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2016年11月16日 第132回社会保障審議会介護給付費分科会議事録

老健局老人保健課

○日時

平成28年11月16日(水)10:00~12:00


○場所

ベルサール半蔵門(ホール)


○出席者

安部(有澤参考人)、井口、伊藤、稲葉、井上(隆)、井上(由)、及川、大西、亀井、小林、齋藤(訓)、齊藤(秀)、鈴木、鷲見、瀬戸、高野、武久、田中、田部井、東、福田(重田参考人)、堀田、本多、松田(敬称略)

○議題

1.介護人材の処遇改善について
2.地域区分について
3.その他

○議事

○鈴木老人保健課長 定刻より若干早いですが、委員の皆様方、おそろいになりましたので、第132回「社会保障審議会介護給付費分科会」を開催させていただきます。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
 本日の委員の出席状況ですが、河村委員から御欠席の連絡をいただいております。
 また、安部委員のかわりに有澤賢二参考人、福田委員にかわり重田恭一参考人に御出席をいただいております。
 以上により、本日は22名の委員に御出席いただいておりますので、社会保障審議会介護給付費分科会として成立することを御報告いたします。
 それでは、冒頭のカメラ撮影はここまでとさせていただきますので、撤収方、御協力お願いいたします。
(報道関係者退室)
○鈴木老人保健課長 では、以降の進行につきましては、田中分科会長にお願いいたします。
○田中分科会長 皆さん、おはようございます。
 本日は、介護人材の処遇改善及び地域区分などについて御議論をいただきます。
 初めに、事務局より資料の確認をお願いします。
○鈴木老人保健課長 お手元の資料の確認をさせていただきます。
 まず議事次第と委員名簿がございます。
 その後、資料1「介護人材の処遇改善について」、資料2「地域区分について」、参考資料1~5、最後に委員提出資料として河村委員から提出資料がございます。
 資料の不足等がございましたら、事務局にお申しつけください。
○田中分科会長 ありがとうございました。
 ここから、議事次第に沿って進めてまいります。
 議題1「介護人材の処遇改善について」の議論を行います。事務局から資料の説明をお願いします。
○鈴木老人保健課長 それでは、「介護人材の処遇改善について」、御説明させていただきます。資料1をごらんいただければと思います。
 1ページ目でございます。前回、論点1ということで、「介護人材の処遇改善について、今後とも確実な処遇改善を担保していくためには、どのような仕組みが考えられるか。また、平成29年度より実施する月額平均1万円相当の処遇改善について、キャリアアップの仕組みなどの制度設計についてどのように考えるのか」という論点を挙げさせていただきました。
 御意見をいただいて、対応案としてその下に書いておりますが、こういった対応案を御提示させていただきたいと思っております。
 まず、1ポツのところにありますが、介護職員の処遇を含む労働条件につきましては、本来、労使間において自律的に決定すべきものであるということですが、確実に処遇改善を担保するために必要な対応を講ずることは、現状においてやむを得ないと。このため、現行の介護職員処遇改善加算の位置づけを前提として、平成29年度介護報酬改定ではこれを維持しつつ、事業者による昇給と結びついた形でのキャリアアップの仕組みの構築について、手厚く評価を行うための区分を新設してはどうかということでございます。
 具体的には、次のページをごらんいただいて、イメージでございますが、これまでは加算((ローマ数字1))月額2万7,000円相当までの加算がございましたが、今回新たに新加算として月額3万7,000円相当のものを新設する。そのときの算定の要件につきましては、これまでの加算((ローマ数字1))のキャリアパス要件(ローマ数字1)及びキャリアパス要件(ローマ数字2)に加えて、キャリアパス要件(ローマ数字3)を満たしていただくということで考えております。
 このキャリアパス要件(ローマ数字3)につきましては、下のところに書いておりますが、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けることとしてはどうかと考えております。
 その具体的な例でございますが、3ページをごらんいただければと思います。現行の加算を上のほうに書かせていただいておりますが、これまでは職位・職責・職務内容等に応じた賃金体系を整備していただくということで、ただしこの場合、どのような場合に昇給するかが必ずしも規定上は明確にさせていただいておりませんでした。それを鑑みまして、今回、新加算としては3つのパターンのいずれかに応じた昇給の仕組みを設けることを新たに要件としてはどうかということにしております。
 まず、1つ目が経験もしくは勤続年数ということを想定しておりまして、それぞれ勤続年数に応じて職位とか給与が段階的に上がっていくという場合はどうかということでございます。
 それから、例にありますがこれについては(マル2)資格ということで、資格を取っていないところから資格を取得するようにキャリアアップすることによって、だんだんと職位もしくは給与も上がっていくという仕組みでございます。
 3点目が評価でございます。これは例示として挙げておりますが、例えば施設内での実技試験とか人事評価、そういったものによってそれぞれ職位と給与が上がっていくという仕組みを考えております。
 これらの仕組みにつきましては、単独もしくは複合して行っていただくことになりますし、また上の赤の四角の中に括弧書きで少し小さく書いておりますが、就業規則等の明確な根拠規定の書面での整備、全職員への周知を行っていただくことを同時に義務づけるということ。昇給の方式については、基本給ですとか、手当、賞与等は問わないという形で、新たにつくっていただくということではどうかと考えております。
 続きまして、4ページ目をごらんいただければと思います。論点2のほうで、前回、委員の方々からさまざまな御意見をいただいたときに、2つ大きな御意見がございました。1つは、ポツにありますが、対象となる職員について、介護職員だけではなく、当該事業者に雇用される他の職種の職員に拡大するということ、もう一つが、対象となる費用について、賃金だけではなく、職場の環境整備や職員の質の向上に資する費用にも拡大するということを言われましたが、これについてどう考えるのかという論点を挙げさせていただいております。
 それについての事務局としての対応案でございますが、今回の処遇改善につきましては、処遇改善加算の対象職員や対象費用の範囲を拡大する場合につきましては、加算の算定額は必ずしも全ての介護人材の賃金に充てられなくなることから、慎重な対応が必要であると考えております。
 このため、平成29年度介護報酬改定においては、新たに措置する月額平均1万円相当の処遇改善が介護人材の賃金改善に確実に結びつくことが重要であるとの考えから、処遇改善加算の対象職員や対象費用の範囲については、現行の取り扱いを維持するということを考えております。ただし、処遇改善加算のあり方については、介護人材の状況ですとか、今回の措置の実施状況ですとか、またそのほかにも他職種、他産業との賃金比較、例外的かつ経過的な取り扱いとの位置づけなどを踏まえつつ、引き続き検討していくこととしてはどうかということを提案させていただいております。
 以上が論点でございますが、もう一つ5ページ以降に、前回の給付費分科会におきまして御指摘があった事項について資料をまとめさせていただいておりますので、御紹介させていただきます。
 6ページでございますが、前回の会議の中で、介護福祉士につきましてルートが3つございますが、そのルートごとの登録者というのがどうなっているのかという宿題が出ましたので、それについての回答になります。
 ここにありますとおり、ブルーが介護福祉士の登録者数総数でございますが、1つが赤で出ております国家試験合格ルート、それから養成施設の合格ルートということで、それぞれこういうような形の経年変化になっているという状況でございます。
 続きまして7ページ、今回の介護人材の処遇改善の関係でございますが、他の職種、特に介護職の中でも介護福祉士の給与についてどうなっているのかという御質問がございましたので、それにつきましてまとめさせていただいたのが7ページでございます。それぞれ介護職員につきましては、介護福祉士の資格を取得している者から保有資格がない方までを細分化させまして、それプラス、ほかの職種の方々の給与につきまして、平均年齢、平均勤続年数、それから平成27年度9月時点と平成26年9月現在のそれぞれの平均給与です。平均給与につきましては、注2に書いておりますが、いわゆる基本給プラス手当プラス一時金を合計して出しております。その差が一番右側に出ております。介護職員の中の介護福祉士の方で言いますと、平均年齢が41.6歳、平均勤続年数が7.9年、27年9月の平均給与につきましては約30万円弱というような結果になっているところでございます。
 また、参考資料につきましては、前回の資料からデータを全て抜粋して一応参考としてつけさせていただいているところをあわせて御紹介させていただきます。
 説明については以上でございます。
○田中分科会長 説明ありがとうございました。
 ただいま説明いただいた事項について、御意見、御質問があればお願いいたします。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 論点1、2とありますが、まず1ページの論点1でございます。キャリアパス要件(ローマ数字3)の経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みと、一定の基準に基づき定期的に昇給を判定する仕組みを同等にここでは扱っておりますけれども、そうではなくて、定昇制度のある事業者、さらには賃金表を作成し、人事評価に基づく定昇制度を実施している事業者をより優遇して、処遇改善はもう何回も行われているわけですから、少しずつでも精緻化することを促す必要があるのではないかと思います。
 そもそも、勤続年数や資格を取ったからといって、必ず職位を上げなければならないということは難しいのではないかと思います。給与を上げることはできても、職位を一緒に上げることは難しいのではないかと考えられます。
 それから、論点2のところでございますけれども、将来的には全ての職種を対象として、どの職種にするかは事業者の判断に委ねるべきだと思います。また、加算を賃金だけではなく、教育研修や子育て支援などにも使えるように、その割合をどのぐらいまで認めるかを定めておくことも必要ではないかと思います。
 それと、処遇改善加算も3回目と繰り返されているわけですが、介護職員処遇改善加算というネーミングも、だんだん給与は上がってきているわけですけれども、いつまでたっても足りないとして同じ名称が繰り返されると、今後かえってマイナスのイメージが続くような気もしますので、より前向きな名称への変更も検討すべきではないかと思います。
 以上です。
○田中分科会長 御提案、ありがとうございました。
 本多委員、どうぞ。
○本多委員 保険料を用いて処遇改善を行うということを反対している立場から、この件に関して意見するというのも釈然としない思いはありますが、貴重な保険料が活用されているということで意見を申し上げたいと思います。
 論点1のキャリアアップの仕組みの構築については、むしろこれまでの加算要件が甘過ぎるのではないかと思います。民間企業であれば当然の要件ばかりであり、このような要件で加算が行われること自体奇異に思うところでございます。
 加算((ローマ数字1))についてはまだしも、加算((ローマ数字2))及び((ローマ数字3))について、要件としてかなり緩いということです。加算((ローマ数字4))については要件を全く満たしていないのに加算されているということで、いわゆるばらまきに近いような形になっています。このような事業所では介護人材の処遇改善に活用されているのかどうかという疑問もあるところです。今回の新加算の算定要件については、異論はないところですが、今後は((ローマ数字2))から((ローマ数字4))の加算については、見直すべきと思っております。
 それから、何度も申し上げているとおり、この処遇改善加算はあくまでも例外的、経過的な取り扱いとして創設された経緯からも、廃止すべきだと思っておりますし、今後行うとすれば公費で賄うべきだと思っております。
 それから、論点2に関しまして、これまで処遇改善がされた際は、加算分について処遇改善に充てられたかどうかということが不明瞭であったと思います。今回は処遇改善を図るために臨時に実施するということですので、確実に処遇改善につながるようにすべきであると思っております。
 したがいまして、処遇改善加算の対象職員や対象費用の範囲については、現時点においては拡大すべきではなく、現行の取り扱いを維持する事務局案に異論はないところです。
○田中分科会長 小林委員、お願いします。
○小林委員 ありがとうございます。
 前回欠席いたしましたので、既に他の委員から同様の御意見があったかもしれませんが、一億総活躍社会の実現に向けて介護人材の処遇改善を行うといった基本的な考え方については異論がありません。ただ、そうした特別な事情に対応する施策であれば、その財源については消費税などの通常の介護報酬とは別途の財源を確保すべきであり、議論する前から実質的に介護報酬で対応するということは決まっているということについては違和感があります。
 さらに、現役世代の介護とか高齢者医療への拠出金は年々増加しており、今回の期中改定によりさらに負担が増えることが想定されるため、そうした負担増に対する財政的な支援をぜひ御検討いただきたいと思います。
 また、今回のキャリアアップ加算については、確実に介護人材の賃金アップにつながり、経験や資格に応じた適切な処遇がなされるよう、今、本多委員からも御意見がありましたように、実際に加算が賃上げに活用されているか確認する仕組み、それから合理的な理由がなく加算前の賃金を下げた上で加算を利用するようなことの防止の仕組みについても、さらに拡充するように御検討いただけたらと思います。
 以上です。
○田中分科会長 井上由美子委員。
○井上(由)委員 ありがとうございます。
 御意見を伺っていて、もっともだと思いました。論点1につきましては、介護職員のキャリアアップを図りながら処遇改善を行うことが確実に担保される仕組みということで、事務局のほうで随分考えていただいたものだと思います。今、御意見にありましたように、甘いという側面があるといった御指摘は確かにもっともだと思いますが、これまでより、より明確になったような気がいたします。
 ただし、この理念のもと、さまざまな加算の取り組みがなされてきたと思いますが、一向に解消していないのはなぜなのだろうと改めて思います。また、1万円の加算によって、これまでついてしまったマイナスイメージが払拭できるとは思いませんし、またそれが払拭されない限り、人材不足が解消するとは思えません。
 これまで、何年間もたびたび議論されているにもかかわらず、他の職種と比べて給与差が一向に縮まらないのはなぜか、介護職の定着率が悪いのはどこに問題があるのか、根底にある明確な原因を探るべきだと思います。
 今回の改定では無理だとは思いますけれども、今後の課題としても根底的にもっときちんと原因を追求すべきだとあえて提起させていただきます。国、医療、介護施設、介護事業所等々は、被保険者、利用者、その家族が介護職に何を求めているのか、特に人材不足で困っている労使間における、使うほうの方が介護労働者に何を求めているのかを、再度具体的に明確にイメージさせることもその原因追求の一つだと思っております。これがいつもよくわからないのですね。はっきりとした明確な求め方というのをしていただきたい。キャリアアップとかいろいろありますけれども、何を求めているのかということを明確にしていただきたいと思います。
 論点2につきましては、今回はもう時間もありませんし、仕方がないのかもしれませんが、介護職が魅力ある職業として認知されるための方法はさまざまな方法があると書かれておりましたけれども、それでいろいろな統計や問題点が出ておりますが、私は基本的に賃金だと思います。介護職を志す人の善意に頼っているだけでは、彼らの疲弊感は増すだけです。そのことがいつも図表に出てきます、人間関係の問題とか、事業所の理念がよくわからないとか、腰痛であるとか、そういうことがやめる原因につながっていくのだと思います。
 賃金を急激に上げるということは今回は無理だと思いますけれども、参考資料48ページに図表が出ております。この48ページの方法は一つの打開策であろうと思います。饅頭型のものからトップがイメージできるピラミッド型ものがつくられております。ピラミッド型は介護職のイメージアップにつながるものと思います。今後の分科会で、このような取り組みの実現性についても、ぜひ御議論いただければありがたいので、よろしくお願いいたします。
○田中分科会長 井上隆委員から順番にお願いいたします。
○井上(隆)委員 ありがとうございます。
 一億総活躍、あるいは介護離職ゼロということに向けまして、介護人材の処遇改善そのものについては異論を唱えるものではございません。ただし、今回の見直しはまず処遇改善ありきということで始まったものでありまして、誰が負担するのか、負担の当事者の理解がまだ十分得られていないのではないかと懸念をしております。
 本来であれば、期中の改定ということでございますので、別途財源を確保して行うべきものと思いますけれども、少なくとも今回の処遇改善の全体の規模がどのぐらいのものになるのか、あるいは1号保険者、2号保険者がどのぐらい平均的に負担増になるのか明らかにしていただきたいと思います。
 論点2につきましては、処遇改善は当然のことながら労使の間で自主的な取り組みで決めるべきことでございますけれども、今回臨時的にということであれば、対応案にありますように、まず確実に処遇改善につながるという方向で担保していただきたいと思います。
 また、次期介護報酬の改定におきましては、この処遇改善が積み重なってきて非常に複雑な制度になってしまっておりますので、ぜひ総合的な見直しも視野に入れて検討していただきたいと思います。
 以上でございます。
○田中分科会長 稲葉委員、伊藤委員の順でお願いします。
○稲葉委員 ありがとうございます。質問が1点と意見が1点ございます。
 まず、質問です。資料1の1ページの下にあります「定期に昇給を判定」という表現についてであります。これは定期昇給という意味ではなくて、昇給についての判定を定期的に行うことという解釈でよろしいのかどうか、ここを確認したいことが1点です。
 意見です。3ページの昇給要件に、経験、資格、評価と3つが提示されて、いずれかに応じた仕組みというふうになっております。これは選択できるということであるのでいいのですけれども、事業所はそもそも評価を行うときに、職員の資格や経験その他を加味して行っているところではありますけれども、評価というものが外されて、経験や資格ということのみで給料が上がっていくという仕組みに今後もしなることがあるならば、これはある意味、職員にとっては働きやすいと言えるかもしれませんけれども、これは職員に対する事業所の管理や指導が効果をなさなくなるといった心配も起きるわけで、結果、事業所の質の低下につながりかねないということを危惧しております。
 先ほども言いましたけれども、評価というものが残り続ける限りはいいとは思いますけれども、そこが心配なので、評価という選択肢は今後も削るべきではないと考えます。
 以上です。
○田中分科会長 では、質問にお答えください。
○鈴木老人保健課長 御質問ありがとうございます。御質問は、定期というところが最終的にどちらのほうに言葉としてかかってくるのかということだと思いますが、この定期というものについては、定期的に評価をしていただいて昇給する仕組みがあるということでございます。昇給の時期ですとか、そういったものにつきましては、各事業所の中で御判断していただくことになると思います。
 これで重要なのは、きちんとしたキャリアアップの仕組みという観点からそういった措置が行われているというところが重要だと思っておりまして、それ以外のところにつきましては各事業所のほうで決定していただいて、ここに書いてありますとおり、その仕組みを全て書面で開示していただいて、職員のほうに提示していただくということで対応していただきたいと思っております。
○田中分科会長 伊藤委員、東委員の順でお願いします。
○伊藤委員 伊藤です。ちょっと途中で質問させていただいて、それに応じてまた意見を言わせていただきたいと思っております。
 まず、月額平均1万円相当の処遇改善を行うという点については、介護離職ゼロという課題に向き合っていくということでありがたいことだと思っております。ただ、その1万円という認識について、前回も申し上げましたが、対人サービス業との比較に基づいているという点は妥当だと考えておりません。全産業平均との乖離をぜひ直視していただいて、今後の人材確保を視野に入れながら、引き続きさらなる取り組みをしていただきたいと思っています。
 それで、参考資料12ページのところに、これまでの効果があるということを書いてあります。一定の政策効果が見られるということも事実だと思っております。しかし、今の処遇改善加算では、処遇改善所要額が加算総額を上回っていればよいとされますので、業績連動が容認されている一時金に充てることも可能ですし、介護報酬の引き下げ改定を理由に、一時金を引き下げておいて加算で戻すということも可能になってくる。新規採用者に傾斜配分するという取り組みも見られています。
 一時金から定昇への移行に充てられているということについても、定昇というのは非常に大切ですから、定昇がつくられるということはいいことなのですけれども、介護労働者の可処分所得が改善するということがあってはじめてその政策効果が実感されるということをよく認識する必要があると思っています。事業主の使い勝手をよくするということで、職員の処遇改善の趣旨が損なわれてしまっては本末転倒だと思っています。
 介護事業所において、チームワークに参加する全ての従事者の賃金が確実に上がる、一人も下がることがないという仕組みにしてほしいと思います。その点、引き続きの検討ということになっていますけれども、介護職、ケアマネ、事務職等を含め加算対象となるように仕組みの改善を願いたいと思います。
 この処遇状況等調査については、現場では違和感が非常にあります。4万3,000円相当の効果ということが12ページに書いてありますけれども、これはその年度ごとに行っている処遇状況等調査の結果を単に足し合わせたものであって、例えば24年調査と25年調査では発射台が下がっているわけですから、これを足し合わせるということが不適当だということをこの前も申し上げましたけれども、とにかく認識していただきたいと思います。それを雇用労働行政を所管する厚生労働省が効果と称するということは、とにかく乱暴だということを改めて申し上げたいと思います。
 12ページですが、4万3,000円に含まれている、27年4月の調査で1万3,000円という数字は、どこから来るのかを教えていただきたい。あと、参考資料2の12ページ、加算((ローマ数字1))を取得した事業所で、事務職員において30万4,000円から31万1,820円と、7,180円上がっているというのですけれども、この事務職員というのはどういう人を対象に調査したのでしょうか。金額に非常に違和感があるということも言われておりますので、この2点についてまず教えていただきたいと思います。
○田中分科会長 老人保健課長、お願いします。
○鈴木老人保健課長 最初に1万3,000円の根拠ということですが、まさに今、先生が参考資料2の12ページでおっしゃっていただきました、この12ページにあります介護職員のところで、平成27年9月と平成26年9月、それぞれ28万7,420円と27万4,250円、この差分が1万3,170円でして、これを丸めて今回、資料の12ページのほうの実績として挙げさせていただいているところでございます。
 あと、事務職員につきましては、今、手元にないのですが、いわゆる事務に関係する職員ということで、調査票のほうには定義をさせていただいて、その範囲の方々についての給与を出していただいているところでございます。
○伊藤委員 ありがとうございます。
 まず、今、伺ったとおり、1万3,170円については月額、常勤の者ということだということです。これは実際の介護職員の常勤・非常勤割合を見ますと6対4と言われていますけれども、訪問ではむしろ3対7で非常勤のほうが多いという実情です。ですので、非常勤は時給が多いので、この調査でも4,000人ぐらいのサンプルということで、この常勤・月額の次に多いサンプルが時給・非常勤という者です。
 これについて見ますと、1,940円という改善です。やはりこの1万3,000円というものが一人歩きしている。実感がないと本当に現場から言われているのは、こういうところにもあらわれていると思っております。
 そして、非常勤につきましては、今あるキャリアパス要件についても規定の整備というのが要件化されているだけですので、その対象となるかどうかは問わないので、実際のところは非常勤の人には加算の効果があらわれにくいと思っています。ですので、キャリアパス要件が今度も新たに設けられますけれども、職位、職責、職務内容に応じた任用要件や賃金体系が非常勤も対象となるよう、要件化を求めます。
 それから、先ほどもありましたけれども、賃金表を改定して賃金水準を引き上げたというものは17.7%で、これが100%になるようにぜひ改善をしていただきたいと思います。
 それで、事務職員の話なのですけれども、この違和感は、同じ12ページにあります介護職員よりも多い31万円ということについて、これは一体誰をとっているのだということを問われています。こういうところも調査の実情を反映しているのかどうかという点で、今後、ぜひ実態をあらわす形で調査、改善を行っていただきたいと思います。
 今度の新加算には3つのいずれかに応じた昇給の仕組みを設けるという要件が入っているのですけれども、昇給の金額については問わないようにも見えてしまいます。そうなると、制度整備がされているだけで、実際は空振ってしまっても加算がとれるということになりかねない。1円でも昇給すればオーケーということでは、もう実施前から介護現場での期待が薄くなってしまいますので、何とぞその点についても実効性を確実に盛り込むような形で要件化をお願いしたいと思います。
 長くなって申しわけないですが、最後に周知方法についてもぜひ厳格化をしていただきたいと思います。不正請求問題でさらにそこの点については対応を強化されているというように理解しておりますけれども、全ての職員が閲覧可能な状態にされていなければ意味がないと思います。その閲覧可能な状態ということについて、ぜひより実効ある形で、報告書にも過半数労働組合等の署名を求めるとか、監査では職員の聞き取りをするとか、履行確保に万全を期していただきたいと思います。
 以上です。
○田中分科会長 お待たせしました。東委員、どうぞ。 
○東委員 まず、資料1の1ページにある論点1の今回の新加算につきまして、定期昇給を評価する仕組みを入れていただいたのは、大変いいことだと思いますので、評価したいと思います。
 それから、資料1の7ページ「平成27年度介護従事者処遇状況等調査(抜粋)」にございますように、介護福祉士の給与は29万9,630円ということで、これまでの介護職員処遇改善交付金や介護職員処遇改善加算については、一定程度の効果は上げていると思います。
 しかし、資料1の6ページ「介護福祉士登録者の推移」をご覧ください。これは私がお願いをして出していただいた資料でございますが、これを見ますと、平成21年にいわゆる介護職員処遇改善交付金が出ました。そして、平成24年には介護職員処遇改善加算になりましたが、養成施設を経た介護福祉士の増加は殆ど見られておりません。
 また、参考資料の21ページ「安倍内閣総理大臣所信表明演説(抜粋)」にありますように、安倍首相が「介護の仕事は、本当にやりがいがある。そのことを国民の皆さんに正しく理解してもらいたい。」とおっしゃっています。若者に魅力あるような介護福祉士に、とも言われておりますが、残念ながら、若い方が養成施設に入って介護福祉士を目指しているというデータになっておりません。今までの介護職員処遇改善の仕組みでは余り効果が出ていないということが如実にあらわれていると思います。
 一方、国家試験に合格し介護福祉士の資格を取得した方、いわゆる実務経験ルートの方はかなり増えております。増えておりますが、参考資料の44ページ「『介護離職ゼロ』に向けた介護人材確保策の関連データ」にもありますように、離職率はまだ16.5%もあるわけでございます。介護福祉士はこんなに増えているのに離職がなぜこんなに多いのか。これも参考資料の21ページ「安倍内閣総理大臣所信表明演説(抜粋)」に「補助者の活用などにより現場の負担軽減を進めます」と安倍首相がおっしゃっていますが、給与だけを上げるだけではなく、補助者や介護助手という考え方を入れないと介護人材確保にはつながらないと思います。現場の負担感を軽減し、かつ介護業務の専門職化ということを図らなければ、離職率も下がらないし、若い人たちが介護福祉士を目指すということは到底かなわないと思っております。資料1の4ページ論点2に「対象となる職員について、介護職員だけでなく、当該事業者に雇用される他の職種の職員に拡大する」とございます。私が以前から申し上げておりますように、看護職、リハ職等、そういう職種ではなくて、安倍首相もおっしゃっているような補助者、いわゆる介護助手等にこの処遇改善のお金を使えるような工夫を次の同時改定でお願いをしたいと思います。
 最後に2点、先程本多委員もおっしゃいましたし、私も何度も申し上げておりますが、今後、この処遇改善につきましては、本当にこれは喫緊の課題でございますので、介護報酬でやるのではなく、きちんと別財源をとって、介護人材確保、処遇改善というものに対しては対応していただきたいと思います。
 もう一つ、若者が介護福祉士を目指すため、さらには介護人材確保のためには、現在介護福祉士は名称独占でございますが、これをいずれは業務独占にしない限り、なかなか若者が介護福祉士を目指すということにはならないと思います。これは今後の課題でございますが、そういうことも御提案を申し上げたいと思います。
 以上です。
○田中分科会長 武久委員、お願いします。
○武久委員 現場から感想を言わせていただくと、資本主義社会では、事業所が経営努力をして職員の給料を上げていくというのが本来であると思いますけれども、参考資料の12ページにございますように、厚労省が率先して既に4万以上も上がっているということ、これは現場からお礼を申し上げます。
 現実問題として、そういうふうに何かアクションを起こしていただかないと、現場では1万円ぐらいはあれですけれども、4万円も上がるという実態はなかなか難しいと思うのですね。
 介護の仕事というのは、重要性や尊さから言うと本当に大変な仕事であります。ところが、国民からの評価というのはどうしてか低いのです。やってみたら、どれだけしんどい仕事かわかりますよ。お風呂へ入れることにしても、おむつをかえることにしても、やってみました。よくやっていると思いました。これに対して十分な給料を事業者としてお支払いするのは当然なのですけれども、介護保険も、医療保険もそうですけれども、全般的にシュリンクする、縮小する方向に行っておりまして、現場の努力にも限りがあるというところもございますけれども、いかにしてこの正当な評価がいただけるかということは、まずほかの委員の方もおっしゃいましたけれども、給料を上げるだけではだめだと。私もそうです。
 まず給料が上がって目立つということは一つの仕事であって、尊い仕事ということは、今まで日本をつくってくれるために苦労をしてきたお年寄りに対して敬意を表する、直接スキンシップのある仕事として、私はやりがいがある仕事だと思いますけれども、今回の1万円上げていただくということも、最初はそういうふうになっても、これは事業所としても努力しないといけない。
 現実問題、東京都では特養がオープンしても介護職員が集まらないで、半分しかオープンできていないという施設があちこちにあると聞いております。2025年の子供の出生数は78万人と想定されておりますので、去年は100万人でしたから、この状態でいくともう介護してくれる若い人はいなくなるのですね。もう少し考え方を変えて、介護保険は介護職員でもっているわけですから、もうちょっとリスペクトして現場で一緒に頑張って仕事をしたいと思います。ありがとうございます。
○田中分科会長 田部井委員、瀬戸委員の順でお願いします。
○田部井委員 そもそも社会保障審議会の介護給付費分科会というのは、今介護人材が足りなくて大変だ、どうしたら介護人材を確保できるかということを必死に議論している場だと思うのです。それにしましては、私は論点1の対応案に書かれている最初の〇の表現が余りに本気度が問われる文章ではないかと思いました。「介護職員の処遇を含む労働条件については、本来、労使間において自律的に決定すべきものであるが、他方、介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るためには、事業者における取組を評価し、確実に処遇改善を担保するために必要な対応を講ずることは、現状においてはやむを得ない」と、そういうようなことでいいのでしょうか。
 そもそも足りないから一生懸命何とかしようと思って議論しているのに、これでは、本当に資本主義的にほかのところで決められるべきものを仕方なく議論しているみたいではないですか。労使間において自律的に決定すべきものであるというふうに書いてありますけれども、そもそも介護保険制度が始まるときに、恐らく介護従事者の給料を幾らぐらいに設定しようかということを制度的に考えて設定されたものではないかと思うのですね。そこからそもそも自律的に任せてはだめだということが決まっているわけですので、そのことを「本来、労使間において自律的に決定すべきものである」という意見がこの給付費分科会の意見の中でも出ていることは承知しておりますけれども、この言葉がこの給付費分科会としてコンセンサスを得られているものとは私は思えないのです。これをそういうふうに表現するということは、こういう考え方に厚生労働省も立っていると見られかねないと思います。
 それから、「現状においてはやむを得ない」ということではなくて、「それが不可欠である」というふうに、私はこの文章は書きかえていただきたいと思います。例えば、労働条件については、「本来」から「他方」までを削除しまして、「介護人材の安定的確保及び資質の向上を図るために、事業者における取組を評価し、確実に処遇改善を担保するために必要な対応を講ずることが不可欠である」と。この表現で、果たしてこの給付費分科会で異論が出るでしょうか。私はそのほうがむしろコンセンサスが得やすいと思いますし、私たちがいかに本気で考えているかということをきちんと打ち出すことになるのではないか考えますので、ぜひお考えいただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。ぜひお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 細かいことになるのですが、4ページの論点2の対応案の2つ目の〇の2番目の黒ポツのところで、最初にいただいた資料では、加算のあり方については今後随時検討していくという、何か緩い表現になっていたのですけれども、きょういただいた資料では、きちんと「引き続き検討していく」というふうに前向きに表現が変わっておりますので、厚生労働省としても細かい表現もいろいろ考えてやっていただいているというのがよくわかりますので、ぜひ、今私が申し上げましたような趣旨で、表現を変えていただきたいと思うのですけれども、お考えを伺いたいと思います。
 それと、1つは介護人材確保施策についてですけれども、これは皆さんから合意が得られるかどうかわからないのですが、参考資料1の45ページの「新規参入促進」というところがあるのですけれども、介護福祉士を目指す学生への奨学金制度ということで、学費貸し付け年間80万円を2年、介護職として5年勤務で返済を免除なのですけれども、これは私はもっと呼び込むためには、ちゃんと2年修業してくれればいい、あるいは介護福祉士を取ったらそれでいいですと。それで免除していただくようなことをしてでも呼び込む。それぐらいの価値はあるのではないかと。そういうことをかなりドラスティックにあれしなければいけないと思うのですけれども、この点について、そんなことは無理だとか、考えてみるとか、もしお考えをいただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田中分科会長 老人保健課長、よろしくお願いします。
○鈴木老人保健課長 それでは、お答えいたします。
 まず1点目、1ページ目の対応案の〇のところでございますが、ここの言いぶりにつきましては、これまで前回の処遇改善加算をつくったときにも、こういった労使間の問題というのは意見の中でございましたし、また今回もそういった意見がございましたので、こういう書きぶりにさせていただいております。逆に、この委員会の中でそこの部分は削除して、もう少し強く書いたほうがいいという御意見であれば、そのような方向で調整したいと思っております。
 2番目の奨学金制度の関係ですが、ここは5年間勤務で返済を免除というのは、介護福祉士になった後、介護職としてきちんと5年間は仕事をしていただいて、その間頑張ろうというような意味も込めて今後5年間ということで設定していると聞いております。
 以上でございます。
○田中分科会長 関連ですか。
○武久委員 関連で。今、田部井委員がおっしゃったのですけれども、この文章を私が理解するのは、事業者の労使関係で上げていっていただけるのは結構ですけれども、今、この状況ではなかなか前へ進まないから、厚労省がこういうふうにいろいろな措置をすることはやむを得ないという意味ではないかと思うのです。要するに、労使間で好きなように介護職員の給与を放っておくと、今までのように4万幾らも上がっていないわけですから、まだまだ仕方がないから、ここのところはやむを得ないという言葉をお使いになったのかなと私は理解していたのですけれども、どちらなのでしょうか。
○田中分科会長 老人保健課長。
○鈴木老人保健課長 今、先生がおっしゃったとおりでございまして、基本的にはいわゆる雇用関係のあるところでの給与ですので、そこに行政機関が入るというのは適切ではないと考えておりますが、一方で、今、武久先生がおっしゃったとおり、そういったところを促すことも含めまして、今回はきちんとした対応をするということはやむを得ないだろうということで書かせていただいているところでございます。
○田中分科会長 どうぞ。
○伊藤委員 ありがとうございます。
 今、論点1の対応案の1つ目の〇についてですが、「やむを得ない」という点、もちろん自律的に決定すべきと当然労働組合としては認識しているわけですけれども、今、処遇改善について特段に政策的な対応が必要だということで、この間、十分な効果も出ていないというところもあるから引き続き必要だと私どもとしては認識していますので、3行目の「講ずることは」以降のところを「講ずることが引き続き求められている」と直していただければありがたいと思います。
○田中分科会長 どうぞ。
○瀬戸委員 ありがとうございます。
 今のことに関しましては、いろいろ議論を聞いていまして、表現の方法はそれぞれ納得するしないがあると思いますが、現状認識から言えばこの表現でいいかなと思います。
 論点1に関しましては、今回の新加算のキャリアパス要件に関して、非常に現場に即した形で要件をつくっていただいていますので、基本的にはこのとおり進めていただければいいかなと思っております。
 論点2に関しましては、従来、我々もずっと言っておりますが、介護職以外も含めた形でのことを引き続き検討していくということになっていますので、例外的、経過的な取り扱いではなく、恒久的な措置も考えた形で引き続きの検討をぜひお願いしたいなと思っています。
 以上です。
○田中分科会長 大西委員、どうぞ。
○大西委員 保険者の立場から一つ、二つ意見を言わせていただきたいと思います。
 まず、今回の介護人材の処遇改善の加算の一つの充実ということでございますけれども、先ほどからお話が出ておりますように、介護職員の賃金が低い、離職率も高いということで、これまで過去に21年度改正である程度全体を充実するとともに、それだけではだめだということで、処遇改善交付金というのを新たに補正予算でつくって、それで措置をしてきたわけです。我々としては、現場を預かる立場からして、そういう処遇改善は必要だということで、それは別財源で交付金みたいな形で継続してほしいという要望だったのですが、やはりそれは本来、介護報酬の中で加算すべきだと。ただ、一概に中で算定をするということになると、先ほどから言っていますように、労使間の交渉というだけになってしまうので、それでは確実に処遇改善は図れないということで、この処遇改善加算といったものが平成24年度の改定から出てきたと理解しております。それを27年度改定でも継承して、今回29年度、特別に上乗せということでやられるということなので、それはそれで私は結構かなと思っています。
 ただ、先ほどから意見が出ていますように、やはり抜本的な処遇改善、しかも介護職員だけに限ったことではなくて、保育士なんかも含めまして、社会保障を支える人材の確保とその処遇みたいなものをどういうふうに考えるのか、そういう経済原則との兼ね合いというのもいろいろ難しい問題はあるのでしょうけれども、そういう中で抜本的に考えていくべきではないかと思っております。
 そういう中で一つ、今回の改正についてお願いしておきたいのは、これは処遇改善加算というのがまた要件が一つ加わって、さらに複雑になるわけですね。そうなりますと、それぞれの保険者としてのチェックというのがまた難しくなっています。今でさえ処遇改善加算というのがなかなかわかりにくいのですね。一つの法人の中で幾つも事業所を持っているようなところで、基本的な処遇改善は事業所単位で図るというのですけれども、人事異動とか何かがあるような場合に、ある一定基準の時点を一つ置いて、そこからの人件費の増みたいなものに見合うような形での処遇改善加算ということでやるのですけれども、それが果たして本当に現場として妥当かどうかというのはなかなかわからないところで、しかも具体的な細かなことになって、都道府県に聞きますけれども、その辺が十分まだわかっていないところがある。国のほうの方針がはっきりしていないからだというような言い方もされることもあるので、こういう加算がまた新たにつくのであれば、国のほうの判定基準算定基準、これをきちっと明確にしていただきたい。それをできれば都道府県にきちっと理解をさせていただいて、我々保険者、市町村の指導をきちっとやっていただきたい。それをお願いしたいと思います。
 もう一つ、余り要件を細かくし過ぎますと、結局、その分、事務負担が過重にふえるということになりますので、その辺はより効果が出るような要件基準みたいなものをきちっとつくっていただいた上で、それで事務負担もある程度軽減されるような方向でいろいろ御検討いただければと思っております。
○田中分科会長 堀田委員、どうぞ。
○堀田委員 大きく2点です。
 今までの委員の皆さんからの御意見もありましたが、まず第1点目は、この処遇改善の議論を、今回は時間がないので致し方ないということになるのだと思うのですけれども、安定的に質、量を賄っていくために処遇改善の議論をしていると思うのですが、この給付費分科会ではこの処遇改善のここのところを2回議論が行われていると思うのですけれども、今、賃金の水準がどうなっているのかとか、職場環境がどうなっているのかということの実態の認識も必ずしも全員が共通ではないところで何となく議論があって、そして何となく引き続いてきていますというところがあるので、その事実認識を合わせた上で、どういう哲学でこの処遇改善を考えるのか、それに基づいてどういう手法と、財源がセットだと思うのですけれども、必要な手だてをどう考えるのかという基礎的な議論がベースで整理が行われた上で、それを出されて議論が行われるということを次の改定のときには期待したいと思います。それが論点2に関係することです。
 本来はそれが先にあってほしいところですけれども、間に合わないという前提で論点1について簡単に申し上げますと、これは〇の3つ目の表現というか、やや検討していただきたいという希望なのですが、最初のところに、「経験若しくは資格等に応じて」とありまして、この昇給を何らかということはわからなくないところなのですけれども、今までさまざまな研究あるいはキャリア段位の考え方なんかもそうだと思いますけれども、必ずしも経験を積んだとか、あるいは資格を取ったということで、現場で発揮される職務遂行能力が高いかどうかわからないということもわかっているところで、今までさまざま加算が行われていますけれども、実際には現場で質の高いケアが行われているか。松田先生たちもやっていらっしゃる研究ですけれども、質に対して評価がなされて、その質の高いケアを行っているところの担い手に職種問わず還元されるというのが普通の姿だと思いますので、そういうような議論を一方でしつつ、必ずしも経験や資格を取ったということだけで、質の高いケアに貢献しているとは限らないというような議論も走っている中で、「経験若しくは資格等」というようなことを出すのがいいのか、「職務遂行能力」というふうに出すのがいいのか、あるいはこの何とか等のところはそれぞれの考え方なので、「一定基準に基づいて」とすることがいいのかというのは、これは慎重に事務局のほうで検討していただければなと思います。
 以上です。
○田中分科会長 ありがとうございます。
 及川委員、お願いします。
○及川委員 ありがとうございます。
 介護福祉士会のほうで意見を少し言わせていただくのですが、まず、今回の新加算の検討については本当にありがたいことだと思っております。現場にいる職員たちが、また介護職、介護福祉士たちがどれだけこの加算で現場にとどまってくれたかということを考えると、本当にありがたい話でございますが、前回の介護給付費分科会の中でも少し申し上げましたけれども、いつまでも処遇改善加算に頼っている場合ではない、何か違うことを考えていただきたいなというところは前回と同じところでございます。
 今回の論点1のところで、キャリアパス要件(ローマ数字3)に、「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み」という言葉が書いてあります。もちろん資格等のことについては、例えばサービス提供体制強化加算というものの中に介護福祉士の配置の要件が入っているように、きちんと位置づけていただいておりますし、いろいろな事業所のキャリアパスシステムの中にも資格要件が入っているものが多いと認識しているところでございます。
 私たちは、この内容について全く異論はないのですが、ただし質を向上していかなければいけないというのは本当に切実に思っているところであります。例えばキャリアパス要件(ローマ数字2)のところに研修のことが書いてあります。現在、御存じのように、人が本当に足りないような状況の中で、確かに要件(ローマ数字2)の研修を位置づけることはできたとしても、本当に研修に行けているのかどうか、職員のいない中、例えば小規模の事業所がその職員を研修に出せるのかどうかということは、いろいろな取り組みを位置付けていただいているのですが、現実的にはなかなか位置づけている研修に行けない状況があるのではないでしょうか。資格要件をつけていただくのはありがたいことですし、必要なことではあるのですが、資質をどんどん向上していくという仕組みがあっても、そこに出せないとか、行けないというような状況はなかなか変わってくるものではありませんので、ここのところは今後考えていただきたいところであると思っております。
 本当に全体的に全く異論はございません。このキャリアパス(ローマ数字3)のことについても、やっていかなければいけないことですし、3ページにあるような経験、資格、評価というものを位置付け、取り組んでいただきたいところではございますが、何せ事務作業も煩雑であるということと、介護職員がぎりぎりの人員で仕事をしているということに変わりはございませんので、このままで私はよろしいのではないかとつけ加えて意見とさせていただきます。
 ありがとうございました。
○田中分科会長 では、齋藤委員、お願いします。
○齋藤(訓)委員 前回も申し上げましたが、単に給与の引き上げではなく、やはり職場環境の整備が並行してなされていかないと、この要件をつけ加えたとしても、介護職の離職がなかなかとまらないのではないか、環境整備のほうにもかなり力を入れていかなければいけないのではないかと思います。
 今回、新しく要件を付加した加算(ローマ数字1)ができることで、現在7割近い事業所が現行の加算(ローマ数字1)をとっておりますから、この要件の引き上げによって処遇改善が進むことに期待しておりますけれども、一方で、この処遇状況調査の結果から見ますと、例に挙げられている加算の((ローマ数字3))と((ローマ数字4))を大体2.8%ぐらいの事業所が算定しているという状況があって、このあたりは何も手つかずで本当にいいのかということを少し疑問視しております。
 特に加算((ローマ数字4))は、職場環境要件等を何も満たさなくても算定できるということになっておりまして、これは処遇改善に向けて事業者や管理者へのメッセージとしては非常に弱いなという状況ですね。ですので、必ず処遇改善に取り組んでいくよう促すためには、少しこの((ローマ数字3))や((ローマ数字4))の要件見直しをやってもいいのではないかと思っております。
 この((ローマ数字3))や((ローマ数字4))の届け出をしない理由を見ますと、対象が制限されているという理由はあるのですけれども、理由の一番大きなものとしては事務作業が煩雑ということになっているので、何かこのあたりをひな形を示す等で改善していかないといけないのではないかと思います。
 給与の引き上げとともに、長く働いていける職場環境をつくり、職員を大事にしますというメッセージが雇用者側から労働者側に伝わらないと、介護職員の離職の防止は非常に難しいのではないかと思いますので、加算((ローマ数字3))((ローマ数字4))の要件も、何らか見直していただけるように要望したいと思います。
○齊藤(秀)委員 ありがとうございます。
 論点1でありますが、処遇改善が確実に実施されているかという問題意識というのはあるわけでありますが、今回御提案がありました新加算、とりわけキャリアパス要件の((ローマ数字3))については特段の異論はございません。
 その上で質問が2つあります。参考資料1の3ページに、介護職員の現状について、就業形態、年齢構成別の資料が示されております。あわせて、後ろのほうには、処遇改善の取り組みによってこれまで4.3万円の改善があったという資料があるわけでありますけれども、その改善がこの介護職員の3ページの資料にあります状況にどういう変化をもたらしているのか、過去データとの比較ができるようなことがあればお示しをいただきたいと思います。それは、一定程度どういう効果がこういう資料の中で見てとれるのかということを知りたいという意図であります。
 2つ目には、今、隣の齋藤委員からのお話もありましたが、加算をとっているところが全体的には多いわけでありますし、とりわけ加算の((ローマ数字1))をとっているところが7割あるというデータになっておりますが、加算の((ローマ数字1))をとっているところと加算をとっていないところでの離職率というのは一体どうなっているのか。全体的に離職率が下げどまっていないというデータの資料はあるわけでありますが、加算の状況に伴って離職率はどうなっているのか。これがなければ、せっかくこの加算をしてもその効果をどういうふうに評価していいのかというのがわからないという意味では、少し粗い資料のつくり方になっているのかなという感じがいたします。以上2つ質問をさせていただきます。
 論点2に関してでありますけれども、他職種の職員への加算適用の拡大でありますとか、賃金以外の費用へも拡大したいという現場の意図だと思いますが、例外的かつ経過的な取り扱いという加算という考え方のもとでは、私はなじまないのではないかと考えております。
 何人かの委員からも御指摘がありましたように、加算で全て解決するというのは限界があるだろうと思いますので、今ありますような他職種の職員でありますとか、賃金以外の対応というのは労働条件を考える上では大事なポイントではありますけれども、これをもし着実に進めるとすれば、もう少し抜本的、また根本的なところからこのあり方を見直していかなければ、加算の延長線上で議論すべきものではない、限界があると考えております。
 以上であります。
○田中分科会長 ありがとうございました。
 質問についてお答えください。
○鈴木老人保健課長 ありがとうございます。
 御質問ですが、両方とも今データが、クロス集計になりますのでデータについてはそろっておりませんので、ちょっとお時間をいただいてデータをそろえたいと思っております。
 ただ、離職率の関係でございますが、離職率につきましては、確かに一つ賃金という問題もあるのですが、参考資料1の8ページにありますとおり、離職については複数回答が出てきますので、そういった意味では収入の関係だけではない可能性がありますので、どのようなデータが出るのかというのは少し分析をして、また御提示させていただきたいと思います。
○田中分科会長 松田委員、お願いします。
○松田委員 齊藤委員が指摘された点は非常に重要だと思います。加算だけで処遇改善というのは非常に難しいと思います。厚労省がいろいろやっている調査の結果をみても、介護労働者における間接業務の多さというのは非常に大きな問題だろうと思っています。その間接業務の多さというのは、例えば介護報酬の請求が複雑だったり、いろいろなことがあるわけですけれども、その間接業務を少し減らしていって、直接サービスが提供できる時間を長くしてあげれば、その分また収入もまた上がっていくわけです。そういう労働生産性を高めるような施策というのを片方で考えていかないと、加算だけではやはり対応は難しいだろうと思います。
 もう一つ考えなければいけないのは、参考資料2の21ページにありますけれども、これは施設系だけですけれども、基本的には規模が大きいところのほうが給与が高いということです。それは、規模が高いところのほうがやはり一人一人がやる間接業務が減らせるということがあるのだろうと思います。そう考えたときに、訪問系とかそういうところになってくると規模が小さ過ぎるという問題があると思います。
 諸外国の動向などを見ていても、訪問系も組織は別だとしてもアライアンスを組むような形にして、サービス提供事業体としては大規模化していくということが結構やられています。それをやることによって全体の介護報酬の請求とかそういう間接業務を集約化できる。そうすると、直接サービスをやる人材がふやせます。このことが何に関係してくるかというと、例えばデイサービスにおける定数の話とかですが、そういうところを少し見直すべき時期に来ているのではないかと思います。
 恐らく介護人材の給与を上げるということは非常に重要なことだと思いますので、そのためには加算だけではなくて、労働生産性を高めるという観点から何かやるべきことがあるのではないかと思います。
 以上です。
○田中分科会長 生産性について触れていただきました。ありがとうございます。
 重田参考人。
○重田参考人 ありがとうございます。
 行政の立場でコメントさせていただければ、まず基本的に事務局の案に賛成させていただきたいと思います。また、現在の加算におきましても、この加算をとるに当たっては、所轄庁に計画書を出していただいて、1年たって実績を出していただく。そういった形で入ってきた加算が処遇改善に振り向けられているというのは行政で確認するというシステムになっています。そういった意味で、加算は処遇改善に振り向けられると確認されているわけですが、今回、きちんと加算のキャリアパスの要件にひもづけられるということは良いことかなと考えております。
 2つ目ですが、現在の加算の要件が甘いという気持ちもなきにしもあらずのところがあるのですが、同時に、地域密着のデイのような非常に小規模なところではキャリアアップのシステムを組みにくい現実があり、そういったところにもたくさんの介護職員が働いておりますので、そういった方でも処遇が改善されるよう、一定ライン配慮することが必要なのではないかなと考えているところです。
 あと3つ目、先ほど話がありました、いろいろ仕組みが複雑になってくると事務量が増えるというところは私どもも同じですので、ぜひ御理解いただければと思うところです。
 以上です。
○田中分科会長 議題1については、一わたりよろしゅうございますか。年度末に至るスケジュールもありますので、本議題については本日の意見を踏まえて、次回の介護給付費分科会において取りまとめを行いたいと考えております。
 続いて、議題2「地域区分について」、事務局から説明をお願いします。
○鈴木老人保健課長 それでは、地域区分につきまして、資料2及び参考資料3を用いまして御説明させていただきます。
 まず、資料2をあけていただきまして、現状と課題でございますが、現在ですけれども、地域ごとの人件費の地域差を調整するために地域区分を設定しまして、地域別・人件費割合別に1単位当たりの単価の割り増しをしているというところでございます。
 これにつきまして、参考資料3の1ページをごらんいただければと思います。端的に申しますと、この下のほうの図にありますとおり、現在、介護報酬の算定につきましてはサービスごとに算定した単位が設定されておりまして、それについて、通常1点10円でございますが、それぞれの地域区分に設定された率を掛けていただいて、これが10円から最高11.4円までありますけれども、それを掛けていただいたものが事業者に支払われるサービス費となっておりまして、その1割を利用者が負担していただくということになっております。
 その地域区分でございますが、参考資料の3ページをごらんいただければと思います。地域区分については27年以前も行っておりますが、前回改定の27年4月に以下のような改定をさせていただいております。1つは、国家公務員と地方公務員ですが、その地域手当の設定値がある地域はその設定値に準拠するということが原則になっております。27年前は国家公務員のみでございましたが、27年4月以降については地方公務員も含めた設定とさせていただいております。
 (マル2)にありますが、ただし、公務員の地域手当の設定がされている地域、これはいわゆるゼロ%地域ですけれども、その地域につきましては複数の隣接地域に地域手当の設定がある場合に限り、以下のルールを設定しているということでございます。これが下のほうの図で示しております。下の図の左側のほうは、見ていただくと、真ん中のところを設定するために、周りが全部16、15、20、20、自分のところも10%というふうに、もう既に国家公務員もしくは地方公務員の地域手当の設定がある場合については、これは10%そのままということになりますが、右側のほう、地域手当の設定がない場合、真ん中ところが設定がありませんというところで、隣接する周りが6%、10%、12%の場合につきましては、周りの中の最低の地域、ここの場合ですと6%ですけれども、6%からゼロ%の間のところについて設定ができるというような特例措置を設けているところでございます。
 また、上の(マル3)にありますが、なお、経過措置として、従前(平成27年3月末まで)の設定値と今回新たに設定した値が乖離がある場合につきましては、経過措置としてその範囲の中でも設定できるというようなことで、今回27年度以降は取り扱いをさせていただいております。
 実際に、4ページが今の点数表でございますが、上のブルーの旧の点数表を下のピンクのほうに、1級地からその他級地まで全部で8級地までそれぞれ分けさせていただいて、それにつきまして各サービスの人件費割合を掛けていただいて、最終的に1点が幾らになるのかということが計算できるということになります。
 5ページにつきましては、それぞれの級地が設定されているところのリストを載せさせていただいております。
 戻っていただきまして、資料2の4つ目になります。こういう設定をさせていただいたその後、第122回の介護給付費分科会、平成27年6月25日に行われたものでございます。このときにおきまして、このときはいわゆる27年の改定後の検証ということで開催させていただきましたが、そのときに地域区分のあり方につきましては、「対応準備に時間を要することも踏まえ、一定期間内に方向性が出せるよう、今後、検討」とされ、これを受けて、第123回の介護給付費分科会において議論をされたところでございます。
 ただし、第123回の分科会におきましては、その下のポツにありますが、「様々な地域の事例を含めて、課題・論点を整理する必要がある。既存のルールを主としつつ、例外的な取扱いについて検討すべきではないか」「近隣の地域との格差や過疎地の問題がある中で、各自治体の意見を聴取し、公平・客観的な方法や広域的な観点から課題や論点等を整理していくべき」との御意見がございましたので、その後、地域区分に関する「隣接状況」「課題」について全自治体に対して調査を実施したところでございます。
 その調査の結果が次以降になりますが、3ページをごらんいただければと思います。自治体の意見の集約ということで、大きく全自治体の隣接地域の状況の調査と、それから具体的な課題についての自由記載ということで把握をさせていただきました。
 結果でございますが、隣接地域の状況については全市町村において把握をさせていただいております。結果につきましては資料としてはつけておりませんが、把握はしております。それから、2点目の具体的な課題につきまして、自由記載をしていただいたところでございますけれども、1,741市町村中181市町村から記載がございました。その記載内容を精査し、今回の地域区分を上げたいという意向が推測されるもの、下げたいという意向が推測されるもの、その他の意見ということに分けさせていただきまして、それぞれ分けたところ、下の円グラフにありますが、上げたいと推測されるものが大体4分1、下げたいというものが4分の1、その他の意見が大体半分ということでございます。
 特に上げたいという意見につきましては、人材の確保・人材の流出に懸念があるという御意見、それから隣接地域とのバランスの問題意識というところから上げたいと推測されるという意見が多かったところでございます。
 下げたいという意見につきましては、やはり隣接地域とのバランスというところもありますが、もう一方で、保険料や利用者負担の増加を懸念して、下げたいという意見もございました。
 次の4ページでございますが、さらにその分析をしまして、2番のところですけれども、隣接地域との関係性ということで、今回上げたい意向と推測される自治体の隣接地域について調べましたところ、隣接地域全てが高いケースが7自治体、いわゆる高いところに囲まれていて自分のところが低いという場合が7自治体、隣接地域の一部が高いので上げたいと言っているところが29自治体、隣接地域と差がないけれども、上げたいと言っているところが8自治体ございました。
 下げたいという意向の場合につきましては52自治体でございますが、隣接地域全てが低くて自分のところが高いというのが全部で4自治体、それ以降、22、4、22という自治体の数になっております。
 5ページをあけていただきまして、そういったところで、今回隣接地域の状況がわかっておりますので、表にありますとおり、隣接地域全ての地域区分の設定値が当該地域の設定値よりも高い自治体、いわゆる高いところに囲まれている自治体につきましては、全部で15自治体ございます。逆に、周りの自治体が自分の自治体よりも低いという、逆に低いところに囲まれている自治体につきましては全部で54自治体ございました。
 6ページにつきましては、経過措置についての御意見でございますが、現在の経過措置につきましては、1,741自治体中142自治体で実際適用させていただいております。その中で、142自治体中、本来の区分よりも経過措置を適用して高く設定しているところ、つまり27年3月は高かったけれども、4月以降低くなったために高い値で設定しているという自治体が全部で4自治体ございまして、その中で今回の自由記載内から推測しますと、3自治体が上げたいという意向を示していると思われます。
 逆に、本来の区分より経過措置を適用して低く設定している自治体は全部で138自治体ございまして、そのうち同様に推測したところ、36自治体が継続して下げたいという御意見を持っていると推測されます。
 こういう結果でございまして、7ページに論点を挙げさせていただいております。1ポツ目にございますが、地域区分につきましては公平的かつ客観的な観点から設定すべきものであるということと、今回、地域区分に関する自治体の意見を調査したところ、現行の設定方法については約9割の自治体からは意見がなかったところでありますが、一方で意見があった自治体からは、隣接地域とのバランスに関する意見が多くて、一部の自治体からは上げたいという意向と下げたいという意向と両方ともございました。
 2ポツでございますが、27年度の介護報酬改定の際、「地域区分の設定方法として、介護人材確保での近隣自治体との均衡を考慮し、地域の実情を踏まえ市町村域を超えた、より広域的な範囲において設定が可能となるようにすべき」という意見について、どのように考えるかというのが一つの論点として挙げさせていただいております。
 また、上記の自治体への調査における意見を踏まえれば、引き続き現行の設定方法を原則とすることが妥当と考えられますけれども、今回、特例として、現行の設定方法による区分を適用した場合、隣接地域全ての地域区分が当該地域より高くなる、または低くなる地域について、一定程度区分の変更を認めることとしてはどうかということでございまして、これにつきましては次の8ページをごらんいただければと思います。
 これにつきまして、イメージとしまして下の絵のほうで御説明させていただきますと、まず、左側の紫のほうでございますが、全ての地域区分が国家公務員もしく地方公務員の現在の原則で設定されているという前提の上で、周りの地域、ここになりますと、中心の地域の周りですので紫のところですが、それらが中心のところよりも全て高い場合、そういった場合につきましては、この例ですと10%が自分のところで、その周りの中の一番低いところ、15%のところの間で設定を選択できるようにしてはどうかというのと、逆に、右側のほうにありますが、今度は自分のところが高くて周りが低い場合につきまして、周りの一番高いところと自分のところとの間で設定が可能というようなことをしてはどうかというのが今回の御提案でございます。
 それから、戻っていただきまして、7ページの3ポツになります。経過措置を適用している自治体につきまして、引き続き引き上げまたは引き下げの意向があると推測される自治体が一定程度存在することを踏まえまして、経過措置の期限については延長を認めてはどうかという御提案でございます。
 最後になりますが、仮に上記の見直しを行う場合に、対象地域に対して新たな設定方法の適用について意向を十分に確認することが必要なことや、27年度介護報酬改定と同様、財政中立で行うことが原則であるが、今回のこの提案の見直しの時期についてはどのように考えるのかということを御提案させていただいております。
 説明については以上でございます。
○田中分科会長 河村委員提出の資料はいいのですか。
○鈴木老人保健課長 申しわけございません。
 それに関連いたしまして、参考資料の最後につけておりますが、参考資料6といたしまして、当分科会の委員であります奥多摩町の河村町長のほうから、地域区分に関する意見ということで文書が提出されておりますので、御参考までに御紹介いたします。
 以上でございます。
○田中分科会長 説明ありがとうございました。
 では、ただいまの説明の内容について、御意見、御質問があればお願いいたします。
 鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 これは調査の結果を踏まえてということですので、余り大きな議論にはならないのではないかと思います。2つ目の○の論点の7ページですが、最初のほうの広域的な範囲の設定、これはよろしいと思いますし、後半のほうの一定程度区分の変更を認めるというのもいいと思います。
 それから、3つ目の○の経過措置の期限の延長もよろしいと思いますし、4つ目の見直しの実施時期ということですが、平成30年度の介護報酬改定に合わせてというのがよろしいのではないかと思います。
 それと、前提ですけれども、その他地域ゼロ%という原則は維持していただきたいと思います。
 以上です。
○田中分科会長 瀬戸委員、お願いします。
○瀬戸委員 基本的に見直し、この論点についてはいいと思います。ただ4つ目のところで、対象地域に対して新たな設定方法の適用について意向を十分に確認するということですが、これは報酬にかかわってきますし、当然利用者負担にもかかわってきますので、事業者及び住民の意見を聞くというような仕組みをつくったほうがいいのではないかと思っております。
 以上です。
○田中分科会長 井口委員、お願いします。
○井口分科会長代理 調査結果、あるいは河村委員の意見等を踏まえて、まず広域的な観点から地域区分を設定するといった場合、公務員の地域手当から離れて新たにブロック分けするというふうになるわけですが、現行の仕組みでも市町村間において上げ下げの意向が大きく異なる中で、新しい仕組みでどのように自治体をブロック分けするかとか、あるいは級地をどうするかといった大変な議論になるのは間違いないと思います。どのように分けたとしても、必ず級地に差が出る地域が出るということは防げないということですから、今まで以上に多くの課題が発生し、また調整が必要となる可能性がある。こういった中で、現行より多くの自治体において納得できるものとするということは、相当難しいことではないかなと考えられます。
 そういったことから見まして、公務員の地域手当準拠を原則としつつ、公平性を確保すべきと考えられるケースについては、例外的な取り扱いで対応するということが一番現実的ではないかと思います。
 以上です。
○田中分科会長 ありがとうございました。
 大西委員、お願いします。
○大西委員 地域区分の設定につきまして、まず、全市町村にアンケート調査といいますか、意向調査をしていただきまして、方針等を出していただいたことに対しまして、丁寧な取り扱いをしていただいたことを感謝申し上げたいと存じます。
 基本的にほとんどの市町村は今のやり方でいい、今の級地でいいということなので、問題は隣接地域との級地が大きく異なる場合とか、あるいは高松市もそうなのですけれども、一遍に地域区分が上がって、それが保険料との関連ですぐには上げられなかった例もあろうかと思います。それぞれ市町村によって意向はばらばらかと思いますので、その辺がきめ細かく対応ができるような制度にしてほしい。少なくとも、論点にございますけれども、それぞれの市町村が上げたい、下げたいといったような場合に、一定基準のもとでそれが選択できるような措置をお願いいたしたいと思いますし、現行の経過措置的なものについては、もちろん30年度以降も継続していただくということが必要かなと思っております。
 その場合には、論点の一番下の4つ目のポツに書いておりますけれども、実際、全体の予算枠の中で財政中立のもとに上げ下げが行われるということですので、あらかじめかなり早い時期にある程度それぞれ地域区分についてどうするのかというような意向みたいなものを固めていただかなければならないということかと思っています。
 実際、30年度以降で適用するとすれば、その1年前ということで、年度末ぐらいまでにはその辺の意向をはっきりさせておく必要があるのかなと。我々としても、市長会あたりでもその辺についてきちっと周知をした上で、それぞれいろいろな要件を踏まえた上で決定していただく必要があろうかなと思っているところでございます。
 ちなみに、高松市におきましても、24年度改定のときに地域区分が導入されたときに、3%、6級地だったのを一応その他地域でゼロ%にしていただいて、27年度のときは6%に上がったのですけれども、今、3%に据え置いていただいているというような経過措置的な扱いをしていただいておりますので、そのようなちょっと判断がいろいろ難しい部分はございますけれども、早目に市町村、保険者のほうに投げかけていただいて、その辺の決定をしていただくように促していただきたいと思っております。
○田中分科会長 議題2についてはほかにございませんか。
 ありがとうございました。
 本議題については、本日いただいた御意見を踏まえて、次回において当分科会として一定の方向性を示すことができるよう、事務局で整理をお願いいたします。
 その他について、亀井委員、どうぞお願いします。
○亀井委員 大変ごぶさたいたしておりまして、申しわけございません。きょうは事務方も大変忙しいらしいので、次から次へ抜けていって、蒲原局長は会期中にもかかわらず最後までいていただいて御礼を申し上げたいと存じます。
 意見ですけれども、初めに一つお礼を申し上げておかなければいけないと思っているのですが、要支援1、2について、要介護1、2の生活支援を外す検討がなされてきたわけでございますけれども、これは残す方向で検討いただくところとなっておりまして、これは感謝申し上げたいと思っています。これを次から次へやられますと、現場は混乱をいたしているところでございます。
 ただ、この保険というのは重度者へシフトしていかざるを得ないということを考えると、早いうちから保険者、自治体は、地域包括ケアシステムをスタートさせなければならないと思っておりまして、きょう午後からも市長会の社会文教委員会がございますので、そこでもお願いをしておかなければならないと思ってございます。
 これは初めに難しいことを言い過ぎたので、まだ手つかずの自治体もあるわけで、その点危惧しているところでございますけれども、まずは地元医師会さんと地域包括支援センターが連携して、そしてまちづくりを進めていく中で、住民自治の熟度が高まってきたら生活支援も充実をしていくだろうと。1,700通りのやり方があっていいと思ってございまして、まずスタートして、徐々に充実していかなければならないと思っています。
 地域包括ケアシステムですけれども、やはりネットワークが非常に重要でございますので、シルバー人材センターであったり、あるいはその他の団体とのネットワークをこれから進めていって、できるだけ早くスタートはしていきたいと思ってございます。
 それと、少子高齢化がどんどん進行していきまして、我が国も人口減少社会に転じたわけでございますが、この流れの中で社会保障制度をいかに持続あるものにしていくのか、これは国、地方共通の大きなテーマであると思っています。
 昨年の給付費が117兆です。2025年になったら140兆になる。こんなのはどうしても捻出していけません。これは消費税を30%にできるか。そんなことでもないわけですから、またこの25年間国の歳入というのは伸びていないわけです。ですから、歳出を伸ばしていないのです。ただ伸びているのは、社会保障費がこの二十数年間の間で12兆から33兆に3倍ぐらいに伸びているわけです。それはどうして捻出しているかというと、特例国債によって捻出しているということです。
 それは誰のつけになるのかといったら、子や孫へのつけになってくるわけでもございますので、高齢者福祉とか高齢者介護というのは非常に重要なことですけれども、同時にまたこれは子供・子育ても充実していかなければ支える人口がなくなってくるわけですから、今、特殊出生率が1.4人です。政府は1.8人にするのだとしていますが、これは非常に難しいと思います。仮に奇跡的にことし2.1人になったとします。2.1人というのは、御案内のとおり、人口を維持できる特殊出生率ですが、2.1人になったとします。それが続いていったとしても、30年間減り続けるわけですよ。15年後に一生懸命子供・子育て支援を充実して2.1人にできたとします。できませんよ。そうしてもう60年間減り続けるわけですから。
 ですから、支える人口をいかにこれから求めていくかということが非常に重要になってくると思ってございまして、子供・子育てに余り金がかからないような、そんな仕組みも同時につくっていかなければならないと思ってございます。我々基礎自治体であったり、保険者はそういう思いが強いということは申し上げておきたいと思います。
 ですので、これをいかに持続ある制度にしていくかというのは、柔道で言う痛み分けみたいなことをしていかざるを得ないと思うのですけれども、それはもう少しずつ負担をいただいて、この伸びを抑制していくということなのですが、これは余り極端なことをしていけないわけですので、私はこれはお願いしておくのですが、まず1つは介護の総報酬割はどうしてもお願いしていきたいなと思ってございます。
 もう一つは、これもかねてから申し上げていますけれども、介護と障害の一元化、不偏の制度にしていく。これは現場では施設への総乗り入れなんかが行われているわけでもございます。これは、我々基礎自治体からすれば、年齢で分けるというのはおかしいのですよ。ですから、一つの法律でそういうことがかなってきたら、これはもっと合理的に運営がなされていくと思ってございます。特に、障害については税だけで運営されておりますので、この伸びが非常に大きゅうございまして、我々基礎自治体も非常に大変だなと、こんな思いをいたしております。いずれにしても社会保障はオールジャパンで支えていかなければなりませんので、そんなことについて意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 もし局長、何か御所見があったら。なかったらいいけれども、あったらおっしゃっていただきたいと思います。
○蒲原老健局長 せっかくの御指名なので、私の局長という立場もありますけれども、少し幅広くお話を。
 1点目はまさに私の局の関係で、今、要支援の1、2のところについては地域の事業ということで移行するプロセスの過程にあるということでございます。もちろんそれぞれの取り組みがありますので、そういうところがきちっと移行できるように、国として、あとは県とも協力しながらそれをきちっとサポートしていくということに力を入れたいとまず思います。
 2つ目は子供の話だったと思いますけれども、これはもう省全体で社会保障全体を考えたときに、支えるところの数というか、それが大事だと思います。それぞれの施策をやっているところでありますけれども、例えば高齢の側から言っても、少し外れるかもしれませんけれども、先ほど出た地域づくりといった意味では、まさに地域包括ケアの地域づくりで、介護予防とか生活支援体制整備事業をやっていますけれども、例えば介護予防という観点で言えば、お年寄りが自分で地域で役割を持って活動をするということは非常に大事だと思いますけれども、その活動の先は、例えばよく我々の世界ではもちろん元気な高齢者が少し弱った高齢者をサポートするというのがありますけれども、高齢者が子供を支えるというのもあるわけですね。こちらから見れば介護予防だけれども、子供のために活動するというのはあると思うので、幅広く地域を横割りで考えていくという観点がすごく大事かなと、聞きながら思いました。
 3点目の話も、今の話とつながりますけれども、大臣も地域共生社会ということを今言っております。そうした中で、これは省全体でも対策本部をつくってやっていますので、そうした中でどういうことができるかということはこれからよく考えていきたいと思っております。
 以上でございます。
○田中分科会長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○鈴木委員 本日の議題とは直接関連いたしませんが、未来投資会議からの提案について意見を述べさせていただきたいと思います。
 政府が成長戦略の新たな司令塔として創設した未来投資会議の下部組織である構造改革徹底推進会合において、自立支援に向けた取り組み強化について提案がされています。確かに自立支援そのものは介護保険の基本理念であり、重要であることは言うまでもありません。
 私はたまたま10月31日にヒアリングを受け、直接提唱されている方の説明も聞く機会がありましたが、この会合で提案されている自立支援型の介護は極めて特殊な手法であり、この手法を全国に広めることには反対します。
 限られた介護保険財源を有効に活用するためにも、軽度、重度にかかわらず、介護を必要とする利用者本人がそれぞれの有する能力に応じ、ケアマネジメントを通じたエビデンスに基づく効率的なサービス提供によって自立支援を目指すべきであると考えます。
 以上です。
○田中分科会長 老人保健課長。
○鈴木老人保健課長 鈴木先生、どうもありがとうございます。
 その後、実は11月30日に開催されました未来投資会議におきまして、厚生労働大臣のほうから介護保険も含めてプレゼンをさせていただいております。
 大臣のほうからは、その中で介護関係におきましてはやはり介護保険の総合データベース、今、レセプトのデータと要介護認定のデータが入っておりますけれども、それをきちんともう少し抜本的に見直しをして、鈴木先生がおっしゃっていただいた、まさにデータ分析を通じた科学的に裏付けられた介護に変えていくということで、そういったことをしながら自立支援志向の介護を推進し、介護保険においてきちんと検討するというような表明をさせていただいておりますので、その方向で厚生労働省としては動きたいと思っているところでございます。
 以上です。
○田中分科会長 説明ありがとうございました。
 よろしければ、少し時間が早いですが、本日の審議はここまでといたします。
 次回の予定について、事務局より説明をお願いします。
○鈴木老人保健課長 次回の日程につきましては、また、決まり次第、先生方のほうに御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○田中分科会長 本日は御議論、ありがとうございました。


(了)

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