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2016年11月14日 第6回 児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成28年11月14日(月)17:00~19:00


○場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省共用第6会議室


○出席者

吉田(恒)座長 金子構成員 上鹿渡構成員 久保構成員 久保野構成員
杉山構成員 床谷構成員 藤林構成員 峯本構成員 横田構成員
吉田(彩)構成員

○議題

(1)意見交換
(2)その他

○議事

○木村補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第6回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は岩崎構成員、林構成員、森口構成員、山田構成員、山本構成員から御欠席の御連絡をいただいております。また、金子構成員からは、遅れての参加になる旨の御連絡をいただいております。

 まず資料の確認をさせていただきます。

 配付資料は右上に番号を付しておりますが、資料1、資料2、資料3に加えまして、机上配付資料ということで1枚、資料を配付させていただいておりますので、御確認いただければと思います。

 資料の欠落等がございましたら事務局までお申しつけください。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。

 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 皆さん、こんにちは。それでは、早速議事に入っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日の議事についてでありますが、配付いたしました議事次第にもありますように、本日も構成員の皆様方から御意見をいただき、意見交換をしたいと思っております。

 まず特別養子縁組に関する調査の状況につきまして、事務局から御報告をいただきたいと思います。その後、司法関与について前回に引き続き、意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、特別養子縁組に関する調査について、事務局からの状況報告をお願いします。

○林補佐 家庭福祉課の林でございます。

 特別養子縁組制度に関する調査につきましては、前回の検討会で調査票を説明しまして、本日の検討会で調査結果をお示しする予定としておりました。期限内に多くの自治体や民間団体から御提出いただき、集計作業に鋭意取り組んでまいりましたが、検討会に御提示させていただくまでに至りませんでしたので、誠に申し訳ございませんが、本日の御提示は見送らせていただきたいと思います。

○吉田(恒)座長 わかりました。

 それでは、今後の調査結果の報告を待ちたいと思います。よろしくお願いします。

 続きまして、司法関与のあり方に関しまして意見交換を行いたいと思います。まず事務から資料の御説明をお願いします。

○木村補佐 虐待防止対策推進室の木村でございます。司法関与の関係の資料について、お手元の資料1、資料2、あと1枚の机上配付資料をもとに御説明させていただきます。

 まず資料1につきましては、毎回検討会の際に御提出させていただいている資料ですけれども、前回、第5回の検討会での御議論を踏まえまして、主な御意見を追記させていただいたものになります。

 資料2につきましては、各項目ごとに目指す方向性の案、論点、留意点、課題を記載した資料を提出させていただいておりまして、こちらの資料は前回の資料と同様のものでございます。

 続きまして、机上に1枚資料を配付させていただいております。こちらの資料につきましては、これまでの議論を踏まえまして特に論点ごとに御議論いただきたい事項を記載させていただいたものでございまして、本日はこちらに記載のある事項を中心に、ぜひ御議論いただきたいというものでございます。

 まず1つ目、裁判所命令についてでございます。これまでの議論を踏まえまして、裁判所命令が必要とされる具体的な場面がどのようなものか。とりわけ在宅ケースでどういった場合に裁判所命令が有効であるのかということ。また、具体的にどのような命令を求められているのかということを、ぜひ御議論いただきたいと考えております。

 また、裁判所からの命令ということを観念するとすれば、司法が関与すべき理由、根拠はどういったものなのかということを御議論いただきたいと思っております。その際、例えば家庭裁判所というのは親権の監督的立場にあるということでございますので、指導並びに命令の中身が親権行使の態様への介入に相当するようなものであるということが必要ということも、1つ考えられるのではないかということで記載させていただいております。

 2つ目の2のところでございますけれども、司法の中立性ということもこれまで何度か検討会の中で御議論されているかと思いますが、一方で家庭裁判所の後見的役割という観点から、この命令についてどのように考えていくべきかと記載させていただいております。その際、前回の検討会でも御議論がありましたが、ブレーキ役である司法が行政の活動を後押しする機能、アクセル役を持つという御指摘についても議論を深めていただければと思います。

 続いて一時保護について、1のところですけれども、一時保護については現行でも行政訴訟の道がある中で、それとは別に家庭裁判所による司法審査を要するということであれば、その理由、根拠はどういったものかということを引き続き御議論いただきたいと思っております。これまでの検討会で出た意見を踏まえますと、一時保護は親権の強い制限であるということ、虐待を理由とする一時保護が増加しており、親権者等の意に反する場合が増えているということ、また、一時保護については、一時保護が解除されれば訴えの利益がなくなってしまうという御指摘もあったかと思いますので、そういった観点から事後の行政訴訟による救済だけでは十分ではないということが考えられるのではないかと記載させていただいております。

 2のところでございますけれども、仮に司法の関与を強化するとした場合に、審査の範囲や対象をどのように考えるかという点について御議論いただきたいと思っております。その際、これまでの議論を踏まえますと、仮に例えば一時保護の開始時に事前審査を導入するといった場合であっても、緊急時の対応が求められていると思いますので、緊急時の行政による職権保護といったものも必要なのではないかと記載させていただいております。

 3のところですけれども、児童相談所や家庭裁判所の体制整備との関係についてどのように考えるかというふうに記載させていただいておりまして、具体的には、例えば段階的に司法審査を導入することも考えられるのではないかという観点で御議論いただければと思います。

 3つ目の面会通信制限・接近禁止命令につきましては、現行、行政の制限、命令となっているところについて、裁判所を命令の主体とすることについて引き続き御議論いただければと思います。また、対象範囲を拡大することについてどのように考えるかということで、接近禁止命令については一時保護や同意入所の場合にも拡大すべきかどうか。また、虐待を行った保護者と子どもが別居し、親族宅等で生活しているような場合にも広げるべきかどうか。これは面会通信制限も接近禁止命令も両方でありますけれども、そういった点について御議論いただきたいと思っております。

 私からの説明は以上になります。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ただいま事務局から説明がありましたように、特に議論を深めていただきたい点を中心にして意見交換を行っていただきたいと思います。

 本日配付の資料1でこれまでの議論が、そして資料2では目指す方向性、論点、留意点や課題が整理されておりまして、さらにそれが今日の机上配付の1枚紙に裁判所命令、一時保護、面会通信制限・接近禁止命令というので整理されております。方向性に関してはまず最初大きく書いてありますけれども、その下の論点等をめぐって御意見をいただきたいと思っております。

 なお、お手元の資料3にありますように、構成員の先生方から資料の提出をいただいておりますので、資料を提出されている先生におかれましては、関係する論点について御発言の際に適宜資料についても言及していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず裁判所命令について御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 では藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 私と久保構成員とで共同で意見をまとめてきましたので、説明したいと思います。

 今回で6回目を迎えるわけで、この検討会は一体何がベースになって、何を目指す検討会なのかというところを最初に確認したいと思うのです。1ページのところに書いておりますように、児童相談所が対応できていないまま家庭に戻して、非常に残念な事件が起きているということがベースにあったのでないかと思います。現状の児童相談所や市町村だけでは十分できていないところに、司法がどのような関与をすれば、子どもに不幸なことが起こらないのか、というところが出発点にあったと思います。

 子どもの権利が守られていない現状というのは何なのかというところで、これも1回目から私から説明してまいりました。長期入所児童の存在であるとか、または家庭復帰後の虐待再発率であるとか、またはアンケート調査の中でも明らかになりました28条申立て後も家庭復帰できない現状、そういった数々の問題があるわけなのですけれども、9月に公表されました死亡事例の検証結果、第12次報告というものがございます。ここをじっくり読んでみますと12次報告におきまして過去3年間、一時保護または施設入所解除後に虐待死亡に至っている14例がまとめられているわけなのですけれども、そのうち9例は児童相談所の指導または支援があったにもかかわらず、死亡に至っているという事実があり、児童相談所による指導措置の限界の一番最悪なケースとして挙げられるのではないかと思っております。

 2ページ目に、指導措置が効果的でない場合の問題の所在はどこにあるのかということを書いておりますけれども、調査の中にもありましたように、児童相談所の指導が有効でないと答えた回答の中で、罰則や強制力がないということを挙げている回答が見られておりました。また、私も市区町村から児童福祉法27条1項2号措置が効果がないという声も多く聞いておりました。

 モチベーションを持たない保護者に養育態度を改善させ、また、養育環境を改善する努力を行わせるためには、一定の強制力が必要であると思っております。アメリカのある報告によりますと、一定の強制力のもとでカウンセリングや治療を継続的に受ける中で、内発的なモチベーションが生まれるといったエビデンスがあります。反対に言いますと、そのような強制力がない中での指導というのは、内発的なモチベーションが生まれるはずもなく、表面的な受け入れに終始し、結果、家庭復帰となって再虐待または虐待死亡が発生しているのではないかと思っています。

 このような児童相談所の指導措置が効果的でない場合、どのように司法が関与していったらいいのか。後半について久保構成員から説明いたします。

○吉田(恒)座長 では久保先生、お願いします。

○久保構成員 それでは、ペーパーに従って、事例を言ったほうが具体的にイメージしていただけるかなと思いまして書いています。4の事例のところです。

 (1)の保護者の方が精神的に不安定といった養育環境。一番いい養育環境ではないかもしれませんが、かといって子どもさんの生命、身体の安全が害されるから、直ちに一時保護をしなければならないという状況とも言えないような事例になります。このような場合に、場合によっては一時保護をして、病院でも通院したらというふうに児童相談所が指導すればいいと考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、結局それは一時保護をして子どもさんを人質のようにして、あなたこうしなさいということを命令するに等しいと思いますので、それはいかがなものかと思いますし、この事例で言いましたら、保護者の方に病院でも通院していただいて、精神的な安定を図るようにしていただければ、特に子どもさんを一時保護するまではないと考えております。こういった場合にはいわゆる受診命令等を発することが有効かなと思うのですが、そういった受診をしなさいという命令を児童相談所だけの判断でやっていいのか。手続保障を図りながら裁判所が関与してそういった命令を出すのがよろしいのではなかろうかと思っております。

 次の子どもさんを学校に登校させないというものです。こちらにつきましては例えば学校教育法で督促をしまして、それでも学校に通わせないということになれば制裁があるとなっておりますので、それで十分ではないかと考えられなくもありませんが、基本的にはそれでは足りない。なぜなら、まず制裁に行くまで、それまでの督促すら今、教育委員会がなかなかちゅうちょしてやらないという現状がございます。そうしますと児童相談所のほうで学校に行かせてくださいということで指導するのですが、ここにもありますように、子どもが学校で体罰を受けたとかいうことで、子ども自身が不登校なんだと言われる保護者の方も結構いらっしゃいます。それで学校に行かせなくてもいいんだと。行かせるとしてもフリースクールとか、そういったところでいいのではないかということで反論されるのですが、なかなか行動が伴わないところがございます。

 こういった場合に、学校に行かせなさいという命令をするのが有効ではなかろうかと思うのですけれども、児童相談所が言うのは学校に行かせてください。それはもちろん普段関与しているときから言うわけですが、それではなかなか強制力というものにはつながっていかないことになりますので、ここでも学校に行かせなさい。保護者の言い分もあるでしょうから、そこでも手続保障を図りながら裁判所も関与して、そういった命令、措置をしていくのが有効ではなかろうかと思います。

 (3)の身体的虐待を認めない保護者です。アのほうは全くなぜ子どもさんにそういう身体上の障害が生じたのかというのがわからないというような親御さんです。よくあるのはSBSshaken baby syndrome)の事例でよく見られるところなのですが、家庭が安全でないということで一時保護をする。28条審判に基づいて施設入所までさせるという例があるのですが、こちらから指導をしてもなかなか変わらない。自分たちはそういう虐待行為をしていないということで、なかなか指導に乗らない。例えば家庭の安全を図るために転居して親族との同居等を提案するのですけれども、そういった行動もされないということになりますと、お子さんはずっと家庭養育に戻ることなく自立まで、長ければ18歳まで施設入所をしてしまうような事例です。このような場合には、さらに親御さんに対する指導として裁判所が関与するという手続が有効ではなかろうかと思います。

 イは28条審判が出て施設入所をしている例ですが、保護者が体罰を容認している。子どもに問題行動があればたたきますということを言われる方。一度、28条の更新をするのですが、その間、一切応答しないという保護者です。2年ごとに更新の手続をとればいいではないかとなるかもしれませんが、その都度、子どもさんは家に帰されるのではなかろうかという心理的負担を受けるということで、実際にこれは親権喪失の申立てをいたしました。しかし、家庭裁判所のほうからは著しく不適当な親権行使が見当たらない、子どもの利益の著しい侵害が見当たらないという指摘を受けました。しかし、これは以前も申し上げましたが、親権を行使しない、いわゆる不作為というものも子どもの利益のために親権を行使すべき親権者としての義務違反とと言えると思いますので、親権喪失の要件を満たすのではなかろうかと考えております。

 先ほど言いましたように、2年ごとに子どもさんがそういう心理的負担を受けるということを考えても、そういった2年ごとの手続をとっていくのは、子どもさんの利益にとってどうなのかというふうに考えております。

 それから、(4)の通所しなくなる。これも裁判所が関与する保護者指導に有効かなと思っております。というのは、児童相談所から通所してくださいと指導をして、最初の1、2回は通所されたのですけれども、何も変わらないということで徐々にフェードアウトしていってしまう例です。特段、今、虐待をうかがわせるような情報もありませんし、今すぐ子どもさんを保護しなければならないというようなことでもないということでしたので、こちらから連絡をとるものの、相当期間通所はなく、途絶えてしまったという例です。ところが、1年ぐらい経過したころに子どもさんの顔などに傷、あざが認められたということで一時保護したのですけれども、子どもさんが話したことによると、実は以前、一時保護して帰ったとき以降も激しい叱責を受けたりとか、たたかれたりすることが続いていたんだということでした。このように、通所しないということもかなり子どもさんの利益を害する場合が多いかと思いますので、このような場合、ただ、通所しないというだけで一時保護するのはなかなか困難ということになります。こういう通所をしてほしいということについても、一定の手続保障を図りながら裁判所が関与して命令を出すということが有効ではなかろうかと思います。

 (5)保護者の養育能力が低い。特段、傷、あざが見られるようなお子さんではないのですけれども、養育能力が低くてかかわり方が希薄だという場合、将来的にはアタッチメント形成に問題を生じさせ、その後も徘徊や万引きをするというような例が結構見られます。このような場合、なかなか保護者の方には理解されず、養育環境も改善することがない。しかも一時保護をするというような緊急性もないということになりますと、このままお子さんはこのような環境のままいってしまう。そういった場合に早期に子どもさんの養育環境を改善するためにも裁判所が関与して命令を出して、養育環境の改善をしていただくのが有効ではなかろうかと思います。

 (6)養育方法が間違っていないと信じているということですけれども、よく出会います例として有名企業の職員、社員の方とか医師、大学教授の方など、保護者の知的レベルが高いということではあるのですけれども、高圧的に子どもさんに接したりとか、子どもさんに自分の思うとおり命令するとか、従わなければ叱責したりとか、時に子どもが問題行動を起こせばたたいたりするとか、子どもさんと十分なコミュニケーションが図られないでそのまま放置したりとか、そういった例が私が実際に会った例でございます。ただ、このような方々は指導というか助言をしても、児童相談所ごときが何を言うんだ、そんなことを言われなくても私たちでやれるから勝手な口を出すなということで、全く相手にされないという例も結構ございます。このように特段、子どもさんの安全が著しく害されているというわけでもありませんので、一時保護がなかなか難しい。と言いながら、ただ、こういった環境で子どもさんの健やかな成長、発達ができるのだろうかというような疑問があるような養育環境。こちらにはこういった方々ですので、きちんと手続保障なり双方の言い分を聞いて裁判所が判断する。その結果、指導・命令をするといったのが有効ではないだろうかと思っています。

 ちょっと長くなっていますけれども、よろしいですか。

○吉田(恒)座長 まずそこまでにしますか。今の藤林先生と久保先生のお話としては、裁判所命令が必要な具体的な場面というのが1つと、その背景について御説明をいただきました。まずここまでのところで御意見ございますでしょうか。横田先生、お願いします。

○横田構成員 最初に藤林構成員が御紹介された虐待死亡事例の件ですが、要するに一時保護、27条措置とか一時保護を解除した後に、在宅で指導がうまくいかなかったので死亡事例というお話でしたけれども、これはデータの評価として指導がうまくいかなかったからということは当然出てくるのかなと。むしろ、一時保護とか解除すべきでなかったものを解除してしまったことのほうが原因なのではないかと思えるのですけれども、そこがデータの評価としてどうなのかなと思いますが、どうなのでしょうか。

○藤林構成員 報告書の中には、児童相談所のアセスメントも課題して問題提起されておりますが、そもそもアセスメントする段階で保護者の態度変容がなされているという前提があるわけなのです。けれども、先ほど言いましたように強制力を持たない治療を行う、または我々の指導を行っても、実務の感覚でいくと体罰は使わないであるとか、児童相談所の言い分はわかった、というふうに表面的に語られる場合が非常に多いのです。本当に態度が変容しているのか変容していないのかというのは、なかなかわかりにくいというのが現状ではないかと思います。どんなにアセスメント力を高めたとしても、そこの真に態度変容が行われたのか行われていないのかというところで、アセスメントができないというのは現状にあるのではないかと思っています。

 そうすると、そもそも態度変容が行われる手続がなされていたのかどうか。そこが私としては問題点ではないかと思っているわけで、そのような手続の保障のもと、親がカウンセリングに通うということがなされていないというのが現状ではないかと思っています。

○吉田(恒)座長 横田先生、どうぞ。

○横田構成員 という御説明なのですけれども、要するにそういうことが予想できるのであれば、一時保護の解除などそもそも慎重であれという結論もあると思うのです。

○藤林構成員 そうです。ですから一時保護の解除にしても、施設措置の解除にしても、慎重なあまり、そこから解除しないというケースもたくさんあると思います。施設に shaken baby syndromeで措置したまま何年たっても家に帰れないという子どももたくさんいるというのが、これもエビデンスの1つとして、事実としてあると私は思っています。それでいいのか。親の態度が全然変わらないまま、それが十分アセスメントできないまま5年も10年も18年も施設入所している子どもの存在をどうするのかというのを、ぜひ司法関係者、法学関係者の方と一緒に考えていきたいというのが私の前半の意図です。

吉田(恒)座長 よろしいですか。ほかに質問ございますか。

 では大谷参事官、お願いします。

○大谷法務省民事局参事官 法務省でございます。今、久保先生から事例について御紹介がございましたけれども、こういう事例についてどのような命令をし、どのような効果を生もうというのかというところまで御説明いただいたほうがいいのかなと思うところです。

○吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 今の御意見は同感なのですけれども、その前提として、こういう事例で、どういう指導をしていて、それが強制力がないゆえにどのように働いていないのかというところを、今回具体的に事例を出していただいたので、非常に想像ができるので、これに即して、ちょっとお手数ですが、御説明いただければと思います。

○吉田(恒)座長 私も同じ疑問で、例えば具体的な事例で4ページの保護者の養育能力が低いというケースがございますね。こうした場合、今の児童相談所だとどういう指導をしているのかということを教えていただきたいということと、そして、この保護者に対して命令を発するとすると、どういう内容の命令というのが想定されるのか。その次のステップとしてどこに行くのかということを教えていただけると大変ありがたいと思います。よろしくお願いします。

○藤林構成員 では私のほうから。この事例というのは、個人が特定できないように複数のケースを加味しながら加工したものなのですけれども、例えば(5)の養育能力が低くてアタッチメント形成に問題が生じている場合は、これは保護者の方にペアレンティングの受講をしていただくとか、またはアタッチメント形成ができるようなカウンセリング技法があったりするわけなので、そういったところに親子で行ってもらうとか、を期待するわけなのです。

 ところが、なかなかそういうことを期待して指導したとしても行かないわけなので、そこでとまってしまう。かといって具体的に保護する要件がなかなかないために、この状態が長く続いていて、結局4歳、5歳となっていく。保育園に行ってくれる場合はまだいいわけなのですが、保育園に行かない家庭もあったりいたします。早ければ6歳、7歳ぐらいで万引きとか徘徊になっていきまして、では徘徊するまで我々は待っているのかというところがあって、それでは非常に遅いわけですから、やはり3歳ぐらいまでにアタッチメント形成を進めていきたいと考えると、何らかのカウンセリングなりペアレンティングに行くような指導を、児童相談所の指導では限界があるので司法関与が必要かなと思います。

 当然、この親と子どもとのアタッチメント形成の状態に対して専門の小児科医、精神科医からのアセスメント、また、それが子どもの生来的な、生物学的な要因ではなくて、親子関係、親の養育態度にあるといった判断が前提としてあってのものです。

○吉田(恒)座長 そうすると、裁判所の命令の内容としては、ペアレンティングのプログラムを受講しなさいというような中身になるのでしょうか。

○藤林構成員 そうですね。親子カウンセリングに行ってくださいということですね。

○吉田(恒)座長 これで受講しないとなると、次のステップはどういうことになるのですか。

○久保構成員 次のところでどういった命令を出すかというのを一応、記載をしておりますので。

○吉田(恒)座長 では、そちらのほうでお願いします。

 もう一つ、私のほうから藤林先生にお聞きしたいのですけれども、こういう強制力を持たせることによってカウンセリングや治療を継続的に受ける中で、保護者の内発的なモチベーションが生まれて改善されるというエビデンスや文献等がありましたら事務局のほうにお願いします。

○藤林構成員 そうですね。これも直前になって実際にそういう現場を体験した臨床心理士から聞いたものですから、それは準備したいと思います。

○吉田(恒)座長 この強制力というのは日本の例ですか?

○藤林構成員 いや、アメリカです。アメリカで裁判所が保護者に対して命令を行い、一定期間、8回か10回ぐらい命令期間というものがあって、大体8回から10回ぐらい命令通所を行う中で、その期間であれば内発的なモチベーションが湧いてくるというような論文があるというようなことでした。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 ほかによろしいでしょうか。なければ久保先生、お願いします。

○久保構成員 続きまして、次の5の保護者指導に裁判所の関与が必要な理由というところをかいつまんで御説明申し上げます。

 先ほど藤林構成員からもお話がありましたように、一定の強制力が必要だというところです。今も児童福祉法27条1項2号の指導措置、行政処分ということで強制力があると言えなくもない。それから、前回からお話が出ています児童虐待防止法11条2項、これも保護者に対して2号の指導を受けなければならないとされているので、義務化はされているという意味では強制力を有するのかなと思いますが、これは強制力といったところで、ただ、言ってみれば口頭で言っているだけで、実際のところこれに対して何ら従わない場合の手続というのは保障されていないというか、用意されていないところであります。

 そこで、制裁を科せばいいのではないかという御意見も出ているかと思うのですけれども、資金を有する裕福な方であれば、お金を払えば指導に従わなくていいのでしょうということになりますし、虐待事案では経済的に困窮している家庭も少なくないのですが、こういった家庭は制裁を科しても「払えません。」で終わりになってしまいます。また、制裁を科すことが本来の目的ではなくて、そこにありますように子どもの権利保障というものが目的でありますので、制裁を科したとしても本来の目的を達成することは難しいのかなと思います。

 以前もお話があったかもしれませんが、家事事件における履行命令に従わない者に対する過料とか、不出頭に対する過料、こういったものは用意されていますけれども、同じようにこれらも使われていないということであります。保護者指導にも過料があったからといって、それを実際にやるかというと、恐らくやらないのだろうなと思います。

 では、実際のところ一定の強制力を有する保護者指導というのはどういったものかということで(3)です。先ほどありましたどういった命令を出すのかというところですけれども、例えば不適切な養育環境を改善するために、先ほどの精神的に不安定な保護者には、そういった精神科等の受診を命じる。子どもを学校に行かせない保護者に対しては、もちろん学校に行かせてくださいという命令。それから、先ほど来、養育能力が低い保護者の方については、養育方法に関して相談機関の掲げた項目に沿って養育を行うことを命じたり、相談機関への通所、子ども養育に関するプログラムの受講を命じるということが考えられるのではなかろうかと思います。

 次に、この命令に対して保護者が従わないとか、養育環境が改善しないといった場合には、原則として今度の児童福祉法の改正で定められました、家庭における養育環境と同様の養育環境への移行が原則化されるとするのが有効ではなかろうかと思います。

 このようなことを原則にすれば、家庭養育が難しい場合には早期に子どもの権利保障、すなわち家庭における養育環境と同様の養育環境における健全育成が図られるのではないだろうか。また、保護者にとっても子どもが分離されてしまうということですので、強い動機づけになるのではなかろうかと思います。

 とりあえず、ここでよろしいでしょうか。

○吉田(恒)座長 実際のプログラムと、その後のステップについて御説明をいただきましたけれども、ここまでの点で、横田先生、お願いします。

○横田構成員 確認ですけれども、これは要するに現状では一時保護できないケースについてという話ですね。とすると、要するに現状で一時保護も27条1項3号措置もとらないという状況において指導という話ですね。そうすると、指導に従わないので、うまくいかないので裁判所命令という話ですね。これがうまくいけばいいのですけれども、逆にうまくいかないときに最後どうやって担保するかといったときに、今回の半年前の法改正の話をされましたけれども、要するに27条1項3号措置というふうに移行するというお話ですよね。これはにわかに信じられない提案だと思うのです。

 というのは、要するに子どもの状況から見た場合に、一時保護が必要でないから一時保護できないという状況であるにもかかわらず、そして、指導に従わなくても一時保護も27条3号措置もとれないにもかかわらず、それが裁判所命令が絡むとどうして一時保護ができたり、27条1項3号措置ができたりするのか。つまり、あくまでも子どもの状況を基準にして一時保護が必要なら保護すべきであるし、必要でないなら保護すべきでないはずなのに、裁判所命令が関わると変わる。それは子どもにとっては何ら状況が変わらないはずなのですけれども、要するに子どもにとって必要でない一時保護を正当化する裁判所命令になるのではないですか。どうでしょうか。

○吉田(恒)座長 いかがでしょうか。

○久保構成員 すみません、ちょっとよくわからなかったのですけれども。

○横田構成員 特に子どもが不登校だから裁判所命令で指導して、それで担保は一時保護ですね。子どもが学校で体罰を受けて学校に行けない、不登校、それで行かせなさいと命令して行かせないと子どもを一時保護するという話ですね。かなりひどいと思うのですけれども、どうでしょうか。

○吉田(恒)座長 久保先生、お願いします。

○久保構成員 いきなり一時保護ではなくて、保護者にも言い分があるでしょう。ここでも学校に行かせないというだけなのです。学校に行かせていただければ全然構わないわけです。そのときに保護者の言い分を聞いて、私たちの主張も聞いた上で裁判所が判断して、そこは学校に行かせるべきなのではないですかということを裁判所が命令する。それでもやらないということになれば、子どもさんを保護するしかないですねというステップを踏んでいくというだけの話なのですけれども、裁判所が絡まないと一時保護はできないというわけではなくて、子どもの権利保障も考えながら保護者の方の権利保障も図っていくというふうに考えているのです。

○吉田(恒)座長 横田先生、お願いします。

○横田構成員 だから、指導に従わない状況が子どもにとって望ましくないならば、その状況だけを見て、一時保護なり27条1項3号措置の必要性を考えればいいわけであって、そこに裁判所命令が絡むか絡まないかは関係がないはずなのです。要するに状況を見て、言うことを全然親御さんが聞いてくれないなということが重なってくると、これは一時保護が必要な状況かなという判断ができるならすればいいことであって、あくまでもそれに尽きるのではないでしょうか。

○久保構成員 先ほどから言っていますけれども、段階を踏むのはどうですかと言っているのです。いきなり言い分が合わない。こちらは学校に行かせろ。保護者の方はこれは子どもの不登校なんだと言っているときに、単純に言うことを聞かないのだったら子どもを一時保護しますという前に、裁判所がきちんと双方の話を聞いて指導した上で、その上でそれでもだめならばということで段階を踏むのはどうですかと言っているのですけれども。

○横田構成員 段階は踏むと言うのですけれども、段階を踏むというのはあくまでも親との関係ですね。その間、子どもとの状況については幾ら親との関係で裁判所命令が繰り返されようとも、それは子どもの状況にとっては関係ないわけです。もし逆にその状況が変わっていることが子どもにとって一時保護を正当化するのであれば、それはあくまでも子どもの状況を基準にして判断すべきであって、そこに裁判所命令が絡むかどうかは関係ないはずです。

○吉田(恒)座長 藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 法学の専門家ではないので、横田構成員の疑問に答えられるかどうかわからないのですけれども、ここの各事例に挙がっているケースというのは、この時点で子どもの立場に立っても不適切な養育環境にあり、この環境が長く続くことによって子どもの不利益というのはもっと顕在化していくと考えていいと思います。親子間のアタッチメント形成ができていないことが、子どもの将来のさまざまな成長発達に影響が働いてくるということについては、さまざまなエビデンスがあるわけです。この時点において我々は保護というか親子分離で、子どもがよりアタッチメント形成ができるような養育環境に置きたいと考えるわけですけれども、一発でここで保護するというわけではなくて、親御さんにも努力していただいて、在宅の場で親子関係がより良好なものになっていただきたいというのが我々の願いでもあるわけです。まずそういったチャンスを提供したい。それでもなおかつ一定期間、効果があらわれない。子どもの成長、発達にも効果があらわれない。ますます子どものダメージが深まっている。しかも臨界期があって、この年齢までに適切な養育環境に行かなければ、子どものダメージは後々5年、10年、15年後にも大きな影響がある。こういった場合に、そこで保護を判断していくというふうになっていくわけです。

 ですから、我々が恣意的に子どもの視点に立たずに、親がこうしているから、保護をする、裁判所関与を求めているということではなくて、我々が把握した段階で子どもの不利益な状態であると判断しているということを前提に議論していただきたいと思います。

○横田構成員 同じことの繰り返しなのですけれども、要するに確かに子どもにとって適切でない養育が行われている。しかし、それでも一時保護までは至らないという状況が議論の大前提のはずです。そうですよね。そして、今の指導でもいろいろなことをやって、27条1項2号の措置で指導でやるのだけれども、うまくいかないという話が議論の前提のはずです。

○藤林構成員 ですから議論の前提は、子どものアセスメントの関係上、現在でも親子分離はしたいと思っているわけです。でも在宅でも親御さんが努力すれば分離しなくても済むわけなのです。それを一定のチャンスを与えたいけれども、ただ、では頑張ってくださいと言うだけでは頑張れないわけなので、そこに一定期間頑張っていただいて、成果が見られたら在宅でいいけれども、頑張らない、または頑張っても成果が見られない場合には保護ですよといった条件を加味したい。条件を加味することが行政処分でいいのか。そこには一定の司法関与の手続が必要ではないかというのが我々の考え方なのですけれども。

○横田構成員 だから、幾ら裁判所命令を繰り返してうまくいかないというときに一時保護が必要になったとしても、それは子どもの状況を見て一時保護をすればいいだけの話で、そこに裁判所命令を関与させる必要はないということです。

 以上です。

○藤林構成員 この先については、文書の後半を読んでいただければと思います。

○吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 今のやりとりとの関係で、挙げていただいているケースの(1)~(6)というのは、大分いろいろ段階が違うのではないかという印象を持っていまして、先ほど久保構成員からのお話の中でも、例えば(3)イのようなケースというのは、むしろ児童福祉の専門家から見れば、これは親権喪失の要件を満たすという方向に解釈を持っていったほうがいいのではないかというお話があったように伺いましたし、他方で(5)(6)につきましては、今のやりとりを聞いていて、(5)(6)が質問なのですけれども、この(5)や(6)のケースは現にどのぐらい児童相談所が指導しているかというところもまだわかっていないのですが、仮に指導をして、受講していないということが続けば、現在のアセスメントでもこれは分離をしたほうがよいと判断されるほど不適切な状況だという前提のお話なのかというのが再度わからなくなったのですけれども。

○吉田(恒)座長 藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 その前提です。分離が前提で、繰り返しになりますけれども、この状況が続くことが子どもの現在にもダメージを与え、将来にもダメージを与えるという前提なので、養育環境を変えるという判断があるわけなのです。

○吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 ダメージを与えるような養育環境だということに異論があるわけではないのですけれども、先ほど横田構成員と議論されていたのは、例えば(6)のケースで、親にあなたはペアレンティング講習を受けなさいと命令をしたところ、受けなかったとなれば、里親委託を考えていくべきだというお話がありまして、そうすると(6)のような家庭で育つことは子どもにダメージがあるので、親にアプローチしてみたけれども、受講に応じないので、では里親委託をしましょうというお話の流れをなさっているように聞こえているのですが、そういうことなのか。

○藤林構成員 大筋そういうことです。身体虐待でも心理的虐待であっても、我々は虐待という認定を行い、虐待という認定判断を行った上で、そこですぐ分離ではなくて、このように生命、健康に非常に重大な危険が及んでいない場合には指導で進めていくわけですけれども、一向に成果があらわれないといった場合に、では子どもの立場に立って、子どもの健やかな成長、発達を保障するという観点で、子どもの養育環境を別にしましょうという提案です。

○吉田(恒)座長 よろしいでしょうか。まだございますか。

 では峯本先生、お願いします。

○峯本構成員 久保先生の後の話にあるかもしれませんが、司法の役割論との絡みがあるかなと思うのですけれども、このあたりをどう見るかで私も法制度的にどう言っていいのかちゃんと理解しているわけではないのですが、今の状態がかなり悪い。でも一時保護に完全に踏み切れるだけの状態ではない。でもこの状態が続くことによって、子どもの状態の観点から見て保護の必要性が出てくる状況になり得る可能性があるといったときに、指導することによって、もう一つ多分こういう子どもの分離に関して言ったら、できるだけ必要最小限度で子どもに家庭の中で育つ環境を保障していくことが最善の利益だという、多分そういう原則が働く中で、一定、その間にこの状態の悪化改善のための指導ができないかといったときに、それは行政がやる指導と裁判所がする指導という観点、裁判所命令による指導という観点で制度というのは理屈上、司法の役割と一定、後見的役割という観点も含めて言うとあり得るのかなと思うので、司法の役割をどう見るかというところはあると思うのです。

 ただ、横田先生おっしゃられるみたいに今、一時保護できない。その状態が次、一時保護するかどうかというのは子どもの状態で判断することになるのでしょうけれども、実際問題として指導に全く従わないで、親がその改善に対する努力を全くしないという状態が、子どもの保護の必要性の判断につながる。それを一応、要件として決めていくというのは、制度としてあり得るのかなと思う。実際にそれで全部のケースが、これがすぐ分離につながる。親が1回指導に従わなかった、2回指導に従わなかった、これですぐに行くのかどうかというところについては、実際のケースの中の難しさは当然あるかなと思うのですが、ただ、それがこの裁判所命令があり得ないということではないのかなと思うのですが。

○横田構成員 同じことの繰り返しですけれども、指導に従わないことの担保として、27条1項3号措置なり一時保護なりを位置づけるべきでないということなのです。指導に何か強制力がないから問題だよね。何か担保を考えましょう。それが27条1項3号措置なり一時保護でしょうという位置づけをすべきでない。27条1項3号や一時保護は、あくまでも子どもの状況のみに焦点を当てて考える。結果的にリンクすることはあるかもしれないけれども、最初からそういう制度として位置づけるべきではないということが言いたいだけです。

○吉田(恒)座長 わかりました。おっしゃっていることはそうずれていないと思うのです。裁判所の命令が仮にあった。そして、その後、必ず一時保護しなければいけないものでもないし、さらにその間、指導に従わなかったら28条かというと、また議論がおかしくなると思うのです。ですからおそらくこの制度をつくるとしたら、そこは児相が判断をすることで、直接裁判所の命令があったからこうしなければいけないということにはならないのだと私は理解していますけれども、久保先生いかがでしょうか。ストレートにつながるというものではないはずですね。

○久保構成員 基本的な保護者の動機づけを担保するためには、原則は一時保護になると私は考えているのです。そうでないとあまり動機づけにならないと思うのです。

○吉田(恒)座長 どちらが正しいかというよりも、それぞれの主張が大分わかってきたというところかと思います。わかりました。

 では吉田先生、お願いします。

○吉田(彩)構成員 ちょっと違う観点から、事例を出していただいて、最初の大谷参事官の質問のところに戻りたいと思うのですけれども、確かに久保野先生がおっしゃるみたいに、いろいろなレベルの事案がまじっていると思うのです。だからこの事案で裁判所に何を判断させようとしているのかというところを、もう少し詰めていただけないかなと思うのです。

 具体的に申し上げると、例えば(2)の不登校の事例で、裁判所は、こういう場合には親として子を学校に行かせるべきだということを判断した上で、親に対して、子を学校に行かせるように命じるということになるのでしょうか。例えば、いろいろな体罰があって不登校になっていて、フリースクールには行かせているけれども元の学校には行かせていないという事例でも、裁判所は、学校教育法上の一般的な義務とは別に、個別具体的な事情を考慮した上で、このような事例であれば、子を学校に行かせるべきだという具体的な義務を親に負わせることになるのでしょうか。裁判所は何に基づいてそのような判断することができるのかということを教えていただきたいと思います。

○吉田(恒)座長 久保先生、お願いします。

○久保構成員 これはほかの例と少し異なるので、これを挙げられていると思うのですけれども、おっしゃるとおりもともと義務があるのですが、それに従わない。ただ、それについては正当な理由等が保護者にもあるので、正当な理由を保護者が言われるけれども、それは通りませんよということで児童相談所のほうで指導というか、学校に行かせてくださいよという話はするのですが、それでも行かせないということで、義務があるということに基づいて裁判所からそういった命令ができないのかというのがここで例を挙げた次第ですけれども、これだけを集中的に、これはおかしいだろうと言って、だから裁判所命令はだめなんだという議論にしていくのは、私は全然思いが違うのです。

○吉田(彩)構成員 わかりやすさから(2)の話をさせていただいただけであって、他の事例でも同じような問題は生じます。例えば(1)では、精神的に不安定な保護者の問題性が記載されていますけれども、実際に保護者が精神疾患かどうかもわからない事案において、裁判所は何を基準にそうした親に対して精神科への通院を命じるのでしょうか。裁判所は何を基準に私人に対して義務を負わせるような判断ができるのかということなのです。共通した問題です。

○吉田(恒)座長 藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 仮に裁判所に申し立てる場合には、当然、例えば(1)であれば精神的に不安定な保護者というのは精神科医が診断して、こうこうこういうふうな診断名がつきました。しかし、通院していないという事実をもって申し立てていくことになるのかなと思いますし、(2)で言えば子どもを保護者が学校に行かせない理由に、保護者の言っている理由というのが全然正当な理由でない。またはフリースクールに行かせるとか、カウンセリングすると言っても全然行こうとしていない。何ら対策を講じていないという事実をもって申し立てていく。であれば裁判所として学校に行かせること、または子どもが学校に行きたがらないのであれば、子どもをカウンセリングに行かせること。そういった命令になっていくのではないか。これはあくまでシンプルな例ですから、具体的にやる場合には当然、児童相談所として膨大な資料は提供していくと思います。

 ついでに先ほど言えなかった、今度このような指導に従わないとかネグレクトが続く場合には、一時保護になりますということを通常、普通、児童相談所の実務で言っていることなので、これを言うことにどういう違和感があるのか私はよくわからないのですけれども。

○吉田(恒)座長 横田先生、お願いします。

○横田構成員 言うことが問題なのではなくて、制度の設計としてリンクさせることが問題だというお話をしたわけです。

○吉田(恒)座長 杉山先生、お願いします。

○杉山構成員 私も一時保護等の次のステップに進む前提として、何かいろいろな段階を踏まなければならないということは理解できるのですが、それが裁判所命令である必然性はない、この点は横田構成員が繰り返しおっしゃられているところに同感であります。

 そもそもなぜこのようなステップ論が出てきたかですが、おそらく裁判所命令に反した場合に過料等の制裁を置くことを考えないと、この議論の出発点としてあった裁判所による強制的な命令というものが想定できないのではないか。要するに裁判所命令という制度を考える背景に、行政指導を超えた強制力のあるものを入れたいということがあったはずなのに、過料等の制裁を入れたくないので、このようなステップの話が出てきたのではないかと思われます。

 家事事件ではないのですが、アメリカなどで一般的に使われる裁判所命令などには過料等の制裁があり、確かにここで指摘されているように実際には発令はされていないのですが、そういう制裁があること自体で履行を担保しているところがあるので、そもそも前提として過料等の制裁を置いても使われていないから、要らないということにはならないであろうと思われます。裁判所命令で強制力があるものを入れたいのであれば、実効性があるかどうかという実証的な研究を示したうえで、制裁を検討していくのであれば、このようなねじれた議論にはなっていかないのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 久保先生、お願いします。

○久保構成員 先ほどの杉山構成員のお話は、アメリカでは裁判所命令に従わない場合には過料の制裁があるということで、やはり過料するときに裁判所命令があるわけですね。

○杉山構成員 民事事件などの一般的な場合の話です。インジャンクションなどの裁判所命令に対して過料等の制裁があるということで、日本でも例えば通常民事訴訟でいろいろな裁判所による命令はありますけれども、命令に対して何の制裁もないために、実際にはあまり履行されていないという制度がたくさんあったりするということで、特に家事の事件に限ったものではありません。

○久保構成員 そういう意味で私は過料の制裁を入れたくないと言っているわけではなくて、過料の制裁では実効性が担保できないと言っているだけです。

○吉田(恒)座長 藤林先生、どうぞ。

○藤林構成員 確認したいのですけれども、杉山構成員が言われた、アメリカでは、過料の制裁があることで虐待ケースに命令して、それが改善したということではないということですね。

○杉山構成員 虐待ケースではないです。一般的な裁判所命令に関する話で、日本でも法廷等の秩序維持等に関する法などに裁判所侮辱の制度がありますけれども、違反に対しては過料等の制裁が用意されていて、それが実際に使われるかどうかは別として、そのような制裁があることによって、すなわち過料が課される可能性があることで履行が担保されているということです。

○藤林構成員 私は今具体的なエビデンスを持っていませんけれども、児童虐待ケースに対して過料制裁で改善したというエビデンスは、私の知っている範囲ではないものですから確認させていただきました。

○吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 まず、今のエビデンスのお話につきましては、どのようなタイプのどのレベルのケースかというところの観点から教えていただければと思います。質問ですけれども、そのままの養育状態であれば、一時保護や分離に値する不利益状態だということなのであれば、どうして行政の指導ではなくて、司法の関与でなければならないのかというところがわからないという点に関しての再度の質問です。

 養育能力の低さですとか児童相談所に通所ができない等の事情の背景には、時には社会経済生活上のいろいろな問題があるということがあるのではないかと思うのですけれども、そうしたときに狭い意味での児童相談所での対応を超えたさまざまな諸機関が連携しての対応等が必要になる場面がありそうな気がいたしまして、そのような連携しての多方面でのアプローチというものを柔軟にしていくためには、行政的な対応のほうが優れているということなのではないかと私は理解してきたのですけれども、今回の枠組みで児童相談所が申し立てて命令をしてやっていくといったときに、そのような背景にあるさまざまな困難のようなものは、どこでどのように組み込まれて対応されていくということになるのでしょうか。

○吉田(恒)座長 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 さまざまな背景、経済困窮であるとか、または親の精神障害であるとか、そういったベースの中でネグレクトであるとか養育力の低い方がいらっしゃるわけなので、それに対しては、現状は市区町村はかなり積極的に福祉制度の提供または情報提供を行い、中には生保を受給される方もあったりとか、または保健師さんの訪問を受け入れる方もあったりするのですけれども、それをもってしても養育方法が変わらない方というのも一定はいらっしゃるわけです。

 ですから、これも繰り返しになりますけれども、児童相談所や今回は市区町村が児童福祉法の中でも支援の主体として位置づけられたわけですが、かなり手厚い支援を行っても、なかなか養育態度が変わらないケースが一定数は存在しています。これに対して、なぜ司法関与が必要なのかというのは、6ページの(4)から下を久保構成員からまた説明をいただくといいかなと思います。

○吉田(恒)座長 それでは、最後の部分、先ほどの御説明で残った部分と次の論点もありますので、そのあたりも勘案しながら御説明をよろしくお願いします。久保先生、お願いします。

○久保構成員 長くなっているので申し訳ないです。(4)のところは、おそらく今の現行法でも児童相談所が指導措置をして、それに従わない場合には、裁判所が関与するとして措置すればいいのではないかというような指摘が出るのではなかろうかと思いますが、先ほど挙げた命令の例ですけれども、こういったのは個人の私生活に公権力が介入していくと、人の行動の自由をかなり制約するものだということになりますので、憲法上の要請からも、そういった私生活に公権力がむやみに入っていくべきではなかろうと思います。

 また、今回、命令についてですけれども、ある一定の期間を想定しておりますので、そういった一定期間、保護者にとっても相当強い規制がかかるということになりますので、相当強い権利制限に当たるのではなかろうかと考えています。そこで権利保障という観点から、人権保障のとりでである司法機関が判断すべきではなかろうかと考えています。

 もちろん児童相談所と保護者と、あってはならないですけれども、対立関係になることも多いということですので、公平な第三者が意見を聴取した上で命令することが有効ではなかろうかと思います。先日、児童相談所に対するアンケート結果でも、これは28条の勧告についてのものですけれども、裁判所という客観的な機関からの指示ということで、保護者としては聞き入れやすいという回答をなされていますので、そういった点でも有効ではないかと思っております。

 そうしますと、行政処分は全て裁判所が 関わる のかという指摘があるかと思いますので申し上げておきますと、こういった私生活に介入したり、人の行動の自由の制約に当たるようなものではない行政処分、営業等の許認可とか収用等に関するものにつきましては、金銭的補償での回復もある程度可能だと思いますが、こういう私生活への介入に当たる部分については、やはり強い制約に当たりますので、例えば、医療観察法の通院命令であったりとか、人の身体拘束とかいうもの、こちらは後日の金銭的補償というのはありますが、それは先ほどの営業等の許認可とか収用等の金銭補償とは比べ物にならないのではなかろうかと思っております。ですので、全ての行政処分に裁判所が関わるということはないですけれども、このように強い制約にかかわるものにつきましては、やはり裁判所が関わるべきではないかと考える次第です。

 具体的な流れとしては(6)に書いておりますとおり、2号措置を前提として、これが功を奏しないという場合には、児童相談所長が命令を出していただくように申立てをなすと。双方の意見を家庭裁判所が聞き、不適切養育の事実等の存否を認定して具体的命令事項、これは児童相談所のほうが策定するわけですが、それを審査して命令を下す。その結果、改善しない、またはその命令に従わないといった場合には先ほど言いましたように、原則として子どもの一時保護、家庭の養育環境と同様の養育環境への移行ということが考えられるのではなかろうかと思います。

 最後に一言、司法と行政の役割論としましては(7)のところに書いております、家庭裁判所の後見的役割からすれば、この単純な司法は行政の行為をチェックするというものでは収まらないのではないかと考えております。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、ただいま御説明いただいた部分に関しまして、いかがでしょうか。

 では、横田先生、お願いします。

○横田構成員 ここの部分は前回、私が否定したのではないかと思っているのですが、つまり公権力性は裁判所の命令があるから公権力性があるわけであって、そうでないなら、その前提はないだろうと言いました。そうではなくて、指導自体に権力性があるというのであるならば、学校とか警察とかいろいろと指導をやっていますけれども、それも全部、司法関与が必要になりますというお話をしました。それに対する、ひょっとしたら反論として、保護者指導は行政処分だという理屈があるのかもしれませんけれども、しかし、基本的に指導は事実行為ですから、精神的事実行為として勝手に入るということが問題だと言うのであるならば、別に行政処分云々という話ではなくなりますから、これはもう終わっている議論だと思うのですけれども、どうでしょうか。

○吉田(恒)座長 いかがでしょうか。

○久保構成員 私も何度も話している内容ではあるのですけれども、私は横田構成員のおっしゃられることも理解はしますが、私たちとしてはこう考えているということです。もう一度それは言っておくということです。

○吉田(恒)座長 では、金子先生、お願いします。

○金子構成員 すみません、遅刻したので流れが必ずしもよくわかっていないのですけれども、今お聞きしていて思ったのは、裁判所は自分たち児童相談所の申立てを認めてくれるに違いないという想定がどこかにあるのではないかと思うのですけれども、果たしてそうだろうか、というのが率直に言って私にはわからないところです。保護者が指導に従わないという事情があるにすぎなくて、他方で今、ご説明があったように保護者にとっては非常に重大な権利制限であるというときに、裁判所が判断を求められたら、私だったらそう簡単には命令を出さないのではないかという気がするのです。

 もしそうなってしまったら、かえって踏み込んだ対応をもはやとれなくなってしまうのではないでしょうか。それよりは、行政の内部で、指導の際に、さっき藤林構成員からお話があったと思いますけれども、もし指導に従わなかったら、次はこうなりますよと保護者に言って様子を見る。それで、どうもだめそうだとなったら、そのときに一時保護なりをして、そのときに事前か事後かはわかりませんけれども、司法審査をするというほうが、かえって柔軟な対応がとれるのではないかと思うのですけれども、どうでしょうか。

○吉田(恒)座長 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 その現状の対応で保護できていない在宅の子どもがたくさんいるという前提でこの話をしているわけなので、今、金子構成員が言われたことで全ての子どもが保護できていれば、こういう議論をする必要はないわけなので、一番最初に言いましたように、現状の児童相談所と市町村の指導支援の枠組みの中で、なおかつ保護できていない子どもに対して、そこに裁判所が関与することによって、より保護すべき子どもが保護できていく。それが子どもの権利保障につながっていくという仕組みを考えたいと思っているわけです。

○吉田(恒)座長 では、金子先生。

○金子構成員 その現状が仮にあるのだとして、その処方箋を司法関与になぜ求めるのかという、そこがよくわからないのです。もうちょっとその事実を虚心坦懐で見て、何が問題なのかというのを把握する必要があるのではないか。何でそこで必ず裁判所に結びつくことになってしまうのかが、率直に言ってよくわからない、と思っています。

○吉田(恒)座長 では、久保野先生。

○久保野構成員 先ほどの最後のお返事と関係するのですけれども、この児童相談所に通所しないとか、養育能力が低いという状態をどう評価するのかということについては、先ほどお答えいただいたとおり、さまざまな経済的なこと等について市町村等がアプローチをしていることなども評価しながら判断していかなくてはいけないということでしたので、今の御質問と関係するのですけれども、裁判所でその養育状況の不適切さ等について判断していくとなると、そのようなさまざまな働きかけがどういう意味を持って、どういう効果を奏しているのか、それらの個々のものについて、個々に保護者がしている反応について、それはどういう要因に基づいているのか、適切なのか、不適切なのかといったようなことを裁判所が判断しないと命令まで行けないということになりそうな気がするのですけれども、私の理解としては、その話と今の金子構成員の司法に期待するというのは、かえって足かせになりかねないということは重なっているように思うのですが、どうでしょう。

○吉田(恒)座長 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 このような制度がもし成立すれば、児童相談所の行うべき仕事というのは増えると思います。今、児童相談所の内部だけで情報を集めて判断して、保護という実施をしているわけなので、ある意味ではそんなに資料を集める必要もないかもしれませんけれども、裁判所が関与して、そこで一定の判断をしていただくとなると、緻密な判断材料として、どれだけ児童相談所や市区町村が何をどれだけ行ったのか、保護者はどのような努力を行ったのかということを、資料をたくさん集めて裁判所に提出していくというのは、かなりの業務負担量になってくると思うのです。そういう提案をすると私は全国の児童相談所から批判を浴びるかもしれませんが、それをしてでも、やはりたくさんの保護すべき、分離すべき状況にある子どもを保護する。または保護しなくても保護者がしっかりと養育できれば、その努力はいとわない、というのが私の考え方です。

 今の金子構成員の質問に対する答えは久保構成員がもう言っているわけなので、要するに我々が行う行政処分2号措置の内容が、もしこれが行わなかった場合に、なおかつ子どもが不利益を受けている状態にあれば一時保護を行います、または3号措置を行いますという、こうならなかった場合に一時保護しますと今は口頭で言っていますけれども、それをちゃんと文書で書くという2号措置が果たして行政処分の範囲でいいのかというところです。法律の専門家ではないので、そこがうまく伝わっているかはわからないのですが、それが行政処分の範囲を超えているのではないかというのが、私と久保構成員との考え方のベースにあるわけです。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 まだまだ議論をしたいことはありますけれども、まだございますか。

 では、局長、お願いいたします。

○吉田雇用均等・児童家庭局長 事務局の雇児局長でございます。

 我々は事務局ですので、先生方の議論を、どちらにどうということなく、虚心坦懐に伺わせていただき、全体としての会議を進捗させていただこうと思いますが、今日の議論の中で幾つかお示しいただいた例の一つ一つについて、どれだけ具体的かなどとという点については、先ほど来、御議論があるように、まだまだ精査あるいは御議論を深めていただく部分があるとして、お出しいただいたもので全てかどうかは別にして、幾つか何となく今の仕組みの中では切りとりにくい、本来ならば、親子分離や一時保護をすることなく、家庭養育を確保しながら、何らかの形で親子関係を改善したいというようなケースがある中で、それに対しどういう形で実効ある介入をしていくか。

 そのときの方法として、いろいろな御議論があるのだと思いますが、先ほど来、杉山構成員や久保野構成員あるいは金子構成員もおっしゃいましたけれども、司法が出てくるかという話の前に、行政としてできることが何かあるとすると、そこもまた、今日の検討会の本旨ではないのかもしれませんが、まずどういう実態に介入できるか。この平場でやるのか、その他の機会でやるのかはお知恵をいただくとして、先ほど来の御議論を拝聴していますと、横田構成員はそれならば一時保護という現行制度があるのだから、一時保護をすべきという、そのような一つの解決策と言いましょうか、処方箋もお示しいただいているかと思うのですが、何があるのか。それがどこまでやれて、先ほど来、何人かの構成員がおっしゃっておられるように、行政の中で飲み込める話なのか、あるいは司法との接点が生まれ得るものなのかというところについて、事務方としても頭の整理をさせていただければと思います。

 そういう意味で言うと、現行の仕組みの中、あるいは現行の役割分担の中では十分に解決し切れていない部分が、仕組みとしてカバーし切れていないものがあるのではないかという御提案から議論が始まっているかと思っておりますので、そこの部分についても、最終的に司法関与にどういうふうにつなげていくかということを含めて御議論をいただければと、事務局としては拝聴して思っております。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○吉田(彩)構成員 現場で必要性があるというお話でしたけれども、要はそのような活動を担うのが行政なのか、司法なのかというところが問題であり、私としては、それは司法が担えるものではないと考えております。今日の議論の中では、裁判所に何を判断させようとしているのかを詰めていただきたいということを繰り返し申し上げたのですけれども、価値観がこれだけ多様化している中で、個別具体的な事案において親による監護の適否を一概に判定することができない事案もたくさんあることと思います。

 仮にいろいろな証拠を出されて、これは子の福祉に反する不適切な監護であるということが認定できたとしても、では、その場合に何をするのが子の監護として望ましいのかということについては、法律を適用することにより判断が可能な司法判断ではなく、まさに行政が判断すべきことではないでしょうか。こういう場合には学校に行かせなければいけないだとか、こういう場合には精神科に通わなければならないといった具体的な義務を、法律もないのに裁判所が新しく創り出すことはできませんので、そういったことを裁判所にせよというところに問題があると思っています。今までの議論の中で、司法が関与するとうまくいくのかどうかという話がありましたが、うまくいくかどうかは別にして、そもそも子の監護養育に関する裁判所命令については、司法が行えないことを司法に求めるものであるというのが私の意見です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 今日は久保先生と藤林先生から具体的な事例を出していただいて、ソーシャルワークとして、どうなのだろうか。それで足りない部分という話になったかと思います。特に強制力というよりも実効性ですよね。実効性がどう担保されるのかというところで、まだまだ議論の余地がありそうだなと思います。福祉の場面でできることというのは、やはりあるはずですので、そこの当たりの詰めも必要かと思っております。

 それから、裁判所の役割、特にその判断の対象というところ、これも実際に判断される側からすれば、大変重要なことだというので、ここの点も今日の議論で、より具体的な論点ということで出てきたかなと思っております。また、今後のスケジュールもあるかと思いますので、今日のところの整理をまた事務局のほうでよろしくお願いいたします。

○床谷構成員 自分の理解の確認のためなのですけれども、裁判所命令を最初に聞いていたときに、在宅のためのケアをする新しいものをつくってほしいということだったと思っていましたので、在宅の次に例えば、分離という形で、ステップとしては一番最初にあるものだと思っていたのです。でも、今日出てきた事例だと28条がもう既に動いているものとか、27条とか、ほかのものが既に動いている。でも、一時保護はできないものとか、いろいろなレベルのものがあって、どうも在宅が最初にあって、その次のステップの前のところを手当てしたいというような、どうも違うみたいに聞いたので、今おっしゃっている裁判所命令というのは、既存の条項との関係では前にあるのか、あるいは、それとは全く関係なしに存在するものなのかという点をお聞きしたいと思います。

○吉田(恒)座長 その点だけ。

○久保構成員 イメージとしては在宅を基本にしております。28条のケースを挙げたのは、やはり家庭養育に戻っていただきたいので、家庭養育環境を改善してほしいというところでの裁判所命令が有効ではないかというところです。イメージとしては、児童虐待防止法の2号措置をつけた後、それに従わない場合には勧告を都道府県知事が出すわけですけれども、そのところで裁判所が入るとイメージしていただくといいかなと思います。

○吉田(恒)座長 それでは、この裁判所命令に関しましては、まだまだ検討すべき点が多いかと思いますけれども、今日の論点としては、まだその次に一時保護についてという部分が残っております。

 資料2で「1.一時保護について」があります。この資料では目指す方向性(案)として、一時保護は親権の強い制限であることを踏まえ、裁判所の関与を導入することが考えられるのではないかという点。そして、緊急時の場合には児童相談所が適切に保護するということが妨げられないようにする必要があると考えられるというのが方向性として挙がっています。

 これまでの一時保護に関する議論をお聞きしておりますと、その方法であったり、そのスケジュールであったり、イメージはそれぞれだと思うのですけれども、司法関与が必要だという点に関して、広い意味での司法が関わるべきではないかという点に関しては、まず皆さん方の御了解をいただいているのではないかなと私は理解しておりますけれども、いかがでしょうか。今すぐというわけではありませんよ。理念的に言えば、何らかの形の司法関与、それが今の方法でいいというのもあるでしょうし、さまざまあると思いますけれども、やはり裁判所が関わるという点で、方向性としてはそうあるべきではないかということでまとめては、まだ早いでしょうか。

 では、横田先生、お願いします。

○横田構成員 今、座長が言われたことの意味を私がお尋ねしたいのですけれども、要するに、この司法関与というのは行政訴訟ではなくてというニュアンスですね。私は、これは行政訴訟があるからという理屈は成り立たないと思っています、例えば、刑事手続で言うと、緊急逮捕の場合にどうせ起訴されるから、刑事訴訟で捜査違法が主張できるので令状は要らないのだと言っているのと同じような主張ですから、この理屈は成り立たないと思っています。

 あとは法務省の例で言うと、入管行政に子どもの権利条約9条の適用がないという解釈宣言がありますけれども、入管行政は幾らでも訴訟はありますから、訴訟があるから要らないということであるならば、この制度についての解釈宣言も要らないはずです。だから、理論的にこれは成り立たないと思っているし、あとは前回言いましたけれども、行政訴訟の場合に訴えの利益がなくなりますよね。

 調べましたけれども、訴えの利益が消滅していない判決がありましたが、それは一時保護から半年後の判決で、大体、基本的に訴えの利益は消滅しますよね。そうしたら、訴訟の中で、裁判手続の中で一時保護の適法性をチェックする手段は事実上はないということです。それでも、訴えの利益消滅を覚悟で訴訟を起こせと。結構、貧困とかで厳しい保護者に要求するというのは非現実的だし、それに訴えの利益が消滅した場合は訴訟費用は原告負担ですから、それはないだろうということで、そこは議論の出発点にしてほしいなと思います。

○吉田(恒)座長 行政訴訟として、それがあるからというところではないのだという御意見ですね。いかがでしょうか。

 では、大谷参事官。

○大谷法務省民事局参事官 法務省でございます。

 前回のこの議論の中でも一時保護については司法関与が必要ではないかという御議論が多かったものと理解をしております。我々としましては行政訴訟があるからいいのではないかというつもりはなくて、行政訴訟もあるけれども、さらにこの制度について司法審査を強めることがなぜ必要なのですかというところによるのだろうと思っています。これもまた、これから御検討なさるのではないかと思うのですけれども、どういう理由をもって司法審査、司法関与を強化するのかというところを御整理いただきたいと思っております。

○吉田(恒)座長 今日の机上配布資料にありますように、行政訴訟はあるけれども、新たな裁判手続という点で、例えば、家裁が関与するということであれば、その根拠をどう考えたらよろしいのかということですね。これがまず1つとして挙げられております。それを踏まえた上で、審査の対象範囲ということですね。具体的な話として体制整備の問題もかかわってきますので、そうしたこともあわせて御議論をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 先ほど横田構成員が言われたとおり、私たちの考え方としては、ここで言う司法審査に行政訴訟は含まれないという考えになっているので、これを強化するものの根拠と言われると、それはもちろん、そもそも行政訴訟はここで言う司法審査に当たらないからだと、ぐるぐる回ってしまうのですけれども、この前も話しましたが、形式的な条約9条が根拠となっておりまして、後は実質的には子どもさんの自由を一定期間制約するということと親権に対する重大な制限であるということからすれば、司法審査が必要で、しかも、それは条約9条の規定からしても、そもそも事前審査を予定しているだろうと思いますので、行政訴訟があるから、それが強化するという流れは、私はとれないなと思います。

○吉田(恒)座長 横田先生、よろしいですか。

○横田構成員 今の議論は私の意見とどういうふうに対応しているのでしょうか。

○吉田(恒)座長 横田先生は先ほど、行政訴訟があるから司法審査という点ではもうクリアしているという理屈にはなりませんよというお話でしたよね。ですので、趣旨としては、今の久保先生のお話は行政訴訟を強化するという方向はおかしいではないかということですよね。

○横田構成員 別に齟齬はないと思っているのですけれども。

○久保構成員 別に反対しているのではなくて、議論としては横田先生の話の内容で進めていただければということで言っただけです。

○吉田(恒)座長 そういう点で確認しておきます。

 では、床谷先生、お願いします。

○床谷構成員 先ほどの久保構成員の発言の中のことで確認ですけれども、子どもの権利条約の条項からすると、司法審査というのは事前でないといけないというのが、条約の要請で必ずそういう解釈になっているということですか。

○吉田(恒)座長 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 一般的な解釈は私も全部調べたわけではないのであれですけれども、基本的には原文の規定ぶりからすると、司法審査に従って権限のある当局が行うとなっておりますので、そこでは事後というのは想定されていないのではなかろうかと。原則としては想定されていないのかなと考えています。

○吉田(恒)座長 では、杉山先生、お願いします。

○杉山構成員 権利条約との関係なのですが、文言を素直に読む限りは、司法関与が事前でなければならないということではない気がしております。むしろ権利条約では、子どもはもちろん、親が司法の関与なく子どもから離されてはいけないという書きぶりにもなっているので、仮に行政訴訟以外に司法関与の制度をつくるとすると、それは保護者の言い分をちゃんと聞くための比較的重めの制度を作ることが要請されているように思っております。逮捕令状のように単に子どもの身柄拘束の是非を検討するだけの制度よりは、親の言い分を聞きつつ、一時保護が正当なものであるかをある程度、慎重に審理していく手続を用意しなければならないと考えております。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 では、峯本先生、お願いします。

○峯本構成員 ここに挙がっている論点について、今のことも含めて意見を述べさせていただけたらと思います。1つは、何で司法審査を要するかということで前回申し上げたとおりですけれども、今の点で権利制限に対する司法的チェックと、司法的チェックを終えた一時保護であることによって、そういう意味での実効性も確保されていくという、横田先生のお話だとアクセルとブレーキという観点で言ったら、両方の趣旨かなと思います。それは矛盾しないと私は思っています。

 審査の事前か事後かという点で言うと、まず現実問題として事前審査を原則というか、一般的に事前審査をしろというのは、結論から言ったら、緊急の保護が必要な場合に用いられるという一時保護制度から言ったら、事前審査を原則とするというのはとれないと思います。

 これは今、杉山先生がおっしゃられた観点で言うと、いわゆる本格的に分離するのと、いわゆる一時保護というのは暫定的な分離ということになりますので、緊急性が認められたときの一時保護なので、手続として割と司法的チェックは必要だけれども、必ず事前にやっておかないといけないというものではないと思いますし、権利条約もそれを求めているわけではないと思いますし、この暫定的なものに緊急性が認められるというケースについて、手続としては、例えば、最初の段階では保護者自身のヒアリングなしで資料に基づいて裁判所が判断をするという、日本で言うと児童相談所からの情報に基づいて裁判所が判断をするという手続があり得るかなと。そうしないといけないと思っています。

 ただ、一つ、事前審査は可能な制度にしておいても、つまり余裕がある場合も中には当然のことながらあるので、そのケースについては事前審査を求めることができるという制度で、あとは事後、緊急保護してから、どれくらいの期間の中で裁判所への申立てをしていくのかということについては、これは現実を見ながら決めていかなければいけないかなと思います。

 ただ、それがあまり長期化すると、少なくとも司法的チェックという観点から言うと、意味が薄れていくことは確かなので、以前にどこかで議論があったかもしれませんが、あるとしても段階的に最初は制度をつくるときは時間的に余裕を持ってということはあり得たとしても、やはり目標とするのはある程度の期間内ということになるのだろうと思います。

 そのときに同意の有無が議論になっていましたが、同意の手続はきちんと。同意がないケースを対象にするのであれば、同意の手続をどうするのかということについては、これはしっかりした制度にしておかないといけないというのと、その前提で司法審査を導入しなければいけないということがあるかなと思います。

 3番目の児童相談所や家庭裁判所の体制整備との関係については、ここは繰り返し、皆さんが共通の認識かなと思いますが、体制整備をしっかりしないと見切り発車的なのはだめなので、そういう意味では、一つは児童相談所の体制整備で言うと弁護士の常勤化といいますか、配置ということが言われていますが、それと同時に、そこをどう考えるかということがありますが、児童相談所の職員体制の整備とか、私も第3回のときの意見の中で書かせていただいたのですが、今日の議論全般に関係するかなと思いますが、児童相談所の支援的な役割を果たすチームと調査介入チーム、裁判所への申立てとか司法手続を担っていくチーム、その体制がとれないと非常に厳しいことになってしまうかなと思いますので、その辺も体制整備の中にしっかり入れていただくということが大事かなと。

 もう一つ、児童相談所で言うと、もちろん先ほど言いましたように、保護者のヒアリングなしで、第一義的にということですけれども、裁判所の判断をいただくということになってくると、ある程度それなりのしっかりした資料を出していかなければいけないということになると、児童相談所の調査権限の問題がずっと課題になっているかなと思います。この辺も具体的にどういう形の調査権を認めるのかというのはありますけれども、その制度設計の中にはしっかり入れておかないといけないと考えています。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 この3点目の体制整備との関係で、今、峯本先生がおっしゃるように、行政訴訟以外の司法審査で事前なり事後なりということだけれども、それはもう当然のことながら必要だと。それとセットで考えていく必要があるということですよね。

○峯本構成員 そうです。そこで本当にロードマップを作成するということが要るかなと思います。

○吉田(恒)座長 ここでは児童相談所や家庭裁判所と書いてありますので、当然、家庭裁判所のほうもそれなりの体制整備がなければいけないだろうということになろうかと思いますけれども、この点では。

 では、横田先生、お願いします。

○横田構成員 峯本構成員に言われたことも関係するのですけれども、先ほどからの議論を整理したいのですが、事前審査か事後審査かというときの議論が2つくらいあると思っていて、つまり具体的な制度設計を事前、事後のどちらを原則にするのですかという話と、そもそもの理念としての事前、事後。具体的にどういう制度設計にするにせよ、理念としてはどうなのかという話があって、多分おそらく最初の久保構成員と杉山構成員との間のやり取りは理念のレベルの話ではないかと思うのですけれども、それで峯本構成員が原則的にはという話をされて、それは具体的な制度設計のレベルの話だと思うのですが、両方があると思いますけれども、それを整理しておかないといけないのではないかと。

○吉田(恒)座長 私が今、申し上げたのは、この3点目のところで体制整備というのは当然必要ですよねという点で皆さん方の御了解をまずいただくというところで、これは確認しておきたい。事前、事後、同意の問題、事後だとしても期間はどうするという点はまだ結論にまで当然至っていないということですので、今、横田先生がおっしゃるとおり、どちらを原則とするか、どういう理念にするかというのは、まだ詰めていく必要のある議論かと思います。ありがとうございます。

 ということも含めて、より根本的なところですけれども、いかがでしょうか。論点として、裁判手続のあり方、権利条約の読み方にもよりますけれども、前からこの点は議論をしておりますが、上鹿渡先生、お願いします。

○上鹿渡構成員 今、体制整備のことで峯本構成員からもロードマップのようなものが必要ではないかとのご提案がありましたが、具体的に何年度までにどこまでやるのかといった目標をもしここで可能であれば、出せたらと思います。必要なことは皆必要だと思っているわけで、それを具体的に数字で提示して見通しを持って進めていくくらいのことができるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○吉田(恒)座長 私のほうでも、この体制整備に関しては何をどう整備するのかというところが必要だと思います。人は当然だとして、先ほどお話があったように、組織をどうしていくのかということもあるし、児相での手続をどうするのかということも含めた体制整備ですので、それを前提にして、いつまでにそれを実現していくのかということになろうかと思うので、まず全体として考えていくべきだろうと思います。

○上鹿渡構成員 特に、これも先ほど峯本構成員から挙げられていましたが、児童相談所に弁護士を常勤で配置していただけると様々な状況を変えられるのではないかと思います。久保構成員はそのようなお立ち場で、司法の専門家の観点でいろいろなことを見ていらっしゃる中で、福祉での限界や、司法の範囲で解決できる問題なのかどうかというあたりをよく理解されていると思います。このように福祉と司法の両方の実際を理解する方がもっと増えていく中で、この問題の解決に向けた議論が深まると思います。実際児童相談所に弁護士の方をどれくらい配置していけるのか具体的に検討し計画していく必要があると思います。可能な弁護士の方がどれくらいいるのか、地方ではまだ難しい状況等もあるのかもしれませんが、年度ごとにどのように増やしていくか計画を立ててぜひ進められたらと思います。

○吉田(恒)座長 実際に弁護士配置に関して、全ての児童相談所に1人置くべきなのか。また、常勤が望ましいけれども、非常勤ではだめかというような議論は弁護士会でも多分されていると思うので、そういうことも参考にしながら検討することになると思いますが、ここの検討会でどこまでできるかというと時間の関係もありますので、課題として御提示いただいたと理解しておきます。ありがとうございました。

 では、吉田先生、お願いします。

○吉田(彩)構成員 児童相談所全般についての体制の整備というお話はまた別にあるかなとは思うのですけれども、考える順番としては、どういう制度になるという問題がまずあって、それからどういう体制が必要だという問題が出てくるのかなと思うのです。

 では、どういう制度になるのかという話なのですけれども、そもそも行政訴訟だけではなく家庭裁判所による司法審査が必要だとおっしゃっているのが何についてなのかがはっきりしておりません。一時保護によって誰のどのような権利を侵害することになるから一時保護への司法審査が必要になるのかということについて、論者によってそれぞれイメージしておられるところが違うように思うのです。

 そこの根本の部分が食い違っていると、具体的に児相等は申立てに当たってどのようなことをすべきなのかといったことや家裁は何について判断をすることになるのかといったことが全て変わってきますので、これらの点がはっきりしないうちは、どういう体制を整備すべきなのかという問題を検討することはできないと思うのです。

 座長のほうから、全般的に一時保護への司法関与というものについて異論はないですよねというお話が先ほどありましたけれども、どういう制度になるか、家庭裁判所がどういう判断を求められるのかということが具体的に明らかにならないのであれば、それでいいですねという話にもならないのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 なるほど。

 では、横田先生、お願いします。

○横田構成員 先ほど座長からはその話ではないと言われましたけれども、今、吉田構成員から出たので、その話をしてもよろしいでしょうか。要するに何のために一時保護の司法関与をするかということですけれども、さっきの事前、事後の話ですが、最初に子どもを親から引き離すことのチェックなのか。それとも一時保護が長過ぎるかのチェックか2つあって、どちらかは最初に考えておかないと次に行かないと思っています。個人的な見解を言うと、実はこの長過ぎるというチェックはうまくいかないのではないかと思っています。

28条審判の例で言うと、これはわずかながら却下があるので、司法のチェックとしては意味があるわけです。つまり、却下の可能性がないようなものは単なるお墨つきですから、却下があるということを前提に考えないといけないのですけれども、長過ぎるチェックのときに、これは一体どういう場合が却下になるのですかね。

 例えば、1年とか長くいるというのがありますよね。でも、1年とか長くいるというのは、長くいる理由があるから長くいるのであって、子どもが帰せないから一時保護にしているのではないですかね。話を戻すと、引き離すということのチェックだったら、ひょっとしたら引き離す必要はないのに引き離していることがあるかもしれないというチェックはできるかもしれませんが、これに対し、2カ月とか延びているものは、児相としても長くいさせたいわけではないのだけれども、とにかく帰せない。帰せない状況なので、司法が何と言おうと帰せないものは帰せないのではないかということで、アンケートにもありましたように、児福審がこれをアウトにした例がないということが出ていましたが、それはアウトにしようがないのではないですかね。ということになると、これは私も一時保護が長過ぎるのは問題だと思っていますが。この長過ぎる問題に対する処方箋は司法関与でないのではないかと思っています。

 もう一つ、別の話です。全体的な話で言っておくと、一時保護のときに、これは具体的な話なので後で言おうと思っていましたけれども、要件ですよね。要件の具体化という話もありましたけれども、これも考えておかないといけないのは、触法少年の一時保護のことを考えて、制度を入れるときに触法少年のことを除外して虐待という要件を入れてしまうと大丈夫かなと。

 今、議論している一時保護の要件は、必要があるときとかいうアバウトなことを言っていますけれども、そのために半年前に児童福祉法改正でかなり具体化しました。あれは一応ぎりぎり触法少年の一時保護まで視野に入れた制度設計になっていると思っているのですけれども、これ以上、具体化したらまずいかなと。これは後で言おうと思っていましたけれども、話を戻すと、要するに制度設計のときに触法少年の一時保護のことを全然考えないで勝手につくってはいけないのではないかということです。

 以上です。

○吉田(恒)座長 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 時間がないので手短に意見を言いたいと思います。今の横田構成員の前半のほうの長過ぎるチェックというのは、長いケースがどういうケースなのかというのは実態がわからないのですけれども、私の理解では、それこそ児童相談所の努力の中で帰すべきものは帰し、帰せないものは28条の申立てを行っていくという現状の制度の運用でやっていけるのではないかと思っています。重要なのは、離すことのチェックを、今は求められているわけです。それがないために、行政訴訟というのはあるかもしれないけれども、適切なチェックがあることによって、却下することもありうることを前提として、より保護が行われるようになる。これも前回から言っていますけれども、要するにブレーキがあるからこそ、適切な保護が可能になっていくと思っています。

 虐待死亡ケースを見てみますと、例えば、シェイクンベイビーシンドローム、SBSで保護されていないケースが実はあって、その後また虐待があり死亡になっているというケースがあることを考えると、離すことのチェックがないために保護されていないケースも、これも明確なエビデンスはわからないですけれども、一定数はあるのではないかと思います。

 そういう意味で、先ほど峯本構成員の言われた事前審査と事後審査とどちらが理念として適切なのかというのはうまく答えられないのですけれども、事前審査の必要性というのは先ほどのような病院ケースであるとか、または在宅のネグレクトケースのような場合には、事前審査で離すことのチェックをしっかり行った上で保護するということが実務上は非常に重要であり、保護の実施、実効性という点からも重要なことではないかと思います。

○吉田(恒)座長 では、金子先生、お願いします。

○金子構成員 先ほども藤林構成員とお話をしていて、ちょっとわからないところがあったというか、私は最初に、その提案だと現状がかえって悪化するのではないですかという話をしていて、そのやり取りの最後に藤林構成員がおっしゃったお話は、重大な権力を行使していて、それについて何のチェックもないのはおかしいのではないかと、結局そこに行き着いていて、それは要するに、現状のパフォーマンスをよりよくしたいというよりは、親と子を引き離すことにチェックがないこと自体がおかしい、そこがゴールなのだという話に聞こえました。だから、現状を改善したいということがゴールで、そのゴールを実現するための手段としての提案、というよりは、親と子を引き離すことにチェックを入れること自体がゴールなのだということなのかなと私は理解しまして、今おっしゃったことも、その理解に整合的なのかなと。先ほど、一時保護について久保構成員からされた説明もその理解と整合的なのかなと思ったのです。

 それは大変大事にしていってほしい感覚だと思いますけれども、そのことで一言だけつけ加えると、前回の案をまだ維持されるかどうかよくわかりませんが、もしいま言ったような理念で行くならば、親の同意があればチェックは要らない、というのはおかしいと思います。離すことは別に親の同意に尽きる話ではなくて、子の側からも考えていかないといけないとするならば、親の同意があろうがなかろうが、チェックはされるべきだと思っています。

○吉田(恒)座長 では、床谷先生、お願いします。

○床谷構成員 私は2カ月のところについてですが、横田構成員は意味がないというご指摘だったのですけれども、規定が2カ月を超えてはならないという制限を置いたことの意味というのは、やはり一旦そこで再検討しようということにあるがゆえに設けたのだと思いますし、それを児福審で審査すると事実上は否定をされないという現状から見ると意味がないと。だからこそ司法でチェックしようということで、この議論はあるのだろうと私は思っていましたので、そこのところは了解が違うところです。

○吉田(恒)座長 お願いします。

○横田構成員 そのことを今お話をしようと思ったのですけれども、例えば、これを入れたらどうなりますかね。今、児童相談所が頑張り切れていないので一時保護が長期化しているので、入れたら状況が改善するかもしれないなという議論をされるのでしょうか。そうだとすると、入れたときにどういう場合がアウトなのかなと。児童相談所が頑張っていても怠けていても、どちらにしたって帰せないものは帰せないのではないですかね。司法介入を入れたら児童相談所が気合いを入れ直して、子どものために何とか頑張ってやるかもしれないということかもしれない。しかし、それをやれなかったときに、児童相談所は努力不足でしたよね。もう一時保護は終わりと言っても、子どもは親に帰せませんよね。そうすると結局担保できないのではないですか。

○吉田(恒)座長 議論の初めとして、2カ月を超え、かつ、親の同意がないというのも一つの案として出てきましたけれども、必ずしもそうではないのではないかというのが横田先生のお話ですね。

 ここの点もまだまだ合意を見るには距離がありそうですけれども、予定の時間がもうほとんどなくなりまして、もう一つ、まだ重要な論点、面会通信制限と接近禁止の点が残っております。資料にありますように、裁判所を命令の主体とするということで、それはどう考えるのか。また、この命令の対象範囲を拡大するというので、一時保護や同意入所の場合など、または親族だけで生活している場合などにも拡大するかどうかということで、時間もありませんけれども、ぜひこの点について御意見をいただければと思います。

 では、横田先生。

○横田構成員 たびたびですみません。これは前回、特に議論にならなかったのですけれども、この制度だったら、むしろ家事事件手続法の239条の保全処分で28条審判の枠内でやる方法はできないかなと。実は調べたら、実際に平成18年に福岡家裁の小倉支部で、今の家事事件手続法の239条よりも相当緩めた面会通信制限、これは一時保護をやっていた例ですけれども、決定を見ると一時保護をやっていたことが当然の要件になっているわけでもありません。これが今の法律状況では否定されてしまっているのですけれども、これが何でひっくり返されたのかはわかりませんが、ここを広げれば。

 アンケートにもありましたけれども、面会通信制限が必要なケースということで紹介されているのを見ると、これは今、述べた28条審判の保全処分という28条の枠内でやれば対応できるのにと思ったのですけれども、この制度ではだめなのですか。

○吉田(恒)座長 28条を本案として、分離が必要だというので保全で。

○横田構成員 はい。というのが実際にあったので、家事事件手続法の239条は家事審判法のときですかね。家事審判規則だと思いますけれども、いつ入ったのかはわかりませんけれども、そこら辺の事情を調べれば、何もこれは家事事件手続法239条のこんな厳しい要件である必要はないのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 では、今の保全の手続を一時保護とか同様の場合にまで家事事件手続法で行けると。

○横田構成員 面会交流の禁止は最初に導入したときに28条審判の枠の中でしたよね。それがいつの間にか、するっと外れているのは、実はブレーキの観点から問題だと思っていて、それをもう一回28条の枠に収めて、しかも効果的にできる方法があるのではないかと思っているのですけれども、それがだめだということはありますか。

○吉田(恒)座長 1つの御意見として承っておきます。

 では、久保先生、お願いします。

○久保構成員 28条の保全処分ですと、先ほど吉田先生が言われましたけれども、28条の本案としてないと難しいと。一時保護は今の制度だと2カ月がありまして、その間、28条がすぐに申し立てられればいいですけれども、それがない段階では保全処分では、今の現行法上では難しいのかなと思います。

○吉田(恒)座長 ほかにいかがでしょうか。

 では、大谷参事官、お願いします。

○大谷法務省民事局参事官 法務省です。

 いつも同じようなことを申し上げて申し訳ないですけれども、面会通信制限であるとか接近禁止命令について裁判所の命令とするという場合に、なぜ裁判所の命令にしなければならないのか。そこの整理をしていただく必要があるかなと思っておるところです。

○吉田(恒)座長 この点はいかがですか。裁判所でなければいけないのかという点で。

○久保構成員 条約の話になりますけれども、子どもの権利としての親との直接の接触や交流が認められている以上は、それを制限するということについては裁判所の関与が必要になってくるのではなかろうか。もちろん手続保障という観点からも必要なのではないかと思います。

○吉田(恒)座長 具体的なところで裁判所の命令とする意味はありますか。例えば、その命令違反に対する対応として。

○久保構成員 面会交流制限もそうなのですけれども、さらに接近禁止命令のところがDV法と同じように、そういう接触があれば罰則があるということで規制が必要だと思いますので、その前提としては裁判所の命令が必要になってくるかなと思います。

○吉田(恒)座長 では、罰則つきの制度にする必要があると。

○久保構成員 そうです。ちなみになぜそういうことを言うかというと、一時保護等で例えば、子どもさんの学校にいくというのを保障するために里親さんとかに委託しようとするのですけれども、やはり接近する可能性がある。事実上は制限をするのは難しいかもしれませんが、少なくともその実効性を担保するための制度があれば、接触を禁止するとか、そういったことは可能ではなかろうかなと思います。

○吉田(恒)座長 大谷参事官、いかがでしょうか。

○大谷法務省民事局参事官 調査の結果によりますと、現在、面会通信制限であるとか接近禁止命令はあまり使われていない。その理由はなぜかと聞くと、施設入所をするなり一時保護をするなりして措置したときに、措置先を教えないことによって、実質的には面会通信制限ができている、あるいは接近禁止命令ができているというアンケートの結果がございます。

 今の久保構成員のお考えのような親権に対する強い制限であるからとか、そういうことであるとすれば、今の実務の措置先を教えないという運用も、それは親権の大きな制限ということになるので、裁判所の命令が全て必要ですということになるのかなと思います。そこのあたりは今の実務と大分乖離がある感じがしますけれども、そのあたりも含めて、立法事実について整理をしていただく必要があるかなと思っております。

○吉田(恒)座長 わかりました。

○久保構成員 すみません、ちょっと間違いで、私は親権の制限になるからとは一切言っていません。子どもの権利の制限になるからとしか言っていません。

○吉田(恒)座長 それではこれで最後にします。

○藤林構成員 前の回でも言いましたけれども、28条ケースの場合には、どこの施設や里親に行っているのかは言いませんので、接近禁止命令の必要性は非常に少なくなるのです。けれども、久保構成員も言ったように、一時保護段階で子どもを学校に通わせるということは当然必要なことであり、何カ月も1年以上、一時保護所に置くということ自体が子どもの権利保障につながっていないということを考えると、一時保護段階から接近禁止命令を行い、子どもが高校とか中学校に通える保障を行うためには必要なことと思います。

○吉田(恒)座長 まだまだ議論すべき点はたくさんあろうかと思いますけれども、さらに今後、事務局のほうのスケジュールを組んでいただいて、論点をより絞ったところで議論ができればと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そのほか、28条に係る裁判所の承認、親権停止制度の活用については、これまでの意見を踏まえて、基本的には運用面での対応でよろしいのではないかと思います。何か特段意見はございますでしょうか。

 では、なければ、そういうところで裁判所の承認や停止制度については対応したいと思います。ありがとうございます。

 それでは、予定の時間を超えてしまいましたけれども、本日の議論はここまでとさせていただきます。最後に事務局から次回の日程等、連絡事項をお願いします。

○木村補佐 本日もありがとうございました。次回日程につきましては、1128日月曜日の1719時を予定しております。次回の検討会では、司法関与については引き続き取りまとめに向けた議論をお願いできればと考えております。また、特別養子縁組につきましては児童相談所と民間のあっせん団体に対する実態把握の調査の結果を集計して、お示ししたいと考えております。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、本日の検討会はこれにて閉会といたします。御出席の先生方、どうも御多用のところをありがとうございました。


(了)

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