ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 医師需給分科会> 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第8回)議事録(2016年9月15日)
2016年10月6日 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第8回)議事録
医政局医事課
○日時
平成28年10月6日(木)13時00分~15時00分
○場所
厚生労働省省議室(9階)
○出席者
構成員
新井 一 (全国医学部長病院長会議会長) |
今村 聡 (日本医師会副会長) |
小川 彰 (岩手医科大学理事長) |
片峰 茂 (長崎大学学長) |
神野 正博 (全日本病院協会副会長) |
北村 聖 (東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター教授) |
権丈 善一 (慶應義塾大学商学部教授) |
羽鳥 裕 (日本医師会常任理事) |
平川 淳一 (日本精神科病院協会常務理事) |
平川 博之 (全国老人保健施設協会副会長) |
福井 次矢 (聖路加国際病院院長) |
本田 麻由美 (読売新聞東京本社編集局社会保障部次長) |
森田 朗 (国立社会保障・人口問題研究所所長) |
参考人
吉村 博邦 (一般社団法人日本専門医機構理事長) |
尾身 茂 (独立行政法人地域医療機能推進機構理事長) |
鎌村 好孝 (徳島県保健福祉部次長) |
○議題
医師偏在対策について
○議事
○堀岡医事課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから「第8回医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」を開催いたします。構成員の先生方におかれましては、本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。ここでカメラは退室をお願いいたします。初めに、本日の御出欠について御連絡します。本日は松田構成員、山口構成員は欠席しております。また一戸構成員も急な所用で御欠席との御連絡を頂いております。
本日の会議には参考人として、一般社団法人日本専門医機構理事長吉村博邦様、独立行政法人地域医療機能推進機構理事長尾身茂様、徳島県福祉保健部次長鎌村好孝様にも御参加していただいております。以降の議事運営については座長にお願いいたします。それでは、片峰座長よろしくお願いいたします。
○片峰座長 それでは開始させていただきます。初めに、事務局より資料の御確認をお願いいたします。
○堀岡医事課長補佐 資料の確認をさせていただきます。座席表の後ろに議事次第があります。その後、資料1~5は各ホチキス留めをして資料を配布しております。乱丁などありましたら、事務局にお申付けいただければと思います。
○片峰座長 議題1、医師偏在対策についてのヒアリングに移ります。先ほど御紹介いただきましたが、3名の方にお願いしております。日本専門医機構新執行部の取組の現状ということで、一般社団法人日本専門医機構理事長の吉村参考人。続きまして、専門医制度についての提案に関して、独立行政法人地域医療機能推進機構理事長尾身参考人。最後に、徳島県における地域医療に関して、徳島県保健福祉部次長鎌村参考人からお話を伺うこととしております。3人の方のお話を続けてお聞きした上で、その後まとめて意見交換ということでお願いいたします。それでは最初に吉村参考人、よろしくお願いします。
○吉村参考人 一般社団法人日本専門医機構理事長の吉村です。この7月に就任しております。資料にあるように、本日は日本専門医機構の新しい執行部の取組の現状ということでお話をさせていただきます。御承知のように、新しい専門医の仕組みについては、2年前にこの機構が誕生して来年の4月に新しい仕組みのスタートを目指して準備してまいりました。その中で、新しい執行部ができた経緯についてお話をさせていただきます。
本年2月ごろから、医師偏在加速に伴う地域医療崩壊への危惧等、機構のガバナンス不足等が指摘される中で、今年の6月に旧執行部の第4回の社員総会で新しい理事が選任されました。
7月4日に第1回理事会を開いて、理事長、副理事長を選任してスタートしたところです。2.の活動の状況については、7月から10月まで理事会6回、社員総会1回、その他、いろいろな委員会を開いております。下から2番目の委員会が2回になっておりますが、これは1回と、新たに専門医認定更新部門委員会を3日に開催しております。あと財務委員会もしておりますので、後ほど訂正したいと思います。
3.機構のガバナンスの見直しです。(1)新しい理事会の体制です。前の執行部は、第三者機関設立のための組織委員会で選任されたものです。日本専門医機構の旧の評価・認定機構の役員を中心に構成されております。必ずしもオールジャパンの体制とは言い難いものでした。新しい執行部は社員による新たな選任規定で選任されて、幅広い医学・医療系団体とか、あるいは有識者として経済学者、その他、患者代表等も加わっております。オールジャパンの体制になったものと思います。新理事の一覧表を次に付けておきました。日本医学連合、日本医師会とか、全国医学部長病院長、その他の設立時の社員から2名、また内科系、外科系からも3名ずつとか、その他、医療系団体。また学識経験者には兵庫県の知事の井戸先生とか、あるいは遠藤先生、その他、患者さんの代表や一般市民も加わっております。
(2)意思決定の透明化と情報公開の徹底と書いてありますが、従来、議論の経緯が不透明と指摘されておりましたので、理事会で徹底的に議論を尽くして、理事会の中で情報共有したい。情報不足で、何をやっているか分からないという御意見がたくさんありました。広報委員会の機能を強化して、迅速な情報提供を心掛けるということを決めました。また定例記者会見も、必ず理事会社員総会の後には開催しております。その他、社員との間も、とかくぎくしゃくしがちでしたが、情報共有を図りたいということです。
(3)機構の基本姿勢です。これが一番大事な所です。機構と学会との関係を、機構と学会が連携して専門医の仕組みを構築することを基本姿勢とする。従来、機構で全てを決定して、学会はそれに従うようにといった上意下達の関係ではないことを明確にしました。
また機構と学会の役割分担も余り明確化しておりませんでしたが、今後は学会は学術的な観点から責任を持ってプログラムを作成していただく。機構の役割としては、機構は専門医の仕組みを学術的な観点から標準化を図る。各学会に対してチェック機能、調整機能として、領域学会をサポートしたり、専門医の資格を、専門医機構認定の資格、私ども公の資格と申しておりますが、私的でない資格としてオーソライズしたいと。
それから、専門医に関するデータベース、専門医の分布状況、その他を是非確認したいと。今までばらばらにやっておりました。もう1つは、専門医の仕組みを通して、国民に対し良質な医療を提供するための諸施策を検討する。これが地域医療の偏在に対する対策法の1つです。
次ページ、先ほど申しました社員、特に学会の社員との間が非常にぎくしゃくしておりましたので、これをしっかりと共有を図りたいと。
(4)地域医療の確保対策について、本来、専門医機構は専門医の質の担保が中心ですが、もちろん地域医療の確保が重要です。機構の役目の1つであるということで、しっかりと位置付けました。
(5)その他、整備指針の見直し、基準等が非常に厳しくて、特に、地域で活躍しておられる先生方がなかなか更新できないと、地域医療も崩壊するのではないかという御意見もありました。実情に合わせて、踏まえて変えていきたいと思っております。
4.の新プログラム開始に伴う地域医療崩壊の危惧に対する「精査の場」の設置については、厚生労働大臣も非常に懸念をしておられました。理事会の構成員を中心に、公衆衛生の専門家である尾身先生を交えて、構成員として理事会メンバーから学会からの推薦理事6名、その他、学会に関わる関係者2名、計8名を除いた方と、尾身先生を交えて設置しました。
実際には7月20日に第1回を開いております。その精査の場での検討結果ですが、募集定員が、従来の研修医の実績の2倍から3倍近くあります。昨年まで、認定施設と今回の認定施設が非常に増えている所、非常に増やした所と、例えば基準が厳しくて減っている所、いろいろな領域がありました。特に(3)後期研修医の受入れの実績があって、基幹施設とか、連携になれなかった施設が一部ですがありました。あとキャリアパスがないとか、いろいろな御意見がありましたが、いずれにしても、検討の結果は新たな仕組みによる制度を一時中止しましょうと。地域医療への対策を講じた上で、再来年度に開始してはどうかという意見になりました。その他、この後多分お話があると思いますが、尾身先生から、将来の人口動態、疾病構造、交通アクセス等を考慮した上で、地域別、領域別の大まかな要請数を示さないと、悪い言葉ですが、専門医の分取り合戦にならないようにしなければいけないということで、これも了承されました。
ということで、5.第3回の理事会におきまして、来年度の仕組みの専門医研修について、(1)として、ここは一度立ち止まって、国民や地域の方々の懸念を払拭できるよう、機構と学会が連携して問題点を改善した上で、2018年を目途に、一斉にスタートできることを目指しましょうと。ただ(2)来年度につきましては、研修医や国民の混乱を回避するためにも、特に基本領域については、各学会が責任を持って制度を運用していきたい。(3)総合診療専門医も新たに作ることになりましたが、これは機構でやることになっておりますが、今までの学会がありませんので、何らかの新たな方策を考えたいということを決めました。
それを受けて、(4)各学会に対しては、できれば来年は既存のプログラムでお願いしたいと。もし、新しいプログラムを暫定プログラムとして用いられる場合には、専攻医が都会に集中しないように基幹施設と連携して再検討する、例えば連携施設でも専攻医が採れるとか、あるいは指導基準が非常に厳しくなっており、論文が2編以上ないといけないとか、いろいろあります。それについても実状に合わせた対応をしていただきたい。
今まで研修を実施していた施設が引き続き専門研修を行えるような工夫を取ってください。また都市部の専攻医の定員を、過去の実績の1.2倍以内に抑えていただきたい。2倍から3倍は少し多過ぎるのではないか。いろいろなオプションがあるので、各学会で工夫をしてくださいということをお願いしました。
次ページ、その結果、6.来年度、新しいプログラムを暫定プログラムとして試行される領域が6領域あります。暫定プログラムで行いたいというところが、小児科、耳鼻科、病理。それから、既存プログラムと暫定プログラムを併用したいというところが、整形外科、救急科、形成外科でした。これについては、実は昨日、尾身先生を交えてヒアリングを行って、各領域とも十分とは言えませんが、大変に良く対応していただいているのではないかという結論になったところです。
7.問題は再来年度の平成30年度に向けてです。今後、基本領域学会と連携して、ワーキンググループを形成して、この6領域のことも踏まえながら、地域医療を崩壊させないための方策を考えていきたいと。最後に以下のような方策を考えております。
大都市圏の募集定員を、過去実績の1.1~1.2倍以下に設定してほしい。あるいは大都市圏に専攻医が来たら、一定期間、地方に必ずローテイトさせてほしい。産婦人科などはそういうふうにしているようです。また、明らかな偏在が生じてしまったときには、年次ごとで来年、再来年と都会の定員を調整していただく。
整備基準を弾力化して、連携施設等でも、十分に専攻医の採用が可能とできるような施策を取っていただきたい。いろいろなオプションがありますので、それをこれから年内を目途に考えていきたいと思っているところです。以上です。
○片峰座長 簡潔にお話いただいたと思います。続きまして、尾身先生、よろしくお願いします。
○尾身参考人 独立行政法人地域医療機能推進機構の尾身です。よろしくお願いします。このような機会をお与えいただきましてありがとうございます。資料2を御覧ください。タイトルは「専門医の仕組みについての提案」となっておりますが、実は、専門医の仕組みについての提案よりも、むしろ医師偏在についての提案でもありますので、よろしくお願いします。
時間の関係がありますので、この紙の基本のところだけを強調して読ませていただきたいと思います。最初のページのIはじめにの第2パラグラフは、私はたまたま現在、臨床学会研のどこにも属しておりません。国内外のパブリック形成に何か関与したものとしてこの提案をさせていただいたということです。
IIは、今、吉村先生のお話があった問題の本質は何かというと、簡単に言えばマル1の最後の2行です。専門医の在り方に関する検討会ということで、いろいろなことが言われていたわけです。実は医師偏在の視点への配慮とか、中立的な第三者の関与という所が十分配慮されなかったために、関係者間の綱引きが行われたというのが、今回の問題の本質だと思います。
III、医師の偏在の問題も含めて、問題解決のための必要条件は何かということです。
最後の2行目、日本の場合にはどうしてもディーテルな所に議論が行ってしまって、基本的な哲学、あるいは考え方に合意がないままにディーテルな議論に走る傾向があって、今回も恐らくそうだったと思います。そのことが綱引きを継続した原因になったと思います。やはり、医療、医師の地理的偏在なども、基本的な考えについて、まず合意することが非常に極めて重要だと思います。
まず、IVの基本的な考え1、ここは重要ですので1つ1ついきます。基本的考え1のマル1、そもそも医療制度、これは専門医制度にかかわらず、医療制度構築に当たっては、将来の日本の医療のニーズを視野に入れ、言ってみれば、あるべき姿の概要を検討しながら行うのは当然のことだと思います。マル2具体的には現状、現在の診療科、地域別の医師数を考慮するのは当たり前ですが、それだけではなくて、将来のことも考慮する必要があります。3つです。人口動態の変化、疾病構造の変化、モータリゼーション・交通利便性など、将来のことを考えて、全国及び各地域の診療科ごとのニーズを基に、各都道府県、あるいは2次医療圏ごとに一定程度の幅を持った各診療科別の専攻医「研修枠」を設定することが極めて重要だと思います。このグランドデザインとも言うべき研修枠が、事実上存在しないままに、これまで専門医養成が行われたために、現在の診療科別の医師偏在が発生したと言えると思います。
マル3、ただこの研修枠というものは、硬直的な数値ではなく、目指すべき方向性を示すものであると思います。例えば、ある診療科の現状医師数が、設けられた研修枠に比べて少ないと、客観的なデータを基に判断されれば、すぐにではなくて時間をかけて、徐々に上方修正をしていくことが現実的だと思います。
例えば、医師数が減少しており、労働環境も過酷な診療科については、この研修枠を設ければある程度歯止めになる可能性もあると思います。
マル4、研修枠を設定しますと、若い、これからの医学生・医師などが、これからの我が国の医療の将来のニーズのイメージが理解できて、専門とする診療科、これから自分は何を選ぶか。どこで働くかということを選択する上で参考になると考えます。
マル5、いわゆる研修枠というのは、欧米ではプロフェッショナルフリーダムを認めると同時に、プロフェッショナルな集団であれば当然社会のニーズ、地域のニーズに応えなければいけないという、社会的責務にも応えるという、両方のニーズに応えることが必要という考えの下に、研修枠というのは、欧米の先進国では実態的に実施されております。
最後ですが、マル6この研修枠という考え方は、実は我が国でも既に初期臨床研修において、いわゆる都道府県別、募集時の定員上限ということで、不十分ながら、こういう考えは既に実施された若い研修医には馴染みの深いものになっているということがあります。
基本的考え2、医師の地理的偏在の解消について、マル1、診療科の偏在については、研修枠の今申し上げた考えで、徐々に改善されると思いますが、いわゆる専攻医研修を終えた、一人前のお医者さんがどこの地域で働くか。つまり、地理的偏在については、専門医制度の議論の枠外の話です。したがって、医師の地理的偏在については、専門医制度とは別途議論する必要があって、事実、こういう所も含めて既に議論が始まっております。
マル2医師の地理的偏在是正には様々な施策が考えられます。私は国民の理解が得られる実効性の高い施策を選んで、実現すべきだと思います。
一体何が実効性が高くて、国民の納得が得られるかというのがマル3です。私の考えは以下の通りです。医師の地理的偏在解消に向けて、最も実効性のある施策。これはいろいろあると思いますが、その1つが、保険医登録の仕組みを変えることだと思います。現在、医師は医師免許取得後、特に条件なしに保険医として登録され、どこでも保険診療に従事できます。この保険医登録の仕組みを変えて、保険医登録の条件、あるいは保険医療機関の責任者になるための条件として、長い期間ではありませんが一定期間、医師不足地域で勤務することを求めることが、最も関係者の間で納得を得やすく、実効性のある対策だと思います。もちろん、本施策が実現するためには、恐らくしかるべき法律改正や、関係者間、これは若い医学生を含めた関係者間のきめ細かい議論が必要だと思います。このことに興味がある方は既にたたき台としてかなり細かい案を作っておりますので、私に連絡して頂ければと思います。
基本的考え3、これは既に地域医療の影響については、先ほど吉村先生がお話されたので割愛します。
基本的考え4、根拠に基づくということで、これは釈迦に説法ですが、ア)エビデンスはそんなに完璧にあるわけではありませんが、これからの議論はエビデンスベースで行われることが大事ということと、先ほども少し申し上げましたが、イ)、我が国の医療が基本的には国民の支払う保険料、税金でほとんどが賄われていることを考えれば、プロフェッショナルフリーダムを尊重して、どこで働くか、どこの科目を選択するかの自由は当然尊重されなければいけないが、一方、地域や社会のニーズにも応えるということが、保険料、税金で賄われている保険医療においては極めて重要だと思います。
そういうことから、V、具体的に提案を幾つかしましたが、マル1は吉村先生のほうで、これから一部の学会については始めると言っていますが、これについては地域医療の影響がないかどうかをしっかりとチェックする必要があります。
マル2は、延期した期間に、各都道府県、2次医療圏ごとに一定程度の幅を持った各診療科別の専門医研修医枠を、これはそんなにリジットなものではありませんから、大体こんな幅というものをそろそろ議論するべき時期に来たと思います。もちろんそこに至る時期はしっかりとコンセンサスをかけて徐々に行うべきと思います。
マル3、専攻医を終えた医師の、一般の医師の地理的偏在については、専門医研修枠の方法では解決されないので、各都道府県ではいろいろな努力がされています。県を越えての仕組みは、まだ日本では確立されておりませんので、その議論をそろそろやる時期だと思います。
マル4、専門医機構のほうが、これからより透明性を高めるためには、内部だけではなくて、外部の人を含めた議論が必要で、そこには透明性、中立性を執行部がそういう方向でやられていると私は理解しております。
マル5は、今日直接関係ないかもしれませんが、今までの専門医機構の議論は、全ての医者は臨床家になるという前提でなされたような嫌いがあります。実は必ずしもそうではないので、私は臨床家になる、医学部を卒業した人の中では、これからますますパブリックケースという分野、ベーシックなサイエンスという部分が必要ですが、これについてもどういう議論をするのか。今までと一緒の20番目にするのかというのは別途議論があると思います。この議論をしないと医療界のほんの一部しか議論しないということになると思います。大体、以上が私の提案です。どうもありがとうございました。
○片峰座長 たくさん大変な重要な御提案を頂いたと思います。後ほど議論させていただきます。続きまして、鎌村参考人お願いします。
○鎌村参考人 徳島県保険福祉部次長の鎌村です。よろしくお願いいたします。それでは、ページ右下の番号順に御説明いたします。
2番です。人口76万人の徳島県の人口当たりの医師数は全国3位ですが、県内での地域偏在が著明です。平成14年、平成の市町村合併前の50市町村当時、徳島市周辺と西部と南部の県立病院所在地に集中があります。
3番です。その後、特に県南部での医師減少が一気に始まり、県南部の拠点病院である県立海部病院での医師半減によりまして、土曜日の救急受け入れ中止につながり、周辺部への大きな影響も出ました。
4番です。平成の大合併後の平成20年は、徳島市周辺への集中があるものの、そのすぐ周囲でも少ない状況であります。
5番です。人口当たりの医師数は全国3位ですが、面積当たりでは全国30位、女性医師の比率は全国3位、医師の高齢化も進み、平均年齢は高齢化全国4位であり、開業医におきましても後継ぎ問題が顕在化しています。人口当たり医師数では1位の京都、2位の東京は面積当たりでも上位で、医師の平均年齢も若いという本県とは異なる特徴があります。
6番です。救急医療の面でも厳しい状況を来しております。
7番です。平成26年時点での状況に公的な医療機関を記しています。民間の医療機関もなく、公立の診療所、病院が地域で唯一という町もあります。
8番です。これまで徳島大学医学生への修学資金貸与制度、高校生への説明会や高校訪問、県内全ての臨床研修病院、県医師会、県が一体となった徳島県臨床研修連絡協議会の設置、そして平成20年度から、とくしま医師バンク事業を開始しています。
9番が事業の概要です。即効性を期待する主な施策ですけれども、これまでも県医師会の協力のもと、民間医療機関から山間部や離島等の5つのへき地診療所、3つの公立病院への定期支援など、一部成果があるものの、まだまだ厳しい状況であります。
10 番です。中長期的な効果を期待する施策として、徳島大学への地域枠・医師修学資金貸与制度、寄付講座の増設、自治医大など、関係者と一体となってライフステージに応じた施策を「切れ目なく」展開し推進してきています。特に寄付講座の1つである「総合診療医学分野」は、それまでは総合診療医を目指すには県外に出るしかないような状況だったのが、現在はスタッフとして大学と県立海部病院を拠点として教授1名、助教5名のほか、ほかの病院に3名、そして今後の専攻希望者として臨床研修医が3人いて、計12人にまで成長しているところです。うち5人が、後ほど紹介しますサークル「地域医療研究会」出身です。
11番です。平成21年度から、夏休み期間に徳島大学におきまして高校生のための医学体験セミナーを開催するほか、「救命救急センター・ドクターヘリ」のある県立中央病院と、地域包括ケアを実践するへき地診療所の現場体験日帰りバスツアー、こちらでは医師を目指す若者たちにとってはモチベーションの上がるような体験や、診療所長からの話などにより、参加者の中から徳島大学の地域枠や自治医大を受験し、面接においても話題に出てくるなど、受験生・合格者にも影響ある効果的な事業と考えています。なお、このツアーにはこの7年間で計249人の高校生が参加しました。
12番です。本県でも修学資金貸与によります地域特別枠を設けており、毎年、1年生及び6年生と知事出席で、それぞれ懇和会を行っており、医学生たちもやる気を表現しています。また、徳島県と言えば阿波踊りですが、副センター長であり県の寄付講座である総合診療医学分野の教授が顧問をされており、今では146人の部員がいるサークルである「地域医療研究会」を中心として、徳島県出身の自治医大生らとともに、毎年、阿波踊りに繰り出しています。地域の医療を輝かせようという思いから「地医輝連」と名付けられています。
13番です。こちらが地域医療支援センターですが、全国的にも早い段階での平成23年11月に、県から徳島大学へ委託して地域医療支援センターを設置しました。
14番です。センター長は徳島大学病院長が務め、副センター長は、1人は大学の医療教育分野の教授であり、今回のこのヒアリングに当たり、特にお世話になりました大学病院のキャリア形成支援センター長、もう1人は、県の寄付講座である総合診療医学分野の教授、そして県立病院部長の合わせて3人で、専任医師として学生時代に修学資金の貸与を受けたことのある医師が務めています。
15番です。次に総合メディカルゾーン構想についてです。徳島大学病院と県立中央病院は従来から隣接して立地していて、相互のソフト、ハード両面での資源活用により、県下全域に効果的に展開しようというものです。
16番です。向かって左手の県立中央病院は平成24年に、右手の徳島大学病院は病棟、外来棟が順次、改築オープンしまして、両病院を連絡橋で繋いでいます。
17番です。上のほうの図は徳島大学における医師のキャリア形成支援組織の概要です。医学部、病院、大学院がありますが、真ん中の病院に地域医療支援センターが設置されることにより、県内の研修病院などの各医療機関、県医師会、そして徳島県行政との連携、ネットワーク化に大きく寄与しています。ハード面での総合メディカルゾーンの立地状況とともに、副センター長の人員などからも併せて県内全体として一体的に取り組めていると考えています。
18番です。センターの重要な取組として、医師のキャリア形成支援や医師確保支援があります。新専門医制度が延期されていますが、センター基幹型の専門医研修プログラムの構築を行っています。
19番です。平成21年度以降の徳島県をキャリア拠点とする教育プログラムでの初期臨床研修医、専門研修医を登録し、データベース化を行っています。
20番です。ホームページの開設や、県内で様々な分野で活躍している各世代の医師である「人」にスポットを当てた内容を売りにした広報誌である、委員お手元の「トクドク」を年2回発行するなど情報発信を行っています。
21番です。地域枠医学生の進路希望についての調査を行うほか、キャリア面談については地域枠1期生が、現在、臨床研修2年目であり、特に地域特別枠医師については副センター長と専任医師、そして県から私の3人で将来に向けて面談をしています。昨夜、一昨日もしてきています。
22番です。地域枠医師の配置調整を通して県全体の医療の在り方を考えると、こういった図式も見えてきます。
23番です。徳島を拠点とした医師のキャリア形成について図式化したもので、オール徳島プラス県外、グローバル化を含めてという感じだと思っています。
24番です。センターによるキャリア形成の支援と、その広報を大まかに示したものです。
25番です。こちらが徳島県における修学資金貸与による地域特別枠医師数の推移です。2期生まで卒業していますが、全員が県内の研修病院プログラムの研修中です。
26番です。徳島県の地域特別枠医師の基本ローテーションを示しています。9年間の業務従事期間がありますが、様々なキャリアプランについて面談なども含め、一緒に考えています。
27番です。地域特別枠医師に対応するよう、地域医療支援センター基幹型の専門研修プログラムを構築し、新たな専門医制度の動向も注視しつつ、検討しているところです。平成21年度以降、大学病院基幹型や県内の各研修病院基幹型の研修プログラムの研修者の登録を継続、データベース化していますが、さらには現在、国において検討中であり、来年度の予算化に向けて進めておられる医師のデータベース化には、その内容、そして管理運用などの活用法、法的な整理等を含めて大きな関心と期待を持っているところです。
28番です。徳島県南部の県立海部病院が拠点となり、主に総合診療医学分野スタッフの指導調整により、保健医療福祉介護機関などの協力のもと、徳島大学医学科全員の1週間の地域医療実習を行っています。地元住民らによる「地域医療を守る会」が熱心に活動されており、地域医療実習の最終日午後の報告会にも、地域住民が積極的に参加して歓迎と期待の言葉を送るなど、医学生や若手医師らからも好評です。これまでにも総合診療医学分野に進み、海部病院に来る医師も出始めています。
29番です。臨床研修制度開始前には大学拠点プログラム開始の医師が、毎年、60~70名だったのが、開始後、間もなく半減しましたけれども、大学病院、県立中央病院、徳島赤十字病院ほか、地域の各病院を含め、特性、個性を生かし、質の向上と多様性により医学生や若手医師の選択肢となることで徐々に回復基調にあります。ただ、新たな専門医制度については指導医数や症例数など量的な基準を求めており、このような初期臨床研修制度開始の際に引き起こされた地方の医療への影響以上に、特に大都市部や大病院への専門研修医及び指導医に加えて、臨床研修医の集中化など、これまで以上の地域偏在や診療科偏在が助長されるなど、新たにもっと重大な地域医療崩壊が引き起こされるのではないかという懸念があります。また、都市部の定員の0.1倍違うだけでも絶対数が大きく、地方の医師確保、正に地域医療の提供体制に大きな影響がありますので、改めて十分な検討、配慮をお願いしたいと思います。
30番です。少し実例を紹介いたします。毎年、夏休み前に山間部のへき地診療所長と私の2人で徳島大学3年生の講義を受け持っており、今年も7月にへき地医療の現場の話、地域医療構想や地域包括ケア、災害医療等を含めた現場の話を2人からそれぞれしました。今回、ちょうどその時期に、そのへき地診療所に1か月間の地域医療の臨床研修に来ていた研修医も講義に出席し、その研修医からは、「大学3年生のときに正に私たちの講義を聞いてから関心を持ち、夏期休暇に診療所研修にも行って、その後、医師となり、今回は研修医としてお世話になっている」といった発言や思いを聞くことができました。その診療所長は今年の「やぶ医者大賞」を受賞された2人のうちの1人です。また、この春、毎年恒例ですが、県医師会主催で行われた県内の臨床研修医全員の歓迎会会場で、徳島大学病院の若手の専門研修医と話す機会があり、自身が初期臨床研修医のときに、「山間部のへき地で泊まり込んでのへき地医療臨床研修が非常によかった。それまでは将来の選択肢にはなかったのが、実際に行って地域内での看取りや、地域包括ケアに熱心に取り組む現場の指導医から学び、多職種共同やチーム医療などを体験したことで考えや視野が大きく広がり、今は専門分野の研修をしているが、将来の選択肢としても考えたい」といった話や、ロールモデルとなる指導医としてその診療所長の名前を挙げました。そこは高齢者が葉っぱを売って元気な「いろどり」で有名な町です。私は県の医療行政に携わっていますが、自治医大出身でこの2つの診療所での勤務歴もあり、現在も週1回程度ですが、山間部の診療所に行っています。
最後の2枚ですが、これまでにお話したセンターの取組などについて掲載したリーフレットです。この地域医療支援センターを通しての徳島県における地域医療の確保のためにも、いい医師育成のサポートは大きな任務と考えています。これからも行政として地域医療の現場とつながっているという思いを持って、取り組んでまいりたいと思っています。以上です。ありがとうございました。
○片峰座長 ありがとうございました。それでは、3人の方の御説明に基づいて意見交換を行いたいと思います。まず最初のお2人、吉村先生の専門医制度の問題、それから尾身先生も専門医制度、さらには偏在対策まで踏み込んでいただきましたので、このお2人の御説明に関して質問、あるいは御意見等をお伺いしたいと思います。その後、徳島県のお話に移りたいということです。いかがでしょうか。
○福井構成員 尾身先生がおっしゃった研修枠を決めるということは、私もずっとこの分科会で主張してきて、今日で4回目ぐらいになります。しかし、国全体として、そして地域として本当にどれくらい専門医の数が必要なのか明確にしない限りこの議論は進まない。この方向で専門医機構の吉村理事長がリーダーシップをとって、是非、進めていただきたいと思います。
この点に関して1つ質問です。研修枠を決める作業をして、それを専門医制度に実装する上では、マッチングという手順を組み込んだほうが、いいのではないかと私は思っています。このことについての議論は専門医機構の中で進んでいるのでしょうか。
○吉村参考人 マッチングの話ですけれども、マッチングするからには定数が決まらないと、定数が2倍も3倍もある所でマッチングすれば、当然、ボタン1つで決まるわけですから、多分、都会のいい所に集まる可能性があります。もちろん、マッチングは将来的に考えていますけれども、今すぐには考えていません。今、定員は2倍から3倍あります。実際には今まではもっとあったと思います。今回、なぜ2倍になったかと言いますと、指導医1人に対して研修医を3人、各学年1人ずつとしましたので2倍に収まったのですが、実際にはもっとございました。こういう状況ですぐにマッチングを入れると、かえって問題が起こる可能性があるのではないかと考えています。
○福井構成員 定数を決めるということと、マッチングは厳密には別の手順になると思います。定数については、全ての専門診療科の先生方と話合いをした上で望ましい数を決めなくてはなりません。定数が決まったところで、ツールとしてのマッチングを導入するという意味です。
○片峰座長 いかがですか。尾身先生、先生が言われる専攻医研修枠と専門医の関係はどういうふうにつながっていくのか。先生が言われるのは後期研修のイメージですよね。
○尾身参考人 今の福井先生のお話で申し上げると、私のイメージは、結局、今までは学会が、それぞれ自分たちの所でどのぐらい養成するということでやってきたわけですけれども、医師の地理的偏在の問題が顕在化した今の時代にあっては、各診療科の専門医数の過多など現状を分析するだけではなく、先程私が申し上げた将来の人口動態の変化、疾病構造の変化、モータリゼーション・交通利便性や将来の医療関係者の働き方などを考慮して、あるべき専攻医の研修枠を幅を持たせて決める時期が来たと思います。
ただそういう枠を決めても、ただ、そこの枠にすぐには行けませんよね。急に2倍にするとか2分の1にすることはできない。ある程度幅を持たせた目標を設定しない限り現状を引っ張るだけで、診療科ごとの偏在が偶然に解消することは無いでしょうね。だから、先ほど私が言ったように将来のことも考慮する必要があります。しかしこのことがうまくいくためにはこれを強制的にやるのでなく自由意思を尊重するマッチングという方法が必要だと思います。ともかくあるべき姿については100%サイエンティフィックにいきませんけれども、いろいろ総合的に考えればできる作業だと思います。
○権丈構成員 今、尾身先生が答えていただいたことは、かなり私の質問の中にも入っていると思いますけれども、この提案は全ページに線を引きたくなるような内容で私は「はい」と思うわけです。ただ、1点、教えていただきたいと思ったのが4ページのVの提案のマル2です。今、福井先生もおっしゃったところで、「『専攻医研修枠』を設定することが求められる。ただし、そこに至る道筋は時間をかけて徐々に行うべきである」とあります。あまり時間をかけないで数年間ぐらいでやっていくとすれば、どういう混乱が起こってくるのか。そして、この「時間をかけて」というのが、大体、どのくらいのタイムスパンの中で我々は認識しておけばいいのか。本当に疑問に感じたのはこの1点で、ここの部分を教えていただければと思います。
○尾身参考人 時間をかけてというのは2つの意味があると思います。まずは研修枠という考え方、新しい哲学ですね。それと方法論があります。これについては誰か1人の学者が勝手に自分の考えでやるということでなく、先ほど私が申し上げたように先に方法論に行く前に、どんな基本的な考えでやるという合意がなければまたぞろ同じようなことが起きますから、まず基本的な考え方について少し時間をかけてみんなで合意することが重要です。ある一個人の意見が一方的に通るということではないと思います。
2つ目の時間をかけるというのは、そういうことで関係者の大体の合意ができたとしますね。産科はこう、外科はこうと言ってそこに至るとき、今、作ったから来年すぐにやれば混乱するのは見えていますけれども、では、それを20年かけてやるのか。ここは私も答えを持っていませんが、少しずつアジャストしてモニターをしつつ、このモニターをしつつというのが非常に大事だと私は思います。みんなの納得感が必要ですから、そういうことで少しずつモニターをして議論をしながら、アジャストすればするしというプロセスを、こういう公の席ではそう正確に言えませんけれども、数年から10年ぐらいかけてやるのが適切ではないかと考えております。これを1年とか2年でやるのは現場が混乱するというのが私の直感です。
○権丈構成員 合意プロセスをしっかりと経つつ、モニターをしながら、アジャストさせながら展開させて動かしていくべきだと解釈して、よろしいでしょうか。
○尾身参考人 そう思います。
○小川構成員 尾身先生の非常にラジカルな御提言に関しては基本的に大賛成です。このぐらいのことをやらないと基本的なところは変わらないだろうと思います。それはそれとして、ちょっと各論的になってしまいますけれども、1つは、各診療科の全国の医師数の偏在というのが存在しているわけです。それに更にもう1つ存在しているのが、各診療科ごとに専門医の都道府県別の偏在がある。私の持っているデータでは確か都道府県偏在の中で一番少ないのが2倍弱です。すなわち、10万人当たりの専門医が、各都道府県で1対2弱ぐらいの差があるのが一番少ない所です。一番多い所は1対8なのです。専門医数の多いところと少ないところで8倍の差があるのです。
ということになると、ここで先ほどの吉村先生のお話に戻るのですが、吉村先生のお話で確か17ページです。これは暫定的だからしようがないのかもしれませんけれども、「例えば、都市部の専攻医の定員を過去の実績の1.2倍程度に抑える等」という所です。要するに現在、1対8の差がある中で、ものすごく少なくなっているところに更に1.2倍、都市部で取ってもいいよということになったらば、そういう各診療科ごとの都道府県別の偏在が更に増悪するのではないか。その辺、こういうことをやればいいというアイデアを持っているわけではありませんが、是非、機構のほうで、そういう各診療科の都道府県別の偏在の実態を明確にして、それを戻していくための方策もこの中に入れていただければ有り難いなと思っています。
○片峰座長 吉村先生。
○吉村参考人 初期研修の場合は1つのプログラムですから、各都道府県別に一定数が振り分けられればかなりの効果があると思います。実際、専門研修ということになりますと御承知のように19の基本領域があります。特にその中でも内科と外科があって、内科については消化器、呼吸器など大体13に分かれて研修するわけです。外科についても心臓外科、呼吸器、消化器など4つに分かれます。結局、それを足しますと35領域で始まるわけです。ということは、単純に8,500人を35で割れば200人ということです。1領域200人が47都道府県に行けば大体4~5人となるでしょうか。それを既に今、30万人の医師がいて偏在していますから、これを年間8,500人出て行くので、偏在を解消していこうと思えば、先ほどお話があったように、5年とか10年を見据えて決めていかないといけないことになります。とにかく1.2倍として、取りあえず激変は避けましょうという意味ですので、将来的には都会を0.8とかにしていかなければいけないのです。ただ、そうしますと外科医などはどんどん減っていて、今、年間680人ですか。これを4領域に分ければ170人ぐらいになるわけです。これを各都道府県に割っていくとせいぜい4人とか、東京は10%ですから68人ぐらいになるでしょうか。少ない所は1人とかゼロになりますので、これを長いスパンで解消していくようなロードマップを作らないと、1年で来年こうなったからすぐ駄目だと言われると、ちょっと難しいことになるのではないかと思います。
○今村構成員 尾身先生に御質問したいのですが、専門医の仕組みの所ではなく、先生の御提言の3ページにある保険医登録の仕組みについてです。先生はもう既に具体的な御提案があるけれども、今日はお示しをいただかないということでした。今後、きめ細かい協議が必要だとも書いてありますが、ここに、医師不足地域で勤務することを全ての「保険医療機関」の責任者になるための条件にすると、これだと読み取れるのですが、例えば先ほど鎌村先生から徳島の事例をお話いただきました。徳島県全体としては医師は多いけれども、県内に非常に医師不足の地域があると。したがって、徳島大学を中心とした先生たちが、徳島県内で一定期間勤めるということは割と簡単にできると思いますけれども、例えば東京のように非常に医療機関が多いわけですが、そこの医師が全国の様々な医師不足の所に行くことを想定されているのかどうか。恐らく全ての医師が医師不足地域に行くと1か月とか2週間とか、そういう感じのイメージになってしまうかなと思います。そうすると、かえってそういう地域では、そんなに短期間でお医者さんが代わられても困るという話もあるかと思います。この辺、もし現状として具体的なイメージがあれば概略でけっこうですので教えていただきたいと思います。
○尾身参考人 今村先生、ありがとうございます。もちろん、今、作っているのはたたき台ですので、それの了解の上で我々がどんなイメージを持っているかというと、基本的に卒業して国家試験に受かれば研修医でも診療行為をやりますよね。したがって、全ての国家試験合格者には、我々の提案の中では一種登録と言っていますが、これを与える。言ってみれば仮免ですね。一種の登録を出さないと診療行為ができませんから。それでは、いわば本免許、二種登録のほうはどうなるかという事ですが、以下のように考えています。様々な検証可能な客観的なデータを構築し都道府県地域医療構想圏(二次医療圏)ごとの医師数、医療ニーズなどをもとに全医療圏をA、B、C(Cが最も深刻)の3種( )に区分する。これに加え、島嶼や過疎地域に限定した特殊地域Sを設ける。例えばSは特別という事で半年、Cであれば1年、Bであれば2年行けば二種免許が登録できる。例えばたたき台として、二種の登録証が無いと保健医療機関の責任者にはなれないという事にする。しかし、実際の運用については各医師の赴任時期の希望を聞いくなどして弾力的に行うことが重要だと思います。もちろんこうした期間が終われば、大学の医局に戻る、開業するなど個人の自由は尊重される。
○今村構成員 イメージはつかめました。ということは、医師が多いA地域の方は相当長期間、そこのA地域にいないと2種は取れないということなのですか。それとも、A地域の方もBやC、Sに行かないと2種は取れないというイメージですか。つまり多い所の方がどうするかということをお聞きしたいのですが。
○尾身参考人 今のたたき台としては、全く余ってしまっいる潤沢の所に行っても本免許は取れないということに、一応、してあります。そうするとどうするかと言うと、保険診療はできないから自由診療をやってくださいという、保険者と医療者の私的契約関係に基づくということで国は介入しないと。それについてはいろいろなオプションがあると思うので、1つのたたき台として、そういう条件で半年から1年、2年くらい行ってもらって、その後は大学に行こうが開業しようが自由というイメージです。
○北村構成員 吉村先生に2つ質問があります。その前に尾身先生がおっしゃった今のシステムは尾身先生が詳しいと思うのですが、実はインドネシアで採用されて失敗したシステムです。モチベーションのない人が先生のおっしゃるCとかSに行って、地域住民から反発を食ったという事実もあるので、情報として。
吉村先生に質問です。1つは今村先生と同じで、県の中での偏在があります。吉村先生がおっしゃったように47都道府県に1つずつプログラムを作ると、大学が基幹病院になってしまって大学に全部集まってしまい、県の少ない所に医者が行かないのではないか、3~5年目の医者が県の中で偏在してしまうということが今回の問題の大きなところです。これに対して、機構はどのような対応をされるのかということです。
もう1つは、更新システムを含めて教育システムの問題で、各学会の総会に出て判子をもらうというスタンプラリー、そのため、既に専門医を持っている人まで総会に駆け付けて判子をもらうという大騒動が起こりました。判子を押してスタンプラリーをすることが専門医の資質かと、それが今回の問題でもありました。
教育的に考えれば、日常の診療システムを自分で振り返ることで専門医を継続できれば一番いいわけで、わざわざ総会に行かなくてもいいのに学会の会費が欲しいからと揶揄される状態もあったので、このことについての対応をどのようにされるのかということです。
○吉村参考人 ありがとうございます。大病院中心になるのではないかという御意見で、これが大きなもう1つの問題です。例えば、大学に集まったとしても、大学には毎年入ってくるわけです。昨日も耳鼻科からお話をお伺いしましたが、3年間ぐらい大学にいて、その中で実際に大学にいるのは6か月ですと、あとは全部連携病院に出ますというお話をお聞きしました。
逆に言うと、最初からばらばらな所に行くことがいいのか、あるいは、ある程度大学とか基幹的な所に集中させて、3、4年たって毎年入って来て必ず出て行くわけですから、そういう方法にしたほうがいいのかということは、議論の分かれるところだと思います。特に研修の質ということを言えば、領域によると思いますが基幹的な病院でやることが順当かと。
例えば、脳神経外科の研修をやるのに地方に出て行って、なかなか患者がいない所で研修はできないということもあるかもしれません。それから非常にまれな疾患を経験したいということなので、大学や基幹的な病院でやるということも必要ではないかということで、やはり、これはローテーションをしながら研修をするということが1つの基本的な考えです。大学だけにいるというわけではなくて、地方へ出ていただく。
もう1つは、今の2つ目の話です。これは、もちろんやり方の問題で、例えば、医師会の各県でやっておられる生涯教育のプログラムをお受けになる、あるいはeラーニングを使う、DVDを見る等、最近はメディアも出ておりますので、いろいろな方法が、必ずしも、一つではないと思います。ただ、専門的な研修について、たまには学会に出て現場で勉強されるということも必要かと思います。それさえあればいいということにならないようにしたいということです。
○北村構成員 関連して、1つ目の質問の答えです。大学に行った場合、大学の診療、研究、教育が満たされて、それであふれたときにだけ地方に来るのではないかと、地方の県の小さい所の病院の先生方が危惧したわけです。要するに、人事権を大学の教授や医局長が持ってしまってあふれたときだけお渡しすると、不幸にも県内のこの分野は足りないとなると大学にしか人がいないとなってしまうので、人事権を県が持ったりしたほうがいいのではないかという議論もありました。
○尾身参考人 北村先生、ありがとうございます。インドネシアのモチベーションの件。実はこのたたき台を作る、これは1年以上やってきたのですが、その間に随分若い医師、若い学生にも意見を聞きました。若い学生が、ほぼ異口同音に言うのが、「基本的には分かる」、「こういうことを自分たちも1、2年ぐらいなら貢献したい」と、「ただし条件が2つある」と言うのです。
1つは、急に行けということではなくて、前もって心の準備、仕組みをしっかりよく作っておいてくださいということ。もう1つは、どこの地域に行くのか、あるいは、ここのA県の地域に行く、どのような病院に行くのか前もって知ることのできる情報があり選べるというか、その条件がある。我々はそれが当然だと思うので、何とかその仕組みが入れるように。
もう1点は先生のモーティベーションのことです。たたき台のほう、今日持ってきませんであれですけども、十分配慮して、やはり行ってもらった人が孤立無援になるようなことがないように、その病院だけではなくて地域がその人のことを支える。地域へ貢献するだけではなくて、行ってよかったと思われるような環境作りは受ける側の責務という仕組みを作る必要があると思います。
○羽鳥構成員 先ほどの北村先生の御質問のスタンプラリーのことです。医師会の生涯教育でやっている共通講習については、各学会の先生、大病院の先生も十分取れるような仕組みを作ることができるよう、今、各学会や病院にアンケートを取っておりますので、早急に解決できると思います。決してそういうスタンプラリーにはならない仕組みになっております。
あと、尾身先生の提案は素晴しいと思います。地域医療構想で将来の医療の必要量を見て、それぞれの病院や医療機関が自分の立ち位置を見直していこうということをやっていると思います。逆に、多分、厚生労働省は5年後の脳外科の専門医や循環器の専門医の数は、これぐらいという医療の必要量を計算できるのだろうと思います。
ですから、それに応じて各都道府県で、もし、このぐらいの専門医の数が必要になるであろうというロードマップを示すことができれば、尾身先生の言っていらっしゃることは多分実現できるのではないかと思うので、それを是非検討していただけたらと思います。
私も吉村先生を助ける立場で専門医機構に入っております。その専門医機構では、主な目的は標準的な医療を提供できるような、各先生方、各専攻医の先生方の質のレベルを上げるということがベースだと思いますので、そこで数の問題を積極的に討議しなさいということは、もう1つ別の枠組みを作らないと難しいのではないかという印象があります。以上です。
○本田構成員 私も尾身先生の各診療科別の専攻医研修枠を設定すること、目安を作ることには大変賛成です。枠を持って目安を示していくということを早急にやっていただきたいと思っております。それに関連して吉村先生にお伺いします。日本専門医機構でもそういう考え方の下で、精査の場で検討を始められたということは、大変、素晴しいことだと思います。
ここで、尾身先生が先ほど提案されていた形のものを示していくという理解でよろしいのですか。例えば、ここで大まかな数字を計算して出していくだとか、いつまでにこういうことを目指しているのだということを考えた検討の場ということなのでしょうか。
○吉村参考人 尾身先生にも検討の場に入っていただいて、そのことを念頭に将来像を描いていこうという姿勢です。
○本田構成員 例えば、いつまでという目標は出るのでしょうか。
○吉村参考人 今以上に偏在が加速しないようにすることが当面の目的ですが、尾身先生のほうで何年掛かるのか、1年なのか2年なのか分かりませんが、それが出次第それを念頭に新しい仕組みを考えていきたいと思っております。
○平川(淳)構成員 私も尾身先生の、基本的な考えとして枠を決めてということについては何の異論もありません。先ほどの保険医を取るために、本人の意図を無視したという言い方ではないと聞きましたが、強制的なことをするというのは徴兵制度みたいなもので、私は若い人間ではないですが今の時代には合わない考え方で、基本的な考え方については賛成ですが、大本の人間性や理念で、何となく私としてはなじまない気持ちがありました。
もう1つは、専門医についてです。医者が全部専門医かというと、そうではありません。医者の専門医を取らないで、すぐに臨床に入って地域で頑張ろうという人もいます。専門医の配置が地域の医師の配置にそのまま直結するお考えがあるようですが、そうではなくて、医師として人のためにやりたいという本当に純粋な気持ちで医者になる先生もいらっしゃいますので、その辺、専門医制度だけで全ての偏在を解決するという考え方について疑問を感じましたので、意見として申し上げます。
○片峰座長 ありがとうございます。大分、時間も押してまいりました。先ほどの鎌村先生の徳島県に関しても御意見を伺いたいと思います。
○今村構成員 質問です。先生が非常に努力されて県内でいろいろな取組をされているという御報告だったと思います。徳島県はもともと医師の数自体は多いけれども地域の中に偏在があるということで、経年的なものとして平成26年のデータが後のほうで出ていて、その前の平成20年に比べると、かなり改善しているというデータのように読み取れます。平成26年は地域ごとに人数が具体的に書かれていて、それまでは単に色分けだけされているのですが、これはどの地域でもこういう取組をされたことによって少しずつ改善されている方向にあるのかどうかということをお聞かせください。
もう1点は、もともとの絶対数が多いので努力すればある程度地域の偏在がなくなるということで、そもそも県全体として絶対数自体が少ないと、なかなかこういうことは難しくなるのかどうかという、今日は青森の一戸先生はお見えになっていないのですが、その辺のところを感触で結構なので教えていただけますか。
○鎌村参考人 前半の所に地図で示している部分については、2年ごとの算出調査等を基にしたものです。平成の大合併前の市町村数は50で、その後24になっておりますので、50から24になったときに薄まってしまって1つの色になっているということですので、現実的には地域では医師が減っております。高齢化しており新しく開業する人もおりませんし、公立病院もなかなかギリギリいっぱいでいっているということで、地域で医師確保が進んで改善しているということではないという事由です。
後半のグラフについては、先ほど説明したように臨床研修制度後、60、70ぐらいだったものが30代に落ちて、しばらく30、40といっていたのが少しずつ、各病院等のそれぞれの努力と、連帯を持ってやったということも含めてだと思うのですが、今、回復基調にあるということで若手医師が少しずつ戻ってきていて、臨床研修を2年、2年終わった段階で県内から県外へ出る方、県外から戻って来る方もいらっしゃいます。これについては、先ほどのデータベース化の所で少し触れましたが、実際、大体差引き0ぐらい、多少多いときと少し少ないときというところで推移しております。
ですから、これを何とか保ちながら更にということで若手のところはいっている。なかなか、医師会の先生の所、開業医の先生は60歳を県平均で超えており、今、県全体では50歳少しですが、地域ではもう70歳近くまでいっている所もあるということで、10年先はどうなのかというところです。
○神野構成員 25ページ、この会でも地域枠の話が必ず話題になりますが、徳島は非常にうまくいっているということですので、あえてお聞きいたします。今、6年修学資金貸与の9年業務従事ですが、恐らく、これは先ほど来の話のように診療科で欲しい診療科と、それほど欲しくないというか、ある程度従事している診療科があると思われます。特に3群病院に行くときには、こういう医師が欲しいという要望があると思います。このように県がお金をたくさん出して育てる地域枠の学生たちに対して、診療科の選び方に対して何か施策を取っていらっしゃるのでしょうか。
もう1点は、最高4年間の中断です。恐らく、ほかは余りいないのではないかと思いますが、中断しっ放しでいなくなったという人はいないのでしょうか。
○鎌村参考人 最初の地域枠医師の診療科については、先ほど申し上げたように、まだ2期生というところで臨床研修という段階です。実は昨日、一昨日も実際に面談しましたが、診療科について、これから希望者が出てくるという段階です。ただ、人数が増えてくるということもありますので、資料の21ページの下の段の所で、「地域枠医師の卒後ローテーションとキャリアパスを構築するためのワークショップ」ということで、県、大学病院、関係病院等に集まっていただいて、診療科ごとのキャリアパスを作ってみてもらっております。
制限は今のところとくにかかっておりません。また、これまで、卒業生に対して小児科、産科、外科というもともと少ない科に、別途、修学資金貸与制度を作って、これまで小児科で、何人か利用していただいたというところであります。
後半の所の4年間については、当初からではなく最初は3年間だけの猶予期間を設けていたのですが、4年間については条件として、一番下にあるように3群病院に1年間行った場合に付加することとしております。更に大学院等も含めてという緩やかな形で、ストレートで専門医を取りたい方がこれを利用する場合と、逆にストレートでなくてもいいからこういう形でというものを幾つか若い人たちの意見も聞きながら作ったということです。
○小川構成員 大変、アクティブな取組をやられて御苦労されていると思います。ただ、東北、北海道の各県から見れば垂涎の的です。派遣できる医者がいるから、こういう仕組みができるのです。要するに、医師数が全国で対人口比3位ですから、十分な医師がいる。それが、ただ単に徳島市に偏在してるから、その方々を過疎の地方に回しましょうということなのです。ですから、全国で3分の1か半分ぐらいの都道府県では、もう地域医療支援センターを開設しても、どういう仕組みを作っても出す医者がいないから動かない。この辺に関してはどのようにお考えですか。
○鎌村参考人 きちんとしたお答えはできないと思いますが、先生がおっしゃられましたように東北地方は本当に厳しい状況という、数字の上では徳島県と比較できないかと思います。ただ、先ほど言いましたように徳島県においても人口が約76万人という中での人口当たりの医師数であること、それと医師も一気に高齢化が進んでいるということで、現在までは何とかやってこられたが、若い世代の医師数が減っている、今、地域医療構想ということで在宅医療等で調整会議等をやっておりますが、このままでは地域の先生方だけでは担えないという状況まできております。
赤で示した所にいるのが、大学病院において教育・臨床・研究にも携わっている方や、ほかに、がん診療連携拠点、周産期母子センターや救命救急センターというところなど、そこから即剥して派遣することがなかなかできない方もたくさんおられます。ここをそのまま、次はこっちという状況にはなかなかいかないという点もあり、非常に苦労している所もあるということを御理解いただきたいというところです。
○小川構成員 大したことではないですが、16ページです。県立中央病院と徳島大学を直接つないで連絡を取っているということは素晴しいことだと思います。御説明がなかったのですが、実際、県立中央病院と徳島大学が、どのように連携しているのかということが1点です。それから、県立中央病院に勤める医師の給料と大学病院に勤めている医師の給与はものすごく差があると思いますが、その辺はどのようになっておりますか。
○鎌村参考人 物理的にはこういう形で、厚労省の許可を得てつなぐことができたということです。パスを持っている人が連絡橋を通っており、患者さんが自由に行き来できるような状況ではありませんが、1つは、県立中央病院にはドクターヘリがあり、運ばれた方のうち大学病院へ行く方や周産期の方など行き来きはあります。あと両病院のスタッフについては、カンファレンスや合同回診など行き来しております。
給与面については、国立大学法人職員と県立中央病院という県の公務員ですので、先生のおっしゃられるとおり給与体系は全く別ということであります。
○権丈構成員 簡単にいきます。先ほどの平川構成員の所の御意見に関してです。尾身先生が報告された2ページの基本的考えとはというマル5に、医師には地域のニーズに応える社会的責務があるという考え方の下にという、プロフェッショナルフリーダムが認められると同時にとあります。
また、3ページの基本的考え方4という所でも、プロフェッショナルフリーダムを尊重すると同時に地域や社会のニーズにも応えることが大事であるとあり、やはり政策、あるいはこういうことを考えていく上では、価値を1つに置くと非常に難しいことになってきますので、この幾つもある重要な価値のバランスを取って人をどのように育てていくのかという話になっていくと思います。
先ほど尾身先生から出てきた枠は、昔の徴兵制みたいに例えられるということは、今の時代はコンセンサスとして、こういう価値も大事なのだということもみんな十分、分かっていますので、余り感じることはないのではないかと思います。
○片峰座長 ありがとうございます。3人の参考人の方、どうもありがとうございました。本検討会は、年内かなり突っ込んで偏在対策に対する実効的な提言を出すべく検討していくことになります。
既に8項目にわたって検討課題が出ております。その検討にあたって非常に重要な御提案、御提言を頂いたと思います。取り分け8項目の中に専門医が入っております。そういう意味では、機構とこの会がどのように連携し役割分担していくのかということは、座長として非常に悩むところです。今日のお話で大分整理できたような気がしておりますので、大変、感謝しております。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移ります。次は医師偏在対策です。前回の会で質問が出た件等について、事務局から追加資料の説明をお願いします。
○堀岡医事課長補佐 資料4の、医師偏在対策に関する基礎資料を御覧ください。前回御議論いただいた中で、様々な御指摘、御質問のありました点を、事務局のほうで作れる資料は作成いたしました。
1ページは「地域医療対策協議会の開催実績」についての御質問がありましたので、全都道府県に調査をいたしました。平成25年4月から平成28年8月までの開催回数という形で全都道府県に聞いております。開催回数0件が6県あり、あとは表のとおりです。6回以上という県も多数ありましたが、かなりばらつきがありました。議題として、多くは基金や医療確保対策。医師確保対策の一環として地域医療支援センターなどについて議論している所。また最近のことですけれども、新たな専門医の仕組みについて、修学資金制度についてということを議論していただいている地域医療対策協議会が多くありました。
2ページは前回出した資料を参考資料として添付しております。地域枠で入学した方と、地元出身枠、つまり地元出身の方というのが、臨床研修修了後に、同じ都道府県で大学と同じ都道府県で勤務した割合はどれぐらいかという表です。赤くしている所は、地域枠で入学している方は68%、出身地が同じ方78%が、臨床研修修了後大学と同じ都道府県で勤務しているということです。出身者のほうが、臨床研修修了後、大学と同じ都道府県に勤務する割合が高いということです。
3ページは、山口構成員などから、非常に面白いデータだけれども、東京など都会部出身の人たちに出身枠のデータなどが引っ張られているのではないかという御指摘を頂きました。もし可能であれば、都会部の都道府県と田舎部の都道府県と分けてデータを取るとどうなるのかという御質問を頂きましたので、分けてデータを作っております。上が6都府県出身で、それぞれ地域枠で入学した人。上の赤い部分は、出身地と同じ大学で過ごした人で、臨床研修修了後地域に残った人の割合です。下は、その他の6都府県で、地域枠と出身地でそれぞれ割ったものです。
例えばこれをどう見るかというと、6都府県出身で、地域枠で入学した人が、臨床研修修了後地域に残った方は62%。田舎部の都県で地域枠入学者は69%でした。一方、都会の都道府県出身で、その後臨床研修修了後大学と同府県で残っていた。つまり、出身地で都会部の人は81%がその地域に残っている。一方、田舎部の都道府県で大学出身地が同じで、その後も地域に残っている人は75%です。それぞれ62%と69%、81%と85%ということで、若干出身地の効果というのは、都会部のほうが高い所はありますが、81%と75%ということでほとんど出身者が、その後地域に残る割合というのは変わらないという状況がありました。
4ページで、他に地域枠で入学している人の中で、出身者が出身地の人。地域枠でない人で出身地の人というのがそれぞれいるので、それぞれ分けてみると、本当の出身地の効果が分かるのではないかという御意見がありましたので、そのように分けております。上は、地域枠で入学した人で、大学と出身地が同じ都道府県、若しくは違う。下は、地域枠でない人でそれぞれ出身地か出身地でないかというものを分けたものです。地域枠で出身地と大学が同じ方は、その後も地域に残っている方が85%、当然ながら一番高いです。でも、一方で地域枠でなくても、出身地と大学が同じ人は77%地域に残っていて、いずれにせよ地元出身者というのは極めて高いという結果が出ましたので御報告いたします。
5ページです。前回地域枠の議論をしたときに権丈構成員から、世界的にも幾つか、ノルウェーなどで研究があって、WHOのガイドラインなども出ているという御紹介を頂きました。その論文などを調べたり、ガイドラインを我々でも読ませていただいてまとめたものです。ノルウェーの論文がありました。ノルウェーの地方都市であるトロムソという所にあるトロムソ大学の卒業生についての、出身枠のようなものの効果を検証した論文です。ノルウェーは、南部が都会部で、北部が田舎部というようになっているようです。トロムソ大学というのは、非常に田舎にある大学だそうです。御覧いただければすぐに分かるデータですが、北部ノルウェー出身で、大学を卒業した人が現住所、つまり今でも北部に住んでいる人は82.9%、82.5%と極めて高い。一方、北部ノルウェーから医師になるためにトロムソ大学を卒業した人というのは、結局3割、若しくは42.9%しか残っていなくて、結論として本研究は地方で教育された地方出身の医学生は、卒業後極めて高く地元に定着するという結論になっています。この間、権丈先生がおっしゃっていたとおり、homecoming salmon仮説というように、正にsalmonという言葉が論文に出ていて、非常に興味深く面白かったところです。
6ページでWHOのガイドラインを載せております。確かにWHOのガイドラインは、どうやったら地域医療のほうに医師を残せるかということが、様々な方策が書いてありました。その中でも、地方出身の学生を対象として入学者を受け入れるというもののエビデンスレベルは中等で、推奨度は強い推奨というガイドラインになっています。Cochraneのシステマティック・レビューでも、地方出身であることが、地方での診療と最も強く関連した唯一の要素と思われる、というぐらい強い記載になっていました。権丈構成員御指摘のとおりの非常に分かりやすいデータでしたので、この場で御紹介させていただきました。
○片峰座長 それでは質疑をお願いします。
○神野構成員 前回少し言ったのですけれども、うまく伝わらなかったのかもしれません。地域に残る人を増やそうと思ったら、大学に地域の人をたくさん入れなければいけない。人口がたくさんいて、大学が1つしかない県は、大学をいっぱい造らなければ駄目だというようになってしまうわけです。地域出身者で、大学はよそへ行ったのだけれども、臨床研修からまた地域に戻ってくる方というカテゴリーも1つ必要なのかなと思います。実際に私はそうなのですが、そういうカテゴリーも、恐らく相当効果があるのではないかと推測しているわけですけれども、その辺のところを次のときにでも出していただければと思います。
○堀岡医事課長補佐 さらに医学部をどうかというのは、それは結局地元出身者の割合をどれぐらい高めるか。例えば本当に足りていなくて、人口当たりの医学部の定員が少ない所は、ものすごく地元出身の割合を高めればいいのかもしれないので、その兼ね合いの問題だと思います。神野先生のもう1つの御指摘は、今の臨床研修アンケートではそこまで細かくは。こういう枠があるかどうか分からないのですけれども、例えば新潟に東京枠があって、東京で養成して新潟に戻るということをデータできちんと示すべきということですよね。
○神野構成員 そうです。地元の大学にはたまたま偏差値で入れなかったかもしれない。でも隣の県の大学に入って、臨床研修の段階で戻って、地元に定着する方も少なからずいるのではないかと思ったのです。
○堀岡医事課長補佐 これは臨床研修のアンケートをいろいろ分析しているのですが、結構難しいのです。どれぐらいできるかを精査させていただければと思います。次回までに間に合うかどうか分かりませんが、どこかで出せるデータを出させていただきます。
○権丈構成員 先ほどのhomecoming salmon仮説の所の論文というのも、one of themの中でこの言葉を使っているので、ここで紹介させていただきました。WHOのほうは随分いろいろなものを見た中で、こういう提言をしているという話です。この話をすると、地域枠の話をすると、地方のほうは医学部全部を地域の人にするのかという話にすぐ行ってしまいます。地域枠として、今暫定的に増やしている所はあります。そこを地域枠として、地元の人と、奨学金の地域枠というのがありますよねと。それだったらこの地域枠というところは暫定的に増やしている医師のところは、枠として、そこは地元枠というようにしていったらいかがでしょうかというぐらいの、かなりおとなしい提案と結び付いた話ですので、よろしくお願いいたします。
もう一点は、地元にみんな医者が卒業したらそこに行くのだろうというのは、1973年の1県1医大構想が立てられたときには、恐らくみんなそういうふうに考えていたと思うのです。そして、それがうまく機能していたのです。ところが、1990年ぐらいにバブルが崩壊して、ダーッと他のエリート層がいろいろと叩かれていく中で、医学部だけがガーッと高くなって、子供たちがみんな医学部に行くということになってしまった。そうすると、1県1医大というところの入学をフリーにしておいたら、都心の進学校の人たちが占拠して、合宿の自動車学校みたいな感覚になってしまっている。ここをどうブロックさせればいいかということを、10年前ぐらいに考えたときに、地元枠というのはかなりエビデンスベースに基づいた政策提言なので、それでやったらいかがでしょうかという話のストーリーになっています。
○今村構成員 厚生労働省にお願いなのですが、年末までに検討すべき医師偏在対策の中で、専門医のことについてメニューの3番目に、国・都道府県、特に都道府県等の調整等に関する権限をこの会で明確化するということが書かれています。前回私から質問して、厚生労働省で専門医の仕組みの在り方に関する検討会はどうなったのかと言ったら、それは開かないと。つまりこの場がそれを決める場だというお話でした。今、地域医療対策協議会の開催状況の中で、新たな専門医の仕組みについて、何県かがこの地域医療対策協議会で、今後の都道府県の権限のことに関する作業をやっています。実はその名称については、全く違う名前で開かれている県もあります。
専門医の仕組みの在り方の検討会では、その途中経過で、今どのぐらいの県の数がこういうことを開催していますという報告がありました。だけれども、全くこういう調査がまるっきりないままに、権限を明確化するなどという議論をしてもらっては困ると思います。やはり、今どのような状況になっているかということをきちんと調べた上で、専門医の在り方の検討会は開かないと言っておられるのだから、この会でデータを出していただきたいと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。
○片峰座長 次回出していただけますか。
○武井医事課長 今村先生から非常に重要な御指摘がありました。次回出せるかどうかは分かりませんけれども、検討させていただきます。
○新井構成員 地元出身の方が地元に残るというお話は、確かにそのとおりだと思うのです。具体的に今の日本の現状を鑑みて、何パーセントぐらい地元出身の方が地元の医学部に入学すれば地域偏在解消に資するのか、その地域によっても違うのかもしれませんけれども、そのような試算はあるのでしょうか。
○堀岡医事課長補佐 大学別の出身者の枠は、前回の資料で出したとおりです。結局その出身者枠ではなくても、いっぱい出身者が入っているので、平成20年と平成21年のデータしか今すぐには言えないです。それで言うと、地元出身で医学部に入っている方が、資料4の2ページを見て横に足せば分かります。地元出身の枠の下のほうのグラフの3,101と872を足すと平成20年と平成21年の入学者においては、大体3,900人ぐらいが出身地と同じ大学に入学しています。出身地と異なる大学に入学しているのは、4,600と2,926の合計なので7,611名ぐらいだという分布になっています。
○新井構成員 私が聞きたいのは、結局地元出身者を大学に受け入れることが、地域医師の偏在の解決策になると言うけれども、やはり地元出身をどのくらいの比率で受け入れたら良いのか、具体的な数字を出して、それぞれの大学にある程度理解を得ないと、その話は進まないと思うのです。そういう意味でお聞きしたのです。別に今すぐということではないのですけれども、一つの目安として、このぐらいのパーセンテージ地元出身者を入れるべきだとか、入れることが望ましいとか、そのような数宇を出すべきなのではないかと思ってお聞きしました。
○片峰座長 文部科学省から、今の御意見に対して何か意見はありますか。
○文部科学省寺門医学教育課長 基本的には新井先生のおっしゃるとおりだと思います。入学のあり様は地域ごとでも様々な作りですし、徳島県のように御苦労されている所もあれば、自分の県の大学が足らずに、他の県の大学にまで養成をお願いする県も現在はあります。そういう状況を考えると、先生がおっしゃったように、やはりエビデンスベースに基づいて地元をどのように考えていくのか。入学のあり様全体についてはもとより、大学それぞれがお決めになることですので、そういう点に十分配慮しながらやっていくべきだという御指示であれば、正に先生がおっしゃるとおりだと思います。
○片峰座長 それでは次に移らせていただきます。次は、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会の開催について」です。実は、この検討会の存在は私も数日前に知りました。中身を見ると、本検討会のミッションと非常によく関係のある検討会である。先回議論になりました医師需給の将来予測ではもう少し足らないと、もう少しやろうということとものすごく関係のある検討会だと思います。この検討会設置の経緯とか、本検討会との関連も含めて説明をお願いします。
○重元医師・看護師等働き方改革推進官 資料5「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」です。1枚目に開催要綱を付けてあります。この検討会の位置付けについては、資料の11ページを御覧ください。6月のこの分科会における中間取りまとめの抜粋を付けております。この中に○が5つ並んでいますが、下から2つ目の○です。アンダーラインが引いてある部分に、「医師の働き方・勤務状況等の実態について、より精度の高い推計を行い、将来あるべき医療提供体制と、そこにおける医師の新しい働き方を示すビジョンを策定した上で、必要な医師数を推計するプロセスが必要」ということ。
一番下の○の下から2行目辺りの、「各都道府県が策定する地域医療構想やあるべき医療の姿を踏まえ、新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)を策定し、その上で必要な医師数を検討する」というように、この中間取りまとめで書いてあることを受け、この働き方ビジョン検討会の設置ということになっています。
1ページに戻ります。この検討会における検討課題です。2.の(1)と(2)の部分ですけれども2つあります。(1)は、我が国の医療を取り巻く状況の変化を踏まえた新たな医療の在り方を検討していただきます。(2)は、今申し上げました新たな医療の在り方を踏まえた、医師・看護師等の働き方や確保の在り方の2点について検討していただき、この新しいビジョン検討会の中で取りまとめをお願いしているものです。具体的には(1)の例にも挙げておりますけれども、多死社会の到来による看取りニーズの増大や、技術革新と言ったこと、こういう新たな医療の在り方を踏まえて、あるべき医療従事者の働き方、あるいは医師・看護師あるいは介護従事者といった方々の間の役割分担、確保策などについて御議論いただくということです。この新しいビジョン検討会で取りまとめられるビジョンを踏まえた上で、この医師需給分科会において、医師の需給推計を行っていただくというような位置付けです。
資料5の一番最後の20ページに工程表を掲げております。ちょうど真ん中辺りに赤い点線で囲ってある部分は、医師・看護師等の働き方ビジョン検討会というのを、先ほどもありましたように、10月3日に第1回を開催し、年度内ぐらいの取りまとめを目指しているスケジュールです。この取りまとめを受け、その下にある医師需給分科会において、医師需給推計を行う。また、この分科会は別に看護師やPT、OTの需給推計の分科会もありますので、医師の需給推計とともに、このビジョン検討会における取りまとめを踏まえ、看護師やPT、OTの需給推計の議論につなげていくという全体の流れになっています。新しいビジョン検討会の概略については以上です。
○片峰座長 御質問、御意見等があればお願いします。
○今村構成員 いろいろな経緯があって、行政としてこういう会をやられるのは何となく分かるのですけれども、是非申し上げておきたいことは、大臣の冒頭の御挨拶の中で、本分科会の中で十分議論をして、仮に現状としてはこういう数字だという根拠を置いて、みんなが合意して挙げた数字を全く無意味な数字だというようなことをおっしゃっているというのは、行政としてきちんと説明をしていないのではないかと思わざるを得ません。情報をきちんと上げないと、何のためにこの検討会を我々が時間をかけて開催しているのか全く分からないということになります。是非ともそこは行政の方にきちんと対応していただきたい。これでは立て付けとして、この会が主に今まで議論してきたことを、上意の概念で決めるということですよね。そんなことは今までに一度も説明を受けたこともない。山口構成員が書かれていることは私ももっともだと思います。もう一度この検討会としてそこを整理していただきたいと思います。
○片峰座長 最大の根拠が、この会の中間まとめで、更なる検討が需給予測のために必要であるというところになっているわけです。この前から議論になっているように、そういう議論というのはこの会では余りされていないのではないかということがありました。そういうところも含めて小川先生どうぞ。
○小川構成員 今村構成員のお話と基本的には同じです。中間取りまとめでは、一番重要な医師偏在対策については、今年末に向けて具体的に検討を進めて取りまとめを行うことになっています。先ほどの工程表からいくと、このビジョン検討会では1月に結論を出すことになっています。この辺の整合性はどうなっているのでしょうか。要するにビジョン会議で結論を出してから、この検討会で議論しろということなのでしょうか。
○武井医事課長 御質問の中で、それぞれの課題ごとに、どの検討会でどう進めていくかという点をまず整理したいと思います。今回この検討会で年末に向けて中心的に御議論いただく内容というのは、医師偏在対策になります。先ほどの資料の20ページを見ますと、医師需給分科会において、医師偏在対策に関して検討した上で、社会保障審議会医療部会へ御報告し、連携しながら議論をしていって、医師偏在対策について年内に取りまとめるというスケジュールです。
その下にある医師・看護師等の働き方ビジョン検討会は、一定の議論を経た後に取りまとめを行い、医師需給推計に役立てていくということで、需給関係の議論と、それから偏在関係の議論を、ここに示すような工程表で進めていきたいと考えております。
○羽鳥構成員 この働き方ビジョンの人選はどういう根拠で選ばれたのでしょうか。検討課題の(1)に、総合診療専門医、かかりつけ医の普及とあります。どういう根拠でこういう人選をしたのでしょうか。要するに、本当の意味でのかかりつけ医をされている先生がいるなら納得できます。
もう1つは医療に関する働き方ビジョンという以上は、ICUとかCCOとか36時間勤務している先生たちが、その実態として本当に困っているのだということは働き方としておかしいでしょうと。当直をしても、それは宿直だということで僅かのお給料しかもらえない。次の日の夜をまたずうっと起きていたとしても、次に外来をしなければいけないとか、そういうことは議論するべきことでしょう。そしたら、救急の先生が代表として入っていなければいけないのに、ドクターどの先生を見たって、自分では診療していないような、ある先生は社長みたいな先生ですよね。それから、ある先生は幾つかの大学を掛け持ちしているような先生ですよね。そんな先生は診療などしていないのに、どうしてこれで分かるのですか。
○片峰座長 まず、別の構成員の先生からの御意見を頂いて、まとめて最後にお答えください。
○権丈構成員 先ほど今村先生からも、こういう経緯を説明してほしいという話がありました。私は5月19日の第6回医師需給分科会で中間取りまとめを議論したときから、最終報告取りまとめのための準備をしています。それはどういうことかというと、中間取りまとめの中に、議事録には載っていないことがいっぱい書いてあるのです。これは、どういう経緯でそういうことになったのか、大体察しが付くわけです。前回のときにも話しましたけれども、会議の健全性を維持するために、外から意見が出されたらここで議論させてくれという話を前回しております。
だから、皆さんが非常にきつい状況にあるのは分かります。この会議はうるさいのがいっぱいいるから、それはできませんという準備を、最終報告のためにしておかなければいけないと思って、毎回同じような話をしていたのですけれども、ついにもう爆発してしまったのかなと。山口構成員の御意見はもっともなところがあって、この辺りのところはどのように調整していくのかというのはなかなか難しいと思います。この会議はうるさいのが結構いますので、会議した上から、それをぽっと要求を上乗せしていくとか、上書きしていくということは難しい会議なのだということがどこぞのほうに伝わっていけば、私としてはいいかなと思っています。
○新井構成員 武井課長から、医師需給バランスと地域偏在は別の議論のようなお話をされましたけれども、私はリンクしていると思います。ここだけを別にしろと言われても、結局つながるのは医学部の臨時定員増を最終的にどうするのかということになってくるわけですから、やはりこれは両方をリンクさせる形で、最終的にその結論を出すべきではないかと思います。医学部の定員増がどうなるかということに関しては、現に現役の高校生なども非常に注目しています。大人の論理で、若い人たちの夢を踏みにじるようなことは決してあってはならないと思いますので、その辺はいろいろ事情があると思うのですけれども、是非よろしくお願いいたします。
○森田構成員 私は親会議のほうの座長をやっているものですから、余計なことは言わないほうがいいと思っています。私自身もこの会議の存在についてはきちっとした形で報告ないし情報提供を頂いたことはないわけです。ただ、いろいろと周りの情報で自ずからその存在と、どういうことをやっているかということは察しています。いずれその調整という話になるのかと思っています。先ほど医事課長がおっしゃったような形での住み分けがきれいにできればよろしいのですけれども、本当にそういうことになるのかと思っております。
この会議自体がある意味で言うと、私もそうですけれども、やはり医学部の将来の定員も含めた需給総数についてどう検討するかというのがメインの主眼であった。そこの問題から地域偏在性の問題と、専門医の診療科ごとの偏在性の問題が出てきたということになっています。あちらのほうは察するところ、メンバーの方もそうですけれども、もう少し別な形でと言いましょうか、我々のほうの議論はある意味で現行制度を前提にしてどのように考えるかという議論かと思います。それに対してその制度そのものについてもう一度見直そうとされているのではないかと思います。ただ、そちらのほうが先に出て、こちらが今までの前提でやっていると、これまたちょっとおかしな話にもなりかねないと思います。これは事務局からいろいろお話を伺って、どうするかというのは考えさせていただきたいと思います。
それと関係しますけれども、本日の議論を聞いていての印象と言いますか、先ほどの尾身先生とか吉村先生のお話もそうですけれども、それについてちょっとコメントさせていただきます。1つは私自身今、社会保障人口問題研究所におりますけれども、日本の人口減少というのは相当急速に進みます。尾身先生も触れていらっしゃいますけれども、需要・供給とか、地域偏在性ということを考える場合に、現時点での人口分布であるとか、それだけを念頭に置いたのでは将来的に狂いが出てしまうということです。将来をどう予測するかというのは難しいところですし、いずれにしても予測、推計ですから幅があるわけです。それをどのように考えていくかというのも、この議論をするときには重要な要素と思っております。
2番目は、昨年の春ぐらいまで私は中医協の公益委員をやっておりました。その観点から言うと、保険財政そのものが非常に厳しくなっているのは申し上げるまでもないことだと思います。最近では、これがいずれにせよ大規模な改革をしない限り、持続可能性を失うのではないかということも言われるようになってきています。数字を見ている限り、それは決して非現実的な話ではないと思います。その中でこれまで医師の需給もそうですし、地域偏在もそうですけれども、我が国でどういう形でそれを調整してきたかと言うと、基本的に診療報酬でやってきた。おっしゃるように皆さん地方で、地域で医療をしてくださいという呼び掛けはしますけれども、それではなかなか動かないわけです。
多くの国もそうですけれども、我が国の場合は特に診療報酬の算定要件と点数でもって医療の供給をコントロールしてきたところがあると思います。そうは言っても、患者さん1人を診て幾ら、何点という世界ですので、患者さんの絶対数が減ってくる場合に、いろいろな意味でそれだけでは調整できないところが出てまいります。中医協の診療報酬体制については佐々木さん、局長とも御一緒させていただきました。診療報酬の中で、そうした地域の偏在性とかバランスを修正するためにいろいろな工夫はされておりますけれども、そんなに効果的な方法は出てこないということだと思います。
そこで出てきたのが、尾身先生も提案されましたけれども、保険医の総数、そうした数量的な制限というものをある程度加えざるを得ないのかと思います。長い説明は省略いたしますけれども、そうした保険財政の観点から、どのような形で地域偏在をなくしていくのか。医師の供給は将来的に過剰になる可能性もあるわけですから、それをどう考えていくかという視点も重要ではないかと思っています。本日は尾身先生が保険についてもちょっと触れられましたけれども、それ以外では余りその議論はなかったかと思いますので、あえて言わせていただきました。
○小川構成員 新井構成員からお話があったので、本日の趣旨とはちょっと外れるかもしれません。以前に1度議論をしたことがあります。平成29年度に終わりを迎える臨時定員増の措置については、中間取りまとめで平成31年とセットにするということが決められたわけです。ただ、このような定員の問題等々については、定員増を決めたのが新医師確保総合対策、あるいは緊急医師確保対策です。閣議決定レベルの意思決定を行って、政府が国民に説明をしたわけです。
ところが、今回の平成29年を平成31年まで延長しますということに関しては、委員会で言っているだけで、国民に周知されていない。これに関しては、都道府県とか大学も含めて困るわけです。それから、受験生も大変困るわけです。延長の条件等々も含め、政府としてちゃんとしたメッセージ出すべきです。定員増の時は閣議決定だったと思いますが、政府からの正式な告示が出されました。今回もはっきりした方針を示す必要があると思います。
○片峰座長 たくさん出ましたけれども、最後にまとめて事務局からお答えいただき、それで本日は終わりたいと思います。
○武井医事課長 たくさんの御意見を本当にありがとうございます。おっしゃる点は事務局のほうでもしっかり受け止めて、次の検討にいかしていきたいと思います。各論で何点か触れられていた点について補足して申し上げます。
新井先生から御意見を頂きました、リンクしている、関連しているというお話です。これはおっしゃるとおりかと思いますが、差し迫った案件として緊急で取り扱う課題である偏在対策については、優先的に取り組んでいく必要があるといった点です。需給問題も今後はしっかり取り組みますが、多分次の大きな節目となる平成32年を念頭に、併せて今後議論を進めていく必要があると考えております。つまり、差し迫った問題について、特に偏在は明らかになっていますので、こうした明らかな問題については優先的に取り組んでいく必要があると考えております。
国民に対する説明ですけれども、この会議は全部オープンで、資料も公開でやっております。先程、例示として閣義決定という指摘がございましたが、今後特に平成32年の話については非常に大きな転機になりますので、やはり大きな視点から、例えば閣議決定といったことも含め、今後検討していく必要があると考えております。
いずれにしても、山口構成員からも御意見を頂きましたので、皆さんから頂いた御意見を事務局としても真摯に受けとめて、今後の検討を進めてまいりたいと考えております。ありがとうございました。
○片峰座長 最後に、次回の日程等について事務局からお願いします。
○堀岡医事課長補佐 次回は10月19日(水)の開催を予定しております。3時間を予定しております。
○片峰座長 これで終了いたします。御苦労さまでした。
※山口構成員 「第8回医師需給分科会への意見」
2016年10月6日に開催されます第8回医師需給分科会に所用のため出席できませんので、以下の意見を提出致します。
第8回医師需給分科会の議題に、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会の開催についての報告」がございます。これは、10月3日に開催された同検討会の報告のことを指していると思います。
同検討会は、医師需給分科会の中間取りまとめ4ページに記載されている「本調査では、女性医師をはじめとする医師の働き方改革を含めた意向等に関する調査等も併せて行い、本年中に各都道府県が策定する地域医療構想やあるべき医療の姿を踏まえ、『新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)』を策定し、その上で必要な医師数を検討する」を踏まえて、知らない間に検討会メンバーが構成され、既に1回目が開催されたのだと考えます。そもそもこの一文は、中間取りまとめまでの議論において一度も出てこなかった意見が唐突に組み入れられたものです。構成員が組み入れられた意味について説明を受けず、理解していない状況の中で、既に検討会が立ち上がり、その内容が「報告」という形でおこなわれることに非常に疑問を覚えます。
医師需給分科会が既に何度も議論をおこなっている現状を考えると、その議論に影響を及ぼす検討会ならば、医師需給分科会の中でその必要性が指摘され、医師需給分科会では調査や議論、検討することが無理なので、別の検討会やワーキンググループで話し合う必要があるという結論になって立ち上がるのが筋だと思います。まったく議論されず、中間取りまとめに書き込まれた内容に基づいて構成された検討会の議論の内容が医師需給分科会の今後の議論に影響を及ぼすということになったいきさつについて、理解や納得がいきません。この検討会の位置づけや役割を明確にし、医師需給分科会との関係性について今一度議論をする必要があるのではないでしょうか。問題提起とさせていただきます。
以上
<照会先>
厚生労働省医政局医事課
(代表) 03(5253)1111(内線4127)
(直通) 03(3595)2196
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 医師需給分科会> 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第8回)議事録(2016年9月15日)