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2016年6月17日 薬事・食品衛生審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会 議事録

○日時

平成28年6月17日(金)15:00~


○場所

新橋8E会議室


○出席者

出席委員(12名)五十音順

荒 川 義 弘、◎川 西   徹、○神 田 忠 仁、 楠 岡 英 雄、
佐 藤 陽 治、 杉 山   肇、 中 岡 竜 介、 中 島 美砂子、
俣 野 哲 朗、 森 尾 友 宏、 森 川 裕 子、 横 田 恭 子
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)五十音順

小野寺 雅 史、 小 幡 純 子、 斎 藤   泉、 坂 本 研 一、
鈴 木 邦 彦

行政機関出席者

森   和  彦 (大臣官房審議官)
磯 部 総一郎 (大臣官房参事官)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
梅 澤 明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)

○議事

○参事官 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会」を開催したいと思います。委員の先生方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。部会長が遅れておられますが、間もなく到着されると思います。その間、神田先生にお願いできればと思います。

 最初に、前回の会議で退任された先生と今回から新任の先生がおりますので、私のほうから御紹介させていただきたいと思います。座席表の裏の面が名簿になっておりますので、これを御覧いただきたいと思います。前は津田先生がお見えでしたが、退官されたということで、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門長の坂本研一先生に交代されました。ただ、本日は御欠席です。続いて国立衛研の新見先生も退官されたということで交代になっており、国立医薬品食品衛生研究所医療機器部埋植医療機器評価室長の中岡竜介先生にも本日から御参加いただいております。ちょうど部会長がお越しになりました。部会長のお越しをもって、17名のうち12名の御出席を頂くことになりました。

 続いて、本日の議題の公開・非公開の取扱いについて御説明させていただきます。議事次第を御覧いただきますと、1.開会、2.公開案件とあります。これが報告事項として、次世代再生医療等製品評価指標についてということで、公開案件のものです。議題2以降に関しては再生医療等製品に関する個別製品の議題で、企業情報に関する内容が含まれることから、非公開にさせていただきたいと思います。

 これより議事に入りますので、カメラ撮りはありませんが、御協力のほど、よろしくお願いしたいと思います。以後の進行については川西部会長、よろしくお願いしたいと思います。

○川西部会長 まず事務局から、公開案件の配布資料の確認を行ってください。

○事務局 本日は机上に議事次第、座席表、委員名簿を配布しております。また、公開案件の配布資料としては資料1-1から1-3を、あらかじめお送りしております。資料に不足等がありましたら、事務局までお申し付けください。

○川西部会長 お手元の資料はよろしいでしょうか。それでは議題に入りたいと思います。まず議題1、次世代再生医療等製品評価指標についてです。これについて、事務局から説明をお願いします。

○事務局 資料1-11-3で御説明いたします。まず資料1-1を御覧ください。平成17年度より、医療ニーズが高く実用可能性の高い医療機器・再生医療等製品については、審査の迅速化、製品開発の円滑化を目的として、評価に当たってのポイントをまとめた評価指標を作ることで、次世代医療機器・再生医療等製品に関する評価指標の作成事業を行ってきております。今般、資料1-2に付けているヒト軟骨細胞又は体性幹細胞加工製品を用いた関節軟骨再生と、資料1-3に付けているヒト(同種)iPS()細胞加工製品を用いた関節軟骨再生に関する評価指標の検討が終了しましたので、御報告させていただきます。これらの評価指標に関しては昨年度、平成27年度に専門家の作業グループの先生方に作成していただいた原案を基にして、5月に任意の意見募集、パブリックコメントを行い、そのコメントを踏まえた上での最終案となっております。今後、この評価指標については速やかに通知として公表していく予定となっております。

 資料1-1の下半分は、この評価指標の内容・位置付けです。次世代医療機器・再生医療等製品について、個別に試験が行われて審査されるという点については、通常の品目と同じですが、評価に当たってあらかじめ着目すべき事項やポイントをまとめた評価指標を作成しておくことで、それらの製品の開発段階における申請資料の収集、更に審査の迅速化を考え、そういったことを目指してこういう事業を行っております。この評価指標に関しては承認基準のような位置付けではなく、あくまでも技術開発の著しい製品を対象として、現時点で考えられる評価のポイントを示した評価に当たっての道しるべのようなものとなっており、法令的な基準とは位置付けが異なるものとなっております。現在までに合計25件の評価指標を公表しており、今回この2件を新たに加えていくということを御報告させていただきます。

○川西部会長 この評価指標について、委員の先生方から御質問あるいは御意見はいかがでしょうか。

○荒川委員 ザッと見させていただいて、例えば資料1-2の3ページの中頃の生存率を出すところは、基本的なマナーとして非常に重要ですが、努力はするものの、3次元で培養しているものは当然、生存率を出すのは容易ではないと思います。例えば「足場材料等をタンパク質分解酵素等で消化して」というのは、可能な場合とそうでない場合があるでしょう。そういった酵素等で消化すれば、当然生存率は落ちてしまい、正しく計測できない場合があります。それが細胞の種類によって違うとなると、元のマトリックスの中での比率とは違うものが出てしまう可能性があります。そこは個々のケースでまた対応していただくことになるかとは思いますが、かなり難しいハードルがあるのではないかと感じました。

○川西部会長 今のはコメントかと思いますが、何かありますか。

○事務局 御指摘いただきありがとうございました。この評価指標自体の背景としては、前回の平成22年に一度、関節軟骨再生に関する評価指標ということで出していたものを、今回、技術の進展を踏まえて改訂するという形で、大分書き加えております。その中で試験方法の例示についても、もう少し充実させようということで、現在御指摘いただいた箇所についても加筆したということです。ただ、実際はそれぞれの製品ごとに最適な方法を設定いただければいいと思いますので、個別に機構とも相談いただいて、できることは実施していただくということで考えております。

○川西部会長 ほかに何かありますか。

○杉山委員 11ページの対象疾患の所です。今のお話を聞くと、既に平成22年に決まっていたのかもしれませんが、「関節軟骨損傷を適応とする」と書いてあります。しかし、後の項目を見ると、変形性関節症が入っていますが、関節軟骨損傷というのは変性疾患を含むという判断でよろしいですか。

○機構 一応今のところ、外傷性の軟骨損傷で変形した疾患、OA等については対象としていないものとなっております。

○杉山委員 そうすると、この後の「変形性関節症(程度、定義)」と書いてあるのは、どう考えればいいのでしょうか。

○機構 先生は専門家でいらっしゃるので御存じのとおり、基本的にOAの疾患においても軟骨下骨の変性が起こり、アライメントの異常まで起こっているようなものは、イメージとしては対象にしていないのですが、簡単な軟骨下骨周辺の変性程度のものであれば、基本的にこういった製品が使えるのではないかということです。過去、平成22年度のガイドライン時にそういった議論もあり、そういったものであれば本通知の対象製品は使えるのではないかということで、変性の程度も含めて検討しているというように御理解いただければと思います。

○杉山委員 そうすると、K-Lグレードの1までというように限定しているわけではないのですね。

○機構 こちらについてはまさに個別品目のコンセプトに応じて、ある程度その範囲は決まってくるのではないかと思われます。

○川西部会長 大したことではないのですが、資料1-2と資料1-3というのは、比較的似たようなものに対する評価指標ですね。しかしパーツで見ていくと、例えば資料1-3には品質的なところがあって、非臨床試験があって、臨床試験という形になっています。資料1-2は、例えば造腫瘍性は品質パートに入っています。そういうところで作りが違う部分があるのです。私がこの辺りをしげしげ眺めたのが初めてということもあるのですが、まだ25個目ということで、作りということでの基本形はまだ余りないのですか。

○事務局 見比べた場合、どこが違うのかが分かりにくいという御指摘かと思います。大変分かりにくいという点については申し訳ございません。背景としては先ほど少し御紹介したように、前回、関節軟骨再生に関する評価指標を作っており、それを拡充して今回、細かい試験方法や臨床試験の部分をかなり書き足し、資料1-2を作っております。そういうことである程度、前回の評価指標を生かしながらやってきたというのが一つあります。

 一方で資料1-3のiPS由来軟骨を対象としたものについては、前回の平成22年の通知の段階では、まだ時期尚早ということで対象にしていなかったのですが、最近は技術開発が進み、治験臨床研究が近づいてきたので、今回新たに作成しました。その際にiPS細胞由来としては、常に網膜色素上皮細胞を対象に評価指標を作っておりましたので、そちらの構成にかなり合わせる形で作成したのです。そういった形で、元にしたものが違っていたために構成が違ってきています。

 専門家の会議でも、合わせるかどうかは議論になったのです。しかし一方で、iPS細胞由来同士で見ていったほうが分かりやすい部分もあります。今回出した資料では見比べにくいのですが、こういった構成になっております。中身については、iPS細胞由来のほうが細胞のバンク化や造腫瘍性の評価など、変わってきているところもあるというのと、一方で軟骨製品として共通のところについては、構成はちょっと違いますが、内容が合っていることは確認しながら進めておりますので、そういうことで御理解いただければと思います。

○川西部会長 これを細かいところまできちんとフィックスしていくのは、もう少し先の話なので、いろいろな形があってもいいかと思うのですが、こちらは頭が古いもので、順序立てて並んでいないと気持ち悪かったので、コメントさせていただいたまでです。ほかに何かありますか。

○荒川委員 関節軟骨ですから、当然長期的な使用が一番興味のあるところだと思うのです。その辺の評価指標は議論されたのですか。

○事務局 臨床試験ではなくて、その後の使用についての議論ですか。

○荒川委員 臨床評価としての期間と、その後の長期のフォローの両方だろうと思います。

○事務局 長期のフォローについて、そこまでの議論はなかったというように記憶しております。

○荒川委員 実際に実用化する上で、もう既に1品は承認されているという位置付けではあるのですが、やはりどのくらいの期間かというのと評価指標が、相互の関係にあるかと思うのです。実際に試験を組む段階では、そこが必要になってきますし、それに向かっての非臨床試験も必要になってくるだろうと思いますので、もう少し具体性があるといいかと思いました。

○事務局 個別の製品の対面助言などにおいて、よく相談していこうと思います。どうもありがとうございました。

○楠岡委員 本質的なところではないのですが、先ほどの部会長の指摘に関連するところです。細胞の起源に相当する部分、この場合だと軟骨細胞若しくは体性幹細胞の部分、あるいはiPS由来という部分と、今度は使用目的による部分、すなわち関節軟骨とか、今後またほかの所も出てくると思うのですが、その辺りを2階建てのような構想で作るほうが、ある意味共通項がどんどん使えます。そこが今回のように乖離していると、ほかでも同じようなことが起こってしまうと思うのです。今後は細胞由来の部分とヒトでの使用目的の部分という2階建てみたいなものにしておけば、かなり共通化できるところもあると思うので、その辺もまた御検討いただければと思います。

○事務局 今回の評価指標については御指摘いただいたとおり、同じことをそれぞれのパートに書いているということで、若干分かりにくい部分がありつつ、一方で製品開発者から見れば、一つの製品しかお持ちでないので、該当する所が見つけやすいという部分もあります。ですから、それぞれ良い点悪い点があると思いますが、御指摘を踏まえ、もう少し分かりやすいものとするように、今後進めていきたいと思います。

○川西部会長 その辺は今出たコメント等を参考にしていただいて、また次のものを作るときに、だんだん一つの形式というのを作っていっていただければと思います。ほかにありますか。

○中島委員 細胞を培養するときに酵素分圧で、かなり性質が違ってくると思うのです。その辺はどのように考えられているのか、コメントをお願いしたいのですが。

○事務局 もう一度すみません。細胞を培養するときに。

○中島委員 細胞の酸素分圧によって、かなり細胞形質が違ってくるのですが、その辺のコメントや考え方は、今回の評価指標には反映されないものなのでしょうか。

○機構 その辺の個別具体的な技術的な部分についてまでは、今回のガイドラインに含められてはおりません。もちろん、そういったものが製造の中の特徴とされる開発者がいらっしゃれば、そこについてまた一つずつ説明が加わっていくという形になろうかと思います。

○川西部会長 ほかに何かありますか。これは報告事項ですので、特に決を採ることはしませんが、一応報告いただいた事項については御確認いただいたことにさせていただきます。いろいろ出たコメントを次のアップデートなり、次のものを作るときの参考にして、より分かりやすくて良いものにしていただければと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございます。

 それでは、これ以降の議題は非公開とさせていただきますので、傍聴の方は御退席いただくようにお願いします。

                                    ( 傍聴者退室)

○川西部会長 まず、事務局から非公開案件の配布資料の確認と、競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をいたします。非公開案件の配布資料として、資料2から資料4をあらかじめお送りしております。このほか、当日配布資料として、資料5、資料6、参考資料1と2、当日配布資料を配布しております。資料に不足等ありましたら、事務局までお申し付けください。

 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告いたします。資料5を御覧ください。議題2、議題3ともにWASP LVに関する審議で、議題2ではカルタヘナ法に基づく第一種使用規程について、議題3では第二種使用等の拡散防止措置について御審議をお願いしたいと考えております。本申請品目については、患者自身から採取したCD34陽性細胞に遺伝子組換えを行ったもので、競合品目はなしとしております。

 続きまして、各委員からの申し出状況について報告いたします。議題2、議題3ともに、御退席いただく必要のある委員や議決に御参加いただけない委員はおられません。なお、本日の審議事項の申請品目については、あらかじめ寄附金等の状況を申請者に確認いたしましたことを申し添えます。以上です。

○川西部会長 議題に入りたいと思います。非公開案件、審議事項の議題2に当たるものですが、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第4条に基づく遺伝子組換え生物等の第一種使用規程の承認についてです。まず、機構から説明をお願いします。

○機構 機構より説明いたします。本審議品目は、○○○○○○○○○○○○○○を欠失し、ヒトWiskott-Aldrich症候群タンパク質(以下、「WASP」)○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○に発現し、水疱性口内炎ウイルス由来Gタンパク質をエンベロープに持つ非増殖型の遺伝子組換えヒト免疫不全ウイルス1型(以下、「WASP LV」)です。WASP LV(以降、「本組換えウイルス」)を用いた治験を実施するに当たり、国立研究開発法人国立成育医療研究センターより第一種使用規程承認申請がされております。

 当該治験は、WASP遺伝子に変異を持つWAS患者の遺伝子治療として計画されており、本組換えウイルスによって患者由来のCD34陽性造血幹細胞にWASP cDNAを導入し、当該細胞を患者に静脈内投与することで、WASPの機能を回復させようとするものです。

 資料2です。諮問書、次に機構が作成した事前審査結果通知書、第一種使用規程承認申請書、生物多様性影響評価書、別紙の順につづられております。配布資料6には、本品目の専門協議において指名した4名の委員を掲載しております。

 次に、品目の概要を説明いたします。資料2に戻って、生物多様性影響評価書の1ページにあるように、本遺伝子組換え生物の宿主は、ヒト免疫不全ウイルス1型(以下、「HIV-1」)です。生物多様性影響評価書の28ページの図4、本遺伝子組換え生物のゲノムの構造です。遺伝子組換え生物である本組換えウイルスは、○○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○、○○○、○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○、W○○○○○○○○○が挿入されております。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○が欠失している、いわゆるself inactivation(SIN)型の構造であるため、ウイルス由来の転写活性は排除されております。また、水疱性口内炎ウイルス由来のGタンパク質をエンベロープに持っております。

 このような構造を持つ本組換えウイルスを造血幹細胞に感染させることにより、血液系細胞でWASPを長期間発現させることが可能となっております。本組換えウイルスを用いた臨床試験は、WAS患者に対する造血幹細胞、遺伝子治療の第I、第II相臨床試験として、既に海外において2010年4月から実施されております。イタリアで実施された3名の患者の経過報告では、通常の造血幹細胞移植に認められる有害事象は生じたものの、いずれの患者も回復しており、それ以外の問題は生じておりません。

 以上が品目の概要ですが、今回、本邦で治験を行うに当たり、申請された第一種使用規程が適切であるかについて、申請書に添付された生物多様性影響評価書等の資料に基づいて御審議していただきます。

 続きまして、本組換えウイルスの第一種使用規程、生物多様性影響評価書及び機構における審査での論点等について説明いたします。まず、本申請の経緯ですが、水疱性口内炎ウイルス由来のGタンパク質をエンベロープに持つウイルスは、細胞表面に付着しやすい性質を持つこと、更に本組換えウイルスを用いてWASP遺伝子を導入した後の細胞培養期間が非常に短いことから、患者に遺伝子導入細胞を投与する際、その細胞表面に感染性を有する本組換えウイルスがまだ残存している可能性が残るため、第一種使用等の承認が必要であると判断され、申請がなされております。

 本組換えウイルスの第一種使用規程について、簡単に説明いたします。資料2、第一種使用規程承認申請書です。1ページの中段から使用等の方法が記載されており、このような方法で使用することでよいかというのが申請の内容です。そこで、申請された使用方法に従う限り、生物多様性に影響が生じないと考えてよいかについて御審議いただくわけですが、使用等の方法については、一つ目として外部機関において本組換えウイルスを感染させた本組換えウイルス感染細胞は、遺伝子組換え生物等である旨を表示したバッグに密封された状態で運搬され、治療施設内の適切に管理された保管庫等で保存されますが、具体的な保管条件については、治験実施計画書等で規定される内容です。保管される際は、使用等の方法の記載のとおり、バイアルに遺伝子組換え生物等である旨を表示した状態で保管されるため、不用意に持ち出されたりすることはありません。

 2つ目として、患者への投与は治療施設内の個室にて、患者に留置してある中心静脈カテーテルに本組換えウイルス感染細胞が入ったバッグを密封経路で接続した後、本組換えウイルス感染細胞が注入されます。患者等の管理は、ウイルス種、投与方法、投与部位、これまでに得られている臨床試験成績に基づいて規定されていますが、当該使用に従う限り、第三者を含む生物多様性に影響が生じる可能性は低いと考えています。

 感染性廃棄物等の処理としては、本組換えウイルス感染細胞に直接接触した注射針、バッグ、カテーテル等の器具類及び患者血液の付着した器材等は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、治療施設で定められている医療廃棄物の管理に係る規程(以下、「医療廃棄物管理規程」)に従って廃棄されることが定められております。すなわち、本組換えウイルスを投与された患者からの体液等は、医療廃棄物管理規程で規定される感染性廃棄物と同等の処理がなされることによって、第三者への感染を防止し、拡散防止されるものと考えています。

 4つ目として、試験のために患者から採取した検体は、治療施設の規定に従って取り扱い、医療廃棄物管理規程に従って廃棄されます。また、外部機関に検体等を用いた試験を委託する場合は、感染性試験等により本組換えウイルスの感染活性が検出限界以下であることを確認してから外部に持ち出すことが記載されております。

 次に、本組換えウイルスの生物多様性影響評価について説明いたします。資料2、冒頭の諮問書の次の事前審査結果通知書の4ページです。II.事前審査の概略です。生物多様性影響評価は、4つの観点からまとめられています。()の他の微生物を減少させる性質と()の病原性についてですが、本組換えウイルスは微生物には感染しないもののヒト、サル、イヌ、ネコ等の広範な動物種の細胞には感染します。一方、本組換えウイルスは非増殖性であり、HIV-1の病原性に関与する遺伝子は除去されていることから、病原性を持つ可能性は低いと考えます。また、本組換えウイルスからの発現産物であるヒトWASPは、ヒト血液細胞に発現する内在性のタンパク質であるため、このタンパク質が発現することで病原性が現れる可能性は低いと考えます。加えて、海外の臨床試験においても、本組換えウイルスによる挿入変異に起因するがん化の報告を含め、本組換えウイルスの感染細胞が病原性を有することを示唆する報告はこれまでありません。

()の有害物質の産生性については、本組換えウイルスにより感染細胞内でWASPが新たに産生されますが、ほかに新たな有害物質が産生されることはありません。

()の核酸を水平伝達する性質については、第一種使用規程に従った使用を行う限り、本組換えウイルスが治療施設外に放出される可能性は極めて低く、例え放出されたとしても、その量はごく微量であると考えられる点、本組換えウイルス感染細胞の表面に本組換えウイルスが残存しても、39ページの図16で示されているように、本組換えウイルスはヒト血清中において感染能を失うことが示されており、感染性を有する本組換えウイルスが患者から排出される可能性は極めて低いと考えられる点から、本組換えウイルスが水平伝達する可能性は極めて低いと考えられます。

 以上より、事前審査の結果としては、申請された第一種使用規程に従う限り、いずれの観点でも大きな問題はないものと考えております。本組換えウイルスの第一種使用規程承認申請書及び生物多様性影響評価書について、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○川西部会長 第一種使用規程の承認に関して、委員の先生方から御質問、あるいはコメントはありますでしょうか。

○俣野委員 今、最後に説明していただいた事前審査の概略の所なのですが、ここに書いてあることは、それぞれごもっともだと思うのです。一応、生物多様性の影響という観点からいくと、()の病原性の所に書いてあるようなことで、病原性はなくともこういうものが感染し得るという形になった場合に、そういう単体とWASPの遺伝子が発現したような細胞を有する動物が、環境上に優勢になっていく可能性はないということを書いておく必要はないのですか。要するに生物多様性の影響という観点から、基本的にはそういうことはないということを言っておく必要があるのではないかと思うのですが。

○川西部会長 いかがでしょうか。

○機構 結論的に書いてある部分と、それから実際この評価書の中でWASP LVが増殖能を欠いているので、通常の細胞に感染しても、ウイルス粒子を産生することはないという記載がありますので、総合的には。

○俣野委員 ウイルス粒子を産生することはないとか、水平感染することはないということはそれでいいと思うのですが、可能性的にはないと思うのですが、分かりやすく言うと生殖細胞に感染した場合に、その生殖細胞由来の子孫とか、動物とかでも何でもいいのですが、環境中に優勢になることがないようにということが、もともとこの多様性に関する法律等の論点ですので、そういうことがないと。わざわざ第一種にして、こういうポイントをいろいろ書いてあるのであれば、そこまで書いておく必要はないのでしょうかということなのですが。

○機構 それはもう少し分かりやすくということでしょうか。

○俣野委員 いや、分かりやすくというか、生物の多様性に影響がないということ、それを書かないと書いていることにならないのではないかということなのです。

○機構 事前審査結果通知書の最後の所に、結論として1文は記載されているのですが、それだとやはり明確ではないという御指摘ということになるのでしょうか。

○俣野委員 いや、ですからこれはいいと思うのですが、ある意味では基になることのために、事前審査の概略という項目がわざわざ作ってあるわけですね。そこに肝心なことは書いておいたほうがいいのではないでしょうか。

○再生医療製品等審査部長 再生医療製品等審査部でございます。先生、御指摘ありがとうございます。従来から生物多様性の影響評価の部分では、水平伝達とか水平感染等を含めて感染性があるか、そしてまた、それが環境中に影響があるかという観点から評価書を書かせていただいており、一歩踏み込んだ形で生殖細胞とかその次の世代に関する部分の評価については、従前からはそこまでの評価を求めておりませんので、感染をしないということであれば、基本的には生物多様性の影響が生じる恐れはないという従来の考え方に沿って、こちらの方で評価をさせていただいております。したがって、そういう観点も評価の上で必要ということであれば、今後の評価の課題として検討させていただこうと思っております。

○川西部会長 ということですが、いかがですか。

○俣野委員 申し訳ないです。例えば事前審査の概略の()の病原性の所に、サル、イヌ等、広範な動物種類の細胞に感染すると、こういうことが現実に起こることもすごく少ないと思うのですが、わざわざ書いているのであれば、こういう細胞に感染しても影響がないということは書いておく必要があるのではないかと申し上げているわけです。これが書いてあって、ここの書き方は病原性がなければいいという書き方ですね。でも、病原性がなければいいというだけではないので、わざわざサル、イヌ等、感染していると書いてあるのであれば、ここに書いてあるのだったら、それで病原性の問題はないと書いてあるだけですが、わざわざこれを書いてしまっていたら、それでも大丈夫だと書いておかないとまずいのではないでしょうか。

○再生医療製品等審査部長 先生の問題意識はよく分かりました。要するに、1文目の所で、「ヒト、サル、イヌ、ネコ等の広範な動物種の細胞に感染する」というように書いていながら、多様性に影響を生ずる恐れはないというつながりの部分だと思いますが、基本的に第一種使用は開放系での使用になりますが、限定的な開放系での使用ということで、今回申請書に書いてあるような様々な条件の下で使用すると。それが正に第一種使用規程に従った使用ということですので、そこの使用規程に従った形で使う限りにおいて、そこで他の動物種の細胞に感染する恐れはないわけです。そういう観点から見て、生物多様性に影響が生じる恐れはないとした申請者の結論は妥当という評価をしているということですので、ウイルスの特性という部分と、実際の使用規程に沿って使用した場合の評価、影響という部分を少し分けて考えていく必要があるのではないかと思っておりますけれども。

○川西部会長 今の俣野先生からの御指摘については、結局、旧来からは、生殖細胞等々を通じた次世代みたいな、そういう類の議論は余り視点には入っていなかったというわけで、そういう可能性が否定されるわけではない。ただ、今回の場合は、こういうものに感染する恐れもないから、多分そういう部分も否定されるということで、今回はこれはこれでいいのではないかという結論ですが、新しい観点としていろいろな可能性を考えるときには、御指摘いただいたような視点も、これからいつも頭に留めておきながら評価しなければならないのではないかということ。そういうことを今日の議事の中に留めておくということで、よろしいですか。この中に何か反映させたほうがいいということですか。

○俣野委員 私は反映させたほうがいいと思いますが、今、部会長のおっしゃるような対応でも了解はします。十分伝わっていないのかもしれないのですが、今おっしゃられたように、第一種使用規程に従った使用を行う限りと、例えば()の病原性の所にも、()の有害物質の産生性の所にも書いてあるわけですね。要するに行う限り、病原性に起因するもの、有害物質に起因するもの、水平伝達に起因するもの、こういうものの危険性はないとわざわざ書くのであれば、当然その基になる、そういう規定をする限り、これは一歩手前ですね。感染したもの自体が優位になって、多様性に影響する恐れはないということを、本来は書いておくべきではないかというのが私の視点ですので、病原性とか有害物質がよければいいのではないかという観点ではないと思いますので、今後、御検討いただければと思います。

○再生医療製品等審査部長 先生の御指摘はよく分かりました。これはいろいろなウイルスとか、物の性質による部分もかなりあると思いますが、そういう視点も視野に入れつつ、個別の品目に応じて検討させていただければと思います。貴重な御指摘を頂きまして、どうもありがとうございました。

○川西部会長 今、このまとめ方としては、()他の微生物を減少させる性質、()病原性、()有害物質の産生性、()拡散を水平伝達する性質というまとめ方の中で、生物多様性影響はないという結論にしていますが、そういう今、御指摘頂いたような視点も加味しながら、これからは見ていこうということだということにさせていただいて、今回の報告の形はこれでとりあえず了解ということでよろしいですか。

○再生医療製品等審査部長 個別の製品の特性に応じて検討させていただくということで、よろしくお願いいたします。

○川西部会長 それ以外に何か御指摘はありますか。

○横田委員 ちょっとよく知らないので、参考までに聞かせておいてください。この形のタイプの遺伝子導入ベクターは実験的にはすごく使われていて、恐らく海外でも骨髄移植に使われていると思うのですが、日本ではWASP以外にも、骨髄移植として使われているのはたくさんあるのですか。これが初めてではないのですよね。

○機構 日本でWASに対して、これは初めてやったものです。

○横田委員 初めてですか。WASはもちろんそうですが、外側の殻の話です。レンチベクターの遺伝子治療はたくさんありますか。

○機構 レンチを用いたものはほかにもあります。

○横田委員 同じ構造のレンチベクターを使うときに、中身が変わるごとにこの膨大なプロセスが必要になるのですか。

○機構 基本的には品目が変わりましたら必要になるかと存じます。

○川西部会長 それ以外に何か御指摘、御質問はありますか。これは審議事項ですので、議決に入りたいと思います。本議題について、先ほど俣野先生からの御指摘の部分は、これからの問題としてあるとして、一応、第一種使用規程の承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 次に、審議事項の2つ目、議題3です。遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止措置の確認についてです。これも機構から御説明をお願いします。

○機構 説明いたします。本審議品目名は、先ほど御審議いただきました品目となりますが、本組換えウイルスを感染させたヒトCD34陽性細胞を製造するために、タカラバイオ株式会社から出された第二種使用確認申請です。資料3を御覧ください。冒頭に諮問書、次に機構が作成した事前審査結果通知書、続いて灰色のタブ以降が申請書になっております。

 品目の概要ですが、本組換えウイルスは、先ほど御審議いただきました品目ですので、その主な特徴については省略いたします。本組換えウイルスを感染させたヒトCD34陽性細胞の製造工程において使用される器具や、ウイルスを含有する可能性のある廃液については、高圧蒸気滅菌等により不活化処理が施されることから、不活化されていない本組換えウイルスがあらかじめ定められた作業区域から拡散することはないと考えております。

 機構における事前審査においては、本組換えウイルスについては遺伝子治療用製品又は遺伝子治療用製品の製造のために用いられる非増殖性ウイルスであり、感染性はあるが病原性を示す可能性は低いと考えられることから、カテゴリー1に属すると判断しております。また、専門委員等協議においても、機構の判断に対して支持を頂いております。したがって、機構は申請者より示された拡散防止措置はカテゴリー1に属する本組換えウイルスの第二種使用等に当たり、適切であると判断しております。本組換えウイルスを第二種使用とする際の拡散防止について、御審議のほどどうぞよろしくお願いいたします。

○川西部会長 ただいまの御説明、この書類を含めて御質問、御意見がありましたら委員の先生方、よろしくお願いします。製造施設での使用ということですが、特にありませんかね。第二種ということですが、特に御指摘等々ないようでしたら、議決に入りたいと思います。本議題について、拡散防止措置は確認されたものとしてよろしいでしょうか。

 特に御異議がないようですので、本品目の拡散防止措置は確認されたものとして、薬事分科会に報告させていただきます。ありがとうございます。

 それでは、報告事項に移ります。報告事項は議題4に当たる所で、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等の拡散防止措置の確認を行った品目についてです。まず、議題4、機構から説明をお願いします。

○機構 報告事項、議題4、資料No.4を御覧ください。遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律第13条に基づく遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする間に執るべき拡散防止措置の確認を行った品目について説明いたします。本年3月に行われた前回の再生医療等製品・生物由来技術部会での御報告以降、本年5月までに厚生労働大臣の第二種使用等の確認を行ったものを、裏面の表にまとめてあります。全部で6件あって、申請者の変更が1件、新規申請が1件、作業区域の追加が2件、作業場所の変更が2件です。使用区分はGILSP及びGILSP相当が4件、カテゴリー1が2件ありますが、このカテゴリー1については既に本部会において御審議いただいた品目です。今回は作業区域の追加ということで申請されてきております。機構において、専門委員と協議したところ、いずれの遺伝子組換え生物についても執られる拡散防止措置は適切であったと判断したものです。資料4については以上です。

○川西部会長 報告事項ではありますが、委員の先生方から何か質問あるいはコメントはありますでしょうか。

 特にないようですので、報告いただいた事項については御確認いただいたものとしたいと思います。ありがとうございます。

 本日の議題としては以上ですが、事務局の方から何か連絡事項はありますか。

○事務局 審査管理課です。カルタヘナ法に関連する違反事案がありまして、本日付けで公表しておりますので、こちらの部会にも御報告させていただきたいと思います。当日配布資料のPress Releaseです。表題として、「遺伝子組換え生物の不適切な使用について」ということで、厚生労働省としては本日、株式会社バイファに対して遺伝子組換え生物の不適切な使用について、文書による厳重注意を行いましたのでお知らせしますということです。内容としては、厚生労働省は今年2月4日に株式会社バイファから遺伝子組換え微生物、具体的にはピキア酵母の不活化処理が不十分な廃液を定められた作業区域の外に漏出させたとの報告を受け、排水の即時停止、事実関係及び当該組換え体の生物多様性への影響評価等の報告を指示しました。また、同年3月3日及び4日に職員を派遣し、現地の調査を実施、事実関係を確認、今年6月9日、同社から本件についての報告の提出を受けました。

 その報告書の概要ですが、一つ目として、平成25年8月、当該組換え体が定められた管理区域外で検出されたことを確認しましたが、法律に抵触していないとの判断をし、厚生労働省に直ちに報告をしなかった。二つ目として、当該組換え体はヒトに対する危険性はなく、環境に及ぼす影響もない。三つ目として、当該組換え体の大部分は排水処理工程を経て不活化され、残りの微量の当該組換え体についても事業所敷地内の漏出経路でサンプリング調査を行い、いずれも当該組換え体が検出されなかったこと、また、特殊な培養条件以外では限られた増殖能しか持たないことも併せると、生物多様性への影響はないと確認をした。最後ですが、今後、不活化処理の適正化にかかる検討の継続及び管理体制の強化等を実施すると、このような報告を受けております。

 厚生労働省として、このような報告を踏まえ、本日、同社に対して再発防止のための措置を徹底するよう厳重注意をいたしました。また、このような事態の再発防止のため、法令の理解及び遵守について、一層の周知を徹底してまいります。このようなPress Releaseをしております。2枚目以降、具体的な内容を記載しておりますので、適宜御覧ください。報告は以上です。

○川西部会長 ということですが、何か質問等々ありますか。私はちょっとがっかりさせられるような印象を持っているわけですが、正直またかという印象なのです。プロフェッショナル集団のはずなのですが、基本的なところが欠けてしまっているということが非常に残念に思うところですが、特にコメントはありませんか。これは一応、情報提供ということですので、ほかに事務局から何か連絡事項はありますか。

○事務局 事務局から連絡いたします。本日御審議いただきましたカルタヘナ法に関する議題ですが、前回3月30日の部会で説明いたしましたとおり、今後は報告事項として取り扱う予定です。来週、24日に開催される薬事分科会での御了承をもって、そのような取扱いが正式に決定するという流れになります。御承知のほどよろしくお願いいたします。また、次回の部会については、現在、日程調整をしており、決定したら改めて連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

○川西部会長 委員の先生方から何かありますか。ないようでしたら、本日はこれで終了させていただきます。今日は私の方が御迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした。御協力ありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から一部非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医療機器審査管理課再生医療等製品審査管理室 再生医療等製品審査管理室長 柳沼(内線4226)

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