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2016年10月21日 第4回新たな社会的養育の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局家庭福祉課

○日時

平成28年10月21日(金)9:30~12:30


○場所

TKP新橋内幸町 ビジネスセンターホール614


○出席者

構成員

奥山座長 松本座長代理 相澤構成員 井上構成員
加賀美構成員 上鹿渡構成員 塩田構成員 伊達構成員
西澤構成員 林構成員 藤林構成員

事務局

吉田雇用均等・児童家庭局長 山本内閣官房内閣審議官 川鍋家庭福祉課長
竹内虐待防止対策推進室長

○議題

(1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告
(2)論点の中の社会的養護に関する議論
  1)「家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう」に関する定義とそのあり方
  2)「できる限り良好な家庭的環境」の定義とそれを利用する場合の条件
  3)里親支援事業体制の在り方
  4)子どもの立場にたった継続性を重視したソーシャルワークのあり方
(3)関係団体等からのヒアリング
  1)前半
   ・全国児童相談所長会
   ・公益財団法人 日本知的障害者福祉協会
   ・全国児童家庭支援センター協議会
  2)後半
   ・公益財団法人 全国里親会
   ・一般社団法人 日本ファミリーホーム協議会
   ・特定非営利活動法人 キーアセット
(4)その他

○議事

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

それでは、定刻になりましたので、ただ今から第4回「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、山縣構成員から御欠席の御連絡をいただいております。井上構成員は、若干遅れて御到着されます。林構成員からは、11時半頃に御退席されるとお伺いしております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。配付資料につきましては、右上に番号を付しておりますけれども、議事次第がありまして、その下に資料1ということで横長の「各検討会・ワーキンググループの開催状況について」というもの。

 資料2が議論のポイントとして、縦長のもの。

 資料3が、林構成員、藤林構成員から御提出いただいた資料。

 資料4としまして、本日お越しいただいております関係団体の方から御提出いただいた資料。

 資料5としまして、奥山座長から御提出いただきました資料。

 参考資料としまして、横長のものが参考資料1ということで、第3回にお出しした資料に、養子縁組の関係で家庭裁判所別のデータを1617ページに追加したものでございます。

 参考資料2としまして、議題の(2)に関連します資料ということで、通知とか過去の専門委員会の資料を添付させていただいております。

 机上配付の資料といたしまして1枚の資料が、里親支援専門相談員に関する施設に対する調査案ということで、藤林構成員から調査をしてはどうかということで御提案いただいたものでございます。

 もう一つ、一時保護に関します調査研究の資料を机上配付させていただいております。

 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 それでは、これより先の議事は奥山座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○奥山座長 

事務局のほうでいろいろ資料をお集めいただきまして、ありがとうございました。

 早速、議事に入っていきたいと思います。

 議事次第に書かれてありますように、最初に、これまで他のワーキンググループがどのような形で進捗しているのかを御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 事務局でございます。

 資料1をご覧いただければと思います。左から2番目の欄、「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進のあり方に関する検討会」でございます。見ていただきますと、第4回ということで1014日に開催いたしております。

 特別養子縁組制度につきましては、児童相談所及び民間養子縁組あっせん団体に対します調査の調査票の案を提示いたしまして、その調査の内容につきまして構成員の皆様方に議論を行っていただきました。この調査につきましては、既に自治体宛に調査依頼のお願いをしているところでございます。

 司法関与につきましては、児童相談所の調査結果について、10月7日時点で回答があったものでございますけれども、事務局から御説明をさせていただいております。その後、調査結果を踏まえまして、制度全体のあり方と個別の論点につきまして、構成員の皆様方に議論を行っていただきました。

 第5回につきましては、ここにありますように1031日に開催予定となってございまして、司法関与につきましては児童相談所への調査結果について、まだ集計に至っていない児童相談所からの回答を反映した調査結果を御提示しまして、引き続き各構成員に議論を行っていただく予定としております。

 特別養子縁組につきましては、次々回、11月の開催の際に調査結果をお示しして御議論をいただく予定としております。

 その他、2つのワーキンググループについては、その後の開催はございません。

 私からの説明は以上でございます。

 

○奥山座長 

ありがとうございます。

 どなたか御質問はございますでしょうか。この検討会の構成員の方々が他の構成員を兼ねていますので、多分構成員のほうからも説明できる部分もあるかと思うのですけれども、御質問はいかがでしょうか。

 では、私のほうから。前回も申し上げたのですけれども、どうしても気になる部分があります。24ページ、一時保護の司法関与ですけれども、「2か月を超える一時保護」とありますが、これは延長の是非を問うということですね。その下に「加えて、親権者の同意がない2か月以下の」というと、一時保護の司法判断と延長の司法判断が同じラインに乗っているような印象を受けます。これは全然違う話だと思います。一時保護の司法関与と延長の司法関与は全くベースが違う話だと思いますが、なぜそれが同じラインに乗っているような形で書かれているのかということに関して、私は非常に不思議に思います。藤林構成員、いかがですか。どういう議論になっているのかというのを教えていただければと思います。

 

○藤林構成員 

前回、まだそこまで議論に達していなかったので、多分今後、ここに争点と書いてあるので、議論がされるのではないかと思います。

 

○奥山座長 

では、今後、そちらの構成員の間で議論がされることということですね。わかりました。その点も含めて御議論いただいておけばと思います。よろしくお願いいたします。

 他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 では、先に進ませていただきます。全体の進捗に関しましては、前回、予算要求のプロセスの状況のご説明と、こちらからの質問へのお答えをいただきましたけれども、全体の進捗に関しましては、またしばらくたったところで御説明をいただいて、議論をしていきたいと思います。

 きょうは、前回に引き続きまして、論点の中で少し早目に議論をしておきたい4つの項目の中の1番、2番に関しまして、引き続き議論を深めていきたいと思います。これに関しまして、前回、藤林構成員のほうからたたき台になるような御意見をいただきました。今回、林構成員のほうから資料を提出していただいていますので、御説明いただけますでしょうか。

 

○林構成員 

よろしくお願いします。

 前回、家庭養護の要件をどう考えるかという議論の中で、先日、私自身が「里親及びファミリーホーム養育指針」の総論の部分に、そのたたき台になるような文面があるので、それをたたき台にいただけたらということを発言させていただきました。

 事務局のほうからも、参考資料2で5番目のところ、P13から里親及びファミリーホーム養育指針をコピーいただいております。そこの18ページです。ここで、「家庭の要件」という形で5本柱がございます。私の本日の資料とあわせてごらんください。

 私の資料の「1.家庭養育(養護)の定義について」というところの下の(1)、1~5がこの18ページの1~5をコピーしたにすぎないものです。だから、そこは皆さん御存じのことかと思いますが、そこに書いてあるとおりです。

 上の「家庭養育(養護)の定義について」というところの黒丸のところは私自身の感想です。特に、家庭のあり方というのが多様化する中で、ごく当たり前の生活というものがこの里親・ファミリーホーム養育指針の中でも頻繁に使われているわけですが、何をもって当たり前の生活として捉えるのかというのは、ある程度養育観とか家族観の違いというところで認めていかざるを得ない面もあるのではないか。

 ただ、黒丸の2つ目で、「里親・FH養育指針」の総論に記載されている、以下の「家庭の要件」を養育に限定した、あくまでも要件であると。これを作成するワーキングの中で、里親家庭以上に意外と施設養護で家庭を意識した取り組みというのは行われているということを実感しました。

 特に、「例えば」というところですけれども、子どもの自己所有観とか自己領域の確保、里親さんの中に個室が確保されていないとか、あるいはマイ茶碗とかマイ箸がないとか、そういう自己領域とか自己所有観というのは大切だけれども、そういうあたりは各家庭の養育観に委ねていくべきではないかという結論に至ったように認識しております。

 そういう部分を除いて、養育は最低限何が必要かというのが1~5、特に前回藤林構成員のほうから、地域の中に存在するということの意味を家庭的養護を含めて考えていくというのは非常に重要な視点かなと思います。

 私も先日、この5月に川崎市のある全面建て替えをした施設を訪問してきましたが、1棟丸ごとのマンションが施設なのです。そこを家庭的養護として運営されているということに対して、こういう使われ方というのはどうなのかなと。新たに何億というお金をかけて、マンション1棟の施設でユニット制にしているというあり方、そういうことに対して非常に疑問を感じることもございました。地域に存在というところをどういうふうに捉えていくか、家庭的養護を含めて検討する余地があるのではないかということです。それが1つ目です。

 それから、前回、私のレジュメの2ページですけれども、「FHのあり方について(10/7の議論を踏まえて)」というところです。実際、省令とか局長通知によってファミリーホームの事業者の規定というものがなされているのですが、前回、職員の通いによるファミリーホームという話があったのですけれども、職員には養育者と補助者がいて、養育者の通いというのは、この通知で言えば認められていないわけです。でも、そういうことが起こっているという現実もあるのだという構成員からのお話もありました。それはこの制度の問題というよりは、この制度の運用の仕方、あるいは指導、あるいは監査の問題ではないかと認識しております。

 つまり、この通知に基づきますと、まず1、私の下線部分です。「養育里親として委託児童の養育の経験を有する者」がするということが1つ目の要件でした。2つ目として、施設が運営することも認めましょうと。ただし、そういう者が養育者となり、「自らの住居をファミリーホームとし」ということですね。だから、自分の家庭をベースとするということが規定されているということです。3として、NPOとかを含めて、児童養護施設が運営するものを含めて、「法人が、その雇用する職員を養育者とし、当該法人の職員が提供する住居をファミリーホームとし」ということですから、基本的に養育者が通勤でという形はここでは認められていないのではないか。

 その職員と言われる中の養育者の要件というのは、以下の1から3にかけてです。1、2は里親登録というところが要件になっている。3は、特に問題になるところ、児童養護施設等において児童の養育に3年以上従事した者。単身でNPOとかを運営されている方、あるいは施設においてもこういう方々が多いのですが、そういうあり方をどう考えたらいいのか。施設経験イコール家庭養護の養育者として捉えていいのかという問題提起です。その具体的提案については、後でお話しするとして、3ページ目の職員体制がどうあるべきかというのが(1)~(3)、通知で規定されております。

 まず、一般の里親家庭がファミリーホームを養育するような形を想定して、「2人の養育者及び1人の補助者」という書き方ですね。(2)で、それ以外の形です。後半部分です。「1人の養育者及び2人以上の補助者」。あくまでも、(3)で、「養育者は、当該ファミリーホームに生活の本拠を置く」ということで、住み込みでもない、通勤でもない、そこを本拠地とするということが規定されております。

 こういう規定を踏まえて、「提案」というところですけれども、施設勤務経験をどう捉えるか。家庭養育において強みとなる場合もあれば、そうした経験が弱みとなって不調に至るケースというのはよく聞くところです。

 「したがって」というところです。「したがって上記の養育者の要件3については、検討の余地があるのではないか」、つまり児童養護施設等の経験が3年以上というところです。

 提案としましては、ファミリーホームの養育者の要件に、里親登録を義務づけられないか。そうしたことにより、施設養護経験者の家庭養育固有の価値、知識、技術の修得が促進されるとともに、施設が運営するファミリーホームの養育者が里親登録することで、施設側の職員の里親に対する認識を深め、施設と里親の架け橋として施設自身が機能することも促進されるのではないか。ただし、施設実習は免除ということもあってもいいのではないか。

 こうしたことは、前回問題となっていた通いという形ですね、上記の職員に対する(2)や(3)についても里親登録に際して詳細な調査がなされて、審議されることで、より厳格な運用というものが促進されるのではないか。特に調査過程で同居予定である居住者全員に会うとか、あるいはそういう人たちの意向の聴取や親族の理解や住居のあり方などのチェックなどがなされ、家庭養育としての適格性というのがより判断がなされ、その適切な家庭養育の具体化が促進されるのではないか。

 大分県など、先ほど藤林構成員のほうの福岡市もそうですけれども、里親型のファミリーホームしか認めていないという国基準を厳格化して運用している実態もあるということを考えると、このあたりは検討の余地があるのではないかということです。

 3に関しては、ちょっと話題が違うのですけれども、ここでとめておいたほうがいいですかね。

 

○奥山座長

 よければ、提案だけ、先生の思っておられることを。

 

○林構成員

 現実の長期里親というのをどう捉えるか。我々は、リーガルパーマネンシーというものを最終的なパーマネンシー保障の中に位置づけていく。乳幼児に限らず学童期も含めて、法律的な安定に基づいた親子関係を提供することが大切だという合意は得たと思います。しかし、現実には長期里親が養子縁組の代替的な機能を果たしているという側面もあるということです。つまり、子どもの年齢によってダブルスタンダード的に考えざるを得ない状況をどう捉えるか。アメリカやイギリスというのは、どんなに長くても2年ぐらいの里親を養子縁組していく。中にはそれが無理な場合もあって、長期里親を認めるというのはあるのですけれども、積極的に長期里親を認めるということは、どう考えたらいいのかと。

 前回のヒアリングの中で、非常に意義のある発言をいただいたと思うのですけれども、その中のお一人が小学校1年から里親に措置されて、二十まで措置延長されたと。大学進学で措置継続云々ということで都とすごくもめたという話をされていましたけれども、そもそもそれが縁組だった場合、そういうもめ事もあり得ない。では、どうして里親さんが縁組を組まなかったのですかというのをその里親さんに尋ねなければわからないところなのですけれども、最後のところはやはり経済的な面というのも大きいのではないかなと思います。要保護児童を対象にした、例えば児童相談所を通して縁組をするというケースに関して、養育費の補助等を含めて縁組促進に向けた何らかの施策が必要ではないという一つの提起です。

 以上です。

 

○奥山座長 

ありがとうございます。

 藤林構成員のほうからの資料に関してなのですけれども前回、時間的に御説明いただけなかった部分が里親支援のところだと思うのですけれども、今の長期里親の件に関して何か御意見はございますでしょうか。

 

○藤林構成員 

長期里親の話に入っていいですか?

 

○奥山座長 

とりあえずここでその部分を合わせておきたいと思っています。

 

○藤林構成員 

わかりました。いろいろな場面で長期養育里親と養子縁組の違いを明確にしていったほうがいいのではないかということは今まで発言してきましたけれども、今の林構成員の意見に加えますと、私は経済的な要因も確かにあると思うのですけれども、それだけでなくて、児童相談所の側にパーマネンシーに対する意識がまだ十分浸透していないというのもあるのではないかということと、養子縁組を組むか組まないか、6歳以上の場合には普通養子縁組になってしまうけれども、結局、それは里親さんに委ねられてしまっているというところがあります。児童相談所がもしパーマネンシーに対する意識を持っていたとしても、そこを里親さんに、例えば特養の場合には申し立てをしませんかというふうに言うことはあっても、最終的にはそこは里親さんに委ねられているという法制度上の限界もあるのかなと思います。

 以上です。

 

○奥山座長 

ありがとうございました。

 そうしましたら、私のほうもで皆さんの前回のお話をもとにまとめた資料5というのがありますので、ちょっと御説明させていただきたいと思います。

 ここは、とりあえずパーマネンシーのことを考えることも含まれてはくるのですけれども、まず改正児童福祉法第三条の二、ここに書かれているように、「児童を家庭において養育することが困難であり又は適当でない場合にあっては児童が家庭における養育環境と同様の養育環境において継続的に養育されるよう」と書かれています。その次に「児童を家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合にあっては」「児童ができる限り良好な家庭的環境において」という、この下線の3つを明確にしておかなければいけないだろうと考えています。

 そのためには、先ほど林構成員のほうからもおまとめいただいたのですけれども、理念として、家庭の機能とは、家庭とは何を指すのだとか、家庭の養育という条件、それから施設の機能、そして、家庭と施設がどういうふうに社会的養護をよい形にしていけるのかというところを、理念としてまとまらなければいけないのだろうかと思いますが、ここは皆さんと今後議論してまとめていければと思っております。

 次に、先ほど林構成員がおっしゃったように、ファミリーホームがどうもいろいろな形があるらしいということが前回議論になりました。事務局からお出しいただいております参考資料2の11ページ、「ファミリーホームの形態について」という絵があります。これを見ますと、こういう形態が今存在するということになります。

 実は、この後のヒアリングでファミリーホーム協会の卜蔵さんがお話しいただく資料の中に、どんな形のファミリーホームがどのくらいあるかという調査結果があるので、そこでまた御質問させていただければと思ってます。

ファミリーホームの形として、自営型として里親さんがファミリーホームを開く。それから、施設の職員が施設から独立して自営型として開くものに、この3種類ある。法人型というのは、施設を経営する法人がその職員を養育者・補助者として行うものという形になっているわけです。

 この中で一つ問題があるとしたら、法人型の中の1人の専業養育者がそこに居住していて、補助者がついて運営するというファミリーホームです。その場合、もともとの家庭ではなく、住み込みという形になる可能性がかなり高いのではないかなと思いますが、地域小規模の住み込み型とどう違うのか疑問です。

 林先生、先ほど、住み込みとそこに居住しているというのは違うのだとおっしゃったのですけれども、どうでしょう。

 

○林構成員

 そうなのです。だから、そこを里親登録を義務化することによって、養育者にとってきちっとした居住としての機能を果たしているかという確認がない中で、別宅に実子と自分の奥さんがいるみたいな、そういうものを多分奥山座長は言われていると思うのです。その辺を意識して、国はあくまでも自分の家庭に迎え入れるということを規定しているわけですけれども、逃げ道というものがあるのかと思います。だから、そこは都道府県のきちっとした指導・監査というあたりで、里親登録のときにきちっと見きわめるということでしか成り立たないのかなと思います。

 

○奥山座長

 御自身の御家族が別にあるという場合もあるかもしれないのですけれども、単身者で比較的若い方がそこに住まわれていて、そして何人か補助者がいるという形だとしたら、住み込みでやっている地域小規模と余り変わらないのではないかなと思いますが。

 

○林構成員

 あなたの住民票がどこにありますかと、そのレベルでしか確認はできないのではないかなと思います。

 

○奥山座長

 その辺、加賀美構成員、伊達構成員、いかがでしょうか。

 

○加賀美構成員

 もともとファミリーホームを施設型ということが起こってきた背景というのは、3分の1、3分の1、3分の1という構造をつくって将来像を描いていったという中で、3分の1の促進を図るという意図がやや働いていたのではないのか。つまり、施設型ということで、施設の職員が住み込むか住み込まないかは別にして、ファミリーホームができるという構造をつくったというのは、そもそもが急ぎ里親制度を推進するという、やや意図的戦略の中でそういう構造がつくられたのではないかと私は認識しているのですが、いかがでしょうか。

 

○奥山座長

 伊達構成員、その辺の違いをどう考えるか。

 

○伊達構成員

 大変大事なところで、課題と将来像と同じような意味合いで、家庭環境と同様な次の設定、それから最後にできる限り良好な家庭環境というような、3つの段階に分けていますよね。その部分を形の問題ではなくて、一次予防、二次予防、三次予防というふうな、もっと全体のシステムとして考えるという捉え方をしないと、形でどこが違うのかということだけをいくらやったとしても、現実的には個々のケースで、例えば今お話しになりましたように、折り合いが本当に悪くなってしまったら、家族の人たちは一時期ファミリーホームからしばらく出て、そしていい状態になったらまた一緒に暮らすということもあり得るわけですから、そういうことを考えると、その段階で形が違うという話をしてもしようがないので、そこら辺の進行に関するコントロールをどうするかという問題を同時に考えていかないと、形のところだけでは決め切れないと思います。

 だから、パーマネンシー概念も、その初期設定さえしっかりしていれば、その後、問題は出ないというふうには考えられないわけですから、我々現場から言うと、とにかく出会った子どもを何とかつなぎとめていくということでやっている仕事も多いものですから、それを考えると、初期条件をどうするかということは大事なのですけれども、そこのくくりと、それから進行上、どういうふうにその子どもたちの帰属意識をつなぎとめたり、育てていくかということをどうやったら図れるかということを同時にやっていかないといけない作業になるのではないかなと思っています。

 ちょっとうまく説明ができなかったかもしれません。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 今のお話になると、どちらかというと、専門委員会で出ていたオフステッドのような評価システムをきちんとしていかないと、その子たちにとって最良の社会的養護になっているかどうかというのが見えてこないのではないかなと思うのですけれども。

 

○伊達構成員

 そうですね。ちょっと後から整理していただきたいのですけれども、3年前に大阪で里親さんの世界大会があって、そこで基調報告をしてくれたデビッドソンさんという方がいらっしゃるのですけれども、この人がいわゆるスコットランドのCELCISのメンバーみたいなのです。向こうのほうも、読んでいると、里親さんはいいと言いながら、実際は里親さんでやっていけないケースがどうしても出てくるものですから、それをどういうふうにして壊れないようにやっていったり、つなぎとめていくかというところに大きな課題があるので、その形の問題はかなりファジーになってしまうというか、そこら辺はやむを得ないことだと書いてありますけれども、そこら辺は大事なことで、私は大きな施設に戻ればいいなと全然考えているわけではないのですけれども、そこら辺をやっていくとすれば、施設機能もあわせて考えていかなければいけないので、そういう議論を何とか深められれば思います。

 

○奥山座長

 上鹿渡構成員。

 

○上鹿渡構成員

 奥山先生が提示してくださった家庭とは何を指すか、特にファミリーホームの中でも、家庭のようなものと施設のようなものの違いについてどう考えるのかについてですけれども、まず家庭というとき、どういうものを家庭と言うか、私は子どもが家庭だと思うかどうかがとても大事で、大人はいろいろなことで家庭というものを定義するわけですけれども、それを子どもが家だと思うことができているか、自分が帰ってくる場所だと感じられているかどうかが重要だと思います。 

ただ、問題は社会的養護下にある子どもが何を家庭と思うかとなると、今、措置されている子どもたちの多くは虐待を受けていて、しかもネグレクトがかなり多いという中では、もともと何が家庭かがわからなかったり、ゆがんだ形で家庭を理解したりしているかもしれません。実は我々が家庭だと示すものがその子にとっての家庭を意味することにもなるというわけで、すごく重要なことを今議論していると思います。

 社会的養護当事者の方が子どものころから施設で暮らしてきた中で施設に求めていたものとしておっしゃっていたことに、「ずっと一緒にいてくれる人を失った子どもが、ずっと一緒にいてくれる人を得られる場所であってほしい」という言葉があります。それは本当にいろいろな意味で「ずっと一緒に」という意味だと思うのですが、心の中でずっと一緒に居続けてくれる人という意味でもあるかと思います。社会的養護下にある子どもが求めていることとしてこのような認識もとても大事で、それを形にしようと思うところに、パーマネンシーの問題や、今回、奥山先生がまとめてくださった1ページにある、家庭をどうとらえるかという問題を検討する必要性がでてくるのだと思います。特に、奥山先生が指示してくださった家庭型ファミリーホームと施設型ファミリーホームのそれぞれ3のところは、運用のレベルでは、施設側が人事異動を想定するかしないかというのは、すごく大きな問題で、人事異動が想定されないとなると、つまり、あなたはずっとここでやっていくのですよという意味合いで現場レベルでは了解が得られているとしたら、その職員はずっとそこにいる人となり子どもたちと一緒に過ごすことができるのかもしれません。      私は施設型ファミリーホームに関して、このようなことをこれまで考えていなかったのですが、人事異動の有無について明確にしておくことは、その後の個々のホームの展開に実はかなり大きな違いをもたらすのではないかと今回考えました。これをどこまで明確に示すかは、難しいことかもしれませんが、このような意識を明確に持つことは、子どもにとっての家庭とは何かという視点からは、大事なことだと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 先ほどの伊達先生がおっしゃっていることはすごくわかるのですけれども、最初から枠組みをぐずぐずにしてしまうと、最初からぐずぐずになってしまうのではないかという不安があって、この3つ、家庭と同様の養育環境、できる限り良好な家庭的環境というのと、その1番目に入れない条件というのは一体何なんだということを明確にしておいたほうが、いいのではないかなと思ったのですけれども、その辺、皆さんの御意見はいかがでしょうか。

 藤林構成員。

 

○藤林構成員

 何をもって家庭と言うのかというのは、非常に線が引きにくいところなので、私は林構成員が言われた、里親登録をし、里親研修を受け、認定されていく方が開くファミリーホームをとりあえず家庭養育と呼んでいいのかなと思います。

 たまたま昨日、私の職場に今年度行われたファミリーホーム全国研究大会の大会報告書というのが来ていまして、横浜大会なのですけれども、公開討論会で創設にかかわった当時の家庭福祉課長の藤井さんと専門委員会の座長であった柏女先生の討論がありました。藤井さんは、これは里親の延長線であると理念として思ってきたけれども、柏女先生はここでざっくばらんに、里親委託率を3倍にするためにはファミリーホームが1,000カ所必要になりそうで、そのためには法人型の必要性も視野に入ってきたと言っている。ちょっと理念から外れて、里親委託率を増やすために増やしてしまったなというところを考えると、私は原点に戻ったほうが、この間の経過を見ても、いいのではないかなと思います。卜蔵さんがいらっしゃらないので。

 

○奥山座長

 後ほど、卜蔵さんが来られると思うので、伺おうと思います。伊達構成員、手を挙げておられた。

 

○伊達構成員

 ぐしゃぐしゃになってしまう危険性は本当にあると思うのです。それはよくわかっているのですけれども、そういうふうな予防の観点の次元の違いとして一度整理をしておかないと、居住場所がどういうところであるべきかということと、支援をどうしなくちゃいけないかということと、その2つの層を整理できないと思いますので、居住場所が全てを決するわけではなくて、居住場所が危うい場合には支援が強力にバックアップするということが当然やられるべきだと思いますので、その2つを見ながら、同時に家庭とか良好なということと、それからできるだけということを分けていくことが必要なのではないかと思います。

 

○奥山座長

 この次に里親支援の方の話をしようと思っているので、支援の話に行って、また戻るということもあるとは思いますが、例えば県がファミリーホームを許可するということを考えると、ある程度条件を明確にしておいたほうがいいのではないかと思いました。

 加賀美構成員。

 

○加賀美構成員

 話を戻すようなことになってしまわないかと、ちょっと危惧したのですけれども、先ほど上鹿渡さんから、子どもにとってどうかという話が出てきたのですね。そうすると、そもそも里親も施設も全て社会的養護だという基本のラインの中で物を考えなければいけないのだろうということを改めて思っています。だから、これは形式的な意味合いで、どこで線切りするかというレベルの話になるのではないかなと思っているのですね。

 子どもにとってみれば、どちらも結局実の親から分離されて保護される場所なのです。そういうことを前提にして、ただ、子どもの養育にとってどうかという観点で、そもそも家庭的、あるいは家庭に近いという環境という言いぶりになってきたのだろうと思うので、そこのところを少し整理しなければいけないのだろう。

 そういう意味では伊達構成員の話とかぶってしまうので、また話がごちゃごちゃしてしまうのですが、そこを含めてはっきりとした整理をするのであれば、明確に里親という仕組みが今あるわけですから、里親という仕組みにきちっと収れんして、そのことを整理するということで、施設型のものは一旦どこかで整理をつけないと、何を基準にするか全然わからなくなってしまいそうなので、そのことを含めて整理をしたほうがいいような気がしております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 西澤構成員。

 

○西澤構成員

 さっきから一生懸命頭の中でまとめようと思ってもまとまらない、ごちゃごちゃの議論になっているなというのが印象です。

 1つは、里親委託率を引き上げねばならないという行動指針を満たすためにどうこうという話はもう置いておきましょう。それは子どもにとっては何の意味もないので、国が国連に対して自分達はしっかりやっていますということを言うだけのことなので、それはもう議論の外でしょう。

 それから、ファミリーホームというのは海外にあるのですかという疑問があって、私のアメリカの経験では、ないです。あれは結局、里親を増やすというか、里親での養護を受ける子どもを増やすための苦肉の策だろうと思うのですね。要するに、里親さんのところに子どもたちを数名置ける。それは苦肉の策なのに、そこにまた施設型という苦肉に苦肉を次ぐというのが、本当に情けないなと言わざるを得ないと思うので、それは加賀美先生が今言ったみたいに、整理しなければいけないだろうなと思います。

 そういう意味で、子どもの立場から、子どもにとっての家庭とはということを言われたので、林先生が出しておられるようなこういう基準、里親登録もすべきだみたいなところを含めて型にはめていくというか、そういうふうに考えたほうがいいと思います。子どもにとっての養育者の永続性をどれだけ担保するかとか、生活をともにするということをどう担保するかというところで考えればいいことではないかと思います。

 また、都道府県がというのも、都道府県が勝手にできるというのも困る。例えば大分なんかはとおっしゃいましたけれども、国がオーケーと言っていることを都道府県が拒否するという、これはどうなのかなと思います。例えば親族里親制度ができたときに、東京都は親族里親は認めませんと言っていたわけですから、これで全国統一の基準になるのかというのがちょっと疑問な点です。

 

○奥山座長

 大分の井上先生。

 

○井上構成員

 大分の話よりも、私は上鹿渡先生、西澤先生、加賀美先生が言ってくださいました子どもの視点からという話で、少しお話ししたいと思います。

 今回一番大事な点は、子どもの愛着形成の発達上で何が必要なのか。そのときに、安全基地としての機能を持つ家族というものをしっかり考えていきましょうというのが前提でないかと思うのです。

 それで、大ざっぱにお話ししますと、最初の5歳までは、子どもにとっては、お母さん、自分というしっかりした1対1の関係というのがあった上で、次が5歳から8歳ぐらいまでのところに、そのいい形でできた安全基地を前提とした上で、少し自立的な行動が始まってきて、自分自身の動ける範囲というものを安全基地があることをもとに確認するという作業が出てくる。そして、今度は8歳から15歳ぐらいまでになって、それをさらに堅固に確かめるような行動として第2次反抗期が入ってきまして、そこでも絶対安全基地が崩れないのを確認した上で、子どもたちはリービングホームのテーマに入っていく。家を出ていくことに入ってくる。自立に入ってくる。

 そういった大まかなラインのときに、それをこの子どもさんに対してどこの施設がどんなふうにやれるかということを判断しながら選んでいく。それが私たちがしなければいけない仕事ではないかなと思っているのですね。

 施設の対応の形のパターンは、多分いろいろな自治体でばらばらだと思うのです。だけど、その中で、この子にはこれが必要、これだったらここがありますというような格好で選んでいけるような制度も考え方として必要なのではないかなと思いましたのでお伝えします。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 どこでお子さんが生活するのがいいかということを考える上でという形でしょうね。

 まず、私の方のこれを説明させていただこうと思います。先程中途半端になってしまったのですけれども、先程の資料の図の11ページを見ていただければと思います。まず里親型のファミリーホームは当然家庭型でいいだろうと。それから、独立の自営型というのも基本的にはいいのではないかなと思いました。ただし、先ほど林先生がおっしゃったように、こちらも里親登録をしていただいて、きちんと見ていく必要があるでしょう。

 私が何で単身者で法人型が問題と思うかは、先ほど住み込みとどこが違うのかというお話もしました。加えて、例えば夫婦で家庭を営んでいた、そこにお子さんを迎え入れましょう、それは子どもを迎え入れることによって家庭が少し変わっていったとしても、家庭に子どもを迎え入れたことになります。しかし、単身者がお子さんを迎えて家庭をつくりましょうというときは、そこで家庭をつくることになります。そのときに、法人の職員として五、六人一遍に子どもたちが来て家庭をつくるという形になるのだろうかというのが、私は非常に疑問に思いました。里親登録することが前提であれば、里親型ファミリーホーム、それから独立自営型ですね、11ページの2のラインは家庭型と言ってもいいのかなと思いますが、施設型の中で、単身者は無理なのではないかなと思ったのが1つ。

 もう一つは、施設の敷地の中に建物を建てて、そこに住まわせてというのは、これはちょっと話が違うのではないかなと思いました。ここに書いてあるのは、本体施設と同じ敷地、もしくはお隣にいて、食事のときは施設に来てできるような形でやるのだったら、それは家庭と同様の環境と言えないと思って書いています。

 さらに、「家庭と同様の養育環境」というのは、特別養子縁組、普通養子縁組、親族里親、里親・専門里親家庭、そして1ページ目にある家庭型のファミリーホームで、これは里親登録を原則とするとした方がいいのではないかと書かせていただいています。

 「家庭及び当該養育環境において養育することが適当でない場合」というのは、どんな場合かということを考えると、これはアバウトになるのですけれども、心身の問題があったり、行動の問題があって、家庭環境では対応が困難と考えられた場合。あるいはお子さんが家庭環境に抵抗感が強くて、最初はなかなか難しい場合。あるいは、これは現状では致し方ないと思うのですが、「家庭環境と同様の養育環境」が提供できない場合。幾ら提供できると言っても、北海道の子どもが九州に行かなければ提供できないのでは、これは困るので、そういう場合には「できる限り良好な家庭的環境」ということで対応するしかないと思います。それはどんなものかというと、「できる限り良好な家庭的環境」ですから、さっき分類した施設型のファミリーホーム、この名称はこのままでいいのかどうかは置いておいて、今の分類でいけばそういうもの。それから、地域小規模。それから、小規模グループケアの分園型。これも前回何回かお話ししましたように、私には2番と3番というのは子どもの側から見て何が違うのかというのが全くわからないのです。もうこれは統一してしまってもいいのではないかと思っています。

 そして、もう一つ新しく考えてもいいのではないかと御提案させていただきたいのは、社会的養護を職業とする里親・ファミリーホームです。現に出てきているわけですから、それを規定しておいたほうがいいのではないかと思います。要するに、御夫婦が社会的養護をすることだけが仕事になっているファミリーホームがあるとすれば、現にあるのだと思いますが、職業里親というのがあっても構わないのではないかと考えます。夫婦が里親だけをしている里親さんですね。そういうことを考えた上で、そういう職業にしているようなファミリーホームや里親さんたちには、できるだけ困難なお子さんたちもそこで家庭のケアを受けられるようにしていただきたいと思います。例えば現在、夜中に何時間かおきに起きて痰の吸引をしなければならないような医療的ケアを受けているお子さんも家庭で過ごしているわけですよね。社会的養護になったら、もう家庭では過ごせないのだということはやはりよくないのではないか。そういうお子さんも含めて里親ケアをやれるような形をできるだけつくっていったほうがいいのではないかなと考えて提案させていただきました。

 また、先ほど施設と家庭養護が共同していくということを考えると、施設がどんな形になっていったらいいのだろうかということも将来を描くべきだろうと思います。大人数の施設というのは、治療を目的としたような形に持っていくのが一番いいのではないかなと思って、ここに書かせていただきました。これも非常にアバウトなのですけれども、書いておきました。

 今後の方向性として、私が考えたことを書きました。皆さんにもご意見をいただきたいのです。内容としては、情緒障害児短期治療施設とか児童自立支援施設というのは、もともと治療型という形で考えられているので、治療型施設として機能するが、できるだけ治療型施設は一時期治療のために入所して、できるだけ家庭、もしくは家庭的なところに戻せるような形をとったほうがいいのではないかと。そして、乳児院と養護施設に関しては、ユニット型を含む本体施設、本体施設は治療型施設にできるだけ移行することも念頭に考えていただければいいのではないかと思ったのです。

 前回、藤林構成員の方からだと、大型施設はもうなしにするというような国連の方向性が出ているという話だったのですけれども、日本の中では現実にあるものをどう考えいくかとしたら、将来的にはこんな形なのかなと思って考えたというのが私の案ですので、皆さんでたたいていただければと思います。いかがでしょうか。

 林構成員。

 

○林構成員

 2ページの3の1、これはよく言われることだと思います。それから、3ページの6.治療型施設、これまで言われてきたことです。いくつかの都道府県の自治体の社会的養護の推進計画の中にも、乳児院が望ましい子どもということで、重篤な医療ケアが必要だとか、障害のある子ということが記載されています。そういうことでもって施設の固有性を担保していくという考え方があるかと思います。

 障害があるからこそ、家庭を基盤にした生活の基盤が保障された上で地域の医療ケアを使えるという体制が必要だと思います。

 そういう子どもたちが、では乳児院に入った後、どういう生活を送っているのかというところまで、なかなかイマジネーションを働かせることができない中で、一生涯施設で生活をしていく子どもたちがいるのだということを私自身も確認する機会がありました。

 一方障害の重い子が里親で暮らしていないかというと、そうではない。施設でむしろ無理な子が里親家庭で障害を持ちながら暮らしている子どもたちもいるわけですね。だから、本来的に治療的な施設というのは通いのクリニックであるべきだと思うし、それを里親さんが利用するという形も含めて、そういう在宅サービスの底上げをしていく。それが里親委託の推進にもつながっていく。いつまでたってもダブルスタンダード的なこういうものがある限りは、里親推進というのは進まないと私は考えております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。障害を持っている子どもこそ家庭が必要というのはそのとおりだと思うのですが、施設というところのよさみたいなものも多少考えておかなければいけないと思うのですけれども。

 

○松本座長代理

 大変大事なところだと思います。施設型、共同という意味。

 奥山先生にもうちょっと補足で説明していただきたいのは、治療型施設とおっしゃるときの治療というのはどういう形のことをお考えで治療型とお書きになっているか。ここの理解はかなり幅があるような気がいたしますので、ちょっと丁寧に御説明いただくと。

 

○奥山座長

 余り深く考えていたわけではないので、難しいのですけれども、いろいろなことが考えられるかなと思います。

 それぞれ1つでなくてもいいと思うのです。例えば行動化が激しくて、家庭にいたらほかの子どもを傷つける、もしくは自分を傷つける可能性があるお子さんを一時的にケアをするとか、あるいは全く言葉がうまく話せない、そういうお子さんたちを評価も含めて見て、また家庭養育のほうにお戻しするということも考えてもいいと思います。あと、医療的ケアを一時的にここで、どういう形で家庭でやれるかというのを一緒に考えていくとか、言ってみれば、里親さんの支援も含めてだろうというふうに思います。

 

○林構成員

 最近、ワシントン州の状況を聞く機会があって、グループホームの廃止運動というのが進んでいる。要するに、手厚い治療的なケアというのが限られた時間の中でどれだけ効果があるのか。それに対する社会的なコストということを考えたときに、ラップアラウンド方式に変えていくということが一定の評価に基づいて進んでいるわけですね。果たして、一定の期間の中で、短期というのをどう捉えるかということもあるかと思いますが、それだけのコストを費やすなら、より家庭をベースにしたところ、拠点にした子どもが通うという施設をどうしてつくられないのかと思います。

 

○奥山座長

 当然、通所も可能じゃないといけないと思うので、通所も可能と書いてあるのですけれども、通所をベースにしてもいいのかもしれないですね。

 井上構成員。

 

○井上構成員

 井上です。大分近辺の状態でお話ししますと、今言われていた治療型の施設の考え方は、情短施設があって、それは医学的な関与と、時にメディケーションが必要になってくる子どもさんたち。それに対しての治療は、3カ月から長くて6カ月ぐらいの状態で、行動変容と薬物の効果を判定しながら見ていくというようなイメージでやっておられます。

 もう一つは、これはいいかどうかわかりませんけれども、私たちのところでやっているのは知的障害児の施設を、軽度の知的障害の子どもさんたちで、しかも社会的養護の問題がある、IQで言うと60というぐらいの子どもさんです。その子どもさんたちで、反社会的な行為とか、そういうのがない子どもさんたちの群で、安定した環境と、自分が何か役に立っているという気持ちになれるような状況の中で育つとうまくいくという子どもさんたちがいて、そういう子どもさんたちを私たちのところでは、知的障害施設の中の、人数的には限られているのですが、実際にIQも低いですので、そこに入っていただいて、2~3年で経過を見ていく。大きい施設の中では結構問題があった、あるいは学校とかいろいろなところで問題があった子どもさんはそこに入ると、それですっとうまくいくという子どもさんたちもいますということをお伝えしたいと思います。

 最後に、児童養護施設がきちっとありまして、そこに関しては、行為の問題はあるのですけれども、情短に行くまではないというような状態の子どもさんたちを見ていくという形で、大体この3つのイメージでやっていくと、形が整って、最もひどい場合が自立支援施設がありますので、そういったところがあるかなと思っております。

 

○奥山座長

 相澤構成員。

 

○相澤構成員

 地域社会でケアをするには、なかなか難しい状況になっている思春期の行動化が激しい子なんかもいるわけで、そういう子に対して施設の中で子どもの支援をするということは必要になってくる。

児童自立支援施設は、昔から小舎夫婦制ということで、夫婦で子どもたちの支援をするということを実施してきたわけでございまして、そういう意味では、できるだけ家庭に近い養育環境についても、そういう環境を検討して、施設の中でも家庭的環境をどういうふうに確保するかということもやはり重要になってくるのではないかと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 西澤構成員。

 

○西澤構成員

 またもや頭がぐちゃぐちゃになっているのですけれども、そういうふうな言い方をすることは不適切かもしれないけれども、里親が数としては急速には伸びないという現実は当然あるわけですよね。そのときに、施設は残るというか、変な言い方ですけれども、そうなってくると施設機能を高めていくということをまずベースに考えて、施設としてはどんな姿が望ましいのかを考える必要がある。例えば、今は本体施設と呼んでいるものはもう認めなくてして、地域小規模か、グループホームかというふうな形で、小集団の子どもたちを施設として見ているというような構造が一番目指すべきところなのではないか。あまり治療型施設と考えない方がいいのではないか。

 先生が今言っていた治療型施設というのは、どれぐらい本当に必要なのか。そういう子はいますよね。自傷行為がすごくひどくてというような。それは多分小児精神科の問題だと思うのです。だから、施設として私達が考えるのは、まずは本体施設をどういうふうにベースラインとしてきっちり整備するか。そこからあふれるというか、そこでは手に負えなくなってしまう子どもたちに対してはどういう手だてを考えるのかという構造にしておいたほうがいいと思います。

 実際のところ、かなり行動化の激しい子どもでも、しっかりした生活支援をしていけば、次第に適応的な状態になっていくので、塩田先生が副施設長をされている施設を見ていてもそう思います。この子は明らかに東京都の小児総合医療センターにお願いしなくてはと思っているような子が落ちついていくわけですから、治療ということではなくて、やはり生活を基盤にしたセラピューティックな環境というふうに私は思います。

 

○奥山座長

 塩田構成員。

 

○塩田構成員

 考えているとどんどん先に話が進んでいくので、私もちょっとついていけなかったのですけれども、家庭的養護推進計画というのを数年前に、全部の児童養護施設は各都道府県に堤出しているのですけれども、そこには必ずユニット化の推進とともに、法人がファミリーホームを持つようにというようなことが奨励されているのですね。ただ、すごく難しいとうちの法人は考えています。行う場合には、夫婦が法人が用意した一軒家に住み込んでもらって、そこに子どもを迎える形というイメージでしたので。私の施設の職員は、現実に里親になりたくてこの仕事についた人たちはすごく少なくて、ソーシャルワーカーになりたいという人たちのなので、里親とちょっと違うというところがあって、難しいなと思っています。ところが、ファミリーホームに取り組まないと、ユニットケアをこれ以上できないという縛りもあるのですね。そのことは、ユニットを増やしてはいけないということではありません。勝手につくってもいいのです。ただ、そこにお金がついてこないので、人を十分に雇えないということで、取り組まなければ小規模化も進んでいけないというような縛りがある。

 それは、施設がよりよく小規模化を推進していくためには違うのではないのかなというのと、施設のよさを考えたときに、私はそれを主張するのはすごく難しいと思っています。施設のよさが発揮できるのは施設がソーシャルワーク機関として機能するときだと思うのです。きちっと子どもの課題をアセスメントできて、その子に適したケア、課題解決のためのケアが提供できるときに、多職種のコラボレーションができる児童養護施設というのはいいなと思っているのです。基本はソーシャルワークですから個別化ができないといけない。そのことが可能になるための単位の生活というのを提供しなければいけないですし、林先生が書かれていたような、規則とか、行事とか、そういうもので縛っているような施設養育では、子どもの家庭の中で起きてきた問題を解決するためには機能していかない。なので、施設養育の支援の中身というのは十分精査していかなければいけないなと思っています。

 まとまらなくてすみません。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 どうもお話を伺っていると、先ほどの里親委託率の数字を上げるための施策みたいなのが前面に出てきているみたいで、そこはもうやめたほうがいいのかなと。

 西澤構成員。

 

○西澤構成員

 ちょっとさっき言い忘れたのですけれども、アメリカで私が働いているとき、今はどうかわかりませんけれども、施設に来る子どもたちは一定の基準があるのです。アメリカの虐待防止学会(APSAC)などがその基準を作成しています。アメリカでは、社会的養育は基本的に養子縁組、里親養育で行うのだけれども、幾つかの例外を挙げていて、その中で一番目に挙げられるのがアタッチメント障害の子どもたちです。アタッチメント障害があって、それが例えば素行障害などを伴っている、混合型の子どもの場合には、いきなり里親家庭に行くのは難しいという判断があって施設が利用される。実際にそういう子どもたちを里親家庭でホールディングセラピーと称した心理療法を行って死亡事件が発生している。そういうことがあったので、一つの基準としては、アタッチメント障害が前面に出ていて、行動化が激しい子どもに関しては、まず施設で子どもの問題行動を軽減させるようなケアを提供することになります。

 

○奥山座長

 オレゴンの方たちの話を聞いたときには、里親家庭ではセクシャルアビューズ被害の子どもがすごく難しいという話が出ていました。

 ほかにいかがでしょうか。

 今日これを決めるというわけではないので、今、いろいろな議論が出た中で、今後、行ったり来たりの議論になるだろうと思います。先に進めて、里親支援のことに関して、藤林構成員のほうから資料を出していただいているのでお願いいたします。

 

○藤林構成員 

では、私の資料の12ページ、このまま時間がなくなってしまったらどうしようかなと思っていたのですけれども、これも、里親支援という言葉がいいのかどうかはあるのですけれども、今後議論していく場合の一つのたたき台として考えていただければと思っています。

12ページに考え方を示しているわけですけれども、里親支援も含めた、またはリクルートから認定、登録も含めた、全体としてのフォスターケアを各自治体でどんなふうに発展させていくのかということが今後の家庭養育の発展につながっていくと思うのですね。

 その体制のあり方というのは、ここにABCの3通りを考えていまして、1つは私のいる福岡市とか、大阪市さんもそうなのですけれども、里親専従チームが6人、7人と、専門家チームとして経験の長い職員を抱えながらやっていくというタイプが1つ。もう一つのパターンは、静岡市さんとか、あるいは全乳協さんが提案されているような養育里親事業とか、またここで議論していくフォスタリング・エージェンシーのような民間機関。児童相談所が専従チームが置けないのであれば、民間機関が包括的なチームをつくっていくというのがBパターンかなと思います。この辺はまたこの後、キーアセットさんが説明されると思います。

 多くの児童相談所、自治体で行われつつあるのはこのCパターンの児童相談所の1人とか2人の職員、一方が非常勤だったりするわけですけれども、プラス施設職員で、その場合には里親支援専門相談員さんでいらっしゃったりするわけですけれども、この双方が役割分担しながら事業展開しているというパターンが今全国的に展開しているのかなと思うわけです。

 どのパターンが一番いいのかということではなくて、それぞれがその地域のフォスターケアを発展させていただければいいと思うのですけれども、もしBパターンを今後発展させていくのであれば、そこは1年、2年やってやめましたという問題ではないので、5年、10年、15年、20年と長く継続性を持ってやっていただきたいし、またそれがほかの地域でも広がっていくためには、十分な制度的な、また財政的な裏づけが必要ではないかなと思っています。

 もう一つの問題は、Cパターンの児相と施設関係者、または児童家庭支援センターも含めた、それぞれの機関が人材を持ち寄りながらやっていくというのは、これはどのように考えたら発展していくのかというのは、もう一回スタートラインに立って考えていくべきではないかなと思っています。

 その場合に、里親支援専門相談員のことがここの検討会でも話題になったわけですけれども、果たして里親支援専門相談員は機能しているのか、機能していないのかというところが、実際のところ私もよくわからない。いろいろな自治体職員に聞くと、うちの県では機能していますというふうに言われるのですけれども、何をもって機能しているのか、成果があるのかというのはなかなかわからないのですね。

 里親支援専門相談員の役割というのはそもそも何だろうかということで、これが参考資料2の44ページに里親支援専門相談員の趣旨とか業務内容というふうに、厚労省の要綱にはあるわけです。

44ページの「趣旨」のところを見ますと、里親支援専門相談員は、(a)(b)(c)3つやるのだと書いてあるわけですね。所属施設の入所児童の里親委託の推進、退所児童のアフターケア、(c)として地域支援としての里親支援というふうに書いてあるわけですけれども、この3つの機能のうち(b)と(c)は効果があったどうかというのは測定困難なのですけれども、(a)の里親支援専門相談員さんがいらっしゃる施設の入所児童が年間何人、里親委託に措置変更していったというのがあれば、それは一つの大きな成果ではないかと思います。ここのところをしっかりと調査しながら、一定の成果があるところは、どのような連携とか、どのような仕組みが功を奏したのかというのを調べていただけたらありがたいなと思います。

 そこに私が問題意識を持っているのは、私が提出している資料の14ページを開いていただきたいのですけれども、昨年11月に福岡市で措置している子どもの入退所調査というのをやってみたのです。これはものすごい時間と労力をかけてやってみたのですが、かけただけの効果があったなというところが幾つかもあるので、今日は時間がないので、その一部分しか紹介できないのです。14ページの図1のグラフを見ていただくと、改めて児童養護施設に入所している子どものうち乳児院から継続して入所している子どもが76人もいて、30%弱が乳児院から長く入所しているということがわかってくるのと、皆さん、長期化していって、このままですと、乳児院から児童養護施設という、子ども時代はほとんど施設という子どもさんがたくさんいるという現実を目の当たりにして、これは何とかしなければいけないなと思ったところです。

15ページを見ていただきますと、これはちょっと網かけが潰れてしまって見えにくいのですけれども、大体「3年の壁」というのは実感として思っていたのですが、やはりそうだなということが統計的に出てきたわけです。3年を超えると家庭復帰になる子どもががたんと減っていくというのがあります。要するに、3年を超えると、あとは18歳で自立と言われる年齢まで入所してしまう。

 真ん中の里親等委託というところですけれども、里親委託になる子どもも大体3年が限界かなと。中には12年目という子どもさんがいらっしゃるのですけれども、児童養護施設で長期入所している子どもで里親委託に措置変更になる子どもというのは非常に少ない。1年目で6人というのは、これはもともと施設に措置する段階で、この子は里親さんが見つかったら措置変更するということが最初に計画されている子どもさんですから、長期入所している子どもで里親委託になっていく子どもさんというのは非常に少ない。大体1年間に3人ぐらいしかいないというのが現状なのかなと思っています。

 そう考えますと、措置権者として、長期入所している、特に乳児院から継続している子どもさんに、より適切な良好な里親養育に移行したいと思うのですけれども、その部分で里親支援専門相談員さんに非常に期待するのです。けれども、それがなかなか進んでいないという現状もあるのであれば、そこは一回調査していただきたいなということで、机上配付資料というのが皆さんの机上に配付されていると思うのですけれども、例えばこんな形で里親支援専門相談員さんが中心となって新規開拓した里親さんは何人ぐらいいらっしゃって、結果的に措置変更になった子どもさんは何人いらっしゃるのか、全施設、乳児院、児童養護施設に調査していただき、その中で成果が上がっている施設には、どういう方法、仕組み、ネットワーク、連携がよかったのかというのを示していただければ、これをもとに今後議論していけるのではないかと思います。

 ちょっと長くなりました。すみません。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 次回、里親支援という名称で、フォスタリング・エージェンシーのことについて議論を深めていきたいと思います。

 今、机上配付資料について御説明いただきましたが、これを調査するということはいいのですけれども、せっかく施設に調査するのなら、これだけなのかと思ったものですから、もし皆さんがこの調査に加えてこういうことを聞いてみたいということがあったら、ぜひ事務局のほうに御提案いただいてそれを加えて調査をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、ヒアリングのほうに移りたいと思います。次回、5時間の時間を議論として費やす形にしておりますので議論はその時にお願いいたします。

 

○西澤構成員

 今日の話題ではないのですが、1つだけ。どうしても前回気になったことで、言い忘れたことがあるのですけれども、いいですか。

 

○奥山座長

 ごく簡単に。

 

○西澤構成員

 この前、自立援助ホームのプレゼンテーションがあったときに、今回の制度改正で、雑駁に言えば、例えば児童養護施設で大学進学を可能にするような制度をつくっていくということがあって、そうなった場合には全部自立援助ホームに措置変更するみたいな星さんの発言があったのですよ。そのとき、私はぼうっとしていたので通り過ぎたのですけれども、そんな話ではないですということを確認しておきたいです。

 

○奥山座長

 それは、そうではないと思います。

 

○西澤構成員

 だけど、自立援助ホームの協議会ではそういう話になっているということですね。

 

○奥山座長

 そういうふうに誤解されておられるのではないかと思います。

 

○伊達構成員

 逆なのです。

 

○西澤構成員

 逆ではなくて、星さんはそれに反対しているというふうにおっしゃったのです。だから、自立援助ホーム協議会としてはそっちの方向だという。それはすごく誤解なので。

 

○奥山座長

 誤解だと思います。

 

○西澤構成員

すみません。それがちょっと気になったので。

 

○奥山座長

 では、ヒアリングに移らせていただきます。

 お忙しい中、ヒアリングの対象になっている方々に来ていただいておりますので、有意義なヒアリングを行っていきたいと思います。

 まず、前半にヒアリングをさせていただくのは、全国児童相談所長会、日本知的障害者福祉協会、全国児童家庭支援センター協議会でございます。それぞれ非常に短くて申しわけないのですけれども、10分で御発表いただいて、3つの団体の方々にお話をいただいた後に質問等をさせていただきたいと思います。目安として9分でベルを1回鳴らせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 最初に、全国児童相談所長会の桜山会長、よろしくお願いいたします。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 全国児童相談所長会の会長を務めております東京都児童相談センターの桜山でございます。本日はこのような発言の機会をいただき、感謝申し上げます。

 本日、隣に座っておりますが、全国児童相談所長会の役員であります神奈川県中央児童相談所の井上所長とともに、これまで全国児童相談所長会として厚生労働省に要望してまいりました事項の中から、家庭養護の推進と一時保護所の問題に絞って意見を述べさせていただきます。

 まず、家庭養護の推進についてでございます。児童福祉行政の現場においては、家庭における養育環境を整備することが何よりも重要であると考え、その家庭の支援をしております。そういう意味で、今般の児童福祉法の改正で、都道府県は子どもが家庭において健やかに養育されるよう保護者を支援するとともに、家庭における養育が適当でない場合には、家庭と同様の養育環境において継続的に養育することを推進すると規定されたことは大変意義深いことと考えております。また、家庭と同様の養育環境において継続的に養育することを推進するということで、里親に対する支援が都道府県の業務として明確に位置づけられました。

 この里親委託について、平成26年度末の69都道府県市別の里親委託率を見てみますと、最小の6.1%から最大の41.4%まで、各自治体における里親委託の状況はさまざまではありますが、できる限り里親委託等を推進していくということは大変重要なことであります。そのため、推進に当たっては次のような観点が必要だと考えます。

 1つ目は、養育里親に求められることとしては、里子を養育するという公的な役割を認識し、児童相談所の援助はもとより、地域の必要な支援を積極的に受け入れて里子を育てていくということ。養育里親もまた、地域においてチームで子どもを養育する一つの機関である。このことを里親の方々に認識していただくことが必要であると考えております。養育里親は社会的養育であるということ。養育里親制度のこうした趣旨を国民に理解していただけるような広報活動が必要ではないかと考えます。

 資料の2ページの表をごらんいただきたいと思います。平成21年4月に施行されました改正児童福祉法により、施設職員等による被措置児童等虐待が公表されております。例えば平成25年度の被措置児童等虐待の事実を認めた事例は合計で87件ありましたが、件数としては児童養護施設が49件、里親・ファミリーホームは13件と、施設のほうが多いのですが、措置あるいは委託をされている児童数は児童養護施設のほうが里親・ファミリーホームよりも圧倒的に多いので、里親・ファミリーホームでの発生割合は施設のそれと比較いたしまして決して小さなものではないと考えます。

 国が定める里親が行う養育に関する最低基準では、委託児童に対する平等な養育、虐待の禁止、懲戒権の乱用禁止について明確に規定されております。しかし、委託児童の権利が擁護されているかを認識するための仕組みが十分に整っているとは言えません。こうした点についても、十分な御議論をいただきたいと思います。

 2つ目は支援策の充実です。児童相談所に里親業務専任の常勤職員を配置し、里親支援機関事業者とともに、こまめに家庭を訪問したり、カウンセリングを実施するなど、里子、里親だけでなく、里親家庭全体の支援を行うとともに、委託前の交流に関する経費の支出、里親並びに第三者に対する損害の補償、賠償制度の確立、高校生の通学費用の実費支給、さらには養子縁組里親と同じように、養育里親についても育児休業制度の利用を可能とするなど、里親支援の充実を図ることが必要ではないかと考えております。

 また、被虐待児や発達障害児など、対応の難しい子どもも増加していることから、専門里親資格の取得を推進する環境の整備を図ることが重要です。現状では、専門里親研修、並びに更新研修は年1回首都圏で開催されていますが、例えば全国児童相談所長会の8つのブロックに合わせて、いくつかのブロックごとに年に複数回実施するなど、専門里親になりやすい研修環境を整えることも必要だと考えております。

 3つ目は養子縁組里親についてです。先日も、「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」において、発言する機会をいただきました。その際、特別養子縁組は法的に安定した親子関係を築くものであり、これを進めていく上で、実父母の同意の問題や、養親が養子縁組について秘密にしたがる傾向があること、また対象年齢の拡大について、未成年養子縁組全般の議論が必要ではないかといった点についてお話ししました。

 養子縁組は、永続的な家庭環境の保障という観点から、大変重要な制度です。ただ、さきの「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」においても十分に議論がされてはいなかったと思います。児童相談所が扱う養子縁組は、あくまで子どもの利益のために行うものです。また、特別養子縁組は実親と法律上の親子関係を断絶してしまうものでもあります。子どもの将来にわたる影響を幅広く御議論いただきたいと思います。

 また、養子縁組に関する民間あっせん団体は、身分にかかわる重要な事項であるにもかかわらず届け出制です。児童相談所、民間あっせん団体のどちらがかかわっても、子どもの立場に立った養子縁組が実現できるよう、民間のあっせん団体に関する許認可のあり方や体制、事業内容について、具体的な検討を速やかに行っていただきたいと思います。

 次に、一時保護所について申し上げます。3ページをごらんください。平成25年度の福祉行政報告例によれば、平均在所日数の全国平均値は29.0日ですが、地域によっては在所日数にばらつきがありまして、短いところは6.8日、長いところでは61.2日となっております。また、平成26年1月から12月までの間、一時保護所134カ所のうち、年間平均入所率が100%を超える一時保護所は9カ所7%、81100%の一時保護所も16カ所12%となっておりますが、1~20%の一時保護所も14カ所10%とあるように、地域により一時保護所の状況に差異があり、一律に申し上げることは難しいのですが、3点述べさせていただきます。

 1つ目は、一時保護所の職員配置についてです。現在、一時保護所は児童養護施設の配置基準を準用しておりますが、目的、生活の様態も児童養護施設とは違います。一時保護所は24時間子どもの受け入れに対応し、子どもの心理的、身体的状況を早期に把握しなければなりません。子どもの年齢構成は幼児から思春期までと幅広いことに加えて、一時保護に至った背景も、非行、虐待、あるいは養育困難など、さまざまです。また、一時保護所に入所する子どもは、親子分離直後であることなど、とりわけ心理的に不安定な時期に当たることから、深く心に向き合った支援を行うことが重要になります。生活支援の充実や個別援助が行えるよう、一時保護所独自の最低基準を設けるとともに、服薬を要する子どもが増加していることなどから、一時保護所の規模及び年齢構成に応じますが、保健師または看護師を複数配置できるようにすることも必要です。

 2つ目は学習機会の提供です。一時保護が長期化した場合、教育を受ける権利を保障するために、学習指導を担当する職員や教員を適正に配置するための財政支援を行うなど、保護児童の年齢や学力に応じた学習の機会の確保を図ることが重要です。また、親の傷病等により保護するようなケースは、通学確保等のためにも里親やファミリーホーム、小規模児童養護施設への一時保護委託や、市区町村におけるショートステイなどにより対応できるよう支援の強化が必要です。

 3つ目は、一時保護所の質の確保についてです。一時保護中の子どもの権利擁護と一時保護所運営の質の向上を図るため、外部の者による評価を受ける仕組みが必要ではないと思います。横浜市や堺市では、児童福祉審議会のもとで実施していると聞いておりますし、東京都でも昨年、児童相談センターにおいて社会的養護施設の第三者評価機関による外部評価を実施し、本年度は都の全ての一時保護所で実施いたします。

 御案内のとおり、既に社会的養護の施設については、その運営の質の向上を図るため、施設種別ごとの運営指針を定めるとともに、第三者評価及び自己評価の実施を義務づけられております。一時保護所は、入所期間は短期間であっても、子どもの行動を一定程度制限することになるわけですので、子どもの権利保障の観点からも外部評価の実施は必要なものと考えております。

 雑駁な説明で恐縮でございますが、以上で報告を終わります。ありがとうございました。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 続きまして、日本知的障害者福祉協会、北川理事、よろしくお願いいたします。

 

○日本知的障害者福祉協会(北川理事)

 日本知的障害者福祉協会児童発達支援部会長の北川です。隣に座っているのは、日本知的障害者福祉協会、太田常務でございます。

 今日はこのような会に、障害児の立場であるこの協会を呼んでいただき、本当にありがとうございました。

 早速、障害児入所施設の現状についてお伝えしたいと思います。最初に書かれてありますように、障害児入所には福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設があります。全部合わせて467カ所、2710月1日の調査ですけれども、子どもの在籍は1万5,787人になっております。

 これまで、障害児入所に関しては十分な調査がされていなくて、今年度4月から、厚生労働科学研究「障害児入所施設の質の向上を検証するための研究」というのが2年間にわたって行われて、実態調査と、また特に被虐待児の実態・支援内容がこの研究に盛り込まれています。

 それでは、日本知的障害者福祉協会の調査から、現状を述べさせていただきます。調査日は、ちょっと古いのですけれども、2610月1日で、243の施設に送付して167施設から返ってきました。今の知的障害を中心とした施設ですけれども、定員は6,590人、在籍は5,506人、定員割れは1,084人となっております。

 児童の年齢と措置と契約に関してですけれども、18歳未満の子どもは3,869人、措置が2,369人で、措置率は61.2%です。18歳以上の方は1,637人、措置が148人となっております。障害児入所の独特の長年の懸案事項として、このように加齢児問題を抱えております。後でこのことをお話しいたします。

 次のページ、入所の理由になります。保護者の養育力の不足、虐待・養育放棄が多くなっております。これは、発達に課題を抱える子どもの子育てがすごく難しくなって、心理的葛藤も含めて、虐待のリスクがすごく高くなっているということがあり、保護者への支援策がすごく必要だと感じるところです。虐待防止学会などでもワーキンググループをつくって、障害児虐待のほうに今年度から取り組んでくれています。

 虐待による入所数は、施設側が把握しているところで368人になっております。一方、被虐待児加算認定児童数は190人と、ちょっとずれがあります。それから、368人の中には契約による入所の子どももいて、47人になっております。子どもの数は減少しているにもかかわらず、虐待されている子どもの数は一定の割合を占めています。虐待の内容は、やはりネグレクトが一番多く、次いで身体虐待となっております。

 次のページです。今回の児童福祉法の改正と障害児入所に関してですが、皆さん御存じのように、平成8年まで障害児施設は児童福祉施策と一緒に児童家庭局が所轄していましたが、その後、社会・援護局の所管になり、障害児者の一貫体制となりました。「障害者プラン~ノーマライゼーション7カ年戦略~」がスタートして、障害福祉が充実する礎となりました。

 そして、平成15年に支援費制度が導入されました。これによって大きな変化をもたらしました。措置制度だけではなく、契約制度が導入されたことにより、児童相談所の判断だけではなく、受給者証を持つ子どもであれば、事業者と契約すること中で、障害児のサービスを使えるようになりました。

 ホームヘルプやショートステイも契約で利用できます。町なかに一軒家を借りてショートステイなどもできますので、現在、一時保護代わりのように児童相談所から頼まれるお子さんもいます。

 このように、契約制度は良い面もあるのですけれども、その一方で障害児入所施設では、本来であれば不適切な養育で措置による入所が妥当であっても、契約とされるケースが全国で出てきました。

 資料1のグラフにもあるように、都道府県によって措置と契約の判断に差が出るなどの課題もここで出てきました。例えば契約の子が両親に本当にお金がなくて、修学旅行に行けないという事例も出てきました。やはり子どもの最善の利益を保障するというところで、社会的養護の必要な子どもについての契約制度は、今後はより慎重に考えていく必要があると思います。

 また、児童家庭局では、里親、ファミリーホームなどについて、先ほどから議論されていますが、家庭と同様の養育環境ということが今回の児童福祉法の改正でも明確になっています。しかし、障害児入所施設については平成24年に小規模加算ケアがついたとはいえ、まだ十分と言えません。また、人員の最低基準も、4.3対1と、児童養護などに比べて厳しい状況です。それから、地域支援も児童家庭支援センターや里親支援機関がありますが、児童家庭局のほうで社会的養護の施策が進む中で、障害児の入所は何か置いていかれた感があります。

 それでは、今後の取り組みに移りたいと思います。今お話ししましたけれども、職員配置が子ども4.3人に対して1人であるため、行動障害とか被虐待児に対して専門的支援を行っていくためにも、この職員配置基準を引き上げていただきたいと思っております。これは障害福祉課のほうにも要望しております。

 それから2点目、小規模グループケア加算は平成24年にできて、障害児の入所施設も少しずつ取り入れていますが、まだ十分とは言えません。この加算の推進とともに、障害のある子が大舎制の施設で遠くに住むというよりは、共生社会という点からも、グループホーム、ファミリーホーム、それから里親の活用ですね。以前、亡くなられた庄司先生と一緒に、障害児も里親家庭でというプロジェクトをWAMで行ったことがありますけれども、このように家庭と同様の暮らしを障害のある子にも提供する必要があると思います。

 このことに関しても障害保健福祉部にも要望しておりますし、今後、平成30年の報酬改定に向けて障害者部会などで要望していく予定としております。障害福祉課のほうでも、頑張っていただけると思っております。

 家庭関係の再構築ですが、これまでは被虐待児の家族関係再構築というよりは、帰省して、面会して、個別支援計画を親御さんと共有するということで、家庭とともに子育てをしてまいりました。障害児入所で一定期間過ごして、行動が安定したら、退所したときに家庭に帰るというお子さんもいて、表の13にあるように、やはり家庭が一番多い状況になっております。一部コモンセンスペアレンティングなどを通して家族支援を行っているところもありますけれども、やはり虐待のあった家庭との再統合に関しては障害児入所施設の今後の課題です。あと、表の20ですが、契約になって、だんだん児童相談所との関係が弱くなっていますので、ここも強化する必要があります。

 次に、自立支援の状況です。これは障害児入所のみの課題ですけれども、これまで18歳を超えた人たちも入所できていました。しかし、平成30年3月までに、障害児入所、障害児と大人の施設の併用、大人の施設に変わる、という、3つのうちのいずれかを選択して移行しなければならなくなりました。

 今後の、障害児入所施設は、成人への移行を必ず行うということが重要な機能ですが、今、大人の施設は、入所施設だけでなく、グループホームもいっぱいなのですね。移行についてはとても難しくなっていますので、この自立支援システムを児童相談所も含めてやっていく必要があると思います。

 今後の将来像ですが、何回もお話ししていますが、障害児入所もより家庭に近い環境への移行が必要だと思っています。それから、地域支援ですが、障害者施策の強みである契約制度ということで、ショートステイとか放課後デイとかホームヘルプなども活用できますので、地域の虐待のリスクのある家庭と子どもの支援をしていくことができるようになると思います。

 また、保育所等訪問支援という制度ができて、平成30年から乳児院とか児童養護にも支援に行けるようになりました。

それから、障害児入所施設の名称ですが、困り感のあるお子さんや家族が利用しやすいように、「児童発達支援入所施設」とすることを望んでいます。

 本当に今回の児童福祉法改正が、障害児の分野でも同じ子どもとして同じように進んでいくことを願います。本日はありがとうございました。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 引き続きまして、全国児童家庭支援センター協議会、小木曾会長、よろしくお願いいたします。

 

○全国児童家庭支援センター(小木曾会長)

 全国児童家庭支援センターの会長をしております小木曾でございます。隣が事務局の武藤でございます。きょうは、こういった場を提供していただいてありがとうございます。

 児童家庭支援センターは、なかなかメジャーなものではなくて、まだまだ周知されていない現状があります。もともとスタートは、それぞれの児童養護施設等に附置というところから始まったのですが、今は附置を外れてしまいまして、NPOの児家センもあるという状況でございます。

 我々、児家センの設置運営の目的ということころで、これはもう周知のことだと思いますが、一応確認させていただきます。特に、市町村の子育て支援に関してということでは、本当に児家センの期待というものが非常に高くなっておりまして、それぞれ市町村の相談に応ずるというところとか、それから児童相談所との関係では、指導委託というものを受けながらアフターケアを担うという部分、それから新たに2011年に里親委託ガイドラインにおいて、里親の支援、特に里親さんとかファミリーホームの相談にも児家センは応じなさいというものも加わりました。そういった意味では、非常に多岐にわたって地域の子育て支援の拠点になる、相談支援機関になるということが求められています。

 ただ、本当に期待がすごく大きいので、実は、これも御存じのように、少子化社会対策大綱の中に2019年までに340カ所の設置という目標を掲げていただいたのですが、現状としては112カ所です。この理由は、特に補助金事業であることとか、先ほどお話ししましたように、NPOでやっているところもあるのですけれども、実際的には本園施設、本体施設と附置というところで、ある意味補助金だけでは賄えない部分を本園からの支援を受けながら実施をしていかなければいけないというのが現状であって、拡大というのがなかなか難しく、我々も何とか未設置県も含めて設置をしていただきたいという働きを各都道府県、行政にもこれから働きかけていきたいということで取り組んでいるところでございます。

 特に、都道府県、市町村というところで、先ほどお話ししましたように、なかなか連携が難しい、地域性もありますし、相談ケースの偏りも非常にあります。ですので、ここをどういうふうに今後いろいろな関係機関と図っていくかというのが我々の課題でもございますし、特に求められている里親支援のところも、試行錯誤しながら今取り組んでいるところでございまして、特にやられているところに関しては、里親支援専門相談員との協力関係の中で、そこに書かせていただいていますけれども、里親制度のまずは啓蒙・啓発、里親認定の研修です。それから、未委託里親さんを何とか引きとめておくと言うと変なのですけれども、委託がないけれども、いろいろなところで里親サロンを開いたりという活動を児家センが中心になってやっているところもございます。

 特に、これから期待されるのは、これは児童相談所さんとの協力というところで、それは本当に不可欠なのですけれども、指導委託というものも児童相談所のほうにも周知いただいて、拡大をしていく必要があるかなと思っているところでございます。

 具体的なお話をさせていただきたいと思います。先駆的な取り組みというところで、福井県越前市の取り組みを御紹介させていただいています。これは福井県越前市、特に里親の登録を含めて、開拓という部分はなかなか難しい部分が日本でも当然ございまして、それに関しては、親族里親の拡大ということを図っていったらどうかと考えております。

 資料のほうにきょうも構成員としていらっしゃる林先生が、20111031日、社会福祉審議会児童部会の中で、何とか親族里親の拡大を図れないかという御質問、そういった貴重な御意見をいただいて、こういうところを我々児家センは先駆的に親族里親の拡大というところを、ただ法律上の壁がございますので、そういったところを何とか変えていただきながら、親族里親の拡大、それがひいては里親さんの拡大というものにつながっていくのではないかなというところで取り組んでいる事例をそこに示させていただきました。

 それから、これはなかなか難しいことだと思うのですが、2番目として、これも越前市で取り組んでやっているところですけれども、措置制度を通所で何とか創設できないかと。御存じのように、都道府県は措置権というのがございますけれども、これを何とか市町村単位で、措置という堅苦しいといいますか、そういったものではなくて、ハードルを下げながら、実際にはそういった要保護児童の対応をできないかというところで考えて、今、試行的にやっているのが越前市でございます。

 実際にどんなことをやっているかということと、今後それができたらというところで、事例をそこに書かせていただいています。例えば児童養護施設に通所措置というのが創設され、これは市町村のレベルでできるとすればという話ですが、例えば全児童養護施設に児家センが、これは標準装備されたらという話でございますけれども、例えば小学校3年生のA君は母子家庭だと。学校から、3週間お風呂に入っていない、この間、欠食も見られるという通報が入って、通常であれば一時保護という形になるのですが、そういう形にせずに、何とかA君をB施設のほうに通所をさせながら、C児家センが指導委託をして、例えば定期的に施設のお風呂に入れてあげるとか、いろいろな形でのケアをしてあげる中で、措置ではないのですけれども、実際的には児童養護施設の社会的な活用ができないかなというのが一つの可能性として考えられることです。

 もう一つ、例えばC児家センの職員が放課後の小学校のA君を迎えに行って、施設のほうに送り届ける。B施設では、A君の宿題とかいろいろな生活指導を行って、学童的なところもあるのですけれども、お風呂に入れて、夕食を食べさせて、親が迎えに来て戻すというところでは、実際的にはそういった活用も可能ではないかなと、一つの構想としては考えております。

 もう一つですけれども、例えばC児家センの相談員が日曜日に家庭訪問して、母と面接をして、親子関係や生活困窮の状況を確認して、翌日、相談員はA児と母の現状を施設と小学校のほうに報告する。さらに、関係機関のほうにもそういったものを処置していただくという形で、本当に早期のネグレクト、虐待の発見という形での目的を持った活動も我々としてはできるのではないか。

 お話ししましたように、先ほどお話しした親族里親の拡大というものに関しても、法律的な壁とか、自治体によってはかなりばらつきがあるという状況がございますので、なかなか困難かと思いますが、そういった御議論は実際に社会福祉審議会のほうでもされていたということに関しても、是非そういった糸口を切り開いていただいて、何とかそういった児家センの活用をしていただければいいかなと思っています。

 それから、措置の問題も、本当に児童相談所さんとの関係がございますので、そう簡単には措置権の問題というのは変わらないと思うのですけれども、もう少しハードルを下げていただくことで、予防的な、本当に要保護児童が措置という形ではなく、もう少し児童養護施設との連携の中で、その間に児家センが入ってコーディネートをするというような役割として活用できるのではないかと思っている次第です。

 本当に児童家庭支援センターというのは、地域における虐待の予防、支えの機能、さらにアフターケアの機能というところでは、児童養護施設だけではなくて母子生活支援室も含めて、乳児院もございますので、本当に地域の中でのいろいろな施設の連携を児家センが図っていくというところで、これからもいろいろな領域のほうに働きかけていきながら、今度、実際に横のつながりをこれからどうやって図っていったらいいかなということも検討しているところでございます。

 そういったことで、本当につなぐという役割に関しては、児童家庭支援センターというのは、これから今後いろいろな面で活用できると思うのですが、いかんせん補助金の状況の中で、なかなか限界というのもあるのですけれども、我々自身ももっともっと努力をしながら、本当に地域の子育て支援の拠点になるべく取り組んでいきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 それでは、3つの団体に関しまして、御質問、御意見等はございますでしょうか。

 加賀美構成員。

 

○加賀美構成員 

ありがとうございます。加賀美でございます。

 まず、全国児童相談所長会ですが、基本的な話になるのですが、さきの専門委員会でかなり議論した部分であるのですが、現状、分離保護と家族との再統合という両方の仕組みを今実際にやらざるを得ない状況で、これは極めて二律背反的な仕事で、それに苦戦しているという児童相談所の実態がある。そのことについてのお考えがあるのかという点。つまり、その機能のあり方について。

 もう一つは、もともと児童相談所は極めて総花的な児童福祉の役割をずっと長いこと担ってきているのですが、近年の虐待の状況からして、虐待対応に追われる余りという言い方をしては失礼なのですが、なかなかその他の役割ができにくくなっているのではないかという観点から言うと、児童相談所の総花的な役割を何とかして役割分担していくということについてのお考えがあるのかという2点でございます。

 それから、児家センについてですが、先ほど指導委託措置の話がありました。実際の指導委託措置は、児家センとして現状でどのぐらい年間で引き受けているのか。総数的なことがおわかりになったら、ぜひお知らせください。

 以上でございます。

 

○奥山座長

 では、全国児童相談所長会の方でお願いします。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 御質問、ありがとうございます。

 まず、強制的な保護と家族再統合という、一見、二律背反的な問題もありまして、これについては全国の児童相談所の中でもよくディスカッションになるのですが、確かに役割を分担したほうがやりやすいという意見もある反面、やはり介入から支援までを一環した流れの中で行うことの利点もあるということで、ケースによってなかなか難しいかなと。ですから、一律に分離すれば楽であるとも言い切れないと考えております。

 それから、ちょっとそれとも関連するのでしょうが、確かに児童相談所は児童と家庭に関するあらゆる相談を受けるということですから総花的で、例えば児童の健康の問題についての相談を受けることがありますが、これは実際には保健所とか保健センターがありますから、そちらのほうへの相談を、助言しております。一方で、確かに虐待の対応件数が非常に増えておりますので、ほかの業務が回らなくなるというのは変ですけれども、かなり忙しいのも事実でございます。

 ただ、被虐待児といいますか、虐待を受けているお子さんが非行傾向があったり、あるいは今、学校などで話題になっていますが、いじめの問題を抱えていたりとか、いろいろな問題がありますので、これも役割分担をどうしていくのか、きっちり決めるのも難しいと感じております。そういう中では、関係機関、学校もそうですし、保健所、保健センター、あるいは警察、検察などとの連携を図るということが重要かなと考えております。

 

○奥山座長

 小木曾さんの方はいかがでしょうか。

 

○全国児童家庭支援センター協議会(小木曾会長)

 ざっとなのですが、本当にまだまだ少ないのですね。実は児童相談所さんのほうも異動がかなり激しくて、指導委託自体を理解いただいていないという現状がありまして、実際の27年度の総数なのですが、349件という状況でございます。

 

○奥山座長 ありがとうございます。

 西澤構成員。

 

○西澤構成員

 児童相談所長会と児家センの協議会のほうに質問といいますか、まず一つ確認です。さっきの加賀美先生の質問に対する回答は、虐待と非行に特化していくという形では可能だという理解ですか。つまり、別のこの委員会で児相の方が保健相談とか障害相談も大事なので、そっちも力を入れなければいけないといった趣旨の発言もあって、ただ私としては、虐待と非行に特化してやっていくというのが今の市町村との連携なんかを考えてもいいのではないかと思っているので、そこを再確認です。

 もう一つは、さっきの発言は、私はぼうっとしていたのでちょっと聞き間違えているかもしれませんけれども、特別養子縁組を、未成年の子を全て対象とする場合に、法的に実親との関係を切ってしまうので慎重でなければならないみたいなことをおっしゃったのは、それは子どもの実親との法的親子関係はやはり維持していったほうがいいよねという価値観が背景にあるととっていいでしょうか。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 2つ目の質問のほうから先にお答えします。

 そういう意味ではございません。要するに、年齢の問題も御議論されていると伺っておりますが、普通養子縁組と特別養子縁組という2つの制度があって、それをうまく活用しいていくことは重要だと考えております。ただ、特別養子縁組は切ってしまうということもあるので、反対ということではなくて、年齢などについて検討されるときにその辺も十分御議論いただければなという意味でございます。

 それから、虐待と非行に特化という問題に関しては、一般的な健康相談は先ほど申しましたように保健センターとか保健所でも受けていただいておりますが、障害児の中には虐待を受けるお子さんも結構いらっしゃるので、簡単に虐待と非行に特化していくのは無理だと思います。

 

○西澤構成員

 それは虐待に含められますよね。言っているのは、児相が障害の仕事が大変なんですよというときに、判定とかそっちのほうが中心なので、それは別に児相にこだわらずに、医療機関とか、市町村の療育センターとか、そっちのほうが専門性が高いわけですから、そちらに任せてもいいわけですよね。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 任せられる機関があれば、診断書の作成などは、そちらの方が中心にやっていただく、そういうのを利用すべきだろうとは思います。

 

○西澤構成員

 ありがとうございます。

 それから、小木曾さんに質問というか、これは失礼な言い方かもしれないけれども、児家センって、私の認識では児童養護施設が何か地域社会に貢献しなければいけないみたいな、児童養護施設の間違った社会化というか、地域化の経過の中で出てきた鬼子のようなものだと私は認識しています。身内から後で蹴りが入ってくると思いますけれども。今度の法改正は、支援体制は市町村ベースにしていこうという方向性なので、もうそろそろ児家センは要らないのではないかと率直に思っているのです。

 さっき小木曾さんも一生懸命プレゼンされましたが、事例の話ばかりで、これは別に児家センのワーカーでなくてもいいわけですね。市町村に優秀なワーカーがいればというか、基盤が強化されれば、今は在宅措置というような制度も検討されているわけなので、そういう意味で児童家庭支援センターは要らないのではないかというのが率直な質問です。

 

○全国児童家庭支援センター協議会(小木曾会長)

 西澤先生がそこまで言ってくださるので。

 実は、この間、全国の大会があったのですが、本当に児家センというのが期待されているのかどうか、補助金制度がずっと維持されているままで、今度は件数で補助金の額を決めるということが今年度示されまして、先生がおっしゃるように、どうしようと。児家センというのがなくなるならなくなるでいいのだけれどもと言ったら変なのですが、私は会長の立場でそんなことを言ってはいけないのですけれども、ほかにそれにとってかわるものがあるのかと。おっしゃるように、そこをちゃんと受け継いで、どういうふうに考えているかわかりませんが、国の構想の中でもしそういうことがあるとすれば、そこにお渡しするのであれば、我々がやってきたことをきちんとまとめておこうと。その上で、340カ所というものが、花火ではないですけれども、ばんと上げられたのですが、実際にそれが達成できるのかどうかという部分が根拠としてあるのかというところと、実際、おっしゃるように、東京都がまた違う方式でやっておりますので、本当にそういうのが児童家庭支援センターはこれだけ期待されているのだけれども、現状としてどういうことを期待されているのかという部分と、実態としてどういうふうに進んでいくのかというのは、本当に今迷走しているという状況は御指摘のとおりだと思います。

 

○西澤構成員

 本当に腹を割って回答をいただいたと思うので、どうもありがとうございました。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 ほかに。

 

○全国児童相談所長会(井上役員)

 先ほどの西澤先生の最初の質問でございますけれども、虐待と非行に特化したほうがいいのではないかというお話かと思います。

 実は、今、現場でやっておりますと、そんなに簡単に虐待と非行を区分けすることができないという実態がまずございます。

 

○西澤構成員

 虐待と非行はかなり重なると思います。

 

○全国児童相談所長会(井上役員)

 いや、それ以外の相談とです。

 それで、一番心配に思っているのは、虐待とか非行のケースワークというのは非常に難しいというのはもちろんなのですけれども、実を言いますと、障害とかいわゆる健全育成の相談というのもかなり高い専門性を必要とします。私どもが心配しているのは、その受け皿を市町村がまだまだ体制をとっていない。専門職もいませんので、そこを心配しているということを御理解いただければと思います。

 以上でございます。

 

○奥山座長

 どうぞ、松本構成員。

 

○松本座長代理

 児童家庭支援センターと児童相談所の方、両方にお伺いしたいのですけれども、別のワーキングでも、市町村の役割についてどういうふうに強化していくのか、あるいは拠点をどう整備していくかということについて議論が進んでおります。

 それとの関係で、先ほど小木曾先生が児家センの役割ということと、例えば具体的に市町村を強化していく、あるいは基礎自治体との関係をどういうふうにお考えになっているか。あるいは市町村が市町村ベースでやるのであれば、そちらのほうを中心にして児家センというものが機能を変えていく、あるいは委託を受けるという格好がいいのか。やはり施設に附置されていて、いろいろな総合的な機能を持っているところが中心になっていったほうがいいというふうに、地域ベースのソーシャルワーク機能の強化という観点から考えるときに、そこはお考えをお聞かせいただければと思います。

 それとの関係で、今、児童相談所長会さんのほうの御発言で、まだ市町村の基盤が強化されていないということを御懸念されて、児童相談所がもう少し役割を果たしたほうがいいのではないかというふうなお話でありましたけれども、逆に言うと、これは市町村がきちっとした基盤を強化されていけば、むしろそことの関係で児童相談所の役割というのも変わってくるというふうな御認識、あるいはそうあるべきだというか、どういうところを目指すべきかという観点から考えたときに、そこはどういうお考えかということをお聞かせいただければと思います。

 

○奥山座長

 お願いします。

 

○全国児童家庭支援センター協議会(小木曾会長)

 先ほど、西澤先生の御質問とつながるのですが、当初は、御存じのようにこれは附置で、つまり標準装備だと、児童養護施設等に全部児家センをつけるのだという御旗のもとスタートしたのですが、現状はその附置が外れたという話の中で、我々も当初は、先ほど先生がおっしゃったように、児童養護施設にある意味地域支援、子育ての相談機関としてそういったものがつくのが当然という形で動いたのですが、それが本当にどこでどうしたか外れたという状況の中で、今度は市町村に特化をして児家センがコーディネートしてきなさいという方向で示され、なおかつ里親支援もこれから附置されたということでは、正直言いまして、私も会長を引き受けて2期目になるのですけれども、どっちに進んでいったらいいのか。両方やっていかざるを得ないのだろうけれども、それにはある意味、本体の我々の能力という部分は超えているという部分で、どこかに特化してということが地域性に合わせて、本当に児童養護施設の附置のほうがいいのか、それとも一つモデル的なものを考えながら、同じような方向ではなくて、本当に今迷走していると先ほどお話ししたのですが、その中で児家センというものがどういう役割を担っていくかということをもう一度整理しようという状況にいるというのが正直なところでございます。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。全国児童相談所長会。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 ありがとうございます。

 松本構成員がおっしゃるのは、市町村が力をつけていけば、将来そっちへどんどん任せていくというような意味合いと考えてよろしいですか。

 

○松本座長代理

 ベースには市町村の関係といいますか、地域ベースでソーシャルワークというものが、特に障害だとかほかの問題を切れないとなると、やはり基礎自治体はサービスを持っておりますので、そちらのほうを基盤にしていろいろこういうのをするというのも一つの考え方だと思うのです。

 

○全国児童相談所長会(桜山会長)

 現行でも、ソーシャルサポート的なものは市町村が持っておりますので、もちろん政令市などで両方一緒に持っているところもありますけれども、都道府県型の児童相談所であれば市町村と連携しております。ですから、市町村が力をつけてくれば、それだけどんどんお任せするという方向にはなると思いますが、中には広域的な対応が必要なのもありますので、最終的に全部が市町村というふうにはならないと思いますし、現行でも規模の小さな町村を中心に、まだまだ児童相談所が役割を果たしていかなければならないのかなと思っております。

 

○松本座長代理

 わかりました。小木曾さんの御提案の中に措置権の問題がありましたので、そこはかなり大きな論点かなと考えましたので、お伺いしました。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 

○藤林構成員

 時間がない中ですみません。2点ほど。

 1つは、質問というよりは情報提供というか、全児相さんから一時保護所の話があったわけですけれども、この検討会でも一時保護所のあり方をぜひ議論してほしいと思っていまして、次回でもと思っているのですけれども、今の全児相さんのお話でも、充足率100%を超えているところから数%のところまで非常に幅が広くて、一時保護所の実態というのはなかなか把握できないので、把握できない中でどうあるべきなのかという議論してもしようがないかなと思っているのです。そういう意味で今皆様方の机上配付として資料を配らせていただいています。これは御存じの方もいらっしゃると思いますけれども、和田一郎先生が母子愛育会にいらっしゃったときに行われた全国の一時保護所、100%ではありませんけれども、実態調査ですので、ぜひ次回までに読んでいただいて、議論していただければと思います。12ページあたりがヒアリング調査結果かなというところで、生の保護所の情報がありますので、参考になるのではないかと思っております。

 もう一つ、日本知的障害者福祉協会の北川さんに教えてほしいのですけれども、私は障害児入所施設は、これから障害児を受け入れていく里親さんの支援、バックアップという点で、物すごく可能性があるかなと思っていまして、北川さんのところがそういった実践をしていらっしゃると思うのですけれども、何かその辺の可能性について、時間がありませんけれども、短くコメントをいただければと思います。

 

○日本知的障害者福祉協会(北川理事)

 私の所属している法人内では、里親とファミリーホームで大体30人近い子どもたちが措置されておりますけれども、一般の専門知識がない里親さんでも、バックアップさえきちんとあれば育てていくことができるという実践をしています。社会的養護が必要な子どもたちが地域で当たり前に住むために、障害児入所施設や児童発達支援センターにおける里親に対するバックアップは、大事なことだと思っております。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 手短に。

 

○相澤構成員

 障害児施策は、今、総合的な施策になりましたけれども、むしろ逆に障害のほうから見て、障害児施策があるもので児童が活用できる、例えば移行期支援とか、そういう事業はあるのでしょうか。例えば、子どもが退所した後のスモールステップで移行支援するときに、障害のほうで出されている移行支援の事業みたいなものは、むしろ社会的養護の子どもにも十分に活用できるという事業はないのでしょうか。こちらでも障害児施策を活用したいと逆に思ったりするのですけれども、その辺はいかがですか。

 

○日本知的障害者福祉協会(北川理事)

 移行期に関してはそんなにないですけれども、グループホームの活用だとか、そういうことをしています。障害児のほうで一番いいと思うところは、措置制度だけではなくて契約制度があって、家庭でちょっといろいろあってあざをつくったという御家庭の子も、簡単に一時保護というよりはショートステイで看られ、その間、お父さんとお母さんにペアレントトレーニングなどをして。もちろん、児童相談所には連絡しますけれども、そしてまた御家庭に帰れるとか、ただ受給者証は必要なのですけれども、契約すればそういうちょっととしたときにお子さんを、措置とか一時保護とかでなくても、しっかり守れるということが契約制度のいいところかなと思っております。

 

○奥山座長

 私の方から、最後に1つだけお伺いしたいのですけれども、私のイメージとして障害児施設がかなり入所が長くなっている方が多いのではないかなと思っているのですけれども、家庭に帰すことに関しての努力はどんなことをされているのかということと、虐待があると返しづらいだろうと思うのですけれども、そこで虐待がある人たちとそうでない子どもたちで入所の長さがかなり違うものなのか、その点について教えていただければと思います。

 

○日本知的障害者福祉協会(北川理事)

 児童入所施設に長くいるということがやはり大きな問題ということで、30年までにとにかく児童のみの施設になるなどの選択を迫られていますが、例えば兄弟にいろいろな問題が起きた場合などについては、ちょっと山間留学のように、という言葉を使っているのですけれども、入所施設を使わせてもらって、行動上の問題を少し緩和して家庭に帰るという治療的な役割を果たしていることも事実です。虐待の子どもに関しては、逆に、一度家庭から保護した子どもをどう家庭と統合していくかということが重要で、この件については、本当に児童養護のほうが進んでいて、こちらのほうはまだそこに十分、手をつけることができていない状況だと思います。児童発達支援センターのほうでは家族支援という形で、家族に対する支援をやっているかもしれません。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 よろしいでしょうか。

 きょうは本当にお忙しい中、貴重なお話を伺わせていただきました。どうもありがとうございました。

 では、交代をしていただいて。

(発表者交代)

 

○奥山座長

 今、交代をしていただいているのですけれども、この次に全国里親会、日本ファミリーホーム協議会、キーアセットの方にお話を伺うことになっております。

 前半と同じように、3団体の方々にお話を伺った後に、質問をお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。非常に短くて申しわけないのですけれども、10分ということで、目安として9分でベルが鳴るということになっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、全国里親会の河内会長、よろしくお願いいたします。

 

○全国里親会(星野前会長)

 全国里親会の星野でございます。

 実は、全国里親会はつい最近役員が変わりまして、先週の金曜日に私は会長をおりまして、こちらにおります河内が新しい会長となりました。きょうは河内のほうから発表させていただきます。

 

○全国里親会(河内会長)

 若輩者ですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 ついこの間、会長職を仰せつかりまして、できるかどうかわかりませんけれども、一言、二言と申し上げたいことをお話ししたいと思います。

 早速ですけれども、「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」においてのヒアリングでございますが、これにおいて改正児童福祉法が子ども権利条約の理念を導入されていますけれども、法の理念を具現化するためには、社会的養護の家庭養育に関して、特に国全体が重点的に取り組む必要があると思います。そこで、最初1から6まで挙げておりましたけれども、新たに7項目目を挙げさせていただきたいと思っております。

 最初に1つ目としまして、養育里親をふやすことを最重要施策とすること。改正法では、児童が良好な家庭的環境で養育されるために必要な措置を講じなければならないなどの規定が明記されていますけれども、養育里親が足りないなど、十分なマッチングができる現状ではありません。

 次に、養育里親を増加させる対策を国として実施する必要があると思います。児童相談所が委託したくても、適当な里親がマッチングできない状況でもあります。里親制度において、養子縁組里親と養育里親の違いが明確になるように留意される必要もあると思います。

 国は地方公共団体が十分に取り組むことができるための措置を講ずるため、あらゆる対策を検討していただきたいと思います。県などで、先ほどの地方公共団体のことでございますが、児童福祉部門以外の総務・財政部門が児童福祉法の理念が具現化できるような対策が必要と思われます。例えば、里親委託率が20%を超えている県等には、地方交付税を増額するような補正率の変更等の対策、また補助事業の県などの負担を減ずるための対策を行い、改正児童福祉法の理念を実現しやすくするための財政支援が必要と思われます。

 里親の啓発、募集等の事務は、数少ない児童相談所だけではなく、市町村が行うべきだと思います。早急にその仕組みを検討する必要があると思います。

 続いて2番目ですが、里親支援事業の拡充と徹底です。平成29年度から実施される里親支援事業は、現行の支援機関事業が徹底されていないことから、地方里親会を活動拠点とする等、対象事業や補助枠等を含めて、地方において取り組むべき方策を検討していただきたいと思います。

 国の補助率を上げるなど、地方で予算化しやすい方法を検討していただきたいと思います。

 続いて、里親支援事業を社会福祉法上の第2種事業とし、補助事業ではなく、義務的経費措置費事業、里親会活動事業を含んでおりますが、このことについて検討いただきたいと思っております。

 次に、施設委託児童は、45人定員で、ファミリーソーシャルワーク、個別対応職員、心理士、看護師等が加算されておりますが、里親委託児童にも施設入所児童と同じ程度の支援を行うべきだと思います。

 続いて、里親、里子支援の充実なくして里親制度の充実はあり得ないと思いますが、里親制度が維持できない支援状況となっています。欧米の失敗を日本で繰り返さないようにすることが大事だと思います。

 実親が利用しやすい里親制度にする必要があります。実親の子育て機能を里親が補完するなど、里親と実親がともに子どもを養育していくシステムを検討すべきだと思います。

 里親制度担当者に対する研修を実施していただきたいと思います。この研修は、都道府県によって異なるかと思いますけれども、この辺のことを強く望まれているようです。

 3番目に、乳幼児委託について。国は、女性が今後さらに社会進出し、就労する方針を掲げ、各種施策を展開しています。今後、里親の登録者を増加させるに当たり、共働きを前提にした制度の充実が必要であると思います。

 養育里親への乳幼児委託の依頼は、児童相談所からある日突然にやってくる。共働きの里親は仕事をやめるか、続けるかの選択を迫られる。乳幼児委託を推進するために、養育里親が容易に育児休暇制度を活用できるようにするべきであろうと思います。

 保育園の利用が優先的に可能となるようにしていただきたい。特に、年度途中で受託する場合の優先的利用が可能となるようにできたらと思っております。待機児童の辺がいろいろと操作されるかと思いますけれども、その辺があればと思っております。

 乳幼児委託を推進するため、児童相談所、乳児院等との強力な連携を図り、新たな事業を検討する必要があろうかと思います。

 里親委託は、実親の抵抗が強いことから、「里親」の名称変更だけではなく、実親支援、特に心理的な支援が大切な課題が挙げられております。

 4番目としまして、職業里親制度についての検討。里親委託を行いたくても、適当な養育里親がいないことが現状です。里親委託の停滞を打破するためにも、職業里親制度を検討していただきたいと思っております。

 5番目に、里親の人材育成についてです。里親自身も、いつまでもボランティア精神を振りかざすのではなく、意識改革が必要であります。里親の養育への知識や理解を深めるなど、質の向上も図る必要があります。里親の専門性を向上させるための研修費用は、ほとんど自費となっています。里親委託手当に研修費等の加算をお願いしたいところでございます。

 6番目に、子どもの意見表明権が児童福祉法に条文に明記されていますが、家族再統合、面会、委託変更時などに里親の意見を表明できるようにできたらと思っております。

 そして、7番目の補足でありますけれども、専門里親についてのお願いでございます。虐待を受けた児童や障害等がある児童を養育している養育里親は、詳細は把握されていませんけれども、相当数いらっしゃると思います。本来、専門里親が養育している件数は非常に少なく、東京都などにおいては1件しかないようです。これは専門里親登録のハードルが高いことに大きな要因があると思われます。

 そこで、専門里親の更新研修期間を2年から5年にしていただけたらと思います。更新時の該当児童を養育している場合は、実績評価を含め、研修を免除されていただきたい。なお、里親手当を引き上げることも考えられます等の願いを講じ、登録里親の増加を図る対策としていただくことを切望いたします。

 以上が提案している文言として、皆様方にお示ししてあるとおりなのですが、よろしくお願いいたします。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 続きまして、日本ファミリーホーム協議会の卜蔵会長、よろしくお願いいたします。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 日本ファミリーホーム協議会の会長の卜蔵でございます。

 早速お話しさせていただきたいと思います。

 本会からは、昨年実施しましたファミリーホームの調査の結果を資料として提出させていただいています。ファミリーホームは制度化から8年目を迎えて、ファミリーホームの現状と課題を踏まえつつ、意見を申し上げたいと思います。

 ファミリーホームの理念の明確化、あるいは家庭養護としての位置づけという中で、「ファミリーホームは里親の大きくなったもので施設の小さくなったものではない」とされました。しかしながら、現実にはそうは言い切れないホームが、特に法人によって開設されたホームの中に見受けられています。ファミリーホーム=家庭養護という図式は全てにもう当てはまらなくなっておりまして、実際には多種多様なファミリーホームが存在しているというのが現状としてあります。里親とともに家庭養護の拡充へ向かうために、里親制度とファミリーホーム制度は一体的に考える必要があるのかなと思っております。

 まず、1つ目ですけれども、課題と将来像では、将来的に1,000カ所という設置目標が掲げられています。ただ、制度化から、当初2年間でかなり大幅にホーム数はふえたのですけれども、それ以降は毎年30カ所程度の増加となっております。今後、里親出身、あるいは施設職員経験者の独立による個人のホームの開設というのは大幅に増加することは見込めません。もし、1,000カ所という数値を考えるならば、当然児童養護施設を中心とした施設による開設の拡充が前提となってきております。

 しかし、児童養護施設が設置するファミリーホームの場合に、地域小規模との違いが不明瞭だという指摘が制度化当時からありまして、なかなかそこの問題がクリアになっていないということで、私どもの考え方としては、施設が2カ所のファミリーホームを持つということが小規模推進の中でうたわれているわけですけれども、施設が直接設置するというよりも、むしろ職員が独立して開設したファミリーホームを支援先として持っていくということを前提にしていったほうが、家庭養護としてのファミリーホームの理念にかなっているのではないかと思います。ただ、一方で、夫婦型の地域小規模の中には、家庭養護に近いというか、ほとんど家庭養護と呼べるものが現実としてあるのではないかと思います。ファミリーホームの1,000カ所という量的な目標については、ぜひ再検討をお願いしたいというところです。

 また、法人型で施設的なファミリーホームも実際にあります。住居を用意して、養育者を雇用してというところがあるわけですけれども、その中にも、例えば高齢児、中高生を中心とした委託を受けて自立支援を一生懸命やっているホームもありますし、また、課題の多い子ども、非行の子どもとかを、補助者を複数配置して支援するなどということで、非常に働きとしては大きな働きをしているファミリーホームもあります。ですが、そういったところの養育に対する評価はする必要がありますので、そこで家庭養護か否かということだけで見るのではなくて、支援のあり方を論じることが必要であると思います。

 3番目に、家庭養護の推進、そして拡充という方向は堅持するということはもちろんですけれども、里親とファミリーホームを合わせて全体として家庭養護を進めていくことの視点が必要だと思います。やはり里親制度の充実なくしてファミリーホームの拡充はないと考えております。里親が十分な養育経験、体験を積んで、その積み重ねの上にファミリーホームをつくっているという仕組みが必要かと考えております。

 先ほど、全国里親会からの意見の中にありましたけれども、現行の里親類型の見直しや新設の検討が必要だと思います。そして、専門里親制度は委託の実態と合っていないと思われるので、そこについても検討をお願いしたいと思います。現行、里親手当は1人目だけ高く、2人目以降はその半額ということになっているのですけれども、むしろ児童数の増加に合わせて加算されるということも考えるべきかなと。

 そして、例えばファミリーホームの前段階として、3~4人程度を育てるミニファミリーホームといいますか、そういった里親さんもふやしていくことが必要かなと考えております。また、ファミリーホームと里親制度の整合性、子どもの委託数で5人、6人がファミリーホーム、里親は4人までということがあるわけですけれども、その辺が今やや混在しているところがありますので、そこの整合性を図ることが制度的に必要かと思います。

 それから、ファミリーホームに委託される子どもは、被虐待児あるいは障害のある子どもなど、課題のある子どもが多くなっております。また、中高生など、委託時の年齢が高い子どもが他の里親施設と比べても多くなっております。制度化当時は、夫は外に仕事があって、夫婦+補助者1名というような形で始まったわけですけれども、現実にはなかなかそうした制度化当時の状況が異なってきて、なかなかそういうことでは維持しにくくなってきているというところがあります。常勤1+非常勤2という配置になっているわけですけれども、常勤2+非常勤1というところへの変更も検討いただきたいと願っております。

 また、ファミリーホームを家庭養護と言うのであれば、子どもへの支援という観点から、保育所の利用など、里親の利用可能なサービスはファミリーホームにも認めていただきたいと思っております。

 ファミリーホームが実質的に最後の子どもの受け所みたいになっているところも見受けられますけれども、果たしてそういうことでいいのかということも考える必要があります。どういう子どもを受け入れ、育てを支援していくのかということをそれぞれの種別のあり方として、全体として検討する必要があると思っております。

 それから、5番目の自立支援についてですけれども、今申し上げたように、ファミリーホームには高齢児の委託が多くなっております。そうした子どもも、短期間ではあっても、きちっと確実に社会に送り出していくために、ぜひ自立支援の充実ということをさらに強化していただきたいと思います。

 また、例えば進学して二十になって措置解除になって、しかしそのままホームで生活するという子どもも多くなっています。そうした場合に、解除になって新たに子ども1人を受ける、あるいは2人受けるとなると、ホームの中に7人、8人といった子どもが実際には生活するということにもなって、負担も増加していくことになりますので、そうした場合のあり方についてもぜひ検討いただきたいと思っております。

 それから、家庭養護の推進は、里親及びファミリーホームへの支援の充実と一体となって進めなければならないと思っております。そのためには、今以上の里親支援の充実が必要になってくるわけですけれども、実際には児童相談所による支援というのは限界が現実にありまして、そこをどこが補うのかということが大きな課題になってくると思います。乳児院や児童養護施設の持つノウハウを生かした里親支援、あるいは他の里親支援機関による支援の充実ということを期待したいところですけれども、そのためには児童相談所が持つ機能を民間に移していくことも必要だと思います。

 また、里親支援相談員による里親支援に地域格差が大きいというのは、そういった児童相談所の対応のあり方とも大いに関係していると思っているところです。

 ファミリーホームとしては、非常にいろいろな形態が出てきているというところで、そこの整理もこれからどうしていくのかなというところが一つ課題かと考えております。

 以上です。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 続きまして、キーアセットの渡邊代表、よろしくお願いいたします。

 

○キーアセット(渡邊代表)

 このようなお時間をいただきましてありがとうございます。限られた時間でございますので、自己紹介、あるいは私どもの法人についての紹介は割愛させないただきます。取り組みのほうに、わずかではありますが、私どもの組織の実績等が書かれておりますので、後でごらんになっていただけたらと思います。

 「議論のポイント」に挙げられている中から、複数の異なる自治体において里親支援機関事業を受託している法人として、関係する事項について意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、里親支援の現状と里親制度の充実に向けた課題というポイントについてです。フォスタリング・エージェンシーの不在というところから課題を挙げさせていただきます。その課題をブレークダウンしていきますと、ぶつ切りの支援、それから支援者の乱立と、解消されない養育里親家庭の不透明さと孤立、それから不明確な目標設定、リクルートから委託後の支援までを一つの機関が担う重要性になっております。

 ぶつ切りの支援という過激な表現にはなっておりますが、里親支援機関として事業を受託している団体は全国に少なくありません。そして、それらの多くは里親支援という名目で、つながりのない、とスポット的な業務を受託しているように見えます。それぞれの業務が果たして家庭養護の促進にどのように寄与しているのか、連続性、包括性というものがわかりにくいのではないかと感じております。

 実際に現場では、養育里親家庭の方々から、里親支援機関って一体何をしてくれるの、あるいは里親支援機関って予算をもらっているらしいけれども、一体何をやっているのという声が聞こえてきたこともありますし、恐らくそう思っていらっしゃる方は少なくないのではないかと思っております。

 それにつながる部分でありますが、支援者の乱立と解消されない養育里親家庭の不透明さと孤立。これはもちろん言うまでもなく、養育里親家庭の責任だと私どもは思っておりません。開かれた養育里親家庭になりなさい、あるいは透明性を確保しなさい、これは里親家庭の努力だけでできることではないと私どもは思っています。“開かれた”養育里親家庭、開かれたというのはどういう状態を指すのかという部分がまだはっきりしていないという部分でコーテーションマークをつけさせていただいておりますが、もちろん透明性、それから養育里親家庭が孤立しないということは、子どもにとって重要なポイントですし、それが養育里親家庭に求められることは当然です。

 そのために、さまざまな“支援者”が用意されていますが、支援者というものが果たしてどんな成果を上げているのか、あるいは支援というものが本当に子どもの利益につながったものなのかどうかというものが現時点ではちょっとわかりにくいなと、私ども実践者としては感じています。

 一方で、そういった現状がありながらも、養育里親家庭の孤立を防ぐために必要なのは、支援者をもっともっと増やしていこうという形ではなくて、むしろ一つの帰属先というものを養育里親家庭にとって用意していく。そういった信頼関係こそが養育里親家庭を孤立から防ぎ、そしてその家庭の透明性というものを築いていく、あるいは発信していくものになるだろうと考えています。

 ソーシャルワークの実践機関が養育里親またはその候補者にとって帰属先となるためには、候補者の段階からその家庭の強みをきちっと理解して、トレーニングをして、そして委託後もともに歩んでいく、そういったものが求められます。その帰属先が多くの場合、養育里親家庭には制度として準備されているようには見えません。偶然、あるいはいくつかの相性を持ってそういったものをつくれている関係があることは私も存じていますが、しかし、それが制度としてできているかというと、必ずしもそうとは言えてないと思います。

 不明確な目標設定。養育里親制度とそれを支援する事業者が、子どもと若者の現在と将来、そして地域社会にどのようにポジティブな変化を生んでいるのか、現状ではそれが明確とは言えません。養育の質をはかることは、質ですから数値化することがなかなか難しかったり、どうやってその質というものを示していくのかということが簡単ではないことは理解しているつもりではありますが、それでもやはり子どものために、しかも事業である以上は目指すべき成果というものを国または自治体が示していく、決めていくということが私は求められるのではないかなと思っております。

 それを達成していくことが事業者にとってゴールとなるべきであって、今のように事業を受託する、あるいは毎年毎年事業を完了するということが、言ってみれば里親支援というもののゴールになってしまったとするならば、それは果たして子どものためと言えるのだろうかと感じています。

 リクルートから委託後の支援までを一つの機関が担う重要性ということについても触れますが、養育里親家庭に委託される子どもと若者のニーズは複雑化していることは、現場の養育里親家庭の皆さんは既に感じておられると思います。そのようなニーズに里親家庭が応えていくためには、チームによる養育が不可欠であることは言うまでもありません。そのチームへ養育里親が帰属感を持っていく、そのことがチーム養育の実践には必須であります。

 その帰属感を育むために効果的なのは、途中から、あるいは委託が始まってから支援を始めるのではなくて、リクルートの段階から、候補者の段階からアセスメント、トレーニング、そして支援を一貫して一つの機関がやっていくということが重要です。

 現状としては、支援者と支援を受ける側という非常にオールドファッションなソーシャルワークがいまだに主流であるように見えます。

 次に2つ目のポイントに行きますが、課題として、日本は何となく先入観として里親が増えないというふうに思われているのではないでしょうか。もし里親がふえないだろうということを前提に何か制度がつくられているとするならば、それは非常に残念なことだと思います。里親家庭を増やす、養育里親家庭の候補者を増やしていくということは、私どもは可能だと思っていますし、私どものような小さな法人であっても実際に資料にあるような実績を上げることができています。ということは、国全体として実践者がきちっと活躍をすれば、里親を増やすことができる形になると思っております。

 もっと言いますと、大切なのは里親登録だけをふやしていくということをゴールにしてはいけないということだと思います。家庭養育を必要としている子どものために養育里親制度をきちっと機能するようにしていくことが大事であって、里親登録をふやしていくということにゴールを設置してしまうと、子どもにとって利益になるような形の里親支援というか、里親啓発、あるいは里親家庭で生活する子どもにその機会を増やすということになっていかないのかもしれません。

 そして、3つ目です。未委託家庭の扱い。未委託家庭をどうしていくのか、未委託家庭に子どもが委託されるようにしていくということが、もちろん一つの大事な改善されるべきポイントであることは私も理解しているつもりです。しかし、その未委託家庭に委託できるように、これから新たな機関に事業として、あるいは既存の里親支援機関や里親支援専門相談員に何とかしなさいよというふうに委ねるのは、果たしてそれが効果的なのかどうかと考えていただきたいと思います。未委託里親を誰がアセスメントしてトレーニングしたのか、また強み弱みを誰が理解しているのか、その役割を担い、彼らを登録まで導いた機関は一体どこなのか、その機関が未委託里親家庭の課題の解決に導くべきだと思いますし、それがより効果的だと思います。アセスメントもしていない、その家庭の強み弱みもわからない機関が後から登場して、その未委託家庭を支援しようとしる、あるいは未委託家庭を委託できるようにするということがどれほどエネルギーと時間を要するのか、私には想像がつきません。

 それから、新たな“在り方”を目指すポイントに関してです。家庭養護を社会的養育の選択肢として質量ともに十分に機能させる作業というのは、これまでにない新しい試みだと私は思います。既存のものをリフォームするのではなくて、新たな方法、具体的にはフォスタリング・エージェンシーの導入や成果ベースの民間活用、厳しい評価基準など、全く新しいものを導入する必要があると考えています。既存のものをアップデートすることも大切かもわかりませんが、新しいシステムをつくるのですから、新しいものを導入するべきだと思います。

 それから、新たな養育里親制度のあり方と既存の里親制度のあり方を分けて考えていただきたいと思っております。新しいものをつくる役割を担う機関に、同時にこれまでのものもやってねというのは無理があるのではないかなと感じています。

 それから、提言とお願いです。フォスタリング・エージェンシーをぜひ導入していただきたいと考えています。フォスタリング・エージェンシー、これは民間の活用ということも含めてですけれども、帰属感を持てるようなチームワークによる養育というものが、欧米諸国の言ってみれば不調やあるいはplacement breakdownというものの経験の上に、つまり負の歴史の上に成り立っているわけです。私ども日本がこれから新しいものをつくるに至っては、そういったものをわざわざもう一度経験する必要はないと思います。だとするならば、養育里親家庭がチームワークを組めるような、そういったフォスタリング・エージェンシーを今から用意していく、それこそモダンソーシャルワークにつながっていくと思いますが、支援者と支援を受ける側という、そこに隔たりがあるようなオールドファッションなソーシャルワークをこれからやるとすると、これからの新しいものをつくる上では非常に難しいのではないかと思います。

 最後に、ぜひ成果ベースによる事業の設計をしていただきたいと思います。やってもやらなくても同じような事業費が出てくるという形ではなくて、一定の成果を出したところ、あるいはケースに応じて事業費というものが払われるような事業設計を是非していただければと思っております。

 ちょっと時間を超過しましたが、以上で私のほうからのお願いと意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 それでは、皆様からの質問、御意見はございますでしょうか。

 では、私の方から1つ。卜蔵さんに示していただいた調査結果を見ると、意外に社福よりもNPO法人が多いのですが、これはどういう形態なのか、おわかりでしょうか。全くの独立したNPO法人なのか、社会福祉法人がまたNPO法人もつくってという形なのか、その辺のところをお教えいただきたいのと、一般社団法人とかいろいろなものが入っているので、どのような形態なのかを教えていただければと思います。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 まず、一般社団法人ですが、実は藤林所長の福岡市に非常に多いのですけれども、中身は全く個人の里親型のファミリーホームと一緒です。それは経理処理とか、そういった事業の運営のために一般社団法人にしたということですので、一般社団法人になっているファミリーホームはほとんど個人型と同じと考えていただいていいと思います。

NPO法人についてはいろいろあります。同じように個人型と同じで、ファミリーホームをやっている養育者がそのために立ち上げた場合もありますし、あるいはほかのいろいろな子どもの支援をやっているNPOがその中で立ち上げたようなケースもあります。また、少ないのですけれども、社会福祉法人がNPOをつくったというところもこの調査の中では出てきていますので、NPO法人の中にはいろいろな形態があります。

 

○奥山座長

ありがとうございます。

 西澤構成員。

 

○西澤構成員

 複数あるのですけれども、簡潔に言います。全国里親会さんの方に質問がいくつかと指摘が1点です。

 養育里親を増やすということを一番に掲げてあるのですけれども、ここの議論では、養子縁組の推進というほうに話が進んでいるのですが、そこであえて養育里親を増やすというのは、養子縁組に行かないということなのかなというのを確認したい。

 それから、2つ目の「里親支援事業の拡充・徹底」の上から5個目の丸のところで、「里親・子支援の充実なくして、里親制度の拡充はあり得ない。里親制度が維持できないところに近づいている」という後に、「欧米の失敗を日本で繰り返さないようにすることが大事である」と、これは具体的に何を欧米の失敗としているのかという点です。

 最後に、指摘ですが、子どもの意見表明権が児童福祉法の条文に明記されたという非常に重たい事項の後に、里親の意見の聞いてよと言うのは、ちょっとおかしいなと私は思います。実際、これはソーシャルワークの問題であって、意見表明権を明記するとかそのレベルの問題とすごく違うことだと思うし、実質上、家族再統合や面会なんかに関しても児童相談所は施設の意見も聞かないわけですから、それは児童相談所のソーシャルワークの問題だろうと思うのでということで、それは指摘ですが、2つの点について教えていただけますか。

 

○奥山座長

 よろしくお願いいたします。

 

○全国里親会(河内会長)

 この提案は、私ついきのうこれを申し受けたのです。それで、受け売りではありませんけれども、大体のことはわかりますけれども、一応、前会長さんにお答えいただこうと思います。

 

○全国里親会(星野前会長)

 まず、養子云々の話でございますけれども、現在、未委託里親さんの中に、単に子どもが欲しいというだけで里親に登録された方が多いのです。だから、今国の方としては養子縁組を推進しようとされているのは、それはそれで結構なことだと思いますし、子どもにとっても養子になればハッピーなのですけれども、現在の人たちは結構そういう人たちが多くて、ただひたすら児童相談所から子どもを紹介されるのを待っているという状況の人が多いのです。

 実際には、子どもたちの状況を見ると、虐待を受けたとか、障害があるとか、そういうケースが非常に多いので、もっとそういった子どもを養護して育てていくという観点からの里親が欲しい。もちろん養子もいいのですよ。養子も別に全然否定しているわけではもちろんありませんけれども、そういうふうな里親さんをもっと募集したい、募っていきたいということなのです。

 

○西澤構成員

 ここでは議論にならないですが、子どもを育てたいというのでは里親のスタートとして不適切なのですか。

 

○全国里親会(星野前会長)

 いえいえ、それは結構です。そのうちに入っていただいて、次第に、そういう子どもたちがいっぱいいるんだということで、自分も養育里親になってみようという人ももちろん増えておりますけれども、地元の里親会にも参加せず、ただひたすらじっと待っている人が多いのが現実なのです。

 

○西澤構成員 

わかりました。ただ、国の調査では4割が子どもの福祉的なことについての観点から里親を希望したとなっているので、ちょっと話が合わないかなという気がしたのですが、それはいいです。

 もう一つの欧米の失敗というのは、端的に言うと何ですか。

 

○全国里親会(星野前会長)

 欧米は、御承知のとおり、たらい回しが物すごく多い。これは一つは施設がないせいもあるのですけれども、この里親からこの里親、この里親からこの里親へと。大体ソーシャルワーカーが子どもの意見を聞いて、この里親は嫌だからほかに移りたいという子どもの意見を尊重してどんどん動かしていくのですね。だから、中にはもう10回、20回、里親の家庭を回っているという子どもが非常に多いのです。それを日本で絶対にそういう失敗をしてはいけないと。それをしないように、里親と里子を両方支援していくというシステムが必要だということなのです。

 

○西澤構成員

 わかりました。そうすると、欧米ではなくて、英米だと思います。大陸ヨーロッパは事情が違うと思います。

 それともう一つは、さっきおっしゃったのは多分事実誤認だと思います。アメリカの里子のドリフターの研究では、一番多いのは里親さんのほうからの不調です。子どもの意見を聞いてではない。それはかなり曲解したデータの紹介だと思いますので、お気をつけいただきたいと思います。すみません、ありがとうございました。

 次に、卜蔵さんのほうに1点だけ確認したいのですが、卜蔵さんの主張は、法人型のファミリーホームも非常に価値があるというか、存在意義があるものがあるのだけれども、それはあくまでも施設だと思っていいのではないかと私は思ったのですが、それはいかがでしょうか。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 果たしてそれを施設と言うかどうかというのは。

 

○西澤構成員 

小規模化の一つのタイプだと。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 法人型で住込み職員的に行っているホームを私たちは施設的と言っていますが、いわゆる里親型のファミリーホームとは別物であると思います。

 

○西澤構成員

 ありがとうございました。だから、要するに1,000カ所という目標設定自体がもう既におかしい可能性もあるということですね。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 そうです。

 

○西澤構成員 

わかりました。ありがとうございます。

 渡邊さん、すみません。いろいろなことではものすごく一致する考えなのですけれども、1つだけ、私は日本のいろいろなこれまでの制度が、要は明治期に国が旗を振って里親を禁止してきた歴史がずっとあって、その結果、里親が増えないという現状につながっていると考えています。そういう文脈において、欧米みたいに本当にリクルートだけでいけるのかどうか。欧米というか、ヨーロッパでは、大体60%以上が御存じのように里親養子縁組で対応していますから、その水準まで行けるというふうに本当にお思いですか。

 

○キーアセット(渡邊代表)

 西澤先生も御存じだと思いますが、80年代、90年代、ヨーロッパで、アメリカのことは私は知りませんが、イギリスあるいはアイルランド、それからオセアニア諸国でバックラッシュがありました。その時期から、オセアニア地域は御存じのとおり親族里親を促進しましたし、イギリス・アイルランドの方はいわゆる民間活用というほうに大きくシフトしました。バックラッシュが起きる原因となる質の低いフォスターケアの結果何が起きたのか。

 里親になり手、つまり里親に対するスティグマというか、里親になるということに対する地域のイメージというのはすごく落ちました。そこで新しい養育里親家庭を確保をするために物すごいコストをかけるようになったのです。里親を獲得する。つまり、里親を獲得しにくい、黙っていても里親が出てくる状況ではないというのは、いわゆる児童福祉先進諸国と言われている国々の状況と今の日本は難しさという点ではそれほど変わらないと私は思っています。

 その中で獲得するために一番大事なのは、これはオックスフォードのリーズセンターの報告書で出ていますが、里親を増やすために一番効果的なのは口コミです。

 口コミってどういうことかと言うと、里親になられた方が大体5年から7年ぐらいでリタイアしていくサイクル、静岡市でもたしか8年がサイクルだというデータが出ていました。それで、リタイアをしたときに、傷ついてバーンアウトしてやめていくのか、あるいは生き方として何か社会貢献をした、子どもの人生に自分の生き方を残すことができたというポジティブな経験をもとにやめていくのかで、その地域の将来のリクルートは大きく変わるわけです。つまり一番効果的なリクルートというのは、今の養育里親家庭、それからすぐ先に養育をスタートされる養育里親家庭にポジティブな経験をいかに積ませるのか。もちろん子どものためにですよ。そして、その方々が地域に帰っていって、「しんどいけれども、やりがいがあるよ」と。今だと、「やりがいはあるけれども、しんどい」なのです。「しんどいけれども、やりがいがあるよ、あんたもやらへんか」という状況をいかにつくっていくのか。

 

○西澤構成員

 大阪弁の方がいいということかな。

 

○キーアセット(渡邊代表)

そういうわけではありませんが。

 

○西澤構成員

 そういうことですか。

 

○キーアセット(渡邊代表)

 コストをきちっとかけて、コストに見合った効率的なリクルート方法をとれば、少なくとも日本の社会的養育の中に子どもたちが必要としている選択肢として家庭養護が機能することは、私は可能だと思っています。

 

○西澤構成員

 ありがとうございます。

 

○全国里親会(星野前会長)

 先ほどの西澤先生の3つ目のお話なのですけれども、別に里親の意見表明権を児童福祉法の中に書けとか、そういうことではないのです。ただ、現実を見ていますと、子どもの意見だけを聞いて、さっとその里親から取り上げて施設に動かすというケースが最近増えております。そういうことに対して、もうちょっと里親の意見もちょうだいねと。どんな一般家庭でも、里親家庭でも、親子の葛藤というのは必ずあるわけですね。そのときに、子どもの意見だけを聞いて動かすなよということなのです。

 

○西澤構成員

 わかりました。その点だと私も共感します。私が今見ているケースでも、ちょっと子どもが状態が悪くなって、里親さんがめげそうになったら、もう一時保護して措置解除しますと言ってきたので、ちょっと待てと私がとめたというのはありますから、その意図はよくわかります。ただ、誤解されるかもしれないという点は、ちょっと気をつけられたほうがいいかなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 加賀美構成員。

 

○加賀美構成員

 ちょっと全然違う観点の質問になります。課題と将来像が発出されて以降、やや急速にと言っていいかどうか、里親が推進され、里親委託される子どもが増えてきているという現状があると思うのですが、一方で、これは非公式な見解でもあるのですが、里親不調がふえているという状況を、もうこれは皆さんお感じになっているのかどうかという観点と、もしそうだとすれば、その要因は何か。それぞれのお立場でお答えいただければということです。お三方です。

 もう一点。先ほど、「里親」の名称変更の話が里親会から出ました。その点について、それぞれの方々がどのように御意見を持っているのか、お聞かせください。

 

○奥山座長

 では、全国里親会の方からお願いします。

 

○全国里親会(河内会長)

 まず、里親委託等はふえて、さらに里親不調等もふえてきたという御質問だったと思いますけれども、この里親委託等はやはり全国的に児童相談所さんの活動が活発になってきたことがあるようにも思います。私は山口県なのですけれども、児相の所長さん等の会議で、いろいろな趣向を凝らされて、地域で市町のほうで説明会が何回も持たれて、その結果、憧れて里親登録された方がたくさんいらっしゃいました。また、一方、里親不調ということは、里親さんだけでなくて、親御さんの養育力不足といいますか、また子どもさんの状態が本当に複雑多岐にわたって、いろいろな主張がどんどんふえてきた時代になってきました。それと、里親さんの登録をされた方々との年齢との関係のものが出てきて不調になったりすることもあるようです。特に、子どもたち、中高生の場合は、反社会問題、あるいは非社会問題的な行動に走って、結局子どもたちの状況に追いつかないといったのが不調の一因にもなっているようです。

 それから、名称のほうですけれども、やはり「里親」と言ったら犬猫で里親さんを募集しているところもあったりして、それが曲解されて一緒に見られるのは嫌だといった里親さんの声があちらこちらから聞こえております。それで名称を何とかしてほしいと言われる一方、やはり里親さんは里親なのだから今までどおりがいいという御意見もたくさん頂戴しております。

 

○全国里親会(星野前会長)

 補足させていただきます。里親の不調がふえているとは言っても、統計の数字の処理の仕方ですけれども、例えば里親からファミリーホームに移ったものも措置変更になるのです。だから、それも不調の中に入っているときがあるのですね。どうも統計のとり方が非常に問題であって、実際は8%ぐらいだと思うのです。それが措置変更に全部入れると20%ぐらいになるのですけれども、その辺のところは厚労省ももうちょっと統計のとり方を考えていただきたいと思っております。

 それから、里親の名称ですけれども、実親さんが里親に行くと子どもをとられてしまうという思いをされる方がどうも多いようでございまして、そういった意味では「里親」という言葉は本当は使わないほうがいいのかなという気もしておりますけれども、戦後何十年ずっと「里親」という言葉を使っていますので、すぐに変えてくれと、そこまではないのですけれども、実親さんのことを思うと、「養育家庭」とか何か、そんな方がいいのかなと、それは私の個人的な考えでございます。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 日本ファミリーホーム協議会のほうはいかがでしょうか。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 統計的なところで言えるわけではなく、私自身の周りでといいますか、宮城の実態を見ての話になってしまうのですけれども、里親委託は非常にふえてきています。実際に不調になるケースも増えているように感じます。

 それはどういうケースかというと、私たちの目から見ると、児童相談所がケース処理に追われて、委託を半ば無理に進めているようなケースも中には見られます。例えば障害がある子であったり、施設で中高生になって不適を起こして里親にとか、そういったケースで里親家庭に行ってうまくいかなくなったケースもあったりします。

 ただ、小さい子であっても不調を起こしたようなケースがあるのですけれども、何が何でも家庭養護にということではなく、例えば子どもが少し落ちつくまで施設で生活して、それから里親委託と、そういったケースワークも考えられると思うのですけれども、そういったところのケースワーク不足というか、それは感じられるようなケースもあります。それとあわせて、支援の不足というところはどのケースでも付随していると思います。

 以上です。

 

○奥山座長

 「里親」という名称に関して、何か御意見はありますか。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 どうしても犬猫とかの里親のほうばかりが出てきて、よくホームセンターとかでは「里親大募集」とか、ああいったようなのが出てきたりするのは非常によろしくないなと思いますので、適する名称があれば変えていただければいいかなと思います。

 

○奥山座長

 ありがとうございます。

 では、渡邊さん、お願いします。

 

○キーアセット(渡邊代表)

 私は、不調は増えているということは施設の先生方からも、体感でしょうけれども、聞いたことがありますし、恐らくこれからも増えるリスクは高まっていくのだろうと思います。

 先ほど星野さんのほうからのお話がありましたが、統計のとり方がどうであっても、生活の場所が変わる、特に家庭養育の場合は養育里親家庭が地域に根差しているわけですよね。その子がその里親家庭を通して地域から何らかの利益を得る、それが家庭養護の一番重要なポイントだと思います。それを組み立てたもの、あるいは地域でさまざまな資源を活用してその子どもの利益にいいと思って組み立てたものが、家庭がかわるということで全部白紙に戻ってしまう。言ってみれば、要対協でいろいろ組み立てても、保護者と子どもが家庭ごと引っ越しちゃってもう全部白紙になっちゃったというものに近い現象が起きてしまうわけです。

 それを考えると、不調というのは本当に深刻に考えるべきだと思うし、その要因は何なのかというと、私はもちろん統計を持っているわけではありませんが、恐らく私の個人的な経験で申しますと、ヨーロッパやオセアニアの養育里親家庭と日本の養育里親家庭には基本的に大きな差はないと感じています。普通のおじちゃん、おばちゃんです。普通のおじちゃん、おばちゃんで、なぜ燃え尽きてしまうのか。なぜ諦めてしまうのか。

 理由はほとんど一緒です。情報がきちっとクリアに与えられていない。孤立感をすごく感じる。誰と一緒にやっているのかわからない。困ったときに誰も助けてくれない。自分の知らないところで物事が決まっていく。そういったことが要は燃え尽きの原因になっていくわけです。

 ということは、明らかに不調というものとソーシャルワークの不十分さというものがリンクしているだろうと、私はそういった研究はしていませんが、個人的には思っています。ですから、そこを整えることが里親を増やす以前に重要なことだと考えています。

 それから、「里親」という名称ですが、犬猫がどうなのかとか、あるいはそれだと里親がふえないからということよりも、子どもにとってどうなのかということを考えるべきだと思います。そもそも養育里親家庭に来る子どもたちの全員にとって、親という役割が本当に里親にとって全てなのかどうかということを考えたときに、「親」という言葉を名称につけるということが本当に子ども中心の考え方なのか。子どもがその人を親だと思うのは自由です。だけども、子どもにとって生みの親がいて、一方で親でもないのだけれども、「里親」という名称で呼び続けることが子ども中心なのかどうか。せっかくこうやって子どもが権利主体になっていることを児童福祉法で明記したわけですから、ここで名称を変えるというタイミングとしてもいいのではないかと思います。

 もっと言うと、「里子」という言葉も、西澤先生とか上鹿渡さんはよく御存じだと思いますが、欧米では公的文書や論文などで「Foster child」なんていう言葉はほとんど出てきません。「Looked after child」とか、あるいは「Children and young people in care」という表現を使います。だから、「里子」という表現も、私は公的な文書でやはり日本ももう一度考え直すいいチャンスではないのかなと。自ら望んで里親家庭に来るわけではない彼らをそうカテゴライズしていくということは、彼らを一人の人格者として認めていると言えるのか、大人の作った制度の中で“里子”とひとくくりに呼んでよいのか見直すいい機会なのではないかなと思っています。

 余談でした。すみません。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 では、伊達構成員と、お二人、手短によろしくお願いいたします。

 

○伊達構成員

 卜蔵さんにお聞きしたいのですけれども、40ページの4のところに、常勤2人+非常勤1人とか常勤1人+非常勤2人ということを書いてあるのですけれども、この考え方そのものはその施設が打ち出すケア単位のつくり方と同じようになっていると思うのです。そうではなくて、ファミリーホームの方たちの中で、今議論に出ていますように、例えばソーシャルワークがちゃんと、誰か助けてくれる人が常時いて、一緒になってやるということになれば、またそのケア単位の施設の考え方ではなくて、一番大事にしているものが何かということで、子どもの人数まではね返ってくるような、もうちょっと枠組みの考え方が違ってくるのではないかと思うのですけれども、ここら辺は議論として出ていますでしょうか。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 結局、ここの出どころというのは、ファミリーホームに来る子どもというのは非常に手のかかる子が増えていて、当初、制度化されたときに厚生労働省から出たポンチ絵を見ると、里親家庭の中でお父さんは外に働きに出て、補助者1人をつけて支援を厚くして養育の質の担保をしようというところで出たところであったわけです。それが、常勤1・非常勤2というところで出てきているのだと思うのですけれども、なかなかそれでは成り立たなくなっているという現状があって、それでアンケートの中にもあるのですけれども、補助者を複数配置してきているところがふえているところがあるわけですね。

 その中で、ファミリーホームの運営そのものが現状では成り立ちにくくなっているというところがあります。実際に、例えば地域小規模との比較で考えれば、当然週休何日とかとあるわけですね。それに比しても、里親型のファミリーホームだと休みも全くないような形で、なぜそこの差があるのかというところで、むしろ我々のほうが負担は大きいのではないかとか、そういったようなところが常勤2・非常勤1にして欲しいという根拠で出てきているのです。

 

○伊達構成員

 もう一点、キーアセットの方にお聞きしたいと思います。里親さんとエージェンシーの関係というのは契約になりますね。

 

○キーアセット(渡邊代表)

 契約というのをどの程度のものにするのかという部分になりますが、いわゆるさまざまな取り決め事項に関して、例えばあなたはキーアセットからスーパーバイズを定期的に受けますよ、あるいはこちらがこういう研修をあなたに受けてほしいのですよといったときには、それに積極的に参加しますというようなものに同意をもらうということを契約と呼ぶのであれば、契約関係になるかもしれませんが、現状の日本の制度でいくならば、登録は当然自治体になります。登録という部分まで民間にというふうになると、それは事業上、要は安全を担保するための保険料等が膨大になります。そうすると、とてもじゃないですけれども、今の日本の現状でそこまでできるか、あるいは法改正をそこまでするのかということで、ちょっと現実的ではないですし、そこまでしなくても、民間のエージェンシーが活躍している国は、例えばアイルランドとかオーストラリアとか、世界中に実際にありますので、そこまで改正しないとできないシステムではないと思います。

 

○奥山座長

 藤林構成員。

 

○藤林構成員

 もう時間が来ていますので手短にと思うのですけれども、卜蔵さんにお尋ねしたいのですけれども、確かにファミリーホームの創設のときとのイメージと違って、実際は我々福岡市もそうなのですが、施設不調になった難しい子どもさんとか、児童自立支援施設を退所して、どこにも受け入れのない子どもさんを積極的に措置してきたというところがあったと思うのです。その中でファミリーホームの方々はとても疲弊したり、とても大変な状況にあると思うのですけれども、これはこのままでいいのかというところがあって、本来ファミリーホームに来るべき子どもというのは、どうあるべきかということなのか、もう一つ思うのは、そもそも6人というのが妥当な数字なのか。本来は5人。5人でも多いのではないか。4人とか、そういうファミリーホームの人数の問題も背景にあるのではないかという点についてコメントをいただきたい。

 もう一つ、ファミリーホームは基本は届け出制なので、ファミリーホームのクオリティーというか質を保つために本来どうあるべきなのかということについても、お考えがあれば教えていただきたいのです。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 全国的に今、ファミリーホームが子どもの最後の委託場所みたいになっているのが実際としてあるのです。例えば児童自立支援施設を出た子どもとか、非行の子どもであったり、あるいは大きな高齢児の子ども、施設で不適になったりとか、保護された子どもとかを含めて、非常に難しいケースの子どもが多くなってきています。

 ファミリーホームを行っている皆さん、それは他に行き場がないのでと言われれば受けて頑張るようなところがあります。先ほども申し上げたのですが、果たしてファミリーホームを家庭養護とするのであれば、そこにどういう子どもを預けていくのがいいのか。それはファミリーホームだけではなくて、里親、ファミリーホーム、あるいは施設というところ、それぞれどういう子どもを委託してやっていくのかというところをもう一度整理する必要があるのではないかと思っています。

 今のまま続けていけば本当に疲弊して、バーンアウトしてしまうところが必ず出てくるというところはありますので、この機会にもう一度それぞれの種別のあり方、機能というところを考えていただけたらと思っています。

 それと人数の問題ですけれども、6人は多いという意見は非常に多いです。ですから、今の中では藤林先生がおっしゃったように4人とか、現行の定員より少ない人数でもということで、プチファミリーホームというのをつくってほしいとか、そういったような意見も出ております。確かに、今の子どもたちの状況からすると、課題の多い子どもたちを6人というのは多いのではないかというところは意見として出ております。

 

○奥山座長 

クオリティーの問題ですか。

 

○藤林構成員

 ファミリーホームの質の担保。

 

○日本ファミリーホーム協議会(卜蔵会長)

 そこは協議会の中でもいろいろな意見があるところなのですけれども、今の養育者の要件は個人的には緩いと思っています。里親であれば、同時2人以上2年、延べ5年以上の経験で5人というところであって、実際に例えば里親登録してすぐに兄弟のケースを預かって、まだ3年ぐらいで始めるというようなケースが出てきているのです。やはり多人数養育の経験というのはファミリーホームには必須だと思いますので、そういった経験の積み重ねなしにファミリーホームを始めることができるというところは、ちょっと考えなければいけない点かなと思っていますので、そこについてはぜひ検討していただきたいと思っております。

 

○奥山座長

 ありがとうございました。

 時間がまた延長してしまいました。申し訳ありません。今日はこれで終わりにしたいと思います。ヒアリングに来てくださった団体の方々、本当にお忙しい中、ありがとうございました。非常に有意義な、貴重なことを伺うことができたと思っております。どうもありがとうございました。

 では、事務局のほうにお返しいたします。よろしくお願いいたします。

 

○事務局(田野家庭福祉課課長補佐)

 どうもありがとうございました。

 次回につきましては、1118日金曜日、午前10時から午後16時まで5時間を予定しております。次回の検討会は、並行して開催されています各検討会、ワーキンググループの開催状況などの意見交換、あと個別の論点に関します御議論を予定しております。

 以上でございます。

 

○奥山座長 ありがとうございました。


(了)

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