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2016年9月14日 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第118回議事録

○日時

平成28年9月14日(水)10:00~11:51


○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)


○出席者

西村万里子部会長 野口晴子部会長代理 印南一路委員 田辺国昭委員
吉森俊和委員 幸野庄司委員 宮近清文委員
中川俊男委員 (代理)松本委員 遠藤秀樹委員 安部好弘委員
加茂谷佳明専門委員 上出厚志専門委員 吉村恭彰専門委員
<事務局>
鈴木保険局長 谷内審議官 濱谷審議官 迫井医療課長 眞鍋医療課企画官
矢田貝保険医療企画調査室長 中山薬剤管理官 小椋歯科医療管理官 他

○議題

○ 関係業界からの意見聴取について

○議事

○西村部会長

 では、定刻になりましたので、始めさせていただきます。ただいまより、第118回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出欠状況について報告します。本日は、平川委員、松原謙二委員が御欠席です。松原謙二委員の代理といたしまして、松本委員に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。

 では、議事に入らせていただきます。

 今回は、これまでの議論を踏まえて、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。

 関係団体として、日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会及び欧州製薬団体連合会より意見を聴取したいと考えております。

 では早速、意見陳述に移りたいと思います。

 まず、関係業界の皆様よりプレゼンテーションしていただいて、その後に、質疑とフリーディスカッションを行いたいと思います。関係業界の皆様は、最初に自己紹介をしていただきまして、その上でプレゼンテーションをお願いいたします。

 では最初に、日本製薬団体連合会の多田様よりよろしくお願いいたします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 日本製薬団体連合会会長の多田でございます。

 意見陳述の機会を頂戴いたしたことに感謝を申し上げます。

 本日は、日本製薬工業協会の畑中会長にも御同席いただいております。

 初めに、私から高額な薬剤への対応に関する意見を述べさせていただきます。続きまして、米国研究製薬工業協会の梅田副委員長と、欧州製薬団体連合会のブルン会長からも、それぞれプレゼンテーションをさせていただきます。

 1ページをご覧ください。製薬産業は、革新的な新薬の創製を通じて、国民の健康寿命の延伸に貢献し、事業の存続を図っているという産業でございます。莫大な費用をかけ、研究開発活動を長年継続することによって得られた成果が適切に評価されなければ、製薬企業の存続は危うくなるわけでございます。

 イノベーションの成果の評価は、薬価において具現されるものでございます。薬価こそが企業経営の要であり、持続的経営の源でもございます。したがって、革新的な新薬については、適切に評価された結果として高額になることも当然あり得るということでございます。

 我々の事業の生命線である薬価制度も、産業を支える制度として運用されるということを希望いたしております。

 2ページをご覧ください。各企業は2年に1回の薬価改定頻度を前提に経営を行っております。したがって、期中改定ありきの議論には、与しません。高額な薬剤の期中改定について、次期薬価改定を待つことなく、これまでにないルールを突然導入し、適用することは到底容認できません。前回の中医協で議論のあった市場規模確認のために売り上げ予測等の非公表情報を開示することは、考えられないことでございます。

 一方で、革新的な新薬の最適使用の推進のため、対象とされる薬剤ごとに有効性・安全性・医療現場の状況などを踏まえたガイドラインが策定されることについて、製薬業界として異論はございません。

 薬価に係る緊急的な対応の必要性については、最適使用推進ガイドライン策定の効果を確認した上で判断されるべきであると考えております。

 3ページをお願いいたします。こちらにつきまして説明は割愛いたしますが、最適使用推進ガイドラインの策定に関する私どもの意見と考え方を取りまとめてございます。後ほどご覧いただければと存じます。

 最後に、4ページをご覧ください。平成27年度に後発品使用促進の目標値が急遽引き上げられ、国内市場の構造的変化が起きている中、平成28年度薬価改定においては、特例拡大再算定が十分な議論もなく性急に導入、適用されました。

このような経営に直接影響を及ぼすルール変更が頻繁に行われるということは、健全な企業経営の根幹を揺るがす事態であり、業界として、また一経営者としても強い危機感を覚えるところでございます。

 国民皆保険制度の堅持は最重要課題と認識しておりますが、薬価や薬価制度の見直しのみで対処することは、もはや限界に来ていると考えております。

 医療費増大に係る負担のあり方については、より広い視点から国民的な議論を行うべきであると考えます。

 以上でございます。ありがとうございました。

 引き続きまして、梅田副委員長より陳述をいただきます。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 次に、米国研究製薬工業協会の梅田副委員長よりお願いします。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 ありがとうございます。

PhRMA副委員長の梅田でございます。

 配付資料のとおりでございますけれども、お時間をいただきましたので、ご説明させていただきます。

 日本政府はイノベーション促進を政策の柱の一つに掲げ、医薬品分野においてもPMDAの体制強化を通じた新薬の審査期間短縮や、新薬創出加算の導入・継続など、イノベーション促進を図るための施策を着実に実行してこられました。

 製薬産業もこれに呼応して、日本における研究開発投資を積極的に増加させてまいりました。その結果、以前にあった平均3~4年のドラッグラグは、現在ではほぼ解消するに至っております。このように、日本が世界同時開発の流れにしっかり加わり、世界の他の地域におくれることなく日本の患者さんに革新的な医薬品を届けることができる道筋が整ってまいりました。

 しかし、こうした中、2016年の薬価改定で導入された「特例拡大再算定」のように、革新的かつ売り上げの大きい医薬品に着目して例外的に薬価を引き下げるルールの導入は、イノベーション促進の取り組みに逆行するものであり、透明性が高い日本の薬価制度への信頼を低下させ、政策に対する予見性を大きく損ない、日本国内での研究開発投資意欲をそぐものと言わざるを得ません。

 さらに今般、革新的であるがために急速に売上高が増加することが懸念される医薬品について、薬価の期中引き下げや保険償還を制限するような提案がなされています。

PhRMAは、これらの背景にある財政への懸念を理解いたしますが、革新的な医薬品が国民の健康及び日本経済に及ぼす多大な貢献を踏まえ、イノベーション促進と健全な財政運営の両立をどのようにしていくか、このことに力点を置きつつ、慎重な議論を重ねる必要があると考えております。

 次に、最適使用推進ガイドラインについて一言申し上げます。

 革新的な医薬品は、その革新性ゆえの期待感により、急速な使用拡大があれば売り上げが飛躍的に増大することで薬剤費が増加し、財政に多大な影響を及ぼすという懸念が一部であることは承知しております。

 しかし、製薬企業はみずから適正使用ガイドの作成等を通じ、治療が必要とされる患者さんに適切に使用されるよう適正使用を既に推進しており、一部で懸念されているような過大な薬剤費支出が、にわかに現実のものになるということは考えがたいところです。

 一方、革新性がゆえに未知な部分も多いことから、有効性・安全性の確保のため、革新的な医薬品の適正使用をさらに推進するために、先日提案された最適使用推進ガイドラインを検討すること自体には異論がありません。

 ただし、本ガイドラインの医療保険制度上の取り扱いや留意事項通知発出等の措置については、患者さんが早く新しいすぐれた医薬品を使用できるというアクセスの確保、患者・医療現場への負担、透明性と予見性の確保にも十分配慮した上で慎重に検討されるべきと考えます。

 最後に、期中改定についても触れさせていただきます。

 現行の薬価改定ルールに加えて新たに薬価を期中に引き下げるルールを導入した場合、たとえ特例的な取り扱いであったとしても、一旦つけられた薬価がその後どうなるのか、その予見性を低下させ、日本における新薬開発や効能追加への意欲をそぐことにつながるおそれがあります。

 さらに、通常の薬価改定及び診療報酬改定と異なるタイミングで一部の薬価を改定するような制度が導入された場合、イノベーションを阻害するだけでなく、医療の現場や流通段階においても不要な混乱が生じることも懸念されます。

 一方、薬剤費の財政影響について、後発医薬品の使用促進策による節減効果が着実に進展していることも相まって、日本の医薬品市場規模の拡大は既に十分に抑制されており、今後はほぼ横ばいで推移すると見込まれています。

 この後発医薬品の使用促進による薬剤費節減の効果に加え、最適使用推進ガイドラインによる薬剤費適正化の影響も考慮しつつ、適切な前提のもと、今後の薬剤費を現実的な数字で検証・議論した上で、制度的対応の必要性を検討していくことが肝要かと考えております。

 以上でございます。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 次に、欧州製薬団体連合会のブルン会長、お願いします。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 皆様、おはようございます。

 私は、カーステン・ブルンでございます。EFPIA Japanにおける会長をしております。そして、バイエル薬品の社長でございます。

 本日は、英語でお話をさせていただきます。

 本日は、このような機会を頂戴いたしまして、私のほうからは、非常に重要な課題であります高額医薬品の問題、それからまた最適使用推進ガイドラインにつきまして、意見を陳述させていただきたいと思いますが、それだけではなくて、薬価制度の持つより幅広い課題についてもお話をしたいと考えております。

 まず、前提といたしまして、皆が合意できる点からお話をさせていただきたいと思っております。それはすなわち、日本の薬価制度が非常にうまく機能してきているというところであります。そして、近年になりまして、政府、患者さん、そして産業界にとって非常によい機能を発揮してきたわけです。

 この市場の予測を見てまいりますと、中期的にはおおむね横ばいの成長が予測されているわけであります。すなわち、この制度自体は既に全体の予算をコントロールする役目を果たしていると言えます。

EFPIAが懸念として感じている点でありますが、ただいまの日米各団体からの陳述にもありましたように、この新たな期中の改定でありますとか、こうしたものが特例的措置であっても、このことが薬価制度自体の予見性と安定性を低下させていくのではないかということの懸念であります。

 加えまして、最近になりまして製品ごとの留意事項通知といったものは、さらに予見性・安定性を損なうものだと考えております。

 私は、冒頭に全体の制度としては非常にうまく機能しているとお話ししましたけれども、課題がないというわけではございません。確かに、こうした課題はありますけれども、それらは非常に少数ながら財政上のインパクトの大きな高額医薬品によるものでありますが、これらの医薬品というのは非常に高度に革新性を持っており、そして、費用対効果の高い医薬品であります。

 私は、こうした問題というのは薬価ではなくて、むしろ財源の問題であるべきだと考えております。そして、新たな財政モデルといったものが一つの答えになるかもしれませんけれども、そこでの答えというのは、目先の特別な事例からの断片的な政策をもって対処すべきものではないと考えております。

 むしろ、私が考えております最善のアプローチは、産業界と政府がともに協力をし合って、そして、国民皆保険制度の持続性を担保していき、ここ1~2年で失われてまいりました市場での予見性・安定性を取り戻すような解決策をともに見出していく努力をすることにあるかと考えております。究極的にはやはりバリュー、価値ということを考えていかなければなりません。

 次の「最適使用推進ガイドラインについて」でありますが、既に産業界と政府のほうで、このような協力関係を築いて、高額医薬品のもたらすファンディングの問題に対策を講ずることができたのでありましたら、今、提案されているような最適使用推進ガイドラインといったものも必要なかったでありましょうし、そしてまた、昨年の特例再算定のようなことも不要であったのだろうと思います。

 ただ、現状の中において、最適使用ということについて私どものほうからコメントさせていただきますと、第1点は、何としても患者さんから必要な薬剤に対するアクセスを奪ってはならないということを申し上げたいと思います。そして、この制度によりましてアクセスがさらにおくれ、新たなドラッグラグにつながってはならないと考えております。

 第2点として注意していかなければならないのは、その中においても適切なイノベーションの評価がなされなければならないということであります。

 第3点は、実施段階が非常に重要だということを申し上げたいと思います。特に、ここでは試行段階において何を検証すべきかを具体的にはっきりさせていかなければなりませんし、また、毎年の見直しということに対するコミットメントが守られなければなりません。

 ということで、最近の政策の変更、提言がなされたことによりまして、この制度に対する安定性・予見性が損なわれてきたということを非常に懸念していることを申し上げたいと思います。ここで、先生方におかれましては、この大型新薬の上市を控えている製薬メーカーの気持ちになって考えていただければと思います。

 ですから、今後の予想といたしまして、特例再算定が起こるのだろうか、期中の薬価の切り下げが起こるのであろうかということを考えていかなければなりませんし、最適使用推進ガイドラインが導入されたことによって市場予測が縮小するのであろうか、総シェアはどのくらいなのか。5%、10%、50%を縮小するのでありましょうか。そしてまた、費用対効果の評価によりまして、さらなる薬価の切り下げということにつながるのでありましょうか。そして、それはどのぐらい下がっていくのでありましょうか。また、2017年におきましては、さらなる薬価コントロールの施策が導入されるのでありましょうか。もしかしたら、それは1つではなく、2016年のように複数取り入れられるのかもしれません。

 このように、現在のこうした環境というものは事業経営にとって非常に厳しい状況であることはおわかりいただけるのではないかと思います。当然のことながら、近年の状況は、結果、日本に対する投資が非常に難しくなっているという状況であります。

 ということで、本日このような機会を頂戴して、私どもの意見を述べさせていただけることは非常にありがたく思っておりますけれども、終わりに当たりまして、是非お願いしたいことは、現在の対話というところからもう一歩踏み出して、この産業界と政府との間の真の協力関係を築くように進められればということを申し上げたいと思います。

 このことは、すなわち政府と中医協のような諮問協議会におきまして、さまざまな政策提言がされていって、それに対して業界のほうが個々の提案に対して対応する、そして、回答するという形ではなくて、全ての関係者が政策提言をつくるところからお互いに協力することができたらいいと考えております。

 そして、そこにおきましては、お互いに合意できる共通の原則というものを持っていくべきだと思います。すなわち、中医協のメンバーの先生方、厚労省、そして産業界が全て合意できることといたしましては、まずは、安定性と予見性を再び取り戻すということ。そして、イノベーションに対する評価をこれからも維持していくということ。また、イノベーションに対する患者さんのアクセスを担保していき、国民皆保険という制度の持続性をも担保していくということであります。そして、保健医療2035に示されたような「キュア中心からケア中心へ」といったものへの移行を図っていく。これが合意事項になると思います。

 そして、これらの原則に基づいて、お互いともに協力し合って、特許のある製品と特許の切れた製品とを組み合わせた、めり張りのある形でのコストの節減を図っていき、その一方でシンプルな制度のよさを損なってきたさまざまな施策を撤廃したり、修正したりということができるのではないかと思います。このようなパートナーシップで協力することによって、必ずやこの制度の安定性、そしてまた予見性というものを回復することができるものと信じております。

 御清聴ありがとうございました。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 一通りの御説明をいただきましたので、これより質疑及びフリーディスカッションに移りたいと思います。なお、質問は日本語でお願いいたします。

 吉森委員、どうぞ。

○吉森委員

 御説明ありがとうございました。

 本日の御説明の中では、企業経営の健全性の観点から、経営に直接的に影響の及ぶルール変更が不定期、かつ頻繁に行えることへの懸念が示されております。その点については、私も一定の理解をしているところでございます。

 しかし、今回議論しておりますのは、その革新性による市場拡大というよりは、期中に当初とは別の効能を追加して、市場規模が収載時の予測より大幅かつ短期的に拡大した医薬品についての議論であります。その薬価改定を次の改定時期まで持ち越すことにより、本来は改定されるべきであろう薬価よりは高額のまま一定期間存続することについての懸念であります。このことは、現状の薬価改定ルールに合致しているとはいえ、国民皆保険制度の維持に懸念が生じるものであると考えておりまして、患者さんのみならず製薬関係業界の皆さんにとってもマイナスの影響が及ぶと考えております。

 このために、今回、効能追加により特例的対応の議論対象となる医薬品については、対象患者数の大幅拡大などにより、原価計算上も製薬企業の研究開発コストの回収期間並びに金額のレベルも向上していると推測されますことから、その分、早期の薬価改定を行い、価格の適正化を図ることは妥当であると考えます。

 なお、今回の議論は当面、効能追加による市場の大幅拡大に対する緊急的対応ということで、特例的な薬剤を射程として議論すると理解しておりますが、次期薬価改定に向けた課題としては、一般的なルールとしての期中に効能追加などによる市場規模が当初の予想よりも大幅かつ短期的に拡大した医薬品をどう取り扱うか。また、その際の原価計算方式における原価の算定方法、並びに対象患者の見込み数の妥当性の検証などがあると思います。この点については、製薬関係業界の皆様がどうお考えなのかをお聞かせいただければありがたいと思います。

 以上、意見でございます。

○西村部会長

 ありがとうございます。

 それでは、今の質問に対しまして、それぞれ御回答・御意見をお願いできますでしょうか。まず、多田会長、お願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 多田から、意見を申し上げます。

 まず、吉森委員がおっしゃいました、今、現実に問題になっている製品の件でございます。元来企業というのは、先ほども申し上げましたように、一定のルールに基づいて、経営あるいは戦略を考えるものでございます。各位御承知のとおり、私どもが新製品を上市いたしますときに、まず、最も緊急性が高い、あるいは治療薬がないものから、一般には小さな市場から入ります。それから適用拡大して、広く患者さんに御利用いただけるという順序立てで開発していくというのが、通常の革新的新薬のあり方であるということは御認識いただきたいと思います。

 それから、期中に効能追加することが悪いかのような印象をお持ちの方がいるのではないかと思われるのですが、そうではなく、ただ今申し上げましたような考え方に基づいていることをくれぐれも御理解賜りたいと思います。

 そして、改定のタイミングについてですが、適用拡大があった都度行うという意見もあるようですが、今般の事例を考えますと、確かに当初と比べましたら、2つ目の適応を得た際に非常に市場が大きくなるということについては、私どもとしても認識いたしております。一方、先ほど申しましたとおり、昨年度特例再算定という新たなルールが導入されており、この中で次期改定の際に処理できる問題ではないかと考えます。つまり、既存のルールで処理可能な状況というか、処理可能なレベルの販売高になるのではないかと考えております。一部に何か非常に大きな想定値だけを取り上げた議論がありますが、実際はそういうことにはなっていないと思います。

 もう一つは、予想値というものは常に予想に過ぎない訳でございまして、いわゆる薬価改定の際の市場実勢価格、こちらは実際の価格を見ているわけでございますが、予想値をベースに設定するとした場合、その予想値なるものが非常に不安定なものであるということも御理解賜りたいと思います。

 以上でございます。

○西村部会長

 梅田副委員長、お願いできますか。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 同じでございますけれども、ポイントは適用拡大がなされたような場合に、次の改定まで待つのかどうかという御意見ですが、これは適用が拡大されましたときに、あくまで市場の可能性としてどれぐらいのところまであるということがあるだけであって、その日に現実の市場で売り上げが突然膨らむわけでもありません。

 また、企業はいろいろな計画を立てて新薬を発売し、適用拡大をしてまいりますけれども、競争状況であったり、あるいは実際に市場においての評価であったりということの中で計画どおりにいかないこともたくさんございます。ある一定の金額・数量を想定して薬価の交渉に臨むわけですけれども、そのような数量に行かないことも幾らでもあるのが現実です。競合品が入ってくれば、持っていたシェアを奪われることもたくさんございます。そうした場合に、数量が減ったので価格を上げるという議論は全くないわけで、このことについても、多田会長が今おっしゃられたとおり、一つの製品がある疾患に非常に有効で、そのほかの疾患にも効くのではないかということについて企業が研究開発投資を続け、それを拡大していくということは、基本的には患者さんにとって非常に大きなメリットになることですから、こうしたことの投資の意欲をいきなりそいでしまうことのないような丁寧な議論をしていただきたいという気持ちでおります。

○西村部会長

 ありがとうございます。

 ブルン会長、お願いします。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 ただいま、多田会長、そして梅田副委員長からお話がありましたとおりです。

 ここで重要なことは、これらの革新的な新薬というのは、本当の意味で高い画期性というものを持っているわけで、その生存期間を長くしたり、QOLを改善するような医薬品であります。そして、ここでは非常に例外的な製品について話をしているわけで、薬価制度全体としては非常にうまく機能しているということは申し上げたばかりでございます。ここ5年の予想を見てまいりますと、非常にバランスがとれておりまして、フラットな伸びの予想になっているわけであります。

 ということで、このことを十分に考えていくことが必要で、既にあります市場拡大再算定のようなルールで、この適用拡大といったものもカバーされている制度になっているわけでありますから、すぐさま価格を切り下げる必要性はないのではないかと思います。そして、イノベーションに対する評価ということが重要だと考えております。このことが企業としましても、予測性が計画できるようにしていかなければならないと考えておりますので、ここで議論していかなければならないのは価格の問題ではなくて、むしろファンディングの問題を議論すべきと考えております。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 幸野委員、お願いします。

○幸野委員

 もう一度、確認させていただきますが、今回の高額な薬剤への対応について議論している中で、現在の薬価算定における原価計算方式には不備があることがわかりました。現在の原価計算方式は、原材料費、労務費、製造経費、研究開発費を積み上げて割り出すものですが、この中の研究開発費については、研究開発費の総額を販売総量で割り戻して単価を決めるというルールになっています。オプジーボの場合は、申請されたときの対象患者数が470人と見込まれて価格が決められたわけで、その後に適応拡大され、対象患者数が、一説によれば約1万5,000人に拡大したということは、対象患者数の前提が大きく覆っているわけなのです。

前提が大幅に変わっているにもかかわらず薬価が維持されるということが、今回のオプジーボによって原価計算方式に不備があるのではないかということがはっきりとしてきたわけで、高額な薬剤が売れ過ぎたから抑制しようということではなく、この制度の不備を期中改定により是正しようということです。いわゆる保険収載時に算定した価格の前提が大幅に変わったときには、やはり薬価を見直すべきだという考え方で議論を行っているのです。こちらについてはいかがでしょうか。

○西村部会長

 今の点について多田会長、御意見をお願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 今の幸野委員からの御指摘事項につきましては、私ども業界としても十分理解をいたしております。ただ、現在の薬価制度そのものは、私どもは大変よくできた制度であると考えております。もちろん、時にいろいろな不備が出てきますが、その不備の都度に委員の方々からも知恵を出していただきまして改善をされてきております。現時点における制度は非常に透明性も高いし、そういう意味で理解されやすい合理的な制度である。そのように理解しております。

 今般のような適用拡大をすることによって、ある時点において急激に売上が増えるのでその時点で薬価を改定しなければならない。それは何が悪いかというと、最初の原価計算方式が悪い。こういう立論だと理解いたしておりますが、私どもの考え方は、あくまでスタートした段階での薬価は、その時点におけるできるだけ正しい原価から提案し、御審議の上で御了解いただいているものです。問題は、御指摘されたような数量の問題であります。数量が途中に変わるというのは当然あり得ることで、先ほど梅田副委員長からの説明にあったように、当初の計画よりも多くなることもあるし、少なくなることもある。多くなる場合においても、それが今回のように非常に大きくなるケースもあろうし、そうでないケースもあるわけでございます。そういう視点から一般論としてこの問題を処理するのは間違いだと考えます。今申し上げたように原価計算方式がおかしいということではないと考えます。

 ただし、今回のようなケースについて、特例的に考えればどうかという御提案につきましては、それは慎重に考えるべきことかもしれません。そのように考えます。

○西村部会長

 続いて、梅田副委員長、どうでしょうか。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 ただいまの御質問は、原価計算方式の中での患者数の予測のところが大きなテーマなのかなと思いました。

 また、私は個別企業の個別製品のことを触れる立場にありませんけれども、一般的には主にがんの薬剤に多い話かなと思います。抗がん剤を開発する場合に、全てのがんに最初から試験をしてということはとてもではありませんので、当然ながら、その薬剤の特性や作用機序、いろいろなことを考えながら、可能性の高いところから始めるわけですけれども、一つのがんに効くということであれば、ほかのがんに効くことはないのかということは、企業も考えますし、患者さんも期待することかと思います。

これを全ての開発の計画を立てて、そこに想定される患者さんの数を順番に全部並べていって、一つの最初の適応症で出てくるときに原価をどう決めることができるかというのは非常に難しい問題であると思います。あるがんに適応いただいた場合に、その次の適用拡大が得られた。これが、今であれば2年に1回の改定の中で患者数が大きくふえたのであれば、薬価の改定があるということですけれども、問題はその2年の間のどこで適用拡大されるかによっては、支払い側としてはちょっと待てない事情にも見えてくるということかと思います。この問題は確かにあるわけですけれども、基本的に、我々みんなが期待するがんの薬剤がそれぞれに開発もされるし、新薬も開発されるし、さらに適用もふえていく。そのことが日本において進んでいくということの重要性がまずあって、ではこの2年の間のどこで出たときにどう考えるか。直ちにそこで、先ほどの1万5,000人、1兆幾らというようなことが本当に起こるのかどうかについては、冷静に見ながら御検討いただきたいと思います。

○西村部会長

 ブルン会長、いかがでしょうか。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 それほど多くつけ加えることはございませんけれども、私も日本に住んで4年たっている外国人といたしまして申し上げさせていただければ、日本におけるこの制度というのは非常にユニークな制度でありまして、このような国民皆保険というものが守られている国は世界にそんなに数多くあるわけではありませんし、患者さんに対して90日でこのアクセスが提供されるということも非常にまれなことであります。そういった意味で、この全体の制度としては非常にうまく機能しているのだということをあえて申し上げたいと思います。確かにある程度の調整は必要になる場合もあるかと思いますけれども、これが破綻している制度では決してないということであります。今、ここで問題にされているのは非常に例外的な事例であるということで、これがいわゆる標準的な例として見てはならないのではないかと思います。

 ですから、イノベーションというものに制裁を与えるようなことが決してあってはならないわけで、このイノベーションで患者さんにベネフィットが与えられているわけでありますから、そこのところを一歩下がって見ていかなければならないかと思います。イノベーションに対する評価と、財政上のインパクトというもののバランスを考えて、全体像を見ていかなければならないかと思います。そういった意味で、市場というのは今、コストの面でも非常にうまくコントロールされているものと考えております。

○西村部会長

 ありがとうございます。

 今のに関連して、では、幸野委員に行ってから、中川委員に行きます。

○幸野委員

 現在のルール上で、効能追加によって適応拡大した場合でも2年待つべきだとおっしゃいましたが、日本の医療費の現状を考えるとそのような余裕はないと思います。

 今般、2015年度の概算医療費が発表されましたが、対前年度比3.8%という異例な伸びを示しています。この理由は、C型肝炎等の高額な薬剤費によって総医療費の約1%を押し上げる要因となったということで、高額医薬品が国民皆保険の危機になっているのが顕著となっています。薬価制度上の算定方式に不備があるとわかったにもかかわらず、2年後の薬価改定における特例拡大再算定まで待つ余裕はないことを御理解いただきたいと思います。今後の医療費についても高額薬剤によって益々伸びていくと想定されることからも見直しを行うべきだと思います。

 もう1点は、イノベーションの評価がされていないとおっしゃっておりますが、オプジーボに関しては通常の一般企業の製品等と比べて高い16.9%という営業利益率が設定されており、それに加えて、画期的な新薬として60%の加算がされ、トータルで約27%に当たる営業利益率が確保されていることから、イノベーションは十分に評価されていると考えられます。したがって国民皆保険制度を堅持していく観点でも保険収載後に市場規模が大幅に変わった場合には、2年後を待たずに見直す必要があると思います。

○西村部会長

 中川委員、お願いします。

○中川委員

 お三方からの御意見を伺っていて、企業経営といいますか、製薬企業の経営面からの御意見は、そうお考えになるのだなと思います。ただし、多田さんが、薬価こそが企業経営の源だとおっしゃいました。今、公的医療保険制度をこれからも持続可能にするための最大の論点は薬価なのです。経営の源と同時に、今は薬価が公的医療保険制度の最大の論点なのです。なぜこういう議論を今ここでしているかということを皆さんには改めて考えていただきたい。

 最近の調剤医療費の動向が厚生労働省から発表になっていますが、2015年度の調剤医療費の内服薬の薬剤料が前年度比で毎月500億円以上多いのです。それはゆゆしき事態です。そういうことを含めて、営利企業の皆さんと、我々非営利の医療機関とが一緒に中医協の場で議論するのは、国民皆保険を支える公的医療保険制度をいかに持続可能性を担保するか、高めるかだと思います。

そこで、何回か前の中医協でも申し上げましたが、製薬メーカーとして、日薬連、製薬協(PhRMA)、EFPIAとして、日本の公的医療保険制度の中で動いているプレーヤーとして、企業としてどのように公的医療保険制度の持続性を担保する努力をしているのかがどうも見えないのです。企業側の論理ばかりなのです。お一方ずつ、どのようなことを考えているのか、まずしようとしているのかをお聞きしたいと思います。

○西村部会長

 今の中川委員からの御質問について、多田会長からお願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 多田からまずお答えいたします。

 ただいまの御質問は、企業が営利のみを追求して、その公的保険の維持に対して努力をしてないのではないかという質問でございましょうか。

○中川委員

 営利のみとは全然思っていません。皆さんが日本の公的医療保険制度を大事にしないと企業も何もなくなりますから。そういう意味ではなくて、具体的に見えないなと。見える形で努力をしてほしい、もし、私が気が付いていないのだったら教えてほしいという意味です。

○日本製薬団体連合会(多田)

 これは、もちろん個別企業によって異なるかもしれませんが、少なくとも私ども日薬連傘下の各企業においては、冒頭にも少し触れましたように、その使命はしっかりと認識しているつもりでございます。あくまで、国民の健康長寿社会をつくり出す。そのためには、やはり革新的新薬というものが大きな意味を持っている。それを創り出すのが私どもであるという基本的な認識のもとに事業運営を行っております。もちろん、株式会社でございますから、当然、その他のステークホルダーに対する配慮は従業員も含めて行っておりますけれども、基本は今、申し上げましたようなところの使命感に基づいております。そのために、国民皆保険を維持するという一方で、費用サイドの問題もあります。しかしこれは良い薬がなければ国民皆保険も何もないわけです。したがって、良い薬を創り出すということがあって初めて健康というものが維持できる。

だから、公的医療保険制度の維持というのはあくまでお金の線をおっしゃっておりますが、それを維持するために医療機関の医師の方々がおられ、薬剤師の方々がおられ、そして私どもメーカーがいて、新薬を開発していくという役割を担っているわけでございます。

そういう観点から、こうしたイノベーションであるとか、革新的医薬品については評価をいただきたいと申し上げたいだけでございます。先ほどブルン会長からもございましたが、国民健康保険の維持あるいは社会保障制度の維持と、私どもが常々申し上げている産業政策の推進のバランスをお考えいただきたい。この場はあくまで薬価の議論が中心になりますけれども、より総合的な医薬事業政策というものもあっていいのではないかと考えております。

○西村部会長

 続いて、畑中会長、どうぞ。

○日本製薬工業協会(畑中)

 日本製薬工業協会の畑中でございます。

 ただいまの中川先生からの御質問でございますけれども、私どもは当然、民間企業、営利企業でございますので、それぞれのマーケット、日本においては日本において定義されたルールの中で健全な競争をしています。そして、この健全な競争という中でさまざまな医療関係者とメディカルニーズのあるところに対して研究開発を続けて、そこから新しい価値をつくって社会に還元しており、こういう活動を繰り返していると思っております。革新的新薬のみならず、適応外薬等についても今まで取り組んできたつもりでございます。また、オーファンドラッグの適応症についても鋭意取り組んでおります。さらに、そこで得られました適正な利潤をまた再投資に向けるという、この繰り返しを今までもやってきております。

 したがいまして、なかなか見えにくいということではございましたけれども、私ども日本製薬工業協会は、R&D投資をベースにして価値を生み、それを社会に還元していく企業でございますので、ここの部分を御理解いただきたいと考えております。

○西村部会長

 梅田副委員長、お願いします。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 患者さんのために、大変すばらしい薬剤を開発していくことに我々は邁進しているわけで、すばらしい薬剤を開発できた場合には、他の先進国に比較しても立派な薬価をつけていただきたいと思いますし、そうした薬価が突然にして何かの新しいルールで引き下げられるということは、大変、経営上も大きなインパクトを受けることであり、よく検討していただきたい、時間をかけて議論していただきたいと思います。

 問題は、最近、C型肝炎薬であったり、きょうも話題になっております新しい抗がん剤のように、極めてすぐれたイノベーションが起きたときに、これを財政上どうするかということであると思います。これらの薬剤というのは本当に医療の中で、また患者さんに対して大変大きな価値を持っているわけで、これをどう財政上で対応していくかということだと思うのですけれども、そのためには、市場そのものが本当にそのことによってどのように拡大し、この後さらにその拡大が続いていくのかということについて、できるだけ正確な予測を持つことが重要ではないかなと思います。

 以前の中医協におきましても、業界側から今後の薬剤費総額の推移についての見通しをお話しさせていただいたことがあります。昨年来、C型肝炎薬が急成長したということもあり、薬剤費の総額が大変大きくなるのではないかということが危惧されております。けさの新聞の記事もそのような流れであるかと思います。

 一方で、本日は資料を用意する時間がなかったのですけれども、民間の医薬品情報調査機関であるIMSが、8月までの計算で今後の市場の予測を出しております。この中に、2015年についてはC型肝炎薬もあり、その市場は8.8%伸びたということが書かれております。

 しかし、ことしは薬価改定の年であり、その予測はマイナス成長であり、これから5年の間、日本の医薬品市場がプラスマイナスほぼゼロ、マイナス0パーセントと予測されております。こうしたようなところをしっかり本当に検証する。専門機関がやっていることですので、私は確実なのだと思っています。これは、我々業界側としては大変ショッキングな数字であります。外資系企業にしてみると、親会社に対して日本への投資を今後どう引き込んだらいいのか、大変悩むところであります。日本の市場の魅力、とりわけ、その中でも新しい画期的な薬剤が価格を切り下げられること、あるいは一定額の売り上げにキャップをかけられてしまうこと。これがどんどん市場は伸びていくのだという予測の中であればまだしも、ここのところをしっかりと我々は見ていく必要があると思います。

 医薬品の価格を切り下げるのはある意味すぐできることで、直ちに結果を見ることもできますけれども、医薬品のイノベーションには10年、20年、30年という時間を要します。その継続的な投資をこの日本の市場で続けていくために、ここのところの大きな数字をしっかりとみんなで確認する必要があるのではないかなと。その中で、もちろん個別の薬価のルール、個別の製品の対応等をさらに検討することは必要だとは思いますけれども、けさの新聞の記事が全てではないと思います。

○西村部会長

 ブルン会長から、お願いします。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 私のほうからつけ加えさせていただきますと、私としましては、この医薬品企業において働くことができますことは非常に誇りに思っていることでありますし、こうした医薬品産業を代表する立場にいられることも非常に誇りに思えるところであります。私どもはこの日本の社会の一員として、そして日本人の健康に大きな貢献をしてきたと考えております。医薬品の安定的な、安全な供給を担保していき、このイノベーションによりまして、予後を向上させていき、QOLを改善させてきたと言えるかと思います。このことをとかく私どもは議論の中において忘れてしまうことがあるのではないかと思います。そのことだけではなくて、企業といたしまして私どもは、さまざまな雇用にも貢献しているわけでありますし、税金も支払っていく。こうしたファイナンシャルな面での貢献というものを社会に還元しているということも言えるかと思います

 それから、このIMSの市場予測についても言及がありましたけれども、私として申し上げたいのは、ことしは薬価の改定があったわけでありますし、そういった意味で市場もマイナス成長になってきた。そうした中において、長期収載品の薬価の切り下げですとか、後発品の使用促進といったところで、既に私どももそこにおいて一役を担ってきた。それに対してある意味での犠牲を支払ってきたということでありますから、こうしたところにも既に貢献してきたということは言えるのではないかと思います。

○西村部会長

 ありがとうございます。

 今の意見に対して、中川委員、どうぞ。

○中川委員

 御丁寧なお答えありがとうございます。

 梅田さんがおっしゃったように、正確な薬剤費の推移を冷静に把握するということは非常に大事だというのはそのとおりだと思います。当初、オプジーボが1兆7,500億円といった報道がありましたけれども、あれで今でも混乱しているのです。それはそのとおりで、C型肝炎治療薬もIMSのデータを見ると、昨年度の後半をピークにだんだん売り上げ額が下がってきていますね。患者さんに使って行き渡るとそれは下がるというのは当然だと私も思います。

 その上で申し上げるのですが、薬剤の革新性ゆえの急速な使用拡大による売り上げ増と、効能効果追加による売り上げ増は意味が違いますし、性格も全く違いますね。その辺はいかがですか。

○西村部会長

 今の点について、どなたか。

○中川委員

 多田さんと梅田さんにお聞きしたい。

○西村部会長

 では、多田会長、いかがでしょう。

○日本製薬団体連合会(多田)

 まず、多田からお答えいたします。確かに、最初の承認を得ること、革新性が評価されることと、効能効果が追加されるという形で評価されることは、中身はある意味で違うかもしれません。しかし、新たな効能を見つけ出すための努力、必要な経費、開発費用等は決して小さなものではございません。その適応が可能性として大きいものほど、たくさんの開発費用がかかるというのが事実でございます。それが、例えば3桁の患者から、特殊なケースにおいて一挙に5桁の患者に変わるというような場合にどうするかについての御質問だと思いますが、そういうケースにつきましても他への影響等も考えながら、今の制度とのバランスもとって、慎重に検討すべきであるというのが私の意見であります。

○西村部会長

 梅田副委員長、いかがでしょう。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 ただいまの御質問は、最初に出てくる薬剤の革新性と適用拡大においては既に薬剤の革新性といいますか、革新的薬剤は開発された、出てきたのだと。その後での、さらにそれを事業上やビジネス上でほかの疾患にも広げていきたいという程度の、革新というようなこととは少し違うのではないかという趣旨の御質問かなと聞いたわけですけれども、これも適用拡大といっても、本当にある薬剤を開発したときに普通に考えられる適用の拡大の方向ということもありますし、病気としては全く異なるところに拡大される適用もあります。

 開発に伴う費用というものは、臨床開発のところに大変大きなお金を必要とするわけです。基礎のところには大変長い時間もかかります。しかし、臨床開発において、1つのもので適用がとれたのでと言って、全く違う適用に行くときにはそこに大きな投資が必要となってきます。ですので、一つ一つの拡大された適用ごとに議論する必要があると思います。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 中川委員、どうぞ。

○中川委員

 今の答えを聞いていてそう思うのですが、先ほど多田さんは、製薬メーカーの企業戦略として、適用の対象の少ないものから始めて、少しずつ拡大していくのだとおっしゃいました。

 はっきり申し上げて、オプジーボの件は悪性黒色腫から非小細胞性肺がんに拡大したとき、まさにそれが企業戦略であるのであれば、これは大きな問題だと言わざるを得ません。今、同時に臨床試験は多くのがん種で同時に進行しているわけです。企業戦略としてまず悪性黒色腫から出したということであれば、まさにこれは製薬メーカーの企業戦略が日本の公的医療保険制度を翻弄しているとしか言いようがないと思います。翻弄されてはたまらないというのが日本国民の考えではないでしょうか。

 ですから、公的医療保険制度下のプレーヤーとして製薬メーカーがどう立ち振る舞うのか。そこを私は先ほどから聞きたいとお願いしているのです。企業の面からイノベーションだとか、企業の新薬開発とか、そういう面だけではなくて、日本の公的医療保険制度、国民皆保険を守る一員、同じプレーヤーであれば、日本において活動する企業は違う側面があってもいいと思うのです。そのことのお答えがないので、しつこいようですけれども、このように聞いております。

○西村部会長

 多田会長、どうぞ。

○日本製薬団体連合会(多田)

 今、中川委員から、企業戦略に対する御批判をいただきましたが、事業を運営するときに、企業戦略というものを持たない企業はないわけでございます。それが今回の医薬品という公的な財においてどうあるべきか、ということを我々企業がどう考えているか、ということだと思います。先ほど申し上げましたように、小さな適応から入っていくということについては、今のルール上は希少疾患的なものについては政府も患者さんも薬が全くないわけですから、まずそういうところへの開発というものを期待しておられるわけでございます。かつ、御承知のとおり、いわゆる承認のための例数等も非常に限られた例数でできるだけ早く患者さんのもとへ届けようという思想あるいは考え方のもとに今の制度が成り立っているわけでございます。あくまで、別に企業の立場だけを申し上げているわけではなく、国もそういうことも含めて制度設計をされておられるはずでございます。

したがって、その制度に則り早く小さい適応から開発を始めようというのは、むしろルールに則った当然のあるべき姿だと思います。それが戦略としておかしいのではないか、戦略という言葉自体がおかしいのではないかという御批判は、いささか私としては受け入れがたく思っております。

○西村部会長

 中川委員、どうぞ。

○中川委員

 戦略としておかしいと言っているわけではなくて、公的医療保険制度が企業戦略に翻弄されてはたまらないと言っているのです。

 先ほど多田さんは、そうは言っても対象患者が効能効果追加で2桁もふえる場合は、何らかのことを考えなければならないとおっしゃったと思いますが、期中改定とは言わないまでも、緊急的な何らかの措置が必要だというお考えには同意いただけますか。

○日本製薬団体連合会(多田)

 今この場で同意する、しないということではなく、慎重に検討すべき課題だと考えております。それが問題でないとは思っておりません。しかし、今すぐにと言われても、数量もどうなるか把握できていないし、背景も十分わかっていない、どこまでのコストがかかったかもわからない。そういう段階で直ちに何らかのルールを適用するということ自体に、私は違和感を覚えるのであります。

 ただ、議論しようではないかということについては、当然、我々としては受けて立とうと考えております。

○西村部会長

 中川委員、どうぞ。

○中川委員

 何とか公的医療保険制度を守りたいということで、製薬企業の皆さんと我々が時には激しい議論もしなければならないと思っているのです。何とかその辺のところを御理解いただきたいなと思っています。是非よろしくお願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 はい。

○西村部会長

 梅田副委員長、どうぞ。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 ただいまの議論の中で、多田会長のおっしゃられた、小さい適用のところから慎重にスタートしていくというような御説明でしたけれども、これはもちろん、現在、議論されている薬剤であったり、病気の種類・タイプあるいは薬剤そのものの作用機序などいろいろなことの中でそういうことがあるというお話で、特に現在、問題になっているものが小さい適用から大きい適用へということになっている薬剤ですので、会長のほうからそういう御説明があったと思います。もちろん、生活習慣病のような大きな疾患に対する薬剤を開発するのに、小さな適用や追加適用がないかと、それを先にやりましょうなどと言う会社はありません。

 しかし、それぞれの企業に確かに戦略があるということも事実で、例えば、小さなベンチャー企業がすばらしい将来性を期待できる製品を開発している、大きな適用が見込める。しかし、臨床開発には大変なお金がかかる。どこかからお金が出てくればいいのですけれども、なかなかうまくいかない場合に、まず小さい適用のところで成果を出してみるということも、その企業にとっての戦略としてはあり得るかもしれません。しかし、基本的にある薬剤の基礎研究がされてきたときに、その薬剤がどこで一番いい成果を、いい結果を、有効性・安全性を示せるかというところを考えているわけで、決して小さな適用でいい薬価をいただいてということを考えているわけではない。一般論としてはそういうことなのだということを御理解いただいた上で、現在の議論になっているかなと思いますので、確認をさせていただきました。

○西村部会長

 では、先に答えていただきます。ブルン会長、どうぞ。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 効能追加のことについてのお話ではありませんけれども、先ほど、私のほうからパートナーシップが必要だということをお話ししましたので、それに加えまして、これは幾つかのヨーロッパの国々で行われていることで、将来的にこうしたことも検討できるのではないかという一つの例であります。ヨーロッパでは、ホライズン・スキャンというものをやっているわけで、ある特定の治療領域、がんなどにおきまして、今後どのような新薬の開発、イノベーションをなされているのかといったところのパイプラインについて、非常にオープンなディスカッションをしていくことで、先を読み込んだ議論をしていくことがなされております。

 ですから、このようなことによりましてオープンな話し合いをすることで、いわゆる薬価収載の段階になって緊急策といったものを急に導入しなくてもいいように準備を整えていくことができるかと思います。これを一つの考え方として、お話ししておきたいと思いました。

○西村部会長

 松本委員、どうぞ。

○松本委員

 罹患患者の多い、少ないで創薬をするというのは、多田会長が企業戦略というようなお話もされましたけれども、少しお聞きしたいのは、例えば、全てのがんで治験するわけにはいかないと梅田副委員長がおっしゃりました。そのとおりだと思いますが、では、対象患者が非常に少ない切除不能な悪性黒色腫と、非小細胞性肺がんのどちらをするかと。余りポピュラーではないという言い方は適当ではないかもしれないですけれども、悪性黒色腫の治験をして、まずそちらを効能効果として適応とする薬剤を開発するのか、肺がんのほうをするのか。そういうのも企業戦略なのでしょうか。

○西村部会長

 今の点、多田会長、お願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

多田からお答えいたします。

 戦略という言葉は、我々は使い慣れているのですが、いささか委員の方々の琴線に触れたのかと思います。

 まず、抗がん剤の開発の場合、多種のがんにいろいろ試してみる。フェーズ1~2、あるいはその前の段階から試してみて、最も効きそうなところから手をつけるというのが通常の開発だと思います。往々にして、そういう場合は希少疾患的な非常に数の少ないがんから始めるというのが通常の戦略と私は考えております。オプジーボの場合も、恐らくそういうことがあったのだろうと、これは私の想像です。

 畑中さん、どうぞお願いします。

○西村部会長

 畑中会長、追加でお願いします。

○日本製薬工業協会(畑中)

 ただいまの多田会長のご発言につけ加えまして、今は特にがんのお話になっていますので、一般論で申し上げますと当然、がん種、サードライン、セカンドライン、そしてファーストラインというように、がんの場合は一般的に縦と横の広がりを考えながら研究開発がなされていると認識しています。

 先ほど、梅田さんからありましたように、プレクリニカルで得られた知見、競合品の今まで得られた知見、そしてメディカルニーズの多寡を考えながら臨床試験を医療機関、そして先生方と話しながらやっていく。その結果として、たまたまAという適応症で初めて出てきた、あるいは、こちらのケースではBという適応症からとなったというのが実態だというのが私の認識でございますし、自分たちの経験でもそういうことになっております。

 以上でございます。

○西村部会長

 松本委員、どうぞ。

○松本委員

 別に戦略という言葉にこだわっているわけではなくて、今のお二人の御説明でよくわかりました。企業の戦略として少ない対象患者から始めて適応拡大をしていったのではないということはよくわかりましたが、先ほど中川委員あるいは吉森委員も言われたように、現実には途中で適応拡大されたということは、認識として皆様もお持ちだということもわかりましたし、これから丁寧な議論を進めていけばいいのかなと思います。

 ですので、日薬連の資料の最後のスライドの中にあります「特例拡大再算定は性急に導入、適用された」というのは、中医協で十分議論して、これは適用されたと思っておりますので、我々に対して失礼ではないですかね。日薬連の考え方としてはそうなのかもしれませんけれども、我々としては丁寧に議論したと考えております。

○西村部会長

 次に、幸野委員のほうからお願いします。

○幸野委員

 違った観点から質問させていただきます。今後、オプジーボと同様に皮膚がん、肺がんに対しての効能・効果が見込まれる類薬が薬事申請に上がっていると聞いておりますが、もし、これが薬事承認、保険収載された場合は、類似薬がオプジーボということになるかと思いますが、現行のルールである類似薬効比較方式でオプジーボの価格を算定するのであれば、現在議論しているオプジーボの価格を見直した上で算定すべきと考えますが、その辺についてはいかがでしょうか。

○西村部会長

 今のオプジーボの件については、多田会長、よろしいですか。

○日本製薬団体連合会(多田)

 このオプジーボと今おっしゃっている新しい薬の類似性というものがどの程度なのか、私は十分な知識を持ち合わせませんので、この点の返答は出来かねます。申しわけございません。

○西村部会長

 今のに関連してですか。

○中川委員

 関連といえば関連です。

○西村部会長

 では、中川委員、どうぞ。

○中川委員

 類薬が出てきた場合に、薬価の安いほうを使うべきだという議論は私は医療側みずから取り組むべき課題だと思っているのです。先ほど、幸野委員が原価計算方式に問題があるとおっしゃいましたが、私は原価計算方式だけではなくて、類似薬効比較方式も、外国価格調整も全て問題だと思っているのです。ですから、全体的な見直しということが必要だと思います。

 同じ効能・効果である類薬があれば安いほうを使うというのは国民負担、患者負担の軽減という観点からも非常に重要なことですので、そういう意味ではそういう方向の議論を進めてほしいと思います。

 それと、一般的な質問ですが、今のルール上、薬価の期中改定は可能ですか。

○西村部会長

 今の最後のほうの期中改定について、どうぞ。

○中山薬剤管理官

 薬剤管理官のほうからお答えします。

 実際のところ、中医協でいろいろな議論をいただいた上で、中医協としての御結論をいただいたということで、期中において緊急的な対応を講じることは可能かと考えております。

○西村部会長

 中川委員、よろしいですか。

○中川委員

 お答えとして、緊急的な対応と言いかえましたけれども、それは可能だという意味ですか。

○西村部会長

 薬剤管理官、お願いします。

○中山薬剤管理官

 あくまで、今、議論しておりますのは、当初の予想から極めて大きく対象患者数がふえたとか、あるいは総額としての金額が非常に高額になったという、極めて特例的な事例についての議論ということで、そういった意味では緊急的な対応というのが必要ではないかという議論をしているという認識ですので、あくまで緊急的対応と申し上げました。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 よろしいですか。

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 ヒアリングの中で期中改定は企業の根幹を揺るがす、経営の予見性を揺るがすという御発言がありましたが、米国・英国の団体の方がいらっしゃるのでお聞きします。このニボルマブの価格を米国・英国はそれぞれどれぐらいの価格で流通されているのかを参考までにお聞きしますが、例えば、100ミリグラム10ミリリットル1バイアルあたりの流通価格について教えていただけないでしょうか。

○西村部会長

 今のデータについてはお答えできますか。

 梅田副委員長、どうぞ。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 今は持っておりません。

○西村部会長

 ブルン会長、いかがでしょうか。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 私も具体的な数字はわかっておりませんけれども、基本的には米国の価格がより高くなるということがあるかと思います。ヨーロッパにおいてはその国の制度によって変わってくるかと思いますが、日本におきましても外国価格調整といったところで国際的な価格レベルに日本の価格は十分に調整されて、合わせられていると考えております。

○西村部会長

 幸野委員、どうぞ。

○幸野委員

 私が独自に調べさせていただいたので、正確かどうかはわからないのですが、日本の今の100ミリグラム10ミリリットル1バイアルで約73万円の価格がついていますが、インターネット等でアメリカのニボルマブを検索してみますと、会社によってさまざまですが、大体1バイアル2500ドル。1ドルを103円と試算した場合約2526万円。英国は1,094ポンドで、1ポンドを135円と試算した場合、約15万円となり、日本の価格とは約2~3倍の格差があります。仮に、日本の価格を少し引き下げたとしても、十分な利益は得られるのではないかと思われますが、それは間違っていますか。

○西村部会長

 今の点について、畑中会長、どうぞ。

○日本製薬工業協会(畑中)

 では、畑中のほうからお答えしたいと思います。

 私どもも欧州各国、米国、そして日本でビジネスをしておりますが、それぞれの製品の価格あるいはその流通のネットプライスは、それぞれの国の制度または保険者との交渉で決まってきますので、私どもが他社の製品についての実際のところの価格を申し上げることはまずできないというのが1点目でございます。

 日本の制度は、米、英、独、仏の海外価格も調整しながら決まっているという理解でおりますので、その意味では、一般論で申し上げまして、日本で決して突出した価格がついているとは私は考えておりません。

○西村部会長

 今の点、よろしいですか。

 では、中川委員、お願いします。

○中川委員

 いい機会なので、ブルン会長に聞いてみたいことがあります。ヨーロッパではプライスボリューム・アグリーメントという仕組みがありますね。予測販売額で契約して、トータルでその薬剤額が超えた途端に薬価を下げるという仕組みだと理解していますが、この仕組みについての評価はどうですか。

○西村部会長

 ブルン会長、いかがでしょうか。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 確かにおっしゃるとおり、このプライスボリューム・アグリーメントは幾つかのヨーロッパの国々においては導入されているわけでありまして、これは価格と販売数量といったところで合意を持っていくというところでありますが、日本の場合には価格の部分を国が決めているところがありますので、100%そのまま日本にそれを導入できるようなものではなくて、システムの違いがあるかと思います。

 ただ、梅田さんからもお話がありましたように、今後、市場の趨勢としては、フラットな伸びが予想されているわけであります。そういった中、日本におきましては、国が薬価を決めている以上、これをそのまま導入するのは難しくなってくるかと思いますが、一つのメカニズムとして、例えば全体の趨勢で合意をする場合もあるわけで、ある一定の市場の伸びといったところで合意をとっていく。その上で、それを超えたところで価格を調整するといった国もあるわけです。それから、個々の品目別にこうした合意を結んでいくという場合もあります。

 ただ、制度が違う、国が薬価を設定しているという中においては、そのまま日本にこれを導入するのは今は難しいものがあるかと思います。

○西村部会長

 よろしいですか。

 では、安部委員、どうぞ。

○安部委員

 高額な薬剤についての議論でありますが、先ほど、C型肝炎の薬剤が上市されて、調剤医療費も非常に大きな影響を受けたということが示されました。確かに、現場と請求の状況を見ても、1剤の薬価が1日平均100円に満たないものの中にあのような薬剤が出てくると大変大きな影響を受けます。

 一方で、私も現場にいますと、C型肝炎の患者さんで必要な方に国民皆保険と高額療養費制度を使って、必要な患者さんに薬が届いて、非常に大きな成果を上げたということは、その革新的な医薬品の価値が日本の医療制度・保険制度に基づいてうまく機能したのだと理解していますし、C型肝炎の薬剤の場合は一定のピークは過ぎている感じがしております。

 一方で、先ほど言いましたように、こういう高額の薬剤が登場して、かつ日本の場合には国民皆保険、高額療養費制度において、幅広い患者さんに、必要な患者さんに高額な薬剤が使用できるということは、例えば米国であるとか、推奨・非推奨のような制度がある国に比べてスムーズにより多くの患者さんに必要な薬剤が届く仕組みになっていると理解しています。そういった意味でも、高額な薬剤のあり方、特に、私は画期的な新薬を開発するイノベーションの体制整備は非常に重要と思いますけれども、先ほどから議論になっているとおり、対象が急にふえたりして、そのイノベーションを支える評価が急激に大きくなった場合には、日本の国民皆保険、高額療養費制度を踏まえてどう考えていくかということが必要であろうかと思いますし、短期的なものなのか、それとも長期的に制度として考えていく必要があるのかは、丁寧な議論が必要かと思います。

 諸外国と比べて日本の医療制度の中で、より多くの患者さん、国民に画期的な新薬が使えるという状況は、むしろ製薬業界にとってイノベーションを支える一つのベースになっているとは思うのですが、そのことについて何かコメントがありましたら、製薬団体の方から御意見をいただきたいと思います。

○西村部会長

 ただいまの安部委員からの御意見に対し、多田会長のほうからお願いいたします。

○日本製薬団体連合会(多田)

日本のこういう研究開発から出てきたイノベーティブな新薬についての評価のシステムは、特に最近では先駆けの制度、新薬の創出加算、各種の加算制度もございます。そういう意味でこの数年間に非常に整備されてきて、従来と比べますと相当配慮ができているのではないか。外資の方々も結果としてドラッグラグの解消、日本での申請を重視されているものと私は理解しております。

○西村部会長

 よろしいですか。

 ほかに御意見・御質問などはございませんでしょうか。

 遠藤委員、どうぞ。

○遠藤委員

 3団体の方にお聞きしたいのですけれども、日本における薬剤費の推移ということで、それぞれ予測されているようなのですが、日本製薬団体の方は必ずしもフラットとはおっしゃっていないようで、最後のところで増大に対する対応という言葉を述べられているのですけれども、PhRMAの方とEFPIAの方はフラットな薬剤費という言い方です。ただ、先ほどの御回答の中ではフラットな率という言い方にされているようなのですけれども、昨年の薬剤費の突出については一過性と見られているのか、それともイノベーションが当然、これから継続されるわけで、そういった中でフラットという意味はどういう根拠でなされているのか。また、日本製薬団体の方の予測として今後の日本の薬剤費の推移をどう分析されているのか、3社にお尋ねしたいと思います。

○西村部会長

 薬剤費の予測や意味についてですね。では、多田会長からお願いします。

○日本製薬団体連合会(多田)

 多田からまずお答えいたします。私どもは先ほど御説明がございましたように、同じデータで議論しております。ある民間の有力な調査会社の御報告では、将来はフラットになるということになっております。そういう視点から行きますと、去年はC型肝炎の治療薬が大きく突出した形になって押し上げたのかなと考えます。御承知のように、今はジェネリック品が非常に推進されており、置き換えられた部分については薬剤費が一挙に下がるわけでございます。長期収載品の減少部分は、それに見合う新薬が出てきて、しかもそれがきちんと評価されて初めて成長という形になるのではないかと思います。

○西村部会長

 梅田副委員長、お願いします。

○米国研究製薬工業協会(梅田)

 私ども製薬企業は、一番大きいところでもマーケットシェアは5%程度と、多くの会社は3%、2%、1%というような、病気の種類が多いですから、会社の数もそれぞれの専門領域を持ってたくさんあるわけで、1つの会社で将来にわたる市場の予測をしっかりできるということは基本的には無理だと思います。これは業界団体においてもなかなか難しいことだと思います。御紹介したのはIMSさんですけれども、医薬品情報については全ての取引を把握されておりますから、新しい薬剤についてもその動向もしっかり見ておられますから、我々が最も信頼できるデータではないかなと思っております。

 先ほど申し上げましたように、確かに昨年は8.8%という伸びが認められておりますけれども、ジェネリックの推進等あって、今後についても薬価改定のある年はマイナス、ない年は若干のプラスということで、基本的に伸びるという予測は全く出ておりません。ですので、そういう市場なのだということの中で一つ一つのルール、あるいは一つ一つの薬剤の議論を丁寧にしていただきたいと思います。

 追加で申しわけありませんけれども、最近、我々が一番心配しておりますのは、特例拡大再算定が導入され、丁寧な議論があったということではありますけれども、ある意味、イノベーションにキャップを設けているわけであります。そのほか、最適使用推進ガイドライン、HTA、留意事項通知と、さまざまな議論がされております。これが、私たちにとってみると、医薬品イノベーションの重要性を認識して、新薬創出加算も導入された2010年ごろから大きく変わってきています。それが、医薬品が本当に医療費の問題の中心なのだということであれば、そのことに対応していく必要があるのですけれども、そのことのためには、まずこうした市場予測をしっかりと見た上で議論していく必要があるのではないかと思います。

○西村部会長

 ブルン会長、お願いします。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

EFPIAとしましても、2014年に日本の市場の10年の予測というものをIMSとともにやってまいりました。その当時でも、10年間でプラス1%の伸びということが予想されておりましたけれども、これは市場拡大再算定や特例再算定などが導入される前の話であったわけであります。今、梅田社長からお話がありましたのは、最も直近のIMSの予測ということで、今後5年間においてフラットな伸びということについては、当然正確だと考えております。ここにさらなる薬価切り下げの施策が導入されてきますと、マイナス成長になるということは忘れてはならないと思います。

 ということで、私どもは、より幅広い議論が必要になってくるのではないかと思います。ですから、このC型肝炎にもはやこれ以上は拘泥すべきではないかと思います。全体の医薬品の中におきまして薬剤費が占めている割合というのは20%でありますから、残りの80%というところにも目を向けていかなければならないかと思います。この薬剤費の20%という部分というのは、今お話ししたように非常によくコントロールされているところでありますので、あとの残りの80%はどうなのかといったところの全体像を忘れないようにしていく必要があるかと思います。

○西村部会長

 ありがとうございました。

 そのほか、御意見・御質問はございませんでしょうか。

 安部委員、お願いします。

○安部委員

 資料についてわからないところがあったので、補足の説明をしていただきたいのですが、EFPIAさんがお出しいただいたスライドの2枚目、3つ目のセンテンスの2つ目のポチで「新しい財政的な手段による対応は解決の手段になりうる」ということで、例として「薬剤に対する支払期間を長期にし単年度の影響を軽減する」という事例が書いてございますが、私にはイメージできないので、少し説明をしていただければと思います。

○西村部会長

EFPIAのブルン会長、お願いします。

○欧州製薬団体連合会(カーステン・ブルン)

 これは、基本的に私どものC型肝炎のこの問題に対しての一つの対応策ということで提言を出したわけであります。ちなみに、EFPIAの会員会社はこのC型肝炎といった領域では全くビジネスをしているわけではないですが、これはむしろファンディングの問題として捉えていこうということであります。このC型肝炎の薬剤というのは、この疾患が治癒に至るものでありますので、非常に費用対効果の高い薬剤であるということでありますが、これを初年度1年目に全てのコストがそこで積み上げられてしまったところに問題があるかと思います。ですから、この問題はもっと早期の段階で話し合って、モデルをつくり上げることによって、この費用や薬剤費をより長年の期間にわたって押しなべて支払うようなシステムができ上がっていればよかったわけでありますけれども、これは当然、最初の段階から話し合って合意しなければならないことでありますので、それが今回はできないわけですが、将来的にはこうした方向について考えればということであります。

 これは、純粋に薬価の問題を議論するということではなくて、むしろ財源について、ファンディングについて目を向けていく。そして、究極的には価値、バリューについて議論していかなければならないと考えております。すなわち、支払い側は薬のもたらしたバリュー、価値に対してのみ支払っていくということが必要になってくるのではないかと思います。

 ただ、これは言うがやすしの話でありまして、この転帰を全て追跡していかなければならないというためには、その電子的なシステムを導入するといったところが必要になるわけですが、業界と政府の間でこうした点での協力ということを話し合っていかなければならないかと思います。ヨーロッパでこうした制度を導入しようということで現在、模索されているわけですが、これは短期的な解決策ではなくて、より中期的な解決策につながるものかと思いますが、まずは何としてもシステムとして転帰を長期にわたって追跡するということが必要になるものであります。こういうことによりまして、保険償還とイノベーションの評価といったことの両方に使えるものだと考えております。あくまでも、もたらした転帰に基づいてそのバリューに支払っていくというところであります。

○西村部会長

 よろしいですか。

○安部委員

 説明は理解できましたが、どのようなプロセスで日本において実現可能かどうかのイメージがつかないところでありますので、私も詳しく勉強したいと思っています。

○西村部会長

 御説明ありがとうございました。

 ほかに御質問・御意見はございませんでしょうか。

 最適使用推進ガイドラインについても御説明がございましたけれども、その辺については御意見・御質問はございませんでしょうか。

 それでは、いろいろ御意見・御質問を出していただきましてありがとうございました。

 大体、御意見・御質問が出尽くしたようでございますので、関係業界からの意見陳述ついて、ここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

 本日の予定された議題は以上でございます。本日の業界意見、陳述の内容も踏まえまして、次回、事務局より「最適使用推進ガイドラインの医療保険上の取扱い(案)」等を提示していただきたいと思います。

 次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。

 では、本日の薬価専門部会は、これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省保険局医療課企画法令第1係

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