ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会)> 第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 議事録(2016年9月16日)




2016年10月7日 第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 議事録

健康局健康課

○日時

平成28年10月7日(金)14:00~16:00


○場所

厚生労働省省議室


○議事

○大林室長補佐 ちょっと早いですが、始めさせていただきます。第17回「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会」を開催します。

 本日は、御多忙のところ御出席いただき、まことにありがとうございます。

 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。

 また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。

 続きまして、出欠状況について御報告いたします。

 中山委員、宮崎委員が御欠席の連絡を受けております。また、釜萢委員からはおくれていらっしゃる旨の連絡を受けております。

 現在、委員10名のうち7名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会令の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 なお、本日は福岡歯科大学総合医学講座小児科学分野教授である岡田賢司先生に参考人として御出席をいただいております。なお、岡田先生は予防接種推進協議会からの推薦ではなく、本日は専門家としての見解をいただくことで御参加をいただいております。

 では、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、配付資料一覧、委員名簿、座席表、資料1-1~1-3、参考資料1と2、各委員からの審議参加に関する遵守事項の申告書を御用意しております。

 配付資料一覧を御確認いただき、不足の資料等がございましたら事務局にお申し出ください。

 申しわけございませんが、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので御協力をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○大林室長補佐 ここからの進行は岡部部会長にお願いいたします。

○岡部部会長 こんにちは。川崎市健康安全研究所の岡部です。

 それでは、きょうは第17回になりますけれども、「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」を行います。

 お忙しいところ、おいでいただいてありがとうございました。少し涼しくなってきたので、動きは多少はよくなったかもしれませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、岡田先生には遠いところおいでいただいてありがとうございました。先ほど御説明があったように、岡田先生は日本小児科学会の予防接種の委員長と、予防接種推進専門協議会をやっておられますけれども、もとの学会等々と協議をしてきたわけではなく、有識者としてのご発言であるというのは、一応お断りしておかなくてはいけないことだと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、最初に事務局のほうから審議参加に関する遵守事項についての報告をお願いいたします。

○大林室長補佐 審議参加の取り扱いについて御報告いたします。

 本日御出席いただきました委員から、予防接種・ワクチン分科会審議会参加規定に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄付金等の受け取り状況と、申請資料への関与について御申告をいただきました。各委員からの申告内容については、机上に配付しておりますので御確認いただければと思います。

 本日の出席委員の申し出状況及び本日の議事内容から、今回の審議への不参加委員及び参考人はおりませんことを御報告いたします。

 以上です。

○岡部部会長 どうもありがとうございました。特に何かここまでは御意見、その他ありますでしょうか。

 ありがとうございました。

 それでは、早速、議題のほうに入っていきたいと思うのですけれども、議題は一番最初の紙のところにありますように、本日は「予防接種に関する基本的な計画」のいわば中間報告をまとめるというところで、このPDCAサイクルに係るヒアリングをいろいろ行うということが、しばらくの予定になっております。

 それで、きょうは3名の先生方から意見をいただいておりますので、1つは坂元委員で自治体からというような形、それから多屋先生が感染研疫学センター予防接種室で今までやってこられたことと、岡田先生も今までの臨床・基礎研究の御経験から御意見をいただくということにしております。

 最初は、坂元委員でよろしいでしょうか。

○坂元委員 はい。

○岡部部会長 よろしくお願いいたします。

○坂元委員 皆様、こんにちは。川崎市の坂元でございます。

 市町村における予防接種業務の流れについて、簡単に説明させていただきたいと思います。これは、特に川崎市の例でございますが、ほとんどのどこの市町村もほぼ同様な流れで業務をやっているものかと思います。

 まず、自治体は予防接種をするに当たって、予算を見積もるということから始まります。当然、子供などの対象者の数とその接種単価、そういうものを合わせて年度予算を決めます。接種単価に関しましては、ワクチンは購入価格等に依存するわけですが、医師への技術料などを合わせた接種単価に関しては毎年、委託事業者である医師会と協議して決めさせていただいております。

 川崎市では大体、毎年1万5,000人の出生、人口1,000対大体11弱ぐらいの出生率なのですが、B型肝炎などを除いて年間37億程度がかかっております。川崎市は地方交付税不交付団体でございますので、全額これを市が負担しているということです。この辺に関しましても一応、厚生労働省さんのマターではなく、総務省さんのマターだと思うのですが、地方交付税で9割を見ているという話なのですが、実際としては中身が見えないので、実態は幾ら出ているかがわからないという意見が、自治体から出されているというところでございます。

 予算の確定と予診票の作成というということで、これは予防接種の内容が変わらなければ以前のそのまま踏襲して使うということですが、その予診票が新たなものになれば、場合によってはメーカーとも相談しながら、さらにわかりやすい予診票を医師会の先生とも相談しながらつくっていくということです。つくられた冊子・予診票等はこの2カ月児、1歳、3歳、9歳、11歳に関しては誕生日の前月にその冊子等を対象者に送るということで、全対象者に冊子・予診票を送るようになってます。

 予防接種が終わった方に関しましては、接種医療機関は毎月10日までに予診票と請求明細を我々川崎市のほうに送っていただきます。この予診票の2枚つづりになっている一つを送ってもらって、それを職員が全内容を厳しくチェックします。期間が合っているか、ロット番号、発熱の有無とか全ての内容をチェックします。これが実は相当大変な作業でございまして、そのチェックが済んだものをデータ化して、予防接種台帳に入れ込み、接種をされた医師会に料金をお支払いするということになっております。まれにこの段階で若干、同意部分がなかったりとか、接種期間がずれていたとか、そういうものを見つけることがございます。

 もう一つ、川崎市は医師会にこの事業を委託している関係上、毎年、年に1回、講習会を開いております。これは、病院からは代表者の医師1名が必ず出席し、開業の先生は接種医自身が出席する必要があります、これは必須でございます。出席がなければそこは接種医療機関として認めないという、かなり厳しいものです。予防接種の内容・概要などについて詳しく2時間ほどかけて、もちろん一部専門家も呼んで、学術講演も含めて予防接種の概要を説明していただくということです。

 そして、「予防接種の勧奨」といたしましては、資料の2枚目ではなく(2)というところでございます。

 「予防接種の勧奨」に関しましては、予防接種台帳が導入されたことによって、比較的、接種漏れの勧奨がしやすくなったという面がございます。毎回、この台帳を見て接種漏れのあるところにはいろいろな形で勧奨をさせていただいております。川崎市におきましては、1歳6カ月と3歳、これは区役所保健福祉センターで乳幼児健診をやっております。来院率はほぼ90%以上でございますので、この際に事前面接をして保健師のほうから母子手帳でもって予防接種の接種状況の確認をまず行って、受けていない方には積極的に勧奨をしているところでございます。

 もう一つは、教育委員会と連携しまして、就学時健診の際に予防接種済率をチェックしております。

 あとは、こういう予防接種の重要な事項を取り決める「予防接種運営委員会」というのを市で開催しております。多屋先生にも委員として御参加していただいておりまして、年に2回ほど開催しております。重要事項は全てここで決定し、市長のほうに諮問答申という形になっております。

 現在、市町村における予防接種の課題としましては、これは自治体によって温度差があると思うのですけれども、接種費用の負担があるかと思います。国が9割見るという形になっておりますが、中身が見えないので自治体によって受け止め方に温度差があるのだろうと考えるところでございます。

 それから、予防接種がかなり多くなって問い合わせの内容が非常に複雑化して、たくさん問い合わせが来ているということです。幸い、川崎市の場合は予防接種の担当に小児科医が2人おりますので、そこが対応して細かい学事的な相談については受けているということなのですが、小さな市町村では医師そのものがいないとかで、困ることがあるという話も時々聞きます。

 予防接種制度そのものに関しましては、川崎市の場合はコールセンターを設置しまして、細かい制度とか仕組みなどその辺に関してはこのコールセンターで現在、一本化で説明できるようになっております。

 マイナンバーに関してですが、これもまた厚労省の問題ではないと思うのですが、マイナンバーネットワークが導入されて、非常に予防接種の自治体間の透明性が高まったという点に関しては非常に評価できるものであるのですが、実は、いろいろな自治体に聞きますと、この予防接種台帳をマイナンバー制度を使ってアクセスすることが、可能か不可能かという意見が分かれておるようです。マイナンバーを本人の同意なく勝手にアクセスできないと解釈している自治体が多いと思います。つまりどういうことかというと、ほかの自治体さんから転入してきた方の情報を、その転出先自治体の予防接種台帳に入って、つまりそれをマイナンバーネットワークを使ってアクセスできるかどうかというのが、自治体によってかなり意見が分かれております。マイナンバーを本人の同意なく勝手にそういうふうにやってアクセスしてはいけないのではないかと解釈している自治体が意外と多いということです。この辺は何か定まった意見がないということで、現実に、今はほとんどの自治体が、予防接種の記録がわからなくなってしまったとの保護者の方から申請があった場合、了解の上で相手側の自治体にマイナンバーネットワークを介して照会をかけるということです。これは御本人の同意を得ているのでやっているのですが、それ以外の同意がない部分に関しては、非常に意見が分かれるということで、ここが一つ自治体の中での悩みかなと思います。

 また、健康被害に関してもいろいろ相談が多くて、かなりレベルの高い相談内容が来ておりまして、ここら辺もやはり全ての自治体が専門家を配置できるわけではないので、大変な課題だと考えております。

 私からは、以上でございます。

○岡部部会長 どうもありがとうございました。

 きょうは、それぞれ3人の先生方がおられるので、その先生方の意見・御発表を伺ってから、この中での質疑あるいはコメントと行きたいと思いますので、よろしくお願いします。

 第2番目のほうは、多屋委員から御報告をお願いします。

○多屋委員 多屋です。よろしくお願いします。

 資料1-2に沿ってお話をしたいと思います。

 まず、今回「基本計画PDCAサイクル」のヒアリングということで、前回提出された資料の「Plan」というところを見ていくことにしました。どういうことを実施してきたかということを考える上で、「Plan」をスライドのほうにまとめています。

 1番目ですけれども、「Plan1」の第一「利用可能な疫学情報を含めた科学的根拠を基に比較衡量する」という部分。それから、同じく第一の二「国は、予防接種施策の推進の科学的根拠として、ワクチンの有効性、安全性に関するデータについて可能な限り収集を行い」という部分。

 その次のページに行きまして、「Plan」第二の「予防接種に関する啓発及び知識の普及」「予防接種事業に従事する者に対する研修の実施」「予防接種の有効性及び安全性の向上を図るために必要な調査及び研究」「副反応報告制度の運用」。

 その次に「Plan」の第三ですけれども「ロタウイルス感染症」「新規のワクチンについて」「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律上の手続を経て製造販売承認が行われた際には、国は、速やかに、当該ワクチンの法上の位置付けについて分科会等の意見を聴いた上で検討し」という部分についてのファクトシートの作成というのが後で出てきますけれども、その部分。

 その次のスライドに行きまして、第三の中では「国は、接種率についての統一的な算出方法及び目標とすべきワクチンごとの接種率について、引き続き検討する」という部分。それから、その下の「被接種者及びその保護者等に対し、感染症に関する情報、予防接種の効果、ワクチンの有効性及び安全性、副反応のリスク及び副反応を防止するための注意事項として、普及啓発の推進」「リーフレット等の作成や報道機関と連携した広報等」の部分。第六としては「感染症発生動向調査による疾病の発生状況及び重篤度の評価、感染症流行予測調査による抗体保有状況の調査並びにワクチンの国家検定による適正管理等」。第六として「副反応報告の報告書の電子化等の検討を進める必要がある」の部分。そして最後の「Plan」ですけれども、第六の三の中にある「感染症発生動向調査及び感染症流行予測調査等により、収集及び解析した上で検討を重ねることが重要である。感染症流行予測調査及び予防接種後の健康状況調査の実施を通じ、ワクチン導入後の当該ワクチンの有効性及び安全性の評価並びに起因病原体の動向の把握に努めるとともに」感染研、地方公共団体、医療機関、保健所、地方衛生研究所と連携体制を強化するという部分について、「Plan」の中でこれまで基本計画が策定されてから実施してきた部分があるかなと思って、赤い字をつけております。

 実際に行った「Do」の部分ですけれども、感染研の中の私が所属している感染症疫学センターでは、毎年度、「予防接種で予防可能疾患の国内疫学情報」として患者情報だったり、病原体情報だったり、抗体保有率情報だったりをまとめております。その資料を、年に1回作成いたしまして、公益財団法人予防接種リサーチセンターが主催されて、全国7ブロックで開催されている「予防接種従事者研修会」というところで、全国の自治体での予防接種従事者の方に対して疫学情報を提供しております。

 2つ目の「Do」としては、副反応疑い報告について電子媒体報告書をつくり、副反応アプリを用いた週帳表(集計、解析)を作成して、厚生労働省とPMDAと情報共有を行っているのですが、この部分は前回の基本方針部会で紹介いたしましたので省略いたします。

 3つ目としては、今、ファクトシートの作成が3つ動いています。少し前に、13価の肺炎球菌結合型ワクチン、10価の肺炎球菌結合型ワクチンのファクトシートが、感染研の中の、当該ワクチンの担当部室並びに疫学センターのメンバーでつくられているのですけれども、現在は「新たに承認されたヒブワクチン」「帯状疱疹ワクチン」「第2期のDTに替わって接種が検討されているDPTワクチン」についてファクトシートを作成中です。

 その3としては、予防接種率のところで何ができているかなと考えましたところ、麻しんと風しんについてのみなのですけれども、1期については年に1回、2期については年度2回、集計しているのですが、つい先日、全市区町村の1期・2期の接種率2015年度分が公表されたところです。

 あとは、感染症疫学センター長が毎月1回、IASRに特集された疾病を中心にメディアの方を対象とした意見交換会を開催されています。そこで、感染症や予防接種に関する情報発信が行われています。

 あとは、予防接種スケジュールを制度が変わるたびに改訂したり、風疹排除についてはかなり力を入れて、毎月啓発資料を作成しているといったことが「Do」として挙げられるかと思います。

 次に、「予防接種で予防可能疾患の国内疫学情報のまとめ」という資料を印刷していただいているのですけれども、この資料については、5ページ目の下にある感染症疫学センターのメンバーの8人で分担してつくっています。この内容は、70分間で予防接種従事者研修会にて紹介させていただいていますので、とても今日全部紹介することはできないので、この中から特に予防接種の有効性の部分を記載できているスライドをピックアップして御紹介したいと思います。あと数分間なので、本当に一部だけの紹介となります。

 一番最初に、DPTですけれども、ページ数で行きますと10ページの下が、「百日咳抗毒素抗体保有状況」がございます。感染症流行予測調査事業によって、ここに書いてある7つの都道府県で測定されているものなのですけれども、百日咳については最近、接種率が非常に高く、また乳児期早期から始めてもらえるようになったことから、0~5カ月の抗体保有率が非常に高くなっています。

 しかしながら、一旦抗体価は下がりまして、6歳ぐらいから抗体価が上がってくるのですけれども、これは自然感染によって抗体が上がってきているのを見ていると考えております。百日咳菌によるブースターがかかっているということを示しています。現在ファクトシートがつくられていますけれども、第2期・1112歳のところでの百日咳菌に対する免疫の付与は重要ではないかなと思います。

 その次にちょっと飛びまして12ページ。これはジフテリアなのですが、ここでDTの効果が見事にわかるのは1112歳のところで、色で行きますと青のグラフです。上から3本目の青のグラフがここで急激に上がっているのがわかります。右側のグラフでも見ていただくとわかると思うのですけれども、2期のDTを接種することで抗体価がぐんと上がっているのがわかります。

 同様に、13ページ目の下の破傷風についても同じで、やはり2期の1112歳のDTの接種によって抗体価に大きくブースターがかかっているということがわかります。

 その次にまた随分飛びまして、次はHibのところに行きたいと思います。15ページ目の上のスライドですけれども、これは庵原・神谷班、今、菅班の先生方がずっとされている疫学調査で、Hibのワクチンが導入されて定期接種になって、Hibによる髄膜炎・非髄膜炎を含めた侵襲性インフルエンザ菌b型感染症が激減しているという効果が出てきているというのがこの表からわかります。

 その次もちょっと飛びまして、ポリオなのですけれども、21ページの上のグラフです。これもDPT-IPVが接種されるようになって、生ポリオワクチンのときはなかなか3型の抗体保有率が上がりにくかったのですが、今は1型も2型も3型も、生後すぐの0-5カ月群から3つとも抗体保有率が高く上がっているというのが見えてくるようになりました。

 日本脳炎は、先日、4人の発症が報告されましたけれども、今回は高齢者の方の発症だったのですが、子供について言えば、23ページ目の下にあるように、積極的勧奨の差し控えが2005年に行われましたが、その後の勧奨の再開によって、3歳以上の子供たちの抗体保有率は積極的勧奨を差し控える前よりさらにもうちょっと上がった、非常に高い抗体保有率まで持ち直しているということがわかります。患者数も今のところ非常に少なくて毎年10人未満で、特に子供の患者さんの発症は、22ページ目の下の日本地図にあるように、2011年から2016年までではこの3名となっています。

 ちょっとまた飛びまして、水痘の効果のところに行きます。30ページの下のグラフなのですけれども、水痘のワクチンが定期の予防接種になった201410月から大きく患者数が減っています。特に、定期接種対象年齢である1-2歳の割合が減っていることがわかります。

 また、同様に31ページ目の上のグラフにあるように、入院水痘は今、全例届出疾患になっていますけれども、特に0歳、1-2歳、3-4歳の入院水痘の報告数が減少しているということから、ワクチンの効果が見えてきます。

 次に飛びまして33ページ目の下、ムンプスなのですが、今年、ムンプスが久しぶりに流行しておりまして、結構患者さんが多い状態となっています。これについては、任意接種対象疾患ということから、なかなか流行は変わっていないという状況が見えていると思います。

 ロタウイルスなのですけれども、37ページ目。これは、三重県津市で研究班の先生方がされた調査ですが、ワクチンの接種率が上がることによって、入院患者さんあるいはその下の外来患者さんが減っているという効果の部分が見えてきています。

 一番最後に、最近話題になっている麻しんなのですけれども、47ページ目の下のグラフです。年齢分布を示していますが、明らかに0~1歳のところと、次の山が20歳になっていまして、この間がぼっこり抜けている部分が2回接種を受けている子供たちの数が多くなっている年齢群で、成果の部分、有効性の部分を見ているのかなと考えているところです。

 次が最後ですけれども、風疹です。51ページですが、ことしは現在のところ、100人ちょっとの患者報告数なのですが、残念ながら2013年の大きな流行以降、成人男性の感受性者の蓄積は全く解消されておらず、30代後半から50代男性については2025%が抗体陰性のままというのが現在の状況です。

 全部御紹介するのは従事者研修会のときになってしまうのですけれども、こういうような資料を用いて、疫学情報をまとめて御紹介させていただいております。

 以上です。ありがとうございました。

○岡部部会長 どうもありがとうございました。

 引き続いて、岡田先生、どうぞよろしくお願いします。

○岡田参考人 福岡歯科大学小児科の岡田と申します。

 岡部先生から御紹介いただきましたように、予防接種の学会がまとまっています予防接種推進専門協議会およびそこに加盟している日本小児科学会などアカデミアからの意見というよりは、一小児科医の意見としてこの資料1-3を作りました。中身は、基本計画ごとに意見を述べています。

 まず、1番目の「(1)予防接種に関する施策の基本的理念」として、「予防接種・ワクチンで防げる疾病は、ワクチンで予防すること」ということをきちっと明示されたことは、社会に対して大きなインパクトを与えたと考えます。

 2番目の「(2)科学的根拠に基づく予防接種に関する施策の推進」。これも予防接種・ワクチン分科会及びその下の、基本方針部会を初めとした3つの部会から出されてきた多くの予防接種施策が実施されたおかげで、欧米とのワクチンギャップは少しずつ解消されてきたと考えます。

 ただ、今後は、本部会あるいはワクチン分科会などで審議する課題を中・長期的に掲げて、関連学会やワクチンをつくっている製造業、産業界などが、米国のACIPの会議ではボーティングメンバーだけではなくて、Liaison Representativesとしていろいろな審議会に参加しているというモデルがございます。関連学会や産業界がLiaison Representativesとして、このような審議会、協議に参加して、産・官・学が三位一体となって予防接種施策を推進する場の設定を望みたいと思います。

 2番目に、それぞれの役割分担に関する事項として、まず「(1)国の役割として」。これは以前に比べると、随分と国の担当課が統合されてきていますけれども、まだワクチン開発や審査に関しては局などが違っていて、ワクチンに対する窓口が一本化されていませんから、同じワクチンに関する事項でも、国の中で十分に情報共有がなされていないというようなことがあります。国の機関の窓口をできるだけ一本化していただきたいということです。

 2)が、これは先ほど坂元先生からもありましたけれども、予防接種にかかわる財源を市町村へ地方交付税として支給されていることは、市町村としてはありがたいことだろうと思いますけれども、その使途を道路などと同じように、できれば予防接種関連だけに限定していただければ、市町村も随分助かるのではないかと考えます。

 2番目に「都道府県の役割」として、全ての都道府県には現在、予防接種センターが設置されていません。予防接種センターは、地域でいろいろな機能がございます。多くの都道府県で予防接種センター機能が実施できるように、都道府県からの域内の医療機関への働きかけをお願いできればと考えます。

 2)は国と同じですけれども、国からの通知が、予防接種関連の部署すべてに伝わる仕組みが必ずしも都道府県庁内でできていません。組織の縦割りの緩和を都道府県庁内でもお願いをしたいと考えます。

 「(3)市町村の役割」として、実施主体の市町村として、県域の市町村の場合に、県を超えた場合のより柔軟な対応ができないかということもお考えいただければと思います。

 1枚めくっていただいて、役割分担で「(4)医療関係者の役割」としては、これは医療安全の観点から、私たち医療従事者は適切な予防接種をやるように心がけていますけれども、避けられない接種事故がどのように起こっているかという状況がそれぞれ違います。接種事故の防止に努めています。

 「(5)ワクチンの製造販売業者及び卸売販売業者の役割」としては、安全で有効なワクチンの研究開発を行うことを、製造販売業者にはお願いしたいこと、および卸売販売業者に関しては、ワクチンの安定的な供給に関して情報共有をしていただければ、今のようなワクチンが足りないというような事態も少なくできるのではないかと考えます。

 「(6)その他の関係者の役割」として、報道機関に関しては、ワクチンというのは一旦世の中に出ると社会のものになります。国民が予防接種による感染症予防の有用性及び安全性等の情報について、正しい知識が得られるように、さらに啓発に努めていただきたいと思います。

 教育関係者に対しては、学校保健の観点から、予防接種及び感染症の知識の普及に努めていただきたいたいです。

 学会に関しては、予防接種に関連している学会・医会の集合体であります予防接種推進専門協議会は、アカデミアの立場あるいは現場の医会の先生方もいらっしゃいますから、臨床現場のニーズの視点から、予防接種施策の評価あるいは検証を定期的に行っていかなければならないと考えます。

 3番目です。「(1)基本方針」として、予防接種・ワクチン分科会および3つの部会の目標に対して、今回のようなPDCAサイクルで、評価・検証を行うに際しては、1つは、定期的に、なおかつ厚労省外、例えば、私たち関連学会あるいは産業界など省外から評価・検証を受けてはどうかと考えますし、省内でしたら、ワクチン・血液製剤産業のタスクフォースの視点から評価を受ける体制づくりを検討してはどうかということも考えました。さらに、ワクチン分科会、3つの部会で審議されるいろいろなアジェンダを日常臨床のニーズの観点から立案するような、米国のACIPでもありますようなワーキンググループあるいは小委員会を、それぞれの部会・分科会のもとに設置してはどうかということも考えました。

 4)は、成人の予防接種が増えてきました。「成人への予防接種施策」をこの基本計画の目標に追加をしてはどうかということも考えました。

 「(2)ワクチン・ギャップの解消」は、少しずつワクチンギャップが解消してきて、先ほど多屋先生もお示しになられましたように、多くのワクチン対象疾患が減ってきたことは、社会に大きなインパクトを与えたと思いますけれども、まだギャップが存在する項目もございます。

 3番目、これも先ほど多屋先生がお示しになられましたけれども、ワクチンごとの目標接種率というのは現在、麻しん、風しんだけかなと思いますけれども、ワクチンごとの目標接種率を設定して、これは疫学センターと共同で対象疾患報告数との推移を見ながら、予防接種施策が適切に行われているかどうかということを検証してはいかがかと思いました。

 「(4)新たなワクチンの開発」に関しては、新規に承認されたワクチンは、その都度、法的な位置づけの検討を基本方針部会のもとに設置されていますワクチン評価に関する小委員会で検討を行うという工程表が明示されたことは、ワクチン開発に関しては大きな駆動力になったと思います。

 ただ、今後は新しいワクチン開発だけではなくて、百日咳などの現行ワクチンの改良に際して、産業界が行う開発治験だけではなくて、学会が行っています基礎的及び臨床研究の成果を、このようなワクチン改良、開発に活用できるような制度設計が必要ではないかと考えました。

 4番目の「(1)予防接種に要する費用」のところです。費用に関しましては、先ほど坂元先生が自治体の立場からお示しいただきましたけれども、この予防接種にかかわる費用は、実施主体の自治体と地域医師会の協議の中で、地域の実情を考慮しながら算定をされていて、地域差が随分大きくなっています。地域あるいは現状を考慮しながら、予防接種にかかわる費用の目安を自治体に明示できないかということです。

 2)は、同時接種がふえてきて、「同時接種での費用負担」ということで予防接種にかかわる費用を、同時接種をしたときに単純に足し算でいいのかどうか、自治体と医師会の間でトラブルになっているということも聞きます。「同時接種での費用負担」というのも御検討いただければと思いますし、3)のワクチン価格の低廉化という意味では、イギリスなどのように国が一括で買い上げて、ワクチン価格の低廉化を図ってはどうか。あるいは、地方自治体の中では地方自治体が一括で買い上げて、ワクチン価格の低廉化を図っているというところもございます。

 4)は先ほど申し上げました。

 さらに、5番目として追加としては、費用対効果がワクチン評価の小委員会でいつも計算をされますけれども、その費用対効果の結果を見て、ワクチン価格というのも国として検討をいただけないかということも考えました。

 「(2)予防接種記録の整備」も先ほど坂元先生が言われましたけれども、多くの市町村で電子データでの記録がなされるようになってきています。ただ、これを現在のマイナンバーと連結できるかどうかというのは、先ほど、まだうまくできていないということは伺いました。それらを、今後は健康保険情報と、もし連結できれば、個人の健康管理の管理方法として役立っていくのではないかということも考えますし、任意接種のワクチン歴もその中に組み込んで、自分自身のワクチン接種歴をいつでもどこでも把握できる仕組みを構築できないかということも考えます。

 5番目として、まず「(1)開発優先度の高いワクチン」として、これは予防接種推進専門協議会から開発優先度の高いワクチンを、主に混合ワクチンをベースに提案をさせていただきましたけれども、これらの開発優先度の高いワクチンの開発状況を予防接種ワクチン分科会、基本方針部会、生産流通部会などに定期的に報告をしていただけないかということもお願いしたいと存じます。

 「(2)研究開発を促進するための関係者による環境作り」としては、これは先ほど申し上げましたように、基礎研究と臨床研究で得られた成果を、新たなワクチン開発や現行ワクチンの改良に結びつける制度を検討していただけないかということです。

 「(3)ワクチンの生産体制及び流通体制」に関しては、研究開発及び生産流通部会に、インフルエンザワクチンのように、年度初めに産業界あるいは流通業界から、その年のワクチンの供給量を年間計画として報告をしていただけると、今のように、今は緊急時あるいは平時どちらも考えられますけれども、地域によってはワクチンが足りないというようなことが起こっていますから、そのような年度初めに、ワクチンの流通量・生産量をきちんと報告をいただけるシステムができないのかどうか。特に、安定供給の観点からは、平時からワクチンの生産、主に流通、これらの整備と情報公開を促進していただけないかということを考えました。

 6番目です。「(1)有害事象の報告および調査・研究制度の充実」として、副反応検討部会で定期的に任意接種のワクチンも含めて、接種後の有害事象が報告されるようになったことは、大きな進歩と考えます。さらに、有害事象報告として10月からは副反応疑い報告となったことは、まさに米国のVAERSのようなシステムはできたのだろうと考えます。

 ただ、1)として、1つの有害事象が異常集積として副反応検討部会に報告された場合に、その因果関係を検証するための疫学調査研究に関しては、ヒブおよび肺炎球菌ワクチン接種が始まったときに死亡例が報告されてた際に、現在、多屋先生を中心に、接種後の乳幼児突然死症候群の疫学調査研究が行われていますけれども、そのような疫学調査研究が、異常なシグナルが副反応検討部会に報告された場合には、迅速に調査研究が開始できるような、米国のワクチンセーフティーデータリンク調査制度(VSD)を参考に、制度として確立できないかと考えました。

 さらに、学問的に評価する米国のCISAネットワークというのがございます。数年前にインフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシー症例の異常集積が起こったときに、科学的にその原因を検証して、ワクチン改良が行われ、翌年にはインフルエンザワクチン接種後のアナフィラキシー症例の発生頻度は元に戻ったというようなこともございます。ある事象の異常集積を検知した際、当該事象を基礎及び臨床で専門的に研究している大学や研究組織と共同して、起こった有害事象を科学的にその原因を究明して、ワクチンの安全性を高める体制づくり、米国のCISAネットワークのようなネットワークを構築していただけないかということも考えました。

 「(2)医療安全の向上」としては、現在、予防接種の医療安全が社会から求められていて、今、報告が市町村から上がってきていると思いますけれども、より正確な報告体制を整備して、それを迅速に現場に還元することで、現場はより医療安全に努められるのではないかと考えます。

 「7.予防接種に関する国際的な連携に関する事項」としては、日本渡航医学会、日本感染症学会、日本小児科学会などが予防接種推進専門協議会と協同して、海外渡航者に対する渡航ワクチン及び帰国者の感染対策、感染症の対応が可能になるような予防接種センターなどの医療機関の整備を進めていってはどうかということも考えました。

 最後に「8.その他予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する重要事項」として、「(1)同時接種、接種間隔等の検討」は、このプランの中に、学会等の関係機関と意見交換するとともに分科会等で検討すると計画はなされていますけれども、まだ「Do」がなされていません。同時接種、接種間隔は迅速に審議をしていただければありがたいです。

 「(2)関係部局およびそれ以外の分野との連携および評価」に関しては、「予防接種は国の危機管理の一環である」ということを考えます。そのような基本理念を確立して、衛生部局以外の分野との連携が必要です。

 1)として、現行の予防接種施策を厚労省内に設置されているタスクフォースやアカデミアから定期的に評価を受けて、予防接種を推進する体制を整備していただきたいということ。

 2)は、先ほど申し上げましたように、臨床のニーズを反映して、中・長期的に検討するための小委員会、ワーキンググループをそれぞれの部会・分科会に設定していただいて、継続的に残っている課題を解決していただきたいということ。

 3)は、学校保健との連結はとても重要で、学校教育の中で感染症及び予防接種の必要性などの知識の習得を促進するために、文部科学省との協議が必要ではないかと考えます。

 4)として、医療系の大学、専門学校では病院実習前には、B型肝炎ワクチンや麻しんワクチンなどいくつかのワクチン接種歴・罹患歴調査が行われて、実習学生の受け入れ要件となっています。ただ、現状では実習を受け入れていただける病院ごとで受け入れ要件が異なっていて、病院側と大学・専門学校側で混乱が生じています。医療系大学や専門学校での入学時あるいは実習前の学生の免疫状態及び予防接種の要件の一定の目安を、分科会あるいは部会から示していただけると、双方が随分助かるかなと考えました。

 以上でございます。

○岡部部会長 どうもありがとうございました。

 大変、広範にわたっての御意見をいただいているのですけれども、最初、坂元先生からは自治体として現在、実施されていることも含めて課題となっていることを話していただき、多屋先生からは感染症のサーベラスデータ、それからどういう疫学的変化が起きてきているか。かなり変化が起きてきているものも見られているということですが、岡田先生からは、実際の現場においてさらに問題点となり、今後改善すべき点というようなところでまとめていただきました。この辺について、あるいはさらに加えるような御意見等があればお聞かせいただきたいのですが、今後、ヒアリングをやるときはこの委員会メンバーもヒアリングの対象になるのですか。そうだとすると、今話してしまうと話すこともなくなってしまうということもあるかもしれないのですが。

 どうぞ。

○江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪でございます。

 もちろん、この部会にはいろいろな立場から入っていただいている方もいらっしゃいますので、ヒアリングをお願いする方ももちろんいらっしゃるかなと思っています。

 ただ、立場としては、実際にある団体なりを代表してお話をいただくということは念頭にありますけれども、本日は、各委員として、一人の委員として御発言をいただければと思っております。

 以上です。

○岡部部会長 きょうはお三方の御意見を聞いた上でというようなところで、もし何か御意見がありましたらどうぞよろしくお願いします。

 どうぞ、中野委員。

○中野委員 坂元委員に質問させていただきたいと思います。

 川崎市の予防接種業務でございますけれども、非常にきちんと体系立って、なおかつ精緻な内容で組み立てられていてすばらしいと思います。

 教えていただきたいことは、岡田先生もちょっと挙げられましたけれども、「予防接種に関する基本的な計画」の中で、「予防接種センター機能推進事業」というのが具体的に盛り込まれていて、しかも「Do」の中で幾つかの都道府県で実施されています。これは都道府県の事業ですからちょっと違うのかもしれませんが、川崎市における「予防接種センター機能推進事業」の位置づけをお教えいただきたいと思います。

 その理由は、私は現在は岡山県、その前は三重県で割と小さな県、200万人未満の人口の県で勤務をしてまいりましたので、結構、県としてそういった全体を見渡してやっていただけるところはやはり貴重な存在だと思ったのですが、「予防接種センター機能推進事業」はぜひさらに充実していっていただきたいと思うのですけれども、都市の規模とか状況によって変わるのかなということもあったので教えていただきたいというのが一点でございます。

 もう一点はちょっと簡単な質問なのですが、予診票のチェックも非常に細かくしていただいていて、非常に敬服いたしました。

 お教えいただきたいのは、もし間違いが見つかった場合、誤接種としての届け出その他を接種医に再度リクエストしているのかどうかということと、もししておられるのなら、その回収率が何%ぐらいかをお教えください。

○岡部部会長 どうぞ。

○坂元委員 予防接種センターとの調整なのですけれども、正直に言って川崎市も横浜市もちょっと規模が大きいので、神奈川県が熱心ではないという意味ではないのですけれども、県は政令市にはかなり任せているところがあって、例えばワクチンの供給とか、そういう全体に関しては一緒にやることはありますが、ふだん業務はほとんど川崎市、多分横浜市も単独でやっているという形です。そういう意味では、恐らく我々から県の予防接種センターは余り見えていないのか、多分、大きな政令指定都市になるとそういう傾向があるのかなと思っています。

 ワクチン供給の時は連携してやる場合もありますが、それ以外は余りないのかなということです。

 それから、この予防接種の問診票からミスを発見した場合、予防接種委託業者が川崎市医師会でございますので、そこにまず通告します。そうすると、医師会のほうからその接種した先生に注意勧告が行くということです。それが重なった場合に、予防接種医を辞退してくれとの話になることもあります。ミスとかも含めて全数は予防接種運営委員会で全て報告して、内容を審議するという形をとっています。個々の名前は出さないのですけれども、予防接種運営委員会で年に2回ほど、全数を提示して、こういうミスがありました、こういう副作用がありましたということを報告しています。そこで、先生方に御審議いただいて、ちょっと内容に問題があるのではないかといった場合は、改めて接種主体の医師会のほうがその先生とお話しするというような場合もあります。

 以上です。

○中野委員 ありがとうございました。

○岡部部会長 ほかはいかがでしょうか。伊藤先生、どうぞ。

○伊藤委員 今後、予防接種の記録を統一するということが、必要になると言われたと思うのですけれども、一方で、坂元先生よりお話がありましたが、予防接種の問診票を個別につくってモディファイしている。個別にモディファイされると、今後の統一という点からすると、例えば現在の電子カルテ情報と同じように、全部集めて集積しにくくなるという問題が発生すると思うのです。今後の予防接種問診票はどれかをひな形にして全部統一しようというような動きはないものでしょうか。同じように、これが岡田先生も指摘をされているところとつながるのだろうと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○岡部部会長 では、坂元委員から先にお願いします。

○坂元委員 予防接種の問診票というのは、自治体で単独というよりは、かなり国とも相談しながら作成しているということもあります。特に政令指定都市の場合は、この予防接種を所管する担当課長同士が年に2回ほど、会議を開きまして、そこでかなりお互いに情報を交換してやっていますので、川崎市だけが何か奇妙に特異的なものというのはないと思います。私の見る限りほとんど横並びかなと思います。

 ただ、伊藤先生がおっしゃいますように、例えば項目の順番が入れ替わってしまうと電子化したときにどうかという、その辺の対応は今後、必要かなということで予防接種台帳というのをさっきも言ってきましたように、それを今度は自治体間のネットワークで広げようというので、つまりマイナンバーネットワークにつながるのですけれども、各自治体の台帳はそれぞれ各自治体が、先生のおっしゃるようにばらばらなので、中間サーバーを置いて、そのサーバーをもってマイナンバーネットワークにつなげるというシステムをやっているのです。その中間サーバーのシステム設計がまた自治体ごとに違っていて、この自治体間の共通化がなかなか難しいということです。例えば川崎市の場合は、約1年間で約10万人の転入者があります。予防接種の対象年齢になると約1万2,000人。そうすると、その1万2,000人をネットワークを使って自動的に追跡するとすごく膨大なシステムをつくらなければいけないということがあって、実際、そこの運用を今後どうするかということ、それから、その中間サーバーが自治体ごとに違っていってしまうと、これも大きな問題になるのではないかということの懸念です。せっかくこういうものができてネットワークが使えるようになるのだったら、統一的なものを考えていただきたいというのは、これはもう自治体からの切なお願いであります。

 以上です。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 岡田先生のほうは。

○岡田参考人 まさに同じことなのですけれども、私も質問していいですか。

○岡部部会長 はい。

○岡田参考人 坂元先生にお伺いしたいのですけれども、先ほど、同時接種の費用のお話を少しさせていただきましたけれども、川崎市では同時接種の場合には費用は足し算でやっていらっしゃいますか。

○岡部部会長 どうぞ。

○坂元委員 20の政令指定都市を見てみますと、足し算のところと、足して何掛けというところがいろいろあって、20の政令指定都市の中では同時接種接種単価に関しては一律ではないと思います。本当に純粋に足し算をしているところと、中には減額というところもあるかもしれません。

○岡部部会長 釜萢委員、どうぞ。

○釜萢委員 今の、同時接種における接種費用ですが、岡田先生は、同時接種の場合の費用はどんどん接種費用を下げるべきだというお考えですか。

○岡田参考人 そうではなくて、医師会の先生方のことを考えると、できれば単純な足し算が一般的かと思うのですけれども、行政の中には、手技料は一回一回だけれども、例えば初診料、再診料は違うのではないかという考えの自治体もあったりして、委託料が下がることは、医師会側には大きな問題だろうと思います。多くの小児科の医療機関では同時接種をやられていますけれども、同時接種の費用の面で医師会と自治体とでトラブルになっていると伺ったことがありますので、どのように解決していったらいいのか思って提案した次第です。

○釜萢委員 解決方法は、接種側は同時接種をすることによって負担が減ることはないのであります。基本的には、同時接種した場合に料金が変わることは不適切だろうと私どもは思っておりますし、それは、今、坂元先生が御指摘のように、行政によってかなり料金を下げてしまっているところもありますけれども、これは不適切だろうと思います。

 同時接種の場合には、接種間隔の注意とか、同時接種に伴う非常にいろいろな大きな注意義務が生じます。また、同時接種を推奨していかないと、なかなか一定の期間の中に適切なワクチンを接種し切れませんので、ぜひ、同時接種で料金が下がることはあってはならないと思っております。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 ほかには、いかがでしょうか。

 池田委員、どうぞ。

○池田委員 3人の先生にそれぞれお伺いしたいことがあります。

 まず、坂元先生にお伺いしたいことは、本日、予防接種業務の実務の流れなどを伺いまして、大変勉強になりました。予防接種に関する基本的な計画の中で、市町村の役割の中には、もちろん先生に御説明いただいた内容が含まれているわけですが、それ以外に書いてあることが、副作用報告制度の円滑な運用であるとか、感染症発生動向調査の実施への協力であるとか、あるいは例示として、広域的な連携について協議する場を設けるといった広域的な連携強化といったことも書いてあって、要するに、これもプランとして上がっているのですが、これについて、先生方のところでの取り組みとかあるいは課題、もし進んでいないからこのようにしたほうがいいということがあれば、教えていただきたいと思うのです。

○坂元委員 広域的な取り組みに関しましては、神奈川県が中心になって、神奈川県内の自治体においてもいろいろな情報交換はやっております。例えば、接種費用の問題とかです。それから、県内にいろいろな病院がありますので、市外の病院に入院した場合の取り扱い等々に関しても広域な連携が必要で、近隣、特に川崎市民の方は県外の東京の病院に入院される場合も多いので、そういう予防接種に関する連携もやっております。

 あとは、先ほども申しましたように、政令指定都市間で年に2回ほど情報交換の会議をやっており、価格の問題とか、いろいろなワクチン供給の問題等を話し合っております。特に、政令指定都市間はこのようなネットワークをつくっていますので、例えば、ある予防接種が新しく入ったときに、どこで不足していてどこでどうだという情報は集められるように、政令指定都市間はかなり細かいネットワーク等をつくって、お互いに協力してやっているところでございます。

 こんなところでよろしいでしょうか。

○池田委員 この予防接種の基本的な計画に書いてある市町村の役割の中で、今後の課題というか、今、できていなくてこれからというところは、先生のお考えの中で何かございますでしょうか。

○岡部部会長 どうぞ。

○坂元委員 先ほども申しましたように、今、ほとんどの自治体が、予防接種台帳が入ったということで、接種漏れの方のチェックが非常にしやすくなったということで、これは非常にいいことかと思います。

 ところが、先ほども申しましたように、自治体間の住民の移動に関して、現時点ではほとんどの自治体が、保護者から要請があった場合にのみ相手側の自治体にその情報を請求するという形をとってます。例えば、東京都から川崎市に転入してきて、ちょっと私、接種歴わからなくなってしまったので教えてくださいと役所に来たときに、川崎市のサーバーを介してマイナンバーネットワークで東京都に照会をかけると、東京都からその方の接種歴が返ってきます。これは現実にはできるのですけれども、問題は、予防接種対象者が毎年1万2,000人川崎市に入ってきて、1万2,000人の情報を自動的に全部とれているかといったら、勝手に川崎市が了解もなくマイナンバーネットワークでその人の情報を同意なく集めてしまって、この人はこれを受けている受けていないということをやっていいかどうかというところが、まだ、正直に言ってわからないのです。マイナンバーを利用される方は、自分のマイナンバーがどうやって使われたかということは自分でチェックできるのです。そうすると、私が頼んでもいないのに、なんでこんな情報を川崎市はとったのですかと言われたときに、今のところ説明することができないのです。あくまで希望者ベースでやるとなると、本当に集団としてとして、公衆衛生学上意味のある予防接種のシステムができ上がるのかどうかということです。これはせっかくマイナンバーネットワークができて、予防接種台帳ができて、そのリンクができれば、全国間的なネットワークなのです。マイナンバーの扱いが果たしてどこまで許されるのかということがちょっと不明確という点が、基本的に予防接種の自治体間の情報の連携をつくるという意味では、これは恐らく総務省のマターだと思うのですけれども、自治体間としてはここが一番悩ましいと考えているところでございます。

 以上です。

○岡部部会長 どうぞ。

○池田委員 多屋先生の発表のところで伺いたいのですが、よろしいでしょうか。

 1点目は、先生の国内の疫学情報の大変詳しいものを拝見しまして、非常に有用なものだと理解いたしました。例えば、このデータの質であるとか、制度とか、迅速性とか、あるいはこれを収集する際の効率とかの点で、何か今後改善すべきことがあるかどうか。もしあるとすれば、それをお教えいただきたいということが1点目です。

 2点目は、これだけのすばらしいデータがあるわけで、例えば、これをもとにこの部分の研究をもっと進める必要があるとか、あるいはいろいろな政策のレベルあるいは実際の臨床のレベルでのいろいろな対応につなげていくとか、その点の仕組みが十分なのかどうか。つまり、データはあってもそれがうまく使われなければ意味がないといいますかもったいないので、そのあたりに改善の余地があるかどうかということが2点目です。

 3点目は、ちょっとつまらない話なのですが、先生に出していただいたスライドの2番目の赤字で書いてあるところに、費用対効果が赤字から消えているので、これは何か特別な意味があって消えているのかと思って、その3点です。

○岡部部会長 多屋委員、3番目からお答えしていただけますか。

○多屋委員 御質問ありがとうございます。3番目から回答させていただきます。

 今回、赤字にしましたのは、私が所属している感染研あるいは感染症疫学センターのほうでやっている部分について書きましたので、費用対効果の部分は、感染研ではできていない部分なので赤字にしておりませんでした。これは、先生がやってくださっているので、期待をしております。

 では、1番目の質問に戻ります。この資料は、全国で予防接種のことに従事している担当者の方に、疫学情報をわかっていただいた上で予防接種のことを考えていただきたいということから、もう何年か前になりますけれども、毎年この資料をつくりながら全国7ブロックを回っております。これをつくる大変さは、確かに8人で分担しているとはいえかなり膨大なデータをまとめますので、大体2カ月ぐらいかかってまとめ上げているという状況です。ただ、感染症発生動向調査と感染症流行予測調査事業の報告をもとにまとめているというのが現状です。

 最後に、2番目の質問なのですけれども、今回、時間が十分なかったので説明はできていないのですが、例えば、それぞれの疾患に対して、ここから得られる課題の部分があります。先ほど有効性ということで、非常に効果が出てきた水痘ワクチンなどを例にとりますと、定期接種対象者の数が激減していることは、明らかに定期接種の効果だと思っています。一方で、やはり定期接種対象年齢以上のところに感受性者が残っていますので、それに対しての対策が、今後、必要なのではないかという科学的エビデンスに基づいた提案がしていけるのではないかと考えています。それぞれの疾患について、この疫学情報から次の課題が見えてくる部分があると考えて、毎年まとめているというのが現状です。

 以上です。

○岡部部会長 2番目は、何でしたか。

○多屋委員 2番目が、今のここから出てくる課題です。

○岡部部会長 わかりました。ありがとうございました。

 どうぞ。

○池田委員 そうしましたら、岡田先生のお話の中でお伺いしたのが、大変いろいろな課題があるということで勉強になりましたが、口頭でお話しになった中で、例えば、費用対効果の結果を見てワクチンの価格を検討するようなことも考えてはどうかというような御指摘があったわけですけれども、日本で、ワクチンの価格が一部のものを除いたら、多分、いわゆる公定価格にはなっていないので、そんな中で、費用をどのように合理的な価格に設定するかということは、大きな問題だと思っているのです。そのあたりで、もしお考えがあれば伺いたいと思いました。

 イギリスでは、先生が御指摘のように、国が買い上げて、そのときに、例えば複数の同じ目的のワクチンで同等の効果のものであれば、当然、国は安いほうを買うわけですし、そうではなくて、例えば価格が違います、効き目も違いますということだと、費用対効果を検討した上で、費用対効果の点で十分であれば高いほうであっても使うというような、費用対効果、経済的なエビデンスをもとに、非常に透明性の高い形で政策決定をしていると理解しているのですが、日本では必ずしも、今、そういうところまでは行っていないと思うので、この先そういったことを進めていくには、どのようなことを考えていけばいいかということを教えていただきたいと思います。

○岡田参考人 御質問ありがとうございます。

 まさに池田先生が言われたように、ワクチン評価の小委員会で先生方が出されている費用対効果の計算で、現在のワクチン価格で費用対効果がある・なしが議論の中で大きな位置を占めていると思っています。先生がご指摘のように国内のワクチン公定価格ではありませんから、新しく承認されたワクチンに関して、先生方が計算していただいた費用対効果の費用の部分で根拠になるワクチン費用で、費用対効果がないとがわかれば、それをメーカーにもう一度返して、ワクチン費用を費用対効果がでるような費用に再検討いただければ、国として、今、新しいワクチンを法的に位置づけるかどうかという議論の中にワクチン費用がとても問題になっているかと思ったものです。現在、メーカーが提示しているワクチン費用がどのような仕組みでどのように決められているかということはよく存じませんけれども、ワクチン費用の決め方も含めて、透明性を持って決めていただければいいかと思って、発言をした次第です。

○岡部部会長 ほかには、いかがでしょうか。

 澁谷委員、どうぞ。

○澁谷委員 坂元委員、御説明ありがとうございました。

 坂元委員のところは、やはり市として保健所も持ち、大きな規模のところだということで、先ほども少し質問があったのですが、実際の政令指定都市ではなくて通常の市町村のところについても、ぜひヒアリングをしていただければと思います。

 それから、実際、総務省の方がいいのかどうかは別にして、マイナンバーのことについてのヒアリングといいますか、何か説明をしてくださる方をこの会にお呼びして、お話を聞くことができないかということの要望をしたいと思います。

 岡田先生、ありがとうございました。岡田先生の中でも御指摘をされておりますけれども、予防接種センター事業のことについてですが、47都道府県のうちの半分以下だということが現実にあるわけです。この阻害要因を、何か事務局のほうはお考えになっていることがあるのかどうかということ。国の施策は国の施策でいいと思うのですが、地域の中で進めていく部分の事業は非常に大事だと思いますので、その阻害要因あるいは対策について、何かお考えがあればお伺いしたいと思います。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 これは、事務局のほうに、ヒアリングについては後で計画などもあるのですけれども、御要望もあったということで、あわせて返事をお願いします。

○江浪予防接種室長 予防接種室長の江浪でございます。

 マイナンバーの関係に関しましては、我々、予防接種を担当する行政部局としても、一体どのようにこれを活用していくかということについては、まず我々のほうからもしっかりと御説明をするべきかと思いますので、本日、御意見をいただいたことを踏まえて、資料を整理したうえで、改めて御説明を申し上げたいと思います。

 2点目の、予防接種センター機能推進事業ということでございますけれども、本日、予防接種センター機能推進事業についての御意見がございましたので、資料を整理して、また改めてどういうものであるかということを含めて、御説明をしておく必要があると考えました。

 我々がやっておりますのは、例えば、平日、休日の時間外とかにおきまして、慎重に予防接種を実施する必要のある予防接種要注意者などに対して、予防接種を実施する市町村からの委託によって実施するという、予防接種の実施そのものをやる機能でありますとか、予防接種に関する正しい知識や情報の提供をやる機能でありますとか、予防接種要注意者の方に対して予防接種の事前事後における医療相談事業を実施するということでありますとか、検証を実施することでありますとか、そういった機能を持ったものを、予防接種センター機能推進事業ということで、国の予算補助ということで一部させていただいているところでございます。

 実施条件に関しましては、全ての都道府県でという目標を立てつつもなかなか進んでいないということも事実でございまして、その理由につきましては、いろいろな折にお聞きしているところもありますけれども、もともとこういった事業をやらなくても、既存の仕組みの中でそういった機能を果たしているものがあるのだとおっしゃるところもございますし、素直に国の補助が2分の1でございますけれども、そういった中で予算の確保は難しいという御意見もあると聞いております。

 この辺に関しましては、本日多くの御意見がございましたので、今、口頭で申し上げたようなこの事業の概要ということも含めまして、また、御説明を申し上げたいと思っております。

 以上です。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 もう一つ。市町村の方々をヒアリングにお招きをしたほうがいいのではないかということは。

○江浪予防接種室長 本日、本来であれば、ヒアリングの進め方に関しましては、ある程度計画をお示ししながら、あらかじめ、どういったところでヒアリングをする必要があるのではないかという御意見をいただきながらやるべきだったともともと思っておりました。

 実は、前回の会議から今回の会議まで少し期間が短かったということもありまして、今回3名の先生方にヒアリングをお願いしたところであります。本日いただきました御意見も踏まえて、これからのヒアリングの進め方に関しては整理をした上で、まず岡部部会長と御相談をして進めていきたいと考えてございます。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 坂元委員は、今の関連の話ですか。釜萢委員のほうが先に手を挙げられていたので。

○釜萢委員 今もお話が一部出ましたが、岡田先生の資料の4のところの「(2)予防接種記録の整備」は坂元先生からも御指摘がありました。もともとマイナンバーは、それぞれの個人の所得を把握して、公平な課税を行う目的につくられたものであります。ただ、それだけだとなかなか国民の支持が得られないというところから、総務省がいろいろな機能を付加して、こういうこともできるあれもできると加えてくる中に、予防接種の履歴の管理が盛り込まれているわけですが、この部分は非常に個人の機微情報にかかわる部分もありますし、それから岡田先生が書かれた「健康保険情報と連結し」というあたりのところは、慎重に対応すべきかと思っております。

 例えば、それぞれの個人の疾病の履歴などについての管理ができるような部分は、本人の同意を得て、この部分の罹患歴については入れたくないというものを選択できるような、医療に関係のあるカードをつくろうということが、日本医師会の主張であります。それを厚労省も御理解をいただいて、今、医療に関する別の仕組みをつくれるという動きになっております。

 全てJPKIのマイナンバーに結びつけてしまうということについては、慎重でなければならないかと思っております。予防接種の記録は、台帳という形でそれぞれの自治体が管理をしているわけで、転居した場合にどうするかということで、これは議論が進んで、全国どこでもその情報にはアクセスできるという国民的理解が得られればそれはそれでいいと思いますが、そこまでまだ行っていないので、現状では坂元先生が言われるように、保護者から希望があった場合に照会して取り寄せる形がよろしいのではないかと思います。

 これは、マイナンバーのシステムネットワークを使ってどこでもとれるという利便性が、皆さんぜひ必要だということになれば、そういうことになるかもしれませんけれども、基本的に予防接種の記録は、個人がしっかり管理して、子供のために親がきちっととっておくべきものだろうと思います。しかし、いろいろな事情でそれがうまくいかない場合もあるので、それに対して補完的に行政が手を差し伸べるという形のほうがよいのではないかと思っております。

 もう一点、岡田先生の「(1)予防接種に要する費用」のところで、同時接種の費用については先ほど申しましたけれども、最近、予防接種法に取り込まれたワクチンは、非常にワクチン代が高いです。これはいろいろな事情があって、輸入物が多かったりするということもあるのですけれども、非常にワクチン代が高いということがあるので、ここをどのように考えるかということは、しっかりと検証する必要があると思います。

 技術料、ワクチンの管理料等に関しては、従来、初診がどうというような積み上げでやってきたところもありますけれども、本来、医師の業務の中で、どれだけの時間が予防接種に割かれて、それに対して事務や看護師も含めてどれだけ費用がかかるのかというところを、皆さんの合意を得ながら、あるべき技術料の部分を時間的にきちっと積算していくということが、今後、必要になってくるかと思っています。

 費用がいろいろ地域によって異なることについては、接種実施主体が市町村になっているので、それを全国統一してということはなかなか難しいところもあるだろう。それぞれの地域の事情もあるのかなということも感じております。

 以上でございます。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 坂元委員、済みませんでした。

○坂元委員 岡田先生のワクチン価格で、自治体が全て買い上げてやっているところがあるとのことですが、実は、川崎市もそのようにやっていたのです。実際、一括で買うとどれぐらいになるのか、例えば、川崎市の場合だったらワクチン代は20億弱ぐらいです。それを一括で買うとどれぐらい安くなるのかと調べると、実際に数パーセントぐらいしか安くならないのです。ただ製造メーカーと契約するわけにはいかない、つまり問屋さんと契約するとなると、特定の問屋さんと契約するという行為になると、もしワクチンの不足が生じたときに、その問屋さんが扱えないなどのちょっと困った事態が生じてしまうのです。川崎市としても、そういう問題で、一括購入ということは基本的に地方自治体としては、入札で問屋さんを選ぶ行為になってしまうので、その問屋さんが、あるワクチンを手に入れることができないととんでもないことになってしまうということと、ワクチンの製造メーカーが選べないということで、接種される先生から、自分はこのメーカーのものがいいのだ、こっちは使いたくないなどという、それぞれの先生のニーズに応えられないということがあって、実は川崎市が一括購入をやめて、現在、薬剤師会にそれを委託して、薬剤師会が全ての問屋と契約を結べるというシステムで、希望の全てのワクチンが入手可能という形にやり直しました。

 だけど、そこでも薬剤師会が一括でやりますから、ただ、問屋をマルチで選べるようになったというシステムは、実際に不足が生じたとき、この問屋さんが扱えないというときに、こっちの問屋さんにスイッチできるというメリットがあるので、現在はそういう方式で、薬剤師会で一括購入をして、それぞれの問屋さんに接種されている先生のところに希望の本数を配送しているという形を現在やっております。

 本当にわずかに安くなるという程度で、150万の人口の都市でも、一括購入しても劇的に安くなるものではないという結果でございます。

 以上です。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 ほかはいかがでしょうか。

 多屋先生、私からの質問ですけれども、疫学情報をいろいろ個別に見ると、確かに、疫学センターのホームページなどとか拾い出せるのですけれども、一括して見ているとVPDに関するものはよくわかるのですが、これはほかの一般の方々がすぐ見られるようなものですか。

○多屋委員 ありがとうございます。

 今、予防接種リサーチセンターのホームページには、このPDFが掲載されていまして、年度の途中で1回か2回は改定をするのですけれども、そこから見られるようにはなっているところです。こちら(部会)で御紹介したのは、多分初めてかと思います。

○岡部部会長 キーワードか何かが出てくるものがあるのですか。わかりやすいものが。

○多屋委員 予防接種リサーチセンターで検索をかけていただきまして、予防接種リサーチセンターのホームページに行きますと、研修のところに「平成28年度予防接種従事者研修会 資料」という形でリンクが張られているので、一番新しいものをアップ・ツー・デートしていただくこともできるかと思います。

 また、感染研のほうにも何か出せるような仕組みがないかどうか、戻りまして検討してみようかと思います。

○岡部部会長 上にわかりやすくリンクか何かが張ってあるとアクセスしやすいと思うので、そこら辺も工夫をしていただければと思うのです。

○多屋委員 ありがとうございます。

○岡部部会長 課題といいますか、将来的な問題が、きょうのヒアリングの中で随分出てきたのです。ただ、この2、3年間にdid(実施)として、どのようにやってきて、結果としてその評価は簡単に評価するとどうだということは、坂元委員あるいは岡田委員、何かございますか。

 予防接種基本計画ができて、予防接種法も改正になったわけですけれども、そこのところの評価の部分で、さらにこういう課題があるということでは、何か御意見がありますでしょうか。

 坂元委員から。

○坂元委員 私は、非常に大きなところは、地方自治体に厚生労働省から副作用情報が本当に瞬時に来るようになって、それは非常に助かっているというところです。これができて副作用の情報システムを変えるという中で、やはり地方自治体としては副作用情報は一刻も早くそれが欲しいということで、それはかなり迅速に送られてきております。むしろ、大量に送られすぎて、今、自治体もその扱いに困ってしまっているというぐらい情報をいただいている。これは一つの大きな成果だと思っております。

○岡部部会長 ありがとうございます。

 岡田委員はどうでしょうか。

○岡田参考人 このワクチン基本計画で多くのワクチンが推進されたおかげで、多くの疾患が減ってきたということは、ワクチンギャップが少しずつ解消されてきた大きな推進力になったと思います。

 以上です。

○岡部部会長 多屋委員はデータでお示ししているのですけれども、今のような、この2年半を評価すると、どのような御意見でしょうか。

○多屋委員 まずは、2012年度に検討したときは、多くのワクチンがまだ定期接種に導入されていなかったのですけれども、その中で、2つ、3つを残してそれ以外のワクチンは定期接種に導入されて疾患の疫学が大きく変わったという部分は、成果の一つではないかと思っています。

 先ほど、池田先生から御質問が出たときに思いつかなかった部分で、実際困っていることとしては、患者さんの予防接種歴が、不明が非常に多いという部分です。予防接種歴にもつながるのですけれども、今、はしかの問題で、はしかを発症された方の予防接種歴が、なかなか調査することが難しいという問題を抱えていますので、自分がすぐに予防接種歴がわかるという仕組みを、ぜひつくっていただきたいと感じております。

○岡部部会長 基本計画の中には、サーベイランスの強化も盛り込まれていて、その結果として随分データーが出てきている。今までの蓄積の結果だと思うのです。

 ありがとうございました。

 きょうの御意見をお聞きして、それがすぐ、全部反映していくわけではないので、きょうはそれをもとにいろいろな御意見を伺ったということがこの会の趣旨なのです。今後、先ほど室長からもありましたけれども、ヒアリングを続けていって、どのようにしてやっていくか。今のところ、全て誰それにと具体的になっていないので、その辺は私も入るような形で、事務局側と検討していきたいと思うのです。澁谷先生がおっしゃったような要望も含めて、ヒアリング計画を立てていきたいと思うのです。

 事務局、その辺の御意見をお願いします。

○江浪予防接種室長 本日、ヒアリングを1回させていただきまして、事務局からも資料を出しながら御意見をお聞きするという形で進めていきたいと思う点もありました。また、事前に先生方からも、どういった方からお話をお聞きしたいということもお聞きしながらやっていかなければいけないと思うところもございましたので、そのところにつきましては、また部会長と御相談しながら、計画を立てて相談して進めていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 きょう御意見を伺ったことも、非常に細かい点もあれば大きいところもあるし、多々あると思うのですけれども、そこら辺を、また、ほかの専門あるいはいろいろな分野の方の御意見を聞いた上で取りまとめて、このサイクルに乗ったような評価をしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 一応、きょうのヒアリング部分としては終わりにしておきたいと思います。

 議題のほうに戻りますと「(2)報告事項」になりますけれども、報告事項は、今、事務局のほうから用意してあるものがあるのでお願いします。

○江浪予防接種室長 参考資料1、Press Releaseのことにつきまして御報告申し上げたいと思います。

 この内容でございますけれども、10月4日付で一般財団法人化学及血清療法研究所に対しまして、医薬・生活衛生局から報告命令等が行われたという内容でございます。その内容につきましてはこのPress Releaseにございますけれども、医薬・生活衛生局のほうで9月6日及び7日に化血研に無通告で立入検査を行い、その結果を精査した結果、エンセバック皮下注用につきまして、製造販売承認書の記載と一部異なる製造を行っていたことが確認されたため、10月4日付で化血研に対しまして、報告命令等を行ったという内容でございます。

 なお、この報告命令等を行う契機となりましたエンセバック皮下注用は、日本脳炎に対する予防接種の製剤でございます。これに関しましては、製造販売承認書の内容と一部異なる製造を行っていたものの、最終製剤の品質及び安全性に対しまして影響を与えないことを確認していることが、あわせて10月4日付で公表されているものでございます。

 この内容につきましては、Press Releaseが行われた後に、各委員にも情報提供申し上げておりますけれども、部会におきましても御報告を申し上げたいということで、本日参考資料としてお配りしたものでございます。

 よろしくお願いいたします。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 このPress Releaseは、予防接種室で行ったものではないのですけれども、何か御質問、御意見がありましたらどうぞ。よろしいでしょうか。

 私からなのですけれども、これはたしか不活化を前にやるべき製造工程になっていたものが、最後のほうでやったということで、不活化そのものに問題があるものではないけれどもプロセスが違うということが問題視されたと聞いたのですけれども、これがわかったのはPress Releaseの後なのです。これは、かなり重要な内容ですので、確かにPress Releaseは別の部局でやったとはいえ、少なくともこの委員会のメンバーであるとか、あるいは医師会も多分そうだと思うのですけれども、こういったようなところには少なくとも同時、相前後して入れていただきたいと思います。朝、ニュースを見てびっくりした先生方が多分多かったのではないかと思います。

 ぜひ、その辺は、関係部局にも連絡をしておいていただきたいと思います。

 釜萢先生、何かございますか。

○釜萢委員 御指摘のとおりで、化血研はなかなか病巣の根が深いなと思うとともに、やはり今回のことも大変大事な事例でありますので、厚労省にはぜひ、そのようにお願いを申し上げます。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 ぜひ、その点もよろしくお願いします。

 報告事項で、その他には何かございますか。

 きょう議論すべきことと報告していただくことは以上なので、あとは今後の予定等々について、事務局からお願いします。大林さん、どうぞ。

○大林室長補佐 この基本方針部会の下にありますワクチン評価に関する小委員会の開催状況について、簡単に御報告させていただきます。

 前回、報告しておりませんでしたが、本年3月、6月にこの小委員会が開かれておりまして、第3回小委員会が3月に開かれたときにおきましては、ヒブワクチンと10価肺炎球菌ワクチンについて審議されております。ヒブについては、感染研にファクトシートを作成していただくことになりました。肺炎球菌ワクチンについては、5月に開催しました基本方針部会で御報告しております。

 第4回小委員会を6月に開催したときですが、ロタウイルスワクチンと帯状疱疹ワクチンと沈降精製百日ぜきジフテリア破傷風混合(DTaP)ワクチンについて審議されております。

 ロタウイルスワクチンにつきましては、多屋先生が中心になって取りまとめていただいた「ロタウイルスワクチンに関する最近の知見」が報告されまして、その報告を受けて第3回の分科会で整理されました腸重積のベースラインデータの整理、リスクベネフィットの分析、費用対効果の推計の3つの課題について、再度、事務局で整理することとなっております。

 帯状疱疹ワクチンにつきましては、阪大微研が製造しております「ビケン」におきまして、本年3月に50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防に対する効能・効果の追加承認が報告されております。その報告を受けまして、感染研に帯状疱疹ワクチンに関するファクトシートの作成をいただくことになっております。

DTaPにつきましては、阪大微研が製造しております「トリビック」におきまして、本年2月に11歳~13歳のDT2期における接種が可能となる用法・用量の変更は承認されたことが報告されました。この報告を受けまして、感染研に改めて百日ぜきワクチンに関するファクトシートを作成していただくことになりました。

 報告は以上になります。

 次回の開催につきましては、追って御連絡させていただきます。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 今の小委員会の報告については、何かありますか。小委員会に加わっていた先生は多屋先生がいらっしゃいます。何かありますか。

○多屋委員 特にないです。

○岡部部会長 ありがとうございました。

 こういうようなことが行われていて、現在進行中であるということになると思います。

 少し時間は残していますけれども、きょうの議論すべきことは以上なので、よろしければこれで終了にしたいと思います。

 どうもありがとうございました。


(了)

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