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2016年10月3日 第17回社会保障審議会人口部会 議事録

○日時

平成28年10月3日(月)15:00~17:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

津谷部会長、大石委員、小野委員、鬼頭委員
駒村委員、早乙女委員、榊原委員、白波瀬委員
鈴木委員、高橋委員、山田委員

○議題

1 報告聴取
  ・日本人の平均余命(平成27年簡易生命表)
  ・第15回出生動向基本調査
2 将来人口推計の方法と検証

○議事

 

○津谷部会長

 それでは、予定された開始時間よりも若干早いのですが、ほとんどの委員が出席なさっておりますので、ただいまより第17回「社会保障審議会人口部会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただき、本当にありがとうございます。私は現在風邪気味で、声がかすれ、大変お聞き苦しいかと思いますが、どうぞ御容赦の程お願いいたします。

 議事に入ります前に、本日初めてこの部会に御出席になる委員がいらっしゃいますので、御紹介申し上げます。山田篤裕委員、慶應義熟大学経済学部教授でいらっしゃいます。山田委員、一言お願いいたします。 

 

○山田委員

 前回は欠席いたしまして失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○津谷部会長

 本日の委員の出欠状況ですが、本日は所用により稲葉委員、大林委員、西郷委員が御欠席になります。駒村委員は遅れて出席されるとのことです。

 それでは、議事に入ります。カメラはここで御退席をお願いいたします。まず事務局から資料の確認をお願いします。

 

○野崎政策企画官

 お手元の資料を確認いただきたいと思います。本日の資料は「議事次第」のほか、資料1「平成27年簡易生命表の概況」、資料2-1「第15回出生動向基本調査「結果の概要」のポイント」、資料2-2「第15回出生動向基本調査結果の概要」、資料3「将来人口推定の方法と検証-平成24年推計の仕組みと評価-」となっています。皆様、お手元にございますか。

 

○津谷部会長

 では、議事の1番目の「報告聴取」を行いたいと思います。人口に関する調査結果として、まず「日本人の平均余命について」、厚労省人口動態・保健社会統計担当の廣瀬参事官より、続いて「第15回出生動向基本調査について」、国立社会保障・人口問題研究所の石井人口動向研究部長より御説明をお願いします。まず、廣瀬参事官お願いいたします。

 

○廣瀬参事官

 それでは、平成27年簡易生命表の概況について御説明します。今般727日に公表したものです。

 まず、簡易生命表とは何たるものかということですが、日本にいる日本人について、対象とする1年間の死亡状況、この場合は平成27年になりますが、この死亡状況が今後変化しないと仮定したとき、各年齢の人が1年以内に死亡する確率あるいは平均して、あと何年生きられるかという期待値、これは保険数学の世界では生命関数という言い方をしていますが、これを死亡率、平均余命という指標によって表したものです。

 これらの指標は男女別に各年齢の人口と死亡数を基にして、全て計算して、構築されておりますので、現在、特に人口のピラミットという形で高齢のほうにたくさ人がいるとか、若齢のほうはだんだん人口がしぼんできているという人口の多い、少ないの構成には左右されず、死亡状況のみで作っています。したがって、この日本の死亡状況を厳密に分析する上で、不可欠なものとして毎年作成しています。

 0歳の平均余命は一生分ですので、特に「平均寿命」という言い方をして、皆様のお耳によく届いているものです。また、全年齢の死亡状況を11点に集約する形で数値を作っておりますので、保健福祉水準を総合的に示す指標として広く活用されています。次ページ以降は平成27年の結果です。

 2ページは「主な年齢の平均余命」です。平成27年ですが、男性の平均寿命は80.79年、女性は87.05年で、前年と比較して男性では0.29年、女性では0.22年上回っています。平均寿命は男女の差は6.26年となっていますが、前年の平成26年と比較して0.07年の減少、男性と女性の平均寿命の差は少し縮まりました。

 これは平均寿命ということで0歳ですが、もう少し細かに年齢別に見たものが表1です。5歳飛びごとに出していますが、どの年齢を見ても前年と比べて少しずつ延びています。平均寿命は延びていますが、一体どういう要因で延びているのかを死因別に分解したものが図1です。男女ともども悪生新生物及び心疾患の死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いています。図1のグラフで高く上のほうに延びているのが左から2番目にある悪生新生物、5番目の心疾患等々です。やはり日本で3大疾患と呼ばれるものの死亡率の変化が平均寿命の延びていることに寄与しています。

 3ページ、寿命中位数等の生命表上生存状況で、聞き慣れない名称となっています。表3側ですが、こちらは生命表上の特定年齢まで生存する者の割合を表しています。男女それぞれ平均寿命・平均余命、この生命表を計算する上では10万人の出生ということで計算しておりますので、この生存数が10万人からどのぐらい減ったか、どのぐらいその年齢に達しているかというところで生存状況、生存数ということ計算しています。例えば、65歳ですが、男性で88,784人、女性で94,239人と、男性で88.8%、女性で94.2%となっており、男性の場合は9人に8人、女性の場合では20人のうち19人という非常にたくさんの方々が65歳まで生存すると生命表上で出ています。以降、75歳の場合ですと、男性74.6%、女性87.7%と、男性では4人に3人、女性では6人に5人となります。また、90歳までの場合では、男性25.0%、女性49.1%と、男性の場合は4人に1人、女性の場合は2人に1人が、この年齢に達すると計算されています。

 また、生命表上で出生数のうち、ちょうど半数となる、統計上ではメディアンとなるかと思いますが、5万人というのが何歳のところなのかというのが表4です。平成27年においては男性が83.76年、女性が89.79年となっています。先ほど申し上げました平均寿命に比べて、男性は2.97年、女性は2.74年上回っています。

 次ページです。平均寿命はもちろん日本で計算されているばかりではなく、世界各国で計算されています。そうしますと、国際的な比較となりますが、どうしても国によって作成期間だったり、作成方法であったり、異なっている所がありますので、厳密な比較はなかなか難しいものとなります。あくまでも現在手に入れている数値で国際比較をしたものが見開きの2ページになっています。平均寿命ですが、男性の場合、一番長いのが香港です。表というよりは表外の参考にありますように香港は、男性の平均寿命は81.24年と81歳を超えています。この比較で行きますと、日本の男性は4番目です。女性について一番長いのは香港で87.32年です。

 死亡の状況で変わるということでしたので、もう少し細かく死因を分析したものが6ページ、7ページです。左側の死因別死亡確率です。人間は何かのある死因で亡くなるということです。平成27年の各死因における死亡状況に変わりがなかった場合、生まれた子どもが何の死因で亡くなるかという確率を計算しているものです。0歳の場合、男女とも悪生新生物で亡くなる確率が最も高く、次いで心疾患、肺炎、脳血管疾患の順です。また、65歳になると悪性新生物の死亡確率は低くなり、この3死因の死亡確率は高くなっています。90歳になりますと、男女とも脳血管疾患の死亡確率が75歳でピークに低くなってきます。

 3大死因、いわゆる悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の3つを合わせた死亡確率は、男性では0歳及び65歳では5割を超え、女性では0歳、65歳、75歳、90歳の全ての年齢で5割を下回っています。

 右側の7ページです。それでは、いろいろ死因があるわけですが、仮にこの死因がなくなった場合、つまり、そういう死因を克服した場合、平均寿命というのはどのぐらい延びるのかを計算したものです。言ってみれば、その死因が克服されれば、それだけ寿命が延びるということは、各死因がどの程度平均余命、平均寿命に影響しているかを測ることができます。

 平成27年特定死因を除去した場合の平均余命の延びで、主要死因について見たものが表7です。例えば、悪性新生物について男性の場合では、平成27年は3.78年、女性では2.92年です。心疾患の場合は、男性1.44年、脳血管疾患0.79年、肺炎で0.82年です。女性では心疾患1.37年、脳血管疾患0.77年、肺炎で0.64年となっています。

 いわゆる3大疾患を全て克服できたという仮定を置きますと、一番下の表になりますが、男性で0歳の場合7.16年、女性では5.88年と出ています。この死因がある程度克服されていけば、日本の平均寿命等々は延びていくのではないだろうかという期待が、少しは持てるのではないかと想定されます。

 以下、8ページ以降は全年齢について生命表ということで死亡率、生存数、死亡数、平均余命を表にしたものが、男性、女性と続いています。簡単ですが、平成27年の簡易生命表についての説明は以上です。

 

○津谷部会長

 御質問、御意見は後でまとめて頂戴することにしまして、石井人口動向研究部長より、「第15回出生動向基本調査について」の御説明をお願いします。

 

○石井人口動向研究部長

 昨年、2015年に実施しました第15回出生動向基本調査の結果概要を、去る915日に公表しましたので、その内容について御説明します。資料は資料2-1と資料2-2があります。結果の概要のポイントに沿いながら、該当部分を御説明します。

 まず、出生動向基本調査ですが、これは近年の少子化の要因などに関係する我が国の結婚と出産の動向や背景を定期的に調査して、関連する施策あるいはこの部会で御審議を頂いている全国将来人口推計の基礎データとなるもので、学術的な人口学研究においても必要不可欠な資料となっています。

 この調査には独身者調査と夫婦調査があって、独身者調査は18歳以上50歳未満の独身者、夫婦調査は50歳未満の有配偶女性を対象としております。先日この両者の速報結果を公表しました。

 それでは、資料に沿って御説明いたします。まず、結果の概要のポイント、資料2-1を御覧いただきますと、こちらに今回の結果のポイントがまとめてあります。第1部、第2部、第3部となっており、この調査には独身者調査と夫婦調査があり、第1部は独身者調査の結果、第2部は夫婦調査の結果、第3部は両者共通項目の結果となっています。それでは、第1部から御説明いたします。

 まず、結果のポイントは1ページ目、概要の4ページでは結婚という選択に関しての調査結果です。4ページの図表I-1-1に、いずれは結婚しようと考えている未婚者の割合を掲げています。男性では85.7%、女性では89.3%ということで、依然として、いずれ結婚しようと考えている未婚者の割合は高い水準であるということが、今回の結果でも出ております。

 6ページは結婚の利点、独身の利点を調べたものです。6ページの図表I-1-6に調査別に見た各結婚の利点を選択した未婚者の割合がありますが、特に右側の女性の所で、経済的に余裕が持てるというのが非常に増加しているという傾向で、前回は15.1%だったものが、今回は20.4%までの増加が見られました。

 右側のページが独身の利点ですが、図表I-1-8を御覧いただきますと、各独身生活の利点を選択した未婚者の割合が掲げられており、特に一番左の項目、行動や生き方の自由が安定的に多数を占めてきており、男性では69.7%、女性では75.5%という結果になっています。

 概要の8ページに「結婚へのハードル」の調査結果が掲げられています。こちらはいわゆる結婚意思のある未婚者に1年以内に結婚するとしたら、何が障害になるかを尋ねたものです。グラフで一番左の項目の所が高いのが御覧いただけると思いますが、男女とも結婚資金が最多で、男性では43.3%、女性では41.9%という結果になっています。

 11ページから異性との交際に関する結果になります。11ページの図表I-2-1に未婚者の異性との交際の状況の結果を掲げています。異性との交際相手を持たない未婚者は引き続き増加しており、今回は男性では69.8%、女性では59.1%という結果になりました。

 12ページに未婚者の性経験に関する調査結果があります。性経験のない未婚者の割合は2000年代後半から増加する傾向にあり、今回は男性では42.0%、女性では44.2%という結果になっています。

 14ページからは希望の結婚像に関しての結果です。14ページ上半分で希望する結婚年齢を調べていますが、希望する結婚年齢は、現在ほぼ頭打ちになっており、今回は男性で30.4歳、女性では28.7歳という結果です。また、年齢差に関して調べたのが図表I-3-2のグラフです。こちらを見ますと、特に男性の左から2番目の項目で非常に増大しているのが御覧いただけると思います。こちらは「同い年結婚」を望む方の割合で、今回は41.8%となっています。

 15ページは女性に関して理想のライフコースあるいは実際になりそうな予定のライフコースをお聞きした結果です。3つあるグラフの右上の女性の予定のライフコースを見ますと、専業主婦コースの減少が続いており、一方で両立コース、非婚就業コースが増加しているという傾向が現れております。

 18ページは未婚者のライフスタイルに関して説明をしています。7角形のレーダーチャートが御覧いただけると思いますが、前回と比べて、未婚者男女とも、1人の生活を続けても寂しくないという割合が非常に増加していまして、男女とも7%ポイント前後増加することが結果として表れています。以上が独身者調査の結果です。

 次は夫婦調査の結果に移ります。ポイントは2ページ、概要は20ページです。20ページからは、最初に夫妻の結婚過程に関しての結果です。20ページは出会い年齢、初婚年齢、交際期間を調べています。夫妻の平均出会い年齢は夫26.3歳、妻24.8歳で、ともに上昇しています。また、平均交際期間も4.34年と伸長が続いており、晩婚化が進行していることがうかがわれます。

 21ページは出会いのきっかけで、特にその中でも恋愛結婚、見合結婚の構成の推移を示したものです。戦前7割を占めていた見合結婚は戦後を通じて減少傾向にあるということで、1990年代半ば以降は1桁台で推移をしておりまして、最新の20102014年では5.5%という水準にとどまっております。

 22ページは夫婦の出生力に関しての調査結果です。この調査では結婚持続期間が1519年の御夫婦の平均子ども数を、夫婦の完結出生児数ということで、夫婦の最終的な出生子ども数として捉えておりますが、これに関しては前回調査で2人を下回り、今回も引き続き1.94人で、2人を下回る結果になっています。

 図表II-2-2は出生子ども数分布を見たものです。こちらを見ますと、直近の調査結果では、2人が54.1%と過半数にある一方で、特に1人の割合が増加してきており、2015年では18.6%にまで増加しています。

 23ページを御覧ください、図表II-2-3というグラフがあります。今、申し上げた夫婦の完結出生児数というのは、結婚持続期間1519年の御夫婦の平均ですが、こちらは04年、59年と5年ごとにグラフにしたものです。

 こちらを見ますと、夫婦の平均の子ども数は1980年代ぐらいまでは、おおむね横這いで推移してきたのですが、1990年代に入ってから、結婚持続期間が短い59年の夫婦で低下が始まり、それが1014年、完結出生児数である1519年まで移ってきて、今はそこまで減少しているという傾向が御覧いただけるかと思います。

 24ページは妊娠・出産をめぐる状況です。24ページ図表II-3-1は夫婦の避妊の実行率を調べています。今回の直近の調査では、夫婦の40.4%が避妊を実施ということで、これは第7回調査以降、最も低い数字になっているという結果が出ています。

 25ページは不妊についての心配あるいは治療の経験を示したものです。不妊を心配したことがある御夫婦等も増加しており、前回は31.1%だったものが、今回は35%まで増加しています。特に子どもがいない御夫婦では55.2%ということで、半数を超えているという結果になっています。

 不妊の検査や治療を受けたことがある御夫婦は全体で18.2%、前回は16.4%でしたので、こちらも増加をしているということで、特に子どもがいない御夫婦は28.2%という結果になっています。

 概要の29ページです。こちらは子育ての状況について調べた中で、図表II-4-4ですが、結婚・出産前後の妻の就業継続率を調べた結果です。表の左から2つ目の欄が第1子出生前後の妻の就業継続率です。こちらを御覧いただきますと、子どもの出生年ごとに集計がしてあり、2009年まではおおむね4割ぐらいの水準で推移してきましたが、20102014年では53.1%ということで継続率が上昇したという結果が出ています。

 31ページです。こちらは子育て支援制度・施設の利用の状況について調べたものです。こちらの結果を御覧いただきますと、第1子について、何らかの子育て支援制度・施設を利用した御夫婦の割合は80.3%となっておりまして、出産後も妻が継続して正規雇用の場合には98.1%ということで、ほとんどの方が何らかの施設・制度を利用されているということが結果として出ています。

 次に独身者・夫婦調査共通項目の結果に入ります。ポイントは3ページ、概要版は36ページを御覧ください。まず36ページは未婚者の平均希望子ども数に関しての調査結果ということで、図表III-1-1がその結果になっています。未婚者の平均希望子ども数は男女ともに低下をし、特に男性では初めて2人を切ったということで、男性に関して前回は2.04人が1.91人、女性に関しては前回2.12人が2.02人となっています。

 37ページは夫婦の理想子ども数、予定子ども数に関しての調査結果です。図表III-1-4というグラフがありますが、こちらに平均の理想子ども数と平均の予定子ども数、その内訳として現存子ども数と追加予定子ども数のグラフが出ています。直近の15回を御覧いただきますと、平均理想子ども数、予定子ども数ともに、前回に比べて低下しており、理想子ども数に対しては、前回2.42人から、今回は2.32人、予定子ども数は前回2.07人から2.01人ということで、どちらも過去最低の数値となっています。

 このグラフで理想子ども数、予定子ども数に高さの差が見られるわけですが、このような理想の子ども数を実現できない理由を40ページで調べています。40ページの図表III-1-9が、いわゆる夫婦の予定子ども数が理想子ども数を下回る理由です。理由として最も多いのは、依然として子育てや教育にお金がかかり過ぎる等が56.3%です。次いで高齢で生むのは嫌だからが39.8%となっています。

 次に「生活経験と交際・結婚・出生」ということで、46ページを御覧ください。46ページの図表III-2-7を見ますと、こちらは今回の調査で、子どもとのふれあい経験に関しての調査をしています。子どもとのふれあい経験が多かった未婚者の希望子ども数は多い傾向で、特に女性で差が大きいという結果が出ています。女性で申しますと、経験が多い場合の平均希望子ども数は2.14人であるのに対して、少ない場合には1.89人ということで差が見られるという結果になっています。

 右側には夫婦の結果が出ており、結婚後10年未満の夫婦の平均理想・希望・予定子ども数についても、ふれあい経験の多い妻で高い傾向が見られるという結果が出ています。

 51ページでは、結婚や家族に関する意識に関しての調査をしておりまして、例えばグラフのところにありますが、1生涯独身は良くないということについて、賛成か反対かということで集計をしておりますが、特にそういった回答が伝統的な考えを支持すると考えられる回答になっているかどうかということ別に、理想・予定子ども数に違いがあるかを見たのが、こちらのグラフです。グラフの黒いほうが比較的伝統的な考え方を支持するという方で、グラフで白い方は、そうではないということになりますが、こういったグラフの結果を御覧いただきますと、黒い方が多くの項目で高くなっているということで、結婚や家族に関して伝統的な考え方を持っている妻のほうが平均理想・予定子ども数が高い傾向が現れているということが結果で出ています。簡単ではございますが、私からの説明は以上です。

 

○津谷部会長

 石井部長、ありがとうございました。それでは、ただいま御説明のありました日本の平均余命、平成27年簡易生命表及び第15回出生動向基本調査について、御質問、御意見などあればお願いします。

 

○高橋委員

 平均寿命の所ですが、資料で言いますと2ページです。近年これを見てみると、男女差が相当縮小してきている傾向があります。これについて何か手持ちで説明されるような材料はあるのでしょうか。

 

○津谷部会長

 参事官、いかがでしょうか。

 

○廣瀬参事官

 男女が徐々に縮まっているもので、明確にこれがという理由がなかなか見当たらないので、手元にはちょっとありません。申し訳ありません。


○山田委員
 同じく資料1について、7ページにある表7、特定死因を除去した場合、平均余命の延びの推移ですが、これ、悪性新生物の場合には、0歳から見てポジティブな大きさというのは、男性が徐々に、例えば、3.75から3.78に上がっていくのですが、ほかの要因については大体小さくなる傾向で、脳血管疾患など小さくなるほうで動いていると。これは計算によるものなのか、それとも実際にこうした傾向が見られるのか。もし御存じあれば教えていただきたいと思います。

 

○津谷部会長

 廣瀬参事官、いかがですか。

 

○廣瀬参事官

 まず日本における死因としては、悪性新生物というものが非常に高いです。ですので、この辺がやはり起因しているのが若干あると思います。ただ、もう1つ特定死因を除去した場合ですが、若くして亡くなるのか、あるいは高齢で亡くなるのかということです。すごく言葉は悪いですが、1人助かったときに、若いところで助かるのか、年を取ったところで助かるのかということで言えば、平均寿命に対する影響はまるで違ってきます。いわゆる若いところで助かったほうが伸びが大きくなってきます。

 ですから、悪性新生物等々につきまして、どうしてもお年を召した方よりは、やはり壮年辺りがかかってお亡くなりになる場合が高くなります。逆に高齢の方は肺炎等々、いわゆる呼吸器系のほうで亡くなる方が多いので、やはり得られる量が変わってきているということがあります。また、そういう所から少しずつ、まずボリューム感が出てきますので、その辺に大きく効くものがあると、非常にこういう所には跳ね返ってくるのかと思いました。

 ただ、明確に、例えば今年は急に効きましたよとはいきませんので、その年に何で亡くなったかというところでもって計算されているものです。

 

○津谷部会長

 山田委員、よろしいでしょうか。それでは、白波瀬委員、先にご質問お願いします。

 

○白波瀬委員

 ありがとうございます。今のことと関連して、山田委員の質問と同じ表7についてです。そもそも図5の所で死因別の分布が年齢によって異なりますので、基本的にこの違いというのが反映されているのかなと考えたのですが、いかがでしょうか。例えば、この発生率そのものがちょっと、年齢ごとにあまり変わらなければどうなっているかといった、そういう要因分解は試されたのでしょうか。それとも、単純に年齢層の死亡について、悪性腫瘍の者が亡くなったらどうかということでしょうか。

 

○廣瀬参事官

 例えば悪性新生物が克服された、いわゆる表7を演算するときに、悪性新生物で亡くなることが無くなりましたということがあれば、当然その方は何かの死因でその後亡くなるわけですので、それは悪性新生物ではなく、例えば心疾患であったり、肺炎で亡くなったりという可能性というのは、それまでと同じ発症ということが。何かに変わるということで結果的に何かで亡くなるということで計算したもので、悪性新生物が克服、除去された場合の伸びというものを計算しております。

 

○津谷部会長

 すみません。ということは、もし、この悪性新生物、いわばがんが全ての年齢で死因から除かれたとすると、がんで亡くならなくともいずれ何らかの死因で亡くなるわけですので、その各年齢でがんを除いた他の死因の分布を使って、比例配分か何かをなさっているということですか。

 

○廣瀬参事官

 簡単に言えばそうです。

 

○津谷部会長

 そういうことですね。分かりました。よろしいでしょうか、白波瀬委員。ありがとうございます。では、鈴木委員、ご質問をお願いします。

 

○鈴木委員

 今のと全く同じ質問で、非常にテクニカルなことかもしれないですが、具体的にどうやって計算をしているのか、よく分からないですね。悪性新生物で亡くなるのは0歳の子もいれば100歳で亡くなる方もいるわけですから、仮に100歳の方が悪性新生物で亡くなったときに、その方ががんで死なずにほかの要因で死ぬということを当てはめるわけですか。するとそのときに100歳の死因の中で肺炎がものすごく大きくなりますよね。がんそのものの死因としては非常に低くなってくるわけです。そうすると、例えば肺炎死亡の可能性が大きくなるというような何かそういう当てはめをして、計算し直すということなのでしょうか。要するに、ですから、非常にテクニカルなことなのですが、何をどうやって計算したのかが分からないわけで。

 

○廣瀬参事官

 本来でしたら、例えば90歳の方が、その後、何を死因として亡くなるのかということを言えば、確かに肺炎が高い、何とかが低いということはありますが、ただ、それは、悪性新生物以外の何かで亡くなるということですので、特段それは肺炎が高かろうが低かろうが、そういう意味では基本的には一緒になるわけです。つまり、あくまでもその他の死因でそれ以降に亡くなるということになりますので。よろしいですか。

 

○鈴木委員

 ちょっと、やはり私には理解できないのだけど、その他の死因で亡くなるのは当たり前ですけれども、その他の死因は各年齢によって死因順位も、それから死因として占める割合も違いますよね。そういう考慮をしているのですかということです。

 

○廣瀬参事官

 すみません、もう1回お願いします。

 

○鈴木委員

 例えば100歳の人が悪性腫瘍で死んだ。でも、この計算上、死なないことにする。死なないときに、ほかの死因はどのように当てはめるのですか。ですから、何をもってその100歳の人はほかの死因で、あと何年生きられるという計算を実際に行っているのでしょうか。単純に言うと、本当に計算の仕方が分からない。

 

○廣瀬参事官

 平たく言えば、それ以降は悪性新生物で亡くなることはありませんということになれば、それはよろしいでしょうか。

 

○鈴木委員

 はい。

 

○廣瀬参事官

 そうすると、その人はある年になったときに、その他の死因で亡くなると。

 

○鈴木委員

 その他の死因。

 

○廣瀬参事官

 ですから、当然、悪性新生物で亡くならなかったので、その人はもしかして、この後、心疾患で亡くなるかもしれない。すると、そのようになるわけですね。

 

○鈴木委員

 それは分かる。

 

○廣瀬参事官

 ですので、当然ある年齢になってそれ以降ですね。

 

○鈴木委員

 ちょっとよろしいですか。

 

○津谷部会長

 どうぞ、お願いします。

 

○鈴木委員

 この特定死因を除いた場合、平均寿命の伸びとかというのは、ずっと何十年も見ていて、多分伝統的な手法が確立しているのだと思います。ただ、不勉強なので手法が私には分からなかったので、今お聞きしたのですが、それは確立した手法だと。非常に難しいし細かいことだけれども、確立したちゃんとした手法で、それは各世界的にもこういう手法が確かめられていると。例えば、先ほども人口動態統計、リー・カーター・モデルのようにきちんと確立したものがあって、それでちゃんとやれるのだと。あるいは平均寿命のようにちゃんと確立した手法でやっているのだというのであれば、もうこれ以上の細かい議論はお聞きしませんが、要するにそういう理解でよろしいのでしょうか。

 

○廣瀬参事官

 それはそういう理解で結構ではないかと。

 

○鈴木委員

 すみません。

 

○廣瀬参事官

 付け加えさせていただけるならば、この簡易生命表等につきましては、報告書を作っており、その中で特定死因を除去した場合は、このように計算しているという手法も示しております。

 

○津谷部会長

 これから今回の人口将来推計についてのお話に移っていきたいと思いますが、鈴木委員が重ねて御質問されましたので、一言だけ付け加えさせて頂きたいと思います。先程の御説明の内容を大雑把にまとめるならば、悪性新生物による死亡が各年齢で男女ともにゼロと仮定し、残った死因についてその分布全体を100%とすると、各年齢において悪性新生物を除いた死因別の割合が得られます。そうすると、悪性新生物以外の死因の合計を100%として、各死因を比例按分ができます。その比例按分された死因別に平均余命を計算すると、悪性新生物による死亡がゼロであると仮定した平均余命が算出できるということではないかと思います。

 ですから、個人のライフコースとして考えると混乱するかもしれませんが、死亡は年齢の関数ですので、各年齢でもし悪性新生物による死亡がなかったと仮定した場合、残りの死因の全体を100%として、比例按分すると、0歳時の平均余命、つまり平均寿命が算出されます。そして、実際に悪性新生物で死んでいる人がいる場合の現実の平均寿命も算出されているわけですから、これら2つを比較すると、後者が前者よりも、女性ですと平均2.92年、男性ですと平均3.78年短くなる、この平成27年の簡易生命表によるとこれだけの差が出るということではないかと私は理解しましたが、それでよろしいでしょうか。

 繰り返しになりますが、生命表による平均余命は、個人がライフコースのいつの時点でどのような死因で死ぬのかということについて推計するものではなく、各年齢の死因から悪性新生物を除き、残りの死因の合計を100%として平均寿命を計算してみると、寿命は平均これぐらい変化するということを示す試算であり、実際に悪性新生物で死亡する人は多くいるわけですので、それを考慮すると平均寿命はこれぐらい短くなるという、単なる比較による数値と考えましたが、その理解で間違っておりませんでしょうか。

 それと同じ作業を、この3大生活習慣病と呼ばれる死因、および肺炎についても行っているということかなと思います。

 

○廣瀬参事官

 ありがとうございます。

 

○津谷部会長

その他、何かご意見・ご質問ありましたら、お願いします。

 

○大石委員

 2点お伺いしたいのですが、1つは平均寿命の国際比較の所で、いろいろ調整して比較するのも難しいというお話は伺いましたが、例えば、この日本の簡易生命表ですと、日本にいる日本人についての平均寿命ということで、例えば香港が世界最長ということですけれども、香港もそうだと思いますし、移民の影響などいろいろあるかと思うのですが、例えば香港の場合でしたら、香港ネイティブってどのようにして定義付けられるのか、何かほかの国々もどのように平均寿命を計算する範囲を定めているのか、大雑把な所まで教えていただければと1つは思います。

 もう1つは、出生動向についての質問というより単なる意見なのですが、赤ちゃんとのふれあいについての質問の所で、多分行政的な要請により入れた項目なのかなという気がしているのですが、これの調査項目としての意味合いはもちろんこれで結構だと思うのですが、これを解釈するのはなかなか難しいのではないかということがあります。

 例えば、職業訓練の効果というのを正しく計るのは、実は労働経済学の世界ではかなり難しい問題といわれており、もともとトレイナビリティーが高い人が職業訓練に来てしまうというバイアスをどのように調整するのかという問題があります。赤ちゃんふれ合いも同様に子供がもともと好きとか、割と産みたいタイプの人が子供とのふれあい経験に以前から参加しているという可能性もあるので、単純に全ての女性を、例えば赤ちゃんに触れさせれば、たくさん子供を産むようになるというような解釈をするのは、ちょっと危険かもしれないと思った次第です。

 

○津谷部会長

 では、最初の御質問につきまして、廣瀬参事官何かありますでしょうか。

 

○廣瀬参事官

 国際比較ですが、「作成期間、作成方法が違う」の中には、「一体どういうものが基礎数として」という所も含まれております。ですので、ある国にとってみたら、例えば自国民ではなく、ほかの国籍の方も入っていれば、その国にとってみれば、外国人等々も含めて計算している場合もあろうかと思います。

 ただ、申し訳ありませんけれども、計算された結果のみが公表されており、それを手に入れておりますので、具体的にこの国は自国だけだとか、この国の場合は外国人も含めてやっているのだという所までの情報がありませんので、あくまでもそれぞれの国がそれぞれの国の責任で計算したものを並べているというところで、考えていただければ有り難いところです。

 

○津谷部会長

 香港はもともと都市国家であり、ましてや現在は中国の一部です。私の個人的な意見ですが、人口一千万人を割り込むような規模の小さい人口について、ここに含めないほうがいいのではないかと私は思います。なぜなら、人口の小さい国や地域では、人口移動の影響が非常に大きいですし、移入者は合法的に入ってくる人ばかりではありませんので、人口規模の小さい都市国家や地域の生命表には、恐らくバイアスが掛かってきます。

 一千万人以上の相当な人口規模をもつ国であっても、生命表の精度に疑問符のつくものもありますが、ここに示されているデータは国連の「Demographic Year Book」から取られているということですので、基本的には各国政府が申告をしてきているものです。これだけ情報がありますと、あまり詳しい前提を調査することは恐らく不可能かと思うのですが、掲載する前にそれぞれの国・地域の状況をもう少し検討されるとよろしいかなと思いました。では、第2点目についてのお答えを、石井部長お願いします。

 

○石井人口動向研究部長

 ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりで、これに関しては、ここではこういった関係性があるということは示しているのですが、この解釈に関しては、因果関係とは必ずしも捉えられない面があるというのは先生がおっしゃるとおりですので、解釈には十分注意をしていきたいと考えております。

 

○津谷部会長

 これは因果関係を言っているものではなく、恐らく内生だと思うのですね。どちらがどちらでしょうか。恐らくお互いに関係のあることですので、相関があるということを、特にはっきりと統計的に有意なものに絞っての御説明になったかと思うのですが、そのように解釈していただければ幸いです。大石委員、よろしいでしょうか。

 

○大石委員

 はい、もちろんです。ありがとうございます。

 

○津谷部会長

 では、鬼頭委員、お願いいたします。時間があまりありませんので、これで最後にさせていただいてよろしいでしょうか。

 

○鬼頭委員

 では、出生動向基本調査について、2点簡単に伺いたいと思います。1点は8ページですが、調査別に見た結婚の障害という理由です。その中に、一番大きいのが結婚資金と書いてあります。これは受け取る側がどう考えているかということなのですが、結婚式の費用なのか、それとも結婚を続けた上での家計であるのか。その辺は何か区別が付くかということです。

 それからもう1点は、40ページになりますが、理想の子供数を持たない理由という所で、文章のほうでは依然として子育てや教育にお金が掛かり過ぎるということが書いてあるのですが、同時にこれは前回調査、前々回調査と比べると顕著に低下しているのです。これは単なる年齢構成の違いとか、それから重複回答になっているので、それらも何か影響しているのかもしれませんけれども、もし本当に経済的な理由が10ポイント以上も、全体で合わせると延べ数ですが、16ポイントぐらい低下しているのですが、もし本当にそうだとすると、経済的な障害は少し軽くなっているのかという解釈がはできるのですが、その辺はどうお考えでしょうか。

 

○津谷部会長

 石井部長、お願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長

 まず、結婚への障害の所ですが、こちらに関しては、やはり結婚資金ということをどのように回答者が捉えるかということになってしまうかと思います。

 それから、40ページのほうですが、これに関しては、確かに前回と比べると下がっているという結果が出たのですが、年齢別に見ると、若い方、特に30代ではやはり8割の方がこれを挙げていらっしゃいます。全体の合計としては年齢構成の影響も受けているということと、若い方では経済的な負担を挙げる方が多い一方で、年齢が高くなってきますと、健康上の理由や、高年齢で生むのが嫌だという理由に変わってくると捉えるべきではないかと考えております。

 

○津谷部会長

 よろしいでしょうか。時間がないので十分に時間をかけることができず、申し訳ありません。年齢構造もそうですが、恐らく女性の就業状態などによる影響も考えられるかと思います。結婚・出生と女性の就業とは因果関係が非常に複雑ですが、更なる分析を社人研でなさっていただけるのではないかと思います。

 あとお二人ほどご質問・ご意見がおありになる委員がいらっしゃいます。もっとゆっくりと時間をかけてお話いただければと思うのですが、時間がありませんので、本当に申し訳ありませんが、手短にお願いできますでしょうか。ここであまり時間を使ってしまいますと、今日の中心的議題である将来人口推計のモデルについての御説明の時間がなくなってしまいますので、榊原委員、手短にお願いいたします。

 

○榊原委員

 1点だけ、このようなきちっとした全国調査を継続的に行われているので、トレンドの変化が明確に分かって非常に面白いと思いました。妻の就業継続率の変化の所で感じました。伺いたいのは、避妊であるとか、不妊であるということには踏み込んで調査をされているのに、人工妊娠中絶については使っておられないのはなぜなのかという点です。日本は中絶について、既婚のカップルにおいても 、かなりいろいろな有力な理由というところで、年間100万人しか生まれない中で、18万件もあるというところが闇になっていると思いました。それについての調査をどうお考えになっているかということだけ、簡単で結構です。

 

○石井人口動向研究部長

 人工妊娠中絶に関しても調査はしておりますが、今回は速報ということで、絞った項目に関しての結果となっております。今後は年度内の報告書作成や、あるいはその後機関誌などでの論文等も考えておりますので、そういった中で分析等を行っていきたいと考えております。

 

○津谷部会長

 早乙女委員、簡単に済みますでしょうか。それでは一言お願いします。

 

○早乙女委員

 1点、確認だけ、50ページで「脱伝統化が進む」と書いてあるのですが、この「脱伝統化」の「伝統的」という表現を包括するものについて、教えていただきたいと思います。表現の部分だけなのですが。

 

○津谷部会長

 何ページですか。

 

○早乙女委員

 50ページの「伝統的な考え方から離れていく傾向」というのがあるのですが、「伝統的」に含まれるものを教えてください。

 

○津谷部会長

 では、石井部長、お願いします。

 

○石井人口動向研究部長

 こちらですけれども、実は1つ前の49ページに、考え方に関して1から13まであります。これに対して回答上は賛成なのか反対なのかということで御回答いただくのですが、それに関して、もう150ページにお戻りいただくと、例えば1のほうは、「生涯独身はよくない」に賛成を選んだ方が伝統的な考え方としております。それぞれ賛成か反対かによって、ここに掲げたほうを伝統的と定義して、集計を行っております。

 

○早乙女委員

 ありがとうございます。

 

○津谷部会長

 よろしいでしょうか。大変活発な御質問、そして多くの有用な御意見を頂き、本当に有難うございました。

 では、次に議事の2番目に移りたいと思います。これは本日の中心的な議題ですが、将来人口推計の方法と検証について、石井人口動向研究部長より御説明をお願いしたいと思います。

 

○石井人口動向研究部長

 将来人口推計の方法と検証について、御説明いたします。本日、御説明いたしますのは、大きく2点です。1点目は、将来人口推計の検証ということで、これまでの将来人口推計の仮定設定の変遷について、御説明いたします。2点目は、将来人口推計の仕組みということで、前回、平成24年推計の方法論と推計以降に出てまいりました実績との簡単な比較についてです。なお、平成24年推計以降の実績の動向を踏まえたより詳細な分析については、今回、データ等の制約もありまして、次回の部会でもう少し御説明したいと考えております。

 最初に、将来人口推計の検証から始めさせていただきます。将来推計の仮定設定は、前回、御説明しましたとおり、出生・死亡・国際人口移動がありますので、それぞれについて御説明いたします。最初、出生仮定についての御説明です。戦後の将来人口推計の仮定設定ですが、戦後復興期を除きますと、おおむね第1期、第2期、第3期の3つに分けることが可能です。そこで、次のページにこれを合計出生率のグラフとともにお示しをしております。1点だけ誤植がありまして、右側のほうに「平成24年推計」に「2010年」と書いてありますが、「2012年」の誤りです。大変失礼いたしました。

 こちらを御覧いただきますと、昭和30年代の所がありますが、こちらが第1期の推計ということで、これは戦後の実績出生率の低下傾向を反映させまして、将来的に人口置換水準を下回る出生率を仮定した推計になっております。ただ、昭和40年代に入りまして、出生率は人口置換水準付近で安定的に推移するようになりました。そこで、昭和61年の推計までの第2期の推計では、将来的にも人口置換水準付近を維持するような仮定設定に変わったということです。しかし、その後少子化が更に進行することになりまして、平成4年以降の第3期の推計では、人口置換水準を下回る仮定設定が行われてきております。

 そこで、第2期の終わりである昭和61年以降の推計について、その変遷をもう少し詳しく御説明いたします。こちらは、昭和61年推計以降についての仮定の変遷をお示ししたものです。こちらの表で御覧いただきますと、1980年代後半から「少子化の要因」という所がありますが、こちらに示すような様々な結婚、出生行動の変化が起こってまいりました。将来推計人口も、これに対応する形で改良を行ってきたのが変遷です。

 そこで、次のページからそれぞれの推計ごとにその内容に関しての御説明申し上げます。こちらは昭和61年推計で、これは第2期の最後の推計になっております。この当時、20歳代の女性で出生率の低下が観察されたわけですが、これは晩産化による出生の先送りであって、30歳代で生み戻されると当時は考えられていたということです。そういったことから、最終的にはコーホート合計出生率水準は、それ以前と変わらない2.0近い水準が設定されたというのが、昭和61年推計です。

 平成4年推計ですが、平成4年推計当時には、20歳代における初婚率の低下が更に進行したということで、出生率も低下をいたしました。このように初婚年齢が上昇するということは、最終的なコーホート出生率にも影響を与えかねないと判断されたということで、こういった晩婚・晩産化による完結出生力の低下が織り込まれまして、1965年生まれコーホート合計出生率が1.80と仮定されたのが平成4年推計になります。

 平成9年推計ですが、この当時、更に20歳代だけではなく、30歳代の初婚率の低下が確認されたということで、こういった結婚行動の変化は、晩婚化にとどまらずに、非婚化が含まれる可能性が高いと考えられたところです。そこで、1980年生まれの女性の50歳時未婚率が一段と上昇するというふうに見込まれて、コーホート合計出生率が1.61と仮定されたのが平成9年の推計です、

 平成14年の推計ですが、平成14年推計を行った当時の実績である1990年代のデータを見ますと、晩婚化・非婚化に加えまして、先ほどの出生動向基本調査の結婚持続期間別のグラフでも御覧いただきましたが、結婚持続期間が短い御夫婦の間で子供の数が減るという変化が生じたのが、この当時の推計の実績値になっております。こういった結婚後の夫婦の出生行動の変化の兆しと、同時に、一方で婚前妊娠の増加という出生年齢の分散の拡大が観察されまして、これらを総合して1985年生まれコーホート合計出生率が1.39と仮定されたのが、平成14年推計です。

 平成18年推計ですが、こういった先送りされました出生の高年齢での生み戻しが低迷してきたということ、また、離婚が増加してきたということで、コーホート出生率が更に抑制される可能性がここで捉えられたということです。また、婚前妊娠による若年出生率増加も一定の歯止めがかかってきたということで、1990年生まれコーホート合計出生率が1.26と仮定されたのが平成18年推計です。

 平成24年推計ですが、2000年代前半の結婚や出産の先送りが30歳代以上で生み戻しによって取り戻されているということで、出生率の低下傾向に一定の歯止めがかかっているということが明らかになったところです。また、離婚の発生も、2000年代前半をピークに低下する傾向が見られて、1995年生まれのコーホート合計出生率は、平成18年推計ではやや高い1.34という仮定設定になったのが平成24年推計の推計設定です。

 御覧いただきましたとおり、出生仮定は、それぞれの時代における実績の趨勢の投影を行う観点から、その要因やメカニズムを取り入れながら改良を行ってきたところです。特に、1980年以降については、急速に少子化が進行してきたことと、その背景となる結婚・出生行動の変化に伴う改良を行ってきたのが、これまでの出生仮定の変遷です。

 死亡仮定について、御説明申し上げます。戦後の将来人口推計の死亡仮定も、おおむね3期に分けることが可能であると考えております。こちらのグラフでは、昭和51年以降の推計だけお示ししておりますが、それ以前も含めまして昭和56年推計までが第1期ということです。こちらのグラフの中に灰色で他の先進諸国の平均寿命が示されております。この当時は、日本の平均寿命は他の先進諸国よりも低い位置にあったということで、生命表の将来推計をする際に、平均寿命の高い先進諸国の死亡率を参考にした、最良生命表等の目標設定を行っていたのが第1期になります。

 ところが、こちらの黒い折線グラフが灰色を上回って推移するのが御覧いただけると思うのですが、この間、特に1980年代に入りますと、日本の平均寿命は他の先進諸国に追い付いて、更にそれを追い越していくという経緯をたどってきたわけで、こういった観点から第2期では、他の先進諸国を参考にするという推計をすることができなくなってきたことになります。

 そこで、第2期以降では、日本の死亡動向から将来の投影をすることが必要となったことになります。特に、第2期、昭和61年推計から平成9年推計ですが、この第2期は死因動向の変化に着目して推計を行ったところです。こちらは、1950年以降の主な死因別の男性の年齢調整死亡率の推移を示したものです。こちらを御覧いただきますと、1950年代、1960年代は、青色で示しましたのが結核ですが、こういった感染症の死亡率低下が著しい時代だったのに対しまして、1970年代に入りますと、緑色で示しましたような脳血管疾患の死亡率の低下が著しくなると、こういった変化が出てきたことになります。

 そこで、第2期の将来推計では、死因に着目をした将来推計を行うことになっております。具体的には、このグラフで御覧いただけますように、年齢階級別の年齢調整死亡率の傾向を将来に向けて補外することで、将来推計を行うという手法が取られたところです。

 ところが、1990年代に入りまして、こういった死因別の将来推計は、死亡率改善を過小評価してしまうとの研究報告がされたところです。例えば、こちらを御覧いただきますと、こちらの黒い線は脳血管疾患の死亡率低下を示しておりますが、それに基づいて黒い点線のように推計がされていたわけです。悪性新生物に関しては、将来推計値と実績の動きが非常に似ていることになります。

 ところが、一方で、こういった脳血管疾患の死亡率の低下が起きますと、悪性新生物の死亡率がそれに伴って上昇する傾向が現れてまいります。この上昇する基調を基に将来に投影を行いますと、点線のような投影結果が得られるわけです。ただ、実際には、脳血管疾患の死亡率が低下した後に、悪性新生物の死亡率が高まってまいりますと、今度は悪性新生物に対しての対応、例えばがん対策のような取組が行われるようになって、悪性新生物の低下が始まることになります。しかしながら、これは死因別の補外からは得られないパターンですので、死因別に投影を行っている限り、このような死亡率改善の過小評価は避けられないことになるわけです。

 もう1点、一方で、1990年代に入りましてリー・カーター・モデルという死亡率モデルが開発されて、国際機関や各国の推計において用いられるようになってまいりました。このモデルは、こちらの式で示された形で表されますが、平均的な死亡率のパターンを示すax という関数と、それに対して死亡のある時点における死亡の一般的な水準を表す死亡指数であるkt というパラメーター、その死亡指数が変化したときに、年齢別の死亡率がどれぐらい動くかを表すbx と、こういったパラメーターによって任意の時点のモデルの死亡率を表すモデルになっておりまして、我が国でも平成14年以降の第3期のモデルとしてリー・カーター・モデルを採用しているところです。

 ただし、近年、我が国ではこういった生存数曲線が遅延していく、いわゆる生存数曲線のシフトのような現象が観察されてきているところですので、平成18年以降の将来推計では、このような現象をよりよく表現できる修正を行ったリー・カーター・モデルを採用しております。

 国際人口移動仮定について、御説明申し上げます。こちらは、国際人口移動に関する仮定の変遷をお示ししたものになっております。我が国では、従来、国際人口移動の水準が低かったことから、平成9年以前の推計では、推計直近での総人口の入国超過率の実績値を固定するという形で仮定を設定しておりました。しかしながら、外国人の入国超過の拡大傾向を踏まえまして、平成14年以降の推計では、日本人と外国人を分けて仮定設定をいたしまして、特に外国人については、実績の趨勢を将来に向けて補外する形で推計を行っております。こちらは、平成14年以降の推計で、外国人の補外、実績の趨勢を補外した趨勢結果と実績値の挙動をお示ししたものになっております。

 変遷に関しましては、ここまでとさせていただきまして、次に、前回の平成24年推計の仕組みに関しての御説明に移らせていただきます。平成24年推計の基本的な枠組みについて、御説明申し上げます。推計の方法ですが、これに関しましては、前回の部会でも御説明をいたしました「コーホート要因法」という方法によっております。推計期間は、本推計が2060年までの50年間、その後、2110年までを参考推計といたしております。

 対象については、外国人を含めた日本に常住する総人口ということで、これは国勢調査と同一定義となっております。また、出発点となります基準人口ですが、こちらは総務省統計局が作成した国籍及び年齢不詳人口を按分した『平成22年国勢調査による基準人口』を用いております。その基準人口を人口ピラミッドでお示ししたものが、こちらのグラフになります。

 仮定値について御説明いたします。このコーホート要因法を用いますことから、将来の仮定値として、出生・死亡・国際人口移動に関する仮定設定が必要とされるということです。それぞれについて御説明いたします。出生仮定です。こちらは、前回、御説明いたしましたとおり、出生では女性の生まれ年、すなわち出生コーホート別に仮定設定を行うということです。その際ですが、この推計では、基準時点に15歳で出生に関する実績値が全くないコーホートを参照コーホートと呼びまして、合計出生水準のベンチマークとしております。平成24年推計では、1995年生まれコーホートが参照コーホートということになります。一方、参照コーホートまでの出生水準の変化は、基準時点で0歳のコーホートまで継続をし、それ以降のコーホートでは一定として仮定設定を行っております。このコーホートを最終コーホートと呼んでおりますが、平成24年推計では2010年生まれが最終コーホートに相当いたします。

 将来推計人口では、先ほど申し上げましたとおり総人口が対象ということですが、出生の仮定設定は、日本人と外国人を別々に行っております。ただし、外国人については、日本人に関する設定を行いまして、それに連動する形で設定をするという方法を取っております。

 年齢別の出生パターンですが、こちらについては経験補正型一般化対数ガンマモデルというモデルを用いております。これに関しましては、参照コーホートの要因別投影から得られる合計出生率に関する情報を用いながら、年齢別のパターンの推計を行うという方法で推計を行っております。

 こちらは前回も御説明したのですが、参照コーホートの仮定設定の考え方をお示ししたものです。参照コーホートの合計出生率は、ここでお示しした結婚する女性の割合と夫婦の子供数、それから離死別再婚の影響度ということで、1マイナス50歳時未婚率、それから、期待夫婦完結出生児数、結婚出生力変動係数、離死別再婚効果係数、そして、その背後にある変数として平均初婚年齢がそこに関係してくるということで、このような構造になっているということです。

 こういったそれぞれの要因に関して、どういった投影が行われているかを次に説明いたしまが、その前に、それぞれの要因に関しての考え方を御説明いたします。こちらは、今申し上げた50歳時未婚率であるとか、夫婦の完結出生児数等、それぞれの要因に関して平成24年当時にどういった実績値の傾向があったのかということと、それを踏まえて平成24年でどのような仮定値が設定されたかを、一覧表にしてお示ししたものです。

 平均初婚年齢ですが、こちらは実績値である1960年生まれで25.7歳だったのですが、これは上昇傾向が続いているということから、1995年生まれ、参照コーホートで28.2歳まで上昇になっております。また、50歳時未婚率ですが、これは実績で9.4%でしたが、こちらに関しても緩やかに増加をしていくということで、20.1%へ上昇していることになっております。夫婦の完結出生児数は、実績値2.07人であったわけですが、参照コーホートでは1.74人まで低下をするということになっております。離死別再婚効果係数ですが、こちらの実績値は0.962という水準ですが、これに関しては0.938へ低下するということで仮定設定を行ったところです。

 これらのそれぞれの要因の投影についての御説明を申し上げます。こちらは女性のコーホートの累積初婚率の投影の状況をお示ししたものです。この投影によって、平均初婚年齢と50歳時未婚率の投影が行われているところです。初婚の年齢パターンに関しましては、出生と同じ一般化対数ガンマモデルが用いられておりまして、これに基づいて1995年生まれの平均初婚年齢は、中位仮定では28.2歳、50歳未婚率は20.1%と推定がされたところです。

 こちらは、女性コーホートの夫婦の完結出生率の投影をお示ししたものです。初婚年齢別の出生確率が安定的な世代では、晩婚化による夫婦の出生児数の低下が初婚年齢の上昇を用いて推定可能ということで、これが青い線で示されております期待夫婦完結出生児数になります。ただ、先ほど平成14年推計で、若い夫婦の方々で結婚後の出生行動に変化が見られたという話を申し上げましたが、特に1960年代以降のコーホートで、こういった晩婚化以外の要因で夫婦の完結出生児率が低下することが、実績として観察がされておりますので、そういった両者の影響を考慮して、夫婦の完結出生児数は1.74の水準まで低下すると仮定設定がされたということです。

 離死別再婚効果の仮定設定です。今、御説明申し上げた完結出生児数は、初婚同士の夫婦の水準になっているわけですが、実際には離死別や再婚が発生するということになります。そこで、女性の50歳時点での結婚経験別の構成、具体的には離別後再婚、その他ごとに初婚同士夫婦に対する出生児数の比を求めまして、さらに、それをそれぞれの構成比で加重平均することによって、全ての既婚女性の平均出生率に変換する係数を推定しておりまして、こちらが離死別再婚効果係数になります。平成24年推計では、参照コーホートでは0.938という水準になっております。こちらは、今まで御説明した参照コーホートの要因ごとの値を一覧にしてお示ししたものになっております。

 こういった参照コーホートでの投影を踏まえまして、年齢別のパターンの推計が必要になるわけですが、経験補正型一般化対数ガンマモデルを用いまして、年齢別の出生率を出生順位別に推計してまいります。その際、例えばAコーホートは2010年時点で既に50歳以上の方々ということで、こちらに関しては全ての実績が得られているコーホートになります。あるいは、Bコーホートは1960年生まれから1975年生まれということで、こちらに関しても出生に関する実績が割と多く得られるということで、AコーホートとBコーホートでは、こういった実績値から直接年齢別のパターンが推定可能になります。

 一方で、Cコーホートとか、あるいは参照コーホート以降というのは、実績値が全くないコーホートということで、こういったところは実績値からの年齢別パターンの推定ができないということで、先ほどの参照コーホートの合計出生率水準、あるいは、ABコーホートでの推定結果を利用しながら、年齢別のパターンの推計を行うということになります。

 こちらのグラフでは、マーカーがない線で平成24年推計の中位仮定値をお示ししておりまして、マーカーで示したのが実績値となっております。特に、白抜きで示しましたマーカーは、平成24年推計以降に判明した実績値ということになっております。こちらを御覧いただきますと、おおむね40歳以上では中位仮定に沿った実績値の傾向になっており、30歳代では、仮定値が僅かに過小になっていているということです。一方で、20歳代では、逆に仮定値のほうが僅かに過大になっていることが、結果として得られております。

 これを期間の合計出生率で見ましたものがこちらのグラフで、緑で示した高位、青で示しました中位仮定値の間を、2011年以降の実績値が推移をしてきているという形になっております。ただ、先ほど御覧いただいた年齢ごとの累積を御覧いただきますと分かりますように、これはある意味では、30歳代の生み戻しによるテンポ効果による影響が大きいと考えられておりまして、こちらのグラフで御覧いただくような世代を追って少子化が進んでいるという傾向が大きく変化したことではないということです。

 死亡仮定に移らせていただきます。死亡仮定では、私どもの研究所で作成をしております日本版死亡データベースを基礎といたしまして、男女・年齢別の将来生命表を作成して仮定設定を行っております。死亡では、日本人・外国人とも日本人と同じ生命表を適用しています。モデルについては、先ほど御説明いたしましたリー・カーター・モデルをベースに、我が国の死亡遅延パターンを反映できるよう拡張した修正モデルを用いているところです。

 死亡仮定の考え方についてお示ししましたのが、こちらです。死亡の全体水準、高齢死亡率改善や寿命の男女差がどうなっていくかを、平成24年当時の傾向と中位仮定値はどうなっているかをお示ししております。死亡の全体水準ですが、これに関しましては、その時点まで速度は緩やかになりつつも、改善の傾向は引き続いてきたところですので、そういったものが今後も、速度は緩やかになりながらも改善が続くことを見込んで仮定設定をしたところです。また、高齢の死亡率改善による年齢シフトの影響に関しても、そういった効果が続いているということで、推計の中でも高齢の死亡率改善傾向が続くということで仮定設定をしております。

 寿命の男女差に関しましては、これは長期的には拡大をしてきたのですが、先ほど簡易生命表の所でもお話がありましたように、直近では横ばいかやや減少という傾向になっておりますので、横ばい傾向が続くということで推計を行っております。こちらは、平成24年推計の仮定値と実績値の推移を示したものです。白抜きが2011年以降の実績値ということで、現在までのところ男女とも実績値はポイント低位の間を推移する形になっているところです。

 国際人口移動仮定です。国際人口移動仮定は、先ほども少し申し上げましたが、平成24年推計では日本人と外国人を別々に設定しております。日本人については、近年の平均的な男女年齢別入国超過率が継続することを見込んでおります。一方で外国人については、過去の入国超過数の動向による長期的な趨勢に従うものとして、将来に向けての投影を行っております。ただし、平成24年推計当時の直近において発生いたしました、世界同時不況と東日本大震災の影響を考慮いたしまして、短期的な出国超過の効果を見込んで仮定設定を行ったところです。

 こちらは、日本人の年齢別入国超過率の平成24年仮定値と、それ以降、20102014年の実績の平均値を白抜きの丸でお示ししたものです。こちらを御覧いただきますと、2010年以降の実績値に対して、仮定値は多くの年齢層でやや過小になっていたことが分かっています。外国人です。こちらは外国人の入国超過数の平成24年仮定値を青い色で示したグラフですが、それと2010年以降の実績値とともにお示ししたものです。特に、白抜きの所が2010年推計以降に出てまいりました実績値ということで、比較をいたしますと、仮定値は実績値に対してやや過大とはなっておりますが、実績値も仮定値と同様、長期的趨勢に回帰する傾向が観察されているところです。

 最後ですが、こちらは平成24年の中位推計による人口と実績の人口を2014年について比較したものです。2014年の総人口は12,7083,000人ということですが、これに対して推計値は12,6949,000人となっていたところです。したがって、推計値のほうが134,000人過小であったことになります。これは比率にいたしますと、0.11%の過小推計になります。この内訳を御覧いただきますと、出生率によるものが98,000人過小、生残率によるものが43,000人の過大、国際人口移動によるものが79,000人の過小推計と、要因が分析されるところです。この後の4647ページですが、こちらは御参考といたしまして、過去の公式推計の仮定値と主な推計結果を要約いたしたものですので、後ほど御覧いただければと思います。私からの説明は以上とさせていただきます。

 

○津谷部会長

 石井部長、ありがとうございました。今回は1976年以降の将来人口推計モデルを3つのフェーズに分けて御説明を頂き、その後、前回の平成24年推計について、過去5年間の実績値が出てきましたので、それとの比較において詳しく御説明を頂きました。人口の三大動態である、出生、死亡、そしてこの場合は純国際人口移動についての御説明でした。大変テクニカルな内容を、時間を考慮して相当なスピードで御説明いただきました。特に「期間率」というのはよく耳にするのですが、コーホート要因法に基づく「コーホート率」との兼ね合いというものは、なかなか理解するのが難しいものですので、恐らく御説明に付いていっていただくのが大変であったのではないかと思います。御質問、御意見がございましたらお願いいたします。

 

○早乙女委員

 大変興味深く拝聴いたしました。平成24年推計の中位仮定の14ページの所で、30代以上での生み戻しによって、かなり実際の総推計値が少し上がったというのが平成24年ではないかと思います。現場で見ていますと30代前半、特に30代後半から40代前半の出産希望者あるいは実績の伸びがものすごいのではないかと思うので、逆に言うと平成14年、平成18年での30代後半の出産の伸びが加味されていなかった、逆に過小評価されていたのではないかという印象を受けます。ですので、平成24年推計のところで、その実数に近い推計がなされているので、この次回の推計に関しては、更にそこを加味していただくといいのではないかという意見です。

 

○石井人口動向研究部長

 平成24年推計当時では、今おっしゃったような30代以上での生み戻しの傾向が出てきたということで、それを踏まえて見直しを行ったということです。平成18年までに関してはそのような傾向は見えていなかったので、そういった点で新たな傾向を踏まえたというところです。

 先ほど御覧いただいたとおり、30代以上のところの生み戻しの傾向は引き続いて起きておりますので、次の推計でも、そういった新しく出てきた実績を踏まえながら推計を行っていきたいと考えております。

 

○駒村委員

 今のやり取りなのですが、これは政策効果があったかどうか、政策効果の結果で出生率の上昇が生まれているということであれば、今後もずっと政策効果が効くかどうかですが、そこはなかなか難しいところもあると思います。その辺の取り戻し効果がなぜあったのかというのは、政策効果の部分は検証されているのでしょうか。もし考慮するなら、それも少し検討しなければいけないと思います。

 それから、技術的なことで幾つかお聞きしたいのですが、17ページのリー・カーター・モデルですが、技術的に50年先という理解でいいのですか。その前の年を見ると、多少推計の将来期間にばらつきがあるので、そこはテクニカルな技術上の問題だと思います。

 2つ目が、修正型というのですが、21ページは既に修正型になっているのかどうか、どこを修正したのかを教えていただきたいと思いました。

 

○津谷部会長

 たくさんご質問がでましたので、1つずつ区切って伺いたいと思います。最初のものは14ページについてのご質問かと思うのですが、政策効果について、もう少し詳しく御説明を頂き、それから次にリー・カーター・モデルのほうに移りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長

 まず、私どもの推計というのは、前回申し上げましたが、基本的に人口学的な投影ということになります。いわゆる人口学的なデータの趨勢を踏まえて、将来に向けて投影を行うというのが基本的な考え方になります。

 30代に産み戻しがどのように起きているのかというのは、おっしゃっているような政策の効果という可能性もあると思いますし、それ以外の要因というのもあると思われますが、将来推計上では、そういったものが全て人口学的なデータの趨勢に反映されていると考え、そのデータの傾向を将来に向けて投影するという考え方になります。

 したがって、個別の政策の効果、あるいは影響を取り出して将来推計をやるということではなくて、人口学的なデータのみに基づいて将来推計を行うという形になりますので、仮に政策の効果というものがその中に織り込まれているのだとすれば、そういったものが将来的にも続くという形で将来推計が行われるというのが推計の考え方です。

 

○津谷部会長

 よろしいでしょうか。駒村委員のおっしゃる政策効果について、恐らくそれはピリオド効果ということではなく、どういう政策であろうが、また社会経済的要因であろうが、それらの影響を直接には考慮せず、各出生コーホート別に、つまり同じ年次に生まれた女性や男性について、それぞれのライフコースにおける人口学的なビヘービアーを将来推計、つまり将来に向けて投影していって、出生コーホート別推計値を最後にガチャンと合わせるということであり、特定の政策効果をここに織り込んでいるものではないということで、よろしいでしょうか。

 

○駒村委員

 言いたかったのは、政策効果の可能性もあって、その政策効果は今後もずっと続くような、どんどんよくなっていくというようなことも甘くなりすぎるので、確かに1980年代コーホートはよくなっているのは明らかだと思うのですが、それはいろいろな可能性があって、これは自然によくなったのか、それならいい傾向で続くという想定もいいですし、政策効果でそこまでずっと続くものでもないとなると慎重にならないといけないということを申し上げたかったのです。

 

○津谷部会長

 有難うございます。ただ、一言付け加えますと、ここに1995年コーホートの推計値がありますが、これは5年ごとに実施している将来人口推計において、国勢調査実施年次に15歳であった女性のコーホートが、先ほど石井部長がおっしゃった基準コーホートです。15歳は人口再生産開始年齢ですので、それから49歳までの35個ある出生コーホートが女性の出産可能期間を形成します。将来人口推計は国勢調査から得られる性・年齢別人口数が基になっているわけですが、国勢調査実施年次に15歳の女子の出生コーホートがコーホート出生力の推計の基準になっております。推計は基準コーホートだけでなく全てのコーホートについて行われますが、これを全部示してしまいますと、何がなんだか分からなくなるということで、多くの場合、基準コーホートの推計値がグラフに描かれていることが多いのですが、他のコーホートについても、全部コーホート要因法で将来投影をされているということかと思います。

 ただ、当然状況は変わっていくわけですので、それをどのように将来投影していくのかということについて、モデルのパラメーターの具体的な設定の仕方については、社人研で考えていただいていると思いますので、次回以降に更なる詳しい御説明を頂くことにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、次に先ほどご質問のあったリー・カーター・モデルのほうにいきたいと思います。

 

○石井人口動向研究部長

 2点目です。この推計では、50年間を推計の期間としていますので、かなり昔のほうですと50年ではなかったこともあるのですが、この23回の推計については推計期間50年ということで、死亡率に関しても、この先50年間の将来推計を行っているということになります。

 もう1点の21ページについてです。こちらにお示ししているのは、オリジナルのリー・カーター・モデルの式を示しております。その修正を行った所に関しては、こちらでお示ししておりません。

 修正に関してどのようなことをしているかということですが、実はリー・カーター・モデルの1つの問題点として指摘されているのが、bx という関数が固定されてしまっているということです。bx が固定されているということは、改善する年齢層というのが、例えば改善が高い年齢層、低い年齢層というのがありますが、そういったものが将来に向けて固定されてしまっているということです。一方で、日本ではこういった死亡率の改善が高いところが高齢のほうに移動していく傾向が見られておりますが、改善率の高いところがシフトするという効果は、リー・カーター・モデルでは表現しにくいとされています。

 そこで、高齢のほうに関しては、そういった年齢層のシフトが表現できるモデルを別途考えまして、リー・カーター・モデルと、ある意味で加重平均するような形で設定するというような修正を行っています。

 

○駒村委員

 35ページの参照コーホートの離婚率、離別率ですが、60年はその世代の50歳までの離婚率は出ているわけですが、15.3というのは推計をどうやって出されたのでしょうか。それが32ページに考え方が出ているのではないかと思います。このときは、「離婚率の上昇傾向はやや緩み」という前提を置いていたのですが、これは何か根拠はあったのでしょうか。どうしてそのようなロジックになったのでしょうか。

 それから、40ページに男女の死亡・寿命の差があります。これは、拡大していたが最近では減少すると。研究分野でどのようなことが考えられているのでしょうか。つまり、女性の社会進出が進んでいるような国では男女の寿命差が縮まっているようなことが見られているのか。その後に横ばい傾向が続くということで、6.75に固定するという形になっていますが、これは何か根拠はあるのでしょうか。

 

○石井人口動向研究部長

 まず、離死別再婚の効果の所です。こちらに関しては、参照コーホートのところはおっしゃるとおりで推計値ということになりますので、それまでのところ、こちらも離婚、再婚の動向を将来に向けて推計を行っています。その推計というのは、平成18年当時も行っていたのですが、平成18年以降に出てきた実績を見ますと、緩やかに進んでいたということで、そういった見直しを行ったというのが、先ほど書きましたところに相当いたします。

 男女差の話です。先ほども話題が出ていましたが、平均寿命の男女差に関しては、近年まで日本は非常に特別な例でして、いろいろな先進諸国では1970年代や1980年代ぐらいからどこも縮小するような傾向が起きています。それに関しては、国によっても傾向は違いますので、必ずしも1つの要因ということは言えないのですが、アメリカの研究では寿命を下げている要因として、喫煙あるいは肥満ということが影響を大きく与えているとされており、このような中で、女性の喫煙率が上がってきていたり、男性の行動が変わってきているようなことで、男女差が縮んできているのではないかという研究がされております。

 日本というのは、そういう中で男女差が広がっている唯一の国だったのですが、2000年代ぐらいに入ってから男女差はあまり拡大しなくなって、どちらかというと横ばいぐらいで推移するような傾向が現在見られています。ただ、縮小がどこまで続くかというのは、必ずしも明らかではないということで、この推計ではおおむね横ばいの傾向が続くという仮定をしたところです。

 

○小野委員

 2点質問させていただきます。1つは、最近「人口と経済」という特集で週刊誌が出たりしておりますが、そこで出てくる人口推計というのは、主に国連のデータです。国連の将来人口推計と社人研が行っている推計のスタンスの違いについて、私の知る限りですと、国連の場合には出生率は人口置換水準という推計になっているというところがあると思います。それが1点です。

 それから、社人研の毎回の報告は今の御説明のとおり、50年の推計ということでされていますが、別途参考推計ということで、後半50年を公表されていると思います。これを区切って、それぞれ位置付けを違えて報告されているということの考え方を教えていただければと思います。

 

○石井人口動向研究部長

 1点目ですが、国連のほうでは、おおむね2年に1回ですが、World Poupulation Prospectsということで、国連人口部が国連加盟国ということですが、世界全体の人口推計をやっています。国連推計では、特にお話いただいたのは出生率仮定のところだと思いますが、日本の出生率の仮定値を見ますと、社人研の推計よりもだんだんと上昇していって、高いほうに収束していくような形になっています。

 そもそも国連の推計の考え方として、1国の推計を細かくやるということよりも、全体としての整合性が重要視されるということが、まずございます。そういった観点からですと、出生の水準というのは長期的な人口サイズに影響を与えますので、どこかの地域が非常に大きく拡大したり、消滅していったりということですと、全体としての整合性が非常に取りにくいということになります。したがって、おっしゃっているような形で、先進諸国というのは現在人口置換水準より低い出生率水準なのですが、それを2.1の人口置換水準まで収束させていくような仮定が、何回か前の推計まで取られていました。

 ただ、実は2.1まで戻すということに関して、いろいろと問題視するような意見もあって、現在は必ずしも2.1ではなくて、収束先というものをある程度実績のデータを基にして、国ごとにばらつかせるような設定にしています。その国のデータも使うのですが、どちらかというと、階層ベイズ的な推計を行って、国ごとの将来の収束値に関してばらつきをある程度持たせようという考え方ですので、ある意味では高い水準に収束させていくという考え方はそのまま保持されているということになります。

 ですから、国連の推計というのは全体としての整合性を重視しながら各国の推計をやるのに対して、各国の推計というのはそれぞれの国の事情をより詳細に見て、その動向を忠実に反映できるような推計をやるということで、日本の推計としては、社人研の推計のほうが、実績の趨勢をより忠実に、ほかの国との関係を特に考えずに推計を行うことが可能であるという違いがあると言えると思います。

 もう1つは、本推計と参考推計の関係ということです。私どもの推計では先ほど申し上げましたとおり、50年間が本推計期間ということになっておりますが、その後の50年間というのは、長期的な人口分析の参考という観点から、人口動態率を全て一定にしてお示ししているということです。仮定設定に関しては、いろいろな不確実性もありますし、なかなか長期のことを仮定するのが難しいという面もありますので、50年間を本推計期間とさせていただき、それ以降に関しては、機械的に人口動態率をフィックスして、長期的な人口の趨勢をお示しするとこうなりますというものをお出ししているのが、参考推計の考え方です。

 

○津谷部会長

 ユーザー側から言いますと、国連の将来推計はコーホート要因法を用いているということには間違いないのですが、それぞれの人口の動態のパラメーターやモデルの具体的なスペシフィケーションがどうなっているのかということについて、どこにも明示されていないのです。ですから、推計結果をみて、そこから恐らくこうやって推計しているのではないかということを推測するしかありません。ですので、先進国については、その国の中央統計局、つまり政府がやっている推計をお使いになったほうがよろしいのではないかと思います。ただ、発展途上国や信頼に足るデータがないと思われるときには、国連推計は大変に有用です。ただ、日本についてはもちろんそうですが、先進国については、原則World Population Prospectsの推計値をお使いにならないほうがよいと思います。どう見ても、我が国の出生率が近い将来置換水準まで回復するとは考えにくい。国連推計はどれぐらいのスピードで、いつ頃回復するのかということについては、幅を持たせるようですが、いずれ出生率が置換水準に回復をするということを推計の前提としておりますので、これは私見ですが、ある意味で現実からの乖離が進んでいるように思います。

 先ほど石井部長もおっしゃいましたが、将来人口推計は将来投影ですので、あまり時間がたってしまいますと、プロジェクターにより投影される絵もそうですが、プロジェクターからの距離が遠くなるとだんだん投影の幅が広くなってぼやけるように、将来推計も推計の起点からの時間がたつにしたがって誤差が大きくなるということですので、50年間で区切っていると理解しております。

 ただ、長期的なデータが是非必要だというユーザーもかなりいらっしゃいますので、100年間の推計をやっていただいているということは、大変有り難いことだと思います。

 

○鬼頭委員

 駒村委員の質問と重なるところがあるのですが、確認させていただきたいと思います。今回は、7ページに期間別の合計出生率の仮定値と実績値を出していただいて、非常に有り難いと思います。過去を検証するということでよく分かりました。

 単純に見てみますと、1980年代までは結構楽観的と言いましょうか、いずれ戻るという感じであるように見えますが、21世紀に入ってくるとむしろ悲観的で、実勢値よりも低いということで、30歳台での生み戻しということで説明されたわけです。

 そうすると、各時代の推計方法が違うということで、1期、2期、3期ということで示されているのですが、やはり推計の方法によって何か影響が出てくるのか。社人研の分析は国連のものと違って、非常に精密に、部品を分解して丁寧に汚れを落として、またそれを組み立てて発車するというような形になっているわけですが、いくら精密にやっても過去のトレンドに影響されるということには違いはないと思います。

 そうすると、今までに予期しなかったことが起きるという兆し、例えば30歳台での生み戻しのようなことですが、そういうものを出生動向基本調査の中から見付け出すことはできないだろうか、それを加味して次回に御報告をしていただけないだろうかということが希望なのですが、いかがでしょうか。

 

○石井人口動向研究部長

 まず、この推計の基本的な考え方というのは、人口投影ということで、それは基準時点までに得られているデータ、人口学的なデータの趨勢を将来に向けて投影するということですので、推計以降に起きる構造的な変化は逆に織り込まれないものであるということだと思います。だからこそ、こういった推計というのは定期的に見直すことが必要であり、逆にこの推計の性格上そういったものを予見のような形で入れるというものではないと思います。

 例えば出生動向基本調査も、この将来推計人口の入力データとなっていますし、先ほど平成14年推計を御説明したときに申し上げたのですが、平成14年推計を行った当時、出生動向基本調査において、結婚持続期間が5年から9年の夫婦の子供数の減少傾向が初めて見られたのです。そういった出生動向基本調査で見られた結婚持続期間が短いところの傾向をその当時の推計に織り込んで、将来投影を行うという改良をそのときに行ったわけです。

 したがって、いわゆる人口学的データの趨勢というのは、今得られているいろいろなデータの傾向というのを、とにかく変化を見逃さないようにして、それが何かの変化であるということが定量的に確認できれば、それを推計に織り込んでいくということですし、そういった傾向が見られないものに関しては、そのときの推計には織り込まないというものが、この推計の考え方になると思います。

 

○津谷部会長

 私の記憶に間違いがなければ、この平成14(2002)推計から、出生、特に結婚その他をパラメーター化するときに、出生動向基本調査のデータを使い始められたと理解しています。そして、そのために、この調査の実施年度を前倒しして、国勢調査と同じ年度に実施されるようになったということであったと思います。調査の実施年度を早められた1つの大きな理由が将来人口推計、特に出生過程の推計に調査の結果を反映させたいというお考えがあったと理解しております。これからも、もちろんそのようにやっていただけると思っております。

 

○大石委員

 2点あります。1点目は、人口のボリュームが高齢のところにいってしまっているので、今後の総人口の推計を考えると、だんだんと死亡を当てるほうの重要性が増ししているのではないかと思います。もし、そのような理解が正しいとしましたら、先ほど駒村委員や高橋委員が質問された、男女の平均寿命差の縮小傾向が続くのかどうかというのがポイントになると思ったのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。これが1点目です。

 2点目は、国際人口移動の43ページと、それを受けた45ページの部分です。43ページの見方としては、赤い線で想定していたほどには、日本人は外に行かなかったという理解でよろしいのでしょうか。その結果として45ページ、特に43ページでは小さな子たちの出国が想定していたよりずっと少なかったということなのですが、なぜそうなるのかがよく分からないのですが、45ページはその予測と実績の差をもたらす要因になっているということでよろしいのでしょうか。あと、すごく幼い子たちが、何でそんなに出国するのかという理由がよく分からなかったものですので、御存じでしたら教えてください。

 

○石井人口動向研究部長

 まず1点目です。死亡というのは、高齢の人口がどうなるか、どこまで生き残るかということに大きく影響を与えますので、その推計は非常に重要だと考えております。もちろん、長期的な総人口の規模というのは出生で決まってきますし、国際人口移動も大きく影響を与えますので、どの影響も重要だと考えておりますが、その際にもう1つ、死亡に関して男女差のお話がありましたが、そもそも日本というのは平均寿命のレベルで言いますと、国際的にもトップレベルであって、それでもまだ伸長が続いているということで、ある意味では人類の寿命がどこまで延びるのかということの先頭に立っているのが日本であるということも言えるわけで、そういう中で推計をやるというのは非常に難しいことになるわけです。ですから、男女差の話も含めまして、死亡の水準というのはどのようになっていくのかということは、死亡の推計を考える上で非常に重要であると認識しております。

 国際人口移動に関しては、おおむね先生のおっしゃったとおりで、日本人の入国超過が、平成24年の仮定値を設定したときの直近よりも、それ以降のほうが絶対値として少なくなってきているというような違いが出てきておりまして、それが最後のページの人口の違の所に反映されていると考えています。

 年齢の小さなところの移動というのは、お父さん、お母さんの年齢のところと一緒に発生してきますので、中年層のところでも絶対値が小さいというような違いが出ていますので、そこと伴って一緒に発生しているのではないかと考えられます。

 

○鬼頭委員

 海外転勤でしょうね。

 

○石井人口動向研究部長

 そうです。

 

○鬼頭委員

 20歳のところで、前は外へ出て、20歳過ぎると入るというのは、多分留学ではないかと思います。

 

○津谷部会長

 小さな子供が単独で国際移動をするというわけではないと思います。

 

○高橋委員

資料の27ページの基準人口の評価についてです。国勢調査の発表になると、細かな基準人口の議論ができると思うのですが、今日の報告では基準人口についての評価がなかったので、次回でもいいのですが、国勢調査の精度はどうなのだろうかということと、国勢調査には国籍不明と年齢不祥があって、それを今までのやり方の年齢不祥人口の按分の手法によって、どういうことが引き起こされるのだろうかというところについて、難しい評価は必要ないと思うのですが、それが分かるようにしていただきたいと思います。その評価を統計局にやってもらうのがいいのか、社人研にお願いするのがいいのかということはありますが、それが気になっている点です。

 

○石井人口動向研究部長

 基準人口に関しては、近年、年齢の不祥などがかなり増えてきているということで、前回の平成24年推計をしたときの平成22年の国勢調査では、統計局で不祥按分の方法を新たに考えて、統計局で不祥按分した基準人口が初めて作成されたところです。

 今回に関しても、統計局と情報交換をしながら進めているところですが、特に基準人口についても、統計局の中での検討がされているところだと思います。国勢調査の確定を踏まえて、統計局で一定の方法に基づいて基準人口が作成されると考えますので、それが出ましたら、例えば不祥按分の方法に関しては御説明できると思います。

 

○津谷部会長

 おっしゃるとおり、2015(平成27)の国勢調査の男女別、各歳別の人口数に不祥が増えてきております。それをどのように調整するのか。総務省統計局がインピュート、推定をやってくださるのですが、そのやり方も含めて統計局のデータを検証する。もしくは、元の不祥のあるデータを使って、調整を社人研のほうでしていただくことも可能性として考えられます。2015年の国勢調査人口が将来人口推計の出発点になるということですので、これについての御説明も是非お願いできればなと思います。

 

○山田委員

 先ほど大石委員も議論されていたところなのですが、41ページの男性の寿命が実績値と乖離しているというところで、22ページのリー・カーター・モデルの御説明があったと思います。これの修正部分が、こちらの実測値との乖離に出ているのか、単に構造的な変化があったのか。今日だと非常に時間が短いので、次回でも御説明いただければと思います。

 

○津谷部会長

 簡単にお答えになれますようでしたら、お願いいたします。

 

○石井人口動向研究部長

 そこに関しては、もちろんリー・カーター・モデル自体の推計法とか、あるいは修正したモデルのパラメーターの値等、いろいろな要因があると思うのですが、一方で死亡の場合には、低位と高位の幅が非常に狭いので、グラフを見ますと若干改善が高いく目立って見えるのですが、大きく中位推計から外れているという感じではないと思います。したがって、出てきた実績を踏まえて、その方法論で将来投影するという形で基本的にはいいのではないかと考えておりますが、次回またもう少し詳しく御説明できればと思います。

○津谷部会長 高年齢期の死亡の先送りは、大変重要な要因かと思いますので、これについての詳しい御説明は次回いただけるものと期待しております。

 ただ今、予定の終了時間を超過しております。まだ、たくさん御質問はあるかと思いますが、時間の関係で全部の御質問をお受けできなかったことをお詫び申し上げます。

 

○野崎政策企画官

 次回の日程については改めて調整させていただきます。後日改めて御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

 

○津谷部会長

 それでは、本日の部会審議は終了いたします。大変御多忙の折、活発に御審議を頂きまして、本当にありがとうございました。

 

 


(了)

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