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2016年10月21日 第3回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成28年10月21日(金) 16:00~18:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)


○出席者

秋池氏、安藤氏、大田氏、古賀氏、小峰座長、冨山氏、中西氏、村木氏、森田氏、横田氏
ベネッセホールディングス人事戦略担当本部長CHO/株式会社ベネッセコーポレーション取締役 岡田晴奈様
日本労働組合総連合会事務局長 逢見直人様
大崎電気工業株式会社代表取締役会長 渡辺佳英様

○議題

(1)労使関係者からのヒアリング
(2)その他

○議事

○小峰座長 それでは、ただいまから第3回「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」を開会いたします。皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただき、誠にありがとうございます。
 議事に入ります前に、10月15日付で事務局に異動があったとのことですので、事務局から御報告をお願いいたします。
○森川労働政策担当参事官 小林の後任で着任しました労働政策担当参事官の森川です。どうぞよろしくお願いいたします。
○小峰座長 ありがとうございました。カメラの撮影はここまでということですが、カメラはいないですね。
 それでは、本日の議事について御説明します。
 本日は労使関係者からのヒアリングと、その他の2つの議題を用意しております。
 ヒアリングの終了後、事務局説明を挟みまして残りの時間で自由討議を行いたいと考えております。
 はじめに、労使関係者からのヒアリングです。ヒアリングは入れ替え制で、議事次第に記載の順番で行ってまいります。
 ヒアリングの流れですが、まずヒアリング対象の方から10分程度で御発言いただきまして、その後、20分くらい質疑、意見交換を行いたいと思います。これをヒアリング対象の方ごとに順次行っていきたいと思います。
 それでは、ヒアリングに入らせていただきます。
 最初に、ベネッセホールディングス人事戦略担当本部長CHO、株式会社ベネッセコーポレーション取締役の岡田晴奈様です。
 岡田様におかれましては、大変お忙しい中、当会議に御出席いただきまして誠にありがとうございます。御発言に当たっては、資料1-1にも記載しておりますように、現状の労働政策の決定プロセスについてどのような問題があるか、また、維持すべき部分はあるかといったようなことについて、委員構成、政策決定に当たっての議論はどうあるべきかといった具体的な論点にも言及していただければと思います。
 それでは、早速ですが御発言をお願いいたします。時間は10分程度でお願いいたします。岡田様からは事前に資料1-2を御提出いただいておりますので、あわせて御参照いただければと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○岡田氏 ベネッセの岡田と申します。本日はヒアリングの機会をいただきましてありがとうございます。
 私は以前に最低賃金部会の委員をさせていただきまして、現在は労働政策審議会の使用者側の委員を務めさせていただいております。
 私が勤務しておりますベネッセは、教育、語学、介護といった領域でのサービス事業を行っているところです。
 それでは、労働政策について意見を述べさせていただきたいと思います。当然のことながら、労働政策は国民生活の全体に深く根付いているものですし、企業経営そのものにも直接影響を及ぼすものです。労働市場は産業構造の変化が非常に激しく、世界情勢も大きく変わってきており、それに対応すべく改革をしっかりと推進していかなければいけないということは当然ではあるのですが、その際には可能な限り労使に混乱が生じないようにやっていくことが基本だろうと考えております。
 お手元に簡単なものですけれども、資料をお配りさせていただきました。労働者派遣法と労働契約法の改正に伴う弊社の動きについて簡単にお示しをさせていただいております。
 めくっていただきまして、派遣法はこれまでの流れに沿ってどういう動きをしたかということをまとめております。どの企業も、制度の見直しなどに合わせて従業員との調整など、それから社内的な制度の運用の見直し等々も進めてきていると思いますけれども、2010年の業務派遣の適正化プランの発信から今回のことに至るまで、さまざまな社内的な変革をしてきております。
 専門26業務のところから日雇い派遣の原則禁止の続行、ここではやはり私どもの業界においては、校正とか、採点とか、編集とか、そういったような業務をお願いしていた方々に対して派遣契約を中止するというようなことも発生しました。
 また、グループ企業派遣の8割規制というものもありましたので、当時100%出資の派遣会社を持っておりましたけれども、他のグループ会社に業務を移管してその派遣会社を解散させ、派遣スタッフを移管させるということも行いました。全員の方を承継することができなかったということもございました。
 今回、個人単位の期間制限ということで、3年ということを言われておりますけれども、大分前からそういった3年という期限についてはしっかり運用を徹底していますので、これについては大きな影響はありませんが、やはり規制緩和と強化というものを繰り返したということがあって、やや雇用の安定というよりは負荷が高まったかなという印象もありますということを赤裸々に書かせていただきました。
 それから、労働契約法に関しましても次のページのところに少し記載をさせていただきましたけれども、事業主としての課題というのもあります。例えば、小学校とか中学校にデジタル教育の授業を推進するに当たってのICTサポーターであったり、それからたまひよ写真館というものがありまして、そういったところのカメラマンさんの雇用とか、そういう特定領域での労働に従事してくださっている方々に対して、今後どうしていくのかというようなところの対応を今、協議しているところです。
 派遣の方に来ていただいておりますけれども、その派遣の方の派遣元の企業との話し合いの中でも、やはり今後無期化していく方向にするのかどうかというようなことで議論を重ねているところがございます。いずれにしても、変革による影響というのは非常に大きいと感じていますので、結果的には労働者の方々の生活と企業経営の良化に資するように、きちんとバランスが取れるように考えていくことが重要なのだろうと思っています。
 また、将来に向けてはデジタル技術も進展していきますし、AIの導入等もありますので、人がなすべき業務内容も変わっていくのだろうと思います。そういったときに、個人がスキルアップをしてさらに高い技能の修得をしていった場合、組織に属して働くというだけではなく、よりフレキシブルな働き方を望む人たちというのも結果としては増えていくのではないかとも思います。いずれにしても、一億総活躍ということですので、老若男女がその状況に合わせて柔軟に働くことができるということが求められていくだろうと思っています。
 政策の決定に当たってということなのですけれども、現在の三者構成原則に基づく政策決定プロセスというのは、この労働政策をしっかりバランスをもって決定していくということに立脚すれば非常に重要なことだと思っていますので、今後も維持すべきであろうと思っています。
 それから、企業現場を熟知している労使の委員と、それからエビデンスの分析に基づいて客観的な御意見をお持ちの学識者の方々が意見を交わし合って議論できるということが労政審の強みだろうと思っています。
 ですが、現状の労政審本審に参加してみて、闊達に意見を交わし合うというよりは、行政に対して意見を述べるという場面も多いと感じていますので、そこは少し反省すべきポイントかなと思っています。もう少し深い議論ができるようにするためには、その議案が非常に広範囲に及ぶということを考えますと、論点を事前に絞り込んで、その論点に対して意見を交わし合うというような進め方を検討してみてもよいかと思っています。労働政策の審議状況の報告ということではなく、次の労働政策、中長期的な労働政策のビジョンといったようなものを策定して、その実現に向けてどうやっていけばいいのかといったようなもっと生々しい議論というか、そのあたりを期待しています。
 こういった会議というのは非常に透明性を担保しなければいけないと思いますので、そうなると労使ともに背負っているものというのは結構あって、なかなか本質的なところにたどり着かない場合も多いと思うのですけれども、全てがオフィシャルな会議体でなくても、そのテーマに対して専門性を持つ人たちが集まって、しっかりと下部組織というか、タスクフォース型の会議を行っていくというようなことも有効なのではないかと思っております。現状では、公労使の代表委員三者が同数参加して議論していくという労政審のあり方そのものについては維持すべきであると考えております。
 さらに、やはりどうしても委員構成が首都圏に集中しているとか、世代的に集中してしまうということに関しては、地方の経営者の方々の御意見だったり、中小零細の経営者の方々の御意見というのもすくい上げるようなやり方を考えてみてもいいかと思っています。
 あとは、政策の事後評価ということに関しましても当然定期的になされていると思うのですけれども、本審できちんとその進捗が確認できて、PDCAが回っているということが確認できるということが必要で、その結果をさらに次のビジョンに反映していくということで、国民からの納得性を得て信頼感を築いていくというようなことも重要かと思っています。
 意見聴取のあり方は先ほど少し申し上げましたけれども、検討テーマに応じては地方の方々の意見、それからさまざまな雇用形態で働く人にヒアリングをするということも必要と思います。タウンミーティングをして、そこで出るさまざまな意見を本審の中に御紹介いただいて、そのビジョン構築のときに活かしていくようなことも有効なのではないかと考えています。
 以上でございます。
○小峰座長 どうもありがとうございました。
 それでは、これから質疑と意見交換を行いたいと思います。自由に御発言いただきたいと思いますが、大田さんは早目に出られるということですので、もしあればどうぞ。
○大田氏 5時20分に失礼しますのでまだ大丈夫ですが、ありがとうございます。
 派遣で働く方のニーズは、多様です。正社員になりたいけれどもなれない人、派遣で働きたい人、それから日雇い派遣であってもやりたい人、いろいろいると思うのですが、その多様なニーズを派遣法のような政策に反映させるにはどうしたらいいと思われますか。
○岡田氏 それは難しいですね。当然、正社員であっても今は多様な働き方をいかにして認めていくかということが議論されていると思うんです。ですから、例えば半日休暇を認めるとか、フレックスタイムでコアタイムを設けずに24時間のうちどこでも自分の都合で働ける仕事もありますし、そういうニーズに対応できる制度を整えていく必要があると思います。
 ただ、やはり正社員に対しては雇用の保障ということをしっかりと見定めて、その方々が貢献していただくということを前提に、制度の整備というものを進めているんですけれども、そこでさえなかなか9時~5時で週5日というところから柔軟な働き方へ大きくは飛躍させることができていない状況です。
 当然、副業を認めるとか、テレワークを推進していくというようなことも行っておりますけれども、それができるというのはやはり一部の企業だろうと思いますので、さらにそれに加えて本当に自由に自分がなすべきものがあって、ただ生活を支えるために派遣というやり方を選んでいる人も多くいらっしゃいますので、そういう方々に対して安定的に雇用を提供していくということは現段階では非常に難しいと思っています。
 ですから、まずはその方々が一人ひとりどういう働き方を指向しているのかということに雇用側はしっかりと耳を傾けるべきかと思うんです。一律派遣はこうとか、そういう雇用形態で分類するだけではなくて、その方々がどういう働き方を指向するのかということとの掛け合わせで制度なりガイドラインというものを整備していく必要があるかと思います。
○小峰座長 では、古賀さんお願いします。
○古賀氏 貴重なお話、ありがとうございました。この会議では課題がたくさん出されていますが、私は先ほど岡田さんがおっしゃった労働政策審議会本審のあり方というものが一つの大きな課題だと思うのです。そういう意味では、労働政策に関する中長期的な課題をどのように議論していくかということが一つの大きなポイントとしてあると思います。
 1つ目の質問は、今、岡田さんはタスクフォース型の会議で議論すべきとおっしゃったのですけれども、前回のヒアリングで労働政策審議会の会長である樋口教授から、労政審の下に、一つのセクションとして企画部会を設けて、そこで中長期的な課題を議論したらどうかという提案もありました。そういう意味では、もう一度具体的なお考えをお聞きしたいということが一つです。
 2つ目は、今の大田さんの意見にかかわりますが、多様な人の意見を労働政策審議会での議論、あるいは労働政策の決定プロセスにどのように活かしていくかということも大きな課題です。そういった意味では、まさに多様な人の意向をどう政策にインプットするか。その方法としては、ヒアリングという方法が考えられます。一方、そういう人を委員に全部入れたらいいのではないかという意見もある一方で、それは現実味がないのではないかという議論もあります。そのあたりをもう一度深く、どのようにお考えかお聞かせいただきたい。これは、派遣労働者にとどまらず、たくさんの働き方を選択している方がいらっしゃる。もっと言えば、働きたくても働けない人の意見はどうなっているかという疑問もあるわけです。
 これら2つについて、先ほどお話しになったことに関連すると思うのですけれども、付け加えることがあればぜひお願いしたいと思います。
○岡田氏 今の労政審の本審というのは、やはり国会の議事があって、それがその中でどう審議されて、今どういう状態なのか。それから、その次に向けてはどういう議論が始まっているのかということを御説明いただいて、それに対して労使がそれぞれ意見を言うという形だと思うんですけれども、足元の議論と、それから少し先を見た議論というのを分けるということも非常に有効ではないかと思います。
 やはり労働政策が実際の労働の現場に落ちてくるまでというのはある程度の時間が必要だと思いますし、それは単に、自分たちが見えている周囲の景色だけではなく、今、本当にグローバルにシームレスに仕事が動いてきていますので、そういった大きなビューの中で見ていく必要もあります。そのときに、今の労働政策の動きに対してだけではなく、切り離して中長期のビジョンを議論する場というものをそれこそ労政審の下というか、別の会議体でやっていくことで集中した議論ができるかと思います。
 労政審の議事進行が難しいと思うのは、非常に幅が広くて、全てのものの予算の中身を御説明いただくだけでもすごく時間がかかっていると思うんです。
 ただ、それは非常に重要なことなので、足元と未来を分けて議論するという形にしていただけると、より柔軟な議論ができるかと思いました。
 あとは、多様な方の御意見をどうやって反映させるかということなのですけれども、これは言っていただくか、聞きに行くかしかないんです。なかなか声を発しても、小さい意見の場合はすくい上げていくことができないということなのであれば、やはりそこに対しては津々浦々の出先機関の中で意見を集約するということだとは思うのですけれども、多様であるがために代表性というか、何がコアなのかということがなかなか決めにくいと思うんです。やはり利害の対立も起こるでしょう。
 ですから、耳は傾けつつ、どういう実態があるのかということはリアリティーを持ってつかまないといけないとは思いますけれども、全ての方の御意見を平等に入れていくということは正直難しいだろうと思っています。そこが政策を決めていくときの一番のポイントだろうと思いますから、こちらから出かけていって意見をすくい上げるということと、いかに声を発していただけるかという工夫というか、そこを深掘りしていくしかないと思います。
○横田氏 シンプルな質問です。現状の委員構成は、新しい働き方や、派遣の多様なニーズというところをまだ反映し切れている委員構成になっていないとお考えなのでしょうか。それとも、今の延長でヒアリングという形で補完をするだけで対応ができるとお考えですか。
○岡田氏 現状でも割と委員構成的には、それこそ中小から大きな製造業の会社までバランスよく構成されているのではないかとは思っているのですけれども。
○横田氏 例えば今日も追加のヒアリングとして、介護現場、チェーンストア、さっきおっしゃっていた地方の中小に加え、さらにはもっとこれから増えるであろう、雇用される側として業務契約の声も、現状でしっかりと踏まえた議論がなされるだけの知識を皆さん持って臨まれている状態なのでしょうか。もっとヒアリングしないと反映し切れていない可能もあるということですか。
○岡田氏 どこがゴールなのかというのは、一概には言えないと思います。
 私は例えば教育の現場ももちろん見ていますし、介護というのもグループの中にはあってそことの連携もしていますので、実態としてはある程度把握しているつもりですけれども、ではそこに対して本当に深い知識があるかと問われるとなかなか厳しいと思いますので、完璧ではないと思いますが、バランスは見て構成されているのではないかと思います。
○横田氏 ありがとうございます。
○小峰座長 私からも2点御意見をお聞かせいただきたいのですが、今日の御説明の中で政策決定プロセスというよりはその中身の中で大変重要な御指摘があったと思います。
 一つは、こういった有期雇用なり派遣なり期限を区切って、ある期限を過ぎると無期にするというような規制のあり方が、かえって有期の人たちの立場を悪くしてしまうことになっているのではないかということなのですが、私はこういうプロセスに全く参加していないので横から見ていただけなのですけれども、横から見ているときに私の仲間と話していると、こんなことをやったらやはり雇止めでかえって悪くなってしまうのではないかという意見が相当多かったのです。しかし、それが決まってしまうということは、その決定プロセスにも何か問題があるのではないかという気もするのですが、その辺はどうかということです。
 もう一つは、これからITとかAIとかいろいろな技術が発達してきて、働き方が柔軟にどんどん変わっていくことになると思います。そうすると、働き方をめぐる制度とか、法律とか、そういったものも相当スピードをもって弾力的に変えていかなければいけないと思うのですけれども、この点でも今の公労使の三者構成で、しかも同数という体系でいいのではないかという御意見のようなのですが、本当にそれで柔軟な意思決定ができるのだろうかという疑問があります。この2点についてお願いします。
○岡田氏 おっしゃるように、無期化のお話に関しましては結果的に残念ながら雇止めせざるを得ないという決定をした部分もございましたが、やはりそこは企業として必要な労働力に関しては、逆に無期化することによっていかに長く効率的に労働力を提供していただけるかというようなことを考える一つのきっかけにもなっていますので、今の時点でどちらがどうということは言えないのですけれども、その決定プロセスが十分だったかどうかということについては、正直よくわかりません。
 もう少し時間をかければ違う方向にいったのか、それとも結論としては同じだったのかというのはわかりませんけれども、やはり決定をして動き出すということが企業にとっては非常に必要なことなので、そういう意味では決定がなされたからこそ次のステップに進むことができるということだと思います。それをやってみた上で、最後のほうで一応検証のことについても触れさせていただきましたけれども、一つの政策が全て未来永劫続くわけではないと思っていますので、それをやってみた結果としてどうだったのかということは真摯に振り返る必要があると思います。
 それから、柔軟な働き方をめぐる法制化のスピードだったり、そういうことを考えると今の構成でいいのかという御指摘だと思います。私は、その現場のリアリティーをつかんで何が正しいかということを検証していくために労使、そしてそのエビデンスを持っている学識者というのがどうしても必要なのではないかと思っていて、対立したときに多数決をとるとすれば同数のほうがやはり公平ではないかと思いますから、膠着するということもあるかもしれませんし、動きがもう少しスピードアップすべきということはあるのかもしれないですけれども、現状ではそこがものすごく足かせになるとは考えていません。
○冨山氏 具体的に聞いてみたいのですけれども、2010年、2012年にいろいろな改正がありました。私はこれは規制強化型だと思うんですけれども、私自身は多分2011年くらいの民主党政権の時代には、既に日本の労働者は猛烈な人手不足になると思っていたんです。それで、絶対そうなるといって書き物をいっぱい残しています。とりわけ、どちらかというと大企業の正社員ではなくて中小企業、サービス業のところでは猛烈な人手不足になる。
 それは根拠があって言っています。我々は東北地方でバス会社をやっているんですけれども、2007年からずっと運転手が不足しているんです。それを構造的に分析すると、完全に生産労働人口が先行して減ってしまうので、田舎のバスとか介護というのは全部お客様は高齢者で、供給側は生産年齢世代の運転手や介護士になりますから、相対的人口比において働き手が減って需要が増えていくので、人手がそういうことで足りなくなっているんです。それは私たちもわかっていたので、どう考えても同じことが絶対日本中で起きると思っていたんです。
 だけど、実際に労政審でそういう感覚の議論というのはいつからされていましたか。2010年頃からされていましたか。要するに、これだけの人手不足になってしまう、求人倍率が4倍、5倍になってしまうという前提の議論をされていましたか。
○岡田氏 具体的にどれぐらい、どういう業種の中で人手不足が起こるのかという議論があったかどうかというのは、ちょっと記憶にないです。
○冨山氏 実際に、我々のところではもう起きていたんです。岩手県と福島県では起きていたんです。リーマンショックのときも、やはり運転手は足りませんでした。それから、津波がきたときも足りませんでした。要は、雨が降ろうが槍が降ろうが、ずっと人手が足りなかったんです。
 きっと今は、この世界はそういう前提で議論されていますね。そうすると、さっきの議論でいうと、やはり私はちょっとセンシティビティーが遅いというか、鈍いというか、さっきちょっと御指摘された世の中の実態に対するアンテナが鈍いんじゃないかという感じが正直しています。
 それから、もう一つは質問で、さっきの三者構成の問題です。今、私の周りの若い人たちで猛烈に増えている働き方が一つ明確にあります。いわゆる個人経営、インディペンデントコントラクターです。彼らは、会社の100%オーナー社長です。この人はどちらですか。労働者ですか、使用者ですか。さっきの三者構成でどちらに入れますか。
 これは今、例外的な働き方ではないんです。猛烈な勢いで増えているし、割と有名な気仙沼ニッティングの御手洗さんのところの働き手は全員インディペンデントコントラクターです。これは間違いなくこの先、猛烈な勢いで増えていきます。
 それで、どこかの広告代理店は今ブラックで怒られていますけれども、あれはまだはるかにましで、下請け、孫請け、ひ孫請けは私の知っている限りほとんどみんなインディペンデントコントラクターです。これはブラックどころではない、超ブラックです。彼らはどちらなんですか。私は、少なくともこのくらいの問いには答えられないと、世の中の多様性を反映しているとは決して言えないような気がするんです。
 多分、この後、過労死するリスクが一番高いのはあの人たちだと私は思います。派遣とかは実はある意味で守られてきているので網はかぶっていると思いますけれども、インディペンデントコントラクターというのははっきり言って全く網はかぶっていないが、現実にはこの働き方は猛烈に増えてきているのです。
 特にデザイナーとかプログラマーとか、ライターさんもそうでしょうか。そういう片仮名仕事というのはほとんど今そういう仕事になっていて、こういう人たちが若い人の中ではすごく比率が高くなってきているわけです。要は、専門学校出的な人ですね。これは、労使でいうとどちらに入るんですか。
○岡田氏 本来的には、御自分のスキルを武器に仕事をやっていくということだと思いますので、事業主の側だと思いますけれども、実態的にはそこに至るまでに、要するに余裕を持ってそういうことができるようになるまでにはやはり一定の期間が必要だと思うんです。そのときには、やはりちょっと違う立ち位置なのでしょうか。
○冨山氏 そもそも労働法制というのが生まれてきた歴史的背景というのは、要は交渉上の非対称性であるとか、あるいは生産手段の非対称性とか、非貯蔵性の問題から生まれてきているんです。そういう意味でいうと、これは典型的な労働者中の労働者だと思うんですけれども、そうは捉えられないでしょうか。
 要するに、労働者もいいところだと思うんです。それこそどこかの広告代理店のひ孫請けなどでやっているデザイナーさんなんて、はっきり言ってすごい世界ですよ。ひどい境遇で働いている人を私はいっぱい知っていて、大体朝の3時から4時頃にメールがきてしまうのですが、どうなんでしょうか。本来の趣旨からいったら私は労働者だと思うんだけれども、違いますか。
○安藤氏 労働者性の議論というのは昔からあって、労働基準法上の労働者という考え方と、労働組合法上の労働者という2つの分かれた考え方があるんです。
 代表例でいうと、プロ野球選手というのは個人で契約をするので労働基準法上は労働者ではないとされているのですが、団体交渉はしてよくて、労働組合法上の労働者になっています。ですから、使用従属性という言い方をするのですが、結局は命令されてそれに対応しないといけない人間なのか、それとも働き方を選べるのかという段階と、あとはやはり交渉上の力関係があるから団体交渉が可能かということ。
 この2つの話というのは分けて考えないといけなくて、今おっしゃっている話は多分後者の話がまず表に出てきていて、つまり個人で使用者でもなく労働者でもない。雇用関係にないですから。
○冨山氏 団体交渉というのは、従属機関ですね。
○安藤氏 ですから、それこそプロ野球選手と同じように団体交渉を可能にすべきではないかというような議論というのはあってもいいと思うんです。
○冨山氏 ウェブデザイナーで団体交渉という姿は現実に考えられますか。プロ野球と違ってすごく分散的な構図の社会になってしまっているわけで、私は組合化してもらえたらすばらしいと思いますが、そういうものはつくれるのか。アメリカのユニオンなどはそれに近いものがありますけれども、現実にそういうものをつくれるのでしょうか。
○安藤氏 俳優さんの組合とかがあって、労働時間も全部管理しているし、労働条件も団体的に交渉する。だけど、オーディションを通じて人が選ばれるわけですね。そういう形で、団体交渉を可能な形にしていくというのは一つの姿かもしれないです。そのほうが窓口が一本化されて、使用者側というか、仕事を発注する側にも有利になる可能性も多々あると思うので。
○冨山氏 形式論としての三者構成論などからは自由に、こういう議論を労政審でやれたらすばらしいと実は思っています。すみません。シミュレーションになってしまいました。
○安藤氏 前回もいろいろな方に意見を聞いたときに私はとても疑問に思っているのですが、多様な意見を取り入れたいという話をすると、皆さん多くの立場の人にヒアリングをするとおっしゃるんです。でも、それが本当に意味があるのかということをぜひお伺いしたいのです。
 結局、皆さんお忙しくて、例えば今日のこの会議は全員参加されていないですよね。忙しい中せっかく来ていただいても欠席されている方がいたり、出られる会、出られない会があってというと、結局たくさんの人を呼べば呼ぶほどみんなが集まれないし、話を聞いていない人が増えていく。
 では、こういう場所に呼ぶのではなくて、事務局の方とかがヒアリングをしてそれをまとめたリポートみたいなものを読めばいいのか。でも、それだと生の声が聞けないし、具体的にもしアイデアがあれば教えてほしいという意味なのですけれども、まさにそういう委員として活躍されていたときに日程調整が難しいから実際問題、今以上に呼ばれても参加できないのか。それとも、例えばヒアリングの機会がとてもたくさんとられるとなったら、そういうものには結構皆さんは対応できるものなのか。
 使用者側の立場として、こういうものには時間が割けるものなのかというあたりを教えていただきたいのですが。
○岡田氏 一概にお答えできないのですけれども、生の声で、かつ多様な人の意見を聞くというのは非常に難しいと思うんです。例えば、大きな会社の社長が現場の声を聞きたいと思っても、なかなかそこでさえもパイプラインが通っていないことも多々あると思うんです。そのときにはラウンドテーブルみたいなもので、とりあえず多くの人を集めて、その場で短い時間で話を聞くということをよくやりますけれども、結局集めたら本当に有効な意見が聞けるかどうかというのはわかりません。
 やはりそれに対して何か考えている、こうしたいという問題意識があるという方でないと、今はどうですかという現状を聞くことはできるけれども、それに対してどうあればいいのかということをなかなか表明することは難しいでしょうし、使用者側の話でいえば時間を捻出していくのは相当厳しいです。それが現実だろうと思います。
○小峰座長 まだ御議論はあると思いますが、予定の時間を過ぎてしまいましたので、岡田様には大変ありがとうございました。
○岡田氏 ありがとうございました。
○小峰座長 それでは、続きまして、日本労働組合総連合会事務局長の逢見直人様よりお願いいたします。
 逢見様におかれましては、大変お忙しい中、当会議に御出席いただきありがとうございます。それでは、ちょっと時間も押しておりますので早速御発言をお願いしたいと思います。時間は10分程度でお願いいたします。
 逢見様からは、事前に資料の1-3を御提出いただいておりますので、あわせて御参照いただければと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○逢見氏 連合事務局長の逢見です。ヒアリングの機会を与えていただきましてありがとうございます。
 それでは、早速資料1-3に基づいて私から御説明をいたします。
 まず1ページでございますが、これは連合組合員の中で、いわゆる正社員とパート、正規、非正規の割合を示したものです。円グラフにあるように、現在は連合の組合員のうち約14%が非正規組合員となっており、人数で言うと約97万人です。また、左側の折れ線グラフにありますようにパート等で働く組合員数は年々増えてきております。
 次の2ページは、非正規・中小企業・未組織といった人たちに対し、連合がどういった取り組みをしているかということを示しています。真ん中の一番上の「働く者の立場からの雇用・労働政策の実現」ということを基点に、左側から回っていきますと、「春季生活闘争」については「底上げ・底支え」、「格差是正」ということで、正社員組合員だけではなくてパート、短時間組合員の賃上げの交渉もやっております。「春季生活闘争」で組織労働者がまず賃上げを決め、それが「最低賃金の引上げ」につながって未組織の人たちにも波及していくメカニズムがあります。
 また、連合は、電話などで「労働相談」を全国で受けていますが、その中で、労働組合に入っていない人たちが今どんな問題を抱えているか、どうしてほしいかということを把握し、そうした相談などを通じて労働組合の「組織化」という働きかけを行っています。こうした形で、連合は働く全ての人たちの雇用と暮らしを守る取り組みを行っているのです。
 具体的な活動は3ページ以降に記載しています。一つは非正規労働者や労働組合がない企業で働く労働者の職場実態を把握して組織化や処遇改善に取り組んでいるということです。また、労働者の視点に立った政策立案を行うために、調査でいえば「パート・派遣等労働者生活アンケート」、あるいは「非正規労働者の働き方意識に関する実態調査」という形で継続した調査を実施しております。イベント的なものとしては、写真を2つ載せていますが、長野県で実施した「パート・派遣・有期労働者との対話集会」ということで、ユニオニオンというキャラクターの下に当時の会長の顔が写っています。右側の写真は、千葉で行った対話集会です。
 4ページ目は、労働相談の写真です。これは連合東京でのホットラインの写真ですが、こうした「なんでも労働相談ダイヤル」というのを全国47地方連合会で行っており、2014年は1万5,659件、2015年は1万6,446件の相談を受けております。相談者の約半分が正規労働者ですが、非正規労働者の人も41%おりまして、最近の傾向としてはいわゆる非正規労働者の方の相談が増えてきています。
 5ページ目は、社会的アピールと広範なネットワークづくりの取り組みについて記載しています。学生や未組織労働者に対して連合を見える化していこうということで、交流・対話を通じていろいろな課題等の受け止めをやっています。左側の写真は、メーデー中央大会におけるテントで、就活している学生たちの相談を受けたりしている「就活応援カフェ」の写真です。また、「派遣社員のおしゃべりカフェ」を実施したり、毎日メディアカフェという毎日新聞が主催するものに連合ブースを出しております。それから、現在はSNSを活用し「ホントにあったブラック求人」という体験談のツイート収集の取り組みもやっております。
 その上で、6ページ目に「労働政策決定プロセスのあり方に関する基本的考え方」として3点ほど載せております。
 まずは、雇用・労働政策は、職場実態を熟知した労使が職場実態を踏まえた議論を尽くして立案するプロセスが必要不可欠だということです。労使を抜きにした政策決定プロセスで立案された労働政策は、職場の実態から乖離した政策となり、制度として職場に根付かないものになります。また、三者構成原則の考え方の本源にあるのは労使自治の原則であり、労使が交渉により自らを規制するルールを立案・議論・決定して、それに法的拘束力を与えるというのが政府の役割です。歴史的にもこういう形で決まってきているわけですし、こうしたものは労働政策の決定プロセスの基本にあるということです。
 三者構成原則は、雇用・労働政策決定プロセスの中で最も重要な考え方だと思います。そして、この労使関与の政策決定プロセスを具現化しているのが労政審であり、その労政審が引き続き「働き方」に関する政策決定プロセスの中心的機能を担うべきだと思っております。
 次の7ページは、「働き方」を含む大きな政策決定プロセスのあり方について記載しています。我々の課題認識としては、「働く」ということはその時々の経済情勢、社会情勢等、さまざまな社会制度、あるいは人口の動態といった複数の課題と密接に関連しておりますので、その意味で働き方に関する政策というのは他の社会制度など全体を俯瞰して、大所高所からの総合的な議論、立案すべき側面があるということです。
 しかし、最近ではこうした総合的な議論を行う会議体が官邸に複数設置され、その会議体で「働き方」を含む政策課題が個別に検討がなされ結論が出されています。しかし、こうした会議体には労働者代表が参加していないケースが多いとの問題意識を持っています。国の政策ベクトルを論議する場というのは、1つであるべきなのだろうと思いますが、そうした会議体には労働者代表を参画させ、当事者たる働く者の声を反映できる政策プロセスを決定すべきです。
 次に8ページ、「労政審のあり方について」です。現在の労政審は、政府の会議体が決定した政策の大枠に沿って個別政策の落とし込みを行っていて、戦略的な議論はできていないのではないかと思います。特に労政審本審は、私自身も本審の委員をやっていますが、労働関係予算などの報告を受けるのみにとどまっています。具体的な制度設計は分科会毎に議論されているのですが、分科会毎の横の連携が十分ではないとの認識を持っています。
 そういう意味では、労政審本審の議論をもう少し活発化させて、あるべき雇用・労働政策の方向性の議論を行い、そこで決定した大枠に沿って分科会等で個別制度のあり方を議論すべきなのではないかと思います。大分前になるのですが、2007年には労政審で「今後の雇用・労働政策の基本的考え方について」を建議した経緯がございます。こういったものを節目節目でやっていく必要があるのではないかと思います。
 次の9ページですが、労政審改革についての個別的論点として、まず一つは労働者代表の正統性ということが論点になっていると聞いております。冒頭で申しましたように、連合組合員のうち非正規で働く人は100万人弱おります。それから、連合加盟の労働組合のうち約3割は中小の労働組合です。そういった意味で、連合運動の多くは非正規・中小・未組織といったものに視点を当てている取り組みであると我々は思っております。また、連合が非正規・未組織・若年の雇用を吸い上げる活動もやっているということは先ほど申し上げたとおりです。そういう意味で、労政審委員は単に組織された労働者の代表ということではなくて、「すべての働く者」の代表として選出されているという自覚を持って労政審で発言をしております。何となく労働組合の代表というのは正社員クラブじゃないかというイメージがあるようですけれども、決してそういうわけではありません。イメージではなく、きちんとしたエビデンスに基づく議論が必要なのではないかと思います。9ページの下段に、直近の法改正における労政審での連合の主な主張、どういう主張をしたかを書いておりますが、これを見ると決して正社員の立場だけで発言しているわけではないということがわかると思います。
 次に10ページですが、労政審の議論のスピードです。雇用・労働政策は労使が徹底的に議論し、ある程度納得した形で結論を得るということが極めて重要です。多数決原理で強行採決のような形で結論を出すべきものではなく、熟議が必要だと思います。しかし、労政審で長期にだらだらと議論をやっているかというと、決してそうではありません。最近の2013年からの主な労働関係法改正における労政審の審議の開始から建議までの期間を下段に載せておりますが、そんなに長く時間をかけてやっているものではないと認識しております。
 次の11ページは「まとめ」です。「働き方」に関する政策は、職場の現実を熟知した労使がコミットした中で、現場の目線を踏まえた上で政策をつくり上げるべきです。
 この労使関与による政策決定プロセスを具現化しているのが労政審であって、労政審は引き続き「働き方」に関する政策決定プロセスの中心的機能を担うべきです。
 一方で、労政審本審や分科会における議論のあり方については、見直す必要もあります。労政審本審においては中長期的視野を含めた骨太の議論をもっとやるべきだろうと思いますし、分科会においてはもう少しお互いの連携ということも考えていく必要があるのではないかと思います。労政審として、一層の機能強化に向けた不断の努力は行っていくべきだろうと思っております。
 以上で、私の発言を終わります。
○小峰座長 逢見様、どうもありがとうございました。
 それでは、質疑、意見交換を行いたいと思いますので、どうぞ御発言をお願いいたします。
○安藤氏 私が一番気になったというか、関心があるのは労働者代表の正統性の議論です。まさにおっしゃっていたように、やはり連合というと大企業の正社員の代表であって、非正規の人の意見を取り入れていないんじゃないかという疑念がありますが、それに対する反論として「「すべての働く者」の代表として選出し、発言している」とここに書かれているわけです。
 それで、エビデンスに基づく議論が必要とおっしゃっているんですけれども、全ての働く者の代表として発言したということをエビデンスとして示せるのかということも気になるんです。
 と申しますのも、やはり出てくる代表者というのは人にもよりますけれども、大体、大企業の労働組合の専従だった方がどんどん偉くなっていって、こういう場に労働者代表として出てくる。そうすると、その人たちに例えば派遣労働者の気持ちがわかるのかとか、また派遣労働者もデータによると約50%は本当はもっと安定した正規の仕事をしたいがそういう仕事がないから嫌々やっているという不本意型で、残りの50%はそうではなくて派遣がよくてやっているという人もいたりするわけです。
 こういういろいろな立場、いろいろな考え方、いろいろな意見の人の代表として、どうすればそれを発言しているということを周りに信じてもらえるというか、それが伝わるのかということがとても気になるのです。「「すべての働く者」の代表として選出し、発言している」ということに対して疑念が持たれているときに、それに対してどう反論されるのが一番伝わるのかというところが気になりました。ここに書いてあるように、こういうことになっているというだけではちょっと弱いのかなという気がしたのですけれども、いかがでしょうか。
○逢見氏 電話相談などで来ている労働相談事例については全部報告が来て、私も見ていますし、労働相談の状況は連合の中央執行委員会にも報告しています。また、審議会等がある場合は労働相談から非正規労働で働く方や未組織労働者の人たちに起こっている労働問題を把握して、政策提言しています。
 それから、連合組合員のうち非正規雇用で働く方が約100万人いると申し上げましたが、その中には派遣労働で働く方もおりますし、パートタイマーの方もおります。そういう人たちの声を代表する必要があるということで、前回から労政審本審委員にもパートの代表の方を入れております。また、派遣労働者のユニオンもありますので、特に派遣法などのかかわりの深い政策課題には、そうした方の意見も聞いた上で参加をしているということでございます。
 9ページの下に労政審における連合の主な主張を記載していますが、主だった法改正では必ず派遣労働者や非正規労働者の人たちの問題点についても発言をしているというのは、労政審の議事録を見ればおわかりになるんじゃないかと思います。
○大田氏 2つ伺いたいのですが、先ほどの議論で多様な働き方のニーズがある中でそれをどう政策に反映するかというとき、私はなるべくたくさんの人の声をヒアリングすればいいということではなくて、どんな働き方を選んでも著しく不利にならないような状態をつくっていくことが望ましいんじゃないかと思うんです。
 つまり、正社員だけが望ましい働き方だというような考え方でいくのではなくて、個人の選択が機能してどれかが著しく不利にならないということですね。あるべき姿を押しつけるのではないということがいいんじゃないかと思うのですが、連合はこれについてはどういうふうにお考えなのだろうかというのが1つ目の質問です。
 それから、多様な声を聞かれる努力というのは実際しておられると思いますし、今そのお話も伺いましたが、非正規の人と正規の人が制度改革をめぐって利害は本当に一致するのだろうか。組合費を払っている人と、非組合員とで本当に一致する形で意見をまとめられるのだろうか。そこは、連合としてはどう受け止めて意見を言っておられるのかというのが2つ目の質問です。
○逢見氏 最初のご質問は、どういう問題意識を持つかということなんです。多様な働き方は、我々も否定していません。しかし、そういう人たちがどんな働き方であってもセーフティネットがきちんと整備され、キャリアアップの機会もあって、自分で能力を高めてそれにふさわしい処遇を受けることができる機会は与えられるべきだと思っているのです。しかし、各種調査などを見てもやはり非正規の人たちにはキャリアアップのチャンスも少なく、セーフティネットもカバーされていない部分があるのです。であるからこそ、連合はそういった部分に問題意識を持ち、政策的に何が欠けているか、それをどうしていったらいいかということを考えているのです。特に労働法というのは、労働者保護のために機能しているところがありますから、そういった問題意識を持って、今起こっている現象の中でどういう点を改善していけばいいか。そういった視点で、我々は審議会に臨んでいるということです。
 2番目の質問は、実際にパートを組織している組合などの運営を見ていただければ良いと思いますが、私の出身のUAゼンセンなどは半数以上がいわゆるパート等の非正規雇用で働く組合員です。パートを組織化する場合に2つの方法があって、正社員を中心に直接雇用をされている人が加盟する既存の組合がそのウイングを拡げてパートの人たちまで組織範囲を拡げて一体的に運営していくというやり方と、地域でユニオンなどに駆け込み的に入ってきて、そこで非正規の人たちを集めて組織化するというのがあります。この2つの方法で、制度的に安定的に運営していく観点からは、やはり前者の既存の組合がウイングを拡げてパートの人たちの声を聞いて運営していくというやり方が安定的な運営ができるのです。
 そうした組合では決して正規と非正規の間で利害対立的に運営しているわけではなくて、パートの人たちの条件をどうやって上げていけばいいか。そのときに、正社員がそういう部分もしっかり見てあげる。そういう形で、全体の最適な関係をつくっていく努力を実際にやっているわけです。
○小峰座長 ほかにございますか。
○安藤氏 今、大田さんからあった質問と同じようなことを私も考えていまして、先ほどのヒアリングで派遣法の改正であったり有期雇用の無期化の話で、使用者側にはいろいろ難しい点もあるというようなお話を聞いたんですけれども、労働者のある人にとっては得になって、ある人にとっては損になるような変革はあると思うんです。
 まさに今申し上げた、有期雇用が一定の年限に達したら無期雇用に無期転換される。これは、無期転換してほしくて無期転換された人はいいですけれども、その手前で雇止めになった人はかわいそうな気がするんです。そういうことで、ある特定の施策を打ったときに幸せになる労働者と困ってしまう労働者が出るというときにはどこで線引きをするかというか、どういう方針でその労働者の意見として出さないといけないのかというところはとても悩ましいと思うんですけれども、そのあたりについてはいかがですか。
○逢見氏 どこかで政策を動かそうとするとき、その政策でプラスの影響を受ける人とマイナスの影響を受ける人がいるというのは、どんな政策でもあり得ます。しかし、これは労働法制については、弱い人たちがさらに弱い立場にならないように、そこはしっかり守っていかなければいけない。これは根本としてあると思います。やはりセーフティネットというのは重要な機能であり、そこは労働立法の座標軸として重要ではないかと思います。その上で、政策的に不利を被る人たちについては、いきなりそういうことにならないようにソフトランディングなどを図るといった工夫はあると思います。
 なお、無期転換は本人が希望することが前提で、一律に無期転換するわけではありません。
○小峰座長 ほかはいかがですか。
○冨山氏 私は連合にはもっと非正規を増やせとずっと言っていた人間なので、この数字を見て非常にうれしく感じています。
 それはそれとして、さっきの正統性の議論なんですけれども、私は連合という一番大きな組織がここにいるのはある意味では当たり前で、当然のことだと思っているのです。必要条件的にはそう思っているんですけれども、逆に十分条件的に捉えたときに、さっきちょっと申し上げたようなインディペンデントコントラクターの問題なども含めて、要は今の構成でフォワードルッキングなものも含めて、現実に起きていることを取り込んでいくような構成になっているのか。むしろこういう類型の人も入れたらいいのだろうと、組合の外側でももしそういうのがあったら、その辺はどういうふうにお考えかというのが質問です。
 それから、私も三者構成というのは全然否定していないんですけれども、逆に使用者の側の中にもひょっとすると利害は一致しない構図はあって、多分、私は経済界の人間としては極めて例外的に最賃を1,000円にしろとか、労働基準監督もどんどん強化しろとか言ってきた側の人間なのです。
 だけど、これは多分どこかの有名な団体を代表してしまうと、なかなか口が裂けても言えない現実があって、同友会は割とそういう意味では緩いのでそういう意見書を出してしまっていますけれども、でもあれも結構、中ではもめるんです。あのくらいのことでももめるんですけれども、その辺は逆に逢見さんから見ておられて、これも同じことなんですね。
 要は、ストレートに経団連的な委員がどこまで、あるいは経団連と日商まで含めてもいいんですけれども、どこまで今の産業構造的にいうと全体像というものが俯瞰して見えているのかどうか。見えていないところはいっぱいあるような気がしていて。
○中西氏 御指摘の点は非常に深刻な問題と認識しています。
○冨山氏 先ほど少し申し上げましたが、例えば東北地方で先行して起きていたああいう労働市場の劇的な環境変化というのは、多分、平均的な経団連では絶対につかめていなかったはずだと思っているんです。
 もちろん意見はどこかで統合しなければいけないので、みんなでわあわあ言っているだけだとまとまらないということは当然なんですけれども、まさにエビデンスのセンシングというのは重要な問題だと思うのです。これは建設的な質問ですけれども、何かいいアイデアをもし逢見さんがお持ちであれば教えていただきたいのですが。一番境目のUAゼンセンで頑張っておられるので。
 もう一点は余計な質問なんですけれども、さっき安藤先生が言われた、ああいうインディペンデントコントラクターみたいな人たちを組織化するような話というのは、現実的アプローチとしてできそうなのか。そういうことは考えておられるのか。もしそれを教えていただければ、これも割とUAゼンセンっぽいテーマのような気がちょっとしているのですが、いわゆる非典型労働なので。
○逢見氏 インディペンデントコントラクターについての質問ですが、そもそも労働組合の歴史というのはクラフトユニオンが起源なのです。つまり、独立した職人たちが集まってつくられている組織から始まっているわけで、そこからその雇用関係ができ上がり、労働組合が発展してきた。今は主に雇用労働者によって成り立っていますけれども、ヨーロッパに行ったらまだ依然として職人の組合はあります。
 日本では、全建総連という組織があります。これは、自前でやっている工務店などの人たちが入っています。それから、音楽家ユニオンなどは、演奏家の方たちが入っています。こうした組合もあるし、労働者性については先ほど議論がありましたけれども、労働組合法上の労働者と労働基準法上の労働者では定義が違って、労働組合法上の労働者は割と幅広く見ているんです。最近は最高裁の判決などもあって少し整理されてきてはいますが、まだ問題はいろいろ残っており、今、連合としても争議をやっているものがあります。特に今は雇用労働に近い働き方であるにもかかわらず請負契約にしているところ、これは実態としては雇用契約ではないかということで労働委員会や裁判所で係争している事件もございます。我々としては、こういう曖昧な働き方で労働法の保護を受けることができない人について、何とか労働者性を認めさせてあげたいと思っています。
 それから、経営者団体のことはあまりコメントはしませんが、連合としては経団連、日商、経済同友会、全国中央会、それから中小企業家同友会というのもありまして、こういったところとお付き合いをしています。また、今、地方で地域フォーラムというのを始めていますが、そこではできるだけ地域で頑張っている中小企業の経営者の人にも来てもらって、できるだけ多様な経営者の方と対話をして、連合のことも理解してもらいたいと思っています。実際に地方へ行って聞くと、抱えている労働問題というのは我々が東京で見ているよりももっと深刻なものもありますので、そういう話もできるだけ聞くようにしています。
○小峰座長 私からお尋ねしたいことがあるのですけれども、提出していただいた資料の6ページです。この真ん中あたりに「三者構成の原則の考え方の本源」と書いてあって、これはルールを決定してそれに法的拘束力を与える場合に三者構成で議論するのがいいのではないかということです。
 これは、私は確かにそうだと思います。労使を両方ルールで縛る場合には、労使が相当議論して納得したものにする必要があるというのはそのとおりだと思います。ですから、これは前回の会議でも言ったのですが、このルールはこういうルール設定型に非常にフィットした議論の方式なのではないかという印象があるんです。
 それに対して、今度は次の7ページで、「働く」ことというのが単に労働ということだけではなくて経済情勢、例えば生産性にも影響するし、人口も関係してくるし、それから社会保障とも密接に関係するという非常に広い大きな問題になってきたときに、そういう議論の場にもやはり公労使同数で、三者構成で議論しなければいけないということは、もうちょっと柔軟に考えていいのではないかと思うのですけれども、それについてどうか。
 それからもう一つ、そういう問題になると、労政審がその議論の中心の場になるべきだという議論は説得力があるかというと、こうした議論は官邸などでもやるわけですけれども、そのときに労働者代表が参加していない場合があるではないか、これはそのとおりだと思うんですけれども、それではそういう官邸などの議論に労働者代表が参画するようになればそれでいいのか。労政審でなくてもいいのかという疑問があるのですが、その辺はいかがですか。
○逢見氏 以前は審議会もいろいろありましたが、これをできるだけ集約化するという形で、労働関係は労政審と中賃に集約化されました。昔は雇用審議会などがありましたが、雇用審議会では中長期的な雇用問題の見通しなども語りながら政策論議を行っていました。行革の中でそうした審議会がなくなり、労政審に一元化してしまっているということがあります。
 現在の労政審は法律案についての諮問・答申機能があるので、委員はやはり労使同数であるべきです。労政審である限りは、やはり同数が原則だと思います。ただ、それ以外のところでも労働問題について議論していけないということではないので、もう少し法案の諮問・答申などに縛られずに、長期的視野で労働政策を議論できる場があってもいいかと思います。
 ただ、官邸の会議体については、我々から見ると大分人選にバイアスがかかっているように感じざるを得ません。
○小峰座長 ありがとうございました。何かありますか。ちょっと時間も過ぎましたが、それでは中西さんどうぞ。
○中西氏 今おっしゃられたことが、かなり本質ではないかと思います。中長期といったタイムフレームの問題だけではなく、現実に起こっていることをどのようにして、しっかりと捉えるかという点については、経営者側にも相当課題が多く、それが政労使の会議でやり切れるとは私は思えないのですけれども、経営者自身の課題であるからしっかり考えるよう言われると、そうではなく、やはり一緒に考えなければならない側面もまたあるものと思います。
○小峰座長 ありがとうございました。
 それでは、逢見さん、本日はありがとうございました。
○逢見氏 どうもありがとうございました。
○小峰座長 それでは、最後に大崎電気工業株式会社代表取締役会長の渡辺佳英様にお願いしたいと思います。
 渡辺様におかれましては、大変お忙しい中、当会議に御出席いただきまして大変ありがとうございます。
 それでは、ちょっと時間も押しておりますので、早速御発言をお願いしたいと思います。時間は10分ということでお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○渡辺氏 大崎電気工業株式会社の渡辺でございます。本日、このような機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 私は、長年にわたりまして労働政策審議会などの厚生労働省の政策決定プロセスに参加してまいりました。その経験を踏まえまして、中堅中小企業を代表する立場から、働き方に関する政策決定プロセスに関して意見を申し上げたいと思います。資料はございませんので、口頭で申し上げさせていただきます。
 まず、委員の構成についてでございます。私は、現在の公労使の三者構成を維持すべきと考えております。労働政策に関する事項は原則として労使自治の下で決定すべきものであり、現場の実情を熟知した労使の代表が真摯に議論し、どうしても折り合いがつかない場合に公益の先生方の御見識をもとに判断するという現在の形が望ましいのではないかと考えております。
 また、政労使か、公労使かという論点につきましては、労政審の議論がその時々の政治的な事情に左右されることは、長期的な労働政策を議論するに当たり好ましくない影響を与えかねないと思いますので、委員構成は現在の公労使を維持すべきだと考えております。
 次に、政策の決定に当たる議論について申し上げます。私のこれまでの経験で、労政審において公労使で十分に議論したはずなのに、その後の国会審議等において結論が変わってしまうということも、ままありました。国会での審議を尊重するということは異存ありませんけれども、政策決定プロセスのあり方として公労使が積み上げてきた議論が無視される決定がなされたことがあるということは、極めて残念だと思っております。
 例えば、平成20年の労働基準法改正の際には、まずホワイトカラーエグゼンプションが一番注目されました。そして、結論から申し上げますと、ホワイトカラーエグゼンプションと月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率の両方を制度化するというのが労政審の結論でありましたけれども、与党で審議を経た結果、ホワイトカラーエグゼンプションは法令に盛り込まれず、割増賃金率に関してはほとんど労政審で審議されないまま、制度化されてしまいました。
 また、派遣法については、時々の事情で規制が緩和されたり、強化されたりしたことは御承知のとおりです。長期的な視点に立って人員計画を立てるという企業側からすると、政策が一貫していないことに非常に苦慮しております。
 さらに、今年の最低賃金の決定プロセスにおきましては、商工会議所として中小企業の経営状況や地域の実情を説明し、慎重な対応をお願いしてまいりましたが、納得できるデータが説明されないまま、政権の意向が強く反映され、大幅な引上げとなりました。
 現在、商工会議所ではさまざまな対応を行っておりますが、地方の小企業を中心に大幅な最低賃金の引上げへの対応に苦慮し、大きな影響が出ることを強く懸念しております。
 加えて、労働政策審議会と分科会の関係につきましても意見します。私の経験では、分科会が出した結論に対して労政審の本審で意見を述べることはほとんどなかったように思います。現行法の大幅な改正や新法の建議に当たっては、その影響の大きさに鑑みまして分科会の出した結論は尊重しつつも、改めて労働政策審議会の本審で議論できるように運営していただきたいと考えております。
 次に、政策決定のスピードについては一概に評価できないと思っております。議論するテーマの重要度や、事務局の進め方によって変わってくるものですし、労働政策審議会で時間がかかっているのか、それとも労働政策審議会の前段階の研究会などで時間をかけ過ぎているのか、又は国会審議が政治の思惑で止まっているのか、さまざまなケースがあると思っております。テーマによってスピードを重視するか、それとも議論の質や深まりを重視するか、事前に労使で合意していくことも有効な方法であると考えております。
 労働基準法改正案は、労使の真摯な議論を経て2015年春に国会に上程されましたが、現在に至るまで議論がなされないまま継続審議状態になっていることは大変残念に思っている次第です。商工会議所としては労働基準法改正案に賛成しており、早期の成立を期待しております。
 最後に、労働政策審議会のあり方について申し上げたいと思います。長期的な視野に立って、労働政策の方向性について大所高所から議論する場としては、労働政策審議会こそがその場所にふわさしいと思っております。我が国は人口減少という構造的な課題を抱えておりまして、社会の構造も複雑化、多様化しております。
 このような中、多様な働き手が、自らの能力と意欲に応じて多様な働き方を選択するような環境整備が求められております。働き手が減少しても、経済規模を縮小させないためには、どのような働き方が望ましいか。働き方の将来像が国民の中に共有されないまま、例えば法律の一部分の修正を繰り返していくことは、かえって全体最適の観点で矛盾が生じかねないと思っております。このような大きな問題を、労働政策審議会の場でぜひ議論をしていただきたいと思っております。
 以上、縷々申し上げましたけれども、労働政策審議会の役割や、掛けられる期待は今後ますます大きくなると思っております。この有識者会議を通し、政策決定プロセスの透明性が向上することを期待しております。以上です。
○小峰座長 渡辺様、どうもありがとうございました。
 それでは、質疑、意見交換を行いたいと思います。御自由にどうぞ。
○安藤氏 今いただいた御意見の中で、目先のルールづくりのようなものと働き方の将来、このどちらも労政審で議論するのがふさわしいというような御見解でしたけれども、私個人としては、公労使が三者で議論するのはいいのですが、ふさわしい人間が違うんじゃないかという気もするんです。
 例えば、今のルールづくりをするのであれば、当然法律に詳しい労働法学者の先生であったり、または企業も経営者であったり、労働者もいろいろ組織化されたところだと思うのですが、例えば20年後とかすごく先のことまで議論しようとしたときに、果たしてそういう人たちがふさわしいのかというのも気になるんですけれども、そのあたりはどのようにお考えでしょうか。
○渡辺氏 やはり将来的な働き方を検討するためには、使用者側と労働者側が十分に議論することが重要だと思います。将来、どのような働き方になるかまではわからないですが、少なくとも今の労働基準法が時間と賃金を結び付ける、という原則に立っている現状を踏まえると、それが果たしていいか悪いかという基本的な問題も含めて十分議論していかなければならないと思います。
 今はネット社会でパソコンあるいは携帯電話その他の手段で就業時間や場所に縛られず働く方も多いわけですから、そういった環境変化も含めて、どういう働き方をすれば労働者にとって最も望ましいのか、ということを労使で十分に議論することは可能ではないかと思うのです。それに、公益の方々の知見を加えることでより好ましい議論ができるものと考えております。
○安藤氏 労使が議論するということについては全く同意見なんですけれども、例えば20年後の議論をするんだったら30代、40代の人が議論したほうがいいんじゃないかとか、失礼ながらそのときには現役じゃない人たちが議論をしても仕方ないんじゃないかということまで考えてしまうのですけれども、例えば経営者側であったらもっと若い世代にこういう人がいるとか、そういうふうにもうちょっと世代的に多様化させてはどうかというような議論がこれまで少しあったのですが、そのあたりについてはいかがでしょうか。
○渡辺氏 労働政策審議会の使用者側の年齢構成をみると、60代が一番多いです。次いで50代、40代となっています。そういう将来的な議論をするということであれば、使用者側で40代という方に参画いただいても悪くないと思います。ただし、使用者側で40代というと中堅幹部ということですが、それが使用者側の代表者かというと判断が難しいところだと思います。
○古賀氏 今の議論の続きですけれども、前回の樋口教授の提案は、労政審の下に企画部会を設けて、中長期の労働政策の議論はそこで議論してはどうかという提案だったと思うのです。
 私はこの有識者会議の初回会合から言っていますが、労働政策も労働政策だけで閉じ込もった議論はできないわけです。税制の問題、社会保障の問題、産業政策の問題といった多くのことと関連して議論しなければならない。そういう点からすれば、そうした総合的な議論を今の労政審本審のメンバーでやるというのは率直にそうかなという気がするのです。渡辺会長は、樋口教授が言ったような本審の下に企画部会などを設けてやるという方法について、どうお考えですか。
○渡辺氏 アイデアとしては結構だと思います。先ほど労働側の逢見さんもおっしゃっていましたが、労政審での議論がほとんどない、というのが率直な感想です。事務局から説明を受けて、それに対して承認するだけですから、それよりももう少し建設的な議論を労政審で行いたいというのが我々の意見です。
○冨山氏 本審というのは、何人の委員がいるんですか。
○酒光総合政策・政策評価審議官 30人です。公労使各側10人です。
○小峰座長 ほかにいかがですか。
○冨山氏 先ほどの多様性とかかわるのですが、今は働いている人もすごく多様化していますけれども、使用者もそれこそベンチャー経営者とか、若い経営者が都会でも、結構地方でも今増えてきていると思うんですね。こういう人を取り込んでいくということは私はすごく大事だと思っているのですが、それはやはり今の感じでいうとそういう企画は何かタスクフォースをつくってそこに入れるのがいいか、それとも本審にも入れたほうがいいのか、その辺はどうなんでしょうか。結構、30代でもいいのがいるんですけれども。
○渡辺氏 審議会の委員の決定方法については詳細に把握しておりませんが、ベンチャー企業とか、あるいはIT情報系の企業とか、そういう分野の委員というのは少ない状況です。
 現在は、どちらかというと製造業とか、サービス業でも大手スーパーとか、そういった企業に偏ってしまっているので、その辺のところは、ベンチャーがいいかどうかは議論が必要ですが、IT情報系の会社からもう少し参画してもらうとか、そのような審議会の委員構成のあり方は、経営者側でも検討すべきではないかと思っております。
○安藤氏 今の議論にとても感銘を受けました。私は個人的には若手の経営者とかがもっと入るべきだと思っているのですが、果たしてその人たちに入るインセンティブがあるのかどうか。
 つまり、今、仕事を立ち上げていてとても自分の仕事が忙しい人たちが、今後いろいろな議論をするような場にかなり拘束されるということを喜んでやってくれる有能な人というのがどのくらいいるのかということがとても気になるんです。例えば処遇であったり、こうすればもっと議論が活発になるとか、参加しやすいであるとか、もっと活発な提言ができるであるとか、議論の進め方でも何でもいいので、こうしたらもっといいんじゃないかというようなアイデアがあったら教えていただきたいんですけれども。
○渡辺氏 委員の参加ということですか。
○冨山氏 報酬を増やすということでもいいですし。
○渡辺氏 まずベンチャーの方とか、そういう若い人で商工会議所や同友会など経済団体に所属している方々は社会貢献意欲も高く、本業が忙しくてもある程度協力いただけるのではないでしょうか。そのためにも、経済団体がもっと魅力的なものになり、若い経営者の方々がもっと経済団体に参加したい、という状況を作っていかなければならないと思います。
○冨山氏 青年会議所とかはどうなんですか。青年会議所には結構いい人がいると思うんですけれども。
○渡辺氏 私も青年会議所で活動しておりましたけれども、青年会議所に加入できるのは40歳までですので、そこから委員を選ぶとなると相当な若手に参画いただくことになり、その良し悪しは別途検討が必要だと思います。なお、商工会議所の労働委員会などには青年会議所の代表が入っていることもあります。
○小峰座長 私の印象では、若い経営者の方も自分たちの意見が本当に政策的に反映されるという公的な役割がかなり果たされるということであれば、比較的入っていただけるのではないかという印象があります。もちろん、お忙しいのですけれども。
○冨山氏 私の感じも近くて、ちょっと前の目玉がドルマーク系のバブっているお兄ちゃんたち、だからはっきり言って六本木ヒルズ系はだめなんですけれども、例の御手洗さんなどもそうですが、最近出てきている人は大分、雰囲気が変わってきていて、やはり社会に貢献したいという思いでベンチャーをつくっている世代が増えてきているので、あの連中ならば私はかかわってくれると思います。
 とにかくバブル目玉ドル系は入れてもろくなことがないのでどうでもいいと思っているんですけれども、新しい連中を巻き込んでいくのは私も大賛成な気がします。
○小峰座長 前回、出席者の方から御提案があったのですけれども、例えば20年後、30年後の働き方を議論するのであれば20年後、30年後に働いている人が議論したほうがいいという御意見があって、その人たちの委員会をサブコミッティのような形でつくって、その人たちだけで議論して、その意見をまた紹介するというふうにしたほうが、個別に呼んでやるよりもいいのではないか。
 そうすると、その応用で考えて、例えば非正規の人だけを集めて働き方について考えてもらうとか、そういうやり方もあるのかなと思いました。
○渡辺氏 私の個人的な意見から言いますと、厚労省のほうで20年後の働き方を検討されているようなので、その検討結果をもっと議論に反映すべきだと思います。
○酒光総合政策・政策評価審議官 冨山さんにも出ていただいてやった会議で、今いただいた報告書をもとにそれを具体的な施策に落とし込むということを今、検討しているところでございます。
○冨山氏 さっきの御手洗さんとか、何人か非常に若い人たちは、むしろ私などより出席率も働きぶりも立派だったような気がするので、おっしゃるように自分たちの意見が今どうするかという議論に入ってしまうと、やはり平均値の中で消えていっちゃうと思うんですけれども、多分20年後という話になるとほぼ生かされたレポートになって世の中に出て行くので、動機付けとしてはすごくあれは効いていましたね。異常にみんな頑張っていたので。ああいうのはいいと私も思いました。
○酒光総合政策・政策評価審議官 今出た御手洗さんなどは東北のほうにいらっしゃいますけれども、時にはテレビ会議などでも参加いただいていたということで、結構参加いただいていました。
○小峰座長 それでは、予定の時間も過ぎましたので、渡辺様には大変ありがとうございました。
 次に事務局から、他の有識者の御意見の紹介と、引き続き説明もあわせてお願いします。
○佐藤企画官 私から資料1-4につきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
 資料1-4ですけれども、まず中小企業団体中央会からということで栗原様から御意見をお伺いしました。本日は御都合の関係でおいでいただけなかったのですけれども、お伺いした御意見をまとめたものと、あとは第1回のときに医療福祉ですとかサービス・小売のところの委員の方が相対的に少ないのではないかというお話がありましたので、日本介護福祉士会と日本チェーンストア協会にもお伺いしてお話を伺ってまいりました。これらの方々の御意見を簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 1枚お開けいただきまして、栗原様の御意見でございます。
 まず、政策決定に当たっての議論につきましては、これまでもいろいろな方々から出ているところでありますが、やはり自主的に政策課題を考えて議論するようなところが不足していたのではないかという御意見がございました。
 それから、エビデンスに基づいて議論をしていくというのは重要で、特に小規模企業のデータというのを重視していただきたいという御意見をいただいております。
 それから、分科会の所掌をまたがるものについてどうするか、見直しを含めて整理すべきであろうというお話でございました。
 それから、三者構成につきましては、基本的に制度をつくる過程においては制度にかかわる当事者が議論に参加をすることが大事であって、そこできちんとした議論を経て決定した結論については多少不満が残っても、制度の普及や法令遵守に尽力をしているという意味で、三者構成というのはやはり絶対必要ではないかという御意見をいただいております。
 それから、公益の委員についても政策分野に詳しい学識経験者が望ましいのですけれども、対立した場合には中立的な立場で意見を言っていただくことが重要であろうという御意見、労使同数は間違いなく必要で、公益もできれば同数がよいという御意見をいただいております。
 代表性のところにつきましては、中小企業の経営者の方々は年齢が上がっておりまして、国の施策として高齢者の活躍ということを言っているのであれば、70歳以上の高齢委員も認めていただきたいという御意見がありました。
 ページをめくっていただきまして上のところでございますけれども、製造業と比較して商業・サービス業というのは規模が特に小さいところもあって、そういうところの経営者に公的な役割を引き受けてもらうというのはなかなか難しいという実情もお話しいただいております。そういう意味で、委員の構成だけではなく、ヒアリングなども含めて活用していくべきではないかという御意見がございました。
 それから、スピードのところにつきましてはケースバイケースで、内容によってはじっくり時間をかけたほうがいいものもあるのではないかということと、官邸や内閣府、内閣官房から大枠の検討課題が示されて、それを労政審で議論すると時間がかかるような場合もあるというような御指摘をいただいております。
 それから、多様化を図ればやはり長くなるという弊害もあるのではないかということで、スピードよりも中身を重視した審議を優先すべきというような御意見をいただいております。
 以上が中小企業団体中央会の栗原様からの御意見でございます。
 続きまして、日本介護福祉士会でございます。同会にお伺いをしたところ、連合や経団連が介護現場で働く人の現状をどのくらい理解されているかは正直よくわからない、我々もよくわかっていませんということでございました。
 それから、強くおっしゃっていたのは、介護というとどうしてもみんながみんな劣悪な労働環境で苦労しているというようなイメージが語られるんだけれども、そういう人ばかりではないんだということをぜひ知っていただきたい。そういう人もいることは否定しないけれども、全体としてそういう人ばかりではないということをぜひ皆様に知っておいていただきたいということをおっしゃっておりました。
 次のページに行きまして、日本チェーンストア協会でございます。同協会は、政策決定のところにつきましてはやはり現場の実態というものをぜひ尊重していただきたいということがお話としてございました。
 それから、三者構成については課題もあろうかとは思うけれども、やはり三者構成でバランスのとれた議論ができるというメリットがあるのではないかという御意見がございました。
 それから、業種業態ごとに抱えている問題点が違う、チェーンストア協会の中でも大分業態によって違うという中で、全ての業界から委員を出すというのは難しいとなれば、やはりいろいろな形で臨時的な委員とか、ヒアリングも含めて補っていくしかないのではないかという御意見がございました。
 それから、代表性のところでございますけれども、やはり小売・サービスの労政審委員が少ないというのは懸念をしている。小売・サービスと製造業では実態が違うのだから、やはり小売・サービスの声とか多様性というのはまだ十分に反映されていないのではないかと思っている。ただ、小売・サービスの中でもその業種・業態によって大分差があるので、小売・サービスという一つで括るのもなかなか難しいのだというお話をいただいております。
 それから、ここは非正規で働いている方が多い業種でございますけれども、「非正規の声」というところではやはり非正規に限らずですが、組織化されていない方の意見を把握するというのは一定の限界があってなかなか難しい。仮にそういう声を聞くとなると、本当にその人が多くの方の声の代弁をしているのかとか、意見が合理的なのかということをしっかり考慮しないといけないのではないかというようなお話がございました。
 最後のところでございますけれども、中央会のところでもございましたが、関係者をどのように関与させるかということが大事であって、関与すると多少不満があっても仕方ないと思うということで、関与することで納得感というものが与えられる面があるのではないかというような御意見をいただいております。
 以上、事務局で御意見を伺ってきた方々の御意見を御紹介させていただきました。
 引き続きまして、資料2に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。資料2ですけれども、前回、前々回に御説明させていただいたところについては基本的には割愛をさせていただこうと思っております。
 9ページをお開けいただけますでしょうか。前回、工藤さんからのヒアリングの中で、公務員や公務員OBも含めて審議会に入って議論をしていただいてもいいのではないかということで、たしか閣議決定か何かでなかなかそうはできないというお話があったかと思うということを御説明させていただいたと思います。その関係で、実際の閣議決定でやはり国の行政機関の職員というのは不可欠の構成要素である場合を除き、基本的には委員にしないということが決まっております。OBにつきましても同様でございます。そういうことで、なかなか現状としては難しいという実態になっております。
 続きまして、10ページ目でございます。こちらは、ちょっと時間がかかってしまったのですが、第1回で大田先生から御質問があったことを本日御説明させていただきたいと思います。
 まず、三者構成原則につきましては、ILOのフィラデルフィア宣言に書いてございまして、下線が引いてあるところでございますが、労働者・使用者の代表者が政府の代表者と同等の地位で、自由な討議とか民主的な決定に参加することが必要であるということでございます。古い宣言なのですけれども、2008年にもこの実践というのは一層意義深いものになっているということで、古くなっていないということが確認されているところでございます。
 この宣言の考え方を踏まえまして、実際にILOの総会や理事会の構成も国際機関の中では唯一という形ですが、政府代表の他に使用者代表と労働者代表が労使同数で入っているということになっております。
 もう一枚めくっていただきまして、11ページ目でございます。では、個別のILO条約でどこまで規定されているのかということがこちらでございますけれども、(1)にございますとおり、労使が参加して、かつ労使同数というところまで明確に条約で決められているものはこの2つでございます。最低賃金の関係の26号条約と、職業安定組織に関する条約の88号ということで、最低賃金の関係と、あとは職業安定組織と書いてありますけれども、88号4条1項のところでございますが、職業安定業務に関する政策の立案について審議会を通じて適当な取り決めが行われなくてはならず、審議会は使用者と労働者の代表が同数であると書いているところでございます。
 そして、その下の*のところでございます。労使の参加を必要としていますが、労使同数まで書いていないものとして、失業に関する条約ですとか、最低賃金の関係の条約とか、家族的責任を有する男女の機会均等の条約、それから海上労働条約の4本がございます。何らかの会議体で労使の参加を必要とするというような書きぶりになっているものでございます。
 またもう一枚おめくりいただきまして、12ページでございます。こちらは、そこまで書いていないんですけれども、基本的には労使にちゃんと協議をしてくださいというのが13本ございまして、書きぶりはさまざまなのですが、例として挙げさせていただいている電離放射線からの労働者の保護に関する条約ですと、権限のある機関は使用者や労働者の代表者と協議すると書かれているところでございます。
 この御説明をしてわかっていただけるといいのですけれども、ILO条約上、完全に労使同数まで求められたのは2本でございますが、この労使協議というところまで含めて日本の中で政策を議論する場合に審議会方式をとっている中で、この労使協議のところも含めて労働政策審議会で議論をしていただくということで担保をしております。
 この審議会方式をとるに当たって、先ほど労使の方々からも御説明をいただきましたけれども、やはり現場の現実を熟知している労使の方々にしっかりと入っていただいて議論していただくことが大事だろうということで、労政審は三者構成になっているというところでございます。ILO条約の関係は以上でございます。
 それから、前回簡単に御説明をさせていただいたのですけれども、ちょっと説明が早過ぎてなかなか十分でなかったところもございますので、20ページからの「労働政策の政策決定スピードについて」の御説明をもう一度させていただきたいと思います。
 先ほどヒアリングの方々からもいろいろとお話をいただきましたけれども、基本的には法改正の契機がございまして、研究会や検討会ということで、特に有識者の方々に集まっていただいて議論することがございます。これは、やらない場合もございます。それから、審議会で議論をしていただいて、国会で審議をしていただいて成立・施行するというのが労働政策の代表的なプロセスになっておりますけれども、こちらはそれぞれどのぐらい時間がかかっているかというのは21ページ目以降で表にしたものでございます。
 ここに挙げている法律は、過去5年間、政府提出で成立した労働関係の法律でございますけれども、基本的には見ていただければわかるとおり、先ほど連合の逢見様からの資料にも入っておりましたが、労政審の審議期間というのは基本的には夏くらいに始まって、冬、年明けくらいに結論を出して国会に提出するというのが一般的なパターンですが、大体半年以内に収まっているようなものが多いです。中には、議論に時間がかかっているものもあります。
 国会での審議のところでございますけれども、こちらも見ていただければわかりますが、基本的には同じ国会の中で通っていれば、国会への法案の提出は予算関連か非関連かで違いますけれども、2月とか3月になっておりまして、会期の延長がなければ6月、延長するとちょっと延びることもあるという中で短いものは2か月とか3か月で、半年くらいで通っております。それで、その国会で通らないと継続審議になって延びるものが出てくるというようなことが国会での審議期間ということでございます。
 その前段階で研究会、検討会というのは、やっているものとやっていないものと結構さまざまなのですが、これはどのくらいエビデンスを集める必要があるのかというのが案件によってさまざまということもあろうかと思います。一律に大体このくらいということがなくて、ケースバイケースで時間がかかるものもあれば、すぐ進むものもあれば、そもそもやらないでいきなり労政審での審議に入っているものもあるという状況でございます。やったものの平均が、7.6か月くらいということでございます。
 それぞれ政策決定スピードはどのくらいかかっているかというエビデンスにつきましては、こういう状況になっているということでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
○小峰座長 ありがとうございました。
 それでは、以上の説明をあわせて皆さんから何かございますか。
○冨山氏 それでは、時間がないので簡単に申し上げます。
 20ページの話なのですが、スピードの問題というのはそもそものアジェンダ設定のタイミングが十分に早かったか、遅かったかという観点があるような気がしていて、何となくスローな感じがしているのは、要するにこの法改正の契機が起きるのがひょっとすると世の中の動きに対して遅れていないかということ。私は再興戦略の弾込めを手伝わされているので、例の1,000円とかは多分このときに出てきているんですけれども、要は私が気がつく前になぜ気がつかないのかというようなことが正直あって、本来はそういうエビデンスとかデータというのは一番厚労省が持っているはずだし、いろいろな実態はいろいろな議論の中でフィードバックされていると思うんです。そうすると、これはこの期間の長さの問題よりは、手前の議論のアジェンダ設定の問題のほうが大事な気がしています。
 それから、これはテクニカルな質問なのですけれども、さっきの意見書の中にもありましたが、正規、非正規という枠組みの議論もあるのですが、実は割とよくわからない行為はさっきのインディペンデントコントラクターともう一つ、中小企業の正社員、中小の正規というのが実際にどのような働き方をしていて、どんな状況でどんな目に遭っているかということで、意外とぽっかり抜けがちな気がしています。
 私自身も再生機構以降、地方の中堅の再建をやってみて新しい発見事項だらけで、こんなこともあるのか、あんなこともあるのか、こういうことが起きているんだということで、人生の中の多くのミステリーが解けているんですけれども、でも働いている人の数の中ではひょっとすると一番大きな塊は中小の正規ではないかと思うんです。それで、こういうデータというのはどこでどういうふうにとられて管理されているのか。これがもしわかったら、今日でなくても結構ですので教えてほしいと思います。
○酒光総合政策・政策評価審議官 まずアジェンダ設定の問題はおっしゃるようなところはよく理解できます。これは、いつどういうアジェンダ設定をするのが正しいかどうかというのは後からでないとわからないところがあるとは思うのですけれども、そこは今の日本の仕組みですと、役所なり何なりが考えてしっかりとアジェンダを提出しなければいけないと思いますので、今のことは我々に対するおしかりだと思って今後もしっかり取り組んでいきたいと思います。
 最近はややそこのところが飛んで、官邸などから御提案いただいたアジェンダをこなすので手一杯というところはあるのですけれども、それは言いわけにしかならないので、しっかり我々としては取り組んでいかなければいけないと思いますし、先ほどの中長期的な議論が不足しているというのは、まさにそういうことをやっていないからアジェンダ設定が適切にできないということもあるのかと思います。
 それからもう一つ、中小の正社員の御意見です。これは2つあって、一つは統計的にとる意味では確かに足りなくなる部分というのは結構あります。特に小零細の部分というのは、先ほどの意見照会のところでもありましたけれども、例えば30人以下は落ちてしまうということがあります。
 もう一方で考えると、実は労働行政は現場行政でもあるので、現場のハローワークや監督署で扱っているのはほとんど中小の正社員なんです。そういう意味では現場と、その現場を指導監督する原局はその辺はむしろかなり意識してやっています。
 ただ、そこが客観的なデータというと業務データみたいな感じではありますけれども、統計データとして不足している部分は確かにあるかもしれません。
○冨山氏 それをうまくまとめてこういうところに持ってこられると、結構いい情報があるかもしれない。
○酒光総合政策・政策評価審議官 おっしゃるとおりです。
 私どもとして一番そこは意識しながら、そこだけというわけではないですけれども、中小の労働者のことはかなり意識してやっています。むしろ大企業の正社員は組合がしっかりしているところが多いので、そこは組合で頑張ってくださいというところがあって、やはり中小は組合がない方が多いので、そこは労働行政としてしっかり見ていかなければいけないという思いでやっています。
○冨山氏 全然異論はないです。
○小峰座長 森田さん、どうぞ。
○森田氏 私は働き方に関する政策のほうは専門ではないんですけれども、政策決定のほうは多少やってきたものですから、ちょっとコメントというか、感想のようなことを述べさせていただきます。
 この働き方に関する政策決定プロセス有識者会議ですけれども、これは労政審だけではなくて労働関係の政策全般をどう決めたらいいかというのが、この会議のミッションだとしますと、もうちょっと幅広く議論をする必要があるのではないかと思います。
 と申しますのは、これは前回もお話ししたかもしれませんけれども、この労働政策審議会の本審といいますのは、橋本行革のときにたくさんあった審議会を減らせというので、いわばアンブレラ審議会という形でつくったものです。
 その意味でつくったんですけれども、何をミッションとするかということが必ずしも先にあったわけではなくて、入れ物をつくって後からミッションを考えたというとちょっと言い方は語弊があるかもしれませんけれども、それに近いところがあります。
 参考資料1に労働政策審議会の設置について厚生労働省設置法の中に書いてありますけれども、労政審は基本的には労働政策に関する重要事項を調査審議するというだけのミッションで、あとはずっと分科会の仕事が書いてあるわけです。その意味でいいますと、労働政策審議会はもし分科会でやっていることを全部審議するといいますか、報告するだけでも相当な時間と労力を要することになりますし、先ほどお話にありましたように、予算の報告とか、形式的なものにとどまるというのは、多分そこに由来することだと思います。
 これは別にこの審議会だけではなくて、厚生労働省でいいますと社会保障審議会も似たようなことがありますし、財務省の財政制度等審議会であるとか関税・外国為替等審議会なども同じような形になっています。
 そういうものであるとしますと、この本審にどういうミッションを与えて、どういう構成をして、何をするかというのは、これから労働政策を考える上で位置付ける話と思っています。
 ただ、これが労働関係の審議会であるということで、三者構成が原則になっているわけです。これも法律に規定されているわけですけれども、なぜ三者構成なのかというのは、これもひとつ考える必要があるでしょう。
 したがって、長期的又は大局的な政策を考えるために、タスクフォースといいましょうか、企画部会をつくるという話が樋口先生からもありましたけれども、そこも三者構成でなければならないかというのは考える必要があると思います。
 と申しますのは、どうしても三者構成の場合には労働側の代表なのか、使用者側の代表なのか、公益はいいのかもしれませんけれども、どちらの代表かということでいわゆるポジショントークになってしまいます。その場合に、先ほど冨山さんがおっしゃいましたようなインディペンデントコントラクターのような人たちはどうやって代表されるのか。どちらかに入ってしまうとその立場からしか議論できないということになりますと、大局的に新しく変わっていく世の中を見据えた上で政策をつくるというのは非常に難しくなってしまう。
 現実の問題としまして、他の政策分野でもそうですけれども、官邸にいろいろな会議がつくられているというのは、既存の審議会のステークホルダーの枠組みが硬直しているから、それを見直すという形でいろいろつくられているところだと思います。
 そういう動きをどう考えていくのか。本審も含めてですけれども、この労働政策審議会をもう少し広い意味で柔軟に長期的に政策を議論できるような場にしていくのか。それはここで議論することだと思いますし、この外につくるというのはここで議論するのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、そういうことを考える必要があるのではないか。
 その場合に問題になりますのは代表性の問題であって、かつては労働側、使用者側、その中でさまざまな利害対立がそこで一本化してここでぶつかるというのが昔の労使の関係だったと思います。それはもっと議会というか、政治のレベルまでいってしまいますと、いわゆるコーポラリズムという形の決定になるわけですけれども、それがだんだん束ねる力が弱くなってきたのか、中でいろいろな要素が出てきたのかわかりませんが、そこはなかなかうまくいかなくなってきた。にもかかわらず、かつての形が維持されているというのが今、問われているところではないかと思います。
 ただ、これは誰がどう代表するかという議論はしても多分答えは出ない話で、どこかで線を引くか、どうやるか、何人かの方に決めるかということですけれども、重要なのはポジショントークになってしまいますと、どうしてもどちらかの立場で言わざるを得ないということです。むしろ労働者の代表の方かもしれませんけれども、我が国の将来を考えたときには、労働者の権利を抑えてもというようなことは言いにくいかもしれませんが、日本全体のために何がいいかという発言ができるかどうか。そういう場をつくっていく必要があると思っています。
 したがいまして、代表性の問題も全員代表したら会議にならないと思いますし、絞り込むと代表されない人は必ず出てきます。どこで線を引くか、誰が選ぶか。私も本業は政治学でしたけれども、その場合には政治的に決める、最終的には政権が決めるというのが政治の仕組みになっていまして、そこが信頼できないという場合にはどうしたらいいか、私にはちょっとわかりません。
○古賀氏 今の森田先生の話ですけれども、小峰先生がおっしゃったように、働く者の代表でも、全体を見渡しながら意見を言う人はいるわけです。中長期的、総合的な議論は労使ではなく、学者の先生が全部やったらいいのかというと、私はそうでないと思います。
 むしろ代表制の問題プラス中長期的で議論する場にはどういう人がふさわしいかということを議論すべきではないかと思います。
○森田氏 ちょっと補足しますと、三者構成というのは労使同数であるかどうかというのと、それぞれの方が誰か一人でも入っていればいいかというのでは大分違うと思うんです。それで、今おっしゃったように使用者側の人でも十分労働者のことを考えているという方がいらっしゃるならば、それはそれとして十分成り立ち得ると思います。ただし、誰がそれを判断して選ぶのかという問題が残るということです。
○中西氏 少々門外漢的な発言で申し訳ありませんが、先ほどの産業構造そのものの変化をどのように労働政策に反映するのかという課題について、これをしっかりと反映できる形を相当模索しなければならないだろうと思います。
 例えば製造業について申し上げますと、私ども日立製作所は製造業の典型のように言われますけれども、実はサービス売上比率が50%を超えています。ですから、そうなってきますと、経営者の立場からは、どのような働き方が本当にその企業にとって最も競争力が出てくるのか、従業員の皆さんにやる気をどう出してもらうかということを決めるための労働政策という発想になりますが、働く側からするとそうではない。経営者側の発想と、何を本当に自分の人生として積んでいけるのかという従業員側の発想は異なるものであり、ある意味で典型的な労使の協議になるものと考えています。
 産業構造自体はまさに今、変わり目であり、それを政策に反映するための仕組みをよく考えなければいけないと思って一所懸命聞いておりますが、なかなか難しいと感じています。しっかりとした解は、すぐには出てこないのだろうという気がします。
○小峰座長 それでは、時間になりましたので、事務局から連絡事項があればお願いします。
○佐藤企画官 事務局から次回の日程について御連絡をさせていただきます。
 次回の会議でございますけれども、10月27日木曜日10時から12時、場所はこの建物9階の省議室で行いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○小峰座長 以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。


(了)

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