都道府県の枠を超えた早期に正しい診断を行うため全国的な支援ネットワークなのですが、いきなり全国に行くのではなく、富山であれば、例えば金沢との連携と、もっと身近な所の広域的なつながりがあると思うので、そういうことも含めて考えていったほうがよいのではないかと思います。以上です。
○千葉委員長 ある意味、御提言というように理解しましたが、よろしいでしょうか。
○五十嵐委員 同じく1ページの所ですが、お願いです。3のトランジションに当たって、小児科と成人診療科と書いてありますが、できましたら小児系の診療科というように、つまり小児科だけで小児慢性特定疾病を診ているわけではありませんので、ちょっと文言を換えていただきたいのが1点です。
もう1つは5番目に就労のことしか書いていないのですが、我が国はOECDの中で、特に25歳以上で勉強している、学校に行っている人が少ないのが非常に問題だと。高等教育をもっともっとちゃんとやらなければいけないと叫ばれている時代なので、是非、治療と就学・就労と、就学も入れていただきたいとお願いしたいと思います。
○千葉委員長 これは御提言というようにお伺いします。ほかにいかがですか。
○本間委員 事務局に伺いたいのですが、3ページと4ページ、都道府県の枠を超えた全国的な支援ネットワークの整備と。これは非常に大事な話で、先ほどの富山と大阪の方のお話を聞いても、やはり枠を超えた提供体制が絶対に欲しいというわけですから、このネットワークを具体的にどのように構築していくのか。例えばデータベースを共有するのだとか、あるいは診療拠点を紹介するとか、具体的なイメージではどのように考えていらっしゃいますか。
○徳本難病対策課長補佐 難病医療支援ネットワークについての具体的なイメージですが、まず、ここに書いてあるNCとか研究班、学会、IRUD、難病情報センターと各都道府県の難病診療連携拠点病院で構成されるということまでは御理解いただいたと思うのですが、それを具体的にどうワークするかについては、これからの検討もあるかと思います。今考えているのは、難病情報センターに各都道府県の拠点病院などがどういった疾病を診られるかという情報を集約いただいて、逆に言うとそれを広く公表することによって、先ほど御意見のありました富山と石川の連携とか、石川と新潟の連携などは、ある程度、自然発生的にできるのではないかと思います。
しかしながら、かなり遠くにしか専門家がいないものに関しては、どこかが調整を図らなければいけないところもありますので、それに対して事務局機能が必要なのかどうかについては、これから関係学会等に御意見を聞きながらということになるかと思います。例えばある程度しっかりとルール作りさえすれば、都道府県の難病診療連携拠点病院が直接学会ととか、直接研究班とというやり取りを関係者の皆さんで合意を得られたら、事務局機能は必要ないですし、それではちょっと交通整理が必要ですよということであれば、何かしらの事務局が必要なのかもしれませんし、その辺はこういうネットワークに参加される皆さんの御意見をこれから聞いてからという形になるかと思います。まずはこの場におきましては、こういったものに関してどのように機能が必要なのかとか、大枠のことを御議論いただければと思います。
○千葉委員長 私は個人的意見としては、やはり交通整理の場所は是非必要だなとは思っておりますが、これは1つの意見として今後考えていただきたい。
○村田委員 同じく1ページですが、難病というと診断だけという感じで治療はないと思われる方が結構あるのですが、治療はかなり重要で、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けるのはいいのですが、やはり「専門医との連携でより身近な医療機関で」というように、そこは是非入れていただきたいのと、その気持ちが十分入っていないのかなと思われるのが7ページ以降で、立派な病院が診断をしたら下に下ろすようなイメージの矢印だけになってしまっているので、双方向の矢印を付けるという形で。どんどん新しい治療法が出てきますので、それを行って、また次の間、良い治療をしてもらって、その次に進めるというイメージを残していただければと思います。よろしくお願いします。
○徳本難病対策課長補佐 この絵図に関して、その双方向の矢印という御提案に関しては、またそれを反映させていただきたいと思います。本日ちょっと紹介しそびれている部分がありまして、今の専門医との連携における身近な医療機関での継続した治療に関しては、ポンチ絵の3ページ目にその他の必要な取組というものがあります。その他の必要な取組の○の2つ目、難病患者の紹介を円滑に進めるための紹介基準やフォロー項目をまとめた内容を各疾病の診療ガイドラインに記載することにより、より身近な医療機関で安心して患者が適切な治療を受けることができるような体制を構築すると。そういった枠組みも整備することによって、専門医、若しくは非常に珍しいものであれば研究班などがオーソライズした、学会がオーソライズした枠組みの中で、受け取るお医者さんも患者さんも安心して地域で、身近な医療機関で診療が継続できると、そのような体制を我々としても支援したいと思っております。
○森委員 モデルで示していただいている図のほうなのですが、紹介というところは非常に有り難いところで、患者からもこちらの移転病院のほうに受診という矢印も入れていただいています。なかなかうまくいっていない事例とか、様子を見ましょうというままで終わっていて、患者が非常に不安に思っているけれども、医師に紹介してほしいとか、紹介状を書いてほしいということすら言えない。そしてまた紹介状を書いてほしいと言っても書いていただけないという現状もありますので、そのようなところは都道府県で構築していただくときにも、こんな現状だというところがしっかりと伝わるように、何か伝えるところのまとめの文言の中にでも入れていただくとか、研修の中でも現状はこうですというところを加えていただけると有り難い。こういうものが伝わりやすいかなと思っています。
今、地域のほうでは、特定機能病院等がしっかりと根付いていると思いますので、そのような所がこれらの拠点病院や協力病院の中にしっかりと入り、この機会に、もっともっと難病に関心を持って入っていただけると有り難いですし、連携もしっかりとしていただきたいというところがあります。
もう1点なのですが、今、就労支援の点で、治療と就労の両立というところをはっきりとここに加えていただいたのはとても有り難いです。もう1つ、医療の面から見ても、療養生活を送る中で、福祉サービスの積極的な活用というのもとても大事な視点だと思うのです。この図の中では、もちろん地域連絡協議会の中にはそのような関係者等は入っておられますが、実施する市町村のほうであるとか、ほかの県のほうなどでもそうなのですが、まだまだ患者自身にもこのような難病の総合支援法などにかかるような福祉サービスが活用できるということすら浸透していませんので、このような図の中に就労支援のように1つ加えていただくことによって、随分意識付けもできるのではないかと思います。就労だけではなくて、福祉の面からの連携図を見ていっても、福祉の制度ではなかなか医療の面が見えてこない面もあるので、是非、難病法におけるこちらの医療提供体制の中にも、福祉支援というところを入れていただきたいと思いますので、是非、御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○千葉委員長 今の点はよろしいですか。
○徳本難病対策課長補佐 頂いた件に関しては、どのように対応できるか、また検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○春名委員 今回は骨子ということなので、最初の目指すべき方向で5つあるのですが、例えば1と4を合わせれば早期に正しい診断ができる体制ということだし、2と3と5を合わせれば、ここは要するに診断後に長期の療養生活と両立できるような治療体制ということで、この2点で5つが整理できるのではないかと思ったので、骨子という点で御検討いただけるといいのではないかと思いました。
それと、就労支援について、ハローワークと産業保健総合支援センターなどの機関が入っていますが、具体的な取組がなかなか見えなかったりすると思うのです。具体的に医療が関わる場面、課題ですが、例えば診断・告知を受けたときに、辞めてしまう人が多いので、そうではなくて、そこで治療の見通しをちゃんと示して、辞めなくていいのだということを情報提供すること。あるいは、事業主とかハローワークの人などが無理のない仕事や職場での留意事項の検討をする際に、専門医の方の助言やコミュニケーションが非常に必要であること。また、就業継続するときに体調を崩して仕事を休まれたときに、そこで辞めてしまうのではなくて、休職して復職できるように職場と医療機関で連携して取り組むとか、具体的な課題があるので、そこを確実にできるような体制ということで整理していただいたほうが、分かりやすくなるのではないかと思いました。
○上村難病対策課長補佐 就労支援について、何人かの委員の方から、もっと具体的なものをということでお話いただきました。5ページや6ページなどに就労支援ということで、一番右端にハローワークとか産業保健総合支援センターなどを書かせていただいて、連携をいたしますということだけお示ししているのですが、次回の委員会で、もう少し具体的なものをお出しするように準備をさせていただきたいと思います。こちらについては、職業安定局とか労働基準局が所管をしているものにもなりますので、こちらともよく相談をして、分かりやすいものを出させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○渥美委員 札幌の北大で膠原病の診療をやっております渥美と言います。最初のページなのですが、分野別拠点病院は高度の診療を提供するということでいいと思うのですが、連携拠点病院というのは名称を再考いただきたいと思います。都道府県に1個しかない拠点病院という名前があって、地域の医師会の先生方、あるいは一般の先生方はそこに患者さんを送ればいいだろうということになって、手紙をポンと書いて送ると。ただ、そこで診療をやっていないという現状があると、例えばオホーツクの小清水町から札幌まで、8時間の夜行バスに乗って患者さんが来るわけです。しかし、ここでは診療をやっていませんよということになってしまいがちなので、分野別拠点病院はがん拠点病院と同じだからいいと思うのですが、こちらの名称に関して御再考いただきたいというのが私の要望です。
○千葉委員長 御意見ということだと思いますが、よろしいですか。
○羽鳥委員 渥美先生のお話とも関係するのですが、がんと違って国のやる事業ではない、都道府県がやる拠点病院ということになると、今回みたいに疾患数も非常に増えて、対象疾患が増えると、疾患数が少なくてそれこそ100万人に1人とか、そういう疾患も当然出てくる。ただ、そういう人たちの診断がつかなくて治療開始が遅れてしまうということにもなりますので、そういう意味では本当はナショナルセンターが必要だと思うのですが、確かに対象疾患が少ないので、それはちょっと難しいということになったら、新しい仕組みの連携システム、新しい仕組みのナショナルセンターみたいな発想が必要なのではないかと思います。要するに80の大学があって、80の大学に306の疾患を全部扱えというのは難しいでしょうから、ここでは5つ、これを中心に診ていると。でも、こっちへ行けば、こうだ。そしてお互いにそれの情報を交換するシステムとか、お互いにやっている研究が見れるというか、成果を比べられるとか、そういうことができるような仕組みを作る。新しく箱物を作ると、また厚生労働省は何をやっているんだと怒られてしまうでしょうから、そういうシステムを作るという発想で何か考えられたらいかがでしょうか。
○徳本難病対策課長補佐 まず、渥美先生から御指摘いただいたような不具合を生じないように、名前をどうすればそれは生じないのかというのは、すぐに今ここの場ではアイディアが浮かびませんので、まずは皆さんからアイディアを頂きながら、そういう不具合が生じないように配慮したいと思います。
羽鳥委員からお話がありましたように、なかなか実際にナショナルセンターを作るというわけにはいきませんので、今の御指摘を聞いていて、全国的な取組としての難病医療支援ネットワークが成熟すれば、そういった機能になるのかなと思いますので、難病医療支援ネットワークの在り方について、今後また検討していく際の、未来像の1つとして御提案いただいたものと理解いたしました。ありがとうございます。
○本田(彰)委員 体制の所は大変よく構想が分かるのですが、実際にこれを動かしていくときに中心となるような人材、最後のほうで人材育成の所もお話がありましたが、その中でネットワークのほうで、難病医療連絡協議会のほうでは難病医療コーディネーターの名前がありますし、地域のほうでは地域協議会という所で、これが富山のほうで言っているような保健師の活動などがあると思うのです。この体制を動かしていくときに、これから役割機能として十分力を発揮してもらいたいような人材育成というところも、その位置付けのほうも、今後の体制を形作っていくときに表していただけると分かりやすいかと思います。
○徳本難病対策課長補佐 今頂いた御意見に関しては、拠点病院などの教育研修機能に依拠するものだと思っていますので、それはしっかりと報告書のほうにも明示していきたいと思います。また、どういう人材が何人必要なのかということに関しては、今すぐには規定することはできないかと思いますが、次回お示しする報告書の内容には、こういったデータはちゃんと皆さん取らないといけませんよねと。いわゆる拠点病院なり、協力病院なりを見ていくに当たり、こういった人材が何人要るかというのを、しっかりと指定する立場の都道府県などは把握しないといけませんよねということも、御意見を頂くことになるのかと思いますので、次回に向けて、また皆さんに御意見を賜れればと思います。
○大澤委員 ページ4の就労支援のハローワーク、その他のことが書いてある場所ですが、この中に当然含まれてはいると思いますが、実際にハローワークや産業医などで御活躍される方たちに、難病に関する研修・啓発といったことを、具体的に定期的にする必要があるのではないかと思います。
○上村難病対策課長補佐 今御指摘のありました産業医をはじめとする、企業内で労働者の健康管理を担う役割を持たられている方に対する研修については、労働基準局のほうで考えておられまして、当課としても難病について、きちんと知っていただくことが難病を抱えながら働いている方の両立支援に一番役立つと考えており、重要だと考えておりますので、そういった連携の在り方とか、研修・勉強会などの開催の方針についても、基準局と相談をしながら進めさせていただきたいと考えております。
○千葉委員長 よろしいでしょうか。いろいろな御意見が出ましたが、もっともな御意見ばかりだったと思います。今で306疾患、まだ増えようとしているわけで、そういう意味でなかなか難しいですよね。皆さんの御意見をお伺いしていると、だからこそネットワークは極めて重要。今日出てきたものをまとめますと、1つは拠点病院です。それから、分野別拠点病院、小児病院があります。9ページの左下に小児医療機関というのがあります。
もう1つは、もちろん教育病院等と一般病院という括りと、1疾患につき患者さん10人とかいう疾患も今後どんどん入ってくるわけで、そうしますと各都道府県だけではカバーしきれないというところで、この左上にある全国レベルの機関と。医療機関もそうですし、都道府県で分からない場合には、国がここ、ここと言う所で診てもらうという流れも必要。ですから、今挙げただけでも5つはあるわけで、この辺の相互のコミュニケーションがしっかり構築されることが極めて重要かと感じました。そういう意味で、それこそバーチャルネットワークにならないように、厚生労働省としては是非、制度が良くなるように考えていただきたいと思った次第です。
恐らく皆さん方の御意見はまだ十分出尽くしていないと思いますが、また御意見がありましたら出していただきたいということ。あと、1つ、ゲノム医療について時間がないということで、最後、尻切れトンボになった感があるわけですが、これは私見も交えますが、お話があったように治療に結び付くケースがどんどん増えてきているということと、発症予防につながるというケースも増えてきているという意味において、私は基本的にこの遺伝検査は推進する方向で行くべきだと考えています。斎藤先生が示された資料の21ページにありますように、それを補填する意味で、カウンセリングといったものをバックグラウンドとして、極めて重要に位置付けることが必要であって、これは両方併せて進めていくべきであろうと思っております。これは厚生労働省のほうでも、そういう方向で話を進めておられると思います。まだまだ御意見はあると思いますが、とりあえずはこの辺で終わらせていただきます。あとは厚生労働省のほうからよろしくお願いします。
○徳本難病対策課長補佐 皆様、御議論どうもありがとうございました。次回の委員会でも引き続き医療提供体制について議論いただいて、委員会としての報告書を取りまとめていただきたいと考えております。なお、次回の難病対策委員会の日程については、改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○千葉委員長 それでは、今日は長い間どうもありがとうございました。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(疾病対策部会難病対策委員会)> 厚生科学審議会疾病対策部会 第44回難病対策委員会 議事録(2016年8月31日)